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1968-05-06 第58回国会 衆議院 外務委員会 第17号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十三年五月六日(月曜日)     午前十時二十一分開議  出席委員    委員長 秋田 大助君    理事 鯨岡 兵輔君 理事 小泉 純也君    理事 田中 榮一君 理事 野田 武夫君    理事 福家 俊一君 理事 石野 久男君    理事 帆足  計君 理事 曽祢  益君       青木 正久君    大平 正芳君       齋藤 憲三君    世耕 政隆君      橋本登美三郎君    福田 篤泰君       毛利 松平君    山口 敏夫君       石川 次夫君    黒田 寿男君       田中 武夫君    田原 春次君       三木 喜夫君    松本 七郎君       山内  広君    伊藤惣助丸君       松本 善明君  委員外出席者         参  考  人         (日本原子力発         電労働組合本部         執行委員長)  青木 賢一君         参  考  人         (関西電力株式         会社社長)  加藤 博見君         参  考  人         (東京工業大学         教授)     垣花 秀武君         参  考  人         (東京大学教         授)      三島 良績君         専  門  員 吉田 賢吉君     ————————————— 五月六日  委員山田久就君木原津與志君及び高田富之君  辞任につき、その補欠として齋藤憲三君、三木  喜夫君及び石川次夫君が議長の指名で委員に選  任された。     ————————————— 四月三十日  在日朝鮮人帰国に関する請願外五件(中村重  光君紹介)(第四九六七号) 五月二日  在日朝鮮人帰国に関する請願阿部助哉君紹  介)(第五〇八四号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  原子力の非軍事的利用に関する協力のための日  本国政府アメリカ合衆国政府との間の協定の  締結について承認を求めるの件(条約第一二  号)  原子力平和的利用における協力のための日本  国政府グレートブリテン及び北部アイルラ  ンド連合王国政府との間の協定締結について  承認を求めるの件(条約第一三号)      ————◇—————
  2. 秋田大助

    秋田委員長 これより会議を開きます。  原子力の非軍事的利用に関する協力のための日本国政府アメリカ合衆国政府との間の協定締結について承認を求めるの件、及び原子力平和的利用における協力のための日本国政府グレートブリテン及び北部アイルランド連合王国政府との間の協定締結について承認を求めるの件、以上両件を一括して議題とし、審査を進めます。  本日は、両件について参考人から御意見を聴取することといたします。  本日御出席参考人青木賢一君、加藤博見君、垣花秀武君、三島良績君の四名の方々でございます。  この際、参考人各位に一言ごあいさつ申し上げます。  本日は、御多用中にもかかわらず御出席をいただきまして、まことにありがとうございました。さきに御連絡申し上げましたとおり、両件につきまして忌憚のない御意見の御開陳をお願い申し上げる次第でございます。  なお、議事の進め方につきましては、青木賢一君、加藤博見君、垣花秀武君、三島良績君の順で、お一人十分ないし十五分程度において順次御意見の御開陳を願い、その後委員から質疑が行なわれることになっておりますので、お答えを願いたいと存じます。  それでは、まず青木参考人からお願いいたします。
  3. 青木賢一

    青木参考人 ただいま御紹介いただきました青木でございます。  私ども組合全国電力労働組合連合会略称電労連と申しておりますけれども、この電労連に加盟しております関係上、本日は原電労組委員長という立場でお招きいただいておりますが、電労連をも代表して意見を述べさしていただきたいと思っておりますので、あらかじめ御了承いただきたいと思います。  ただいま検討されております日米日英協定締結に関しましては、私ども、今日わが国において原子力発電所がすでに運転に入っており、続く建設計画も着々と実現され、また具体的日程にのぼっておるという現況にかんがみまして、この両協定早期締結すべきであるというぐあいに考えております。しかしながら、私ども協定締結立場をとりつつも、すべてについて満足しているというわけではございません。たとえば一九七一年以降の核燃料確保という問題についてどのように考えておられるのか、あるいはまた協定自身についても一点申し上げたいのでありますが、日米協定によって供給ワクがきめられます。このワク内におけるわが国の自由な、弾力的な運用がはかられるのかどうか、つまり、将来わが国原子力発電建設を行なう場合に、その炉型の変更とか建設時期の変更とかいうことに関して自由にとり行なうことができるのかどうか、ここいらが、私どもとしては自由に行なわれなければならない、かように考えておるわけでありますけれど、この協定本文を吟味しました結果、どうもそういうぐあいに読みとれるところがない。したがって、将来わが国政府あるいは電気事業者が、たとえばAECから契約を求められる等のことによって、かなりこの協定が負担になるようなことになりはしないだろうかどうだろうか、こういったような懸念を持ったわけであります。したがって、この協定締結するに際しては、いま申し上げた点については、ぜひ明らかにしておいていただきたい、かように考えております。  そこで、私どもといたしましては、この協定には、先ほど申しましたように賛成立場でございますが、核燃料確保とか、そういった、むしろこの際もっと大きなわが国原子力政策全般の問題について考えていただかなければならない問題が二、三あるのではないか、かように考えておりますので、この際二、三申し上げたいと思います。  まず第一番目は、原子力開発を進めるという基本的な問題についてのわが国政府あり方というか、政治あり方というか、そういうことについてであります。これは、原子力平和利用軍事利用という問題について、わが国政治のかまえというか、姿勢を明確に打ち出していただく必要があるのではないか、こういうふうに考える点でございます。わが国憲法においても、原子力基本法においても、軍事力を持つこと、また核兵器を持つことは、これはもう当然禁じられておるわけでありますし、今日までの政治あり方とか何か見ましても、そういうような点は全然ございませんでした。しかし、今後ともそういうようなことがはたして十分に保たれるのかどうかという点については、疑念をはさまざるを得ないのです。これはたとえば、一つ原子炉計画をするとか、あるいは再処理工場計画するとか、そういうようなことに遭遇した場合に、必ずそれが軍事利用と結びつくのではないかといったような疑問に発生した議論が必ずといっていいぐらい起こるわけです。この起こってくるゆえんというのは、今日のやはり政治姿勢というか政治の動向からして、わが国憲法ではこうなっている、原子力基本法ではこうなっているとはいっても、どうもそこに危惧される点があるからだというふうに考えられるし、またそういうような危惧があればこそ、そういう論議がされるのだろう、こういうぐあいにども判断しておるわけです。  そこで、お考えいただきたいことは、原子力軍事利用する技術平和利用する技術ということですが、これは根は同一のものであって、そこに差がない。つまり、平和利用なら平和利用専門技術でそれに取り組んでいくということはできないということなんです。このことは、宇宙開発についても同様に言えると思いますし、今日ビッグサイエンスといわれておる問題については、多分にこういったような面を持っておると思うのですけれども、それを軍事利用するか平和利用するかということは、一にかかって科学や技術の問題ではない、政治姿勢の問題である、政治のかまえである、そういうふうにさせない政治的な力を発揮してもらうことである、こういうぐあいに考えます。私ども原子力産業に従事しておるわけですし、また従事していようと従事していまいと、原子力が人類にとって非常に大きな利益をもたらすということは、これは何人といえども否定することのできない事実でございますから、この平和利用は促進しなければならないというふうに考えますけれど、こういったような面で危惧感があるとすれば、わが国の正しい発展というものは促されないのだ。したがって、今後のわが国政治あり方としては、ぜひともこの軍事利用平和利用という問題に関して、絶対に軍事利用はしない、させない、こういうような政治的力を発揮するのだということを、与党あるいは野党という立場を越えて、やはり国全体の利益という観点でここのところをひとつ御検討いただいて、そして国民にも信頼され、世界にも信頼されるようなかまえを示していただきたい。これなくして正しい開発はできないであろうというぐあいに私は考えるわけです。  なお、付言すれば、もしそういうような疑問があるとすれば、これはもう平和利用原子力開発をあきらめてしまう以外にないということです。つまり、必ずそこは根は同じになっているわけですから、そこのところをひとつ政治の力で——われわれの力ではとてもできないわけですから、政治の力で規制をきちっとしていただく、これが、まずわが国原子力開発における基本的な重要な問題であるというふうに私は考えます。  次に、協定に関連して二点申し上げたいのです。  その第一点は、この協定によって濃縮ウラン供給ということが保証される。これは非常にけっこうなことだと思うのですけれども、今日の日米関係というものをベースにするこの濃縮ウラン供給というきずなですか、こういうようなことで発展していくあり方というのは、日米関係の今日の状態がいつまでも続くということが前提になるわけですから、非常に危険があるのじゃないか、こういうふうに考えます。これは好むと好まざるとにかかわらず、歴史のいままでの示すところであります。したがって、この日米関係は、原子力開発においては極力薄めていくような方向を考えなければならない。そういうような点で、昨年政府事業団をつくりまして新型転換炉開発するというような計画を出されたこと、これはわれわれは非常に高く評価しておるわけです。私ども電労連としては、この開発方法そのものについては、実は政府と違った考え方を持っておりますけれども、それについてここで述べるのは場違いであろうかと思いますので、省略させていただきます。けれども、ともかく新型転換炉をやろうという国のこの政策は非常に正しかったし、これはぜひとも実現するように政治的な力でもってしっかりとバックアップしてやってもらいたい、こういうぐあいに思います。同時に、アメリカとの関係を薄めていくという方向ですが、新型転換炉だけでは不十分である、こういうぐあいにどもは考えるのです。現在、在来炉といわれているものの中には、軽水炉ももちろんあるわけですが、それと二分する力とも言っていいほどのものにガス系の炉があるわけです。これは経済的にちょっと問題があるというふうにわが国ではとらえられておりますけれども、ドイツとかフランスとかの例を見てみますと、このガス系炉に対する追求の意欲というのはきわめて高いわけです。フランスにおいても、国として、ガス系にするか水系にするかという態度を今日まだきめかねているというようなことが伝えられておりますが、両国とも、いずれも軽水炉経済性は高く評価しつつも、その燃料供給に厚い壁があるということで、このガス系に対する評価をしておるわけです。わが国においても、新型転換炉はこれからの炉でございますけれども、いますでに在来炉という範疇に入っておるガス系の炉についてもぜひ考慮していただきたい。これはできることならば、わが国原子力政策の大きな一つの柱としてそれを取り上げていただきたい、こういうぐあいに考えております。  第二点は、核燃料確保という問題です。私ども、きわめて暴論かもしれませんし、誤解を招くかもしれませんけれども、こんなような感じを持っております。発電をする機械は、いざとなればどうにでもなるだろう、しかし、ほんとうに将来日本が困るかもしれないと思われるものは、天然ウラン確保するということだということです。今日、資源論的立場でこれが多いとか少ないとか、量をいまとっておかなければならないとかなんとかいうような話をしますと、まるで気違い呼ばわりされますけれども、しかし、わが国固有資源が少ないという事実と世界現状というものを見た場合に、私は、この点については相当きびしく考えなければならないというぐあいに考えております。政府は、核燃料確保ということについては、それなりに考えてはおられるでしょうけれども、どうも手ぬるい。昨年来の話をいろいろ聞いておりますと、もう民有ベースになったのだから、まるでわれわれのほうはあまり責任がないみたいな、こういうような感じを受けないわけでもないのですが、実はそうじゃございません。天然ウラン確保するということは、ある意味においては  これは先ほど言いましたように、誤解ないように聞いていただきたいのですが、自主開発するとかなんとかということで金をかけるくらいなら、もっと外交政策とか通商政策とかという面でそういうお金を使って、世界天然ウランをどっさりと今日確保していくようなことを考えるほうがりこうじゃないか、そういうようにするほうが将来の安定のために役に立つのだとわれわれは信じて疑わないわけでして、ひとつ十分に御吟味いただきたいと思います。  最後に、この原子力協定締結に際して、これはお願いということではありませんけれども、今後の外交姿勢あり方とかあるいは政治のかまえ方ということについて、ぜひ諸先生の心の中にとどめておいていただきたいということについて申し上げたい。  その一つは、御承知のように、核防条約というのが、いま世界で論議されておるわけです。この間、西独にアメリカが、プルトニウム供給ということについて、核防条約調印を条件に持ち出したとかいうことが新聞で報道されておりました。それからまた、国連総会の第一委員会におきまして、米国の代表が、核防条約調印をしなければ保有国は非保有国に対して核燃料を提供しないことがあるかもしれない、こういうようなことを言ったわけです。こういうような発言は、私は文字どおり政治的な圧力であるというぐあいに考えます。今回論議されておりますこの協定は、民有ベースといいますか、民間取引前提としている。そういうような点で、従来の協定より非常な進歩である。したがって、この民有ベース取引というものによって産業原子力開発も一そう進展するだろうと期待されるわけですけれども、こういう民有ベースというか民間ベース取引が、核防条約等政治的な力によって左右されないようにしていかなければならない。今日、具体的にわが国米国の間でそれが問題になっているとは思いません。しかし、そういったようなかまえを今後の外交を進めていく上においてきちっと認識をされて、かまえていく必要があるというぐあいに考えます。  第二点は、御承知のように、この両協定によって、わが国相手国国際原子力機関による査察を認めているわけです。この査察を認めている事実と、核防条約で問題になっている査察という問題についてですが、やはりわが国外交姿勢としては、ここで米ソユーラトム諸国を含め、平等な査察が行なわれるような権利をしっかりと持っていただく必要があるのじゃないかというぐあいに思うわけです。ところが、アメリカとの協定でもって、一方的にわが方が裸になってしまったということです。したがって、今後アメリカに対して、おまえのほうも裸になれということは言えないのかというと、そうではないという意味なんです。アメリカは、この核防条約の問題をめぐって、自分のほうは裸になってもいいというようなことを言っておりますけれども、要するに、ぴちっと平等な査察を行なえ、しかも、産業発展を阻害するような査察をしないということについて、強力に発言し、主張する権利だけはきちっと持っておくのだということを先生方に十分に御認識いただいて、わが国外交政策を進めていただきたい、こういうぐあいに思う次第であります。  以上で協定に関する私の意見を終わりたいわけでありますけれども、この機会でありますので、ほんとうはもっと申し上げたいのですが、最後に、ちょっと時間をちょうだいいたすことについてお許しいただきたいのであります。  私ども原子力プロパー労働組合であります。そういう関係で、原研労組とか動燃労組とか、そういう原子力プロパー組合との交流を行なっております。最近、ここで問題になる点に共通点がございます。それはどういうことかと申しますと、われわれが今日までつちかってきた技術あるいは経験、これがどのように今後わが国で生かされていくのか、つまり、われわれは将来どういうふうになっていくのか、こういう点について不安感を持っておるということです。原研においても、動燃関係からだろうと思いますけれども動力炉計画プロジェクトが削減されたとか、あるいは必要な予算がとれない、人員は確保できない、そればかりでなく、有能な人たちが流出していくという問題意識を持って悩んでおります。それから動燃においても、これは昔の原燃関係人形峠鉱山を中心とする原燃関係ですが、わが国固有資源確保ということについて政府はどういうふうに考えるのか、われわれの将来は一体どうなるのか、何か聞くところによると人形峠はなくなってしまうというような話もあるらしいじゃないか、こういうような点をめぐっての不安感というのは非常に強くある。それからわが原電においても、敦賀が開発されたあとは一体どうなるのか、単なる運転員となってとどまるのか、われわれが今日までつちかった力は適用されることはないのか、こういうようなことについての不安感を持っておるわけです。口幅ったいような言い方ですけれども、ともかく、わが国を代表する原子力プロパー労働組合員が共通して将来に対して不安を持っているということは、非常に重要な問題であろうかと私は考えます。これは外交政策も非常に重要でありますけれども、今日、こういうような状態に置かれているということについては、先生方にはぜひ御認識いただいて、この原子力政策あり方ということについても漸次御検討いただきたい、かように思っておりますので、よろしくお願い申し上げたいと思います。  以上をもって陳述を終わります。
  4. 秋田大助

    秋田委員長 次に加藤参考人にお願いいたします。
  5. 加藤博見

    加藤参考人 私は、関西電力の副社長加藤でございます。私は、現在電気事業連合会の中で構成しております原子力開発対策会議委員長をもつとめておりますので、本日は電気事業者としての立場から発言をさせていただきたいと存じます。  まず、今般国会で御審議をお願いいたしております日米日英原子力協定につきましては、私どもは全面的に賛成でございまして、かつ、これは必要不可欠のものと考えておりまして、その早期の御承認方をよろしくお願い申し上げる次第でございます。  次に、この両協定が必要欠くべからざるものと考えております理由を申し述べさせていただきます。  原子力平和利用の中核をなします原子力発電開発は、わが国エネルギー政策上絶対的に必要なものでありますことは御高承のとおりでございます。私ども電気事業者といたしましても、電力長期に安定して、かつ低廉に供給する責任上、従来開発してまいりました水力、火力に加えまして、原子力発電を強力に推進する計画を立てておるのでございます。この原子力発電開発量は、昭和五十年度までに約六百万キロワットが予定されており、さらに昭和六十年度までには政府計画にもございますとおり三千万ないし四千万キロワットが想定されております。このように、原子力発電は将来電力供給の大きな支柱となるべきものでありまして、電力各社はそれぞれの立場でその開発に真剣に取り組んでおりますが、現在すでに日本原子力発電会社東海発電所運転に入っておりますほか、同社の敦賀発電所三十二万二千キロワット、東京電力福島発電所一号機四十万キロワット、関西電力美浜発電所の一号機三十四万キロワットの建設が鋭意進められておる状態でございます。また電気事業者は、原子力発電所で必要とする核燃料につきましても、カナダの鉱山会社より十年間にわたり合計で一万五千五百ショートトンの購入契約を結ぶほか、米国鉱山会社との共同探鉱計画にも着手するなど、長期的な見通しの上に立って着実にその資源確保に当たっているのでございます。また、電力各社は、今後の大規模な開発にあたりましては互いにきわめて緊密な連携を保ち、さらに広域運営の妙をも発揮しつつこれを推進する所存でありまして、これにより合理的かつ経済的な開発が実現するものと信じておるのでございます。  ところで、世界各国原子力開発状況を見ますと、昨年末現在で、運転建設計画中の発電所の出力は合計で約八千万キロワットにも達しておりまして、いまや原子力発電はその実用化の時代に入ったと考えるものでございます。しかしながら、わが国は不幸にして原子力発電技術自主的開発にあたって先進外国に著しく立ちおくれておりますために、現在これら諸外国に伍して原子力による発電を行ない、これにより国民経済の向上をはかりますためには、これら先進国よりの技術情報、機器、燃料役務等供給による協力を受けざるを得ないと判断されるのでございます。さらに、今後の動力炉技術自主開発につきましては、動力炉核燃料開発事業団において鋭意その推進がはかられておりますが、これを一そう効率的なものといたしますためには、これまた先進諸国との相互協力を必要とするのでございます。  米英両国原子力発電開発の分野で非常に進んでおりまして、両国との協力協定は、以上の趣旨からぜひ必要なものであると考え、現状に即して改定されました今回の協定国会における御承認を切望するものでございます。  なお、日米協定では、今回新たに濃縮ウラン供給ワクの増量、賃濃縮の実施などが規定されておりますが、これは私ども電気事業者としてもきわめて望ましいことであると考えております。  この点を若干補足させていただきますならば、増量されます濃縮ウラン供給ワクは百六十一トンでありますが、現在電気事業者建設中ないしは昭和四十六年度までに着工を予定しております原子力発電所で必要とします濃縮ウラン供給が、今後三十年間という協定有効期間中十分に確保されるということを意味するものでありまして、電気事業者としましては、電力長期安定供給責任上、大いに好ましいことと考えておる次第であります。  次に、賃濃縮は、われわれが別途入手します原材料の天然ウラン米国で濃縮した上、これを日本国内で使用することを可能にするものでありまして、これにより核燃料入手上の自由度が一段と拡大されるものとして喜ばしいことと考えております。  以上のほかに、新たな内容として、三百六十五キログラムのプルトニウム供給が定められております。このプルトニウム研究用、特に動力炉核燃料開発事業団高速炉開発に必要とされるものでありますが、国内での今後数年間のプルトニウム生産量はわずかでありまして、その必要量を充足するのに十分ではありませんため、動力炉自主開発推進をはかるたてまえから、とりあえず当初の必要量供給余力のある米国より入手し、これによって自主開発を一そう早く推進されることが希望されるのでございます。  一方、日英協定につきましては、従来と大きく変わった点はございませんが、新技術に即応して特殊核物質、器材、関連役務等供給が一そう明確になった点は好ましいことと考えております。  以上、協定の改定が日本における原子力発電開発上不可欠で、また望ましいものであることを申し述べましたが、本両協定は、ぜひ本国会の会期中に御承認をいただきたく、この点について若干つけ加えさしていただきます。  まず、日米協定関係につきましては、現在国内建設中の敦賀、福島一号、美浜一号の三発電設備が当初必要とします濃縮ウランは、いずれも米国での賃濃縮によって入手する計画でありますが、これらの発電所建設の工程上、早いものはこの濃縮を来年早々には行なう必要があります。この賃濃縮のための米国政府との契約は十分な時間的余裕を持って行なわねばならず、一方、この原材料の天然ウランの入手は、早いものはこの夏を予定しております。しかしながら、この諸手続は、協定の発効によって初めて実施が可能となるものでありますので、私ども電気事業者の悲願でもありますとおり、これら原子力発電所が工程にのっとって完成いたしますよう、協定の御承認はぜひ本会期中にお願い申し上げたいと存ずるものでございます。  なお、動力炉核燃料開発事業団で進めております高速炉臨界実験装置には、さしあたって約百キログラムのプルトニウムが必要とされ、すでに入手のための予備交渉が始められておりますが、高速炉の早期開発のたてまえから、今明月中にでも、できれば契約調印をしたいぐらいだと聞いております。これも日米協定の発効待ちの形でありますので、この点よりも早期承認を賜わりたいと存ずる次第でございます。  次に、日英協定関係につきましては、東海発電所の取りかえ燃料の入手がこの協定に基づいて行なわれておりますが、その円滑な入手をはかりますために、これまた早目の御承認をお願い申し上げる次第でございます。  以上、何とぞ原子力発電開発推進に対する私どもの願いをおくみ取りいただきまして、日米日英原子力協定早期承認方を重ねてお願い申し上げまして、私の陳述を終わらしていただきます。ありがとうございました。
  6. 秋田大助

