運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1968-03-27 第58回国会 衆議院 外務委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十三年三月二十七日(水曜日)    午前十時三十八分開議  出席委員    委員長 秋田 大助君    理事 鯨岡 兵輔君 理事 田中 榮一君    理事 野田 武夫君 理事 福家 俊一君    理事 戸叶 里子君 理事 穗積 七郎君    理事 曾祢  益君       青木 正久君    世耕 政隆君      橋本登美三郎君    松田竹千代君       山口 敏夫君    山田 久就君       石野 久男君    木原津與志君       黒田 寿男君    帆足  計君       伊藤惣助丸君    川上 貫一君  出席政府委員         外務政務次官  藏内 修治君         外務省アジア局         長       小川平四郎君         外務省経済局長 鶴見 清彦君  委員外出席者         外務省条約局外         務参事官    高島 益郎君         大蔵省関税局関         税調査官    宗  知武君         専  門  員 吉田 賢吉君     ————————————— 三月二十三日  委員青木正久辞任につき、その補欠として藤  山愛一郎君が議長指名委員に選任された。 同月二十六日  委員伊藤惣助丸君辞任につき、その補欠として  渡部一郎君が議長指名委員に選任された。 同月二十七日  委員福田篤泰君及び渡部一郎辞任につき、そ  の補欠として青木正久君及び伊藤惣助丸君が議  長の指名委員に選任された。 同日  委員青木正久辞任につき、その補欠として福  田篤泰君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 三月二十三日  日本国とニュー・ジーランドとの間の漁業に関  する協定締結について承認を求めるの件(条  約第一四号)  メキシコ合衆国の領海に接続する水域における  日本国船舶による漁業に関する日本国とメキ  シコ合衆国との間の協定締結について承認を  求めるの件(条約第一五号) 同月二十六日  在日朝鮮人の帰国に関する請願外一件(岡田春  夫君紹介)(第三〇三七号)  同(有島重武君紹介)(第三〇八七号)  同(北側義一紹介)(第三〇八八号)  同(中野明紹介)(第三〇八九号)  同(長谷川正三紹介)(第三〇九〇号)  同(米田東吾紹介)(第三〇九一号)  同(島上善五郎紹介)(第三一七一号)  同外二件(山内広紹介)(第三一七二号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  千九百六十六年の満載喫水線に関する国際条約  の締結について承認を求めるの件(条約第一一  号)  日本国シンガポール共和国との間の千九百六  十七年九月二十一日の協定締結について承認  を求めるの件(条約第一号)  日本国マレイシアとの間の千九百六十七年九  月二十一日の協定締結について承認を求める  の件(条約第二号)  関税及び貿易に関する一般協定ジュネーヴ議  定書(千九百六十七年)及び関係交換公文の締  結について承認を求めるの件(条約第三号)  関税及び貿易に関する一般協定第六条の実施に  関する協定締結について承認を求めるの件(  条約第四号)  千九百六十七年の国際穀物協定締結について  承認を求めるの件(条約第五号)      ————◇—————
  2. 秋田大助

    秋田委員長 これより会議を開きます。  千九百六十六年の満載喫水線に関する国際条約締結について承認を求めるの件を議題といたします。     —————————————
  3. 秋田大助

    秋田委員長 政府より提案理由説明を聴取いたします。藏内外務政務次官
  4. 藏内修治

    藏内政府委員 ただいま議題となりました千九百六十六年の満載喫水線に関する国際条約締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。  国際航海に従事する船舶について、その積載限度を国際的に規制する条約としましては、現在、一九三〇年に作成された国際満載喫水線条約があって、わが国を含め約七十カ国の間で実施されていますが、この条約は、作成後すでに三十七年余を経て、近年における著しい造船技術進歩等に必ずしも即応しない面が出てきております。そのため、新たに現状に即した条約締結する目的をもって、一九六六年三月、ロンドンで国際会議が開催され、その成果としてこの条約作成されたのであります。  この条約は、海上における人命と財産の安全を確保する目的のもとに、国際海運に使用される船舶について一定の構造上の要件を課し、この要件を満たす船舶には所定の方式に従って計算される積載限度を指定するとともに、この積載限度を守って航行する締約国船舶には港湾内における取り締まり検査をほとんど免除することを規定しているものであります。  主要な海運国であるわが国としましては、このような条約によって船舶積載限度が国際的に規律され、もって国際海運の安全が増進されることは、きわめて望ましいことであるものと考えます。  よって、ここにこの条約締結について御承認を求める次第であります。何とぞ、御審議の上、すみやかに御承認あらんことを希望いたします。
  5. 秋田大助

    秋田委員長 本件に対する質疑は後日に譲ることといたします。      ————◇—————
  6. 秋田大助

    秋田委員長 次に、日本国シンガポール共和国との間の千九百六十七年九月二十一日の協定締結について承認を求めるの件及び日本国マレイシアとの間の千九百六十七年九月二十一日の協定締結について承認を求めるの件、以上両件を一括して議題とし、審査に入ります。  質疑の通告がありますので、これを許します。田中榮一君。
  7. 田中榮一

    田中(榮)委員 私は、一九六七年九月二十一日のマレイシア協定及びシンガポール協定、いわゆる経済協定につきまして、若干お尋ねしたいと思っております。  まず、シンガポール経済協定につきましては、一昨年椎名外務大臣シンガポールを訪問いたしました際に、現地におきまして、大体有償無償合わせて五千万マラヤドルでありますかによって手を打たれまして、現地政府におきましても、現地華僑団体その他からの相当強い突き上げがございまして、いろいろ苦境に立たれたのでありますが、その間いろいろ現地政府におかれましても折衝を重ねて、大体日本との間におきましては、シンガポールにおきましては無償二千五百万ドル、有償二千五百万ドル、合計五千万マラヤドル、それからまた、その後、マレイシアにつきましては、シンガポールがさようにきまりましたので、ぜひともマレイシアにも経済協力をすべしというマレイシア政府からの相当強い要請がございまして、これも昨年協定が成立したわけでございます。これは無償二千五百万ドルで協定が成立したのでありますが、こうした協定が成立するまでの経過につきまして、われわれはときどきそういう情報あるいはまた政府発表等によりまして了承いたしたのでありますが、その経過につきまして、政府としてどういうような経過をとってどういうように対処したか、そういうことにつきまして、ひとつ御説明を願いたいと思います。
  8. 藏内修治

    藏内政府委員 この両協定の成立の経過でございますが、非常に長い経過をたどっておるわけでございます。  このシンガポール及びマレイシアにおける戦争中に発生いたしました不幸な事件、これは当時血債問題と称せられたわけでございますが、この対日要求のまず当初に出ましたのは一九六二年でございます。まだ当時英領シンガポール自治政府というものでございましたが、これと最初に解決話し合いを行なうことになったわけであります。その後、一九六三年、シンガポールを含めてマレイシアが成立したことは御承知のとおりでございます。それによりまして、マラヤ地域ボルネオ地域等における同様の問題を含めて、ラーマン首相との間に、マレイシア全体の問題として両国政府の間で取り上げられることになったわけでございます。その後、数次にわたって話し合いを進めてまいりましたけれども、その間にンンガポールがマレインアから分離独立をいたしましたために、シンガポール及びマレイシア両方政府に分けて交渉が持たれた、そういうことになったわけでございます。  その後、まず、シンガポール政府のほうが、一九六六年六月になりまして、正式にシンガポール政府としての解決提案をいたしてまいりました。要請をいたしてまいりました。椎名大臣シンガポールを公式に訪問されました際に、両国外務大臣の間で総額五千万シンガポールドルの供与によりシンガポールの対日要求問題を最終的に解決するという話し合いで、大筋合意を見たわけでございます。両国政府がこの合意に基づきまして協定作成話し合いを開始いたしまして、無償分二千五百万シンガポールドルの供与に関する日本シンガポールとの間の協定が署名をされた、この実施に関する公文も一九六七年一月に交換をされた、こういういきさつでございます。目下有償分二千五百万シンガポールドル供与に関する取りきめの話し合いが引き続き続行されているということであります。  分離いたしましたほうのマレイシアとの話し合いも、並行して進められておったわけでございますけれども、一九六七年にマレイシア首相兼外相であるラーマン氏が来日されました際、話し合いが進められまして、マレイシアに対する二千五百万マレイシアドル相当生産物及び役務無償供与ということで、最終的に話し合い解決をするということになったわけでございます。  以上が今日までの概略の経過でございます。
  9. 田中榮一

