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1967-12-15 第57回国会 衆議院 法務委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十二年十二月十五日(金曜日)    午前十時四十八分開議  出席委員    委員長 大坪 保雄君    理事 井原 岸高君 理事 大竹 太郎君    理事 田中伊三次君 理事 高橋 英吉君    理事 濱野 清吾君 理事 加藤 勘十君    理事 横山 利秋君 理事 岡沢 完治君       村上  勇君    神近 市子君       中谷 鉄也君    山田 太郎君       松本 善明君    松野 幸泰君  出席政府委員         法務政務次官  進藤 一馬君         国税庁長官   泉 美之松君  委員外出席者         警察庁長官官房         総務課長    土金 賢三君         警察庁警備局警         備課長     三井  脩君         法務大臣官房人         事課長     羽山 忠弘君         法務大臣官房経         理部長     辻 辰三郎君         法務大臣官房司         法法制調査部長 川島 一郎君         法務省刑事局青         少年課長    安田 道夫君         法務省人権擁護         局長      堀内 恒雄君         最高裁判所事務         総局人事局長  矢崎 憲正君         最高裁判所事務         総局家庭局長  細江 秀雄君         専  門  員 高橋 勝好君     ————————————— 十二月十五日  委員高田富之辞任につき、その補欠として中  谷鉄也君が議長の指名で委員に選任された。 同日  理事中垣國男君同日理事辞任につき、その補欠  として田中伊三次君が理事に当選した。     ————————————— 十二月十四日  小菅刑務所の青梅市移転計画撤回に関する請願  外一件(長谷川正三君紹介)(第二八七号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  理事辞任及び補欠選任  裁判官報酬等に関する法律の一部を改正する  法律案内閣提出第四号)  検察官俸給等に関する法律の一部を改正する  法律案内閣提出第五号)  法務行政及び検察行政に関する件  人権擁護に関する件      ————◇—————
  2. 大坪保雄

    大坪委員長 これより会議を開きます。  理事辞任に関する件についておはかりいたします。  すなわち、理事中垣國男君より理事辞任の申し出があります。これを許可するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 大坪保雄

    大坪委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。  ただいまの理事辞任に伴う補欠選任に関しましては、先例により、委員長において指名するに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 大坪保雄

    大坪委員長 御異議なしと認めます。よって、田中伊三次君を理事に指名いたします。      ————◇—————
  5. 大坪保雄

    大坪委員長 裁判官報酬等に関する法律の一部を改正する法律案、及び検察官俸給等に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。  両案に対する質疑を続行いたします。岡沢完治君。
  6. 岡沢完治

    岡沢委員 最初に、昨日大竹委員から御質問になったことと関連をするのでございますけれども裁判所職員あるいは刑務官を含む法務省関係職員超過勤務の問題につきましてお尋ねをしたいと思います。  法務省裁判所それぞれ別個にお答えいただきたいのでございますけれども職員超過勤務状況について実態調査等をなさったことがございますか、あるいは実態について、その内容を把握しておられますか。
  7. 羽山忠弘

    羽山説明員 法務省におきましては、御承知のように検察官に対しましては超過勤務手当を支給しないことになっておりますので、その面の調査をいたしておりません。ただ、特殊の事件がございましたときに、夜、検事がおそくまで仕事をするというようなことは、そのつどその庁においてはよくわかっておると思いますが、本省におきましてはその実態はよくわかっておりません。ただ、その他の職員につきましては超過勤務手当を支給いたしておりますので、ある程度の実態はわかっておると思います。
  8. 矢崎憲正

    矢崎最高裁判所長官代理者 裁判所におきましては、裁判官には超過勤務の制度は全くないわけでございまして、朝夕、深夜まで非常に一生懸命仕事をいたしておるというのが実情でございます。一般職員につきましてはもちろん超過勤務手当はあるわけでございまして、これにつきましては、各庁におきまして、それぞれその実態に即して超過勤務手当を支給いたしておるというのが実情でございます。
  9. 岡沢完治

    岡沢委員 私はある意味では政府に協力的な、あるいは裁判所検察庁裁判官検察官を除く職員には非常に情けのない御答弁だと思うのです。私自身が裁判所につとめたこともございます。最近、法務省刑務官と話したこともございますけれども、私の知る限りでは、個人ごと勤務実態に応じた超過勤務手当は支給されてないのが現状ではないかと思いますが、間違いでございますか。
  10. 矢崎憲正

    矢崎最高裁判所長官代理者 実働に応じて超過勤務手当を支給しているというように実態を聞いてはおりますが、しかしながら、超過勤務の時間が非常に重なったような場合には、完全にその月の予算でまかなえないというようなことはあり得ることと存じます。
  11. 羽山忠弘

    羽山説明員 私のほうも大体同様でございます。
  12. 岡沢完治

    岡沢委員 私は、この十二月の初旬に大阪刑務所に参りまして今村所長と話し合ったわけでございますけれども、少なくとも大阪刑務所職員超過勤務手当につきましては大体割り当て制であって、実態の三分の一程度しか支給されていないという意味の御発言がございました。これは、おそらく大阪刑務所だけの特殊事情ではなしに、全体に超過勤務の時間数、金額がきめられておって、それを月ごとに平均して割り当ててしまう。実態は、それをはるかにこえる勤務がなされておるというのが、所長の偏見ではなしに、実情だと私は思うのです。そういう点につきましてはやはり御遠慮なさらずに実態を把握されて、そして要求すべきものは要求されるということが職員服務規律の大前提になるのではないか。私たちはいたずらに国民の税金でまかなわれる公務員給与を無条件に上げるというようなことについては、もちろん財政的な配慮も必要だという立場からも、ストレートには支持しないわけでございますけれども、しかし、法律上認められた超過勤務手当が、法の執行者であり、あるいは法の主宰者であります法務省裁判所において、まず職員に対する給与の面でも履行されない。それではそこに服務する職員が法の執行について、あるいは法の権威について疑いを生ずるのは当然であり、勤務に対する熱意を失うのも当然だというふうな感じがするわけであります。行政近代化能率化ということをいわれますし、私たちは十分な給与のもとで能率的な行政運営が、法の番人の立場におられる裁判所なりあるいは法の執行者法務省からまず実施されるべきだし、これはもちろん同じような問題が教職員一般公務員にもあることは認めますけれども、私はことに裁判所の場合に担当大臣をお持ちでないというような面もあり、あるいはまた裁判官はことあげせずというような過去の因襲等もあって、ことさらに言うべきこともおっしゃっていない。そのために職員不満がある。そのために職員組合等の行動についても、当委員会で問題になったような思想傾向が生ずるという一因にもなっておると私は感じますので、そういう点は、やはり責任者の方が声を大にして、御遠慮なさらずに言うべき主張はなされ、予算獲得についても努力されるというのが、私は職責上の義務ではないかと思うのでございますけれども、御所見を承りたい。
  13. 羽山忠弘

    羽山説明員 超勤の対象となっておる職員に対しまして、非常に御同情のある御質問でございまして、まことに恐縮にたえないわけでございます。ただ、私どものほうで超過勤務手当が十分にあるとは考えておりませんが、ただいまのお話、私のあるいは聞き違いかもしれませんが、刑務所におきましては、全職員について実働時間の三分の一しか超過勤務手当を払っていないというようなことはないわけでございまして、それはおそらく、御承知のように事務保安等に分かれておりまして、刑務所長の裁量によりまして、保安と申しますか、直接戒護、保安の任にあたりまする職員のほうには、実働時間に応じて一〇〇%の超勤をやる。それからそのはね返りが逆に庶務、会計その他の一般事務に従事する者については、実働に対してはかなり低い率になるということはあり得るかと思います。  それから御承知と思いますが、超過勤務手当と申しますものは俸給の単価で計算いたしますので、所長超過勤務手当を一時間もらうのと、普通の初任の看守がもらうのとではずっと違うわけでございます。そこで看守のほうに極力一〇〇%回して、幹部が実働の三分の一ぐらいで遠慮するというようなことはあろうかと思います。全部ならして三分の一というような事態にはなっていないということを御了承いただきたいわけでございます。
  14. 岡沢完治

    岡沢委員 私が職員を保護する立場に回りまして、御担当皆さん方が反対の立場に立たれるのはおかしなことでございますけれども、私の今村所長から聞きました範囲では、数字には若干の違いがありましても、たとえば大阪刑務所に対して一年間の超過勤務手当はこれだけだという限度が示されて、その範囲内で運用する。実態は、超勤の時間はその超過勤務手当の額ではとてもまかなえない、実務時間に比してはるかに少ない割り当て比例配分をしておるというのが実態だということを現地の所長さんから、まだ一カ月もたっていない範囲で私は聞いたわけでございますから、私の言っていることのほうが実際は正しい。国家財政に協力するという意味で、きわめて御遠慮深いただいまの御発言だと思いますが、お互いにもう少し調査を進めていただいて、実態に即した勤務手当が法に基づいて支給されるということは当然の要求であり、そのかわりに、刑務官その他の職員方々に、公務員としての正しい勤務の態度、いわゆる奉仕者としての責任を求めるということのほうが筋が通るのではないかというふうに思います。ことに、教職員の場合でございますと、勤務の性質上その実態をつかみにくいというような点がございますけれども裁判所法務省職員に関する限り、実態が把握されるはずでございますから、そういう点での懸念はないわけでございます。ぜひそういう点から職員不満を助長するようなことのないように御配慮いただきたいと思います。  次に、引き続きまして、刑務官関係お尋ねしたいと思います。刑務官護送手当の問題でありますが、私の聞きました範囲では、受刑者護送して他の刑務所に移すというような場合に、たとえば一般職公務員で五等級以上の者は、旅費一等旅費をもらえるはずでございますけれども受刑者護送していく場合には二等の旅費しかもらえない。しかも、一般公務員の出張でございますと、一般的には目的地に達しましてから要務がございます。行くまでの間はむしろ精神的にはきわめて楽な立場にございます。ところが護送の場合は、運搬の途中自体勤務でございまして、一瞬の油断もできない。逃亡その他の懸念がございますし、特に過去の例からいたしましても、便所に入っている間でも監視を怠れないというような、一瞬も緊張をゆるめられない立場にありながら、しかも、一般の五等級以上の人が護送に当たる場合があると思いますが、そういう場合に、当然の給与よりも低い基準でしか支給されない。非常に不合理だと思いますが、こういう点について、いかがお考えでございましょうか。
  15. 羽山忠弘

    羽山説明員 お尋ねの点は、私どもは目下努力いたしておる点でございまして、御指摘をいただきましたことを恐縮に存ずるのでございます。ただいま御質問にございましたとおりの実情でございます。と申しますのは、矯正職員階級制というのがございまして、上は、うんと上のほうへ参りますと法務事務官等級ということになるのでございますが、いわゆる保安関係職員階級は、看守長、副看守長看守部長、一番下が看守ということになっているわけでございます。看守は、二十五年たちましても三十年たちましても、看守である以上は七等級であり、現行の旅費規程が、公安職(一)の七等級看守旅費は二等であるという規定になっておるわけでございます。そこで、御質問のように、長年つとめても、いつまでたっても、看守である以上は二等の旅費しかもらえない。たとえば、娘でもむすこでもそうでございますが、家族が学校を出ましてたまたまタイピストとか何とかで刑務所につとめた場合に、しばらくいたしますと、一般職のほうで六等級になる。子供のほうは出張するときに一等旅費をもらって、おやじは二等旅費をもらっておるというようなのが現状でございます。この点はまことに妙なことになっておるのでございまして、私どもはこれにつきまして、改善する方法が二つあると思うのでございます。その一つは、この看守のうちで何らかの者を一等旅費がもらえる等級、すなわち六等級に昇格するという方法を講ずる点でございます。その次は、かりに看守で七等級のままでおりましても、一般職は六等級から一等旅費が出るのでありますから、それの六等級に対応する金額に達しました者については、七等級でありましても一等旅費が支給できるというようにいたしてはどうか。先般来人事院、大蔵省と交渉を重ね、また前任の大臣にもお骨折りをいただきましたのみならず、このたび大臣が御交代になりましたので、私と矯正局長がまっ先にこの問題を大臣にも御説明申し上げたのでございますが、従来の改善策といたしましては、さきに申し上げたのが一部改善されまして、看守の中に、現在看守が約八千名くらいおると思いますが、その一割に相当する約八百人につきまして主任看守というものをつくりまして、それは六等級に昇格させるという措置をとったわけでございます。そしてその主任看守につきましては、その主任看守の数が現在八百人となっておりますが、その八百人をもう少しふやしてもらいたいということで折衝をいたしておるわけでございます。その次は、七等級であっても二万八千円の月額に達した者、すなわちこれは七等級の八号でございまして、行政職の(一)の六等級の一号になるわけでございますが、二万八千円以上に達した者には、かりに七等級であっても一等旅費を支給していいというふうに規則の改正をしてもらいたい、これは大蔵省の所管でございますので、そのことを目下鋭意折衝中でございます。そういたしますと若干予算がかかるかと思いますが、もちろんそれに伴います予算措置はまた別途講ずることにいたしまして、当面そのようなことを考えておるということでございます。
  16. 岡沢完治

    岡沢委員 御努力いただいていることはわかるのでありまして、私も納得はいたしますけれども、またもう一つ別の観点からいたしますと、護送刑務官目的地に達しますと任務が終わるということで、すぐ帰ってくることがたてまえになっておりまして、一般公務員でございますと当然一泊の宿料がもらえるところを、一日で打ち切られる。二泊かかるところでも一泊で、非常に短く計算される。しかし実際は、せっかく送っていったので、送った先の刑務所施設なんかも勉強してくる場合が多いというふうに聞きましたし、また実際、他の刑務所あるいは他の施設の御見学をなさり、いろいろな状況を知るということは非常に有益だという感じもいたします。また先ほど指摘いたしましたように、護送途中がきわめて過重な勤務なわけでございますから、ある程度の休養も必要ではないか。ところが実態は、目的地での仕事は全く無視される。非常に不合理というよりも、ある意味では合理的かもしれませんが、しかしきわめて不利な扱いを実態としては受けるというふうな御説明今村所長からありました。私も実際そうだという感じがいたしました。そういう点につきましても格別配慮がなされるように大蔵省、あるいは法の解釈その他で許す限り、下級刑務官不満のないようにしてもらうということがきわめて大事ではないか。刑務官不満がやはり受刑者にも影響することは当然に考えられます。また最近、刑務官希望者が非常に少ないということなんかも、私はこういう点にも原因があるような感じがいたします。法の許す限り、あたたかい配慮下級刑務官に対して必要ではないかということを指摘さしていただきます。  一応、刑務官関係質問は終わりまして、裁判官検察官の、ただいま提案されております改定とも関連いたしますけれども戦前、戦後の給与水準物価指数関係もありますけれども、比較できる資料をお持ちでございましたら、お答えいただきたいと思います。
  17. 川島一郎

    川島説明員 お答えいたします。  戦前裁判官検察官俸給は、一般行政官と同じく、高等官官等俸給令というものによって定められておったわけでございます。それが戦後になりまして、昭和二十三年に、裁判官については裁判官報酬等に関する法律、それから検察官については検察官俸給等に関する法律が制定施行されまして、一般行政官とは別に定められることとなったわけでございます。  そこで、ただいま御質問のございました戦前と戦後の裁判官検察官俸給の、物価指数を勘案した上での比較をいたしますと、ごく大ざっぱなところでございますが、昭和十年を例にとって、昭和十年の物価指数をかりに一といたしました場合に、現在では、その約五百倍、四百六十四倍ということになっております。それで、裁判官等級の刻み方でありますとか、検察官の職種それから等級の刻み方、こういうものが変わってきておりますので、一応ごく大ざっぱに対比してみたわけでございますが、裁判官のうちの判事、それから検察官のうちの検事の一号から八号まで、この部分につきましては、昭和十年当時をかりに一〇〇といたしますと、ただいま申し上げました物価指数を勘案しても一二〇とか一三〇とかいうように、昭和十年当時よりは現在のほうが実質的に高くなっておるということが言えるわけでございますが、それより下のクラス、つまり判事補でありますとか検事の九号以下につきましては一〇〇を割っておりまして、低いところは大体七〇くらいの見当になるようでございます。
  18. 岡沢完治

