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1967-12-21 第57回国会 参議院 予算委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十二年十二月二十一日(木曜日)    午前十時三十七分開会     —————————————    委員の異動  十二月二十一日     辞任         補欠選任      西郷吉之助君     古池 信三君      稲葉 誠一君     野上  元君      中沢伊登子君     片山 武夫君      春日 正一君     岩間 正男君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         新谷寅三郎君     理 事                 白井  勇君                 玉置 和郎君                 西田 信一君                 平島 敏夫君                 八木 一郎君                 小林  武君                 瀬谷 英行君                 小平 芳平君     委 員                 青柳 秀夫君                 井川 伊平君                 内田 芳郎君                 大谷 贇雄君                 岡本  悟君                 梶原 茂嘉君                 北畠 教真君                 小林  章君                 小山邦太郎君                 古池 信三君                 西郷吉之助君                 塩見 俊二君                 杉原 荒太君                 任田 新治君                 内藤誉三郎君                 船田  譲君                 増原 恵吉君                 柳田桃太郎君                 吉江 勝保君                 吉武 恵市君                 占部 秀男君                 岡田 宗司君                 木村禧八郎君                 小柳  勇君                 鈴木  強君                 千葉千代世君                 中村 英男君                 野上  元君                 羽生 三七君                 矢山 有作君                 吉田忠三郎君                 鈴木 一弘君                 二宮 文造君                 矢追 秀彦君                 片山 武夫君                 岩間 正男君                 春日 正一君                 石本  茂君    国務大臣        内閣総理大臣   佐藤 榮作君        法 務 大 臣  赤間 文三君        外 務 大 臣  三木 武夫君        大 蔵 大 臣  水田三喜男君        文 部 大 臣  灘尾 弘吉君        厚 生 大 臣  園田  直君        農 林 大 臣  倉石 忠雄君        通商産業大臣   椎名悦三郎君        運 輸 大 臣  中曽根康弘君        郵 政 大 臣  小林 武治君        労 働 大 臣  小川 平二君        建 設 大 臣  保利  茂君        自 治 大 臣  赤澤 正道君        国 務 大 臣  木村 武雄君        国 務 大 臣  木村 俊夫君        国 務 大 臣  田中 龍夫君        国 務 大 臣  鍋島 直紹君        国 務 大 臣  増田甲子七君        国 務 大 臣  宮澤 喜一君    政府委員        内閣法制局長官  高辻 正巳君        内閣法制局第一        部長       真田 秀夫君        総理府人事局長  栗山 廉平君        総理府特別地域        連絡局長     山野 幸吉君        警察庁交通局長  鈴木 光一君        行政管理庁行政        管理局長     大国  彰君        防衛庁防衛局長  宍戸 基男君        経済企画庁調整        局長       赤澤 璋一君        経済企画庁国民        生活局長     八塚 陽介君        法務政務次官   進藤 一馬君        外務省北米局長  東郷 文彦君        外務省条約局長  藤崎 萬里君        大蔵省主計局長  村上孝太郎君        大蔵省理財局長  鳩山威一郎君        大蔵省証券局長  広瀬 駿二君        大蔵省銀行局長  澄田  智君        国税庁長官    泉 美之松君        厚生省環境衛生        局長       松尾 正雄君        厚生省医務局長  若松 栄一君        厚生省保険局長  梅本 純正君        農林大臣官房長  檜垣徳太郎君        農林省農林経済        局長       大和田啓気君        農林省農政局長  森本  修君        農林省農地局長  和田 正明君        林野庁長官    片山 正英君        通商産業省企業        局長       熊谷 典文君        通商産業省公益        事業局長     井上  亮君        中小企業庁長官  乙竹 虔三君        労働省労政局長  松永 正男君        建設大臣官房長  志村 清一君        建設省河川局長  坂野 重信君        建設省道路局長  蓑輪健二郎君        建設省住宅局長  三橋 信一君        自治省行政局長  長野 士郎君        自治省選挙局長  降矢 敬義君        自治省財政局長  細郷 道一君        自治省税務局長  松島 五郎君    事務局側        常任委員会専門        員        水谷 国一君    説明員        経済企画庁調査        局長       矢野 智雄君        厚生省社会局長  今村  譲君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○昭和四十二年度一般会計補正予算(第1号)(内  閣提出衆議院送付) ○昭和四十二年度特別会計補正予算(特第1号)  (内閣提出衆議院送付) ○昭和四十二年度政府関係機関補正予算(機第1  号)(内閣提出衆議院送付)     —————————————
  2. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) ただいまから予算委員会を開会いたします。  昭和四十二年度一般会計補正予算昭和四十二年度特別会計補正予算昭和四十二年度政府関係機関補正予算。  以上三案を一括して議題といたします。  国税庁長官から発言を求められておりますので、この際これを許します。国税庁長官
  3. 泉美之松

    政府委員泉美之松君) 昨日、当院の議院運営委員会理事会におきまして、一昨日、当委員会におきまして、市川委員の御質疑に対しまして私が答弁いたしました内容に関連いたしまして種々御論議がございましたので、この際、一昨日の答弁につきまして補足して御説明申し上げます。  一昨日、市川委員の御質疑にお答えいたしました私の答弁内容は二点ございました。まず第一点は、国会議員の方について昭和四十二年三月十六日から十二月十日までの間に申告が少なかった方々に対しまして修正申告書提出追加納税をお願いいたしまして、その処理の事跡が、人員で五十名、増差所得で一億五千四百四十二万円、増差税額で二千四百四万円であったということであります。  第二点は、昭和四十一年分の所得について、政治資金にかかる雑所得を赤字で申告された方が五十一名あり、そのうち一部の方に税金を還付したといった問題を生じましたが、その後、このような申告は、現行税法上認められないという結論に達し、修正申告をお願いした結果、現在ほとんどその処理を了し、その結果、約千三百万円を追加納税していただいたという点であります。この第二点のような問題を生じましたことは、その節申し上げたことではありますが、国会議員の方の昭和四十一年分の所得税確定申告の際に、政治資金にかかる雑所得収入金額がゼロの場合にも必要経費損益通算ができるかどうか、また、政治活動のために支出した費用のすべてが政治献金という雑所得必要経費とみなされるかどうかという点について、国税庁の見解に明確でないところがあり、申告指導に当たりまして、国税庁のほうに誤りがあったことによるものでありまして、こうした事態になりましたことにつきましては、国会議員方々責任を帰すべきものではなく、ましてや脱税といったようなものでは決してございません。国税庁申告指導誤りがありましたことによりまして、議員方々に御迷惑をおかけいたしました点は深くおわび申し上げます。     —————————————
  4. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) これより締めくくりの総括質疑を行ないます。占部秀男君。
  5. 占部秀男

    占部秀男君 私は最初、今度の日米会談の結果としての小笠原返還問題について、佐藤総理にお伺いをいたしたいと思います。  いままでの衆参両院予算委員会小笠原問題で明らかになっておりますところは、一つには手続上の問題として、奄美大島返還のときのように、日米間の返還協定によるということが一つ二つは、五月以前に返ってくるであろう、こういう点が二つ三つは、東京都に帰属をさせるか、あるいは国の直轄にするかは、一月ですか、調査団を出した後にきめたい、この三つの点がいままで明らかになっていたところだと思うんですが、総理はこれでよろしゅうございますか。
  6. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) お答えいたします。そのとおりでございます。
  7. 占部秀男

    占部秀男君 そこで、総理はきのう美濃部東京都知事と、おそらくこの問題でありましょう、お会いになったということでありますが、その内容を教えていただきたいと思います。
  8. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 新聞ではいろいろな報道を伝えております、会見について。その前に、この小笠原が返ってきたら、国が直轄するとか、あるいは東京都で、これをぜひ東京都に帰属させるべきか、こういうような議論新聞にはそれぞれ出ております。そして、いかにも政府東京都知事の間に意見の食い違いでもあるかのような印象を与えております。私はこういうことがあってはならない、総理といたしましてその責任を感じておりますので、東京都知事を呼んで、小笠原の問題はとにかく一月に現地調査をするので、現地調査実情を明らかにし、そうしてその後にどういうような復帰、もと住んでいた人、島民復帰ができるのか、またどんな町村ができるか、こういうようなことを考えるべきではないのか。もう最初から予定して、いまどこそこだと、こういうことをいまきめるのはやや早いのではありませんか。よくひとつ落ちついて実情調査しようじゃないか。また、いま対策本部を設置して、これについては東京都ももちろん協力してもらわなければならないし、委員も派遣してもらっておると思うので、そして十分意見も述べてもらいたい。こういう話をしたのであります。ことに、このいま言われておりますものは、米軍が三百、家族まで入れてその程度じゃないだろうか。また、もとの島民で帰島を許された者が、これまたわずか三百程度でございます。今度、小笠原が返ってまいりますと、島の数は相当多数ありますので、こういうところへ三十や五十の部落ができても、その行政処置はたいへんむずかしくなる。いま他でも困っておるような一つの例をとりましても、お医者さんがまずいないんじゃないか、そんなこともありますから、民生を確保するという、そういう立場に立って、よくその実情を把握して、また、ものによりましては、この所有権ども明確ではございませんので、幸いに国の所有、国有のものが非常に多いのであります。土地どもですね。そういうようなことで、実情をよく調査して、今後いかなる町村ができ上がるのか、そういうことも考える。また、帰島する諸君にしましても、これも広範囲にそのようなことを考えましてもどうだろうか、まあとにかく一応いまいえることは、現状を明らかにしないと、先走っても困ると、美濃部知事もそれに賛成のようでありまして、それらの点では意見が一致して、その他の事柄についてはあまり意見の交換はいたしておりません。私はこういう大事な問題で、国が、あるいは地方が、都が何々だというような議論がいまありますけれども、たいへん心配してのあまり、ただいまのように都知事会見をして意見調整に努力しておる、かような状態であります。まあ問題は、東京都知事も私も、小笠原島民、これがしあわせであるように、そういうものを考えるのが今日の私どものまず第一の事柄である。でありますから、それは調査をした後にできる、かように思いますので、その点では十分意見を交換したつもりであります。
  9. 占部秀男

    占部秀男君 この問題で相当、国の直轄か、あるいはまた東京都に帰属させるかということで、世間でも非常な問題にしておるわけです。そこで、知事とお会いになって意見調整されることは私はけっこうなことだと思うのですが、その場合に、総理としては知事意見というものは単に知事意見だけではない。都議会御存じのように、この十二日の日に、小笠原諸島返還についての意見書を満場一致で、自民党の議員方々も入ってですね、これを決定しておる。で、自治法の規定の中でも、御存じのように、知事意見の場合には、議会の決定をもって意見としなければならぬということになっておる、こういう場合ですね。したがって、これは単に知事だけの意見ではなくて、都議会を通して都民総意であると、こういう立場に立っておそらく知事との話し合いをされたと思うのですが、そういう点はいかがですか。
  10. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 美濃部個人に会ったわけじゃございません。都知事として美濃部君と会ったのでございますから、その辺は美濃部君もよく心得ておると思います。私がやはり知りたいのも、ただいまの東京都民考え方、そういう点でございます。そこには誤解はございません。
  11. 占部秀男

    占部秀男君 そこで、きのうのお話の中では、いまの総理お話ではいかなる町村ができるかと、こういうような問題も実態調査の上考えてみたいのだと、こういうように言われておりましたが、町村のことばかりで、府県、都道府県の問題については触れてないわけです。私はやはりこういう点は当然触れるべき問題ではなかったか。都の総意というものがはっきりしているのですから、したがって、触れるべき問題ではなかったかと思うのですが、総理はどういうようにお考えですか。
  12. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 占部君のお尋ねをあるいは誤解しておるのかわかりませんが、いま私が申しますのは、自治体の基本的な基礎になるもの、それを考えることがまず第一ではないか。その考えで、それから先の中間の都道府県のあり方というものがきまるわけでありますから、それを私は申し上げている。だから、占部君もその方面は専門だから御承知のとおりですが、地方自治体というのはやはり基礎になるもの、それがまず第一だと思います。で、私が一番心配しておりますのは、あの島にそれぞれ二十人、三十人というような小さな部落が返ったとしたら、これはたいへんなことじゃないかと思うのです。そういう意味で、どういうような希望を持たれるかわからないが、帰島についても具体的な処理をしなければならぬだろう、こういう点で美濃部君の意見もいろいろ聞いておる、そういうように御理解をいただきたいと思います。いまのまず基礎の問題がきまれば、また、東京都知事に私は相談しているのですから、ほかのことを考えてではない、かように御了承いただいてもけっこうです。
  13. 占部秀男

    占部秀男君 なぜ私がこういうことをお尋ねするかというと、この委員会でも、この前、小笠原の問題が出たときに、先ほど言いましたように、総理みずからが東京都に帰属をさせるのか、国の直轄にするかは調査団を派遣した後にきめるのだ、こういうことでありますから、したがって、総理考え方の中には、場合によれば国の直轄にもしなければならぬ場合もあるのじゃないかということはもう考えられておられるわけです。それで、私は国の直轄にするというような場合がかりにあったとしたならば、これは私は憲法違反の疑いがあるのじゃないかということを心配するわけなんです。現在の憲法では、この国の直轄という形は、都道府県の段階を通り越して、はたして許すことができるかどうか、これは非常に私は疑問じゃないかと思うのです。そこで、そういうふうに考えたのであって、総理は、かりに国に直轄をするというような場合には、これは憲法違反だというようにお考えにはなりませんか。この点はいかがですか。
  14. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) いずれにしても私は憲法違反をする考えはございません。先ほど来申しましたように、どういうような形が一番島民にしあわせをし、また島の開発にもしあわせするだろうか、そういうことで考えよう、あと法制的なことは、私は憲法違反だけはしない、そういう考え方でございますので、専門家意見を徴してよく善処するつもりでございます。
  15. 占部秀男

    占部秀男君 総理憲法違反をしないと言われるのですが、国の直轄の場合には、私は憲法違反の問題が起こってくると思うのです。しかし、これはあとで聞くとして、その前に念のために聞いておきたいのですが、これは外務大臣にお聞きをしたいと思うのですけれども、この返還協定が調印された後、はっきり日本の領土となる日はいつということになりますか。技術的な問題ですが、その点をお伺いしたいのです。
  16. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 両国において、日本国会の批准、アメリカ自身のやっぱり手続両国手続が終了した場合において、これをどういうふうに、たとえば何日というふうに協定の中に入れますか、これは事務当局に答えさせますが、とにかく両国政府においてやはり手続を完了した場合と考えておりますが、実際の何日ということについては、事務当局にお答えいたさせます。
  17. 東郷文彦

    政府委員東郷文彦君) 返還協定につきましては、目下関係各省ともよりより打ち合わせ中でございますが、協定をつくりまして、その発効してから即日とするか、あるいは諸般の準備の関係から、協定発効の日から何日後、たとえば三十日とか、六十日とか、こういうふうにいたしますか、目下研究中でございます。
  18. 占部秀男

    占部秀男君 現在、現地に残っておる人はどのくらいおるのですか。また、帰島を希望しておる人はどのくらいおるのですか、調査があったら教えていただきたい。
  19. 田中龍夫

    国務大臣田中龍夫君) お答えをいたします。最初に帰りましたのは百七十数名でございましたが、今日は約二百名程度に相なっております。帰島希望の者につきましては、これはあるいは東京都、あるいは団体のほうでいろいろと調査をいたした次第でございますが、まだ最終の結論は判明いたしておりません。なお、詳しいことは担当の者からお答えいたさせます。
  20. 山野幸吉

    政府委員山野幸吉君) 帰島の希望者でございますが、ずいぶん古い調査はございますけれども、ごく最近の新しい帰島の希望者は、政府としては調査したことはございませんし、また、その帰島の条件というのがはっきりきまらないままに希望をとっておりますので、民間で行なわれたものでもあまり信憑性がないように私どもは思っております。今後適当な機会に調査をいたしたいと考えております。
  21. 占部秀男

    占部秀男君 東京都が去年ですか、調べたところでは、約五千人近い帰島の希望者があると、こういう事実があるんですが、まあいずれにしてもよろしゅうございます。ただ、私そこでお尋ねしたいのは、そうしますと、調印されたという後には、その地域に帰島した人はもちろんでありますが、居住しておる人にも国民権利義務というのは調印をした後には即発生するということになるわけでございますか、その点をお伺いしたい。
  22. 山野幸吉

    政府委員山野幸吉君) 返還後における旧島民権利関係でございますが、まあ権利態様にもいろいろございまして、たとえば漁業権工業権のような公権もありますが、土地所有権のような私権もございますし一また、戦前それがどのような実態であったのか、戦後二十二年間どのように経緯をしてきたのか、そういう実態をよく調べました上で、それぞれの権利態様に応じて今後決定、善処してまいりたいと、かように考えております。
  23. 占部秀男

    占部秀男君 ぼくの質問しているのは、そこまでこまかく聞いているのじゃなくて、憲法上の国民権利義務というものがいつ発生するのかということを聞いておる。
  24. 高辻正巳

    政府委員高辻正巳君) お答え申し上げます。  施政権返還されれば、すなわち、同時に憲法が適用されることになるわけでございますので、したがって、お尋ねのような趣旨におきましては、憲法上の権利義務は直ちに発生するとお考えになっていただいてけっこうでございます。
  25. 占部秀男

    占部秀男君 もう一つ念のためにお伺いしておきたいのは、この前の奄美大島返還の場合には、自治法の第五条でそのまま鹿児島県に返ってきたわけです。これはおそらく今度の場合には先例となるべき形じゃないかと、かように思うんですけれども、この点はいかがですか。
  26. 高辻正巳

    政府委員高辻正巳君) 奄美大島返還の際は、御指摘のとおりに、奄美大島が県の所属としては鹿児島県に入るというふうに考えて立法的な措置がとられたことは御指摘のとおりでございます。それは一つの例でございますが、今回の場合にそれと同様に考えるかどうか、これはまた返る島の実態奄美大島の場合とだいぶ違っておりますので、その辺は行政上の考慮をどこまでといいますか、要するに、実態調査を遂げた上で、何が適当であるかというような行政上の施策としてどう考えるのが適当であるか、これはまずやはり考えていった後に、いろいろな法制上の考慮も払っていかなければならぬと思っております。
  27. 占部秀男

    占部秀男君 そうしますと、今度は沖繩の場合なんですが、まあ総理はここ二、三年で沖繩は返してもらえるめどをつける確信があると、まあかようにいま言っておられるのですが、沖繩が返ってきた場合に、かりに国の直轄にするというようなことにこの小笠原がなれば、やはり国の直轄にするというようなことも考えられるし、また、そうしない場合もあると、こういうことになるんじゃないか。先例というものはないような形になってしまうのですね、そういう点、総理、いかがでございますか。
  28. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 沖繩の場合は、一口に百万名が住んでおる、こういうことが言われております。したがいまして、小笠原はいまは二百名程度いるでしょう。これからどのくらい帰ってくるかわかりません。こういうところと、これは自然に取り扱い方か変わったって——必ずしも小笠原を例にすることはないと、かように私は思います。もうりっぱな地方自治基礎もできておりますから、これはちょっとその点ではあまり先例にならないのじゃないか、かように考えます。
  29. 占部秀男

    占部秀男君 そうしますと、これは大事な点ですから、しつこいようですが、聞いておきますが、沖繩が返った場合には、国の直轄論というのはそうした実態の上からいって考えられないと、かように了承してよろしゅうございますか。
  30. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) これはだいぶ先のことですが、ただいまのところはちょっと考えられません。
  31. 占部秀男

    占部秀男君 ただいまのところ考えられませんというのですが、総理がそう言われるのですから、そのまま了承しておきます。  そこで、先ほどの国の直轄というような場合には、これは私は憲法違反じゃないかと、かように考えておるのですが、かりにそれをすれば。ところが、総理憲法違反をする考えはないと、かように言われるわけですが、それでは国の直轄にした場合に、どういう理由で憲法違反にならないのか、その理由を教えていただきたいと思います。
  32. 高辻正巳

    政府委員高辻正巳君) お答え申し上げます。  要するに、憲法上の地方公共団体というのは何であるかということに尽きると思います。ただいま小笠原の公共団体としての取り扱いについては、総理からも申し上げましたように、実は政府当局としてまだきめているわけじゃございませんから、きめているようにおとりいただくと困りますけれども、純粋の法理論として申し上げてみたいと思います。  そういう観点から申しますと、先生も御承知かと思いますが、例の東京都の特別区の区長の選任制が憲法に違反しはしないかという一つの事件がございまして、これには最高裁の判決が出たことがございます。この判決の中身は、ちょうどだだいまの立法措置について法制局で立案をするときに考えたのと同じ結論だと私どもは見ておりますが、憲法にいわれる地方公共団体というのは、住民が共同体意識を持って経済的、文化的な共同生活を営むという基盤、その基盤の上に存立する一つの自治形態をいうのであるというふうに申しております。で、こういう観点からものを見ました場合に、やはり総理が言われましたような住民に直結するような第一次的な町村、市町村と申してもよろしゅうございますが、そういう一次的な公共団体、これは住民がおそらくあるところには必ずといっていいくらいに共同体意識というものが自然に生まれてくるものだと思います。したがって、いまの小笠原の住民が直ちにそういう状況にあるかどうかは別といたしまして、本土から帰っていって自然にそういうものが出ていくということは当然に考えられる。したがって、そこに町なり村なり、そういう一次的な自治体をつくるということは、これは憲法の要請するところであろうというふうに考えられるわけでございます。ところで、ひるがえって、今度は東京都との関係考えてみますと、小笠原は、これは言うまでもなく行政権の分離があり、それから平和条約三条の施政権のもとにあったということから、ほとんど直ちに言えると思いますが、いまの小笠原の住民が東京都の現在の住民との間に共同体意識を持って経済的、文化的な共同生活を営むという社会的基盤というものがあるかないかということになりますと、それはまあそういうことになるかもしれませんが、いま直ちにあるということにはならぬのではないか。だとすれば、憲法上の地方公共団体としては必ずしもそこに都に入れなければならぬということにはならぬだろう。むろんいまそうすると言っているわけではございません。それは先ほどお答えしたとおりでございますが、憲法上のぎりぎりの考え方としてはそうなるであろう。あとどうするか、これはまさに立法政策上の問題として、大いに考えなければならぬことは当然だと思います。が、事を憲法上の土俵の中で考えてまいりますと、そういうことになるだろうというのが私どもの一応の考え方でございます。なお、先ほども申し上げましたように、いろいろな調査を遂げた結果、いろいろな施策を講じていくについて、先生の御心配のような憲法に違反することのないように、われわれも慎重に考えてまいりたいと思っております。
  33. 占部秀男

    占部秀男君 念のために総理にお願いしておきますが、きのう——これは時間の中に入れないでください、これは稲葉君の議事進行みたいなものですから。稲葉君の質問に対して法制局長官が答弁したときに、政府の統一見解かと、こういうふうに聞かれたときに、いや、自分はそういうあれじゃないということを答えたんですが、法制局長官の答えることは総理が答えることであると、こう思ってよろしいわけですな、その点は。——別に答弁は要りませんから。  そこで、それ以外に何か理由はないんですか。結局はいまの理由は立法政策的な問題に帰着するわけですが、それ以外に理由はありませんか。
  34. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) それ以外にございません。いままた確められましたが、法制局長官は法律問題については内閣を代表してちゃんとお答えしておりますから、これはもう御信頼をいただきたいと思います。
  35. 占部秀男

    占部秀男君 そこで、これは新聞等で伝えられておるわけですが、政府の部内の一部には、東京都の自治権というものは消滅しておる、こういうような考え方で、いわゆる消滅論というものがあって、したがって、これを返す、東京都に当然帰属させる必要はないんだ、こういうことがいわれておるというんですが、これはもうこういうことはないわけですね、そのほかの理由がなければ、ないわけですね。その点、総理にひとつ。
  36. 高辻正巳

    政府委員高辻正巳君) これはまた自治権ということになりますと、またうるさい問題になりますけれども、要するに、自治権というのは、これは自治権をめぐっての基本的な問題としては、自治権というのはもう自然に固有のものか、あるいは国から与えられたものかというような論争がされております。まあ定説と申し上げては、あるいはおしかりを受けるかもしれませんが、通説といってもいいかもしれません。それは国から与えられたものであるということになっております。ただし憲法上「地方自治の本旨に基いて、法律でこれを定める。」というような保障がございますが、その範囲内では法律で与えられたものということになっておりますので、法律で、したがって、憲法に違反しない限りは、どのようにでも措置ができるということに結論としてはなります。その場合に地方自治の本旨に基づくか、基づかないかということになりますと、さっき申し上げましたような、やはり実体的な基盤としてのそういうものがあるかないか、その辺が結局きめ手になる問題に相なるのではないかと思っております。
  37. 占部秀男

    占部秀男君 どうもぼくの質問があまり簡単過ぎて、かみ合わないんですがね、新聞の伝えるところによると、昭和二十一年ですか、占領軍のメモランダムの問題があって、そして東京都の自治権というものはすでに消滅してしまっておるんだ、だから東京都に帰属させる必要はないのだ、こういうようなことが政府部内の議論としてあると、こういうことを書いてあるわけです。そこで、そういう点はないのですねということを言ったわけです、そういう解釈はないのですねと。
  38. 高辻正巳