    田中(榮)委員 本件につきまして、さらにお尋ね申し上げたいと思いますが、このシンガポールにつきましては、無償二千五百万シンガポールドル、それから有償二千五百万シンガポールドルを供与いたしておりますが、何がゆえにこのシンガポールだけに有償二千五百万ドルを供与し、マレイシアに対してはそうしたものがないのか、それにつきまして、ちょっと御説明を願いたいと思うのであります。
  10. 小川平四郎

    小川政府委員 その点につきましては、この取りきめは、シンガポール及びマレイシアわが国との友好関係に基づきまして、わが国両国発展に寄与するというような見地から、経済協力として行なうものでございますので、金額につきましては、わが国財政事情もございますし、また両国経済発展現状等を勘案いたしまして、おのおの無償につきましては二千五百万ドルということになったわけでございます。シンガポールにつきまして有償がついておりますのは、実はマレイシアにつきましては、この前年に一億五千万マラヤドル有償円借款契約ができております。したがって、マレイシアにつきましてはすでに有償援助が行っているわけでございます。シンガポールにつきましては、シンガポールが独立いたしましてからまだ日が浅いわけでございましたので、こういうような有償経済協力が行なわれておりませんでしたので、この機会に無償と合わせまして有償の二千五百万ドルを供与いたしたわけでございます。
  11. 田中榮一

    田中(榮)委員 シンガポールわが国との貿易関係をちょっと数字について見ますと、日本からの輸出が約一億四千二百万ドル、シンガポールから日本への輸入が三千万ドルで、これは日本からの輸出が非常に多いわけであります。ところが、マレイシアにつきましては、日本からの輸出が約八千九百三十九万ドル、それから、マレイシアから日本輸入するものが三億七百万ドルで、そのおもなるものはゴムであるとか、すず鉄鉱石、そうしたものがマレイシアから輸入されるわけでありますが、そうした意味におきましては、この日本への輸入というものが非常に多いわけであります。そこで、こうした貿易関係のアンバランスというものと、それから借款との関係というものは、外務省としてはある程度考慮されておるでありましょうか。外国から非常に大きなものを買う、そのかわりに日本から輸出するものは非常に少ない、それからまた、向こうから買うものは少ないが、日本からどんどん送るものは非常に多い、そういうものに対しては、日本としてはある程度借款というものを認めて、そうして輸出入とのバランスをこの面において調整するというような、いわゆる経済外交的な政策的な面が行なわれておるのかどうか、その点についてひとつ御質問したいと思うのであります。
  12. 小川平四郎

    小川政府委員 御指摘のとおり、わが国シンガポール、それからマレイシアとの貿易構造は非常に異なっております。シンガポールに対しましては輸出超過マレイシアに対しましては輸入超過となっております。これは両国の国の構成が違うわけでございまして、シンガポールは御承知のとおり小さな島でございまして、中継貿易及び地場産業によって立っておる国でございますが、マレイシアは原材料を相当出しております。御指摘のとおり、ゴムとかすずとかいう大きな輸入物資がありますために、日本側輸入超過になっておるわけでございます。  これと援助関係でございますが、先ほど申しましたように、国の構成要素が異なっておりますので、同一に論ずるわけにはまいりませんけれども、シンガポールの場合には、この借款によりまして、日本からの技術援助その他によりまして産業をさらに興すということによって、シンガポールからの貿易の増進ということに寄与できると考えております。また、マレイシアにつきましては、こういう経済協力によりまして、いわば日本品の進出ということが予想できると思っております。両国構造は違いますけれども、それぞれ今回の協定によりまして貿易を促進することができると考えております。
  13. 田中榮一

    田中(榮)委員 それでは別な面からちょっと御質問申し上げたいのですが、今回のこの経済協力でありますが、血債問題として新聞等に報道されております対日血債要求問題が、相当シンガポールにおいて熾烈に行なわれまして、相当大きな社会問題を引き起こしたことがあったのであります一が、この血債問題を引き起こしたその根源、すなわち、これを推進いたしました、大きな役割りを演じたといわれるものに中華商会というものがありますが、マレイシアにおきましても、シンガポールにおきましても、中華団体、いわゆる華僑団体というものが、その国の経済を左右するだけの大きな力を持っているわけでありますが、現在のシンガポールあるいはまたマレイシアもそうであろうと思いますが、血債問題を引き起こしたその根源となった、中核体となった中華商会とは、一体どういう団体なのであるのか、それについてひとつ御説明願いたいと思います。
  14. 藏内修治

    藏内政府委員 この血債要求と申しますか、この問題につきまして推進力となりましたのは、いまのお話の中華商会というものでございますが、これはシンガポールマレイシア、この辺に在住する中国系のいわゆる華僑最大組織でございます。これは日本相当する団体を想定いたしますと、商工会議所というような性格のものでございますが、商業、貿易、金融、こういうものに従事、営業をいたしております人たち中心のメンバーとなって設立されたものでございます。一方、中国系住民の利益を代表して、いろいろな面でリーダーシップを持っておる、こういう団体でございます。現在、正確な会員の総数は六、七百名くらいではないか、こういうぐあいにいわれております。いわゆる移住してきた中国系人たちでございますから、本来、血縁団体というか、そういう非常に団結力の強い、組織力の強い団体であると承知をいたしております。そういう人たち中心になりまして中華商会、さらにこれはマレイシアを通じましては連合会がございまして、こういう団体地域も非常に大きな経済力を持って握っておりますために、これが中心となって活動を開始している、こういうことであろうと思っております。
  15. 田中榮一

    田中(榮)委員 そこで、この中華商会が当時蜂起したその最大の直接の原因となりましたのが、マレイシア及びシンガポールにおける第二次世界大戦の間における不幸な事件といわれて新聞等に報道されたのでありますが、これはわれわれもうすうすは報道等で知っておりますが、これにつきまして、もう少し外務省側からの御説明を承っておきたいと思います。
  16. 小川平四郎

    小川政府委員 これは第二次大戦中日本軍占領したときに起こりました各種の事件でございますが、大きなもの、小さなもの、いろいろあったわけでございます。占領中、戦時のことでございますので、まことに不幸な事件であったのであります。現地ではいろいろ言っておりますけれども、記録によりますれば、軍事裁判の際の資料によりますと、日本軍昭和十七年二月十六日、すなわち、シンガポールに入りましてから三月一日にかけまして、シンガポール近郊において中国人約二千五百人ないし五千人を殺害したという記録が出ております。現地におきましては、五千人以上の華僑が殺害されたということを言っております。また、これは日本のほうの復員庁の調査によりましても、当時占領政策に対しまして、いろいろ不平を持っている者たちがいろいろなたくらみをしているというようなことで、数千人の者を逮捕いたしまして、そのうち約五千人を処刑したというような記録がございます。これが一番大きな、シンガポール住民がいわば血債というものの対象にしている事件でございます。  マレイシアにおきましては、このような大きな事件でございませんでしたが、各地におきまして同様の事件が出ておりまして、同じく軍事裁判記録によりますと、十七年の三月上旬、北方のセレンバン地区において九百九十人の中国人を殺害したというような資料が出ております。北ボルネオにおきましても、若干の同種の事件があったようでございまして、やはり軍によりまして約二百名の処刑が行なわれたというような事件がございます。
  17. 田中榮一

