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1967-12-13 第57回国会 衆議院 商工委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十二年十二月十三日(水曜日)委員長の指名 で、次の通り小委員及び小委員長を選任した。  産金等対策小委員       天野 公義君    宇野 宗佑君       鴨田 宗一君    島村 一郎君       田中 武夫君    中村 重光君       塚本 三郎君    近江巳記夫君  産金等対策小委員長                 鴨田 宗一————————————————————— 昭和四十二年十二月十三日(水曜日)    午前十時四十八分開議  出席委員    委員長 島村 一郎君    理事 天野 公義君 理事 鴨田 宗一君    理事 河本 敏夫君 理事 田中 武夫君    理事 中村 重光君      稻村左近四郎君    岡本  茂君       神田  博君   小宮山重四郎君       齋藤 憲三君    坂本三十次君       田中 六助君    橋口  隆君       武藤 嘉文君    岡田 利春君       佐野  進君    多賀谷真稔君       千葉 佳男君    中谷 鉄也君       永井勝次郎君    古川 喜一君       塚本 三郎君    吉田 泰造君       近江巳記夫君  出席政府委員         公正取引委員会         事務局長    柿沼幸一郎君         法務省民事局長 新谷 正夫君         大蔵省関税局長 武藤謙二郎君         厚生省環境衛生         局長      松尾 正雄君         厚生省薬務局長 坂元貞一郎君         農林省農林経済         局長      大和田啓気君         通商産業政務次         官       藤井 勝志君         中小企業庁長官 乙竹 虔三君  委員外出席者         大蔵大臣官房財         務調査官    田代 一正君         厚生省環境衛生         局環境衛生課長 柳瀬 孝吉君         特許庁長官   荒玉 義人君         専  門  員 椎野 幸雄君     ————————————— 十二月十二日  京都府城陽町の山砂利採取による公害に関する  請願(岡本隆一君紹介)(第二二二号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  通商産業基本施策に関する件  経済総合計画に関する件  私的独占禁止及び公正取引に関する件      ————◇—————
  2. 島村一郎

    島村委員長 これより会議を開きます。  通商産業基本施策に関する件、経済総合計画に関する件並びに私的独占禁止及び公正取引に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、これを許します。田中武夫君。
  3. 田中武夫

    田中(武)委員 昨日に引き続いて北ベトナム万年筆輸入の問題を取り上げたいと思うのですが、その前に、武藤関税局長に一言申し上げたいと思います。  昨日の委員会出席要求は、十一日の午前中に委員部を通じてやったはずなんです。もしあらかじめ予定せられた日程があって——きのうは何か外国関係のことでということだったと思うのです。それが急に出てきたわけじゃないと思うのです。それならばなぜあらかじめ、出席できないから説明員をもって代表せしめますがよろしいかということを言わなかったか。出席要求があるにもかかわらず出られないことがわかっておりながら、そのときになって委員長から指名せられて、おりませんということでは許されないと思うのです。大体大蔵委員会であるならば出るのかもしらぬが、直接担当委員会でないと思うので当委員会軽視したのかどうか。あらかじめ——私は何も外国関係問題等があるのに無理に出てこいとは言わない、なぜそれだけの手続をとらなかったのか。当委員会軽視もはなはだしいと思います。したがいまして、関税局長の弁明を求めると同時に、委員長からしかるべく御処置を願いたいと思います。
  4. 武藤謙二郎

    武藤政府委員 ただいま田中先生からおしかりを受けた件ですが、一応事情を御説明いたしたいと思います。  実は先生承知のように、昨日渉外関係仕事があるということをおとといわかっておりまして、それでちょうど時間がかち合いますので、私どものほうは、これは連絡が粗漏で委員会のほうへはっきりと届いていなかったのかと思いますけれども、私の次長に当たります上林調査官を出すからということで、私ども連絡がそういうふうにちゃんと完全にいっておるものと了解いたしておりました。そういうことで、事前にしっかりとした手続を踏んでいなかったということ、ただいまおしかりを受けましたが、まことに申しわけございません。以後注意いたしますから、田中先生どうぞ御了承願いたいと思います。
  5. 田中武夫

    田中(武)委員 まあ関税局長はすでに連絡があった、こう理解しておったようだ、こういうことですが、当然出席要求者に対して、かくかくたる理由によってその時間には出席できません、したがって何時なら出られますがということになれば、質問の時間を変えるなり、そうしてあなたに聞くことを時間を変更してもよかった。質問に入って、委員長から氏名を呼ばれるときにあわてて説明員が、こういうわけでございますというようなことは、私は軽視だと思う。当然直接、要求者に対して、電話でもいい、こういう事情ですからということは言うべきじゃないか。したがいまして、当委員会の審議を停滞させたのはあげて責任関税局長にあります。当然きのう私の質問は終わっておる。それが関税局長がいなかったためにこうしておくれたわけです。したがって、自後の質問者に対しても多大の迷惑を与えておるわけです。委員長においてしかるべく御処置を願います。
  6. 島村一郎

    島村委員長 今後こういうことのないように私からもよく注意いたします。
  7. 武藤謙二郎

    武藤政府委員 まことに手続粗漏で申しわけございません。どうぞ今後注意いたしますから御了承願いたいと思います。
  8. 田中武夫

    田中(武)委員 それでは質問に入ります。大体大蔵省の役人は一番国会に対してなまいきな態度をとっておる。これだけはっきり言います。私もかつて大蔵委員をしておりましたが、それだけははっきりと申し上げておいて質問に入ります。  そこで関税局長は、大体きのう見えた調査官からいきさつはお聞きになったと思います。北ベトナム製ホンハという万年筆輸入について十月二日にパーカー社代理人から、関税定率法第二十一条による輸入差しとめの申し立てが出てきたわけですね。それに対してどのような処置をとり、今後どのように処置していこうと考えておりますのか、お伺いいたします。
  9. 武藤謙二郎

    武藤政府委員 昨日、私どものほうの次長に当たる上林調査官から大体お話は聞いておりますが、ただいま御質問の件でございますが、経緯を申しますとこういうことでございます。  まず、ことしの十月二日にパーカー社から、これは湯浅という代理人を通じてでございますが、北ベトナム製万年筆のクリップの矢羽根のマークがパーカー商標権侵害する、こういうことで輪人差しとめ申し立て書、こういうものが税関に出てまいりました。それで税関のほうは十月の十七日に工業所有権にかかる主務官庁である特許庁に事実認定について文書照会いたしました。これに対して十二月の十一日に特許庁から回答を差し控えるという文書の返答がございました。片や十一月の三十日に三進交易株式会社から北ベトナム製万年筆ホンハ紅河と書くのでございますが、これの輸入申告が出てまいりました。これが矢羽根のついた万年筆でございます。そこで特許庁のほうでいろいろと御苦心なさったと思いますけれども、なかなか結論が出ないで、本件については回答を差し控えるという回答をいただきましたので、今度は私どもがこれをどう扱うかということについて目下検討中でございます。それからさらに本件につきましては、今度パーカー側から民事訴訟法の規定によりまして仮処分申請が出ております。そういうことも考えまして目下慎重に検討中である、こういうのが現状でございます。
  10. 田中武夫

    田中(武)委員 荒玉長官とはきのうある程度の質疑応答をいたしましたが、あらためてお伺いします。十二月の十一日に、正式に回答しかねる、こういうことを大蔵省のほうへ、あるいは税関長だったか知りませんが回答せられたその経緯について、もう一度簡単に言っていただきたいと思います。
  11. 荒玉義人

    荒玉説明員 昨日申し上げましたように、こういった照会は今回初めてでございません。その際われわれの態度といたしましては、法律解釈上明らかに疑義のないという事項につきましてはイエス、ノーという返事を従来してまいったわけでございます。ただし本件につきましては、商標法上、非常に法律解釈上争いのある事項でございます。同時にそういったことにつきましては、特許庁内部では、いわば鑑定手続という正規な手続をいたします。同時に本件裁判所における係争中というまあ非常に具体的な問題になっておりますので、したがいまして、そういった性質のものはわれわれが回答するということはむしろ避くべきではないかという判断から、本件につきましては回答を差し控えさしたわけでございます。
  12. 田中武夫

    田中(武)委員 特許庁から、だれが見ても侵害であると認定できるものならばそのような返事があったと思うのです。お聞きのように疑義がある、そういうことで回答しかねるという回答があった。それを受けて大蔵省としては態度をきめなくちゃならないと思います。ところが民事訴訟法による仮処分が出されたので云々でありますが、私は、行政事務は、仮処分決定せられたときには別です、しかし仮処分申請せられたからという理由によって行政事務をなおざりにするといいますか、とめるということはいけないと思います。したがいまして、どうするつもりなんです。
  13. 武藤謙二郎

    武藤政府委員 仮処分申請の内容が移動禁止を含んでおるようでございますけれども、しかし田中先生おっしゃいましたように、仮処分申請が出たからしたがって行政当局として何もしないでぼんやりしておるというわけではございません。先生これは御了解願えると思いますが、非常に異例なことでございまして、疑いはあるけれども、どうもはっきりしないというような事態だと思います。そこで、これを税関としてどうするかということはなかなかむずかしい問題でございますので、目下いろいろとこういう場合にどうすべきかということを検討中だということでございます。
  14. 田中武夫

    田中(武)委員 関税定率法の二十一条によって、これこれの権利を「侵害する物品」は輸入禁止しておる。しかしその処分権は同条の二項等で税関長にゆだねられておるわけです。したがいましてその侵害が明らかであるかどうか、これがはっきりと認定せられるときは別といたしまして、疑いあるということであなたのほうで特許庁にも照会をした。これはあくまで税関長行政処分をするにあたっての参考意見を求めたものだと思うのです。ところが特許庁からも同じように疑義ありということでしょう。そうするならば、当然関税定率法第二十一条二項の権限によって税関長処分すべきである。処分というか処理すべきだ。当然そのためには大蔵省等の上司あるいは本省意見を聞くことはあろうとしても、この法律で認められておる処分権税関長にある。したがって直ちに態度決定すべきだと思うのですがどうですか。ただ仮処分申請が出ておりますので云々ということは理由にはなりません。と申しますことは、仮処分は言うまでもなく口頭弁論を用いるのが原則です。ただし、急迫を要するときは口頭弁論を用いずして決定してもいいということが民訴法六百五十七条二項にあるわけです。それを見ますと、あの条文を半面解釈すれば当然原則として口頭弁論である。口頭弁論に持ち込むならばそうたやすく結論が出ないと思います。かりに結論が出たとしても、その決定に対する異議申し立てがあった場合はなおさら続く。長く行政事務を渋滞させておくということは許されない。したがって裁判所決定が出ればその決定に従うことは法的にはやむを得ない。しかしそれ以前は、ただ申請が出たからといって——どんなことでも申請はできるのですよ。へ理屈言ったって、どんなことをしてもできるのですよ。そういうことによって輸入申告者に対して時期を失するような措置をとっていいのかどうか。したがってそれとは別個に決定をいつやるか、はっきりしてください。
  15. 武藤謙二郎

    武藤政府委員 先生お話のように、これは税関長権限でございますけれども、こういう事例につきましては、各税関がばらばらになりませんように本省がいろいろと指導しておるわけであります。そこで仮処分申請が出ているから漫然とその結果を待っているということでは私どもございません。しかし特許庁でいろいろと御検討になっても疑いはあるがはっきりしない、そういう事態でございますので、こういうケースについて私どもはどうするのがいいかということを目下いろいろと苦慮しておる、そういう状況でございます。その考慮の中に仮処分申請が出ているという事実も無視することはできないと思いますけれども仮処分申請があったから、それでその結果が出るまで何もしないでいるというわけではございません。
  16. 田中武夫

    田中(武)委員 関税定率法第二十一条一項四号は「特許権実用新案権意匠権商標権又は著作権侵害する物品——侵害する」ですよ。おそれがある物品じゃないのですよ。「侵害する物品」となっておる。したがって積極的に侵害であるということが認定せられない以上は、禁止理由にはならないと思います。いかがでしょう。
  17. 武藤謙二郎

    武藤政府委員 先生お話しのように、もしはっきりと侵害するということになりますと、税関長は「汲収して廃棄し、又は当該貨物輸入しようとする者にその積みもどしを命ずることができる。」こういうことになっております。ただ先ほど先生おっしゃっておられますように、疑いがある、疑いがあるけれどもどうもはっきりしないという状況でございますので、税関としてはまだいずれともしておらぬ、そういう状況に現在のところはあるわけです。
  18. 田中武夫

    田中(武)委員 いまも言ったように「侵害する物品」。したがって積極的にその根拠がない場合は私はまず許すべきである。それがいけなければ、それこそ法によって裁判所等で争うべき問題だ。ただ大蔵省として、一つ税関でなくてあっちこっち出てくるから、意見統一のために若干の日時を要するということは、私はそれまではいけないとは言いません。しかしいたずらに腕をこまねいて見ておる問題ではない。したがいましてこういうものは、いわゆる商売というものは時期を失しちゃならないのです。かりにそういうことによって商機を失した場合は責任はどうなるのか。したがってできるだけ早く結論を出す、結論を出すのじゃなしに輸入を許可すべきである。どうです。いつごろまでにその結論が出、その手続がとれるのか。もしそういっておるうちに裁判所のほうで仮処分決定を出してくれるならけっこうだというような態度であるならばひきょう千万、行政のサボタージュだといわなければなりません。はっきりしてください。
  19. 武藤謙二郎

    武藤政府委員 先ほど来お答えしておりますように、先生も何度も念を押しておられますけれども裁判所決定が出るまでわれわれ漫然と手をこまねいておるということではございません。これは御了承願いたいと思います。私どもなるべく早くはっきりした結論を出したい。これは両方の関係者の利害が衝突する問題でございますので、なかなかむずかしい問題でございますが、私どもこういう異例ケースについてどう処理するのがいいかということを連日検討し、またいろいろと照会などしておる、そういう段階でございます。
  20. 田中武夫

    田中(武)委員 結論はいつごろ出ますか。あるいは漫然と照会しておるのではなくて、いつごろまでにめどをつけるということの前提に立って作業をしておると思うのです。そのめどはいつですか。
  21. 武藤謙二郎

    武藤政府委員 これは外国電報を打ったりなどして、もうすでに調べておりますので、われわれとしては最大限のスピードでやりたいと思っておりますので、誠意のあるところをくんでいただきたいと思います。
  22. 田中武夫

    田中(武)委員 外国電報を打ったというのは、どこへどういう意味のことを照会したのですか。
  23. 武藤謙二郎

    武藤政府委員 御承知のように、パーカー万年筆というのは世界じゅうで売られておりますので、同じような例が外国でも起こっておるかもしれない。起こっているという話も聞いておるわけでございます。そこでそういうこともやはりこういう異例ケースについて判断をくだすのに参考になるだろうということで、そういう事例があれば、それはどういうふうになっておるのか調査してほしいという電報を打っております。
  24. 田中武夫

    田中(武)委員 だから、それはその国の商標法というか、意匠法というのか、どういうのかわかりませんが、その商標法というのが日本と同じであるのかどうか。法律が違うならば、私は単なる参考にすぎぬと思う。どこどこへ電報照会しておるのか、そこの国の商標法日本の国の商標法と同じなのか違うのか、その点を伺いたいと思います。
  25. 武藤謙二郎

    武藤政府委員 私ども、まず調査しておりますのは、そうこれに該当せる国はないのじゃないか、そういう事例が起こっている国はそこで——どこでどういうことが起こっておるのか概略わかりましたら、先生のおっしゃいましたように、そこの国の法律がどうなっているかということを調べませんと、参考としては弱いものですから、一応とにかくどこで似たようなケースが起こっているか調べてくれというのを、これは相当広く電報を打っております。
  26. 田中武夫

    田中(武)委員 それは在外公館を通じてですか。
  27. 武藤謙二郎

    武藤政府委員 そのとおりでございます。
  28. 田中武夫

    田中(武)委員 それはいつ幾ら打って、そのうち幾通くらいの回答が来ているのか、来ていないのか。
  29. 武藤謙二郎

    武藤政府委員 電報はこの委員会の始まる前ではございますけれども打ってありまして、まだ回答には接しておりません。これは実情を申しますと、電報が届きますと、おそらくそれから在外公館担当官が、相手にこういう問題だといってアレンジをして、それで会ってすぐ即答できるところもあるであろうし、即答できないところもありましょうから、したがいまして、電報を打って公館だけですぐわかるというわけにはこれはいかぬだろうと思います。したがいまして、相手政府に接触をしていろいろ聞くということですので、オウム返し返事が来るということを期待するのは、ちょっと無理かと思います。
  30. 田中武夫

    田中(武)委員 電報を打ったのはこの委員会の始まる前なのですか。——だからいつ打ったのかということですね。もしそういうことならば、一体それまで何をしておったのか。それから諸外国に打ったと言ったが、先ほどはいろいろケースがあるだろうと思いますと言って、二回目はそう多くはないと思う。こうあなたは言ったわけだ。だからそういうことが問題になっているであろうということが、あらかじめどこどこということを握っておったのか、握らずに全世界に対して電報を打ったのですか。
  31. 武藤謙二郎

    武藤政府委員 特許庁から返事のありました日に、ヨーロッパのおもだった国に電報を打ちました。
  32. 田中武夫

    田中(武)委員 特許庁照会をして、特許庁から積極的な意見が出ることを期待しておった。それならば、その積極的な意見の上に立って考える。こういうことだったところが、特許庁から回答しかねるという回答があったので、そこで外国へ対して照会した、こういうことですか。それと私は、関税定率法に基づいて、あるいは日本商標法に基づいてきめるのに外国のことを参考にすることはいい。いいけれども、いまそのために事務を停滞さす。いたずらに、いつ来るかわからないのだから、何回打ったのかわからないのだから、それが一々全部返事がくるまで待っていたらたいへんじゃありませんか。それまでにできるならば裁判所処分決定をしてくれる、そうすれば肩が軽くていい、そういうのは私は安易な考え方だと思うのです。逃げ口上だと思うのです。そういうことでなくて、法に定められた権限というか、職責によって直ちに決定いたしなさい。その決定はあくまで行政処分の形式をとってください。行政指導というような名のもとに、往々にしていままでずるずるものを長引かして、結局は申請者等被害を与えても救済の道はなかったのです。したがって、明確なる文書による行政処分上して出してください。そうすることによって被害をこうむった申告者は、法の定めるところによって国家賠償を請求することができますから、はっきりしてください。いつやります。
  33. 武藤謙二郎

    武藤政府委員 先ほどから重ねて申し上げておりますように、私ども漫然と決断を延ばすということは、先生先ほどから御指摘のように非常に関係者に迷惑なことで、損害を及ぼしますから、そういうことは考えておりません。しかし、行政実情について申しますと、いろいろなことが起こったというときには、何か起こったからといって、直ちにどうするということをきめかねる、こういうことは間々あることでございます。私どもなるべく早く態度をきめたいと思っておりますけれども、しかし、そういういろいろのケースにつきましては、いろいろなことを考えまして、したがって外国に対する照会も、先ほど先生がおっしゃられましたように、これは多数の国で起こってはいないとは思うのですけれども、しかし、もしどこかの国で同じようなケースがあったということにつきましても、それがどういうふうにしてどういう法制のもとでそうなったかということも考慮しなければいけませんが、そういうことも参考にしてきめたい。いろいろのケースがございますので、普通こういうときにはそういう調査を一々するわけではございませんけれども、この際はやむを得ずいろいろと手を尽くしている、そういう実情でございまして、再々御指摘がございましたが、私どもこれで引き延ばしておくというつもりは毛頭ございません。
  34. 田中武夫

