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1967-12-14 第57回国会 衆議院 商工委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十二年十二月十四日(木曜日)    午後一時三十一分開議  出席委員    委員長 島村 一郎君    理事 天野 公義君 理事 宇野 宗佑君    理事 鴨田 宗一君 理事 河本 敏夫君    理事 中川 俊思君 理事 田中 武夫君    理事 中村 重光君 理事 麻生 良方君      稻村左四郎君    岡本  茂君       齋藤 憲三君    坂本三十次君       田中 六助君    丹羽 久章君       橋口  隆君    岡田 利春君       佐野  進君    千葉 佳男君       中谷 鉄也君    永井勝次郎君       塚本 三郎君    吉田 泰造君       近江巳記夫君    岡本 富夫君  出席国務大臣         通商産業大臣  椎名悦三郎君  出席政府委員         大蔵省関税局長 武藤謙二郎君         通商産業政務次         官       藤井 勝志君         通商産業大臣官         房長      大慈彌嘉久君         通商産業省化学         工業局長    吉光  久君         通商産業省繊維         雑貨局長    金井多喜男君         通商産業省鉱山         局長      両角 良彦君         通商産業省公益         事業局長    井上  亮君  委員外出席者         大蔵省銀行局特         別金融課長   小宮  保君         通商産業省通商         局国際経済部長 川田 通良君         自治省財政局交         付税課長    横手  正君         消防庁予防課長 高田  勇君         専  門  員 椎野 幸雄君     ————————————— 十二月十四日  委員稻村左四郎君辞任につき、その補欠とし  て高橋英吉君が議長の指名で委員に選任され  た。     ————————————— 本日の会議に付した案件  小委員会における参考人出頭要求に関する件  液化石油ガスの保安の確保及び取引適正化に  関する法律案内閣提出、第五十五回国会閣法  第一四六号)  通商産業基本施策に関する件  経済総合計画に関する件      ————◇—————
  2. 島村一郎

    島村委員長 これより会議を開きます。  この際、参考人出頭要求に関しましておはかりいたします。  産金等対策小委員会において、参考人から意見を聴取することに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 島村一郎

    島村委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  なお、参考人から意見を聴取する日時、人選手続等につきましては、委員長に御一任を願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 島村一郎

    島村委員長 御異議なしと認め、さよう決定いたします。      ————◇—————
  5. 島村一郎

    島村委員長 通商産業基本施策に関する件及び経済総合計画に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、これを許します。塚本三郎君。
  6. 塚本三郎

    塚本委員 経済企画庁にお尋ねいたしますが、十一月の二十四日でございましたか、閣議決定特恵に対する供与をすることにきめたという新聞報道がなされておったと思います。具体的にどのようなお考えのもとにこのように踏み切られたか、この点を御説明をいただきたいと思います。
  7. 武藤謙二郎

    武藤政府委員 関税局長武藤でございますが、いまお話しのございました十一月二十四日の閣議決定は、短いものですから読み上げますと、   明年二月の第二回国連貿易開発会議を控え、 南北問題の解決につきわが国としても格段の努力が要請されているが、特に対発展途上国特恵重要な問題となっている。   特恵が実施される場合、わが国輸入面影響のみならず、輸出品構成発展途上国と競合する軽工業品の比重が高いため、他の先進国と異なり輸出面においても大きな影響を蒙むるおそれがある。   しかしながら、先進国言貝としてわが国も南北問題の解決に寄与することが望ましいとの見地に立ち、また世界主要先進国が対発展途上国特恵供与を行なう方針を明らかにしつつあることにかんがみ、わが国としても下記の対外的要件および国内対策を確保しつつ、一般的かつ暫定的な特恵制度に参加することとし、このための国際的合意の達成のために努力するものとする。  1、2とございまして、1のほうが対外的要件、これは簡単に申しますと、輸出面日本独特の問題がここに書いてあります。  それから2が国内的な要件が書いてございます。国内的な要件のところを読んでみますと、 2 わが国としては、基本的長期的には世界貿易の動向に適応しつつ、わが国経済の拡大を図るため、産業構造輸出構造高度化を一層促進すべきであり、かかる方向への産業界自主的努力が今後格段と要請される。特恵具体的影響は今後暫定されるべき特恵方式内容如何にもよるが、業種によっては相当な影響を蒙むることも考えられるので、政府としては、かかる業界についてはその自主的努力とあいまって、中小企業を中心として企業近代化合理化構造改善の促進、輸出振興技術開発等の諸施策を重点的に一段と拡充強化することとする。また、経済的社会的摩擦を回避するため産業転換円滑化に関し所要の措置を講ずるとともに、輸入急増等の場合における特恵制度上の緊急措置を機動的にとりうるよう十分配慮する。 こういうことでございます。
  8. 塚本三郎

    塚本委員 業種によっては相当の影響があるということを見越してこれを踏み切ったということに対するお尋ねでございますけれども、たとえば、相当ではなくして、決定的な影響を受けるべき業種さえもすでに想像されておると思うわけです。おそらく当局にも幾多の陳情が参っておると思いますが、たとえば木材加工の合板のごときあるいは綿製品の二次加工のごとき、これらの問題は相当の影響ではなくして、業界の声が正しいとするならば、決定的な影響も受けざるを得ない、こういう立場にあると思われております。おそらくこのことは当局にも再三にわたって陳情がなされておると思いますが、これらの施策に対してあえて踏み切られた所信のほどをもう一度伺いたいと思います。
  9. 川田通良

    川田説明員 お答え申し上げます。ただいまの御質問に対しましては、特恵供与に踏み切りますまでの内外情勢を簡単に御説明申し上げて御理解をいただきたいと存じます。  御承知のように、特恵関税の問題は、いわゆる発展途上国産業振興並びに輸出所得の増加、ひいてはその国の経済発展のために発展途上国が早くから非常に強く要望しておった事項でございます。これに対しまして、先進国といたしましては、各国の歩調は必ずしも整ってはおりませんでしたけれども、しかしながら、発展途上国要求が強くなりますにつれまして、これは放置できないということで先進国の間で協議を重ねてまいったわけでございます。この間におきまして、御承知のごとく、わが国発展途上国輸出振興もさることながら、特恵関税供与することによりまして最も大きな影響を受けるということが予想されておったわけでございます。御承知のように、産業構造もそれから輸出構造もまだ軽工業品に重点がかなり多い。したがいまして、わが国輸入面においてのみならず、第三国たる、たとえば米国市場におきまして後進国産業と競合する面が多い。したがって、もしも特恵供与されました暁には、わが国産業被害がほかの先進国に比べて多いということが予想されるわけでございます。したがいまして、わが国といたしましては、率直に申しまして、従来はどちらかというと消極的な態度をとっておったわけでございます。米国も、日本と若干立場は違いますが、やはり特定の国に差別のある関税を与えるべきではない、いわゆる最恵国待遇原則に基づいて関税全般を引き下げるべきであるという、こういう基本的な立場のもとに反対しておったわけでございます。しかしながら本年の四月に至りましてジョンソン大統領は、われわれといたしましては非常に奇異な感じがいたしたのでございますけれども、その態度を変えまして、後進国発展のために、基本的には積極的な態度をとるということを表明いたしたのでございます。ここにおきまして、わが国といたしましても、客観情勢が変わってきたということで、急遽部内検討を始めたわけでございます。その後先進国の間では、いわゆるOECD経済協力開発機構を場といたしまして各国協議を重ねてまいり、協議が進むにつれまして、結局、基本的な線ではだんだん合意が達成される気配になったわけでございます。そこでわが国といたしましても、これに対しまして基本的な態度をどうするか、前向きで行くか、あるいはあくまでも反対だという態度を貫くべきか、決断を迫られたわけでございます。  こういう情勢のもとにおきまして、私どもは、国内産業に対しましても具体的にどういう品目にどういう影響があるか、できる範囲で調査をいたしたわけでございます。先ほど話も出ましたが、後進国との競合関係の多い、たとえば木製品関係であるとか、あるいは繊維製品関係であるとか、その他雑貨関係あるいは軽機械関係、こういうものにつきましてかなり影響のあることが予想されるということにつきまして資料がだんだん整ってまいったわけでございます。  しかしながら、あとで申し上げる機会もあるかと思いますが、いまだ特恵影響は正確には予測できないのでございます。と申しますのは、どういう品目について特恵関税を与えるか、あるいは、その特恵関税の幅をどれくらいにするか、これは今後先進国の間である程度協議を行ない、また、その国々がそれぞれ自分態度を自主的にきめて、さらにまた、後進国のこれに対する態度をきめていく問題でございまして、現在の段階におきましては、いかなる品目についてどれだけの影響があるかということは正確には予測できないわけでございます。  しかしながら、御質問にございましたように、ただいま申し上げました品目につきましては、やはりある程度の影響があるのではないか。ことに、品目によりましては特定地区に集中しているものがございますので、そういうものにつきましては、その地区については相当な影響が予測される。したがって、これに対しては、もし特恵を前向きに踏み切る場合においては、政府としてはできるだけの対策をとらなければならないということになるわけでございますが、内外情勢を見まして、どういうふうな態度をとるべきか、九月、十月にかけて政府部内協議を行ないまして、ちょうど十一月の末、十一月の三十日並びに十二月一日、これが先ほど申し上げましたOECD、いわゆる先進国間の協議の場におきまして一応最終的な特恵関税に対する基本的な態度がきまるのでございますので、これを前にいたしまして急遽政府方針決定するということになりまして、各省間の協議を重ね、関係方面にも、また業界の御意見も伺いました結果、わが国としては、基本的には、やはりアジアの唯一の先進工業国として、後進国発展ということを祈念しなければならない、こういう基本的な立場のもとに、また、後進国発展するということは、ひいてはわが国輸出にも好影響がある、間接的ではありますけれども、回り回って影響があるという判断のもとに一応特恵には前向きに踏み切る。しかし、その場合に、先ほど申し上げましたような、日本特殊事情におきまして、日本だけが先進国の間で過度の負担をするということがないようにという条件と、いま一つ国内的には十分の対策をとる、この二つの条件を合わせまして、一応特恵には前向きに踏み切るという態度をきめたわけでございます。  以上でございます。
  10. 塚本三郎

    塚本委員 内外の諸情勢いかんともしがたいという政府立場というものは、通産省からいただきました多くの資料の中でほぼ察しがつくわけです。しかし、それならばこの一年間、資本取引自由化で再三にわたってこの委員会におきまして、それのわが国業界に与える影響の大きさというものにつきまして真剣に取り組まざるを得ないということの主張がなされたはずでございます。そして、資本取引自由化を控えてこういうことが提案理由まくらことばのように、各法案ごとにこのことが論ぜられておったわけでございます。にもかかわらず、ある業種やある地域におきましては決定的な打激をこうむる危険性のあるというこの特恵に対して、ほとんどこのことが通産省は論じられておらなかった。これはなぜでございましょうか。
  11. 川田通良

    川田説明員 先ほど申し上げましたように、特恵影響品目によりましてはかなりある、しかもそれは、軽工業につきましては、御承知のように特定地域に集中しておるものがかなりございます。そういうものにつきましては、その地域ではかなり影響があるであろうということは、実は私も地元の方あるいは業界の方からも御説明を受けておりますし、その影響は軽々に論ずるわけにはいかない、これは私どもといたしましては十分認識しておりましたので、したがいまして、もし国内的なことだけを考えるならば、この特恵というものを、はっきり申しますと、いかにして最小限のものにできるか、あるいは、そういう影響を食いとめるためにはどういう具体的な特恵が考えられるか、こういう検討を交えますとともに、また、業界方々に、客観情勢としては、特恵関税というものはなかなか日本だけの立場で防ぎとめられるものではないということにつきましても、ある程度御認識いただくように努力はいたしてまいったつもりでございます。  今度の閣議決定の発表にあたりまして、あるいは唐突という感じをお持ちの方もあろうかと存じますけれども、しかしながら、かなり過去の間におきまして、こういう客観情勢につきましては、私どももできるだけ御説明申し上げるようにつとめてまいりましたし、また、内外情勢がだんだん差し迫っておりますことは、業界方々かなり御認識があると私どもは実は存じておったのでございます。  しかしながら、急な決定をいたしましたような感触をお与えしたのは、先ほど申し上げましたように、できるならば特恵最小限に食いとめたい、そのための対策はどうするか、そのために他の先進国とどういうふうに了解をつけるか、こういう点につきまして従来は努力してまいりまして、それがこの九月、十月に至りまして、結局これは日本としては特恵関税基本的な態度というよりも、方法論の場においてわがほうに有利なように持っていくのが得策である、こういう判断をいたしました結果、先ほど申しました十一月末のOECD会議を直前にいたしまして閣議決定をいたし、そして前向きに踏み切るということにいたしましたので、この点があるいは急な政策の転換であるという感じ業界の方には与えたのではないかと思う次第でございます。
  12. 塚本三郎

    塚本委員 おたくのほうから出ておる資料等を読んでみましても、実は、すでに四月にアメリカが大きな転換をしておる。このときにすでに予測せられておったと私どもは見るべきでございましょう。それであるのにかかわらず、その以後、国会の中でほとんどこのことが浮かび上がってこなかった。資本取引自由化は、先ほど申し上げたように、あんなにも大きく、事あるごとに政府のほうからその必要性とその危険性が叫ばれておったわけです。しかし、特恵に対しては、このことを政府側からはほとんど論ぜられておらない。こういう形で突如新聞でばばっと出てしまった。その底流というものは私たち承知をいたしておりました。  資本自由化というものの日本経済に与える影響も大きいでございましょう。しかしながら中小企業に与える影響は、私は、逆に日本産業構造の特殊的な事態を考えてみますると、資本取引自由化以上に影響力は大きいと思っております。にもかかわらず、これをこんな形で突如として、すでに来年の二月というそういうことの時点を前にしてやっといま踏み切った。もちろん実施はそれから先になるでございましょうけれども業界のこれに対するいわゆる混乱の精神的な問題や具体的な問題は、私はこれからたいへんな問題ではないかと思っております。何か私どものひがみかもしれませんけれども、大企業に最も大きな影響のある資本自由化に対しては政府は大きな声で警告を発して、中小企業は、国家全体からいいますると、もちろん金額からいっても小さい問題でございます。こういう形で実は軽く転換ができるとでも思ってみえるのではないか、いわゆるこんな危惧さえ持つわけでございますが、どうでしょうか。
  13. 川田通良

    川田説明員 御質問のとおりに、この特恵関税供与中小企業に最も大きな影響があるということは御指摘のとおりでございます。資本自由化の場合には、大企業、もちろん中小企業も含まれますが、大企業に対する影響が比較的多いのに対して、今回の特恵関税供与中小企業が最も影響を受ける、これは御指摘のとおりでございます。したがいまして、私もこれらの供与につきましては、片方、対発展途上国問題という一つの大義名分とにらみ合いながら、わが国中小企業の利益というものをいかにして守るかという点につきまして非常にいままで苦心してまいったわけでございます。ただ、御指摘のように私ども努力が不足のために、その辺の何と申しますか、業界方々現実の差し迫った情勢を認識いただく上においてあるいは私ども不十分の点があったかと存じます。  ただ、先ほど申し上げますように、客観情勢が非常に対外的に急転してまいっておる、しかもそれは、資本自由化の場合と若干違いまして、わが国が独自の判断で独自の決定をする、そしてそれによって、何と申しますか、勇往邁進するというわけにはなかなかまいらない情勢でございます。  そういうことと、それからいま一つは、これは実は現在でも業界方々には過度に不安をお持ちになるんじゃないかと思う点がございますが、それは特恵関税があすにでも実施される、そうすると、あしたから後進国との競争が始まって、そのためにたちまちに日本国内業界影響がある、こういう危惧をお持ちの方もあるかと存じますが、それは先ほどから先生もおっしゃいましたように、若干これは思い過ぎでございまして、実際に実行されますのは、来年のいわゆるUNCTAD、国連貿易開発会議あとにそれぞれの国において案がだんだん固まる、さらに国際的に交渉が行なわれ、そして先進国間でもこういう方針でいこうということが固まる、その上に国内的な立法手続——関税譲許のためには立法手続が要るわけでございますが、そういう手続を経まして、その上でいわゆる特恵関税供与されるということになりますので、実際それが実施され、国内産業に直接影響が及びますのは、私どもの観測では、あと二年あるいはそれ以上と予測されるわけでございます。  そういう点につきましては、まだこれから時間もございますし、また、先ほど申し上げますように、特恵の幅なり、あるいは品目の選択なりにつきまして先進国間でいろいろ協議する余地もございます。もちろん他方、後進国から非常に強い突き上げ要求もございましょうし、決して楽観はできませんけれども、そういう国際的な協議の場におきまして、なるべくわが国中小企業被害が少ないように今後ますます努力していきたい、またその余地も多分に残っておると私どもは考えておる次第でございます。
  14. 塚本三郎

    塚本委員 そもそも、この特恵供与基本というものを考えてみると、きわめて大きな矛盾があるわけでございますね。これはもうすでに専門的に御検討なさっておいでになる通産省よく御存じのとおり、国家全体からするならば、確かに日本先進国です。しかし、いわゆるこの関税を取りはずすとか、あるいはまた半分に切り下げるとか、こういうような特恵対象となる品目ということだけをとってみたならば、二年、三年とおっしゃいますけれども、すでに日本後進国になってしまっておる業種がずいぶんあるんでございますよ。それはもう御承知のとおりだと思っております。  すでに日本後進国であるのにかかわらず、後進国のほうが税金を実は高くかけて、そして先進国のほうが税金を安くしてその取引ができるというようなばかなことが、実はこの特恵に関する限りはまかり通るという——国内だけでない、外国に行ったときに、特にアメリカの場合の例をとってみますると、先進国の韓国やあるいはまた台湾のものが税金がなくして、後進国日本がとにかく高い税金をしょっていかなければいけない、こういうことが現実に起こるのでございます。そのことを何とか食いとめるだけの努力をしていくのが日本立場ではないか、こういうふうに思うわけです。もちろん、アメリカさんのなさることだから手が触れられないというような問題ではないというふうに私は思うわけでございます。もっと経済開発ということを全体的に見たならば、そういうことが率直に言われなければならない。言ってみるならば、そうしますると、中小企業の諸君は大企業の犠牲として取り扱われなければならぬ。言ってみるならば、そういう先進的な産業さえなかったならば、自分たち中小企業者は、後進国あるいは後発地域として税金が安く、あるいはなくしてアメリカ輸出できたかもしれない、こういう感じさえ抱かれるだろうと思っております。それは理論的にいえばそういうことになるのじゃございませんか。こういう重大な問題を十分に業界と相談することなく——もちろんそれは業種はまだきまっておりません。しかし、大まかに政府がこれを供与するということを閣議決定として発表してしまったならば、当然のごとくこの対象業種となるところの人たち混乱というものは予測しなければならぬと思いますが、どうでしょうか。
  15. 川田通良

    川田説明員 御指摘のとおりでございます。  先ほどから申し上げておりますように、私ども日本産業の中には後進国からの競争に対して劣勢にあるという産業があることは十分承知いたしております。現に、たとえば米国市場におきましては、後進国からの輸出に押されて、日本のシェアと申しますか、日本輸出の割合が減退している産業も幾つか見られるわけでございます。こういう産業につきましては、御指摘のように、むしろ後進国産業のほうが先進国である日本の中のその競合産業よりは競争力が強いというものもあるわけでございます。したがいまして、その点が私ども政府といたしましても特恵関税に踏み切る場合の最も大きな関心事であったわけでございます。  少し立ち入って申し上げますと、先進国との間の協議におきましては、わが国が最も強く主張し、最後までねばったのはこの点でございます。これがいわゆる輸出の面における負担の公平、輸出面も含めた負担の公平ということでございます。先進国はお互いに輸入の面での負担の公平ということは考えておりまして、ある特定先進国のみがこの特恵供与による輸入負担をこうむらないようにということは、いずれの国も関心を持っておりますけれどもわが国の場合のように、その産業構造あるいは貿易構造後進国と直接競合する関係にあるために、いわゆる第三国市場における輸出面での負担という点につきましては最も強い影響を受けるわけでございます。この点は他の先進国とは若干事情が違うわけでございます。したがいまして、輸入面負担のみならず、日本の場合のように第三国輸出市場における輸出面における負担ということもあわせて、そうして先進国の間で不公平な負担が行なわれないように、特に日本に過重な影響が及ばないようにこの点を十分に考慮に入れる、こういう原則を貫徹するために非常な努力を払ったわけでございます。その結果といたしまして、先ほど申し上げましたOECD会議におきましては一応わが国主張原則的には認められておる形になっております。したがいまして、今後、たとえば米国市場におきまして現実日本後進国と競合している品目につきまして特恵関税アメリカが与える、さらにまたその特恵関税の幅が非常に大きいとか、日本産業に対する打撃がかなり正きいと予測される場合には、この原則に基づきまして米国と交渉を——米国に対して、そういう品目は、たとえば例外品目にするとかあるいは特恵の幅を小さくするとか、こういう考慮を払ってもらう余地があるような原則をつくったわけでございます。  さらにまた、もう少し詳しく申し上げますと、現在できております先進国間の一応了解でございますOECDにおける了解におきましては、いわゆる例外品目という考え方がございます。これが先生おっしゃいますように、後進国のほうが非常に競争力が強くなっておる、したがって特恵関税を与えなくても十分に伸びるという産業につきましては、いわゆる国際競争力のある品目として特恵関税供与対象の例外とするという原則が一応認められております。もちろんこの原則は、後進国といたしましては非常に大きな不満を持つでありましょうし、また、大幅にこれを利用することはきわめて困難かと思われますけれども、そういう原則もひとつ利用いたしまして、先ほどおっしゃいますような、日本産業のほうがむしろおくれている、こういう品目につきましては、いわゆる例外品目ということで特恵関税影響最小限に食いとめる努力をいたしてまいりたいと考えておる次第でございます。
  16. 塚本三郎

    塚本委員 九月十三日日米経済合同委員会の席上でいまおっしゃったような主張を菅野通産大臣が主張いたしましたときに、特恵バスはすでに発車したんだ、こういって、実はにべもなく突っぱねられたというような記事が出ておったと思います。いまおっしゃったようなそういういわゆる楽観的な見通しは可能でございましょうか。
  17. 川田通良

