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1968-04-01 第58回国会 衆議院 外務委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十三年四月一日(月曜日)     午前十一時九分開議  出席委員    委員長 秋田 大助君    理事 鯨岡 兵輔君 理事 小泉 純也君    理事 田中 榮一君 理事 野田 武夫君    理事 穗積 七郎君       青木 正久君    大平 正芳君      橋本登美三郎君    山口 敏夫君       山田 久就君    石野 久男君       木原津與志君    帆足  計君       伊藤惣助丸君    川上 貫一君  出席国務大臣         外 務 大 臣 三木 武夫君  出席政府委員         外務省アジア局         長       小川平四郎君         外務省北米局長 東郷 文彦君         外務省条約局長 佐藤 正二君         外務省国際連合         局長      重光  晶君  委員外出席者         経済企画庁調整         局参事官    赤羽  桂君         大蔵省国際金融         局投資第二課長 前田多良夫君         専  門  員 吉田 賢吉君     ————————————— 三月二十九日  委員毛利松平君及び伊藤惣助丸君辞任につき、  その補欠として福田赳夫君及び渡部一郎君が議  長の指名委員に選任された。 同日  委員福田赳夫辞任につき、その補欠として毛  利松平君が議長指名委員に選任された。 四月一日  委員世耕政隆君及び渡部一郎辞任につき、そ  の補欠として青木正久君及び伊藤惣助丸君が議  長の指名委員に選任された。 同日  委員青木正久辞任につき、その補欠として世  耕政隆君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 三月二十八日  船員の厚生用物品に関する通関条約締結につ  いて承認を求めるの件(条約第一六号)(予)  アジアオセアニア郵便条約締結について承  認を求めるの件(条約第一七号)(予) 同月三十日  所得に対する租税に関する二重課税回避及び  脱税の防止のための日本国政府セイロン政府  との間の条約締結について承認を求めるの件  (条約第九号)(参議院送付)  所得に対する租税に関する二重課税回避のた  めの日本国デンマーク王国との間の条約の締  結について承認を求めるの件(条約第一〇号)  (参議院送付) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  国際情勢に関する件(ヴイエトナム問題等)      ————◇—————
  2. 秋田大助

    秋田委員長 これより会議を開きます。  国際情勢に関する件について調査を進めます。  質疑の通告がありますので、順次これを許します。山口敏夫君。
  3. 山口敏夫

    山口(敏)委員 実はきょう、モンゴルわが国外交関係の問題について、外務大臣並びに外務省当局の見解をお聞きしょうと思ったのでありますけれども、すでに御承知のとおり、世界国々の方々が非常に多くの関心と同情を寄せ、また解決への期待といいますか、和平への努力に対して非常に注目しておりますところのベトナムの問題について、アメリカ大統領であるジョンソンが、きょう、三十一日の午後九時、日本時間のちょうど十一時ごろに、北爆停止声明といいますか、北爆の問題について新しい提案を行なうということを伝え聞いておるわけであります。すでに時間的にもちょうど十一時を過ぎておりますけれども、このジョンソン大統領の報道がすでに外務省当局においてキャッチされておるかどうか。また、この問題について外務大臣のお話をお伺いしたい。
  4. 三木武夫

    三木国務大臣 ジョンソン大使からこのことについてはすでに連絡がありまして、日本時間で午前十一時に全米に向かって放送がされておるようであります。従来アメリカは、昨年の九月、サンアントニオの演説において、ジョンソン大統領は、北爆停止をする場合には、やはり直ちに話し合いに入れる、また、北爆停止の間において特に北側が南に対しての戦力の増強を行なわない、こういう条件であれば北爆を停止する、こう言っておったわけであります。最近までアメリカはこの考え方をずっと主張し続けておったわけであります。しかし、この間、直接間接にもハノイに対しての打診を行なっておったものと思いますので、何らかの見通しがついたものだと私は思います。見通しがついて、そして北爆停止に踏み切ったものだと思う。  したがって、こういうベトナム和平について一つの希望を持てるような事態が起こったことを私は歓迎をするものであります。このアメリカ北爆停止に対する提案きっかけとして、戦線は南に縮小し、そしてまた、軍事的解決ではなくして、問題を政治的に解決しようという機運が助長されて、これがベトナム和平に対しての具体化への大きな前進であることを日本政府期待をするものでございます。
  5. 山口敏夫

    山口(敏)委員 ジョンソン大統領声明は、非常に和平へのための積極的な姿勢だとわれわれも非常に高く評価し、また期待をするわけでありますけれども、と同時に、日本政府においても、こうした声明を契機として、さらにアジアにおける日本立場として、具体的に和平実現への努力を行なう用意があるかどうか、ひとつ外務大臣にお答えいただきたいと思います。
  6. 三木武夫

    三木国務大臣 これはしばしば申し上げておりますように、ベトナム戦争というものはあまりにも失うものが多い。このことによって、アジアのためにも世界のためにも、非常に暗い影を投げかけておることは事実であります。したがって、従来も、日本政府ベトナム早期和平実現に向かってできる限りの努力はいたしてきたのでございます。今後は、この問題は日本一人の力でどうこうという問題でもありませんが、同じく早期和平への実現を願っておる世界各国とともに、日本としても、これをきっかけとして今後ともできる限り和平実現するような努力をすることに対しては、これはわれわれとしてもできるだけの努力をいたしたいと考えておる次第でございます。
  7. 山口敏夫

    山口(敏)委員 たいへんよくわかりました。どうか政府としては、この問題に対して、せっかく長い間のトンネルから一つの光明を見出したといいますか、非常に明るいきざしといいますか、見通しというものがついた現在の時点において、いま大臣が言われたような点についてさらに具体的な努力を一歩一歩積み重ねて、世界人たちがこいねがっておる平和への実現という問題に対して、ひとつ積極的に取り組んでいただきたい、かようにお願いする次第であります。  それでは、ベトナムの問題については、外務大臣の積極的な姿勢というものも理解できましたので、モンゴルとの外交問題について質問をさせていただきたい、かように思います。  先般、アジルビシモンゴル平和友好団体連合執行委員会議長一行が来日して、貿易問題など両国関係について民間の代表と話し合いを行なったほか、二月二十四日には、外務省小川アジア局長との間にも非公式な会談が行なわれたと聞いております。そこで、両国関係全般について質問をしたいと思います。  私は、以前からモンゴルについては非常に大きな関心と興味を持っておりました。これはジンギスカン以来の歴史に関するロマンチックな動機のみにとどまらず、非常に政治的な動機といいますか、重要な問題が数多く残されておるということであります。わが国モンゴルは、申すまでもなく、たいへん多くの共通点を有しております。たとえばアジア州を共有しておるということや、あるいは地理的にもたいへん近く、人類学上から考えてみても、密接な関係にあるとされております。と同時に、今後も同じアジア民族として、民族的運命をともにすることもあろうと思うわけであります。  そこで、現在、日本モンゴル外交関係樹立の上で、さしあたってどのような問題が横たわっておるか、ひとつお聞かせ願いたい。
  8. 三木武夫

    三木国務大臣 モンゴルについては、国連加盟日本が支持して、モンゴルに対しての日本立場もある程度国際的に明らかになっておるわけでございます。ただ、現在、賠償問題その他の問題についてモンゴルとの間にまだ話の妥結がつかないという点もあって、この交渉が長引いておる次第でございます。
  9. 山口敏夫

    山口(敏)委員 賠償の問題が解決してないという、それがわが国モンゴルとの間を阻害する一つの原因になっておるようなことでございますけれども、やはりモンゴルが主張するわが国に対する対日賠償請求権の具体的な根拠という問題に対してお聞かせを願いたいと思います。
  10. 三木武夫

    三木国務大臣 アジア局長からお答えをいたさせます。
  11. 小川平四郎

    小川政府委員 モンゴル側の言い分によりますれば、モンゴルは一九三五年から一九四五年の間に日本から侵略を受けた戦争状態があったという立場をとっております。それによりましてこうむりました損害といたしまして、米貨に換算いたしまして約八千万ドルの賠償請求権がある、そのほかに人的損害として約二千三十九人の損害がある、この対日賠償請求権を有するというふうに述べております。
  12. 山口敏夫

    山口(敏)委員 いま局長おっしゃったようないわゆる物的な損害、それから人的な損害、こうした問題が、日本では、現在においては払う必要はない、認めておらないわけですね。モンゴルとしてはぜひ払ってもらいたい、まだ留保をしている段階だ、平行線だと思うのですけれども、この問題が乗り切れなければ両国外交関係というものが樹立できないということであるならば、これを具体的にどういう形で解決しようという意図があるのか、その点についてお聞かせを願いたいと思うのです。
  13. 小川平四郎

    小川政府委員 ただいま申し上げました数字は、モンゴル極東委員会がございましたころに提出した資料でございます。その後、賠償の問題につきましては、特に強く主張しておりませんが、私どもが話すときには、常にそういう請求権というものがあるということを言っております。額その他については最近はあまりメンションしておりませんけれども、やはり国交を結ぶについてはこの問題を先に解決してもらいたいという態度には変わりがないようでございます。  私どもといたしましては、モンゴルとの戦争状態というものは、われわれの側から見ますればなかったという立場をとっておりますので、その辺のところはもう少し詰めていく必要があると思います。ただいままでの東京におきます会談は、本年、昨年、短期間でございましたが、大体言っているところはわかりますが、さらに詰めての話し合いというものは、モスクワにおきましてわがほうの大使モンゴル大使がときどき会って、時間をかけて意見の調整をするという状態になっております。
  14. 山口敏夫

    山口(敏)委員 そういった一つの大きな難関を乗り越えつつ、また同時に、六一年ですか、国連加盟の際には認めておるというような関係で、貿易は多小なりともお互いに交流をはかっておると思うのでありますけれども、やはり貿易の問題については、世界貿易により多くの国家が参加するような努力が不断になされて、初めて世界国々の永続的な伸長というものが保障されると思うのであります。  そこで、ニューデリーで行なわれておりました国連貿易開発会議中心とする全体的な努力というものは、もとより実り多いというものとは期待いたしておりますけれども、現在の日本は、やはり世界国々の中で非常に経済成長の面においても先進国型の数に入っておるということは、自他ともに認めておるところだと思うのです。こうした工業的にもあるいは経済的にも非常に豊かな、あるいは先進国型をとっておるわが国においては、一方においては、個別的に個人のといいますか、一国の立場として、より多くの国家世界貿易の土俵に引っぱり込むあるいは引っぱり上げる努力というものが必要だと思うのであります。  そこで、近年のわが国貿易の推移を見ますと、アジアに対して非常に急速に原燃料の輸入依存度というものを強めております。具体的に申し上げますれば、三十六年においてはアジア地域において二六%だったものが、四十年においては三三%ということで上がっておる。先ほどベトナムの話も出ましたけれども、それに比例して、アメリカのほうに対する依存度というものが減っておるわけであります。こうした具体的な面を見ても、経済的の面から見ても、アジア諸国との相互依存関係というものが、今後の日本経済の打開の道をひとつ示してくれておるというふうに私は判断するわけであります。したがって、モンゴルだけが、こういった日本の大きな外交といいますか、経済といいますか、国の流れに対して例外であるという理由は乏しいと思うのであります。そういう点において、モンゴルわが国の間の貿易的な現状というものに対して、私はかなり不満を持っておるわけでありますけれども、いずれにしましても、どういった形で現在両国貿易関係を継続しておるかという点について、当局の御説明を求めたいと思います。
  15. 小川平四郎

    小川政府委員 モンゴルとの貿易の額はまだ微微たるものでございまして、昨年度は九十二万二千ドル、一昨年度は五十六万九千ドル、その一は四十五万五千ドル、額としては小さいものでございますけれども、年々わりあいに堅実に伸びているわけでございます。ただ、何と申しましても遠いところでございますし、交通も不便でございますので、貿易量が拡大されないのでございますが、現在までのパターンから申しますと、日本のほうが輸入が多うございまして、原産品でございます原皮とか毛皮とか、そういうものを輸入しておりまして、こちらからはタイヤ、チューブとか鋼管あるいは繊維品、そういうものが輸出されております。ただいま申しましたように、現在までは日本輸入超過になっております。これは先般参りました方とも話しましたが、やはり輸送——船舶鉄道等の便が非常に限られているので、そういうようなところも将来は改善をしていきたいというようなことを申しております。しかし、最近は、中共経由貿易よりもソ連経由貿易のほうがふえている、そういうようなことから、通信その他もソ連経由のものになっております。今後はナホトカ経由貿易がふえる可能性があるのではないかというふうに考えております。
  16. 山口敏夫

    山口(敏)委員 聞くところによりますと、いわゆる中ソの谷間にあって、中ソ論争一つのしわ寄せというものを受けている。いま局長がおっしゃったように、いわゆる中国経由からナホトカ経由に非常に移行しつつあるという点なんかも、こうした問題が象徴的にあらわれていると思うのでありますけれどもモンゴルを先般たずねた人が、北京経由といいますか、一つ郵便を送るにしても、北京経由でいままで送っておった。また、国際郵便法ですか、そういう形になりますと、モンゴルアジアの中の区域に入っている。こうした点について、その手紙が着かないのではないか、せっかく出した一つの商用の問題にしても、あるいはプライベートな手紙にしても、これが正確に着いているかどうか、非常にはっきりしないというような苦情といいますか、問題がずいぶん出ているわけですけれども、こういった点で、中ソの外交関係におけるモンゴル立場というものはどのような状態になっておりますか。
  17. 小川平四郎

    小川政府委員 ただいま最後の点で御指摘になりました郵便の問題でございますが、これは郵政省のほうでいろいろ交渉いたしまして、最近ソ連回り郵便及び小包が届くようになるということでございます。四月一日からを予定しておりましたから、おそらく本日からソ連回り郵便小包ができることになると思います。  中ソとの関係は、私ども印象では、やはり中間におりまして、みずからどちらに加担するということをあまりはっきりした意思表示をすることを避けているようでございますが、私ども印象といたしましては、相当ソ連に近い態度をとっているのではないかというふうに考えます。
  18. 山口敏夫

    山口(敏)委員 時間の関係もありますので、先を急ぎますけれども、いずれにいたしましても、いままでいろいろモンゴルの問題について、最初に言いましたように、非常につながりが強い。こういう点から見ても、口をきかない兄弟が不自然であると同じように、やはりこの日本モンゴルの現在の状況というものは、私は一つのひっかかりを感ずるわけであります。こうした問題が一つの政治的な意図によって、いわゆる外国の、それぞれ日本友好を結んでおる国々の干渉といいますと語弊がありますけれども、こういったようなことによって、それが阻止、阻害されておる面もあるのではなかろうかというふうな疑問も当然わいてくるわけであります。  そこで、政府は、現在の態度というものを改善するつもりはあるかないかということと、また、モンゴルとの外交関係樹立にいかなる具体的な一つの対策を持っておるか、外務大臣からお聞かせ願いたいと思います。
  19. 三木武夫

    三木国務大臣 モンゴルについては、先ほども申しましたように、国際連合に入ることを支持したわけですから、われわれが好意的な立場に立っておることは明らかであります。しかし、外交関係樹立するについては、その事前に解決をしなければならぬ問題もあるわけですから、そういう問題を解決して外交関係樹立するということが常道でありますので、今後とも、モンゴルとの諸懸案を解決して両国関係を改善するために努力をいたしたいと考えております。
  20. 山口敏夫

    山口(敏)委員 三木外務大臣が日ごろから主張されておりますいわゆるアジア太平洋州の提案ということに対しましても、われわれ非常に期待をしておるわけであります。いわゆるアジアの中の日本といいますか、アジアとともに歩む日本という一つのことばからしても、私は、このモンゴルとの外交関係樹立を一刻も早く、いま大臣がおっしゃったとおり、ひとつ推進していただきたいと思います。かつて佐藤総理沖繩を訪問して、沖繩祖国復帰なくして日本の戦後は終わらないという心からなるステートメントを発表いたしましたけれども、私は、モンゴールとの外交関係樹立なくして日本外交の戦後的な処理は終わらないというふうに思うのであります。モンゴル共産圏でありますけれども、いわゆるほかのアジア共産圏国々との国交が回復されていないからといって、このモンゴルもまさにその中の一つだということは理由にならないと思うのであります。なぜならば、他のアジア共産国分裂国でありますけれどもモンゴルは御承知のとおり分裂国家でない。まして日本外交においては、それぞれ共産主義国家とも外交関係樹立しておる国は数え上げれば幾らもあるわけでありますから、どうかひとつ、大臣が先ほどおっしゃられたような点について、具体的に、なおより早く、このモンゴルわが国との外交関係樹立に対して積極的に取り組んでいただきたいということをお願い申し上げまして、私の質問を終わらしていただきます。
  21. 鯨岡兵輔

