○帆足
委員 時間がございませんから、私はごく簡単に申し上げまして、あとの機会に譲りますが、先ほど
見通しが甘かったと言われましたけれ
ども、たとえば
ベトナムにつきましても、このたびのドル暴落につきましても、数年前からもう何十冊も本が出ております。私は昨年胆石の手術をいたしまして、わずかの書物を読んだのでありますが、たとえば長洲教授の「資本主義の新時代」という本を読んでみましても、当時すでにドルの危機のことを詳細に書いてありまして、戦後
アメリカの
貿易は三一%であった。しかるに、一九六一年にはわずか一七%に下がってしまった。EEC諸国、西ヨーロッパ諸国は二七%にきている。ラッシュのような勢いでドルがヨーロッパに移りつつある。数カ年後にはドルの危機が迫ってくるであろう。ポンドと並んでドルの危機が迫ってくるであろう、こういうことがもう詳細に書いてありますし、また、
ベトナムの
戦争につきまして、アイゼンハワー元帥は、有名なケネディの就任を予想した告別の辞で、私はここに私の在任中に起こった新しい現象で、祖国がいまだかつて直面したことのない重大な脅威について一言触れておきたい——アイゼンハワー元帥の
立場は、
日本でいえばちょうど宇垣大将のような粛軍派といいますか、合理的陸軍派と申しますか、そういう
立場にあったように私は観察しておりますが、続いて、巨大な軍事組織と
アメリカの巨大な大軍需産業の結合体が、連邦
政府のあらゆる部門、あらゆる州議会、あらゆる都市、
経済的、政治的、精神的にも、これがまた職業軍人と結合した場合には、強力な影響力を発揮するであろう。不当な勢力が猛烈に台頭してくる
可能性は現に存在しておる。今後も変わらないであろう、暗に若いケネディ
大統領に送ったはなむけのことばでございます。やがてケネディ
大統領が、わずか二百人ぐらいであった軍事顧問を二千人、二万人、二十万人にふやさざるを得ない
立場になりまして、不幸にして凶弾に倒れました。当時、ワールドクックという社会評論家が当時の情勢を分析いたしまして、
アメリカは、まさにアイゼンハワー元帥の指摘したように、
ベトナム戦争を契機として、福祉
国家でなくて、ワーフェアステイト、すなわち
戦争国家に変わってきた。いまや
アメリカの全予算の六〇%、恩給を入れると七〇%が軍事費になって、
アメリカは肝臓硬変症にかかっておる。いずれは切開手術の必要の日が来るであろう、こう書いております。
このようなことは、すでに
世界各国において指摘されていたことでございますが、たとえば、いまスハルトインドネシア
大統領が参っておいでですが、これに対して、六千万ドルまたはもっとそれを多くしょう、一億ドルにしよう、あるいは少なくしょうという話がありますけれ
ども、その問題につきましても、もうほとんどすべての学者が一致しまして、
戦争費を後進国開発に切りかえる必要がある。ということは、
戦争終結に件う恐慌対策としては後進国開発計画にいかねばならぬ。しかし、その後進国開発の
前提条件としては、まず土地改革が必要である。土地改革をせずして、いかなる資金を送り込んでも、健全な労働力を得られず、
経済力は得られない。同時に、政治の腐敗を一掃する政権、すなわち、明治維新のような清潔な政権ができなければ、すなわち、ソロバンと論語、マーシャルのことばでいえば経理と騎士道、そういう精神の
政府ができなければ、それはどろ水に金を捨てるようなものだ。植民地が独立して新興国になりまして、おおむねの
国々が失敗いたしましたのは、おもに
賠償と
経済協力によってスポイルされたと
経済評論家は指摘しておりまして、かろうじて難を免れましたアラブ連合の
大統領は、個人として非常に清廉潔白だということを私は聞いている。行く町々でそれを聞いて、ナセル
大統領はほかに能があるかどうかはあえて知りません。これはアラブ連合の大学生の言うたことばです。しかし、ナセル
大統領が個人的に清廉潔白であることはだれ一人疑いません。これがアラブの力です、私はそのことばには感銘しました。デビ夫人を御夫人にしたインドネシアのあの
大統領、スカルノさんですか、いい人物でしたけれ
