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1968-04-23 第58回国会 衆議院 外務委員会 第14号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十三年四月二十三日(火曜日)     午後四時十三分開議  出席委員    委員長 秋田 大助君    理事 鯨岡 兵輔君 理事 小泉 純也君    理事 田中 榮一君 理事 野田 武夫君    理事 福家 俊一君 理事 石野 久男君    理事 帆足  計君 理事 曾祢  益君       青木 正久君   橋本登美三郎君       松田竹千代君    毛利 松平君       山口 敏夫君    山田 久就君       木原津與志君    黒田 寿男君       田中 武夫君    田原 春次君       高田 富之君    山内  広君       伊藤惣助丸君    松本 善明君       斎藤 寿夫君  出席国務大臣         外 務 大 臣 三木 武夫君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      宮澤 喜一君  出席政府委員         経済企画庁調整         局長      赤澤 璋一君         外務政務次官  藏内 修治君         外務省経済局長 鶴見 清彦君         大蔵政務次官  倉成  正君         大蔵省関税局長 武藤謙二郎君  委員外出席者         外務省経済局外         務参事官    鈴木 文彦君         外務省条約局外         務参事官    高島 益郎君         大蔵省関税局国         際課長     岩田 善雄君         大蔵省関税局関         税調査官    坪井 哲郎君         大蔵省国際金融         局次長     奥村 輝之君         大蔵省国際金融         局投資第一課長 田中啓二郎君         農林省農林経済         局国際経済課長 増田 甚平君         通商産業省通商         局国際経済部長 川田 通良君         専  門  員 吉田 賢吉君     ————————————— 四月二十二日  委員伊藤惣助丸君辞任につき、その補欠として  渡部一郎君が議長指名委員に選任された。 同月二十三日  山内広君が議長指名委員補欠選任された。 同日  委員戸叶里子君及び渡部一郎辞任につき、そ  の補欠として田中武夫君及び伊藤惣助丸君が議  長の指名委員に選任された。 同日  理事穗積七郎君同月十二日委員解任につき、そ  の補欠として帆足計君が理事に当選した。     ————————————— 四月十九日  南方諸島及びその他の諸島に関する日本国とア  メリカ合衆国との間の協定締結について承認  を求めるの件(条約第一八号)  航空業務に関する日本国政府レバノン共和国  政府との間の協定締結について承認を求める  の件(条約第八号)(参議院送付)  船員の厚生用物品に関する通関条約締結につ  いて承認を求めるの件(条約第一六号)(参議  院送付) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  理事補欠選任  関税及び貿易に関する一般協定ジュネーヴ議  定書(千九百六十七年) 及び関係交換公文の  締結について承認を求めるの件(条約第三号)  関税及び貿易に関する一般協定第六条の実施に  関する協定締結について承認を求めるの件(  条約第四号)  千九百六十七年の国際穀物協定締結について  承認を求めるの件(条約第五号)      ————◇—————
  2. 秋田大助

    秋田委員長 これより会議を開きます。  この際、理事補欠選任の件についておはかりいたします。  理事穗積七郎君、去る十二日委員解任につき、理事が一名欠員となっております。  これより理事補欠選任を行ないたいと存じますが、先例により、委員長において指名するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 秋田大助

    秋田委員長 御異議なしと認め、委員長理事帆足計君を指名いたします。      ————◇—————
  4. 秋田大助

    秋田委員長 関税及び貿易に関する一般協定ジュネーヴ議定書(千九百六十七年)及び関係交換公文締結について承認を求めるの件、関税及び貿易に関する一般協定第六条の実施に関する協定締結について承認を求めるの件、及び千九百六十七年の国際穀物協定締結について承認を求めるの件一、以上三件を一括議題とし、審査を進めます。  質疑の通告がありますので、順次これを許します。田中武夫君。
  5. 田中武夫

    田中(武)委員 ケネディラウンド妥結に伴う本三件に対しまして、実は貿易関税、いろいろ関係がございますので、商工委員会あるいは大蔵委員会との連合審査を希望しておりました。ところが、都合で連合審査がやりにくい、開かれにくい、こういうことでありますので、本日は、通産大臣も後ほどおいでになるそうですから、通産大臣も含めて、外務大臣あるいは大蔵大臣に若干の質問をしたいと思います。  そこで、まず、これは三木大臣あるいは宮澤さんでも、どちらでもけっこうですが、お伺いいたしますけれども、このケネディラウンドは、一体だれのために結ばれたといいますか、妥結したのか、どういう目的で、だれのためにケネディラウンドは存在するのか、お伺いいたします。
  6. 三木武夫

    三木国務大臣 だれのためといえば、人類とでも答えたらいいと思います。やはりこれは全体の貿易拡大しよう、世界経済成長をはかろう、経済はやはり拡大の中に成長があり、発展があるわけでありますから、貿易関税障壁というものをできるだけ少なくして、自由貿易に近づけていくことが世界貿易拡大につながる、このことがやはり世界経済成長を助ける、こういうことでケネディラウンドの交渉が始まったものと考えます。
  7. 田中武夫

    田中(武)委員 なくなったケネディ大統領が、いわゆる彼の理想主義の上に立って、世界貿易拡大、こういうところからケネディラウンドを提唱したと思います。自後、何回かの会議を重ねて妥結に至ったわけでございますが、まだアメリカの輸入制限の問題とか課徴金の問題等々と関連をしまして、EECではこれが繰り上げ実施等について問題が残っておるようでございます。私が冒頭ケネディラウンドはたがためにあるのか、こういうことを申し上げましたのは、ケネディ理想主義の上に立っての貿易拡大、ところが、このケネディラウンド妥結に基づいて、もうすでに日本におきましては関税定率法国会に出されておりまして、その改正衆議院は通過しているはずです。そのことによって、この理想たるべき世界貿易拡大に逆行する面があります。そういう点についてどのようにお考えになるか、そういう意味において、まず冒頭ケネディラウンドはたがためにあるのかということをお伺いしたわけです。すなわち、世界貿易拡大という大理想からいって、むしろ縮小する部面が出てくるのです。それはおわかりだと思います。もしそうでなければ、私逐次縮小する面を申し上げていきたいと思うわけでございます。
  8. 三木武夫

    三木国務大臣 これを御承認いただければ、関税定率法はもう必要がなくなるということでございます。
  9. 田中武夫

    田中(武)委員 本件が国会承認を得ました場合には、関税定率法改正はしなくてもいい、そうおっしゃったのですか。(「そんな答弁をしたらだめだよ、三木さん」と呼ぶ者あり)関税定率法はなくなる、定率法というとちょっとおかしいですよ。
  10. 鶴見清彦

    鶴見政府委員 ただいまの御質問の点は、日本譲許いたしました今度の点につきましては、ただいま御審議いただいておりますジュネーブ議定書欧州共同体等との間の協定等、これを御承認いただきますれば、それに基づいて関税定率法改正する必要はないということでございます。ただ別途、関税定率法のほうは、たとえば中共の問題ということで、大豆とか銑鉄等について、これはすでに衆議院で御決定いただいたことは私どもも承知いたしておりますし、また、この三件の中の一つになっておりますアンチダンピングの問題がございますが、これに基づきまして若干の改正を必要とするということでございます。
  11. 田中武夫

    田中(武)委員 そこで、今国会に出て、すでに衆議院を通過しておるところの関税定率法改正というのは、このケネディラウンド妥結に伴う法改正じゃなかったのですか、そうじゃないのですか。それとは別個のものなんですか。
  12. 鶴見清彦

    鶴見政府委員 私が大蔵省関税局長から聞いておりますところでは、その改正実施自身は、この現在御審議いただいておりまする三つ案件国会承認を経た上で、そこから実施段階に入る、そういうふうに了解いたしております。
  13. 田中武夫

    田中(武)委員 大蔵省関税局長見えていますか。——次官が見えていますね。  関税定率法改正は、このケネディラウンド妥結に伴う、いわゆる一律関税引き下げという上に立って、今回の改正案が出されたのでしょう。それが衆議院を通過して、いま参議院へ行っておる。したがって、いま外務省から御答弁のあったように、本三案件国会承認を終えた場合は、その必要はない、あるいはまた、そのことによって関税定率法が動くというのですか、そういう意味答弁であったと思うのです。したがって、言いかえるならば、三案件国会承認を得られない問は、かりに関税定率法が成立をしてもそれは実施できない、こういう意味なんですか。
  14. 坪井哲郎

    坪井説明員 いま局長すぐ参ると思いますので、ちょっとその間の事実だけ御説明申し上げたいと思います。  ただいま先生指摘のように、この条約承認されますと、関税の規定につきましても条約のほうが優先する、こういうことになっておりますから、条約に盛ってありますところの譲許税率は、この条約が御承認によって発効した場合には、それによって働きます。ただ、国内法関税定率法におきましても、もちろんこの条約の趣旨に沿いまして、たとえば後進国産品等につきましては、段階的な引き下げをしないで、最終税率まで一挙に引き下げようというものもございまして、そういうものは定率法のほうで国内的に措置をいたす必要がございます。  それからもう一つ、従来、国内産業保護のために国定税率暫定税率を持ったものがございます。暫定的に増税をいたしてきておったものがございます。しかし、最近の情勢を見まして、条約のほうで漸次税率引き下げられますのに合わせて、税率引き下げても国内産業に悪い影響を及ぼさないものにつきましては、従来の暫定税率定率法の中で引き下げて、それに合わせて実施をしていこう、こういうものもございます。  ですから、条約の発効によって、税率はその条約によって働きますけれども、国内的に見た場合に、いま申しましたように、段階的引き下げを経ないで一挙に最終税率まで働かそう、こういうものにつきましては、国内法で暫定的に税率引き下げておる、こういうものもございます。条約は御承知のように、五年間五分の一ずつ引き下げることになっております。でございますから、条約が優先するのでございますけれども、その最終税率まで引き下げようとするものについては国内法で手当てをしょう、こういうことであります。
  15. 田中武夫

    田中(武)委員 委員長、いまの説明で、本三案件——これは条約という名前は使っておりませんが、広義の条約ですね。この三案件と、すでに衆議院を通過したところの関税定率法との関係はどうかということについて、いまの説明でわかりましたか、私にはどうもわからぬですがね。  それじゃ、もっと根本的な議論に持っていきましょうか。国内法条約との関係はどういうことなんです。こんな議論になると、とてもあなたかなわぬでしょう。
  16. 坪井哲郎

    坪井説明員 どうもちょっとことばが足りませんで失礼いたしました。  ただ、条約の場合、協定税率ということになりますので、それで、国内法のほうが協定税率よりもさらに低い税率の場合は、国内法のほうを働かせます。定率法が低い——先ほど申しました一挙に最終税率まで引き下げるものについては、協定税率よりもさらに国内税率が低うございますから、それがすぐ働く、こういうことになります。
  17. 田中武夫

    田中(武)委員 原則的に言って、条約国内法が競合した場合はどちらが優先するのか、それが一点ですよ。これは通説とすれば、条約が優先する、こう考えておると思うのです。  それと、あなたの答弁を聞いておると、この三条約案国会承認を得た場合——すでに衆議院を通って参議院に行き、やがて成立するでしょうが、この関税定率法のうちで、比べてみて、一挙に下がる、言うならば、有利なときには国内法が優先する、こういう説明ですか、そういうように聞いたのですがね。そうなると、条約国内法と、なお進んで憲法といきましょうか、これが相競合した場合はどういう解釈をしますか。
  18. 高島益郎

    高島説明員 条約国内法との関係について、一般的な御説明を申し上げます。(田中(武)委員「一般的はいいのですよ、これと関税定率法との関係を言ってくれ」と呼ぶ)その前に、先生の御質問がございましたので……。
  19. 田中武夫

    田中(武)委員 それは優先するのはわかっている。そんなことを言っていると、条約に対する国際法一元説とか多元説とか、そんなことにまでさかのぼって議論しなければいかぬことになるよ。
  20. 坪井哲郎

    坪井説明員 どうもたびたびで申しわけございませんが、定率法のほうは、この条約が発効することを一応想定いたしまして、条約が発効したときに定率法のほうも働くように、実施の日からこの暫定税率適用する、こういうことになっております。それで、たびたび申しましたように、いまの定率法のほうで協定税率よりも低い税率が設定されておりますものは、その低いほうの暫定税率が働くということでございます。
  21. 田中武夫