    田中(榮)委員 この戦争によって残された残忍なつめあとがいまなおありまして、現地においていろいろ云々されるということは、日本の今後の発展のためにもまことに支障を来たす原因をつくるものと考えております。したがいまして、今回のこの血債問題、これがいわゆる経済協力という平和的な形に変わって処理されるということは、これはまことに時宜に適した、けっこうなことと考えております。したがいまして、私どもは、一日も早くこの血債問題が処理せられまして、両国の国民の間にこうした戦争の災害に基づくわだかまりというものを一掃いたしまして、今後両国経済発展に寄与するように努力されんことを私は希望する次第であります。  次にお尋ね申し上げたいことは、この協定に基づきまして、わが国から相手国に対して供与される生産物及び役務を使用する計画について、マレイシアの場合とシンガポールの場合とにおいて、その内容が非常に異なっておるのであります。たとえばマレイシアの場合におきましては、船舶二隻を建造してこれを提供する、そのほかに、両国政府合意する計画についてこれを提供する、協力するということであります。また、シンガポールの場合におきましては、シンガポール政府提案をし、かつ日本国政府が同意する計画、こういうようにおのおの両国提案計画が違っております。これはその国の希望要求、実情を勘案してやられたものと考えておりますが、そういうふうに考えて差しつかえないものでございましょうか。
  18. 小川平四郎

    小川政府委員 御指摘のとおりでございまして、マレイシアの場合には、当初から今回の協力資金によって船舶二隻をつくりたいという希望が表明されておりましたので、それが中心になりまして話が進みましたために、船舶をまず特定いたしまして、さらに残額があります場合に両国合意してきめるということにしたわけでございます。  シンガポールの場合には、まだ具体的な計画がございませんので、今回の協力資金は、当然シンガポールが最も自分経済発展に即した計画によりましてこの協力を行なうのが至当であると思いましたので、まずシンガポール側のイニシアチブを求めたということでございますので、同じ性質でございますが、表現が違っておるわけでございます。
  19. 田中榮一

    田中(榮)委員 私も詳しいことは存じませんが、シンガポール政府におきましては、何かスポーツセンターとかそういったものをつくりたいというような意向があったやにも聞いておりますが、現在シンガポールに関する限り、シンガポールのほうの計画というものはまだ具体化していないのでしょうか、ある程度具体化してこちらのほうに協議をしつつある状況でございましょうか、その辺を承っておきたいと思います。
  20. 小川平四郎

    小川政府委員 交渉の過程におきまして、ただいま御指摘のありましたスポーツセンターの話も出ましたけれども、それはあまり実現性がないということで、現在立ち消えになっております。具体的にはまだシンガポール側からの提示がございませんけれども、これは有償の二千五百万の借款が参ります、これと総合してシンガポールにおきまして目下計画を練っておりますので、逐次提示されると思います。現在のところ、まだ具体的な案は出てきておりません。
  21. 田中榮一

    田中(榮)委員 このマレイシア船舶二隻というのは、マレイシア政府のほうから貨物船二隻を建造してこれを提供してもらいたいということをわが国のほうへ申し入れたのでありましょうか、こちらから何かそういうプロジェクトを持ち出してそれに合意さしたということになるのでしょうか、その辺もう少し詳しくお話し願いたいと思います。
  22. 小川平四郎

    小川政府委員 これはマレイシア側からの発案でございます。マレイシアは現在相当左物資輸出しておりますけれども、自分の船というものをほとんど持っておりません。そこで、自分の船を持って海運をつくりたいというのがマレイシア政府希望でございます。したがいまして、それのまず第一のステップといたしまして、船舶を今回の経済協力によって得て、それを母体に海運をつくっていきたい、そういうことでございますので、全く向こうからの発案でございます。
  23. 田中榮一

    田中(榮)委員 そういたしますと、貨物船二隻を建造して提供する、その提供した総額におきまして二千五百万マラヤドルに達しない場合に、その差額の使い方については、両国政府合意する計画に従ってこれを使う、こういう意味に解釈してよろしゅうございましょうか。
  24. 小川平四郎

    小川政府委員 そのとおりでございます。
  25. 田中榮一

    田中(榮)委員 わかりました。  そこで、シンガポールのほうにつきましては、向こうのほうからまだ何ら具体的なプロジェクトというものを持ってこないのでございますが、何かそれにつきまして、政府としても、情報としてこういうものを向こうとして考えておるというようなことはお聞きになっていないでしょうか。
  26. 小川平四郎

    小川政府委員 先ほど申しましたとおり、まだ総合的な計画シンガポール側に立ちておりませんので、総合的な話まで入っておりませんが、一つ、産業センターというようなものをつくりまして、ここに機械類その他を入れまして、いわば産業教育というようなものの施設をつくりたいという案が出ております。もちろん、これは全部でございません、一部分で足りると思いますけれども、そういうようなものがぼつぼつと出ております。これを総合いたしまして全体の計画をつくるという作業をいま向こう政府でやっております。
  27. 田中榮一

    田中(榮)委員 それでは最後に、一つ大事なことをお伺いしたいと思うのです。  このたび、幸いにこの経済協力協定両国政府間に同意が得られたのでございますが、マレイシアにおいてはそういうことはないと思いますが、シンガポール等におきましては、当初、中華商会におきましてわれわれが納得できないような膨大な対日補償額要求しておることを新聞等で私は拝見したのであります。幸いに、椎名外務大臣が一昨年シンガポールを公式に訪問されまして、現地最高責任者とよく話し合いをいたしまして、大体有償無償五千万シンガポールドルで妥結がついたのでありますが、現在このシンガポールにおります中華商会というものが、やはりこの協定額に対しましていろいろ反対を唱え、あるいはまた対日貿易に対しましてのいろいろな牽制手段あるいは対日ボイコットの手段に訴えて、将来また何らか補償の追加を求めるというような動きがある程度ないでもないということをわれわれは心配しておるのであります。そういう点のお見通しにつきまして、今後こうしたことは絶対にないという保証が成立できるものかどうか、その辺をひとつお聞かせ願いたいと思うのでありますが、これは政務次官からお願いしたいと思います。
  28. 藏内修治

    藏内政府委員 シンガポールに関しましては、マレイシアよりも早く、椎名外務大臣シンガポール政府との間に大筋の合意を見ておったわけでございます。これに刺激されてマレイシアも同様解決という手順で進んだことは御承知のとおりでございますけれども、目下のところでは、シンガポール中華商会におきましては、本件をもって最終的に解決をしたという態度をとっておりまして、個々にはあるいは多少の不平とか不満もあるかも存じませんけれども、中華商会の態度といたしましては、これで最終的に解決をしたのだということで、比較的冷静を保っておるだろうと思います。したがいまして、わが国といたしましても、できるだけ早く協定を正式に承認をして、この問題の最終的な解決を見たという体制を早くつくりたいという気持ちでございます。  それから、マレイシアにおきましても、マレイシア中華商会組織の中には、ラーマン首相などを突き上げて、かなり強い要求を出すべきだという意見もあったと承っておりますけれども、ラーマン首相なども、日本との友好関係を維持するために、この程度のところで妥結すべきだということで、非常な説得を傾けられたようでございます。したがいまして、マレイシアにつきましても、わが国においてはできるだけ早くこの協定承認をして発効せしめて、以後同じような問題がさらに蒸し返されることのないような方向に持っていきたい、これが日本政府としても念願するところでございます。そういうことのできまする限り、本問題が再び蒸し返されて、追加の要求というようなことが発生するような事態は避けられるのではないか、かように存じております。
  29. 田中榮一