    川田説明員 私どもは、実は決して楽観はいたしておりません。先ほで申し上げましたように、まだ今後の努力余地が大いに残っているということを申し上げたわけでございまして、決して、それが容易に認められ、わが国産業に有利なように、すべてが有利に決定されるとは実は考えておりません。  先ほどお話ございました日米合同委員会の経緯におきましても、最初わが国の提案に対しまして、アメリカは、それはよくわかる、事情はよくわかるけれども、しかしそれを非常に大きな主張として表に出していくことは、後進国に対する聞こえ上いかがであろうか、そういう立場を表の原則に打ち出すのはいかがであろうか、こういう意味の反論があったのでございまして、日本主張が不合理であるとか、あるいはそれは全く不可能であるとかということを申したわけではないと私は承知いたしております。したがいまして、先ほどOECD原則に基づきまして、私ども現実特恵関税供与の場合に、米国に対しまして具体的に交渉いたします場合には、われわれの主張米国に対しまして十分聞いてもらう余地はあると考えております。ただ、いま申し上げましたように、これは後進国に対しましてはまた微妙な問題でございますので、この辺の交渉がどういうふうに取り運ぶか、また米国との間にどういう了解がつくか、これはまた今後大いにわれわれは努力を要することであると考えておる次第で、ございます。
  18. 塚本三郎

    塚本委員 特恵関税は、後進国に対する先進国の義務ではなかったはずでございますね。あくまでも先進国立場で一方的に供与すべきいわゆる特別の恩恵であると私どもは解しておるわけでございます。その特別の恩恵で決定的な打撃を受けるような業種にまでいわゆる影響があるという事態であるのにかかわらず、何かささやかに哀訴嘆願して、そして仲間の諸君に理解していただこうとするその通産省態度、こんなことで特恵関税が扱われておるとするならば、業界にとってはきわめて心外だ、こういうふうに受け取られるであろうと私は判断いたします。それほどまでに大きな——私は一、二の例しか持っておりませんけれども、おそらくこのことは業界からもおたくのほうにも強く主張されておると思います。  たとえば合板の例なんか、決定的に一度にこの問題が出てきたわけではなくして、じりじりと押されて、すでに特恵供与すべき競争相手国とアメリカ市場におきまして、これは百万平方フィートで出ておりますが、日本が三十五年におきましては七五・三に対して、韓国はもちろんゼロ、台湾は六・四でしかなかったわけでございますね。ところが、四十二年、ことしになりまして、一月から七月までで、アメリカ市場におきますラワン合板は、実は七五に対してわずか一五という数字に下がってきております。韓国は、当時ゼロであったのが日本の倍の三十二になっております。台湾は、わずか六であったのが二六、あるいはまた、フィリピンにおきましては、一七が二二、いずれにしましても、韓国、台湾、フィリピンがすでに圧倒的に日本を年ごとに追いつき、そして追い越して、すでに倍の実力にいま輸出の舞台ではなっておるんですね。これはいわゆるラワン合板だけの問題ではない。おそらく綿に対する二次加工の問題も同じような数字を示しておるであろうと思っております。これがアメリカ市場で締め出された。全く韓国や台湾が日本に比べて先進国でございますね。日本の倍も輸出——かつてはわずかに一割足らずの、あるいはゼロであったものがどんどん追い抜いて、この七、八年の間に追い越してしまって、倍の力になった。こういうものに対してさらに特恵関税を付与するという形になってきたならば、もはやこの業界はいわゆる立ち行き不可能で、業種転換決定的に迫られるという立場になり、ささやかに特殊なものだけを国内需要に向けるという形になってしまいはしないか。こういうようなものが、ひとり合板やあるいは綿に対する二次加工だけではなくして、ほかの業界にもおそらく相当数出てくると見なければならない。それを、いわゆる国際的な関係で余儀なくせられたというようなことだけで実は受けとめるというわけにも私は——義務的な問題ならばこれはいたし方がございません。しかし、一方的に与えるべき恩恵に対してこんな大きな犠牲をわれわれは予測しなければならぬのでございましょうか。しかし、おまえの言うことは危惧なんだとおっしゃる。例外品目として認められるということが断定的に言い得るならば、私はこんなことを大きく叫ぶ必要はないと思っております。しかし、日米経済合同委員会においてにべなくアメリカ代表から、このことをはね返されたとは申し上げませんけれども、体をかわされておるこの姿を見ても、実はきわめて大きな危険性がある。二年、三年先だとおっしゃいますが、すでに追い抜かれてしまった。かつては八十何%のアメリカに対する輸出のパーセントを誇っておりました。それがすでに逆に追い抜かれてしまっておるというような業界が幾つか出てきておる。こういう状態のときに、そんな安易なことで切り抜けられるとお思いでございましょうか。
  19. 川田通良

    川田説明員 私どもは決して安易な気持ちでおるわけじゃございません。おっしゃいますように、合板あるいは二次製品は代表でございますが、後進国競争にすでに追われて、米国市場においてはそのシェアを失いつつある品目があるわけでございます。これが、特恵関税後進国供与することによりましてさらにそれに対して拍車が加わるということになりますので、私どもといたしましては、特恵関税供与基本方針をきめるまでに非常にちゅうちょし、また、いろいろと政府といたしましてもできるだけの努力をいたしたわけでございます。しかしながら、対後進国問題あるいはいわゆる南北問題というのはさらにまたもっと広い視野で考えらるべき問題であり、また、日本の最高政策として非常に高い観点から判断さるべき問題であると私どもは考えるわけでございます。  そういう観点に立ちますると、われわれは、わが国産業後進国に押されている品目につきましてあくまでもこれを守り通す、そして特恵関税供与しないという態度をはたして貫くことが得策であろうかという点につきましていろいろ検討を加えたわけでございます。そうしまして、この閣議決定のこの段階におきまして、基本的には前向きに踏み切る、しかしながら、国内産業に対する影響は大きいことも予想されるので、それらの品目については、対外的には最小限主張をし、また、対内的に影響の多い品目につきましては、政府といたしましては、先ほどの御説にございましたように、中小企業に対する影響を考えまして、中小企業のいわゆる近代化合理化対策あるいは産業構造対策、こういうものをさらに集中し強化し、あるいはまた輸出面での積極的な努力を行なう、あるいはまた技術改善その他も、従来からも行なわれておりまするけれども、こういう政策を集中的にこの特恵対策という面に実施していく、こういう対内、対外の二つの努力を続けるというような前提のもとに踏み切ったわけでございます。  それから、合板輸出につきまして具体的な数字のお示しがございましたが、合板は後進国が最も競争力のある品目一つであるというふうに私どもは考えておる。原料あるいは材料もそれぞれの土地で供給できますし、また、品目によりますが、技術もそれほどむずかしいものではない。したがって、現在でもすでに後進国輸出が伸びつつある品目でございます。こういう品目は、私ども判断ではいわゆる競争力の強い品目と見られる品目であると思います。ただ、先ほども申し上げましたように、現在の段階において合板がいわゆる例外品目になるとか、あるいは米国がそれに対して例外品目となることを承知するとか、こういうことは申し上げられる段階ではございません。しかしながら、こういう後進国競争力の強い品目については、われわれとしてはそれが例外品目になるような努力をしたいと考えておる次第でございます。
  20. 塚本三郎

    塚本委員 御努力のほどはわかりますが、大きな決意が要るわけであります。たとえば、いま例として申し上げたわけですけれども、原材料の問題については、日本の合板のごときは安くなる可能性はございません。しかも人件費は、その特恵供与をしなければならぬであろう相手国と比べてみても、最も高くて二分の一、安いところは三分の一から五分の一という労働力で実はこれが製造に当たっておるという実情、さらに、最も合理的な大量生産し得べき機械は大部分日本から持っていっておる。しかも彼らは、いま統計的に申し上げたように、ここ五、六年の間に急激に伸びてきたということです。日本はイギリスの今度の姿と全くよく似ておりまして、いわゆる六十年の伝統を誇っておりましただけに、古い機械、非能率的な、そして非近代的な製造の中にその日を送ってきたという、そういう事態にあったわけでございます。しかし、これを改善してみたところが、決定的な大きな差がございまする人件費の問題あるいは土地の代金、こういうもので格差がございますから、しかも、こういう問題はもはや科学的な処置を加えて施すべき範囲というものは、実はもう限定されてしまっておるのじゃなかろうか。しかもそれが日本先進国であるという、先進産業の犠牲にさせられてくるということは、業界にとっては耐えられないところです。そのことを御理解の上で除外品目としての御努力をなさっておることだと推察はいたします。しかし、もしそれが除外できなかったときには国家的な犠牲者としてこれを取り扱わなければならぬと判断されますか、どうでしょうか。
  21. 川田通良

    川田説明員 御説のとおりでございまして、対外的には、いわゆる後進国に対する対策の犠牲と申しますか、その大きな影響を受けた結果、国内産業があるいは倒産におちいるとか、あるいはほかに転換せざるを得ないとか、こういうことに立ち至りました場合には、やはりこれは当該一産業だけの責任ではないというふうに考えるべきであると私どもは考えております。ただ、その場合にはいろいろな対策がございますけれども、いわゆる金融とか税制とか、そういう従来の対策のみならず、労務面での対策等も考慮せられねばならないと思う次第でございます。  ただ一つだけつけ加えさしていただきたいのは、先ほど先生のお話もございましたように、特恵関税がなくてもひしひしと迫っている非常にきびしい客観情勢なわけでございます。したがいまして、業界におかれましても、やはり特恵関税供与があってもなくても非常に大きな客観情勢の推移の問題として受け取っていただいて、自主的な合理化近代化のために努力は続けていただきたい。それとあわせて政府ができるだけの施策を講ずる、これがわが国といたしましてとるべき態度ではないかと考えておる次第でございます。
  22. 塚本三郎

    塚本委員 おっしゃるとおりだと思っております。ただ、私が遺憾に思いますのは、このようなことは特恵関税が追い打ちをかけたという形であるにすぎないわけでございますね。すでに追い落とされつつあるという状態でございます。このときに特にこういうような業種が、中小企業にとって、しかも輸出品目と金額にとってわが国の中に占めます位置は決して低いことはないという判断がなされております。このときに私は、もっともっと——いままでに資本取引自由化に控えてというまくらことばのごとくに、くる法案もくる法案もこのことを実は政府としてはこの場で述べられてきております。にもかかわらず、特恵の問題だけが全く政府の腹がきまっていなかったとおっしゃればそれだけでございますけれども、しかし、そういう問題は早晩やはり受け入れざるを得ないという大局的な見地、これはもうすでに予測されておったところだと思います。にもかかわらず、それがいままでほとんど主張されず、もっと前からこの問題に対する施策を立てていかなければならなかったのではなかろうか。それは特恵がなくても早晩そういう事態に立ち至ることは輸出数量と金額を見ればわかるとおりでございますね。そういうことに対する強力な施策がなかったということはどうしてでございましょうか。
  23. 川田通良

    川田説明員 これは特恵関税対策のワクを出る御質問でございますが、通商産業省といたしましては、従来からの中小企業対策というものは、特恵関税に限らず、今後のわが国中小企業あるいは軽工業関係業種後進国からの競争に追われており、それに対処していくための合理化対策一つとして行なわれてまいったと私は考えております。資本自由化の場合のように大企業影響を受ける場合には早くから至れり尽くせりの手を打つ、しかし中小企業の場合にはおくればせに、やっときまってからあわてる、しかもそれが不十分である。そういうことがないように、また、決してそういうことであってはならないと私どもは考えるわけであります。  先ほどから申し上げますように、特恵関税につきましては今後きまる過程においてまだいろいろ努力余地が大いにございます。その時間的な余裕を見まして私どもといたしましては国内対策を現在やっておりますが、中小企業対策に、もし加えるものがあればさらに加えて、現在のものはさらにこれを重点的に特恵関税対策に指向していただいて、そうして国内産業影響最小限度に食いとめたいと考えておる次第でございます。
  24. 塚本三郎

    塚本委員 十一月二十四日の閣議決定のときに、これが中小企業に与える影響はきわめて甚大であるということで、幾つかの施策が例示的にあげられておったと思います。しかし、いまそこではお述べになりませんでしたが、新聞の発表によりますると、財政的な措置は特別にしなかったということが出ておったように記憶いたしております。その点はどうでしょうか。
  25. 川田通良

    川田説明員 現在の段階では、財政的にどういう措置をとるとか、あるいは税制面でどういう措置をとるとか、そういうところまでは具体的に案を詰めておりません。しかしながら、先ほど申し上げましたように、まだ具体的な施策を講ずる時間的余裕はございますので、特恵関税対象がどういう品目になるか、また、どれだけの幅になるか、そういうことを見きわめながら並行して国内対策を講ずるために各省間の打ち合わせも行ない、私どもとしては最大限の努力をしていきたいと考えておる次第でございます。
  26. 塚本三郎

    塚本委員 確かに、除外品目としてそういう危険性のあるものが除外されていけばもちろん必要ないでょう。おそらくそのことは判断として除外品目になる可能性が強いという判断のもとに、もし除外にならなかったときにやればいいという判断なのでございましょうか、その点はどうでしょう。
  27. 川田通良

    川田説明員 私どもの考えは、いまの御質問のお答えといたしましては、そうではございませんということでございます。特恵関税がきまりますのは約二年くらい先、あるいはもっと先になると申し上げましたけれども、しかしながら特恵関税品目が具体的にきまってから施策を講じてはおそいわけでございます。したがいまして、私どもといたしましては、現在の段階でもどういう品目に適応される可能性があるか、また、それに対する特恵の幅がどれくらいになるか、もしそうなれば、国内産業のどこにどのくらいの影響があるかということを詰めてまいりまして、これはやはり推測にすぎないかもしれませんけれども、しかしながら後進国産業と競合面の多い産業ということでいま拾いましてもある程度考えられるわけでございます。したがいまして、そういう産業におきましては特恵が近く行なわれる可能性があるということを念頭に置きながら、現在の段階でも、従来から行なわれておりますいわゆる中小企業の諸施策に加えましてそれをさらに強化して、いわゆる合理化対策の一環ではありますけれども、しかし特恵関税という一つの拍車がさらに加わってくる、その環境の悪化と申しますか、きびしくなる情勢に対応して現在からさらに施策を強化していくべきであると考えておる次第でございます。
  28. 塚本三郎

    塚本委員 十一月の三十日と十二月一日にOECD理事会が開かれたというその説明がございました。このときに日本の代表から力説せられた要点は何と何と何でございますか。もう一ぺん御説明いただきたい。
  29. 川田通良

    川田説明員 OECD理事会の会議の内容あるいはその結論につきましては、そのまま公表することをOECDの申し合わせで禁じられておりますのでそのとおり申し上げるわけにはまいりませんが、要点だけ申し上げますと、要するに、各国いろいろの主張がございましたけれどもわが国が特に主張をいたしました点は、原則的には輸出の面での影響も考慮に入れた先進国間の負担の公平の原則ということでございます。つまり、輸入面のみならず輸出面も含めて先進国間の負担の公平をはかる、これが眼目でございます。その場合にこの原則を、いわゆる品目をきめる、あるいは例外品目をきめる場合にそういう原則を一応念頭に置いてきめるということと、それから、一度特恵関税供与いたしました場合に、最初の予測に反して非常に輸入がふえるということがあり得るわけでございます。特恵関税対象になりました品目後進国からの輸入が急増するということがあり得るわけでございます。その場合には、当然それぞれ輸入国はこれに対して、国内産業を保護するために、場合によってはこれをストップする、あるいはある程度ワクをつくるということがあるわけでございまして、これはセーフガードと呼ばれておりますが、そういうものを発動する場合にも、自国の産業の問題だけではなくて、この場合に、たとえばアメリカにおきましては、日本からの輸出と競合する面については日本産業の利益と被害ということもある程度考慮に入れる、こういう考え方でございます。もちろん、こういうことはそのままの表現では入っておりませんけれども、そういう解釈のできるような原則に従来の原則を修正してもらったということでございます。
  30. 塚本三郎

    塚本委員 輸出の面を含めた負担の公平ということで、国際競争力のあるところの品目についてはいわゆる特恵供与を除外する、こういうことが主張せられたというお話でございますが、これに対する他の理事国の見解はどういうふうな状態でございますか。
  31. 川田通良

    川田説明員 各国はいろいろ千差万別でございますが、まあ一言で申しますると、この会議の内容は、先ほど申し上げましたように、実はあまり外部に公開されないことになっておりますけれども米国、英国、あるいはフランス、ドイツ、イタリア等、かなり調子の違いはございますけれども、ある程度理解を示した国と、それから、そこまで考えるのは、という国とございますが、しかし、おしなべて申しますると、日本主張は、一応主張としてはもっともである、しかしながら、それを具体的に発動する場合にどうやるか、また、そういう考え方が後進国に聞こえた場合に、それに対する反響がどうであろうか、こういう点につきましてある程度疑問が投げかけられた、しかしながら、最後の段階においては、一応日本主張したような原則が、日本主張したような立場がいれられるようなそういう立場を取り入れた表現になったということでございます。
  32. 塚本三郎

    塚本委員 私が申し上げるまでもなく、この特恵供与でもって、さしあたって最も影響力を受ける日本の国、しかも、数字的に通産省から発表せられた数字等を検討いたしますると、他の国は、理事国といえども先進国といえども後進国からの影響力は三分の一あるいは五分の一あるいは十分の一程度だという数字が金額的に発表せられております。ならば、この問題については、日本が一番の大きな影響力があることは決定的だと思っております。にもかかわらず、理解を示した程度で、実はこの問題が、いわゆる日本としての対処のしかたとしては、私の見解からするならば、あまりにもなまぬるいのではなかろうか。日本はこの問題に対しては、例外品目の、いわゆる除外品目の問題に対しましては主導的な立場をとるべきだというふうに思いますが、どうでしょうか。
  33. 川田通良

    川田説明員 実質的には御説のとおりに、日本がもちろん一番影響が多いわけでございますし、また、日本主張がもっと受け入れられてしかるべきだというのは、私ども同じような気持ちでございます。しかしながら国際会議の場所におきましては、やはり一国の主張というものは、いかにその内容に理屈があってもほかの国からそのとおり受け取られるというわけにはいかないというなかなかむずかしい面がございます。それからまた、ちょうど相手の——相手と申しますか、特恵関税によって逆に利益を受ける国、特恵関税を強く主張している国がいわゆる後進国発展途上国でございますので、こういう国の立場からまいりますると、日本に対しては、何と申しますか、先進国として、あるいは羨望の目をもって見る、あるいはいろいろと努力を要請するという点もございまして、私ども日本主張が、私ども考えるほどそのとおり受け取ってはもらえない、またその主張が、われわれの主張のとおり一〇〇%通るわけにはなかなかむずかしい面があるという点を御理解願いたいと存じます。
  34. 塚本三郎

    塚本委員 そうばかりとは言えないのじゃないか。おたくからの資料を見ましても、同じ後進国の中だって、この影響力を受けるのはわずか十カ国くらいの先発後進国が最も影響力を受けるのであって、あとの七、八割というものはそんなに影響力を受けない、恩恵を受けられない立場にある。むしろそういう感じ日本が持っておるとすれば、逆に私は、特恵を工業製品だけに限定して論ずること自身に無理があると思うのです。先進国として被害を受ける決定的な被害国は日本だけである。そうして、利益を受けるのは、後進国のうちの七、八十あります中でわずか十ほどの先発後進国が利益を受けるだけで、もし日本がそういう立場に立つならば、日本だけは例外なんだから、どうせ日本輸入をたくさん余儀なくさせられておる資源の問題がございます、だから、一次産品をそのかわり買わしていただきますという、こういう手くらい考えても、もちろん特恵というルール、いままで主張してこられたルールの中でははまらぬかもしれません。しかし、日本がそこまで御進国に対する影響力を考えるならば、その恩恵を受け得ないところの大部分の諸国に対する手を差し伸べてあげる、そうするならば万事円満にいくではございませんか。先進国だけがいい顔をしておって、その中で特殊事情にある日本の国だけが被害を受けて、そうして恩恵を受けるものも後進国の中の特殊的なそういうわずかな地域だけとするならば、例外を主張いたしまして、そうして、そのかわり日本は一次産品をうんと買い入れる、こういう形に切り抜ける方法も主張していいのではないか、私はこういう感じ、いわゆる世界の南北問題という立場で考えられるならば、そこまで問題を広げて論じていっていい問題ではないか、こういうように考えるのですが、どうでしょうか。
  35. 川田通良

    川田説明員 御説のとおりでございまして、後進国の間でも、この特恵関税の受け取り方にはかなりの差がございます。  御指摘のように、後進国の間にも、いわゆる先発後進国と申しますか、比較的工業化の進んだ国とそうでない国とがございます。こういういわゆる先発の後進国におきましては特恵関税の利益がまともにあるわけでございまして、こういう国はもちろん先頭に立ってこれを主張しておるわけでございます。残りの、いわゆる私ども申しております後発後進国におきましては、特恵関税そのものの利益は、現在の段階ではあまり大きくない、あるいは、国によりましてはほとんどないわけでございます。したがいまして、こういう国は、ただいまお話しの中にございましたようないわゆる一次産品、つまり農産物であるとかあるいは鉱産物についていろいろな要求を出しておるのであります。  簡単に申しますと、こういう商品については国際市場における価格の変動が激しい、そのためにその国の外貨所得が非常に不安定である、長期的には低下していく傾向がある、したがって、これに対する対策を考えろ、そのためには先進国も応分の資金の負担をしろ、たとえば商品協定をつくれ、あるいは緩衝在庫をつくれ、こういう主張を非常に強く行なっておるわけでございます。あるいは先発あるいは後発の後進国を通じまして、いわゆる援助はさらに総額をふやしてくれ、あるいはその条件をゆるくしてくれ、こういうことを非常に強く主張いたしておるわけでございます。  したがいまして、これらの主張のそれぞれにおきまして各後進国の利害は若干ずつ違いますけれども、やはり自分たち主張による好影響を最も強く受けるところはそれを強く主張するということでございまして、たとえば特恵関税につきましても、後発後進国が直接の利益がいまは少ないからといって決して反対しておるわけではございません。近い将来に自分たちもやはり工業を発展させ、この特恵関税の利益を受けようという気持ちもございますし、また、自分たちが特に強く主張いたしておりますいわゆる一次産品に関する先ほど申し上げました商品協定その他の対策、こういうものを強く主張し、またそれに対する他の後進国、つまり先発後進国の共同歩調もとってもらうために共同戦線をとりまして強く主張いたしております。したがいまして、後進国の間での意見が分かれて、必ずしも特恵関税に賛成しないとか、あるいは、場合によっては反対するという情勢は現在の段階ではほとんど見られないのでございます。さらにまた、御指摘のように、ほかの面で、たとえば一次産品の商品協定その他の面で日本が協力する、あるいは緩衝在庫等の保持の資金につきまして何分の負担日本がするとか、あるいは、さらにまた援助をふやすとか、条件をよくするとか、こういう点につきましては、またそれなりに日本としては、当然国なりあるいはその影響の直接の対象になります産業におきましてそれぞれの負担をし、あるいは影響を受けなければならないわけでございます。そういうものと総合いたしまして、日本としての対後進国政策あるいは南北問題に対する日本の国策がきまるものであろうかと思います。その中の一環といたしまして今度の特恵関税も考えられておるわけでございまして、現在の段階で基本的に一応原則がきまっておりますのは特恵関税だけでございますが、その他のただいま申し上げましたような問題につきましても、今後やはり次々と後進国要求が出、それに対してわが国としてもどう対処するか、やはり日本としてはほんとうの決心をこれから迫られてくる、こういう段階ではないかと承知いたしておる次第でございます。
  36. 塚本三郎