    鯨岡委員 ちょっと先ほどの問題に関連して、外務省のほうにお願いしておきたいのですが、いま承るところによると、ジョンソンのきょうの声明といいますか、演説がどんどん電文で入っているそうであります。この委員会の終わるまでにできるだけ詳細にその演説内容についてお知らせをいただきたい、こういうことをお願いしておきます。
  22. 三木武夫

    三木国務大臣 承知いたしました。これのできるだけ詳細なテキストを委員会にお出しすることにいたします。
  23. 秋田大助

  24. 穗積七郎

    穗積委員 外務大臣お尋ねいたします。  いまのジョンソン大統領ベトナム戦争に対する新たな方針、これは在日大使を通じて外務省にすでにあらかじめ御連絡があったように承りましたが、そのときの連絡の中に、すでに骨子について報告があったかどうか。いかがでございますか。それがそうですか。
  25. 三木武夫

    三木国務大臣 これがそうです。
  26. 東郷文彦

    東郷政府委員 私が直接大使連絡を受けた次第でございますが、そのときには、非武装地帯のすぐ上のところを除いて北爆を全面的に中止する、つまり、北ベトナムの一番南の部分を除いて北爆を停止する、なお、戦線を全面的に、英語で申しますとデエスカレート、縮小する用意がある、そういう点をごく概略を申してまいったわけでございます。
  27. 穗積七郎

    穗積委員 非武装地帯北側の一部を除いてというのは、その北何マイルというようなあれはあるのですか。それからもう一つは、空爆の話がありましたね、海上からの攻撃はどうですか。
  28. 東郷文彦

    東郷政府委員 非武装地帯の北何マイルというようなことはございません。空爆及び海空攻撃ということでございます。
  29. 穗積七郎

    穗積委員 その場合、従来の主張と変わった点がありますか。つまり、北からの援助を中止しろということがアメリカ側の従来の前提条件であったわけですね。ところが、このたびの問題は、北爆停止無条件であるかどうかが一番の焦点でございましょう。したがって、ジョンソン大使からあらかじめそういう内容にわたって報告があったとすれば、日本外務省としては、報告があるのが当然だし、なければ無条件であるかどうかをただすのが当然のことだと思うのです。もうすでにいまの時間では発表になって四十分たっております。だから、内容について秘密はないわけですね。だから、至急その点を明らかにしていただきたい。無条件であるかどうかが第一点の問題である。そんな報告ではおかしいですよ。そんなものは報告にならないですよ。
  30. 東郷文彦

    東郷政府委員 私が承りましたときには、そこまで詳しい連絡はなかったわけでございますが、現在全文を入手いたしまして、その点を検討中でございます。
  31. 穗積七郎

    穗積委員 それについて、外務省はその点はお尋ねにならなかったのですか。一番重要なポイントですよ。それを通して日本外務省ベトナム戦争並びアジアにおける情勢判断をする、そのポイントじゃないですか。そんなものは子供の通告連絡みたいなものです。一番大事な点は、無条件であるかどうか。その点はもし触れていなければ、私は質問を留保しておきますから、お昼の休憩中に直ちに外務省から大使館に通じて、あるいは公開発表になっておるかもしれないから、その点を確かめて、外務省判断をわが委員会報告をしていただきたい。それに対する私の質問を留保しておきます。午後の報告を受けて、その点に関してだけ質問をしたいと思います。御了承ください。大臣、よろしゅうございますね。
  32. 三木武夫

    三木国務大臣 よろしゅうございます。
  33. 穗積七郎

    穗積委員 次にお尋ねいたしますが、いかがでございましょうか、率直に、私は、責任を追及するという問題でなくて、党派を越えて、アジア戦争の問題かあるいは平和の問題かが一番大事な問題だと思うのです。そういう意味でお尋ねをするわけですが、昨年佐藤総理ジョンソン大統領会談するときに、おもにベトナム戦争に対する情勢分析判断はわが外務省がしたと思うのだ。その外務省判断がいささか誤っておったのではないかと私は思う。むしろ逆に、場合によればアメリカのイニシアのもとに年内か年明け早々ぐらいにはベトナム戦争解決する可能性があるというふうな判断をしておられたのではないか。それはおそらくは下田大使を通じての情報あるいはその他のルートもあろうと思うけれども、いずれにしても、総括的に見ますと、旧正月以後の戦局や、それからベトコン側政治革命方針というものを見ますと、これはもう明らかに日本政府情勢判断は甘かった。これを変えることに私は何らやぶさかであってはいけないと思うのですよ。ライシャワーすら、御承知のとおり急転換しておるわけですから、そのことは、何も固執して言いのがれをするより、もっとりっぱなことであるし、国民の率直な信頼を得るものである、こういうふうに思いますし、国民をしてまた今後のベトナム戦争中心とするアジア情勢に対する判断を誤らしめないために必要ではないか。まず第一、日米会談当時に世界を驚かしたベトナム戦争を支持するという共同声明を出した時点と、今日の現実との間に、大きな見込み違いがあったということは、これはもう率直に認めざるを得ない事実だと思います。その点について、まず第一に外務大臣御所感を伺っておきたいのです。
  34. 三木武夫

    三木国務大臣 この旧正月の攻勢というものは、これは世界各国ともあれだけの攻勢を各都市にかけるとは予期していなかったと思います。そういう意味において、日本もまた、テト攻勢による各都市への攻勢というものが激しかったということは、ああいう事態があの時点に起こるとはわれわれは予期していませんでした。それが情勢判断が甘いとおっしゃれば、その批判は甘んじて受けなければいけない。ああいうふうな情勢が起こるとは思いませんでした。  ただ、ベトナムに対する日本政府態度は、北爆に対しても、南ベトナムに対しても、ああいう一つの戦闘行為というものを全面的に支持するという立場日本は言ったことばないのです。日本が常に言っておることは、たとえば南ベトナム戦争に対しても、アメリカが南ベトナムにおいて達成しようとする戦争目的というものに対しては日本は理解することができる。北爆に対しても、ただ無条件北爆をやめろということだけではアメリカがこれに応じないと言っているのですから、北爆をやめたときに、やはり北のハノイのほうからも、この北爆をやめたときを利用して戦力の増強をするような、そういうふうなことは差し控えてもらいたいという希望をアメリカが持つことは無理からぬことであるということで、全面的に戦争北爆というものをまつ正面からけっこうであるという支持を、そういう形の政府の意思を表明はしていないのであります。これは、戦争あるいは北爆というもの自体がけっこうなことだと思っておる人はだれもないわけです。したがって、われわれとしても、一日も早くベトナムに平和が実現することが望ましいということは、繰り返し述べておる政府意図でありますが、その間、一方的にアメリカだけがすべて悪いのだという立場政府はとってない。やはり南ベトナムにああいう戦争が起こったということのその経緯などについても、われわれは無視することはできない。そういう立場から、日本政府ベトナムに対するいろいろな発言が生まれてきておるのであるということを申し上げておきたいのでございます。
  35. 穗積七郎

    穗積委員 私は、三木外務大臣が、佐藤総理を取り巻く自民党内におけるいわゆるタカ派、古きを忘れず、新しきを学ばざる諸君、これらの諸君の意見に対して、必ずしも同意見でないという考えは、私は理解できます。しかし、あなたは佐藤内閣の外務大臣です。だから、共同の責任があると思う。そこで、いまあなたがその立場に立って、昨年十一月以前のベトナム戦争情勢判断については甘かったという批判があれば、それは甘んじて受けようという率直な態度に対しては、私は好意を持ちます。しかし、これは世界のだれもが見誤ったことだというのは、言い過ぎだと思うのです。自由主義諸国においても、フランスをはじめとして非常な批判があった。フランスにおいては特に政府がそうであった。それから社会主義諸国におきましては、このことはもう当然の成り行きとして見ておったわけです。当然の成り行きとして、予想される事実として見ておったわけですから、いかに日本外務省のアンテナが思想的偏向によって正しい情報も拒否しておるのか、あるいはアンテナが偏しておって大事な半分のことが耳に入らないのか、いずれにいたしましても、情勢は明らかにもう変わっておる。それで、このいわゆる和平交渉でなくて、かつてのフランスと同様、かつての日本が大陸から撤退したと同様の状態条件においてアメリカが撤退をすることによってベトナム戦争解決をされる可能性が、いまのところは私は圧倒的に強いと思う。そういう情勢の中であり、しかもあなたは山口委員質問に答えて、失うもののみ多きベトナム戦争であったと言われるならば、共同声明において、この戦争の戦闘行為を含むアメリカの対ベトナム政策を支持されたことは、私は修正すべきだと思うのです。転換をすべきだと思います。そのことを強く求めて、大臣のお考えを伺いたいのです。
  36. 三木武夫

    三木国務大臣 このベトナム戦争が起こった原因というものを振り返ってみますと、やはりジュネーブ協定によって南北というものが分かれたわけですね。これは暫定的であっても、一応南北というものにベトナムが分かれて、やはりその間は力によって侵さないという、こういう一つの精神によってジュネーブ協定というものが生まれたのですから、現在北からの浸透があることは、これはもう事実です。相当な北からの兵力も入っておることは事実です。したがって、民族自決という原則は、これは一つの普遍的な原則だと思いますが、その原則というものを力によって押しつけることはいけない。これもまた原則でなくてはならない。そういうことで、アメリカがあの戦争に介入した当初は南ベトナム政府の要請でありますが、その要請によってアメリカが軍事的に介入したのですが、しかし、繰り返しアメリカが言っておることは、北のベトナム政府を転覆する意思はない、このジュネーブ協定による南北の共存ということが実現するならば、アメリカはもうマニラ会議では六カ月以内にアメリカの軍隊を撤退するという声明まで出しておる。基地を求めず、軍隊の駐留をする意思はない、やはりこの南北のベトナムにおける平和的な秩序が回復するならば、いつまでもアメリカは介入する意思はないのだと、こう世界に言っておるわけですから、そういうふうなことで、この戦争アメリカ意図というものか、一方的にアメリカがもうすべて悪いのだという立場に私どもは立っていない。その点が穗積君との間に意見が食い違う理由だと私は思います。
  37. 穗積七郎

    穗積委員 共同声明のああいう表現での支持を修正する、あるいは転換する、あるいは取り消す必要があるではないかということを聞いておる。だから、情勢判断が誤りならば、そしていまの事実を厳然たる事実として認めざるを得ないということになれば、ここで新たなる方針日本政府も必要とするのではないか。方針なくしてベトナム戦争に対する政治的な活動というものはできないと思うのですね。そういう意味で伺っておる。  そこで、もう少しそれに関連して伺ってあなたの御答弁をお願いいたしましょう。先ほどあなたは、いままでアメリカは北とも公式または非公式に接触しておったと思うから、北の大体のその内容をサウンドできて、それで北爆停止に踏み切ったのではないかと推測されておりますが、私はそうは考えない。そのことが完全無条件であるならば、可能性があるかも知らぬが、それは初期のことだ。ところが、現在の段階になると、無条件であって、なおかつ私は可能性はないと思います。特にアメリカとソビエトとの間の交渉によってこれを妥結していこうとするこのルートは間違っていますよ。北ベトナム政府並びにベトコンのオーソリティーというものを相手にしないで、あるいは中国と何ら接触をしないで、この問題を、東南アジア全体の問題を解決しようとすることは、私は間違っておるし、不可能であると考える。  そこで、順を追うてお尋ねいたしますが、北政権との間に何らかの打診が行なわれた上であろうというあなたの推測はどこから出ておるのか、まず、それを伺いたいわけです。
  38. 三木武夫

    三木国務大臣 最初に、共同声明穗積さんお持ちだろうと思いますが、ここに読み返させていただきます。「大統領は、紛争の正当かつ永続的な解決を見出すため、いつでも話合いに入る用意のあることを明らかにした。総理大臣は、紛争の正当かつ公正な解決を求めるという米国の立場に対する支持を表明するとともに、できる限り平和探求に努力するとの日本の決意を再確認した。」こういうのが共同声明の文句でありますから、いま穗積さんが言われるように、ベトナム戦争を何でも支持するという共同声明とは違う。公正かつ正当な解決をしたいというアメリカ態度に対する支持を与えるので、そういう態度に出ないときまで無条件アメリカを支持するという意図は、この共同声明の中にない。  それから第二点の、何らかの見通しアメリカについたのだろうという話を私がなぜ述べたかということは、アメリカはサンアントニオ方式、これを固執しておったわけです。そうでなければ、これはアメリカとしては北爆停止できぬ、こう言っておったのが、急遽北爆停止に踏み切って、おそらく——全体のテキストは読んでないけれども、私は条件はつけてないと思いますよ。これに条件をつけるということなら、サンアントニオ方式と同じでありますから、おそらく条件をつけずに、大統領はこうやって日本にも連絡をしてきて、世界に予告して、十一時に重大演説をするというのですから——条件をつけた演説なら、サンアントニオ方式でありますから、そんなに世界に対して重大発表というほどのことじゃない。おそらく条件はついていまい。しかし、それまでの間に、友好国あるいはまた直接のルートがあるのかもしれませんが、そういうことで、このハノイの意図というものも、アメリカが、これは戦争の当事者でありますから、真剣に打診、検討を加えて、ここで北爆停止をすれば話し合いに応ずる可能性があろうという見通しのもとに、従来あんなに固執しておったサンアントニオ方式というものの考え方を捨てて、無条件北爆停止に踏み切ったものであろうと私が推測をするということは、これは無理からぬ推測だと私は思っております。
  39. 穗積七郎

    穗積委員 これは情勢判断の問題ですから、あまり深入りはしたくありませんが、あなたのいまの説明で、無理からぬことであろう、おれの推理は正しいというようにジャスティファイされるわけですが、私はそんなところに大きな原因があると思わないのだ。というのは、旧正月以後圧倒的な敗北段階に入ってきたのだということですね。そうすると、無条件撤退以外になくなるわけだ、このままでやれば。そして一方において、軍事的行き詰まり以上のドルの危機、それに伴って資本主義諸国間の内部的な矛盾、対立というものが、もうベトナム戦争、共産主義のほうの態度なんといっておる前に、そのことが深刻にあらわれてきている。この二つの事実を背景にして、アメリカの国内並びに国外における政治的世論が、ジョンソンをして頑強な、無謀な、無知な政策から転向せしめた、せしめざるを得なくなったと思うのです。大臣、内談をしておりますが、どうしたのですか。
  40. 三木武夫

    三木国務大臣 いま重大な報告がありましたけれども、これはあまりにも重大なことで、確認をしなければ申し上げるわけにはいきませんから、続けてください。
  41. 穗積七郎

    穗積委員 それは従来のアメリカベトナム戦争解決方針があった。そのためにサンアントニオ方式というものを主張しておった。ところが、それはもう固執することが事実できなくなった。軍事的、経済的世論の力関係で、もう敗北を認めざるを得なくなったので、それが主たる原因で無条件北爆停止をせざるを得ない。それがもうかすかな最後の手であって、それも可能性があるかないかはわからない。まさにイニシアは全部北側が握っておる。こういう状態であって、北側が事前に了承したからサンアントニオ方式を変えたのだという判断は、これは私、三木外務大臣の聡明さをもってしては、あまりにも手落ちの判断ではないかと思うのです。  そこで、続いてお尋ねいたしましょう。そういうわけで、さっき共同声明のことをおっしゃいましたが、「紛争の正当かつ公正な解決を求めるという米国の立場に対する支持を表明する」というのは、これはこの中にエスカレーション政策を含んでいるんですよ。手段としてのエスカレーション政策も支持しているんですよ。戦争だけを支持したのじゃないんですよ。アメリカは侵略のためにやっているとは言わない。正当かつ公正な解決ということを目標にしていると言っているけれども、その手段としては、とにかく北爆を含むエスカレーション、場合によれば北進をも含むエスカレーション政策というものを含んでそれを支持しているわけです。明らかにそうですよ。だから、これは取り消すのが相手のあることだからできないというなら、これとは違った新たなるベトナム戦争処理方針というものを日本外務省自身が積極的に打ち出すべきである、このことを私は強く要求いたしまして、質問を続けましょう。  そこで、第二にお尋ねいたしますが、もし無条件停止であったならば、ここの共同声明無条件停止は無意味だという佐藤総理の発言は当然否定さるべきですね。北爆の停止にはハノイによるそれに対応した措置が期待されるべきであるとの見解を佐藤首相は表明した、こうなっている。これで北爆を支持しているわけだ。やめる場合は、いまの条件が前提になっている。これを前提としてやっているのだから、無条件である場合には、日本政府はどうするのですか。アメリカはもうこれを変えておりますよ。佐藤さんの支持方針を変えているんですよ。変えたときに、日本政府はそこで妥協してはいかぬと言われるのですか。アメリカに追随するのですか。どっちですか。無条件北爆停止は支持しますか。支持しませんか。そうすると、この声明は否定になりますね。日本政府もまた否定した。
  42. 三木武夫