    岡沢委員 物価指数の比率を幾らに見るかによって変わってくると思いますが、実態はいまのお答えとはだいぶ違いまして、戦前裁判官検察官は、少なくともいわば非常に裕福なといいますか、交際その他に困るような給与でなしに、一般的には、いわゆる俗にいう上流社会生活ができたと思うのでございますけれども、現実の裁判官検察官生活は、御自分で官舎以外の家を持つというようなことは全く不可能な給与水準ではないか。私たちにも友人に裁判官検察官がたくさんおりますけれども、忘年会のつき合いにも、ことばをじょうずに濁しますけれども、結局は負担が問題で参加してくれないという場合があるようでございます。そういうことは、やはりその職責からいいましてもきわめて不合理というよりも残念なことであって、私は給与だけが裁判官検察官権威を上げるとは思いませんけれども、やはりその職責、ことに良心に従って独立して職務を行なう裁判官、あるいはきのう来問題になりました検察官権威のためにも、給与水準格別のものがあっていいんではないか。それだけに、しかし職責十分国民の期待するものをやっていただく。副収入その他が全くないということも、当然ではございますが、やはり配慮されてしかるべきなんで、法律改正は要しますけれども、この点について私は、当局者はもう少し勇敢に予算要求その他をなさっていいのではないかというふうな感じがいたします。ことに日本が新憲法のもとで、第九条で戦争を放棄して、力による支配というものから法の支配という、近代国家の最も先端をいく国家組織を持っているわけでございます。その場合、比較するのもどうかと思いますけれども、他日の国会で通過いたしました国防費、三次防につきましては五年間に一兆三千億の予算を使われる。われわれからいたしますと、日本平和国家のたてまえからいいますれば、そういう軍事予算をむしろ平和的な、ことに法の権威の維持のためにその何分の一かが使われるということは、正しい行政のあり方だというふうに感じます。そういう点からも私は、もう少し御遠慮なさらずに給与改定について当局者は努力をなさるべきではないかということを指摘さしてもらいたい。それがまた憲法でいいます公平にしてことに迅速な裁判実現に間接的に役立つ。検察官給与も、直接の司法官ではありませんけれども、法の権威実現のためにはきわめて大事な立場にあるだけに、裁判官に準じて御要求あってしかるべきだというふうに感ずるわけであります。ことに最近の司法修習生出身者志望別を見ました場合に、裁判官検察官希望が非常に少ない、弁護士志望が多いということは、私は給与に大きな原因があると思います。そのこと自体はやはり裁判所検察庁権威を失墜する一つの半面的な要素を持っておる。弁護士になっておる者がすべて優秀だというような主張をする気持ちはさらさらありませんけれども、最近の志望状況を見ますと、特に検察庁の場合、志望者の全員を採用しなければ定員を満たせないというようなことも聞いております。それでは質のいい検察官が全部集まるということにはならないわけでございまして、そういう点からも、この際給与水準の引き上げについて、まずみずから主張なさるということが必要でないか。国会の場合、過去の委員会発言からいいましても、超党派でこの問題については協力するということをお約束していることを御活用いただきたいと指摘しておきます。  最後に、小さいことでございますけれども大阪裁判所の実例でございますが、他の官庁でございましたら当然局長次官クラス方々が、自分部屋はもちろんのこと、机もお持ちでない。きょう甲の裁判官がお使いになると、あしたは乙の裁判官がその机をお使いになる。弁護士その他の当事者との打ち合わせの部屋もないというのが実態でございます。また、大阪検察庁の場合も、いま問題になっております特捜部検事方々にいたしましても、検事の個室はお持ちでございますけれども電話は直通が全くない。土曜日になりますと、午後一時からは電話もかけられない。関係者も非常に不便でございます。能率にも影響いたします。人的な問題は、定員法その他の関係もあり、きわめてむずかしい、実現に時間を要する問題かと思いますが、こういう施設の問題につきまして、せっかくの迅速な裁判とかあるいは捜査の敏速性が害されるというようなことはきわめて残念だと思いますし、国家経済から見ても決して得策ではない、こういう点について御配慮があるのかどうか、御意見を承りたいと思います。
  19. 矢崎憲正

    矢崎最高裁判所長官代理者 岡沢委員の先ほどからの御指摘、まことにそのとおりでございまして、私ども御支援を受けながら十分に一生懸命努力いたしまして、給与の面それから施設面等について改善すべく努力いたしたいと思っております。  なお、大阪につきましては、最近非常に庁舎面等予算面は好転いたしておりまして、実行の域に入っているということだけ申し上げておきます。
  20. 辻辰三郎

    辻説明員 先ほど御指摘大阪検察庁庁舎施設の問題でございますが、御承知のとおり、大阪につきましては、現在新しい法務合同庁舎を建設中でございまして、これが四十四年の三月までには完成する予定になっております。現在のところはたいへん狭隘な施設で、当事者にたいへん御迷惑をかけておる状況であると存じますが、完成の暁にはりっぱなものができるわけでございます。現在予定いたしておりますのは、電話につきましても、でき上がりますと大体十二人で十の電話を使用する。もちろん交換を通した電話でございますけれども電話等につきましても十分の配慮をいたしております。現在のところは多少交換その他の点がうまくいかない面があろうかとも思いますけれども、いましばらくのごしんぼうをお願いいたしたいと考えておる次第であります。
  21. 岡沢完治

    岡沢委員 これで終わりますが、いまの電話の点、交換手が六時で終わってしまう。そうすると検事さんに電話もかけられない。土曜日の午後は全くつんぼになってしまうということでございまして、ぜひ交換手くらいの費用は——男の交換手を使えないことはないと思うので、実際能率化にこれはちょっとした配慮でできることなんで、法務庁舎の新しいのができるまで待つと、やはり二、三年先になることでございますから、現実の事件処理にも関係しますので、やはりこまかい配慮が必要だということを指摘さしてもらいまして、終わります。
  22. 大坪保雄

    大坪委員長 松本善明君。
  23. 松本善明

    ○松本(善)委員 法務省に聞きたいのですけれども法務省職員実態ですね。昨日、裁判所については少しお聞きしたのですけれども、いま公務員の賃金が非常に低いということで、生活保護基準以下の公務員の賃金があるということで問題になっておりますけれども法務省では、そういう生活保護基準以下の職員があるかどうかということについて調べたことがありましょうか。
  24. 羽山忠弘

    羽山説明員 調べたことはございません。
  25. 松本善明

    ○松本(善)委員 そうすると、そういうことについては、法務省としてはいままであまり関心がなかったわけですか。
  26. 羽山忠弘

    羽山説明員 一部の役所の職員生活保護を受けておるという事例を聞いたことはございまして、私どもも、それはそれといたしまして、類似の事例が法務省にあるかないかということにつきましては、会同その他の機会に聞いてはおりますが、まだそのような報告に接しておりません。したがいまして、徹底的に調べるということをまだいたしておりません。
  27. 松本善明

    ○松本(善)委員 これはそうむずかしいことではないのです。法務省の中の職員俸給について全部調べ上げるということは、そうむずかしいことではないと思うのです。生活保護基準もわかるわけでありますから、その調査はそうむずかしい大ごとではないものと思います。それがいまなされていないということは、法務省の、言いますならば下級職員といいますか、一番下積みで働いている人たちに対する考え方が非常に希薄なのではないかというように考えるのですけれども、政務次官の御意見を伺いたいと思います。
  28. 進藤一馬

    ○進藤政府委員 法務省につとめておる者は、上も下も十分にその職責が遂行できるように、給与の点においても私ども考えておる次第でございまして、下の者と上の者と気持ちの上においては少しも変わらない、下の者も、十分にそういうおっしゃったような点を検討いたしまして、手抜かりのないように進めていきたい所存でございます。
  29. 松本善明

    ○松本(善)委員 内職をしておったり、それから共かせぎをしていたりというようなことが、いまの公務員の賃金では何十%、場所によっては四〇%、場合によっては六〇%というような状態になっているというような数字が、ほかの調査では出てきております。そういう点について、法務省は何らかの調査をいままでにしたことがあるかどうか、それをお聞きしたいのであります。
  30. 羽山忠弘

    羽山説明員 まことにおしかりを受けるかもしれませんが、私どものほうに、職員同士で共かせぎをしておる例もございますが、ただ、今日までのところ、どの程度の職員が共かせぎをしておるか、あるいは内職をしておるかというような点をいまだ調べておりません。
  31. 松本善明

    ○松本(善)委員 共かせぎをしたり、内職をしなければ食えないような状態に給料の低いいわゆる下のほうの職員がなっているという実情について、法務省としてはいままで何か対策を立てたことがありますか。
  32. 羽山忠弘

    羽山説明員 その実態承知いたしておりませんので、対策の点についてまだ考慮いたしたことはございません。
  33. 松本善明

    ○松本(善)委員 政務次官に伺いたいのですが、いまお聞きのように、いままで法務省では、そのような低い給与職員のことについてほとんど何らの配慮がされてないようです。政務次官、どのようにお考えになっておりますかお聞きしたいと思います。
  34. 進藤一馬

    ○進藤政府委員 まだ十分に、そういう点について実態調査が行き届いていない点があったかと存じますが、そういう点は十分に調査いたしまして、対策の資料にいたしたい、かように考えます。
  35. 松本善明

    ○松本(善)委員 低い給与公務員実情は、そういうように内職をしたりあるいは共かせぎをしたりというようなことが、かなり一般的になってきている、こういう実情でありながら、その賃金の要求は満たされていない。いまこの物価の上昇の中で、千円や二千円というようなことではどうにもならぬ、そういう不満は、各省の公務員に一ぱいになっております。ここに公務員も出席をしておると思います。その人たちもみな同じような気持ちになっておる。この時期に、総理大臣は十五万円、大臣は十万円、それから政務次官や国会議員は二万円。二万円というと、国会議員の歳費の全体から見ればわずかのように見えるかもしれません。しかし普通に働いている職員から見れば、二万円の賃上げというのはたいへんなことです。そういうように、上に立つものはうんと給与が上がる、そうして下では生活保護基準すれすれ、あるいは内職をしたり共かせぎをしたりしなければいかぬ、こういうような実情について、政務次官はどのようにお考えになりますか。
  36. 進藤一馬

    ○進藤政府委員 人おのおの立場がありまするので、そういう点を配慮して、そういう差も出ております。しかしながら、十分にその職責を果たせるようにするのが必要だと思っておりますので、そういう点につきましては、十分考えていきたい。  ただ、共かせぎをしておるから実際の生活がどうかということも、調べなければ、その内容に至らなければ、やはり何とも申し上げられませんので、そういう点もやはりよく調べて対処していきたいと考えております。
  37. 松本善明

    ○松本(善)委員 いまどきそういう認識で法務政務次官がおられるということについて、公務員の諸君が聞いたらどういう気持ちがするかということをよくお考えいただきたい。これはとんでもない、そんなことでいいのかということをみなが考えるに違いありません。一そうの努力を期待して、裁判所質問したいと思います。  昨日、私、裁判所にいろいろ質問しまして、きょうまたお聞きするということは言っておいたのですけれども、いま法務省に聞いたと同様の内職やあるいは共かせぎの実情、それから生活保護基準以下の職員給与の状態、そういうことについて調べてほしいということを、当委員会の席上でも申しましたし、それからあとで御連絡をして打ち合わせもしたわけですけれども、結果はどうでありましたか。
  38. 矢崎憲正

    矢崎最高裁判所長官代理者 昨日もこの席で御説明申し上げましたように、奥さんが内職をしているとか、いろいろそういう問題になりますと、相当プライバシーに関係いたしてまいるわけでございまして、われわれのほうで公な立場で、あなたの奥さんは内職をしているかとか、どういうような内職についているかとか、そういうような点はなかなか調べにくい立場にございますけれども、しかしながら、きのうも申し上げましたように、職員担当の係官の会同等におきましては、そういうようなことについてもそれぞれ話し合ってもおります。それからまた、御承知のように、全司法との団体交渉を持つわけでございますけれども、その場合に、全司法のほうから具体的な人について話が出ることがございます。こういう場合につきましては、その具体的なものにつきましてわれわれの関係のほうで具体的にも検討して、その給与がその職責に応じて適当かどうかというような点については、再吟味するということはいたしておるわけでございます。
  39. 松本善明

    ○松本(善)委員 昨日も言いましたし、その後裁判所といろいろ話をしている中でも話をしたのですけれども生活保護基準以下の職員がいるかどうかということは、これは数字を調べればわかることです。そんなむずかしいことではないはずです。そんな簡単なこともやっていないというのだったら、やはりこの職員給与の状態について、真剣な検討をやっておられないのじゃないかと思うわけです。同時に、内職とか共かせぎの問題は、これは確かに一人一人正確な調査をするのはいろいろむずかしい問題があるでしょう。それは昨日も申しました。しかしこれは、だからといって知らないでいいということで済ませる問題ではないはずであります。やはり組合のほうではこの程度を主張している、この程度の人がいる、裁判所としても給料の状態や生計費の状態を考えれば、大体その程度だろう、あるいはそれより幾らか少ないかもしれない。裁判所として、人事当局としては、この程度に認識をしているというような見解がなければならないはずです。そうして、この実情は困るからこういうふうにしたい、こういう具体的な実情把握、それに対する対策がなければ、その省に勤務をしている人たち給与について責任を持っているとは、とうてい言えないと思う。いまのような答弁は、なんの前進もなかったというふうに思います。  これで終わるわけではありません。これからいま一そうの努力をして、その職員がほんとうに生活が安定するように努力をされたいということを要求しまして、質問を終わりたいと思います。      ————◇—————
  40. 大坪保雄

    大坪委員長 ここで、法務行政及び検察行政に関する件、並びに人権擁護に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、これを許します。中谷鉄也君。
  41. 中谷鉄也

    ○中谷委員 法務省人権擁護局にお尋ねをいたしたいと思います。  要するに、日本本土と沖縄との一体化を進めるということが、日米会談の結果共同コミュニケで発表せられた。そういう状態の中で、政府が最初に早々と取り上げたことは何かというと、一体化措置の一番最初の措置だということで、警察力の増強ということをお取り上げになった。いわゆる沖縄の警察の通信あるいは装備等について強化しよう、こういうことが話されている。すでに琉球警察の責任者政府に参り、さらにまた本日の新聞報道によりますと、警察庁の関係の方がすでに沖縄の琉球警察を指導するために現地へ行かれた、こういうことが報道されているわけでございます。  そこで、この問題については、沖縄の受け取り方は、要するに沖縄の基地の自由使用ということを確保するための治安警察の強化なんだ、右寄りを非常に警戒しているという状態がある。ところが、これはあと警察当局にお尋ねいたしたいと思いますけれども、そうすれば、法務省は一体沖縄と本土との一体化ということについて、現在までどのような措置をとろうということを考えておられるのか。考えてみますると、沖縄という潜在主権を持ちながら違法地域、ここでは米軍人、軍属の沖縄県民に対するところの犯罪あるいは現行犯逮捕の制限、検挙率の低さ、裁判の非公開、公害問題、遺棄、ありとあらゆる人権問題が集積いたしておる。警察庁だけが本土の一体化を進めて、法務省人権擁護という観点において一体化を進める努力をしないとするならば、これはまことに私は遺憾なことだと思う。しかし、そういうことはあり得ないことだ。要するに属人主義の立場から、この機会に申し上げるまでもなしに、潜在主権があり、沖縄県民は日本人だ。そこで人権侵害が行なわれているということになれば、法務省人権擁護担当の省として本土一体化のための努力をすべきであるというふうに私は考えるけれども、この点について法務省の御見解を承りたいと思います。
  42. 堀内恒雄

