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1967-12-20 第57回国会 衆議院 農林水産委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十二年十二月二十日(水曜日)    午前十時五十七分開議  出席委員    委員長 本名  武君    理事 高見 三郎君 理事 長谷川四郎君    理事 森田重次郎君 理事 赤路 友藏君    理事 石田 宥全君 理事 中村 時雄君       大野 市郎君    鹿野 彦吉君       小坂善太郎君    坂田 英一君       坂村 吉正君    始関 伊平君       田澤 吉郎君    田中 正巳君       西村 英一君    藤田 義光君       湊  徹郎君    伊賀 定盛君       角屋堅次郎君    兒玉 末男君       佐々栄三郎君    柴田 健治君       島口重次郎君    美濃 政市君       森  義視君    玉置 一徳君       斎藤  実君    樋上 新一君  出席政府委員         科学技術政務次         官       天野 光晴君         農林政務次官  安倍晋太郎君         農林大臣官房長 桧垣徳太郎君         農林省園芸局長 黒河内 修君         食糧庁長官   大口 駿一君         食糧庁次長   田中  勉君         水産庁長官   久宗  高君         海上保安庁長官 亀山 信郎君  委員外出席者         科学技術庁科学         審議官     高橋 正春君         大蔵省関税局企         画課長     渥美 謙二君         農林省畜産局参         事官      立川  基君         食糧庁業務第二         部長      荒勝  巌君        専  門  員 松任谷健太郎君     ――――――――――――― 十二月十五日  委員島口重次郎辞任につき、その補欠として  大原亨君が議長指名委員に選任された。 同日  委員大原亨辞任につき、その補欠として島口  重次郎君が議長指名委員に選任された。 同月二十日  委員矢尾喜三郎辞任につき、その補欠として  角屋堅次郎君が議長指名委員に選任され  た。 同日  委員角屋堅次郎辞任につき、その補欠として  矢尾喜三郎君が議長指名委員に選任され  た。     ――――――――――――― 十二月十四日  中小企業を圧迫する農協事業是正に関する請  願(佐々木秀世紹介)(第三二六号)  生鮮食料品等流通近代化資金制度樹立に関する  請願佐々木秀世紹介)(第三二七号)  同(篠田弘作紹介)(第三二八号)  同(中川一郎紹介)(第四四四号)  土地改良職員給及び事務費に対する財政措置  に関する請願瀬戸山三男紹介)(第四四二  号)  公立文教施設に対する国有林野貸付料減免に関  する請願阿部昭吾紹介)(第四四三号) 同月十八日  土地改良職員給及び事務費に対する財政措置  に関する請願渡海元三郎紹介)(第五一二  号)  同(田村元紹介)(第七五六号)  公立文教施設に対する国有林野貸付減免に関す  る請願松澤雄藏紹介)(第五一三号)  中小企業を圧迫する農協事業是正に関する請  願(松前重義紹介)(第五一四号)  直江津港植物検疫業務拡充に関する請願(井  出一太郎紹介)(第六二二号)  同(小川平二紹介)(第六二三号)  同(小澤貞孝紹介)(第六二四号)  同(吉川久衛紹介)(第六二五号)  同(中澤茂一紹介)(第六二六号)  同(羽田武嗣郎紹介)(第六二七号)  同(林百郎君紹介)(第六二八号)  同(原茂紹介)(第六二九号)  同(平等文成紹介)(第六三〇号)  同(増田甲子七君紹介)(第六三一号)  乳製品輸入差益金による酪農振興特別助成事業  に関する請願井出一太郎紹介)(第六三二  号)  同(小川平二紹介)(第六三三号)  同(小澤貞孝紹介)(第六三四号)  同(吉川久衛紹介)(第六三五号)  同(中澤茂一紹介)(第六三六号)  同(羽田武嗣郎紹介)(第六三七号)  同(原茂紹介)(第六三八号)  同(平等文成紹介)(第六三九号)  同(増田甲子七君紹介)(第六四〇号)  生鮮食料品等流通近代化資金制度樹立に関する  請願池田清志紹介)(第七五四号)  同(南條徳男紹介)(第七五五号)  鹿児島北伊佐かんがい排水事業促進に関する  請願池田清志紹介)(第七七三号)  大口園田地区農免道路建設に関する請願(  池田清志紹介)(第七七四号)  鹿児島県姶良郡の農業対策に関する請願池田  清志紹介)(第七七五号) 同月十九日  生鮮食料品等流通近代化資金制度樹立に関する  請願金子岩三紹介)(第八五〇号)  同(小泉純也君紹介)(第八五一号)  同(進藤一馬紹介)(第八五二号)  同(鈴木善幸紹介)(第八五三号)  同(田川誠一紹介)(第八五四号)  同(田中六助紹介)(第八五五号)  同(三原朝雄紹介)(第八五六号)  同(山崎巖紹介)(第八五七号)  同(神田博紹介)(第九三六号)  同(松野頼三君紹介)(第一〇九九号)  同(西岡武夫紹介)(第一一〇〇号)  同(愛知揆一君紹介)(第一三一一号)  同(荒木萬壽夫紹介)(第一三一二号)  土地改良職員給及び事務費に対する財政措置  に関する請願秋田大助紹介)(第九三七  号)  同(坊秀男紹介)(第九三八号)  同(早川崇紹介)(第一三〇八号)  同(笹山茂太郎紹介)(第一三〇九号)  同(中谷鉄也紹介)(第一三一〇号)  飯田営林署本谷製品事業所存続等に関する  請願原茂紹介)(第九三九号)  食糧管理制度堅持に関する請願谷口善太郎君  紹介)(第一二五三号)  東京営林署猿江貯木場の移転に関する請願(有  島重武君外四名紹介)(第一二五四号)  中国産食肉の輸入禁止解除に関する請願外十一  件(藏内修治紹介)(第一二五五号)  直江津港植物検疫業務拡充に関する請願(下  平正一紹介)(第一二七五号)  乳製品輸入差益金による酪農振興特別助成事業  に関する請願下平正一紹介)(第一二七六  号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 十二月十九日  愛媛県のかんきつ類干害対策に関する陳情書  (第一四六号)  農地法の一部改正等に関する陳情書  (第一八六  号)  農業共済保険事業費増額に関する陳情書外二件  (第一八七  号)  同  (第二三二号)  農業者年金制度確立に関する陳情書外十三件  (第一八八号)  同外四件  (第二三〇号)  カンショ作振興に関する陳情書  (  第一八九号)  農地法の一部改正に関する陳情書  (第一九〇号)  食料品流通近代化資金制度樹立に関する陳情書  (第一九一号)  農地制度改善促進等に関する陳情書  (第二  一〇号)  農林漁業構造改善等に関する陳情書  (第二二四号)  農業構造政策基本確立等に関する陳情書  (  第二二五号)  農地法改正反対に関する陳情書  (第二二六  号)  農林漁業近代化のための金融対策に関する陳情  書  (第二二七号)  地方生鮮食料品市場の整備に関する陳情書  (第二二八号)  大規模家畜ふん尿処理施設設置事業費国庫補助  に関する陳情書  (第二二九号)  農業委員会経費増額に関する陳情書  (第二三一号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  農林水産業振興に関する件(てん菜、でん粉、  漁業及び米穀問題)      ――――◇―――――
  2. 本名武

    本名委員長 これより会議を開きます。  農林水産業振興に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。島口重次郎君。
  3. 島口重次郎

    島口委員 本年の春以来問題になっておりまする、例の製糖会社であるフジ製糖閉鎖をいたしますることになりまして、これを栽培しておる北東北農民が、生産いたしましたてん菜処理の問題、来年度における転換作物の問題で苦悩を続けているのであります。政府にいたしましても、国内の甘味資源自給度を高め、寒冷地畑作振興対策という面から強く指導してまいりました責任から、いろいろ努力してきたことは認めるけれども、その後における状況がどうなっているかということを、まず第一番にお尋ねしたいと思います。
  4. 荒勝巌

    荒勝説明員 お答えいたします。  この春、フジ製糖が三月十日に閉鎖いたしましてから、われわれといたしましては、何とかいたしまして現地におけるフジ製糖工場設備を活用いたしまして、現地で四十二年のビート砂糖になるようにということで努力してきたのでございますが、いろいろな事情から、現地砂糖にすることば非常にむずかしくなったということが第一点。次に、七月ごろから、断念したあと何とかして北海道へこれを送りまして、できたら砂糖にということで努力いたしましたが、これも、輸送上の隘路あるいは輸送中の技術上の問題等から実現できませんで、結局、九月末に農林省といたしましては、東北三県の関係県の知事と協議いたしました結果、本年産ビートについては、政府において、いわゆる糖安法に基づきます最低生産者価格を保証しておりますトン当たり六千九百七十円を農民に支払って、そして大根所有権も、かつその処分権農民におまかせすることとして、助成金として特別交付金を、トン当たり六千九百七十円支出するということにいたしまして、大体そういう線でただいまのところ進んでおりまして、三県とも、当時約束いたしましたいろいろな数字に基づきまして、現在ある程度支出が進行しているのではなかろうか、こういうふうに理解しております。
  5. 島口重次郎

    島口委員 ただいまの御答弁によりますると、特別交付金として助成金を出して、それが徐々に進行しつつあるというお話でありまするが、トン当たり六千九百七十円、この算定基礎東北三県に配分したと思いまするが、その配分後における状況を、秋田県、岩手県、青森県、各県ごと状況を教えてもらいたいと思います。
  6. 荒勝巌

    荒勝説明員 お答えいたします。  この金額を大体三県に割り振りまして、ただいまの段階では、青森県に対しまして三億二千六百七十四万七千円、岩手県に対しまして一億五千九百七十一万八千円、秋田県に対しまして五百四万円という金額を内示いたしまして、これは三県と十分協議の上、内定して支出した次第でございます。それに基づきまして、各県ともそれぞれの県内において支出されておるやに聞いておりまして、各県とも多少でこぼこはございますが、青森県は十一月の末日におおむね生産者支払いを行なった。岩手県は近日、あるいはきょうあたりかもわかりませんが、支払いを完了するという報告を聞いております。それから秋田県は十二月の末、二十七日ごろに支払いを完了する、こういうふうにわれわれ聞いておる次第でございます。
  7. 島口重次郎

    島口委員 そこで、青森県が一番、生産数量から申し上げましても、金額から申し上げましても多いわけでございますけれども、その際に、反当どの程度の収穫があるという見通しに立ちまして積算をしたか、それをお尋ねいたします。
  8. 荒勝巌

    荒勝説明員 ことしの東北におきますビートは、最近にない天候に恵まれまして、われわれの見込んでおりました数量の最一局の限度までいったのではなかろうか。御存じのように、東北ビートを入れましてから、いわゆる実際の生産が行なわれるようになりましてからまだ五年ぐらいしかたっておりませんが、ことしの見込みは、過去のいずれの見近みの年よりも最高実績を示しました。  青森県におきましては、スタート昭和三十八年当時には、いわゆる一ヘクタール当たり二十二・一トンというふうな収量でございましたのが、三十九、四十年と徐々に増収されてまいりまして、四十年には二十八・一トン、四十一年は二十九・八トン、ことしはまあ三十トンくらいかというふうに当初判断しておったのでございますが、現在の段階では、三十三トンというふうに判断しておる次第でございます。それから岩手県も同様でございまして、三十八年には二十一トンということでスタートしたわけでございますが、二十五トン、二十八トンというふうに上昇してまいりまして、本年は、やはり最高の三十二・三九トン。それから秋田県におきましても、当初の三十八年ごろは二十一・一トンでありましたのが、ことしは三十トンで、平均いたしまして、スタートの三十八年のときには二十一・九トンぐらいでございましたのが、三十九年が二十三・三トンになり、四十年が二十八・一トンになりまして、ことしは平均で三十二・八トンでございます。ことしの天候技術の向上、両面あわせまして最高のこういう反収を示したのではなかろうか。  ただ、四十一年までの分につきましては、これは実績でございまして、いわゆる製糖工場に入りましたビートについて実測といいますか、実際に重さをはかった数字でございますが、四十二年のものにつきましては、実際に収穫して工場に運んだ数字ではございませんで、あくまで見込みといいますか、坪掘りといいますか、試験場のデータとか、そういった方法による、統計学的には一種の抽出方法をとっております関係もありまして、ほんとう収穫高といいますか、実収高というものは確定し得ない、最後まで見込みの評価がついて回るというふうな結果でございますが、いずれにいたしましてもことし最高のできであったということ自体には間違いない、こういうふうに判断いたしておる次第でございます。
  9. 島口重次郎

    島口委員 八月の段階坪掘りと申しますか、検見と申しますか、その抽出方法によりまして三十二・八トンの積算トン当たり六千九百七十円で特別交付金交付したというのでありますけれども、その後の実績状況はどういう報告になっておりますか。
  10. 荒勝巌

    荒勝説明員 その後県からいろいろ御報告をいただいておりますが、先ほど申し上げましたように、これがあくまで見込みであり、かつ平均値というか、サンプル調査的な方法でありますので、ほんとう実収高というものは最後まで確定し得ないというかつこうでございますが、ただいまの段階では、岩手秋田ともに、当初われわれ農林省と三県知事との間でいろいろ協議して、ことしの収穫高をこの辺で押えていこうという線とほとんど変わっておりませんで、おおむね岩手秋田につきましては、われわれとの話し合いの線に基づいて大体いま話がついておるというふうにわれわれは理解しておる次第でございます。  ただ、青森につきましては、現在の時点で、当初の見込みよりも相当上回ったという御報告をいただいておるわけでございますが、県としましては、その見込みの違いについては、現時点において見込みの違いだから、さしあたって県として農民には迷惑をかけないというかそういう線に従って、現在地元農家には、県費として多少持ち出されて支出しているやに聞いておりまして、青森県につきましては、われわれといたしましては、大体一ヘクタール当たり三十三トンと先ほど申し上げましたが、調査結果では、大体三十七、八トンぐらいあったというお話でございますが、本件については県のほうで処理していただきたいということで、現在話を進めている次第でございます。
  11. 島口重次郎

    島口委員 ただいまの御答弁のとおり、秋田県、岩手県では問題なく、最初の算定に基づくワク内で解決をしたということを私も聞いておりますが、青森県では、ただいまの御答弁にあるとおり三十七トン内外の収穫がありまして、金額にいたしますと五千二百三十八万一千円、収穫量にいたしまして七千五百十五トン増収になったと聞いております。  そこで、県のほうといたしましては十一月下旬にこの金を支払いをしておる、こう聞いております。  そこで、この不足金について特別交付金の追加をお願いしてもらいたいということでいろいろ折衝されておるそうでありますけれども、この交渉の過程がどうなっているか、詳細にお知らせを願いたいと思います。
  12. 荒勝巌

    荒勝説明員 先ほど多少触れたわけでございますが、ことしの九月二十八日の三県知事農林大臣との話し合いで、北東北の四十二年産生産量をおおむね六万五千ないし七万一千トンというふうに見込んで、そうしてトン当たり六千九百七十円で計算しますと、約四億五千万ないし五億円前後を県に対して補助します。こういう話し合いが行なわれて、三県知事ともこれについて御了承といいますか、やむを得ない旨御返事をいただいたわけでございますが、われわれといたしましては六万五千と七万一千トン、この幅の間に大体おさまるというふうに当初思いながらも、万が一ということも予定いたしまして、この六万五千ないし七万一千トンということについて、最高額の七万一千トンをとりまして補助金金額を計上したようなかっこうになっておりまして、現在の時点で、この七万一千トンという全体としての数字が、われわれのとったこの措置が、そんなに間違っていなかった。しかも、昨年までの最高額といたしましての青森実績は、約二十二トンから始まりまして二十九トンというのが過去における最高限度でありまして、それがかりに一割多くても三十二トンくらいだったのが、最高の三十三トンをとった、さらに上回ったということで、大体この線でおさまるのではないかというふうに理解しておりますし、岩手秋田とも、大体われわれの判断とあまり違わない範囲内でおさまりました。北東北における地形のあり方、あるいは現在におけるあそこの種子の実態、あるいは技術水準等からいたしまして、おおむねこの線におさめていただきたいということで、ただいまも実行している次第でございます。
  13. 島口重次郎

    島口委員 部長答弁を理解いたしまするに、どうも論理的な矛盾があるのではないかと思います。気候や技術の面から申しますと、岩手県、秋田県がこれでおさまりましたから青森県もおさまるであろう、おさまらぬというのは、何か青森のほうでは不正なことでもやっているのではないかという説明のしかたにもとれるのであります。  いずれにいたしましても、生産数量オーバーをいたしましたときにどうするかということの問題点がどうなっているのか、この点明確にしてもらいたいと思います。
  14. 荒勝巌

    荒勝説明員 ただいま私の申し上げたことが、ちょっと誤解されてお聞き取りになったように思いますので、あらためて答弁させていただきますが、決して青森県のやった措置をわれわれが間違っているという判断をしているのではございませんで、先ほど申し上げましたように、本件実収高最後まで、永久につかめない数字でございまして、最後まで坪掘りによる、あるいはサンプル調査方法による見込み収穫でございまして、正直なところ青森岩手秋田、三県ともまだ相当量大根が土中、いわゆる畑の中に埋もれたままで、来年の春にえさ用に回すべく農家においては置いておられる方が相当あるやに聞いておりまして、最後までほんとう実収高はわからないのだということを申し上げたわけでございます。  それで、その実収高がわからないにしても、大体従来の実績から、青森岩手秋田には三県それぞれ地勢上の関係もあるかと思いますが、おのずから序列というものがございまして、その県内平均反収には、各県とも相当ぱらつきがありながらも、それぞれおおむね順当な平均反収の順番がございまして、青森につきましても、岩手に対しましても、ことし、われわれはどうかと思ったのでございますが、青森最高の三十三トンの見込み岩手につきましては三十二・三九トンの見込み秋田は少し下回った三十トンを見込みましたところ、岩手秋田の二県につきましては、−おおむねおさまったということを申し上げておるわけでございます。青森につきましては、われわれの見込みましたもの、しかもこれはわれわれだけの見込みでなくて、県と十月末ごろに十分御談の上見込んだ数字でございます。  したがいまして、先ほど申し上げましたように、われわれとしては七万一千トンという最高のトン数を想定して実行いたしております関係もありまして、この辺で御了承願えるものと、こういうふうに判断している次第でございます。
  15. 島口重次郎

    島口委員 どうも私には納得がいかぬのであります。一トン当たり六千九百七十円という単価を出している限りは、収穫予想オーバーをいたしますと、当然それ以上の不足金が出てくるのでありますから、これに対する対策がなければならないと思う。最高生産予想で見たから、それ以上であっても農林省のほうでは見ないのだ、これは交付金交付いたすワク外であるというような考え方は、どうも納得いかぬのであります。そうだとするならば、全体でこれだけだ、こう総ワクをきめて、総ワクワク内で操作をしなさいというならあなたの話の筋は通るけれども、一トン当たり六千九百七十円というものを出している限り、実際の収穫が多ければ、そのオーバーした点についてどうかするかという問題が、当然出てくると思います。  特に、農林大臣はこの委員会の席上におきまして、政府が強力に指導いたしましてビートの栽培をやらしたのであるから、農民大衆には御迷惑をかけない、こう言っているのであります。大臣の声を聞きまして、それに従いまして、青森県では、一部の農民支払いをいたし、一部の者には支払いをしないということができないから、大臣答弁の線に従って支払ったものだと私は理解するのであります。したがいまして、大臣が、フジ製糖閉鎖をいたしたことによりまして決して農民大衆に御迷惑をかけないと言ったことは、やはり生産実績トン当たり幾らというものを出してくるのが当然の措置だと考えますが、その点どう考えておられるか、もう一度お答えを願いたいと思います。
  16. 大口駿一

    大口政府委員 交付金交付状況なりいままでの経緯につきましては、ただいままで第二部長がお答えいたしたとおりでございますが、そもそもフジ製糖が突如工場閉鎖いたしましたことは非常に不幸なことでございまして、農林大臣が国会で答弁申しましたように、農民に迷惑をかけないということを主眼として今日まで私どもやってまいったことは、そのとおりでございます。  ただ、不幸にしてフジ製糖そのもの閉鎖をし、また、その後地元のあらゆる方の御努力にもかかわらず、フジ製糖設備を活用するということもできなくなったということから、ビート砂糖原料として使用することができないという事態に立ちまして、できるだけこの資源を活用しようという見地でいろいろ研究いたしました結果、一部についてはアルコール原料等に活用いたしますが、あとはやむを得ず飼料等に充当せざるを得ないという不幸な事態になりまして、農民が従来当然期待をしてしかるべき最低生産者価格相当分について、おおむね生産量に見合った数字補助金で出すという、言うなればいままでの補助金あり方からいたしますと、非常に思い切った措置を講じたつもりでございます。  ただ、その計算をいたします際に、もしビート原料でありますれば、農民が畑からこれを掘り起こして集荷場所まで運びまして、ほんとう砂糖原料になる部分を厳密に計量いたしました上で、初めて正確なる生産量というものをつかむべき性格のものでございますが、このビートを今回利用する方法といたしましては、掘り起こした上でアルコール原料に使うものもございますが、多くのものは畑にそのまま残した上で明年飼料に充当するということをやる関係上、最終的に全体の生産量を正確につかむ機会はあり得ないということを、先ほどから部長から申し上げておるわけでございまして、過去の趨勢その他から見て、非常に高い反収というものを基礎にして、この範囲でやっていただくということで、事務的にもまた政治的にも何べんも御折衝した結果、最終的に、三県知事の代表ということで青森県知事農林大臣とが文書によって御相談をした上で、一番高い見込み数量で出してあるわけでございます。  したがいまして、ただいま先生、生産量に応じてというおことばを使っておられる、それにことばを返すつもりは毛頭ございませんが、私どもが生産量に応じてトン当たり幾らという計算をするための生産量というものは、当然畑から掘り起こして全部計算するということをやって初めて生産量ということばが使えるわけでございますけれども、今回の措置は、あくまで生産見込み量という域を出ておらないことは、私どもの計算もそうでございますし、また、青森県から言ってこられておるものも生産見込み量という問題でございますから、私ども常に、根本的には農民に迷惑をかけないということで今日までまいり、最後の問題がそこに集約をされておるかのごとくでございますが、私どもとしましては、今回の補助金交付するという経緯なりまた補助金の内容等から見まして、現在交付いたしておる数量でまかなっていただきたいという気持ちでおることを、先ほど来るる申し上げているわけでございます。トン当たり幾らというものは、計算の基礎には使っておりますが、全体で何トンというものは、あくまで生産見込み量ということで計算せざるを得なかったという経緯を御理解の上、御了承いただきたいと思います。
  17. 島口重次郎

