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1967-12-14 第57回国会 衆議院 交通安全対策特別委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十二年十二月十四日(木曜日)    午前十時三十分開議  出席委員    委員長 山下 榮二君    理事 大久保武雄君 理事 大竹 太郎君    理事 木部 佳昭君 理事 登坂重次郎君    理事 井上  泉君 理事 太田 一夫君       丹羽 久章君    広川シズエ君       古川 丈吉君    古屋  亨君       後藤 俊男君    塚本 三郎君       松本 忠助君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)      田中 龍夫君  出席政府委員         総理府総務副長         官       八木 徹雄君         内閣総理大臣官         房陸上交通安全         調査室長    宮崎 清文君         警察庁交通局長 鈴木 光一君         法務政務次官  進藤 一馬君         厚生政務次官  谷垣 專一君         厚生省医務局長 若松 栄一君         建設省道路局長 蓑輪健二郎君  委員外出席者         大蔵省銀行局保         険部長     新保 實生君         厚生省医務局次         長       北川 力夫君         通商産業省重工         業局自動車課長 田中 芳秋君         運輸省自動車局         保障課長    菅川  薫君         運輸省自動車局         整備部長    堀山  健君         労働省労働基準         局補償課長   長岡  貢君         建設省道路局企         画課長     豊田 栄一君     ————————————— 十二月十四日  委員春日一幸辞任につき、その補欠として塚  本三郎君が議長指名委員に選任された。 同日  委員塚本三郎辞任につき、その補欠として春  日一幸君が議長指名委員に選任された。 同日  理事山田耻目君同日理事辞任につき、その補欠  として井上泉君が理事に当選した。     ————————————— 本日の会議に付した案件  理事辞任及び補欠選任  交通安全対策に関する件(交通事故によるむち  うち症に関する問題等)      ————◇—————
  2. 山下榮二

    山下委員長 これより会議を開きます。  この際、おはかりすることがございます。  理事山田耻目君から理事辞任申し出があります。これを許可するに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 山下榮二

    山下委員長 御異議なしと認めます。よって、許可することに決しました。  これより理事補欠選任を行ないたいと存じますが、これは先例によりまして、委員長において指名することに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 山下榮二

    山下委員長 御異議なしと認めます。よって、理事井上泉君を指名いたします。      ————◇—————
  5. 山下榮二

    山下委員長 この際、田中総理府総務長官及び八木総理府総務長官からそれぞれ発言を求められております。順次これを許します。田中総理府総務長官
  6. 田中龍夫

    田中国務大臣 私は、このたび総理府総務長官に就任いたしました田中龍夫でございます。よろしくお願いいたします。また私は、総理府に設置されております交通対策本部本部長もつとめさしていただいておる次第でございます。就任に際しまして一言ごあいさつを申し上げます。  御承知のごとくに、ここ数年来、自動車保有台数の急激な増加に伴いまして、交通事故も逐年増加する傾向を示しております。このような趨勢に対処いたしまして、政府は、人命尊重、特に歩行者保護の見地から、交通安全対策政府の最重点施策一つに取り上げまして、交通安全施設整備拡充交通安全活動の推進、交通秩序の確立及び被害者救済対策強化の四本の柱を中心といたしまして、諸般の施策を積極的に推進いたしておるところでございますが、私も交通安全対策強化につきましては、最大努力を傾注する所存でございますので、何とぞよろしく御協力のほどをひとえにお願い申し上げまして、ごあいさつといたします。(拍手
  7. 山下榮二

    山下委員長 引き続きまして、八木総理府総務長官にお願いいたします。
  8. 八木徹雄

    八木政府委員 このたび、総務長官を仰せつかりました八木徹雄でございます。たいへんふなれな男でございますけれども、交通問題というのはいま社会の最大関心事でございます。皆さまの御指導、御鞭撻をいただきまして一生懸命勉強してまいりたいと思いますので、どうぞよろしくお引き回しのほどをお願いいたします。(拍手)      ————◇—————
  9. 山下榮二

    山下委員長 それでは、次に交通安全対策に関する件について調査を進めます。  まず、交通安全施設等整備事業三カ年計画の変更、及び通学路に係る交通安全施設等整備及び踏切道構造改良等に関する緊急措置法施行に伴う昭和四十二年度補正予算について、総理府から説明を求めます。
  10. 宮崎清文

    宮崎(清)政府委員 補正予算の御説明を申し上げます前に、前五十五特別国会で成立いたしました通学路に係る安全施設等整備及び踏切道構造改良等に関する緊急措置法に基づきます諸計画がどういうぐあいにつくられているかということを簡単に御報告申し上げます。  御承知のように、この緊急措置法によりますと、昭和四十二年度及び四十三年度におきまして緊急に実施すべき通学路にかかる安全施設整備計画を策定すること、及び踏切道構造改良保安設備整備に関する緊急計画を策定いたしまして、それぞれ市町村都道府県段階で総合的な計画を立て、これを国がいわば補助事業といたしますものと、地方が単独で行ないますものを順次繰り上げまして、国が補助事業対象といたしますものにつきましては、十一月三十日までに閣議請議を行なうということになっていたわけであります。この点の作業は大体順調に進みまして、御承知のように、十二月一日に通学路にかかります交通安全施設緊急整備を、現行計画に基づきまして現行交通安全施設等整備事業に関します三カ年計画を変更する案と、それから踏切道緊急整備に関します計画案は、いずれも十二月一日の閣議によって決定されております。なお、その資料は本日お手元に配付いたしてございます。  なお、それに先立ちまして、これも同じく法律によりまして、中央に閣僚よりなります協議会が設けられておりまして、これらの計画案につきましては、閣僚協議会の意見を聞くことになっておるわけでございますが、この協議会も去る十一月二十八日に開かれまして、そこで建設省国家公安委員会が作成いたしました原案について検討の結果、同意をいたしております。そういう手続によりまして十一月三十日閣議請議をいたし、十二月一日に閣議決定を見たわけであります。  次に、しからばこの四十二年度、四十三年度の緊急整備事業のうち、四十二年度の補正予算でどれだけの予算がついたかということでございますが、これも同じく別表としてお手元にお配りしてございます「通学路に係る交通安全施設等整備及び踏切道構造改良等に関する緊急措置法施行に伴なう昭和四十二年度補正予算」という表がございます。これに一応詳細しるしてございますが、簡単に御説明申し上げます。  結論的に申しますと、昭和四十二年度の補正は、この三つの欄がございまして、このまん中の欄に記載してございます。これによりますと、まず、都道府県公安委員会分、これは御承知のように、主として信号機、それから道路標示等電気代でございますが、これにつきましては、昭和四十二年度補正予算といたしまして、国費を約五億算定いたしております。なお、信号機等補助率が全部二分の一でございます。したがいまして、その事業費がその倍の十億になるわけであります。それから、通学路以外の一般道路につきましては、信号機等につきましては、今回の補正では特に予算を計上いたしておりません。  次に、道路管理者分、これは歩道でございますとか、横断歩道橋でございますとか、あるいはガードレールの設置でございますが、これにかかる分といたしましては、国費といたしまして五十六億円、通学路分について計上いたしております。この道路管理者分につきましては、御承知のように国の直轄分もございますし、それから地方負担分というものもございますし、また、特にこの法律におきましては、市町村道につきましてはその財政負担能力が乏しいところから、現行補助率の二分の一を三分の二以内まで上げることができるという法律の仕組みになっておりまして、この点につきましては、先生方十分御承知でございますが、昭和四十三年度予算はもちろんのこと、昭和四十二年度の補正分につきましては、この補助率の二分の一を三分の二に引き上げまして、結局国費五十六億円に対しまして、事業費全体といたしましては、その左に書いてございます九十七億円になっておるわけでございます。  このようにいたしまして、昭和四十二年度の補正におきましては、都道府県公安委員会分と、それから道路管理者分を合わせまして、国費六十一億を計上いたしております。したがいまして、事業費は百七億になるわけでございまして、差額の四十六億というものは地方費ということになるわけでございます。  以上が四十二年度の補正予算内容でございます。  なお、踏切道構造改良事業につきましては、四十二年度におきましては、構造改良も、それから保安設備整備につきましても、補正は計上いたしておりません。  これは、一つは、保安設備整備は、御承知のように鉄道事業者に対する補助金でございまして、これは四十三年度予算で計上いたしまして四十二年度にさかのぼることが可能でございますので、四十三年度予算にその補助金は計上いたす予定にいたしております。それから、構造改良分につきましては、四十二年度におきます事業量がわりに少のうございますので、これは既定経費の流用という形で処理をいたしたい、こういうことでございまして、もちろん構造改良につきましても、四十二年度に緊急措置法に基づきます事業は実施いたすわけでございますが、今回の補正予算にはこれは計上いたしてないということでございます。
  11. 山下榮二

