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1968-05-08 第58回国会 衆議院 外務委員会 第19号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十三年五月八日(水曜日)    午前十一時十三分開議  出席委員    委員長 秋田 大助君    理事 鯨岡 兵輔君 理事 小泉 純也君    理事 田中 榮一君 理事 野田 武夫君    理事 福家 俊一君 理事 石野 久男君    理事 帆足  計君 理事 曽祢  益君       青木 正久君    海部 俊樹君      小宮山重四郎君    齋藤 憲三君       世耕 政耕君   橋本登美三郎君       福田 篤泰君    松田竹千代君      三ツ林弥太郎君    藤本 孝雄君       毛利 松平君    山口 敏夫君       山下 元利君    山田 久就君       石川 次夫君    木原津與志君       黒田 寿男君    田中 武夫君       田原 春次君    三木 喜夫君       松本 七郎君    伊藤惣助丸君       松本 善明君    斎藤 寿夫君  出席国務大臣         外 務 大 臣 三木 武夫君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      鍋島 直紹君  出席政府委員         経済企画庁調査         局長      矢野 智雄君         科学技術政務次         官       天野 光晴君         科学技術庁原子         力局長     藤波 恒雄君         外務政務次官  藏内 修治君         外務省国際連合         局長      重光  晶君         通商産業省公益         事業局長    井上  亮君  委員外出席者         科学技術庁原子         力次長     田中 好雄君         科学技術庁原子         力次長     成田 寿治君         科学技術庁原子         力局国際協力課         長       川島 芳郎君         科学技術庁原子         力局核燃料課長 萩野谷 徹君         科学技術庁原子         力局放射能課長 赤羽 信久君         外務省条約局外         務参事官    高島 益郎君         通商産業省公益         事業局技術長  藤井  孝君         通商産業省公益         事業局原子力発         電課長     都築  堯君         専  門  員 吉田 賢吉君     ————————————— 五月八日  委員池田正之輔君宇都宮徳馬君、大平正芳君、  橋本登美三郎君、福田篤泰君、毛利松平君及び  山内広辞任につき、その補欠として三ツ林弥  太郎君、山田久就君海部俊樹君、小宮山重四  郎君、藤本孝雄君、山下元利君及び木原津與志  君が議長指名委員に選任された。 同日  委員海部俊樹君、小宮山重四郎君、藤本孝雄君、  三ツ林弥太郎君及び山下元利辞任につき、そ  の補欠として大平正芳君、橋本登美三郎君、福  田篤泰君、池田正之輔君及び毛利松平君が議長  の指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  原子力の非軍事的利用に関する協力のための日  本国政府アメリカ合衆国政府との間の協定の  締結について承認を求めるの件(条約第一二  号)  原子力平和的利用における協力のための日本  国政府グレートブリテン及び北部アイルラ  ンド連合王国政府との間の協定締結について  承認を求めるの件(条約第一三号)      ————◇—————
  2. 秋田大助

    秋田委員長 これより会議を開きます。  原子力の非軍事的利用に関する協力のための日本国政府アメリカ合衆国政府との間の協定締結について承認を求めるの件、及び原子力平和的利用における協力のための日本国政府グレートブリテン及び北部アイルランド連合王国政府との間の協定締結について承認を求めるの件、以上両件を一括して議題とし、審査を進めます。  質疑の通告がありますので、順次これを許します。三木喜夫君。
  3. 三木喜夫

    三木(喜)委員 きのうから原子力協定について質問をしておりましたが、その中で、特に私は、この協定原子炉の事故、それから放射能安全性、こういうことを問題にしておりましたところが、きのうからきょうにかけまして、科学技術庁では、佐世保の港に強い放射能検出されたということで非常に大騒ぎをされたようであります。新聞には詳しく出ておるわけでありますけれども、国会としてこの問題も重視しなければならぬと思うのであります。したがって、きょうは、きのうの質問の順序を変えまして、この問題について若干お伺いしたいと思います。  そこで、最初科学技術庁大臣にお尋ねしたいと思うのですが、いままでこうしたモニタリングにおきまして、異常なこういうデータが出まして、その結果大騒ぎをしたことがやはりあるわけであります。にもかかわらず、今回も、科学を主体にするところの役所のあり方として、私たち外部から見ておって非常に心配なところがあるわけです。寒心にたえぬようなところが出ておるわけであります。  その一、二を申し上げますと、きのうこれを発表する、発表しないということで、人心に非常に不安を与えておる。それから、このモニタリングにおいて記録したところのデータ現実に示されていない。そういう図表が示されるならば、一見して、これは外部レーダーなんかの影響でこういう感応を示したかどうかということがわかるはずであります。放射能測定で、現実潜水艦から出ておるということになりますと、私は、急角度のこういうカーブを描いたところのグラフは出ないと思うのです。順次上がって、そうしてどんどん下がっていく、こういうような形が出てくるんじゃないかと思うのです。そういうものもどうやらきのうは示しておられないように思うのですね。それから、係の方々が相当あわてておられる。きのうの様子を各方面から聞いてみますと、科学技術庁長官をさがしておられるのにもだいぶあわてたようでありますし、発表する、せぬということについても、非常に一般に疑心を抱かせるような発表のしかたをしておるわけであります。  端的に申し上げまして、以上三つですが、私はこの間から言うておるように、科学技術庁は、科学中心にして国民信頼を与えるところの庁でなければならぬという強い希望を持っておるわけであります。にもかかわらず、阿賀野川のあの問題でも、科学技術庁において妙な結論を出すというようなうわさが流布され、それが新聞に載ったというようなこともあります。今回も、またまた国民が一番心配しておるところの原子力潜水艦放射能の問題について、あわてふためいて非科学的な態度で対処したということは、科学技術庁あり方に、今後、信頼を寄せる国民にとっては非常にマイナスになると思うのです。そういう点において、ここで大臣からでもあるいはまた原子力局長からでも、ひとつ詳しく説明していただいて、そういう心配のないようにしたい、こういうぐあいに思うわけであります。そういう立場に立って質問いたします。
  4. 鍋島直紹

    鍋島国務大臣 佐世保港におきまする異常放射能の事件につきまして、ただいま三木先生からそれぞれおしかりなり御要望がございました。技術庁といたしましては、六日来の経過を率直に御報告を申し上げ、また技術的な面につきましては原子力局長からお答えを申し上げたいと思います。  実は六日の朝、御承知のとおり、定時観測をいたしたのでございます。これも御承知かと思いますが、佐世保市におけるモニタリングポスト、それから海上保安庁に委託いたしておりまする、十時からでございますが、定時観測が行なわれまして、各所を観測した後に、原子力潜水艦の停泊しておる百メートル先の一、二の地点におきまして、実は水中においても、あるいは空中におきましても、大体十倍ないし二十倍近い観測値検出したのでございます。その報告が参りました点につきまして、その報告が来たのが昼前後、午後にかかったころであったかと思います。この検討については、いわば多少の疑問が、私もよくわかりませんが、技術面から持ち出されましたことは、その上昇角度の問題と、それから水中空中とが同様に同じくらいいわば異常値になるということは、普通一般のこうした放射能問題等においては、放射能の流出といいますか、放出と申しますか、そういう点においてはあり得ないと考えられることである。したがって、ここに観測といいますか、計測と申しますか、はかり方の点の故障か、あるいははかり方のまずさか、何か別途の原因があるのではないか。これらのことについての研究をしなければ、どうもその点について問題があるのではないか。あるいは一地点のみ、その地点だけ異常に検出されるという点につきましても、率直にいっていろいろ疑問がある。  そこで、その問題はそれとして、直ちに再度観測に入ることをお願いをして、指令をしまして、午後すぐ観測準備を整えていたしたわけでございます。そして直ちに行なった第二回目の観測が、午後四時ないし五時ごろになったかと思いますが、その際は特に入念にやってもらうことにいたしますとともに、ただ水中空中のみならず、その付近、特にその近所の海水をも採取してきて、それを、計器の故障であってはいけませんので、さらに別途その海水を持って帰って検出をするというようなことで、それを六日の午後から七時、八時くらいまでかかったわけでございます。そうしましたら、その際においては何ら異常を認めなかったということで、一応、率直に申し上げますと、それで経過発表すべきであるかどうかという点でいろいろ論議をいたしましたけれども、少なくとももう一ぺん、七日の朝、正確に今度はさらに入念にはかることによってその実態を確かめたい。その後においてその経過発表することのほうがよろしいのではないかというようなことで、七日の朝になりまして、さらに再度の調査を行ないまして、そして空中にも、あるいは水中におきましての検出にも異常がなかったものでございますから、その結果を七日の午後に大体取りまとめまして御発表申し上げたような次第でございます。  なお、この間におきまして、佐世保市のモニタリングポストは終始一貫異常を認めていないという実態もございました。  また、最初異常値を発見しました直後におきまして、もしその事態心配する事態になれば、直ちに外務省を通じてアメリカ大使なり何なりにそれを通報し、適宜の処置をとっていただくとともに、政府としても、直ちにとる準備はそれぞれ官房長官等にも連絡をいたしまして、準備はいつでも緊急体制に備え得るように整えておったのでございます。出ました数値が十倍ないし二十倍といいますのは、私も学者じゃございませんからわかりませんけれども、大体千倍くらいからいろいろ警戒警報に入って、危険と——危険といいましょうか、警戒しなければならぬ数値だそうで、十、二十倍というのは、異常だそうでございますけれども、いわば中共の爆発等放射能等によることに比しても、まだまだその程度に至らない。まあこれは上空の話でございますけれども、そういったようなことで、一般的に被害を与えるとかどうとかいうようなことはない状態であるという技術的な見解等も聞きまして、私はしろうとですから、この点は断定できませんけれども、したがって、そういったことがはっきりした上で直ちに緊急体制に移り得るという準備を整えて実は進めてまいりましたが、幸いにも、先ほど申し上げましたように、第二回目の調査、第三回目の七日朝の調査においても異常値を認めてない。そこで一応ここに大体の結論を得て発表するということにいたしたわけでございます。  この間、あるいは第二回の調査後に発表することのほうがよかったのではないかというふうに私自身は反省をいたします。この点は念には念を入れて発表した点がございました。多少その辺にいろいろ疑惑を、あるいは御不安の点を国民方々にお招きいたしましたことは、その手段方法については私は率直に反省をいたしておる次第でございます。今後、かかることもないとは思いますけれども、十分今回の成果を取り入れまして、国民に御不安を与えないように、私は最善を尽くしてまいりたいというふうに考えております。  以上、経過を御報告申し上げます。
  5. 三木喜夫

    三木(喜)委員 端的に申しますと、今回非常に心配をばらまいたその一番中心は、やはりそういうグラフにあると思うのですね。実物をそこにお持ちですか。
  6. 藤波恒雄

    藤波政府委員 いまおっしゃいます測定の結果につきましては、数字はすでに電話で届いておりますけれども、グラフにいたしましたチャートは現在向こうから輸送中でございまして、まだ、私ここへ出てまいりますまでにはこちらに到着いたしておりません。到着いたしますれば、さらに詳しい分析判断ができることと思っております。
  7. 三木喜夫

    三木(喜)委員 私はそこが問題だと思うんですよ。きのうからみんなが心配してどうだどうだと言っておるのに、うろたえておきながら肝心のものをつかんでない。これが私は非科学的であり、その部署につく人のあり方として問題だと思うのですよ。見せてくださいと言えば、きょうない。もはや二日もたって、二回も調査さしたのでしょう。水までとってきたのでしょう。それならば、科学技術庁としては当然そういうものを入手すべきですよ。警察のルートを使ってもいいし、あるいは新聞社にお願いして、そうして電送写真でやってもいけるのです。そういう緊急事態に対処する——これがいまあなた方かおっしゃるように、平常の十倍とか二十倍、まあ人体にはあまり影響のない程度だった、中国の核爆発の実験の放射能よりも低かったんだ、まあ安心だというようなことなのですけれども、安心だと言うより前に、安心し得るところの科学的な運び方を皆さんがしてくれなかったら、国民はやはり不安に思いますよ、きのうから私も科学技術庁様子を見ておりまして、新聞社が詰めかけてたいへんなことだったように思いますが、新聞なんかを見ますと、やはりその不信感が出ていますよ。なぜそういう方法をとられなかったのか。緊急事態に対してそういうことをやっておかなかったならば——こんな問題なんかももう一刻を争うような問題ですし、国民に早く不安を除去するように対処しなければならぬ問題であります。私は、あなた方のそういうきちっと測定されたところのグラフがもう入っておるかもしらぬと思って、できれば見せてもらいたいと思ったのですが、数値は押えておられる。私は、これはレーダーなんかの影響だったということになると、急角度に上がって、そしてまた下がると思うのですね。そういうことがどういう様子を示しておるのですか。その様子を示しておることによって、また海水を取ったり、四時ごろにもう一ぺん調査をしたり、それからまた翌日も調査したりしなくても、これはかくかくかくのごとくなっておりますということは言えると思うのです。原子力局長、あなたを責めるわけじゃありませんけれども、やはりそういう体制を私たちはとってもらいたいと思うので、その辺をひとつ聞きたいと思います。
  8. 鍋島直紹

    鍋島国務大臣 いま三木先生の言われますように、データ等は、やはり電送写真等で送れるように当然しなければならぬことであったと思います。その間の事情は、私しろうとでよくわかりませんが、手落ちがあったと思います。したがって、今後そういうことがないようにわれわれ原子力局に申しまして、十分準備を整えておきたいと思います。
  9. 藤波恒雄

    藤波政府委員 ただいま大臣が申しました趣意に沿いまして、私も努力いたしたいと思います。  なお、若干補足して申し上げますと、先生もお話の中で触れられましたように、今度の数値変動状況の観察をいたしますと、海水におきます数値、それから空間におきます数値を同時にはかっておるわけでございますが、異常が発見されました時点での数字は、両方とも比例して変動しておるような数字が出ておるのでございます。普通の汚染物が何か海水に流れ出したといったようなことを想定した場合には、そのような数字があらわれることはちょっと常識的に考えられないというようなことからいたしまして、また、その前後が通常と全然変わらないオーダーの数字であるといったようなことからいたしまして、先生もいまちょっとお触れになりました、たとえば電波による測定機への誘導妨害というようなものであれば、そういう現象が起こり得るということも考えられますので、それもたぶんその原因ではないかというぐあいに考えておりますが、なおチャートが参りましてからそれを確かめたいと思います。
  10. 三木喜夫

    三木(喜)委員 もちろんそうですけれども、電話数値なんかをちゃんと押えたということでしょう。そうすると、急角度に変わっておるかどうかということは、グラフを見なくてもわかると思うのです。その点はどうですか。
  11. 藤波恒雄

    藤波政府委員 ただいま申し上げましたように、前後の状況、それから海水空中におきます数値変動状況等から見まして、われわれはそのように判断をいたしております。
  12. 石野久男

    石野委員 関連質問ですが、大臣にいまの件で。発表のしかたですが、放射線量が流れ出すことについての危険というものは、周辺一般地域住民あるいはまたその他、たとえば海底であれば海底の海産物とかなんとか、いろいろなものに対して警戒しなければならないわけですから、これはもう時間がたって薄めてから発表をしたのでは何の意味もないのです。一番危険なときに即刻発表しなければ、周辺地域住民に対する危険防止ということはできないと思うのです。今度の場合のように、だんだん信憑性を確かめてからやるということになると、これはかえって危険性一般の人々に広げてしまう結果が出てくる。この態度は非常に間違っておると私は思うのです。ことに空中である場合は人体にすぐですが、海中であれば、軟体動物とかなんとかにはそれがそのまま吸収されていくわけです、そういう半減期の長いものでも短いものでも。それで、やはり発表のしかたについて、いま三木さんからも話があったけれども、今度の科学技術庁態度というのは非常に間違っておると思う。この考え方は改めてもらわなければいけない。どんな場合であっても、そういう現象が起こったときは、すぐ発表する態度をとる用意がなければいかぬと思いますが、その点について、ひとつ長官の所見を聞いておきたいと思います。
  13. 鍋島直紹

    鍋島国務大臣 先ほど経過報告を申し上げましたように、今回の場合におきましては、大体数値の出ましたのが午後一時か二時ごろで、それからこちらに通報があったかと思います。そこで、再調査を一方命ずるとともに、その数値検討に入らせておったわけでございますが、まあ十倍、二十倍等では人体に十分安全であるという見地のもとに、再調査の結果を待ったというのが今回の実情でございます。しかし、いま石野先生の言われる事態もわかりますので、これらのことにつきましては、今後住民方々の御不安と、さらに直接被害等も考えまして、発表のしかたは再検討を加え、また十分反省してまいりたいと考えております。
  14. 帆足計

    帆足委員 ちょっと関連してお尋ねしたいのですが、だれしもきのうの新聞心配しているわけですが、現在の程度では人体に害は明確にないわけですか。現在の水準では、大量に使うようなことがあってもありませんか、その点お尋ねしておきたい。
  15. 鍋島直紹

    鍋島国務大臣 技術的なことでございますので、原子力局長かうお答えいたさせます。
  16. 藤波恒雄

    藤波政府委員 この程度数字でございますれば、現在きめられております許容量水準から申しましても、十分低い数字でございまして、人体には障害がないという範囲でございます。
  17. 帆足計

    帆足委員 それならば、やはりその基準に対して、そういうことについての注意並びにその後の調査状況を正確に伝えておきませんと、大量にそれを使う場合もありますし、それを濃縮して使うような場合もございますから、やはり両委員が御質問になったように、特に大事をとっていただきたいということを切に要望いたします。
  18. 三木喜夫

    三木(喜)委員 午後科学技術特別委員会がありますから、技術的な問題は、私もそこで石川さんに次いでお伺いしたいと思います。きょうは、その取り扱う方法なり措置のしかたについてだけ申し上げるわけです。  そこで午後、実際にあらわしたところの数値を、石川さんの質問はきのうから出ているようですから、用意をしていただきたいと思いますが、この点、局長よろしゅうございますか。
  19. 藤波恒雄

    藤波政府委員 いまのお尋ねは、石川先生から具体的な資料要求ということではないと思いますが、午後の石川先生の御質問に備えまして、できるだけ資料用意しておきたいと思います。
  20. 三木喜夫

    三木(喜)委員 そういう数値についての資料を求めるということが前日からあったかなかったか、それは私知りません。しかし、この問題について質問をするということは申し出ておったわけであります。だから、一番問題になるところの数値を出していただけますかどうかということを申し上げたわけです。
  21. 藤波恒雄

    藤波政府委員 私のほうにわかっております数値は、すべてお出ししたいと思います。
  22. 三木喜夫

    三木(喜)委員 それならば、それでけっこうでございます。午後またそれを見せていただいて、いろいろな問題をお聞きしたいと思います。ただ、ここで一つ最後に申し上げたいことは、よく核アレルギーということを言いますね。核アレルギーということを言うことは、核に対して不感症であっていいという——よくなめるということを言うんですが、不感症であっていい、そうそう心配せぬでもいいというような態度を持つということは、またこれ危険だと思います。そういうところから、今度のこの調査、あるいはその部署に当たっておる人、長崎におけるところの海上保安庁の係の人、こちらでは科学技術庁の方、これを見ますと、課長さんですか、放射能関係課長さん、まあ両方とも聞くところによると新しいお方で、この方面のことに対する経験があまりおありにならぬ。言うなれば、科学技術庁におけるところの課長さんとしては、わりあいやりやすいところだというような考え方から、そこへ新しい人を持っていっておられるような気もするんです。いまの人が悪いとかいいということを言うわけじゃありませんけれども、私の申し上げたいのは、小学校の生徒でも火災予防訓練平時においていたします。何にも火災が起こっていないときにそういう訓練をして、そうして一朝そういう災害が起こってきたときにどう対処するかという用意をするんですから、少なくとも科学技術庁の一番責任のところにおられる人は、平時からそういう訓練といいますか、知識、そういうものの対処のしかたをやはり十分に身につけておいていただきたいと思うのです。そうでなかったら、こういうことが起こってきたときに、やはりあわてざるを得ない。きのうからこちらで非常にあわてておられたんじゃないかと私は思うのです。ちょうど同じことが、四十一年五月三十日から六月三日まで横須賀スヌーク号が入ってきたときに、異常の調査結果を示しております。そのときに、横須賀市役所中心にして非常に心配してあわてたことがございますが、このときも、何かその結果をあまり発表したがらぬというかっこうが出ておったわけであります。これはそのことを隠そうとしておられるのか、あるいはまたこのことに対してかまえがないのか。どっちであっても私はいけぬと思うのですね。国民の前にこのように耳をおおい、目をおおうということはいけませんし、かまえがなくてそういうことが出せない、そういうことにいままで経験がない、どうしたらいいんだろうか、アメリカに遠慮しなければならぬのだろうか、そういうことが先にきてちゅうちょされるようなことになれば、やはり科学技術庁という、その科学という名前が泣くと私は思いますので、十分備えをしていただきたいと思うのです。一般におきましては放射線を取り扱うところの技師の試験をしたりするんですし、一番中心のお役所ですから、日本の国の放射線の全部の信頼を集めておられるところの人、そういう専門家がむしろおってくれてもいいんじゃないかと私は思うのです。それを次々にポストを変えていくところの一つの場所であるというような、そこさえ通っていけば、もう一つ上のほうの課長になり、局長になるんだというようなことだけでは、専門的な立場としてぐあいが悪いと思います。これだけ科学が進んでまいり、専門化してきたときに、そういう経験者を持っていくか、資格者を持っていくかということも、私は一つの備えだと思うのです。いまの人が悪いということを言っておりませんよ。そういうことに対するところの——また長官も近くおかわりになったりしたら、またこれ白紙になってしまうのですけれども、次々によく科学技術庁大臣がかわられるので、私も非常にはがゆい思いがするのですけれども、局長さんからそういう点に対して——局長さんもまたかわられますが、大臣、やっぱり責任がありますから、その辺のことをひとつ明確に、国民信頼を得るように答えてください。こんなことを横須賀でもやったのでしょう。そうしておいて、また佐世保でも同じやり方をして、同じ発表のしかたをして、世間を惑わし、不安を持たせ、疑惑の念を抱かせたわけです。長崎なんか、おそらく漁民なんか非常に心配しておると思うのです。私は現地の声は知りませんけれども……。これはやはり大臣から御答弁いただいて、この問題は私は終わりたいと思います。
  23. 鍋島直紹

    鍋島国務大臣 いま三木先生の言われることはごもっともだと思います。やはり常時それに対する——放射能の問題はある意味では国民の一番の関心の的であり、非常に神経的な面もあるわけでございますから、また事実その点に十分気をつけなければならぬ。したがって、それを受けて立つ科学技術庁のスタッフも十分考えておかなければならぬと思います。なお、現在それぞれ専門家もおりますが、反省してみますと、やはり佐世保港における問題のためには、海上保安庁に委託を申し上げてこの調査をしておる、科学技術庁直接の出先はないといったような問題あるいはいま申し上げるように、データ等も従来の例に従って郵送して、電送しないという例、あるいは科学技術庁にも相当恒久的な専門スタッフを置いて、直ちに応ぜられるようにしなければならぬというようなこと、これらのことも、十分今後そのあり方につきまして考えて、速急にひとつそういったスタッフができるような体制に整えたいと思います。
  24. 三木喜夫

    三木(喜)委員 ぜひそういうようにやっていただいて、科学に対処する役所らしいやり方をしていただかなかったらいけないと思います。  次に、原子炉の事故の問題できのう質問しておりましたので、続けてその問題をやりたいと思います。  今度のこの原子力協定によりますと、そういう原子炉のひび割れ事故が起こったり、あるいは事故の危険がある疑いがある、こういうような場合には、これに対処するところの協定の案文はやはりないのですか。ということは、事故が起こったようなとき、あるいは契約に違反しておるようなとき、あるいは納期が非常に長くなったようなとき、そういうときには原子力協定のどこかにやはり基準を置いて、アメリカと交渉のできるようなところがなければならないということで、きのうはJPDRの原子炉の問題についてお伺いしたわけです。どこを拠点にするか、全然そんな拠点にするところはないのか、その辺をひとつお伺いしたいと思います。
  25. 藤波恒雄

    藤波政府委員 いま御質問のありました原子炉等をアメリカから輸入いたしまして建設したものが、あとになりまして事故を起こしたり、あるいは建設中に工事が遅延して、完成がおくれたりしたときの処理については、協定上どうなっているかということでございますが、これはすべて契約事項にまかされておりますので、協定上には表面に出ておりません。それぞれの契約に基づきまして、違約金の問題で処理する場合もありましょうし、あるいは建設中等でありますれば、それが完全に所期の性能を出すまで相手方のメーカーの責任と負担においてやらせるといったような方法をとっておるわけでございます。ただ、JPDRのように、もう引き渡しも受け、それから保証期間を経過して数年使っているものにつきましては、おのずからそれに契約上の限界があることは、普通の設備の導入の場合と同様でございます。
  26. 三木喜夫

    三木(喜)委員 そういたしますと、私は端的に申し上げて、原子力協定によってだれが責任を負うのか。責任の所在というものを、いまあなたがおっしゃるように、お互い契約者同士においてやるならやるということにやはりする必要があると思うのです。そこで、原子力協定によってそういう責任はないんだというところは一体どこですか。
  27. 重光晶

    ○重光政府委員 補足して説明申し上げますが、原子力協定、もちろん政府間の協定でございます。それで、民間同士あるいは日本側が民間の場合、契約になりますが、この契約のことについてこまかく規定するということは、一般上行なわれてない。ただ、政府間の問題ははっきり規定してある。たとえば、実際上そういう問題は起こりませんけれども、日本政府アメリカ政府からそういうものを受けるという場合については、御承知のとおり、この協定の第五条である種の免責をいたしております。しかし、実際上はそういうことは起こり得ないので、民間が入ってまいりますから、そのことについては、民間の普通の契約と申しますか、商法上の手続と申しますか、それでやるというのがこの協定のたてまえでございます。これはこの協定のたてまえが特殊のたてまえでなくて、政府間の協定でございますから、普通こういうたてまえをとっておるわけでございます。
  28. 三木喜夫

    三木(喜)委員 きのうもあなたと多少論争いたしました原子力兵器の問題ですね。ここで論争いたしましたが、これはアメリカの一九五四年の原子力法をそのままここへ持ってきておるでしょう。こういうことを申し上げましたね。それから、きのうからずっと科学技術庁局長の御答弁を聞いておりますと、未知の面がたくさんあるしするから、こういうような協定にならざるを得ないんだという答弁が随所に行なわれた。未知の面がたくさんあるし、だから、いつまでかかるか——納期の問題についてもそういうことが言えるわけであります。しかし、前の協定は十年前でしょう。今日、こういう突きっ放すような協定の内容でいいのだろうかどうか、ある程度責任を持ってもらうような書き方は条文上、協定の性質上できないというようなことは、私は、それは言いのがれだろうと思うのです。むしろ、そういうことをしてもらうことが、国民なりあるいは産業界に対して私は安心を与えるもとになるのじゃないかと思う。これを読んでみますと、多少免責どころでない、突きっ放したような条文になっておるわけで、これは私は非常に遺憾に思うのです。第五条で、「保証せず、」一番最後に、「適合することは保証しない。」契約者間でどうでもしたらよろしい、いまの答弁を極端に言いますと、そういうことになると思うのです。もう過去十年たって、今日原子力も相当確信を持った時期でなければならぬのに、それに対して責任を負わないというような協定をしてくるということは、私は屈辱の協定だと思います。そういう点、やはり冒頭に申し上げましたように、この原子力協定に責任の所在というものを何らかの形で明示していただきたい。これは専門家の国連局長のような条約を取り扱われておる方から言いますと、それは技術的にできないという議論も成り立つかと思います。しかしまた、こういう切なる希望と熱意を持って折衝するならば、何かの形で入れ得るんじゃないかしらとも思ったりするのです。その点ひとつお聞きして、次にまた原子力局長にお聞きしたいと思います。
  29. 重光晶

    ○重光政府委員 この協定の五条は、政府間の問題で、実際はそういう問題を生じないことでございますが、交換公文、これは付属のものでございますが、交換公文の初めに持ってきまして、もちろん、民間同士あるいは民間と向こうの政府、こういうものは普通の契約そのもの、あるいは国際慣例、あるいはそれに関する法律に従うんだけれども、両国政府は、そういった民間ベースをも含んで、それによって提供される資材、情報が不完全及び不正確でないことを確保するために最善の努力をしたいという意味の申し合わせをしておるわけでございます。これは交換公文でございます。ですから、先生のおっしゃいましたこと、全くごもっともなので、協定のたてまえとしては、五条は政府間だけのことをとらえておりますが、実施の問題、実際の問題に関連して、この交換公文で、何も両国政府はその問題を突っ放すんじゃないんだ、とにかく両国政府でできるだけのことはやって、民間ベースのものも不都合のないように確保していきたいということをうたったわけでございます。
  30. 三木喜夫

    三木(喜)委員 原子力局長にお伺いしますが、きのうJPDRのヘアクラックについてお伺いしたわけですが、米国のオイスタークリーク原子炉ですね、これは圧力容器に深さ五ミリ、長さ二十センチのやはりヘアクラックが起こっておりますし、それからチューブ亀裂ですね、これも原子力新聞によりますと、百三十七本中百八本に、その継ぎ目のところに亀裂ができておる。それから、インドのタラプール、これもチューブの亀裂が百七十八本中百三十七本やはり起こっておる。こういうぐあいですから、米国のオイスタークリークではいまだに認可がおりていない。JPDRにおいても、このヘアクラックは母材のほうにだんだん進んでいっておる心配があるわけでありますね。  そこで、私が申し上げたいことは、きのうも言いましたように、これは国連局長も聞いておいていただきたいと思うのですが、わが国としては、敦賀に一基またGEから買い入れるんでしょう。それから東電の福島にまた二基このGEから買い入れる。GEが納めたものが、インドのタラプールにおいても、米国のオイスタークリークにおいても、日本のJPDRにおいても、その圧力容器のところにそういうひび割れが入って、だんだんそのヘアクラックが伸びていく、これで原子炉の運転を中止せにゃならぬ、こういうことになってくるわけですね。そこで、具体的には一体どういうようなJPDRに対するところの補償ですね、賠償といいますか、そういうものを得たか、一体現実はどうなっておるか、それをお聞きしたいと思います。   〔委員長退席、鯨岡委員長代理着席〕
  31. 藤波恒雄

    藤波政府委員 昨日もお答え申し上げましたように、JPDRにおきまして圧力容器にヘアクラックが発生しておるということは事実でございます。諸外国においても似たような現象が二、三起こっておるということも承知いたしております。現在具体的にはどういう対処をしておるかと申しますと、JPDRは、御承知のように現在一万キロの出力の設備でございまして、それを運転をしておるわけでございます。もちろん試験的設備でございますので、運転をとめたり動かしたりしておるわけでございますが、年に一回の定期検査を行なうということになっておりまして、そのヘアクラックの進行状況につきましても、たびたびの検査の結果に基づきまして、その後の対処方針をきめながらやっておるわけでございまして、現在のところは、その一万キロの範囲でやっておるというのが現状でございます。それで、昨日御指摘がございましたように、この炉は出力を二倍にして、新たなる目的に使おうとするJPDRII計画というものがあるのですが、その計画を実施するかいなかにつきましては、このヘアクラックの進行状況というものを、安全性の観点からも、より精細に審査して判断をした上でないといけないとわれわれは判断をしておるわけでございまして、現在安全審査会におきまして、この方面の専門家を集めまして慎重に検討中でございます。その上でJPDRII計画の実施に踏み切りたい、こういうぐあいに考えております。  なお、御質問の中にございました、こういう問題に関連しての相手メーカーに対する補償問題ということにつきましては、先ほど申し上げましたように、この炉は、すでに受け渡しを受けまして相当年数たっております。すでにいわゆる契約上の保証期間というのが過ぎておりますので、この問題についてはあらためて賠償を要求するということはできないという現状になっております。なお、その問題は御指摘のように、今後こういうタイプの炉に起こりかねない問題でございますので、こういう実績を参考にして将来の技術開発に資していかなければならぬ、こういうぐあいに考えております。
  32. 三木喜夫

    三木(喜)委員 そういう態度は当然とらなければいかぬですね。いまおっしゃるように、技術開発の参考にすることはいい。それはもう当然やらなければならぬことですけれども、問題は、こういうことをその協定の中に今後入れる必要があるということを考えるかどうかということと、また、それが、いまおっしゃるように、多少交換公文の中でそういうことがうたわれるとしたら、今度はお互いの業者間でそういう契約をちゃんと取りかわす必要があると思うのですね。これは政府としてそういうことを必要と感じるかどうかということが問題になっておるわけです。これからJPDRのII計画をどうするこうするということはちゃんと計画に出ておるのですから、その問題は私たちはいいのです。しかしながら、出力を二倍にして、そうして十九億円金をかけてやるという計画が、こういうヘアクラックができて、髪の毛のような亀裂がずっといって、しかもそれを削ってみると、だいぶ深く侵食をしておる。母材にまで入っていたということになると、そういう心配を持つわけですから、これは原子力の安全審査会において検討してみて、技術的、科学的な将来の参考にするということはわかりますが、問題は、責任は日本だけがいつまでも苦しまなければならぬかということです。最初に何とか約束はできぬものだろうか。これは時間がたっておるからいたし方ない、こういうことですが、将来に備えての問題を申し上げたいと思うのです。
  33. 藤波恒雄

    藤波政府委員 先ほど例にあげられました原電の敦賀炉は、やはりアメリカから輸入するわけではございますけれども、いま問題になっておりますプレッシャーベッセル、圧力容器につきましては、国産でひとつ技術開発しながらやってみよう、こういう意欲的な計画になっておるわけでございます。まあ、国産だからといって問題がないわけではないので、やはり同じ可能性を持っておるわけでございますから、それがないように、製作面、材質面等において十分な検討をしながらやっていかなければならぬと思うわけでございます。なお、今後東電のものにつきましては、アメリカから輸入するということになっておりますので、当然こういった問題も念頭に置いて、契約条件に保証条項等を十分盛り込むという努力はいたしていきたいと思います。
  34. 石川次夫

    石川委員 関連して。  このJPDRの問題は、外務委員会で取り上げるにはふさわしくないと思いますので、いずれあらためてと思っておりましたけれども、ついでと言ってはたいへん恐縮でありますが、ちょっと念のために伺いたいと思うのです。  JPDRは、もともと自然循環三万五千キロ熱出力ということになっておりまして、強制循環では七万キロということになっております。それで、中性子を倍にするということを通じまして、燃料集合体の国産化をはかるという、非常に遠大な計画で行なわれておるわけであります。  ところで、先ほど三木委員のほうから言われたように、応力腐食という現象でクラックが生じたということで、実は、これは近藤さんが発表されたときには、科学技術庁原子力研究所のほうも、たいした問題ではないというふうにとっておられたと思うのです。これが東大のほうへいきまして、東大の教授がそれを取り上げて、これはたいへんだということで、初めて問題になったという、このうかつさをいま責めようとは思わないのでありますけれども、そういうことで、JPDRはいまのところ安全審査会にかかっておりまして、底のほうのクラックの状態を調べ直すということになっておりますけれども、その結果は、私はよく聞いておりません。聞いておりませんが、おそらく、この圧力が現在の自然循環のままでそれだけの応力腐食の状態が出たとすれば、倍に熱出力を上げるということになれば、これは当然持ちこたえることはできないのじゃないか。これは非常にしろうと考えで、常識的な判断であります。  それから、十九億という予算をとりましたけれども、これは前年度から二億円持ち込んで、ことしの予算のうちから他を削除して二億円回したという、非常に無理なII計画の予算が組まれておる。それは実際予算面で非常な無理をしてこの十九億という予算をひねり出した。これも見積もりの誤りであります。見積もりの誤りからそういうことをせざるを得なかったということです。  非常に熱を入れて始めたわけでありますが、これが安全審査会で通るかどうかということは、その見通しは、いまのところまだ不確定ではありますけれども、これは通りそうもないのじゃないか、放棄せざるを得ないというような見方のほうが若干私は強いと思っております。そうなると、一体その責任をどこでとるかという問題にも発展しかねないので、今度の条約で、五条では、ほとんど野放しの免責条項になっておる。これは国連局長から、実際はそうではないのだというお話があるかもしれませんが、保証期間も過ぎておるのですね。そういう点で、この重大な計画というものを放棄せざるを得ないということで、せっかく燃料集合体の国産化をはかるというような計画が、ここで断念せざるを得ないということになった場合に、これはアメリカでは責任を持たぬわけですね。溶接の技術者なんかこれとからみ合っておるようで、日本のほうが溶接技術が非常に自信があるというようなことで、今後の問題に対しては、ある程度見通しはつくのかもしれませんが、この問題について、上ぶたのほうは大体解決がついたと私は思うのですけれども、この炉の底辺部のほうはちょっと直しようがないわけです。放射能が一ぱいで、どうにも手のつけようがない、直すことは不可能だと思うのです。そういう場合に、この責任をどこがとるか。この免責条項なんかを見たって、全然どうしようもない。しかも、保証期間が切れている。そうすると、新しい計画は、燃料集合体の国産化をはかるということは断念せざるを得ない。そうなった場合、一体こういう責任はどこでとるのですか。局長でも大臣でもけっこうです。
  35. 藤波恒雄

    藤波政府委員 いまの問題は、この協定の第五条とは関係のない範囲でございまして、先ほど来申し上げましたように、契約に基づいて処理されるということになるわけでございます。それで、先ほど申し上げましたように、本件につきましては、すでにいわゆる保証期間というものは過ぎているということは申し上げたとおりでございます。  なお、第五条につきましては、先ほど国連局長から説明があったとおりでございますが、なお具体的に申してみますと、ここに書いてございますように、これは両国政府の間で交換されますところの資料なり資材なりということでございまして、たとえて言えば、わが国の原子力研究所で研究された研究成果の発表文あるいは論文等が向こうの研究所へ行ったというような場合に、AECがそれを使って何らかの計画をしたような場合に、所期のとおりの性能がかりに出なかったといったような場合、日本政府を通じて、原子力研究所のこういう研究レポートをもらって、それをもとにしてこういう計画をやってみたのだけれども、どうも予定の成果が得られなかった、それは日本政府の責任である、こういうようなことを言われても、そこまでは保証をしない。もちろん、この条項は、できるだけ完全、正確であることを確保するために最善の努力を払うということは、先ほど国連局長からお話しの交換公文にもあるわけでございますけれども、そういう交換された資料をいかに使用し応用していくかということは、それぞれその資料を受け取った側の政府の責任でやっていただきたい、そういうことをいっている意味だと私ども解釈をいたしておりまして、この条文は、聞くところによりますと、こういう協定がいろいろ国際間にたくさんあるようでございますけれども、すべてこのような様式になっているそうでございます。
  36. 石川次夫

    石川委員 これはあまり詳しく突っ込んで質問する場所じゃありませんからやめますけれども、結局民間の間の協定というものがあって、その保証期間は切れちゃっているわけですね。切れちゃうと、政府間の交渉ということにならざるを得ないということになると、この協定というものが生きてくる。そうすると、向こうはもう完全に責任はないというかっこうになれば、全面的にこちらがしょい込まなければならぬ。せっかくやろうとした強制循還によるところの中性子を倍にして新しい燃料体をつくろうとする計画は途絶する、その責任はあげて日本政府が負わなければならぬ、そういうことにならざるを得ないわけですね。それは確認していいですね。
  37. 藤波恒雄

    藤波政府委員 原子炉を入れて建設をするというような場合は、日本政府が直接やる場合はほとんどございませんので、具体的には各企業者がやるわけでございますが、そういう当事者の責任においてなされる、こういうことになると思います。
  38. 三木喜夫

    三木(喜)委員 ついでですから、次にJRR2、これは十八カ月で完成、百五十万ドル出して出力一万キロワットのものをつくる。契約は、三年かかって、三十六年二月十四日が最終期限で契約が切れる。そのとき、わずか一キロワットより出てない。そうすると、相手は燃料が悪いという言いわけをしております。三十六年の三月二十六日までかかって千キロワット、七月の八日に三千キロワット、この次が問題だと思うのですが、二〇%濃縮のウランを入れて一万キロワットというのが、九〇%の濃縮ウランに切りかえております。三十七年の一月十八日に一万キロワットになった。経済的なロスが非常に多いわけであります。これは具体的に期限が切れたとか切れないとかいう問題ではないわけですね。先ほどのケースとはちょっと違うわけです。契約の期間も違っておりますし、それからやりあげたものが、二〇%の濃縮ウランを使うというのが九〇%の濃縮ウランになっておる。そうすると、非常に日本としては損失をこうむるわけであります。これで、端的に申し上げますと、一体お互いの間にどれだけのペナルティーが取れたのか、それから燃料はこれによってどれだけたくさん要るのか、こういう問題をひとつお聞きしておきたいと思います。
  39. 藤波恒雄