    三木国務大臣 穗積さんの前段から、あなたは一方的に宣言をされたので、答えるわけにいきませんが、順を追ってお答えをいたしますが、総理大臣が言う「正当かつ公正な解決を求める」といなことですから、これは戦争を大いにやれという文句じゃないですね。解決というものは、これはやはり平和的解決以外にないのですから。日本は軍事的な勝利を得るということは一ぺんも言ったことはない。問題は政治的に解決するよりほかにないという立場ですから、したがって、これは戦争を激励したのだというふうにおとりになることは、少しこれは拡大というよりかは、少し問題の声明の本質を曲げるものである、こういわなければならぬ。また、北爆についても、「北爆の停止にはハノイによるそれに対応した措置が期待されるべきであるとの見解を表明した。」ということで、「それに対応した措置」というものは、これを機会にして、もうベトナム問題を片づける、話し合いを通じてそして片づけるという意味であって、北爆を大いにやりなさいという北爆に対する激励の意図は、この中に少しも含んでいないということで、やはりこれがもう戦争の継続、北爆の継続というものを総理が意図して、それをジョンソン大統領に対して意思を表明し、その意図を激励したというふうにおとりになることは、少しやはり事実を曲げるものじゃないでしょうか。それからまた、今度の北爆停止は、これはハノイと話し合ったものではない。話し合ったものであるならば、これは無条件でありませんよ。だから、この今度のジョンソン提案は一方的な無条件な停止であると私は考えております。ただしかし、この間、ウ・タント事務総長なんかでも、北爆をやめろ、やめたら二週間以内にはもう話し合いが始まるだろうとか、また、東欧、東ヨーロッパの首脳部とも私昨年参りまして話したときに、まあ多少の表現は違っても、同じようなニュアンスで話をしておったのでありますから、アメリカ条件は付してないけれども北爆停止によって話し合いが始まるであろうという期待を持って、そしてサンアントニオ方式というものをアメリカが捨てて、新たなる局面の展開を求めたのであろうという私の推測は、依然としてこれはそういう推測をすることはまあ普通のことであろうと考えるのでございます。
  43. 穗積七郎

    穗積委員 外務大臣局長を通じてお耳に入っておるかどうか知りませんが、いま十一時の日本の信頼すべきマスコミの報道によると、これはアメリカからの外報によるものですが、この声明に対して北側が応答するかどうかは全く疑問である、可能性についての推測すべき何らの確証はない、選択権はまさに北側にのみあるのだ、それが出るか出ないかが次の問題であるというふうに報道をされております。これは声明ではなくて報道ですからね。いまあなたの言われる、北側と事前の何らかの内面的な理解が取りつけられたのではないかというのも推測だが、あげて現地からの外報はそれはないという判断であるわけです。そうなりますと、あなたのいまのことばがちょっと残っているのだ。釈然としないのですよ。北側からの対応措置、具体的に言えば、このときの佐藤さんの頭の中には、北側からの援助は停止される、完全停戦状態にならなければ無意味だということが含まれておる。しかもアメリカ北側との何らの非公式なコミットもとってなくて、それで声明した場合には、これとは反するわけだ。これはくずれるわけですよ。そういう情勢判断を誤り、それから、ベトナム戦争に対する解決のつまらぬ条件をここでつけておることです。これはそういう意味で、この条項の第四パラグラフにおける重大なる変更だと私は思うのです。そういう点で私は伺っておるわけです。何も皮肉に言っておるわけではない。これにとらわれておったんでは——私は、これは一ぺん率直に否定すべきものだと思うのです。それが日本政府によってとられないならば、それとは違った新たなる方針が出てしかるべきだ。先ほどあなたは、この声明を喜ぶ、新しく和平へのきっかけになることを期待すると言っておる。そうして与党の質問者の要望に答えて、ベトナム戦争解決に対して積極的な行動を起こすことにやぶさかではないと言っておられる。そういうときに、この共同声明にとらわれておって、このワクの中でやっては、これは私は動きはとれないと思うのです。事実は、もうこれをはるかに乗り越えて、変わった事実が外交情勢の中に出ておるわけですね。だから、私は、この間の佐藤さんとの問答の中で、佐藤さんの政策、方針が愛国的であるか反愛国的であるかは、これからのあなたの政治行動でお互いに証明しようじゃないかと申し上げたのはこのことなんです。この十一月声明というものは、日本並びにアメリカ帝国主義の重大なる共同宣言ですよ。それに対して、事実は半年を出ずしてどんどんこれをくつがえさざるを得ない情勢が、新たにドルの問題においても、ベトナムの戦局においても出てきておるわけですからね。だから、アメリカに一方的な追随をしたような態度では、これは日本外交というものはとんでもないところにはまり込んでいく。特にあなたは将来を期待されるならば、そうして将来日本の平和と国民大衆の要望にこたえんとするならば、この佐藤声明からは間隔を置いておくべきだと思うのです。また、同じ政府の中であっても、外務省が独特のニュアンスというものを持つことが、私はこれからの動きを可能ならしめる条件であると思う。三木外務大臣の率直な誠意のある反省と御答弁をいただきたい。
  44. 三木武夫

    三木国務大臣 今度の北爆停止の措置というものは、やはりハノイとアメリカとが直接に打診したり、あるいはまた間接の打診でも、その結果であるというふうに私は言っておるわけではない。いろいろなルートを通じてアメリカ話し合いができるのではないかという期待を持ったことは事実だろうと私は思います。それは何かといえば、国際機関とか第三国の責任者もそういうことを言っていますし、チン外相でも、昨年の暮れに、北爆無条件停止されるならば、話し合いに入ることが可能だろうというような意味のことを発言していますからね。それだから、北爆無条件に停止をするならば、話し合いに入り得るだろうという可能性に対してアメリカ期待を持つことは、これは私は当然のことだと思うのでございます。したがって、ハノイと直接に話し合いをしたというなら無条件ではありませんよね。しかし、いろいろな打診の結果、これで話し合いが行なわれるのではないかという期待を持つということは、これは条件ではありません。だから、そういう期待を持つということがいけないのだ、それは無条件に反すると穗積君は言われておるのではないでしょうが、期待を持つことはアメリカとして当然のことであろう。また、総理の共同声明の中の対応した措置というものに対して、非常に軍事的にお考えになっておりますが、やはり佐藤内閣が終始言っておることは、早期平和的解決でありますから、この対応した措置という中には、大きな中心の題目は、話し合い戦争当事者が始めるということです。これはどうしたって、やはり戦争をやっておる当事者が話し合いを始めなければ解決できないんですからね。北爆を停止した機会に、ハノイがこれに対応した措置ということで話し合いに応じて、平和的な解決をはかるということをこの中で佐藤総理期待するということは、共同声明をいまさら取り消してどうこうという問題ではないのではないか。無条件北爆停止というものは、だれしもみな言っておることですから、それに対して、何らかの対応した措置というもので話し合いに入るということが一番大きなことです。初めの戦力の増強という点では、最近ではアメリカも変わって、いつものような補給だったらいいんだ、にわかに大きな補給をやらなければ、ノーマルな補給というものはいいんだというようにアメリカの解釈も変わっていますからね。対応した措置で、変わらない一点は、戦争当事者が平和的解決のために話し合いに入るということであります。これが一番大事な点でありますから、佐藤総理の脳裏にあったものはそういうことであろう。だから、この事態になってもこれは取り消す必要はないのではないか。これは私の意見です。
  45. 穗積七郎

    穗積委員 いま質問中に、同僚からの報告を聞きますと、ジョンソン大統領は続いて声明を出して、ベトナム処理についての責任を痛感して、次期大統領選挙に立候補することを辞退したというニュースが入っております。外務省に入っておりますか。
  46. 三木武夫

    三木国務大臣 まだそういうニュースは確認をしておりません。
  47. 穗積七郎

    穗積委員 確認はしておらないが、うわさとしては聞きましたか。おかしいじゃないですか。われわれ民間の者がいまこの質問中に聞いておるのに、外務省が聞いていないということはないでしょう。それは正式な情報として発表されたかどうかは知らぬが、日本政府がそれを確認したかしないかは別として、そういう報道があった事実は知っておりますか。
  48. 三木武夫

    三木国務大臣 報道は、私らのほうに回ってきた紙をごらんになったんじゃないですか。いま紙が回っていったんじゃないですか。そういう報道は聞いていますが、しかし、これは重大なことでありますから、そういう重要なことについては、正式な報告がなければ、われわれはそういうことは話題にもすべきでもなければ、発言もすべきでないと思います。
  49. 穗積七郎

    穗積委員 これは重大な問題です。だから、あとで休憩もやられるそうですから、できるだけ休憩中にそれを一ぺん確認をとって、ここであわせて発表していただきたい。それまで私の質問は留保しておきます。  実は、私の意見では、これは三木さんと意見が違うことは遺憾でありますけれども、率直に申し上げておきましょう。  昨年十一月十五日の共同声明は、先ほど言ったように、日本並びにアメリカ帝国主義の重要な共同宣言である路線を明確に打ち出しておる。そういう意味では、われわれにとって反面教師としてはよくできている。私は、この間も佐藤総理に申し上げたように、この方針日本のために変えなきゃいけない、アジアの平和と繁栄のために変えなきゃいけないというふうに強く目標を持っております。だが、それを私だけの方針が正しいといって押しつけるわけではない。事実をもってやっていく以外にないと思うのです。そうしたら、いまも第四項の問題について質問いたしましても、あなたは事実上情勢判断が甘かったことを率直に認められて、そして、この共同声明は、事実の中でどんどん変更を余儀なくされていっているわけです。われわれがやっているのじゃない。政権をとっている人々の間の中で、事実が変更していっているわけです。それへ持ってまいりまして、ジョンソンがもしこの方針に従ったベトナム政策、アジア政策で責任をとってやめるということになれば、これを共同の目標として設定した佐藤首相の政治的運命も、ここで当然自決すべきであると思います。このアメリカ日本との関係で、この方針と違った大統領が出てきて、佐藤さんは一体どうやってやりますか。のみならず、それは日本国民が納得しません。佐藤さんに総理の権限を与えている主権者である日本国民は、大統領がこの声明に従った方針で失敗をして、責任をとってやめたときに、佐藤内閣がのんべんとしているということは納得しない。私は、これは野党の党派性にとらわれて言うのではありませんよ。ほんとうに日本の民主政治の当然の責任政治のたてまえからいってそうあるべきだと思う。  したがって、そのことを私の意見として申し上げて、ここで休憩していただくなら休憩に応じます。その点はひとつしっかり打ち合わせの上で、情報を報告していただきたい、こういうふうに思いますから、委員長におかれて休憩をされるならば、私の残余の質問は午後に留保いたします。
  50. 秋田大助

    秋田委員長 午前の会議はこの程度にとどめ、この際、暫時休憩いたします。    午後零時十七分休憩      ————◇—————    午後二時三十五分開議
  51. 秋田大助

    秋田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  国際情勢に関する件について質疑を続行いたします。穗積七郎君。
  52. 穗積七郎

    穗積委員 これはちょっと一見しただけで、まだこまかく正確に判断ができてないかもしれませんが、やはり予想いたしましたように、アメリカ側の一方的宣言であり、そして無条件北爆停止である、このように私は通読して理解いたしましたが、外務省の御理解も同様でございましょうか。
  53. 三木武夫

    三木国務大臣 このジョンソン大統領演説は、北爆をやめるについて条件はっけてないですね。だから、すぐに話し合いに入ることを要望しておる。アスクということばを使っておるのですね。それからアメリカの自制に見合うような、アメリカの自制を利用しないことをアシュームするというのですから、想定する。要望し想定するということばを使ってありますから、これが条件だとは……。いままでのサンアントニオ方式で、こういうことをすれば北爆をやめると言っておったのに比べると、これは、そういう条件をつけずに北爆をやめる、しかもこれがそういう話し合いに入ることを要望するということで、アメリカの一方的北爆停止提案である、こういうふうに解釈したほうがいいと思います。もう何もかにも、いろいろサンアントニオ方式との関連性も言っておりますから、条件をつけずにやめるのだから、無条件とも言えないこともないが、一方的北爆停止アメリカ提案である、こう受け取るほうがより正しいと思います。
  54. 穗積七郎

    穗積委員 私は、無条件と言いましたのは、相手方に前もって一つ条件を確約せしめる、そういう意味の条件、それを条件つきというが、そうではなくて、アスクしたり、アシュームしたりすることは、これは自由ですから、一方の相手方は何もオブリゲーションを感じていない、感ぜずにいいわけですから、そういう意味では無条件。あと、その一方的に無条件で停止したことが、相手方または世界外交に対してどういう影響を与えて、何か出てくることを期待することは自由ですよ。相手側に対しても、世界に対しても、自由なことですけれども、この場合はいわゆる一方的かつ無条件北爆停止である、条件をつけない北爆停止である。あとは期待どおりにいくかいかぬかを見守った上で次のことを考えるということで、すなおに理解すべきだと思うのです。大体それで外務省の解釈と一致いたしますね。
  55. 三木武夫

    三木国務大臣 北爆停止について条件はつけてないと解釈します。
  56. 穗積七郎

    穗積委員 そこで、次に問題になりますのは、従来になかったことでございますけれども、ジュネーブ協定というものがここへ出てきているわけですね。「平和は一九五四年ジュネーヴ協定に立脚することができる。」とある。これはわれわれ再再言ったように、ベトナム解決はすでにもう済んでおるのだ、それは一九五四年のジュネーブ協定である、アメリカがその線につくべきである。当時は共同署名国ではありませんが、単独声明を出しまして、これを支持しておるわけですから、いわば締約国と同列なんですね。それをあえて破っておったところに問題があった。したがって、民族自決、民族統一、内政不干渉、こういうものを中心にいたしましたジュネーブ協定の線にアメリカの基本の線が返らざるを得なくなった、こういうことで、私はこの点で一つの進歩であるというふうに考えますが、そのように、外務省の理解も同様であろうが、外務省の今後の動きについても、一九五四年のジュネーブ協定があくまでも解決のための基本原則である、こう認識すべきだと思いますが、大臣の御所見を伺いたいのです。
  57. 三木武夫

    三木国務大臣 この紛争解決はやはりジュネーブ協定に返るべきであるという意見には同意見であります。
  58. 穗積七郎

    穗積委員 次に、外務省日本政府は、私は、先ほど言ったような十一月十五日の共同声明に必ずしもとらわれないで、新たなる情勢の変化に対応するために、具体的な前進をした外交方針というものを打ち出すべきではないかと思います。そのときに、ジュネーブ会議の共同議長国として英、ソを指摘しておるわけですけれども、現実の解決問題としては、大臣も先ほどお認めになったように、この紛争の当事国をまじえて話をすることが最も望ましい。そういうことになりますと、いまの情勢の中では、北ベトナム政府はもとよりでありますが、南の人民解放戦線のオーソリティ、それからもう一つは、あっせん者としては中国を加えることが、私はベトナム解決並びに今後のアジアの平和を確保するために望ましいことではないかと思う。ということは、特に最近になりまして、アメリカ与党の中におきましても、中国政策に対する大きな転換をすべきである、それはアメリカの対アジア政策の転換の中の一つの重要な柱であるという認識が高まってきておることは御一承知のとおりであります。そこで、先般のわが国と中国とのいろいろな、切れなんとして切ることのできない、妨害しようとして妨害し切れない、そういう微妙な関係にあるわが日本でありますから、特に、ベトナム問題をアジアの全体の平和との関連において基本的に解決するためには、いま申しましたように、原則はジュネーブ協定の線に返ることと、そして同時に、関係諸国あるいはあっせん諸国というものは、いま申しました人民解放戦線のオーソリティと、それから中国のあっせん的動きを期待することが、あっせん者としての日本の重要な一つの勘どころではないかというふうに私は考えるわけです。このことは、後に日中関係にも大きな影響を及ぼすと思いますがゆえに、この際、特に三木外務大臣の正確な見通しを持った良心的な御判断、お気持ちをひとつ伺っておきたいのです。
  59. 三木武夫

    三木国務大臣 この戦争の終結については、まず当事者国において話し合いがなさるべきです。その当事者国の話し合いという中には、形はいろいろ問題があると思います。形についてはいろいろ問題があるが、いわゆるベトコン、民族解放戦線といわれる人々も何らかの形においてこの話し合いに入るべきだと私は考えております。それから中国——どうせこの会議はジュネーブ協定のときのような国際会議が開かれることになるわけです。そのジュネーブ協定そのものが再現しなければならぬと私は思ってないんです。しかし、ジュネーブ協定の振り出しに戻って解決の道を見出す以外に解決の方法はないだろうと考えておりますが、ジュネーブ協定の参加国と同じような国が同じように行って、ベトナム問題に対するジュネーブ会議を必ずしもせんならぬとは思っていないが、そういう会議の中に中共が入ることがアジアの平和のために好ましいと私も考えます。そういう国際会議が開かれたときには、中共もやはり入るべきであるというふうに考えておる次第でございます。
  60. 穗積七郎