    島口委員 確かにフジ製糖で買い上げをいたします際は、集荷をして工場に持ち運ぶ、これをはかりまして引き取るという方法だろうと思います。ところが、先ほどもお話がありましたように、坪当たり収穫予定を立てるのだとするならば、農林省のほうといたしましても、初めからそういう方式でやるのだということをなぜ県のほうに明確にお伝えしないのかという問題点。  それから、これは十一月十日、米内山委員に対する局長の答弁、農林水産委員会議録第六号の六ページの上段、一番初めのほうでありますが、「万が一オーバーした場合はどうかということにつきましては、今後各県ともさらに協議するということは、各県と約束しておるような次第でございます。」と答弁している。もしそういうような打ち切りであるとするならば、そういう答弁をする必要がないと思う。いかにすぐれた技術をもちましても、あるいは神さまでありましても、予想外ということがある。あるから万が一オーバーいたしました際には、各県とも協議をするということの答弁が出ていると思う。ただいまの食糧庁長官のような答弁であるとするならば、たとえ多かろうと少なかろうと問題はない、これで打ち切りだということにならなければならない。協議をする必要がないということになってくる。こういう点はどうなんですか。
  18. 荒勝巌

    荒勝説明員 ただいま御質問のありました、各県と協議しますと言ったのは私だと思います。そのときにおきましても、いわゆる県とは十分協議をするということで、それぞれ三県とも県内のいろいろな御事情もあって、多少数量的にもあるいは収穫面積につきましても、その後何べんか調べておりますうちに、いろいろでこぼこがありまして、当初われわれが予算に想定しましたような収穫面積なり反収なりと違ってきたわけでございますが、各県の御事情をよく聞きながら、われわれとしては最終的に予備費を計上し、かつ各県にそれぞれの配分をしておるということについてのそういうことを、協議というふうに申し上げたわけでございまして、青森県につきましても、けんもほろろに青森県の話も全然聞かなかったというわけではございませんで、十分にいろいろと協議をして補助金の内示を決定した、こういういきさつでございます。
  19. 島口重次郎

    島口委員 長官の答弁にいたしましても、ただいまの部長答弁にいたしましても、私に対する答弁にはなっておらないと思う。これは、あなたのほうと県のほうとおそらく収穫予想というものを協議の上で決定したと思いますけれども、万が一それをオーバーいたしました場合には、各県とも相談するということです。これはトン数にいたしましても、金額にいたしましても、決定いたします前に協議するということではない。皆さんの予想と収穫されました実体との関係を指摘しているものであります。こういう点どうなんですか。長官もう一度答弁してください。
  20. 大口駿一

    大口政府委員 先ほど私が申し上げましたことを、もう一回繰り返すことになるかと思いますが、これはあまり理屈を申し上げるのもはなはだ恐縮でございますが、先ほど私が申し上げましたことは、県と相当何べんも協議をいたしました上で、生産見込み量というものをきめたわけでございます。その際においても、当時として考えられる最高数量というものを基礎にして一応はじいたわけでございますが、もしかりに実際の砂糖原料として生産すると同じような形で全部計量するという手続が予想される場合でありますれば、最終計量数量ということにあるいはなったかと思いますが、今回のビートの利用方法にかんがみまして、そういうことではないわけでございますから、私どもとしては十分協議をした上で、知事と大臣との間で最終的にお話し合いがまとまった数字というものを基礎に、早目に補助金を、予備費を計上して交付するということをすべきであるという判断でやったわけでございますので、私どもがやりましたことが、先生のせっかくの御指摘ではございますけれども、最終の生産量と食い違っておるというふうには、私は考えにくいのではないかというふうに申しておるのでございます。
  21. 島口重次郎

    島口委員 それでは農林大臣と各県の知事との契約書なり交換公文、文書があるのですか。部長さん、ここにあなたの答弁で、「先日の閣議で、大体四億九千五百万円前後と閣議決定をしておりまして、各県に現在その内情を知らせておるわけでありますが、もし万が一オーバーした場合はどうかということにつきましては、今後各県ともさらに協議するということは、各県と約束しておるような次第でございます。」と、こうなっておるのです。これはもし事務当局で答弁できなければ、政務次官のほうからお答えを願います。
  22. 安倍晋太郎

    ○安倍政府委員 私、まだ次官に就任したばかりで、十分実態を把握しておりませんので、満足のいく御答弁ができないのでありますが、その点お許し願いたいと思います。  ただいま事務当局からいろいろ御説明をいたしましたように、この補助金が決定されるにあたりましては、三県の知事と農林省大臣はじめ十分協議をいたしまして、かつ三県の実情、作柄あるいは生育の状況等も十分把握をいたしまして、その結果算定された数字であると思っております。
  23. 島口重次郎

    島口委員 大臣と知事との取りきめがどうかということの問題が一点、それから、この答弁との食い違いはどうなんだということを聞いているのです。
  24. 大口駿一

    大口政府委員 お答えいたします。  ただいまの会議録の部長が申しました答弁との関係は、私はこのように理解をいたしております。万一生産量オーバーした場合というふうに申しておる点は、生産量ということばであらわす数量は、私は今回の措置ではつかみ得ないと思います。そういうことをいま申しておる時期ではございませんけれども、御相談をいたしますということは申しておると思いますが、オーバーした場合には、必ずそのオーバーしたように善処してお払いをしますということまで、答弁はしておらないと私は信じております。
  25. 島口重次郎

    島口委員 それは詭弁じゃないか。それで打ち切るんだというなら、その後何を相談する必要があるのですか。打ち切るんだというなら、その後における相談というのは何を意味するのですか。もう一回答弁してください。
  26. 大口駿一

    大口政府委員 あまりへ理屈ととられるといけませんので、申し上げにくいわけでありますが、今回の措置は、国と県と力を合わせて、農民に迷惑をかけないような措置を考えていくというのが基本であろうと私は考えております。したがいまして、いま御指摘になっている問題が、すべて私のほうだけで措置をし得ない場合には、相談の余地がないというふうには私は考えておらないのであります。
  27. 島口重次郎

    島口委員 相談するというのは、一体何を相談するのかね。長官、もう一回答弁をしてください。
  28. 大口駿一

    大口政府委員 国が補助金の追加という内容についての相談ばかりではないと思います。県としてはどういう措置を講ずるかとか、いろいろの御意見を申されれば、私のほうもその御意見を伺うということは、もちろん相談をする範囲内だと思っておりますが、ただ、補助金を追加交付するという問題につきましては、先ほど来るるお答えいたしている考え方で、私どもは現時点ではおるわけでありますので、先ほど来お答えいたしたとおりでございます。
  29. 島口重次郎

    島口委員 そういうような明確な契約が、大臣と知事との間に文書か何かあるのか。ここの答弁は、はっきり金額の問題で話し合っているじゃないですか。しからば、これにかわる何かの相談というのは、具体的に何をどう相談されてやるのかという、あなた方の構想を話してみてください。
  30. 大口駿一

    大口政府委員 県との間の御相談と申しますのは、もとの補助金交付する過程におきましても、国が予備費を計上して交付する部分はどう、あるいは県がどういう範囲措置を講ずるというようなことを十分御相談をした上で、最終的な結論に到達をいたした経緯がございます。したがいまして、その後においてまだ御相談する余地が残っておるということであれば、もちろん御相談をいたしますが、その御相談というものは、私どもは、県でいろいろ御努力を願う部分はどうであるかとか、あるいは国としてはどういうことをするかというような問題は、すべて県とわれわれと従来も御相談をしてまいったことでございますし、また、今後も御相談をする余地があるということで、当時部長がお答えしたものと私は理解をいたしておりますので、先ほどのような御答弁を申し上げたような次第でございまして、私は、県が農民に対して経済連その他と力を合わせていろいろな措置を講じておられる問題は、すべて私どもと県とで、従来もまた今後も御相談をしていくべき性格のものであるというふうに考えておるのでございます。
  31. 島口重次郎

    島口委員 あなたの答弁を聞いていると、まだ特別交付金交付しない前の話じゃないか。交付するまでは、あなたのおっしゃるとおり、県とも収穫の予想を検討する、あるいは金をどうする、あるいは収穫されましたてん菜をどう処理するということだったが、これはもう閣議決定後の事態での答弁なんですよ。しかも、長官がいまおっしゃるように、てん菜糖を合同酒精のほうに販売いたすことも決定をしたあとの段階なのです。前の段階ではないのです。前の段階なら、あなたの答弁がなるほどと思われる節もあるけれども、この時点ではもう決定済みの段階なのだ。しかもこの答弁では、はっきり金額に対する答弁をしている。だから、もしあなたのほうで交付金としてはこれ以上交付ができないとするならば、そのオーバーをいたしたもの、生産数量オーバーをいたしたのでありますから、それに対するどういう対策で補充するとか、補足するというような具体性があるならばわかるけれども、それがないといたしまするならば、オーバーをいたしました際の相談というのは一体何を意味するのだ。具体的に言ってください、抽象論でなくて。
  32. 大口駿一

    大口政府委員 オーバーをした分というものがもしありました場合に、その分については県費で持っていただくというようなことも、当時は御相談の内容となっておったのでございます。
  33. 島口重次郎

    島口委員 県費でその支払いをするというなら、何もあなたのほうで相談じゃないではないか。あなたのほうでも幾らか払うということがあるから相談じゃないかね。あなたのほうが一銭も払わない、払う気がないで、県費で支払わせておくというのは、これは相談の部に入らぬと思うがどうなんだね。
  34. 大口駿一

    大口政府委員 補助金金額を決定いたします過程におきましても、国が持つべき部分と県が持つべき部分との御相談はあったのでございますが、ただいま御指摘になっております問題は、補助金金額が決定したあとの問題をさしておられますが、これはかねての御相談どおり、もし県御当局として農民に迷惑をかけないということでおやりになるということであれば、私どもとしては、県費でそれをお持ちになるということしか方法がないではないかというふうに、実は当時考えておったのでございまして、それらのお互いの意見の交換は、私は十分御相談に乗っておるということに入ると思っております。  なお、今後の転換対策その他につきましても、まだ今後御相談をする問題が一ぱい残っておりますので、そういう問題も含めて、今後も御相談に乗っていくということでございますから、私は、先ほど来申しておりますように、国としての見得る限度はこういうことだということをるる御説明をいたしましたことも、補助金の決定したあとの御相談の範囲に入っておるというふうに理解をして、先ほど来お答えをしておるつもりでございます。
  35. 島口重次郎

    島口委員 先ほどから何回も私が要請をいたしておりまするが、ただいまのあなたの解釈のようなものは、大臣と知事との交換文書があるのですか。あなたの主観的な解釈ですか。その一つの相談あるいは協議と称するものの理解のしかたが、非常に大きな距離があるわけであります。その距離があるとするならば、大臣と知事との間に契約書なり交換文書があるならば、あなたの解釈のしかたも理解できないわけではないけれども、あるかないかをはっきりしてもらいたいと思います。
  36. 大口駿一

    大口政府委員 最終的に知事と大臣とで今回の措置を講じます際のお話し合いの際には、国としてめんどうを見てもらう部分はこの部分であるというふうなお話し合いの含みで御相談がまとまったというふうに、私どもはその場にて理解をいたしておりますので、先ほどからお答えをしているようなことを申し上げておるので、御了承いただきたいと思います。
  37. 島口重次郎

    島口委員 それでは文書がないというのか。はっきりしなさいよ。
  38. 大口駿一

    大口政府委員 これを越える部分については、県で負担をするというような形での文書はございません。
  39. 島口重次郎

    島口委員 なければ、オーバーをいたしました際には御相談に応ずるというのだから、おそらく青森県の知事といたしましても、農林省のほうへあとを見てくれという要請があるはずなんだ。要請がある限りは相談しなければならぬじゃないかね。あなたの理解している解釈と、青森県知事の理解している解釈には大きな開きがあると思うのだが、それほどあなたのほうで明確にしているなら、なぜそのあとで相談というようなことを言うのですか。
  40. 大口駿一

    大口政府委員 先ほど来同じことを申し上げて恐縮でございますが、知事が大臣とお話し合いのときに、具体的にどのようなことを申されたかとか、あるいはその後の御相談で県知事はどういうふうに申されておるかということを、あまりこまかく、御相談の内容までここで全部申し上げることもいかがかと思いますから、私どもとしては、基本的な考え方を先ほどから繰り返しお答えをしておる点を御了承いただきたいと思います。
  41. 島口重次郎

    島口委員 どうもこの問題は納得できないような答弁だから、いずれ私も関係者の方から資料を求めまして、そのあとであらためて再質問いたしますから、保留してもらいたいと思います。  ここでだいぶ時間をとりましたので、中間を省略いたしまして、あと一つだけお尋ねをいたします。  なたねかすの飼料の問題ですが、えさが年々少なくなりまして輸入量が多くなっているわけでありますが、このなたねかすの飼料につきましてはどういうようなお考え、方針でおられるか。これは畜産局長のほうへ御質問申し上げます。
  42. 立川基

    ○立川説明員 畜産局の参事官でございますが、ただいまの先生の御質問についてお答えいたします。  なたねの油かすにつきましては、先生御存じのように、飼料の品質改善に関する法律によりまして、家畜なり家禽なりの栄養に供されます。農林大臣の指定する飼料の一つということで指定しておりますので、ほかの大豆かすなりその他と同じような形で、一つの指定された飼料として、制度としては平等な形で適用されるというふうに考えております。
  43. 島口重次郎

    島口委員 えさの登録にはなっているようですけれども、配合飼料になっておらないようなことでありますが、この点はどういう関係からそういうことであるか、少し詳しく説明をお願い申し上げたいと思います。
  44. 立川基

    ○立川説明員 ただいまの御質問でございますけれども、政府といたしまして配合飼料原料として、先ほど申し上げましたように使ってよろしいということにはなっておるわけです。ただ、経済上の事情なりいろいろな事情がありまして、現実に使われておるかいないかという点につきましては、いま私どもの調べましたところでは、そう多く使われていないという現実ではあるようでございます。制度といたしましては、使っても差しつかえないということでございます。
  45. 島口重次郎

    島口委員 その実際に使われておらないというのは、業者の企業努力が足らないのか、それとも皆さんの指導が足らないのか、その点はどうなんでしょう。
  46. 立川基

    ○立川説明員 ただいまの問題でございますけれども、取り扱いとしては平等にしておるわけでございまして、あとは経済上の問題なりその他いろいろな要素がございまして、現実には、先生一番お詳しいのですけれども、肥料として使われておりまして、えさとしては必ずしも使われていないというような現状でございます。それはわれわれのほうも、御指摘のように研究の足らない点もいろいろあるかと思います。ただ単に行政上の指導とか何とかいう問題もありますけれども、それ以外に、経済上の問題なりその他いろいろな事情もあると思いますので、いまの実情といたしまして、肥料に使われて飼料になかなか使われていないという、その原因なんかにつきましても、今後検討してまいりたいというふうに考えております。
  47. 島口重次郎

    島口委員 欧米におきましても、なたねかすのえさと称するのは相当大量に消費されております。そういう面から、皆さんのほうでも国内の資源というものを有効に活用いたしまして、できるだけ輸入量を減らしてもらいたい。その対策に一段の御努力をお願い申し上げておきます。  もう少し時間があるようですからもう一点伺いますが、ビート生産が本年で打ち切りでございますから、来年度から作物の転換をしなければならぬわけであります。そこで、作物の転換につきまして、いろいろ農林省と県のほうとの御相談の上でまとまった線があるようでありますけれども、これを見ますると、従来北の国と称する北海道、青森県では、なたねの含有率が非常によろしい、質がよろしいということなんですけれども、なたねの再生産ということは一つも入っておらぬようでありますが、これは農民の要請がないわけなんですか。その間のいきさつを教えてもらいたいと思います。
  48. 黒河内修

    ○黒河内政府委員 ただいま先生のお尋ねのなたねの生産につきましては、実は県のほうから全然御要望がなかったわけでございます。したがいまして、私のほうといたしましては転換対策の中には取り入れておらぬ、こういうことになっております。
  49. 島口重次郎

    島口委員 それでは、また別の問題に入ると相当時間がかかりますから、この辺で打ち切りますが先ほど保留いたしました問題は、さらに資料を整えましてから再質問をいたしますから、しかるべく御了承願います。
  50. 本名武

  51. 森田重次郎

    ○森田委員 ただいまの島口委員からの質問に関連して、二、三質問してみたいと思います。  これはわれわれの地方としてはきわめて重大な問題でございます。大体四十二年度にどの程度作付すべきかということが、農民としてはすでに非常に大きい惑いであった。しかし、もうやるものはやってしまったあとで起こった現象でありますから、何ともしょうがない。  そこで、われわれは農林大臣に対して、とにかくすでにビートの作付が終わったんだ、このあと始末を一体どうなさるつもりであるということで、しばしば答弁を追ったのです。農林大臣はこれに対して、農民には絶対御迷惑をおかけいたしませんと断言したはずなんです。だからわれわれも農民に対して、大臣があそこまで言っているんだから心配せぬで、とにかく収穫量を上げるようにやったらよかろう、こういうことで農民の質問に答えてきた、こういうことなんです。ところが、いよいよ収穫時になってしまって、一体これをどう処理するかということで、先ほど園芸局長からも御答弁がありましたとおり、北海道へ持っていこうかということも大きい問題だったが、やはりうまくないんだという結論に達した。  そこで、結局到達したことは、とにかく一トンについて六千九百七十円お金を払うんだ、こういう約束が知事と農林当局との間に妥結した。これは新聞にでかでかと書かれたことなんです。問題はここにあるのですよ。それは農林省のほうに責任があるか、知事のほうに責任があるかはしばらくおくとして、とにかく新聞に、一トンについて六千九百七十円で買い上げるんだ、こういうことになった。だから農民のほうでは、当然それだけの金がもらえるんだというふうに考える。これまた常識的に考えて当然そうなるわけなんです。  そうすると、残ることは何であるかといえば、一体数量がどれだけ生産されたかというきわめて簡単な事柄だと私らは考える。あとはこの数量をどうするのだということです。まあ私、農林当局と県知事の間の交渉等の内容を若干知っておるのですが、要するに、平均して毎年この程度のものが収穫されているから、大体ことしはこの程度でめどを立てようじゃないかという相談なんですが、こんなものは確定的にきめられるわけでも何でもないのであって、ただ双方客観的根拠で、平均された反当収量を基準にして、面積がこれくらいだからこれくらいとれるだろうという、非常に概念的な数量算定のしかたをしたはずなんです。それで、大体このくらいの予備費を出して支給すれば問題は片づくだろう、こういう考え方であったと私は思うのです。いまになって、こまかい契約の内容はどうであったとかこうであったとか言って、契約の端々を文理の上から究明するということになると、ああでもない、こうでもないという水かけ論になるので、いまの島口委員の質問に対する御答弁も、どうもそういう迷路に入ってしまったような感じです。しかし、これはそんなことばの端くれでやる訴訟問題でも何でもないのでありまして、おおよそのところを、政治問題としてこれくらいの見当でいけばいいじゃないかという、これは行政裁量できまる問題だとわれわれは考えていたものですから、大臣と知事の折衝に、われわれも間へ入ってしばしば陳情等を申し上げ、それで妥結するものとは実は考えておった。  しかし、ここまできて、前に大体こうだろうといって暫定的にきめた数量、それを基準にした六千九百七十円、その金を上げたのだからそれでもういいじゃないか、こういうのが結局議論の焦点になっている。しかし、そんなことはおかしなことなんで、これだけしか払いませんよときまったわけでも何でもないのでありまするし、そう考えてくると、これは予備費の中から五千万前後の金を出すか出さぬかという、行政裁量の問題に帰着するものだと私は思う。ところが、メンツがどうとかこうとかという議論になってしまったという感じなんです。したがって、まるで裁判所で原告と被告が争うて答弁するみたような妙な雰囲気に、この委員会がいまなってしまっている。おかしなことだと私は考えている。  しかし、問題は農民が納得するかどうかということなんです。農民に、ぶつ払いでこれだけ金を払われたから、あとは青森県で生産量に案分比例すればいいのだという原則が立っておったということなら問題ないのだけれども、そうではないのだ。そんなふうな約束でもなかったように聞いている。非常にあいまいな表現になっているようにわれわれも見ているわけなんです。  そうなると、これはここで文理的な突き詰めで相手を窮地におとしいれて、そこから何か引き出そうといったって、なかなか食糧庁長官もいまのようにがんばっていて、めんどうなところになると、こういうところじゃこれ以上答弁ができないというようなことになる。そうならざるを得ないのでございましょう。しかし、繰り返して申し上げると、どうしても農民は納得しないですよ。だから、しかたなしに県のほうでは、立てかえてもこれはやらなければならないというので、いまのところ便法として、一時立てかえて農民には払ってやったと聞いているわけなんです。そうすると、県のほうにそれだけの穴があいているわけだ。それを何とかしてもらわなければ、貧乏な青森県の財政としては非常にこたえる。こういうことがいま問題になっていると私は思うので、契約の内容については、私も若干法律をかじったものでありますが、こんなものは一体無効か有効かということになると、生産量の見通しなぞ、これは双方間違っている。錯誤です。錯誤なら法律的に無効だということは、これは明らかなことなんですから、そんな形式論を私は展開するつもりは毛頭ございません。  そこで、長官の御答弁はいまここで一通りお伺いしましたから、これ以上長官に答弁を促そうとも考えません。また、非常に御苦心なさっているということもわれわれ察知しておりますから、これ以上答弁を求めません。園芸局長に対してもまたこれ以上求めなくてもいいと思うのですが、問題は政務次官なんですよ。いまあなたがここで、初めて政務次官になりましたからと言われた。全くそのとおりなんで、いままで肩を並べていた方が政務次官になられて、このいきさつをよく御存じない方へ答弁を求めるということは、非常に無理だということは森田も知っております。知っておりますが、しかし、これは解決しなければならない問題なんです。しかも、きょうはあなたは大臣の代理人で出ているのでありますから、大臣の責任においてこれは解決してもらわなければならない問題なんです。だから、文句を言えば、文理の形式論理に惑わされて、こういう問題を責任なしに放てきしてしまって、農民の信用を失墜してしまうというところに、私は農林省の方々に根本的な反省を求めたいと思います。だから、こういう点を十分御考慮いただきたい。きょうのここでの島口さんの質問は要点をついていると考えて、私も同感なんです。本来なら、私ももう少し追及したいと思いますけれども、追及してもこれ以上の答弁が出そうにありませんから、この辺にしておきますが、これは政治問題です。  だから、そういう意味で、この空気をひとつ大臣によくお伝えくださって、これは政務次官の一つの試金石になるかもしれませんから、その点をよくお考えくださって、そこで大臣とよく御相談くださった上で、農林省の一つの大きい政策としてお考えくださって、これをぜひ早く解決してもらいたい。これに対して、政務次官の決意のほどをお伺いしておきたいと思うのであります。
  52. 安倍晋太郎