    田中(武)委員 これはパーカー代理者からそういうような申し立てがなかったからスムーズにいったのかどうか知らないが、すでにホンハ万年筆は二千百ダース入っているのですね。それはそのまま入ったわけです。その意味においては輸入の実績があるわけですよ。そこへたまたまパーカー社代理人からそのような申し立てがあった。——それは行政内部において、そういうことを参考として、外国事例なんかを勉強してきめるということは、私はいけないとは言いません。しかし、事は申告が出て、物がすでに入って、そうして保税地域に置いてあるのでしょう。いままでもそういうふうにして入ってきておるわけだ。しかも、法解釈にあたって外国事例を参照せよとは一つも書いてないのです。私の言うのは、関税定率法二十一条は、権利侵害する物件なんですよ。したがって権利侵害するところの積極的な要件がなければ当然許可すべきです。そしてそれによって被害をこうむったところが今度は法による保護を求めることは別問題です。行政として積極的な理由がないのにそういうことで渋るということは、普通の関税事務のほかに何らか政治的な意図があると考えざるを得ないのです。そういう政治的な意図行政官は持つべきでない。あくまでも行政官は法の命ずるままに仕事をすればいいのですよ。その法律のどこからそんなに長く引っぱることを許されるという解釈が出ますか。侵害する物件ということは——権利侵害する物件ということは、積極的な侵害ということの解釈がない以上、私は許せないと思うのです。  そこで、それならあなたに伺います。この事案につきまして、商標権のどの点が違反になっておりますか、お伺いいたします。
  35. 武藤謙二郎

    武藤政府委員 この法律ははっきりと侵害をするという場合には積み戻しを命じ、侵害しないとはっきりすれば輸入を許可する、こういうことになっております。ところが現状は、先ほど先生も言っておられますように、疑いがあるものですから、私どもがいろいろと調べている。したがって、私どもははっきりと侵害しない、したがって輸入許可をするということもいまはきめかねる、しかし、侵害するとして積み戻し等の命令を出すということもまだ差し控えている、目下そういう中間の段階にある、そういうことでございます。
  36. 田中武夫

    田中(武)委員 あなたは関税定率法二十一条の解釈を一項と二項を逆に読んでいる。一項はまず輸入禁止品として、その四号に積極的なる権利侵害をするところの物品となっておるのです。そして二項はそれを受けて、そのような物については税関長はこれこれの処分をするとなっております。あなたの説明は、二十一条はまず二項があって、そのほうをあなたは先に説明しておる。それは違うでしょう。原則輸入禁制品なんです。そして二項はそれの処分権限をきめてある規定なんです。したがって、輸入禁止するには積極的なる権利侵害ということがはっきりしていなければ、私は積極的な理由はないと思う。あなたは二項をもって答えていますが、そういうものは、こういう処分税関長ができるということを認めている規定なんです。条文を、一項、二項ひっくり返して読んでは困る。あなたはそういう読み方を教わったかもしらぬけれども、それでは許されません。どこで法律を覚えたのですか。
  37. 武藤謙二郎

    武藤政府委員 先ほどの御説明のしかたが悪かったかもしれませんけれども先生のおっしゃるように、別に私二項と一項をさかさにして読んでおるとは思いませんけれども、その問題よりも、私が申し上げたかったことは、輸入を許可するというのと、積み戻し命令等の処分をする、二つありますけれども、現在のところ、私どもはいずれともきめかねている。したがいまして、私どもはまだ輸入を押え、積み戻しを命ずるというところまで踏み切っているわけではございません。まだいずれともきめかねている。それが現状でございます。
  38. 田中武夫

    田中(武)委員 だから、輸入をさしたらいけないというのは積極的にこれこれこれこれの権利侵害した物品なんです。そうでなかったら輸入をさすべきなんです。この法律のたてまえは、輸入はまず自由に入れさすのだということを原則としておるのでしょう。そして、このような場合には押えるのだということですよ。したがって、こういう例外規定に対しては拡張解釈は許されないのですよ。だから、積極的に権利侵害の根拠がなければ、まず入れることを許すべきだ、私はそう解釈します、違いますか。これは例外規定なんだ、違いますか。原則ですか、この二十一条は例外規定なんです。例外規定はあくまでも縮小解釈するのが法のたてまえなんです、違いますか。あなたの言っていることは、それは本来転倒していますよ。だから、権利侵害であるという積極的な理由をここであげてください。でなければ、許可をしなさい。
  39. 武藤謙二郎

    武藤政府委員 通常の場合ですと、先生おっしゃいますように、はっきりと権利侵害するか、侵害しないか、右か左か非常にはっきりしてしまいます。そうしますと、すぐに輸入を許可するか積み戻しを命令するというようなことが簡単にとれるわけでございます。先ほど来出ておりますように、これは疑いがある。そういうところで、どうも全然問題がないというわけでもないし、はっきりと侵害しているというのでもないというのが現状でございますので、そこでどうするか。いつまでもこのままにほうっておける問題ではございません。そこでなるべく早く私どもとしてどう踏み切るかということの結論を出さなければならないのは、先生から先ほど来重々御指摘のとおりでございますが、そこでどうするかということを、目下検討中でございます。非常におそいじゃないかというお話でございますけれども、普通こういうことはあまりありませんので、したがいまして、われわれとしても苦慮している。そこのところを、先生おくみ願いたいと思います。重ねて申しますが、私どもなるべく早く、われわれとして非常にむずかしいところではございますけれども、きめたい、そういう気持ちで考えております。ただ、こういうデリケートな問題でございますから、やはりわれわれとしては、ある程度こうしようというのに対していま以上の自信を持ちたいということで、いろいろ調査している、そういうことでございますので、私ども決してサボっている、あるいはずるずる引っぱるという気持ちは毛頭ございませんので、その点御了承願いたいと思います。
  40. 田中武夫

    田中(武)委員 疑いがあるのなら、商標法の何条のどの点に対して疑いがあるか。一ぺんはっきりしてください。
  41. 武藤謙二郎

    武藤政府委員 これは私どもより特許庁のほうが詳しいと思いますけれども特許庁でもいろいろと検討された結果、回答いたしかねる、そういうことでございますので、なかなかこの点はむずかしい問題であると思います。まだ検討中でございますので、あまり検討の途中でもっていろいろと申し上げないほうがいいのじゃないかと思うので、その点この程度で御了承願います。
  42. 田中武夫

    田中(武)委員 それはおかしいですよ。検討中であるからと、まるで警察の、あるいは検察官の捜査中の事件か、裁判係属中の事件のようなことを言いなさんな。事は行政ですよ。いいですか、あまり言わないほうがいいと思うなんて、何という言い方ですか。そのこと自体が国政審議に対する君の考え方の一端をあらわしておると思うのだ。積極的に違反の事実をあげてください。
  43. 武藤謙二郎

    武藤政府委員 これは私どもいろいろな点を総合的に考えて結論を出したい。まだしかし総合的に決断をするのに材料が不足の状況でございますので、その点はしばらく待っていただきたいと思います。
  44. 田中武夫

    田中(武)委員 あなたは疑いがあると言っておるのでしょう。疑いの事実を、商標法に基づいてはっきりとこういう点に疑いがあると、一ぺん言うてください。
  45. 武藤謙二郎

    武藤政府委員 これは私ども専門ではございませんので、むしろどういう点で回答ができないかということを特許庁からお話しになったほうがいいと思いますけれども、非常に簡単に申しますと、クリップ自身は非常に似ている。しかし、それが法律上どうかというところが非常にむずかしい、そういうことだと思います。
  46. 田中武夫

    田中(武)委員 この法律による処分権税関長にあるのですよ。私は特許庁意見は聞きました。あなたの、大蔵省の見解を聞いておるのですよ。クリップが似ておるからというだけなんですか。それは法律のどこに照らして侵害になるのか。そうでなかったら、あなた、理由になりませんよ。積極的な理由法律的に説明してください。
  47. 武藤謙二郎

    武藤政府委員 これは商標権の問題でございます。そこで商標権につきまして、これが該当するかどうか、そこのところがなかなかはっきりと決断ができない、そういう状況でございます。
  48. 田中武夫

    田中(武)委員 商標権の問題であることはわかっているのだ。商標権の何条によって疑いがあるのか。一体大蔵省商標権とはどういうように解決しておるのか。
  49. 武藤謙二郎

    武藤政府委員 商標法の第三十七条、この関係でございまして、それについて私ども別に特別に大蔵省独特の解釈を持っているわけではございません。
  50. 田中武夫

    田中(武)委員 三十七条、ちょっと読んでください。
  51. 武藤謙二郎

    武藤政府委員 それでは朗読いたします。  「第三十七条次に掲げる行為は、当該商標権又は専用使用権を侵害するものとみなす。一 指定商品についての登録商標に顔似する商標の使用又は指定商品に類似する商品についての登録商標若しくはこれに類似する商標の使用  二 指定商品又はこれに類似する商品であって、」 〇田中(武)委員 わかった。万年筆のクリップは商標ですか。
  52. 武藤謙二郎

    武藤政府委員 そこのところがいろいろと議論が分かれるところだと思います。
  53. 田中武夫

    田中(武)委員 商品じゃありませんよ。商標とは物品に付するものなんですよ。三十七条を読む前になぜ二条を読まない。三十七条によって侵害することが云々というなら、それじゃ商標というものは一体どんなものだということを頭に置かなくちゃいけないわけです。商標とはどんなものだ。クリップは商標なのかどうなのか。
  54. 武藤謙二郎

    武藤政府委員 その点につきまして、いろいろとむずかしいところがあり、したがいまして、先ほど先生おっしゃっておられますけれども本件につきまして右か左かはっきりとしないというのは、その関係が主たる問題だろうと思います。
  55. 田中武夫

    田中(武)委員 それじゃ商標の定義を下してください。
  56. 武藤謙二郎

    武藤政府委員 私ども商標について専門ではありませんので、先ほど来申し上げておりますように、特許庁検討されても、これについてははっきりと右か左かというふうに結論が出てこない、そういう事実を踏まえて、それでそのほかの材料、その点につきまして私ども特許庁以上に権威のある判断ができると思いませんけれども、その他の点もいろいろ考えまして、何とかなるべく早く決断をせなければいかぬ、そう考えているのが現状であります。
  57. 田中武夫

    田中(武)委員 特許庁回答しかねると言ったというけれども、単なる照会だからです。特許庁結論を出さなければならないような、たとえば無効の審判とか、そういう手続をとれば結論を出しますよ。少なくとも、法によって処分権が与えられているのは税関長ですよ。したがって、その解釈税関長がするでしょう。特許は詳しくありません、で事は済みません。商標の定義、クリップは商標なりや、回答を出してください。
  58. 武藤謙二郎

    武藤政府委員 クリップが商標なのかどうかというところ、これはいろいろとこまかく言いますとむずかしいことがあると思います。そういうことも含めて、私ども、非常にむずかしいことでございますけれども特許庁でも慎重に検討された結果結論が出なかった、そういう事実も受けて、それでこれをどうするかということをきめなければならない。したがいまして、非常にむずかしい事態でございますので、いま現在のところ、まだ判断を下すことができない状況にある、こういうことでございます。
  59. 田中武夫

    田中(武)委員 同じ答弁を繰り返すんじゃない。あなたは疑いがあると言うのだから、その疑いの事実を明確にしろと言っている。その前提は商標とは何かということです。そしてクリップは商標なりやということに対して疑いがあるという積極的根拠がなければ、あなたのいまの答弁は通りません。私が言っておるのは、商標とは物品に付するものなんです。いいですか。そんなことぐらいは商標法第二条を読んだらわかるんだ。だから、積極的な、侵害の事実に対して疑いがある、こういう根拠をあげてください。いろいろ検討しておるではいかぬ。ちゃんと法律の条文を示して、これに疑いがあるということを法律の文句から言ってください。
  60. 武藤謙二郎

    武藤政府委員 商標法の第二条の第一項に「「商標」とは、」云々という規定がございます。それで、これについてまず問題のものは、平面的なものだけに限るかどうか、そこのところがクリップについては一つの問題だ、もう一つは、付するというのはどの範囲か、そこが問題だと思います。
  61. 田中武夫

    田中(武)委員 商標法の二条一項ですね、これが明示しているものは平面的なものだ——私は平面、立体を論議しているのじゃない、付するというものです。だからしたがって、あなたの言っているクリップがパーカーと酷似しておる——カンニングするな。これから何か、税関は、大蔵省は一々特許庁の指示を受けて輸入事務を運ぶのかね。そうでなかったら、カンニングをやめなさい。——その解釈は、物品の一部なのがどうかです。あなたは、一部でない、商品に付するものだと言うのですね。その点だけはっきりしておきましょう。疑いがある、事実としてはそれでしょう。商標法の二条からは、これは文字とか図形とか云々といっておるでしょう。疑いはありませんよ。意匠法との違いはどこにあるのです。意匠は物品の形状、すなわち物品の一部です。そこが違うと思うのですよ。積極的な根拠もないのにいままで渋っておったことは、行政のほかに何らかの意図があった、そう判断せざるを得ません。したがいまして、外国事例等を照会しておることも、それは内輪としてはいいと思います。しかし、いつまでのめどをつけてこれを解決するか、はっきりとここに明言してください。そうでなかったら、積極的に違反しておるという立証をしてください。
  62. 武藤謙二郎

    武藤政府委員 先ほど来、いつまでに結論を出すのだということを繰り返しお求めのようでございますけれども、日にちについていつまでということは申し上げかねます。私どもとして先ほどから申し上げております、また、これは先生も御了承願えると思うのですが、非常にむずかしい事例であると思いますけれども、われわれとして、むずかしいという前提で、なおかつある段階においては、これまでの調査でもってどちらかに踏み切るということをきめざるを得ないと思っております。なるべく早くそういう決断をするように検討も進め、材料も集めたいと思っております。
  63. 田中武夫

    田中(武)委員 関税定率法の二十一条一項によって積極的に権利侵害したるものであるということがなくして、ずるずるに事態を引っぱって、そしてそのために与える損害等については全部責任を持つ、それを確認してください。それと同時に、最終的の結論行政指導とかなんとかいうあいまいなことでなくて、文書による行政処分として出していただく、これだけ確認できますね。
  64. 武藤謙二郎

    武藤政府委員 最終的には輸入を許可する、あるいはもう一つの、極端ですと、多分積み戻しを命令する、どちらかの措置になると思います。
  65. 田中武夫

    田中(武)委員 それは行政処分として行ないますね。
  66. 武藤謙二郎

    武藤政府委員 さようでございます。
  67. 田中武夫

    田中(武)委員 それでは、それに対する一切の損害には応じるということになりますね。それはもちろん法律にあるのですからね。行政処分でやる、それだけ確認しましょう。
  68. 武藤謙二郎

    武藤政府委員 行政処分でございますから、法に従ってとるべき責任は私ども国として果たすべきだと思っております。
  69. 田中武夫

    田中(武)委員 それ以上からをかぶっては前進しないと思いますから、次に法務省の民事局長さんに、もう大体本論の質問は終わったのだけれども、若干お伺いしたいのですが、実はこの問題については仮処分が出ておるということで、その写しをもらいたい、こう言ったところが、これはお読みになったと思うのですが、裁判所からきわめてかみしもを着た文書をもらったのです。御存じでしょうか、この文書……。
  70. 新谷正夫

    ○新谷政府委員 そのような経過を裁判所のほうから聞きましたし、また法務省の政府委員室のほうからも事情は若干聞いております。
  71. 田中武夫

    田中(武)委員 私は申請書の謄本を要求したのではないのです。いつ、だれに対して、どのような内容のがきたのか知りたい、こういうこと、これは国政審査の上に必要として要求した。ところが謄本なら利害関係者云々、閲覧なら民事訴訟法の百五十一条一項ですか、何人も閲覧できる。しかしそれを受けて、「口頭弁論を開くことを要しない保全訴訟手続については、そのまま適用されるものではない。」云々なんですね。先ほど来私が指摘しておるように、この仮処分というのも原則として口頭弁論を経ることが原則なんです。そうでしょう。急迫を要するときに限ってということなんです。開かずして断行というのですか、あれをやれるということなんです。したがって、私はいまさらこの回答についてけちをつけませんが、一体どのような仮処分申請が、このホンハ万年筆に対していつ、だれを相手に、おそらく税関長相手だと思うのですが、仮処分の命令が出ておるのか。その内容はおそらくいま問題になっておる三進交易の申請しておる三百ダースが対象になっておるのだと思うのですが、その内容がどういうものなのか。仮処分というものは個々に対して行なわれるので、近くかりに神戸大阪に入ってくると、そのつどそのつど仮処分しなければならぬ、そういうことになるのか、どうですか。この問題についての仮処分の、いま言ったような要点だけについては、訴訟に対してあまり深入りはしませんが、少なくとも相手方は税関長だと思うが、対象は何か、そのくらいのことは知りたいのです。それと同時に、おそらく税関長に対していま三進交易から出しておる三百ダースに対してだと思うのですが、そうすると、他に大阪なり神戸に入ると、そのつどそのつど仮処分する必要があると思うのですが、そうですね。
  72. 新谷正夫

    ○新谷政府委員 この仮処分の内容につきましては、実は私承知いたしておりません。おりませんが、おそらくこれは当事者間の紛争に発展する問題であろうと思いますので、税関相手にするものでなくて、パーカーの会社と輸入業者との争いではあるまいかと思います。また同時に、先ほどおっしゃいましたように、こういう問題が起きましたら、そのつど個別的にそういう仮処分が行なわれるということは仰せのとおりでございます。
  73. 田中武夫

    田中(武)委員 もちろん紛争になれば、私は当事者で争われると思うのです。そこが知りたかったのですよ。これはおそらくこれこれのものを輸入を許可してはならないという仮処分を求めるというのではないかと思うのですよ。それなら税関長にやるべきです。そういうようなことを知りたいから資料として要求したのだが、はねつけられたのですよ。その程度くらいは調べてもらえるでしょう。結局は当事者同士本訴で争うということになると思うが、仮処分はおそらく税関長に対して、これこれのものを関税定率法二十一条一項四号ですかに基づいて許可してはならないという仮処分、そんなものじゃないかと思うのですが、その内容はわかりますか。
  74. 新谷正夫

    ○新谷政府委員 はっきりしたことは申し上げられませんが、法務省のほうの問題でございませんので、これは最高裁判所事務総局のほうからお答えすべき筋だと思います。しかし、これはもう私どもの想像をまじえてお答えいたしますと、たいへん恐縮でございますけれども税関相手にしたものでないということだけはおそらく間違いないと思います。おそらくパーカーの会社と輸入業者との個人的な紛争の問題であろう、こういうふうに想像されるのでございますが、それ以上のことはちょっと私のほうもはっきりしたものはわかりません。ことに国が当事者になっておるものでございますれば、訟務局という組織がございまして、そこでこの事件を担当することになりますけれども、そういうこともないようでございます。そういたしますと、おそらくこれは国あるいは税関が当事者になっておる事件ではないというふうに考えられます。
  75. 田中武夫

    田中(武)委員 その点がちょっとわからぬので実はお聞きしたのですが、本訴で権利侵害であるかどうかを争うのはもちろん当事者だ。だから、三進交易ですか、輸入申請しておる、それを差しとめということでなくて、関税定率法二十一条の一項四号で、こういうものは輸入してはいかぬということになっておるので、税関長に対してこれこれの行為を請求する仮処分じゃないか、私はそう思ったので言っておるのですが、それじゃ委員長、最高裁に対して係争中の事件に対しての資料要求はどうなりますかね——いままでその前例はないですね。そういう三権分立は認めたいのですが、法務省は何とかそのくらいのことは調べてこいよ。——それではその点が明らかになったときにもう一度あらためて質問を継続することにいたしまして、きょうはあとの方もつかえておりますので、残余の質問を保留して、これで中止をします。
  76. 島村一郎

