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1968-05-10 第58回国会 衆議院 外務委員会 第20号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十三年五月十日(金曜日)     午前十一時二十分開議  出席委員    委員長 秋田 大助君    理事 小泉 純也君 理事 田中 榮一君    理事 野田 武夫君 理事 福家 俊一君    理事 石野 久男君 理事 帆足  計君    理事 曽祢  益君       青木 正久君    宇都宮徳馬君       世耕 政隆君   橋本登美三郎君       福田 篤泰君    松田竹千代君       毛利 松平君    山田 久就君       木原津與志君    黒田 寿男君       田原 春次君    高田 富之君       松本 七郎君    伊藤惣助丸君       松本 善明君    斎藤 寿夫君  出席国務大臣         外 務 大 臣 三木 武夫君  出席政府委員         総理府特別地域         連絡局参事官  加藤 泰守君         防衛庁防衛局長 宍戸 基男君         科学技術庁原子         力局長     藤波 恒雄君         外務政務次官  藏内 修治君         外務省北米局長 東郷 文彦君         外務省条約局長 佐藤 正二君         気象庁次長   増田 誠三君  委員外出席者         防衛庁長官官房         防衛審議官   丸山  昂君         科学技術庁原子         力局国際協力課         長       川島 芳郎君         科学技術庁原子         力局原子炉規制         課長      大町  朴君         外務省条約局外         務参事官    高島 益郎君         大蔵省理財局国         庫課長     相原 三郎君         大蔵省国有財産         局国有財産第一         課長      斉藤 整督君         大蔵省国際金融         局企画課長   熊田淳一郎君         海上保安庁警備         救難監     猪口 猛夫君         自治省行政局振         興課長     遠藤 文夫君         専  門  員 吉田 賢吉君     ————————————— 五月九日  委員石川次夫君、田中武夫君及び三木喜夫君辞  任につき、その補欠として高田富之君、山崎始  男君及び山内広君が議長指名委員に選任さ  れた。 同月十日  委員齋藤憲三君辞任につき、その補欠として宇  都宮徳馬君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  南方諸島及びその他の諸島に関する日本国とア  メリカ合衆国との間の協定締結について承認  を求めるの件(条約第一八号)      ————◇—————
  2. 秋田大助

    秋田委員長 これより会議を開きます。  南方諸島及びその他の諸島に関する日本国とアメリカ合衆国との間の協定締結について承認を求めるの件を議題とし、審査に入ります。  質疑の通告がありますので、順次これを許します。石野久男君。
  3. 石野久男

    石野委員 大臣に、小笠原返還に関する質問をする前に、きょうからパリベトナム和平の問題についての会談が行なわれるようでありますが、これに対する政府見通しの問題について、大臣所見をひとりお伺いします。
  4. 三木武夫

    三木国務大臣 いよいよきょうから、時差もありますからあれですが、とにかく十日、パリにおいてアメリカハノイとの話し合いが始まる。きょうは顔合わせでしょう。そして本格的には来週から行なわれるのでしょうが、しかし、どうもパリでずっと会議——ただ予備というのではなくして、相当あとの話、本格的な話し合いまでも入る気配もございますので、われわれとしては、パリ会議がどういう経過をたどっていくかということに重大な関心を持っておる。出先の在外公館を通じて、このパリ会議をめぐる諸問題については、詳細なその経過を知るような手配をいたしておるわけでございます。ただ、これは石野君も御承知のとおり、非常に複雑な背景を持っておる。朝鮮戦争よりもずっと複雑なものを持っています。このベトナム戦争終結まで持っていくための解決しなければならぬ諸問題は……。だから、簡単なものでは終わらない、相当な時間がかかると私は思います。しかし、ベトナム和平に対する世界の世論というものは、もういまや大きな世界潮流になっておるわけですから、この世界潮流にさからって、またやはり戦争をエスカレートすることは、してもらっては困るし、できもしないと、私はそう思っております。時間はかかっても、結局は戦線を縮小して和平への努力がなされるに違いないし、またわれわれとしても、それを期待をいたすわけでございます。また、日本としても、どういう場面になるか、和平達成のために有効な働ける余地があったならばいかなる努力も惜しむものではない。これはわれわれが常に申しておる点でございますので、いまは、きょうから始まるというので、この成功を政府としては心から願っているのだということ以上に、まだ経過を見ないと申し上げる段階ではないと思います。
  5. 石野久男

    石野委員 このベトナム和平についてのパリ会談は、経過を見なければ確かに言えないことが多いと思うのですが、現実には、一方で和平交渉が始まろうとしておるときに、ジョンソン声明があって以後、爆撃は依然として続いておるし、むしろ、ときには従前よりも非常にきついものが見受けられるわけです。同町に、南のほうでやはり解放民族戦線のほうの戦いも非常に熾烈になっている。テト攻勢以上の動きが南のほうで行なわれていると聞いておる。こういうような情勢を、和平の問題との関連性政府はどういうふうに見ておられるか、ひとつ大臣所見を聞かしていただきたい。
  6. 三木武夫

    三木国務大臣 このジョンソン提案の場合でも、全面的に北爆停止するということはジョンソンは言ってない、部分的な停止をする。またハノイも、これに応じた場合においても、南に対しての援助はやらぬという約束をして話し合いに応じようといってハノイがこたえたわけではない。アメリカハノイも、この和平提案に対する約束の不履行であると私は思ってないわけです。ただしかし、おそらくいろいろな立場から、いよいよ話し合いに入る前に、お互いにいろいろな立場の強化というものを考える面もあるのかも一しれません。しかし、残念なことだと私は思っています。せっかく話し合いができて、話し合いに入ろうというときに、南も北も戦闘行為が継続しておるということは、まことに遺憾だとも思いますけれども、いよいよきょうから話し合いが始まれば、戦闘行為停止ということが話し合い議題に第一番になるのですから、やはり戦闘は縮小への方向に向かっていくであろうということで、その意味からも、きょうの会談というものに期待を持たざるを得ないということでございます。
  7. 石野久男

    石野委員 いま大臣も言っておるように、和平が始まる場合には、戦闘行為が縮小するということが前提になると思うのですが、北の要請は、しばしば声明等を見ておりますと、全面停止、これを要求しておるわけです。ところが、片方はやはり部分停止という形になっておりますから、このかみ合いがなかなかうまくいかないだろうと思う。そういう情勢については、これは両当事国の問の問題ではありますけれども、しかし、第三国としての日本なんかでも、きわめて関心を強めなければならぬ点であろうと思っております。これらについては、相手方のやることですからどうなるか知りませんが、ただ、先ほど大臣が言われております、この段階でやれることがあるならばやってみたい、しかし、ただそう言っておるだけではだめなんで、こういう情勢政府としても正しくつかんでおるわけですから、この段階で、やはり和平交渉を促進させるためには日本がどういうことをやるか、またどういうことをやろうとしておるか。全然それはいままだ何もないのだというのか、それともこういうことをやりたいというふうに政府としては考えておるということがあるならば、ひとつこの際大臣からその所見を聞かせてもらいたい。
  8. 三木武夫

    三木国務大臣 何かやったらどうかということでは、これはやはり一日も早くベトナムに平和をという国民の気持ちを代表して、しばしば何かやったらどうか、確かに——こういう国際問題というものは、何もやみくもに動き回ることがいいとも私は思わない。やはり日本が動くことによってそれが非常に有効であるという場合でないと、あっちに行き、こっちに行き、動き回ることが日本和平への努力だというふうには思わない。したがって、今後どういう面で日本が働くような場面が出てくるか、いまちょっとわかりませんが、とにかく日本が望んでおるのは、ヨーロッパ諸国とは違って、アジア一員ですから、このアジアでああいう戦争がいつまでも続いていくということは、これはいろいろな意味において日本国内にはね返っておるのですからね。外交の上においても国内においてもはね返っておる。一日も早く戦争を終わってもらいたいと考えておるのですから、戦争終結に導くために日本が果たせる役割りがあったならば、今後話し合い経過においてわれわれとしては努力をしたい。いまはどういうことになるか、話し合いもこれから、まだ第一回の話も済んでないときにああだこうだと言って、それを予測して日本がこういう面で働いてみたいと言うことは、そういう発言はちょっと適当でないように思います。
  9. 石野久男

    石野委員 情勢変化に応じて外交は行なわれるのですから、いま外務大臣が、どういうふうに進むかわからない段階でものを申せないということは私どもよくわかるわけです。ただ問題は、これは、政府としてはそういうことは言いにくいことでしょうけれども、われわれ見ておるところで、北あるいは南における戦いの中に、日本がやはりいろいろな物資の面とかその他の面で協力しておって、戦争行為が強化されるような内容を持っておるものがあるわけです。いわゆる軍需物資特需等を通じていろいろあると思います。こういう側面で日本戦争を挑発し、あるいはまた拡大するような援助的な形をするということになると、日本和平段階にかえって歯どめをしていることになってしまう。こういう問題は、極力、政府としても公然とは言えないにしても、やはり配慮をし、和平方向への道を閉ざさないようにする、そういう指示、指導、そういうものがなければいけないんじゃないかと私は思うのであります。そうでありませんと、われわれはアジア一員であるからそれを何とかとめたいと言いましても、われわれがやはり特需とかなんとかでやっている問題が、かえって戦争を拡大していくということになっていったんでは逆の方向になるだろうと思うのです。この点は、われわれとしても真剣に考えなくちゃならぬじゃないか。そういうような配慮もしないで、ただパリにおける情勢変化だけを見ておる、こういうことだけでは外交上の問題はうまくいかないだろう、こう思うのです。そういう点で、私は、日本政府としても、やはり真剣な態度をここで明確にして内外に声明すべきじゃないか、こういうふうに思っておるのですが、その点はいかがですか。
  10. 三木武夫

    三木国務大臣 石野君は戦争協力というふうに言われますけれども、日本はまあアメリカから見てももの足らないでしょう、日本戦争協力はしないんですから。武器弾薬、これはベトナムだけでなしに、その周辺の国もどこもやらぬのですからね。戦争物資、それから戦争に関連するような物資というようなものは、日本はやはり輸出ということを、特需という形においても戦争に直接関連するような物資は送っていないわけです。したがって、南ベトナムにも国交回復しておるけれども——南ベトナムも不満でしょうね。日本援助というようなものは、医療援助以外にはほとんどないんですからね。だから、こういう日本態度というものは、一日も早くベトナムに平和をと言っておる政府態度と矛盾するものではない。南ベトナムなんか国交回復しておっても、医療以外にほとんど援助がないんですもの。いろいろな点で、日米安保条約によるところの義務はわれわれはやはり履行しなければいけませんよ。ベトナム戦争の前からわれわれは日米安保条約を結んでいる。それに対する安保条約からくる義務は履行しなければならぬが、特にベトナム戦争というもの、戦争の継続を可能ならしめるような形の援助というものは、日本政府はしておりません。だから、政府が一日も早く和平の実現を望んでいるということと政府態度は矛盾しておるとは私は思っておりません。
  11. 石野久男

    石野委員 ベトナム和平の問題は、今後にかかっておる非常に重要な問題であるし、アジアの全局的な大勢にも非常に影響が大きい。そういう意味でこれからの推移も見守らねばいけませんけれども、大臣見通しは、たとえば、先ほども朝鮮戦争より非常に複雑多岐であるということを言われましたが、どうでしょう、パリ会談というものは、見通しとして、朝鮮戦争のときよりももっと話し合いがまとまるのは長くなる、その複雑多岐ということの意味は、もっと長くなるという見通しを持っておるのですか。それとも、やはり今日の世界情勢等から見て、これがもっと早く妥結点に到達すると見ておられるか。その程度の見当は、政府としてはつけておられるだろうと思うのですが、いかがでしょうか。
  12. 三木武夫

    三木国務大臣 朝鮮よりも複雑ではないかというのは、戦争背景として持っておることが複雑だと言っておるので、年限の点はちょっと予想がつかないんですよ。朝鮮は二年かかりましたね。ですから、その二年よりも長くかかるだろうということを意味したのではなくて、朝鮮戦争よりももっと複雑な内容ベトナム戦争は持っておるのではないか、その戦争の複雑さを言ったので、年限朝鮮戦争よりも長くかかるかどうかということは、きょう初めて会うわけですから、しばらく会議をやってみないと、時期的な見通しは私はわからぬ。しかし、ジョンソン大統領も、まあこれは大統領に立たないと言っているのですから、もう一ぺん立つことはありませんよね。そうなってくると、自分の在任中にこれは片づけたいとジョンソンは思うでしょうね。しかし、そうなってくると、やはり非常に時間は限られておるわけですから、みなやっぱり早く解決をしたいという希望をアメリカハノイも持っておるではありましょうが、実際問題として、そう短期間解決ができるかどうかということにはまだやはり疑問があるということだと思います。
  13. 石野久男

    石野委員 いま大臣が、ジョンソンが秋の大統領選挙に出ないんだから、なるべくその前に片づけたいというような一つ気持ちを持っておるだろうと言われたことは、大臣考え方として私は非常に傾聴に値すると思いますが、しかし、それと同時に、そうならば、おそらく、日本がもしすべきことがあるとするならば何とかしたいということになりますと、その短い期間の中で相当程度積極的な行動が出てこなければ協力はできないだろうと思いますから、この点は、ひとつまあ外務省は、かまえてはいるだろうと思いますけれども、態勢としてそういうような心がまえで進んでいるものと見ますし、またそういうふうになさるもの、してもらわなければいけないのじゃないか、こう思うのですが、その点での配慮は十分なさっておるのでしょう。
  14. 三木武夫

    三木国務大臣 これはいま申したように、アメリカハノイとの話し合いがどういうふうに進展するか、そのいろんなあらゆる場合を考えて、日本が働ける余地があるならば働きたいという、そういうための検討は加えておる次第でございます。
  15. 石野久男

    石野委員 ベトナムの問題は、これから国際情勢についての質疑をするときにまた十分あれしますが、もう一つだけちょっとお聞きしておきたいのは、私も実は関係をしましたことですが、日中の関係の問題でございます。特に最近覚書貿易協定ができましてから、日本の財界でもこの問題については積極的な態勢を示して、貨物船輸出問題等に関連して、いま輸銀使用の問題が出ておるわけでございます。ところが、中国の側は、輸銀使用について、特に吉田書簡の問題に非常に強い意見が出てきておりまして、具体的にこれの交渉が困難な状態になっておるのが実情であります。大臣は、輸銀使用については実情判断してということをしばしば言っておるのでございますが、中国側情勢から見ると、必ずしもそういうあいまいなことばでは契約するにあたって納得しないという実情があると思うのです。われわれは、やはり今日の日本情勢から見て、海外への輸出を拡大するということが喫緊の要務だ、こう思っておるので、この吉田書簡に関連する輸銀使用ができないという問題は、早急にこれは解決しなくてはならぬ。今日貨物船の契約問題をとらえて論議になっていることについても、政府態度が明確にされないと、実際にその実務に当たっている諸君の道しるべが出てこないことになるわけです。これは当然政府の責任でもあるわけですから、この際、ひとつ政府としてはっきりした態度の表明がなければならぬと思いますが、外務大臣はどういうふうにこれを処置なさろうとしておりますか。
  16. 三木武夫

    三木国務大臣 石野向の言うように、輸銀の資金でも無制限にあるわけではないわけです。したがって、今後いろいろ共産圏との間にも延べ払い——プラント類延べ払いということが国際的な取引の慣行にもなっておるわけです。そのようなものの間にも非常に長期の延べ払いを要求するわけです。だから、具体的に問題が起こったときに、日本国益を踏まえて自主的な判断をするという以上に、何でももう全部よろしゅうございますと言えるわけでもないし、やはり問題が起こったときに、日本国益の上に立って自主的に判断をするということを申し上げる以上に私は言えないと思いますよ。そのことは、まあ日本政府としていまの段階で言えることばとしては、それ以上のことは言えないのじゃないかと私は思っておるのです。
  17. 石野久男

    石野委員 いや、だから私は聞いているのですよ。問題が起こっていないときなら私は聞きませんけれども、現実貨物船の売り買いという問題が出てきておりまして、その問題がひっかかって話が進まないという現実の問題にぶつかっておりますから、この問題についての政府考え方をはっきり聞かしてもらわなければいかぬ。これは政府がそういう話をしなければ、話し合いを進めようといっても進みません。問題が起こって話が進んだって、それがデッドロックにのし上がっておるのですから、これがないといえばないんだし、あるといえばあるんだし、政府がこういう問題があるということを認めなければ−現実にはそういう問題が起こっているんだから、政府はやはりそういう民間で起きている問題を、あるものはあるものとして、事実は事実として認める、こういう態度政府の施策を明確にする必要がある。だから、これは問題が起きたときではなくて、現に起きているから、この問題をどうするのか、こういうことを聞いているのです。
  18. 三木武夫

    三木国務大臣 私、そういうのが現に持ち上がっているとは聞いていないのですけれども、船のそういう問題があるとすれば、これはどういうふうな条件でどういうことを考えているのか。それはやはり一つ手続が具体的に起こってきた場合に自主的に判断するんだと言っておるので、われわれは、最終的な判断は、政府がいろんな国益上の立場に立って判断を加えると言っておるので、それまでの間には事務的な手続はやはり進めなければならぬと思います。そうして最後にその手続、どういうふうな条件なのか、どういうことを希望しておるのか、そういうことがちゃんと具体的に問題になったときに、最後判断を自主的にするということよりほかにきめる方法はないと思う。
  19. 石野久男

    石野委員 大臣は非常に逃げておられるけれども、商取引の場合は、ことに輸銀使用の場合になりますと、あらかじめ政府方針が出ませんと、商社にしても何にしても話が進まないのですよ、実際問題として。だから、具体的に問題が出てきたときに話をするというのは、非常に逃げ口上で、非常に不親切なものの言い方だと思うのですよ。商売をやる当事者、売りたいというものは、そういう政府方針——言うならば、通産省の仕事に入る前に外務省仕事があるわけですから、外務省一つ方針政府の全体としての方針が出てなければ通産業務は進んでこないのです。もう現にこの問題は一つの壁にぶつかっておるわけですから、もしいま考え方がないなら、早急にそういう問題についての政府方針を出すのかどうか、ここらのところをはっきりしてくれなければ、いつまでたっても不明確のままでいきますから、より基本的な問題は政府の基本的な方針を出すことにあると思います。総理の言い方にしても外務大臣言い方も、その場のがれの言い方をしておって、非常に不親切だ。政治に対してふまじめだと思うのです。そういうふまじめな態度はよろしくないのではないかと思いますので、もう一度外務大臣所見を聞いておきたい。
  20. 三木武夫

    三木国務大臣 私は、具体的な問題としてこういう問題が起こっておるとは聞いていない。起こっていないときに、原則的に中共貿易にこれから輸銀使用いたしますというようなことを申し上げられない。具体的な問題が起こったら、その問題の条件、いろんな点を検討して、政府が最終的にどうするということをきめたらいい、こういう考えです。
  21. 石野久男

    石野委員 私は、三木大臣中国問題については非常に進んだ考え方をお持ちになり、友好関係を腹におさめておる、こういうように思いますので、日中の関係をなるべくこの時期によき方向に持っていくことが大事だ、こう思って聞いておるのですが、大臣はそんなことは聞いていないということは、事実上はこういう問題は、大臣の腹がしっかりしないと問題が起きてきません。だけれども、きょうは条約審議ですから、他日またこの問題について話を聞きたいと思います。  そこで、小笠原返還に関する、今日出ておりまする承認を求める件についてでございますが、まず、小笠原施政権返還される。と同時に、これまで潜在的であったいろいろのわが国法律関係、こういう関係が顕在化することになりますが、ここではっきりしておきたいのは、わが国施政権が法律的にいままで停止されていたそういう時期というのは、いつから停止されていたのか。それからまた、そういうことを停止したところの文書関係のものはどういうふうになっているのか。それから先にひとつ聞いておきたいと思います。
  22. 加藤泰守

    加藤(泰)政府委員 お答えいたします。  昭和二十一年の一月二十九日に、GHQから行政権分離の覚え書きが出されまして、それに基づきまして、小笠原は本土の政府行政権から分離されました。したがって、法律関係もその時点から適用がむずかしくなったわけでございますが、さらに、昭和二十七年の四月二十八日の平和条約によりまして施政権アメリカに与えられるということから、それが結果といたしまして、二十一年の一月二十九日以降日本法令適用ができなくなった、こういうふうに考えております。
  23. 石野久男

    石野委員 そうすると、今度小笠原日本返還された場合には、法律関係としてはいつの時期から復活することになるわけですか。
  24. 加藤泰守

    加藤(泰)政府委員 お答えいたします。  もちろん、返還協定が発効した時点からでございます。
  25. 石野久男

    石野委員 そうすると、今度返還が行なわれた時期からということですか。そうすると、その間の空白がございますね。その空白の処置というものはどのようになさいますか。
  26. 加藤泰守

    加藤(泰)政府委員 お答えいたします。  その空白期間は、約二十三年になるわけでございますが、その間、アメリカ軍政下におきましての法令としては、小笠原火山諸島及び南鳥島司法及び刑法典というものと、いわゆる自治機能でつくられた布令、すなわちいわゆる五人委員会でつくった法規があるわけでございます。これは特別の規律ということになるわけでございますが、それ以外の事項につきましては、たとえば民法上の財産権の問題等につきましては、特にアメリカ側で特段の定めをしたという事実がございませんので、慣習法的といっていいかと思いますが、あそこで生活しております人が日本人であり、かつ長い間日本法令下で生活をしていた人たちでございますので、その法意識を考えますと、やはり本土の民法の諸規定の内容が慣習法的に実現していたのではないかというふうに考えます。したがって、そういうような問題につきましては、返還になりましても、何ら手当てをする必要はないわけでございます。これに反して、行政権行使に関係するものは、施政権を譲渡しているので、一応消滅をしていると解されるわけであります。したがいまして、行政権行使に関する事項は、新たに本土の法令適用するに際し、特別の規定を設けていかなければならないことになるわけであります。そういうような事項を暫定措置法案として御審議を願っているわけでございます。
  27. 石野久男

    石野委員 そうすると、暫定措置法案でなにしている土地所有関係とか土地の賃借関係、賃貸関係あるいは漁業権とか鉱山権等のいろいろなそういうものは、その暫定措置法案の中でどういうふうに復活させようとしておるのですか。
  28. 加藤泰守

    加藤(泰)政府委員 お答えいたします。  漁業権につきましては、先ほど申し上げましたように、いわゆる行政権行使の結果として出てきておるものでございますので、一応消減しておるわけでございます。したがって、返還になりましてから直ちに漁業権設定ということも適当でない。と申ますのは、旧島民がまだ帰っておりませんので、旧島民が帰って漁業を営み得るような状態になった時点で、現島民と合わせて漁業権設定を考えていくのがいいじゃないかというふうに考えますので、暫定法案におきましては、さしあたっての措置といたしまして、旧島民で向こうに帰った人及び現島民の方々だけにつきまして、漁業ができるように規制をしていきたいというふうに考えております。  それから鉱業権につきましては、これも漁業権と同じような意味で消滅しておると思いますが、返還になりましたなければ、当然鉱業法の適用を受けることになります。したがって、その場合には、いわゆる鉱業権の出願についての先願主義が働いてまいりますので、昔鉱業権を持っていた人があるいは鉱業権を取得できないという事態にもなろうかと思います。そういうことがないように、一定の期間を限って出願させることを認めまして、それに優先権を与えよう、そういうふうに考えております。  それから耕作権につきましては、やはり民法的な権利としてでございますので、期間の定めのないものは一応現在も有効に存続しておるというふうに認められるわけでございますが、当事者間で期間の定めをしたものにつきましては、その期間の満了によって当然消滅しておるというふうに言わざるを得ないわけでございます。したがって、これらにつきましては、暫定法の施行後一年を経過したあとの一年間に申し出をさせまして、法律上一定の規制——強制といいますとちょっと語弊があるかもしれませんが、地主との間で賃貸契約ができるだけ結べるような配慮をいたしまして、いわゆる特別賃借権の設定というような形で処理しているわけでございます。
  29. 石野久男

    石野委員 こまかい問題はまた措置法のほうで論議していきたいと思いますが、ただその場合に、旧島民の諸君は、今日まで自分たちの持っておる諸権利というものを、平和条約といいますか、あれで凍結されて今日まできているわけです。こういう諸君に対して補償する義務が当然政府にあると思うのですが、そういう補償の意思、政府としては、この凍結中の島民の諸権利に対する補償という問題はどういうふうに考えておりますか。
  30. 加藤泰守

    加藤(泰)政府委員 行政権の分離によりまして、行政権にからむ問題点としての、たとえば漁業権の問題、鉱業権の問題等につきましては、先ほど消滅したというふうに申し上げましたけれども、それにつきましては、覚え書きによりましてそういう事態が起きたということで、特に補償ということは考えていないわけでございます。ただ、アメリカ側から三十六年にいわゆる見舞い金として六百万ドルの日本政府に対する交付がございましたので、それを分配いたしまして、その権利が行使できない状態であったことに対する見舞いをいたしているわけでございます。
  31. 石野久男

    石野委員 三十六年に約六百万ドルの見舞い金といいますか、そういうものがアメリカから出た。これはアメリカがそういうことをしたのでしょうけれども、必ずしも損失に対して見合ったものであるかどうかもはっきりしませんね。それと同時に、島民が持っておった権利について、日本政府がそういうことをしたことでもないわけですが、日本政府平和条約ということに基づいてこれらの島民の権利を凍結した一半の責任があるわけですから、この人たちの失った権利に基づくところのいろいろな損害、損失というものに対しては、少なくとも政府としては何がしかの補償をする義務というものを——憲法における私有財産尊重というたてまえからいきますと、本人の意思でなく、国の意思でこれらの人たちに相当多額の損害をかけているわけですから、やはりそういうものに対して補償をすべきではないかと思うが、これは大臣、そういう点はどういうふうに考えておりますか。
  32. 三木武夫

    三木国務大臣 この問題は、やはり政府のほうでもいろいろ検討を加えて、西村農林大臣から本会議でも答弁をいたしましたように、これは小笠原が何か平和条約第三条によって施政権アメリカに行ったわけですから、そういう形で日本施政権がなかった時代の鉱業権、漁業権というもの、これに対する損害賠償は旧島民の請求権の対象にしないというふうに政府は考えておりまして、これは本会議でも答弁をいたしたとおりでございます。
  33. 石野久男

    石野委員 ぼくの聞いているのは、それは政府は島民に対してそうきめた。島民が政府に対してというよりも、政府が旧島民に対して、島民の持っていた諸権利の行使がこの期間中に十分に行なわれなかったという損失があったわけですから、それに対してどう対処するかということをぼくは聞いているので、アメリカとの関係でどうこうということではないのです。政府と島民との関係はどういうふうにするかということです。
  34. 三木武夫