    穗積委員 もう一ぺんちょっと確かめておきますが、先ほどの紛争当事国の問題の中には、南の人民解放戦線のオーソリティは当然頭の中に入っているわけですね。
  61. 三木武夫

    三木国務大臣 私は、形はどういう形で入るかは別として、やはりベトコンといわれる代表者諸君が何らかの形においてこの話し合いの中に入ることが適当であろうと考えております。
  62. 穗積七郎

    穗積委員 なぜ私がこういうことを聞くかといえば、聡明な三木さんにはおわかりだと思うが、私は、この手続、プロセスがこの問題解決、平和解決のための大きな条件になると思うからです。というのは、きょうの声明の中で重要なことは、解決方針といいますか、政治的条件について、アメリカは一九五四年のジュネーブ協定の線にのっとるということをついに認めざるを得なくなっていることが大きい。これは言うまでもなく、ベトナム戦争解決の基本的な内容を示しておるわけです。そうなりますと、私は、米軍の基地撤去、米軍撤退は当然この協定の中に含まれる精神、基本条件であると考えております。そうなりますと、アメリカがこれによって包括的にアメリカの敗北を認めてのベトナム解決の政治的条件というものが、例の十項目かありましたが、ああいうものではお話にならぬけれども、従来よりは一歩前進であるということを認めざるを得ない。そのときに問題は、日本政府が独自の方針を持って、いまの中国を含む直接または間接の関係諸国を必要とすると同時に、解決の政治的条件といいますか、和平条件というものを、この際、過去におけるわれわれの大陸戦争の経験等から見まして、ジュネーブ協定を踏まえて、日本政府自身が積極的な条件成熟の調整のために動くべきだと思うのです。その意見を発表すべきだと思う。それについて御用意はございませんか。
  63. 三木武夫

    三木国務大臣 先ほども私が申したように、前回のジュネーブ協定にも中共は入っておったわけですから、今回もまたベトナムの平和的解決、極東の平和、こういうものを踏まえて、中共がこのような国際会議に参加することは好ましいと私は思います。
  64. 穗積七郎

    穗積委員 それからあとは、総括いたしまして今後の見通しでございますが、私どもはそういうことを日本立場から見れば、平和的かつ話し合いの中で問題の解決を希望いたしております。しかも、原則はあくまでジュネーブ協定の線にのっとる、こういうことでありますが、外務大臣どうですか。政治家としてのジャッジメントで前進の可能性をどう見ておられるか。それは一にアメリカ側条件にかかってくると思う。それから、大きくは人民解放戦線北ベトナムと中国との一つのつながりですね。これの意見の対決になる。むしろ、ソビエト、アメリカの間で問題を解決するということは私は不可能だと見ておる。むしろ、そうなるとかえって問題が混乱する、こういうふうに思うわけです。そして先ほど言いましたように、これが旧正月前でございましたら順調に行ったと思いますけれども、いまの情勢は旧正月前とは全く情勢が変わっておりまして、経済的にも軍事的にも一方的にアメリカに不利、一方的に北側に有利だ、そういう情勢の中でありますから、アメリカの、このジュネーブ協定に立脚するということの具体的な構想といいますか、中身、つまり、アメリカまたはアメリカに最も近い諸国の間で国際的な世論として、ジュネーブ協定に立脚することの具体的な内容、それが何であるかということがだんだん見通しがついてこないと、これは簡単にいかないのではないかと、私はとっさの判断をしておるわけです。それについて外務省あるいは政府御所感、お見通しはいかがなものであるか、伺っておきたいと思います。
  65. 三木武夫

    三木国務大臣 今回のアメリカ提案は、北爆停止の地域などに対しては多小の制約があるようですが、北爆をやめることに条件は付さなかったわけですから、したがって、ハノイも従来無条件北爆を停止するならば話し合いに応ずる、こうしばしば言ってきたんですから、このアメリカ提案きっかけとして、ベトナム和平の機運が動き、そして戦争当事者でまず話し合いのできるというような状態をつくり出すことが必要である。だから、ハノイが一つアメリカの真意というものをくみ取って、話し合いにまず応ずる、こういうことでなければ、なかなかジュネーブ協定をいきなりというわけにもいきません。われわれが心から願っておることは、このアメリカ提案をハノイのほうにおいてもこれをやはり真剣な提案として受け取って、話し合いに応ずるという機運が生まれることでございます。
  66. 穗積七郎

    穗積委員 なお、これはそうストレートにいくかどうか、私は先ほど申しましたように、時期、情勢が変わっておりますから、新正月当時とはちょっと違うのではないかと思いますが、それはもう少し推移を見まして、また次の機会に、政府と国会との間で質疑応答を通じて意見を調整をしていくべきではないかと考えております。  最後に、もう一つこれに関連してお尋ねいたしますが、これには書いてありませんが、先ほど大統領ジョンソンが次の大統領に立候補を辞退する決意を表明した。これと一緒のようでございますが、その部分がまだ発表になっておりませんが、政府に入りました情報で、この際、大臣から、あるいは局長からでも報告をしていただきたい、事実を。
  67. 三木武夫

    三木国務大臣 ジョンソン大統領がテレビ放送の終わりにおいて、大統領選挙に出馬をしないという発言、それから民主党候補者として指名を求めない、またこれを受諾する意図はないという、はっきりした意思表示であった趣であります。この点については各新聞、テレビ等で放送されておりますが、それで使ったことばが非常に強いことばを便っている。「アイシャルノットシークアンドウイルノットアクセプトザノミネーション」これは非常に強い表現であります。私はそのままにこの発言は受け取っておるのであります。したがって、この北爆停止きっかけとして、ベトナム和平実現したいという真摯な意図から、大統領に立候補しないという、からだをかけ、最高の重みをつけたこういう提案がなされたも一のだと考え、評価する次第であります。  私は、先ほども申したように、私の心からの願いと希望は、北爆無条件停止をすれば話し合いに応ずると言っておったハノイが、このアメリカ大統領の本気の提案に対して、話し合いに入るということでございます。  また、ジュネーブ協定の議長国のソ連やイギリスのことにも触れて、これに対する努力演説の中で要請しておりますが、この議長国たる両国も、アメリカ意図を十分くみ取って、和平のためにこの機を逸せず活動を開始することを期待するものでございます。  われわれとしても、関係諸国の政府ともさっそくに連絡をとって、和平実現のための最善の努力をいたしたいと考えておる次第でございます。ジョンソン大統領大統領選不出馬に対する発言と関連して、政府意図を申し述べておきたいと思います。
  68. 穗積七郎

    穗積委員 私は、アメリカの極東政策、特に対ベトナム、対中国政策の転換が行なわれなければ、アメリカ並びに日本国民、さらにアジアの人民大衆に非常に不幸である、その転換をするものはジョンソンの退陣であるというふうに考えておりました。したがって、みずからその意義を察知してジョンソンが退陣声明を出したことを私は心から歓迎をいたしたいと思います。  そうなりますと、実は佐藤政府の政治的責任が当然問題になるわけです。先ほど言いましたような十一月十五日の共同声明は、まさに中国を共通の脅威として、それを取り除くことを前提として、そうしてベトナム戦争を支持し、日本の自衛のみならず、極東アジアの安全保障に対して日本の積極的貢献を約束せしめ、さらに続いてドル防衛については日本の最大限の協力、われわれは国民の間ではこれを心中体制と言っております。実は心中体制よりもっと低いわけですね。アメリカは絶対心中しませんから、こっちは心中のつもりでおっても。だから、日本は一方的な身投げになると思うのです。そうして交渉の中心であった沖繩問題は、そういう軍事的な背景の中で、固有の領土ではなくて共通の基地となった。こういう問題設定をしたこの共同声明というものは、全く太陽の前の雪だるまの運命でなければならない、こういうふうに思うわけです。しかも、共同声明の相手のジョンソンが、みずからこの共同声明方針によるアジア政策の失敗を自覚し、その転換をするためには自分の退陣をかけてやるのだ、やらざるを得ないということになった以上は、当の相手の佐藤首相は、少なくともこれに対して政治的無責任であり得るはずは私はないと思う。これをもって日本国民を引っぱっていこうとした、これをもってアジアの諸国民に対して日本を代表する佐藤政府の宣言としたわけです。それが全く誤りであった、こういうことにジョンソンの政治行動を通じて実証されてきたわけです。そうして、その中心であるベトナム戦争を、いま申しましたようなジュネーブ協定に引き下がって解決を求めざるを得なくなってきておるときに、佐藤政権の政治的責任は、これは自民党の内部においても私は問題になるべきことだと思うのです。私は先ほど言ったように、反対党の党派性にとらわれて言うわけでは決してありません。これこそが国会の権威であり、民主政治の権威を守るものである、このように考えて、私は、この際、日本国民大衆の平和と生活のために、アジアの平和のために促進せしめんとするならば、まず佐藤総理がその責任を明らかにしてかかるべきだというふうに強く信ずるわけです。外務大臣御所感を伺いたいのです。
  69. 三木武夫

    三木国務大臣 穗積君のお話を聞いておって、どうも私は納得しかねるのは、何も共同声明の中にベトナム戦争はいいのだとも、北爆がいいのだとも言っておるわけではない。どのようにしてこの不幸な戦争を早く終わらすか、それに役立つにはどういう方法があるかということを真剣に考えて、そういう方法、そういう全体の戦争解決に役立つような方法はないであろうかということが共同声明の出発点になっておるわけです。この戦争北爆をけっこうでございます、これを大いにやるようにという、そういう意図はない。しかし、ただいろいろなことを一方的に言うだけではだめなので、全体としての和平実現のために役立つのにはどういう方法があるかということを頭に入れながら、共同声明というものはなされたものであって、あなたの御指摘になるような、これは戦争北爆の支持というふうにお読みになることは、少し事実を曲げていやしないか、これが一点。  第二点は、ジュネーブ協定以外に、その振り出しに戻らなければもう解決の方法がないことに落ち込んだということでありますが、このジュネーブ協定に戻って解決するよりほかにはないというのは、これはアメリカも前から——初めてここで言ったのではない。世界各国も、それよりほかにはないということは従来から言っておるのであって、戦争解決する国際会議の形式としてはジュネーブ協定の方式に返らざるを得ないということは、これはハノイも言い、アメリカも言っておるので、落ち込んでしもうてその解決以外に道はないということも、これまた事実を曲げるものではないかと私は思うのでございます。そういうことを考えてみますると、やはりいまいろいろお述べになりましたことは、残念ながら見解を異にいたしておるということでございます。
  70. 穗積七郎

    穗積委員 それはあなたが役人出身の大臣なら、この字句をつかまえて、それはこういう意味だ、和平解決のためを目標にしておるのだとか、ああこう言って、それで言いのがれをして責任を感じないということもわかるが、あなたはやはり政党出身の政治家でありませんか。それを考えてみて、新しい路線であったこの共同声明の相手国の親分のジョンソンがもう退陣をしてしまって、政策の大転換をはかろうとしておる、そういうときに、佐藤首相がのめのめとそんなことを言ってしがみついておろうというのは、ちょっとおかしいと思うんですね。それはあなたにしては全くのミスジャッジだと私は思う。  これ以上議論してもしようがないから、御忠言を申し上げておきますから、佐藤首相にもひとつ直接お伝えをいただきたい。首相にはまたお目にかかったら委員会で申し上げます。  次に、実は私は、きょういろいろな問題について整理をいたしまして質問を続けたいと思っておりましたが、この問題で時間をとってしまって時間がなくなりまして、あと質問者も続いておりまして迷惑でありますから、残余の部分は次の機会にいたしまして、この際、二つだけ伺っておきたい。  それは何かというと、沖繩のB52の撤去の問題、それからもう一つは、緊急な問題として王子の野戦病院の問題でございます。その他のことは留保いたしまして、次の機会に少し本格的に伺いたいと思っておりますから、御承知の上で、この二つのカレントトピックスについてお答えをいただきたい。  これはわが党の党代表の勝間田調査団が参りましてB52の実情を視察をし、そしてこれは全島的のみならず、全国民的背景において撤去を求めなければならないと主張しておる。それから、政府が御任命になりました、世間からは御用懇談会といわれた大浜調査団も帰って、これは撤去を求めなければならないと強く言っておる。このことは、せんだっても私が申しましたように、沖繩県民こぞっての熱烈な要求なんですね。だから、さすがの大浜さんもこれをもう取り次がざるを得ない、自分もその立場に立たざるを得なくなっていることを証明しているわけです。これについて、これ以上とやかく申しませんが、政府はあれは施政権外の問題であるというようなことで責任を転嫁すべき問題ではない。沖繩県民は日本人であります。それで、相手国のアメリカは、日本に対して、政府のことばをかりれば、最も信用すべき、最も日本国民の要望に対しては常に気を配り、理解を示す、理解あるパートナーである、そう言って宣伝してきたのであるから、条約上の権利義務でなくて、これはもうどうしても人道的立場あるいは平和を要求する世論の立場で、アメリカに聞かさせざるを得ない、アメリカは聞いてしかるべきだ、こういうふうに強く思います。これに対して具体的にどうこうということは、御答弁を伺ってからにいたしますが、一々お指図はいたしませんが、強い決意を持って、この撤去問題に対しては早急に、かつ積極的に取り組むべきである。それに対して、具体的な対策も含めて御所信を国民に表明していただきたいのでございます。
  71. 三木武夫

    三木国務大臣 いま穗積さんもお述べになりました中に御指摘のあったように、これは施政権の外にあるわけです。また、そういう条約上、軍事上の側面もあるわけですが、政府関心を持っておるのは、沖繩の住民の人たちが非常に不安に思っているこの側面は、日本政府としても関心を持たざるを得ないわけでございます。条約上はこれは施政権がないのですから、何も言うことはないわけですが、また軍事上の理由もあるでしょう。しかし、いま言ったような側面から政府関心を持って、アメリカに対しても善処を要望したことは御承知のとおりであります。これに対してアメリカ側は、永久の基地にする考えはない、極東の緊迫した情勢によって移駐したので、永久の基地にする考えはないという意思表示アメリカ政府から受けておるわけでございます。したがって、こういう極東情勢も、B52が移駐いたしたときよりかは少し平静に返りつつある面もございますので、われわれは、いつまでもB52があの飛行場におらなくてもいい事態が早く来ることを期待いたしておる次第でございます。
  72. 穗積七郎

    穗積委員 特にこの北爆停止声明きっかけとし、それから対北朝鮮との関係も平和的な話し合い可能性があり、両方ともそういう誠意を示しているでしょう。B52をあそこへ持っていって威嚇をする必要はもうないのですよ。いまの軍事的情勢も変わっておる。だから、これをきっかけにして、もしアメリカにして、北爆停止が平和を念願することが目的であるという真意であるならば、この際アメリカにすすめることが、アメリカをしてやらしめることが、日本としては、単に沖繩県民の要求だけではなくて、アジアの緊張を緩和せしめるためにも必要な外交的措置であると日本政府は自信を持つべきだと私は思う。そういう意味で、もう少し誠意をもって、早くどういう方法で一体相手にその判断を求めるのか、撤去を求めるのかということを明らかにしていただきたいのです。
  73. 三木武夫

    三木国務大臣 このB52の問題に対しては、われわれも関心を持っておるわけであります。大浜さんの沖繩問題懇談会の方々四人ばかりが現地へ行かれた。まだテレビで見ただけで、報告は受けてないのですが、そういうお話も聞きたいと思っております。この問題については、われわれも沖繩人たちの不安に対しては非常に関心を持っておる。アメリカとの間にも、これは何もわれわれとして要求とか何とか言わなくても、話のできる間柄でありますから、この問題に対しては大浜さんの話も聞き、今後とも関心を持ち、できるだけ沖繩人たちが非常な不安にかられないような事態に早く立ち至るように、われわれとしても努力をいたしたいと思います。
  74. 穗積七郎

    穗積委員 ぜひそれを強く要望いたします。  最後に、王子野戦病院の移転の問題についてもお伺いをして、政府の——大体これは申し上げぬでもわかっているでしょう。先月十八日に抜き打ち開院をやり、一昨日、患者の抜き打ち移動をやった。地元区長さんなんかの意見を聞きましても、いままで事前または事後必ず連絡があったのに、今度は全くない。それで東京都知事をはじめ都議会、区議会、党派を越えて強く要望している。さらに地元の諸君も総決起いたしましてこれに反対をしている。政府もこれに対して撤去を求めるのが好ましいという気持ちを持っておられるやさきに——そこで第一にお尋ねいたしますが、局長からでもけっこうですが、外務省に対しては向こうから事前通告があったのですか。
  75. 東郷文彦