    山下委員長 以上で説明は終わりました。     —————————————
  12. 山下榮二

    山下委員長 次に、丹羽君から質疑申し出がありますので、これを許します。丹羽久章君。
  13. 丹羽久章

    丹羽(久)委員 ちょっとわからぬ点があるのでお尋ねしますが百七億計上してある中で、国費が六十一億、それから地方費が四十六億で、三分の二まで引き上げるということになっておるが、全体的に私どもは三分の二まで引き上げてやってもらいたいという考え方であるが、この率でいくと三分の二にはなっていないように思いますが、三分の一というところもあるということですか、どういうことになりますか。総額百七億の三分の二だというと七十数億になるという計算になるが、その点ひとつ数字的な説明をお願いしたい。
  14. 宮崎清文

    宮崎(清)政府委員 法律のたてまえは、補助率を三分の二までに引き上げることができるのは市町村道分だけでございます。したがいまして、都道府県道分につきましては従前どおり二分の一でございますので、市町村道分が三分の二になっておりますこと、それから、この道路管理者分につきましては、いろいろ複雑でございまして、たとえば直轄部分で国が全額負担する部分もございます。北海道の分とか、そういうものも込みになりますから、公安委員会の分のようにぴったり二分の一ということにまいらないわけでございます。繰り返しますが、三分の二に補助率を上げましたのは市町村道分だけでございます。
  15. 丹羽久章

    丹羽(久)委員 そうすると、もう一ぺんお尋ねしますが、国道は三分の二だとか三分の一だとか半分だとかいうのではなくて、全額持つのでしょう。
  16. 宮崎清文

    宮崎(清)政府委員 これはまたいろいろございまして、国道でもいわゆる指定区間内という直轄部分と、それから都道府県知事が管轄している分と両方ございまして、これがまた違っております。それから北海道につきましては、全額国庫負担でございます。
  17. 丹羽久章

    丹羽(久)委員 そうすると、北海道を除いたところにおいては、ほんの一部分で、国道においては全額持たないの。これではやっぱり数字的だけの説明で、実際のはどうだかわからぬ。
  18. 宮崎清文

    宮崎(清)政府委員 二分の一以下の補助率は、この法律に基づきますものはございません。必ず二分の一以上でございますから、市町村道は三分の二、それから国道につきましては四分の三の場合もございます。それから全額の場合もございます。
  19. 太田一夫

    太田委員 ちょっと関造して。  宮崎さん、別にこれはあなたの資料にけちをつけるわけじゃありませんけれども、これではいまのとおり十分わからないわけです。したがって、この市町村道内容も要りますね。それから、どれくらいの程度を——閣議決定された事業量の金額ではあるけれども、あと道路通学道路内容がない。そういうものは明らかにして、もう少しこまかいものにしてこの次までに出していただけませんか。ひとつ次回の委員会に御提出をいただきたい。そうしませんと、いまのようにこれは疑問だらけになりまして、たいへん困ると思うのです。
  20. 宮崎清文

    宮崎(清)政府委員 実は道路別事業量につきましては、現在いろいろと計算中でございまして、建設省公安委員会等もよく確かめますが、できるだけ次回に資料提出いたすように努力いたしたいと思います。現在整理中でございまして、相当な仕事になっておりますものですから……。
  21. 山下榮二

    山下委員長 それでは委員長からも申し上げておきます。  次の二十一日の委員会までに建設省、各省とも打ち合わせを願い、通学路の分あるいは三カ年計画分等について区別をし、事業内容等についてもわかるように、いま太田委員から注文がございましたように、資料をひとつ御提出をいただくようにお願いをいたしておきます。     —————————————
  22. 山下榮二

    山下委員長 それでは、次に交通事故によるむち打ち症に関する問題について質疑の通告がございます。これを順次許すことにいたします。大久保武雄君。
  23. 大久保武雄

    大久保委員 警察庁が最近まとめたところによりますと、十一月末までのことしの全国交通事故による死者、負傷者数は、総計五十九万一千六百八十人となったということであります。平均すると一日に一千七百十一人が死傷していることになります。十二月の今日までに死傷者が六十万人の大台を突破いたしました。空前のいまわしい記録をつくっておりますことは、これは確実といわなければなりません。本院におきましても、多年議席を有しておられました社会党の東海林議員が、十月一日交通事故のために痛ましい最期を遂げられたのであります。私たち交通安全特別委員会に席を置く者といたしましては、東海林議員の死を無にせぬよう、交通事故の絶滅にさらに一そうの努力を尽くさなければならぬことを誓いたいと思うのであります。  ことし特に目立ちますのは、負傷者の著しい増加であります。昨年に比しても二三%の増加であるということであります。中でも、ことしになって多いのは、都市を中心として起こる追突事故に基づくむち打ち症患者激増であるといわれております。そこで本日は、むち打ち症対策に関し、若干の質疑を試みたいと考えます。  第一にお尋ねしたいのは、世間でむち打ち症と申しますが、これは語源はアメリカから来ておるとも聞いておりますが、一体どういう病気むち打ち症と名づけておられるのか。これは厚生省でございますか、まずこの対象を明らかにいたしたいと思います。
  24. 北川力夫

    北川説明員 お答え申し上げます。  むち打ち症というものがどういうものであるかと申しますと、ただいまお尋ねにございましたように、すでに四十年前にアメリカクローエ博士がいわゆるウィップラッシュ・インジュリー、むち打ち損傷という名前でこれを発表いたしたものでございます。したがいまして、最近自動車追突事故とかそういったことで、被害者加害者間のトラブルが非常にこの問題をクローズアップをしておりますけれども、本来むち打ち症という名前のそういった特有の病気があるわけではないのでございまして、追突の衝撃によって頭が激しく振られ、頸部がむち打ちをたたくように前後に振動いたしまして、頸椎の過伸展と過屈曲が起こって、あと頸部中心としていろいろな症状が出てくることであります。これは症状といたしましては、頭痛とかあるいは頭が重いという感じ、あるいは首が痛い、あるいは上肢がしびれるとか痛む、あるいは目まい、耳鳴り、難聴、目のかすみ、それから目の奥の痛み、ふらつき、それから、のどの異常感あるいは微熱、脱力感、こういったものが典型的な症状でございますが、このような症状が長い間とれないで長期間続く場合のことを、いわゆる一般にはむち打ち症というふうに呼ばれているわけでございます。しかしながら、最初に申し上げましたように、むち打ち症というのではございませんで、これはあくまでもむち打ち傷害による一つ症状である、こういうことでございます。
  25. 大久保武雄

    大久保委員 むち打ち症の発生する原因は、先ほど申しましたように、追突であるといわれておる。自動車による人身事故は一体どのくらいふえて、そのふえておる人身事故のうちで、追突による人身事故は非常に激増しておると聞いておりますが、どのような数字でふえておりますか。これは総理府ですか。わかっているところから御回答願いたい。
  26. 鈴木光一

    鈴木政府委員 御指摘のように、本年に入りまして非常に死傷者事故件数がふえてきまして、昨年の同期に比較いたしまして二三%近くふえておるわけでございますが、そのうち追突事故も昨年に比べまして非常にふえておりまして、件数を申し上げますと、追突事故のこれは人身事故だけでございますけれども、昨年一年間で全国で五万三千五百七十九件でございます。本年に入りまして、十月末までの統計しか持ち合わせございませんけれども、十月末ですでに七万四千三百九十五件の人身事故である追突事故が発生しておるわけでございまして、昨年に比較いたしますと、大体六七%程度の増を示しております。
  27. 大久保武雄

    大久保委員 死傷者事故件数が二三%の増加があって、特に追突事故は十月末で七万四千三百九十五件、対前年比六七%、約七〇%の増加であります。これは容易ならぬ追突激増であるといわなければならぬと思います。おそろしい数字であるといえると思います。そこで、こういう追突による人身事故がふえております以上は、追突むち打ち症が関連して発生するということでありますならば、むち打ち症の最近の増加も非常に激増しておるといわなければならぬと思うのでございますが、政府で一体むち打ち症患者が現在どのくらい全国におると推計されておりますか。この点を、これは厚生省でございますか、ひとつ明確にしていただきたいと思います。
  28. 北川力夫