    秋田委員長 次に垣花参考人にお願いいたします。
  7. 垣花秀武

    垣花参考人 私、東京工業大学の垣花でございます。私は、原子力の専門の一斑の研究をいたします学者といたしまして、また原子力が平和に利用されて、それが基礎になって日本の経済が豊かになるということを強く望む者といたしまして、意見を述べさしていただきたいと思います。  結論を先に申し上げますと、本協定は、現時点においてはなるべく早く締結するのがよかろう、あるいはもう少し正確に申しますと、日本原子力発展技術的現段階においては、この提携を結ぶことはやむを得なかろう、そういうことが私の結論でございます。その結論に至りますために、私は、問題を二つに分けてお話しいたしたいと思います。一つは、この条約自身の問題でございます。それからもう一つは、条約を取り巻きます日本原子力開発現状、この二つの問題について意見を述べさしていただきたいと思います。  まず、条約自体の問題でありますけれども、これはアメリカの側から申しますと、まことに当然の措置でございます。なぜかと申しますれば、アメリカは——アメリカないしはイギリスはですけれどもアメリカは、日本に非常に大きな商品である原子炉を輸出するわけであります。その利潤はたいへん大きなものであります。おそらく二十世紀最後の最大のビッグビジネスだと思います。そういうビジネスの商品にチャージいたします核燃料物質である濃縮ウラン日本にも供給するということは、これはアメリカにとって痛くもかゆくもない当然の措置でございます。その当然の措置を日本が受けざるを得ないということ、それを喜ばざるを得ないということが、またわれわれの技術的な弱さなわけであります。  ひるがえりまして、それでは日本にとってこれがどういうことになるかと申しますと、確かに、これから動く日本の原子炉は無事に燃えるであろう、そしてエネルギーが供給されるであろう、われわれ国民生活の中に占める原子力の豊かな貢献というものはどんどん広がっていくであろう、これは確かでございます。同時に、先ほどからときどき話題になっておりますけれども、入ってまいりました核燃料査察するという形がこれにも出てくるわけです。ちょうど、ただいま問題になっております核拡散防止条約というものの二国間の関係が、このまま具体化していく形が出てくる。これは、現在でも産業的に弱い、技術的に弱い日本原子力の今後の技術的な発展にとって、相当な脅威を与える可能性がある、そういうこちらの問題があるわけであります。さらに、そういう意味で差し引きバランスをとりますと、必ずしも日本にとって非常によい条約ではないけれども、われわれの技術発展段階においてやむを得ない、そういう意味で私ども賛成せざるを得ない、そういうことになるわけであります。  さらに、少しこまかい問題を申し上げますと、この協定において、量の問題と価格の問題、そのチャージされます、燃えます核燃料、主体として濃縮ウランでございますが、それの量の問題と価格の問題がほぼ解決したがごとく見えております。それは確かでございまして、今後日本建設される、アメリカから輸入する原子炉に必要な濃縮ウランの量は確保されたかのごとく見えますけれども、ここに一つ問題がございまして、その量というものがどういう時期に、どういうふうに来るかという問題が非常に大きな問題であります。その問題はアメリカ側にもございますけれども日本側の需要の波と申しますか、いつ入れるか、そういうところに非常に問題点がございまして、それが直ちにまた価格の問題に関係する。この協定によりますと、価格はアメリカ国内価格にスライドしてきめるというふうになっております。これは非常に有利のように見えますけれども、もちろん、これをトランスポートする、運ぶ価格というものがつきましても、御存じのとおり、濃縮ウランは非常に危険なものでございますから、太平洋を越すということはたいへん価格が上がることでございます。なおかつ、ある程度価格的には保障されているけれども、しかしながら、日本の需要とアメリカのあれがマッチしないような場合、あるいは日本がキャンセルしたり、あるいは急いでそれをほしいとか、そういうことが起こりますと、そのたびに非常に価格的な不利が起こる。そういう問題は、この条約が施行されました後にも、日本国内で大いにいろいろ考えなければならない。たとえば、先ほどから早期締結を望んでおられます。これも一つのあらわれでございまして、おくれますとそれだけ不利になる、あるいは早まりますとそれだけ有利になる、いろいろそういう問題点が存在すると思います。  それからもう一つ、これも同じく価格の問題にかかわるわけでございますけれども、一応保障されております。しかし、先ほどから申しますとおり、太平洋をトランスポートするということは、非常にこちら側のハンディキャップであり、しかも、こちら側が急に必要であったりいろいろな問題をもとに、価格の面で不利が起こる。そういうことを考慮いたしますと、どうしても濃縮ウラン供給源を多元化すればいい。この際に日英の間のあれが結ばれましたことは、一つのキーポイントになっておりまして、同時に、結ばれるということは非常によろしいわけでございますけれどもアメリカだけにたよらずに、何とか多元化の道をたどらなければならない、そういうふうに思うわけでございます。  次に、少し広げまして、この条約を結ばざるを得ないというハンディキャップを少し考えてみますと、日本原子力全体の問題でございますけれども、現在、日本原子力は、アメリカの次ぐらいの勢いで原子力発電建設されるわけでございますが、非常な相違がございまして、アメリカの場合は、そこで燃やす濃縮ウランが輸出のアイテムであるのに対して、日本の場合はそれは全然考慮していない、そういう相違があるわけでございます。このハンディキャップというのは非常に重大な問題でございまして、どうにかして解決せねばならない。現在のところ、アメリカからの一方的な行為と申しますか、もちろん商業ベースにおける行為でございますけれども、本条約によりまして、ともかく燃えるようにはなっているわけでございます。しかし、何としても大きな原子力発電をやるからには、日本においても核燃料の自給体制、少なくとも部分的には自給するような体制を整えない限り、正常な原子力発展は起こり得ない、そういうふうに思うわけでございます。現在、事業団とかその他で非常に長期的にりっぱな計画が立てられまして、日本産の原子炉ができ上がるかのごとく見えております。でき上がることをわれわれ希望する次第でございますけれども、そういうりっぱな原子炉が日本でできたとした場合に、そこに入れる濃縮ウラン日本が持たない限り、それは国際的商品にはなり得ない。もし日本の原子炉が非常に優秀なものであって、これをドイツの市場に売るとかあるいはインドネシアに売ろうとする場合に、それにコンピートするものとしてアメリカなりイギリスの原子炉が出てくる。そういたしました場合に、われわれがそれにチャージする、入れる燃料を持たないならば、これは少しも国際商品にならない。しかも、その原子炉製造産業というものは、世界的に見てたいへん大きな産業であるということを御考慮願いたいという次第であります。  そういう意味で、本条約日本にとって、現時点ではたいへん必要とは思いますけれども、本条約によって日本原子力というものは決して十全に基礎が与えられたものではなくて、依然として脆弱な基礎の上に立っておるわけでございますので、速急に核燃料体制というものを日本で打ち立てる必要がある。そして核燃料体制ができ上がって、初めて日本原子力発電というものが健全なものになり、日本のエネルギーというものが非常に安定、安価なものになる。そして、われわれの経済発展が二十一世紀に向かって健全に広がっていく、そういうふうに考える次第であります。  以上でございます。
  8. 秋田大助

    秋田委員長 最後に、三島参考人にお願いいたします。
  9. 三島良績

    三島参考人 私は東京大学の三島でございます。私は、ただいま東京大学の工学部の原子力工学科の主任をしておりまして、核燃料工学という講座を持っておりますので、主として核燃料の専門という立場から、この条約に関しましての意見を述べさしていただきたいと考えます。  すでに御承知のように、原子力平和利用というのをやらないと——次の時代のエネルギー源としてぜひ必要であるということは言うまでもないことでございますけれども、それを進めますために、各国それぞれ、いろいろな原子力開発計画を持っております。日本の場合も、原子力発電長期計画もございまして、その中は主として二つの段階に分かれると思うのでありますけれども、まず第一段は、既成型の炉を外国から導入をいたしまして、さしあたり日本での原子力発電の需要をまかなうためにそれを動かす、その次の段階としては、自分で新しいタイプの炉を開発いたしまして将来の需要に備え、国際競争にも耐えていけるような日本原子力技術というものを打ち立てていく、そういう二つの段階で原子力発電計画が進んでいくと思われます。  第一段階のほうが、御承知のように、コールダーホール型のタイプをイギリスから輸入をいたしましたり、あるいは現在進行しておりますように、アメリカ型の軽水炉を輸入いたしましたり、さらに、外国の経験なり実績なりから見まして、経済性、安全性の点で、わが国において動かしてだいじょうぶであると思われるものを買ってきて動かすというのが第一段階であると思われます。  二番目のほうが、ちょうど先ほどからお話が出ておりますけれども、昨年の十月から発足をした動力炉核燃料開発事業団で、新型転換炉、高速増殖炉という二種類の炉を自主開発することになっておりますが、これがそれに当たるわけでございます。  そういったようなわが国原子力発電計画を進めていくにあたりまして、一番大事なことは核燃料確保でございまして、燃料確保できないと、せっかく炉を設置いたしましたり、あるいは新しい炉を開発いたしましても、結局動かないわけでございますから、成果を発揮することができなくなるわけでございます。そういう点で、燃料確保ということが非常に大事であることは申すまでもございませんが、それに関連した話として三つぐらい申し上げてみたいと思います。  第一番は燃料資源の確保でございまして、すでに先ほどもお話が出たわけでございますけれども燃料資源の確保というものについては、相当一生懸命になってやらなければいけないと思います。これは、ちょうど科学技術庁の資源調査会で、昨年いろんな稀元素の資源の調査をいたしまして、ことしの初めに報告書を出したわけでございますけれども、その審議の過程でもいろいろな論議がございました。それからまた、南米であるとかアフリカであるとか、そういったところの資源を調査して歩かれた方の御意見を伺いましても、各国とも長い将来を見越しまして、稀元素の資源の確保ということには非常に一生懸命である。国の費用で調査員を派遣したりいたしまして、おもなところの資源を押えることに非常に一生懸命になっております。日本の場合には、いまからでもおそくありませんので、できるだけ手を打って、海外資源の確保ということによっぽど積極的に努力をいたしませんと、将来ほんとうに要るときになって資源が手に入らないためにどうにもならない、非常に高い鉱石を買わされたりして、経済的に非常に不利なことになるというおそれがあるかと思われます。  燃料につきましては、先ほども一お話が出ましたように、すでに電力界、金属鉱山会社あたりの業界の協力によりまして、ある程度は海外のウラン資源を確保することができたようでございまして、すでに昭和五十三年までにわが国原子力発電で必要とするウランの量の五八%は確保されたといわれておりますけれども、五八%で安心してはいけないわけでございまして、一〇〇%確保する努力をしなければいけませんし、それから、先になりまして飛躍的に使用量も増大すると思われますので、それに対する手当を十分にしなければいけないと思うわけでございます。結局核燃料が自給できませんと、自分でつくりました炉あるいは自国の中で動いております炉に対しての燃料確保ができませんで、結局は、せっかく自主開発をいたしました炉もほんとうに動かすこともできませんし、ましてや、輸出することはできないということになるだろうと思います。  その次が濃縮ウラン確保でございます。御承知のように、現在動いております軽水炉というのは、濃縮ウラン燃料として必要でございますけれども、現在、日本では自分で濃縮する設備を持っておりません。将来は、日本でぜひ濃縮をやれという御意見もございましょうし、あるいはその他、外国から濃縮ウランを買ってくればいいという説もございましょうけれども、とにかくさしあたりは、日本に設備はございませんので、海外の賃濃縮を利用して濃縮ウランを入手するほかはないわけでございます。その点で、今度の協定で、百六十一トンという数字でございますけれども、これから当分の間、わが国建設する予定の炉に必要な濃縮ウランを百六十一トンまでは、わが国のほうで希望すれば供給をしてくれるということが保障されたということは、たいへんけっこうなことでございます。ただ、いろいろ御心配もありますように、この量につきましては、わが国で要らなくても無理に押しつけられるのではなくて、要る量は百六十一トンまで供給してもらえる、それからまた、将来計画がさらに伸びましてこれでは足りなくなった場合には、使途を明らかにして相談すれば、この量は当然ふやしてもらえるんだというような意味であれば、たいへんけっこうであると思うわけでございます。  さらに、先の問題としては、濃縮ウランの入手源がアメリカだけであるというのは、確かにいろいろ不都合の起こることも想像されますので、できれば複数の入手源を確保するようなことも考えるべきであると思うわけでございます。  日英協定のほうは、イギリスから導入いたしました炉の燃料供給を保障してくれたという点で、同様にけっこうなことであると思います。  その次はプルトニウムでございます。御承知のように、プルトニウムの使い方というのは、本来の使い道は高速炉でございまして、一九八〇年代に入りましたころには実用の高速炉の発電所ができるであろうという予想で、各国とも一生懸命に競争して開発をしておるわけでございます。わが国でも、動力炉核燃料開発事業団が中心になりまして高速増殖炉の開発をするわけでございますけれども、この計画を、すでに二、三年前から動力炉開発臨時推進本部の高速炉の分科会で検討してまいりまして、動燃事業団の現在進行中の計画のもとになりました計画の立案をしたわけでございますけれども、そのときも、一番私ども心配いたしましたのはプルトニウムの入手問題でございました。スケジュールを書きまして、いつまでに臨界実験をやり、その次に実験炉をこしらえ、さらに二十万キロワットの原型炉というのを昭和五十年度ころまでにつくるといったようなスケジュールを引いてみましても、プルトニウムが予定どおり手に入りませんと、その計画は予定どおり進行できないわけでございまして、プルトニウムの入手というのは、ウラン二三五の入手よりも、いろいろ国際政治の問題その他との関連がございまして、なかなか簡単にいかないことも予想されたわけでございまして、関係者といたしましては、確かにプルトニウムが入手できるかということをかなり心配をしておったわけでございます。そういう点で、今度の協定で四十三年まで  ちょうどその間はわが国内でプルトニウムを自分で供給することはできないわけでございますから、この間の必要量として三百六十五キロを供給してもらえるということになったことは、たいへんけっこうなことであると思うわけでございます。  それから、今度の協定に関連いたしまして、特殊核燃料物質の民有化という話が出てまいりました。これは、原子力開発というのは非常に多額の費用を要することであって、民間の資本投下だけではとてもできないことが多いので、国が中心になって一生懸命にやれという話はよくございます。これはそのとおりであると思うのでございまして、高速炉のようにそれが経済性を持って実用化されるのがだいぶん先であるというようなものについては、ぜひ国が主体になって開発をやらなければいけないと思いますけれども、ある程度経済性が確立しました現在の軽水炉発電所といったようなものになってまいりました場合には、むしろ民間の産業界が御自分で責任を持って、施設から燃料まで全部持たれてやられるほうが、おそらく企業が意欲としても盛り上がりましょうし、技術の向上にも役立つであろうと思われますので、その方向に向いてきたということは非常にけっこうであると思います。ただ、特殊核燃料物質というのは、その取り扱いに非常に慎重を要するわけでございまして、民有化にあたりましては、国内での特殊核燃料物質の移動の全部のコースにわたって、国として十分監視、規制ができるような点になお一そうの留意をしていただくことが必要かと思います。これはもちろん、いままでも原子力平和利用確保ということ、それから安全性の確保といったような観点から、いろいろな規制がございまして、十分整備されておるわけではございますけれども、この機会に一そう留意をしていただきたいと思います。特に低濃縮ウランでなくて、今度はプルトニウムも民有化に回るわけでございますから、これにつきましては、さらに格段の規制、監督方式の整備といったことに配慮をしていただいたほうがいいと思います。さしあたりは動力炉核燃料開発事業団であるとか、あるいは原子力研究所であるとか、そういったところだけでしかプルトニウムは使用されないと思いますけれども、いずれは民間でプルトニウム燃料の加工などが行なわれることになると思いますので、そういう施設の安全基準その他の整備もぜひ考えなければいけないと思うわけでございます。  それから最後に、今度の協定に関連いたしまして、入手した濃縮ウラン国内で加工して外国へ出すということの道が開かれたわけでございまして、これはたいへん喜ばしいと思う次第でございます。核燃料というのは、御承知のように、原子炉の心臓部でございまして、核燃料が自分でできないで日本原子力工業が確立したなんということは言えないと思うので、ぜひ核燃料日本技術日本の資本でつくれるようにならなければいけないと思うのでございますけれども、それにつきましては、そう一朝一夕にはいかないわけでございます。よく石油の例を引かれますように、原子力の時代になってもエネルギーの源を外国の資本に全部押えられるということにならぬように、核燃料工業は国内日本の資本で自立できるように大いにがんばらねばいかぬということがよくいわれるわけでございますけれども、これは民間の燃料工業をやる方々だけの努力ではできない点もございますので、政策的にも大いに配慮をしていただきたいと思うわけでございます。幸いにして、現在までのところ、だんだんと国内関係の方々の努力によりましてわが国核燃料工業も経験を積んできておりますが、まだ何と申しましても実際の原子炉に入れて燃してみたという経験がございません。ことに発電炉に対しましては、ほんとうにそれで電気を起こして売ったという経験を持っておりませんために、使われるほうからいいますと、質的にはかなり勉強をして上がってきたということは認めるけれども、何ぶんにも実証されておらぬではないかといったような問題があるわけでございます。こういった方面に対しまして関係の民間業界が大いに努力をされますとともに、国においても、わが国核燃料工業を早く自立さして、日本国内の原子炉の燃料日本でつくるのは当然といたしましても、できれば海外にまで日本で加工いたしました燃料が輸出できるようになる日が近いことを望むわけでございます。  いろいろなことを申し上げましたけれども、以上のようなことでございまして、今度の協定は、いずれもわが国原子力工業の現状を考え、核燃料工業の現状を考えますと、けっこうなことであると考えますので、早期にこれが実施されることを希望するわけでございます。しかし、ただいま申し上げましたような点については、御審議の過程で十分御留意をいただきまして、慎重に御審議をいただきたいと思う次第でございます。  以上で、私の意見を申し述べるのを終わります。
  10. 秋田大助