    ○堀内説明員 お尋ねの沖縄の警察制度の一体化ということが新聞に出ておったようでございますが、私ども、その一体化の動きは具体的にどういう内容を持つのか、まだ承知いたしませんので明らかでありませんけれども、私ども立場人権擁護立場では、従来これまでの間そういう動き方をいたしたことはございません。今後の問題といたしまして、そういう沖縄と一体化という動きがありますにつれまして、私どものほうでも将来そういう線でいくことができるかどうか今後十分検討いたしたい、こう考えております。
  43. 中谷鉄也

    ○中谷委員 要するに、警察力の強化、沖縄の警察を本土並みにするということについては、すでに具体的に動き始めている。総理じきじきの直命で動き始めておる。人権擁護関係においては検討をするというふうなことでは、はなはだ片手落ちであるというふうに言わざるを得ないと思いますけれども、いかがでございましょうか。
  44. 堀内恒雄

    ○堀内説明員 従来法務省と沖縄との関係におきまして、沖縄の法律制度が日本法律制度とほぼ同じ制度をとられておりますので、戸籍あるいは登記とかいうような分野におきましては、たびたび法務省から指導のために沖縄に参ったことがございますけれども、人権の分野ではまだいままで一度もそういうことがございません。できますれば、そういうような動きもしてみたいと私ども考えておるわけでございます。御指摘の点で、従来の動きとしてははなはだ遺憾でありますけれども、もしも琉球政府の側からそういう人権の分野でも、人権活動につきまして日本政府側の指導というようなものを要請されましたならば、私ども十分関係機関と連絡をとりまして、それに沿いたいと思います。
  45. 中谷鉄也

    ○中谷委員 私が調査したところによりますと、要するに、ベトナム戦争のエスカレーション化に伴いまして、そのベトナム戦争が激化しているそういう曲線と、そうして沖縄における米国軍人軍属の沖縄住民に対するところの犯罪の増加率というのは、これは同じ軌跡を描いている。これが一つ。しかも、検挙率の問題について調べてみましたけれども、たとえば本土における米軍人軍属、家族によるいわゆる犯罪、そういうふうな検挙率は、昭和三十八年が発生五十五、検挙が五十五、昭和三十九年が発生が四十九、検挙が四十九、傷害については、昭和三十八年が発生百二十三、検挙百二十二というふうなことに相なっている。これは私、こういうのを調べてまいりました。あといろいろな事件がありますけれども、要するに検挙率は一〇〇%なんだ。ところが沖縄におけるところのいわゆる検挙率というものを調べてみますと、一九六五年で検挙率が六〇・九%、一九六六年で検挙率が六四%、ことに凶悪犯といわれている殺人、強盗、放火、強姦、これらの検挙率は一九六五年度で三九・七%、一九六六年で検挙率は四〇・一%、現行犯ですよ、目の前でそのような犯罪が行なわれているというふうな、そういうものについての検挙率は非常に少ない。とにかく私は非常な人権侵害が行なわれているということを言わざるを得ないと思うのです。  そこで、警察庁の方においでいただいているので、お聞きをいたしたいと思いますけれども、今度警察庁としては、沖縄の警察力を本土の警察と同様に強化するのだ、装備、通信等の面において整備するのだ、それが本土一体化だということをおっしゃって、すでに琉球警察の幹部が警察庁と話し合いをされておって、さらに十四日にはすでに警察庁の幹部の方が沖縄へ出張された、そういうことが新聞に報ぜられております。沖縄県民の立場に立って、沖縄の警察に期待するものは、私は装備とか通信の強化ということではないと思うのです。問題は布令八十七号、要するに琉球民警察官の逮捕権についての布令、一九五二年施行でございますけれども、それによりますと、現行犯の逮捕の範囲が非常に限定されている。さらにそういうふうな現行犯を逮捕いたしました場合には、布令八十七号、二、Aでございますけれども、「警察局の警官が、米国陸、海、空軍の軍人その他米国軍法に服すべき者を逮捕するときは、直ちに最寄りの米国陸、海、空軍の憲兵隊又は海軍警備隊に、逮捕状況明細報告書と共に犯人を引渡さなければならない。」ということになっている。要するに、琉球の警察には、公務外の犯罪について捜査権もなければ、まして琉球の裁判所には裁判権はない。しかも現行犯逮捕については、重要な事件だけしか逮捕することができない。たとえば交通事故等については、業務上過失致死傷等については、それが全部逮捕できることになっていないというふうな、そのような布令八十七号の持っているところの、これは米軍人軍属から人権侵害という犯罪による被害を受けたところの沖縄県民にとっては、非常な不満と、そうして裁判の結果がどうなったかわからないという、あるいは捜査権がないものだから、うやむやに事件がやみからやみへほうむられているという実態を生じている。まず布令八十七号というものをやはり撤廃ないしは修正しなければならぬ。少なくとも現行犯逮捕事件等については、琉球民警察に対して捜査権を獲得するということが本土と一体化の中においてやるべきことだ。要するに基地反対闘争が行なわれるというふうなことについての、治安態勢を強化するための警察の強化というようなことであれば、沖縄県民は迷惑することはなはだしいと私は思う。そういうふうな点について警察庁としてはお考えになっておられるかどうか、この点をお答えいただきたいと思います。
  46. 土金賢三

    土金説明員 お答え申し上げます。  警察庁といたしましては、琉球の警察を本土並みにレベルアップしなければならないということは考えておりまして、目下それにつきまして検討いたしておる次第でございます。これにつきましては、ただ単に警察だけがレベルアップするということだけでは解決し得ない問題もあると思います。全体の沖縄の水準をレベルアップすることによって、当然警察もまたレベルアップする、こういうことが基本的には考えられておるわけでございますが、当面沖縄の警察の状況がどうなっておるかということを、実は私どもも十分把握しておらないのが実情でございます。先般も沖縄の警察から、ただいま御質問にありましたように幹部の方が見えまして、いろいろと話は承ったのでありますけれども、なおこれにつきましても、ただいまお話にありましたような状況がどうなっておるかということについては、私どもも詳しくはわからない。したがいまして年内にこちらからも調査員を派遣いたしまして、この実情をこれから把握しよう、こういうことにしているような次第でございます。そういうことになりますと、警察のそういうレベルアップの問題の一番基本的な問題は、やはり私どもといたしましては警察の運営管理面というよりも、そういう管理部門、装備とか通信とか、そういった資材、捜査にいたしましても鑑識資材、そういうものがどうなっておるかということ、あるいはまた警察官の検挙率を上げるというふうな点にいたしましても、教養はどうなっておるか、こういうようなことが基本問題としてまず取り上げられなければならないものであろう。それと相まって、もちろん運営管理部門、いろいろ捜査の運営はどうなっておるか、やり方はどうなっておるかというふうな点もあろうかと思います。それについても引き続き今後も現地に行きまして調査をして、私ども沖縄の警察のレベルアップについてはどういうふうにしたらいいかという具体的な策をこれから検討する、とりあえずそういった基本的な問題についてまず調査をいたそう、こういうふうに考えておる次第でございます。
  47. 中谷鉄也

    ○中谷委員 もし検挙率の低さということが琉球警察の教養というような問題と関係があるかのごとき、あるいは捜査技術と関係があるかのごとき趣旨の御答弁であれば、私は沖縄の現地の警察官がかわいそうだと思う。沖縄の現地の警察官は、パトロールするときにピストルを持っておりませんよ。なぜピストルを持っていないか、それは、ピストルを持ってパトロールした場合に、米軍人などのほうからのトラブルが生じて、おみやげに持って帰るからピストルをくれというようなことを言われるという状態に追い込められている。だから沖縄の警察に対して一番しなければならないことは、米軍人軍属が、公務外において沖縄県民の目の前でゆうゆうと犯罪を犯している、しかし琉球の警察官はそれに対して手が出ないという、この実態を解決しないで、装備だとか通信だとか、そんなものを幾ら充実しても、それは同じ日本人である琉球警察官の、沖縄県民の基地反対闘争に対するところの治安対策としての面が強化されるだけであって、私は何ら意味がないと思う。だから、私は警察庁に、そういう実情であったならそのことは徹底的にやってみましょうという御答弁をいただきたいと思うけれども、要するに、検挙率の低さということは、米軍人軍属というものに対して琉球警察官が権限を持っていない、この点が私は一番大きな問題だと思う。逆に言うと、布令八十七号の問題だと思う。この点を明確に調査をし、そのようなことを解決することが本土一体化であり、沖縄警察が沖縄住民の人権を守ることだ。警察というのは、本来人権を守るためになければいけないと私は思う。そういう方向へ努力をするということで御答弁をされるかどうか、これが一点。  もう一点は、琉球警察の警察官が米軍人軍属をやっとの思いで、凶悪犯の場合、三人のうちの一人くらいを逮捕したといたしましても、その裁判の結果がうやむやだ。軍事基地内の軍事法廷において裁判が行なわれる。被害者も琉球警察の当局者も、新聞社さえも、それが沖縄県民に対して行なったところの犯罪の結果が、それが起訴されたのか、起訴されないのか、どんな判決を受けたというふうなことが不明だということが一番沖縄県民の不満の根源になっている。そういう問題についての、たとえば現行犯で沖縄の警察が検挙して、米空海いずれに渡すかどうかは別として、現在の法制では渡さなければいかぬが、渡した者についての裁判結果というものが警察当局に明確に連絡をされるようなことについて、早急に努力をされるべきだと思うけれども、この点についての御所見を承りたい。  同時に、人権擁護局長お尋ねをしておきますけれども裁判が公開されていない、米軍人軍属が沖縄県民に公務外において行なったところの犯罪、このような裁判が公開されていない。私がライトホールという総務局長に会って聞いたところによると、いや公開をしているのだと言うけれども、軍事基地の中にあって、法廷がどこにあるかもわからない、裁判の日時も知らされない、軍事基地に入るためにはパスポートがなければ入れないということは、これは事実上の非公開です。これが非常に沖縄県民に対して不満を来たしておる。私自身が直接聞いた話ではありませんけれども、沖縄県民は、米軍のほうはベトナム戦争をやっているのだ、沖縄県民に対するところの犯罪があっても、それに対して厳罰を加えたら米軍の士気が低下するというふうなことを言っておるということも、沖縄県民の中ではささやかれておる。これは明らかに人権侵害だと思う。こんな問題を、警察のほうが本土一体化ということで、装備、通信についてのレベルアップをする、人権擁護局のほうは検討するというようなことでは、私は、沖縄県民の立つ瀬がないと思う。人権擁護というのは、やはり人権擁護局がどんどん沖縄のほうへ行ってもらわなければならぬ。専門官を派遣することを含めて検討されるかどうか。人権擁護の専門の人を人権擁護局としては派遣すべきであると思うが、この点。さらに、国際人権年が近づいてまいりましたけれども法務省としては、この機会に沖縄の人権侵害の事実をも調査される意思があるのかどうか、これらの点についてひとつお答えをいただきたいと思います。
  48. 土金賢三

    土金説明員 お答え申し上げます。  沖縄警察の捜査権限がどうなっておるかという問題も、警察の運営問題といたしましては大きな問題でございます。これにつきましても、どうなっておるかということについて調査を行なわなければならないと思っておりますけれども、とりあえずはそういった運営部門よりも、まず管理部門、警察官の待遇の問題などももちろんあるわけでございますけれども、そういった警察官の組織、管理というか、そういうことがどうなっておるかということを今度中心に調査をいたしたい、こういうふうに考えておるわけでございます。  なお、引き渡したあとの裁判の結果がどうなっておるかわからないということでありますが、私どももこの点について、まだ遺憾ながらその実情を把握しておりませんので、それについても将来調査いたしたい、こう私は考えております。
  49. 堀内恒雄

    ○堀内説明員 お尋ねのように、沖縄におきまして裁判の公開がなされておらないというようなお話を承ったのでありますが、裁判の非公開ということは、現在では法の支配という原則に違背して、人権上はなはだ好ましくないことであることは明らかと考えられるのでありますが、それらの点の調査のために、直接に法務省人権擁護局から沖縄に行って調査することができるかどうか。できますれば、私ども直接の調査をいたしたいのでございますが、まず沖縄のそれらの方策につきましてどういう手続が要るかという点を私ども調べたのでありますが、総理府に特別地域連絡局があって、沖縄の関係も所管しております。なお、外務省の北米局が沖縄関係の所管をいたしておりますので、それらの庁と連絡をとりまして、私どものほうでも直接そういう調査の道を与えられるかどうかということを連絡をとってみたいと考えております。  それから第二の問題でありますが、来年は国際人権年でありまして、私ども、その国際人権年の行事の中で、各種の人権に関係のある実態調査をしようということを計画しておりますが、沖縄についてもそういう実態調査をする用意があるかという御質問でありますが、第一問でお答えしましたと同様の方法で、そういうことが可能かどうか、それら関係の各省と連絡をとって努力してみたいと考えております。
  50. 中谷鉄也

    ○中谷委員 政務次官にお尋ねをしたいと思いますけれども、警察庁のほうは、警察の運営、管理の面、特に装備その他の問題について調査をする、こう言っている。このことは、しかしその点だけの調査のように私は思える。これは沖縄の警察が、沖縄県民に対するところのいわゆる治安的な面に重点が置かれている、私は、そういう評価をしている人が多いということを申し上げた。しかし、いずれにしても調査すると言っておる。警察については、もう早々と十四日の日に警察庁の幹部が沖縄の警察の調査に飛んでおる。人権問題については、特連局と話をして調査できるかどうか、そういうような点について検討してみようというふうなことなのか。警察力の強化だけはできる、人権問題については、調査できるかどうかというふうな法的な手続的な問題について、窓口で局長さんのお話は迷っておられる。潜在主権があり、たとえば援護法にしろ恩給法にしろ、属人的な立場でありましょうけれども、それらについてはいろいろな法的な手続があるけれども適用されており、人権問題という一番大事な問題について、本土一体化というのは、まずその専門の所管省である法務省が現地に乗り込むこと、こまかい法律論はともかくとして、乗り込むことが本土一体化じゃないですか。これは局長さんのお話は非常に慎重な答弁だけれども、方針の問題として承りたい。
  51. 進藤一馬

    ○進藤政府委員 私どもは、本土一体化のためにいずれも早く実態調査をしたいと考えておりまして、できるだけ早く調査いたしたいと思っております。
  52. 中谷鉄也

    ○中谷委員 来年度の予算で組みますか。
  53. 進藤一馬

    ○進藤政府委員 その点については、また大臣とも相談いたしまして……。
  54. 中谷鉄也

    ○中谷委員 終わります。
  55. 大坪保雄

    大坪委員長 神近市子君。
  56. 神近市子

    ○神近委員 第一に、最高裁の方に、四十一年であったと思うのですが、最高裁で少年法を、二十歳の制限を十八歳にしたいというアイデアが出たようで、これに対しましても私どもは、家庭裁判所のほうからいろいろな陳情を受けたんです。それで、いま考えると、どうも非常に少年の栄養がよくなったせいもあるそうですけれど、早熟の関係があるので、十八歳説も必ずしも考えてみて意味のないことではないと思うのですけれど、そのときの構想は、どういう動機で十八歳説が出たのか、ちょっと御説明ができたら伺いたいと思います。
  57. 細江秀雄

    ○細江最高裁判所長官代理者 ただいまの神近委員の御質問でございますが、少年法改正に関しましては、昨年の五月に法務省から少年法改正に関する構想が発表されたわけでございます。それに対して、私どもは昨年十月、この構想に対する意見というものを事務総局から発表いたしましたが、それは、いまお尋ねの少年年齢を十八歳に引き下げるという案でございませんでして、年齢についてはやはり現行少年法を維持すべきであるという意見を発表したわけでございます。十八歳に引き下げたらどうかということは一応世間でもいわれておりますし、また法務省の昨年五月発表になられました構想の中でも、十八歳以下を少年として、それ以上を青年とする方向をお考えになっておるようでございますが、私どもとしては、二十歳を十八歳に引き下げようという考えはございません。
  58. 神近市子