    ○安倍政府委員 ただいまの森田先生のお話はよくわかります。農民に迷惑をかけないという大前提で、この対策処理していかなければならぬと思うわけですが、その大きいものとして、助成金を出すということでいろいろ質疑があったわけでございますが、交付金の額につきましては、いま農林省で大体きめておるわけでございます。しかし、根本的には農民に迷惑をかけないということでございますし、今後の転換対策のこともありますので、さらにまた農林大臣とも相談をいたしまして、てん菜農民の方に迷惑のかからぬような方向で、ひとつ努力していきたいと思います。
  53. 森田重次郎

    ○森田委員 たいへん明快な御答弁で満足いたします。ぜひこれをそのとおりひとつ実現していただきたいと思います。  次の問題も、これも簡単に質問いたしますが、ビートをやらなくなったんだ、それじゃ何に転換するか、こういう問題です。そうすると、一番直接なのは陸稲なんですよ。陸稲をやりたいということになる。またわれわれの地方では、陸稲が畑作では一番お金になるということなんです。これに対して何か助成の道を講じてもらいたいと、再三これも陳情申し上げておったのですが、いろいろほかのことをお話しくださって、一番直接な陸稲をかわいがってもらえない。いろいろの理由を言っておりました。おりましたけれども、相当われわれは確実性を持っていると考えておるので、これに対してぜひ転換助成をしてもらいたい、こんなふうに考えているのですが、これに対してひとつどなたからか御答弁をいただきたいと思います。
  54. 黒河内修

    ○黒河内政府委員 ただいまの御質問にお答えします。  陸稲につきましては、助成をというお話がございましたけれども、私どもといたしましては、一つは、陸稲の育種につきまして、これは国のほうで現地選抜試験をやるということで措置をとっております。ただ、陸稲の生産合理化というようなことにつきましては、先生御承知のように、ビニール被覆によるマルチ栽培、こういう新しいいろいろな技術ができておりますので、そういうことにつきましは、農業改良資金の技術導入資金でごめんどうを見る、こういうことになっております。
  55. 森田重次郎

    ○森田委員 ただいまの御答弁で一応了承いたします。融資の対象にするというのですが、そのワクを、ひとつあの地方の人に相当広げてもらいたいということをお願いしておきます。  次に、もう一つ大きい転換策として地元の要請というものは、開田計画なんです。つまり、田をつくりたいということです。ビートにかわるものとして田をつくりたい。これは相当大きい計画があるのでありまして、農林省でも一応計画としては認めて、ある程度の調査費をつけてもらっているわけです。ところが、これは四十四年度までに完成しようじゃないかという計画であったのですが、いまの農林省の予算のつけ方だというと、これは四十五年、六年と相当長くかかるのじゃないか。さらにそれから実施の計画なんということになるというと、十年もかかるのじゃないかということで、地元では非常な失望を感じているわけです。そこで、今後のビートの転換策として、特にこれを促進してもらいたいというのが非常に強い要請となって出てきているのであります。これに対して、ひとつ特別の御考慮をお願いできないかということであります。これに対する御答弁をお願いしたいと思います。
  56. 黒河内修

    ○黒河内政府委員 ただいまのお話につきましては、土地改良事業といたしまして、農林省としては大体各県の御要望に沿うようなことを、四十三年度予算の運営の中でやっていく、こういうことでございます。予算の情勢等は相当きびしいものがございますけれども、われわれといたしましてもよく努力いたしまして、御期待に沿えるようにいたしたいと思っております。
  57. 森田重次郎

    ○森田委員 いまの御答弁は、ちょっと私の質問の的からはずれているようですが、新しい開田計画ですから、その辺をよく考え直していただきたい。あなたは当面の責任者じゃないかもしれませんが、とにかく農林省は、ことし史上空前の大豊作だというので、もう米はあまり要らないようなうわさまで立っているのですが、また来年凶作にでもなるというと、またうろたえて開田計画を強く主張する。そんなネコの目玉の変わるみたいなようなことをやっておられちゃ、私は、農林省本来の使命の上から考えてみて憂うべきものの考え方だと思う。もっと大きい根本方針から考えてもらいたい。どこの県を見ましても工業が非常に発展して、水田等はどんどん減っていっていることは、これは顕著な事実なんです。  私は、この間中国地方をずっと一回り回ってみましたが、山間地のたな田式の水田というものが放てきされております。これは驚くべきことだと見てきたのです。山口県の奥しかり、広島県、鳥取県、島根県、岡山県、全部そうなっております。特に警告を発しておきたいことは、島根県のごときは、もとの石見の国の山奥は、部落がほとんど崩壊するという現象になっていることを見てきた。帰りに島根県の新聞を買って見ますと、どうですか、島根県の十大ニュースのトップに掲げられているものは何だといったら、人口が一割減ったということです。その一割減った根本の原因は何だといったら、その山間地帯のたな田式水田の放てきです。それは、みんな木炭の生産とそれから水田とあわせて、かろうじて生計を立てておったが、今日、木炭の生産がほとんど意味がないことになってやめたというので、そのたな田式の水田だけではとてもだめだというので、それをみんな放てきして、家でも何でも建ったまま投げ捨てて、都会のほうに流れ出ていっているという姿なんです。こういう点を考えれば、今日、農林省は食糧自給度を高めるというようなことを口では言っておりますけれども、いざとなると、さっぱり実行のほうへ熱情を傾けていないとわれわれからは見られるわけです。  そういう点から考えましても、われわれのほうの何は、とにかく二万町歩開田計画というようなものが立っているのですから、これの調査等に対して、徹底的に調査費を多くしていただいて、そうしてビートの転換はこのとおりじゃないかというように、農民を安心させるような政策を実現してもらいたいと私は考えているわけなんです。これも政務次官からひとつ御答弁をいただきたい。
  58. 安倍晋太郎

    ○安倍政府委員 この問題につきましては、森田先生からも直接御要請を聞いた次第でありますが、開田の全国のいろいろな計画につきましては、目下農林省において作業を進めまして、明年度予算の中にこれを盛り込むように努力をいたしておりますが、特に先生のお話の開田計画については、ひとつ努力をして、これを実現するような方向に持っていきたいと思っております。
  59. 森田重次郎

    ○森田委員 以上で、私の質問を終わります。
  60. 本名武

    本名委員長 午後一時に再開することとし、これにて休憩いたします。    午後零時十三分休憩      ————◇—————    午後一時十六分開議
  61. 森田重次郎

    ○森田委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。  午前中に引き続き質疑を行ないます。児玉末男君。
  62. 兒玉末男

    ○兒玉委員 最初に、コーンスターチとでん粉の関係につきまして、食糧庁長官にお伺いしたいのでございます。  この件につきましては、すでに社会党としましても、現在のコーンスターチの非常な進出と同時に、国内のイモでん粉価格の低迷に関連しまして、当面の緊急対策並びに恒久対策を含めたところの申し入れをいたしておりますし、十分御検討をいただいておると思うのでありますが、農安法の唯一のささえとして、特に現在のコーンスターチの異常な進出に対応する方策として、いわゆる関税定率法の改正なりまた生産数量等の規制が行なわれてまいったわけでありますけれども、最近のコーンスターチの生産状況というのを見ておりますと、昭和三十五年二万八千トンであったものが、昭和三十八年には十四万トン、四十二年には実に四十万トンをこえるという驚異的な進出を示しております。  このような状態を放置するならば、当然国内のバレイショでん粉あるいはカンショでん粉価格の暴落、またはこのようなイモ作農民に対しましても決定的な打撃を与える、きわめて重要な段階に当面しておると私は思うのでありますが、こういう情勢に対処しまして、特に担当の食糧庁として、どのような措置を講じられようとするのか、また、どのような御検討を願っておるのか、まず第一点お伺いしたいと存じます。
  63. 大口駿一

    大口政府委員 コーンスターチの問題につきましては、ただいま御指摘にありましたように、昭和四十年以来関税割り当て制度を創設いたしまして、一方においてコーンスターチの生産が過剰にわたらないように措置をいたしておりますと同時に、イモでん粉に対するいわゆる抱き合わせ販売等の実施を、行政指導によって行なうことによりしまして、イモでん粉の需要の確保ということに、今日までつとめてまいったことは御承知のとおりであろうかと思うのであります。現在の関税割り当て制度を規定いたしておりまする関税の暫定措置法が、明年三月三十一日で期限が切れまするので、明年の四月一日以降の措置について、目下政府部内において検討をいたしておる段階でございまするが、いずれにいたしましても、関税割り当て制度そのものは、これを継続いたすという方針のもとに、現在作業を続けておるわけでございます。  現在の関税割り当て制度は、御承知のように、一次税率として一〇%、二次税率として二五%の一税率を規定いたしておるわけでありまするが、最近の輸入トウモロコシの国際価格の下落並びに国内産のイモでん粉の農安法に基づきます基準価格の上昇によりまして、二次税率を支払ってもなおかつ十分採算に乗り得るという事態が発生いたしておることを背景といたしまして、二次税率を五〇%にすべきであるという強い御要望も、私どもとしては伺っております。社会党のほうからの申し入れの内容につきましても、私どもは承知をいたしておりまするし、また、農業団体その他からもこのような御要望をいただいておるわけでありまするが、年内に関税率審議会等が控えておりまして、目下最終的な作業を急いでおる段階でございます。いずれにしましても、関税割り当て制度というものを手直しした上で継続をするという方針のもとに、現在部内で検討いたしておる段階でございます。
  64. 兒玉末男

    ○兒玉委員 関税の関係等については、本日関税局のほうもお呼びいたしておりますが、その前提として、社会党から、今日の国内のイモ価格の低迷に対して、農安法に基づくところの買い入れ措置等の緊急措置をとる必要はないのかどうか、価格低迷の現況から見てそういうことがたいへん憂慮されておりますし、特にバでん等につきましても、その点が非常に心配されておるわけでありまするが、その辺の措置についてはどういうふうな情勢の判断をされておるのか、お聞かせをいただきたいと思います。
  65. 大口駿一

    大口政府委員 現在の国内産のでん粉の価格が低迷をいたしておるという御指摘でございまするが、このことは、昨年よりも生産量がふえました北海道のバレイショでん粉について、特にそのことを御指摘になったものと思いまするが、現在の北海道のバレイショでん粉の産地価格をいろいろ調べてみたのでございまするが、政府が農安法に基づきまして定めました基準価格を基礎といたしまして、政府が買い入れまする場合の価格と、現在の市価と比較をいたしますると、まだ必ずしも直ちに買い入れを必要とするような価格水準になっておるとは言いがたいようでございます。  私どもといたしましては、でん粉の価格維持のためには、でん粉全体が、昨今、国内のでん粉需要全体をまかなえないという、いわば不足の基調になっておりまするので、でん粉に対するコーンスターチの抱き合わせ販売等を実施いたしまするとともに、行政指導等によりまして、コンスターチの増産等によって全体の需給が著しく緩和することにより、バレイショ並びにカンショでん粉の価格が、そのために著しく悪影響を受けるおそれは、ごく最近の時点においては、なかろうというふうな見通しを持っておるわけでありまするが、しかし、先ほど第一間日でお答えいたしましたように、明年四月以降関税割り当て制度を引き続き実施をするという対策もあわせて実施していくのが、当面の緊急対策というふうに考えておる次第でございます。
  66. 兒玉末男

    ○兒玉委員 長官は、予算委員会との関係で時間がないそうでありますが、この際、特に長官に御要望したいことは、先般申し入れをしました恒久、緊急対策を含めまして、農林省としても積極的な努力をしていただきたい。同時に、このこは、現在の消費者団体を含む各層が、第二次関税の引き上げなり、あるいは抱き合わせ販売等に対する措置等についても、この構想にほとんど反対の団体はないというような、この国内における世論の背景ということも十分踏まえながら、積極的な御努力を賜わるよう特に長官に御要望したいと思います。  次に、部長にお伺いしたいのでありますけれども、現在のようなコーンスターチの幾何級数的に増大する現況に対しまして、特に主務官庁としてはどういうふうな措置をとるか、国内のイモでん粉業界あるいは生産農民が安心して供給できるような対策が考慮されるのか、その辺の状況についてお伺いをしたいと思います。
  67. 荒勝巌

    荒勝説明員 お答えいたします。  一昨年、議員提案でトウモロコシの二次関税が提案されまして、二五%の関税率が課せられましたときには、二五%の関税率が二次関税でかかっておれば、これは一種の禁止関税にひとしいものであるというふうに私たちは理解をいたしました。当時トウモロコシの値段が、トン当たりでおおむね七十ドルから七十五ドルくらいしておったものですから、一種の禁止関税的なものと判断いたしまして、国内産のイモでん粉にはおおよそ不当な悪影響を及ぼすはずがないというふうに判断しておった次第でございます。ところが、その後、国際的にトウモロコシが非常に順調に増産されたようでありまして、この一年来の経過をたどりますと、逐次毎月のように値が下落してまいりまして、現在六十ドルから六十二ドル前後の輸入価格を示しておるような次第でございます。  こうなりますと、われわれが当初予想しておりました七十五ドル前後が六十ドル前後にまで下落いたしますと、国内産のイモでん粉との価格の比較関係からいたしますと、二五%の関税をかけてもなおかつ相当入ってくる余地がある。私たちのほうといたしましては、年間のイモの需給見通しを立てまして、その必要量は、いわゆる国産でん粉では補充できないので、必要量を輸入系統のでん粉にたよることといたしまして、そうして一次割り当てといたしまして、たとえば四十二年度の見込みでは、大体四十万トン程度コーンスターチに依存せざるを得ないのではなかろうか、こういうふうに判断しておるわけでございます。そうして必要量に押えまして、先ほど御指摘のありましたように、二五%の関税を課しましても、なおかつ相当な量が入ってくる。過去の実績からいたしますと、二五%の関税で入ってきますものは、四十一イモ年度を例にとりますと、せいぜいコーンスターチ換算で三、四万トン前後で、国内産のイモでん粉に不当に悪影響を及ぼすものではないというふうに判断しておった次第でございますが、この四十二イモ年度に入りますと、こういう事態を見越しまして、あるいは四十一イモ年度の倍に相当するような数量の、二五%をかけたコーンスターチが生産されるのではなかろうかというふうに懸念いたしておるような次第でございます。  それで、ただいま長官からも答弁いたしましたが、でん粉の関係各方面から非常な強い御要望もありますので、現行のこのタリフクォータ制度自体は延長いたしますが、その際に、でき得れば何らかの手直しをしたらいかがかということで、ただいま関係方面と慎重な検討をいたしておるような次第でございます。
  68. 兒玉末男

    ○兒玉委員 現在のこの第二次関税二五%の定率というのが、当初禁止関税的な役割りを果たしてきたわけですけれども、いま二部長答弁の中でもありましたとおり、コンスの原価がだんだん安くなっている。そういうことで、結局二次関税の二五%ではその効果はほとんどない。むしろそのほうが、現在の国内のカンショでん粉よりも価格が安いという現象にあるわけであります。  そういう点等から考えますならば、もちろんこれは今日の世界の趨勢である自由化政策から後退するような形でありますけれども、現在の輸入トウモロコシの量というのが、飼料用を含めて約四百万トンあるわけでございますが、私たちが主張しているところの、このうちの加工原料用の分については、輸入割り当て制に移すということが抜本的な対策ではなかろうか。一般に要請されている二次関税をかりに五〇%に上げたとしましても、その効果というものは、また一、二年を待たずして現状のような状態になるのではないかという見当から判断します場合に、この輸入トウモロコシの加工原料に限って、輸入割り当て制に戻すということを実際どういうふうに判断されるのか、この点について、食糧庁並びに大蔵省担当者の御見解を承りたいと存じます。
  69. 荒勝巌

    荒勝説明員 お答えいたします。  関係方面からも強い御要望もありますが、この関税割り当て制度のほかに、いわゆる外貨割り当て輸入制の復活をもう一ぺんやったらどうかというふうな御意見も強く、また先生の御指摘もそのように理解したわけでありますが、われわれ農林省のほうでも、食糧庁の内部でも、いろいろその件については検討したのでございますが、外貨割り当ての復活ということになりますと、単に日本国内的な、法律的な措置だけではなくして、国際協定といいますか、そういったものに日本も相当参加しておりまして、そういう方面との関係もこれあり、また、いまさら外貨割り当て輸入制度の復活ということもいかがかというふうに判断いたしまして、できるならば、いわゆるタリフクォータ制度のもう少し改善が加えられたら一番いいのではなかろうかということで、現在検討している次第でございます。
  70. 兒玉末男

    ○兒玉委員 大蔵省はだれか来ていますかわかりませんが、大蔵省のほうにちょっと見解をお聞きしたいのであります。特に先般の六月でしたか、ジュネーブにおいて開かれましたケネディラウンドにおける関税一括引き下げの交渉過程におきましても、EECに加盟するフランス等におきましては、特に国内における農産物の価格政策、あるいは農業の共通政策、あるいは共同市場対策等含めまして、アメリカとかなり激しいやりとりが行なわれたことが、関係のいろいろな資料でも察知できるわけでございますが、特に今日のこの日本のコーンスターチの問題につきましては、国内の甘味資源保護の立場、あるいは先ほど質問いたしました輸入割り当て制の一部復活の問題等におきましても、やはり緊急的な意味と同時に、国内の農業を保護するというきわめて重要な課題でありますし、四百万トン近くの輸入トウモロコシのうちのわずか一割そこそこのこの加工原料用分だけを割り当て制に復活させることが、国際的にどのような抵抗があるのか、この辺の状況についてお聞かせをいただきます。
  71. 渥美謙二

    ○渥美説明員 お答え申し上げます。  全般的なそういう感触というようなことになりますと、あるいは外務省のほうからお答え申し上げるほうが適当なのかも存じませんけれども、一般的に申しまして、ただいま仰せのように貿易の自由化という線が趨勢として強く出ております。また、特に来年二月にUNCTADの会議を控えているというようなことから、後進国が先進国に対して、関税障壁を高めない、あるいは引き下げよという要求が、全般的に非常に強い趨勢であるということでございまして、その中で、こういった品目の関税率を引き上げてまいるということには、なかなか問題があるであろうとは思うわけでございます。しかし、最近、特にトウモロコシの輸入価格が下落したというようなところから、せっかくのTQ制度がその役割りを果たしていないじゃないか、こういう問題が現実にいろいろ起こってきているようなわけでございまして、農林省のほうからもいまいろいろお話を伺っております。今後、農林省のほうとよく打ち合わせながら検討いたしてまいりたい、かように考えております。
  72. 兒玉末男

    ○兒玉委員 二部長にお伺いしたいのでありますが、聞くところによりますと、二十五日に関税率審議会が開かれると聞いておりますが、おそらく本年の最後会議になろうかと思うのでありますけれども、私は、問題は非常に緊急性を持つものと思うのでございます。現在食糧庁としては、一般に強く要請されておるところの現行の一〇%、さらに二五%の五〇%引き上げという線、この辺の見通しといいますか、作業の状態というものはどういうふうになっておるのか、お伺いいたします。
  73. 荒勝巌

