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1967-12-11 第57回国会 衆議院 予算委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十二年十二月十一日(月曜日)    午前十時七分開議  出席委員    委員長 植木庚子郎君    理事 小川 半次君 理事 正示啓次郎君    理事 二階堂 進君 理事 藤枝 泉介君    理事 古川 丈吉君 理事 加藤 清二君    理事 中澤 茂一君 理事 小平  忠君    理事 伏木 和雄君       相川 勝六君    愛知 揆一君       荒木萬壽夫君    有田 喜一君       井出一太郎君    池田正之輔君       川崎 秀二君    久野 忠治君       河野 洋平君    重政 誠之君       周東 英雄君    鈴木 善幸君       中野 四郎君    西村 直己君       野原 正勝君    福田  一君       船田  中君    古井 喜實君       松浦周太郎君    松野 頼三君       山崎  巖君    猪俣 浩三君       大原  亨君    角屋堅次郎君       川崎 寛治君    北山 愛郎君       阪上安太郎君    楯 兼次郎君       成田 知巳君    西宮  弘君       芳賀  貢君    畑   和君       山中 吾郎君    横山 利秋君       麻生 良方君    折小野良一君       春日 一幸君    広沢 直樹君       谷口善太郎君  出席国務大臣         内閣総理大臣  佐藤 榮作君         法 務 大 臣 赤間 文三君         外 務 大 臣 三木 武夫君         大 蔵 大 臣 水田三喜男君         文 部 大 臣 灘尾 弘吉君         厚 生 大 臣 園田  直君         農 林 大 臣 倉石 忠雄君         通商産業大臣  椎名悦三郎君         運 輸 大 臣 中曽根康弘君         郵 政 大 臣 小林 武治君         労 働 大 臣 小川 平二君         建 設 大 臣 保利  茂君         自 治 大 臣         国家公安委員長 赤澤 正道君         国 務 大 臣         (内閣官房長         官)      木村 俊夫君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)      田中 龍夫君         国 務 大 臣         (行政管理庁長         官北海道開発庁         長官)     木村 武雄君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 増田甲子七君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      宮澤 喜一君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      鍋島 直紹君  出席政府委員         内閣官房長官 亀岡 高夫君         内閣法制局長官 高辻 正巳君         内閣法制局第一         部長      真田 秀夫君         総理府特別地域         連絡局長    山野 幸吉君         警察庁長官官房         長       浅沼清太郎君         防衛庁長官官房         長       島田  豊君         防衛庁防衛局長 宍戸 基男君         防衛施設庁長官 山上 信重君         経済企画庁調整         局長      赤澤 璋一君         経済企画庁国民         生活局長    八塚 陽介君         外務省アジア局         長       小川平四郎君         外務省北米局長 東郷 文彦君         外務省条約局長 藤崎 萬里君         大蔵省主計局長 村上孝太郎君         大蔵省主税局長 吉國 二郎君         大蔵省銀行局長 澄田  智君         大蔵省国際金融         局長      柏木 雄介君         厚生省援護局長 実本 博次君         通商産業省鉱山         局長      両角 良彦君  委員外出席者         参  考  人         (日本銀行総         裁)      宇佐美 洵君         専  門  員 大沢  実君     ————————————— 十二月十一日  委員北澤直吉君、猪俣浩三君及び春日一幸君辞  任につき、その補欠として河野洋平君、川崎寛  治君及び折小野良一君が議長指名委員に選  任された。 同日  委員河野洋平君及び川崎寛治君辞任につき、そ  の補欠として北澤直吉君及び猪俣浩三君が議長  の指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和四十二年度一般会計補正予算(第1号)  昭和四十二年度特別会計補正予算(特第1号)  昭和四十二年度政府関係機関補正予算(機第1  号)      ————◇—————
  2. 二階堂進

    ○二階堂委員長代理 これより会議を開きます。  植木委員長が所用のためおくれますので、委員長が出席されるまで、指名により、私が委員長の職務を行ないます。  昭和四十二年度一般会計補正予算(第1号)、昭和四十二年慶特別会計補正予算(特第1号)、昭和四十二年度政府関係機関補正予算(機第1号)、以上三案を一括議題とし、審査を進めます。  これより総括質疑に入ります。松野頼三君。
  3. 松野頼三

    松野(頼)委員 自由民主党を代表して、総理施政方針及び最近の政治に関する問題を率直にお尋ねいたします。  なお、議会の議論は、与野党ともに、質問という形で、ある場合にはずいぶんすれ違いな議論がある。これは基本的にその現状認識の相違のために、土俵の違う議題がやや出てくる傾向があります。しかし、与党の私たち立場から言うならば、政府と一体であるべき同じ立場に立って、同じ土俵の上にものごとを認識して、本日は同じ与党政府の中における考え国民の前に出して、将来の建設的な意見を導き出すならば私は幸いだと思います。その意味で、私と総理考えがすべて同じであるばかりじゃありません。違う場合もありましょうし、また、お互いの党内の意見は幅広く国民の前に出す、これも必要なことだと思いまして、本日は、与党質問に私は立ったわけであります。  第一に、昨年末の共和製糖事件や、最近その他一、二の不祥事件が世間にあらわれ、国民の注目を集めております。政界官界の粛正の声も高まっておると思います。これに対して、国政に携わるものは、ひとしく厳粛にその源をみずからきわめ、えりを正す必要があると思います。最高責任者である総理の御所見をまずお伺いいたしたいと思います。
  4. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいまの御意見、私、組閣以来、もちろん政界浄化について特に意を用いてきたつもりでございます。ことに、昨年共和製糖事件が発生し、また一部におきまして批判も受けた、こういう点から内閣改造をいたしたり、非常にこの点では政界浄化に気をつけてきたつもりでございます。  最近になりまして、LPG事件といわれる大阪タクシー事件等が、ただいま捜査進行中であります。まことに遺憾なことだ、かように考えますが、ただいま捜査進行中でございますから、その事態そのものについてとやかく説明する自由は私持っておりません。しかしながら、いずれにいたしましても、この種の事件が起きたことについてはまことに残念に思います。政界の一部のこの種の問題だけではありません。官界におきましても、公務員関係におきまして不祥事件が起こる、そういうことがひいては政治行政に対する国民の不信を招く、かような意味におきまして、もとを正さなければならない、かように私は思っております。そういう意味で、もちろんえりを正すというよりも、このことが政治の基本だ、かようにすら私考えておる次第でございまして、こういう事件ができるだけ早い機会に明確になり、そうして国民が納得のいくような処置ができること、そのことを望んでおるような次第であります。
  5. 松野頼三

    松野(頼)委員 官界における一部官僚スパイ行為事件というものは、これは公務員法違反という形だけで律すべきにはあまりにも軽過ぎるのではなかろうか。捜査中のものは別としましても、その法律の刑罰そのものに疑問の多いものも、私は出てきておると思います。これらについては、あわせて公務員法なりあるいは適当な立法も必要なものがあるやに私は思います。あわせて、今後の政治を清潔に、正しく行なわれんことを特に要望いたします。  首相は、特に最近、行政機構改革ということを言われました。これは国民の非常に期待し、希望するものであります。吉田内閣当時、総理大臣官房長官時代、おそらく何回となく行政機構改革吉田総理はやられました。政権が長期化すればするほど官僚組織というのがある意味においては沈滞する、停滞する傾向がある。内閣が長く続けば続くほど行政機構改革は、やらなければならないというのが、吉田総理の私は一つの信念じゃなかったかと思います。佐藤総理も、安定した政治の中に今後政治を進められるならば、国民政府の中に立つ官界というものが正しく国民の民意に沿わなければ、いたずらに政治国民の中に壁をつくるような、いわゆる役人気質の悪弊が出てくると私は思います。それには常に新風を吹き込む、行政機構も時々刻々変わり得るような、柔軟な体制をとらなければならないと私は思います。  その一つとして、今回一省一局の削減、これも一つの大きなヒットだと私は思います。しかし、一つ一つ考えてまいりますと、予算編成が近づくにつれ、この立法が近づくにつれ、やや活字が小さくなり、政府の声も小さくなりつつありやと私は心配をいたしております。ぜひこれは英断をもって、一省一局のこの行政機構の第一の着手をされたい。  同時に、公社公団整理もあわせて行なうべきではなかろうか。ことに、公社公団は第二の官僚といわれるごとく天下り人事たらい回し人事が非常に目立っております。高級官僚のほとんどの者が、一部の者はそのまま天下りであり、あるいはたらい回し傾向が見えるということは見のがすわけにはまいりません。これも私たちは、この際あわせて行なうべきいい時期だと思います。  最後に、三番目には、公務員定員を三年以内に五%減の方針、これも有名無実にならないよう、この三つが今日いわれております行政に関する当面の問題であります。  ぜひこの三点について総理大臣英断を希望し、また、あわせて答弁をお願いいたします。
  6. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 最近は財政硬直化ということがいわれております。ひとり財政ばかりではありません。やはり行政機構そのもの硬直化している。ものの考え方硬直化しているんじゃないか。絶えず新しいもの、絶えず改善するということ、そういう意気込みがなければ、この硬直化を改正するわけにはいかない。今回の財政のほうにおきましても、そういう意味でその硬直化を解こうとしている。行政機構の問題につきましては明らかにそのことが言える、かように思います。御承知のように戦後統制経済をやっていた。その統制経済はもう全部はずされて、わずか一部だけ残っている。米、そんなものが残っている。金融統制や何か、もうすでになくなっている。しかし、どうもものの考え方統制時代考え方ではないのか。機構そのものもその時分のような考えではないか。これはいずれにいたしましてもメスを入れなければならない。改革をしなければならない。ただ全体を根本的に改正するということは、なかなかプラスの面もあるがマイナスの面もございます。したがいまして、円滑にこういう改善をはかってまいる。そのためには機構の一省庁一局廃止、このことをぜひやろう、こういうことであります。ただ、これは行政機構改革に取りかかった最初第一歩だ、かように考えていただきたいと思うし、ことに与党におきましては、その意味において十分理解していただきたいと思うのです。この考え方で新しく仕事自身仕事考え方も変えていかなければならない。機構から入るのがいいか、仕事から入るのがいいか。やはり両方から改善をはかっていく、こういう意味でこの機構改革と取り組むというその姿、その第一歩を踏み出した、かように御理解をいただきたいのであります。  もう一つの、ただいまの公社公団につきましては、もうすでに行政監理委員会からそういう答申も出ております。したがいまして、公社公団についてもう一度考え直す時期に来ておる。したがって今回も整理と取り組みます。もちろんこれが諮問委員会からの答申どおり勧告どおりと、かようには私は考えませんけれども、とにかくその方向公社公団整理にも取り組みます。また、御指摘になりましたように天下り人事と言われるそういうものにつきましても、もっと広い範囲から適材適所に人を登用する、こういうことでありたい、かように思いますので、ただいま官房長官を中心にして、公社公団等役員の人選も、それぞれの担当省だけの責任でなくて広く人材を適材適所に配置する、こういうような考え方でございます。また、ただいま行政機構改革と取り組んでおる際でございますから、一部公団公社等におきまして役員増加をしたい、こういうような強い希望を持っておるようですが、この際に役員増加などはもちろん考える筋ではない、かように考えております。  次は、ただいまの定員縮減の問題であります。今日、御承知のように人員整理を積極的にやるような、そういうような乱暴な考え方はいたしておりません。しかし自然減耗補充自然減耗、それだけでもたいへんな数に上るのでありますし、また積極的に人をふやしていかない。また各省間の定員のアンバランス、それなども是正していかなければならないと思います。したがいまして、在来定員というような考え方でなくて、これまた新しい制度考えていくべきではないだろうか。全体として欠員不補充、あるいは新規採用、これはある程度どうしてもやらなければならないと思います。そういうことを考えてまいりますと、縮減ということは、消極的な意味で減らしていくような考え方であります。同時にまた、最初に申しました機構改革仕事のしぶり改革等によりまして、新しい人員増、これはできるだけ避けるつもりであります。  こういうようなことをあげて、いわゆる硬直化、これをほぐしていくという、こういう考え方であります。もっと大きく申せば、占領下行政制度そのもので今日まで残っておるものも相当ある。もう二十二年たって、新しい時代が来ている。完全独立時代も来ている。そういう際に、新しいものを考えていく。それはもう仕事の面から、同時に、その仕事整理していく、かような、またしぶりも変えていく、こういうようなことでございます。これは与党におきましても、そういう意味で特に御理解を賜わりたいと思いますし、各省大臣も、私のただいまのような話を今日まで十分したこともございませんから、あるいは一部に理解しておらない点もあろうかと思いますが、ただいま申し上げるのは、冒頭に御指摘になりましたように、同じ土俵の上に立ってものごとを進めていこうという、その気持ちから私は率直に私の考えていることを御披露した次第でございます。
  7. 松野頼三

    松野(頼)委員 先に進みます。  政府所信表明の中で一番注目されるのは東南アジア一連外遊であります。総理は、諸外国で、日本経済力発展に対する賞賛のことばを耳にし、日本国際的地位が飛躍的に向上したことを痛感したと言われ、同時に、国際的責任がそれだけ重くなるわけである。日本はまたその責任にこたえなければならない、これが外遊一つ報告の中にあります。  戦後日本国際信用をかち得た原因は二つ私はあると思います。第一は、日本が真の平和国家であり、侵略的意図がないということを諸外国が十分認識した、これが基礎であって、その上に、東南アジアにおける賠償の忠実な履行、東南アジア諸国の、発展途上にある諸国に与えた利益は大きいものだと私は思います。この上に、今回の外遊が非常な成功をされた。ただ、いままでの時期と今回は違いまして、一つ転換期を迎えたんじゃなかろうか。援助の時期も、相当な成功をしたが、それも無限に続くものではありません。また、その援助の方法も変わりつつあります。  日本が今後アジアの安定に資するために、私は、アジアに対する技術援助経済援助のほかに、おそらく政治的な討議が各所でなされたのではなかろうかというのが一つの変わった観点かと思います。これは私のみではなく、ヨーロッパの外電がその中に一、二報じております。有力紙の「タイムズ」「ル・モンド」これが総理外遊をこう批評しております。今回の首相外遊で、日本はこれまで対外活動経済面が主で政治的指導性を欠いていた、今回の外遊はその不均衡是正第一歩であるという問題点を私は指摘していると思います。おそらく総理外遊報告の中にも、政治的な観点に立って、ある国においては、中共の核の脅威を総理に訴えた国もあったと私は思います。あるいは、ベトナム周辺国家は、ベトナム戦争和平についてともに総理と語られたと思います。これはいままで日本経済においてのみアジア外交といういうものを討議したものが、今回はお互いの共同の政治——政治最高のものはおのおのの国の平和を守ること、安全を確保すること、これが私は政治最高国際間の共通関心事だと思います。今回の外遊ではベトナム周辺——あえて南ベトナムとは申しません。例であげるならば、中立的、鎖国的国家をとっておるビルマにおいては、南北ベトナムの大使が同居しており、ベトナム南北問題に一番関心の深いのはビルマであることは、これは論をまちません。そのビルマにおいてさえ、ベトナム問題の解決の見通しが立たない。たまたまその機会を私も得ましたが、南北ベトナムの固定された勢力というものがなかなか一歩ものかないという姿が、ベトナム戦争の一番長引く原因ではなかろうかとビルマでは実は見られておるかもしれません。  私は、今回の外遊について総理が、経済的援助一つ方向の転換、第二番目には、共通アジアの平和とお互いの国の安全を守る、これが今回のいままでの外遊と違った転換期であると実は感じます。総理外遊報告の中に二、三そのような感じを受けますけれども、直接本日は、総理東南アジア外遊で得られたこの二点について、あるいは、その他に新たな観点が生まれるならばそれもつけ加えてお答えいただくならば、国民も非常にいままでの考えから一歩変わったアジア外交を導き出し得るのじゃなかろうかと私は感じまして、この点を第一にお伺いいたしたいと思います。
  8. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私のこのたびの東南アジア並びに大洋州訪問——アメリカはまた別ですが——これらの諸国につきましての訪問目的は、たびたび申したとおりです。まず、その国の実情を知ること、同時にまた、日本あり方をよく説明すること、これは申すまでもなく、ただいまお話がありましたように、日本平和国家であり、独立を尊重し、内政には干渉しない、平和のうちにお互いが繁栄し平和を求めるということ、こういう日本の態度をよく説明するということ、この点では十分効果をあげまして、過去の問題と違っているのです。日本あり方についてはよく理解してくれたと思います。したがいまして、経済的に発展をいたしましても、いわゆる経済侵略というようなことばはもうない。むしろ積極的に日本経済援助を求める。これは日本がほんとうに平和に徹した国であり、内政に干渉しないという、そういう意味でこの日本に対する期待が非常に大きいのであります。この点では私はよほど変わってきた、かように思います。  そこで、日本責任もまた重いと思う。そこでひとつ皆さんに考えていただきたいのは、この場合に、経済協力といっても、やはり国内におきましてもたいへんまだまだ解決すべき問題が幾つも残っております。しかし、日本実情東南アジア外国実情とを比べてみたら、これはたいへんな開きがあります。ここで、日本国内において、これこれの問題を片づけなければならない、その際に、外国援助をするということは少し国内を無視するんではないか。軽視するんではないかというような話がしばしばございます。しかし私はこれらの点においても、日本経済援助はいわゆる利己的であってはいけない、国の利己であってはいけない、かように考えますので、日本平和外交、侵略しないというばかりじゃなく、経済援助におきましても、国の利己的な立場において経済援助をするんでないということ、これを十分理解するようにしなければならない、今後の一つの問題だと思います。  第二の問題は、申すまでもなく、ただいま行なわれておりますアジア現状、そこに一つの不安があります。ベトナム戦争あるいは中共核開発の問題、それぞれについて東南アジア諸国は、たいへんこれらの影響からどういうようにしたらいいか、また、こういうような問題について積極的に発言をしないような傾向もございますし、それらの点については大なり小なり非常な影響をこうむっておること、これは事実でありますから、これらの点について十分話し合っていく必要があると思います。これはただいま御指摘になりましたように、日本政治的なこの役割りを果たすのではないか、アジアにおいて政治的な役割りを果たすのではないか、こういう点だろうと思います。しかし、誤解されても困りますのは、日本はただいま第一に申したように、平和憲法のもとで、平和に、平和外交を進めておる。軍事的に介入するような考え方は毛頭ございません。したがって、しばしば、政治的に指導するとか協力するとか、かように申しますと、一部でそれは軍事的に協力するのではないかというような非常な不安を持っておられるようであります。そういう点は全然ないのですから……。また諸外国におきましても、よく日本実情理解してくれておる。そういう点の要望はいたしておりません。私はそういうようなもとにおいてお互いが平和であり、繁栄する、まあそのためには何といってもお互いにそれぞれの独立を尊重し、内政不干渉お互いに干渉しないという、その原則のもとにおいて共存の体制ができるんだ、かような点をよく話をしてきたつもりであります。もちろん第三の問題としては二国間だけの問題もございます。それらの点は、第一の問題にもからみまして誤解のないように、また十分目的効果をあげるように、それぞれの国においての経済援助枝術援助等もよく話し合ったつもりでございます。  とにかく、今回東南アジア諸国を回りまして、アジアにおける日本先進工業国である、そういうような意味日本に対する期待は非常に大きい。それは各方面でございます。ただ単に経済だけではない。それにこたえる日本人の心がまえというものは在来とは変わって、もっと高い立場大局的立場で臨むべきではないか、かように考えております。
  9. 松野頼三

    松野(頼)委員 今回の外遊で非常に総理の感ぜられたことは、いままでとだいぶ私は——もちろん世界の情勢アジア情勢の変化によっていろいろ議題が変わったと思います。なお日本においても、国内においてできる海外援助、あるいは輸銀の使用等は当然まだ考えられるものが国内にも私はあわせて残っておると思います。ことにアジアの中で一番問題はこのベトナム周辺の国、できればベトナム問題そのものの終局というのがアジアにおける最大な議題であります。さきの日米首脳会談でも、日本ベトナム問題というのが、もちろん日本アジアの一員として非常に関心が深い。そこでベトナム和平についてたびたび野党に答えられ、たびたび総理もその方向を示された。今回東南アジアを回ってこられて各国から受けられた印象、それは、あわせてこのベトナム和平はいかにすれば和平の道に到達するや、日本がその場合いかなる努力をするやということが今日あらためてまた問題になると思います。首相は先般、グエン南ベトナム大統領の北ベトナムに対する平和書簡を日本に託されたという報道も受けております。その後この取り扱い、その結果はどうなるか。あるいはまた逆に一方では、北爆を含めた北ベトナムに対するアメリカの現在政策を総理理解しておる、あたかも総理は一方的な立場をとっておるじゃないかという非難も国内には一部に出ております。これらはちょうど右と左の話であって、現実にこの問題は総理自身からお伺いして、今後の方針——すべての国民関心のない者はありません。またそれだけ関心があって、その結論を見出し得ないのがベトナム問題ではないかと私は思います。したがって、いろいろ各人、一部をさわり、一部を見て議論をされること、この議論が全般の議論じゃもちろん私はないと思います。しかし、いずれにしても最高責任者である総理が、ベトナム問題に対して一番苦労されている最高な人であることもまた私は認めます。あらためてここで何らかの道、何らかの方法というものがベトナム問題東南アジアを回ってこられ、あるいはアメリカとも会談をされ、そうして日本の今日の立場、この三つから日本の果たし得る役割りが近いうちにあるのか、ないのか、また、とてもこの問題はしばらく時間をかさなければ見通しがないのか、あるいは、いつかはこういう時期を待つのか、非常にむずかしい話もあるかも知れません。きょうはひとつ率直にお互いの気持ちの中においてこの疑問を持ちながら、その方向をお尋ねいたしたいと思います。
  10. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ベトナム問題のお尋ねですが、この限られた時間中にこれを説明することはなかなかむずかしいことでございます。しかし、ただいま各国ともこのベトナム問題に非常な関心を持っておること、これは事実でありますし、このあり方がどうなるかということについてはみんな各国とも心配をしておる。ひとしく申しますことは、一日も早く平和が、和平が招来することだ、しかもこのベトナムの問題は、いろいろの国がこれに関係はしておるが、アジアの問題だ、アジアの問題であるだけに、アジア諸国としてはやはり一日も早く和平が来るように努力すべきではないか、それには何といっても紛争当事国、南北ベトナムがそのつもりになってくれることがまず第一に必要なことだ、これがアジア諸国のみんなの一致した考え方であります。日本役割りについてアジア諸国が、やはり一役買ったらどうか、かように希望いたしますのも、アジアの問題だということであります。またそういう意味からも、南北ベトナムがまず第一に話し合いに入るというその気持ちにならなければどうしようもないじゃないか、これが第二の問題であります。  そこでまず、最近南のチュー大統領から平和書簡を出すという、こういう話が出ております。したがいまして、これについて外務当局にいろいろ打診もさせておりますが、なかなかそう簡単なものではないようだ、かように申しております。また、外国がこれに関係しておる。それでいつも一番問題になるのはアメリカであります。アメリカは現に北爆をやっている、エスカレートするのではないか、一部ではさらに核兵器を使うのではないかというような心配をしておられる。しかしながら、そのアメリカが核兵器は使わないということ、これは大統領やマクナマラ国防長官が上院においてちゃんと証言をしておりますから、核兵器の心配はないにしても、とにかく戦争はエスカレートしておる、これは一体困るじゃないか、しかしそのアメリカ自身が和平のためならいつでもまたどこへでも出かける、かように呼びかけておる。また今度のチュー自身の平和書簡の問題もある。そうして東南アジア諸国が希望しておるように、これはアジアの問題だ、外国よりもまず南北両方がその気持ちにならなければ話がつかないじゃないかと言っている。この気持ちをもっと率直に南北両国が、両ベトナム当事者が考うべきじゃないかというのが私の結論であります。そういう意味で、この話し合いができるようなことならあらゆる機会を私どもも提供しよう、またそういう方向へ進もう、かように実は申しておるのであります。  一部におきまして、私が北爆を支持したとか云々を言われますけれども、私は北爆あるいは南の戦争、陸上、地上戦争、そういうような問題で、その殺し方がどうとかこうとかいうような問題じゃなくて、戦争自身をやめるべきなんだ、北爆を含め、また南のこの戦闘を含めて、全部戦争自身を和平に持ってくるべきじゃないのか、戦争をやめるべきじゃないか、こういうことでございますので、いわゆる北爆支持ということは当たらないのであります。ただいま申し上げるような形におきまして、このベトナム問題に一日も早く和平が招来されることを心から望んでおる次第であります。
  11. 松野頼三

    松野(頼)委員 十一月十四日、十五日、ワシントンにおける会談の佐藤総理大臣とジョンソン大統領との共同コミュニケについて二、三お尋ねをしてまいります。  日米共同声明では、第一に印象に残りますのは、国民の悲願である小笠原諸島の一年以内の返還、私はこれは非常な大きなニュースだと思います。またこれが実現されるならば非常な大きな収穫であり、二十数年間の大問題の解決だと私は心から大賛成であります。しかもこのやり方が、平和時に話し合いで領土が移譲されたということは、歴史上ではおそらくありません。無理にこれを類推していって、多少これに似ておりますのが、戦後において西イリアンとインドネシアの割譲された例があります。まだこれも完全に完了はしておりません。しかし、これは、その背景に武力的行為があったことは周知の事実でありますので、完全な平和と対等な立場ということでは、今回の小笠原とはこれは異なります。  この問題について、私も国際法規例集というのを一生懸命さがしましたが、なるほど非常にこれは例の少ないこと、大体いままで各国でやりました平和割譲の場合には、金を払うというのが非常に多いようです。あるいは取りかえる、交換するというのが非常に多いようです。今回このような対等な立場で行なわれたという例は、国際法例上には私は前例のないものだと、これは大いに賛成をいたします。同時に、この問題がいよいよ実行されるについては、小笠原問題は相当長期間——おそらく荒廃されておる、かつての農地はなくなっておる、帰島きれる住民の生活も非常に昔と変わっておる、マングローブの木がたくさん茂っておると聞いております。したがって、さっそく東京都内に六千人、八千人といわれる方がおられて、第一の希望が帰島であり、復帰であることは当然なことだと思いますが、早い機会にこれが実行されるというと、直接政府援助をされて、この小笠原問題は単なる地方行政庁にゆだねず、新たな観点で、相当期間は私は国の援助によって、この帰島と開発をされなければならないと思います。これについてあなた方政府の見解が固まっておるやどうや。これは小笠原問題に対する私の大きな賛成であり、快事であり、総理に賛意を表する第一点と同時に、この後における方向を示していただきたいと思います。
  12. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 今回小笠原が帰ってきたことは、一億国民とともに喜ぶべきことだ、私はかように考えております。これは私の功績というようなことでなしに、今回実りができた、たいへんいいことだ、かような意味国民とともに喜びたい。日本の国力がそこまできたということも一つの大きな理由だと思います。  ただいま言われますように、こういう事柄がなかなか平和時に先例が少ない、そのとおりであります。しかし、考えてみると、沖縄、小笠原については日本の潜在主権があるのでありますから、この点はアメリカもちゃんとサンフランシスコ条約で認めておる。そういう形でございますから、この扱い方が初めてできたんだ、かように思います。そういう意味で、過去の吉田さんのサンフランシスコ条約における功績というものはすばらしいものだ、かように評価していいだろう、あらためてもう一度私はそれを考うべきだと思います。  しかして、外務当局が米政府とどういうように話をつけるか、ただいま非常に急いでおります。協定が早くできるだろう、かように思っております。協定という形になるのか、これはどういう形になるのか、その辺は外交にまかしておきたいと思います。ただいまいわれておりますことは、大体第三条による施政権を一方的に放棄すればそれでこと足りるのじゃないか、かようにもいわれていますが、どういうような形になりますか、スムーズにとにかく実現することを心から望んでおります。  ところで、日本政府といたしましては、小笠原の現状を十分知っておりませんから、できるだけ早く——もうすでに対策本部は設置したと思いますが、そういうふうに対策本部をつくって、そうして年が明けるととに現地調査をいたしますし、そうして実情を十分把握いたしまして、適当な復興計画を立てる、あるいはこれの開発援助に力をかすということをいたしたいと思います。それから後にこれはどういうふうにするか、またその期間をどのくらいの間、ただいまのような開発援助を直接するか、さらに地方自治体を通じてするか、それらのことも十分考うべきことだ、かように私は考えております。  また、軍事的な問題につきましても、これは本土並みになるわけでありますから、安全保障条約に基づく施設区域の提供というか、そういうことはもちろんでありますが、その他の事柄につきましても、ただいまアメリカが実際にこれを占拠して施政権を持ち、いろいろのことを行なっておりますから、技術的にも即時にというのはなかなかむずかしいのじゃないだろうか、その辺もまた粗漏のないように十分努力するようにいたすつもりでございます。
  13. 松野頼三

    松野(頼)委員 小笠原が返還されれば、当然これは日米安保条約の一般条約の中に入る基地施設使用ということになるのであろうと思います。それに関するものは、条約あるいは法律というものが必要で新たに立法提案されるのですか、あるいはこのまま自然に包含的に、日本の復帰がきまればすべてが自動的にこのまま付随するものであるか。要するに、国会に提案される条約とかあるいは法律があるのかないのか、これだけお聞きしておきたい。
  14. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいまのこれをいかにするか、この点では外務大臣にお答えさせたい。
  15. 三木武夫

    ○三木国務大臣 いま協定案の作成を急いでおります。しかし、その中にどういうふうに取り入れるかということは、今後検討いたしたいと思っております。
  16. 松野頼三

    松野(頼)委員 いずれ協定案は——案というか、いずれ国会承認という形のものが何か提案されるということだけはわかりました。内容についてはそのときにあらためてお伺いします。  次に、所信表明の中で北方領土。領土は国家民族の基本に関する問題であります。あらゆる場合においてあらゆる機会をとらえて、国際的に十分納得できるような明快な理論を立てて、北方領土も今後努力されなければなりません。北方領土の範囲あるいはその論拠というのは明確なものであると思います。北方領土の範囲も政府において十分理論的に、私は、今後とも変わらざる国民の悲願として、今回の小笠原の成功と同じように——北方領土はより以上問題があるやに私も観じます。これを機会になお一そう政府の努力と忍耐強い北方領土に対する現実的な活動をぜひ期待いたします。  次に、問題の沖縄の問題でありますが、共同声明の中を議題として本日はお尋ねいたします。  沖縄問題は、今回佐藤総理が訪米されましたのがちょうど——その前に岸総理・アイゼンハワー大統領の共同声明、第二番目に藤山外相・ダレス長官、第三番目に小坂外相・ハーター共同声明、四番目の池田総理・ケネディ大統領の共同声明、五番目が佐藤内閣総理大臣・ジョンソン大統領共同声明一九六五年、今回が第六回目の共同声明。この六つの共同声明の中に沖縄、小笠原問題が常に重大な重要問題として出ております。  しかし、これをずっと見てまいりますと、基本的に少しずつ変わって前進をしてきたと私は思います。第一の潜在主権ということばが出ましたのが、岸・アイゼンハワー大統領の共同声明のときに潜在主権ということばが共同声明の中に出ております。大統領は日本がこれらの諸島に対する潜在主権を有するという合衆国の立場を再確認したというのが出ております。これが岸・アイゼンハワー大統領の共同声明の中にあります。このときに、議会においては、潜在主権とは何ぞや、ただ空文じゃないか、冷凍じゃないかという議論もだいぶ出ました。潜在主権議論をめぐって、国会内に実は潜在主権という法的解釈、政治的解釈が出たわけであります。あの当時は、必ずしも今日のような事態が前進するという期待を持った方もあれば持たなかった方もある。しかし、今日見ると、この潜在主権ということばが明らかに一つの路線として、すでに小笠原が返還され、沖縄もこれと同様な姿になるということが国民の前に現実としてあらわれた、これがこの六回の中における順次変更したと同時に成功したことだと私は思います。ひとつもこの六回の中の方向とその立場は変わっておりません。ある方は軍事問題とすりかえたと言われております。この六回を終始重ねて見るならば、すりかえたところは一点もない。すりかえたと言う方は、自分の頭のほうがすりかわっておるのかもしれないと私は思う。私は、現実にこの問題を率直に見て、沖縄問題は非常な大きな前進だと思う。小笠原が前進として現実あらわれたならば、沖縄もこれにあわせてという印象を強める共同声明の文句を私はこの中に見られます。これが、今回の沖縄の全面解決ができなかったにしても、沖縄がこうあるべきだという一つの予想される会談の内容があったのだと実は私は思います。これは会談に立ち会われた方よりも、率直総理がはだに感じられたことじゃないか。また、この共同声明の中にも私が感ずるようなことばを、これを実は私が読んだだけではわかりませんので、総理にお伺いしたいのはこのことです。はだに感じ、直接与党の私がお聞きしたいのは、この中に、将来ともに沖縄がこの姿になるであろう、沖縄も、小笠原の解決が将来沖縄の問題としてこれが認められるであろうというふうな文句が私はあったと思います。この点は、「小笠原諸島の施政権の返還は、単に両国の友好関係の強化に貢献するのみでなく、沖縄の施政権返還問題も両国の相互信頼関係の枠の中で解決されるであろうとの日本国民の確信を強めることに役立つであろうと述べた。」これは明らかに小笠原の現実のこの成功が、沖縄もこれの方向に行くのだという日本国民の確信を強めるであろうというのが大統領のほうのことばであります。この一言を見るならば、私は、沖縄問題が完全に解決されなかったというよりも、すでに予約される姿というものが小笠原であらわれたということだと思います。これは、この問題を共同声明の文句で私が議論するより、その場に立ち会われた総理の感触が、私のこのいまのような感触かどうか、これは率直に総理にお伺いするのが一番正しいと思いますので、お伺いいたします。
  17. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 お答えいたします前に、ちょっと誤解を受けると困りますから申し上げておきますが、北方領土に簡単に触れられました。別に私の意見を求められなかったのです。そこで、国民の皆さんからは、北方領土も南の沖縄、小笠原も同じような原因じゃないか、かように誤解されるとこれはたいへんだと思います。北方領土は、これは南のサンフランシスコ条約の第三条に基づくようなものとは違っておりまして、歴史的にまたこういう事実が出てきた、この原因がはっきり違いますから、この北方領土に対する私どもの態度というものは、南に対するような態度とは根本的に違う。この点は誤解のないように願いたいと思います。(「わかった」と呼ぶ者あり)私は、この点は誤解のないことだと思いますが、あらためて一言いたしておきます。社会党からもわかったという不規則発言が出ておりますが、たいへん私はけっこうなことだと思っております。  そこで、答弁をいま求められましたお話をいたしますが、申し上げるまでもなく、この沖縄、小笠原、これはサンフランシスコ条約第三条に基づくものであります。したがいまして、この第三条から申せば、沖縄、小笠原、それは二つとも日本の安全保障にも、同時にまた極東の安全保障にも関係がある、こういうものでございます。しかし、この両方ともお説のとおり潜在主権を認めておる、本来日本の領土だ、これに変わりはございません。  そこで、日本の安全確保、また極東の安全確保から、これらの点をどういうように処理したらいいか。小笠原の場合は、沖縄が果たしておる役割りよりも役割りが小さい、かような意味で、今回は小笠原を返してくれたということであります。したがいまして、極東の情勢、あるいはまた今後の科学技術の進歩発展、あるいは国論の動向等を考えて、そうして沖縄問題とも将来取り組むわけであります。まず小笠原問題が解決したということは、同一条件下にある沖縄についても同じように解決ができるのだ、実はかような望みが持たれるわけであります。ただいま共同声明を読まれましたが、これは実は私が期待し、さように思ったということであり、これはジョンソン大統領ではございませんから、その点は誤解のないようにお願いしておきます。これは、私がこの点からこの共同声明をつくり、そうしてあえてジョンソン大統領がこれを否定していないところに意味があるのだと思います。私自身は率直にかように考えておる、必ず沖縄もやがては小笠原と同様に解決されるだろう、こういうことを申したについて、ジョンソン大統領は否定しておりませんから、その意味におきまして、アメリカも私どもの期待を裏切るようなことはない、かように確信するわけであります。
  18. 松野頼三