    田中(榮)委員 私は、シンガポールマレイシアが追加要求をするかどうかという今後のことにつきまして、いま蔵内政務次官からのお話を承りまして、大体了承したのでありますが、向こう中華商会というものはなかなか執批に要求を繰り返しておるように私は聞いておるのであります。そこで、シンガポールでは、先ほど冒頭に申し上げましたごとくに、日本からの輸出、要するに日本から送っておるのが一億四千万ドルで、これは一九六六年の統計でありますが、シンガポールから買っておるものはわずかに三千万ドルと、全く一方交通の貿易でございます。したがって、ある程度経済的にこれらの中華商会等も納得させるためには、いま少し貿易を拡大いたしまして、シンガポール産の原材料、製品等を日本輸入、する必要があるのじゃないかということ。それからもう一つは、シンガポールから技術協力で研修生、留学生を受け入れしていますのが、一九六三年が二十三名、それから六五年には二十四名、それが一昨年は十三名にがた落ちに減っておる。半分になってしまっておるというわけであります。それから、専門技術者その他の日本から派遣しております者はわずかに三人という状況でございまして、これらの点も、いま少しシンガポールの研修生、留学生の受け入れを多数入れて、そうして向こう産業振興のために協力してやる、それからまた、専門技術者その他の派遣もできるだけ便宜をはかって、いわゆる技術協力相当な力を注いでやるということなんかも、私は現地の人人の人心を緩和し、また日本を理解してもらう上においても非常に大きな力になるのじゃないかと考えております。そういう点につきまして、今後シンガポールマレイシア——ことにマレイシア日本が買い手、お得意さんでございますから、この点はシンガポールとは多少事情が異なっておりますから、日本としましてはやりやすいと思いますが、これにいたしましても、やはり経済協力並びに技術援助というものをこれからもどしどしひとつ力強くする必要があるのじゃないかということも考えまして、この両国の今後の動向につきましては、十分にひとつ関心を持って御注意を願って、すみやかにこの協定が成立することを希望いたしまして、私の質問を終わりたいと存じます。答弁は要りません。      ————◇—————
  30. 秋田大助

    秋田委員長 次に、関税及び貿易に関する一般協定ジュネーヴ議定書(千九百六十七年)及び関係交換公文締結について承認を求めるの件、関税及び貿易に関する一般協定第六条の実施に関する協定締結について承認を求めるの件及び千九百六十七年の国際穀物協定締結について承認を求めるの件、以上三件を一括議題とし、審査に入ります。  質疑の通告がありますので、これを許します。山田久就君
  31. 山田久就

    ○山田(久)委員 本日は、貿易自由化問題に関連しての国際的な措置に関してお尋ねをしたいと思うのでございますが、全般的に申しては、第一次欧州大戦後の国際経済というか、保護貿易政策というものが、結果において第二次大戦を誘発するという要因をつくったということから、第二次大戦後においては、貿易の自由化という旗を高く掲げ、このための強力左国際的左努力が続けられたということは、私は基本的な方針としては非常に正しい方針であったと思うのであります。しかしながら、その後のいろいろの動きを見てみれば、むろん、国際経済というものは、いろいろ左政治問題がからみ合って、そう簡単ではない。したがって、いろいろな努力にかかわらず、ポンドの切り下げであるとか、近くはドル防衛の問題というようないろいろな事件が持ち上がって、まかり間違うと、再び世界貿易が縮小均衡というようなところにいくのじゃないかというような、そういう懸念も抱かれておるのは御承知のとおりであります。全般的に、むろん、これに関連しては、たとえば今日、世界経済の中でかなり大きなウエートを占めておる共産圏が、ソ連、中共その他東欧等をはじめといたしまして、世界経済の自由化という方向に協力を示してないということは、私は非常に残念なことだと思う。最近はだんだんそういうような動きが少し出てきておることは、非常に喜ばしいことでございますが、むろんこういうことも一つの影響ではありますし、また一方において、ベトナムその他の戦争という要因も、必ずしも当初予想しておったようなものではなかった。したがって、そういうことは考慮に入れなければならないけれども、結果において、当初の方針というものを、今日非常な国際経済の問題が起こっているにかかわらずやはり正しかったと見るかどうかということ、これは実は非常に基本的な大事な問題だと思うのです。本来は、この問題は責任大臣の御意見をとくと伺うべき筋合いであるけれども、本日は事務当局に一々これをお聞きするのも多少無理かとも思いまするので、こういうことを頭に置きつつ、事務的な二、三の点についての事務当局の評価というものだけに問題を限って、ひとつお聞きしたいと思うのであります。  まず最初は、ここのところ各国非常に力を入れてやってきたケネディラウンドの問題でございまするが、この結果、わが国もいろいろ努力をしてきて、六四年の貿易基準で大体二十億ドル余りの譲許を先進国からかちとった。一方、それに対しての見返りを与えたのは二十三億ドル程度というふうにもいわれていますけれども、事務当局といたしましては、いろいろな点から見て、差し引き利益を一体どういうふうに考えておられるか。むろん、これに踏み切ったのだから、その利益というものを認めておられるのだと思うけれども、しかし、一方、非関税的な措置といいますか、クオーターの問題だとか自主規制の問題だとか、あるいは政府調達、バイアメリカン、あるいは農産物の取り扱いというような、そういう方面になると、必ずしも所期の効果をおさめていないというような面もあると思う。ここら辺の評価をどんなふうに考えているのか、ひとつこの点について見解をお尋ねしたいと思います。
  32. 鶴見清彦

    ○鶴見政府委員 ただいま山田先生から御指摘のありましたとおり、戦後の国際経済あるいは世界貿易の中におきまして、貿易障壁あるいは金融面での原則というものは、IMFあるいはガット体制で出てまいりました。これが非常に日本のために役立っているということは、ただいま御指摘のとおりでございます。したがいまして、日本といたしましても、この精神に沿いまして、ケネディラウンドの交渉にも積極的に参加いたしまして、ケネディラウンドの交渉過程におきまして、先生御承知のとおりに、アメリカとEEC及び日本が一つの中核体をなしまして、その推進に最後まで努力をいたしたわけでございます。したがいまして、その結果といいますか、評価という点につきましては、ただいま御指摘がございましたように、六四年の貿易額にいたしまして四百億ドルくらいのものについて、平均いたしますと、五年間にわたりまして三〇ないし三五%の関税引き下げということでございますが、非常に画期的なものである。これは全般的な評価といたしましては非常に画期的なものでありまして、第五回のいわゆるジロンラウンドに比べまして、かなり大きなものであるということがまずいえるかと思います。  次に、わが国について申し上げますと、ただいま御指摘のとおり、日本が譲許しましたのは約二十三億ドル見当、しかし、そのうち無税の譲許が七億五千万ドル、したがいまして、実際に関税引き下げを行ないましたのは十六億ドル見当。これに対しまして日本側が受けた先進国からの譲許は約二十億ドルということでございます。単純な計算の上に立ちましてもそういう評価が出るわけでございますが、さらにそれ以上に、日本としまして非常に高く評価する点は、先生も御存じのとおり、日本輸出品の大部分、九〇%以上というものが製品あるいは半製品というものでございまして、他方、輸入の方面は半分以上が農産食糧品、原材料ということでございます。先進国の関税が引き下げられてまいりますれば、これが日本の今後伸ばしていくべき重化学工業製品の輸出に非常に大きな役割りを果たしていく、この点は大いに強調されるものではないかと考えておるわけでございます。
  33. 山田久就