    秋田委員長 これにて参考人意見開陳は終わりました。     —————————————
  11. 秋田大助

    秋田委員長 参考人に対する質疑の通告がありますので、順次これを許します。齋藤憲三君。
  12. 齋藤憲三

    齋藤(憲)委員 お忙しい中を御出席いただきました参考人各位から御高見を拝聴いたしたのでありますが、各参考人のお立場から拝聴いたしました御高見は、ここで原子力問題に対する抱負経綸の何万分の一か何十万分の一か、さだめし時間に制約があって御不満であったろうと私は思うのであります。私のほうにも十五分という時間的制約がございまして、何を御質問申し上げていいか、ちょっと戸惑っておるわけでございますが、せっかく機会を与えられましたので、簡単に意見をまじえて御高見を拝聴いたしたいと思う次第でございます。  先ほどもお話の中にございましたが、いまの世の中ではビッグサイエンスということがうたわれております。しかし、宇宙開発にしろ、あるいはコンピューターにしろ、これから興らんとする海洋開発にしろ、いずれにしてもビッグサイエンスには違いないと思うのでありますけれども、同じくビッグサイエンスと言いながら、この原子力だけは格段と飛び離れたビッグサイエンスであると私は考えておるものであります。これはいわゆる宇宙構成の物質の本質を大きな革命に導いたものであるということ、いままでこれ以上細分し得ざるアトムと考えておったものが、原子核の構造がわかって、しかも、それに非常に大きなエネルギーが存在しておる、さらに、その原子核が素粒子の状態にまで進んでいって、もうすでに二百に余る素粒子が発見され、その生命は百億分の一秒という短い生命でもって消滅しておる、あるいは生まれておる。まあ私の聞いたことばの中にも、アインシュタインは、物理学が変わった、哲学も変わりつつあるという偉大なることばを残したと、こういわれておるのでありますが、そういう一面と、これから人類社会を新時代的に導いていくエネルギーの世界において、また、これはいままでの重力の世界あるいは化学反応の力によって生み出されたエネルギーとはとうてい比較にならない根本原理に立ったところのエネルギー源である。でありますから、一言にビッグサイエンスといいますけれども、これは、原子力というものに匹敵するビッグサイエンスというものはいまだこの世の中に存在しなかったことであって、これは一番人間として大きな自然科学の未開の天地を解明したのだと私は思っております。  それでございますから、そういう立場に立って、日本原子力あり方ということを考えますと、先ほど青木さんからお話がございましたが、これは非常に大きな問題が提起されておるわけであります。もちろん、日本といたしましては、申すまでもなく平和利用に徹しておるわけであります。最初、昭和二十九年に二億三千五百万円の原子力予算が可決されまして、その後、直ちに原子力基本法というものに取り組んで、これは議員立法でもって可決いたしたのでありますが、申し上げるまでもなく、それの第二条には、平和に限る、これは大原則でありますから、気違い的な為政者が出ない限り、日本原子力というものは、兵器として殺戮に使われるということは絶対にない。佐藤内閣総理大臣が核非保有原則を再々口にされるということは、これは念には念を入れて言われておるので、あの原則というものは、日本にはもう最初から確立しておったと私は思っておるのであります。  そういう立場からまいりますと、青木さんも、この協定には賛成だ、しかし不満足な点がある、また不安な点もある、それはいろいろごもっともなことだと思うのでありますけれども、ただお立場上、いままで実質的に原子力平和利用の職場、特に発電の職場、研究所の職場にタッチしておられる方々が、体得された経験、技術が将来どうなっていくのだろうか、たとえて言うならば、原子力研究所の予算もふえないし、人員もふえなかったじゃないか、一体われわれがタッチしているところのこういう経験、技術というものは将来どうなっていくのであるかというようなお話があったのでありますが、それについて、ひとつもう一ぺん御心境を伺いたいと思うのであります。これは、原子力世界というものに徹して、原子力世界という将来を描けば、原子力の職場にタッチしておられる方が、一番大きな将来性を持った職場に働いているということになるのであって、これは御自分の心がまえ、御自分の職場に対する認識いかんによって、そういう不安というものはないのであって、むしろそういう職場から新時代を導いていくところの力というものを生み出すのだということが、私は、原子力平和利用にタッチしておられる職場の方々のお考えでなければならぬ、こう思うのであります。それを百年前も二百年前もに考えられたような職場におけるところの考え方から自己の立場というものを律していくというと、いろいろな問題も起きるでありましょうけれども、私は、原子力世界というものは、もう先ほども申し上げましたように、非常にかけ離れたビッグサイエンスでありますから、ここに心魂を徹して働いておられる方は、そういう職場から生じる不安というものはないのじゃないか、私はそういうふうに考えておりますが、この愚見に対しまして、ひとつ御高説を拝聴したいと思います。
  13. 青木賢一

    青木参考人 ただいまの御質問ですけれど、おっしゃられるとおり、確かに時代の先端を行く産業に従事しているわけで、われわれの技術が将来どうなるのかこうなるのかということについて不安を持つということは、非常におかしいのじゃないかというお話です。しかし、実際問題として、やはり今日までのわが国原子力政策というものが紆余曲折し、そしてわれわれはびほう策、こう称しているわけですけれども、このびほう策を重ねてくる結果、たとえば原研の場合でも一つのプロジェクトが出てきます。それをやろうかと思うと、今度それがなくなって、別のやつをやれ、そういうような状態で、どこを見詰めていっていいのかわからない。そういうふうになってくるうちに、先ほど言ったように、プロジェクトが削減されるとか、あるいは人形峠はどうなるのだとか、あるいはまたわれわれの敦賀のあとは一体どうなるのかというようなことが、切実な問題として押し寄せてきているわけなんです。したがって、きちっとした国全体の原子力に関する計画と申しますか、政策というものをぴたっとした形で出していただいて、われわれはこういう分野にいるのだ、そうしてこういう分野にいて、その次にはこういうふうに発展していくのだ、こういうようなかまえがきちっと出れば、そこを見詰めながら意欲的に働いていくことができるけれども、どうもそのときそのときの事情とかあるいは政策変更とかいうようなことによってはっきりしておらぬですから、そういう意味で、いまちょうど一つの沼にというか、谷にあるのではないかと私は思っておりますけれども、今後原子力政策というものが、そういうような点も十分に認識された上で検討されて、そしてりっぱなものができてくれば、当然、われわれはいまおっしゃられたように時代の先端を行く産業に従事しておるものでありますから、大いに事業の発展することについて自信を持っておりますし、そういうぐあいに徹したい、こういうぐあいに思っております。
  14. 齋藤憲三

    齋藤(憲)委員 時間がありませんから、またいずれ機会を得て、大いにその点に対してディスカッションをいたしたいと考えております。  その次に、関西電力加藤社長に質問申し上げたいと思うのであります。これは電力会社といたしましては、お説のとおり、これから原子力発電によって大きなシェアを占め、特に民福に資さなければならないことは世界的の趨勢でありますから、私がここから何も申し上げる必要はないと思いますが、私はそういう大きな事業をいたしたことはございませんが、日本原子力の実情というものから将来の見通しをいたしますと、何が一番不安かといえば、これは優秀な頭脳を持っておる日本の人々の流出というもので多少は困難を感じ、相当の年数は経るだろうと思いますけれども、おそらく高速増殖炉では何とか世界のレベルに歩調を合わし得られるのではないかという感じをいたすのであります。これは十年かかるか二十年かかるか、すべて原子力関係しておる方々の総力の結集と、これに対する政策その他の問題も必要だと思うのでありますけれども、私は、過去十数年の日本原子力産業の歩みを振り返ってみますと、まだものにならぬと言う方もありますけれども、よくぞここまで原子力の実体というものを解明し尽くしてきた、しかも勇敢に新型転換炉、高速増殖炉に取り組んで、ここで十年、二十年の期限を切ってとにかくものにしようという意欲が燃えておる勢いというものは認めなければならぬと思うのでありますが、そういう点に立って、一体その原料物質をどうするのだ、燃料物質をどうするのだという点にまいりますと、これは実にはだにアワを生ずるような思いもいたすのであります。百六十一トンのウラニウム二三五は石炭に換算して四億五千万トン、石油に換算しても三億二千万トン、五十三億ドルに相当する百六十一トンのウラニウム二三五を三十年間の契約によってアメリカから供給を受ける。しかし、これはわずかに六百万キロワットに対するところの燃料率であります。いま世界では、昨年度は八千万キロワットの原子力発電所建設が始まったというのでありますから、日本昭和六十年までには三千万ないし四千万キロワットの原子力発電所をやる、そういう場合において、これは一体どういう見通しの上に勇敢に原子力発電に取り組み得るかということなのであります。カーマギーから一万五千トンの何か契約ができたとか、あれは私はU3O8の形における一万五千トンだと思うのです。これはウラニウム二三五純粋量だったらたいへんなものであるけれども、それが一万五千トン、こう言われる。百六十一トンに比較するとこれはたいへんだと思うけれども、中を探っていくと、U3O8だというと、何だこんなちっぽけなものかということになってしまう。ですから、そういう点に対して、いまは心配ない、三十年先はおれなんか心配する心要はない、こういうようなお気持ちではないと私は思うのです。どういう見通しを考えておられるか、これをひとつお伺いいたしたいと思います。
  15. 加藤博見

    加藤参考人 いまの先生のお話、ごもっともなんでございまして、この原子力発電がこれからどうなるかという問題点のうちで、一番大事な問題は、いま、昨年できました動力炉核燃料開発事業団で手がけようとしております動力炉の新型のもの、新型転換炉並びに高速増殖炉の研究開発がこれからどういうふうに進むか、それがどういう成果をあげていくかということは非常に大きな問題でございますが、これは私の経験から申しましても、日本の電気メーカーのほうの技術、これは非常にやまと民族が優秀だということもございますし、非常に技術も優秀でございます。この十数年間における新鋭火力の発展というものは、今日の電気事業の発展につながっているものでございますから、これは全く日本の国産の電気メーカーの技術の優秀さというものに非常にあずかって力があるのでございまして、日本の科学技術のメーカーの優秀性というものが、原子炉並びに原子炉に関連したタービン発電機等の製作、こういう面においても十分発揮されて、在来炉に対してはもちろん成功、これからどんどん国産化していって成功するだろうと思いますし、また、高速増殖炉、新型転換炉におきましても、動燃事業団が中心になっておやりになる技術開発がおそらく成功していただけるのではないかというふうに大いに期待をいたしておるわけでございます。  それから、もう一つ燃料の問題でございますが、これは先ほどから三島先生からもお話のありましたとおり、これも非常に大事な問題でございます。それで、現在世界におけるウランというものがどの程度のものであるか、それから世界の原子炉の開発によってこのウランがどの程度の需給バランスになっていくか、こういうのは、原子力委員会のもとにあります核燃料懇談会というものをこの間やりまして、詳しく委員会として結論が出ております。それによりましても、なかなか将来たいへんなものであるということでありますが、決して悲観する必要はない。いまはカナダ、米国あるいは南アというようなものを中心にしてウランが掘り出されておりますけれども、ほかにオーストラリアその他、世界的のウランの需要に応じて非常に探鉱熱が各国においても出ておりまして、どんどん新しい鉱山が見つかっております。したがいまして、この原子力の需要に応じてウラン鉱というものもだんだん確保されていく、また、世界的にウランの市場というものがだんだん確立されていく。そうすると、ポンド当たり八ドルとかあるいは十ドルとかいうような世界市場が確立されて、ある程度ウランが確保できるのじゃないかというふうに予想をしておるわけでございます。それで、現在におきまして、燃料の入手方法といたしましては、長期契約ですね。長期的に外国鉱山会社長期契約をやるという方法、それから短期契約といって、炉がきまりますと、その炉の燃料を役務を突っ込みにしてメーカーにお願いするという短期契約の方法、それからもう一つは、先ほど申し上げました探鉱開発、自分で外国鉱山を持って、そしてそこから掘り出すという、この三つの方法でやっておるわけであります。それでいまは、しばらくは長期契約という方法を主にして確保していきたいというふうに考えておりますが、長期的には探鉱開発というものもまぜて、この二つを柱にして、足らぬところを短期契約によって進めていくということでございます。  それから、御承知のとおり、高速増殖炉になりますとプルトニウム燃料でございまして、プルトニウムは、軽水炉その他で燃やしますと、プルトニウムはその中でできていく、再生産されるということになりますので、プルトニウムになりますと、非常に全体のウランの需給バランスが楽になるということでございまして、全体的に三千万、四千万という原子力発電燃料も、われわれとしては一応心配なしに確保できるのじゃないかというふうに考えておる次第でございます。もっとも、この高速増殖炉の日本においてほんとう実用化されるのは、おそらく一九八五年前後ではないかというふうに思っておりますので、それまではかなりウラン確保というものは大きな問題でございまして、民間といたしましても、大いにこれに対して遺漏のないように努力をいたしたいと思っております。
  16. 齋藤憲三

    齋藤(憲)委員 その燃料問題については、私もいろいろ考えがありますが、これは他日に譲ります。  なお、将来広域的に発電事業の妙味を発揮してというおことばがございました。これに対しましては、原子力発電という問題に対する国家的な視野から、私も非常に考えるところがあるのでありますけれども、これをやり始めますと時間がなくなりますから、これは割愛さしていただいて、垣花先生一つ御質問を申し上げたいと思います。  私、中央公論の三月号にお書きになりました「原子力開発現状と理念」という先生の論文を何回も繰り返して拝読いたしました。大いに共鳴を深くいたしたのであります。そのことに言及いたしますと、これまた時間がなくなりますからやめますが、ただ、私先生のお書きになった中に、もう原子力発電がどんどん行なわれていくと、こんなに大きなビッグサイエンスがビッグテクノロジーによって、ビッグビジネスになってきているのだ、これは無限大に拡大されていくような大きな仕事なのだが、それと同時に、おそるべきプルトニウム世界の津々浦々に生産されているということに留意しなければならぬという一節があったわけであります。これはもちろん日本といたしましても、世界といたしましても、このプルトニウムというものが、やはり悪くいうと核アレルギーのバチルスでありまして、これを征服せざる限りにおいては、原子力平和利用というものに徹した概念を持ち得ないのではないか、そうも思われるわけであります。そういう意味で、私、一九五八年の六月に締結されました日米原子力に関する協定と、それから今回締結されます非軍事的な利用の協定をざっと比較してみましたところが、大体同じなんですね。どこが一体違っているのかと、こうやりましたところが、量が違っておったり、期限が違っておったり、あるいは灰処理、再処理をする場合に、一九五八年には日本には再処理工場がないだろうというところから、プルトニウムの入った灰は全部アメリカに持っていくとか、それを今度は日本でやれるようになったとか、ただ、念には念を入れて規制を強固にいたしましたのは、非軍事的利用というものに対するアメリカのいわゆる査察、審査の権利であります。これは非常に厳重をきわめている。私忘れましたけれども、他のいかなる条約も、国際原子力機関協定を結んで査察の分野をきめたそれは除くけれども、それ以外はいかなるものにも犯されないのだ、それが、アメリカはこれだけの査察権利を要求するという条項がございまして、非常に今度はその点はきつくなった。いわゆるその百六十一トンの二〇%に押えたウラニウム燃料、これは特例を設けておって、もっと濃厚なウランにして供給することもできると書いてある。ところが、前の二トン何がしの場合においては、大体九〇%の濃縮なのを渡すという、それを今度は二〇%に、量がふえたから原則的に改めて、そのほかに三百六十五キログラムのプルトニウムを今度は渡すのでありますから、アメリカといたしましては、これが軍事的に利用されないようにがんじがらめの査察条項というものをここに規定してあるわけであります。また、日本もその原子力に関する規制の法律が再々改正せられまして、この点に対しましてはやはり厳重に取り締まりをいたしておるわけであります。ただ問題となりますのは、これを民間が保有することができるということに今度は変えていこうというところに一まつの疑点があるのではないかとは思われますけれども、あれだけの国際原子力機関査察を受け、アメリカ査察を受け、そうして日本が規制法によってこれを規制し、そしてプルトニウムを平和的に利用しようと、こういうのでありますから、これ以上不安を感じたのでは何もできないじゃないか、これでいわゆる最高の状態におけるプルトニウム平和利用という形が日本にはもたらされるのではないかと、私はそう考えておるのですが、この点に対して先生は一体どうお考えになりますか、ひとつ御意見を承りたいと思います。
  17. 垣花秀武

    垣花参考人 確かに大きな相違といいますのは査察の問題でございまして、これは前の条約の時点におきましては、幾ら査察をしていただいても、日本には大きな技術がございませんので、むしろ前の条約のときにそういうものがありましても、こちら側はちっとも技術的に不利ではない。ところが、現在ああいう形で二重、三重、四重になるということは、おっしゃるとおり、プルトニウムなりウランなりが完全に平和利用されるということの保証にはなりますけれども、それを日本の独自な技術で使おうといたします場合には非常に不利になりかねない、そう思うわけであります。私たち日本人の立場でおりますと、われわれは、事原子力に関しましては徹底的な平和利用主義者である、そういうふうに思っておりますので、まことにこれはありがた迷惑みたいなところもございます。こちら側で思っているだけでなくて、客観的にそういうことで、こういうような足かせ手かせができますことは確かにいいことでございますけれども、それがまずく適用されますと、われわれの新しい技術というものは筒抜けにどこかへ行ってしまう、そういう問題になりかねないと思います。  なお、ここでちょっと補足いたしますと、われわれの——われわれと申しますか、日本と西独が非常に大きなハンディキャップを背負って国際的に原子力開発に出発しておるわけであります。これは将来外交政治的な、歴史的な問題として非常に取り扱われると思うのでありますけれども、まず第二次大戦の戦敗国として、核燃料物質と申しますか、核分裂物質を持たないような精神的、政治的環境で原子力開発に出発した、そういうことがあるわけであります。そのハンディキャップが依然として二十何年たってもこの条約の中に実は見え隠れしている。もちろん、われわれはそういうものを正しく利用いたしまして、われわれの国家の倫理的な立場に立ちまして、そういうハンディキャップを克服しながら、なおかつ原子力の国際競争に勝つという可能性もございますけれども、われわれのごとく徹底的な平和国家になった上で、なおかつ非常に不平等的にわれわれだけがウラン二三五なりプルトニウムなりの査察を受けて、第二次大戦——古い話でありますけれども、戦勝国が依然として、ソ連にしてもアメリカにしても受けないで済むというような状態が残るということは、非常に実は問題だと思います。この条約の中には、実は依然として第二次大戦の戦敗国であるという、そういう様相も入っておりますと同時に、そういうことを押しのけるだけのわれわれのほうの技術的なあれもございませんので、今後二つの問題としまして、外交的にこういう問題を少しずつもっと平等的にしていくという問題、それからわれわれの原子力技術というものをもっとこのハンディキャップを克服しながら伸ばしまして、そして対等に国際的な発言ができるようにする、そういう二重のあれをわれわれは持っておるのじゃないかと思います。
  18. 齋藤憲三

    齋藤(憲)委員 だいぶ時間が経過いたしましたから、最後に、三島先生にひとつお伺いいたしたいと思います。  お説のように、日本原子力発電の過程は、ほとんど無から出発したようなもので、出発したときには、すでに英国ではコールダーホールが着々と進行し、アメリカでは軽水炉がどんどん実験に移されておったという時代で、この状態に即応して日本の体制を確立してまいりますには、どうしても外国技術の導入をしなければならない。コールダーホールを輸入し、いま盛んに軽水炉の建築をやっておるわけでありますが、次に来たるべき自主的な技術によって日本原子力発電体制を確立するということは、仰せのとおり、新型転換炉、増殖炉というものに指向しておるわけです。しかし、これもわれわれといたしましては、原子力研究所を設立いたしましたときから、日本原子力体制は何を目標として研究を進めるのか、はたして増殖炉を目標とするのか、核融合反応の世界を目標にするのか、どこで一体世界のレベルに合致する目標を立てるのかということをずいぶん口やかましく国会においては論じたはずであります。しかし、いよいよ増殖炉に原子力研究所が目標を定めるといったのは昭和三十七年でございますから、ごく最近のことだと私は記憶いたしておるのであります。菊池理事長が外国を視察してまいりまして、その視察報告を国会でやりましたときに、いよいよ増殖炉の時代というものに目標を定めて、これに大きな望みをかけて努力をしたいという報告をされたのであります。そうしますと、まだわずかしかたっておりません。よくこれまで踏み切って大きな予算を目標として増殖炉に取り組み得たと私は思っておるのでありますが、先ほど加藤関西電力社長のお話も承りましたが、何を言うても、結局問題は核燃料物質に帰着してくるわけであります。核燃料物質に帰着してまいりますと、私などのような心配性は、ここしばらく、アメリカにもあるし、カナダにもあるし、南アにもあるし、あるいはオーストラリアからも見つかるかもしれないし、また東南アジアにはトリウムもあるじゃないかというような話では、日本の運命を託する原子力発電の将来というものに対して安心感を持ち得ないわけであります。これは笑い話になるかどうかわかりませんが、私がアメリカに参りましたときに、あるアメリカの大きな会社社長に、これは原子力潜水艦をつくっておる会社社長でありましたが、一体あなたはどういう考え方を原子力燃料に持っておられるのだ、こういう質問をいたしましたところが、パーペチュアルモーションだ、いやパーペチュアルモーションということにはならないでしょうと言ったら、いやそうではない、ウランは海水の中に四十億トン入っておる、だからウランでもって発電をやって、その一部をさいて海水からウランをとっておれば、パーペチュアルモーションではないか。これはずいぶん私はこだわったんです。いまでもこだわっている。はたして海水に四十億トンのウラニウムを含有しておるとすれば、究極はやはりこの海水中の四十億トンというものをものにしなければならぬのではないか、こう思っておる。と申しますのは、これもビッグサイエンスの中には入らないかもしれないけれどもビッグサイエンスに近づく一つのサイエンスとして、最近海水の淡水化というものがある。これはやりようによっては非常に大きなしかけをもってやらなければいかぬわけですが、この海水を淡水化するときには、九十二の元素というものは全部含まれておるというのでありますから、これをとっていくということが、私は、将来の非常に大きなサイエンスになるのではないか、そう思うのでありますが、海水からウランをどうして採取するかということは、もう英国では非常に力を入れているという写真を私は見たのであります。先生、この点に対してどういうお考えを持っておられますか、もしお持ちでしたらひとつ承りたいと思います。
  19. 三島良績