    北川説明員 むち打ち症というものが、先ほど申し上げましたように、一般にはむち打ち症といわれておりますけれども、医学的には追突によって起こった頭部傷害あるいは頸部傷害の中の一部であるということでございますので、いわゆるいま全国むち打ち症患者といわれております数は、一説によりますと約六万人というふうに聞いておりますけれども、これだけで医学的に正確にいわゆるむち打ち傷害による症状を持った患者であるということは必ずしもできないと思うのでございます。したがいまして、現在六万人といわれておりますものは、いわゆる俗称むち打ち症のものでございまして、対象者自体の客観的な把握が容易でない現在におきましては、正確なことを現在把握することはできないような状態でございます。ただ、ある病院におきます最近の一つ臨床例を申し上げますると、いわゆる頭部頸部外傷の外来における比率というものがございますが、これは都内の非常に大きな病院でございますけれども、三百五十六人の最近扱いました臨床例の中で、頭部外傷が二百二十六名で六三・五%、それから頭部外傷後遺症が八十六名で二四%、それからさらにむち打ち傷害による頸部外傷が四十四名で一二・五%、こういう数字都内のかなり大きな病院臨床例として出ております。これによりますと、結果的には一二・五%がいわゆるむち打ち症というものに該当する、こういうことになろうかと思います。したがいまして、いわゆる約六万人ということに、医学的にはわれわれとしては確信の持てる数字ではございません。ただ、一応いわゆるむち打ち症というものは約六万人いる、こういう説があることは聞いております。  大体以上でございます。
  29. 大久保武雄

    大久保委員 いま頭部の話がございましたが、先ほど警察から御説明の、四十二年の十月までの人身事故追突事故が七万五千件と言いましたね。そうすると、十二月まで入れたら九万件から十万件に近い追突による人身事故が起こっておるわけです。それなのに、全国むち打ち症が六六万人というのは、何だか私は、ずぶしろうとから考えてもたいへん少ないような気持ちがするわけであります。厚生省は、こういう非常な政治問題になりつつあるむち打ち症に対して、もう少し対象人員を明確にされる必要があると思います。これは俗称と言われるから、どういう根拠で言っておられるのか、その俗称根拠を、ひとつずぶしろうとにわかるように説明をしてもらいたい。
  30. 北川力夫

    北川説明員 先ほど頭部を「ずぶ」と申し上げましたが、これは最近は「とうぶ」というふうに申しておるようでございますから、「ずぶ」でも「とうぶ」でもその辺はごかんべんを願いたいと思います。  むち打ち症というものにつきましては、先ほど申し上げましたように、学者の中におきましては、頸部損傷あるいは頸部の症候群と正確には呼ぶべきであろう、こういうふうに主張する人が多いのであります。いわゆるむち打ち症には、広い意味で申しますと、頸椎の骨折などで、形態学的な変化によって、直ちに生命の危険を伴い、あるいはかなりの後遺症を残すような重度のものも含まれておりますけれども、特に形態学的には何らの変化が認められないにもかかわらず、先ほど申し上げましたようないろいろな症状を呈するものもかなりあると考えられておるわけであります。専門家によりますと、このような症状は、早期に適切な治療を行ないますと、多くに後遺症を残すことなく治癒するものである、こういうふうにいわれております。なお一般的にむち打ち症ということばが、非常に暗い印象を与えがちでございますが、これは先ほど申し上げましたように、語源的にこういうことばを使っているわけでございまして、たとえ追突によって症状が起こったものでございましても、適切な治療早期にやれば、多くの人たちは治癒する、こういうふうにわれわれはこの際正しい認識をしなければならないと思っておるわけでございます。そういう状態でございますから、いままでそういった交通災害頸部頭部損傷を受けまして、そうして後遺症が残っている方々もあると思いますけれども、その中で正確にむち打ち傷害によるいわゆる後遺症として把握されておる者は何名いるかということは、われわれもいわゆる交通に関係した救急病院というものを国立として持っておりますけれども、そういったところを調べましても、なお現在の段階で医学的に正確に何万名というふうに把握することができない、これが偽らない現状である、こういうことを申し上げたような次第でございます。
  31. 大久保武雄

    大久保委員 労働省労災補償関係では、東京都だけでも、四十一年度に発生した新規のむち打ち症が五百八十一人、こういわれておる。そうしますと、これは東京都だけですから、これを全国にすれば十倍にしても六千人、それがずっと積み重なっていきますからたいへんな数字になると思いますので、まず、実態の把握を速急にしていただきたいと考えておる次第であります。  次に、このむち打ち症に対する医療対策としていかなる方法を講じておられますか、医療対策についてお尋ねをいたしたいと思います。
  32. 北川力夫

    北川説明員 これはいま申し上げましたように、できるだけ早期に総合的な診断を行ないまして、それに対応した治療をする必要がある、こういう見地から、従来から交通事故による外傷患者に対する施策として、いわゆる救急医療の対象にしてまいっておるところでございます。目下進めております救急医療対策といたしましては、まず、消防法令に基づく救急医療機関といたしまして、現在全国で三千六百の病院、診療所が告示をされておりまして、これが救急隊によって搬送される傷病者等の治療に当たっている現状であります。なお、本年度からは、これら救急医療機関が特殊な、また高度な医療機械、器具を共同で利用できるような体制を整備することといたしております。それから比較的重傷の救急患者に対しては、高度の総合的な診断と治療を担当する専門施設といたしまして、国立あるいは公的な医療機関を主体として、救急医療センターというものの整備をはかっておりまして、本年度末で三十七カ所が整備を完了する予定でございます。さらに、次の段階にまいりまして、これらの診療業務に従事いたします医師に対しましては、交通傷害に適切に対応できるよう、昭和三十九年度から各都道府県に委託をいたしまして、必要な研修を実施いたしております。なお、いわゆるむち打ち症といわれるものなど、交通事故による傷害の診断及び治療につきましては、なおいろいろと研究を要すべき点もございますので、従来から研究を進めてまいっておりまして、今年度におきましても、交通事故形式と損傷形態及び後遺症に及ぼす影響に関する研究というものを、特別研究として目下実施をいたしておりますような現状でございます。
  33. 大久保武雄

    大久保委員 頭部の外科のお医者さんが足らぬということをよく聞きますけれども、これはお医者さんを養成することについて、どういうような対策をとっておられるか。
  34. 北川力夫

    北川説明員 これはただいま申し上げましたように、昭和三十九年度から都道府県に委託をいたしまして、そういったいわば脳外科と申しますか、頭部損傷、そういう方々に対する相当専門的な医療が必要でございますので、そのための研修を行なっております。
  35. 大久保武雄

    大久保委員 次に、今度は労働省関係になると思いますが、労災補償の制度上どういう扱いがされておりますか。むち打ち症といったようなものは、先ほどお話がありましたように、治癒といっても、どういう時点を治癒というのか、また障害が残っておる場合はどういう取り扱いをされるのか、また自賠法との関係はどうなるのか、この辺を労働省関係から御説明をいただきたいと思います。
  36. 長岡貢

    ○長岡説明員 いわゆるむち打ち症につきましては、業務に起因することが明らかであり、かつ治療の必要なものにつきましては療養補償給付及び休業補償給付を行なっておるわけでございます。治癒ということでございますが、症状が一応固定いたしまして平衡状態に達したものにつきまして、治癒ということでそれぞれ障害等級表に定まっておりまする障害補償給付をいたすことに相なっております。障害補償給付につきましては、精神または神経の障害の程度に応じまして、一級あるいは三級あるいは七級、九級、十二級、十四級、このような損傷程度によりましてそれぞれの障害補償給付が支給される、このように相なっております。
  37. 大久保武雄

    大久保委員 むち打ち症は運転手に非常に多いということをいわれていますが、これはいわゆる職業病ということになりますか、どういうことになりますか。
  38. 長岡貢

    ○長岡説明員 災害に基づく疾病でございます。業務に基因いたしまして起こりました疾病ということでございます。
  39. 大久保武雄

    大久保委員 職業病ではなくて、災害による疾病ということであると一応了承いたします。  次に、運輸省にお尋ねしたいと思いますが、むち打ち症に対する自賠責保険はいかなる取り扱いをされておるのか、御説明をいただきたいと思います。
  40. 菅川薫

    ○菅川説明員 お答えいたします。  自賠責制度上は、傷害治療期間中は治療費、休業補償費、慰謝料等を含めまして最高五十万円という限度で損害に対する支払いを行なっております。  なお、後遺症につきましては、第一級三百万円から第十四級十一万円までの範囲内で、障害の等級に応じまして、専門の医師の判定を待って、その判定された等級に応じた後遺症に対する保険金を支払うことといたしております。
  41. 大久保武雄

    大久保委員 これは一般論にはなりますけれども、自賠責保険が三百万円まで今度上がったわけですけれども、むち打ち症をはじめとする交通事故による災害は非常な後遺症が残るわけですし、また非常な生活上の苦しみも起こってきますから、五百万円ないし千万円まで将来上げていったらどうかという意見もあるようですが、将来それに対する引き上げの意思ありますか。
  42. 菅川薫