    塚本委員 援助よりも貿易の拡大、私はこの考え方は賛成でございます。だから、これを回避することによって援助額を負担しなければならぬというアメリカからの押しつけがましい空気、こういうものを私は堂々とはね返していいと思っております。何か、この特恵なるものをいろいろと、私ども十分掘り下げたわけではございませんが、日本だけがひとりいじめられておるという形にしか受け取れないわけでございます。言ってみるならば、EECとアフリカとの関係、あるいはイギリスと英連邦との関係アメリカと南米との関係、こういうようなおのおののブロックの関係の行き詰まりを全部総合的に日本にぶつけてきたような形がこの特恵の姿に集約されてきた、こういうふうにさえも私どもは受け取っております。  この際、先進国自分たちのブロックの中の問題の解決をここにぶつけられたという形を回避するために、先進国同士の話し合いよりも、もっと後進国と直接の折衝というものをして、ほんとうに後進国に喜んでもらう。アジアにおける日本の責任というものは当然果たさなければならぬでしょう。現実にその中において、いわゆる自由主義陣営が、経済だけではなくして、何かはかの問題等も考えて懸念のあるような国々との関係だけを考慮に入れておるような気さえするわけでございます。この際、二月一日でございますか、インドにおきまする第二回のその開発会議のときに、その多くの後進国に対して、日本が膨大な資源の輸入をいたしております一次産品の輸入に対しては、私どもは将来とも増大しなければならぬでございましょう。   〔委員長退席、宇野委員長代理着席〕 それならば、この際、先進国のそういう自分たちだけの勝手なことでもっていわゆる日本に犠牲をしいておって、そうして日本の苦しい立場というものに対しては冷淡なこういう態度に対して、われわれはそんなに意に介するよりも、具体的に後進国をそのまま援助して、日本の将来への貿易の量を拡大するための施策のために、何らか具体的にその後進国に対する、いわゆる二月の第二回の総会に対する対策をこれから講じられる意思がないかどうか、私はそれを具体的に進める必要があると思いますが、どうでしょう。
  37. 川田通良

    川田説明員 ただいま御指摘の点のまず第一の、先進国の間のいろんな問題をわが国にしわ寄せさせられておるということでございますが、私どもは、先進国が意識的に日本にしわ寄せをしたというふうには考えておりませんけれども、しかし結果的には、この特恵対策に関する限り、日本に非常に大きなしわが寄るということはいなめない事実でございます。したがいまして、いままでいろいろと、なるべくそういうことにならないような努力を続けてまいりましたし、また今後も続けていきたいと考えておる次第でございます。  それから、後進国との関連をもっと密にして、後進国事情も個々によく聞きながら、そうして日本としてもとり得る、また後進国にプラスになるような対策を考えていくべきではないかという御説に対しましては、全く同感でございます。  今回、来年の二月、三月に開かれます第二回のUNCTADを前にいたしまして、私どももこれからいろいろ具体的な点を詰めて、いかなる対策について日本がそういう後進国の要望に応じられるか検討する段階でございますけれども、すでに、いわゆる七十七ヵ国会議と申しておりますが、後進国の合同の会議におきまして後進国の共通の要望というものは一つの形になってあらわれております。こういうものを詰めてまいります段階におきまして、やはり後進国のほんとうにプラスになるような、また、わが国としても十分協力のできるような、そういう対策を考えていきたいと考えておる次第でございます。
  38. 塚本三郎

    塚本委員 いま申されたようなことを具体的に後進国に対してそれぞれの国に恩恵が及びまするような施策を行なっていきますならば、あえて日本の問題、いわゆる先発の地域におきます競争力のある品目に対する除外という問題は、私は受け入れられるのではなかろうか。しかし、このままほかっておきますと、七十七カ国の一致した、いわゆる総当たりでもろに攻撃を受けたならば、自分たち被害がごくささいであるところの理事国は協力をしてくれないのではないか。そういう意味からいっても、後進国に対してこれから具体的にスケジュールを立てて対策を立てる必要があると思いますが、観念的にそうすればいいであろうというのじゃなくして、具体的にいわゆる総会対策というものを立てていかなかったら、私は、もうこれはそのときになってはおそい、こういう感じがしますが、どうでしょうか。
  39. 川田通良

    川田説明員 御承知のとおりでございまして、私どももただいまのような認識の上に立ちまして、すでに出ております後進国要求をもとにいたしまして、これはひとり通産省だけではなく、外務省はもちろん、大蔵省あるいは農林省、その他関係各省ございますので、政府の内部におきまして具体的な題目の検討を重ねておる次第でございます。
  40. 塚本三郎

    塚本委員 内部において検討を重ねておるといっても、もう来年二月でございましょう。これは時間的に、直接折衝するために出かけていっておも立ったところはやらなければ間に合わないのじゃございませんか。
  41. 川田通良

    川田説明員 先生の御指摘の点は、個々の国と直ちに交渉を始めたら、ということかと存じますが、やはり出ております要望は、一国一国、若干の影響の違いはございますけれども、共通の項目は拾ってございまして、もしもこれを日本が受け入れるとか、あるいは一応困難であると答えるという場合には、やはり国別よりも個々の題目別になりますので、私ども検討といたしましては、一つの計画自体として、計画全体としてとらえるという考え方で現在の段階は進んでおります。もちろん、この計画の実施にあたりまして、その影響を受ける度合いは、国によりまして若干の差があるわけでございます。したがいまして、これに対する関心は、国によって、題目によって若干差があると思います。したがって、個々の交渉におきましては、その辺は多少交渉技術の問題はあるかと思いますが、現在の段階では、一応国別に考えないで、対策の全体として考えている。そういたしまして、この会議は二月から三月、長期にわたるわけでございまして、その会議の過程におきましていろいろな紆余曲折が想像され、またわが国と同調する先進国あり、あるいはそうでないところあり、また後進国の間でも意見が分かれるところもありということで、その場合の局面に処して対処すべきではないかと考えておる次第でございます。
  42. 塚本三郎

    塚本委員 そうしますと、もうこのまま、いまの時点の各国の理解のまま二月における第二回の会議にいわゆる出たとこ勝負ということにならざるを得ないということになりますが、そういうことでございますか。
  43. 川田通良

    川田説明員 出たとこ勝負ということばで定義いたしますと、そういう表現もあるいはできようかと思いますが、私どもは、決してこれが出たとこ勝負とは考えておりませんので、いろいろな問題は、はっきり申しますと出尽くした形でございます。そうしまして、その問題の中には、正直に申しますと、日本がこれを受け入れることのできる題目はそんなにたくさんはない、つまり、受け入れるのが非常にむずかしい問題が多い、したがって、それをどういうふうにどの程度に受け入れていくかは、相手の国の要望の強さ、また、ほかの先進国のこれに対する態度等を見ながら対処していかなければならないと考えておる次第でございまして、私どもは、今後の後進国あるいは先進国を含めましての諸外国の出方あるいは対策を見ながら柔軟な態度で処理していきたいと考えておる次第で、ございます。
  44. 塚本三郎

    塚本委員 それでは、もう水かけ論になってしまいますから結論的にお尋ねしておきますが、たとえばいま私が一、二申し上げました合板であるとか、あるいは綿製品に対する二次加工、こういった問題は、この二つに限ってもよろしゅうございますが、これは例示的に申し上げるのですが、この二つに限って、いま日本が最も危険な立場に立たされておる品目だと思いますが、こういう問題は、いままでの経過からしたら、二月における会議では除外品目とすることができるというその可能性というものは何%でございますか。おたくの判断でけっこうでございますから……。
  45. 川田通良

    川田説明員 私どもの気持ちといたしましては、先ほどから繰り返し申し上げておりますように、合板、繊維二次製品等は後進国競争に最も押されておる品目でございますので、なるべく特恵対象にならないように、またその幅は、もし特恵対象になる場合は少なくなるようなことを実は期待いたしておりますけれども、しかし、基本的にはわれわれ日本政府部内におきましても決定的な思想統一はまだ行なっておりません。  それからまた、第二回のUNCTADにおきまして後進国の交渉の場でどうなるか、見通しは何%ぐらいかというお尋ねでございますけれども、この例外品目という考え方は、先進国の間では思想統一が一応できておりますけれども後進国の間につきましてはこれはまだ公表はいたしておらないわけであります。また、後進国自身は、おそらく例外品目最小限にしてほしいとか、あるいは、できるならばそういうものはなくしてくれとか、こういう要望は当然出てくるであろうと思います。そして、との会議におきましてどういう了解がつきますか、まだ私どもいまの段階では客観的にどうなるかという断定はできないというのが正直なお答えでございます。  しかしながら、繰り返して申し上げますように、われわれといたしましては、何とか国内産業影響最小限にしたい、いわゆる後進国問題、南北問題の解決のために日本も全力は尽くすけれども、しかし、まだまだ国内産業にもいろいろな問題をかかえておる、この問題につきましては、やはり日本国内事情もわれわれとしては十分考えなければならない、したがって、この両者の調整におきましては、おのずから限度があるという点につきまして後進国の了解も得、また、先進国先ほど原則に基づきまして具体的な特恵供与のときに十分配慮してもらうという努力を重ねてまいりたいと考えておる次第でございます。
  46. 塚本三郎

    塚本委員 了解してもらうとか、あるいはまた、その努力を重ねるというお話でございますが、最初申し上げたうよに、日本の国が、先進国が特別にいわゆる恩恵を供与する立場なんだ、この基本原則を貫いて、受け入れられなかったならば、すでに特恵そのものがおかしいじゃないか、いかなかったならば、なぜ最恵国の問題でこれを争ってこないのか。さっきもお認めいただきましたように、EECとアフリカとの問題、あるいはまたイギリスのいわゆるブロックの問題やアメリカ合衆国と南米との問題等、こういう変形的な特恵の姿を世界特恵に広げたのが実は今度の問題でございましょう。このこと自身何も大義名分はないと私は思っております。それをぶっつけられて日本だけが犠牲にさせられるなら、それは同じように平等の立場に立って最恵国の問題をぶっつけて、逆にそのことでいくことが日本にとって最も有利ではございませんか。それをどうしても受け入れられないなら、しかたがないから、日本先進国という有名税のつもりでそういうことをさしていただくということならば、それは当然のごとく除外品目というものを堂々と掲げてみたって、その業界が全く後進国でありますことは数字が示しておるでございましょう。それにもかかわらず、そういう武器が幾つかあるにもかかわらず、へっぴり腰——そんな言い方は恐縮でございますけれども、なぜそういう態度で臨まなければならぬのでございましょうか。世界貿易の拡大を言うならば、最恵国待遇をもっともっと強く、正々堂々と主張してオープンにいき、あるいは、それができないならば、後進国に対する先進国としての義務というものを感じさせられるならば、一次産品をも特殊の例として含めるという形で太刀打ちすることもできるでございましょう。この問題は対アメリカとの問題ではなくて、いわゆる後進国に対する特別恩恵の立場にこちらは立っておるのだ、こういう立場で言い切っていくことができるではございませんか。しかも、膨大な一次産品を毎年日本は買わなければならぬ経済状態にあるとするならば、幾つでもそういう手は打てると私は思うのでございます。ところが、もう来年の二月でございましょう。そんなときにこんな状態のまま出たとこ勝負でぶつかっていったならば、その前途というものはきわめて危険なんだ。資本自由化という問題を再三にわたってこの一年間政府がここで叫ばれたごとく、そのような姿勢をとられたならば、私は、もっと具体的にいまめどがついておったのではないか、こんな気さえもして、悔やまれてならぬわけでございます。再度その決意のほどを承りたいと思います。
  47. 川田通良

    川田説明員 特恵関税後進国に対する対策一つでございますが、もっと基本的な問題といたしまして、各先進国は、後進国も含めまして、いわゆる最恵国待遇原則、つまり関税自体を各国に対して無差別平等に引き下げる努力をすべきである、この点は先生のおっしゃるとおりでございます。この点につきましては、先進国間の了解におきましても特恵関税で終われりということではございませんので、最恵国待遇原則に基づいて今後ますます関税引き下げの努力をする、いわゆるケネディラウンドの終わった直後ではございますけれども、さらに今後とも長期的に関税引き下げの全面的な努力を行なうということになっております。また、この考え方は今度のOECD基本的な方針の中にも一応織り込まれておりまして、これはいわゆる特恵関税の暫定性の原則と申しておりますけれども特恵関税は未来永劫のものではない、後進国のその産業発展するまでの間暫定的に特恵関税を認めるのであるという考え方になっております。したがいまして、期間が十年とかあるいは幾らとかいろいろ議論はございますけれども、ある時期が過ぎた場合には当然この特恵関税ははずされるという考え方があるわけでございます。その場合には、おそらく特恵関税にあわせて他の先進国に対してもその関税を引き下げて、そうして先進国後進国を通じて共通の税率になる、こういう考え方が各国の間にあるわけでございまして、先生御指摘のように、この特恵関税はさらに基本的には各国の無差別平等の原則による最恵国待遇原則によっていくべきであるという点は、私どもも同感でございますし、またOECD各国の間でも了解されておる点でございます。  そのほかの点につきましては、先生おっしゃいましたように、今後とも、その特恵問題だけではなくて、後進国の問題につきましては、もっと広い視野で日本としてはできるだけの努力をいたしますとともに、また他面、日本国内におきますいろいろのまだ残っておる問題、先進国とはいいながら先進国の中のおくれている国として残っている問題はやはりあわせて解決さるべきであり、その場合には、後進国に対する日本基本的な、何と申しますか、好意的な態度と両方あわせてわが政府としては決断すべき問題であるというふうに考えておる次第でございます。
  48. 塚本三郎

    塚本委員 もう何度も申し上げてもあれでございますから、強い態度をこの際とくと御要望申し上げておきます。そのことを十分御理解しておいでになるあなたが、特恵関税を受け身の形だけで言っておられて、私は、逆に日本が一番不利という立場だけを防戦これつとめておる姿は痛ましいとさえも思われる状態でございます。逆にこちらから最恵国の問題で実は攻撃に出てしかるべき問題ではなかったか、こんな気さえするわけでございます。だから、この際はぜひそのことを強く主張していただきたいというふうに希望を申し上げておきます。いずれまたこの問題は通常国会でも再三にわたってお尋ねもし、御意見を申し上げてまいりたい、かように思っております。  最後に、繊維のほうで、しぼりの輸入の問題につきまして、これは範囲は狭うございますけれども、しかしながら業界にとりましてはこれまたきわめて深刻な問題になっております。相当量いま業界に入ってきておるように見受けられますが、どんな措置をとっておいでになりますか。
  49. 金井多喜男

    ○金井政府委員 御案内のように、しぼりの日本への輸入、特に韓国からの輸入が最近とみに激増しておる次第でございます。  私どもの知る限りにおきましては、愛知県、東都府等を中心といたしまして、しぼり加工に携わる業者の方が非常な脅威を感じておる次第でございます。一方、韓国のほうとしては、日本との貿易の推進、なかんずく片貿易の是正等の見地から、委託加工の製品につきまして、関税を、生産財を含めた全部の金額ではなくて加工賃だけで輸入の扱いをしてほしいというような強い要望が年来ある次第でございますけれども、その点につきましては、私どものほうは、国内産業あるいは産地に与える影響が非常に大きいということを考慮いたしまして、現在のところ、その委託加工品の輸入関税について加工賃だけにしぼるというような考えは持っておりません。
  50. 塚本三郎

    塚本委員 輸入数量についてはどうでしょうか。
  51. 金井多喜男

    ○金井政府委員 輸入数量につきましては、実はこれは厳格なる関税統計にあらわれてこないわけでございますので、大蔵省の当局をわずらわしまして、いろいろ推計等を交えた数字でございますが、顕著に輸入がふえておりますのは昭和四十年からでございます。年々ずっとふえてまいりまして、ことしあたりの見込みといたしましては、日本国内産が三十億円程度といたしますと、韓国のしぼりの輸入というものは、生地代を含めまして四十億円程度、すなわち国内生産よりも輸入品のほうが十億円程度上回る状態ではなかろうかというふうに考えております。
  52. 塚本三郎

    塚本委員 これも将来、そういう輸入業者の希望が大きれば希望どおり認めていかれるという方針ですか。
  53. 金井多喜男

    ○金井政府委員 私どものほうとしては、これはなかなかむずかしい問題でございまして、先ほども申しましたように、国内の業者といたしましては、非常に輸入による脅威——これは量的な問題の根源には、韓国の労務費が安いものですから非常に加工賃の上でも格差があるわけでございます。そういった点で、このままの状態だとじりじり押されていってしまって、国内産業が撲滅のおそれもあるというような強い主張もあるわけであります。ところが、一方、韓国と日本との貿易関係、それからすでにこのしぼり製品につきましては自由化をしておりますので、そういった輸入面につきましては、そういう国内問題はございますけれども、私どもの現在の考えといたしましては、特に輸入について制限をするとかいうようなことは従来のいきさつ等からして至難ではなかろうか、こんなふうに考えておる次第でございます。
  54. 塚本三郎

    塚本委員 御承知だと思いますけれども、金額はわずか三十億円でございます。しかしながら、これは工場労働者と全く違っておりまして、婦人の家庭の内職として実はこの生産の大半が占められております。その労働人口というものはきわめて大きな数にのぼっておるわけでございます。金額からするなら、全くこれは産業としては取るに足りないものであるかもしれませんが、労働人口、特に婦人の家内労働という見地、これは無視することができない。地域によりましては、特に愛知県のごときは重大な問題になっております。これを制限することができないとするならば、何らかの形で——業界からも再三にわたってこれに対する要請が来ておると思いますが、まさか野放しにはしておいでにならないと思いますが、これに対する具体的な対策の一、二をお聞かせ願いたいと思います。
  55. 金井多喜男

    ○金井政府委員 対策としては、輸入の扱いをどうするかという問題と、関税措置をどうするかということが業界として一つの大きな関心事であろうかと思います。なお、加えまして、一部の意見としまして、韓国品について品質表示か何かで差でも設けてくれないかというような意見もあるわけでございます。  第一の点につきましては、国際的な貿易自由化の動向なり日本と韓国との片貿易の是正なり友好関係というようなものからいたしますと、私どもはなはだ至難と考えておることは先ほどお答えいたしたとおりでございます。  第二番目の関税の問題にいたしましても、率直な話が、韓国のほうといたしましては、本年においても何度か閣僚ベースを中心にして会談を行なったわけでありますが、そのつど、とにかく委託加工品については生産財を除いた加工賃だけで関税を評価すべきじゃないかという非常に執拗な要求があるわけでございますけれども、私どものほうといたしましては、これまた先ほどお答え申しましたとおり、国内産業が非常に打撃を受けておる状態でございますので、そこまではとても譲れないということでがんばっておる次第でございます。  第三の補足的な問題として品質表示等の問題につきましては、これも実は私ども検討しておる次第でございますが、現在の品質表示法は任意表示ということを主体にした法律の構成でございますし、また一方、この品質表示について、国内の扱いにおいてもいろいろ問題があるわけでございますが、どうも原産地を示すということを品質表示に取り上げるというような問題も、これまた国際的な表示の自由化という大きな観点から考えますと、ある特定国について非常に差別的な印象を与えるという以外にメリットがないというような感じもいたす次第でございます。これはまだ検討の段階にある次第であります。  以上、大まかに申しまして三点でございます。
  56. 塚本三郎

    塚本委員 原産国の表示が差別待遇を与えるという、そういう見解というのは、私はちょっと納得がいかないと思うのです。たとえば、アメリカにおきましてもカナダにおきましても、メイド・イン・ジャパンというものが必ずつけられておるように記憶いたしております。通産省アメリカ先進国として経済的にはずいぶん学んでおられると思います。この点から考えても、韓国にこういうことをすることが差別待遇だというふうな考え方は、逆に言うならば、不当表示という疑惑さえも持たれると業界はいっております。だからこの際、正々堂々と品質を表示することによって、業界自身もいわゆる品質向上のために自信を持って努力することができるし、そのほうがこそく的な輸入の制限をするよりもいいのではないか。このことのほうが前向きの考え方だと私は思うのですが、どうでしょうか。
  57. 金井多喜男

    ○金井政府委員 私の先ほどの答弁が多少明確さを欠いておったかと思いますが、先生御指摘のように、メイド・イン・USAとかメイド・イン・イングランドとか、そういうものを任意に表示するということは行なわれておりますが、これは法律上からいってもけっこうでございます。私が申し上げたいことは、要するに、韓国なら韓国のしぼり業者が、あるいは日本輸入業者が自主的に韓国製品なる旨の表示をするという点については、これはもし当事者がやるというなら大いに歓迎するところでございます。ところが、お尋ねのような趣旨におきまして、ある意味において非常にこの韓国製品が日本にフラッドをして、そして関連の日本国内中小企業者が困るからやるということになりますと、これはまあ強制的にやるということ以上には、なかなか自主的に表示をするというようなムードになっていないのじゃないかと思うわけでございます。  そういった意味におきまして、強制表示という点につきましては、現行の国内法においてもそういう規定はございませんし、かりにそれを強制表示の方向において検討いたすにつきましても、その辺の大義名分につきまして、なかなか理論的にむずかしい問題がある次第でございます。こういうことを申し上げたかった次第でございます。
  58. 塚本三郎