    三木国務大臣 総理府のほうがもっと私より詳しいと思いますが、われわれとしては、結論的にいえば、六百万ドルという見舞い金も出ておるし、だから、その施政権アメリカにあったうちにおける漁業権とか鉱業権を使用することができなかったという損失の補償には応じない、そういう意味の請求権の問題は起こらないというのが政府考え方でございます。
  35. 石野久男

    石野委員 確認しておきますが、そうしますと、政府は、そういう島民からの請求権には応じない、与えた損害を補償するということについては全然配慮してない、こういうことですね。
  36. 加藤泰守

    加藤(泰)政府委員 私から補足して説明させていただきますが、六百万ドルの配分につきましては、もちろんアメリカから出たわけでございますが、その六百万ドルの配分によりまして、実際問題として使用できなかったという、そういうあれについての損失的なものは、一応処理されているというふうに考えますので、したがって、それ以上政府から補償する必要はないというふうに考えております。
  37. 石野久男

    石野委員 大臣、この協定の前文に、「これらの諸島日本国への早期復帰をこの地域の安全をそこなうことなく達成するための具体的な取極に関して日本国政府及びアメリカ合衆国政府が直ちに協議に入ることに合意した」とあるのですが、この「具体的な取極」というのは、どういうことを具体的に合意したのですか。またその中に「安全をそこなうことなく」ということが書かれておりますけれども、それはどういうことですか。
  38. 三木武夫

    三木国務大臣 この「安全をそこなうことなく」ということは、これは佐藤・ジョンソン声明に出てきておったことばですが、おそらくこのことは、返還をされれば、小笠原に対する防衛の責任というものは日本にくるわけですね、安保条約適用範囲になりますから。そういうふうなことになるから、この地域の早期復帰をしても、地域の安全をそこなうことなく達成できるようなことになるから、そういうふうな取りきめという意味がここに入っていると思います。
  39. 石野久男

    石野委員 この「具体的な取極」というのは、結局ジョンソン・佐藤共同声明の中の「この地域の防衛の責任の多くを徐々に引受けるという総理大臣が表明した日本政府の意図を考慮に入れるであろう。総理大臣大統領は、米国が、小笠原諸島において両国共通の安全保障上必要な軍事施設及び区域を」云々、こういうことですか。
  40. 三木武夫

    三木国務大臣 いまあなたが言われるのは、前文の中に、日本政府とアメリカ合衆国政府が協議に入る、それは安全をそこなうようなことなくしてこれが達成できるということについて、「協議に入ることに合意したので、」ということで、これは協議に入ることが重点に置いておるわけですが、しかし、「そこなうことなく達成するための」ということで、安全を害することなくそういう達成する取りきめについて協議に入るということをいっておるわけです。  それから、いま御指摘のようなことは、これがやはり具体的に安保条約適用範囲になるわけでありますから、小笠原諸島における防衛上の諸問題というものは、やはり徐々に日本——すぐに引き渡せないものは、アメリカが引き続いて使用するもの、すぐに引き渡せるもの、多少の時間をかけるものということで日本が引き継いでいくのだということの意味でございます。
  41. 石野久男

    石野委員 そうしますと「安全をそこなうことなく達成するための具体的な取極に関して」という問題は、これは防衛上の問題ですが、きょうは防衛庁長官は来てないようですから、あとで大臣に聞きますけれども、一応この問題に関連して防衛庁がいまどういうような具体的な話をしているのか、そういう問題をひとつ御説明願いたい。
  42. 宍戸基男

    ○宍戸政府委員 防衛庁といたしましては、米軍が撤退したあとすぐ米軍の軍事施設を引き継ぎまして、所要の部隊を配置いたしたいというつもりでおります。そのために、とりあえずは連絡員を数名出しております。さらにこの返還時期が近づきましたら、それをさらに増強いたすつもりでおります。具体的に返還が成立いたしましたら、その連絡員をさらに所要の部隊に昇格させるというふうなことを考えております。
  43. 石野久男

    石野委員 その所要の部隊にかえていくという、そのときの防衛庁がすでに用意している配置計画といいますか、そういうふうなものはどういうふうになっているのですか。
  44. 宍戸基男

    ○宍戸政府委員 諸島につきまして、一応落ちついたといいますか、一応当座の引き継ぎのごたごたが済みましたあとの配置計画につきましては、せっかく検討中でございまして、よくまだ煮詰まってない段階でございますけれども、大筋だけ申し上げますと、現在約二百人程度の米軍の要員を配置いたしておりますけれども、わがほうも落ちつきましたら、父島、硫黄島、南鳥島、合わせましてほぼ二百人程度のものを配置する必要があろうかという程度に考えております。もっと具体的に申し上げますと、父島におきましては、港がありますので、艦艇に対する補給基地を維持したい。硫黄島、南鳥島におきましては、これは港はございませんで、航空基地でございますので、その航空基地の管理要員を配置いたしたいというふうに考えております。規模は全体として二百人程度でございますので、それぞれの島に分けますと、父島、硫黄島それぞれ数十人から百人足らずの小部隊で、普通、部隊の名前でいいますと、分遣隊とか派遣隊とか、そういう程度の小部隊でございます。そういうことを考えております。
  45. 石野久男

    石野委員 そうしますと、艦艇の補給基地というのは、いわゆる海上自衛隊、それから飛行機のほうは航空自衛隊、そのほかに陸上自衛隊もそこへ行くわけですが、自衛隊の体制からいうと、陸上、海上、それから航空と、この三部隊が入るわけですか。
  46. 宍戸基男

    ○宍戸政府委員 大部分海上自衛隊を考えております。父島はもちろん艦艇の補給基地ですから、海上自衛隊でございます。それから硫黄島、南鳥島は航空基地でございますけれども、海上自衛隊も航空関係を持っておりまして、硫黄島、南鳥島におきます航空基地要員も海上自衛隊から出したい。と申しますのは、有事の際のことを考えますと、あそこを基地にして対潜哨戒をするというふうなことに有用であろうというふうに考えられますので、平時における訓練も、海上自衛隊が行なう対潜哨戒の訓練の基地にいたしたい。したがって、補給整備要員も海上自衛隊から出すというふうに考えております。特に航空あるいは陸上自衛隊から恒久的に出すということは考えておりません。臨時的に、 たとえば不発弾処理ということは陸上自衛隊の任務でございますので、そういうことが必要ならば陸上自衛隊からも臨時に出ることばあり得ると思いますけれども、恒久的な配置としては海上自衛隊を主として考えておる、こういうことでございます。
  47. 石野久男

    石野委員 そうしますと、たとえば臨時に出す場合の軍の関係といいますか、管区の関係からいいますと、あそこはどういう管区の関係になるのですか。
  48. 宍戸基男

    ○宍戸政府委員 管区といいますと、地域的な管轄区域でございますか。
  49. 石野久男

    石野委員 そうです。
  50. 宍戸基男

    ○宍戸政府委員 海上自衛隊では横須賀地方総監部の管轄地域に大部分入るわけでございますけれども、現在の規定では、硫黄島のほうが呉地方総監部の管轄区域に一応線を伸ばしますとなりますので、それはふぐあいでありますので、いまわれわれ考えておりますのは、横須賀と呉の管轄区域を若干変更いたしまして、横須賀地方総監部一本の管轄にいたしたい。これは政令の改正を必要としますけれども、一応案としてそういうことをいま考えている段階でございます。航空自衛隊と陸上自衛隊は、先ほど申し上げましたように、恒久的な配置にはまず当たらないと思いますので、管轄地域のことについては特に考えておりません。臨時に陸上から不発弾処理班が出るというときには、管轄の問題を離れて必要な部隊から派遣するというふうなことになろうか、かように思います。
  51. 石野久男

    石野委員 いま、たとえば陸上の場合でも航空の場合でも、管轄を離れて適当なということは、軍の統制上といいますか、そういうものからいいまして、そういう予備部隊というのがまた別にあるのですか。
  52. 宍戸基男

    ○宍戸政府委員 予備部隊が特にあるわけではございません。臨時の不発弾処理ということでございますと、常時の何かの任務であれば管轄をはっきりしなければなりませんけれども、臨時の派遣、一時的な仕事であれば、そういうことはあまり必要でないという前提で申し上げたわけでございますけれども、実際に出るのは、東部方面総監部というのがございまして、これが陸上で申しますと東京、関東方面で、その方面を管轄いたしておりますので、その方面の部隊から出るのが自然でございますので、たぶんそういうほうから出るだろうというふうに考えております。
  53. 石野久男

    石野委員 これはまたあとで大臣が来ましたときにいろいろお聞きしますが、小笠原がこうして返りました場合には、ジョンソン・佐藤声明によって、結局安全をそこなうことなく達成するためのこうした防衛の関係、その軍事的意義というようなもの、これは防衛庁としては、全体としてどういうふうに軍事的意義をお考えになっておられますか。
  54. 宍戸基男

    ○宍戸政府委員 現在のアメリカの方面から見た軍事的意義ということでございましたら、これはグアム、フィリピン、沖繩その他極東に配置されている諸部隊に対する補給あるいは交通の要点という、いわば第二線的なものであろうというふうに考えられます。この三つの現在の小笠原諸島に関します米軍基地の立場ですね。  わがほうに返りました場合のわが国から見ました軍事的価値といいますと、先ほどもちょっと申し上げましたけれども、有事の際にはわが国船舶の海上交通の安全を確保するということが、自衛隊、特に海上自衛隊の任務でございます。そのためには、艦艇で船団を護衛するとか、あるいは航空機によって対潜哨戒をするとかいう手段によって海上交通の保護をいたすわけでございますけれども、その手段をするための基地として、軍事的に有用であるというふうに考えられるわけでございます。
  55. 石野久男

    石野委員 防衛関係についてはまたあとでなにしますが、第一条の二項に「これらの諸島の領水を含む。」こう書いてあります。わざわざこの「領水を含む。」ということを明示しているのですが、なぜこういうような規定が必要なのかということにちょっと疑問を持つわけなんです。沿岸または島で、その領水を含まない場合があるのかどうか、こういう疑問を持つ。沿岸とか島には必ず領海が不可分であるというふうにわれわれは思っている。それだのに、ここではなぜ領海といわないで、領水ということばを使っているのか、ここをひとつ明確に……。
  56. 佐藤正二

    ○佐藤(正二)政府委員 この領水と申しまして、領海と申しませんでしたのは、別に意味はございません。領海のことでございます。領水ということばを使いましたのは、返還協定のもとになります平和条約第三条の規定に、「領水を含むこれらの諸島」という字があるものでございますから、これを使いまして、はっきりさせるために、「領水を含む。」と入れたわけでございまして、別に他意はございません。
  57. 石野久男

    石野委員 平和条約第三条に合わせて領水といったので、この意味は領海と同じだということですね。
  58. 佐藤正二

    ○佐藤(正二)政府委員 さようでございます。
  59. 石野久男

    石野委員 第五条の一項の後段に、「ただし、前記の放棄には、これらの諸島の合衆国による施政の期間中に適用されたアメリカ合衆国法令又はこれらの諸島の現地法令により特に認められる日本国民の請求権の放棄を含まない。」こうあります。ここにいう「アメリカ合衆国法令」というのはどういうものであるか、また、「現地法令」というのはどういうものなのか、また、これらの法令または現地法令によって特に日本国民に対して認められる請求権というのは、具体的にどういうことをいうのか、これをひとつお伺いします。
  60. 佐藤正二

    ○佐藤(正二)政府委員 実はこの規定自体が、非常に観念的と申しますか、法律的と申しますか、そういうふうな規定でございまして、放棄すべき請求権というものがありま具体的に考えつかない程度のものなのでございます。しかし、もしありとすれば、放棄するというような意味規定なのでございますから、その場合に、アメリカの施政下にありましたときに現地の権利として認められていたようなものを放棄する、そういうものをも放棄するということは、われわれとしても承服しがたいということで、この規定を入れたわけでございます。したがって、ここに申します「アメリカ合衆国法令」と申しますのは、アメリカ本土の法令がそのまま小笠原適用されたわけではございませんで、一種の異法地域として一部の法令適用されていたわけでございます。これで認められておりましたような請求権につきましては放棄しないということをうたったわけでございます。それから現地法令につきましては、刑法について一部法典的なものがあったわけでございますが、それ以外に、慣習法的に、法令と申しますか、法慣習と申しますか、そういうものがあそこの島で施行されていたということは事実でございます。それによって認められていたような請求権と申しますか、権利を放棄しないのだということをうたったわけでございます。
  61. 石野久男

    石野委員 そうしますと、合衆国の法令というその法令は、合衆国の本国における法令とは違った特殊の法令があそこに行なわれていて、今度日本返還された場合、受けるときにはその法令のままで受けるのですか。それとも日本で措置法とか何かに改めて、そういう法令なり条例を出すということをいうのですか。どういうことですか。
  62. 佐藤正二

    ○佐藤(正二)政府委員 その点につきましては、むしろこの五条の二項の問題だと思いますが、施政権下にありましたときの法令によって行なわれた作為または不作為の効力を承認しておるわけでございます。ただし、この点は、この規定の意味といたしましては、そのときに行なわれた作為、不作為の効力を遡及効的にだめにするということはしないということでございまして、もちろん、こちらに返ってまいりましたときには、こちらの法令によってこれを規定するわけでございます。ただし、前に米国の施政権下にあった問の法秩序をそのまま遡及効的にくずしてしまいますと、法的安全を害するものでございますから、その意味でこの規定をつくりまして、その間の効力はこれを承認する、もちろん、施政権がこちらに返りましたあとは、こちらの法令でこれを規定する、こういうことでございます。
  63. 石野久男

    石野委員 そうすると、その作為、不作為の効力ということは非常に多くあるわけですが、私どもはっきりわからないのだけれども、この条約の中にある作為、不作為の効力というのは、具体的にはどういうものなんでしょうか。
  64. 佐藤正二

    ○佐藤(正二)政府委員 具体的に考えられることと申しますれば、私も全部が全部当たってみたわけではございませんが、むしろここで考えておりますことは、施政権下による法秩序全体という考え方を考えておるわけでございます。ただ、具体的には、たとえばそこで婚姻が行なわれたとか、あるいはそこにおいて契約が行なわれたとか、そういうふうなことはあり得たと思います。
  65. 石野久男

    石野委員 第五条の一項で、アメリカに対しての日本の請求権は放棄したわけですね。しかし、日本の国民が合衆国によってこうむった損害に対して、日本政府に対して賠償請求を訴えることができるのかどうか。日本国民がアメリカによってこうむった請求権は結局なにしましたけれども、しかし、日本の国民がアメリカから受けた損害に対して、日本政府に対して請求することができるかどうか。第五条第一項は、アメリカに対しての請求権を放棄しているけれども、日本政府に対する請求権の放棄ではないわけです。だから、そこを先ほどちょっとお話がありまして、外務大臣からはそれを受けつけないという話があったけれども、しかし、日本人は日本政府に対しての請求権の放棄はしていないと思うのですが、その問題はどういうふうになりますか。
  66. 佐藤正二

    ○佐藤(正二)政府委員 その問題は、この協定自体が日本アメリカとの協定なのでございますから、アメリカとの関係日本国としてアメリカに対して持っておる請求権の問題だけを規定したわけでございます。そこで、日本の中での、いわゆる日本の国民が日本国政府に対して持っておる請求権がどうなるかという問題は、むしろ日本の中の法令の問題でございまして、こちらの、アメリカに対してこれを約束するしないの問題ではないと思うのでございます。したがって、この協定にはむしろ出てこない問題とお答えするよりほかしようがないと思います。
  67. 石野久男

    石野委員 この協定には出てこないということは、もちろん、アメリカ日本とが結び合う条約関係ですから、それはよくわかるけれども、しかし、この問題に関連して当然出てくる問題だから、先ほどもちょっとお尋ねしたわけですが、もう一ぺんこの点ははっきりとさせておきませんと、アメリカに対して請求権の放棄をしたということが、日本の国民が一切の請求権を放棄したことに通じてしまうと、旧島民などに非常に問題が出てくると思うのです。そういう意味で、アメリカとの関係ではないけれども、それでは日本の中ではどういうように扱おうとしておるのか、それらの点がわかったら聞かせてください。
  68. 加藤泰守

    加藤(泰)政府委員 お答えいたします。  ただいまの点につきましては、暫定措置法におきましては、そういう規定はきめておりません。と申しますのは、アメリカのやった行為について、日本政府がその損害を補てんする責務というものは一応考えられないわけでございますので、暫定法におきまして、日本政府に対して請求するとかしないとかいうような規定は設けていないわけでございます。
  69. 石野久男

    石野委員 島民が受ける損害の中に、二通りあると思うのですよ。結局国民として持っておった権利が、日米の平和条約によって停止されたことによって受けた損失が一つあるわけですよね。それは日本政府がそういう平和条約を結んだという行為によって出てきた損失ですが、それと同時に、今度はアメリカが二十年間にわたってあそこでいろいろなことをやっておる間に出てきたところの、当然あるべかりし権利に対する損害をアメリカ側から受けている、こういう場合があると思うのです。二つあると思うのですよ。だから、アメリカに対しては、もう政府は請求権の放棄をしているわけですが、しかし、国民の側からすれば、やはり政府に対する請求権、政府から受けたところの損害と、アメリカが統治している間に受けたところの損害を同時に権利として主張し、あるいは損害を補てんしてもらうという権利はある、こう思うのです。そういう意味で、政府に対する請求権はどうかということを先ほどから聞いているわけです。
  70. 加藤泰守

    加藤(泰)政府委員 お答えいたします。  条約を結んだことによる損害があるかどうかということでございますが、そういうものを補償するかしないかという問題は、私、返還時点の問題ではないと思います。ただ、アメリカの施政下においてそういう損害があった場合の問題につきましては、まさに第五条一項のただし書きにおきまして、その施政下において損害の処理が当然行なわれるわけでございますので、その法令によって請求権を認められている場合には、その権利は放棄しないというのがこのただし書きの趣旨だというふうに考えております。
  71. 石野久男

    石野委員 そうすると、第五条ただし書きは請求権を放棄していないということですから、国民は請求権を持っていて、これは結局日本政府がこれに対して受けて立つのですか、アメリカが受けて立つのですか、どっちなんですか。
  72. 佐藤正二

    ○佐藤(正二)政府委員 これはむしろ私権の問題をここで取り上げたわけでございます。ただし書きにも書いてございますように、「日本国民の請求権」と書いてございます。これは私権の問題でございます。この問題は、施政権下にありまして、向こうの法律の上で実体権として認められていたと申しますか、請求権ありとして認められたものということになるものでございますから、したがって、アメリカの法律のほうでと申しますか、施政権下にありました間に小笠原適用されておりました法律と申し上げたほうが正しいと思いますが、それによって認められた権利については、放棄していないということでございます。
  73. 石野久男

    石野委員 だから、放棄していないのだから、返還後において、島民は、その放棄していない請求権をどこへぶつけていくのかということです。
  74. 佐藤正二

    ○佐藤(正二)政府委員 もちろん、アメリカに対して請求できるわけでございます。しこうして、これに対して正当なる救済が行なわれなかった場合には、日本政府は、当然、この点につきましては日本政府も請求権を放棄していないわけでございますから、外交保護権の行使もできるわけでございます。
  75. 石野久男

    石野委員 この請求権の行使は、政府としては個人に対米交渉をさせるというお考えでございますか、今後。返還後において、個人としての国民の一人一人が、島民が請求権を持つわけですね、放棄していませんから。それを今後アメリカに対して請求権の行使をする場合の具体的な措置、方法、そういう問題については、政府はどういうふうに考えていますか。これは個人にまかせきりにするのですか。どうなんですか。
  76. 佐藤正二

    ○佐藤(正二)政府委員 一番当初に申し上げましたとおり、こういう関係で残っております請求権というのは、ほとんど具体的にはない。実は現地島民につきましては、そのつどそれぞれ補償しておるようでございます。  それから旧島民につきましては、帰れませんでしたことに対するいわゆる見舞い金を出して、解決をしておるわけでございます。したがって、具体的にはこういう問題は起こらないと思うのでありますが、問題がもし起こりましたときには、日本国政府としてこれをまとめるか、あるいは個人にまかせるかという問題は、これは私からお答えをするよりも、むしろ政治的な問題だと考えますので……。
  77. 三木武夫

    三木国務大臣 問題は請求権の問題で、ほかにたいして協定の中にはないのですが、請求権の問題というのは、いろいろな面で考えてみたのです。しかし、実際問題としてはないのではないか。ああいうふうに書いてあるけれども……。こういうふうに見ておるわけでございます。
  78. 石野久男

    石野委員 実際問題としてなければ、こんなものは書かぬでもいいのだから……。やはり書いてある以上は、あることを予想しておるのだし、いままでのところは、アメリカ施政権を持っておるのだから、いろいろな事務をやる人がみんなおるわけですから、そこで簡単に処置ができる。しかし、返還された後において、アメリカのそういう行政機構というのはなくなるわけです。したがって、個人として請求権を持っておる場合、アメリカにということになると、アメリカのどこへ行くかわからなくなってしまうわけです。だから、これは政府として何か方法を考えるかどうかしませんと、個人ではとてもできやしないのじゃないかということを心配するから、個人をほうりっぱなしにするのかどうかということをお尋ねしておるわけです。
  79. 三木武夫

    三木国務大臣 まあ考えられないのですが、そういうものが実際に出てくれば、日本政府としていろいろめんどうを見るよりほかにはないと思います。
  80. 石野久男

    石野委員 返還されると、いまの損害の問題というようなものに類似的なものが出てくるのは、結局、現在は欧米系の帰島住民がいるわけですね。この諸君と、それから旧島民との間にいろいろな問題が起きる、こう思うのです。これは旧島民の私有地をこれらの人々が使用しておるわけですから、ここで出てくるところの所有権と借地権といいますか、使用権といいますか、それとのかち合いがたいへんな問題になるだろうと思うのです。これは措置法の中で委員会でもいろいろ論議しておると思いますけれども、私は向こうへ行きませんからわからないので、そういう問題についてはどういうふうに処置なさろうとしておるか、この点を聞かしていただきたい。
  81. 加藤泰守

    加藤(泰)政府委員 お答えいたします。  現在欧米糸の日本人として約二百名の方がおられるわけですが、その方々が四十四世帯を構成しておりますが、その四十四世帯が四十二戸の家に住んでいるわけでございます。その方々の宅地の使用権といいますか、そういうものにつきましては、これはアメリカ側がそういう指示をして、そこを使用しておるという関係でございますので、現時点において、あちらの法令下においては適法な権利の行使であるというふうに考えられるわけであります。   〔委員長退席、野田(武)委員長代理着席〕 したがって、本土に返ってきた場合は、もともとの所有権との衝突、こういうことが出てまいりますので、その点につきましては、暫定措置法案の中におきまして、現島民が宅地として使用しているものにつきましては、法律上民法の賃借権が設定されたというふうに処理をいたしまして、現島民の方々の宅地の使用権を確保しているわけでございます。
  82. 石野久男

    石野委員 これは、現在使用している人は賃借権がそこでできているのだということで処理をいたしますと、今度は帰っていく人たちの問題が出てくるわけですよね。いわゆる使用権があれば、なかなか所有権を持っている人たちが簡単にはそこに入居もできないでしょうし、もちろん家がある場合はともかくとして、ない場合はないなりにその土地の使用さえもできないというような、そういう問題については、それではどういうふうな配慮をしますか。
  83. 加藤泰守

    加藤(泰)政府委員 お答えいたします。  四十二戸のうちで、実際問題といたしまして、第三者といいますか、民間の方々の所有する土地の中で、親族関係の方を除いた第三者の方の土地を使用していると認められるものが十戸でございます。十軒ございますが、その他、所有者の不明なものが五軒くらいございます。それ以外は、いわゆる親族関係の土地を利用しているもの、それから国有地、公有地を使用しているというものでございますので、問題になりますのは、いまの段階ではその十戸の方々であろうと思います。したがって、その十戸の宅地の所有者の方々が帰った場合に、みずから使えないということが出てまいりますので、その点につきましては、暫定措置法案におきましては、ひとつ国有地を貸し付けるなり、あるいは現在の土地と交換するなり、そういう方法で処理をしたい、そういうふうに考えております。
  84. 石野久男

    石野委員 これはいまアメリカの施設がいろいろあると思うのですが、返還後にそれはどういうような施設が残るのか。それとも施設全部が返るのか。   〔野田(武)委員長代理退席、委員長着席〕 それで、そういう施設は、実質的に、個人の所有地の上にある場合と、それから国有地の上にある場合とでは、また取り扱いがいろいろ違ってくると思うのですが、アメリカ関係使用している施設の残存する状態、それらに対する、いま言ったような所有権や使用権の関係、そういう問題についてわかりましたらひとつ……。
  85. 丸山昂

    ○丸山説明員 協定にもございますように、アメリカが引き続いて返還後も使用する予定になっておりますのは、硫黄島のロラン施設、それから南鳥島のロラン施設、二つでございます。そのほかは全部日本側に返還になるということになっております。  現在アメリカ使用しております状況を簡単に申し上げますと、父島、これは、グアム島にございますマリアナの海軍の連絡所と申しますか、これが父島にございます。大体あそこの港湾の施設と気象関係の観測所でございます。こういうものが主体になっております。それから硫黄島のほうは、沿岸警備隊の運用しておりますロラン局、これはA、Cの二局ございますが、これを運用しております。それから飛行場がございまして、これは第五空軍の座下の基地部隊でございますが、緊急着陸用の飛行場でございます。これを運用しております。それから南鳥島のほうは、これは小さな島でございますので、ほとんど大部分がロラン局の基地、これを沿岸警備隊が運用しております。それから気象局が若干人を派遣しておりまして、気象観測を実施しておる。こういう状況でございます。
  86. 石野久男

    石野委員 それは個人といいますか、旧島民の所有権との関係などというものは全然起きてこない、みんなこれは国有地関係だけですか。
  87. 丸山昂

    ○丸山説明員 その関係は目下調査中でございまして、国有地のところもございますし、それから民有地のところもあるようでございます。現在のところは、その所有関係がはっきりしておりません。
  88. 石野久男

    石野委員 もしそういう施設が私有地の上にあるという場合、その個人が、そういう施設があってもらっては困る、こういうような意見が出た場合、これは一つまた問題が出てくると思います。そういう場合のやはり施設の移転ということを当然考えなければならなくなりますが、そういう点は、もし問題が起きたときはどうしますか。
  89. 加藤泰守

    加藤(泰)政府委員 お答えいたします。  暫定法案におきましては、いまのような施設と、それ以外にも水道とか電気等の施設もあるわけですが、そういう関係の施設につきましては、さしあたっては使用権を設定してその土地を使用できるようにいたしたいと思っております。ただ、これらにつきましては、引き継ぎを受けてから十分検討した上で、必要ならば土地収用法の手続をとってもらうようにいたしたいというふうに考えております。
  90. 石野久男