    田中(武)委員 そうなると、つまらぬ議論がしたくなるのですよ。まず国際法上、条約について一元説多元説とありますね。一元説をとった場合は、国内法条約が競合すれば、条約が優先する、こういう考え方なんです。多元説をとった場合は、条約国内法は違った法体系にある。したがって、条約が有効に成立するならば、それを国内実施するためには、それに対する必要な国内法を制定しなければならないというのが多元説ですよ。何なら国際法先生でも呼んできて聞きますか。まず、その多元説をとるのか一元説をとるのかによって違うのですよ、国際法解釈は。いいですか。したがって、大体一元説がいま——従来は多元説だった。旧憲法では、おそらく、条約が発効したときには、それに従って国内法を変えなくては国民の権利、義務は発生しない、こういう解釈が強かったと思います。今日の新しい憲法ではいわゆる一元説をとって、条約のほうが優先だというのが多数説だと私は思っております。  その場合、この条約がある。一方において関税定率法が出されて衆議院を通った。その関係はどうなるのか、こういうことなんですよ。その説明がもう一つ私にはよくわからぬです。したがって、当然大蔵委員会商工委員会外務委員会連合審査会を開かなければならなかったわけです。あなたは私に納得のいく説明ができないでしょう。この三条約案関税定率法の今度の改正案との関係、及びこれが通った場合、いわゆる三案件承認された場合、どういうことになるのか、わかるように言ってください。
  22. 武藤謙二郎

    武藤(謙)政府委員 いまの関税の率の関係にしぼって体系を申しますと、条約できまっている譲許税率体系一つございます。これは御承知のように条約がある。しかし、実質的には便益関税のところへも適用になりますけれども、その他のところには国定税率と申しますか、定率法暫定措置法税率適用になるわけでございます。したがって、日本のほうはいまの関税率は二本立てになっております。ただ、実際問題としては、定率法ないし暫定措置法国定税率譲許税率と同じである——形は違いますけれども、実質の税率が同じであるというときには、結果は同じということになります。  そこで、今度国定税率のほうは大蔵委員会で御審議いただきまして、先般成立したわけでございますが、それがKRでもって譲許税率が下がることを予想して、それで国定税率を下げるということにしておるのがその中に入っております。そこで、条約のほうが通らずに、法律のほうだけが先に行きますと妙なことになりますので、その関係は、条約実施される、譲許税率実施されるときから法律が動く、そういうように法律のほうに手当てしております。
  23. 田中武夫

    田中(武)委員 お聞きのように、ともかく大蔵委員会関税定率法をやってしまった。こちらでは現在それと関係のある三条約案が審議中である。しかも、それはいずれにしろ貿易に大きな関係があるわけです。だから、商工外務大蔵連合審査をやり、国内法とあわせ審議するのがほんとうだったと思うのですよ。それをまちまちにしてやるから、こういうことになるのです。  国定税率国内法によってきまる。したがって、その国内法は、ケネディラウンド妥結に伴うこの三つ条約案、これがすでに通るものとの想定の上に立って立案をし、改正案を出した。それは衆議院を通って参議院に行っておる。かりにこの三案件国会承認がおくれた場合、関税定率法改正が成立しても、これと抵触するところは動かない、そういうことになるのですか。
  24. 武藤謙二郎

    武藤(謙)政府委員 国内法関係はもう国会を通りまして、実は四月一日から施行になっております。ただ、先生いま御心配になった件は、KRのほうの条約が通りませんと、それに合わせるために措置をしたところは動かないようになっております。
  25. 田中武夫

    田中(武)委員 したがって、ぼくはまだ参議院にあると思ったら、参議院も済んで成立しているのですね。すでに四月一日から実施されておる。しかし、この三案件が通らなければ、改正案の中でこれに直接関係のあるのは空文といいますか、動かない、現在ではそういう不安定といいますか、ちょっとおかしな関係にある、そういうことなんですね。
  26. 武藤謙二郎

    武藤(謙)政府委員 実施の日からということになっております。条約のほうが実施される日から、こういうことになっております。
  27. 田中武夫

    田中(武)委員 関税定率法改正の中にそういうふうにしてあるのですね。だから、それもここへ出して——私は、大蔵委員ではないが、三委員会連合審査すればこういう問題はなかったと思うのです。一応その関係はわかりました。やはり政府としては、条約の問題については一元説の上に立っておる、そういうことがはっきりしました。  それではお伺いしますが、そこで、ガットに加入しておらぬ、たとえば中国、北朝鮮等々は、この条約案が通過をする、承認される——現在関税定率法改正がもう実施されておるが、その適用は受けないわけでしょう。したがって、ガット加盟国からは、関税定率改正及びこの条約承認によって関税が下がって、単価の安いものが入ってくる、ところが、そうでない、たとえば中国その他の国からは、関税が一〇%つくわけですから高いものが入ってくる、こういう関係になりますね。したがって、先ほど私申しましたように、世界貿易拡大理想としながら、一面においては、むしろ世界貿易縮小意味するような結果になるのではないか、こういうふうに申し上げているわけです。その点について両大臣いかがですか。
  28. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それはそういうことはないと思います。つまり、ガットに加入しておって、無差別の通商関係を結ぼうという国についてケネディラウンド適用があるのであって、そうでない国についてその適用が一応ないということは、しごく当然のことではないかと思います。
  29. 田中武夫

    田中(武)委員 いや、それは法律的といいますか、あるいは理論的といいますかの答弁であって、それが当然だということは、一面共産圏といいますか、ガット加盟をしていない、いわゆる特恵関係にない諸国と日本との貿易、これはむしろ縮小するでしょう。そうすると、ケネディラウンド世界貿易拡大理想としている。ところが、そのために——もっと例をあげますならば、たとえば現在、中国からは冷凍エビが年間三十七、八億円入っております。これは基本税率で一〇%の関税がかかる。ところが、メキシコ等から同じ冷凍エビが入るとします。これは五%、そこに五%という値が開くわけです。そのことによって中国からの輸入、したがって日本からの輸出、これがやはり大きな障害を受けることはいためない事実なんです。そうでしょう。そうすれば、一面において世界貿易拡大理想を掲げながら、縮小方向をたどるところも出てくるではないか。たがためにケネディラウンドは存在するかということに対する答えなんです。いかがですか。
  30. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 御指摘のねらいは、私にはわからないことはございませんけれども、わが国としては、要するに、わが国国益を中心に考えれば私はいいのだと思います。ですから、わが国により安いものがどこから入ってこようと、より安いものが入ってくればわが国とすればいいわけです。たまたまそれによってどこかの国が相対的に不利をこうむるということは考えられるわけです。しかし、その見返り輸出がとおっしゃいますが、わが国に相対的に有利な立場で入っておる国に対して見返り輸出がふえるわけでありますから、わが国国益を損することは少しもない、ただ、それは原則論としまして、相互主義によって自分のほうも下げたい、お互いに下げようじゃないかというような話があれば、それはまた別のことであろうと思います。
  31. 田中武夫

    田中(武)委員 国益からいってそれはといういまの答弁はいかがでしょうかね。こういうことで宮澤さんいいですか。いまのような答弁でどこに政治があり、どこに政策があるのですか。あなたは、どこからだって安いものが入ればいいのだ。しかし、同じ関税率にした場合、南米から来るのとお隣から来るのとでは、お隣が安いのはさまっておるでしょう。国益からいうならば、同じ関税率にすべきなんだ。そうしたらより安いものが入るのです。そうでしょう。ところが、一方には関税障壁がある。一方はこのことによって下がる。したがって、遠いところのものが入ってくる。それで、安いものが入るなら国益上いいじゃないかと言うが、はたして実質的な内容はどっちが高いか安いかわからぬでしょう。あなたのような答弁をせられるなら、私は政治政策はないと思うのです。取り消しなさい。
  32. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 関税というのは相互主義のものでありますから、こちらだけがかってに譲許をすれば、それだけ国益がそこなわれる、それだけのことであります。
  33. 田中武夫

    田中(武)委員 だから、こちらだけではなしに、こちらから輸出することについても話し合えばいいじゃないですか。これは現に国益の上に立っておると思うのです。中国から輸入するものでも、原材料等については安い税率でいこうということになっておるでしょう。したがって、政経分離だ、こういうふうにうそぶいておるのもいいが、実際国益ということに立つならば、交渉したらいいじゃないですか。そうでしょう。それをやらずして、あなたのいまの答弁のようなことは、私は政治ではない、どこに政策があるのかと言いたいわけなんです。いかがですか。
  34. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 ですから、おっしゃっていらっしゃることはわからぬではないと言っておるのです。しかし、その問題は、このケネディラウンド譲許し合ったから、自動的にそれに入らない国に対しても下げたらよかろうということとは、次元の違う話だと私は思っております。
  35. 田中武夫

    田中(武)委員 もちろん、理論的に言うならば、ケネディラウンドによって妥結をしてこうだ、したがってガット加盟国のみ適用せられるのだ。ところが、ガットに加盟してない国は二十七カ国ほどあるわけですね。この中にいろいろな国があります。しかし、それに対しも、先ほど言ったように、世界貿易拡大自由貿易ということが理想であるならば、なぜそういう方向をたどる政治をやらないのですか。あなたのおっしゃるように、もちろんガット加盟国だけにこの効果は及ぶのだ、ガット協定に基づくのですからね。だから、ほかのものは知らないのだということになれば、これは学者の意見といいますか、あるいはまた書生議論とでもいいますか、政治家の答弁、大臣の答弁とは受け取りがたい。その答弁はお返しいたします。どうするのか、あらためてお伺いいたします。
  36. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それはお返しくだされば、お受け取りするしかないわけですが、この条約案との関係では、お互いにコンセッションをするわけでありますから、やはりこっちから出す以上、向こうからももらわなければならない、こういう関係になっておるということを申し上げたので、これを離れて、なるべく世界各国がお互いに関税障壁を減らして、そうして貿易量をふやしたほうがいいではないかということは、私は、世界貿易の見地からいえばそのとおりだと思います。ただ、先ほどから特定の国をあげておっしゃっていらっしゃいますので、そうなりますと、これは通商だけでなく、外交の全般的なやりとりの問題でございましょうから、それはおのずからお答えなさる所管の大臣がおられますと思います。
  37. 田中武夫

    田中(武)委員 何も私はあなたに最初から答弁してくれとは言わなかったはずですよ。両大臣いずれかと、こう言ったわけですよ。  外務大臣、いまの議論をお聞きになったと思うのです。さて、そういうような状態の中において、世界貿易がほんとうに片ちんばでなしに拡大していく方法としてはどうあるべきか。これはいま宮澤さんも、これは外交の問題であり、政治の問題であって、所管大臣がおられるからと、こういうことなのですから、ひとつ大臣からお伺いいたします。
  38. 三木武夫

    三木国務大臣 これでケネディ氏が提唱した当時とはやはり関税引き下げの率は少し後退した感じはあるけれども、しかし、とにかく関税が一括引き下げられて、そのことが世界貿易のプラスになることは事実であります。したがって、このケネディラウンド一つ貿易拡大の転機にして世界貿易拡大していく。これはいろいろな障害はあるけれども、その障害というものはやはり時間をかけてなくしていって、これを自由貿易への道の第一歩にするということよりほかにはないと思います。
  39. 田中武夫

    田中(武)委員 そこで大臣、中国との貿易におきまして、日本輸入品でも、たとえば大豆、銑鉄、こういったようないわゆる原材料とでもいいますか、こういう輸入品目に対しては関税引き下げ措置をとったのでしょう。これも日本に必要だといいますか、原材料だから下げたんだ、それも国益だ、こう言われたら話は別ですがね。これを品目的に見ますと、現在中国との貿易品目は六百三十五品目ほどあります。そして特別な措置がとられたのは、そのうちの二百八十六品目で、率にして四五%、金額的に言うならば、これは前にも通産省から聞いたと思いますが、金額では八〇%がその措置にあって、あとの二〇%がその措置にあわない、こういう答弁だったのです。ところが、私は、品目で見なければその歩合は出ないと思うのです。なぜかというと、現在その措置をとったのと、とらないものとの金額の比率が八対二だ、こういうことであるならば、措置をとらないものは今後量はふえないと思う。すなわち、貿易を動かないもの、静と見たところの考え方なのです。今後ますます貿易拡大していく、これはいずれの地区にとらわれずということであるならば、やはり品目を見ながらその適用を考えていくべきじゃなかろうか、このように思いますが、いかがです。
  40. 倉成正

    ○倉成政府委員 ただいま田中委員からお話がございましたように、今度のケネディラウンドの結果、協定税率適用品目が増加したために、中共、北朝鮮等いわゆる国定税率適用区域からの輸入品が、相対的に協定税率よりも高い国定税率適用されていいかどうか。原則的には宮澤長官からお答えいただいたとおりでありますけれども、従来中共から入っております米、石炭あるいは塩、栗、アズキ、こういうのは協定税率と格差はございませんし、今回もまた、大豆、銑鉄というものにつきましては、わが国国内の需給関係あるいは関連産業の動向等を考慮して協定税率に合わした次第でございます。このあと残っている大きなものといたしましては、絹織物、生糸というものがございます。これについては御案内のように、最近国内の生糸に対する需要も非常に強いし、また国内における生糸生産というものもかなり増加してきておりますので、この関係の情勢を主管省である農林省でひとつ十分見きわめていただいた上で、どうするかということをきめたい。そのほかの個々の問題につきましては、わが国の産業の動向やあるいはいろいろな国内事情を見合わせて、できるものはひとつ将来協定税率に合わして国定税率を下げていきたい、こういう前向きの姿勢で取り組んでおる次第でございます。
  41. 田中武夫