    ○菅川説明員 お答えいたします。  後遺症に対する保険金は、いま申し上げましたように、第一級三百万円が現在は最高でございますが、これに対する将来の考え方の問題でございますが、いま御質問のように、むち打ち症とか、いろいろ新しい交通事故による問題が生じてきておるわけですが、これが改定につきましては専門的な医学的な見地からの検討が必要であろうかと思います。これにつきましては、聞くところによりますと、労働省関係において労災関係の後遺症の障害等級表の改定について、現在専門家によって検討が行なわれているということでございます。大体自賠責の等級区分というのは、労災関係のそういうものに準じて、やはり専門家の御意見を待ってきめるということにしておりますので、私どももこの障害等級表を実情に合わせて改定するということにやぶさかではございませんが、そういう専門家の方々の検討の結果を待って措置したい、そういうことに考えております。
  43. 大久保武雄

    大久保委員 これも一般論にはなってきますけれども、税法に関して、自賠責保険の保険料の所得控除を行なうべきである、そういう意見がかなり要望されておるようです。これに対する運輸省の意見を開陳してもらいたいと思います。
  44. 菅川薫

    ○菅川説明員 いろいろな交通事故による損害に対する保険ということでは、強制保険制度というものには、強制保険として事故を起こした人あるいは起こさない人にかかわらず、一律に強制していくという性格のものでございますので、保険金額のアップ等についてはその面の考慮も必要であろうかと思います。しかし、そういう強制保険の限度額でもちろん十分であるとは考えられませんので、さらに任意保険等の普及はぜひとも必要であろうかと存じております。そういう意味で運輸省といたしましても、強制保険並びに任意保険の保険料の所得控除について、諸方面に対して強く要望している段階でございます。
  45. 大久保武雄

    大久保委員 次に、むち打ち症の発生するような事故防止対策をどうするかという問題でありますが、まず、どうしたら被害の軽減ができるかという点であります。  いま、タクシーにしても一般の乗用車にしましても、うしろにまくらをつけて走っておる車をわれわれは見受けるわけでありますけれども、ところが専門家に聞きますと、あのまくらは必ずしも安全じゃない、追突されたときに頭がうしろのまくらにぶつかった反動で前に首が傾いて、むしろかなり危険性なしとしないといったようなこともいわれまするし、また、あのまくらのためにバックミラーが見えないという運転技術上の問題もあるようにも聞いております。  そういったような不完全な状態のものがタクシーなり、あるいは一般乗用車なりに取りつけられて走っておる。これはまことにいいかげんなことであって、その安全の責任を持っておるのは運輸省ですか、ひとつ御答弁を願いたいのですが、そういったような、七割も激増しておる追突、それから発生するであろうむち打ち症、それを防止すべくつけておる備品と申しますか、まくらが必ずしも安全ではない、こういうことではみんな自動車に乗る人がむち打ち症ノイローゼになるということも無理からぬ話だと思いますが、一体どうしたら軽減できるかということに対するいかなる措置をやっておられるのか、これは運輸省ですか、ひとつ御答弁を願いたいと思います。
  46. 堀山健

    ○堀山説明員 自動車整備部長でございます。  ただいまのお話でございますが、不幸にして追突された場合に、その被害を最小限にとどめようということでいろいろ考えられました方法が、まくらが有効であるということがいわれておるわけでございます。それで、現在いろいろな種類のまくらが出ておりますけれども、ほんとうにいいものはどういうものかということが実は問題であろうかと思います。  それで、安全まくらが衝突の場合、——衝突にもいろいろ種類がございまして、低速で当たった場合、非常に早いスピードでぶつかった場合、いろいろあろうかと思いますが、ある速度以下になりますと、そういう安全まくらをつけたほうが有効であるといういろいろな従来の内外の研究の結果、そういうふうに証明されておりますので、私どもとりあえずの対策といたしましては、どういう安全まくらが一番いいのかということについて検討しておるわけでございます。現在の段階では、日本工業標準調査会の自動車用安全まくら専門委員会というのがございまして、ここで専門家委員の方々が効果的な安全まくらの技術基準を現在検討されておるわけでございます。近くその結論が出る予定になっておりますので、基準がきまり次第、私どもその装着を促進するような措置をとるつもりでおります。
  47. 大久保武雄

    大久保委員 ただいま基準を審議中だということでありますけれども、先ほどから説明のように、十カ月間に七万件をこえる追突事故が発生しておるということでありましたならば、これは一日も早く基準をきめて、そうして安心してまかせられるようなまくらなり、あるいはその他のものを開発しなければならぬと思う次第であります。一説によれば、野球のバックネットみたいなものが、あれは王がはじき返らぬで垂直に落ちるからいいんだというようなことで、これも研究開発の途上にあるそうでございますが、これは運輸省等でもっと早くこの点について御審議を願いたいと思います。  そこで、この安全まくらをつくっておるのは中小企業、零細企業が多いそうでございますが、そういう人間の命あるいは傷害に関係するものでございますから、事業体がいかにあるにしろ、基準を守らせるということは大切でございますが、いつまでにその基準をつくられますか。
  48. 堀山健

    ○堀山説明員 お答えいたします。  現在の予定では本年度中にきまる予定でございます。
  49. 大久保武雄

    大久保委員 それでは三月までにきまる、こう考えていいわけですね。
  50. 堀山健

    ○堀山説明員 そのように私ども考えております。
  51. 大久保武雄

    大久保委員 次に、追突の起こってくる大きな原因は、交通渋滞だといわれておるわけであります。最近、休日等の自動車の渋滞は実にひどいありさまでございます。これも警察で調べられたところによると、四百メートルつながるのを渋滞度というそうでありますが、去年の十月は一日平均の渋滞時間が三百十九時間、四十二年は三百九十二時間にふえているそうであります。こういったような渋滞が起こってきますと、つい追突が起こるわけでございますが、こういう渋滞が起こってくるのは車両数の増加等にもよりましょうが、警察では一体どこに原因があると見ておられますか、お答えを願いたいと思います。
  52. 鈴木光一

    鈴木政府委員 交通の渋滞につきましては、東京、大阪等は非常に激化しておることは御承知のとおりでございまして、御承知のように、道路環境と自動車台数との関係で、非常に混雑するということになります。しかし、これを円滑にさばいていくということにつきましては、私どももいろいろ対策を講じなければならぬわけでございまして、信号機の系統化など、都市や幹線道路におきますところの交通の円滑化対策、それから、いろいろな規制標識がございますけれども、規制標識が運転者から見えやすい状態に常に置くといったようなこと、それから、交通警察官によるところの交通の整理といったようなことで、できるだけ交通規制の面からも交通の円滑化対策を推進いたしたいというふに考えております。
  53. 大久保武雄

    大久保委員 むち打ち症に限らず、交通事故による傷害を受けた人は非常な後遺症が残って、家族ともども生活に苦しむという事態が起こっております。そこで、こういう方々、あるいは法律に知識のない一般庶民でありますとか、あるいは貧困な家庭の方でありますとか、そういう方々の被害者の声、これが比較的組織されてない。そこで、こういう方々の声をできるだけ取り上げて、そうしてわれわれは再び交通事故が起こらぬようにしていかなければならぬのでありますが、そういう被害者の相談あるいは被害者の声を聞くという点について、これは総理府の担当かと思いますが、どういう措置をとっておられ、また、現在どういうことになっておるのか、お答えを願いたいと思います。
  54. 宮崎清文

    宮崎(清)政府委員 御指摘のとおり、交通事故によって被害を受けられた方々の救済の問題は、まず、最初は救急医療の問題でございますが、あわせて損害賠償をいかに確保するかという問題がございますが、これは一面におきまして先ほど運輸省から御説明がありましたように、強制保険でありますとか任意保険の給付でありますとか、それとあわせて、大部分被害者の方は必ずも的確な法律的知識を持っていらっしゃらない。また、必ずしも訴訟を起こすための十分な費用もお持ちにならない。そのために、みすみす悪質な示談屋にひっかかったりして泣き寝入りをしておるという事例が従来非常に多かったわけでございます。そこで、これは放置しておけないということから、この点につきましてはすでに警察であるとか、あるいは民間の交通安全協会等も交通事故相談をやっておりましたが、やはり何と申しましても住民の福祉に直結する問題であるというところから、本年の七月以降すべての都道府県交通事故相談所を設置させまして、これに対して国が所要の補助をする。そこではできるだけ親切に、交通事故万般にわたって相談に応じ、かつ顧問弁護士等も置きまして、法律的な問題についても協議をする、こういうことで発足いたしたのでございます。こういうことが望ましいことかどうかわかりませんが、現在非常に盛況でありまして、私どももこういうことをやったかいがあったと実は喜んでおるのでございますが、あわせて市町村にも簡単な事故相談の窓口をつくりまして、軽微な事案は市町村に処理させるということにいたしております。  なお、それ以外にも、これは現在運輸省でやっておりますが、自動車損害賠償保障法に基づきます訴訟勘定に若干の剰余金がございまして、その利息の一部をもって日本弁護士会が行なっております交通事故相談でございますとか、あるいは資金がないために訴訟を受けられない者に対して、訴訟費用を貸し付ける法律扶助協会というものがございますが、こういう法律扶助協会等に対する助成等も行なっておるのが現状でございます。
  55. 大久保武雄