    三島参考人 ただいまの御質問にお答えいたしますが、資源の確保というのを非常に大事だということを盛んにさっき申し上げたわけでございますけれども、工業的にはたして資源として使えるかということを考えますときには、どこにどのくらいあるということだけでなく、経済的に取り出して、ほかの資源から持ってくるのよりもより安く、あるいは少なくとも同等ぐらいで手に入るかというようなことがたぶん問題になるわけでございまして、海水からウランをとるという話は、事実あちらこちらで研究をされております。私自身やっておりませんが、私の原子力工学科でもそういうのを学生に実験をさしておられる先生もおられますし、事実研究をしておるわけでございますけれども、現在のような方法で鉱石からウランをとってまいりますのと比べて、海水は確かに手近にはございますけれども経済性の問題がはたしてどうなるかというようなことが、まず第一の問題であろうと思います。  それで、いまのことに関連いたしまして、日本のように、自分の国にほとんど核燃料資源がない——全然なくはございませんけれども、それを当てにしてやるというほどにはないということになると思いますが、そういう国の場合には、やはりいろんな入手の手段を多角的に検討することが必要ではないかと思うわけであります。鉱石の存在する場所にしてもそうでございますけれども、あちらこちらにございますのに、どこか一カ所だけにたよってしまって、そこからしか手に入らないということにしておきますと、やはりどんなことで供給の不安が起こらないとも限りませんし、それから、現在のようにある程度確保されたというわけでありますけれども、これはアメリカ軽水炉日本が買うことにきめたので、それに関する燃料確保に対してはある程度好意的に協力をしてくれるというような事情もあり得るわけでありまして、将来、自分で開発する新型転換炉などの燃料確保という場合に、はたしてその資源を持っている国が、自分の国の炉を買うのでもないのに今回のように非常に好意的にやってくれるかどうかも必ずしもわからないと思うので、できるだけいろんな資源確保の手は多角的に打ったほうがいいと思うのでございます。その一つとして、海水からウランをとるというのも、研究としては興味を持たれる方があったらぜひやっていただいて、実際にそれをやるかどうかは、いま考えている資源の入手の困難の程度の違いもございましょうし、経済性の問題もございましょうから、そのときに判断をしたらいいのではないかと思いますので、研究テーマとしては、やはり勉強しておいていいテーマではないかと思うのであります。そんなことでございます。
  20. 齋藤憲三

    齋藤(憲)委員 これで私の質問は終わりますが、申し上げるまでもなく、日本現状は、どうしてもアメリカ濃縮ウランにたよらなければ、日本原子力発電体制を確立していくわけにはまいらぬ。何とかして合衆国との間の協定を早急に確立いたしまして、業界の希望する核燃料物質の入手を安定させたい。幸い、御出席を賜わりました四人の参考人各位におかれましては、この協定成立に賛成の御意見をちょうだいいたしましたので、まことに感謝にたえません。  いろいろつまらない質問を申し上げましたが、ひとつごかんべん願いたいと思います。どうもありがとうございました。
  21. 秋田大助

    秋田委員長 帆足計君。
  22. 帆足計

    ○帆足委員 ただいま与党の同僚議員から、まことに示唆に富む御質問がありまして、私は深く感銘して傾聴いたしました。  実は時間もございませんが、参考人の方に申し上げて参考にしていただきたいのでございますが、この協定が外務委員会にかかりましたのはごく最近でございます。私は不勉強で、一月くらい前からようやくいろいろの参考書を先輩各位からいただきまして、急に勉強いたしましたのですが、事柄の重大性とその歴史的意義の偉大なことに実に驚いている次第でございます。人学ばざれば禽獣のごとしと言いますけれども、まことにそのとおりであると思います。したがいまして、この協定につきましては、どうしてもただいまの齋藤議員のような見識のある与党議員の方々、また野党議員の中で深くこの問題を検討せられておる方々の御意見も拝聴いたしまして、そうして議員はただ御質問申し上げるだけでなくて、専門の方々に深く啓蒙していただきまして、また政治家として言うべき御注意は十分に申し上げて、それらの点は速記にとどめ、ときとしては付帯意見といたして、さらに委員長の御注意を促しまして慎重な審議を必要とするように私は思っております。しかし、会期も急いでおりますし、参議院にもかけねばなりませんから、大局から見ましてこの協定はタイムリーに通過することが必要であるという皆さまの御意見を伺いまして、私も、大勢においてはそのような配慮は必要であるとは思っております。しかし、国会は十分に慎重に審議する場所でございますから、ただいま伺えば伺うほど、私は、これは深く検討いたさねばならぬと思っております。  と申しますのは、私事にわたって恐縮でございますが、私の青年時代の思い出でございますが、学校を出まして、やがて東京電燈の郷会長の調査秘書になりまして、次には小林一三氏、平生釟三郎氏の調査秘書をいたしておりました。当時としては電力のことをやや深く存じておりました。戦争が済みまして、日本が廃墟になりましたときに、日本は海の国でございますから、原料を輸入し、製品を輸出する。貿易は呼吸のごときもので、輸出は吐く息、輸入は吸う息。しかし、何分にも国内にその基礎としてエネルギー資源を確立せねばならぬ。幸いにして湿度は多うございます。住みにくい国でありますが、食糧は豊富でございますけれども、台風と治水の仕事が十分に進んでおりません。それと道路の問題。当時日本のエネルギー資源をどこに置くかということが論争になりまして、私は、層の薄い、値段の高い石炭にたよるよりも、まず治水の仕事に、多目的ダムに重点を置いて、石炭をもって補うべし、また、鉄道を電化することによってエネルギーの効率使用をすることが必要である等のことを、当時経済復興会議の幹事長として主張いたしまして、数年間努力をいたしました。  いま振り返ってみますると、それらのことはもはや全部実現され、そして常識にすらなっておりますが、その石炭ですら、いまや重油にかわってしまっておりまして、そのエネルギーの現在の総量はもはや隔世の感があるのでございます。戦前最高七百万トンであった日本の鉄鋼は、いまや六千万トンをこえた。夢に夢みるような大きな数字でございます。そこにもってきて、今度原子力エネルギーの問題が——私どもは核アレルギーとよく言われて、核戦争のことを心配し過ぎると言われるのでございますけれども、しかし、これは後ほど申し上げますが、そう言われることを私は光栄に思っておる者の一人であります。原子力平和利用ということを、アイソトープとか、その他いろいろの部分的な技術で、科学博物館などで拝見したときは、これはただ珍しいという一語に尽きたのでございますけれども、今後、二十年後においては、日本のエネルギー総量の過半が原子力発電に移り、しかも、そのコストはやがて重油を割るようになってまいり、その輸送に至っては何百分の一の輸送力で済むということになってくれば、それは非常なエネルギー革命の問題でございます。  きょう皆さま方から、それぞれ御意見を謙虚に伺わしていただきまして、また、外務委員といたしましては、外交のことには多少通じておりますけれども産業のことには通じておりませんので、齋藤委員はじめ科学技術委員、また通産委員諸兄の教えも受けたいと思っておる次第でございます。したがいまして、きょうは時間がございませんから、私ども要点を伺いまして、あとはこの委員会において論議が続くでありましょうけれども、前向きの姿勢でそれを十分に討議し、そして皆さまのお仕事に間に合うようにいたしたいと思っておることをまず御了解願いたいのでございます。  齋藤委員から青木賢一君に対して御質問がありまして、私も拝聴いたしました。しかし、この一点については、私どもも同じようにこだわっております。人類がもし諸兄のごとき理性を持った人たちで構成されておるならば問題はありません。しかし、不幸にして、人類の現段階は進化の過程にありまして、驚くべくその理性は低いのでございます。ヨーロッパもそう高くはありませんけれども、特に日本におきましては、民主革命は成らず、民主主義は南無阿彌陀仏、そして過去においては、「朕惟フニ」という一言でもって万事解決。教育勅語はきわめて小さなプラグマチズムで、偉大なるテネシーダムをつくったアメリカのプラグマチズム、またはジョン・デューイを生んだプラグマチズムとは、格段の違いがあると私は思っております。一国の生産力は、その民族の持っておる哲学の深さと広さに正比例すると思いますが、八月十五日の民主革命によりまして、鉄鋼六千万トンをこえましたのは、とにもかくにも日本の封建制が破れて、人の心が開発されたからであろうと思うのでございます。原子力エネルギーが発電にやがて使われてまいります前途の展望を考えますと、まことに心おどる思いがいたすのでありまして、かのジェームス・ワットの蒸気機関の発明にも匹敵するものであろうと思うのでございます。  歴史を思いますと、歴史の進行というものは、すでに起こったことのあと始末と、これから起ころうとすることの萌芽と、およそ二つがあるように考えます。たとえば戦艦大和は、あれほどすぐれた海軍技術をもってつくりまして、真珠湾攻撃の一週間後にこれが進水をいたしまして、日本の科学技術世界の科学技術の最高峰といわれたあの大和が旗艦になりましたときに、私はいまも感銘深く思い出すのですが、山本五十六元帥が、私は大和をつくることに反対であった、飛行機をつくるべきである、その反対であった自分が、いまやかくかくたる戦勝のもとに、ちょうど真珠湾攻撃の十日後でございましたが、金鵄勲章をもらいまして、戦艦大和の司令長官室におさまった、まことに歴史の皮肉と言わざるを得ない、やがて一年半後には戦局の前途は見え、二年後には私は不幸のうちに消えるであろう、私はそのことばをいまも思い出しますが、作家阿川さんが文化賞をもらった名著「山本五十六」にこのことを書かれております。  なぜこのことを申し上げるかといいますと、一方人間は愚かしくも戦争をしながら、他方でいま原子力の問題が日程にのぼっておる。沖繩には基地があり、国内至るところに基地がある。寝撃ちジョンソンと言われるジョンソンが、突如として北ベトナムとの和平を声明しましたけれども、寝撃ちジョンソンのことですから、いつまたピストルを撃つかわからぬという状況で、それが沖繩に波及し、紅衛兵の中国に波及し、日本の軍事基地に波及したならば、原子力発電も何も一瞬にして吹っ飛んでしまうし、至るところに危険と結びつく可能性もある。こういう世の中に住んでおるのでございますから、青木君の指摘された点は、私は単なるアレルギー性の御注意とは思いません。きわめて重要な問題であると思います。  教授の皆さんに伺いますが、もしヒトラーと東条さんが原子力を利用して原子爆弾をつくっていたならば、この世界はどういうことになっていたでしょうか。今日の政治情勢がそれほど安心できる政治情勢でしょうか。少なくとも外務委員会においては、これに心から賛成をしながら、なおかつ歴史のそういうような段階であるということを発言する政党、攻撃する個人がおっても、私はそれは当然のことであると思うのでございます。先ほど歴史について申し上げましたが、ジェームス・ワットの蒸気機関の発明は、やがて自由、平等、博愛の最初ののろしでありまして、やがてそのあとに影を映す歴史はアメリカの独立戦争となり、偉大なる独立宣言となり、偉大なる精神となりました。しかし、戦艦大和をつくったこの偉大な技術は、将来をつくるのではなくて、これは過去の善後処置でございました。十二月八日にもうすべては済んでいたのです。八月十五日までたくさんの青年を殺して、これは事後処置をしたのであります。愚かな私ども人間の理性は、これから起ころうとする事件と、すでに済んでいた事件との区別がわからないのでありまして、大東亜戦争四年間の仕事は、ヒトラーという気違いに踊らされて、われわれは、ただ愚かにもこのあと始末をしていた。幸いにして、終戦の日を早く迎えることができましてしあわせでありましたけれども、そのときに、もし湯川博士のような人が一ダースもおられて、東条さんに原子力を利用させたならば、またヒトラーが原爆を使ったならば、どんなことになったであろうかと思うと、歴史の宿命を深く思わざるを得ないのでございます。私ども政治家でございますから、やはりそういうことにも心から寄せざるを得ないことを参考人各位に私は一言申さざるを得ないのでございます。議員は、御質問を申し上げて蒙をひらいていただくと同時に、国民を代表いたしまして、要望や留意事項を聞いていただくという両方の仕事が議員の仕事でございますから、かく申し上げました。  由来、わが国では、科学者、技術者の方々はどうも政治にうとく、職人かたぎがございます。そうしてわれわれ政治家は科学技術にうとく、また実業界には不覊独立の精神は一面ありますけれども、他面いわゆる福澤先生が言った町人根性というのが残っておりまして、取るにも足らぬ役人の前に頭が上がらぬ。そうであるのに、私ども日本社会党も口を開けばすぐ国営と言いますが、国営といえば何もかも解決するかといえば、国営とは役人の古手が仕事をすること、事柄を複雑にすること、そういう一面と、過当競争を防止して、そして計画的に仕事をするプラスの面と両面がございますから、私は、諸先生が無条件に国営にすることには不賛成であると言われた意味はよく理解できるのでございます。わが党としてもこういう点はよく検討いたしまして、そして理性と計画性が必要である。仕事の段取り——よく大工の棟梁が段取り八分と言いますけれども、段取りができれば能率が上がります。そういう意味の国家計画、国営思想は私は健全であると思いますけれども、役人の外郭機関をつくって事柄を複雑にし、硬直化させるよりも、創意と自由にあふれた方々の責任にまかすということも忘れてはならぬことのように思うものの一人でございます。  本論に入りまして、二、三のことをお教え願いたいのでございますが、ただいま齋藤議員の御質問の中で、私が一番感銘深く、また今後勉強せねばならぬと感じましたことは、原料をどこに得るかという問題でございます。今日アメリカとの関係はまずまずよいほうでありましょう。あすも健全な意味で、理性的な意味で、よいことをわれわれは望みますけれども、しかし、アメリカは、一千億ドルの予算のうち七百五十億ドルを戦争に使っておりまして、この膨大な、全人類を養い得るといわれるほどの生産力を持っておる国が、その生産力の七割五分は肝臓硬変症になっておりまして、からだの三分の二は紫色にふくれあがっておる。これは私がかく申すのではありません。アイゼンハワー元帥がおやめになるときに、若いケネディに対して、アメリカの軍部と軍需産業と職業軍人と結託したならば、第二の東条にならないとだれが言い得るであろう、だれが押え得るであろう、これは有名なアイゼンハワー元帥の告別の辞でございます。アイゼンハワー元帥は、人も評するように、日本でいえば宇垣陸相のような立場の人であったようであります。もしアメリカとアジアとの関係がそごし、あと一、二カ月か半年ベトナムの問題にかかっておりますけれども、一たび中国の国境を越えるような事態があったならば、沖繩、日本、台湾、朝鮮、アメリカ関係は現在のようには私はうまくいかないと思います。では代案があるかといえば、もちろん代案もございません。したがいまして、あえて経済技術的に現在の皆さんの構想に全面的に反対ではありません。経済関係をよくすることはよいことでありますけれども、しかし、齋藤議員がいま御指摘されたように、歴史は動きますし、大局からいえば、やがてはアフリカ諸国は西ヨーロッパが世話をし、中南米はアメリカが世話をし、東南アジアは日本と中国が世話をする、過渡期において互恵平等の関係で世話をする、そういうような経済地理学的なことも考え得るわけでございますが、アメリカとの間にある距離が来るということも、立地的には考え得るわけでございます。したがいまして、今後条約の背景におきまして、われわれは原料をどういう方面から得るかということについて、皆さまが御心配になっておられるように、政治的に考えましても、十分な配慮をいたしておくことが必要であろうと思うのでございます。  私がなぜこういうことを繰り返し申し上げるかと申しますと、かつて経団連におりましたときに、大東亜戦争が十二月八日に起こりました。そのときの日本の鉄鋼の最高の生産額はわずかに七百万トン、敵国たるアメリカから参るはずのくず鉄を除いて考れば、まず三百万トンが当時自給力でございました。アメリカの鉄鋼産額は六千八百万トンでございました。それから三年後には日本の鉄は二百万トンに下がり、アメリカの鉄鋼は九千八百万トンにのぼっております。二百万トンと九千八百万トンの鉄の戦い、運命はだれにもわかるわけで、その一つのことが国民の常識になっていたならば、あの愚かなことをもっと早く処理することができたわけでありまして、妥協点はまず上海、香港がせいぜいのところを、ガダルカナルまで出かけて、ついに転落し、二発の原爆を食らい、そうして蒸発した。それまで私どもは何を考えていたかというと、戦艦大和をつくるほどの一流の技術者を持ちながら、「朕惟フニ」の一言で、それで人生哲学は過ぎてしまった。朕は思えど人は思わず、この国には哲学書もなく、厳粛な宗教も衰えて、そうして、私どもはただとうとうとして時の政府に追随してまいりました。  こういうような諸条件を考えまして、原子力エネルギーの問題を討議するにあたりまして、やはり国際情勢に対して意見を交換し、原料の獲得についても、幾つかのその背景の流れを考えておくことが外務委員として必要であろう、こう思うわけでありまして、このことは、科学技術委員の諸君から、私どもはもっと本委員会において教えてもらいたいと思っております。ただいま、当面アメリカにたよるといたしまして、将来日本原子力自立のための原料の獲得は、大体いま学者といたしましてどういう方面に着目をし、どういう技術に着目したらよかろうか、いずれ委員会で十分な検討がございますから、ごく簡単にある方向だけをお教え願いたいのでございます。
  23. 秋田大助

    秋田委員長 どなたにお答えをいただきましょうか。
  24. 帆足計

    ○帆足委員 このことについて御発言くださいました三島先生にお願いします。
  25. 三島良績

    三島参考人 お答えいたします。  一言で申しましたら、やはり資源の供給のルートを多様化するということを考えたらいいんじゃないかと思います。どこか一カ所だけでなしに、先ほどもちょっと申し上げましたように、複数の方面から手に入れることを考えることと、それから燃料資源の種類にいたしましても、現在でも天然ウランあり、濃縮ウランあり、プルトニウムありでございますけれども、そのほかにトリウムというのがございます。これは先ほど齋藤議員がおっしゃいましたけれども、アジアの近辺にはわりあいトリウムの資源というのがございますので、現在世界で普通に考えられておりますのは、ウラン二三五−プルトニウムという燃料サイクルでございますけれども、トリウム−ウラン二三三という燃料サイクルもあるわけでございまして、日本のようにアジアの中におります国としては、そういう方面の研究開発にも力を入れるといったようなのが一つ方向ではないかと思います。そういうことで、あと資源の確保としては、どこか一カ所だけでなしに、いろいろな多方面の資源を考えまして、それから入手できそうな時期、量、それから日本国内プルトニウムみたいにいずれは再処理してつくられるものも出てまいりますから、そういうものの時期的な関係も考えまして、またそれぞれの燃料資源の種類に合ったような炉型もございますから、その辺を検討して、上手にいろいろな資源を使いこなして、貴重な海外資源を、国内にない資源を外国から持ってくるわけでございますから、なるべく手に入れた資源を有効に利用できるような方法を考える、そういう方向で努力するのがいいんじゃないかと考えるわけでございます。
  26. 帆足計

    ○帆足委員 ありがとうございました。  その次には、原料の購入費、非常なばく大な金額になると思います。その価格のきめ方、一年ごとにまた技術も進歩してまいりましょうから、そういうことはいずれ政府当局から伺いますけれども、原料の購入の価格は、経営は幾つかに分立しておりまして、互いに競争し合って値段がつり上がるというようなことでは困りますので、原料購入の方法につきまして、専門家として御注意の点がありましたら、垣花教授にお伺いしたいと思います。
  27. 垣花秀武

