○成田
委員 時間もだいぶんたっておりますので、
最初に申しましたように、端的な御答弁をいただきたいのですよ。私は、不使用協定に賛成かどうかと言うのです。そうすると、拡散防止条約の平和利用にまで脱線されたのでは、時間もだいぶん
たちますので……。
そこで、共同声明で中国の脅威の問題をいろいろ言われましたが、私は、中国が不使用協定まで提案しているのだから、
総理としても、ほんとうに核の脅威をお
考えならば、不使用協定に対して積極的な行動を起こすべきだと思うのです。中国の脅威云々ということをよく言われますが、これは歴史に対する反省がないと私は思うのですよ。
日本の軍国主義というのは、明治以来中国に何度も攻め入っているのですね。そして中国人民に非常な損害を与えている。今度の太平洋
戦争で
日本は敗戦した。その間、中国側から
日本に攻め入ってきたとか、攻め入ろうとしたというような事実はないわけです。すべて
日本の一方的な侵略なんですよ。しかもこの敗戦処理もまだ終わっていないのですよ。こういう歴史の教訓をくみ取らないで、中国の脅威云々と、これをアメリカと一緒に宣伝するということは再び
日本の歴史に大きな汚点を残す、こういう結果に私は道を開くことになるんじゃないかと思うのです。それで、もう少し中国問題に対する謙虚な態度をとっていただきたい。これをひとつ強く
指摘しておきたいと思います。
その
考え方が、たとえば
ベトナム戦争の問題にも出ておる。あるいは安保条約に対する
考え方にも出ているのでありますが、
佐藤総理は
ベトナム問題について、北爆もさることながら、これに対して北のほうのそれに対応する態度が必要だとか、あるいは今度の
所信表明では、さらに一歩を進めて、直ちに話し合いのテーブルにつくべきだとか、こういう演説をされておるのです。北爆の問題には共同声明では触れておりましたが、
所信表明では北爆のホにも触れていない。
総理は一体北爆のことをどう
考えておるか。
現在アメリカの
ベトナム戦争というものが世界の人々からどう見られておるかこれは最近のギャラップの世論調査にあります。米国の北爆に反対し、米軍の撤退を主張するもの
——六カ国調べておりますよ。フランスが七二%、北爆に反対し撤退を要求する。フィンランド八一%、スウェーデンは七九%、ブラジルは七六%、米国と近いといわれているイギリスでさえ四五%、カナダ三四%。しかも、このイギリス、カナダでは、
現状維持だとか、あるいはアメリカの攻撃を強化しろというよりは、撤退を主張しているほうがパーセンテージとしては多いわけですね。
要するに、
総理の、北爆に対する対応した措置だとか話し合いのテーブルにつけというのは、侵略者と被侵略者を同列に取り扱っている。侵略者であるアメリカに対して国をあげて抵抗している
ベトナム人民に対して、抵抗をやめろ、これが
総理の
考え方なんです。現にインドネシアのマリク外相がこういうことを言っていることは御
承知と思うのです。
〔二階
堂委員長代理退席、
委員長着席〕
「米国は北側の話し合いに応ずるとの保証がなければ北爆停止はできぬと言うが」、これをオウム返ししたのが
総理の
考え方です。しかし、マリクはこう言っておりますよ。「われわれ
アジア人からすると、この
考えはおかしい。他人の家へ爆弾を投げつけているのは米国である。爆弾がやんだとき、初めて人々はおはようございますと外に出てこられるのである。」おはようございますというのは、特に
日本語で言ったそうですね。これは
総理に対する大きな皮肉だと私は思うのですよ。こういう発言から見ましても、現在の南
ベトナムにおける戦闘あるいは北
ベトナム爆撃、この
ベトナム戦争を終結さす道はジュネーブ協定に基づく以外にないと思います。これが原則だと思いますね。これに対して
総理がアメリカに追随したような
方針をとっておられることは、私は非常に遺憾だと思うのです。
そこで、この共同声明にある日米安保条約の問題この安全保障の問題に関連して最後に申し上げておきたいのですが、
総理はけさの答弁でも、また本
会議その他の答弁でも、安全保障条約が極東における
日本あるいは自由
諸国の安全保障に役立っておる、こういうことを強調されるわけです。これは私は、いまの