    島村委員長 佐野進君。
  77. 佐野進

    ○佐野(進)委員 私は、中小企業の当面する諸問題の中で、金融対策を中心にして若干の質問をしてみたいと思います。質問の内容は大体六つばかりに分けてありますが、重複するところもありますので、答弁はそれぞれ質問の意の満たないところも補って答弁していただきたいと思います。  まず第一に、中小企業金融が今日非常にむずかしい状況にきておる。中小企業そのものがむずかしい段階にあるだけに特にその点が痛感されるわけです。そこで私は、第一番目に、中小企業が去年もう史上最大の倒産だった、これは何とかしなければいかぬ、こういうことでことしの国会の中でもたいへん論議がされて、また昨年度から本年度にかけて中小企業庁が真剣にこの倒産をなくするために努力を続けてきたということになっておるのですが、われわれの聞く新聞紙上その他の情報によれば、倒産は昨年度を上回る趨勢にある、しかもその趨勢は大中の企業よりも中の下あるいは小規模企業がその該当になっておる、こういうようなことをいわれておるのですが、この状況について、これは要点だけでけっこうですから、まず最初に説明してもらいたいと思います。
  78. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 御説明申し上げます。昭和四十二年に入りましてからの企業倒産は、一月−十一月合計で七千五百三十三件でございます。特に十一月は九百五十四件で、前年同月比五一・四%増と、遺憾ながら戦後最高の数字を示しております。業種別に見ますると、いずれの業種も前年の水準を大きく上回っておりまするが、建設業が前年より四八%増と非常に大きいのでありまするけれども、製造業の中におきましては、繊維、食料品、機械、金属、この辺の業種が大きな数字を示しております。それから、いま先生指摘の資本金別の規模でございまするが、中小企業の倒産件数は全体の九九・七%でございます。四十一年度に比べまして資本金五百万円未満の小規模層の割合が増加をいたしております。  以上、かいつまんだ数字を御報告いたしました。
  79. 佐野進

    ○佐野(進)委員 聞きしにまさる状況だと、こういうことになるわけですが、ことしの三月のこの委員会で、中村委員が当時の影山中小企業庁長官に対して倒産の状況について質問をしておるわけです。これについて影山長官は、十分ひとつ努力をしてそういうような中小企業の倒産、特に小規模企業の倒産をなくするようにしたい、そのための施策をことしはいろいろ考えておるのだ、特に信用補完の問題について、あるいは金融その他の措置について十分なる配慮をすると、こう言っておるのですが、三月からもう八カ月以上経過した今日、さらに五割以上も昨年同期に比べて倒産数が増加しておるということは、中小企業庁当局としてはどういう説明をしてこのことしの三月の委員会における当時の長官の言明を裏づけようとするのか。どのような努力がなされておるか、具体的な例を一、二示してもらいたい。
  80. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 前長官が答弁いたしましたとおり、中小企業庁といたしましては、無担保無保証制度の活用等々の信用保証制度の活用、ないしは政府金融機関を通じます指導等を活用して対処してきておるのでありまするが、遺憾ながらいま申し上げたような数字になっております。調査いたしましたところによりますると、その倒産の原因でございまするが、これは販売不振が首位を占めております。続いて放漫経営、それから売り掛け金回収難、あるいは最近連鎖倒産というふうな例も出てきておりまするが、連鎖倒産を除きます他の諸原因につきましては、いずれも経営が十分でなかった、で、体質が次第に弱化してきたということが原因であろうと思います。したがいまして、ただいまの中小企業庁といたしましては、金融面におきます対策、特に年末を控えておりまするので、さしあたりの金融面におきます対策を金融当局とともに協力して強化いたしますとともに、根本的には企業の体質強化が必要であると考えまするので、おのおの企業を所管いたします各省と協力をいたしまして、企業の体質改善に努力をしてまいっておる次第でございます。
  81. 佐野進

    ○佐野(進)委員 具体的に聞きますけれども、倒産の原因は、いま言われたように販売不振、あるいは放漫経営、その他いろいろあろうと思うのですけれども、それは何もいまの時点の中で始まったのでなくして、過去何年かの間における倒産の実例が、三年、四年前の中堅企業から小規模に移る経過の中でもうはっきり明らかになっておるわけですね。したがって、それに対する取り組みとして本年度の施策が講ぜられておると思うのです。ところが本年度の施策は講じたにもかかわらず、相変わらず倒産は同じような状況で推移しておる。そこに前年度のいまごろと比較して質的な変化があるといわれるような面が遺憾ながら私の調査では具体的に出ていないのです。そこでことしはそういうことのないようにということで、法律の改正なり新しい法律の成立なりをさせて対策を立ててきておると思うのですが、具体的に言うならば、たとえば不渡りによる連鎖反応によって倒産をするということになるわけですから、これは金融上の措置として、手形の支払い期間が非常に長くなっておる、あるいは不渡りになったその不渡りをつかまされたことによって倒産をする、あるいはまた不渡りを発行せざるを得ないという形の中で倒産をする、こういうような具体的な事例がその中で出ておるわけです。さらに放漫経営という形の中においては、設備のいわゆる過剰拡大といいますか、そういうようなことが前から出ておる。何も変わってないのです。変わってない状況の中でその取り組みをしてきて、なお変化がないということでは、正直に言ってこれは困る。単なる議会における答弁にすぎない。中小企業対策で中小企業庁としては金融面においては何も努力をしなかったといわれても一言も言いようがないと思う。そこで、たとえば手形が不渡りになるという状況の中で倒産しそうになったとき、一体どうしてこれを救済しようとする方法があるのか。あるいはその連鎖反応を起こすという状況になったとき、どうやったならばその連鎖反応を押える方法があり、具体的にどうしたらいいかというようなことは当然考えられていなければならぬ。その考えられる措置が具体的に進行していくなら、本年度の倒産はこんなに多くならないで済んだのではないか。特に建設業の関係においてことしは多いということは、ことしの九月の金融引き締めの影響が当然建設業の方面に波及していくだろうということは、あの当時だれしもが予見しておった。その予見が現実に具体化されておるのが現在の状況なんです。それに対して何をやったかということになるわけです。だから、何をやったかということも含めてこういう点についての対策をひとつ聞かしてもらいたい。
  82. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 御指摘のように、どうもはかばかしく成果があがっておらぬわけでございますが、連鎖倒産防止につきましては、先生承知のように法律がございまして、大口倒産企業が出ました場合には、通産大臣が指定いたしますことにより、信用の補完措置を直ちに講じまして、中小企業に波及することを防止いたしておるわけであります。したがいまして、今後大口の連鎖倒産が出るというふうな危険性がある場合には、直ちにこの法律を発動し、制度を運用しておるということで常に警戒をしていく必要があると思うわけでありますが、いままでのところ、手形サイトにつきましては、通産大臣から通達を出しまして、機械、非鉄、鉄鋼、繊維等、各業種別に手形の標準サイトを守るような通達を出しておるというふうな措置をしておりますが、一般的には先ほど申し上げましたように個々の業種の体質改善が非常に大事であるということであると思ます。通産省の各所管原局におきましては、繊維をはじめその構造改善対策に乗り出しておりますし、またおのおの業種を所管する各省におきまして体質改善に乗り出しておる、こういう状況でございます。ただ現在のところ、遺憾ながらあまりその効が出ませず、破産の数字が依然として高水準であるということでございます。
  83. 佐野進

    ○佐野(進)委員 それからもう一つ、破産、倒産に至る経過の中で、あなたのほうで出しておる「中小企業」、これらをはじめいろいろ対策として読ましていただいておるのですが、その中で一番多く、一番最初にあげておる問題が、その背景には労働力不足の問題があるが、これは軽視することができない、そういうことをあげておるわけです。したがって、金融の面と労働力の確保の面、それは労働力の確保の面は直接的ではないが、小規模企業の倒産の非常に大きな原因だ、こういうことがどこの文章を読んでも——あなたのところだけじゃないです、どこの文章を読んでもそうなっているのですね。近年、中小企業の倒産ないし破産の原因はそこにあるんだ、こういわれておるのですが、金融面については直接あなた方の責任だ、しかし、労働力の確保の問題は責任でないということになろうかと思うのですが、労働力の確保が金融と並んで重要な中小企業対策の一環だ、こうせざるを得ないとするなら、それらについてはどのような対策が立てられるか、あなたのほうでは立てているのか、あるいは、これは労働省に全部まかしておるのか、その点もひとつ聞かしてもらいたい。
  84. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 労働力の確保につきましても、これは私たちの責任であると思います。中小企業庁は中小企業の根本策につきましての責任を一体的に負っておりまする官庁でございまするので、労働力の確保につきましても私の責任は免れないと思うわけでございまするが、しかし、労働力の確保対策は、具体的に労働省の現場にお願いをする面と、それから労働力確保対策を支援する面と両面あると思うわけでございます。  労働省の現場にお願いする面につきましては、職業紹介制度を大いに活用していただくというふうなことでございますとか、それから職業転換と申しますか、技能訓練と申しますか、これを十分強化いたしまして、流動性を増すという制度でございまするとか、さらに労働、通産協力いたしまして福祉施設等の労働環境を改善いたすという政策でございまするとか、この辺は一応労働省が表に出ましたり中小企業庁が表に出ましたり、お互いに協力しながらやっているところでございまするが、それよりも特に重大なのは、労働力確保の裏をなしまする、むしろ労働力はもう減っていくことはやむを得ないというふうに考えまして、いわゆる省力化対策と申しますか、設備によります労働力の代替と申しますか、構造改善対策が非常に大事であるということで、特に強力にその面の対策を講じておる次第でございます。
  85. 佐野進

    ○佐野(進)委員 それでは、倒産の状況についてはいまお話しになったように、十一月段階まで非常にふえておる、特に十月はふえておる、こういうことでございますから、そうすると、この十二月あるいは一月、二月、三月、年末あるいは年度末に対する中小企業の金融が非常に逼迫する、こういうことはもう例年の例です。したがって、この事態に対して、十一月の時点の中でこの年末ないし年度末に対する対策はどのように講じておるか、ひとつ聞かしてください。
  86. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 さしあたり年末及び年を越しましたあとの数カ月は相当警戒をして諸対策を講ずる必要があるということで、金融、財政当局と協力するとともに、まず政府関係中小金融三機関に対しまして財政資金を大幅に投入いたしました。貸し出し規模におきまして千六十億円、これは昨年度も年越し対策でやったのでありますけれども、本年は昨年度の二四%増しということでまず第一に着手をいたしております。しかし、政府金融機関から供給される資金はもちろん一割にも足らない額でございまして、主力は民間金融機関でございまするので、民間金融機関で中小企業向けの資金が必要なものは供給してもらえるようにということで、特に金融当局も配慮をしまして、中小企業向けの民間金融機関の貸し出し目標額は一兆九百億円ということで決定をされました。これは昨年の一五%増しでございます。もっともこれは目標額でございまするので、これが現実にどう達成されまするか、この辺は十分に注視をする必要があるというふうに考えるわけでございます。したがいまして、この辺のところは日銀ないし大蔵当局、特に大蔵当局から金融機関の指導を十分強化してもらうということで、その措置も実は手を打っておる次第でございます。ただ心配しておりまするのは、ポンド問題の余波等を受けまして、さらに引き締めが強化されるのではなかろうか、このしわが年越し後にも特にあらわれるのではないかという点を心配しておるわけでございますが、さしあたり現在までは、いまのような手を打ちまして、事態の推移を見守っている次第でございます。
  87. 佐野進

    ○佐野(進)委員 そうすると、たとえば、いま金融対策としてそれぞれの手を打っておるけれども、この前、いつでしたか、あなたのほうで下請代金の支払いを促進するとか、そういう具体的な対策をやりましたね。そういうような具体的な対策をやらなければ、ただ金を貸しますよということだけではなかなか成果はあがらない。これは過去の例で明らかになっておるわけですが、そういうような面について特に——これからあとで触れますけれども、ポンドショック以前の状態と以後の状態ではだいぶ違ってくるので、それらについて、年末ないし年度末に向けてどういうような手を講じようとしておるか。直接的な対策があるならひとつ示してもらいたいと思います。
  88. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 まず、下請代金の支払い遅延を防止することは一番大事だと思うわけであります。したがいまして、十二月の八日付をもちまして公取委員長と通産大臣の連名をもちまして、業界、各産業団体及び関係方面に対しまして通達を出しまして、親企業者が下請代金の支払いについて十分配慮をするよう——詳細の中身は省略いたしますけれども、日数も入れまして、標準の支払い代金のサイト内で手形は済ますように、それから現金の支払い期日につきましても悪化させないように、こういう意味の通達をまず出しております。  それからさらに、先ほど触れましたが、財政金融当局、日銀を含めまして、この当局から全国の金融機関に対しまして指導をされることになっておりまするが、年末金融に対しまして特段の中小企業に対する配慮をするように、それから特に問題は、中小企業向け貸し出しのシェアといいますか、比率の問題でございます。  現在のところ、今回の引き締めにおきましては、従来のかつて経験いたしました引き締め時と違いまして、親企業者と申しますか、これは下請を相当めんどうを見る、と申しますのは、下請のめんどうを見ませんと景気回復時において十分伸びられませんので、めんどうを見る、また、都市銀行等の金融機関も中小業者はいいお得意になってまいりましたので、この点、十分種々手厚く考える、措置するというふうにやっておるようでございますけれども、さらに中小企業向けのシェアの落ちないように大蔵、日銀当局は市中金融機関を指導するというふうになっております。  それからさらに、特に一兆九百億円の先ほどの金融機関の貸し出し目標でございますが、その中小企業向けの貸し出し目標が現実に達成されるように、この辺の指導の強化もするというふうな手はずになっております。
  89. 佐野進

    ○佐野(進)委員 だから、たいへん手はずはいいのですが、やるやるといっても、実際上十一月で昨年の五割増し、こういうような倒産が出ておるわけですね。あのとき、好況だ、ことしは景気はよくなるだろうということを前提にした時点の中で倒産数はふえておるといっておるのです。この暮れから来年の三月ごろまでは、金融情勢においても、あるいは景気の動向においても非常に警戒を要する、こういう赤信号が出ておる状態の中でその対策を立ててもらわなきゃならない。だから、好況下の倒産と不況下の倒産ということになれば、不況下の倒産のほうがより深刻な影響を与えるであろうということは当然予想されるわけです。その中で下請代金の支払いを促進するということで、これはまだポンドショックが出る前かあるいは出た直後の状況の中で、ポンド引き下げが行なわれた直後の状況の中でその経済事情が明らかになりつつあるわけですから、総理大臣の、あるいは大蔵大臣の方針の中でもその点が強調されたときですから、当然一番先にその影響を受ける中小企業に対して中小企業庁が対策を考えないということは、これはもうあってはならないことだと思うのです。したがって、いま具体的にこれから年末ないし年度末に、あの次に行なうべきことはこうだというようなことは、私は、聞かなくとも説明があってしかるべきだと思うのです。ただ抽象的なことじゃなくて、具体的に先ほど来言っておるとおり、ひとつ、あったら、もちろんあると思うからここで説明してもらいたいと思う。
  90. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 先ほど私ちょっとことばが足らなかったのでございますが、先生質問のように、実は、このポンド問題でさらに引き締めが強化されるだろうということの予想をいたしましたので、金融財政当局に特に私たちのほうから要請をしまして、その協力でいま申し上げたような措置をする、こういうふうなことを実はしたわけでございます。しかし、どういうふうになってまいるか、ただ私たちこれは非常に注意をして見守っておるのでございますが、いまのところ倒産は確かに多いのでございますけれども、いわゆる町の引き締まりの状況は、どうもそれほどまだ深刻になってきているとは考えられない。もっとも、これは非常に警戒していかなきゃいけませんけれども、そういうことで十分事態の推移を注視し、必要な手は追加して打っていく必要がある、あれば打っていかなきゃならぬというふうに思っております。
  91. 佐野進

    ○佐野(進)委員 具体的に言うならば、あれ以外に手がないという答弁だということにならざるを得ないと思うのですが、これはしかし支払い代金遅延防止を促進するということでなく、倒産者に対してでなく、倒産寸前の企業に対して信用補完制度の中において、あるいは先ほど質問しているその他の具体的な方針があるわけですから、そういうような中において、倒産寸前の中小企業、特に小規模企業に対して、救済対策というか、これをつぶさないで立ち直れるような施策についてもう少し真剣に考えてもらいたい。この問題については、きょうはその程度でやめますけれども、あれだけで終わりだ、あとはお金をよけい出すようにしているのだということでは、少し私は満足できないと思う。  次に、そういうような状況の中で、来年度の予算の編成がこれから行なわれようとしているわけです。したがって、このままの状況で、あなたのほうでは金融引き締めの影響がどう出るかわからない、こう言っておるけれども、われわれが注意してあらゆる方面の情報を総合すると、ことしよりも来年がよくなるという意見を吐いておる人はだれもいないわけです。したがって、来年の経済情勢はきわめてきびしい、こういう判断に立ってわれわれは取り組みをしなければいけない。  そうすると、来年度の中小企業の行なう対策ということであなたのほうで出しておる「中小企業」というこの雑誌によると、四十三年度の対策がいろいろ載っておるわけです。これをこのままあなたのほうでは行なっていって、特に中小企業金融の面その他について——きょうは中小企業金融を中心にして質問していますから、その面で十分足りると考えるか、あるいはこれについては不足と考えるか、それらの面について一応聞いておきたいと思います。
  92. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 中小企業金融の面につきましては、中小企業振興事業団を通じまする手でございますとか、近代化設備資金の府県を通じます供給でございまするとか、あるいは主流をなします中小企業三金融機関を通じます金融でございますとか、先生指摘のように、来年度財政当局にそれを要求しておる段階でございます。実は、金融面につきましては相当大きな数字を要求しておりまして、特にこういう引き締め時でございますので、中小企業もまた一般的な引き締めを行なうべきであるという考え方もありますし、また私たちも、伸ばせるような設備投資はやはり伸ばして一般的な世の中の動きに協力することは必要であると思いますけれども、しかし、対外的な情勢は非常に切迫をしてきておるわけでございまして、発展途上国の追い上げ、それから特恵問題、資本自由化等、中小企業の近代化、合理化が特にいま強く要請されておりますので、この必要な資金の確保はどうしても来年度はやっていく必要があると考えております。
  93. 佐野進

    ○佐野(進)委員 私がいまおもに質問しているところは、いわゆる積極的な面ということよりも消極的な部面における乏しき人というか、いま困難に直面している人たちあるいは業界、そういうものが、設備の近代化をはじめ、いろいろ企業の維持発展ということについて当然夢を持ち努力をしておりますけれども、それはそれとして当然考えなければならない。だがしかし、いま倒産に直面し、やり繰りに奔命しておるそういうような企業に対して、これをどう救済するか、あるいは救済ということよりもどう力をつけるかということもたいへん大切なことではないか、したがって、そういう部面において、この金融管理下における来年度の中小企業金融対策が、いま立てられておる対策で事足りるのかどうか、そういう点を質問しておるのです。したがって、あなたのほうでは——私も通産省から出ておる本も十分読ましてもらいました。そう上で、いまあなたのほうでは来年度の施策として、中小企業金融対策としてこれでいいのかどうかというその結論をお聞かせ願いたい、こういうことを言っているのです。
  94. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 さしあたり必要なのは信用保証制度、補完制度、これは現在の制度を強化していくということでやってまいるというふうに考えておりますが、次に一番大事なのは運転資金の関係でございまして、この関係につきましては、商工中金、国民金融公庫等を通じますパイプと市中一般金融機関を通じますパイプと、それから特に企業間信用の問題があるわけでございますが、私たちいずれも現在の段階につきましては、さしあたり予算要求、財投要求の規模で処置をしてまいりまして、事態の推移によって、もし不十分な場合には手を加えていくというふうに考えていかざるを得ないのじゃないかと思います。
  95. 佐野進

