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松隈参考人 かねて
大蔵委員会より
出席を求められておりましたが、
税制調査会におきましては、来年度
税制改正の問題の
作業を詰めております
段階でございまして、なかなか適当な時間を持つことができなかったことをまずおわびを申し上げます。その上、
税制調査会におきます
審議はまだ具体的な形をとるに至っておりませんので、
調査会を
代表して明確なお答えもできないと思いまして、
出席の時期について御配慮をお願いしていた次第でもございます。しかし、現
段階における
審議状況を申し上げるよう特に求められている事情を承りまして、短時間で恐縮でありますが、差し繰り
出席いたしましたことを御了承いただきたいと思います。
税制調査会の
審議経過でございまするが、昭和四十三年度の
税制改正につきましては、さきに総会におきまして、臨時小
委員会を設けてそこで
審議をすることになりました。小
委員会は昨日までで六回の
審議を終わっております。
まず、
所得税につきまして一番多く論議をされました。
所得税が重過ぎるから軽減する必要がある。それについては、御承知のとおり、各種控除の引き上げによる方式と、税率、ことに
所得三百万円以下程度の税率構造、別なことばで申し上げますと累進度の問題でありますが、それがあまりにも小刻みで急激に上進するからこれを
緩和せい、この二つの点が問題になったのでありまするが、本年は、財政硬直化の
関係からいたしまして、自然増収は約九千五百億円程度に見積もられるのであるけれども、減税財源に回す余地がきわめて少ない、場合によってはゼロというような話も
大蔵省のほうから伺っておりますので、税率構造の改正は見送らざるを得ない。これは長期答申において税率構造もやはり見直す必要がある。そこに欠陥があればこそ少しのベースアップであっても直ちに税率が累進しまして、実質的な増税というような結果になる。もし低
所得層に対しまする累進課税の
段階がもう少し大刻みであれば、六%や七%のベースアップがありましても、それは限界に近いところにいる人には例外的に上の税率がかかるけれども、大多数の人は上の
段階の税率の適用を受ける必要はない。こうなれば、よく近ごろは
税制調査会、あるいはそれは
政府であるかもしらぬが、何とかの
一つ覚えみたいに毎年各種控除を引き上げているじゃないか、こんなことはやらぬで済むようにせい、こういう意見がございまして、それはまさにそのとおりでありますので、そういう方向に行くべきであるということを、四十三年度は無理とすれば、長期答申にはせめてその旨を明らかに書きたいということにいま考えられておるようでございます。
一方、各種控除の引き上げによります課税最低限の引き上げの問題でございますが、これは
税制調査会といたしましても昨年の暮れの中間答申において、夫婦子三人の給与
所得者の場合、これを一応標準世帯と呼んでおりますが、その場合において八十三万円程度には引き上げたい、こういう答申を出しております。現在の
委員の任期は来年の七月まででありますので、中間答申に述べられたことが任期の終わるまでに実現しないようでは、何のための中間答申か、こういうことにもなりますので、現在約七十三万円でありますのを、十万円ほど引き上げまして八十三万円にする、こういう説が多かったのであります。たまたま
国会のほうの御議論を伺いますと、四十四年度という見方もありますが、おそくも四十五年度までには、先ほど申し上げた標準世帯の場合に百万円にする、こういう御意見のようであり、
政府もそれに大体において同調しておられる、こういうことを承っておりますので、そちらのほうから申しましても、一方において
所得税の減税を一年ぐらい休んだら、こういう論があるにしましても、四十五年度に百万円に持っていくというのに、四十三年度に休んでおいて、そしてあとの二年でやるなんといっても、それはあまりにも問題をあとに繰り延べる、こういうことになるおそれがありますので、そちらの方面からいっても、課税最低限の十万円引き上げ程度はもう当然という結論になるであろう、こういう意見が多かったものでありますので、先般
所得税の課税最低限の引き上げだけについては大体意見の一致を見たと思いましたので、小
委員長試案といたしまして、課税最低限を十万円引き上げるという案を小
委員会に提案いたしました。小
委員会の中では、これではなお不十分であるという意見がありましたが、最小限度この程度は必要であるということで、大体その線は固まっておるように見受けております。
所得税について課税最低限を十万円程度上げました場合に、地方の住民税の課税最低限をそのままにしておいていいかということは直ちに問題になったわけでございます。
国会においてもやはり住民税の課税最低限をある程度引き上げるという附帯決議がなされているように承っておるわけでございます。そこで、自治省のほうから、住民税の課税最低限、現在四十三万円でありますが、これをどの程度に引き上げるかということについて資料の提出を求めまして、各種控除を一万円程度引き上げるというような資料——それによりますと、四十三年度の減収額が三百十億円くらいございます。そのほかに四十二年度に国税の
所得税において給与
所得控除を拡大いたしました、そのはね返りが四十三年度に出ますので、それが三百十億円、合わせて六百二十億円ぐらいの財源が要るということになっております。御承知のとおり、国税の減税の場合にはさいふが
一つでありますから、課税最低限を十万円引き上げることによって約一千億円の減税財源を要するのであります。それをどうするかということは、地方税のように三千数百の団体があり、その中には
赤字財政の団体があるという場合に比較しますと、問題は、地方税は非常にむずかしい場面に到達するわけでございます。この住民税の課税最低限引き上げ及び給与
所得控除改正のはね返りに当たるものをどうまかなうかという問題は、まだ最終的に詰めてございませんが、
所得税の課税最低限引き上げと同様、もしくはそれ以上に住民税の課税最低限についてはこれを引き上げる必要があるという論はかなり強くなっておりますが、まだ
所得税以外については小
委員長試案をこれから出そうとしているわけでございますので、その辺最終的にどう固めますか、そこに問題があるということを申し上げます。
次に、いま申し上げましたように、国税の
所得税の課税最低限の引き上げで約千億円要るのでありますが、
大蔵省の
税制調査会での説明によりますと、来年は財源が非常に窮屈であるから、千億円
所得税を減税するのであれば、他の方面に増収の余地のある税目をさがしてそれの増税によって、できれば千億円をカバーしてほしい、こういうような説明がございました。
委員会の
委員の間には、
所得税の減税千億円は最低の減税である、一方において理屈がついて間接税を増徴できるという見通しが立てば、それはそれで提案するけれども、
所得税を減税するためにと申しますか、それに直結して間接税を上げるという考え方には賛成できない、こういうような意見がございます。そういうことで、間接税の増徴はなかなか議論が多いのであります。そういうことで、資料の検討だけをいまいたしておる
段階でございます。それは
新聞にも出ておりますとおり、たばこの価格の引き上げ、酒税の引き上げ、物品税の引き上げ、それらの資料を検討いたしておりますが、これについては意見がかなり分かれておりますので、これの取りまとめが今後の
税制調査会小
委員会の
仕事だ、かように存じておる次第でございます。
簡単ではありますが、
経過を以上申し上げます。