    田中(武)委員 外務大臣、お聞きのようなことで、結局は中国、北朝鮮等々になるわけですが、ガット加盟をしていない国、こことの貿易を現在よりか広げていく姿勢をとるのか、現在を固定して、あるいはそれ以下に縮めていくといいますか、縮小していく、そういう姿勢をとるのかということにかかってくると思うのです。いわゆる国定関税率は、これは政府がやろうと思えばいつでもやれるものなんです。自主的にやれるわけなんです。したがって、政府がもっと中国なら中国からの輸入品目をふやす、そして輸出品目をふやしていく、こういう考え方をとるならば、いつでもやれるわけなんです。したがって、現在このような措置をとっておられるということは、今後倉成次官は前向きと、こういうふうにおっしゃったわけですが、これは政府の姿勢としてどう考えておられるのか、そのことがこの関税定率適用あるいはその適用を広げていく、こういうことにかかってくると思うのです。いかがでしょう。
  42. 三木武夫

    三木国務大臣 政府の方針は、共産圏といえども、どこの国とも貿易拡大していくということが方針であります。日本のような国で貿易拡大というものは、経済政策の中においてはやはり最も重要な国の方針に属します。中共、共産圏の場合は、国内産業への一つの配慮というものも必要でありますから、貿易によって国内産業が急激な打撃を受けるということは考えなければなりませんので、そういう国内産業の面とにらみ合わして、国定税率ケネディラウンド実施される機会に今後引き下げていく、国内産業に対して打撃を与えない限り引き下げていく方向で検討していくというのが政府の方針でございます。
  43. 田中武夫

    田中(武)委員 ちょっと途中ですが、先ほどの関税定率法改正でこの条約案と関連というのは、附則にうたっているこれなんですね。そのことはなかったから、あれしたのですが……。
  44. 武藤謙二郎

    武藤(謙)政府委員 はい、そのとおりです。
  45. 田中武夫

    田中(武)委員 ここでこのガット協定「第六条の実施に関する協定の効力発生の日」まで、結局は通ってもその効力といいますか、それは停止せられておる、そういうことですね。  そこで、次へ進めますが、大臣、ケネディラウンド適用国といいますか、ガット加盟国、これは現在五十二カ国、その中にはアルジェリアとかハンガリー等も入っております。また、逆に二十七カ国という国がこれに参加をしていない。その中には中国とか北朝鮮があります。それだけでなくて、南ア等も入っているわけですね。そこで、中国とこう言うと、すぐこうびんとけられて、どうも大臣、政府委員答弁はからを締めるような感じを受けるわけです。そこで、そういう特定のことを言いません。この加盟しておらぬ二十七カ国には、今後日本は、たとえば東独等々に対してもっと貿易の道を開かなくてはならない。通商を拡大しなければならないという国はたくさんあると思うのです。南アあたりにしても、銑鉄とかなんとかいうのが、これは重要な輸入先にもなるし、あるいは雑貨その他については重要な輸出先になると思うのです。したがって、ただ単に宮澤長官が言われたような、そういう原則であるからそうなんだということでなくて、加盟していない国に対しても同じようにいわゆる特恵的な関税適用できるように検討をしていく、そのためには、何もこちらだけが下げるということではなくて、宮澤さんもおっしゃったように、あちらも下げるように——そういう場合には二国間の特恵契約ということになるかもわかりません。しかし、ガット加盟ということによって画然と区別することは、いわゆるガットの強化という上に立てば、法律的にそうだろうと思いますが、政治的に見た場合に、そういうことでいいのだろうか、こういう疑問を持っているわけです。したがって、二十七国ですか加盟しておらぬ国、これに対しても、今後どのような姿勢を政府として持っていかれるか。あえて中共とか北朝鮮とか言いません。ガットに加盟していない、すなわち、このケネディラウンド妥結に伴う恩恵といいますか、これがその希望であり、理想である世界貿易拡大につながる方法をひとつ検討してもらいたい。こういう点からお伺いしますが、いかがでしょう。
  46. 三木武夫

    三木国務大臣 まずできる限り——いまガット加盟国は七十六カ国あるそうですが、できるだけ多数の国にガットに加盟してもらうということが、方向としては一番好ましい方向であることは事実であります。しかし、それが加盟国以外には、ソ連のような二国間の協定のような国もありますが、いま言ったような便益関税ですか、国定税率、いろいろ方法はありますが、方向としては、いま申したように、国内産業、これはやはり無視していいという理屈は成り立ちませんから、国内産業というものの立場も考えながらできる限り——こういう関税引き下げていこうという世界的な傾向でもありますので、ガット未加入国の関税に対しても引き下げるような努力を政府はいたしたいと考えております。
  47. 田中武夫

    田中(武)委員 これはこまかいことですが、ケネディラウンド適用をせられるのは五十二カ国だと思いましたが、違いますか。これは七十二カ国ですか。
  48. 鶴見清彦

    鶴見政府委員 ガットの現在の加盟国は七十六カ国でございます。それから、ケネディラウンド適用をする国になりますと、ガットによるものが四十六カ国、それに仮加入を申請しております国が三カ国、また、その他に二国間条約のある国が七カ国でございますので、合わせまして五十六カ国、そのほかに便益関税適用国というのが五十二カ国ありますので、全部合わせますと百八カ国になります。
  49. 田中武夫

    田中(武)委員 訂正します。ガット加盟国というのは、ケネディラウンド適用国というふうに改めます。  そこで、このガット及びケネディラウンド、これを見た場合、私はアメリカの理想主義というものが出てきておると思う。同時に、その中にアメリカの実利主義といいますか、理想主義と相矛盾したものを内臓しておる。そのことが、ドル防衛等等からくるいま問題の輸入制限あるいは輸入課徴金等々の問題を起こしておると思うのです。そこで、そのようなことについてどのような見解を持たれておるかということと、さらにこの輸入制限とかASPの実施をやめろ、そのかわりに、EECはこのケネディラウンド実施を繰り上げるということで、何回か会議等も持たれている。その経過がわかっておりますならば、その経過、及び日本としてはどうするのか。EECはそういった方向輸入制限あるいはASP等々に対して対処すると出ております。アメリカの理想主義の中に含むところの実利主義という立場に立って、やはり日本製品にも輸入制限をしよう、あるいは輸入課徴金の問題がまだ消えていないと思います。そのときには、日本はいかに対処するか。EECはこうやる、日本としてはどうする、いかがでしょうか。
  50. 三木武夫

    三木国務大臣 日本の場合は、EECとの経過は事務当局からお話しをしてもよろしいわけでありますが、いままで二回でしたか、EECとアメリカとの間に会議をしたようでありますが、話の妥結をしないで、あらためてまた会合をすることになっておるわけであります。日本もまた、EEC諸国がケネディラウンドの繰り上げ実施ということで一致するならば、やはり繰り上げ実施をしようということを申し出ておるわけでございます。そういうことによって、輸入課徴金のような制度はアメリカとしても断念してもらいたい。輸入課徴金ばかりでなく、まあ昨年は相当輸入制限立法——選挙の年という関係もあったのでありましょう、輸入制限の立法というものが数多くアメリカの国会に提出をされて、行政府は非常に強い態度で、こういう制限に対してできるだけ阻止しようという態度をとって、昨年度の国会においてはみな未成立であったわけであります。また、繊維に関して、最近またこの物品税に付加した税金なども出てきておるわけでありますが、これに対しても、あらゆる機会、会合の場合あるいは外交機関を通じて、輸入制限的な立法は、ケネディラウンドの推進役であったアメリカとしては非常な自己矛盾ではないか、一切のこういうアメリカの輸入制限措置はやめてもらいたい、そのことは連鎖反応的に世界貿易縮小につながることになるからという強い申し入れをして、そしてアメリカの反省を求めておる次第であります。アメリカもまた、理想主義の一面、経済の面においては実利主義的な面は否定できないと思います。また、ケネディラウンドにしても、各国とも、理想主義で賛成したという面もありますが、同時に、各国とも勘定も合うということでこれに対して賛成をしたわけであって、経済の諸問題について常に理想主義という立場はとれない。各国とも実利を追求するということは当然のことであります。ただ、その実利の追求の中に目ざす理想があるというだけで、これは一つの進歩であると評価せざるを得ないと思います。
  51. 田中武夫

    田中(武)委員 ずばり言いますと、アメリカが保護貿易主義で、これはドル防衛ということもありましょうが、日本に対して輸入課徴金をかける、あるいは日本の線製品に対して、いまおっしゃったのがASPかと思うのですが、国内のにかける税金と同じものをかけるということですね。そういうような方法をやめなければ、こちらもケネディラウンドに基づくこういう協定の批准はお待ち願いましょう、そういうことはどうなんでしょう。EECはそういう態度でしょう。繰り上げるというのだけれども……。したがって、ずばり言うなら、交渉の一つの手段と言ったら少しよくないことばだと思いますが、アメリカさんが日本の製品の輸入制限とかあるいは輸入課徴金をまだやろうとおっしゃるならば、このケネディラウンド理想に反するとして、こちらも少しそれの批准をお待ち願いましょう、こういう態度はどうか。言ってもいいのじゃないかと思うのですが、いかがでしょう。
  52. 三木武夫

    三木国務大臣 このケネディラウンドについては、日本の利益に合致するということでわれわれが賛成をしたわけでありまして、いまのようにケネディラウンド実施を延期するという国、そういうことによってアメリカの輸入制限の諸措置に対して対抗するという国はどこもありません。EECも七月一日から実施するという方針で、アメリカの輸入課徴金の問題が出てきたので繰り上げるとは言っておりますけれども、世界貿易拡大につながるケネディラウンド実施をおくらせて対抗しようという声は少しも起こっていない。また、そういう形で対抗するということは邪道である。やはりアメリカに対して、そのことが非常に世界に対して悪い影響をもたらすから、こういう考え方は捨てるべきであるということで、アメリカの反省を求めることが正道だと思います。
  53. 田中武夫

    田中(武)委員 なるほど、そういうことは邪道かもしれません。しかし、EEC諸国はいわゆる国際収支は黒字なんです。日本はいま赤字に悩んでおるわけなんです。置かれた状態が違うわけなんです。アメリカも黒字国に対してと、こういうことでEEC相手だ、こうだった。ところが、日本に対してもそういうことを実施する、こうであるならば、アメリカの理想主義に合わぬじゃないか、ケネディラウンドを提唱したところのアメリカの考え方と合わぬじゃないか、したがって、こちらもあなたのほうのお考えがはっきりするまでちょっと待たしていただきますと言うのは、一つの交渉のテクニックとして私は許されるのじゃないかと思うのです。と同時に、それは邪道だから正々堂々と、こういうことであるならば、輸入課徴金あるいは輸入制限、ASPに対してどういう外交上のきめ手がありますか。
  54. 三木武夫

    三木国務大臣 これは、アメリカもカナダも国際収支の赤字国でありますが、一月からケネディラウンド実施しておるわけであります。もし実施しなければ、日本に対してこの適用をみなやらぬということでありますから、日本はいろいろ日本貿易の上においてプラスの面、マイナスの面を計算して、日本のプラスということで賛成しておるのでありますから、あまりこれはすごみのきいた報復手段にはなりません、こういうことをすることは。そういうことで、やはり国際的に約束したことは日本が実行するということがいいので、ほかの手段としては、これはやはりアメリカの国内、アメリカの国会にも関連することでありますから、ぎゅっと一ぺんに言わすような手はありませんけれども、しかしながら、外交機関を通じ、あるいはこれは日本ばかりでなしに、世界各国も、アメリカがそういうふうな輸入制限的な措置をとるべきではないという強い世界の圧力の前に、輸入課徴金のごときも、実施する、すると言ったけれども、しかし、それはこの世論の反発に対してアメリカもいろいろ考えざるを得ない。こういうことで、何かきめ手と言ったならば、田中さんの御指摘のようなきめ手に欠く点がありますけれども、しかし、外交機関を通じあるいは世界諸国とも連携をとりながらやることが、全然無力だとは思っていないのでございます。
  55. 田中武夫

    田中(武)委員 外務大臣は、やはり私は理想主義だと思う。けっこうだと思うのです。しかし、何らかのきめ手といいますか、何か持っていないと、交渉というものは私はできないと思います。ただ単に総理の親書を福田さんが持っていく、これなら哀訴嘆願ではなかろうか、こういう感じすらするわけです。私は、ケネディラウンド妥結に伴う関税の一律引き下げは、何も外国のためあるいはアメリカのためにのみ存在して、日本のためにはならないとは言っておりません。もちろん、日本国益にも沿うところはありましょう。しかし、現実にケネディラウンドを提唱した国がその理想と反することを考えておるというときには、ある程度考えてもいいんじゃないか、こう考えますが、外務大臣がそういうお考えで、理想主義によってやろうとおっしゃるならけっこうです。そのかわりに、いまの輸入制限輸入課徴金、ASP、これらの実施は必ずやらさないという自信はお持ちだろうと思うのです。どうですか。ここでそういう聞き方はどうかな。
  56. 三木武夫