    東郷政府委員 三月十五日にすでに開院いたしまして、いつでも患者を搬入し得る状態にあったということは承知いたしております。しかし、現実の搬入につきましては、あらためて通告はございませんでした。
  76. 穗積七郎

    穗積委員 それに対して、従来も政府は、アメリカ友好的だと言われて自負しておられるわけだ。それで話のわかる相手だと国民に教えておるわけだ。それなのに、いまのような仕打ちに対して黙っておられるのはおかしいと思います。外務大臣いかがですか。
  77. 三木武夫

    三木国務大臣 王子の施設については、昭和四十年に病院の建設をしたいという申し出を受けて、そのときから病院の建設が始まったわけでございます。相当前にそういう話を受けておった。ところが、ベトナム戦争ども熾烈になってまいりますし、伝染病とか、あるいはまた風紀の問題、騒音、いろいろ地元の人が心配をされておるということであります。われわれとしても、アメリカの施設があまり都心にあるのは好ましくない。住民との間にいろいろな関係が起きますから、できるだけ都心から離れたところにこういう施設を移してもらいたいという基本方針のもとに、相当整理を行なってきたのです。いま都心に残っておる施設は非常に少ない。そこで王子の場合は、これは病院ですから、アメリカ人に限らず日本人でも、病院という社会的な施設というものに対しては、われわれとしてもこれは評価をしなければならない。自分もそういう場合を考えてみれば、普通の場合ではないのですから、したがって、もしそれが都心から移るということになれば、代替地の問題も起こってくるわけです。そういうことで、私は時間がある程度かかると思うのです。だから、時間がかかって根本的な解決ができるまでの間は、いわゆる伝染病とか、その他騒音の問題とか、風紀の問題とか、こういうことに対してできるだけの注意をアメリカ側にするように要請しながら、将来はこういう施設は都心から離れるような話し合いアメリカとの間に進めていきたい、これが正直な政府の考えでございます。
  78. 穗積七郎

    穗積委員 これについても、先ほどのB52の撤去と同様に、もう少し積極かつ熱心な態度をもって進められんことを強く要望いたしまして、残余の私の質問は次の機会に譲らしていただきます。
  79. 秋田大助

    秋田委員長 帆足計君。
  80. 帆足計

    ○帆足委員 きょう外務大臣から、重大なニュースがあるが、その発表には慎重な態度をとらねばならぬという話がありまして、その結果は北爆の停止——北爆の停止だけでございましたら、この文章の中身「将来完全な爆撃停止が可能となるかどうかは今後の出来事によって決まることになろう。」こう書いてありますから、私は例によって例のごとく、ジョンソン大統領、このようなゼスチュアを示して、そのあとベトナム民族解放戦線並びに北ベトナム政府無条件ジョンソンの繰り返しごとを受け入れるとは考えられませんので、結局このようなゼスチュアを示したあとは、いま数百万発と伝えられております小型原爆を投げる危険性がありはしないかということを、すでにフルブライト・アメリカ外交委員長も心配して発言しておられますが、このことを実は心配しておりました。ところが、ただいま穗積君の質問が次第に核心に触れていくにつれて、ジョンソン大統領は、再立候補指名を辞退してまで決意をしており、責任をとるというニュースを聞きまして、これはきわめて重大なニュースであるということをよく理解いたしております。  そこで、穗積君の質問にありましたように、また、この文章にもありますように、今後の和平の基礎として、ジュネーブ五カ国会議のジュネーブ協定を尊重する趣旨のことばがこれに盛られてあります。申すまでもなく、この五カ国協定は、いずれの国も同様でございますけれども、なかんずく、国境を接しておる中国も七億の人口を擁する新興国でありますから、その成否にとって重大なかぎを持っておる国の一つである、その中国の存在というものに対しても、実際的なアプリシェートをなさるということを外務大臣から伺いまして、私も、そうあってほしいと、現実の問題として思うのでございます。  そこで、まず第一にお尋ねいたしたいことは、ディエンビエンフーの敗戦のあと、聡明なフランスの政治家マンデス・フランス首相の手によりまして、ジュネーブ協定が成立したにもかかわらず、アメリカはこれに調印せず、やがてゴ・ジン・ジェムを擁して、今日のアメリカ軍介入侵略の端緒をつくって今日に至ったのでありますけれども、一般的に、北爆またはアメリカ軍がこれに参加して戦闘が激化し、屍山血河の戦いが続くというようなこと自体、そのような非人道的な戦争の行為自体に対して、日本国民としては、同じくアジア国民として、またアジアの隣邦として憂慮するものである、けれどもアメリカベトナムに対する政策そのものの大局には誤りがなかった、このように外務大臣は言われるのですけれども、大局自身にも誤りがあった。このことは、すでにフルブライト外交委員長も自己批判をしておるのでありまして、問題に対する接近の方法において、接触の方法において、すでに誤りがあった、このように見ておるのでございます。南北戦争の場合に、フランスは一方に介入しようとし、英軍が一方に介入しようとしたことは周知のことでありますけれども、南と北とは風俗、人情、大いに異なっておりますにかかわらず、これはアメリカの内戦として解決することができました。明治維新のときに、幕府軍を助けようとしたのはフランスであり、勤王軍を助けようとしたのは英国でありました。しかし、当時大西郷と勝海舟とは、外国の援助を得て兄弟かきに争うことは本意でないと、ともに外国の援助を断わって江戸城の平和明け渡しになったのでございます。幼な心にこの美談を聞いておりましたときには、ただ英雄豪傑の逸話としてしか考えませんでしたけれども、今日のきびしい国際情勢を別にいたしまして、いかに大西郷と勝海舟とが聡明して、かつ先見の明があり、国事を憂うる政治家であったかということを私は痛感いたしまして、懐旧の念を新たにする次第であります。もし明治をわれわれが記憶するとするならば、幕末維新の志士の大いなる志と、日本橋の水はテームズに通じると叫んだ先覚者、それは幕末を隔たる七十八年前のことでございますけれども、それをも含めまして、そのような広大な視野、祖国に対する責任感、独立自尊の気風、それらをともに記念するならば、私は価値あることと思っておるのでございます。  そこで、外務大臣お尋ねいたしたいのは、アメリカがそもそもベトナムの内戦に介入したこと自体に、その接触の方法に、そしてジュネーブ協定に賛成するようなゼスチュアを示しながら、最後の段階にひそかに逃げ出して、張作霖のようなかいらい政権を南方につくり、その自分のかいらい政権を、あたかも日本の関東軍が張作霖を暗殺したように抹殺してしまった。これがこの戦争の発端であることを思うと、一体どこにアメリカベトナム干渉の合理性が見られるか、私は、その合理性の一端なりとも外務大臣お尋ねいたしたいのでございます。
  81. 三木武夫

    三木国務大臣 しばしばアメリカ世界に向かって言っておることは、大統領が三代にわたって南ベトナムの自由独立というものの保障に対する要請を受けたということが一点。もう一つは、そういうことがなければ南ベトナムの自由と独立というものが保持できないというような状態であって、民族自決はいいけれども、力による政権の政治形態というものをしいるというようなことはいけない、こういうことが、アメリカがしばしば言っておる点であります。ただ私は、こういうベトナム戦争というものは非常に複雑な背景を持っておるので、いろいろとこの問題のしさいにわたっては歴史の審判を受けなければならぬものがたくさんにあると思います。しかし、アメリカ自身がいま申しておるような点については、そういう事実は世界も知っておるわけであります。そういうことで、必ずしもアメリカが基地を持ったり、あるいはあそこに永久に兵を置こうとも思っていない。しかも、一万マイルも遠いところにアメリカの青年を送って、そうしてアメリカは領土的に野心を持っているわけは絶対にない、そういうことを考えてみると、やはりアメリカアメリカとして、ベトナムに軍事的に介入した理由アメリカ自身が持っている、こうわれわれとしては認めざるを得ないのでございます。
  82. 帆足計

    ○帆足委員 いつの間にか外務大臣アメリカの官選弁護人になられたことを私はふしぎに思うものでありますが、たとえば東北と九州とはことばが違います。幕末のころは方言が強かったので一そう違います。そこで、幕府軍と勤王軍とは二つの国であるかというと、そうではありません。ベトナム一つの国である、また朝鮮も一つの国である、この地理的事実。南北戦争はありましたけれども、南北アメリカ一つの国である。この地理的事実は、ファクトはファクトとして、大臣におことばを返して、それは御承知でありましょうか。
  83. 三木武夫

    三木国務大臣 私も、ベトナムに対しては民族自決の原則によって、ベトナムの将来をきめるものは南北ベトナム人である、だが、そういう民族自決をやろうとしても、いまのようなベトナムでは、外国から軍隊が入り、多額の軍事援助が来ておるというような状態では、自由に、よそからの勢力に影響されないで民族の自決はできないではないか、だから、一日も早くいわゆるジュネーブ協定に返ってあそこの戦争を終結せしめて、そしてだれからも干渉を受けない、自由なベトナム人の意思によってベトナムの将来がきめられるようなベトナムをつくる、これはもう私は、この原則には大賛成であります。どうしてそういう環境をつくるかというつくり方について、いろいろ意見の分かれがあるけれども、それ以外にベトナム問題の恒久的解決はない。南ベトナム北ベトナムベトナム人であることは、むろん言うまでもないことです。どのようにしてベトナムの将来というものをきめるかという問題は、この南北ベトナム人以外にはない。ほかの者がいろいろ内部に入っていくことはよろしくない。だから、自由にきめられる環境をどうしてつくるかというところに問題の中心があると私は考えております。
  84. 帆足計

    ○帆足委員 佐藤内閣の外務大臣でなければもう少しフリーに言えると、心中お察しいたしますが、まことに基礎薄弱な官選弁護人のようにお見受けいたしました。もしアメリカがジュネーブ協定に戻りたいと考えるならば、最初のときからゴ・ジン・ジェム張作林などを立てないで、英国と相談し、ソ連と相談し、ジュネーブ協定を尊重して、自由な選挙が行なわれるように指示すればよろしいものを、みずからひそかに脱退してベトナム製張作霖を立てて、思うようにならなくなると、これを抹殺して、それからドン政権、チャン政権です。そのあとはグェン・カオ・キがあらわれた。で、グェン・カオ・キの身元を調べてみましたら、これは北ベトナムの傭兵だった男なんです。外務省はそこまで身元調べをなさいましたかどうか、これがベトナム戦争の実態でございます。かくのごときことを言うて外務大臣の気色を悪くさせることは情において忍びざることですけれどもジョンソン大統領が今日窮鼠のごとき醜態をさらすに至った事態の背景は、深くかつ遠きを思わせるのでありまして、さらに外務大臣は、われらのベトナムの事態の現実に対する見通しが甘かったことを痛感すると率直に言われました。人は率直であるということは非常に美徳でございまして、人に好感を持って迎えられるものであります。しかし、多くの人が甘かった、こう言われるとすると、これは落第坊主の寝言でありまして、アメリカ以外の国でこれに追随したのは、豪洲、ニュージーランド、あとは韓国、イモの一つほどの蒋介石、それから和製ジョンソンといわれる佐藤首相。これは懲罰委員会にはかからぬと思いますが、和製ジョンソンというニックネーム、愛称をもって呼ばれる佐藤さん、そういう人たちでありまして、与党の中にも、賀屋さんのような年老いて次第に単細胞に近づきつつある方は別といたしまして、与党のアジア研究会の諸君や、その他新進気鋭の合理主義者たちは、もう早くからベトナム問題については警鐘を乱打、幾つかの論文を発表されておるのは私も拝見いたしました。したがいまして、ジュネーブ会議参加諸国に十分な相談をせずして、アメリカが単独行為をとって、アメリカ的ディエンビエンフーになった。現にドゴール大統領は幾たびか警告して、最初二百人であった軍事顧問が——顧問と申しますのは、会社でも大体五人か十人のものです。それが十万人にふくれ、二十万人にふくれ、二十五万人にふくれたときに、二十五万人の軍事顧問とはこれいかに、これことごとくGIではないか、このようにドゴール将軍からひやかされておるのであります。「ル・モンド」紙を読みましても、朝日新聞にまさるベトナムの率直な記録が連載されております。そして、日本の朝日新聞、毎日新聞、読売新聞の記者ともどもに、国際記者の皆さんは非常に良心的で、大森特派員は、ライシャワー博士から赤とののしられて、彼は野のジャーナリストに下ってしまいましたが、いまやジョンソンがやめるという段階になれば、大森実君は毎日新聞の国際部長さんに名誉回復すべきではないかと、心ひそかに思っておる次第でございます。このような事態になって、ただ甘かったでは私は済まないのでありまして、外務大臣の御発言は常に弾力性がありますから、これは広義に解釈するとしましても、しかし、下田大使に至っては、日本国民の世論の八%以上はアメリカベトナム政策を支持しておると揚言しております。ところが、最近の週刊誌及び新聞における世論調査を見ますると、国民の大部分はベトナム戦争をいとわしく、これにかかずらうことを避けたいというのが国民の九〇%の世論でございました。この世論調査という事実をもちましても、下田さんの発言というものがいかに軽率であったか。これは直ちに責任をとっていただかなければならぬように思いますが、外務大臣、以上私が述べましたことに対して、まことにもはやもう完膚なきまでに批判されて、答うべきことばもなかろう、人道的にはそう思いますけれども、しかし、やはり外務大臣の席におられますから、ひとつあやまちを改むるにはばかるなし、御答弁を願いたい。少なくとも、さっきの御答弁で非常によかったのは、ジュネーブ協定のその精神を重んずるということ、中国を無視してアジアの現実というものはあり得ないということ。これは賛否は別です。西方にクマがおり、南方に象がおるとしたならば、その事実を無視することはできません。つゆのときには雨が降る、夏は暑い、そうすれば、つゆのときに番がさをさし、暑いときにはパラソルをさす、それ以外に方法はないわけでありまして、その事実を最初から無視して歩いたらズブぬれとなって、そして肺炎になる。いまやアメリカはまさに肺炎と肝臓硬変症になっておる。ひとつ御答弁願いたいと思います。
  85. 三木武夫

    三木国務大臣 外務大臣はことばがないわけではございません。お答えをいたします。  まあ私が、このテト攻勢について、あの時期に、あのような広範な都市攻撃が行なわれるということは予期せなかった、その予期せなかったことが甘いとおっしゃるならば、甘んじて甘いという批判を受けましょうと私は申したわけでございます。全体のベトナムに対するわれわれの考えが甘いとは思っていない。しかし、テト攻勢についてはそういう感じ一まあ帆足さん、テト攻勢をちゃんとああいうものがあることをやはり予期されておったのかどうか知りませんが、あの時期で、ああいうふうな形の攻勢が行なわれるということはなかなか予期せない事態でありました。そのことがベトナム問題全般に対して甘いと私が発言したようにとられることは、外務大臣の権威のために、それはそういう御理解ならば御訂正を願います。私は、このベトナム戦争というものをそんなに甘くは見ていない、そういうことでございます。そしてまた、いろいろと歴史的なことを述べられましたが、これはアメリカだっていろんな判断の誤りもあるでしょう。やることに全部誤りがないなどと、私はアメリカのために弁護しようとは思わない。いろんな誤りもある。ベトナム戦争の背景の複雑さ、これは実に理屈どおりのものでない背景の複雑さがありますから、その間やはり判断にも誤りをおかすような場合もあり得るでしょう。しかし、私が言いたいことは、そうやって、将来歴史というものがベトナム戦争にいろんな批判を下すでしょう。しかし、いまわれわれがうしろへ向いて、どこが悪い、これが悪いというよりかは、アメリカ大統領大統領の地位をかけて戦争を終わらそうではないかという提案をした。これを一つきっかけにして、みんながやはり力を合わせてベトナム和平に持っていくことができないものか、せっかくのこれだけの提案を行なわれた、これをベトナム和平のために生かすことができないか。そういう意味で一つの建設的な一われわれとして建設的にものを考えていこうではないかということで、過去の歴史をここで振り返って、帆足さんと私が議論をして、アメリカのために弁明しようとは私は思っていない。ただ、これだけのこの事態に対して、これを何かベトナム和平に結びつけることができないか、こういうことが願いでございまして、あなたの言われることに、外務大臣としてことばがないということではございません。いろいろおっしゃるならばお答えをいたします。
  86. 帆足計