    石野委員 この第三条の規定によりますと、結局、返還後残るのはロラン基地だけだということになっているわけですね。しかし、小笠原が返る場合には、結局日米安保条約に基づく内地並みということになってまいりますと、アメリカのほうで軍事基地の拡大といいますか、新しい要請というようなものが出てくるかもしれない。そういう場合は、大臣、これはどういうふうに考えられますか。それらの場合に対処する心がまえ、政府はそれをどういうふうに対処するお考えでいられるか。
  91. 三木武夫

    三木国務大臣 石野さん、私、小笠原には出てこないと思っています。しかし、もし出てくれば、地位協定に従ってこれは日本が協議をするよりほかにはない。出てこないと見ています。
  92. 石野久男

    石野委員 協定に基づいて協議をするということは、悪くとれば、結局新しい基地がまたできてくるということになるわけですよね。これは防衛庁の関係もございますが、結局防衛庁は、先ほど来も話があるように、やはり安全を確保するというたてまえで、ジョンソン・佐藤声明の中から出てきたその体制をつくり上げていくわけですね。したがって、その体制でいけば、アメリカはおそらく基地を拡大しようという要請はあるまいと思うし、また防衛庁としても、やはりそういうことのないことを前提として、いろいろな配置をするのでしょうから、あるまいと思うだけでなしに、かりにあった場合でも、日本としては、ジョンソン・佐藤共同声明で「この地域の防衛の責任の多くを徐々に引受ける」という首相の考え方に基づいて、ロラン基地、だけは残して引き受けていくわけですから、これを拡大したのじゃ意味がないのだ、こう思う。だから、政府としては、むしろこの段階では拡大する考え方はないし、またそういうことに応じないというぐらいの腹がまえがあってしかるべきじゃないか、こう私は思いますが、この返還にあたって、まだ防衛についてそういう不確定要素といいますか、そういうものを残しておるのですか、どうですか。
  93. 三木武夫

    三木国務大臣 残してはいませんけれども、安保条約のたてまえで、地位協定でそういうふうな話し合いはできることにはなっておるので、そのたてまえも小笠原だけには認めるな、こういうふうに力んで言う必要もない。しかし、実際問題としてはないというふうに考えています。いまも、あれは実際ロラン局でも、ロランのA局などは日本に返しているわけですけれども、あそこの場合は両方が細み合わされて一体になってオベレートされているようですし、そういうことはなかったのですから、いま持っておるのでも、これはできるだけ日本に移管しようというのがアメリカの意図ですから、これ以上拡大ということはございませんが、たてまえとしては、やはりいま私が申したように、小笠原だけはそのたてまえを除外するのだというふうに言う必要もないのではないかというので言っただけのことで、実際問題としてはないと考えています。
  94. 石野久男

    石野委員 私は、せっかく小笠原が返ってきて、たてまえとしてはないと思っても、また向こうでそういう要請があれば、これは条約だから協議しなければならないということになった場合、やはり基地の拡大ということはしないという腹がまえを政府としては持つべきだ、それでないと返還意味がなくなる、こう思いますので、これは一応政府としてもはっきり腹をきめておいてほしいと思うのです。  で、この返還がきまりました場合に、現在、旧島民のうちで向こうへ帰ろうとする人は、どのくらいの割合ではっきりしているのか。そしてまた、その人たちの生活問題というものは、これは国と都とで真剣に考えていることは仄聞しておりますけれども、何せ二十年以上も離れているので、われわれが行ってはみないけれども、新聞報道等を見ると、自分の持っておった所有地がもうジャングル化してしまっておって、どうにもならぬというような状態があって、個人の力ではどうにもならぬというような情勢が、具体的に土地の問題などでも出ているようでございます。そういう問題について、政府は、こういう帰島者に対してどのように援助してやるのか、そういうかまえをどういうように計画的になさるつもりであるのか、この際、詳細にお聞かせ願いたい。
  95. 加藤泰守

    加藤(泰)政府委員 お答えいたします。  実は総理府で旧島民の意識調査というのを実施しているわけでございますが、まだその集計が完全にできておりませんので、五月一日現在の状況でお話を申し上げますと、三千九百件の調査の中で、回収できましたのが約五四%程度でございます。これは郵送による調査でございますので、六〇%程度ならば大成功だというふうに一般的にはいわれておりますが、その調査の結果を見ますと、ぜひ帰りたい、あるいは大体帰ると思う、あるいはいまのところまだはっきり帰るとは決心してないけれども、帰る意思が相当強いというような方々が、合計しますと大体七〇%前後ではないかというふうに考えております。ただ、これは、いま申し上げましたように全体の五四%の中でございますので、むしろ残りの方は、どちらかといえば帰島の意思があるいは薄いのかもしれないというふうにも、これは私の推定でございますが、そういうふうに考えますと、七〇%前後という数字をもって、旧島民約九千名といわれておりますが、その九千名の方々の七〇%も帰るというふうにはもちろん断定できないわけでございますので、いまの段階でどの程度帰るのか、それは申し上げられないわけでございますが、そういうようなあれから見ましても、大体三千名から四千名程度は帰る意思が相当はっきりしているのじゃないか。これはほんとうにこの場で私、推定で申し上げて恐縮でございますが、そういうふうに考えているわけでございます。  したがって、そういう方々が帰りまして生活ができるように配慮していく、これは当然のことでございます。暫定法案におきましても、国と関係地方公共団体は帰島者の生活の再建について努力するということを責務として規定しておりますので、そういう点にも帰島者に対して相当の帰島援護をしていきたいというふうに考えております。  ただ、何といいましても、ではこの小笠原諸島に帰って何をやるのかということになりますと、非常にむずかしい問題があるわけであります。特に戦前におきましては農業が相当盛んであったわけでございますが、農業につきましては、現在ジャングル化しておるというようなことで、直ちに農業に着手できない。したがって、その耕地を造成するということについては、これは今後の問題でございますが、復興計画等で十分考えていきたいというふうに思うわけです。  ただ、水産につきましては、もちろん船さえあれば帰ってすぐに水産業が営めるわけでございます。したがって、水産業については相当早く着手できるのではないかというふうに考えております。ただ、それにつきましても、水産物をどうやって処理するか。現地で処理できる数は、人口が少ないわけでございますので限られております。そうなりますと、やはり本土に輸送するというようなことが当然問題になるわけでございます。したがって、そういう輸送手段をどういうふうにして確保するかというふうなことについて、目下検討中でございます。その点についても、帰島された方がせっかく魚をとったけれども役に立たないというようなことがないように、十分配慮いたしたいというふうに考えております。
  96. 石野久男

    石野委員 帰島者が三、四千名おりますと、それらの人々に対する政府並びに地方自治体の経済的協力態勢というものを相当積極的にやらなければなりませんが、東京都としても真剣にやるでしょうけれども、大体経済協力の心がまえとして、政府は、たとえば十の経済協力をしなければならないときに、地方自治体とどのくらいの責任分担で経済協力をやっていこうとしておるか。たとえば五対五でいくのか、七対三くらいの比率で政府がより多くめんどう見てやろうとしているのか、そういう経済協力に対する地方自治体との案分比を政府はどういう比率でやろうとしているのかということを、ひとつこの際聞かしていただきたい。
  97. 加藤泰守

    加藤(泰)政府委員 お答えいたします。  国と地方公共団体が密接な関係でその小笠原帰島の問題に取り組まなければならぬわけでございます。したがって政府として相当積極的にこの問題を考えていきたいと思っているわけですが、奄美大島の場合にも、特に負担金、補助金等につきましては、一般のものよりも手厚い手当てをいたしております。奄美と違いまして、小笠原の場合は——奄美の場合は一応社会秩序の保たれた形で返還になったのでございますが、小笠原の場合は何しろ無人島に近い状態で、ジャングル化したような状態でございますので、奄美と同じように考えるのは、同じでいいというふうに言い切るのは問題があるのじゃないかというふうに考えております。したがって、これはまだ関係当局と十分打ち合わせをしておりませんので、お答えできないのでございますが、その点について、そういう特殊な事情を十分考えて、万全の策を講じたいというふうに考えております。
  98. 石野久男

    石野委員 意欲のほどはよくわかりますけれども、特にこういう三、四千名の人が行きます場合、第一番に問題になってくるのは、教育の問題と、それから病院等の問題なんだと思うのですが、こういう問題で、たとえば教育なんかでは、内地のほうでいいますと、PTAの寄付金とかが非常にかさんでいて困っているわけです。そういう帰島者に対して、そういうようなことを前提にして教育のことをやっておったんではとてもだめだと思うから、一切PTAの寄付金とかなんとかいうものなしでやれるような心がまえがなければならぬだろうと思うのです。そういう意味では、国と地方との協力体制においても、国が特別力を入れなければならぬだろうというふうに思いますので、国がどの程度地方自治体に対して迷惑をかけないようにしていくつもりでおるか、及びどのくらいの比率で援助するかということをもう一ぺん聞かしてもらいたい。  それから、約束で曽祢さんに譲らなければいけませんので、最後に、ひとつ大臣にお聞きしておきます。あとでまた大臣には質問するのだけれども、この際、この返還協定がこういう形でできました場合に、日米の平和条約第三条の扱いについてはどういうようにするかということだけをひとつ大臣から聞かしてもらいたい。
  99. 加藤泰守

    加藤(泰)政府委員 お答えいたします。  具体的にというお話でございますので、非常に答弁しにくいわけでございます。と申し上げますのは、先ほど申し上げましたように、小笠原の現状から考えまして、奄美のとき以上に考えていきたいという心がまえで関係当局と打ち合わせ、協議したいと思っておりますが、いまの段階では、まだそういう結論が出ておりませんので、まことに恐縮でございますが、この程度でお許し願いたいと思います。
  100. 三木武夫

    三木国務大臣 平和条約第三条、この規定によって、今度の小笠原返還協定というもので日本施政権の権利すべてを引き受けるわけなんです。まだ沖繩が残っておりますから、平和条約第三条というものは、何もこれをまだどうするという必要はない。沖繩が返ってからも、私は、空文になっても平和条約第三条は置いておけばいい。その三条で処理しなければならぬ問題がみんななくなっても、だからといって三条をどうこうする必要はない。そういう条文というものはたくさんございますから、やはり平和条約三条によって沖繩の問題も解決をしたいというふうに考えております。
  101. 石野久男

    石野委員 もうおきますが、大臣、そのなくなっても条約を置いておいたらいいという考え方には、私は簡単にはちょっと納得しない。そういうような考え方は国の権威のためにも一そういう、ないものをわざわざ協定として残す必要はない。かえってまずいので、そんなものは、ないのは白紙にしてしまうほうがいいと私は思うのですよ。私は、これはどうも外務大臣の心がまえの問題だ、こう思いますけれども、ちょっとそのことばはあとでまた御答弁をいただければなんですが、私はそういう考え方には納得しないということだけをここで申し上げておきましょう。大臣、御答弁があったらひとつ答弁しておいてください。
  102. 三木武夫

    三木国務大臣 石野さんの言われるのも一理あると思いますが、実際沖繩問題が残っておる。平和条約三条によってこれが解決になったときに、三条によって領土問題がなくなったときに、もう一ぺん連合諸国が寄って平和条約の改正の手続というのもどうか、内容は空文化しても、もう一ぺん連合国が寄る手続は要らないのじゃないかというふうに考えるのですけれども、しかし、それはやはりあまり便宜論過ぎるぞという御議論もあると思いますが、沖繩問題が解決するまで時間があることですから、われわれとしても研究をいたすことばいたします。
  103. 秋田大助

    秋田委員長 曾禰益君。
  104. 曾禰益

    ○曽祢委員 本件の質問に入る前に、一昨日の本委員で私が質問いたしました、アメリカの原子力潜水艦の佐世保寄港にあたっての異常放射能の検出されたことに関連いたしまして、私ばかりではございませんが、各委員から、原潜あるいはアメリカの原子力艦艇の日本寄港に対する賛否の問題は別として、当面来ておる以上は、やはり異常放射能の問題等、こういったような安全問題については、もっと政府の体制をぴっちりして、臨機応変の体制をやる必要があるし、科学技術庁が中心になってしっかりやれということを、これは特に単なる国民の安全の問題ばかりでなく、実害があるなしにかかわらず、いろいろ人心に対する影響からいっても非常に大きな外交上の問題であるから、外務大臣としてもしっかりこの点をやってほしいということを要望しておきました。ちょうどその委員会が終わったあとで、実はアメリカの原子力潜水艦が出港を延期した。そうなると、これはまた異常放射能が故障等によって起こったのではなかろうかということで人心が動揺するのが当然であって、はたしてその原因はどこであろうかというので、一日国民が不安をいだいておったと思うのです。その後の発表等によりますと、これはいわゆる潜水艦のソーナーの故障であって、原子炉の関係ではないというように発表されておりまするが、それがはたしてそういうように受け取っていいのかどうか。  それから第二の点は、特に異常放射能がなぜ起こったかということについて、昨日はいろいろ科学的な検討を書面の上でやったようでありまするが、それは現地においてさらに徹底した調査をやってすみやかに真因を突きとめ、今後の検定調査等について科学的な体制を早く整えねばならぬ。この問題についてまだ懸案が残っておるわけです。  以上二点についての外務大臣の御所信と、それから実情についての御報告をまず求めたいと思います。
  105. 三木武夫

    三木国務大臣 今度の原潜の放射能の問題は、われわれが見ても、少しもたもたした感じがしましたね。このことは、一つには、やはりまだ放射能に対しては、日本の場合は一般の人たちが非常に不安がっていると思います。日本の場合は、実際は欧州の諸国よりも船の入ってくるのが少ないでしょうし、そういうことで、放射能調査の体制、これは科学技術庁でやっているわけなんですけれども、体制というものについては、われわれ自身も相談をしまして、ないときはいいのですけれども、あったときのことがありますから、この体制を整備すること、それと発表が多少もたもたしておるということは、かえって不安を与えますから、故障なら故障ということで、どこであったか、みなが何かこう言っているけれども、実際はそうでないのだぞというような、不安を与える余地なからしめるような方法というものが、迅速にそういう形で発表されなければならぬ。今度の事件は、最初に申したように、多少もたもたしているという感じを私自身も受けているので、今後こういうことを一般の人たちも持たないように体制を整備する努力をいたします。
  106. 曾禰益

    ○曽祢委員 ぜひこれはすみやかに現実の行為において実績があがるようにやっていただきたい。特に科学的調査というものについてまだ足りないと思うのです。いろいろなカウンターなどの信憑度あるいは調査に当たる人の技術的レベルというようなことも非常に大きいと思うのです。厳正なる事実は、どんないやなことでもはっきりキャッチして、これに対処しなければいけない。科学的レベルが低くて、もしつまらない不安でもまき散らしているとすれば、これはまことに申しわけないことです。そういう点について、内閣全体の姿勢として至急体制を整えていただきたい、重ねて要望しておきます。  第二の問題は、それではございませんが、これは五月六日に私どもの党から内閣に申し入れて、皆さん御承知の問題ですが、要するに、フィリピンの大統領が、さきのマニラの市長の措置にきびすを接するように、在フィリピンの十八の日本商社に対して、目下やっている上院の調査が完了するまで一応営業権を停止する、こういう非常措置をとったことに対して、これははなはだ不当であるので、外務省もそう思っておられると思いますけれども、すみやかにその措置を解除することが第一。さらに引き続いて、もっと抜本的な解決として、懸案である通商航海条約をすみやかに承認し、批准させる等々の措置をとるような申し入れをしております。この問題がペンディングであるところにもつていって、昨日の新聞の伝うるところによれば、これに関連をいたしまして、七日の外務次官とラウレル在日フィリピン大使との会談において、フィリピンから強い要請のあったところの日本・フィリピン友好道路建設計画について、とりあえず三千万ドルを援助することの用意があるということを牛場次官から伝えた。そのことに関連いたしまして、新聞の伝うるところでは、大蔵省側としては、八日に、関係各省の間でまだ援助する話がまとまっていないのに、かってに援助額を明示したとすれば今後非常に困る、厳重に外務省に抗議することになったと伝えておるのであります。その各省間の行き違い等は、やや問題の重点ではないかもしれませんが、私どもは、こういう問題か起こっている最中に——むろん日本は、何といっても、いうならば大国であります。したがって、フィリピンにいろいろ内政上の問題があって、いささか今回の措置も、フィリピン内部の内政問題のポリティカルフットボールに利用されている感がなきにしもあらずであって、わが国としては、厳正な態度と同時に、われわれのフィリピンに対する当たりそのものにおいて、やはりき然たる中にも、こちらが緊張を特にエスカレートするような措置は、われわれはおとなとして慎んでいただかなければならないと思います。しかし、それにしても、国民として、一方においてフィリピンに対して文句を言っているのに、片一方においてそれを緩和させる意味であるかどうか知らぬけれども、いかにも甘っちょろいなという感じがしないでもありません。一体この真相はどうなのか。また、これに関する外務大臣所見をはっきりと伺っておきたいと思います。
  107. 三木武夫

    三木国務大臣 いま曽祢君のお話の中にもございましたが、やはりこの問題は、国内政治との関連というものも相当あるようにわれわれは考えているわけでございます。いずれにしても、あのような商社に対してとった態度というものはすみやかに解消されなければならぬ。また、通商航海条約国内法でまだ——われわれは、フィリピンの大統領その他首脳部と会うたびに、日比関係を正常な関係に置くためには通商航海条約がすみやかに批准されなければいかぬということを、口をすっぱくして申しているし、向こうもこれに関連して国内法で整備しなければならぬものがあって、その問題がまだ二つ三つの法案が残っているということで、通商航海条約が国会で承認を受けられていないことは残念であります。これは今後も日本として一日も早く国会の承認を受けて、通商航海条約というものが実施されるようにならなければならぬ、これは督促するという立場から努力をいたす所存でございます。  牛場君のは、ラウレル大使がフィリピンに帰るについてあいさつに来て、いろいろ現状について話し合ったことば事実でありますが、むろんああいうことがあっても、日比間の懸案というものの話をするということは外交上最も重要なことであって、ああいうことがあったからもう一切話はしないということもおとなの態度とは思えません。しかし、金額をきめたり、そういうことは、あの場合政府の中でまだ話し合いもついていないのですから、フレンドシップハイウェー、友好道路に対しての金額をきめたというようなことはないので、政府としても、友好道路についてはできるだけ協力したいという気持ちはあったことは伝えたでしょうが、金額をラウレル大使に言ったようなことは、事実もありませんし、私も新聞を読んで、大蔵省も少しおとなげないなと思いました。日本の新聞にそういうことを言うのは、少しおとなげないじゃないかという感じを受けて、その記事を読んだところでございます。
  108. 曾禰益

    ○曽祢委員 これはこれ以上追及いたしませんが、大蔵省のセンスがよかったか悪かったかは別として、やはりラウレル大使としても円満解決努力するあまり、おみやげを持って行きたかったのでしょう。現実にどういうふうに話されたか知りませんが、むろん外務次官とラウレル大使が話されて金額がきまる問題ではありませんが、たまには、おとなだけではいけませんから、ぴりっとしたところを示して、この通商航海条約の批准というものは一挙にできないと思いますので、それまで全部ペンディングになって商社活動ができないようなことのないように、当面これを解除する、さらに話を続けるというようなことにぜひ持っていっていただきたいことを重ねて御要望申し上げます。  そこで、直ちに本件に入って、ごく重要と思われる数点に限って御質問いたします。  第一にお伺いしたいのは、この今度の協定の第一条によりまして、平和条約第三条の規定に基づく、簡単に言えば施政権全般をわが国に返すといいますか、アメリカがこれを行使しないで、わが国がこれを引き受けるということになるわけですが、この施政権返還と通常いわれるものは、はたして両国間の協定だけで第三者に対する対抗力があるのかどうか。これは、まるでつまらないところに詮議立てするようにお考えになるかもしれませんし、現実には小笠原の問題について他の第三国から問題が起ころうとは実際問題として予想されない。しかし、これは同じパターンが当然に沖繩に及ぶのであって、むしろ及ぶべきである。国民の希望からいえば、今度の協定小笠原だけでできたのは非常に残念で、この同じ協定が沖繩についてもぴったりというか、ただ軍事基地のウェートといいますか、重要性は小笠原と違うが、少なくとも返還の本来のあるべき姿としては、同じ協定が沖繩をも含んでできればなおよかった、こう思う。したがって、この問題は、わが国平和条約によって実質的に主権あるいはそれに近いものを放棄、それらを今度は回復するという問題として、むろん沖繩にも関係がある。加えて、これは第三条じゃないけれども、第二条関係の北方領土、これは条約上むろん違います。ソ連は平和条約署名国でございませんから、その点は違うけれども、しかし、そういったようなすべての領土の回復の一つの一番はしり、いうならば、モデルケースになるわけですね。したがって、だいじゃうぶなのかということを念のために伺っておきたいわけです。平和条約は、言うまでもなく、多数国間の条約ですが、直接の受益者はアメリカです。直接受益者から日本に返すんだから、一向に差しつかえない、それはそのとおりでしょう。しかし、こと沖繩となると、現実にそこにいろいろ、付近の国で、あるいは沖繩に対して一種の主張なり——権利とは言わないが、主張を持っている。それが領土権の主張でなくても、軍事基地のあり方等に対する主張を持ってくるかもしれぬ。そういうことを考えるならば、これは私は決して悪いと言ってないのですよ、私はいい例だと思うのですけれども、やはりわれわれが受け取る場合に、だいじょうぶなんだろうな、第三者に対する対抗力はどうなんだ、政府がこういうことを考えるのは当然なんだ。私は、その意味で聞いておるのですから、ひとつお答えを願いたいと思います。
  109. 三木武夫

    三木国務大臣 平和条約の第三条によって、権利、利益は、ほかの国でなしにアメリカのみに与えられておるわけですね。したがって、アメリカが権利及び利益を放棄することは理屈の上においては可能である、アメリカだけに与えられておる権利、利益ですから。したがって、それをアメリカ日本に返す場合には、実際には連合国側にどういうことを言ったのか、私どもはよくわかりません。しかし、連合国側に異存がないということをアメリカとしては見通し——それをどういう手続をやったかはわからぬけれども、これは連合国側に異存のないということを見通して、権利及び利益を放棄したものとわれわれは解するものであります。しかも日本の場合は、いま沖繩についても一、曽祢君、関連でお尋ねになったようでありますが、潜在主権を持っているということは世界周知の事実ですね。小笠原、沖繩に日本が潜在主権を持っているということは、だれでも、私どもが会っても、世界に知れわたっておる。これに対して何も異論を差しはさんだ議論は私は聞いておりません。したがって、その潜在主権を持っておる——それはなぜ潜在というかといえば、平和条約の三条によってアメリカが権利と利益をいま行使しておるからで、それを全部権利と利益を放棄すれば、こういう面からも日本に返ってくることは当然の帰結でもあるわけですから、この問題は、われわれとしては、いろいろな面から考えてみても当然なことであって、平和条約三条ということについてはあんまり疑問を持たないで、これでもう連合国側の話し合いも異存がないということをアメリカ見通してやったことだから、やはり沖繩の問題についても、こういうような方式で返還を希望したい、こう考えておるわけでございます。
  110. 曾禰益

    ○曽祢委員 私は、むしろアメリカが異存なきことを確かめたか確かめなかったかということに、細目に入らないほうがいいと思うのですね、これは平和条約は多数国条約であるから。それから、一ぺんやった第三条をいまさら殺せといったって、実際無理な話で、実際空洞化すればいいわけですから、実際第三条をあとで殺せという議論は別として、第三条で得た権利については、あるいは関係国に一種のクレームを言われるような感じがするかもしれませんけれども、現実の受益国と潜在主権国との間に話がつけば、どこにも文句を言わせないんだ、これでいいんだということは、はっきりそういうことは言っていただきたい。ただ、現実には、沖繩については、私よく知りませんけれども、ちらほら新聞等に出ているところによると、国民政府あたりは、かつて昔は沖繩については一種の宗主権的なものを持っていたやに伝えられて、そんなことは昔の古証文で問題にならぬと思いますけれども、現実には、沖繩の今後の軍事的価値の点から、相当大きな関心を持っていることは事実ですね。したがって、アメリカさんのほうが確かめてから話しをするというようなことは、言わぬほうがいいと思うのです。わがほうとしては、これは第三条の規定から見て、形は多数国条約であるけれども、本質的には、これは受益者のアメリカと、被害者といいますか、潜在主権を持っている、いじめられたほうの日本との間の二国間条約で、これはりっぱに、何らの疑いなく第三者に対抗できる、領土主権あるいは施政権の基本的解決ができるものである、文句言うなというくらいな、ぴしっとした見解を立てておくことが、今後のために必要ではないか。現実に、たとえばいろいろな近辺の諸国の安全に、沖繩の基地、特に軍事的な基地が非常に政治的、軍事的に影響を持っている。そういう政治上の事実はありましょう。しかし、法律的な処理については、施政権の処分については、それらの国々が何ら口をばさむ余地がないんだ、これはぴしっとしておく必要がありはせぬか、かような意味で申し上げたので、さらに明確な御答弁を得られればけっこうだと思います。いかがでしょう。
  111. 三木武夫

    三木国務大臣 曽祢君のようにぴしりと、文句を言うな、受益者同士で片づけばこれで解決ではないか、こういうこと、確かにそのほうが、われわれの感じとしても、それがわれわれの感じに近いと思いますが、しかし、あなたのように考える人ばかりでもないのです。この条約をいろいろの角度から検討なさる方もございますから、私の答弁が最大公約数的な答弁になったのでございまして、感じとしては、あなたの言われるような感じを私どもも持っている。しかし、お答えとしては、いろいろな方に対しての、みなに共通するお答えをしておいたほうがいいと思って、アメリカが問い合わせたと言わぬけれども、異存のない見通しをつけてというお答えをしたわけでございます。
  112. 曾禰益

    ○曽祢委員 その程度でよろしゅうございます。次に進みます。  第二条につきましては、これは第二条も、私は私なりに、沖繩に対する一つのいい先例という意味で、非常に重要な規定だと思いますが、結局、本土並みの安全保障条約適用を受けるということになると思うのですね。そこで、一体、この協定の案文から見ますると、これは当然のことであるけれども、安全保障条約というものをはっきり特定化しているわけですね。つまり「千九百六十年一月十九日にワシントンで署名された日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約及びこれに関連する取極」ということになっておるわけですね。これはただ安全保障条約ということでなく、具体的にはっきり言わなければいけないだろうということで、こうなっていると、もしかりに、現行の安全保障条約が今後改定されるというようなことはないとは言えないと思うのですが、そういう場合には、一体どうなるのですか。そういう場合には、この精神からいえば、純粋の文理的解釈からいえば、あらためて協定しなければいけないけれども、趣旨からいえば、この条約、もしくは現にそのときに有効であるところの、あるいは改定されるかもしれない安全保障条約に従って、要するに本土並みであればいいわけだと思うのですが、その点はどうなんですか。
  113. 三木武夫

    三木国務大臣 われわれの解釈も本土並みである。だから、安保条約が改定されるような場合があれば、右へならえになる、こういうふうに解釈いたしております。
  114. 曾禰益