    三木国務大臣 たいへんにむずかしい御注文で、これはやはりアメリカの国会にも関連いたしますから、やらさないというたんかを日本国会において切る勇気はございませんが、しかし、ASPのごときはアメリカ自身が約束をしておるわけでありますから、そういうふうな輸入制限、しかもそのことが世界貿易の上に悪い連鎖反応を起こすようなことを阻止するために、今後全力を傾けて努力をいたしますと、これ以上のことを申し上げられないことは残念でございます。
  57. 田中武夫

    田中(武)委員 では私もこれ以上申し上げないことにいたします。  そこで、第二次世界大戦後アメリカの経済世界支配体制といいますか、あるいはブレトンウッズ体制といいますか、これは、私は、IMF、いわゆる国際基金協定、それとガット、中には世銀等を入れる人もありますが、これは別といたしまして、IMFとガット、これによって支えてきたと思うのです。ところが、きょうは直接関係がないので、あまりIMFのことについては議論はいたさぬつもりでおりますが、これはすでに予算委員会等でも議論をいたしましたように、ドル危機といいますか、こういう中からいいIMF体制に一つの危機が来ている。それを救おうとして、SDRの創設ということにある程度成功したかと思います。しかし、これも私はIMF体制の基本的な危機を救ったとは思いません。ただ単に一時的なカンフル程度ではなかろうかと思います。  また、ガットは、南北問題の中から、もうガット理想ではやっていけない、ガット協定ではやっていけないという面が出てきておるわけなんです。そういうことに対して、この前、私は予算委員会で、再検討の時期がきておるんじゃないか、こういうことも言ったわけなんですが、この世界をいまゆり動かしている一つの大問題である南北問題南と北との団体交渉といわれたこの南北問題について、外務大臣はどのように認識をし、把握しておられるのか、さらに、いまのガットとIMF体制とについて御意見を伺いたいと思います。これはひとつ出目澤さんのほうから……。
  58. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それは、ブレトンウッズ以来のことは、アメリカが何も世界経済を支配しようということがあってしたことではなくて、あの当時は世界各国ともドルが不足でありましたし、ドルを必要とした時代であったと思います。マーシャルプランなどが行なわれておる段階でありますから。したがって、当分ドルをキーカレンシーとしてやっていけるであろうというふうに、多くの人人が考えたのだと思います。ケインズのような人が多少違うことを考えておったように思いますけれども、しかし、まあドルでいいではないかということで、みんなが合意をしたということであったと思います。しかし、その後にわが国、ヨーロッパなどが復興いたしてまいりましたから、いわゆるドル不足という問題は、逆にドル防衛という問題につながってきた、こう考えます。ですから、そのこと自身は、実はIMF体制がくずれたということではなくて、ドルというものが世界各国の間でちょうどまんべんなく上手にあんばいされるであろうというふうに考えておった状態が、そうでない状態になったということになって、しかし、依然としてその国際決済のための国際協調が必要であるということはみんなが認めるわけでございますから、それならば、ドルなり金なり一いま金については御承知のようなことがございますから、それを補う何かの信用供与、あるいはこれが信用でありますかどうでありますか問題ですが、ともかく……(田中(武)委員「シマウマとかいったな」と呼ぶ)ええ、シマウマでございますが、国際決済の方法はないかということで、SDRというものが考えられたと思うのでございます。ですから、私は、SDRが万能で、いろんなことを解決されるというふうにはむろん考えるわけにまいりません。やはり国際協力のたまものとして生まれたのでありますから、国際協力という精神が破れれば、これはもう一ぺんに破れてしまう筋合いのものだと思います。したがって、各国が国際収支についてやはり自制をして、お互いに協力をし合う、そういう精神で運営されなければならない。しかし、いずれにしても、そういう新しい決算方法を考えついたということは、やはり各国の間に、協力しなければ世界平和が保てない、世界貿易拡大しないという共通の認識があったということは、これは私は将来に向かって評価すべきことではないかと思うのでございます。  それからガットについては、確かに御指摘のような問題があると思います。といいますより、ガット自身がすでにそういう問題に気がついてきたと思うのでございますが、つまり、比較的先進国がお互いにいわばハンデキャップなしで貿易をやろうという考えに対して、発展途上国はそれでは無理であるということから、特恵といったような思想をガットが事実上認めるようになったのでございますから、私は、ガット自身がそういう現状にかんがみて新しい認識をつけ加えたというのがいまの姿ではないかと思います。したがって、先ほど外務大臣が言われましたように、できればより多くの国がガットに入ることが第一に望ましいというふうにやはり考えます。で、発展途上国に対しては特恵をやるということは、これはもう現状としてはやむを得ないのみならず、むしろガットがそういうふうに適応したというふうに考えます。他方で、UNCTADの問題が御承知のようにあるわけでございますから、先ほど外務大臣も言われましたように、やはり世界平和を維持していく、増進していくということであれば、南北の格差ということは、北側の国が国内の事情の許す限りにおいて、南側の国が発展するように、一次産品においてもあるいは軽工業品においても、できるだけ、場合によってはハンデキャップを与えてでもその発展をはかってやる、こういうことが世界全体の課題であるというふうに考えております。
  59. 田中武夫

    田中(武)委員 私は、いわゆる戦後、この二十年の間に世界情勢が変わった、したがって、IMF体制もガット体制も考え直す時期がきておるのじゃないか——私は別にこれをなくせよとは言っておりません。再検討の時期がきておるのじゃないか、このことを前から申し上げておるわけであります。いまの宮澤さんの答弁でも、ガット自体の中に、考えなくちゃならない点は、ガットを直すというよりか、むしろガットが動いておるといいますか、解釈を申し合わせによって変えたという点ですね。私は、そういうことでなくて、もっと基本になるガット自体を根本的に再検討する必要がある、こう思うのですが、これはまあその程度にしておきます。  そこで、三木大臣にお伺いしたいのですが、先ほど申しましたように、これからの一つの国際的な大きな問題として南北問題がある。ニューデリーにおいて第二回国連貿易開発会議が行なわれました。しかし、その中で一体何がきまったかといえば、南側が不満なことばかりだ。いわゆる一%援助ということ以外には新特恵にしても十分なことはできなかった。しかし、私は、南の主張は正当というか、聞かなければ、今後世界的な平和という上に立っても十分でないと思う。しかし、この南北問題は、国際的な経済の二重構造からきたところの一まあ経済だけではないでしょうが、二重構造からきたところの問題である。ところが、日本にも、中小企業とか農業とかいったような、いわゆる一面においては発展途上国にひとしいようなものが存在する。すなわち、日本国内にも二重構造が存在する。そこで、日本は、この南北問題についても、国際的な二重構造の解消と国内的な二重構造で悩まなければならない、こういう問題が私いまあると思うのです。したがって、国内の二重構造に対してどのように考えるかということと同時に、国際的な二重構造の解消、すなわち南北問題の解消について外務大臣はどのように考えておられますか。あるいは経済企画庁長官は、国内の二重構造の解消といいますか、是正といいますか、こういうことについて経済的にどうあるべきで、この問題を解決しない限り、日本は先進国グループとしても決して南の要求をそのまま受け入れることはできない状態にある、すなわち、国内、国外の二重構造で悩んでいるというのが現在の姿ではないかと思うのですが、いかがでしょうか。
  60. 三木武夫

    三木国務大臣 まあ今日最大の世界の問題の一つが南北問題、いろいろ局地戦争の根源にさかのぼれば貧困がある、そういうことですから、これは世界の平和あるいはまたさらに世界の発展のためには、南北問題先進国と後進国との格差を縮めていく努力というものをしなければ、世界の平和はこの面からくずれてくる可能性を絶えず持っている。大問題になるゆえんだと思います。  そこで、日本の態度ですが、これは各国とも、国内というものは、絶えず人間の生活が向上を目ざしていく以上は、いろいろな問題をかかえていると思います。しかし、日本の場合は、先進国のほかの国々に比べて非常に問題が多い。人によったら中進国だというような形容詞でさえ言われるくらいでございます。これは農業とか中小企業とかいう、まだ近代化されない産業部門、しかも就業人口を非常に多くかかえている。私は、それが一段落済んで後進国の問題に取り組むということでは世界の要請に合わない。それは宮澤大臣からいろいろお話があると思いますが、その近代化も促進しながら、一方において、この南北問題の中心である後進国の貿易拡大あるいは開発の促進、そういうものに協力していく。これが済んでからこれというのではなくして、並行してやはり考えざるを得ないのではないかというふうに思います。どのようにして国内的な要請と国際的な要請の調和点を見出していくかということが、やはり今後の日本政治の中で非常に大きな問題になってくると思います。日本方向としては、それと並行して日本の国際的責務といってもいいと思う。このごろの傾向としてUNCTADなんかにあらわれているものは、後進国諸国から新しい要求として出される、先進国諸国はそれにこたえざるを得ないというところに、戦前にはない新しい歴史の大きな変化がある。日本だって自分の国内にいろいろ問題があるからといって、国際的な責任を果たさないということであれば、将来の日本自身の利益から見て合致するとは思わない。国際的な責務を果たし、みずからの安全、みずからの経済発展の上からいっても、長い目で見れば、この責任を果たしたほうがいいという考え方でございます。
  61. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 これは各国とも多かれ少なかれやはり問題があるように思いますのは、たとえばアメリカの場合でも、御承知のように、今度ケネディラウンド実施するということに伴いまして、国内措置として調整援助というのでございますか、アジャストメント・アシスタンスということを法律の規定でやる。これはやはり産業によってはその影響を受けると考えられるアメリカの国内産業があるようでございますから、いわんや、わが国においてはそういうものがかなりございます。わが国の中には、一般にそれは中小企業なりあるいは農業の対策としていままでやってまいったわけでありますし、かたがたケネディラウンドの交渉で、それらの品目については、わが国が特別に利害関係を持つアイテムとして除外を交渉の場で実際いたしているわけでございます。ただ、わが国経済成長が相当早うございますので、御承知のように、ケネディラウンドの交渉が始まりましたとき、一九六三年に私どもがこれは日本としては困ると思って考えましたジャパンアイテムといわれたものが、六七年に妥結するときにはすでに実はジャパンアイテムではなくて、香港アイテムにむしろなっておったという例でもわかりますように、かなりわが国経済成長は早うございますから、国内措置さえ間違いなければ、ほんとうに困るものはそもそも譲許しておりませんから、大体やっていけるであろう。ただものの中には、やはり地域産業に関係するものがかなりございまして、特定の地域だけがいたむようなものがかなりございますから、やはりそういうところはそういう配慮をしていかなければならないと思います。いずれにしても、国内の労働力がこれだけ逼迫してまいりましたので、ケネディラウンドあるなしにかかわらず、それらの産業は、すでに発展途上国との関係でなるべく高級な資本集約的なものをつくろう、労働集約的なものからそういうほうへ製品の型を動かしておりますので、これから何年かかかりまして下げていくとすれば、過去の経験にもかんがみて、そうきつい問題は出てこないだろう。もちろん、一般に中小企業あるいは農業対策としてやっていることは、今後も進めていかなければならないと思います。
  62. 田中武夫

    田中(武)委員 何かだいぶ長い答弁になりましたが、結局そういうことで、この国際穀物協定のうちの食糧援助規約の第二条の規定のみは留保した、そういうことですね。
  63. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それはそういうことでは必ずしもなかったので、むしろ、この穀物協定の中へそういう援助というような系列の違う話が入ってくることが、ことにわが国のように小麦などを輸入しておる国の立場からいきますと、なおさらに筋道が違う、こういうふうに私どもとしては考えておるわけでございます。
  64. 田中武夫

    田中(武)委員 結局、この食糧援助規約の第二条を留保したのは、私は、日本のいわゆる二重構造の底辺にある農民、こういうことをも考慮の上であったと思うのですが、そうではなくて、いわゆるこの体系からいって、そういう協定の中にこのような規定を入れることはおかしいということで留保されたのですか。
  65. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 これは先ほど田中委員が言われましたように、アメリカが理想と実利とを両方追っておるようだと仰せられましたが、穀物協定というのは、まさに実利のほうの問題でありますが、その援助というのは、本来理想のほうの問題であるべきなのであって、援助もすれば、結局それだけのものがマーケットからよそへどきますから、それだけマーケットにすきができて、増産ができる、それでといったような話は、ちょうど先ほど言われましたように、実利と理想とがこんがらかっておる。わが国がそういうことをやっても何ら実利を得る国ではないので、援助をするとすれば、それはやはり理想という見地から出るべきものではないか、こういうことで留保をいたしたのが主たる理由でございます。
  66. 田中武夫

