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1968-05-15 第58回国会 衆議院 建設委員会 第22号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十三年五月十五日(水曜日)    午前十時四十一分開議  出席委員    委員長 加藤常太郎君    理事 金丸  信君 理事 砂原  格君    理事 丹羽喬四郎君 理事 森下 國雄君    理事 渡辺 栄一君 理事 佐野 憲治君    理事 内海  清君       伊藤宗一郎君    池田 清志君      稻村左近四郎君    大野  明君       佐藤 孝行君    澁谷 直藏君       正示啓次郎君    田村 良平君       葉梨 信行君    井上 普方君       唐橋  東君    福岡 義登君       北側 義一君  出席国務大臣         建 設 大 臣 保利  茂君  出席政府委員         建設政務次官  仮谷 忠男君         建設省河川局長 坂野 重信君  委員外出席者         農林省農地局参         事官      佐々木四郎君         通商産業省公益         事業局技術長  藤井  孝君         自治省財政局財         政課長     首藤  堯君         専  門  員 熊本 政晴君     ――――――――――――― 五月十三日  委員葉梨信行辞任につき、その補欠として森  清君が議長指名委員選任された。 同日  委員森清辞任につき、その補欠として葉梨信  行君が議長指名委員選任された。 同月十四日  委員北側義一辞任につき、その補欠として大  橋敏雄君が議長指名委員選任された。 同月十五日  委員浦野幸男君、下平正一君及び大橋敏雄君辞  任につき、その補欠として江崎真澄君、唐橋東  君及び北側義一君が議長指名委員選任さ  れた。 同日  委員江崎真澄君、唐橋東君及び北側義一辞任  につき、その補欠として浦野幸男君、下平正一  君及び樋上新一君が議長指名委員選任さ  れた。     ――――――――――――― 五月十四日  公営住宅入居収入基準の引上げに関する陳情書  (第三五九号)  駐車場の整備に関する緊急措置法早期制定に  関する陳情書  (第三六〇  号)  建設業者育成強化に関する陳情書  (第三六一号)  瀬戸大橋架設に関する陳情書  (第三六二号)  関門国道トンネル通過料金無料に関する陳情  書(第三六三号)  びわ湖総合開発に関する陳情書  (第三九六号)  都市計画法案の一部修正に関する陳情書  (第三九七号)  主要地方道宇和島須崎線国道昇格に関する陳  情書  (第四二二号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  治山治水緊急措置法の一部を改正する法律案  (内閣提出第九一号)      ――――◇―――――
  2. 加藤常太郎

    加藤委員長 これより会議を開きます。  治山治水緊急措置法の一部を改正する法律案を議題とし、審査を進めます。  質疑の通告がありますので、順次これを許します。唐橋東君。
  3. 唐橋東

    唐橋委員 私は、水利に関する問題のうち、発電県で起こっております減電補償の問題についてお伺いするわけでございますが、質問に入る前に、ごく簡単に現状を理解していただきたい、こういう点で、経過等も含めて申し上げさせていただきたいのでございます。  御承知のように、現在、発電所一つ水系にありますと、いま土地改良事業が非常に大型になりまして、開田計画が大きく出ております。そうしますと、それに対する用水としてその水系から水をあげる、こういう場合に、下流発電所上流から水をあげられるために発電量が減少する、こういう問題が起こりまして、その減少した分について補償をしていただきたい、もしその補償ができなければ揚水はできません、こういうことがそもそも問題の発生になったわけでございまして、一つの例を申し上げますと、十三ヘクタールの新規開田をする、そしてそれに揚水をした下流発電所に対する影響等計算してみると、四百七十万以上の補償金が必要である、こういう問題が発生したわけでございます。十三ヘクタールの新規開田に四百七十万の補償要求では、これは農民の負担では全く開田できない現状にあったわけです。そういう問題の発生から、四十二年度一ばいかかりまして、福島県と東北電力との間において、減電補償契約基準ということでいろいろと折衝されまして、その努力効果等については非常に敬意を表するわけでございますが、その結果によりまして、この四月一日からはおおよそ前の減電補償要求額の四分の一程度になる、こういうことで、いわば農民人たちは非常に喜んでおるというのが現在の情勢でございます。しかし、県が中に入りまして東北電力契約基準を取りきめて、農業団体、特に土地改良団体でございますが、その間に入りました努力等は認めるとしても、この契約は、それはそれとして、この契約のもとになっているものをもう少し検討してみたいということと、もう一つは、この契約の中にある条項で、私なりに見ますときに、大きな矛盾があるんじゃないかという一、二点も気づいておるわけでございます。したがいまして、それらの点についてお伺いしたい、こう思うわけでございます。  それで、問題点に入る前にひとつお伺いしたいのでございますが、通産省公益事業局お見えになっておりますか。−いまの電力関係でございますから、資料的なものとしてお聞きしたいのでございますが、水利権許可はこれは建設省ですね。東北電力に現在の水利権はいつ許可されておりますか。その年月日をちょっとお聞きしたいのです。阿賀野川水系です。
  4. 坂野重信

    坂野政府委員 先生承知のように発電所がたくさんございまして、これは一定しておりませんで、水利使用はずっと古くからやっておる発電所もすでに十何年たっておるのでございますが、ちょっと一定しておりませんで、いろいろと発電所ごとにそのつどやっておりますので、いま詳しい資料は持ち合わせておりません。
  5. 唐橋東

    唐橋委員 発電水利の問題ですから、新しい発電所ごとにそのつどそのつど水利使用許可をするのですか。
  6. 坂野重信

    坂野政府委員 そのとおりでございます。
  7. 唐橋東

    唐橋委員 その場合、三十年ということで理解していいのですか。
  8. 坂野重信

    坂野政府委員 そのとおりでございます。
  9. 唐橋東

    唐橋委員 通産省のほうにお伺いいたしますが、東北電力の中で、阿賀野川水系只見川水系発電の総量はどのくらいになっていますか。
  10. 藤井孝

    藤井説明員 ただいま数字をちょっと持っておりませんけれども、七、八十万キロワットくらいあると思っております。
  11. 唐橋東

    唐橋委員 それに伴って、いまの阿賀野川水系で、これは都道府県収入になっておると思いますが、水利使用料はどのくらいの収入に見込まれていますか。
  12. 坂野重信

    坂野政府委員 ちょっとはっきりいたしませんけれども、概算で、東北電力関係で全体で年間約十億円の水利使用料でございます。
  13. 唐橋東

    唐橋委員 これは東北電力だけですか。
  14. 坂野重信

    坂野政府委員 東北電力だけ申し上げますと、昭和四十年度で約十億でございます。全国では発電用水利使用料は約六十億円でございます。
  15. 加藤常太郎

    加藤委員長 速記がとりにくいから御静粛に願います。
  16. 唐橋東

    唐橋委員 その場合、福島県はどのくらいですか。
  17. 坂野重信

    坂野政府委員 福島県は六億七千万円でございます。
  18. 唐橋東

    唐橋委員 その場合に、東北電力の場合に補償単価基準になっておるもの、いわば現在の料金織り込み原価、こういうふうに理解されているものが五・〇一二円、約五円ですか、そういうように理解していいですか。
  19. 藤井孝

    藤井説明員 二十九年ごろには総括原価単価基準にした考え方でやっておりましたが、その後いろいろ検討いたしまして、新鋭発電火力単価並み——これは二円八十二銭でございますが、それを単価とするということになっております。
  20. 唐橋東

    唐橋委員 これは九電力全部同じですか。
  21. 藤井孝

    藤井説明員 これは東北電力の場合でございまして、東北電力の地域における発電単価から出したものでございます。
  22. 唐橋東

    唐橋委員 東北電力の場合二円八十二銭、わかりました。  九電力関係のこれに相当する単価を、いまお手元に資料がもしなければ、あと資料としていただけますか。
  23. 藤井孝

    藤井説明員 後ほど準備しまして御提出いたします。
  24. 唐橋東

    唐橋委員 土地改良の場合ですが、団体営と、それからたとえば愛知用水のようなもの、あるいはその他大規模国営の場合というような計算で、同じ単価になっていますか。
  25. 藤井孝

    藤井説明員 大規模な場合におきましては、それはキロワットに非常に影響してまいりますので、そのウエートを考えたような計算になっておりますけれども、小さいものになりますと、キロワットアワーだけの計算に近いものでやるというような場合も出てまいります。したがいまして、ケース・バイ・ケースでちょっと計算が違ってまいるわけでございます。
  26. 唐橋東