    大久保委員 そこで、相談にはあずかっておるけれども、そういったような被害者あるいは命を捨てあるいは一生を廃疾に泣いて家族は飢えに苦しむ、そういったような被害者があるのに対して、それに対する取り締まりはどうかというと、この前ダンプの規制を当委員会で審議をいたして通過をいたさせましたし、道交法の改正等ができたわけであります。前国会におきましても私は質問をいたしましたが、その際、刑法二百十一条の改正がこの前も継続審議になっておるわけであります。刑法二百十一条は、明治四十年日本に自動車が十六台しかなかったときにできた法律であって、これは肉屋さんが余ってくさった肉を売ったとか、あるいはお医者さんが誤診をしたとかいうことであの法律はできておる。いま自動車が一千万台に達するという時期に、同じ法律で動かしておるということ自体がおかしいと思うのです。そこで、この刑法二百十一条の改正は、かつて衆議院を通過したことがあるわけです。この前も継続審議になって、法務大臣はしばしば、自分は委員会に出席しておる。今回は時間不足で継続審議になったけれども、来たるべき臨時国会において最善を尽くして審議を促進していただき、御期待に沿うべく、本件の法案とともにこの交通対策の事故防止等にお役に立ちますよう、この刑法改正案を生かしていくことに最善の努力をする。来たるべき臨時国会において、刑法の改正は通します、こういうてこの委員会田中法務大臣は私に答弁をされたわけであります。もうすでに相当長い国会で審議し尽くされた法律でございますから、この国会でもやろうと思えばやれぬことはなかろうと私は思う次第でございます。きょう法務大臣が予算委員会でこちらに来られませんが、政務次官出席ですから、この田中法務大臣の言明をどう処置される決心であるのか。ひとつ食言にならぬように御回答を願いたい。
  56. 進藤一馬

    ○進藤政府委員 刑法の一部改正案につきましては、第四十八国会で提案以来御審議をいただいておりますが、交通事故による死傷者はいまなお減少いたさないのでありまして、交通事故防止対策の強力な実施をまことに必要といたしておるわけでございます。業務上過失致死傷罪の刑の引き上げ等に関する刑法改正は、交通事故防止対策の一環をなすものでありまして、法務省といたしましては、この早期の成立を強く望んでおる次第であります。先ほど法務大臣が委員会におきまして所信を述べられましたが、その中にもこの点を強調されまして、私も全く同感で、ぜひとも改正案の早期の成立にできる限り努力いたす決意であります。どうぞ御了承願います。
  57. 大久保武雄

    大久保委員 終わります。
  58. 山下榮二

    山下委員長 次に井上泉君。
  59. 井上泉

    井上(泉)委員 北川医務局次長にお伺いしますが、このむち打ち症の問題について、いま大久保委員の質問にいろいろ答弁されておったのですが、あなたはこのむち打ち症の対策というものが、学問的な名前がどうあろうとも、いろいろな状態が総括されてむち打ち症といわれておるのですから、このむち打ち症対策を、今日緊急になさねばならないとお考えになっておるのかどうか、そのことをひとつ承りたいと思います。
  60. 北川力夫

    北川説明員 ただいま仰せのとおり、いわゆるむち打ち症というものにつきましては、非常に大きな現在の社会問題でもございますので、私どもといたしましては診断、治療、そういった面につきまして、現在も研究を進め、また救急医療センター等を中心にいたしまして、できるだけ研究はいたしておりますけれども、今後さらに十分な治療の研究あるいは診断に関する研究というふうなものを一そう強化をはかってまいりたい、かように考えております。
  61. 井上泉

    井上(泉)委員 政府はそういうふうな答弁をなさるのでありますけれども、このむち打ち症の問題が国会、政治の場で問題になったのは、昨年京都の府議会がむち打ち症対策に関する意見書を議決をして、厚生省あるいは労働省等にその意見書を送付をしておるのですが、その意見書に対して厚生省労働省とはそれぞれ返事をなされておると思いますが、厚生省労働省はどういう返事をされておるのか、この機会にその回答についての内容を御説明願いたいと思います。
  62. 北川力夫

    北川説明員 私のほうといたしましては、現在の段階では、まだその意見書に対しまして回答はいたしておりません。
  63. 長岡貢

    ○長岡説明員 労働省といたしましては、京都労働基準局並びに監督署等に対しまして、むち打ち損傷の補償、職場復帰というような点について具体的な指導をいたしておるわけでございます。さらに、要望の具体的な一つ一つの事項につきましては、いろいろなむずかしい問題もございますし、災害医学研究委託費というもので、専門家の先生方に研究をお願いいたしております。さらに、科学技術庁のほうに、治療等についての研究費につきまして、現在予算の折衝をいたしておるというような状況でございます。
  64. 井上泉

    井上(泉)委員 厚生省がその京都府の意見書に対して何にも処置をしていないということはないでしょう。何かやっておるでしょう。私は京都府の「府政だより」の資料版から見たわけですけれども、十二月の十六日に報告された報告書によって厚生省もその意見書の趣旨についての返事をしておるはずですが、何にもしてないですか。これはうそですか。これは京都府が出した書類ですから……。
  65. 北川力夫

    北川説明員 私、はなはだ申しわけないのですけれども、具体的にどういう文書で返事をいたしましたか、あるいはたまたま意見書を説明に来られました場合に口頭でいろいろ申し上げましたか、その点につきましてちょっと実情を把握いたしておりませんので、申しわけございませんけれども、あるいは先生おっしゃるように、意見書の提出にあたりまして、口頭でいろいろ申し上げておるかとも思いますので、いまはっきりいたしておりません。
  66. 井上泉

    井上(泉)委員 意見書というものは、これはわれわ地方議会におるときからも意見書を出すわけですが、意見書を出したら出しっぱなしで一方交通になるような性質のものではないし、それについてはしかるべき意見がそれぞれ上級の機関から出されてくるのが当然のこととしてなされておる。こういうふうに、すでに昨年京都府の議会からもこういうむち打ち症の障害に対しては早急な対策を立ててくれ、こういう意見書が出されておるにもかかわらず、それについて今日まだ十分な調査、対策がなされずに、まだこれから、重要な問題だから検討、研究する、こういうようなことではなかなか国民としては納得がいかないと思うのです。総理府八木総務長官お尋ねをするわけですが、一体こういうふうな国民の声、願いというものがこういう形で次々に研究とかあるいは調査をするとかいうことで、実際問題としては何にも調査も研究もされてない、こういう状態というものがよいものであるかどうか。八木総務長官も新任をされたばかりでございますので、いろいろとその決意のほどもあろうと思うのですが、むち打ち症患者に対する救済措置についてのこういう世論の動向に対して、総理府としてどういうふうにお考えになっておられるか、役人の心がまえとあわせて承りたいと思います。
  67. 八木徹雄

    八木政府委員 おっしゃるとおり、まじめな国民の声を受けとめて、これに的確なる処置をするということが役所の責任だと思います。特にいまお話のありましたように、地方議会の議決をした意見書などは特に尊重しなければならないことだと思います。いま医務局次長のほうはそれを承知していないということのようでありますが、ゼロ回答というようなことはあり得べきことではないと思います。しかし、その意見書自体に的確に答えられない、検討する期間的余裕を与えてもらわなければならぬこともあり得ることだと思いますが、とにかくこれだけむち打ち症をはじめ交通安全対策全体が国民的世論の高まっているときでありますから、これに対しては前向きに処置していくように、関係各省のほうにもよく連絡をとりまして善処してまいるようにしていきたいと存じます。
  68. 井上泉

    井上(泉)委員 最近新聞、テレビ等でむち打ち症の問題が大きく取り上げられてきたわけですけれども、こういうふうに取り上げられたからこの問題が討議をされるではなしに、その現実の事実というものが取り上げざるを得ないような状況にあるということ、これについての厚生省調査も——これは失礼ですが、次長さんはこの調査にあたって対人関係、つまり被害者を御自分であるいは臨床調査をされたとかいうようなことはおありでしょうか。それともいろいろな報告に基づくいままでの説明だったのでしょうか。その点ひとつお答えいただきたい。
  69. 北川力夫

    北川説明員 私は臨床を行なっているものではございませんので、実はおっしゃるような実際に臨床にあたって診断をしたり治療したりというふうなことはやっておりません。ただ、先ほども申し上げましたように、脳神経外科と申しますか、頭部外傷と申しますか、そういったことを中心にして専門的な医師がおりますような病院の実情についていろいろと話を承った結果についてお話をしたような次第でございます。
  70. 井上泉