    ○曽祢委員 わかりました。その点非常に明確でけっこうだと思います。  それから、防衛問題等について私質問したいのですけれども、これはやはり大臣が来られてから、こまかい点じゃございませんので、そのときまで留保さしていただいて、もう一つだけ、特に私が小さなようで大きな問題として取り上げたいのは、実は硫黄島の記念碑に関する問題でございます。  私は、かつて日本軍が中国大陸を、はっきりいえば侵略戦争をやっていたときに、日本の軍人さんと大げんかしたことがあるのです。それは上海に日本の忠勇なる兵隊さんの慰霊塔をつくる、ぼくはそんなばかなことはよせと言ったんです。ほんとうに日本の国民がとうとい血を流した土地に、感じとしては記念塔をつくってあげたいという気持ちはわかる。しかし、上海地方を日本が永久に占領して、これを領土的に日本のものにするならいざ知らず、いずれは日支事変が済めば中国の領土に返す。外国の領土にその外国を侵略したような軍隊の記念碑をつくるなんというのは、いかにもセンスがなさ過ぎる。かえって、そういうものをつくったら、あとでその忠勇なるわが同胞の霊に報いないような、両国間の国交のトラブルの種をつくるようなものだ、そんなばかなことだけはよせ。国内でつくるならいい、外国の領土を取ってしまうならいざしらず、さすが日本の軍人といえども、中シナまで領土をとろうとは言えない。外国の領土にそういうものをつくるのは大間違いだと言って、けんかをしたことがある。変な話ですけれども、私は、今度の第二次大戦の結果として、沖繩や小笠原アメリカがほしがったのは、軍事的に使うなんというのはあとでつけた理由であって、むしろ、何といっても記念碑のつもりだったと思うのですよ。小笠原のほうは、やはり硫黄島を記念して、マリーンの栄光のためにあそこへ記念しているわけです。沖繩島のほうは、バックナー中将が死んだから、陸軍の記念碑、どっちもモニュメントのつもりで取った。それが平和条約のときになって、法律屋のダレスがやってきて、それを潜在主権とかなんとかいって、領土権じゃないんだから、第二条とは別に第三条にしてみたり、潜在主権で返すことがあるような、ないようなことを言って、それは領土権じゃないから、国連憲章によるところの戦略的信託統治区域にするなんというのは、これはあとで理屈をつけたんです。いまとなっては、特に沖繩の場合は非常な軍事価値を認めて、これがいまむしろ返還の災いになっておる。そういう意味で、この硫黄島の記念塔というものを考えたときに、そこにやはり問題の核心がある。外務大臣がこの問題で相当神経を悩まされたと思うのですが、どうもこの書簡を見るとすっきりしないのですよ。何ですか、この書簡は。第一、これは出しつばなしの書簡ですか、往復の書簡ですか。われわれの参考として受け取っておるのは、「拝啓」といって、こっちから出しつばなしの書簡じゃないですか。交換公文でもない。往復書簡でもない。私はずいぶん変なものだと思った。読んでみると、なお変なんです。とにかく摺鉢山の頂上にアメリカ合衆国の海兵隊員のための記念碑があります。これを長く残したい気持ちはよくわかります。しかし、この戦場はわが勇敢な兵士も戦って、血を流したところである。したがって、われわれは返還を機会に日本の兵士のための記念碑も建て、そして「この二つの記念碑が両国永遠の平和を願い、かつ、両国勇士の勇敢と献身を記念するものとしてこの地に長く残ることを念願するものであります。」こういう日本気持ちを述べておられるのはけっこうだと思うのですが、最後になると、「よって、本大臣は、合衆国に対し、合衆国海兵隊員のための記念碑が摺鉢山に存置され、合衆国の関係者がこれに立ち入ることができるようにすることが日本国政府の意図であることを」伝える。いろいろ言っておるけれども、要するに、合衆国側に対して、摺鉢山の上に合衆国の海兵隊員のための記念碑が存置されることに異存ございません。また「合衆国の関係者」というのはどういう意図かよくわからぬ。「ユナイテッド・ステーツ・パーソナル」これはどういう意味ですか。軍人ですか、「関係者」となっておる。これが立ち入ることができるようにしてあげます、これだけのことを言うならば、返ってきたら、日本の記念碑をつくるのに何もアメリカに言う必要はない。何だかよくわからないのですよ。しかも、これは少しかっこうのよい話が出たかと思うと、新聞の伝えるところによれば、その記念碑というものは、われわれ日本人は、おそらく銅板のものだろうと思っておったが、行ってみたら、銅でつくった旗みたいなものが建っておる。銅でつくった旗なんか、ずいぶんやぼなものだと思うのです。(「どうかと思う」と呼ぶ者あり)まさにどうかと思う。これはそのとおりだと思うのです。これこそ実際につまらないと思うのです。やはりもう少しすっきりしてください。これはやるならやるで、両方の合同のあれにしたらいいじゃないか。(「それは祖界を認めるのと同じじゃないか」と呼ぶ者あり)銅の旗は、祖界を認めようなものです。ですから、これはもう少し処理が——私は手紙はあまり感心しないのです。こっちだけで何かべたべた弁解がましいことを言って、結局向こうのいいことだけ約束しているのですね、言うならば一方的に。どうもすっきりしないのですよ。もう少し日本人の気持ちに合致して、アメリカンボーイズに対して記念碑けっこうですけれども、せめて日本に返ってくるのですから、パリの凱旋門じゃあるまいし、それからドイツのベルリンにロシア軍の戦勝記念碑なんか建てたら、愚の骨頂だと思うわけですよ。そういうことはまずいので、やはりそういうことは日米両国の永続的友好関係を願うならは、もう少ししゃんとして——だから、日本人として非常に不快であるし、もっと何とか事態を改善したらどうですか。外務大臣、いかがですか。
  115. 三木武夫

    三木国務大臣 まあ手紙の文章はともかくとして、一口に言えば、要するに、向こうは摺鉢山に記念碑を置いて——一万人くらいの血を流したのです。アメリカはその記念碑の存置に対してやはり強い感情を持っておる。そこで、われわれとしても、これは日本人のほうは二万人ぐらいあそこには血が流れておる。だから、いろいろこれは考えてみたが、その場合の解決は、われわれのほうも記念碑をつくって、この設計というものはやはりもう一ぺん考えてみようと思っております。これはジョンソン大使に私は言ってある。全体としてこれができた場合に設計というものを考えてみよう。これはちょうど調印式の日に私は口頭でもって言ったわけです。そして山へ上がっていけぬような、道をつけぬようなことはしない。その山へ上がっていかれるように、関係者というものは、海兵隊の家族の人もあろうし、海兵隊自身の人もあろうか、道は残しておいてあげる——何も便宜を与えるという意味ではないのですよ。記念碑のところにそういう関係者が行って、昔のことを回顧するために、そこへ上がっていけるだけの道は残してあげよう、やはり日本政府がそれだけのことはいたしましょうということで、あの場合、そういうことで一応あの問題は解決をする以外に解決の方法がなかったということが、率直なその当時の模様でございます。しかし、将来もっと気のきいた形にできればいいと私はいまでも思っていすま。
  116. 曾禰益

    ○曽祢委員 私は、その現にできている記念碑なるものがどういうものかよく知りませんから、あまり詳しいことを申し上げることはできないのですが、何もそれをこわすとか、そんなやぼなことを言っているのではないけれども、できれば全体を、頂上を——ただアメリカ人から見れば、何かピュリッツアープライズの写真かどうかは知らぬが、星条旗を持っているマリーンが頂上にいる有名な写真がある。それをいつまでも思い出そうということは悪趣味だと思う。ほんとうはハイカラなところで、日米合同のアンノーンソールジャー向けの記念碑的なものにして、上に行けばアメリカ人はこっちを拝むし、日本人はこっちを拝むということになるから、できればそれも合同したような一つの平和の記念碑みたいなもの、記念場所でもいい、あるいはメモリアルホールでもいいから、何かもう少し考慮をめくらされることを——いまあなたはやると言っておられるので、私はおまかせしますけれども、このハンドリングは非常に重要ですよ。日本国民が向こうへ行っていやな感じをするのもいかぬし、かといって、向こうのマリーンの家族が来ても満足しなければいかぬ。そこら辺が非常に重要な政治と外交だと思うので、くどいことを申しませんが、この処理については十分お考えの上、少しスマートな解決をしていただきたい。
  117. 秋田大助

    秋田委員長 伊藤惣助丸君。
  118. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 科学技術庁は、昨日、茨城県の東海村の日本原子力発電会社東海発電所が国際原子力機関の査察を受ける、こういうふうに言っておりますが、どういうスケジュールをとられるのか、承りたいと思います。
  119. 三木武夫

    三木国務大臣 国際原子力機構の査察の問題をお尋ねになったと思いますが、現在、日本は二国間の協定によってIAEAの査察を受けているわけです。今度核拡散防止条約が成立をすることになりますと、やはりIAEAの査察ではありますけれども、いまのような査察の基準によるか、あるいは核防条約による非核保有国の一般的な査察になりますか、どういう査察になるかわからないが、その間、できるだけ二国間の協定による国際査察も、核防条約からくる国際査察も、これは差がつかないようにするように努力をしたいということを昨日も申し上げておるわけでございます。
  120. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 原子力局長から詳しいことを伺いたいのですか、来ておりませんか。——これは査察員はアルゼンチンの人のようであります。そして期間は、今月の二十三日から三十日までの期間において査察をする、このようにいわれております。東海村に原子力発電所が建設されて十年になったわけでありますが、いままでに一回もなかったわけです。今回が初めてなわけでありますが、どのようなスケジュールで、また査察の範囲はどのようなものか、その点について伺いたいと思います。
  121. 三木武夫

    三木国務大臣 伊藤さんのお話は、東海村の原研に対する国際的な査察の問題にどういうふうになっているのかという具体的なお尋ねでございますので、これは科学技術庁の原子力関係、原子力局長も来てお答えしたほうが、答弁として適当だと思いますので、その答弁は留保さしていただきたいと思います。
  122. 秋田大助

    秋田委員長 いま原子力局長を呼んでおりますから……。   〔「定足数が全然足らぬ」と呼び、その他発言する者あり〕
  123. 秋田大助

    秋田委員長 この際、本会議散会後直ちに再開することとし、暫時休憩いたします。    午後一時四十九分休憩      ————◇—————    午後二時三十二分開議
  124. 秋田大助

    秋田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。伊藤惣助丸君。
  125. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 科学技術庁は昨日、茨城県東海村の日本原子力発電会社東海発電所が国際原子力機関の査察を受けることになった、このように発表されたようでありますが、その査察のスケジュールについて簡単に伺いたいと思います。
  126. 川島芳郎

    ○川島説明員 お答えいたします。  国際原子力機関の査察は、昨年九月に日本とイギリスとの間に結んでおります協定に基づきまして、その査察を国際原子力機関に移しましたので、それに基づきまして、今回初めて査察を行なうことになったわけであります。査察員は一名ないし二名でございまして、期間は五月二十三日から三十日までの間ということでございます。ただ、その間、何日を東海発電所の査察に当てるかということにつきましては明らかでございませんが、おそらく一日ないし二日がこれに当てられるものと思います。
  127. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 東海村は約十年前建設され、そして現在まできたわけでありますが、この国際原子力機関の査察は今回が初めてである。そういう点について、先日来審議になりました原子力協定の査察のあの条項と比べて、さらにまた、その前例にもなると思うわけです。その査察の範囲、またどのような査察をするのか、具体的に伺いたいと思います。
  128. 川島芳郎

    ○川島説明員 国際原子力機関の査察は、国際原子力機関で定められております憲章に基づきまして、さらに理事会で定めました保障措置を実施いたしますための規則に基づきまして行なうこととなっております。この規則に基づきますと、日本からは、まず査察を受ける前に、発電所の設計に関する情報を与えることになっております。これにつきましては、大体国際原子力機関から毎年刊行されております原子炉要覧に載っている程度の資料をすでに送付してございます。そのほかに、東海の発電所の中にどのくらいの燃料があるかという数量、それからその燃料が運転されるに伴ってプルトニウムを生み出していくわけでありますが、どのくらいのプルトニウムが生成されておるかということを報告してございます。このような報告に基づきまして、査察員は、その報告に書いてあるところにその燃料があるか、それからまた、プルトニウムは確かにそれだけ生成されておるかどうかということを見るのを主眼としております。
  129. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 査察員はアルゼンチンのビュッヘラーという人が担当している、こういわれておりますが、そのほかにどういう人が査察員として来るわけですか。
  130. 川島芳郎

    ○川島説明員 国際原子力機関の査察員は、理事会で認められた者が査察員として任命されるわけでございますが、いま約二十名ぐらいおります。そのうち、特に日本向けに査察をする場合には、事務局長より日本政府に対して、これこれの査察員を日本向けの査察員に任命したいということの問い合わせがくるわけでございます。それで、日本政府承認を得てその査察員を任命いたしておりますが、現在のところ、いま伊藤先生のおっしゃいましたアルゼンチンのビュッヘラーのほかにアメリカ人が一人、それから査察総監をしておりますオーストラリアの人が一人任命されております。合計三名でございますが、今回は、おそらくビュッヘラーと、それから査察総監も来ることになると思われます。
  131. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 この査察についてでありますが、前回審議しました原子力協定の査察と同じかどうか、その点伺いたいと思います。
  132. 川島芳郎

    ○川島説明員 先ほども御説明いたしましたように、国際原子力機関の査察は国際原子力機関の保障措置制度に基づいておりますので、この前御審議いただきました協定の査察が国際原子力機関に移管されれば、それと同じような査察を行なうということになろうと思います。
  133. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 この原子力協定の旧協定及び新協定といいますか、その中で日米と日英の査察については非常に違いがあります。非常に英国のほうが査察が簡単になっているように思われます。また、たとえ二国間条約であったとしても、国際原子力機構、いわゆる当事国以外の国際原子力機構が査察をするということになっているわけですが、その現行協定に基づいて行なわれると思うわけです。私たちが非常に心配する点は、その査察の結果、軍事目的には使われないということが確認されれば向こうはいいと思うわけでありますが、しかし、東海のあの発電所については、何回か工事がおくれたり、また故障したということがあるわけです。そういう点で、安全性についてもし不安があった場合にはどのような処置をなさるのか、また、そういう点についての問題も査察項目にあるかどうかということ、その点伺いたいと思います。
  134. 大町朴

    ○大町説明員 お答え申し上げます。  先ほど国際協力課長が申し上げましたように、査察は、燃料が報告されておるとおりになっておるかどうかということが目的でございますので、特に安全の点についてどうこうといわれることはございません。
  135. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 国際原子力機構が査察をする、そのあとに英国もやるわけですか。
  136. 川島芳郎

    ○川島説明員 国際原子力機関に査察が移管される前は英国がやっておりましたが、国際原子力機関に査察を移管いたしました後は、英国は一切査察をしない、すべて国際原子力機関にまかせるということでございます。
  137. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 この査察でありますが、これは一定の期間があって来るわけですか。それとも十年に一回とか、今度の場合十年目に査察をされるわけでありますけれども、その期間が定められてあるのですか。
  138. 川島芳郎

    ○川島説明員 査察の回数は国際原子力機関の保障措置制度によってきめられておりまして、これまでございますような研究炉のようなものは非常に回数が少なく、たとえば年に一回ということでございますが、熱出力十万キロワット以上の発電所、東海発電所はそれに属しますが、そういう発電所の場合はいつでも査察できるということになっております。しかも、予告なしで査察できるという制度になっておりますので、今後何回来るかということは、これは国際原子力機関の方針によっておるわけでございます。
  139. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 最後外務大臣に伺いたいのですが、今回東海村の発電所が初めて査察を受るわけであります。おそらく、軍事目的には利用しておりませんから、必ず査察がなされたあとにおいてもそれはいままでどおり運転はできるようになると思います。この査察と核防条約にある査察、さらに新協定と現行協定の査察の場合はほとんど同じだと思いますが、これらの関連について、大臣から一言見解を伺いたいと思います。
  140. 三木武夫

    三木国務大臣 核防条約、これはどういうことになりますか、核防条約が成立をすれば、非核保有国が燃料核物質の供給を受けるときには、国際的査察を受けなければ核燃料は供給を受けられない、こういうことになる。そこで、二国間協定で核燃料の供給を受けておるわけですが、今度日本の東海村が受けるような査察を受けなければならない。この査察の基準というものが違うことはやっかいですから、核防条約というものは多数の国々が入るので、国際原子力機構において国際的査察の基準というものができると私は思う。これができたときには、日本はその基準というものと二国間協定の査察の基準とを同じようなものにしたい、こういう努力をすることにいたします。また、現に昨日の本会議で通過した原子力協定でも、いろいろ事情が違ってきたならば条約改正はできるということになっておりますから、そういう査察の点について、二国間協定とか核防条約による査察とか、いろいろ幾種類も査察の基準があることはやっかいなので、これをできるだけ単純に統一化するような努力をいたしたいと考えております。
  141. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 そこで、大臣最後に一言お伺いいたしたいのですが、私たちは、核防条約のそういう取りきめがない現在において、また現行条約がまだ十二月四日まで期間がある状態からいっても、今国会でこのいわゆる原子力協定は必ずしも採決する必要はないじゃないか、このように言ってきたわけです。現在の大臣の答弁からも、もし核防条約において国際原子力機構の査察のことがきまれば、そのように二国間条約のほうも条約改定をする、こういうふうにいま伺ったわけですが、そういうことを伺いますと、やはり今度の新協定の採決は少し早かったように私は思うわけです。しかも、三十年間にわたる協定を急いで結論を出す必要はなかったのではないかと思うわけです。そういう点について、とにかくいまの大臣の答弁は非常に前向きでありますし、確かにそうではないかと思うわけです。したがって、今後査察の問題に限らず、ほかの面で日本の国家利益をそこなうようなことがあった場合には、いつの場合でもその協定を改定するというくらいの姿勢でいくべきではないか、そのことを思うわけです。大臣所見を伺って終わりたいと思います。
  142. 三木武夫

    三木国務大臣 必要があれば改定もするということで、改定が必ずしも必要だとは思っておりません。必要があればそういう手続の道も開けているのだということでございます。そうすると、少し採決が早まったのではないか、そういうことはないので、これはもうこの国会で批准を願わなければ、今後原子力発電を計画的に進めていく上において非常に不安定なものになりますから、それは非常に早まったどころか、これはぜひともこの国会で承認を受けなければならぬ案件であったわけでございます。
  143. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 終わります。
  144. 秋田大助

    秋田委員長 帆足計君。
  145. 帆足計

    ○帆足委員 せっかく大臣の御出席中でございますから、まず大臣にお尋ねいたしたいと思います。  与党内におきましても、最近中国世界政治において占める位置や、また複雑な国際情勢内部における中国の存在、歴史的意味等につきまして御勉強なされていることを新聞紙上で承りまして、とにもかくにも研究を深めるということは私はよいことであると存じまして、非常に注意いたしまして、御勉強の経過などを拝読いたしている次第でございます。御承知のように、聡明なイギリス、また独立自尊のフランスは中国をすでに承認いたしております。その他多くの国々が中国承認いたしておりまして、結局、代表的なものとしてこの問題の壁にぶつかっているのはアメリカでございまして、われわれは、敗戦後アメリカとの特殊の従属関係のために、中国に対して独自の立場をとり得ない悩みに与党または歴代の政府が悩まされましたことは、これは歴史的事実でございます。なかんずく、吉田書簡などというものは、外務委員一員といたしまして、外務委員会で論議されたことのないようなこのようなものが、法律と同様あるいは法律以上の効果を政策に及ぼしたことは、私はまことに遺憾なことであると思っておりまして、このような書簡が外務委員会において論議され、野党の意見を十分に組み込まれて行なわれたことであるならばまだがまんできますけれども、一老人の書簡が、しかも、もう長い間行政の地位にない方の意見が今日まで生きていたということは、これまた世にもふしぎな物語りの一つであると思っております。そこで、前向きの姿勢で外務大臣はこのことを御研究なさっており、また意見の一端も閣議その他で述べられたということを伺いまして、けっこうなことと思っておりますが、率直に申しまして、池田内閣のときよりも、佐藤内閣のほうが、中国に対して悪い印象を与えておるということは事実でございます。  そこで、私はお尋ねいたしたいのですけれども、台湾につきましては、すでに終戦直後、トルーマン大統領、アチソン国務長官のときに、台湾を日本から離すということをきめたのみでなくて、中国の何々省に入れるということをトルーマン大統領並びに国務長官は承認いたしまして、そして省長もすでに任命いたしました。その儀式も終えておるのでございます。したがいまして、台湾は中国のものであるという考えは、単に周恩来首相の意見であるだけでなくて、蒋介石の非常に強い意見でございます。わかりやすく言いますと、ちょうど沖繩は日本の領土である、二つの日本というものはない、沖繩百万の同胞は日本民族である。これは今日、佐藤さんも確固不動の信念としてこれを認められ、衆参両院も満場一致の決議をいたしております。それならば、おのれの欲せざることを人に施すことなかれで、台湾もまた大中国の一部分でありまして、その一部分のところに蒋介石少数政権が割拠しておる。その点において中国一つである。これは蒋介石、周恩来共通の意見であるのみでなく、フランス、イギリスもこれを認め、われわれもまた沖繩の経験によって、二つの日本があるのでなくて、日本は沖繩を含めて一つである。このことは三歳の児童にも理解し得ることであると私は思いますが、政府部内においては、この問題について明確な御返答を承ったことはございません。したがいまして、少なくとも中国一つであるという二とについて、三木外務大臣の御答弁をお願いしたいと思います。
  146. 三木武夫

    三木国務大臣 国民政府も中共政府も、中国一つであるということを常に申しておることでありますから、そういうときに、日本一つだとか二つだとか言う必要はない。まあ違った政府であることはありますけれども、向こうは一つと、こう言っているのですから、日本が違うと言う必要はない。私は、日本がこの問題について深入りする必要はない、かように考えます。
  147. 帆足計

    ○帆足委員 それでは三木外務大臣としましては、一つ中国という観点に立って外交のことを考える、台湾のことを考えるということはない、そういうことを表明されたわけでございますか。すなわち、一つとか二つとか言わない、しかし、事実問題として一つではないかというただいまの御答弁でありますか。私は、それのみでなくて、法理論、現実論、また沖繩の例から見ましても、一つとか二つとかいうことよりも、もう明らかに一つである、このことを外務大臣にお尋ねしたわけでございますから、論議の問題でなくて、法理的にも現実的にも一つ中国である、政権は確かに二つありますけれども、中国一つである、こういう御返答でありますか。これは非常に重要なことでありますから、もっと明確に伺っておきたいと思います。
  148. 三木武夫

    三木国務大臣 目を見張って見ますと、違った政権が二つあることは事実ですが、日本がつくったのではない。もしそれが責任を持つものがあるとしたならば、二つあるというのが事実である。しかし、二つあるけれども、国民政府も中共も、中国一つである、こう言っておるのですから、日本が、両方が言っていることに対して、いやいや、中国は違う、幾つであるということを言う必要はない、こういうふうに考えております。
  149. 帆足計

    ○帆足委員 やや問題は明らかになりましたが、これは以前に比べると一歩前進であると思います。なぜ私がこのことを申すかと言いますと、かりにアメリカを例にとりましても、南北戦争のときには二つにアメリカが分かれて戦いました。しかし、アメリカはやはり一つであったのです。またベトナムは、いま南北に分かれて心ならずも兄弟かきに戦っておりますけれども、ベトナムもまたやはり一つでございます。朝鮮も南北に分かれて対峙しておりますけれども、朝鮮一つでございまして、かのイムジン河という民謡に象徴されますように、川の流れを見ながら水鳥は飛び交うけれども、祖国は一つ、このことは、いま流行の歌でございますけれども、同じことでございます。わが日本におきましても、先日の外務委員会で申し上げましたが、明治維新のときに西郷南洲を助けようとしたのはイギリス、勝海舟を助けようとしたのはフランスでございました。しかし、海舟、南洲とも外国の助けは借りぬ、自分の国のことは自分で処理する、そうして時代の趨勢を見通すことのできた勝海舟のその聡明さによって、ついに江戸城の明け渡しは平和のうちに行われたのでございます。私は、これをただ単なる物語りだと思っておりましたけれども、いまや眼前に多くの民族が二つに分かれて戦っている悲劇を見まして、この両英雄の国を思う心の深く、かつ切であったことを、これは寝物語りではなく、現実に今日われわれの模範とすべきこととして痛感いたすのでございます。だとするならば、台湾に対しても、基本的にはイギリス並びにフランスがとっている態度、すなわち二つの中国ではなくて、その九割九分を支配している政権が中心の政権であるということをもはや明確にすべきときではあるまいか。と申しますのは、例の「弓張月」、為朝が八丈島という伊豆の端におって、そうして一つの政権といいましても、それでは都の政権は一体何であるか、都の政権こそが中心の政権でありまして、「弓張月」は遺憾ながら、これは亡命した政権でございます。蒋介石政権は台湾に亡命した政権で、国土の片すみに亡命した政権でございます。したがいまして、もう自民党の皆さんには歴史の流れを洞察されまして、せめてイギリス外交のつめのあかでもせんじて飲んでみたら、漢方薬くらいのきき目があろうではなかろうかと思う次第でございます。最近、与党の中にこの論議がぼつぼつ起こっているということは御同慶の至りでありまして、すでにワルシャワにおきまして二百数十回アメリカ中国とは接触しておりますが、時と場合によりましては、日本を飛ばして中国アメリカとの間に話が進むということも、今度のジョンソンの引退声明を見まして、このきびしい国際情勢の中ではあり得ることでございますから、中国に対してもう少し接近政策をおとりになったらいかがかと思いますが、ただいまの御心境で外務大臣はどのようにお考えでしょうか。
  150. 三木武夫

    三木国務大臣 イギリスの外交政策、つめのあかをせんじて飲めというお話でございますけれども、せんじて飲む必要はないので、やはりその国の利益というものがある。国益というものがある。どの国もみな自分の国の利益というものを踏まえて外交をやっているんですから、外交はまねをするべからず、自分の国の利益によって外交をやるべきだ、これは私の信念でございます。  そこで、中国との問題は、これはやれることとやれないこととがあります。台湾問題というものが解決しなければ、日中関係にもやはり限界がありましょう。しかし、やれる範囲内で日中の関係をできるだけ接触を強化していくというこの考え方には、私は賛成をするものでございます。
  151. 帆足計