    政府委員高辻正巳君) 少し根本のほうを申し上げ過ぎたようでございます。ただいまのお尋ねから申しますと、行政権の分離があり、施政権が行使されたということから申しまして、東京都の自治権というものがそこに及ばなくなったと、何といいますか、基本的には米国の施政権をもとにした行政といいますか、そういうものが行なわれることになり、したがって、それに抵触するものは消えてなくなった、こういう考え方でございます。
  39. 占部秀男

    占部秀男君 そうすると、東京都のこの帰属、この自治権というものは、現在はないという考え方でありますか。
  40. 高辻正巳

    政府委員高辻正巳君) 小笠原に関しては、東京都の自治権はない、こういうわけでございます。
  41. 占部秀男

    占部秀男君 それはけしからぬ。というのはですよ、このアメリカの施政権のもとでは、沖繩も奄美も小笠原も、これは潜在主権があるということで、それで潜在主権があるのだから潜在的に自治権はあるのだということを、政府はいままで言ってきたわけじゃないですか。現に奄美大島返還される昭和二十八年ですか、あのときの政府答弁を調べてみると、こういうことを言っているわけですね。奄美の場合には、この地域は当然鹿児島県の所属に属していたわけで、それは事実上行政、立法、司法の権限が行使できなかったというわけだけです。これが回復すれば当然に従前の地位がそのまま回復されるものです。こういうふうに言っておるのですよ。それを政府答弁をしておる。それだのにあなたのいま言っておることは、まるっきりそれと反対なことを言っているのですが、これは非常に迷惑だと思うのですが、取り消してもらいたい。
  42. 高辻正巳

    政府委員高辻正巳君) いまのお尋ねの点は、先生も御存じと思いますが、地方自治法の五条の一項だと、「従来の区域による。」ということだけを実は引用していただければ十分だと思いますが、要するにいまの法制の態度から申しますと、従前の区域に入るというのが、法制上の立場からは原則になっております。したがって、奄美大島鹿児島県の区域に入っておったものですから、そこに入ってまいるということでございまして、自治権ということから考えた場合に、これは自治権というのは団体の自治権でございますが、団体の自治権として、小笠原というものがいまのような団体としての一体性というものがなくなった場合に、はたして言えるかどうか、これはまあ疑問と申し上げておくにとどめておいていいと思いますが、いずれにしても、先生御指摘の点は、奄美大島に関しても地方自治法の五条の一項あたりの法制上のたてまえからいって、そこに戻るのだという説明が一番端的だと思います。むろんいま御指摘の点が誤りであったと私申すわけではございませんけれども、それよりも端的には、自治法のいまの法制立場からいってそうなったということになると思います。
  43. 鈴木強

    鈴木強君 関連。法制局長官はね、総理大臣も言われたのだが、内閣を代表して答弁しているのだ、信頼してくれ、こう言うのですがね。きのう、おとついあたり、総理大臣がおらぬからあれですけれども、だいぶこれは反撃を受けたんです、野党側からも。それで、言っていることがわからぬのですよ。要するに結論的に占部君の言っていることに対してずばり答えてもらいたい。ですから、奄美大島を返す場合に、いわゆる政府が従来から言っている潜在主権ですね、いいですか、現実的に主権の行使はできないけれども、そこには潜在的な主権はある、こう言われたわけですよ。ですから占部君の指摘したような問題については、実際の発動はできなかったが、眠った権限として日本にあったということを、はっきりあなたが否定したようなかっこうになっているわけだ。だからその点をはっきりしてもらわぬと、論議が前進しないわけだから、いろいろこうあっちいったり、こっちいったりね、三百代言のようなことでもってあんた言うからわからないのだ、聞いておる人が。はっきりわかるような答弁をしてもらいたい。
  44. 高辻正巳

    政府委員高辻正巳君) どうも申しわけございませんが、潜在主権のもし話であれば、これはもう問題なしに、向こうの統治、施政権がなくなれば当然に復活するということは、もういままでもしばしば申しておりますし、私もただいまそういうふうにはっきりと申し上げられます。
  45. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) どうも私ども法律論をいま議論するのにはちょっと早いように思うのです。いま問題になりますのは、実際にどういうように処置するかと、こういうことだと思うのです。私は、いま憲法論もございますから、憲法違反はしない、また、島の開発、同時にまた、帰島する人々に何が一番しあわせになるかと、こういうことでひとつゆっくり考えていきましょうと。いずれにしても、調査をしないことには、いま議論することがやや先走りますと、どうも実態をつかみかねるから、いましばらく待ってくださいと、かように実は申しておるのでございます。いま議論されるのは潜在主権、そういうことはことばとして使っておる。しからば潜在自治権ありゃ、こういうような話に進んでおるようですけれども、ちょっと私はそこまでいくと、いまの状態にはちょっと合わないのじゃないだろうかと。私は法律論を議論するつもりはございませんが、どうか御了承いただきたい。
  46. 鈴木強

    鈴木強君 関連。
  47. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 簡単にしてください。
  48. 鈴木強

    鈴木強君 総理大臣も問題をあとにそらしているのですがね。議事進行としては、憲法上疑義があるかどうかということから発しているわけでしょう。ですから、総理が言われるように、実態として憲法に違反しないような形で、島の人たちがよくなるように考えていくのだと、これはよくわかりますよ。わかりますけれども、その際に、やはり憲法上疑義があるかどうかということが、東京都に帰属するかしないかの問題から発しているわけですから、ですから、あなたも法制局長官を立たせて答弁させているわけでしょう。したがって、長官の答弁がどうもあいまいになってきたから、実際なくなったと言うから、そうじゃなくて、潜在主権というものはあったでしょう。そうならば潜在自治権というものはあったでしょうと、こういう点を明らかにしようとしているわけですから、これは総理大臣、うしろに問題をバックさせないで、憲法上の問題として論議しているのだから、その点をはっきりしてもらいたいと思う。
  49. 羽生三七

    ○羽生三七君 関連。こういうことじゃないですか。結局、潜在主権があったから潜在自治権もある。憲法上何らの疑問はないと。ただ政府の言うことは、小笠原について東京都と共同体的な要素が現実論としてあるかどうかを検討した上で対処すると、こういうことを言っていると思うので、そのことは私たちはどうあろうとも、東京都に帰属すべきものだと思うけれども考え方としては、潜在主権があったところには潜在自治権があるのだから、当然憲法上何らの疑問の余地はない。あとは実体的な問題に関する考慮だけが残っておると、こういうことでしょう。
  50. 高辻正巳

    政府委員高辻正巳君) 潜在主権、これは申すまでもなく、これは何といいますか、むしろ国内法上のものと申しますよりは、一国の主権の問題でございます。したがって、これは法律でどうするというようなことがそこには介在をしない。向こうの施政権がなくなれば、当然に潜在主権が顕在化する、つまり日本の統治権がそこに及ぶ、これはもう当然に及ぶということで、要するに主権概念から出てくる問題でございます。ところが自治権も同じだろうと、こう仰せのことだと思いますが、自治権のほうは、先ほども触れましたように、国内法によって与えられたものでございますので、潜在主権のように、たちまちそれが復活して、日本の主権がそれに及ぶというようなことと違って、そこに国内法上でそれをいじることができるという点が違うということを申し上げたかったわけであります。いろいろこまかくなり過ぎて申しわけございませんが、結論はそのとおりでございます。
  51. 占部秀男

    占部秀男君 そこが大事なところなんです。それを聞きたいと私は思ったわけです。あなたはいま、潜在主権の問題は主権の問題だから、これは法律でどうこうという問題ではないと言う。ところが自治権の問題は、これは国内法によって与えられた問題で、法律事項であると言われる。ところが自治権そのものは、はたして法律事項であるかどうか、ここに私は問題があると思う。というのは、旧憲法と、これは私が言うまでもなく、いまの憲法との違いは、新憲法の中には地方自治の項目があるわけだ。その中では組織と運営については法律にゆだねておるのですね。ところが、じゃ自治権、いわゆる自治権というのは自治の本旨だから、団体自治と住民自治、これは憲法で保障されているのですよ。そうでしょう。主権の概念の中に入って、憲法で保障されているのですよ。このこと自体は法律でどうこうできないのですよ。それをあなたは、全体が法律でどうにかできるというようなことを言われるのはおかしいじゃないですか。ここが急所な点なんです。
  52. 高辻正巳

    政府委員高辻正巳君) 先生のおっしゃるところは一々ごもっともで、私もよく存じております。御指摘の点については、先ほども触れたと思いますけれども、確かに地方公共団体の組織、運営は地方自治の本旨に基づくように法律で定める、大事なのは地方自治の本旨に基づくようにというところで、そこが保障の基盤でございます。したがって、先ほどお話しした点もそこに関係がございますが、住民の共同体意識を持って、経済的、文化的、社会的、共同生活を営む社会的基盤があるところに自治体を設けない、あるいはその組織、運営を定めないというような法律は、違憲の法律になります。そういう意味においての地方自治の本旨に基づく保障、これが憲法のまさに定めているところで、その点は先生の御指摘のとおりでございます。
  53. 占部秀男

    占部秀男君 それがまたおかしいのですよ。いまは府県制度と市町村制度の二段階になっておりますですね。この二段階の実態の中では、府県なら府県の範囲の中にぽつぽつと部落的なものが少しあって、それがやはり村をなしておるようなところもあるのですよ、実態としては。ちょうど小笠原の中で、さっき総理が言われたように、ぽつぽつとある。それと同じような実態があるのですよ。実態論として——あなた、実態論から言っている。そういう場合に、東京都の何というか、帰属の区域になって、ぽつぽつそういう実態があっても何ら差しつかえないのじゃないですか、現実の問題実態論としては。あなた実態論からそういうことに持っていくけれども、それじゃ問題にならないですよ。問題はやはり基本的に府県制度というもの、あるいは市町村制度というものはあるのだと、この観念の上に立ってものごとをきめなければ、きめようの基準がないのじゃありませんか。その点を私が言うのですが、何かはかにきめようがありますか、基準が。
  54. 高辻正巳

    政府委員高辻正巳君) 確かに市町村都道府県があります。それで都道府県もまた憲法上の地方公共団体であるかどうかということは、例の知事の公選問題に関連して非常に論議をされた点であります。その点はいま触れるわけでございませんが、要するに問題は、小笠原諸島が復帰してまいりました場合に、小笠原諸島における住民の一つの共同生活体、これは先ほども申しましたが、いますぐにそういうものがあるのかないのか、逐次本土から行くにしたがって、少なくともそういうものができていくことは明らかなところでございます。で、そういう場合に、第一次的な公共団体的共同体、それについて町村、第一次的な地方公共団体を設けていく、これは憲法の要請するところであろうということをさっき申し上げましたところで、ひるがえって、今度は小笠原の住民と、それから東京都の現在の住民との間に、そういう共同体意識あるいは経済的、文化的な共同体としての実態、そういうものがあるかないかということが一つのけじめになると思います。いま、けじめは何かということを仰せられましたが、やはり最高裁が言っておりますようなこのけじめ、これは私どももやはりそういうものであろうと、前から考えてありましたが、その一つのけじめはやはり十分に考えていかなければいかぬのじゃないかと思っております。  しかし、それは憲法上の問題でございまして、やはりそれ以上に、こういう東京都のもとにつかせるのがいいかどうかという問題は、むろん別個のことでございまして、それは小笠原実態等もよく見、何が島民のおしあわせになるかというような観点から、行政上の施策として今後考えていくべき問題だと思っております。その間、いま御指摘のような点もあわせまして、憲法に違反することのないよう、先ほど申したとおりでございますが、なお慎重に検討をしてまいりたいと思っております。
  55. 占部秀男

    占部秀男君 その点がどうもあなたは逃げようというような感じが強い。というのは、あなたが東京都全体として、小笠原を含めての共同社会的な実態があるか、意識があるかと言っておられるけれども、それはどういうところで認定するのですか。それは水かけ論ですよ。あるといえばある、ないといえばない。これは基準にならぬですよ。やはり基準は、憲法に従って、現在の地方自治法に従ってやる以外に手はないのですよ。しかし、これはここで幾らやったってしょうがないことですから、私はこれはこういう形ではやりません。  それじゃ、私は逆に聞くのですが、国民は、日本人というのは、生まれれば国民としての権利義務があるわけですね。同時に地域住民としての権利義務も持っておると、こういうように思うのですが、その点はいかがですか。
  56. 高辻正巳

    政府委員高辻正巳君) 通常われわれが生まれましたときは、国家の、地方公共団体の住民として生まれてまいります。住民としての義務、これは当然に負うことになるものでございます。
  57. 占部秀男

    占部秀男君 じゃ、なぜ国民としての権利義務地域住民としての権利義務を、生まれたとき、その者の固有のものとして持つか、こういう点はどういうことから出ているわけですか。これは憲法で保障しておるからじゃありませんか。
  58. 高辻正巳

    政府委員高辻正巳君) 憲法の問題になりますと、先ほどの地方自治の本旨に基づいて定める、これはもう先生のおっしゃっておることと同じことだと思っておりますが、ただそれで、法律できめることになっておるものですから、法律上の地方公共団体、その住民に対する権利義務というものが、地方自治法、その他の規定によって規定されております。その結果として、そこに住民としての権利義務が生じてくる、こういうことになるわけでございます。
  59. 占部秀男

    占部秀男君 あまりこれをやっていると時間がたっちゃいますから、結論を言いますけれども、いずれにしても、国の直轄という問題はないのですよ。基礎的な町村を設ける、基礎地方団体を設けるということ、これはわれわれもわかっております。同時に、いまの憲法では二段階構造というものを予想しておるので、府県の問題がどうしても出ざるを得ないのですよ。かりに憲法で定めておる法律のその行き方、これは地方制度の組織と運用についてはやれるけれども地方団体をあらためて設けることを肯定するとか、あるいは地方団体を否定するとか、こういうことはできないわけでしょう。そうすれば国民というものは、すでにいずれかの地方団体に属しなければならないということになるわけなんです。で、私の言うのは、しいていえば、小笠原の島が東京帰属になるという場合もあるだろうし、あるいは静岡県の帰属になる、鹿児島県の帰属になる、これは立法事項であり、また立法政策の問題であるかもしれません。これはわれわれは反対ですけれども、まあかりにですよ。しかし、都道府県帰属を全然なくして国の直轄にするということは憲法上できるかどうかというと、私はこれはできない、こういうことを言いたいのですよ。この点はあなたいかがですか。
  60. 高辻正巳

    政府委員高辻正巳君) その問題を実は前から論じていたと私は思っておりますけれども、いずれにしましても、そのいまの問題の考え方、これは、ともかくも日本の国土に生まれて一つの社会を形成するもの、それは何といっても第一次的には自分の周辺における一つの社会共同体ができているわけであります。だからこそ、これは民主主義の基盤だと言われておりますが、そういうものができてきました際に、そこに公共団体を設けていくというのが憲法の基本的精神だろうと思います。したがって、そういうものはつくらなければいけない。たとえば奄美大島が返りましたときには、先ほどもちょっとお話が出ておりましたが、あるいは現在の沖繩でもそうでございましょう。そこには市町村として、とにかく本土におけると同じような一つの、基礎は違いますけれども、ものがある。それが返ってきます場合には、ほとんどそれをそのまま地方自治法の市町村とする、現に奄美大島の場合にはそうしたわけでございますが、それができるわけでございます。ところが、小笠原島のほうになりますと、そこにまあ調査の必要性が非常に強調されてまいりますが、小笠原のほうになりますとややその趣が違ってまいる。しかし、先生御指摘のように、そういうものがいまあるか、あるいは逐次できてくるか——少なくもできたことを考えて第一次的な地方公共団体というものは固めていく必要があるだろう、それは間違いないことだと思います。ところが、その次に都道府県との関係になりますと、まあけじめになるとかならぬとかということはございますが、何しろいままでその行政権で分離されており、現に施政権が行なわれており、そこと東京との間にいま最高裁の判例が言っているような事態が直ちにあると見られるか見られないかといえば、これはどうもいまそうなっておるものが現にあるということはなかなかむずかしいのじゃないかと思います。これはしかし私見でございますから、あまり強調はいたしませんが、そういう観点から見て、もしそこに憲法の要請するようなものがあれば、むろん都道府県の区域に入れなければいかぬし、もしそうでないと見られるものであれば、そうしなくても憲法には違反しない。しかし、立法政策の問題として何がいいかという当否の問題はさらによく考えていく必要がある、こういうことであろうと思います。
  61. 羽生三七

    ○羽生三七君 ちょっと一つ関連。よくわからないですから、むずかしいことは別にして簡単なことをお伺いします。たとえば、佐藤総理は山口県のどこそこ出身ということになっている。占部君は東京都、私は長野県なんです。小笠原がもし東京都でないということになると、日本小笠原島民ということになるのですか。そういうことは、たとえば具体的な話ですよ、非常に。むずかしい議論は要らないのです。
  62. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) いま非常にはっきりしたことをお尋ねのようですが、私先ほど来申し上げておりますように、法律論はしばらくおきまして、調査をして、そして実際にこのなにが、みんながしあわせになるように、そういうことを考えたらいいだろう、また私自身は憲法違反するつもりはない、かように思っておりますから、先ほど来いろいろ論議された占部君の御意見もよく頭に入れておきまして、そうして具体的に処理するにあたりましては、ただいまのような憲法違反という——これは私は占部君の説に賛成というわけじゃございません、憲法違反は絶対に犯さないというようにこの上とも注意する、かように御了承いただきたいと思います。
  63. 占部秀男

    占部秀男君 いまの羽生さんから出た質問も、私たちの質問も、総理が一月以降の調査団を出して、その結果国に直轄をするか都に帰属をするかと、これを出されたならば、ぼくはこういう問題はいま出してこないのですよ。調査団を出して、実態を知らせる。その実態がわからない前に、国にするかあるいは都にするかと言うから、われわれは心配で、こういう問題をやっておるわけなんです。そういう点をひとつ総理考えていただきたいと思うのですよ。  そこで、引き続くのですが、私は単に概念論で言っているのじゃないのです。というのは、小笠原なら小笠原という一定地域の住民が、国の直轄ということによって、国民としての権利をいわば剥奪されるのですよ。それだから私はこの問題は大事な問題だと言うのです。具体的に言えば、選挙権の問題です、一つはね。これは、小笠原の人は、かりに直轄になれば、都道府県知事の選挙はできないでしょう。都議会議員だとかあるいは県会議員の選挙はできないのでしょう。ところが、ほかのところは全部できるのですよ。これはあなた、憲法は法の前に平等だと規定しておるけれども、こんなことはあなた、憲法違反じゃありませんか。その点どうですか、具体的に私はお伺いします。
  64. 高辻正巳

    政府委員高辻正巳君) 確かに、都の団体に入っていれば、むろん都知事の選挙が与えられなければなりません。したがって、その属している地方公共団体が何かということが先決の問題になると思います。現にそれと同じような——全然同じではございませんが、例の東京都の特別区につきましては、これはほかと違いまして、二重構造であるのが、そこでは一重構造になっておるというようなこともございます。したがって、やはり先生御指摘のように、実態の問題とのかね合いでやはり考えていくべき問題だと思います。(小林武君「それは答弁にならぬよ」と述ぶ)
  65. 占部秀男

    占部秀男君 それは、小林さんの言うとおり、答弁にはならない。東京都の区の場合には、あれは特別地方公共団体、普通地方公共団体である東京都の中にあるわけです。したがって、都民は、知事の選挙もできれば、都議会議員の選挙もできるのです。ただ、三多摩の諸君が市町村長の選挙ができるのに、特別の地方公共団体だから区長の選挙はできないというだけなんです。あなたのいまの例とは全然それは違うのですよ。本質的に違うのです。その点認めなさい。
  66. 高辻正巳

    政府委員高辻正巳君) 特別区の区民でございますね、これが、区長の選挙はできなくて、東京都の知事の選挙だけはできる。そういう関連で、これはまあ事実でございますから、そういうことで一重のところがあるということを申し上げたわけでございまして、それ以上のことを申し上げたわけではございません。
  67. 占部秀男

    占部秀男君 何だかおかしい。
  68. 高辻正巳

    政府委員高辻正巳君) したがって……。
  69. 占部秀男

    占部秀男君 あなた例にとったんでしょう。
  70. 高辻正巳

    政府委員高辻正巳君) 取り消せという……。
  71. 占部秀男

    占部秀男君 こんな例があるんだから……。(「取り消せも取り消さないもない、どういう解釈だというのだ、あなたの議論は」と呼ぶ者あり)
  72. 高辻正巳

    政府委員高辻正巳君) 取り消せというのは……、その事実だけを申し上げたわけで、それ以上にわたって私が何かよけいなことを申し上げたつもりはございません。
  73. 占部秀男

    占部秀男君 それはおかしいですよ。じゃ、この小笠原の場合に具体的にとって見ましょうか。小笠原が国の直轄になった場合に、小笠原島民が市町村——まあ市はできないでしょうから、町村ですな、町村長と町村議会の議員については選挙権はあるのですよ。しかし、都知事、それから都議会議員、これには選挙権はなくなるわけですよ。そうでしょう。だからそれが大事だというのです。それからもう一つは衆議院の選挙ね、これはどういうことになるのか、こういう問題も出てくる。
  74. 高辻正巳

    政府委員高辻正巳君) 議会の議員の選挙、これはむろん、小笠原の住民もまた日本国民でございますから、選挙法の定めるところによって選挙権を行使することができることは当然でございますし、またそうしなければならぬと考えております。
  75. 占部秀男

    占部秀男君 私は選挙だけ言っているのじゃないのですよ。国の選挙と地方の選挙、地方住民の選挙は違うのですよ。地方住民の場合は、住民自治で、参政権なんですよ。これは参政権というもの、それが否定されるんですよ、これで。その否定されるのがいいか悪いかということなんだ。ほかのほうは否定しないんだが、小笠原のほうだけは否定されるんですよ。こういう不平等な扱いでいいか悪いかということを私は聞いている。
  76. 高辻正巳

    政府委員高辻正巳君) 小笠原の区域の住民、これが東京都の地方公共団体の中に入らない、つまり東京都民でないということになりますれば、これはその自己の属している団体としては東京都の団体に属していないわけでございますから、都知事の選挙権はないことは御指摘のとおりでございます。それがいいか悪いかでございますが、これはまさにそういうような政策をとるのがいいか悪いかということに結局相なるわけでございまして、その点は、先ほど来総理もおっしゃっておられますが、そういう点もかね合わせて考えてそういう政策をとっていくかどうかということを考えてまいる問題になると思っております。
  77. 占部秀男

    占部秀男君 憲法国民権利を不平等に扱っておるでしょう。これはどうなんだということ。
  78. 小林武

    小林武君 関連。簡単なことを言うとね、国政に参与できないわけでしょう、選挙権がなければ。そうでしょう、参画できないわけでしょう。そういうことが一体許されるものなのかどうか。あなた憲法憲法とよくおっしゃるが、憲法上許されるのかどうか、それを聞いているんですから、そういう許されないものがあってもよろしいというあなたが答弁するなら、それでわかる。そうなのかどうか、はっきり言ってくれればいい。そういう持って回ったようなことを言ったらだめなんですよ。
  79. 高辻正巳

    政府委員高辻正巳君) 国民の参政権、つまり議会の議員を選挙する権利、これは絶対に否認はできません。当然小笠原の住民も、日本国民である以上、選挙法の定めるところによって選挙権を持つ、あるいは持たせるべきである、これはもうあたりまえのことだと思っております。
  80. 小林武

    小林武君 委員長もう一つ。参政権というものはとにかく絶対これはとることはできないんだと、こういうことになりましたら、一体小笠原島民というのは具体的にいって国の直轄になった場合はどうなるのか、とらないで一体いくとなったらどういうことだということを言わなかったら、これはだめです。そうでなかったら、あなたは法律解釈としてはだめでしょう、意味がないじゃないですか。どういう方法があるのか、あなた小笠原が国の直轄になった場合はこういう方法によって参政権というものはちゃんとあるということを、措置ができるのですということを言わなければ、憲法違反じゃないですか。
  81. 高辻正巳

    政府委員高辻正巳君) 小笠原におろうとどこにおろうと、日本国民である以上は憲法の規定に従って当然に参政権を得るわけでございます。
  82. 小林武

    小林武君 具体的にどうなるか。
  83. 高辻正巳

    政府委員高辻正巳君) 具体的な法制上の措置、それは別途考えていけばいい。とにかく憲法上保障されているわけでございますから、そういう意味においては厳に憲法の定めるところである、こう申し上げていいと思います。
  84. 占部秀男

    占部秀男君 総理に聞きたいんですがね。だからぼくはさっき、国の直轄ということはできないんじゃないかと、東京都に帰属するか、静岡にするか、鹿児島にするか、それは立法政策の問題であるかもしらぬと、いずれにしても地方団体を設けなければ憲法上の不平等の問題が出てしまってどうにもならなくなるのじゃないかと、こういうことを私は言ったんですよ。
  85. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 直轄論、あるいは東京都潜在自治権を復活するとか、まあいろいろ議論むずかしいようですが、とにかく実態調査をいたしまして、そして憲法違反をしないような、また御意見もよく伺いましたので、そういう立場でこの措置をきめたい、これはひとつ御了承いただきたいと思います。
  86. 小林武