    塚本委員 おっしゃるとおり、それは法律的にはそうかもしれませんけれども、具体的に、たとえばアメリカなどでもほとんど日本商品は、おそらくこれはカナダ等でも日本が自主的にやっておるのではなくして、ある程度それは国の政策としてやらされておるんじゃないかというふうに——これは私まだ十分勉強しておりませんけれども、それくらいのことはすることによって、日本が、業界自身がいわゆる品質の改良に全力をあげる、こういうことは私はいいことではないか。そんなことは、何にも警戒してみたり、あるいはまた相手のいわゆるごきげんを考慮する必要はないんじゃないか。輸入を制限してみたり、そういうことならばそれは大義名分は通りませんけれども、韓国のものにそのまま韓国表示をするということに対して差別待遇だというふうに見るということは、あまりにも遠慮し過ぎておりはしないかと思うのですが、どうでしょうか。
  59. 金井多喜男

    ○金井政府委員 たとえば貿易管理の面におきまして、輸入の通関の場合に原産地をはっきり表示させるという点については、これは各国とも輸入管理の面で適用していようかと思います。しかし問題は、国内に流れて流通過程に入った場合に、それを強制的に表示するというようなことについて、私ども現在の段階におきましては、ほかの各国においてもそういうようなことが行なわれているというようなことについてはまだ具体的な例を承知していない次第でございます。先ほど申しましたように、韓国のほうといたしましては、日本に対しまして、これは長い間この会談等のつど強い要望、すなわち韓国のしぼりについて、関税の面においてまで特例の措置を講じてほしいというようなことが、もう日韓経済会談の最も大きい問題になっているということすら言えるのじゃないかというような実態でございます。そういった点におきまして、私ども国内に与える影響と、隣国との貿易拡大、片貿易の是正というようなことをあわせて考えますときに、まことに恐縮でございますけれども、先生のおっしゃるように、いや、遠慮せぬでいいというふうに、なかなか行政当局といたしましては結論を下すにはちょっとまだ検討を要しようか、こんなふうな気がいたしておる次第であります。
  60. 塚本三郎

    塚本委員 考慮の余地はありますね、検討余地はあるということは。
  61. 金井多喜男

    ○金井政府委員 そういった点におきましては、先ほどもお答え申しましたように、私ども内々検討いたしておる段階でございます。
  62. 塚本三郎

    塚本委員 もう一つ、それでは、輸入の場合における荷受け機関を、たとえば工業組合とかそういうことでつくるということ、実は数量を制限するのではなくして値段を——農産物には若干そういうことが行なわれているようでございますけれども国内市場における価格を維持する、こういうことのためにいわゆる荷受け機関をつくるということは、考慮に値しませんか。
  63. 金井多喜男

    ○金井政府委員 私ども、そういった輸入の制限的な意味において荷受け機関をつくるというような点につきましては、実は検討しておらない次第で、ございます。  なぜ検討していないかという点につきましては、先ほど来申し上げますように、やはり金融の面におきましては基本的にフリーという考え方でございますので、実は業界のほうからもそういう意見もございませんし、私どももそういった基本的な思想から、検討というような考えはございません。
  64. 塚本三郎

    塚本委員 繊維局長、もう繊維自身が、とにかく二次加工等におきましては斜陽的な空気を否定するわけにいかない。これは決定的な問題として、もう労賃の問題が圧倒的な比重を占めていますね。こういう状態は、すべてそういういわゆる影響力を受け入れざるを得ない状況になっておる。もちろん、単に私はしぼりだけを例にあげて申し上げましたけれども先ほど特恵の問題にあわせて繊維の二次加工の問題等は、これはもはや先進国としての技術的な問題だとか資源的な問題ということの別の問題でございますね。だから、もう労賃という決定的な大きないわゆる断層を持っておりまするものの受けなければならぬ宿命だと思います。こういう問題に対してどのように対処するのか。もうある程度までとにかくささえにささえて限界にきたときに業種転換をするよりしかたがないというのか、あるいは、これだというような施策を考えておいでになりまするか、その基本的な見解をもう一度お尋ねしたいと思います。
  65. 金井多喜男

    ○金井政府委員 御指摘のように、日本中小企業はいろいろの業種がございますが、このしぼりのような特定業種は非常に後進国の追い上げを受けまして、毎年毎年といいますか、日に日に影がだんだん薄くなっていくという実態につきましては、私ども行政当局の任に携わる者として非常に困ったものであるということを痛感しておる次第でございます。  根本的には、私ども、この繊維の二次製品加工なり、あるいは私が所管しております雑貨の業種等につきましては、とにかくせっかく長年築いてきた業種であり産業でございますので、そういった点からは、できるだけいままでのあり方でもってより発展してもらうということが願いでございますけれども、だんだん日本自由化が進捗し、国際経済が開放経済体制に向かいますと、それに押される産業というものが出てまいるわけでございます。この点につきましては、私どもも、まず根本問題といたしまして、中小企業者あるいはそういった中小企業の製品業者が、やはり絶えず国際経済はどういうふうに動いていくか、あるいは日本産業というものはどういうふうにあったらいいかというような、長期的な業種のビジョンなりあるいは企業のビジョンなりというものを確立して、そして徐々に品種転換なりやっていただくというような方法も例外的にやむを得ないのじゃないだろうか、このように思います。  第二番目といたしましては、そういった場合に、中小企業施策として、そういった国際経済の変化に対応して、品種転換なりあるいは業種転換なりやらなければならないような事態につきましては、それ相当の業者の自主的な努力に即応して、国としても、たとえば金融措置等を中心に円滑なる転換等ができて、そうして新しい産業がまた発展するというようなふうに指導すべきである。こんなふうに考えておる次第でございます。
  66. 塚本三郎

    塚本委員 苦しい立場においでになると思います。おそらく、そうしまするならば、決定的なこの労務費に対する断層というものを埋めるわけにはいかないということになると、もうあとは特別な施策はないのです。意匠だとか、あるいはその技術的な微妙な問題でございますね。あるいは芸術的な分野を確保するというような程度、こういうようなほんとうにわずかの分野にしかいわゆる一歩先んじるわけにはいかない。このときに、原産国としてのいわゆるその国名表示がノーと言われるならば、それはもう悪貨が良貨を駆逐するじゃございませんけれども、やはり外見的にちょっと見ただけではわからないというような安いものがどんどん流れてしまって、おのずからそういうふうな衰退の一途をたどらなければならない。こういう意味からも、ひとつ希望として、最初考えられるとおっしゃったのですが、何とか原産国としてのその国名の表示の方法について、せめてこんな道からでも、いわゆる日本の伝統的な業者というものはこういうものをつくっておるんだということで彼らに希望を持たして、業種転換よりもこのことによって生き延びられ、そして業者自身もまたさらに広い市場というものを確保させるところの希望を持たせなければいけないのではなかろうか。ひとり芸術的なものあるいは文化的なもの、こういうもので意匠、デザイン、そういうものの研究はもちろんですけれども、その土台となりまするいわゆる特産国としてのそういう余地というものを確保するためにもそういうことをもっと真剣に具体的にひとつ取り組んでいただきたい。このことを強く希望いたしまして、私の質問はこれでやめさしていただきます。  ありがとうございました。      ————◇—————
  67. 宇野宗佑

    ○宇野委員長代理 次に、内閣提出液化石油ガスの保安の確保及び取引適正化に関する法律案を議題とし、審査を進めます。  質疑の申し出がありますので、これを許します。中村重光君。
  68. 中村重光

    ○中村(重)委員 それでは、液化石油ガスの保安の確保及び取引適正化に関する法律案についてお尋ねするのでありますが、この法律案の議論の中心になるのは、何といってもこの第二条だろうと思うのです。一番重要な点について先にお尋ねしたいと思いますが、きょうは大蔵省、消防庁あるいは自治省等から出席をしていただいておりますから、それらに関係するものを先にひとつお尋ねをしてみたい。  その前に、何といっても重要な問題は、これは事故をなくするための保安の確保ということが一番大切であると思います。最近新聞を見てみると、毎日毎日プロパンの事故というものが、きょうはあっちにあすはこっちにというぐあいに出ている。この法律案は、実は特別国会において成立をしないで継続審議になっておる。消費者保護法が三本通産省のほうでは出て、一本は公取の関係になるのですが、ついに提出する運びに至らない。その中の一本が、いま私どもが継続審議として慎重に取り組んでおる法律案になるわけです。ところが、これがきわめて重要な法律案であるにかかわらず、業者間のあるいは通産省内部においてなかなか意見がまとまらぬ。いろいろな関係があって、国会の会期末に至ってようやく提案される。しかも、その内容を見ると、全くずさんというか、無責任というか、審議をするにも手がつけられないといったような内容のものであるということについては、まことに遺憾に思うわけです。先般来、数回にわたって佐野委員ほか同僚委員からお尋ねをしておるわけですから、できるだけ重複を避けてお尋ねをしたいと思いますが、まずその前に、最近の事故の状況はどういうことになっておるか。LPガスだけでなくて、都市ガスの事故もLPをしのぐような事故発生というものが起こっておるようでありますから、その事故の件数、また、その事故はどういうような事故であるのか、その分類等についてひとつお示しを願いたいと思います。
  69. 吉光久

    ○吉光政府委員 お話がございましたように、最近非常に事故が多うございまして、私ども取り締まりの任に当たっておるものといたしまして非常に遺憾なことだと存じておるわけでございます。  数字につきまして御報告申し上げますと、昨年の四十一年でございますけれども液化石油ガスによる災害事故が全体で百五十一件ございました。本年は一月から十一月十五日締め切りまででございますが、各県から報告をいただいておるものの数字で申し上げますけれども、百四十五件でございます。このままの調子でまいりますと昨年以上の件数になるのではないかというふうに実は心配いたしておるわけでございます。  この内訳でございますけれども、事故の百五十一件のうち、いわゆるスタンド等の事業所で起こりました事故件数は十七件でございます。これは昨年の数字でございます。それから消費先——一般家庭でございますとか、事務所でございますとか、そういうふうな消費先で起こりました事故件数が百二十五件でございます。それから運搬中に起こりました事故が九件でございます。本年に入りましてやはり依然として圧倒的に多いのは、一般消費先で起こりました事故でございまして、これは先ほど申し上げました百四十五件のうちの百二十二件というものが一般消費先で起こった事故となっております。なお、事業所におきますものあるいは運搬中は、本年は事故件数はだいぶ減っておりまして、やはり一番ふえる数が多かったのが一般消費先というふうな事情になっております。
  70. 井上亮

    ○井上(亮)政府委員 都市ガス事業関係の事故の状況について御報告申し上げます。  この事故の態様は二通りあろうかと思います。  一つは、ガスの供給に関してトラブルがある、いわゆる人身事故ではございませんので、トラブルがあるという問題と、それからもう一つは中毒関係のもの、これは人身に対して害を及ぼしている事例でございますが、二つございます。  供給に関するほうは、これは全国で本年度では四十二件、しかしこれは暦年でずっと見てまいりますと、近年この事故は非常に減ってきておるという実態でございます。ただ、なお中毒事故のほうにおきましては、四十一年度の実績は、件数にしまして全国で四十八件、それからその件数のうち死亡関係が五十九名あります。ただ、この死亡の中にはガスによる自殺という問題も入っておりますので一がいに事故とは申せませんけれども、しかし、いずれにしましてもガスで中毒死をしたという件数でございます。なお、本年に入りましてからはこの件数はさらに減りまして、ただいまのところ件数として二十七件の事故があるということでございます。なお昭和三十五年には年間に百三十件ぐらいの中毒事故があり、さらに三十八年ぐらいをとってみますと六十五件ぐらいの件数を数えておったわけでございます。減ってはまいっておりますが、なおこういう中毒による事故が依然としてあるということについては、今後私ども十分そういうことのないように善処をいたしたい。しかし、まあ自殺となりますとこれは防ぎようがありません。それ以外の中毒事故につきましては絶滅を期してまいりたいというふうに考えております。
  71. 中村重光

    ○中村(重)委員 自殺が防げないことは、お答えをいただくまでもなくわかり切った話なんであります。まあ、あなたのほうで総合エネルギー調査会に提出した資料を見ましても、いかに都市ガス並びにLPガスによる事故がひどいかということがうかがわれるわけでありますが、いま井上局長が、事故は漸次減ってきた、こういうことですが、比率から見ると、都市ガスの事故というものはLPガスよりもはるかに高いということが、公式に提出された資料の上からは知ることができるわけです。いずれにいたしましても、都市ガスであろうともLPガスであろうとも、こうした事故というものが起こらないように万全の処置を講じてもらわなければならぬと思います。  先般も私は委員会においてお尋ねもし、指摘もいたしたわけですが、この法律案が成立するに至らなかった。そこで特別決議を実はやった。異例な決議であります。その中で特に保安面について強調をいたしておるのであります。いまお答えをいただきましたように、LPガスの事故というものは非常に高い状態であるということを伺ったわけでありますが、この決議に基づいてどういう措置をおとりになったのか。先般矢野課長からもいろいろ伺ったのでありますけれども、一片の通達ではどうにもならぬ。だからして、一斉に保安の点検ということをやって、その保安点検の結果というものが通産省に吸い上げられるという形でなければならぬと私は思うのです。そういうことをおやりになったのかどうか、おやりになったとすれば、それがどういう状況になっておるのか伺っておきたいと思います。
  72. 吉光久

    ○吉光政府委員 先般の決議におきまして御注意いただきました線に沿いましてやりました行事でございますけれども、何ぶんにも高圧ガスそれ自身の性能につきまして一般消費者でよくわかっていないがために起っておる事故というものも相当件数ございますので、第一点といたしましては、そういう意味での消費者啓蒙と申しますか、そういう形での行事をやっておるわけでございますが、ちょうど冬場にかかります十月二十三日から二十九日までの一週間、高圧ガスの保安週間というふうな週間を設けまして、そこで、これは通産省だけでなくて、全国の都道府県なりあるいはまた業界団体等の御協力も得まして、一般消費者に対します保安上の注意書き、これをビラにいたしたものを各消費家庭に配りますとか、あるいはまた、家庭の消費設備につきまして点検をいたしますとか、あるいは主婦等を対象といたしました講演会なり懇談会というふうなものを設けまして、この一週間にそういう意味で家庭の主婦に対する高圧ガスの扱い上の特徴と申しますか、そういう点についてのPRを行なっておるわけでございます。  なお、さらに十一月二十日から十一月二十七日までの八日間にかけまして、テレビによりまして全国的に保安啓蒙のためのスポット放送というものを行なっております。これはさらに引き続きまして、週刊誌等によりまして保安啓蒙のためのスポット的な宣伝をいたしてまいりたいというふうに考えております。  消費者啓蒙上やりましたような事項は以上のとおりでございまして、さらにあの決議にございました、第二点の新法関係についての準備体制を早くしろというような決議をいただきましたわけでございますが、これは関係の政省令等の原案をつくりまして現在関係者の後意見をお伺いし、だんだんと最終結論に近づきつつある、こういう状況でございます。
  73. 中村重光

    ○中村(重)委員 先ほど事故の分類について明らかにしていただいたわけですが、いろいろ保安啓蒙等しておられるということは、私もテレビを見たり新聞を見たりして承知している部分もあるわけです。  なお、いまのお答えによっても相当詳細にわかったわけですが、その保安点検をやって改善を命じた事項であるとか、いろいろなことが私はなされなければならないと思うし、また、なされたとするならばその結果がどういうことになっておるのか、おやりにならなかったならばならなかったでいいわけですが、どういうことであったのか、お聞きしておきたい。
  74. 吉光久

    ○吉光政府委員 先ほどお答え申し上げました十月二十三日から二十九日までの間におきます保安週間におきましては、それぞれ業界団体あるいは販売店等の御協力をいただきまして、具体的に各消費家庭につきまして、これはそれぞれの地域でやりました行事は違っておりますけれども、具体的にそれぞれの消費家庭における消費設備につきまして、たとえばゴム管を取りかえていただくとかあるいはボンベの固定化をはかってもらうとか、それぞれにつきまして、現地のそれぞれのところで具体的な活動をいたしております。全国的にどの程度のことをやって、どうなっておるかという結果の数字についてはまだ報告が参っておりませんけれども、行事といたしましてはそういう行事をいたしたわけでございます。
  75. 中村重光

    ○中村(重)委員 少なくとも、この法律案が継続審議になって、そしていろいろな角度から尋ねられることはあなた方はわかっていなければならないでしょう。どういう点が現在の設備の面において改めていかなければならないのか、法律案の中にいろいろと具体的な面も出てくる、特に高圧ガス取り締まり法規の中にいろいろ器具のそうした取り締まりの面、規格等詳細に出ているわけです。必ずしもこれが完全であるとは私も言えない。だからして一斉保安点検をやって、そしてそういうことを報告を求めて、それによってあなた方が特にまた勉強し、改めるところは改めていくということにしなくてはならない。また、質問に対しても十分それら具体的な点について答えるという準備がなければならない。同時に、当委員会において異例の、特別の決議をしたわけですから、これに対しては一斉点検をやらせる。保安週間であればなおさらのこと、そういう週間を設定をしておやりになったということであればけっこうなんです。そういうようなことをおやりになったならば、ただこうしなさいということだけでなくて、その結果はどうであったのかということを吸い上げていくというくらいの熱意があってしかるべきではありませんか。その結果をいまお尋ねをしているんだから、それを明らかにしてほしい。おやりになっておられなければ、それはそれでよろしいんだから、はっきり答えてもらいたいと言っている。
  76. 吉光久

    ○吉光政府委員 先ほど申しました行事の結果につきましては、都道府県を通じまして現在報告を求めておりまして、具体的なことでお答えできないのは非常に残念でございますけれども、都道府県を通じまして現在報告を求めておる段階でございます。
  77. 中村重光

    ○中村(重)委員 ともかく特別国会、続いて臨時国会と終わって、八、九、十、十一、御承知のとおりきょうは十二月十四日ですよ。臨時国会において当然これが継続審議になっているんだから、質問されるということもわかっていたでしょうし、また、質問されるされぬにかかわらず、あなたが言われたように事故というものは非常に多いんだから、減少する方向でなくて非常にふえてきているんだからやはり法的に不備な点もあるのではないか、こういったようなことを事故の分類の中からもあなたが十分の関心を持って対処されるということ、私はそのことが大事だと思うのですよ。それなくしては指導はできないじゃございませんか。しかし、いろいろお尋ねをしなければならない点が多いんですし、まだこれを吸い上げていないと、そのままお答えになったのですから、もっと強い関心を持って、責任を持って職責を果たしてもらいたいということを私は要望いたしておきたいと思います。  次に、保安点検の関係で私お尋ねをするんですが、この高圧ガス取締法規集を見てみたんですけれども、ボンベのバルブはこの高圧ガス取締法のどこにその規格等定められておるのか。どうも私が調べた中ではそれが出てこないです。これは非常に重要な器具でございますから、当然規格がどこかにあるんだろうと思うのですが、それをひとつお聞かせいただきたいと思います。
  78. 吉光久

    ○吉光政府委員 高圧ガス取締法の四十八条に充てんに関する規定があるわけでございますけれども、「高圧ガスを容器に充てんする場合は、その容器は、左の各号に該当するものでなければならない。」というそこの四十八条に、充てんする場合の容器の基準が規定されておるわけでございますが、その第一項の第三号に、バルブにつきましては「通商産業省令で定める規格に適合するものを装置してあること。」ということで、バルブの規格基準をここできめておるわけでございます。なお、先ほど申し上げました法律を受けまして容器保安規則の四十二条で「バルブおよび附属品の規格」ということで基準を設けておるわけでございます。
  79. 中村重光

    ○中村(重)委員 四十八条を受けて規則ができて、規則の四十二条と四十三条ですか。
  80. 吉光久

    ○吉光政府委員 バルブにつきましては四十三条でございます。
  81. 中村重光

    ○中村(重)委員 これの中には私がお尋ねをしたボンベのバルブは出ていないじゃございませんか。
  82. 吉光久

    ○吉光政府委員 これは先ほど法律のところで御説明申し上げましたように、高圧ガスを容器に充てんする場合の容器の基準といたしましてのバルブでございますので、したがいまして、これはボンベのバルブの基準というふうに御了解いただきたいと思います。
  83. 中村重光

    ○中村(重)委員 了解しろと言われても、四十二条に容器区分というのがありますね。七章、「充てん」の規則のほうですよ。これの中に「液化石油ガス以外のガスを充てんする内容積が五千リットル以上の容器」とある。その次に「液化石油ガスを充てんする内容積が五千リットル以上の容器であってバルブ、附属配管または液面計が突出したもの」こう具体的に出ている。ところが、五千リットルだから五トンでしょう。一番多いのは家庭用のボンベです。これが一番事故も多いのです。それが具体的にどこに出ているんです。
  84. 吉光久

    ○吉光政府委員 いま規則の四十三条をごらんいただいたのでございますが、いま御指摘ございました四十二条は、タンクローリーあるいはその他の非常に大きな大型容器についてのバルブ基準がきめられておるわけでございますが、四十三条は、その他の一般消費向きの容量の小さいものについて規格を定めておるわけでございます。
  85. 中村重光

    ○中村(重)委員 四十三条を読んでみたけれども、バルブについての規格は出ていないじゃありませんか。
  86. 吉光久

    ○吉光政府委員 端的に書いてまいっておりますけれども、一号もそうでございますけれども、第四号のところをごらんいただきたいのでありますが、バルブ、附属配管のところを省略して読みます。バルブの「耐圧性能および気密性能は、これらを装置する容器の耐圧試験圧力および気密試験圧力以上の圧力で行なう耐圧試験及び気密試験に合格するものであること。」というところをごらんいただきたいのでございますけれども、これは端的に容器基準として、バルブの基準として書いたものでございます。
  87. 中村重光