    ○帆足委員 ただいまの御答弁は、自民党の外交調査会長または外交調査会委員としてのおことばならば、私は、敬愛する三木さんのおことばとしてよくわかります。しかし、残念ながら、責任者外務大臣というところに、三木さんはじめ寂として声なしという悩みがあろうと思いますから、あまり深くは追及しません。  また、いろいろ複雑な事情と申しますが、人生は常に複雑なのでありまして、失敗したときにだけ複雑になるものではありません。昔から複雑でありました。そうしてこのベトナム戦争は、今度の激戦で敗れたものではありません。これは戦略的に言えば、軍事的に言えば戦術でございます。戦術の敗北は戦略からきているのでございまして、ディエンビエンフーの敗北も戦術的敗北でございます。その背後にあるのは戦略、その戦略が誤った。すなわち、ベトナムへの接近の方法においてアメリカは不誠意であり、合理的でなかった。私はそのことを明確にしておきたい、こう思って申し上げたわけでございます。  また、甘かったということばの中には、戦略と戦術の区別がなかったこと、すなわち、木を見て森を見なかったことと、それからもう一つは、下田大使大使として用をなさなかったことにあると思います。第一、ライシャワー博士ですら、やはり学者ライシャワーは博士でありますけれども、しかし、駐在大使としてのライシャワーさんは、大森実君のベトナムのありのままの情報に対して、偏向を示しておる、偏向報道である、こういう失言をいたしました。彼の学者としての生涯に一点の汚点を残したことは、あの敬愛する温厚なライシャワー博士として一世一代の失策であったと私は思うのでございます。  ただいま穗積君も質問いたしましたが、事態がこのように推移いたしました以上は、外務委員会としては、過去からはただ学ぶことにとどめまして、過去を語って、いたずらに個人個人が先見の明を誇り合ってもしようがない、それは小人のすることでありまして、過去から学んで、今後をどのようによくするかということが共同の課題でございましょう。だとするならば、B52の問題にいたしましても、これが直ちに戦局に影響があると思って保守政党としては十分なことが言えなかった。いまや、戦略的にも戦術的にも道徳的にもあやまちであったということが明らかになった以上は、しかも、B52に核兵器が載っているか載っていないかわからないという状況のもとでは、私は、沖繩の同胞の心配をいれて、断固としてアメリカに警告を発してもらいたいと思います。私はデンマークのある知り合いの外交官から聞いたのですが、デンマークでは、デンマークが許しておる基地から原爆を搭載したB52がデンマーク政府通告もせずに飛び立って、グリーンランド沖で墜落して大事件を起こした。似たような事件がポルトガルかスペインにあったことも外務大臣は御存じでしょう。私はこの話を聞きまして、同じことが沖繩に起こらねばよいがということをかねて心配しておりましたけれども戦争のなまぐさい血潮に酔いしれていたアメリカ当局者の耳には入りませんでした。けれども、いまやジョンソン大統領が責任をとろうとする段階においては、私は、同じことをあらしめてはならないと思います。出発したいならばアメリカ領土から御出発ください。またはアメリカの領土から出航した航空母艦から何でもなさったらよろしい。しかし、日本の国土、潜在的といわれておりましても、日本の国土から出発することは道義的にごめんこうむりたいと思います。したがいまして、穗積君は先ほど多少遠慮して申し上げましたが、いまの情勢では、私は大浜さんの報告も参ったことでございますから、至急外務大臣は大浜さんにお会いになって、デンマークがグリーンランド問題でアメリカに警告を発したように、はっきり——そういうことは日本の安全保障にならない。現にアメリカの一般的戦略に反省すべき余地があったのではあるまいか。その間の冷却期間を今後半カ年は置かねばならぬのでありますから、沖繩を使うことはやめてもらいたい。と申しますのは、万が一にもこれがデッドロックにぶつかったときには、軍の一部の右翼はやけになりまして、小型原爆を使うおそれがあるのでございまして、そのことに対してはワシントンポストにおきましても、ロンドンタイムスにおきましても、至るところでそのことを憂慮した論文が出ております。私もフルブライト外交委員長並びにケネディ大統領候補に同じことを書きまして、同時に沖繩の状況と、朝日新聞に載りました「戦場の村」というあの連載のルポルタージュを磯野富士子教授に訳してもらいまして英語にいたしまして、そして参考のために送りましたところ、数日前にロバート・ケネディ氏から懇篤な返事が参り、フルブライト外交委員長からも返事が参っております。いずれ外務委員長に提出してお目にかけますから、どうかごらんになっていただきたいと思います。  事態はすでにこのようになっておりまして、戦略的に見ましても、戦術的に見ましても、事変は終息に向かうのでありますから、ひとつ外務大臣から理のあるところをB52に対してはっきり言っていただきたい。  それから北区の野戦病院につきましては、とにかく野戦病院という名前自体がけしからぬのでありまするし、他国の首都のまん中に、そこの市民がきらうのに何も置かなくとも、ハワイに負傷者をお連れになって一向差しつかえないのでありますし、サイゴンの病院に回復期までお引き取りになってもけっこうでございまして、かりにわれわれが戦争をどこかでいたしまして——そういうことはありませんけれども、ワシントンにどんどん患者を運ぶというようなことをしたら、それはワシントンの市民はいい顔をしないでしょう。ましてや外務大臣は、病人だから人道的見地と言われましたけれども、単なる病人ではありません。ベトナム戦争の負傷者またはベトナム沖繩で淋病や梅毒をちょうだいしてきた人もまじっているそうであります。性病は伝染病であるかないかわかりませんけれども、性病患者が非常にたくさん来まして、横須賀でも、国立でも、立川でも、あのあたりのバーには日本人は近づくなといわれているくらいでございますが、この事実を御存じでございますか。伝染病の中には性病は入るとお考えですか。したがいまして、それほど市民がきらって、八百屋のおかみさんまでがデモをしている場所に、別に野戦病院をつくらなくても私はいいと思います。こういうことはやはりけじめを明らかにしていただきたいと存じます。もちろん、外務大臣としては同盟国に言いにくい点がありましょうから、とにかく外務委員会、外務委員、また衆議院議員は、国民の代表として票をとらねばならぬ立場におるから、とてもとても押え切れるものではない、ひとつ国会議員が承知しないから、こうおっしゃって、外務大臣はそれを取り次いでいただきたい。都会議員、区会議員もまた超党派的に同じことであります。これに対してひとつ明確な御答弁をお願いしたい。
  87. 三木武夫

    三木国務大臣 B52に関しては至急に大浜さんにお目にかかって、現地の模様等も話を聞きたいと思っております。  それから王子のほうについては、これは私自身も、ああいう一つアメリカの施設が都心にあることは好ましくない結果をもたらすことが多いのではないか、できるだけ都心から離れたほうがいいという意見であります。ただしかし、いま帆足さんは非常に何でもせっかちにいろいろおっしゃって、すぐに撤去要求だ、こう言われるのですけれども、やはりこれにはある一つの、移転をするにしても代がえ地の問題もございますし、あれはやはり安保条約の地位協定によっておるわけでありますから、そういうことで、やはりある程度の時間がかかるわけでございます。そういうことで、なるべくアメリカの施設は都心から離れた地域に置いて、そうしてその施設が使われるというふうに今後アメリカとの話し合いを持っていきたい。何も外務大臣だから言いにくくて、外務委員会でいろいろ言ってくださろうという御親切のようでございますが、外務大臣だからといって言いにくいことを言わないような外務大臣ではいけませんから、それはいとうものではないのですけれども、ああいう施設ですから、すぐ右から左にこれを——そういうものが移転する場合にとう解決するかという問題等もあわせて考えないと建設的な提案にならない。やはり提案をする場合には、なるべく合理性のある提案をすることが必要であると思いますので、そういうことでわれわれとして今後対処していきたいと考えておる次第でございます。
  88. 帆足計

    ○帆足委員 それでは両件とも、今後とも折衝を続けるというふうに承ります。与党のほうは春の海ひねもすのたりのたりかなでいいでしょうが、野党はのたりのたりとしておったのでは国が滅びますから、私どもはせっかちでございますけれども、それは御了承願います。  それから、ニュースが不十分であることを私は痛感いたしますが、下田大使は、正確なニュースをアメリカにも送らず、ひいきの引き倒しで日本にも送ってない。ワシントンポストやニューヨークタイムズなど、なかなかいいことが書いてありますが、一向政府からいただくものに出ておりません。下田大使に対して直ちに懲戒処分せよとは言いませんけれども、正確なニュースを大使館、領事館が送るように、もう少し訓戒を施されたらどうでしょうか。見通しが甘かったといま大臣がお嘆きになった、率直に言われたその意味はいろいろに解釈されるといたしましても、そこへ並んでおられる諸公の補弼の任に欠くるところがあった、なかんずく、各国大使のニュースにおいて欠くるところがあった、私はそう思っております。外務省から出ますいろいろなニュースを手にとって読んでおりますが、やはり偏向、そのニュースは一方に片寄り過ぎております。もう少しニューヨークタイムズ、ワシントンポスト、ル・モンド紙、ロンドンタイムズ、マンチェスターガーディアン紙などをしっかりお目通しになって、その中の重要な他山の石と思われる記事は外務委員会にも配っていただきたい。外務大臣に到着をしている下田大使からのニュースは、私はあまり正確にして精密でないとにらんでおります。したがいまして、下田大使に対しては警告を発していただきたい、こう思う次第であります。
  89. 三木武夫

    三木国務大臣 下田大使はきわめて有能な外交官でございまして、なかなかいいニュースを送ってきております。一々外務委員会に御報告しない場合もありますけれども、情報の収集には非常に努力をしておるように見受けられます。したがって、せっかくの御要請でございますけれども下田大使を何か召還とかいろいろなお話がありましたが、そういう意思は持っておりません。
  90. 帆足計

    ○帆足委員 もちろん、大使を懲戒に付することは、同時に外務大臣にも累が及びますし、また、下の者をかばうというのは純風美俗でございますから、一応そういう答弁しかできないでしょう。それは、下田大使はまさかばかだとは言えないでしょう。しかし、私はばのつくほうに近いと思います。彼がいままで語ったことばは現実離れをしておりまして、一体東大時代に何を読んでおったか。雑誌キングでも寝ころがって読み、あとは外交官試験だけに熱心ではなかったろうか。シェークスピア全集くらいは読んでおるか、頭に合理性があるか、映画を見るか、映画のあとにアイスクリームを食べて奥さんと一緒にコーヒーを飲むかどうか、こういう個人的なことまで調べなくてはならないほど、彼のニュースは政府をして誤らしめた。しかし、個人のことに触れることは適当にいたします。しかし、私がよくよくこう申しますのは、下田さんが外務大臣ぶりの大発言をなさるからなんです。事務官としてきちんとした資料を送り、発言なさっておればよろしいけれども、ときどき外務大臣にもまごう大発言をされて、そして外務委員会には一ぺんも出てこないわけだから、あそこは聖域だと言われております。聖域のエアポケットに次官がおりまして、そして大使がその次のエアポケットにおる。外国の外務委員会ですと、次官及び各国大公使をも監督する非常な強い権能を持っておりますけれどもわが国では伝統的にその権能、外務委員会の発言が不十分でございます。したがって、私は、三木外務大臣は聡明な方と思いますけれども、やはり情勢において多少甘いことがあり得る、やはりこういう欠陥は確かにあると思います。官僚主義の欠陥を直していただかなければならぬ。アメリカ外交委員というと、外交委員の発言というものは非常に大きく見られておりますことを特に付言をしておきたいと思う次第でございます。  それから、ベトナム戦争におきまして、アメリカ軍、それから韓国軍も含めてでもけっこうですが、傷病兵並びに死者の数は現在幾らくらいになっておりますか。公表されたものでけっこうです。これは割り引きして公表しますのが例ですから。
  91. 小川平四郎

    小川政府委員 三月なかごろの統計でございますと、約一万九千名の米軍の死者がございます。負傷者はおそらく五倍程度だと思います。正確には記憶しておりません。
  92. 帆足計

    ○帆足委員 私どもが聞くところによりますと、なかんずくジェット機のパイロットの死傷者が多い。そのために、一人のパイロットを養成するには非常に大量の青年と訓練が要りますから、これがアメリカにおける戦術上の隘路の一つになっているように聞いております。こういうこともしさいに御調査になって、そして軍事上の見通しをお立てになればよかったものをと、私はそう思っております。  スウェーデンの政府アメリカに対して警告を発した。これは二週間ばかり前のことでございますが、新聞に出ておりました。そしてベトナム戦争を早くやめるようにという厳重なプロテストを行なったということを聞いておりますが、外務省のほうにはどのような正確なニュースが入っておりますか。——御相談の間に、同時に、グリーンランドにおいて墜落したB52に原爆が載っていたということでありまして、デンマルク政府から抗議が出たと聞いておりますが、大体どういういきさつが行なわれましたか。ついでにお尋ねをしておきたいと思います。
  93. 三木武夫

    三木国務大臣 スウェーデンのことは、いま政府委員で正確にその事態を知っておる者がここに来ておりませんが、おそらく各国とも、それをどういう形で、抗議というか、あるいはまたベトナム和平に対する強い要請というか、これはもう世界各国とも、ベトナム戦争を継続したらいいというものはないので、いろいろな機会に、われわれでもあらゆる機会にベトナム早期終結ということを非常に言っておるわけで、どういう——抗議というような内容に値するのかどうか、これは実際問題を調べてお答えをいたすことにいたします。  グリーンランドに対するB52の墜落には、やはり水爆を搭載しておったようでございます。これはグリーンランドに対しての防衛条約があるわけでございます。しかし、その条約の中に、B52のようなものを積んだ、そういう水爆などに対しては何も触れていなかったのですね。したがって、正式にデンマルク政府からアメリカに抗議をしたという話は聞いておりません。条約の中に水爆に触れた一つの規定というものが全然なかったわけなので、こういう点が、テンマルクの国会で問題になって、今後そういう原爆を積んだ飛行機が飛来するような場合においては、やはり事前の連絡を必要とするような何らかの取りきめをアメリカとの間にしたいという動きが起こっておるという情報を私らは受け取っております。それがいまお尋ねになりましたグリーンランドの問題に対する私の知っておる限りの御報告でございます。
  94. 帆足計