    ○山田(久)委員 いま経済局長からのお話、大体そういうふうに判断していいのじゃないかと私も考えておったわけです。ただ、私が指摘しておきましたが、まあ、そういう面はいいとして、非関税障壁という面になると、必ずしもなかなかうまくいっていない。実は非関税障壁の面では、むろん相手方の国内産業の保護の必要というようなことであって、相手の立場もよく理解しなければいかぬ。間々、わがほうでは売らんかなということで自分がこれを希望する、これに反対するというのは、すべて相手が間違っているというような行き方も非常に多いのじゃないか。それも自分が進んで情勢判断、相手の立場も考えてやっていけば問題ないのに、人かとめない限りはどこまでもやっていくというような行き方は、われわれとしても非常に反省しなければならぬ点があるし、そういうような点は、業界に対してもそれぞれのところからよく理解と反省を促してもらう必要があるということを考えます。しかし、それにもかかわらず、いま言ったその方面の障害になると、必ずしもうまくいっていないというようなことなので、これらの点について、一体どういうふうに評価されておるか。ことにいま、御承知のように、アメリカの輸入課徴金というものが非常に大きくクローズアップしてくる。むろん、これにはアメリカ側のいろいろな立場があるにしても、日本側としては非常に大きな関心を持たざるを得ないので、やっぱりこれの解決ということについては、アメリカの立場は理解しつつも、わがほうの立場というものをよく理解させるような申し入れを、十分熱意と忍耐、努力をもって先方に行なうべきだ。現にそういうことを行なっていると思うのですが、この交渉の状況及び見通しというものを、一般問題のほかに、この問題について、どういうふうになっておるか、見通しておられるか、この点について、ひとつ政府の見解を聞きたいと思います。
  34. 鶴見清彦

    ○鶴見政府委員 ただいま先生の御指摘に在りましたいわゆる関税以外の非関税障壁の問題、これは六四年大臣会議の際に、日本側の主張によりまして、ケネディラウンドの三本の柱に一本加えまして、ケネディラウンド交渉の過程においては障壁もあわせて検討されるべきであるということで入ったわけでございますが、現実にケネディラウンド交渉過程において、一応先進国に対しましていわゆる非関税障壁、特に対日差別の問題につきましていろいろと話をしかけたのでございますが、現実には、対日差別の面につきましては、ケネディラウンド交渉過程自体におきましては大きな進歩はなかったということは、まことに遺憾だと存じております。しかしながら、この対日差別の緩和あるいは撤廃ということにつきましては、ケネディラウンド交渉以前からも続けておりますし、現在もまた続けておりまして、たとえば、御存じのように、イタリアにつきましては対日差別が百四品目もございますが、これも近く交渉を始めることになっておりますし、フランスにつきましては五十数品目の対日差別がございますが、これもここ一両日あるいはここ一週間以内のうちには妥結するということになります。これによりますと、約三十品目ばかりが自由化されてくることになるわけでございまして、したがいまして、ケネディラウンド交渉の過程におきまして、対日差別の緩和ないし撤廃というものは必ずしも成功はいたしませんでしたけれども、やはりその際に得られたモメントといいますか、それによってだいぶ交渉が進んでいるということは申し上げ得るのではないかと考えるわけでございます。  そのほか、非関税障壁といたしましては、有名なアメリカン・セリング・プライス、ASPという制度がございます。これにつきましては、主としてアメリカとイギリスとEECの交渉の結果、アメリカが二年以内に撤廃する努力をするということに丘って、これは現在アメリカで新しい通商法案の中の一つの柱となっております。しかしながら、御存じのとおり、現在のようなアメリカの状況におきまして、通商法案がいつ議会に上程され、いつそれが通過するのか、現在のところまだ見通しは明らかになっておりません。  それからあと、その他の非関税障壁につきましては、先生の御指摘になりましたバイアメリカンの問題でございますが、バイアメリカンは、問題はケネディラウンドでも取り上げられませんでしたけれども、別途、こういったバイアメリカンのようないわゆる国産品を使うという問題につきまして、OECDの場で引き続き検討を続けておりまして、何らかの国際コードのようなものをつくろうという動きがあるわけでございます。  さらに、もう一つのいわゆるダンピング、反ダンピングの問題につきまして、これがアンチダンピングの法制を各国がまちまちに恣意的に適用をされますと、非常に貿易制限的な効果を持つわけでございます。日本の場合、カナダあるいはアメリカ等で若干の苦い経験もあったわけでございますが、このケネディラウンドの交渉過程において、アンチダンピングの制度の運用についての国際コードというものができ上がりまして、これがいよいよ承認を得まして、そして発効するようになりますれば、その面におきまする恣意的なアンチダンピングの制度の発動というものが抑制されてまいります。これは日本にとりましても非常に有効なことではないかと考えておるわけでございます。  ただいまさらに輸入課徴金の問題についての御質問がございましたが、輸入課徴金の問題につきましては、かねてことしの初めにロストウ国務次官がまいりまして、ドル防衛についていろいろ説明した際に、ボーダータックスの問題といたしまして、二ないし二・五%のものをアメリカとしては立法化してかける必要が出てくるかもしれないが、これは結局EEC側が最近ボーダータックス率を上げた関係もありますので、それとのにらみ合い、それをどの程度EECが緩和するかいかんにかかるのだという話をしてきたわけでございます。したがいまして、アメリカの政府といたしましては、国務次官等々をはじめといたしまして、EEC側とかなり熱心に交渉もしたようでございまするが、しかしながら、あまり見るべき成果がなかったというようなことから、それではやはりボーダータックスか、あるいは輸入課徴金か、あるいは輸入割当か、あるいは輸入課徴金と輸出リベートを結びつけたような、そういったような四つばかりのいろいろな可能性というものを検討されていたわけでございます。それにつきまして、われわれ日本政府といたしましては、アメリカがドル防衛のために課徴金を取らなければならないということは、それはよくわかるけれども、貿易面において貿易制限的な措置をとるのはこれはおかしいじゃないか、そういうことは結局ケネディラウンドというものを提唱したアメリカの立場をも悪くするし、かえって、もしそういうことをやれば、各国の対抗措置も誘発して、結局意図したところも実現できないということになりますし、また、日本の場合にいたしますと、対米輸出依存度というものが非常に高いわけでございますので、非常な影響が出てくるというので、これに対して強く反省を促して、そのことをロストウ次官が来ましたとき、また一月末のホノルル会議におきまして、さらに二月の下旬でございますが、下田大使からその点について正式に申し入れをしております。またさらに、大臣からジョンソン大使を呼んで、日本の強い態度を表明して、アメリカがそういう態度をとらないようにということを申し入れたわけであります。その他、OECDの場におきまして、経済政策委員会その他の委員会におきまして、やはり同じようにそういう主張を続けてまいりました。また、日本だけが主張してもあれでございますので、イギリス、カナダ、豪州あるいはEEC諸国とそれぞれ連携をとりまして、アメリカがそういった貿易制限的な措置をとらないようにということで、強く働きかけてまいったわけでございます。そのまた一環といたしまして、先生も御存じのように、先週の月曜日に、現在これから御審議いただきますケネディラウンドの交渉経過というものを、アメリカがもし輸入課徴金のような貿易制限的な措置をとらないならば、一時的にというか、繰り上げ実施をすることもやぶさかでないのだという積極的な面を打ち出しまして、イギリスもそういう面を打ち出しましたし、カナダもそういう面を打ち出しておりますが、問題は、EECが一体となってそれと同じような立場をとるかどうかという点が一番問題でありまして、一昨日、昨日、二十五、二十六の両日EECの会議がありまして、その結果といたしましては、その可能性を考慮するのだという点でコミュニケが発表されましたこと、先生御案内のとおりでございます。問題は、そういったEECの態度について、それはアメリカがもう少し様子を見るということになるかどうか、この点は二十九日、明後日から始まりますストックホルムにおける例の特別引き出し権、IMFのSDRの問題でございますが、これにも若干関連しているように受け取られるわけでございます。でありますから、われわれといたしましても、引き続きEECにも働きかけておりますし、EEC自身がケネディラウンドの繰り上げ実施ということにまとまってアメリカに働きかける、アメリカがしたがって輸入制限的な輸入課徴金のようなものをやらないという方向になるように引き続き努力を続けたいと思います。しかし、先ほど申し上げましたように、EECが一応先般の会議におきましてケネディラウノド繰り上げの可能性を考慮するというはっきりした態度では必ずしもないということでございます。これを受けてアメリカがどういう態度に出るか。問題は、いろいろと伝えられているところによりますと、アメリカは四月の第一週ぐらいには態度をきめざるを得ないという考え方を持っているようです。したがいまして、ただいま申し上げましたように、二十九日からストックホルムで開かれまする十カ国蔵相会議、この際において、国際金融面においてアメリカがどの程度に譲歩するのかしないのか、この点をにらみ合わせまして、EECの中の、特に従来ケネディラウンド繰り上げに強く反対しておりましたフランスがどういうような態度に出てくるか、EECとして一本になってケネディラウンド繰り上げ実施をすることになるかどうかという点が、非常にいま微妙な段階になっているのではないかと考えております。
  35. 山田久就