    ○中村(重)委員 これは耐圧基準として四十二条に五千リットル、家庭用じゃないんだけれどもはうきり出しておるんですね。特に家庭用のボンベだから、バルブというのはこれは高圧ガスだから非常に大事なところですね。だから、そこには具体的に出していくのでなければ——これはあなたの解釈ですが、こうなんだとあなたは言われる。ところが、このボンベというのは実際はだれが試験をしておるのかということになってくると、充てん場なんかでは業者がやっておる。自分で検査をするんですよ。耐圧検査等も自分でやるんだ。自分でそれを使っておるんですよ。なるほどこの文章にはいろいろ書いてある。こうなんだ、合格するものとかなんとか——合格とか不合格とか実際はだれがきめるんだ。業者が自分でこれはいつもやっておる。私が言うのは、家庭用のこのボンベ、しかも一番重要部分のバルブだから具体的にこれを出さなければいかぬ。業者は、家庭用のボンベのバルブは実は高圧ガス取締法の中には規格がないのです、そういう理解をしておる人たちが多いのです。そして、これはネジ山がばかになってしまう、それで事故が起こったら実はたいへんですということ等も言っているのです。また、あなたがいまお答えになったけれども、四十三条の四号を私が読んでみましても、四十二条の中に、この大型のものに対しては、五千リットル以上のものに対しては云々、こうはっきり具体的な規格が出ている。そしてこれが明らかになされている。だがしかし、家庭用の場合においてはこうなんですと、あなたはこう言われるんだけれども、そうかなと考えてみてもどうもぴったりとこない。現に、これを使う業者の人たちにこれが理解されていないのです。だから私は、先ほど保安点検等をおやりになりましたか、その結果を吸い上げましたか、ボンベについているバルブのネジ山がこれはもうばかになってしまっておる、そういうのが実際あるんだから、一番大事なことが業者に理解されていないということは、あなたは問題だとはお考えになりませんか。相当責任ある業者の中においても、指導層の人たちですらこれが理解されていないというこの事実ですよ。私はあえて名前を言えと言われれば名前も申し上げてよろしい。ともかく指導層の人が私が申し上げたとおりに思っているんだ。
  88. 吉光久

    ○吉光政府委員 ただいまのネジ山の問題につきましては、まだ法令集に載っておりませんけれども、この十一月十日付で省令でこの基準を改正いたしまして、新たにこの中に取り入れることにいたしました。  ただ、いま先生御指摘の点が起こってまいりますのは、もともとこれは法律の四十八条に書いてございますように、容器に充てんする場合の容器基準、こういう書き方になっておるものでございますので、容器それ自身について先ほどお話がございましたように、検査とか検定とかいう制度をとっておらないで、現実の問題といたしましては、容器を検定いたしますときにバルブを一緒に見るという、要するに、容器につきまして、容器検査場で容器を検査いたしますときに一緒に見るというふうなことでございまして、現実の義務づけといたしましては、充てんする場合の容器というふうなことで規制いたしておりますので、そういう意味から、容器の場合にはバルブ自身の基準というふうに理解されることが非常に困難であるということではないかと思います。
  89. 中村重光

    ○中村(重)委員 そのとおりですよ。その点が一番大事なところです。ボンベは家庭に持ち込んだ、そして、そこでいつもバルブを締めたりあけたりするのは家庭ですよ。そういう一番大事なところに具体的な規格がないのです。いまからそれをやらなければいけない、こういうことです。もうこうした事故が頻発をしておるのに、取り締まりというようなもの、あるいはそうした検査というものがいかにずさんであるかということを私は知ることができる。  消防庁にお尋ねをいたしますが、御承知のとおりの事故発生の状態の中で消防庁としては強い関心を持っていらっしゃると思うのでございますが、こうした事故の状態について、消防庁の立場からいろいろとお考え方、御意見というものがあろうと思うのでございますが、ひとつお聞かせ願いたいと思います。
  90. 高田勇

    ○高田説明員 ただいまのボンベに関します事故の問題につきましては、私どもといたしましても、実際問題として、そういう事故が多発いたしております現状から見まして、そういう事故が発生いたしました場合に消防としてこれに向かってのくという使命がございますので、重大な関心を持っております。  それで、この問題に対しまして、実はLPGの法案の問題とも関連するわけでございますけれども、私どもはかねてLPGの災害というものに重大な関心を持っておりまして、ことに、最近製造施設とかあるいは貯蔵施設その他の施設というものが非常に町の中に多く出てきているということから見まして、町の中でそういった対策を持たない。みずから保安の体制がとれない、一般の国民というものに対する不安というものが当面出ているものについては早く除去していかなければならないのじゃないかということから、当面の問題としても重大な関心を持って、それには保安の能力を備えた人というものが中心になって現場でやらなければいけないのじゃないだろうかという、そういう私ども立場から、高圧ガス取締法を所管いたしております通産省とその交渉もいたしておったわけでございます。そうして、最終的には私どものほうが、当面の問題としてはこれに一つの流れとして関与していこうということから、関与した当面の決着はついておるわけでございます。その場合にも、いろいろの基準というものがありました場合に、その基準について、実際に現場でやっております保安の見地から見て、そういう基準の問題でもって不都合があるということを私どものほうで判断いたしましたならば、そのことを通産省のほうにも申し入れをいたしていこうというふうな体制になっておるわけでございます。  したがって、今後の問題といたしましても、そういうことは私ども立場から当面の解決方法としてはやってまいりたい。先生が御指摘の問題につきましても、そういう点からの事故というものもあるわけでございますので、今後とも私どもも重大な関心を持ってやってまいりたい、こういうふうに考えております。
  91. 中村重光

    ○中村(重)委員 事故の発生ということは、非常にこれは火災に発展をしていくわけですね。したがって、現場では消防署ですね、それと都道府県、市町村といったような、そうしたところで具体的に話し合いがなされる、あるいは取り締まりがなされる場合いろいろなことが事故の防止のために行なわれているのではないかというように考えるのですが、その点はどうでしょう。
  92. 高田勇

    ○高田説明員 私どものほうでは、LPGに限りませんで、消防の立場から、これで火災が発生したりあるいは爆発現象を起こしたりというような、人命に損傷を起こすような火器の取り扱い、器具、施設等に対しましては、その面から私どものほうはかねてから指導を行なっておるわけでございます。その部分につきましては、現在では市町村の条例において行なっている部分もございますし、今度の場合にも、私どもがその所在を認知するという方法もございますので、実際の問題といたしましては、それを常時の査察においてこれの是正をはかっていくということは常に行なっておりますので、予防機関として各戸戸別におたずねし、あるいは特殊な建築物等に対しましては、重点的にこれを現実に行って指導ないし監督を行なっていくということは常に行なっておるところでございます。
  93. 中村重光

    ○中村(重)委員 この法案を逐条的に審議する中で自治省にもお尋ねをしたいわけですが、都道府県に保安担当者というものが実はいるわけです。ところが、通産省のほうの資料を見ると、各都道府県において相当な数——あとで何名いるのか明らかにしていただきたいのですが、具体的に私は長崎県の例でお尋ねをしたことがあるのです。通産省資料でみると、これは三名あるいは五名といったような数が出てくる。ところが、実際そうした担当者がいるのかというと、いないのですね。LPGの関係のいわゆる専任でやっているという人がいない。全体のそうした保安関係で係長が一人、それから係長もいたりいなかったり——人事異動の際にいたかと思うと、もういなくなる。そうして、女の人が一人いる、ほかに兼務——全体で二人か三人、保安点検だとか、あるいは指導だとか取り締まり、そういったことができるような状態じゃないですね。これは私は各府県において同じような状態ではないかと思うのであります。さらに、この法律案が制定をされるということになってまいりますと、都道府県の果たす役割りというのは非常に大きくなる、過重されてくるわけでございますが、それだけの用意というものが都道府県にあるのかどうか、財政的な面等において自治省としてはどのようにお考えになっているか。それから、いま通産省のほうで明らかにされておりますような、そうした保安要員というものが現実にはいないというようなことに対してどのような考え方を持っていらっしゃるのか。これはひとつ消防庁の御意見も伺いたいのでありますが、自治省に、この新法に伴っての都道府県の負担が過重されるということについての財政的な面からの考え方もあろうかと思いますので、ひとつお聞かせ願いたいと思います。
  94. 横手正

    ○横手説明員 お答えいたします。  ただいま先生のお話がありましたように、府県の実態というものはそういうかっこうになっておるのじゃないかと思います。ただ、今後の地方財源措置の考え方でございますが、ただいままでのところ、通産省のほうから説明を承りました段階では、一方におきまして、この法案が成立、施行されることになりますと新たな財政需要が生じてまいるわけでございますので、一方におきましては手数料収入というものも地方団体に入ってまいります。この手数料収入によっておおむねまかない得るのだ、そういうふうに私ども考えておりますし、通産省のほうからの御説明にもそういうふうにありましたように承知いたしております。  今年度につきましては、このように法案が目下審議中でございますので、地方財政計画あるいは地方交付税上の基準財政需要額の積算にあたりまして算入するというような措置は講じておりませんが、これが施行になりますと、当然必要な歳入、歳出とも地方財政計画に織り込まれますとともに、交付税積算の際に検討してまいる、かような段取りになっております。  以上でございます。
  95. 中村重光

    ○中村(重)委員 お答えのように都道府県に手数料が入るんですね。ところが、これから入るのじゃなくて、いままでも入ってきているのです。現実は、ただいま私が申し上げたとおり、保安要員というものは非常に体制は弱いんですよ。だからして、それは手数料が入ってくる、その手数料でまかなえる範囲でやっておるのだろうか、あるいはそうではなくて、そうした保安というものは非常に重要なんだから、そういうところの要員は十分充足していかなければならないのだということによって、具体的にそれらの問題に対しては、あなたのほうとしても十分要員確保ということについて指導をしてこられ、財政的な面についても、そういう点でこれを認めていくというような態度をおとりになっていらっしゃるのか。しかし、それは地方自治体の自主性でやることなのだから、かりに何名なんというようなことについては別に関係はないのだからそういうことはわからぬのだというようなことなのか。私は重要であるだけに関心を持っておられるであろうと思うからお尋ねをするわけなんですけれども、その手数料の範囲でまかなうというようなことであってはならない。だからして、基準財政需要額等々、やはり重点的な面については特に配慮していくというようなたてまえでもあろうと私は思いますので、あなたのほうの指導方針というのか、考え方をひとつ聞かしてもらいたいわけなんです。
  96. 横手正

    ○横手説明員 これは先生も御承知のように、地方交付税の計算といいますものは、これは出てまいりました結果の普通交付税、これは一般財源でございますから、各団体必要なところへ必要なように使ってよろしいわけでございますが、ただ、地方団体といたしましては、基準財政需要額の積算基礎というのが一つの目安となり参考資料となってその団体の各種行政を行なっておるというのも、また一面実態になっております。したがいまして、私どもとしてやれます範囲は、基準財政需要額における積算基礎が、十分そうした面の各行政の実態に合ったような形にまで持っていく必要があろう、かように考えております。したがいまして、こうした面におきましても検討は続けてまいりたい、かように存じております。  ただ、現在までのところ、通産省のほうの御説明によりますと、それほどの増員が必要だというような話も承っておりません。これから明年度の地方財政措置に関連しまして、おそらく今後お話があるのじゃないかと思いますが、そうしたお話も承った上で十分検討してまいりたい、かように考えます。
  97. 中村重光

    ○中村(重)委員 法律を新しくつくったりあるいは法律を改正したりする場合、地方自治体に関係するものについてはあなたのほうと合い議をするはずなんですね。この法律をつくったために、あるいは改正をするためにどれほど要員が必要となり、地方自治体にこの負担を課することになるのか、そういう点にあなたのほうは重大な関心をお持ちになるだろうと私は思う。この新法ができましても、そうたくさんの増員があるというようには考えられないのだ、ましてや、LPGの需要がふえてくるということは、それだけの手数料もふえてくることに通ずるのだというお考え方も、あなたのことばの中からはうかがえる。ところが、私が言うのは、先ほど来お答えがありましたように、事故が頻発している、ところが、現実にこの取り締まりをやっておるところの地方自治体、それは要員が非常に不足をしておる、検査をしようにもしようがない、どうにもならないのだというような状態にあるというのです。だから、いつも声を大にして私どもはこれらの問題を取り上げて、通産省に対しても、地方自治体と話し合いをして保安の万全を期するようにやってもらいたいのだということを言っているのです。だから、これからはということよりも、いままでの点をまず反省してもらわなければならない。どこにそういった保安軽視をやらなければならない、いわゆる陣容を強化することができないというような原因があるか、LPGの法律の取り締まりの面において現在非常な無理が実際あるのかどうか、あるとするならば、これをどうしたほうがよろしいのかということ等については、十分関心を持って話し合いを通産省ともしてもらわなければなりませんし、また、地方自治体に対して指導し協力もしてもらうというようなかまえでなければならないと私は思うわけなんです。だから私は、そうした現在の状態、それは将来に向かって保安の万全を期していく、事故を撲滅していくという考え方の上に立ってあなたの積極的な考え方をひとつ伺ってみたい、そういう考え方からお尋ねをしておるわけです。
  98. 横手正

    ○横手説明員 実は、この法案が出ます前に、私どものほうへ通産省のほうから御協議がございました。ただ、その時点におきましては、実は昨年度までこうした関係の保安要員の基準財政需要額上の人員といいますものが非常に過小だったことも事実でございますので、本年度、規模是正的な意味で交付税措置上は多少の増員をいたしております。そういうこともありましてか、この法案の御協議の際には目立った増員の必要というようなことのお申し出はなかったわけでございますが、どうも先ほど先生のお話等から、通産省のほうでも新しくまた実態を調査されたのではないかと思いますが、かなりの増員の必要性というような資料も用意されておるようでございます。このほうの用意されました資料関係につきましては、まだ私ども説明を受けていない段階でございます。   〔宇野委員長代理退席、委員長着席〕 おそらく明年度の地方財政に関連しましてお話があるのだろうと思います。これにつきましては、十分その際に検討してみたい、かように考えておるわけであります。
  99. 中村重光

    ○中村(重)委員 私は、その人をふやしていかなければならぬということに対してあなたのほうといろいろ話し合いをするということは、これはもう予算と関係してまいりますからね。しかし、この法律案というのは、特別国会に提案されて、先ほど来質疑の中で明らかになっておりますように継続審議になっておる。ですから、この新法をつくります際に当然詳細な打ち合わせというものがあったものだと、私はそう考えておる。だからして、要員をふやしていくということになってくると、これに対しては、まあ具体的なそうした財政上の問題というものも当然話し合いの対象になっておるのだ、実はこう思ったわけです。また、そうあるべきだというように考えておる。いままで都道府県に関係をいたします——これは法律でもって都道府県に関係のないものはほとんどございませんが、特に中小企業振興事業団法の審議の際には地方行政委員会から細谷君もここへ出まして、そうしてここで、いわゆる自治権の侵害の問題あるいは財政上の問題という点から、中小企業振興事業団法の成立に伴って地方自治体に及ぼす影響等の問題についていろいろな角度から質疑をやったということもあるが、私どもは特にこの新法というものが保安という面を非常に重要視しておりますので実はお尋ねをしておるわけです。  そこで、吉光化学工業局長にお尋ねをいたしますが、都道府県の人的面からくるところのいわゆる保安体制というものが非常に弱いということはあなたもおわかりになっていらっしゃると思う。それに対する対策というものはどのようにお考えになっていらっしゃいますか。
  100. 吉光久

    ○吉光政府委員 取り締まり要員は多ければ多いほどよいわけでございますけれども、一応私どもといたしましては、仕事量に応じまして、それぞれ、これはプロパンガスというものだけに限定いたしませんで、高圧ガス一般として扱っておりますけれども、高圧ガスの取り締まりに従事しております職員につきまして、どれくらいの人数を置いていただければ標準的であろうかというふうな意味での標準的な各県別の、これくらい置いていただければ都合がいいなという意味での作業をいたしておりまして、実は、先ほど自治省からお話ございましたけれども、本年は去年に比べまして二十六名増員をもらっておるわけでございます。なお、これを今度の新法の中で、通商産業大臣と都道府県というその系列だけで体制の万全を期するということではいささか手不足ではないかという意味から、一番末端機構でございます各市町村にございますところの消防署の御協力をこの法律の体系の中でいただきまして、それと相まちまして取り締まりの体制の完備をはかってまいりたい、こういう考えでおるわけでございます。
  101. 中村重光

    ○中村(重)委員 それでは、これから法律案の中身に入ってまいりますが、この法律案の目的というのは、保安の確保と取引適正化をはかるということになるわけです。ところが、保安の確保という面だけを考えると、これは高圧ガス取締法を改正する、それで保安取り締まりを強化していくということだけで足りるのじゃないか、そう思う、一方、今度は取引適正化をはかろうということになってまいりますと、どうしても需給関係それから価格の安定というところまで考えなければいけないというように私は思うわけです。ところがこの法律案は、保安の確保、それから取引適正化ということを目的といたしておりますが、需給の関係それから価格の安定ということについては触れてない。言いかえると、これは中間的な法案であるというように考えられるわけでありますが、そうした流通機構の問題、さらには価格の安定というところまで、この法律案の中で、ただいま私が申し上げたような線でひとつ十分な法体系を整備するというような配慮というものはなされなかったのか、まずその点を伺ってみたいと思います。
  102. 吉光久

    ○吉光政府委員 お示しいただきましたように、この法律自身が保安の確保と取引適正化、この二つの目的を持って消費者保護に当たろうという考え方で出発いたしておるわけでございますが、高圧ガス取締法は、もうすでに先生御承知のとおり、こういうふうなLPガスのように一般家庭において主として消費されるというガスではなくて、むしろ工場、事業場等で使われますところのアセチレンでございますとかあるいは酸素でございますとか、そういうふうな工場、事業場で主として消費されるそういう高圧ガスということを頭に置いて立案されておった法律でございます。したがいまして、現在のように急速にLPガスが一般家庭に入ってまいりますと、どうしても消費者中心にしての取り締まり立法が必要であるということで、工場、事業場で使用される他の高圧ガスと一般消費家庭等で相当使われますLPガス、この関係をはっきりさしたほうが、より保安の体制についての円滑な体制ができるのではないか、このように考えたのが第一点でございます。  と同時に、さらにそういう先ほどからの事故内容等につきまして分析いたしてみますと、消費者自身がガスについての知識が不十分であるということのほかに、保安サービスがもう少し徹底いたしておれば家庭等における事故が防げたのじゃないかというふうな面もございますし、そういう保安サービス面等を頭に描いて考えますと、従来のように、ただ単純に販売所の販売施設が保安基準に該当していればよろしいという、そういう角度で判断するにしては少し問題がありはしないだろうか。むしろ、やはりそういう保安サービスもできるということを前提に置きました形での単純な保安許可ではなくして、いわゆる事業許可制というふうなものを内容的に取り入れたほうが、より保安サービスが完全にできるのではないであろうか、こういう感じもいたします。  したがいまして、単純な保安許可というふうなものから、事業許可の要素をも頭の中に描き、同時にまた、当面一番問題になっておりますのが、品質、規格につきまして非常にまちまちなものがあるということ、あるいは品質規格によりまして価格も違ってまいるというふうな状況でもございます。あるいはまた、計量問題等につきまして、計量についての考え方というものも一般的には統一されていないというふうな事情もございますので、まずそういうふうな、現に起こっております問題を早急に解決するため必要な手段と申しますか、それをこの中にあわせ盛りまして保安の確保と取引適正化をはかってまいりたい、こういう趣旨で一本化をいたしたわけでございます。
  103. 中村重光

    ○中村(重)委員 保安の面は了解できます。あなたがお答えになりましたように、いわゆる消費者の保護という立場に立つ、そのためには高圧ガス取り締まりというような事業場が中心となってくる法律でなくて、新法によって保安の確保をはかっていく、そういう考え方であります。しかしながら、現実にはこの自主保安体制ということを強化していく、また期待をしておられるであろうと私は思うのです。そうなってまいりますと、どうしてもその業者に対して安定した経営をやってもらわなければならぬということになってまいります。また、消費者を保護するということは、必ずしも保安の面だけではなくて、価格、品質の問題ということも非常に重要な消費者保護の要素であると私は考える。それならば、取引適正化するということも以上私が申し上げたことに通じてはまいりますものの、やはり流通機構の問題、需給関係、それから価格を何とか安定させ、消費者を守るという立場からこれを規制していくというようなことも考えるべきではなかったか、こう私は思うわけであります。そこまでいっていないということは、この法律案というものが中間的なものになっている、徹底したものではないというように私は考えておるわけでございますが、その点は配慮されなかったのか、無理があるとお考えになったのか、ひとつ伺ってみたいと思います。
  104. 両角良彦

    ○両角政府委員 ただいま御指摘をいただきましたように、LPGの需給並びに価格を安定いたすということはたいへん必要なことであろうかと考えます。しかしながら、この需給並びに価格の安定をはかります具体的な手段といたしましてはいろいろな方策が考えられるわけでございまして、実態的には、一つは、LPGの需要がどう変化していくかということを各事業部門別に的確に把握いたすこと、また、供給というものが需要に対して十分行なわれるかどうか、輸入面におきまして、あるいは石油精製の面から、石油化学の面から、各方面のLPG供給源が需要に対応できるだけの供給力を持っているだろうか、こういう点を的確に把握をいたすことが前提になるわけでございまして、この点につきましては、御承知のごとく石油業法によります石油の供給計画におきまして毎年慎重な検討を加えておる次第でございます。  また、LPGの安定供給をはかっていきます場合の最大の問題はLPGの貯蔵能力の拡充でございまして、この点は特に石油化学並びにLPGの輸入業におきまして、従業貯蔵能力、タンクの不足がしばしば指摘されたのでありますが、この辺のタンク能力の拡充をはかっていくということが安定供給に通ずるゆえんであると考えております。また価格の安定は、ただいま申しました需給の適正な把握、貯蔵能力の拡充ということを通じまして、その結果として需要、供給のバランスがとれるところに期待をいたすというのが一番自然なやり方ではなかろうか、かように考えた次第でございます。事実、昭和四十年度、四十一年度並びに本年度にかけまして、ただいま申し上げました需給の調整及びタンク能力の拡充ということが行なわれまして、今回これを法律的に推進しなければならないという実態的な事情がないと判断をいたされましたので、今後とも、法律問題としてではなく、実際のLPGの需給調整並びに安定価格という点につきましては、ただいま申しましたような方策を通じて推進をしてまいりますが、本法律におきましてこの問題を特に取り上げる必要はない、かように判断いたしております。
  105. 中村重光