    唐橋委員 大規模になれば、この単価でいくとものすごい減電料が出てくるというような予想のもとに、大規模な場合多少減免しておるというような内容の御答弁だと思うのですが、そんなふうに理解していいですか。
  27. 藤井孝

    藤井説明員 そういうことじゃございません。大規模になりますと、その影響で、せっかくある発電の設備を有効に使えないという、キロワットに非常に大きく影響する場合がございますので、むしろその逆の場合になるわけでございます。逆の場合というか、高くなるというケースがあるわけでございます。
  28. 唐橋東

    唐橋委員 それでは、これも後ほどでけっこうでございますから、そういう大規模の場合の単価と、それから団体営のような、いわゆる直接農民の場合の単価と、資料等ございますればお出しを願いたいと思います。これは農林省関係でも、この前この問題を取り上げましたときに、ひとつ御調査をお願いしたいと言っておいたのです。それらに対する資料等も一応はおそろえになっていると思うのですが、いかがですか。
  29. 佐々木四郎

    佐々木説明員 昨年の七月に、農林省で各地方に照会いたしまして、発電関係のある農業用水事業を、過去三十八年から、将来は一、二年先を見まして四十五年くらいまでの間の事業調査をいたしました。その結果を概略申し上げますと、発電所上流から水を取るような計画がございますのが、全国に全部で五百六十九地区ございます。その五百六十九地区のうち、減電補償の交渉をすることに関係するものが三百六十八地区ございます。この三百六十八というのが、ただいま先生がお話しになっておられる問題の地区であろうと思いますが、この内容を若干申し上げますと、このうち三百十九地区というものは、いわゆる融資地区と称しまして、農林省でやっております。資金を農民に貸し付けましてやります仕事でありますが、これは大体非常に小規模のものでございます。つまり、ほとんど全体、九割くらいのものは規模の小さな開田用水工事、こういうふうに理解できると思うのでございます。さらに、この三百六十八のうち、三百五十六という、ほとんど大部分が東北のほうに集中しておりまして、東北地方でそういう減電補償関係する農業開発計画が非常に多い、しかもその規模は非常に小さい、こういうことがわかったわけであります。ただいまのところ、大体以上のような調査結果になっております。
  30. 唐橋東

    唐橋委員 では、なおあと関連すれば質問を繰り返したいのですが、前に進めましてお聞きしたいのは、私から申し上げるまでもなく、河川法の第二条に「河川流水は、私権目的となることができない。」こういうように明示されておるわけでございます。この「私権目的となることができない。」というのを、ごく簡単に御説明いいただきたいと思うのです。
  31. 坂野重信

    坂野政府委員 御指摘河川法の第二条第二項でございますが、河川流水というものは絶えず流動している状態でありますので、これに特定の財産的な支配を特定の者が及ぼすことは不可能であるという解釈でございまして、そういうことで河川流水所有権その他の私法上の財産権の対象とはならないということを明らかにうたっておる、こういう解釈だと思います。
  32. 唐橋東

    唐橋委員 一つの流域に住む人たちが各種の産業に従事しておる、したがって、その河川を利用することが基本的には認められておる、こういうように第一は理解し、したがって、その流水使用は公平でなければならない、だから特定個人法人が独占してはならない、所有してはならない、こういうように理解し得ると思うのですが、どうですか。
  33. 坂野重信

    坂野政府委員 御指摘のとおりでありますが、そのために河川法の二十三条に河川水利権というものを規定してありまして、そこで河川法によりまして規制を受けるわけでございます。ですから、そういう面からいいますと、河川法の二条と二十三条とは矛盾するものじゃなくて、そういう水利権という許可に基づいて権利を公法上において取得する、そういう解釈でございます。
  34. 唐橋東

    唐橋委員 そういう一つの制限の中で許可をもらう、こういう場合に、御承知のように四十一条で補償要求等ができると規定されているわけですが、具体的に、一つ河川福島県のような発電に利用されている川は、いまのように許可をもらう、そうすると、もらうまでには四十一条の補償規定その他がございますが、許可をもらってしまえば、あと上流で新しく水を使用しようという人たち使用権というものは一切認められない、こういうような状態が出ておるのですけれども、そういう場合には、いまの河川法の第二条の解釈の場合にどんな解釈をしていいか、私はこの点が非常に理解しにくいので、ひとつ説明願いたいと思います。
  35. 坂野重信

    坂野政府委員 むずかしい御質問でございますが、二十三条にあがっておりますのは、先生承知のように、許可に基づいて水利権使用ということでございまして、今度は、実際に許可を受けたものに対して、新しくまた許可の申請が出てきた場合、その許可によって既得水利に対して損害を及ぼすという場合には、これは明らかに四十一条に規定がございますが、その許可を受けたものが損失がある場合にはその損失補償しなければならない、そういう関係で、先ほどの現実の問題、すでに既得発電水利があった場合に、その上流のほうにおいて新しく開田を起こす、そういう場合に対しては、この四十一条あるいは四十二条に基づきまして損失補償要求があった場合には、当然しなければならぬというふうに解釈しております。
  36. 唐橋東

    唐橋委員 少し簡単に申し上げたので、私の質問と逆なんです。といいますのは、水利使用占用許可をもらう場合には、いわゆる水利使用許可を受けたものがその損失補償しなければならないということで四十一条がありますが、したがって、受けるものはたとえば漁業権やその他の補償を払う。たとえば電力会社が受けようとする場合に払う。しかし、占用許可をもらってしまってからは、今度は一切の上流水利使用権は、この場合だと、一株式会社である東北電力会社にあるのだ、こういうように独占的な形態が明確に出てくる。これを認められるかということなんです。
  37. 坂野重信

    坂野政府委員 先生の御質問は、水利使用優先順位の問題かと思います。あるいは当たらないかもしれませんが、現行の私どものいろいろな取り扱いでは、その水利使用というのは、使用目的いかんにかかわらず、既得水利使用というものが優先するという立場をとっておりまして——もちろん、いろいろな水利使用が競合いたしました場合には、先生承知と思いますが、四十条に水利使用許可のいろいろな要件がそこに書いてございます。そういうことでいろいろ判定するわけでございますが、原則としては、既得水利使用というものが優先するという原則がございますので、新しく上流のほうに新規開田が出てきた場合には、やはり既得水利権者が優先するという立場ですから、それに対して、そういったすでに水利使用許可を受けておるものに対しての損失が出てきた場合には、損失補償というものは四十一条によって当然やるべきであると解釈しております。
  38. 唐橋東

    唐橋委員 その解釈であろうと思っているのです。したがって私はここに非常に疑問が出てくるのは、やはり許可をもらってしまえば既得権ですよ、あと上流の水は一滴たりとも、一法人なり個人なりの占用権があって、それは使えないんだ、こういうことは、いまの解釈から当然出てくる。したがって、いま発電水系において開田しょうとすれば、そこに問題が出てくる。それならば、河川法第二条第二項の私権目的になることができないという関連とどこで調整し合っていくものなのか、こういうことを私は解明してほしいと思うのです。そういう点で、もう一度質問の要旨を整理してお伺いしたいのですけれども、いまのように占用権をもらった、そうすると、上流は、この占用権のために、あと水を使う権利がない。しかし、御承知のように、もう開田はぜひ必要だ、やりたい、しかし、それはあくまでもその水系から揚水しなければ開田はできない、こういう場合に、占用者と、農民立場土地改良区の立場、水がほしいという二者だけの問題にしておいていいのかどうか、ここから先にお聞きしたい。
  39. 坂野重信

    坂野政府委員 最初にお答えいたしましたように、確かに河川法の第二条には、河川流水は、私権目的となることができないということがうたってあります。それは御承知のとおりでございます。二十三条には、私権目的ということではないけれども、流水占用許可できるんだということをはっきりうたっております。そこで、先ほど申し上げましたように、一たん許可したものは、そこで優先権ができるわけであります。あとでその上流のほうに新規開田等によって新規水利権の要請が出てきたという場合には、私もことばが足りなかったと思いますが、その河川に水の余裕があれば、上流といえども文句なしに水利権許可できることになるわけでございます。ただ問題は、水が不足している場合、発電既得水利権を満たしたあと余裕がない場合は問題になってくるわけでございます。その場合には、やはり先ほど言いましたように規定がございまして、流水占用というものが、先願主義といいますか、既得水利権が優先するという立場に立っておりますので、そういう観点から、上流のほうの新規のものにつきましては制約があるわけでございます。そうして、下流同意が得られれば問題ないわけであります。それから、下流同意がなくて下流のほうの補償要求があれば、どうしてもそういう既得水利権が優先するという立場でありますので、上流のほうの新規開田等新規流水占用については、そういう損失補償というのは相当に支払わなければならないという立場をとっております。
  40. 唐橋東