    田中(武)委員 このケネディラウンドの起こってきた経過等を見まして、そこにやはり理想主義と実利主義といいますか、相矛盾する二つの思想がある。これをどのように調和をとるかということが問題だと私は思うのですが、これはこの程度にいたします。  そこで、委員長、これからはちょっと通産大臣が必要なんですが、通産大臣は、いま聞きますと何か発熱とかで、商工委員会のほうは終わったらしいのですが、出られないということなんです。そこでこれを留保するとあすに質問が続きますが、それでいいのですね——それでは自後の質問は留保します。まだ二つばかりずっと外務大臣にお伺いしたいですが、この系統を追ってきておるところは、通産大臣がおられるときまで——私は審議には協力するつもりであったのですが、やむを得ません。  それでは外務大臣、済みませんが、これは直接このケネディラウンドとは関係がないのですが、きのう実はお伺いするつもりであったのが、大臣の都合で中座せられましたので、これだけ切り離してちょっとお伺いしておきます。  と申しますのは、きのうインドネシア賠償の問題を話しておった。ところが、インドネシアの近海においてわが国の漁船がときどき拿捕せられる、こういう事件があります。そこで、インドネシア海域における日本の漁船の安全操業の問題と、聞くところによると、一定の海域に出漁する場合は何か料金を払っておる、こういうことも聞いておるのですが、そのもとをなすものは、インドネシアはいわゆる領海二十海里説を主張し、日本は三海里説の上に立っておる、こういうことのように聞いておるのですが、これの話し合いはどのようになりますか。
  67. 三木武夫

    三木国務大臣 最近、田中さんも御承知のように、領海外に漁業の水域というものをみなが設ける傾向が世界的にある。インドネシアも十二海里だそうですが、そこで、われわれとしては、領海は、これは国際的にきめられるべきだと思いまして、われわれも協力したのでありますけれども、六海里ということでいつかある程度までいったのですけれども、まとまらなかったのであって、いまはそういう国際条約——従来の国際条約の中には三海里というのが出てきておりますが、各国が領海というものに対して、新たなるいろいろな海里説をとる中に、これをやはり国際的に取りきめて、それが世界各国に通用する領海というものができていないわけです。したがって、日本は三海里という上に立っておるのですが、その主張というものを日本は現在くずしてはいないけれども、実際問題として、漁業水域などをこしらえて、そのために漁民が行って拿捕されたりということになってくると、日本の領海は三海里であるからということだけではこの問題は解決しませんので、現実的に漁業協定を結んで領海を拡大したのではない、安全操業という見地から、現実的な処理をしておるというのが実情であります。インドネシアについても、スハルト大統領も来たときに、総理からもこの問題を持ち出しまして、日本とインドネシアの漁業交渉はある程度煮詰まっておるのであります。これは妥結を見るという確信でございます。ただ、インドネシアの他の援助の問題もありますから、この問題を切り離してというわけにはあの場合いかなかったのでありますが、できる限りすみやかに漁業協定というものが結ばれて、日本の漁民が安全操業のできるようにいたしたいと思っております。
  68. 田中武夫

    田中(武)委員 援助と漁業協定を取引するというようなことは私はあまり望まぬのです。やはりはっきりとした基準を設けてやるべきじゃないか。そのためには、国際的に領海は何海里説というのがいろいろありますが、それははっきりする必要があるんじゃないかと思うのです。また、現在金を払うておるというのはほんとうですか。時間の関係がありますから続けますが、たとえば南米のチリとかペルーとかは二百海里説をとっているわけですね。また、現に日ソ漁業協定が交渉中です。ところが、初めから大陸だな問題といいますか、そういうことで何か暗礁に乗り上げておる。ソ連は国内法でことしの二月か何かにきめたそうですが、水深二百メートルまでの大陸だなにある鉱物、定着性の生物資源は、領海外であってもソ連の主権に属する、これを侵す外国人には最高一年の禁錮及び一万ルーブル、約四百万円の罰金を科す、こういう国内法がある。国内法が直ちに日本の漁民に及ぶとは思いませんが、そういう問題があるわけなんです。   〔委員長退席、小泉委員長代理着席〕 そこで、国際法上ではいろいろ何海里説等々ありますが、かってに領海はここまでだと、かつては季ライン等がありましたが、そういうことはどうなんでしょう。堂々と、日本は漁業も大きな一つの資源です。したがって、国際的に何海里までだということをはっきりして、安全操業ができるような方法を提唱すべきじゃないでしょうか。ただ二国間の交渉だけで、ではこの場合はこの程度で妥結しましょう、こういうことだけではなく、国際的に領海はどこまで——何海里説、何海里説等あります。あれはだんだんと昔の沿革をたどれば、大砲のたまが届かない範囲とかいうことで、そうなってくると、今日では領海はなくなってしまいます。したがって、私は、これは国際法的にきめるべき問題だと思うのですが、外務大臣、ひとつあなたが外務大臣のときにそういうことを国際的に打ち上げて、十分な交渉なり国際間のこの種のことをきめる会議を提唱せられる必要があるんじゃないかと思うのですが、いかがですか。
  69. 三木武夫

    三木国務大臣 しばしば、田中さんの御指摘になるようなことは、世界各国ともこれは不便に感じておる、したがって、海洋法の会議の場合にもこれは非常にやはり論議された。いまでは六海里が一番多いと思います。三海里の国も相当にありますが、三海里と六海里ですね。二百海里というものは、これはもう問題にならぬわけでありますが、三海里と六海里、それで六海里のほうが少し多くなっていると思います。しかし、御指摘のように、このことが非常に漁業の紛争などを巻き起こす原因にもなりますので、国際的に一定の領海というものがきめられることになれば、世界の紛争の種を少なくする意味においてもまことに好ましいことだと思うのでありますが、いきさつ等については、条約局から参っておりますので、説明をいたさせます。
  70. 田中武夫

    田中(武)委員 時間の関係がありますからけっこうです。  そこで、日本は三海里説をとっておる。しかし、六海里説、十二海里説、二十海里説とあることは私も存じております。それぞれの国が、たとえばチリ、ペルーのように二百海里だなんということでやられた場合に、公海と領海との区別が国際的につかぬわけです。だから、そういうことをはっきりきめようじゃないかということを日本がイニシアチブをとってやる必要があるんじゃないか。そのことが、防衛等でも問題になりましたが、いわゆる領海内の無害航行の問題につきましても、それが一体どれなのか。日本は三海里説なら、他の国からいえば領海であるところが、日本は公海であって堂々と通れるという問題があるのです。そういう点につきまして、いろいろあろうと思います。条約局長ですか、何かありましたら簡単に経過を願います。実はあとに質問者もおりますし、直接関係がないので、私は遠慮しながら質問しておるので、ひとつ要領よく御答弁願います。
  71. 高島益郎

    高島説明員 ただいま先生が領海につきましていろいろの説があるというお話でございましたけれども、国際法の現状におきましては、領海は三海里というのが通説でございます。それ以外の領海は、各国それぞれ主張はいたしておりますけれども、これはわが国のみならず、国際慣習、国際法に基づきまして認められない説でございます。これは国際間におきまして、そういう説をとる国があっても、いろいろ問題は生じても、いかんとも解決のしょうがない、そういう状態でございます。わが国といたしましては、これは国際的に統一するためにいろいろな機会を得て努力しようということで、検討をいたしております。
  72. 田中武夫

    田中(武)委員 定説が三海里だと言ったって、現実につかまえられてほうり込まれるのでしょう。そんなこと言っておったってしょうがないと思うのです。だから大臣、定説はこうなんだということを言っておっても、現実にしょうがないのです。だから、これはむしろ水産資源を大きな資源とするところの日本が、はっきりとそういうことを提唱して、国際的に定義をつくるという方向にいってもらいたいと思います。  時間がありませんから続けますが、これも簡単でけっこうですが、ベトナム戦争の停戦後も含むと思いますが、北ベトナムに対しても日本経済援助をする、こういうことで外務省は検討しているということを聞きましたが、それは事実なのか。もしそうであるとするならば、どういう方針をお持ちなのか、お伺いいたします。
  73. 三木武夫

    三木国務大臣 ベトナム戦争のジョンソン提案以来、和平への一つのきっかけができたことは事実でありますが、これがいよいよ和平達成、休戦協定締結ということは、相当な紆余曲折があって、すぐにベトナム戦争が終息するということは、少し楽観に過ぎると思いますが、とにかくいつかはベトナムの戦後がくる。その場合には、いままではいわゆる武力による戦いであったけれども、先ほども田中さん述べられたように、これからはいよいよ貧困への戦いである。こういう違った形の戦いというものが開始されることは間違いない。そこに日本——これは日本ばかりでもなくして、世界的な規模で、長い戦争によって荒廃したベトナムの復興というものは考えるべきだと思います。そういう点で、アジアの一員たる日本が、戦後のベトナム復興というものをどう考えるかということをいろいろな角度から検討を加えておるというのが現在の実情でございます。
  74. 田中武夫

    田中(武)委員 北ベトナムについても話がつけば援助をする、こういう考え方はあるのですね、南だけじゃなしに北へも援助するという考え方は。
  75. 三木武夫

    三木国務大臣 これはぜひともベトナムというものを長続きのする状態に置くためには、やはり北ベトナムというものを考えざるを得ない。ジョンソン大統領もボルチモア演説の中で、北ベトナムを含めて十億ドルの援助をするということを世界に向かって述べたこともあって、ただ戦争が終わったということだけではいけないので、長続きのする平和というもの、安定というものを考えたときに、もう少し大きな規模でベトナム復興というものは考えなければならぬではないかというのが世界の目だと思います。日本が結論を出したわけではございません。
  76. 田中武夫

    田中(武)委員 実は先ほども申しましたように、ここで通産大臣かあるいは通産省のしかるべき人がおられるならば、もうあと二、三十分で終わるわけなんですけれども、それはキーカレンシーの平価切り下げ等に伴う損失補償の関係、それが貿易との関係もありますので、そういう問題について伺うつもりであったのですが、そういうことでありますので、その点だけは保留いたします。
  77. 小泉純也