    荒勝説明員 食糧庁といたしましては、過般来関係方面からも強い御要望もございますので、事務的には現在整理いたしまして、大蔵省といろいろ事前に打ち合わせをしておりまして、実は、昨日開かれました関税審議会のほうにはかりたかったのでございますが、少し資料の整備のための時間が足りませんで、次、二十五日に予定されております関税審議会にはぜひはかりたいということで、現在作業を進めておるような次第でございます。  いずれにいたしましても、関係方面から御要望もあった件につきましては、ただいま先生も御質問になり、私たちのほうからも御返事いたしましたように、きわめて純粋の国内措置のみをもってしてはなかなか片づかない、場合によっては国際協定に抵触の懸念もありますので、現在大蔵省とも十分に、この辺まではだいじょうぶという線を見きわめるべく作業を進めておりますので、なお二、三日政府案として固まるには時間がかかるのではなかろうか、こういうふうに理解しておる次第でございます。
  74. 兒玉末男

    ○兒玉委員 二部長に再度お伺いしたいのでありますが、特に私たちが懸念することは、せっかく関税制度を改めても、コンスの製造量というものが行政指導の面において確実に規制をされるということでないと、せっかくの措置が意味をなさない。特に、たとえばコンス固有の量だけについて一〇%の適用をしているわけでありますけれども、現実にはコンス固有の域をはみ出して、相当その製造量というのが規制外に出されておるということも、数字の面でははっきり指摘されておるわけでありますが、こういうような行政指導というものを、今後どうされようとしていくのか。  第二点は、特にいま私たちが要請しているところの、いわゆる抱き合わせ販売に対するところの関税を無税にすることは、非常に優遇の結果になるわけでありますが、これにいたしましても、今日先発八社あるいは後発十四社を含めて、製造過程においても、かなり設備の拡充等がうわさをされておるような現状から判断をいたしましても、国内産価格との調整をとるといいながらも、こういうふうな無税措置あるいは優遇措置をとることによって、現実にどの程度の規制というものが可能になってくるのか、その辺の見解をこの際お伺いしたいと存じます。
  75. 荒勝巌

    荒勝説明員 お答えいたします。  単なる従来の、明年の三月三十一日で切れます関税定率法の暫定措置の、いわゆる一般的な輸入は一〇%で、タリフコォータ二次関税として二五%という案で単純延長をはかりますならば、われわれが現在持っております行政力をもっていたしましては、コーンスターチの過剰な輸入が行なわれて、二五%の関税を越えてでも入ってきまして、やはり国内産イモでん粉に悪影響を及ぼすのではなかろうか、こういうように思っております。したがいまして、まだ十分結論は出ておりませんので、現在検討中で、きょう御返事ができないのは残念でございます。  われわれといたしましては、この関税定率法をこの際単純延長ではなくて、従来よりも国内産イモでん粉に悪影響を及ぼさないような方法で、何らかの改善された案が出せるならば一番好ましいということで、現在せっかく作業している次第でございます。もしそういうふうに多少でも改善されれば、現在無制限といいますか、無秩序になりつつあるでん粉関係につきまして、多少の秩序ある指導ができるのではなかろうか。なおそれと同時に、そういうことに加えまして、昨年来とってまいっております国内産イモでん粉といわゆる輸入コーンスターチとの抱き合わせによりまして、国内におけるでん粉の安定的な需要の確保を、さらに一そうきめこまかく実施してまいりたい、こういうふうに思っておる次第でございます。
  76. 兒玉末男

    ○兒玉委員 せっかく政務次官も御出席でございますので、一言お伺いしたいと思うのですが、いままで長官なりあるいは二部長のほうから専門的な立場から御答弁があったわけでありますけれども、御承知のとおり、バレイショにいたしましてもあるいはカンショにいたしましても、このイモ作農民の現状というものは、これ以外に転換作物のきかない地理的条件になっているわけでありまして、過去十年間の価格変動を見ましても、自主的にほとんど値上がりをされておらないし、せっかく農産物価格安定法がありながらも、現実に農民の所得というものは、最も低位にあるわけであります。先ほど大蔵省の渥美企画課長答弁されましたが、国際的には、農産物に対するところの保護政策というものは、非常にきびしい条件のもとに競争をしいられているし、後進国からの輸入農産物に対しましても、これまたきびしい国際間における要求があるわけであります。  そういう情勢を踏まえながらも、国内におけるイモ生産農民の立場というものを無視するわけにはいかないと私は思うのでありまして、 これによって生計をささえる農民というものも相当の数を示しております。そういう点等から判断をいたしますならば、先般わが党から申し入れをしました、当面のコーンスターチ並びにでん粉の価格維持に対する諸要求というものは、切実なる問題であり、緊急にこれが解決を迫られている課題であります。同時にまた、今後の展望に立つ長期政策というものも、この際農林省は責任を持って対処すべきであろうと思うのでありますが、この辺の情勢に対して次官の見解を承って、この問題に対する私の質問を終わりたいと思います。
  77. 安倍晋太郎

    ○安倍政府委員 ただいま御質問がありましたように、国内イモでん粉生産者に悪影響を及ぼさないという基本的な考え方に立って、いろいろな措置を講じていかなければならないと思うわけです。先ほどお話がありました輸入割り当て制にするということも一つの案かもしれませんが、これはガットその他いろいろと国際協定等の問題もありまして、今日の客観情勢のもとでは無理であろうと思うわけであります。したがって、ただいま事務当局もお話をいたしましたように、二五%の関税を引き上げる、いまや二五%が禁止関税的な意味を失っておるわけですから、これを引き上げるということは、基本的な方向であろうと思います。さらに抱き合わせの分につきましても、いままでの一〇%ということにつきまして検討を加えるという方向は、大蔵省とも相談をして強力に進めていかなければならないわけであります。  さらに、国内的なイモの生産振興のための諸施策につきましては、いろいろとこれから講じていかなければならないとともに、農産物価格安定法等の適切な運用によって、価格の安定に実効をあげるように努力いたしたいと思います。  最近におきまして、でん粉需要の増加と国内産でん粉の生産減少によって不足基調となっているので、外国産でん粉の輸入、コーンスターチ増産によるでん粉需要の安定をはかっておりますが、コーンスターチについては、行政指導によりまして国内産イモでん粉との調整販売を行なって、イモでん粉の需要の確立をはかっておるわけであります。そうしたことによりまして、いまの税率の改正、さらに国内的には生産の拡大をはかっていくように、基本的にこれから農林省としても方策を進めていきたいと思っております。
  78. 兒玉末男

    ○兒玉委員 次に、水産庁と科学技術関係について御質問をいたします。  最初に、科学技術関係についてお伺いしますが、すでに問題となっております南種子島における宇宙ロケット基地の問題でございます。この点につきましては、現在、科学技術庁の発射実験が延期されたという状態で、ほとんど事態が進展しない状態のまま、現地における漁民と対立を続けておるわけでございますが、問題の中心は、現在技術庁が考えている科学技術関係の開発に反対をするという立場ではなくして、この実験地域が、宮崎県を中心に年間約二十数億のカツオ・マグロを中心とするりっぱな漁場であり、しかも、この漁場が制約をされることは、現地漁民にとりましては死活の問題だという現実であります。  御承知のとおり、現在太平洋地域におけるリマ水域、東大の内之浦ロケット基地、また陸上自衛隊の佐多の辺塚実弾射撃場など、好漁場というものが、次々にこのような規制のもとに追い詰められておる状態にあるわけであります。しかも、私がいままで調査した範囲におきますと、科学技術庁が南種子島にこの基地を設定する場合、特に漁業関係について、ほとんど事前の分析なり調査がなされないまま、突如としてこの基地設定がきまったというところにも、私は、関係漁民の非常な反撃を買った歴史的背景があると思いますが、今回関係の長官、担当者もおかわりになったのでありますが、その後の経過はどういうふうになっているのか、現在の状況をお聞かせいただきたいと思います。
  79. 天野光晴

    ○天野政府委員 私が答弁するより、兒玉先生のほうがよく認識されておることであろうと思いますが、科学技術庁といたしましては、私赴任して日なお浅いのでありますが、種子島の基地の問題につきまして、いろいろ経過と今日の考え方等をただしておるのでありますが、第一として、種子島の基地を変えることは、現在非常に困難だということ、そして種子島の基地を選んだのは、科学技術庁として、いまの兒玉先生のお話ですと、何か手落ちがあったようなお話でございますが、最良の場所であるという点で種子島を基地に設定されたようでございます。そういう点で、言うなれば沿岸漁民にとりましては生活の基地でもございますし、優先権もあるわけでありますので、現在の技術庁の方針といたしましては、沿岸漁民の納得を得た上でこの問題の処置をしたいというので、現在、発射を中止しておる段階でございます。  日本の宇宙開発という大きな問題から考えてみますと、現在中止しておるこの状態は、嘆かわしい次第でありますが、発射する基地としては、種子島に置く以外にどうにも処置がないので、何とか漁民対策を、ひとつできるものなら円満に解決をしてやりたい、こういうことで鋭意努力中でございます。   〔森田委員長代理退席、委員長着席〕 それと同時に、現在までは宮崎県の知事さんのほうに、そのあっせん方を御依頼申し上げておったのでありますが、受け入れていただけなかったわけでありますが、最近になって、宮崎の知事さんも中に入っていただけるような段階になりましたので、地元県知事のあっせんを大いに期待しておるというのが今日の状態でございます。  おそらく私の答弁が御期待に沿えないだろうと思いますので、経過等につきましては、事務官のほうから答弁させたいと思います。
  80. 兒玉末男

    ○兒玉委員 いま次官が御答弁されましたが、特に御承知のとおり、鹿児島県の大隅半島に、現在東大のロケット基地もあるわけであります。でありますから、この点は前長官の二階堂長官も、予算委員会の席上で、宇宙開発の一元化ということについては、鋭意努力をする旨御答弁されておるわけです。特に、ぼう大な国の財源を使う以上は、やはり効率的に行なうべきであり、しかも、宇宙開発は非常に広範多岐にわたるとはいえ、やはり国家の財源を投資する以上は、一元化という点にもう少し積極的に取り組むべきではないかと私は思う。すでに私は、東大の内之浦ロケット基地というものは、世界でも有数無比といわれるくらい地理的条件も整っているということを、現地調査におきましても、内之浦の最高責任者からも、そのような話を伺っておるわけでありまして、東大は東大、防衛庁は防衛庁、科学技術庁は科学技術庁と、それぞれ分離した形では、真の宇宙開発の成果を期待できないじゃないか。こういう一元化の点については、現在どういうふうな検討がなされておるのか。  同時にまた、種子島が最良の基地だという御答弁をなされましたけれども、この点については、今日世界各国が、宇宙開発については、それぞれの基地を設けてやっておるわけでありまして、南種子島以外に絶対にその基地がないということは、いささか私は納得ができないのでございますが、一元化の問題で、まず第一点として、どういうふうな作業が進められておるのか、この点についてお聞かせをいただきたいと思います。
  81. 天野光晴

    ○天野政府委員 一元化の問題につきましては、前大臣が鋭意努力されまして、一応基本的な方針をまとめまして、宇宙開発審議会のほうに諮問をいたしておりました。私たち交代いたしましてから、予算等を伴います関係から、宇宙開発審議会のほうで小委員会をつくって、この問題を検討中であるという話をお聞きしましたので、これを大急ぎで仕上げるように連絡をとりまして、小委員会の結論はまとまりまして、きょう総会を開いて、最終的な結論が出される見通しであります。いま兒玉先生のおっしゃるとおり、この大きな仕事を、国費を分散してこまかく使っておるようでは、完全な研究開発はできませんので、これは大きな国の力で一括してやるという方針のもとに、強力な考え方で臨んでまいりたいと考えておりますが、経過について、もし私の答弁が足りなかったら、事務当局から説明させます。
  82. 兒玉末男

    ○兒玉委員 現在、地元関係漁民がなかなか話し合いに応じないというのは、もしこの場所をとられた場合は、行きどころがないということなんです。それだけに、私は漁民の気持ちというものは切実であり、しかも真剣だと思うのであります。そういう点から考えます場合に、やはり一元化の方向として、いま政務次官が答弁されましたとおり、むしろ内之浦の基地こそが、これは当初建てられましてから相当の成果もあがっておりますが、その辺の関連は一体どう考えておるのか。  それから同時に、補償すれば何とかなるという安易な気持ちでは、取りつけるのはなかなか困難だと思うのです。というのは、現在まで、たとえばリマ水域の防衛施設庁の補償にいたしましても、関係漁民が要求する金額の五十分の一程度しか補償されておらない。また漁業構造改善によって、いま大多数の漁民がかなり船の性能を高めておりますけれども、現在のリマ水域というものは、昭和二十七年に制限が開始されて以来十五年間、全然その内容の改善がなされていないし、十五年前に漁労した漁船だけが対象になっている問題等も、今日水産庁を中心として進められている漁業構造改善の意図するところは一体那辺にあるのか、この辺にも大きな矛盾を感ぜざるを得ないし、加えまして、東大の内之浦ロケット基地の実験回数にしましても、当初の回数から三倍、五倍、十倍とどんどんふえて、全く大阪城じゃないけれども、外堀を埋められて、内堀、本丸と、こういう現象になって、漁民はもう政府のいうことは信用できない。今度は佐多の辺塚の実弾射撃場につきましても、射程距離約一万三千メートル、しかも小型船でありますから、季節風の時期等には、どうしても海岸線を通らぬことには漁労ができないという深刻な状況に追いやられておるわけであります。加えまして、今回の種子島水域というのは、二十億をこえるばく大な漁獲があることは、科学技術庁も十分御推察をいただいていると思うのです。かりに五分の一の補償ができるとすれば、むしろ私は現在の南種子島のロケット基地の再検討をしたほうが、同じ補償をするならば、国家的な財源を使う場合においてもそのほうが有利ではないか、経済的に言っても効果的じゃないかという判断すら、しろうと的な考え方でするわけでございますが、この辺の点についても、やはり科学技術庁としては、漁業に従事している皆さん方の意向というものを、十分尊重していただく謙虚な気持ちがほしいと思うのです。  先般、ある代議士が私案という形で、君たちが言うことを聞かなければ、立法措置をやってでもこれを強行するという発言があり、また地元の新聞がそれを書いたために、非常に漁民が激高したいきさつもあるわけでございますが、その辺のことについても、単に一片の法律でこれを片づけてしまうがごとき、そう安易な問題でないということを、この際御理解いただきたい。この辺について、ひとつ立法措置によってでも強行しようということの私案というものは、私はどの辺から出たかわかりませんけれども、過去における長官の答弁なり、本委員会、予算委員会答弁を通じても、そういう意見は一ぺんもないのでありますが、その辺の見解はどういうふうに理解されているのか、最後にひとつ次官の見解を承りたい。
  83. 天野光晴

    ○天野政府委員 私はまだ、その強制的な処置を講じてまでやるという話は聞いておりません。そして私、個人的でもそういうことはいたしません。あくまでも地域住民の納得のいく線に沿ってこの問題の解決をしたいと考えております。そういう点では、さきに対策委員会ができまして、その案を宮崎県の知事にお渡しして、御依頼を申し上げておるわけでありますが、その内容についても十分検討した結果、科学技術庁としては御依頼を申し上げたわけでありますが、言うなれば、現地の漁民の方々から完全な了解を得ておりませんし、その案も、おそらくここ一両日くらいの間に漁業組合のほうに提示されるんじゃないかという感じもいたしますので、その反応といいますか、その結論を見まして適当な処置を講じたいと思いますが、いま兒玉先生が言われたような、強制的な処置を講じていくというような考え方は毛頭持っておりません。
  84. 兒玉末男

    ○兒玉委員 事務当局のほうにお伺いしたいのですが、これは水産庁とは密接な関係があるわけでございまして、現在まで水産庁の意向も十分技術庁のほうにはお伝えされておると思うのですが、現在までそういうふうな作業を進める過程において、特に漁民の抵抗は非常に強いということと、それから唯一の好漁場である。こういうふうな水産関係の面において、過去においてどのような交渉なり話し合いがなされてきているのか、この辺事務当局のほうにお聞きをしておきます。
  85. 高橋正春

    ○高橋説明員 お答え申し上げます。  先生御指摘のとおり、あるいは政務次官の答弁にもございましたように、私どもといたしましては、地元漁民の納得を十分に得るということ、しかも、宇宙開発の国家的意義ということだけで、特に地元の方々のみの犠牲によってこれをしいるようなことはいたさないという形でございます。  なお、先ほどの御質問にございましたような補償という問題があるわけでございますが、先ほど御指摘の二十億と申しましても、これは御承知のとおり、屋久、種子の全域にわたります年間の属人的統計によるものであります。御承知のとおり、リマ水域もしくは辺塚におきますところの防衛庁の射撃演習と違いまして、私どもと東大の実験と申しますものは、年間継続的に全水域を制限いたすものではございません。たとえて申し上げますれば、打ち上げの前後一時間の制限でございます。もちろん、これに対しまして出漁その他の準備というようなことで、約一日の操業が不可能になるということは申し上げるまでもないことでございますが、そういう点で、なかなか漁業補償の対象になります漁獲高自体を明定することは不可能でございます。それよりも、私どもといたしましては、せっかく開発されました種子島の東方の漁場を私どものほうで制限いたしますから、補償というか、従来も謝金ということで、協力に対しましてのつかみ金のこうなものにつきましてはお支払い申し上げておりますけれども、これの増額をはかりますと同時に、もっと基本的には、漁業振興させますことによりましてそういう被害の軽減、あるいは結果におきましてプラスになりますような方向でこれを解決いたしたい、こう思っております。  先ほど政務次官から答弁ございましたように、関係省庁、特に東京大学並びに自衛隊につきましても、同じような条件下でただいま実験が停止しておりますので、政府といたしまして窓口を一本にいたしまして解決いたしますために、本年三月に政府内に漁業対策協議会をつくりまして、このメンバーといたしまして水産庁にお入りいただきまして、従来も漁業振興方策という点につきまして、種々お打ち合わせ、御指導をいただきまして今日まで進んでおります。  なお、客観的情勢が、私どもの漁業振興対策を具体的にお示しいたしますような時点になかなか到達いたしませんでしたので、打診程度にとどまっておったわけでございますが、去る十一月十七日に長官の文書をもちまして、五項目にわたります漁業振興策と、さらに打ち上げの機数、時期等の調整の問題、並びに、先ほど申しました謝金関係の増額の問題、さらに具体的な実験の施行等につきましては、地元と協議会をつくりまして、十分に漁民の方々の御了解を得てこれを行なうというような、四つの基本的な項目につきまして、県のほうに知事あてにお願いを申し上げまして、去る十一月の二十日に知事が漁連のほうに政府の考え方を提示されまして、漁連のほうでも種々御検討され、近々何らかの意思表示があるやに承っております。  いままでの段階は、以上でございます。
  86. 兒玉末男

    ○兒玉委員 私は現地にも参ったわけでありますけれども、御承知のとおり、現在科学技術庁が予定しているものは最も小型でありまして、これから中型、大型と逐次拡大の計画が、ちゃんと青写真として説明されておるわけです。しかも、発射の時期というのは非常に天候に左右されやすいし、また発射の天候状態というのは、魚をとるときとちょうど合致するような状況のもとにあるわけです。でありますから、いままで東大の場合におきましても、きょうやるぞといって予告しておって船は待機しておる。ところが、ちょっと天候の状態がくずれるとまた明日に延ばすということで、実際はその制限期間というものは、当初の三倍、四倍というふうに非常にふえていくという現実を、漁民ははだで感じておるわけでございます。そういう点等から考えましても、いま事務当局が御答弁になったように、実際の時間は一時間かもしれませんけれども、この水域に出漁する漁船というものは、少なくとも自分の港から三時間ないし四時間以上の時間を費して行かなければいけない地理的条件にあることも、十分踏まえていただかなければいけないということであります。  同時に、これは水産庁長官にお伺いしたいのでありますが、県のほうに一応科学技術庁から意向打診がだされたやにいま御答弁がありましたが、やはり漁業関係最高の長として、この問題については非常に真剣に長官には取り組んでいただいておるわけですが、新しく技術庁長官もかわられたし、おそらくその後何らかの水産庁との間においても意見の交換等がなされたかと思うわけでございますが、その後の経過なり、また水産庁としてとってきた処置等はどういうふうになっておるのか、お聞かせいただきたいと思うのです。
  87. 久宗高

    ○久宗政府委員 経過につきましては、先ほど科学技術庁のほうからお話しになったとおりでございまして、御質問の初めにありましたように、本件につきましては、当初の段階におかれまして、科学技術庁はこの辺にはふなれな点も多少あったように思うわけでございます。さようなことで、お話をする筋、時期等に若干の問題がございまして、いろいろな誤解があったように思うわけでございます。水産庁といたしましては、本件につきましては、御指摘のとおり相当影響の大きい問題でございますのと、また同時にロケットそのものの重要性等も考えまして、相当時間をかけまして科学技術庁とずいぶん突っ込んだ御相談をいたしたわけでございまして、最近におきましては、非常によく漁業の内容を理解されておると確信いたしておるわけでございます。  特に、本年の三月の段階に一つ危機があったわけでございますが、ロケットのスケジュールから申しますと、当然ここで上げざるを得ないというぎりぎりの場面が一度あったわけでございます。水産庁といたしまして、この段階ではぜひ、いま科学技術庁がお話しになっておりますような筋で、完全な納得を得てやるべきだ、非常に長期の計画でございますので、さような意見を強く申し上げまして、科学技術庁といたしましては非常な困難な中で、その踏み切りをなされまして思いとどまられたわけでございます。  さような経過を経まして、今日政府部内におきまして、先ほど御説明申し上げましたような機関がございまして、振興方策なり具体的なお話をいたしまして、知事にお願いをする段階になったわけでございまして、私どもといたしましては、この全過程を通じまして、比較的わかりにくい漁業関係の問題につきまして、関係者によく御納得いただくように努力をいたしたつもりでございます。もちろん今後といえども、この問題の経過につきまして重大な関心を持っておりますし、御指摘のように、必要がございますればいつでも間に入りまして、まとめられるような努力をいたしたいと考えておるわけでございます。  政府の機関の中には当然、水産庁と申しますよりは農林次官が伺っておりまして、水産庁から次長が伺いまして、それぞれの段階におきまして必要な御意見を申し上げておるわけでございます。
  88. 兒玉末男