    ○中村(重)委員 これからずっと審議を進めてまいりますと、第二条の関係でLPGのいわゆる供給の公共性という観点から価格の問題は当然出てまいります。したがいまして、いまのお答えでは私は満足はできない。しかし、さらっと一応お尋ねをしていきたいと思いますので、あとでまたその点は、井上公益事業局長もおられることでありますし、いろいろと考え方を聞かしていただきたいと思います。  そこで、また保安の問題に戻ってくるわけですが、本法が施行された場合に一般家庭の災害というものが完全になくなるということを私は期待したいわけですが、どんな完ぺきな法律を制定いたしましてもなかなかそうもまいりますまい。だがしかし、従来の事故を分類いたしまして、こういう点が事故の起こる原因であるから、それをなくすためには、法律あるいは政令、規則等を整備することによって、また自主保安体制を強化していくという形の中で事故はこの程度防止することができるのだというような確信がなければならないと思うのです。ただおざなりに法律あるいは政令等をつくるということではないだろう、してみますと、この法律を制定いたして、そこでこれを施行するという形になってまいりますと、どの程度現在の事故というものが防止できるというようにお考えになっておられるのか、まずその点を伺ってみたいと思います。
  106. 吉光久

    ○吉光政府委員 従来の事故の内容を分析してまいりますと、一番大きなウエートを占めておりますのは、やはりLPガス自身の毒性がよくわからないままでお使いになっている消費者の方が相当あるということでございますけれども、さらに加えまして、これは法律上の制度の問題として処置するということは非常にむずかしい問題でございまして、むしろ積極的に保安啓蒙運動をやるということ以外になかろうかと思いますが、さらに、販売業者のほうの保安サービス面でもう少しそこらを注意していただければ相当程度カバーできたのじゃないだろうかというふうに思われる面の事故もあるわけでございます。あるいはまた、主として販売業者の処置の欠陥によるということから起こりました事故件数も一部ございます。あるいはまた、家庭で使っておりますところのガス器具、たとえば燃焼器でございますとかゴム管でございますとか、そういうふうなものにつきまして、電気用品と同じように何かの検定制度があれば不良が防げたのじゃないかというふうに考えられる、そういう器具が不良であるというところから事故が起こっておる場合もございます。それからまた、配管のミスと申しますか、配管工事が不十分でございましたために起こっているような問題もございます。  したがいまして、今回の法律におきましては、主として販売業者を通じまして消費者に対する保安サービスをしていただくという点が特に強調されておるわけでございますが、そのほかに、先ほど申し上げましたような器具につきましての検定制の採用でございますとか、あるいはまた、配管工事面につきましても、従来野放しでございましたものについて相当の規制を加えてまいるというふうなことで、いままで起こりました事故を起こさないような制度をつくり上げたいというのがこのねらいでございまして、先生の御質問に的確に、これで何%は事故がなくなりますというふうにはお答え申し上げかねるわけでございますけれども、相当数事故は減少するのではないであろうか、このように考えております。
  107. 中村重光

    ○中村(重)委員 事故の防止というのは、いろいろな点から組み合わせられて防止できるということに私はなると思う。的確に何%事故が減るのだということは、それはなるほど言えないかもしれない。しかし、事故の内容、いまあなたがお答えになったように、そういうことからこれを完全に実施していく。先ほど来いろいろ要員の問題等々お尋ねをしたわけです。そうした期待をしておることが完全にここで実施されるという形になってまいりますと、事故はこれによって防止できる。そのとおりにならないということはあるかもしれませんよ。これはしかたないのだ。しかし、あなたのほうはこれを実施するとこうなるのだという一つの目標というのが、それは観念的に考えるだけじゃなくて、やはり数字的に——現在の事故は数字がはっきり出ている。だからして、数字的にこの程度は事故を減少させることができるであろうということぐらいはわかるのじゃないでしょうか。また、わからなければならぬように思いますね。それがはずれることはあるのですよ。それを私は言っているのじゃない。少なくとも、あなたのほうはそこまでの、何というか、確信の上に立たなければ、法律というものは人を拘束するわけです。だから、やはりそういう精神の上に立って法制定というものはなさるべきだと私は思う。いまのお答えよりももう少し、何というのですか、確信のあるお答えというものがされるのじゃないでしょうか。
  108. 吉光久

    ○吉光政府委員 的確に申し上げられますのは、少なくとも物理的な事情と申しますか、配管が悪いがために、最初から悪かったがために起こっておりますとか、あるいはまた、機器自身が故障しておりますとかいうふうな物理的な面について起こってきた事故、大体全体のそれぞれ三分の一ぐらいずつございますけれども、そういうふうな事故につきましては、これはもう相当部分絶滅できるのではないであろうか、このように考えますが、たとえば、今度の保安サービスの中に、LPボンベを家庭に運びます場合、たいてい毎回一回運んでおりますので、運んだときにちょっと注意していただくというふうなことがやっていただければ、そこでも、何と申しますか、据えつけの悪さがあるとかないとかいうようなことをちょっと消費者のほうに注意していただければできる問題がたくさんあるわけでございますので、そういう物理的な問題につきましては、相当程度事故を絶滅できるのではないであろうか、このように考えております。
  109. 中村重光

    ○中村(重)委員 私は、いままでの事故の発生といった点、それから、先ほど指摘をいたしましたような取り締まりに当たるところの都道府県の保安体制、それらの点等から考えてみまして、この際保安の確保をはかる、そのためには、ガソリン等の危険物と同じように、保安取り締まりを消防法の対象にするということにしたらどんなものだろうか、そう実は思うわけです。いろいろと問題はあるだろう。いわゆるマイナス面プラス面というものはあるだろうと思う。この点に対しては、三局の中でもいろいろと議論された点でもあろうと私は思うのですが、消防法の対象にするということについては、どのようにお考えになりますか。支障がありますか。
  110. 吉光久

    ○吉光政府委員 消防活動自身が火災予防あるいは災害予防等に当たっているわけでございますので、そういう観点からだけ判断いたせば、非常に消防の活動に近いという事業でもあり、部面でもあろうかと思いますけれども、何ぶんにもやはり健全な企業と申しますか、企業内容の充実した企業であって初めて保安サービスも可能であるというふうなことにもなるわけでございますので、今回、単純な施設の保安的な許可というふうなことから事業許可制度に切りかえたわけでございますが、そういう事業許可制度を前提にいたしまして判断いたします場合には、これは事業自身について健全な発展をはかっていくということと並行的に保安体制の取り締まりを強化していくということ、こういうことが必要ではないかという意味で、主務大臣系統につきましては従前の通産大臣の姿を変えなかったわけでございますけれども、ただ、現実の問題といたしまして、消費設備等、要するに取り締まり面から申し上げます場合には、現場の一番近くに所在しておりますのはやはり消防署でございます。そういう意味で、今度の法律の中でも、申請書類を出します場合に消防署長の意見書を添付していただきますとか、あるいはまた逆に、許可いたしました場合には、許可した人が消防署のほうに連絡をいたしますとか、あるいはまた、消防署のほうで巡回されましたときに何らかの形でこれは措置が必要であるというふうに判断されました場合には、都道府県知事のほうに対しまして措置命令についての請求ができるとか、あるいは、一般的な基準をきめます場合にも消防長のほうで意見をいただくとかいうふうな、実際の取り締まりも地元に密接しております消防署の御協力を得て保安面もやったほうがより効果的ではないだろうか、こういう角度から、いままでのワクから一歩踏み出しまして、地元消防機関に関する協力規定を今度立案の段階では入れておるわけでありまして、これが最善ではなかろうか、このように判断しております。
  111. 中村重光

    ○中村(重)委員 消防法の対象になるということになってくると、消防庁は受ける側になるわけです。高田さんでは責任ある答弁はできないのかもしれませんが、保安に対しては重大なる関心を持っておられるということは当然でもありますが、先ほどのお答えの中にもあったあなたのほうの陣容は五万人、そうすると、高圧ガス担当者の数は三百余人というふうに私の調査ではなっております。陣容の面においてこれは比較にはならない。もちろん、それは消防のほうはそれなりのまたいろいろな任務もあるわけです。それだけの数が必要であるということは実はわかるわけであります。いま局長からお答えがありましたように、協力を求めるというようなことが条文に中にあるということになってまいりますれば、協力といっても、必ずしもこれは強制規定という形ではなく、単なる協力である、これは不十分であるということは言うまでもない。そこで、消防法の対象として消防がガソリン等の危険物と同じような取り締まりに当たるということについてはどのようにお考えになりますか。  実は、私どもは石炭の場合に、椎名大臣も井上局長もよくおわかりのとおり、ともかく生産は通産省、保安は労働省に移すべしということを強調してまいりました。いまでもその考え方は変わらない。石炭の保安の問題とこのこととは、私は内容的に若干違う面があるということはわかりますが、しかし、そうした許可等と組み合わさして保安の監督指導ということを通産省が担当することのほうがやりやすいというような面、そういう面が実はあるのだろうと思うのでありますが、いまの吉光局長のお答えの中からもそういうことがうかがわれたわけです。しかし私は、この点はいままでの状態から考えてどうしても不十分だと思いますので、あなたのほうはこれに対してはどのようにお考えになりますか。
  112. 高田勇

    ○高田説明員 今度通産省から提案されました液化石油ガスの保安の確保及び取引適正化に関する法律案を提案される前段階として、各省協議の段階において交渉がなされ、最終的に、いまのような形で一面私どもが関与しているという形になって政府案として出されております現在におきまして、私どものほうのこの立場から申し上げるということも何かと存じます。  しかし、基本的な考え方といたしましては、私ども立場というのは、火災その他の災害から、非常に弱い立場にある一般国民を保安の立場から守っていく役所でございます。したがって、事業の問題、いわゆる経営の問題あるいは生産とか流通の問題というものには、私どものほうはタッチすべき筋合いのものではないと存じます。しかし、保安の面については、これは終始一貫、私どもは重大な関心を持って守っていかなければならない立場だと思う。したがって、保安面から一番弱いところを守る場合には、先ほども申し上げまして繰り返しになりますけれども、現地において人員と能力とを持ってやるということが、保安という点からいけば一番効果があがるのではないかという考え方は、私どもは終始一貫持っておるところでございます。
  113. 中村重光

    ○中村(重)委員 吉光局長にお尋ねしますが、さっき二十九名増員を要求するというお答えがあった。この高圧ガス全体の取り締まりの中で、二十九名の増員要求と合わせてどのくらいの規模になるのですか。高圧ガス全体の取り締まりに当たる要員というのを、都道府県とそれから本省通産局、別々にひとつお答え願いたい。
  114. 吉光久

    ○吉光政府委員 先ほど申し上げました二十六名本年で増員されまして、その結果、現在二百三十七名というのが都道府県の取り締まり要員の全数でございます。これは兼務いたしております場合には延べで計算いたしませんで、たとえば〇・五というふうな半分で計算いたしまして、実質人員として換算いたしました場合の数字が、全都道府県で二百三十七名でございます。これは昨年に比べて二十六名人員増加をされておるわけであります。ただ私どもは、非常時体制といたしましてはさらにこれでは不十分ではないかということで都道府県のほうにもお願い申し上げておるわけでございます。また、通産省自身の関係でございますけれども、本省と通産局合わせまして、高圧ガス関係を担当いたしております者は四十八名でございます。これにつきましても、さらに来年度につきましては拡充をいたしたいということで、現在そういう意味での配慮をいたしておるわけでございます。
  115. 中村重光

    ○中村(重)委員 いまあなたがお答えになった数、私は大体三百名程度だろうということであったわけですが、二百八十五名とこういうことになるわけですね。高圧ガスの中でもLPガスの需要というものは拡大の一途をたどっておる。それに比例して事故も頻発しているという点から考えてまいりますと、私は、要員が不足、これではいけないというように実は思うわけですが、先に進めてまいらなければなりませんから、この点はあとからお尋ねすることにいたしたいと思います。  いずれにいたしましても、私は消防署に対して協力を求めるということでなくて、具体的には、いまあなたのお答えの中に出ましたように、消防署の意見書の添付であるとか、消防署から都道府県知事に対する設置の請求をする規定というものがある。それだけでなくて、もう少し消防署が取り締まりにタッチするようなことが考えられないのか。巡回のときにただ立ち寄ってみようということだけではなくて、定期検査というのか、もう少し消防署として協力ということでなくて、義務的にその保安をしなければならぬという、そういう責任体制を考えてみる必要があるのではないか、こう思うのでございますが、その点はいかがでございましょう。
  116. 吉光久

    ○吉光政府委員 消防署の活動につきまして全部を網羅いたしておりませんのは、消防法の規定自身によりまして、消防吏員の権限等が規定されておりますので、したがいまして、消防吏員の権限といたしまして、事業所、あるいは承諾を得れば家庭にもはいれますけれども、あるいは家庭の外から配管設備を見る等、要するに、消防法の権限としてできます立ち入り検査等の規定につきましては、これは消防法の立場でやっていただくわけでございまして、そこで確認された事項について、設置請求権があるとか、あるいはまた一般的基準の問題まではお返って基準についての意見も述べられるというふうな、現実の活動と密着した形で御協力をいただく、こういうことになっておりますので、したがいまして、いまの立ち入り検査等の規定につきましては、この条文の中には含んでいないわけであります。
  117. 中村重光

    ○中村(重)委員 消防法の規定によってそれができるということはわかっておる。できるということは、しなければならぬということじゃない。私が言うのは、しなければならないというような、そういう規定というものを何かもう少し考えられないのか。法律というものは、必要なことは改正をしていかなければならないわけですから、ともかく現在の状態、ただ単に二十六名の増員をするということだけでは不十分であるということは、お答えの中からも出たわけでございますし、また一面、人をふやしさえすればいいというものでもないということは私はわかる。しかし、全体のそうした保安に関係するような人たちが、事故をあらゆる角度から協力し合ってなくしていくという体制というものが必要である。どうして災害を防止するか、どうして人命を守っていくか、そういう考え方の上に立っていろいろな困難な問題はこれを克服していくというようなことでなければならないのではないか、そういう考え方から私は申し上げておるわけであります。現在の法律の上に立ちますと、お答えのような、やればやれるんだということだろうと思う。だがしかし、それがどうにもならないのだから、どうにかなるようにひとつやらなければならないということで実は申し上げておるわけです。だから、だれもやれるようなことになっておるということでなくて、いま私が申し上げたようなことについて検討されなかったのかどうか。
  118. 吉光久

    ○吉光政府委員 まことにお示しのとおりでございまして、私どもは、実は高圧ガス取締法の体系の中におきまする以上に、消防機関との協力関係について消防庁と御相談申し上げたわけでございます。途中の過程におきましてはいろいろと意見もございましたけれども、最終的に、要するに、いままで都道府県知事の系統だけでやっておりました仕事につきまして、保安体制の万全を期するためには消防署の協力が必要である、こういう前提に立った上で、消防庁と御相談申し上げ、現在この案を御提案申し上げておるわけでございまして、ただ、将来の問題といたしまして、これで全然おしまいだということになりますと、さらにさらに検討する問題もあろうかと思いますが、現状におきましてはこれが最善ではないだろうかということで御提案申し上げた次第でございます。
  119. 中村重光

    ○中村(重)委員 先に進みます。  この高圧ガス保安協会と都道府県のLPガス協会との関係でございます。この点は佐野委員からも触れたところだろうと思うのでございますが、法案の内容を見ますと、高圧ガス保安協会と都道府県LPガス協会との関係が必ずしも明らかではない。ところが、現実には高圧ガス保安協会というものは手足を持たない、したがって実際の実務というのは都道府県のLPガス協会というものがやる。それじゃこの関係がしっくりいっているのか。そうではない。してみると、いわゆる自主保安体制を強化していく、そういう点から問題が依然として私は残ると思う。この関係は非常に重要であると思うのでございますが、この際、高圧ガス保安協会の任務というものはこういうことだ、それから都道府県のLPガス協会の役割りはこうしなければならぬというように、両者のそれぞれの任務をひとつ区別していくということを考えなければならないのではないかと思うのでございますが、いかがでしょう。
  120. 吉光久

    ○吉光政府委員 高圧ガス保安協会が高圧ガス取締法の規定に基づいていろいろの仕事を与えられておるわけでございますけれども、この保安協会の一番重要な問題は、やはり何と申しましても、保安の技術的基準の統一と申しますか、そういうふうな事業ではなかろうかと思うわけでございます。先ほどお話がございましたように、保安の問題というのは、やはりあくまでも自主的な保安体制というものが整備されることが一番理想的でございまして、ただ単に取り締まるだけで保安を強化するということには一定の限界がございますので、どうしても内部的な盛り上がりと申しますか、自主的な保安体制というものが整備されることが必要ではないかと思うわけでございます。  そういう意味で、実は高圧ガス保安協会というものが高圧ガス取締法に基づきまして設立されたわけでございますけれども、ただ、高圧ガス保安協会があるから、だから都道府県の任意的なあるいは自主的な保安団体あるいは啓蒙団体と申しますか、そういうものは要らないというふうな形にはなっていないと思うわけでございまして、現実の問題といたしましては、やはりそれぞれ民間にございますところの各県単位程度でございますけれども、そういう意味の自主的な団体というふうなもの、やはりこれの御協力をいただかなければ、本来の意味での自主保安体制というものがうまくいかないのではなかろうか、相補完する形で初めてりっぱにいくんではなかろうか、このように考えておるわけでございます。
  121. 中村重光

    ○中村(重)委員 おっしゃるとおりですね。だから、それを具体的にどう実践するかということです、私が申し上げておるのは。あなたはそのように期待をしておられる。だがしかし、現実にはそのとおりにいっていない。両者の関係というものはなかなかうまくいかないです。高圧ガス保安協会というものは、やはりどうしてもこの自分の権限というようなものを拡大していくという考え方がある。ではそれを全体をひとつ掌握していこう、これに反発するという形が出てくるんでしょうね。私はそういうことは決していいとは言わない。いいとは言わないのだけれども現実にはそういうようなことなんだから、だからして、自主保安というものが非常に重要であるということはあなたのお答えのとおりでありますから、そうした自主保安の確保ということをさらに強めていくために、民間団体の持っているいろいろの能力というものを発揮させるそのための何か措置というものが具体的に講ぜられてこなければならないと私は思うのです。  そこで、この法律案の中にはそういうことが具体的に書かれてないのだが、考え方としては、いまお答えのように抽象的なことではなくて、高圧ガス保安協会にはこういうことをやってもらいます、民間の都道府県のいわゆるプロパン協会にはこういうことをひとつ担当してもらいたいと思うのだという、あなたが考えられておる具体的な構想というものをお示し願わなければ、いまのような御答弁では、私が問題点として考えておりますことがそこで解消されるということにはならないのですね。このことはいま初めて私が指摘するのではなくて、あなたもいろいろな角度からこの問題については研究してこられたことだろうと思いますから、だからして、ひとつ具体的な考え方というものをこの際明らかにしてほしいわけです。
  122. 吉光久

    ○吉光政府委員 本法律案に即して御説明を申し上げますと、大体保安協会でやっていこうと思っている仕事につきましては、これは実は従業員に対します保安教育の基準となるような教科書をつくっていただくというふうなことを高圧ガス保安協会のほうでやっていただくつもりでありますけれども現実に今度はその教科書を使いまして、従業員に対して現実の問題として保安教育をやるという場合には、やはり都道府県の団体でございますところのそういうLP団体で共同して実施していただくというようなことも必要かと思います。それからさらに、いろいろな意味での技術上の統一的基準そのものにつきましては保安協会のほうで制定いたしますけれども、たとえば消費設備の点検あるいは調査というふうなものにつきまして、具体的にこれを実施いたします場合の指導と申しますか、こういうふうなことにつきましては、やはり都道府県単位の団体でやっていただくというのが実際的ではないであろうか。あるいは、保安台帳のつくり方の問題でございますとか、あるいは消費者に対しましての一般的な注意書きの書き方の問題でございますとか、そういうふうな、いわばほんとうの自主保安体制の中の中核をなすようなものと申しますか、そういうふうなものにつきましては、やはり都道府県の保安団体の活動の中でこれをやっていただくのが最も適当ではないであろうか、このように考えております。
  123. 中村重光

    ○中村(重)委員 大体私の考え方とかみ合ってきたようですが、私はここへメモしてみたのです。  都道府県のLPガス協会がやります任務としては、自主保安基準の原案作成及び意見の具申、それから保安に関する啓蒙宣伝、それからLPガス器具の検定検査、保安教育講習等の庶務、実務、それから消費設備の工事の監督等に関する実務、こういったようなことは、これはどうしても手足のない高圧ガス保安協会ではできない。少なくともいまの百倍くらいに人員をふやさなければできない。であるからして、これは民間団体であるところの都道府県のLPガス協会に担当してもらうということが私は一番いいのではないか。いま私が申し上げたことは、大筋としてあなたの考え方と大体合致するのではないかと思うのでございますが、いかがでしょう。
  124. 吉光久

    ○吉光政府委員 御指摘のとおりでございます。
  125. 千葉佳男

    ○千葉(佳)委員 関連して御質問申し上げますが、先ほどの答弁の中で、新法の最大のねらいというのは販売業者を通じての保安のサービスを向上することである、こういうふうに御答弁になったわけでありますけれども、それに関連して、最初にさかのぼって、昨年度の事故の件数百五十一件、事業所に起きた件数は十七件で、消費先で起きたのが百二十五件、運搬中が九件、これはわかりました。わかりましたが、しからば、それが規模別——たとえば業者の規模ですね。一人から二人でやっているとか、五人近辺でやっているとか、十人でやっているとか、従事している規模、それから次に、何トンぐらい取り扱っているところが事故が起きたという、こういう百五十一件の中身をひとつお知らせいただきたい。これは都市ガスについても同じであります。そこから保安に関して関連質問をいたしたいと思います。
  126. 吉光久