    松野(頼)委員 したがって、小笠原問題の解決ということが、沖縄問題への大きな前進の一つのパターンとして当然私はとれると思います。沖縄問題も実は相当の大きな前進を示したと私は思います。  この前、一九六五年の佐藤・ジョンソン会談の共同声明と今回のものと見ると、ずいぶん前進をした。その中に、同じ理解という中におきましても、相当な理解、あるいはわかったという理解、まあまあその辺の意思はわかったよという理解の度合いも違いましょうが、今回は十分な理解をしたということは、沖縄問題に関しては了解という意味理解にまで前進したことは明らかであります。その証拠に、両三年以内という年限が入ってきた。両三年以内に双方の満足し得る——いままでの五回の会談においては、了解とか好意を示すという理解の度合いはありましたが、このような両三年以内に双方が満足する返還をという期限が入ったというこの理解は、明らかにこれは相当な了解であります。したがって、この両三年内に満足し得るような返還の合意を得るようなものが交渉に入るということは、私は、沖縄の返還にもう一つの時間的目標が到達したと思います。ある方は、両三年をどうのこうのと言う方があります。しかし、これは、その会談の当事者である佐藤総理とジョンソン大統領以外はだれもこれの真偽を言う資格はない。その「両三年」ということとこの「理解」ということは、非常に大きな前進と理解であるという感じを私は持ちます。したがって、この際、総理から、でき得る限りこの「両三年」とこの「理解」ということばについて御説明をいただきたいと思います。
  19. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 これは私の確信だというので、それで、皆さんからもいろいろの批判を受けております。もちろん、大統領と私との間で両三年ということを明示的に約束したことはございません。しかし、私が両三年にぜひめどをつけたい、こういうことに対して、大統領自身がフリ・アンダースタンド、こういうことばを特に使っております。そのことば自身は、ただ単に承知したということでなしに、もっとただいま言われるような了解と解釈してもいいんじゃないかというぐらいに私も思います。しかし、そのことばはいずれにあろうとも、これらのいろいろな私から出した提案、これに十分理解を示し、またアメリカ側も、沖縄が果たしておる軍事的な基地、重要さというものをよく話をした、それらの討議の結果、さらに継続的に沖縄の地位について話し合おう、かようなことに同意をしたのでございます。そこで、私の実は確信が生まれておるわけであります。私は率直に申しますが、アメリカ政府、大統領と私との間に両三年の明示があった、かようには申しません。明示的な約束があったとは申しません。しかし、私は、この討議を通じまして私が確信を得た、かように申し上げるのでございます。
  20. 松野頼三

    松野(頼)委員 総理は非常に率直にすなおな御意見を申されたと思いますが、いずれにしましても、この共同声明というものが出されたということは、日本側の意向、ある場合にはアメリカ側の意向がお互いに一致しないものもあります。しかし、両方で了解の上でこの共同声明ができたということは、日本の言うこともアメリカは了解、アメリカの言うことも日本は了解、合意といかなくても、この共同声明というものは今後において必ず成果があがるものだ、総理のその理解が必ず現実として実現されると私は信じます。また、おそらくその確信を総理はお持ちであろう。この前のジョンソン・佐藤会談のときの模様と今回を見ると、総理の基本的態度は、非常に同じ路線を信念のまま進まれたように私は思う。第一回のときから今回まで一つ一つがその印象を受けます。しかし、これはあえて本日その結論を求める時期ではありません。さらに先の議論を進めたいと思います。  そこで、沖縄問題でもう一点、今回諮問委員会という性格が一つの問題として明快にされました。この諮問委員会というのは、高等弁務官に対する諮問委員会の地位なのか、あるいは国際的機関として日米対等の中における地位なのか、いま問題となっております主席公選とか日本への国政参加という問題はこの諮問委員会でやるべき性質のものなのか、この諮問委員会というものが非常な大きな権限があるのか、それは大きな方向を私は示すと思います。今後の沖縄における諸問題の解決のために、総理の受けられた諮問委員会——法律的にはいずれその場でけっこうですが、総理考えておられる諮問委員会は、主席のもとにおける諮問委員会なのか、日米対等の立場の中における諮問委員会なのか、あるいはこれは日米の中に橋渡しをする問題点を解決するのか、あるいは沖縄だけの固有の問題点を解決するのか、どっち側かということが、この文句だけでまだ実は——もちろん共同声明ですから今後の交渉もありましょう。総理から、前進された沖縄問題の中における諮問委員会の性格を一言お答えいただければありがたいと思います。
  21. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は、今回もアメリカに参りました際に、国民の世論を背景にして特に主張してきた、かように私は思っております。その意味では私自身が最善を尽くした、かように考えておりますので、国民の前に実はそれは確信を持って報告ができるのであります。  そこで、御承知のように、国民の世論としてまず固まりましたものは、一つはいわゆる沖縄問題懇談会でございます。もう一つは沖縄自身におけるいわゆる立法院の決議なるものがございます。そういうものが、国民の世論を背景と申しましても、これは具体的になっておるわけであります。そこで、先ほどのウイジン・ア・フュー・イアーズ、これは、両三年の間にというような点は、いわゆる沖縄問題懇談会が出した中間的な決議でございます。これを忠実に話し合い、忠実に披露した。そのことによりましてただいまの問題が解決をする、かように私は確信を得ておるわけであります。  そこで、もう一つの問題は、沖縄と日本本土との一体化、これを促進する一つの問題であります。今日までも日米両政府の間に協議委員会が設けられております。あるいはもうその協議委員会でこと足りるのかわからない、それより以上のものをやらなくともいいのかわからない、かように考える向きもありましょうが、一体化を進めるためには、やはり弁務官を中心としての諮問委員会をつくることが必要だろう。そうしてこれは日米琉三者がこれに代表を送るわけであります。その事柄は、高等弁務官に対して諮問に答えるとかあるいは意見を勧告するとかいうようなことではございますけれども、しかし、恒常的な、常時そういう機関が置かれるのであります。いままでの協議機関でありますと、これは随時に開いた。今度は恒常的なものになる。絶えずそこにおるということになります。そうして日本政府考えがこの諮問委員会を通じて高等弁務官に直接タッチできる、こういうことでありますので、よほど一体化を進める上において進歩だと私は思います。前進だと、かように思います。もちろん、これがただいま御指摘になりましたように国際機関なりやいなや、こういうことなりますと、国際機関といえば、必ず両国政府を縛るようなものが国際機関、純国際機関だ。しかし、これは純然たるものではそういう意味ではございません。ございませんが、この日本、琉球、アメリカ、それぞれの代表者が参加するということでは国際機関的性格は持っておる。しかし、その結論というか、諮問あるいは勧告は高等弁務官に対するものだ、こういうふうに見て、いわゆる国際機関として考えることはどうかと私は思います。この日米両国の問題については、これは協議委員会において政府を縛るものがございますから、そのほうで考えればいい、かように思います。ただ、日本政府考え方がこの委員会を通じて恒常的に、常時高等弁務官に影響を与えるというか、それに意見を述べる分、こういうことで違うと思います。詳細はもしさらにお尋ねがあれば外務大臣からお答えさせます。
  22. 松野頼三

    松野(頼)委員 諮問委員会の件につきましては、いずれ別の機会といたします。  そこで、沖縄問題の次に、防衛の問題を総理所信表明及び最近の政府の姿勢としてお伺いをいたします。  総理は、施政方針演説で、軍事力だけが平和確保への前提であった時代は去った、国民一致してみずからの国をみずからの手で守る気概を持つ、この二つが自主防衛という感じです。国民に対する防衛意識の印象に残った二点であります。はたして前段と後段とのつながりは、あえて私はここに論評を避けます。要するに、軍事力に猛進するのじゃないのだ。たまたま日米の共同コミュニケの中にも、同じように軍事だけが世界を支配する時代はもうあり得ない、だからといって、軍事のない時代もまだ理想、幻想としてしか世界にはない。ここが今日における防衛が必要である、軍事同盟が世界に網を張っておる、アジアにおいてもほとんどの国が軍事同盟の傘下にない国はないという現状だと私は思います。そこで自主、みずからの手でみずからの国を守る気概、これは特に変わったというか、当然なことだと私は思いますし、これが今日目新しく響くならば、実は響くほうがいままでの考えがやや違っておったんじゃないか。しかし、当然なことを当然に言ってなおかつ衆目を集めるところに、なお私たちは注意をしなければならない。自主防衛、ことばが妥当かどうか知りません。みずからの国をみずからの国民が守る、これがない独立国は、私はあり得ないと思います。したがって、本日はその観点から、同じ土俵の上で私は考えまして、自主防衛ということばがどうか、これはわかりません。このことばも、私はいまだに疑問を持っております。自主防衛で近いのは、単独防衛ということばがときどき言われます。これが私の解釈では、スイスあたりが単独防衛国家かと、こう感じますが、ほとんどが共同防衛体制の中において自主防衛の思想を生かす、方向を生かす、自国の国益に対処してみずからその行動をとる権利、また行動をとるというのが自主防衛であろうし、またたまたま共通の利害を有する国があるなら、それと手を組む共同防衛ということもあり得ると私は思います。そこで、自主防衛の姿から日本を今日考えてまいりますと、いろいろな論評がございます。あるいは防衛は非武装中立、これをもってわが国の防衛とする危険な考えもないとは言えません。裸防衛ということばになりましょう。しかし、それには世界に関する、周囲に関する情勢認識が幻想を帯びておる。その上でこのような意見が出てくるが、日本はまだ幻想に酔う時代じゃない。今日日本周辺を見ても、南北の朝鮮の問題、大陸と台湾の問題ベトナム南北の問題、アジアにおける今日の戦火というのは、非常な危険な状態にあると思います。アジアばかりでなしに、この二十年間に、カシミールの紛争、パレスチナの紛争、あるいはキプロス、あるいは先般のアラビア、これらを加えますと、約四十回の戦争または内紛が行なわれておる。まだ世界が平和だと言うには幻想過ぎると私は思います。  このようなときに、日本周辺を見ましても、目前にソ連、中共の軍事条約、一九五〇年から、有効期限三十年ですから八〇年まで。ソ連と北鮮、これも一九六一年から十年、その後は無期限のようであります。中共と北鮮、これは無期限であります。また自由諸国においては、ヨーロッパにおける各種条約と同じように、アジアにおいて米比、米韓、SEATO、CENTO、各国の条約がある。これはみな軍事条約で、お互いの国を単独で守るよりお互いの共同の力で守ろう。単独防衛では国の安全はない。したがって、共同の防衛力によってお互いの防衛の義務、防衛の負担を減らしておるのが、今日の姿であります。単独防衛と例をあげましたスイスにおいては、実はおそるべき多額な軍事費によって自分の単独防衛を守り続けております。私は、この意味で、日本の憲法、諸外国の憲法、世界の軍事条約、こう見ると、この危険な世界の中に、また一番危険を包含するアジアの中に二十年間、四十回の内紛、戦争の中に、日本が幸い一度も戦乱に巻き込まれることなく、またその脅威を未然に防ぎながら、私は今日まで日本が平和を守り得たことは、非常な国民の団結の力、国民の意思であり、またその政府方針というのが正しかったということを実証できると思います。しかし、いままでの過去においても、自衛隊、日米安保、あるいは治安、これらを完備して内外に備えたから今日の経済の繁栄をかち得たと私は思います。ただ座して平和を求める、徒食してわれわれが経済を繁栄さしたわけでは断じてないと私は思います。これが私は、防衛の今日における現状認識、この上で今後の防衛体制、あるいは防衛意識、あるいは日米安保、あるいは将来における沖縄問題も、観点一つとして進んでくると私は思います。最近沖縄問題にあわせて直ちに核の議論が、沖縄の核基地かどうかという議論が、直ちに実は議論されております。私は、沖縄問題は、両三年内にその協議をする、その交渉をするというそのテーブルの際に、その問題が議題になることであって、今日直ちに結論を出す必要もなければ、まだその時期ではないと思う。それより、日本アジアにおける安全と平和をどう考えるかという方向がきまらなければ、沖縄の核基地、あるいは自由使用だとか、あるいは制限使用だとかいう議論は、私は早過ぎると思う。その前に、日本アジアの安全をどうするかという方針がきまらない前に、一政府、一内閣だけの問題でなしに、国民全部がアジアの平和と安全を考えた上、その上で政府は結論を出すべき議題だと私は思います。そこで、その前提であるアジアにおける安全あるいは日本の国の平和を守る、この姿をどうするか、これが沖縄問題の解決を導く前にわれわれがみずから国内において討議し、研究し、方向を立てなければならない議題だと、私は実は思っております。  そこで、日本の脅威の一番現実的なものは、中共の核爆発、昭和三十九年十月、四十年五月、四十一年五月、四十一年十月、四十一年十二月、四十二年六月、非常に速度を早めまして、中共の核爆発から核兵器、核装備、核開発が前進していると私は思う。これを脅威でないという国は、アジアの中には一カ国もありません。兵器であり、装備され、開発され、射撃される準備をされるというならば、どこかの周辺の国、その射程距離の国は、脅威を受けることは当然であります。一切使わないという保証のない核兵器が世界に存在すること自身、唯一の被爆国である日本にとっては非常に大きな関心を深め、再び日本に核の被害を及ぼすようなことは、断じて日本はしてはならないと私は思う。それには核がなるべく世界に兵器として使われないようにという悲願も、残念ながら、一つ一つと各国に保有され、核兵器がもうすでに五カ国ぐらい保有されるという逆な実態を今日示しておる。アジアぐらいはと言ったそのアジアにおいてさえ、核開発、核装備がされるというならば、私たち自身が核からいかに日本を守るかということを真剣に考えなければならなくなる。核禁止、拡散防止というその叫びよりも、われわれ自身がどうしてこれを守るかということが、政治の、あるいは政治家の重大な問題だと私は思います。ヨーロッパにおいては、この核が逆に使われざる核平和ということばに変わって、核によって平和が逆に保たれている。もちろん、使われざる核ということばで、核兵器がお互いの自制心、抑止力というものでお互い自身に自制して、逆に平和は保たれている。ある場合には、核によって外交が進められる。核対話ということばさえ出てきて、核を持っている国だけが対話あるいは勢力を持つという外交にさえ、実は変わりつつあると私は思います。したがって、この現実を忘れて、精神的な面だけで日本政治を動かすわけにはまいりません。そこで、中共の核に対する対策として、日本の国防、日本の基本的姿勢は、どうすればこれに対処できるか、どうすれば日本国民を核から守れるか、これが私の今日の一番念頭から去らない防衛の基本であります。国防の基本方針の中にも、非常に明快に出ております。また、先般、侵略に対する抑止力として有効な防衛力を整備する、日本の防衛は侵略に対して、これを撃退するにあらずして、侵略に対する抑止力としてまず第一に防衛力を整備して、その次に有効な防衛力としてこれを活躍する、活動する、これが日本の国防の基本方針と三次防の大綱の中に、私は明らかにうかがわれます。しかし、問題は、日本の今日の問題において、核攻撃に対するもの、この答えがなかなか出てまいりません。一般の防衛力に対しても、同様に明快なものが出てこない。私はこの点において質問として答えを導き出したいのは、中共の核に対してどういう姿で日本はこれを取り上げ、またどういう姿で日本国民を安全に置くか、これが第一点。  第二点は、日本の防衛力というもの、あるいは防衛というのは、何も自衛隊だけをふやすことが防衛だとは私も考えておりません。しかし、実力部隊である防衛をになうものがなくては、これは防衛の姿にもなりません。第一に、中共の核に対する日本の脅威と、これに対して国防上はいかなる姿をとるか。第二点は、日本のみずからの国を守るということは、何を今後具体的に推進されるか、この二点をお伺いしたいと思います。
  23. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私の所信表明演説から、実は論争を巻き起こしております。私はいわゆる防衛問題、これはうらはらをなすものは、申すまでもなく、わが国の安全をどうして確保するかという問題なんです。防衛論争こそはわが国の安全論争だと、かように私は思っております。私自身がしばしば申しますように、総理大臣というものの責任、それは一体何なのか。申すまでもなく、わが国を安全な地位に置いて、そうして国民が自由濶達にそれぞれの才能を伸ばすことができる、そういうものが私の責任だと、かように考えております。私はその観点から、やっぱり今日までの自衛隊、同時にまた日米安全保障体制、これがわが国の安全を確保しておるんだ、したがって、しばしば申しますように、この体制はくずさない、かように実は考えております。  もう一つ、この際私どもが忘れてはならないことは、わが国の平和憲法であります。また核に対する基本的な原則であります。核は保有しない、核は製造もしない、核を持ち込まないというこの核に対する三原則、その平和憲法のもと、この核に対する三原則のもと、そのもとにおいて日本の安全はどうしたらいいのか、これが私に課せられた責任でございます。それがただいまやかましく言われておる防衛論争という形でありますが、実は防衛論争じゃなくて、わが国の安全論争なんだ。そうしてわが国の、安全ということについては、われわれ自由民主党のように、ただいま自衛隊、自衛力を持つんだ、そうして日米安全保障条約、そのもとにおいて安全を確保できるのだ、かように申す者もございますし、一部には非武装中立論、これもございます。さような意味で、自衛隊はこれはよけいなものだ、かようにも言っておるし、日米安全保障条約は戦争への道だ、とんでもないものだ、かように実は言っておるように、ただいま国論が分かれておるわけであります。しかし私は、私に課せられた責任から、現状が最も望ましいことだ。やむを得ない方法だと、かようにも思いませんが、私は望ましいことだ、わが国の安全はそういう意味で確保される。したがいまして、私はジョンソン大統領とこの前一九六五年に会ったときも、また今回会ったときも、日米安全保障条約というものは日本が受けるいかなる攻撃に対しても守ることができるのか、言いかえるならば、核攻撃に対してもこれはやはり役立つのかと、こういうことを実は申しております。ジョンソン大統領は、明らかにあらゆる攻撃から日本を守りますと、かように申しております。これがいわゆる日米安全保障条約の目的であります。これは攻撃的なものでは絶対にございません。私は、このことは平和憲法のもとにおいても矛盾なく守られる筋のものだと、かように考えております。  したがいまして、いま中共、隣の国中共が核兵器の開発をしておる、これはただいまお話しのとおりであります。もう六回の実験もやっておる。しかし、これからさらに小型化されるとか、あるいは運搬方法を完備するとか、まあ長距離ミサイルですが、そういうようなものを開発するには、まだしばらくかかるかわかりません。しかし、過去の経験から、私どもの予想以上の早いスピードでとにかく開発されておる。このことを考えますと、今後この開発がおくれると、かように私は思いません。しかし、私は中共の核だけを云々するのではないのです。核兵器を持っている国に対しましては同じように、アメリカであろうが、ソ連だろうが、中共だろうが、フランスだろうが、イギリスだろうが、もう人類の存立を危うくするような核兵器、これはないようにしようじゃないか、絶対に使わないようにしようじゃないかという、そういう考え方日本平和憲法の精神を述べておるのが、現状でございます。私は、今日中共が核兵器を持ちましても、ただいまのような安全保障条約のもとにおいて日本の安全は確保される、かような確信を持っております。しかし、いずれにいたしましてもこの種のものはもう世界からなくなるような、そういう時期がこなければならないものだ、かように私は思います。ずいぶん幻想的な言い方をするようでありますが、いま宇宙開発の時代だといわれておる。どうして地上ではかようなものが使われ、そうしてお互いの生活を犠牲にまでして核開発をするのか、このことを私考えるときに、もっとわれわれにも幻想的なものがあっていいんじゃないのか。平和、そのためのただいまの日米安全保障条約が持つ戦争の抑止力、これはもっと高く評価していいんではないだろうか、かように私は思っておる次第であります。ただいまそういう意味でこの日米安全保障体制は、今後も続けていくということを申しておるわけであります。これがただいまの中共の核武装に対する日本の安全確保の方法であります。  もう一つは、やはり私どもがかような意味で安全保障体制をいま整備しておるのだ、そのことはわが国の安全につながることなんだ、この点を国民に十分理解してもらいたいのです。みずからの手でこの国を守る、こういうもののうちには、みずからが兵器を開発することもございましょうが、それよりも、何といってもまずとっておるその政策についての十分の理解を持つこと、それが望ましいことであり、わが国の安全が確保されるゆえんだ、かように私は思うのでございまして、特に声を大にして、みずからがみずからの国を守るその気概を持ってほしい、そうして具体的措置についても政府に御協力を願いたい、かように実は申しておるわけであります。
  24. 松野頼三

    松野(頼)委員 戦後二十二年たちまして、核問題に関しては、政治の中では非常な禁止的発言、あるいはタブーとされておった時代もあります。しかし、私たちは原子力の平和利用をはじめ、原子力発電、原子力商船あるいは原子力を推進力とする軍艦も、もうすでにできております。また、ほとんど水上艦艇、水中艦艇は原子力でなければ通用しない時代、原子力船が寄港すれば放射能が海を汚染するといった時代はもう過ぎて、次の時代に原子力、核問題は前進しつつあると私は思います。いうなればこれは入り口であって、今後いかなる方向発展するか、これによっていかなるものが生み出されるかは、まだ無限なものだと実は私は感じます。そういう感じから、将来ともに核問題あるいはその他原子力を含む問題というのは、いままで二十三年が最後じゃなしに、これからこの問題の議論を公平な立場で正しく見直す時期じゃなかろうか。あるいは次の世代においては、核がまた変わった形で世界のひのき舞台に登場するかもしれません、あるいは外交に、あるいは条約に、あるいは宇宙に。そう考えますと、佐藤内閣においての今日までの堅持された態度、また今後も堅持されるでありましょうが、将来の次の時代は、また次の時代考えるべき余地はあるんじゃないかという気が私はいたします。憲法上の問題はあえて私はどうこう——憲法制定当時は核問題というものはまだこんなに議題になっていなかった時代ですから、政府方針としては一貫して総理のお答えのとおりでありますが、次の時代に核問題、原子力問題を考え直すという時期は、やはりその発展、世界の情勢に応じて日本もとり得る余地があるのじゃないかと私は実は思います。これは総理は、おれの時代はおれが答えるので、次の時代まで答えられるかと言われるかもしれませんが、その点は間口をあけておいてもらわなければ——いずれ私のほうが総理よりも次の時代になることは間違いないのです。われわれの時代が来ることは間違いないのです。したがって、次の時代を制約し得るものは、憲法だけだと私は思うのです。政策がその権力のある、影響力のあるときは——政策は憲法と同じように、法律と同じようにその効果があるが、その次の時代を制約し得るものは憲法以外にない。改定されなくても改定されても、その憲法の存在だけが次の時代を制約できると思う。ところが平和憲法の中には、核というものは実は明快に書いてありません。その憲法の精神を類推して、各官房長官あるいは法制局長官がいろいろ答弁されております。全部読んでみましたけれども、そう明快なものはありません。だいぶいろいろ変わっております。私は、今日この結論を出さなくて、次の時代の結論は次のものに出す余地を与えておいてもらいたい。また与うべきものである。憲法はそれを制約していない。佐藤内閣、保守党内閣としての佐藤総理の三選、四選、五選まだやられても十年です。それ以上は次の時代のものに対する間口はあけておいてもらいたい、これは議論をする意味じゃありませんが、私はその考える余地を残してもらいたいということだけを申します。  次に、あと物価と文教と政治資金が残っておりますが、次に移る前に総理の答弁をお願いします。
  25. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 先ほどの実は答弁漏れがございますから、その点を補足さしていただきたい。  先ほどの話で沖縄の核基地云々の話が出ております。ただいまのところ沖縄がどういうような状況であるか、私には十分わかりません。しかしながら、この沖縄地域、これは米兵約四万五千くらいはいる、これは大きな補給基地であること、これは確かであります。したがいまして、この点についての問題は、沖縄が返ってくるときに考えればいいじゃないかという先ほどのお話がございました。私は、そのとおり実は思っております。今日からこの基地がどうなきゃならないとか、兵隊は、米軍はよけいだとか、そんなことをいうのはどうかなと実は思っておったのでございます。先ほど結論を出していらっしゃいますので、さらにこの問題を真剣に取り扱う、慎重に扱う、そういうことでよろしいのではないか、かように思っております。  それからもう一つ。いまのいわゆる平和憲法の問題と、武器としての核兵器というものと、平和利用としての核というものとは、やはり私は区別すべきものじゃないだろうか、おそらく今後ともそういう方向で進むのではないだろうか。私は次の時代を云々するわけじゃありません。また私が幾ら次の時代を縛ろうと申しましても、私、もういなくなって、死んでしまったら縛りようがございませんから、そういうことは実は申しませんが、おそらくわれわれの希望、われわれの理想としては、いわゆる平和利用ということは今後進められるだろうが、核兵器はとにかくこれから地上からなくなる、こういうことが望ましいことではないか、かように思いますので、それだけ補足説明しておきます。
  26. 松野頼三

    松野(頼)委員 総理の言われることはよくわかりましたが、同一な頭じゃありませんから、必ずしも同一ではございません。これは同一だと私は了解はできません。しかし、それは本日の議題じゃありません。  次に、問題点の物価問題と財政硬直の問題。あるいは与党質問でも、きょうは突然のことで、大蔵大臣が資料のどうのと御心配になるようでありますが、きょうはほんとうに突然で、質問通告を出しておりませんから、資料のことについてとやかく申しません。考え方さえ示していただけば、総理大臣と大蔵大臣けっこうであります。ただ、私の質問の中には数字が入りますが、これは質問を明快にするための数字で、この数字にとらわれず、答えは明快にしてもらいたいと思います。  第一は、佐藤内閣における物価問題、これが今日の一番大きな関心事であります。端的に申すならば、四・五といわれますが、今後努力によって四・三くらいの努力をされなければならない。今日すべての中で、国民の、あるいは財政の中においても、物価が非常に大きな問題を占めておる。ことに十月以降急速な物価上昇の見えることは、警戒を要すると思います。年度平均において必ずしもべらぼうに上昇したとは見えませんが、十月以降の後半期の上昇率は警戒を要する。一方また景気調整という姿でこれを推進するならば、不況下の物価高という最も好ましくない経済事情におちいりはせぬかというのが、私の一番の心配であります。  第二番目には、公共料金、公定料金、消費者米価あるいは専売品価格、これは政府が直接やられることですから、なおこの政策は十分物価の動向とあわせて政府自身が真剣にやってもらいたい。  第三番目に、生産性に見合わない大幅な賃金が、物価上昇の要因であることは議論を待ちません。総評で一万円ベースアップなどというのは、これは少し物価問題からいうとナンセンスであると、私は思います。物価と賃金の悪循環を防ぐため、適正な方法、あるいは政府機関の公社公団、この賃金体系等も考えなければ、基本的な対策は立たないと私は思います。勇断をもって物価問題に対する総合的な対策を本気でやってもらいたい。総理は非常に熱心でありますが、なお一つ一つ回答を求めて、各大臣からの統制ある行ないを現実にやってもらいたいということを私はほんとうに望みます。  第二番目に財政。時間がありませんから二つ続けて申しますから、二つ続けてお答えを願います。  四十三年は、実は一兆円という多額な自然増収が見込まれます。その中で、六千八百億というのが当然増という経費だといわれる。にもかかわらず、財政硬直といわれるのは、私は財政硬直の犯人がどこかにあると思う。では何が財政硬直の犯人かということを示していただかなければ、財政硬直であるという理解国民はしにくい。ほんとに自然増収がないというなら別です。一兆といわれております。その中で、六千八百億は当然増だといわれる。それでも残りは三千何百億というものがある。では何が財政硬直の犯人か。だからこれを退治しなければならないんだ。何となしにその辺が説得力が少ないんじゃないか。地方財政は数年前からどちらかというと今日のような姿をとってきております。言うなれば、財政硬直はもう地方財政では経験済みかもしれません。この辺、一般に考え——人件費の上がりもありましょう。しかし、それもいままで、四十二年度予算においても、同様に人件費の増はなかったとはいえません。今後組まれる予算に対する希望ですから、まだ今日は、与党政府お互い意見を出し合って、国民の疑問を解くべき時期だと私は思います。それをなおひとつ説明を願いたい。財政硬直の原因総理には物価に対する覚悟をお伺いいたします。
  27. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は、ことしの予算をつくったときに、不況の克服と物価の鎮静に努力する、かように約束いたしました。しかして不況の克服はでき上がりました。また、経済は生きものであるから、絶えずそのつどこれに対する適切なる対策を講ずると、かような約束をしてまいりました。御承知のように、なかなか、安定成長というか、われわれの考えた実質成長以上の成長をやっておる。こういうことで九月以降引き締めに転じたのでございます。まだその効果は十分出ておりません。しかし今後ともそういう効果が出てくることを期待しておりますが、また物価そのものも、初秋まではまず安定成長の方向にいっていた。しかし、消費者米価を上げてから、なかなかそうもいかないようですが、しかし、いまのところ、大体年間の四・五に押えるというか、それ以内にとどめるというか、その見当は一応ついておるように見受けます。しかし、それにいたしましても、冬の一月から三月までの生活必需物資等の値上がりがどうなりますか、ここに一つの問題があると思います。これがうまくわれわれが期待するような方向でいけば、四・五でなくて四・三にも下がり得るだろう。しかし、また逆な場合も考えられる。いずれにいたしましても、この辺に一つの問題がある、かように思いますので、一そう気をつけてまいるつもりであります。  また、硬直化の問題については、私から申すよりも、大蔵大臣からお答えいたさせます。
  28. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 財政硬直化というのは、これを裏返して言いませば、財政が弾力をなくしているということでございまして、弾力をなくしていることは、税収の自然増の多寡ということとは大体無関係でございます。と申しますのは、先ほど数字をあげられましたが、たとえば法律、制度の拘束によって当然経費が増額されなければならぬというもの、いわゆる当然増といっておるものの経費は、来年ざっと計算すると、いま言われたような数字になろうと思います。本年度はどうだったかといいますと、そういう経費は本年度三千七、八百億円だったと思いますが、これは来年どう計算しても七千億円前後になる。その次に、当然増に準ずる経費、大体、計画に伴って年々増額されていくべきもの、それから国民の所得水準が上がったことに伴ってやはり増額さるべきもの、というようなものも、計算しますと一千億前後はあろうと思います。そうしますと、この二つをもっても、これはもうたいへんなことでございまして、いまおっしゃられたような一兆円というような自然増収は来年見込まれません。もしこの二つの経費もまかなえないということでしたら、これはたいへんでございますが、かりにその経費をまかなえるだけの自然増収があったとしましても、新規政策費というものがないということはたいへんでございまして、新規政策費がないということは、もう予算の弾力性を欠いておるということでございまして、このことを私どもは予算の硬直化といっておるものでございますので、当然、経済が伸びている以上は、増収の絶対額は去年より少ないということはないと思いますが、かりに増収の絶対額があっても、国費全体の中に占める当然増、また、それに準ずる増が九割以上にもなるという姿は、これはこれからの政治をほんとうに硬直化せしむるものであって、いまのうちにこの措置をつけ、解決の糸口をつけなければたいへんだということを私どもは心配している。こういう実情でございます。
  29. 松野頼三

    松野(頼)委員 なお、総理のおことばにもあったように、ぜひひとつ努力されて、四・五は四・三くらい——与党も一体となって応援しますから、その目標と努力で、物価を一つでも安定の口火を切りたい。こういう上げムードを一ぺん押えて、そして下げムードにするには、何らか一つの区切りが私は大事なことだと思います。ついては、企画庁長官も努力されて、四・三には年度内に見込みをつけてもらいたいということを希望します。  大蔵大蔵の言われることもよくわかります。どうぞひとつ、この際ですから、予算の組み方に改善すべき道があるのじゃないか。これは与党政府で常に議論になる。大蔵省の主計官が、小さな橋とか、川とか、外務省の在外公館まで手を入れる、あるいは査定するところに硬直性の原因もあるのじゃないか。もう少し流動できる予算を各省に与えるべきだ。言うならば、総ワクを各省大臣責任を負ってその中で自分の政策を盛り込むという、行政機構における人間の流動性と同じように、予算の組み方の流動性というものも、私は今回はおやりいただける時期ではないかと思います。硬直化といわれる看板を逆に善用されて、予算の組み方の流動性によってこの予算の硬直化を取り除かれる、血管が動脈硬化しつつある、コレステロールの多いものをこの際取り除くには、一番いいことは、予算総体よりも、組み方をお考えいただくと私はありがたいと思います。これは、大蔵大臣のみならず、総理大臣にも御理解いただけることじゃなかろうかと、これはあえて質問とはいたしません。提案といたします。  まだ、実は問題が二点あります。一つは、文教の問題として羽田事件。わが国は世界で最も教育普及の高い先進国であると一般的に見られ、これに異論をはさむ者はありません。しかし、教育の機会均等という理想が、ある意味においては、一部の学生にしろ、学生たる身分をもって、レジャーにあるいは貴重な青春を使い、学業の本分を忘れる姿もなしとせぬ。社会の重要な構成員である彼らが、構成する社会を自治という形で運営しようというのは、みずからその自治に値する行為と行動をとらなければならないと私は思います。羽田事件における論評は、私がいろいろ申すまでもなく、ほとんどの論説、ほとんどの国民からこれに対する憤激、学生のあり方及びその管理者に対する憤激が出ております。私は、この問題については、ただ今日、一、二の問題として見過ごすわけにはいきません。学生運動の異常な事態だとか、許せぬ学生デモの暴走とか、羽田事件のはね上がり学生、暴徒学生には容赦するな、羽田乱闘に思う、暴徒にひとしい行為、学生とは思わぬ、これぐらい私は世論が統一されて学生問題に対するものはないと思います。政府当局に対してはほとんどありませんが、ただ一つ、残念なのは遠慮し過ぎるという声が一つあります。政府に対するおしかりは、遠慮し過ぎることがよくないということであります。それぐらいこの問題は、私は、ただ一つの小さな事例として、過去のものとして見過ごすわけにはいきません。一回、二回、これが将来への大事な道を誤らないように、この問題については、強く政府の中で恒久的に、今後の問題をたしなめる意味で確然たる態度と方向を示していただきたいと思います。
  30. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 羽田事件に対しては、いろいろの批判を受け、また政府も鞭撻もされておる、かように思います。これは一つの問題はやはり教育問題、同時にもう一つは治安問題、二つの面からこの問題を取り組まなければいけないと思います。  治安という点では、特別な部類の特別な階級のものが治安関係から除外される、かようなものではございません。治安には、すべてのものはやはり治安を守っていく、その秩序破壊に対して、これを守るというこの責任がございますから、学生といえどもそれは同様でございます。しかし、学園の自治あるいは学園の研究の自由、それらの点については、私どもは尊重するという、そういう立場でなければならないと思います。そういう意味で、学校の管理者の責任というものは非常に私は重いと思います。今日、学校管理者、そういうものがその責任を果たすということで、そして十分学園の自治を守っていく、こういうことであってほしいと思います。最近、京都大学の学生部長が告示をした、これなぞは私は、たいへん管理者として当然なすべきことを徹底を期しておるのではないかと思います。その教育問題、それから、ただいま申します治安問題、この二つの面から問題を解明していかなければならぬ、対策を立てなければならぬ、かように私は思っております。
  31. 松野頼三