    ○帆足委員 三木外務大臣のそのお考え方が、もう少し内閣全体の意見になることを私は切望しますが、せめて英国の外交のつめのあかをせんじてと言ったのは、アメリカのひげのちりばかり払わずに、つめのあかの中には回虫卵もおりますし、ばい菌もおりますから、参考にしていただきたいというほどの意味でありまして、私は英国の外交に必ずしもすべて同調しろなんということは夢にも考えておりません。それは聡明な大臣には御理解のことと思います。ただ、同じ保守政党でありますから、皮肉にそのようにユーモアを交えて申し上げただけのことでございます。  とにもかくにも、二つの中国ということは成立しない。よく外務大臣の言われるように、現実現実である、すなわち、現実一つである、政権が二つあるだけである、せめてこれを明確にされたことだけでも、私は御伺慶の至りでありまして、なぜ私がこのことを申し上げますかと申しますと、世のリベラリストは、つい善意でありましょうけれども、独立台湾というものがあり得るかのごとく考えまして、そして、台湾政策が失敗し、または蒋介石がなくなりましたあと、独立台湾というものに国連の一部の勢力が多数決で執着いたしまして、台湾を信託統治にしようとする意見が国務省の背景にあるから、それを非常に多くの人々は警戒いたしておるのでございまして、これは周恩来首相が警戒しているだけではなくて、蒋介石氏も警戒しておることであります。したがって、一見非常に台湾には特殊性がありますから、そこで台湾独立論、台湾信託統治論、台湾中立論というようなことに案外リベラルな方がつい錯覚を起こす。それならば、沖繩信託統治論、沖繩中立論、沖繩独立論——これは敗戦直後に、進歩陣営の中で、沖繩独立論というのは相当の力を占めておりました。それと同じ錯覚を起こすことになって、外交上の混乱の源になりまするし、一部のよからぬ勢力が信託統治の名のもとに事柄の解決をおくらし、そしてまた信託統治を前提として軍事占領を長引かすというようなことになるおそれがある。むしろ、端的に中国本土と対立しているアメリカ軍部のほうが問題の誤りを明確にしておる。中国立場からいえば明確であって、信託統治論、中立論、独立論というのがいかにももっともらしく聞こえて、非常に危険であるというふうに中国政府は考えておるのでございます。中国政府がどのように考えようと、それは中国の自由でございますけれども、私は、やはりこの意見は正しいと思います。すなわち、沖繩についてわれわれの思うこと、おのれの欲せざることを人に施すことなかれでございまして、われわれが沖繩の祖国復帰そのものを望むとするならば、中国は台湾の祖国復帰を望むであろう、このように考えております。御参考までに申し上げまして、この問題の解決の一歩前進されることを切に要望する次第でございます。  次に、小笠原の問題を中心といたしましてお尋ねいたしますが、防衛庁におきまして、日本の防衛というものを考えておる部局または責任者はどちらでございましょうか。実は、外務委員会におきまして私はもう少し防衛論が大いに論議されてよいのではないかと思いますが、歴代の外務大臣は、自分は戦略のことにうといからという御謙虚な御答弁がありまして、いまだかつて包括的な日本防衛の哲学について承ったことはないのでございます。防衛庁におきましては敗戦の専門家はたくさんおられますから、その敗戦のエキスパートの意見は聞きたくありませんけれども、しかし、防衛というものをどのように考えておられるか、またその専門的な中核機関はどこであるか、まずそれを御教示いただきたいと思います。
  152. 宍戸基男

    ○宍戸政府委員 防衛庁の機構と所掌のお尋ねかと存じますけれども、もちろん防衛庁の最高責任者は長官でございますが、その補佐機関として内部部局というのがあります。その内部部局は長官官房と防衛局、人事局、装備局、経理局、教育局、衛生局の各局に分かれております。その所掌は、官房は全般的な補佐役と申しましょうか、そして防衛局——私、防衛局長でございますが、これは防衛計画の基本的なことにつきまして長官を補佐するという役目をしております。それ以外に制服の部隊がありますけれども、その制服部隊を統括する機関として陸上、海上、航空のそれぞれの幕僚監部がありまして、さらにそれを統合的に見る機関として統合幕僚会議というのがあります。これが制服部隊のほうの長官の補佐役になっております。こういった機構でございます。
  153. 帆足計

    ○帆足委員 これは小笠原にも関連する問題でございますが、一国の防衛ということにつきましては、今日原子力の時代になってまいりますと、いわゆる専門家というものよりも、良識あり、思慮深く、世界情勢日本の内外の情勢を理解しておる方が、私はある意味において最高の軍事的戦略家であると思うのでございます。これは端的に申しますれば、大東亜戦争の起こりましたときに、いつも申し上げますように、日本の鉄の自給力は三百万トン、アメリカは六千八百万トンでありました。この事実に立脚するならば、ほぼ上海が妥協点、香港がほどほどの場所、シンガポールとなるともう足が伸びる、ガダルカナルとなるともう転落することは明確でございました。これは山本五十六元帥が繰り返し述べたところでありまして、戦後の阿川氏の山本五十六伝に詳細に書かれておるとおりでございます。  私は、防衛局長の御任務の御苦労であることを深くお察しいたします。防衛局長は、東大昭和十七年度のまことに愛らしい私の後輩であるように承りましたが、何科を御卒業になりまして、どういう経歴で、軍事問題についてはどういう書物を御愛読なさっておられるか。(「興信所じゃないよ」と呼ぶ者あり)興信所ではございませんけれども、一応常識として、この微分積分のような状況に置かれておる日本の防衛を担当している御苦労を理解するという意味におきまして、御経歴と御感想の一端からまず伺いたいと思います。
  154. 宍戸基男

    ○宍戸政府委員 私の経歴のお尋ね、たいへん恐縮でございますけれども、お尋ねでございますので申し上げなければならぬわけでございますが、東大を出まして、内務省の役人になりました。年次は昭和十七年でございますので、戦中派といいますか、戦争中でございましたので、二年現役の海軍に参りまして、四年ほど海軍の勤務をいたしました。帰りまして役人に復活をいたしまして、主として警察畑を勤務いたしましたが、途中で防衛庁の前身であります警察予備隊の創設に参画いたしまして、三年ばかり勤務いたしました。また、現在防衛庁におりますけれども、約三年ばかり前に警察から防衛庁に参りまして、教育、人事等の行政をやりまして、昨年から防衛局長を拝命しているという経歴でございます。  いまお話し申し上げましたようなことで、学歴も経歴も、いわば普通の行政官としての経歴でございまして、行政官、特に私がいままでやってまいりましたのは、主として治安畑、警察畑の経験と知識を持った行政官であるということになろうかと思います。  わが国の戦略といいますか、軍事的なことについて、何か抱負があるかということのお尋ねもあったようでございますけれども、防衛庁の局長として必要な知識と勉強は、平素努力してやっておるつもりでございます。もちろん、まだ不十分ではございますけれども、そういった勉強はしておるつもりでございます。もともと防衛庁の機構は、先生も御承知かと存じますけれども、戦前と違いまして、シビリアンコントロールを本則としております。その頂点は、もちろん国会に基礎を置いた議院内閣制でコントロールされる、その代表として国務大臣である防衛庁長官がコントロールされるわけでございますが、その補佐役として、主として行政的な面で内局のわれわれのようなものが補佐する、そして運用の面については、ごく専門的には制服部隊の幕僚長と統幕議長、これが補佐し実行するというたてまえになっております。ただ、その軍事的な運用面につきましても、非常に大事な方向とかいうことを決定する際には、行政官であるわれわれの内局もタッチしまして、その補佐によりまして長官が判断されるという仕細みでシビリアンコントロールを維持しよう、こういう仕組みになっておりまして、それに必要な範囲の勉強をしている、こういうようなことでそれに向かって努力をしている、こういうことでございます。
  155. 帆足計

    ○帆足委員 まことに詳細に、かつ御謙虚な御答弁で恐縮でございますが、私どもの経歴は衆議院要覧に出ておりますから、どうぞごらんください。また、シビリアンコントロールということはきわめて重要でございますから、十分御勉強、御確信の上に——専門家の知識というものは、それほど過大評価すべきものではありません。広く深い良識というものが今日最高の戦略であると私は信じておりますから、防衛局長、十分に御勉強になって、シビリアンコントロールの権威というものにプライドを持ってひとつ御善処あられて、そして職業軍人というものは、いわば大工のようなものでありまして、設計者の言うとおり動けばいいのでございますから、一般的に申しまして、必然的に視野の狭いものでございます。そこで、防衛局長は、たとえば孫子の兵法とかクラウゼウィッツとかお目通しになっておりますか。最近の戦略書で、私どもに推薦に値する書物はどういうものでございますか、ちょっと御見識の一端を伺いたいと思いますが、、ありのままでけっこうです、御謙遜なさらなくても。
  156. 宍戸基男

    ○宍戸政府委員 ごく一般的な知識として、私もいろいろな書物を一通りの程度読書はいたしますが、特に深い読書家というほどのことはありません。孫子とかクラウゼウィッツの戦争論というものは読んだことはあります。ただ、現在の職務上、毎日戦争論をひもとかなければならないというほど実務に直結した問題ではありませんので、ただ、基礎的なそういう哲学というものは、われわれ防衛局長に限らず、防衛問題にタッチする者は必要であろうということで、いろいろな本はできるだけ勉強したいと思っております。具体的に、現在いろいろな防衛問題、最近は安全保障に関する論議が、幸いといいますか、われわれにとってはたいへん幸いに、たいへん論議が盛んでございますので、いろいろな書物がもうずいぶんたくさん出ております。戦争論や孫子に匹敵するほどの歴史に残る書物かどうかは、まだ出たばかりでよくわかりませんけれども、いろいろな新聞社の安全保障に関するシリーズものがずいぶん出ておるように感じますし、そういう雑誌もずいぶん出ております。また、防衛庁関係の先輩等でそういった問題をお書きになった書物もいろいろたくさん出ておるように思います。具体的にどういう書物ということをあげることは、ちょっといま即座に思いつきませんので、御遠慮させていただきますけれども、ずいぶんたくさん出ているように思います。
  157. 帆足計

    ○帆足委員 委員長も御承知のとおり、私は政府に御質問申し上げるだけでなくて、国民の意思を常に御要望申し上げ、そして政府当局並びに行政当局の方にも参考にしていただくという、御質問と要望と両方兼ねて申し上げるという趣意でありますので、せっかくここから名論卓説を主観的には述べたいと思っておりますのに、議席がからで、気勢まことに上がらず、御注意のほどを願いまして、いかがでしょうか、もう少し議席がふさがって、大いにやじが飛ぶくらいの——石野理事も心配しておりますが、これでは聞いてくださる同僚議員もなければ、聞くのはただ空気ばかり。委員長、ちょっと一服してよろしゅうございますか。——水を一ぱい飲みまして……。私も実は所用がありまして、十二時から一時半まで欠席をさせていただきました。みずから顧みず与党のことばかり申すこともできませんから、なるべく早く御出席を御督促申し上げまして、質問を続けます。  なぜかくのごときことを申し上げるかといいますと、外務委員会並びに内閣委員会において国防のことについて委員が十分に論議いたさなければ、せっかくのシビリアンコントロールも迫力が出ないと思うのでございます。また、御経歴は警察——警察は一つは治安警察、政治警察、これは社会制度の矛盾と不幸からきていることで別問題でありますが、その他は刑事問題を取り締まる、いわばどろぼう、すりを取り締まる仕事でございますから、軍備の問題とは非常に距離があるのでございます。いささかも警察におられたという御経験を生かそうなどと念頭にお置きにならぬことを切に要望する次第でございます。  自衛隊が事あるときには国内の治安維持に当たるという一文が、安保条約の中にございます。しかも、外国の軍隊をかりてそれに当たるということは、何たることであるか。この点については、いずれ安保改定の機会に十分論議するつもりですが、ジニファーソン、すなわち、アメリカ独立宣言を書き、三代目の大統領になりましたジェファーソンは、みずから独立宣言の中に、国民は抵抗の権利を持っている。何となれば、平素羊のごとくやさしい国民が決起する場合には、何か理由がある。これは刑事事件とも違うし、単なる思想問題でもない。国民が沸騰するのにはそれだけの理由があるから、国民はみずから沸騰し、抵抗する権利がある。しかし、それが一般の市民の平安な生活に障害を与えては困るから、警察はそれを取り巻いて、他に及ばないようにするのが精一ぱいの仕事である。私は幾たびも委員会で述べましたが、ウィスコンシンの警察大学におきまして練習している姿を見ましたが、鉄かぶとをかぶって、みんなが石を投げるのをじっとがまんして、がまんをする習慣をつける。そして、自分のほうから追っかけていって棒でなぐるというようなことはしない。しかたがなくて解散させるときには、水をかけたこともありますし、引っこ抜くこともありますが、引っこ抜いて適当なところに分散させたあと、病院の中にまで入っていってぶんなぐるというような権利はないわけであります。これをアメリカでは抵抗の権利と申しておりますが、この国においては、由来人権の思想が非常に低うございまして、たとえば忠臣蔵などと申しますと——義理がたいことは美しいことです。しかし、一人の殿様のために四十七人の若者が死なねばならぬとするならば、それは封建時代という時代の制約のためにできた一つの悲劇でありまして、永遠に子供たちに残すべき道徳の権威にはならぬと私は思うのでございます。したがいまして、明治の代が明けますと、切腹は禁止になりました。元来、腹はおいしいものを食べ、それをそしゃくするためにあるのでありまして、切るためにあるのではありません。もし腹が切るためにあるならば、腹を切った場合に快感を感ずべきでありますけれども、神は腹を切るときに非常に痛い思いをさせ、やがて命がなくなるのでございます。私が赤穂四十七士であったならば、ひそかに脱藩して、富土山麓に赤穂農業合作社をつくりまして、お軽、勘平に子供十人も生ませまして、ヒエをつき、ソバをつくり、富士の流れで粉ひき水車小屋もつくりまして、そして赤穂農民協同組合で楽しく暮らすことであろう。このほうが合理的であり、道徳的であるというふうに私は考えております。  世の中の移り変わりによりまして、人の心も道徳もこのように変わっていくのでありますから、どうか防衛局長におかれては、与党、野党の議論をともどもによくお心におとめくださいまして、やがて数年後社会党内閣ができましたときの準備も、それだけの心のゆとりも持たれておることがしかるべきである、ちょうど日本はそのような米ソ中間の地帯にある国でありまして、中立の国というのは別に珍しいことではありません。北はフィンランドからルーマニア、オーストリア、ユーゴスラビア、サウジアラビア、エチオピア、セイロン、ビルマ、ラオス、カンボジア、政治的中立あるいは軍事的中立をとっている国は、非常に多いのでございます。一方に偏した考えをコントロールするためにシビリアンコントロールという制度になっておるのでございますから、防衛庁当局の幹部におかれては、よほど大局からものを見る眼力が必要であることを痛感いたします。  小笠原島が日本に戻るようになりまして、これは俗論でございますけれども、ある防衛庁筋の人から、二千キロ行動半径が広がったから、いよいよ大型のジェット機、戦艦大和をもう一ぺんつくる日がさたなどということを私は聞きまして、また、そういう随筆を読みまして、実に苦笑いしたのでございますけれども、沖繩に対して、国内の基地に対して、小笠原に対して、一体これを合理主義的にどのように考えたらよいかということは、常に私どもが疑問にしておるところでございますが、ただいまは話題を小笠原に限って申し上げる機会でございます。  防衛庁におきましては、一応の担当者は防衛局長——大臣はちょいちょいおかわりになりまして、前の鹿児島出身の大臣でしたか、観兵式においでになってたいへん喜んだ大臣もおられますが、始終おかわりになる大臣に伺うよりも、場合によっては局長に伺ったほうが、やはり現代の皆さんの考え方というものが多少なりとも伺えるのでございますが、過ぐる敗戦の歴史から、防衛庁の幹部の方は何を学んでおられるか。戦争は始まろうとしておるのではなくて、戦争はすでに終わりました。生命線も消えてしまいました。カニは甲らをもがれ、つめをもがれ、白身になり、酢の中につかっております。そこで、この国の防衛という戦略の大局は、一体どのような形でできるか。私はこれをいろいろ考えてみまして、万全の策というものが敗戦の国にあろうはずもありませんが、次善の策はないものであろうか、これが皆さまとわれわれの共通の課題であろうと思います。万全の策というものは、敗戦の国にありません。戦争は始まろうとしておるのではなく、すでに終わって、われわれは戦いに敗れたわけです。防衛庁としては、敗戦の経験から最も大きく学んだことは何でしょうか。これは防衛庁の教育局長としても必要なことですし、装備局長としても必要なことですから、その一端を感想だけでも伺っておきたいと思います。
  158. 宍戸基男

    ○宍戸政府委員 たいへんむずかしい御質問で、即座にお答えもなかなかできかねる大きな問題かと存じますけれども、敗戦によって何を学んだか、これはいろいろな方面からいろいろな答えができる問題かと思いますけれども、私の頭に浮かびます一番端的な事柄は、二度と戦争を起こしてはいけないということが第一だと思います。  その戦争を起こしてはいけない、平和でなければいけないということでございますけれども、それではどうしてそれを実現することができるか。これにずいぶんいろいろな方法論があり、政策があり、議論が分かれるところだと思います。それはもちろん高度には政治が御決定になる問題でありますけれども、われわれの仕事から見ましても、非常にむずかしい問題でありますが、二度と戦争を起こさないためには、現在の複雑な世界情勢から見まして、わが国の国情、国力に応じた抑止力というものが必要である。それによって局部的な侵略が、万一の場合の侵略も排除できるような、そういう体制をとることによって平和が維持できるし、二度と戦争を起こさないという希望がより高く達せられるのではなかろうかということを考えるわけでございまして、お尋ねの何を学んだかということにつきましては、戦争を起こすべからずということが第一に頭に浮かぶわけであります。
  159. 帆足計

    ○帆足委員 私は、非常に大きな質問をいたしたのでございません。平凡な御質問を申し上げたつもりでございます。日本のいま置かれている立地条件から見まして、一体防衛は——かつて満州を生命線といいました。しかし、日本の置かれている立地条件から見まして、小笠原諸島は一体防衛上どういう地位を占めるようにお考えでしょうか。
  160. 宍戸基男

    ○宍戸政府委員 小笠原諸島に局限して申し上げますと、現在の小笠原はもちろんアメリカ施政権下にありますが、アメリカのほうでは、沖繩、フィリピンなどを前線と見まして、それをバックアップする役割りを果たしているというふうなことを考えているようであります。日本に返りました場合の役割りを考えてみますと、わがほうの役割りを考えてみますと、これはけさほどもちょっと申し上げたことと重複いたしますけれども、貿易で成り立っているわが国の海上交通を確保するということが、非常に大事な自衛隊の任務でありまして、かつ、それは主として海上自衛隊の任務になるわけでございます。その有事の際に海上交通を確保するというためには、各種の手段がございますけれども、主として艦艇による船団護衛、あるいは航空機による対潜哨戒、掃討というふうなことが考えられます。そういったことを万一の場合——もちろん万一の場合のことでございますけれども、そういったことを念頭に置きまして、平素訓練に従事するわけでございますけれども、小笠原諸島が返りました場合には、若干の海軍基地をそこに置きましていま申し上げましたような、ことにいざという場合に役に立つための訓練をその地域で実施することにいたしたいというのが、わがほうの構想であり、そういうことを考えておるわけでございます。
  161. 帆足計

    ○帆足委員 そのような科学的根拠のない御答弁が出はしないかと思いまして、いろいろ最初に申し上げたのでありますが、大体安全保障とは定義しますと、何の安全を守るのでございましょう。安全保障とはどういう意味でしょう。また、防衛とはどういう意味でしょうか。防衛の対象は、何を守ろうとなさっておるのでしょうか。守るものがわからなくて、そうして防衛しておるというと、おかしなことになります。少なくともアメリカを守ることを第一義に考えているのではないことはわかっておりますけれども、その他、何を守ろうとなさっておるのか。
  162. 宍戸基男

    ○宍戸政府委員 防衛といいます場合の対象は、わが国土、国民でございます。
  163. 帆足計

    ○帆足委員 わが国土と国民がどうなることを——それが傷つけられることを防衛するのでございますか。
  164. 宍戸基男

    ○宍戸政府委員 秩序ある生活をしているわが国土と国民、そういったもの全体を守る、こういうことかと存じます。
  165. 帆足計

    ○帆足委員 その中には、国民の人間としての自尊心、人格、そういうものを守るということも入っておりますか。
  166. 宍戸基男

    ○宍戸政府委員 健全な意味での人間の人格、自尊心、そういったものは、当然いま申し上げました国民の中に含まれることと存じます。
  167. 帆足計

    ○帆足委員 そういたしますと、ここで二つの問題がございます。  安全保障ということは、国土及び国民の生命の安全保障だといたしますと、順序として一番差し迫った問題は、国土に対しては風水害でございます。毎年風水害で受ける犠牲の量と数は、関東大震災の被害の総額ぐらいの損害を受けておると統計は伝えております。  第二に、生命の安全保障に関しましては、もちろん病気もありますけれども、交通地獄はベトナム戦争よりたくさんの死傷者が出ておるといわれております。であるとすれば、予算の順序は、風水害と、人命を守るための社会保障及び交通地獄に対する予算、それに対する割合のほうに防衛庁予算よりももっと多く回すべきであろう、こう思います。もちろん、これに対してあなたがお答えになることは、立場上困難でありますから、速記録にとどめて、ひとつ防衛庁の幹部の方に、特に武官の方に続んでいただきたいと思います。生理的に頭のいい方もおりますから、おわかりになろうと思います。  それから第三に、これを純戦略的に考えますと、国民の自尊心と人格を傷つけることがすなわち安全の破壊であるとしますと、沖繩におきましては、九十六万の同胞が、自治権もなく、行政権もなく、裁判権もなく、少女が暴行を受けても、それを訴える、そして処罰する権利もなく、そして円を使う権利もなく、ドルを使う。ふるさとに墓参りに参るのにも、場合によっては数カ月もかからなければ、そしてパスポートをもらわなければ参れない。時には許可がおりない。そうすると、すでに安全は侵されておる。その侵しておるのが同盟国アメリカであるとするならば、これは一体どういうことでしょうか。防衛庁はアメリカと一戦交えねばならぬという抽象論にもなるわけですが、一体軍事同盟を結ぶということは、歴史の現段階ではどこの国でもあるところです。かつて日英同盟というのもありました。しかし、同盟があるがゆえにその国の国民の自尊心と人格を売ったという例はないわけでありまして、同盟の口実のもとに、軍事基地をつくることは許されましても、憲法を破壊すること、国民の自治権を奪うこと、はいまの国連憲章によっても、人権宣言によっても植民地廃止宣言によっても、許されておりません。この許されてないことを同盟国と称するアメリカが公然とやっておることに対しまして、防衛庁の諸君は、国土が侵され、人権が侵されておるとお考えてしょうか。それとも——もちろんそれはやむを得ないことです。やむを得ないことであるけれども、すでに侵略を受けておる。そうすると、他国の侵略を防止するどころか、すでに侵略は行なわれておるのでないでしょうか。私は、防衛に敏感な諸君が、切歯拒腕してこの矛盾を深くお考えにならないのはふしぎでございます。軍事同盟ということはあり得ます。お互いに尊敬し合いながら、一たん緩急あるときに攻防の約束をするということはあります。しかし、その約束があるからといって、その国民の自治権を奪い、司法権を奪い、裁判権を奪ったとなるならば、それは敵国と言わねばなりません。ことばを端的に言えば、敵国ということばを使わねばなりません。こういう状況になっておって、これが同盟国とは世にもふしぎな物語り。そこで、私は、幾たびかこの外交委員会において、東京では紳士、沖繩ではギャング同様のふるまいが行なわれておるということを申しました。防衛庁の観点から申しまして、沖繩はすでに侵略を受けておるという定義は適用できないでしょうか。軍事、防衛がいかに必要なものであろうとも、その必要の名のもとに国土はすでに侵されておる。かつてフランスにおいてアルサス・ロレーヌがドイツに侵略されましたときに、フランスはやはりそういう立場に立ちまして、アルサス・ロレーヌは残念ながら勝利と自由の美名のもとにドイツによって侵されておる、こう言って嘆いて、アルサス・ロレーヌの教職員会はアルサス・ロレーヌの子供たちにひそかにフランス語を教えました。弾圧のあらしをくぐって、フランス魂を忘れるなと、こう言って、君が代ではありませんけれども、マルセーズを教えて弾圧を受けたのは、有名な話です。局長として極端なお答えはできないと思いますけれども、ただいまあなたは国民の人格が傷つけられることを防ぐことが防衛の一つの任務であると申したとしたならば、沖繩の現在置かれておる状況と防衛庁の任務とするところの間に、遺憾ながら現実の矛盾がある、こうお考えにならないか。
  168. 宍戸基男

    ○宍戸政府委員 先ほど私、防衛は何かというお尋ねに対しまして、確かに国土あるいは国民の生活を守ることだと申し上げたわけでございますが、さらにいま沖繩の例をおあげになりまして、詳しいお話を承ったわけでございますけれども、私個人としては、またいろいろ考えも持っておりまして、必ずしも先生のお説に同調いたしかねる点もございますけれども、お伺いいたしますと、いまのお話は、文字どおり政治論争といいますか、政治的な観点からのお話のようでございますので、公務員であります私からは、そのお説に対するお答えは御遠慮さしていただきたいと思います。
  169. 帆足計

    ○帆足委員 それは防衛大臣をお呼びするところでしたが、同時に外務大臣がおられますから……。  日米同盟というものがありながら、防衛庁が任務とするところの国民の自由と人格がすでに侵されておるということは、はなはだしい矛盾ではないか、こう御質問したのですが、事務当局としては答えられない。外務大臣はどのようにお考えですか。
  170. 三木武夫

    三木国務大臣 なかなかむずかしい御質問のようですが、ものの見方にはやはりいろいろな局面がある。ある一つの局面をとらえれば、それは非常に自尊心を傷つける。ある局面をとらえれば、自尊心の擁護にもなる。単純に一つの問題を非常に一点にしぼって割り切ることは、なかなか困難だと思います。
  171. 帆足計

    ○帆足委員 いや、むずかしいのは、お答えがむずかしいのであって、質問はむずかしいのではないのです。どうして言いのがれするかがむずかしいのであって、お察しいたしますけれども……。それから、ある局面ではございません。九十六万のすべての沖繩同胞は、他国の支配下にあり、自治権を奪われ、司法権を奪われ、行政権を奪われ、子供が暴行を受けても訴えるにすべなく、その領土も奪われておるということと、防衛庁は国土の安全と国民の自尊心と自治権を守らねばならぬということの間に、もう疑う余地なく矛盾があるではないか、こう申したのであって、ある局面でなくて、全面的に矛盾である。ただ、軍事同盟ということはあり得る。それはあり得る。だけれども、軍事同盟があるから、たとえば日英同盟があるからといって、その同胞が自治権を奪われ、行政権を奪われ、司法権を奪われているという例は、象牙海岸に行ってもないということです。そこで、防衛庁というものは、それを横目で見ながら、深刻な矛盾を感ずるであろう。しかし、局長にそれを答弁を求めることは、職務上酷であるから、外務大臣はそれは深刻な矛盾である、こうお答えになることを予想して私はお尋ねしておるのであって、一局面でなくて、沖繩の置かれておる全面的状況がそういう状況になっておる、こう申したわけです。
  172. 三木武夫