    唐橋委員 そこなんです。ですから、一たん占用権をとってしまえば、あと上流でいかに開田をしてかんがい用水がほしいと言っても、この占用権を認められたものに優先権がございますということで権利者がその権利を主張すれば、一滴の水でもこれは使用し得ない、こういうことが明白にいまのお答えの中からも出てくる。これでいいのか。それならば、何かこちらの、いわば私権目的になってはならないというあの条項の中で、いわゆる占用権許可されたものと、これから水を使いたいものとの中間的な、具体的に言えば、水利使用料を取っておる県なり、あるいは水利権許可を与える国なりが——一級河川の場合は国ですから、国なりが、必ずその中に入ってその調整をやる、こういうようないわば法的な根拠がなければ、一たんもらってしまえばあくまでも既得権というようなものとしてがんばっていけるし、がんばっていくことのできる法的根拠——繰り返すようですが、そうすれば上流人たちは一切水が使われない、こういう矛盾を解決しなければならないのが、実は減電補償の問題として当然出てくるのですけれども、それは他の水道用水に使う、工業用水に使う場合だって同じくこの種のケースは出てくると思うのですが、その場合、いま申し上げましたように、一たんもらったものは既得権だ、権利があるのだ、このことだけを認めておいていいのかどうか、こういうことを私はお聞きし、そうして、もしそれで多少困難のある場合には、県なり国なりがこういう根拠によって入っていけるのだというところがあるのかということを聞いておる。
  41. 坂野重信

    坂野政府委員 何回もお答えするわけでありますが、先生の御質問は二つに私は分かれると思うのです。要するに、損失補償の問題と水利使用権利許可そのものとあるわけであります。先ほど申し上げたのは、水利使用許可そのものは、下流に一たん許可した場合には、もう河川余裕がない場合には絶対に上流のほうには新規水利許可をしてはいかぬということではないわけです。水利許可は、総合的な観点で、四十条にもございますけれども、既得水利権との公益性問題等も十分勘案いたしまして、既得水利権に対して損失を及ぼすかどうかというようなことも判定いたしまして、それから下流から同意があるかというような問題があるわけでございますが、いずれにしても水利使用そのもの許可できるわけでございます。許可するのですけれども、損失補償はこれは別問題でございます。許可したあとも、損失問題については、やはり下流のといいますか、既得水利のほうが優先いたしますので、そちらのほうから損失補償要求が出てきた場合には、当然損失補償法律に基づいてやらなければならないという立場でございまして、その場合に、損害額の問題につきましても、四十二条にございますように、河川管理者、まあ建設大臣が、その損失額協議等があった場合にはその仲裁的な役割りをなすことができることになっておりますので、そういう立場で、できるだけ損失が少ないようにという努力は従来もやっております。しかし、水利権許可そのものは、下流のほうとの関連において十分考えていきたいという立場でございますので、水利使用許可そのもの損失補償の両方の観点から考えなければいかぬ問題だと思うわけでございます。
  42. 唐橋東

    唐橋委員 私は次の質問でそれに入ろうと思ったのです。  そうすると、必ず損失補償しなければやはりその占用権者同意を得られない、こういうたてまえになっている、そういうお答えだと思うのですが、しかし、ここで考えていただきたいのは、たとえばその占用権をもらう場合だって——漁業権やその他のものは別ですよ。しかし、かんがい用水権については同意を得てあって、補償はしてないわけでしょう。発電水利使用許可をする前に、それなら、かんがい用水についてもっと水がほしい、おまえのほうでこれだ使っている分だから、もっとほしいのなら、おまえのほうから補償を取るなんという、そういうような補償はないわけですね。かんがい用水の場合に、片方は既得権として全然水はただで使っている。それから今度、発電所水利使用許可を出してしまえば、それからのかんがい用水は、いまのように補償金を出さなければ使えない、ここに矛盾が出てくるわけですね。工業用水とかその他は別ですよ。少なくとも私がいま質問で限定するのは、かんがい用水ということに限定して質問しないと混線すると思うからです。かんがい用水の場合は、一つ水系の中で、やはり時間的な前後のために、前のは水がただだ、発電所等水利権許可してしまったあとは、今度は必ず有効な金を出さなければ、いわば補償を出さなければ現実に水を使えないようになっている。これでいいのかということですね。このことは、私は、特に農林省立場からのこれに対する見解もお聞きしたいわけなんです。建設省水利関係とそれから農林省のいまのかんがい用水に帰属している一つ権利、こういう考えのときに、このままでいいのかということを明確にひとつ解明していただきたいのです。
  43. 佐々木四郎

    佐々木説明員 かんがい用水がすでに存在しておりまして、あとから他のかんがい以外の水利がそれに影響を与えるような場合は、つまりその影響農業側損失を与える場合は、農業側といたしましても補償金をもらう。しかしてまた、いままでも、たとえばかんがい用水というのは大体わが国の場合は非常に古いものが多うございまして、そういうところで新しく発電水利が起こりまして、その中に既得かんがい水系損失を与えた場合は、農業側損失補償をいただく、こういうことをやる、そういう考えでございます。
  44. 唐橋東

    唐橋委員 いまのお答えは非常に常識論だと思うのです。私が言うのは、片方占用許可をした——ある制限の中でできているわけですがね。河川法第二条には、私権目的になっちゃならぬということを明確にしているわけですね。すると、一株式会社が条件の中に占用許可をもらったとしても、もらってしまえば、完全に私権のために使われているのだ、だから補償を出さなければその水は使用させないのだ。こういうことが、いいのかという基本的な問題についての農林省の見解をお聞きするわけです。私からいえば、その場合は、占用許可をもらったものと、これから水を使うもののこの二つだけの権利にしないで、少なくとも占用許可を与えるものが、私権目的となることができないという一つ原則の上に立って仲裁をしていき、公平にこの水の配分をやらせる必要があるのじゃないか、こういうたてまえで、この二つの関係——占用許可を得たあとはあくまでも私権になります。私権になるからこそ、上流の人には水を一滴もあげられないのですよ。それを許可してしまったのだから、あとはもう補償金を出せば水を使っていいのだ、こういうことでいいのか。そうすれば必ず河川法第二条二項の解釈にぶつかってくる。これを農林省としてはどう考えるのかということをもう一度お聞きしたい。
  45. 佐々木四郎

    佐々木説明員 先ほど河川局長のお話もございましたが、私どもは、水利権許可をもらう場合は、河川法のたてまえからいたしまして、河川管理上支障がなければ与えられるものと考えております。河川管理上は支障はないけれども、下流等に既得水利権がございまして、これに損失を与えるような場合は、発電であろうが、農業であろうが、当然補償はしなければならないという原則が、河川法の四十一条でございますか、そういうところへ出ているのだろうと思います。したがいまして、ただいまのお話は、既得発電水利権に対する損失補償のお話ではございますけれども、この発電と農業をかりに置きかえて考えます場合には、農業側損失を受ければ当然補償要求し、補償されなければ困るわけでございます。いまのお話の会津地方では、逆の——逆と申しますか、発電が既存でございまして、あとから開田等が出てきておりますのでそういう問題が出ておりますが、場所によっては、逆に、既得の農業水利がございまして、それにあとから発電が出てきまして、既得の農業水利権損失を与える場合は、発電側から農業は補償金をもらわなければならない、こういう事例も過去にたくさんあるわけでございます。したがいまして、その損失補償額等の算定なり正当な筋の通った補償、そういうことが私としましては問題ではないか。往々にして農民側が川の流れ、水の問題等に対しまして知識が不十分なために被害をこうむるというようなことのないように、そういう点は気をつけなければならない、こういうふうに思っております。
  46. 唐橋東