    小林武君 関連。総理お尋ねいたしますが、簡単なことなんですよ、これは。実態調査というのは、島民の状況がどうだとか、それから防衛庁長官の立場から言えば、防衛上の問題でどうなるとかということをいままで承っているわけです。それはいいとして、いまの帰属の問題になりますというと、ひとつその帰属の問題のいう参政権の問題ということになると、これはもういま行かなくてもわかっていることなんですよ。何も小笠原まで行ってみなくても、そんなことははっきりしたことなんですよ。だから、あなたのほうでそういうことで議論しているならば、総理大臣として、そのことは心配ないのだ、衆議院の場合も、参議院選の場合も、何の場合も、都知事の場合も、みんなそれに対して参政権を与えるような措置というものは考慮しているのだということをお答えいただけばいいのです。それで終わりです。
  87. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 参政権は、これは無視はいたしません。これは先ほど来言っておることなんです。憲法違反をしない、そこをおわかりいただきたい。(「いまの質問を含めてだよ」と呼ぶ者あり)いまのような質問も含めて。それで、いま私が実態調査を云々と言っているのは、多数の島がございます。しかし、そういうところに全部みんな帰っていって二十、三十の部落をこしらえたら、これはたいへんなことだと私は思うのです。お医者さんだっても出かける——そんな無医島は必ずできるのですね、お医者さんもできないのですから。だから、そういうことを考えると、帰島等についてももっとよく調査をして、やっぱりある程度のものがまとまるようにしないといけないだろう。また、全体といたしましても、そういう実態が必要なんですね。だから、これから復帰計画等もでたらめに——、でたらめとは申しませんが、無計画では実は非常に困ることになるだろう。非常にそれは心配しているのです。で、いま小林君が言われ、占部君が言われるように、私どもが参政権を無視したり、あるいは不都合な状態をこしらえた、そのときはひとつうんと糾明してください。しかしながら、この点はまだその結論は出ておらないのです。どうか御了承いただきたいと思います。
  88. 占部秀男

    占部秀男君 時間がなくなるから、ほかの問題もあるものですから、ぼくは簡単に言っておきますが、これは参政権だけの問題じゃないのですよ。いわゆる条例を制定したり改廃したりするという権利もあるし、それから事務、事業についての監査の権利をあるのです。国会にはないですよ。ところが地域住民にはあるのですよ。それからまた、議会を解散する権利もあれば、知事や役人をリコールする権利もあるのです。こういうような権利は、やはり小笠原だけがないというわけには私はいかぬと思うのです。そうでしょう。だから、そうなれば、おのずからその問題を解決してもらえるようにやっていかなくちゃならない。その点を総理に一言言っていただけば、これでもうおしまいにします。
  89. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 御意見をほんとうによく拝聴いたしましたから、十分善処するつもりでございます。
  90. 占部秀男

    占部秀男君 もっと聞きたいことがあるのですが、この問題一応切っておきたいと思います。  次の問題は、エンタープライズが入ってくるという通告を政府は受けたということなんですが、この事実について知らしていただきたいと思うのです。
  91. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) エンタープライズの入港、寄港ですね、通知は受けておりません。何か新聞にそういう報道があったが、それは事実とは反しておりません。
  92. 占部秀男

    占部秀男君 そうすると、一月二十日に佐世保に入港するのだと、しかもそれは、エンタープライズをはじめあと三つばかりの艦船とこれを護衛する戦艦、これが入るという事実はないと、かように言い切っていいわけですか。
  93. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 私が申しておるのは、事実がないということじゃなくて、通告を受けてはいないというので、事実は否定しておるのではないということでございます。
  94. 占部秀男

    占部秀男君 そうすると、それが入ってくるという事実は知っておるわけですね。
  95. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 日本はエンタープライズの寄港に対して承諾を与えておりますから、当然に知っておるわけであります。
  96. 占部秀男

    占部秀男君 それは一月二十日に佐世保に入ってくるということでありますか。
  97. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) いや、そのことを申し上げているのではなく、まだ通告を受けていないということは、いつ、どこへという、こういう通告は受けていないということでございます。
  98. 占部秀男

    占部秀男君 そこでこの問題は、これはもう外務大臣に私が言うまでもなく、このエンタープライズは核、非核両用の空対地ミサイルを装備されておる、こういうことなんですが、そうすると、核兵器を佐世保なら佐世保に、あるいは横須賀かもしれませんけれども、持ち込まれるということになるんじゃないかと思うのですが、総理この点はいかがでございますか。
  99. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 日本政府が核兵器の持ち込みを認めない、これはもう十分アメリカにも伝えてありますし、アメリカ自身としても十分承知しておりますから、したがって、核弾頭をつけたような核兵器を持ってエンタープライズが入港するということはないと、こういうことを信じております。
  100. 占部秀男

    占部秀男君 信じているということはわかるんですよ。外務大臣が、いいと言うわけがないんです。ただ問題は、じゃ核兵器をつけているか、つけていないかということをだれが判断するか。これは立ち入りはできないんでしょう。その点はどういうことになりますか。
  101. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 究極においてアメリカを信頼する。これだけの日本の重大政策、その政策をアメリカがみずから打ち破って核兵器を持ち込むということは、日米関係の経緯から考えてそういうことは信じられない。アメリカを信頼するということでございます。
  102. 矢山有作

    ○矢山有作君 関連。外務大臣に伺いますが、第七艦隊の所属ですね、エンタープライズは。第七艦隊というのは、私どもの聞くところでは、常時核装備をして緊急の事態に備えておるということが、伝えられておるわけです。私どもも、第七艦隊の果たしておる役割りから見て、そうであろうと考えておるわけですが、そのエンタープライズが核装備をしていないという保証は私はないと思うんです。緊急の事態に備えるのに核装備をしないで日本に入ってきて、緊急事態が突発した、さあ核兵器のあるところまでそれを取りに帰ってそれからはせつけるんだというのでは、一秒を争ういまの戦争の事態の中では、とてもじゃないが常識で解釈できない。それを、アメリカが持ち込まないと言ったから一方的にそれを信じて入港させるんだというのじゃ、国民はそのことばは信頼できませんね。非常な危険感を持ちますよ。どうなんですか。
  103. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 安保条約の事前協議条項というものは、これはそんなに軽い条項だとは思っていないのです。きわめて重要な条項でありますから、その安保条約の規定をみずから破ってアメリカが核を日本に持ち込むというようなことは、従来のアメリカと日本との関係から考えて、あり得ないことであります。信頼していいと私は思っております。
  104. 矢山有作

    ○矢山有作君 事前協議の規定というのはそれだけ重要であるだけに、第七艦隊に所属するエンタープライズの入港を認めるということになると、はたして核を持っておるのか持っておらないのか、その点をやはり十分確かめる、そういう意味でこれはやはり事前協議の対象にすべきじゃないんですか。事前協議の対象にして十分調べて、なるほど核を持ち込まないのだというはっきりした確証が得られてから入港を認めたというなら話はわかりますよ。それをやっていないでしょう。
  105. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) アメリカの覚書にも、事前協議の条項は守るということをアメリカは文書の中にも書いてきておるわけであります。したがって、われわれは、そのような事前協議を破ってそして核兵器を持ち込むということはないと信じております。
  106. 羽生三七

    ○羽生三七君 関連。これは事務当局でよろしいのですが、実際問題として、この核弾頭を取りはずしをして——とこに置いてくるか知りませんが——そうしてそれをまた必要なときに取りつけるというような、そういうことが簡単にやれるのかどうか。技術的なことですが、事務当局においてお答え願いたい。
  107. 宍戸基男

    政府委員(宍戸基男君) われわれが聞いておりますところでは、第七艦隊のエンタープライズが常時核弾頭を装備しておるというふうには普通いわれておりません。軍事上の常識では、ポラリス潜水艦とかICBMとかいうものは常時装着しておるのじゃないかというふうにいわれておりますけれども、エンタープライズはいろいろな飛行機が載っております。いざというときに核用に使えるミサイルもありますけれども、それが常時装着されておるというふうには普通いわれていない、こういうふうに聞いております。
  108. 矢山有作

    ○矢山有作君 これは外務大臣、幾ら議論してもすれ違いに終わると思うのです。あなたのほうは、核は持ち込まぬと言っておるから持ち込まぬだろうと信じておるのだし、それからいまの防衛局長は、エンタープライズは核装備はしていないのだと信じておるのですから。私どもは、第七艦隊が果たしておる役割りから見て、どんな緊急な事態でも対応できるという立場から第七艦隊は常に行動しておるのですから、そうすれば、たとえエンタープライズが核装備をしておらぬとおっしゃっても、私どもは、いまの戦術の上から言うならば、これは核装備をしておると考えるのが常識だろうと思う。しかしながら、こんなことは幾ら議論したって、これはあなたのほうはとにかくアメリカを一辺倒に信ずるのだから、話が入れ違いになる。  それからもう一つ、観点を変えて聞きますけれども、これは私は新聞のことをまるで信ずるわけじゃありませんよ。ところが、こういうふうにいわれておるのです。「エンタープライズは、四十年十一月に第七艦隊に配属され、ベトナム海域に出動していたところを、さる六月末、補給と修理などのため、米本土に帰っていたもので、ベトナム作戦に復帰する途中、立ち寄るもの」と、こういうことなんです。そうすると、これは戦闘作戦行動との関係はどうなんですか。日本から今度は戦闘作戦行動——直接ベトナム海域に出ていくのでしょう。これは事前協議の対象じゃないですか。
  109. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 日本に立ち寄る目的が補給、休養で、作戦行動で日本から発進するということではないということでございます。
  110. 矢山有作

    ○矢山有作君 それは違いますよ。補給、修理その他のために一たんアメリカに帰って、全部整備ができたから日本に来てそれから出ていくのでしょう。そうなれば、補給だとか修理だとか、そんなものは済んでいるのですよ。とにかく日本に一たん寄港してそれからベトナム海域に出るというのですから、直接戦闘行動に日本を発進して参加するのじゃないですか。そう考えるのが常識でしょう。そうすれば、これはやはり事前協議の対象ですよ。
  111. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 覚書の中にも、事前協議の条項というものをアメリカはこれを破ることはないという保証を与えておりますから、アメリカのそのエンタープライズが日本を基地として作戦行動に使われることはない、そういうことをアメリカ自身がみずから破るということはわれわれは考えられないということでございます。
  112. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 関連ですから、簡単にしてください。
  113. 矢山有作

    ○矢山有作君 それじゃ外務大臣国民に対する説得力はありませんよ。それじゃエンタープライズは一体日本に来てそれからどこに行くのか。これはやはりベトナム海域に復帰するのでしょう。行くところははっきりしているのです。それとも、日本に寄ってまたアメリカに帰っていくのでしょうか。それなら話は別ですよ。どうなんですか。日本に来たらベトナム海域に出るのでしょう。出るとするならば、日本を基地として直接戦闘作戦行動に出るのじゃないですか。
  114. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 直接の作戦行動に出るものではないわけです。したがって、安保条約の事前協議という条項に抵触するものではないとアメリカも言っておりますし、われわれもそう信じておりますが、もう少し日本寄港後の行動がわかっておれば、事務当局から補足いたさすことにいたします。
  115. 東郷文彦

    政府委員東郷文彦君) エンタープライズの行動、運航計画に関しましては、一々通報を受けておるわけではございませんが、数カ月前、本件の話し合いをしておりましたころ、極東水域に次回回航するのは明年一月ごろであろう、こういう話は聞いております。したがって、伝えられるごとく、エンタープライズが来月かりに参りますれば、その後ベトナム水域に向かうであろうと私は想像いたしております。そこで、それが安保条約第六条の事前協議に関しまする戦闘作戦行動であるかどうかという点でございますが、これは、その戦闘作戦行動と申しますのは、われわれの解釈でも、ある特定の作戦行動を日本からやるという場合のことでございまして、エンタープライズに載っております艦載機その他がベトナム水域に参りまして、そこであらためて作戦命令を受けて作戦を行なうというような場合に、エンタープライズが日本の港から出ますことは、安保条約の事前協議に申します戦闘作戦行動とは解しておりません。
  116. 小林武

    小林武君 関連。私はあまり軍事的なことはよく存じておりませんけれども、常識として、あなたのいまおっしゃるように作戦行動に参加するために行動を起こしてすでにアメリカから出てきた、そういう場合どうなんですか。これは、こちらから戦闘をしかけるということはないわけです。相手方からしかけられるということを想定しないで行く、そんなぼんやりした軍艦があるはずはないわけです。でありますから、一体あれですか、そういう装備を全然はずして日本に来るなんということは、戦争常識として一体そういうことがあるのかどうか。私は、外務大臣たいへん信ずる信ずるとおっしゃっている。何か宗教的なような御発言をなさっているが、そういうことではなくて、現実に一体いままでの日本の海軍の場合を見た場合でも、自衛隊の場合だってそれは同様だと思うのであります。一体敵の前面に出ていく場合に、相手方の巧撃を予想しないで出ていく、そんなぼんやりしたあれはないと思うのです。この点で、外務省は一体確信を持ってそういうことを言うのか。あるいは——防衛庁の長官はいないのですか、一体そういうことが事実あるかどうか明らかにしてもらいたいと思うのです。そんな信ずる信じないの問題じゃないのです、これは。国民の前に明らかにしなければならぬことなんです。だから、これはそういう意味で答弁をはっきりしてもらいたい。
  117. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) アメリカが文書でもって事前協議の条項に抵触するようなことはしないというこの約束は、外交関係においてもやはり信頼関係というものがなければ、これはなかなか外交関係というものは成り立たない。そういう、アメリカ自身がそのことを約束して寄港する場合にも寄港するわけでありますから、したがって、アメリカ自身としても安保条約という、しかも事前協議の条項というのは、いかに日本の国内においてもこれが大問題であるかというのは、アメリカ自身も百も承知しておるわけであります。しかも、アメリカ自身が文書でもってそういう事前協議の条項に抵触するようなことはない、こう言ってきておるのに、それ以上、われわれは従来の日米関係の経緯を考えてみましても、そうするなら、われわれは信頼する、そういう信頼関係がなければ、なかなか外交関係というものは全部が全部みんな疑ってかかってするというものではない。やはり根底には、外交関係には信頼関係というものが要る。アメリカがそのようなエンタープライズが日本に寄港するということで、重大な、安保条約をみずから打ち破るというようなことをアメリカがするということは、私は信じないということでございます。
  118. 矢山有作

    ○矢山有作君 これでやめますが、北米局長に。
  119. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) これだけにしてください、だいぶ長くなりましたから。
  120. 矢山有作

    ○矢山有作君 アメリカにとっては、日本外務大臣がそれだけアメリカを信頼してくれれば、これは心強いでしょうね。国民はすこぶる不安ですがね。まあ、それは皮肉ですが。  私は北米局長にお伺いしたいのですがね、あなたはエンタープライズが寄港して極東水域に復帰するであろうということを予想しておられますね。それで、ただ戦闘作戦行動になるのかどうかということについては、一たん日本の港を離れて命令を受けたなら戦闘作戦行動になると、こうおっしゃる。じゃあね、その戦闘に参加する戦闘任務というものはね、どこで与えられたかということをあなた確認できるのですか。すでにアメリカを出てくるときに戦闘任務を与えられて、日本に立ち寄って、日本からすぐ出ていくかもしれない。あるいは日本に寄港しておるときに戦闘任務を与えられて直接出ていくかもしれない。あなたの言うように、日本の港を出てからそれから戦闘作戦行動に対する任務を与えられるのかもしれない。その点の確認ができるのですか。どういう方法によってあなたはそれを確認して戦闘作戦行動ではないということをおっしゃるのですか。
  121. 東郷文彦

    政府委員東郷文彦君) 私もアメリカの個々の作戦命令がいつ出るか確認する手段を持っておりませんが、従来の事前協議に関する解釈は、先ほど申し上げたように、たとえは航空母艦——エンタープライズに限らず航空母艦が日本の港を出ましてそれからある水域に行きまして作戦に従事する。こういう場合の日本の港からの出港は、これは第六条の事前協議の対象にはならぬという解釈を従来からとっております。
  122. 占部秀男

    占部秀男君 いずれにしてもこの問題は、かぎを与えておいてどろぼうに入られぬのだ、こういうように信じておけということなんで、これは国民としては、安全の面からいっても、核兵器の持ち込みの心配のある面からいっても、これは問題があると思うのですが、まあ、ここで一応切っておきます。  次に、政治資金規正法の問題……。
  123. 羽生三七

    ○羽生三七君 ほかに移るなら一問だけ関連して。  いまのことは純技術的な御質問であったと思うのですが、政治的に見て、これは総理にお伺いしたい。これはエンタープライズだけではないのです。空母に付属するその他の戦団ですね、一種の。これはベトナム海域で第七艦隊の主力としていろいろな行動をしたことは御存じのとおりであります。それが立ち寄って再び出かけていくのですから、政治的に見て、このベトナム問題にできる限り総理はいろいろ北爆支持と、こう見られるようなことも一部で言われておりますが、必ずしも明確にそう言われたのじゃないけれども、それにしても、こういう寄港を通じて、かえってそういう何らかの協力——アメリカに対する、ベトナム戦争に対する協力も明確にするような印象を与えるのではないか、私はそういう意味の政治的な点でむしろ憂慮をしておるのであります。ですから、核の問題——核弾頭を持っておるかおらぬかというそういう問題もさることながら、政治的な意味でですね、総理は十分お考えをいただくべきではないかと思いますが、いかがでございましょうか。
  124. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 日本が純中立的な立場にあるのかどうなのかという、しばしば議論をされるのでございます。ベトナム紛争には日本は軍事的に介入してない、これは御承知のとおりであります。兵隊を送っておるわけじゃありませんし、武器を輸送しでおるわけでもありません。しかし、日米間に安全保障条約がある。日本とアメリカとの間が日米安保条約で結ばれておる。その意味において、日本は紛争の一方の当事者である、あるいはアメリカ自身と特殊な関係にある、こういう意味でしばしば日本の中立性というものが疑われる。これはそういうことはあるだろうと思いますが、しかし、私は日本の条約上の権利義務、これは両国間において守るべきことである、かように思っておりますもので、ただいまの問題に対しましても、核兵器は持ち込まない、また持ち込まさない、もしそういう必要があるならばそれは事前協議の対象になる、そういう場合でも日本は主張を変えない、こういうことはしばしば申しております。したがって、日米安全保障条約のもとにおきましても、日米間においていわゆる事前協議の項目というものが厳に守られておる。その守られておる立場におきましては、それをさらに広げて、そうしてあまり日本が戦争に加担しておるように見られることは、これは非常に私は迷惑だと、かように思います。問題は、やはり日米安全保障条約というものがある。これは、先ほど来お答えしておりますように、相互に信頼しない限り安全保障条約が守られないこと、これはもう皆さん方もおわかりだと思います。私は、相互の信頼に立って、そうしてこの事前協議の事項も厳格にお互いに守っていくと、こういうことでございますから、この場合におきましても何ら心配はないのである、かように思っておる次第でございます。
  125. 占部秀男

    占部秀男君 いずれにしても、われわれとしては、この問題は事前協議の対象とはっきりすべきであり、かつ、こういうことが入ってくること自体、これはわれわれとしては反対である、こういうことなんですが、これ以上は申し上げません。  そこで、政治資金規正法の問題ですが、衆参両院予算委員会でいままでやって明らかになってきたところは、次の通常国会へ再提出するということと、選挙制度審議会の答申を尊重するということと、選挙制度の改正との車の両輪の輪はとらないと、この三つの点だったと思うんですが、総理の見解を伺いたい。
  126. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) もう一つそれにつけ加えまして、前国会の審議の経過に顧みて、そうしてその上で一つの成案を得て国会に提案する、提案する場合には二月中に出せという野党側からの時期も明示されておりますので、そういう点を考慮して、ぜひ今度は成案を得たいと、かように思っております。成立さしたいと、かように思っております。
  127. 占部秀男

    占部秀男君 そうすると、いまの総理のお考えでは、前回廃案になった政府案に重点を置くのか、あるいは選挙制度審議会の答申に重点を置くのか、ちょっとわからないんですが、その点はいかがですか。
  128. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) いまその点で、いろいろ党とも折衝しておる、また検討をしておる最中でございます。御承知のように、理想的なもの、これはもう願ってもないことですが、なかなか理想実現には時間がかかりますから、それよりも、私はこの際、政治資金規正に一歩でも二歩でも踏み出すということ、実効をあげるような、そういうものが望ましいんではないだろうか、かように思いまして、成案を得ること、成立のできるという、そういうことに特に重点を置いて案を練り直しておると、かように御了承いただきたい。
  129. 占部秀男

    占部秀男君 そうなると、実行できるものということに重点を置くということになると、前回の政府案あるいは答申、これと相当後退するような感じが与えられるわけでありますので、具体的にひとつお伺いしたいと思うんですが、これは自治大臣にひとつお願いしたいと思うんですが、この寄付の制限の問題で、これは御案内のように、二千万円、千万円、それから個人五十万円というような答申のあれがあったわけですが、自民党の中には資金の規制はすべきでないという意見がある、こういうふうなことを聞いておるんですが、そういう方向にいくようなことはないと思うんですけれども、その点はっきりお伺いしておきたい。
  130. 赤澤正道

    国務大臣赤澤正道君) 私には私の考えがありますけれども、まだ成案を得るための検討の過程でございますので、決定的なことは申し上げられません。
  131. 占部秀男

    占部秀男君 それは重大ですがね。資金の規制をすべきでないと、こういうことも、それじゃ検討の中へ入っておるというわけですか。
  132. 赤澤正道

    国務大臣赤澤正道君) 先ほど総理が申されたことに尽きると思いますので、その意味でお考え願いたいと思います。
  133. 占部秀男

    占部秀男君 答申にも政府案にも、たとえば普通の会社の場合は二千万円までだという点がはっきりしているのですよ。ところが、それを自民党さんのほうでは、全然規制すべきでないという議論があるというのですよ。それはもう、今度の選挙制度審議会の答申は全然無意味だということになる。だから私は心配して聞いておるのです。いずれにしても、金額を明示して制限をすると、これはあるわけですな。
  134. 赤澤正道

    国務大臣赤澤正道君) 政治資金規正法の中核をなすものは、言うまでもなく資金公開の原則を貫くということでございます。その他いろいろな問題が議論せられておりまして、党内でもいろいろな議論も出ております。党内だけでなくして、いま総理が申されたように、先般の衆議院での審議の過程でもいろいろな議論が出ておるわけでございまして、そういうことを十分しんしゃくをいたしまして成案を得たいと考えております。
  135. 占部秀男

    占部秀男君 納得できない。あなたはいま、政治資金の問題では公開の原則が重点だというけれども、この間の選挙制度審議会の答申は、公開の問題もあるけれども、金額を明示して制限をすることが今度のいろいろな黒い霧を払うことになる、こういう点をはっきりと答申しておるのですよ。それを全然陰において、そうして公開の原則だけということは、これはもう選挙制度審議会の答申を尊重していないということじゃありませんか、この点どうですか。
  136. 赤澤正道

    国務大臣赤澤正道君) 幾たびも申し上げますとおり、十分尊重はいたします。しかし、そういう問題も含めまして、いろいろ審議の過程がございまするので、それをよく勘案いたしまして成案を得たい、その成案を十分御審議をわずらわしたいと思っております。
  137. 占部秀男

    占部秀男君 時間が惜しいですから、簡潔にそれじゃ確認しておきますが、それじゃ、いま政府のほうでは寄付の制限については取っぱなすことも考えておる、かように了解していいわけでありますか。
  138. 赤澤正道

    国務大臣赤澤正道君) たびたび申し上げますとおりに、成案を得るための検討の過程でございまして、議論はいろいろございます。
  139. 占部秀男

    占部秀男君 議論はいろいろある問題ではないのです。二月には総理は出すと言っておる。しかも、選挙制度の答申には、二千万円という明示があるのですよ。この二千万円を上にしよう、下にしようというのは議論ですけれども、取っぱなすということになれば、これは議論をはるかに越えた問題じゃありませんか。その点はいかがですか。
  140. 赤澤正道

    国務大臣赤澤正道君) ただいま取っぱなすなどということできめた事実はございません。そういったことも一切を含めて検討中であります。
  141. 占部秀男

    占部秀男君 そうすると、寄付の制限は、金額を明示して、ともかくも法案の中には出すのだ、かように了解してよろしゅうございますか。
  142. 赤澤正道

    国務大臣赤澤正道君) まだ最終的にきめていないということを申し上げておるのでございまして、そういうことも十分織り込んで検討いたしております。
  143. 占部秀男

    占部秀男君 しつこいようですがね。最終的にきめていないということの中には、それでは寄付の制限をしないということも含んでいるということなんですな。そうでしょう、いまの答弁では。
  144. 赤澤正道