    三木国務大臣 他国の支配下にあるということは、これは言われるとおりだと思います。しかし、われわれが一つの安全保障条約などを結んで、あるいは欧州においてはNATO、北大西洋条約などの機構があって、そういう条約のもとに他国の軍隊がおるということ、そういうことの前提の上に立ってあらゆる面があるということ——しかし、いまのような施政権そのものが他国の支配下にあるというこの沖繩の現状をさして見れば、局面も何もありません。これはやはり日本人として全面的に施政権返還を要求し、こういう事態の解消をわれわれは願っておるわけであって、現在の沖繩の状態というものがいかなる影響を日本民族に与えているかということは、これは申すまでもないことであります。
  173. 帆足計

    ○帆足委員 三木外務大臣は、単なるとNATOとか軍事同盟とかという問題から離れて、その国民が全面的に他国の支配下にあるということは確かに矛盾である、こう肯定なさいました。私は、防衛庁としては、本来ならば沖繩祖国返還のデモンストレーションのときには、これに参加するくらいの気持ちがわいてしかるべきであろう、これくらい重要な問題であると思っておるわけであります。したがいまして、他国の支配、仮想敵国などということばも、いろいろな意味で軽々しく申すことばできない。たとえば野党が、この現状から見るならば、仮想敵国どころではない、アメリカは現に侵略国です、こう言って少しも間違いありません。また、日本政府が沖繩を他国に売っておるということを指摘されても、これはやむを得ません。しかし、同時に、それでは他の国に対してどうかといえば、やはりいろいろな困難がありますから、私は軽率に特定の国をとらえて仮想敵国というようなことばは使いたくありません。しかし、倉石さんが失言なさったのも、憲法第九条を無視されまして、日本の置かれた微妙な地位に対して目を閉じて、この国は軍備があれば相当のことを主張することができるがと言いましたけれども、じゃ軍備があればアメリカにどの程度のことが言えるのか、フランスにどの程度のことが言えるのか、ソ連、中国にどの程度のことが言えるのか、具体的に科学的に考えてみるならば、問題はさように簡単ではないのでございます。軍備の弱いインドですら、ネール首相在世の当時には、その道徳的な民族の力で相当の発言力、また防衛力を発揮いたしました。ちょうど個人でも同じでありまして、腕力だけが身を守る力ではありません。からだは福田幹事長のようになよなよされておりましても、頭脳明晰であったならば、生きる道はたくさんあるわけでございまして、逆に拳闘の選手であるからといって、雑草のごとく生活力がたくましいとはいえないのでございます。最近の生物学の書物を見ると、雑草のほうが生活力は低くて、あの美しいにおいを発するバラのほうが生活のエネルギーは高いそうでございます。私は、この雑草とバラとの比較は、防衛庁の心すべき問題であると思います。世界で一番強かったといわれる日本の軍隊は、世界で一番弱い軍隊であった。なぜかというと、愚かであったからです。世界で一番忠勇武烈な軍隊といわれた日本の軍隊は、世界で一番ひきょうな、道徳的に低い軍隊であった。これは「人間の条件」をお読みになれば、よくわかることです。人は美しい夢を追いてきたなきことをするものぞ、これは詩人アンデルセンの「埋木」にある一句であります。  したがいまして、小笠原にことを限って申しますと、小笠原についての戦略的地位というものは、日本から二千海里裏のほうにありますから、ソ連、中国との対立に対しまして積極的意味を持つまいと私は思っております。もし全面的にソ連、中国と衝突がありとするならば、この前の欧州大戦のときには、最後の日まで台湾と朝鮮との補給路は続きました、背後に大陸を背負っておりますから。しかし、いまや大陸を万が一にも刺激するならば、裏側の補給路は五千キロにわたっておりまして、だれが石油を、大豆を、米を、塩を、砂糖を、補給してくれるでしょうか。まず二ヵ月もたたないで原料の補給で参ってしまうと私は思います。ジョンソンアメリカ国防長官は、マッカーサー元帥が日本よ、アジアのスィッツルたれと言ったときに、一日に百万ドルの大めしを食う胃拡張の民族をアメリカが前線基地として持ちこたえることはできないであろう、したがって、率直に申すならば、日本アメリカに対して演ずる役割りは、前線基地、犠牲基地、補給基地以外にあるまい、これは驚くべきことですが、こう述べまして、マッカーサー元帥はそれをとりなすように——これはリーダース・ダィジェストに二度も載っておりますが、日本アメリカにつこうともソ連につこうとも、火中のクリを拾わされるならば、食糧問題で参ってしまい、原料問題で参ってしまい、さらに近代武器の問題で参ってしまう。日本のただ一つ生きる道は平和と中立の道である。太平洋のスィッツルたれ、これはマッカーサー元帥の有名なことばです。まるで片山哲氏の演説のようなことばでございますけれども、この速記に間違いはありません。  したがいまして、私は、自衛隊の諸君が謙虚に御職業の限界を絶えずよく御反省なさって——安全保障ということは、国土と生命の安全保障である。そうするならば、国土に対しては風水害、生命に対しては交通地獄と病気というものがある。また貧乏というものがある。それと、保守的政治論の立場からいえば、ある程度の安全装備を考えたいというお考えが与党から出てくることは、おそらく必然でしょう。社会党はそれを国土再建のための国土計画隊に再編成したいという考え方です。これはベトナムにおきましても、キューバにおきましても、国民全部に武器を持たしておりますけれども、革命は起こりません。そしてアメリカのあれほどの侵略に対しても、職業軍隊はごくわずかですけれども、自分の国を自分で守っております。しかし、日本のごとく原料のない国、人口過剰な国に対して、中立に置いてこれを貿易で利益することは合理主義的に考えられますけれども、これを武力で制圧してソ連、中国側として利益があるかというと、広大の領域を持ち、豊富な資源を持っておるソ連、中国としては、日本を侵略して利益はありません。同じことはアメリカにも言えますけれども、ただアメリカは、対アジア侵略の前線拠点として日本の一部を使っておる、こういう必要から出ておることでありまして、アメリカが資源のために日本を必要としておるのではないでしょう。アメリカの極東政策のため、これが現実に置かれている日本の姿でございます。  そうしますと、アメリカの防衛と日本自身の防衛との間に、どうしても矛盾がある。日本の与党が日米同盟のような関係においてアメリカをたよるとするならば、それは私は反対ですけれども、一つの論理として合理的に理解し得る。しかし、日本が前線基地、犠牲基地、核兵器基地、出撃基地になるとするならば、そればアメリカの防衛になるけれども、すなわち、アメリカの安全保障になるけれども、日本にとっては非安全保障である。雷の鳴るときにちょうど避雷針のような立場日本が立つわけで、アメリカのショーウインドウになるな、進駐当時のマッカーサーはわれわれにそのように教えました。したがいまして、防衛庁におきまして、アメリカ軍の立場から考えたアメリカの防衛と日本の自主独立の立場から考えた日本の防衛との間には、とにもかくにも客観的矛盾があるということを、これは防衛庁でよく聞いていただいて、速記録を読んでいただけばけっこうですが、そういう矛盾があるということを外務大臣は十分に御認識でございましょうか、外務大臣の御所見をただしておきたいと思います。
  174. 三木武夫

    三木国務大臣 私は、この日米安保条約は、日本の安全に関する条約、そういう性格を持ったものが安保条約だと考えて、そういう意味において、事前協議の条項などもできるだけ厳格に守りたい、こう考えておるわけでございます。
  175. 帆足計

    ○帆足委員 外務大臣は顧みて他を申される御答弁でしたが、日本国民が日本の国土、日本同胞の生命を守る問題と、アメリカ国民がアメリカの国土及びアメリカの利害、アメリカの国民の生命を守る問題との間には、立地的に見ても、戦略的に見ても、大きな矛盾がある。とにもかくにも、現実に矛盾があるということをよく御認識なさっておられるか、こうお尋ねしたのです。
  176. 三木武夫

    三木国務大臣 この安保条約についていろいろ御論議になっておりましたから、安保条約というものが、単純にアメリカの極東戦略に奉仕するというふうには自分は考えていない。日本の安全保障という上から考えて、この日米安保条約というものの性格がそういうところにあると自分は考えている。だから、安保条約の必要性も自分はそういう角度から考えておるのである。しかし、そのことが、アメリカ自身の安全というものに、これはまたプラスする面があることは御承知のとおりであります。いずれにしても、極東において平和が維持できないで、次々に極東の平和がくずされていく状態においては、単にアメリカのみならず、その他の国においてもいろいろ安全に影響を与えることは明らかでありますから、そういう意味においてアメリカの安全にも影響を持つことは、それは当然のことだと考えております。
  177. 帆足計

    ○帆足委員 私は、重ねて明確にいたしておきたいことは、アメリカの祖国はアメリカであり、われらの祖国は日本です。この両国及び両国民の安全を守る戦略上において、特に立地条件から見て、両者の間に重大な矛盾がある。孫子の兵法に、地の利ということは戦略の最大のものであるということが書いてあります。ある意味におきまして、特に近代戦になる前でしたら、日本が大陸側の背景と手を結んで、そして遠く離れた前面の敵と戦うということは、海軍と航空機をもってすれば戦いやすい立地条件にありました。したがいまして、あれほどの敗戦をなめましても、最後の日まで台湾と当時の満州、朝鮮から輸送路が続いておりまして、かゆをすすっても生きていくことができました。しかし、いまは逆に五千キロ離れたアメリカと手を結んだ場合に、立地条件として、日本は王の前に置かれた歩のような条件になりまして、立地条件からほとんど戦略が立たない。私は戦略的にこのように見ておりまして、したがいまして、安全保障の方法は非常にむずかしくて、敗戦後この国に万全の道はない、次善の策しかない。その次善の策は、保守党の立場に立てば、アメリカとある種の了解を得る程度が精一ばいであって、この国を基地にすることは、具体的には核基地、特に出撃基地にすることは、非常に危険性を伴う。そこで、保守党の中の聡明な方々も、せめて沖繩に限って出撃基地、核基地を認めたものと思いますけれども、沖繩に限ってそれを認めたとするならば、沖繩がその犠牲になっておることである。そこで、核基地つき返還ではわれわれは一そうあぶないといって、社会党はこれに警告していることは御承知のとおりでございます。  アメリカ人にとっての最大の関心事、アメリカの軍部が予算を出すゆえんのものは、アメリカの国土と国民を守るためでありまして、日本を守るというのはおまけの口実であることくらいは御承知でありましょう。だれが他国のために、たとえば日本人がハワイを守るためにだれが命を捨てる、また、それをすすめるたらちねの親がおるでしょうか。したがいまして、外務大臣は率直に、日本アメリカとは一定の、NATOのような条約を結ぶけれども、そこの間には隔たりもあり、矛盾もあるとお答えになって、その隔たりと矛盾とを野党がつくときには、重大な参考にしよう、こういう心境であってしかるべきであろうと思います。  いまや、小笠原が祖国に復帰するにあたって、当然小笠原を含む戦略論の再検討が行なわれますから、私はまずこのことをお尋ねしたわけであって、また心なき者が、二千キロのかなたに防衛範囲が伸びたから、大航空部隊をつくり、大海軍をつくる絶好のチャンスが来たなどという、愚かな議論を聞くものですから、そこで、やはり戦略的に小笠原というものがどういうものであるかということを外務省及び防衛庁においては十分に検討していただきたい、そういう前提のもとに御質問したい、こう申したわけでありますから、外務大臣は、とにもかくにもアメリカを守るという戦略と、日本をそのために活用する、利用するという戦略との間には、一致点もあるけれども、重大な矛盾点もある、その点を解決するのが私の苦労とするところである、こう御答弁になって、初めて三木さんらしい御答弁だと思うわけです。それを答えていただきたいと思って、私はこうしてしつこく申し上げておるわけです。
  178. 三木武夫

    三木国務大臣 いろいろと帆足さんから御意見を交えての御質問があり、お答えまでも用意されて御質問がございました。帆足さんの言われる、こういうふうに答えたらどうかというのは、私もおおむねそういうふうに答えて差しつかえなかろう、こういうふうに考えます。
  179. 帆足計

    ○帆足委員 この問題は、やがて安保条約の検討ということに移ってまいるのでございます。したがいまして、また沖繩が両三年後に祖国復帰するというのも、同じような論理に基づいておるのでございますから、防衛庁といたしましては、時代の潮流をよく御理解くださり、防衛というものが小銃、機関銃時代の防衛ではない、いまや原爆、ロケット、人工衛星時代の防衛であるということを、外務委員会からこもごも強い主張があったということをよくよく御理解願って、重ねて速記録を御回覧願いたいと思う次第でございます。特に武官の方には外務委員会に接する機会がありませんから、外務委員会の論議に始終目を通して視野を広めていただく、それがほんとうの祖国の防衛のために役立つことでもあるし、またシビリアンコントロールの権威のためにも何ほどかの常識の涵養になるのではなかろうかと思うのでございます。  さて、小笠原の問題につきましては、政府当局からその後詳しい報告が出まして、私も有益に拝読いたしました。したがいまして、小笠原の荒廃した現在の状況につきましては、調査団の御苦労によりましてよく理解することができました。そこで、二つの面でお尋ねしたいと思います。  一つは、このように荒廃した小笠原諸島に対しまして、私なども事実を存じませんでしたので、経済的に多大な期待を持っておりましたけれども、これはなかなか困難な仕事であるということがわかりました。この問題につきまして、政府当局は、どこの省のどこの部局が担当されて、東京都とどのように御連絡になって、どういう手順で住民との連絡をされて、そして移住、開発の準備をお進めになるか。二、三分でけっこうでございますから、この条約締結するにあたりまして、その荒筋だけを御説明願いたいと思います。
  180. 加藤泰守

    加藤(泰)政府委員 お答え申し上げます。  小笠原は、現在総理府の私の所属しております局である特別地域連絡局で担当しておりまして、復帰までのいろいろな措置についてただいま準備をいたしております。復帰いたしましたあとは、自治省のほうでいろいろめんどう見ていただくことになっておるわけでございます。ただ、各省との関係でいろいろ調整の問題がございますれば、総理府で調整をしていく、そういうことでございます。  それから東京都との関係につきましては、もちろん、今後東京都と十分密接な連絡をとって、復興の問題と取り組んでいかなければならないわけでございまして、その点につきましては、今後自治省が復興の問題につきましての所管をいたすことになりますので、自治省のほうで東京都と十分連絡をとってやっていただくことと思います。
  181. 帆足計

    ○帆足委員 これは私から委員長へのお願いでございますが、各外務委員小笠原の復帰に関する各種の論議は、それぞれ国民の代表の声として参考になることでございますから、ぜひとも、直接国会に関係のありません東京都知事並びに東京都関係当局のほうにも一この速記録を若干部数お回しくださることをお願いいたします。  最後にお尋ねいたしますが、現在、小笠原における米軍軍事基地の状況について、これに説明が出ておりますが、今後、軍事基地として防衛庁はどういう御計画をお持ちですか。その計画次第によっては、私どもこれに御賛成申し上げることはできないのでありますが、現在、基地または軍使用について、防衛庁としてはどういう御研究または御関心をお持ちになっておりますか、お尋ねしたいと思います。
  182. 丸山昂

    ○丸山説明員 私からお答え申し上げます。  米軍の今後の基地使用計画につきましては、お手元の資料にあると思いますが、硫黄島と南鳥島のロラン局をそれぞれ運営するということでございます。  それから防衛庁のほうの計画といたしましては、父島と硫黄島とそれから南鳥島、それぞれの基地につきまして、父島につきましては艦艇の補給基地、それから硫黄島につきましては海上自衛隊の航空機の飛行場のための基地、それから南鳥島につきましても、大体硫黄島と同様でございまして飛行場の基地、これを展開する予定でございます。
  183. 帆足計

    ○帆足委員 それでは、ただいまの米軍基地のほうは現状のままですか。また、どういう内容の基地ですか。また、これを拡張し、または修理する気持ちがありますか。
  184. 丸山昂

    ○丸山説明員 米軍のほうはロランでございまして、これは航空機や艦船が飛行中もしくは航行中に、自分の位置がわかるように、一種の電波の灯台といわれておりますが、そういう性格のものでございます。これが硫黄島と南鳥島にそれぞれ一ヵ所ずつあるわけでございます。現在のところ、アメリカがこれを拡張するというような話は私どもは聞いておりません。
  185. 帆足計

    ○帆足委員 それでは、最後ですから簡単に申し上げますが、今度自衛隊が引き継ぐという硫黄島、父島その他の基地は、新たにおつくりになるのですか、どういう基地ですか。  それから、ついでにお尋ねいたしますが、もし新島の射爆場が困難なようなときに、小笠原に持っていくような気持ちがありますか。この三つについて具体的にお答えを願いたいと思います。
  186. 丸山昂

    ○丸山説明員 現在アメリカがそれぞれ使用しております基地の一部分を引き継ぐということでございまして、現状以上に拡張する計画は考えておりません。  具体的に申し上げますと、父島につきましては、艦艇に対する補給でございますので、油、水等を補給するための必要な施設ということでございまして、現在、アメリカの海軍の父島派遣隊でございますか、これが使用しております中の、またごく一部を使用するということになっております。  それから硫黄島につきましては、ただいまはアメリカの第五空軍が予備飛行場として使用しているわけでございますが、この飛行場の施設を当方が引き継ぐことに計画を立てております。しかも、先ほど申し上げましたように、海上自衛隊の対潜哨戒機がここを基地に使えるための飛行場運営の管理要員、これを若干名置くことを考えております。  それから南鳥島につきましても、現在千二、三百メートル程度の滑走路がつくられておりますけれども、この飛行場を運営する管理要員を若干名置く、こういうことでございます。
  187. 帆足計

    ○帆足委員 最後にロケット試射または艦砲射撃等の新たな計画はあるか、また、新島が反対で、ここに射爆場を設けることができないようなときに、小笠原を代地として御研究になるというようなお考えがあるか、お聞きいたしたいと思います。
  188. 丸山昂

    ○丸山説明員 ただいまのところ、艦砲射撃の標的というようなことについては考えておりません。  それからロケットの試射場につきましては、一応その可能性があるかどうかということで、私ども調査団を派遣いたしました結果、適地ではないということで、目下その計画は考えておりません。
  189. 帆足計

    ○帆足委員 新島のかわりといいますか、水戸射爆場が新島で拒絶されましたときに小笠原を……。
  190. 丸山昂

    ○丸山説明員 新島がもし射爆場として使えない場合に、小笠原に回すというようなことは考えておりません。
  191. 帆足計

    ○帆足委員 それでは、その他お尋ねしたいこともございますが、時間の順序がございますから、きょうはこの程度にして、あとは次の機会にいたします。
  192. 秋田大助

    秋田委員長 伊藤惣助丸君。
  193. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 この小笠原協定が国会で承認されれば、一ヵ月後に実質返還されて戻ってくるわけです。そこで、たくさんの問題があるわけですが、きょうは、その中でもしぼりまして尋ねたいと思います。  私は、二月初旬に小笠原に行ってまいりました。実際この眼で見てまいりました。非常に、調査というよりは、探検をしてきたというくらいの島であったわけでございます。  そこで、初めに防衛庁に伺いたいわけですが、前回の国会答弁で防衛庁長官は、もし自衛隊に民生協力をやれというならばやらすつもりはある、このような本会議における国会答弁があったわけです。そう長官が言うからには、このような自衛隊の民生協力計画があるんだという、そういうものを持っておったればこそ、そのような答弁をなさったのではないかと思うわけです。非常にたいへんな無人島を開発するためには、たくさんの資金と、また人員を必要とするわけです。したがって、防衛庁のあの機動力、そして人員をもってするならば、その復興も決して長期にまで及ぶことはない、このように考えられるわけですが、防衛庁の民生協力の具体的な構想を伺いたいと思うわけです。防衛局長にお願いします。
  194. 宍戸基男

    ○宍戸政府委員 方針といたしましては、前に長官から答弁されましたように、できる限り民生協力すべきことは当然だと考えておりますが、お尋ねの具体的な計画があるかということにつきましては、現在、まだ総理府を中心といたします各省の復興計画がそれほど煮詰まっていない段階でございまして、何事業をどういう時期に、どういう規模でやるかというふうな具体的な計画ができ上がっている段階ではございません。ただ、考えられますことは、まず輸送事業、輸送関係のこと、これはわがほうは艦艇なり航空機なり、有力な機関を持っておりますので、わがほう自体の輸送も一さることながら、民主関係の方々の御希望によって、現在も協力しておりますけれども、民間の輸送機関の整うまで相当の期間、わがほうが相当な協力を当然しなければならないというふうに考えられます。  また、次に具体的に考えられますものは、土木関係であろうかと思います。戦時中の不発弾等がまだ相当数残っている疑いがあります。とりあえず、こういったものを捜索し、探知いたしまして、それを処理するということが一番先かと思いますが、それをやりまして、さらに、いろいろな土木工事等が次に計画されると思います。その進展によりまして、自衛隊もできる限りの協力をいたすということになろうかと思います。  その他、通信とか医療関係等、いろいろな必要に応じて、各省の計画に応じて、わがほうの力とにらみ合わせながら御協力していく、こういうことになろうかと存じております。
  195. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 いまも話が出ましたが、私は、この復興開発にあたって、一番早くやらなければならないことは、硫黄島の遺骨の収集と不発弾処理だと思います。不発弾処理については、陸上自衛隊が担当になるのではないかと思いますが、遺骨収集は厚生省の管轄なわけです。これはもうだいぶ前から言われておりまして、当然厚生省との打ち合わせをし、また、これはおそらく同時に行なわれることではないかと思われるわけですが、その厚生省との打ち合わせ、また具体的な措置、その遺骨収集について検討されたかどうか、されたならばその構想を伺いたいと思います。
  196. 丸山昂

    ○丸山説明員 遺骨は、主として大体硫黄島が主体になるということでございまして、先週の土曜日に防衛庁長官が直接父島を視察されました機会に、厚生省から援護局の次長に同行していただきまして、次長は翌日硫黄島へおいでになりまして、私どものほうの陸上幕僚監部の第四部長と一緒に現地を視察、調査いたしまして、その調査結果に基づいて、できるだけ早く具体的に遺骨収集の細部計画を立てるということになっております。ただいまの現状は以上のとおりです。
  197. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 これはもう前々から言われていることでありますので、どうかすみやかにその処置と処理をしてもらいたいと思うわけです。要望いたしておきます。  また、小笠原の防衛計画についてでありますが、いままで、約二百人程度の海上自衛隊を中心として行なう、こういうばく然とした答弁は何回も聞いております。   〔委員長退席、田中(栄)委員長代理着席〕 もう返還も一ヵ月後に迫っておるわけでありますけれども、それでは、海上自衛隊のどこの部隊がどういう装備をもって担当するのか。さらに、最近まで、小笠原防衛について、何回か調査団を防衛庁は派遣しているようであります。閣議においても、防衛庁長官から、返還にあたっては、復興計画もよいけれども、防衛計画が大事じゃないかというようなお話を総理となさったということも聞いております。そういう点について、具体的な防衛計画を伺いたいと思います。
  198. 宍戸基男

    ○宍戸政府委員 全般的な構想につきましては、すでに先生御承知のように、三島合わせて約二百名前後のものだということを長官も申しておりますし、私もお答え申し上げたわけでございますが、具体的にどういった部隊をどういった装備でということにつきましては、そういうお尋ねでございますけれども、実は、私の手元で現在鋭意検討中でございます。私なりの案は持っておりますけれども、実はまだ防衛庁としてもオーソライズされておりませんし、関係当局との打ち合わせも、一部やっておりますけれども、完結しておりませんので、公式な場所でお答え申し上げる段階まできていないことをたいへん申しわけなく思いますけれども、ごく大筋だけ申し上げますと、先ほども申し上げたわけでございますけれども、全体で二百名程度の範囲内でございますが、父島につきましては、これは横須賀地方総監部の管轄区域になりますので、その配下の部隊を分遣隊あるいは派遣隊程度の小規模の部隊として派遣することになろうかと思います。考え方は、大艦隊を常時あすことに張りつけるというようなことは考えておりませんで、防衛軍等が訓練をする場合に支援できる基地を置いておくということでございまますので、そういう補給基地要員を若干置く、分遣隊程度のものを置くということでございます。それから硫黄島につきましては、これは港はございませんで、結局飛行場関係でございますので、内地からの輸送機なり大型の航空機が発着できます。それに対する管理、支援のサービス部隊を置く。南鳥島も、さらにそれの小規模なものを置くというふうなことを現在計画しておる段階でございます。
  199. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 大体まとまったように私は聞いております。防衛局長試案があるようでございますけれども、その試案をもしできましたならばお聞きしたいと思います。
  200. 宍戸基男

    ○宍戸政府委員 事務局段階での試案はいろいろございまして、それを練っている段階でございます。御承知のように、行政部内では、局長が一案を示したからといって、それが直ちにオーソライズされるわけでもございませんし、いろいろ関係部局なり関係省庁がございますので、案は相当手元では煮詰まっておりますけれども、それが公式な場所で申し上げるような段階までいくのに多少手間がかかりますので、もう少し時間をかしていただきたいと存じます。
  201. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 かつて防衛庁長官は、たとえ小笠原が返ったとしても、第三次防衛計画は変更ない、このような発言をなさっておりますが、その点についても確認しておきたいと思います。
  202. 宍戸基男

    ○宍戸政府委員 三次防の修正ないし改正等は、この小笠原が返ってきましても、考えておりません。
  203. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 煮詰まっているけれども発表できないということでありますが、これは国民が早く知りたがっておることでもありますし、その扱いは決してマル秘や極秘やそういう扱いの部類に入らないと思うわけです。装備等については、これはまた別でありますけれども、配置については、私は何ら言っても差しつかえないんじゃないかと思うわけです。それでは、煮詰まった案を公式の場でいつ発表なさる予定ですか。それを伺っておきたいと思います。
  204. 宍戸基男