    ○佐野(進)委員 あなたもまだかわって間がないので、あまり具体的にどうだこうだということもどうかと思うのですが、しかし、いずれ——いずれというよりも、どうしても取り組んでもらわなければならぬ問題点だと思うので、少し無理かもしれませんが、なお若干の質問を続けていきたいと思います。  その次、いまのようなお話で来年度の対策が進められていくわけですが、私は、いまのは答弁になっていないと思う。したがって、私の聞かんとする真意にはまだ到達していませんが話を進めてみたいと思います。  いわゆる金融の面、来年度の対策の中で、もちろん近代化するあるいは協業化する、いろいろありますけれども、それらの中でも特に零細小規模業者が脱落しないようにというような形の中における配慮、こういうものがなければ、いかに一方において繁栄する企業が出ても、つぶれていく企業がその陰でたくさん出ていくということであってはならない。そういう面をどうやってやるかということになると、金融面におけるところの対策としては、どうしても繁栄する企業に対して目が向けやすい。脱落せざるを得ない企業に対しては、それはやむを得ないという印象になりやすい面が非常に強いと思うのです。したがってそういう面が、去年からことしにかけての倒産者の現状と結び合わせて、来年度は非常に議論になる、こう考えるわけです。そこで私は、いま金融面において一番問題になろうとしていること、あるいは問題になっていることだと思うのですが、いわゆる金融機関の一元化といいますか、総合的な対策を立てるということの中で、中小企業金融制度の総合化というか改革といいますか、そういうことが審議会その他の中ではかられておるということを聞いておるわけです。この改革が前進的な意味においての改革なら私はいいと思うのですが、改革の持つ意味が、先ほど言ったような点について若干でもマイナスを及ぼすということがあってはたいへん困る気もするので、この中小企業金融機関の改革の現状についてどういうような取り組みになっておるか、ひとつこの際明らかにしてもらいたいと思います。
  96. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 金融制度調査会におきましても種々御検討にいまなっておるわけでございます。財政金融当局の御専門でございますけれども、われわれといたしましては、一般市中金融機関が中小企業金融方面に、もっと強化といいますか、重点を向けてくれるということが必要であると思いますし、特に地方銀行、それから相互銀行、信用金庫、こういう従来の中小企業金融を担当しておりました金融機関があるわけでございます。この辺のところの機能が十分に働いてくれるということが非常に必要であると思います。そういうふうな一般の市中金融機関のほうの中小企業向けの機能の強化とともに、私たちといたしましては、何といいましても、何ぶん補完的な意味ではございますけれども政府金融機関の拡充が非常に大事であるということで先ほど申し上げましたような御答弁をした次第でございます。
  97. 佐野進

    ○佐野(進)委員 長官もし無理なら、だれかかわりの人に答弁してもらってもいいと思うのですが、いわゆる金融制度調査会がいま取り組んでおるその状況をひとつ教えてもらいたいと思います。
  98. 田代一正

    ○田代説明員 お答えいたします。金融制度調査会は、昨年の六月以降、いわゆる金融機関の再編成ということで検討に入っておるわけでございます。昨年の六月から約一年四カ月ほどかけまして、本年の十月までにその第一ラウンドといたしまして、「中小企業金融制度のあり方について」という問題について答申いたしております。で、先月下旬以来さらに第二ラウンドといたしまして、中小企業金融機関を除く一段の民間金融機関のあり方についてということをテーマといたしまして、いわゆる第二ラウンドがこれから始まるという段階でございます。
  99. 佐野進

    ○佐野(進)委員 その中で中小企業の政府関係金融機関についてはどのように論議されておりますか。  それから、これらのいわゆる民間金融機関の統合というその目標がいろいろいわれておるようですけれども、主たる形態としてどういうような形をとろうとしておるのか、この二点についてひとつ。
  100. 田代一正

    ○田代説明員 お答えいたします。先ほど申しましたことしの十月二十日の答申では、初めは政府機関を込みにしてということで始まったのでございますが、十分時間もなくて、結果としましては民間の中小企業金融機関を中心にした答申になっておるわけでございます。答申の末尾に、政府機関に若干関連すると思われますのは、信用補完の問題、これは非常に重要である、さらに検討したいという文章になっております。そういうことで民間中小金融機関が中心になっておるということでございます。  それから、この答申の骨格をなす考え方について二、三申し上げますと、骨格の中心になる哲学と申しますか、考え方は、先生も御案内のとおり、昭和四十年代の経済の展望ということを前提にいたしまして、それによって経済成長のパターンが変わってくるだろう、あるいは資本の自由化その他もあって、いままで考えられなかったいろいろの要因があるだろうということで、そういった客観的な将来を見通したところで、はたして金融はこの段階では何をしたらいいかということ。そこで、それについての基本的な考え方としましては、俗にいう金融の効率化、金融を効率化しなければいけない、金融を効率化するためにはどうしたらいいかという問題であります。それには適度な、適正な意味における競争原理が働くというような仕組みがなければならぬということを中心的なテーマにいたしまして、それに応じて展開されているわけでございます。  そこで、またさらにこまかくなりますが、その論争のさなかにおいて現在相互銀行、信用金庫、信用組合という三つの金融機関がございます。これについても、三つを認めないで二つに整理したらどうだという意見が途中で非常に有力な意見としてあったわけでございますが、結果としましては三つの機関を認める、で、それ相互に新しく位置づけして三つの機関を今後認めていくことにしたらどうかというのが大体骨子になっておるわけでございます。
  101. 佐野進

    ○佐野(進)委員 そうすると、このいわゆる金融再編成のねらいは、四十年代を見通しての一つの金融の効率的な運用、こういうことになろうかと思うのですが、そうなった場合、いわゆるその目標は、さっき言ったとおり二つにするということ、三つの既存の制度に対して二つにしよう、集中的、集約的というか、そういうような形のほうが効率的だというのが調査会の議論として大勢をなしておる、いわゆる庶民金融、大衆金融、こういうものについてはできる限り少数の制度金融機関がこれに取り組む、こういうような方向であるというぐあいに理解していいのかどうか、この点お尋ねしたい。
  102. 田代一正

    ○田代説明員 必ずしもそうではないのでございまして、二つのタイプにするか、現行に類似した三つのタイプにするかという議論につきましては、いろいろな議論があったわけでございますが、二つのタイプにいたしますと、それはそのときの議論といたしましては、いわゆる株式会社制度を中心にしたのが一つの議論、それから純然たる協同組合システムにするのが一つの議論、二つに分解するということであります。  そういたしますと、非常に問題になりますことは、そのまん中をつなぐ中間の中小企業金融にこたえる金融が不十分じゃないかという問題が一つ、それから末端、下のほうを完全な協同組織体にブロック化いたしますと、当然資金量の伸びその他も制約され、零細層についても十分な金融ができないのではないか、こういう二つの理由から、やはり現在あるような三つのパイプをつけておいて、それで資金供給をしたほうが非常に望ましいのじゃないか、こういう考え方ですね。
  103. 佐野進

    ○佐野(進)委員 そうすると、民間の機関といわゆる政府関係機関である三つ、今度四つということになっていますが、この機関との調整はどういうぐあいにはかろうとしておるのですか。
  104. 田代一正

    ○田代説明員 別に答申にはその辺の関係について一切触れておりませんので、やはり現在ある三機関と申しますか、というものを前提にした考え方ではないかというぐあいに考えております。
  105. 佐野進

    ○佐野(進)委員 この問題についてはもっともっと掘り下げて議論しなければならぬと思うのですが、これは大蔵委員会のほうでもやると思いますから、私は、いまのこの中小企業金融の一元化というか再編成というか、そういう中で当局が調査会の審議を得ながら対策を立てておると思うのですが、これは先ほど言った中小企業金融の健全なる発展を促す方向でやっぱり取り組んでもらわないと、ただ体系と、一つ先ほど来主張しておる点ですね、恵まれた企業というか繁栄する企業のみに向いた金融再編成であってはならない。もちろんそれを無視するということは間違いだけれども、その点についてはひとつ十分配慮をして取り組んでもらいたい。要望しておきます。  そこで、そうなりますと、政府の関係の中小企業金融の三機関、よく俗にいう三機関に、今度新しく環衛金融公庫ができたわけです。この環衛金融公庫の持つ意義と位置づけ、これは成立の過程の中でいろいろ議論があったのですが、一応でき上がった。そうするとこの機関は厚生省の所管だ、こういうような形になっておる。ところが、中小企業施策のあらましというか、中小企業庁のほうの中小企業対策金融の金融機関の対象としてこの環衛公庫がやはり重要な四十二年度の施策の柱としてあるわけです。そうすると、この環衛公庫というものは中小企業庁の中小企業対策のものなのか、環衛業、いわゆる厚生省の環境衛生に関係する対策のものなのか。その点あまり国会審議の場においては、特にああいう状況などで十分な審議をされないで通ったという経過もあるので、この点どういうような統一見解なのか、政府側の見解をひとつ、これは中小企業庁と厚生省のほうから答弁してもらいたいと思います。
  106. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 環境衛生金融公庫は、環境衛生適正化法の規制を受けております環境衛生の十八業種の中小企業者が衛生設備を設置し、さらにその合理化、近代化を推進することによりまして公衆衛生の向上をはかろう、それでこの際に必要な特定の資金を供給する、こういうことをねらって設立されたというふうに私たち承知しております。したがいまして、これは環衛十八業種の所管省でございます主として厚生省がこの世話をしておられるわけでございますけども、いずれもこれは中小企業者でございまするので、中小企業庁といたしましても、この環衛公庫の運営につきましても十分な関心を持っておる必要があるというふうに考える次第であります。
  107. 松尾正雄

    ○松尾政府委員 厚生省の見解も、ただいま中小企業庁長官が述べられたのと同様でございます。衛生的な目的ということを主としてやっておりますけれども、実態は、ただいま申されましたように中小企業が多いという点で両者の性格を持っておるというふうに考えております。
  108. 佐野進

    ○佐野(進)委員 そうすると、大蔵省のほうに聞きたいのですが、先ほど言った政府機関金融、中小企業関係の三機関に新しく環衛公庫が入ったわけですね。そうすると、この関係については、大蔵省としては金融機関としての位置づけをどのようにしておるのか。いわゆる中小企業ということで位置づけておるのか、厚生省のほうの環境衛生的な立場で位置づけておるのか、その点をひとつ聞かせてもらいたい、あとの質問との関係があるから。
  109. 田代一正

    ○田代説明員 先ほど申しました先回の「中小企業金融制度のあり方について」という答申がございます。答申の中の文章に、政府関係の中小金融機関という中に、三機関のほかに最近では環衛公庫もできたというぐあいに触れてございます。ですから、広く申しますと、中小金融制度であるけれども政府系の中小企業金融機関の一環であるということが言えるのではないかと思います。ただ、先ほど来両省から御答弁がありましたように、その中のごく特定の資金をお貸しするという機関であるというぐあいに御理解願いたいと思います。
  110. 佐野進

    ○佐野(進)委員 そこのところが大蔵省のほうはもう少し明快なあれが出るのかと思ったのですが、いわゆる十八業種を対象とした環衛公庫が設立される、こういうことについて私も賛成しましたし、いいことだと思っておるわけです。しかし、いいことだと思って賛成したということとその運営と制度のあり方ということについては、これまたおのずと将来にわたる問題にも関連するので議論のあるところだと思うのです。したがって、政府関係機関としていままであった三金融機関に対して環衛公庫ができた。できることについて大蔵当局も賛成した。賛成したのは政府だからこれは提案したほうだと思うのですが、その位置づけをいわゆる三政府金融機関とどのような関係の中で位置づけておるか。同じですよという抽象的な表現ではちょっと何か今度将来いろいろな面において問題が発生するのじゃないかという気がするので、これはあとの質問にも関連するから、この際明らかにしておいてもらいたい。
  111. 田代一正

    ○田代説明員 私が先ほど申しましたことが非常に抽象的とおっしゃいましたけれども、たとえて申しますと、多賀谷委員もおられますが、石炭関係で産炭地域に振興事業団というのがございます。これは産炭地域に融資をする、しかも企業融資をするわけですね。ですから、これは本来ならば、中小公庫とかあるいは開発銀行でできるかもしれない。しかし、特に政策目的を持って、そういう限度を画して融資機能を与えたというものだと思います。ですから、たとえはどうか知りませんけれども、そういうぐあいに御了解願っていいのじゃないかと思います。一般的な中小企業金融の大宗をなすものはあくまでも中小公庫であり、国民公庫であり、商工組合中央金庫である、ごく特定の問題、特定の政策目的について貸すのが環衛公庫である、こういうぐあいに考えたら一番すなおな考え方だと思います。
  112. 佐野進

    ○佐野(進)委員 そうすると、私この際ぜひ聞いておかなければならないのは、あの法律が通ったとき私もその委員会を傍聴しておったのですが、あらゆる経過の中で、まさに熱気をはらんだ委員会の中であの環衛公庫法が通ったわけですね。その通る過程の中で附帯決議がつけられたということで、附帯決議として五項目が出ているわけですね。そうして、これに対して文書質問が出され、答弁が出ておるわけです。  そうすると、いまあなたの答弁を聞くと、そういう目的さえ明らかであるならば、たとえば多賀谷さんと言われたような形の中にある金融の対象の業種が出るならば、これは幾らでも設立することが可能なものである。可能なのであるということよりも、むしろ特定の目的のために、その一般金融機関外における政府金融機関が発生することは、いうなれば好ましいことだ、こういうような表現にとられると思う。そういうぐあいに理解していいわけですか。
  113. 田代一正

    ○田代説明員 そういう好ましいかどうかというお話になりますと、本来なら、機構というのは、なるべくならば非常に簡素なものがいいと私は思うのです。だれが見てもよくわかるというものがいい、そのために簡素なものがいいと思います。これは、私がさっき申し上げたことは、できた今日から見たら、そういうことになるだろうということを申し上げたわけです。好ましいか好ましくないかという判断は、私申し上げた記憶は全然ございません。そういうぐあいに御了解願いたいと思います。
  114. 佐野進

    ○佐野(進)委員 あなたの立場からはそういう程度の答弁しかできないだろうと思うのです。私は、この附帯決議並びに質問、答弁、こういうものから一貫して感じることは、さっき言った中小企業金融機関の総合的な検討、調整、あるいは一元化になるのかならないのかわからないけれども、ともかく現時点の中で中小企業金融の持つあり方というものが不十分である。したがって、その対象の機関を何とかここで、あなたの言うように四十年代を目標にしてその時勢に適合するようなものにしなければならない、こういうことで真剣に論議されておるという過程の中で、こういう機関そのものができたということはいいとしても、これからの運用という面については、十分慎重な配慮と対策が立てられなければならぬ、こう私は思うのです。  そういう面からすると、中小企業庁が一般金融機関として持つ、その対象とする三金融機関に対する指導の欠除というか、取り組みの不足が、中小企業者をして特定の金融公庫をつくらせなければ、自分たちの生活の向上も、業種の発展も向上もないのだと、こういうようなところに結びついていったのじゃないか、こう思うのです。そういう点について中小企業庁はどう考えておるのか。この金融公庫発展と既存の中小企業金融対策との関連の中で、何か反省なり、あるいは反省でなくてそれがいいのだというぐらいに、さっき大蔵省が言ったような形の中で考えておるのかどうか。この次の質問を展開する前にちょっと聞いておきます。
  115. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 環衛公庫ができたことに関連いたしまして、その後さらに業種別の政府金融機関があればほしいという民間業界一部の動きがあることは先生承知のとおり、われわれも聞いておるわけです。これについて考えるわけであります。率直に申しまして、まず行政の強化と、それからそれに裏打ちされる金融機構と一応これは分けて考えて、それから最後にこれは一本になるものだと思うわけでございます。ということは、現在機械工業振興法なり繊維の構造対策の法律がございます。これは通商産業省の原局でございます重工業局が機械工業振興法を、それから繊維につきましては、繊維雑貨局が所管をいたしましてこの行政方向をきめ、行政の効果的な手段として融資を、いろいろ案を考え、投資を考えるわけでございます。それは原局が考えまして、それを受けて立ちまして、金を供給するのはどこかと申しますと、大企業は開発銀行でございます。それから中小企業は中小企業金融公庫、それから国民金融公庫が供給する、こういうことであると思うわけでございます。  したがいまして、現在非常に問題になっておりますたとえば流通業の強化の問題——流通業を強化いたします場合には当然金が要るわけでございます、この流通業を強化するのに、どういうふうにしたら近代化していくかということは、日本の経済にとりましていま非常にキーポイントであると思うわけでございます。この流通業の近代化についての行政をどういうふうに考えるのかというのは、流通業を所管する各省の責任だと私は思います。これは、たとえば通産所管業種でございますと通産大臣でございますし、農林所管業種でございますと農林大臣でございます。この行政責任大臣がその行政の方向をきめ、金が要るなら投資なり融資なりを考える。それを今度は第二の問題としてどこの金融機関から供給するかというのは一応別の問題であるというふうに思います。そこで、どこの金融機関から供給するかということになりますと、これは中小企業庁の中小企業基本政策の問題でございますし、また金融政策の問題であるというふうに私は思います。
  116. 佐野進

    ○佐野(進)委員 だからこういう公庫をつくってくれという声が出る、あるいは中小企業者、いわゆる十八業種の人たちは環衛公庫に入ることができたのだ、たいへんありがたい、しかし、入ることのできなかった人たちはそれに対して何か非常に取り残されたような感じになる。これは私は当然だと思うのですよ。だから、そういう取り残されたような感じをどうやって払拭し、なくしていくのかということについて、中小企業庁がこの環衛公庫ができたことに対応して対策を立てたかどうかということを聞きたいのですよ。
  117. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 いま申し上げましたことをもう少し具体的に申し上げますと、たとえば環衛公庫ができまして、したがいまして、環衛公庫から、従来中小企業金融公庫ないし国民金融公庫からでございますと八分二厘の金しか借りられなかった人たちが、特に必要な近代化設備につきましては七分七厘の金、それから特に衛生設備等につきましては六分五厘の金が借りられるということになったわけでございます。この近代化設備なり衛生設備なり、これを特に強化すべきである。そして、それをどう計画的に強化し近代化していくべきか、投資をしていくべきか。私さっき申し上げました意味は、これは厚生大臣の責任であると私は思うわけでございます。厚生大臣がこういう方向をきめました場合に、その厚生大臣がきめました方向に従いましてどういう金を出していくかというのが金融機関の問題である、こういうふうに思うわけであります。
  118. 佐野進

    ○佐野(進)委員 そうすると、厚生大臣がそういう業種についてはきめる。たとえば魚介類とか野菜とか生鮮食料品その他については農林省がきめる、こういうことになるわけですね。そうすると、あなたのほうはそういう点についてできるだけこれにお力添えをする、こういう形で理解していいですか。
  119. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 農林大臣の所管物資につきまして、これの流通機構の近代化がいま非常に要請されているということは、国民の一人として私も十分承知をしております。また必要であろうと思います。この場合に、農林所管物資の流通機構の近代化のために金が要る。しかし、金が要るというだけでは私は済まないと思います。これは国の金を流すわけでございますので、どういう方面に対しまして、つまり農林省所管物資の流通機構近代化を達成いたします場合に、どういう計画をつくって、どういう方面に、どういう設備に、どういうふうに金を流していくかという、いわゆる農林所管物資の流通行政をここで強化、拡充されるということは、私は農林大臣の専管事項であると思います。これが大いに強化されるということは、国民の一人として望ましいというか、非常にお願いしたい点であると思います。それができまして方向づけができました場合に、すなわち、農林所管物資の流通機構近代化の方向、計画ができました場合に、それに対してどういうふうに金を流していくかというのは、中小企業金融機関の問題である、これは別の問題であるというふうに考える次第でございます。
  120. 佐野進