    松野(頼)委員 なお、政府及び総理大臣の決心と実行を切に期待と希望いたします。  最後に、政治資金と選挙区制について、時間がありませんので簡単に申し上げたい。  政治資金の規正法につきましては、先国会で政府は非常な大きな尊重された答申案の原案を提案をされました。その審議の経過、これが第一。第二番目には、その後において区制の答申が出ました。この二つが前国会から今国会における大きな政治資金規正法に対する次に考えなければならない二点だと私は思います。  政治資金は、清潔に、正しく、また、これを規正するということは必要なことだと私は思います。ただ、その案の内容が守り得ないもの——今日でも政治資金規正法というのは現存しておるわけであります。しかし、今日の政治資金規正法の現状においては、まだ現状と合わないというので、政治資金規正法の改正ということで今回出されるならば、その時点における政治あり方国民の対する受け取り方、あるいは国民の希望するものというものをさらに検討されて、ぜひ次の国会には提案、審議、可決されんことを私は望みます。  同時に、選挙区制についての答申でありますが、これは実は非常な複雑な審議を経まして、最終的にまとまりましたのは、選挙区制としては小選挙区制を中心とした案、これが絶対多数であります。六つの案が出ました。しかし、小選挙区制を中心とした案が実は絶対多数であります。不幸にして与野党の議論はまつ二つに割れております。しかし、野党の中にも、また三党、四党が一致してはおりません。また、みなおのおのの案が出ておる。与党の案、野党の案が四つ、これぐらい実はおのおのの考えが分かれるものはありません。また、答申案そのものも、学者の中にも学者としては権威のある方が多かったと思いますが、経験の少ない方が多かったために、学識はあっても経験がない、経験があっても学識がない、この両方の感じをこの審議会が受けた結果、この答申案というものが必ずしも一本にまとまらなかったと、私は過去の経験を反省しております。今後この問題については、資金と同時に区制、金のかからない選挙という、そのもとにおける政治資金の規正のしかたと、現行制度における資金の規正のしかたとは、やはりそこに土俵が違うと私は思います。かりに区制改正がならなくても行なう政治資金なのか、区制改正を前提とする政治資金なのかということは、これ非常に立法の段階において違ってくると私は思います。したがって、政治資金規正については、ぜひ国民の十分な理解の得られるように、政府において取り扱いをしていただくことを私は希望して、質問にかえます。
  32. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 松野君は選挙制度審議会の特別委員としていろいろ御活躍され、その実情をよく御承知のことだと思います。また、私どもは、この選挙制度審議会の答申に基づいて前国会に政治資金規正法を提案いたしました。しかし、ついに不成立になりました。また、苦い経験があるわけであります。  区制の問題については、今回もいわゆるこの選挙制度審議会で最終的にまとまった御意見を実は伺うことができませんでした。しかしながら、区制についていろいろの意見があり、ただいま御指摘になりましたように、大同小異ではあるが、小選挙区制が圧倒的に多数だという、こういう結論のようにもお見受けいたします。しかし、いずれにいたしましても、これは一つにまとまっておらないだけに慎重に取り扱わなければならないと思います。  この区制の問題と資金規正の問題と、これを同時に並行して出せという御意見もございますが、私どもはすでに前国会に政治資金規正法だけは分離して実は提案をいたしました。しかし、苦い経験がございますから、今後これの扱い方については十分慎重にいたさなければならないと思います。また、提案する以上、それは必ず成立するものでなければならない。また、必ず成立させなければならない。これが政府責任でもあり、与党責任でもある、かように考えますので、十分これらの点を勘案いたしまして、慎重に扱うつもりでございます。  ただいまのところ、もうすでにしばしば申し上げましたように、通常国会にはぜひとも成案を得て御審議を得るようにいたしたいと、かように私は考えております。したがいまして、区制とはあるいは別になるかもわかりませんが、政治資金規正法の問題は、前国会の経験もございますから、ただいまのように慎重に扱うが、通常国会にぜひ出したい、成案を得たい、かような気持ちでございます。
  33. 松野頼三

    松野(頼)委員 以上をもちまして、与党質問を終わります。率直な答弁、また、かみ合ったりかみ合わなかったりしましたが、本日の質問をこれをもって終わります。(拍手)
  34. 二階堂進

    ○二階堂委員長代理 午後一時より再開することとし、暫時休憩いたします。    午前十一時五十九分休憩      ————◇—————    午後一時八分開議
  35. 植木庚子郎

    植木委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。成田知巳君。
  36. 成田知巳

    ○成田委員 私は、日本社会党を代表いたしまして、先般の総理所信表明並びに日米共同声明につきまして、問題点を順次お尋ねしたいと思います。  総理は、南ベトナム訪問の際には、御承知のように羽田の流血デモで送られました。また、アメリカ訪問にあたりましては、由比老人の焼身自殺、この抗議をあとにして出発された。日米会談を終えまして日本に帰ってきました日には、沖縄における十数万の弔旗の県民大会で迎えられたわけであります。このことは、幾ら総理が訪米の成果を声を大にして宣伝されましても、総理の一連の行動が一体日本国民に何をもたらすか、その危険性について国民が直感しておる、その真実を国民は見抜いておる、こういう証拠だと思います。今回の日米共同声明を見まして国民ひとしく異様に感じますことは、こういう共同声明としては珍しく長文です。十項目にわたる共同声明の中で、国民が最も関心を寄せておりました沖縄問題については、第七項目で取り上げられておるだけなんです。その内容につきましても、全国民期待したものとはおよそほど遠いということを後ほど明らかにしたいと思いますが、したがって、国民は、日米会談が全くアメリカのペースで行なわれた、沖縄問題は日米会談の主たるテーマではなかったということ、むしろ沖縄問題をえさにしてアメリカの極東政策に軍事的、経済的あるいは政治的に協力するという危険な針をのまされた、こういう印象を国民はぬぐい切れないわけなんです。そこで、以下質問を通じまして問題点を明らかにしていただきたいと思いますが、質問は具体的にいたします。したがって、答弁も要領よく、具体的にお願いしたいと思います。  まず、最初の問題でありますが、総理はジョンソンと第一回の会談をやられた。会議の席から出てこられたときに非常にふきげんな様子をしておられた、こう日本の新聞紙は一斉に報道しております。その理由は、沖縄問題を総理が出したときに、ジョンソン大統領は、その問題はマクナマラとラスクに話してもらいたいと軽くいなされた、こういう情報なんですが、真相はまだあると。すなわち、総理がジョンソンとお会いになったとき、まず最初にジョンソンから出されたのはポンドの切り下げ、ドル防衛、これについてどれだけの協力をしてくれるんだ、こういう強い要請を受けた。それがふきげんの真相だ、こう伝えられておるわけなんです。そこで、総理はジョンソンとの会談の際に、ポンド切り下げということを予想しておられたのかどうか、また、アメリカのドル防衛に対する協力要請というものを予想して会談に臨まれたものか、それをまず承りたいと思います。
  37. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 出かける前に、大蔵当局から、ポンドの不安ということを聞いて出かけました。
  38. 成田知巳

    ○成田委員 ポンドの切り下げがあるということを聞いていかれたのですか。
  39. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 切り下げがあるとは聞いておりませんが、ポンドは何とかしないとたいへんな状態でございますと、こういうことを大蔵当局から聞いて出かけた、かように申すのです。
  40. 成田知巳

    ○成田委員 それから、ドル防衛について、アメリカの強い要請があったということは事実でございますか。
  41. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私がふきげんで出たという話ですが、まことに重大なる交渉を持つのでございますから、そんな浮いた顔で私が出てこない、これは当然でございます。また、ジョンソン大統領から各般の問題について話がございました。これは沖縄、小笠原の問題も、極東の問題も、また国際情勢一般についても、またさらに、いまのような通貨の問題ももちろん話が出ております。
  42. 成田知巳

    ○成田委員 現実にポンドの切り下げが行なわれ、ドル危機がいま問題になっているわけですが、これはもちろん、資本主義国家間におけるところの矛盾が、私は激化した一つのあらわれだと思うのですね。一歩踏みはずしたら資本主義国家群というものは恐慌に突入する、こういう重要な問題を包蔵しておると思うのです。このことは、ことばをかえて言えば、IMF体制の危機、ドルによるところの世界支配、これが一大ピンチにおちいっていることじゃないかと思うのです。総理は、こういう事態を一体基本的にどうお受け取りになっているのか。今後の見通し、さらにわが国の貿易、経済、金融に及ぼす影響、これに対する対策、これについての総理としての基本的な考え方、大綱をひとつお示し願いたいと思います。
  43. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 成田君から簡単に、資本主義国家群のこれは当然の道だ、かように結論を下しておられますが、私は必ずしもそうだとは思いません。しかし、ただいままでのいわゆる国際決済通貨としてのポンドの占むる地位、これはたいへんな動揺だと思います。この点では、ポンドを国際決済の通貨に使っているのは自由主義国家群ばかりじゃございません。共産主義国家群にもポンドを使っている国がございます。したがいまして、その国の通貨としての価値の問題と、また国際通貨、決済通貨としてどういう地位を持つか、その二つに分けて考えなければならない、かように私は思います。  そこで、ポンド自身の切り下げというものが及ぼしておる影響、これはたいへんなものだと思います。さらにまた、英米等が利子の引き上げをした、こういうこともまた影響がございます。幸いにしてわが国の円は、たいへん国内実情等からささえられておりまして、ただいま強い状況にありますから、私は円については心配はないと思います。しかし、この円自身はさような状態でございますが、わが国の外貨保有高等から見ると、これは、積極的に対外的にこれを援助するような、それだけの力はございません。また、そういうことを思い切ってやれば必ず円にも悪影響があるだろう、かように考えますから、そこで私どももこれは慎重に取り組まなければならない。まず第一にあらわれてくるのは、どういうことにあらわれてくるだろうか。必ず輸出競争と申しますか、輸出の面できっとむずかしいことになるのじゃないだろうか。そういう意味でわれわれは、今日当面しておるこの国内経済を打開するためにも、貿易伸長、ことに輸出振興をはからなければならない。そういうことに影響のあるポンドの状態、これについては十分注意していかなければならぬ、かように私は考えておりますし、また、資本の導入等にもいろいろ影響がございましょう。短期、長期合わしてそういう問題がある。これらの点も十分気をつけていかなければならぬ、かように思っております。
  44. 成田知巳

    ○成田委員 日本財政に対する影響
  45. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 日本財政の問題は、ただいま当面しておる問題と、もう一つは、来年度予算編成の問題この二つに分かれるわけです。ことしの予算編成の際に、おそらく皆さん方にお約束いたしました。当時申しましたのは、国内経済は動揺しておる、そういう状況であるから、まず第一に不況の克服だ、もう一つ経済を安定成長に乗せていくことだ、そうしてそれがわれわれの見通しと狂った場合には、適時適策、適当なる策を立てていく、こういうことをお約束したように思います。不況の克服は、これはできました。また、ただいまもたいへんな消費状況でございます。昨日の日曜日などは、もうこれはたいへんな百貨店の売り上げ高。しかし私は、今日のこの経済の状態はわれわれが考えたより以上の成長をしておる、これはもういなめない事実であります。そのことが同時に、国際収支にも悪影響を与えておる。健全性を失わんとするというか、非常な危険がある。そういうところで九月以降引き締めに移ってまいりました。この状態は、今後とも引き続いて私どもがとっていかなければならないと思います。そこへ持ってきて、ただいま御指摘になりましたポンドの異変もございますし、ポンドをめぐって、やはりドルも同じような懸念がある。こういうようなことが一連の問題でございますから、わが国の経済が置かれている、国際経済が置かれておる立場、これはたいへん困難だと思います。したがって、来年度予算編成におきましてもやはり縮減する、その方向で進みたい、かように考えております。しかし、これはまだはっきりした、いわゆる税収入の見通しだとか、あるいは約束をいたしました減税の規模だとか、あるいはまた、財政需要に対する緊急度あるいは必要性、需要度はどうなっておるか、そこらもまだ明白でございません。これらの点では、いまのところ直ちにどうこうするということを申し上げかねますけれども、私は縮減方向でやる、公債をできるだけ依存度を小さくすることはもちろんでありますが、絶対額にいたしましても、公債も減額すべきではないか、こういう際こそ健全財政方向に向かって一歩も二歩も踏み出すべきではないか、かように考えておる次第であります。
  46. 成田知巳

    ○成田委員 来年度の予算編成、その規模あるいは公債依存度の問題、こういう問題については、後ほど同僚委員からお尋ねしたいと思いますが、一言だけ、基本方針として総理がどうお考えになっているかを承りたいのですが、それは、いわゆる補正予算を前提としない当初予算を組むかどうか。これは総理の大方針できまることだと思いますが、それについての御意見を承りたい。
  47. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 新聞その他で伝えておりますように、財政の途中で補正財源を見ることはなかなか困難だろう、こういうことは予想されます。できるだけそういう意味で補正を組まなくて済むような方法はないだろうか、大蔵当局でいろいろ検討いたしておる最中であります。したがいまして、ただいま問題になります、いつも補正の大きな問題になります公務員給与であるとか、あるいは消費者米価であるとか、あるいは生産者米価であるとか、こういうもののきめ方をいかにするか、そういう問題はまだはっきりきまっておりません。おりませんが、ただいま言われておりますように、予算行使途上において、中間において大きな財源を見つけることはなかなか困難な状態ではないか。そこで、そういうものが事前にくふうできるなら、これは回避するような方法をしたらどうだろうか、こういうようなことでいろいろ結論を出すべく検討中だというのが現状でございます。したがいまして、お尋ねになりました点は結論が出ておる、こういうような状況ではございません。ただいまどうしたらいいだろうかということで、一生懸命勉強中でございます。
  48. 成田知巳

    ○成田委員 この問題については同僚議員からお尋ねすることにしまして、次に、共同声明の中に、「両国それぞれの国際収支の全般的な均衡を早期に回復することが両国の基本的関心事であることに注目し、この目的を達成するため、相互に支援すべきことに合意した。」と、こうありますね。現在アメリカが国際収支の均衡に悩んでおる、赤字は増大しておる、その最大の原因は一体どこにあると総理はお考えですか。
  49. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 アメリカの国際収支、いわゆる経常貿易収支、それでは相当の黒字が出ております。しかし、やはりアメリカ自身が対外的な援助費も相当多額出しておるし、またベトナムなどの戦費も相当出ておる。こういう事柄がやはり赤字の原因というか、国際収支の健全性をそこなっておる、かように私は見ております。
  50. 成田知巳

    ○成田委員 アメリカの国際収支の赤字の原因、二、三あげられましたが、最大のものは、最後に言われたベトナム戦費だと思うのです。御承知のように、一日七千万ドルと言われておりますね。ということは、一日二百五十億円ですよ。一年にしますと約九兆円、日本の予算の二年分ですね。これがベトナム戦費に使われておるということ、このことが、アメリカの国際収支の赤字、ドル危機の最大の原因だと思うのです。これについて総理は最大の原因とお考えになるのかどうか、これをひとつ明らかにしていただきたい。
  51. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいま申したように、これも大きい一つの問題だ、かように思っております。
  52. 成田知巳

    ○成田委員 どうもベトナム戦争に対する協力の姿勢というものを固持されるものですから……。世界の常識ですよ。結局アメリカのドル防衛か、あるいはベトナム戦争をやめるか、二者択一というのが世界の常識なんです。それを一つ原因だなんと言われるところに、総理の姿勢の問題があると思うのです。  次にお尋ねしたいのですが、いま共同声明で読み上げましたように、相互に支援することになっておりますね。日本もアメリカも国際収支の均衡に悩んでおる。相互に支援するというのですが、総理は、ジョンソンとお会いになり、いろいろ会談されたそうですが、アメリカが日本国際収支を改善するためにどういう支援をするのか、ひとつ具体的に承りたいと思います。
  53. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 これは本会議でもしばしばお答えいたしましたように、アメリカのドル国際収支が健全であることが、アメリカばかりじゃない、日本にもやはりこれは利益だ、また、日本国際収支の健全性を保つことは、日本ばかりじゃない、アメリカにも利益があるので、その点では共通の利害だ、かように私は考えております。そういう意味で貿易の拡大が一つの問題だと思います。また、そこにバランスをとることだということでございます。また、これは主として大統領も、具体的にこまかな話には入っておりません。これはおそらく、大統領自身が、その前に行なわれた日米経済合同委員会、それらの意見、その会議の模様について、それをファウラー財務長官から報告を聞いている、そういう意味での話じゃないかと思います。私自身も、こういうことについてこまかく、どうしたらどうなるとかということまでは実は知っておったわけではございませんので、ただいまのような話が一般的には出ましても、具体的な話、そこまで話は入っておらない、さように御了承をいただきたいと思います。
  54. 植木庚子郎

    植木委員長 成田君にこの際申し上げます。  ただいま日銀総裁宇佐美淘君が御出席になりました。なお、宇佐美参考人は二時三十分に他の用務のため退席いたしたいとのことでありますので、この点お含みの上御質疑願います。
  55. 成田知巳

    ○成田委員 相互協力するといいながら、いまの総理の御答弁では、アメリカが日本国際収支の改善のために積極的に協力するという具体的なものは何もないということじゃないか、逆に日本から、アメリカの国際収支悪化に対する協力、これは後ほど申し上げますように、中期債券その他に問題があるのですね。これでは共同声明で相互支援というのじゃなしに、全く一方的な支援になってしまうと思うのですね。せっかく共同声明で相互支援ということを表明された以上、具体的なアメリカの日本に対する支援というものはどういうものか、これをひとつお尋ねしたいと思うのです。
  56. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いま日米間で、日本側に一番問題になっておりますのは、アメリカの保護貿易政策、これが具体化することは非常に困ることであります。幸いにしてジョンソン大統領は、政府立場で保護貿易、これを絶対にやらないと言っている。これなどはなお監視を要する問題であります。これは一つの具体的な問題であります。  もう一つは、利子平衡税に対する課税の問題がございます。また、一般の貿易に対しましても、いろんな条件の問題がございます。それらの問題を、やはりアメリカ側も十分日本の貿易の拡大に役立つように考えてくれること、これは望ましいことだと思います。
  57. 成田知巳

    ○成田委員 そういう感覚だから私は問題があると思うのですよ。保護貿易をやらないとか、利子平衡税の問題、これの緩和をしたいというのですが、この共同声明にもあるでしょう。ケネディラウンドが成功したといっていますね。その成果を高く評価している。さらにまた、国際取引の一そうの自由化をもたらす政策を支持する、これは当然のことなんですよ。保護貿易をやるとか利子平衡税を課するということ自体が、これは非常なマイナス要因なんですよ。それをやらないということは、あたりまえなんでね。共同声明でもそういう自由取引といっているのですよ。だから、保護貿易をやらないのはあたりまえのことなんですよ。輸入制限をやらないのはあたりまえのことなんです。そうじゃなしに積極的に支援するとなれば、積極的な施策があるはずなんですよ。それを承っているわけです。
  58. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 成田君はたいへん簡単に割り切っておられます。しかし、保護貿易論者が国会内で発言をしておる、その事実は無視できないでしょう。しかもアメリカ自身では、そういう立法が可能なんです。日本ではそういうことがないのです。だから私がしばしば、これはプレスクラブの会談におきましても、何にしても、いつも言っておりますのは、せっかくケネディラウンドが成功したのじゃないか、その効果を半減させるような、また、それと逆行するような保護貿易、これは困ったことだ、アメリカらしくもないということを実はプレスクラブでもちゃんと発言をしております。これは政府自身、これはジョンソン大統領自身が、それはもう非常に強い態度を示しておりますから、これはいま言われるように当然のことだ——なかなか国会その他においては当然でないのです。わが国でも当然と思えるようなことがなかなか当然でないように、これが実情でございます。そこらをよく考えていただきたい。実情実情ですからね。議論議論。そこらのところをよく考えていただきたい。
  59. 成田知巳

    ○成田委員 共同声明で、要するに積極的なお互いの支援をやろうということ。アメリカの特殊事情をとらえて、普通のことがアメリカでできないということなんですよね、普通の状態に返すだけなんで、積極的な日本に対する支援じゃない。ところが今度日本の場合は、アメリカとは違って積極的に、今度の共同声明に基づいて、アメリカのドル防衛にいわば一方的な支援という形でやろうとしているわけです。  そこでお尋ねしたいのですが、もうすでに日本は、相当額の短期ドル債券を長期のドル預金にして、ドル防衛に協力している、こういう話があるのですが、中期債券の問題とは別に、その事実があるのかどうか。あれば、その金額、それを承りたいと思います。
  60. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 米国の中期債券を買っておる事実はございません。
  61. 成田知巳

    ○成田委員 中期債券以外にはないですか。短期ドル債券というものを長期のドル預金にしているという事実はありませんか。
  62. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 短期の財務証券は、当然日本がこれを持って運営しております。
  63. 成田知巳

    ○成田委員 短期のドル債券を持っていますね、アメリカの銀行に。それをすでに長期のドル預金に切りかえたという事実はないかということです。
  64. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 これは、短期の債券は非常に流動性を持ったものでございますから、これを中期債券に切りかえたらこの流動性はなくなる。したがって、日本ではこれを中期債券にした事実はございません。
  65. 成田知巳

    ○成田委員 したがって、短期のものを長期に切りかえることは、流動性がなくなるからしたくない、また、そういうことをやっていない、こういうお話なんですが、では、伝えられる中期債券の問題ですが、これも同じだと思うんですね。短期ドル債券を中期のものにする、こういうことが流動性をなくするということなので、いままで政府はそれをおやりにならなかった。伝えられるところによりますと、九月の日米貿易経済合同委員会で中期債券の購入をアメリカから要請があった、こういうことを聞いておるのですが、宮澤企画庁長官、事実そういう点はありましたか。
  66. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 私は存じておりません。
  67. 成田知巳

    ○成田委員 今度のジョンソンとの会談においても、それはなかったと考えてよろしいわけですね。
  68. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 もちろん、ジョンソン大統領とは、さようなこまかいというか、具体的な話はございませんでした。
  69. 成田知巳

    ○成田委員 いま大蔵大臣がいみじくも言われたように、短期のドル債券を中期のドル債券に切りかえるということ、これは中期債券はそうですね、ローザ・ボンドとか、これは国際流動性をなくするから、日本の外貨準備の関係上、そういうことはやるべきでないと思っているし、またやってきてないということで、中期債券の申し入れもなかったそうですね。したがって、あっても、これはいままでの方針どおり、流動性という点から考えて拒否される、こう理解してよろしゅうございますね。
  70. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 外貨の保有高はわずか二十億ドル、その以内でございますから、流動性をなくするようなことは、いわゆる流動性がなくなれば円が弱くなるということでありますから、わが国の円を弱くするようなことは絶対に考えません。
  71. 成田知巳

    ○成田委員 いまの総理のお話を聞きまして、私もそれは当然だと思いますね。現に日本が金がなくてマルク債さえ起債しようとしている。これがポンドの切り下げでだめになった。他国から金を借りようというのが、短期ドル債券を、中期債券を購入して、これの流動性をなくするということは国益に反することですから、いまのお話で国民も安心したと思います。中期債券の購入はない、こう理解をいたします。  それから、次に、アメリカ製の武器の購入の問題、これが要請されるのではないか、いわゆる小委員会でそういう要請があるのではないかに聞くのでありますが、そういう要請があっても、中期債券と同じように拒否される、こう理解してよろしゅうございますか。
  72. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 これは、三次防を計画いたします際に、国産計画をいろいろ立てております。その国産計画の立たないものについて、ある程度のものがあろうかと思います。しかし、その金額はわずかふえるだけでありまして、いわゆる援助額というそういうようなものではございませんから、それを一緒にしないように、また私どもも、いわゆる円が大事なんですから、そこらで誤解を受けないようにいたしたいと思っております。
  73. 成田知巳

    ○成田委員 それから、共同声明に、東南アジア諸地域に対する援助量の拡大、条件の緩和、こういうことをうたっておりますね。どの程度援助量を拡大され、現在の条件をどの程度緩和されようとしておるのか。特にインドネシアの問題なんかについて、とかく巷間うわさがございますので、その点についての総理の見解を承りたいと思います。
  74. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 これは大蔵省や外務大臣がお答えするほうがいいかと思いますが、私がとにかく出かけたので、いろいろ交渉を持ちましたから申し上げますと、インドネシア、これはオランダのアムステルダムで各国の援助計画が立つ、その際に一体どうなるかということを申したのであります。このアムステルダムの計画が進まない限り日本援助計画は立たないというのが実情であります。また、その際の条件なぞは、そういう意味でまだ私は聞いておりません。  その次は、いまビルマの問題がございます。ビルマやタイ、あるいはフィリピン、そういう三国についてのいろいろの話がございます。これも大蔵当局でいろいろその後の折衝をしておることだと思いますが、まだ私は、最終的に条件がどうなったという報告を聞いておりません。しかし、それぞれの援助の指定項目と申しますか、それぞれの国の経済建設に役立つもの、たとえばフィリピンにおいては道路計画だとか、あるいはビルマは何でしたか、それぞれそういう計画を持っておりますので、その国の経済に役立つような援助考える。しかし、みんな低金利を望んでおりますが、なかなか低利のものが貸しにくいというか、そこで話がなかなかまだ最終的妥結になっておらないと思います。日本で三分五厘というようなことはなかなかむずかしい状態だということで、まだ最終的に各国と話が合っておらない、かように御了承いただきたい。各国とも申しますのは、あるいは三分であるとか、あるいは二分五厘であるとか、非常な低利長期を希望しておりますので、そういう点が日本実情には合わない、こういうことでまだ最終的に話がまとまらない、さように御了承いただきます。
  75. 成田知巳

    ○成田委員 それから、いつもこれは問題になることなんですが、外貨準備中に占める金の割合です。これは、政府はなかなか御発表にならない、あえて問いませんが、国民の常識になっておると思います。大体十九億余りの外貨準備のうち金の保有高は三億三千万ドル、ということは一五%くらいですね。世界各国と比較して、けた違いに低いということです。しかも、ドル防衛に協力するという意味で、金との交換をやりません、こういうことを言っておられる。ところが、アメリカにおきましては、もう、御承知のように、今度のゴールドラッシュで金の保有高は百二十四億ドルになっておる。新聞紙その他の報道では、金準備率の廃止をやる、金の交換停止もやられるのではないか、こういうことがもっぱらうわさされておるのですが、それでもやはりドル防衛に協力するという意味で、金との交換というのはお考えになりませんか。
  76. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 金はできるだけ多く保有するに越したことはございませんが、過去の実情から見まして、日本で金を買う外貨の余裕というものは、いままでございませんでした。買おうとしても買う余裕がなかったということが一つと、それでは金の保有比率が非常に少ないからといって非常な不便をしたかと申しますと、そうではございませんで、むしろ金以外のドル運営をやったことによって日本のいろんな信用がついておるという場面もございますので、従来これで切り抜けてこられたのでございますから、特にここへきて金の比重を多くしなければならぬという必要性もないものと私は思っております。
  77. 成田知巳

    ○成田委員 従来切り抜けてきた、こう言われますが、これはドゴールも言っているように、アメリカのドルというものがどんどん入ってきた、そのことが、フランス市場といいますかにドル支配をもたらした。しかもそれは、ドルが国際基軸通貨であるために、アメリカは自由にドルの発行ができる。これは全くアメリカの御都合じゃないか。日本においてもそうだと思うのですね。しかも、従来はこうだったと言われますけれども、情勢が変わってきているのじゃないか。いわゆる金準備率の廃止あるいは交換停止、ドルの切り下げさえうわさされているのですね。そういうときに、世界でもけたはずれに少ない金の保有量で満足できるかどうか。もしドル危機というものが深刻化した場合、これは日本国民に重大な損失を与えることになるのですね。その点について、もうそろそろドル依存から脱却する、これくらいの方針は、政府はお持ちになってしかるべきだと思うのですが、どうでしょうか。
  78. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 いろいろ、ドゴールの政策はともかくとしましても、世界の大勢はむしろ逆でございまして、今度のIMFの大会におきましても、世界各国できめましたことは、金に直接結びつかない新しい準備資産を創設する、こういう方向によってこれからの国際経済の問題を片づけようという方向で、世界がいま一致してこの準備をしているときでございますので、必ずしもドゴールの言うように、金本位制に世界が戻るというような世界の大勢じゃございません。ことに日本みたいな国にとりましては、今度のような金に結びつかない準備資産ができることは、もう最初から日本も主張しておった線できまったことでございまして、この線に沿って今後の国際経済の問題は片づくものというふうに私は考えております。
  79. 成田知巳

    ○成田委員 私が申し上げたのは、ドゴールの金本位制に帰れ、これをいま直ちに可能だという意味で申し上げたのじゃないのです。むしろ日本の金の保有率の非常な低さですね、このことが、問題が起きたときにどういう影響があるか、この点を政府はやはりもう少しまじめに、真剣に考えるべきだ。単にアメリカの要求に一方的に協力することがほんとうの協力じゃないのです。やはりもう少し自主的な立場をとっていただきたい、こういうことを申し上げたわけです。  そこで、この問題についての結論に入りたいと思いますが、もしドル防衛の手放しの協力だとか、こういうことをやれば、国際収支の悪化を来たすことは当然です。それから、大蔵事務当局も言っておりますように、経済協力という形でどんどん東南アジアその他に協力費を出すことは、いま問題になっている財政硬直化の大きな要因になる、そのとおりだと思うのです。この財政硬直化の問題は、ことしになって急に起きた問題じゃないと思うのですよ。もう数年前から起きている。それをなぜことしになって急に財政硬直化財政硬直化と、大きな声を出して宣伝されるか、この真意は私はここにあると思うのです。ドル防衛のための費用あるいは自衛隊の第三次防衛計画の防衛費、これだけはどうしても確保しておきたい、そのための布石なんですよ。すなわち、ドル防衛費と自衛隊の費用というものは、これは聖域で、手がつけられない。そこで財政硬直化ということで、たとえば社会保障費の後退、二重構造の改善のための費用の削減あるいは公務員給与、生産者米価の凍結、公務員の首切り、こういう方向に持っていこう、これが財政硬直化政府が声を大にして主張するほんとうのねらいだと思うのです。この問題については、これまた同僚議員から具体的に掘り下げた質問があると思いますので、以上でやめます。  そこで、日銀総裁にひとつお尋ねしたいと思います。  ポンド切り下げ、ドル不安は、資本主義諸国の金融市場に大きな動揺を与えております。そこで、アメリカを中心にして危機がさらに深刻化することを防ぐために、お互いに協力という形で必死になって努力しているわけです。現に、米国では、最近公定歩合の再引き上げ、こういうこともいわれておる。また、イギリスでは、ポンドの切り下げをやって一カ月もたたないうちに、またまたポンド相場というものが動揺している。安値を示しておりますね。ところが日本では、総理は消費抑制、消費抑制と言われますが、消費抑制じゃなしに設備投資が、相変わらずこういう国際環境のきびしさにもかかわらず衰えを見せない、こういう状況なんですね。だとすると、日本の金融政策の総本山である日銀総裁としては、金融政策についても期するところがあると私は思うのですね。  そこで、その総裁としての方針を承る前に一言お尋ねしておきたいことは、五日の大蔵大臣の財政演説を日銀総裁はお聞きになりましたか。お聞きにならないにしても、あの事前に原稿もできておりましたから、原稿はお読みになったと思いますが、日銀総裁の大蔵大臣演説をお聞きになった印象というものは一体どうでしょうか。日銀総裁の印象を承りたいと思います。
  80. 宇佐美洵

    ○宇佐美参考人 大蔵大臣の演説は直接には伺いませんでしたけれども、拝見いたしました。  今度の演説は補正予算に関する説明が大部分でございます。これは私として、いまの現状からいいまして、補正予算はなるべく少ないほうがいいと思いましたけれども、御説明をしさいに見ますると、いずれも、何といいますか、財政の構造上の問題でもう大部分きまっておるという状態でございますので、やむを得ないと思っております。  ただ、一言加えますと、あの予算が通りましても、私は引き締めの現在とっております政策が混乱をするとは思っておりません。むしろこれからの四十三年度の予算が問題だろうと思っております。そのほかの四十三年度に対する御方針は、内容がはっきりいたしませんけれども、御方針はきわめていいと思います。と申しますのは、財政はなるべく圧縮する、国債もできるだけ依存度を低めるという御方針でぜひやっていただきたい、かように考えておるところであります。
  81. 成田知巳

    ○成田委員 いま日銀総裁の財政演説に対する印象というものをお聞きしましたが、これは私、日銀総裁の受けられた印象としてはまことに不満だと思うのです。原稿をお読みになったと申しますね。私、大蔵大臣の財政演説を聞きまして、すぐ感じましたことは、こういうことが書いてあるんですね。財政状況をずっと述べまして、「このような状況にかんがみ、政府は、去る七月以来、所要の措置を講じてまいりました。」この政府の講じた所要の措置の中に、「金融面におきましては、公定歩合の一厘引き上げを行ないました。」政府がやったというんですよ。これは街頭演説のことばなら了としてもいいと思います、舌足らずと。しかし、いやしくも財政演説で大蔵大臣が国民に向かって訴えるとき、公定歩合の引き上げを政府がやった——これはもし現在の実態をそのまま言いあらわしたとすれば問題だし、これは日銀のいわゆる金融政策、特に公定歩合の問題は、日銀法ではっきり書いてあるはずです。政策委員会が決定するはずなんです。政府が公定歩合の引き上げをやった——全く日銀の権限をじゅうりんしていると私は思う。それをお聞きになって何とも思わないとなれば、日銀総裁の感覚は私は麻痺していると思うのです。この政府財政演説というのは、練りに練って、てにおはでも注意して書くのですよ。それをあなたお読みになって、政府が公定歩合の引き上げをやったということを読んで、これはおかしいと思わないということは、現に政府が公定歩合の引き上げをやっておる、これを認めることですか。
  82. 宇佐美洵

    ○宇佐美参考人 お答え申し上げます。  私は、まず公定歩合を上げましたときの実情を申し上げますが、あのとき新聞にも大蔵大臣が述べたと記憶いたしておりますが、これが時期決定、それはすべて私に一任されております。これは日銀法のとおりに実行したものであります。したがって、ただいまお話しのように、大蔵省あるいは政府がきめたものでは絶対にございません。  それからこの文章を読んでどう感じたということにつきましては、私も、もしあそこに日本銀行と書いてあればむろんいいと思いますけれども、しかし、それは実際はそういうふうになっておりますので、つまり日本銀行がきめたことでございますので、私は、ことばが足りなかった、そういう印象でございます。
  83. 成田知巳

    ○成田委員 最初申しましたように、これはことばが足りなかったということで済む問題ではないと私は思うのです。これは単に街頭演説か大衆演説なら、こういうことも言うでしょう。しかし大蔵大臣の所信表明ですよ。事務当局が練りに練ってつくった文章なんです。しかも、政府が公定歩合の引き上げをやったということは、これはもう何といっても、日銀の政策委員会の権限を侵したものだと思うのです。大蔵大臣は、これについて一体どうお考えになっているのですか。
  84. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 ここに書いてありますのは、七月に政府は所要の措置をとった、これは政府のとった措置でございます。それから九月には政府は「繰り延べの措置を講ずることといたしました。また、金融面におきましては、公定歩合の」云々と、「金融面におきましては、公定歩合」ということは、これはさっき日銀総裁の言われましたように、総裁の権限でございますので、金融・財政一体の原則で当時一緒にとられた措置でございましたが、「金融面におきましては、公定歩合の一厘引き上げ」を行なったというのは、これは大蔵大臣が行なったという意味ではございませんで……(発言する者あり)これは「一厘引き上げが行なわれ」とあれば、あるいはよかったかもしれませんし、そうでなくても、「日銀においてはこれを行ない」と言えばいいのですが、そういう意味のものでありまして、これを政府が行なったと書いているわけでもないし、現に実情は、いま総裁が言われましたように、この措置は日銀総裁にまかせてあったことで、政府がやったことではございません。
  85. 成田知巳

    ○成田委員 日銀の中立性というのは非常に問題なんですね。それで「金融面におきまして」と、主語がないわけです。主語は「政府」と書いてある。私はそういう詭弁は通用しないと思うのです。「政府」が主語なんですからね。それでは、主語はないということになるのですよ。これは単に私がことばをあげつらうのではなしに、日銀の中立性の問題というのは、日銀法改正でも大問題になっているわけですね。そういうときに政府がこういう表現をするということは、現在の金融政策に政府がどれだけ圧力を加えているかということの証拠だと思うのです。この点を私は強く指摘したいと思うのです。  そこで、いま日銀総裁はあくまでもき然たる態度でおやりになる、こういうことなんで、最近の国内経済事情あるいは国際経済の状況から見まして、来年度の、今後の金融政策について、日銀総裁としては一体どうお考えになっておるか。特にその際、金融引き締めが強化されますと、中小企業に対するしわ寄せがあると思うのですが、中小企業対策というものについても金融政策上どうお考えになっておるか、それを承りたいと思います。
  86. 宇佐美洵