    ○帆足委員 時間がございませんから、私はごく簡単に申し上げまして、あとの機会に譲りますが、先ほど見通しが甘かったと言われましたけれども、たとえばベトナムにつきましても、このたびのドル暴落につきましても、数年前からもう何十冊も本が出ております。私は昨年胆石の手術をいたしまして、わずかの書物を読んだのでありますが、たとえば長洲教授の「資本主義の新時代」という本を読んでみましても、当時すでにドルの危機のことを詳細に書いてありまして、戦後アメリカ貿易は三一%であった。しかるに、一九六一年にはわずか一七%に下がってしまった。EEC諸国、西ヨーロッパ諸国は二七%にきている。ラッシュのような勢いでドルがヨーロッパに移りつつある。数カ年後にはドルの危機が迫ってくるであろう。ポンドと並んでドルの危機が迫ってくるであろう、こういうことがもう詳細に書いてありますし、また、ベトナム戦争につきまして、アイゼンハワー元帥は、有名なケネディの就任を予想した告別の辞で、私はここに私の在任中に起こった新しい現象で、祖国がいまだかつて直面したことのない重大な脅威について一言触れておきたい——アイゼンハワー元帥の立場は、日本でいえばちょうど宇垣大将のような粛軍派といいますか、合理的陸軍派と申しますか、そういう立場にあったように私は観察しておりますが、続いて、巨大な軍事組織とアメリカの巨大な大軍需産業の結合体が、連邦政府のあらゆる部門、あらゆる州議会、あらゆる都市、経済的、政治的、精神的にも、これがまた職業軍人と結合した場合には、強力な影響力を発揮するであろう。不当な勢力が猛烈に台頭してくる可能性は現に存在しておる。今後も変わらないであろう、暗に若いケネディ大統領に送ったはなむけのことばでございます。やがてケネディ大統領が、わずか二百人ぐらいであった軍事顧問を二千人、二万人、二十万人にふやさざるを得ない立場になりまして、不幸にして凶弾に倒れました。当時、ワールドクックという社会評論家が当時の情勢を分析いたしまして、アメリカは、まさにアイゼンハワー元帥の指摘したように、ベトナム戦争を契機として、福祉国家でなくて、ワーフェアステイト、すなわち戦争国家に変わってきた。いまやアメリカの全予算の六〇%、恩給を入れると七〇%が軍事費になって、アメリカは肝臓硬変症にかかっておる。いずれは切開手術の必要の日が来るであろう、こう書いております。  このようなことは、すでに世界各国において指摘されていたことでございますが、たとえば、いまスハルトインドネシア大統領が参っておいでですが、これに対して、六千万ドルまたはもっとそれを多くしょう、一億ドルにしよう、あるいは少なくしょうという話がありますけれども、その問題につきましても、もうほとんどすべての学者が一致しまして、戦争費を後進国開発に切りかえる必要がある。ということは、戦争終結に件う恐慌対策としては後進国開発計画にいかねばならぬ。しかし、その後進国開発の前提条件としては、まず土地改革が必要である。土地改革をせずして、いかなる資金を送り込んでも、健全な労働力を得られず、経済力は得られない。同時に、政治の腐敗を一掃する政権、すなわち、明治維新のような清潔な政権ができなければ、すなわち、ソロバンと論語、マーシャルのことばでいえば経理と騎士道、そういう精神の政府ができなければ、それはどろ水に金を捨てるようなものだ。植民地が独立して新興国になりまして、おおむねの国々が失敗いたしましたのは、おもに賠償経済協力によってスポイルされたと経済評論家は指摘しておりまして、かろうじて難を免れましたアラブ連合の大統領は、個人として非常に清廉潔白だということを私は聞いている。行く町々でそれを聞いて、ナセル大統領はほかに能があるかどうかはあえて知りません。これはアラブ連合の大学生の言うたことばです。しかし、ナセル大統領が個人的に清廉潔白であることはだれ一人疑いません。これがアラブの力です、私はそのことばには感銘しました。デビ夫人を御夫人にしたインドネシアのあの大統領、スカルノさんですか、いい人物でしたけれども、しかし、彼もやはりその通弊から免れることはできませんでした。タイの歴代の政府、ゴ・ジン・ジェムはじめ、チャン・バン・フォン政権、グェン・カオ・キ政権、李承晩政権、いずれも悪名高き状況でございます。賠償及び経済協力には猛烈なリベートがついておりまして、これは防衛庁腐敗の比ではありません。いずれ摘発される日が来ることを私どもは予想し、そのような悪い事実のなからんことを、国民の一員として期待するものでありますけれども、世に著明なる、これは隠れたる事実でございます。それで、コリアン・ロビー、タイ・ロビー、インドネシア・ロビーなどという巷間伝わることばがございまして、それについて幾つかの本も、また週刊紙での暴露記事も出ております。したがいまして、今日の事態をそのままにして、軽率に経済協力をすることは、いま非常な警戒を要する。すなわち、その政界の清潔さ、その受け入れ態勢の合理性並びに計画性及び土地改革の合理的に行なわれておる速度などと見比べて、出していただきたい。何千億円という資金が、そういうことの十分な検討なくして出されておって、そのうち大部分のものは未回収になっております。金利も取れない。また、貸したものがやったような結果になっている賠償金が非常に多い。立ちぐされになっているものもあります。南ベトナムに対する経済協力も行き詰まり、インドネシアにおける幾つかのプラントが行き倒れになっております。また、幾つかの経済協力の賠償金は、その期限に金を払うことができないで、繰り延べ繰り延べになっておる。これなどに比べますと、中国に対するプラント輸出などは、イデオロギーは別として、非常に正確な支払い状況になっております。  そこで、外務大臣にお目にかけますが、たとえばこれはサリドマイドの子供たちですけれども、このような哀れな、カタツムリがここについているくらいの子供たちが、行く学校もなく、十分な資金もないのに、スハルトさんなんかに払う金がどのくらい残っておるか。私はスウェーデンの厚生大臣に聞きました。貧しいスウェーデンでどうしてこう行き届いた社会保障ができておるかと聞きましたら、必要なことの予算を先に組むのです。そして必要であるけれども、大きな金持ちや財力のある人の資金でやれる事業は、そのほうの金融や銀行でまかなうようにして、ほんとうに困っている人のことを先に組むのです。これがスウェーデンの予算の組み方です。こう聞きました。人間の喜びには限りがある。しかし、悲しみには限りがありません。犬、猫に生まれたより、もっと人間は不幸です。私は政治家の一人として、その喜びをふやす力が私などにあろうはずもありませんから、せめてその悲しみに限りを置くことが政治の仕事でないでしょうか。もちろん、それは国際的にも同じ考えでいかねばならぬでしょうけれども、国内にこのような生活がたくさんあって、そしてチャンとかドンとかグエン・カオ・キとかゴ・ジン・ジェムとか李承晩とか、こういうものに何のために金を払う必要があるか。私は、外交委員として、金を出すときには、合理的に、健全な政府に、きちんとして、それが生産に役に立って、利息としてそれを取ってくる、そういう金の貸し方をしてもらいたい。  かつて福沢諭吉が息子の桃介に金を貸したときに、銀行預金の利子を取った。子供から利息を取ったといって、みな福沢さんを悪く言うのです。福沢先生は、ただの金を貸すと人間はくさる、銀行預金の利息を親として涙をのんで取る。そして、福沢桃介はりっぱな実業家になりました。したがいまして、政府が国際環境をよくし、貿易をよくするために金を貸すときには、福沢先生のような心がけで貸していただきたい。同時に、留学生の受け入れ態勢、特に技術留学生の受け入れ態勢などにもつとまじめな金を使い、その施設をよくしていただきたい。  そういうことに基づいて、今度各国別に条約審議のときに、現在の賠償金がどのように使われておって、どのような場所に不正があって、どのようなところに外務委員として指摘せねばならぬ点があるかということを私は指摘して、政府に御注意を促したい、こう思うのでございます。
  95. 三木武夫

    三木国務大臣 低開発国に対する援助が、いろいろなスキャンダルが起き、これが利権の対象になることは、最も憎むべき行為だと私は思っております。今後とも、この低開発国に対する援助が、真に国民生活の向上あるいは安定、こういうことに役立つために使われるような努力をしなければ、国民にも相済まぬと考えており、その決意であることを明らかにしておきます。
  96. 秋田大助

    秋田委員長 伊藤惣助丸君。   〔委員長退席、田中(榮)委員長代理着席〕
  97. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 先ほどテレビ、ラジオ等でもありましたように、外務省北米局から、大統領の全米向けテレビ、ラジオ放送の演説要旨が出されて、私もそれを拝見いたしました。そこで、外務大臣に伺いたいわけでありますが、三十一日の夜を期して北爆を一応停止することを命じた、さらにこれによって直ちに北ベトナムとの交渉に入る、また、ハリマン移動大使等を通じて和平交渉に関する仲介を英ソ両国に依頼する、このようなことが述べられております。この演説によってアメリカベトナム政策が百八十度転換したわけでありますけれども、このような政策転換について、外務大臣はどのような判断をなされておるか、伺いたいと思います。
  98. 三木武夫

    三木国務大臣 百八十度アメリカベトナム政策の転換である、そのようには私は思っておりません。しかし、大統領が次の大統領選挙に出馬しないという、自分の政治生命をかけて重味を加えて、この提案をしたというところも、これを評価をしたい、こう考えております。
  99. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 その内容によりますと、英ソ両国を依頼するというようなことでありますが、私は、この中で特に中共について何も触れてない、ここにいろいろ感ずることがあるわけであります。大臣の見解を伺いたい。
  100. 三木武夫

    三木国務大臣 ソ連とイギリスを特にこの中で指摘したのは、ジュネーブ協定の共同議長国であるからであります。むろん、これはイギリス、ソ連のみならず、世界各国に対しても、どうかこのアメリカの気持ちを生かしてくれというジョンソンの祈りも一、この中に私はあると思っております。ただ、ジュネーブ協定の議長国であるという点で、特にソ連とイギリスを指摘したものと考えます。
  101. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 さらにまた、そのように声明しながらも、今後五カ月以内に約一万三千五百にのぼる支援部隊を派遣する、こういうことが同時に述べられております。また、北爆は一〇〇%でなくして、その九〇%であるということからも、北爆停止という一つ声明と、少しこの辺がわからないところでありますが、そのことについて伺いたいと思います。
  102. 三木武夫

    三木国務大臣 おそらく非武装地帯の北という中には、御承知のように、北のほうにはいま問題の地点がありますから、そういう点でやはりアメリカの兵力も相当北におるわけですから、非武装地帯の付近、いろいろなそういうことで、特に北爆を停止することについて、何らかのいままでのアメリカの軍隊の配置等に関連して言ったので、やはりほんとうからいえば、もう全部北爆を停止したいという気持ちであったでしょうね、ここまで言う以上は。ただしかし、北のほうに配置しておる米軍というものに対しての多少の関連性があって、こういう発言になったんだと思うのでございます。  それから、五カ月以内のことですが、これは、アメリカが前から五十二万五千人の兵力にするということは、これは昨年の何月か、とにかく昨年じゅうに決定をされたことで、すでにこのためのいろいろな手配もされておったので、特に兵力を増強するという意図ではなくして、昨年度に決定をしたことが、これが手配も済んでおったのでしょう、実施されるということで、これが新たなる兵力増強の意味を持つものではないと解釈をいたしております。
  103. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 先ほど来外務大臣の答弁を伺っておりますが、確かに、ベトナムの問題については、その背景にいろいろ複雑な問題がある。これはわれわれもそのように思います。今回の北爆停止によりまして、長い期間にわたる戦争も終結のほうに一歩近づいたという面では、私たちも非常に喜んでおります。  そこで、伺いたいわけでありますが、北爆の停止によって、北ベトナムが今後経済面、さらにいままで北爆にあって破壊された町の建設に立ち上がるときが来るわけであります。そのときに、わが国としては北ベトナムにどのような援助の手を差し伸べていくか、こういうことについて国民は非常に関心を持っております。そういう点で外務大臣の所見を伺っておきたいと思います。
  104. 三木武夫

    三木国務大臣 伊藤議員のお話、ちょっと少しテンポが早いように思うのでございます。いまやはりアメリカ北爆停止提案をしたのですから、ここでわれわれがすることは、せっかくのこの提案をてことして、ベトナム和平というものを実現するために全力を尽くすべきである。しかも、この戦争というものは、いろいろ話し合いが妥結するまでには時間がかかると思います。しかし、幸いにそれが妥結をした後においては、やはりインドシナ半島における長続きのする平和を考えなければならぬ。したがって、そういう場合には、やはりジョンソン大統領も、ボルチモア演説の中で、和平が来たならば北ベトナムを含んで援助を行なう意図であるという演説をしたことがあります。私は、昨年九月、日米経済貿易委員会のときに参りまして、ホワイトハウスで午さんの招待を受けた大統領に対する答礼で、あなたは戦争が片づくならば北ベトナムを含んでアジアのために援助したいと言った、やはりこの非常にチャレジングな提案というものは忘れてはいないという演説を、私はお返しの謝辞を述べたときに加えたというぐあいで、これはやはりもしベトナム戦争というものが話し合いがついて和平実現されるならば、アジアの安定ということに対して大局的に判断をしなければならぬ時期が来る。日本もまた非常な大局的な見地に立って、長続きのするアジアの平和を考えなければならぬ。あまりいろいろなことにとらわれないで、長続きのする平和を考える時期だというふうに考えております。
  105. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 そこで、佐藤内閣の外交姿勢について触れておきたいわけですが、昨年の日米共同声明以来、私たちは、佐藤内閣が極端に右傾化してきている、このように判断しているわけであります。対中国問題、またベトナム問題についても、そういう見解を持ってまいりました今回のションソン大統領演説を聞きまして——まずベトナムについては、北爆を第一に停止すべきである、さらに関係諸国が集まって、場所はどこでもいいけれども、平和会議を開くべきである、このように公明党は主張してきました。そして、北爆は必ずやその戦いをエスカレーションしても和平にはつながらない、このようにも声を大にして私たちは言ってまいったわけでありますが、今回のこの演説内容を聞きまして、ますますわが党のその主張が明確に正しかったのではないか、このように思っているわけでありますが、ここで大事なことは、わが国外交姿勢が、いままでと同じようにジョンソン大統領のその外交路線に追随していくのか、さらに、そのジョンソン大統領外交姿勢が失敗だったのだから、今後は日本独自の外交路線でいくのかということについて、国民は大きな関心を持っておると思います。そこで、外務大臣外交姿勢について伺っておきたいと思います。
  106. 三木武夫

    三木国務大臣 私は、外交というものは、その国の国益を踏まえて常に自主性を持たなければいかぬ。そうでなければ、自主性のない外交というのは外交ではない。ただしかし、その自主性というものが、常に何か表面立って、反対である、これを断固撤回すべし、断固反対と、こういうことが自主性だとは私は思わない。やはり友好国に対しては友好国としてのアドバイスのしかたがあろうと思います。したがって、アメリカ外交にそのまま追従するというのが日本外交だったら、そんなものは日本外交がないということでありますから、外交は自主的でなければならぬということは、これは鉄則であります。だから、私は自主外交ということばはきらいなんです。自主でない外交があるのかと言いたいくらいで、言われるとおり、外交というものは、やはり日本の国益を踏まえてやらなければならぬ。また、伊藤さん、公明党がベトナム問題についていろいろ熱心な御提案をされたということは、私も記憶しております。東京で和平会議を招集したらどうかという御提案も伊藤さんの御提案だったと思います。われわれもできればそれは好ましいのでありますが、ベトナム問題にはベトナム問題としてのいろいろ経緯がございますから、やはりジュネーブ協定のような国際会議、メンバーはそのままのメンバーでなくていいと私は思うが、そういう形のほうが経緯から見ていい。だから、御提案のような東京会談というわけにはいきませんでしたが、熱心にベトナム和平を願っておられたということは、われわれとしても敬意を表する次第でございます。
  107. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 このベトナム戦争の行使については、たくさん過去に原因がございますが、大体マクナマラのドミノ理論というところから出発している、このように聞いておりますが、特に武力による紛争解決というのは成功しない、そういう一つの実証になったのではないかと思います。  そこで、今後はわが国外交路線についても、先ほど外務大臣からありましたように、一つは、絶対平和を掲げて、そしてアジアのいわゆる経済大国である日本の地位をしっかり認識して——私はその前に言いたいことは、常に外交姿勢については消極的である、このように私たちは思っているわけであります。さらに積極的に日本アジアにおけるその主役としての役割りを果たしていくべきである、このように思っているわけです。それにいたしましても、今回のベトナム政策を支持した佐藤内閣については、われわれはきびしい批判の目を向けております。そして、今回、先ほども社会党さんからお話がありましたけれども、このアメリカ外交路線の失敗は、即日本外交の失敗にも通ずるのではないか。そういう面から、佐藤内閣はその責任を何らかの形で国民に示すべきである、このように思うわけでありますが、外務大臣の所見を伺っておきたいと思います。
  108. 三木武夫

    三木国務大臣 これはアメリカの失敗というように伊藤さん断定してしまうわけでありますが、アメリカとしては北爆停止にいろいろ条件をつけておったのを、条件をつけないで北爆停止をしようという新たな提案であります。これによって一日も早く平和を実現したいというアメリカ一つの新しいベトナム収拾策を提案された。これにさらに重みをつけるという意味においても、大統領が政治生命をかけておる。出馬をしない、この生命をかけて提案をされたことであって、これでもうすぐにアメリカの責任、佐藤内閣の責任、こういうようにたたみかけて言われることは、どうも承服いたしかねると申し上げておきます。
  109. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 特にこの北爆停止を契機にいたしまして、確かに戦いの終結の方向に向いていくことは間違いないと思います。  ここで私は、さらに新しい提案大臣にしまして、そうして大臣の所見を伺いたいと思うわけであります。  その一つは、現在の世界情勢の中にあって一番大きな問題は、核の問題でございます。現在の世界情勢は、核を保有する五大国によって支配されていると言ってもいいわけです。さらに、核を保有する国の外交が常に第一になっておる。こういう現実があるわけでございますが、この際、特に、北爆停止を契機として、日本世界平和のために、また日本国民の平和と安全のために、積極的に、それらの核保有国の五大国が核軍縮について首脳会談を開け、そうして核の国際管理なり、また核の完全軍縮なりというものについて検討することを提唱してはどうか、このように思いますが、外務大臣の所見を伺っておきます。
  110. 三木武夫

    三木国務大臣 今度国連で核拡散防止条約、この条約の本文の中に、軍縮の誠実な履行ということが入ってきたわけですね。したがって、中共、フランスというものはこの条約に入らぬのではないか、こう見られておるわけですけれども、しかし、核軍縮というものが一つの大きな課題になってきておるわけですね。日本の場合も、単に核を持たないということだけでは消極的過ぎるわけです。やはり核軍縮というもの、核の国際管理というものに対して、日本外交はもっと積極的でなければならぬと私は思っております。今後外務省の取り組み方にも改革を加えていきたい、こう考えております。したがって、こういう核拡散防止条約ともにらみ合わせて、いま伊藤さんの言われるように、フランスも中共も入ってこないということになれば、核保有国の一つ会議というようなことも、時期はこれはいまというわけにはいかないかもしれないが、核拡散防止条約というものがいま議題にのぼっておりますから、実際はあれに入ってくれば、核軍縮のやはりある程度の道義的な義務を負うわけですから、あれに入ればもう国際会議をしなくてもいいわけですけれども、なかなかそうもいかぬ場合には、核軍縮というものについては、何らかのそういう核拡散防止条約の場でない一つの国際的な場というものも、御指摘のように必要な場合があろうと思います。それは、そういうことを日本が提唱してそれが核軍縮に役立つならば、提唱することをいとうものではございませんが、いまのところは、ああいう核拡散防止条約ども国連で審議されておりますから、いまは適当な時期とは思いません。しかし、考え方としては、そういう考え方はむろんあり得ると思います。
  111. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 この際、もう一歩深めて言っておきたいわけでありますが、もう一つは、核を持たない国の非核保有国連盟の結成ということであります。核保有国について、たとえば核拡散防止条約ですか、あれによって核を拡散させない、これはいいことだと思いますが、しかし、横の拡散はなくしても、縦の拡散はあり得るというふうに言われておるわけです。そこで、核を開発できる非核保有国、日本を含めてだいぶございますけれども、そういう国が連盟を結成することによって、核保有国に対して、あなた方がこれ以上核を拡散し、さらに核を軍縮しなければ、われわれも核を持つぞというような面からも、一つは核軍縮についてはその姿勢がとれるのではないか、このようにも思っております。その点についての外務大臣の所見を伺いたいと思います。
  112. 三木武夫