    唐橋委員 大臣にお伺いしたいのですけれども、農林省の見解はいままでの法律的なものだけの上に立って、私からいえば、何といいますか、新しい方向は全然出ていないのですよ。おそらくこれはちょっと出せないだろうと思うのですけれども、出せないからといって私ここで了承はしたくないのです。大臣にこの点もう一度繰り返します。今後の問題としてやはり新しい水利の問題になってくると思うのです。といいますのは、大臣が水利権許可する。許可するまでには、なるほど、いままでの漁業権なりその他の補償あるいは同意を得るという許可条件があります。しかし、一たん許可をもらってしまえば、発電水系にある上流の水は、一滴といえどもただでは使えなくなるのですよ。だから、農林省のほうでは、補償さえ出せば使えるのです、こういうことになる。補償を出すということになりますと、かんがい用水のようなほんとうに生産に使う水であっても、今度は金のかかる水になってくる。一番最初に申しましたように、十三ヘクタールで四百七十万の補償金があった。四分の一となっても百万ですよ。十三ヘクタールで百万の補償金を出さなければそこの開田ができない。こういうことを認めていいのか。それを認めるということは、いまの法のたてまえでは、許可をもらったものと、これから水をほしいというものの二人だけの関係にしてあるからそうなんだろうが、そういう場合には、河川法の中にも調停ということはありますが、そういう開田要求が出て水がほしいというときには、この条文にあるいわゆる紛争の調停の性格でなくて、当然、水利使用許可——これはさっき質問したように、発電所ができるごとに許可しているわけです。それと同じように、今度こちらのほうで大規模かんがい用水が必要だとするならば、そのやり方に準じて水利使用許可を与えればいいわけです。そして水を使わせなければならないのじゃないか、こういうことが私の論拠になっているわけです。発電所だけは、増設すればそのつど水利使用権を与える。しかし、他方は、大規模かんがいをしたい、開田をしたい、あなたたちのほうは、これは二者、だけの関係で、わしは知らぬ、だからいまのように一滴の水も使えないという関係になっておる。それは、農林省のほうでは、けっこうでございますと言う。私はちっともけっこうでないのですよ。というのは何かといえば、繰り返すようですが、発電所の増設ごとに水利権はその水利使用に応じて許可しているのですよ。そうするならば、こちらで五十町歩、六十町歩のかんがい用水が要るというならば、このときやはり水利使用占用許可をまずこちらのほうに与えるべきではないのか。それを与えられないでおいて、今度は二者の、いわば補償条項だけにしておるというのは、矛盾でないのか、こういうことを言っておるわけです。大臣、御理解いただけたでしょうか、特殊問題なんですが……。
  47. 保利茂

    ○保利国務大臣 先ほどからお話を伺っておりまして感じますことは、非常に大事な水でございます。水がなければ何もできないわけでございます。水利権を得て、そこに発電とか農業とか、いろいろやるわけでございます。したがって、水の一定量の確保が安定されなければその事業は成立しない。農業においてもそのとおりだと思う。これだけの田にはこれだけの水が要る、それで水利権ができておるのだ。電気事業においても同じことだと思う。したがって、それだけの施設が伴われておるわけですから、一定の水は——あなたは、河川法の二条による私権の対象になっちゃいかぬということからいうとおかしいじゃないかと言われますけれども、少なくともそういうことで一定の水量の確保をはからなければその事業はできないわけですから、それが一つ水利権が設定されて、上のほうでその水の使用ができないということになりますれば、その事業というものは——これは逆に言いまして、下に農業水利権を持っておる、その上に持っていって発電所を起こしたというような場合と同じことだろうと思います。したがって、そういう場合には、かりに上のほうに別の水源涵養をいろいろやる。いまお話しのような場合でも、発電所上流開田されておる、それに水が困るから、それじゃ新たな水源酒養をやるためのダムをつくるとかなんとかいうことをしますれば、それだけやはりまたその開田される人には分担金がかかるわけでしょう。同じことだと思うのです。そういう意味で、やはり調整をはかっていかなければ、水利権というものは相当強く保護されなければ、農業にしましても、その他の産業にしましても、安定した事業の遂行はできないだろう、そういう上から調整をはかっていくべきであろうと考えるわけでございます。
  48. 唐橋東

    唐橋委員 大臣が調整をはかっていくという趣旨はわかるのです。私は、調整をはかる場合に、大臣、具体的に御理解いただきたいのですけれども、阿賀野川水系なんというのは、下流から上流まで十数カ所の発電所がもうできてしまっておる。水利権があるわけです。だから、いま水をあげようとすれば、これはもうどこからあげたって必ず発電影響があるわけですよ。それで、発電所が増設されるたびに水利使用許可は更新しているわけですよ。今度は開田です。今度新しく開田をしよう、こういうことになっているわけですね。新しく開田をしようとする場合には、発電所水利許可をもらうと同じように、新しい発電所をつくるときに手続をとると同じように、このいわゆる揚水しようとする人のほうがやはり手続をしていけば、今度はこれだけの水量がほしい、こういうふうにしていくことが当然であって、そしてそういうようなやり方をすれば、いま大臣が言われるように、調整に入っていかれる。それを、いまは全然一つ占用権をもらった電力会社、それから農民との関係だけにさせている。こういうことはやはり改めるべきじゃないのか。そうしなかったならば、大臣が言うように調整していくことがないんですよ。二人だけの問題になってしまうのです。補償問題だけになってしまうのです。補償問題になって、そしてこの河川法にあるように、紛争になってくれば、今度はその紛争の調停にしてもらう、こういうことでなしに、やはり水がほしいときには、当然いまのように発電所関係のほうはそういう手続ができているんだから、農民関係のほうだって同じ手続で水利権許可をもらって手続をすれば、補償問題というワクから出た解決ができるのじゃないのか、こういうように考えるわけなんですが、そういう点はどうなんです。私はやはり他方だけに認めているような気がしてならないんですが……。
  49. 保利茂

    ○保利国務大臣 私はどうもここに電気事業のために水利権を得られる、それで、その水量が確保されなければ事業目的は達せられない、ないしは農業においても、これだけの量がなければ農業経営はできない、そういうことになる。その上流に持っていっていろいろまた水を使われるということになれば、それは公共のため、特にあなたの心配される農業のため開田するのだから、そんなことをやかましく言わぬでいいじゃないかと言われると、下のほうも、その水量が確保されるということで事業が遂行されているのが、妨げになってくるのじゃないか。そこで、それは上で水を使われるのはけっこうだろうけれども、それじゃ私のほうはこれだけ損害を受けるわけだから、これだけはひとつ、これだけ全部とは言わぬでも——そこは調整の問題でしょうけれども、何ぽか持ってもらいたいということになるわけです。そういうことは困るので、それじゃもう自分たちは上のほうでひとつ水資源を培養しようということになれば、やはりそれだけお金がかかっていくわけでしょう。ですから、どっちみち両方の兼ね合いのところでございましょうが、そうかといって、この下流水利権を保護しないと、これも料金を払って負担してそうして事業目的のための施設をやっているわけですから、逆の場合、農業をやる場合といえども同じことで、そこに水利権のむずかしいところがあるのでございましょう。そこで東北電力あたりでも、県も御心配になって、問題の点については調整をはかっていただいて、先ほどお話しのように、この四月からかつての四分の一くらいの料金まで損失補償を下げてきたということで一つの調整作用が行なわれている。また、行なわれなければならない。しかし、なかなか関連した問題があるようでございますから、それぞれの関係当局ともよく相談、検討をするように河川局においてもお願いをしたいと思っております。
  50. 唐橋東

    唐橋委員 大臣の趣旨も了解いたします。  もう一つ残っておりますが、どうもピンとこないのは、行政的に同一権利として認められていないのじゃないか。前の趣旨のほうはわかりますよ。下流上流のお互いの権益は公平に見てやらなければならないのだという大臣の答弁はわかるのです。ですが、こういうことになっているわけですよ。発電所の増設をするというときには必ず水利権の更新があるわけです。それはもちろんどれだけの水を使うかということから出てくるわけでしょう。それで、現在またその発電所ができているわけです。ですが、この発電水系の中で新しい水を今度はこれだけ使いたい、こういうことになってくると——ここなんですよ、大臣、前の占用権者と、新しい水が使いたいという、前の権利とこちらのほうの権利の主張の単に二者だけの話し合いなんです。こちらのほうはこれからなんです。こちらのほうの人たちも使いたいというときには、一級河川ならば、大臣のほうに、これだけの水を使いたいんだ、こういうようにいわゆる水利使用のものを出してくれば、いま大臣の言われるような公平な配分ができるのじゃないか。こちらのほうの手続を当然先に認めるべきではないのか。そうすれば、いま大臣の言われるような調停の段階に事前に入れるのです。こういう方法がないのか、こういうことなんですが、御理解いただけますか。
  51. 坂野重信