    ○佐野(進)委員 ところが、それが別な問題でなくて、もうすでに現実の問題としていろいろ——たとえば環衛公庫ができたわけでしょう。だから、できたということは、現実の問題としていまここにあるわけですよ。だからそういう点について先ほど来いろいろ私が聞いているわけです。  それでは、一応それはおくとして、厚生当局と農林当局にこの際聞いておきたいのですが、いま中小企業庁長官が言ったように、近代化なりあるいはその他に必要な施策については、厚生当局あるいは農林当局のほうで具体的に案を立ててもらいたい、こういうようなことがいわれておるわけですね。そうすると、いま当面われわれのところへきているのは、いわゆる五業種をはじめとして多くの業者が、環衛公庫ができたのだからそれに対応するような金融機関をつくってもらいたい、あるいは金融の対象の中に入れてもらいたいというようなことがいわれておるわけですね。これらについては、両省はどういうような考えと取り組みをしているか、ひとつここで聞かしてもらいたい。
  121. 松尾正雄

    ○松尾政府委員 環衛公庫についてのこれからの進め方というような問題でございますけれども、環境衛生適正化法に基づく業種だけ一応扱う、ところが、ここに一つ非常に直接的な問題として出てまいりますのは、食品衛生法という法律によりまして、許可業種、都道府県知事が許可をしなければ営業できないという業態があるわけでございます。それが肉の販売でありますとか、あるいは飲食店とか喫茶店であるとか、そういうものは環衛公庫のほうに入ってめんどうがみてもらえる。ところが食品衛生法に基づく乳の販売でございますとか、あるいは魚介類の販売でございますとか、そういうたくさんの種類、このものが環衛公庫に入っていない。しかし、都道府県知事が、国民の食品衛生という観点から、これを非常に平等にひとしく指導監督をしていく、その上で、また同時にそういう指導監督をした結果が国民の食生活の上に、食品の質の上にもひとつ有効にはね返るような指導をしていかなければならない。そういう態度にある場合に、いまの食品営業の許可業種というものが二つに分かれている。対象でいいますと、ちょうど環衛のほうに入っておるのが約六十万、それから適用外になっているのがたまたま六十万、まさに半分に折半されておるという状態でございます。こういう問題は、やはり食品衛生法に基づいていろいろな行政上の強い指導をやる。同時に、国民の期待に沿いますような食品というものを確保する。これは単なる取り締まりだけではやはり妥当じゃございませんので、そういう改善方法、こうやればいいのだということで専門的な立場で指導いたしましたならば、それに対して、同時にそれがまた経営のほうに援助できるように、そういうふうにやはり一元化して、指導と助成というものが特別にこういう場合には一本になったほうが、業界のためにも、ひいては食品衛生の向上にも非常に役立つのではないか、こういう関係で、来年度におきましては、その食品衛生の許可業種に残った六十万というものをこの対象にしたいという考えでただいま予算の要求をしておるわけでございます。
  122. 大和田啓気

    ○大和田政府委員 私ども、生鮮食料品の生産流通について農林省として責任を負っておるわけでございますが、生鮮食料品の流通改善あるいは物価安定ということがやかましくなりましたのはここ数年でございまして、私ども昭和三十八年に閣議決定がありました生鮮食料品流通改善対策要綱というもので、中央卸売り市場ないし地方市場の卸、仲買い、小売りを通じて流通改善ということをやってまいってきておるわけでございますが、ここ数年の間にも、いろいろ業界の実態も非常に流動的に変わってまいりまして、中央市場の建設につきましては相当多額の補助金を出して整備につとめておりますけれども、なお全国をながめますと千七百ないし千八百の地方市場というものがございます。中央卸売り市場と地方市場との生鮮食料品の扱い高は、大ざっぱにいって半々程度でございます。ところが、地方市場についての補助金の制度もいままでございませんし、体系立った融資の制度もございません。それぞれの責任で、きわめて未整理の状態で取り扱いをしておるのが現実でございます。あるいは物価の安定ということで、東京、大阪等、仲買い人を中心として統合の問題を進めておりますけれども、これについても十分融資のめんどうを見ておりません。それから小売りにつきましては、これは膨大な数でございますけれども、最近の労働力不足ということもございますし、消費者の好みがだんだん高度化し、また複雑になったということもございまして、いままでの商売のやり方を切りかえて、総合食品化といいますか、あるいはスーパーマーケットというと大げさでございますけれども、そういう省力的な経営に相当自主的に動きつつある状態でございます。私ども、農林水産業の生産ということばかりでなしに、流通の問題に取り組んで過去に相当努力をしてまいりましたし、物価問題とかあるいは生鮮食料品の流通問題ということは、これからの農林行政にとっては相当大きな課題として、われわれこれからのがれることができないような大きな宿題であろうと思うわけでございます。私ども、環境衛生金融公庫があるからということでは必ずしもございませんけれども、抽象的に中小企業の金融は一本でということよりも、むしろ刻下の問題になっておりますところの生鮮食料品の流通改善とか、あるいは物価安定をどういうふうに進めるかという実態的な観点から金融の問題を処理したいというふうに考えております。  来年度の予算の措置といたしましては、私ども生鮮食料品の生産ばかりでなしに、農業、林業、水産業を含めて、農林漁業金融公庫という独自の政府機関がございまして、ことしの資金ワクも千六百億ほど、相当な融資ワクを持っております。全国に十四ほどの支店がございますし、大きな金融組織でございますが、そこを通じて、卸、仲買い、小売りを一貫しての流通改善のための融資制度を確立したいというふうに考えておるわけでございます。もちろん卸、仲買いというものは、これは公庫が直接貸しもできるわけでございますが、膨大な数の小売り商につきましては、あるものは公庫が幾ら支店がありましても代理貸しで、直接貸しということはあるいは無理であろうと思いますので、その場合は、一般の金融機関あるいは国民金融公庫等を受託金融機関にして金融ができるのではないかということで、現在資金のワクといたしましては、卸、仲買い約百億、小売り約二百五十億ということで大蔵省と相談をいたしております。
  123. 佐野進

    ○佐野(進)委員 それぞれの立場はわかったのですが、そうすると、この質問に対する答弁の中でこういうことを書いてあるのだね。「なお関係省である大蔵省、農林省及び通商産業省とは協議済みである。」こういうことが書いてあるわけだ。そうすると、これは厚生省が出したのだから、結局四省でこのことについては相談してこの答弁書が作成されておる、こういうことになるわけですね。そうすると、この答弁書の中で、第一項としては「御趣旨のとおりである。」いわゆるどの業種も平等にその資金融資を受けることが可能だということについては「御趣旨のとおりである。」それから、五業種について、これについてはすみやかにやってもらいたいということについては「融資の前提となる諸制度の整備とあわせてとるべき措置を検討して参りたい。」三項に対してはそういうことですね。これは大蔵省の関係になると思うのですが、「諸制度の整備とあわせてとるべき措置を検討して参りたい。」こういう趣旨はどういうことなんですか。
  124. 田代一正

    ○田代説明員 私が着任する前の文書でございますが、以下、私の聞いている範囲では、現在環衛局で扱っております衛生施設貸し付け、それから近代化資金貸し付けと申しますのは、いずれも食品衛生法上の適用業種であり、同時に環適法の対象であるということですね。ですから、衛生的な観点からの融資という問題はもちろんですが、同時に、近代化という要請は環適法の体系から出てくる問題じゃないかということであります。そうしますと、環適法から除外されて、かつ食品衛生法上の対象業種というものについては、近代化という要請は法律そのものから出てこないという意味だと私は了解しております。
  125. 佐野進

    ○佐野(進)委員 なかなかむずかしいのだけれども、だれでもいい、どこの省でもいいから、いまの点についてもっと明快に答弁できるところありますか。
  126. 柳瀬孝吉

    ○柳瀬説明員 融資の前にそういういろいろな業種につきまして、どういうふうにそれを改善あるいは向上育成措置をしていくかというふうな問題があるわけでございます。そういう制度をまずどういうふうにするかということをそれぞれ所管の省と検討して、その上で金融措置もその裏づけとなる問題として考えていきたいというふうなことでやっております。
  127. 佐野進

    ○佐野(進)委員 十分まだそれぞれ調整がとられていないようですから、あまりいまの段階で話をしても何だか悪いなと言っちゃこっちは気が弱いようだけれども、やめておきましょう。  そこで私は、いわゆる業種別金融機関というものができた、それに対して、その対象にならなかった業界、業種の人たちが、自分たちも当然それに該当する——それに該当するということは、ことばをかえていえば、中小企業庁並びに政府の中小企業金融対策について非常に不満を持っておる。不満を持っていることがどこに突破口を求めたらいいかということになると、直接関係のある省であった厚生省あるいは農林省というところに突破口を求めて努力をしたということに帰着せざるを得ないと思うのです。これはどういう形でどう表現しようとも、そうだと思うのです。したがってわれわれも、そういう意味において、厚生省の所管である環適法適用の業種についてこれの公庫をつくることは、現時点においてこれはまさにやむを得ないけれども必要なことだ、こういうことで賛成をしたわけです。積極的に、こういうことがいいことだからやれやれということじゃなかったと思うのです。そこで、そういう面から考えると、この業種からはずれた業種の人たちに対してどういう措置をとるかということになってくるわけです。  そこで、いま、厚生省のほうなりあるいは農林省のほうなりから言われたような意見が出されておりますが、当然それらのことについて、中小企業庁のほうとしてどういう考えを持つかということをこの際明らかにしておいてもらいたい。
  128. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 何しろ中小企業業種は非常にたくさんございまして、先ほど私申し上げましたように、中小企業庁が一体的に基本政策はやっておりますが、業種は各省が所管されておるわけであります。ただ、中小企業業種は約千あるといわれておりますが、遺憾ながらなかなか手が回り切れない、その御不満が確かに環衛公庫をつくる一つの動機であったということは私はいなめないと思います。したがいまして、今後業種を所管する各省と、それから持に一体的に基本政策を立てます中小企業庁と、この面の行政強化は十分がんばっていかなければならないと思うわけでありますが、中小企業庁といたしましては、業種に対します政策強化は、先ほどから繰り返して申しますように、ぜひやられるべきである。ただ、金融の強化もはかるべきであるけれども、業種に対する政策強化とともに金融機関を次々に分立していくということは、先ほど申し上げましたように、業種は千もございますので、極論いたしますと千の金融機関をつくったほうがいいということになるわけであります。  私は、金融の効率化をはかるという面からいいましても、また融資条件のバランス、これは先ほど先生御引用の春日質問書にも書いてありますが、業種間のバランスというものは法の前に平等である以上当然であるというようなことを書いておられますが、こういう業種間の融資面におきます融資条件のバランスを確保するという面からいきましても、またさらに、従来すでに中小企業金融公庫なり国民金融公庫なり、これは非常に実績を持って手なれておるわけでございます。したがいまして、そういう点から考えましても、私、中小企業庁長官としては、各業種を所管する各省が行政強化をされまして、必要な金融についての方向をおきめになった、それに対して金融をつけていくという金融機関は極力統一的、有機的に運用できるような金融機関がいいというふうに考えております。
  129. 佐野進

    ○佐野(進)委員 厚生省あるいは農林省、通産省のほうの考え方は大体わかりました。  いずれにしても、いま急にこの問題がどうだこうだということではないわけでありますから、三省とも、いわゆるそういう設備の近代化なり社会環境の変化に応じて、どうしても自衛的にも融資の道を開く中で自己の企業を守り抜いていこうとしなければならないせっぱ詰まった業態、業界の人たちに対して、特に通産省はそうですが、関係各省のほうも積極的な取り組みをひとつお願いしたいと思います。  そこで、私は最後にいま長官が言ったことに関連して質問を若干してみたいと思うのですが、国民金融公庫がある、こう言っておるのです。国民金融公庫があって、国民金融公庫が十分そういう業界の人たちに対する対策が立てられていればこういう問題は起きなかった。結局、そういう対策を立てなかったところにこういう問題が起きて、そうして各業界が各業種別に金融公庫をつくってもらう以外自分たらの業界の発展がないのだというせっぱ詰まった思いにかられて、それを突き上げられる厚生省なり農林省としては当然そうだと思う。中小企業庁のほうは、設備の近代化だとか協業化だとかあるいはその他だとかいうことで、業界の直接の窓口となっていろいろ相談に乗ってくれないのだという印象が中小企業者全体の声になろうとしておる。これは中小企業庁を何のために持っておるのだということにもつながりますので、これはひとつ長官大いにがんばってもらわなければならぬと思う。  そこで、そういう面からすると一番問題になっておるのは国民金融公庫、いわゆるいま言われた業種以外に数限りない業種の人たちがこれを利用しておる。利用しておるのになぜ満足が得られないか。私はいろいろ満足が得られない条件はあろうと思うけれども、一番大きな問題はやはり借りることについてめんどうだということ、それから非常に期間が制約されておるということ、それから申し込んだことに対して、借りる金額が申し込み金額に対応していつも少なくなる。こういうようなところから、つい国民金融公庫——もちろん利用はしておるけれども、大部分の人たちが、せっぱ詰まった形の中で国民金融公庫へ行って相談するよりも、いわゆる町の金融機関のほうへ走って、倒産の原因をつくったり、あるいは歩積み・両建てというような過酷な条件を示されてもそれにすがらざるを得ない、こういうような状況が出てきておると思うのです。庶民金融、大衆金融だといわれていながら、特に小規模企業のいわゆる倒産の対象になるそういう人たちの期待に十分こたえない金庫、公庫がある。これではどうにもならないと思うのですが、これらに対する当面の施策というか、そういういわゆる環衛公庫ができたという時点の中で、通産当局として何か対策を立てておるのかどうか、この際聞いておきたいと思います。
  130. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 いま御指摘のように、国民金融公庫の窓口の扱いを十分改善するという必要があると思います。これは私たちも常日ごろ、サービス改善、中小企業者のサイドに立って親身になってやるというふうな指導をさしておるのでございますけれども、御趣旨によりまして、十分強化をしてまいります。ただ問題は、国民金融公庫及び中小企業金融公庫、商中、中心になります三機関があるわけでございますが、十分サービスには気をつけますとともに、しかし必要なのは、やはり必要な資金量を確保するということであろうと思います。これは、かりに別の政府金融機関をつくりましても資金量は要るわけでございまして、問題は、国民金融公庫の資金量をどういうふうに確保するかということが私の責任でありますし、財政当局にも特に強く相談をしておる点でございます。これが一つと、それから第二は、国民金融公庫は八分二厘といういわゆる通利一本でございまして、三百万円以下の貸し出し、いわば比較的小さな層の人たちの貸し出しに応ずるというかっこうになっておるのでございますけれども、この八分二厘の通利一本で小さな人たちに、薄くではあるけれども広く貸すという体制がいいのかどうかという問題でございまするが、これを厚く貸し出そうとすると、また猛烈な資金量ないし金融公庫の今度は経営問題も起きてくるわけでございまして、その辺も十分金融当局と、強化する方向に相談をしてやってまいりたいと思う次第でございます。
  131. 佐野進

    ○佐野(進)委員 ぼくはきょう一貫して質問しているのだけれども、長官、あなたの責任は実に重要なんですよ。中小企業者、特に小規模企業者がどんどんつぶれている。それが原因になって倒産者がふえている。その責任はだれかれということになると、政府で、政府の中ではあなたが責任を負わなければならぬ。それは何が原因かというと、人手不足あるいは約手その他のいろいろな問題があるけれども、結局金融面に問題がしぼられてくるということにならざるを得ないわけですよ。その金融面——もちろんそれだけが原因じゃないけれども、非常に大きな柱であることは間違いない。そうであるとすれば、あなたは既存のワクの中で、いまおれは前の長官からバトンを譲り受けて中小企業庁長官になったんだ、あと何年かやればまたどこかに行くんだという程度のことではいまの中小企業対策は困るんだな、正直なこと言うと。ほんとうにあなたは、からだを張ってというのが適切かどうかわからぬけれども、もっと真剣になって取り組んでもらわなければいかぬ。  そうすると、公庫ができるとかなんとかといういまの状況の中で私がきょう一貫して質問してきたことも、そういう中であなたのほうで中小企業金融対策についてもっと真剣になってもらいたい、なってもらうためには、どこにネックがあり、どうやったらいいのかということを私は質問してきたのです。  そういうことからいうならば、結論的には、いろんなものがあるとしても、当面差し迫った段階の中では、金融公庫をはじめ、そういう対象にならない人たちを含めて全中小企業者が救われる道は、政府の三金融機関がもっと積極的に中小企業者のために役立つような、安心して最後のどたんばになったときにそこに行けば何とかなるのだということでなければならぬでしょう。その一番下の例として、国民金融公庫の話を私はしたわけです。これにいま言ったように資金量がふえるのはあたりまえのことじゃないですか。借りたいから行くのだから、行けば資金量がふえるのはあたりまえだ。薄くするといったって、三月や半年の金を貸して、つぶれかかった企業がよくなるということはありっこない。しかも、それが手形なり何なり差し迫ったものであるとするならば、もう少しあたたかい措置を講じてもらわなければならぬわけですよ。だから、そういう点についてもう少し熱意を持ってやってもらいたい。そこで、もう一回決意を聞きたい。
  132. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 御指摘の数々、私も日夜腐心しておるわけでございます。何しろ非常に問題はむずかしい。  特に私思いますのですが、日本の経済がいよいよ近代化する曲がりかどにきておりまして、そのしわが中小企業に寄っておると思うわけでございます。この中小企業者は業者数にして九九%をこえる。従業員数にしましても農民よりもはるかに多い、こういうことでございまして、私たちは経済各省の主たる仕事が中小企業に向いているということを各省にお願いをする、中小企業問題の窓口のわけでございます。私たちは一生懸命やりますが、各省にも特に相談をして、各省とともに、いまの先生の御趣旨のような点を十分考えながら、曲がりかどに立った中小企業行政とほんとうにからだを張って取り組んでまいりたいと思います。
  133. 佐野進

    ○佐野(進)委員 最後に、政務次官に締めくくりの質問をします。  私も前の政務次官あるいは大臣には中小企業問題で何回か質問しました。あなたに初めて私は質問するわけですけれども、いままで一時間半近く御質問したように、当面する中小企業対策というのは、いま長官の言われるように非常に大切な問題だと思うのです。そしてその中心が、ともすれば税制、金融その他いろいろありますけれども、特に金融の面に向かっていま中小企業者の関心が高まっている。その面が金融公庫設立ということを契機にして一段とまた燃え上がってきていると思う。ここで政府は適切な措置を講じて、少なくとも倒産者が激増する十一月段階で五割増しというようなことが、来年の十二月段階においてはことしに比べて少なかった、こういうようなことでなければならないと思う。そのためにはやはりほんとうにあたたかみのある対策を立ててもらいたいと思います。そのためには、いわゆる大蔵だ、通産だ、厚生だ、農林だというようななわ張り争いでなくして、どうしたら中小企業者がこの事態の中において一番親切な施策の対象になることができるかというところに焦点がしぼられていかなければならないので、そういう面において、一応政府のこの委員会における最高責任者であるあなたの決意を聞かしてもらって、私は質問を終わりたいと思います。
  134. 藤井勝志