    藤波政府委員 原子力研究所のJRR2のお話でございますが、私、当時の契約の内容をよく調べてみないとわかりませんけれども、おそらくこの当時は、まだ世界的に見ましても原子力開発の過渡期にあった時代でもございますし、またJRR2は、性格上研究炉の性格が非常に強いものでございますので、おそらくは、契約条件にも相当の幅と申しますか、きちっとしてない面もあったのじゃないかと正直考えます。御指摘の、途中で燃料の濃縮度を変えた問題等につきまして、どのように負担をしたかというようなことにつきましても、私いまちょっと申し上げられませんけれども、おそらく、こういう研究炉のあの当時の輸入建設につきましては、途中におきまして双方協議しながら、合意をしつつ変更をしていくという部分もあったのではないかと想像いたします。
  40. 三木喜夫

    三木(喜)委員 課長さんどうですか。
  41. 萩野谷徹

    萩野谷説明員 私も、その当時炉のことに関係しておりませんので、正確なことは申し上げられませんけれども、私の記憶が間違いなければ、当時の協定では、たしか九〇%燃料は入手できなかったのじゃないか。したがいまして、アメリカ側でも、初めての経験として二〇%濃縮燃料で設計して日本に納めるということで始まったかと思います。  それともう一つ、先生がたしか千キロぐらいで始まったとおっしゃいましたけれども、燃料も一つの理由ではございましたけれども、もう一つは、やはり熱交換器のほうにもいろいろ故障があって、なかなか時間がかかった、こういうふうに記憶しております。
  42. 三木喜夫

    三木(喜)委員 私が聞いておることは、端的に言うと罰金ですね。それを聞いておるのです。
  43. 萩野谷徹

    萩野谷説明員 契約条件については、私は、その当時おりませんので存じておりません。
  44. 三木喜夫

    三木(喜)委員 次に、古い証文を出してきたように思われるかもしれませんが、私は、やはりこの協定に関係があるので、念のために聞いておるのですが、コールダーホール型の原子炉の問題です。これは日英になるわけですが、四十二年十月十五日の新聞、去年ですね、四十二年の十月五日、本格的営業運転を開始、全出力で、建設以来七年八カ月ぶり、こういうことを書いてあって、非常に私たちも愁眉を開いたわけなんですが、そのあとで、また原子力産業新聞四十三年の一月二十五日に、「東海炉が運転停止」「ガス循還器の修復で二月末まで」と書いてありますね。これも非常に情ないことになっておるわけでありますが、これについてもやはりそういうことが言えるわけであります。一月の十日くらいに定期検査でとめたようでありますが、五億円くらい電気の上で損失をしておる。いわゆる管の中に音がして、またひび割れがあるようなぐあいだから、何カ月か休む。いままでも完成がおくれて、政府協定でこれは輸入したのですから、当然イギリス政府に対して覚え書きで損失をかけた補償をとるべきだと思うのです。それというのも、まる三年おくれておるでしょう。まる三年おくれておる。これなんかは政府間でやっておりますから、だれがその損失を負うかということは明らかなわけであります。これとても三十五年の一月三十日に契約を発効して、三十九年の七月三十日に営業運転に入るのがやっと翌年、四十年の五月に臨界になり、四十一年七月二十五日に十二万五千キロワットの営業運転をして、四十二年一月二十八日十六万キロワット試験運転をやり、四十二年の七月にやっと十六万六千キロワットに到達しておるわけですね。このコールダーホール型の原子炉の当事者は非常な御苦労をなさっておると思います。私はその御苦労に対しては敬意を表するのですが、これだけ故障だらけで、そして次々と契約したとおりにいかない。これは未知の世界があるからだということだけでは済まされないだろうということを私は言いたいのです。こんなに契約と違って、これにも書いてあるように、やっと七年八カ月ぶりに全出力を出し、全出力が出てやれやれと思ったら、またこの新聞に書いてあるように故障しておる。これはやはり原子力協定を結ぶようなときに、日本からも向こうをこの協定は規制するのでしょうけれども、日本は裸ですから、いまはみんな向こうから買わなければならぬ。燃料も向こうから輸入しなければならぬ。本来買い手市場なんですね。買い手市場が、諸外国の例に合わせて大体こういう協定が常識であるということだけで済まされるかということなんです。日本はいいお客さんだと思うのです。そのいいお客さんが何もこれについてチェックできないというような協定だけでは、私どもはどうも納得がいかない。それはあとで国連局長にお聞きすることですけれども、まず最初に、東海村のこのコールダーホールの原子炉は、病気だらけのいわば一種の病人ですね。つまずきどおしの、故障だらけの原子炉に対して、一体具体的にどんな補償をとったんですか、これを一ぺん聞かしていただきたい。これはよくわかるでしょう。それがわからぬということはないと思うのです。
  45. 藤波恒雄

    藤波政府委員 原子力発電会社が東海村に設置しております原電一号炉の問題につきましては、それが予定より非常に工期がおくれたこと、その原因の中にはいろいろとトラブルがあったことにつきましては、私どももたいへん残念に思っております。この設備はまだそのような状態にございますので、一応出力運転には入っておりますけれども、相手方の英国のメーカーとの間の関係におきましては、まだ原電と設備の完全引き取りということを行なっておらないわけでございます。したがいまして、いまのおくれましたこと等によります経費の負担でありますとか、あるいはそのペナルティーの適用でありますとかいうことがいまの大きな問題になっておりまして、せっかくいま原電と相手のメーカーとの間で折衝を続けておるという現特でございます。
  46. 三木喜夫

    三木(喜)委員 今度は協定上の問題として、国連局長に、外交を通していろいろ御苦労をいただいた問題です。これからもたくさん原子炉が入ってきます。また御苦労をいただかなければならぬのですが、この協定を結ぶについて、これは国際的な常識であるからこの程度協定でいいんだということを言わずに、この交渉のときにこういうことが問題になって、そうしてこれを何とか入れようじゃないかというような努力はなされましたか。日本に来ておる原子炉は次々こういう問題が起こっておるわけなんですね。困ったことだと私は思うのです。これはやはり外交を通してやっていただかなかったら、民間だけで責任を果たせ、処理せよ、こう言うても無理だろうと思うのです。ナショナルプロジェクトだとか、ビッグサイエンスだとか、ビッグビジネスだというようなことを言い出したら、これは国が責任を持たなければならぬ。外交上もあるいは技術の上においても、あるいは予算の上においてもそうしていかなかったら、これは育たないですよ。そこで、どんな努力をしてくれたかということを私は言いたいために、わざわざJPDRからコールダーホールからいろいろ出して、これは、中身の科学的な問題はまた科学技術特別委員会でやったらいいのですけれども、きょうは、どんな損失をどういうぐあいに補償したか、どんなにおくれたか、その責任は一体どこかということから、この協定とか交換公文とか、外交上に対処する立場としてお聞きしたいと思うわけなんです。
  47. 重光晶

    ○重光政府委員 コールダーホールの問題は、日英間の協定の問題でございますから、実を申しますと、この新しい協定の交渉をしますときに、このコールダーホールの問題が出ておったわけでございます。そして、そういう意味もあって、ある意味においては日本の立場は交渉上は強かった。したがいまして、日英間の協定は、日米間のに比べますと、協定といたしましては相互主義になっておるわけでございます。それで、これは協定を相互主義にしたところで実際上の問題は解決しないとおっしゃられるかもしれませんが、しかし、この免責の問題は、日英間では六条でございます。そしてこの六条の書き方も、日米間とは違いまして、まず民間の場合、両当事者の契約というものによるのだ、そうして契約に従うことを条件として、すなわち契約が最初に参りますが、それ以外のところで政府間だけの取引の免責をいたしております。でございますから、実を申しますと、この交渉途上、コールダーホールの問題がありましたもので、協定のかっこうとしてはより双務的というかっこうにでき得たわけでございます。
  48. 三木喜夫

    三木(喜)委員 補償の問題とかお互いの間の契約の問題について、これを協定の上にどう生かしていくか、あるいは交渉の上でどうするかという問題については国連局長にお聞きしたわけでありますけれども、大臣せっかくおいでいただいて、あまり無言の行も申しわけないと思いますので、お伺いしたいのですが、大臣も、ちょうどこれを見ますと、六代の原子力委員長でもあるし科学技術庁長官でもあり、また十二代の長官でもありますし、特に政界のエリートですから、こういう科学方面で国がどう立っていくか、いろいろな天然資源の少ない日本としてはどういうところに活路を見出していくかという大きな国策の上に立って、大臣科学技術庁長官をやっておったときも、この問題が大きなビジネスサイエンスとして台頭していたわけであります。その中で、ただいま私が申し上げたように、外交上もどうも日本は裸であるだけに弱いのではないかと思うわけです。それから予算の面でも、原子炉開発には政府間は二千億、それから民間は千二百億というように、原子力開発についての予算の持っていき方もどうも感心しませんので、こういう状況では、私は原子力産業というものがスムーズな進展をするとは思わないんです。したがって、そういう方面経験もおありで大臣もなさったのですから、この際、最後に大臣のお考えを聞いておきたいと思うのです。原子力委員長科学技術庁長官には、また科学技術特別委員会でいろいろお聞きすることができるのですけれども、外務大臣であれ、科学技術庁長官であった三木外務大臣に、ひとつこの際所見を聞いておきたいと思います。
  49. 三木武夫

    三木国務大臣 私自身は、やはりいろいろ問題はあっても、将来、日本の総合エネルギーの面で原子力の占める割合というものは非常に圧倒的になっていくのではないか、一九七〇年代以後は。いまコストの点も相当高いコストについておるようでありますけれども、だんだんと研究が積んでくれば、一番安いエネルギー源になるのではないか。しかも、日本のように、石油資源もほとんどありませんし、これを九九%も海外での石油に依存しておって、それが遠い中近東とかあるいは米大陸から運んでくるというようなことは、これはまあたいへんなことです。この需要が拡大すれば、輸送手段でも、これはちょっと想像しただけでもたいへんなことであります。だから、また次のゼネレーションの時代がくれば、もっとやはり燃料の問題というものはわれわれのいま考えも及ばないようなこともできるのかもしれませんが、しかし、私は一九七〇年代は原子力時代だと思う。そこで、一方新型転換炉、高速増殖炉などの検討を加えて、核燃料というものに対して日本がみずから開発ができるような体制を整えなければ弱いですよね。やはり核燃料をよそがもうちゃんと握っている時代は非常に弱い立場です。そういう点で、今後、そういう面においてもこれは政府としても相当金をつぎ込んでいく覚悟が必要だと思います。これは民間としてもペイしますから、民間で実用化されておる段階ですから、民間自身もいろいろこれの開発を通じて経験を得るわけです。ただ、いままでの未知な分野を開拓するのとは違いますけれども、新たなるいま言ったような一つの発電炉を開発するのに、これは相当政府がリーダーシップをとらなければできるものじゃない。そういう点では、石川さんがいつか、二、三日前ですか、もっと政府が力を入れるべきだと言われて、全く同感だというお答えもしたのであります。そういうことで、今後、核兵器には近づいていかぬのですから、やはり核の平和利用の面においては一流の国家になるという一つの体制を整えていかなければ、日本というものは将来禍根を残すことになる、そういう点で、今後われわれ自身も考えなければならぬたくさんの問題をかかえている、こういう感じを持っております。
  50. 三木喜夫

    三木(喜)委員 まことにごもっともな御所見を承ったわけでありますが、しかし、実情はこれに伴うていないのですよ。私、この原子力の開発の十年を読んでみますと、やはりその中に、なくなられました池田総理も原子力委員長科学技術庁長官で、それから三木さんもそうですし、いまの総理の佐藤さんもそうですし、いわゆる保守党の大ものといわれるような方が大臣になられておるので、何とか進展しておるかと思いますけれども、外交上もやはり問題があります。これは濃縮ウランのほうのことですが、ガス拡散方式あるいは遠心分離方式を日本が大体開発目当てができた、そういうことで、東海村でもちゃんと二つ、そういう用意をして研究しておられますね。そうすると、アメリカから、その資料については発表するな。ドイツにもこういう圧力——私は圧力だと思うのですけれども、かかっている。その言われる意味はわかります、アメリカの言う意味はそれはわかります。しかしながら、技術を公開しなかったらますますおくれてしまって、他国に追従せねばならぬ。お互いにわれわれ、アメリカと比ベれば、どっちかというと原子力の面では低開発ですが、低開発の国は技術を公開することによって進歩するのに、そういう圧力がかかっております。そのデータは四十二年の八日十八日、濃縮ウランの製造技術について情報漏れを防ごう、米から申し入れ、それには原子力基本法に反する、米の独占目的かの声もある。端的に言うて、中身も言いたいですけれども、時間もありませんから、問題点だけ提起したいのですが、こういうことをやられたら、これはやはり外務大臣として何とか一言なかるべからず。科学技術庁はどういうように考えておられるか、これはまた両方からお聞きしたいと思うのです。  それから再処理の問題です。これは大臣に聞いておっていただきたいと思うのです。お金をかけなければならぬということですが、再処理の問題で、いまどこにつくるかということは問題がありますけれども、大体設計がことしじゅうにできる。しかしながら、国の予算としての出し方はこれでいいと思われますか。債務負担行為でやって、そして利子のかかる金でやらす。そうすると、再処理工場を日本でつくって、かりに操業したとしましても、イギリスへ頼むか、またアメリカに頼まなかったら採算がとれぬというようなことも起こり得ると思うのです。そういう利子のかかった金で建設していかなければならぬ。これもいま大臣は、科学は非常に大事だから予算を国としてかけなければならぬと言っておきながら、一方大蔵省では、ほんとうにちびるようなやり方でこの再処理工場についてもやっておって、科学が進歩するだろうというようなことは、国策としてこれは言えないと私は思うのです。  この二つの問題を、大臣がおられますから、大臣のほうからお聞きしておきたいと思うのです。質問大臣を追及するというようなことでなくて、大いに予算を置くように努力してもらいたいと思うのです。ことのし予算なんかは実にだめなんですよ、こんなやり方では。そこで、先ほどの御答弁に関係して、その問題をお聞きしたい。
  51. 三木武夫

    三木国務大臣 この再処理工場は、いま科学技術庁の話を聞きますと、相当ペイするのだという。工場がペイするから融資でもできるということで、科学技術庁もそういう基本的な考え方に同意したようであります、ペイするということなら。融資でできる場合には融資でやることも、これは悪いことじゃないわけですからね、いろいろの財政的な資金はそんなに潤沢ではないのですから。しかし、あなたの言われる、石川さんも同じことでしたけれども、これに対して政府がやはり相当金をつぎ込んで、立ちおくれておる原子力産業の基礎というものをしっかりと築かなければならぬということは、私も全く同感で、今後この原子力の平和利用の面における予算というものは、われわれは地位のいかんにかかわらず、関心を持つことにほんとうにしたいと私は思うのです。いまのままでは、日本がこれだけ立ちおくれておるのですから、よほど政府が力を入れなければ、なかなかこのおくれを取り戻せない。だから、民間でできることは民間でしたらいいし、するのですけれども、政府がどうしてもやらなければならぬ面もあるわけです。そう思います。  それで、いま何かアメリカから、遠心分離法に対して、申し入れというほどのものでもないようですけれども、しかし、日本は核の開発には原子力基本法の三原則があるわけですから、そんなものを言ってきても、それは問題にならぬということでありまして、そういうことをアメリカから言うてきたら、原子力基本法の三原則を曲げるというふうなことは、われわれとして絶対にいたしません。いわゆる公開という原則はやはり貫かなければなりませんから、あまりそういうふうな点は、何か言われたらすぐに基本法でも曲げて何かするのじゃないかという御心配は、どうぞ御無用に願いたいと思います。
  52. 三木喜夫

    三木(喜)委員 先へ話を進められましたが、私らはそういう疑いを持って質問をしておるわけじゃないのです。あとでまたもう一つ聞きたいと思いますが、科学技術庁長官、いま再処理工場の問題が出ておるのですが、いま大臣は、ペイするということであるから、そういうような財政の措置でいいのじゃないか、こういうことだった。科学技術庁長官もそう思っておられるのですか。そう思っておられると、だからあんなことになったのだなと私は思うのですね。
  53. 鍋島直紹

    鍋島国務大臣 再処理問題につきましては、すでに御承知のとおり、現在十三億の国費でこれは設計をいたしております。それを加えて、来年度くらいからぜひ建設にかかりたいというので、大体百六十数億かかるわけでございます。その金は、一応これは私の前のときからのいろんな大蔵省との交渉で、再処理工場はある程度ペイをするから大半は財投でいいではないか、こういう話し合いで進められてきておるというふうに聞いております。  率直に私の立場から申しますと、利子のつく金よりも、やはり国費で組んでいくべきだ。しかも再処理は、今後におきまする原子力利用のいわゆる燃料サイクルの重要なポイントをなすものでございますし、これをつなぐことによって、さらに利用そのものが国策として発展する重要なポイントであると考えます。もちろん、収入もある程度あがることは事実でございましょうけれども、原則としては、科学技術庁としては、やはり国費をもって、少なくとも再処理工場の第一工場だけでも建設をして進めていくべきだという主張を持っております。
  54. 三木喜夫

    三木(喜)委員 どうか歴代の科学技術庁長官が一貫してそういう考えを通してもらいたいと思うのです。毎年毎年、予算ぶんどり合戦の中で横断的にものを処理していく。私は、これを縦にずっと考えてやってもらいたいと思うから、こういうことを言うておるわけなんです。おそらくこのままいきますと、一トン処理する能力と〇・七トン処理する能力とでは、その再処理費はうんと違うと思うのですが、日本のはどんなものをつくろうとしておるのか、おそらくもっと小さいのでしょう。そうすると、コストが高くつくと私は思うのです。これは科学技術庁原子力局長どうですか。日本のいまつくる再処理工場の規模では、相当高くついて、ペイするといいながら、ペイするでしょうか。アメリカに送ると輸送費がかかりますけれども、輸送費だけは助かると思うのですよ。しかし、規模も小さいし、金利のかかる金で再処理工場を動燃事業団にやらすといっても、これは国の力でやるのでしょうが、高ければ電力会社はこういうところに頼まないと思いますがね。その点どう思われますか。これは大いに主張しておいていただきたいと思うのです、形式的な答弁でなくて。
  55. 藤波恒雄

    藤波政府委員 お話のとおり、現在建設計画をやっております第一工場は日産〇・七トン、こういう規模でございますので、いわゆる経済規模から申しますと、小さい関係上、やはり当初はある程度割り高になるということは避けられないと思います。われわれといたしましては、せめて外国へ送ります場合の輸送費をも含めた値段に近いところでおさめたいというぐあいに考えておるわけでございます。それにいたしましても、先ほど長官から話がありましたように、できれば全額国費で、無利子の金でいきたいというのが本音でございますけれども、融資でいく場合におきましても、できるだけその割合を少なくし、また利率も低いものを要求したいと考えておりますし、さらには、場合によりまして将来利子補給といったような手も要求していかなければならない事態が出てきはせぬかというぐあいにも考えておるわけでございます。
  56. 三木喜夫

    三木(喜)委員 あとの質問者に申しわけないので、一つだけ伺ってあとの問題はまた科学技術対策特別委員会でお伺いいたします。  この間の石川さんの質問に対して、私、やはりどうもふに落ちないといいますか、もっとやってもらいたいということがありますので、両方大臣がおられますから、御答弁いただきたいと思うのです。査察を簡単にするための努力をしたらどうか、こういうお尋ねに対して、鍋島長管は、核防条約が成立すれば、査察は簡単なほうに一本化されるよう協議すると答えておられます。それで、協議ができるのかどうか、そういうことの可能性があるのかどうか、この辺だけひとつ聞かしてもらいたいと思います。
  57. 三木武夫

    三木国務大臣 交換公文の中に、要するに、いろいろ情勢が変化したときには、アメリカはいつでも協議するということがある。規定を改正する目的で協議するということになっておりますから、この交換公文によって、もしIAEAの査察がここに書いてあることよりももっと簡単なものになりますれば、そういうことで条約の改正を提議しようと思っております。
  58. 三木喜夫

    三木(喜)委員 残余は科学技術対策特別委員会に譲りまして、これで終わります。
  59. 鯨岡兵輔

    ○鯨岡委員長代理 曽祢益君。
  60. 曾禰益

    ○曽祢委員 協定の問題に入る前に、一つだけ、先ほど三木委員から御質問のありました、佐世保港におけるアメリカ原子力潜水艦の寄港に際しての安全性の問題、放射能検出問題等について、科学技術庁長官から、この間からのやり方を反省していくというお話がございました。私は、もう少し具体的な御返答が得られれば望ましいと思うのです。  第一には、こういったような放射能から安全を守る問題、原子力潜水艦その他アメリカの軍艦の寄港に際する安全性の問題ですね。放射能からの安全性の問題、これについては海上保安庁に委託しているとか、あるいは市町村にまかせているというような態度ではいけない。これは当然科学技術庁が中央官庁だと思いますが、その放射能の点検、安全性の確保は、中央官庁の科学技術庁が直接に責任を持ってこれに当たるということをこの際明確にされたい。  それから第二は、そこからくる問題でありますけれども、どうもやっているやり方が非常に手ぬるくて、こういうような重要なデータチャートがまだついてない、郵送している。そういう姿勢が、単に科学技術の番人としてでなくて、日本の政府の姿勢として間違っている。したがって、この問題については、大体そういう方向で言っておられたと思いますが、緊急にそういうデータをつかむ、データをつかんで、直ちに発表するのがいいかどうか、これは非常に問題があって、かえって発表が不必要な不安を巻き起こすような場合には、直ちにそのデータを点検し、その上で必要な再調査等は——半日おいてまた半日なんという手ぬるいことは許されない。直ちに再調査なり、データに対する科学検討を加えて、その上で責任を持ったすみやかなる発表を行なう、これが第二点。   〔鯨岡委員長代理退席、委員長着席〕  第三点は、われわれしろうとでよくわかりませんが、今度の場合でも、検出の機械設備は、たとえばガイガーカウンターみたいなものを使っておるとして、それがいろいろな他のレーダー影響を受けるものとすれば、そういう影響を受けないような科学的な調査を進めて、最も信頼できる科学調査方法を発見して、これによって調査をやる。これは第一の点、第二の点とも関連するでしょうけれども、そういう科学的な放射能検出対策を直ちに確立する。この三点について明確な御返答を得たいと思うのです。  これは単に科学技術庁長官から御返答を得たいだけでなく、アメリカの軍艦の寄港に関連する問題であり、これは日米間の大きな政治問題でもありますので、これは内閣全体が取り組むべきであって、その意味において、外務大臣からもこの点に対する御返答を得たいと思います。
  61. 鍋島直紹

    鍋島国務大臣 ただいまの御質問の第一点でございますが、すでに申し上げましたように、市におきましてモニタリングポストでこれを常時警戒いたしますが、技術庁はこれを指導いたしますとともに、別途海上保安庁に委託して空中水中放射能検出を定期的に点検をいたしておるわけでございます。非常に重大な場合は、直ちに科学技術庁から人も派してやるわけでございますが、いわゆる一本化しておる状態では現在ございません。したがって、これらのことについては、さらにやはり再検討を加える必要があろうかと思います。したがって、その際は、やはり科学技術庁から警備艇を出して直接指導をする。その保安庁の警備艇をすぐ科学技術庁に移管するというわけにもなかなかまいりませんから、そういった点は十分再検討を加えたいと思います。  その次に、データの読み方につきましては、これは非常に深刻に反省いたしております。やはり電送ぐらいで送ってもらって、すぐ点検できるような方法、装置を考えなければならぬ。郵送をしておりましてなかなか入手できなかった点は、今度のわれわれが反省すべき一つの大きな点でございます。  それから発表の点におきましては、実際出たときに疑いがあるのをそのまま発表してよろしいのかどうかという点、これはもう一ぺん十分考えたいと思います。  それから再調査の点は、できるだけ早く、こちらも大体十二時前後に向こうのデータがあがり、そして一時前後に来まして、おかしいというので、すぐ再調査をしましたが、いろいろなことで再調査船が出航したのが三時ないし四時前後になったかと思います。そういうようなことでおくれておりますので、これらもやはり再調査に備える事前の準備態勢が必要ではなかったか、その点もやはり反省すべき点であろうと思います。  なお、第三点の科学調査検出方法について、従来のもの以外に、もっと精密な、正確な、しかも新しいものがあるかどうかということは、私も技術的にわかりませんので、これは技術庁として検討を加えたいと思っております。
  62. 三木武夫

    三木国務大臣 原子力潜水艦などの放射能被害というものはほとんどないというのが世界的な通例になっているわけですね。したがって、今回の場合に対しては、何か測定器などに対してほかのほうからのいろいろな影響レーダー影響などもあったのではないか、いろいろな点で、もう少し科学的にこの機会に十分な検討を加えてもらいたい。もしこれが原子力潜水艦の寄港などによって放射能というものの原因があるならば、これはやはりいろいろな問題が将来外交交渉にも起こってくると思いますが、まずわれわれとしては、こういう今回のようなことは対しては、徹底的な科学調査に基づくその結果を待って、必要があるならば、これは外交交渉のルートに乗せなければならぬ、こういうふうに考えておる次第でございます。
  63. 曾禰益

    ○曽祢委員 アクシデントが起こったから外交交渉をやれというのではなくて、やはり海上のことですから、衝突とかいろいろな場合もあり得る。普通安全だといわれているけれども、まだ必ずしも十分であるかどうかわからない。しかも、海上交通のひんぱん等によってアクシデントの場合もあるので、そういう場合に外交交渉もあろうけれども、その前の国内体制として、すぐ外交問題に火のつく問題なのであるから、十分なる科学的な調査等をやって国民に安心を与えるということが、外交上も必要ではなかろうかということを申し上げておるわけです。そういう意味で申し上げているのですから、直ちに外交交渉に取り上げて云々と言っているのではないということ、政府の姿勢として、外務大臣からもわが国の主張等をバックアップされることを要請しておるわけです。おわかりですか。
  64. 三木武夫

    三木国務大臣 これはよく曽祢君の御質問の趣旨がわかりましたが、政府としてもいろいろなこういう場合に対する問題点、これはつまり反省すべき点がある、こういうことで、国民に対して現実にやはり放射能被害から守るということが第一だし、そういう場合に国民に対する発表のしかたにも問題がありますし、いろいろな点で、こういうことを一つの貴重な反省の機会とし、また徹底的に調査をする一つの機会として、政府全体がこういう問題には対処しなければならぬということは、御指摘のとおりに考えております。
  65. 曾禰益

    ○曽祢委員 本件二つの協定の趣旨につきましては、われわれ考えまして、昭和五十年に稼働するわが国の軽水炉型の発電炉を耐用年数二十五年と計算いたしまして、大体その所要量の濃縮ウラニウムをウラン二三五の換算で計算して百五十四トン、これを確保する、その他若干の研究用の低濃縮以上の濃縮ウラン並びにこれまた研究用のプルトニウムを当面必要な量を確保する、こういう趣旨でつくった。特にこの日米関係の協定はそうだと思うのであります。したがいまして、はなはだ残念ではございますが、わが国の発電炉が採算上どうしても当面軽水炉に依存しなければならないという現状、並びに現状においては、濃縮ウランの供給源としては単にアメリカがあるのみである等の現状からいたしまして、わが国にとっては、この日米協定は、これは有利であるというよりも、むしろ不可欠だ、やむを得ないというぐらいな気持ちで考えて、そのサービス提供を確保する、これが私は当然ではないかと思うのであります。しかし、これはやはりいろいろ考えなければならない点が多々あろうと思うのでありますが、これはすでに同僚委員、特に石川委員あるいは三木委員から非常にポイントに触れた御質問がございまして、若干問題点としてはダブるかもしれませんが、私自身の管見を加えながら、この協定上どうもこの点が一番心配ではなかろうかという問題、それは大きく分けるならば二つだ。一つは、やはり安易にこの協定に寄りかかっていることからくるいろいろな制約上の危険、これは今後わが国の平和的な核開発上にかえってマイナスになりはせぬかといういろいろな点があろうと思います。第二の点は、この協定といわゆる核停条約との関係、これはいろいろな点から非常に重大な関連があろうと思う。つまり、この協定、特に日米協定が含んでおる保障措置と部分的核停条約との関係がどうなのかという点だと思う。  そこで、まず第一の点でございますが、これも同僚各委員から御指摘になった点でありますけれども、この条約によって三十年の約束をしたのだから、こちらが縛られるのじゃないか。私は、純粋な法律論から言えば、これは向こうにサービス供給の義務を与えた形になっておる。残念だけれども、三十年は長過ぎるかもしれないが、こちらがまだ小学校にも入ってないような状態ですから、一応三十年ということに反対はない。しかし、わがほうに買い付けの義務はなるほどないのです。ないけれども、しかし、現実に、今度はわが国あるいは特定の公社等が買うのではなくて、むろん発電炉についてもそうである。特に濃縮ウランについては民有になる。したがって、各電力会社及び原電が買い付けの当事者、そうすると、これが実際上契約しなければならぬ。契約する場合に、毎年所要量で契約するのか、あるいはやはりアメリカの都合からいっても、三十年間の契約にしてくれればなお都合がいいということもあろうし、現実に契約してしまった以上は、なるほど国としてはアメリカから買う義務はありません。しかし、個々の会社の契約というものは、かりに三十年なら三十年の契約にしなければぐあいが悪いという場合には、途中で日本の方針が変わった、日本のほうで自前の——濃縮ウランの自前ということはむずかしいと思いますが、あるいは新型転換炉に変えれば、低濃縮ウランはこれだけの量は要らないというときに、事実上はこちらのほうが買い付けの量を減らさなければならぬ。そういう場合に、この協定によると、全部アメリカがパーになるというか、アメリカが全部今後の供給義務を免除されるというか、これからの供給については免除されることになるかもしれないが、そういった点、現実に考えた場合には、第八条の解釈から言いまして、第八条の特にBの規定のごときは、事実上私契約でやる場合に長期契約を強要される結果になる。この条約の解釈について、鍋島さんと外務省両方からお答えを願いたい。
  66. 重光晶

    ○重光政府委員 ただいま御指摘の、契約を長期にしてしまったら契約で縛られるのじゃないかということは、もちろんたてまえはそのとおりでございますが、いま御指摘になった八条のいろいろな規定、これは結局民間ベースの契約をもとにして核物質の日本に対する移転が行なわれるわけで、その契約の実施に関係することが御指摘の八条に書いてあることだと思うのでございます。たとえば八条のDでございます。私の持っておるのは二〇ページになりますが、その三行目に、「又は供給契約の締結の後にこれを終了させることを希望する場合には、」これは日本側が契約を締結いたしまして、しかも、いろいろな事情でその契約を終了させることを希望する——変更でございますね、こういうことも実際はあり得るのではないかというので、こういう規定も入れておるわけでございます。その場合に、前に御指摘——たしか石川委員だと思いましたが、ここに「別途合意される場合を除き、」日本がもう終了してくれという場合には、全体のワクが減るのだ、こう書いてありますが、この別途合意される場合を除くということで、アメリカは、その場合に、いや、おれは契約を減らすことについて合意しないということになれば、ビトーを持っているのではないかという意味の御指摘だったと思うのですが、しかし、これはそういう意味ではございませんで、実際契約を行なう、そうして日本の事情で全部引き取れなくなったという場合に、それでは日本はそのほかのものをかってなところに使えるのかということになりますと、この協定のたてまえは、初めから日本の計画に合わせてやっておるのでございますから、全然アメリカと相談なく、かってに使えるということではおかしいので、その場合は、かりに終了させることを日本側が希望して、余ったものをどうするかということは、この協定で合意したように、あるいは個々の契約の問題になりますが、当事者は日本の民間とアメリカということになりましょうが、やはり双方の合意で、事情の変更について合意して処理しようではないか、こういうふうにここではなっておるわけでございます。したがいまして、一度契約したらそれっきりで——実際、契約のたてまえからいえはそうかもしれませんが、それでも三十年間という御指摘の期間には何が起こるかわからないということを一応予想いたしまして、この協定にも、契約の実施に関連して起こるそういった問題について規定した次第でございます。
  67. 鍋島直紹

    鍋島国務大臣 外務省側の御答弁でもう尽きておるかと思いますが、現実の問題として考えていきます場合、大体これから五年間に、建設中であり、建設されるであろうという十三基の問題について、原電あるいは各発電会社が契約をいたすわけでございます。今日、日本の転換炉あるいは増殖炉等の今後の計画等から見まして、ほとんどが軽水炉ではなかろうか。最近のところはちょっとわかりませんが、大体軽水炉時代ではなかろうか。そういたしますと、いま外務省が言われましたように、その計画に従って契約をしていくというような形で、計画どおりいけば十分の燃料がある、こういう形になろうかと考えております。
  68. 曾禰益

    ○曽祢委員 いや、そうじゃないのです。それはポイントをはずれた答えです。私、しろうとだからよくわかりませんが、たとえば電力会社なり原電が、この別表に掲げておる発電炉を一応軽水型として、しかもGEかWHから買うということにして、それに基づいてこの濃縮ウランの提供を毎年幾らということで、大体三十年間の分を全部契約してしまう。それで、引き取りのあれも、契約それ自身のつくり方も毎年やるのか、五年ごとにやるのか、三十年でやらなければならぬのか、もし三十年間という契約を私契約でやったら、それこそ、そのうちに事情の変更があったらというクローズを入れることになっても非常にやっかいなことになりはしないか。だから、国と国との話し合いで、向こう三十年の供給のワクをきめておくのはいい。しかし、これを私契約で個々でやる場合に、よほど政府がそういうことを適当に指導しないと、そう言っては悪いけれども、これはみんな電力会社の諸君があわてて、結局アメリカの圧力のもとに、もう非常な長期契約をいまからつくってしまう。そしてあとで抜き差しならなくなって、そのときになって要らなくなりましたでは、ほんとうは私契約上ではこっちが悪いのだということに追い込まれることになるおそれがあるのではないか。これは立ち入った話であるかもしれないが、契約上ではどっちも勝敗がきまらぬということ、これがポイントだから、供給を受けられるという権利は国の協定で確保しておく。しかし、これが直ちに私企業の義務にならぬように、あとでトラブルを残さないように融通をつけておくようなことができるのかできないのか、またできるなら、そうしておくべきではないかということを言っているわけですよ。
  69. 鍋島直紹

    鍋島国務大臣 そのようになっていると思いますが、局長からお答えいたさせます。
  70. 藤波恒雄

    藤波政府委員 具体的な契約のやり方は、この協定によりますと、別表に掲げてあります二、三のそれぞれの計画ごとに一括契約を行なうのを原則としておるのでございますが、合意されれば分割契約もできるということでございます。また、一括契約をやりました場合にも、途中で事情が変更になって、日本側で不必要になったような場合には、三年半の予告期間を置けばペナルティーなしにキャンセルできる、こういうことでございます。
  71. 曾禰益

    ○曽祢委員 その点は、いままで何か契約があってやったのか、それとも今後つくる契約のひな型によってやっておられるのか。
  72. 藤波恒雄

    藤波政府委員 具体的には賃濃縮契約のフォームというものがありまして、それに基づいてやれる、こういうことでございます。
  73. 曾禰益

    ○曽祢委員 少し細目に入り過ぎるような感じがしますが、これは重要点でございますから……。  これを包括的にやってしまうということは極力避けるべきじゃないですか。たとえば、原電なら原電でこの中に出ている限りのものをやればいい。契約者はみな個々の企業者でしょう。ですから、包括的なんていうことはあり得ない。たとえば東電なら東電で、ここに出ている福島ばかりでなく、第二号、第三号まで一ときにやるというのですか。包括的というのはどういうのですか。
  74. 藤波恒雄

    藤波政府委員 先ほど御説明申し上げましたのは、たとえば別表のEというところに東京二号炉とございますが、この東京二号炉の燃料を得る場合には、その分だけを一括するのが原則だ、こういう意味でございます。
  75. 曾禰益

    ○曽祢委員 それでわかりましたが、いずれにしても、現実には特に国が中心でなくて、個々の企業者が契約の当事者になりますから、何といっても先方の圧力が相当強いと思うので、そこら辺、将来のわが国の原子力発電あるいは原子力産業の技術のレベルに応じて、この協定によってサービスを受ける権利は確保しておくけれども、しかし、それによるところの義務は極力これを少なくして、不必要な——事情が変更になったら手かせ足かせにならぬような配慮がぜひ必要だと思うのです。そういうつもりで科学技術庁長官は指導していただけるかどうかということを御答弁願いたいと思います。
  76. 鍋島直紹

    鍋島国務大臣 いま曽祢委員の言われましたとおりの指導をしなければならぬと考えております。
  77. 曾禰益

    ○曽祢委員 そこで、もう一つ私どもが心配な点は、政府全体の原子力平和利用に対する姿勢そのものについて、先ほど三木委員からも御指摘がございましたが、どうも言っておられることとやっておられることの間に相当の開きがあるように考えるのであります。特に本年の国会における総理大臣の施政方針演説の初めのほうは、実にすばらしい、レベルの高い調子で「まず第一に、二十世紀後半の人類は核時代に生きております。この核時代をいかに生きるべきかは、今日すべての国家に共通した課題であります。」という書き出しがら始まって、まず核兵器を日本は保持しない、持ち込みも許さない、こういう決意を表明され、当面核拡散防止のための公正な条約締結につとめる、さらに核軍縮の達成に努力する、こういう非常に高い調子できて、さて、重要な点としては、わが国の立場としては、世界における唯一の被爆国民の日本としては、「人類にとって次の世紀にかけての最大の課題は、核エネルギーを中心とした科学技術の進歩の問題であります。核エネルギーの平和利用の分野は予測のつかないほど広大なものであり、」と、とうとうとこう言われまして、また巨大科学というようなことばにも触れ、宇宙、海洋の平和開発の問題にも触れられ、最後に「われわれは、核エネルギーの平和利用における国際的進歩におくれをとらないよう、こん身の努力をしなければなりません。そして、科学技術の面における貢献によって、核時代におけるわが国の威信を高め、平和への発言権を確保し、国際社会に建設的な提言を行なうべきであります。」私はこれを聞いて、国民は全面的に賛成すると思ったのです。ところが、現実にやっておる予算措置は、これも三木君が触れられておるとおりでありますけれども、一つの古い統計をとれば、四十一年度の日本の予算が百二十六億円、西ドイツは四百三十一億円、四十二年度が二百八億円、四十三年度が先ほど来問題にされたように、予算と債務負担行為と合わせてたった三百十二億円、予算は二百六億七千八百万円、債務負担行為が百五億云々、まことにこれは、いかに長期計画の始まりであるとはいえ、あまりにも貧弱ではないか。そこで、私の心配は、確かに、この現状から見れば、ことばは慎まなければいけませんが、あえて言うならば、屈辱的とでもいいましょうか、協定によって向こう三十年間、特に濃縮ウランの確保をやらなければならぬ。また、当面軽水炉についてもアメリカに依存しなければならない。この現状から、やむなくこの協定をつくったのであるが、一面においては、当面利用すべきものについてはやや長期にわたって利用のできる体制はとっておかなければならぬ。しかし、このことがややもすれば、非常にりっぱなことを言われるけれども、現実にやる点は、予算の関係ありというようなことで、非常に憶病なというか、足りない。施策が予算の点で非常に制約されている現実からいえば、どうもアメリカから三十年の、言うならば平和利用の一種の保証とでも申しましょうか、これに安住しての長期計画である。たとえば軽水炉についても、すみやかに日本の技術によってこれを国産化する、それから、言うまでもなく、これを単に描けるもちにならないような意味で、新型転換炉の開発にほんとうにつとめる、特に新型転換炉より、さらにわが国にとって核燃料の経済的利用のためからいって、どうしても高速増殖炉に言うならば科学の運命をかけるようなつもりでほんとうにやる。そうして核燃料の自給とまではいかなくとも、探鉱から、あるいは再処理の問題から、加工の問題から、いわゆる核燃料サイクルを日本に確立するというくらいに、ほんとうにこの際真剣にならなければいかぬ。もしこの協定の受諾によって、安易にアメリカにもたれかかるという姿勢が出てくるならば、これはわれわれは、この受諾に対して大いに考えなければいかぬ。この協定のメリットそのものではなくして、政治の姿勢の問題だと私は思うのです。この点について、そういうことのないように、安住しないように戒めておきたいと思うのです。この点については、技術庁長官と外務大臣から明確な御答弁を願いたいと思います。
  78. 鍋島直紹

