○園田国務大臣
公害関係がそれぞれ農林省、建設省あるいは通産省、運輸省、各方面にまたがっておって、実施の面に相当困難があることは事実でございます。できれば一元化することが適当ではございまするが、現実の問題としては、社会の進歩の複雑さ、及びその発達の中から、複雑な
公害がどんどんどんどん新しく出てまいっております。したがいまして、これを一元化することは困難ではありまするが、しかし御
指摘のとおりに、少なくとも
基本法に基づく実施の法律案について、窓口がみずから進んで人間の健康と生命を守る。
公害は
厚生省が所管をしたい。責任を買って出ておる。
厚生省に窓口が一本にしぼられるという法律の基準をしなければ、いまのままではなかなか困難であると私自身も考えております。ただ
基本的な考え方を申しますると、いま通産省、各省と
厚生省とどう違うかということをおっしゃいましたが、いろいろな折衝を重ねてまいりますと、いろいろな惰性もあります、習慣もあります、誤解もあるようでございます。たとえば自動車の排気ガスについては、自動車の構造あるいはこれの経営ということについては、しろうとの
厚生大臣が口を出してもらっては困るという御
意見もあるようですし、あるいは煙突については、全然商売に経験のない
厚生省が来て口を入れては困る、これもごもっともでございます。しかし、私のほうでは、そういうことに口を出す意思は全然ないのであって、ただ最終
段階の出てくる煙、自動車の排気ガス、そういうものが人命と健康にどういう影響があるかということで、その点についてだけしぼらしていただければいい、こういう
方針で、実は折衝を進めてきております。紛争の処理についても、御
指摘のとおりに、本年正月には、総理は伊勢の駅頭で、紛争処理基金の案分についても、記者会見をして正式に
発表しておりまするし、
委員会、本
会議等においても、しばしば明言しておるところでございます。そこで、いろいろ困難がありましてまとまらぬ点もございまするが、各省とも、必ずしもなわ張りを固守しているわけではなくて、回数を重ねれば、だんだんお互いの
意見が煮詰ってきているようではございまするが、ただそのスピードと、かといって、
国会とのお約束もあるし、また社会の要請もありまするので、
基本法に基づく実施の法律案を、このままいつまでも放任することはたえがたいところでございまするから、いまようやく二法案の法律案作成をやっているところでございます。
なおまた、紛争処理につきましても、まだまだ
国会の日数もあるところでございまするし、この紛争の処理が一番大事でございまするから、私は、何とかして成案を得て、頭を出すところまでこぎつけたいと努力しておる最中でございまするが、ただ、紛争処理について私の言いたいところは、この
公害というのは、犯人がだれかということではなくて、目的は、被害を受けた人間を
政府がどうやって守るか、あるいはどうやって救済するかということが、
公害の主目的でございます。そこで、その救済をするについては、一番
原因の多かったものから逐次責任を担当していこうじゃないかという、責任のあんばいが基金の問題になっているわけでありまして、財界の方々の御好意は非常にわかります。自分たちが金を集めて、好意によって援助をしてやろうということでございまするが、
厚生大臣が願いますることは、
公害の認定ということは、どなたにも干渉されてはならぬので、公平に
公害の認定をするのには、人さまのお情けで助けてもらうということでは−私は
公害の認定の場合に、いままでもほとんど、実例からして、
公害が、即時あるいは適切に紛争処理あるいは訴訟等が片づいた例はないので、足尾銅山のごときは、九十年もかかってようやく解決した。解決したときには、被害者がいないということになってはたいへんでございますから、その点を心配しつつやっておるわけでございます。したがって一元化の問題につきましては、現実としては一元化はできないかもしれぬが、少なくとも法律の作成につきましては、窓口を一本にしぼってやらなければならないだろう。ただいまのところでは、
関係閣僚
会議で、政令その他で、窓口は
厚生省にするということはきめておりまするものの、それは必ずしも、実質上、
厚生大臣が主となって各省にお願いするというかっこうではなくて、五分五分で相談をして、聞かれなければしかたなしに、あきらめて早く法律案をつくるということになっては、いささか問題があるのではないか、このように率直に考えております。