    ○兒玉委員 持ち時間がきましたので、最後に特に御要望申し上げたいと思うのですが、政務次官の答弁の中にもありましたとおり、現在の漁民の心境としては、やはり命がけでこれに抵抗するという強硬な姿勢にあるわけです。そういう情勢を十分踏まえながら、やはり流血の惨に至ることのないように、先ほども再三答弁されましたとおり、漁民の死活の問題ということを十分踏まえながら、特に本日は長官もお見えになっておりますので、現在までの内容についても十分ひとつ御進達を願いまして、前向きの姿勢でこれが解決されるように特に要望申し上げまして、私の質問を終わりたいと思います。
  89. 本名武

    本名委員長 柴田健治君。
  90. 柴田健治

    ○柴田委員 今度、通常国会中に出されるという海上交通規制に関する法制化の問題で、海上保安庁長官水産庁長官に御質疑を申し上げたいと思うのです。  この海上交通規制に関する法制化ということで、今日、海上安全審議会、企画部会のほうから報告されておるこの内容を一応目を通してみますと、なかなか問題が多いようであります。特に沿岸漁業、内海漁業、そうした漁業に与える影響が非常に大きいのじゃないか、こういう一つの心配がございますので、この法案の作成過程においていろいろ御審議されておると思いますが、通常国会にいつごろ出されるのか、まずその点を保安庁長官にお尋ねしたいと思います。
  91. 亀山信郎

    ○亀山政府委員 現在、私どものほうで原案の作成中でございまして、できれば年内に法制局との審議に入りたい、同時に関係の官庁との問題点を煮詰めていきたい、かように考えておりますが、予算編成の段取りがどうなるかということによりまして、その時期も若干延びるのではないか。しかも、法制局といたしましては、予算関係法律が審査に入ってまいりますと、そのほうが時間的に優先するというようなことがございますので、私どもはなるべく予算関係法律を法制局でお取り扱いになる前に、この法律案の審議をお願いしたい、なるべく早く国会に提出したいと考えておりますが、何月ごろになるかということについては、いま確たる見通しが立て得ない状況でございます。
  92. 柴田健治

    ○柴田委員 作業の考え方について御答弁願ったのですが、この法案が表面に出てまいりますと、そうでなくても漁民のほうは非常に強い反対をしておる。そういう意思表示も私たちは聞いてまいりました。絶対反対だ、条件つき反対でなしに絶対反対だという声を聞くわけでありますが、そういう絶対反対という漁民の立場から考えますと、二の制度化を強行する意思があるか、あくまでも通常国会にこの法案を、たとえ漁民が反対しようともこれを押し切る、そういう決意で提案される覚悟があるのか、それをまず聞きたいと思います。
  93. 亀山信郎

    ○亀山政府委員 漁民の方たちからの御意見は私どもも伺っております。私どもといたしましては、十分御説明申し上げて御納得いただけるという確信を持っておりますので、ぜひともこの次の国会には提出いたしたい、かように考えております。
  94. 柴田健治

    ○柴田委員 この海上交通規制に関する法制化は、基本的な考えはどういう考え方に立ってやっておるのか、まずそれを聞きたいと思います。
  95. 亀山信郎

    ○亀山政府委員 従来から、海上の安全を守るためには各般の法規がございまして、たとえば船舶の構造等につきましては船舶安全法、あるいは乗り組み員の資格等につきましては船舶職員法、それぞれの法律がございまして安全を守っておりますが、船舶の航行につきましては、特にそのうちで海上衝突予防法あるいはそれに基づく政令でございますところの特定水域航行令、また港内の交通の安全をはかる法規といたしまして港則法、このような法律がございまして、これによって交通の安全、船舶の安全、これは一切の船舶を含んでのことでございますが、これをはかってまいっておりました。  最近の情勢は、御承知のように、船舶の交通量が非常にふえてまいっておる。貿易量がふえるに従って船舶の交通量がふえて、日本全国でこの十年間に、隻数においてもトン数においても二・六倍あるいは二・七倍、特に最近目立ちますことは、東京湾、大阪湾、伊勢湾、瀬戸内海、こういった地区における船舶の増加は非常に著しいものがあるわけでございます。その次に船の質というものが、御高承のように、何十万トンというようなタンカーが出てまいる、あるいは危険な発火性のガスを積んだ船が入ってまいるというように、量質ともに非常にふえておって、これらの船が万一事故を起こした場合の影響は、はかり知れぬものがある。  こういうことからひとつわれわれ従来の交通に関する法規をもう一ぺん見直してみようではないか、そこで足らざるを補い、不備なところを直していくということが必要であるというので、これは海上保安庁におきましても、運輸省におきましても、長い間いろいろの角度からそれぞれ検討してまいったわけでございますが、最近の事情では、これは一刻も猶予がならないというふうに考えまして、新たに法制の準備をしておるところでございます。  そのうちで、海上衝突予防法は、御承知のように、これは国際条約に基づくものでございますので、これはそのままずっと適用させていく。ただ内水及び港については、特別の国内法をもって行なう。したがいまして、従来の特定水域航行令という政令でやっておったこと、あるいは港則法でやっておったことを一本の法律にまとめまして、最近の船舶の交通の実情に合うように、これを修正あるいは補っていくというのが、基本的な考え方でございます。
  96. 柴田健治

    ○柴田委員 水産庁長官にお尋ねしたいのですが、この海上交通法が制定されたら、漁民、漁場に与える影響というものをどう認識されておるのか、どう踏まえておるのか、まずその点をお尋ねしたいと思います。
  97. 久宗高

    ○久宗政府委員 海上交通法案の問題と関連いたしまして、規制の内容がどうなるかによりまして、当然影響は違ってくるわけでございます。私どもといたしましては、いずれにいたしましても今日の客観情勢から考えまして、海上交通法案でお考えのような一連の考え方は必要であろう、こう考えざるを得ないわけでございますが、同時に、それとの関連におきます漁業との調整と申しますか、調和と申しますか、さような問題につきまして、相当こまかく吟味をいたす必要があろうと考えておるわけでございます。
  98. 柴田健治

    ○柴田委員 海上保安庁のほうには、海上交通の円滑化というか、いままでの法の不備をぜひ直していきたい、こういうことで基本的な考え方を聞いたのですが、しかし、一つの法律をつくるにしても、それぞれの産業に関連しての考え方が立たなければならぬと思うのです。そこで、第一次産業である漁業というものも、同じ産業でありますから、その漁業に与える影響をどう判断し、どう処理するか、これをまず大前提に考えていただかないと、漁業のほうはどうでもいいんだ、漁民が苦しんでも困ってもそれはどうでもいいんだ、こういう考え方で、ただ海上保安庁の本来の使命だけを守ればいいんだ、これでは片手落ちの制度になってくると私は思うのです。そういう点で、いま水産庁の長官から御答弁の中で、影響があるだろう、こういうことを認識されておりますが、保安庁のほうは、その漁業問題についてどういう方法処理していくのか、その点をまずお聞かせ願いたい。
  99. 亀山信郎

    ○亀山政府委員 私どもが海上の安全を守るということは、商船、漁船、そのようなどちらがどちらということではございません。海上にあるすべての種類の船の安全を守っていくということが、やはり基本的な考え方でございます。そこで、やはり漁業に従事する方につきましても、漁船の安全ということが非常に大事なことであろうと私どもは考えております。  そこで、先ほど御指摘になりました海上安全審議会における当件の審議にあたりましても、漁業関係の問題を非常に熱心に討議をされまして、専門委員会、さらには水産庁等とも打ち合わせをしてまいりまして、私どもとしては漁業に与える影響というものを、従来も考えてまいりましたし、今後も十分考慮に入れていきたい、かように考えております。  具体的に申し上げますれば、漁業に関連する条項は、第一点は、特定の水域における漁船の避航義務の問題第二点は、特定の水域によって、もし必要な場合にはある種の漁業に制限を加えるということが大きな問題点でございます。そのほか、漁船が一般に漁場に向かうとき、あるいは遠洋方面に出かけられるときの交通方法につきましては、これはもう一般の船舶と全く同様でございますので、問題は狭水道といわれておる地域における漁船の行動と、漁船以外の一般の船舶との行動を、どう調和させていくかという点にあるわけでございます。  現行法を申し上げますと、一般的に言って漁労中の船に対しては、それ以外の船舶はその進路を避けるというのが大原則になっております。しかし、特定の水路におきましては、非常に狭い水域であって船舶の退避行動が困難な場合、そういう一部の水域に限ってこれを逆にいたしまして、漁船のほうに避航義務を課するというのが、現行法制のたてまえになっております。私どもはその点について、従来の法制を振り返って考えてみて、まず第一は、そのような水域をそう広くとるべきではないのではないか、真に必要やむを得ない水域に限るべきでないのかというのが第一点。第二点は、避航義務について、漁労中の船が一切の他の船舶を避けろというのがいまの法制になっておりますけれども、むしろ小型の一般貨物船の場合には、網を引いておる漁船よりは行動の自由があるということで、小型船については、小型船のほうが漁船を避けるように、従来の法制とは変えるという点と、二点にわたって考えておるわけでございます。  それから漁業の制限、禁止につきましては、これはいまの避航義務をもってしても、さらに大きな危険が起こる可能性があるというような、真にやむを得ない個所についてのみ考えるべきであって、水産業といえどもりっぱに生産性をあげて、それによって生きてこられておる方が多いわけでございますから、これに対して交通という面だけから、これを制限したり禁止したりするというふうなことは、安全の面で真にやむを得ない場合に限らるべきであろうというふうに私どもは考えておる次第でございます。
  100. 柴田健治

    ○柴田委員 保安長官の答弁を聞くと、審議会で漁民やいろいろな機関の代表者の御意見を十分聞いてあると言うが、審議会の委員の名簿を見ますと、どれほど漁業関係のある者が入っておるのかわからない。あまりにも納得のできかねる点があるのですが、いまからでもおそくないので、審議会の委員くらい差しかえてもらいたい。たとえば、水産事業は農林省の水産庁が号令かけたら、水産業がすぐ前進するものではない。やはり市町村なり都道府県なり地方の公共団体も大きく影響があるわけです。こういった法の制度化については、やはり地方の公共団体の、たとえば府県知事会の代表を入れるとか、町村会の代表を入れるとか、何らか——これを見ると、船主協会の会長とか、石油会社の社長だとか、結局、殿様ばかり寄っての審議会だ。結果は、もう昔の殿様が大名行列をするように、おれが歩くのだから、お前らよけてじっと待っておれ、こういう考え方の制度をつくるような気がしてしようがない。だから、漁民の騒ぐのは無理がない。  それから、いまお答えがあったのですが、避航義務や特定水域の指定をして制限、禁止をやる、それに対する考え方があまりにも安易ではないかというような感じを私は受け取るわけです。その場合に漁民がどう受け取られるかということです。保安庁長官に研究してもらいたいことは、陸上でも、東京のまん中でもそうですが、トレーラーだとかタンクローリーだとかいう大型車は通さない道路があるわけです。何時から何時までは大型車は通ってはいけないと時間を制限したり、また全然禁止の区域もある。そういう大型車にきびしく制限する陸上交通の法規もあるわけです。海だけは、大型はもう自由で制限を受けないで、小型や漁船だけがまるで全部犠牲を払う。  そこで長官にお尋ねしたいんですが、漁船によって海難事故が起きたという実例は何件あったんですか。漁船がじゃましたというものです。その点お答え願いたい。
  101. 亀山信郎

    ○亀山政府委員 いま海難の原因についてのお尋ねでございますけれども、先ほど申し上げました、特に船が込み合います瀬戸内とか、浦賀水道とか、伊勢湾など特定の地域につきまして、過去五年間において漁船と漁船でないものが衝突した例というものは、私どもが調べたところでは、四十二件ございました。衝突事故は四十二件ございましたが、その内三十四件、ほとんど九割は小型の船と漁船との衝突事故でございました。先生の  いまの御質問に対しての答えとして正確かどうかわかりませんけれども、手元にある数字といたしましてはそのような数字でございます。
  102. 柴田健治

    ○柴田委員 この答申の内容を見ると、五百トン以上が優先権を持って、五百トン以内というものが避航義務になるわけですが、五百トンという制限をすると、これからの船舶はほとんどみな大きくなるんです。貨物船はもちろん、旅客船、観光船に至るまでほとんど五百トン以上です。そうすると、いよいよ漁民が漁場で働いて生活をしていくという、その生活の基盤が根本的にくずれるんではないか、こういう不安が出てまいるわけですが、もっと船の制限トン数を、五百トンというのでなくして、たとえば五千トンとか一万トンとか、そういうことで大きい船を規制するような考え方があるかどうか。  それから、同時にまた、瀬戸内海は十万トンも二十万トンもの大きな船が幾らでも通っていいんだという考え方自体がおかしいのであって、少しは大きい船のほうにも規制をするような考え方があってほしいんではないか、こういう気がするんですが、そういう点の考え方についてお答え願いたいと思います。
  103. 亀山信郎

    ○亀山政府委員 先ほど、法の基本的な考え方を申し上げましたおりに触れたと思いますが、今回の法規制を考えていく上で一番大きな点は、いわゆるタンカー等の大型船舶に対する規制を強化するという点でございます。従来なかった規制を大型船に加えていくということでございまして、狭水道等の場合において、あらかじめそこに到着する時間を届けさせて、それによって、おまえ待っておれとか、あるいは夜は通ってはならないとか、そういうふうな従来なかった規制を大型船に加える点が、今回の立法の中で非常に大きな部分を占めておるわけでございます。  それから、漁船の避航義務についてでございますけれども、従来は、先ほど申し上げましたように、現在の特定水域航行令におきましては、たとえば、備讃瀬戸の水域におきましては、そこを通過する漁船以外の船舶がよけるということだけしか書いてございません。これは一切の船舶を意味するわけでございます。それを、私どもは五百トン以上に限るべきではないか。  そこで、しからば五百トン以上と五百トン未満とはどういう数字になっておるかということですが、備讃瀬戸の東の部分でございますが、この付近で見ますと、千三百八十隻というのが大体一日の通行量であります。これはわれわれが調べた数字でございますが、その千三百八十隻のうち、五百トン未満は千二百五十六隻、五百トン以上が百二十四隻であります。したがいまして、数にいたしますと、大部分、九〇%が五百トン未満であります。御承知のように、瀬戸内海は昔からの交通路でございまして、機帆船、帆船の時代から九州−阪神、四国−阪神あるいは中国−四国というところを結ぶ零細な運送業者の数が多いために、そういうことになっておるわけでございます。しかし、仰せのとおり、ああいう水域にべらぼうに大きなものが入ってくるということはいろいろな面で危険を生じますので、先ほど申し上げましたように、それには、通峡にあたっていろいろな制限措置を加えていって安全をはかっていきたいというのが、私どもの今回の法案の非常に大きなねらいでございます。
  104. 柴田健治

    ○柴田委員 法案が出てみないとこまかいことの論議はできないのですが、基本的な考え方だけ一応お尋ねしておきたいと思うのですけれども、漁労中の制限または禁止という場合、この答申の内容を見ると、補償措置また転業措置を講ずべきだという勧告をしておられますが、この点について、漁民のほうからいうと、そんな補償の問題どころではないのだ、この法案自体が絶対反対だ、こう言っておるのですけれども、一応当局の見解だけ聞いておきたいと思ってお尋ねするのですが、この補償についてはどういう方法の考え方を持っておるか、お尋ねしたいと思います。
  105. 亀山信郎

    ○亀山政府委員 漁業を禁止し制限する場合に補償が要るのは当然のことだと私どもは考えております。先ほど申し上げましたように、金銭で解決するだけの問題ではないと思っておりますし、答申にはございましたけれども、はたして現在の状態において禁止をする、たとえば、こまし網等についてそういう声が一部にはございますけれども、これは、それによって生活する、あるいはそれによって水産資源の採取をしておるという事実から考えまして、禁止というような手段を講ずる必要があるかどうかという点が、私どもは一番問題だと思っております。したがいまして、現在のところ、私どもは禁止に至るようなことはいたしたくない、何らかの方法によって禁止をしないで済ませていきたいという考え方を基本的に持っております。私も漁民の方々から、金銭問題だけではないのだということも強く伺っておりますし、また、それももっともだというふうに考えております。ただ、安全を守るためにどうしてもそういう事態が生じた場合には、やはり考えていかなければならない問題ではないか、こういうふうに思っております。  そこで、補償につきましては、現在漁業を主管されております水産庁の御意見もよく伺った上で考え方を固めていきたい、かように考えておる次第でございます。
  106. 柴田健治

    ○柴田委員 何かあいまいな答弁なのでよくわからないのですが、水産庁とよく相談をして措置をきめたいというのですね。そうすると、補償しなければならぬ段階にきたときには、補償のほうは農林省のほうの水産庁でやってくれ、たとえば、現在ある漁業法の中でやってくれ、こういうような逃げの手があるのではないかというような気がするのです。一方では罰則の規定を設けて、その罰則の規定だけで漁民は制限を受けるが、漁業という自分の基盤が失われるについては補償もしてくれない。それは法文に明文化してない。現行の漁業法の中で何とかしろというような考え方があるとすれば、こんな片手落ちの制度はないと思うのです。明らかにすべてを入れるべきじゃないか、こういう考えですが、この点について水産庁長官はどういうお考えなんですか。この補償の問題について御答弁願いたいと思います。
  107. 久宗高

    ○久宗政府委員 補償の問題は、おっしゃるようにいろいろむずかしい問題があるわけでございまして、ただいま保安庁長官からも考え方を申されたわけでありますが、現在、両当事者間におきましてせっかく詰めておるところでございます。
  108. 柴田健治

    ○柴田委員 先ほど審議会のことで、委員の差しかえのことのお答えがなかったのですが、委員の差しかえはできるのですか、できないのですか。
  109. 亀山信郎

    ○亀山政府委員 委員の任期がございますので、いますぐ差しかえができるかどうか、私もちょっと申し上げかねるわけでございますが、先ほど申し上げましたように、委員の構成を見ますと、大日本水産会と全漁連の会長さんに委員に入っていただいておりますが、私どもとしては、全漁連が大体沿岸漁業の方面を代表していらっしゃる、こういうふうに考えておりますし、海運関係では、外航と申しますか、大手と内航と旅客船、この三者の代表が入っておるわけでございまして、そのほかに石油会社等御指摘になりましたけれども、これは、特に大型タンカー等に対する規制をきびしくするという考え方がございますので、それによって関連を非常に大きく持つ向きに入っていただいておる。その他は各方面の新聞関係の方とか、一般的な公益を代表されるような方々というふうな構成になっておりまして、決して沿岸漁業を軽視するとか、これを数で圧倒するというふうな考えは、私どもは毛頭持っておりません。
  110. 柴田健治

    ○柴田委員 この法案の作成をする中で、航路のしゅんせつであるとか、港湾の施設の改善、整備、こういうものを十分しなければならぬという勧告があるのですが、この点について、この法案を立法化する中で、一方ではこうした港湾の整備、改善、または航路のしゅんせつ等をする特別の予算措置等をもってやる、そういう考え方があるのかどうかお尋ねしたい。
  111. 亀山信郎

    ○亀山政府委員 その点につきましては、運輸省の港湾局で、港湾整備五カ年計画というものをつくってやっておりまして、その中で、港及び航路のしゅんせつについて、必要な個所については長期的な計画が立てられておりますので、それをぜひとも予算的に実現していただきたい、私どものほうではかように考えております。
  112. 柴田健治

    ○柴田委員 現状の姿の中でも漁場を荒らされ、いろいろな被害をこうむって、漁民はいまでも困っているのですが、そういう日本全体の漁業のおくれておるその上に、また、今日のいろいろな公害で漁民が困っておるということは、水産庁もよくその実態を認識されておると思うのです。そうしたおくれた漁業に対して、この法を施行するにあたっては、水産庁としてはもっと別な角度で考えなければならぬのではないか。ただこの法案はいいんだと、賛成の意思表示だけでは、漁業というものは伸展しない。やはり漁民の立場、漁業振興という立場、水産庁は何としても最大の責任の機関でありますから、そういう立場で、あくまでも漁業振興、漁民の保護という立場で、この法の制度化についてはもっと発言をして、漁民が騒がないように、漁民の理解とまたそれに対する施策も進めていかなければならぬ。この点について水産庁長官はどういう考え方を持っているのか、お尋ねしたいと思います。
  113. 久宗高