    鍋島国務大臣 当面の担当者といたしまして、お答えをいたしたいと思います。  御承知のとおり、現在軽水炉の時代でございますが、少なくとも東電の三号炉、関西の二号炉からは、日本における水軽炉の国産化ということで進めていくような計画を立てて、これを強力に推し進めたいと思います。  なお、その後におきまして転換炉、増殖炉——大体転換炉の原型ができますのが昭和四十九年ぐらい、それから増殖炉の実験炉から原型炉に入りますのが五十一年前後になろうかと思います。したがいまして、その前後になれば、少なくとも核燃料の再処理も日本でできるようになりますが、濃縮技術もある程度でき得るような形で、遠心分離の方法ができ得るような形で進めていきたいと考えておるわけでございます。そういたしますと、大体現在の加工のほうは、三菱そのほか六社から申請をされておりますので、これらの点、いま原子力委員会で慎重に審査中でございます。しこうしてそれを許可し、この加工の準備ができますれば、その前後に一応核燃料サイクルというものができ得る計画になっておる。その辺のところを見ながらこれを進めてまいるわけでございますが、少なくとも転換炉、増殖炉のためには大体二千億ないしそれ以上の金が要るのではなかろうか。先ほど予算の御指摘がございましたが、私どもとしましては、今年度はこれでがまんするとしても、今後においては、本格的に転換炉の研究、増殖炉の研究あるいは軽水炉の国産化、しかも、核燃料サイクルの開発ということになりますと、これはそれこそこん身の努力をもって予算と人間とを養成し、そのときに備えて着々と準備を整えなければならないという時代が来るかと思います。  微力ではございますが、それらの点につきまして、私は、職務柄はもちろんでございますけれども、政府自体として、ひとつ総理のことばどおり実行に移されるように努力をいたしたいと考えております。
  79. 三木武夫

    三木国務大臣 いま科学技術庁長官から将来の抱負をいろいろ述べられたのですが、結局は、これが日本の核の平和利用ということばかりでなく、輸出産業としても伸びていくほど開発されなければならぬ。そういう意味において、いま科学技術庁長官の述べられたような計画をわれわれが内閣全体としてバックアップして、国策としてこういうことが行なわれるような政治の体制が必要であるというふうに感じます。
  80. 曾禰益

    ○曽祢委員 どうかそのことばがことばだけに終わらないように、われわれ国民にひとつ実行をもって示してもらいたいと思っております。  あとは午後になるそうですか、私は、査察の問題は非常に重要な問題だと思いますので、質問を続けさしていただくことにしたいと思います。
  81. 秋田大助

    秋田委員長 この際、午後二時三十分より再開することとし、暫時休憩いたします。    午後一時二十九分休憩      ————◇—————    午後二時四十九分開議
  82. 秋田大助

    秋田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。曽祢益君。
  83. 曾禰益

    ○曽祢委員 午前の質問の際に申し上げておきましたように、私の質問の第二の点は、この二つの協定と核防条約との関係についてでございます。  この点についても、特に同僚石野委員並びに石川委員からの御質問がございましたが、両条約ともに、核防条約が成立した場合には、そして締約国がこの当事国になった場合には、核防条約に適合するように協議する、あるいは改正するということを附属の交換公文あるいは了解覚書きではっきり明記しているようなわけでございます。したがって、言うまでもなく、この二つの協定と核防条約とは非常に深い関係があるわけであります。そこで、この協定を審議するにあたって、われわれは、十年前に日米、日英協定ができたとき、そのときの日本の状態を言うならば、むろん日本は絶対に核兵器をつくらない、したがって、その点を証明するために、アメリカやイギリスに対し、あるいは双方の話がつく限りにおいては国際原子力機関に対して、いかなる保障措置、簡単に言うなら査察もオーケーだというふうに、小学校に入る前の幼稚園のときから優等生みたいな態度をとってきたわけでございます。この平和目的に限るというわが国の意図に関する限りは、十年前と今日と変わらない。いな、むしろ今日のわれわれは、平和利用を徹底的にやって、わが国の安全保障の一つの重要なにない手として、兵器は絶対につくらない、しかし、平和利用の面においては、いかなる超一流の国にも、事、平和利用に関してはその水準において負けないのだというような、そのくらいの高い水準を平和利用の面において達成することが、新しい意味の日本の安全保障にすらなると思うのです。そういう重要な時代になったのですから、ただ単に十年前の協定にあった保障条項をそのまま今度も前と同じように引き継いだというのでは、少し時代の感覚を疑わざるを得ない。つまり、これは石川委員と外務大臣との質疑応答の中にもありましたように、たとえば石川委員は、日米協定の中の査察保障条項についてこれこれの問題がある、これで一体いいのかと言うと、それに対する外務大臣の御答弁は、いや、核防条約のほうは大体簡素化でもっと簡単になるのだし、結局は核防条約のほうに移るのだから、それで差しつかえないのだ、大体そういう御趣旨だと思うのです。ところが、私は、必ずしもそう言えないのじゃないかという心配を持つわけです。   〔委員長退席、田中(榮)委員長代理着席〕 つまり、いまの段階で核防条約がもう現実にわれわれの目前に条約案の形で迫ってきている。ちょうどその時点に日米協定ができた。日米協定が少なくとも署名されたのはことしの二月二十幾日だ。それで、核防条約のいわゆるアメリカ、ソ連の二次案というものが、三月の初めだったと思いますが、できた。ちょうどタイミングが合っておるわけですね。だから核防条約をめぐって、やはり査察保障条項をなるべく簡素化しようじゃないかという国際的な傾向が強くなり、そのことに日本は大いに賛成だし、これからも大いに主張しなければならない。その時点において日英協定ができ、日米協定ができた。そうすると、依然として十年前の、言うならば、日本はいい子であるから、かなり具体的な、かなり立ち入った査察ができるような条項をそっくりそのまま持った協定で、いまわれわれに賛成を求められておる。これはちょっといままでの十年前の観点だけで考えられないものがあるのではないか。ことに私が心配するのは、この日米協定と日英協定の査察条項を比べてみると、一つ基本的に違うところがあるのではないか。それは、日英協定は、はっきりと国際原子力機関の保障措置、査察に全面的に移り変わることが賛成なのです。もしそれができなかった場合には、イギリスだけでこういうような査察をやろうということなのです。ところが、アメリカのほうの協定——協定の読み方の問題かと思いますから、御説明をいただきたいのですけれども、アメリカによる査察が全面的に国際原子力機関のほうに移るというのではなくて、アメリカがやるべきことを国際原子力機関がこれを代理してやる。代行するというか、代置ということばを使っておりましたが、その部分においてはIAAのほうに移るけれども、しかし、まだアメリカのは留保している分がある、こういうようになっている。むろん、この点については外務大臣あるいは外務省の御説明をまつまでもなく、そうなっておっても、実際上核防条約ができ、日本を含めた国々が入り、そして国際原子力機関の査察というものが国際的にどんどん進行するようになれば、事実上アメリカは、この日米条約でどう留保しておいても、実際的には国際原子力機関のほうに査察を譲ってしまうことになるであろうということは、傾向としてはある。しかし、条約のたてまえはそうなっていない。これは一体どういうわけなんです。この点を御説明願いたい。
  84. 重光晶

    ○重光政府委員 ただいま御質問になりましたまず第一点は、現行の日米協定の査察の規定をそのまま受け継ぐのがおかしいではないかという点であったと思いますが、査察に関連して、現行の日米協定と、いま御審議を願っております新協定では、同じところもありますが、違ったところも多々あるわけでございます。同じところと申しますのは、もちろん査察の具体的な対象、それから日本だけが査察を受けるということ、これは同じでございますが、たとえば新協定におきまして、これは十一条のABCDのDでございますけれども、アメリカ側の査察員に対して秘密保持の義務を課しております。   〔田中(榮)委員長代理退席、委員長着席〕 Dの初めのところ「B(4)の規定に従って」というところでございます。その最後に「産業上の秘密又は他の秘密の情報を漏らしてはならない。」こういう規定がございます。これは現行の協定にはないところでございます。それからまた、これはこまかいことになりますけれども、日本がアメリカからもらった核物質を加工して、そのものを、いまの協定ではアメリカが優先的にそれを買い取る権利を持っております。そういうような優先買い取り権は今度の協定ではなくしております。ですから、そういう点で、全面的ではございません。基本的には、日本だけが査察を受けるというたてまえは変わっておりませんが、それに関連した規定では、私どもは少しく改良しておると思っておるのでございます。  それから第二の点の、核不拡散条約における査察との関連でございますが、これについて、イギリスとの協定アメリカとの協定に基本的に差異があるのではないかというお話でございましたが、書き方は多少違っておりますが、たとえば日米間の現行協定におきましては、日米両国が将来原子力機関に査察を依頼し得る事項を具体的にきめようではないかというのが現行規定でございます。ところが、それに反して新しい協定では、原則的に原子力機関のほうに移行するという原則を出しておるわけでございます。そういう意味では、現行協定とは非常に違っており、その意味では、イギリスとの協定と同じ原則に立っておると私どもは解しておるわけでございます。具体的には、現実に両協定とも移管協定によりましていまも原子力機関の査察を受けておるわけでございますが、しかし、法律的にいいますと、たとえば原子力機関が日本に対する査察を断わる、そういうことはありませんけれども、そういう場合にはアメリカが直接やる、その場合には、この査察の規定をかぶってくるわけでございます。そうして、これは前にも御指摘がありましたが、原子力機関の査察は、査察の対象としていまの日米の協定よりも範囲が狭くなっておる、すなわち原料物質と特殊核分裂性物質、これだけであって、減速材その他は入っていないという御指摘がございました。これはまさしくそうでございますが、しかし、基本的に原子力機関の査察は、たとえば日本が査察を受けますと、日本にあるすべての核物質に対して査察が行なわれるのでございます。ところが、日米間、日英間におきましては、アメリカあるいはイギリスから入手した核物質だけなんでございます。そこで、アメリカのほうからいえば、減速材だけをアメリカが出して、日本の国産の核物質で動かしてプルトニウムができる、その場合はやはり査察の対象にせざるを得ない。したがいまして、日英、日米間だけではございませんで、二国間の原子力協定は、すべて査察には減速材その他が入っておるのでございます。しかし、この問題も、日米間、日英問を含めまして原子力機関の査察に、般的基準ができまして、それによってやるということになれば、当然減速材云々の問題は必要がなくなって消えるべきものでございます。ただし、日本にあるすべての核物質が査察を受ける、こういうことになるわけでございます。
  85. 曾禰益

    ○曽祢委員 第一点につきましては、少しあなたのほうが誤解しておられると思うのです。それは現行協定から見ると、まあやや改善といいますか、査察に関して現行協定よりも変わった点がある、それは認めます。そうじゃなくて、ただ、そこへもってきて大きな変化があった。つまり、国際原子力機関による査察問題が核防条約で起こって、それについては、いろいろな観点からなるべく繁雑でなくしようじゃないか、いわゆる簡素化ということが大きくうたわれ、その結果、特に核防条約の新しい案によると、第三条でいろいろ査察のことを書いてありますが、特にその中でも前文に触れて、なるべく新しい技術というようなものを使える限り使って、そうしてこの核防条約に入って、そうして平和利用にだけ専念する国の平和的な開発に対しては、言うならば、よけいなじゃまをしない、できるだけ努力しよう、こういう基本的な方向があらわれ、前文に出され、その精神はやはり第三条の保障の中にうたっているわけですね。したがって、いままでの十年前の査察よりも、全体としては、そのほかにテクニックの発達もあったのだから、かなり簡素化するという方向に、この二国間の協定でも、もっともっとあなたが考えている以上に簡素化する方向に進むべきではなかったのか。十年間の経過にかんがみて、査察の簡素化に全然進歩がなかったというのではないけれども、もっとやはり——ちょうどこの協定に署名したあと核防条約の第二次案ができて、かなり全体的の空気が、核防条約に多くの国を入れさせるためにも、事、平和利用に関しては、核兵器保有国も大体平等でいくのだ、そのために繁雑な査察ということはやめようじゃないかという好ましき傾向が出てきたその時代に、どうも十年前のとあまり変わらないような条約をつくるというのは、いかにも曲がないじゃないかということです。しかし、これは政治論であって、外務大臣から御答弁願わなければならぬ問題かと思うのですが、そういう意味で言ったのであります。  それからもう一つの点は、日米協定の十一条の書き方から見ると、何といっても、十一条のBを見れば、「アメリカ合衆国政府は、この協定の他のいかなる規定にもかかわらず、この協定に定める保障措置が第十二条に規定する両当事国政府の合意により国際原子力機関の保障措置によって代置される範囲を除き、次の権利を有する。」IAEAのほうにまかすということになっていないのですね。IAEAのほうに代置されない部分があったら、やはりこれだけの権利を持つ。そこへいくと、日英協定のほうが実にすかっとしているので、これは国際原子力機関に全部まかすのだ。それがどうしてもできないような場合には、イギリスとしては、言うならばやむなくこれだけの査察の権利を留保するということになる。実際上の査察の内容を見れば、日米も日英も実質的にたいして変わりはないと思うのです。それを大きく二つに分けるならば、原子炉その他のいわゆる施設そのものが兵器生産に関係してはいかぬから、原子炉その他の施設そのものの設計を審査する権利、ここにも私はいろいろ問題があると思うのです。設計を審査するとは、むろん設計図だけじゃないと思うのです。そこで、やはり施設に相当立ち入った立ち入り検査が行なわれる心配があるわけです。これが一つ。  第二の、種類の問題はいろいろございますが、まあ簡単に言うならば、燃料あるいは原料物質を追跡して、最終的にプルトニウム等がどうなったかということを、物質を追跡する必要があるから、結局は、人物等に接近して、場合によったらみずから計量する、計測をする権利を留保する。こまかい点はまだありますけれども、大ざっぱに言えば大体その二つのことがわれわれとして一番神経にさわるような、また同時に、査察を簡便ならしめようとすれば、どうしてもそこに触れるかもしれない、相当立ち入り検査的な考えがそこにある。この二点においては、確かに日米協定も日英協定もそう本質的な違いはないのではないかと私は思うのです。しかし、基本的な協定の精神が、少なくとも案文にあらわれている限りでは、日英のほうが進歩的で、日米のほうが何だかけちくさくて、アメリカが検査権を握っているという印象を与えているのです。これは私は否定できないと思うのです。IAEAによって「代置される範囲を除き、次の権利を有する。」というのは、全面的ににIAEAに移管しないのだという権利を留保しているんじゃないですか、その点をどう思いますか。
  86. 三木武夫

    三木国務大臣 条約の文面、文案から見れば、曽祢さんのような解釈もされる余地があると思います。しかし、実際問題として、この国際原子力機関の査察というものにアメリカが移管するわけですからね。これだけは残しておくんだ、そういうことには実際問題としてはできぬ。そういうけちくさいものにはできないと思います。しかも、この国際原子力機関の査察というものをできるだけ簡素化していこうというのがわれわれの希望でもあるし、また核防条約に加盟した非核保有国の共通のこれは希望だと思います。できるだけこれは機械化して、自動化していきたいと考えているに違いないんですが、そういうことで、こういうことができますれば、それに右へならうようにアメリカとの間に話し合いをするし、またその話し合いはつくと私は思っております。
  87. 曾禰益

    ○曽祢委員 外務大臣は非常に勢いよく言われましたけれども、この協定に関する限りは、あなたの負けで、私の勝ちですよ。これはどう考えても、できはよくないんですよ、アメリカとの関係は。だけれども、この協定にも予想しているごとく、核防条約ができ、日米両国ともに当事国になった場合には、これはもう付属の文書によって審議して、そして必要な改正を加える、そういう場合には、やはりどうもかっこうが悪いですね。それは重光国連局長の言うとおり、日米間の条約だから、ほかのところから入手したとか、そういうものとは別だ、だから日米間の協定と核防条約による国際原子力機関の査察とは範囲が違う、そんなことはわかっておる。ところが、範囲が違うほうの、これからモデルになるであろう国際原子力機関のほうは、比較的——われわれはそれを希望するのですけれども、相当寛大といいますか、大勢をキャッチした方向に進もうとするし、また進めなきゃ困る。ところが、一方において、それができる直前につくった日米間の協定は、えらい渋いものをつくっておるということは、やはりはっきり言って政治的にもまずいんじゃないか。せっかく日本が今度核防条約でこの査察問題についてなるべく簡素化せい——外務大臣は外交演説をされたとき、たいへんにいいことを言っておられる。施政方針演説でこういうふうに言っておるのですね。「今日を核外交時代と呼ぶ人があります。」けさの佐藤総理ばりのことが入っておるんです。それで、いろいろ核兵器に対する反対の意見を強く言われるとともに、「今後日本が日本の立場から世界の平和と繁栄に貢献するならば、」兵器は持たなくとも「国際社会において尊敬され、重視され得る日本たり得ることは間違いありません。」と言って、ここから、「しかし、核エネルギーの平和利用の面における機会均等だけは絶対に確保しなければなりません。」ここまで言われているんですからね。「このことに保証を求める日本の強い主張を曲げるようなことは、私はいたしません。」と。これは三木さん、ほんとうにしっかり頼みます。日本の外務大臣がこれだけの大宣言を発せられたんだから、私は、ほんとうにこの核防条約が軍縮への一里塚である限りは、完ぺきを期するだけが能ではないんで、それは多くの国が入れるようなものをつくるのがいいと思うけれども、しかし、軍縮への一里塚にならないとか、保有国による核軍縮をさぼる材料に使われたり、あるいは平和利用において差別があるものだったら、これはわれわれは反対すべきであって、その点から、私は、この協定がたまたま核防条約がより具体化しようという場面に署名されて国会の審議に入った以上は、この協定だけのメリットで論じられない。核防に対してプラスの面ならいいけれども、やや重荷になりはせぬか。せっかく簡素化しようというのに、日英協定は非常にすきっとできているのに、日米協定のほうはどうも古くさい。これは悪気じゃなくて、十年前の日本の考えは、平和利用しかやらないのだから、何でもあけっぱなしだという態度だったと思うのです。その態度は、兵器をつくらないという面では私は正しいと思うけれども、と同時に、やはりこれからは産業の争いをやっていく意味において、やはり産業スパイなんかごめんだとか、少なくとも核兵器保有国のわがままは許さぬとか、非保有国の中でも、日本とドイツ等のしのぎを削ったテクニックの競争を核の平和利用の面においてやらなければならないという時点で考えたときに、平等な査察ならどんなものでもやるけれども、不平等なものは一切ごめんだというくらいの強さがなければいかぬ。その意味からいうと、どうも日米協定は、悪く言えば、十年一日のごとく保障問題をやや軽く取り扱い過ぎていはせぬか。なるほど、これはこれだけだ、全体の関係が国際原子力機関中心に移るのだから、アメリカもそうやぼは言うまいという、弁解としては、政治論としてはわかるけれども、成文の解釈から言えばだめですよ。アメリカは、これははっきり留保していますよ。私は、その点を今後の問題として非常に憂える。いまさら協定をもう一ぺんやり直せ、われわれがここに保留条項をつくってやることは、これはやぼでしょう。ですから、それは私に関する限りは慎みますけれども、これはほんとうにアメリカに対してくぎをさしておかなければいかぬ。確かに、これはどうもあまりきちんとし過ぎている。これからは平和的意図の明らかな国についてあまり物質を追っかけてやるということはやめろ、ほとんどブラックボックスさえ置いておけは——いますぐそこにいきませんが、数年後には、もう施設に立ち入ったり、あるいはプルトニウムのさまつな存在を追っかけるあまりに、実質的に日本が不平等な査察に服するようなことに絶対にいかぬという、その点に力点を置かれる必要があると思うから、たいへんにくどいようだけれども、申し上げているわけなんです。  そういう意味で、今度観点を変えまして、鍋島さんと原子力局長のほうに伺いたいのですが、われわれはこういう問題にいま日本として当面しているわけですね。現実に国際原子力機関がこれからどういう査察をやるであろうか、これは非常に重大な問題です。日本はいままで非常にいい子だったから、すでに第一号の原子炉について国際原子力機関の査察を受けているわけです。その現実から見て、私たちが考えているようなことが杞憂なのか、これはまあ外務省の国連局からも御説明願いたいのですけれども、たとえばさっき言ったように、デザインをエグザミンするとかレビューする、つまり、原子炉その他の設計を審査する、検討する、ということは、単に図面だけの検査じゃないと思うのです。これは非常に意地悪く言えば、いつでも立ち入り検査——なるほど、自分の国の政府報告する以外は、みだりに産業の秘密、商業の秘密を侵さないかといったら、そんなことを言ったって、もうその国に筒抜けにする以上は、いまのところは劣等生だけれども、これからだんだん優等生になる日本の秘密は、結局アメリカには筒抜けになるわけなんです、考えてみれば。そこで、まず外務省のほうから、いま言った設計を審査する、あるいは検討するというのは、条約上どういうことなのか、設計図だけでは済まないのだろうという気がするのですが、その点まず御説明願って、それからコールダーホール型の東海村の原子炉に対するこれまでのIAEAの査察の実態から見て、どれくらい繁雑なのかについて、御説明願いたい。
  88. 重光晶

    ○重光政府委員 ただいま設計審査のお尋ねでございますが、条約としては、もちろん直接には設計審査だけで、ほかのものは含まれていないわけでございます。しかし、それと関連いたしまして、この協定がまあ十年一日のごとく、査察の点については原則として前のものを踏襲しておるというおことばではございましたが、先ほど申し上げましたとおり、確かに曽祢先生のおっしゃるとおりに、イギリスとアメリカの両協定を比べますと、イギリスは原則として双務的になっております。それは、イギリスに対して日本の立場がそれだけ強くなったからそれができた、正直に申しますと、そういうことであろうと思います。ところが、アメリカに対しては、先生が指摘されましたように、まだ確かに設計の審査まで入っておる。ただ、私どもが考えても、現時点において、これがアメリカとの関係で非常に理想的であったとは残念ながら考えておりません。しかし、少なくともいままでの協定に比べますと、とにかく原子力機関が査察に行くんだという原則も明らかにしましたし、交換公文でもそれをまた確認いたしました。そういうことでございますから、改善はしておる。ただ、十分でないという御意見に対しては、私どもも深く反省しておる次第でございます。ただ、具体的にそれでは原子力機関における査察が今後どうなるだろうか、それが実はわれわれのこれからの大問題でございますが、具体的に御指摘になりました計画書の審査、こういうものはわれわれとしては当然なくなっていくもの、そういう腹で考えておるわけでございます。
  89. 曾禰益

    ○曽祢委員 もう一ぺん……。この設計の審査というのは、設計図面だけなのか、それとも施設そのものまで発展して審査をするのか。条約上の解釈はどうでございますか。
  90. 重光晶

    ○重光政府委員 その点は、設計図の審査だけでございます。
  91. 曾禰益

    ○曽祢委員 それは間違いないですか。
  92. 重光晶

    ○重光政府委員 これは条約の解釈としてはそういうふうになると思います。
  93. 曾禰益

    ○曽祢委員 だいじょうぶかね。これはがんばり通さなければいかぬぜ。
  94. 重光晶

    ○重光政府委員 もちろん、設計の審査以外の査察の条項によっておる査察は、これはまた別でございますけれども、しかし、設計の審査ということになれば、設計図の審査ということになります。
  95. 曾禰益

    ○曽祢委員 それは先ほど言いましたような、主として燃料物質あるいは原料物質を追っかける、そのフローを追っかける意味から、ものに接近し、場合によってはみずから計量する、そっちから出てくるかもしれない。しかし、デザインそのものを審査するということは、設計図を見て、これならよかろう、それはだいじょうぶかな。だれだって設計図だけでなく、見たいものね。特に日本がこれからかりに——これは少し楽観し過ぎるかもしれないけれども、たとえば濃縮ウランの日本式遠心分離の非常にすばらしいあれができたとする。これはへたをすれば非平和的目的にも使われるかもしれないという疑いを持たれるかもしれないけれども、むしろ商業的に、産業的に非常に重要な秘密事項になるわけですね。そういうものが見たいのは、これは人情なんですね。設計図だけ見て、これはいいというふうに済みますか。その点はだいじょうぶですか。
  96. 藤波恒雄

    藤波政府委員 私からちょっと補足いたしまして、実際どの程度に行なわれているかということを申し上げたいと思います。  保障措置の内容の中には、いまお話しのように、まず主要施設の設計の審査ということ、それからもう一つは、核燃料物質等の数量等につきましての記録の報告の問題、それから、査察員を派遣いたしまして、それらの記録が正確であるかどうかということのチェックだとか、こういうことになろうかと思います。  最初の設計の審査というものは、現実には比較的概略的なものでありまして、求められる図面等も、原子炉要覧等に普通公表されております程度の図面でいままで済んでおると思います。  それから、原子炉施設等へは、もちろん査察員が参りました場合には寄りますけれども、御承知のように、放射能もある程度ございますから、中身にまで入り込んで見るわけにもいかない施設でもありますので、それほど立ち入っての検査といったものはないのが現状でございます。  それから記録につきましては、実はわが国の原子炉等規制法におきましても、核燃料物質の所在、移転、それから原子炉の中で照射されて生成をいたしますプルトニウムの生成推定量等は、こまかに記録の義務づけをしておりますし、政府にも報告の義務づけをしておりますが、IAEAに出します資料は、それらの範囲内で済む程度資料でございまして、それらを整理いたしまして、政府を通じましてIAEAのほうへ報告をしておる、こういうのが現状でございます。
  97. 曾禰益

    ○曽祢委員 いままでのところは、何といっても幼稚園から小学校へ入ったばかりみたいなもので、コールダーホールでやっておればわかり切っておる、筒抜けみたいなものだ。だから、施設に対する設計の審査というものは、そうやかましい問題にはならぬですね、わかっておるのですから。こんなものは秘密がないくらいなものですからね。これからは、日本はそのテクノロジーの秘密を解いて、世界の一流のものにしていこうということになりますと、そこに査察の問題とぶつかる問題が出てくる。私は、この原子力平和的利用の場合に、民主、公開というのは、現状では大賛成だけれども、しかし、同時に、商業上の競争上の秘密をどうするかということ。日本だけが全部見せた場合には、核兵器をつくるという悪い意図を持っておる国がそういうものを使った場合にどうするか、アメリカからの圧力というものを離れて、もう一つそこに問題があるかもしれないという問題があるわけですよ、査察という問題は。そういうことをよく考えた場合に、国際原子力機関がいままでかなりゆるやかな査察をしておったから、それで済むものとは考えられない。ことに私は、参考人の関西電力副社長の加藤さんに失礼かもしれないけれども、やはりこれから日本の弱き——弱きといっても、経済力は強いかもしれません、その日本の民間企業者が、現実に査察を受けるような原子炉を動かすことになるわけですね。そういう場合に、どうも国際的な査察機関等に対して、ややもすれば卑屈なぐらいサービスがよ過ぎて、そのサービスの競争をするとか、それから、結局アメリカや西ドイツの利益を守るような人が国際原子力機関の査察員として日本に来る。ソ連の人はお断わりするでしょう、平和的利用の施設に対する同様のIAEAの査察を受けないというのですから、そういう人は好ましからざる人物として、日本へ来ることはお断わりするでしょうが、むしろ日本の商売的な相手であるアメリカ、西ドイツのインタレストを守るような人が査察に来る、こういう場合は、よほど締めてかからないといけないのじゃないか。だから、いままでのIAEAの東海村に対する査察で、これでいいだろうとか、この協定にどう書いてあろうが、国際原子力機関が動き出して、核防条約に日本も、またすべての多くの国が入るから、そっちのほうに移るだろうからというセンスだけではいけない。むしろこの機会に、これを——この協定だけの問題でありませんが、この協定ができるときに、ちょうど国際原子力機関が、平和利用についての査察の平等性と核を兵器に利用しないという査察の調和をどこでとるかは、非常にむずかしい高度の技術的な問題であると同時に、高度に国際政治的な問題をここで取り上げるということになるのですから、私がこういうことをやかましく取り上げる理由はおわかり願えると思うのです。  そこで、そういう意味で、もうこれ以上私は町間を使いたくございませんから、最後に、先ほど言ったことですけれども、特に外務大臣及び科学技術庁長官に、私の意見として警告的に申し上げておきたいのは、核防条約の第三条の3にはこういうことを言っておるわけです。「この条にいう保障措置は、この条の規定及び前文にいう保障措置の原則に従い、第四条の規定に合致する方法で、かつ、当事国の経済的若しくは技術的発展又は平和的な原子力活動の分野における国際協力を妨げないような方法で実施されなければならない。」こういうふうにいっているわけです。それで、特にこの前文の第四項は先ほども言いましたように、「器具及び他の技術を要所において使用することにより原料物質及び特殊核分裂性物質の移動」、移動という翻訳はどうかと思うのです。フローと書いてあるのですから、むしろ流れでしょう。物質の流れを「効果的に管理するという原則を国際原子力機関の保障措置制度のわく内において適用することを促進するための研究、開発その他の努力に対する支持を表明し、」云々と、こうなっている。要するに、そういう意味で、できるならば、あまり立ち入った検査をして、そのことによってその国の商業的な利益をそこなったり、繁雑な査察によって不平等な待遇をしたりすることをすまい。むろんその本旨は、核の軍事的利用を押えるということにあるけれども、いわゆる大の虫を殺すようなことをすまいという考慮が底に流れているし、この点は、どの国よりもわが国こそ強く主張しなければならない。こういう精神においてこの協定を見るときに、特に日米協定は、必ずしも条約のできから見てこの新しい情勢に即応せざる面もあるけれども、われわれはこの協定がもたらす事実上の便益を考えて、ただこれにべったりと安易に依存しないという基本的姿勢を強くとるとともに、ぜひこの外交の面において、特に核防条約のこれからの発展に即応して、おくまでさっき私が読み上げた外務大臣の施政方針演説にあらわれた、平和利用については断じてその平等性を譲らぬ、それを主張して、それを通して、そしてりっぱな核防条約をつくるように努力する、こういうことを強く私は要望しておきたいわけです。両大臣からの御答弁を伺って、私の質疑を終わりたいと思います。
  98. 三木武夫

    三木国務大臣 いま曽祢君が御指摘になりましたように、核兵器の開発は日本はやらぬということ、したがって、核の平和利用の面については、われわれは各国との間に、核防条約に私どもが加盟をいたしましても、原子力の平和利用の面における研究、開発その他に不平等な取り扱いを受けることのないように、今後とも私の外交方針演説に述べたことの所信を貫きたい覚悟でございます。
  99. 鍋島直紹

    鍋島国務大臣 査察の目的は、すでに御承知のとおり、平和利用に徹するということであり、軍事利用に転化しないという、そこのところのけじめの点だろうと思います。したがいまして、昨日も御答弁申し上げましたが、原子力委員会等におきましても、査察の基準等はできるだけ簡素化すべきであるということを考えております。きのうも、濃縮二〇%ぐらいまでは当然軍事利用できないからいいじゃないか、そういう基準を考えたかという御質問もございました。したがって、今後におきましては、やはり外務大臣の言われましたように、決して差別的待遇を受けないように、かつ、日本から積極的にそういった査察の基準というものもIAEAに対して働きかけるように、ひとつ努力をしてまいりたいと考えております。
  100. 秋田大助

  101. 田中武夫

    田中(武)委員 もうだいぶん同僚委員も詳細にわたって質問いたしておりますので、私はできるだけ簡単に質問をしていきたいと思っておりますので、答弁者のほうもそのつもりで簡潔にお願いします。さらに事の性質上、前委員質問と同じようなところも出てくると思いますが、そういう点につきましても、ひとつ簡単にお願いします。  そこで、この両協定は、原子力の平和利用についての協定でございます。したがって、この協定は、原子力基本法の三つの原則、すなわち、まず平和目的、次に民主的な運営のもとにおける自主的な開発、さらに成果の公開、いわゆる平和、自主、公開の三原則の上に立たねばならないと考えるわけなんです。そういたしますと、まず、この協定の第一条の1項、ここに「秘密資料」ということばがあり、その次に「(1)原子兵器の設計、製造若しくは使用、」こういうことばが出てくるわけなんです。平和利用の協定に、原子兵器の設計だとかあるいは製造、使用、あるいはそのことの項が「秘密資料」というインデックスによってあらわされておるということ、こういう点については、原子力基本法のいわゆる三原則から見てどういうことになりますか。
  102. 重光晶

    ○重光政府委員 秘密資料という定義か確かに一条にあがっておりますが、秘密資料に関する規定は二条のB項でございます。要するに、秘密資料はこの協定では提供しないということだけでございまして、実際上は、文字上は秘密資料とございますけれども、秘密資料はこの協定とは全く関係がないということでございます。また、原子力兵器のことについても同じことが言えるわけでございます。
  103. 田中武夫

    田中(武)委員 何だかもう一つわからないんですがね。一条I項にこう定めておいて、第二条のB項では「この協定に基づいては通報されないものとし、また、」と続くんですね。だから、言うならば、このI項はこの協定から除かれるという意味ですか、そう読むんですか。
  104. 重光晶

    ○重光政府委員 一条は、これは全部定義でございますが、これは二条で、秘密資料または秘密資料の通報を伴うような施設その他の移転は行なわないと書いた関係上、秘密資料というものは何であるかということを明確にする必要があったので、一条のI項でございますね、これで規定しただけのことでございます。したがって、二条がもとでございまして、二条はこの協定では関係がないと言っておるわけでございますから、関係がないものは何であるかということをはっきりさせる必要があるということで、一条に書いただけでございます。
  105. 田中武夫

    田中(武)委員 これは言うまでもなく、一条のI項はいわゆる定義ですね。そして第二条のB項にこういう規定がある、したがって、秘密資料とは何かということの定義を一条I項でやったんだという。私は、もしそういうことであるならば、全然そんな項目はなくていいんじゃないですか。疑わしいような「秘密資料」だとか「原子兵器の設計、製造若しくは使用」というようなことばはなくていいんじゃないですか。何かこれは入れることによって積極的な意義があったんですか。
  106. 重光晶

    ○重光政府委員 これはおっしゃいますとおり、日本だけのことを考えますれば、日本の法制でこういう秘密資料はないのでございますから、要らないわけでございますが、しかし、相手のアメリカ側には、アメリカの国内法で秘密資料がたくさんあるわけでございます。したがって、日米間の協定としてはやはりこれを明らかにする必要がある、こういうことになると思います。
  107. 田中武夫

    田中(武)委員 どうも私はアメリカの国内法がどうであるのかよく知らないのですが、平和協定と言いながら、こういう文句が出てくることはどうか。もし関係がないのなら、頭から書かないほうがいいじゃないか、こういう感じを持ったものだから、お伺いしたわけです。したがって、これはあくまで第二条に主体があって、一条I項はただ定義ということであって、実際は関係がないのだ、この協定とは関係がない、こういうことは明白なんですね。
  108. 重光晶

    ○重光政府委員 おっしゃるとおりだと存じます。
  109. 田中武夫

    田中(武)委員 それから、この協定の十一条B項の(1)それのあとのほうに、「その他の資材のいずれかを使用し、加工し、若しくは処理する次に掲げる物の設計を審査する権利」こういうものがあって、「原子炉並びに」と続くわけですね。そうすると、これは他の委員質問したところだと思うのですが、これからの日本の原子炉の設計とかそういうものは、全部この協定によるいわゆる審査の対象になるわけですね。
  110. 重光晶

    ○重光政府委員 この点は、前に御説明申したところに関係があるのでございますが、もちろん、日米協定アメリカから入手したものについては、条文上こうなっておるわけでございます。しかし、実際上は、繰り返して申し上げておりますとおりに、この査察を原子力機関に移管してございますから、実際上の設計その他の審査に関する査察というものは、先ほど原子力局長から御説明したような実態になっておるわけでございます。
  111. 田中武夫

    田中(武)委員 そこで、これを審査するかしないか、これはアメリカが一方的にきめるのでしょう。アメリカの決定によるのでしょう。私は、他の委員が同じことを伺ったけれども、そうでなくて、原子力基本法でいうところの、民主的にしてかつ自主的なという項からどうなのか、こうお伺いしているのです。これはアメリカが審査する必要があるかないかということを一方的にきめるでしょう。そこに原子力基本法の大目標であるところの三つの柱の一つの自主的ということとの関係はどうなのかと聞いておるのです。
  112. 重光晶

    ○重光政府委員 完全なる意味の自主的査察、外国あるいは国際機関の介入を許さない査察ということは、将来は別として、いまのところは確立してないわけでございます。  それから、具体的設計の審査につきましても、いま申しましたとおりに、原子力機関に移管したと申し上げましたが、それはアメリカがかってに移管したのでも日本がかってに移管したのでもないのでございまして、日本とアメリカ原子力機関の三者の合意によって移管してあるわけでございます。
  113. 田中武夫

    田中(武)委員 この十一条のB項の(1)のしまいのほうのところを言っておるのですよ。「処理する次に掲げる物の設計を審査する権利」というのがある。この権利はアメリカにあるのでしょう。したがって、この権利を行使するかどうかはアメリカがきめるのでしょう。それが原子力基本法の民主的にしてかつ自主的な運営の自主との関係はどうであるか。私の質問は、まず原子力基本法というのが前提にあるのですから、それに従って答えてください。これで原子力基本法第二条でいうところの、民主的運営にしてつか自主的であると言い得るのか。すなわち、日本の平和利用は、民主的でかつ自主的でなくてはいけない。この自主性との関係を言っておるのです。同じことを聞いておるのですが、観点が違いますからね。原子力基本法というものを頭の中に置きながら、ひとつ御答弁願います。
  114. 重光晶

    ○重光政府委員 十一条の御指摘の査察が、原子力基本法の民主的、自主的に反するとは私どもは思っておりません。なぜかと申しますと、かりに査察を自主的にしなければ、すなわち、外国から入れた施設その他に対して日本が自主的に査察しなければ、この原子力基本法に違反するというふうには、いまの段階では私どもは考えてないわけでございます。  それから、アメリカが権利を持っておるということでございますが、まさしくそのとおりでございます。ただ、実態は、アメリカ、日本、それから原子力機関の合意によって、原子力機関による査察になっておるわけでございます。
  115. 田中武夫

    田中(武)委員 同じようなことを繰り返し繰り返し聞くのはいやなんです。しかし、これによると、この協定に基づいて入手したところの燃料その他を使用する原子炉等は——いまはアメリカその他から輸入しておるかもしれぬ。先ほども話があったようですが、日本が今後自主的に開発する、日本の技術ではできると思うのです。そのような場合でも、一方的に、燃料をもらっている、資材をもらって使用しておる、こういうことで査察をせられるのでしょう。その査察の必要があるかないかということの決定は、アメリカが一方的にやる、こういうことなんですよ。そうじゃないですか。そのことは、原子力基本法の第二条の精神からいってどうなのかと聞いておる。きわめて明快な質問をしておるのですよ。
  116. 重光晶

    ○重光政府委員 私の御説明のしかたがまずいかもしれませんが、この協定は、アメリカから入手したものに関する査察が問題になっておるわけでございます。
  117. 田中武夫

    田中(武)委員 入手したもので、それを資料として原子炉をつくる。それでアメリカから入れる濃縮ウランをたく。その原子炉が対象になるのでしょう。そうすると、日本の原子力平和利用は、三つの柱である平和、自主、公開の原則からいって、自主性という点において原子力基本法との関係いかん、こう聞いておるのです。
  118. 重光晶

    ○重光政府委員 先生の御質問は、私よく了解しておるつもりでございますが……。
  119. 田中武夫

    田中(武)委員 だから、言いかえるなら、原子力基本法を通してこれを見てくださいよ。あくまでも、日本の原子力の平和利用ということは、原子力基本法が基礎なんです。結ばれてしまった条約と、法律と、いずれが優先するやということになると、国際法上の一元論や二元論を論じなければならぬ。そういうことはやらないのです。少なくとも日本においては原子力基本法というものが確固としてある。したがって、原子力基本法を通してどうなのか、こう言うておるのです。そうなると、将来の原子炉等々においてもいわゆる審査の対象になる。これは自主的ではないではないか、こう言っておるのですよ。あなたで無理なら、ここで私は無理に押しつけてはやりません。これはできるだけ協力してきょう通すというか、採決のつもりでおりますが、しかし、気が変わったらどこまでいくかわかりませんよ。あなたでは答弁できませんよ。これは法制局長官を呼んでこなければできない。やりますか。
  120. 重光晶

    ○重光政府委員 おことばではございますが、この十一条Bの(1)の後段でございます。結局、ここに書いてある、「次に掲げる物の設計を審査する権利」というものをアメリカ側に与える。確かにここに協定上与えております。しかし、それがわが国の原子力基本法の自主という点に抵触するとは私どもは考えていないわけでございます。
  121. 田中武夫

    田中(武)委員 これは見解の相違とでもしておきましょう。そういう答弁をするなら、私はなお突っ込んでいきたいんですよ。審査をするということは、設計図を見るだけではないでしょう。審査というものは一体何ですか。法律上審査とはいかなる意味を持っておるんですか。審査とはいかなる意味を持っておるか。
  122. 重光晶

    ○重光政府委員 この点は、午前中の委員会でも出た問題でございますが、私どもとしては、これは設計図の審査と考えております。実際は、これは同じ設計図でも非常に大まかなものでやっておるわけでございます。
  123. 田中武夫