    垣花参考人 私、先ほどの三島教授のあれにちょっと補足がてらお話しいたします。  まず、原料と申ますと、現在、現実の原料は天然ウランでございますけれども、実はそれ以上にそれを濃縮するという技術が重大なわけでございまして、核燃料という問題を考えますと、天然ウラン確保ということと、いかにして濃縮されたウランを獲得するか、あるいは濃縮技術を確立するか、そういう二つの問題があるわけでございます。そして天然ウランは現在のところある程度フリーマーケットでございます。これは先ほど帆足先生もお話をなさいましたわけでございますけれども、第二次大戦がもたらしました経済的効果の非常に大きなものの一つとして、原料市場が比較的自由化したということがあると思います。すなわち、それは植民地というものがなくなりまして、そういう形で自由化した。鉄鋼の問題などもお話しになっておられましたけれども、一般的に申しまして、そういう原料市場はかなり自由である。しかしながら、天然ウランははたして自由であるかということは、現時点ではかなり自由であるけれども、将来は問題が出てくる。ただ、非常によろしいことには、天然ウラン世界じゅうに分布しておりまして、必ずしも一国に偏在していない。そういう意味で、適当な措置をとれば、必ずしもいま大あわてでここで大きな国家資金を投資したりする必要はなかろうと思います。ただし、全体的に申しますと、売り手市場にだんだんなっていく傾向がございますので、大きな国家的な見地から、全体のバランスをとりながら、次第に天然ウランの市場というものを確保していかなければならない、そういうふうに思います。  それから二番目の——ちょっと御質問にはずれるかもしれませんけれども濃縮ウラン費あるいは濃縮ウランにするその加工賃、濃縮するための賃ですね。これは実は全燃料費の三分の一近い三〇%ばかりの額でございます。それから、原子炉を一基建設いたしまして、それを動かす。その動かします場合に、長期運転します場合、燃料が占めますあれが大体五〇%である。したがいまして、二分の一かける三分の一というのは濃縮ウラン費である。したがいまして、今後日本が非常に大きなエネルギーのあれとして原子力開発し、しかもそれが現在のアメリカの炉型でございますと、一基建設するごとに、その三分の一かける二分の一、六分の一というものがウランを濃縮するところにいってしまう。現状はそれがアメリカである。それでもこの想定によりますれば大体来ることになっておりますけれども、それは非常にいろいろな問題がありますので、そこらあたりを多元化したらよかろう。あるいはできることならば日本でそういう独自な技術と申しますか、日本でも部分的には濃縮できるようなところまで技術的に開発をはかったらよかろう、そういうふうに私は思っております。
  28. 帆足計

    ○帆足委員 非常に参考になりました。時間がありませんから、私の御質問はもう要綱だけにして、ただお答えを承ってよく参考にいたしたいと思います。  次に、関西電力社長加藤さんにお伺いいたしたいのでございますが、原子力発電に必要な技術力、資力等につきまして、私ども身近でございますから、東京電力関西電力、中部電力、皆さまの経営などよく存じておりますが、他の電力会社が決して弱体などと申すわけではございません。しかし、原子力発電は、非常に大きな設備になればコストが安くなると伺っておりますので、あまり数が多いと過当競争になりはしないかというしろうと考えでございます。または技術者の数が足りなくて奪い合いになりはしないであろうかなどということ——もちろん、自由競争というものは非常な刺激になりますけれども、過当競争は弊害を生みますので、需要と供給の調整がこの過渡期には必要であろうと存じます。青木賢一君から御指摘になりました点も、公共性、国家性を持たせねばならぬ、また目標を持って自分たちも勉強をしてまいりたいというお考えでございました。したがいまして、過当競争になったり設備増になったり技術者不足になったりするような心配はないか。また、立地条件につきまして、アースクウェークとかまたは軍事基地とか飛行機の墜落とか、そういう危険につきまして、専門家としてどういう御注意が必要か。ただいま理事から時間の御注意がありましたから、あとはもう一問いたしますので、とりあえずそれを伺います。  それからついでに、金融の問題につきまして、これは長期の低利の金融が必要と思いますが、皆さまの合理的な御要請は十分に通っておるかどうか、伺っておきたいと思います。
  29. 加藤博見

    加藤参考人 中央三社以外の電力会社原子力開発のお話でございますが、これは三社に引き続きまして、各電力会社においてそれぞれ計画をいたしておりまして、逐次他の六電力原子力発電をやっていくと思います。  それから次の御質問の、原子力発電というものは、非常に大型でないとメリットがないということは御指摘のとおりでございまして、火力発電に比べると大きなユニット、たとえば一基五十万、七十万、百万といったような大きなユニットにしないとメリットがないということでございますので、中央三社はもちろんでございますが、地方の各社においても、火力に比べると比較的大きなユニットを建設するということになると思います。その場合に一番問題になりますのは、先ほど齋藤先生からもちょっとお話に触れられましたが、広域運営の問題でございまして、一基つくりましたときに、その年にはその電力会社の区域ではその電力が消費し切れないという問題が出てくると思います。その場合に、われわれとしては広域運営のルールを使いまして、その年にその会社で余った電気はその隣接の会社がそれを一緒になって消化してやるということを融通契約等でやる、つまり、輪番開発とわれわれは言うておりますが、そういう輪番開発ということを趣旨にして、この大きなユニットのメリットは九社全体で吸収していくというような広域運営協定のもとにそういうものをやっていきたい、そういうふうに考えております。  それから技術者の問題でございますが、御承知のとおり、原子力発電所建設は火力発電所建設に非常に似ていて、タービン発電機の部門は火力と全く同じでございますし、原子炉自身にしても、最初一、二基やりますればそれがなれてきまして、一応技術者の養成もできるということで、火力は御承知のとおりこの十数年間全国的に非常な発展をいたしまして、火力発電所技術者は各社とも十分おりますので、こういう人を補足しながら原子力プロパー技術者を養成していけば、決していまの発電計画に対して間に合わぬことではないというふうに思っております。  それから立地の問題、これは御指摘のとおり非常にむずかしい問題でございまして、われわれとしては、地元関係に御満足のいくように、地元関係の説得ということを主にいたしまして、また地方の府県の方々にも応援を願いまして、適地を求めているわけでございまして、われわれの会社なんかは、一カ所にとどまらず、数カ所の候補地をいま手がけておるようなわけでございまして、将来とも非常に慎重にやりたいというふうに考えております。  それから金融の問題でございますが、これは御承知のとおり、建設費がやはり火力の大体二倍くらいかかります。しかし、水力に比べますと六、七掛けのもので済みますので、水力に比べると建設費は安いのでございます。火力に比べると倍ほどの資金が必要でございますが、現在におきましては、だんだん水力は減らして、こういう原子力というようなものに取り組みたいと思っておりますので、発電に関する限りは、火力に比べると金融は相当むずかしいのでございますが、現在の電気事業者の内容によって、資金を集めるということは大体できるんじゃないかというふうに考えております。
  30. 帆足計

    ○帆足委員 御注意がございましたから、約束を守りまして、これが最後の質問でございます。  私どもは、このたびの協定を審議するにあたりまして、初めて大いに啓蒙されました。みずから外務委員会理事をつとめさせていただいておりながら、全く事情を知らなかったのでございます。したがいまして、電気事業連合会等におきましては、今後国民に対するPRのことを十分お考えくださいますように加藤社長にお願いいたします。私どもは、これほどの大きなエネルギー革命が進行途上にあることの認識がたいへん薄うございました。  それから最後に、青木賢一君に、これは加藤さんへの質問と関連いたしまして、お尋ねというよりも、私も同じような確信を持っていることを一言申し上げます。  昨日、私は、大化の改新のあの偉大な時代の大仏開眼を体験しようと奈良に参りまして、恵まれた一日を送りましたが、その奈良の大仏さまのところで交通安全の守り札を売っております。奈良の大仏と交通安全がどういう因果関係にあるのか。交通安全が必要ならば、立体交差へでももっと予算を回したらどうであろうか。子供の事故死が小児の死亡率の四五%、聞くも涙、語るも涙、そのほうの予算に回したほうがよろしいのであります。交通安全のお守りを売っておりますのは、マルチン・ルーテルが批判した、ローマ法王が免罪符を売っていた風景によく似ていると思いまして、これは詐欺罪として告発したらどうであろうかと思いましたけれども、人の心に触れる問題でありますから、非常な印象を受けました。  ある二十階建てのビルの落成式に参りましたら、上においなりさんが祭ってあります。なぜかと申しますと、火事を防止するためにということでございましたが、火災を防止するためならば、もっと科学的方法に、またその訓練に資金をお入れになったらどうであろうか、おいなりさんにたよるような心がけでは火事を防ぐことはできないであろうと私は社長さんに申しました。  時代はこのような過渡期でございますから、せっかく合理的に——すなわち、政治はまだ合理的になっていないし、社会も合理的になっていないし、人の心も合理的になっていない諸条件の中で、皆さんが従業員を訓練され、文化活動をなされ、そして良心的な経営者と責任感のある従業員がよく協力をなされ、技術者もまた政治に対してどんどん不平を言っていただきたい、こういう気持ちでございますから、青木賢一君の最初の御意見は決してむだでなかったと感銘して拝聴したということを申し上げまして、以上で私の質問を終わります。
  31. 秋田大助

  32. 石川次夫

    石川委員 原子力の問題は、世界的に、国内政治、国際政治を通じてたいへん重要な問題になっておろうと思うのでありますけれども、きょうは、意見を申し上げるのは、あとの外務委員会と科学技術振興対策特別委員会の連合審査会のときに申し上げることにいたしまして、一つだけ申し上げたいのは、EECが生まれた根拠というのは、低開発国と提携するよりは、高度に成長した相手国同士で貿易を盛んにすることのほうがよいという経済の論理に支配されてEECが生まれたことはわかりますけれども、それとあと一つの理由は、やはりアメリカに対抗するという意味もあるでありましょうけれども、ヨーロッパの一国だけで原子力の研究はできない、やはりヨーロッパが全部力を合わせなきゃできぬということでユーラトムが生まれ、この原子力開発ということを中心としてEECというものが生まれた、いわば原子力が国境を突破したというような、非常に大きな意義を持っているのではないかと思うのです。  今度の原子力協定を見ますと、いろいろなところで問題がありますけれども、単純に、まず第一に青木参考人に御質問申し上げたいのであります。  青木参考人は、民有ベースになったことは一つの進歩だ、こういうことをおっしゃいました。私も、これを国有国営にすることは非常な困難性もあるし、経済的にも財政的にもなかなか容易ではなかろうというような実際的な問題もあろうかと思いますけれども、この原子力協定の相手方のアメリカのほうは窓口は一本なんです。アメリカ原子力委員会でやり、日本のほうは全部民間でやるということになりますと、非常に原子力開発についてばらばらになっていくというような危険性も多いのではなかろうかという感じがしないわけでもありません。電力会社関係では、この原子力発電に即応して広域管理をやろうではないかというようなことも新聞で散見されております。いずれにいたしましても、この原子力開発民間ベースで相互協定をしてしまうということには、あとでまたあらためて質問したいと思っておりますけれども、相当問題があるのではなかろうか。したがって、この管理を統一的にやっていくということのためには、一つの方法としては、日本原子力委員会というものが窓口になるというような考え方もあっていいのではないか。したがって、単純に民間ベースになったからベターであるというふうに考えていいかどうかについては、相当疑問があると思っておるのでありますが、その点についての御見解を伺いたいと思うのであります。
  33. 青木賢一

    青木参考人 確かに、アメリカAEC、こちらのほうは電力会社であろうと政府であろうとそれはかまわないという形になっておりますが、民間ベースでいっていいか悪いかという問題なんですけれども、われわれは、民間ベースでやった場合のよい点を——先ほど帆足先生も申しておられましたように、企業努力もするだろうし、自由な競争をすることによっていろいろと促進される面がある。一つには、そういうような点でこれには賛成をしておるわけです。たまたまアメリカAECという窓口一本化であるから、わが国もそうしたほうがいいではないかという御指摘ですけれども、案として、わが国原子力委員会が窓口になったらいいではないかということは、いま直ちに言えないのです。ただ、今後九社それぞれの立場原子力開発を手がけていく場合に、サイクルの問題も考えなければいけないだろうし、効果的な日本全体の国民経済的な観点に立った購入というようなことも考えなければならないでしょうから、その購入方法については、やはり一本化された管理というか、体制のもとで行なわれるほうが望ましいということは、いまの段階で言えると思います。ただ、原子力委員会がそれに当たるのがいいかどうかということについてはちょっとわかりませんけれども、一本化された形でいくほうがわが国の場合いいだろうということは言えます。
  34. 石川次夫

    石川委員 これはまたあとで質問いたしますけれども、実は安全性の問題との関係があるのです。これからどういう原子力開発していくかということについて、やはり国全体の体制でその方向を見きわめながらやっていくということにしなければならぬということになりますと、いま青木参考人が言われておるように、ばらばらに直接交渉するということであってはならないのではないかという危険性を、今度のこの原子力協定でもって痛感をするわけでありますが、それは、意見はあとにいたします。  それから、加藤参考人にお伺いいたしたいのでありますけれども、先ほど来、核燃料物質の供給源をどうするかということで、この原子力協定によりますと、まるきりアメリカ賃濃縮に依存をするかっこうになっておりますけれどもアメリカ自体が実際問題として、この原料の生産能力はどうなっておるかということを考えますと、これはいろいろ見方もあるでございましょうけれども、おそらく一九七三年ごろになれば、もう原料の生産というのは満度になる。限度に来てしまう。アメリカ自体がほかから購入しなければならぬということになるのは、現在の数字からいうとそういう結果になっておるわけであります。したがって、濃縮ウランのその能力は確かにあるでしょう。百六十トンの能力はあるでしょう。しかし、原料生産の能力は、アメリカ自体が行き詰まることはもう明らかなんです。世界の半分ぐらいのウランを持っているとはいいながら、アメリカ現状からいきますと、そういう限度になるのではないかというように考えておりますけれども加藤参考人はそのことにはいま直接は触れておりませんけれども、充足されるから非常にこの原子力協定は満足であるということで、アメリカとの原子力協定について積極的な賛意を表されておりますけれども日本では、この原料のほうの探鉱問題ですか、金属鉱物探鉱促進事業団というものに依存をいたしまして、自分でほんとうに真剣に原料というもの、天然ウランというものを持ってきて、自分のところで濃縮をするのだという熱意は全くないという点で、今度の原子力協定だけで安閑としてよいのかどうかという疑問を持つわけです。それで、ひとつ伺いたいのは、アメリカの生産力で、アメリカが自分のところで探鉱をして、採掘をして、製錬をして、濃縮をして日本のほうに提供できる能力は一体何年ごろまで続くというお見通しを持っておられますか。
  35. 加藤博見

    加藤参考人 御注意のとおりでございまして、この燃料の問題は、その鉱石をどこから買うか、どうして獲得するかという問題、それから転換の問題、それから濃縮の問題それを成型加工する問題、そういういろいろな段階があるのでございまして、そのうち、できるだけ日本燃料サイクルを確立する、さっき三島先生もおっしゃいましたように、そういうのが望ましいということでございますが、遺憾ながら、いまのところは、それがすぐには実現しないということでございますのと、初めのウランという鉱石が日本にほとんど——人形峠に多少ございますけれども、量としては確保できないということでございますので、鉱石の確保に関しましては、ここ十年ぐらいの手配を一応いたしまして、その鉱石を転換工場に持っていき、それからアメリカAECに濃縮をお願いして、日本の成型加工はとりあえずしばらくはアメリカでございますけれども日本に成型加工工場ができれば、そこへだんだんお願いをして成型加工していこうというのがわれわれの燃料供給計画に対する大体の心づもりでございます。  いま御指摘の、アメリカAEC原子力濃縮の設備がどのくらいあって、いつごろ不足してくるかという問題は、これはアメリカ全体、いな世界全体の濃縮ウランの需要と、それからアメリカ及びイギリスにおける濃縮の設備の量によってきまるわけでございまして、これは私、はっきりはつかんでおりませんけれども、いま先生の御指摘のとおり、一九七三年あるいは七五年ごろになると、現在の設備では不足してくるのではないかということに聞いております。したがいまして、アメリカとしても、これは何か考えるのではないかと思いますが、日本として、先般来、この問題について原子力委員会を中心にして核燃料懇談会というものを開きまして、いろいろ濃縮を国でやるかどうか、国内でこれをひとつやるべきじゃないかという意見が出ております。したがいまして、昭和五十年くらいまでにその研究開発を十分やってみよう、どういう濃縮方法が日本としては好ましいかという研究開発をやって、そしてその段階において、アメリカが増設をやらないのであれば、日本においてその濃縮の設備をつくり、ひとつ日本で工業化することもいまから研究してみたらどうかという意見が出ております。したがいまして、われわれとしては、この濃縮ウランが、日本原子力発電発展に沿うて濃縮設備がある程度できることを期待しておるわけでございまして、そういうようなことで、先生の御質問のお答えにならなかったかもしれませんが、われわれ自身として電力会社がこれをやるということはとても経済的に引き合いませんので、他力本願ではございますが、アメリカ並びに諸外国、それから日本国内においてこれが実現できればという期待を持っておるわけでございます。
  36. 石川次夫

    石川委員 濃縮の設備としては、アメリカは十分あると思うのですよ。原料が乏しい。そういう点で、原料をどうするかという問題が非常に重要な問題になってくる。濃縮の問題はあとでまた触れますけれども……。そこで、日本では、先ほど申し上げたように、金属鉱物探鉱促進事業団というところに依存をしておりますけれども、これは鉛と亜鉛しかやっていないのです。ウランなんというのは全然のしろうとです。非常にへっぴり腰で、本格的に自給自足の体制をつくろうということになっておらぬという点で、非常に問題があるのじゃなかろうか。アメリカ自体、大体一九七三年で原料はもう自分のところでも足りない、ほかから輸入しなければならぬという体制になっておるということですね。そのときに、日本は、アメリカとの原子力協定ができたから、何かもう全部濃縮ウランアメリカから来るのだというふうな安易感を持たせては非常にまずいのじゃないかという点の問題があると思うのです。それはあとでた数字その他については申し上げたいと思います。  それから、垣花先生にちょっとお伺いしたいと思うのですが、実はこの原子力協定の中の査察の問題をちょっと調べてみました。核防条約よりもきびしいのです。核防条約でありますと、被査察国の合意が必要であるというのだけれども、これは合意が必要でないのです。一方的に査察員を指名するという権利を持ち、日本はこれを承認するというかっこうをとっておるということが一つと、それから査察をする対象が核防条約よりもっと広範囲なんです。そういう点で、私は、この原子力協定は非常に屈辱的なものだと思う。そういう点では非常に私は問題があると思います。それは別にあとでお話をいたしますけれども……。  それで、私は、一つの提案として、低濃縮のウランというのは軍用には使えないと思うのです。垣花さんにこれはひとつ確かめておきたいと思うのでありますけれども、高濃縮のウランが、一部は高速増殖炉というものについて添加剤として必要だということはいえますけれども、高濃縮のものについての査察というものは相当しっかりやらなければならぬという問題が出てくる。そういう点で、低濃縮と高濃縮を今度は一本にして核防条約なんかでやることになっておりますが、この低濃縮のものについての査察というものはそう必要ないのじゃないか。これは軍事機密につながることはないだろう。工業秘密をとられるという危険性はあるけれども、軍事機密ということにはつながらないという点で、高濃縮のものあるいは高濃縮のプラント、そういうものについては相当腰を据えてやる必要があるのじゃなかろうかというふうに思っておりますけれども、この点について垣花先生の御所見を伺いたい。
  37. 垣花秀武

    垣花参考人 まさにたいへんごりっぱな御指摘だと思います。現時点では、二〇%、二三五ぐらいまでは平和利用のみと考えてよろしいのじゃなかろうかと思います。もちろん、兵器というものもどんどん進歩する可能性がございますので、長期的に考えますと何か起こるかもしれませんけれども、しかしながら、起こったとしてもそれは有効な兵器ではない。したがいまして、ほんとうに軍事目的というものを防衛するための措置でございましたらば、二〇%以下のものは、本来は査察の対象にならなくてよいのではなかろうか、技術的にはそういうふうに思います。プルトニウムに関しましては、これは少し余談になりますけれども、これは完全に原爆に使いやすいものでございますから、査察の対象になると思います。  以上でございます。
  38. 石川次夫