    国務大臣赤澤正道君) たびたび同じことを申し上げて恐縮ですけれども、そういうことも一切含めてただいま検討中でございます。
  145. 占部秀男

    占部秀男君 匿名の寄付行為の問題はどういうふうに考えておられますか。
  146. 赤澤正道

    国務大臣赤澤正道君) ただいまの段階では同じことを申し上げるよりいたしかたがないのでございます。それは、御案内のとおり、いろいろ議論も寄りました問題が全部含まれて検討されつつあるわけでございまするので、あれこれ一つずつ抜き出してこれからずっと御質問いただきましても、やはり検討中であると申し上げるよりいたしかたがないわけでございますので、その点はひとつお許しを願いたいと思います。
  147. 占部秀男

    占部秀男君 どうも、もっと私は、連座制その他こまかく聞きたいと思ったんだけれども、全部質問に対する答弁を拒否されたようなもので、どうにもならないわけです。しかしまあ、こうやっていたってしょうがないんで、私は最後に、この問題について、総理に、政治資金規正法の問題についての政治姿勢の問題で率直にお尋ねをしたいんです。というのは、これは総理御存じのように、あなた自身がこの答申は尊重をするということを言い、さらに政府の案ができる前後には勇断をもってこれを通すと言っておるんですね。にもかかわらず、前回は廃案になったわけです。まあ、党内の事情はわれわれもわかりますけれども、しかし、これでは国民は承知できないわけですよ。問題は黒い霧の問題を処理しようという政治資金規正法の問題であって、しかも選挙制度審議会の答申の問題なんです。そこで、総理は今度出されると言うんですけれども、これは二度と再び、また廃案になる、こういうことになれば、これはもうたいへんな、何とも言えない問題であって、おそらく総理としては今度は政治生命をかけてこの案を出されるようになると思うんですが、ひとつそうした決意のほどをお伺いしたい。
  148. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 民主政治のもとにおいて最も大事なことは、政治が主権者たる国民から信頼されることでございます。政治が主権者たる国民の不信を招くようなことがあってはならないと思います。また、この民主政治のもとにおきましては、政党政治、これは政治を遂行していくのに、過去の経験から申しますと、望ましい姿だと、かように思います。ところで、この政党中心に政治が行なわれるとして、平素からいろいろの政治問題と取り組む、また、主権者たる国民に十分理解してもらう、そういうような意味で政治活動が活発であることも当然であります。ところが、活発でありますだけに、とかくいまの政治活動、政党活動というものにやや金がかかり過ぎておる、なかなか理解しがたいものがあるようだ。各政党ともそれぞれみんな借金を相当額しょっておる。これなぞは、明らかに、政治活動がいかにむずかしいものであるか、これはおわかりがいくだろうと思います。私は、こういう意味におきまして、政治が国民から不信を買ってはならない、同時にまた、政治があまり金を使わなくて済むような、そういう方法はないだろうかと思います。だから、ここらに政治資金規正の必要性も痛感されるのであります。しかし、これは一人だけの問題ではございません。社会的な環境からもいろいろ必要の出費があるようでございますから、そういう点もさらに今後くふうしていかなきゃならぬと思います。ただいま御指摘になり、また、先ほど来お答えをいたしましたように、理想的な案から申せばこれは非常に簡単なものでございます。しかし、お互いに苦い経験を積んできております。国民の信頼を高める、こういう意味で一そう努力しなければならぬ、かように思っております。その意味から、今度はこの案をぜひ成立さしたい、そういう意味で、過去の苦い審議の経験にも照らして、実際的な案をつくることがまず第一必要ではないだろうか。ただいま自治大臣との間にいろいろの質疑応答もございました。ただいまの段階で一々まだお答えもできないことは、政府側としてはたいへん残念に思っております。しかし、いずれそのうちに成案を得て国会提出いたすのでございまして、どうかその際には十分御審議をいただき、そうしてぜひ成立に御協力願いたいと思います。ただ、いまのところでは、案を示さないで御協力願いたいと、かように申しまして、めくら判を——めくら協力とでも申しますか、それを要求しているようで、まことに相すみませんが、私どもの気持ちのねらいのあるところは以上のところで尽きたように思いますから、どうか案が出てきたらその際に法案を御審議していただきたい、こういうことで、この問題をしばらく政府にあずけていただきたいと思います。
  149. 占部秀男

    占部秀男君 次に、大蔵大臣にちょっとお伺いいたしますが、予算は年内に編成ができるというのですが、そうじゃなくなったというようなことがちょっと新聞に出ておりますが、この見通しはいかがですか。来年度の予算。
  150. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) いま、年内編成の目途をもって作業を急いでおりますが、国会が長くなりました関係で、私どもの準備も非常に差しつかえが生じておりますので、今明日の間に、今年内編成ができるかどうかという見通しをつけたいと思っております。
  151. 占部秀男

    占部秀男君 そこで、赤澤自治大臣にお伺いいたしますが、今度の予算の中で地方減税をするのだということで自治省としてはきめて、いま大蔵省と折衝しておるということを聞いておるのですが、その内容はどういう内容ですか。
  152. 赤澤正道

    国務大臣赤澤正道君) 住民税の減税は非常に強い要望であることは御案内のとおりでございまして、前々国会衆参両院地方行政委員会で附帯決議に、例のない金額まで明示した非常に強いのがつけられてあります。われわれといたしましてもやはり御期待に沿わなければなりませんし、しかし、地方財政も苦しいさなかでございますが、とにかく前向きで御期待にこたえたいと思いまして、目下税調にも相談中でございます。
  153. 占部秀男

    占部秀男君 案の内容はきまっておるのじゃないですか。そして、自治省案はきまっておるのじゃないですか。それをもって大蔵省と折衝しておるのじゃないですか。
  154. 赤澤正道

    国務大臣赤澤正道君) ただいま申しましたとおりに、自治省案というよりは、国会でもってもう金額まで明示して要望されておるわけでございまして、それを中心といたしまして自治省でいま検討をいたしておるわけでございます。その数字は御承知のとおりでございます。
  155. 占部秀男

    占部秀男君 水田大蔵大臣にお伺いしたいのですが、これはもう、この前の国会のこの予算委員会で、私の質問に対して、大蔵大臣は、地方住民税と、それから例の所得税のアンバランスの問題、それから住民税の減税していない実情の問題から、明年度の予算ではぜひとも実現をするのだ、こういうことを言明されたわけですが、今度はそれをもちろん実現してもらえると思うのですけれども、その点はいかがですか。
  156. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) ただいまその方向で検討中でございます。
  157. 占部秀男

    占部秀男君 検討中ということは、地方税の減税をしない場合もあり得るということでありますか。
  158. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) その方向でということは、負担を軽くするという方向でということでございます。
  159. 占部秀男

    占部秀男君 まあ、いずれにしても、金額の問題はとにかくとしても、負担を軽くするというのだから、地方減税はしますと、こういうことですね。これははっきり簡単にひとつ言ってもらえませんか。
  160. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) いま税制調査会にもはかっておる事項でございますが、私どもはそういう気持ちでいま検討中でございます。
  161. 占部秀男

    占部秀男君 最後に、東京都の区長公選の問題についてちょっと聞きたいのですが、いま相当な区が、区長が選任できなくて非常にもめておるというのですが、その点、どういう事情でありますか、知らせていただきたい。
  162. 赤澤正道

    国務大臣赤澤正道君) 普通地方公共団体としての東京都というものは、中身が非常に複雑でございまして、きょうも小笠原問題で、自治大臣は抜かしてだいぶん御質問のようでございましたけれども、実際困ったものだと思っております。これをどういうふうに解決をつけるかということは、この前私が自治大臣をいたしましたときも大問題でございました。占部さんとは、ずいぶんこのことで議論を重ねた記憶がございます。しかし、この東京都の特別区の自治というものは、江戸の八百八町時代からの引き継ぎがございまして、大阪や名古屋と違うことは、占部さん一番御承知のとおりでございます。しかも、区長をきめますのに、知事の同意を得て議会が選任をするというようなことになっておるものですから、その内部の勢力分野によりましては、なかなかうまくきまりにくいような状態になっておりますので、こういったことを根っこから解決することについていろいろ苦心しておることも、東京御出身の占部さんは一番よく御承知のとおりでございます。名案があったら拝借したいと思っておりますけれども、すぐ公選にしたらどうかとおっしゃるのじゃないかと思うのです。この前の議論の続きですが、それにも、御案内のとおり、なかなかそうやりにくい事情もあるのでございまして、しかし、目下制度調査会そのほか、自治省内部でもずいぶん検討を重ねておりますので、いましばらくこの結論は検討の時間を与えていただきたいと思います。
  163. 占部秀男

    占部秀男君 時間がございませんから、総理に一言だけ伺っておきたいと思います。  いま、練馬をはじめ、六つの区が年内にきまらないのじゃないかという状態になっております。これは二十三区で六つの区がきまらないということ、非常に都民としては大きな問題なんです。その原因は、まあいろいろあります。しかし、いま自治大臣が、すぐ区長公選だと言われたけれども、区長を公選にしておけばですよ、こういうようなごたごたは起こらないのですよ。私は、やはり区長公選にしてもらうべきじゃないかと思うのですけれども、こういうごたごたを起こさないためにも必要なんじゃないかと思うのですが、総理の御意見を最後にお伺いして、私の質問はやめたいと思うのです。
  164. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) いま赤澤君からお答えいたしましたように、ただ単に区長公選だけで片づく問題では私はないだろうと思います。首都という東京都、全人口の一割以上を持っておるこの特別区域、その行政組織がいかにあるべきかということ、このことを考えなければいかぬのじゃないか、かように私は思っております。そういう意味で、自治省におきましても、また東京都におきましても、真剣に取り組むきべ事柄だと、かように思います。
  165. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 以上をもちまして占部君の質疑は終了いたしました。  午後一時三十分再開することといたしまして、これにて休憩いたします。    午後零時三十四分休憩      —————・—————    午後一時五十一分開会
  166. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) ただいまから予算委員会を再開いたします。  委員の異動について御報告いたします。  本日、中沢伊登子君が辞任され、その補欠として片山武夫君が選任されました。     —————————————
  167. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 午前に引き続き質疑を行ないます。小平芳平君。
  168. 小平芳平

    ○小平芳平君 まず、総理にお伺いしたいのでありますが、今回の補正予算が二千五百二十五億という史上空前の補正といわれておりますが、しかし既定経費の増額がほとんどであって、ここにすでに硬直化が目立っているわけであります。で、こうした硬直化の原因について、しばしばここでも論議されてきましたが、その最大の原因は、政府の予算編成時に圧力団体やあるいは人気とりの総花主義とか、官庁間のなわ張り争いとか、こういうことが原因になって、こうした放漫財政を続けてきたために、多額の赤字国債を発行するようになって、これが硬直化の最大の原因ではないか、このように考えますが、いかがでございますか。
  169. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 財政硬直化の原因は簡単ではございません。ただいまあげられましたものもそれぞれ硬直化の原因をなしておると、かように思います。ただ、その公債発行が唯一最大の原因ではないか、かようにただいま言われたように思いますが、必ずしも私はそうではないと思います。御承知のように公債発行に踏み切りましたのは、当時の経済情勢から見まして、どうしても不況を克服しなければならない、財政で刺激を与える、こういう意味から公債に踏み切ったと思います。したがいまして、不況は完全に克服することはできた、だから公債発行そのものはその意味においては意味があったと思います。しかしその公債発行に踏み切った結果、とかく財政というものに依存しやすいといいますか、理論的に直ちに合理性ばかりを高めるわけにいかない、そういうようなものが積み重なってただいまのような硬直性を来たした。硬直性の原因はしばしば説明しておりますように安易に財政に依存したとか、あるいは当然増、あるいは準当然増というようなものが財政のゆとりをなくした、かように思っております。それについてはただいま御指摘になりましたように、大蔵当局並びに政府自体が予算編成の重要性を十分考えなければならなかったと、そういう意味で私どもがやや甘い見方をした、こういうただいまの御批判、これは私は反省すべき事柄だ、かように思っております。いままでの予算編成に取り組む姿、それ自身でも政府自身がさらに反省し、もっとくふうしていかなければならない、かように今日考えております。ただいま申しますように、大へんくどいようですが、一つの原因、これが原因だというものはなかなかつかみにくいように思います。それぞれのものがそれぞれの影響を与えておるとかように私は理解いたします。
  170. 小平芳平

    ○小平芳平君 総理として、そういう点については、予算編成については反省すべきことがあると言われます。そこで私もただ公債発行だけが原因だと申し上げておるわけではないのです。初めて政府が国債政策をとったときに、この予算委員会でもこの財政の硬直化が、あるいはまた放漫財政に流れては大へんなことになるということはもう再三論議されたわけです。ところが、当時の大蔵大臣は不況の克服のため、あるいは歯どめをしてあるから心配はない、あるいは国債は国民の財産として残るからだいじょうぶなんだ、かえってその国民にとってはありがたいことなんだ、ということを繰り返し繰り返し説明をいたしましたが、私たちはそうした不況の克服、あるいは歯どめ、あるいは国民の財産、これについていろいろ意見があったわけですが、その後の運営、今日の結果から判断なさって、総理はどのように、当初の予期どおりの結果をもたらしていると判断なさっていらっしゃるかどうか、その点についてはいかがですか。
  171. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 公債発行に踏み切った当時の大蔵大臣の申したことはそのとおりだと思います。私はりっぱな財産であり、また不況の克服もできた。同時にまた公共投資がそれによって進められた、その効果に十分あげていると思います。しかし、いずれにいたしましても、その結果財政が膨張した、ことに一つの問題があったと思います。いままでのような高度経済成長が続いておれば、この点は安心でございますが、しかし経済の成長度も順次変わってまいりますし、また来年度のような事態、いわゆる国際収支の関係、ポンドの危機等を考えると、こういう際には一そうこの硬直性というものを痛感せざるを得ない。普通の状態で経済が成長している場合だと比較的見のがしやすい、かように思います。しかし来年の予算編成にあたっては硬直性をやはり見きわめて、これに対する対策をとって予算をつくらなければならない、かように思います。
  172. 小平芳平

    ○小平芳平君 私のお尋ねした点は、この不況の克服と、これは克服はできた、それから次に歯どめしてある、このように説明しておりましたが、その当時予想したとおり消化ができてきたかどうか、この点についてどうですか。
  173. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) いまあげられましたこの歯どめがしてあったかどうかと、これは歯どめはしてあったと、はっきり言えるわけでございます。ただいまも市中消化、建設公債に限る、これはもうはっきりした歯どめでございます。また今回の予算編成にあたりましても、在来から公債の依存度をだんだん下げてきておりますので、今度は依存度を下げるだけではいけない、さらに総額についてもこれを縮小していこうじゃないかということをただいま予算編成にあたって考えております。またこれは国民の蓄積となる、財産になる、これはそのつもりで今日も保有されており、そうしてその点ではりっぱに目的を達したと思います。だから、三つの目的から見まして、もっと強い歯どめがほしかった、こういうことは言われるかと思いますが、これは程度上の問題だと思います。私は財政当局がこの三つの原則を忘れたと、かようには思っておりません。
  174. 小平芳平

    ○小平芳平君 経済が高度成長しているときには自然増収があったと、そこで自然増収を頼りに財政が膨張してきた。ところが、その高度成長が、佐藤総理御自身もああした高度成長の行き方は考えものである、もっともっと安定成長を目ざすべきだという御意見で、さてそこで高度成長の結果から生じたひずみ是正とか、そういうような時期に、ここでもって公債を発行した。そうしますと、われわれ常識で考えても、いままで一万円なら一万円で生活をしてきたと、さて二千円ずつ毎月借金をしていく、そうなっていけば、その二千円の借金がどんどんふやしていけるならともかく、この借金は将来減らさなくちゃいけない。これは硬直化することはもう当然わかり切っていた。それを歯どめの程度の問題だと総理はおっしゃるけれども、今日の現状では、そうしたもっともっと財政に対する責任、予算編成に対する政府責任、これを追及し、明らかにされなければならない。ただ、将来反省すべき一つの材料だというような簡単な問題ではないと、このように思います。いかがでしょう。
  175. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私は、いま責任を追及される——これはもうもちろんこういう事態になってきて、私どもが健全安定成長を願っていながらその目的を達していない、そういう意味で政策的に狂いがあると、そういう意味で責任をとれと言われることもわからないことはございません。しかし、当時公債に踏み切りました一番の大きな目標は、何といっても不況を克服するにあったと思います。その不況克服ができたということ、これは国民も十分評価してよろしいことではないか、さらにあの不況が続くようだったら、これはたいへんな事態だったろうと思います。しかし、それがとまったというこの点では、私は相当に評価していただきたいと思います。しかし、その後になりまして、安定成長を願っていながらなお高度成長を現出している。ことしの予算編成にあたっては、特に中立性予算をつくって、そうして経済に刺激を与えないようにする、安定成長への基盤をつくる、こういうことをお約束してまいりました。上半期におきましては、たいへん適当な推移であったと思いますが、下半期になりまして、これはやはり過熱の様相を出しております。だから引き締めなければならない、こういうのであります。予算審議の当初におきまして、経済にはその時期時期に応じてそれぞれの対策を立ててまいりますと、こういうお話をしたとおりに、引き締めざるを得なくなった。この辺は私どもも十分考えなきゃならぬと思います。  しかして、これはことしの予算でございますが、予算全体を長期の目で見ると、ただいま御指摘になりますように、いわゆる予算硬直化の様相が出てきておる。したがいまして、こういう問題、いわゆる長期的な観点に立っての硬直化をなくする、そういう意味の努力をしなければならない。これがまあ来年度予算編成にあたりまして、われわれが問題にしておる点でございます。でありますから、ただいま御指摘になりますように、もちろんことしの経済の成長について、われわれが見たような安易な見方でなくて、非常に下期になってきびしい国際環境もできたし、また国内におきましても過熱の様相が出ている、これは厳に戒めなければならない。だが、同時に長期的観点に立ってこれからの予算を見ると、この硬直性というものを除いていく、そういう努力をしなければならない。これがまた来年の変化した国際環境に対応するゆえんでもあり、また国内経済に対応する措置でもある、私はまあかように考えて、二つ事柄が、観念的には別々のことではございますが、来年の予算編成にあたっては、これと取り組んでいくということでございます。
  176. 小平芳平

    ○小平芳平君 いまの総理の御答弁ですが、その二つのことが少し混乱しているのではないかと思う。これは不況克服は、大型予算を組み不況を克服し、経済を高度成長させるということならば、これは不況克服はできるわけですね。国債を発行し、あるいは公共土木をどんどん起こし、それはできるわけですが、総理のねらいはそうじゃなかったと思うのですね。不況克服はなぜありがたいか、これは安定成長になってこそ不況克服がありがたいのであって、ただ刺激をした、不況は克服でき、景気よくなった、ところが別の障害が出てきちゃった、これじゃありがたくないわけです。いかがでしょう。
  177. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 小平君はまあそういう意味で責められておると思います。確かにそういう点がなきにしもあらず、そこで問題になりますのは、経済安定成長をやればどういうことがいいのか、国際収支も安定し、同時にまた物価も安定するだろう、これが物価の安定を来たさなかった、こういうところにいま私どもが反省もし、努力をやはり要望されていると、かように考えておるのであります。ことしの上期においてはすべての指標が大体望ましい姿であった、ということは当時においては物価はやや安定しておりました。しかしながら下期になりましてから過熱の様相を来たし、そうして片一方では消費もなかなか堅調だし、また消費者物価ばかりでなく卸売りまでやや強めになってきた、ここらに問題があるわけであります。しかし年度を通じて物価をごらんになれば、大体私どもが約束したような数字におさまるのじゃないか、かように思います。問題は、ただいまのような状態が今日救い得ない状態である、かようには私は思わないのであります。硬直化そのものも、このまま推移すれば、これはドイツのような例になり、あるいはイギリスのような例になる、そういう轍を踏みたくないから、今日の硬直化についても対策を立てよう、かように申しておるわけであります。
  178. 小平芳平

    ○小平芳平君 ただいまの総理の御答弁は、大蔵大臣も全く御同感と思いますが、大蔵大臣にお尋ねしますことは、来年一−三月の国債発行はどの程度見込んでいらっしゃるか、また四十三年度予算で国債発行はどの程度を目標となさるおつもりか、これはいかがでしょう。
  179. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 一−三月の発行予定としましては、まだ千七百億円残っておると思います。これをどういうふうに発行するかということは、国債発行懇談会の議を経てこれをするということになっておりますので、これから相談してきめる事項でございます。  それから来年度の公債発行につきましては、ただいま総理からもお話がありましたように、公債の依存度を思い切って減らし、そればかりでなくて、市中消化という歯どめを私どもはかけておりましたが、こういう面からも来年の経済情勢を見通しまして、この消化力の範囲内にとどめる必要があるということから、額についての圧縮も考えたい、いま具体的に幾らということはまだ結論は出しておりません。
  180. 小平芳平

    ○小平芳平君 それは大蔵大臣よくわかりますが、大蔵大臣のお気持ちとしては、財政当局のお気持ちとしては、千七百億をやはり減らすことが可能か、あるいはまあ減らす方向に御検討なさるおつもりか、それが一つ。  もう一つは第一に国債は別会計にしてやっていけばいいと思うのですが、いまのように建設公債だ建設公債だといいながら、結局国としての一つの事業としてやっていきますと、どうしてもそういう結果になるのじゃないかということを感じますが、いかがでしょう。
  181. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) ただいまのところでは、国債は一切別会計にする必要はないと思います。と申しますのは、御承知のとおりに財政法によって公債を出し得る対象もきめられておりますし、公共事業費でございますが、この範囲内において国債の額も国会の承認を得てこれを発行するというたてまえになっておりますので、ほかの用途に一切これは使われていないということでございますから、別に国債を特別会計に移して掲示する必要は私はないというふうに考えております。  それから、来年一−三月の国債の発行、千七百億全額を発行するかどうかということについては、さっき申しましたようにこれから相談することでございますが、本年度御承知のように公共事業の繰り延べをやっておりますし、これに対応した国債の発行分というものをかかえておりますので、こういうものをどう処理するかという問題も残っておりますから、今後十分検討したいと思っております。
  182. 小平芳平

    ○小平芳平君 その建設公債に限っているという点については、私は先ほど申し上げたような理由から言ったわけです。  次に、この今回の補正で輸出入銀行へ五十億出す、また輸出保険特別会計へ三十億円繰り入れる、この理由はいかがでしょうか。
  183. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 保険のほうは、御承知のように、インドネシアそのほかのことから保険料支払いが多くなるという事柄でございまして、輸出入銀行への出資は、最初貸し付け規模を三千億円と予定しておりましたが、造船が非常にふえたりいろんなことから、資金が三千二百五十億円ぐらいなければいけないという状態になってきましたので、今回の補正で資金運用部の資金を二百億、産投会計から五十億というものを、二百五十億円を追加したので、ございますが、五十億円の出資の追加をやりましたということは、これは輸出入銀行の損益を維持するという立場から、もうぎりぎりのところでございます。ほんとうは百億円ぐらいの出資をしないと、経済協力そのほかで、他面この輸銀の維持というものは非常にむつかしくなっておりますが、ぎりぎりのところ五十億円を追加したということでございます。
  184. 小平芳平

    ○小平芳平君 その問題についてですが、いま経済協力その他、あるいは貿易振興というようなことも入るかと思いますが、今回のこの補正は焦げつき債権の処理であって、そうした経済協力も過去の総合処理に充てるのじゃないかと、この点についてはいかがですか。
  185. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) そういうだけではごいざませんで、非常に低い金利で運用しておるものの必要量、需要量というものが相当増加しましたので、輸銀のやはり損益に響くことが大きいということから、出資をしたということでございます。
  186. 小平芳平

    ○小平芳平君 これは政府の説明にもあるように、焦げつき債権の処理も入っているわけですね。
  187. 村上孝太郎

    政府委員村上孝太郎君) 輸銀の話と輸出保険の話と両方いま伺いましたけれども、輸銀のほうでありますれば、現在造船費その他に非常に低利の融資をいたしております。それと輸銀の資金コストのほうは、政府の出資と、それから預金部からの投融資財源の利息の追加だけでやっいる、それにまあ管理費を加えて貸し付けをいたすわけでございますが、その間に逆ざやがございますので、一定の出資額を確保しないというと、資金の貸し付けの利回りとその資金コストがバランスをしないわけでございます。そのために出資をいたしておる。そういうかっこうでございます。輸出保険のほうは、これはインドネシア及びアラブ等の焦げつき債権でございますけれども、これにつきましても、現在コンソーシアムが行なわれまして、その関係の再建の方途を各国寄り集まりましていたしておりますので、その結果リファイナンスということになりますれば、そのほうから回収金が入ってくる、こういうことになるわけであります。
  188. 小平芳平

    ○小平芳平君 とにかく硬直化と言われながら、こうした焦げつき債権の処理にそうしたお金をいま入れることについては、私たちはあまりすっきりしたものがありませんが、ちょっと時間がたちますので、次に、社会保障制度、社会保障関係の予算を今回の補正予算では減額修正しておりますが、どうしてこうしたのか。かりに例をあげますと、生活保護に必要な既定経費とか身体障害者保護費というようなものが、どうして減額されるのか。一方ではふやしながら一方では減額する、その理由はいかがですか。
  189. 村上孝太郎