    田中(武)委員 原子炉が対象になるのは設計が対象になるのでしょう。いまはよそからの輸入のものを使っている。しかし、日本がそれを改良し、新たなものをつくった、その設計図。現在自動車の設計図だって、いわゆるばく大な金をかけ、あるいは人の命がかかってスパイをやろうとしておるのでしょう。いわんや、原子炉の設計が将来三十年にわたって審査せられるということで、はたして日本の原子力の平和利用が自主的であるかということについては、だめですよ、そんなことじゃ。だめだと私は断定しますよ。しかし、だからといって、ここで私は審議をとめようとも思いません。思いませんが、あなたが法律的にそれだけの自信があるならば、私は次々にいきますが、いかがですか。自信ありますか。私はそう思うていますじゃ困りますよ。審査とは一体法律的にどんな意味を持つのか。法制局長官なりあるいは専門家を呼んで聞こうじゃないですか。あなたの主張が正しいか、私の主張が正しいか、どうなんです。ただ、いままで設計はあくまでも設計図を見せるだけだというようなことで済んだかもしれません。しかし、私はあくまでも法律的にものを聞いているんですよ。法律的な用語として、審査とはどういうことですか。だめだよ。かぶとを脱いでおきなさい。——委員長、この調子でやっていると日が暮れて道遠しになります。しかし、私はいま言ったように、そんなにいじめようとは思っていませんから、これでおきますがね。これは考えねばいけないと思う。そこで、これはむしろ外務大臣よりか、その衝に当たるところの科学技術庁長官に私申し上げますが、どうです、私の言っておることと、原子力基本法から見て、矛盾していませんか。矛盾しておるとは言えないと思うのです。しかし、そういうことがないようにやるというぐらいの答弁をしなさい。
  124. 鍋島直紹

    鍋島国務大臣 お話を伺っておりますが、私法律に詳しくはございませんけれども、要するに、原子力基本法によって自主的に公開あるいは民主的運営ということをやっておるのであります。一方、アメリカの立場において、自主的なアメリカの主導権のある立場においてそれをいわば審査する、査察をするということについては抵触しないか、こういうようなお話、そういうことではないかと思います。実際いいますと、これは常識的な考え方かもわかりませんが、日本はあくまでも平和利用で、それ以外のことをしないわけですから、平和利用、軍事利用に対する査察であるならば査察の必要はないというようなことすら言えるのではないかと、まあ私個人は考えますが、できるだけそういうことじゃなくして、自主性をあくまで保っていくように私は最善の努力をしたいと思います。
  125. 田中武夫

    田中(武)委員 ちょっとまだあれですがね。じゃ、こういう答弁しなさいよ。あくまでも原子力基本法の、三つの原則は日本の原子力平和利用についての基本でございます。したがって、この条約のまだ残っている疑義等があれば、その上に立って、いわゆる憲法七十三条二号のほうで解釈について話し合ってはっきりしますとか、そういうことぐらいは言えるでしょう。だから、あくまで原子力基本法は守りますと……。
  126. 鍋島直紹

    鍋島国務大臣 もう当然のことでございまして、私の立場とすれば、日本の原子力の平和利用につきましては、あくまで原子力基本法を守り抜くことでございます。
  127. 田中武夫

    田中(武)委員 そういうことで、そういう問題から見て疑義が出てきておる点については、後日いわゆる行政的な、国会の承認を得るというのではなしに、いわゆる七十三条の二号のほうの外交的手段によって明らかにしていく、そういうことを要求しておきます。  次に、この協定の持つ意義は、今後日本の原子力発電ということに大きなウエートがかかると思うのです。そこでまず、これは通産省の井上局長に伺いますけれども、まず基本的な問題として、天然ウランか濃縮ウランかということは、もうすでに議論を尽くし解決をしておるのですか、いかがですか。将来天然ウランでやるのか濃縮ウランでやるのかということについては、もう議論は出尽くしたのですか。
  128. 井上亮

    ○井上(亮)政府委員 ただいま、御承知のように、先生のおっしゃる両方を一応併用して発電を進めておるというのが現状でございます。将来の問題につきましては、これはまだ、端的にお答え申し上げれば、一辺倒にはなっておりません。
  129. 田中武夫

    田中(武)委員 もちろん、イギリスとアメリカ両方協定が結ばれておるからそうだと思うのですが、しかし、これに百六十一トンですか、ということの限度がきまっておるのです。しかも、これは三十年固定なんですね。これは各委員が長過ぎると言ったと思います。何回言っても長過ぎます。その間、いわゆる一つのワクにはめられたというかっこうになります。ところが濃縮ウランでいくのか天然ウランでやるのか、この議論が煮詰まっていなければ、これは百六十一トンでいいのかどうかということは言えませんですね。  そこで、あまり困らすような質問は避けますが、この三十年の間一定のワクの中にある、少なくとも年限は。そう考えた場合に、一九七八年、一九八八年、一九九八年まで続くのですね。この十年、二十年、三十年後、その時点における日本の需要電力、供給との関係及びその電力源が火力、水力、原子力で割り当てはどうなるのですか。大体の試算はできていますか。
  130. 井上亮

    ○井上(亮)政府委員 将来の原子力発電の実態でございますが、まず一般論として申し上げまして、これはエネルギー調査会等でも審議した内容でございますが、一応昭和五十年には六百三十万キロぐらいの原子力発電を実施したい、それからさらに昭和六十年度には非常に大きくなりまして、三千万キロから四千万キロ程度原子力発電を実施いたしたいというのが、ただいま一応私ども長期の展望として持っておる数字でございます。
  131. 田中武夫

    田中(武)委員 これはいろんな資料がありますが、大体聞くところによると、昭和五十五年か五十八年ごろ、十二、三年から十五年後くらい、その辺がクロスの線なんです。原子力発電のほうが今度は火力、水力にまさるということ、そうして三十年のときの日本の産業の状態、したがって、それに対する——これは生活文化もあるでしょう、それに対する電力需要と供給とを見た場合に、この百六十一トン云々でいいのか、そういうことまで十分計算の上でやっておられるのですか。
  132. 井上亮

    ○井上(亮)政府委員 ただいまのお尋ねに対しまして、電力の中の原子力発電のウエートは、五十年時点では、さっきの六百万キロと考えまして、大体九%程度というふうに考えております。さらに昭和六十年度、私先ほど三千万キロから四千万キロくらいの原子力発電を実施すると申しましたが、その時点では大体二一%から二七%ぐらいのウエートを原子力発電が占めることになろうと思います。
  133. 田中武夫

    田中(武)委員 いや、だから私は、議論の基本として、三十年は長過ぎると思っているのですね。その上に立って、三十年先の電力の需給なんというのは、机の上ではできても、ほんとうはわからぬのじゃないですか。逆に振り返って、三十年前といったら昭和十三年ですよ。昭和十三年の時点に立って、昭和四十三年に国会において原子力協定が議論せられるとだれが考えたでしょう。そうなると、これからの三十年は、それよりももっとテンポが早いかもわからない。ならば、原子力には変わりなかったとしても、原子炉の設計等には変わりが出てくるだろうし、それになおかつ燃料についても、濃縮ラウン、いま考えておるものが最適だということではなかろうと思うのですね。そういうことに立った場合、なぜ三十年という長年月を必要としたのか。条約というものは、五年かあるいはたかだか十年まできめておいて、そうして必要があれば更新するという規定を設けておけば、三十年という必要はなかったのじゃないですか。これはすでにだれかが聞いたと思いますが、私もそういう疑問を持っております。どうなんですか。五年くらいにしておいて、そして必要ならば更新の道さえ開いておけば——安保条約だってそうでしょう。それに、これからわかりもしない三十年先といえば、夢の世界ですよ。そういうときに、三十年というこういう協定はどうなんです。外務大臣、これをいまさら十年にしなさいといってもどうかと思うのですがね。私は五年か十年——五年ぐらいでもいいと思うのです。このような日進月歩の中では、その時点に立って更新ができるような方法さえ考えておけば別に差しつかえないのじゃないですか。大臣、これから期間を五年か十年にして更新をするような考え方を出すわけにいかないのですか。昭和十三年に四十三年のことを考えた人がだれかおったか。そうすると、昭和が続くかどうか知りませんが、七十三年を見た場合に、一体どうなるのでしょう。ちょっと長過ぎる。ということは、この原子力に関する限り、イギリスも含めてですが、アメリカからワクをはめられて、そのワクの中でしか活動ができない、そういうことになるのですよ。そのこと自体、原子力基本法でいう自主性からいって、はたしてこの協定自体がどうなのか、こういう疑問が出るわけなんです。これはひとつ大臣から答弁をしていただいて、もう次に進みます。こんなことをやっていると、これはいつまでたったってらちがあかぬですから……。
  134. 三木武夫

    三木国務大臣 三十年という年月、こういう変化と進歩の激しい時代ですから、長いと言われることもよくわかりますが、これはいまさらどうというわけにもいきませんので、三十年ということで御審議を願いたいと思います。
  135. 田中武夫

    田中(武)委員 中のことが全部いいとしても、その期限だけでもわれわれは賛成できかねるのです、三十年なんというのは。  そこで、これはついでにお伺いしておきますが、九条のA項で「十六万一千キログラム又は両当事国政府の問でそれぞれの法律上及び憲法上の手続に従って合意される量」こう二つあるのですが、「又は」でつながっておるのですね。そうすると、限度は、十六万一千キロというのがあとにも出てくると思うが、これが一つ押えられておって、その下において憲法または法律に基づくというのですか。それともこれは同列で考えるのですか。十六万一千キロというのは一つの限度だということは他のどこかにも出てきておりますね。
  136. 重光晶

    ○重光政府委員 この「又は」というところは、ちょっと読みにくいことは確かでございますが、この意味は、先生のおことばでいえば、同列に並んでおる。すなわち、百六十一トンは確保する、それよりふやす場合というのが「又は」以降に並んでおるわけでございます。
  137. 田中武夫

    田中(武)委員 そうすると、当事国というのは、アメリカのなにもあるでしょうが、日本からいえば、これの関係の法律といえば原子力基本法だと思う。憲法とあるのですが、それによって必要ならこれは増量できるわけですね。そういう規定もどこかにあったと思います。  そこで、附表ですね。ここにいま建設中だとか、これは私も知っております。それから「計画中」「考慮中」というのが出ておりますね。もちろん、この七条の附表は九条によって修正ができるようになっておりますが、これは三十年間見通して、大体これでいくのかどうか、これでいいのかどうか。それともう一つは、「考慮中」というのは、一体どこでやるのか。何を意味しておるのか。それから、これはだれかが言ったと思いますが、現在の九電力会社が一つ一つ、あるいは二つ三つと持っていくのがいいのか、あるいはそういった大きな設備をするためにはブロック制とか、電気業界でいうならあるいは広域運営といっておりますが、言いかえるならば、三十年間電力界のいわゆる再再編成というものはないという前提に立っておられるのですか。どうです。
  138. 井上亮

    ○井上(亮)政府委員 附表に出ております各社の計画数字でございますが、これは三十年間にやる事業ではありませんで、ここに出ております会社がこの年次に、昭和四十六年度までに着工するというものを一応予定いたしたわけでして、その着工しました所要燃料が少なくとも三十年間は確保できることというようなことで、百六十一トンの内訳にそれを入れたということであります。したがいまして、四十七年度着工以降の分につきましては、この所要燃料では足りない場合があり得る。それは天然ウランか何かでやれば別でしょうけれども、イギリスあたりから買えば別でしょうけれども、足りない、こういうことになるわけであります。  それからなお、電力業界の体制問題でございますが、これは当面、少なくとも今日の九電力体制、これは、私諸般の内容を検討いたしまして、現状においてはこれで十分やっていける、これはまた同時に消費者に対するサービス面からいたしましても、一応現体制でやり得る、こう考えております。しかしながら、これも先生お話しのように、三十年とかあるいはそれ以上の長きにわたって現状のままか、こうお尋ねになりますと、それは、現状においてはこれで矛盾なく、また消費者等にも迷惑をかけずにやってはおりますけれども、遠い将来の問題になりますと、これはそのときの経済情勢あるいは電力の効率的な運用体制というような進歩もありましょうから、それとの見合いで考えられなければならないというように考えております。
  139. 重光晶

    ○重光政府委員 この附表と九条A項の関係については、いま通産省のほうから御説明したとおりに考えております。
  140. 田中武夫

    田中(武)委員 この附表というのは、やはりこの協定の一部をなすんでしょう。
  141. 重光晶

    ○重光政府委員 そうでございます。
  142. 田中武夫

    田中(武)委員 そうすると、四十七年以降計画したときには、別に何らかの手続をとってこの附表に追加をしていく、そういうことになるのですね。これはなぜこの附表まで協定の一部として入れる必要があったのか。言いかえるならば、少なくともこれだけの「建設中」あるいは「計画中」「考慮中」と入れて、それだけの燃料だけは確保したいということのほうが先行したためにこうなったのかと思いますが、どうなんでしょう。現にこれから次々と新しいものも考えなければいけないし、技術も発達すると思うのです。それを附表にうたってしまって、そしてそれが協定の一つの内容をなすわけですね。そういういき方はどうなんです。協定を結ぶという上に立っていいことですか。これも私の言うように、三十年間固定せられる中のもう一つ固定になりはしませんか。だんだんと自主性がなくなってきたということがはっきりするじゃありませんか。そうじゃないですか。原子力基本法にいうところの自主性ということが完全にこのことによって奪われておる、こういうように思うんですがね。もちろん附表は追加はできます。できますから——この問題を進めるとまたストップになりますからしませんが、なぜ附表に列挙する必要があったのか。どうなんです。
  143. 重光晶

    ○重光政府委員 この附表と本文の関係は、先ほど御説明したとおりでございますが、結局、四十七年以後新たな計画をつくる場合に、この協定をふくらまして、すなわち協定を改正して、附表も改正してつくるか、あるいはまた必要があれば別個の協定を結ぶか、これは先のことになると思います。しかし、この協定だけからいいますれば、ここに附表に掲げたものの三十年分——しかし附表をなぜ掲げる必要があったのかと、こういう御質問でございますが、元来、この百六十一トン、すなわち、この協定の眼目になります核物質の確保とその百六十一トンの内容がこの附表から出ております。そこで、便宜のために、このことだけの協定であるという意味であげたのでございます。
  144. 田中武夫

    田中(武)委員 考え方はわかりました。しかし、そのことは、より固定化してしまうことになりますね。私は、この三十年間、これによってワクははめられる、固定化する、こう言っておるのです。もう一つ附表によってなおかつ固定化してしまう。もちろん修正の手続はありますがね。これはなぜそんなに固定化の窮屈なことをきめなくてはならなかったのでしょうか。それを私は疑問に思うわけなんです。——まあよろしい。しかし、これはいわば濃縮ウランという一つの物質、言うならば商品です。商品の供給協定なんですね。それはもちろんこれが日本にはなくて、アメリカだけにしかない、こういうことであるので、供給協定ではあるが、対等の上に立っての双務契約でなくて、一方的契約にならざるを得なかった事情はわからぬことはないです。少なくともこれは原子力燃料というものであるからこそ、国が条約上の手続によってきめたわけですね。しかし、そのことを除けば、一つの商品の供給協定ですよ。商売上の協定なんです。そんなら当然双務契約でなくてはいけない。ところが、文章はほとんど一方的なものなんだ。片務的なものになっている。そこで、私はどうも法律的に見て納得がいかない。しかも、供給協定であるならば、商業ベースの上に立って値段なんかのきめ方をはっきりしておかなければいけないと思うのです。ところが、これは返還のときはアメリカ原子力委員会の公示した値段ということになっていますね。そのほかは値段のことはうたうてないでしょう。どこかありますか。  なお、これはこういうことを政府間においてきめておいて、実際にあたってはそれぞれの東京電力とか関西電力等々が民間ベースにおいて交渉することを妨げない。このワクの中で交渉することになるのでしょう。その場合、どうなるのですか。これはあくまでも商品——アメリカからいえば商品ですよ。商品の供給協定、言うなれば売買契約ですよ。こういうことでいいのですかな。
  145. 重光晶

    ○重光政府委員 お答えは前後しますが、アメリカから買う濃縮ウランの価格については、八条Aの(2)に、一応、具体的にどうということはございませんが、アメリカの「国内の使用者について適用される価格又は料金とする。」というふうにしてございます。それからまた、先生もちょっと御指摘になりましたように、なるほど、この附表によって、結局この協定は、この附表に掲げられたものの核燃料を確保する協定ということになっております。しかし、同じ八条でございますが、この八条、A、Bとずっとございますが、これはそうはいっても、具体的に契約をし、あるいはこの附表にのぼっておるものでも、日本の都合によって契約しなかったり、あるいは途中でやめたかったりする場合が現実に出てくるわけでございます。そのことをこの八条の規定が一応予想して規定しておるわけでございます。
  146. 田中武夫

    田中(武)委員 これはあくまで売買契約なんです。特殊な商品に対する売買契約なんです。だから、その上で条文を考えるべきであると私は思う。それなら、当然、お互いに対価を出してやるという、言うなら民法の五百五十五条の精神でいくべきだと思うのです。一方が物を供給する、それに対して対価を支払う、それが基本ですよ。それがどうも片務的、一方的契約になっておるところに不満があります。しかし、事が特殊なものであるということで、ある程度やむを得なかったことは了承しましょう。しかし、私はここで指摘をしたように、これはもうあくまでも売買契約である。そうなんですよ。違うとおっしゃるならまた議論しますけれども……。それにしては少し遠慮し過ぎた。しかも長い間固定せられる。みずからの手でみずからを縛るようなこんな協定をなぜ結ばなくてはいけないのかと思う。  次にいきます。  この八条D項で、別途合意される場合は解約せられることがある、こうなっているのですね。ところが、実際どうなんですか。アメリカの現在のウラン鉱の状態からいって、一九七五年ごろにはアメリカのウランはなくなるのじゃないですか、その後の開発は別として、いまの見通しは。そうして、南アフリカとかインド、オーストラリア、ラテンアメリカ等は取引を禁止していますね。そうした場合、もしウランが枯渇した場合は、アメリカはどこからウランを入れるか。当然共産圏になるのですよ。アメリカ自体が三十年間の濃縮ウランをつくるだけの資源を持たないのではないですか。私もよくは知らない。しかし、大体が一九七五年ごろ、アメリカの現に発見し、現に掘っているところはもう枯渇するのではないですか。ウランを濃縮するところの技術をアメリカは持っているとしても、原料のウラン鉱というものは、一体アメリカだけで三十年まかなえるのか。しかも、いま言ったように、南アフリカにおいてはウランはあります。しかし、人種問題等々で、これは商売はやらない。さらにインドとかあるいはオーストラリア、ラテンアメリカ等は取引を禁止しておるでしょう。ただ一つ開かれているものは、いまのところカナダだけですね。そう考えてきたときに、アメリカ自体が三十年間このような国際情勢が続くとも思えませんし、共産圏等から買い入れることになってくると、事情は変わってくるのではないですか。そういう点からいっても、三十年は長過ぎると思うのですが、どうです。
  147. 重光晶

    ○重光政府委員 いま御質問の八条D項によりまして、アメリカのAECに濃縮作業を委託するわけでございますが、その原料でありますイエローケ−キでございますが、これは必ずしもアメリカ国内で求めることを考えておりませんで、カナダ等の豊富なる資源に期待をしておるわけであります。なお、将来につきましては、それ以外の地域につきましても多角的に求めるという努力を続けるべきであろうとは思っております。
  148. 田中武夫

    田中(武)委員 だからいま言ったのです。カナダから入る道しかないんだ、こう言っているのです。それもたいしたことないですよ。三十年間にわたって、そのもとになるところの資源といいますか、ウラン鉱の見通しはないですよ、アメリカの立場に立った場合にも。にもかかわらず、三十年間というのはどうにも納得がいかない、こう言っているわけですが、これも、やっておるとまたきょうのことにならないので、次に行きます。  そこで、イギリスともアメリカともそうですか、ことにアメリカとの交換公文に核防条約との関係がうたってありますね。あれを読んでおると、核防条約に賛成せねばならない、そういうような印象を受けるわけです。私は何もそれを頭から反対とかどうとか言っていないのですが、何だか、濃縮ウランの供給協定によって核拡散防止条約に関する日本の態度までチェックされた、こういう感じを受けるのですが、それはどうなんでしょうか。それから、核拡散防止条約で、欧州ではユーラトムの査察ということを従来どおり主張しておる。そうなると、この協定によって日本だけが特別な査察といいますか、を受けるということになるわけです。そう考えてくると、ますます窮屈になってくる。で、やはりもとに戻って、原子力基本法との関係からいって、どうもおかしいんじゃないかと私は思うのですが、どうなんでしょう。
  149. 三木武夫

    三木国務大臣 この協定が、核拡散防止条約に日本が入ることを前提にしておるということはないですよ。それは査察を国際原子力機構に移管するというようなことから、田中さんはそういうふうに類推されるのかもしれませんが、そういうことを義務づけてはいないということは言えると思います。  それから査察の点では、御説のように、ユーラトムはIAEAとの間に協定を結びますからね。そしてまた、IAEAのほうで査察に対して協定を結んで、IAEAのほうとしては協定の実施を監視もするでしょうし、まあユーラトムはアウトサイダーでなしに、仲間ばかりの査察だから、査察が非常に寛大なんではないかという印象もありますが、しかし、われわれはユーラトムとIAEAとの査察の間に差があってはいけないと考えておるのです。現在でも、規約の上から言ったら、ユーラトムのほうがIAEAよりもずっと厳重ですよ。しかし、将来これをできるだけ一本化されたような形において査察が行なわれるようにしていきたい。査察というのは、今後国際原子力機構で再検討されますから、そのときに、ユーラトムとの協定ともにらみ合わして、差別がつかないようにしたい。それから、日本だけではありませんよ。これで査察は一般的な国際的な一つの基準ができるわけですから、それでみな右へならえになるわけです。
  150. 田中武夫

    田中(武)委員 核拡散防止条約については、いろいろ意見を持っておりまます。現在の核保有国を固定化するとか、あるいは査察の方法とか、あるいは現在の核保有国の軍縮のまず前提にならなくてはいかぬとか、あるいは中国を入れなくちゃ問題にならぬとか、いろいろありますが、それはもうほかの委員も触れたと思いますから、省略いたします。しかし、いま大臣そう言われたが、どうもここてことさらに——もちろん、核拡散防止条約が結ばれたときには、何らかの手続を変更しなくちゃならぬ、改正しなくちゃならぬことはあろうとしても、どうも交換公文にぴしゃっとそれが入っておって、しかも下田大使は、御意見ごもっともでございます。これを承ることを光栄といたしますというようななにを入れているにしても、どうも納得といいますか、釈然としませんが、いいです。  それから十一条のD項ですね。この中に、長いから途中だけ読みますが、アメリカ政府によって指名せられた要員、査察する人が、「同政府に対する自己の責任を遂行する場合を除き、」云々と、こうなっているんですね。このところから見ると、その意味からいえば、査察員は工業秘密を漏らしてはならないが、しかし、アメリカ合衆国に対してはその限りでない、こういうように読めるんですが、そうじゃないですか。ということは、この条項によって産業上の秘密——これもだれかがやったと思いますが、日本は現在のようなところで満足できませんし、日本の技術は必ずや優秀なる新しい原子炉を考えるだろう、あるいは増殖炉だとか何だとかいうのを考えるだろうと思います。そういうような場合の産業上の秘密が守られない。アメリカに対してはことさら守れない、こういう感じを受けるのですが、この点どうですか。
  151. 重光晶

    ○重光政府委員 D項に書いてある「自己の責任を遂行する場合を除き、」ことにアメリカ政府に対してですね、結局査察員は査察の報告をする必要があると、ざっくばらんに言えばそういうことでございます。とにかくアメリカ政府には査察の結果を報告するということになるわけですが、それについては、これはアメリカ政府にもどこにも報告しない査察ということにもちょっとなりませんし、実はこのD項の規定は現行の日米協定にもないのを入れたわけでございますし、それからアメリカが各国と結んでおる協定にもない規定でございます。ですから、これはアメリカ政府報告するから意味をなさないとおっしゃればそれまででございますが、しかし、一応商業秘密を守るための規定と思っております。
  152. 田中武夫

    田中(武)委員 だから、将来優秀な——これはもちろん日本で論ずる場合は平和利用ですが、優秀な増殖転換炉等ができる。必ずやらねばならぬと思うのです。そういうようなときに、いわゆる産業上の秘密がアメリカに対してだけは秘密にならないということだけは、この条文で言えますね、それがいいか悪いかは別として。この条文はそういうふうになっていると認められたらそれでいい。そうなっていますね。
  153. 重光晶

    ○重光政府委員 アメリカ政府に対する報告はあいておるということであります。
  154. 田中武夫

    田中(武)委員 大臣、いまや、産業スパイはなやかといいますか、映画や推理小説だけでなくて、実際あると思うんですよ、ことに原子力産業に対して。その場合に、いま国連局長が肯定せられたように、少なくともアメリカに対してだけは門戸開放なんですね。どうなんでしょう。先ほどもちょっと議論があったように思うが、現在ではまあまあとしても、日本はいつまでもそうアメリカに門戸をあけっぱなして、産業上の秘密というものを持たずにやれるのか、こういうことです、これは兵器の問題なら別です。日本の場合はあくまで平和利用ですが、それでもそういうことになっておるということについては、やはり片務的なものであると思いますが、大臣どうです。三十年を、ひとつ日本の産業のビジョンを描いてみてください。
  155. 三木武夫

    三木国務大臣 これは、実際問題として、これをやるのはアメリカ自身にしても、IAEAがやるわけですね。そういうことで、これにはやはり産業スパイ、産業上の機密を漏洩してはいかぬとか、いろいろな核、原子力科学技術開発などを阻害してはいかぬということは、この協定の一つの前提になっているのですね。ことにそういうことが、今後はこの協定を実施するについて注意せなければならぬ点だと思いますが、しかし、初めから、これで産業上の機密が漏洩する、機密が維持できぬというものでもないだろうと私は思う。また、三十年ということも、実際日本が濃縮ウランというものをみずからここで持っておって、そのことで原子力発電というものが開発できるのなら、これはまあ短いほどいいのですが、考え方によっては、こちらは縛っておかないとちょっと不安な点もありますね。濃縮ウランというものがアメリカ以外にいまないのだから、相当多額の費用で次々に計画して、燃料が来ないということになったら困る。それだから、田中さんは何か日本は縛られたと言うけれども、日本から見ればアメリカを縛っている面もあるのですね。だから、商売というより、燃料を供給する義務を負うておる。その燃料を、低廉な、アメリカと差をつけない条件において供給しなければ承知しないぞという、こういう点もあることを考えてみれば、あんまり三十年三十年、片務的と言うこともいかがかと存ずる次第でございます。
  156. 田中武夫

    田中(武)委員 現時点に立った場合と、これからの日本の技術開発を考えた場合とは違ってくると思うのです。けっこうです。  そこで、いまは日本の総理までがアメリカの核の抑止力にたよるということ、ドルと核のかさで安住して昼寝しようなんと思っておられる時代ですが、日本が原子力の平和利用について技術が発達し、もっと自主性を持った場合には、これは改正なり修正をする、そういうことの用意があるということだけをひとつ言ってください。
  157. 三木武夫

    三木国務大臣 私は、一つの科学技術に関連する条約というものは、常に改正の可能性を持っている。ことに交換公文などでそういうことはいってありますから、日本の産業の利益を守ることに対してきわめて鋭敏な態度政府はとるということを申しておきます。
  158. 田中武夫

    田中(武)委員 一応そういう外務大臣の答弁というか決意で、ここは通過します。  次に、日本のみずからの手で原子燃料を開発していくという点についてはどのように考えておるのか。今度は一緒になるのですな。原子燃料公社というのをつくってやっておるわけです。最近の情報によると、岐阜県下で、人形峠より埋蔵量が多い、優秀なものが発見せられたということを聞いております。そういたしますと、これは日本の手においての濃縮ウランでいくのか、これはパテント等をアメリカで持っておるから、あるいは別な方法等々の研究はやはり進められるのでしょうね。そうしてその研究が進められることに従って、こういう協定もそのつど再検討をしていく、あるいはこれによって、常時協議するというような規定もどこかにあったように思いますが、そういうことは続けられていく。したがって、私は、三十年は長い、固定せられておる、原子力基本法からいって自主性がなくなっていくのではないか。そういうことではなくて、常にそういうことを研究し、常に踏み破っていくだけのこちらのほうも——こちらということばはどうかと思うが、日本も自主開発というものは続けていくのだ、これによって時々刻々に従って再検討を加えていくのだ、そういうことをひとつはっきり言ってください。
  159. 鍋島直紹

    鍋島国務大臣 日本におきまして現在人形峠を中心として天然ウランがございますのは、イエローケーキというもので約五千トンでございます。これは原子燃料公社から現在動力炉燃料事業団に引き継がれまして、これに対してどうするかということが現在問題となっております。温存すべきか、非常に少ないですから、あるいは使ってしまうべきか、これについての方針は近々、ことしの夏までにきめてまいりたいと思いますが、いわばすぐに使うという方法でない、何らかの形でこれを進める、日本にもあるようにしていきたいというふうに考えます。  そこで、濃縮の技術は現在日本にございません。そこで、動燃事業団におきまして、アメリカの隔膜法という方法てない——これは非常に金がかかり、電力を要しますから、別の遠心分離法による濃縮技術をとにかく現在開発中でございますが、だんだんと進んではおりますが、まだまだ小学校程度でございます。したがって、大体その開発のめどを昭和四十八、九年、その前後までに置いて、何とかものにしていきたい。これはぜひひとつしなければなりませんし、それ以外の大学なりあるいは理化学研究所等でもその基礎的研究を行なっております。そういたしまして、ひとつ自前で濃縮もできるように、日本としてもやってまいりたいというふうに考えております。
  160. 田中武夫

    田中(武)委員 実は私たくさん用意をしておる。与党の人がせかすようだったら、私は意地でも二時間でも三時間でもやろうと思っておったが、案外紳士的な態度をとられるので、こちらも大体腹の中はわかっておるのだから、もうこれ以上やりません。  最後に、やはり原子力基本法というものはわれわれも賛成してつくったわけです。少なくとも日本の原子力の平和利用ということについては、何といってもこれが憲法なんです。だから、この上に立ってものを考えていくと同時に、おくれておる面につきましては、日本の優秀な技術なり頭脳をもってすれば、私はできると思います。そういう点でもって今後十分にやるということと、それからこういういわば庁務的な一方的なものについては、逐次改正を要求していくのだ、そういうことの答弁があったと理解して、私の質問を終わります。
  161. 秋田大助

    秋田委員長 石野久男君。
  162. 石野久男

    石野委員 もう本協定についてのこまかいことはいろいろ聞いておりますので、特にこの協定が、原子力の長期開発という側面から、どういうふうにわれわれの展望の中で役立つかということをこの際しっかり見ておく必要があるのではないか、こう思います。  この協定は、この前も私お尋ねしましたときに、いろいろ論議のなにを出しておりますし、また同僚議員からもいろいろ問題点は摘出されておりますが、いま田中委員から質問のありました、たとえば十一条のD項の秘密情報を漏らしてはならないという点で、アメリカ側に対しては全く何の責任もないという条項があります。これは日本の原子力開発、これから三十年にわたる情勢を見て、こういうことではたしてほんとうに開発の路線を守り抜けるかどうかということが一つ問題になるわけです。したがって、このD項に書かれた問題を確認する方法を何か考えなければいけないのじゃなかろうか。このままでほっておいたのでは、この協定を結ぶということは、先ほど大臣アメリカ側を金縛りにしたのだと言うが、金縛りにしたのじゃなくて、こっちが金縛りにされてしまっているのですよ。特に、私ども、日本の技術はそんなにちゃちなものじゃないと思っておる。科学技術庁もその自信の上に立っていろいろ開発の仕事をしておると思います。おそらく一、二年の間には、画期的なものをわれわれやはり炉の開発の中でも出すかもしれない。ところが、たまたまこのウランを入れておるために、われわれはやはり、たとえば軽水炉なら軽水炉を入れる過程の中で、それに付属するものだとか、あるいはまたわれわれが何か手を加えたもので非常に画期的なものがあっても、軽水炉に関係し、それからまた導入したウランに関連があるとすれば、これはみなこの条項に引っかかってしまうわけですね。したがって、われわれのノーハウはどこにも確保されないということになってくる危険がありますよ。それは先ほど国連局長が一応認めたとおりだと思います。それに対して、いま政府としては、このD項の「情報を漏らしてはならない。」ということについて、わがほうが確認するどういう処置をとろうとしておるか。
  163. 重光晶

    ○重光政府委員 この十一条D項について、アメリカ側には秘密が全部漏れてしまうというお話でございますが、この条文はアメリカ政府だけを問題と申しますか、アメリカ政府にはレポートするが、それを例外として、アメリカ側の査察員は秘密を守る義務がある、こういうことでございます。それで、両政府間の協定として、アリメカの査察を認める以上は、すなわち、アリメカの査察と申しまのは、結局アリメカ政府の査察でございますから、民間の査察を受けるわけではないのでございますから、したがって、現実の査察員がアリメカ政府報告するということは、これは協定上やむを得ないというか、当然のことだろうと思います。しかし、アリメカ国内で、査察員が見た日本の機密が広がってしまうということではないわけでございます。そういう意味では産業の機密が守られると思うのです。このD項の実施についてどういう措置をとられるかというお話でございますが、両国政府間がお互いにこういう協定をする以上は、まずお互いに政府のやることについては信頼してかからなければいかなる約束もできないわけでございます。そういう意味において、このD項に書いてあるとおり、アリメカ側の査察員は、アリメカ政府に対する報告の場合は別として、産業の機密は守られるものと私どもは解しておるわけでございます。
  164. 石野久男

    石野委員 日本の側は非常に人がいいわけですよ。とにかく向こうを信頼しておるわけですからね。だから、とにかくわれわれの期待に沿うてくれるものだ、こういうふうに見ておるわけです。しかし、この条約全体を見ますと、免責はアメリカ側にありますけれども、日本の側には免責になるものはほとんどございません。何かありますか、日本側の免責になるものは。
  165. 重光晶

    ○重光政府委員 この協定における免責は、アメリカ政府と日本政府の間だけの問題でございます。したがって、もし日本政府アメリカ政府そのものから核物質その他をもらえば、それについて、日本側に手渡したあとのことについてはアメリカ政府は免責する。しかし、実際は日本政府そのものがアメリカ政府からそういうものをもらうということではないので、日本の民間が入ってくるわけでございます。それですから、実際はそれが問題で、実際の場合には政府間の免責という規定はないわけでございます。
  166. 石野久男

    石野委員 政府間の免責はないが、今度は日本の民間が何か免責されるものはありますか。
  167. 重光晶

    ○重光政府委員 それは午前中の論議にも出ましたが、結局契約の問題になるということでございます。
  168. 石野久男

    石野委員 民間の側と契約が行なわれる場合に、これは三木君からも先ほど聞いたとおりですが、ばらばらの契約をするわけですよ。したがって、Aの会社、たとえば東電あるいは関西電力、それから中部電力その他のところで契約をする場合に、それを具体的に指示するという考え方、あるいはまたそれを指導するという考え方、あるいはそれを正確に掌握するという権限、そういうふうなものを何か政府は持っておりますか。
  169. 重光晶

    ○重光政府委員 契約の問題については、原則としては、当然アメリカ及び日本のそれぞれの国内法に従うわけでございます。しかし、協定の問題としては、この交換公文にも触れておりますが、もちろん、民間が入った場合にはこの契約によるのであるけれども、両国政府はその契約について問題が起こらないように努力していこうということだけはうたっております。それ以外のことは、当然日本の国内法及びアメリカの国内法で政府が介入する、こういうことになると思います。
  170. 石野久男

    石野委員 そういう問題は、通産のほうでは何か正確に把握する方法ありますか。
  171. 井上亮

    ○井上(亮)政府委員 一般論として申しまして、私ども核燃料を利用する業者の数も、大体電力で言えば九電力、九社あるわけでございますが、核燃料に限らず、米国とのいろいろな原子力関係につきまして、購入契約等する場合もあるわけでございます。その場合、先生の御指摘になりましたような、ばらばらのために国益を害するという事態のないような指導は政府として厳重にいたしたい、こう考えております。その一例といたしまして、現在核燃料の海外開発あるいは海外との長期契約の問題があるわけでございますが、これらに際しましても、関係の電力業界一丸となって一つの対策委員会をつくらせまして、当然これは役所がその中に指導として入りまして、交渉に当たらせるというような統制のとれた体制で、ばらばらのために国の利益をそこなうということのないような指導を行なっておりますし、今後もそのようにやっていきたい、このように考えております。
  172. 石野久男

    石野委員 これは先ほどから問題になっておりますように、協定の期限が三十年にわたりますから、経済情勢も非常に変わるでしょうし、それは国内的だけじゃなしに、世界的にも非常に変わりがある、それから技術的な側面でもたいへんな変わり方が出てくるだろうと思います。そういう中で、企業はそれぞれ今日の時点ではある程度協力を求めておりますけれども、しかし、今日、たとえば協力体制などにつきましても、自動車なら自動車で見ますると、きのうまで三菱と富士とがいろいろやっておりましたけれども、それは必ずしもうまくいかないようになっていくような事情があって、その協力体制というものは民間だけでは容易にきまらないだろうと思います。それから、今後世界的に資本の関係が、外資との結合の状態がそれぞれ変わってきますと、とてもやはりそういう期待は持てないだろう、こう思います。そこで、私は、原子力の開発におけるわが国の一つの長期にわたる展望とその政策がこの問題とどういうように結合するかという、これが長期にわたるだけわれわれにとって大事だ、こう思うわけです。したがって、そういう問題を、ただ希望だけじゃなくして、具体的にどうするかということを、これは原子力局と通産とがはっきりした態度を示さないというと、われわれはこの問題についての安心感が出ないし、具体的にはやはりこの協定によってたいへんな問題が出てくるだろう、こう思いますから、希望ではなく、こういうような情勢の中でどうするかということをひとつはっきり示していただきたい。
  173. 井上亮

    ○井上(亮)政府委員 先ほどもお答え申し上げましたように、原子力に対して買い手と申しますか、あるいは燃料等については需要部門になるわけですが、各社がばらばらにいろいろ外国の業者と折衝し、そのことのために不利益を受けるというようなことのないようにする必要が一つあると思います。それからもう一つ、特に核燃料関係になりますと、これはただいま御審議を受けておりますような、いわば戦略物資といいますか、それにも転化し得るような性質の特殊な商品でございます。平和利用にも使います商品でございます。こういう特殊な物質である。   〔委員長退席、鯨岡委員長代理着席〕 この二点から考えまして、やはり秩序のある購入体制、これをつくることが特に必要だと私は考えております。そのために、私どもとしましては、先般も電気事業審議会で、先生のおっしゃいましたような趣旨で、今後政策を展開していく必要があるというような御決議をいただきまして、私どもただいま業界指導といたしまして、できるだけ業界が政府指導のもとに共同した体制をとって当たるようにというような対策をいまとっております。これは自主的にいわゆるカルテルを結ぶような性質ではなく、政府指導のもとにこういった統一ある、秩庁のある体制をとるようにというような組織づくりをいまいたしております。
  174. 石野久男

    石野委員 これは通産大臣がいれば大臣にも聞きたいところですが、科学技術庁長官にもはっきりただしておきたいと思うのですけれども、核燃料の購入については、先般参考人が来ましたときにも、参考人は口をそろえて、みな購入を一本化しろということを言っておりました。  われわれは、やはり核燃料については二つの側面からきわめて重要視しなければならぬと思うのです。一つは、やはり売り手市場ですから、われわれのほうがむやみやたらに高値で買わされないようにするということのための体制を固めること。いま一つは、いま局長が言ったように、軍事と平和との関係があるので、平和利用に徹するという側面から、やはり購入の窓口を一本にし、そして規制法の適用が適切に行なわれるような線を確保しなければいけないと思うのであります。だから、これはただ民間での協力ということに政府が指導性を持たせるというような、うわべの口だけではだめなのであって、具体的にこの協定が実施されるその時点で、それに対する対策を確立するということが大事だろう、こう思うのです。そういうことを処置しませんと、いままで何人かの同僚委員が憂えていたような問題あるいは参考人各位がやはり心配していたような状態というものが、具体的な問題としていますぐ出てくるだろう、こう思います。この点では購入についての一本化という問題ではっきりした態度を、これはその機構をつくるなり、あるいは制度をつくるなりということをここで確約しておいてもらわなければ困ると思うのです。これは長官の意見もひとつお聞きしたいと思います。
  175. 鍋島直紹