    ○藤井政府委員 先刻来佐野委員の中小企業金融を中心とされました中小企業対策についての御熱心な御質問を拝聴いたしまして、全く私も同感に思います。  先ほどから話が出ておりますように、日本の中小企業はかつてなき大きな構造改革の時代に突入をしておるというふうに思うわけでございまして、そのような国内情勢とあわせて、御承知のごとく最近の国際経済情勢も大波が取り囲んでおるわけでございますから、これはたいへんなことでございまして、先ほどしょっぱなに、倒産件数を前提としていろいろ御心配の御議論でございました。私も倒産をされる中小企業者の立場から考えると、まことにお気の毒にたえない状態でございまして、最小限度にこれを食いとめるという努力は政府として精一ぱいせなければならぬ、これはあらゆる所管を越えて、政府として取っ組むべき重大な課題だと思います。  ただ私は佐野委員とともにひとつ考えさしていただきたいと思うのは、一つの大きな構造改革が行なわれておりますから、ここに倒産ということがほかの方向へ転換することも考える。ただ倒産件数だけをすべてのきめ手ということには、現時点においてはやはり多少そこは考えなければならぬ。決して私はこれをおろそかにするという意味で申し上げるわけでもなく、弁解的に申し上げるわけでもございませんけれども、そういう点があるということを、今後ひとつ大いにこの場を通じてともに研さんしていきたい、このように思います。  それから金融問題についてるるお話がございました。私はずっと長年大蔵委員のほうをやっておったわけでございまして、先ほどから各省から意見が出ておりましたけれども、金融制度のあり方そのものから考えれば、多元化すべきものではないというのが私の持論でございます。ただ、今度の御承知の環境衛生金融公庫というものが発足を見ました。これは委員の御指摘のごとく、やはり従来の中小企業専門の政府機関の融資の状況、これが手厚くなかったというところにも直接的な原因の一つがあろうかと思うのでありますが、ともかくできたのです。また、できた理由としては、先ほど話が出ておりましたように、やはり公衆衛生というこの角度から特別に政策的な金融機関をつくったわけでございますけれども、最近、この発足を契機として、今度はまた農林関係ですね、流通近代化という線、これをとらえて、先ほど農林省から説明のごとく、実体的な金融の必要性を強調されて新しくできようとしております。この問題について、私はやはり先ほど中小企業庁長官が答えましたように、望ましき方法としては、金融条件、融資条件、こういったものがまちまちに相なる——現に相なっておるわけであります。同時にまた実績の面からいっても、やはりもちはもち屋でやっていくという点も考えなければならぬ。しかも、機構をふやせば、それだけ人件費といいますか、そういうものも要るわけでありますから、金融の効率化という点からいっても、やはり本筋は、いままでの中小企業金融機関が融資条件を改善する、そして融資の内容を通利八分二厘、これをできるだけ下げていく、融資ワクを拡大する、こういうような線に努力すべきである、大蔵省もこれを受けて立つべきである、このように私は考えるわけでありまして、ひとつよく検討させていただきたい。政府部内においても各省において現在真剣に検討中でございますから、御意見参考にさせていただきまして善処いたしたい、このように思うわけであります。
  135. 佐野進

    ○佐野(進)委員 終わります。
  136. 島村一郎

    島村委員長 午後二時三十分より再開することとし、この際、休憩いたします。    午後一時二十四分休憩      ————◇—————    午後二時四十七分開議
  137. 島村一郎

    島村委員長 休憩前に引き続き、会議を開きます。  通商産業基本施策に関する件並びに私的独占禁止及び公正取引に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、これを許します。近江巳記夫君。
  138. 近江巳記夫

    ○近江委員 前回の委員会におきまして、化粧品の表示の問題等についてやらしていただいたわけでありますが、厚生省の方にお聞きしますが、薬事法の第二条第三項には、「「化粧品」とは、人の身体を清潔にし、美化し、魅力を増し、容貌を変え、又は皮膚若しくは毛髪をすこやかに保つために、身体に塗擦、散布その他これらに類似する方法で使用されることが目的とされている物で、人体に対する作用が緩和なものをいう。」とあり、全く危険や危害のないものと定義されている。これは間違いありませんか。
  139. 坂元貞一郎

    ○坂元政府委員 ただいま御指摘の薬事法の第二条の化粧品の定義でございますが、ここで申し上げております点は、化粧品というものは、使用目的と使用方法からその範囲なり何なりを限定をいたしまして定義づけているわけであります。そこで、「人体に対する作用が緩和なもの」を化粧品というようなことになっております。  これは御案内のように、医薬品等の分類が薬事法の中にあるわけでございますが、化粧品と医薬品と比べてみますと、もともと医薬品のほうが人体に対する作用というものは化粧品以上に強いものもだいぶあるわけでございます。したがいまして、相対的な概念としまして、化粧品につきましては医薬品ほどの強い薬理作用を持っていないという意味から法律のほうではかような定義をいたしたわけでございます。したがいまして、一般論的に申し上げますと、化粧品というものは、その使用目的等からいいまして、人体に対する作用というものは医薬品ほど強いものではないということは化学的にも明白に言えることである、こういうふうに私ども解釈しております。
  140. 近江巳記夫

    ○近江委員 これは「国際経済」という雑誌でありますが、これを見ればわかると思いますが、これにも「多発する化粧品事故」「その危険性と乱用への警告」、これを私もずっと読ませてもらいました中でちょいちょいチェックしたところがありますので抜粋してみますと、「皮膚科の専門医の間に化粧品によるかぶれや皮膚炎が問題になりつつある。」「横浜市立大学医学部の野村義圀教授は語る。「確かに化粧品による皮膚かぶれ、特にシミはふえています。これは油性クリームの生産高の伸びに歩調を合わせているとみられています。終戦直後と比較すると三〇倍から四〇倍の増加です。化粧品の乱用に通じるものがあります。」「東京女子医科大学の中村敏郎教授もこんなことをいう。」「化粧品の副作用として起る化粧品皮膚炎は、意外なことに皮膚を保護し、美しくするはずの基礎化粧品によることが多い。」また中村教授は「絶対に皮膚かぶれをしない化粧品はいまのところむり」」、こうした内容が出ているわけです。また聞くところによりますと、ヘアスプレー、これは火災の上から非常に危険である。あるいはまた男性用の整髪剤ですね。これが要するにセルロイド系統のものを溶かして、たとえばめがねのところを白なまずのように変えたという例もあるそうです。こういったいろいろな点から推してみて、消費者の立場からいくと、常に非常に不安な気持ちで化粧品を使用している。私は、こうしたものが作用の緩和なものということで、いまの状態でこのまま済ませるかどうかという問題なんです。私はこういう不安感を除くためにも、医薬品と同じく、何らかそうした表示等の問題においても考えなければならないのじゃないか、このように思うわけでありますが、あなたの御見解はどうですか。
  141. 坂元貞一郎

    ○坂元政府委員 御指摘のように、化粧品についての皮膚障害等の事故があとを断っていないことは事実でございます。私どもとしましても、化粧品等の使用にあたって、事故が発生しないように十分予防策を従来とも考えてまいったわけであります。  ただ、先般の委員会でも申し上げたわけでありますが、化粧品による皮膚障害等の事故のいわゆる原因究明というものが、現在のわが国の医学の水準でははっきり断定的なことがいえないという状態にあるわけでございます。したがいまして、かりに事故が起きましても、その事故というものが化粧品の持っている内容成分とどのような因果関係にあるかという点については、現在、いま申しましたように科学的な結論というものが明確に出されていないわけでございます。したがいまして、従来から化粧品等のそういうような事故の起きた場合の原因として一般的にあげられている点は、先般の委員会でも申し上げたとおり、内容成分に不純物が入っているとか、あるいは使用する本人側の異常体質であるとか、あるいは使用者側の若干の誤用があったというような点が一般的な原因ではなかろうか、こういうふうにいわれているわけでありますが、いま申しましたように、学問的な究明というものはやってはおりますけれども、はっきりした断定的なものがいえないという現在の水準にあるわけでございます。したがいまして、私どもとしましては、従来から学問的な研究なり検討をいろいろな試験研究機関等で進めているわけでありますが、いま言いましたように、なかなかまだそのところが科学的に立論ができないという状況下にあります。  しかしながら、ただいま御指摘のように依然として皮膚障害等の事故が起きているわけでございますので、私どもとしましては、現在の市販されている化粧品等の中でやや副作用の強いようなものと見られるものにつきましては、十分今後学問的に検討を進めてまいりたいということで考えているわけでありまして、その具体的なやり方としましては、ただいま私どものほうにあります薬事審議会の化粧品関係の専門委員会で、一応今年度は特に事故の多発していると見られている成分、あるいは乳化剤とか殺菌剤等の一部につきまして、その許容濃度というものをどのように規制していくべきかということの研究を進めております。  そこでこの研究が、大体私どもとしましては来年の三月、つまり本年度中にこの検討を終了したい、そうしまして、もし学問的にそのような乳化剤等の一部について許容濃度というものをきめる必要があるというような結論がかりに出てまいりますならば、先般の委員会でもお答え申し上げましたように、ホルモン剤と同様の規制をせざるを得ない、内容成分等を当然表示させるような方向になるだろう、私どもはかようなことで現在検討を進めているわけでございます。
  142. 近江巳記夫

    ○近江委員 もとに戻るようでありますが、合成洗剤で以前に問題になったABSの問題であります。男性整髪料の中に含まれているのではないか、そういった声もあるわけでありますが、これについてどうかという問題です。それと、そうしたものの成分、さらに高級の透き通った石けん、あの中にもABSが入っているのではないか、こういった声もあるわけです。さらに、一般のクリームには長期保存に耐えるように防腐剤が入っているのではないか。その事実があるかどうか。また、これが皮膚障害を与えている、そういううわさもあるわけでありますが、こうした点について見解をただしたいと思います。
  143. 坂元貞一郎

    ○坂元政府委員 お尋ねの点は、ただいま手元に資料がございませんので明確にさせることはできないわけでございますが、後ほど資料に基づきまして、内容成分等についてどのようなものが入っているかお答え申し上げたいと思います。  私どもといたしましては、先般の委員会でも申し上げましたように、化粧品等の原料というものは、いま御指摘のように非常に慎重に扱わなければならぬわけでございますので、先般来化粧品の原料の規格基準というものを、これは長年の研究の結果ようやくでき上がりましたので、先般、八月これを告示いたしたわけでございます。現在その原料基準に従いまして化粧品メーカーの指導をやっているわけでございます。その原料基準に合わないようなものは、今後法律に従いましてしかるべき処置をしていく、こういう体制で現在進んでいるわけでございます。  したがいまして、御指摘のように個々の品目についていろいろな原料成分が含まれているという場合に、その原料成分がほんとうに学問的に、使用してもいいものかどうかという点についてはなかなか一がいに申し上げられませんけれども、やはり相当な学問的検討の結果に基づきまして結論を出さなければならぬわけであります。で、いま申しましたように、原料基準というものを、はっきりしたものを作成いたしまして、現在これを実施に移しておりますので、いずれ遠からずこの原料基準等の実施というのが完全に円滑に行なわれますならば、原料等の問題については相当進歩していく、私どもはこういうふうに確信をしているわけでございます。
  144. 近江巳記夫

    ○近江委員 厚生省で品質の調査をしておると言っておられますが、どういった規模でそれをやっておられるのか、そうした技術分野を大体でよろしゅうございますが、ひとつ説明願いたい。  それと一つは、あなたの場合、表示を義務づけるということについてはまたしばらく考えなければならぬ。いまるる述べられたわけでありますが、私は、この薬事法という法律自体、考えてみれば薬局の距離制限なんというものは、これは考えようによれば憲法違反の疑いもあるのです。そうでしょう。それほどの強い薬事法が、なぜ表示を義務づけるというそれくらいのことができないのか、無力なのかということを私は聞きたいのです。その点どうですか。
  145. 坂元貞一郎

    ○坂元政府委員 第一点のほうの化粧品等の品質検査でございますが、たてまえとしましては、先般の委員会で申し上げましたように、医薬品と若干ニュアンスが違っているわけでありますが、しかしながらいずれにしましても、薬事法に基づきまして厳重な規制をするたてまえになっておりますので、品質検査の点について申し上げますと、私どものほうに中央にも国立衛生試験所というのがございます。それから各都道府県に地方衛生研究所というものが必ず一カ所ずつございます。こういうところで十分品質検査をし、また臨時に私どもで薬事法に基づきまして、全国におります二千名の薬事監視員が抜き取り検査というものをやっているわけであります。それに従いまして、品質面では相当違反事項もございますが、それに対する処分も毎年毎年ある、こういうことでございます。  それから第二点の成分の表示の点でございますが、この点につきましては、冒頭に御指摘のように、医薬品と若干違った作用を持っておること、つまり医薬品ほど強い薬理作用を持っていないということからしまして、すべての化粧品に内容成分を表示するような法律上のたてまえになっていないわけでありますが、私どもとしましては、いま申し上げましたように、ホルモン剤と同様に、今後相当問題が出てくと思われるような本のにつきましては、ホルモン剤同様の規制をしていこうということで、先ほど本年度中に結論を出したいと申し上げました乳化剤等については、そのような検討をいま専門家を中心として進めている、こう事情に相なっているわけでございます。
  146. 近江巳記夫

    ○近江委員 一つは、成分を表示するということは、結局価格の問題にも相当やはり影響してくると思うのです。それは最初のうちはなかなか理解しにくいかもしれないけれども、だんだん知識がそのように普及してくるに従って、結局消費者が適正な価格で買えるようになってくる。そうした消費者保護、さらにはまた先ほどのいろいろな障害の事例等を考えた場合、成分を表示するということについては、これは一般消費者にとっては非常にプラスなんです。この点を先ほども早急に検討するということをおっしゃっておられますが、往々にしていままで検討する検討するということでそうした問題がなかなか解決されずに終わっている。こうした点において、早急にこの点をよく相談して見解をひとつ示してもらいたいと思う。今後のあり方について厚生省のあなたに聞きましたけれども、公取としてはどうですか。
  147. 柿沼幸一郎

    ○柿沼政府委員 先般この委員会先生の御質問に対しまして、前向きで検討するという答弁をいたしたわけでございますけれども、その後厚生省と連絡をとりまして検討した結果を申し上げますと、成分表示の問題については二点論点があるように存じます。  第一点は、ただいま薬務局長からも申しましたような、保健衛生上の危害防止という観点からの問題でございまして、この点につきましては、薬事法の厳格な運用ということで厚生省に対処していただく問題かと思います。  それから第二点は、化粧品が非常に低廉な原材料を使いながら、それを相当高い価格で一般消費者に売りつけておるじゃないか、その点について成分表示がこれを救済する一つの方法になるのじゃないかという点でございます。確かにそういう面があろうかと存じます。若干その点を分析して私ども検討いたしました結論を中間的に申し上げます。  一つは、化粧品という商品が一種のムード商品というような性格のものでございまして、必ずしも需要者がどういうものを欲するかという問題と原材料が結びつかない面を持っているのじゃないかという点がございます。その辺を若干実証的に裏づけますために、私どもの消費者モニターの報告なり何なりにつきまして、実際原材料について一般消費者がどういう感覚を持っているかという点を若干トレースしておりますけれども、さらにこの点をもう少し消費者の感じというものを裏づける資料を集めていきたい、こう思っております。  第二点は、化粧品の原材料の非常に大きな部分を占めておりますものは比較的単純な原材料でございますけれども、実際のこれの需要に対する決定的の要因となっておりますのは、ごく微量の香料でありますとか顔料という面に関するくふうが多いわけであります。最近も問題になりました、たとえばレモンというような表示をする、それからハチみつが入っておるという表示をいたしますとか、あるいは一般消費者に非常にわかりにくいような化学品を添加するというような場合に、これが成分表示でうまくつかまえていけるかというような問題がございます。この点につきまして、もう少し分析を進めたいというふうに考えております。
  148. 近江巳記夫

    ○近江委員 先ほどレモンの話が出ましたが、私もいろいろ話を聞くものですからずっと見てみました。きょうは委員長の許可を得てサンプルを持ってきたのでありますけれども、これはいずれもレモンが入っておるという化粧品です。これには「レモンエッセンスのリンス作用でしなやかに仕上げます。」こう出ているわけです。それからこれは「天然レモンを主体にビタミンB6を加えた化粧水です。」こう載っておるわけです。これは「天然レモンオイルを配した美白乳液です。」「レモンの成分を含有し」とも出ております。あるいはまた「レモン果汗がたっぷり」、この石けんですね。こうした内容を見ますと、まず厚生省に聞きますけれども、天然レモンのエッセンスあるいはまたレモンオイル、あるいは天然果汁、そういったものが化粧品の中に配合されて、商品としての保存性があるかどうかという問題です。また、これらの事項が厚生省に届けられているか。先ほどの天然レモンオイルというのは、このレモンのどの部分の成分をさし、またそれはどのような効果があるのか、この点についてお聞きしたいと思います。
  149. 坂元貞一郎

    ○坂元政府委員 化粧品の中に、レモン乳液あるいはレモン化粧水というような名称で市販されているものが非常に多いわけでございますけれども、私どもとしましては、先般の国会で問題になりましたように、ポッカレモン、これは天然のレモンが含有されていないにもかかわらず、含有されているような疑惑を受けるような表示、広告をしていたというような事例でありますが、このことは化粧品についても同じくいえるわけでございます。したがいまして、化粧品の場合は天然のレモンの果汁等が現実に含有されているかどうか。もし、含有されていないにもかかわらず、いまお示しのように、入っているというような表示なり広告がかりに行なわれておりますならば、これは薬事法に基づきまして、不正な広告、不正表示ということに相なるわけでございます。したがいまして、私どもは、過去においてもそのようなものを摘発し、処分をいたしております。それからまた、ポッカレモンの問題が国会で論議されたあと、化粧品業界におきましても、さっそくこの問題を自主的に取り上げまして、今後化粧品等において、その容器なり包装に天然のレモン果汗が含有されているというように誤認されるような表現を行なわないということを業界として自主的にきめまして、公正取引委員会及び私ども厚生省のほうに、今後この点については厳重に業界としても自主的に規制を加えていきます、もしそのようなことに違反する場合には業界自身でも規制措置を考えるが、当然、行き過ぎ等の行為があったら、法律に基づく処分もあえてやむを得ない、というような業界自身の決議もありまして、現在これに基づきまして、このレモン等の問題は自主的に解決し、また、私どものほうでも、薬事監視という面で、この不正表示、不正広告というものを厳重に取り締まっていきたい。また現在取り締まっておるわけでございます。したがいまして、確かに内容成分の中に天然の果汁なりエッセンス等が入っていないにもかかわらず、入っているように誤認をさせるというようなことは決して正しい行き方ではないのでありますので、御指摘のように、この点につきましては、今後とも私どもは鋭意監視を続け、また、業界自身にも反省を促して、正しい方向に向いていくように努力をいたしたい、かように思っておるわけでございます。
  150. 近江巳記夫

    ○近江委員 私たちも、これはしろうとで、そうした成分のこまかいことはわからないですけれども、化粧品なんというのは保存性を要求されるわけです。そんな中に、変色しやすい、そういう天然レモンの、そうした果汁を配合するということ自体、私は無理だと思うのですけれども、これについてのあなたの見解はどうですか。
  151. 坂元貞一郎

    ○坂元政府委員 レモンの果汁なりエッセンスというものは、御案内のように、成分的には、いわゆる世間で言っておりますビタミンCに大体近いものでございます。ビタミンCの作用というものは、これも御承知だろうと思いますが、はだを美しくするとか、あるいはしみ、そばかすを除くというような作用にきき目があるわけでございます。  いま御指摘のように、レモンの果汁なりエッセンス等が入っておるということ自体が問題じゃないかという御意見でございますが、私どもとしましては、その点は、審査の段階で十分検討を加えまして、やはり薬事的に成り立たない、薬理的に問題があるような内容成分を含ませないように従来も指導しておりますし、今後もまた、先ほど申しました原料基準等の適確な運営を通じまして、この点は違反のないようにやっていきたい、かように考えているわけでございます。
  152. 近江巳記夫