    ○宍戸政府委員 何月何日とはっきりお約束はなかなかできかねるわけでございますけれども、そう遠くない時期——われわれ防衛局長なら防衛局長なりの案を関係部局あるいは関係省庁といま相談中ということで、煮詰まりつつあると申し上げたわけでございまして、その案に対する反対意見、これは大き過ぎるとか、これは金を食い過ぎるとかいうような意見は当然あるわけでございます。   〔田中(栄)委員長代理退席、小泉委員長代理着席〕 それを加味されまして防衛庁長官が判断される、あるいは総理が判断されるという段階がおのずから次にあるわけでございまして、そういう手続を踏みまして、もちろんそういったお答えが——おっしゃるように、秘密を保たなければならぬ、きまったあとまで秘密にしなければならぬとは考えておりませんで、現在は、きめ得る権限のある方がまだきめられるところまできておりませんので、私の口からお話し申し上げるわけにいかないということを申し上げているだけでございます。いずれ近いうちにきまることになると思います。きまり次第大臣からでも御発表になる、こういうことになろうかと思います。
  205. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 この問題については、たいへん重要な問題でありますし、次回、防衛庁長官に直接伺いたいと思うわけです。また、先ほどお聞きしました遺骨収集との関係でありますが、少なくともこういうことは返還と同時にやるべきである、こう思うわけです。また、防衛庁の立場からいっても、返還がきまっている以上、当然、返還前には、その配置や装備や訓練や、そういったものが完全になされていなければ、返還と同時にその配置につくわけにもいかないと思うわけです。そういう点で、私は、防衛庁の立場からいっても、非常にこれはおそい、こう思うわけです。この点は、次回、長官から明快に伺いたいと思うわけです。  次に伺いたいのですが、私が父島あるいは硫黄島に行って感じましたことは、確かに国有地が非常にあるわけです。その中で、かつて父島には四万の海軍、空軍、陸軍が最後には立てこもったわけでありますけれども、あの二見港を中心として、奥深くある奥村の元海軍基地、さらに飛行場、これは非常に広いところであります。今回の小笠原調査団の発表にも、旧基地については、特に陸軍あるいは海軍の境界もはっきりと残っておった、こういうふうに報告がなされております。その父島、母島、また硫黄島における旧陸軍の敷地はどのくらいあったのか、伺いたいと思うのです。
  206. 斉藤整督

    ○斉藤説明員 小笠原にございました旧軍の国有財産につきましては、必ずしも戦前から台帳が整備いたしておりませんので、全貌ははっきりわからないのでございますが、これは旧軍関係仕事を厚生省が引き継がれたという関係で、厚生省に残っております資料から見ますと、父島に憲兵分隊及び宿舎としまして六百四十九坪、父島の要塞司令部の官舎といたしまして八千四百八十九坪、そのほか南鳥島に、内容はよくわからないのでございますが、二万七千坪、それから所在不明といたしまして陸軍築城本部、東京港湾要塞司令部官舎があったことになっておりますが、これにつきましては数量はわかっておりません。
  207. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 大蔵省に伺いたいのですが、これは国有財産としていま没収したわけですか。
  208. 斉藤整督

    ○斉藤説明員 軍の取得の経緯についてははっきり承知いたしませんが、おそらく軍が買収したものと考えております。
  209. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 現在は大蔵省、返還になれば——返還前ではありますけれども、当然国有財産としてということか、あるいはそのまま自動的に自衛隊に移るのかということです。
  210. 斉藤整督

    ○斉藤説明員 そのものにつきましては、当然大蔵省が一応引き継ぎまして、その中から防衛庁が必要とされる分につきましては使用を認めるとか、あるいは防術庁に所管がえをするということになろうかと考えております。
  211. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 なぜ私はそのことを聞いたかといいますと、小笠原は非常に小さな島でありまして、父島にあるもとの海軍基地はいいところです。現在でも米軍が燃料の置き場みたいな形で使っております。さらに前には千五百メートルぐらいにわたる飛行場がある。海軍が使っておったわけです。この間の防衛庁長官の答弁によりますと、それをまず整備して民間にも貸し与える、こういうような発言があったわけです。そこで私は、できるならば、それを国有地として返還と同時に没収するなら、自衛隊に自動的にやるというのではなくして、さらに何かの審議会なり何なりを通じて、それを民間中心の飛行場に開放すべきではないか、こういう考えを持ったわけでありますけれども、さらに自衛隊としては、先ほどから聞いておりますように、二百名といえば非常に小さな人員であります。現在父島には、海兵隊といいますか、約三十二名くらいしかおりません。家族を含めても七、八十名であります。しかも、大村のほんの一角を使っておるにすぎないわけです。おそらく、あの父島に海上自衛隊が行ったとしても、話によれば四、五十人程度ということになりますと、現在米軍の使っている施設を使って十分であります。そうしますと、いま飛行場が荒れておりますが、昔使っておった飛行場または昔あった海軍の基地は必要ない、私はこういうふうに思うわけですが、防衛庁としては、そうじゃなくて、前の海軍の施設をそっくり使う考えなのか、さらに飛行場も自衛隊で整備して使う考えがあるのか、その点もはっきり伺っておきたい。
  212. 丸山昂

    ○丸山説明員 父島の問題を主としてお尋ねのことと思います。これは実は、各省の総合的な経済開発計画のマスタープランがまだ定まっておりませんので、私ども限りで考えておる範囲でございますけれども、一応現在私どもが計画しておりますのは、伊藤先生も現地をごらんになっておられますので御存じだと思いますが、中央の船着き場のところに現在アメリカの司令官の宿舎がございます。あの宿舎からみさきのほうへ向かいます、主としていまアメリカの海軍が使っておるところでございますが、大体あそこを主体として使うということを考えておるわけでございまして、その他につきましては、いまのところおも立った計画は持っておりません。そういう状況でございます。
  213. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 いまおっしゃったことですが、防衛庁長官はそういう答弁をしていない。飛行場は父島にあるけれども、将来整備する、そういうニュアンスの答弁をしているわけです。それじゃ、父島にあった旧海軍の飛行場及び旧海軍のあと地は使う計画はない、そういうことでございますか。つまり、返還されれば、大蔵省に国有地として一回入るわけですね。そして自衛隊が希望すればというふうにあなたおっしゃいましたけれども、米軍が使っておったところだけを四、五十人の海上自衛隊に渡して、あとは民間に開放してもいいというふうに考えられるわけです。防衛庁としてはその計画がない、いまそう聞いたわけですが、これは間違いないですか。
  214. 丸山昂

    ○丸山説明員 こまかい点につきまして、ちょっとただいま御回答申し上げるのが適当かどうかと思うのでございますが、昔の海軍の防備隊が使っておりました敷地がございます。これは現在アメリカが燃料置き場に使っておる埋め立て地でございますけれども、これはちょっと地図がございませんので、場所はあれですが、奥村に向かいます一番奥まったところの二見港の一番奥にあるところでございます。ここは自治省のほうで住宅地として使うというような御計画がございますので、私どもといたしましては、飛行場の整備の問題と関連するわけでございますが、おそらく当分の間は航空機は飛行艇しか使えないのじゃないか。陸上機を使うとなりますと相当長い滑走路を必要とするわけでございますが、もと海軍が使っておりました州崎の飛行場というのは現在荒れ果てておりまして、実距離が約七百メートルちょっとというところでございますので、とても一般の旅客機の発着には使えない。これをまた整備いたしますには相当経費がかかるということから、当面飛行艇の発着にたよらざるを得ない。したがいまして、飛行艇のすべりと申しますか、飛行艇が陸地へ上がりましてしばらく休むわけでございます。   〔小泉委員長代理退席、委員長着席〕 これは飛行艇のために絶対必要な施設ですが、ただいまの防衛隊の南の敷地にこの施設をつくるということを考えざるを得ないのではないかということでございます。その辺を若干考えておるという程度でございます。  それから飛行場のほうにつきましては、ただいま申し上げましたように、これは手を入れましても、わずかの経費ではりっぱな飛行場になる可能性がちょっとございませんので、私どものほうとしては、ヘリの緊急着陸くらいに使う程度のことを考えておるのでございます。これは運輸省のほうともよく相談をいたしまして、将来の開発計画の線に沿った整備計画を別個に立てる必要があるのではないかというふうに考えております。
  215. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 それでは、父島については水陸両用で、現在米軍が利用しておりますあれを利用する。州崎にある飛行場は考えていないというが、荒れ果てているといっても、あのくらいの整備は簡単なわけですよ。千五百メートルの滑走路も、それ以上の滑走路もすぐにつくれるように私は調べてきました。荒れておりますけれども、買収して土地を広げてということを考えれば、何ら問題ないところです。それでは、それは民間で開発をし、そして民間で——民間というよりも、運輸省の管轄にして開発するということがあれば、そちらのほうに譲る、自衛隊としては主張しない、こういうことで了解してよろしゅうございますか。
  216. 丸山昂

    ○丸山説明員 ただいまそのとおりでございます。
  217. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 最近の報道によりますと、艦艇の補給所または訓練基地にもする、こういうことがいわれておりますが、どのような計画か。また、訓練といいますといろいろあるわけですが、どんなことをその基地を中心にしてやるのか、それを伺っておきたいと思います。
  218. 宍戸基男

    ○宍戸政府委員 一般的には、先ほども申し上げましたように、護衛艦の対潜訓練を各海域でやりますが、小笠原が返ってきた場合には、あの海域も現在やっております種類の訓練をするのに適当な場所であろうということを想定しているわけでございます。具体的にどういう期間どういう訓練をするかということにつきましては、これから検討してまいりたいということで、現在まだ具体的な計画まではまいっておりませんけれども、ごく大ざっぱな考えとしては、いろいろな護衛艦の応用訓練だとか、あるいは輸送の訓練だとか、普通横須賀沖なり四国沖なり等でやっておりますと同種類のものをあの海域でもやる、そのために、たとえばあの代近の海域で一週間なら一週間程度訓練をやるといたしますと、水も要る、油も要るということで、各護衛艦が水を補給し、油を補給する、そのサービスをするための要員をあそこに置いておく、それを受け取って訓練をする、こういうふうなことになる、こういうことでございます。
  219. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 いま主として父島のことについて伺ったわけですが、母島にもあるいは硫黄島にもあるわけです。それと南鳥島にもあるわけですけれども、母島については現在無人島になっております。さらに、硫黄島につきましては飛行場が中心でありますが、父島と同じような計画があるかどうかですね。現在では父島にのみ五、六十人、硫黄島にまた数十人、南鳥島に十数人か二十何人か配置の計画のようでありますが、母島には何も置かないということでございますか。
  220. 宍戸基男

    ○宍戸政府委員 前提といたしまして、先ほど申し上げましたように、まだ公式なものではございませんで、ごく大筋のものとしてお受け取り願いたいと思いますが、現在われわれが頭に考えておりますのは、父島と硫黄島と南鳥島を対象にしておりまして、母島その他いまの三つ以外の島につきましては、艦艇にいたしましても航空機にいたしましても、訓練基地という対象には考えておりません。また人数につきましても、先生のほうからいま具体的にお示しがございましたけれども、全体として落ちついた姿で、三つの島を合わせまして二百人程度であろうかということを大臣もお答えいたしましたし、私どももそんなことで考えておりますが、たとえば父島が四十人だとか百人だとかいうことにつきましては、まだこれからのことでございまして、直ちに四十人、五十人ということでいまきめているわけではございませんので、その点御了承いただきたいと思います。
  221. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 そうしますと、私たちはあの島を平和な島にしていきたい、小笠原の復興にあたっては、まずそのことを基本的な目標にしていくべきではないか。それについては、旧島民も現島民も戦争の犠牲者となって非常に苦しんでいる関係からも、それはみんな要望しております。しかし、戦略的見地からいって、あの父島というのは、全島が要塞化されたぐらい非常にめぐまれたところでもあるわけです。したがって、旧海軍、旧陸軍の使ったあとが必ず自衛隊の手に移るのではないか。また訓練基地、補給基地とはいっても、戦前に一隻の海軍の船が補給のためあの二見港に入ってきた、何回か補給するうちにだんだん大きくなって、最後には、戦争中にはごらんのような要塞の島になってしまった、四万の大軍があの島に立てこもった、こういう一つの事実があるわけです。ですから、そういうことは今後ないとは思いますが、平和な島として開発する上において、大体打ち出された二百人という数字からいっても、昔の基地をそのまま使うことは広過ぎる。さらに、旧島民、現島民についても、非常に狭い土地であるし、現在国有地が八〇%という現状からいっても、使えるところはすべて開発し、また耕作していきたい、これが旧島民、現島民の願いなわけです。そういう現在までの答弁のような事実であれば、非常に島民も安心するのではないかと思います。したがって、先ほど言いましたいわゆる訓練基地という名前はおかしいわけですね、そういう意味からいきますと。たとえば訓練基地といっても、高射砲なんかの訓練基地にはしないとおっしゃいましたが、戦前はちょうど二見港の真裏あたりに第一砲座、第二砲座、第三砲座というものをつくってバンバンやった。あの島のちょうど裏側、非常に魚のいるところで、非常に漁民が困ったという話を聞いております。もしか同じようなことをするならば、われわれはからだを張っても、そういう立ち入り禁止なんというのはなくすようにやるんだという人も中にはいるわけですね。ですから、海上自衛隊が島の防衛、そして訓練基地というよりも、単なる補給の基地として使う、こういうふうに考えてよろしいわけですね。
  222. 宍戸基男

    ○宍戸政府委員 先ほど申し上げましたように、艦艇のことにつきましては、父島を主として基地に使いますが、その使い方は、先ほど申し上げましたし、いま先生のおっしゃったようなことでございます。また、硫黄島等の航空基地につきましても、あそこに大きな航空部隊を張りつけるというようなことは考えておりませんで、ある期間あの付近で対潜哨戒なら対潜哨戒の訓練をする、その場合に、あそこに発着いたさなければなりませんので、いつ来てもいいように管理部隊を置いておく、訓練が終われば、またそれぞれの内地の基地に帰って行くということで、常時おりますのは三十人からせいぜい百人程度というふうに御了解願ってけっこうだと思います。そういうことが前提でございますので、地域、施設等につきましても、これは主として父島が問題かと思いますけれども、総理府におかれまして、全体の民生関係と防衛関係との調整をはかっておられる。われわれのほうは、必要なものは必要として主張いたしますけれども、不必要な欲張りといいますか、民生を圧迫してまで不必要な基地をほしいというふうには特別に考えておるわけではございません。
  223. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 あの二見港にはかつてアメリカの潜水艦が何回か入港しております。一説には、もぐったままでも入れる、こういうふうにもいわれております。そういう点においては非常にいい二見湾である、こういうふうにいわれているわけでありますが、港湾の整備に従って、おれらくは米軍の艦艇なんかも、あるいは補給や訓練なんかで入港を申し入れてくるかもしれないと思うわけです。しかし、私は、あくまでもあの島は再び基地の島にしてはいけない、こういうふうに考えております。いまの答弁からある程度了解したわけでありますけれども、どうか、そういう飛躍した、またはジョンソン大統領との共同声明にあるような、小笠原地域の防衛をやるのだというような強力な計画を立てないように要望いたしておきます。  次に、外務省に伺いたいのですけれども、この協定は三十日後発効する、このようになっておりますが、発効すれば、だれでもすぐに行けるのか、この点についてはどうでしょうか。
  224. 三木武夫

    三木国務大臣 たてまえとしてはだれでも行けるわけですが、輸送機関の問題がございます。
  225. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 この協定の第三条に「合衆国軍隊が現に利用している硫黄島及び南鳥島における通信施設用地(ロラン局)は、千九百六十年一月十九日にワシントンで署名された日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定に定める手続に従って、合衆国軍隊が使用する。」こういうふうに出ております。私が調査したところにおいては、あそこにありますロラン局の人たちは、アメリカ運輸省の管轄下にある沿岸警備隊であるわけです。この協定によりますと、合衆国軍隊とありますので、どこの軍隊が引き継ぐのか、明確に伺いたいわけです。
  226. 三木武夫

    三木国務大臣 この点については、伊藤さんの質問の結果われわれも勉強いたしたわけでございます。あなたの質問によって外務省の者も非常に勉強をいたした。合衆国の軍隊とは、陸海空、それに海兵隊、それから沿岸警備隊、これをアメリカは軍と言っておる。そうして戦時でありますとか、大統領が指令したときは、沿岸警備隊は軍隊、もう軍そのものになるわけです。いまは運輸省の管轄ですけれども、軍隊であることは間違いない。伊藤さんのおかげで勉強いたしましたことをお礼申し上げます。
  227. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 それではいままでの沿岸警備隊の方がそのまま引き続いているということですね。それは私たちもいろいろ調べておりますが、どこに所属する沿岸警備隊ですか。
  228. 三木武夫

    三木国務大臣 いまは運輸省に所属しております。
  229. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 それは大きく言えばそうでありますけれども、いろいろ地域とか区域とかあるわけであります。たとえば太平洋沿岸の沿岸警備隊とか、いろいろあるわけですが、どこに所属する警備隊ですか。
  230. 三木武夫

    三木国務大臣 在日米軍の指揮下にあるわけです。
  231. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 多少疑義がありますが、そのようにアメリカが言い、外務省の調べでもそうなっているならば、そのとおり軍隊という形で認めなければならないと思うわけです。しかし、私はもう一歩この点もはっきりしたい。協定において軍隊といっても、やはり沿岸警備隊といったほうがいいのではないかと思うのです。たとえば、先ほどお話がありましたが、ロラン局はA、B、Cとありまして、現在硫黄島にあるのはA局ですね。そして南鳥島にあるロラン局はCですね。そして八丈島にあるのはBでございますか、それはもう返還になっておるわけですね。私は、ここではっきりしておきたいことは、運輸省所属の沿岸警備隊としておったほうが、返還についても、八丈島が返還になったと同じように早くなるのではないかと思うのですが、その点についてはどうですか。
  232. 三木武夫

    三木国務大臣 同じことだと思いますよ。
  233. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 次に、大蔵省に伺いたいわけですが、一つは、現在向こうの通貨はドルであります。それで、返還になれば、ドルを日本円にかえる、こういうふうに新聞報道されましたが、この点事実ですか。
  234. 相原三郎

    ○相原説明員 ただいまおっしゃいましたように、現在アメリカ合衆国通貨が法定通貨になっております。返還されれば、当然日本国通貨が法定通貨として通用するわけでございます。したがって、返還の日から一定期間内に円貨に交換するということにいたしたいと思います。
  235. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 これは非常に大事なことなんです。ということは、小笠原返還は、即、次の沖繩返還のモデルケースになる、こういうことで私は重視しているわけでありますけれども、このドルの問題についても、いままでは、奄美大島が返ったときにはドルはアメリカに行ったわけですね。しかし、今度の小笠原のドルの問題については、日本円と交換してこちらに持ってくることができるということになれば、それはそのまま今度は沖繩返還については、日本にとってまた大きな意味での一つのモデルケースになっていくというわけで重視しているわけでございます。それで、一定期間と言いましたが、これは返還と同時に行なうわけでありますか。
  236. 相原三郎

    ○相原説明員 あらかじめ日銀等の職員が円貨を持ってまいりまして、返還と同時に交換いたします。何日間が適当かということは、もうちょっと実情を調査してからきめたいと思いますが、住民の利益をはかりましてきめたいと思っております。
  237. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 もう一つ、旧島民が相当多く帰島を希望しているわけでありますけれども、帰島者に対して一定期間免税措置や減税措置をしてもらいたい、こういう要望があるわけです。大蔵省としては、その点どのような考えがあるか、伺いたいと思います。
  238. 加藤泰守

    加藤(泰)政府委員 私からお答えさせていただきたいと思います。  暫定法案につきましては、特に免税の規定等は規定しておりません。ただ、国税、地方税の経過措置として、多少の特例を設ける道を開いているわけでございます。したがって、課税関係はどうなるかということが当然問題になるわけでございますが、返還日以降の所得についての問題、所得税について申し上げればそういう問題になりますので、少なくとも本年度におきましては、かりに七月からといたしましても、六ヵ月の所得、こういうことになります。したがって、その六ヵ月の所得に対して一年分の控除その他の控除をし、それから税金の関係も、普通の税法が適用されることになった場合に、大体において所得の関係から考えますれば、所得税は納める必要がないような状態ではないか、そういうふうに判断しております。
  239. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 これは復興計画のときにもいろいろ問題になりますし、また、もう少したってからでもこの問題は検討をしていけばいいと思うわけです。  次に、運輸省の方に伺いたいのですが、先ほどもお話がありましたように、現在本土から約千二百キロぐらい遠くにある小笠原に対して全然船便がないわけでありますが、小笠原返還になればどういう定期航路の構想があるか、それを伺いたいと思うわけです。——それでは運輸省が来ていないようでありますから、総理府に伺いたいのですが、意識調査の結果であります。一時中間発表になりましたが、その後の意識調査の現況について伺いたいと思います。
  240. 加藤泰守

    加藤(泰)政府委員 この前の一応の中間的な発表以降、ちょっと集計をしておりませんので、まことに申しわけございませんが、今日のところは、この前の中間発表の状態ということでごかんべん願いたいと思います。
  241. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 それでは、外務大臣がいらっしゃる間ひとつ交代いたしまして、また質問を続けさせていただきます。
  242. 秋田大助

    秋田委員長 松本善明君。
  243. 松本善明

    松本(善)委員 小笠原に入ります前にちょっとお聞きしておきたいのは、前に安保条約の事前協議条項についてのゼントルマン・アグリーメントの中身を文書にして出してくださいと要求しまして、外務省では四月二十五日付で「日米安保条約上の事前協議について」という文書をいただきました。その内容は、   日本政府は、次のような場合に日米安保条約上の事前協議が行なわれるものと了解している。  一、「配置における重要な変更」の場合    陸上部隊の場合は一個師団程度、空軍の易合はこれに相当するもの、海軍の場合は一機動部隊程度の配置  二、「装備における重要な変更」の場合    核弾頭及び中・長距離ミサイルの持込み並びにそれらの基地の建設  三、わが国から行なわれる戦闘作戦行動(条約第五条に基づいて行なわれるものを除く。)のための基地としての日本国内の施設・区域の使用こういうものでありました。非常に簡単なものでありまして、この中には日米間の口頭約束ということはどこにも書いてないのですけれども、これは単に一方的な了解だという趣旨でありますか。
  244. 三木武夫

    三木国務大臣 これは新しい安保といいますか、安保条約の改定が行なわれた場合に、しょっちゅう日米間で話し合って、文書には残しておりませんけれども、日米両国でこの点は了解されておる。こういう場合には事前協議の条項が発動するということは、日米の了解となっておるわけでございます。文書にはなっておらない。しかし、この点に対しては日米間でよく了解しておる、こういうことでございます。
  245. 松本善明

    松本(善)委員 そうすると、日米間で了解しているということは、口頭約束だというふうにいってもいい、こういうことでありますか。
  246. 三木武夫

    三木国務大臣 口頭約束といいますか、口頭了解といいますか、そういうことばを使ってけっこうだと思います。
  247. 松本善明

    松本(善)委員 これ以上の了解はないというふうに理解をしていいのですか。
  248. 三木武夫

    三木国務大臣 そのとおりでございます。
  249. 松本善明

    松本(善)委員 この点についての質問は、また機会をあらためてしたいと思います。  小笠原諸島は、沖繩とともに、軍事占領とサンフランシスコ条約第三条の規定によって、戦後二十三年間不法に日本本土から切り離され、アメリカの全面占領のもとに置かれてきました。このたび小笠原返還協定によって、アメリカ小笠原諸傷に関し、サンフランシスコ条約第三条の規定に基づく不当なすべての権利及び利益を放棄することになったことは、まことにおそ過ぎはしましたけれども、きわめて当然のことであると考えております。しかし、この返還協定では、第三条で硫黄島及び南鳥島におけるロラン局の米軍使用を引き続き認め、さらに第二条では、小笠原諸島日米安保条約適用下に組み入れ、そのことによって今後どこでも米軍基地を新たにつくることができる道を開いているなど、きわめて重要な問題を含んでいると思います。  お聞きしたいのは、昨年の日米共同声明では、小笠原諸島施政権返還にあたり、日米両国共通の安全保障上の利益が大前提になっております。小笠原諸島アメリカの極東戦略上一体どういう役割りを果たしてきたというふうに政府のほうでは考えておられるのか。
  250. 宍戸基男

    ○宍戸政府委員 アメリカから見ました戦略上の役割りにつきまして、アメリカの国防省が六七年の五月に声明をしておる中で、そのことに触れておりますが、その趣旨は、小笠原諸島は自由世界の主要な海路の防衛と監視という点で、また第二次防衛線として重要な位置を占めている、これらの諸島は、沖繩とかフィリピンなどにある複雑な機能を持ったアメリカの基地をバックアップする役割りを果たしている、こういうことを言っておりますが、これに尽きておるかと思います。
  251. 松本善明

    松本(善)委員 わかりました。  さらに、この共同声明が発表された後に、マリアナ海軍司令部の司令官であり、小笠原、マリアナ諸島の副軍政官でありますジョーンズ海軍少将が、小笠原の持つ戦略的重要性はもちろん言うまでもない、返還協定交渉が始まった場合でも、日米両国の安全という面では相互に十分に認識されるだろうということを言って、国防総省の、いまの答弁にありましたことをさらに裏づけるような発言をしております。それからまた、昨年十一月十三日、日米共同声明の直前にも、アメリカ政府当局者は、小笠原が非常に便利な戦略的な位置にあることを認識している、だから、緊急事態発生のときはこれらの価値が重要性を増そうということも言っております。  それから、もう一つ申し上げておいて聞いたほうがいいと思うのですが、国会でも問題になりましたいわゆるブルラン作戦計画、これは幾つもの報道の中に出ておりますが、ブルラン作戦計画では、日本の空域の防衛には、硫黄島に一部移動するサイパン、グアムの航空集団、おおむねB52を中心とする爆撃機主力約二百五十機を充てる、硫黄島は航空基地、父島は船舶基地としてその役割りを果たすということで、かなり具体的に小笠原諸島の軍事利用が想定をされておるわけです。先ほどこの委員会で、外務大臣が、安保条約に基づく地位協定で基地の使用アメリカ軍のほうから申し出るということはたぶんないのではないかという趣旨の答弁をされました。これは、いま私が申し上げたことや、あるいは先ほどの防衛局長の答弁から見て、ちょっと考えられないことではないかと思いますが、この点はいかがでしょう。
  252. 三木武夫

    三木国務大臣 硫黄島がB52の基地になるというのですか。
  253. 松本善明

    松本(善)委員 移駐してくる……。
  254. 三木武夫

    三木国務大臣 そういうことはわれわれは考えておりません。B52の基地に硫黄島がなるなどということは考えておりません。したがって、私は、小笠原に対してアメリカが現在のロラン局以上に日本の施設・区域の使用を拡大するような要請を日本政府になされるとは考えていないのであります。あるまいということでございます。
  255. 松本善明

    松本(善)委員 私の聞いておりますのは、先ほど具体的にB52について言いましたのは、ブルラン作戦計画として報道されている中にあることで読んだわけでありますが、全体として外務大臣にお聞きしたいのは、先ほど防衛局長の答弁にもありますように、この小笠原諸島の戦略的重要性が変わらないということについては、そして緊急な事態にはここを使わなくちゃいかぬという趣旨の言明が幾つもある。先ほど防衛局長の答弁をした国防総省の言っております内容も、そういう趣旨を言っている。こういう点から考えると、ここを米軍が使わない、使うことは予想されないということは、とうてい理解ができないのです。B52の基地になるかどうかということではなくて、全体として、こういうような評価ができるのではないだろうかということをお聞きしているのです。いかがでしょう。
  256. 三木武夫