    ○山田(久)委員 いろいろ政府のほうでも努力をなすっている様子で、われわれとしては大いにしっかりやっていただきたいということでございます。むろん、これらのいまの輸入課徴金など、ケネディラウンドの精神に反するのみならず、いま指摘されているように、そのやり方いかんではガット違反というような問題も起こし、また成り行きでは各国の報復措置というようなことも起こってくるだろうし、そうなれば、結果においてはついに世界貿易の縮小ということにもなりかねない。そういう意味で、ひとつこの上ともいろいろ政府の御尽力を強く希望してやまない次第であります。  のみならず、本件は、わが国の場合においては、未開発国の特恵関税という問題とこれが結びついてくるということにもなってくる。中小企業をかかえておるという特殊な日本の体質からいって、しかもその影響力からいって、非常に問題が大きい。場所によっては、伝えられるような特恵関税と、そうして課徴金の問題が結びつくというと、地方においては、それぞれ中小企業の相当部分がブロック的に非常な倒産を引き起こすという状況にもなりかねないという、これは特に重大な問題をわれわれのほうとしては含んでおるわけであります。したがって、この一般的な輸入課徴金問題のほかに、たとえば最悪の場合に、そういう点を加味してもっときめのこまかい立場から、たとえば香港などについて見ても、わがほうの雑貨製品よりもはるかに優秀な機械設備なんかを持ったところもあるし、場所が場所といっても、一体いずれを未開発国と見るべきか。英国の植民地で英国資本で優秀な機械を持っている。しかも有利な低賃金を持っているところで、一般のすでに問題になっているところではあるけれども、これを低開発国として、それとのからみ合わせというようなことをやるのが一体妥当かどうかという、わが国についての特殊な問題があると思うのです。したがって、最悪においてもそういうきめのこまかい問題というものを十分ひっさげて、そうしてアメリカ側に納得させるように、こういう努力もあわせてひとつ行なうことの用意を十分に整えておいていただきたい、このことを特に要望をつけ加えておきたいと思います。  最後に、もう時間もございませんが、国際穀物協定の加盟問題について、ちょっとお尋ねいたしたいと思います。結局、これでわがほうの利益は何であるかということでございますが、この協定は、小麦貿易規約と食糧援助規約というものの二つになっておる。前の小麦関係の面では、新しく定められた価格帯、現行よりも引き上げられているような面もあるようでございまするが、これがつまり国際価格の引き上げというようなことにおちいるおそれがないのかどうか、その辺のことも踏んまえて、一体わがほうの利益はどうなのか。また、いまの穀物援助協定の問題については、これは原則として、商品協定へこういう援助協定を入れるのはおかしいじゃないか。わがほうもそのことについて援助義務というものを留保されておるようでございますけれども、一体どうしてこういうことになったのか。それはわからぬわけじゃないけれども、わがほうとしてこれをついに引き受けるに至った事情と、今後のこの問題についての対策、これを両方ひっくるめて穀物協定に加入することの利益、どう評価判断するか、このことを最後にお聞きして、質問を終わりたいと思います。
  36. 鶴見清彦

    ○鶴見政府委員 ただいま先生の御質問になりました、新しい国際穀物協定に対する利益という点につきまして、これは先生御指摘のとおり、穀物協定の中には、価格帯と、それからもう一つただいま御指摘の食糧援助の問題、この二つがございます。御指摘のとおり、価格帯は、従来の小麦協定の価格帯よりも、確かに下限、上限ともに上がっているわけでございます。ただしかしながら、この価格帯の中で、日本といたしましては、日本の必要とする小麦というものを安定的に供給を受け得るという点が非常に利益でございます。しかし、実際の穀物価格が上限を越すような場合には、上限のところでもって従来の線までは必ず日本が買い得るという点、これははっきりいたしておりますから、これは明らかな利益であろうと思いますが、他方、下限が上がったために、従来よりも少し高いものを買わされることになるんじゃないかという御懸念ももちろんあろうかと思います。この点は、実際に買う穀物の価格というものは、そのときそのときの世界の穀物市場の実勢価格によって買うわけでありますので、この点は、実際問題として高いものを買わされるという結果には必ずしもならないかと考えております。ただ問題は、実勢価格がいまの下限よりも下回るような場合にはどうなるか。それが長い間続くような場合には、下限価格で買わされることになって、かえって損するのではないかという御懸念があるわけでございますが、そういう際におきましては、価格の調整委員会と申しますか、そういうものによりまして、一時的でありますが、そういう価格の下限あるいは上限の調整という可能性を排除していないわけでありまして、そこに一応の安全弁があり得るというふうに考えるわけでございます。  それから、第二の御指摘の点の食糧援助につきましては、ただいま御指摘のありましたごとく、商品協定の中でこういった食糧援助というようなものをするのは筋が違うではないかということで、日本側は当初からこれに反対いたしております。なぜこういうものが穀物協定の中に入ってきたかということにつきましては、御存じのとおり、アメリカが従来主として余剰農産物という形でインド等に食糧援助をいたしてまいりましたけれども、過去二、三年の間のインドの非常な飢饉のために、アメリカの食糧援助に回し得る余剰農産物というものも底をついてきた。今後新たにそういった食糧援助をするためには、アメリカとしましても、新たに作付反別をふやして増産せざるを得危い。そういうことになるならば、生産国のみならず、輸入国、消費国も大いにひとつ食糧援助の肩を持ってもらいたい、また持つべきではないかという考え方が出てまいりました。輸出国側、すなわち、アメリカ、カナダ、豪州等がそういう点を強く主張して、入ってまいったわけです。また、それには、食糧援助という形で普通の流通過程以外にいろいろと小麦が流れるということになりますと、小麦の普通の国際市場における流通過程にやはり悪影響を及ぼすというようなことを前々から豪州あたりが言っておったわけであります。それをある程度国際管理のもとに置こうという考え方も背景にあったわけであります。こういうことから、食糧援助を穀物協定の中に入れようということになったわけであります。しかしながら、先ほど申し上げましたごとく、日本は商品協定の中でそういう食糧援助をするのは筋が違うということをあくまで突っぱったわけであります。しかしながら、どういたしましてもこの食糧援助というものが入らない限りはアメリカで国際穀物協定の議会の批准も得られませんし、また、ほかの国もそういう態度でございましたので、結局日本といたしましては、食糧援助の義務というものを留保いたしまして、しかしながら、食糧援助自体につきましては、商品協定のワク外におきまして、日本としてこれは非常に大事なことであるという考え方もありますので、義務としてではありませんが、道義的な責任というような形で、一方的な意思宣言をいたしまして、一応四百五十万トンが総額でございますが、日本に割り当てられたのはその五%、二十二万五千トン、価格に直しますと約千四百三十万ドルでございますが、その分は食糧援助として日本はやるのだということを一方的な意思宣言で行なうことにいたしました。その意思宣言をすることによって、国際穀物協定の食糧援助関係部門について留保をしておる、そういう形でもって国際穀物協定というものが成立したわけであります。  したがいまして、日本といたしましては、穀物協定下におきまして、法的な義務としては食糧援助はいたしませんけれども、ただいま申し上げましたごとくに、一方的な意思宣言という形で、道義的な援助というものをやるという形で、これを実行することになったわけでありまして、このための必要な予算措置も現在行なわれつつある状況でございます。また、日本の場合におきましては、後進国の一時的な食糧不足というものを補うために、食糧援助というものは非常に大事だけれども、基本的には、結局後進諸国の農業開発というものが一番大事であるという主張を常々持っておりまして、そういう関係もございますので、この食糧援助の過程におきましては、必ずしも米を含む穀物だけではなくて、たとえば肥料あるいは農機具、そういう農業開発に役立つものを使い得るという形にしておるわけでございます。
  37. 山田久就