    政府委員村上孝太郎君) こまかいことでございますので、私からお答えいたしますが、今回減額をいたしておりますのは、これは厚生省の中央の官庁とかあるいは地方のその関係をやっておりまする職員等の旅費、庁費、こうしたものにつきまして、今回の人事院勧告のベースアップの結果必要となりまする原資の一部を、行政機構自体も経費を節約いたしましてそれを捻出しようということでやりました一環として、そういう事務費、庁費についてやっておりますのでありまして、現実に困った方々に差し上げる事業費関係で節減をいたしておるわけではございません。ただ失業保険の繰り入れにつきましては、これは節減をうたっておりますけれども、これは月平均の受給者が減っておりまするとか、あるいは初回の受給率が現実には予算で見ましたよりも下がっておるということで、本年度の所要額としてはそれだけ要らないと、こういう見込みが立ちましたので、これを節減いたしておる、こういうかっこうでございます。
  190. 小平芳平

    ○小平芳平君 それでは、具体的に、身体障害者保護費二千四百二十六万、これは不用額となっておりますが、どうしてこれ不用になるのですか。
  191. 今村譲

    説明員(今村譲君) お答え申し上げます。  いまの不用になりましたのは、内部障害者、いわゆる結核のアフターケア施設、これが保護費でやっておりましたのが、身体障害者福祉法の改正をし、七月一日からそれを身体障害者福祉法の中に入れるということにしまして、七月一日から予算を組んでおったわけでございます、身障法のほうで。ところが、国会の審議の都合上身障法の改正が七月一日に通りませんで、実施が八月一日になりましたので、一カ月分よけいに余ったというので、その部分は減額いたしまして、それで従来生活保護でやっておりました金が二千万前後でございますが、それは生活保護費で一カ月間継続して繰り下がったということでございます。したがって、生活保護費のほうはその部分だけ支出してございます。
  192. 小平芳平

    ○小平芳平君 いままでもこの委員会でそういう質問があったわけですが、来年の予算編成にあたって、そうした硬直化あるいは不況というようなことを理由にして、社会保障関係費を削るとかいうようなことがないように、これはひとつ総理から御答弁願いたいと思いますが、社会保障関係はですね、これはぎりぎりの——福祉国家として見た場合、日本の国の社会保障制度自体が、いま内容が非常に乏しいと思うのですね。これを減らすというようなことがないようにと思いますが、いかがでしょうか。
  193. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) いわゆる弱い者いじめにならないように努力するつもりでございます。ただいまの小平さんの御意見、よく拝聴しておきます。
  194. 小平芳平

    ○小平芳平君 減額も、先ほどの法律の関係の減額はともかく、結局その減額修正した結果、保護の査定がきびしくなるとか、そういうことがないようにしていただきたいと。それからまた、具体的なこれからの施策として、これも総理が児童手当は早急につくるべきだと、これは各国の例から見ても、まあ四十三年度からでも実現したいというような趣旨の、まあそのとおりではなかったようですが、御発言、御答弁があったこともありましたが、この点については、総理、いかがでしょうか。
  195. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 児童手当についてはいろいろ検討をしております。わが国の場合は、まあ特定の低所得層といいますか、生活扶助を必要とするような方々に対する児童手当等をいままで支給しておりますが、しかし、全般的にいわゆる児童手当というものを一律に出すということは、なかなか財源もむずかしいことでございます。しかし、これらのことも含めて、ただいま検討中でございます。
  196. 小平芳平

    ○小平芳平君 それから、この身体障害者の、身障児のほうですが、そうした身体障害の子供を持っている親が、非常に、自分が死んだあとどうなるかという心配からして、子供を殺したとか、自殺したとか、こういう問題が起きていることも御承知のとおりだと思いますが、そこで、身体障害者保険というものをつくって、すでに神戸、岡山、足利、市川というような地方団体で身体障害者保険をつくっておる現状ですが、これは国がやるべきだと思うのですが、国がやらないと、保険ですから、ばらばらにあちらこちらできた場合、さあ統合するとなってもたいへんです。また、国がやれば事務費とか経費の上からも、集中的にできる。こういう点についていかがでしょうか。
  197. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 厚生大臣からお答えいたします。
  198. 園田直

    国務大臣(園田直君) 心身障害者の親が、自分が死んだあとのことを心配していることは痛切なもんでありまして、御指摘のとおりに、いろいろ人権問題に関する、生命に関する問題が起きております。したがって、ただいま神戸その他の都市で、地域に限られた年金制をつくっておりますが、これは広域的にやったほうがいろんな面で有利なことは当然でありまして、この制度を広げて国の制度にするよう、技術的な検討を命じております。
  199. 小平芳平

    ○小平芳平君 厚生大臣、これはしばらく前からの問題ですので、もう少し具体的な方法は立てておりませんですか。
  200. 園田直

    国務大臣(園田直君) いろいろ技術的な問題がありますので、いま資料は集まっておりまするから、そう長くない時期に検討は終わると思います。
  201. 小平芳平

    ○小平芳平君 次に、公務員給与についてですが、今回の公務員給与引き上げは人事院勧告に基づいてなされた。ただ、実施時期がいつも、毎年のことですが、こうしてずれていくのは非常にわれわれとしては不満でありますが、そこで、今回の給与改定にあたって、調整手当ですね、調整手当についての御説明と、それから今回の改定で、これは事務当局からでもけっこうですが、総理もよくお聞き願いたいのですが、幾ら上昇するかですね、この点について。
  202. 栗山廉平

    政府委員(栗山廉平君) 私から答えさしていただきます。  第一点の、調整手当はどういうものかという御質問でございますが、これはいまおっしゃいましたように、人事院の勧告が都市手当ということで出ているものを調整手当という名前に変えましたもので、性格は全く同じであります。大都市におきまして官民給与の格差が非常に顕著であり、また大都市とその他の地域との間におきまする物価、生計費等にもかなりの差がある。一方、現在行なわれております暫定手当というものが長い間定額で据え置かれておりまして、年々ベースアップに伴ってその比率が低下してきておるわけであります。今後さらに低下する傾向にあることは明らかでございます。こういう事情からいたしまして、近年大都市におきまする公務員の採用、維持が非常に困難になってきておるのでございます。それとともに、地域間の職員の給与の均衡上もいろいろの問題を生ずるに至っておる実情にあるのでございます。こういう点を人事院が踏まえまして、これらに対応する措置として、大都市在勤職員に暫定手当にかえて新しい手当を設けるようにという勧告がございましたので、それに応じまして、実質上、名前は変えましたが、同じ性格のものを支給するように提案いたした次第でございます。  それから、第二点の、ベースアップの額の問題でございますが、一番上の最高の額と申しますのは、御承知のように一般職の中で指定職の甲というものがございます。この指定職の甲が一般職の中で一番高い額でございますが、指定職の甲におきましては二万円の引き上げの額になっておるのでございます。最低が行政職(二)の五等級でございまするが、五等級の一号及び二号、これは八百円の増額になっております。それはすべて人事院の勧告どおりでございます。  その理由といたしますところを簡単に申し上げますと、本年の民間における階級別の給与の上昇傾向というものが、各階層を通じまして、おおむね同率の引き上げ傾向を示しておるということを勘案いたしまして、大体同率の引き上げの人事院勧告があったわけでございます。それに応じまして、今回の給与改定は上下の等級を通じまして、ほぼ同額の、同率の引き上げを原則としたものでございます。ただし、先ほど申し上げました指定職の甲につきましては、一昨年は据え置きとなっております。それからまた、昨年はほかの一般の職員が六・九%のベースアップをいたしましたのに対しまして、低率の五%と相なっておるというような事情、それから指定職でない行政職の一番上の一等級というのがございまするが、これとの均衡をはかり、職責に相応した額とする必要があるということと、民間企業役員の報酬に比較して相当低位に指定職のほうがあるということ、そういうような事情をすべて総合勘案いたしました結果、指定職の甲につきましては相当の改善の必要性があるということから、人事院の勧告が出たものでございまして、人事院の勧告が二万円となっておるわけでございます。それに従いまして、今度の俸給表の中に提案さしていただいたわけでございます。
  203. 小平芳平

    ○小平芳平君 まあその内容をいまここでやっておる時間もないし、また予算委員会でありますので、詳しく内容はお聞きいたしませんが、要するに大都市において公務員の給与が低いということ、また今回の給与改定によって上がる額が、低い人は八百円、こういう実情にあるということをまず申し上げて、次に行政改革についてお尋ねいたします。  一省庁一局削減という、これを第一歩として行政改革に着手していくという、まあこういう総理の御答弁がありましたが、それについては、私たちも決して反対したりするわけではありません。それはもう行政改革は非常に大事なことだというふうな観点からお尋ねするわけですが、やはりこの行管の長官のほうからお答え願いたいと思いますが、総理から一局削減ということを言われたですが、行管のほうでは、これをどういうように受け取って検討なさったのですか。
  204. 木村武雄

    国務大臣木村武雄君) 現在の行政組織、行政機構、行政運用、やはり政府の側から見ましても、改革したほうがよさそうでございます。そうでありまするから、国民から見ましても親しめない行政機構になっておる、信頼のできない面もたくさんあります。それだけでなくて、力強い行政機構でもない、そうですからやはり改めたほうがよろしい、それはそうだと思います。日本の在来の行政機構は、いわば国家の行政機構であって、国民行政機構ではなかったらしい。こういう時代は国民生活に結びついた行政機構であってほしいと考えておりますから、そういう観点に立って、やはり行政の大胆な改革をしなければならぬのでありますが、さてその行政改革をやろうと思いますると、いままでの歴史に徴しましてなかなか困難なようであります。そこで行政改革の主体性を政府が持つことができるやいなや、こういうことが一番重大な問題だったと考えております。そうでありまするから、佐藤内閣総理大臣が大胆に一省庁一局削減、こういうものを打ち出してみられたのであります。もちろんこれは画一的でありますし、機械的でありまするし、一方的でありまするけれども、これをやることによって行政改革のいまの内閣が主体性を確立することができた、こういう点に、非常に私は重要な意義があると、こういうように考えておりまして、それを額面どおりやることができましたから、そういう意味合いにおいて、国民のための行政改革に乗り出すことができる自信を得たと、こういうふうに私はこの問題を大きく解釈いたしております。これから本格的な行政改革に乗り出したいと考えております。その方針は今度の施政方針の演説にも総理が申し述べられましたとおり、行政の簡素化、効率化、人員減、それから経費の削減、この四つの柱を中心にいたしまして、大きな行政改革をやってみる自信を得たような気がいたしております。
  205. 小平芳平

    ○小平芳平君 やはり長官、画一的、一方的な思いつきでなくて、もう少し科学的に国民のための行政行政のまた簡素化、能率化、これが主眼でなければならないと思いますね。この点は御同感だと思います。ところで、じゃ具体的に運輸省は何を減らされたか。
  206. 木村武雄

    国務大臣木村武雄君) 観光局を廃しまして、観光部にいたしました。
  207. 小平芳平

    ○小平芳平君 そこで運輸大臣、一つ観光局を減らされたと。私たちは、まあ局を減らすことは反対だというわけじゃありませんけれども、観光行政については運輸大臣、また総理大臣どうお考えですか。
  208. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 現在の日本の国際収支の関係から考えましても、観光を大いに振興するということは非常に大事なポイントであります。ことしあたり見てみますと、外貨の収入の面からは観光だけを見ましても相当な赤字になっております。日本の現在の国際的位置あるいは観光その他から見た山水の景色、人情、文明の相違、こういうものを見ますと、もっと大きな観光収入を得ることが可能であると考えます。その点についてわれわれの努力は非常に不足しておると思います。そういう点からも大いに今後努力してまいらなければならないと思っております。
  209. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) いま中曾根君がお答えいたしましたように、一口に観光行政と申しますが、国際観光あるいは国内観光、まあ二つに分けて考えられます。それぞれがそれぞれのりっぱな目的があるのであります。したがいまして、その局は廃止いたしましたが、その中身は充実していかなければならない、これが私どものねらいでございます。
  210. 小平芳平

    ○小平芳平君 運輸大臣、その局を廃止して中身を充実するというのはどういうやり方をなさるのですか。
  211. 木村武雄

    国務大臣木村武雄君) 観光行政は細分いたしますると十一省庁にまたがっております。非常に複雑なんでありまして、これを一本化したいと考えております。そして観光行政の一元化は、閣議の決定事項になっておりまするから、この一元化の問題は早々に、来年早々からでもこの問題と取り組んで一元化したいと考えております。御承知のように、ただ単に観光行政というだけでなく、日本は平和日本になったんですから、平和の象徴としての観光日本というものもあります。世界中から見てもらいまして、喜んでもらう日本にするためにも、観光行政の一元化はどうしても必要だと存じておりまして、幸いにも観光行政は一元化することは閣議の決定事項になっておりますから、これを一元化したい考えております。
  212. 小平芳平

    ○小平芳平君 要するに、運輸省では局を減らしたけれども、一元化してこれはどっかほかへつくるわけですか。
  213. 木村武雄

    国務大臣木村武雄君) この観光行政を一元化したものをどこに置くかということはまだ決定しておりません。これをこれから協議いたしまして、最も適当な場所に置きたい、こういうように考えております。
  214. 小平芳平

    ○小平芳平君 ところで、今後局が、たとえば運輸省もそうですけれども、また防衛庁には防衛局、教育局、人事局、衛生局、これで局が、それなら人数は何人かと言えば、この局以上の部や課がほかにあるわけですね。ですから、局というのはどういう基準でどこできめるかですね。それからまたそれがはっきりしなければ、局を減らしたからといって、行政改革に着手したかどうかすら、局自体がはっきりしないわけですから、わからなくなっちゃうおそれもあると思うのですね。したがってこの局に対する長官のお考えと、それから私の申し上げますことは、佐藤総理が、確かに行政改革に着手なさることは、これはもう非常に大事なことだと申し上げているとおりですが、そこで行政の簡素化、能率化、あるいは科学的な研究の上で今後推進していかなければならないのじゃないかと思いますが、最後に総理からお答え願いたいと思います。
  215. 木村武雄

    国務大臣木村武雄君) 行政改革の問題ですが、私行政管理庁長官としてその局に立ってみまして考えましたことが一つあるのです。それは臨調答申というりっぱなものがあります。十六項目に分かれておりまして、今度取り上げた問題はその十六のうち三つ取り上げてみたんです。まだ十三残っておりまするが、その十六項目はみんなそれぞれりっぱなものなのであります。これを全部実現いたしましたならば、相当実績のあがる行政機構になろうと思いますが、ただもっとしさいに分析してみますると、大胆に言いますると、建物の中の室内装飾というような形になるのであります。本建築の設計というものではなさそうな気もするのであります。そうでありまするから、各省に向かいまして、そうして今度総理、外相が施政方針演説で述べられた四つの柱に対する答申案を求めまして、ほんとうの行政改革の一番新しい青写真のようなものをつくってみたい、そしてほんとうに簡素化して、ほんとうに能率のあがるように、ほんとうに喜ばれるような、親しまれるような、頼もしいような行政機構をつくってみたい、こういうように考えておりまするから、その局の問題も、それから部の問題も、課の問題も、基準はあまりありませんけれども、そのときに考えてみたい、こういうふうに存じておりまするが、行政は何も一党一派のものではありません、国民のものでありまするから、どうかいまだこれからりっぱな改革案をつくろうという準備のまっ最中なんでありますから、お気づきの点がありましたならばどうかおっしゃってくださいまするようにお願いを申し上げておきます。  私のこの問題と取り組みました立場を申し上げますると、全身をアンテナにしてあらゆる国民の声を聞いて、この問題とほんとうに取り組んで、そうしてりっぱな行政改革をやったという佐藤内閣の実績として残していきたい、こういう考えを持っておりまするから、どうかいろいろな点でお気づきの点がありましたならばお教えくださったならば非常に幸いであります。
  216. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいま木村国務大臣がお答えしたとおりでございます。私はただいまの一省庁一局廃止、これはもちろん形の上から見ましても、また内容的に見ましても、まだまだほめられた筋のものではございません、御指摘になりましたとおり。ただ、こういう行政官庁、組織も硬直化してきておりますので、ひとつその硬直化を打破しようと、その第一歩を踏み出した、かように考えております。したがいまして、御指摘になりましたように、今後さらに総合的に、計画的に、科学的にもこの行政機構の整備をはかっていく、同時に簡素化もその当然のこととして整備する、と同時に簡素化をはかっていく、ほんとうに国民のお役に立つようにしたい、かように考えております。
  217. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 以上をもちまして小平君の質疑は終了いたしました。     —————————————
  218. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 次に、片山武夫君の質疑を行ないます。片山君。
  219. 片山武夫

    片山武夫君 私はまず佐藤総理に質問したいと思いますが、質問の第一は、総理が東南アジア訪問をなさいました、それに関する問題であります。  総理は、国事多端なおりからみずからアジア諸国を歴訪され、相互理解と認識を深くした、これはたいへんけっこうなことだと思いますし、また御苦労さまであったと申し上げたいわけであります。これがただ独善になってはいけない、私はさよう思うわけであります。特に訪問された諸国が戦後処理の終わった国あるいは経済協力に相当関係の深い国が多かったと思うのであります。外務省の報ずるところによれば、総理はたいへんな歓迎を受けたということも報ぜられております。またたいへんな成果をあげてきたというふうにも発表されておるわけであります。総理もそういう中で各国を回られたわけであります。いろいろたくさんみやげを持ってお帰りになった、かように思うわけであります。ひとつその内容を率直にお話し願いたい、発表願いたい、かように思います。
  220. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ことしの下半期に私が韓国大統領の就任式に参列をするのをはじめといたしまして、東南アジアの諸国、大洋州までみずから訪問してそれぞれの首脳者と意見の交換をいたしました。この各国の首脳者と意見の交換をしたことは、たいへん幸いであったと思います。ただいま独善になっては困ると言われますが、確かに独善的になってはこれはいかんことでございます。しかし、アジアにある同じ国、日本が東南アジアの諸国からも正しく理解されず、また日本自身が東南アジアの国づくりについて正しい認識を持たないとしたらこれほど不幸なことはないように思います。私が出かけましてみずから親しくこれらの点を視察することができ、またその機会に日本の平和国家として進むこともよく説明をいたしまして、誤解のないようにこの点では努力したと思います。  これでどれだけの成果があったかと、これはなかなかはかりにはかけにくいものだと思いますが、しかし、日本が正しく認識された、こういうことは、今後日本の活動上経済的にも、政治的にもたいへん意義深いものではないだろうか、かように私は思います。ことに私が各国を認識したという、その点は、これは何と申しましても、私の訪問した各国がそれぞれ最近国づくりにじみちな努力を続けておる、この点が私はたいへん見のがすことのできないりっぱなことであると、かように思います。  ところでこれらの国々のそれぞれが国づくりをする、同時に、地域協力、その方向でも努力をしている、連帯感をつくりつつある、これらのことを見のがさない、先進工業国である日本の責務を果たしていくと、こういうことで日本はありたいと思います。また、そういう意味で私が歓迎されたというのではなく、日本の国力が歓迎された、日本の協力援助を求める、そういう期待が非常に大きかった。これがただいまの私が東南アジア諸国において示された歓迎行為でもあったろうと、かように思います。  ところで具体的には、しからばどういうことをしてきたか、こういうお尋ねだと思いますが、私が出かけまして日本と二国間の問題でそれぞれ懸案になっておる事項等について取り組んでまいりました。それらの解決の糸口は見つけることができたと思いますが、まだ経済援助の実質的なかたまりといいますか、両国意見の合致、そこをみるまでには至っておりません、これからの問題だと、かように私は考えております。いろいろ長くなりますから、お尋ねがあれば両国間の関係についてもさらに説明さしていただきます。
  221. 片山武夫

    片山武夫君 いま総理からお話がありましたように、私は総理がアジア諸国訪問にあたって、日本の認識を深めてもらう、そのためにどういうような内容で発言されたか、こういうことを実はお聞きしたいわけなんです。私の考えでは、日本憲法第九条によって戦力を持たない。こういうことが一つあるわけでありますが、それを、総理は、日本は平和に徹して、そうしてアジア諸国との友好を深め、平和的手段によって、すなわち、これは経済協力あるいは経済援助、こういうことによってアジアの平和と安定のために努力したいと言われたと私は推察するのでありますが、しかし、これは、これによって各国がそれぞれ日本に対するえらい信頼度といいますか、これをあなたは非常に高めたとお考えになっておるかどうか。
  222. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) いま経済協力の点についてだけお答えいたしますが、過去におきましては、しばしば経済協力、これは経済侵略ではないか、ことばを置きかえると経済侵略ではないか。日本は軍事的には他国を侵略はしないが、今度は武力ではなくて、経済で侵略するのではないか、依然として植民地政策をとっておるのではないかと、こういうような誤解、不安が過去においてはあったと思います。しかし、最近になりましては、日本は真の平和国であり、また、植民地をつくるなどのような考え方をしていないと、このことが理解されたと、かように思って、私は、その意味でたいへん各国の理解度をありがたく思っておるような次第であります。
  223. 片山武夫

    片山武夫君 たいへん総理は高く評価されておるようですが、私は、アジアの中における日本立場は非常にきびしい条件下に置かれていると思うのであります。なお、総理のその発言をアジア各国が一〇〇%真剣に受け取ったかどうか、これについても一つ疑問があります。これはなぜかと言えば、まず、国内の問題を一つとらえてみてもおわかりのように、いわゆる自衛手段、その自衛手段の一環として三次防計画が着々と進められておる。そして、これに対して自衛隊は憲法違反ではないか、あるいは、また、戦力であるとか、いろいろ国内に批判があるわけであります。こういう状態の中で、日本ですらなかなか理解し得ないような問題が、この自衛隊をめぐって、アジア諸国がそれを知らないはずはないと私は思うのです。そういう意味で、これは総理も相当努力をしておられるわけでありますけれども日本の中においてすらまだまだそういう理解が深まっていない。だから、私は、このアジア諸国が一〇〇%信用するかということについては非常に問題があると思います。特に総理が各国に行って、日本は平和に徹する、平和的手段によってアジアの安定をはかる、こういうことを言っておられるわけでありますけれども、ただ、自衛隊増強計画、これがアジア諸国に対して、はたしてこれが脅威にならないという保証があるかどうか、また、あなたはそれをどういう形で保証してきたか、こういう点について触れたかどうか、私は特にその意見の交換した内容を、もしありましたらお聞かせ願いたい。
  224. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私が訪問した先は、それぞれの最高責任者、また、それに準ずるような人たちでございます。したがいまして、私が意見を交換するその範囲においては、ただいま片山君の御指摘のようなことはなく、よく日本のあり方を理解してくれております。しかし、これは私が認識した各国の首脳者の言、それが直ちにその国の全国民の声だと、かように私が評価したら、それは間違いが起こるだろうと思います。しかし、首脳者同士として、よく私どもの行き方、私どものあり方については認識してくれておる、かように私は理解して帰ったのであります。
  225. 片山武夫

    片山武夫君 続いて、東南アジア諸国といろいろ共同声明を出されております。その中で、経済援助の問題とベトナム戦争に関する問題が取り上げられております。時間がないから、ごく簡単に申し上げますが、大別すると、ベトナム紛争解決のための声明書の内容はいろいろ二通りに分かれておると思います。中で二、三の国に対しては、平和のためにこれは当事者諸国が積極的な努力をすることを要望した、こういう表現を使っております。ある国においては、いわゆる日本と相手国、両国が平和解決のためにできる限りの努力をすべきだ、こういうことが言われておりますが、こう二通り使い分けた意味を御説明願いたい。
  226. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 二通りに使い分けした意味のお尋ねでございますが、その前に申し上げておきますが、私の東南アジアの一連の訪問、これには両国間を理解し合うことが一つの問題だし、両国間にある一つの経済的な計画、これを解決していくことも一つの問題がある。同時に、また、流動するアジアの情勢、ことにベトナム紛争を中心として、これらのところから各国の首脳者がどういう感じを持っておるか、自分たちの国の政局にどういうような影響を与えておるか、これを実はつぶさに視察してまいったのであります。各国とも、私ども同様、あるいは国が隣するという関係、あるいは、また、直接紛争に加担しておる、こういうようなそれぞれの立場がありますので、たいへんな関心を示しておる、これは私どもが想像した以上のものがございました。これは東南アジアばかりでなく、大洋州の豪州、ニュージーランドを含めてこのことが言えると思います。  そこで、各国ともひとしく希望しておりますものは、一日も早く恒久的な平和が招来すること、それを心から願っておる、これはそのとおりであります。同時に、また、この問題はアジアの問題だと、したがって、アジアの問題である限りにおいて、お互いが最もこの問題では影響を受けることもきびしいが、解決をする責任もそこにあるんではないだろうか、ましてや、ベトナムの両当事者、南北当事者そのものが一番責任があるのじゃないのかと、こういうように、それぞれの国によって表現のしかたが違うわけであります。したがいまして、いま御指摘になりましたものは、一般的のものと、また、それぞれの国によりまして、国の特殊性からの主張が出ておる。いずれにいたしましても、私は、ベトナム問題の紛争解決に積極的な意欲を示しておる、こういう意味で日本も賛成した、それが共同コミュニケで、それぞれの国においてそれぞれの国に適したような書き方がされておる、かように御了承いただきたいと思います。
  227. 片山武夫