    ○神近委員 私は、どちらかというと、幾らか下げたほうがこれからの少年対策にやりいいのではないかということで最高裁のお考えを聞いたんですけれど、これは別といたしまして、少年法の二十四条の二号に救護院と、三号に少年院と二つあるのですが、この救護院と少年院はどんなに違うのですか。
  59. 細江秀雄

    ○細江最高裁判所長官代理者 少年法二十四条に記されておりますのは、少年に対する保護処分の種類を定めておるわけでございます。それは一項の一号から三号までございまして、一号が保護観察、二号が救護院、養護施設、三号が少年院送致ということになっておりまして、非行を犯した少年に対しましていろいろ素質の調査等をいたしまして、その少年に見合った処分として少年院に送る、あるいは救護院あるいは養護施設に送るということになっておりますけれども、少年院は法務省の所管の施設であり、養護施設あるいは救護院というものは厚生省所管の施設でございます。そこに差異があるわけでございます。しかも、少年院は主として犯罪少年あるいは虞犯少年などを入れるわけでございますが、養護施設のほうは、むしろ十四歳未満の保護を要する少年、あるいはそういうふうな犯罪性のむしろ希薄な少年を収容する施設というふうに承知しております。
  60. 神近市子

    ○神近委員 この間フランスで十五になる少年が八つになる男の子を殺したという事件があって、これはもう少年問題を考える者には世界的にショックを与えているようですけれど、これが万一日本で起こったということを想定すれば、これは十五歳ですから、少年院ですか。
  61. 細江秀雄

    ○細江最高裁判所長官代理者 ただいま御指摘のような事例がかりに日本で行なわれたということになりますと、日本の少年法では、十六歳に満たない者に対しては検察官送致ができないという規定があるわけであります。したがいまして、十六歳未満の者でございますと、刑事処分に付されないということになりますので、家庭裁判所でいろいろ環境その他を調査いたしました上で、一番重いと申しますか、少年にとってはきびしい処分になりますが、それは少年院送致ということになるかと思います。
  62. 神近市子

    ○神近委員 いまここに少年問題白書ですか、青少年白書を総理府の青少年局から出ておりますけれど、まだこれはちょっと見るひまがなかったのですけれど、この間東北地方の調査に行ったときに、宮城県の警察本部から少年非行の調査というようなものが出ております。これは宮城県だけの問題でなくて、全国の代表的な調査ではないか、宮城県だけが特別にこういうような傾向を起こしているのでなくて、これは一例でないかというように考えるのですけれど、四十年度、四十一年度と比べてでありますけれど、四十年度が強姦は最高です。そこで四十一年にちょっと、減っているというようなことですけれど、これはどういうところに四十年と四十一年の違いが生まれてきたか。社会的な情勢を見ると、強姦が四十年度に高く、四十一年度に幾らか下がったというのは、どういうところに原因があるか。社会情勢を考えると、少年によい影響を与えるというような事態は生まれていないのにこれが減ったということは、私は赤線というか、そういうものの使用が四十一年度は多くなって、この暴力による強姦というものが減ったのじゃないかというような考えを世間一般の状態から考えて持ったのですけれど、これはどういうようにお考えになりますか。
  63. 細江秀雄

    ○細江最高裁判所長官代理者 ただいま御指摘の宮城県の統計資料というものを私、実は詳細に承知いたしておらないわけでございます。その宮城県の統計によりますと、いまの御指摘では強姦事件が四十一年度は減少しておるというお話でございましたが、私どものほうでとっております統計を見ますと、私どものは既済人員でとっておりますけれども昭和四十年度は強姦が全国で四千九百八十五件ございました。これが四十一年度は五千六件というふうになっておりまして、わずかでございますけれども、十数件増加しておるという統計になっております。この強姦事件というのは、やはり少年に非常に多いわけでございますが、これはいろいろ原因があろうかと思いますけれども、やはり何と申しましても少年というものは環境に影響を受けやすいという状況下にございますので、いわゆる成人向けの映画とかあるいは不良マスコミというものに影響されて性犯罪が少年の間に多いのでないかというふうに、私ども想像しておるわけでございます。
  64. 神近市子

    ○神近委員 きのう、どこかの雑誌社がやってきての話で、売春というものはもう公然と行なわれているじゃないか、あれは廃止したらどうだろうというような意見を持ってきたのです。私はずいぶん青少年の人たちから投書をもらうのです。いつでもその問題でからまってくるのですけれども、きのうの人には、どういうことを考えていられるか、私の返事は、これをやめたら、日本の国家の体面がちょっと落ちるでしょうというようなことで、もう現実にはあれはあってなきがごときもの、床の間に造花を飾ったようなもので、何にもこれはにおいも出さないし、水も吸わない。だけれど、そんなものでしょうかというような話をしたのです。これについては、青少年の栄養がよくなって、からだが早く成育するということ、それからもう一つ、どうしてもここで次官にも考えていただかなければならないのは、飲み食いが非常に外で盛んにあるということ、この間の調査では、年間六千億という金が飲み食いに使われている。会社が中心らしいけれども、ともかく六千億という金が使われている。私は自分で酒が飲めないから、キャバレーだの銀座あたりの飲み屋だの歩いたことが一度もないからわからないのですけれども、ともかく六千億という金が毎晩毎晩飲み食いされている。いろいろ考えると、政治家もいるかもしれないし、会社の重役とか外交員とか、そういう人たちだろうと思うのですけれど、それが青少年を非常に刺激すると私は思うのです。だから、ひったくりだのあるいは強盗だのを少年がするのですよ。私はどう考えても、日本人は現在は酒を飲み過ぎると思うんです。テレビで、「三匹の侍」なんか見ると、まるで水を飲むように酒を飲むでしょう。ほんとうに水のように酒を飲んでいる。ああいう時代が日本にあったのかしらんということを疑うのですけれども、徳川時代よりもかえっていまは水のようにお酒が飲まれているんじゃないかと想像されるのです。それで、少年にはお酒を売っていけないという規定が、少年法にちゃんときめてあるでしょう。あれは一体だれが行使するのですか、それはわかりませんか。だれがあの法律は行使しているのか。警察なのか。酒屋に行って、少年には酒を売るなと言ったって、わかりやしないです。売りたいのがやまやまであるから、私どもにはあの人の年は二十歳以上と見えましたと言えば、一々年を聞いてやれないでしょう。一体こういうあってなきがような少年法なんかあって、それで規制ができているとあなた方考えていらっしゃいますか。
  65. 細江秀雄

    ○細江最高裁判所長官代理者 ただいま御指摘のとおり、少年の非行防止の対策というものはいろいろあろうかと思いますが、私ども考えまして、まず三つに大別することができるというふうに考えておるわけでございます。  まず一つは、少年を取り巻く環境の浄化ということでなかろうかと思います。これは先ほど来御指摘のとおり、深夜喫茶とか、あるいは酒を飲む場所が多いとか、あるいはトルコぶろとか、そういうふうな歓楽街、不良なと申しますか、青少年に悪い影響を及ぼす環境というものを浄化する必要があるというふうに、まず考えるわけでございます。これらにつきましては、各都道府県なんかで青少年条例というものを設けまして、少年をその不良環境から守ろうという動きが、最近非常に活発でございます。  それから第二番目といたしましては、いわゆる少年が非行におちいる前段階において少年を補導するという活動でございます。これはいわゆる警察の補導活動という面であらわれてまいっております。これは御承知のとおり、いわゆる警察がそういうふうな歓楽街なんかで少年を補導しておりますが、その数が昨年あたりは百十万人に及ぶということを聞いております。こういうふうな前非行段階における補導措置という方法。  それから第三番には、非行におちいった少年に対して再び非行を犯さないような方法を講ずるということ、これが私ども裁判所の使命であると思っております。したがって、いまお酒の問題が出ましたが、こういうふうな飲酒を取り締まるというのは、やはり警察の段階においてなされるわけでございます。したがって、少年に対して酒を売ってはいけないという未成年者飲酒禁止法という法律がございますが、それを取り締まるのはやはり警察でございます。統計資料を見ますと、未成年者飲酒禁止法で昭和四十一年度に検挙されましたのが、千六百十九人というふうな警察のほうの統計になっております。なお、先ほど申しました前非行段階における補導措置といたしまして、深夜喫茶その他で警察官が酒を飲んでおる少年を補導するというのも、相当数あろうかと思います。これらの数字については実は正確な統計資料がございませんので、どれくらい年間あるのかわかりませんが、かなりの数に上るのでないかというふうに考えております。
  66. 神近市子

    ○神近委員 少年にお酒を飲ませないというようなことは——これはおとなも少し控えたがいいと思うのですよ。この間京都に行ってきた者がいるんですけれども、京都では飲酒時間は十一時までに限っているそうだ。それで非常に町が静かで睡眠も十分にできますというようなことを町の人が話したのですけれども、東京だって、少年の問題を扱う以上、おとなも少しお酒を控えたほうがいいと思うのですよ。オーストラリアでは、ついこの間まで夕方七時までしかお酒を飲めなかったのですよ。この間十時にしたのでたいへん反対運動が起こったようですけれども、規制すれば規制できる。ビルマだかカンボジアだかでは、仏教の許す日だけしかお酒は飲まない。私はいまの時世で、やはりおとながお酒におぼれるということ、これは非常に考えなければならないと思うのです。私はそういう意味からも、せめて飲酒の時間を十一時ぐらいに規制する。まあオーストラリアは十時までだそうですけれども、十一時までぐらいに規制するということが必要ではないか。そしてそれは日本国民の健康のためにも、精神的健康のためにもたいへんいい。お酒をお好きの方が相当いるでしょうから反対もあるかと思うのですけれども、これはみんなの共同の道徳というか、生活の規制を守るためには、時間的にそういう制約を少しやったほうがいいのではないかと考えるのですけれども、次官はどういうふうにお考えになりますか。
  67. 進藤一馬

    ○進藤政府委員 ただいま外国の例も引き出されましたが、外国でも、ニュージーランドではいままで六時まで飲酒を許しておりましたが、今度の国民投票で十時までになったということでございますが、やはりそういう意味におきましては、ある時間の制限というものは必要ではなかろうかと思います。まあ何でも度を過ぎるということがやはり環境を悪くして、また犯罪のもとにもなるというようなことも考えられるのでございます。ただ、それぞれの国民生活と申しますか、風習もありましょうし、そういう点もよく考えなければならないんじゃなかろうかと思いますが、なるべく環境をよくして、青少年のそうした犯罪の温床にならないように、これは国全体考えていかなければならないと思います。私もまたそういう点は十分に注意して、今後の青少年の正しい育成をしていかなければならぬと考えておる次第であります。
  68. 神近市子

    ○神近委員 十一時という制限、私は、これはぜひ何とかほかの委員方々にもお願いして、実現させていただきたい。いま十二時まででしょう。そして十二時までで切るかといえば、これは読んだことで自分で見たことじゃないのですけれど、あとにもちゃんと抜け穴があって、たとえば夜食の必要がある人たちにお握りや何かを売る。食事を売る。そのときに必ずまたお酒を隠れて出している。あれは、十二時以後というものは、ほんとうにおなかのすいたという人たちには折りか何かにしてしまって、十二時以後は売らないということ、お酒は十一時までということで、十二時までが夜食の必要のある人というふうなことにしなければ、私、この日本がどういう人間が育っていくかわからないと思うのです。家庭の中でも、子供たちにしつけをしようと思えば、親がそのとおりにやってみせなければ、なかなか子供は従わない。それを考えれば、おとながやりたいほうだいのことをやって、女をからかったり、お酒を浴びるように飲んだりして、少年にそれをするなと言っても、どうにもならないじゃありませんか。だから、私ども帰るのに、たった一分ですけれど、自動車をおりていく路地があります。その路地にひったくりが出やしないかと思って、こわくて、給料なんかもらったときには、ちゃんと出迎えを出させているくらい、いま都会というものはひどいのですよ。私は、このままでおくならばどういうことになるかわからないと考えるから、一つは皆さんに考えていただきたいと思ってこういう問題を出したのでございます。ともかく十五の子供が八つになる女の子を殺してお金をせびるというフランスのあり方は、あしたはわれわれのところに来ると思わなければならない。どうかそういう意味で飲酒の制限——私、自分がお酒を飲まないからあんなことを言ってと言われるかもしれないけれど、そんなに飲みたければ、自分のうちで飲めばいいじゃありませんか、持って帰って、幾らでも。六千億というような金が使われるということが、青少年の悪化あるいは犯罪化というようなものを起こしている。私はこの機会にぜひお願いしたいのは、大臣がいらっしゃらないからしようがないけれど、前の大臣がいらっしゃるときにこの問題を出したかったのですが、機会がなかったのですけれど、ぜひこの制限をしていただきたい。京都並みの制限でいいですよ。京都並みの制限で、十一時までに制限して、町の灯はそのときにきれいに消す、そして隠れた商売もさせないということにしてくだされば、京都のように夜は静かにみんなが安眠できるということを言ったそうですけれど、これはタクシーの運転手が言ったそうです。私は、ぜひ東京をそのようにやっていただきたい。これが私のこの少年問題についてのお願いであり、またぜひ実現を願いたいという希望でございます。終わります。
  69. 大坪保雄

    大坪委員長 午前の会議はこの程度にとどめ、午後二時から再開することとして、暫時休憩いたします。    午後零時二十五分休憩      ————◇—————    午後二時二十一分開議
  70. 大坪保雄

    大坪委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  法務行政及び検察行政に関する件、並びに人権擁護に関する件について調査を続行いたします。横山利秋君。
  71. 横山利秋

    ○横山委員 きのう法務大臣に、同和信用組合に関する問題について、報告を受けました事実を御説明をいたしました。きょう大臣はお見えになりませんけれども国税庁長官を含めて、政府側の同和信用組合に対する今回の査察事案について、質疑をいたしたいと思います。  まず最初に、政府委員にこういうことを考えてもらわなければなりません。それは、日本におります六十万の朝鮮人諸君についてのものの考え方からどうしても始めなければならぬと思うのであります。本委員会は、帰還協定の問題をずいぶん議論をいたしました。また、法的地位についても議論をいたしました。私どもが朝鮮人を語るについて、根底として、やはり関東大震災から支那事変、大東亜戦争を通じて、在日朝鮮人に対するわれわれ日本政府並びに日本人の歴史的な経過というものを頭の中に入れませんと、誤解も生ずる、行き違いも生ずるということであります。おそらく政府側答弁として、日本人も朝鮮人もない、法のあるところ平等に処理をするというお答えが、間々出そうな気がするわけであります。しかし、私はあえて言いますが、それではいかぬのです。特別に慎重な配慮がなければ、この問題について、いろんな問題について円滑にいかないのだ。それはわれわれの恩恵的立場であってはならず、むしろ、われわれの過去に対する反省的立場でなければいけないのだ。こういう意味で、私は、まず御答弁をなさるにあたって、そういうものの考え方を根底に置いてやらなければ日本政府行政運営は円滑にいかないということを申し上げておきたいと思うのでありますが、この点については、かつて法務大臣の田中さんが私の趣旨に同感をされたのであります。政務次官は、御経歴の示されるように、大東亜戦争下において特異な立場をおとりになった方でありますが、どうお考えでございましょうか。一般論として御意見を伺っておきたい。
  72. 進藤一馬

    ○進藤政府委員 横山委員の御質問に満足いただけるかどうかわかりませんが、私、やはり法の命ずるところによって処理していくのが当然だと考える次第でございます。それ以外に区別的な気持ち持ちません。ただ法に従っていきたい、かように思っております。
  73. 横山利秋