    石川委員 まことに私も同感だと思うのであります。十ぱ一からげで、低濃縮のものにまでそういう厳重な査察をする必要は毛頭ない、こういう点で、核防条約についても、この原子力協定に基づくところの査察についても、非常に問題がある、こういう点を一応この段階では指摘をしておきたいと思います。  それから、核濃縮の問題でありますけれども、実はアメリカで毎年二十億円ぐらい注ぎ込んでシャーウッド計画というのをやっておる。核融合——核融合ができれば、先ほど海水の問題が出ましたけれども、海水全体が石油になるほどの原動力になるわけであります。これができればエネルギー問題は解消するということでありましたけれども、結局シャーウッド計画というのは中央突破できないということで、プラズマの本体の解明に戻るという基礎研究のほうにアメリカは戻っております。そういうことで、日本でも濃縮の技術としてはガス拡散法というのがありますけれども、軍用を持たない日本でガス拡散法をやるということになると、相当高いものにつくのではないか。軍用があるから、アメリカでは、大量生産によってガス拡散法というものがある程度価格を下げることができるということがいえるかもしれないけれども、そうすると、日本で考えられるのは一体何か。遠心分離法あるいはノズル法というのが西ドイツでできておりますが、遠心分離法は日本で発表しようとしたところが、発表をアメリカから差しとめられたというふうな奇怪な事件が一つありましたけれども、遠心分離法という方法もある。それから垣花先生がおやりになっておるような化学分離法というものもあるわけです。そういう技術をやるにつけても、日本の基礎研究の予算というものは、この核濃縮の問題に限りませんけれども、全部ひっくるめてやはりこれは基礎的なものから出発をしなければ、日本ではとうてい核濃縮の技術を成功させることは不可能である。そういうときに、日本の科学研究費それ自体を見てもわずかに五十億円です。未開国よりも少ないのじゃないかと私は痛感をしております。基礎研究の体制をつくらないで、いきなりビッグサイエンスに関連したものだけを取り上げていこうと思っても、これは砂上の楼閣になってしまうという気がしてしかたがないのであります。そういう点で、日本の核濃縮の技術というものを育てるために、これは全体的な基礎研究ということもありますけれども、一体どういう形で進めたほうがいいのかという点について、垣花先生三島先生に、御意見があればひとつ伺いたいと思います。
  39. 垣花秀武

    垣花参考人 お答えいたします。  その前に、日本と同じような状態にございます西独のあれを参考のためにちょっとお話ししたいと思います。  御存じのとおり、今後の原子力開発の基礎は、濃縮ウランを自由な手で持っているか持っていないかということにたいへんかかっております。現在最も安くしかも豊富にそれを生産しております国は米国とソ連、そして小規模で高く生産しております国がフランスと英国、おそらく中国もその中に入ると思います。そういう状態でございまして、いずれもガス拡散法によって事を処理しております。イギリスとフランスの場合は、明らかに高い濃縮ウランを自国でつくりながら、それで、ある程度輸入する価格を自分のほうに有利にするためにやっている。同時に、イギリスの場合のごときは、自分のつくった炉を外国に輸出する場合には、その自分でつくった濃縮ウランをチャージしてやる、協定にもございます。そういうような形で自国の産業防衛上に使っております。そしてそれを将来アメリカと価格をコンパラティブにするためにどういう措置を講じておるかと申しますと、フランスなどの場合は、ヨーロッパ全体をひっくるめまして生産工場をつくる、そういうことを考えております。そのことの意味は、ガス拡散プラントは規模が大きくないと安いものができない、一国だけの規模ではぐあいが悪い、したがいまして、どうしても大きな経済圏を含んだプラントをつくらなければならない、そういうふうな見地でやっております。西独と日本の場合は、御存じのとおり、先ほどちょっと申しましたけれども、出発の初期に核分裂物質を持ち得ないというハンディキャップがございましたので、体制が非常におくれておりまして、どのグループにも属さずに何とかして安定輸入しようというのが現状でございますけれども、西独の場合は、非常に広範に基礎研究をやっておりまして、そしてその成果が時々刻々出ている、そういうことでございます。全然日本のように本格的な濃縮研究というものをしてないのではございませんで、たいへんやっておる。そのいろいろな結論として、たとえば七、八年前には遠心分離機について非常にいい結果が得られた。ごく最近はノズル法について得られた。そういうふうな氷山の一角のごとき研究成果が出ますけれども、それをささえる基礎研究が非常に長期的に行なわれている、そういうわけでございます。したがいまして、それなどを参考にいたしまして日本現状を考えますと、非常に不利ではございますけれども一つ有利な点がある。ということは、大体一九七五年ぐらいまでは濃縮ウランというものは必ずしも不安定ではない、アメリカにおいて十分供給し得る能力がある。供給せねばアメリカ産業が興らない、原子力製造産業が興らない。したがいまして、七五年ごろまではわれわれは何もつくらなくてもよろしい、むしろ、七五年ごろまでに急速に基礎研究を行ないまして、そしてでき得べくんば小規模であっても十分科学的に競争できるような新技術開発する。もしそれが不成功に終わった暁は、ガス拡散プラントでも小規模につくるか、あるいは大きな経済圏を考えまして、何らかの形で少し規模の大きいものをつくる、そういうような措置が必要かと思います。いずれにいたしましても、先生が御指摘のとおり、現段階は、ことにウラン濃縮に関しましては、プロジェクトに問題をしぼってかけるというのではなくて、時間がございますので、基礎的な研究を広範にしかも正確に優秀な技術者を集合させてやるという段階ではなかろうかと思います。  以上でございます。
  40. 三島良績

    三島参考人 濃縮ウランは、垣花先生が御専門でございますので、私は、直接濃縮のやり方について特に申し上げることはございませんけれども、基礎研究が非常に大事であるということを御指摘がございましたので、それに関しましてちょっと申し上げたいと思うのです。  非常に原子力発電計画が伸びまして、どんどんあちらこちらに発電所ができますし、新しい動力炉開発のプロジェクトも計画されて、大きな国家資金を投じて進むことになったわけでございますけれども原子力というのは、まだこれから非常に発展する技術でございますので、どういう部門が将来発展し、ものになるかというのが、まだわからない点が幾つかあると思います。基礎的な研究をするというほうに対して、御指摘のとおりできるだけ力を入れていただきたいと思うわけでございます。濃縮の話もそうでございますし、これから開発する高速炉の話もそうでございますけれども、目先にメリットの出てくるものにとかく予算が集中しがちでございます。やはり、もう少し長い目で見ていただいて、できるだけ基礎研究に予算をさく、そういう関係者のいわゆる選手層を厚くしていただかないと、いざというときになって、やはり日本技術が海外に負けないように活躍をするのに準備が不足になるおそれがあると思います。ぜひそのような御配慮をいただくことはたいへんけっこうだと思います。
  41. 石川次夫

    石川委員 あと一つだけ御質問申し上げます。  いまのお話もっともで、一九七五年までは日本は大体安心しておられると思いますけれども、七三年から七五年になると、どうしても原料を自分で加工しなければならぬという羽目になるのに対して、核濃縮の技術も非常におくれておる。海外探鉱の面もまるっきりやってないにひとしいような状態、これで一体日本の将来のエネルギーをどうするかという、きわめて重大な段階である認識をひとつ政府が持っておるかどうかという点、非常に私は不安です。そういう点で、いまのそういうものをやるにいたしましても、核濃縮の技術なんかも、結局は一九七五年に何とかできるという、これは半自給体制をつくるというふうな目標をつくるにいたしましても、何としても基礎研究の予算が足りない、基礎研究に立ち戻ってやらなければならない。日本政府はどうも国威宣揚が好きで、ビッグサイエンスみたいなものに取り組むことは、やろうとする意欲はあります。予算は十分じゃありませんが、これは外国に比べたら問題にならぬけれども、意欲はある。動燃団というものもそのためにできたわけでありますけれども、基礎研究のほうがおろそかになっておるという一つの顕著な例としては、先ほど青木参考人が言われましたけれども原子力研究所というものが基礎研究を全国的に集約して行なっておるわけです。ところが、ことしの原子力研究所の予算が一体どうなっておるか、全然ふえておりません。それどころか、JMTRに人を供出するということで、JMTRへは四十名、大洗のほうに十七名、高崎へ四名、原子力研究所から人が出るわけです。したがって、この基礎研究を確立するということのために、それだけ人をふやさなければならないわけです。新しいテーマとしてそこへ人が行ってしまう。それをかってに当局のほうでは研究テーマをどんどんつくりかえておる。せっかく自分が心血を注いでやっておる研究のテーマをどんどん切りかえる。人間は一つもふえておりません。こんな体制で動燃団のほうにだけ力を入れるような——力を入れておるといっても十分だとは思いませんけれども、そういう体制で一体日本原子力開発ができるのかどうかという点は、まことに私は寒心にたえない。聞くところによりますと、原研は赤だということで、原研を追い詰めろというような意欲の人も多分に政府のほうにある。その一つの例としては、JRR1は廃止をするとか、JRR2のほうから三名供出する、JRR3からは四名供出する、ウラン二三五の化学的分離の研究なんかは取りやめるというようなことで、原子力研究所のずいぶん思い切った削減をやっておる。そういうふうな体制で、原子力に関する基礎的な研究というものに十分な理解と意欲を持っているかどうかという点については、相当私は疑問だと思います。その赤だという——科学研究というのは、何も研究の成果に赤い色や白い色がついているわけではないのですよ。だから、思想がおかしいからだめだというふうな考え方で、日本の科学が一体発達するかどうかという点について非常な疑問がある。その一つの顕著な例は、これはいずれ科学振興対策特別委員会のほうで申し上げたいと思っておりますけれども、JRRIでいろいろな研修生の研修をやる。そこに代表的な先生がみんなついて、研修でもって、全国から集まっている人たちにいろいろなことを考えているわけですね。その中で、現在の労働組合委員長、前の委員長、その前の委員長、三人は今度はずされました。これは全部その会の代表者です。この人たちがどうも労働組合委員長をやっていたものだから研修生の先生になることは不適当だということで、全部はずした。こんなやり方で一体日本の基礎的な研究というものが進むかどうかという点について、私は非常な疑問を感じないわけにはいかぬわけです。そういう点で、青木さんが先ほど来申されたようなことも、その意味も含まれてあったのではないか、こう思うのでありますけれども、そういう点で、原子力研究所というものをいま少し拡充強化をして、そこから基礎的な原子力の研究を出発させるのだという意欲が全然見られない、これでは日本原子力の研究というものは砂上の楼閣にすぎない、こういうことを痛感をするわけであります。その点で御意見があれば、青木さんはじめ、ひとつ伺いたいと思うのです。
  42. 青木賢一

    青木参考人 ただいま石川先生の御指摘になった点、同感です。先ほど齋藤先生からそういった点に関連して質問があって、私もちょっと抽象的な答弁をしたわけですけれども、高速炉の開発ということ、それから新型転換炉開発、そもそも私どもは、この事業団をつくる必要があったのかどうかという疑問すら持っておるわけなんです。私どもは、先ほどちょっと言いましたけれども、高速炉の開発については私どもなりの意見を持っているということを申しましたけれども、高速炉の開発については、先ほど齋藤先生もおっしゃられましたように、昭和三十七年に、原研の目標をそこに合わせるというような申し合わせができているわけですから、ここできちっとさせるような方策をとらなかったのかどうか、新型転換炉については省略しますけれども、そういうことについて、先回の事業団法の成立に際しての説明は、プロトタイプをつくるのだから、現在の原研法ではぐあいが悪いとか、官民協力を要請するために現在の原研では機構上できないとか、いろいろな理由を述べられておりましたけれども、しかし、そもそもそういうことを原研でやらせようということをかつてきめておったわけだし、第一、最近の段階においても、原研において新型転換炉の五十万キロくらいなやつをつくらせようかというような話すら、この法律の番人である役所の人たちすら考えていたのですから、原研法でこれができないとかなんとかということはほんとうはなかったはずなんです。それがどういういきさつか、先ほど石川先生の言われたような理由だろうと思うのですけれども、いろいろないきさつによってそれができなくなった。そしていまの実情は、先ほど御指摘のとおりであります。そこで、われわれが考えるのに、例は非常にまずいのでお許しいただきたいと思うのですけれども、われわれは時代の先端を行く科学技術を担当する労働者として前途洋々たるものである、これはいわば、たとえれば将棋だと思うのです。われわれは将棋盤の上には常に乗っかっておるのです。そこでこまを組みかえて将棋をさす。これを進めていくときに、途中でちょっと調子が悪くなると、勝負がつかないうちにやりかえてしまう、そしてもう一ぺん同じ将棋盤の上でこまを並びかえられて、もう一ぺんやり直しをさせる、いわばこういうような状態ですから、いつも盤の上には乗っかっておる。つまり、原子力をやっているのだから、それは前途洋々だ。しかし、われわれはどういう方向で進めるのかということになると、これは非常に問題になってくる。つまり、へぼ将棋を何回やりかえたって、へぼ将棋はへぼ将棋だと思うのです。やはりどうしてそこがへぼであるかということをまじめに検討しない、そこらあたりに非常に大きな問題があるのじゃないか。先ほど石川先生御指摘のとおり、赤とかなんとかというような問題もあったやに私ども聞いておりますけれども、どっちにしても、こういう状態に持っていかされたのは、ぼくはやはり政府に大きな責任がある、こういうぐあいに考えます。たとえば当社の炉の導入に際して、当時の国会の論議などを見てみますと、この炉は絶対に経済性が確立されますということを政府人たちは言っておるのです。それに対して民社党の佐々木良作議員が、経済的にいったらわしは腹を切ってもいい、こういうかまえであのとき話ししたけれども、絶対にいきますというふうに言い切っていたわけですね。しかし、今日の状態を見て、こういう状態に追い込まれたのは、これをやっておった原電がまずかったのだみたいなことで、そういうふうに言い切っておった役所の人たちは、これは責任をとらされぬでいいような状態になっておる。こういうようなことですから、たとえば原研の問題にしても、いろいろ問題があるとすれば、なぜそういうことになったのか、どうしてそういうふうな状況になったのかということを、そういう責任をとるとらないというような非常に深刻な段階でやはり検討をされるようにしなければ、これは赤かどうか知りませんけれども、ともかくこういう状態がいつまでも続くのではないかというふうにぼくは思います。かりに赤というようなものがあったとしても、政府にきちっとしたかまえがあれば、これは組織的に解決すべき問題であって、機構をいじくって赤を追放しようとかなんとかしても、これはできない問題ですよ。組織的に解決する、こういうかまえを政府が持たなければ、いつまでたっても正しい意味での発展は期待し得ないだろう、こういうぐあいに思うのです。
  43. 石川次夫

    石川委員 ほかの先生何かございますか。青木さんありがとうございました。  はっきり申し上げますと、原研理事は、自民党の某氏から相当強力な圧力をかけられておる、やむを得ずやっているのだということを言明しているのです。これは原子力の基礎的な研究を拡充するという点からまことにまずい、こういう点をはっきりこの機会に申し上げておきたいと思います。そういうことで、この人たちは、この研修所の先生をやっていながら思想教育をやっておるという実績があれば、あるいはそういう方法もいいでしょうけれども、何もそんなこと、これっぱかりも、みじんもそういうことを言っていないということを私は信じております。そういう点で、原子力研究所が協力をしなければ、動力炉開発事業団というものは出発しても成功できない、どう考えても成功できない。ところが、いまのような形でどんどん追い詰めていきますと、協力するという意欲がわいていないというのが厳然たる事実です。これを何とか解決しないというと、動力炉開発事業団というものは、軌道に乗せようと思ってもこの研究は軌道に乗らない、こういう点を私は非常に心配をして、あえて申し上げておきたいと思います。  それから、先ほど申しおくれたので、ちょっと青木さんに申し上げておきますが、原子力委員会がこの炉の導入について管理をするということは、ほんとうの私の思いつきでありますけれども原子力発電会社があるわけですね。こういうところで一応管理ができないか。せっかくそのためにできた……。それで、各九電力は経済力が相当違います。経済力が違って、経済力のあるところだけは進めていくというふうなことでは、ますます格差を広げていくということで、やはり原子力発電会社というものがあるわけですから、そういうところが中心になって統一し、どういう炉を持っていくか、どういう炉を持ってくれば安全性が確保できるかということを考えながら、やはり統一的な購入方法を考えていかなければならぬ。いまのように九電力でばらばらにわれ勝ちに買うということは、安全性の上からきわめて問題が出てくるのではないか、こういう心配がされてならないわけであります。  それから、あと一つ意見として申し上げておきますが、原料の探鉱の問題でありますけれども、多面的に買うということを垣花先生おっしゃいました。ところが、南アフリカは、アフリカとの貿易の関係で、人種差別の問題があって、南アフリカにウラン鉱があることはわかっておりますけれども、こことの貿易は、なかなか困難な事情があります。こことやれば、ほかのほうとの取引が停止をされるという政治的な問題がからんでおります。そうすると、オーストラリアあるいはインドという問題が出てきますが、オーストラリアもインドも輸出はいたしません。国の方針として、その原料というものは自分の国のエネルギー源として大事に確保するというかまえになっておる。したがって、よほどこれは真剣にいまから取り組まないと、とんだ立ちおくれを来たすということを非常に心配しております。意見として若干つけ加えて、あとは、こまかい点については午後の連合審査会でまた質問したいと思います。  ありがとうございました。
  44. 秋田大助

    秋田委員長 曽祢益君。
  45. 曾禰益

    ○曽祢委員 私は、ほんとう参考人の方々にそれぞれお伺いしたいのでありますけれども、本委員会の開会にあたりまして、大体きょうの審議については、われわれ委員側もなるべく協力して、一人十五分くらいでやろうではないかというような申し合わせがありましたが、熱心のあまり、相当すでに各委員が時間をお使いになり、あわせて私のあとにさらに二名の有力な委員が待っておられますので、残念でありますけれども、私は理事の一人として審議に協力促進、こういう意味で、私の発言の時間を非常にカットいたしまして、主として青木参考人に対して、ごく一、二点について伺いたいと思います。  青木参考人の御意見を伺っておりましたが、原電並びに電労連を代表されまして、本件の協定には、これは早期締結すべきである、こういう基本的観点に立ちながら、なおかついろいろな問題点がある、これも指摘されたのであります。特にこの協定により、特にアメリカとの協定によっては、供給ワクがきめられることはいいといたしましても、そのワク内で自由に、たとえば炉の型の変更があった場合にどうするか、そういったような買い付け等の変更が自由にできるかどうか、さらには、AECからの契約を求められた場合の負担がさらに加わらないか、こういう点を明らかにする必要があるということを述べられ、また、これに関連いたしまして、垣花参考人のほうも、こういう点についてやはり濃縮ウラン供給の量と価格の問題がある、これはタイミングの問題があって非常に重要であることを指摘されたのであります。これも私もそのとおりだと思います。  それから青木参考人は、特にこの問題、協定だけに関してではなくて、むしろわが国原子力平和利用について思い切った開発を進める。基本的にはやはりテクノロジー的な観点から言うと、軍事利用平和利用も紙一重というか、あるいは同じなんだ。基本はやはり政治姿勢の問題である。国民の心、政治姿勢といろものが、ほんとうに平和に徹するかいなか、これが一番きめだまなんだ。それがもしぐらつくような政治があるならば、どうしても平和利用そのものについての円満な進展に非常な大きな暗影を投じやせぬかということを心配されておる。残念ながら、そういう心配は要らないとは断言できない。私もその点について憂いを分かつ一人です。  さらに、協定に関連いたしましても、はたして日米のこのきずながこのままでいいのかどうか。今後の政府新型転換炉の研究、あるいは在来炉の中からも、ガス型のドイツ、フランスのものも取り入れて研究したらどうか。さらには、天然ウラン確保についても不十分ではないか。ことにとれが民間ベースに移された場合にその心配を持たれるのも、これも私はごもっともだと思うのです。  それから最後に、外交姿勢並びに政治の問題といたしまして、核防条約に触れて御意見がありました。私もこの点について——この点に関してだけひとつ青木参考人に御質問したいのですけれども、私もこの両協定を研究する場合に、何といってもこの協定の中に、覚え書きにおいて、この協定核防条約との関係に触れておりますし、現実にはいま核防条約のいろいろな大きな問題がありますが、その中で、純粋に政治的な、純粋に軍事的な点を別にすれば、これからの平和利用の場合の一番最大の核防条約の問題は、言うまでもなく、平和利用に関しては、極端にいえば、核兵器保有国と非保有国との間に、さらには非保有国の中でEECとわが国のようなEEC以外の国との間に、あらゆる意味での事実上の不平等関係をつくってはならない。これが現実に、これは必ずしも協定だけできまらない、いわゆる国際原子力機関の現実にやるところの保障措置、簡単にいえば査察、これが燃料物質を追及する査察もありましょうし、それに関連しての施設なりあるいは区域に対する立ち入り検査等の査察がありましょうが、これがはたしてこの点で平等、不平等関係がどうなるかということが、核防条約に関連したこれからの一番最大の重点ではないかとすら私は思っているのですが、そういう意味で私が伺いたいのは、問題の御指摘のとおりだと思うのです。特にこれから核燃料そのもの、あるいは平和利用の炉の施設等々が民有に移されるということは、一つ意味で新しい私企業のイニシアチブを利用してやるので、決してそれ自身悪いとはいえないけれども、何といってもアメリカとの関係で非常に力が弱いというか、非常に圧力を加えられやすいという心配を、これはわれわれも持つし、加えて、私企業に使われる、しかも生産に従事する労働者諸君あるいは技術者諸君が、非常にその点を国がやっている以上に心配するのは、私は当然だと思うのです。そこで、こういう点について心配されるが、現実に、ことに原電の場合には、すでに東海村で、これはイギリス関係ですけれども、一種の経験をされているわけですね。加えて、原電東海村のほうもIAAのほうの査察に移したわけなんです。IAAの現実にこういう点に関する査察の実態等から見て、大いに心配があると思われるのですけれども、それらの実態に触れて、査察があまりにも繁雑であって、先ほど来も石川委員から指摘されたように、たとえばいわゆる低濃縮のウランといいますか、濃縮ウランそのものについては問題じゃないのですけれども、しかし、濃縮ウランをつくって燃やせば、出てくるプルトニウムを追跡しなければならないという形で、やはり査察の問題がこの場合もつきまとうので、高濃縮のやつだけを追っかけるというわけにいかない。それらの査察の実態から見て、こういう点が心配ではないかというようなことが当然あるように思うので、この点、もう少し実態に触れたお話を願いたい。  それから、ついでにと言ってはたいへん失礼ですけれども、ほかのお三方に聞く時間がありませんから、むしろずばり言って、いま私の心配は、何といっても、民有になって日本のいわゆる発電会社のほうがこれを担当されるわけですね。個々に契約する。個々に査察に服する。そういう場合に、かつて世銀から借款を受けるときに、さんざんアメリカあるいは世銀側に振り回されたようなことにならぬように、査察に名をかるところの不当な産業スパイ等については、協定にはそういうことはしないということを書いているけれども、御本人自身が本国の政府に通報するのは当然なんで、そういういろいろな問題があるから、民有に移された場合の査察について、事実上の不平等という関係を押しつけられないためにはどうしたらいいかということを当然私はお考えになっていると思うので、これはひとつ企業体の側としての加藤さんの御意見も、青木さんのお話のあとに聞かしていただきたいと思います。
  46. 青木賢一