    ○近江委員 要するに、そうした表示と内容が違うという場合においては、これは完全な法違反だと私は考えるわけです。これに対して、公取として、どのように思っていらっしゃるか。さらに、もしそういう事実がありとして、違反であった場合に、どういう処置をとっていかれますか。
  153. 柿沼幸一郎

    ○柿沼政府委員 ただいまのレモンの場合でございますが、食品のレモン果汁の場合と、化粧品のレモン添加の場合では若干事柄が違ってくる場合が多いんじゃないかと思われるわけでございますけれども、食品の場合には、なまのレモン汁そのものだというような表示で、前回排除命令を出したわけでございますけれども、おそらく化粧品に添加する場合には、レモンのエッセンスというような形でもって、そのかおりでありますとか、そういうものを添加するという意味合いのものが多いと存ずる次第でございます。ただ、明確にそれが不当表示に相当するような場合には、これは不当景品類及び不当表示防止法違反ということになるわけでございますけれども、一種のムードとしてレモンという表現を使うという場合には、排除命令を出すというところまでいかない場合も多いかと思われます。ただいま薬務局長が申されましたように、業界でも自粛するという体制でございますので、その成り行きを十分監視してまいりたいというふうに存じておる次第でございます。
  154. 近江巳記夫

    ○近江委員 私は、先ほどこのサンプルを持ってあがったわけでありますが、これらは結局氷山の一角だと思うのですね。そういう点で詳細に調べていけば、まだまだ検討しなければならないものが出てくると思うのです。  ここで私は厚生省の方に申し上げたいのでありますが、薬事法の第六十一条、この規定に従って、あらゆる化粧品に、その内容成分、配合割合を表示することを義務づける必要がある、このように私は思うわけです。これに対しての見解。また公取は、要するにこうしたまぎらわしい——先ほど現実に私が読みましたね。天然果汁を配するとか、そういうインチキですね、表示と内容が違う、こういうものを今後びしびしと取り締まっていくかどうか。要するに、公取としての基本的な態度。  さらに、いままで、レモン等の問題も非常に大きな問題になったわけでありますが、これはいろいろとあるんですね。商品の数からいけば相当なものだと私は思います。そういうまぎらわしいものがこのままの状態になっていること自体が、これは結局現在規制している法自体が手ぬるいのではないかと私は思う。今後、進んで不当表示法を改正して、そして商品に品質成分等の表示を義務づけることが必要ではないか。将来のことでありますが、これに対する見解をお聞きしたいと思うのです。できるだけ早期にこの改正案を提出される意思があるかどうか。以上、両局にお聞きします。
  155. 坂元貞一郎

    ○坂元政府委員 先般来から申し上げておりますように、化粧品の表示につきましては、具体的にいま二つ問題があると御指摘になったわけであります。第一点は、皮膚障害等の事故を防止するという意味合いと、それから第二点は、内容成分が虚偽にわたるような場合、あるいはそのおそれを招くような場合というような二つの観点から表示すべきじゃないかという御意見でありますが、私どもとしましては、第一点の、被害防止と申しますか、皮膚障害等の被害を防止する観点からする対策といたしましては、現在とられておりますホルモン剤同様の規制を加える成分というものが、今後出てくるかどうか。また出てくるならば、ホルモン剤同様の規制を早急に学問的な根拠に基づきましてやっていきたい。そういうことによって逐次、そういうような作用の強い成分が使用されるような段階になれば、そういうものをホルモン剤同様の規制を加えながらこの問題に対処していきたい。  それから第二の点としまして、内容成分が虚偽にわたるとか、あるいは誤解を与えるような表示のしかたという観点からの問題としましては、先ほど申しましたように、薬事法によりまして現在——法律の条文を申し上げますと、六十二条によりまして、化粧品については、「虚偽若しくは誤解を招くおそれのある事項」、を表示してはならない、こういうことになっている。それから片一方、広告につきましても六十六条で、虚偽または誇大な広告を化粧品についてはやってはならないことに相なっているわけでございます。したがいまして、当然そのような法律に触れる行為というものがありますならば、薬事監視という面からこの問題を取り上げて、摘発なり何なりで厳格な運用をやっていく、こういうことでこの問題は考えていくべきじゃなかろうか、私どもとしましては、こういうふうに考えているわけでございます。
  156. 柿沼幸一郎

    ○柿沼政府委員 化粧品の不当表示の問題につきましては、第一次的には薬事法の広告規制ということで厚生省にやっていただくことになると思いますが、不当景品類及び不当表示防止法の見地からも、これが一般消費者に不当な誤認を与えるというような場合におきましては、公正取引委員会としても厳重な監視を加えていきたいというふうに考えております。  それから内容成分について表示を義務づけるという点でございますけれども、表示を義務づけるということが、この問題に対処する適切な手段であるかどうかということにつきましては、先ほど申しましたように、こういった一種のムード商品といわれるようなものについては、私は相当問題があるのじゃないかというふうに、いままでの検討の結果、印象を持っておるわけでございます。ただ、内容成分の表示につきましては、最近わが国に入ってまいります外国商品を見ておりますと、わが国よりももう少し表示が詳しいというような面もございまして、やはり成分表示をどういうふうにしたらば、一般消費者の保護に適合するかということにつきまして、なお掘り下げた検討をさせていただきたい、そのために若干の時間をいただきたい、そういうふうに思う次第でございます。
  157. 近江巳記夫

    ○近江委員 この不当表示防止法が成立したときに、厚生省と公取との間に覚え書きを取りかわしましたね。間違いありませんね。その内容について聞かしてください。両局から……。
  158. 坂元貞一郎

    ○坂元政府委員 いま手元に資料がございませんので、正確なことは申し上げられませんが、覚え書きの内容として公正取引委員会及び厚生省の間でかわした事柄は、今後不当表示等の問題につきましては、この両行政機関において十分協議をしていきたい、片一方だけが出過ぎることのないように、十分協議をして事を運んでいくというのが第一点でございます。  それから第二点としましては、本来薬事法に基づきまして十分やれるものがあるわけでございます。そういうような事柄につきましては、まず薬事法という法律に基づきまして事を運んでいく。しかし、どうしても薬事法という法律のワク外で問題が出てくるというような事柄につきましては、当然公正取引委員会のほうの法律で問題を片づけていく。第一次的には薬事法で片づけ、そして、どうしても片づかない問題がかりに起こったような場合は、公正取引委員会のほうでこの問題を片づけていく。大体内容的には、かような趣旨の覚え書きに相なっておる、こういうように考えております。
  159. 柿沼幸一郎

    ○柿沼政府委員 大体趣旨といたしましては、ただいま薬務局長の申したとおりであるというふうに了解いたしております。
  160. 近江巳記夫

    ○近江委員 その間の取りかわした覚え書きをあとで提出してください。よろしゅうございますね。——私が知っておる範囲においては、これは公取事務局長と厚生省の薬務局長間に取りかわされた不当表示防止法運用に関する覚え書きですね。この要旨については、薬事法の第二条第一から第四項にいう医薬品あるいは医薬部外品、化粧品または医薬用具を対象としておる内容、法第二条、「景品類」「表示」の定義、指定について公取は厚生省と協議する。間違いありませんね。二番目、法第三条、景品類の提供に関する制限について協議する。これはカラーテレビとかそういうものが入りますね。第三番、法第六条、第十条、排除命令、公正競争規約の設定及び取り消しについて協議する。第四、法第四条、不当表示の規制については薬事法を適用する。ということは、本法は発動しないということを、これは意味しておる。私はここで思うのです。こうした消費者を守るべき法か、局長間の取りきめによって——いままでのあなた方の答弁を聞いておると、非常にそういった点にこだわっておるというか、拘束されておるように私は思う。法というものが、単に局長間のそうした覚え書きによって拘束されるものかどうかということです。この点について両局から見解を聞きます。
  161. 坂元貞一郎

    ○坂元政府委員 そういうような事例は現在の実定法の中にはたくさんあるわけでございます。つまり、一つの事柄について二つなり三つなりの法律がダブって規制を加えていくというような場合が多いわけでございます。このような場合は、どの法律が優先するか、これは確かに法律にはっきり明文の規定がない場合は、当然法律の趣旨なり立法の精神なり何なりを総合的に勘案して解釈を下すべき事柄だ、私どもはこういうふうに考えているわけでございます。そのような観点から、ただいまの薬事法なり不当景品類及び不当表示防止法のこの関係をながめますと、薬事法というものは、御承知のように主として保健衛生上の見地からいろいろな各種の規制を加えていくというのが法律の精神でございます。で、一つの事柄が起きた場合に、そのような精神を持った薬事法というものがまず最初に動き出して、その法律に基づいて規制を加えていくということが一番最初考えられるわけでありますが、しかしながら、どうしても薬事法のワク外の問題だというような場合は、これは別個の法律で規制を加えていく、こういうようなことに一般論として相なるかと思います。私どもといたしましては、薬事法ですべてのことが片づくというふうには決して思っておりません。特に最近の消費者問題というものは非常に複雑でございますので、単に保健衛生上の見地からだけの規制ということだけで問題が片づくようなやさしい問題でないわけであります。最近の動きを見ますると、公正取引委員会のほうで各方面に幅広く活躍しておられるわけでございます。これは私はそれでいいのじゃないか。やはり私どもといたしましては、薬事法というものはそのような保健衛生というものを第一主眼として各種の規制を加えているわけでありますので、それに基づきまして規制をまず優先的に考えていく。しかし、どうにも薬事法のワク外の問題だ、あるいはそれ以外の問題で、薬事法という法律の体系では規制ができないという場合は、これはもう当然別個なしかるべき法律でこれを規制をしていくというのが一般論的な考え方だろう、こういうふうに思っているわけでございます。
  162. 柿沼幸一郎

    ○柿沼政府委員 薬事法と、不当景品類及び不当表示防止法では、目的を若干異にするわけでございます。不当景品類及び不当表示防止法の第一条の目的には「この法律は、商品及び役務の取引に関連する不当な景品類及び表示による顧客の誘引を防止するため、」云々と書きまして「公正な競争を確保し、もって一般消費者の利益を保護することを目的」といたしておるわけでございます。したがいまして、対象は同じでありましても、こういった角度からこの法律を発動するということはあり得るわけでございます。ただ、この法律が施行されました当初、公正取引委員会といたしましては、この運用に当たる実際の人員が少ないという問題もございまして、特に医薬品といった非常に複雑な行政対象に対しまして専門家をたくさん擁しておる厚生省がまず第一次的にその運用に当たる、ただ問題がございました場合には、私どもといたしましても厚生省と緊密な連絡をとって、こういった角度からの法律の運用についても遺憾なきを期していきたいというのが、事務的な申し合わせといたしまして一応その間に線を引いた根拠であろうかと思われる次第でございます。実際問題としてこの法律が適用できるかできないかという点になりますれば、もちろん法律が規定したとおり運用しなくちゃならない場合もあり得るというふうに考えております。
  163. 近江巳記夫

    ○近江委員 そこで厚生省に聞きますけれども、要するにあなたのほうで、そうしたたとえば先ほどの不当表示とかいろいろな点を発見されるわけです。成分についても非常にまずいというような点、そういう点をあなたの厚生省のほうで全部ストップしてしまうというような事態になれば、公取が幾らこの点はまずいじゃないかということを言っても、結局厚生省のほうでいろいろなことを勘案してちょっと待ってもらいたい。それじゃ公取でもって先ほどの不当表示防止法等の法律をほんとうに権限を持ってやっていこうというそうした舞台がなくなってくるわけです。今後そういった点において、厚生省として厳正公平に、あくまでも消費者を守るという観点からやっていけるかどうか、約束できるかどうか、その見解を聞かしてください。
  164. 坂元貞一郎

    ○坂元政府委員 薬事法の運用につきましては、先ほど申しましたように、保健衛生という、いわゆる保健衛生立法に根本の趣旨がなっているわけでございます。したがいまして、保健衛生的な見地からの規制は、この法律を適確に運用すれば相当な効果なり成果があがるはずのものでございます。しかしながら、最近の消費者問題というものは、いまも申しましたように、非常に複雑な内容を持っておるわけでございまして、ただ単に私どもの所管しております薬事法だけで事が円満に解決するということは至難でございます。したがいまして、そういう観点から申し上げますと、公正取引委員会のほうのいろいろな法律の運用なりあるいは実際の指導なりで問題を片づけていただくという場合も、最近の事例からいいまして非常に多いわけでございます。私どもとして公正取引委員会と厚生省の間に対立的な感情があるとも思っておりませんし、また従来の経緯を見ましても、この両者間に相当緊密な連絡をはかりながらいろいろな問題について事をきめていくという実績になっております。私どもとしましては今後ともそのような両者協議という基本的な考え方は十分尊重し合いながら事をきめていきたい、ひとり薬事法だけでやればすべての問題が片づくというふうに私自身も思っておりません。場合によったら公正取引委員会のほうのいろいろな各種の法律を十分運用していただくと、事が非常に円満に、円滑にいくという場合もケースとしてあり得るわけでございます。今後とも私ども公正取引委員会のほうと十分緊密な連絡をとりながらすべての問題について対処していきたい、かように考えているわけでございます。
  165. 近江巳記夫

    ○近江委員 公取に対しても私は申し上げたいのですけれども、不当表示防止法ですね、これを成立さすときに、あなたのほうの、先ほど局長間の覚え書きからいけば、これはほんとうに恥も外聞もありませんで、足かせをはめられてしまっておる。先ほどのあなたの答弁でも、何ぶんにも手薄でございました。これはいまはかなり陣容は整ったかもしれませんが、そのときの条件はそうだったかもしれない。しかし、あまりにも厚生省におんぶした形じゃないですか。一般国民大衆は公取が最も商品のそうしたことについてわれわれを守ってくれるんだという絶大な信頼を置いておる。あなたがびしびしと国民を守るという立場に立って動いてもらわなければ、だれが守るのですか。それを単に局長間の約束がありますからと、公取としての意見もびしびし言えないようないまのような態度で国民は信頼できますか。そういう点について、局長間の覚え書きというものは、何も覚え書きまでかわす必要はない、私はそう思う。今後、公取として再販規制の問題等もありますし、相当き然とした態度でこれから進んでもらわなければいかぬと思う。それに対して公取としてどういう決意で今後臨んでいくか、それについて聞かしてください。
  166. 柿沼幸一郎

    ○柿沼政府委員 この法律が発足いたしましたときの事情は申し上げたとおりでございますが、その後逐年、皆さん方の御支援、それから一般消費者の御支持もございまして、この法律運用の陣容も充実させていただいてまいっておるわけでございます。私どもといたしましては、基本的に一般消費者の利益を守るという立場から、き然たる態度でこの法律の運用に当たっていきたいというふうに考えてまいっておる次第でございます。
  167. 近江巳記夫

    ○近江委員 いま、前回から引き続いていろいろと聞かしてもらったわけでありますけれども、いずれにしても、私の取り上げたのは氷山の一角です。全商品を調べていけばどれほど問題が出てくるかわからない。こういう点について公取また厚生省は、あくまでも消費者保護という第一義に立って今後臨んでいただきたい、この点を特に要望しておきます。  最後に、通産の政務次官も関係ないとはいえない立場です。いままでのやりとりを聞かれてどのように思っておられるか聞かしてください。
  168. 藤井勝志

    ○藤井政府委員 最近、消費者保護行政の必要性が特に強調されておる現在でございまして、御趣旨の点、公取のお立場、それぞれございますが、われわれ消費者保護の見地から、大いに適切な行政運営がされるように十二分に注意していきたい、このように考えます。
  169. 近江巳記夫

    ○近江委員 それじゃ、この件についてはこれで終わります。  次に中小企業の問題をお聞きしたいと思います。  この前、年末の中小企業に対する金融対策をお聞きしたわけでありますが、きょうの新聞にも出ておりますとおり、来年の一月から国際収支の悪化に対応するために本年の二五%から三〇%減の窓口規制を実施する、こういうことが発表されたわけです。現在のこの状況から考えますと、あの一厘の引き上げ、さらに海外の諸情勢の悪化、あるいはまた日銀が本年一五%の窓口規制をしましたが、それをさらに二五ないし三〇%の窓口規制をやっていく。そうなってくれば当然選別融資等の問題も起きてくるわけです。長官も御存じのとおり、本年の倒産数はおそらく八千件をこえ一万件に近づくのではなかろうか。これは一千万円以上でその数です。それ以下であったならばどれほどの中小企業、零細企業が倒産しているかわからない。これはもう単なる中小企業の問題ではない。これは社会的な問題だと私は思う。年末対策についても、千六十億、さらに民間金融については一兆八千億の手当てをしたなどと聞きました。しかしながら、ほんとうの問題が出てくるのは、これから三月、春にかけて私は出てくると思う。いままでのようなこの対策でいきますと、これはたいへんな問題になります。これに対して、中小企業、零細企業を救うためにどういうような抜本的な対策を考えておられるか、この点をお聞きしたいと思います。
  170. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 私たちの対策といいますか、処置いたしましたことをお答えいたします前に、先生御引用の新聞記事でございまするが、朝日新聞が本日報道するところによりますと、日銀は一月から窓口規制で二五ないし三〇%減らす、こういう記事が出ておりますけれども、直ちに私のほうで確かめましたところ、まだそのような決定はしておらないということでございます。ただ、御指摘のように、すでに十−十二月におきまして、前年度の伸びました分、貸し出し増加分に対しまして、貸し出し増加分は四千八百五十七億でございますが、四千八百五十七億の一五%を削りまして本年の伸び分は四千百二十という窓口規制を日銀当局は実施したのでございますが、御指摘のように、また私たちも、ポンドの切り下げ等からわが国の国際収支についての見通し難というふうなことで、来年の一月−三月につきましてはさらに窓口規制を強化するという話が伝えられておりまして、非常に心配をしておるわけでございます。したがいまして私たちといたしましては、すでに当委員会においてお答えいたしましたような財政投融資上の貸し出し規模の増加、これは実は年末だけではなくして、年越し後の一−三月分の所要資金も見込んだ分でございますが、それだけでは不十分であるというふうに思いましたもので、大蔵及び日銀当局に要請をいたしたわけでございます。その中身は次のようなことになっております。まず年末金融でございますが、年末金融につきましては、全国銀行、相互銀行及び信用金庫は、それぞれの協会または連合会ごとにこの十一月初めにきめました中小企業向けの貸し出し目標額の達成につとめてほしい、これは、前にも先生指摘ございましたように、一応一兆九百億という数字がきまったわけでございますけれども、昨年の実績はこの目標額を下回っておったものでございますから、本年はぜひこの目標額を達成するように指導してほしい、これが第一点でございます。  それから第二点は、今後とも全国銀行にありましては、各銀行の総貸し出し残額中に占めます中小企業向けの貸し出し残額の比率、これを落とさないようにしてほしいということでございます。これは金融が引き締まってまいりますと、とかく中小企業に貸し出しました分ないしは中小企業に貸し出すべき分を削りまして大企業のほうに回すという例が従来の金融引き締め時に行なわれたものでございますから、これを予防したいという趣旨でございます。  それから第三点は、中小企業専門金融機関にありましては、資金がこれ以上詰まってまいりますと、コールレートが上がるわけでありまして、この中小企業専門金融機関は、本来中小企業に向けるべき金をコール市場に流しまして、そしてコール市場で運用するというおそれがございます。これも過去の金融引き締め時にはあったことでございますので、そういうことはひとつやめてほしい、そういう指導を強化してほしい、これが第三点でございます。  さらに第四点といたしまして、少なくとも過去の引き締め時にあったような、通常健全な経営をしておる中小企業が金融面だけの理由で倒産するに至るような、すなわち黒字倒産に至るような事態は絶対に引き起こさないように指導してほしいという申し入れをいたしまして、大蔵、日銀両当局も、これは当然のことであるということで、責任者の言を得まして、責任者はおのおのそういう趣旨で傘下の金融機関を指導することを約束した、こういう次第になっておるわけでございます。しかし、これでも非常に心配でございますので、われわれといたしましては、今後とも金融情勢を十分厳重に監視しておりまして、中小業者、特に零細の業者に対するしわ寄せが極力ないようにがんばってまいりたいというふうに考える次第でございます。
  171. 近江巳記夫