    ○横山委員 私が法ということと実際の運用ということを区別いたしましたのは、たとえばこういうことであります。先年問題になりましたけれども、名古屋のあるクリーニング屋さんが——気の弱い養子の人であります。税金の調査を数日連続受けまして、動転をいたしまして、そして家出をいたしまして、しばらくたってから入水自殺をいたしました。また、かつてあったことでありますけれども、やはり気の弱い養子のつくり酒屋さんでありましたが、夜の夜中まで調査を受けて、そうして裏の納屋で首つり自殺をいたしました。これは未遂に終わったわけであります。これはずっと前のことであります。それから本年は、やはり私の知っている名古屋の中川区でありますが、税務調査を受けまして、家出をいたしまして、二カ月くらいたって東北地方で死体が発見されました。こういうことを考えてみますと、法のもとで平等であっても、国民の中にはいろいろな人がおる。私は、何も朝鮮人諸君だけを別にするわけではありません。いろいろな人がおる。いろいろな人に納得と説得をもって当たるということは、きわめて重要である。いわんや、そこに人権の問題を考慮に入れるとするならば、なおさらである。そういう意味合いにおいて、日本人の中においても、法の運用についてケース・バイ・ケースにおいて運用の全きを期さなければならぬ。いわんや朝鮮人においてをや。これは歴史的な問題がある。こういう意味で申し上げたのでありますから、誤解のないように再度御答弁を願いたい。
  74. 進藤一馬

    ○進藤政府委員 法の運用にあたりまして、特にいろいろな相手の立場も十分考慮して、あたたかい気持ちでやるべきだと思う次第でございます。それに人種的な偏見とかそういうものはあるべきではない。そういう意味におきましては、人権を十分認めて、尊重する意味において法のもとに執行する。根底にはあたたかい気持ちでやるべきが当然だと考えております。
  75. 横山利秋

    ○横山委員 御趣旨が、何も税務行政ばかりではございません、あらゆる面で私は生かさなければならぬと思います。その意味では、法務省人権擁護局というものの存在をきわめて重要に私は考えておるわけであります。人権擁護という立場は、なかなかむずかしい立場で、しかも法務省における人権擁護局ということになりますと、わりあいに局限された問題を扱いがちでございます。ひとつ法務省にあるという立場でなくて、政府にあるんだ、したがって、各省のすべての問題について、常に人権擁護立場からチェックをするという気持ちがなくてはならぬと思うのであります。今回発生いたしました同和信用組合のこの査察につきましては、いろいろな角度でこの問題が問題を提起しております。国税庁長官にいまお聞きになったと思うんですが、今回どうしてこんなに混乱したのか。動あれば反動あり、おそらくきょうの大蔵委員会の答弁をもってしても、抵抗があったから力が、権力機構が動いたんだというお話だと思うのであります。抵抗があったから、なかったから——あるだろうか、ないだろうかという予測の問題が、もう一つあると私は思うのであります。朝鮮人の心情、それから朝鮮人の組織という点については、十分予測というものがなくてはならなかったのではないか。その点に私は、何も抵抗をより多く、あるいはより小さくということでなくして、少なくとも朝鮮人諸君の利益について議論をする場合に、普通の感覚でやればいいだろう、日本人の商売人と同じにやればいいだろうというような感覚でなさったうらみがあるのではないか。周到な準備、たとえば、私の申し上げたいのは、調査に行った、調査が拒否されたという事実の争いがいま起こっておるわけでありますが、私も質問する以上は、先ほど広沢委員が言いましたように、調査をほんとうに拒否したかどうか、どういう事情にあったのか、ずっと調べてみましたところ、決してその調査を拒否し続けておったという事実はないのであります。事実問題の行き違いが多少あったにいたしましても、もう十数件となく調査に協力して書類が提出され、そして説明が行なわれ、この分においてはかかる大事を惹起するようなほど調査拒否があったとは信じられないのであります。もう少し手段を尽くして調査に協力を求めるべきではなかったか。百歩譲って、もしあなたのほうが調査拒否の事実が今回あったとしましても、いま一歩調査に協力をする期待と努力を続けるべきではなかったか、こう考えるのでありますが、いかがでございましょうか。
  76. 泉美之松

    ○泉政府委員 お答えいたします。東京国税局におきまして、今回同和信用組合について査察を行なったわけでありますが、これは申し上げるまでもなく、同和信用組合の脱税の容疑ではないのでありまして、同和信用組合と取引をし、同時に同和信用組合に預金をいたしております——もちろん本人名義の預金になってない、架空名義の預金になっておるものが相当多いわけでありますが、いずれにいたしましても預金をしておりまする五名の者につきまして、東京国税局といたしましてはかねてから査察対象人物といたしまして査察を続けておったのであります。そこで、普通金融機関に対しましては、その信用を重んじまして、できるだけ令状の執行をしないで、任意調査によりまして協力を得て、その目的を達成するということにいたしておるのでございます。ただ、本件の場合におきましては、すでに先ほど横山委員からお話がございましたが、従来協力依頼をいたしまして協力を受けた事実もあるようでございますが、今回問題となっておりまする被疑者の五名の場合におきましては、協力を得られなかったのでありまして、ことに十二月五日に査察立件いたしました事案の場合におきましては、査察官が一たん差し押え領置いたしました物件を実力をもって奪還されるといったような事態を生じておるのであります。したがって、今回の信用組合に対する査察実施の際におきましても、午前中任意調査に入るように申し入れたのでありますが、その協力を得られませんので、金融機関であることを考えまして、午後三時に営業が締まりますその十分前の二時五十分に調査に着手する、こういうふうな手段を講じまして、できるだけ金融機関としての業務の遂行に支障のないように、また取引を妨害しないようにという配慮をもって行なったのでございますが、ただ、ちょっとお話がございましたが、従来の経緯から見まして抵抗があるということは予測いたしておりましたけれども、その抵抗が意外に非常に強かった。そのために警察の応援を求めざるを得ず、また警察の機動隊の応援も、一次の応援では足らず、二次の応援もいただかなければならない、こういったような事態になりまして、非常に混乱いたしたことは確かでございます。しかし、東京国税局といたしましては、相手が北朝鮮の人であり、北朝鮮の方が経営者になっておるという事実は十分承知しておったのでありまして、そういった意味で抵抗があることは考えておりまして、普通の日本人の金融機関と同じつもりでやったわけではもちろんございませんけれども、しかし、それにいたしましても、金融機関としてこのような強い抵抗があったのは初めてでございます。そのために、若干そういった場合の措置としてどぎまぎしたような事態があったことは、いなめないと思うのであります。いずれにいたしましても、このような事態の起きたことは、私どもとしては非常に残念に思っております。もっと任意調査に協力していただけますならば、こういった事態にならずに済んだであろうということをいまでも思っておるのであります。
  77. 横山利秋

    ○横山委員 長官のお認めになったように、本件は一応除外をいたしまして、それまでに至る税務当局の調査要求に対しましては、協力を願った、こういうふうに解釈をするのですが、私の手元にありますものによると、税務職員調査要求いたしましたのは、四十一年の六月から四十二年の村井産業、神田税務署に至るまで、約二十件ぐらいのもの、この期間内にずいぶん多いわけでありますね。四十一年の六月から約一年ちょっとの間に、二十件の調査要求がある。それらは詳細を朗読するのを省略いたしますけれども、これはほとんど全部といってもいいですね、全部調査官の要求どおり提出したとか、あるいは四十一年六月は、渋谷税務署へ渋谷税務職員同行の調査を行なうことを合意したが、その後連絡なしとかいうように、全部調査に協力をしておる。それはほかの金融機関でも、税務職員調査に来た、ああそうですか、それではすぐ出しますということばかりでもなくて、やはりときには、あした来てちょうだいとか、いま担当者がおりませんでということはあるのです。したがって、この同和信用組合が、今回の事件まで調査協力の実績なしとは言いがたい。問題は今回だけだ、こういうふうに判断ができるのですね。そうだとすれば、今回は一体どういうことから起こったかということが問題であります。一体今回の問題の最初の調査要求は、どういう事実から起こりましたか。調査要求をした事実だけでけっこうです。
  78. 泉美之松

    ○泉政府委員 先ほど申し上げましたように、本件行政捜査に立ち至りましたのは、五名の方——その氏名はできるだけ公表することは差し控えさしていただきたいのでありますが、五名の方の脱税容疑につきまして査察をいたしておるのでありまして、その関係でありますが、特に十二月五日に査察立件いたしました事件につきまして、先ほど申し上げましたように、一たん査察官が八名をもって捜索、差し押えいたしました物件を、四十名の会社従業員が参りましてこれを奪還されたという事件がありましたために、その取引先である同和信用組合を調査しないと、査察立件の目的でありまする証拠固めが十分できないということであります。同時に、その人は同和信用組合の理事をもいたしておりますので、その理事の席にそういった証拠物件があると認められますので、その証拠物件を提出願うということが必要でありまして、そのために任意調査を申し出したのでありますが、協力を得られませんために強制調査に踏み切ったのであります。
  79. 横山利秋

    ○横山委員 十二月五日から始まりのようでありますが、三和企業に対して東京国税局の査察官宮崎何がしという人が来て、業務多忙なためあす調査することを了解をして帰った。十二月六日に査察官宮崎氏より電話して、関連先として人種の異なる法人及び個人の調査要求、すみやかに本人の了解を取りつけられれば調査に協力する旨話しておる。それからすぐ十二月十三日に移っておるわけですね。本店営業部に午前九時三十分に来られた。調査要求するも、本店営業部に取引がないことを職責をもって了解しておるので、取引なしと告げた。自分のところには、自分が一番よく知っているから言うけれども、本店にはこの人は取引がないということを告げたということです。ところが、もうすでに、そのときにはあなたのほうはいまの同和信用組合に関係のない事件——私はよく知りませんけれども、取り返したとか取り返さぬとかいうようなことは信用組合がやったことじゃないのですから、納税者のことで起こったことについて、同和信用組合はこのように協力の態勢にある。また事実は事実として、私のところは、本店としてはあの人は取引がない、職責をもって言えるといっておるときには、もうすでにあなたのほうは、同和信用組合は協力態勢なしと判断をして、午前にそういうことを言いながら、もう着々準備態勢を整えていて、断わるに違いないということで、わあっと押しかけた、こういうように判断ができるのでありますが、同和信用組合そのものが、この三和企業でありますか、そのほかの問題のある企業者に対して調査協力の事実がなかったとか、何回行っても承知しなかったとか、こういう事実が希薄のように見えてしかたがありませんぞ。この点どうなんです。
  80. 泉美之松

    ○泉政府委員 この点につきましては、先ほど大蔵委員会でもお答え申し上げたのでありますが、同和信用組合も、軽微な点につきましては調査に協力してくれた事例があるようでございます。しかし、査察の対象にいたしますような事件につきましては、たとえば昭和四十一年の十月十二日に、これはやはり北朝鮮の人でありますが、その人の査察容疑に関しまして任意調査を申し入れまして、拒否をされております。それから昭和四十二年四月四日に、同じく北朝鮮の人について任意調査を申し入れまして、拒否されております。それから四十二年十月九日につきまして、やはり同じように拒否をされております。それから四十二年十二月五日に拒否をされております。なお、この間四十二年の七月二十七日に、東京局の部長名で任意調査に協力されたい旨の申し入れをいたしております。しかし、先ほど申し上げましたように、その後も十月九日あるいは十二月五日に任意調査に対する拒否の事実がございました。そういうことが積み重なってまいっておりました。そこで先ほど申し上げましたように、十二月五日立件いたしましたものにつきましては、その社長が同時に同和信用組合の理事もいたしておるというようなことからいたしまして、任意調査に応じられないならば強制捜査するのもやむを得ないということに立ち至ったのであります。
  81. 横山利秋

    ○横山委員 四十二年の十月、岩本欣也東京国税局調査官の要求どおり提出になっております。四十二年の十月、谷口哲義仙台国税局査察官、岡村並びに竹村査察官の要求どおり提出になっています。いまここでこの事実問題を一つ一つ議論いたしますと、時間がございません。だから私は、あるいは一つ二つの問題について違う点があるかもしれませんけれども一般論からいって、あなたがお認めになったように、わずか一年やそこらのうちで二十件ばかりのものが、私のほうが羅列いたします問題のことについては、さまであなたのほうが反論がない。そういたしますと、捜査に協力をしていなかったという事実は、一般論としては成り立たないのではないか。しかし、今回の査察は、過去のことがそうであったからということでなくて、今回の査察令状はあくまで査察令状として、この三和企業関係について調査協力がなかったからやったのでしょう。そうでなければおかしいと思うのであります。過去のことについては意見の多少の違いがあるけれども調査に協力を全然しなかったという事実は考えられない。今回の問題については、あなたのほうは先入主があって、必ず断わるに違いないだろうからという感覚が——わずか五日に来て、これは報告によりますと、あした調査してもらうことについて了解して、六日に査察官宮崎氏から電話にて言うてきた。そうして調査に協力する旨話した、こういうことになっておって、いきなり十三日に移っておるわけであります。十三日は朝、本店とは取引がないのだ、本店には取引がないのだ、職責上わかっているから、三和企業について、こう答えた。それが調査に非協力ということに一体即断をし得るものかどうか。もう少し、この間五日からのずっとの経過をたどってみますると、まだ一回、二回、そんなことをおっしゃるけれども、実は三和企業は関係があるのだということを念を押してやって、それからやってもしかるべきではないか。あなたのほうは、もうこれはここはだめだろうというわけで、十三日でありますか、朝行って穏やかに話をしておるときには、すでに万般の態勢が整っておって、警察にも連絡があって、何名くらい出動、査察官は二百名くらい動員、その晩のうちにコピーに写して云々という万般の態勢を整えておいて、朝、調査に協力してもらいたいと言ったのではないか。そのときに、いや本店はあの人とは取引がございません、私が職責上わかっているのだから、あの三和企業とは、というふうに答えたことをもって調査に非協力というのは、即断が過ぎるのではないか、こう私は判断せざるを得ないのです。
  82. 泉美之松

    ○泉政府委員 事実の問題は、客観的に調べませんと、何が真実であるかということがなかなかわかりかねることは、横山委員もよく御承知だと思います。私の受けております報告によりますと、相手方は本店のほうのことだけしか話しておらないのでありまして、確かに本店ではそういうことがあったかもしれませんが、問題は上野支店なのであります。上野支店におきまして任意調査の協力を求めましたところ、本人名義になっておる預金以外の預金は、本人の承諾がない限りは調査に応じられないというふうに拒否しました。なお、伝票を調査したいということを申し入れたのに対しましても、反対伝票の調査は拒否する、こういうような事実があったのであります。お互いに自分の有利なことだけを言い合ったのでは、真実はなかなか把握できないと思うのでございますが、私の受けておる報告によりますと、本店はともかく、上野支店においてこういう事実はあったようでございます。
  83. 横山利秋

    ○横山委員 ほんとうにあなたも私も事実を見ていないのだから、一方的な事実だけで押し切る議論は、なるべくやめたいと思います。ただ、しかし、あなたがいまおっしゃったことばの中に、本店はともかく上野はこうだということばがあるのであります。私も本店の事実だけをこれは申し上げているのですからどうかと思いますけれども、しかし、どうもおそらく協力しないであろう、だから、朝まあやってみよう。やってみてアリバイをつくっておけ。そうしてその間態勢は全部できているのだから、わっと行こうという、何か本店だけが——そういうようなことから言いますと、私はかりに百歩譲っても、本店関係については考えるべき点があったのではないかと思いますよ。  次に移ります。これは事実関係でありますから何でありますが、査察令状を示したか、示さなかったかという点について、あなたのほうの受けました報告をひとつ願いたいと思います。
  84. 泉美之松

    ○泉政府委員 これは強制調査でありますので、もちろん国税犯則取締法に基づきまして、裁判所の令状を得て執行しておるわけであります。本店におきましても、上野支店におきましても、令状を示しておるのは当然であります。ただ、その令状につきましては、調査開始にあたりまして在店いたしました従業員の一番上席と思われる者に提示したということに報告を得ておりますが、その人への氏名が、どういう氏名の方であるかということは確認しておらなかったようであります。なお、上野支店におきましては、一たん従業員に対し令状を提示いたしました後、預金係長であるとかあるいは支店長という方が三十分ないし一時間たった後にお見えになりました。そのつど査察官は令状を、その預金係長あるいは支店長にお見せいたしております。
  85. 横山利秋