    青木参考人 ただいま曽祢先生からの御質問なんですけれども、実際にいま査察ということをわれわれ直接経験した、それでどういうような苦労をした、こういうような実態に即した現在の査察上の問題については、現在まだ経験しておらないのでわからないのです。会社のほうでは、ああいうこともやられるのではないか、こんなようなデータもつくらなければいけないじゃないか、ああでもない、こうでもないということを盛んに言っておりますけれども、まだこれだ、これが問題だというようなものは現在ありませんし、私また担当外でもありますので、ちょっとお答えできませんということであります。たいへん申しわけありません。
  47. 曾禰益

    ○曽祢委員 心配をしておられるわけですね。
  48. 青木賢一

    青木参考人 ええ。それは心配をしております。
  49. 加藤博見

    加藤参考人 核防条約に関連いたしまして、われわれの一番心配しておるのは、いま曽祢先生の御指摘にあった査察の問題でございます。それで、これに関連しましては、政府からも過日この核防に関するいろいろな国際的の会議に御出席になりまして、査察の方法をどうするか、そういう問題に関連しましていろいろ意見を申し述べておりますので、平和利用のために査察ということはどうしても必要だということはやむを得ないとしても、査察のやり方によって事業者が運転に支障を来たしたり、あるいはメーカーが査察のためにいろいろなノーハウその他の秘密を各国に提供するというようなことにならぬように、こういう問題に関連しましてその国際会議において主張いたしまして、われわれの意見を通すようにいたしております。しかし、これは現実に初めて査察を受けられる原電のいろいろな経験によって善処したいというふうに考えております。
  50. 秋田大助

  51. 三木喜夫

    三木(喜)委員 簡単に四人の参考人の方にお伺いいたします。  皆さん口をそろえて、今回の原子力協定に関連いたしまして、   〔委員長退席、田中(榮)委員長代理着席〕 日本がナショナル・プロジェクトとして取り組んでおりますところの原子力開発並びに核燃料確保、これが非常に重大であるということを一様におっしゃいました。いろいろな角度からお教えをいただいて、非常に参考になったと思いますが、私たちも科学技術対策特別委員会でもう過去何回となくこの問題と取り組んでまいりました。齋藤先生もいまおっしゃいましたように、私たちのビッグサイエンス、ビッグビジネスというような、そういう観点に立って、一番重要だということを考えております。  そこで、いままで概略いたしまして国は原子力開発について一千億の金を出し、企業は千二百億の資金を投入しておるわけであります。それで、青木さんがおっしゃった国全体の利益を考えなければならぬ、こういうお考えですが、もちろん国益ということは十分考えなければならない。しかし、その国益の限界と企業の利益の限界というものをどのように考えられるか。これはやはり今後重要な争点になると思いますので、お聞かせをいただきたいと思います。  それから、関西電力の副社長さんの加藤さんにお伺いすることは、東海の原子力発電所燃料を取りかえるのが急を要するから、したがってこの協定を早く通してもらわなければ困る、こういう必要性を述べられたわけなんですけれども、私はこれは午後十分爼上にのぼせて問題にしたいと思っておるのですが、燃料取りかえが問題になるのでなくて、むしろ東海の原子力発電がなぜ燃料を取りかえなければならぬのかということが問題になるのじゃないかと思います。それが逆にお話しになったような気がしておるのですが、まあ全力運転をするのだということをほんの最近まで聞いたわけですよ。そうしておいて、いま燃料を取りかえるなんというのはどうしたことか。  垣花先生には、私も中央公論の三月号を読んで、先生のお説に非常に感服したのですが、その中でただ一つ、私も、アメリカ核燃料にいたしましても原子炉にいたしましても、独占体制に対してやはり危惧の念を持つわけなんです。先生もやはりそれを言っておられます。核のかさに入ったということが軍事上問題になっているのと同じように、われわれも燃料アメリカのかさの中にすっぽり入っては、これは今後やはり抜けられないひとつの惰性ができてしまうのじゃないかという心配がありますので、垣花先生のおっしゃっておるように、何とかここから抜け出すところの努力をしなければならない。そのわけは、先生もおっしゃっておるように、核燃料を介してアメリカ世界各国電力を制御し、さらに生産全体をコントロールしかねないということを言われておるわけなんです。私もその点に賛成でありますけれども、どのようにしてはい出すかということの端的な御所見を伺いたい、こう思います。  それから、三島先生にお伺いいたしたいのでありますけれども最後のところでおっしゃいましたのですが、エネルギー資源によって外国に押えられないようにしなければならない、民間だけではだめだ、国が力を入れなければならない、このようにおっしゃっております。今回も民有に移されたからといって、国もこういうことを等閑に付するはずはないと思いますが、今後われわれも国会において十分こういう点を協力していって、国民的合意と、それから国民利益、国家的利益という点については十分に考えなければなりませんけれども、いま先生おっしゃった中で一言気になるのは、民間がプルトニウム確保したりあるいは取り扱うようになるだろう、したがって規制を強めなければならぬ、このようにおっしゃったのですが、現行規制においてこのことが不可能だとお考えになるのかどうか、その点をひとつお聞かせいただきたい。  以上、時間がありませんので、各参考人一つずつお伺いしたわけであります。自後おいでいただくならば、午後の科学と外務との連合委員会でひとつ十分聞きたいと思いますけれども、それも不可能だと思いますので、他日科学技術対策特別委員会でお伺いする機会をつくって、そのときに譲りたいと思います。
  52. 青木賢一

    青木参考人 国益と企業の利益についてどういうふうに考えるかという御質問だと思います。これは置きかえていえば、日本の全体の利益と電気事業の利益とどういう関係にあるか、こういう御質問と承ってよろしいわけですね——電気事業は公益事業として、その企業の基盤というのが法律的に保障されているわけです。したがって、これはそういったような点から考えても、そもそも国民に対して利益を与えるということをまず考えなければいけない立場にある。しかし、現在の企業体が私企業であるということであって、そこにもし私企業の利益が優先されて、国民利益が犠牲にされるというようなことがあるとすれば、これはやはりいけないことだと思います。そこで、私どもは、この現在の電力の体制という問題について一つのビジョンを持っております。これはやはり、わが国のような小さい国において九分割されている形態というのは好ましいものではない。一社化ですね、こういうふうな形に持っていくのが好ましい、これはわれわれのビジョンとして描いております。そういうふうにするのが、基本的に国民利益を還元する一番いい方法である。しかし、今日直ちにそういう状態に入るのがいいか悪いかということになりますと、この利益というものもいろいろな角度で考えられなければならない。それはまず料金の問題であり、あるいはまたサービスの問題であるというようなことに分けられるわけですけれども、特にサービスとか基本的な利益をバックペイするための組織の機構上の運営が民主的に、そして意欲的に行なわれる、そういうような背景に立ってサービスが十分に行なわれるというためには、一つの社会的な条件が必要であろう、そういうような時期を待つのじゃなくて、そういうような時期をわれわれはつくっていく、そういう流れの中で一社化というようなことを実現していきたい、かように考えております。  今日、この原子力開発問題については、確かに各社位単でもって行なわれております。しかし、ここでは先ほど加藤社長が言いましたように、広域運営ということでむだのないようにするというふうに考えられておるようですけれども、そういうようなことを十分にしつつ、私どもは私どもなりに民主的な運営がされる、つまり、官僚統制の——官僚統制も決して悪いわけじゃないのです。しかし、いまのやり方というのはどうも非常に問題があるので、そこらあたりが改善されるような時期を求めつつ、企業の一社化ということを求めていきたい、こういうように考えております。ちょっとピントがはずれたかもしれませんけれども、公益事業においては企業の利益より国民利益をまず第一番に考えるべきであろう、このように考えております。
  53. 加藤博見

    加藤参考人 先生の私に対する御質問は、東海発電所の取りかえ燃料日英協定との関係だと思いましたが、御承知東海発電所は、発電を開始いたしましてから相当事故をやりまして、発電が順調でないということは確かでございますけれども、ある程度発電をやっております。私その会社ではございませんので、数字的にはちょっと解明いたしかねますけれども、相当発電はやっております。そして原子力燃料というのは、やはり四年ないし五年——東海が何年に全部かえるかは、これも私ちょっと詳しく存じませんけれども、美浜あたりは四年たちますと一回全部取りかえるのです。一年に四分の一ずつぐらい取りかえていく、こういうことなんでございまして、東海村も何年か運転をしますと、それを全部取りかえる、そして一年にある程度の部分を取りかえていくということがあるわけでございまして、ある程度の運転をやりますと、必ず取りかえが出てくるということでございますので、決して事故があったから取りかえる必要があるというのじゃなくして、ある程度の運転をやりますと、やはり取りかえが必要になってくる、その取りかえはこの日英協定に基づいてやるということでございますので、そういう意味を申し上げたつもりでございます。
  54. 垣花秀武

    垣花参考人 私がお答えしなければならない問題は、実はたいへん大きな問題でございます。今後アメリカなり、あるいは共産圏でございますとソ連のそういう独占体制というものをどういうふうにアジャストしていくか、そういうのが実は原子力の健全な発展、ひいては今後の世界経済の健全な発展のための大きな問題だと思います。私自身そういう問題を指摘いたしましたのは、現状を正確に分析した結果こういうことになっているということを書いたわけでございまして、それを一体どうしたらいいかということは、むろん私自身も今後勉強せねばなりませんし、先生方にもいろいろ勉強していただきたい。と同時に、これは世界の、アメリカの学者にしましても、イギリスの学者にいたしましても、非常に真剣に考えている問題でございまして、私自身も含めまして、ことしじゅうとかあるいはもう数年かかりますと、何かお答えできることがあるかと思いますけれども、決してやさしい問題ではないけれども、解決せねばならない問題である、そういうふうに思います。お答えになりませんで、どうも申しわけございません。
  55. 三島良績

    三島参考人 お尋ねございました中で、私が先ほど申し上げたのは少しことばが足りなかったかと思いますのは、わが国燃料工業を一人前に育て上げるために企業としても一生懸命努力はされると思いますけれども、確かに国産の燃料発電炉に入って無事に燃えてだいじょうぶであるということを実証したりするのには、民間の燃料をつくる関係の人だけの努力ではできない点もありますので、そういう問題については、政策的にわが国燃料工業を育成するような配慮をしていただくことが必要だという意味で申し上げました。  それから、もう一つのほうのプルトニウムを使うようになってという話でございますけれども、そちらのほうは、現在のように研究開発段階で使っておりますときには、現在の法規がございまして、それで規制されて十分であると思うのでございますけれども、   〔田中(榮)委員長代理退席、委員長着席〕 将来プルトニウムの入った燃料加工を民間でもやるようになるときに備えまして、現在のウラン二三五の燃料の加工については、燃料の加工施設の安全基準といったようなものが先般できておりますけれども、そのときは、プルトニウムはまだ少し先の話であるので、プルトニウムが入った場合には、安全上の規制その他が多少きびしゅうございますから、それに合うように考えるのは、いずれプルトニウムを使うようになる時期までに考えるということになると思います。ですから、プルトニウムの入った燃料の加工施設ができるまでには、そういうことの制限をしなくてはいかぬということを申し上げた次第であります。——それでよろしゅうございましょうか。
  56. 三木喜夫

    三木(喜)委員 いま垣花先生のお話の中で、私もそれを前から思っておるのですが、いま原子力開発については片側通行ですね。アメリカに従属しておりますが、これはアメリカから離脱することはできないように思いますけれども、ソ連あたりとの接触ということは、先生の著書、論文にはソ連のことはあまり書いてないけれども、相当独占をソ連としてもやるだろう、こういうことをおっしゃっておりますけれども、中身をあまり紹介されておりませんし、また秘密にしておる国ですから、そういうことがわからないのかと思いますが、そういうところからも入れる道はないだろうか。これは先生が先ほど多方面から核燃料の物質を入れろとかおっしゃったですね。そういう点何かお考えがありますか。  それからもう一つ関西電力の副社長さんに私はお聞きしたいのですけれども、この前の動燃事業団の法律ができたときに、私たちはずいぶんこれはやかましく言った問題なのですが、国益の問題でどういうように割り切っておられるのですか。一社にして、あなた方の利益国民にみな分配せい、こんな乱暴なことを言っているわけじゃありませんが、一社じゃなしに——一社にするという構想は一つのビジョンですから、これはけっこうですが、利益をそういうように分けろ、そんな乱暴なことを言っているのじゃありませんけれども、たとえば、このあとで必ず再処理の問題が出てくるわけですね。そうすると、再処理の料金というものは、アメリカと比べて、日本の場合は相当きびしい条件がつきますから、あるいはまた資金的にも……。そうすると、アメリカよりも高いかもしれぬと思うのです。そのとき、企業としては国益なんか言っておられないわけですね。そういうとき、どう考えられるかということ。  さらに軽水炉の問題ですけれども軽水炉は、二十年なり二十五年はどうしてもこれは固定されてしまうだろうと思いますけれども、しかし、高速増殖炉や新型転換炉ができたときには、相当犠牲を払わなければならぬことがまた起こってくると思うのです。そこを乗り切ってもらわなかったら、現在の原子力開発の中で大きな力を持っておられる九電力、これにそっぽ向かれてしまったら、いやナショナルプロジェクトだとか国益だとかいうことを言っても、机上の空論になってしまうんですね。そういう点をどういうように割り切っておられるか。先ほど青木さんに聞いたことを今度そちらに移してお聞きしたいのです。これはあとの論議に影響がありますので、ひとつ聞かしておいていただきたいと思うのです。午後なり、あす、あさってとずっと続く論議に一つの問題点でありますので、聞いておきたいと思います。
  57. 加藤博見

    加藤参考人 これは将来の問題でございますので非常にむずかしい問題でございますけれども国内における燃料サイクルの確立ということは望ましいわけでございまして、われわれといたしましては、再処理工場の第一工場はひとつ国でやっていただけないかということで、これが御承知のとおり動燃事業団で——前の燃料公社からこの再処理工場の設立をやっていただいておるわけでございまして、四十七年度ごろはこれが建設されるだろう、場所その他はまだ未定でございますけれども、そういうふうに聞いております。この再処理の手数料、これがどうなるかということは、いま動燃事業団の副理事長の今井さんとわれわれといろいろ折衝しておるわけでございます。御推察のとおり、やや高くなりそうだということを聞いております。しかし、われわれとしては、国にお願いをしておる以上、ある程度の犠牲は払わなければいかぬと思います。しかし、これは研究開発段階のものである、ほんとうの再処理工場でこれで採算ベースに乗ったのではないのですから、輸送費も含めて、手数料をできるだけアメリカ並み——ひとつ利子補給その他国家資金の導入等で、できるだけアメリカ並みぐらいにしていただけないかということをいま希望しておるわけでございまして、どう落ちつくかはまだ決定いたしておりません。今後の問題でございます。  それから、いまやっております動燃事業団新型転換炉並びに高速増殖炉の国のプロジェクトを将来九電力がどう取り扱うかという問題、これもずいぶん先の、十年ほど先の話でございますけれども、これは、この原型炉自身はおそらく九電力で譲渡を受けまして、これによって発電をさしていただくということになると思います。その譲渡価格その他については、これは今後の問題でございます。いずれにしても、原型炉についてはある程度の資金、まあ五〇%を期待するという基本方針にはなっておりますから、われわれとしてもある程度の資金をこれに応援をしなければいけないと思っておりますが、その資金の出し方等も考えましてこの譲渡価格はきまるのじゃないかと思っておりますが、その譲渡価格によってこの原型炉を引き取って、ずっと発電に使っていくということだけは確かでございます。しかして、使った暁において、その炉をそのまま日本のメーカーにつくらすかどうかという問題、それもやはりその段階になって、非常にこれが信頼性があるものである、これが将来経済的にいけるものであるという場合には、国内のメーカーにつくらして、それを電力会社が使いましょうし、そのできが非常に悪くて、事故が非常に多いというようなことになりますと、これはまた一つの民間の企業として考えなければいかぬという問題にもなると思います。いずれにしても、先ほど私だれかの質問にも申し上げましたように、日本のメーカーの技術というものは非常に優秀でございますので、われわれとしては、非常にりっぱなものがつくっていただけるんじゃないか、国のプロジェクトとしてもりっぱなものがつくっていただけるんじゃないか、こういうことを期待しておるわけでございまして、そのときになってみないとわからぬというわけでございますが、非常にわれわれは期待をして、その成功を祈っておるわけでございます。
  58. 垣花秀武

    垣花参考人 お答えいたします。  ソ連から濃縮ウランを輸入する可能性があるかないかということかと存じます。それは、核拡散防止条約などにもからまりまして、おそらく全くあり得ないことではない、むしろそういうことが起こったほうが、場合によっては有利になる可能性があるのではなかろうかと私は考えます。査察の条項にいたしましても、あるいはソ連のほうがより厳格であるといたしますればそういう対象になりませんでしょうけれども、価格とかそういう面でいいことがあるかもしれません。たとえば、先ほどちょっと申しましたけれども濃縮ウランを買います時期の問題、この条約によりますと、今後建設いたしますどの炉にはこれだけの濃縮ウランを最終的には供給するというわけでございますけれども、こちら側の事故とか、そういう問題で、たとえば燃料を全部とりかえなければならぬ、そういうような問題が起こりました場合に、アメリカAEC計画にはずれます場合は非常に法外な価格で買わなければならぬというようなことが起こるかもしれない、そういうようなことを考えますれば、共産圏、自由圏を問わず、もしそういう売り手があるならば買うという体制はとったほうがいいのではなかろうかと思います。また、とれる可能性が、今後核防条約などというものが正確にうまく締結されまして、そういうものが積極的な面にあらわれるとすれば、そういうことではなかろうかと思います。  以上でございます。
  59. 秋田大助