ども、しかし、彼もやはりその通弊から免れることはできませんでした。タイの歴代の
政府、ゴ・ジン・ジェムはじめ、チャン・バン・フォン政権、グェン・カオ・キ政権、李承晩政権、いずれも悪名高き状況でございます。
賠償及び
経済協力には猛烈なリベートがついておりまして、これは防衛庁腐敗の比ではありません。いずれ摘発される日が来ることを私
どもは予想し、そのような悪い事実のなからんことを、
国民の一員として
期待するものでありますけれ
ども、世に著明なる、これは隠れたる事実でございます。それで、コリアン・ロビー、タイ・ロビー、インドネシア・ロビーなどという巷間伝わることばがございまして、それについて幾つかの本も、また週刊紙での暴露記事も出ております。したがいまして、今日の事態をそのままにして、軽率に
経済協力をすることは、いま非常な警戒を要する。すなわち、その政界の清潔さ、その受け入れ態勢の合理性並びに計画性及び土地改革の合理的に行なわれておる速度などと見比べて、出していただきたい。何千億円という資金が、そういうことの十分な検討なくして出されておって、そのうち大部分のものは未回収になっております。金利も取れない。また、貸したものがやったような結果になっている
賠償金が非常に多い。立ちぐされになっているものもあります。南
ベトナムに対する
経済協力も行き詰まり、インドネシアにおける幾つかのプラントが行き倒れになっております。また、幾つかの
経済協力の
賠償金は、その期限に金を払うことができないで、繰り延べ繰り延べになっておる。これなどに比べますと、中国に対するプラント輸出などは、イデオロギーは別として、非常に正確な支払い状況になっております。
そこで、
外務大臣にお目にかけますが、たとえばこれはサリドマイドの子供たちですけれ
ども、このような哀れな、カタツムリがここについているくらいの子供たちが、行く学校もなく、十分な資金もないのに、スハルトさんなんかに払う金がどのくらい残っておるか。私はスウェーデンの厚生
大臣に聞きました。貧しいスウェーデンでどうしてこう行き届いた社会保障ができておるかと聞きましたら、必要なことの予算を先に組むのです。そして必要であるけれ
ども、大きな金持ちや財力のある人の資金でやれる事業は、そのほうの金融や銀行でまかなうようにして、ほんとうに困っている人のことを先に組むのです。これがスウェーデンの予算の組み方です。こう聞きました。人間の喜びには限りがある。しかし、悲しみには限りがありません。犬、猫に生まれたより、もっと人間は不幸です。私は政治家の一人として、その喜びをふやす力が私などにあろうはずもありませんから、せめてその悲しみに限りを置くことが政治の仕事でないでしょうか。もちろん、それは国際的にも同じ考えでいかねばならぬでしょうけれ
ども、国内にこのような生活がたくさんあって、そしてチャンとかドンとかグエン・カオ・キとかゴ・ジン・ジェムとか李承晩とか、こういうものに何のために金を払う必要があるか。私は、
外交委員として、金を出すときには、合理的に、健全な
政府に、きちんとして、それが生産に役に立って、利息としてそれを取ってくる、そういう金の貸し方をしてもらいたい。
かつて福沢諭吉が息子の桃介に金を貸したときに、銀行預金の利子を取った。子供から利息を取ったといって、みな福沢さんを悪く言うのです。福沢先生は、ただの金を貸すと人間はくさる、銀行預金の利息を親として涙をのんで取る。そして、福沢桃介はりっぱな実業家になりました。したがいまして、
政府が国際環境をよくし、
貿易をよくするために金を貸すときには、福沢先生のような心がけで貸していただきたい。同時に、留学生の受け入れ態勢、特に技術留学生の受け入れ態勢などにもつとまじめな金を使い、その施設をよくしていただきたい。
そういうことに基づいて、今度各国別に
条約審議のときに、現在の
賠償金がどのように使われておって、どのような場所に不正があって、どのようなところに外務
委員として指摘せねばならぬ点があるかということを私は指摘して、
政府に御注意を促したい、こう思うのでございます。