    ○宇佐美参考人 これからの経済の見通し並びに来年の見通しについての御質問でございますが、御承知のように、十一月ポンド平価切り下げがございまして、さらに金融面でも、ポンド切り下げのみならず、英国、カナダまで公定歩合を引き上げまして、いまいろいろの経済の見通しは非常にむずかしい段階に来ておるわけであります。  こういうふうな状態のもとにおいて、やはり、私は、この世界の情勢並びに九月から実施いたしております日本の、先ほどもお触れになりましたが、設備投資をはじめ、日本情勢がどういうふうに動いているかを見ておるところでございます。九月の引き締め後間もなく、金融面では若干の浸透が見えましたけれども、なかなか経済の実際面ではあらわれてまいりませんでした。これはいろいろの理由もあろうかと思いますし、金融を引き締めたからといって即日方向転換をするのは、実際経済はむずかしいのでありまして、次第に浸透してくるか、いま見ておるところでございますが、何といいましても、企業の手元資金もわりあいに潤沢でございましたし、また、現在は国際競争とか、あるいはまた、資本の自由化とか、また労働問題の逼迫等もございまして、やはり設備はぜひともやらなければならぬという考えの方も相当多いのが実際でございます。  したがって、今後これがどういうふうに出てくるか、私どもは、まだ国際収支が改善されないうちに、今度のポンドの問題を中心にする世界の金融がこういうふうに動揺してまいりましたことは、非常に残念に思っておるわけであります。もう少し国際収支が回復してまいりましたときならばいいのでございますが、こういう情勢から見ますと、私は、やはり一番問題は、高金利時代がまた来はしないかということでございます。高金利時代が来ますと、各国ともどうしても自分の通貨を中心に考えやすいので、世界全体の貿易経済は、まあむろん伸びることは伸びると思いますけれども、だんだんむずかしく、伸びが縮まってくるような気がいたすのであります。そういうふうになりますと、やはり日本が、外国がよくなるだろうということを安易に考えて拡大ばかりをやっていてはいけないのではないか。やはり輸入面——ただいま輸出のほうはいい面も少し出てきておりますが、依然として輸入の水準は高うございます。これをやはりある程度圧縮いたしまして、そうして均衡をとるように早くいかなければならぬと思うのでありますが、いま申し上げましたような、世界の情勢はなかなかむずかしゅうございますので、私は、来年の方針としましてはやはりかなり継続的といいますか、見通しはむずかしいのでございますが、大勢は引き締めを続けていかなければならぬと、かように考えております。  それから、そういう状態になってきて日本経済は非常に苦しくなるんじゃないか、特に中小企業について苦しくなるんじゃないかという御質問がございました。私どもも、中小企業の問題は、常に日本銀行として気にしている問題でございます。ことに、このように金融を引き締めてまいりますと、やはり皆さん中小企業の方は心配されるのももっともだと思うのです。したがって、われわれはこの政策を打ち出しましたときに、全国の支店長を集め、また銀行の主要な方に集まっていただいて、中小企業はぜひ十分考慮してくれ、まあ輸出金融と中小企業金融はぜひひとつ十分情勢をキャッチして、そうしてやってくれということを頼んで、いまも常にそのことを申しておるのであります。これに対しまして、これから年末がまいります。そうすると、一そうこの問題は深刻になってくると思います。これに対して、各民間の金融機関、銀行、相互銀行、信用金庫等々も、この年末金融については、昨年よりもかなりワクを大きくしております。たぶん昨年の暮れはそれらのものは九千五百億と記憶しておりますが、ことしは一兆九百億というふうに拡大をしております。また、政府機関におきましても相当の考慮をされております。  さらに、私どもはいま窓口規制をやっておりますけれども、窓口規制の対象の中には、中小企業に非常に関係の深いものは対象外にいたしております。そういうような考慮をしながら、ひとつ私どもは何とか中小企業に多くの支障のないようにいたしていかなければならぬと努力いたしておるところでございます。
  87. 成田知巳

    ○成田委員 日銀総裁けっこうですから。
  88. 植木庚子郎

    植木委員長 宇佐美参考人には御多用中のところ御出席いただき、まことにありがとうございました。御退席いただいてけっこうです。
  89. 成田知巳

    ○成田委員 大蔵大臣、いまの、政府は公定歩合の引き上げをやったというのは、文章をよくお読みになったら、そんな笑いごとでは私は済まされないと思うのですよ。主語ははっきり「政府」と書いてあるのですよ。これは中立性の基本に触れている問題です。事実上ではもう中立性を破っておる、そういう事実を表明したというならいいですよ。しかし、そうじゃないということになれば、政府が公定歩合の引き上げをやったということは、これは取り消すべきですよ。そんなことばの問題ではないと思うのですよ、これは。政策の基本に触れる問題なんで、取り消すなら取り消す、取り消さないというならば私たちとしてはその考えによってやります。
  90. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 まず実質的の問題を申しますと、さっきお話しいたしましたように、政府がきめたのではなくて、日銀総裁が独自の考えできめたということははっきりしております。事実はそうでございます。で、表現が、主語が「日本銀行」という字が抜けてこういう文章になったということは遺憾でございますので、この点は実際に合うように訂正いたしてよろしゅうございます。
  91. 成田知巳

    ○成田委員 訂正すると申しましても、これは本会議で、衆参で国民に対してあなたが演説したことですよ。政府が公定歩合の引き上げをやった、これは訂正する、どうして訂正されますか。  〔「訂正すると言ったから、どこで訂正されるかはっきりさせなければだめですよ」と呼び、その他発言する者多し〕
  92. 植木庚子郎

    植木委員長 成田君に申し上げます。成田君に申し上げます。訂正の方法等につきましては、理事会でも相談をいたしまして善処することといたしますから、質疑の御進行を願います。
  93. 成田知巳

    ○成田委員 私がこの問題を取り上げましたのは、単なることばの問題じゃないということなんです。日銀の中立性の基本に触れる問題なんです。こういうことが財政演説で平気で言われるところに問題がある、こういう意味で申し上げたのですから、理事会で十分ひとつ御協議を願いたいと思います。  次に質問に入りたいと思いますが、沖縄問題を中心にいたしまして、小笠原、ベトナム戦争、中国問題、さらに安全保障の問題についてお尋ねしたいと思います。  午前中の松野委員との質疑応答にも出ておりましたが、小笠原問題というのは沖縄問題のパターンにもなる、こう考えられるわけなんです。そこで、小笠原返還についてまずお尋ねしますが、いままでの答弁を通してわかりましたことは、原則として奄美方式による。奄美方式ですね。そして、奄美返還の際の例の特別の防衛に関する交換公文、これは取りかわす意思はない、こういわれておりますが、これをもう一度確認していただきたいと思います。
  94. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 小笠原の返還方式、これはまあ奄美方式ということがいわれております。いまちょうど外務大臣がせっかくこれと折衝しておる最中でございます。これはいわゆるサンフランシスコ条約そのものを訂正するとか、直すとかいうようなことでなしに、ただ、第三条によってアメリカ自身が専属的に持っておるこの施政権を放棄すれば済むんじゃないのか、そういう意味で奄美方式が採用されるんじゃないかということでございますから、誤解のないように願いたい。  そこで、交換公文、あの奄美大島の返還の際には交換公文がございました。御指摘のとおりであります。しかし、今回はさような必要はないだろう。と申しますのは、小笠原については、当時の奄美大島とは違いますし、また、安全保障条約もその後変わっておりますので、その必要はないから、おそらく交換公文は必要ないのだ、かように私どもも考えておると、そういう意味で外務大臣が折衝中でございます。
  95. 成田知巳

    ○成田委員 小笠原が返還されましたときの行政管轄の問題なんですが、けさの松野委員質問に対する御答弁で、必ずしもこれは明確になってないようなんですが、復興開発にたくさんの金が要ることはわかります。この復興開発は国庫で支出しまして、奄美のときもそうなんですが、地方行政団体がその実施に当たると、これは当然考えていいと思うのです。特に小笠原が返還されるということは、いわゆる潜在主権が顕在化するということなんです。だとすれば、いままで主権と同じように潜在化しておりました東京都の行政管轄権というものが顕在化するわけですから、これは論理的に当然何か特別の事由があれば別です、特別の事由のなき限り、東京都に行政管轄が移るということは、これは常識だと思うのです。いま申しましたように、復興開発に必要な金は政府がどんどん出して、実施は地方行政団体が当たればいい。東京都が当たればいい。それに何か直轄方式というものを考えているやに言われるのですが、そうしますと、国民としては、何か裏があるんじゃないか。憲法上の問題、地方自治法上も相当問題がある、あえてそういう道を選ぶのは何に理由があるのか、これはまた現状から見まして非常に逆行だと思うのです。いま日本国内に直轄地域というものはないでしょう。昔は台湾総督とか朝鮮総督がありました。これは植民地ですよ。もし小笠原を直轄するということになれば、昔の台湾方式、朝鮮方式の復活です。相変わらず植民地状態に置くということなんです。そういうことをあえてされるのは、やはり東京都知事が美濃部革新都知事である。ここに軍事基地を設け、軍事基地を強化する、こういう意図があるから、そういう無理な方法をされるんじゃないか、こうとらざるを得ないわけです。したがって、そういうことがない限り、率直に潜在主権が返り、顕在化すれば、東京都の行政管轄も当然顕在化して東京都に移ります、これが筋でございます、こうお認めになったほうがいいんじゃないかと思いますが、御意見はどうでしょう。
  96. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いませっかく返ってくる際でございます。これはできるだけ円滑に日本に返ってきて、そうしてこれらの島々が開発されることが望ましいと、これは社会党の方もさようにお考えだろう。ことにまた帰島等についても、できるだけそういうことで便宜もはからなきやなりませんし、地方自治体、もと東京都内であったということ、東京都であったということ、これはもう無視できない状況でございます。問題は、いかにすれば最も開発に便し、また帰島にも便するかということでございます。私はいわゆる天領方式だとか、あるいは直轄方式、それをぜひいつまでもやるというような考えではございませんが、しかし、少なくとも今日この復帰本部を設けて、そうしてそういうことをも含めて、また、ただいまいろいろの御意見を述べられましたが、そういうことを勘案して、そうしてこの処置をきめるべきだ、かように私、思っております。ただいま直ちに何々にすると、かように申し上げるのは、やや時期が早いんじゃないか、かように私思っておりますので、その点では、これは誤解のないように、私は偏狭な考え方でただいまのことを申しておるわけじゃありません。どこまでも小笠原のりっぱな開発に便するような、そういう方法が望ましいと、かように考えております。  また、防衛問題についても、これが本土並みになること、これはもう問題がないのでございますから、領土、領空、領海、こういうようなものを日本が防衛するわけであります。しかし、それにいたしましても、アメリカ自身が現在駐留あるいは施政権を持っておる、こういうことでございますから、いま直ちにこれに取ってかわれるかどうか、そこらもよく調べてみないと、いろいろな議論があるだろうと思うのです。いずれにいたしましても、来年早々協議ができる前におそらく現地を十分調査してまいりまして、そしてりっぱに成果をあげるようにいたしたいものだ、かように思っております。どうか御了承いただきたいと思います。
  97. 成田知巳

    ○成田委員 東京都の直轄方式にすることは当然だ、しかしながら成果をあげるためにはいろいろな方法がある。何か東京都の管轄にすることが成果をあげることに障害になるような御発言なんですね。いつまでも直轄方式なんか考えていない。そう言うことばの裏には、やはり直轄方式を考えているということなんだ。筋は東京都だと言いながら、しかもその直轄方式を考えるということは、これは私、筋に合わないと思うのです。しかも私たちはこれが一番心配されるのは、そういう筋の合わないことをやられるのは、軍事力との関係があるのじゃないか。軍事基地との関係ですね。特にこれが先例になりまして、沖縄の場合でもそういうことが考え得ると思うのです。沖縄が返還になった、当分は直轄方式だ、こういうことも考えられます。したがって、そういう筋の合わないことをおやりになれば、特別の根拠があるはずなんです。特別の根拠をお示しにならない。したがって、私たちはあくまでも、憲法上も地方自治法上も問題のある小笠原復帰の問題について、東京都に管轄をまかすべきである、こういう強い主張をします。この問題については、後ほどまた同僚議員から質問してみたいと思います。  そこで、いままでの御答弁の中で、小笠原では核保有はいたしません、また核持ち込みもしない、こう答弁されておりますね。これはもう一度御確認いただきたいと思います。
  98. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 本土方式ということは、ただいまのもしもそういうことがあるなら、これは事前協議の対象になる、かように御了承いただきます。
  99. 成田知巳

    ○成田委員 いままでの政府の御答弁とは違ってきたと思うのです。いままで政府は、核持ち込み——核保有はもちろん、核持ち込みはいたしません、もし事前協議が要求された場合、形の上で要求された場合は拒否する、そのことを言われたと思うのですが、基本方針としてはあくまでも核保有はしない、核持ち込みはしない、これがいままでの方針だ、こう理解してよろしゅうございますね。
  100. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 本土並みということを申したのです。だから、本土並みに扱うことです。だから、いまのような本土も核の装備はしない、核の持ち込みもしない。もしもこれをやるならば、重大なる装備の変更だから事前協議の対象になるということを、本土並みの場合には当然申すわけです。だから、さように御了承いただきます。
  101. 成田知巳

    ○成田委員 もちろん重大な装備の変更だから、事前協議の対象になるということ、これは条約解釈としてはそうでしょう。しかしながら、いままでの政府方針は、そういう対象になるとかならないとかという条約解釈じゃなしに、核持ち込みはやりませんと、これはいままで総理は何回も言っておられたのですね。したがって、核持ち込みはしないという方針は変わらないのかどうか、それを私は言っているわけです。いまの総理の御答弁でわざわざ当然のこと、事前協議云々の問題を出すことは、事前協議のいかんによっては持ち込みを許し得ることがあるのだ、こういうようにもとれますから、そういう誤解のあるような発言はおやめになって、持ち込みはいたしません、その方針は変わらないのなら変わらないと、こう明確にひとつ断言していただきたいのです。
  102. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 先ほど来からいろいろ議論されておりますが、条約論争、政策論争、これは区別して考えていただいたらいいだろう。私は条約のたてまえを申しております。これは本土並みだということでございます。
  103. 成田知巳

    ○成田委員 私は、条約のことについては、いま申し上げていないのです。したがって、方針としてはどうかということをいまお聞きしているのです。従来の方針がお変わりになったのかどうか、それを確認しておきたい。
  104. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 本土としては、私どもは核の三原則、核を製造せず、核を持たない、持ち込みを許さない、これははっきり言っている。その本土並みになるということなんです。
  105. 成田知巳

    ○成田委員 それならそう言えばいいです。そんなに大きな声を出す必要はないです。  そこで、お尋ねいたしますが、本土並みになるという基本方針は、みずから核の製造、保有はしないということですね。それから核兵器の持ち込みも許さない。これが三原則だ、こう御確認あったわけです。  したがって、そこで私、さらに確かめておきたいのですが、日本は核兵器を保有しない、製造しない。保有しないということは、攻撃用はもちろんのこと、防御用の核兵器も持たない、こういうことだと理解してよろしいですか。
  106. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は、先ほどの持たない、製造しない、持ち込みもしない、この三原則を忠実に守るということでございます。これはもうすでに核の平和利用についての法律が、そういう意味のことをはっきりしておるように私は解釈しておりますが、憲法自身に、核兵器について云々は、これは攻撃用の兵器は持たないということだと思いますね。しかし、憲法自身の問題じゃなくて、核の平和利用というこのほうの法律で、その趣旨が明確になっている、かように御了承いただきます。
  107. 成田知巳

    ○成田委員 いまの答弁は、一体何を答弁されたかわからないのですがね……。
  108. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ちょっと待ってください。  いまの核の問題というのは原子力基本法でございます。法律から申せば原子力基本法です。
  109. 成田知巳

    ○成田委員 そんなことは御訂正されなくてもこちらはわかっておりますが、いま私がお聞きしましたのは、三原則を堅持されますという、製造もしない、保有もしない、持ち込みもしない。その保有という中に、攻撃用の核兵器はもちろんのこと、防御用の核兵器も持たない、こういう理解でいくべきだと思うのですよ。これは解釈の問題ではないですよ。方針の問題ですよ。いままで核は持ちませんというのは、攻撃用も防御用も持たないんだ、こういう意味と私たち理解している。国民もそう理解している。政府もそういう答弁をしてきている。したがって、その点を明確にしていただきたい。
  110. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいままではっきり、いま成田君のお尋ねのとおり申しております。
  111. 成田知巳

    ○成田委員 そういたしますと、日本は核兵器を持たないということは、攻撃用はもちろん、防御用も持たないことだ、こういうことを確認されたわけです。  そこで、次にお尋ねしたいことは、日本国土への持ち込みをしないということです。三原則の一つですね。日本国土への持ち込みはいたしません。その場合、小笠原のように日本に返還され、日本の施政下に置かれる地域にも核は持ち込まない、これはもう当然のことだと思うのです。日本の本土並みになるのですから。したがって、小笠原の場合、日本に返還される、日本の施政下に置かれる、そういう地域にも核は持ち込まない、当然のことだと思いますが、念のためにひとつ確かめておきたい。
  112. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 先ほどから非常にはっきり申し上げております。沖縄——ではない、小笠原が返ってくる。小笠原が返ってくると、小笠原が本土並みになる。したがいまして、本土と同一でございます。
  113. 成田知巳

    ○成田委員 どうも沖縄と言いながら訂正されたことは、少しあとに問題が残るように思いますが、小笠原が本土になるんだから本土並みだ、こう理解すべきですね。返還された場合は本土になるんだ。したがって、取り扱いも本土並みだ。  そう理解した場合、さらにもう一つ確かめておきたいことは、持ち込まぬということは、新しく持ち込みを許さないということなのか。そうではなくて、もし小笠原に核基地があったとした場合、これは従来あるわけです。総理の言う持ち込みというのは、新しく持ち込みをしないのだ、従来あるのは別だ、もしそういうことがあればたいへんだと思うのですが、総理の言われるのはそうじゃなくして、新しく持ち込みを許さぬというだけではなしに、もし小笠原に核基地があればこれを撤去する。すなわち日本の施政下、あなたの言われる——聞いておってください。あなたの言われる日本の施政下では一切核兵器は存在させぬ、こういう意味だと当然理解すべきだと思いますが、いかがでしょうか。
  114. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は、小笠原の現状をよく知りませんけれども、おそらくないのだと思っております。また、そういうことがあれば、そういう点をも含めて十分返還について交渉をいたします。そして、こういうことがあってはならないというのがいままでの考え方でございますから、この考え方は、私、変えるつもりはございませんので、こういう点ではアメリカによく実情を話しして、そしてそういうものはないようにしたいということでございます。
  115. 成田知巳

    ○成田委員 私は小笠原の例をあげたのですが、要するに解釈の問題です。これは明確にしておきたいのですが、要するに将来、日本に返還される地域ですね、その地域に核を持ち込まないということは、新しく持ち込まないだけじゃなしに、もしあればこれを撤去する。いわゆる日本の施政下に置かれる地域は一切核兵器は存在させないのだ、こういう理解でいいですね。——それは政策の問題だから、法制局長官、いろいろ言われる必要ないです。
  116. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 先ほど来お答えしたとおりでございます。
  117. 成田知巳

    ○成田委員 わからないから、私お聞きしているのですがね。その点明確にしていただきたいと思うのですよ。これは沖縄問題にも関連がある問題です。あなたは一般論としては、持ち込まない、持ち込まないと言って、持ち込みは許さぬと言いますね。そこで持ち込みの場合、私、二つ場合があると思うのです。一つは、新しく持ち込むという場合。それから、いままでその地域にあって、そして日本の施政下に置かれる、その場合も、日本の施政下に置かれた以上、これは持ち込みになるのだから私たちはそういうものは認めない、こう当然理解すべきだと思うのです。ただ、三百代言を使う人は、持ち込みというのは新しく持ち込むことだ、昔からあったのは云々というおそれもありますので、そこで明確にしておきたいのですが、要するに、今後返還される地域においては一切核兵器は存在させない、これが持ち込みの意味だと理解してよろしゅうございますか。
  118. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 小笠原についてはっきり、ただいまのように本土並みに扱うということを申し上げます。したがいまして、新しく持ち込むことももちろん、また現在あるならば、そういうものの撤去についても十分折衝すると、かように御了承いただきます。
  119. 成田知巳

    ○成田委員 小笠原についてということは、筋論からいって——小笠原を一つの例に取り上げたのですが——筋からいって、日本の施政下においては一切核兵器は持たない、これが持ち込みを許さないという趣旨だと、こう理解していいですね。
  120. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 現状において申し上げておるので、その点を間違いのないように願います。
  121. 成田知巳

    ○成田委員 現状においてというのはどういうことですか。私は、総理のいままでの基本方針日本は核を持ちません、持ち込みは許さない、この持ち込みの内容を聞いているのです。日本の場合、みずからの場合はわかりました。みずから保有しないということはわかりました。しかしながら、持ち込みの意味なんです。要するに、現状というその方針です。基本的な方針なんですよ。日本の施政下では、持ち込みということばは、これは結局施政下に入ったところには核兵器は認めません。これは日本の本土になるわけですから、本土には核兵器は持ち込みを許さない。そのことは、一切本土には核兵器は持たない、こういう趣旨だ。これが政府方針じゃありませんか。それを現状においてはということを言うのは、政府は何をお考えになっているか。したがって、その点は方針として明確にしていただきたい。
  122. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 小笠原の質問は先ほどのでいいと思いますが、ただいまいろいろ成田君がお尋ねになろうとするのは、沖縄だろうと思います。沖縄についての現状は、十分私どもも考えなければならない。また、沖縄自身がどういうような状況に置かれておるか、これは沖縄が返ってくるときに考えようじゃないかというのが政府の態度でありまして、今日から、ただいまのようにはっきり絶対に持たないのだ、かように言うことがわが国の安全にはたして効果があるかどうか、実はここに問題があるのです。私はその点をよく考えて、しかもたびたび申し上げておるように、わが国の安全は片一方で確保するし、祖国復帰はぜひとも実現したい、この二つはいつも念頭から離れないで、二つをあわせて考えている。この点を社会党の方にもぜひ御了承をいただきたいと思う。
  123. 成田知巳

    ○成田委員 これはいよいよ総理、馬脚を出したと思うのですね。小笠原と沖縄は違う、沖縄においては核兵器基地つきの返還があり得る、こういうことを総理は確認したことですね。そうじゃありませんか。それで、いま安全保障の問題と沖縄の返還の問題をからませましたですね。これはもともとからむ性質のものじゃないのですよ。この点については後ほど私、御質問申し上げたいと思いますが、全く次元の違ったものを同時にやっている。同次元でやっている。大体安全保障の問題については私たち関心を持っております。私たちは私たちの政策を持っております。その問題は別に論議するとして、なぜ安全保障の問題を考えなければ沖縄の返還はできないのですか。そういう条約上の根拠はありますか。安全保障の問題を考えなければ沖縄の返還はできないという根拠はありますか。条約上の根拠はありますか。それは政治論なんですね。政治論については、まず条約上の根拠というものを確立して、安全保障はどうあるべきかということを大いにやるべきだと思う。条約上の根拠も無視しまして、そうして安全保障の問題を考えなければいかぬ、したがって、沖縄については核基地の返還もあり得るということは、これは全く暴論だと思うのです。条約上の根拠は一体どうなんですか。安全保障の問題を考えなければいかぬ、沖縄の基地つきを認めなければいかない、そういう条約上の根拠はありますか。
  124. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私はこれはたいへんな問題だと思います。私自身、総理大臣というのはこれは政治家でございます。政治論議するのはあたりまえなんです。私自身が、わが国の安全確保について絶えず頭を悩ましておる。いわゆる法律家ではない。だから弁護士は弁護士らしい御意見をしたらいいだろうけれども、政治家が政治家らしい議論をするのは当然じゃないかと、かように私は思います。そうして、この沖縄が果たしておる役割りというものは、ただいまこれはたいへんな役割りを果たしておる。日本の安全はもちろんのこと、極東の安全にこの抑止力が非常な効果をあげておる。こういうことを政治家は考えるのはあたりまえじゃないでしょうか。私に政治家をやめろとおっしゃればそれはまた別です。   〔発言する者あり〕
  125. 植木庚子郎

    植木委員長 静粛に願います。——静粛に願います。
  126. 成田知巳

    ○成田委員 私は、安全保障の問題を考えるなと言わないのですよ。安全保障のあり方については、社会党と自民党は根本的な相違があります。考えるなと私は言っているのじゃないのですよ。総理は、沖縄の返還を求めるためには安全保障の問題を考えなければいかないと、こう言うのです。そうじゃないのです。まず沖縄の返還ということは、アメリカがいかなる根拠で沖縄を占有しているか、その根拠について明らかにする。その上で、安全保障の問題を論議すべきだと思うのですね。  そこで、その問題については後ほどさらに触れていきたいと思いますが、総理はいま、沖縄が返ってきたときに核の問題を考えればいいと、こう言われましたね。しかしながら、三木外務大臣も、この共同声明を発表されたあと、こう言っているじゃないですか。これは常識だと思うのですよ。要するに、両三年の間に沖縄の返還ができるような条件をつくることが今後の交渉の主題だと言っている。これは共同声明から見て私は当然だと思うのですね。いままで総理は、二、三年内に返還の時期についての合意ができる確信を持っている、その理由として共同声明の「以上の討議」というのをあげられたのですね。ところがその「以上の討議」の中には、御承知のように総理が一方的に主張したと同時に、総理大臣も大統領も、沖縄の軍事基地が極東における日本及び自由主義諸国の安全保障に重大な役割りをやっていると、こういうことを言っているわけです。したがって「以上の討議」にはそれが入るわけですね。したがって、沖縄の基地の評価、沖縄の軍事基地の機能が低下しないようにして返すのが筋か——アメリカは基地の低下があったら返さない、こう考えておるとしか思えないわけですね。そこで、総理はいま、沖縄については安全保障という見地から小笠原と違うと言われるが、小笠原の場合は核兵器の持ち込みは考えません、こう言ったのですが、沖縄の場合には、総理のいまの御発言では、核兵器基地つき、この返還があり得る、こういうことがはっきりしたわけです。これはいままでの政府方針からいったら、私は百八十度の方針の変化だと思うのです。いままで総理は、いわゆる三原則で保有いたしません、製造いたしません、持ち込みはしませんと言った。ついに沖縄に至って、この持ち込みがあり得るということがはっきりしたわけですね。この方針の百八十度転換というものを総理は一体どう考えるか。私たちは、沖縄というものはそんな安全保障の問題の前に当然日本に返るべき問題だ。これは後ほど論議いたしますが、総理はここで、百八十度政策の転換を沖縄に関してやりました、こういうことをはっきり国民の前で言い、その根拠というものを明らかにすべきだと思うのですね。
  127. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 沖縄の問題で、あり得るとかあり得ないとか何にも申したわけじゃございません。私、白紙で、そうしてその返還のときに考うべきことだ、こういうことを実は申しておる。これはまだ私は、ただいま成田君の言われるように、あり得ると、かように実は言っておるわけじゃありません。誤解のないように願います。そこで二、三年のうちに返還のめどをつけるという、そういうことについて私は確信があるということを申したわけなんです。それはめどであって、それからその次に三、四年またかかるのかもわからない。そういうことはやっぱりこの際に申し上げなければならないことだと思います。だからこの防衛の問題について、日米両国の間に合意が成立することが先決であります。私はそういう意味で、日本総理在来方針を主張しろと言われる社会党の方のお話もよくわかっておりますし、またそういう点で私も簡単に妥協するつもりはもちろんございません。しかしこういう事柄は、国際情勢の推移にもよるでしょうし、国論にもよりましょうし、また科学技術の進歩もございましょうし、いろいろのことがあるから、いまからそんなに目にかどを立てて議論することじゃない、それはそのときになりましてよく相談したらいい、私はかように思っております。
  128. 成田知巳

    ○成田委員 小笠原の場合と沖縄の場合と総理は全く答弁が違ったわけですよ。小笠原の場合は核の持ち込みはいたしません、それははっきりしたわけです。ところが沖縄の場合は今後情勢を見なければいかない、こういうことを言っておられるわけですね。一つ情勢いかんによっては核の持ち込みがあるということなんです。情勢いかんによってはあり得るということなんですよ。ないというならば、絶対に沖縄についても小笠原と同じように日本の施政下に返った場合には核基地は認めませんということを、この機会国民にはっきり確約すべきだと思うのです。基本方針は持ち込みはいたしません、したがって、沖縄についても核基地つきの返還は考えておりません、これをはっきり総理国民の前に明らかにすべきだ。いままで国民が非常に不安に感じていることは、総理は口を開けば、一般論としては核の持ち込みはいたしませんと言うでしょう。ところが、事、沖縄になると、いまの答弁でも出ておりますように、問題が非常にぼやけてくるわけです。したがって、基本方針が変わらないとすれば、沖縄についても核基地を残すことは絶対いたしません、これを私は、この質疑応答を通して天下に明らかにすべきだ。これができないとすれば、やはり総理は将来、沖縄の核基地つき返還を考えておる、こうとしかとれないと思うのです。明確にしていただきたいと思うのです。
  129. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 沖縄と小笠原の相違は、まず第一に、小笠原はいま返ってくるんです。これはもう一年以内に返ってくるという、もう来年早々返還の約束をしようという、だからこれは具体的にいかようにでも私どもははっきり言えるわけなんです。したがってこれが本土並みになるという、そういう状況でありますから、ここには、ただいまのように新しい持ち込みも、在来からの核兵器があるならば、そういうものの撤去も、十分話し合っていきたいということを申し上げておる。沖縄はまだ返らないのですよ。この点に非常な誤解がありはしませんか。沖縄を早く返してくれる、これを早く祖国復帰をさすこと、これが、沖縄住民ばかりじゃない、わが国民全体の、一億国民の願いであります。だから、私はこの祖国復帰について最善を尽くしてまいります。しかし同時に、この共同声明でもうたっておるように、この軍事的な基地が果たしておる役割り、これはたいへん大きいのであります。こういう点で両国政府理解に達しないといけないことは、これはもう当然でしょう。だから私は、両三年内にこのめどがつくだろうということを申し上げております。そのめどは一体どうつけるか、これからいろいろ折衝するのです。ただいまから、いまのようにはっきりこうこうだと、こういうことを言うことは、私どもが交渉するのに必ずしも得だとは私は思いません。  とにかく片一方で祖国復帰を早く実現するという一つの要請があります。これは国民の願望である。私は総理としてそのこともぜひやらなければならない。同時に、私自身が総理として、やっぱりこの国の安全も考えなければならない。そこにむつかしさがあるのです。そこで、一方だけの問題じゃない。だから、その施政権が返ってくるから、軍事基地は全部もう撤去だとか、あるいは軍事基地があるからいつまでも祖国復帰ができないのだと、かように考えたその考え方を、二律背反ではないのだ、私は、そこらに調和がとれるのじゃないか、それを一つの交渉のめどにして、これからアメリカと取り組もうというのです。その間には情勢の変化もありましょう。必ずや、おそらくまず一番大きな情勢の変化は、ベトナム問題などはそのうちに解決するでしょう。さらにまた、中共自身だって、いまのような孤立主義からやっぱり国際的に共存政策にも出ていくこともございましょう。国際情勢の変化ももちろん考えなきゃならないし、また私ども、核の抑止力というものがこれからまたよほど変わってくるだろう。これは科学技術の進歩であります。そういうことを考えると、もっと幅の広い交渉をするのが当然ではないのか。私はあえて成田君を説得するつもりで申し上げるわけじゃありませんが、国民自身が、こういう点で、いよいよその返還がきまる、その際にいかに、どうするかということをひとつ考えようじゃないか、かように実は申しておるのであります。(拍手)
  130. 成田知巳

    ○成田委員 小笠原の場合は当面の問題だ、沖縄は数年後の問題だ。しかしながら方針があってしかるべきだと思うのですよ。そしていま総理の御発言を聞きますと、情勢いかんによるのだということですから、情勢いかんによっては核基地を認める場合もあるのだと、当然そうなりますね。総理はそういう御方針を持っていますか。  それから、総理がよく、沖縄の問題については国民的な合意が必要だと言われているのですが、一体、政府自民党はどういう方針で沖縄返還問題をやろうとしておるのか。野党各党は出しておりますよ。国民に、やっぱり方針を示すべきだと思うのです。総理がいま考えておられる、可能にして一番最善の方法というのはどういうのか、それを示すことによって、国民コンセンサスというものが得られるのじゃないか。それを示さないで、ただ抽象的に、沖縄の返還の問題と安全保障の問題を両立させなければいけないと、これだけでは、国民はどこへ向いていいかわからないと思うのですよ。それを明確にしていただきたい。そのことは、沖縄の基地の取り扱いについてどうすべきかということですね。これをひとつ明らかにしていただきたい。
  131. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いま、基本的に沖縄問題と政府が取り組む態度、これは申すまでもなく、先ほど来申しておるように、一億の国民の願望を達成すること、言いかえれば祖国復帰、これが早く実現すること、これが一つであります。もう一つは、わが国の安全、これを確保するということ。これはいま、どうしたらいいかという、その具体的なものはございませんが、あらゆる場合に、私どもは安全確保というその問題を、絶えず総理として考えていく。その二つをとにかく実現さす、こういうことであります。それをやっていく場合に、アメリカと相互の理解と友好関係のもとにこれを片づけていこうというのが、私どもの考え方であります。アメリカと闘争を展開してやることが、沖縄復帰を実現する最善の道だとか最短の方法だとは、私は思っておりません。それはもうアメリカの相互理解、相互親善関係、友好関係のもとにおいてこの沖縄の復帰を実現するという、これが最短であり、最善の方法だ、かように政府考えておるのであります。
  132. 成田知巳

    ○成田委員 話が抽象的で困るのですが、いま私がお聞きしましたように、安全保障の問題に関連して、沖縄の基地というものをどうお考えになるか。返還の場合、総理の言われる安全保障というものを考えた場合、核基地つきの返還というものがあり得るのか。それとも、従来の方針どおり、核基地持ち込みは絶対許しません、そういう大方針のもとに折衝されるのか。それをまず明らかにしていただきたいと思うのです。抽象論ではないのですよ。具体的な問題として、沖縄は例外なのか、それを明らかにしていただきたい。  それから、アメリカとの闘争云々の問題については後ほど申しますが、要するにいま国民の聞きたいことは、一般論としては、総理は核持ち込みは認めませんと言っておる。事沖縄になると、非常に不明確なのです。したがって、それを明確にしてもらいたい。願わくは、国民の希望しているように、沖縄の核基地つきの返還は、絶対こちらは認めません、さらに自由使用も認めません、総理のいわゆる本土並みの取り扱いをするのだ、これを国民期待していると思う。その方針を高く掲げて、そしていわゆる国民的な合意というものを求めるというのが、私は総理としての当然の職務じゃないかと思う。それを明らかにしないで、ただ抽象論を言っていたのでは、国民は全く疑問を持たざるを得ないと思うのです。それを明確にしていただきたい。具体的に言っていただきたい。
  133. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は、先ほどのことで尽きておるように実は思います。いま具体的に言えとおっしゃるが、これは先の問題なんだから、その先の問題をいまからきめてかかるところに誤りがあるのではないのか。先の問題は先の問題で、そのときになって考えればいい。だから、いまの状態では白紙の状態であることが望ましいのです。白紙の状態が。だから、白紙の状態で沖縄返還問題と取り組んでいく。まだある程度の時期的な問題がございますから、その間に情勢の変化もうんとありますよ。だから、そういまからきめて、もう一切この道だ、これだけで一切わき目を振らないんだという、そういう路線を引くことは、私はやっぱり国際情勢についても望ましいことではないと思う。いま方針として言えるのは、国民の願望を達成することと、同時に日本の安全を確保することと、その二つに最善を尽くすという、これが私に課せられた責任だと、かように思います。ただいま御指摘のように、そんなことを言わないで、おれはもう核基地つきのものは反対だとか、普通の基地なら賛成だとか、あるいは有事駐留なら賛成だとか、何かそういうようなお話が皆さんのうちから出てくるのか、あるいはかねてから社会党さんが言っておられるように、これはもう無防備中立だ、おれのところは無防備中立だから、さようなことは一切考えておらぬ、かように言われるのかどうか。私はそういうことでなしに、もっと国際情勢に対処すると、こういう態度でこの問題と取り組まないと、これはやっぱり、この沖縄返還の実現はなかなか困難じゃないか。沖縄の返還、これはもう一億の願望でございます。これはまた、この国の安全を確保すること、これは私だけが声を大にして申すが、国民全体がやっぱり安全の確保については非常に関心が深いと思うのです。ことに最近のように、核の谷間にこの国があるんだ、そういう状況のもとにおいて日本の安全をどうして確保できるのか。これはもう国民全体が非常な関心を持っておると思うのです。だから、このことを、おまえは政治家じゃない、法律家で考えろという。そうじゃなくて、私はやはり政治家、総理として、最高責任者で考うべきことなんで、そういう点は、もう少し成田君も御理解があってしかるべきじゃないか、かように思います。
  134. 成田知巳