    ○小泉委員長代理 帆足計君。
  78. 帆足計

    帆足委員 きょうは大蔵大臣おりませんが、ケネディラウンドの問題は、行政上の問題となりますと、技術的にこまかなことがたくさんあろうかと私は思います。また、議員の職責としてはとても目を通し切れないくらいこまかな点、項目がたくさんあろうと思われる。  それで、従来、行政あって政治なしというのが戦後の特色だと思うのです。インフレーションのために、いかにも大きな政治が行なわれているような現象形態が見えますけれども、それはインフレーションという魔術が自己運動しているのでおりまして、この大増産大所得倍増も、決して政府政策の結果ではなくて、庶民は重税に苦しみ、インフレーションのために塗炭の苦しみにおちいって、その反対給付として国家資本が増大して、そして存外大きな仕事がやれているというのが、私は事の本質だと思います。  なぜこういうことから言い始めたかと申しますと、戦前における大蔵大臣というものは、各大臣もそうですけれども、相当の政治的見識を持っておりました。戦前のある時代の大臣をほめたことは、現在の各大臣にやはり政治力が足らないということを私は率直に申して痛感いたしております。たとえばなくなった井上準之助氏にしても、相当のすぐれた経済学者でした。私は学校を出てすぐその下で働いたのですけれども、経済学者でありながら、コロンタイ女史の「三代の恋」という小説を、ポケットから出して、「帆足君、これを読んだかね」と言うような新感覚も持っておられたのであります。全く対蹠的な立場におりましたけれども、高橋是清翁は、インフレーションとリフレーションの区別を当時においてさえよくわきまえておりまして、今日すでに常識になっておるケインズ学説の限界というのをあの老翁はきわめて明確に認識しておりました。そこでインフレーションの段階を越えようとすると、彼は命を賭して一線を守るためにがんばり、ついに軍部ファッショの凶弾に倒れたことは、皆さん御承知のとおりでございます。  したがいまして、このケネディラウンドの問題を論ずるにあたりまして、やはり外務委員会としては大局を見ることが必要であろうと思います。過去二十年、経済復興の過程において、アメリカがまず先頭を切り、やがてヨーロッパが復興してまいりました。アメリカはおのれの形、そのルールに合わして世界をリードしてまいりました。そして、ケネディラウンドが論ぜられ、話がまとまりつつあるときに、地球は回りまして、情勢はいま大きな転換期にあることはすでに御承知のとおりでございます。これに伴ういろいろな矛盾もすでに指摘されました。考慮すべき点が指摘されたということは、私は、外務委員会としてやはり適切な注意であったと思って、よく拝聴いたしました。日本ケネディラウンドについてこれましたゆえんのものは、アメリカの看板娘としてばかりではなしに、インフレーションの犠牲において自由競争の陣列に入ることができましたが、その背後に、相対的な労賃の非常に安いこと、住宅問題の未解決、国内における中小企業の倒産など、たくさんのアンバランスを犠牲にして、そしてかろうじて世界競争についてきたということを忘れてはならぬと私は思います。一面われわれの政策は成功しましたけれども、他面大きなひずみを持っておることは御承知のとおりです。  そこで、先日、大蔵大臣に、とにもかくにも春闘、秋闘、これでは困るではないか、預金一つ考えても将来が不安ではないか、インフレーション、重税、住宅問題この三つの地獄は一体どうして解決するのか、どういう手順で解決するのか、その見通しだけでもお尋ねしたいと伺ったのですけれども、私は、そのとき、一瞬の大蔵大臣の表情で、これに答え得るだけの御見識を望むことはちょっと無理だという印象を受けました。   〔小泉委員長代理退席、委員長着席〕 彼は立ち上がって、インフレーションを防ぐには需要と供給のバランスをとることです、こういう答えでありました。これでは、昔、交通政策を習ったことがありますが、交通政策とは交通の政策に関する学なりということを定義した大先生がおられまして、これは東大の先生ですが、この大先生に非常によく似ていると思います。交通政策とは交通に関する政策の学なり、それで問題が済むならば事は簡単でございまして、何の本質にも触れておりません。  まず、関税政策を考えるにあたりましても、やはり一番重要なのは、背後に国民経済の安定、その背後のものはすなわち通貨の安定でしょうが、通貨の背後にある三つの関所がありますが、第一はおそらく財政のバランスだと思います。第二は国際収支のバランス。第三の関門は直接の需給のバランス。この三つの関所が、国民経済を総合的に分析するときに考えねばならぬ関所であると私は思っております。  今日、日本の現状におきまして、この小さな島に一億の人口が生きるのですから、平和とそれから貿易、これが党派を越えて一番大きな命題だと思います。平和に役に立つものはすべて善である。貿易にプラスするものはすべて善である。平和を乱すものは、どんなに主観的意図がよくても、それは悪であり、貿易を減らすほうに役立つものは、主観的意図がどんな哲学を持っていようとも、おおむね悪であると定義して言い過ぎであるまいと私は思っております。だとするならば、このケネディラウンドという一つの線、そして日本がその潮流に半分うまく乗った線、今後そのまま潮流に乗れるとは考えられない矛盾を持っておるこの線に対しては、まず、貿易の増大と平和についてこれが寄与するという見通しと調整がつくことが第一であろうと思います。  そこで、お尋ねするわけですが、第一に、長官のおられる問に先にお尋ねしたいのですが、日本の通貨の安定は、現在のところ何を目標にしてお考えになっておられるか、また、国際収支の現状とことしの四月の見通し、現在の金準備、また金に準ずるものの準備はどういうふうになっているか、ちょっと簡単に御説明を願いたいと思います。
  79. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 前段にいろいろお述べになりましたことについて、別に反論を申し上げるつもりではございません。けれども、過去十何年のわが国経済政策の目標が、できるだけ国内の失業をなくす、完全雇用というものを目ざして進んできたことは確かであったと思います。そして、この目標はかなりの程度に現在達成されつつございまして、一部には人手不足が起こっておるわけでございます。それとともに、給与水準も上昇してまいりました。このことは、私は、政治のあり方としても、また経済政策のあり方としても、慢性的な失業に悩んでおりましたわが国にとりましては、決して間違った方策ではなかった、こう考えております。その結果、通貨の価値が何がしかそこなわれたではないかという御指摘であれば、私は、確かにそういう点はあったであろうと思います。けれども、通貨が安定しておって失業が多い状態と、過去何年かわが国がとってきた状態と、いずれをよしと考えるかといえば、私は、いままでのところ、私どもの考えてやってきたことは間違っていなかったという判断をいたしております。  ただ、今後通貨の安定は何を目標にして考えるかという御設問ですが、やはり労働の需給関係がこれだけ逼迫してまいりますと、一本調子の信用創造による成長政策というものは、相当注意してやりませんと御心配になるような事態がこれから本格的に問題になってくる、そういうことはあると思います。また、アメリカなどでも、ニューエコノミックスがある意味では同じような問題に直面しておるのではないかと思います。そういたしますと、労働の生産性をいかにして上昇させるか、国内経済の中で生産性の低い部門から高い部門へどのようにして労働力をじょうずに移行させるか、このことが通貨の安定を一番確保する方法ではないか、私はこういうふうに考えております。
  80. 帆足計

    帆足委員 それでは端的にどんどん質問いたしますが、私はただいまの宮澤長官の御答弁にはあまり賛成できません。というのは、やはり所得倍増政策として成功したごとく伝えられるこの資本の倍増の背後に、無事の民の、かつての植民地時代だったときの上海の裏町のような生活が膨大な人口において展開されておるのでございまして、人口の三割ぐらいはかって日本に見なかったような退廃的な物質的生活、退廃的な精神的生活をしており、それから住宅難のひどいこと、手取りの収入の少ないこと、これについては、もう一度知はあなたのほうでお出しになっている統計を再検討して、そして反論をしたいと思っておる次第でございます。  日本の現状の退廃、その物質的アンバランス、その生活の退廃こそが精神の退廃の基礎である。この諸悪の害毒中の害毒であるインフレーションを政府各位の方々は過小評価しておるように思います。決して宮澤長官に悪意があるわけじゃありませんけれども、やはりつい安穏な生活の環境の中にほんとうに民の苦しさを見そこなっておるのではないかということを私は心配いたします。また、昔の銀行家というものは、金融の専門家というものは、通貨の安定というものを非常に大事にしました。一割物価が上がるということは、年百万円取っている人から十万円盗むことでございますから、百円札のにせ札づくりなんかは、おおかわいいかわいいと言って頭をなでてやっていいくらいのことでありまして、日本銀行が行なっているインフレーションによるところの収奪というものはおそるべきものでありまして、この極悪非道なものであることに最近金融業者がもう不感症になっているのはおそるべきことであると私は思っております。このことは、もし大蔵委員会ならば、私は何度繰り返しても繰り返し過ぎることはない。インフレーションと重税、そのためにほとんどあまねくリベート、収賄、汚職至らざるなしというのがほんとうの真相であることは、皆さん御承知のとおりであります。表に出ております事件は氷山の一角でございまして、私が青年時代会社づとめしておりましたころは、一銭五厘の切手ですら、これは公務だから庶務課から出しなさい、これはぼくの彼女に出すのであるからと自分で出して、私に三銭くれた。そのくらい当時は財界の生活ですらきびしいものでありまして、財界の交際費でやたらに事を弁ずる、いわんや、ゴルフの費用から二号さんの費用まで会社でまかなうというような弊風は、三十年前にはあまりなかったことのように記憶しております。まあ、そういうことを長々と述べてもしかたがないことですが、私は、そういう点で、いまの日本経済の状況は、長官がお考えになっているよりも、はるかに病根が深いということを申し上げておきます。  そこで、当面の問題を三つ、四つお尋ねいたしまして、質問を打ち切りますが、第一に、日本の通貨の当面の安定の目標をドルにつないでお考えですか、ポンドにつないでお考えですか。または金その他の外貨を少し準備しておくお考えですか。また、ドルの前途をどのようにお考えになっておられますか。もちろん、これは軽率に発表しにくいことでありますけれども、まず一般的常識において長官としてどのようにお考えですか、お伺いしたい。
  81. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 前段に言われましたことでありますが、経済成長に伴う物質的あるいは精神的な退廃、病根ということは、確かにそういうことが非常に心配される状態であると思います。私ども、国民全体さようであると思いますが、かつては貧乏という状態、貧に処する道徳というのをいろいろ教えられておったと思います。しかし、少し生活が物質的に楽になって、今度はあえて富とは申しませんけれども、それに処する道徳というものを実は教えられていないように思うわけでございますから、それは、そういうことなしに経済成長だけが進んでいって、その間にそういう深刻な問題が出てきておるということは、私も事実であろうと思っております。  それから、円の価値をどこに置くかということでございますが、私自身は、円のほんとうの力というのは、日本経済の生産力、生産性というところに置くのがほんとうであろうというふうに考えますので、この点は、あるいは帆足委員の考えと多少違いがあるかもしれないと思います。しかし、やはり円の信用というのは、日本経済の生産力、生産性というものが基盤であるというふうに考えております。現実にはもちろん円はドルとの関連において表示されておるわけでございます。したがって、対外的にはドル三百六十円というレートが十分に守られるように対外価値を維持する、対内的には消費者物価との関係を考える、こういうことになるであろうと思っております。  なお、先ほどわが国の外貨準備がどういうことになっておるかということでございましたが、これは大蔵省政府委員が来ておられますから……。
  82. 奥村輝之

    ○奥村説明員 現在の、三月末のわが国の外貨準備は十九億六千三百万ドルでございまして、その中で金の占めておりますのが約三億三千万、あとゴールドトランシュが二億一、二千万、そのあとは短期政府証券、預金ということになっております。預金のほうは米ドル預金が主でございまして、その他、ポンド預金あるいはその他の通貨の預金がございます。
  83. 帆足計

    帆足委員 あと二、三問ですが、大蔵政務次官にお尋ねしたいたのですが、ドルの見通しにつきまして、大体どういうようなお考えでおられますか。
  84. 倉成正

    ○倉成政府委員 ドルにつきましては、御案内のように、いまアメリカがベトナム和平——ドルをとるかベトナムをとるかという選択において、ドルの防衛ということに全力を注いでおるというジョンソンの決意においても明らかでございますし、また、ドル防衛のための国内政策をいろいろとっておるというのが実情でございます。また最近、マーチンが、公定歩合の〇・五%を引き上げるということによって、国内政策についても配慮を払っておる。楽観は許しませんけれども、非常な決意をもってアメリカは努力しておりますし、国際協力が順調に進む限りにおいては、ドルについては不安はない、かように考えております。
  85. 帆足計

    帆足委員 大蔵政務次官の御答弁は、私は非常に賢明な御答弁であると思います。というのは、ベトナムの問題は深刻な軍事問題でありますけれども、同時にこれは経済問題でございます。したがいまして、経済問題から冷静に客観的に感得しておくということは、やはりアメリカの動向を見る上において非常に有用な観点だと思います。したがいまして、ただいまの観点に対しては、私は敬意を表します。  それから、ケネディラウンドに話が戻りまして、結局、この矛盾の多い自由競争の世界経済の上で、貿易をよくするためのことでございますから、したがいまして、一つは、戦争をしながら経済をよくしよう、貿易をよくしようとするところに、道徳的に矛盾がございますだけではなくて、現実的に矛盾が出てまいりました。一年数カ月前にアジア開発銀行をつくりますときに、これはだれが考えても別に差しさわりのないことのように見えますけれども、社会党はいろいろ慎重熟慮して、あのときは遺憾ながら反対いたしました。なぜ反対したかといいますと、二百五十億ドルも使ってベトナムで破壊殺戮を続けておりながら、二億や三億ドルの金を出して、そして開発銀行をつくったというのでは、人間の理性の権威において恥ずかしいことではないか、このように考えまして、われわれは反対したのです。二百五十億ドルも一年間に使って、そして遠く一万キロも離れた国にやってきて、余分の干渉をして、益なき戦争をしながら、他方で十億ドルや五億ドル出して、そして復興に加勢をする、これは、人間の理性がそういう矛盾を許さないという証拠として、私どもは賛成したかったのですけれども、その矛盾のあまりのばかばかしさに憤りを覚えて、これに不賛成を唱えたわけでございます。  したがいまして、ケネディラウンドのことを考えるならば、同時に戦争と平和のことを考えねばならぬわけです。したがいましてケネディラウンドの目標とするところを、その明るい面をもし理解しようとするならば、先ほど同僚の議員諸君が指摘したように、吉田書簡の問題を解決し、チンコム、ココムのようなオブソリートなものを廃止し、また技術者の出入国禁止のようなことをやめ、また、北ベトナム、北朝鮮並びに中国大陸との平和な常識的な貿易は、経済政治——小さな政治のいざこざとは切り離しても、一般的に人類の友好という線に沿うて、そういう大きな政治の線に沿うて、これを進歩的、合理的に解決していく。  そこで、ケネディラウンドの明るい側面に賛成しようと外務大臣がお考えならば、どうぞ外務大臣お目をさまして、伺いたいのですが、その同じ思想で、その同じ合理的な考えで吉田書簡をやめ、チンコム、ココムをやめ、技術者の出入国を緩和する、そういう方向に進んでいただきたい。それを進まないで、そしてただケネディラウンドだけを問題にされるならば、それは子供の木馬に乗ったようなことであって、やがて目まいがして落っこちるようなことになるわけでございます。したがいまして、理性の筋を通すためには、一方でケネディラウンドのプラスの面に賛成なさるならば、他方において東西貿易を緩和して解決していくという方向に向かって進むということを肯定していただきたい。外務大臣からはたびたび伺っておる問題ですが、ひとつケネディラウンドの問題とバランスをとる意味において、進歩的なお答えをお願いしたいと思います。
  86. 三木武夫

    三木国務大臣 ケネディラウンドケネディラウンドとして評価すべきだと思います。ただ、ケネディラウンドのこういう実施を機会に、共産圏貿易などについても、国内産業に悪い影響を与えない限り、できるだけ関税を下げていくということが好ましいと思っております。これは毎々お答えしたとおりでございます。
  87. 帆足計

