○鶴見
政府委員 ただいま先生の御
指摘に在りましたいわゆる
関税以外の非
関税障壁の問題、これは六四年大臣
会議の際に、
日本側の主張によりまして、ケネディラウンドの三本の柱に一本加えまして、ケネディラウンド
交渉の過程においては障壁もあわせて検討されるべきであるということで入ったわけでございますが、現実にケネディラウンド
交渉過程において、一応先進国に対しましていわゆる非
関税障壁、特に対日差別の問題につきましていろいろと話をしかけたのでございますが、現実には、対日差別の面につきましては、ケネディラウンド
交渉過程自体におきましては大きな進歩はなかったということは、まことに遺憾だと存じております。しかしながら、この対日差別の緩和あるいは撤廃ということにつきましては、ケネディラウンド
交渉以前からも続けておりますし、現在もまた続けておりまして、たとえば、御存じのように、イタリアにつきましては対日差別が百四品目もございますが、これも近く
交渉を始めることになっておりますし、フランスにつきましては五十数品目の対日差別がございますが、これもここ一両日あるいはここ一週間以内のうちには妥結するということになります。これによりますと、約三十品目ばかりが自由化されてくることになるわけでございまして、したがいまして、ケネディラウンド
交渉の過程におきまして、対日差別の緩和ないし撤廃というものは必ずしも成功はいたしませんでしたけれども、やはりその際に得られたモメントといいますか、それによってだいぶ
交渉が進んでいるということは申し上げ得るのではないかと考えるわけでございます。
そのほか、非
関税障壁といたしましては、有名なアメリカン・セリング・プライス、ASPという制度がございます。これにつきましては、主としてアメリカとイギリスとEECの
交渉の結果、アメリカが二年以内に撤廃する努力をするということに丘って、これは現在アメリカで新しい通商法案の中の一つの柱となっております。しかしながら、御存じのとおり、現在のようなアメリカの状況におきまして、通商法案がいつ議会に上程され、いつそれが通過するのか、現在のところまだ見通しは明らかになっておりません。
それからあと、その他の非
関税障壁につきましては、先生の御
指摘になりましたバイアメリカンの問題でございますが、バイアメリカンは、問題はケネディラウンドでも取り上げられませんでしたけれども、別途、こういったバイアメリカンのようないわゆる国産品を使うという問題につきまして、OECDの場で引き続き検討を続けておりまして、何らかの国際コードのようなものをつくろうという動きがあるわけでございます。
さらに、もう一つのいわゆるダンピング、反ダンピングの問題につきまして、これがアンチダンピングの法制を各国がまちまちに恣意的に適用をされますと、非常に
貿易制限的な効果を持つわけでございます。
日本の場合、カナダあるいはアメリカ等で若干の苦い経験もあったわけでございますが、このケネディラウンドの
交渉過程において、アンチダンピングの制度の運用についての国際コードというものができ上がりまして、これがいよいよ
承認を得まして、そして発効するようになりますれば、その面におきまする恣意的なアンチダンピングの制度の発動というものが抑制されてまいります。これは
日本にとりましても非常に有効なことではないかと考えておるわけでございます。
ただいまさらに
輸入課徴金の問題についての御質問がございましたが、
輸入課徴金の問題につきましては、かねてことしの初めにロストウ国務次官がまいりまして、ドル防衛についていろいろ
説明した際に、ボーダータックスの問題といたしまして、二ないし二・五%のものをアメリカとしては立法化してかける必要が出てくるかもしれないが、これは結局EEC側が最近ボーダータックス率を上げた
関係もありますので、それとのにらみ合い、それをどの程度EECが緩和するかいかんにかかるのだという話をしてきたわけでございます。したがいまして、アメリカの
政府といたしましては、国務次官等々をはじめといたしまして、EEC側とかなり熱心に
交渉もしたようでございまするが、しかしながら、あまり見るべき成果がなかったというようなことから、それではやはりボーダータックスか、あるいは
輸入課徴金か、あるいは
輸入割当か、あるいは
輸入課徴金と
輸出リベートを結びつけたような、そういったような四つばかりのいろいろな可能性というものを検討されていたわけでございます。それにつきまして、われわれ
日本の
政府といたしましては、アメリカがドル防衛のために課徴金を取らなければならないということは、それはよくわかるけれども、
貿易面において
貿易制限的な措置をとるのはこれはおかしいじゃないか、そういうことは結局ケネディラウンドというものを提唱したアメリカの立場をも悪くするし、かえって、もしそういうことをやれば、各国の対抗措置も誘発して、結局意図したところも実現できないということになりますし、また、
日本の場合にいたしますと、対米
輸出依存度というものが非常に高いわけでございますので、非常な影響が出てくるというので、これに対して強く反省を促して、そのことをロストウ次官が来ましたとき、また一月末のホノルル
会議におきまして、さらに二月の下旬でございますが、下田大使からその点について正式に申し入れをしております。またさらに、大臣からジョンソン大使を呼んで、
日本の強い態度を表明して、アメリカがそういう態度をとらないようにということを申し入れたわけであります。その他、OECDの場におきまして、
経済政策
委員会その他の
委員会におきまして、やはり同じようにそういう主張を続けてまいりました。また、
日本だけが主張してもあれでございますので、イギリス、カナダ、豪州あるいはEEC諸国とそれぞれ連携をとりまして、アメリカがそういった
貿易制限的な措置をとらないようにということで、強く働きかけてまいったわけでございます。そのまた一環といたしまして、先生も御存じのように、先週の月曜日に、現在これから御審議いただきますケネディラウンドの
交渉経過というものを、アメリカがもし
輸入課徴金のような
貿易制限的な措置をとらないならば、一時的にというか、繰り上げ
実施をすることもやぶさかでないのだという積極的な面を打ち出しまして、イギリスもそういう面を打ち出しましたし、カナダもそういう面を打ち出しておりますが、問題は、EECが一体となってそれと同じような立場をとるかどうかという点が一番問題でありまして、一昨日、昨日、二十五、二十六の両日EECの
会議がありまして、その結果といたしましては、その可能性を考慮するのだという点でコミュニケが発表されましたこと、先生御案内のとおりでございます。問題は、そういったEECの態度について、それはアメリカがもう少し様子を見るということになるかどうか、この点は二十九日、明後日から始まりますストックホルムにおける例の特別引き出し権、IMFのSDRの問題でございますが、これにも若干関連しているように受け取られるわけでございます。でありますから、われわれといたしましても、引き続きEECにも働きかけておりますし、EEC自身がケネディラウンドの繰り上げ
実施ということにまとまってアメリカに働きかける、アメリカがしたがって
輸入制限的な
輸入課徴金のようなものをやらないという方向になるように引き続き努力を続けたいと思います。しかし、先ほど申し上げましたように、EECが一応先般の
会議におきましてケネディラウノド繰り上げの可能性を考慮するというはっきりした態度では必ずしもないということでございます。これを受けてアメリカがどういう態度に出るか。問題は、いろいろと伝えられているところによりますと、アメリカは四月の第一週ぐらいには態度をきめざるを得ないという考え方を持っているようです。したがいまして、ただいま申し上げましたように、二十九日からストックホルムで開かれまする十カ国蔵相
会議、この際において、国際金融面においてアメリカがどの程度に譲歩するのかしないのか、この点をにらみ合わせまして、EECの中の、特に従来ケネディラウンド繰り上げに強く反対しておりましたフランスがどういうような態度に出てくるか、EECとして一本になってケネディラウンド繰り上げ
実施をすることになるかどうかという点が、非常にいま微妙な段階になっているのではないかと考えております。