    秋田委員長 石野久男君。
  60. 石野久男

    ○石野委員 たいへんおそくなりまして、お互いに昼食抜きで恐縮でございますが、もう少し時間をいただきまして、お尋ねさせていただきたいと思います。  最初に青木さんにお尋ねしますが、青木さんが指摘されておりますように、原子力平和利用軍事利用の区別というのはなかなか微妙で、これは一にかかって、やはり政治姿勢の問題だ、こういうお話がございました。私どももそう思うのでございますが、そのことに関連しまして、これは参考人の皆さんに、おのおのの方にお聞きしたいのですが、実は核防条約でございます。この核拡散防止条約がいろいろな形で、内容は複雑でございますし、また世界各国も、これに対して、核保有国と核非保有国との間で、ものの見方もずいぶん違うわけです。最近の情報では、米ソの核拡散防止条約に対する世界への要求というものは、非常に強い態度になってきているように聞き及んでおります。これはタイムスの情報などを聞きますと、これに協力しなければ、平和利用の核物質、燃料に対しても援助はしないのだ、こういうような意向であるというようなこともいわれておるわけです。特に第三条の規定を強く要求しまして、そういうようなことはまさかなかろうとわれわれは思っておるのですが、しかし、あるいはまた、これは国際的ないろいろな問題で、核拡散防止条約に対する非核保有国のこれに対する同意がなかなか得られないという事情から、そういうことが国際政治の上で行なわれるかもしれないという危惧も全然ないというわけにはいきません。こういうような問題が、もし具体的な問題で政治情勢の内容として国際政治の中に出てまいりますと、この協定との関係は非常に微妙になるだろう、こういうふうに実は私ども思っているわけです。そういう点について、皆さんのお考えをひとつ、非常にむずかしいかもしれませんが、簡単でよろしいですから、お聞かせいただけましたら、先にお聞かせしていただきたいと思います。
  61. 青木賢一

    青木参考人 私は冒頭陳述で述べましたように、この核拡散防止条約というもののいろいろな裏の話とか具体的な話は存じませんが、ただ、ここで二点御注意願いたいということを繰り返しますと、その一つは、こういう協定によって、わが国平和利用というものが民間ベースでともかく伸びようというときなんだ、こういう状況にあって、この核防条約等政治的な制約によって、こういう発展が阻害されるようなことのないようにかまえておく必要がありますということを指摘したのが、まず第一点だったわけです。  それから第二点は、この協定締結するとしても、米、ソ、ユーラトム諸国を含め、平等な査察を行なうべきであるという権利はしっかりと保持しておいていただきたい。これはアメリカわが国の間で、たとえば、先ほど屈辱的な査察をこの協定で認めているのだ——しかし、だからといって、アメリカに対して、たとえば軍事施設などの査察なんというのは全然除外されているようですけれども、ぼくはそこまでいったっていいのじゃないかと思いますけれども、とにかくアメリカに対してもソ連に対してもユーラトム諸国に対しても、きちっと公平にやろうじゃないかということは、ひとつ主張していただきたい、こういうかまえでやっていただきたいというぐあいに申し述べたわけです。これは繰り返しになりますけれども、同じことです。
  62. 加藤博見

    加藤参考人 核防条約の問題は、私は専門ではございませんのですが、いまの青木さんの意見と大体同じでございます。しかし、われわれとしては、核防条約のためにこの協定ができないということでは困るのでありまして、原則としては、核防条約というものはやむを得ないのではないかというふうに考えております。ただ、査察の問題でございますが、これがやはりできるだけ公平にやっていただきたいということ、並びに核非保有国保有国とを公平にやっていただきたいということ、また運転その他に支障のないようにやっていただきたい、それからメーカーその他の秘密ですね、ノーハウ等があまり他国に知られないようにやっていただきたい、秘密が保てるようにやっていただきたい。これは条約にはそうなっているようでございます。それが実際に行なわれるようにやっていただきたいという希望を持っておるわけでございます。核防条約自身についてはこれを成立させて、そして二つの協定もそれに関連して成立をできるだけ早くやっていただきたい、こういう希望でございます。
  63. 垣花秀武

    垣花参考人 ただいま青木氏、加藤氏からお話しがございまして、一般的なことは十分と思いますので、特徴的なことだけを申し上げます。  ただいま石野先生からお話がありましたとおり、ある種の、持っているほうの恫喝的なあれがあるということなんでございます。まず、これを締結しない国に対しては平和用の核燃料物質を送らないという言い方をしているという報道があるわけでございます。このエフェクトは二つございます。一つは、技術を持たないような国でございますね、これに反対して、あまり賛成しそうもない国、たとえばインド——全くないというわけではございませんけれども、必ずしも強い技術を持たない国に対しては、これはある意味ではかなり積極的な効果があるわけです。あるいはエジプトとか、そういう国がこの条約に参加することは、世界の平和全体のためになるかと思います。それに対しまして、たとえば西独とか日本のような場合には、いささか形が違うわけでございます。もちろん、現時点においてそういうことを言われますと、われわれは全く困ってしまう。いままさに燃えようとしている、エネルギーを発しようとしている原子炉に、エネルギーを燃やしてくれる燃料がないということになりますと、国民全体がたいへん麻痺してしまう。そういうことになるわけでございますけれども長期的に考えます場合には、こういうようないわば一種の恫喝が通用するということ自体が、この条約の不平等性を示すものでありますので、技術を持ち、ポテンシャリティを持っている西独とか日本の場合には、むしろこういうものを踏まえながら、そういう現状をかみしめながら、自分自身で核燃料の体制というものを整える方向にいかざるを得ないし、いくようなことではなかろうかと思います。そういうような二つのエフェクトがあるかと思います。
  64. 三島良績

    三島参考人 すでに三人の方から御意見がございましたので、あまりつけ加えることございませんけれども査察の問題などは、先ほどからいろいろお話が出ておったと思うのでございますけれども、現在のように自分で濃縮ウランがまだつくれませんで、外国から提供してもらわなくちゃいけないという段階でございますと、提供するほうの国としてはどうしても査察をしたいというふうに考えるのは当然であろうと思いますので、これはやむを得ないと思います。ただ、これから日本原子力産業が発達してまいりまして、発電所が動き、国内で原子炉をつくる産業が起こり、燃料をこしらえる産業が起こってくるというときに、あまり円満な発展を阻害することがないようによく考えなければいけないと思いますので、査察に対する考え方というのが国により違いますし、それから受ける側とする側で違うわけでございますけれども、頭から相手を信用しないで、何かごまかすのではないかという考え方で取り締まろうという場合と、ある程度信用してかかる場合とで、ずいぶん態度が違ってくると思います。日本の場合には、信用してもらって査察を受けられるような、相手の国にそう思ってもらえるような交渉をすると申しますか、日本の進み方なり何なりに対して信頼を持ってもらうような方向に説得に努力したほうがよろしいのじゃないか、そして査察を受けますのはやむを得ないといたしましても、そのために商業機密その他わが国産業発展にマイナスができるだけ少なくて済むように努力をすべきだ、そういうふうに考えるわけでございます。
  65. 石野久男

    ○石野委員 加藤参考人にお尋ねしますけれども、先ほど三木委員からお尋ねした新型転換炉の問題でございますが、軽水炉を入れてこの協定と抱き合わせの形で燃料確保は、一応これは向こう三十年間保証されるということで一つの安定感が出る。この安定感の中で私ども心配するのは、自主開発がかえって、燃料の面でもあるいはまた炉の面でも、思ったようにいかないのではないかという心配を、実は前の事業団の法案が審議されたときからしているわけです。先ほどのお話しで、とにかく原型炉ができればそれを九電力が一応受けて使いたい、こういう話でございましたが、その原型炉ができる前に、あるいはまたできる過程で、各国ともこの新型転換炉を相当程度みな研究しておるし、開発を進めておりますので、企業という立場から、こういう各国の新型転換炉に対する至嘱といいますか、企業的な意欲が出てくるというような情勢がありやせぬだろうか、こういうことを私ども実は率直にいうと心配しているわけです。皆さんのほうは企業ですから、先ほど国益の問題もありましたけれども、やはり企業採算の問題をどうしても先行させることになるでしょうし、それからまた、プロジェクトとして設定された新型転換炉の研究過程なり、あるいはまたそれの開発過程の見通しも皆さんなりにおわかりになるでしょうから、そうすると、世界新型転換炉で、より進み、より企業的によろしいと思われるようなときに、事業団開発作業に対して協力姿勢方向転換させるようなことはないだろうかどうだろうかということが、実際問題としてわれわれ心配しますが、そういう点についての業界の一つの見解を聞かしていただきたいと思います。
  66. 加藤博見

    加藤参考人 いま石野先生のお話し、ごもっともの御質問でございますが、われわれとしては、火力のときでもそうでございますけれども、できるだけ国産の機械を使うという原則は、これはもうはっきりしておるのであります。そして、国産の機械を使う一つの理由としては、やはり経済的に国産の機械が非常に安いのでございます。はっきり言うて、関税、輸送費、それから向こうは非常に設計費が高いのです。したがいまして、国産の機械は非常に安い。火力の例をとりましても、おそらく二台目でしょうが、大体火力は国産にとりますけれども、これで一五%ないし二〇%安いのです。それですから、われわれとしては、できるだけ国産の機械を早くものにしていただいて、そして軽水炉においても国産の機械をできるだけ早く使うということを念願しておる、祈っておるわけです。  したがいまして、この新型転換炉、高速増殖炉の問題でも、これはいずれにしても原型炉が二十万ないし三十万ぐらいの大きさのものでございます。したがいまして、初めからこの原型炉自身が経済的にぴったりいくのだということはわれわれちょっとむずかしい。実際問題として、初めの一台目からわれわれの希望どおりの建設費でできるということはちょっと期待ができぬのじゃないか。しかし、これは将来の商業炉につながる一つの原型炉であるというふうに考えておりまして、これがやはり自主開発として将来国産につながる一つの段階であるというふうに考えておりますので、この原型炉に関する限り、やはり国産育成の意味が相当あるのではないかというふうに思いますから、われわれがこの原型炉に対して途中から方針を変えるということはおそらくないと思います。これはやはり動燃事業団技術者の面においても資金の面においてもできるだけ応援をして、これがほんとうに成功するように努力をしたいというふうに考えております。  それからまた、この途中の段階において、新型転換炉あるいは高速増殖炉の諸外国のもっとりっぱなものがあるときにどう考えるかという問題でございますが、これは、いまの動燃事業団新型転換炉の原型炉、それから高速増殖炉の実験炉並びに原型炉の工程、いまの日本の両方の工程は、諸外国の工程に大体負けないように——負けないようにと申しますか、それにマッチするように大体考えられております。したがいまして、国のプロジェクトをやっておる間に外国から同じ型のものを輸入するということは、おそらくないのじゃないかというふうに考えております。
  67. 石野久男

    ○石野委員 もう一つ加藤参考人にお尋ねします。  濃縮ウランのことですが、これは先ほどもなるべく国でやってもらったほうがいいという御所見を承っておりますが、やはり濃縮ウランを国でやろうとしますと——今日世界開発しておりますガス拡散とか、あるいはまた日本自身がいままで努力してきました遠心分離法、そういういろいろなものがありますが、この濃縮ウランの問題で、先ほど加藤さんは、とにかくアメリカ側が増設しないならわが国でも増設しよう、なるべく他力本願でないようにいきたい、こういうお話を承ったのです。承ったのですが、実際問題としてこれをやろうとすると、やはりガス拡散というような大きい形はできないでしょうし、どうしても燃料公社が前に一応案を出しました遠心分離法というような形のものを積極的にやらなければならないだろう、こう思うのですよ。そういう点について、これは政治的に特にアメリカからの強い要求などがあって、これを公表することもできないし、それから公表できないということは、事実上企業化するということもなかなかできにくいということなんだろうと思いますが、こういうような問題について、財界の皆さんのお考えはどういうふうでございましょうか、これをひとつ聞かしていただきたい。
  68. 加藤博見

    加藤参考人 この濃縮の施設の問題を今後どうするかという問題は、われわれの電力会社ではまだあまり研究をいたしておりません。むしろ、これは原子力委員会を中心とする核燃料懇談会において、いろいろ将来をどうするかという御研究が進んでおりまして、先ほど私ちょっと申し述べましたように、五十年度ごろまでに、ひとつどういう方法がいいか、いま先生御指摘のようにいろいろ方法がございますので、どれが日本として工業化するのであれば一番いいかということを研究してみようということで、これはもうすでにある程度の予算を計上しておられるようですが、少し本格的にやってみようというような御様子のようでございまして、非常にわれわれもそれを期待しておるわけでございます。しかし、この濃縮の問題は、御承知のように、アメリカが軍事費によって相当この設備をやりまして、そして濃縮をやっておるので、実は濃縮費が非常に安いのでございます。軍事費から出ておるものですから、適当に償却を考えてやれるということで、非常に安くなっておりますので、日本でやります場合に、アメリカと匹敵するかどうかということが、工業化する場合には非常に大きな問題になってくると思います。それで、将来どうするか、これはそのときになっての問題でございますが、いまからそれを十分検討して、濃縮ウランが切れるというようなことのないように努力しなければならぬ、検討しなければならぬというふうに考えております。
  69. 石野久男

    ○石野委員 垣花先生三島先生にお尋ねしますけれども、この条約の中での査察の問題は、先ほどからお話しになりますように、私ども見ましても、非常にきびしいものがあると思うのです。そこで、もしこの条約をわれわれが批准をするという場合に、特にこの査察の問題で先ほどからいろいろとお話も聞いておりますけれども、特にこういう点を注意すべきであるというようなことで、なお御意見がありましたら聞かしていただきたいということが一つであります。  それからいま一つは、核燃料を多元的に確保するという方法を一つ考えると同時に、国内的にはやはり民有化の線が一つあるわけですから、この民有化の問題について、多元的に確保するということは、これは政府の努力なり、これも、条約ができれば民間の努力ということになってまいりますから、それはそれなりの一つ姿勢の問題でございますけれども、民有化の問題については、やはり平和利用の問題と軍事利用の問題との境界線が非常にむずかしいということなどもあって、査察の問題だけではなくて、そういう平和利用の観点からする一つの見方としても問題があると思うのです。そういう点で、この民有化の問題についてのお考えをいま一度両先生からお聞かせ願いたい。なお、青木さんからも、もしその点についての御意見がありましたらひとつ聞かしていただきたい。
  70. 垣花秀武

    垣花参考人 最初に査察の問題でありますが、先ほども議論が出たわけでありますけれどもプルトニウムにつきましては、これは確かに危険なものでございますけれども濃縮ウランに関しましては、二〇%以下の二三五でしたらそれほど軍事利用には適用できないわけでございますから、そのあたりに線を引くというようなクレームは一応は立て得るかと思います。ただし、二〇%以下の濃縮ウランでありましても、それを燃やしますと、プルトニウムができますので、そういうような意味で、いろいろ技術的に困難はあるといたしましても、少なくとも二〇%の二三五と九〇%の二三五は違ったものである、そういう認識は必要だと思います。  それから、民有化の問題でございますけれども、これは、アメリカ核燃料その他原子力関係は非常な勢いで民有化しておるのでありますけれども、ただ一つ民有化しておりませんと申しますか、一本化しておりますのが、先ほどからやはり議論になっております濃縮ウランでございます。したがいまして、日本の場合も、この濃縮ウランの買い入れ、あるいは加工さして賃濃縮させる、そういうような問題につきましては、できれば一本化の体制が必要かと思います。もちろん、それが政府が窓口であるか、それとも民間の共同のあれが窓口であるか、その辺の技術的な問題は私は厳密に考えておりませんのでわかりかねますが、向こうの一本化に対してこちらが多元であるということは、経済常識からいってもおそらくたいへん損なことだと思いますので、一本化が必要かと思います。もしそういうことではなくて多元化いたしますと、確かに御指摘のとおり、経済的な問題だけではなくて、管理とかそういう問題でも非常に重大な支障がくる可能性がある。これはもちろん例の査察の問題ともからみ合うわけでありますけれども、そういう意味で、できれば少なくとも窓口は一本化である必要があろうかと思います。  以上でございます。
  71. 三島良績

    三島参考人 最初の査察のほうでございますけれども、いまもお話が出ましたように、ある程度、燃料の種類によってどういうところを気をつけて押えればいいかというようなことは違ってくると思うので、一律にはまいりませんのですね。現在のところとしては、どういうふうに査察をしたらほんとうに効果があがるかということについては、ゆっくりと検討をして、ある程度話し合えるような余裕を残しておければ一番よろしいのではないかという気がいたします。それで、その場合には、たとえばいまお話が出ましたように、二〇%ぐらいの濃縮ウラン燃料軽水炉燃料に加工するという場合と、それから濃縮度の高い燃料というのは、材料試験炉の燃料のようなものでございますから、これはアルミニウムと合金にして燃料をこしらえるわけでございます。それからプルトニウムは、さしあたりは臨界実験装置の燃料とかその他いろいろございますけれども、それを取り扱う場所が、原研であるとか、あるいはもとの原子燃料公社、いまの事業団の東海事業所というふうに、きまったところでしか扱わないわけでございますから、個別に管理をする方式というのを検討するということは可能ではないかと思います。  それから、民有化に伴う話でございますけれども、これは民有化になりましても、 いまのように、核燃料物質というのは、実際に動く経路をかなりしっかりと記録をとって管理するということは可能であろうと思われますので、日本に入ってきた量、それからあとどこをどういうふうに動いて、何の目的にどこでどのくらい使っておって、それがいつどちらへどれだけ動いたかといったようなものを、記録もとり、監視をすることはできるであろうと思いますので、特別に、核燃料を民間が持つことになりましても、そのためにたいへん心配だというようなことではないのではないかと思っております。ただ、プルトニウムについては、どこが持つではなしに、二三五よりは、プルトニウムのほうが現在の規則でもかなりしっかりしておると思いますけれど、なお一そう念を入れてよく検討していただくのはけっこうだと思います。
  72. 青木賢一

    青木参考人 査察の問題については、先ほど曽祢先生にお答えしましたように、具体的なテクニカルの問題についてはちょっとわかりませんので、省略さしていただきます。  なお、燃料の民有化、国有化という問題ですけれども、非常に言い方が乱暴になりますけれども、国有ということになると何もかも国有、民有化ということになると何もかも民有化で、そしてぴたっとどっちかにしてしまわなければならないような考え方があるというのは、どうも問題じゃないかと私は思うのですね。これは冒頭述べたとおりなんです。民有化の方針が出たからといっても、国の持つべき責務が決して軽減されているわけでもないし、むしろ、もっと重要になってきているかもしれないというふうに申し上げたのですけれど、民有と国有ということはぴたっとあれするものじゃなくて、やはりわが国の利用は平和利用前提なんですから、その経済ベースとかその他のいろいろな環境によって弾力的に考えられたらよろしいのではないでしょうか。そういうような意味で、たとえば、今般この協定によって民有ベースでもってこれがいかれるということになったら、それは非常にけっこうなことである。そこでもたらせるメリットというものは、再々言われているとおりであります。しかし、そうかといって、じゃ国が今度は責任がなくなったのかというと、そうではない。先ほど事業団燃料関係部門のことについても申し述べましたとおり、わが国はともかく固有資源として二千トンから三千トンの核燃料があるという事実もあるわけだし、できるだけ世界天然ウラン確保する必要がありますということを申し上げたわけですけれども、こういうような事業を行なうということになると、今度採算という問題があるわけですから、そこには民営でできるかできないかというような問題が当然伴うわけです。できないけれども、しかし、将来の繁栄のために国は何かしなければならないじゃないかというときには、これは国の力でやったらよろしい、私はこういうぐあいに考えるわけなのです。  特に軍事の問題とも関連して、さっきプルトニウムの話が出ましたけれども、当面プルトニウム事業団関係といいますか、使われる対象も国家機関において使われるわけですから、これは何もいま民有にしなくたってよろしい。しかも、このプルトニウムが商業発電所において寝かされた場合の金利とかいろんな経済コストとかいうことを考えると、非常に問題がある。これはきちっと安定的に確保してやったほうが、そういう軍事とかなんとかとつながるような面での妙な動き方をすることを防ぐことができるわけですから、そういうような意味においても、たとえばプルトニウムは当分国有でいこうということであるならそれでもかまわないじゃないか、こんなふうに私は考えております。
  73. 石野久男

    ○石野委員 ありがとうございました。
  74. 秋田大助

    秋田委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。  参考人各位には、まことに長時間にわたり貴重な御意見を御開陳いただきましてありがとうございました。委員会を代表いたしまして、委員長より厚く御礼を申し上げます。  この際、暫時休憩いたします。    午後二時十四分休憩      ————◇—————   〔休憩後は会議を開くに至らなかった〕