    井上(泉)委員 現実にむち打ち症患者というものがどういう苦しみを味わっておるかということで、そのむち打ち症患者にお会いになったことはあるのでしょうか。
  71. 北川力夫

    北川説明員 会ったことはございます。
  72. 井上泉

    井上(泉)委員 そのときの感じはどうですか。
  73. 北川力夫

    北川説明員 これはもう、先ほどから先生方からいろいろお話がございますように、そういった損傷を受けました直後の治療とか、あるいは補償とかいろいろな問題があるかと思いますけれども、全体的に一つの不安と申しますか、非常に暗い印象と申しますか、そういうものをわれわれとしては感じておるような次第でございます。
  74. 井上泉

    井上(泉)委員 そういう暗い印象を受けられたあなたとしても、その患者のそういう状態に対して、いわゆる行政の職にある者としては早急な対策を立てて、患者に対して明るい展望が得られるような措置をなさるべきだと思うわけですが、そういう点を御研究なされておるというから、その結果を期待するよりほかにしようがないのですが、現在むち打ち症患者というのは、私どもの調査によりますと、これはもうごく一部ですけれども、四十二年九月現在で、私鉄の中の一部のタクシー関係ですが、東京では明星タクシーというタクシー会社、そこでは運転手が百六十六人おる。その中でむち打ち症として療養を受けておるのが十五人おる。あるいは大阪周辺のそれぞれのタクシー会社では、タクシーの運転手の四%ないし五%の者がむち打ち症患者として治療を受けておる。こういうふうなことから推計をいたしますと、これはもう相当なむち打ち症患者が潜在をしており、しかもむち打ち症であるけれども、医者の診断によっていろいろ違うわけだから、なかなかむち打ち症患者としての取り扱いを受けることができずに苦しんでおるというのが実情ではないかと私は思うわけです。  そこで、いま厚生省北川医務局次長にお願いをしたいわけですが、現在一人の患者が——私ここにカードを持っておりますが、関東労災病院という、これはいわば国立の病院ですけれども、こういう労災病院でも、一人の患者が放射線科、内科、眼科、耳鼻咽喉科、整形外科、脳外科、神経科と、これだけ治療を受けなければならないというような状態で、一つの整形外科なら整形外科だけでこの処理のされるような症状ではないということは、これはあなたお認めになられるでしょうか。
  75. 北川力夫

    北川説明員 先ほどから申し上げておりますとおり、むち打ち傷害によって起こります症状は非常にさまざまでございます。したがいまして、普通の患者治療成績から見ますと、大体一週間以内に、十分な治療をしますと、なおるものは七割から八割程度あるというふうなことがいわれておりますし、また二週間から四週間程度で比較的よくなるというふうなものもあるわけでございます。ただ、このいわゆるむち打ち症といわれておりますものの一番われわれが懸念いたしておりますことは、一つは恐怖心と申しますかあるいは心配と申しますか、一種のノイローゼといったふうなものがそれに合わせて、いわゆる合併症のようなかっこうで出てまいるというふうな点でございますし、臨床例を聞きますと、非常に妙な言い方でございますけれども、補償問題が解決いたしますとなおる、こういうケースもあるようでございます。したがって、こういうことを考えますと、非常に心因的な、精神的な要素が多分に支配をしている。そういったことを考えますと、いまおっしゃったような、単なる特定の診療科だけではなくて、いろいろな方面の診療科を回って十分な検査をして、その上で医学的にこれはむち打ち症による障害であるという的確な診断を下さなければならないというふうなケースがあろうかと思うのであります。また、その人が本来的に高血圧症であるとか、あるいは低血圧症であるとか、あるいはまた動脈関係、循環系統、いろいろな疾病を潜在的に持っております場合に、たまたまその追突事故というふうなものによってそういう疾病が顕在化する場合もございますから、そういった面をあわせ考えますと、特定の一つの脳神経外科とか、あるいは単なる外科というふうなものだけで始末し切れない面が多分にあると私は考えております。
  76. 井上泉

    井上(泉)委員 そのむち打ち症患者治療のなにについてはけさの朝日新聞か何かにも、そういうふうに慈恵医大の先生がそういうことを言っておられるのですから、その心理的な、精神的なもの——きのう患者の方がだんだん陳情に来られたのですが、その患者の方の話を聞きましても、やはり精神的なものが四割ある。こういうことは、やはり頭ですから神経系統がおかされておるから、そういうものが当然出てくると思うのです。その点についてはまたあとで御質問するとして、補償課長が出ていかなければならないそうですから、補償課長に一、二お伺いしたいと思います。  私はゆうべタクシーに乗ったところが、京王電鉄のタクシーの運転手さんでしたが、偶然にもむち打ち症患者の方で、その人は労災保険で一カ月入院をして、二カ月通院をして、それからなおったと思ってこの仕事をして、そして補償も労災の関係も打ち切り、それから事故の示談書にもなおったということでやった。それから三カ月たってうちへ帰ったとたんに卒倒して、それからずっと六カ月入院をしておった。こういうことでした。そうなると、今度そういう場合に労災の適用がされないわけですが、こういう場合にはどうなんですか。この点を伺いたい。
  77. 長岡貢

    ○長岡説明員 お答えいたします。むち打ち損傷による症状の発症がきわめて急性の場合、あるいは悪急性の場合、あるいは相当期間たちましてから発症するというような、いろいろな被害の状況によりましてあらわれてくる精神神経症状が異なっておるといわれておるわけでございますが、そういう発症した症状が少なくとも業務に起因した発症であるということで医師が認めた場合におきましては、労災の立場といたしましては業務上の疾病ということで補償することに相なっております。
  78. 井上泉

    井上(泉)委員 このむち打ち症患者が、医師が認めた場合ということについてたいへん苦心をするそうです。というのは、私がいま申し上げましたように、一つ症状についても総合病院のほとんど各科へ行かなければならぬ。こういう状態で、それが高血圧の症状を持っておったとか、あるいはまた、神経痛の症状があったとかいうことで、なかなか医師が判定をやってくれない。そういう場合、医師がやらぬものを労働省が認めるわけにいかないといえばそれまでですけれども、やはりむち打ち症という心身に非常に大きな障害を与える症状に対しまして、これらの労災における継続診療あるいは補償というものについては、やはりこの災害補償法の面で改正をするなり、あるいはまた、その運用の方法について、もっと温情のある処置をとるとか何か処置をしてやらないと、これだけ交通事故激増して、しかも自分から起こすわけではなく、他動的に引き起こされる事故ですから、その他動的に起こされる事故に対する処置としては、労働省、つまり労働者の権利を保護するという立場にある労働省としては、その辺の運用をひとつ十分考慮してもらいたいと思いますが、その点についてのお考えを承りたいと思います。
  79. 長岡貢

    ○長岡説明員 ただいま先生御指摘の問題につきまして、先ほどの災害医学研究委託費を、慈恵医大の伊丹教授、それから横浜市立大学の土屋教授、東京労災病院の近藤院長、こういう専門の方方に差し上げまして、現在治療あるいはそういった認定の問題につきまして御研究を願っておるわけでございます。しかも先ほど先生御指摘のような非常に複雑な症状を呈する疾病でございますので、その点につきまして業務上であるかどうかというような点について、このむち打ち症専門家会議を開きまして、学者の先生方を動員いたしまして現在審議をいたしておるところでございます。  それで、先ほど申し上げましたように、症状が固定いたしました場合には、療養給付と休業補償については不支給決定をいたしまして、その残った障害の程度に応じまして障害補償が支給されるというたてまえに相なっておるわけでございます。先ほど申し上げましたように、一級、三級、七級、こういった程度の、疾病の残った、症状の重い方々に対しましては年金を保障する、それから九級、十二級、十四級、比較的軽度あるいは中等度以下の障害に対しましては一時金を支給する、こういうようなたてまえになっておるわけでございます。その疾病が先ほど申し上げましたように平衡状態に達した、その状態が抵抗が加わりました場合には、再発といたしまして療養補償給付、休業補償を行なう、このようになっておるわけでございます。先生御指摘のように、このようなむち打ち症患者の保護につきましては、今後も十分努力をいたしたい。このような所存で監督署あるいは基準局に対しまして指導いたしてまいりたい、このように考えております。
  80. 井上泉

    井上(泉)委員 ぜひひとつその趣旨を末端の監督署のほうへも徹底するように御指導をお願いしたいと思います。  それでは、次に自動車賠償保険のほうでお伺いしたいのですが、たとえば四十一年で、ごく最近の資料でけっこうですが、自動車損害賠償保障法に基づく保険料というのがどれくらい保険会社のところへ徴収されておるのかどうか。これは大蔵省のほうですか、どっちでも、わかるほうで答えてください。
  81. 新保實生

    ○新保説明員 自動車損害賠償責任保険の保険料の収入額がどれほどあるかという御質問だと思いますが、ただいま手元にございます四十一年度の実績でございますと、四十一年度におきましては、四百十一億七千八百万円でございます。
  82. 井上泉