    ○横山委員 私のほうの報告は、令状を十分に見せなかったといいますか、出さなかったという報告ですが、百歩譲って、あなたのほうでは、上野では確認した、こういう人に見せたという、確認をされたようでありますから、この件につきましては、もう一ぺん調べてみます。しかし、本店で相手が確認できなかったというのは、これは争いのもとになると思うのですね。相手が確認できなかったというのは、場合によっては、客観的類推をもってすれば、見せなかったのかもしれないという類推ができるわけです。まさかそういうことはないとは思うのですけれども、しかし、他方においては見ていないという主張がある。あなたのほうは見せたと言うけれども、相手が確認できなかったという言い方では、客観的に言うと、本店におけるあの喧騒の雰囲気の中で、もうあなたのほうの責任者が動転してしまって、そうして十分なる法律上の職務を遂行しなかったのではないかと言われても、これはしかたがありませんよ。なぜ見せたときには相手を確認なさいませんか。
  86. 泉美之松

    ○泉政府委員 お話しのように、裁判所令状を見せたときに相手を確認すべきだと思います。本人は、どこの席におった人であるかはわかっておるということは言っております。  なお、私言い忘れましたが、本店におきましても、三時二十五分になりまして、本店の総務部副部長に令状を提示いたしておる事、実があるようでございます。
  87. 横山利秋

    ○横山委員 本店のだれですか。
  88. 泉美之松

    ○泉政府委員 総務部副部長です。
  89. 横山利秋

    ○横山委員 しからば、総務部副部長に一ぺん確認をしてみたいと思いますが、いま、うしろからメモを出されて、急に先ほどの長官の答弁と違った答弁をなさるというのは、ちょっといかがなものかと思うのですけれどもね。急にだれか——いやな言い方をいたしますけれども、あなたのほうが急にそういう見せた人をこしらえ上げてもらっては困りますよ。これは、先ほどのあなたの答弁と違うのですから、一ぺん確認をしてみたいと思います。  それからその次に、いま、ちょうど三井警備課長がお見えになりましたが、国税犯則取締法九条によって出入りを禁ずという張り紙をして、入り口の通行が遮断をされました。あの張り紙の写真を見ますと——これはお役所が張ったのでありますが、だれが張ったわけでありますか。国税庁でありますか、警察でありますか。
  90. 泉美之松

    ○泉政府委員 私からお答え申し上げますが、これは査察官が張りました。これはお話しのように、国税犯則取締法に基づきまして行なっておるわけでございます。
  91. 横山利秋

    ○横山委員 出入り口の出入を禁ずということは、あらゆる人ですか。収税官吏も警察も通ってはならぬという意味ですか。
  92. 泉美之松

    ○泉政府委員 この出入り禁止は、一応何人によらず許可を得なくしてはその場所に出入りすることを禁ずる、こういうことになっております。しかしながら、出入り禁止の目的は、臨検、捜索または差し押えを行なうために、その目的達成の必要上行なうわけでありますから、したがって、その目的達成上必要な査察官であるとか、あるいは実力をもって妨害行為があった場合に、それを排除するために警察官の応援を求める、こういった場合に、査察官あるいは警察官の立ち入りは当然許可をいたしまして、それを許すことになるわけであります。
  93. 横山利秋

    ○横山委員 私も当然そうだと思うのですがね。それにもかかわらず、警察官がはしごをかけて二階から乱入し、窓ガラスにひびが入る、それからグラインダーがこわれるというような行為を、なぜ警察官はするものでしょうか。三井さんにお伺いしたいと思う。——どうして警察が言わないのですか。
  94. 泉美之松

    ○泉政府委員 事実関係はあまり御存じないと思いまして……。
  95. 横山利秋

    ○横山委員 事実関係——通って通れるものを、何ではしごをかけて二階から入ってブラインダーをこわす、めちゃくちゃなことをやるかということを、私は法律的に聞いておるのです。
  96. 泉美之松

    ○泉政府委員 その事実関係をまず申し上げて、あとでお答えいただきたいと思いますが、いまのお話のございましたのは、同和信用組合の上野支店において起きた事実でございます。同支店には、先ほど申し上げましたように、二時五十分に着手いたしまして、三時四分に、営業時間も終了した関係でありましょう、信用組合のほうで表のシャッターをおろしたのであります。当時、中には、査察官が入って、営業部にあります書類につきまして差し押えすべきものを整理するということで、それをまず臨検して、それから差し押えに着手しようとして入っておったわけであります。そこへ同信用組合の従業員と、それから他の第三者——これは、ちょうどそこの信用組合のうしろの建物にあります商工組合の方であると思われるのでありますが、そういう人たちが多数上野支店内のところに集まってこられまして、査察官のそうした臨検、捜索が妨げられるおそれがありましたので、警察官の出動を要請いたしました。その結果、警察官が入るのに、シャッターがおりておりますので、そのシャッターをあけて警察官が入ったわけであります。入った後、外部にまた相当数の関係のない者が集まっておりますので、それが乱入することを防ぐために、もう一度シャッターを締めたのであります。そうした上で差し押えすべき物件をそれぞれ確認をする手続をとっておったわけであります。そして、差し押えしたものを調書をつくるのは、現場が非常に混乱しておって、そこでは調書をつくるのに非常に困難であると判断いたしまして、国税局に物件を引き揚げた後、差し押え目録と領置目録をつくるということを相手方の支店長に伝えまして、そして引き揚げることにいたしたわけでありますが、ちょうどシャッターがおりておりまして、そのシャッターの電源が切られた関係か、シャッター付近を相手方に占拠されまして、再びシャッターをあけることができなくなりました。そこで、シャッターをあけるようにしばしば信用組合の当局者に言ったのでありますが、言を左右にしてあけませんので、やむを得ず実力行使によってはしごをかけて二階から警察官が入りまして、そのシャッターの付近の人たちを排除してジャッキでシャッターをあけた、そういうような事実でございます。
  97. 横山利秋

    ○横山委員 また事実問題で時間を食ってもなんでありますが、シャッターをあけるべき責任者が一体おったのか、またそれに対してほんとうにシャッターをあけろと言ってもあけなかったのか、ずいぶん議論のあるところであります。少なくとも国税犯則取締法九条で、出入を禁ずるという張り紙をした以上は、そこは収税官吏並びに警察官の占拠するところとなって、そしてその裁量のもとにゆだねられている状況にあると、私どもは判断が容易にできるわけであります。それにもかかわりませず、二階からはしごをかけてやる、たいへんな大とりものみたいなかっこうが現出をいたしました。  そこで、それに関連してついでに聞いておきたいのでありますが、こういうような事案によって納税者——これは被疑者ではないわけです、同和信用組合は第三者であります。被疑者でもそうでありますが、第三者が受けた損害ですね。金額上の問題はあるいはそうたいしたことないかもしれない。写真を見たのですが、窓ガラスがこわれてめちゃくちゃになっておるということは、一体どういうことになるのでありますか。法律の示すところによって、原状回復の責任はあなた方にあるのであります。三井さんのほうは、原状回復の責任上、これは弁償なさる法律上の義務があると思うわけであります。また、長官のほうは、これも議論を展開していくわけでありますが、領置目録をその場でつくらなかった、あるいはてんまつ書をその場で書かなかった、目ぼしいものをみんな持っていったということによって、何がとられたかという客観的な確認ができないわけです。だから、大蔵委員会でもそうですが、四千円入っておったということについてあなたと広沢委員との間に争いが起こっておる。あなたは入ってなかったと言い、広沢委員総務課長ですか、入っておったことを認めたと、こう言う。私は四千円を議論するわけじゃありません。少なくとも押収目録もあるいはてんまつ書も書かずに、目ぼしいものを全部持っていって、おれはこれだけしか持っていかないのだと言って、もしあとで調査した結果、たまたま紛失した、そういう場合における被害については、国税庁はどう考えるのか。その点を御両者から伺いたいと思います。
  98. 泉美之松

    ○泉政府委員 お話のように、シャッターをジャッキで引き上げましたためにシャッターがこわれたり、あるいは鉄の大きなとびらがございまして、施錠されておりましたので、その錠をはずしたといったようなことなどがありまして、そういった点でいろいろ物的な損害を与えているわけであります。これにつきましては、私のほうにおきまして原状に復旧するということを行なうのであります。普通の場合でございますと、査察当日、そういうことがございましたら、そのすぐ直後にそういうことを申し入れまして、わがほうから業者を差し向けまして復旧するのでありますが、たまたま本件の場合には、当日夜おそくなりまして引き揚げてまいりましたのと、それから翌日、差し押えの必要のない物件について、できるだけ早く返還するという努力をいたしましたために、十四日中にはそういう申し入れができませんでした。本日中に復旧の申し入れをいたす予定であります。  それからなお、確かに現場におきまして差し押え目録あるいは領置目録をつくるのが望ましいのであります。普通の場合そうしておるのでありますが、本件の場合におきましては、実力をもっていろいろな抵抗がありました。現場におきましてその目録を作成しておるうちに、証拠資料になるべきものが散逸するおそれがありましたために、やむを得ずそういった物件を国税局に引き上げた後に、差し押え調書あるいは領置目録を作成いたしたのであります。こういうことは非常に異例の事実でございまして、決して望ましいことではございません。したがって、そういったどさくさの際に、査察官としてはできるだけ被疑者についての取引関係のあるものだけの書類に限ろうといたしましても、なかなか現場におきましてはそう冷静に事が処理できない。取り急いでやるために、あるいは不必要な物件も相当国税局に引き上げたことがあろうかと思います。それにつきましては、できるだけ早い機会にお返しするということで、当日徹夜をいたしまして物件をより分けまして、査察のために差し押える必要のない物件は、信用組合は九時から始まりますので、午前七時に返還いたしまして、信用組合の営業に差しつかえのないように、できるだけの配慮をいたしたつもりでございます。しかし、それでもなお小切手等が紛失したといったような申し出が、十四日になりまして上野のほうの支店からございました。ただこれは、これまた事実関係でありまして、そういうどさくさのときにほんとうにそういったものを持っていかなかったのか、持ってきたのか、これは争いの起きる種になると思います。しかし、当方の差し押え目録にはそういう物件が載っておりませんので、先方にもう一ぺん十分調査してもらいたい、当方にはそういった物件は残っていないということを申し入れまして、先方において目下調査中と聞いております。いずれにいたしましても、そういうことによって損害をかけるということは本意でございませんので、それらの点につきましてはしかるべき処置をとらなければならぬと思っております。
  99. 横山利秋

    ○横山委員 ちょっと聞きますが、原状回復の法律上の責任は、ほんとうはどちらなんですか。警察ですか、国税庁なんですか。
  100. 泉美之松

    ○泉政府委員 これは、国税犯則取締法に基づきまして強制捜査をいたしましたのは、国税局でございます。警察のほうは、その国税局が臨検、捜索執行のために応援を求めた、その応援のために来ていただいたのであります。したがって、原状復旧の責任は国税局にあるものと考えております。
  101. 横山利秋

    ○横山委員 三井さんに一つお伺いしたいのですが、いまの長官のお話のように、国家権力の発動による査察事案について、混乱を防止するために警察官を派遣される。その派遣は、あくまで補助的な範囲内を出てはならぬと思うのですね。これはだれが言ったのかよくわかりませんけれども、収税官吏かあるいは警察官か知りませんけれども、文句を言った者に対して、おまえはあちらの国へ帰れという暴言を吐いた者、あるいは手錠やピストルをちらつかせて、行かなければ撃つぞということを言うた者、これは事実関係でございますから争いが起こるかもしれませんけれども、私どもに対してこもごも報告があった。話はそういうことなのであります。警察官の指導については、この種の問題についてはよほど慎重に行動してもらわなければならぬと思うのでありますが、上から、二階から入るという事態というものは、だれが命令したのでありますか。査察の責任者がおまわりさんに入ってくれと言ったんですか、それともおまわりさんが自発的に入っていったわけですか。
  102. 三井脩

    ○三井説明員 ただいまの点につきまして、詳細な事実関係を私たちまだつかんでおらないのでございますが、ただいまの国税犯則取締法の第五条によりまして、警察官が収税官吏から応援を求められた、こういうことでございますので、その応援のために参ったということでございます。その際に、あくまで今回の臨検差し押え捜索というのは警察官が行なうのではなくて、収税官吏が行なう、これに対する補助、援助、こういうことでございますから、その現場における執行のやり方そのものにつきましては、収税官吏の意図を受けて措置をする、こういろことになるべきものだと考えます。ただ、警察官が相当数出ておりますし、その意図の範囲内において、具体的、技術的にどうするのかという点につきましては、現場に指揮官がおりますので、その指揮官が収税官吏と連絡の上、最も適当な手段、方法を用いるということであると考えます。  ただいまのお尋ねの窓に入るという具体的なことについて、この窓から入ってほしい、こう言われたのか、あるいは警察官が、中に入ることを要請されましたので、入口から入ろうといたしましたけれども、シャッターがあかないというようなことで窓から入ったわけでございますが、それが自主的判断によって行なったのかどうかという、そのこまかな具体的な事実関係については承知いたしておりませんが、いずれにいたしましても、現場の状況から見まして、そのことは警察官の応援という仕事範囲内のものであるというふうに考えております。ただ、いまお話のように、現場においてはあくまで冷静に執行いたすべきものでありますから、警察官が、いかに挑発等の行為がございましても、そこは冷静に職務の執行として令状を執行していくという態度であるべきでありまして、この点につきましては、平素から十分教養、訓練をいたしておるつもりでございますが、一そうこの点につきましては十分徹底をいたしたいと考える次第でございます。
  103. 横山利秋

    ○横山委員 いろいろな言い方もあるけれども、それならおまえあっちの国に帰れという言い方というのはないのです。だれが言ったか私どもわかりませんけれども、そういう感覚こそ、私が冒頭に申しましたように、日本人の無事の人であってもそうだし、あるいは朝鮮人の諸君に対してもそうでありますが、まさに人種的偏見ですよ。こういうことは今後厳重に戒めてもらいたいと思います。  それから先ほどの長官に対する質問の続きでありますが、必要であるものと必要でないものと混乱のときであるからわからぬので、とにかく持っていくよりしようがなかったというお話であります。したがって、領置目録もあるいはてんまつ書もその場で書けなかった、こういうことであります。私は決してそれに納得はしません。しませんが、かりにその必要があった場合、百歩譲って必要があった場合には、あとでどういう問題がそれによって生ずるかわからないという判断が、同時に働かなければだめだと思うのです。手形が失われたと言われたらどうするか、現金が入っておったにかかわらずなくなったと言われたらどうするかという判断が、同時に働かなければなりません。したがいまして、もしそういう必要が百歩譲ってあったとしたならば、同時に責任者が、これを開封するときに立ち会ってもらいますから、来ていただけませんかと、任意に同行を求めるがごとき慎重な配慮があってよかったのではないか。いかに喧騒の場合とはいえ、あるいは国税庁に引き揚げてそれを開封する場合の心がまえといい、何かもう一歩、混乱のために動転をしているという感じがするわけであります。持っていくときにはボール箱にどんどん詰め込んで、持っていったらさあ徹夜だというようなことで仕事をお始めに相なったらしいけれども、そこのところは、あなた方にもう一歩責任者として検討すべき余地がなかったかどうか、いかがでございますか。
  104. 泉美之松

    ○泉政府委員 査察官といたしましては、差し押え、領置すべき物件とそうでない物件とを選別することをやりたかったと思います。しかし、それがそれだけの余裕がなくして引き揚げざるを得なかったのだと思います。しかし、それにいたしましても、その引き揚げの際に、いまお話しのように、関係者に、これから差し押えめ録をつくるから立ち会ってもらいたいということを、もう一ぺん念を押すべきだったと思います。ただ、査察官といたしましては、最初臨検捜索に入りますときに、従業員に立ち会いを求めましたところ、立ち会いを拒否されました。そこで、警察官の立ち会いのもとに臨検捜索を始めたわけであります。そこで、その臨検捜索の引き継ぎであると考えまして、その後先ほど申し上げましたように、上野支店におきましては支店長、それから千駄ケ谷の本店におきましては総務部副部長などが来ておるわけでありますから、そういう者にもう一ぺん協力を求めるほうが、もっと望ましかったと私どもは思います。ただ、それだけの精神的ゆとりもなかったのかもしれませんが、それだけの措置をとらなかったために、後日になっていまお話しのように紛糾のもとになるようなことが生じたことは、非常に遺憾に思っておるような次第であります。
  105. 横山利秋