    ○近江委員 なるほど長官のおっしゃったことは非常に私はいいように思います。しかしながら、いままでのやり方を見ておりますと、このようにやっております、あのようにやっております。だけれども、実際にはそれが行なわれていない。歩積み・両建ての問題等にしても、これは大蔵省に言いまして、各銀行筋にも徹底して、厳重にこれはやっております、そんな報告を私は耳が痛くなるほど聞いております。だけれども、現実に下ではそれがやられているのです。窓口規制も選別融資の点も言っておきます。だけれども、現実に選別融資されて、借りたくたって借りられない。ですから、いまおっしゃったそうした事柄をほんとうに最末端にまで行き渡るように厳重な監督をやってもらわなければ私は困ると思うのです。ですからそれに対してただ言いましただけで終わったんでは、これはあんまりかわいそうです。中小企業のわが国に占める立場については、長官は何もかも知っていらっしゃるわけですから、そんなことをいまさら言う必要はないと思います。これに対して、長官はおっしゃったが、さらにそれを徹底さすためにどのようにするのか、さらにもう一歩突っ込んだ決意、またその対策をお聞きしたいと思うのですけれども、どうですか。
  172. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 中小企業庁といたしましては、中小業者、特に零細中小業者の地位と申しますかお仕事をお助けするのが私の仕事でございます。したがいまして、先生指摘のように、これは口頭禅ではいけませんので、現実に実績があがらなければいけないということで、実は先ほど申し上げましたようなことを金融当局、財政当局に要請をし、それを監視するという体制をとっておるわけでございますが、なお私たちといたしましては通産局ないし府県という手足もございますので、これらを通じまして厳重にその辺の注意をいたしますとともに、さらに各種の産業団体、中小企業の業種団体を通じての情報のすみやかなる入手及び情勢の的確なる把握をいたしまして、遺漏なきを期してまいりたいと思います。  さらに各省に対してでございますが、きょうこの委員会でもちょっとお答えを申し上げましたように、これから中小業者の立場をどういうふうに保護し、どういうふうに国民経済の中に占めます重要な地位に応じた国家の保護を与えていくかというのは、これは私たちが窓口でございますが、同時に私は各省の責任であると思います。したがいまして、中小企業庁といたしましては、今後一そう各省との連絡を密にいたしまして、各省のこういう面に対します配慮を強く要請してまいりたいというふうに思います。
  173. 近江巳記夫

    ○近江委員 それでは、その点中小企業庁としてさらに強力な今後の推進を要望しておきます。  それから、資本自由化などの影響を考えますと、中小企業の根本的な体質改善をしていかなければならぬ、このように思います。政府としても、中小企業振興事業団を発足されて、近代化の足がかりをつくられたわけであります。しかし発足してすでに数カがたっておりますが、私の聞く範囲においては、非常に申し込みも少ない。それはPRが足らないとかいろいろな原因もあるでしょうが、こちらが想像していた以上に少ない現況ではないか。こうした実態をあとで御報告願いたいと思う。  それからさらに、同事業団の融資を受けて近代化をはかれるのはどれだけの中小企業か。これは少なくとも自己資金を三五%出さなければならぬ。これはいうならばエリートです。そうすると全体の中小企業、零細企業から見れば、これはほんの一握りということばもあてはまらないくらいのわずかな部門です。おいおいこの振興事業団も発展はしていくと思いますけれども、それに至るまでの間、零細企業、中小企業がどのように体質改善、近代化をしていくか、特に個々の企業について、私は非常に問題だと思う。四十一年度の予算から見ますと、四十二年度における個々の企業に対する近代化資金が十億減っていますね。都道府県においてプールし合った金を合わせれば前年度と変わりないといった答弁もいただきましたけれども、いよいよ予算編成にあたって同じような通産省がそういう態度でいくとなると問題です。これだけ倒産がふえてきている。金融面においてこれだけの対策が立っておるというお話先ほどありましたけれども、しかしながらそういうような、要するに踏みつぶしていくような、それを黙って放置していくような考え方でいきますと、さらに倒産に拍車をかけてくる。かわいそうです。ですから、そうした個々の企業、あるいはさらに現在の中小企業振興事業団のそうしたあり方、中小企業の近代化に対してどのように今後対処していかれるか、そういった点をひとつ長官並びに政務次官の両方からお聞きしたいと思います。
  174. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 まず私から事務的な問題をお答えいたします。先生指摘のように、特に私たちも、この倒産が多いという事象を見まして、これは単に放漫経営でございますとか、経営のかじのとり方が失敗したというよりも、むしろ構造上の問題が相当多いという認識を持っておりますし、さらに資本の自由化、それから発展途上国の追い上げ等々を考えますと、中小企業の構造改革は目下一番大事な、急がなければならない問題であると思います。その場合に、御指摘のように、この意味します中小企業が中小企業の中のエリートではいけないと思います。したがいまして、この中小企業振興事業団の活用におきましては、エリートのみをピックアップするというふうなことではなくして、むしろ業種ぐるみ、産地ぐるみに構造改革を進めていくという構想をも織り込んでおります。御承知のように繊維の構造改善対策はこういうようなやり方をしておるわけでございますが、繊維の構造改善対策で得ました経験を他の業種にもわれわれは及ぼしてまいりまして、業種ぐるみ、産地ぐるみ、一番零細な業種の人をも救い上げていくということをいたしたい。なお、これにつきましても、御指摘のように、事業団が供給し得る資金は七割でございまして、三割は手金を有しなければならぬという点がございますが、この三割につきましても、実は繊維の構造改善の事業協会に五億の保証基金を用意いたしておりまして、金のない企業に対しましては保証制度をさらに活用するということをやった次第でございます。  さらになお、この事業団の対象に乗りませんような、業種ぐるみの構造改善ができない、ないしは協業化、共同化もできないというものにつきましては、従来、いま御指摘のような近代化資金の供給を府県を通じてやるわけでございますが、本年度は前年度に比べまして財政投融資の面は減っておりますけれども、貸し出し規模の面においてはふえております。来年度以降この制度をますます充実して、現在の運用におきましてはこれは三百万円以下というふうに運用いたしておりますので、主として小規模事業者の近代化に役立っている次第でございます。さらに本年度から機械の貸与制度、これは八割を無利子で貸すという制度も始めたわけでございますが、私たちとしては中小企業の中の一部の上部階級ではなくして、むしろ中小企業の中の大部分を占める零細企業者の近代化、合理化に重点を向けた構造改善対策を今後も進めてまいりたいと思う次第でございます。
  175. 藤井勝志

    ○藤井政府委員 先ほどからいろいろ御指摘があり、中小企業庁長官のほうからお答えをいたしまして、もうすでに尽きておりますけれども、せっかくの御指摘でございますから、簡単にお答えをいたします。  申し上げるまでもございませんが、現在かつてなき大きな転換期に中小企業が置かれておることは御案内のとおりであります。いわば低廉な労働力に依存しておったのがいままでの中小企業の伝統的なあり方ともいえると思うのです。それが大きく転換を迫られておる、ここにいまのお話のいろいろな問題が集約されてきておると思うのです。したがって、根本的には、中小企業の構造改革ということと真剣に取っ組む。特にわれわれのほうは厚生省の立場と違いまして、いわゆる単なる社会政策というわけにはまいりません。コマーシャルベースという一つの線を立てて、中小企業といえども国際競争力にうちかつだけのものをつくり上げるというくらいな気概を持って取り組まなければならない。そのほか、ついていけない者は企業転換といいますか、そういったこともあわせて考慮をする。ついていけないところを無理やりにそのレベルに置いて日本経済全体がもたもたしておったのではこれはよろしくない。このように考えているわけでございまして、御趣旨の点は十分理解いたしまして善処いたしたい、このように考えます。
  176. 近江巳記夫

    ○近江委員 それから労働力の問題でございます。いま次官もそれについて若干触れられたように思いますが、これもいろいろな点の関連があるわけでありますけれども、非常に中小企業、零細企業は労働力確保に苦慮しております。一たんやめていったあとの補充がきかない、そういった点で事業を縮小していく、こういったじり貧のような状態になっておりますが、この労働力の需給に対して、特に中小企業、零細企業の労働力確保、こうした問題についてどのように考えていらっしゃるか。
  177. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 ただいま日本の全企業が悩んでおりますが、特に中小企業者は労働力確保に苦労をしておるわけでございます。それに対します対策として一番根本的と申しますか、まずやらなければいけないのは、収益力をつけるという点、すなわち中小企業といえども、大企業に負けない賃金を払うということは絶対に大事であるということで、収益力を強力化せしめるということは、結局合理化せしめる、競争力を強めるということでございますから、これをまず基本対策にしておる、これは私たちの責任であると思います。  それから第二に、同じ賃金をもらえましても、中小企業には行きたがらないというのが現実でございます。これは申すまでもなく、中小企業の職場は労働環境が必ずしもよくないという点がございますので、労働環境の改善につきまして、労働省と協力をし、私たちのほうの予算ないし財投でカバーすべきものは私たちで、労働省でカバーすべきものは労働省で重点的に取っ組んでおりますが、今後、福祉施設なり体育設備等の労働環境を改善する施策については、来年度も重点的に税制の面をも活用してまいりたい、こういうふうに思っておるわけでございます。  それから第三は、職業紹介所制度、主としてこれは労働省の専属分野でございますが、この分野に対しまして、私たちとしても、このように中小企業の職場は賃金もよくするし、また労働環境もよくするのだから、ひとつ職業紹介のほうも力を入れてほしいということで労働省のほうの協力を仰ぎまして、職業紹介所制度を活用いたしまして、さしあたり特に輸出品をやっておりますような輸出貢献企業と申しますか、この辺への労働配分について特に労働省でも重点的に考えるというふうな対策を講じております。職業紹介所制度の活用はさらに必要であるという要請を私たちはいたしております。  そのほか、いろいろきめこまかくやらなくてはいけないものでございますので、労働省幹部と私たち幹部と月に一ぺんずつ隔意ない懇談会を開いておりまして、おのおの知恵のある者はどんな小さな知恵でも出し合っていこうではないかというふうなことで勉強をしておるのが実情でございます。
  178. 近江巳記夫

    ○近江委員 もう一、二点聞いておきたいのですが、特恵関税の実施によって、わが国の貿易という点において相当影響を受けると思うのです。特に、この中小企業の貿易というものは完全に影響を受ける。こういう点におきまして、今後中小企業の貿易政策として、たとえば税制上においてもっと優遇するとか、いろいろな対策があると思いますが、非常にいまこういった問題が大きくなっておりますし、この点についてひとつお聞かせ願いたいと思うのです。
  179. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 特恵制度につきましては、主として中小企業に対します影響が非常に大きいというゆえをもちまして、わが国が反対であるという態度を堅持しておりましたことは御承知のとおりでございます。ただ、世界先進国の大勢及び特に発展途上国からの非常に強い要請からいたしまして、日本としてもこの問題を前向きに考えていかざるを得ないということで十一月の閣議決定を見、さらに最近のOECDの理事会におきまして、日本側の条件を入れてくれるならば、日本側はこの問題について前向きに考えるということでございまして、その出しました条件といたしましては、対外的に各国先進国間の輸出入両面において公平を考える、すなわち、日本だけがしょわないという点と、それから次に、国際競争力のある産品は特恵から除くということ、この条件を出しまして、これが理事会で認められましたので、日本としてもそういう条件のもとにこの問題を前向きに考えていくということになったわけでございます。しかしそういう条件をのませまして、さらに関税制度を活用して、緊急関税制度等で緊急の場合には対処するといたしましても、中小企業の輸出産業の面におきまして、またもう一面の国内のマーケットにおきまして、非常に大きな影響があるということは先生指摘のとおりでございます。したがいまして私たちといたしましては、全力をあげてこれの対策にいま苦慮をしておるのでございますが、ポイントは何と申しても構造改革であり、競争力強化が第一であると思います。  それから第二におきましては、発展途上国と競合しないような産品に次第に切りかえていくという政策はぜひとるべきであるという検討をいたしております。  第三には、そうなりますと、中小企業は技術開発力が非常に弱いものでございますので、技術開発力をつけさせて、新商品の開発なり、新しい生産方法の開発なり、あるいは経営管理面におきます広い意味での技術なり、こういう面の改善をはからせていくという方向の勉強を始めております。  さらに、輸出振興についての対策も必要であるという検討もしておりますが、それとともに、先ほど政務次官も答えられましたように、ときによりますと、製品転換を考えるべき中小企業もあるのではないか。製品転換を考える場合においては、われわれとして全力をあげて新しい製品分野についての金融面、税制面の助成を考えていく、こういうふうなのを基本方向にいたしまして勉強をいたしておるわけでございますが、先生承知のとおり、実施は大体二年ないし三年後でございますので、それまでに万全の策を考えていきたい、ないしは中小企業の体質改善を極力進めてまいりたいというふうに考える次第でございます。
  180. 近江巳記夫

    ○近江委員 局長お話よくわかりました。私は先ほど税制の問題、優遇の措置について考える意思はないか、こういった点を一点入れたわけでありますが、中小企業で貿易にあたっている人は非常にその声が強いわけです。この点はどうですか。税制上の優遇です。
  181. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 先ほど非常に抽象的なことで失礼いたしました。実は具体策はまだはっきりきまっておりませんので、その方向で勉強するということで申し上げたわけでございますが、税制として活用できますのは、当然先ほど申し上げました各項目の中身になるわけでございます。構造改善対策の税制もございますし、技術開発上の税制もございますが、特に先生指摘のように、輸出振興のための特別税制、これはもう十分に考えるべきである。準備金等を活用いたしまして、ないしは特別償却制度等を活用していくということを当然考えていくべきであるというふうに思います。
  182. 近江巳記夫

    ○近江委員 それでは最後にお聞きしておきます。  財政の硬直化ということが非常にクローズアップされてきておるわけでありますが、中小企業の毎年の予算を見ますと、非常に乏しい。四十二年度においても三百五十億、ざっと〇・七%です。これはもう長官も中小企業の立場は御承知のとおりであります。九九・七%は中小企業、零細企業である、さらに四割以上の人がそこで働いておる。さらにはいろいろな税金をひっくるめますと、中小企業関係で払っておるのはざっと四千億をこえる、そういった点からいったときに、わずか三百五十億、〇・七%という予算でもって、幾ら項目はこうします、ああしますといろいろ並べ立てても、絶対額においてこんな弱体なことであっては、ほんとうにただ言うだけにすぎない。何ら内容がないということになります。ここにおいて、この硬直化のしわ寄せがさらにこのように乏しい中小企業にこないようにまず防ぐ——防ぐという防戦の体制ではない、中小企業の現況を考えるならば、さらにもっと大幅な予算を獲得していく、こういう姿勢、これを最も長官が強く持ってもらわなければならない。何百万という中小企業、零細企業の期待は長官の肩にかかっているわけです。ひとえに長官の肩にかかっておる。ですから、いよいよこの予算編成期にあたって、長官としての決意、姿勢をひとつここで述べていただきたい。さらに政務次官にもお願いしたいと思います。
  183. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 御指摘のように、中小企業者は、従業員を入れますと千九百万人おりますし、農業人口は千二百万人である。こういう頭数に比べまして、あまりにも、予算面におきまして、中小企業予算は三百五十億であり、農林水産予算は、食管を入れますと四千九百七十億であるというふうな、格段の差があるわけでございます。もっとも、財政投融資におきましては、中小企業は先ほど政務次官が答えられましたように採算ベースに乗るということがやはり基本でございまするので、国の支援措置としては一般会計によりますいわゆる補助金ベースの金よりも、むしろ財政投融資、すなわち金融ベースを国で援助するという方向が有効であるということで、財投におきましては、中小企業関係は本年度二千九百九十八億、約三千億でございまして、これに対します農林関係の財投は千四百十億ということで、財投関係におきましては、これは投入ベースでございまして、貸し付けベースになりますと中小企業は六千三百八十五億、農林関係は千六百億と、さらに開くわけでございます。それにいたしましても、先生指摘のように、われわれはこの予算編成期に際しまして、特に硬直化が叫ばれておりますし、新規要求が非常にむずかしいというときに、われわれは深く心配をしておるわけでございます。ちなみに、中小企業関係の予算は、本年度全部ひっくるめまして、各省関係でございますが三百六十四億四千万円でございます。これに対しまして五百三十億七千万円の要求をいたしております。前年度対比四五・六%の増でございます。五百三十億といっても、非常に小さな金ではございますけれども、実は、先生承知のように、予算要求は前年度の二五%頭打ちということで、そういう政府、閣議の申し合わせがあったわけでございます。二五%頭打ちに対しまして四五%の要求をしたというのは、実は通産関係のほかの部分に遠慮をしてもらいまして、がまんをしてもらって、中小企業予算に集中して予算要求を四割五分増しでしている、こういうことでございます。私といたしましては、何とかこの出しました予算要求につきましては、全面的にひとつこれを通したいというふうに考えておりますが、何ぶんひとつ各方面のお力添えもいろいろお願い申し上げたいと思う次第でございます。
  184. 藤井勝志

    ○藤井政府委員 ただいまわれわれに対して激励を兼ねた御質問をいただきまして、たいへんありがたく思いますが、私、率直に申し上げまして、通産行政の基本は輸出振興と中小企業対策であるというふうに考えておる一人であります。したがって、御指摘のような問題、全く同感でございます。特にまた、私は御指摘のごとく、ただ、いままで予算が少ないからという、こういう受け身の形からだけではなくて、中小企業を取り巻く現在の内外の情勢は、特に七月の資本自由化の問題、ケネディラウンドを背景とした関税一括引き下げの問題、また三年後に控えた発展途上国特恵関税供与の問題等、こういうことを展望いたしますと、これはひとつ相当思い切った中小企業対策を急がなければならぬ、こういうふうに考えております。せっかくの御支援、今後一そうよろしくお願いいたします。
  185. 近江巳記夫

    ○近江委員 えらい重荷をよろしくよろしくということでしょわされたような感じでございますが、これはほんとうに全員が一致して、国民の代表、さらにその為政者の立場として、力を合わせていかなければならぬ問題だと私は思います。  政府の申し合わせで二五%という話が出てきまして、私もそういうことを初めて聞いたわけでありますが、非常によくないと思うのですね。全体に二五%以上はよくない。とにかくそういうことをやっているから政府の予算が総花的になってしまう。ほんとうに力を入れなければならないところは一〇〇%であろうが二〇〇%であろうが入れていく。したがって、長官としても、立場上そうした申し合わせ等で拘束されるという気持ちはわかりますけれども、しかし先ほど申し上げたとおり、ただ長官一人の肩にいうなればかかっておるわけです。中小企業千数百万の人々の期待がかかっております。したがって、そうしたパーセントにとらわれることなく、またわれわれ議員としても、これは党としても、中小企業の強化については常に力を入れております。直接また総理等にもこうした問題も進言をしたい、このように思っております。私たちもできるだけそうした今後の推進をしていきたいと思っております。したがって、長官もその二五%ということに影響をされずに——あんな五百何十億なんて少な過ぎますよ。これは私は決して暴言ではないと思う。ほんとうに長官として構想を練り、これだけは要るという対策からいうならば、もっとひとつ強気の姿勢でがんばってもらいたい、このように私は思います。その点を特に要望しておきまして、非常に長時間にわたりましたが、これで終わらせていただきたいと思います。
  186. 島村一郎

    島村委員長 次回は、明十四日木曜日午後一時理事会、午後一時十五分委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後四時十六分散会