    帆足委員 最後に、以上のような次第でありますから、私どもはいまの政府の外交政策、対外経済政策に不満な点は、東西貿易と南北貿易の問題について熱心でないということです。それから、人類がここまで進歩しておるのに、愚かな戦争が行なわれておる。それに対して、勇敢にその戦争をやめさせよう、多少やけどしてでも勇敢にやめさせようとするような道徳的権威がわが国に足らない。ネールは武力を持っていないインドの首相でありましたけれども、ネールの権威というものはやはり大きなもので、尊敬すべきものでありました。ネールの権威を日本政府に望むことはできませんけれども、やはり佐藤さんが小ジョンソン、和製ジョンソンのようにいわれることは、私どもとしてはあまりうれしいことではありません。何か暗いものがあり、何かぼそぼそしたものがある。そういう印象を受けているということはほんとにいやなことで、世論調査すると、あまり人気がないのです。ぜひとも一国の総理、一国の外務大臣は、大衆からほのぼのと明るいものを感ぜしむるような、そういう風格を持っていただきたい。  佐藤さんが、国を守る気概を持てとか、それから福澤先生のことばを引かれて、独立自尊の気象なくんば国を思うこと深くかつ切ならず、ということばをどこで覚えてこられたか言われましても、どこかであれは覚えてきたんじゃあるまいか、東京の駅長さんがどこかで覚えてきたんじゃあるまいかというような印象を人に与えるようでありまして、子供たちが集まって話しているのを聞いてみましても、何となしにたよりないなということを言われる。(「抽象論でなく本論に入れ」と呼ぶ者あり)いや、そういう国民感情を述べているわけです。議会というところは国民の気持ちを訴えるところですから、やはりそういうところは虚心たんかいに、われわれがケネディラウンドを論ずるにあたっても、たよりなく思っている点はそういうところですから、ケネディラウンドに対するわれわれの最終の社会党としての決定は、まだきまっておりません。その明るい面とその暗い面と両方を分析しておりますが、しかし、とにもかくにもわれわれは、ケネディラウンドの明るい面だけが強調されて、そして暗い面または解決せねばならぬ問題を解決しないでほうっておくというようなことになるならば、この案に賛成はできかねるわけでありますから、率直に問題点を指摘したわけでございます。
  88. 秋田大助

    秋田委員長 松本善明君。
  89. 松本善明

    ○松本(善)委員 経済企画庁長官が御用がおありのようでありますので、先に、長官がおられる間、質問をしたいと思います。  先日、この委員会で、関税の一括引き下げ日本農業にたいした影響がないという答弁政府がされました。長官もいま、ほんとうに困るものは譲許されていないんだという御答弁をされたわけであります。しかし、たとえば大豆、羊肉、牛脂というようなものの関税引き下げられておるわけであります。そうすると、アメリカ大豆あるいはニュージーランドの羊肉などの輸入増によって、大豆であるとかなたね作農民、養豚農民が相当打撃を受けるんじゃないかというふうに考えられます。この点についての経済企画庁長官のお考えをお聞きいたしたいと思います。
  90. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 その中で、まず大豆でございますけれども、これは国内で交付金の制度をやっております。交付金を出しておりますから、まず直接の影響はないと思います。  それから、マトンのあれでございますが、これは御承知のように、酪農関係は一般に自由化をしていない状態で、これから国内の酪農の保護育成をはかろうとしておるのでございます。そういうワク内のことでございますので、全くそれは影響がないということは、あるいは厳密には申せないのかもしれませんが、やはり農民と消費者と両方の利益のかね合いの大体いいところではないかと考えておるのであります。
  91. 松本善明

    ○松本(善)委員 これはそう楽観できるものではないのではないかと私たちは考えておりますけれども、さらにもう一つお聞きしたいのは、小麦の価格帯が引き上げられたわけでありますが、どういう必要があったのか、どうしてそういうことになったのか、お聞きしたいのです。
  92. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 これは多少専門的なことでございますので、あとから関係の方に補足をしていただきますが、当時の状況では、実勢価格が確かにかなり上がっておったわけでございます。そこで、輸出国、輸入国がいろいろ協議をいたしまして、ある程度価格帯そのものを上げるということはやむを得まい、しかし、それは現実の価格そのものが、だから上がるというわけではございませんけれども、そういう趨勢をある程度反映させることはやむを得まい、こういう考え方でございました。
  93. 松本善明

    ○松本(善)委員 日本はその際どういう主張をしたのでしょうか。
  94. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それは輸入国でございますから、なるべく低いことを希望する、ただ、詳しいことをはっきり覚えておりませんが、わが国の価格をはじきますときに、カナダのバンクーバー、そこらあたりを基点にとるかどうかといったようなことで、わが国の価格関税に相当有利、不利の点がございましたから、そういったようなものも含めまして、しかも、この小麦協定ができないことによってケネディラウンド全部がこわれるということは防ごう、こういうような交渉の態度でございました。
  95. 松本善明

    ○松本(善)委員 この実勢価格には影響ないと言われますが、やはり価格帯が引き上げになれば値上がり傾向になる。いままででも値上がりする傾向を反映させたということでありますけれども、やはり値上がり傾向になるということ、これは否定できないんじゃないかと思いますが、企画庁長官、実勢価格には全然影響ないということでしょうか。
  96. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 その当時かなり実勢価格が強かったのでございますが、今日は当時予測しておったのと多少むしろ違う傾向が出てきておるのではないか、これが一時的な傾向であるかどうかということには問題があると思いますが、おそらくは、実際の取引価格というものは上がることはないのではないかというような感じが、むしろいまとしてはいたしております。
  97. 松本善明

    ○松本(善)委員 ちょっと御説明、理解できないのですけれども、やはり短期的ではなくて、長期に、全体にこの価格帯が上がればやはり値上がりという傾向を生ずるのではないかというふうに私たちは思うわけです。そういうことになると、食管会計を圧迫するということにもなるであろうし、これがひいては小麦粉はパン、めん類、そういうような物価の値上がりに影響していくのじゃないかという心配をいたします。そういう点については、この問題について何ら心配はない、そういうふうに経済企画庁長官はお考えなんでしょうか。
  98. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 これは何と申しましても需給関係でございますから、当時おそらく供給者側が考えたことは、価格帯を上げれば、それだけ国内の増産が可能であるというふうに考えたでありましょうし、私どもは、それによってむしろまた実勢価格が落ちつくであろうというふうに、おのおのの思惑が別々であったわけでありますが、実際上は、現在小麦の価格は上がっていないのではないかと思います。  それからもう一つ、ことしになりまして、食糧庁が外国からの小麦の買い方を思い切って自由化され、改められまして、そうしていままで、いわばメリットの高い小麦が格安に入っておった。したがって、必ずしも必要でないのに非常に高いメリットの小麦を使ったということを改めて、輸入小麦の価格をメリットに従って再編成されましてから、それでいわばぜいたくな買い方をするということがなくなった、そういう点も、これは国内政策でございますけれどもとられまして、今日小麦の価格は、むしろ私は安定をしておるのではないかと思っております。
  99. 松本善明

    ○松本(善)委員 そうしますと、先ほど長官言われました、輸入国なので低い値段をやはり主張したということの態度と、多少矛盾をするように感じます。日本にとって価格帯の引き上げが何ら不利益にならないのであれば、低い値段を主張するということも必要ないのじゃないかと思うのです。その点の矛盾はどうお考えになっておりますか。
  100. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それは確かにございますので、当時ほとんどすべての人が、わが国を含めまして、小麦の実勢価格はやはりかなり高くなっておるというふうに考えておったのであります。しかし、現在の時点で見ます限り、必ずしもそうではないように私としては聞いております。当時、したがって絶対に小麦の価格は高くならぬという主張は自信を持ってはできませんでしたが、かりにそれができたといたしましても、もし小麦協定ができないとなればケネディラウンド全体がこわれるという情勢でございましたから、その両方を勘案いたしますと、ある程度の価格帯の引き上げは、実勢が強そうな点もあって、妥協してもいいのではないか、こういう気持ちでございました。
  101. 松本善明

    ○松本(善)委員 そうすると、結局関税引き下げをえさとして、アメリカの要求に妥協したということになるのではないかというふうに私は思うのですけれども、別のことをちょっとお聞きしたいと思います……。
  102. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 その点についてだけちょっと申し上げておきます。  そうではないと思います。御承知のように、ケネディラウンド関税一括引き下げが可能であった国は非常に少のうございまして、オーストラリアにいたしましても、カナダにいたしましても、アルゼンチンはもとよりでございますが、これらの小麦の大量供給国は、工業製品の一括引き下げに加われなかったわけでございます。いわゆる一括引き下げ国という中へは入れなかったわけで、この国の重大関心はむしろ小麦の価格であったわけでございます。したがって、ケネディラウンドの効果をできるだけ多数の国に及ぼすとすれば、農産物を含めて、いわゆる小麦協定を含めて、全部の交渉をしたほうがわが国に有利であった、こういう判断でございました。
  103. 松本善明

    ○松本(善)委員 ちょっと十分理解できませんけれども、別のことをお聞きしましよう。  日本は食糧輸入国であるのに、なぜ五%の食糧援助を引き受けるのか。これは留保しておるけれども、しかし、それは書簡で引き受けるということになっております。これはどういうわけでしょうか。
  104. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 わが国としては、決して裕福で何も困ることはないという国ではございませんけれども、しかし、戦争を放棄して世界平和を求めるということであれば、さらに貧しい国に対してはできる限りの援助をするということは国の方針であると考えます。その中でやはり何が一番困るかといえば、食いものがないという状態が一番困るのでございますから、国情の許し得る限り食いものの援助をするということは、これは援助の中では最低限必要なことでございましょう。過去にもまたそういうことをいたした例もあるわけでございます。ですから、国力の許す範囲で援助をする。しかし、その中で最も入り用な食糧援助をするということは、これは私どもの国の方針である、こう考えております。
  105. 松本善明

    ○松本(善)委員 しかし、日本の態度としては、この食糧援助規約をつけ加えることに反対をし、結局留保する、これについては不満であったということではないのですか。
  106. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 援助というのは、余ったものをくれてやる、余ったものを買わせるというような精神のものではない、こう考えましたので、留保いたしました。
  107. 松本善明

    ○松本(善)委員 この五%といいますのは、一体日本円にしてどのくらいに当たるのでしょうか。
  108. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それはほぼ千四百万ドルちょっと切れるくらいで、五十一億円であります。
  109. 松本善明

    ○松本(善)委員 この五%のうち、書簡では相当部分を食糧援助するというふうに言っておりますが、相当部分というのは一体どの程度を言うのでしょうか。
  110. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 まあ半分以上ということであります。
  111. 松本善明

    ○松本(善)委員 そうすると、この部分は輸入をしてでも援助するということになるのではないかと思いますが、この食糧援助の問題については、アメリカの余剰農産物が底をついてきているという状態の中で、食糧援助の肩がわりを他国に押しつけてきているということではないかと思います。その結果、犠牲をわれわれが受ける、日本が負っているということになるのではないか。それが初めの日本の主張と違って妥協せざるを得なくなってきた、こういうことになっているのではないかと思いますけれども、こういう考えは全く間違っているというふうに企画庁長官はお考えになりますか。
  112. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 全く間違っているというふうに考えます。世界の貧しい国を救うのがアメリカだけのつとめであると考える理由はありません。
  113. 松本善明

    ○松本(善)委員 企画庁長官の考えと私は全く違うのであります。これは実際の食糧援助が反共政権のてこ入れになっていたり、それからこの援助を日本が引き受けさせられて、アメリカのドル防衛に協力させられる、こういうふうに私たちは考えております。しかし、時間が十分ありませんので、ここで企画庁長官とこれ以上議論するつもりはありませんけれども、先ほど来議論がありました輸入課徴金の問題とドル防衛との関係について、企画庁長官はどういうふうにお考えになっておられますか。
  114. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 アメリカとしては、ドルの流出をできるだけ防ぐということをいろいろ考えて、その対策を大統領が発表しておるわけでありますが、その一環に輸入課徴金ということが考えられておると思います。しかし、先ほどからるるお話のありますように、輸入課徴金というのは、世界貿易を自由に拡大しようというものの考えに反しておりますから、私は、そういうアメリカの主張は適当でないと考えております。
  115. 松本善明

    ○松本(善)委員 日本はドル防衛に協力をするという立場をとっている、政府のたびたびの答弁で。こういう立場でやっていたのでは、輸入課徴金に反対をするのにも徹底してやることができないんじゃないかと思います。この点、企画庁長官のお考えを聞きたいと思います。
  116. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 ドルがアメリカの通貨であるからドル防衛に協力をするのではなくて、キーカレンシーであるから協力をするのであります。しかし、協力のしかたにもいろいろあるはずでありまして、世界貿易の自由化拡大に逆行するような上向をとるということは、むしろ協力にならない、こういう考えでございます。
  117. 松本善明

