○野間
委員 これは
総裁得意の負担論ですが、それは大企業が確かに交際費を五千億円も使っておる。しかもそれはほとんどが無税だ、税の減免までされておる。そういうものは確かにむだなんだ。だからそれで負担をしてくれるなら、ほかの方法で、法律の問題とか何かにしてそれで
国鉄に入るのならいいのですよ。それを入れて、そのかわりに定期を上げないということなら
総裁の負担論が成り立つと思うのですが、それはそういう理論を言ってもだめなんですね。それから、確かに大企業の中には通勤定期分を負担してくれるということはありますけれ
ども、最近はやはりそれを人件費に逐次繰り入れておる。人件費の一部にされておる。それからいまは、職員の当然上がるべきベースが通勤定期の分だけ上がらないという作用になりつつある。今回の二百五十三億の分、この三七・三%上がる今度の分はほとんど企業が負担をしない。これは私が
予算の分科会でも言ったとおり、ほとんどの会社が、担当大企業でも今回の分は個人に負担してもらうというふうに答えておる。大企業ですらそうですから、
あとの中小企業あるいは個人事業、そういう方面の、つまり零細な低賃金の通勤者は全く本人が、いままでの分もこれからの分も負担をするのであります。今度の負担の増加というものは、たいへんな問題ですね。これはもう
国鉄の皆さんのほうでも出しておるとおり、いま通勤の平均がたしか十六キロであったと思いますが、たとえば横須賀線で鎌倉から通うと千五百三十円も上がるのですね。いま通勤の時間は一時間をこえております。通勤距離が延びておる。そういう
実態であります。私が通っておる川崎からでも五百八十円、一ヵ月の定期で上がります。一ヵ月に五百八十円、あるいは千五百三十円などという高額な通勤の負担の増加をしなければならぬということは、これは
総裁、実は家計のほうから言ってもたいへんな問題なんです。この分まで大企業が払うということはないのです。したがって、中小企業あるいは零細企業などに働いている労働者は、通勤からくる負担分は非常にたいへんなんです。そうして毎年のベース改定でも、これからはそう簡単にはいかぬと思うのですね。しかも最近の経済の情勢というものは、私が申し上げるまでもなく、三井大財閥におられたからおわかりでしょうが、いまの景気の動向あるいは国際的な経済の動向、これが
日本の経済に与える影響というものは無視できない。佐藤内閣はわりあい国会では簡単なことを答えておりますけれ
ども、しかし
実態は今年の四月以降あるいは後半からは経済の影響が非常に出てくる。したがって、もちろん大企業のほうでも負担をしないし、個人の負担は激しいものになってくるというふうに思うのです。したがって、そういう
意味から言えば、今回の定期値上げというものは国民生活に与える影響が非常に大きい。しかも、それがまた物価にはね返ってくる影響も大きい。経済企画庁ですか、あるいは
国鉄ですか、〇・〇八%しかないと言っている。これはしかし物価が全然変動のないときの計算であればいいのですが、いまのような物価が常に変動している、変動というより急上昇しているその中での
国鉄の値上げというものが与える影響というのは、これは私は相当大きく影響してくるのじゃないかと思うのですね。これは、きょう運輸大臣がおられないのでたいへん残念ですけれ
ども、まず私は
国鉄の
総裁に申し上げたいのだが、五〇%までは企業の責任、
国鉄の責任だ、それ以上はこれは明らかに国の政策でやっておるものであるから国が負担をすべきだという、いま
総裁の言われた立論は、これは私は正しいと思う。したがって、もし
国鉄のほうで定期運賃の値上げをしないで、利子補給であるとか、あるいは
国鉄に対する政府の出資であるとかいう方面の政策を進めていって、最初からそういう方針でいったのならよかったのだけれ
ども、今回の場合には
総裁のほうではこの定期運賃の値上げも
国鉄財政に対する
一つの政策として出しておられるというところに、国民から見ると
国鉄に対してたいへん信用を失うという結果になり、いまのような大きな問題に発展をしてきているのじゃないかと思うのですね。ですからこれは、作業もだいぶ進んでおるようでありますけれ
ども、やはり
国鉄運賃の値上げはしないで
——確かに国の財政は硬直化だといわれている。しかし硬直化という問題は、これはいろいろ分析をすれば、
国鉄の財政に対し、あるいは国民の足である
国鉄の経済危機を打開する方策をとるのに、どれほどの金が必要なのか。いま定期だけで二百五十三億、
国鉄にとっては二百五十三億は大きいけれ
ども、国全体から見ればそう大きいものではない、私は捻出できないものではないと思うのですね。そういう方向で
国鉄が押していくべきではなかったのかと思うのですが、いかがでしょう。