    片山武夫君 では、続いて共同声明の内容ですが、オーストラリアにおいてはその解決策がいろいろ討議されたということが言われておる、その内容についてお聞きしたい。
  228. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 豪州、ニュージーランドは、ちょうど私が参りました際が派兵を増強した直後であります。そして、こういう際に兵隊をたくさん送り出す、そういうことについては、相手国からも、これは実は兵隊を出すのは早く恒久的な平和をこの地域に招来したいためだと、われわれは戦争激化を望むものではないのだ、こういう意味の説明がございました。
  229. 片山武夫

    片山武夫君 この東南アジアとのいろいろ共同声明の内容については、いろいろ政治的な含みがある、かように理解してよろしいと思うのですが、続いてお聞きしたいことは、沖繩返還の問題とからんで、いままで東南アジアでいろいろ、いわゆる日本は平和に徹して、そして平和的手段によってアジアの安定をはかるんだということを言われてきた。したがって、その方向は、まあ戦力を、あるいは、また、自衛力を強めるという方向ではないかと、私さように考えるわけでありますが、それと同時に、アメリカにおいでになって、そして沖繩返還、いわゆる両三年の間にめどをつけたいというあの共同声明を発する中で、いわゆる自主防衛という問題が出てまいっております。自主防衛確立が前提となって沖繩返還がされるのだと、かように説明をされておりますが、この間アメリカにおいでになったときと東南アジアを回られたときの間では、相当矛盾が私はあるやに感ずるわけでありますが、その点ひとつ明快にお答えを願いたい。
  230. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私の主張は、東南アジアだろうがアメリカだろうが日本国内だろうが、主張は変わっておりません。私は絶えず自主防衛ということを申しておりますから、もちろん憲法の範囲内——憲法は守らなければならない、また、国力、国情に応じた防衛力を持つという、これが基本的態度であります。したがいまして、この基本的態度は、どこに行きましても私の主張は変わっておりません。ただいま東南アジアやあるいはアメリカ、あるいは国内において違うんじゃないかという御批判がございますが、全然変わっておりません。また、自主防衛ということばは、これはみずからの国をみずからの手で守る、こういう気概を示せということでございます。具体的措置として、完全に自分たちの力だけでこの国を守るという、そういう大それた考え方はただいまはしておらないのであります。でありますから、自主防衛という、みずからの力でみずからの国を守る、その気概を示す、これが自主防衛の基幹であります。ただいま国力、国情に応じて防衛力を整備しておるというのが実情でございます。したがいまして、具体的な方法とすれば第三次防、これを整備することである、アメリカに行きましても、私は日本のこの態度を変えておりません。したがいまして、アメリカと別な約束は何らいたしておりません。これは何度も繰り返して申し上げたとおりであります。また、東南アジア諸国へ参りましても、日本はベトナム戦争に軍事的に介入できない、また、する意思もない、これは日本憲法から、また、その他の国内法からこれは当然のことだということで堂々と説明しておりますので、外国へ参りまして、そういう点でも私の主張を一、二した覚えはございません。
  231. 片山武夫

    片山武夫君 重ねてお伺いしますが、先ほどもちょっと質問申し上げましたけれども、お答えがなかったんですが、いわゆる日本の自衛隊そのものがアジア諸国に対して脅威にならないという保証をどういう形で総理はなされているか。
  232. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私は、アジア諸国に対しまして、日本が他国に脅威は与えない、国力、国情に応じて持つ自衛力はそういうものであるということ、同時に、また、国際紛争を武力によって解決する、そういうことは憲法で禁止されている。ここに各国も日本を信頼する根拠が実はあるのであります。この憲法九条、これが明らかに日本は戦争を放棄しておる。ただ、日本としては、みずからを守るというか、防衛だけはいたしますけれども、それにいたしましても、他国に脅威は与えない、これが本来のあり方であります。この点をよく説明したのであります。別にこれについて疑問を持って質問したような国もございません。したがって、私は積極的に説明する要はなかった、この点がよく理解されておる、かように私は思って帰って来たのであります。その例に、先ほども、軍事的な問題ばかりじゃなく、経済的にも、経済侵略というようなことはいまはだれも考えておらない。だから日本の援助を心から期待し、願っておるというお話まで実はしたわけであります。
  233. 片山武夫

    片山武夫君 総理のいまのお話によりますと、これは日本人よりもわかりがよろしかったというふうに感ずるわけであります。  続いて、総理にいま一つお伺いいたしますが、これは電気ガス税の問題、これは総理はいつも、池田総理と同じに、私はうそをつかない、このひとつ正直さを証明していただきたいと私は思うのです。それは、これはもう大衆課税で悪税だということを再三再四私も直接総理の口から聞いている。そしてそのことを三十七、八、九と、それは三年間確かに撤廃はできないけれども、一%ずつ毎年減らそう、そういう約束があったわけです。そういう態勢が確立されたんだけれども、ついにその後減税措置がとられないようになりました。もちろんこれは地方財政との関係もあっていろいろ問題があろうかと思いますが、しかし、総理はそういうことをしばしば言われておるし、それはうそをつかないということならば、これは四十一年、四十二年、この二年分、さらに三年度の会計において二年度分を軽減するかどうか、その決意をひとつ総理から私はお伺いしたい。
  234. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私は、やっぱり電気ガス税、これは悪税だといまなお思っております。しかし、なかなか地方財源も簡単でございませんので、私ども考えるようには減税が実施されておりません。こういう点については自治大臣にさらに検討をしていただく、かようにお願いをいたしておきます。
  235. 片山武夫

    片山武夫君 ちょっと理解しにくいんですが、これはいわゆる電気料金についてきて回っておりますし、これは国民は電気料だと思っている、そういうところに私は問題があると思います。だから、そういう形でなく、別に徴収することを考えるか、あるいは減税するか、この二つ一つを御返事願いたいということが一つ。  それから、大蔵大臣にちょっとお伺いしたいんですが、現在何か保険業界からいろいろ組合の共済活動について申し入れがあったように聞いておりますし、その上に立って保険審議会においてこのことが何か審議されるというような状態を私は聞いております。このいわゆる組合の共済活動というのは、これはお互いに相互扶助をしようと、こういうところから立脚したものでありまして、原因は、私は、やはり国の社会保障制度が貧弱だということと同時に、また、保険業者のこれは利潤追求、そういうところからサービスの低下、こういうことが起きているところに私は最大の原因があると思いますし、それを自衛する意味で、これは組合員一人一人がそういうふうな形で共済活動をやっておるのです。したがって、それを保険業と同一視するというのは私は問題があると思います。したがって、この労働組合のささやかな相互扶助、いわゆる共済活動、こういうものを保険業者と同じ形で規制するというのは私は間違って  いるのではないかと思いますが、ひとつ大蔵大臣  の見解をお聞きしたい。
  236. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 電気ガス税は、ただいま言われますように、電気代、あるいはガス代金と間違えられるようないわゆる徴税方法がたいへん金もかからないし、便利な税金でございます。そういうところに事業主体としては非常に魅力を感じておる。したがいまして、なかなかこの廃止が困難である。いままで三年がかりでだんだん減らしていったと、たいへんな努力であったと思います。したがいまして、今後これについてさらに実効をあげるようにするためには、さらに引き続いての努力が要る、かように考えます。ただいま御指摘になりましたように区別することができるのかどうなのか、その点もあわせて考えるように自治省で研究したいと思います。
  237. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) ただいま共済事業を行なっている団体は、御質問の労働組合のほかに農業協同組合、消費生活協同組合、農業協同組合は農林省の所管、消費生活協同組合は厚生省の所管、事業協同組合は通産省の所管、公益法人、これは各省の所管でございますが、その他任意団体等、多数にのぼっております。これらの共済事業につきましては、掛け金の算出とか支払い準備金の積み立て、資産運用と事業の運営に関する法令の規定も各省庁非常にまちまちになっておって、そうして法的の監督も全く及んでいないというものもございます。この状態に対して、審議会が、もしこのままで共済事業が大衆化して普及していってもいいかどうかということを問題にした事実はございます。したがって、特に労働組合の共済組合を問題にしたということではございません。で、この種の組合員の相互扶助の趣旨をもって行なわれている共済事業というものは、別にいまの保険業と衝突するものではないというふうに私どもは解釈しています。問題は、これが非常に規模が大きくなり、大衆化していった場合に、その掛け金をかけている大衆の利益を保護する何らかの措置は将来必要になりはしないかというような問題ははらんでいると思います。
  238. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) もう時間がありませんが。
  239. 片山武夫

    片山武夫君 ちょっといまの質問の要旨にまだ答えていない点があります。
  240. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) じゃ簡単に願います。
  241. 片山武夫

    片山武夫君 いまの大蔵大臣のお答えは、労働組合の運営している共済活動、これに対してはいま干渉する気持ちはない、こういうことになりますか。
  242. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) いや、ひとり労働組合だけでなくて、いま申し上げましたような各省の監督下にあるいろいろな機関が同じような趣旨で共済事業をやっておる。
  243. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 以上をもちまして片山君の質疑は終了いたしました。
  244. 片山武夫

    片山武夫君 ちょっと答えが理解できないのです。私の質問のお答えがピントがはずれている。
  245. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) ですから、それら全体に対していま私が申し上げたとおりでございます。
  246. 片山武夫

    片山武夫君 特にその労働組合の……。
  247. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 片山君、発言の許可を受けてから発言してください。  質疑は終わったという宣言をしたのですから、まだいろいろあるでしょうが、やっぱり規定どおりにやっていただきたいと思います。
  248. 片山武夫

    片山武夫君 じゃ、いずれ機会を見てやります。     —————————————
  249. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 増田防衛庁長官から発言を求められておりますので、この際、これを許します。増田防衛庁長官。
  250. 増田甲子七

    国務大臣増田甲子七君) 一昨々日の瀬谷委員並びに木村委員の御質問に対する私の答弁中、フルシチョフ等ソ連指導者の言を援用した毛沢東に関する部分について誤解を招く点がございました場合には、委員長において適当なる処置をとられるようお願いいたします。
  251. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) ただいまの増田防衛庁長官の発言に関しましては、委員長において速記録を調査の上、善処いたしたいと存じます。
  252. 小林武

    小林武君 ただいまそういう発言がございまして、委員長からもいま今後の処置についての御意見がございましたが、その趣旨に沿うて、なるべくこの問題を蒸し返すというような態度でなく申し上げたいと思いますが、ただいまの防衛庁長官のお話ですというと、引用文であるという、こういうお話でございました。しかしながら、私が速記録を熟読玩味いたしましたところ、これは文法上からいっても日本語の解釈としては引用文というのは木村並びに瀬谷委員のあれを片づけるわけにはちょっといかないと思うのであります。かりに引用文だといたしましても、こういう引用のしかたというものは非常に問題があるということをまずお考え願いたい。私は、単に誤解を招くというふうにお考えになっているようでございますけれども、これは大きな問題で、両国の国交上の問題はもちろん、政治、経済、ひいて申し上げるならばアジアの平和の問題にも関連することでございますから、慎重を要することだと思うわけでございます。それから私は、この問題をこのままにしておけば、この国際情勢の中で故意に挑発をかけたというようなことに受け取られるおそれも十分にある内容だと、こう考えるわけであります。したがって、これは問題は解決はいたしましたけれども、今後この種の問題については慎重な御発言があってしかるべきだということを御注意申し上げて、私の意見といたします。     —————————————
  253. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 次に、春日正一君の質疑を行ないます。春日君。
  254. 春日正一

    春日正一君 初めに、企画庁長官、六四年から六五年へかけてのあの不況から立ち直ったおもな要因ですね、これを説明してほしいのですが。
  255. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 後になってわかりましたことは、あの不況からの立ち直りの時期は、昭和四十年の十月であったわけでございます。そういう意味の御質問だと思います。それで、立ち直りの過程は、最初に、御承知のように、財政が景気振興の措置を講じました。そうして輸出がかなり上昇を始めまして、それがやがて民間の設備投資を起こし、それから在庫の増となり、それに伴って消費が上がったと、こういう形で立ち直りをいたしました。
  256. 春日正一

    春日正一君 大体そういうことだと思うのですけれども、広い意味のベトナム特需ですね、これが非常に多くなったと思います。それから東南アジアへの資本輸出、特に日韓会談以後のそれ、それから先ほど言われた赤字公債を出しての公共事業の振興、それに設備投資と、いま長官の言われた中身は大体こんなものだと理解しますが、それでいいですか。
  257. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 概してそういうことだと思っております。
  258. 春日正一

    春日正一君 四十年九月から四十二年九月までの工業生産指数、生産性の伸び率、製造業の労働者数の増加率、卸売り物価指数と消費者物価指数の上昇率、これはどういうふうになっていますか。
  259. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 四十年九月から四十二年九月ということですが、政府委員からお答えを申し上げます。
  260. 矢野智雄

    説明員(矢野智雄君) お答えいたします。  四十年九月から四十二年九月までの二カ年間におきまして、工鉱業生産が三八・二%上がっております。それから製造業の常用雇用は二・八%の増加、それから製造業の生産性指数の上昇が三四・六%であります。また、卸売り物価指数が六・七%、同じく消費者物価指数が八・八%であります。
  261. 春日正一

    春日正一君 非常に伸びている。特に卸売り物価がこの期間上がっている。そこで、東京、大阪、名古屋の取引所の一部上場の製造工業の会社二百六十社、これの確定決算を見ますと、四十一年の三月期から四十二年の九月期までの二年間、計上利益が九一%ふえておる。純利益にすれば二倍以上ふえている。だから、この期間、非常にもうけた。しかも、政府は、租税特別措置とかあるいは配当控除その他いろいろな名目で主として大資本に減税になる、こういうものを年間一兆円減免税を行なっております。そこで、大資本はもうけたのだけれども、この間、労働者の賃金、これはどうなっておるのか、労働災害はどうなっておるのか、これをお答え願いたいと思います。これは労働省のほうだと思いますが。
  262. 小川平二

    国務大臣(小川平二君) お答えいたします。  実質賃金につきましては、お尋ねの二年間において一三・九%の上昇となっております。  それから労働災害の発生の状況でございますが、ことしに入りましてから九月までの労働災害の発生状況は、死傷者二十七万二千人、二年前の四十年の同じ期間に比べまして四%強の減少でございます。死亡者が四千四十七人、同じく三%強の減少でございます。
  263. 春日正一

    春日正一君 労働災害は、私どもで調べても、政府の統計で減った数字になっているんですけれども、そのほかに、労働強化の結果、労働者の健康が非常にそこなわれておる。特に、労災と認定されないで、腰痛症とか腱鞘炎とか、その他いろいろな職業病がふえている。これは大問題になっているわけですけれども、こういうものは当然職業病として認可して手当をすべきじゃないかと思うのですが、どうですか。
  264. 小川平二

    国務大臣(小川平二君) 特殊の職業病が増加してきておる傾向は、これは事実でございます。これにつきましては、十分検討して対処していかなければならない問題だと存じております。
  265. 春日正一

    春日正一君 そこで、この期間ですね、四十年九月から四十二年の九月までの期間に、農家の現金収入、これがどのくらいふえておるか、それから離農、出かせぎの数がどうなっているか、この点を聞かしてほしいと思います。
  266. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) 第一問は何でございましたか……。
  267. 春日正一

    春日正一君 農家の現金収入が、四十年の九月より、まあ統計は九月というふうに切ってないからあれですが、それから四十二年の九月の期間、どのくらいふえているのかということですね。
  268. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) あとのほうからお答えいたします。  いまお話の離農でございますが、離農にもいろいろございまして、大体、御存じのように、第二種兼業農家で、農業という看板は掲げておっても、実際の家庭の所得は農業よりほかの所得のほうが多いものでも農業に勘定しておるものもたくさんございますので、そういうものが他産業に転換していく離農がかなりございますが、昭和三十五年以降、それ以前に比べまして、いわゆる離農は増加しておりません。大体九万戸程度で推移いたしておるわけでございます。それから農家の季節出かせぎ者につきましては、最近まで増加傾向が目立っておりましたが、その後やや減少いたしまして、四十一年においては二十三万人程度となっております。今後の見通しにつきましては、離農戸数、季節出かせぎ者とも、当面、大体近年の情勢を横ばいでいくんではないかと私どもは見ております。  農家の所得につきましては、政府委員のほうからお答え申し上げます。
  269. 森本修

    政府委員(森本修君) 農家経済の状況でございますが、農業所得と農外所得を合わせました農家の所得、これが、四十年が一戸当たり六十六万六千円、それから四十一年が七十六万円ということになっております。
  270. 春日正一

    春日正一君 比率にするとどうなりますか、パーセントは。
  271. 森本修

    政府委員(森本修君) 約一五%増でございます。
  272. 春日正一

    春日正一君 離農出かせぎの数字については、まあ出かせぎなんかは特に政府の発表と世間の発表とだいぶ違うんですけれども、これをおきまして、農家の所得も一五%程度しかふえていない。 そこで、本年度の風水害、干害による農家の被害の総額、それからその救済措置ですね、これはどうなっておるか、聞きたいと思います。
  273. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) 本年度に発生いたしました農林水産関係の被害総額は、施設の関係で約千三百五十九億円、それから農林水産関係で約千二百六十一億円、合計二千六百二十億円に達しておるわけでありまして、この対策といたしましては、先般来しばしば報道されておりますが、要約して申しますと、施設災害の復旧につきましては、すでに予備費で約六十四億九十万円を措置いたしましたほか、今回の補正予算で約二十八億七千万円を計上いたしております。その復旧の促進をはかるために万全の措置を講じておるわけでありますが、さらに、このほかに、国庫債務負担行為を五十七億一千万円計上いたしまして復旧の促進をはかることといたしております。  それからまた、被害の農林漁業者等の営農資金の確保のためには、天災融資法の発動を現在まで百四十五億七千万円の融資措置を講じましたほかに、例の自作農維持資金として約七十一億八千万円の融資を追加実施するように措置をいたしました。それから御存じの再保険の概算払い、及び共済金の早期支払いの措置は、食糧対策とあわせまして低品位の米の買い入れ、それから災害応急米の売却等の臨時の措置を講じました次第でありますが、農地等の災害防止のために積極的に各種土木改良事業等を推進いたすと同時に、今回の経過にかんがみまして、治山事業等について予防措置をできるだけ講じてまいろうといたして、災害地に対してそういうことの計画を立て、努力を進めておるわけであります。
  274. 春日正一

    春日正一君 農家の個人の被害に対する救済というものは、私ども地方へ行って見ても非常に不十分で、その点が訴えられておりますけれども、特に羽越水害での被災農民の生活資金、これはまあ工賃だけにしか頼れないのに、工賃が一日千円、それもまだ査定が終わらない。雪が降ってしまった。だから、どうにもしようがないので、大都市に出かせぎに出てしまって、被災地では人手不足を訴えておるというようなことがテレビでも放送されておりますけれども、こういうことを一体どうするつもりなのか、それでいいのか、この点をお聞かせ願いたいと思います。
  275. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) 羽越の災害につきましては、災害発生当時も私どももじかに視察をいたしました。ここでは、御存じのように、まあ山形県よりも新潟県のほうが多いわけでありますが、多く災害を受けました地方の住民の多くは、ふだんでもやっぱり出かせぎに行っておいでになる方が多い家庭でありまして、ただいまは、よそへ出ていかなくても、あの復旧事業にもうすぐ目の前に大きな土木事業が施行されておるわけでありまして、そういうところに幾らでも仕事があって現金収入を得られる道があるのでありまして、政府側及びその工事担当者のほうでは、その地方の労働力を吸収するためにいろいろ骨を折っておるわけでありますが、あの地方の人々は多く定期的に他に出かせぎにおいでになる予約を持っておいでになるような方が非常に多いので、現在あそこで復旧の土木工事をいたしておるところでも労働力の吸収に骨を折っておるというような実情でございます。ただいま千円云々というお話がありましたけれども、私ども調査によりますというと、あの復旧工事に出てまいる者はかなりの給料をもらっておるわけでありますが、全般としていま羽越の災害復旧につきましては、新潟県知事をはじめ県当局の方々は、あの復旧及び先ほど申しました融資等について、政府はいち早く手をつけ、しかも離農資金の査定などが、新潟県は県の都合でやや現在おくれてはおりますけれども、非常に進捗いたしておることを住民も感謝をいたしておる次第でありまして、私どもといたしましては、いまただ残っておりますのは、集団的に移住をしてまいらなければならない村もございまして、そういうことについて、ややまだ目的どおりには達成されておりませんけれども、この復旧については、これはひとり農林省だけではございませんで、政府それぞれの関係省が、全力をあげてその復旧と同時に、その被災者たちの現金収入を得る道について、県当局と打ち合わせまして全力をあげてやっておるわけであります。
  276. 春日正一

    春日正一君 いま私が言ったようなことがテレビなんかで報道されて、そこで地元の人が言っておる。地元じゃ千円だ、都会へ出れば二千円だということ、だからその点は根拠のないことじゃないと思いますよ。  それからこの期間の中小企業の倒産の件数です。これの趨向ですね、ふえていっておる。それをお聞かせ願いたいのですが。
  277. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 今年の秋ぐらいからずっと倒産の率がふえておりまして、十一月は最高の数に達したわけであります。累計十一月の末までで五千六百十九に達しました。
  278. 春日正一

    春日正一君 景気が過熱するという状態で倒産が引き続いてふえてきておった。そこでこの期間、交通事故の発生状況、その特徴を聞かせてほしいのですが。
  279. 赤澤正道

    国務大臣赤澤正道君) 交通事故の最近の特徴を申しますと、毎年、上期より下期のほうが発生の傾向は非常に多くなっております。この期間の特徴といたしましては、一つは、交通事故の発生が、都市よりだんだん地方の郡部のほうへ移行してまいっておるようでございます。それからその次に、自家用車による事故が非常に多くなっている。自動車交通の増加に伴って、自動車同士の事故が多くなってきております。その次は、歩行者の場合、死者は依然として全体の三〇%強を占めておりますけれども、安全施設の整備などに伴って、横断歩道歩行中の事故、死者は減少している傾向にあります。最近は都市部において、うしろからの追突事故が非常に多くなっております。いま一つ、景気変動の面から見ますと、国民総生産の対前年増加率が高い年は、やはりそれに比例して交通事故が多くなっているという現象が見られます。
  280. 春日正一

    春日正一君 大体以上大ざっぱに聞いたところでも、佐藤総理になってからの経済政策のもとで、少数の大資本家が急激に資本を集積して富み栄えていったけれども、労働者や農民や勤労市民、中小企業家などの生活と経営というものの改善というものはあまりやられていない。物価の値上がり、労働強化、倒産、各種の災害、公害、交通地獄、住宅難というような形で、全体ひっくるめて見れば、状況は悪くなっている、こういうことになるのじゃないかと思うのですけれども総理どうですか、この点。
  281. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) どうも私の見るところではそうではございませんで、この間の設備投資の伸びなどを見ておりましても、予想以上に中小企業の伸びが多いわけでございます。これは、大企業の資金需要がなかったせいもございますけれども、それから製造業に対して非製造業の設備の伸びが大きいというようなこともございます。それから雇用は、御承知のように雇用指数が非常に上がってまいりました。それから都会と農家との生活——生計費調査を見ましても、ことに最近は農家の生活内容の上昇のほうがはるかに大きいわけでございます。もちろんこの間、公害でありますとか交通事故でありますとか、そういうことは一般の人間の活動、経済活動に伴って大きくなってまいりましたし、また倒産についても、御指摘のようなことがございます。しかし倒産の内容を見ますと、やはりこの倒産そのもののほぼ半数は、土建業といわれるものであります。しかも創業年次で見ますと、大体五年以内に創業したものが倒産をしておるということであって、労務上の問題は起こっておりませんから、概して申せば、やはり創業したときの心がまえに多少不十分なところがあった、こういったようなものに倒産が多いように思うわけでございます。概して申しますと、どうも春日委員の仰せられましたようには私ども考えておりません。
  282. 春日正一

    春日正一君 まあ非常な過熱するほどの好況の時期に倒産がふえて、つまり弱い者が踏みつぶされていっている、これは間違いないと思います。  そこで宮澤長官、例の宮澤構想をお出しになったときに、財政の硬直化を、これは当然いまの経済の困難な問題とからんでいると思うのですけれども、出されたのですけれども、そこのところをもう一度大筋を説明してほしいのですが。
  283. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) しばしば申し上げておりますので簡単に申し上げますが、要するに、現在の行財政をささえておりますいろいろな慣行であるとか制度であるとかいうものが、戦後二十年たちましてわが国も急速に変貌しておりますから、このままではなかなか通用しにくくなっておる。しかも新しい時代は新しい施策を必要とするわけでございます。そのためには、古い要らなくなったものはやはり切り捨てていく必要がある。同時に、行政をになっておる、私自身を含めまして、関係者の考え方にも、やはりこの際、考え方を新たにする必要はないだろうか、こういうことを申しておるわけでございます。
  284. 春日正一