    ○山田(久)委員 了承いたしましたので、質問を終わります。
  38. 秋田大助

  39. 田中榮一

    田中(榮)委員 ケネディラウンドに関係いたしまして、二、三のことについてちょっと質問いたします。  ケネディラウンドは、ケネディ大統領が、世界の貿易を拡大するというために貿易拡大法を国内において制定いたしまして、そして各国がこの貿易拡大に協力するという意味におきまして、関税の一括引き下げを行なうようになりまして、数次の国際会議を開催いたしまして、昨年もわが国からも宮澤経済企画庁長官が行かれまして、非常な難局に処しまして、今日のようなケネディラウンドの結果をおさめたわけであります。したがいまして、日本貿易を拡大するために、また低開発国の貿易を拡大するためにという大所高所から、日本としてもこのケネディラウンドに賛成をしているわけでございます。ところが、そのケネディラウンドの提唱者であるアメリカが、先般、ドル防衛の見地から、できるだけ外国からの輸入を防遏するという意味におきまして、特に輸入課徴金制度を検討しまして、これをやがて実施に移さんとしているような状況であります。特に年額百二十億ドルになんなんとする貿易の中で、対米貿易が全貿易額の三二%を占めておる日本としましては、この輸入課徴金制度の実施ということは、日本貿易、ことばをかえて言うならば、日本の外貨の獲得に非常に大きな影響を来たすわけであります。そこで、先般新聞で見たのでありますが、政府としましては、米国の輸入課徴金制度の実施に関連して、関係官庁の間において協議を遂げて、いわゆるケネディラウンドの実施時期を繰り上げるというようなことに申し合わせたようでありますが、これは今後五カ年間に関税の現行税率の約三〇%を引き下げるという話だったと思うのですが、その五カ年というものを三年にするとか、あるいは四年にするとか、こういうような意味で申し合わせをしたのですか。その点、ちょっとお聞きしたいと思います。
  40. 鶴見清彦

    ○鶴見政府委員 ただいま田中先生御指摘のとおり、輸入課徴金の問題は、ケネディラウンドの精神にもちろんそぐわないものでございますし、先ほどお答え申し上げましたとおり、政府といたしまして、そういうものをやらないようにということで、あらゆる措置をとりつつあるわけでございますが、それの一環といたしまして、今週の月曜日に関係省との間でいろいろと打ち合わせました結果、政府としては、ケネディラウンドの繰り上げ実施に、条件をつけておりますけれども、賛成するにやぶさかでないということを明らかにいたしたわけでございます。その条件といたしましては、アメリカが輸入課徴金制度をしないということとか、あるいはそれ以外の輸入制限的な保護立法もとらない、それからもう一つ、日本が特につけておりますことは、四〇二A条という特殊な関税評価制度でございますが、アメリカ政府がその廃止に最大の努力を払うということ、この三つを条件としてつけております。それとともに、ほかの主要ケネディラウンド参加国がこれと同じように繰り上げを行なう、この四つになるかと思います。そういうことでございます。ただ、具体的にケネディラウンドの繰り上げのしかたをどうするかということにつきましては、いろいろ関係省で検討はいたしておりますが、具体的にどうやるかということにつきましては、まだ結論は出していないわけでございます。これは結局、ほかの国のやり方、またアメリカの動きというものをにらみ合わせましてきめたいと考えておりますが、先生も御存じのとおり、イギリスはその点につきまして明らかにそのやり方自身をも発表いたしております。これはイギリスは、交渉の結果によりまして、ことしの七月一日からことしと来年の二年分を実施するわけでございます。日本の場合におきましても、ただいま御指摘をいただいております協定によりまして、これが可決承認されました暁におきましては、七月一日からことしと来年の二年分は実施する、これは明らかになっておるわけでございます。したがいまして、これをそれ以上どの程度に繰り上げるかというのが問題になるわけでございます。イギリスの場合には、七月一日にことしの分と来年分をやる。そしてさらに来年の一月一日からこの三年目以降三年分を一気にやってしまうというのがイギリスの言い方でございます。日本の場合にはたしてそこまでいけるかどうか、もう少しやり方等につきましては、十分それの及ぼすべき影響及びアメリカの課徴金等々を阻止する方法というものを勘案いたしまして、具体的にきめるように取り計らいたいと考えているわけでございますが、現在のところ、どういうふうにやったらいいかということは必ずしもまだきまっていないという状況でございます。
  41. 田中榮一

    田中(榮)委員 かりに米国が輸入課徴金を実施しようとして具体的に手続をする場合におきましては、ガットの会議にその課徴金創設の申請をいたしまして、ガットの審議会においてこれを審議して、その議決を得ねばならぬと私は思うのですが、その場合において、ガットとして、この課徴金制度はガットの精神あるいはケネディラウンドの精神にはっきりまっこうから反している措置でありますから、万々そういうことは——こうしたものは問題になると思うのですが、外務省としてはどういうお見通しでございましょうか。かりにガットの審議会にこの申請書が出た場合に、あるいはその五%を三%にしようということになるのか、これは絶対にまかりならぬということになるのか、あるいは時期を延ばすということになるか、こういうお見通しはどうでしょうか。
  42. 鶴見清彦