    ○成田委員 これは総理の答弁を聞いていまして、国民は全くわからないと思うのですよ。返還のときに考える、核の問題は考えるというのですが、返還がきまる前には、その交渉があるわけですね。三木外務大臣も言っておるように、両三年の間に返還されるような条件をつくることが今後の交渉の次第だと言っておる。返還がきまって、それで核基地の問題を論議するのじゃなしに、こういう問題が前提になって、返還されるかどうかがきまるわけですね。したがって、総理としては、最も望ましいやり方はどうなんだ。いまの情勢のもとで、ただ一つとは、総理として言えないかもわかりません。いわゆる弾力性ある態度で臨まなければいかぬかもわかりませんが、やはり現時点において、いやしくも一国の総理大臣である以上、アメリカとの交渉の経過においても、大体総理としての青写真があるはずなんです。したがって、現下の情勢で最も望ましい、また可能なやり方というのは、総理としては、一体沖縄の基地問題についてはどうお考えになっておるか、これを明らかにしていただきたい。
  135. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 先ほどから申すことを、また同じことを申しますが、これはもう交渉の中身の問題ですし、ただいま社会党の立場から、成田君がいろいろ御意見を述べられました。これも、私どももちろんうわのそらで聞いているわけじゃありませんし、十分それも胸に入れまして、そうして最善を尽くしてまいる、かように御了承をいただきたい。
  136. 成田知巳

    ○成田委員 私は、いまの総理の御答弁から受ける印象は、結局核基地つきの返還、あるいは自由使用、これをのまざるを得ない。もしそうでなければ、そういうことはありませんということをここで明らかにすべきだ。それが言えないということですね。小笠原の場合については、核の持ち込みはいたしません、沖縄においては違うということは、いままでの方針が百八十度、事沖縄に関する限り、転換される、これを明らかにされたものだ、こう国民としても理解せざるを得ない。それ以外の理解のしかたはないと思うのです。そこで私は、そういうやり方がいかに間違いであるか、これを明らかにしていきたいと思うのです。  総理は、社会党のように沖縄問題について談判しろとか交渉しろというのはおかしい、何回もそれを言われます。きょうもそれを言われた。米国が沖縄を持っているのは不当だから交渉しろ、談判しろ、こういうような道は自分はとらない、こう言っておられますね。  そこで総理にお尋ねしたいのですが、沖縄立法院が四月二十八日に決議しておりますね。「沖縄における米国の施政権の根拠は対日平和条約第三条にあるとせられているが、もはやそれは価値を失い、米国の施政権の存続は不当である。」となっておる。これは社会党と同じですよ。不当だ。この立法院の決議というものを総理はお認めになりませんか。不当だとお思いになりませんか。
  137. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 先ほど、一億国民の世論を背景にして私はアメリカと折衝した、ということを申しました。その一つ立法院の決議もあるし、また沖縄問題懇談会等が具体的な問題でありますということを申し上げました。私は、これらの問題をやはり率直に披露して初めてアメリカと話ができた、かように今日も思っております。
  138. 成田知巳

    ○成田委員 社会党がいっていることも不当なんで、立法院のいっていることも不当なんですからね。何も社会党のその主張が間違っているとか言えないと思うんです。立法院の決議と同じなんです。そこで、不当である、アメリカが沖縄を占拠していることは不当である、こう総理はお認めになりますか。もし不当でないとすれば、その根拠をお示し願いたい。
  139. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は、これは不法、不当だとか、かようには思っておりません。
  140. 成田知巳

    ○成田委員 そうすると、沖縄立法院の主張というものを認めたということはお取り消しになっている。そうして不当だとは認めていない、そういう根拠はどこですか。
  141. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私どもは、しばしば申し上げたように、これは不自然な状態だということは申しました。しかし、不当だとか不法だ、かようなことばは使っておりまません。御了承いただきたい。
  142. 成田知巳

    ○成田委員 これはことばを使わないじゃなしに、いま、不当だとは認めないと言われるのですが、不当でないという根拠はどこかというのです。どうも総理は、社会党の言うように交渉しない、談判しないというのは、何かアメリカの占拠というのは、いま言われたように、正当なんだ、そしてお願いして返してもらう、こういう立場をとっているからそうなる。不当でないという根拠をお示し願いたい。
  143. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 サンフランシスコ条約の第三条で施政権を持っておる、かように私は理解しておるのです。したがいまして、いわゆる不当だとか不法だとかいう——しかし、幾らサンフランシスコ条約第三条で施政権を持っておろうが、こういう状態が二十二年も続くということは、これは不自然だ、これが私どもの考え方であります。だから、その意味で、もう潜在主権も認めているんだから、日本のみんなその復帰を念願しておるから、ひとつ願望をかなえてくれ、これを私どもはアメリカに行って話をするのは、これはあたりまえです。
  144. 成田知巳

    ○成田委員 不当とか不自然——不自然というのは、その不当からきた不自然なんです。不当ではない、サンフランシスコ平和条約第三条だと言われたのですが、第三条は、御承知のように信託統治を前提にしていますね。その信託統治というのは、国連憲章にもあるように、自治能力のない、民度の低い住民を対象にしているんですね。総理は、沖縄の県民が自治能力のない、民度の低い住民とお考えになっていますか。
  145. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 これは条約だから、外務省のほうで解釈させたらいいと思いますが、御承知のように、いま御指摘になりましたように、信託統治を考えたらどうかという、しかし信託統治が実現する前に、信託統治を要求したら日本政府は絶対に反対しないということが前文で書いてあったと思います。そしてこの信託統治が出てくるまでは施政権をアメリカが持つという、そういうような書き方じゃなかったかと思い、ます。私はもしこれが——きょうも松野君にもお話ししたのですが、これは施政権でまだよかった、あれがもし信託統治にでもなっていたら、今回のような交渉はできなかった、かように私は思っております。そういう意味で、あれが信託統治にならなかったことがむしろよかったのではないだろうか、かようにすら考えております。
  146. 成田知巳

    ○成田委員 信託統治にならなくてよかった——これは全く第三条というものを理解していない証拠なんです。アメリカはもともと信託統治にする意思はないのです。だからケネディ大統領も、日本に将来返還しましょう——これは極東の緊張の関係もありますが、返還しましょう、またエールズ陸軍次官が、アメリカの下院の歳出委員会で、信託統治にすることは考えておりませんと言っている。そのことは、アメリカに意思はないということなんです。したがって、その義務の問題じゃない。権利を放棄しているわけです。権利を放棄したとすれば、第三条を根拠にして、アメリカは占拠する理由はないわけです。なぜそれを不当と総理はお考えにならないのですか。また、根拠があると、なぜお考えになるのですか。
  147. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は、先ほど申しましたように、法律論でどうこうするのではなしに、日米友好関係、親善関係のもとにおいてこれを解決さすことが、最善また最短の道だ、かようなことを申しておるわけであります。
  148. 成田知巳

    ○成田委員 法律論で云々と申しますが、まず条約で、サンフランシスコ平和条約第三条で、アメリカは施政権をいままで行使してきた——それでも法律論云々はしないということはおかしいじゃないですか。まず法律論、条約論をやって、その上で安全保障はどうあるべきかということを考えるべきである。これは常識の問題ですよ。総理、お答えなさい。常識の問題ですよ。まず私が御質問申し上げているのは、信託統治というものは、民度の低い、自治能力のない国民である、沖縄県民をそうあなたはお考えになりますか。すでに第三条はその点においても間違いがあると思う。さらにアメリカは信託統治にする意思がないということを明らかにしている。第三条の根拠というものはなくなっているわけです。それを明確にしていただきたい。
  149. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 これは条約局長に答弁させますが、それでいけなければ私が申し上げますが、これは先ほど来言っておるように、アメリカ自身がいわゆる領土的な野心のないこと、これははっきりしています。したがいまして、サンフランシスコ条約でも日本の潜在主権を認めておる。イギリスの当時の代表者も、そういうことを言っている。そのとおりであって、しかし、第三条の書き方では、これは将来信託統治にもし希望するならば、日本はそれに反対はできない、またそれをやるまでは、ただいまのようなことがいわれて、施政権はアメリカが持つ、こういうことがいわれておる。しかし、そのままとにかく続いてきたことも事実であります。私は、今日、こういう事柄が、いわゆる法律論で問題を片づけるのでなくて、やはり友好親善関係のもとにおいて解決すべきだ、かように思っております。
  150. 成田知巳

    ○成田委員 もともとアメリカが沖縄を占拠したのは、サンフランシスコ平和条約第三条という条約、法律上の根拠でやっている。それがいま問題になっているときに、 いや法律論じゃありません、政治論でやりますということは、一国の総理大臣立場じゃないと思うのですね。まず、先ほども私念を押しているのですが、沖縄の住民を、それほど自治能力のない人間とあなたは見ておるのですか。総理どうですか。信託統治にするということは、自治能力のない、民度の低い住民なんですよ。これが常識論ですよ。これはもう専門知識を要しないのです。条約論というよりは常識論ですよ、総理。常識論ですよ、これは。
  151. 藤崎萬里

    ○藤崎政府委員 まず、信託統治制度が適用される地域は、民度の低い地域だけに限定されておるわけじゃないのでございまして、憲章第七十七条で、信託統治制度は次の種類の地域に適用するとありまして、a、b、cと三種類ある。第一は「現に委任統治の下にある地域」、bが「第二次世界戦争の結果として敵国から分離される地域」、c「施政について責任を負う国によって自発的にこの制度の下におかれる地域」、こういうことでございまして、沖縄はこのbに該当するというのが、従来から申し上げておる政府の見解でございます。  平和条約第三条の解釈でございますが、これも従来から申し上げておりますように、これは、アメリカがいついつまでに信託統治の提案をしなければならないという義務を規定したものじゃないのでございまして、また、アメリカ政府当局者がいままで、信託統治の提案をする権利を放棄すると申したことはございません。
  152. 成田知巳

    ○成田委員 条約局長、少し的はずれの答弁をしていらっしゃるのですがね。私は地域の三つの条項というのは知っておりますが、そうじゃなしに、信託統治制度目的というのは、民度の低い、自治能力のない住民、これを対象にしているのが信託統治の目的じゃないか、目的を言っているのですよ。地域を言っているわけじゃないのですよ。  それから、サンフランシスコ条約の第三条の問題ですが、アメリカは権利の放棄をしてない、義務を規定したものじゃないと、こう言われるのですが、権利の放棄の意思表示はあっているじゃないですか。信託統治はしませんと言っているのだから、公然と言っているのだから、これが権利の放棄でなくて何ですか。問題はこういう条約論じゃないと思うのですよ。総理の基本的なお考えを私は聞いているのですよ。そうしますと、どこから考えても不当であり不法なんですよ、これは。サンフランシスコ平和条約第三条の権利の放棄、もう事実上信託統治にしないというのだから、もう第三条は根拠がなくなっていますよ。したがって、不当であり不法であるとすれば、即時、無条件、全面返還というのは当然なんです。その上、安全保障の問題はどうあるべきかということを考えるべきだ。したがって、これは権利の要求ですよ。それを、お願いしますなんかという卑屈な態度で臨むべきじゃないと思うのですね。  それからもう一つは、総理は安全保障、安全保障と言われますが、これは沖縄返還の問題と安全保障という次元の違った問題を同一次元で取り扱っている。ということは、沖縄の返還の問題というのは人権の問題ですよ。戦後二十二年、異民族のもとで支配を受けてきた、この人権の問題なんです。ところが、総理は調整すると言いながら、実は安全保障という問題を沖縄返還問題よりも重点を置いている。そのことは、そうじゃないと言われますが、勝間田委員長質問に対して、次のような答弁をされておるのですよ。勝間田委員長は、沖縄に基地があることが沖縄県民にとってはむしろ戦争の脅威になる、総理は基地が安全保障をしておると言うのですが、実際基地にいる人は、沖縄の人は、むしろこれが戦争への道だと考えておる、これを勝間田委員長指摘したわけです。これに対してあなたの答弁は何ですか。「私は、沖縄よりも、この安全保障条約のもとにおいて、日本がほんとうに平和のうちに経済再建に力を注ぎ、今日の隆盛を来たしたという、このことを十分認識していただきたい」——沖縄よりも、要するに日本が繁栄したことが大切じゃないか、このことは調整どころじゃないですよ。人権の問題である沖縄復帰という問題を、安全保障よりもずっと下の次元に置いている。しかも、その安全保障の問題たるや、政府の安全保障というのは、私たち後ほども指摘しますが、アメリカの極東戦略に追随した危険な道なんです。沖縄よりも安全保障が大切とは一体何ですか。言うまでもなく、沖縄の人は、戦争末期に本土のたてになって十数万人の人が死んでいるのですよ。戦争が終わってから、いわば日本本土の人質になっているのですよ。そして植民地的な、奴隷的な生活をしいられてきているのです。この背景というものなくして、安全保障、日本が繁栄しました、沖縄問題よりもこのほうが大切でございます、これは口が腐っても総理としては言えないはずだ。むしろ、いままで本土のために犠牲になった沖縄県民、このことを考えるならば、安全保障との調和論なんか出すべきでないことはもちろんなんですが、本土の基地、これを撤廃するより先に、沖縄の基地を撤廃しろ、そういう社会的な、道義的な責任感に基づいて、アメリカと折衝すべきだと私は思う。これは、もし総理に人間的なものがあれば当然のことだと思う。総理はかつて、沖縄の祖国復帰なき限り戦後は終わらないと言ったのです。その名文句を吐いた総理が、沖縄よりも安全保障なんかということは、絶対言うべきじゃないと思うのです。私は総理の決意を聞きたい。そういう意味においても、沖縄については、基地が、核基地が残るかどうかは、今後の折衝に待たなければいかぬなんということは、絶対に言うべきじゃない。もう総理の下心がこれで国民にはっきりわかったのですよ。やっぱり基地を残すという前提ですね。そういう交渉をやろうとしているのですね。これはもう沖縄県民のみならず、日本国民全体の絶対に承服できないことなんです。総理の見解を承りたいと思います。
  153. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 何度でも申しますが、実は一億国民の願望達成、また安全確保、私はこれが、程度はどちらが上とかどちらが軽いとか、かような意味はございません。これは、もしそういうことを御理解だとしたら、私の表現がそういうことになるならば、これは何か私が表現が間違っている。今日申し上げることが正しい。もうはっきり申しますが、その二つは同時に考える。やっぱり社会党の方も、おそらくわが国の安全確保の大事なことはよく御承知だろうと思います。だからこそ、安全論争、防衛論争、これをなさるのだと思います。だから私は、社会党の方が安全について無関心だとは申しません。これはもう確かに日本の国が安全でなければならない。ただその安全について、私どもが考える安全の方法というものと、社会党の方の言われる安全の確保方法、この間には非常な差がある。その点はまことに残念であります。こういうことはどうでもいいんじゃない、これが基本なんです。私はこの点をよく言って、かみ合わないと、どうしても話ができないことになるのです。私は、ただいま申し上げますように、沖縄の復帰、これは一億の願望である、またこの国の安全を確保すること、これはもう絶対に必要なんだ、私どもは、この国の安全を確保するために、日米安全保障条約を必要としておる。それはもう社会党の皆さんは、それは必要なしと言われるのだから、それはそこでうんと結論が違うのは当然であります。そこで、私は、沖縄の問題もこれはとにかく早く実現するようにしなければならない、復帰を早く実現するようにしなければならない、それかといって、在来からのわが国の主張を非常に変更さすという、そういう状況でもない、かように思います。これはもう先ほど来成田君から御指摘になりましたように——しかし、私は、これらの点は、ここ一、二年たてば、必ずや日米両国が合致する、満足するような共通点を見出すことができるんじゃないだろうか、それを見つけようというのがただいまの状況であります。  そうして、これがどうしてもおわかりにならないと言われるが、同時にまたことばの端をとるわけじゃありませんが、あれでもう総理の核基地つき返還ということを考えていることはよくわかった、こういうようなことばも言われますが、私はそんなことまで実は申しておるのじゃないのです。そういう事柄についてこそ、これから国民とともに十分検討して、そうして返還のめどもつけ、実現するまでに両国民が納得のできるような、そういう処置をとろうというのです。これからまた変化もございます。いろんな意味で変化もございますから、いまから一つの方法をきめて、そうして取り組むということはいかがかと思う。これはちょっと間違ってくるんじゃないのか、かように申し上げたのであります。
  154. 成田知巳

    ○成田委員 一つの方法に固定することが間違いになる、将来の情勢の変化も考えなければいかぬ、それはことばのとおりだと思うんですよ。しかしながら、沖縄の核基地つき返還はあり得ないということは言い得ないということですね、総理は。情勢の変化によってはあり得るということを言っているということは、総理の頭の中には、最も国民関心を持っている核基地つきの返還、自由使用というものも一つの方法として考えている、これはもう論理的にそうならざるを得ないと思うんですね。それを私は指摘しているのです。それが非常に危険だということです。  そこで、いま日米安全保障条約の問題をいろいろ言われ、安全保障についての見解の相違を言われました。その問題について入りたいと思いますが、その前に、この問題に関連してお聞きしたいのは、総理は、その共同声明を発表されたあと、ジョンソンは太平洋の共同防衛、総理もそれに対して賛成されたのですが、太平洋の共同防衛というのは一体何ですか。両国の共同防衛というのは、一体何をお考えになっているのですか。
  155. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 アメリカは、大統領はじめ各長官とも、日本平和憲法はよく知っております。したがいまして、日本がやり得る範囲というものは、これはもうちゃんと限られておる、これはよく知っておりますから、その憲法違反まで向こうが願っているわけじゃありません。共同防衛と申しましても、これは日本が担当すべき日本領土についてももっと積極的に担当したらどうかというようなことはもちろん申しておりますけれども、それより以上のことがあるわけではございません。
  156. 成田知巳

    ○成田委員 そこで、小笠原が返った場合、沖縄も同じだと思いますが、米韓、米台、米比、ANZUS条約、こういうものが共同防衛地域にあげておりますね。その現在の沖縄、小笠原は、当然共同防衛地域からはずされるものと理解すべきだと思いますが、どうでしょうか。
  157. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 日本は、米韓あるいは米台、またANZASにも参加しておりません。したがいまして、アメリカが小笠原を日本に返してきたら、日本が防衛の任に当たるのは、申すまでもなく、小笠原の領土、領空、領海、これに限られることはもちろんであります。しかも、その範囲におきましても、ただいまアメリカがどういうような防備体制をとっておりますか、それもよく話し合ってみないと、即刻全部が移り変われる、こういうものではございません。したがって、徐々に変わる、こういうことばを使っておるのは、そういう意味でございます。
  158. 成田知巳

    ○成田委員 そこで、小笠原の防衛なんですが、いま領土、領海、領空と言われましたが、共同声明には、小笠原諸島の地域とありますね。この地域の範囲は一体どうなんですか。
  159. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 小笠原の地域というのは、この前も、その範囲は一体どこまでか、島々は一体どれどれか、こういうような話がございましたが、この点は外務当局と十分話し合って、その間に、日本との間に誤解はございません。これは南西諸島のうちから沖縄並びにその一連のものを除いたもの、したがいまして、東のほうの一連の火山列島をも含んでおると思いますが、南鳥島等も入ります。しかも、その地域は、先ほどから言っているように、領土、領空、領海、かように御了承いただきたいと思います。
  160. 成田知巳

    ○成田委員 いま、小笠原諸島の地域の中には、火山列島、沖の鳥島、南鳥島が入っていると言うのですが、サンフランシスコ平和条約第三条では三つのグループに分かれていますね。一つは南西諸島ですね。南西諸島の中には琉球諸島及び大東諸島が入っている。第二のグループは南方諸島です。この中にいわゆる小笠原群島、西之島及び火山列島。いまあげられた沖の鳥島及び南鳥島は第三グループなんですね。したがって、小笠原群島というのは南方諸島の一部なんですよ。南方諸島の一区域なんですよ。ところが今度の共同声明、いまの御答弁では、小笠原諸島、沖の鳥島、南鳥島、これも入ると、非常に範囲が広がったわけです。これはサンフランシスコ平和条約第三条のグループ別とは、少なくとも違っておると思うのです。私は、広く返ってくること、賛成です。しかしながら、サンフランシスコ平和条約第三条の定義とは違うということですね。なぜこのように広げたのか。そのことは防衛問題とも関連があると思います。そういう意味でひとつお尋ねしたいのです。
  161. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 これは、外務当局が事務的に話し合ったものをまずお聞き取りをいただきたいと思います。
  162. 東郷文彦

    ○東郷政府委員 ただいまの点は、十一月の総理訪米に先立ちますいろいろな話し合いの場合におきまして、この平和条約のただいままでお話しの南方諸島以外のすべての島を含むということで、事務的には間違いなく話をしておりまして、 コミュニケをつくる場合にも、あるいはこの平和条約第三条の字を引きまして全部書くという案もございましたけれども、そういたしますと、コミュニケが非常にややこしくなりますので、その見地から小笠原という字を使うことによりまして、それらの諸島全部を含むという了解で作成いたしました。
  163. 成田知巳

    ○成田委員 あれだけ長文のコミュニケに、あと沖の鳥島及び南鳥島を入れることが難解になるということは、これは理解できないと思うんですね。そんな簡単な問題じゃないと思いますよ。サンフランシスコ平和条約第三条に三グループに分けているんですよ。南方諸島、南西諸島、沖の鳥島及び南鳥島と。しかも小笠原群島というのは南方諸島の一部なんですよ。これは条約で規定しているんですよ。このグループが之をやるのに、事務当局で打ち合わせをして、共同声明には、字句が繁雑だから、これは全部小笠原で含めました、そんなことは許されないと思いますよ。条約の規定を、事務当局の一方的な事務上の煩瑣だ、これでかえるということは許されないと思う。共同声明にそういう共同声明はつくれないと思うのです。これは明確にしていただきたいと思いますよ。これは防衛との関係があるんですよ。
  164. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いずれこれは協定のときに明確になりますから、さように御了承いただきます。またこの点は、ただいまの話でも御了承だと思いますが、これが違わないということ、これはもう再確認しておりますから、どうか御了承いただきたい。
  165. 成田知巳

    ○成田委員 協定のときに明確になるというが、いまの方針で明確にされるのでしょう。それは条約と直接ぶつかるわけですよ。そんなものをいま明らかにしないで、協定のときに明確にします、それは許されないです、国会として。条約第三条にその三グループははっきり書いてあるんじゃないですか。
  166. 東郷文彦

    ○東郷政府委員 やがて、返還協定をこれから米側と話し合って確定いたしますが、その際には、むろん平和条約第三条のいまおっしゃいました島もそのとおり引きまして、その返還協定ではむろんはっきりいたす予定でございます。
  167. 成田知巳

    ○成田委員 この問題について、共同声明ができたあと、東郷さんに、小笠原地域、この地域というのは一体どの地域だと言ったら、東郷さんがあの地域だと言って、大笑いになったというのですね。それほど政府はこの問題を簡単に考えておったのです。しかしながら、やかましく言えば、サンフランシスコ平和条約というのは多数国家の条約なんですよ。したがって、この条約で規定されたものを両国だけで改正するということは、ほんとうはできないはずです。したがって、この問題については、いま言った共同声明で、小笠原の中にこれは全部入りますなんということは、共同声明の権威にかけても私は言うべきではないと思う。やはり共同声明に明確に書くべきですよ。協定の際にやりますなんということは、共同声明の権威そのものをなくしているじゃありませんか。そんな共同声明なら変えてください。まずやり直してください。最も重要な問題、条約との関係で問題のある問題を共同声明でごまかして、それで協定であらためてやりますなんていう、そういう共同声明なら、私は改めるべきだと思うのですよ。総理、どう思いますか。
  168. 東郷文彦

    ○東郷政府委員 先ほど申しましたように、この点は十一月、総理訪米以前の話し合いにおきましても、双方において全然意見の不一致もございませんし、また両国間を法律的に拘束する問題といたしましては、共同声明よりは返還協定の字句のほうが問題になりますので、そのときに、共同声明にこう書いてあったからというような問題は、明確にすでになっておりますので、さような心配はわれわれはないと考えております。
  169. 成田知巳

    ○成田委員 逆なんです。やはり条約との関係があれば共同声明でそれは明確にすべきなんです。明確にして、それを協定で成文化すればいいのです。しかもその共同声明で小笠原地区という、いかにもサンフランシスコ平和条約第三条の小笠原群島だけをさしているような、そういう印象を与えて小笠原地域の防衛を守るといっておる。これは何と申しましても、共同声明のつくり方に問題があると思うのですよ。  それから、問題は、したがってその防衛の問題なんです。いま総理は領土、領海、領空と言われ、さらに本会議質問に対する御答弁を聞きますと、公海上の軍艦、船舶——これは日本人の財産ですから、これはわかります。だとすれば、この小笠原諸島のこの地域の防衛の責任を生む。共同声明は地域となっているのですよ。いま言われたように、なぜ領域と書かないか。私が問題にするのは、もし沖の鳥島及び南鳥島が入りますと、底辺は沖の鳥島と南鳥島の関係で約二千キロですね。それから父島に対しては二等辺三角形の形で約千キロ以上です。広大な地域がいわゆる小笠原諸島の地域なんです。この広大な地域の責任を負うと言われたのですよ。なぜ総理の言われるように領海、領空、領土だけならば領域ということばを使わないのか、地域の防衛の責任ということでこの広大な地域の防衛の責任を共同声明で発表されたのか、これが問題だと思う。安保条約でも領域というのはテリトリーと書いてあるのですよ。それを今度はエリアということにしている。そうしてこの広大な小笠原地域の防衛の責任を負う、これがいわゆる太平洋共同防衛につながる、こうとらざるを得ない。したがって、もし総理の言われるように、領土、領海、領空ならば、領域と改めるべきだ。この共同声明は間違いだ、こう認定せざるを得ないと思うのですが、いかがですか。
  170. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 なかなか成田君、論理的にお話しでございますが、大体この共同コミュニケ——他に議論が波及しても困りますけれども、両国政府方針をきめるとか、基本的な意向を明らかにするとか、こういうものでございますから、いわゆる条約だとか協定、こういうものではございません。したがって、共同コミュニケの取り扱い方はややそれらとは楽な扱い方をしております。したがって、この点では今後国内でさらに国会の承認をとる手続を必要といたしますから、そういう際に明確にひとつしていただきたいと思います、その島の範囲ですね。  それからまたもう一つの防衛の責任日本は今日まで残念ながら全部日本の力だけでわが国の防衛の責任を果たしておるとは私は思えません。だからこそ日米安全保障条約の必要をいま痛感しておるのです。また私がしばしば国民に呼びかけ、みずからの国はみずからの手で守る、こういう気概をひとつ持とうじゃないか、こういうことも実は申しております。しかし、それかといって、私は平和憲法の範囲を逸脱するような考えは毛頭持っておりません。言いかえますならば、この極東の平和と安全のために果たしておるのは主として米軍がやっておる。日本はもちろん抑止力として、日本の本土における自衛隊というものが戦争抑止力、これは十分発揮しておると思いますよ。しかしながら、いわゆる極東というか、他の地域については、これはやっぱり米軍が果たしておるのです。だからこの点も御理解をぜひ賜わりたいと思うのです。私どもはいま国力、国情に応じた自衛力を持っておる、こういう意味です。そしてその国力、国情に応じた自衛力はやはり戦争抑止力を日本本土内において発揮しておる、かように御理解をいただきたい。いわゆる共同防衛と申しましても、日本の担当しておるものはそういう意味で非常に限られたものだ、かように御了承いただきたいと思います。
  171. 成田知巳

    ○成田委員 共同声明というのは両国首脳のつくった文書なんで、そんなに厳格な意味がないのだ、こう言われたんですけれども、私はそんなものじゃないと思うんですよ。いやしくも、特に沖縄、小笠原の問題については関心を持っているのですから、したがって、相当専門家がいてつくられたことなんですから、小笠原の範囲についても、いま言ったよに非常に問題があった、地域については総理は領土、領海、領空だと言っておる、それぐらいのことが外務官僚にわからないはずはないと思うのですよ。地域と領域がどう違うか。ことさらに地域ということばを使ったということは、この広大な三角形の水域に対していわゆる共同防衛、日本が防衛義務を引き受けるその伏線であったとしか考えられない。いま総理は、この地域ということばはラフなことばであった、間違いであった、こう言われるのですが、それではこの地域ということばは領域というので必ず訂正されますね。
  172. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は、間違いであったとは申した覚えはないのですが……。この領域ということばがいま問題になったでしょう。その領域ということばは、これは私どもの考えているのとは違っているということをいま申したわけです。領土、領空、領海、これが私どもの防衛の範囲だ。だからその領域としていま御指摘になりましたような三角形の広い区域、これを考える、そういうものではないということを申したわけです。  また、さらに申し上げますが、私は在来から言っておりますように、施設、地域、これは安全保障条約でしばしは使っておることばだと思います。今回特別にそういう用語を使ったわけではなくて、安全保障条約上の用語と、かように御理解をいただきたいと思います。
  173. 成田知巳

    ○成田委員 安全保障条約上の用語になっていないんですよ、いま総理が言われるような。そして、その共同声明にはこの地域の防衛の責任といっているのです。ところが総理は、この地域というのは領土、領海、領空である、これは安全保障上のいわゆる領域だと言われる。したがって、両国首脳が発表する共同声明なんですから、この領域の責任というならわかるのですよ。これをことさらに、専門家がいながら、地域といった、そこに問題があるわけです。したがって、いま言われたように広い三角形の防衛を考えているわけではないのだ、領域を考えているのだしたがって、これは当然協定でその形で出るものだ、こう私は理解したいと思います。  それから、この防衛の問題をいま総理は言われました。この点についてお尋ねしたいのですが、総理は安全に対する国民が確信を持てば、両三年といわないで、それよりも短い期間で返ってくると言われる。さらに所信表明では、国民が国を守るための現実的な対策、こういうものを考えろ、そうなれば近い将来に返ってくる、こう言われたのですね。そこでその現実的対策とは何かということで、本会議でも勝間田委員長その他から質問があったのですが、総理の答弁は、たとえば、憲法改正はしない、あるいは海外派兵はいたしません、徴兵制もやらない、いわばないないづくしなんですね。いままで両三年内に返還の時期についての合意ができると、こう言っていたのが、決意いかんによっては両三年以内に返ってくるということでしょう。その前提が具体的な施策だとすれば、国民としてはその具体的施策というのは一体何かというものについて重大関心を持たざるを得ない。ところが答弁では、憲法改正はいたしません、何々はいたしませんと言うだけなんですね。この点について、官房長官が、所信表明のあった日に、この意味は、精神的な面を非常に強調すると同時に、自主的防衛の整備、安保条約の堅持、米国の核抑止力への依存の三つ、こうあげておられるのですね。この点は総理もそのとおりだとお考えになりますか。
  174. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 まあ、人間が違っておるように、やや表現その他は違っておるか知りませんが、私は同一の考え方だ、かように思っております。
  175. 成田知巳

    ○成田委員 そこでお尋ねしますが、憲法の問題海外派兵、徴兵はやらない。国防省の設置あるいは機密保護法、こういうものはどうお考えになりますか。
  176. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は、国内でもいろいろ意見が違っておりますね、この安全保障体制について、そういう事柄が話がむずかしくなるゆえんじゃないだろうかと思います。どうも、いまの安全を確保する、こういう意味から、私が自民党どおりに全部がなってくれとかようにいま呼びかけても、なかなかなられないでしょうが、自民党だけでも、これもまた自民党の中でもいろんな議論がございます。しかし、少なくともいまの自衛体制、防衛体制、それに加えるの日米安全保障条約、これでこの国の安全は確保できる、こういうのでありますが、最も極端な例を申せば、核兵器持つべし、こういう議論もないではございません。これは自民党の中の意見でもそれだけ違っておる。まして国論として見た場合に、無防備中立論もございますれば、また安全保障条約、これこそ戦争への道だといって攻撃される皆さん方もあるのです。こういう事柄が今日の安全体制、防衛体制に非常に影響を与えておると思うのです。日本は一体どう考えておるのだろうか、安全保障体制、これで万全を期しているのだろうか。あるいはよその国まかせじゃないのか、こういう議論すらあると思います。そういう観点からいろいろ考えてみると、いまの秘密保護法、そういうようなものについても、これはただいまの世論が非常に開いておる。これは絶対に必要だと言う者もありますし、これこそこれは特別に言論を圧迫し、あるいはその他の自由を奪うものでけしからぬというような議論もございます。しかし、そういうものをよく私ども考えて、そして政治をしなければならない。ここに国民の総意を結集する必要のあること、これは、私が成田さんに申し上げるまでもなく、御承知のことだと思います。ただいまのような、真正面から摩擦を起こすようなことについて私が今後どういうように取り組んでいくかというただいまのお尋ねでありますが、私は小さな問題のために大きな摩擦を引き起こさないようにこれは注意すべきだ、かように私自身考えております。そうして最も大事なことは、いやが上にもこの国の安全、それを十二分にひとつ考える、こういうことでありたいと思います。  また、そういう意味からも、ただいまのように、あるいは一部で外務省の機密文書が漏れたとか、あるいは防衛庁の機密文書が漏れるとか、こういうようなことがあっては困るのです。だから、いま法律をつくる、かようには申しませんが、わが国の安全確保のために万全を期するという、そういう態度ではぜひ取り組んでいただきたい、かように私は考えております。
  177. 成田知巳

    ○成田委員 総理方針を聞くのですけれども、総理一つも自分の考え方を言わないのですね。まあ、言えないのかもわかりませんが、言わないのですね。  そこで、自主的防衛の整備の問題で、けさ松野委員質問に対して、平和憲法を守る立場から、核兵器は製造しません、保有もいたしません、持ち込みもいたしません——この持ち込みの問題について、沖縄については非常に怪しくなっております。これはやはり私は憲法の精神に反しておると思うのですよ。あなたは憲法のワク内というものを逸脱しておると思うのですよ。そのおそれが多分に出てきたということです。そう言いながら総理は、武器としての核兵器は持ちません、持ち込みません、平和利用としての核、これは別だ、こう言っているのです。そこで憲法のたてまえというのは、やはり自前の核兵器は持たないことはもちろん、核の持ち込みも許さないというのが憲法のたてまえじゃないかと思うのですが、これに対する総理の御意見を承りたい。
  178. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 憲法上の問題と言われるが、憲法の精神に反するかどうか、こういう問題じゃないかと思うのです。まあ日本の場合は、核戦争ばかりじゃない、いわゆる国際紛争を戦争に訴えないという、そういう意味で攻撃的な武器は持たないという、これはまあ誓っておるということでございますから、この点で、私どもがいま議論しておるのはそういうことであります。外国に脅威を与えるそういうような武器は持たない、だけれども、自衛のためならというが、それでは自衛のためなら核兵器を持つのかという、これも先ほど来言っているように、私どもは核兵器は持たないということを誓いました。しかし、とにかくいま核を保有しておる国の谷間にあるのだから、そういうもとでこの国の安全を確保するためには、日米安全保障条約によらざるを得ないじゃないか、これもやむを得ないじゃないかということを申しておるのであります。   〔委員長退席、二階堂委員長代理着席〕 だから私は、成田君とそれらの点では意見が一致するのじゃないだろうか、かように思います。
  179. 成田知巳