    春日正一君 そこで、まあ硬直化の対策の対象として何項目かあげられておるのですけれども、主として、たとえば地方交付税だとか、公務員給与あるいは食管会計あるいは生活保護、その他そういったようなものが対象になっている。ここは非常に問題だと思うのですけれども、こういうものは、私いま言ったような、ずっとここで答弁されたような事実、この政治に基づいて経済が大きくなっていく中で、いろいろな生活保護の問題、いろいろな問題が出てきて、それを解決しなければならぬというので、当然やらなければならぬ。つまり経済の発展の中で生み出されてきた結果を処理していく。こういうものは消極的な要因だと思いますよ。むしろ財政の中で積極的な要因として困難をつくり出したものは、たとえば三次防だとか、あるいは対外援助が急速にふえるとか、道路整備五カ年計画の組みかえをやって予算をふやしたとかいうようなものが、財政の中で大きな比重を占めてきた。しかも佐藤総理は、今度向こうへ行って、また海外援助だとかあるいは防衛力だとか、そういったようなもの、ドル防衛だとか、新しいものを引き受けてこられた。こういうものこそ要因なんで、これを手をつけずに、国民生活の苦しいところを一そう攻めるというような考え方は逆じゃないか。まさに国民の一番苦しいところへさらに犠牲を押しつけながら、新しい共同声明で出されたような需要をまかなっていこうということになるのじゃないか。そこのところどうなんですか。
  285. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 私どもが財政硬直化を指摘いたしまして、ねらっておりますものは、やはりそういう問題が解決されましたあと、わが国が福祉国家としての理想を求めていくわけでございますから、そのためには、そういう貧しい人人、不満足な人々に対する政府の手を差し伸べていかなければなりませんが、しかしその場合でも、やはり国民からお預かりした税金というものは、できるだけ効率的に使っていかなければならないと思います。国民からまたそういう信頼を得て初めて国民にもそういうものを、福祉国家らしい、よけいな、いまよりあるいは重くなるかもしれませんが、御負担もお願いしなければなりませんが、そういう金を、国民の税金を効率的に使うということを、この際、硬直化を打破することによってそういう基盤を築きたい、こう思っておるわけでございます。
  286. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 春日君、時間がありませんから簡単に願います。
  287. 春日正一

    春日正一君 効率化という議論に入ると時間がありませんから、結論を私言いますけれども、こういうことじゃないですか。池田内閣以来のことはここでおきますわ。佐藤総理になってからでも、あの三十九年、四十年にかけての不況、これは高度成長政策の矛盾のあらわれだと、私はそのときにそう言っておいた。それを打開するということでこの赤字公債を発行したり、いろいろなさっきここで出たような措置をとって、それで景気を持ち返したのはいいけれども、それがわずかな期間ですぐ過熱、そうして国際収支が非常に悪くなって、赤字が増大した。だから引き締めをやらなきゃならぬということは、やっぱり経済政策が右に左にゆれている、日本の経済が。そういう意味では佐藤内閣の経済政策というものが、私どもが人民を犠牲にすると、その面だけで言っているだけでなくて、そのもの自体がやはりうまくいっていない、不安定なものだということを証明するものだと思いますよ。だから、私どもいままでの予算の討議でも、人民の生活の向上、国内での健全な消費にささえられた安定した経済を築いていかなきゃならぬし、そのためには自主独立、そういう立場で平和的に発展させていくということを主張してきたけれども、やはりここでの問題はそこのけじめだ。その点では宮澤構想その他のあれを見ても、この矛盾を打開するために、さらにより多くの犠牲を人民に負わせて打開しようという方向をとっている、これははっきり言えると思う。ここを総理が真剣に考えるならば、切り変えて、ほんとうに人民の生活がよくなっていく、多数のものをよくしていくという立場での経済の方向をとるべきだと、このことを私は切言して私の質問を終わりたいと思います。答弁いらぬです。
  288. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 以上をもちまして春日君の質疑は終了いたしました。     —————————————
  289. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 次に、石本茂君の質疑を行ないます。石本君。
  290. 石本茂

    ○石本茂君 初めに佐藤総理大臣にお伺いいたしますが、わが国の経済が非常に成長したといわれておりますが、これはすなわち国力がついたというふうに理解してよろしいのでございましょうか。
  291. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) そのとおり私は考えております、国力がついた。それを数字的に見ましし、国民所得の増加、国の生産の増加、これは数字の上でも出ております。また、個人所得の頭割りにいたしましても非常に伸びておる、これは国力の増加だと思います。
  292. 石本茂

    ○石本茂君 そこでお尋ねすることになりますのは、戦後二十年福祉国家建設ということが看板になりまして、この方面にも非常な努力を払ってこられたことは承知をしているのでございますが、現実にいまの社会保障政策の中の事実に目を向けてみますと、なるほど大きな看板が幾つも並んでおりますけれども、中身になりますと、たいへんお粗末な状態もございます。一方、国家財政の配分等に目を向けてみますと、国民所得の五・五%がやっと医療保障政策に向けられているというこの事実に対しまして、総理はいかようにお考えでございますか、お伺いいたします。
  293. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) いまちょっと聞き漏らしたのですが、五・……。
  294. 石本茂

    ○石本茂君 国民所得の五・五%と申しました。
  295. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私どもこれを一般会計支出の面から見まして、大きな比重を占めておるのは地方交付税交付金の一八%、こういうのを別にすると、社会保障費は一五%を占めておる。また、文教・科学振興費は一三%、公共事業費が二〇%、防衛費が八%、こういうようなものが大きいと思っております。したがいまして、いま国民所得全体からの見方でございましょうが、一般会計歳出に占むる各費目の割合、これでひとつ御判断をいただきたいと思います。
  296. 石本茂

    ○石本茂君 諸外国、特に先進国を見ますと、わが国よりははるかに社会福祉、社会保障政策の面に相当額のものが払われておりますし、西ドイツ等を見ましても一九%という大きなものがやはり充当されております。私はここで特に総理にお願いしておきたいと思いますのは、大きな勢力によります圧迫が、弱い者の上にかかってまいりませんことを切にお願い申し上げたいと思うのでございますが、いま総理の御説明を聞いておりまして、そうではないんだというふうに私なりに御確認をしたのでございますが、はたしてほんとうにそうでございましょうか。
  297. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) わが国の社会保障費が一般会計支出に占むる割合、これは必ずしも低い状態ではございません。しかし、中身から見ますると、全体として日本行政水準が低いということにもなりましょう。したがいまして、社会保障の各部門においてさらに充実を必要とする。こういうことはしばしばいわれておるとおりでございます。私もさようにも考えます。同時にまた、こういう点に——ちょうど来年はむずかしい時期になっております。予算編成たいへん困難だと。こういう際にも、特に弱い者いじめにならないように、特に予算編成では注意してまいりたい、かように思っております。
  298. 石本茂

    ○石本茂君 仄聞するところでございますが、財政硬直化をめぐりまして、来年度予算の中では特に生活保護等の非常に問題になっておりますみじめで弱い者に、何かしわがきそうだということを聞いていますが、絶対こんなことはございませんでしょうか、もう一度お伺いします。
  299. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) そういうことにならないように、そういう批判を受けないように最善を尽くしたいと思っております。
  300. 石本茂

    ○石本茂君 そこで、次に厚生大臣に幾つかお伺いしたいと思いますが、大臣は御就任の際にも申しておられましたけれども、医療保険制度の抜本的改正にあたりまして、中身の濃いものにしたいという御見解をお持ちのようでございますが、その概略、骨子でけっこうでございますが、どのようなところに濃い中身とおっしゃっておりますのか、お伺いしたいと思います。
  301. 園田直

    国務大臣(園田直君) 抜本対策は十一月に厚生省の事務当局の試みの案を発表いたしております。と申しますのは、これはさらに各方面の御意見を聞いた上で、各関係団体の意見を聞いた上で、さらに検討して一つの案として、その上で政府部内の調整をはかって、明年中に提案したい、こういう考え方でありまするので、その中で、先般来から申しておりますことは、高額所得者と低額所得者の取り扱いをどういうふうにするか、こういう点は特に考えていかなければならぬという程度であって、ただいまの段階では、内容を具体的に申し上げる段階ではございません。  なお、これの運びといたしましては、御案内のとおりに、保険関係は、審議会あるいは協議会が各方面に分かれております。したがいまして、これをこのまま各方面に意見を分けて聞いて、それで各方面の意見を聞くことにしたほうがいいのか、あるいは、保険を一緒にする考えはありませんが、医療保険というものをまとめて意見を聞く審議会を別につくったがいいのか、あるいはつくるとすればどうやったらいいのか、いろいろ案がございまするから、それぞれの案について、いまのままであったがいいか、あるいは別につくったがいいか、こういうことも含めて早急に検討せよ、こういうことで明年中に提出するということをめどに準備中でございます。
  302. 石本茂

    ○石本茂君 先般、特例法が出まして、健康保険の問題で出まして、結局患者さん自身の自己負担がふえるような特例法が出たのでございますが、その結果、もう幾つかの問題も出ておりますので、ぜひそういうことのありませんように、自己負担を増額するというような改正方になりませんことを特にお願いをしたいのでございます。  次にお伺いしたいと思っておりますのは、僻地医療と、そして医療従事者の不足対策でございますが、このことにつきまして、大臣どのような御見解をお持ちか、お尋ねしておきます。
  303. 園田直

    国務大臣(園田直君) 僻地の医療については、皆保険が実施されております今日、医療機会均等の立場からいっても、早急に対策を講じなければなりませんが、実情としては、まだ相当数なお医者さんがいない地域がございます。したがいまして、三十一年度以降、政府としては、急速に僻地の診療所あるいは巡回車、その他の方法を講じて整備をいたしておりますが、いまなお十分ではございませんので、早急に対策を講じたいと思っております。  特に考えますることは、りっぱな僻地の診療所をつくりましても、そこにお医者さんや看護婦さん——まあ看護婦さんはまだでありますが、お医者さんが居つかない。これは環境の不良や子供の教育の不便、その他のことがございます。したがいまして、これは今後はもう少し検討して、巡回車とか、あるいは患者を運ぶ車とか、そういう機動性を付与して、絶えずいつでも動けるようにするほうに重点を置いたらいいのではないかという検討をいたしておりまするが、いずれの方法をとるにいたしましても、まず整備をしなければならないのは、御指摘のお医者さんと看護婦の数の充足であります。お医者さんにつきましては、三十六年以降、文部省にもお願いをして、逐次ふえてまいりまして、四十二年度には、千名の増加を見ておりますが、なおまだ不十分であります。看護婦さんの制度、准看護婦さんの制度等につきましても、国家の修学資金の補助あるいは修学の施設等を整備してまいりまして、毎年一万人以上の修業者を見るに至りましたが、実質においては御案内のとおりでございます。したがいまして、これは看護婦さんの待遇改善の問題等も関連しておりまするので、そういう点も考慮しつつ制度を充実をし、増加を急ぐとともに、修業されて資格を持ちながら職につかないで遊んでおられる方もありますから、こういう方々の就職もお願いできるように、これは待遇等の問題もありますから、からみ合わしてて早急に充当したいと考えております。
  304. 石本茂

    ○石本茂君 いま申されましたことにつきましては、代々の大臣にも、前回の大臣にもその前の大臣にもお聞きいたしまして、同じ回答をいただきました。で、もういま対策をするということではございませんで、僻地に参りますと、医師を獲得しますためには、その市町村財政の全部をなげうちましても、なおかつ医師の来手がないというこの現状でございますし、巡回とおっしゃいましても、あるいはまた、そのための巡回車その他の云云とおっしゃいますが、道路もろくについておりませんような実態もございますので、そういうことはこれからの対策ではございませんで、もうすでにあると私は思ってお伺いしたのでございますが、どうか新大臣、前をお向きくださいまして、一日も早く僻地の人々が救われますように、実際の行政をしていただきますことをお願いしたいと思います。  それからもう一つ申されました看護者——医師を含めてでございますが、医療従事者の待遇が非常に悪いということにつきましては、ただその働いておる場所だけのこれは責任ではございませんので、国家が一体どうされようとしておりますのか、もし具体策がございましたら、一つでけっこうですから、お伺いできませんでございましょうか。
  305. 若松栄一

    政府委員(若松栄一君) 看護婦の不足がすでに数カ年間続いておりまして、慢性的な欠乏状態になっております。このために、医療機関がむしろ病棟閉鎖をするというような事態も起こっておりますが、この看護婦養成のための施設の拡充、特に、いままでは補助金等も非常に少ないというようなことから、逆に行政の足を引っぱるというような事態もございましたので、そこら辺の大幅な改善をはかる。同時に、看護婦、助産婦その他医療関係者の待遇改善につきましても、人事院その他と折衝をいたしまして、このような人手不足の時代ではございますけれども、特に欠乏しておりますこの職種への導入をはかりたいと考えております。
  306. 石本茂

    ○石本茂君 もう一つつけ加えたいのですが、医師になりたい人、看護者になりたい人は現在一ぱいいるのでございます。それなのになれないような仕組みをつくってあるところに、私は国家の責任があると思いますので、どうかこの点お考えいただきたいと存じます。  続きましてお伺いいたしたいのは、この保育所の問題でございますが、三歳児問題がずいぶんやかましくいわれておりますにもかかわりませず、ほとんど三歳児が入りたいとしても、保育所に入ることもできませんし、もちろん教育法の中の幼稚園等には入れませんので、しかもこの実態を見ますと、そこに最も重要な役割りをする保母が足りない、非常な不足をしております。そうしてこの人方の待遇はものすごく悪うございますが、一体これをどのように措置されようとしておりますのか、お尋をいたします。
  307. 園田直

    国務大臣(園田直君) おかあさんが外に働きに行かれる機会がどんどんふえておりまして、保育所が非常に不足であります。しかも、その保育所が、定員が六十名になっておると思いますが、その関係上、無認可の保育所が相当あちらこちらに使われておる。これは、その無認可の保育所をとがめることよりも、むしろ各所に保育所を設置しなければ、おかあさん方がたくさん働きに行かれるのに不便であるという点から、明年度思い切って保育所をふやすように考えております。なおまた、保育所の中の予算が、実際に規定されているものよりもなかなか手薄であるという実情もよく検討してわかっておりますので、この点も今後指導していきたいと考えております。  それからなお、保育所の時間について、近ごろ各所から意見が出ておりますが、ただいまの現行法や、その他の予算の関係上からして、たとえば温泉地の付近であるとか、あるいは夜の夜勤につかれる方とか、こういう方々のためには、事務当局に命じてできるだけ現行法で便宜をはかれというわけで、時間の延長、十一時ごろまでは願い出のあったところは、実施を調査をして、必要であれば許可をいたしておりますが、ただ二十四時間制の問題が相当出ております。この問題は、私は事務当局には、今後は非常にふえられるだろう、あるいはまた、二十四時間の保育所をつくると、これは夜働かれる方々のためだというので非難を受けるかもわからぬが、たとえどのような職業であっても、子供と母親の場合には、同一に母親と子供である。それからまた、普通の職業につかれる方もどんどんふえてまいるから、何とか二十四時間のあれができるように検討しろと言っておりまするが、これはなかなか事務的よりもやはりもっと検討すべき問題があるような気がいたします。たとえば心理学者の意見等を聞きますと、毎晩子供を預けてちょうど寝入った時期にお母さんがそれをもらって起こして帰る、あるいは体をゆらして帰るということを毎日毎晩続けておったら子供の精神の発育、健康の発育には非常に悪いというようなこともあります。さすれば、そういうもののためには特別の設備とか保育所をつくらなければならぬなど技術的な問題もたくさんございまするから、その御要望は十分わかりつつそららの方向に向かって善処したいと考えております。
  308. 石本茂

    ○石本茂君 ただいま二十四時間保育を含めたお話がございましたけれども、私どもやはり働く婦人の立場でございますと、深夜勤務をどうしてもしなければならない医療従事者がおるということをお忘れになっているんじゃなかろうかと思うんです。と申しますのは、先般厚生省が二十四時間保育は子供のために好ましくないということで禁止したいという意見が発表されまして、実は私ども非常にふんまんやる方ない気持ちを持ったのでございますが、医療行政の中枢であります厚生省当局がその医療に従事する婦人労働者である看護婦等の業務を阻害することを目的とされているのかどうか、非常にアンバランスな考え方に実は困惑を覚えているわけでございます。が、いま申されましたので少し胸をなでおろしましたけれども、夜働く婦人というのは必ずしも不健全労働者ではございませんで、人間の生命を守るためにこそ働いておる婦人労働者もおるのでございますから、二十四時間子供を預けっぱなしにする母親もおりませんし、夜中預けたいと思っておりませんが、預けざるを得ない現在の世相でございますこともお考え下さいまして、一方にだけよいというような行政は絶対になさいませんようなことをお願いしたいと思うわけでございますが、二十四時間保育でやっぱりいけませんのでございましょうか。
  309. 園田直

    国務大臣(園田直君) いろんな技術上の問題から二十四時間制はいけないと言っておったかもわかりませんが、私が就任いたしましてからその方針は切りかえて、二十四時間制を実施する目的を持ってそちらの方向に検討してくれと頼んでありますし、事務当局も納得をしてその方面の研究をいたしておりますから、この点はお確かめを願えばけっこうでございます。
  310. 石本茂

    ○石本茂君 たいへん安心いたしました。どうかよろしく御検討方をお願いしたいと思います。  次に、続きましてこの保母の不足対策でございますが、これはどのようにお考えですか。保母さんの不足対策。
  311. 園田直

    国務大臣(園田直君) 保母さんは御承知のとおりに、看護婦さんとはまた違った職務上非常に複雑な問題等もございまして、この人手不足には非常に苦慮しておるところであって、心身障害者などの業務に関係しておる者あるいは協会の関係の人々は、今後どうやって、この専門的な知識を必要とするし、非常に複雑である保母というものを育成していくのか、こういうことをしばしば私のところにも言ってきておられます。これはやはり保母育成の施設とか整備とか方針等にいままで問題があったのであって、保母などをきらうような風潮ではない。というのは、各大学の社会科などにいって連絡をとってみますると、若い学生やあるいはお嬢さんで、非常にりっぱな家庭の人々が進んで社会に奉仕するために保母になりたいなどという数は相当多うございます。そこで、こういう若い人のよさというものに目をつけつつ養成の整備あるいは待遇等を考えてまいりますると、その方針さえよければ私は保母さんの不足には心配しない、こういうように考えておりまして、その方向に向かって検討し、整備していくつもりであります。
  312. 石本茂

    ○石本茂君 続きまして、もう一つ二つ聞きたいのですが、実は児童手当の伴でございまして、四十三年度にはつけたいということを前大臣おっしゃいましたけれども、聞くところによりますと、これは見送りになるということですが、一体いつになりましたら実施されますのかお尋ねいたします。
  313. 園田直

    国務大臣(園田直君) この問題も毎回同じだとお叱りを受けるかもわかりませんが、前任者が四十三年度をめどにしてやりたいと委員会で申されたそうでありますが、ただいまの現状は、児童手当懇談会で具体的な構想を審議しておる段階でありまして、その結論の出次第早急に準備する所存でございます。
  314. 石本茂

    ○石本茂君 次に、経済企画庁長官にお尋ねしたいのですが、現在の物価高、特に直接生活に続いておりますどころの食料品、特に生鮮食料品、野菜、あるいは魚が非常な値上がりでございまして、家計を預ります主婦は毎日頭を痛くしているのが現状でございます。特に賃金が上がったから物価が上がったとときどき言われますけれども、そうじゃございませんで、物価が上がってから賃金が上がっているように私ども現実の生活の中で受けとめておりますけれども、この辺についていかがな御見解をお持ちになっていらっしゃいましょうか。
  315. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) それはいずれともはっきり申し上げられないことでございます。統計的に見ますと、消費者物価の上昇よりは平均賃金率の上がりのほうが大きい場合が多いのでございますから常に肯定的には申し上げられませんが、いわゆる五分位層の下位におられるような人々にとってはそういう実感がおありかもしれないと思います。ただ念のために申し上げますが、五分位層の下位におられる人というのは実は固定的な人ではございませんで、そのときどきの統計でたまたまそういう地位に立った人がそのときにその下位にあるということで、そういう固定的な層があるわけではございません。
  316. 石本茂

    ○石本茂君 実際の生活の場におりまして、毎日の食膳をどのように管理をしようかということで非常な苦しみをしております。全部が高所得者ではございませんので、低所得者もおりますので、どうかこの面について一日も早く物価の安定策をおとりくださいますことをお願いしたいと思います。  続きまして、もう一点でございますが、これは行政管理庁長官にお尋ねしたいのでございますけれども行政の改革をめぐりまして向こう三年間に公務員の定員を約五%縮小したいという意見が出ております。この際に、一般公務員の中にも現業職員がおりますので、たとえば病院等に働きます医師、看護婦、あるいは郵政の業務に従事する者もそうですが、この者につきましても同じように一律に扱いまする予定なのでしょうが、お伺いいたします。
  317. 木村武雄

    国務大臣木村武雄君) 佐藤内閣の二本の柱の一つが人間の尊重、非常に抽象的ではありますが、私なりに解釈いたしますと三つの要素を含んでおると思います。一つは生命の尊重、一つは人権の尊重、一つは人格の尊重だ、こう思いまするが、その三つの中で優劣をつけるわけにはまいりませんけれども、やっぱり人命の尊重が一番大切なのじゃないだろうか。その人命を預っておいでになりまする看護婦さんとかお医者様に対するこちらのものの考え方なんですが、もちろん一般のワクの中で扱ってはおりますけれども、やぼな考えは少しも持っておりません。必要の場合には必要の限度に応じて臨機応変の処置をするだけのやさしい気持ちは十分に持っておりまするから、どうかそれはお含みおきくださいまして、なお石本さんからも現状に立っておいでになります看護婦さんの方々に、政府はこういう気持ちを持っておるのだということを十分お伝えくださいまして、どうか病人だけは大切に取り扱ってくださるように私からもお願い申し上げます。
  318. 石本茂

    ○石本茂君 一言だけお願いいたします。非常にやさしいおことばをいただきまして心から感謝しますが、実は現在までに欠員の不補充の問題をめぐりまして、決してそういうふうな扱いを受けておりませんでした。看護婦が二人やめなければ一人採用できないというきびしい現実の中でいま仕事をしてまいりましたので、私はそういうやさしいおことばにはだまされてはならぬと実は思っておるのでございますが、どうかお願いいたします。
  319. 木村武雄