    ○久宗政府委員 御指摘の点はまことに同感でございまして、私どももこの法案に限りませず、漁業に関連のある問題につきましては、必要な発言は常々いたしておるつもりでございます。  なお、海上交通法につきましては、今度の総合的な検討をされた前の、つまり現行制度におきまして、制度のたてまえと実際の運用におきまして、若干漁民が不安を持つようなケースがあったように思うわけでありますが、ただいま長官から御趣旨の御説明がありましたような基本的な考え方でいかれますならば、かつ、具体的な運用につきましても突っ込んだお取りきめができるとすれば、私どもとしては、やはりこの法案の考え方には反対はできない、こう考えておるわけでございます。  ただ、補償問題のお話が出ましたけれども、この種の問題につきまして、どのように法制的にそれを処置するかという問題につきましては、現在、両当事者間におきまして吟味をいたしておりますが、私どもといたしましては、この点がはっきりいたしませんと漁民が非常に不安がるというふうにも考えますので、さようなふうに努力をいたしたいと考えております。
  114. 柴田健治

    ○柴田委員 漁場というものは、長官も御承知のように漁業区が設定され、それぞれ区域があるわけですね。陸上の農業と同じように田んぼとみなしてもいいわけです。ところが、海は広いんだからどこでもとれるじゃないか、七つの海があるんだ、どこでも自由にとれるんだという考え方があるとすれば、これまたたいへんなことなんで、かってにどこででも魚がとれるわけでもなし、どこにでも魚がおるわけでもないのです。そういう点を考えて、やはりこの立法措置についても十分配慮しないと、漁民の方は納得しないと思う。  それから、漁民が納得しないものをやるとするならば、たいへんな政治問題になってくると思うのです。水産庁は何としても漁民を守る立場なんですから、ただいい法律だからといって盲目的に追従していくような姿勢というものはあり得ない。あくまでも農林省は高姿勢になっていただきたい。漁業振興、漁民を守るという立場で、この法案について、漁民の立場に立っての発言をどんどんしていくようにやっていただかなければならぬのではなかろうか。  いままでの動きをじっと観察してみますと、何かついていく、相談があれば相談に応ずるという姿勢、こういう姿勢では、この立法化についてもわれわれは安心できない。やはり漁民のことを考えると、水産庁自体がどうしても受け身である。受け身であるがために、漁民のほうから受け取る感じというものは、非常に不安と心配が出てくる。そのために反対せざるを得ない。何が何でも反対だということになる。もう正月を迎えるが、正月どころじゃないんだ、新年になってこの法律が制度化されたら、われわれはもう漁場もなくなる、いまですらたいへん困っておるのに、それ以上困らされたらたいへんなことになる、こういうことで非常な不安を持っておるわけですから、これらのことについて漁民が騒がないようなどういう措置をとられるか、水産庁の長官として、運輸省のほうがどんな法律をつくろうと、守るべき点は守るという強い姿勢、そういう強い考え方で臨まれるかどうか、その決意を聞かしていただきたいのです。水産庁長官、御答弁願います。
  115. 久宗高

    ○久宗政府委員 全く同感でございまして、さような努力をいたしたいと存じます。
  116. 柴田健治

    ○柴田委員 簡単明瞭でまことに安心したんですが、海上保安庁長官にお尋ねしたいのですけれども、船舶の通行を円滑化するために、海難事故を防止するために、現行法規が不備であるから、それを集約して、統一してりっぱなものをつくる、そういう点についての理解はできるのでありますが、ややもすれば、先ほども私が申し上げましたように、小さい漁民に与える影響を考えずして、大きい船だけを保護する、そういう感じにわれわれは受け取れるわけです。  その前に受益者負担ということを考えられているのかどうか。たとえば、現在でもいろいろな船から、まあ石油タンカーが瀬戸内海を通っているのですが、油が漏れる、また事故で海面に油が流れてしまう、魚がもうとれない、食えない、こういうことで非常な不安があるわけですが、これから万一事故があった場合に、この制度化の中で、大きい船が恩恵をこうむるのですから、そういう場合に受益者負担というものを考えられるかどうか。そして、たとえば船舶漁業保険というような、名称はどうでもよく私がかってに言うのですが、船舶に対してそれだけの安全とか保護というようないろいろな立場で考えるとするならば、利益を受ける大きい船舶について、今後こういう立法化をしてもなおかつ事故が起きた場合、その漁業に対する見舞いなり補償というものについては、全体の船が、受益者が責任を持つのだという立場で、そうした船舶漁業保険というような、名称はどうでもいいが、受益者負担という立場でそういう制度をやられる考えがあるかどうか、それを聞いておきたいと思います。
  117. 亀山信郎

    ○亀山政府委員 ただいまのお説、まことに傾聴いたしました。ただ、そういう問題につきましては私の直接の所管ではございませんので、御趣旨のほどを運輸省の所管の向きに十分伝えまして、検討をいたさせるようにいたしたいと思います。  私どもといたしましては、海上において油を流して水産動植物に被害を与えるというものに対しまして、最近成立いたしました海水油濁防止法、あるいは現行の港則法、あるいは将来できるであろう海上交通法等にもそういう規定を設けるつもりでございますから、そういう法に基づいて、そのような水産動植物等に被害を与える物質を海上に流すものに対しては、どこまでもこれを追及してつかまえるというのが私どものほうの仕事でございます。  それと同時に、そういう油が不幸にして事故によって流れた場合、いち早く漁場あるいは養殖漁業からこういうものの侵略を防ぐ、そのためにオイルフェンスとかあるいは中和剤というようなものも当方の巡視艇で準備をいたしまして、現在でも小規模ではございますけれども、当庁としてはできる限り油によるよごれというものを除去するような努力を払っておりまして、今後ともそういう努力を続けていきたいと考えております。
  118. 柴田健治

    ○柴田委員 水産庁の長官に同じような考え方をお尋ねしたいのですが、水産庁としてはそういう問題で運輸省のほうから相談を持ちかけられたら、これまた漁業に影響する制度でありますから、大きく賛意を表して、積極的な姿勢でそういう制度をつくるように働きかけられる御意思があるかどうか、見解を聞いておきたいと思います。
  119. 久宗高

    ○久宗政府委員 私も、この段階ではっきりした御返事ができないわけでございますが、いま長官の言われましたような趣旨で、検討してみる価値のあるたいへんおもしろい提案ではないかと考えております。
  120. 柴田健治

    ○柴田委員 水産庁の長官に聞いておきたい点は、そうした現在の交通量からだけで判断すると、将来の長期の展望に立っての誤りが出てくるのではないか。いまの交通量、現時点だけで押えてとやかく論議すべきでないんだ。五年先、十年先を考えなければならぬ。五年先、十年先を考えて、いまからどの程度、たとえば沿岸における船の交通量がふえるかということを考えなければならない。また瀬戸内海においても、特に私は岡山ですから、瀬戸内海の交通量を、いまから五年前のことを考えた場合、また今後の五年先のことを考えた場合、たいへん伸び率が違うと思うのですが、その場合、漁場はいよいよ狭められてくるし、漁民の就労制限というか、そういうものが出てくる。いよいよ転職をしなければならぬということになる可能性が、五年先、十年先に出てくる。その前にこの立法化によって、このときにはひとつこういう方法で転職の制度または漁民に対する失業保険制度をつくり、こういう制度を契機として将来のことを考えていく、そういう考え方があるかどうか、そういう点で見解を聞きたいのです。
  121. 久宗高

    ○久宗政府委員 経済発展のテンポから見まして、御説のように現段階でももちろんたいへんな錯綜をしておるわけでございますが、さらに五年、十年ということになりますれば、今日予測し得ないような非常なふくそうぶりになるものと考えられるわけでございまして、さようなことを前提といたしまして、特に瀬戸内海におきます漁業の今後のあり方につきまして、相当長期に見渡しました検討が必要であろうと考えておるわけでございます。現在はやや過渡期でございまして、その方向づけを決定いたしますのに幾つか要素がございまして、まだあまりはっきりした形でこうあるべきだということが打ち出されないのが現状でございます。
  122. 本名武

    本名委員長 中村時雄君より資料要求に関する発言を求められておりますので、これを許します。中村時雄君。
  123. 中村時雄

    ○中村(時)委員 途中で関連ですが、われわれ農林の関係としては、漁業者擁護という立場を中心にその政策の判断を進めていく、これが原則的な問題だろうと思うのです。ところが、実際の問題としては、そういう方向に行ってない。まだ案でありますが、提出されておりませんので資料要求をしたい、こう思っているわけです。  まず第一は、海上交通法案ですか、これは何という案で出されてくるのかわかりませんけれども、提出するにあたって、それまでにおけるところのいろいろな基礎資料があったと思うのです。その基礎資料を御提出願いたい。  それから第二点は、この法律案に対しての関連法律、どういう法律がこれに関連してくるか、その法律。  それから、先ほど質疑の中にありました審議会の議事録並びに委員のメンバー、経歴、職業、その所在地、この三点を要求する次第です。  それと同時に委員長にひとつお願いしておきたい。おそらくこれは運輸委員会に提出されるだろうと思うのですが、必ずこの問題に対して連合審査会の開催をやっていただきたい。これをひとつお願いしておきます。  以上です。
  124. 亀山信郎

    ○亀山政府委員 ただいま仰せの資料は至急取りそろえまして、委員会のほうへ提出いたしたいと思います。
  125. 柴田健治

    ○柴田委員 こういう交通規制が強く出てまいりますと、水産業者に与える影響は、まことに何としても隠せないことは事実です。影響のあることは間違いない。これは水産庁長官も認めておられるとおりであります。われわれの考え方と当局の考え方とは違うかもしれませんけれども、影響の度合いというものは、これはもうたいへんなことになるというふうにわれわれは認識をしておるところなんで、そのために漁民が騒いでおるのも無理からぬ点だと十分理解できるわけです。  それから、年々漁場がいろいろな汚物などで荒らされる。養殖漁業や何かいろいろなことをやって、たくさんの金額を投資して構造改善をやっておるのですけれども、それがふいになってしまうという心配がある。いままでの施設に対するいろいろな影響が出てくる。また、これから投資しようという意欲が出てこない。いろいろな面で、いままで投資した施設が十分効果が出てこない損失、またこれからやろうとする意欲が出てこないという、精神的に与える影響というものは大きい。そういう点について水産庁は、この立法化に伴って、もう一ぺん水産業の振興の抜本的な計画、いままである計画ではなしに、形の変わった、これなら漁民が納得してくれるだろうという、そういう抜本的な計画を、もう立てる必要があるのではないか、こういう考え方をわれわれは強く持つわけです。そういう点についての考え方を聞いておきたいのですが、いかがでしょうか。
  126. 久宗高

    ○久宗政府委員 先般の国会で四つの法律を議論しました際も、きびしいお尋ねがありまして十分お答えできなかったのでありますが、いずれにいたしましてもここ四、五年の経済の成長があまり伸びが激しかったわけでございますので、その影響を相当具体的に受けているわけでございまして、そのような過程の中で、私どもとしましても、いわゆる非常に長期にわたるビジョンというものを描こうとして、なかなか描き切れないでおるわけでございます。現在の段階においては、私どもは、さようなことができるような準備の過程だろうと考えまして、当面の問題ではなくて、やや長期の問題に対処できるような準備を実は進めつつあるわけでございますが、まだ結論的に申し上げる段階にきていないわけでございます。いまの瀬戸内海におきます一連の問題にいたしましても、やはり相当労働人口の移動の問題も含んでまいりますので、この辺もよく頭に置きまして、基本的な考え方をまとめる必要があろうと思うわけでございます。  なお、海上交通法案につきましては、まだ内部で議論中でございまして、詳しく論議できないわけでございますが、ただいまいろいろ御注意ございました点、私どもも常に気がついて運輸省当局にも申し上げている件でございますので、今後の案を固めます段階におきましても、さらに詳細にお話を進めてまいりたいと思っておるわけでございます。  ただ、ちょうどこういう過渡期でございますので、先ほどもちょっと申し上げたのでございますが、従来やっておりましたやり方では、現在の漁民の方々は不安に思われるわけでございまして、この点私どももよくわかるわけでございますが、先ほど保安庁長官の言われましたように、非常に問題を限定して考えていこうとしておられます考えがもし貫かれるとすれば、少なくともいまの漁民の御反対の中で、相当部分が誤解に基づくものであるということも言えないこともないと思います。しかし、やはり従来の経緯から申しまして、この種の問題につきましては基本的な原則だけではあぶないわけでございまして、かりにこういう方向に進むといたしましても、その実施の細目に至りますまでの相当はっきりした考え方というものを固めてまいりたい、さような点につきまして、水産庁といたしましてできるだけの努力をいたしたいと考えておるわけでございます。
  127. 柴田健治

    ○柴田委員 長官の意思は十分理解できたとは思いませんけれども、そういう姿勢で取り組んでおられるし、また将来もそういう姿勢で熱意を持って取り組まれるということを理解して打ち切りたいと思いますが、これは強い要望としてお願いしておきたいのですけれども、早急にそういう計画を立ててもらいたい。それでわれわれもともどもに検討いたしたいと思っております。  そこで海上保安庁長官に聞いておきたいのですが、法案の中で特定区域を制定する場合に、たとえば都道府県知事、そういう県に相談をしてきめるというようなお考えがあるのかどうか、法案の中に明記されるかどうか、この点を聞いておきたいのです。
  128. 亀山信郎

    ○亀山政府委員 従来は政令できめられておりまして、政令は、御承知のように閣議で決定されるわけでございますが、都道府県知事という公共団体の首長に対しまして、意見を聞くあるいは協議するという御要望も、瀬戸内海の関係の十二の県の水産主管課長会議の中でもそういう御意見が出ておりますので、現在、法律的にそういうことが妥当であるかどうかということを検討いたしておるところでございます。私どもは、できる限り地元漁業許可をなさる県知事に御相談申し上げてきめていきたいという方向でものを考えておる次第でございます。
  129. 柴田健治

    ○柴田委員 今度の法案の中でわれわれが関心を持つのは、何としても漁業振興という立場、それを忘れてはならないわけでありますから、漁業振興即漁民の保護、漁民の社会的、経済的すべての地位の向上ということを忘れてはならぬわけでありますから、そういう点を十分考えていくとするならば、どうしても補償の問題にからんでくるという気もするわけです。その他いろいろな施策の中で漁民を理解さしていかなければならぬことは当然でありますけれども、補償問題になってくると、ここにいろいろな解釈の問題が出てくるのではないかという気がする。たとえば、都道府県知事が許可を出しておる漁業、それから自由漁業というのがある。特に問題になるのは、そういう小さい自由漁業なんですが、この自由漁業に対して保安庁としてはどういう見方をしておられるのか、それを聞いておきたいのです。
  130. 亀山信郎

    ○亀山政府委員 漁業の制限、禁止という場合に、私どもはトロール、底びき、こまし網、けたあるいは網を引っぱってする漁業だけに限りまして、一切の漁業というふうには考えてはおりません。たとえば、一本釣り等の自由漁業を禁止するというふうなことは、われわれは全く考えていないわけでございます。と申しますのは、船舶の交通上一本釣り漁業が非常に大きな障害になるとか、あるいは非常に大きな危険を及ぼすというふうなことは、現状では私どもちょっと考えられないと思います。つまり、海上衝突予防法が漁労中の船舶に対して優先権を認めておりますのは、行動が不自由である、網を引っぱっておることによって普通の船のように自由に方向転換ができないのだということから、海上衝突予防法は大原則として、漁労中の船舶に対してほかの船はそれをよけなさいということになっております。  ただ、先ほど申し上げましたように、特定のごく限られた水域については、それだと交通がとまってしまうから、その関係を逆にしておる、こういうことでございまして、一切の漁業を制限するとか禁止をするとかいうふうなことは、制限、禁止を考えます場合にも全然考えていないわけでございまして、自由漁業というふうなものについては、われわれは特に制限とか禁止とかの対象としては考えない、かように思っております。
  131. 柴田健治

    ○柴田委員 考えないということを聞くと、これはいろいろとり方によって違ってくると思うので、実質的には影響を受ける。一本釣り、そういう自由漁業のほうが、そうした特定区域なりいろんな規制をかえって受ける、かえって影響があるということが出てくる可能性があるのです。考えてない、それならもう全然影響ないのか、影響がないんだろうな、しろうとにはそういう暗示を与えるような印象を与える答弁なんですね。ところが、実質的には影響があるとわれわれは考えております。その点については、水産庁長官はどう受けとめておられるのですか、お答え願いたい。   〔委員長退席、高見委員長代理着席〕
  132. 久宗高

    ○久宗政府委員 これも、規制がどういう形でどの程度行なわれるかによると思うのでございますが、前もって抽象的に議論をしてもしようがないのではないかという感じがするわけでございます。保安庁長官が、いまの網を入れておる船は避けにくいわけでございますから、したがってほかのほうに避けさせる、それができない場合には禁止ということにいかざるを得ないというふうにお考えになるのはよくわかるわけでございますけれども、これはやはり現実の規制が行なわれます場合の当該海域の態様によりまして、きわめて常識的に考える必要があるのではないかというふうに考えます。
  133. 柴田健治

    ○柴田委員 与えられた時間が参りましたから、この辺で打ち切りますが、いずれ正式に法案が出てまいりますし、そのときはいろんな資料も要求——先ほど中村委員からも要求がございましたが、いずれ十分質疑もしたいと思っております。きょうはまだ法案が出てまいっておらないので、ただ、いま漁民が騒いでおる気持ち、問題点、悩み、常に不安な中で心配しておりますから、そういう基本的な問題だけをお尋ねしたのでありまして、いずれあらためてきめのこまかい御質問を申し上げる時期がくると思いますので、その節は親切に、また、その問題が大きく発展したいへんな政治問題にならないように、法案作成についての十分な配慮と同時に、また漁民の立場を無視しないように、あくまでも漁民を大前提にして考えてもらう、そういう立法措置を講じてもらいたいことを強く訴えて、質疑を終わりたいと思います。ありがとうございました。
  134. 高見三郎

    ○高見委員長代理 佐々栄三郎君。
  135. 佐々栄三郎

    ○佐々委員 海上交通法につきまして、ただいま柴田委員からかなり詳細にわたって質問がありましたが、私もこれに関連をいたしまして、若干のお尋ねをいたしたいと思うのであります。  特に瀬戸内海の漁業は、最近、海面の埋め立てあるいは工場の排水あるいは大型船舶の廃油、こういうようなものによって漁民がだんだん圧迫をされておるというのが実情でございますので、私ども日本社会党は、特に瀬戸内海の漁業につきまして、次のような政策、方針を持っておるわけであります。  まず第一は、「瀬戸内海区内の水質を汚染から守るためすみやかに効果的な水質基準を定め、汚水、汚物および船舶廃油等の流入、投棄を規制する。」第二に、「国の責任で、魚介類のふ化放流事業を推進する。」第三、「不慮の事故から瀬戸内海区を守るため、マンモスタンカーの航行を禁止する。」こういう方針を、特に瀬戸内海漁業に対しまして持っておるわけでございます。これにつきまして水産庁長官はどういうふうにお考えになるか、まず御見解を承りたいと思います。
  136. 久宗高

    ○久宗政府委員 瀬戸内海のみならず、一般に公害によります沿岸漁業の荒廃が非常に進んでおりまして、私ども苦慮しておるわけでございますが、先般来御討議いただきました公害基本法もできまして、これによりまして、国の全体制といたしましてこれに取り組もうとしているのが現在の段階であるわけであります。水産の側からだけ見ますと、大きな基本方針がきまりましても、その具体的な運用いかんによりまして非常に問題が多いわけでございまして、今日まで参りました経緯から見ますと、水質の問題にいたしましても、私ども自身もこれについてもっとしっかりした態度で臨まなければならなかったなというふうに反省をしておるわけでございます。  瀬戸内海そのものの水質の基準といった問題につきましても、御承知のとおり、あそこは世界でも、水面単位に見ました場合に、水面単位の生産力ではほとんど最高の水準であろうと思うのであります。魚の組成はだいぶ変わりまして、様子は変わっておりますけれども、やはり海の持っております生産力というものをまざまざと見せられるところでございますが、地域的に見ますと相当問題があるわけでございまして、水質の基準につきましても、基本的な規制が必要であろうというふうに考えておるわけでございます。ただ、これは技術的にはなかなかむずかしい問題であろうというように思っております。  それから、ふ化、放流の問題につきましては、不十分ではございますけれども、栽培センターその他で相当やっておるわけでございまして、私どもといたしましては、これがまだ試験段階の域を出ない程度のものでございますけれども、将来相当の効果を持ってくるものといたしまして、非常に期待をかけておるわけでございまして、さような一連の方法によりまして対処してまいりたいというふうに思っておるわけでございます。  なお、第三の点につきましては、ただいまさような問題も頭に置きました海上交通安全につきましての基本的な制度が検討されているわけでございまして、その中におきまして論議をしてまいりたいと考えておるわけであります。
  137. 佐々栄三郎

    ○佐々委員 時間が制限されておりますので、その程度で次へ移ります。  この法律の法案要綱と申したらよいでしょうか、この法案要綱の目的は海上の交通安全というもの——先ほど海上保安庁のお答えがございました、つまりこの法律によって保護せられる一般的な法益というものは、海上交通の安全と災害の防止ということ、これはよくわかります。そこで私が聞きたいのは、一般的な法益はそういうふうに理解されるわけですが、それではこれによって具体的に法益を受けるもの、それは一体だれか、これについて御見解を聞きたいと思います。
  138. 亀山信郎