    鍋島国務大臣 いま通産省から言われたとおりでありますとともに、どうせこの大半は発電の核燃料になるわけでございます。したがいまして、これは通産省と十分御協議の上、きめるべきであり、しかも、核燃料を購入するその民間機関は、結局政府の許可を受けなければならぬ。その許可の際におきましては、通産省と十分協議の上、一つの指導性を持って許可し、しかも購入した場合におきましては、当然原子力基本法に基づいて、これは政府が持ちましょうと民間が持ちましょうと、あくまで平和利用に徹するという形で縛られていくわけでありますから、それらの規制といいますか、それも十分行なっていかなければならぬ、かように考えます。したがって、これは、いよいよこれが発動して、発電が臨界に達して動く、その前の購入の時期になりますと契約が行なわれますので、したがって、その契約時において、通産省と科学技術庁とが十分連絡の上、いまの指導性を発揮し得るようにいたしたいと考えておるわけであります。
  176. 石野久男

    石野委員 契約をする場合には、アメリカ原子力委員会が一本になって窓口一本で来るけれども、日本の場合は、政府が指導するのでしょうが、各メーカーなりこちらの政府指名したもの、そのものはみんなばらばらですね。それぞれがやはりそのときの経済的な情勢や、あるいは企業間の競争とかなんとかがありまして、自分のものだけ先に確保したいわけですから、だから、たとえば百六十一トンといいましても、これをやはり各電力会社に並べ直していきますと、東京電力はこの際もう十トンだけよけいほしいというときに、中部電力が五トン先に取ってしまったり、あるいは関西電力で八トン取ってしまうと、その十トンは取れない、こういうことが、統括していない場合は出てくるに違いないのです。そうなってくれば、値段の問題はせり合いになってくることはもう間違いないわけですから、そういうことで、向こうは窓口が一つだけれども、こちらが何本にも分かれていると、買いあさる形が出てくる。百六十一トンというワクがあったとしても、そのときの精製されたウラン鉱の情勢等によって、品薄のときにお互いにほしいという場合は、せり合いが出てきたりする場合が出てくると思うのです。そういう場合の規制というものは、いま大臣が言ったような認可したときとか、あるいはそれを政府と相談したときに話し合いしたからというようなとこでは、私は解決しないだろうと思う。それをやはりはっきりさせるのには、どうしてもそういう機構なり何なりというものをはっきりしておかなくてはいけないのではないか。こういうことで私は聞いておるわけですから、いま大臣の言われるようなことではちょっと無理だろうと思うのですね。
  177. 鍋島直紹

    鍋島国務大臣 いま言われるように、その前に一応体制を整えるということが必要であろうと思います。したがって、その体制に基づいてやはり許可なり何なりを政府でするわけでございまして、民間機関でもただ核燃料を買うというわけにはまいらない。したがって、そういう点は通産省とよく御相談の上、これが万全を期してまいりたいということを申し上げておるわけであります。
  178. 石野久男

    石野委員 これはやはりこの機会に安全を期するとかなんとかでなしに、問題点としては非常に重要だし、われわれのこれについての態度はもうはっきりしておるわけですけれども、いずれこの法案がもし成立したとするならば、やはりわれわれの憂えておることは、何の制約もなくこのままずっと実行されていくわけですから、この際、私たちは、わが党の態度がどうだとかこうだとかいうことでなくて、実際に原子力開発の上で出てくる問題点を、いまからはっきりだめ押しをしておくということが大事なので、そういう問題については、やはり機構的な問題を何か考える作業が起きてこなければいけないと思うのです。通産省はどういうふうに考えておりますか。
  179. 井上亮

    ○井上(亮)政府委員 先生御意見はまことにごもっともだと思いますし、日ごろ私どもが痛感している点でございますので、先ほども申しましたように、私ども電力業界を指導いたしまして、ただいま窓口の一元化と申しますか、そういう体制づくりをいたしております。ただ、これは一種の業界の共同行為というふうに単純にとられてもいけませんので、政府指導しもとに秩序のある開発とか購入とかいうような体制づくりをいたしたい、こういうふうに考えております。
  180. 石野久男

    石野委員 これははっきりと、ただ協定を通すために答弁したということにならないように、実質的な成果があるように、ひとつ通産当局が配慮をすべきだと思うし、また政府はそれを真剣に考えなくてはならないのではないか、こう思います。  今度のこの協定は、前と違って、燃料の国家管理から民有に移ってきております。その民有の問題で問題になるのは、結局向こう側は、原子力委員会は、この交換公文にもあるように、合衆国原子力委員会は「自己の選択に基づき、同委員会が満足のできる保証を同委員会に与えるよう当該私人又は私的機関に要請することがある。」こういうように言っておるわけですね。それからまた、同委員会は「自己の選択に基づき、同委員会を同委員会が満足のできる方法により当該物質に関する責任から免れさせ、かつ、損害を与えないようにするよう当該私人又は私的機関に要請することがある。」こういうように、各民間に対して政府指名するものに対して、こういう免責をアメリカ委員会は要求しているわけです。こういう要求がばらばらに出てくるときに、おそらくやはり向こう側から出てくるものがA、B、C全部同一であるとは限らないと思うのです。その業者によっていろいろ違いがある。それを政府としては規制する、あるいはそれをはっきりつかむ、契約が結ばれる前にそれを正確につかむ方法はあるものですか。政府としてはあるのですか。
  181. 井上亮

    ○井上(亮)政府委員 具体的な民間同士の契約等結びますときには、契約内容につきましては、当然関係業者から私どものほうに連絡があり、それを私どもがチェックいたすというふうに考えております。
  182. 石野久男

    石野委員 それは慣例としてあるわけですか。ちゃんときまった条例か何かあってですか。
  183. 井上亮

    ○井上(亮)政府委員 法律ではありませんけれども、これは法律としましては、いろいろ基本的には原子炉を導入してそれを設備を許可するということになりますと、電気事業法の許可の問題ですから、当然政府の審査の対象になるわけですが、契約している段階については、そこまで法律的に当然に見るという筋合いではございません。しかし、いずれ許可の形で申請がなされるわけでございますので、事前の指導監督としてそういうことをいたしたい、こう考えております。
  184. 石野久男

    石野委員 そうしますと、これは、各電力会社なり何なり、日本側の民間会社はみなばらばらにやって、あなた方は指導するだけなのであって、実際には、連絡があればわかるけれども、連絡がなければわからないわけですよ。そういうことですね。
  185. 井上亮

    ○井上(亮)政府委員 必ず連絡がございます。これは行政指導でございます。  それからもう一つ、金を送りますときには為替の許可等が要りますので、その際には当然政府の許可が必要になってきます。
  186. 石野久男

    石野委員 各民間会社が契約をした問題は、向こうから供給されたところのものは、第八条I項に書いてあるように、「日本国政府がこの協定に従って供給することを合衆国委員会に要請し、又は旧協定に基づいて日本国政府に供給されたある種の原子力資材は、注意して取り扱い及び使用しない限り、人体及び財産に有害である。日本国政府は、このような資材の引渡しを受けた後は、アメリカ合衆国政府に関する限り、その安全な取扱い及び使用について、すべての責任を負うものとする。」と、こうあるわけですね。こういう人体及び財産に有害なものの取り扱い、これはもちろん別に規制法があるわけです。あるわけですけれども、こういう内容を持った契約をする各民間会社に対する具体的な政府の指導なりあるいは管理というものは、規制法もあるのだろうけれども、ほかに何か措置する方法がありますか。   〔鯨岡委員長代理退席、委員長着席〕
  187. 井上亮

    ○井上(亮)政府委員 先生の御質問に対しまして、私どもの措置といたしましては、電気事業法とか、あるいは原子炉等の規制法とか、あるいは国会の御承認を得ました条約等をもとにいたしまして判断を加えたい、こう考えております。
  188. 石野久男

    石野委員 大臣が席をはずされる時間が近いようですから、大臣にひとつお尋ねしますが、大臣は昨日わが党の三木君に対する答弁の中で、第五条の「情報が正確であること又は完全であることを保証せず、」あるいは「特定の使用又は応用に適合することは保証しない。」ということに対して、この問題については、交換公文で、「両当事国政府は、提供される資材及び情報が不完全及び不正確でないことを確保するために最善の努力を払うものであるので、」こういうふうに交換公文でも書いておりますからと、こういうような答弁をなさいました。しかし、この交換公文をずっと読んできますと、「努力を払うものであるので、」ということで、両方とも最善の努力を払うことになっておるのです。ところが、そのあとずっと見ると、「協定の第五条の規定に基づき、これらを受領する当事国政府の責任においてなされるものとし、これらを供給する当事国政府は、その情報、資材、設備及び装置がいずれか特定の使用又は応用に適合することは保証しない。」と、こうあるのですよ。だから、保証しないことに対して、交換公文ではちゃんとそれに対する配慮はしていますよと、きのう大臣は答弁したのだけれども、しかし、実際にはやはり交換公文は、第五条ですか、これをそのまま再確認したにすぎないのじゃないですか。
  189. 三木武夫

    三木国務大臣 これは努力目標ということになっておるわけでありますが、これは政府間の場合であって、民間の場合は、これは何も拘束するものではないわけです。実際問題としては民間の場合が多いということでございます。
  190. 石野久男

    石野委員 民間の場合は契約でそういうことになっているからということですが、契約という問題になると、先ほど田中君からも話があったように、双務的な契約にならなければならい。一方的に保証しない。保証しないでは、これは困っちゃうわけだ。そういう意味で、この第五条の協定というのは、かりに政府であろうと民間であろうと、非常に片務的な内容を持っているものではないか、こういう心配をわれわれはしているわけなんですよ。そうでないということはどこで保証されますか。
  191. 重光晶

    ○重光政府委員 御指摘の第五条は、このアメリカ政府と日本政府との関係だけを述べたのでございまして、両政府間で、直接核物質その他を日本がアメリカ政府からもらうということは実際上ないわけでございます。しかし、なぜ五条を設けたかと申しますと、万一日本政府そのものがそれをやった場合、これは政府間の問題でざごいますから、普通の商業ベースの、両国のどちらかの国の法律で解決するという問題にはなりませんで、両政府間の国際間の問題になります。したがって、実際上はあり得ないことではあるけれども、政府間で受け渡しをした場合には、この政府間の取りきめとして免責するのであるというたてまえだけをうたったのが五条でございまして、実は、実際にアメリカから日本に入る核物質、施設その他を日本が入手する場合には、実は五条は関係ないわけでございます。
  192. 石野久男

    石野委員 そうすると、五条が関係がなくて、民間の場合は、それはどの条項が関係するのですか。
  193. 重光晶

    ○重光政府委員 実は民間の商業ベースの契約に関しては、この協定は触れていないわけでございます。
  194. 石野久男

    石野委員 商業ベースにおけるものは触れてない。しかし、今度は、協定の交換公文の中の4には、先ほども私がちょっと触れましたが、「合衆国原子力委員会は、日本国政府の管轄の下にある私人又は私的機関に対して原子力資材を移転する前に、当該資材の安全な取扱い及び使用についての責任に関し、自己の選択に基づき、同委員会が満足のできる保証を同委員会に与えるよう当該私人又は私的機関に要請することがある。」こういうようになっているわけです。これは向こうの満足のできるような保証を向こうが要求しているわけです。ところが、この人たちに対して入れられる資材並びに情報が不完全及び不正確でないことを確保するということについての保証は、今度は交換公文なりあるいは協定のどこかで触れられておるのですか。
  195. 重光晶

    ○重光政府委員 この交換公文の四項は、実はアメリカ原子力委員会がアメリカの国内法によって課せられている義務に関連して書いてあるわけでございます。ただ、これに関連して、日本の民間私人が買うわけでございますが、そのことについては、これ以外には触れておりません。
  196. 石野久男

    石野委員 そうすると、日本の民間の商人が買う場合には、先ほど田中君も触れておられたように、きわめて片務的である。そして一方的に向こうを免責するための保証を要求しているわけですね。これはもちろん向こうの国内法に基づいてはいるだろうけれども。「日本国政府の管轄の下にある私人又は私的機関に対して」というのは、いわゆる日本の商社、業者のことを言うのでしょう。そうなんでしょう。
  197. 重光晶

    ○重光政府委員 そうでございます。
  198. 石野久男

    石野委員 そうすると、向こうは向こうの国内法によって、日本の商社なりあるいは日本の業者に対して、アメリカ原子力委員会を免責することの保証を求めているわけですね。
  199. 重光晶

    ○重光政府委員 実はこの四項は、直接免責の問題ではなくて、アメリカの国内法のたてまえ上、原子力委員会はこうした私人からこの保証を要請することができるということになっておるわけでございます。したがって、アメリカの国内法でできるわけだから、日本に売る場合もできるようにしてもらいたい、実際にやるかどうかは別問題として、そうしませんと、アメリカの国内法を変えなければならない。したがって、第四項は、要請することがあると書いてあるわけでございます。しかし、四項全体は、アメリカ側を免責する、そういう趣旨のものではないのでございます。
  200. 石野久男

    石野委員 先ほどの免責というのは、私が間違ったのです。それば向こう側を満足させるような保証を向こうは要求しているわけです。それはよくわかるのです。そこで、日本側が相対で、双務的な関係で、今度アメリカに対して不完全でない資材、情報、そういうものの保証を要求することができるかということです。それはどこに書かれているかということです。
  201. 重光晶

    ○重光政府委員 その点については、この協定は全然触れておりません。
  202. 石野久男

    石野委員 そういうことを触れてないということは、結局濃縮ウランの売り買いでございますが、その売り買いの中で日本の側には不利ではございませんか。
  203. 重光晶

    ○重光政府委員 先ほどから問題になっておりますとおりに、アメリカ協定は、イギリスとの協定と違って、アメリカから日本が買うということを前提としておるわけでございます。したがって、そういう意味では、イギリスとの協定に比べますと、すべての規定が双務的ではございません。日本が買う場合を前提として立てられておる。そういう意味では片務的ではございますが、しかし、日本が買う場合ということを考えますと、先生がいまおっしゃったようなことは、おそらく必要がなかったのではないか、こういうふうに考えております。
  204. 石野久男

    石野委員 買う場合だから、むしろ必要なんだろうと思うが、第五条の規定は、これは政府間規定ですね。
  205. 重光晶

    ○重光政府委員 そうでございます。
  206. 石野久男

    石野委員 しかし、政府間規定だけれども、この内容は民間にも全然無関係なものではございませんね。この内容は、そのまま民間にも移しかえられるものでしょう。
  207. 重光晶

    ○重光政府委員 五条はあくまでも政府間の場合だけでございます。
  208. 石野久男

    石野委員 第五条は政府間だけのことはわかっている。向こうから移転された情報並びに資材及び設備、装置の使用または応用、これは政府政府との関係はよくわかるけれども、これを具体的に実施したり、あるいは使用したりするのは、日本の場合は民間でしょう——民間だけでなく、政府もあるわけだ。原子力研究所もあるわけです。ですから、民間及び政府がこれに関係します。こういう内容を持っているのに、政府間だけのものだというのですが、民間の場合についての保証はどうしてくれるのだ。向こうはしない。われわれがしてほしいという場合にどうなんだ。先ほど国連局長は民間、民間と言っておりましたが、日本にはやはり国有のものもあるわけです。原子力研究所があるわけです。原子力研究所に入るところの情報または資材、設備及び装置の使用または応用、こういうものについては、アリメカは日本には全然保証しないということでしょう。それはどうなんですか。
  209. 重光晶

    ○重光政府委員 原子力研究所につきましては、この協定の定義によりまして、日本政府の中に含まれないことになっております。  それからまた、五条はもちろん政府間のものでございますが、それでは民間のものはどうなるかということになりますと、この五条の影響を受けることは全くないのでございます。それは普通国際慣例なり契約できめる。その影響でこうならざるを得ないという事情及び法律的効果は全然ないものと考えております。
  210. 石野久男

    石野委員 大臣にお聞きしますが、この第五条の「保証せず、」というものについては、昨日の大臣の答弁では、交換公文でちゃんとそれは考慮するということになっているわけです。しかし、これは先ほどは、政府間のものだから民間とは関係がない、こう言われましたが、事実上は民間の関係のものについては、アメリカの立場、いわゆる原子力委員会は、売り手のほうは、情報あるいは資材等について不完全であっても、あるいはそれが不正確であっても、それに対する保証は全くしない、こういうことを言っているわけです。これはやはり日本側にとって非常に不利ではないか。先ほど大臣は、三十年間にわたって長期の確保をしたからいいじゃないかと言われましたけれども、事実上百六十一トンの濃縮ウランを受ける附表に書かれた十三基の炉を持っている側からすれば、ないものをもらったのだからありがたいという点は一応わかるけれども、しかし、契約の側からすれば、こういう保証を与えられないという、きわめて不安定なものがあるわけです。それは大臣も認めますね。
  211. 三木武夫

    三木国務大臣 民間の場合は契約しますから、契約の場合に不利益にならないようにすべきである。この条約にあるのは、これは政府間のことばかりである。しかし、その中で確かに損害賠償には応じないという何もありますし、不利益という点もありますが、しかし、ほとんど民間の場合が多いのですから、契約の場合にそういう不利益にならぬような注意をいたしますならば、この協定を結ぶことによって非常に日本が不利な立場に立つとはわれわれは考えていないのでございます。
  212. 石野久男

    石野委員 これは条約そのものは事実上政府間のものだというけれども、それでは民間に何か条約があるかというと、民間は条約がないので、そういう条約を素通りして、これに制約された中で行なわれていくのですから、だから、事実上はこの条約の制約を受けるわけですね。だから、そういう点では、現時点ではウランが非常に入手しにくいということのために、契約の上ではきわめて不利であるけれども、やむを得ずこれを受けている。まあ平たく言えばそういうことですね。大臣
  213. 三木武夫

    三木国務大臣 平たく言えば、実際日本にウランがあり、濃縮する技術があれば、これは一番いいのですけれども、アメリカ以外にないわけです。そして、日本は原子力発電をせざるを得ないのですから、まあ、こういう日本の客観情勢というものが、こういう協定を結んで、そして原子力発電をせざるを得ない必要性もそこにあって、この協定を結ぶものである、こういうふうに御承知おきを願いたいと思います。
  214. 石野久男

    石野委員 日本側がアメリカからものを買うときは一応そういう形になりますが、今後は再処理をしたり再加工をしたものが、これは三十年もありますといろいろなものが出てくると思うのです。その場合に、政府間の協定だからということだけじゃなく、民間がかりに再加工をしたり再処理したものを外国に売るという場合に、これは政府としても、政府間の協定の中で向こうは免責条項がずらっと並んでいるわけですが、日本の側では、いまのところは政府間でも免責されるものはないわけですね。この条項の中には何もないわけですね。そういう再生産され、あるいは再処理されたりするものに対して、わが国はアメリカと対等の立場で免責を要求する、こういうことの必要はあるのではないでしょうか。
  215. 重光晶

    ○重光政府委員 将来日本からアメリカに輸出する場合のことについては、実は現行協定では、日本からそうした輸出するものはアメリカが優先的に購入する権利を持っていたのを、この協定でこの規定をなくした。したがって、アメリカ以外にも売れることにしたということが一つと、それから先生の問題にされましたその場合の免責、これはこの協定を逆にして、たとえば五条を逆にして、日本の民間ではなくて、日本政府アメリカに輸出するという場合のことだと思うのですが、もちろんそれは将来の問題ですが、それからいえば、先生のおっしゃるとおりに、五条があるのだから、そういう場合はこちらも免責してもらおうということになると思います。ただ、実際上は日本政府が売るというよりも、日本の民間でございますから、そういうふうになると、この協定の五条とは関係なくなるわけでございます。
  216. 石野久男

    石野委員 答弁の技術としてはそれでいいのですけれども、しかし、ほんとうにナショナルインタレストという立場からすると、これはきわめて重大だと思うのですよ。私どもがいまここで真剣に論議しているのは、日本の原子力の開発というものは自主開発をしたいからです。そうしてそれを早期にやりたいからです。だから、ノーハウなんかでも確保するような体制をとりたいし、それからまた外国に売る場合でも、損をしないで売るようにしたい、もうけて売りたい、やはりこういう願望を持っておるし、また、それでなければわれわれは社会党だからいろいろな政策上の問題はありますけれども、企業としては、それをやらなければ成り立たないわけですね。世界の競争場裏では勝っていけないと思うのですよ。この条約をこのままにしておいて、われわれ予想しないところの技術開発が行なわれる。それで、たとえばいま百六十一トン入るところの濃縮ウランなり、あるいはイギリスなどから入ってくるところのウラン原料を再生産するという技術が進むとか、あるいは加工するという技術が進んでいきますれば、そういうことを具体的に商業ベースに乗せて、海外に出さなければいけないと思うのです。三十年という年月は、これはおそらく三木さんも私も、場合によればこの世にはいないかもしれないのだ。そういう長い年月、先ほど田中君からもちょっと話がありましたが、昭和十三年の段階で、昭和四十三年の今日を、だれがこういうことを予想したかと言いましたけれども、われわれは、これから三十年後のことをなかなか予想できないわけです。しかも、科学の開発は非常に早いのだから、そういう意味で、わが国がやはりこの協定の中でナショナルインタレストをどういうふうにして守るか、そのナショナルインタレストの路線の中で、原子力開発をどういうように確保していくかということが論議されなければいけないと思っておるのです。したがって、第五条の規定というのは、政府間ベースでというふうには言っておるけれども、実質的には、アメリカは民有化されているけれども、出すときにはアメリカの合衆国原子力委員会というものが窓口になって、一本になってくる。日本の側は、いままでは国家管理であったものを、一挙にこれを民有化する。そうして、まだひよこです。まだひよこにもなっていないでしょう。卵かもしれない。そういう卵の中のまだ無精卵であるかもしれないようなものが、そういうものが先を争って飛びついていくわけですよ。ただワクだけはきめましたけれども、そういうような状態できめられたのがこの条約です。しかし、それにもかかわらず、わが国の技術開発が進んで、そうして何がしかのものをわれわれが売り込みをしようとするときに、第五条では日本は保証されない。何も保証されないのですね。情報についてもあるいは資材等についても、それの正確さあるいは完全さの保証もされないし、あるいは使用または応用について、適合するかどうかということについても保証されてないのに、今度は日本のほうから出すものについては、全部その保証を要求されるだろうと思うのです。そうなりますね。それでは非常に不平等になりはせぬか。そういう問題に対して、やはり政府は対策を考えるべきではないかと思いますが、どうですか。
  217. 重光晶

    ○重光政府委員 先ほどの私の説明、ちょっと訂正さしていただきますが、と申しますのは、五条はアメリカ政府から日本政府が買う場合と申しましたが、実は私の誤りで、両政府間で交換きれる場合でございます。したがって、将来、こういうことがあるかどうか知りませんが、日本政府アメリカに出す場合は、もちろんこれで免責される。問題は、実際の場合でございます。民間企業から出す場合、これは繰り返しになりますが、この五条とは全然関係がない。そのときの公正な契約条件によって主張すべきことは最大限に主張して契約をつくっていく、そういうことになると思います。
  218. 石野久男

    石野委員 そういうように読めるから、だから、国と民間との関係が問題になってくるのです。アメリカの側は、原子力委員会に政府はその責任を預けて一本にできて、しかも向こうの政府という形でくるわけでしょう。政府はその双方の保証条項は適用されるのだけれども、日本の側は民間だから保証されないでしょう。形の上ではいかにも双務的な関係が確立しているようであっても、実質的には何も確立されていないじゃないか、そこなんです。そこをどういうふうにするかということを聞いているのです。
  219. 重光晶

    ○重光政府委員 この五条の解釈として申し上げますと、五条は両方政府の場合であって、片一方が政府で片一方が民間の場合には、五条は適用されないわけでございます。したがいましてアメリカ原子力委員会、すなわち、これはアメリカ政府に入りますが、これから日本の民間が買う場合、あるいは逆に、これはこんなことはあるとは思いませんが、日本政府アメリカの企業に売り渡す場合、及び両方の民間同士で売買される場合、これはいずれもこの五条に関係がないわけでございます。
  220. 石野久男

    石野委員 五条は政府間でしょう。そうすると、いまのアメリカ原子力委員会が窓口になって行なう行為、この協定に伴うところの行為は、政府とみなさないのですか。
  221. 重光晶

    ○重光政府委員 日本側が政府であって、日本政府がアリメカの原子力委員会から直接買えば、この五条の問題になります。しかし、日本のほうが民間の企業がアリメカの原子力委員会から買えば、この五条は関係ないわけでございます。
  222. 石野久男

    石野委員 日本の側は政府で、アリメカの側が民間の機関であっても、第五条の適用はされないのですか。
  223. 重光晶

    ○重光政府委員 されません。
  224. 石野久男

    石野委員 そうすると、この協定は、たとえばウラン百六十一トンについては、第五条は全然適用されないわけですか。
  225. 重光晶

    ○重光政府委員 この百六十一トンのうち、私こまかいことは存じませんが、原子力発電の企業が買う場合はもちろん入らないわけでございます。ただ、日本政府そのものの機関があって、そのものが直接アリメカから買う場合、これは非常にわずかな問題だと思いますが、それは五条に関係があることになります。
  226. 石野久男

    石野委員 それでありましたら、今度は、この協定にあるところの免責の条項で、原子力委員会を免責していますね。アリメカの原子力委員を免責して、日本の業者いわゆる民間は免責されないということについて、向こうは政府でない、原子力委員会は政府でないけれども、免責される、日本の業者は免責されないということは、きわめて不平等になる、こういうことは言えますね。
  227. 重光晶

    ○重光政府委員 アリメカの原子力委員会は、一条の定義によってアリメカの政府の中に含まれる、そういうことになっております。
  228. 石野久男

    石野委員 そうすると、向こうの側では政府に含まれるから、向こうは免責される。そこで、私が先ほど申しましたのは、日本の側で再生産し、再処理したものを向こうに出す場合に、日本の側ではそれを免責されるような条項に載せるという配慮が必要じゃないかということを私は言っているのですよ。それは結局日本の政府というような形で持ち込まないというと、免責条項は出てこないのでしょう、この条項からいえば。そういう配慮をどういうふうにするかということなのです。
  229. 藤波恒雄

    藤波政府委員 お尋ねのポイントがどうもはっきり受け取れませんで、恐縮でございますが、たとえば再処理でできましたプルトニウム等をアメリカへ逆輸出するような場合に、それを政府で買い上げて、民間でなくて相手方の政府機関であるAECに売る場合は、第五条の適用があり得るではないか、こういう御質問であれば、私としては、そういうことになり得ると思います。そういうことにつきまして、ただいままだ具体的に考えてはおりません。
  230. 石野久男

    石野委員 この問題は、条約を結ぶ場合に、国の利益をどういうように守るかということに関連して私は聞いているのです。だから、これは外務省も、それから原子力局も、通産省もそうですけれども、われわれのほうでつくったものがよそへ売られるときに、向こうが買うときは、向こうのほうは全部一方的な免責があるわけですね。われわれは免責を受けるということは非常に有利ですよね。しかし、免責を受けるためには、民間では免責は受けられない。政府であるならば免責は受けられるということになってくるのでしょう。また、保証もしなくていい。正確だとか、あるいはそれが正しいものであるとかいうようなことについての保証はしなくていいというのは第五条で確立されているわけだから、それを受けるような配慮がなぜなされないかということを聞いていることと、それをしないでも国の利益は守られるかということ、これを聞いているわけです。  これは特に大臣にお聞きしますが、アメリカのものを買うときにはこういうふうに免責がたくさんついておって、日本のものを売り込むような情勢のときの免責は全然配慮されていないということは、日本のほうで売り込むことを予想していないのかどうかということが一つですね。それが前提になっているのかどうか。それじゃそこから聞いていきましょう。
  231. 鍋島直紹

    鍋島国務大臣 いわば核燃料の加工したもの、あるいは再処理生産したものというものを一応——私はこれをよく存じませんが、将来のことにおいてはあり得る場合があろうと私は思います。したがって、それを予想してこれをつくられたかどうかという点につきましては、これは外務省のほうからひとつ御答弁をお願いしたいと思います。
  232. 三木武夫

    三木国務大臣 これは将来の問題として考えてみましょう。やはり国の利益、国益という立場に立って、将来そういう場合に考えてみるべき問題を含んでいると思いますので、検討をいたしてみることにいたします。
  233. 石野久男

    石野委員 これはナショナルインタレストの立場からすれば、きわめて重大な問題だと思うし、この協定を結ぶにあたって、このことも配慮されていないとすれば、政府としては、全く国民の利益というものを考えないで、ただアメリカ側の一方的な売り込みだけを受けて立ったというべきか、さもなければ、日本の企業家のきわめて恣意的な競争意識というようなものにあおられたかというようなことにしかならなくなってくる。だから、政府がほんとうに国の利益というもの、原子力開発というものに即応して考えるならば、やはりこの点は十分考慮すべきだ、こういうふうにわれわれは考えているのです。  三木大臣に聞きますが、第十一条に査察条項がずいぶん書き並べられておるのですが、これは昨日来ずっと同僚議員がいろいろ尋ねておりますので、こまかいことは聞きませんが、なぜこういう査察——「保障措置によって代置される範囲を除き、次の権利を有する。」こういうふうに書かれておるのですけれども、この「原子力機関の保障措置によって代置される範囲を除き、次の権利を有する。」と書かれた、この以下のものについて、アメリカは日本の原子力平和利用というものに対して、きわめて不信の態度を持ってこういうことを書いておるのだろうか、どうだろうかという疑問を持つのですが、アメリカはやはり日本の原子力平和的利用については疑問を持っているのでしょうか。
  234. 三木武夫

    三木国務大臣 日本は核兵器を開発しないということを非常に強く言っていますから、不信の感情を持っているとは思いませんけれども、とにかく扱うものが濃縮ウランという核兵器にきわめて近いものでありますから、これは日本に限らず、どこの国とも、こういう協定を結ぶ場合の査察の規定は厳格にならざるを得ない。特に日本だけに不信感情を持っておってこういうことにしたのではない。しかし、扱うものそれ自体が査察の厳重なことを要求しているのだと私は思います。
  235. 石野久男

    石野委員 こういうアメリカ態度は、日本としては、パートナーシップを常に呼号される政府としてはおもしろくないのと違いますか。
  236. 三木武夫

    三木国務大臣 いや、これはどこの国でも、核兵器というものに対して非常に神経過敏でありますから、ほかの国にはこういうことは言わないで寛大な協定を結んで、日本だけをこういう金縛りにするような協定ならば、われわれもアメリカの差別の扱いに対して特別な感情を持ちますが、どこもみな一緒です。全部一緒の協定ですから、特に日本だけを特別扱いしたというのでないですから、あなたがおっしゃるような感情をアメリカに私は持ちません。
  237. 石野久男

    石野委員 そうすると、三木外務大臣としては、アメリカがこういうことを日本に言うのは、いま憲法第九条があって、別に戦争もしない、軍隊も持たないというようななにがある、だからそんな心配せぬでもいい、私たちからすれば、こんなもの要らないじゃないか、こういうふうに言えるのじゃないか、こう思うのだけれども、その努力はなさったのですか。
  238. 三木武夫

    三木国務大臣 日本が核兵器を開発しないということはアメリカもわかってはいるでしょう。しかし、しないといっても、しようと思えばできるわけですから、そういうことで、アメリカ自身とすれば、日本に限らず、この協定を結ぶときにはこういう厳重な査察規定というものを設けることが一つの型になっているといえるのではないか。しかし、アメリカ自身が日本が核兵器の開発をやろうとほんとう思っているとは、私、信じておりません。
  239. 石野久男

    石野委員 三木外務大臣は平和主義に徹していると思うのですよ。平和主義に徹している三木外務大臣が、こういう査察条項を何の不審も抱かないで受けるということは、私は、国の政府を代表する大臣としてちょっと心外なんです。大臣はあたりまえだと思っているのですか。
  240. 三木武夫

    三木国務大臣 私自身は核兵器を開発しようという考えは全然ありません。ありませんから、核兵器——査察ということは結局は核兵器ということでしょう。このことが核兵器の開発への道をふさぐということでしょうから、したがって、これが一つの世界的な協定の型になっている、日本だけでなしに、全部一つのパターンだということならば、特別に日本に対してどうこうということを考えなくてもいいのではないか。しかし、私はしばしばこの委員会でお答えをしておりますのは、国際原子力機構の査察というものが、もう少し単純な、しかもできるだけ自動的に機械化されていくような査察であることが好ましいと思っております。そうすると、そういう国際原子力機構の一つの査察というものの基準ができることになる。核拡散防止条約などの締結に伴ってもそういうことは必要になってくるわけです。そういう場合に、この査察というものは国際原子力機構の査察にゆだねるわけでありますから、したがって、そういう単純な形にできるだけこの査察を移行するようにしたい。そして、ここに査察に移された以外のことというような文句があることによっていろいろ御心配のようでありますけれども、しかし、これはアメリカが移管するわけですから、アメリカ自身が特にこの条項を一つのてこにしていろんな無理な注文をつけてくるとは私は思っていない。
  241. 石野久男

    石野委員 私は、アメリカは無理な注文をつけてくるとは思わないという大臣考え方に、それはそうじゃないとかなんとかここでは言わないのですよ。それよりも、日本が平和主義に徹しておるのに、まさにこの兵器開発を意識したような形での査察の内容が、しかも国際原子力機関の保障措置によって代置される範囲を除いてこれだけのものが出てきているのですから、実をいうと、この第十一条のBはきびしいわけですよ。ですから、私は大臣にお聞きしたいことは、こういうきびしい査察条項をなぜ平和憲法を持っている日本が受けなければならないのかということを聞いているわけなんです。それに対して政府としては、この協定を結ぶにあたって、アメリカに対して何かものを申したのかということを実は聞いているわけです。
  242. 三木武夫

    三木国務大臣 いまも申しておるように、日本の場合はいま言われるとおりですけれども、これが国際的な協定の一つのパターンになっている、こういうことで大体みな協定が結ばれておるということで、特にこういうものが日本に関する限りは必要でない、これはのけてもらいたいということで強硬な交渉をしたことはございません。一つの型として受けたのであります。しかし、このことが、いま石野さんの言われるような日本の平和主義という一つのプリンシプルにこの査察を受けることによって抵触するとは私は思わない。
  243. 石野久男

    石野委員 国際的なパターンだからというので、あえて日本の平和憲法の趣旨からする抗議なりあるいは意見を申し述べたことはないといま大臣は言われた。それはまた逆な立場からいえば、国際的なパターンであるものに対しては、われわれは平和憲法を持っているたてまえからして、やはりまたわれわれもそれを相手方に要求せねばならぬ。そういう国際的なパターンになるものは、われわれはそうでないのにこういう査察を受けるとすれば、こういうようなものをまたわれわれは向こうに対してもやはり要求することは当然行なわなければいけませんね。大臣はその心がまえがあるのですか。
  244. 三木武夫

    三木国務大臣 私は、アメリカに対しても査察をするということを強く言う論者であります。査察を受けるというのです。平和利用については査察を受ける。これは、非核保有国だけが査察を受けるということは片手落ちである、核保有国も——軍事利用はできませんね。軍事利用というものは査察をできるわけがないが、平和利用については査察を受けるべきだ。これはアメリカも受けるという意向を明らかにしております。ソ連は反対していますよ。イギリスに対してもアメリカに対してもソ連に対しても、私は強く——グロムイコに対しても私は強くこれを要請をいたしたのです。向こうは同意してないが、イギリスとアメリカは受けるという意向であります。これはできるだけ一緒であるべきだと私は思っております。
  245. 石野久男

    石野委員 もう一つお聞きしておきます。  国際的なパターンだからというのだけれども、この査察を受けるというか、日本の憲法がどうあろうが、向こうがこういうふうにすることは向こうのかってだというような声がちょっとうしろのほうにもありますけれども、私は、やはりこれは非常にアメリカ側としては日本に対する信頼感を持っていないという一つのあらわれでないか、こういうふうにさえ思うわけですよ。そうでないといういま大臣のお答えですが。ところが、大臣は、いままでたとえばアメリカ原子力潜水艦が来たり、あるいは航空母艦が来たり、それからまたサバンナ号とかなんとか商船なんかもかりに入ってくるという場合になると、アメリカ信頼して査察なんかはやりません、こちらは調査はやりませんということを言い切ってきているんですよ。それとは非常に違うじゃないかということですよ、私の感じは。政府はそういうものに対してアメリカ信頼してやらないということを言ってきたんですよ。だから、政府がそれだけのことを言っておるのなら、アメリカだって日本を信頼してこんなことをやらないでもいいじゃないか。もしこういうことをやられる理由が民有にあるなら、その民有はやめるべきだというように私はむしろ思うんだ、国が責任を持てばいいんですから。民有というのは、率直に言いますと、原子力基本法の三原則に基づいて、今日日本の持っておる法律の上では、むしろ核燃料の国家管理というのはまだ厳然としてあるわけですよ。先般、いわゆる動力炉・核燃料開発事業団の法案ができるときにも、われわれやはりこれの国家管理の方針を依然として踏襲する、それを守るということで、あの事業団法ができたわけです。だから、大臣、この査察の問題についてきわめて大事な点は、そういう平和主義に徹しているものが、こういうきびしい、国連の機関よりもよりきついようななにを受けるということは屈辱的じゃないかということを私は申し上げる。これは同僚議員も言っておったけれども、特に私が申し上げたいのは——それは先ほど曽祢さんも言っておった。曽祢委員もこれは屈辱的だと言っておった。この屈辱的なものをなぜ抵抗も何もしないでやったか、その政府の真意を私は疑うのですが、大臣はアリメカに対しても、これを今度は打ち返しの形で日本の側としてはきびしくそういう査察を要求する、そういう態度をお持ちですか、この際、はっきり聞かせておいてもらいたい。
  246. 三木武夫

    三木国務大臣 私が言っておるのは、核拡散防止条約に関連をして、そして国際原子力機構の平和利用の面における査察というものは、核保有国も非保有国も差別を受けるべきではない、同様な査察を受けるべきだというのが主張でございます。したがって、われわれに厳重なら、平和利用の面においては核保有国も厳重な査察を受けるべきである、こういう意見でございます。
  247. 石野久男

    石野委員 同僚の帆足さんからもちょっと質問があるようですけれども、ただ、いま核拡散防止条約に触れておりますから、ひとつ……。  この核拡散防止条約の、この前私ちょっとお尋ねしましたが、第三条の二項ですね。この二項は、もう明らかに「この条にいう保障措置の下に置かれない限り、(a)原料物質又は特殊核分裂性物質又は(b)特殊核分裂性物質の処理、使用若しくは生産のために特に設計され、若しくは準備された設備若しくは物質を平和的目的のためいかなる非核兵器国にも供給しないことを約束する。」こうあるわけですよ。ですから、この核拡散防止条約に参加しなければ、第三条第二項によって、平和目的であってもこれは供給されないことになります。これはそういうように読んでいいわけですね。
  248. 重光晶

    ○重光政府委員 いまの核拡散防止条約の案の三条二項、これはいまお読みになりましたとおり、当事国——当事国というのは保有国も非保有国も含んでおります。それがこういう査察のもとに置かれない限りは、こうした物質その他を非保有国に供給しないという約束でございます。ところが、いまの御質問は、この条約に入らなければこういうことにならないという御質問でしょうか。その点、はっきりしなかったんでございますが……。
  249. 石野久男

    石野委員 この「保障措置の下に置かれない限り、」これは査察のもとに置かれない限りということですね。査察は、いわゆる核拡散防止条約に入らなければ査察を受けなくてもいいわけですよ、そうじゃないですか。
  250. 重光晶

    ○重光政府委員 この条約は、当事国というのは、当然条約に入らなければ当事国じゃございません。ただ、これに入ってない状態は、要するに、いま審議を願っております日米条約とか日英条約とか、アメリカ方々の二国間協定がございます。それによって規定されておるわけでございます。その協定はすべて査察ということが規定されておりますし、それから条約上のたてまえは二国間査察であっても、実際上は現状ですでに査察を原子力機関に移管しておるわけでございます。
  251. 石野久男

    石野委員 そうしますと、いま局長が言われたように、いわゆる核拡散防止条約に入らなくとも、日米の間のこの協定があればまたそれでいく、こういうわけでしょう。ところが、先ほど来大臣の説明は、交換公文の八項の、「両当事国政府は、協定の規定がその時に存在する新しい状況に対処するに不適当となったときはいつでも、協定の規定を改正する目的をもって相互に協議する。そのような協議は、いかなる場合においても、両当事国が原子兵器の拡散防止のための条約の当事国となったときは行なわれる。」こうあることをきのうから何べんも言っておられるわけですよ。そこで、これとの関係は、この日米協定とそれから核拡散防止条約との間で、より簡素化されたものに入るということですね。そういうことの意味は、結局拡散防止条約の中に入るということではないのですか、どうなんですか。核拡散防止条約よりもこちらのほうが簡素化されているという意味なんですか、それとも核拡散防止条約のほうが簡素化されているという意味なのですか。きのうから言っていることの意味はどういうことですか。
  252. 三木武夫