    国務大臣木村武雄君) いままではいままで、これからはこれからでございます。
  320. 石本茂

    ○石本茂君 どうもありがとうございました。どうかよろしくお願いいたします。
  321. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 以上をもちまして石本君の質疑は終了いたしました。     —————————————
  322. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) この際、委員の異動について御報告いたします。  先刻、西郷吉之助君、稲葉誠一君、春日正一君が委員を辞任され、その補欠として古池信三君、野上元君、岩間正男君が選任されました。     —————————————
  323. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 以上をもちまして、質疑通告者の発言は全部終了いたしました。よって、補正予算三案の質疑は終局したものと認めます。     —————————————
  324. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) それでは、これより三案の討論に入ります。通告がございますので、順次発言を許します。発言者は、賛否を明らかにしてお述べを願います。  附帯決議案につきましても、討論中にお述べを願います。瀬谷英行君。
  325. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 私は、日本社会党を代表して、昭和四十二年度補正予算三案に対して、反対の態度を明らかにするものであります。  いま日本の経済はきわめて深刻な事態に直面いたしております。その原因としては、政府が経済の見通しを誤り、放漫な財政の運営を続けてきたことを第一にあげなければなりません。今日までの無計画な設備投資の行き過ぎは、政府の予想をすらはるかに上回り、七兆二千億に達し、国際収支には大幅な赤字が見込まれるに至ったのであります。  国民は、とどまるところを知らない物価の上昇に苦しみ、かつ悩まされ、貨幣価値の下落を苦々しい思いで見送るほかにすべがないのであります。年度を通じましての物価の上昇率が、たとえ政府の見込みどおり四・五%におさまるとしても、昨今における急激な物価の上昇と、すでに予想される各種公共料金、消費者米価等の値上げ攻勢によって、物価の上昇傾向は来年度に引き継がれていくことはもはや明らかであります。  この間、政府は景気調整と称して、国債発行の減額、公定歩合の引き上げ、さらには三千億に及ぶ公共事業費の繰り延べ等によって当面を糊塗しようといたしたようでありますが、さしたる効果を期待することもできず、経済の高度成長というかけ声とはうらはらに、中小企業、零細企業の倒産が相次いでおります。  政府に為政者としての思いやりと一片の良心があるならば、率直に見通しの誤りを認め、国民にその不明を謝し、深く政治責任を痛感しなければならないところであります。  過般のポンド切り下げは、かつて世界に太陽の没するところなしとうたわれた大英帝国にも、時代の波は容赦のないことを知らしめました。本国会における予算審議において、ポンド切り下げに関連して、ドルの将来に対する懸念と質疑が繰り返されたのはけだし当然であろうと思うのであります。しかしながら政府答弁よりうかがわれることは、相も変わらぬドル盲信であります。  わが国の外貨準備は二十億ドル前後に停滞し、輸入規模の五分の一程度にすぎず、きわめて不安定な状態にあり、金の比率もはなはだしく低いのであります。要するに、経済の基盤は、いかに国民の総生産の高さを政府が誇っても、実体はすこぶる脆弱であることを忘れてはならないはずであります。  政府は、ドルが国際通貨として多数国で利用されてきたこと、また従来外貨をドルで保有し運用してきたことを理由に、ドル依存の体制を最善無二の道と信じておるかのように見受けられます。  しかしながら一葉落ちて天下の秋を知るごとく、いまやポンドの切り下げは、否定しがたい歴史上のできごととなりました。そしてアメリカは、周知のように、世界に悪評の高いベトナム戦争の主役となっております。  ワシントンからの報道によれば、アメリカにおいても、ベトナム戦争に対する批判は年々きびしく、前アメリカ海兵隊司令官ですら、ベトナム戦争に米国の安全がかかっているという見方はたわけた話であると言い切っております。すなわちアメリカが戦っている相手の大部分は南ベトナム国民であって、ベトナム戦争がサイゴンのならず者と国民との内戦であることがはっきりしているというのであります。つまり、かかる見解に従えば、アメリカはサイゴンのならず者の味方になって、南ベトナムの国民の大部分を敵に回して戦っているということになります。ただしこのような見解はきわめて常識的であって、かつ正常なものであろうと思うのであります。それにもかかわらず、ベトナムでは国際的常識にさからって、米軍による大量の殺戮が日夜を分かたず続けられております。われわれがきわめて残念に思うことは、佐藤総理がアメリカを訪問してジョンソン大統領と会見しながら、アメリカのベトナム戦争に対する強い反省を求めることができず、逆にこれを支持激励して帰って来たことであります。そしてついに沖繩返還という切実な国民的願望にはむなしい気休めのことば以外には何の実りも得られませんでした。  政府佐藤・ジョンソン会談による日米共同声明を高く評価することを国民に求めておりますが、今国会の審議を通じて明らかにされたところは、絵にかいた山吹の花にもひとしく、実の一つだになきぞ悲しむのであります。われわれも小笠原返還を今日すなおによろこびたいと思います。しかしながら、小笠原諸島は本来もっとすみやかに返還されるべき島々でありました。それに引きかえ沖繩は百万同胞の非願もむなしく、核基地という迷惑な付録がついたまま祖国のふところに帰る日もさだかではありません。そしてベトナム戦争の有力な足場に利用されているのであります。今日、アメリカはベトナム戦争という泥沼にずるずると踏み込み、世界の公正な世論に反して正義に反する戦争をあくまで続けようとしております。政府はドルの柱に寄りかかり、安保条約のもと、アメリカの核のかさのもとにある限り、身の不安はないものと思っているようであります。しかしながら無限の浪費にもひとしいベトナム戦争という重荷が、いつまでもドルを安泰にしておくという保証は決してないのであります。政府はドルの価値を維持することが日米両国の利益となるから、そのための協力が当然であると答えておりましたが、ポンドに続くドルの危機は、為政者として希望的観測を抜きにして冷静に考えなければならないところであります。いまこそ対米追随のごますり外交を反省し、ドル防衛のため身のほど知らずの犠牲を払うことのないよう、日本国民立場に立って政治姿勢を正すことを強く政府に警告するものであります。  もしも、昭和四十二年度予算編成の際に、われわれが警告し指摘していた数々の問題点を、時の政府が謙虚に聞き入れていたならば、少なくとも当初申し上げたような経済の見通しの誤りはなかったのではないかと思うのでありますが、その第一が国債の発行であります。多額の国債があたかも健全な財源と同じように安易に取り入れられ、いまに至って消化困難になっております。膨大な国債発行と総花式な放漫財政が今日病根となって財政の硬直化を招いたことは否定しがたいところであります。ところが予算編成の責任を最も感じなければならないはずの大蔵省は、まるで人ごとのようにふるまい、あたかもその答弁においては、財政硬直化とは降ってわいた交通事故でもあるかのように聞き取れるのであります。なるほどポンドの切り下げのごときは人ごとならぬできごとであったかもしれませんが、国際環境のきびしさはいまに始まったことではありません。しかるに、財政硬直化対策のしわ寄せを公務員給与、公共事業費、公共料金値上げ、社会保障費、地方交付税交付金等々、国民生活の上に一切押しつけようとすることは断じて見のがすことができないところであります。  第一に、政府は人事院勧告を尊重して、昨年より一カ月繰り上げ、八月より実施することとしたと称しておりますが、人事院勧告の尊重とは金額のみならず、実施の期日も勧告どおり守らなければ尊重したことにならないのは自明のことであります。かかる子供だましのごまかしは毎年のことながら承服できません。  次に、財政硬直化に籍口して、社会保障関係費に犠牲を求めておりますが、国民生活の面でこれまた容認しがたいのであります。生活保護費、失対賃金についての基準の引き上げ、さらには医療費の引き上げに伴う医療保険国庫負担分の増額も当然考慮すべきでありましょう。  第三点として、災害対策関係と本年度予算審議の際、与野党一致で付せられました決議事項の実施があげられます。すなわち物価上昇の抑制、住宅、道路、交通安全、公害対策、治水等の緊急事項に関する諸決議であります。  これらに要する財源でありますが、政府は画一的かつ無責任に一省一局削減を唱えております。もし行政機構の改革を真剣に行なう熱意があるならば、一局のみならず一省を削減する場合もあるはずであります。また公社、公団にしても整理すべきは整理統合し、逆に必要があれば何局でも新設をする措置を講ずべきであって、国民生活を中心とした業務の必要性から要員は割り出されるべきであります。いたずらに人件費の画一的削減を考えるよりも、租税特別措置の廃止、交際費、広告費等に対する課税の強化、億をこえる政治献金の出所等に着目して積極的な税収をはかるべきであります。  まず、産投会計への繰り入れをとりやめ、既定経費の節減、第三次防衛計画費の削減により三百五十億、既定予備費中二百五十億を削減することは可能であります。一方、税の自然増収、日銀、専売納付金等を合わせて四千億を追加計上し、公債発行額は七百億減額を実施すべきであります。かかる努力を怠り、財政が硬直化すれば漫然とその責めを国民大衆に転嫁する考え方は、住民本位の民主政治とは相反することはなはだしいものがあります。特に、大衆課税は中央、地方を通じてますますきびしく、ささやかなる消費支出まで仮借なく抑制する方針をとりながら、漸増の道をたどってきた防衛費のみが治外法権的にあたたかく保護されるのでは、その真意のほどを疑わざるを得ず、何人をも納得させることができません。  一方において、汚職議員を輩出しながら、政治資金の規正にすら手をこまぬいている現状では、他方において、財政の縮減を国民に説く資格なしと信じ、ここに本予算案に対する反対の意思を表明するものであります。
  326. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 小林武君。
  327. 小林武

    小林武君 日本社会党を代表し、公明党、二院クラブの賛成を得て、昭和四十二年度一般会計補正予算(第1号)外二案に対する附帯決議を提案いたします。  一、政府は国際経済情勢の変動に備え、わが国   経済の自立と安定成長をはかるため、速かに   左の措置をとり、国際収支の改善と外貨準備   の充実に万全をつくすべきである。  一、速かに輸出の拡大、貿易外収支の改善、外   貨流出の防止など適切な措置をとり、国際収   支の悪化と外貨準備の減小を極力くいとめる   こと。  一、貿易規模に見合う適正な外貨準備の基準   目標を設定し、外貨準備の増加につとめるこ   と。  一、情勢の許す限り、金保有の増加につとめ国   内金の増産などの対策をとること。  一、世界貿易競争の激化に備え、日中日ソ貿易   の拡大など多角的な貿易発展の対策を講ずる   こと。   右決議する。  以上の提案について、その理由を説明いたします。  本年の国際収支は、輸出の伸び悩み、貿易外収支の赤字などのために著しく悪化し、総合収支は六億ドル以上の赤字見込みとなり、外貨準備は二十億ドルを割り、さらに減少の道をたどっているのであります。また十一月十八日、英ポンド切り下げがドル不安に波及し、英米はじめ各国の金利引き上げ、金騰貴など国際通貨体制の動揺が続いており、これらの変動がわが国経済に及ぼす影響も軽視し得ないものがあります。  この数年間、わが国の外貨準備は、貿易の伸張にもかかわらず、二十億ドル前後に停滞し、輸入に対し五分の一程度にすぎず、先進諸国に比して外貨準備及び金保有ともにきわめて低位にとどまっているが、最近の国際経済の動向に備えるためには、もはや現状のまま推移することは許されないところである。  政府は、これら内外の諸情勢を正しく把握し、経済の自立を安定成長のため、当面の国際収支の悪化を食いとめ、外貨準備の充実と、貿易の飛躍的発展をはかるべきであると考える次第であります。  どうぞひとつ御賛成を得たいと思います。
  328. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 玉置和郎君。
  329. 玉置和郎

    ○玉置和郎君 私は、自由民主党を代表して、昭和四十二年度一般会計補正予算外二案に対し賛成討論をいたします。  本予算の補正と、財政投融資の追加によって、現下の緊急を要する、公務員給与の改善、災害の復旧、生産者米価の引き上げに伴う食糧管理特別会計への繰り入れ、交通安全対策、国鉄、開銀、輸銀等への投融資の増額等の財政措置がとられることとなっております。  本年九月以降、公共事業実施の繰り延べ、公定歩合引き上げ等、財政金融一体となった国際収支改善措置が講ぜられましたが、ポンド切り下げに伴い、国際的経済環境は、ますますきびしさを加えております。本補正予算は、このような情勢のもとにおいて、限られた財源の中で、責任ある政府として、最大の努力を払って作成されたものであると信ずるものであります。  次に、その、三、四の点に触れてみたいと思います。  第一は、公務員給与についてであります。本年の給与改善の特徴は、昨年度と比べ、財源的に苦しい中を、昨年より一カ月繰り上げ、八月実施に踏み切ったことであり、ことに問題になっております医師、大学助手、刑務官等の初任給について格別の引き上げを行なったこととあわせ、公務員給与改善に対する政府の熱意のあらわれでありまして、この際、公務員諸君の綱紀の厳正と職務能率の向上を国民とともに、特に期待するものであります。  加えて、軌道に乗ったかに見える行政機構の改革断行については、国民がもろ手をあげて賛意を表している実態を直視し、この際、あらゆる困難な壁を突破しても、実現を期せられたいのであります。  第二は、災害復旧費であります。本年の集中豪雨、台風等による被害報告額は、千九百七十億円に達すると見込まれております。これについては、すでに、予備費二百二十億円を支出して、そのつど対処してまいったのでありますが、さらに補正計上して復旧に万全を期しております。  第三は、食糧管理特別会計への繰り入れ千百八十億円であります。これは、四十二年産国内米の政府買い入れ価格が前年に対し、九・二%引き上げられたこと、また、国内産米の買い入れ数量が、史上最高の豊作を背景として、大幅に増加したことなどによって、同会計の食糧管理勘定の損失額が増加する見込みとなったため、これを補てんするためのものであります。しかして、消費者米価については、本年十月より一四・四%の引き上げを行なったにもかかわらず、なお、生産者米価と消費者米価との間に平均、百五十キロ当たり五百十五円という憂慮すべき逆ざや現象を呈しているのであります。しかしながら、この際あえて巨額の繰り入れを行なったことは、一方において、農民諸君の所得を補償し、他方においては、消費者物価安定の実をあげようとするものであって、私どもは、この政府の決意に対し、最大の敬意を払うものであります。  ただ、現在は、食管制度そのものについて、また、生産者米価と消費者米価との関係について、根本的な検討を要する時期に至っておりますが、この際政府において、真剣な検討を加えられ、その改善合理化に努力されるよう期待いたすものであります。  第四は、交通安全対策費であります。政府は、かねて、交通安全対策を重視し、諸般の施策を講じてまいりましたが、特に、学童等の通学路の交通安全について計画の拡大を行なっていることは、交通事故が大きな社会問題となっているおりから、国民の要望にこたえることのできた措置として高く評価いたしたいのであります。  このほか、東南アジア漁業開発センターに対する拠出金や、国鉄や開銀、輸銀への投融資の増額等いずれも時宜に適した措置であります。  さらに、公債を予定どおり、七百億円減額していることは、公債政策の弾力的運用という観点から、高く評価するものであります。  以上のごとく、今回の補正は、緊急やむをえないものばかりであり、その追加総額は、三千十四億円という巨額に達しております。  しかし、これをまかなう財源面では、例年にない大幅な既定経費の節減、予備費の減額など、財政当局のなみなみならぬ苦心が払われ、その結果、一般会計補正予算の規模は、二千五百二十五億円に圧縮されているわけでありまして、先般来の、財政の執行の繰り延べ措置等とも相まち、景気に対し、十分なる配慮が払われていると考えるのであります。  ここに改めて、政府の施策に敬意を表し、私の賛成討論を終ります。  なお、ただいま日本社会党の提案にかかる附帯決議案については、諸般の情勢から判断して、この場合適当でないと考えるので賛成できません。
  330. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 小平芳平君。
  331. 小平芳平

    ○小平芳平君 私は、公明党を代表して昭和四十二年度補正予算三案に対して反対の討論をいたすものであります。  今回の補正予算は、修正減少額を差し引いても二千五百二十五億円余となり、昭和四十一年度の補正予算千六百二十九億、四十年度六百五十一億、さらに三十九年度八百五十一億円に比べて、全くの超大型補正予算となったのであります。  ところで、まさにこの補正の段階で硬直化を露骨に示していると言わざるを得ません。  大型補正の歳出要因はいずれも既定経費の当然増であります。この超大型規模となったそもそもの原因は、予算編成時における政府与党の圧力によるうしろ向き支出であり、さらに安易に多額の赤字国債を発行し、歳出入のつじつまを合わせてきた無責任きわまりない放漫財政によるものと言わざるを得ません。政府は、このような態度を今後も改めない限り、予算の膨張、財政の硬直化はとどまることなく、ひいては国民生活へ重大な圧迫となることは必至であり、政府の猛省を促すものであります。これが反対の根本理由であります。  さて反対理由の第一点は、公務員給与改定に関する人事院勧告が完全実施されていないことであります。政府は、前年度よりも一カ月繰り上げたことにより一歩前進したと説明しておりますが、ただでさえ上に厚く下に薄いといわれる今回の給与改定であり、また公務員法の性格、人事院の存在理由から見て、勧告を完全実施することは当然の理であります。しかるに人事院勧告をいままでにただの一度も完全実施しないで、ことしもまた実施時期を三カ月もおくらせることは、絶対に承認することはできないところであります。財源措置については、当初予算の際に既定経費を十分検討し、節減することは考えられないわけはないのであります。  次に、反対の第二は、災害復旧費が十分でないことであります。本年度の土木、農業、水産施設の災害は千九百七十億円の巨額に達したのでありますが、これに対し、いままでに予備費で二百三十億円支出し、今回の補正で七十六億円を計上しているにすぎません。残余の予備費で多少支出されるといたしましても、とても十分なものとは言えないのであります。被災者のことを考えるとき、災害復旧をすみやかに行なうため、災害復旧費をさらに増額すべきことを要求するものであります。財源については、前に申し上げたとおりであります。  さらに第三点は、食管会計への繰り入れ措置についてであります。政府は、十月一日から消費者米価を一四・四%引き上げたのでありますが、その上に大豊作によって政府の米の買い入れが九百五十万トンと大幅に増加し、当初予算として一千二百八十七億円を組んでいたのが、二千四百七十億円と約二倍の増加になったのであります。政府は当初予算計上の買い入れ見込み七百七十五万トンは、四十一年度より二十五万トンも少ない量で見積っていたのであります。これはいかなる理由によるものか。政府の見込み違いもはなはだしいと言わざるを得ないのであります。  第四に、中小企業や農業、社会保障政策等の立ちおくれであります。一方では、インドネシア等の焦げつき債権を、財政の硬直化が叫ばれているこのときに、国民の税金で多額に負担しておきながら、中小企業等に対してはあまりに冷淡であります。中小企業は今年史上最高の倒産件数を出し、しかも年末金融の逼迫に直面しております。その経営はますます困難をきわめているのであります。また国民大衆は、相次ぐ物価の値上がりに苦しんでおります。このようなときに、三千億円という空前の補正を組みながら、社会福祉に対する政府の態度はまことに冷酷そのものと言わなければならないのであります。  以上の理由により、公明党は政府提出の補正予算三案に対し反対するものであります。  次に、小林委員提出の附帯決議案に対しては、国際収支の現状からしてきわめて時宜を得たものと考え、賛成いたすものであります。
  332. 新谷寅三郎

  333. 片山武夫

    片山武夫君 私は、民主社会党を代表してただいま議題となっております昭和四十二年度補正予算案に反対の意を表明いたします。  第一の理由は、景気調整問題についてであります。政府は、国際収支の赤字に直面して一連の景気引き締め政策を打ち出しましたが、これは従来から繰り返し行なわれてきた目先をつくろうためのものにすぎません。  そもそも今回の国際収支の赤字は、民間設備投資の行き過ぎに基因するものでありまして、これの合理的、計画的調整こそわが国、経済への最大の課題であります。しかるに政府は、公共事業費の繰り延べにより社会資本に圧力を加え、金融引き締めにより、中小企業にしわ寄せするという結果を招来しております。これは明らかに佐藤内閣の大企業偏重、国民生活軽視のあらわれであると断定いたします。  第二の理由は物価問題についてであります。今年初頭には比較的安定したかに見えた物価が、八月からわずか三カ月間に四・五%も高騰しております。その原因は政府による一連の公共料金値上げが上昇ムードをかき立て、その政策的波及が一般物価の便乗値上げを誘発せしめておるのであります。私どもは過去すでに久しく解決策を政府に迫ってまいりましたが、何ら効果的対策が立てられておりません。現在、最も必要なことは、政府の断固たる物価抑制政策を国民に示すことであります。そのためには、消費者基本法をすみやかに制定すべきであると思います。この点、きびしく反省を求むるものであります。  第三の理由は、財政硬直化対策についてであります。御承知のように歴代内閣は、これまで無計画に総花的放漫財政を用い、また安易な国債政策をも導入してまいりました。その結果むだと非能率が充満した行政機構と財政の硬直化を招いたと思うのであります。ところが、政府はこれが対策の犠牲を国民に対する増税と公共料金の値上げ、社会保障費、公共事業費、地方交付税交付金等々の削減に転嫁せしめようとしておるのであります。私どもは、このような政府の意図を断じて許すことはできません。  最後に反対する理由は、公務員の給与引き上げについてであります。今回の補正予算案は、公務員の当然の権利である人事院勧告の完全実施をまたもや見送ってしまいました。そればかりではなく、これに関連して、政府は公務員の給与引き上げを物価の上昇率に見合って当初予算に見込むことを検討しておられるようでありますが、これは、人事院の勧告制度を根本からくつがえすものだと言えます。ひいては、公務員給与を抑圧しようとするものでありまして、われわれの断じて容認できないところであります。  以上の理由により、私は、この補正予算案に反対するとともに、現下わが国経済の直面する内外の諸情勢にきびしく対決せられんことを付記いたしまして、私の討論を終わります。
  334. 新谷寅三郎

  335. 岩間正男

    岩間正男君 私は、日本共産党を代表して本補正予算三案に反対するものであります。  反対理由の第一は、補正予算そのものが、広範な国民の要求とはほど遠い反人民的な内容を持つものであるからであります。まず、今次補正予算の重要な課題の一つは、罹災者の完全救済を中心とする災害復旧費の問題であります。羽越災害や九州干ばつによる被害総額は、政府の中間報告によっても、三千億円にのぼり、これに個人災害を加えるならば、はるかに巨額に達するのであります。しかも、毎年繰り返されるこれらの災害は、明らかに歴代自民党政府が米日独占資本本位の政策を優先し、災害対策をきわめておざなりにしてきた結果の人災であり、政災であります。今回の羽越災害はその端的なあらわれであり、したがって、政府は罹災者の救済と被害地の早期完全復旧について、全責任を負わなければならないのは当然であります。しかるに今回の補正計上額は百四十七億円、これに予備費支出二百二十億円を含めても、その二割にも満たず、政府は復旧費の大半を地方自治体と罹災民に押しつけようとしているのであります。ことに個人災害についての対策は、全く放棄されて顧みられないのであります。  次に、公務員給与の改定費として五百四十五億円が計上されていますが、これは国家公務員の一律八千円要求の半ばにも達せぬものであり、不十分な人事院勧告をすら無視する不当なものであります。これでは実質的な賃上げどころか、物価の上昇分にも満たないのであります。このように政府は、みずからの低賃金政策の根幹ともいうべき、公務員労働者の賃金を押えることによって、日本の賃金の水準を低く固定化せんとする策謀を強めているのであります。しかも、重要なことは、政府は、人事院勧告の実施を悪用して、公務員の団結を分断し、支配を強化せんとしていることであります。すなわち、その配分を上に厚く、下に薄くすることによって、行(一)の五六%、行(二)の八〇%の労働者は平均引き上げ額にも達しないのであり、さらには、都市と農村の公務員労働者を差別分断する調整手当の新設など、不当な内容を伴っているのであります。  次に、食管特別会計への繰り入れ千百八十億円も、農民の切実な要求を無視し、とうてい生産費を償い得ない低額に押えつけて計算されたものです。しかも、消費者米価を今年一四・四%も引き上げた上、さらに来年三、四%引き上げることを予定しているのであります。こうして政府は、米価の二重価格制、ひいては食管制度そのものを破壊し、日本農業の自主的発展と農民の生活を一そう困難にしているのであります。  さらにまた、交通安全対策費として六十一億円を計上しておりますが、すでに交通事故による死傷者の数が昨年より二カ月も早く上回るという悲惨な現実を考えるとき、あまりにも少額過ぎると言わざるを得ません。  反対理由の第二は、以上で明らかなように、広範な人民の差し迫った要求については、何一つ有効な措置をとることなく放置しておきながら、独占資本の強化とその対外進出には特段の支出を行ない、アメリカ帝国主義のアジア侵略に協力するいわゆる海外援助費を特に増大させていることであります。すなわち、一般会計、財投を含めてこれらの補正総額は三百七十数億円に達しています。とりわけ輸銀への追加二百五十億円は、今回の日米共同声明の一端がすでに具体化されつつあることを示すものと言わざるを得ません。すでに明らかなように、佐藤内閣はさきの日米会談において共同防衛責任分担のための軍事費や、侵略的な東南アジア、経済援助費の増加、ドル防衛への協力等を義務づけられました。そのために、今後五年間に支出される二兆三千四百億円の三次防経費、一兆八千億に及ぶ対外援助費をはじめ六兆六千億円の道路整備費、治水、港湾、国鉄、電電その他主として独占資本のための公共投資、また、租税特別措置による年間一兆数千億円等の当初計画はあくまでこれを強行するのみが、日米会談の結果に伴う義務履行のための諸経費を全面的に予算化し、これを実行せんとしております。これが当面する財政圧迫の最大の根源であります。しかるに政府国民の前にその実体をひた隠しにし、一そうの収奪によって、これらの負担のすべてを国民に転嫁するねらいをもって、きわめて意図的に、いわゆる財政硬直化論を持ち出しています。そしてその具体化としての宮澤構想を推し進めようとしているのであります。すなわち、政府はいわゆる硬直化の原因が、地方交付税、人件費、社会保障費等の増大にあるとして、その解決を大衆課税の強化、公共料金、独占物価の引き上げ、社会保障制度の根本的改悪、食管制度の事実上の廃止、公務員の大量整理と低賃金の固定化、及び地方財政へのしわ寄せ等に求め、これを強行せんとしております。これほど国民を欺くものはありません。  わが党は、財政硬直化論議に隠された、このような欺瞞的意図を徹底的に追及するとともに、財政を民主化することによって、国民の切実な要求を早急に実行し、それに必要な財源は、赤字公債の発行をやめ、独占資本のための公共事業費、対外進出費、軍事費、警察費などの大幅削減によってつくり出すことを強く要求するものであります。  以上をもって私の反対討論を終わります。
  336. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 以上をもちまして討論通告者の発言は全部終了いたしました。よって、補正予算三案の討論は終局したものと認めます。  それでは、これより三案の採決に入ります。  昭和四十二年度一般会計補正予算昭和四十二年度特別会計補正予算昭和四十二年度政府関係機関補正予算、以上三案を一括して問題に供します。三案を原案どおり可決することに賛成の方の起立を求めます。    〔賛成者起立〕
  337. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 起立多数と認めます。よって、三案は原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  次に、討論中に述べられました小林提出の附帯決議案を議題といたします。  小林提出の附帯決議案に賛成の方の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  338. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 起立少数と認めます。よって、小林提出の附帯決議案は否決されました。  なお、本院規則第七十二条により議長に提出すべき報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  339. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日はこれをもって散会いたします。    午後四時五十一分散会