ベトナム戦争と安保の関係に目をおおうた、ある
意味において虚構と申しますか、でっち上げの
議論だと思うのです。ということは、具体的に申しますと、去年NHKが安保条約、
日本の安全と
独立について、という世論調査をしていますね。その世論調査で、
日本の安全と
独立について日米安保
体制が必要だというのが二七%です。武装中立は一四%、社会党の主張する非武装中立は実に四二%ですね。それから、最近朝日新聞その他
有力紙が沖縄問題について世論調査をやっておりますね。その世論調査の
一つの例を申し上げますと、沖縄の基地は極東の平和や
日本の安全に必要か。これに対して、本土における調査は、必要というのは四〇%、不必要というのが三〇%です。沖縄では、必要というのはたった二八%で、不必要というのが四〇%おります。それから、基地はかえって敵の攻撃を受けることになり、不安と
考えるか。この調査について、本土では、不安と
考える人が五〇%おります。不安でないというのはたった二四%です。沖縄に至っては、基地があることは非常に不安だ、かえって敵の攻撃を受けるというのが実に六五%ですね。不安でないというのがたった一五%です。この両調査は、
ベトナム戦争の現実を通しまして、安保条約の本質と申しますか、意義が
ベトナム戦争によってテストされた。その結果、安保条約の危険性というものが、その本質が
国民の前に明らかになったということなんです。
総理はいままで、いや、安保があったから
日本は安全で、それで繁栄したと言うが、それは単なる頭の中の抽象論ですよ。むしろ安保条約と
ベトナム戦争という現実の関係から、安保条約が
日本の安全であるかどうかということをもう一度ここで再反省すべきだと思う。
総理の言うように、安保があったから安全だ。じゃ安保がなかったらどこから攻めてきたんだ、そういう
質問も出ますよ。安保がなかったらどこから攻めてきたんだ、
日本はどうなったんだ。これは
お互いに抽象論だと思いますね。そういうのは安全保障を論議する道ではないと思う。
さらに、
総理は先ほども言われましたが、いわゆる核武装によるところの恐怖の均衡論、沖縄に対する攻撃というものはアメリカとの全面衝突、アメリカの核攻撃を予想しなければいかぬ、これは外務省のいわゆる安全保障に対する見解です。それをあえてやる国はない。だから、沖縄の基地あるいは日米安保条約、こういうものは
日本の安全に役立っているんだ、こういう
議論をされます。この発想も、この
考え方も、
ベトナム戦争の経験が全く欠除されていると思うのですよ。単に安保条約というものを抽象的に
考えている。
ベトナム戦争との関係、
ベトナム戦争の経験というものを全く欠除したものの
考え方だと思いますね。と申しますことは、たとえばアメリカとの全面衝突を
考えて
日本の基地を攻撃するのはないだろう、こういうことを
総理は言われる。それが安全保障になっている道だと言うのですが、そのことはある朝突然、ある国がアメリカとの全面衝突を覚悟して
日本に武力攻撃を加えてくる、そういう想定なんですね。そういう
考え方それ自体が非常に非現実的な
考え方だと思うのです。
ベトナム戦争の現実というのはそれとは全く逆なんですよ。全く逆の事実をいま
日本人に教えていると思うのですね。御
承知のように、いま
ベトナム人民は、核強大国であるアメリカですよ、このアメリカの侵略に対して国をあげて戦っているわけですよ。最悪の場合はアメリカの核攻撃のあることも覚悟して、
ベトナム人民は戦っていると思うのです。そのアメリカ軍はどこを根拠にして
ベトナム攻撃をやっているか。これは日米安保条約、あるいはサンフランシスコ平和条約三条に基づくところの沖縄の基地、
日本の基地を利用してアメリカ軍は
ベトナム攻撃をやっておる。だから、
日本政府も認めたように、
日本は
ベトナム戦争では中立ではないと言っている。もうすでに
日本は、安保条約の結果、
ベトナム戦争では中立を失っているわけです。
戦争への道に入っておるわけです。そこで、いま
ベトナム側がなぜ
日本の、アメリカの利用している基地に対して攻撃をしてこないのか。これは私は、
ベトナム側がアメリカの核がおそろしいから攻撃してこないのじゃないと思う。