    三木国務大臣 核拡散防止条約には趣旨には賛成である。これは、大体ああいう条約ができることは核戦争の防止に役立つという立場でありますから、趣旨には賛成という立場であります。最終的な政府態度はまだ表明をしてないのであります。したがって、今後国際原子力機構の中において、これは核拡散防止条約によって査察制度ができて、それを受け持つものは国際原子力機構でありますから、国際原子力機構で理事会等が行なわれて、そしてこれからきめることになると思います。ユーラトムとの問題もあるし、そういう基準がきまれば、やはり国際的な査察というものの一つのフォーミュラができると思いますね。したがって、いまの御質問は、核拡散防止条約に入らなければ、簡素化といっても査察も受けられないのじゃないかというような趣旨かもしれませんが、そういうことで、今度の場合国際原子力機構で一つの基準ができますれば、今後査察制度というものは、そういうふうなことによって、核拡散防止条約に入らなくたって、国際原子力機構の査察制度はあるわけですから、だから、そのことは、核拡散防止条約にも入らなければ一切の国際原子力機構による査察を受けるという便宜はないのだというふうに断定はできぬと私は思っております。
  253. 石野久男

    石野委員 核拡散防止条約に入らなくても、原子力機構の保障措置があるわけですね。あるけれども、この条約は、国際原子力機構の保障措置に代置される範囲を除いてこの権利が出てきているわけですから、それ以上のものがここに入っているわけです。それの中のものは、この国際原子力機構の保障措置をわが国は受けるわけです。そうなってきますと、先ほど言っているように、核拡散防止条約の内容というものは、簡素化するかあるいは複雑化するかわかりませんけれども、しかし、日本が入ることを希望しているわけだと大臣はいま言った。そうすると、それに入らない場合は、平和的な目的のもとのいかなる非核兵器国に対しても物質を供給しないのですから、これはいやでもおうでも入らなければ物質は受けられませんね。核拡散防止条約の第三条の二項というのは、かりに日米の問題がありましても、核拡散防止条約の第三条三項の適用を受けると、保障措置のもとに置かれない限りは、入っていない限りは、平和目的のためいかなる非核兵器国にも供給しないということになりますから、日本は、この原子力協定の問題と核拡散防止条約との関係においては、やはりどうしても核拡散防止条約の中へ入り込んでいかなければいけないという状態になりはしませんか。
  254. 三木武夫

    三木国務大臣 こういうことなのです。国際的査察を受けなければ、いま言った平和利用のためにいろいろな核燃料の供給を受けられないということですから、条約に入らなければというのではないのです。やはり国際原子力機関による査察を受けなければそういうことができないということで、このことが条約への加入を強制づけておるものではないということでございます。
  255. 石野久男

    石野委員 国際原子力機関と核兵器の不拡散に関する条約と同次元で見てよろしいのですか。
  256. 重光晶

    ○重光政府委員 同次元という御質問はちょっと私ははっきりしないのでございますが、要するに、三条二項に書いてある保障措置というのは、国際原子力機関による保障措置という意味でございます。したがって、この条約に入らなくても、国際原子力機関の保障措置を受ければ、もちろん受けたものに対しては、これは当事国の義務ですから、そういう物質を持ったものはやることができる。ただ、国際原子力機関の査察を認めないものに対しては、条約に入ろうと入るまいと、それらの物質はやってはいかぬということでございます。
  257. 石野久男

    石野委員 核拡散防止条約という条約が一つあって、この条約の中に入るという当事国と、それから現在の国際原子力機関というものに入っている当事国がありますね。これとこれとは同じですかということですよ。そうじゃないのでしょう。国際原子力機関に入っているものであっても、核拡散防止条約を批准しない国があるわけです。その場合に、核拡散防止条約の批准をしないものはこの条約の第三条二項の適用を受けることになってしまうでしょう。いわゆる保障措置のもとに置かれない限りの国になってしまうでしょう。
  258. 重光晶

    ○重光政府委員 その点は、この条約の当事国にならなくても、国際原子力機関の査察を受諾する国に対しては、この条約の当事国であろうとそうでないとを問わず、この条約の当事国、すなわち核拡散防止条約の当事国は、それらの物質をやってもいいわけでございます。
  259. 石野久男

    石野委員 先ほどから大臣は、国際原子力機関の査察を受けるものであれば、この条約の三条の適用——三条の二項というのは、「保障措置の下に置かれない限り、」とあるわけですから、ここは排除されるものを言っているわけです。そういう排除された、仲間に入らないというならば、入るのか入らないのかということなのです。だから要するに、こちらに現在の国際原子力機関があるでしょう。それからこちらには核拡散防止条約を批准する国が出てくるわけです。しかし、これは、同じ国であっても、批准する国と批准しない国とがある。批准した国は今度は三条の適用の排除を受けるわけです。平和目的の場合でも何でも支給はしてもらえるわけです。だけれども、これの批准をしない国は第三条二項の適用を受けてしまって、平和目的のためいかなる非核兵器国にも供給しないという適用を受けてしまうわけでしょう。
  260. 重光晶

    ○重光政府委員 その点は、繰り返しになって私も全く申しわけありませんが、この三条二項は  「供給しないことを約束する。」といっているわけです。どういう国に対して供給しないことを約束しているかというと、原子力機関の査察を受けない国は、この条約の当事国であろうとそうでないとを問わず、これは関係ないことでございます。この三条二項は、原子力機関の査察を受けない国に対しては、それらの物資を提供しないことを約束をしている。それだけのことでございます。
  261. 石野久男

    石野委員 いや、それはそうじゃないでしょう。当事国というのは、この条約に入っている国のことをいうのでしょう。第三条の「当事国である非核兵器国は」というのは、核拡散防止条約に入っている非核兵器国はというのでしょう。
  262. 重光晶

    ○重光政府委員 三条二項は、当事国は、すなわち、この条約の締約国になる国は、「供給しないことを約束する。」ということをいっているわけです。当事国は、供給しないことを約束する国でございます。それはこの当事国でなければやりません。しかし、だれにやらないかということになれば、これはこの当事国とは関係なく、国際原子力機関の査察を受けないものに対してはやらぬ、こういうことでございますから、ここの当事国は、供給しないことを約束する国でございます。
  263. 石野久男

    石野委員 ここでいう当事国というのは、この核拡散防止条約に入って、この条約に基づくところの保障措置、いわゆる査察ですが、その査察を受けないものは、こういうふうに私は読むのですが、核拡散防止条約に入っていなくても、いまの国際原子力機関の査察を受けているものであれば、平和的な目的のためいかはる非核兵器国にも供給する、こう読むのですか。
  264. 三木武夫

    三木国務大臣 こういうことですよ。いま私も聞いておったのですが、要するに、みな入る。核拡散防止条約は入らぬ国もできるでしょう。その入らぬ国は何も核燃料の供給を受けられないということになれば、核拡散防止条約に入ることを非常に強制することになるでしょう。それはフェアではないでしょう。だから、一方において国際原子力機関があって、その機関の査察を受けるならば、核拡散防止条約に入らなくても燃料は供給いたしましょう。だから、国際的査察を受けぬ限りはやはり核燃料などの供給は受けられませんよということなのであります。
  265. 石野久男

    石野委員 私は、その点は非常にごまかしがあると思うのです。それはごまかしがありますよ。たとえば、この条約の第三条には、「当事国である非核兵器国は、原子力が平和利用から核兵器又は他の核爆発装置へ転用されることを防止するためにこの条約に基づいて負う義務の履行を検証することをもっぱら目的として、国際原子力機関憲章及び国際原子力機関の保障措置制度に従って国際原子力機関との間において交渉され、かつ、締結される協定に定める保障措置を受諾することを約束する。」こうあるわけです。だから、この条約に基づいているのですから、条約に基づいてということになれば、条約に入っていないものは条約に基づく必要はないでしょう。条約に入っているから基づいているのであって、条約に入っていないものは基づかなくてもいいではないでしょか。これはどういうことですか。
  266. 三木武夫

    三木国務大臣 一方において入らぬ国があるでしょう。そうしたら、国際原子力機関の中で査察の規定というものができますから、入っていない国でもそれを受けなければならない。それだから、国際的な査察を受けぬ限りは核燃料の配給は受けられない。核防条約の中に入っておる当事国は核防条約による規定による。入らない国でも、核燃料の供給を受けようというときには、国際原子力機構の査察規定による、こういうことになるのです。査察を受けずにはこの供給は受けられないということになると思います。
  267. 石野久男

    石野委員 これは理解のしかたの違いかもしれませんがね。もう一ぺん読みますと、「この条約に基づいて負う義務の履行を」と、こういうのですね。「この条約に基づいて負う義務の履行」なんです。ですから、国際原子力機関というのはいまあるわけですよ。そこに基づいて負う義務とはまた違うわけですよ。「この条約に基づいて負う義務の履行を検証する」ためにということですからね。だから、先ほどから皆さんが言っているように、現在の国際原子力機関におけるところの査察事項とは違うわけです。そういう違うところの査察を受けるその当事国のことをいうわけですよ。ですから、先ほどから言っている皆さんの言う意味と、私が聞いていることの意味と、理解のしかたが違うかどうか知りませんけれども、私は、第三条の規定における「当事国」というものは、やっぱり核拡散防止条約に入ってないといけない。入ってなければ、この第三条の適用を受けてしまう、こういうように理解すべきじゃないか、こういうように思うのですが、それは違うのですか。もうこれだけにしておきますが……。
  268. 重光晶

    ○重光政府委員 この査察の条項は、もちろん、この条約に基づく権利義務を書いたものでございます。したがって、この三条二項の「当事国」は、この条約の「当事国」にきまっております。ただ、この当事国が持っておる権利義務だけを書いておるわけです。したがって、ほかの国には、これこれの国には供給しないという義務を課しておるわけです。問題は、どういう国に供給しないかということ、これは三条二項に書いてあるわけです。査察を受けない「いかなる非核兵器国にも、」その「いかなる」というのは、条約に入ろうと入るまいと、条約の「当事国」であるといなとを問わず、すべての非核兵器国に提供しない。大臣がいま申されましたのと逆に書いてあって、理解しにくいと思いますが、それは当事国の義務を書いたから、こういうことになっておるわけであります。
  269. 石野久男

    石野委員 ぼくはまだ質問があるんだけれども、あと一つだけ聞いておきます。  これは科学技術庁長官にお尋ねをしますが、燃料サイクルの確立の問題なんです。燃料サイクルを確立する上で、燃料をこういうふうに確保することに努力しておるわけです。しかし、われわれがやはり燃料サイクル確立の上で一番大事なのは、使用済み燃料が発生して、これはプルトニウムをつくらなくちゃならないという事情に逼迫しているわけですね。この逼迫している時点で、これを早期に開発する工場を考えなければいけない。そういうことで、再処理工場の問題が出ておるが、再処理工場の問題については、これは四十七年にどうしてもつくるべきだということを私たち強く希望しておるわけです。これをつくるについては、立地の問題か何かかがあって、なかなかそれは進まないという事情にある。これを一日も早くなにするのには、もう設計はおそらくことしじゅうにできちゃうわけですから、敷地の問題とか何かについてもうあらかじめ処置をし、それがもう進まなくちゃならないと思うのです。これは科学技術委員会の中でもしばしば問題になっていることでもあるし、これだけ片務的な、しかも、われわれから言えば屈辱的な協定だと思われるようなものをしてでも、百六十一トンの燃料を確保しようと努力しているときに、事後処理的な形になる再処理の問題が依然として低迷しておるというようなことは、私はいかぬと思うのです。そういう意味で、この敷地の問題についての処置のしかた、それから、工場設置の問題についての態勢というものを早急にきめるべきじゃないか。そういう点で、いま原子力局はどういうふうにしているか、科学技術庁はどういうふうにしているかということについて、ひとつ所見を聞いておきたい。
  270. 鍋島直紹

    鍋島国務大臣 再処理工場の設立は、すでに十三億の国費をかけて現在設計に入っておる段階でございます。したがいまして、四十七年度にこれを行なうのには、来年の春ぐらいからは少なくとも着工しなければならないことは御承知のとおりでございます。ただ、立地条件の問題におきまして、第一候補地がなかなかいろいろな米軍の射爆場等との関係によって進められていないことは事実でございます。したがって、原子力委員会、また科学技術特別委員会等において、あの原子力委員長代理の有澤氏も言われましたように、真剣に第一、第二の候補地に取り組んで、そうしてただいまの計画を実行に移すようにしてまいりたい。また、そのことに、実際いいますと、いまこういうふうなことでございますから、国会がちょっとひまになれば、直ちに原子力委員会と原子力局と、あるいは動燃事業団との真剣な打ち合わせに入りたいと考えております。
  271. 石野久男

    石野委員 最後に、原子力開発については、先ほど田中君からも話があったように、原子力基本法の三原則というものは明確に守られなければならないと思うのです。再処理工場の問題についても、やはり民主的でなければならないと思います。いろいろと安全性の確保の問題、民主的な問題、公開の原則というものを明確に守るということが大事であると同時に、やはりわれわれは乏しい資金の中でものをつくっていき、効率的にそれを開発しなければいけませんから、むだのないようにやらなければいけないと思います。そういう意味で、開発する地点なんかにおいても、せっかく開発したけれども、足踏みをしておらなければならぬということで、血税をつぎ込んだものが、作業開始もできないというような状態になったり、あるいはトラブルが起きたりするようなことば、絶対に避けなければならないと思います。東海村はそういう問題を持っていると私は思います。そういう点は十分配慮の上で処理されなければいけないのじゃないか。そういうことについても、もう一度長官の所見だけは聞いておきたい。
  272. 鍋島直紹

    鍋島国務大臣 いまの御趣旨に沿って、もちろん三原則を守って処置いたしたいと思います。
  273. 秋田大助

    秋田委員長 帆足計君。
  274. 帆足計

    帆足委員 過ぎたるは及ばざるがごとしといいまして、われら人生、無風流を好まず。しかし、非常に多くの議論が突っ込んでなされまして、この重大なエネルギー転換の協定案につきまして、かくも熱心に外務委員会で討議されましたことを私は喜ぶものでございます。  大臣は、わずかな時間しかないと思いますから、せめて私は、大臣のおられる時間に、二十四、五分なりといたしまして、あとは、御都合によっては長官にごく簡単にお伺いしたいと思います。  また、党は違いますが、曽祢益君のきわめて良識のある質問を伺いまして、まことにともどもに稗益されました。  この原子力協定に関する案件は、やはりアメリカから買う以外に当面他の方法がございませんから、当然、各委員からこもごも指摘されているような点も文章にあらわれておりまして、文章自身が英語風で、たいへん解読に困難でございまして、皆さま専門家に御質問しなければわかりかねる、こういう点がどうも質問が無風流になりました原因であろうということは、与党の方にもお許しを願いたいと思うのでございます。  さっそくでございますが、当面アメリカからしか買う方法がありません。したがいまして、三十年という期限のつけ方につきましても、所要量をわれわれは必要とするし、安定した購入、長期の確保を必要とする、そういう一面もありますから、同時に、これに対して適当な区切りを置いて、修正継続のできるような外交技術上の方法があれば、一そう満足であることは御了解できると思いますが、運用上そのように骨を折っていただきたい。しかし、外交は相手のあることですから、言うはやすく行なうは難しということも私どもよく存じております。ただ、先日参考人を呼びましたときに、私の最も敬愛しております与党の齋藤議員から、敗戦国の影響もあってというお話がございました。私は、確かにそれもあると思いますが、しかし、敗戦という意味は、いろいろな意味がありまして、戦争は終わりましたけれども、ある意味において、私どもの心の敗戦は続いておるように思いまして、すなわち、独立自尊、民主主義の気風が官民ともにまだ十分ではない。みずから卑しめて人これを卑しむという一面もやはり強く残っておることは、私は、特に外務関係の公務員諸君において大いに考えていただかねばならぬ。そのために、外務省関係の方々の給与待遇等は恥ずかしからぬことにして差し上げねばならぬと平素思っておるものの一人でございます。新憲法のもとに、日本の置かれた状況が二つの世界の谷間にありまして、また、アジアの他の国から猜疑心を持って迎えられないために、もう少し合理的な、バランスのとれた外交政策が続いておりましたならば、平和的原子力開発に対して抵抗を感じ、あるいはアレルギーを感ずるということは少なかったであろう。再軍備等に伴いますいろいろな議論がありまして、佐藤首相の発言や倉石さんの失言などもありまして、原子力の平和開発にすら私どもはアレルギーを感ずる。そういうようなことが、原子力平和利用に対します機関の弱体、学究の優遇の立ちおくれ、予算編成の満足等を起こしているという一面も理解せねばならぬと私は思っておる次第でありまして、これは野党の責任もありますが、与党においても十分考えてくださらなければ、私は、一瞬にしてジョンソンがベトナムに対する態度をある程度変えたあの事実、または中国問題において過去において私どもが失敗した事実などを考えまして、三木さんの外交には弾力性があることに対して、私は一面敬意を払っておりますが、どうしても敗戦から学ぶことが必要であるということを、齋藤議員のお話を聞きながら、別に反対ではありませんけれども、痛感いたしました。  そこで、三十年という期間につきましては、私ども、松永安左エ門さんぐらいの長寿を保たなければ、まずわれらほとんどあの世に行っておるでありましょう。いまから三十年前は東条さんの時代でありまして、今日を想像することもできません。二十年前、廃墟となった日本において、私は経済復興会議の幹事長をつとめましたが、マーケット少将に五百万トンの鉄をつくらしてくれと言いましたら、おまえは気違いか、GHQに参るよりも松沢病院に行ったほうが近いよと、こう言われたことを私は記憶しております。いまや、そのときの鉄は六千万トンでありますから、したがいまして、三十年後というものは、加速度を入れますと三百年後ということにもなりますから、当面長期安定した材料を獲得いたしますためにやむを得なかった措置であろうとも、やはり石野君が指摘されたような、また各議員が指摘されました点については、今後運用上格段の御努力を願いたいのでございます。  いまも思い出しますが、福沢諭吉、中江兆民、これと並ぶ幸徳秋水、この三名の学者のうち、幸徳秋水は絞首刑に処せられましたが、あの絞首刑に処せられた明治四十三年の秋、石川啄木は、きょうはかぜぎみであろうか、熱っぽい、気分がすぐれぬと日記帳に書いて、その三行後には、「新しき明日の来るを信ずといふ自分の言葉に嘘はなけれど」、こういう歌を書きとめております。私は、三十五年後を思いながらこのことばを思い出しまして、そのときのアジア、そのときの日本、そのときのアメリカを考えますと、やはり三十年ということばに、この条約にこだわらざるを得ませんので、三木大臣がお考えになる以上に、今後とも折衝のたびごとにこの運用の弾力性について御注意を願いたい。  私どもといたしましては、このエネルギー革命に対しまして、少なくとも電力会社におりました私は、やはり本能的に賛成の気持ちであります。しかし、一つ一つの項目を論じますと、国内の立法ならば附帯決議を、留保条件を設けるべきでございましょうけれども、国際条約でありますから付帯条件というわけにまいりませんので、付帯条件という意味で反対の投票をせざるを得ないと私どもは考えております。日本社会党は何んでも反対という意味ではなくて、理解はしておるけれども、つくべき点をついておかねばならぬ。私は、参考人に対します質疑以外は、いま初めてのただ一回の質問でございますし、これが最後の質問でございますから、率直に心境を述べさしていただいた次第でございます。  さっそくでございますが、査察の問題につきましては、石野君からもずいぶん詳しくお述べになりました。さっそくお尋ねいたしたいのですが、これは他の条約との一つのフォーミュラともなっておるというおことばがありましたが、アメリカと他国が濃縮ウランまたはウランを提供する条約を結んでいる国はどことどこでございましょうか、ただいまのところまたは交渉中の国は。
  275. 三木武夫

    三木国務大臣 まず最初に、帆足さんの行き届いた御質問に感謝いたします。ことに、世の変化に即応して条約を弾力的に運用せよという御注意は、これはわれわれの心すべき点と考えております。  それから御質問の、アメリカが濃縮ウランを供給いたしておる国にはどういう国があるか、これはアメリカとスペイン、アメリカとスイス、アメリカとスウェーデン、アメリカとオーストラリア、アメリカとノルウェー、それからアメリカとユーラトム、これだけございます。
  276. 帆足計

    帆足委員 以上の国で今後参考になりますのは、当面はスウェーデンであろうと思いますが、これは今後研究することといたしまして、査察につきましてお尋ねいたしたいのですが、これは、査察という意味は設備の報告でございましょうか、実地の見学、調査、立ち入り検査等を意味しますのでしょうか、あるいはまた原子力関係といたしましても、発生炉があり、今後濃縮炉の研究があり、または速力を早める新しい炉等の研究並びに設備が行なわれるのでございますが、そのすべてを含むのでございましょうか、また単に報告でありましょうか、立ち入り検査等を意味するのか、御教示を願います。
  277. 重光晶

    ○重光政府委員 現在、日本が現実に受けております国際原子力機関の査察、この内訳を申しますと、先ほど問題になりました設計の大体の審査、それから日本側が出す記録を向こうで保持するということ、それから日本側が出す報告でございます。それから第四番目には立ち入り審査というものも入っております。
  278. 帆足計

    帆足委員 この際、幹部の皆さんにお願いいたしておきますが、当面衝に当たるものは民間の会社でございますから、まず報告につきましては、報告のフォーミュラをなるべく簡素にしていただきたい。それから、こういうようなプランはどうしても若干途中で改善せねばならぬことが起こりますので、善意の改善に対して理解を持っていただきたい。それから、計画の変更がどうしてもあり得ますから、その変更手続等も簡素にしてもらいたい。これは仕事の上できわめて重要な問題でありますから、ちょっと責任ある御返答をいただいておきたいと思います。
  279. 三木武夫

    三木国務大臣 われわれも、査察の問題というものは、非常に重視しておるのですが、できるだけ、いま帆足さんの御指摘のように、これは手続をもう簡素化して、われわれが懸念するような、商業秘密的なものが漏洩することがないとか、いろいろな点で、国際原子力機関などとも、これはみな各国と今後相談するわけでありますが、もう少し査察というものは簡素化していきたいと考えておりますので、御注意はそのとおりに考えております。
  280. 帆足計

    帆足委員 ただいまの点は、私どもかつて実業に従事いたした者といたしまして、非常に痛感いたしますから、これは普通の二十階建てビルの設計のときなどにも起こる問題でございます。したがいまして、しかとひとつ御記憶、御承認のほどお願いしたいと思います。  さらに、これはお教えを願いたいのですが、一面私どもは自給体制をつくってまいらねばなりませんが、これは大臣のお留守のあとに、あとは実務的なことですから……。  これは私ども勉強不十分でございまして、まことに恐縮ですが、この原子力発電における濃縮ウラニウムの値段の電気エネルギー単価におけるパーセント、それからウラニウム鉱をカナダから買いましたときの値段とその加工料、それから発電炉及び濃縮炉建設費の原価に占めるパーセント、これはははんそういう程度——私どもは科学者でございませんで、政治家でありますから、きわめて常識的な数字を御教示願いたい。
  281. 藤波恒雄

    藤波政府委員 電気の発電コスト、キロワット当たりの値段の中で、資本費が約三分の二ぐらいで、三分の一ぐらいが核燃料費だ、こういうようにお考え願いたいと思いますが、その三分の一の核燃料費のうち、三分の一がウラン原料費、すなわちイエローケーキであります。三分の一が濃縮費であります。あとの残りの三分の一が加工費である。大ざっぱに申しまして、こんな程度でございます。
  282. 帆足計

    帆足委員 それから発電炉及び発電設備のうち、自給し得るものは自給し、輸入し得るものは輸入すると思いますが、その輸入の割合と自給の割合は、原料でなくて、設備に関する限りは、現状ではどういうものでしょか。あとで承ってもけっこうです。
  283. 藤波恒雄

    藤波政府委員 現在アメリカから輸入して建設いたしております一号炉等で申しますと、約半分ぐらいが外貨のもので、半分ぐらいが国産でできるものでございます。相手方がメインコントラクターとして全責任は持ちますけれども、下請として日本のメーカーがつくる部分がございますので、その程度になりますが、現在二号炉等で国内メーカーを契約者としてやっておりますものは、さらに国産部分がふえてまいっております。七〇%ぐらいになろうかと思います。
  284. 帆足計

    帆足委員 濃縮炉をつくる上において、または原子力電気エネルギーを出す設備をつくる上において、すでに立ちおくれになっておる特許というものはどのくらいの分量あるものでしょうか。
  285. 藤波恒雄

    藤波政府委員 原子炉に関連する特許件数がどのくらいかということは、私はつまびらかでありませんけれども、具体的に、いまアメリカから入れて検査しております軽水炉等を二号炉、三号炉から国内メーカーが順次国産化をするという場合には、その日本のメーカーが相手方の国の、たとえばGEとかウエスチングハウスと提携をいたしまして、技術導入によりまして製作をする、こういうことでございます。  それから、手元にございます資料に基づきまして、原子力関係の特許公告件数がどのくらいあるかというのを大ざっぱに申しますと、原子炉のみならず、ほかの関連放射線関係のものも入れまして総計約三千件弱ございまして、そのうち千三百件くらいが外国の出願になるものであります。
  286. 帆足計

    帆足委員 それはどのくらいの期間の特許ですか。もうどうもやむを得ない、そうして相当額の特許料を払わねばならぬ性質のものでございましょうか。
  287. 藤波恒雄

    藤波政府委員 ただいま申し上げました数字は、現在公告されておる件数でございまして、これがすべて使用されておるというわけでございませんで、具体的には、先ほど申し上げましたように、日本の国内メーカーが相手と技術提携をしまして、技術提携料を払ってやっておるのでございまして、その中にどの程度特許料が含まれておるかはよく存じませんが、そうたくさんの特許が含まれておるとは考えません。
  288. 帆足計

    帆足委員 濃縮ウランの加工料については、アメリカのほうで国内できめておる値段でいくということですから、日本側は発電所が幾つありましても、不当競争、過当競争になることはあるまいと思いますが、いかがですか。
  289. 藤波恒雄

    藤波政府委員 AECの行ないます濃縮の費用というものは、定価表が公表されておりまして、これはアメリカ国内にも日本にも一律に適用になる、こういうことになっておりますので、さような御心配はなかろうかと思います。
  290. 帆足計

    帆足委員 民間会社は競争する本能を持っておりますが、競争によって何らかの弊害があるということは予想されますか。予想されますれば、またそれを防ぐ方法もおのずから研究され得るわけですが……。
  291. 藤波恒雄

    藤波政府委員 この附表にございます原子力発電計画は各電力会社のものでございますが、御承知のように、電力会社は供給区域を分けましてそれぞれ供給を行なっている公益事業でございますので、ほかの製造工業と違いまして、無用の競争といったような心配はないのではないか、しかも、先ほど来通産省のほうからも御説明がございましたように、電気事業法に基づきまして適正なる指導がなされておるということでございますので、そういう点からも、計画は適正なる計画だけが認められていると思います。
  292. 帆足計

    帆足委員 もうわずか数個の質問でございますからごしんぼう願いますが、私どもの日本の手に入りました特殊核物質の処理については、安全の範囲におきまして使用者の意思を極力尊重されたいと業界が要望しておるようでございますが、私は、その範囲ではこれはもっともなことであるし、また、秘密保持上にも必要でございますから当然と思いますが、政府当局の御意見はどうですか。
  293. 鍋島直紹

    鍋島国務大臣 規制法による政府の規制というものを、安全審査といいますか、それを厳重にいたすだけでございまして、それ以上のノーハウ等々あれば、それにはタッチいたしません。
  294. 帆足計

    帆足委員 この協定によりまして日本側が主として特に束縛を受けておるという点は、まあ査察その他の点が指摘されましたが、その他どういう点があるのですか。また、日本側がアメリカ側を束縛し制約しておるという利点はどういう点があるでしょうか、これは要点だけでけっこうです。
  295. 藤波恒雄

    藤波政府委員 査察等の問題につきましては、また外務省からお願いすることといたしますが、計画の立案とか実行等に関連して申しますと、われわれは、わが国の自主的にきめました計画がそのまま認められるものと考えております。現に附表をつくります場合にも、わがほうで計画をいたしましたものがそのまま載せられておるということになっておりますので、今後のそれらの計画の実行あるいはそれの変更、追加等につきましても、わがほうの主張が尊重されるものと考えております。
  296. 帆足計

    帆足委員 原料及び設備については、電力は豊富かつ低廉でなくてはならぬ、これは国のエネルギーの根幹、国のコストの根幹でございますから、豊富低廉でなくてはならぬ、これは至上命令です。したがいまして、このような大事業におきましては、やはり資金が時と所と出処を得なければならぬ、すなわち、低金利で、なるべく長期で、時を得て金融が行なわれねばならぬ。これにつきまして、通産省並びに大蔵省においては十分な御理解と準備計画がおありですか。
  297. 藤井孝

    ○藤井説明員 原子力発電における予算でございますが、これは火力発電と比較してみますと、現状のところ二倍くらいの経費がかかりますが、逆に水力と比べますと三分の二ぐらい安うございます。しかも、将来を考えますと、スケール・メリットを追求してだんだんと建設単価は下がってくると思われるのでございます。しかも開発は何も過剰な開発をするわけではございません。火力にしても水力にしても、また原子力にしても同じでございます。年々の需要増に対する必要量を開発するわけでございますので、特段に資金量が多くなるとかいうようなものではないと思うわけでございます。  ところで、その資金につきましては、そう申しましても相当量の資金が必要でございますし、また、新しい開発につきましては、いろいろリスクもある程度は予想しなければいかぬということもございますので、しかも、大いに国産化もやっていかなければいけないというふうなこともございます。そういう意味から、政府の低利資金、開銀資金、これを現在もいただいておりますが、今後も強くいただいて開発を進めていきたいと考えます。
  298. 鍋島直紹

    鍋島国務大臣 科学技術庁としましては、原子炉の開発あるいはプラントのことにつきまして、いま通産省の言われましたように、開銀の融資をあっせんする、しかも低利であっせんすること、特に国産技術の開発につきましては、特別償却等で税金の面もできるだけ免除する方策をとってまいっております。
  299. 帆足計

    帆足委員 実は、私はこのことに触れましたのは、国鉄の現状でございます。世界で賛嘆されている高速度の鉄道すらわれわれは持っておりますし、かつて、大宮工場の組み立て工場は、三十年前にソ連に教えにすら行った伝統を持っている。日本の鉄道は世界の模範であるといわれた。この鉄道が、立場は多少違いますけれども、奇骨稜々たる石田禮助翁の指導のもとに、いまいかに資金に苦しんでおるか。そのために、また子供たちから英雄といわれておる電気機関士の諸君がいかに薄給であるか、現場を見て私は驚きました。どうして春闘、秋闘といって鉄道の諸君が騒ぐのか。私も切符切りの係の人を見まして、これはまあ楽な仕事だから女の子にもさせられるというような錯覚を持っておりましたところが、電気機関士の激務、一つ手をあげることによって二千人からの運命がきまる後部車掌の仕事などというものの心労はたいへんなものです。それに対して福祉設備もごくわずか、給食の設備もあたたかい御飯を夜中に食べる設備もない駅が多いのでございます。したがって、石田禮助氏は資金のために苦しんでおります。東京都の改革はだれしも思うことですが、これも資金に苦しんでおります。したがいまして、一国の基本であるエネルギー源の開発に対して、同じ災いを繰り返さないように、大衆のために豊富低廉な電力を提供すると同時に、優秀な従業員諸君の生活も確保し得るように、いま最初の出発点にあたって御配慮を願いたいのでございます。  それにつきましても思いますことは、いま国際為替相場が非常に動揺しております。また、国内の経済分析につきましては、すぐれた経済学者が少なくなっております現在、日本経済及び世界経済の見通しがちょっと暗たんたる一面がございます。必ずしも楽観を許しません。特にドル相場、円相場の問題もございます。為替相場のこともお考えくださって、原料の購入、設備の購入のことについては、常に資本主義社会においては為替相場という心臓が脈打っているということをお忘れないように希望いたします。  引き続いて最後に、一、二でございますが、かつて電力会社が乱立いたしておりました当時、これを一社に統合するという案、奥村喜和男氏の一社官有案には私は心中反対でありまして、私としては、統制と自由との調整という案が妥当と考えておりました。私は理性派、合理主義派でありますが、そして、経済に計画性がある程度、資本主義のもとにおいても、過渡期に必要であろうと思っております。にもかかわらず、一社には、過去においても、いまも反対でございます。一社独占というものは官僚統制になりまして、そして必ずしもいいものでないということをいろいろな例で見ました。したがいまして、乱立しておりますと、私どもは一社国営にしたいと思いますけれども、一社国営になると、せめて数社競争してもらいたいと思う。これが今日の人情でございます。今日の電力会社、九社でございますか、まずまずと存じておりますが、これは専門家の間では検討の余地があろうと存じますけれども、原子エネルギー電源開発の際には、相当の規模でなければコストが下がりません。技術者の数も、優秀な技術者が少なくとも幹部には要るでしょう。石炭及び石油火力発電の技術と似ておりますから、一般の従業員は、現在の従業員を訓練して御協力願うことができますけれども、幹部になりますと、原子科学について理解のある技術者が相当必要なようにしろうと考えで考えられますが、それらの技術者の奪い合い、または足らないで困るという事態が起こりはしないか、それらの点についても、十分な計画的御準備がありやいなや。同時に、発電所を置きます場所につきまして、十分な準備をしますれば問題はないと思いますけれども、軍事基地との関係等で、B52が堕落するような場所だと非常に困るわけでありまして、原子力の平和利用と軍事基地というものは水と油のように一致しないものでございますから、そういう点の御考慮も必要であるまいかと思います。すなわち、小規模過ぎても困るようなときは、数社連合で一社をつくるというようなことも可能でありますから、その辺のことについて、研究の過程でありましょうけれども、私どもは注視をいたしたいと思っておりますし、皆さんの御研究の過程を承っておきたいと思います。
  300. 鍋島直紹

    鍋島国務大臣 原子力発電、あるいはそのほか原子力船もすでに本年着工するわけであります。それらのことにつきまして、技術者の養成ということは一番大事なことであり、御指摘のとおりでございます。そこで、現在におきましては、原子力研究所等に各社からそれぞれ研修生が来られまして、そういったことに備えて、いわば技術者の養成に当たられております。しかし、基本的には、これはやはり文部省関係においてよりよき教育をしていただき、その専門的な教育を身につけた方に世に出ていただかなければなりませんので、これらは文部省当局と現在できるだけの連絡をとっておる次第でございます。  次に、発電所等の設置の問題につきましては、これは昭和三十八年でございますか九年でございますか、通産省のほうでお調べをいただきまして、大体全国の中の候補地といいましょうか、いわば技術的に、あるいは経済的に、あるいは地位、そのほかいろいろな面から見た、大体この辺ではどうであろうかといったような適地の研究調査ができておりまして、大体二十カ所くらい全国でこれが公表されております。したがって、それらのことを参考にして、各九電力等が実は候補地さがし、あるいは適地といいましょうか、そういうところに設置をせられておるようでございます。なお、もうすでにその地点に現在建設を予定されておるところも二、三あるやに聞いております。さらに進んできます場合、おそらくこれは通産省からお答えがあろうかと思いますが、現在は四十万キロ、五十万キロ、東電第二号で七十万キロでございます。おそらく十三基以降、将来においては一基百万キロ以上のものができてくるだろうと思います。そういう際になりますと、資金の面から見ても、あるいは一つの電力の分布、あるいは需要という面から見ても、やはり数電力ないしそういった方々が共同して、こういった電力を配分せられる、あるいは建設せられるというようなこともあろうかと思いまして、通産省のほうでも、これらのことについては御研究中であるというふうに聞いております。
  301. 帆足計

    帆足委員 これで最後の御質問でございます。  私は、人類の進歩は生産力の進歩によるものであるというこの哲学は、正しいと思っておりますが、生産力の中で最も大きいものは、人間の力と科学技術の力でございます。まさにジェームズ・ワットが自由、平等、博愛の基礎になったことは、私先日申し上げました。だとするならば、原子力は、ロケットは、宇宙旅行は、おそらく人類恒久の平和の前夜になるものではないか。原子力のことを思うと、胸のとどろくような思いがしまして、わが孫は、おそらく全部セントラル暖房の中に住めるであろう。人類は必ずしも前途は暗くないと私は信じております。  最後に、四海水に包まれておる日本でございますから、私は、海の国日本は、日本国というよりも、日本丸と言ったほうが適当なくらいだと思う。日本丸の中に一億の人口が生きねばならぬ。だとすれば、平和が必要であり、貿易が必要であり、エネルギーが必要であり、科学技術、理性が必要であり、そして最後に同胞としての愛情が必要である。これが私ども外務委員の進むべき道である、それに近づきたい、こう思っておるわけでございますが、原子エネルギーで海水を分析し得るようになるとしますと、まず塩がとれますけれども、塩は砂糖と違って、非常に値段の安いものでありまして、どうしようもないというほどのものではありません。それから蒸留水がとれます。これは、水の問題は非常に大きな問題でございます。その他無数の元素がとれる。その中にウランも含まれておるということも、ある通俗科学雑誌で読みましたけれども、現在の段階で、私はそれを現実の問題とは思っておりません、これは通俗雑誌の囲み欄で読んだのでございますから。しかし、海水からウランを期待する萌芽があるかどうか、その一ことだけを伺いたいと思います。
  302. 藤波恒雄

    藤波政府委員 海水に含まれておるウランの採集に関する基礎研究、この間もお話が出たわけでございますが、まだ実験室のビーカー、フラスコ程度の段階のものではございますけれども、ところところでその研究をやっておる状態でございまして、まだいつごろ、どの程度の成果が経済的に、技術的にあがるかということにつきましては、相当長期を要すると思いますが、そういう状態でございます。
  303. 帆足計

    帆足委員 以上をもちまして、時間をお与えくださいましたことを感謝いたしますとともに、私どもは、ただいま申し上げましたことを、本来国内法でありましたならば、附帯決議として、皆さまとともにこれをつけておきたいと思って、速記に残した次第でございます。しかし、諸般の事情で、条約でありますから、附帯条項をつけられませんので、意のある党が、だれかが犠牲になって反対の意思を表明し、強く政府に警告し、国民にも訴える必要があると思いまして、後ほど石野委員から、討論の際に論旨明快に討論されると思いますけれども、どうか、私どもが何でも反対党でないという気持ちだけは十分おくみ取りくださいますように、切に希望いたしまして、意のあるところを述べた次第でございます。
  304. 秋田大助

    秋田委員長 伊藤惣助丸君。
  305. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 この原子力協定については、非常に内容が複雑であり、疑問点が多いわけです。本日は、時間もおそくなっておりますので、同一問題についてはあまり深くお尋ねはいたしませんが、いずれにしても国民が納得できるように、率直明快に答弁願いたいと思います。  この新協定は、わが国の最近の原子力発電の増大に伴い、核燃料の確保と特殊核物質の民有化の方針にのっとって、政府だけでなく民間も取引できるようにすることなどがその主目的になっているといわれております。  そこで、初めに、日英原子力協定のほうから質問したいと思います。  この原子力協定の第十条四項でありますが、この査察についてであります。日英両国及び国際原子力機関との三者間で合意に達することができなかった場合は、この協定を破棄することができることになっております。これはどのような場合に三者間で合意に達することできなくなることが予想されるのか、どういうことを考えておられるのか、政府の見解を伺いたいと思います。
  306. 重光晶

    ○重光政府委員 日英協定十条四項には御指摘のとおり書いてあるのでございますが、実は具体的に日英両国と国際原子力機関との協定がうまくいかぬという予想がないのでございます。ただ、ここに書いてありますのは、日米にも同じ条項がございますが、これは査察の問題でございまして、これは非常に重要なものであるから、万が一そういうことが起こったならば、協定そのものを破棄の原因になる、こういう規定でございまして、そういうことは、われわれ及びイギリスもそうでございますが、具体的には三者間で協定ができるという見通しを持っておるわけでございます。
  307. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 うまくいくならば、こういう協定はあまりこまかくする必要はまたないのじゃないかと思うのです。うまくいかない場合、問題があった場合に、両方に、その詳細にわたる取りきめ、もしくはそれが法律上こまか過ぎるならば、たとえば行政解釈ですか、そういうこまかいものである程度取りきめておくのが大事ではないかと思うのです。私はなぜそのように思うかといいますと、たとえばこの協定は、二国間条約といっても、必ず国際原子力機関が入るわけです。したがって、たとえば日英両国でそれが合意に達しておったとしても、国際原子力機関の都合によって、それじゃだめだ、そうくつがえされるような場合に、この協定が破棄されてしまうのかということであります。その点について政府の見解をお聞きしたいと思います。
  308. 重光晶