    坂野政府委員 どうも先生の御趣旨、あるいは失礼でございますけれども、先生何か勘違いをされているのじゃないかと思います。大臣が十分答弁されましたように、いろいろ段階があるわけですね。いまのケースは、発電所が下にあって、発電所の上で新しく農業水利をほしいということです。それに対していま水利権はもうやっているわけです。しかし、既得下流発電所に対して損失があるから、それで新しくあとで出てきたものは損失を払わなければならぬという立場です。今度は逆に、その上に発電所が新しくできる場合には、下流の農業水利に対して悪影響を及ぼした場合には、今度発電所のほうに新しく水利使用許可した場合には、その損失分に応じて今度発電所損失を払わなければならぬ。水利権許可というものは、損失とは無関係に、いろいろ総合的に見て、この川に水があるかないかということを判定して、同意があれば問題はないし、同意がなければ、総合的な判断でもってどうにかここに水利権許可できるであろうということで、いろいろ判断をして水利権許可を順々にやっているわけであります。損失補償についてはすでにでき上がったものが優先するので、これは発電であろうと農業であろうと、いろいろ議論はありましょうけれども、そういうたてまえで、既得水利権者損失を与えた場合には、その範囲内において要求があった場合には、当然その損失補償を与えるということで、水利権そのものは別に、発電だから、農業だからというのじゃなくて、その川に水がある限りにおいては順々に許可していく、水がない場合には新しく水資源の開発をやる。大臣がおっしゃったように、もし発電にそういう損失補償を払うのはいやだから、われわれは別個に用水をとろうという場合には、それはかってに水資源の開発をされておとりになればけっこうです。あるいは国がやってもいいわけです。その場合には、もちろん、大臣のおっしゃったように分担金が必要である。私はどうもその辺がきわめて明快だと思うのです。
  52. 唐橋東

    唐橋委員 前提がちょっと私は御了解いただけるものだと思って質問いたしておかなかったが、こういうことなんですよ。いま発電所水利権をもらっています。用水として新しく水を使おうとする、また水利権者はどういうふうにするかというと、いまのように、補償契約をしなければ用水許可しませんと、こう出てくるわけです。これは当然でしょう。あなたたちの考え方ですね。だから二者の関係になっているのでしょう。これは水利権をもらっています、これだけ発電しています、一秒間に〇・二トンの水をあげまして、こういうようにします、そうしますと、それじゃ補償を出しなさい、そうでなければ用水契約はいたしませんぞということになっているわけです。ですから、いわゆる電力会社農民との関係だけになっているのです。ですから、その場合に農民発電所にそういう用水をほしいということは出しても、当然水利使用というものを、一級河川ならば、大臣に出しさえすれば、この二者の話し合いの補償要求だけでなしに、すぐにいまのような問題が事前にできるのじゃないか、そういう手続が私は必要でないのかということを言っているわけです。だから、そちらさんの言う話と全然違っているわけじゃないのです。違っているわけじゃないのだけれども、食い違っているわけです。そういうような行政的な方法を講じさせていけばここで円満にできてくるのじゃないか。そうでなければ、電力会社が、農民補償を出さなければ一滴の水も使用させないのだ、こういう態度に出られれば、私は繰り返すようですが、占用権者だけ、いわゆる既得権という権利はあるけれども、開田はできなくなってくるという実情があるので、そういうふうな方法を私は必要とするというわけです。
  53. 坂野重信

    坂野政府委員 お答えいたします。  先生のおっしゃいますのは、やはり地元同士の話し合いといいますか、そういう当事者同士でやらすのはおかしい、そういうことのようでございます。それは確かにそういう面もあると思いますが、私どもとしては、こういった水利調整の問題は、できるだけ地元の自主的な話し合いということで従来からやっておりますし、今後もできるだけそういう方向でいきたいと思いますが、それは先生のおっしゃるような弊害があるいはあるかもしれません。それにつきましては四十条にそういう条件をうたっておりまして、河川管理者の側でこういった水利権許可する場合には、下流に支障を及ぼさないような施設をやったり、あるいは新しく許可しようとする水利内容公益性の問題を勘案することになっております。重要な問題につきましては河川審議会の意見を聞くというようなことになっておりますので、地元の同意が得られない場合にはそういう道もあるわけでございますけれども、私どもとしては、できるだけ地元の自主的な話し合いによって解決していただいて、そうしてそれと伴って補償の問題もできるだけ話し合いをやっていただいて、つかない場合には、もちろん河川管理者が裁定する道もございますので、建設省としてはそういう立場で従来も補償額をできるだけ軽減するようにということを側面的にやっておるわけでございます。
  54. 唐橋東

    唐橋委員 その問題はもう少し私は残しておきたいと思うのですが、もう一点は、契約条項を見てみまして、さっき確かめましたように、三十年が限度ですね。現実には、三十年をこした場合には、前の占用権者に継続させることはありますが権利としては三十年ですね。契約条項を見てみますと、前には六十五年、今度は新しく五十年という補償契約をしているわけです。そうしまして権利のない先のものまで補償計算するということはできないのじゃないか。あくまでも三十年なら三十年で切って、そうしてその時点で契約更新をすることはいいけれども、自分の権利を持たない——簡単に言えば、いまもらったとすれば、二十年無権利のものを権利を主張して補償をとり得るのか。これは契約基準の中から出てきておる点なんですが、その点はどうなんですか。
  55. 坂野重信

    坂野政府委員 ダムの耐用年数を——いろいろ解釈ございますけれども、一応先生のおっしゃるように六十五年というようなことで耐用年数を考えておるわけでございます。物理的に六十五年くらい持つだろうということでいっておりまして、計算は、御承知のように耐用年数にそのダムの経過した年数を差し引いて、そうして、要するに耐用年数に相当するそういった経過年数の差し引きの問題がございますけれども、そういうものを考えて補償の額を算定しているわけでございます。御質問の三十年というのは、別に三十年で占用が終わってしまうというのではなくて、一応従来の慣例からいきまして、三十年という期間は、ダムの発電のような場合には、一応期間が満了したときに、この時点でまた水利権内容とか条件を再検討するという意味の更新期間でございます。完全にそれを終わってしまうということでございませんので、水利権そのものが実質的に失効するというわけでもございません。大体耐用年数も従来やっている補償の考え方でいいのではないかというふうに判断いたしておるわけであります。
  56. 唐橋東

    唐橋委員 これで終わりますが、そういう考えが法律的に成り立ちますか。たとえば五十年の計算でまた一括補償が出ているのですよ。三十年後にはほんとうにもらわれるかもらわれないか。権利がないわけだ。三十年後には権利のないものを、あるものと認定して補償できるのですか。私が言うのは、三十年なら三十年にしておいて、その三十年過ぎたときに契約を更新するのならば、これは補償というのです。水利権は三十年しか許可をもらわないで、補償だけ五十年を一括補償するということはできない、そういう権利はない、こういうような筋なんです。あと自治省関係、来ていただいておりますが、これは時間がないようですからあとでやることにして、この点だけ。いわゆる補償要求権利としてそういうものが認められるかどうか。どうなんです。実際に権利として三十年しかないのですよ。それを五十年計算して、それで五十年分の要求を先取りするということはできないのですよ。権利があるのですか。その点の御答弁をいただいて、私の質問を終わりにします。
  57. 坂野重信

    坂野政府委員 先ほども申し上げましたように、三十年で権利がなくなるというわけでございませんので、一応占用基準として三十年ということをいっておりますけれども、ダムは耐用年数を六十五年と考えておるわけであります。ダムは通例少なくとも六十五年はもつわけでございますけれども、三十年を一つ基準として、その時点が終わったら、また水利権関係等について検討してさらに更新等をやっていくということで、完全に水利権そのものが三十年で失効するという意味合いではございません。そういう観点から、先ほどと同じ答弁でございますけれども、耐用年数の補償計算計算して、さっきのような考え方で経過年数というものを差し引いた耐用年数等の補償を考えていくということでございます。
  58. 加藤常太郎

    加藤委員長 福岡義登君。
  59. 福岡義登

    ○福岡委員 治山治水事業の推進について私どもも大いに関心を寄せておるのですが、以下若干の質問をしたいと思うのです。  まず初めに聞きたいと思いますのは、建設省が、たしか昭和三十九年か四十年ごろだったと思うのですが、昭和六十年を目標にしまして二十三兆円の治水の長期計画を持たれたのでありますが、現在その長期計画というものはどのようなことになっておるのか、根本問題としてお聞かせいただきたいと思います。
  60. 坂野重信