    ○成田委員 全く基本的な問題について意見は一致しませんね。いま総理は、日本は核の谷間にある、これは共同声明の中共の核兵器の問題だと思いますが、この共同声明の中に、中共からの脅威に影響されないような状況をつくると言っていますね。この状況というのは、この文意から見ますと、次には、たとえば政治的、経済的安定と言っていますから、この文意のねらいは、この状況というものは軍事的状況だと思うのですね。それ以外にはあの共同声明は理解できない。この軍事的状況というのは一体どういうことをお考えになっているのか。たとえばNEATOなんかというものをお考えになっているのか。いま日本は核兵器は持たない、防御用にも持たない、こう言われたのですが、NEATOというものを考えていらっしゃるのか。それでなければ、具体的にそういう脅威されないような軍事的状況というものはどういうものをお考えになっているか、それを承りたいと思います。
  180. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いわゆる防共連盟というものは考えておりません。日本の場合は日米安全保障条約、これで日本の安全を確保している。おそらく韓国の場合は米韓条約、あるいは中華民国の場合は米台でやっておるのだと思います。いま問題になりますのは防共連盟、そういうものを考えておるか、これは全然考えておらない、これははっきり申し上げておく。  また、中共自身も、核兵器を持ちましても、これは共存状態になれば、私は脅威を必ずしも与えるものではないだろう、また核の使用ということについて世界に声明する、かつていわれたように、自分のほうが先に核兵器は使わないというように言っている。ここらにも一つの安心感はあるのかもわからない。それならばむしろ核を開発してくれないほうを私どもは希望する。とにかくやはり共存関係に立つのだということで窓口を開いて、そして国際社会に親善友好の関係を持つようになれば、国際関係は非常に変わってくるのじゃないだろうかと思います。私は、核兵器というものが、なるほど戦争の武器として非常な力を持っておるという、そのことは認めますが、同時に、これこそが戦争の抑止力になるのじゃないか。核兵器というものはそう簡単に使えないのだ。せっかく持ちましても、必ず報復を受けるのだ。かように考えると、核兵器というものをもし使用するならば、これはたいへんなことになるのだ。そういう意味で核兵器自身が、これはちょっと矛盾するようですが、戦争抑止力がそこにあるのじゃないだろうか、かように私も思いますので、ここらもひとつ今後のあり方として考うべきことじゃないかしらんと思います。だから核兵器、それを持つことが一つの武器ではあるが、同時に、そんなものをもし使ったら、もう袋だたきにあう。そういう意味で、これはまた使えないものだ。そういう抑止力がある、かように私は理解しております。
  181. 成田知巳

    ○成田委員 一般論としての総理の御答弁ですが、軍事的状況というのは一体どういうことを考えておるか。共同声明で軍事的状況をつくるといっている、その「状況」というのは一体何ですか。
  182. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は、いまのような軍事的にそれぞれの力をかす、あるいは核のかさの問題も一つございましょう、それが一つの問題だ。同時にまた、政治的に安定すること、経済的に自立すること。問題は、やはりいま貧乏が問題を起こす一つの禍根だと思います。これはやはり各国が協力して貧乏を征伐するという、これはせっかく東南アジア諸国が貧乏から抜け出そうとしておるのですから、ここらにやはり私どもが援助すべきものもあるだろう、かように思います。
  183. 成田知巳

    ○成田委員 先ほど申しましたように、この「状況」というのは、文章からいきまして政治的、経済的安定とは別のパラグラフなんですね。「また」——「オールソー」と書いてあるのです。したがって、「状況」というのは軍事的状況、その軍事的状況というのはいまのお話では核のかさ、こういうことが明らかになったのです。  そこで、いま中国のお話がありましたが、中国は不使用協定を提案しましたね。いかなる理由にしろ、みずから先に核を使うことはしない。もっとも、総理のけさの答弁でも言われましたが、これがいわゆる核の脅威をなくす一番の現実的なやり方だと思うのですね。そこで、中国はそういう提案をしておりますし、それからソ連もそういう提案をしている。したがって、ほんとうに総理は、核の脅威というものをなくするとすれば、核脅威に対するほんとうの対策というものは、核は使わないということを核保有国の間で協定することが一番だと思います。これをアメリカに総理は強く要求すべきだと思うのです。そういう不使用協定に対する総理の見解はどうか。さらに、最近の国連におきまして、ソ連あるいは非同盟諸国が提案した不使用の決議案ですね、これに対して総理は賛成なのかどうか。この二点を承りたいと思います。
  184. 三木武夫

    ○三木国務大臣 核拡散防止条約とも関連して、核の使用というものに対して、非同盟諸国などに対してどういう保障を与えるかということでこの問題は論じられておる。これはやはり、政治的なかけ引きでなしに、この問題はいわゆる大きな問題だと思う。これは、条約の関連などにおいて核の脅威を除くのには、核保有国がどういうふうな形でその不安を除くことがいいかということは、今後の問題だと思います。国連等においても、この問題が政治的に何かかけ引きみたいに取り扱われないで、ほんとうに核の脅威から人類を守るというようなことで検討されることを、われわれは望んでおるわけであります。
  185. 成田知巳

    ○成田委員 一体何をお答えになったのかわからないですね。総理、ひとつお答え願いたいのですが、不使用協定に対しては賛成ですか。国連決議が行なわれましたね、これに対しても賛成かどうか。特に、核の脅威の問題を論ずる以上、不使用協定の即時締結というために行動を起こすべきじゃないか。
  186. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いま外務大臣からお答えいたしておりましたとおり、私は核兵器、そういうものがなくなることが一つの人類の願いだと思っております。そういう意味日本は持たない、製造もしないという、これこそ皆さんとともどもに、そういう方向が人類のしあわせのためにも必要だ、かように思っておるわけであります。  そこで、そのまず第一歩として、いわゆる核の拡散防止協定、この精神に協力するという、そういう意味でできるだけ早くこの条約を締結すべきじゃないか、かように実は申しておるわけです。ところが、五つや六つの国あたりが持つことはいわゆる拡散というほどの問題じゃないのだ、十も二十もの国が持つようになれば、それこそ拡散というような問題はたいへんなことだ、いまの程度なら必要ないじゃないかという、これはフランス的な考え方もございます。しかし、私どもはそんなに思わない。とにかく、核を持つ国がふえることは核戦争への危険がそれだけふえるのだ、そういう意味で核拡散防止条約、これが一日も早くできることを希望しておる。また、そういう意味で努力もしております。  ただ、核が新しいエネルギーとして持つ平和的な効力、これはどうも持たないとやはりおくれることになるのじゃないのかというので、平和利用については、持たない国も持てる国も同じような待遇を受けるわけにいかないのか。いわゆる持たない国に対しても。平和利用の機会均等というか、そういう意味のことを実は強く要望しておる。これがある程度、ただいまアメリカなども、あるいはイギリスも同じように、一定の条件のもとにおいて平和施設、平和のための核使用、これは公開してもよろしい、こういうことを言っておる。また、査察を受けてもいいということを言っている。こういうのがいまの現状でございます。  しかし、とにかく核を米ソが持っておるだけでもう非常な危険を身近に感ずるのだから、それを使用しないような方法、ただそれが政略的な問題でなしに、しんからもう使用しないのだ、こういうようなことであるなら私どもも非常に希望する。それにはやはり核拡散防止条約、これが望ましいことだし、そうして核兵器がなくなる、そういうファーストステップ、最初第一歩を踏み出す、こういうことであってほしいと思います。それが、ただいま言われるように核を使用しないのだという、そういう意味の約束を取りつけることが必要じゃないかと言われますが、私は、最近国連で行なわれた議論の全貌を明らかにいたしておりません。新聞等で、日本がその際に棄権したとかなんとかいうような報道もございますが、私はそれらについての十分の報告もまだ受けておらないような状況ですが、しかし、いずれにいたしましても核兵器の持つ危険性、これに対しましては各国とも注意を払って、そして人類のためにこの種の兵器がなくなるように、また、その方向へ一ぺんにはできないにしても一歩一歩進んでいく、こういうことであってほしいと思います。
  187. 成田知巳

    ○成田委員 時間もだいぶんたっておりますので、最初に申しましたように、端的な御答弁をいただきたいのですよ。私は、不使用協定に賛成かどうかと言うのです。そうすると、拡散防止条約の平和利用にまで脱線されたのでは、時間もだいぶんたちますので……。  そこで、共同声明で中国の脅威の問題をいろいろ言われましたが、私は、中国が不使用協定まで提案しているのだから、総理としても、ほんとうに核の脅威をお考えならば、不使用協定に対して積極的な行動を起こすべきだと思うのです。中国の脅威云々ということをよく言われますが、これは歴史に対する反省がないと私は思うのですよ。日本の軍国主義というのは、明治以来中国に何度も攻め入っているのですね。そして中国人民に非常な損害を与えている。今度の太平洋戦争日本は敗戦した。その間、中国側から日本に攻め入ってきたとか、攻め入ろうとしたというような事実はないわけです。すべて日本の一方的な侵略なんですよ。しかもこの敗戦処理もまだ終わっていないのですよ。こういう歴史の教訓をくみ取らないで、中国の脅威云々と、これをアメリカと一緒に宣伝するということは再び日本の歴史に大きな汚点を残す、こういう結果に私は道を開くことになるんじゃないかと思うのです。それで、もう少し中国問題に対する謙虚な態度をとっていただきたい。これをひとつ強く指摘しておきたいと思います。  その考え方が、たとえばベトナム戦争の問題にも出ておる。あるいは安保条約に対する考え方にも出ているのでありますが、佐藤総理ベトナム問題について、北爆もさることながら、これに対して北のほうのそれに対応する態度が必要だとか、あるいは今度の所信表明では、さらに一歩を進めて、直ちに話し合いのテーブルにつくべきだとか、こういう演説をされておるのです。北爆の問題には共同声明では触れておりましたが、所信表明では北爆のホにも触れていない。総理は一体北爆のことをどう考えておるか。  現在アメリカのベトナム戦争というものが世界の人々からどう見られておるかこれは最近のギャラップの世論調査にあります。米国の北爆に反対し、米軍の撤退を主張するもの——六カ国調べておりますよ。フランスが七二%、北爆に反対し撤退を要求する。フィンランド八一%、スウェーデンは七九%、ブラジルは七六%、米国と近いといわれているイギリスでさえ四五%、カナダ三四%。しかも、このイギリス、カナダでは、現状維持だとか、あるいはアメリカの攻撃を強化しろというよりは、撤退を主張しているほうがパーセンテージとしては多いわけですね。  要するに、総理の、北爆に対する対応した措置だとか話し合いのテーブルにつけというのは、侵略者と被侵略者を同列に取り扱っている。侵略者であるアメリカに対して国をあげて抵抗しているベトナム人民に対して、抵抗をやめろ、これが総理考え方なんです。現にインドネシアのマリク外相がこういうことを言っていることは御承知と思うのです。   〔二階堂委員長代理退席、委員長着席〕  「米国は北側の話し合いに応ずるとの保証がなければ北爆停止はできぬと言うが」、これをオウム返ししたのが総理考え方です。しかし、マリクはこう言っておりますよ。「われわれアジア人からすると、この考えはおかしい。他人の家へ爆弾を投げつけているのは米国である。爆弾がやんだとき、初めて人々はおはようございますと外に出てこられるのである。」おはようございますというのは、特に日本語で言ったそうですね。これは総理に対する大きな皮肉だと私は思うのですよ。こういう発言から見ましても、現在の南ベトナムにおける戦闘あるいは北ベトナム爆撃、このベトナム戦争を終結さす道はジュネーブ協定に基づく以外にないと思います。これが原則だと思いますね。これに対して総理がアメリカに追随したような方針をとっておられることは、私は非常に遺憾だと思うのです。  そこで、この共同声明にある日米安保条約の問題この安全保障の問題に関連して最後に申し上げておきたいのですが、総理はけさの答弁でも、また本会議その他の答弁でも、安全保障条約が極東における日本あるいは自由諸国の安全保障に役立っておる、こういうことを強調されるわけです。これは私は、いまのベトナム戦争と安保の関係に目をおおうた、ある意味において虚構と申しますか、でっち上げの議論だと思うのです。ということは、具体的に申しますと、去年NHKが安保条約、日本の安全と独立について、という世論調査をしていますね。その世論調査で、日本の安全と独立について日米安保体制が必要だというのが二七%です。武装中立は一四%、社会党の主張する非武装中立は実に四二%ですね。それから、最近朝日新聞その他有力紙が沖縄問題について世論調査をやっておりますね。その世論調査の一つの例を申し上げますと、沖縄の基地は極東の平和や日本の安全に必要か。これに対して、本土における調査は、必要というのは四〇%、不必要というのが三〇%です。沖縄では、必要というのはたった二八%で、不必要というのが四〇%おります。それから、基地はかえって敵の攻撃を受けることになり、不安と考えるか。この調査について、本土では、不安と考える人が五〇%おります。不安でないというのはたった二四%です。沖縄に至っては、基地があることは非常に不安だ、かえって敵の攻撃を受けるというのが実に六五%ですね。不安でないというのがたった一五%です。この両調査は、ベトナム戦争の現実を通しまして、安保条約の本質と申しますか、意義がベトナム戦争によってテストされた。その結果、安保条約の危険性というものが、その本質が国民の前に明らかになったということなんです。  総理はいままで、いや、安保があったから日本は安全で、それで繁栄したと言うが、それは単なる頭の中の抽象論ですよ。むしろ安保条約とベトナム戦争という現実の関係から、安保条約が日本の安全であるかどうかということをもう一度ここで再反省すべきだと思う。総理の言うように、安保があったから安全だ。じゃ安保がなかったらどこから攻めてきたんだ、そういう質問も出ますよ。安保がなかったらどこから攻めてきたんだ、日本はどうなったんだ。これはお互いに抽象論だと思いますね。そういうのは安全保障を論議する道ではないと思う。  さらに、総理は先ほども言われましたが、いわゆる核武装によるところの恐怖の均衡論、沖縄に対する攻撃というものはアメリカとの全面衝突、アメリカの核攻撃を予想しなければいかぬ、これは外務省のいわゆる安全保障に対する見解です。それをあえてやる国はない。だから、沖縄の基地あるいは日米安保条約、こういうものは日本の安全に役立っているんだ、こういう議論をされます。この発想も、この考え方も、ベトナム戦争の経験が全く欠除されていると思うのですよ。単に安保条約というものを抽象的に考えている。ベトナム戦争との関係、ベトナム戦争の経験というものを全く欠除したものの考え方だと思いますね。と申しますことは、たとえばアメリカとの全面衝突を考え日本の基地を攻撃するのはないだろう、こういうことを総理は言われる。それが安全保障になっている道だと言うのですが、そのことはある朝突然、ある国がアメリカとの全面衝突を覚悟して日本に武力攻撃を加えてくる、そういう想定なんですね。そういう考え方それ自体が非常に非現実的な考え方だと思うのです。  ベトナム戦争の現実というのはそれとは全く逆なんですよ。全く逆の事実をいま日本人に教えていると思うのですね。御承知のように、いまベトナム人民は、核強大国であるアメリカですよ、このアメリカの侵略に対して国をあげて戦っているわけですよ。最悪の場合はアメリカの核攻撃のあることも覚悟して、ベトナム人民は戦っていると思うのです。そのアメリカ軍はどこを根拠にしてベトナム攻撃をやっているか。これは日米安保条約、あるいはサンフランシスコ平和条約三条に基づくところの沖縄の基地、日本の基地を利用してアメリカ軍はベトナム攻撃をやっておる。だから、日本政府も認めたように、日本ベトナム戦争では中立ではないと言っている。もうすでに日本は、安保条約の結果、ベトナム戦争では中立を失っているわけです。戦争への道に入っておるわけです。そこで、いまベトナム側がなぜ日本の、アメリカの利用している基地に対して攻撃をしてこないのか。これは私は、ベトナム側がアメリカの核がおそろしいから攻撃してこないのじゃないと思う。総理の言うように、アメリカとの断力衝突をおそれて、それで全面的な攻撃はないんだ、だから日本の安全は守られる、そういうアメリカとの全面衝突をおそれたために日本に対する攻撃がないというわけじゃないのです、現にアメリカと全面的に戦っておるのですから。この北ベトナムがなぜ攻撃しないか。それは攻撃能力がないということが一つだと思うのですね、率直に申しまして。また、そうすることがどういう影響を及ぼすか、それを慎重に配慮している結果だと思うのです。もし攻撃能力があり、そしてアメリカが安保の結果日本の基地を利用している、その基地をたたくことなくしてはベトナム人民は全滅するのだ、こういう状況になった場合、攻撃能力があれば、攻撃しないという保証はないと私は思うのです。アメリカの日本の基地に対して攻撃がないという保証はないと思うのです。特にこのベトナム戦争がエスカレーションして、核の第二打撃力を持っておる中国とかソ連がもし入ってきたという場合、そういうことは当然予想しなければいかぬ。アメリカと安保条約を締結して基地を提供しておることが安全なんだということは、全くそれとは逆だということですよ。現にソ連だとか中国というものは、その意味のことを日本に警告しているじゃありませんか。全く逆だと思う。したがって、安保が極東の平和と日本の安全に必要なんだ、こういう主張というものは、狂信的な反共主義者の頭で考えたことか、あるいはまた、ベトナム戦争の現実というものを全く考えない、アメリカによって押しつけられた、自主的立場を全く放棄した人々の考え方だと私は思うのです。ほんとうの日本の安全というものは、やはり極東における緊張を緩和することだと思うのです。基地を撤去することだ。そのためには、基地を撤去しなければならない、安保を廃棄して緊張を緩和するということ、そのことが平和への貴重なイニシアチブだと思うのですね。そのことがまた、極東の平和と日本の安全への道につながるのだ。そのための平和外交、そのための国際的な平和共存、この努力をやることが真の安全保障の道だ、こういう確信を私たちは持つわけなんであります。むしろ、抽象的に安保条約が日本を守ったのだ、そんな考え方は、ベトナム戦争との関係から、ベトナム戦争の現実の教えるところからいって、全くこれはくつがえされてしまった、こう私たち指摘せざるを得ない。これが私たち立場だということを強く訴えたいと思います。  そこで、総理からそういう御答弁がなければ、またすれ違いということになりますが、ベトナム戦争の現実というものはそういうものだということ。そこで総理に申し上げたいことは、今度の論議を通しまして、要するに自民党政府の沖縄問題に対する方針というのがないということです。ただ、国民的なコンセンサスが必要だ、必要だ、国民的合意が必要だ、必要だ、こう言って、抽象的に国を守るとか、昔の東條内閣が言ったようなことばかり言っている。これではあまりにも無責任だと思う。したがって、少なくともこの日本の将来の運命を決定するような沖縄問題については、どういう形で返還を求めるか、この大綱を国民に示すことが政府並びに与党政治的な責任だと私は思うのです。これを示さずして、ただ国民に国を守ることを説くことは、これは全く無責任だと思うのですね。議会政治あり方からいっても、私は許されないと思う。  そこで、政府はまず沖縄問題についての方針を示すべきだ。そして国民意見を聞くべきだ。そしてある段階が来て問題が煮詰まってきたときは、当然国民の信を問うという意味で総選挙をやる、国民の意思を問う、それが私はほんとうの国民的な合意を得る道だと思う。それをやらないで、秘密外交ですね、いや、これは将来のことでございます、返還の際に核の問題、自由使用の問題は考えますということは、全く問題を回避した形なんです。そういう形でアメリカと妥結して、そしてこれを国民に押しつけるというような非民主的な態度は、私はとるべきじゃないと思う。あくまでも堂々と国民に訴えて、国民の審判を求めるべきだ、こう思うのですが、総理の御見解を承りたいと思います。
  188. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 成田君のお説を実は慎重に、また謙虚に伺いました。たいへんな認識をしておられると思います。もちろん、私どもも過去の歴史について反省をしなければならない。これは、日本人、反省することは大いにけっこうです。しかし、戦後の日本、これはもう新生をしたはずです。平和憲法のもとに、いずれの国とも仲よくする、お互い独立を尊重し、内政に干渉しない、この平和国家としての日本でございます。そういう際に、反省ばかりしているのが能ではないと思います。私は、ただいま申し上げる平和国家、これは十分ひとつ理解してもらうということが必要だと思います。  そこで、ただいま言われますように、中共が核を持つのは、何だか日本から攻めてこられるからと言わんばかりのような言い方をされる。過去の歴史を見れば、日本は攻めてばかり行ったじゃないか。そういう意味で、何か核の開発について、これを援護するようなお話がございました。しかし、私が最近東南アジア諸国を回りました際に、東南アジア諸国、陸続きの諸国は、中共核開発をしていることに非常に危険を感じております。何らそこに脅威はないじゃないかという御指摘でございますが、しかし、沖縄に基地があれば中共が、ソ連が、攻めてくるやらもわからないというようなお話をなさる。攻めてくるやらもわからない、そういうことは脅威だと私は思いますよ。これはもう社会党自身が、そこらにやや矛盾したお考えを言っておられるような気がしてならない。だから、そういうところの軍事基地をなくしろ、かようにお話しでございますが、軍事基地をなくすることが日本の安全を確保する、その道に通ずるとは私は思いません。いろいろの世論の統計を御披露になりました。しかし私は、総理としてわが国の安全を考えた場合に、今日の自衛力だけでは足らない。どうしても私は、日米安全保障条約を必要とする、このことを強く国民にも訴えます。私は、これによって初めて核の谷間にある日本も安全だと思います。そういう際に、どこの国が攻めてくるか、さようなことを考える必要はない。わが国の安全を確保するために十二分の対策を立てる、これが総理に課せられた責務であります。私は、そういう意味からこの問題と真剣に取り組むつもりであります。また、核そのものが使わない兵器であるならば、そういうものを持つ必要はないのじゃないでしょうか。私はまた、国民の生活を犠牲にまでして核兵器を開発するというようなことは、私自身は日本ではとらないと言って、これは何度も申し上げた。これは国民生活を圧迫することに必ずなる。国民生活を圧迫しなくても、日本では持たない、これははっきりしているのです。英国のウィルソン総理と私がかつて、まだ政局を担当する以前に話をしたことがあります。そのときに、労働党党首ではなかったのですが、ウィルソンは、自分たちが政権を担当したら、いまの保守党内閣が持っているような、ああいうような力より以上のものを持つようなことはいたしません、言いかえるならば、国内でも十分の財力がないにかかわらず核兵器を開発しつつある、これはおろかなことですと、実は当時申したものです。しかしながら、安全保障条約に対しては、いわゆるNATOに対しては、いまの保守党内閣よりもより忠実な内閣をつくってみせます、そうして政治的安定をもたらし、世界の平和のために努力する、ということを実は申しておりました。ただいま英国自身も非常な難局に立っておりますが、世界の安全を確保する、平和を保つ、そういう意味の協力は、やはりこういう財政的な危機に際しても英国は果たしておる、かように私は思っております。私は、皆さん方とどうも基本的に根本の考え方を違えております。皆さん方は、安全保障条約がなかったら一体どうなる、どこからか攻められる、だれが攻めてくるか、こういうお話をなさいます。しかし、安全保障条約々持てば必ず戦争になると言われたのは皆さん方じゃございませんか。過去二十年間に戦争の危険がありましだか。そのことをお忘れなく、まずお考えをいただきたい。私は、この安全保障条約があったから、このもとにわが国の繁栄があったということを申しております。これがなくても繁栄はあっただろうというのは、皆さん方の言い分なんだ。しかし、繁栄の問題ではなくて、この問題があればこれは戦争への道なんだといまでも言っておられる。これがあるからこそ戦争へつながるのだ。しかし過去においてはさような危険がございましたか。二十年間ない。今後もないと私は思う。だから、そこで、この点はひとつ謙虚にお互い考えてみようじゃありませんか。国の安全のためにどういう方法がいいか、これは私は、私だけの主張をするわけじゃございません。皆さん方とともどもにひとつ考えてみたい。私は、いま、総理として責任を果たすという、そういう意味からはこのものがどうしても必要だ、かように考えておる。その所信を率直に申し上げてそうして訴えておるのであります。  また、ベトナム問題について、るるお話がありました。なるほどベトナムの問題については、私も東南アジア諸国を回る際に、またアメリカに行きましても、同じことを申しております。そうして、同時に、けさほども松野君にお答えいたしましたように、一日も早く平和が招来すること、これが極東のためにまたアジアの平和のために望ましいのであります。私は、そのためには、アジアの問題であるだけに、南北両者がとにかく話し合いに入ること、これが一番痛切に戦争の悲哀を感じておるはずなんです。だから、ぜひとも二つが話し合いの場につくこと、そうしてそれはジュネーブの協定の精神であろうが何であろうがけっこうだと思う。ジュネーブ精神、これが一つのその方向だろうと思います力とにかく、話し合いに入るという、戦争をやめるということが、これが何よりも必要なことだ、私はかように考えております。  北爆についての問題がいろいろ批判されております。これは、私は、エスカレートしないようにと、あらゆる機会にその話をいたしております。これはもう二年前からその話をしております。しかしながらこのエスカレートというか、あるいは——とにかく北爆は、ときに激化しております。また地上戦闘、これは南の地域において地上戦闘が行なわれておること、これは皆さん方も無視はされないだろうと思う。したがいまして、北爆停止に対して十分の保証があるということが望ましいことではないでしょうか。私は、これを取りつけることにしても何にいたしましても、和平になること、こういうことが理由になりまして、そうして北爆が今日続いていること、まことに残念じゃないか。しかもこれは同一民族ですよ。これは、国が違って他国とやっているのじゃない、同一民族が相争っている。これは、とにかく武器を捨てて、そうして話をすべきではないかと思う。これが私どもの希望するところの問題しかもこの問題についてアメリカ自身が非常に注意をいたしまして、ソ連やその他が拡大しないように、これに十分の注意をしておるわけであります。だから、いま行なわれている戦闘が直ちに拡大して世界戦争になろうと、こういうようなお話がときどき出ますが、これなぞは私ども注意すべき事柄で、さようなことはないのだ、私は、むしろ、こういう事柄が、この必要より以上にある脅威を与えることにもなるのじゃないか、お互いにこういう点についてはやはり気をつけた発言をすべきじゃないか、かように実は思っております。
  189. 成田知巳

    ○成田委員 私は大体質問を終えようと思ったのですけれども、総理のほうからむしろ逆に……。(「挑戦してきた」と呼ぶ者あり)挑戦と申しますか、御意見がありましたから、もう少し時間をいただいてこの問題を明らかにしたいと思います。  いまの総理のお話を聞いておりまして、特に共同声明、あるいは所信表明東南アジア諸国を回ってきて、そうして東南アジア諸国が中国の核に対してどう考えておるか、これを強調されるのですが、大体総理がお回りになった東南アジア諸国というのは、全部とは申しませんが、いわゆる反共国家ベトナム参戦国なんです。そういうところへ行って話を聞いてきて得々と言われることは、総理としてはそういう国で大体洗脳を受けてきたのではないか、これをまず私考えるわけです。  そこで、安保条約の問題ですが、安保があったから日本は繁栄した、私は、そういう論議をやることはあまり意味はないということなんです。これは街頭演説ならいいですよ。そういう演説をやれば、もしそういう御意見を出せば、では安保がなかったらどこかが攻めてくるのだという議論になる。これは私はあまり実りのある議論ではないと思う。だからそういう議論は、いやしくも総理大臣としてはおっしゃらないほうがいいです。参議院の演説くらいでおっしゃるのはいいけれども、あまりにも品がなさ過ぎますよ。  そこで、問題はそういう抽象的な論議ではなしに、私はベトナム戦争との現実で安保条約がいかなる役割りをしているか、いかなるテストを受けておるか、これをもう少し国民は、特に政府は真剣に反省しろと言っておる。いま総理は、社会党は安保ができたら戦争への道だと言ったが、戦争は起きなかったじゃないか。これは私たち社会党その他民主勢力が中心になっていわゆる反戦、平和の運動をやってきて、皆さん方の戦争への道、その手を縛ってきたからこそこの程度で押えることができたのです。しかも、現在政府も言っておるように、安保条約がある以上基地を提供してアメリカに協力するのは当然だと言って、ベトナム戦争に中立ではないと言っておるじゃありませんか。ベトナム戦争に中立でないということは、半ば戦争に加担しておるということなんです。したがって、これが拡大していけば、先ほど言ったように、さらに日本戦争への道に巻き込まれる。そのことは今度の共同声明でありありとその危険性を出していると私は思うのです。  それからジュネーブ協定の問題について総理はいろいろ——要するに話し合いの場につくことだ、ジュネーブ協定の精神を尊重することもいいだろうと言うのですが、ジュネーブ協定には何と書いてありますか。あの十七度線——よく総理は南政府、北政府と言いますけれども、十七度線というのはジュネーブ協定では単なる軍事境界線です。政府的に領域を定めた線ではないということ。しかも、歴史を見てもわかるように、一九四七年、ベトナムは統一選挙をやっています。統一自由選挙をやってホー・チ・ミンが大統領に任命されておるのです。これはベトナム人民の総意としてホー・チ・ミン政府はできたわけです。当時は、かつての宗主国であるフランスでさえ、このホー・チ・ミン政権は財政的に政治的に軍事的に自主能力を持った独立政府だ、こういうことを承認しておるのです。したがって、ベトナムにおける合法政府というのはホー・チ・ミン政権以外にないのですよ。  しかも、例のジュネーブ協定によって十七度線が定められた。このジュネーブ協定には何と書いてあるか。外国の軍隊の導入、軍事基地の設置は一切やってはならないということが書いてある。アメリカは五十万に達する軍隊を出しておるじゃないですか。軍事基地をつくっておるじゃないですか。これは全くのジュネーブ協定違反ですよ。ジュネーブ協定に基づいて解決するのが筋だとすれば、アメリカの北爆停止はもちろんのこと、アメリカ軍隊の撤退を要求することは当然なんです。それを要求されないで、ジュネーブ協定違反をやっておるアメリカ、これと話し合いをしろということ自体が無理な話なんです。これはジュネーブ協定を尊重したことにはならないと思う。総理は同一民族間の争いは早く収拾してもらいたい、そのことは内戦であるということを総理自身認めていらっしゃることなんです。内戦に対して外国が武力干渉することは許されないと思うのです。アメリカが軍隊を導入することは許されないと思う。したがって、ジュネーブ協定に基づいて解決するというならば、まず北爆の停止、アメリカ軍の撤退を要求すべきだと思います。  これらに対する総理の見解を承りたいと思います。
  190. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 もう私も、別に論戦をするつもりはございません。先ほどの私の説明で政府の所見は非常に明確でございますから、もう重ねて申し上げませんが、とにかくいまのベトナム問題は、和平が早くここに実現されなければ困ります。だから、そういう意味で、アジアの問題だと言っている。アジアの問題であるだけに、アジアの両当事者、これはとにかく早く話し合いに入れというのが私の主張であります。そうして、ただいま、それがジュネーブ会議で、その精神によってきめられる、十七度線が軍事的な処置だ、こう言われても、一応そういうところで話しはつくでしょうが、行く行くは必ずベトナム人によって、どういうような国をつくるべきか、これを相談すればいいことだ、私はかように思います。  その他の問題についていろいろ誤解等もあるやに見受けますけれども、基本的にだいぶ立場が違っておるようでございますから、いたずらに論議いたしましてもいかがかと思いますので、この辺でやめておきます。
  191. 成田知巳

    ○成田委員 総理から反論がありましたから、私はもう少しジュネーブ協定の問題その他について触れたいと思ったのですが、総理はどうも回避されるようですから、これは同僚議員に譲りたいと思いますが、単なる精神論じゃないですよ。ジュネーブ協定というはっきりした国際条約がある。これをじゅうりんしているのはアメリカなんだ。それに協力しているのはあなた。そうすると共犯ですよ。  そういうことをはっきり申し上げまして、私の質問はこれで終わらせていただきます。(拍手)
  192. 植木庚子郎

    植木委員長 これにて成田知巳君の質疑は終了いたしました。  次に川崎寛治君。
  193. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 私は、先ほど成田委員から日米共同声明を中心にいろいろと追及をされました、特にその共同声明に関連をし、沖縄・小笠原に重点を置いて、以下質問をいたしたいと思います。  先般の各党の代表質問において、自由民主党を代表して愛知議員は、平和時における領土問題の解決は世界史に例のない近来の快挙だ、このように言われたのであります。また総理も、ヨーロッパの歴史を比較してみよ、こういうふうなことで答弁をいたしております。それで、お尋ねいたします。ヨーロッパでどのように西ドイツ、イタリアが領土問題を解決したか、お答えいただきたいと思います、総理自身。
  194. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 外務省の事務当局から答えさせます。
  195. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 総理が、本会議で党を代表して質問をした者に対して、ヨーロッパの歴史を見よとあなたは答弁をしたわけなんです。答えなさい。
  196. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私はそういう例がなかったように記憶しておりますので、さように申し上げました。
  197. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 それでは、西ドイツは戦後いち早くザール局を設けました。そしてアデナウアーの最も信頼をする人物をその局長に充ててこのザール問題の解決に取り組んでいったわけです。一九五四年、パリ協定によってザールのこの領土問題は解決いたしました。一九五四年であります。いまから何年前ですか。平和的に解決をしておるわけです。イタリアはどうですか。イタリアはフランスやオーストリアやユーゴに対する領土問題にこれまたいち早く取り組んでまいりました。日本、ドイツ、イタリアの三国の中で最も講和条約の早かったのもイタリアであります。もめたトリエステの問題にいたしましても、同じく一九五四年に対ユーゴーとの間において解決をしておるわけです。  奄美大島から小笠原へ何年かかりましたか。奄美大島から小笠原へ十五年。来年とするならば十六年。世界史上ないと、そういう形で快挙だ、手放しで小笠原の問題を絶賛をいたしておりますけれども、もっと謙虚に、九十六万の同胞の問題をほんとうに民族の問題としてあなたが切実に考えてやるならば、また自由民主党がこれまでの政権の間にこの領土の問題を防衛問題とからめて、先ほど成田委員から御質問のとおりに、利用するということではなくて、民族の問題として領土の問題として真剣に取り組んでまいるならば、西ドイツと同じように沖縄局もできてよかったでしょう。いま日本政府のどこの部局に沖縄局あるいは沖縄・小笠原、そうしたものが銘打たれた局がございますか。特殊地域の連絡局というのがあるだけです。でありまますから、私は、ヨーロッパの国々がわが国よりも早く、西ドイツやイタリアがそうして取り組んでまいったその姿勢と比較をいたしますときに、たいへんおくれているということをもっと謙虚に考えなければいけないと思うのです。私はこの点をまず最初指摘をいたしておきたいと思います。  では、日本がこの沖縄、小笠原の領土問題をどのように扱ってきたか。先ほど成田委員質問に対しまして、平和条約の三条についてきわめていいかげんなあいまいな回答をいたしました。この点を私は少し最初に追及をいたしてまいりたいと思います。  相互理解と相互協力、こういうことで、アメリカの善意を信じてこれまでやってまいった、こういうことでございますが、平和条約の三条の解釈については、これはもう少し詰めてまいりたいと思います。  また、吉田茂氏がサンフランシスコ会議でとった態度、それは、ソビエトやインドやエジプトや、そうした国々の反対もあり、いろいろともめたわけでありますけれども、結局沖縄を占有するためには、信託統治制度という、そういう仮面をかぶる以外になかった。だから、吉田氏は、この講和会議で受諾をするに際して、感謝のことばをささげ、いずれ返還される日を期待する、こういう形で結んでおるわけであります。といたしますならば、沖縄、小笠原について、平和条約の第三条でうたっているような形での信託統治制度にされるということを期待をして、あるいはそういうことを予測をして、これまで日米の間に交渉があったのかどうか。吉田氏自身が最初から信託統治制度が仮面であるということを承知の上で、これは受諾をいたしておるのであります。でありますから、信託統治制度にする、あるいはしょう、そういう問題が日米間であったかどうか、まずお尋ねしたいと思います。
  198. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 当時の模様はどういうことであったか、私よく存じませんので、あるいは条約局長などよく知っているかと思いますから、そのほうから答えさせます。
  199. 藤崎萬里