    ○重光政府委員 統論理的に考えますれば、日英が同じ意見であっても原子力機関がそれに同意しないということも、論理的には考えられるわけでございますが、結局、査察の問題で、日本はなるべく簡単な簡素な、日本の機密が外に出ないような査察を要求するわけで、イギリスがそれに同意いたしましても、かりに原子力機関で、これから設定するであろう現状の簡素化の後にできた一般的規定に非常に違う場合には、やはり問題があり得ると思います。しかし、おそらく実際はそういうことではなくて、これは核防条約も実際は関係してまいりますが、一般的規定というものは、日本、イギリスのみならず、関連する、こういうことをやっております先進国全部の意見をいれて、一般協定ができるという見通しでございます。
  309. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 非常に聞きたいことがよくわからないのですが、もっと明快に答弁願いたいのですけれども、時間の関係で先に進みます。  次に、第十条の五によりますと、日本が濃縮ウランを平和目的に使用しなかったり、また査察条項の約束を履行しない場合は、イギリス側は協定を破棄することが一方的にできることになっております。こういう点はいままで何回も質問が出ておりますが、これはイギリスの場合においてもアメリカの場合においても非常に一方的に有利である、日本側に非常に不利な条項である、このように思うわけです。この取りきめについて、ここのところの話し合いがどのようになされたのか、伺っておきたい。
  310. 重光晶

    ○重光政府委員 この五項の規定は、これはイギリスだけが破棄する権限があるのではなくて、イギリスが義務違反をすれば、日本が破棄する、要するに双務的な規定でございます。したがいまして、イギリスだけが破棄するということで交渉したものではないのでございます。
  311. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 双務的かもしれませんが、日本に不利ではないかということです。  次に、日英間の了解覚書によりますと、協定の規定を不適当にさせるような情勢が生じたときには協議することになっておる。このようにありますが、まず、これもどのような場合のときにそのようなことがあるのか、その点を伺いたい。
  312. 重光晶

    ○重光政府委員 交換公文の了解覚書でございますが、この協定の変更を目ざして両国間で協議するというのは、具体的には、これは日米条約の場合もございますが、主として、核防条約の後に、原子力機関を中心として国際的、一般的な査察制度ができた場合と、こういうことでございます。
  313. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 協議するわけですけれども、そしてお互いにそのあと、要するに、日本もこの場合は一応協議することによって態度を明らかにすることができると思うわけでありますけれども、その場合、いわゆるその後のその協定に対するわれわれの態度、たとえばこちらから破棄するということができるかどうか、たとえば協議しても、この協定では日本にはどうも発議権がない、一方的に見えるわけです。イギリスの協定においては双務的であるといわれております。しかし、非常に不利な条件で協議がなされるのではないか、そういう点をこの面では心配するわけです。その点について……。
  314. 重光晶

    ○重光政府委員 両方とも協議を行なう権利があるわけでございますが、しかし、査察の問題が実際問題としては一番問題だと思います。したがいまして、いま申しましたように、またこの第一項で書いてありますとおりに、核防条約ができて、国際原子力機関のもとに査察条項ができた場合、それにこの協定を合わせる場合には、もちろん日本の利益のために合わせる、こういうかっこうになるわけでございます。しかし、条文といたしましては、ほかのことについても、必要があれば、両国とも協議を言い出して協議することができるというかっこうになっております。
  315. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 日本に発議権があるということですか。
  316. 重光晶

    ○重光政府委員 そのとおりでございます。その点の得心配はないと思うのでございます。
  317. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 イギリスがユーラトムに加入し、また日英両国が核防条約の当事国となった場合に、協議が行なわれ、必要な場合に条約と両立するよう改正される、こういうことでありますが、核防条約の何条と両立するように改正されるのかということです。
  318. 重光晶

    ○重光政府委員 いまから具体的に全部あげることもできないと思いますが、その場合、やはり核防条約の三条、すなわち査察の条項——もっとも核防条約の三条は、具体的には核防条約ができてから原子力機関と各国とが相談して協定するということになっておりますが、その協定、具体的には三条の規定が一番これに関連があるかと思います。
  319. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 日英、日米、日加の原子力協定のほかに、ソ連とかフランスと同種の協定締結する予定があるかないか、これは長官及び外務大臣から伺いたいと思うわけですが、また、動力源の国家経済生活の中枢をなす原子力開発も考慮するならば、その協力関係は一国のみに依存することは疑問なわけです。できるだけ多くの国と協力関係を結ぶことが、わが国の国策からいっても得策だと思うわけです。そういう意味において、ソ連やその他の諸国ともこの種の条約を結ぶ考えがあるかどうか、その点を長官に伺っておきます。
  320. 鍋島直紹

    鍋島国務大臣 これは外務大臣の御答弁がしかるべきかと思いますが、フランス等の場合におきましては、協定以外にいろいろフランスの民間会社と契約を結んで、特に再処理等の問題は、その設計等においては非常な協力を得ておるわけでございます。実際におきまして、ソ連は平和的な査察すら現在これを拒否しておるような国でございますから、個々の場合においてあるいは協力を得る場合ができるかもわかりませんが、やはりお互いに平和利用の査察という点になりますと、現在ソ連はそれに乗っておりませんので、こちらの希望は、もちろん協定することにやぶさかでないにいたしましても、なかなか事実上は困難ではなかろうかと考える次第でございます。
  321. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 日米協定には「非軍事的利用」ということばが使われておりまして、日英協定には「平和的利用」ということばが使われているわけです。内容は同じじゃないかと思うのですが、どうしてこのような使い分けをしているのか、その意味、内容の相違点があれば、教えていただきたい。
  322. 重光晶

    ○重光政府委員 確かにことばは違うのでございますが、実は同じ意味でございます。なぜ違うことばを使ったのかということになりますと、イギリスもアメリカも、実を申しますと、いままでの協定の字をそのまま使っておるわけでございます。しかし、意味においては全く変わりございません。
  323. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 昨日のこの外務委員会において、政府側から、たとえば軍艦に原子力装置をつけても、それば原子兵器とはならない、あくまでもその船を動かす装置として、いわゆる推進装置として使うならば、これはできる、こういう答弁があったわけですけれども、これは間違いないことですか。
  324. 重光晶

    ○重光政府委員 その問題は、昨日日米協定の原子兵器の定義のところで問題になりましたが、私が申し上げましたのは、原子力潜水艦あるいは原子力空母その他の軍艦は、なるほど原子力を利用した兵器であることは間違いないけれども、しかし、この条約にいう原子兵器ということにはならない。これは原子兵器の定義のところでそういうふうになっておるということを申し上げたわけであります。原子力を使った兵器であることは、一般的にいえば間違いないけれども、この条約による原子兵器にはならないということを申し上げたわけであります。
  325. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 外務大臣がいないので、これはまたあとにしたいと思うのですが、その答弁からしますと、たとえば、現在護衛艦、いわゆる海上自衛隊にはたくさんの軍艦があります。そういう船につけることができる、こう解釈もされるわけですが、その点についてどういうような見解ですか。
  326. 重光晶

    ○重光政府委員 つけることができるというのは、原子力推進機をつけることができるかという御質問だと思いますが、これは私、協定の関係からいえば、この協定は禁止していないということは申し上げられますが、政府の政策として、そういうところに原子力推進機をつけるかどうかということは、別途ほかから答弁していただきたいと思うのです。
  327. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 これは非常に大事な問題なんです。たとえば、いま第三次防衛整備計画というのが行なわれておりますが、海上自衛隊が非常に強力に整備されております。特に四十六年度までにはミサイル艦が一隻できる。ターターというミサイルをつけた護衛艦でありますけれども、新型のターター、いわゆるエンタープライズについておるところのテリアに相当するミサイルがつくわけであります。こういう護衛艦に原子力をつけるということになりますと——その新型ターターは核非核両用のミサイルであります。そういうものにつけることが可能であるということは、この条約にある非軍事的利用という面からいった場合に、協定に違反するのではないか。先ほど言ったことは、いわゆる軍艦につけることができる、原子兵器にはならないというものの、その非軍事利用という協定から否定されるのではないか、こういうふうに考えるわけですが、その点について……。
  328. 重光晶

    ○重光政府委員 日米条約十条のAの(2)でございますが、ここでは、アメリカからこの協定に基づいて日本が入手した特殊核物質を軍事的目的に使用しないことを日本が約束しております。したがって、アメリカから入手した特殊核物質については、おっしゃるとおりに軍事的目的には使わないことを日本は約束しておるわけです。
  329. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 これはあとで外務大臣からまた答弁を伺っておきたいと思います。  先に進みますが、日米協定の第二条Aに、「有効な関係法令及び許可要件」という問題がございますが、いわゆる「許可要件」というのは、日米間でどんな取りきめ、またどんな問題を要件としてあげて話し合われたのか、その点伺っておきたい。
  330. 藤波恒雄

    藤波政府委員 これはいろいろな関係法令があるわけでございまして、原子力直接の規制法もございますが、物を輸出する場合につきましては、両国ともそれぞれ輸出入貿易管理に関する法令等もございます。それらの法令の許可要件にかなっていなければそれぞれの国の許可が得られませんので、そのことをいっておるわけでございます。特別のことを意味しているのではないと解釈いたします。
  331. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 わからないのですが、いろいろなこまかい話し合いをしたのではないかと思うのです。  次、第五条でありますけれども、この中におけるいわゆる免責条項ですか、米国は責任を負わないということになっておるわけですね。この点について、通常いう一般の商習慣から考えれば、非常に理解できないことなんですが、その点についてどのようにお考えになっておりますか。
  332. 重光晶

    ○重光政府委員 この五条は、御承知のとおり、アメリカと日本で、両国の政府間で免責し合うという規定でございます。そうして現実には両国の政府間で直接こういった核物質が移転されることはございません。非常にわずかでございます。日本の国の研究所その他が問題になるだけでございます。ところで、そうした場合には、普通の貿易あるいは商行為として、何か問題が起こったときには、商行為の場合は仲裁なりあるいは契約に基づく処理がされるわけでございます。ところが、政府政府の行為というものは、普通一般に商行為と考えられないわけでございます。したがって、ほとんど普通にはあり得ないことではございますが、政府政府の場合には、日米両国政府相互に免責し合うということで、一般の商行為として現実に日本が核物質をアメリカから入れる場合のことには関係がないわけでございます。
  333. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 時間がありませんから進みますけれども、この次の六条のC、「契約上の政策」ということがあるのです。非常にばく然としているわけですけれども、これはどういうことですか。
  334. 重光晶

    ○重光政府委員 この御質問は、実はごもっともだと思うのでございます。「政策」と日本語で申しますと、それこそ制度とか体制とかそういうものではなくて、政策そのものでございますが、実を言うと、この「契約上の政策」というのは、契約に関するそれぞれの国内の制度、体制、それに助えてそのときの政府の政策、こういうものを一緒くたにした観念でございます。その点は、この字が誤解を起こしやすいということは私ども感じておりますが、これは政策だけではなくて、制度、体制を含むものと、こういうふうに理解をしていただきたいと思います。
  335. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 こういう問題があるから、非常に内容が複雑だと言われるわけですね。平和利用も非軍事利用も同じであるとか、なるべくこういう条約等については、国民が読んでもわかるようにはっきりすべきではないかと思うのです。これはまあ希望として述べておきます。  次に、八条Aの二項の「予告期間」というのがございます。「予告期間」といっても、これまたはっきりしないわけです。「予告期間」とは大体どのくらいの期間なのか、また、たとえば予告が短い期間においては割り増し金を取る、このあとのところに書いてあります。これは非常に大事なことだと思うのですが、その短い予告期間というのは、時日にして何カ月なのか何年なのか、よくわかりませんが、この点はどのようになっていますか。
  336. 藤波恒雄

    藤波政府委員 予告期間というのは、何年もという長期ではございませんで、現在のところでは、四カ月、五カ月程度ということに了解しております。それからその後段のところに、その通常の期間よりもっと短い期間で入手をしたいというときには、できればそれにも応じてよろしいと、こういう規定がありまして、それに関連いたしまして、その場合にもし増加経費がアメリカ側にかかる場合には、その増加実費を賦課することがある、こういうことを条件につけているわけでございまして、通常は、そういう付加金をつけてまで短期に入手するということでなくて、通常の予告期間を置いて契約をいたしたい、こういうぐあいに考えておるわけでございます。
  337. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 この九条の百六十一トンというのは、大体このうちの百五十四トンが原子力発電所に使われる、あと残りの七トンくらいは研究用に使われる、このように聞いておるわけですけれども、わが国の原子力産業の発展から見ても、当然足りなくなるわけですね。そしてしかも、この協定には、その燃料をためることもできなければ、またよけいもらうこともできない、こうきびしく制限がございますね。これはあとで言いますけれども、その蓄積する場所もアメリカ承認を得なければならないということが出てくるわけです。そしてこの契約は、三十年間で百六十一トンということでありますけれども、三十年以前に、たとえば今後の原子炉の開発または購入等によって、十五年、二十年のうちに百六十一トン以上必要となる場合が考えられるわけです。そういう場合には、ここにある百六十一トンを必要となった場合は、あらためて法律上及び憲法上の手続によって入手することができる、こういうふうに書いてあります。この場合、わが国においてこれを国会の承認を受けるのかどうか、または承認を受けないでも自由にすることができるのかということですね。その点をはっきり伺っておきたいのです。
  338. 重光晶

    ○重光政府委員 この協定で百六十一トン、そしてそれをこえる場合は、両国政府間でそれぞれの法律、憲法の手続に従って合意される量ということでございますから、その場合は、追加の入手については、こういった協定のようなかっこうで国会に提出が必要だとは考えておりません。この協定に含まれておる、そう解釈しております。
  339. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 じゃ、その量をふやす場合には、協定一回承認を得れば必要ないというわけですね。  それから、もう一つ伺っておきたいのですが、これは十三基の原子炉に使う燃料として契約するわけですけれども、十三基外に使う場合、濃縮ウランを使用することができるかということです。その点伺います。
  340. 鍋島直紹

    鍋島国務大臣 この協定は、この附表にございます十三基の発電所に対する必要量が主体となっておりますが、現実の問題としては、十三基はここ四、五年のところの建設または建設予定、そういうことで三十年間の問題になっております。しかし、やはり先ほど言われましたように、昭和五十年六百三十万、昭和六十年三千万ないし四千万キロワットということになりますと、たいへんな原子力発電所を必要とするわけでございます。ただし、それが濃縮ウランを必要とするいわば軽水炉の的電であるか、あるいは昭和五十年前後に開発されるであろうといわれる転換炉、あるいはその後に開発されるであろう増殖炉、そういうことになりますと、濃縮ウランの必要はないわけでございます。現実に増殖炉等のプルトニウム、あるいは日本における転換炉から生産することができる時代が来るかもわかりません。したがって、その後の時代はなかなか予測しがたいものでございますが、さらに十三基以上に必要とする時代も来るではなかろうかというふうに考えますので、やはりこの協定によってあるいは増、あるいは減という幅を持たしてやる。したがって、これは将来のことでわかりませんけれども、増にしても、まるまる全部が、その後の日本の発電に使うのに濃縮ウランを全部必要とするとは考えません。おそらく濃縮ウランを必要とする軽水炉時代から次の時代人っているだろうと考えます。
  341. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 十三基以外でも使えるというわけですか。——それじゃ査察のところなんですが、日本はこの十一条の査察を受け、もしこの中にある一項目でも違反した場合は、アメリカ協定を一方的に破棄することができる。しかし、第十条B項の(1)の内容にアメリカが違反した場合でも、日本は査察もできなければ、また第十一条に対応した権利を主張することができない。これはもういままで何回も問題にされておるわけでありますが、この点についても明快な答弁をはっきり伺っておきたいと思います。
  342. 重光晶

    ○重光政府委員 いまあとにあげられました第十条B項は、実はアメリカ側の保証でございまして、この十条のA項は日本の保証でございます。したがって、十条全体としては、日本政府の保証とアメリカ政府の保証と二つ並んでおるわけでございます。  十一条の査察については、いままでずいぶん議論が出ましたが、確かに、査察を受けるのは、現実問題としてアメリカの場合は日本だけ、すなわち、日本だけがアメリカから核物質を入手するわけでございます。そこで、この査察が非常に片務的である、あるいはほかに比べて過酷なものなのではないかという問題が出されましたが、この十一条B項に書いてある問題のうち、たとえば国際原子力機関の査察の現状でございますね、将来はこれを簡素化するように各国は考えておりますが、現状と比べますと、この文字の上からは、査察の対象になる物質が二つこの日米協定でふえているわけでございます。これは減速材物質及びその他アメリカ側がきめる物質ということであります。しかし、これはほかの二国間協定でも全部こうなっておるのでございまして、なぜこうなっておるかと申しますと、日米間の査察は、アメリカから入手した物質だけを査察するわけでございます。日本の国産の物質は査察しないわけでございます。原子力機関の査察は、日米間と違いまして、日本にあるすべての核物質に対する査察となっております。したがって、アメリカとの協定のほうでは、減速材のようなものもアメリカからもらって、ほかの国産の核物質を使ってもプルトニウムができるではないか、そういう意味で、日米協定にもこの減速材その他が入っておりますし、ほかの二国間協定も全部入っておるわけでございます。しかし、それは、査察の対象が国内にあるすべての核物質であるか、相手国からもらったものだけであるかということによる違いでございまして、実際上は、現在の原子力機関のやっておる査察と、ここに書いてある査察とは、すなわち二国間協定の査察とは実質的に違いがない、こういうことになっております。
  343. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 いまの査察の問題ですが、第十条のBのところに、米側が軍事目的に使用しないというところがありますね。これはもう日本が買った、そしてまたアメリカに加工してもらう場合、あるいは加工じゃなくて使ったものを向こうに渡す場合、これはあると考えられます。その場合に、米側が軍事目的に使用しない、こういっているわけです。ここで使用しない保証というのはないわけですよ。どのようにして保証を確認するかということが問題になると思うのですね。要するに、この条文から言うと、われわれは使用しない、信用しろ、こうとれるわけですよ。これは軍事目的に使わない、それじゃ私たちは査察しましょうと、これは書いてないわけです。だから、アメリカはわれわれに査察するけれども、アメリカがわれわれは軍事目的に使用しませんよと言ったことについては査察ができない。ここら辺に不平等だと言われる原因が、この項目からあると私は思う。どうやって軍事目的に使用しないという保証を政府は確認するのですか。
  344. 重光晶

    ○重光政府委員 この条項を形式的に比べれば、おっしゃるとおりだと思います。この点は不平等な形式になっておると思います。実際問題といたしましては、日本アメリカからもらった核物質を加工してできたものを、それをアメリカに出すということは、量からいって非常にわずかなものであり、また時期からいって先のことになると思います。ですから、形式的には不平等でございますが、実際上はそれほどの問題ではないと私どもは考えております。
  345. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 第十一条の査察の点で、米国と国際原子力機関と二重にわたって査察を受けるわけですね。これは非常にきびしいのではないか。こういう点も同僚議員から指摘のあったところであります。  そこで、その第十一条のB中に、数項目にわたって、この条項に違反した場合には、一方的にアメリカだけが破棄することができる、こういうふうになっているわけです。たとえばその判断、また違反したということは、全部アメリカの考えできまるのじゃないかと思うのです。日本がそれに対して、そんなことはないと、アメリカにそのことを言えないのじゃないか、こういうふうに思うわけです。この点についても、アメリカ判断アメリカが一方的にこの数項目に該当したということで破棄することができるということについて、非常に不安があるわけです。その点について御見解を伺っておきます。
  346. 重光晶

    ○重光政府委員 十一条で、日本がアメリカ原子力機関の双方の査察を受けるということは、実際上はないわけでございます。実際上は、現在でもアメリカは査察をしないで、査察を原子力機関に移管してあるわけでございます。  それから、この査察の結果、違反があるかどうかの認定は、アメリカ側だけがするのではないかという御心配、これはもしそういうことになったら非常に困るということは私どもは考えておりますが、実際問題として、結局査察というものは、軍事利用に使うことを防止する査察でございます。したがって、アメリカが日本は軍事利用に利用しておる、日本は利用していない、こう言って意見が対立しておる、そういうことは実際上はないし、それからまた、協定のたてまえから申しまして、査察の結果をアメリカの一方的判断に決してまかせているものではございません。
  347. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 実際面ということから言うと、考えられないことです。しかし、条約上からいって、その裏づけ、保証というのが出ていないわけですよ。そこで不平等じゃないか、こうわれわれは見るわけです。ですから、たとえば、それでは日本側においてもしこの数項目にわたっての取りきめに疑義がある場合には、この条項のところに、お互いにその点については協議するというような協議事項とか、何らか入れるべきではなかったかと思うわけです。その点について……。
  348. 重光晶

    ○重光政府委員 実際上、これで協議してこの条約を実施するわけでございますから、条約の規定すべてがそうでございますから、特にその条項は入れなかったわけでございます。
  349. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 東海村の原子炉は、現在まで何回くらい査察を受けましたか。そしてまた、どのような手続で査察が行なわれたのか。そしてアメリカや国際原子力機関がそれぞれの立場でやったと思うのですが、その状況について伺っておきたいと思います。
  350. 藤波恒雄

    藤波政府委員 東海村の発電所は、先ほどもお話が出ましたように、建設にだいぶ手間どりまして、運転開始がおくれましたものですから、それまでの間はIAA移管ということを行なっておりません。比較的最近になりましてIAA移管を行なったわけでございますが、まだIAAの査察は一ぺんも受けておらない状況でございます。
  351. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 たとえば査察員の問題ですけれども、米側の指名した査察員または国際原子力機関の指名した査察員に対して、日本側が拒否できるかできないかということですが、その点伺いたい。
  352. 重光晶

    ○重光政府委員 現実には日本側が受けているのは国際原子力機関の査察でございますが、これについては日本は査察員に対して拒否権を持っております。現実は違いますが、日米間の条約そのままでもしアメリカが指定したとすれば、これはアメリカの日本に対する査察でございまして、日本に拒否権を持っておりません。
  353. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 十二条のB項でありますが、「いずれの当事国政府もA、に規定する三者間の取極について相互に満足する合意に達しない場合には、通告によりこの協定を廃棄することができる。」こうありますが、この三者間協定というのは、私は非常に問題であると思うわけです。この三者問協定について、国会の承認を要するのではないかと思うわけですが、この点についてお聞きします。
  354. 重光晶

    ○重光政府委員 現在行なっております三者間協定、これは移管協定といっておりますが、これは現行の日米あるいは日英協定に基づいて行なっておる、そういう意味でこれに含まれるということで、移管協定そのものは国会の承認を求めておりません。
  355. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 この三者間協定は現在でき上がっているわけですか。
  356. 重光晶

    ○重光政府委員 現行規定に基づくものは現在成立して、それによってやっております。
  357. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 たとえば米側の査察員が秘密を漏らした場合、これは当然考えられることでありますけれども——考えられないかもしれませんが、罰則規定があるかということです。また、そのことによって日本が損害を受けた場合、どのような措置をするか、お伺いしたい。
  358. 重光晶

    ○重光政府委員 この新しい協定においては、アメリカの直接の査察があった場合——実際はないのでございますが、あった場合、秘密を漏らしてはならないとしております。もし漏らせば、当然外交問題として処理すべきことだと思います。
  359. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 ですから、当然処理するわけですが、規定がないわけですね。どういう規定で処置するのかというわけです。なければつくらなければならぬと思うのですよ。
  360. 重光晶

    ○重光政府委員 具体的な措置は、アメリカ側に要求してアメリカ側にさせるということになります。しかし、損害賠償そのものは外交チャンネルによってこちらがもらう、しかし、おそらく日本側はアメリカ政府に対して処罰を要求する、それに基づいて、アメリカは国内法に基づいて処罰する、こういうことになると思います。
  361. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 過去、日本に原子力潜水艦やエンタープライズが寄港いたしました。現在も寄港しておりますが、アメリカ政府が、そういう原子力艦艇には核兵器を積んでいない——ジエーンの軍事年鑑やその他の軍事専門家においては、核兵器が搭載されているということはもう世界の常識である、このように言われておりながらも、わが国の政府は、積んでいないと言うから積んでいないんだということで、全面的に信用して寄港もさせているわけですね。これは日本政府アメリカを信用しているからでありますけれども、これと同じように、査察の問題については、日本で原子力の平和利用をするということをアメリカが信用してくれれば、査察等においてもこんなにきびしい、また非常にややこしいような査察を受けなくても済むのじゃないか、こういう率直な疑問がわくわけです。その点についてどのような考えを政府は持っているか、伺いたい。
  362. 三木武夫

    三木国務大臣 伊藤さんの言われることにわからぬわけではないですが、日本の場合はもう核兵器はやらぬですからね。一番問題点は、核兵器というものに対してこれを転用するということだけでしょうからね。だから、そういう査察も要らぬといえばそうですか、しかし、やはり日本だけに——日本は一番きびしいわけですよ。日本だけに寛大な協定を結べば、この協定がほかの国にも影響するんですね。そういうこともございますし、アメリカの国内法との関係もあると思いますよ。アメリカの国内法との関連、諸外国への影響、そういうことで、日本が一番核兵器開発の希望を持たない国であるにかかわらず、こういうふうな規定にならざるを得ない点も、われわれとしてはわかる気がするのであります。
  363. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 この協定の効力発生に至るまでの手続の問題ですが、わが国においては国会が承認する、憲法第七十三条三号の規定によってやっているわけでありますけれども、アメリカあるいはイギリスにおいては、その手続をどのようにするわけですか。
  364. 重光晶

    ○重光政府委員 アメリカ及びイギリスのこの協定に対する国会の承認の手続は同じでございまして、国会に提出いたしまして、そうして一定期間提出しておくとそのまま承認を受けたことになるという制度でございます。
  365. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 この協定の有効期間は三十年となっておりますが、中途で日本側から廃棄することができないのか。これはもう廃棄条項がないということですね。同僚議員からいろいろ質問があったところです。現在国際条約が日本には約八百くらいあるといわれておりますが、その中において長期にわたる条約というのは、まず三十年のは日本にはないといわれておりますね。しかもまた、条約にはほとんどが廃棄条項がある。たとえ協定になくても、その取りきめに破棄の条項があるわけですけれども、これにはないわけです。この長期にわたる協定の取りきめについて非常に疑義があるわけです。先ほど来からも話がありますように、科学の技術の進歩に比べて長過ぎはしないか。また三十年の間に国際関係がどう流動するか想像できないじゃないか、また日米関係の今日のような状態が依然として継続するかどうか、それもわからないじゃないかというような、いろいろなことが考えられるわけです。そして、わが国と中国やソ連との関係も、どのように発展するか、これもまたわからないところなんです。そういったこと、いわゆる日米関係を三十年間という長い間固定して、また現在のまま三十年はうまくいくということを前提にしてこの協定を結ぶということについては、わが国の国家利益にとってはたしていいのか悪いのか、こういう疑問もまたわいてくるわけです。そしてこの条約は、単に商品的であるとか、また技術的内容の条約ではなくて、きわめて政治的性格の強い条約でもあるわけです。一般の常識として、こういう条約には必ず破棄規定を含めるのが当然だと思うわけでありますが、この点についてもまた伺っておきたいと思います。
  366. 三木武夫

    三木国務大臣 破棄規定のない条約もたくさんありますよ。しかし、この条約は、要するに、端的に言えば、百六十一トンの濃縮ウランを買うということでしょう。買うというよりは、供給の義務を規定してあるわけで、日本が必要がなければ買わなくていいのです。三十年というと長いようだけれども、やはり原子力発電というものは長期計画として考えざるを得ない。ですから、あまり短期間だと燃料の供給が不安になるということで、原子力発電を進めていくのに非常に不安を与えてはいけませんから、そこで三十年という長い期間にはなっておるけれども、その間、もし買う必要がないといったら、この条約は効力が眠ってしまうのです。そういうように三十年と長くても眠るのですから、御心配になるような、何か強制されて三十年やらされるというふうには考えなくてもいいのではないかと思うのでございます。
  367. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 この三十年の有効期間において非常に考えられることは、わが国の原子力産業がアメリカによって独占されるのではないかということを国民心配するわけです。また、わが国の原子力産業がアメリカに従属する、そしてまた、日本の原子力産業の独自の開発がおくれるおそれがある、こういう点で私たちは疑問に思うわけです。そしてわが国としては、あくまでも原子力産業の自主開発を強力に進めて、そしてこの産業については常にフリーハンドでいくべきである、このようにも思うわけですが、その点について大臣の所見を伺いたい。
  368. 鍋島直紹

    鍋島国務大臣 わが国の現状から見まして、どうしても原子力発電に移行しなければならない必要性に迫られております。これは日本のエネルギー政策上も、どうしても速急に原子力発電に移っていくという実態でございますが、残念ながら、日本にはまだ濃縮技術がございません。現在の遠心分離機でも、昭和五十年前後にようやく開発でき得るという計画を立てておる。そのようなことと、日本における現実の天然ウランの実態——約五千トンでございますが、そういったようなところから考えていきますと、どうしても外国から濃縮ウランを入れてその開発をしていかなければならぬという必要性にも迫られておるわけでありまして、昭和六十年までに三千万キロないし四千万キロワットに開発する計画のうち、本協定による百六十一トンは約六百万キロの発電に見合うものであります。これは十三基分の三十年間の燃料でございます。そういう意味では、決してアメリカに従属するというようなことには相ならないと思います。したがって、今後日本もそれだけでは足りないのでございますから、次の転換炉、増殖炉というふうに、濃縮ウランの要らない、しかも効率的な原子炉の開発に全力をあげなければならないという必要性に迫られておるわけであります。
  369. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 そのことについては、予算の面からいっても、ここ二、三年というのは伸びが非常に低いわけです。百三十億くらいの開発費では何もできないわけです。たとえば西ドイツ等におきましては、昨年からことしにかけては約百億以上増額してその開発に当たっております。そういう面からも、もちろん原子力産業を強力に発展させるためにも、その点についてはそういう予算措置をしなければならないと思います。  次に、現在国連において核防条約が審議中でありますが、一説によりますと、この核拡散防止条約締結しなければ核燃料は売らない、こういう話がありますが、事実かどうか、伺いたいと思います。EECのユーラトムに対しても同じような話があった。したがって、EECは独自の濃縮ウラン開発の動きがある、このようにも報道されておりますが、この点についても伺っておきたいと思います。
  370. 三木武夫

    三木国務大臣 そういうことば私はあり得ないと思います。核防条約は核防条約ですから。しかし、核燃料の供給を受けるときには、国際原子力機構による査察を受けるということが条件であることは間違いのないことでございます。
  371. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 たとえ核防条約締結されなくても核燃料は買える、こういう保証はとっておくべきだと思うのです。大臣の所見を承りたい。
  372. 三木武夫

    三木国務大臣 そのとおりに考えております。しかし、国際査察を受けなければいけないということです。
  373. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 政府協定から、今度は米国の民有化政策にのっとって、わが国も民間が濃縮ウランを買えるようにこの協定では定めてありますけれども、わが国はあくまでも核の平和利用を推進するわけです。その場合、民間に対する平和利用の監視はどのような方法でなされるのか、伺いたい。
  374. 鍋島直紹

    鍋島国務大臣 日本の平和利用は、原子力基本法によりましてもうはっきりきまっておるわけでございます。したがって、それ以上に出ることは法律違反になりますとともに、規制法に基づきまして、たとえば民間が所有しておりましょうとも、あるいは原子力施設をいたしましょうとも、あるいは政府みずから所有しあるいは原子力関係の平和利用の施設をいたしましょうとも、規制法に基づきまする厳重なる査察なり検査、安全審査まで受けることになっておりますから、御心配はないと考えます。
  375. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 今回の日米協定において、アメリカ原子炉の売り込み政策に追随しているのではないか、このようにもいわれておりますが、あくまで原子力産業は経済主義、また商業主義に走ってはいけないと思うのです。本来の原子力の開発をおくらせることがあってはいけないと思いますが、この点について政府はどのようにコントロールするつもりか、また、その計画を伺っておきたい。
  376. 鍋島直紹

    鍋島国務大臣 この附表に載っております十三基の中で、やはり最初のものはGEとかWHとか、アメリカから買ってくるものもあるわけでございますが、関西電力第二号以降においては国産でほとんどできる予定でございます。ただ、一部あるいは輸入ものもございましょうけれども、国産化ということを目標に進めておるわけでございます。
  377. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 外務大臣に伺いたい。先ほど質問を残しておいたわけですが、きのうの答弁で、軍艦に原子力の推進機をつけても、条約上かまわない、こういう答弁があったわけです。現在自衛隊においては第三次防が整備されておりますが、その護衛艦につけることができるかどうかということです。その点について大臣から明確に伺っておきたい。
  378. 三木武夫

    三木国務大臣 これはやはり原子力を推進力に使うならば、原子兵器の中に入らぬですから、推進力には使えても、推進力以外のことで使うということはできないわけであります。
  379. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 原子力商船であるとか、原子力客船であるとかというところに使うのは、当然これはもういいと思うわけです。たとえばこれが自衛艦、いわゆる軍艦につける場合、できるかどうかということです。
  380. 三木武夫

    三木国務大臣 それは使ってもいいわけですが、アメリカからもらった核物質はそれには使えぬということであります。
  381. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 大臣御存じだと思うのですが、三次防の中に、ミサイル艦が一隻できるわけです。それは「あまつかぜ」のさらに大きいやつで、これにはターターの新型をつけるといわれております。ターターの新型はテリアです。テリアにも一型、二型と種類があります。そのテリアというのはほとんど非核両用の兵器です。それをいま装備する、このように装備年鑑にもはっきり出ております。こういう射程距離の長いもの、しかもミサイル艦に原子力装置としてつけることができるかどうかということですが、それも可能なわけですね。
  382. 三木武夫

    三木国務大臣 核は、両用の場合、ミサイルでも、いわゆる核兵器で、核兵器でない場合、その両用の場合ということばあり得ると思う。しかし、それに核兵器をつけちゃいけませんよ。そういうものはやはりつくっちゃいけない。だから、両用の場合でも、日本が持ったミサイルは両用にならない。核兵器は使っちゃいけないということであります。
  383. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 まあ、ミサイル艦でもつけていいというふうに考えておりますが、よろしゅうございますか。別に悪いと言っているわけじゃないけれども……。
  384. 三木武夫

    三木国務大臣 伊藤さん、何をつけるのですか、つけるものによって……。
  385. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 要するに原子力の推進力ですよ。
  386. 三木武夫

    三木国務大臣 そういうふうなことに原子力を使うことはいいのですよ。推進力に使うならいいのだけれども、ミサイルというのは核弾頭ということですよ。それはいけない。
  387. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 この協定の上からいいますと、アメリカの濃縮ウランはいわゆる軍事利用には使ってはいけない、こういうように出ておりますから、それはたとえできたとしても、アメリカの濃縮ウランを使ったものはつけることはできない、こういうことでございますね。
  388. 三木武夫

    三木国務大臣 そうでございます。
  389. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 次に、日英、日米、日カの原子力協定のほかに、ソ連とかフランスとかの各大国と同じような協定締結する考えがあるかどうか、伺いたいと思います。そして、これは将来の国際関係の動向を考慮するならば、さらにまた動力源の国家経済生活の中枢をなす原子力開発も考慮するならば、その協力関係は、一国に依存するということは非常に疑問になってくるわけです。できるだけ多くの国と協力関係を結ぶことが日本の国にとっては得策じゃないかと思うわけです。そういう意味で、ソ連やその他の諸国ともこの種の条約を結ぶことが日本の利益になるのではないか、こう思うわけです。この点について大臣の御所見を承りたいと思います。
  390. 三木武夫

    三木国務大臣 フランスやドイツとの間に、原子力の平和利用の面について、お互いに技術、情報の交換その他協力し合うということは、そういう取りきめができております。しかし、いまのところ、このような核燃料というものをこれから買おうという予定はございません。
  391. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 要するに、いまのところないというわけですね。三十年間ないということですか。これはもう大臣生きているかどうかわかりませんが、それだけ伺っておきたい。
  392. 三木武夫

    三木国務大臣 それは伊藤さん、三十年ということは、どういうことが起こるか、そういうことは言えませんね。三十年の間にはいろいろなことが起こりますよ。この席上で、私は、三十年こうだということを言い切れるものではありません。
  393. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 わが国の国家利益のために、第三国のソ連や中共や、また売るという大国からは買う、そういう態度でいくべきである、私はそのことを要望して、質問を終わります。
  394. 秋田大助

    秋田委員長 松本善明君。
  395. 松本善明

    松本(善)委員 外務大臣にお聞きいたしますが、すでにこの委員会で、この協定がわが国の原子力エネルギーについてアメリカに従属をすることになるのではないかという点が、各野党の委員からそれぞれ懸念が表明をされました。条約上は別に引き取り義務がないということを理由に、従属ではないということを言うのが政府の答弁の趣旨だと思います。しかし、この計画に従って発電用原子炉が十三基もできていく。非常に多い部分が原子力発電に依存をしていくということになった場合に、アメリカのほうでこの濃縮ウランの供給をしないということになった場合には、日本はたいへんな影響を受けるのではないか。そういう点ではアメリカにしっかり握られている。そういう意味では完全に従属をしている。あるいは、言うならば、いままで日本は核のかさに入っているとかドルのかさに入っているとかいうことがいわれていました。これから、そういう意味で、アメリカの濃縮ウランのかさに入るというふうに言えるのではないかと思います。この点についての政府の見解を伺いたいと思います。
  396. 鍋島直紹

    鍋島国務大臣 この協定は、ここに十三基ございます。約六百三十万キロでございますか、大体この型式はおそらく軽水炉でございましょうし、濃縮ウランを必要としますから、その三十年間分の百五十四トンですかの供給をアメリカがいわば保証しよう、いつでも出すという形をとっておるわけでございますが、日本におきまする今後における原子力発電の勢いは、それのみならず、昭和六十年には三千万キロないし四千万キロというふうに進みますから、おそらく百基をこえるであろうと思います。一方、日本におきましては濃縮技術を開発するために、遠心分離機そのほかで現在やっております。それも大体計画によってうまくいけば、昭和五十年前後にはその技術もあるいは習得、開発できるのではなかろうかという時代になってきております。なお、炉そのものも、新型転換炉あるいは高速増殖炉というようなことで、濃縮ウランを必要としない、新しい、もっと効率の強い炉に転換するであろうということも想像されますので、いま言われましたように濃縮ウランそのもののかさの中に完全に入るというようなことは、私としてはあり得ない、もっと科学技術というものが進歩していくものであるというふうに考えます。
  397. 松本善明

    松本(善)委員 抽象的にいえば、それは自主開発が進めばだいじょうぶだということになるでしょう。しかし、この委員会に来ました参考人は、みんな、そう簡単なものじゃないのだ、むしろ実験段階なのだということを言っておるわけであります。科学技術庁長官はどういう根拠をもって五十年ごろにはだいじょうぶだということを言われるのですか。
  398. 鍋島直紹

    鍋島国務大臣 それは原子力委員会の今後におきます開発計画、大体その計画どおりいくかいかぬかは、今後のわれわれの努力でありますし、ぜひいかせるように資金の面そのほかを十分考えていかなければなりませんけれども、少なくとも今日現段階においてでき得るであろうという現実性のある計画を立てておるわけでございます。その計画に基づいて申し上げております。
  399. 松本善明

    松本(善)委員 そういうことで信用できるくらいなら、各参考人だとか、あるいは野党の委員が、こんなことをいつも何べんも何べんも質問するわけはないわけです。この問題についても、昭和三十三年当時は、政府は天然ウランを使用する英国炉が日本の国情に合っているということを説明しているわけです。現在では、アメリカの軽水炉がいいのだということを言っておるわけです。わが国の原子力開発十二年の歴史を見ましても、科学技術庁長官の言うようなことば全然信用できないです。参考人も、そのたびごとに変わってしまう、いままでせっかく研究したものがみんなだめになってしまうということを言っていたでしょう。ことばで、新型転換炉だ、あるいは高速増殖炉だ、それはやっているでしょう。だけれども、それが五十年ごろにはだいじょうぶだという保証はどこにもないじゃないですか。だれがどういう計画で言っているのか、はっきり言ってください。
  400. 鍋島直紹

    鍋島国務大臣 私申し上げておりますのは、大体新型転換炉を四十九年であったかと思いますが、原型炉をつくっていくということ、五十一年に増殖炉の原型炉をつくっていこうということは、原子力委員会の専門部会で大体その計画を立てておって、これは公表しておるわけでございます。したがって、日本の最高技術の方が——私はしろうとでなんでございますが、そのためにはもちろん最高の努力が要ることは当然でございますけれども、一応そういった権威ある原子力委員会の専門部会でこの計画を立て、しかも、原子力委員会がそれを承認しておるわけでございますから、それに基づいて申し上げておるわけでございます。
  401. 松本善明