    三木国務大臣 この核拡散防止条約というものが締結されますと、今度の草案の中には、五年ごとに再審査をするための会議が開かれるわけです。そうなってくると、核の非保有国は軍縮というものを非常に促進したいという立場ですから、そういう条約締結できれば、いろいろ非核保有国が話し合う場面が出てくると思います。いまここでひとつ核兵器を持たぬ国が世界的な連盟をつくって、そうしてその団体の威力によっていろいろ平和のために寄与しようということは、なかなか実際問題として——国によっていろいろ立場が違うのですから、むしろ核拡散防止条約ができて、五年ごとの再検討という場があるのだから、いやおうなしに非核保有国がいろいろと話し合う場面もあるのですから、共通の問題として話さなければならぬ問題ができれば、そういう場を使うほうが私は実際的だというふうに考えております。
  113. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 次の質問に進みますが、先日わが党の鈴切議員に答弁がありましたが、非常にあいまいな点と、大臣が知らないということで非常に質問ができなかった点がございますので、その残りの分の聞きたいことをきょうは率直に伺っておきますので、よろしくお願いいたします。  一つは、事前協議の問題でございます。本国会の防衛問題の大きな焦点となったことは、この事前協議の歯どめが野党からはどうしても空文化してしている、大臣はそうじゃない、こうおっしゃいます。常にすれ違いましていままできたわけでありますが、私は、特にそのことについて、吉田・アチソン会談、いわゆる交換公文がございますが、さらにまた、国連の十六カ国共同提案国の一員になった、この二つの面から、事実上事前協議といろのは空文化されているのではないか、このようにも考えられる点がございますので、その点について大臣に伺っておきたいと思います。  この吉田・アチソン交換公文については、一九五一年、当時の吉田茂氏とアメリカ合衆国の国務長官ディーン・アチソン氏との間にその公文が交換されました。この内容については、「平和条約の効力発生と同時に、日本国は、「国際連合がこの憲章に従ってとるいかなる行動についてもあらゆる援助」を国際連合に与えることを要求する国際連合憲章第二条に掲げる義務を引き受けることになります。」こういうふうにその書簡にございます。  そこで、伺いたいわけでありますが、日本国における施設及び役務について、またあらゆる援助を与えるということをここで述べられておりますが、どのような役務、またどのような援助を与えるか、その点を明快に伺っておきたいと思います。
  114. 三木武夫

    三木国務大臣 いまの国連の決議に対する共同提案国になったことと、それから吉田・アチソン交換公文による二条の問題……
  115. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 ちょっとその前に、順を追っていきますので、もう一回伺いますが……。
  116. 三木武夫

    三木国務大臣 そういう関連だと思いましたので、お答えしようとしたのですが……。
  117. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 そこで、いわゆる吉田・アチソン会談における書簡の中にある日本側の義務ですね。そのことについて明確になっていないわけです。たとえばどういう援助をしていくのか、どんな役務があるのかということであります。そのことを伺っているわけです。
  118. 三木武夫

    三木国務大臣 これは国連局長に補足をさせますけれども、この中の第二条というものは原則をきめたわけです。問題を平和的に解決しなければならぬという原則で、特にこれがこまかいいろんな義務を負うとかいうよりも、国連機構に対しての一つの大原則をうたったものであって、こまかい義務規定とかなんとかいうものをこの中に含んでいるとは思わないのですが、国連局長から補足いたさせます。
  119. 重光晶

    ○重光政府委員 国連憲章の第二条が引かれてあるというお話で、それに関連してお答え申しますが、いま大臣から申し上げましたように、第二条は、国際連合というものの目的というか、大原則というものを抽象的にうたってあるわけでございます。それで、具体的な義務は、安保理事会の権限なり、それから総会の権限なりで、具体的にあとに出てまいるわけでございますが、この二条はいわば総論というもので、原則でございます。その内容は、七項目に分かれておりますけれども、一口に申し上げますと、国連というものは、国際の平和と安全の維持を一番の目的として存在するものだ、こういうふうに申し上げていいのではないかと思います。
  120. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 よく聞いていてもらいたいのですが、要するに、アチソン交換公文で取りかわしたところの役務、さらにその援助というのは、安保条約にあるということでしょう。伺っておきます。
  121. 東郷文彦

    東郷政府委員 吉田・アチソン交換公文で日本側が約束しました援助と申しますのは、ただいまのお話のように、一または二以上の国際連合加盟国が極東におきまして国際連合の行動に従事するにつきまして、日本国内及びその付近においてその行動を支持することを日本政府が許し、かつ容易にするということでございまして、ただし、ここで申しておりますのは、一または二以上の国際連合の行動に参加する国、同時に、同じく国際連合の活動に従事する軍隊でありましても、特にこの交換公文におきまして、アメリカの軍隊については安保条約によるということで、この古田・アチソン交換公文からははずれておるわけであります。したがって、アメリカ合衆国の軍隊に関する限りは、安保条約、地位協定の規定に従って行動する、こういうことになっておるわけであります。
  122. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 北米局長は沿岸警備隊以来のことを考えているんじゃないですか。質問はそのことを聞いておるのではない。私の聞いておるのは、むずかしいことじゃない。アチソン交換公文一において、どこにそれが役務があるかといえば、これは専門家ならだれでも知っている。皆さん方もよく知っておる。このアチソン交換公文の三項目のところに、いわゆる安保条約に従って行なわれる取りきめによって規律される、こうあるじゃありませんか。これでいいでしょう。このことを確認しておるのです。
  123. 東郷文彦

    東郷政府委員 そのとおりでございます。
  124. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 そこで、伺いたいわけでありますけれども、先ほど申し上げましたように、いま国民が米国との関係において一番心配しておるのは、緊迫した国際情勢の中にあっては、一つ戦争に巻き込まれるのではないかということ、さらに、米国に施設、区域を提供しているが、朝鮮にいる国連軍に対してその施設、区域を提供することを交換公文で言っているけれども、そのことによって、いわゆる戦略上の後方基地としての報復を受けるのではないか、こういうことを心配しておるわけであります。特にプエブロ等のときにおいてはこのことが言われたわけであります。しかし、佐藤総理三木外務大臣も、そんなことはない、その解釈を聞けば、論理の飛躍である、このようにたびたび発言なさいました。その法の純粋な解釈、また政府立場国民の前に明らかになっていないわけであります。そこで、外務大臣が常に言うように、国連軍といえども日本にいる米軍が戦闘行動する場合には、全部事前協議の対象にする、このように言われておるわけでありますけれども、私は、このアチソン交換公文によって、事実三木大臣のおっしゃるように事前協議の対象になるかもしれません。しかし、協議の対象とはなっても、チェックすることはできない、拒否することはできないのではないかという点であります。いままでも何回も聞いてきたのですけれども、このことを大臣ははっきり明確に御存じないようなのであります。だから、そのことを声を大にして言ったのではないか、こういうふうにも私は疑っているわけであります。その点の、チェックできるかできないかという点について大臣から伺っておきたいと思います。
  125. 三木武夫

    三木国務大臣 米軍が行くときには、むろん事前協議の対象になりますが、国連軍のときには、ここで提供してあるのは兵たん基地でありますから、したがって、国連軍が直接戦闘作戦行動に日本の施設から出るということは、実際問題として兵たん基地を国連軍には提供しておるわけですから、ここで日本を基地として直接戦闘作戦行動に出るということは予定をしてないという解釈をとっておる次第でございます。
  126. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 そうしますと、事実日本にいるそういう軍隊が兵たん基地として使っているのだから、たとえ移動したとしても、それは事前協議の対象にならないということでありますか。
  127. 三木武夫

    三木国務大臣 国連軍としての米軍が出ていくときには、それは事前協議の対象になりますよ。
  128. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 そこが、この間も言いましたように、アメリカの二枚鑑札のところなのです。日本には在日米軍のほかに第五空軍、太平洋の第七艦隊、いろいろなアメリカの極東戦略上の大きな部隊がございます。それで、朝鮮において紛争が起きた場合には、直ちにそれらの軍隊が国連軍という鑑札のもとに日本から出ていくわけであります。それが事前協議の対象にならないということになれば、これはまた大きな問題にもなる。ですから、この辺を、もう一回ここのところを伺っておきたい。
  129. 三木武夫

    三木国務大臣 これはいま私が言っておるように、国連軍でもそれが国連軍の中にある米軍であるという場合には、全部事前協議の対象に直接戦闘作戦行動はなるということでございます。
  130. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 もう一つの面から伺っておきますが、これは昭和二十九年六月十一日に効力を発生した日本国における国際連合の軍隊の地位に関する協定、これがございます。この中に、日本国は「あらゆる援助を国際連合に与える」こういうことが出ております。この「あらゆる」というところに、どれだけをあらゆるというふうにするのかという点で非常に疑問がございます。それについて伺います。
  131. 三木武夫

    三木国務大臣 これは安保条約でいう地位協定と同じ便宜でございます。
  132. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 そうしますと、そんなちっぽけなもので、たとえば国連軍は全部事前協議の対象にしたとしても、私たちはあらゆるということになれば、実際問題として、相当こちらにおいては危険であるとか、それから住民が返還を要求しているというようなことがあったとしても、そういった規定を義務づけている関係から見るならば、実際に事前協議の対象としても断わる理由がなく、拒否できない、このように思うわけであります。その点の大臣の見解……。
  133. 三木武夫

    三木国務大臣 伊藤さんのいままで引用されたのは、「あらゆる援助」というのは、これは前文の規定で、本文の規定ではない。これを受けて、日本国連軍に対しても、安保条約の地位協定によって与える便宜を国連軍に同じように与える。「あらゆる」というのは、何でもできるという意味のあらゆるではありません。地位協定によるあらゆる援助を与えるということでございます。
  134. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 この点があいまいだったわけで、初めて外務大臣から新しい見解が出たわけでありますが、そうであるならば、今後はすべて事前協議の対象になる、しかも拒否権はある、このように解釈してよろしいわけですね。
  135. 三木武夫

    三木国務大臣 米軍に関しては、直接戦闘作戦行動はすべて事前協議の対象になる。日本は拒否権を持っておるということでございます。
  136. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 ところが、先ほど一番先に申し上げましたが、あの一九五〇年の十月七日の国連決議でございます。あれには、この間も統一見解が出ておったようでありますが、通常三十八度線突破決議ともいうべきものでありますが、この一員に日本が加わった。その提案国になった。さらに一九六六年六月のASPACにおける共同宣言においても、これを尊重し実行する、このようにもわが政府は言っているわけでありますが、そのこととこの共同宣言とが食い違っていると思うわけです。そのことについて大臣はどう思われますか。
  137. 三木武夫

    三木国務大臣 いま伊藤さんの言われる、日本が共同提案国になった国連の決議、二つあるわけですね。一つ内容は、韓国と北鮮を国連に招請するというような決議の内容であり、もう一つは、朝鮮問題、ことに統一問題を平和的手段をもって推進して、同地域の平和と安全を確保するという、こういう決議に対して、日本が協同提案国になったのでございます。国連軍の朝鮮半島における軍事行動に関しては、これは別の——この決議案からきておるのではないのです。それば、何も日本はそのときメンバーでもございませんし、提案国ではない。日本が共同提案国になったものは、この内容というものは、伊藤さんが御指摘になるように、何か日本戦争に巻き込まれるとかなんとか、そういう懸念を持った決議案ではない。
  138. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 そのことについては、条約を勉強してまいりますと、どうしてもそのような解釈に立たざるを得ない、そういう背景がございます。確かに突破決議がなされたときには、日本は賛成国ではありませんし、そういう面では参加しておりませんでした。しかし、何ゆえに一九六六年のときに十六カ国の一員となって、いわば朝鮮に対する国連軍の一員としての提案国になったかという理由であります。
  139. 重光晶

    ○重光政府委員 ただいまの御質問のうち、国連諸決議の関連に関することだけを私からお答え申し上げますが、一九六六年の、日本が共同提案国になりました決議案は、毎年同じ決議案を繰り返すのでございますが、前の年の決議案、すなわち六五年の決議案で、ほとんどすべての過去における朝鮮問題に関する国連決議を引用しております。そして、その引用の中には、ただいま御指摘の五〇年十月七日の国連総会の決議も引用しております。それからその次の引用は、五三年八月二十八日の総会決議を引用しております。これは、休戦協定ができまして、この休戦協定を国連総会がいわば追認をした、認めたという決議でございます。それから、ずっとその後を引きまして、全部で十三の決議が引いてあります。そして、これらの決議を前提として、ただいま大臣から申し上げましたような朝鮮問題、ことに統一問題を平和的手段をもって解決するよう努力し、その地域の平和、安全を強化することに対する国連活動を認めるという決議、これが具体的に日本が共同提案国になった決議の内容であります。  そこで、この共同提案国になった決議が何を前提としておるか。もちろん、御指摘の五〇年十月の決議も前提としておりますが、しかし、その後、休戦協定ができ、南北両鮮の境、いまの休戦ラインでございますが、これは休戦協定に違反しなければ、北からも南からも侵略することができない、すなわち、それは違法であるということを前提とした決議案なんでございます。   〔田中(榮)委員長代理退席、委員長着席〕 したがいまして、御指摘のとおり、前の五〇年の、先生おっしゃいました、いわゆる三十八度線突破決議と申されましたが、その決議も引用しておりますけれども、しかし、その後の状態が変わったということは、ほかの引用の決議によって非常にはっきりしておるのでございます。したがいまして、日本の共同提案国になった決議と、休戦ラインを北に向かって攻撃をするとか、あるいは北から南に攻撃をするとか、こういう事態とは、全く関係がないという法律構成になっておるわけであります。
  140. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 あなたの解釈は、これは大臣の解釈と聞いてよろしいですか。
  141. 三木武夫

    三木国務大臣 よろしいです。
  142. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 それでは、そのわれわれの考え方が国連において認められておりますか。
  143. 重光晶

    ○重光政府委員 これは国連において認めております。と申しますのは、ただいま申しましたように、すべての決議を引用して、それを前提として共同提案国になった決議が、実は毎年同じような決議が上程されておるわけでございますが、これは当然のこととして理解されております。
  144. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 そうしますと、提案前の国連における安保理の決議は死んでいる、こういうふうに考えられるわけですね。
  145. 重光晶

    ○重光政府委員 もちろん、同じ国連総会が、この場は総会の問題でございますが、前の決議を変更した決議をあとでつくった場合には、その変更された部分だけは当然変わるわけでございます。しかし、形式的にあとでつくったものが前を全部無効にするという考えではございません。したがって、いわゆる三十八度線突破決議というこの突破というところは、この休戦協定によって当然消えているわけでございます。
  146. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 時間がございませんので、結論を簡単に申し上げますが、またの機会に詳しく聞きたいと思いますけれども、私は、いまの局長の答弁に納得がいかないわけです。そうして、そのようなことをアメリカがもし認めておったとするならば、再び戦争が起きた場合には、それじゃ向こうのいうところの三十八度線を突破できなければどうもいけなくなってしまうというふうにも考えられるわけです。  さらに私が言いたいことは、結論から申し上げますと、確かに国連の一員として、その義務もあるでしょう。しかしながら、吉田・アチソン交換公文、さらにそれを確認した岸・ハーターの書簡、こういうものがございますけれども、こういうことが一つはあらゆる面でということで、必ずしも事前協議というものの範囲でとらえることができないのではないか、こういうふうに考えることができるわけです。そこで、吉田・アチソン交換公文を破棄すべきである。さらに、毎回国連総会において行なわれるところの共同提案国になることを棄権すべきである。また、国連軍の地位協定についても、変更かあるいは破棄すべきである、このように私は主張するわけです。  次回、またそのことについて大臣に伺いたいと思いますので、よく大臣も御研究の上、答弁をしていただきたいと思います。  以上で私の質問を終わります。
  147. 秋田大助

    秋田委員長 次回は、来たる三日開会することとし、時間は公報をもってお知らせいたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後五時九分散会