    ○吉光政府委員 現在LPG関係の販売店の数でございますけれども、大体全国で約五万六千戸程度でございます。これを規模別に見てまいりました場合に、従業員が一人から五人というところのものが全体の六〇・七%を占めています。それから六人から九人というので約二〇%程度でございます。十人から五十人が約一五%でございます。ちょっと省略させていただいて、従業員百人以上の規模のものというのは〇・四%でございまして、圧倒的に中小規模のものが多いわけでございます。同時に、圧倒的に多い中小企業の中にも個人経営でやっておられるものが大体約半分ございます。それから株式会社形態をとっておりますものが大体二%前後ではないか、このように推定いたしております。  それから、その規模別の事故の関係でございますけれども、実はいまのは会社の規模でございまして、この規模と事故との相関関係というふうなものについては的確な統計を持ち合わせておりませんので、後ほど調べました上で御報告させていただきたいと思います。
  127. 井上亮

    ○井上(亮)政府委員 都市ガスの関係につきましては 先ほど事故の件数につきまして御報告申し上げましたが、原因別には私、手元の資料でわかるわけですが、規模別には後刻資料によりまして提出させていただきたいと思います。原因別にはただいまわかるわけでございますけれども……。
  128. 千葉佳男

    ○千葉(佳)委員 いろいろな点から保安の確保というものを追及していく、こういう点は非常にけっこうなことだろうと思うのでありますけれども先ほど答弁がありましたように、新法のほんとうのねらいというものは、販売業者を通じての保安確保、こういうことになりますと、実際具体的にそれはどうあるべきなんですか。  実は、私は宮城県でありますからいなかのほうでして、ずっと回って歩きましてLPG関係の業者を聞いてみましたら、先ほど局長から答弁がありましたように、個人経営というのは非常に私どものところは多いわけでございます。個人経営がいままでは実際高圧ガス取締法というのですか、これの二十八条に規定されておる販売主任者というのですか、これでやられておるわけですが、新法では十九条の業務主任者並びに二十一条の主任代理者という、こういうやつでやられておるわけであります。そうなると、実際に個人経営の具体的な中身を見たり聞いたりしておりますと、おやじさんがやって、奥さんが電話番をやっておる、そういうのが全体の半数という、こういう膨大な数でありますけれども、それが今度の新法によって、もう一人奥さん以外の代理者を置かなければならぬのじゃないか、こういう点、非常に神経質になっておるようでありますが、その点、保安と関係して、私は基本的には反対するものではありませんが、もし適当な経過措置というものを考えておられないとするならば、今度の新法のねらいが、販売業者を通じての保安の確保という、こういういわば美名に隠れて、実際は、先ほどから申し上げておる個人経営の零細業者にそういう業務主任者、代理者という具体的なかっこうを通じてそのしわ寄せがくるのではないか、こういう点非常に心配しておりますが、その点どうでありますか。
  129. 吉光久

    ○吉光政府委員 お話しございましたように、今度は業務主任者の代理者というふうなものを置くことになっておるわけでございますけれども、この業務主任者の代理者の資格要件の問題でございますが、やはりこれは保安を確保する必要上こういう代理者を置くということにいたしたわけでございますので、おのずとそちらからの制約もあろうかと思います。ただ、現実の問題といたしまして、ある規模に対応した形での代理者の数がきまってくると思いますけれども、あまり酷な要件を課することによって、かえってそれが置けない、違法行為があちらこちらで起こるという事態は、これは厳に避けるべきことでございます。  そういう意味で、実は経験年数等について幾らにすれば一番現実的であるかという点についての判断も現在やっておりますし、また、一挙に同時に全部この形でということになりますとやはり無理が出てまいりますので、その間合理的な経過措置をも考えながらこの体制を完備していきたい、このような考え方で現在進めております。
  130. 中村重光

    ○中村(重)委員 これから流通経路の問題に入っていきたいと思うのですが、実は大蔵省の小宮課長に来ていただいておりますし、また、きょうはでき得ればひとつ第二条の一番問題点について触れてみたいと思います。  そこで、金融を先にお尋ねをしてみたいと思いますが、小宮課長にお答えをいただきます前に、吉光局長からお答えをしていただきたいと思います。  というのは、保安設備ということです。それから取引適正化をするということになってまいりますと、メーターということ等を中心にお考えになっていらっしゃるんだろうと思うのでございますけれども、今度は充てんの際のいわゆる分析ということも、これは相当大きな費用を必要とするということになる。そうした保安、それから近代化ということ、それから品質をよくするということは、非常に重要な新法の柱という形に実はなっておる。してみますと、これらの措置を完全に実施をしていくというためには、どうしても特別な融資というものが講じられなければならないというように私は思います。したがって、政府関係金融機関、特に零細な業者は国民金融公庫というものに対する期待というものが出てくるのではないかと私は思うわけでございます。それで、従来のような一般融資のいわゆる八分二厘、しかも短期というようなことでなくて、これは災害等の点も十分配慮された特別の融資措置ということ、具体的には長期低利の融資ということが考えられなければならないではないかというように思うのでございますが、これらの金融措置に対して吉光局長はどのようにお考えになっておられるか。また、大蔵省の小宮課長のお考え方もこの際お聞かせ願いたいと思います。
  131. 両角良彦

    ○両角政府委員 御指摘のように非常に零細な販売業者でございますので、保安の強化に伴いましてこれら販売業者の合理化が必要であろうということでございますが、その合理化方策は特に協業化という方向で、たとえばボンベの大型化あるいはメーターの取りつけの普及といったような方策を推進いたすのが適当かと存じております。かような協業化施策を展開します場合の資金は、やはり中小企業振興事業団によります高度化資金で低利長期の融資をはかってまいりたいと考えております。また、協業化がかりに困難な場合におきましても、協同組合組織等の活用を通じまして、また個々の事業者につきましても、それぞれ中小企業振興事業団の融資対象とするようさらに検討を加えてまいりたいと思いますとともに、個別の事業団に対しましては、商工中金、中小企業金融公庫等の従来の中小企業金融方式を活用するようにつとめたいと考えております。
  132. 吉光久

    ○吉光政府委員 保安施設のほうにつきましての融資なりあるいは税制上の措置等につきまして御説明申し上げます。  このLPG関係の地下タンクピット等あるいは障壁、この建設の関係のお金、あるいはまた緊急遮断弁の設置でございますとか、あるいはガス検知警報機の設置に必要な金というふうなものにつきましては、すでに昭和四十一年度から中小企業設備近代化資金の融資の対象になっておるわけでございまして、さらにこの法案が成立いたしました後には、この法律にいっておりますところの液化石油ガスの分析設備というものにつきましてもこの対象にいたしたいということで、内々話を進めておるわけでございます。  なお、税制上の問題でございますけれども先ほど申し上げた障壁と地下ピットと、そして先ほど申し上げました分析機でございますけれども、これにつきましては、この法律が通ることを前提にいたしまして、特別償却のほうに入れていただくというようなことで内々話が進められつつあります。
  133. 小宮保

    ○小宮説明員 先生、保安設備と取引適正化云云という二つのことをおっしゃったわけでございますが、保安設備につきましては、ただいま通産省のほうからお答えがございましたように、近代化資金等の用意もございますが、あと、中小公庫それから国民公庫におきまして、産業安全衛生設備の特別貸し付けという制度、これは数年前からやっております。これは突然のことでございましたので、私、手元に資料を持ち合わせておりませんが、おそらくLPG販売業者の中でも、ある部分のものはこれでカバーされておるのじゃないかと思いますが、こういう方法もあるわけでございます。それで、最近こういう広い意味での公害というのか、こういう安全面について非常に社会的な要請が強いわけでございまして、国民公庫等からも、これの拡充と申しますか、そういう意見が来年度も予算要求に関連して出てきております。これはただいま私ども検討中でございますけれども、仰せの御趣旨を配慮しながらそれをひとつ検討してまいりたいと思っております。  なお、近代化等の問題につきましては、やはりこれはそのもの自体が安全設備というわけではないわけでございます。やはりこれは別途の方策を講ぜざるを得ないわけでございまして、やはり個個の業者ということになりますと、これは国民公庫ないしは商工中金から組合を通ずる転貸というような形で近代化をはかっていくということになると思いますし、それから、ただいま通産省からお話がございましたような振興事業団を使いまして協業化による合理化をはかっていく、そういうような方策になるか、こういうように考えております。
  134. 中村重光

    ○中村(重)委員 協業化の問題等々、それからいわゆる分析設備ということ、これは相当膨大な費用を必要とするということになってまいりましょうし、特別の金融措置を講じたいというようないまお答えも実はあったわけですが、これらのことと関連をいたしましてまだ突っ込んでお尋ねをしたいと思いますけれども、大臣の時間の関係等もあるようでございますから、ぜひ大臣にもお答えを願わなければならぬ点が第二条の中で出てまいりますので、この点をひとつお尋ねをしておきたいと思います。  第二条の一番問題は、第三項「この法律において「液化石油ガス販売事業」とは、液化石油ガスであって容器に充てんされているものを一般消費者等に販売する事業(液化石油ガスであって容器に充てんされているものを一般消費者等に現に引き渡し、その消費された液化石油ガスのみについて代金を受領する販売をする事業を含む。)をいう。」これはなかなかむずかしい表現でして、わかりにくいんです。特にカッコの中がわかりにくいのでございますが、この三項について、どういうことなのか、ひとつ的確にお答えを願いたいと思います。
  135. 吉光久

    ○吉光政府委員 二条の三項の液化石油ガス販売事業の定義の関係でございますが、カッコの外で言っております「液化石油ガスであって容器に充てんされているものを一般消費者等に販売する事業」、これが通常行なわれておりますところのいわゆる家庭が使っておりますボンベ売りというふうなことで、家庭にボンベ込みで液化石油ガスを販売されておる状態のことを言っておるわけでございまして、普通一般の形態でございます。  それから、カッコの中でございますけれども、ボンベ売りとまではいきませんで、少なくともボンベ自身につきまして、これを一般消費者等に現実に引き渡し行為をいたしておりますけれども、そのボンベにメーター等が——いわゆるメーター売りと申しますか、メーターがつけられまして、メーターによって計量された範囲内で代金を決済する、こういうふうな形式のものでございまして、これはボンベ一本の場合もございますれば、ボンベ二本の集合的な場合もございます。いずれの場合もあり得るわけでございますけれども現実の販売の形態が、カッコの外がボンベ込みのいわゆるボンベ売りと言っているのに対しまして、中はメーター売りというふうなことになっておるわけでございます。  ただその場合、そのメーター売りにつきまして、すべてのメーター売り——一般的に小規模導管供給で配給されておることが多いわけでありますけれども、そのすべてについてこのカッコ内が適用されるというふうなことになりますと、いわゆるガス事業法との関係がございますので、したがいまして、そこらの点につきまして非常に狭義の、現実にボンベが相手方、一般消費者等に売り渡されておりまして、そういう形で内容を限定いたしておるわけでございます。
  136. 中村重光

    ○中村(重)委員 大臣もお聞きになって、わかったようなわからぬようなことだろうと思います。カッコの中は、一本とは言わない、二本でも三本でもいいということでしょう。これは計量器をつけるんだという。私は、このカッコの外、いわゆるボンベ売りということをなぜに計量器をつけないという形でお答えになるのかわからない。少なくとも取引適正化ということがこの法律案の柱であるとするならば、指導としては、ボンベ売りもすべて計量器をつけさせるという指導こそあってしかるべきだと思う。だから、特別に計量器をつけないボンベ売りと計量器をつけるボンベ売りということと区別しなくたって、計量器をつけるということは、問題は、取引適正化する、この法律の趣旨に沿って一つ取引方法としてこれを業者がやる、その行為であってよろしいのではないか、したがって、区別をするというならば、導管供給の点を区別をしていくということであってよろしいのではないかという感じがいたします。  そこで、いままた局長がお答えになりました、導管供給が現に行なわれておる、その導管供給のすべてをさすのではない、きわめて狭義の導管供給を考えておるのだとおっしゃったんですが、その狭義の導管供給というものがどの程度を考えておるのか、規模の大きいものはガス事業法との関係においてこれはいけないのだ、導管供給であっても規模の小さいもの、そういうものはガス事業法に触れないのだという根拠はどういう点にあるのか、その点が明確ではございません。  以上、二点について、私が区別をしてお尋ねをいたしましたのでお答えを願いたいと思います。
  137. 吉光久

    ○吉光政府委員 最初に、計量器つきの計量売りというのが原則論になるのが理想ではないのだろうか、こういう御指摘があったわけでございます。まさに、理想形態といたしましては、計量器を取りつけて販売するというのが非常に理想的な姿だと思うわけでございますが、この法律の定義でカッコの外の、充てんされている液化石油ガスボンベ込みで販売いたすというふうな形態が現実に圧倒的多数を占めているものでございますので、したがいまして、そういう意味からここに書いたわけでございまして、御指摘の計量器のついた販売形態というものは非常にふさわしい形態だということにつきましてはまことに私も同じ意見でございまして、この定義自身は、実はそことは違った形、現実にある実態からこういう表現をいたしたわけでございます。  それから、いまの小規模導官供給の問題でございますけれども、実は、小規模導管供給事業につきましては、どういう形態であれば最も理想的であろうかというふうなことにつきまして、この法律案を提案いたします前に相当議論をいたしたわけでございます。いま御質問ございましたどれぐらいの規模の大きさであればガス事業法になるか、あるいはまた、どれぐらいの規模の大きさであれば本法の対象になるかというふうな点につきましては実は規模で規定いたしますことが非常に困難でございましたし、同時にまた、そういう問題自身につきましては、やはりこういうガス事業体、何と申しますか、非常に家庭の消費生活に密着いたしておりますそういうガスの供給でございますので、やはり何と申しますか、公益事業規制の根本にもからみ合う問題でございますので、したがいまして、そこらの規模をどういうふうな形でどうするというふうな点につきましては、実はこの定義では示していないわけでございまして、むしろ現実取引の形態といたしまして、ボンベ自身が現に相手方、一般消費者等に現実に引き渡されまして、そしてその引き渡されたものにつきまして、今度は引き渡されたボンベ等についての一般的な管理責任と申しますか、これは実は引き渡しを受けた者にあるわけでございますけれども、そういうふうな現実の占有権の移転を受けました上でメーターでガスを使っておる、こういうふうなものにつきましては、その規模の問題を離れまして、そういう実態にあるものについてはこのカッコ内が適用される、こういう形でこの定義を書いたわけでございます。
  138. 中村重光

    ○中村(重)委員 まあカッコの中はただし書き的なものとも解される。私は、取引適正化ということがこの法律の目的の一つの柱なんだ、だからして、消費者のすべてともいっていいように、もう少し取引を適正にしてもらいたい。ボンベは一ぱいいっておったのだろうか、あるいはまだ残っておったのではなかろうかというやはり不安と不信というものがあるんだから、だからして、保安と取引適正化ということをこの法律の目的としてお出しになったのであるならば、やはりボンベ売りがそういう形でなされておるけれども、それは取引適正化ではない、今度の新法によって取引適正化をはからせる、そのためには計量器をつけて販売をやらせるというふうな積極的な面というものが私は出されてしかるべきだという考え方の上に立つのです。そこで、計量器をつけて売るということをただし書き的にお考えにならないで、やはりこれを前面に押し出していくという取り組み方をこの法体系の中で期待をしておる、こういうことなんです。  それから、いまカッコの中の「現に引き渡し」という問題でございますが、ここに、導管供給が現に行なわれておる、それをはっきり認めながら、特にこの法律案の中に導官供給ということを避けられた。まあ、いろいろと耳に入ってくるところによりますと、たいへん通産省内でも苦心をされたようでございます。苦心の結果のこれが傑作というのか、そういう形で出てきたのでございましょうが、少なくとも、私どもがこの法律案を審議いたしますにあたって、読んでわかるような法律案をひとつ出してもらいたい。ボンベを現に引き渡し——一般にボンベ売りも、これは現に引き渡しておるわけですね。ところが、これは現に引き渡したんだ、そして計量器をつけてこれを販売することと、その次にもう一つあるとするならば、これはいわゆる導管というのか配管というのか、ともかく管をもって供給をする、そして、それも計量器をつけるということに当然なってまいります。だから、そういうことであるならば、ここに実態がそういうことであるのだから、もう導管ということをはっきり出していいのではないか、そして、その規模だけが問題であるとするならば、政令事項として政令で規模はこの程度だということを明らかにしていくというようなことも考えられてよかったのではないか。  先般福岡で公聴会を開いたのでございますが、都市ガス業者の方々にも公述人として来ていただきましたが、都市ガス業者の方は頭からLPガスの導管供給を否定をしておられます。この二条の三項の中、このカッコの中は、これは導管供給ということによって供給されるものではない、これはあくまでボンベ売りでございますということを言っておられる。そういう解釈をしておられる。一方今度は、LPガスの方も公述人として来ていただきましたが、その方はこの「現に引き渡し」ということは、これは導管供給を意味するのです、こう言っている。利害を異にする立場からではございましょうけれども、いずれにしてもそういう解釈をとっておられるのでございまして、私どもが読みましてもこれはわからないのです。実態がこうなんだと、こうおっしゃるのだけれども、実態は導管供給をしておるのが事実あるというのは知っていますが、それならばそうお書きになってよろしいと私は思うのであります。特にここに導管供給ということを明らかにされないのはどういう点にあるのか。明らかに文字に出すとこれがガス事業法に触れるのだ、しかし、実態は導管供給をやっておるんだから、これを認めるのだということならば、文字にあらわさないということによってガス事業法に触れないというような解釈がどこから出てくるのか。文字にさえ出さなければほかの法律に触れたってかまわないというような考え方というものは私は乱暴であると思うのであります。だからして、これは三局でそれぞれ検討されて結論が出たのでございますから、井上局長、両角局長、それからいま吉光局長からはお考え方を伺ったのでございますけれども、あらためてまた私のこの指摘に対してそれぞれお答えを願いたいと思います。
  139. 吉光久

    ○吉光政府委員 すでに先生御承知のとおり、ここで書きましたのは、ガス体のみの売買、いわゆる導管供給にもいろいろの形態があろうかと思うわけでございますけれども、ガス体だけの売買というようなことはこの文章には入れなかったわけでございまして、液体の入っておりまするボンベにつきまして支配権が移ると申しますか、そしてそれをガス燃料体として使うというふうな場合を想定いたしたわけでございまして、導管供給自身につきまして、ここに導管供給というふうな形だけで表現いたしました場合には、その導管供給の形態のあり方いかんによりましては、ガス事業法との関係で相当解釈上むずかしい問題が出てくるであろう、このような判断をいたしたわけでございます。
  140. 井上亮

    ○井上(亮)政府委員 ただいま法律の解釈につきましては吉光局長から御説明申し上げましたが、全く同じでございます。  ただしかし、先生先ほど指摘がありましたように、LPGの小規模導管事業者に対してどのように法的に位置づけていくかというような問題が、この問題とはまた別個の問題としておるわけでございます。現状、御承知のように、現行のガス事業法によりますれば、ガス事業者とは、導管をもって供給する事業者というような規定もあるわけでございます。しかし、現実にはこの新法との関係でいろいろ問題もありますので、ただいま通産省におきましてはエネルギー調査会の中にガス部会を設けまして、このガス部会で今後のガス事業のあり方、特にこの小規模導管企業の法的な位置づけにつきましてどのように考えていくかというようなことについて検討中でございます。私どもとしましては、できるだく早く結論を出しまして、結論が出ますれば、ガス事業法を改正いたしまして対処していくつもりでございます。
  141. 両角良彦

    ○両角政府委員 ただいま両角局長が申し上げましたとおり、ガス事業法と小規模導管供給との調整がたいへんむずかしい問題でございますので、エネルギー調査会等の結論を持ちまして調整を行ないたいと考えております。
  142. 中村重光

    ○中村(重)委員 私は、先ほどの吉光局長の御答弁、これに法的に解釈は同じであるというそれぞれのお答えには納得がいかないのであります。  そこで、私は端的に井上局長にお尋ねをいたしますが、LPガスを小規模であって導管供給をするということは、ガス事業法に触れるとお考えですか、触れないとお考えですか。
  143. 井上亮

    ○井上(亮)政府委員 ガス事業法に触れるということは別にございません。ただ、私ども問題にしておりますのは、製造形態によってガス事業の区別はいたさないつもりでございます。製造形態、つまりガス発生装置、発生形態によってガス事業であるとかないとかいう区別は私はしないつもりでおります。そういう見解で、LPGであろうとも、いやしくも多数の消費者に対しましてガスの供給をするといいます場合には、やはりその規模なり程度なりによりまして公益性というものを持つ。別な表現でしますれば、消費者の選択を制約するといいますか、消費者選択が自由に行なわれがたいような形態、多数の消費者がやはり利用されるものでございますから、そういった場合には私は公益性があると思いますので、そういう面について公益事業規制をやはり課すべきだという考え方を持っておるわけでございまして、特にガス事業法に触れないといいますよりも、むしろ新しく発生しましたこのLPG小規模導管供給という新しい供給形態、こういった事業をこの法律の中でどのように位置づけていくか、これは新しい問題でございます。そういった意味合いから、先ほど申しましたように、ただいまガス部会の中で、この扱いにつきまして、消費者の利益を守るという立場からどのように——法的な規制もありましょうし、その他の問題もありましょうから、位置づけにつきまして検討中でございます。
  144. 中村重光

    ○中村(重)委員 ボンベに充てんされておるガスを運んでいって、そこで導管供給、その形態はガス事業法に触れない、こういうお答えがあった。昭和二十九年十月一日発行のガス事業法の解説書、公益事業局ガス課編著のものです。この同法第二条の解説によりますと、ガス事業は導管によるものであるのだから、ボンベその他の容器にガスを充てんして、そのガスの供給をいわゆる導管によって行なうことは、これはガス事業ではない、こういっている。だからあなたの答弁とはここで食い違う。昭和二十九年十月一日発行のあなたの前任者の局長——二十九年当時でありますから、だいぶ前の事業局長のときではありますが、このときの解釈とあなたの解釈はここで違ってまいりましたが、この見解の変更であると理解をしてよろしゅうございますね。
  145. 井上亮