    松本(善)委員 いままででも全部そういう説明できたのだが、十二年間だめだったわけでしょう。もし科学技術庁長官の言われるとおりであれば、この協定は十年でいいじゃないですか。五十年ごろは国産の濃縮ウランでいけるのだということなら、十年でけっこうじゃないですか。それが信用できないからこそ、三十年ときめているのじゃないですか。
  402. 鍋島直紹

    鍋島国務大臣 そうはならないと思います。十三基の軽水炉、いわゆる濃縮ウランを必要とするものは、そのまま二十年、三十年存続いたしていくわけでございまして、昭和五十年、六十年になる前後に、さらにそういった炉ができてくる、こういうわけでございますから、そういうことにはならないと思います。
  403. 松本善明

    松本(善)委員 私たち、そういうことではとても信用できませんけれども、別のことをお聞きします。  かりに、それまでの間であっても、アメリカのほうから濃縮ウランを渡さぬということを言われれば、困るのは日本である。そうすると、個々の契約の上でもアメリカが一方的な優位に立つと思うのです。量でありますとか、濃縮度でありますとか、あるいは引き渡し契約でありますとか、いろいろな問題が個々の契約でこれから出てくると思う。その場合に、アメリカの言い分を必ず聞かなければ日本のほうが困るということになるのではありませんか。
  404. 鍋島直紹

    鍋島国務大臣 この協定によりまして、アメリカが日本に対しまして濃縮ウラン百六十一トンを供給する、しかも附表をつけて、その基礎はこうであるということを出しておりますから、アメリカとしても、それは途中でいやだとか、どうだとかいうことにはならない、われわれはそれを信用すべきであると考えます。
  405. 松本善明

    松本(善)委員 それはあくまで大ワクでしょう。これから個々の契約をやられるわけでしょう。その個々の契約をやるときに不利になるのではないかということを言っている。違いませんか。個々の契約をやるときに日本のほうが優位ですか。
  406. 鍋島直紹

    鍋島国務大臣 大ワクの見通しを立てて、そうしてその供給量を確保しておるわけでございます。個々の契約はその供給量によって行なわれるわけでございますから、そう不利になるというふうに考えませんが……。
  407. 松本善明

    松本(善)委員 そういうことはあり得ないです。個々の契約のときに、必ずそれは条件が問題になる。そのときにどちらが優位になるか、それはどちらも優位になりませんというようなことでは決してないですよ。私は、いまの答弁ではとても満足できません。正しくないと思いますけれども、時間の関係もありますので、先に進みます。  この濃縮ウランの問題だけではなくて、原子力発電所の建設費の問題ですけれども、ここに出ております敦賀発電所、それから福島の原子力発電所、それから美浜の場合、それぞれアメリカの輸銀からの借款と建設費との割合を述べていただきたいと思います。
  408. 藤井孝

    ○藤井説明員 建設費でございますが、敦賀発電所は三百二十三億円でございます。福島原子力発電所は四百十八億円、それから美浜発電所が三百十八億円でございます。輸銀の関係の数字は、いまちょっと持っておりませんので、後ほど調べてお答え申し上げます。
  409. 松本善明

    松本(善)委員 それはたいへん不勉強な話だと思います。私のほうの調べている範囲で、多少合いませんけれども申しておきますと、敦賀発電所が三百五十七億円、そうしてメーカーとの契約額が二百十二億円、アメリカの輸銀の借款額が二百二億円、九五%以上がこの輸銀を使っている。そうして福島の原子力発電所の場合は、総建設費が三百八十四億円です。メーカーとの契約額が二百九十三億円、そうして、その中でクレジットが四十一億円あります。アメリカの輸銀の借款額は二百九億円。美浜は多少違う。総建設費は三百四十七億円、アメリカの輸銀の借款額が百十九億円。いずれにしましても、建設費が圧倒的にアメリカの輸銀を使ってやられておるということは認めますか。こまかい数字はわからぬと言われますけれども、このことは認めるかどうか。
  410. 藤井孝

    ○藤井説明員 ただいま数字を持っておりませんので、はっきりしたことを申し上げかねるのでございますけれども、先ほども、いわゆる輸入による部分と国産の部分の話が出たわけでございますが、大体機械関係費用の五〇%あるいはそれを越す程度のものを輸入にまっておるというような状況でございますので、全体の建設資金の中に占める割合は、先生のおっしゃった数よりももっと少ないものだというふうに考えております。
  411. 松本善明

    松本(善)委員 あなた、こまかい数字がわからなくて、なぜ私の言っているのより少ないということが言えるのですか。そういう無責任な答弁ができますか。
  412. 藤井孝

    ○藤井説明員 実は全体の工事資金の中には、国内でできる土木費とか、いろいろな費用が入ったものでありまして、機械費はウエートは多うございますけれども、全体を占めるものじゃございません。その中で国産化というものが五〇%程度入っておるというようなところから判断いたしまして、半分以下には当然なるというふうに思っております。
  413. 松本善明

    松本(善)委員 責任を持って答弁をしてもらいたい。この三つの発電所でアメリカの輸銀の使用額が半分をこさないのかどうか、あなた、その点もはっきり言えますか。そういうことが責任を持って答弁できるのかどうか。
  414. 藤井孝

    ○藤井説明員 数字は正確に調べて、またお答え申し上げたいと思います。
  415. 松本善明

    松本(善)委員 正確に知らなければ、私の言っていることが違っているとか、それより少ないなんて言えないはずじゃないですか。そういう無責任な答弁を国会でするというのはけしからぬと思います。  この数字を見ましても、やはり原子力発電がアメリカに従属しているということは明らかだと思います。濃縮ウランにいたしましても、それから金融の面でもこういうことでありまして、これは協定の条文の中にも従属的なものが幾つも出てくる。先ほどの国連局長の答弁でも、条文そのものが不平等であることは認めるという答弁がありました。日英の原子力協定では五条の保障措置が双務的になっておりますけれども、これがアメリカとの関係では双務的なならなかった理由。双務的なことを主張したのか、それがいれられなかったのか、それとも初めからそういうことは主張しなかったのか、どういうわけでこうなったのか、その経過をお話しいただきたい。
  416. 重光晶

    ○重光政府委員 前にも触れましたが、日英の問題は、初めはこれほど双務的じゃなかったのでございます。しかし、まあ日本とイギリスとの関係と申しますか、これは完全に双務的になったわけでございます。しかし、アメリカから入れる核燃料は、実はイギリスから入れるよりもずっと大きいものであって、その点は、日本はまだ日米の関係では、核燃料の移転ということからいえば、アメリカから買うという時代でございます。したがって、アメリカとの協定を双務的にするということは、事実問題としてできなかったわけでございます。
  417. 松本善明

    松本(善)委員 そうすると、主張したけれども、できなかったということですか。
  418. 重光晶

    ○重光政府委員 主張といいましても、具体的の条項については一々主張したわけでございます。しかしながら、結果としては現実に即した協定にならざるを得なかった、こういうことでございます。
  419. 松本善明

    松本(善)委員 そうすると、アメリカとの関係では日本へ来る量のほうが多いので、不平等性について問題にすることも政府はしなかった、これは妥当である、こういう考えなんですか。
  420. 重光晶

    ○重光政府委員 そういう意味では決してないのでございまして、要するに、日本としては、アメリカに非常に大きい核燃料をコミットさせた、そうして、日本はそれを買う義務を引き受けたわけではないわけでございますから、それとのうらはらの問題において、査察の面では一方的な査察の条項にならざるを得なかった。すなわち、結局アメリカに核燃料の長期にわたる供給を約束させた、そのうらはらで査察は一方的なかっこうにならざるを得なかった、そういうことでございます。
  421. 松本善明

    松本(善)委員 外務大臣にお聞きしておきますが、国連局長の説明によりますと、核燃料の供給を約束させたから、この部分では不平等になっておっても、結果的には平等なんだ、日本にとっても妥当なんだ、どうもこういう見解のようでありますが、それでいいのですか、確認しておきます。
  422. 三木武夫

    三木国務大臣 条約を個々にとってみればいろいろ言い分はあろうと思いますが、日本はどうしてもやはり原子力発電にエネルギー源をたよらざるを得ない、核燃料を買わざるを得ない、こういう必要性から、国全体の大きな目的からいったら双務的だと思います、日本はほしいのですから。
  423. 松本善明

    松本(善)委員 結局、濃縮ウランをアメリカからもらう以外にないので、この程度はやむを得ないのだ、そういう趣旨の答弁だと受け取ります。  さらに、協定の十条B項において、アメリカも日本から移転をされる資材を平和目的のために使わなければならないということを義務づけている。この点では日米両国同様であります。しかし、その保障措置についてだけはアメリカは免除されている。アメリカも当然に日本から行く資材についてこれは平和利用をしなければならぬ、これを保障する措置がなければならぬ、これは当然のことではないかと思います。こういうこともやむを得ませんか。
  424. 重光晶

    ○重光政府委員 査察そのものは、元来軍事目的に転用しないためにするものであります。元来そうであります。そして、アメリカは軍事目的に核を利用しておる国であり、日本は軍事目的に使用してない国でございます。そういうことが基本的にあるわけでございます。にもかかわらず、アメリカは、日本から日本が加工したものがアメリカに行った場合には、それは軍事目的に使用しないと約束をしているわけでございますが、査察となりますと、これは基本的に核平和利用が軍事利用に転化されないかどうかということでございまして、この点については、アメリカに対して査察をする必要というものは基本的に日本の場合と違うわけでございます。
  425. 松本善明

    松本(善)委員 そういうことになりますと、これは、アメリカが日本から行った資材を軍事目的に使用しても、実際上それを制限する措置はない。先ほど来の答弁でも、プルトニウムは相当数のものになる。こうなりますと、日本がアメリカの核軍備の下請工場になるという危険性は十分あると思う。日本でできたプルトニウムやそういうものは向こうで平和利用以外に使わない、軍事利用をすることを防ぐという措置はないということになれば、いま私が申しましたような余地は十分残されていると思いますけれども、いかがでしょうか。
  426. 重光晶

    ○重光政府委員 日本からアメリカに核物質が輸出されるということは現状ではないわけで、例としてプルトニウムをいまはアメリカから入れておるわけでございます。そうして、ほんとうにプルトニウムの平和利用ができるようになれば、おそらく日本は日本でできたものをフルに利用したいでしょうし、プルトニウムというものが日本からアメリカに輸出されるというような事態は、いまから予想されます期間においてはちょっとないことではないかと思います。
  427. 松本善明

    松本(善)委員 あなたがそういうことを言うなら聞きますが、この協定は、日本からそういう物質、資材がアメリカに行くことを前提としたものでしょう。前提としていませんか。そのことだけ聞きます。この協定はそれを前提としていないかどうか。
  428. 重光晶

    ○重光政府委員 そのことを考慮に入れた協定でございます。
  429. 松本善明

    松本(善)委員 そうでしょう。そういうことがないなら、そういうことをきめる必要がない。  それからこれもだいぶ問題になったのですが、確かめておきますが、協定の十一条の保障措置ですね。原子炉その他の設備、装置の設計の審査、核物質設備等の記録の保持、報告の提出、査察の権利、こういうものを持つことになっておりますが、こうしますと、三十年間にわたって日本の原子力研究がアメリカに支配をされる。いま日本の頭脳流出ということが盛んにいわれておりますけれども、これがもっとひどい形で、日本の原子力研究がアメリカに押えられるという結果になると思う。これは政治的には非常に重要な問題ではないかと思いますが、これについての外務大臣の見解を確かめておきたいと思います。
  430. 三木武夫

    三木国務大臣 押えられる——アメリカは、原子力の平和利用の面においても相当発達しておる国ですね。日本のこれから開発することをみなアメリカに、いろいろわれわれの研究の成果をとられて押えられるというふうに、もしそういうふうに世界がみな日本の技術を学ばざるを得ないようになってくれば、やはり日本の国家利益の見地から、これに対しては、日本の商業上の秘密というものは、この条約によって漏洩してはならぬという大きな前提に立っているわけですから、そういうことで何らかの方法を考えなければなりませんが、この条約が、すぐにアメリカに隷属して、もうアメリカの核開発の前に頭が上がらぬ、そういうふうには私は見ないのですがね。日本はやはり後進国ですからね、核の平和利用の。できるだけやはりそういう核燃料もとり、技術もとって、これは一流の国家に水準を上げていくという努力をしなければならぬので、いますくに隷属——そんなら自分で自己開発するということになれば、とても時間がかかるでしょう、これは。(「自己開発せいという質問なんだ」と呼ぶ者あり)もし、自己開発というような意味であれば、われわれとはやっぱり意見が違いますね。自己開発というものをして、濃縮ウランをみずから日本がつくるまで原子力発電もやらぬということになれば、これもやっぱり非常な時間がかかって、そういうことが松本君の主張であるならば、われわれと考え方は違うということでございます。
  431. 松本善明

    松本(善)委員 私のほうの考えはまたあらためて申しますけれども、三十年間にわたって日本人の頭脳を使用しないということはできないと思います。これがアメリカ政府には、日本の原子力研究は全部筒抜けになるこの協定でしょう。これは、やはり日本にとっては非常に支配をされるということになるのではないかと思う。これはだれも否定することのできないものだと思うのです。この点について聞いておきます。
  432. 三木武夫

    三木国務大臣 アメリカ政府はその保障に対しての報告を受けるわけですが、それを政府以外に漏らして、その日本の研究の成果をアメリカが産業の面に利用するということは、条約の精神に反する、こう思っております。
  433. 松本善明

    松本(善)委員 それはまあ私は相当外務大臣と見解が違いますが、その程度にして……。  原子力の第三者損害について、アメリカ政府を免責している。これももちろん不平等な条項です。この免責条項が入ったということは、原子力施設の事故による損害が非常に大きいものだということをアメリカが知っている、しかもまた、この事故がゼロでないということを知っているからだと思います。一九五六年に、アメリカの議会がアメリカ原子力委員会に、原子力発電所の事故を想定した損害について調査報告を行なわせました。その報告によりますと、電気出力が十万から二十万キロワットの原子力発電所が事故を起こして、内部の燃料棒が溶けてしまい、ガス状あるいは揮発性の放射性物質が格納容器から微量ずつ漏れ出る場合を想定して分析しておる。その中で、蓄積分裂生成物の五〇%が約二千度の高温で放出をされ、煙霧状に広がった場合の被害額を推定し、物質損害七十二億ドル、約二兆六千億という額が示されております。政府は、この原子力発電所の事故による損害をどうやって賠償するつもりでありますか。
  434. 鍋島直紹

    鍋島国務大臣 原子力の損害賠償につきましては、日本の制度におきますと、原子力損害の賠償に関する法律というのと、原子力損害賠償補償契約に関する法律というものによってこれを賠償することになっておるわけでございます。その制度は、被害者の保護と原子力事業の発達に資するということでございますが、大ざっぱに申しまして、賠償の責任は無過失無限責任ということで、その事業者に集中されます。  第二に、賠償責任の履行を裏づけるために、原則として一工場もしくは一事業所当たり五十億円の原子力損害賠償責任保険契約を締結しなければならないということになっております。  第三に、それ以上に国の援助義務がございまして、五十億円以上の損害が発生した場合、国は必要に応じまして国会の議決を経て原子力事業者に援助を行なう。そういった骨子の賠償規定がございます。
  435. 松本善明

    松本(善)委員 電気出力が十万から二十万キロワットの原子力発電所の事故でさえ、いま申しましたように、二兆六千億にものぼるわけです。五十億とはけた違いであります。現在建設中の発電所は、いずれもこの二倍から、着工計画中のものでは三倍規模のものであります。被害の規模ももちろんで、一そう大きなことになるのじゃないかと思いますけれども、賠償措置は現行のままでいいとお考えですか。
  436. 藤波恒雄

    藤波政府委員 原子力の安全確保につきましては、原子炉規制法に基づきまして、厳重に安全審査から運転管理までやっておりますので、そのような大きな事故は起こらないものと確信をいたしております。  なお、五十億円の限度につきまして、いまのお話につきましては、もしかりに五十億円以上の損害が発生した場合には、国は必要に応じて国会の議決を経て原子力事業者に援助を行なうということになっておるわけでございます。
  437. 松本善明

    松本(善)委員 この損害に対する賠償よりも前に非常に大事な問題があると思いますのは、原子炉そのものの安全性であります。これは昨年十二月にアメリカのニュージャージー州のオイスタークリーク原子力発電所で、試運転を前にして圧力容器の水圧試験で多数のひび割れが発見されております。そしてその結果、全出力運転は今年末まで延期をされたのであります。また、ゼネラルエレクトリックの合弁会社でありますGEJの日本原子力研究所の動力試験炉にもひび割れが発見されたことを、去る四月十日原子力委員会の原子炉安全専門審査会が中間発表しております。こういう状態でありますが、安全性は確認されたということが言えるでしょうか。
  438. 藤波恒雄

    藤波政府委員 お話しの原子力研究所の中のJPDRという原子炉のひび割れの問題、これは昨日来何回か出ておるわけでございます。御説明したとおりでございますが、その問題に関しましては、お話しのとおり、現在JPDRを二倍の規模に拡大する、いわゆるJPDRII計画の安全審査に関連をいたしまして、原子力委員会の下部機構であります原子炉安全専門審査会におきまして、わが国のこれに関する専門家を集めまして慎重に検討中でございます。われわれといたしましては、その専門家の結論を得まして、それを尊重して今後の計画に踏み切りたいと思っております。
  439. 松本善明

    松本(善)委員 まだ問題があります。アメリカでもこの軽水型大型発電炉の実用価値を認定をしていません。昨年の二月に、アメリカ原子力委員会は、一九六二年十一月の原子力発電計画に関する大統領への報告の改定報告を作成しました。この報告の軽水炉の部分には、こういうふうに書かれております。軽水炉が発展し、改良が進められたにもかかわらず、技術的にはまだ保留されている分野がある。現在建設中あるいは計画中のプラント規模の運転経験はない。新しい商業プラントに対して使用される大量の燃料の統計的な経験はない。また安全性に関する研究も継続中である。こういう公式報告です。それからアメリカ原子力委員会は、一九五四年原子力法の範囲内で実用価値の認定を法律化するまでに軽水炉が来ていないことを支持した、こうもありますし、また原子炉安全性という部分には、こう書かれてあります。安全性に関する研究開発計画は、新型の原子炉の開発よりも優先されるべきものであり、これらの炉の開発に際しては、安全性を高める研究に重点を置くべきである、はっきりこう言っているわけであります。だから、軽水炉はアメリカでさえ実用価値の認定がされていないものであります。また、四月十九、二十の両日、原子力安全研究協会が主催いたしました第一回原子力安全性総合発表会におきましても、原子力委員会の原子炉安全専門審査会の委員であります東京大学の内田秀雄教授は、軽水炉などの在来型炉でも現状ではまだ立証炉ではない、すなわち、確かに安全であり、しかも経済的に採算がとれると立証されていないことをきびしく指摘しております。こういう状態であるのに、政府が軽水炉の安全性が確認されたかのようにして、急いでいま建設をしなければならぬという理由は、どこにあるのですか。
  440. 藤波恒雄

    藤波政府委員 軽水炉といえどもまだ改良の余地が相当あることは、われわれもそう思っております。それに関連いたしまして、そういう観点からまだ変化しつつある部面はあると思います。そういうことに基づきまして、もし安全問題でいろいろの幅が出てきたような場合におきましては、われわれは、現段階におきましてはその中の一番安全サイド、安全率を予定といたしましてやっていくという態度でやっておるわけであります。将来これが解明され、改善されていけば、その安全率がだんだん広まっていくという方向を期待しておるわけでございます。
  441. 松本善明

    松本(善)委員 そうしますと、安全性についても改良中のものだという答弁として受け取ります。受け取りますが、さらにお聞きしたいのは、アメリカではこの軽水炉の導入に関して七十項目の設計基準を出しております。これを日本の安全審査について採用してないんじゃないか、この点についてはどうでしょうか。
  442. 藤波恒雄

    藤波政府委員 原子力委員会が中間発表をいたしました七十項目の設計基準というものは、私もよく存じております。これらをながめますと、わが国の原子炉安全審査で行なっておりますのと比べまして、安全度に対します考え方は変わっておりません。むしろ、地震に対します耐震設計等の部分につきましては、日本のほうがさらにシビアーにやらなければいかぬといったような部面もあるわけでございます。決してわが国の安全審査がアメリカ等よりはゆるいということは考えておりません。
  443. 松本善明

    松本(善)委員 答弁では安全性でだいじょうぶだという趣旨のことを言っておりますけれども、実態は少しもそうでないと思います。  さらにお聞きしますが、アメリカでもこの民有化は日本よりもおそいんです。アメリカは一九六四年に原子力法を改定しておりますが、実施されるのは一九七三年のことであります。しかも、いつでも国有化できるようになっております。日本がどうしてアメリカよりも早く、安全性アメリカでも問題になっているものを今年七月一日から民有化に踏み切るという、何でそんなことをしなければいかぬのですか。そんなに早く——安全性が確認をされていれば別ですけれども、原子力局長でも、安全性についてはこれは改良中のものだという話なんです。そういうものをなぜ——そのほかいろいろ問題もあります。先ほど来の従属の問題もあります。ありますが、そういうものをなぜいますぐに急いでやらなければいかぬのか、その理由はどういうことなのか。
  444. 藤波恒雄

    藤波政府委員 われわれといたしましては、その原子炉が民有でございましょうとも、あるいは国有でございましょうとも、安全審査については同様に厳重なる規制をやっておるつもりでございます。その点は差異はないと考えております。
  445. 松本善明

    松本(善)委員 それでは別の質問をいたします。今後の日本におけるプルトニウムの累積生成量の見通しをちょっと話していただきたい。
  446. 藤波恒雄

    藤波政府委員 これはいろいろ炉の運転の程度によっても変わってまいりますけれども、大ざっぱに申しまして、昭和五十年までに約四、五トンのものができると考えております。
  447. 松本善明

    松本(善)委員 昭和何年までですか——五十年ですか。昭和六十年までには四十五トンくらいになるということがいわれておりますが、いかがでしょうか。
  448. 藤波恒雄

    藤波政府委員 大ざっぱに大体五十トン足らずできるものと見通しております。
  449. 松本善明

    松本(善)委員 そういたしますと、このプルトニウムが五十トンということになりますと、広島、長崎型原爆の五千発分くらいの潜在的核保有国に日本はなるということになると思いますが、外務大臣、このことをお認めになるでしょうか。
  450. 三木武夫

    三木国務大臣 認めません。それはなぜかといったら、核兵器を開発する意図を持ってないんですから、プルトニウムは五十トン未満あっても、これはやはり日本が原爆、核保有国というのではない。プルトニウム保有国であることは間違いない。
  451. 松本善明

    松本(善)委員 私のお聞きしましたのは、こういうふうにお聞きしたのです。潜在的核保有国になるのではないかと言ったのです。五千発の核兵器を持つ、核爆弾を持つというふうにお聞きしたのではないのです。五千発分の潜在的核保有国になるのではないかということをお聞きしたのです。
  452. 三木武夫

    三木国務大臣 それは松本君、五千発という計算がわれわれにもわからない。われわれはつくる意思はないんですから、何百発というふうに換算はしない。プルトニウムが五十トンできるだけである。
  453. 松本善明

    松本(善)委員 それは外務大臣が否定されても事実であります。事実は明白であります。  それからもう一つ、ちょっとお聞きしておきます。科学技術庁長官にお聞きしておきますが、わが国の原子力基本法は自主、民主、公開、もう当然のお話でありますが、これは防衛庁の原子力研究にも適用されますか。
  454. 鍋島直紹

    鍋島国務大臣 法律でございますから、日本国内いかなるところでも適用されます。
  455. 松本善明

    松本(善)委員 そうしますと、防衛機密というものは核研究の場合にはないというふうに伺ってよろしいでしょうか。
  456. 鍋島直紹

    鍋島国務大臣 そうだと考えます。
  457. 松本善明

    松本(善)委員 核拡散防止条約との関係がこれでも問題になっておるわけでありますが、いまこの核拡散防止条約との関係で世界の平和にとってやはり最も重要なことは、これは核兵器の使用禁止の問題であるというふうに思います。この問題について、先日の報道では、あるいは日本政府が附帯決議を提案するかのような報道もされておりました。政府は、核兵器の使用禁止の国際協定の必要性について、どういうふうに考え、どういう方針を持っておられるか、この点お聞きしたいと思います。
  458. 三木武夫

    三木国務大臣 核兵器の使用については、われわれは核兵器が使用されることのないことをこれで望んでいる。したがって、核でよその国に対して脅迫を加えたり侵略を加えたりするようなことをどういうふうにして防止するかということについて、決議案ともにらみ合わせて検討を加えているということであります。
  459. 松本善明

    松本(善)委員 先ほどの答弁をちょっと確かめておきたいのですが、きょうの国連局長の答弁では、この協定原子力潜水艦原子力空母の建設は禁止していないと言いましたが、外務大臣、あるいは先ほどの間違いかもしれませんが、アメリカから持ってくる濃縮ウランは、それに使えないという趣旨の答弁をされましたが、それは違うんじゃないかと思いますが、いかがでしょうか。
  460. 重光晶

    ○重光政府委員 前から問題になっております日米協定の一条Cの「原子兵器」というものの中には、いわゆる原子力潜水艦は入っていないという御説明をしたわけでございます。それで条約としては、このあとのほうで、十条でございますが、軍事目的にアメリカから入手した核燃料を使わないことを日本は約束しております。この協定に関してはその二点でございます。
  461. 松本善明

    松本(善)委員 そうすると、結局原子力潜水艦原子力空母の建設は禁止をされていない、そういうふうに受け取っていいのですね。
  462. 重光晶

    ○重光政府委員 この協定では禁止されておりません。
  463. 松本善明

    松本(善)委員 それから最後に、一つお聞きしたいのですが、これだけの重要な問題があります日本のこれからのエネルギー産業の将来の問題でありますとか、安全性の問題でありますとか、あるいは軍事利用の問題であるとか、時間の制約もありまして、すべての問題を出すことはできませんけれども、非常にたくさんの問題があるにもかかわらず、これをなぜ日本の学術会議に諮問をしなかったのか。当然学術会議に諮問をして、いろいろな問題点を出して、そうして検討するのが当然ではないかと思います。この点はなぜしなかったのか。
  464. 三木武夫

    三木国務大臣 科学技術庁としてもこれは非常に重視したのですけれども、学術会議にはこれは諮問をするというような手続をとらなかった。従来も、学術会議にこういう両国間の条約を諮問という形はとらないのです。これは実際問題として、条約を学術会議に先に諮問して、そこの団体の了承を得なければということになってくると、非常にやっかいだ。だから、これはやはり科学技術庁の責任において、そしてこの条約の利害得失、国益を踏まえて検討するよりほかには、私、実際問題としてないのじゃないかと思います。
  465. 松本善明

    松本(善)委員 これは義務づけられているわけではもちろんありません。しかし、学術会議は、学術会議法でも、「わが国の科学者の内外に対する代表機関として、科学の向上発達を図り、行政、産業及び国民生活に科学を反映浸透させることを目的」としておる。まさにこういう場合に私は諮問をすべきではないかと思います。諮問をしなかったということは、これはやはり自主、民主、公開という原子力平和利用の基本原則、これに反しておる、そういう内容であるから、こういうことになったのではないかと私は思います。そこで、濃縮ウランをえさにして、安保改定期を前にして三十年協定締結するということは、安保条約の長期固定化のなしくずし工作、外堀工作の重要な柱の一つになるという点も見のがすことのできないことだということを私は指摘をいたしまして、質問を終わりたいというふうに思います。
  466. 秋田大助

    秋田委員長 これにて両件に対する質疑は終了いたしました。     —————————————
  467. 秋田大助

    秋田委員長 これより討論に入ります。  討論の申し出がありますので、順次これを許します。石野久男君。
  468. 石野久男

    石野委員 原子力の非軍事的利用に関する協力のための日本政府アメリカ合衆国政府との間の協定並びに原子力平和的利用における協力のための日本国政府グレートブリテン及び北部アイルランド連合王国政府との間の協定に関する日本社会党の態度を表明したいと思います。  私どもは、この両協定に対して反対であります。その趣旨を申し述べます。  今日、わが国の原子力開発の重点的な課題は、何といっても高速増殖炉及び新型転換炉を早急に開発すること、及び核燃料サイクル、これを早期開発、確立することだ、こういうふうにわれわれは考えております。この開発は常に平和的目的に即しなくてはいけませんし、また、その体系は常に原子力基本法の精神に基づかなければならない、こう思います。そういう大勢から、私たちは、一日も早く原子力の熱エネルギーに関する成果があがり、そして安価なエネルギー供給が確立される、こういうふうに期待しているわけであります。しかし、社会党がこのような期待をかげながら日本の原子力の開発をする場合、常に原子力三原則に基づく平和目的及び安全性の確保、それから自主開発と国家管理のたてまえ、この四つのたてまえを通じてこの政策を打ち出し、また主張してきたことは、もう既成の事実であります。このたびの日米原子力協定及び日英原子力協定締結にあたって、私どもはこういうようなたてまえをとっておるにもかかわらず、これに反対しなければならない理由は、以下の理由に基づきます。  私どもは、いま世界の大勢からいうと、アメリカは濃縮ウランについては決定的な独占的地位を持っておりますし、そしてそういう立場から、アメリカはその体制を一そう強く世界的に支配の体制にしようとする、そういう努力をしております。私は、先般科学技術特別委員会原子力視察で世界の各十カ国を回りましたが、各国ともに原子力に対してはきわめて熱意を込めた開発の態勢を示しておりますが、同時にまた、先進国はその自己の開発したものをできるだけ商業的に各国に売り込もうという態勢も強いのであります。濃縮ウランの日本とアメリカとの売買協定を結ぶにあたっての協定の内容を見ますると、明らかにこの売り込みの姿勢がきわめて強く出ているということが言えるのでありまして、そういう態勢の中で、この協定がきわめて片務的であり、不平等である。しかも、私たちは、その内容がいままで原子力平和利用三原則に基づく国家管理の方式であったのを今度は民有化の方式に変えた、その民有化に変えたという路線の中で、日米協定政府間の保証では双務協定的な体制になっておりますけれども、しかし、民有化という路線の中で巧みに一方的な片務協定の内容が押しつけられてきておるし、また保障条項につきましても、きわめて屈辱的なものがここに織り込まれてきている、こういうように見ざるを得ないのであります。われわれはそういう立場からこれに反対します。  特に、先ほども申しましたように、原子力基本法による平和三原則のたてまえに立った核燃料に対する国家管理の方式が、内閣の閣議決定によって民有化の方向をとっていく。アメリカも民有化は一応の方針はきまっているけれども、事実的にはやはり国家管理と同じような体制で対外的には売買の契約の当事者となっておるわけでありますが、日本ではやはり民有化を主張すると同時に、もう多岐的になっている、多元的になっておりまして、その体制は、実にその片務協定に対する応対力にはならないという実情にあります。われわれはこの民有化をとったところの政府の方針には企く反対であります。それに基づくところのこの協定に対しても、もちろん反対にならざるを得ない。  それから、核燃料の確保のために軽水炉を通じて濃縮ウランを確保しようというその姿勢はよくわかりますけれども、この協定は三十年にわたるという長期でありますが、その長期三十年間にわたるところの原子力開発の体制というものは、われわれの予側し得られないものがあることは、すでに大臣がしばしば言っているとおりであります。われわれも、こういう三十年間にわたるところの核燃料の確保を、軽水炉——もちろんこれは十三基にわたってでありますが、この十三基の軽水炉に固着させて、そしてこれを確保する体制をこういうような協定に結ぶということは、日本の自主開発をきわめて阻害するという心配をしているわけであります。そのことがおそらく具体的に出てくることを懸念いたしております。  私たちは、原子力開発が特に世界の趨勢として急速に行なわれていくことからいいますならば、三十年という年限は非常に長期であります。だから、これはもしそれを確保するための必要があるならば、当然のこととして五年ないし十年間に期限を切ることのほうが、もっと国家的な立場からすればよろしいのじゃないかというように考えております。ことに軽水炉の問題については、私ども、新型転換炉及び高速増殖炉の開発にあたって、東電あたりから関西電力、各九電力及び日本原子力発電所等がすべてこの軽水炉に集中化しているということは、どうしてもやはり日本の自主開発をアメリカの軽水炉型に制約されるという懸念を持っております。その懸念を持っておるときに、なおかつ燃料の問題で三十年間にわたってこういうような定着化をさせるということは、ほんとうにこの自主開発の路線を阻害するであろうという心配をしておるわけです。そういうたてまえからも、これは反対せざるを得ないわけであります。  また、軽水炉の経済性そのものにつきましても、最近軽水炉の値段が非常に上がってきまして、電力の発電単価の問題におきましても、必ずしも単価を低減化することが可能であるかどうかということは疑問だという線が、経済的にも強く憂えられなければならないような情勢がございます。それだけではなく、軽水炉自身の安全性の問題についても、非常に危険なものがあります。これと同型でありますJPDR、日本原子力研究所にあるJPDRにおけるところの事故、たとえばヘアクラックなどにつきましても、これは非常に問題が多うございますし、それから世界各国でも、軽水炉を用いるところのそういう同次元の事故が多いものですから、そういう事故回数が非常に多いような問題に三十年間にわたるところの定着化をさせるということは、これは決して国益上からいってもよろしくないということをここで言わなければなりません。  それからなお、国際原子力機構の査察の問題でございますが、これはもう非常に一方的であります。この一方的な義務の受け入れをこの協約はわれわれに押しつけるわけでございますが、このことは、また同時に、核拡散防止条約の実施期間がもうすぐ来るであろうということが見込まれる中でこういうことがやられるということは、先ほど来われわれが特に主張いたしております核拡散防止条約の先取りの協定である、こう言わざるを得ないのであって、これはもういやおうなしに核拡散防止条約にわが国が入っていくということを前提とする協定だというふうに見ざるを得ないのでありまして、これは単に日本の原子力開発のための燃料獲得だということだけの意味ではない。もしほんとうにそういう核燃料の獲得ということだけを考えるならば、もっと長期を短期にすべきだし、また、やはりそういう双務協定的なものを契約の内容として持ち込むべきであったろうと思うのでありますが、それができていない。そういう点でもわれわれはこれに反対せざるを得ないのであります。  それからまた、協定の内容がきわめて片務的であります。核拡散防止条約とかあるいは査察の問題が非常に不平等であるだけでなくして、協約内容についても、きわめて片務的な、一方的な義務が押しつけられているというような点からも、われわれはこれに賛成することができないのでありまして、以上の理由から、われわれはこの両協定に対してはどうしても賛成ができない。そういう意味で反対をするわけです。
  469. 秋田大助

    秋田委員長 伊藤惣助丸君。
  470. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 私は、公明党を代表いたしまして、ただいま議題となっております日米、日英両原子力協定承認に対しまして、反対の意を表するものであります。  まず、反対理由の第一点は、免責条項であります。協定第五条並びに第八条のI項は、十年前に締結した現行協定とほぼ同じで、不平等かつ不合理な内容を繰り返したものであり、商業常識の上から考えても容認できないところであります。  その第二点は、査察条項についてであります。ことに日米協定における査察条項は、あまりにもきびし過ぎます。これでは不平等条約というよりは、むしろ屈辱条約というべきものであります。第十一条の規定によりますと、日本側は原子炉の自主的な運営もできなければ、原子力産業の独自の開発などもできないことになりかねません。また、第十条において、わが国は原子兵器その他の研究はしないことを誓約しております。それにもかかわらず、これについてアメリカの一方的廃棄の権利をもって威嚇しておるのであります。アメリカのわが国に対する不信は、ここにおいても明らかであります。わが国としては、まことに不快きわまりない規定というべきものであります。日本は原子力基本法のたてまえからも、憲法の解釈上からも、原子力を軍事的に利用されず、また利用しないことは明白であります。にもかかわらず、きびしい査察を要求するのは、日本を信頼していない証拠であり、かつまた、査察権を確保することによって、日本の原子力産業をアメリカのひもつきとし、従属させる意図が存するのではないかと考えざるを得ません。さらには、わが国の原子力の開発を阻害するばかりでなく、わが国の原子力の分野を従属的な立場に縛りつけて、アメリカ原子力産業の長期かつ安定した市場として確保しておこうという意図が、露骨にうかがわれるのであります。国民感情からしても、このような不合理な協定に賛成することはできません。  しかも、今回の質疑を通じて残念に思ったことば、政府が真にわが国の原子力開発の将来を考慮して対米交渉を行なったという熱意が感じられなかったことであります。  また、報道によりますと、国連で審議されておる核防条約に関し、もし核防条約に署名しない国があれば、米ソの核大国は平和的利用のための核燃料を供給しないとおどしをかけているということであります。このような大国意識とその恣意を許しておいて、真の意味での原子力平和利用を期待することはできないのであります。  わが党は、終始一貫原子力平和利用の重要性を強調し、その発展を強く主張しております。それゆえに、この協定は、わが国の自主的な原子力発展を期し得ないものと判断し、反対するものであります。  以上を申し述べまして、反対討論を終わります。
  471. 秋田大助

    秋田委員長 松本善明君。
  472. 松本善明

    松本(善)委員 私は、日本共産党を代表して、日米、日英両原子力協定に反対の意見を述べます。  まず、日米原子力協定は、第一に、今後三十年間にわたってアメリカの低濃縮ウランに依存することを取りきめ、日本の原子力開発の対米従属を一段と強めようとするものであります。すなわち、この協定は、エネルギー資源、発電炉技術、原子力発電所建設費のすべてをアメリカに依存するわが国の原子力発電計画をさらに推進するものであり、日本の自主技術の開発をそこなうばかりでなく、電力を軸にした日本の重要基幹産業に対するアメリカの支配権を強化する内容を持った従属的な協定であります。この協定で日本への一方的な査察のみを許していることは、この従属性の端的なあらわれであり、第三国への加工輸出の道が開かれたことは、日本がアメリカの下請的立場で東南アジアに進出しようとするものにほかなりません。  第二に、日本が今後建設を予定している軽水型動力炉は、アメリカ原子力委員会の報告からも明らかなように、アメリカにおいてさえ実用価値が認定されたものではありません。にもかかわらず、この協定で、日本政府は、原子力第三者損害についてアメリカ政府の一方的免責を取りきめ、軽水炉を進んで導入しようとしています。しかも日本政府は、これに伴う安全性対策をとろうとしていません。その上、民有化によって、すでに産業公害でも明らかなように、企業の採算性ということで、原子力公害の危険は一そう増大しております。  第三は、日本における原子力の軍事利用の危険性についてであります。すでに本委員会において、この協定原子力空母、原子力潜水艦の建造を禁止していないことは明らかにされました。そればかりでなく、今後大型発電炉の運転で生成されるプルトニウムによって、日本は潜在的核保有国となるのであります。しかも、民有化により、民間会社がプルトニウムを自由にたくわえ、加工できるようになることは、企業秘密の口実のもとに核兵器研究の危険に大きく道を開くものであります。佐藤内閣が、昨年の日米会談以後、アメリカの核抑止力への依存を強調し、軍国主義復活を急速に押し進めようとしている現在、特にこの危険を重視しないわけにはいきません。  わが党は、このように長い将来にわたって日本の対米従属を深め、安全性の不安と軍事利用の危険を一そう強める日米原子力協定に反対するとともに、日本の原子力開発は、日本の良心的科学者が一致して要求しているように、安全確保と自主、民主、公開の原子力平和利用三原則をきびしく守ることを前提に、基礎研究を着実に発展させながら、総合的なエネルギー政策の上に立った研究を推進することを主張するものであります。  次に、日英原子力協定は、地元民が反対しているように、安全性に問題があり、技術の従属性を強める日本原子力発電株式会社東海発電炉の燃料補給確保を目的としたものであります。また、日米原子力協定による対米従属の原子力開発の大ワクの中で運用されるため、全体としてアメリカヘの従属性を強める要因となるものであり、わが党はこの協定にも反対であることを表明して、討論を終わります。
  473. 秋田大助

    秋田委員長 これにて討論は終局いたしました。  これより採決いたします。  原子力の非軍事的利用に関する協力のための日本国政府アメリカ合衆国政府との間の協定締結について承認を求めるの件、及び原子力平和的利用における協力のための日本国政府グレートブリテン及び北部アイルランド連合王国政府との間の協定締結について承認を求めるの件、以上両件を承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  474. 秋田大助

    秋田委員長 起立多数。よって、両件は承認すべきものと決しました。  おはかりいたします。  ただいま議決いたしました両件に対する委員報告書の作成等につきましては、委員長に御一任を願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  475. 秋田大助

    秋田委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————   〔報告書に附録に掲載〕     —————————————
  476. 秋田大助

    秋田委員長 次回は、十日午前十時より理事会、理事会散会後委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。    午後九時十七分散会