    井上(泉)委員 その自動車賠償法による保険料の収支の状況というか、それはどうですか。
  83. 新保實生

    ○新保説明員 お尋ねの収支の点につきましては、いまそれに的確にお答えする資料手元に持ち合わせておりませんけれども、これは自動車損害賠償保障法の法律の条文にございますけれども、これを取り扱う保険会社は、もうけもしなければ損もしない、そういうたてまえで保険料並びに保険金額、そういうものが計算されておるわけでございます。資料につきましては、追って調べまして申し上げたいと思います。
  84. 井上泉

    井上(泉)委員 いま手元資料がないということですから、あとでその資料提出していただきたいと思います。  それでは、運輸省の方にお伺いしますが、後遺症症状で、第一級の症状によって賠償法による保険金が支払われた例が四十一年度でどれぐらいあるのか、ひとつお願いいたします。
  85. 菅川薫

    ○菅川説明員 お答えいたします。  実は第一級ということで、第一級の全数を調べたという資料手元にございませんのですが、こういうむち打ち症関係の問題が発生しましてから、私のほうもいろいろ検討しておったわけでございますが、主として神経症状的なものがむち打ち症の関係で問題になるということで、そういう面から拾って調べたのがございますので、その点についてお話し申し上げますと、現行の第一級の五号というもので「半身不随」というのがございますが、後遺症についての支払いは、この三十九年から後遺症というのが別ワクになってきたわけです。それ以前は重症、軽症ということで、後遺症に対する保険金支払いというのは別になかったわけですが、三十九年の改正から後遺症について別に保険を支払うということになりましたので、その三十九年の二月から四十一年三月までの契約分について調べたわけでございますが、それではこの第一級五号の「半身不随」となっているものが七十五件、すなわちこれは約二年二カ月間に相当するわけですが、七十五件ございます。
  86. 井上泉

    井上(泉)委員 それで、この第一級の「精神に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの」、これは結局むち打ち症患者に多くあるわけですが、これに該当して支給をしたというものは一件もないですか。
  87. 菅川薫

    ○菅川説明員 私が申し上げましたのは、むち打ち症関係では神経症状的なものが多いということで、その面で半身不随というのを拾ったのが七十五件ということで、その他の第一級での支払いについては、現在手元資料を持ち合わせておりません。
  88. 井上泉

    井上(泉)委員 その半身不随でなくとも、むち打ち症患者にお会いになってみればよくわかると思うのですが、これはとても一生労務につけられるような状態でない人が相当おるわけですが、それが、庭掃除もできるじゃないか、あるいはちりも拾えるじゃないか、こういっても、そのような者を雇用する場所がないのですから、それで生活ができるわけじゃなし、とてもとてもそういうふうなところに服務するとかいうようなことはできないですが、それを半身不随だから当てるというだけでなしに、もっとそういう症状について賠償法の適用というものを考慮する必要がありゃしないかと思うのですが、その点どうですか。
  89. 菅川薫

    ○菅川説明員 私はいま代表例として半身不随の点をあげたわけですが、自賠法の後遺症に対する支給は、事故原因というか、後遺症になった原因がむち打ちとかいろいろあると思いますが、最終的に請求のくる段階では半身不随の場合もあるし、その他先生のおっしゃったような症状になっておる場合もあるかと思いますが、結局そのあらわれた症状に従いまして、これはそういう精神的な面で後遺症があり、第一級に該当するというような専門の医師の判断があれば、それに応じた保険金を支払うわけで、私、半身不随を例として申し上げましたけれども、その場合だけしか後遺症に対する保険金を支払わないという意味ではございません。
  90. 井上泉

    井上(泉)委員 この自動車損害賠償責任保険における障害の場合の賠償限度というもの、これをいま大久保委員も言われておったけれども、やはり保険金額というものを障害の場合においても大幅に引き上げる必要があると思うのです。その点で、大蔵省の保険部長に、資料がないというのですけれども、最近損害保険会社が自動車賠償保険の契約をしてくれ、してくれと言ってずいぶん歩いておるわけですが、この点の保険会計というものはすごく黒字だと私は思うのです。保険会社がとんとんだということについては問題があろうと思うのですが、その点調査をされればわかると思うのですが、その点あなたとんとんということをそのまま信用しておるのですか。それとも、調査をする必要があるとお考えになっておるのですかどうですか。
  91. 新保實生

    ○新保説明員 自動車事故の保険は二通りございまして、御承知のように自動車損害賠償保障法に基づく自賠責保険と普通略称しておりますが、これは強制保険でございますが、それから、先ほど申し上げました標準保険料、四百十一億とあるいは申し上げたかもしれませんが、これは四百十六億でございますので御訂正いただきたいのでございますが、それともう一つは、任意保険と申しておりまして、これは強制でなくて、これだけではどうも保険金が万一の場合に不足する、そういう意味で、強制保険の上積みの意味で保険をかける。それのほうの数字は、実は申し上げておりませんが、標準保険料だけ申し上げますと、これは四十一年度の数字でございますが、七百三十一億になっております。そこで、先ほどお答え申し上げましたのは、強制保険のほうでございまして、四百十六億、これは法律にもございますように、これによって保険会社はもうけてならないというたてまえで保険料率を実ははじくことになっておりまして、これは運輸省なり大蔵省がそれぞれ事業費、取り扱いの事務費というものを査定いたしております。たとえば、それを取り扱う保険会社の職員の給与は、公務員のベースで計算する、したがいまして、その意味では民間の給与が公務員よりもいいわけでございますけれども、その点は見ておらないというわけでございます。  それからもう一つ、任意保険のほうでございますが、これは非常に最近賠償の金額がふえてまいっておりまして、賠償水準が高額化しておる、そういう意味合いから現在の保険料収入と、それから支払い保険金とのバランス関係が非常に不安が持たれておるわけでございまして、これはもうけるという——計算のしかたがいろいろあるわけでございますけれども、正確に申し上げられませないのは損害額の確定というのが相当時間がかかるわけでございまして、契約の締結、したがって、保険料を支払うという時点と、それから実際に事故を起こした時点、それから、事故が発生後、お互いに加害者被害者が話し合って、それには損害保険会社も加わりまして損害賠償額をきめるわけでございます。それが非常に長引くわけで、ちゃんとした一定の期間計算というのがいろいろ方式はあるわけですが、リツンベースとかアーンドベースとか、いろいろ計算のしかたがあるわけでございますが、その両方から見ましても、保険会社がもうけるという状態にはなっておらないのでございます。
  92. 井上泉

    井上(泉)委員 それはもうけておる状態になっておらぬということはどうかと思うのですけれども、その点についてはもっと調査をした資料でやってもらいたいと思うのですが、その調査はできますか。そういうような報告、調査はできないですか。
  93. 新保實生

    ○新保説明員 大体概括的な見方、調査をした数字は、これは出せると思います。
  94. 井上泉

    井上(泉)委員 それでは、強制保険のほうが四百十六億で、任意保険が七百三十一億、約倍近い、八〇%以上の額ですが、これはいわばむち打ち症患者に限らず、交通事故被害者の一番困るのは、こういう症状が起こってそれに対する補償措置というものがほとんどなされない。ほとんどなされないというのは言い過ぎかもしれないが、相当困った者ほど苦しむ。そうしてえらい業者にやられるほどほったらかされる、こういう状態で、交通事故被害者というのはたんへんな悩みを訴えておるわけですが、これは強制保険の限度額を引き上げて、先ほど保障課長さんは、何か任意保険のほうも進めておるとかいうような答弁を大久保委員にされておったのですが、そういう任意保険を進めるくらいなら、強制保険のワクをもっと広げて、そうして補償限度額も引き上げて、そうしてもっと適切に補償金が支払われるような措置をとるのが、これは私当然なされなければならないと思うのですが、その点についての運輸省の御見解を承りたい。
  95. 菅川薫