    ○藤崎政府委員 沖縄を信託統治にすることの国際連合憲章上の根拠は、先ほど申し上げたとおりであります。日米間の平和条約に関する交渉とは申しませんで、協議と申しておりましたが、その際から、日本政府としましては、条文上信託統治の権利をアメリカが持つことになっても、実際にはその提案はしないでもらいたい、できるだけ早く直接日本に返還するようにしてもらいたい、そういう趣旨で話がしてございます。
  200. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 そのとおりであって、提案しないでくれ、こういう了解もついておる。また、国連憲章をこまかに見れば、提案をしても信託統治制度には通らない。国連憲章で信託統治制度に持っていく具体的な手続というのは通らないのであります。具体的に実行が不可能である。でありますから、信託統治制度にされないということをあらかじめ承知の上で今日まで持ってまいったわけであります。  そこで、そういう虚構の上に組み立てられてまいった沖縄、小笠原の地位というもの、それをてこにして日本の安保体制が、そしていままた、先ほど来問題になっておりますように、沖縄の核つきあるいは基地自由使用、そういうふうな問題に発展をしようといたしております実態について入ってまいりたいと思うのでありますけれども、こうした日本政府の弱腰というもの、先ほど私が申し上げましたように、西ドイツやイタリアと比較をしてみても、いかに屈辱的な、また対米従属的な領土問題の扱いであったかということは、先ほど来の政府委員の答弁を見ても理解できると思うのです。成田委員がことしの四月二十七日の立法院の決議について言われました。これには答弁がないわけであります。立法院の諸君は、今回あなたの下部組織になった自由民主党の諸君を含めて、平和条約三条には沖縄統治の法的根拠はないのだ、不当だ、こう全会一致で四月二十七日にいたしておるわけであります。そのことをあなたはどう思うかということについて、回答が先ほどはございませんでした。あらためて明確にお答えいただきたいと思います。
  201. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いままで沖縄の基地、これが現実に力を出した場合、いま盛んにベトナム問題で云々されておりますが、その前に、韓国の問題、南北韓国の際——いわゆる朝鮮事変の際もこの基地が働いた、こういうことはございます。したがいまして、この沖縄の基地というものはいろいろの問題が起きておりますので、非常に平和な、何らそういう問題がない場合、欧州の場合と一緒に論ずることはいかがかと思います。こういう事柄がやはり不自然な状態を長引かしたゆえんでもあるのではないか、かように私は理解しておるのであります。  問題の、ただいまの立法院の決議でありますが、これは先ほども申しましたように、私自身が、立法院の決議どおりにはまいらないにしろ、この点をジョンソン大統領に対しましても率直に訴えたこと、これには間違いございませんから、そういう意味で、立法院の決議も、これは祖国復帰への念願、沖縄同胞の念願でございますから、率直に私自身が伝えたつもりでございます。
  202. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 総理のいま言っておられる立法院の決議というのは、総理がアメリカに行く前の十月の末に立法院が決議をして、そして七〇年までに返還を実現してほしい、憲法のもとに返してほしい、こういった決議のことをあなたは言っておられると思うのです。そうではなくて、その前、講和条約の発効の日、屈辱の日として沖縄の同胞が毎年迎えておる四月二十八日、日本から正式に切り離された日でありますけれども、その前日に立法院が決議をした決議に、不当である、アメリカの沖縄支配の法的根拠はもうないのだ、こういうことを明確に全会一致で決議をしておるのであります。そしてそれは総理大臣あてに送られておるのであります。あなたはごらんになりましたか。
  203. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私あてに来たものは私が見ております。私は沖縄同胞の願い、これはよく知っております。最後にいま言われますように、十月の決議、これは私がそのまま携行していったものでございます。しかしその前から、もちろん沖縄の立法院の決議というものを無視はいたしておりません。ただ、そういう事柄がございましても、私がどういうような交渉をするか、これは私がいわゆるベストを尽くした、最善を尽くした、かように何度も申しておりますように、私自身が考えましてこれが適当な方法だというものを、今回アメリカに参りましてワシントンで交渉したのでございます。これは必ずしもそれぞれの皆さん方の御意見を全部そのとおり伝えた——伝えばいたしましても、そのとおりの方法で交渉したということではございません。それは私自身が、私の責任において、最善だと思う方法をやったことを御了承いただきたいと思います。
  204. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 不当だということについて、なかなかうんと言えない。だから不自然だという気持ちで、えんきょくに言おうといたしておると思うのです。  このことばのやりとりをしても時間が過ぎますので、では具体的にお尋ねしますけれども、沖縄の現在の地位というのは、信託統治地域でもありません。租借地協定による租借地でもありません。日本がアメリカに割譲したものでもありませんから米国の領土でもありません。といって、アメリカに施政権を渡しておりますから、日本の領土でもない。きわめて奇妙な状況にあるわけであります。  そこで、具体的になおお尋ねしますが、先ほど条約局長は、この地域は国連憲章七十七条のbだ、こう言われました。国連憲章の七十七条のbであるならば、残存主権もありません。分離される地域でありますから、残存主権もありません。どうですか。これはダレスが講和会議の際に、あえて適用するとするならば国連憲章七十七条のbだ、こう言っておるのであります。分離される地域ならば残存主権もないじゃないですか。
  205. 藤崎萬里

    ○藤崎政府委員 この分離ということば意味でございますが、主権関係のことばで分離されるという意味に必ずしもとる必要はない、そういうふうに前々から政府としては解釈をとっております。
  206. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 これは議論の分かれるところでありますし、議論をしておってもたいへん時間をとると思います。  それでは、「信託統治制度の基本目的」、七十六条にございますけれども、この七十六条の「信託統治制度の基本目的」からするならば、当然沖縄が信託統治地域になるべき地域ではないということについては、総理もイエスと言われますね。
  207. 藤崎萬里

    ○藤崎政府委員 どういう地域を信託統治にするかということは、先ほど私がここで読み上げました第七十七条に規定があるのでございまして、第七十六条のほうは、信託統治になった地域の施政について施政権者が心得るべきことが列挙してある。その中に、もしそこが民度の低いような地域であったら、民度を向上させるようにするということも書いてあるわけでございます。これは信託統治権者が信託統治を実施するについて心得るべきことであって、信託統治にするかいなかを決定する基準ではないのでございます。
  208. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 でありますから、沖縄が七十六条の「信託統治制度の基本目的」、これに該当するかどうか。これは該当しないのです。低い地域でない。日本と同等の 日本の一部であります。文明国の百万人であります。だから、これは七十六条のこの「基本目的」に合う地域ではありません。  では、次に進めてまいりたいと思いますけれども、アメリカが信託制度の提案をやらないということが明確になったのは、いつでありますか。
  209. 藤崎萬里

    ○藤崎政府委員 アメリカの当局者が、そういう考えを現在持っていないということをいろんな機会に言っておりますが、最初にどういう人がどこで言ったかということを私いま記憶いたしておりません。
  210. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 いま明らかなように、信託統治制度にはしないということは、もう既定の事実できておるわけです。提案権があるのだ、こういう理屈もつけておるようでありますけれども、それは通らない。といたしますならば、平和条約の第三条は、アメリカが信託統治制度にしないということがはっきりしておるのであれば、信託統治制度の提案をし、可決されるまでの間、立法、司法、行政の一切の権限を行使するということを認める、その第三条というのはくずれておるわけです。どうですか。
  211. 藤崎萬里

    ○藤崎政府委員 アメリカの当局者がそういうことを言ったから、直ちに第三条のアメリカの権利がなくなるという関係のものではないのでございまして、これは前から申し上げておりますように、日本も信託統治にしてもらいたくないと言っておりまして、アメリカとしても、そのときどきにそういう意向はないと言っておりますけれども、将来にわたってそういうことを全然権利を放棄するというふうにコミットしたことは、またこれ一度もないのでございます。
  212. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 国際条約の上ではっきりしていないときは、義務を負う側に有利に解釈するのが、これは通例であります。また疑わしいときは、当事国の責任を負わなければいかぬほうに不利に解釈をするのか当然てす。日本はなぜ——いままで国民の願望だと総理は言ってきた。国民の願望だということを言いながら、なぜ相手側に有利なように平和条約の三条を解釈をして持ってきたのですか。これはあとで具体的に沖縄の基地の問題で、基地の権能の問題で、役割りでお尋ねをいたしてまいりますけれども、一貫して日本の自由民主党、政府の中にあります姿勢というのは、この講和会議最初から屈辱的な外交を続けてきておる。そうして国際法上不自然である、不当である、無効である、そういうことが議論をされ、おおよその多数意見になっておる今日においても、なおかつアメリカ側に有利にして沖縄を提供しておる。これが総理の言う相互理解と相互協力であります。国連に加盟をした今日、先ほど来の議論からもはっきりいたしますように、そしてさらには日本が国連に加盟をした今日、七十八条からいたしましても、これは明らかに無効であります。どうですか。
  213. 藤崎萬里

    ○藤崎政府委員 国連憲章第七十八条は、ある地域が独立をしまして、国際連合の加盟国となった後には、その地域には信託統治制度を適用しない、こういう意味でございまして、国連の加盟国の領域の一部が信託統治制度のもとに置かれることを妨げる趣旨では毛頭ない。それはむしろそういうことを奨励する趣旨の規定が第七十七条のC項にあるわけでございます。
  214. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 条約局長から説明をいたしましたので大体いいかと思いますが、私は最もわかりやすい——このほうがわかりいいのではないかと思うのですが、平和条約の第三条、これはもう川崎君も御承知のとおりに、沖縄についてきめておりますのは、日本国は、「合衆国を唯一の施政権者とする信託統治制度の下におくこととする国際連合に対する合衆国のいかなる提案にも同意する。」こと、まずそれがきめてある。そうして、右「提案が行われ且つ可決されるまで、合衆国は、」「これらの諸島の領域及び住民に対して、行政立法及び司法上の権力の全部及び一部を行使する権利を有する」旨が規定してある。これは、日本が敗戦の結果、こういう規定を実は設けたのだと思います。日本がそれだけに、負けていない、それはこんなことは申さないでしょう。しこうして、これがもしも国際連合に対して合衆国が、信託統治というものを要求をして、そうして信託統治になったらどうなっているか。この権利で、これはもう信託統治を要求すれば、日本は反対をしないのですから、これは信託統治になり得たかもわからない。これがいま多数国の条約だから、二国間だけでそんなことはできないといっても、日本自身がこれはもう反対をしないというのですから、そういう意味でそれは案外できたかもわからない。そうしてこれが、信託統治ができていたら、それこそ私ども、日本に返ってくる、そういうチャンスはなかなか簡単ではないと思います。また当事者自身は、こういう規定はあるけれども信託統治は、日本もどうかやらないでくれ、おまえのほうが施政権を持っておることはやむを得ない、やむを得ないが、信託統治にはしてくれるな、こういうことを言い、それに対してアメリカ側も信託統治はしないようにしよう、こういうことで努力してきた。そうしていろいろな事態が実は起きております。ことに私は、こういうような不自然な状態が長く続いたのは、これは何といっても韓国、朝鮮半島の事変だと思います。これが、占領後引き続いてマッカーサー司令部が当時ありましたが、その時分に沖縄が果たした役割りは非常に大きかった、こういうことでなかなかこの沖縄の軍基地というものを捨てかねているというか、これを離すことになかなか考え方が及ばなかった、かように実は思っております。先ほども、けさ松野君に話をいたしましたように、沖縄に米軍がまず約四万五千名くらいはいるだろう、こういうことがいわれております。この狭いところにそれだけの者がいる。これはやはり一朝事ある際に、やはり抑止力としてこれが働きをするという、かような意味だと私は思います。そういうような意味で、これは特別な軍事基地である、こういうことをやはり理解しないと、いまの状態はなかなかわかりかねるのじゃないか。  しかし、それがどうあろうと、とにかく日本国民、ことに沖縄の百万同胞としては、一日も早く祖国に復帰したい、こういう念願に変わりはございません。そうしてそのことを考えると、米国の軍基地もさることながら、今日の沖縄の経済それ自身にも、たいへんアメリカに依存しておる部分もございます。またその他の習慣等におきましても、いろいろくふうして変えていかなければならないものがある。したがいまして、これから交渉するにあたりましては、軍事上の問題もさることながら、内政上の問題におきましても、右から左、即時返還というのはなかなかできかねる。できるだけそれを早く解決するようにしょう。ことに川崎君の出ておられる鹿児島県は、沖縄とつながっておるところであります。そういう意味では、一そうそのお気持ちもわからないではない、私、かように思いますが、とにかく本国に復帰する、それまでには種々両国お互いに交渉し合って、そうして円滑に推移していくようにくふうしなければならない問題が非常にあると思います。これが、沖縄の場合は小笠原と同一に論ずることができないゆえんであります。
  215. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 条約三条そのものについては、条約そのものを読み上げて説明をしたにすぎないわけでありますけれども、結局語るに落ちて、条約上の解釈についてはたいへん自信を失っておる。だから不当であり不自然である、こういうことを認めざるを得ない羽目にあるわけであります。なかんずく一九六二年にケネディ声明が出されて、返還される日を期待をする、また、今回の共同声明におきましても、返還の基本方針を確認し、こういうことになってきた。といたしますと、平和条約三条そのものによる根拠というものは、これはますますなくなっておるのです。そうして、それを変えておるのが軍事基地の特殊性だと、こう言われる。このことを沖縄の同胞は怒っておるわけです。人身御供に出されておるのだ、こういうことで沖縄の同胞は怒っておる。でありますから、そういう軍事基地の特殊性と言われました。新しい中国の誕生、朝鮮戦争、そしてそれ以後次々に戦略爆撃基地になり、また戦術核兵器が置かれ、そしていまベトナム戦争の中の沖縄と、こういう特殊な地域にされてまいっておるわけであります。  そこで、私はお尋ねします。沖縄が、そういう極東の日本を含む安全のために必要な、大事な役割りを果たしておる、こういうのでありますが、どのように大事な役割りを果たしておるのか、説明を願いたいと思います。
  216. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 これは戦争の抑止力、一口に言えばさようなことばでございます。
  217. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 それでは共同声明に基づいて少し尋ねてまいりたいと思います。  この共同声明には、抑止力として大事だということを七項においては明確にうたっておるわけであります。「総理大臣と大統領は、これら諸島にある米国の軍事施設が極東における日本その他の自由諸国の安全を保障するため重要な役割りを果たしていることを認めた。」こういうわけであります。  議論に入ります前に、この共同声明自体の訳も、何べんかいろいろと改訳をして問題になっております。私は、いまのこのくだりにもたいへん問題があると思うのです。それは何か、ここには「諸島にある米国の軍事施設が」と、こう訳してあります。原文は「ミリタリー・ベーシス」であります。ところが小笠原の場合の軍事施設は「ファシリティーズ」であります。違う。建物とか施設とかそういうものではなくて、沖縄の「ミリタリー・ベーシス」というのは基地であります。そのこと自体をこのように軍事施設というふうに非常にトーン・ダウンをしておる。ここにも外務省の姿勢がよく見えておると思います。沖縄の基地は、御承知のようにただ単に鉄条網に囲まれた建物ではない。施政権の一切をもってつくり上げられている、地域も含んだ基地であります。道路も、また水道も電力も、あるいは人権を無視をすることも、一切がっさいが含まれた基地であります。  次には、「日本その他の自由諸国の安全を保障するため重要な役割りを果たしている」ただ単なる重要性でしょうか。原文のほうには「バイタルロール」となっておる。これは生死にかかわる、欠くことのできない、絶対不可欠であります。ここに沖縄の基地の、アジアの安全保障における役割りの重要性というのが、原文では明確に書かれておるのを、ただ単に「軍事施設」が、ただ単に「重要な役割りを果たしている」のだというふうな形に結んできております。  では、この日本アジアの安全保障に欠くことのできない沖縄の軍事基地でありますけれども、ここにいう「他の自由諸国」というのは何ですか。
  218. 東郷文彦

    ○東郷政府委員 ここで申します「他の自由諸国」とは、極東地域にございます自由諸国、その中でも特にアメリカといろいろな条約関係にございます韓国、台湾、フィリピン、それから——特にそういう条約関係にございます極東の自由諸国を念頭に置いて書いておるわけでございます。
  219. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 これはいま北米局長が言いましたように、アメリカを軸に相互防衛同盟条約を結んでいるアジアの国々そのものをさしておるわけですね。といたしましたら、沖縄の基地が日本の平和を守る、と同時に、そうした相互防衛同盟条約を結んでいるアジアの他の国々すべてにとってバイタルな役割りを持っておるのだ、こういうことになりますね。
  220. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 御承知のように、日米安全保障条約の際に、いわゆる極東の範囲とはいかなるものか、どこをいうのだと、ずいぶん長い論争をしたことでございますから、その点を思い起こしていただけばおわかりだろうと思います。
  221. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 範囲のことを言っておるのじゃないのですよ。その沖縄の軍事基地の役割りというものが、これらのアジアの国々、極東の国々にとって欠くことのできない、不可欠の基地であるということを認めますね、と……。
  222. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいま英文についていろいろのたんのうな知識を御披露になりました。しかし、私ども日本訳文でいまの説明をいたしておりますから、その辺、誤解のないように願っておきます。
  223. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 訳文が正文ですか。日本文が正文ですか。違うはずですよ。
  224. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 共同声明では、あまりどちらが正文だとかいうようなことはいわない。ただ便宜上、この場合には英文を主にしてつくったものでございます。
  225. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 英文が正文だ、こういうふうに了解をされております。そういたしますと、ジョンソン大統領のほうはバイタルロールで認識をしておる。そこにいつも食い違いが出てくるのです。あとでたくさん出てきますから、その食い違いを次々に指摘をいたします。  だから、沖縄の軍事基地がアジアの安全保障にたいへんな役割りを果たしておるということになりますと、いま局長も答弁をしましたように、沖縄の軍事基地が、アメリカがアジアに張りめぐらしておる軍事同盟体制のかなめであるということをお認めになりますか。
  226. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 アメリカの持つ軍事力、これはもうすばらしいものです。日本の防衛力、こんな自衛隊の力なんか、これは問題でございません。韓国においても台湾におきましても、同様なことがいえるだろうと思います。だから、やはりいまの極東の安全、平和を確保するためにアメリカが果たしておる役割り、これは大きいのは当然であります。かように私は認識しております。
  227. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 それでは、軍事同盟体制のかなめだ、全部からんできている、キーストーンだ、こう彼らも言っておる。それでは、これだけの役割りを沖縄の基地が持っておるのは、どこからきておるのですか。
  228. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 これは御承知のようにサンフランシスコ条約第三条、それに基づいて施政権を持った。そこで、その施政権下にある地域にアメリカが自由な基地をつくることができる。これはアメリカの施政権者の自由です。そういうことが言えるでしょう。
  229. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 すれ違っておるのです。そうじゃなくて、アメリカの極東の戦略体制の中でこういう非常に重要な役割りを果たしておるという、その基地の機能、基地の役割りが保障されておる、生まれてきておる。  じゃ、もっと端的にお尋ねしましょう。これは要するに極東体制の中の核基地であるということ、それから次には、米軍がいま四万数千でありますが、常に非常に移動もしておる。この米軍が軍事行動をとるについて自由であるということ、このことが、極東の軍事同盟体制の中の沖縄がかなめとしての役割りを果たしておるということについてはお認めになりますね。
  230. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 現状においては、そのとおりであります。
  231. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 特にベトナム戦争あるいは中国の核の脅威、そういうことを強調しておる。このことは共同声明でも明らかにされたところでありますけれども、さらにイギリスがスエズ以東の軍事基地を撤収しつつある、こういうふうな中で、沖縄の軍事基地というのはただ単に極東だけではなくて、アジア全体のそういう戦略体制の拠点になってきておるわけです。そのことについてお認めになりますか。
  232. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私はそこまではわかりません。そこまで存じません。
  233. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 防衛庁長官、どうですか。
  234. 増田甲子七

    ○増田国務大臣 コミュニケに極東と書いてございます。極東だと思っております。
  235. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 要するにアジアにおけるそうした非常に強い軍事力、それは核と基地の自由使用、その上に立っておるということについては認められた。そしてそれがさらに今日返還の問題が議論になっておるにもかかわらず、沖縄における軍事基地の、基地の建設、拡大というのはいま続いておるのです。より一そう強力な基地にされていきつつあるわけであります。でありますから、この沖縄の基地の値打ちというものについては、総理がお認めになったと同時に、アメリカのほうもこの点については繰り返し強調しておる。あるいはホルト陸軍次官補のアメリカの議会における証言を見ましても、これはたびたび強調が行なわれておりますし、あるいはシャープ太平洋統合軍の総司令官も、この沖縄基地の重要性というものについては繰り返し強調しておるわけであります。  そこでお尋ねをしますけれども、総理は安保体制の堅持を言われました。日米安保体制の堅持を言われました。あるいはアジアにおけるアメリカとの共同防衛の点にも先ほどは触れられました。これらの中で、先ほど極東における基地としての役割り総理が認められたわけでありますけれども、いま日本に返還をされたら、その値打ちはどうなりますか。
  236. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 日本の安全保障体制、これはもう先ほどからたびたび声を大にして申しましたから、重ねては申しませんが、この日米安全保障条約、このもとにやはり日本の安全があるのだ、この考え方は、総理として私は結論を変えませんから、何度お尋ねになりましても、繰り返すだけであります。そこで説明は省略いたします。またその防衛体制、かように申しましても、私どもがちゃんと憲法を守っておる、その範囲でやっておる、またその他の原子力基本法等もその根本をなしておる、これもまた変わりがございません。  そこで沖縄の基地の問題これは一体どうなるのか、こういうことでありますが、先ほどもお答えいたしましたように、現在、ただいま一つの方法、方針をきめて、それで返還について取り組むことはいかがかと思う。この返還の時期に対して、それまでにそういう問題をきめるべきじゃないかということを成田君にも声を大にして実は申し上げたばかりであります。これは川崎君も静かに聞いておいでになりましたからよくおわかりだと思いますが、私はそういう意味でこの問題を扱うのであります。ただいまの状況、現時点、これはもう先ほど来申しましたように、ずいぶん沖縄にはりっぱな基地ができておるような話であります。しかし、そこで核基地が、どういうような形で核基地があるかどうか、それは私は知りません。知りませんが、先ほど来申しますように、相当の兵力がそこにいる。そして、その兵は絶えず移動するものである、いわゆる補給基地としての、あるいは緊急派兵するような、そういう意味のベースだ、かように私は申し上げたいのであります。核基地がどういうようにあるか、そういうことはまだ私自身も知りません。また今後の問題としても、おそらくそういう問題がだんだん変わってくるだろうし、もしあるとしても変わってくるだろうし、そういうことをも含めていかにあるべきかということをきめればいいのじゃないだろうか、かように思っておるのであります。
  237. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 沖縄の基地が非常に強力な役割りを果たしておる、こういうことですね。この基地がいま日米安保条約の適用地域になったら、この基地の機能は落ちますね。どうですか。いま極東の防衛体制のかなめとしての役割りを果たしておる。これが本土に返還をされて、日米安保条約の適用地域にストレートにそのままなったとしたら、これはどうなりますか。
  238. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 そこらに、即時返還ができない理由があるのだろうと思います。私は、大体わが国の安全を確保するのに、この沖縄の基地が果たしておる役割りを高く評価しておりますし、特別に弱化するようなことはこれを考えておりません。したがって、即時返還ということができないのはこの点にかかっております。しかし、今後の模様、国際情勢の変化によっては、この事態が変わるだろう。また変わることを期待しておるわけであります。この点を十分理解していただきたい。皆さん社会党のように、もともとこんな軍事基地はよけいなんだ、こんなものは戦争をやる道なんだから、なくすることは非常に簡単だ、なくすればいいじゃないか、かように言われますけれども、私自身は、この国の安全のために、弱化するようなことは考えたくない、いまの状況のもとではそれは考えることはできない。しかし、今後の変化、これはあるだろう。かように期待をいたします。もう早い話が、ただいまのベトナム戦争もですよ、これは、それこそ両三年ならずしておそらく結末はつくでしょう。いまこれを急いでおりますから……。これが一つ変わるだけでも非常な情勢の変化だと思います。さようなことを考えていけば、だんだん変わってくる、かように私は思います。
  239. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 それでは、いま返れば機能は弱化すると言われるわけですね。
  240. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いま返ることはなかなかできないのじゃないかということを私申し上げておりますので、いま弱化するかしないか、そこはわからないですよ。あるいはまた弱化しても、日本の安全を確保されるなら、それはちっとも差つしかえないです。問題は、日本の安全を脅かすような変化があるかないかということなんです。そこら誤解のないように願います。一切弱化したら困るというものじゃない。極東の安全にちっとも支障なければ、弱化したからといってちっともかまわない。そこらのところはもっと話をしないと困るでしょう。ことにアメリカ自身が施政権を持って、あれだけの基地を持っておりますから、これは直ちに即時返還ということになると、ここにたいへんな摩擦を起こすだろう。したがいまして、そこらに問題があるんだろう、かように思います。私は、弱化そのものよりも、日本の安全に支障を来たすか来たさないか、これが問題だろうと思っております。
  241. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 いまの議論で大体論理的には詰まっておると思うのですけれども、それでは沖縄を日米安保条約の外に置いておる。現に返ってないんだから外ですね。安保条約の外ですね。このことが、日米安保体制を固め、また極東の安全保障にたいへん強い沖縄の基地の役割りを果たしておるというふうに受け取ってよろしいですね。
  242. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 これはもう先ほどもお話ししたように、施政権と軍基地、言いかえますならば、祖国復帰、また日本の安全、これが二者択一の状況のものではない、二者背反するものでもない、そこに私どもの苦心が要るのです。日米両国の間で十分話し合っていこう、これなんです。だから、これがいま言われるように割り切りまして二者択一だ、どちらか一つだというなら非常に簡単ですが、さようなことでは総理大臣はつとまらない。ここはひとつ御了承いただきたい。
  243. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 二者択一といいますが、それじゃ沖縄のいまの機能というものを——総理がいつも言う国際情勢、時間、科学技術の発達、こういう三つの条件を言われる。じゃ三つの条件が変わらないとしたら、いまの機能を落とさないためには、現状を続ける以外にないということですね。
  244. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 そういうことでもないですよ。どうも社会党の方は頭がいいからすぐに結論を急いでおるのですが、そう結論を急がないで、両方がうまく目的を達するようにしようじゃないか、これをひとつ一緒になってくふうしてくださいませんか。この場合に、だめなんだ、これはもう基地撤廃以外にないんだ、それでなければ祖国復帰はできない、祖国復帰しない限りこれはだめなんだというような結論を出さないで、一緒になってこれをぜひともひとつ考えてください。私は一緒になり得ると思うのです。だんだん社会党の皆さん方も、この国の安全確保については絶大なる考え方をしていらっしゃる。しかしただ、これはもう当然でございますが、いわゆる安全保障体制戦争へつながるということだけは、ひとつ変えてもらわないと、どうも私どもとどうしても筋違いになる。これはそこでどうも結論が同一のものが出てこない。しかし、やはり何といっても、この国の安全を確保しなければならない。同時にまた、沖縄の百万の同胞、同時にまた一億の国民、その願望も達しなければならない。これが私に課せられた責任なんです。これはひとつ、それは佐藤だけ、おまえ考えればいいと言わないで、やっぱり社会党の方も一緒になって考えていただきたい。これをお願いいたします。
  245. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 社会党は、安全保障について、軍事力優先ではなくて、外交でやるべきだ、それは先ほども成田前書記長からるる言われた点であります。  それらの点はさておきまして、いまのこの点について、もう少し私は詰めたいと思うのです。ということは、返還のめど、返還のめどというのが国民にはわからぬのです。あなたはわかっておるかしらぬけれども、国民にはわからぬ。だから、いまこの点を詰めようとしておる。じゃ科学技術の発達、それは何ですか。アメリカ側の科学技術の発達か、この共同声明に出ておる中国の核開発というものの脅威を言っておるわけでありますけれども、そちらのほうの発達なのか、科学技術の発達という点はどこにあるわけですか。
  246. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいま戦争抑止力というもの、あるいは平和の確保、これは大体力の均衡だといわれております。しかし、私先ほど申し上げたように、核兵器そのもの、これはやっぱり抑止力になっておるだろうということも申しました。しかし、これは絶対に使えないものだ、使えないんだということに気がついてくると、核兵器の開発ということはしなくなるだろう、核兵器を使えば、必ず報復をそこで見る、それでその国の安全は確保されない、かように私は思います。こういう点にお互い考え方が変わってくれば、いまの戦争のないという時代もだんだん出てくるのじゃないか。これはずいぶん夢みたいな話ですが、いま、とにかく宇宙開発の時代ですよ。そういう際に、日本の国でござい、どこそこの国でございといって小さく固まって、戦争の脅威にばかり奔走する、そういうような考え方ばかりでもないでしょう。おそらく十年、二十年たてば、人類はすばらしいくふうをするかもわからない。そういうことが全然期待でないものじゃないだろう。それは、私どもが生きておる間にそんな結論は出ないかしれない。佐藤内閣の寿命もそう長くはないのですから、そこはもう御安心なすっていいです。しかし、とにかくお互いにもっと考え方を見たらいいだろうと私は思います。ことに川崎君などはお若いんだから、新しい時代、次の世代にちゃんとお考えになるだろう。そこら、あまりいまから、いまくふうできるその範囲でものごとをすべて考えて、五年先をいまから規律することは、これはどうだろうかというのが私の考え方であります。これはもう身近なことでも、つい最近まで、東京−大阪間、こんなものが三時間で走れるようなことはだれも考えなかった。最近の経済社会開発計画なら、今度はあとの十年くらいで一時間くらいになるだろう、どんどん変わっていく、どんどん進んでいくのです。そういうことを考えると、いまから考え方を固定さして、そうしてこういう大きな問題国民の利益、国益に合致する問題それから民族の念願、それを達成しようというときに、そうあまり短気を起こさないで、もう少しじっくり取り組んでいく、こういうことを申し上げます。
  247. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 短気を起こさぬで、じっくり取り組めということは、返還をじっくり取り組めということですね。科学技術の発達、私はいま聞いた。だから、あなたはそれを宇宙開発だ何だと話をわきのほうにそらしていった。国際情勢と時間と科学技術の発達という三つのことを、あなたは繰り返し言ってきているのですよ。だとするならば、これは夢のような話だ、非常に遠い将来の話だ、具体的な返還の問題は非常に遠い将来の問題だということを、いまあなたは科学技術の発達の中から言っておるわけです。そうじゃないですか。
  248. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 これはなかなか川崎君を説得することはむずかしいのでしょうが、私はもう何度も申し上げたのです。この一億国民、百万の沖縄の同胞、これは祖国復帰を心から願っておる。これを一日も早く実現するようにしようじゃないか。同時にまた、わが国の安全の確保、これも私の責任ですと申し上げておる。いまのようにいつのことかわからぬというようなことでは、それは国民も満足はいたしません。だからこそ、皆さんにもお話をして、いい名案をひとつ考えようじゃないか。そのときに、アメリカに対してアメリカから戦い取るというような態度では、これは私はなかなか実現しないと思う。友好親善関係のうちに、理解のうちにこの問題と取り組んで、初めてこれを実現するのだ、これが最善の方法であり、最短期間に実現するものだ、こういうことを何度も申し上げておる。これはなかなか納得はされないでしょうが、おそらく心ある国民の方々は私のこの考え方を支持してくれる、私はかように思いまして、この論争はもうお預かりにいたしたいと思います。
  249. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 シャープ太平洋統合軍司令官が、朝日新聞の岸田、前田両記者の質問に対して回答しておるのですね。これは沖縄基地を含んでおる総司令官であります。この朝日新聞の七月二十日付のこれを見ますと、シャープ太平洋統合軍司令官はこう言っております。「東南アジアの自由主義諸国の平和と安全に対する脅威が西太平洋地域に存在するかぎり」いいですか、次です。「沖縄が自由陣営の」あなたの言われるとおり「抑止、防衛基地としての価値を失うような技術、軍事上の進歩は予測できない。沖縄の米軍事施設を保持することは、こんごも日本を含めた自由主義世界の安全保障に欠かせないであろう。」「東南、東北アジアでの不慮の事態に備えるため、沖縄は米陸空軍のきわめて重要な中継基地であり、兵たん基地であり、また重要な通信センターであることに変りない。」つまりいま沖縄の基地を保持して支配をして、そしてアジアにおける軍事同盟体制のかなめとしての沖縄を握っておるその総司令官が、いまのところ技術、軍事上の進歩は予測できないのだ、こういうことを言っておる。といたしますと、先ほどのあなたの科学技術上の発達ということは予測できない、この論理を貫くならば、予測できないことですね。どうですか。
  250. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 どうも私の説明と食い違っておるのですが、すれ違いになっておるのですが、共同コミュニケはジョンソン大統領と私との間でやったのであります。大統領は申すまでもなく、これは最高のアメリカの責任者でございます。そうしてこの二人で、沖縄の現基地、これは重要なる役割りを果たしておることをお互いに確認をしておる。その点においては、私帰りにこのシャープ提督ともハワイで会いましたが、その際も、もちろんただいまのような話は率直にしております。これは現状においてそのとおりなんですね。今後の問題について、沖縄の問題がいつまでもいまのような役割りを果たすかどうか、これは疑問だと思います。シャープ自身も、そういう点には私には触れませんでしたけれども、そこが問題なんじゃないでしょうか。現状においてはお説のとおりであります。だからこそ、ただいま即時返還はできない。これは沖縄の同胞の諸君もそんなにまで急いでおる状況ではございません。いまの状態で即時返還、即時全面無条件返還、これができないというのは、やっぱり沖縄の同胞も遺憾ながら認めざるを得ないと言っているじゃありませんか。私はそれらの点を勘案し、この実現するように、早く祖国復帰するようにあらゆる努力をしなければならないと思う。これは先ほど来申したとおりでございますから、重ねては申しません。現状において果たしておる軍基地、その役割りはただいま御指摘になったとおりであります。
  251. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 それであるならば、現状のとおりである。いまシャープ司令官の言ったことをお認めになった。それならば、国民が決意さえすれば三年を待たずして返る、そのことはどういうことですか。いまのこのことを認めた上で、どのことを決意をすれば返るのですか。
  252. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は、こういう意味で、この日本の防衛体制というものがもっとはっきりすればできるのだろう、かように思います。しかし、これは国民自身がきめるべきことで、私自身がとやかく言う筋のものではございません。
  253. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 国民はどのような形でそれを表明すればよろしいのですか。
  254. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は、国民のこういう点についての表明の方法はいろいろあるだろうと思います。いま具体的に沖縄問題懇談会を続けてやっておりますが、こういうところで意見一つ出てくるのも方法でしょうし、あるいはまた、その他ただいま各方面で、この防衛問題、安全確保問題について各方面の良識のある連中が議論をいろいろかわしております。これも一つの問題でありましょう。また、先ほど御指摘になりましたように、最終的に、民主主義なんだから、それで総選挙に聞くということも一つの方法でありましょう。私は、いろいろ国民がこういう問題について態度を決定する場合、これはあるだろうと思います。(「総選挙をやるのだな」と呼ぶ者あり)こういう事柄が、いま選挙をやるのだろうという不規則発言ございますけれども、これは先ほど成田君からもそういうことをやれという、むしろ堂々と戦って堂々と国民の批判を受けろというようなお話が出ておりました。私は、そういうような問題をも含めてこういうことは考うべきことだ、かように思います。
  255. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 沖縄問題懇談会は、これは総理の私的な諮問機関であります。私たちは、これを決して国民の代表、国民の世論の結集点というふうに見るわけにはまいりません。このことははっきりいたしておかなければならぬと思うのです。世論操作のための機関にしかすぎなかったのでありますから、この点はひとつ明確にしておかなければならぬ。あなたと十分に意思を通じた上でありましょうが、下田氏が外務次官の当時、あるいはアメリカの大使になってから、繰り返し繰り返し核つき返還の方向をあおりました。しかし、あなたがアメリカに行きます前に各新聞で行なわれました世論調査、さらには現地における新聞等の世論調査を見ても、国民はそういう決意をしていないのです。これは国民の声とあなたは見ないつもりですか、どうですか。
  256. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は、新聞の記事はよく目を通しております。
  257. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 目を通しておるということと、繰り返し行なわれたそうした世論調査、あなたは非常にひやかすようなことで言っておりますけれども、各紙とも私は今度はほんとうに真剣に取り組んだと思うのです。だから、この半年間、沖縄、小笠原に関する記事というものは膨大な量です。その中で行なわれた世論調査というのは、あなた方が期待をするような方向を示していない。そのことがあなたはけしからぬ、だから国民は決意をせよと、こう言っておるのだと思うのです。しかし、どういう決意をすればいいかははっきりしていないわけです。どういう決意をすればいいのですか。
  258. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は、世論がけしからぬと言ったことは一つもございません。また、出ておるパーセンテージその他について、これは間違っているというようなことも言ったことはございません。記事は、私はよく目を通しておるということを申しました。私自身は、しかし、先ほど来申しておりますように、この数字が何と出ようと、とにかく安全保障条約は絶対に必要だという、その立場でございます。この点をはっきり申し上げておきます。あるいは世論無視だというおしかりを受けるかもしれませんが、私の決意はこれに変わりはございません。この点を重ねて申し上げます。これは必ず皆さん方から、国民から、いつの日にか——それはおしかりを受けるかもわかりませんが、私は、この日米安全保障体制、これは必要だ、また、ただいまの自衛力、これは国情、国力に応じて整備するという基本的な、いままで一貫した方針、そのもとで進んでいくつもりでございます。そうして、ただいまの沖縄の返還に備えて、それに対する態度は、そのとき、それが近づいたときに明確にする、こういうことを申し上げておるのであります。ただいま、それが右でもない、左でもない、そういう状態でございます。お互いがもっと積極的にこの国をひとつ守るということに立ち上がることが必要だ。とにかく安全だからということで、かようなことが言われておる。とにかく、安全保障体制戦争への道、これだけはひとつやめていただきたい。国民にはっきり申し上げて、かような間違った考え方を持たないでいただきたい。そうして、国民が立ち上がれば、ただいまのそういうようなことは、その反対の方向だということを国民がわかってくれる、これが必要なことです。
  259. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 何を決意すればいいかと聞いておるのです。国民日本の安全を守るという気持ちがないとあなたは言いたいのですか。いまの日本国民は、日本の安全、日本の平和を守る意思がない、眠っておる、こう言いたいのですか。
  260. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は、眠っておるとか考えておらぬとか申しません。しかし、社会党の皆さんのように、安保体制戦争への道だ、これは私はとらないところだ、そういう考え方はひとつ整理してもらいたい、これが私の考え方であります。国民にそのことを呼びかけて、これで国民がちゃんと機会があったら批判するのです。
  261. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 これは答弁になっておりません。もう少し、先ほどの議論にまた返りますけれども、共同声明の中にある日本及びその他の極東の自由諸国、それは、先ほど外務省の答弁にありますとおりに、アメリカと防衛同盟条約を結んでいる国々だ、こう言われた。それらの国々は、沖縄の基地というものをたいへん重要なかなめにしてベトナム戦争に参加をしておるわけです。参戦国です。沖縄が日本の施政権からはずされて、そしてアメリカの絶対権力の中に支配されて、強大な核と、そして施政権を握っておることによって持っておる軍事行動上の自由、それがアジアにおける安全保障を確保していく抑止力だ、こうあなたは言うんでしょう。沖縄を日本に返還をさせるためにはどうしたらいいのか、国民は何を決意したらいいのか、これを聞いておるのですけれども、その沖縄のそのことはわきのほうにそっちのけて、ただ決意のほうだけを言われる。だから、その沖縄が持っておる軍事力、力、抑止力、あなたの言う抑止力、それは核と自由使用、オールマイティーの施政権から来る自由使用、そのことを返還のためにどうしたらいいのか。あなたは一方では決意をしたらと、こう言う。何を決意したらいいのか、こう聞いておるわけです。
  262. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 決意というよりも、沖縄の果たしておる役割りについて深い理解を持つことが大事でしょう。いまのお話でよくわかりますように、この沖縄の基地が果たしておる役割り、これはたいへんな役割りだと思う。これをもっと皆さんが理解してくだされば、これは楽ではないか、私はかように思います。この点が先ほど来から議論になっておる、かように思っております。
  263. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 総理、まともに答弁してくださいよ。しかも、このことは、国民がみんな疑問を持っているんですよ。わからぬのです。わからぬのです。それをはっきりしなければわからぬじゃないですか。私は、アメリカの立場に立って、アメリカが沖縄の基地をこう見ておるという立場を先ほどからいろいろ言ったわけだ。あなたもそれは認めたわけだ。そんなら、それをどうすれば、日本国民がどう決意をしたら返ってくるのか、そのことを聞いておるのです。
  264. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は、この沖縄が果たしておる軍基地、これにつきましては、日本考え方とアメリカの考え方は、現状において必ずしも一致するとは思いません。これがもし現状において一致すれば、それは話が簡単でありましょう。それを見出すのが私どもに残された仕事だと思います。だから、沖縄の地位について今後継続的に協議するというのは、そういうことでございます。現状において明らかに違っておる。これはもうはっきりしておる。だから、それを両者の間の話し合いで歩み寄りができなければならない、かように思います。
  265. 中澤茂一