    坂野政府委員 御指摘の二十三兆は、私どもといたしましては、一応目標の年次を昭和六十年度ということで考えまして、実はその前に、今後一体どれだけやれば治水の施設は完ぺきを期せられるかということで、全体計画というものをここ  二、三年にわたって作業をして、一応の目安を出したわけでございます。その中で、昭和六十年度までには一体どのくらいの治水の長期計画を見込むべきかということで、先生あるいは御承知かと思いますが、建設省といたしましても、国土建設の基本構想というものを、昭和六十年で一これは河川だけではございませんで、全般にそういう構想を打ち出しておりまして、その一環として、治水も二十三兆くらいあれば、そういった昭和六十年の国土建設のバランスがとれるのじゃないかということで、長期的な構想を打ち立てたわけでございます。それをもとにいたしまして、今度の新治水事業五カ年計画の二兆何がしという数字も第一期としてはじいたわけでございまして、二十三兆というのは、そういう意味合いにおきまして、新治水事業五カ年計画のもとをなす長期的な計画であるというぐあいに私ども考えております。主体は防災でございますが、その中には水資源の開発も含んでおるわけでございます。
  61. 福岡義登

    ○福岡委員 そうしますと、現在なお経済社会の発展その他を考えて昭和六十年をながめれば、大体治水関係は二十三兆円の仕事をすれば、たしか昭和四十年から二十年だったと思うのですが、現在なお経済社会発展の実情に二十三兆円で即応できるという前提の上に立っておられる、そのように理解してよろしいわけですか。
  62. 坂野重信

    坂野政府委員 そのとおりでございます。
  63. 福岡義登

    ○福岡委員 続いてお伺いしたいのですが、昭和四十一年のたしか八月二十七日じゃないかと思うのですが、建設省が、さっきちょっとお話があった国土建設長期構想というものを立てられた。それから去年、昭和四十二年の二月か三月に経済審議会の経済社会発展計画というものが出されたわけで、それとの関係は、この六十年度二十三兆というのはどういうように考えればよろしいか、お伺いしたい。
  64. 坂野重信

    坂野政府委員 先ほど申し上げましたように、国土建設の基本構想では、金額は一応二十一兆ということになっておりますので、これは単価問題等もございまして、年次の関係もございますが、一応私どもの考えでは、現在の二十三兆と大体合っておるということで、これは先ほどお答えしたとおりでございます。経済社会発展計画は、御承知のように昭和四十二年度以降の五カ年間の計画でございます。そういう公共事業の総額は、先生承知のように、二十七兆五千億になっておるわけです。その中で国土保全関係が一兆八千億くらいになっております。それを年次をスライドいたしますと、それから治山治水を差し引きますと、大体二兆八百億程度の数字になるわけでございます。それで、今度お願いしております新治水事業五カ年計画は二兆五百億という数字でございますので、大体経済社会発展計画の線に合っておるということが言えると思います。   〔委員長退席、砂原委員長代理着席〕
  65. 福岡義登

    ○福岡委員 そうしますと、一貫した計画の上に立って事業が進められておる、こういうことになると思うのですが、昭和四十年から今日まで、四十三年なんですが、今度の新五カ年計画二兆五百億、これを完全に実施した場合に、さっきの二十三兆に対する進捗率というものはどの程度になって、昭和六十年まで三回くらいの五カ年計画をつくらなければいかぬわけですが、これでいくとおおむねいまのテンポでいってやれるという見通しがあるかどうか、その辺を、要点だけでけっこうですが、聞かしてもらいたいと思うのです。
  66. 坂野重信

    坂野政府委員 新治水事業五カ年計画でございますが、これは伸び率が——これも伸び率で申し上げたほうがわかりやすいだろうと思うのですが、二二%の伸び率になるわけでございます。昭和四十三年度を初年度といたしまして、二二%ずつ毎年平均的に伸びていきますと、約十カ年伸ばしてまいりまして、二二%で五カ年伸ばしますと二兆五百億になるわけでございます。それをさらにあと五年くらいそのままずっと伸ばしてまいりまして、十カ年くらい二二%で伸ばしていく、それからその後は六十年まであと八年間残るわけでございますが、一〇%くらいの伸びでいきますと、二十三兆という数字になるわけでございます。これは長期的な考え方でございます。
  67. 福岡義登

    ○福岡委員 大体わかりましたが、もう一つお伺いしたい点は、治水事業に対して特定財源というものはないわけです。一般会計に全部たよっているわけですが、道路は御承知のように特定財源を持っておる。今度も二兆四千億を建設省としては考えられたけれども、最終的には二兆五百億円ということになっている。それで、二十三兆も再検討される段階がくるかもしれませんが、一応現在の段階で二十三兆やれば十分だという前提の上に立って考える場合に、それがはたしていまお話しのように毎年一〇%ないし二〇%の伸びでやっていけるかどうかということに一まつの不安を覚えるわけであります。財源的にこういうものについて特定財源というものは考える必要はないのかどうか。私は、たとえば場合によっては治水債券というようなものを考えてもいいのじゃないかという気がするのですが、財源的に一体どういうように考えられておるか、お伺いしたいと思います。
  68. 保利茂

    ○保利国務大臣 簡単に二十一兆、二十三兆と言いますけれども、これはなかなかたいへんなことで、そこで土地の問題になれば土地証券を出せばいいじゃないか、水になれば治水証券でも出したらどうかということでございます。私は、そういう安易なことはできないのだろう、やはり国力の充実と見合って、バランスのとれた——これはいま二十三兆とか二十一兆とか言われておりますけれども、おおむね大体災害から免れ得るような河川の様相を全国的にとるためには、少なくも五十兆以上は要るだろうといわれておるわけですが、それに耐え得るような国力の充実に期待をしていくほかはない。その国力の充実と見合いつつ、バランスを失しない事業遂行をはかっていくということを基本的にはどうも腹に持たざるを得ないのじゃないか。ただ、当面の二兆五百億の五カ年計画、それすら非常にがんばらなければ心もとないというような状態でございますから、いわんや、何十兆ということに対しては、いろいろと御意見も伺って、よほどがんばった慎重な検討もまた必要だろうかと考えております。
  69. 福岡義登

    ○福岡委員 こまかいやりとりは別にしまして、ぜひこの新五カ年計画を六十年度で目標が完全に達成できるように一そう推進をしてもらいたいという要望をしておきたいと思うのです。  同時にまた、治水事業の中身について、いままでの経過を見ますと、たとえば一つの例を言いますと、工業用水が重点にされて、そのほかの問題が少しおくれておるという実態を見るのですが、今後はバランスのとれた事業遂行というものに配慮をしていただきたいということについても要望申し上げておきたいと思うのです。  次に、新五カ年計画について二、三お伺いしたいのですが、さっきも話しましたように、当初二兆四千億であったのが、閣議了解は二兆五百億にダウンをしたわけであります。非常に私どもとしても不満を持っておるのでありますが、問題は、この中で全体の計画は三千五百億もダウンしておるのに、これに反しまして、災害関連地方単独事業というものが大幅に増額されておるわけです。二兆四千億のときの災害関連地方単独事業の割合は八%であった。二兆五百億にダウンしておるのに、災害関連地方単独事業関係は一四%にふえておるわけであります。当初二千億だったのが三千億にふえておるわけですから、割合からいえば八%であったものが一四%にふえておるわけです。これは二兆五百億の計画はできたけれども、事実上内容的に無理があるのじゃないか、同時にまた、地方財政に非常に大きな圧迫を及ぼすのじゃないかという気がしてならぬわけであります。そこで、建設省の見解、自治省もお見えになっておられますから、自治省のほうの見解も聞かしてもらいたいと思うのです。
  70. 保利茂

    ○保利国務大臣 二兆五百億の新五カ年計画内容は、だんだん御指摘のようなこともございますし、実際無理が当たっておるのではないか、仰せのとおりなんです。無理が当たっておるくらいのことをしても五カ年計画の改定を必要とする、それが次の段階への大きな布石でもあるわけでございますから、あえて……。  そこで、規模が小さくなっておるではないかというお話でございますが、ここまでとにかく持ってきますのは、だんだん御理解のような事情でございましたから、ぎりぎりのところへ持ち込んでまいったわけでございます。なお、内容につきましては、中小河川でありますとか、都市河川でありますとか、こういうところのなにが全体から見まして少しおくれておるのじゃないか、すなわちバランスを失っておるのではないか、そういうことのないように内容はこれからきめなければならぬわけでございますけれども、特に中小河川、都市河川というようなものについては相当重点的な配慮をしてまいりたい、こういう考えでございます。
  71. 首藤堯