    ○井上(亮)政府委員 御指摘のありましたのは昭和二十九年でありますが、当時の見解は、たしか現行ガス事業法制定の時期であろうと思います。その当時におきましてはまだ小規模導管供給という問題は起こっていなかった時代でございました。ボンベの一本売りがようやく始まったかどうかという時期ではないかと私思うのでございます。したがいまして、その解釈につきましては、ボンベの一本売りにつきましてはガス事業法の対象にならないというふうに考えております。
  146. 中村重光

    ○中村(重)委員 いずれにいたしましても、私は、容器に充てんされたLPガスを運んでいって、そこで導管で供給するという、そういうものは、これはさっきもガス事業法には触れないのだというあなたのお答えであったわけです。まあしかし、この二十九年十月一日発行の解説書によると、ともかく導管供給というものは都市ガスのみしかやれないということに、これでは大体解釈されそうです。しかし、いまあなたがお答えになったことでよろしい、私はこう思うのですが、これは昭和二十九年。ただ、最近導管でLPガスを供給しておる、これはガス事業法に触れるのだからこれをやめさせなさい、こういって都道府県とか市町村に対して通産省が指導しておる、口頭または文書でもって指導しておるということを伺っておるのでございますが、そういう事実があるのかどうか。その事実があるとすれば、いまあなたがお答えになった導管供給というものはこのガス事業法に触れないということと、これまた食い違ってまいりますが、その点いかがでございましょうか。
  147. 井上亮

    ○井上(亮)政府委員 大事なところだと思いますので正確にお答えをさせていただきます。  先ほどの御質問に対しまして、触れる触れないの問題は、私は触れるとも触れないとも申さなかったわけでございまして、問題は、そういうことではなくして、やはり先ほども申しましたように、LPGの小規模導管供給事業というようなものは、最近に開発された簡易なガスの供給事業でございまして、したがって、この簡易なガスの供給、これにつきまして、ガス事業法体系上どのような法的位置を与えるのが、消費者の利益を守るという観点から見まして、より好ましいかという点をただいまガス部会で検討しております。  あくまでも基本的な観点は、やはり導管供給ということになりますと、公益性を持つ性格ではないか、つまり、多数の消費者に対しまして固定した導管で供給するということになりますと、やはり若干の地域性もありましょうし、あるいはそのほか、消費者から見まして、消費者が選択したいという自由を奪われるというようなこともありましょうしいたします。言いかえれば、公益性があるわけでございます。したがいまして、そういう場合にはやはり公益上の規制を課さなければならないのではないか、これは私個人の私見でございます。ただいまガス部会で検討中でございますからまだ固まった意見ではございませんけれども、私はそのように考えております。  したがいまして、そのような観点から見まして、私どもは、やはり技術の進歩とかガス事業法の現状に対しましてもう一度検討を加えておるわけでございまして、私どもは、この小規模導管事業に対して、ガス事業法の体系の中でどのような位置づけを与えるかというような観点で検討中でございまして、いま直ちに触れるとか触れないとかいうお答えを先ほどしたわけではございません。ただし、LPGの導管供給の事業でやはりガス事業法の認可申請をされるという場合には、私は、その案件ごとにケース・バイ・ケース——現行のガス事業法の体系で考えまして、許可を与えるべきかどうかということはケース・バイ・ケースで判断して取り上げていきたいということでございます。
  148. 中村重光

    ○中村(重)委員 大臣、お忙しいようでございますが、あなたがお聞きのとおり、これは特別国会に提案された法案で、混乱の中にようやく三局が意見を集約して、ここで提案をするということのようであります。ところが、いままでの質疑の中であなたもお感じになっと思うのでございますが、導管供給は現に行なわれておるのです。その現実の上に立ってこの法律案が実は提案されるということになってきた。その現実認識の上に立って考えたのが、いわゆるボンベを「現に引き渡し」、それから先はこれを導管によって供給するということをお互い了解し合っての上であるのだけれども、導管というその文字が出ることがガス事業法に触れるという点をおもんぱかってここに出していないというように、私はそのいまのお答えの中からもそのとおり伺って理解をしておるわけなんです。だがしかし、これはいまガス部会の中で検討しておるのだということ、ところが、法律案として提案はされた。そして、私どもはこれを慎重に審議していく中でそれぞれの利害関係者の御意見というものを伺ってみると、都市ガス事業者は、導管供給は否定をする、プロパン業者は、この「現に引き渡し」という、それによって導管供給は可能になったのだというように解釈をしておる。ここで、この法律によってそれぞれ権利を行使し、義務を履行していかなければならない人たちがその解釈が頭から食い違っておるということでは、これはたいへん混乱をすることになってくるわけです。私どもこの法律案を審議するにあたって、このまま原案のとおりこれを通過成立をさせるということになってくると、混乱するということがわかりながら成立をさせるということになり、これはたいへん無理があるわけなんです。そういう点から、提案時期がおくれたということが最大の原因ではございますが、これを継続審議にしたということでございます。したがって問題は、これが残されておるということは、いまガス部会で検討されておるのだというお答えの中からもはっきりしておるということになってまいります。これから検討しなければ完全なものができ上がらないのにこの法律案を実は成立をさせるということに無理があるということは、あなたもおわかりになったのだと私は思うのでございます。  ここでお答えをあなたからいまいただこうと思ません。この点については、まだいろいろな角度から——私は時間はかまいませんが、それぞれの関係者の方々はあまりおそくなると御迷惑でございましょうから、適当な時間にきょうは切り上げなければならぬと思います。ですから、いま大臣の答弁がございますと、まあ、適当な答弁はあなたはできましょうけれども、適当な答弁を伺うことは、かえってどんなものであろうかと思いますから、きょうは答おえを願わないで、あらためてあなたからはお答えを願うことにいたします。少なくとも、大臣の答弁は大きな影響力を持つものであるということを私は十分考えておりますから、その点、あなたを尊重しまして、また、あなたを信頼をしてきょうはお答えをいただかないわけでございますから、どうかひとつきょうはお引き取りを願って、各局長から十分ひとつ事情をお聞きになって、あとでお答えを願いたいと思います。  井上局長、あなたの前任者のときにこれは話し合いの中で出されて、精力的にあなたもこれにお取り組みになったのだけれども、非常に苦心をして答弁をしていらっしゃる。また、混乱も実はあるようでございます。ですけれども、あえて私はその言質をとらえていろいろ言おうとは思いません。当然です、そういう混乱があるのは。この法律案そのものが混乱をしているのだから、あなたのそのくらいの答弁の混乱は、これはあたりまえのことだと私は思う。  いま私は手元に四十一年十二月二十七日、公益事業局長から通商産業局長あてに出されている「液化石油ガス等による小規模導管供給のガス事業法上の取扱いについて」というのを実は持っておる。これを読んでみますと、これは、導管供給というのを頭から否定しているのではない、導管供給によりガスを供給している場合においてもガス事業法上ガス事業とはならないというケースとして、ここへ出しているものがある。だから私は、導管供給そのものに目の色を変えて何のためにそう盛んに苦心をされて——苦心というのか、おそれたというのか、そうごたごたしなければならないのかふしぎに思う。問題は、先ほど井上局長答えられたように、いかにして消費者の利益を守るかということです。だから、そういう公益的な立場の上に立ってこれをどうするかということをお考えになったならば、問題は解決したのではなかろうかというような感じがいたします。  都市ガス事業になるほど導管というのがある。しかし、公益事業である都市ガス事業は、導管供給そのものがこの都市ガス事業の公益性のすべてではない。一つの要素であるということは私はわかる。ですけれども、ガス事業法というものは、LPガスが今日のように普及してない前にできている法律だということははっきりしておる。導管供給を需要者が圧倒的に望んでおられる、導管供給をすることが事故を防止することに大きく役立つということもはっきりしておる。それならば、この法案をおつくりになるにあたって、それはむずかしい「現に引き渡し」とかなんとかいうことでなくて、はっきり導管供給をお認めになって、その規模をこの法律の中にすべて対象とするということが適当でないとお考えになるならば、その規模は政令で定めるなら政令で定めるということにして、これ以上は都市ガス、いわゆるガス事業法の対象にするならする、これ以下はこの法律の対象にするならするというように、ひとつすっきり割り切ってお考えになったならばよかったのではないかというような感じがいたします。どうも、そんなに苦心されたということは、私は必要以上の苦心、苦労をされたというような感じがしてならない。  重ねて吉光局長にお尋ねをいたすのでございますが、そのものずばり答えてください。ともかく、LPGを容器に充てんをしてそれを持っていって、それから先に導管供給をするということはいいのか悪いのか、この法律案の中でこれを認めておるのか認めてないのか、これをひとつはっきり、そのままずばり答えてもらいたいのです。
  149. 吉光久

    ○吉光政府委員 この法律で対象にいたしております液化石油ガス販売事業につきましては、これは結論を先に申し上げますと、容器を現場に持っていきまして、相手方の占有に入っておるか、支配下に入っておるかいないかの差で、この販売業者であるかないかということの決定をいたしておるわけでございまして、容器自身を販売事業者自身の占有下に置いて、その上で導管供給で家庭にガスを売っておるというふうな範囲のものにつきましては、これはこの販売事業という中に入っておらないわけでございまして、同じような導管供給の形態でございますけれども、ここでいう販売事業という中には入れておらないわけでございます。ただ、導管供給で供給するということ自身を否定するつもりは毛頭ございませんし、導管供給で供給されるということがりっぱなことである、要するに、保安上の立場から申しましても非常にりっぱなことであるというふうに私ども考えておるわけでございますけれども、ただ導管供給というだけで、それだけの立場から判断するわけにまいらない先ほど来の問題がございましたので、そういう公益性の基本的な問題だけを一応この法律からははずしてあるということでございます。
  150. 中村重光

    ○中村(重)委員 容器に充てんしたLPガスを持っていくんですね。そうして相手に引き渡した、そういうことが確認される状態である、それならば導管供給としてこれを認めていくのだ、こういうお答であった。確認される状態とは、これは実態論になってこようと思うのですが、それはどういうことですか。
  151. 吉光久

    ○吉光政府委員 これは事実認定の問題でございますけれども、その土地の所有権あるいは賃借権等を持っておるその他人の土地の中にそれらが置かれておるかどうか、あるいはまた、そのLPGの容器につきましての保管設備と申しますか、かぎ等を一体だれが持ち、だれが確認しておるかというふうな、そういう事実関係を調べることによって判断がきくであろう、このように考えております。
  152. 中村重光

    ○中村(重)委員 じゃ、具体的に尋ねますよ。同一敷地内ということをお答えになりましたね。そうすると、アパートが——団地でもいいのですが、アパートが一棟、二棟、三棟、四棟、五棟と同一敷地内に建てられてあった。そこへボンベを持っていってそれを引き渡す、そこで導管で供給するということは差しつかえございませんね。
  153. 吉光久

    ○吉光政府委員 具体的に一棟、二棟、三棟というアパートにつきまして、それぞれについて容器の占有が移っておる、現実に引き渡しが行なわれておるという状況で、あとが導管供給されておるという場合でございましたら、この法律でいう販売事業ということに該当いたすわけでございます。
  154. 中村重光

    ○中村(重)委員 私が一棟、二棟、三棟、四棟と申し上げたことをばらばらに一棟ずつにお考えにならないように。かりに一棟であってもあるいは五棟であったにしても、現にある特定の業者がLPGを持っていって、そうしてこれを引き渡したということで、そのすべてのアパートに対して導管で供給する、それはこの法律案のカッコの中に入っておるのだ、いわゆる導管供給をやってよろしい、これはガス事業法には触れないのだという考え方の上に立っておられるのか、そういうように理解してよろしゅうございますか。
  155. 吉光久

    ○吉光政府委員 現にそういう形でガスが供給されておるということであれば、この定義でいうガス販売事業者の中に入るということでございます。
  156. 中村重光

    ○中村(重)委員 それならば、現に引き渡し、導管によって供給するという形に修正をいたしましても、あなたの考え方とは相違いたしませんね。
  157. 吉光久

    ○吉光政府委員 専管ということばをつかまえますと非常にむずかしゅうございますけれども、要するに、現に引き渡しまして、そうして、それを引き渡されたものにつきまして導管によってこれを消費すると申しますか、その導管が消費済み的なかっこうになるような意味での導管というふうなものでございましたら、この法律の規定の適用対象になっておるわけでございます。
  158. 中村重光

    ○中村(重)委員 現に引き渡したのです。これはアパート、一棟もあるでしょう、あるいは五棟もあるでしょう、そこで引き渡したということは、あなたのところにこれを供給いたしますよと言って供給する約束をするのですよ。それで引き渡した、そうして先は導管で供給するのですよ。だから、現に引き渡し、導管によって供給するということは、あなたの考え方とは違わない。これは井上公益事業局長も異論があろうとは私は思わない。なぜか。公益事業局長名によって「導管によりガスを供給している場合であっても、ガス事業法上ガス事業とはならない。」ということでずっと以下書いてある。   ガス事業を営む者とはならないものとして、  例えば次のものがあげられる。  一、社宅等の給与住宅において、その居住者の所属する会社等が自ら供給する場合   「社宅等の給与住宅」とは、社宅、公務員住宅、中小企業が共同して管理するその従業員のための賃貸住宅、その他これに類似する形態のものをいう。   「その居住者の所属する会社等が自ら供給する場合」とは、その居住者が所属する会社等が液化石油ガス等を購入してその居住者に配分する場合をいう。  二、家主が液化石油ガス等の一部を借家(間)人に自ら供給する場合。   一般的には、同一敷地内にあるアパートに供給する場合をいうが、同一敷地内でなくとも、いわゆる大家と店子という関係である場合は含まれる。  三、液化石油ガス等を共同して購入し、共同してガスを使用する場合。   いわゆる共同自家用であって、組合契約等に基づき、液化石油ガス等を共同して購入し、導管を共同利用してガスを使用する場合をいう。  四、地域として把握されない程度の広さの小区画にガスを供給する場合。と、こうある。だから、同一敷地内、現にこれを引き渡した、こういう形で、それで導管を供給するのは、いわゆるガス事業法でいう導管供給ではないということを、はっきり公益事業局長名で出しているのだから、だから私は、現に引き渡し、導管によって供給する、こういう形にかりに私どものほうで修正をいたしましても、提案されたあなた方とは考え方は違わないではないか。なぜにそうむずかしく単管ということばに一もう導管は同感と言ったらいいですよ。あなたの言う導管でなくて、考え方は同じだという同感でいいじゃございませんか。
  159. 井上亮

    ○井上(亮)政府委員 いろいろ先生御意見ありますけれども先ほど来申しましたように、小規模導管事業者——ガス事業法では導管をもって供給するものはやはり性格的に公益性を持っております。先ほども言いましたように、一軒一軒がボンベ売りを買います場合には、これは消費者のほうに選択の自由がございます。危険な業者だと思えば買わない、高ければ買わないというような自由がございます。しかし、相当規模の導管供給ということになりますと、一たびそういった大きな相当な施設を住宅に施しまして多数のものに供給されるというようなことになりますと、これは消費者としては簡単に選択の自由がございません。したがいまして、私ども特にそういう場合にはやは公益性が出てくると思います。したがいまして、そういう見地から、小規模導管事業者につきましては、全部がどうかというと、これはまた少し検討しなければならぬと思いますけれども、しかしそういう公益性が多分にある。したがいまして、そういう事業者につきましては、現在のガス事業法を改正いたしまして、新しく開発されたこういった小規模導管事業者についての法的位置づけを、ガス事業法体系、言いかえれば公益事業法体系におきまして規制するという措置が、消費者のためにも必要だし、それからまた、大きく見ますと、そういった小規模導管事業者のためにも私はさらに裨益するものがあるのではないかというふうに考えまして、こういう小規模導管事業者につきましては、やはり一般的にいいまして公益性を持ち得るわけでございますから、私どものほうの法体系の中で公益事業規制をいたしまして、単に保安規制だけでない形の消費者保護のための規制をしていきたい、そういうふうなことをただいまガス部会を開きまして検討しておるわけでございます。  ただしかし、いま相当突っ込んだ意見を私申しましたが、これはあくまでも公益事業局長個人の意見でございます。ただいまそういう考え方でいいかどうかということにつきましてはガス部会で検討いたしておりますので、その結論を待ち次第、私どもとして善処してまいりたいというふうに考えます。
  160. 中村重光

    ○中村(重)委員 私の質問に対するお答えにならないのです。  先ほど来お答えがあったように、ボンベを持っていって現に引き渡して導管で供給することは、このカッコ内によって認めているのだということをお答えになり、あなたも、法律解釈としてはそのとおりだとお答えになったのです。それを私は言っているのであって、あなた方が答えられないようなことを私はお尋ねしているのじゃない。しかも公益事業局のほうでお出しになったこれを読んで——何のために導管供給に対してそうこだわられるのか私はわからないのです。はっきりさせようと私は言っているにすぎない。  それから、いま言う公益性、公益性とは何ぞやという問題に発展をしてまいります。きょうはやりません。あすでもあさってでも私はやります。導管供給そのものが公益性だというふうにお考えになるということはどんなものだろうかと私は思う。ボンベ売りそのものであっても私は公益性というものはあると思う。少なくともこのLPG販売事業というものは、私は公益性を持っていると思う。都市ガス以上に供給力がある。だから、この公益性ということは、消費者の利益をどう守るかという消費者の立場の上に立つべきではないでしょうか。  だから、かりに農協がある村に行ってボンベ売り、一本売りをどんどんしておった、それ以外のものはない。そういう場合に、このボンベ売りのLPGを買わなければならない。そのことは独占的にもなっていくわけです。ですから、導管で供給するそのことが、いわゆる公益性、公益事業の対象ということでお考えになるのではなくて、そのものを買わなければならぬかどうか、その品物が国民の日常生活の上に立ってどのような影響力を持っておるものであるかという、そのことが公益性があるかないかということを判断する基礎にならなければならない。だからして、導管供給そのものを公益事業だというようなことで、それにこだわっておられるから、ガス事業法に触れるとか触れぬとかということで、必要以上にあなた方は無理にこだわって混乱をしているのだと私は思う。  だからして、私は修正をするとは言ってないのだが、修正をしてもあなた方と考え方は違わないのじゃないか、こう言っているのだから、それならそのとおりだ、こう言えばいい。修正するかせぬかということは、これは与党とも話し合いをしてやらなければならないのだから、これはあいまいな、混乱をするような、そういうものを原案のとおり通すということは適当でないということであるならば、修正をして通すということにもなるでしょう。これはこの後の発展にあることですから、考え方として私が申し上げておることと一致するならば、そのとおりにお答えになればよろしい。ガス部会でこれを検討しているのだからどうだこうだということは、これは別の問題です。だからして、考え方が違うのか違わぬのか、それをひとつお答え願いたい。
  161. 吉光久

    ○吉光政府委員 これは非常にむずかしい問題でございまして、いま御指摘がございましたように、いわゆる導管というのですか、管と申しますか、そのあり方によりまして話がだいぶ違ってくるのではないかと思うわけでございまして、普通、ボンベ一個売りの場合に、メーターをつけまして一般消費者に売っておるという場合の管につきまして、どちらかといいますと、これは広い意味で導管でございます。配管と申しますか、何と申しますか、いわば量によって違うと思いますけれども、いわゆる導管というふうな感じのしない配管と申しますか、よくわからないのでございますけれども、実はそういうふうな場合も予想いたしまして、配管とかどうとかということばを建築基準法あたりでも使っているわけでございます。その導管という場合に、そういうふうなものも導管であり、あるいは非常にたくさんの人に供給している管も導管である、そこらの、導管ということばの使い方による場合が非常に多いのではないかと思うわけでございますが、と同時に、先ほど指摘がありましたように、いまの公益事業局から出ております通達の中にも「例えば」ということで、共同のアパートでございますとかあるいは社宅でございますとか、そういうふうな、何といいますか、ある一つ特定された分野における広がりを持ちました導管供給というものについて、一応これはガス事業法が適用にならない、こういうことを公益事業局長の通達は示しておるわけでございまして、したがいまして、ただ単純に、いまの場合にボンベを現に引き渡しておって、そしてあとすぐ導管というふうなことに即なるかどうかという点につきまして、やはりそこの供給形態のあり方というものとからみ合ってくるのではないか。要するに、私が申し上げますのは、導管ということばの使い方と申しますか、このようなことになるのではないか、このように考えます。
  162. 中村重光

    ○中村(重)委員 だれが聞いておっても、あなたは何のためにそうこだわるのかわからない。みなそうだろうと思う。現に引き渡して導管で供給するということは、これはそれを引き渡したということ、その形態が認められる状態、実態論になるんですよ。それはよろしいんだとあなたは答えたんですよ。だれも違うとは言わなかったんですよ。そのとおりです、こう言った。だから私は、公益事業局長名で出されておるこういうものを読みながら、それでは——アパート一棟とか三棟とか五棟とか言わないんですよ。同一敷地内ということもはっきり書かれているのだから、その戸数が何戸であろうとも、現に、ボンベを持っていって引き渡して導管で供給するということをお認めになるのだから、そのとおりだとお答えになったのだから、それでは、現に引き渡し、導管により供給するということをはっきりさせたところで、あなた方の考え方とは違いませんね。なお、これはどうもあいまいなんだから、ここにはっきりさせるかさせぬかということは別として、はっきりさせてもあなた方の考え方と相違することにはなりませんねと、こうお尋ねしているのです。だから、そういろいろこだわってああだこうだとおっしゃらなくても、同感でございますと言えば、それでいいじゃないですか。
  163. 吉光久

    ○吉光政府委員 どうも非常に難問でございまして、たびたびお答えするわけでございますけれども、いまの先生おっしゃいましたことばをこういうふうなことばにおっしゃっていただければ、私はそれで全く同じ意見でございますけれども、いまの現に引き渡された容器につきまして、これを導管で供給するのではなくて、もう引き渡しを受けておるわけでございます。したがって、導管によって消費するという意味ですから、これは実は同じことなのでございますけれども、いまの先生の供給するということばは、現に引き渡しを受けた人が導管によって消費するというふうなことを逆の面からおっしゃったという意味の供給であれば、全くそのとおりでございます。
  164. 中村重光

    ○中村(重)委員 これは何時間やっても足りません。ですから、話し合いをしなければなりませんけれども、きょうはこれで終わって、あらためてやることにいたします。結論が出ません。
  165. 島村一郎

    島村委員長 次回は、明十五日金曜日午前十時十五分理事会、午前十時三十分委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後六時二分散会