    三木国務大臣 まあ、非常に緊急な事態がくれば、それは基地の使用ということも問題になってくるかもしれませんが、それは非常な緊急事態であって、平時に——平時にといいますか、そういう事態のこないときには、小笠原の施設とかあるいはまた区域が非常に拡大されるとは思っていない。緊急事態ということになれば、それはそのときの状態によってそういう必要が起こってくる可能性はないとは言えますまいけれども、われわれはそういう事態をいまは想定してないものですから、アメリカの基地の拡大ということは考えてはいないということを申し上げておるのでございます。
  257. 松本善明

    松本(善)委員 施政権返還された後も、硫黄島には大型ジェット機のような飛行機があり、父島の二見港あるいは南鳥島の飛行場などはやはり米軍が使用できるということになるのではないかと考えられるわけですが、この点について、増田防衛庁長官は、かつて外務大臣も同席をしておられるところで、四月十五日の参議院の予算委員会で、こういうふうに言っているのです。「南鳥島に千三百メートルの飛行場がございます。この飛行場の管理方も米軍から頼まれております。」管理方を米軍から頼まれておる。「そして米軍と日本の自衛隊とで共用するということは、小笠原島における硫黄島の飛行場と同じでございまして」云々、こういうふうに言っておるわけです。また板谷海幕長は、防衛の主任務が今後日本側にあるといっても、日米安保体制のもとで必要があればアメリカが随時使用してしかるべきであり、今後アメリカとの協調、協力の中で防衛線を固めていきたいということで、アメリカとの共用というようなことが言われ、あるいはアメリカから基地の管理を頼まれているというようなことが言われるということは、私はたいへん不見識なことではないかと思いますけれども、外務大臣はどう考えられますか。
  258. 三木武夫

    三木国務大臣 いまはアメリカが管理しているわけですね。それがいなくなるわけですから、飛行場の管理は日本に移るわけですよ。ロラン局などに対していろいろ補給するでしょう。ものを持ってこなければならぬですから、向こうもやっぱりそれは使わざるを得ないわけです。日本の側が管理して、それをアメリカも使わしてくれよという、そういうことであります。これを日本のほうで、アメリカから施政権が返されて、そうしてアメリカから頼まれるというのはちょっとおかしいと思いますね。やはり、まあ使わしてくれよということをアメリカから頼まれるので、この飛行場の維持をアメリカから日本に頼まれるという性質のものではない。施政権が返ってくればですね。
  259. 松本善明

    松本(善)委員 その点、また防衛庁長官にも次の機会に聞きたいと思いますが、このロラン局の使用を硫黄島と南鳥島について認めておるわけですが、これはどういうわけで認めることになったのか、簡単に説明していただきたいと思います。
  260. 三木武夫

    三木国務大臣 一つアメリカが強く希望をした。あるいはまた、このロラン局が、これは電波灯台とでもいうのですか、アメリカばかりでなしに、受信機を持ったものはだれでも利用できるということであり、ロランのA局などの電波は、日本の漁船などでもずいぶん利用しておる面もあるわけです。それとまた、ロラン局のC、これに対しては、なかなかこれは精密な一つの電波灯台とでもいうべきもので、日本に移管されても、いま日本がこれを管理していくということにはまだ少し日本の体制が整ってないようですから、こういう三つの点から、日本は、日米安保条約によって引き続いてロラン局の使用アメリカに認めることが適当である、こういう判断に達したわけでございます。
  261. 松本善明

    松本(善)委員 四月二十四日の参議院の本会議で佐藤総理大臣は、ロランCは、ただいまの状態では軍用のみに使われることになりますという答弁をしております。これは、ほかの漁船やその他民間にはこれに応ずる受信機がないからというような趣旨のことのようです。これは間違いありませんか。
  262. 三木武夫

    三木国務大臣 いまは軍用が中心になっておるようです。使えぬことはないらしいですね。宇宙開発なんかにも使えるようですけれども、しかし、現在は受信機の関係もありますから、ほとんど軍用である。Aのほうは、いま私が言ったように、漁船なんか、あるいは飛行機なども使っておるということであります。
  263. 松本善明

    松本(善)委員 現在は軍用にしかロランCの場合は使われていないということは事実だと思うのですが、としますと、ロランCは軍事目的のためにつくられたものであるということは否定できないのではないかと思いますが、この点については政府の認識はどうでしょうか。
  264. 三木武夫

    三木国務大臣 そう言っていいと思います。
  265. 松本善明

    松本(善)委員 それから外務大臣、やはりこのロラン局に関係した質問で、四月十五日に参議院で、これは「当然に安保条約適用を受けるわけでありますから、基地防衛に対する責任は伴ってくると思います。」安保条約日本アメリカの基地の防衛の責任があるわけでしょうか。それは言い違いであるというならそれでけっこうです。
  266. 三木武夫

    三木国務大臣 それはやはり日本国内においてアメリカの基地が攻撃を受ければ防衛の責任がある。
  267. 松本善明

    松本(善)委員 硫黄島及び南鳥島のロランCは、北海道十勝太、沖繩のロランCとともに、西太平洋海域においてB52などの軍用航空機、船舶がみずからの位置を正確に知るためにつくられたものであると考えております。一九六四年の十二月八日以後は太平洋にポラリス潜水艦が配置をされました。これは、ポラリスは目標に向けて正確に発射できるようにするために最も正確に自分の位置を知る必要があるのだと思う。だから、ポラリス潜水艦は当然このロランCを使用しているというふうに思いますけれども、政府はこのことをそういうふうに認識をしているかどうか。
  268. 三木武夫

    三木国務大臣 ポラリス潜水艦もこれを利用する。ポラリス潜水艦が自分の位置を確認するためにロランCがあるのではない、しかし、ポラリスも利用をするということでございます。
  269. 松本善明

    松本(善)委員 ロランCは、ポラリス潜水艦にとっては欠かすことのできないアメリカの核戦略の目というような重要な役割りを果たしておると思います。このロランCを認めるということは、ポラリス潜水艦は始終水の底に、海の中にもぐっていなければならないという性質があるから、必ずしも日本本土へ公然たる入港を必要としないと思います。だから、いますでにやられております攻撃型の原子力潜水艦の日本寄港を許しているということと、同時に今度のロランCを小笠原諸島で確保するということは、全体として日本アメリカの潜水艦を使用した核戦略の核基地になるということを意味するのではないかと私は思いますが、ロランCとポラリスとの関係についての外務大臣考え方をお聞きしたいと思います。
  270. 三木武夫

    三木国務大臣 核基地になるというようなことはありません。ロランCは、ポラリスばかりではなしに、ほかの軍艦も、その電波を受けて自分の場所を確認することになるわけですから、ポラリスのためばかりではないわけです。それで、ポラリスが来たならば、これを入港は認めない。核装備の軍艦の寄港は持ち込みである、入ってくれば核の持ち込みである、そういうことで認めないというのですから、ロランC局を認めたから基地になったということは、少し論理の飛躍である。
  271. 松本善明

    松本(善)委員 私の言いますのは、ポラリスというのは、性質上寄港する必要がない。ただ、ロランを認めるということは、ポラリス戦略にとっては非常に大事なものなのだという趣旨のことを言っておるわけであります。  ちょっと先を急ぎまして、もう一つ外務大臣にお聞きしておきたいことは、小笠原諸島条約区域に入れてアメリカが結んでおる相互防衛条約、これは何と何とあるのですか。
  272. 佐藤正二

    ○佐藤(正二)政府委員 とっさのお尋ねで、私も全部申し上げられるかどうかわかりませんが、米比条約、米韓条約、米華条約、ANZUS、SEATO、それだけじゃないかと思います。
  273. 松本善明

    松本(善)委員 いま条約局長の言われた条約の中で、小笠原返還協定の発効によって、小笠原諸島条約区域からはずれるのは何と何ですか。
  274. 佐藤正二

    ○佐藤(正二)政府委員 小笠原が返りますことによってはずれるのはないと思います。
  275. 松本善明

    松本(善)委員 そうすると、小笠原に関しては、米韓、米華、米比、ANZUS、SEATO、これは全部そのまま残る、こういうことになるわけですか。
  276. 佐藤正二

    ○佐藤(正二)政府委員 この種の条約をすべて私いま当たってみたわけではございませんが、大体の例文といたしまして、太平洋地域ないしは西太平洋地域における米軍に対する攻撃というような形になっておりますから、小笠原自体に米軍がいなくなれば別でございますが、米軍がいる限りにおいては、常にその同じ条約区域に入ってくると思います。
  277. 松本善明

    松本(善)委員 そうすると、いま申しましたようなアメリカとの条約は、それぞれ相互防衛条約だと思いますが、そうしますと、小笠原返還と同時に、これらの諸条約安保条約とで、いわゆる多角的軍事同盟の中に日本小笠原を軸として直接入っていくという結果になるのじゃないか。その点についてはどう考えられますか。
  278. 佐藤正二

    ○佐藤(正二)政府委員 その点はたびたび御質問を受けているわけでございますが、太平洋地域における米軍と申しますと、実は日本の中におります米軍も入っております。したがって、小笠原が返ってきたからその点が変更されたということではございません。ただし、集団防衛という形ではございませんで、日本アメリカとの間で安全保障条約が結ばれておりまして、小笠原の米軍が攻撃された場合には、日本についてはそれに対する共同防衛の義務が発生するわけでございます。それ以外に別々の条約で別々に防衛義務が発生するわけでございます。したがって、集団防衛と申しますのが、ある司令部を持ちまして、一種の集団として動くという意味でおっしゃっておるのでございましたならば、そういう形にはならないようでございます。それぞれの条約でそれぞれの義務が発生いたします。自分の国が攻められているわけでございますから、日本の場合は当然でございますけれども、たとえば小笠原が攻められた場合に、豪州に、日本における米軍の防衛の義務が発生する、こういう形になるわけでございます。
  279. 松本善明

    松本(善)委員 条約としては個々ですけれども、小笠原が攻撃をされるということになると、先ほど言いましたような各条約が発動し、安保条約も発動する、結果的にはそうなるということですね。
  280. 佐藤正二

    ○佐藤(正二)政府委員 その場合にどういう形で防衛が行なわれるかという問題は、これはまた別の問題だと思います。これは日本条約的には義務が発生いたします。義務が発生いたしますが、日本自体が豪州の軍隊を入れて防衛しなければならないか、この問題は、日本自体の主権の問題がございますから、これはまた別の問題だと思います。
  281. 松本善明

    松本(善)委員 確かめてだけおきますが、そうすると、条約的には発動する状態になる、これは間違いないですね。
  282. 佐藤正二

    ○佐藤(正二)政府委員 さようでございます。
  283. 松本善明

    松本(善)委員 それからもう一つ、私聞き間違えたのかどうかわからないのですけれども、小笠原が返ってこなくても、いまでもそうだという趣旨のことを言われたのですか。
  284. 佐藤正二

    ○佐藤(正二)政府委員 日本におります米軍、これはある条約におきましては西太平洋にいる米軍という、その西太平洋というところを日本に置きかえればそういうことになるわけでございますから、その場合に豪州に義務が発生することは事実でございます。日本におります米軍が攻撃を受けた場合には義務が発生することは確かでございます。しかし、実際に動くかどうかということは、これはまた先ほど申し上げたとおり別な話であります。
  285. 松本善明

    松本(善)委員 そうすると、いま日本小笠原が返ってこなくても同様の状態である。そしてこれは個々に確かめておきたいのですが、米比、ANZUS以外のものも、米韓その他先ほど言いました五つの条約全部発動するということは間違いないですか。
  286. 佐藤正二

    ○佐藤(正二)政府委員 先ほど申し上げました中で、米韓、米華は入っておらないわけです。
  287. 松本善明

    松本(善)委員 米韓以外は全部発動する、いいですね。
  288. 佐藤正二

    ○佐藤(正二)政府委員 米華も入ってないのです。
  289. 松本善明

    松本(善)委員 米韓、米華が入っていない、それ以外は全部入っている、現状でも発動する、こういうことですね。
  290. 佐藤正二

    ○佐藤(正二)政府委員 ANZUS、米比は確実に入っております。
  291. 松本善明

    松本(善)委員 SEATOは。
  292. 佐藤正二

    ○佐藤(正二)政府委員 SEATOも一入っております。
  293. 松本善明

    松本(善)委員 きょうの外務大臣に対する質問は終わります。
  294. 秋田大助

    秋田委員長 伊藤惣助丸君。
  295. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 運輸省の方に伺いたいのですが、小笠原については一ヵ月後に復帰になるわけでありますけれども、一番問題になるのは、本土とのいわゆる交通問題です。そこで、運輸省においてはどのような航路の計画があるか、この点をまず伺っておきます。——それでは、いないようですから、気象庁の方に、増田さんですか、伺いたいと思います。この条約にも、特に南鳥島にある気象観測というものを米軍から引き受けてやる、そういうふうに協定にありますが、具体的にいつ引き受けて、どのような構想でやるのか、まず伺っておきたいと思います。
  296. 増田誠三

    ○増田政府委員 小笠原諸島は、わが国の気象観測上非常に重要な地点でございます。特に台風なり梅雨前線の発生とか、気象を観測します上に非常に重要なポイントになるわけでございます。そこで、小笠原諸島返還になりますと、私ども気象庁といたしましては、ただいまのところ、父島と南鳥島に観測所を設けたいということでいろいろ準備を進めておるわけでございます。  御質問の時期の問題でございますが、条約が有効になりましたら、なるべく早くということで、目下必要な経費等積算いたしております。とともに、南鳥島につきましては、非常に状況がわかりませんものでございますから、最近調査団を派遣いたしまして調査いたしておりますが、いろいろむずかしい問題があるというふうなことが非常によくわかったわけでございます。観測の規模といたしましては、とりあえずはあまり大きなこともできませんので、必要にして最小限、逐次増強するというような方向で進めたいと考えております。
  297. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 硫黄島には気象観測は置かないわけですか。
  298. 増田誠三

    ○増田政府委員 硫黄島につきましても、小笠原返還の話がございました当時検討はいたしたのでございますけれども、現在硫黄島にはアメリカのほうもさしたる気象観測をいたしておりませんし、それから父島、南鳥島の観測をいたしますればとりあえずは問に合うのではないかということで、ただいまのところは計画の上に乗せておりませんけれども、いずれまた、ただいま申し上げましたような二つのほうの観測がある程度整備いたしました暁には、さらに再検討してみたい、こういう方向で考えております。
  299. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 私は、この問題についても二月から聞いているわけです。ちっとも進んでないわけですね。いわゆる返還が一ヵ月後に迫ったわけですから、早急にその計画と構想を打ち出して、実際にそういう重要な拠点であればあるほど急ぐべきである、私はこのことを要望しておきます。  それから海上保安庁に対して伺いたいと思います。いま小笠原の旧島民及び現島民が一番心配している点は、漁業従事者はもちろんのことでありますが、とにかく小笠原の警備が非常に心配である、またはいわゆる三海里以内の魚族についての保護または警備については、いまのところはほとんど無防備に近い、こう言われているわけです。そこで、返還と同時に保安庁が派遣されると思いますが、そのときの具体的な構想があったら伺いたいと思います。
  300. 猪口猛夫

    ○猪口説明員 先生も記憶も新しいと思いますが、昭和四十年の十月に小笠原諸島の南のマリアナ海域で漁船の集団海難がございまして、大きな犠牲を出したのでございますが、その教訓にかんがみまして、昭和四十一年度以降二千トン型の大型快速巡視船を建造することになっております。四十二年度一隻、四十三年度一隻、とりあえず二隻つくることにいたしまして、一隻はすでに就航して、現在マリアナ海域を前進哨戒しておるわけ−でございます。また四十二年度の実績によりますと、小笠原島付近で約二十九件ばかりの海難がございました。これらの海難救助体制のためにも、先ほど申しました大型巡視船の前進哨戒が必要になってくるのでありますが、前進哨戒に関しまして必要なことは、やはり前進の補給基地というものが必要になってまいります。ちょうど小笠原諸島が返ってまいりますれば、二見港が適当な地と思われますので、他の開発計画と勘案いたしまして、給水その他の設備が十分になれば、私のほうも補給の設備をつくりたいと考えておる次第でございます。  なお、御承知のように、父島には、向こうから返還を受けます航路標識も五基ばかりございますので、それらの維持管理のためにも前進基地をつくりたいと思っております。  また、先ほど先生がおっしゃいました沿岸警備の事案につきましては、現在は御承知のように占下領でございまして、いわゆる向こうの領海侵犯等の問題は二、三あるようでございますが、今後はその逆の現象が起きるわけでございますので、先ほど申しました大型高速巡視船を基幹といたしまして、できるだけ今後他の開発計画と照らして前進基地を設置していきたい、かように考えておる次第でございます。
  301. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 海上警備についてはいま伺いましたが、小笠原海域といいますのは、非常に広い地域にわたるわけです。そして計画には、まず父島にということから、保安庁の計画も父島を中心としているのではないかと思うのですが、この点はいかがですか。
  302. 猪口猛夫

    ○猪口説明員 先ほども申しましたように、父島が一番かっこうの地と予想されておりますので、他の開発計画と関連いたしまして、海上保安庁では父島の二見港を希望しておるわけでございます。
  303. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 そこで、私は伺いたいことは、現在旧島民の方の話も、また現地に行ってきた人たちの話、私も行ってまいりましたけれども、確かに父島と母島は三十二キロくらいの間隔です。硫黄島は百五十五キロぐらいですか離れておりますが、しかし、父島を中心としての海上警備だけでは、いわゆる真の魚族の保護というのはできないのじゃないかと思うのです。たとえば、母島等に行って上陸してみると、無人島でありますから、タマナの銘木にするような大木や、また母島の近海にあるサンゴ礁や、またはほとんど警備のない母島の近海においてすでに密漁が発生している。それについて、総理府もまた海上保安庁等においても、方針の決定がないからいけないのだ、こういうことで、それらの漁業者は、もう政府なんかたよったってこれではどうにもならないということから、最近では現地に行き、また自衛手段をとらなければならない、帰島の許可が出れば即刻に行って、そして自衛もやるのだというような話も私は伺っております。そういう点からいいまして、私は父島を中心とした海上警備だけでは、真に小笠原海域の海上警備をやり切っていくということにはならないと思うのです。そういう小笠原の、前に住んでおった少なくとも五島周辺の領域または領海というものの警備は行なうべきじゃないかと思うわけです。その点についての御見解を伺いたい。
  304. 猪口猛夫

    ○猪口説明員 小笠原周辺におきます主として水産関係の警備、取り締まり等につきましては、水産庁におきましておそらくもう取り締まり関係方針なり基準なりというものが決定されると思っておりますが、それによりまして、海上におきます取り締まりは、水産庁の監視船なり、あるいは都条例的のもので取り締まる案件がありますれば都の監視船も加えまして、当庁でも警備、取り締りに当たっていくわけでございますが、その事案の内容、規模等によりまして、常時二見港以外のところにそういう拠点をつくる必要があるかどうかということにつきましては、まだ十分検討しておりません。たとえば、もし現状のままでございましても、その案件が予想され、あるいは発生いたしますれば、直ちに内地から増強もできる状況でも一ございますので、その時々の事案あるいは予想されます案件等につきまして善処していきたいと考えておる次第でございます。
  305. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 あとのほうの話を期待するわけでありますけれども、やはり事実母島が無人島であるということ、また母島近海には相当の魚族やサンゴ礁や、また母島の中には一本三十万もするような銘木になるような大木があるということ、サンゴ礁にしても、それをそのまま日本に持ってくれば、やはり数万から十数万に及ぶものがあることは事実なわけです。また、実際にそういうことをやっている人もいるわけであります。そういう点からいっても、やはり真に小笠原の住民、原島民の今後のことを思うときに、積極的にそれらの警備も行なうべきじゃないかと思うのです。そのことを伺っておきます。
  306. 猪口猛夫

    ○猪口説明員 水産庁ともよく協議いたしまして、先生の御趣旨に沿うように措置をしていきたいと思っております。
  307. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 自治省に伺いたいわけですが、復興計画については、私たちは、暫定措置法と同時に、たとえば復興計画の全部ではなくても、ある程度のビジョンを打ち出すべきであった、このように思っているわけです。現在総理府において意識調査を行なっておりますが、その意識調査が進まないというようなことを総理府が言っておるようでありますけれども、なぜ進まないのか、またなぜはっきりしないのか。その根底には、やはり政府がどのような予算規模、どういう復興計画のビジョンがあるのかわからない。そこで、このまま帰っても不安である。また、ノスタルジアにかられて帰ったとしても、生活に追われてまた戻ってくるようなことになってはしようがない。そういう意味で意識調査もおくれている。また、なかなか調査表に書けない原因にもなっているわけなんです。そこで、四十四年度のときにちゃんと予算もつけて復興計画を出すというお話は聞いておりますけれども、しかし、旧島民のほとんど全員が、その復興計画を早く出してほしい、ビジョンを早く打ち出してほしいと言っておることは、自治省においても聞いていると思うわけです。前回、一部の報道によって、帰島二千名ぐらいを目標に立てたのではないかと思われるものが発表されましたが、その後検討しているとは思いますけれども、計画及びビジョン等がまとまっている部分の中で、これだけは発表できるというものを伺いたいわけです。
  308. 遠藤文夫

    ○遠藤説明員 実は復興計画については、前々御意見があったわけでございますけれども、お話もありますように、これは総合的な全体的な計画でございますので、各種の問題が関連しておるわけでございます。たとえば、これは相互関連の問題でもございますが、総理府でやっております旧島民の帰島の見込みとか、あるいは本土との交通の問題だとか、産業の振興の見通しとか、それを全体的にいろいろ検討しなければならないわけで、これは当然私のほう限りで決定できるわけのものでもないので、関係各省で、いま先生御存じのように、それぞれ専門的な分野から検討しておるというような状況で、その辺との連絡をとりながら研究を進めているという段階でございまして、復興計画としてここで構想あるいはビジョンとして申し上げるようなところまでいま固まっておりませんので、その点御了承いただきたいと思います。なるべく早く御趣旨を体しまして成案を得ますように努力していきたい、かように考えております。
  309. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 先ほどからも私は各省の方に申し上げておりますように、非常におそいんですね。ほんとうに国民は早期返還を望み、また旧島民はできるならば一日も早く帰りたい、これが国民の声です。特にそういう声を政府はいち早く知って、その万全対策を講ずることが一番大事ではないかと思うわけです。復興計画についても、私は二月から機会あるごとにいままで伺っております。いまだにその発表の段階ではないという話でございますけれども、意識調査に伴ってある程度の基礎は固まった、このように私は聞いてもいるわけです。たとえば父島をベースキャンプにして、そしてだんだんに母島、そして硫黄島というふうに開発していく、こういうふうな話も大体大臣からは承っているわけであります。そういう点について、もう一歩進めた計画、また基本的な方針が出されなければしょうがないと思うのですね。  そこで伺いたいわけですけれども、その一番大事なことは、父島をベースキャンプにするぐらいだったならば、実際に母島にも三十トンぐらいの船はつけることは可能でありますし、硫黄島においても、やはり戦前においてもいかりをおろし、そしてはしけで運んで物資を補給したこともあることからいっても、その三つの島は少なくとも同時に手をつけるべきである。また、旧島民は特にそのことを強く望んでいるわけなんです。そういう点についてどういう考えか、伺いたいと思うわけです。
  310. 加藤泰守

    加藤(泰)政府委員 私からお答えいたします。  父島は、現在アメリカ軍がおりますし、また二百名の住民がいるということで、ある程度利用されているわけですが、母島は全く無人の島である。また、硫黄島は御承知のように不発弾の問題遺骨処理の問題等がございますので、その各島の実情がそれぞれ違っている関係でこれを同時にといいましても、同じようなスピードというか計画内容でというわけにはまいらぬわけでございます。やはり父島の現在の状況を考えますと、二見湾という非常によい港がございますので、これを活用するということが中心にならざるを得ないわけでございます。したがって、先生のおっしゃったようなベースキャンプを父島に設けてというのは、そういうようなことと、それから現在水道も一応引かれておりますし、もっとも現在の水源だけでは今後帰島した人数によっては足らなくなることは当然でございますので、そういう点も考えなければなりませんけれども、発電の施設もまたあります。そういうような観点から考えますならば、一応父島を根拠にしてということも言えるのではないかと思うわけですが、しかし、このことは、復興計画を立てる段階で、総合的に、また効率的に開発を進めていかなければならぬわけでございますので、先生のおっしゃることも十分考慮いたしまして、計画を進めていくようにいたしたいと思っております。
  311. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 帰島者の援護措置についてでありますが、これは申し上げればたくさんございますが、現在心配しているのは、帰島者に対する移転費用はどうなんだろうか、個人負担なのか、またはある程度援助があるのかどうか。また、住宅資金ははたして援助してもらえるのかどうか。さらに農業、漁業その他の人たちが行くわけでありますが、そのときの建設資金の援助または住宅問題を国としてはどのように考えるのか。また、東京都とどのような連携の上で話し合っているのか。さらに農業に従事する人については、少なくとも三年間くらいは開墾または農地として整備することに没頭し、お金にならないと思うわけです。その間の生活の保障があるのかないのか。もう一つは漁業についてですけれども、はたしてカヌーでとっても、製氷工場なり、または加工場なり、または漁船の買い付けに対する資金の援助があるのかないのか、こういう点が非常に現実的な心配であるわけです。その点についての自治省並びに総理府の基本的な考え方を承っておきたいと思うのです。
  312. 遠藤文夫

    ○遠藤説明員 御指摘がありましたような、たとえば現地におきますところの住宅をどうして建設するかということなどにつきましての、いわゆる帰島の援護というような問題につきましても、これは結局現地をどのような形で復興して、それでそこにどのような段取りで旧島民の方に帰っていただくかということの兼ね合いで、一緒に考えなければならぬ問題でありますので、復興計画の中身の問題として検討させていただきたい、かように存ずる次第であります。
  313. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 私は、あなたのいまのような答弁はだいぶ前に聞いているのですよ。それで早くやる、少なくとも向こうに渡るくらいまでにははっきりする、たとえ予算が伴わなくても、一つの計画や基本線くらいは出さなくちゃならぬという話も私は聞いているわけです。全然それが進んでいないということは、私は怠慢じゃないかと思うのです。先ほどの意識調査にしても、いまは発表段階じゃないというが、実際に一部報道されておるじゃありませんか。そういう点からいっても、私は、もう一歩積極的に、またほんとうに旧島民のことを思い、そして今後の復興開発計画を真剣に思うならば、どんどん促進すべきである、そういうことを要望して、私の質問を終わります。
  314. 秋田大助

    秋田委員長 先刻の松本善明君の質疑に関連いたしまして、外務省の佐藤条約局長より発言を求められております。これを許します。佐藤条約局長。
  315. 佐藤正二

    ○佐藤(正二)政府委員 先ほど松本先生から御質問がございまして、私準備しておりませんで失礼いたしましたが、ANZUS及び米比については、これは先生御指摘のように入っておりますが、SEATOについては入っておらないようであります。その点だけ……。
  316. 秋田大助

    秋田委員長 本日はこの程度にとどめ、次回は、十四日午前十時より理事会、理事会散会後委員会を開会することとし、これにて散会いたします。    午後六時六分散会