    ○首藤説明員 ただいま建設大臣からお話がありましたように、新五カ年計画が決定されまして、国の予算等の措置を通じまして毎年度の施行額がきまってまいります。事柄の重大性にかんがみまして、そのように毎年の施行額がきまりました場合には、地方負担額を地方財政計画に計上し、交付税、起債等の財源措置が適確に行なわれるように私どもとしては十分努力をしてまいりたい、こう考えております。  ちなみに、四十三年度の措置は、公共事業の負担及び単独事業等を通じまして地方の持ち出し分が約六百八十億見当だろうと思います。そのようなものをいま申し上げましたように財政計画に計上いたしておるわけでございます。
  72. 福岡義登

    ○福岡委員 計画が完全に遂行されるように、しかも地方財政があまり大きな圧迫を受けぬように、ぜひこの際要望しておきたいと思う。  次の問題は、砂防行政についてであります。現在建設省農林省、名前は違いますが、仕事は同じようなものが相当あって、長い議論を私どもも承知しておるわけなんです。最近ある程度連係もとれてうまくいっておる面もあるように思うのでありますが、まだ相当不十分な面があると思うのであります。できれば水系ごとにでも両省が十分計画段階で連係をとって工事の推進をはかってもらいたいと思うのですが、いまの実情を見ますと、どうもまだ連係が十分とれてない点があるようであります。でき得ればこれは一本化する必要があるのじゃないかという気がするわけであります。同じ水系の上のほうの治山関係の工事がなされたけれども、下のほうの砂防関係の仕事がなされていない、そのために、ちょっと水が出ても、こうむらなくてもいい災害をこうむる例も二、三聞くわけでありますが、この行政の一本化というものが考えられないかどうか、また、現に農林省建設省の調整ははかられておるかということも聞きたいわけであります。
  73. 保利茂

    ○保利国務大臣 基本的には福岡さんと同じような考えを持ちますけれども、それぞれ山のほうの担当と川のほうの担当とは長い沿革があるわけであります。国会においても、昔から、山が先か川が先かというふうな議論が非常に長く続いてきている。しかし、いずれにしましても、農林省のために砂防があり、建設省のために砂防があるわけではない、やはり民生のために砂防があるわけです。したがって、両省の所管は異なりますけれども、一方が整って、一方が全然放置されるために、起こらぬでもいい災害を招きやすくなることが間々あるようでございますが、それはきびしく反省されなければならぬと思う。そういう意味でいろいろ伺ってみますと、両省の間で、林野庁と河川局の間で相当緊密な事務連絡をとって、執行上においても、施行上におきましても連絡を密にいたしておりますし、私どももそういう考えでおりますから、ひとつこの上とも砂防目的が十分に達成せられるような予算執行を考えていかなければならぬ、また、いくことに善処いたしたいと考えております。
  74. 福岡義登

    ○福岡委員 ぜひ十分な調整をとっていただきたいということを要望して次にいきますが、災害復旧の現状について少し聞きたいわけです。  まず、今日現在——今日現在といいましても、昭和四十三年度に残されておる過年度災害はどのくらいあって、それがどのくらいの計画で復旧ができるのか、現状についてお伺いしたいと思います。
  75. 坂野重信

    坂野政府委員 先生承知のように、災害の年度割りは、直轄災害につきましては、その発生した災害の年次から数えまして、直轄の内地は約二年で完成する、それから北海道につきましては三年、補助災害につきましては、特に緊急を要するものは三年でやってしまう、それから緊要でない一般的なものは四年でやろうということで、初年度につきましても三〇%はやっていこうというようなことで、全国的なそういうワクを考えまして、そして災害の実態に応じてその点は全国的にやっておるわけでございます。したがいまして、現在三十九年からの災害が残っておりまして、全体的に申し上げますと、国費でございますが、四十三年度の予算が五百二十六億ばかり見ております。そして四十年度までに、補助の場合で申し上げますと、ちょっと話がこまかくなりますけれども、大体一平均で過年災が七二%くらい進んでおるわけでございます。それで、四十三年度の末にいきますと、三十九年の災害は完全に終わりまして、四十年災も終わりまして、四十一年度に起きた災害が八八%くらい進んでおります。それから四十二年度に起きた災害が七二%というぐあいになっております。したがいまして、四十三年度が終わりますと、四十四年度以降に残った災害の国費が二百六十億ということになります。これは概要でございます。
  76. 福岡義登

    ○福岡委員 災害復旧は、直轄の場合は二年、三年の場合は割合は二、五、三という割合に現在なっておるんじゃないですか。三、五、二ですか。
  77. 坂野重信

    坂野政府委員 緊要につきましては、直轄から申し上げますと、直轄の内地でいきますと、五〇、五〇でいくわけでございます。最初が五〇%、その次が五〇%。それから北海道につきましては、最初の年が四〇%、その次が四〇%、残りが二〇%。それから補助につきましては、緊要なものにつきましては、最初の年が三〇%、その次が五〇%、残りが二〇%。それから補助全体としては、現在では最初の年が三〇%、その次の年に今度新しく四二%、その次の年の第三年目が一六%、第四年目が一二%というぐあいに実施することになっております。
  78. 福岡義登

    ○福岡委員 大体わかりましたが、この災害復旧のピッチをもう少し上げるというようなわけにはいかないのですか。これも何回かこの委員会指摘しておるのですが、長いのは三年、四年で復旧されるわけですけれども、その間にやりかけた工事がまた水害でやられるという例は何回もあるわけです。その辺について改善される方針は持っておられるかどうか、ぜひ持ってもらいたいと思うのですが……。
  79. 坂野重信

    坂野政府委員 先生の御指摘のとおりでございまして、これは予算補助になっておりますので、大蔵省と建設省の間で協議いたしましてやるわけでございます。今年度におきましても——一般災の補助が従来は第二年度で七一%、三〇プラス四一でございましたのが、今年度は三〇プラス四二ということで、七二%までようやく一%アップということでございます。それ以外に、国庫債務等の措置によりましてできるだけ契約をいたしまして、早く進捗さすということを考えております。  それから補助工事のうちで七割くらいは緊要工事ということで考えております。ですから、災害が起きまして特に急ぐようなものは大体三年——全体で三年ですけれども、ここで申し上げましたように、二年目で八〇%は終わるわけであります。そうすると、補助工事のうちの七割について二年目に大体八〇%終わってしまう。直轄につきましても、内地につきましては二年で全部終了する。従来から比べますとだいぶん進捗いたしておりますが、なお大臣から言われておりますように、できるだけ事務的に今後進捗に努力したい、かように考えているわけでございます。
  80. 福岡義登

    ○福岡委員 これもできるだけ改善をしていただくように要望して、次に移りたいのです。  水資源開発の場合に、この間建設大臣の所信表明に対して私質問をしたのですが、水資源地区の開発についてはいまのところこれという手当てがないわけであります。たとえば農地が水没する、あるいは民家が水没する、それは金銭補償で適当にそれぞれが生活再建を考えていく、こういうことになっている。水資源開発によって利益を受けるものは、相当距離が離れたところの地域である。水資源地区の人々に対する恩恵というものは現在何もないと言っていいような状態なんであります。そこで、一、二の私の考えも過去にこの委員会で述べたことがあるのですが、今度の新治水五カ年計画を見ましても、相当ダムができるわけであります。三百余りの計画があるわけでありますから、新たに手をつけるものが相当あるわけでありますが、そういう問題について建設省としては何か考え方を持っておられるかどうか、お伺いしたいと思います。
  81. 坂野重信

    坂野政府委員 新治水事業五カ年計画の中には、先ほど先生の御指摘のありましたように、水資源の開発というものも相当見込んでおりまして、その中で長期的な見通しというものを地区別に考えておりまして、その一環として五カ年でできるだけ着工できるものは着工しようということで、ダムの建設あるいは天然湖沼の開発利用あるいは河口ぜき、治水ダムということを考えておるわけでございます。いろいろ議論になっておりますが、そういった水源地の開発に伴いましてその周辺の開発等の問題がいろいろ起きておるわけでございまして、まあ用地補償問題等で難航しておるわけでございます。私どもとしては、用地補償といいますか、そういうものをできるだけ拡大的に解釈いたしまして、できるだけその周辺の関連開発というものを一環として計画の中に織り込んで、少なくともその生活再建あるいは地域住民に迷惑をかけないというようなことで、最近はダムの建設等につきましては相当大幅にそういう点を考慮いたしまして、従来はなかなか常識的に考えられないようなことまでも取り入れて、あるいは道路をつくるとか、あるいは国有林の払い下げをしてもらうとか、あるいは都市計画的な手法まで取り入れるというようなことで、ずいぶんがんばっておるわけでございます。しかし、地元の関係等ございまして、先生承知のように、なかなかこういう折衝が難航しておるところもございますけれども、できるだけそういうことによってひとつやっていきたい、現行法の範囲内で拡大解釈できるものはできるだけ拡大解釈いたしまして、そういった地域住民の地域関連というものを取り入れてやっていきたいというぐあいに考えておるわけであります。
  82. 福岡義登