    ○鶴見政府委員 ただいま先生御指摘になりましたとおり、万が一アメリカが課徴金というものをどうしてもやるんだということになりました場合には、そのことをガットにもちろん出す必要があるわけでございまして、アメリカも従来ガットのワク内でやる、ガットに全然違反するような形ではやりたくないということは申しておりますので、当然ガットに持ち出すことになると思います。同時に、アメリカ議会に対しましてもそういうものを持ち出すことになると思いますが、ガットの場合におきましては、一つの行き方といたしましては、ガット二十五条によりますいわゆる免責、ウエーバーというものをとる。そうしますれば、ガット違反ではないという形になりますから、これが一つの方法でございます。これは過去の例によりますが、御存じのとおり、一九六二年にカナダ、一九六四年にイギリスがやはり輸入課徴金というものをガットに持ち出しております。カナダの場合には一五、一〇、五%という三つの段階のものがございましたし、イギリスの場合は一五%の課徴金でございましたが、それで結局、ガットでいわゆる二十五条によるウエーバー、免責は認められませんでしたし、正式な申請も必ずしも行なわれなかったわけでございまして、結論的にはそういう課徴金というものはガットの二十五条の違反だ、したがって、まことに遺憾である、したがって、これは非常に暫定的でなければならない。それから、そのために特別の作業部会を設けまして、常にこの課徴金というものが必要がもうなくなるかなくならないかということを監視をいたしまして、この援用国に対して常にそれを監視しつつ監督をするという制度でもって、結論的には黙認という形になったわけでございます。したがいまして、今度ももしアメリカが輸入課徴金というものをガットに持ち出しました場合、正式にガットの二十五条のウエーバー、免責を求めるかどうか、あるいは求めないで、前のイギリスとカナダのような例の形になっていくかどうか、この点は必ずしも明らかではないと考えるわけでございます。免責のためにはガット加盟国の三分の二を必要とするわけでありますので、はたしてそのウェーバーをとり得るかどうか。日本の場合にいたしますと、正式にウエーバーまで認めるのはなかなかむずかしいのではないかというふうに考えられるわけでありまして、もしどうしても持ち出す場合には、結論的にはおそらく黙認というような形になる可能性がわりに多いのでは互いかという感じがいたします。この場合には、もちろん、先ほど申し上げましたように、非常に暫定的なものである。常にガットの特別作業部会におきましてそれを監視していくということが考えられます。またさらに、ガットに持ち出す前に、前のカナダ、イギリスの例によりましても、IMFに、一体国際収支上の理由でこういう輸入制限的なことをするだけの根拠ありやなしやということを一応認定を受ける必要がありますので、おそらくアメリカといたしましては、ガットに持ち出す前に、IMFに対してこういう点についての相談をしかけるといいますか、諮問をするといいますか、そういう形の措置がとられるのではないかと考えております。
  43. 田中榮一

    田中(榮)委員 私は、こうした輸入課徴金制度のごときは、ガットの精神に反しまするし、アメリカが提案しました貿易拡大法の精神にも反するのではないかと思いますので、これはやはりガットの二十五条の規定に従って、正当な手続によってガットにおいて十二分にこれを審議することが望ましいものと私は考えております。  そこで、いまの日本貿易というものは、ダブルパンチではなくて、トリプルパンチを受けておりますね。その一つはいまの輸入課徴金の脅威、これは現在輸出入の貿易、ことに輸出貿易で雑貨、軽工業品を取り扱っておる連中は戦々恐々として、もしこれがいれられた場合におきましては、繊維、陶器、それから輸出カメラ、望遠鏡あるいはカバン、万年筆、喫煙具、こういう業者というものは非常な大きな脅威と不安に陥るのではないか。輸入課徴金でまず第一にパンチを受ける。それからケネディラウンドによってまたパンチを受ける。それからもう一つは特恵関税でありますが、先進国においては特恵関税相当実施いたしております。最近におきましては、韓国、台湾のごときが、日本と同じような品物をアメリカなりヨーロッパに輸出している。しかも韓国、台湾は特恵関税を受けて、非常に安くアメリカに輸出しておる。ところが、日本は普通の関税であるわけでありまして、とても引き合いができぬというような状況で、特恵関税で第三のパンチを受ける。したがって、日本貿易というものは、まさにトリプルパンチを受けておる。ダブルパンチでなくて、トリプルパンチを受けておるということであります。最近インドのニューデリーのUNCTADにおきまして、低開発国が先進国に対していわゆる特恵関税を猛烈に要求いたしております。そうしたことで、ニューデリーにおいてようやく先週会議におきまして決議ができたそうでありますが、こうした空気がまた盛り上がってくると、おそらく特恵関税の問題がまた再燃してくる。そうなってくると、日本としては輸出業といいますか、貿易に対して非常な大きな打撃を受ける結果になるわけであります。  そこで、日本は非常に正直で、たとえばガットの会議の際に、国内で業者を保護するような措置は直ちに廃止せねばならないというので、たとえば租税措置における法人の輸出所得控除制度なんかを直ちに廃止してしまった。いままでは輸出所得に対しては租税的にフェーバーを与えまして、これを控除しておったのです。ところが、ガットができましてから、ガットの決議によりまして、国内でそうした助成措置は全部違反であるからというので、輸出業者の輸出に関して所得を受けたその金に対しては、徴税の上におきまして従来免除しておったのでありますが、これを免除しない。いままではこれを損失勘定に勘定しておったのを、利益勘定にこれを計算するということになって、日本としましては、ガットでそういう決議をやれば、直ちにそれに対して反応して、すぐ措置を講ずるという、非常に正直な政策をとってきたのでありますから、もし輸入課徴金をアメリカがやるならば、日本もできれば、それに対してまた輸出所得控除制度を復活したらどうか、あるいはこれに対して融資をしたらどうか、あるいはまた逆に対抗的な課徴金を設けたらどうか、いろいろな問題が出ておりますが、私は、そうした問題は枝葉末節な問題であると思うのであります。  要は、せっかくケネディラウンドを制定し、そして関税一括引き下げによりまして貿易の拡大をしようということがまとまったやさきでありますので、私どもは、こうした輸入課徴金は、ドル防衛をやろうというその気持ちはよくわかるのでありますが、やはりこの問題は、これを全面的に廃止するか、あるいは低開発国に対する特恵措置をやめるか、あるいはまた課徴金の対象となる品目を制限していくか、あるいは課徴金の率を下げるか、あるいは実施の時期を延期するか、こうしたいろいろな方策があると思うのでありますが、われわれは全面的にこれを廃止するという方向に持っていくことが、いわゆるケネディラウンドの精神であるということを考えておるわけでありますので、どうか外務省におかれましても、こういう点をとくとひとつ、日本貿易の重大性また日本貿易というものがいかに影響をこうむるかということを考えて、この課徴金の問題につきましても、たまたまいま山田先生からケネディラウンドの御質問がありましたので、私はこれに関連いたしまして、輸入課徴金の不当なることを申し上げまして、ひとつ外務省の猛省を促したいと思います。これに対して政務次官から御答弁を願いたいと思います。
  44. 藏内修治

    藏内政府委員 この問題は、現在世界経済の上から申しまして、超重要問題と申してもいい問題だとも思いますので、正確には三木外務大臣からお答え申すべきが至当かと存じますけれども、私の感触といたしましては、まあアメリカにとりまして、国際収支、要するにドルの防衛ということがきわめて重要な問題であることは私どももよくわかりますが、われわれ日本側といたしましても、日本政府の国益を守る、日本の国益を守るということは、もちろん考えなければなりませんけれども、今日の時代において、それが単に輸入課徴金に対する日本側のみの対策という狭い範囲で問題が解決できるかどうかという点には、これは非常に問題点が多々あろうかと思います。日米貿易だけがアメリカの国際収支の悪化の原因ではないことは申すまでもございません。そういう観点から申しますと、単にこの問題を解決するのに日米間のバイラテラルな立場だけでこれを考えていっていいのかどうか、あるいはもっとガットであるとかOECDというようなマルチラテラルな場において問題の本質的な解決をはかるべきではないかという気もいたします。これらの点も、現在できるだけ広く目を開いて、これらに対処していく。日本の国益をいかに守るか、被害を最小限度に押えていくか、それでまた国際経済の拡大均衡という、本来ケネディラウンドのバランスのとれた拡大による世界経済の安定という、そういう一つの理想に向かってどうしたらそれが達成できるか、そういう広い観点からも当然検討していかなければならぬことであろうと思っております。非常にむずかしい問題でございますけれども、いま申しましたようなことは一つの日本国民の世論とも今日なっておりますので、この課徴金の問題あるいはケネディラウンド等によりまして日本経済の受ける大きなしわ寄せというものは極力排除いたしたい、その観点は瞬時も忘れないように努力をいたしてまいりたいと思っております。
  45. 秋田大助

    秋田委員長 本日はこり程度にとどめ、次回は、来たる四月一日午前十時より理事会、理事会散会後委員会を開会することとし、これにて散会いたします。    午後零時五分散会