    ○横山委員 一つ別な問題で聞いておきたいのですが、四十二年の十月に、谷口哲義という納税者の問題で、同和信用組合へ仙台国税局の人が来られだ模様であります。国税局査察官岡村利雄、竹村正和という二人の方のようです。査察官の要求通り提供した、こう書いてあります。私がこの報告を見ていささか不審に思いましたのは、仙台国税局の査察官だと思うのですが、土地管轄上、質問検査権の発動ができない人ではないか、こう思われるわけであります。それにもかかわらず、同和信用組合は、査察官の要求どおり書類を提出したと報告を受けておるわけであります。私も、税を担当しております者として、質問検査権並びに査察の権力の発動については常に慎重論を展開しておるわけでありますが、この谷口なる納税者のことで、同和信用組合で、土地管轄のない仙台国税局の人が来て、何も言わずに、私は査察官であります、そうして協力をしてもらいたいと言うことは、いかがなものであろうか。これも事実関係をよく調べてみなければ、私も最終的な判断は下せないのでありますが、もし私の想像どおりといたしますと、この人は質問検査権を発動する権限を持っていない立場にあるのではないか。もし持っていないとするならば、実は私は質問検査権はあなたのところに対してはないけれども、しかし、まあ仙台からわざわざ来ましたから、ひとつ御協力が願えないだろうか、こういう前提がなければ、これは権力の乱用になる。同和信用組合は、そういう法律的解釈を知らなかった。私の言ういろいろな前提を置いてみて、知らなかった。ただ、税務署から来た査察官であるということになれば、協力するよりしかたがないだろうということで調書を提出したということに報告を受けておるわけであります。こういう点についてどうお考えですか。
  106. 泉美之松

    ○泉政府委員 その事実関係私存じておりませんので、あるいは後に調べた上で報告を申し上げたほうがよろしいかと思いますが、一般的に申し上げますと、国税局の査察官は、その国税局の管轄区域内でしか土地管轄を持っておりません。したがって、仙台国税局の査察官でございますれば、東京国税局の管内に参りまして質問検査を行なうことは、権限がないことになります。したがって、おそらくは東京国税局局員の兼務発令があったか、それによって合法化されるか、あるいはいまお話しのように、質問検査権の発動ではなしに、まあせっかく仙台から来たんだからできれはお教えをいただきたいというようなことで、事実上の協力を求めたのではないかと思います。ただ、事実上の協力を求めるときに、いま先生のおっしゃったようなことを申し上げてはいないのではないか、というふうに思っております。
  107. 横山利秋

    ○横山委員 その点は、土地管轄の問題として将来もあり得ることでありますから、一ぺん事実関係を調べておいていただきたいと考えます。  その次は、負傷者の問題であります。私の報告を受けたところによりますと、納税者側、同和信用組合の人及び一緒に行った人も負傷者があるという。あなたのほうの報告を聞きましても、負傷者があるという。それから同時に、警察関係においても問題が生じたように思われるわけであります。本件のような事案は、類例がないと私は思うのであります。私が指摘したことをすべて長官がお認めになったわけではございませんけれども、いささか徴税行政側についても、まだまだ慎重にやれば回避し得たかもしれないという判断を、私はどうしても持つわけであります。また同時に、私どもも、陳情を受けております同和信用組合に対しましても、私、大蔵委員としての立場において、今後はこうしなさいよという希望を言うつもりであります。したがいまして、この予測せざる混乱になりました過程で惹起いたしました負傷者については、特に警察関係の問題につきましては、この際格段の考えをすべきではないかと思うわけでありますが、三井さんのほうはこの問題についてどういう態度をとっておみえになるわけでありますか。
  108. 三井脩

    ○三井説明員 負傷者の点につきましては、まだ具体的な報告に接しておりませんが、実情をよく調べた上措置をいたしたいと思います。
  109. 横山利秋

    ○横山委員 いまのところ、公務執行妨害とか、あるいは抑留とか、逮捕とか、そういうことはございませんね。
  110. 三井脩

    ○三井説明員 当日、十三日の事態につきましては、逮捕者はございません。
  111. 横山利秋

    ○横山委員 それでは特段の考えをひとつ持ってもらいたいと思います。もちろん、おそらく同和信用組合側はふんまんやる方ない点がございますから、まだまだ私の申す立場と別な立場において異議を申されることがきわめて多かろうと、私は推測をしております。しかしながら、この問題の中で最も重視すべきことは、この年末を控えて同和信用組合を通じて預金をし、あるいは手形割引をし、あるいはまた商売をやっておる人の立場であります。争いのある問題は別といたしまして、一刻も早く金融機関としての正常な業務を取り戻さなければならぬ。そうでなくては、一波が万波を呼んで、はかり知れざる手形の不渡りが生じたりあるいはまた倒産が生じたりするおそれがきわめて強いからであります。そこで、長官にその点について、いままでのことは別といたしまして、これからの問題として、まだまだ領置をされておられるものがあろうかと思う。昨日私が東京国税局の局長電話をかけて、これだけは何としても返してやりなさいと言いましたところ、一部もうお返しになっておったようなものがございます。職員の諸君もたいへんからだがえらいかもしれませんけれども、全力をあげて領置いたしましたもののうち、三和企業ほか問題のものの選別を大急ぎでやって、あとのものは即刻同和信用組合にお返しになるべきだ。私が申し上げたこれこれはどうしても必要だというものは、もちろん必要でありましょう。しかし、業務運営上、あなたのほうで不必要であっても、ぱっとあれは横山商店のものはどうだったかいな、あれはあの中に入っておったわいという問題が、おそらくあるはずであります。でありますから、あらためてお願いをするといいますか、要求をいたしたいのでありますが、これはまあ不必要だ、向こうにも不必要に違いないという判断をしないで、どうしても税の執行上必要なものだけに限って、あとは全部すみやかに返されるように要望したいのでありますが、いかがでござざますか。
  112. 泉美之松

    ○泉政府委員 先ほども申し上げましたように、東京国税局といたしましては、一たん東京国税局に引き揚げました物件のうち、翌日の営業に必要であろうと思われる物件につきましては、これを返還する措置を講じたわけでありますが、その後も信用組合側のほうの申し出によりまして、当方にとって被疑事件の関係上どうしても必要なもの以外のものにつきましては、できるだけ早く返すことにいたしております。昨日も十点余り返還いたしました。本日も十四点余り返還する予定になっております。その後につきましても、いまお話しのように、被疑事件につきましてぜひとも必要な証拠物件になるもの以外のものにつきましては、できるだけすみやかに返還する措置をとりたいと存じております。
  113. 横山利秋

    ○横山委員 全部で何点ですか。
  114. 泉美之松

    ○泉政府委員 返還いたしましたのが約三百五十点であるということは報告を受けておりますが、残っておる物件がどの程度であるか、実はまだ報告を受けておりません。さっそく調べましてまた申し上げたいと思います。
  115. 横山利秋

    ○横山委員 写真で見ましたところ、私の推算としては幾十とないボール箱、あなたの言う三百何十点というのは、台帳、元帳一冊とかなんとかということでやりますと、押収いたしましたうちのほんの一部という感じがするわけですが、まあそれは別といたしましても、とにかく全力をあげてひとつ返還をしてやってもらいたい、こう思います。  以上、時間をかけて問題点を究明しました。事実問題につきましては、ずいぶんまだ問題が残っております。大蔵委員会で長官がおっしゃったように、もう少し事実は事実として詰めなければ、必ずしも質疑応答についても意見が一致しない。対策が樹立できない点は多々ございますけれども、これを要するに私の感想といたしましては、少なくとも同和信用組合に脱税があったわけではない。ほんとうのあなたのほうの調査をしたい人は、同和信用組合以外の人であった。いわゆる反面調査である。反面調査調査査察の国家権力を発動し、しかもこれほどの、私はあえて大事と申し上げるのですが、大事を発動されるということは、これはどう考えても少し行き過ぎの点があったのではないか。それから運用面につきましても、まだまだ慎重に行なうべき余地があり、争いの余地を残してしまった。必ずしも調査査察のあり方としては適切ではないような気がする。同和信用組合には、きのうから多くの預金者、多くの中小企業の取引者が押しかけて、自分の預金はどうなる、自分の手形割引はどうなるというような心配が殺到をしておるわけであります。信用組合の信用の失墜はもとよりでありますが、取引をしております多くの中小企業者、一般の諸君に対して、多大の反響といいますか、影響あるいは実害を及ぼしたということについては、これはよく考えなければならぬと思うのであります。問題は国税庁の問題でありますが、法務省並びに警察両方面におきましても、営業権といいますか、そういうものが今日の資本主義社会においてはきわめて重要なものになっておるわけでありますので、私あえて言うのであります。本人が脱税したわけではない。その機構が脱税したわけではないんだけれども、反面調査ということでかくも営業に対する実害、信用の失墜が許さるべきであるかどうかという点にまで私は疑念を持っておるわけであります。今後ともこの調査査察の発動につきましては、格段の慎重な配慮をされるよう私は要望して、質問を終わりたいと思います。
  116. 大坪保雄

    大坪委員長 松本善明君。
  117. 松本善明

    ○松本(善)委員 国税庁長官に伺いたいんですが、このいま問題になっております同和信用組合といいますのは、在日朝鮮人が経営する金融機関であって、この人たち日本で相互扶助の協調精神に基づいて、金融問題を自主的に解決しようという正当な目的でつくられたものであり、日本関係法規と監督官庁の指導監督のもとにある合法的な金融機関であるということは、御存じですか。
  118. 泉美之松

    ○泉政府委員 お話のように、同和信用組合が、在日朝鮮人の方の手によって、その相互扶助、金融の円滑をはかるために設けられまして、東京都の監督下にあるということは、承知いたしております。
  119. 松本善明

    ○松本(善)委員 在日朝鮮人——わが国におります外国人の生活のために営業しているこういう金融機関について違法あるいは不当なことが行なわれるということは、単に国内問題だけではなく、国際的な問題になるという、きわめて重要なことだということを考えに置かれた上で答弁をしてもらいたいと思いますが、まず、こういう金融機関に、十三日午後二時五十分、白昼公然と数百名の武装警官が護衛をして、百名をこえる国税局員によって中を占拠し、帳簿書類をすべて、これは強奪といってもいいようなやり方で持っていかれた。警官隊と国税局員が数隊に分かれて、一隊は金庫を占拠し、一隊は電話機を押えて外部との連絡を遮断し、一隊は職員たちを室の片すみに押し込んで動けないようにした。職員に聞きますと、警官はピストルに手をかけて、おとなしくしないと撃つぞということを言いました。組合をやりたければおまえの国に帰ってやれ、警官がこういうようなことを言っておる。まさに銀行ギャングにひとしいような野蛮な行為である。職員に対しては、女子職員の髪の毛を引っぱったり、分厚い帳簿で頭をなぐったり、足をけるというような暴行を働いて、五名の負傷者が生じております。ここに診断書の写しがあります。一人は十日間の通院加療の要がある人、それから一週間の通院加療の要がある人、それからまたもう一人一週間、四、五日というのもある。これだけの人がけがをしております。診断書の写しを見てください。そういうような暴行を、公務の名においてやっている。上野の支店では、いまも少し話がありましたけれども、二階の窓から乱入し、ブラインドなどをこわして、机をドライバーだとかペンチでこじあける——白昼、強盗まがいのやり方です。ここに写真がありますからお見せします。この乱暴ろうぜきのやり方、ものすごいものです。見てごらんなさい。警察の方もこれを見てごらんなさい。これが公務の執行か。めちゃくちゃですよ。しかも、警察官がこわしている写真もあります。ブラインドをこわしている。人はだれもいません。警察官、見てごらんなさい。こうやってこわしておる。警察……
  120. 大坪保雄

    大坪委員長 松本君に申し上げます。自席で発言してください。
  121. 松本善明

    ○松本(善)委員 資料をお見せしようと思って……。
  122. 大坪保雄

    大坪委員長 資料は、事務員がおりますから、事務員に渡してください。
  123. 松本善明

    ○松本(善)委員 それから、警察官が通行を妨害をしている。三、四人かたまって一人にかかっている。こういうようなやり方、ここにもその写真がある。そういうやり方がなされておる。こういう実情を、国税庁長官、それから警察ではどう考えるか、お答えいただきたいと思います。
  124. 泉美之松

    ○泉政府委員 先ほど来申し上げておりますように、本件は十三日の午後二時五十分から強制捜査に踏み切ったわけでございまして、そのために相手方の実力抵抗があり、やむを得ず警官の出動を要請するというような事態に立ち至ったのは、非常に遺憾であります。普通の場合でございますと、金融機関は、みずからの脱税容疑のためではなくて、その預金者の脱税容疑のために調査をしたいというときには、任意調査に応じてくれるように、それぞれの金融機関の協会を通じて申し入れておりまして、また金融機関側もそれを承知しておるのであります。しかし、本件の場合には、任意調査に協力が得られませんので、やむを得ず強制調査に入ったわけでありますが、その強制調査の過程におきまして、実力でもって抵抗されますので、実力でもって排除するというような事態になったのでありまして、したがって、多少きついおことばがございましたようでありますが、えてしてこういう実力行使が相対抗いたします場合には混乱が起きやすいことでありまして、したがって、そういうことにならないように十分注意すべきものだと思うのであります。こういったことのために負傷されました方が、先方にもあるようであります。査察官のほうにも、三週間の通院加療を要するという診断を受けた者もあります。警察官の中にも、やはり負傷した人がおるようであります。お互いにこういったことが起きましたことは、非常に不幸なことに思っております。
  125. 三井脩

    ○三井説明員 この種の捜索等におきましては、先ほどもお答え申し上げたわけでございますが、冷静、沈着に執行するようにというのがたてまえでございます。ただ、相手方に抵抗があるというようなときには、それ相応の措置をとるということでございまして、その一断面だけを取り上げますと、非常に激しいというようなこともあろうかと思いますが、全体としては執行が円滑に行なわれるように、これに対する抵抗の抑止というのが、警察官の任務でございます。ただいまお話しになりましたシャッターをこわした、ブラインドをこわしたというようなお話の点でございますが、事実関係を詳細存じておりませんので、いかなる状況のもとにそういうようなことになったのかという点につきましては、実情を十分把握した上で考えてみたいと思っております。
  126. 松本善明

    ○松本(善)委員 おとなしくしないと撃つぞとか、組合をやりたければおまえの国に帰ってやれとか、ブラインドを自分で——この写真を見てもわかるように、だれも抵抗している状況はないですよ。そういう状態を見て、いまのような答弁。通り一ぺんの抵抗があったからやったのだというような感覚では、とても公正な職務は行なえないと思う。非常に遺憾である。厳重に反省を求めたいと思います。  先ほど国税庁長官の言ったところに関係して聞きたいのですが、いま関係のないものは、きのうもきょうも返している、これからもどんどん返すということでございましたですね。そういうことですか。
  127. 泉美之松

    ○泉政府委員 あの現場の混乱した中で物件を引き揚げてまいりましたので、その物件の中には、必ずしも今回の査察事案のためのものばかりでない資料も入っておったようでありますから、そういったものにつきましては、すでに十四日の早朝七時に、約三百点お返ししたのであります。その後もいろいろ調べてみますと、当方において証拠物件としてどうしても保管していかなくてはならないといったようなものでないものもございますので、そういったものにつきましては、コピーをとって証拠能力を保全いたしました上で返還する措置をとっておるのであります。その結果、現在では約三百五十点を返還いたしておるという状況であります。
  128. 松本善明