    ○亀山政府委員 海上交通法の目的としましては、いま御指摘のとおり、船舶の交通の安全と船舶交通に基因する災害の防止ということでございますので、第一次的には、海上にある船舶交通に従事している者の生命、身体の安全、積み荷及び船舶の安全が第一次的でございます。しかしながら、災害防止という面では、船舶の交通事故が、最近のようにタンカー等のような非常に危険なものを積んだ船がふえてまいりますと、事故によって起こる被害はその船舶の乗り組み員、船舶の積み荷あるいは船舶それ自身にとどまらず、沿岸の産業、水産動植物、さらには無形の財産ともいうべき美しい海岸をよごすというふうなことでございますので、私どもは、第一次的には船舶乗り組み員等でございますが、第二次的には全国民と申しますか、それに関連する沿岸住民あるいは水産関係に従事する方々、それらがすべてこの法益を受くる対象と考えております。
  139. 佐々栄三郎

    ○佐々委員 要するに、漁民に対してもおまえのためにもなるんだぞ、こういうようなわけだろうと思います。ところが、問題は、やはり漁民としてはその法律が施行されたときに受ける利益と受ける被害、これを比較いたしました場合に、そこに非常に大きな懸隔があるということは問題だと思います。先ほど柴田委員の質問に対してお答えしておられたところを聞きますと、漁船に関係ある事故につき若干の数字をあげておられましたが、私はその数字の根拠を知りませんから、これについてはこれ以上申し上げるつもりはありませんけれども、前々回の当委員会におきまして、斎藤委員と保安庁の次長さんだったと思いますが海難事故につきまして論議をせられたその速記録を私拝見したわけです。それによりますと、年々海難で死亡いたします者が約千二百人ぐらいある。ところが、この事故の発生水域は全部遠洋でありまして、全部というとあるいは間違いかもしれませんが、ほとんどが遠洋であって、内海地域におきましては死亡者が出るような事故は起こっていない。それからまた事故の原因を見ますと、これまた保安庁次長のお答えでありますが、エンジンの不整備、それから荒天のキャッチがおそかったこと、荒天に対する避難方法が不適当であったということでありまして、衝突事故というものはほとんどない、こういうような質疑応答がなされております。  そういう点から考えてみますと、この法律によって規制しようとする内海におけるこの交通安全という問題は、漁民の立場から申します限り、それは内海の問題でなく遠洋の問題であり、衝突事故でなく、気象を早くキャッチして早く救済に出動をするというような問題にむしろ重点を置かなくてはならぬと私は思います。そういう点からいたしますと、漁民のためにもなるというような言われ方は、私はどうも納得できない。漁民のためを考えるならば、先ほど言ったところの遠洋あるいは衝突事故以外の事故について、もっと適切な、親切な方策が講じられるべきだと私は思うわけです。したがって、私はこの法律によって具体的法益、具体的に利益を受ける者は漁民でなくて、いわゆる海上運送業者あるいは大企業の荷主、こういうものだと私は考えるわけです。これについてあなたの御見解もあると思いますが、後ほど述べていただいていいのです。  その次に、この法案要綱というものがどういうような必要から生まれてきたか。これは先ほど柴田委員の質問に対してもお答えがありましたので、あまり詳しく御説明を聞こうとは思っておりませんが、先ほどの私の申しましたこととあわせて、ひとつ簡潔に御答弁をいただきたいと思います。
  140. 亀山信郎

    ○亀山政府委員 最初の御指摘の、瀬戸内海等の内海においては漁船の事故が少ないのではないかというお話でございますけれども、確かに比較といたしましては、漁船の事故は約四二%が遠洋で起こっております。したがいまして、六割が内海及び沿岸三海里以内の領海内でございます。これに比べまして普通の商船では、沿岸三海里以内と港内というものを合わせますと七二%でございますけれども、瀬戸内海におきましては、やはり非常にたくさんの漁船がございます。これらと一般商船との衝突事故は、先ほど数字を簡単に申し上げましたけれども、現実にあるわけでございます。これらの漁船並びに一般商船その他の交通秩序をつけるということが、やはり漁業にとって利益の面もあります。しかし、それによって制限を受ける面もある。これはやはり安全のために、一般の道路交通でも、利益を受ける半面もあり、また安全のために制限を受ける半面もあるということであろうと私どもは考えております。  それから、大企業のためにのみというふうなことはわれわれは考えておりません。一般の海上における貨物船といいましても、瀬戸内海には零細な一ぱい船主が圧倒的な多数を占めております。通行船舶の九割近いものが小型鋼船でございまして、これらが零細な事業者であるという点は、よく先生方も御存じのことだと考えております。  この法律の必要性は、先ほど申し上げましたように、従来からある種の規制はございますけれども、最近のように船の数がふえてくると、あるいは船の質が変わってまいりますと不十分である。ことに港則法で、港の中では相当の規制が行なわれておりますが、港の中と同様に、船の往来の激しい狭い港の入り口、たとえば浦賀水道、あるいは備讃瀬戸あるいは来島水道、こういうところに対するいままでの規制が、たとえば大型船に対して全くの野方図といいますか、大型船の規制というふうなことが行なわれていない。これに対する交通規制を、あるいは一方通行とか、あるいは航行経路を安全な水路に変えさせる、迂回であってもそういうところを通れというふうにすること、そういう点が新しく必要となって出てきたわけでございます。
  141. 佐々栄三郎

    ○佐々委員 内海で漁船が関係した事故があることは否定しません。しかし、それは人が死ぬような大事故ではない。交通安全のために規制せぬよりしたほうがよいのは当然だが、漁民としては、内海でなく遠洋で年々千二百人の漁民が死んでいることこそが重大だというのです。  時間の関係で次へ進みますが、なぜこういうものが必要になったかということについて、やはり最近の高度経済成長政策による輸送量の増加、それから大型船舶やタンカーの増加、就航数の増加というようなことからこういう必要性が出てきたと思うわけです。漁民の船がふえたかというとふえておりませんし、漁獲量がふえたかというとこれまたふえておりません。つまり、これは漁民側の要求、必要性から出たものでなくて、高度経済成長政策という政策から出たものだということは、これはあなたも確認されますね。
  142. 亀山信郎

    ○亀山政府委員 船舶の交通量の増大は、経済の成長に基づくものであることは、先生の仰せのとおりでございますが、そういう現実を踏まえた上で、こういう船に対する交通に秩序づけ、規制をしていくということが、結局、そこで漁業をする人々にとってもその安全を守るために必要である、私どもはかように考えております。
  143. 佐々栄三郎

    ○佐々委員 これ以上申しても、お答えは同じだろうと思いますから申しませんが、ただ、私が申したいのは、何の罪もない漁民に、そういうような漁民以外の方面から起こってきた原因によって漁業を制限、禁止しようという考え方ですね。しかも、この要綱を私は見ましたが、大型船舶に対しての一般的な規制ももちろんあるのです。あるのですけれども、先ほど私が冒頭に申したように、たとえば、瀬戸内海地域にマンモスタンカーを入れるなという要求をわれわれは持っておるが、そういうようなことについては一向規制しようとしない。漁民側だけを規制しようとしておるということを私は問題にするわけなんです。水産庁長官、これについての御意見を聞きたいと思いす。
  144. 久宗高

    ○久宗政府委員 漁民の感覚といたしましては、おっしゃるとおりな受け取り方をすると思いますし、私どももさような感じを持っておるわけであります。ただ、いまの大型船を入れる必要があるかどうか、入れる場合にどの程度の規制があれば可能であるかといったような問題につきましては、やはり政府部内におきましても、統一的な考え方を持ちまして対処すべきものと考えておるわけでございます。
  145. 佐々栄三郎

    ○佐々委員 次に進みます。  まずお聞きをいたしたいのは、避航義務と漁業の制限、禁止の問題でありますが、それより先に、まず第一番に狭水道としていま指定しようとしている水域はどこか。それから「等」ということばがありますが、それもあわせて水域をおっしゃっていただきたいと思うのです。
  146. 亀山信郎

    ○亀山政府委員 現在私どもが考えておりますのは、東京湾の入り口である浦賀水道付近、伊勢湾の入り口である伊良湖水道付近、瀬戸内海におきましては備讃瀬戸、来島水道、釣島水道、これらの地点を考えております。  ただ、こういういわゆる「狭水道等」と「等」の字が入っておりますけれども、狭水道というものにつきましては、大体従来ある程度慣習的に、海難審判例等によって、狭い水道というのはこういうものだという判例による一つの基準がございますけれども、それだけにとらわれるわけではなく、実際に船舶交通量の多い危険な海域というふうに考えまして、先ほど申し上げました数カ所を考えております。しかし、これをきめていく過程におきましては、十分関係者の意見を聞きつつその範囲をきめていきたい、かように考えております。
  147. 佐々栄三郎

    ○佐々委員 次に海上衝突予防法の問題につきまして、前の質問者への答えとして、これは国際条約だ、こうおっしゃいましたが、それに間違いありませんか。
  148. 亀山信郎

    ○亀山政府委員 正確に申し上げますと、国際海上衝突予防規則というふうなものが国際間の取りきめとしてできておりまして、わが国はこれを受諾しております。そして実質的に過半数以上の国が受諾をしておりますので、効力が発生をしておりますが、いわゆる厳格な意味での条約というよりは、むしろ一つの国際取りきめとして考えたほうがよかろうかと思っております。
  149. 佐々栄三郎

    ○佐々委員 海上衝突予防法二十六条によりますと、「漁ろうに従事している船舶以外の航行中の船舶」すなわち一般の船舶は、「漁ろうに従事している船舶」すなわち漁船の「進路を避けなければならない。但し、この規定は、漁ろうに従事している船舶が航路筋において他の船舶の航行を妨げることができることとするものではない。」こういうふうな規定になっておるわけです。  そこで私がお尋ねをいたしたいのは、この規定は漁業保護、漁民保護についての国際的な取りきめであり、言うならば、これは漁民、漁船に対する憲法的な規定だ、原理的な規定だ、こう思うわけです。ところが、今度制定されようとしておる内容によりますると、まっこうからこれに対して背反をしておるわけですね。これを一体どういうふうにお考えになっておられるのか、これはひとつ漁民保護の立場にある水産庁長官からお答えをいただきたいと思います。
  150. 久宗高

    ○久宗政府委員 私からお答えするのは適当でないので、保安庁長官からお答えするのが筋だと思うのでありますが、いまお尋ねの避航義務の関係につきましては、現行法の水域におきます問題につきまして、先ほども説明がございましたように、一定のトン数以上のものと以下とを分けまして、避航の義務の関係を具体化するわけでございまして、私どもといたしましては、あるトン数によります限度があるほうが、やはり合理的ではないかと考えております。
  151. 佐々栄三郎

    ○佐々委員 ちょっと聞き取りにくかったのですが、私は、この衝突予防法の二十六条は、これは憲法的な規定だとしますと、いま規制しようとしておる海上交通法の内容は、この原則的なものに背反しておるんじゃないか、こういうことをお尋ねしたのです。それでは、これはひとつ保安庁のほうからお答えをいただきたいと思います。   〔高見委員長代理退席、委員長着席〕
  152. 亀山信郎

    ○亀山政府委員 仰せのとおり、海上衝突予防法におきましては、原則として漁労中の船舶——漁労中の船舶とは、網、なわまたはトロールを引っぱる船であるというように定義が出ております。そういう船を避けなければならない。ただし、航路筋において船舶の航行を妨げることができることとしてはならないということがございまして、国内規則でこれと違う定めをすることができる、河川、湖沼、内水については別の定めをすることができるということで、現在の特定水域航行令はその条、項に基づいて政令で規定をされておるわけでございまして、私どもといたしましては、衝突予防法のただし書きというものは、航路筋において妨げることができるものとしてはならないのだから、常に漁船が、つまり、一定のトロール等の漁業従事船が権利船であるのだぞということではないのだ、ある場合には、航路筋においては、漁船のほうが避けることが必要な場合もあるんだというふうに解しております。そして、やはり内水については別の定めをすることができるという、それに基づいて特定水域航行令では、広い海面のうちである一定の水域を限って漁船に避航義務を課しておる、こういう組み立てになっておりますので、原則に対する例外という点では、先生のおっしゃるとおりであります。
  153. 佐々栄三郎

    ○佐々委員 私は、この「航路筋において他の船舶の航行を妨げることができることとするものではない。」という規定のニュアンスからいいますと、やはりそういう大原則はあるけれども、権利を乱用してはいけないというような意味だろうと思うのです。  それからもう一つ、これはただいまのお答えにあった特定水域航行令第四条で、特定水域においては漁船が一般の船を避けなくてはならぬというふうな規定がございます。しかし、これがあるから今度もできるんだという考え方も私はどうかと思うのです。大体、海上衝突予防法第二十六条が、漁民の権利を条約的、原理的に宣言している規定とするならば、これにまっこうから背反するこの特定水域航行令第四条は、まことに不穏当だと思うのです。だから、これがあるからまた次もできるんだというような解釈は、私はとり得ないのじゃないかと思うのですが、いかがでしょう。
  154. 亀山信郎

    ○亀山政府委員 海上衝突予防法は、すべての海域全般に通ずる原則を示すものでございまして、特殊な海域におきまして必要があった場合に、これと異なる定めをするということは、決して海上衝突予防法に違反するものでもないし、また、法の精神に違反するというふうには考えておりません。海上衝突予防法でそういう規定を置いております趣旨は、網やなわを引いておる船は行動が不自由である、したがって、行動が不自由な船と行動が自由な船とが行き会い関係を生じた場合に、行動が比較的自由なほうのものから先によけろというので、やはり基本的には海上における船舶の互譲の精神というものから出てきておる。各自がかってに走り回ったならばむしろ大きな災害が起こる。その互譲の精神をあらわしたものである、かように考えておりますので、特定の水域において交通量が多い場合には、漁船のほうから避けていただくということも、場合によれば合理的な場合がある、かように考えております。
  155. 佐々栄三郎

    ○佐々委員 私は、その互譲の精神は、互譲したら生きられない漁民のほうに要求すべきでなくて、大型船舶のほうへ要求すべきだと思うのです。それがそもそもこの海上衝突予防法二十六条の趣旨だと思うのです。そういう点で、まああなたと一致しません。しかし次に進みます。  その次は、もう条文を読むのは省略しますが、要綱十三条の後段の漁業の制限、禁止でございます。こういうきびしい規定は、海上衝突予防法や特定水域航行令の中にもあるのかどうかということをお伺いしたいと思います。
  156. 亀山信郎

    ○亀山政府委員 海上衝突予防法、特定水域航行令には、漁業の制限、禁止の規定はございません。
  157. 佐々栄三郎

    ○佐々委員 そこで漁場に入ることができないというような、漁民から漁場を剥奪するというのは、漁民から生命を剥奪するのとこれは同じです。憲法は生存権、勤労の権利、財産権、職業選択の自由権、こういうようなものを保障しておるわけです。ただし、公共の福祉の必要がある場合には、これは御承知のとおりある程度制限できますね。私は、こういうような漁民の生活権、生存権を否定するというような法律を、一片の法令によって規定することができるのかどうか、根本的な憲法の立場からも疑義を持っておるのですが、これについてのあなたの解釈をお聞きしたいと思います。
  158. 亀山信郎

    ○亀山政府委員 私どもは、先ほど来申し上げておりますように、漁民にとりましては、法律的に可能であろうとなかろうとも、従来の長年の生業を奪われるということに対しては、簡単に納得し得る問題ではないということも十分承知をしております。したがいまして、一定の漁労を禁止するとかあるいは時間を制限するというふうなことは、公益上全くやむを得ない場合に限らるべきだというふうに考えております。  ただ、漁業法三十九条であったかと思いますが、漁業調整上あるいは船舶の航行、停泊、係留等の公益上の必要がある場合には漁業権の取り消しができるとか、あるいはその前のほうで、漁業権に対して、公益上の必要によって条件を付することができるとか、あるいはその規定が、大臣許可漁業に準用されておるというふうなことから考えまして、交通安全という立場からは非常に限られた条件のもとにある種の漁業の禁止は可能ではないか、かように考えております。
  159. 佐々栄三郎

    ○佐々委員 それは漁業権等の行政権によって個別的に付与された権利の問題で、そういうものは海上衝突予防法は対象としていないと思います。これとは次元の違う問題です。いずれにせよこの法律は、漁民の立場を忘れた、あるいは無視した法律だと思います。結局のところ漁民は、いままでは高度経済成長政策のひずみ、しわを、海面の埋め立てとかあるいは廃油とか、汚水とかというものによって受けてきましたが、今度は漁場そのものを剥奪されようとしているのです。だから私は納得できません。一口で言うと、漁民に対して、そこのけそこのけお馬が通る、お馬の上には、高度経済成長政策によって伸びてきたところの大型船舶、大企業、そういうものが乗っておると思う。漁民としては、これはまことに迷惑な話です。  今日、農民の土地につきましては、土地利用区分とかあるいは農業地域振興法というような形のもので、いわゆる領土宣言というものが行なわれようとしておる段階です。漁民の立場からも、やはり私はそういうようなものが制定せられてしかるべきだと思うのです。私は、水産庁長官はこの点で立ちおくれをしておると思うのですが、いかがでしょうか、水産庁長官のお考えをひとつお伺いしたいと思います。
  160. 久宗高

    ○久宗政府委員 お説のような考え方もあり得ると思いますが、海域なり海の利用という点になりますと、そう簡単でないのではないかというふうに思います。
  161. 赤路友藏

    赤路委員 二点だけ関連して簡単にお伺いしますが、ちょっと変わったことをお尋ねするのですけれども、いま姫路の妻鹿に大きな埋め立て地ができて、出光興産が石油コンビナートをあそこにつくるというので、通産省のほうへ許可申請をしたわけです。それを見てみますと、埋め立てた陸岸から海上へ六千メートル、そこへ二十万トンのタンカーを停泊させて、そして油をタンクヘ上げるという。私は二十万トンのタンカーで、どのくらいの時間で油を上へ上げるか知りませんが、これはどうでしょうか、航海の安全には支障ないですか。これが一つ。  それから二十万トンの船が、何時間かかるか何日かかるか知りませんが、沖合い六千メートルのところへ停泊して油を入れる。これはいままでのお話を聞いて、長官の御意見からいけば、航海の安全を守るためには絶対許可はできぬということになるのですが、その点いかがでしょう。
  162. 亀山信郎

    ○亀山政府委員 申しわけありませんが、私、具体的な計画は承知いたしておりませんけれども、沖合いに出していわゆるシーバースによって荷役する場合、通常二十万トン程度のものですと二十四時間ないし四十八時間です。これに似た例としては、宇部興産が宇部沖にシーバースをつくるということで計画がございましたおり、そのシーバースの置かれる地点が、ちょうど豊後水道から上がって関門へ抜ける、私どものことばで常用航路、普通の船が通る道に当たっておりますので、そこはやめてもらいたいということを申し上げて、場所をずらしていただきました。これは、実は現在私どもにそういうものを規制する権限がございません。そこで港の中でございますと、これは港域内における工事作業でございますので、現行港則法で許可をする、あるいは不許可にするということができますけれども、現在では、新たに埋め立てた沖のほうということになりますと、現行法ではできません。私どもは、先ほど来御議論になっておる海上交通法で、そういうところまで手を伸ばしたいと考えておるのでございます。
  163. 赤路友藏

    赤路委員 海上保安庁の長官に申し上げておきますが、いまこれのために共同漁業権はすでに抹消しているのですね。おそらく具体的なものとしてこれはあらわれてくると思う。見てみますと、大阪のほうから飾磨港へ入るまともの航路になる。こんなものが許されて、漁船が何かちょろちょろするのはいかぬというのはちょっとおかしいことになるので、十分ひとつ御検討を願いたいと思います。  それから水産庁長官に一点だけ。先ほど佐々君から瀬戸内海の漁業上から見た重要性といいますか、このことを質問したら、マンモスタンカーを入れぬとか、それから採苗されたものをここで放流するとか、いろいろ言ったわけなんです。これはそのまま長官はその重要性は認められて、これからいろいろそうしたことも試験段階としてやっていく、こういうことだと思うのですよ。交通安全を確保するということは、これはいいことでしょう。それはそれでいい。ただ、瀬戸内海に関する限りにおいてはちょっと考えなければいかぬ。たとえば、日本海であるとか太平洋のどこかであるとかという外海でなしに、瀬戸内海の場合は、特に日本の場合、あれは沿岸漁業モデルケースになっておる。いま養殖を盛んにやっておりますけれども、そうでなしに、採苗したものを向こうでどんどん放流して、瀬戸内海における漁業というものを伸ばそう、こういうような立場、これは単に漁民のためじゃない。これだけはひとつ覚えておいてください。単に漁民のためだけじゃない。私は率直に申し上げますが、統計を見ていただけばわかります。四十年の統計を見てみますと、いま盛んに農林省が奨励しております畜産関係、これは牛から豚から馬から羊、それから鶏、ブロイラーまで全部入れて大体七十五万トンです。家畜の屠殺したものが七十五万トン。ところが、魚のほうの統計は四十年は六百九十万七千トンであります。これに鯨を加えますと、七百十万トンになるわけです。要するに、国民のたん白栄養源はほとんど魚に依存しているといっても、数字の面からはおかしくない、これが現実なんです。  もう一つ申しますが、農林省が五十一年を押えて食糧の自給というので一生懸命になってやっています。米はいいでしょう。しかし、畜産はそう簡単に伸びない。そうすると、どうしてもウェートは魚にいかざるを得ない。ところが、いまでは七百万トン前後が日本の大体の水揚げの量になっている。もうこれから大きく伸ばすことはかなり困難性が伴う。特にその六百九十万トン、七百万トン前後の魚の中心は漁船漁業なんです。内海から沖合いへ出かけての漁船漁業がその大半を占めておるのであって、必ずしも国際的な、大手のやっておる漁業が全体の中では大きなウエートを占めない。そういう面から見ますと、この瀬戸内海の今後のあり方は非常に重要なことになる。これは、漁民の生活の問題だとか何だとかいうことはもちろんありましょうが、より以上に、国民の魚類たん白源をどうするかということがこれからの大きな問題点なんです。長官のほうでもおわかりなんでしょう。これから十年たったら、おそらく九百万トンから一千万トンの魚類がなければならない、こういいながら、いま七百万トンでくぎづけされるのではないかという現状にある。  こういうことを考えてまいりますと、私は交通安全をはかっていただくことはけっこうなんですが、瀬戸内海における漁業安定を中核にしてその上に交通安全を確保するという、その順序を、重点の置き方をひとつ十分御検討願いたい。いずれにいたしましても、通常国会でこれは法律として出されることと思いますが、そのときに十分検討はさしていただきますが、あらかじめそういう事態にあることをお知りおき願いたい。私の言っていることに間違いがありましたら、長官、御訂正願ってけっこうですが、いかがでしょう。
  164. 久宗高