    ○中澤委員 ちょっと関連。  総理、決意がちっとも具体化しないから、問題が進んでいかぬのです。だから、決意というのは、核基地を認めろという決意を国民がするのか。自由使用を認めろという決意を国民がするのか。あるいは、三次防をもっと強化しろという決意を国民がするのか。それとも、おれは兵隊に行きたいという徴兵制度に賛成する決意をするのか。何の決意か。そこが一つも明らかにならぬから、空転しているのです。内容だ。沖縄核基地を認めればすぐ返すというならば、それは一つの方法です。だから、その決意の内容を明らかにしないと、理論が空転しているんだ。
  266. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 先ほど来私が申しましたように、日本は、安全保障についてですよ、いま日米安全保障条約がなければ、核の谷間にある日本としての安全の確保はできない、かようなことを申しております。しかし、みずから持たないといってこれを約束しておる。また、日本も、簡単に持つつもりはございません。また憲法改正もございません。いまの徴兵も考えておりません。これはもうはっきりしておる。しかし、いまの状態のままで、現状のままにおいて話をするならば、アメリカのこの核基地——核基地があるならは核基地、あるいはいま自由使用をしているんだ、そういう状態をそのまま認めれば、それは話ができるでしょう。しかしながら、そういう事柄については、いまの国民、またわれわれから見ましても、現状はそういうことをやる考え方はないんでしょう。私どもはそれをやるつもりはないから、したがって、これらをもっと時間をかけて、情勢の変化によってそういう結論を出したらいいんじゃないかということを申しておる。現状においてはそれはできない。
  267. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 それでは、いまの総理の答弁にありますように、核つき自由使用を認めればアメリカはのむ、こういうわけですね。
  268. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は、まだそこまでの結論はございませんが、いまの状態ならそういうことが考えられるかと、こういうことを申しただけであります。これならだいじょうぶだ、あるいはかようなことを言って国民に押しつけようという、そういうような考え方ではございません。誤解のないように願っておきます。
  269. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 それなら、核つき自由使用、これならアメリカはのむ、誤解をするなと言いながらも、先ほどはそれを言っておるわけですね。あなたはそれに反対しておる、それを認めていない、こういうことですね。
  270. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 まだそこまでいっておりません。だから、それで困るだろう、だから話をしよう、だから、これは返ってくるその時期に対しまして考えてみよう、こういうことを申し上げておるのです。これは何度申し上げてもそれがわからない。だから、これは私自身もただいま白紙でございますから、そういうものはまだ結論が出ておらない。これを先ほど成田君にも極力申し上げておる。また同じように、まだ白紙の状態でございますから、ただいまその点は結論が出ておりません。
  271. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 あなたは、いまの沖縄の基地の問題を白紙で今度ジョンソン大統領と会ったのですか。沖縄の基地の扱いについては白紙で会われたのですか。
  272. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 共同声明に書いてありますように、この沖縄の基地が果たしておるその地位については、私の認識も、大統領の言っていることについてそれは違いはございません。したがって、その点はその共同声明、コミュニケのとおりであります。しかし、それじゃ結論はどうなるのか。ただいまこの時点で結論を出す筋のものではないということを、何度も繰り返して申し上げております。誤解のないように願いたい。
  273. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 核基地を認めない。認めなければ返さない。いいですか。現状で核基地を認めなければ返らない。基地の自由使用を認めなければ現状で返らない。そのとおりですね。
  274. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 どうもわからないですね。これから継続的に協議するということに同意をしたということでございます。まだ協議をしておらない。だから、継続的にこれから協議するということであります。これが共同コミュニケなんです。だから、いま言われるように、もう結論が出ていて、これこれなら、基地の自由使用ならもういいとか、核基地ができれはもういいとか、そういうような問題じゃないのです。これから継続して協議するという、それに同意をした、それより以上の何ものでもございません。だから、これからそれはどんな議論が出てくるか、両国政府におきまして協議をするのですから、それをしばらく見ていただく、それ以外はございません。(「おかしいじゃないか」と呼ぶ料あり)幾らおかしいと言われても、これより以上のものはございません。
  275. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 決意をすれば——いいてすか。繰り返し繰り返しあなたはもうそこをはぐらかしておる。決意をすれば返るのだ、こういう。決意をすれは返るのだ。それじゃ、一方では核基地を認め、基地自由使用を認めたら返る、こういうことなのですか。
  276. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 問題を二つを一緒にされるからちょっとわかりかねたのですが、いまのでようやくお尋ねあるいは御意見の筋はわかりました。  まず一つはこのコミュニケ、これは先ほど来申し上げますように、これから継続的な協議に入るのであります。ただいまのところ、まだ右とも左とも申しておりません。これはひとつわかっていただきたい。私が、国民が防衛ということについて、安全確保についてもっと立ち上がってほしい、このことを申しております。そうして立ち上がればこれが返ってくるということなのだが、この点で、(「立っている」と呼ぶ者あり)立っておると言われますが、この防衛確保、安全確保には、私どものような主張から、社会党さんのような主張まで、こんな幅が広いのであります。同じように立ち上がってこの国の安全を確保するのだ、かように言われましても、私はなかなかそうは思わない。やはり私どもが主張するような意味に立ち上がってほしい、これを国民に私が呼びかけておる。
  277. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 いいですか、総理、私たちが言うような方向に立ち上がればと言うのですけれども、どういう方向に立ち上がればいいのですか。
  278. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 はっきり申しますと、防衛体制を憲法がきめておる範囲で、そうして国力、国情に応じて自衛力を整備する。これに協力を願いたいし、そうして日米安全保障体制、この体制に協力してもらう、これが私の具体的なものです。その決意を私が申しておる。
  279. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 そして沖縄の基地をどうすればいいのですか。
  280. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 これは先ほどもう一応わかったと言われたように、これから協議するのです。だから、協議を継続的にするのですから、そこで出てくる。先ほどわかったと言われたばかりですよ。それを忘れられても困る。
  281. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 それじゃ核つき、基地自由使用であれば返る。じゃ、核つき、基地自由使用以外に返る道があるか。
  282. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 これは将来の問題、それが継続的に協議する問題でございます。だから、いまのようにもうちゃんと結論が出ておれば、これは結論を出さなくてもいいのかもわかりませんが、そうではない。それが出ないのでしょう。いま国内の世論から見ましても、そんな簡単に、核つき自由使用だとか、そんなものを言ったらたいへんでしょう。だから、これは先ほど来申し上げておりますように、継続的に協議をする。それでもう一本なんです。それは皆さん方もちゃんとそこを待っていらっしゃるのでしょうが、私はさようなことは申しません。先ほどから何度も言っておる。これは成田君に対しましても、川崎君に対しましても、同じことを主張しておる。だから、私どもこれから継続的に協議する題材、これは一体何か。こういう問題についてでございます。この基地の地位について、これは問題にしている。これが継続的に協議しなければならない問題だ。
  283. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 外務大臣、けさの新聞を見ますと、外務省は来年の二月から交渉に入るにあたって、基地の取り扱いをきめなければ交渉はできない、こういう筋の報道をしております。基地の取り扱いというのはきめずに返還のめどについて交渉ができるのですか。
  284. 三木武夫

    ○三木国務大臣 沖縄のほうは、やはりこれから基地のあり方、これはやはり安全保障問題と関連をして検討すべきものだと私は思います。しかし、めどがついたときには、その結論は、基地はどういうふうな基地のあり方というものが——いよいよ返還ということになってきたときには、基地のあり力は当然に最終的に決定されておらなければならぬものである。それまでの過程は、安全保障の観点からいろいろ検討を加えていくべきだと思っております。
  285. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 安全保障の観点から沖縄の基地をどのように扱うかということをきめて交渉を進めるわけですね。きめつつ交渉を進めるわけですね。
  286. 三木武夫

    ○三木国務大臣 返還をされるときには、基地はどういう基地かということが最終的にきまっておらなければ、それは返還はきまりません。しかし、その間は、途中は、きめるのではなくして、日米が共同していろいろ検討を加えるということでございます。きめるのではない。
  287. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 先ほど外務大臣のほうは少しニュアンスが違うのですよ。外務大臣のほうは返還のめどがきまってからということじゃなくて、安全保障の問題について協議をしながら、こう言うわけです。基地の取り扱いというものも、当然にそこで入っておるわけですね。総理は、返還のめどがきまって、それから基地の取り扱いをきめればよい、こう言う。いま総理は、安全確保に立ち上がれ、私の考えている真の意味に賛成しろ、こというふうなことを自衛力増強について言ったわけですね。しかし、いまは言えない、いまは言えない、こう言ったわけですね。どういうことですか。中身をはっきりしてください。
  288. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 たいへんだから言えないのじゃない。そんなことを言うたらたいへんだろうという。これはそうなんです。それはもうたいへんです。だから、そういうことを言ったらたいへんだろう。  そこで、三木外務大臣と私との間が違ったというようなお話ですが、いま二、三年のうちにめどをつけようじゃないかということを申しております。この二、三年の間にめどをつけるという、そういう場合に、いまのような問題が同時に話し合いに入る、これは継続的にやはり入ることでございます、協議に入るということでございます。これはまだ協議事項が何と何と何だということに限られておりません。おりませんが、全般的な話をすることになるわけです。そういう話がついて、それで初めてこの返還のめどが立つという、これは別に三木君と私の間に食い違いはございません。ただ、私のほうがやや先走ったような言い方は、おそらくそこが言いたいんでしょうが、この二、三年で返還のめどをつけると言っているじゃないか。それがはたしてつくのかどうか。それをつけるためにはいろんな議論があるだろうというのでだんだん話を進められたから、話がこんがらかってきたように思います。しかし、私、そうじゃないので、この二、三年の間に話がつくようにとにかく進めるべきじゃないか、これが祖国復帰を早く実現する方法だと、かようにいまもなお考えておるのです。これは継続して協議をすること、これは外務省がいま言っている、外務大臣が言っておることと私の間に食い違いはございません。そのとおりであります。
  289. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 関連。これは重大な案件に到達しておりながら、質問者の質問総理は十分に答えていない。これはやがてその総理の要求すること、これを国民が受け取った場合に、あいまいもことしてニュアンスがわからない。これでは立ち上がれと言われても、どうにも立ち上がりようがないわけなんです。そこでお尋ねします。はっきりお尋ねしますから、はっきりお答え願いたい。  第一番。沖縄は返してもらいたい、国民の念願である、それをあなたは交渉し、共同声明を発した、そこまではいい。そこで問題は、両三年のうちにそのめどがつく、ついては条件があるとおっしゃっていらっしゃる。すなわち、いまその条件は何かといえば、安全確保に立ち上がれとおっしゃった。いまここでおっしゃった。次に、私の言う意味に賛成しろとおっしゃった。そこでお尋ねしたのは、安全確保とは何か、内容は何かとお尋ねしておるわけです。その内容がない。先ほど中澤君も、徴兵か核つき返還かと、こう聞いても、そうではないとおっしゃってみえる。そうでしょう。安全確保に立ち上がれとおっしゃってみえるけれども、安全確保の内容がわからない。そこで、内容とは何か、安全確保の内容とは何であるか、はっきり明確にお答え願いたい。
  290. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 先ほど答えたばかりです。これは私が申しますように、平和憲法のもとにおける国力、国情に応じた防衛力の充実、これに賛成してもらいたいし、これに協力してもらいたいし、これだけで足らない核の谷間にある日本、これは日米安全保障条約のこの体制のもとにこの国の安全をはかっていく、これに協力してもらいたい、これに立ち上がっていただきたい、これはもう非常にはっきり申し上げた。この点は、これは何度も申しますが、ここに誤解があっては困るのです。私は皆さん方に問題を提供しておるようでたいへん恐縮でございますが、私自身がこの安全確保についてはただいまのように申すことが一番いいんだ、かように実は思っております。いわゆる無防備中立論、これには私は賛成しないのであります。そこで、ただいまのことにぜひとも御賛成願いたい、そういう意味で協力してもらいたい、これを申し上げておる。  もう一つの問題は、先ほど来川崎君に申し上げておる沖縄の問題です。沖縄の問題は、一体いつ返ってくるのか、これはただいま申し上げますように、これから継続して協議に入る、これがいま言われておる問題でございます。この協議ということまでが、同意ができたのです。しかし、その中身はどうするということは、これはまだ全然意見を発表しておりませんし、また、相手方からもその意見を聞いておらない。共同コミニュケに書いてあるとおり、私が一方で国民の願望を述べた、そうして、それが二、三年のうちにめどをつけてほしいと言ってこれを求めた、これについて、十分その願望は理解した、こういうことばは取りつけましたけれども、二、三年のうちに必ずめどをつける、それまでの約束は取りつけてはございません。また、沖縄が果たしておる軍事基地、この重要性は私も認めたのでございます。そこで私は、二、三年のうちに確信があるという話はいたしております。この意味で、沖縄を早期に返還ができるように最善の努力をする、また、そういう意味で私は確信を持ってこれから交渉に入る、かように申しておるわけであります。
  291. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 安全確保に立ち上がれの内容は、国力、国の経済力に応じた防衛、それを完備する、だから賛成しろ、しからざれば沖縄の返還は不可能である、こう言いたいのですか。(「沖縄の問題とは違う」と呼ぶ者あり)いや、沖縄の問題で質問しておるのだから……。それじゃちょっと待ってください。それじゃ聞きますが、私の言う意味に賛成しろという、その意味は何ですか。
  292. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 防衛論争、これは安全論争だということをけさほどからいろいろやっております。そこで、私は、いま国力、国情に応じた自衛力を整備すること、このことをぜひ賛成してほしい、こういうことを申しております。ただ、それだけでは不十分だ、そこで日米安全保障体制、これが絶対に必要だということを申しておるわけであります。過去におきまして、日米安全保障体制、これの改正にあたっては、ずいぶん困った事態が起こりました。したがいまして、私は、これらの方々が国防あるいは安全確保に全然無関心とは申しませんが、ただいまのような状態が私は最も望ましい安全保障の姿だ、かように考えておりますから、これにぜひとも立ち上がって賛成してほしい、このことを申し上げた。これは声を大にして実は申し上げた。沖縄の問題は、これはまだこれから継続的に協議する、こういうことで、まだ右とも左とも申しておりません。だが、直ちに沖縄の問題に結びつけてこう言われることは非常に迷惑でございますが、しかし、少なくとも、いまの前提になるもの、これだけはぜひともやってもらわないと、私が沖縄の返還について継続的に協議するその意向も、実は非常に弱まるわけであります。そのことを申し上げたのであります。
  293. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 大事の点ですから、念を押しておきます。  憲法の範囲内で、日本経済力の範囲内で防衛力を拡充しろ、それが沖縄を両三年の間に返還させる条件である、こういうことですね。そうなりますと、現在でも自衛力はある。防衛力はある。それを強化拡充せんければ沖縄を返還することはできない、こういうことなんですね。あなたの意見を聞いているんです。こっちの意見じゃないんですよ。質問が関連だから、確認しておるんです。
  294. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 たいへん困ったことですが、いまのようなことと違って、私は何度も申し上げておりますが、日本の憲法のもとにおいて国力、国情に応じた自衛隊をつくること、これはすでに国会においてもきまっておるからけっこうですね。そうしてそれが日米安全保障条約、これで——これが補完だろうが、これが主軸だろうが、どちらでもかまいませんが、とにかく日本の安全の確保はできておる。これはぜひともやってほしい。この日米安全保障条約が要らないというような考え方だけは持たないで、ぜひとも立ち上がってほしい。これが私が国民に対して要望し、お願いをしておるところであります。しかし、それが沖縄返還の条件だと、かように私は申しません。私は、日本の国は日本国民の手で守るという、これで立ち上がっていく、これがやはり国防意識の高揚だと思います。こういう気概が示され、そうして具体的な措置として、いまの日米安全保障条約が締結される、こういうことでこの体制が続いていくならば、私はこれはたいへんけっこうなことだ、かように思います。しかし、これが沖縄返還の条件だということはいまだかつて申してはおりませんから、誤解のないように願います。
  295. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 不満ですが、これで……。
  296. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 日米安全保障条約、そうしてプラス沖縄の基地、これが総理が堅持しようとする日米安保体制であるということは、先ほど来の議論で明確になりました。明確だと思います。で、首脳会談のあと、現地沖縄では、世論にもはっきりあらわれております。あるいは抗議集会、弔旗を掲げた抗議集会もあらわしておるように、領土問題を防衛問題にすりかえてもらったことに対する怒りというのは、激しいわけです。那覇の市民二十七万のうちの十万の人々が、抗議集会に集まっておるわけです。そしていままで非常におとなしかった団体までが、アメリカの基地がある限りこれは施政権は返ってこない。また、いま総理の、国民が決意をすればと、そういう方向でいくならば、たいへんな方向に行きそうだ、こういう懸念をいま沖縄の現地では持っておるわけです。あなたは、いますぐ返ってくるということを期待していない、そういうたいへん不穏当なことを現地の諸君の気持ちに対して言われました。決してそれはそう思っていないのです。ですから、この議論を詰めますと、まだまだたくさんの、一体化の問題等もございますし、小笠原の問題もまだ残っておりますので、私はいずれあらためてやらなければならないと思いますが、結論的にいいますならば、いま若い諸君の結婚の原則というのは、家つきカーつきばば抜きだと、こう言うそうでありますけれども、沖縄の同胞がいま返還ができる道は、核つき、そして先ほど来極東の安保体制のかなめだと認められたようにNEATOつき、そして憲法抜きだ、ここまで極端にいま言いよるんですよ。核つきNEATOつき、そして憲法抜きだ、これが率直にいま佐藤総理日米首脳会談に向けての、そしてあなたが決意をすればという方向に対して投げかけておる沖縄現地の同胞の、即時復帰を願う切実な叫びであるということを言っておきたいのです。  次には、人権問題もたくさんあります。相互理解と相互協力のもとにいまなお三千から四千という米軍軍人軍属に捨てられた沖縄の婦女子、これも施政権を——先ほど来議論がありましたように、平和条約三条に根拠がない、不自然だといいながらも、軍事基地の自由使用、軍事行動の自由を認めるために、施政権を渡し切りにしておるために生まれてきておる悲劇、これが人権問題であります。三千人から四千人の妻子が置き捨てられておる姿。あるいは日米首脳会談以後に頻発してきておる土地問題、それはあなた新聞をよく読んでおる、こういうことでありましたから御承知でありましょうが、伊江島、ここでは沖縄住民が逮捕されておる。首脳会談のあとですよ。これはかつて勝間田委員長も現地を数年前に視察をされたところであります。逮捕されておる。あるいは読谷村においても、特殊部隊が連日降下演習を行ない、銃で農民が追っ払われておる。農民は言っておる、何のための首脳会談だったんだろうか、私たちの生活はどうなるのか、私たちの人権はどうして守られるのか、そのことが首脳会談でどう前進をしたのか。ないのです。あるいは沖縄の基地の労働者は布令百十六号、これでその労働三権を奪われております。労働基本権を奪われております。同じ日に、労働三法と一緒に、生まれた日に布令百十六号が制定をされた。そして基地労働者の基本権というものが奪われたまま十数年たっております。道路の上でビラをまいて逮捕されておる。それもすべてあなたの言う相互理解と相互協力のもとに、極東の平和と安全のために基地を渡し、施政権を渡しておることから生まれてきておるわけです。それが施政権がないために、基地の自由使用を認めておるために生まれてきておるということをあなたはお認めになりますか。
  297. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 この人権侵害等について、私もほんとうに心配しております。したがって、これから諮問委員会が早く発足して、そういう事柄についても真剣に取り組むことが望ましいと思います。とにかく諮問委員会は、この一体化についてわが国政府自身がこういうことに関与することになるのでありますから、いままでの協議委員会あるいは技術委員会等とはまたこと変わり、広範の範囲において諮問委員会がわが国を代表する、代弁する、こういうことにもなる、かように思います。
  298. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 同じ日本国民がこうした人権が守られないということ、百万の同胞が差別を受けておる。憲法上どうして許されておるのですか。
  299. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いままでのところは、川崎君御承知のように、施政権をアメリカが持っておる。だから、施政権者がそういう点について住民の福祉を十分めんどうを見なければならない、そういう立場だと思います。なるほど、日本人には違いない。また、教育もそういう意味日本教育をやっておる、教科書なども使っております。しかし、これは何といっても施政権が当方にございませんから、いままでのところは、そういう点で日本人でありながら十分めんどうが見れない、残念な状況でございます。これから順次そういう点が改善されるだろう、これに沖縄の同胞が期待をかけておるのも、そういう点だと思います。
  300. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 人権が守られていないという事実は、お認めになっておるわけであります。本委員会においても、総理は、沖縄の基本的人権侵害の問題等については日米協議委員会に入れると、こう言われた。あるいは参議院の予算委員会における質問に対しては、日弁連の報告等が問題になったときに、あなたは何と答えたか。その答弁は、首脳会談において人権が十分に守られるようにあなたはジョンソンと話し合いなさいという質問に対して、いや、そういう問題があったら、どしどしそのつどそのつど解決しますよと、大みえを切った。しかし、日米協議委員会にいまだ議題に上がったことはないのです。ありますか。
  301. 東郷文彦

    ○東郷政府委員 日米協議委員会は、御承知のように、もともと沖縄に対する援助予算の審議のために、協議のために設けられたものでございますが、その後この委員会は、予算のみならず、沖縄住民の福祉の問題も取り扱おうということで、その扱う仕事が広がったわけであります。いまお話しのようないわゆる人権問題と申すものも、これを純政治的な問題とすれば、その委員会で正面から取り上げることは多少問題があると思いますが、しかし、この問題は、政治的のみならず、経済的、社会発ないろいろな面もございますので、そのような面からその問題も取り上げて、沖縄住民の福祉の改善のために、協議委員会においても、前回、と申しますとだいぶ前になりますが、そのときにも取り上げられたこともございます。また、協議委員会の外におきましても、日常外交ルートにおいて改善のために努力しております。
  302. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 制度として入らないということはいま言われたとおり。しかし、あなたは、それをこの委員会では日米協議委員会に入れますと言った。あなたはいつもしごく簡単に考えるのです。  だから、諮問委員会でお尋ねしますよ。あなたは帰ってきたときに、松岡主席と大浜懇談会の座長に言ったことは何だ。諮問委員会で国政参加、主席公選の問題をやります、強力な委員会としていきますと、こう言った。主席公選と国政参加、これらの問題ははずれますね。食言じゃないですか。あなたははっきり言われたのです。新聞にはっきり出ておる。あるいは木村官房長官も、アメリカでこの諮問委員会の問題が出たときに、テレビを通してやっておる。あるいは外務大臣もそういうふうな意味のことを言っておる。ところが、帰ってきて日米間の協議をやり始めると、だんだん話がおかしくなってきて、いつの間にかどこかわきのほうにいってしまう。主席公選や、あるいは国政参加の問題も、この諮問委員会においてやる、非常に強力な委員会にしていくのだ、あなたが大浜さんや松岡さんに言ったこと、それがいつの間にか消えていったこと、これがあなた方の解釈。そしてそれが日米間で詰めてみると、いつも消えていっている姿です。私はこの点を今後の問題についてもさらに詰めていきたいと思うのです。日米協議委員会で、施政権の返還や基地の扱い、そういうものもやる、こういうことを言っておるあなたの大臣がおるのですよ。国民がわからぬ前に国務大臣がわかっていないのだ。取り上げましょうか。十一月二十九日の内閣委員会で、防衛問題が一番これから大きくなるというこのとき、防衛庁長官は、具体的なことはこれから後に日米協議委員会で種々相談をします、こういうふうに言っている。何べんも何べんも、日米協議委員会でそういう問題を扱っていくということを、ここではっきり言っている。日米協議委員会はそういうものでないということは、いま局長が言った。最初経済援助、そしてあなたがこの間行かれた佐藤・ジョンソン会談の結果、少し機能がふえて、福祉問題が入ってきた。ところが、それが、日米協議委員会が基本的なものを話し合っていくのだということを内閣委員会で言っているのです。いかに十分理解されていないか、そしてことばがいかにあいまいに、いいかげんに使われておるか。これで国民に決意をせいと言っても国民は決意できないのです。私はそのことを指摘をしたいのです。  そこで、これらの点を議論しておりますと、時間がもう迫っておりますから、諮問委員会の問題についてお尋ねをします。この諮問委員会は高等弁務官の権能を変えることになりますか、どうですか。つまり国際的な機関だと、こう言っておるのでありますが、大統領行政命令のその高等弁務官の権能というものの中に、国際機関に関する点は明確に規定をされておりますが、それらのものを左右するというふうにいえますか、どうですか。
  303. 三木武夫

    ○三木国務大臣 諮問委員会独立の機関であって、高等弁務官に隷属するものではない。しかしながら、沖縄の施政権は高等弁務官が持っておるわけですから、したがって、勧告権である。調査したり勧告したりして、その最終的な採用というものはこれは高等弁務官にゆだねざるを得ない。しかし隷属する機関ではない。独立に調査もできれば、勧告もできる機関である、こういうふうに考えております。
  304. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 大統領行政命令自体をやっておればもう時間がありませんからできませんけれども、オールマイティーなんですよ。勧告が高等弁務官を左右できる、影響を与え得る、そういう制度上の根拠は何ですか。
  305. 東郷文彦

    ○東郷政府委員 今回の諮問委員会は、詳しいことはこれから米国側と取りきめます。おそらく交換公文になると思いますが、そういう形でやります。それに従ってアメリカのほうも拘束されるわけでございます。その根拠は、同じ行政命令を出した大統領が、沖縄の内政に関して、今回の諮問委員会のような日本側の考えも生かしていくということを認める措置をとるわけでございますので、同じ大統領の行政権の範囲内で大統領が措置することでございます。
  306. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 それから、日米琉三方から委員が出ることになります。琉球政府からは一人出ることになるわけでありますけれども、これは琉球政府章典によれば、外交権を持たないのですね。その点はどうなりますか。
  307. 東郷文彦

    ○東郷政府委員 今回の諮問委員会が純粋に外交的かどうかという点は、多少問題がございますが、諮問委員会に出て、その諮員委員会の代表として活動する限度において、米国政府が琉球政府にそのような地位を認めることになるわけでございます。
  308. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 それでは大統領行政命令その他のそういう布令、布告等の改正があると理解してよろしいですか。
  309. 東郷文彦

    ○東郷政府委員 現在の諮問委員会は高等弁務官の権限内の事項についてということになっておりますから、そこで行政命令を変えるような勧告が出るということはあるいは考えられないかもしれませんが、しかしながら、その場において、いろいろ意見を交換しているうちに、米国政府に、場合によっては行政命令をこの点を変えたらいいという結論が出てくるかもしれません。そういうふうになりますれば、米国政府の措置として行政命令を変えるということもあり得ることかと思います。
  310. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 それでは、最後に小笠原の問題でお尋ねをしたいと思います。  成田委員からもお尋ねがあった点でもございますが、行政帰属の問題について少しくお尋ねしたいと思います。これは憲法が適用されておるが、平和条約三条で眠らされておる。つまり実施をはばまれておる。このように小笠原については考えるべきだと思います。そういたしますと、小笠原の施政権が返還をされたそのときに即時立法、司法、行政の憲法上の三権は直ちに実施される、こういうふうに理解をしてよろしいですね。
  311. 三木武夫

    ○三木国務大臣 直ちに返還になれば実施になります。
  312. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 直ちに返還になればじゃなくて、施政権が返還になったら、眠らされている憲法のその権能は全部直ちに起きますね。
  313. 三木武夫

    ○三木国務大臣 そのとおりです。
  314. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 そこで次にお尋ねします。といたしますならば、成田委員も言われたように、これは地方自治法の五条からいきましても、当然東京都の小笠原、こういうことで起き上がってくるわけですね。これまで東京都知事も、首脳会談の前に何べんも総理に会われました。数度にわたってこの小笠原の返還について都知事が会われたように伺っておるわけであります。でありますし、また勝間田委員長その他の首脳会談の際に、小笠原は東京都に所属させよう、こういうことでまいったわけであります。そこで、政府が小笠原復帰の対策本部を設置をしたわけでありますが、これまでの経緯等からいたしますならば、当然この小笠原の復帰、これからの開発の問題については、都知事とも十分に打ち合わせた上で対策本部を設置されたものだと、こういうふうに理解をしたいのでありますが、この点はどうですか。
  315. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 御指摘になるまでもなく十分連絡をとらなければいかぬと思います。たぶん本部には都の代表もだれか入るのじゃないか、かように私考えております。その辺、なお田中総務長官からお答えいたします。
  316. 田中龍夫

    ○田中国務大臣 御案内のとおりに、ただいまの対策本部を緊急に設置いたしまして、ここで今後いかにするかということを十分検討いたしたいと存じます。  なおまた、東京都あるいはまた関係団体も参加いたすようになっております。同時にまた、それを所轄いたしておりまする自治省から本部員が参加することになっております。  以上でございます。
  317. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 総理は都からと言われたが、いまの総務長官のお話だと都からは出ておらぬようですね。自治省からだと……(「都からも出ておると言っておる」と呼ぶ者あり)都からも——その本部を設置をする前に、都知事も何べんも会っているわけでなんですし、本部設置の前に、当然小笠原は東京都に所属するものでありますから、そういう立場から直ちに打ち合わせをした上で本部を発足させるべきだ。ところがいま、新聞等にも出ておりますように、国の直轄にしよう、こういうふうな考え方もあるわけでありますけれども、先ほどお認めのように、憲法が即時実施をされる、こういうことであれば、憲法の九十二条から四条の地方自治の権限と地方自治の本旨というものも当然に生かされてまいらなければなりません。国が直轄をしていく、こういうふうな、ためにする政策的な、そして地方自治にとってたいへん大きな問題を起こすことになりかねないと思いますので、当然これは都に所属をし、都を通して復興開発が行なわれていく、こういうふうに理解をしてよろしいですね。
  318. 田中龍夫

    ○田中国務大臣 お答えをいたします。  これらの問題は、何ぶんにも二十年間荒廃に帰しておりまして、無人の島も多いといったようなことで、いろいろな事前に処置いたすべきこともたくさんございます。かようなことで、こういうふうな問題一切あげまして、この対策本部においてこれから検討してまいりたい、かように考えます。
  319. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 原則をまずはっきりしなさいと、こう言っておるのです。原則は、総理が勝間田委員長に言われたように、東京都に所属するでしょうねと、こういうふうに言っておられるわけだけれども、党首会談で言われておることですね、それがまた変わるということであれば、これはたいへんまた問題になるわけですから、二、三年お守をして帰しましょう、その間に基地なんかでもつくってと、こういうことではいけないわけです。ですから、原則として、先ほど私が申しました憲法との関係等からして、当然これは眠らされていた小笠原の五つの村という行政はあるわけですし、それが起き上がってくる。そうして、それに対して都を通して国が十分な国家資金を入れて開発をしていくというのが、当然しかるべき措置だと思います。ですから、まず都に所属をさせて、普通地方公共団体としてやっていくということが一つ。  それからもう一つは、これだけ二十数年間国の行為のために切り離されていたわけでありますから、全額国が金を出してこの復興開発に注ぐ、こういう点についてまず明確な方針をはっきりしていただきたいと思います。
  320. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 川崎君にお答えいたしますが、私、勝間田委員長と会ったときに、非常に明確にはさようには申しておりません。これはいいかげんなことを申したわけでもございません。それで、この点も誤解のないように願っておきますが、これは在来から東京都の部分であった、そういうことが考えられるでしょう、ということは申しました。おそらくそういう意味期待は非常に強いだろうと私は思います。しかし、何としても、いま対策本部で申しますように、二十二年間もこれは占領され、そうして荒廃に帰しておるその土地でございます。したがって、本土からも、中央政府からも、十分これに積極的に援助しなければ、この再開発というか、そういうことはなかなかできないと思います。また、南方の諸団体、引き揚げられた団体の諸君の希望もあるだろう。そういうような意味で、この対策本部でそういうことを含めてよく調査して、どういう事柄が一番小笠原の復興再建に役立つか、そういう道を選ぶべきだ。私は先ほどもお答えしたと思いますが、別に知事がだれだからとかいうことでこの取り扱い方を一、二にするつもりはございません。どうしたら一番効果があがるか、そういう意味でよく話し合って、そうしてこの問題を解決するつもりでございます。どうかまた、社会党さんも、そういう意味で知事の問題じゃないのですから、ひとつ御理解を賜わりまして、私どもに御協力のほどをお願いいたします。よろしく……。
  321. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 知事の問題ではない、当然のことだと思いますから、これまで、首脳会談の前に、小笠原の返還について都知事も一生懸命心配をし、総理に会っておられるわけです。今後の復興開発の問題についても、すみやかに都知事に会って、それらの点を十分話し合うよう期待をいたして、終わりたいと思います。
  322. 植木庚子郎

    植木委員長 これにて川崎寛治君の質疑は終了いたしました。  次回は、明十二日午前十時より委員会を開会することといたします。  本日は、これにて散会いたします。   午後六時二十七分散会