    ○松本(善)委員 この課徴金問題で、日本の中小企業に対する影響はどういうふうにお考えになっておりますか。
  118. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 課徴金が行なわれないように、わが国はじめアメリカ以外の多くの国が努力をしておりますから、行なわれないことを希望して去ります。しかし、万一行なわれるようなことがありますと、一部の、ことに地域産業にはかなりの影響があることを心配いたします。
  119. 松本善明

    ○松本(善)委員 いまいろいろ交渉しておる、働きかけておるということですけれども、先ほどの外務大臣答弁でも、どうもなかなか成功しないかもしれない、きめ手はないかもしれぬということですので、ケネディラウンドの交渉自身では課徴金問題について制限を加えていない。アメリカとしては、結局関税引き下げ輸出を増大する。輸入のほうはこういうことで、課徴金一つの問題でしょうけれども、保護貿易が実際上やられて輸入は制限をする。結局アメリカが非常に大きな利益を得るということになるのではないか。その結果が、もしいま宮澤企画庁長官が言われかように、課徴金問題がそのまま成功しないということになれば、中小企業にも相当の影響がある、先ほど長官は否定をされましたけれども、農民にも影響がある、私たちはそう思っております。日本の人民に犠牲が転嫁されるのではないかというふうに思いますけれども、長官の御意見をお聞きしたいと思います。
  120. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 アメリカがドル防衛をせよということは、これはアメリカで言っておるばかりでなくて、世界の各国が言っておることであります。わが国も言っておることであります。したがって、それが成功するということは、もちろんアメリカも利益でありましょうが、キーカレンシーである以上、世界各国共通の利益であると考えるわけであります。しかし、そのために輸入課徴金をやるというこは、これは世界貿易そのものに影響があるのでありますから適当でない、こう思っておるのであります。
  121. 松本善明

    ○松本(善)委員 結局、ドル防衛のためには、ある程度の犠牲を負ってもやむを得ないという答弁だったというふうに思います。たいへん私たちの考えからすれば遺憾であると思います。企画庁長官に対する質問はこの程度で終わりたいと思います。  それから、外務大臣にこの際多少お聞きしておきたいのですが、外務大臣は、この問の委員会で、安保条約の事前協議に関するゼントルマン.アグリーメントの中身を文書で提出するということを言われたのですが、これはどうなっておりましょうか。
  122. 三木武夫

    三木国務大臣 これはたいした書類でないのですよ。政府がいままで言っておることで、もうプリントいたしております。非常に膨大なものでございますが、事前協議の対象にかかるものに対する日本政府の考え方、私はちょっと草稿を見ましたが、近くお配りできると思います。
  123. 松本善明

    ○松本(善)委員 それから、十六日の委員会で、外務大臣は、ベトナム民主共和国とアメリカとの接触場所を、アメリカが従来の主張をくつがえしてあまり長くずるずると引き延ばすようなことになったら、アメリカに勧告をするということも考えているという趣旨の答弁をされたと思うのです。しかし、現在に至るも接触場所はきまっておりません。しかもアメリカのほうでは、プノンペンが提案されると、予備接触の場所には双方の代表部がなければならぬという条件がつく。ワルシャワが提案されると、接触は中立国で行なわれなくてはいかぬという条件や、それから、双方が代表部と適切な通信手段を持っている場所でなければならぬというような二つの条件、十八日のジョンソン大統領の言うのでは、四つの条件をつけております。こうして次々と条件をエスカレートしておるわけですが、この態度について、アメリカのロバート・ケネディ上院議員でさえ、十八日に、ジョンソン大統領はベトナムとの話し合いのため、いつでもどこへでも行くと言っていた、プノンペンとワルシャワ以外のどこにでも行くと言わなかったはずだ、ジョンソン大統領が予備交渉の場所について新たに持ち出した条件は許しがたい、と言っております。マンスフィールド上院民主党院内総務も同じような非難をしております。この際、このアメリカの態度は非難さるべきじゃないかと思いますけれども、外務大臣、前回の委員会での発言にかんがみて、どうお考えになりましょうか。
  124. 三木武夫

    三木国務大臣 いま、この場所については、直接にハノイとアメリカとの間に折衝が続いておるようであります。新聞でいろいろ出ておることも、これはいろんなかけ引きもあると思いますが、やはり場所の問題では、そう遠くない時期に妥結をするのではないかと期待をいたしております。いまは当事者で直接話し合いをしておるのですから、われわれ第三者がこの時期において発言することは差し控えたいと思っております。
  125. 松本善明

    ○松本(善)委員 この接触を延ばしながら、米軍機による北爆は十九日には百六十波、昨日は百五十一波、十九度線以南は全く北爆の拡大になっております。こういう状態についても、こういうアメリカの態度も外務大臣はやはり黙認をしていく、いまは黙っているということでいこう、こういうことでありますか。
  126. 三木武夫

    三木国務大臣 これは話し合いが始まりますれば、北爆の問題というのは第一番に予備交渉の議題になってくるわけでありますから、われわれとしても、一日も早く北爆をやめ、話し合いに入るという事態がくることを希望しておるわけでありますが、それにつけても、一日も早く話し合いが始まることをわれわれは期待をいたすものでございます。
  127. 松本善明

    ○松本(善)委員 日本とベトナムの人民の友好のために、ハ・スアン・チュオン氏を団長とするベトナム日本友好協会代表団の入国が申請をされましたが、これについては入国を認めるということになりましょうか。
  128. 三木武夫

    三木国務大臣 これはちょうど日にちもあまり余裕のない日にちであります。日本へ来たいという目的の会合の日にちが、そうずっと先なことでないので、近く結論を出したいと検討を加えております。
  129. 松本善明

    ○松本(善)委員 それは認めるという方向で検討しているというふうに伺っていいでしょうか。
  130. 三木武夫

    三木国務大臣 いまは、この問題をどう処理するかということで検討を加えておるということでございます。
  131. 松本善明

    ○松本(善)委員 十七日に東京都知事が朝鮮大学の認可をいたしました。この問題について、韓国の崖圭夏外務部長官が国会の本会議で、朝鮮大学認可問題に関係をして、「日本政府が認可を無効にすることを約束してきた」というふうに発言をしているということが報道をされております。これはだれがそういう約束をしたのでしょうか。
  132. 三木武夫

    三木国務大臣 そういう約束を何人もする権利はありません。事実に反します。
  133. 松本善明

    ○松本(善)委員 そうすると、韓国の外務部長官が言ったことは間違っているということになると思うのですけれども、日本政府は、これについて抗議もしくは取り消しを要求するというようなことはするのでしょうか。
  134. 三木武夫

    三木国務大臣 われわれも正式にそういう発言があったということは受け取っておりませんし、新聞紙で松本君もごらんになったと思いますが、おそらく何らかの誤報ということであろうと私は考えるわけでございます。だれが言ったにしても、韓国府政に対して日本がそういう約束をできるわけはないと私は思います。
  135. 松本善明

    ○松本(善)委員 誤報でなければ、やはり抗議をするという問題になりましょうか。
  136. 三木武夫

    三木国務大臣 外交上のことで一々仮定を設けていろいろなお答えをすることは適当でない場合が多いと考えております。
  137. 松本善明

    ○松本(善)委員 それではケネディラウンドの問題でお聞きしたいのですが、外務大臣は先日の委員会で、輸入課徴金問題を阻止できるならば関税の繰り上げ実施はプラスという趣旨の答弁をされたと思います。課徴金そのものが不当であるということは、もうこの委員会で再々各委員政府からも言われておる。この不当なことと取引をして、さらに繰り上げ実施をするというようなことになると、これはアメリカに追随するたいへん卑屈な態度ではないかと思いますけれども、外務大臣の御意見を伺いたいと思います。
  138. 三木武夫

    三木国務大臣 それは松本君の言うとおりだと思います。私、記憶にありませんが、もしプラスと言ったとすれば、課徴金課徴金として適当でないということで、ケネディラウンドの繰り上げ、それがプラスとかマイナスということでなくして、そういうことでアメリカのドル防衛に協力をし、そして、このことが世界貿易縮小にも通ずるようなこういう課徴金制度を思いとどまらせるならば、われわれは、ケネディラウンドの繰り上げ実施をしてもいいと西欧諸国も言っておるわけであります。しかし、ケネディラウンドの繰り上げ実施ということは、その輸入課徴金という適当でないものを認めてということでなくして、やはりこれはこれ、あれはあれとして、けじめをつけて考える必要があるということは御指摘のとおりだと思います。
  139. 松本善明

    ○松本(善)委員 それから、この前の委員会でやはり政府答弁で、ケネディラウンドはアメリカのドル防衛だとか国際収支とは関係がないという趣旨の答弁がされました。しかし、ケネディ大統領が一九六二年の一月二十五日に、通商拡大法を提案するにあたって発表しました通商特別教書では、こういうふうに言っております。「アメリカの国際収支に対する圧力増大の結果、ドル貨の国際的地位を強化し、アメリカの正貨準備が着実に減少するのをはばむため、アメリカの輸出を増大することが肝要だという点に、過去数年間、新たな注目が向けられだした。」中略で、「こうした新たな挑戦や機会に即応しうるよう、本日議会に対し、一九六二年の通商拡大法を提案した」という趣旨のことを言っている。これはいまのような深刻なものではないにしても、いまほどでないにしても、アメリカにドル防衛、国際収支を改善するという目的があったことは明らかではないかと思いますが、いかがでしょうか。
  140. 三木武夫

    三木国務大臣 いまのようなドル防衛などという今日のような状態ではなかったわけで、アメリカの輸出増大ということがアメリカの利益に通ずることは、ケネディ前大統領の言うとおりだと思います。しかしまた、これは今日からしても、関税税率が一括引き下げられることによって日本輸出増大にも通じますし、各国とも、ケネディ大統領のような演説、そういう立場でケネディラウンドを見るというのが各国の態度ではないでしょうか。自分の国の不利益であったならば、こういう話はまとまらない。各国とも、輸出の増大を通じて、これはその国のためにも非常に利益であるという判断がこれをまとめたのでしょうから、みながアメリカにサービスするためにケネディラウンド交渉をしたものだとは私は思っていないのであります。
  141. 松本善明

    ○松本(善)委員 ケネディラウンド交渉は、いま言いましたように、一九六二年から提唱されましたが、年頭一般教書、経済報告、それからいま読みました通商特別教書、みんな言っておりますけれども、アメリカが国際収支上の慢性的な赤字と金流出——これは経済報告の文章でありますが、それに直面をして、それを乗り切るために、主としてEECの保護貿易主義を打破し、アメリカの輸出を増大させる目的で持ち出された。関税の一括引き下げによって最大の利益を得るのは、これは外務大臣も認められたし、それから水田大蔵大臣も認められたが、最大の輸出国であるアメリカであります。日本府政は、このアメリカの利益擁護に協力をし、みずからの関税をも引き下げて、これによる輸入増大によって、先ほど申しましたように、日本の中小企業でありますとか農業がやはり打撃を受けることを許すという結果になる。それから国際穀物協定によって、輸入小麦の値上げあるいは食糧援助まで義務づけられる。これがやはり人民にもちろん影響があると思います。非関税障壁の除去については再々ここで論ぜられました。ASP制度あるいはアメリカの関税法の四〇二A条、輸入課徴金、何の制限も与えていない。これらのことを考えると、外務大臣はいま否定をされましたけれども、アメリカの意図にやはり追随をしている、そういう結果のものではないかと思いますけれども、これについての、私が指摘しましたような点についての総括的な外務大臣の御意見を伺いたいと思います。
  142. 三木武夫

    三木国務大臣 私はそうは思わない。日本の場合は、これだけ国際競争力を持ってきますと、自由貿易という方向に一やはり世界関税の障壁ばかりでなしに、その他輸入の制限的な措置を撤廃して自由貿易を推進するということが日本の利益に合致する。日本輸出貿易の上においてそれだけの国際競争力を今日持ってきておる。そういう点で、自由貿易への歩みというものを日本の不利益だという評価は適当でないと考えます。また、このことによってやはり多少の打撃を受けるものもありますが、非常な打撃を受けるものは譲許の中から除いてあるわけであります。したがって、このケネディラウンド実施されていくことは、日本貿易全体のためにプラスであるという評価をいたすものでございます。
  143. 松本善明

    ○松本(善)委員 私たちの評価とは違うわけであります。私たちは、この経済全体のアメリカに対する従属をやめて、貿易ももっと自主的で平等互恵、こういう関係をやはり打ち立てるということが必要である、それから中小企業をもっと積極的にこれに参加をさせる、こういうことなしに、いまのような従属的な貿易というものは反対なんだ、私たちはこう考えています。  この点を指摘いたしまして、きょうは質問を終わりたいと思います。
  144. 秋田大助

    秋田委員長 本日はこの程度にとどめ、次回は、明二十四日午後一時より理事会、一時三十分より委員会を開会することとし、これにて散会いたします。    午後六時五十五分散会