    ○福岡委員 これはどうしても特別の立法をするか何かしてもらいたいと思うのですが、現在一、二カ所具体的な例を私も知っておるわけであります。どういうことになっておるかといいますと、工事事務所の所長がジープに乗って二人くらい所員を連れまして役場に行って、予備調査をさしてくれぬか、こう言うわけです。ところが、町議会のほうは全く反対しておるわけです。町長以下全部反対。地元も、水没を予定されておるものが大体二百五十戸から三亘月くらいある相当大きなダムなんですが、町議会あげて反対しておる。農協の総会でも反対しておる。そこへ工事事務所の所長がジープに乗って二人くらい所員を連れて、予備調査をさせてくれぬかということで乗り込む。そうすると、予備調査をさせることもいかぬということで追い返す。工事事務所のほうに聞いてみると、あれは何回かやはり回を重ねていかなければいかぬことなんですということで、むだな時間を相当費やしておるわけですね。それで、いまから三年も五年もあるのですから、何回か回を重ねていくうちに町のほうも折れてくれます、いままでの例がそうです、これくらいのやり方なんです。そういうやり方ではいかぬのであって、事前に十分に、こういうダムをつくりたい、このダムの利益を受けるのはこうこうであるという計画も町長くらいには示し、同時に、水没する地域についての開発というものもこういうぐあいにしたい——それはいま局長もおっしゃったような、ただ道路を一本つけかえるとかなんとかいうちゃちなものじゃなくて、いま申し上げました二百戸も三百戸もというような大規模のダムになる場合は、その町をどこかへ移すというくらいの計画を考えてもらいたいと思います。農地も相当水没する、それから住宅も相当水没するわけですから、新たなところに農地を開発したり、あるいは宅地を造成したり、それに関連する学校でありますとか、公共施設などもやっていく、そうして、どうぞそこへ移ってもらえぬでしょうかというような、そういう話が事前に町長なり、あるいは場合によっては市長と建設省なりあるいは場合によっては農林省などが話をしまして、水没地域もいままでの生活よりも少しでもよくなる、むしろダムをつけてもらうほうが生活状態はよくなるから賛成だというくらいな話に持っていくことが私は必要なんじゃないかと思う。そういうことについては、いまこれは全然法律も何もないわけであります。わずかに補償基準の中で代替措置などをすることができるという程度にしかなっておらぬわけであります。そういうことがないままでダムを強行しようとするから、いろいろトラブルも起きると思うのであります。  建設大臣にお伺いしたいのですが、そういう趣旨の特別立法というか、立法措置を講じてもらいたいと思うのだけれども、大臣としては一体どう考えられるか。
  83. 保利茂

    ○保利国務大臣 だんだんお話しのような事情が、これからたくさんの水資源——貴重な水資源でございますから、水資源をつくり上げてまいりますためには、これからダムをつくるといっても、いまお話しのようになかなか容易じゃないと思うのです。もちろん、その地域地域、その個所個所にもよってくるわけですから、一がいには言えないと思いますけれども、相当頭を切りかえた扱いをしないと、なかなかスムーズにいかないのではないかというように感じております。したがって、たとえば水源地地域開発法といったような考え方は、考え方としては私は十分そういうものがあることは望ましいことだと思っておりますから、ひとつ検討をしてみたいと思っております。
  84. 福岡義登

    ○福岡委員 もう少しそこのところをはっきり言うてもらいたいのですが、検討をするということなんですけれども、まあ社会党としましても場合によっては法案を出したいという気持ちもあるのですが、もう少し前向きに、次の国会ぐらいには政府のほうから、水没地域といいますか、水源地域の開発について何らかの立法措置を講ずるくらいのところまで話を聞いておきたいのですが、いまおっしゃった意味はそういうようにとっていいのかどうか。
  85. 保利茂

    ○保利国務大臣 主として水没地域といいますと、関連は林野庁に及ぶのだろうと思うのでございます。林野庁でも当今の考え方はかなり前向きのかまえで心配をしてくれておるわけですから、実際上法律をつくることが目的ではなしに、あなたの言われるような趣旨を生かしてできるだけ円滑にダム建設が行なわれるようにするということが目的なんでございますから、それで目的が十分達せられない、やはり立法措置でもお願いしなければむずかしいということであれば、これはちゅうちょするわけにいかぬだろうと思います。その辺のところを検討を願って結論をつけたいと思っております。
  86. 福岡義登

    ○福岡委員 その点、現在は御承知のように何もよりどころになるものはないわけであります。わずかに補償基準の中に一行か二行書かれておるだけなんです。これは農林省にも関係しますし、文部省にも関係するし、建設省にも関係しますし、おっしゃるように各省に関係するわけであります。問題は、いま大臣がおっしゃったように、目的が果たせればそれでいいわけなんですが、保利建設大臣の時代にはこれはうまくいくかもしれぬけれども、あるいは佐藤総理大臣の時代にはうまくいくかもしれぬけれども、これは政府や人はかわるわけであります。ですから、住民としては、よりどころにしようと思えば、やはり立法措置が必要である。行政措置で当面できるものはそれは進めていただきたいし、お願いしたいと思うのですが、これだけの大きな事業をやろうとしておるのですから、何かよりどころにすべきものをこの際考えていくべきではないかと思うのですが、どうでしょう。   〔砂原委員長代理退席、委員長着席〕
  87. 保利茂

    ○保利国務大臣 人がかわろうとも、とにかく社会的背景がありますから、単に金銭補償だけで事が済むような世の中でなくなってきておるということは、だれしも考えるところだと思います。そういう点も考えて、関係の各省もそういう認識は非常に強く持っていただいておるようでございますから、そういう点で内部だけでも取りきめができますれば、それでも何とかの五省協定といったようなこともあるわけでございまして、そういう点で少し事務当局に勉強をしていただきたいと思います。
  88. 福岡義登

    ○福岡委員 くどいようですが、いまの点、立法措置を講ずるか、行政措置でやっていくかということは、急を要する問題だと思う。立法措置をとらなくてもよろしいということになるかもしれません、あるいは立法措置を講じなければいけないということになるか知りませんが、いずれにしても、それらについていま大臣がおっしゃった筋の話のまとめができる時期ですね、早急にやってもらいたいと思うのだけれども、いつごろまでにいま大臣がおっしゃったようなめどをつけてもらうことができるかどうか、おおむねのめどぐらいは聞かしておいてもらいたい。
  89. 保利茂

    ○保利国務大臣 ちょっと福岡さん、時限的に押えられると自信がないので、とにかくせっかく河川局も一生懸命になってくれておりますから、関係各省に強く働きかけまして、できるだけすみやかな機会に結論をつけさせてもらいたいものだ。そうでないと、立法問題が起きますから、それをそっちをとるか、こっちでいくかということになってくるのだろうと思います。そういうことであります。
  90. 福岡義登

    ○福岡委員 疑うわけじゃないのですが、時として常套語で、検討いたしますということで逃げられることが多いので、何月何日というところまでは私は言っておるわけじゃないのです。おおむねことし一ぱいか秋ころ——それまでに大臣がかわられては困るのですが、秋ごろまでとか、大体、早急にという気持ちを聞かしておいてもらいたい。
  91. 保利茂

    ○保利国務大臣 各省とも前向きだと申しますものの、各省の意見がまとまるまでには相当たいへんだろうと思う。それで、ひとつ連絡協議会といったようなものでも早急に持ってもらいたい、こう思っております。
  92. 福岡義登

    ○福岡委員 それでは、きょうはこの辺で終わります。
  93. 加藤常太郎

    加藤委員長 本日はこの程度にとどめ、次回は、来たる十七日午前十時理事会、午前十時十五分委員会を開会することとし、これにて散会いたします。    午後零時三十二分散会