    ○松本(善)委員 国税庁長官、この国税犯則取締法の二条による行為というのは、憲法の三十五条の拘束を受けるもの、住居の不可侵、捜索については、「正当な理由に基いて発せられ、且つ捜索する場所及び押収する物を明示する令状がなければ、侵されない。」という条項のもとにあると考えられますか。
  129. 泉美之松

    ○泉政府委員 さようでございます。したがいまして、第二条に基づく令状におきましては、捜索をすべき場所並びにその対象となる物件が限定されておるわけであります。
  130. 松本善明

    ○松本(善)委員 その場所と物というのは、どういうものでありましたか。
  131. 泉美之松

    ○泉政府委員 これは私現物を見ておらないのでございますが、通常の場合におきましては、金融機関を調査いたしますときには、金融機関の営業場にある被疑者に関連する帳簿、書類、こういうことになるのが通常でございます。したがって、おそらくそういった令状であったろうと思います。いずれ確認いたしました上で明確にお答えいたしたいと思います。
  132. 松本善明

    ○松本(善)委員 そうすると、その被疑者に関係をしないものを、いまあなたは返していると言うが、選別することができないで持っていくということは、これは根拠のない、言うならば強奪といってもいい根拠のない持ち帰りではありませんか。
  133. 泉美之松

    ○泉政府委員 先ほど申し上げましたように、できるだけ被疑者に関連のある物件だけを領置していくべきでありますけれども、現場が非常に混乱いたしておりましたために、それだけの整理をつけるいとまがなかったということであります。したがいまして、こういったことは決して望ましいことではなく、できるだけその現場において差し押え物件の目録と領置の目録を作成するのが、望ましいわけであります。通常の場合そういたしておるのであります。ところが、本件の場合は非常に激しい実力抵抗がございましたために、やむを得ずそうした措置をとらざるを得なかったのであります。
  134. 松本善明

    ○松本(善)委員 あなたは、それは重大な責任を追及されておるのですよ。望ましいだけではない。押収するものがはっきり明示されるものでなければ持っていってはいかぬ、日本国民は、あるいは日本にいる人は、何人もかってに物を持っていかれることはないのですよ。税務署の官吏であろうと、警察官であろうと、この捜査に必要だなんていって何でも持っていくということはできないのです。いまあなたの発言したことによれば、関係のないものを持っていっている。その場では非常にたくさんであって選別することができなかった、やむを得ないのだ、望ましいけれどもできなかった、それは憲法のこの条項に、三十五条に違反をしているということになりませんか。
  135. 泉美之松

    ○泉政府委員 これは事実関係でございまして、そういった事実を御承知にならぬと、なかなか冷静な処理ができなかったことだと思います。本来ならば、そういう現場におきまして差し押え目録及び領置目録を作成して、相手方にそういった目録を交付し、そうして領置するというのが、当然のやり方であります。
  136. 松本善明

    ○松本(善)委員 犯罪で、刑事事件で捜索する場合も、押収する場合も、ちゃんとその場で目録を出すのです。それを出さなければ、先ほど同僚委員が言ったように、かってに持っていかれてもわからぬじゃないか。憲法のこの条項があるから、押収目録についてやかましいことが言われ、捜索令状を示すことにやかましいことが言われている。かってに持っていってはいかぬということにちゃんとなっている。いまあなたの答弁によれば、明らかに国税庁の職員関係のない物を持っていっておる。憲法違反をやっている。これは犯罪ですよ。職権乱用、関係のない物を持っていったら、望ましいどころのものでは決してない。この法律論を、あなたも冷静にいままでの答弁を考えてください。そういうふうに憲法にちゃんと書いてある。権限のないことをやれば、公務員のほうが職権乱用になる。あなたの見解を聞きたい。
  137. 泉美之松

    ○泉政府委員 先ほどから同じようなことを繰り返して申し上げるようでありますが、現場が非常に混乱いたしておりましたので、査察官といたしましては、これが被疑者の脱税事件に関係ある書類というふうに思って、それを国税局に持ち帰ったものと思います。ところが、よくよく調べてみると、その関連性は非常に薄いということがわかりましたので、そういったものについては差し押え目録に記載せずに返還をするという措置をとっておるわけであります。確かにそういった差し押え目録を作成しないで物件を引き上げたという点については、問題があろうかと思います。ただ、国税犯則取締法におきましては、差し押え目録あるいは領置目録は、その場で作成しなければならぬというふうになっておりません。こういう非常な際でありますので、やむを得ずそうした措置をとったものと思います。
  138. 松本善明

    ○松本(善)委員 刑事訴訟法だって、警察官の場合だって、その場でなんて書いてないですよ。国税庁長官がそういう考えであれば、税務署は査察のときに何をやるかわからぬ。憲法との解釈においてそういうふうにやっているのです。警察のやり方よりも、税務署のやり方のほうが簡単でいいなんということは、絶対にない。刑事事件のほうがもっと重大なんです。あなた方は、税務署のやり方を全体として根本的に反省をしなければならぬと思う。憲法に書かれている人権を侵害している。この問題では、あなたに厳重な反省を求めて、さらにまた機会をあらためてその結果を聞きたいと思います。  任意査察を拒否されたということを先ほど言っておったけれども、当日は午前十時ごろ、国税局員が上野支店の場合は三名来て、任意査察をする旨を通告している。その時間に支店長がいなかったので、職員が了寧に支店長が来てからにしてほしいと言って時間まで告げて話をしております。本店ではやはり十時ごろ、国税局員四名来て、三和企業と関係があるかと聞いただけで、任意査察の通告もしていない、こういう状況ですよ。こういうような状態で強制査察をやっている。先ほど、それまでの経過については同僚委員がいろいろ述べたので、繰り返しません。あなたが先ほどその答弁の中で言っておった北朝鮮の人が任意調査を拒否したという、これは同和信用組合にどういう関係があるのですか。
  139. 泉美之松

    ○泉政府委員 先ほど申し上げましたように、東京国税局で査察対象にしております北鮮の出身の方で、簡単に言いますと、在日朝鮮人の方の脱税事件につきまして、同和信用組合にその取引及び預金の現在高を調査したいと申し入れたところ、その任意調査を拒否されたということでございます。
  140. 松本善明

    ○松本(善)委員 同和信用組合がですか。——ああそうですか。それは私たちの受けている報告とは違いますけれども、ここではそのままにしましょう、押し問答してもしかたがありませんから。  それから先ほどのことに少し関係するけれども職員はその場で目録をつくって置いていけということをはっきり要求しているのです。それに対して国税局員は、持って帰ってからつくってやる、こういうことを言っている。それじゃもう常識で考えても、何を持っていかれるのかさっぱりわからぬ。法律を知らない人が考えても、問題が起こらぬようにその場でつくってくれ、これはあたりまえの話です。その後、国税局の小林一誠査察官が弁護士と一緒に話し合って、そして目録をつくっておくということを一たん約束しておきながら、結局つくらないで持っていった。この辺は、税務署の職員は何やってもいいというふうに考えているのじゃないかと思うのです。現場で問題になっているのですよ。それもわざわざ約束しているのです。それをやってない。あなたはその上官としてどう考えますか。
  141. 泉美之松

    ○泉政府委員 その点は先ほど横山委員の御質問にお答えいたしましたように、最初は差し押え目録を現場で作成するつもりで行っておるわけであります。ところが、現場でそれを作成しようとすると、相手方の抵抗が非常に強くて、物件が四散して、これを差し押え、領置する目的が達成できないというように認められましたので、差し押え目録は一たん局に引きあげて後作成するということを相手方に告げまして、その上で局に引き揚げたのでありまして、その過程におきましては、おそらくその場で作成するというようなことがあったと思います。しかし、そういうことが実行し得ないような現場の混乱が起きたのでありまして、したがって、やむなく国税局に引き揚げた。後に目録を作成するからということで引き揚げたのであります。横山委員に申し上げましたように、この引き揚げの際に、これから差し押え目録を作成するから、同和信用組合の人が立ち会ってもらいたいというように、すぐ措置すればよかったと思います。この差し押え目録ができました後には、信用組合の人が立ち会って一々物件を確認いたしました上で、これは差し押えする、これは返還するというようにきめたように聞いております。しかし、その前に、差し押え目録を作成する段階でそういうことをすべきであったのではないかというように考えております。
  142. 松本善明

    ○松本(善)委員 この日、ダンボール箱を五十個持ち込んでいる。これは初めからみんな持っていくつもりですよ。それ以外に考えられないでしょう。実際上そのとおりやっているのです。そうして、やむを得ないと言うけれども、やむを得なければ持っていくことはできないのですよ。法に基づいてしか持っていくことはできないのです。法に基づかない持ち帰り行為というのは、強奪と同じなんです。犯罪行為なんです。それはやむを得ないということによって合理化できるものでは決してないのです。あなた、何べん話をしてもまだおわかりにならぬようですけれども、もう一度、一回ゆっくり研究してごらんなさい。  法務省に聞きますけれども法務省は、人権の侵害について、これが一つの所管事項になっております。いま申しましたように、はっきりと日本憲法三十五条に定められております住居の不可侵権が侵害をされておる。こまかい事実を知らなくても、いまの国税庁長官の答弁ではっきりしております。法務省の見解を聞きたいと思います。
  143. 堀内恒雄

    ○堀内説明員 事実の関係は、伺っておりますと、いろいろ細部において食い違っておる点もあるように思います。また、ただいまお尋ねの、関係のない文書が押収されたものの中にまぎれ込んでおるということがありましても、直ちに人権侵害ありということはできないと思います。それは、おっしゃるとおり、形の上ではあたかも人権の侵害があるように見えますけれども、いろいろな詳細な事情を勘案いたしませんと、さような判断はできないだろうと思います。ちょうど刑法におきまして、職権の乱用の場合でも、違法性の阻却という考えがあります。この場合にも、われわれの人権の考え方におきましても、やはり違法性の阻却というような考え方が入るべきだと思います。各種の事情を詳細に知りませんと、さような判断はできないと思います。
  144. 松本善明

    ○松本(善)委員 結局は人権局長の考えは、違法なんだけれども、事情がそうだものだから、刑法でいうならば違法性を阻却する場合に当たるのじゃないか、聞いておったら、一応確かに違法であるというふうに考えられる、だけれども、その状況によっては、それは特別に職権乱用罪というようにするには、違法性を阻却するということになるかもしれぬ、あらためて研究したい、こういう趣旨ですか。
  145. 堀内恒雄

    ○堀内説明員 ほぼそれに近いのでありますが……。
  146. 松本善明

    ○松本(善)委員 どうですか国税庁長官、人権局長が考えても、とにかく形は違法だ。これは国税局員のために、あるいは犯罪にはならぬということを考えてやるかもしれぬという程度のものだという答弁ですよ。よく帰ってからお考えください。  この事件は、初めから周到な計画でやられたものだと私たちは考えている。第一に、この日この時間は、ちょうど千代田公会堂で南朝鮮における民主的な学生、教授の死刑に抗議する在日朝鮮人の集会があって、この同和信用組合の役員はみんなそこに出席をして、組合が手薄であるということをねらって行なわれている。そして国税局員は、本店に職員が何人いるかということを人数を確かめて、いつもは三十人くらいいるけれども、きょうは手薄だということを確かめてやっている。第二に、先ほど申しましたように、押収する物件を入れるダンボール箱を五十箱持ち込んで、あらかじめ机の位置、役職の名前が記されて、場所につくなり、す早くそれぞれの机のところに置いて、押収物件は指揮者がみんな分類をして入れていく、こういうやり方。第三に、本支店とも同じ時刻に同じように警官を連れて踏み込んだ。そうして外部と遮断をし、同じような方法でやっております。これを私たちは、一連の在日朝鮮人に対する敵視と弾圧事件、あるいは学校教育法の改悪でありますとか、在日朝鮮人の帰国問題、あるいは南朝鮮の朴政権、こういうものとだんだん密接になってくる、こういう政治的な事件と無関係とは、とうてい考えられない。むしろ新しい在日朝鮮人に対する敵視の政策が、さらに進んでいるというふうに考えざるを得ない。いままで問題になったのは、学校教育法の改悪、教育の問題それから帰国の問題、今度は在日朝鮮人の財産を奪おうとしているという政策が始められたとしか考えられません。先ほど申しましたように、在日朝鮮人が民族的偏見の、差別のきびしい日本で、相互扶助の精神でつくっているこういう組合金融機関、これを破壊しようという——しかも強制査察の中で、本店では、てめえの国に帰って組合活動をやれというような暴言を吐くとか、帳簿を全部押収して、営業ができないと言って返還を要求する職員に対しては、二、三日組合を締めておってもいいじゃないか、こういうことを言っている。金融機関が一日でも店を締めたらどうなるかということは、これは税務署の職員、国税庁の職員は知らないはずは絶対ありません。銀行は帳簿なりというふうにいわれているくらいだ。それほど帳簿というものは大事なものです。それをみんな持っていった。これは同和信用組合が、単に査察を受けたというようなものじゃないですよ。国税局に接収されたも同じです。営業用の帳簿をみんな持っていかれたんだ。私たちは、これについては過去のことを思い出すのです。いわゆる朝連が解散させられ、財産が接収されたという事件が、朝鮮戦争のころにあります。いまこの在日朝鮮人総連合会を解散させるというような口実は、どこにもない。だから、国税通則法とか国税犯則取締法の条項を使って、この在日朝鮮人の財産に大きな攻撃を与えるということになったのじゃないかと思います。法務政務次官、私はこの事件についていろいろの政治情勢その他を考えますと、そういうふうにしか見ることができないような、非常にひどいことが行なわれている。政務次官は、この事件そのものと、私のいま申しました見解について、一体どういうふうにお考えになるか、所見を伺いたいと思います。
  147. 進藤一馬

    ○進藤政府委員 いろいろものの見方もありますが、私は、いまのおことばのように、そういう意図のもとにやっているとは考えておりません。また、そういう意図で日本の国内におられる方々の、たとえ外国人であろうと、扱うべきものではないと思います。そういう考えで政府がやっておるとは考えないのであります。
  148. 松本善明

    ○松本(善)委員 そうしますと、いま申しました非常に非行といいますか、国税庁の私の数々の信じられないくらいの違法な行為があるわけなんです。これについて、法務省として人権擁護局を管轄しておるわけです。人権の侵害のないようにという立場にある法務省の政務次官として、その点についての見解を伺いたいと思います。
  149. 進藤一馬

    ○進藤政府委員 いまの同和信用組合における捜査の模様を聞きますと、いろいろ不適当なことが相当あったように思います。そういう点につきましては、私どもは十分事実を調べました上で、不当なことが今後ないようにさせたいと思う次第でございます。
  150. 松本善明

    ○松本(善)委員 質問を終わります。
  151. 泉美之松

    ○泉政府委員 ちょっと申し上げたいと思うのでございますが、先ほど松本委員からいろいろお話がございましたが、私どもといたしましては、当日在日朝鮮人の方の集会があったかどうかということは、もちろん承知いたしていることもございませんし、それからまた在日朝鮮人を敵視し、あるいは弾圧するというようなつもりは毛頭ございません。ただ、在日朝鮮人の方でも、所得税法、法人税法に違反いたしまして脱税をいたしますならば、これはやはりその脱税の摘発をせざるを得ない、こういう見地でやっておるだけでございまして、別に政治的意図あるいは政治的目的といったようなものを特に持ってやっているようなものではありませんことを、十分御了承いただきたいと思います。
  152. 松本善明

    ○松本(善)委員 その点ちょっと。国税庁長官、これが同和信用組合の犯則事件であるならば、それほどのことを言わない。ほかの人のことでこれだけのことをやっているから、それ以外には考えようがないと言っているのです。よほど厳重な反省をしてもらわなければならぬと思います。このことだけ言って、質問を終わります。
  153. 大坪保雄

    大坪委員長 本日の議事はこの程度にとどめます。  次回は、来たる十九日午前十時より理事会、午前十時三十分より委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後四時二分散会