    ○久宗政府委員 全く同感でございまして、水産の問題を話します場合に、いつも食糧確保でございますとか、動物たん白云々とか、まくらことばのように惰性で言ってまいりましたわけで、ただいま御指摘のように、計数ではじいてみましても実は相当なギャップがあるわけでございまして、私どももあらためてさような意味合いを考えて対処しなければならぬと考えておるわけでございます。
  165. 佐々栄三郎

    ○佐々委員 避航義務等の制限、禁止を規定する十三条のほかにも、漁民の権利を制限する種々の規定があり、また補償、罰則、審議会等問題点がたくさんありますが、時間の関係上後日に譲って、この問題についての私の質問はこれで終わります。水産庁、海上保安庁は御苦労でございました。  それでは、食糧庁の方に米の問題を少しお聞きしたいと思います。  御承知のように、いま消費者米価と生産者米価を当初予算に組み込むかどうかという問題や、生産者米価と消費者米価の同時決定の問題、それから時期別格差や予約減税の廃止の問題等、いろいろ米の問題が政府の大きな問題になっておるようです。私、実は現在の段階におけるこれらの問題についての政府の見解を聞きたいのですが、この御質問を新任の次官にするということは少しお気の毒であると同時に、正確なお答えをいただけるはずもないだろうと思いますので、これは省略します。  ただ、私がこの際お伺いしたいと思いますのは、ことしは約千四百万トンの増産でございます。ところが四十二年度の持ち越し米が、十月で大体六十四万トン、それから四十三年末の持ち越しの見込量が大体二百万トンをこすというような状況になっておるように承っておるのでございますが、これについての食糧庁としての見通しをまずお伺いしたいと思うのです。
  166. 田中勉

    田中(勉)政府委員 ただいまお話のございました先米穀年度末と申しますと、この十月末日におきましての古米の持ち越しは、大体先生のおっしゃるとおりでございます。それから本米穀年度末と申しますと来年の十月末日でございますが、手持ち量は、先ほどお話しございましたように、ことしの生産が千四百万トンを上回ることは確実でございますし、また、現在政府の買い入れ量も非常に増大をしております。最終的にことしの米がどの程度になりますかということは、まだいま進行途上でございますので、最終的な数字はわかっておりませんけれども、いずれにいたしましても九百万トンを相当大幅に上回るということは予想される現状でございます。そうなりますと、今米穀年度末の古米の持ち越しは、先生もおっしゃったように二百万トンを相当上回るのではなかろうか、こういうぐあいに予想いたしておるわけでございます。
  167. 佐々栄三郎

    ○佐々委員 それでまずお伺いしたいのは、その持ち越しの数量が、今後もかなり増大をするという見込みを持っておられるのかどうかということと、そういうような段階を見通しまして何らかいま政府がお考えになっておられる米対策というものがもしあれば、お聞かせをいただきたいと思うのです。
  168. 田中勉

    田中(勉)政府委員 先ほど申し上げましたように、相当量の古米持ち越しがここに現実の問題として出てくることは予想されるわけでございます。今後もこのような状態が予想されるかどうかという御質問でございますが、御案内のように、ことしの米の生産は記録的な大豊作ということが非常に大きな原因になりまして、先ほどの六十何万トンの前年度の持ち越しに比べまして二百万トン以上になる、こういうことでございます。決定的な要因は、やはりことし記録的な大豊作であったということが一つでございます。  それから、問題の需要面の動向でございますが、需要の傾向をちょっと簡単に申し上げますと、最近一、二年、一人当たりの米の消費量が減ってきております。これは統計上にも出てきておるわけでございますけれども、人口増加等を考えましても、絶対量としてはむしろ横ばいかあるいは減ってくる、こういうようなことからいたしますと、今後の米の生産がどういう状態になるかということは、これは将来の問題で予測の段階を出ないわけでございますが、平年作程度の生産だということになりますと、現在の持ち越し程度のもの、いま予想されるような持ち越しが将来も続くということは、十分予想されるわけでございます。  そこで食糧庁は、現業をやっている立場からいたしまして、相当量の古米が翌米穀年度に持ち越されるということになりますと、配給の関係におきましても、新米、古米との調整の問題とか、いろいろまた新たに困難な問題も実は出てきておるわけでございます。また、そういう需給大幅緩和の情勢に対しまして、消費者の側におきましても、うまい米を配給しろというような要望も実は出てきているわけでございます。したがいまして、軽々にいま記録的な豊作があったから、直ちに生産面において品種を限定し、選定をして生産をどうするというようなことは、考えてはいけないと思うわけでございますが、何といたしましても、やはりそういう需給の緩和に伴いまして、米の品質、食味等に対する要望が強まっている段階でもございますので、それらの面を極力、やはり良質多収の米ができるような形において指導していくということが必要であろうと思いますし、それから、膨大な古米が翌米穀年度に持ち越される現状にもあるわけでございまして、またその米を配給していかなければならぬという現業的な問題もあるわけでございますので、持ち越しの米につきましては、現在買い入れました米のうちでも、良質で長期保管に耐えるようなものを極力管理していくというような配慮も必要ではないかというように考えている次第でございます。
  169. 佐々栄三郎

    ○佐々委員 この問題につきまして、いま配給や質の面からのお答えがありましたが、もう少し別の食管制度の基本問題についてもお聞きしたかったわけですけれども、きょうは不適当だと思いますので、この問題はこれでやめておきます。一  あとこまかい問題でありますが、三つ、四つお伺いをいたしたいと思います。それは、配給秩序改善措置要綱なるものが従来からありますが、この要綱によりますと、食糧配給協議会というものと配給制度批判検討会というものを各都道府県につくらなければならぬということになっているわけです。要するに、これは一般消費者に良質の米を、しかも規格どおりの米を配給させるための制度でありますが、今日、全般的に各都道府県でこういう組織がつくられて運営をされているかどうかということをお聞きしたいと思います。
  170. 田中勉

    田中(勉)政府委員 配給秩序の確保維持という点につきましては、先生から御指摘ございましたように、現在地方におきまして大体二つの柱を立てているわけでございます。配給改善協議会と、それから実際にその精米が配給されたものを無作為に抽出いたしまして検討する精米検討会というものと、二本立てで大体現在の配給秩序を指導しているわけでございます。  御質問の、各県みなそろっているかというお話でございますが、現在これができ上がっておりますのは三十七道府県ということになっているわけでございます。全国各県にこれができているわけではございません。しかしながら、できていない県におきましても、先ほど御指摘がございました配給秩序改善措置要綱に基づきまして、府県段階において行政庁が、米屋の段階をいろいろ監査をするということが一つの要綱の柱になっているわけでございます。また、同時に食糧庁におきましても、全国的に許す限りにおいて、そういう府県のやっていることに対して、さらに食糧庁の段階におきましても立ち会いなりあるいは指導するなり、そういうことも繰り返しているわけでございます。  繰り返すようでございますが、先ほどの配給改善協議会というものが設けられている県は、現在は三十七道府県でございます。
  171. 佐々栄三郎

    ○佐々委員 協議会というのは十県ぐらいしかできておらないということを私は聞いておるのです。それから東京や千葉にもできておらないということを聞いておるのですが、この点を確かめたいと思います。  それから、その配給協議会に消費者代表がどういう形で選ばれておるか。消費者代表というべき者が入っておらないというようなことも聞いておるのですが、いかがでしょう。
  172. 田中勉

    田中(勉)政府委員 東京にはもちろん配給改善協議会が、都の主唱のもとにでき上がっております。  それから、この中に消費者の関係をどういうぐあいに選定しているかというお話でございますが、私どものほうの指導方針としましては、県、それから私どもの出先機関でございます食糧事務所、それから配給業者、それから消費者代表または消費者ということで構成するのが、これが適当であるというような指導をいたしておるわけでございます。その場合の消費者の選び方は、現在は各県ごとにそれぞれの判断に基づいて、その目的を達成するための必要な選定の方法を、各県ごとにやっているわけでございます。
  173. 佐々栄三郎

    ○佐々委員 その次は、やみ米が最近非常に多いように聞いておるのです。それも農民側から出るものでなくて、配給所からずいぶんたくさんやみ米が出ておる。所によっては七割から八割ぐらいまでやみ米が販売されておるというようなこと々聞くのですが、いかがでしょうか。その比率、割合というものと、いま一つは、一体なぜこういうようなことになるかということ、これをお伺いしたいと思うのです。
  174. 田中勉

    田中(勉)政府委員 やみ米につきましては、まず生産者の側から余剰米として販売されるやみ米というのが、従来のやみ米ということになっているわけでございます。この点につきましては、最近、生産者米価の決定の経緯もございまして、相当の量が政府の手に入ってくるというのが現状でございます。現在の段階におきまして、生産高に対して約六四%近くのものが、政府の買い入れの中に入ってきております。数年前までは五〇%台とか、こういうことがあったわけでございます。その五〇%台の時分には、やはり相当のやみの量が、生産者の側から出ておったことも事実でございますが、最近は、この量は非常に激減をしておるというぐあいに理解をいたしておるわけでございます。  そこで、後段の御指摘のございました配給業者からのやみというようなことが最近出てきておるのではないか、こういう御指摘でございます。その点につきましては、私のほうも実際の現実をつかんだわけでございませんが、そういう声をしばしば最近聞くわけでございます。この点につきましての私のほうの対処のしかたといたしましては、各県ごとにその配給計画を定め、また配給の米をどうするかということにつきましては、県庁当局それから私どもの出先機関である食糧事務所と、大体三カ月ごとくらいにその実際の所要量、人口に伴う実際の所要量というようなことで、需給計画についてはかなり詰めて、府県といろいろ打ち合わせをして、その打ち合わせに基づいて米をその県において売却しているというのが現状であるわけです。  しかしながら、やはり米屋、小売り屋も全国で五万七千軒も実はあるわけでございます。その中におきまして、米屋間におけるそういう政府から買い受けたもののいわば流通と申しますか、そういうことに対しましては、先ほども申し上げましたように、私のほうといたしまして配給業者の立ち入り検査とか、帳簿の点検とか、こういうことをいろいろ厳重にやって、いやしくも配給されたものが横に流れるというようなことは、私のほうの管理の本質から見ましても、これは非常に問題の多い事項でございますので、この点については、私のほうといたしましても重々そういうことのないように、まず配給業者の自覚と、それから政府側におきまして、あるいは県側においての立ち入り検査あるいは指導、こういうことを強化してやってまいりたい、こういうぐあいに考えておる次第であります。
  175. 佐々栄三郎

    ○佐々委員 私の聞いたところによりますと、消費地では古米と新米が半々の割合で卸業者から販売される。そのために新米が別米という名前で一般消費者のほうにやみで流される。こういう問題と、いま一つは、今度内地米というのができまして、一等から四等までがここに入っておる。ところが、あまりよくない米が配給に乗せられて、上質米がやみに流れるというようなこと、こういうようなことが配給所からのやみ米の発生の大きな原因になっておる、このように私は承っておるのです。その結果、配給を受ける人は非常にまずい米を食べさせられる。だからこれがまた悪循環をして、配給を受けずにやみ米を買うというようなことになってくる。米穀業者の中には良心的なまじめな人もおりますから、そういう方にはこういう議論は非常に気の毒でありますから、私はそういう方については申すわけではありません。ただ、往々にしてそういうような操作をして、不当な利益をむさぼっておる業者があるのじゃないかと思います。これについて食糧庁としてもっときびしい取り締まりをやられる必要があると思うのですが、いかがでございますか。
  176. 田中勉

    田中(勉)政府委員 ただいま、十一月や十二月ごろの実際の全国的な米の配給関係は、古米が大体五割それから新米が五割というような実態になっておるわけでございます。そこで米屋の側におきまして、やはり新古米をそれぞれ混米をいたしまして、内地米一本という価格になっておるのが、十月一日からの配給品目の改定であるわけでございます。くどいようでございますけれども、それ以前の配給品目につきましては、上米、並み米というようなことで配給区分を設けたこともあるわけでありますが、その結果、並み米が上米に化けるとかいろいろな苦情を、昨年度私どもも耳にしたわけでありますので、何といたしましてもまずその問題につきましては、やはり配給品目を単純簡明なものにするということが第一の措置だろうと思いまして、十月一日から一−四等を原料とする内地米一本ということで、もう消費者にも内地米一本で、価格はこうであるということで、はっきりと消費者の理解なり自覚も求めたわけであります。先ほどお話がございましたように、たとえば等級としては、一−四等の中では、四等が一番下等になるわけでございますが、こういうものがどうも配給に乗せられる、古米が乗せられるということを耳にせられたというお話でありますが、この点につきましては、こういう切りかえ時の問題でございます。特に十月一日から配給品目を改定して消費者にお目見えをしたわけでありますので、この点については、いやしくも消費者の不信感を買うことのないように、特に米屋の自覚と注意を促してまいっておるわけでございますが、そういう声が間々あるという話も、私も仄聞はいたしておるわけでございます。  この問題に対処する方法といたしましては、やはり基本的には制度の問題としてまず取り組んでいかなければならぬというぐあいに考えているわけでございます。現在食糧庁といたしましては、大精米所の普及ということを極力推進いたしておるわけでございます。大精米所におきましては、そういう新米、古米あるいは一−四等の米を均一に混米をいたしまして、そしてそれを袋詰めにして消費者の家庭に届ける、こういうことがやはり根本的な制度のあり方として、それを推進していくということも考えておるわけでございます。そのほかに米屋自車の側において、消費者がうまい米を持ってきてくださいということになりますと、やはり新米をそれだけ別ワクとして、これは別米でございますというような話も私は仄聞いたすわけでございますが、今後におきましては、古米の混合率も、少なくとも今月を山といたしまして非常に減少してくるわけでございますし、また新米になりましても、そういう別米というふうなものが横行するということは、これは私のほうとしても厳に戒めていかなければならぬと思っております。  基本的には、大精米所なり均一なものを精米するというような、そういう施設を拡充いたしまして、そして、袋詰めによって消費者の信頼感を得、同時に、米屋についてはきびしくその辺は自覚を促していきたいと考えております。
  177. 佐々栄三郎

    ○佐々委員 配給米の中に不適格品、異臭米というものがたくさんまじっておる、中には一割くらいもまじっておるというようなことを私は聞いておるのです。これは農薬が原因だというようなこともいわれておりますが、これについて、なぜこういうような異臭米ができるのか、こういうものがまぜ込まれて配給されておるということがもし事実とするならば、一体どういうような取り締まりの方針でこれに臨まれるか、ということをお聞きしたいと思います。
  178. 田中勉

    田中(勉)政府委員 確かに遺憾なことに、最近においのついた米が、政府が買ったものの中にあるということで、配給業者からいろいろ苦情を持ち込まれている事態があるわけでございます。そこで、米でございますので、私どもといたしまして、食糧庁のみならず全農林省をあげて、生産担当あるいは技術担当の部局等が中心になりまして、この問題を、県段階の県当局あるいは県のいろいろな技術担当のところと協議をいたしまして、その原因の調査を実は過去一年間やってまいったわけでございますが、現在のところ、その栽培過程にできるものか、あるいは保管中にできるものか、その辺がなかなかはっきりした結論は出ておりません。しかし、この問題につきましては、なお引き続き検討を進めなければならぬということで、農林省の側におきまして県段階の県当局とも十分連絡をとりつつ、さらに掘り下げてまいりたいというぐあいに考えているわけでございます。  そこで、こういう米のにおいがございますので、食べる以上有害か無害であるかというようなことにつきまして、私のほうからそれぞれ専門の権威あるところで研究をしてもらいましたが、においのある米につきましては、有害であるという結論は出ておりません。これは無害であるという結論が出ておるわけでございます。さればといいましても、実際に配給になった場合には、においがあるということは、やはりこれは食味上大問題でもございますので、私のほうは、現在そういう米につきましては、各食糧事務所の段階におきまして、それぞれその米のにおいの程度を仕分けいたしまして、いやしくも米屋の納得しない米につきましては、私のほうとして強制的に配給することは考えておりません。十分その点については、そういうことのないように現地を指導いたしておるわけでございます。
  179. 佐々栄三郎

    ○佐々委員 時間が来ましたので、あと二問だけで終わりたいと思います。  一つは、先ほどお答えがありましたいわゆる大精米所、集中精米とでも申しますか、これが全国的に二割方こういう形で行なわれているということを承っているわけです。そこで、ここで袋詰めにして一般配給機構の上に乗せられるわけなんですが、その袋詰めにしたあとでは米の検査をすることがあるのか。つまり、規格どおりの米が入っておるかどうかということを、消費者は検討することはできません。店頭で販売している場合はできますが……。そこで、その袋詰めをする場合に、食糧事務所あたりが検査に臨んでいるのかいないのか、立会しておるのかどうか、この点をお聞きしたいと思うのです。
  180. 田中勉

    田中(勉)政府委員 結論から先に申し上げますと、袋詰めをしている集中精米所、大精米所につきましては、検査官はこれを立ち会いはいたしておりません。それからなお、一般の小売り店の配給の米につきましても、先ほど申し上げました精米検討会とかそういうことで、無作為に抽出したものについてのいろいろな検討をするということはやっておりまするけれども、その現場現場に行って精米を検討することはいたしておりません。ただ、集中精米所のほうは、小袋詰め配給ということになるとみずからも縛るということになっておりますので、この点は、私のほうが特に立ち会い等の措置を講じなくても、何々精米所のつくったものであるというようなことからいたしまして、これは信頼のできるものであるというぐあいに考えておる次第でございます。
  181. 佐々栄三郎

    ○佐々委員 最後に一問だけで終わりたいと思います。  それは、ことしのお米が胴割れ米が非常に多いわけなんです。私のほうの県でも、私が入手しました資料では、まだ四割方の検査の段階でございましたが、〇・二%程度の胴割れ米が出ているんです。胴割れ米になりますと、規格外甲ということになって、ずいぶん価格が安くなるわけで、一方で非常に豊作でありますが、こういうものが多いと差し引きされるわけで、農民としては非常に大きな関心を持っているわけです。これは全国的にそうじゃないかと思うのです。私のほうは大体五一%くらいがなかてなんで、ちょうどことし異常乾燥というか、干ばつの時期に遭遇しているわけです。胴割れ米多発の原因をどういうふうに見ておられるか、それと、胴割米れが発生しないようにどういうような指導を農林省としては現地に対してしておられるか、この点をお伺いしたいと思います。
  182. 田中勉

    田中(勉)政府委員 胴割れ米の発生につきましては、天候上からくるところの胴割れ米の問題と、それから乾燥調製の過程において出る胴割れ米と、二つ原因があると思うのです。天候上からくる問題につきましては、ことしは確かに先生御指摘のように、収穫時の天候と申しますか、いわば夏以降の天候が非常によかったということからいたしまして、どちらかと申しますと、いわば好運が続いておった。異常な過乾燥と申しますか、過乾燥のような現象が出ておることも事実でござ  います。それから同時に、従来ならば、たとえば葉とか茎がだんだん黄色くなってから刈るということが農家の作業慣習としてあるわけでございますが、ことしは非常に成熟が早く、実りも早くなっているというようなことからいたしまして、どうも刈りおくれの現象が出てきているということで、どちらかというと、農家の収納作業のほうが立ちおくれたというような問題もあって、そういう胴割れのような現象ができたのではなかろうかと実は考えております。  先生の県を引用されておっしゃっていただいたわけでございますが、私も香川県につきましては、天候の要因というものが非常に大きな要因であるということを実は痛感しておりますのは、三十七年産のときに、あの県で一、二等米が七五%出たという事実がある。その翌年三十八年のときには、一、二等米がわずか二%足らずというようなことで、天候上のあれによりましても非常に米ができぐあいが違ってくるということでございます。それからもう一つ、乾燥調製上の問題といたしましては、特にこれは軟質米地帯でございますけれども、やはりできたものを火力乾燥をいたしますと、どうしても火力乾燥になれないと、いろいろな面において人為上の胴割れというような問題も出てくるわけでございます。火力乾燥の問題につきましては、技術指導によって克服していかなければならぬ、それから天候上のいまの問題につきましては、やはり刈り取りの適期を誤らないように指導していくということが必要ではないか、こういうぐあいにいま考えております。
  183. 佐々栄三郎

    ○佐々委員 終わります。
  184. 本名武

    本名委員長 次回は明二十一日開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後四時三十一分散会