総理の言うように、アメリカとの断力衝突をおそれて、それで全面的な攻撃はないんだ、だから
日本の安全は守られる、そういうアメリカとの全面衝突をおそれたために
日本に対する攻撃がないというわけじゃないのです、現にアメリカと全面的に戦っておるのですから。この北
ベトナムがなぜ攻撃しないか。それは攻撃能力がないということが
一つだと思うのですね、率直に申しまして。また、そうすることがどういう
影響を及ぼすか、それを慎重に配慮している結果だと思うのです。もし攻撃能力があり、そしてアメリカが安保の結果
日本の基地を利用している、その基地をたたくことなくしては
ベトナム人民は全滅するのだ、こういう状況になった場合、攻撃能力があれば、攻撃しないという保証はないと私は思うのです。アメリカの
日本の基地に対して攻撃がないという保証はないと思うのです。特にこの
ベトナム戦争がエスカレーションして、核の第二打撃力を持っておる中国とかソ連がもし入ってきたという場合、そういうことは当然予想しなければいかぬ。アメリカと安保条約を締結して基地を提供しておることが安全なんだということは、全くそれとは逆だということですよ。現にソ連だとか中国というものは、その
意味のことを
日本に警告しているじゃありませんか。全く逆だと思う。したがって、安保が極東の平和と
日本の安全に必要なんだ、こういう主張というものは、狂信的な反共主義者の頭で
考えたことか、あるいはまた、
ベトナム戦争の現実というものを全く
考えない、アメリカによって押しつけられた、自主的
立場を全く放棄した人々の
考え方だと私は思うのです。ほんとうの
日本の安全というものは、やはり極東における緊張を緩和することだと思うのです。基地を撤去することだ。そのためには、基地を撤去しなければならない、安保を廃棄して緊張を緩和するということ、そのことが平和への貴重なイニシアチブだと思うのですね。そのことがまた、極東の平和と
日本の安全への道につながるのだ。そのための
平和外交、そのための
国際的な平和共存、この努力をやることが真の安全保障の道だ、こういう確信を私
たちは持つわけなんであります。むしろ、抽象的に安保条約が
日本を守ったのだ、そんな
考え方は、
ベトナム戦争との関係から、
ベトナム戦争の現実の教えるところからいって、全くこれはくつがえされてしまった、こう私
たちは
指摘せざるを得ない。これが私
たちの
立場だということを強く訴えたいと思います。
そこで、
総理からそういう御答弁がなければ、またすれ違いということになりますが、
ベトナム戦争の現実というものはそういうものだということ。そこで
総理に申し上げたいことは、今度の論議を通しまして、要するに自民党
政府の沖縄問題に対する
方針というのがないということです。ただ、
国民的なコンセンサスが必要だ、必要だ、
国民的合意が必要だ、必要だ、こう言って、抽象的に国を守るとか、昔の東條
内閣が言ったような
ことばかり言っている。これではあまりにも無
責任だと思う。したがって、少なくともこの
日本の将来の運命を決定するような沖縄問題については、どういう形で返還を求めるか、この大綱を
国民に示すことが
政府並びに
与党の
政治的な
責任だと私は思うのです。これを示さずして、ただ
国民に国を守ることを説くことは、これは全く無
責任だと思うのですね。議会
政治の
あり方からいっても、私は許されないと思う。
そこで、
政府はまず沖縄問題についての
方針を示すべきだ。そして
国民の
意見を聞くべきだ。そしてある段階が来て問題が煮詰まってきたときは、当然
国民の信を問うという
意味で総選挙をやる、
国民の意思を問う、それが私はほんとうの
国民的な合意を得る道だと思う。それをやらないで、秘密外交ですね、いや、これは将来のことでございます、返還の際に核の問題、自由使用の問題は
考えますということは、全く問題を回避した形なんです。そういう形でアメリカと妥結して、そしてこれを
国民に押しつけるというような非民主的な態度は、私はとるべきじゃないと思う。あくまでも堂々と
国民に訴えて、
国民の審判を求めるべきだ、こう思うのですが、
総理の御見解を承りたいと思います。