    ○菅川説明員 お答え申し上げます。  先ほどお話し申し上げましたように、治療費等に対する保険の限度額は現在五十万円でございまして、それから後遺症のほうは、三百万円から十一万円までの範囲で支払われておるわけでございます。それで傷害治療のほうの治療関係の五十万円につきましては、本年八月死亡の限度額を引き上げます際にも検討がなされたわけでございますが、傷害による治療費等の強制保険に対する請求関係の大半が五十万円の限度内でカバーされておるという実情でございましたので、傷害関係の五十万円の引き上げはいたさなかったような次第でございます。ただ、御承知のように、死亡関係のほうは、これは一般的な国民的な要望もございましたし、百五十万円から三百万円に死亡の場合引き上げたわけですが、後遺症については、その死亡の場合の最高限度の三百万円とこれに匹敵するものとして、第一級として従来百五十万円であったのをやはり三百万円に引き上げたような次第でございます。  それで、先ほどお話ししましたように、傷害による治療関係の保険金の五十万円につきましては、実態的なデータからもそういう実情でございますので、ちょっとこれを引き上げるということにはいろいろ問題があろうかと思いますが、後遺症関係の三百万円から十一万円という範囲内においても、実情に応じた等級表の改定等はすべきであろう、こういうことで、たとえば先ほどいろいろ神経症状の点で申し上げましたが、現在後遺症については一級で、先ほど代表例として「半身不随となったもの」が三百万ということでございますが、そのほか第七級には「神経系統の機能に著しい障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの」、これが七級でございまして、百二十五万円になっております。それから、その次が第十二級でございまして、「局部に頑固な神経症状を残すもの」、これが三十一万円であります。また、表としては一番下の十四級が「局部に神経症状を残すもの」十一万円。それで、ここら辺の各等級区分を見ますと、七級の百二十五万円から十二級の三十一万円までかなり格差がございますので、この中間は神経系統の機能に障害があって労務が相当に制限されるというような一つの中間等級を持ったらというような検討も現在いたしております。そういう意味で、この三百万の限度自体を引き上げることについては、今後いろいろ検討が必要であろうかと思いますが、その範囲内においても、実情に合ったような改定については、これを心がけたい。ただ、これはこういう病気の問題でかなり医学的な、専門的な検討を必要とすることでございますので、労災関係とか、その方面でのいろいろな専門家による御検討の結果を待って実情に合わせて改定について措置したい、そういうことで考えておる次第でございます。
  96. 井上泉

    井上(泉)委員 時間がないので、最後の質問をいたすわけですが、要するにむち打ち症にかかられた方というものは、御案内のように頸部の打傷とか脳震蕩、頸部損傷、手が麻痺するとか、あるいは目が見えなくなるとか、耳が聞こえなくなるとか、ものが言えなくなるとか、あるいはまた夫婦生活が十分にできなくなるとかというような人間のあらゆる病気の、うるさい病気を全部集中するような症状を引き起こすことが——国立名古屋大学での集団検診の報告を私はいただいておるのですが、その報告の内容でもそのことが十分指摘をされておるわけでございます。それで、すでに政治の面としては、昨年——ことしはもうあと半月しかないが、昨年の十月にすでに厚生省労働省に対してむち打ち症患者がこういう状態で、こんなに困っておるから、早く対策を立ててくれという意見書が地方議会からも出されておる。愛知県のほうでもそういうふうなことがやられておる。あるいは京都でも大阪でもやられておる。そういう状態に対して、今日まだ実態が十分把握されていないということは、まことに遺憾千万で、現在、厚生省ではむち打ち症患者が何を基準にして約六万人ということを——これはおそらく勘で六万人という以外に、正確な調査をしていないから出ないと思うのです。それで、かかった者がどういう症状になっておるかということも的確に把握していないと私は思うのです。そういうふうなことも質問する時間がないので打ち切りますが、一体総理府、つまり交通安全対策本部の総元締めとしての総理府としては、このむち打ち症患者の救済措置について、交通安全対策の一環として、早急にこういう患者の精神的な不安をなくすように、あるいはまた、その事故にかかった場合の精神的な不安を解除するために、今後どういうふうに仕事を進められようとするおつもりであるのか、その辺の見解をひとつ承って、私の質問を終わりたいと思います。
  97. 八木徹雄

    八木政府委員 交通安全対策全体が先ほど申しましたように、いまの社会問題の中で一番大きな問題の一つに数えられるわけですが、わけてもむち打ち症はその症状が非常に悲惨である、また非常に激増しておるということで、これに対する対策というものは超重点的に考えていかなければならない課題だと思います。私どもといたしましては、安全対策全体に四つの柱を立てておりますが、特に、いま言われました救済対策というものもその重大な柱の一つでございます。まだ的確にこれで完璧だというところまで対策が整っていないことは非常に遺憾でございますけれども、いま申しましたように、重大問題でございますから、各省とも連絡を密にとりまして、いわゆる重点対策、緊急対策としてこれから処置するようにさらに努力してまいりたい、こう思っております。
  98. 山下榮二

    山下委員長 それでは、次に松本忠助君。
  99. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 きょうは時間もございませんので、若干の質問をさせていただきたいと思っておりますが、きょう議題となっておりますむち打ち症のことにつきましては、いろいろ大久保さんあるいは井上さんからも御質問がございました。その中で、私も若干重ねてお伺いしておきたい点がございます。  それは先ほど通産省の方のお答えにあったと思いますが、ヘッドレストの問題であります。ヘッドレストのことにつきましては、まだ十分検討がなされていない。しかし、これは早急にやらなければいかぬ。来年の三月までにはその基準をきめたいというようなお話が出ておりました。これはやはりJIS規格としてきめられるのかどうか、その点もう一度確認したい。
  100. 堀山健

    ○堀山説明員 お答えいたします。これはJIS規格としてきめるわけでございます。
  101. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 ヘッドレストについてJIS規格をきめるということでございますが、なお私はもう一歩進んで、いま最も問題になっておるのは、自動車の安全構造の問題です。こういう問題で、自動車全体に対しての安全構造の基準を定める考えを持っておるかどうか、この点について聞いておきたい。
  102. 堀山健

    ○堀山説明員 追突事故につきましては、先ほどお答えいたしましたように、いろんな方法があると思いますけれども、当面とりあえずの措置としては、まくらが一番適当である。ただ、従来出ておりますのは粗悪品が非常に多いので、この際いいものにしてこれを普及させるのがしかるべきである、こういうことでございます。ただ、もう一つの問題としては、衝突ということは避けられない問題でございますが、衝撃をいかにうまく吸収させるかという問題があると思います。これにつきましては、いろんな面について解明が十分できてございませんので、運輸省といたしましては、船舶技術研究所の自動車部門の強化をいたしておりますが、ことしはその衝突の実験装置を備えつけまして、さらに現在科学技術庁の特別研究調整費を折衝中でございます。そして衝突のあり方についてさらに解明を深めていきたいと思っております。  なお、衝突する場合に、これはなるべく衝突しないということの一つの方法として、たとえばうしろの尾灯だとか制動灯だとか、そういったうしろの灯火類、こういうものをどのように変えたらうしろから追跡する車がつかえにくいか、こういう面があろうかと思いますので、そういう点についても検討を進めております。
  103. 田中龍夫

    田中説明員 ただいま運輸省のほうからもお話がございましたように、通産省といたしましても、日本工業規格を安全まくらについて早く策定をいたすということで、実は昨年十一月から私どもといたしましてこの作業にかかったわけでございます。それで、一応本年度一ぱいにやるということで、この点につきましては、先ほど大久保先生からいろいろお話がございましたが、アメリカにおきましても安全基準の点から非常に検討が進められておるわけでございます。ただ、アメリカのほうにおきましては、パッセンジャーカー、乗用車を中心といたしまして安全まくらの装着につきまして検討しているわけでございますが、わが国の場合に、必ずしも乗用車に限らず、トラック等の追突事故も多いわけでありますので、むしろアメリカよりも一歩を進めまして、すべての車に適用する安全まくらをつくりたい、こういう観点から研究を進めて、本年度一ぱいにJIS規格としてこれを制定する、こういう形になっております。  なお、そのほかに自動車それ自体の構造につきまして、追突事故を防止するということも含めまして、できる限り安全性を高める。これは何よりも技術の開発をいたしますことが必要であろうと考えております。すでに四十二年度、御承知でございますが、約一億四千万円の予算をもちまして、従来の通産省にございます工業技術院系統の試験研究所、これを統合いたしまして、自動車安全公害研究センターというものを発足いたしたわけでございます。ここにおきまして車体構造それ自体に対します基礎的かつ科学的研究を現在進めておるわけでございますが、もちろんこれにはメーカーといたしましても、積極的に参加をするということになっております。この共同研究によって進めておる次第であります。それは大体ブレーキの性能の研究あるいは追突の際におきますショックをやわらげる、こういう点を中心に現在鋭意検討中であるということでございます。
  104. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 次にお伺いしたいことは、八木長官にお伺いしたいわけでありますが、それは現在、むち打ち症患者を救済するという手段の一つとして、国立の、言うならばむち打ち症センターというようなものを考えてはいないかどうか、この点についてお答えを聞きたいわけです。  というのは、現在のむち打ち症患者に対する、いわゆるむち打ち症患者であるということの査定、また後遺症がこの患者は確かにあるのだということに対する査定がなかなか行なわれない。そのために、いわゆる加害者被害者の間にいろいろの紛争が絶えない。このむち打ち症で一番問題になるのは、いま申し上げたように、被害者のほうは正常な運転をしているにもかかわらず被害を受けているという、ここに割り切れない問題がある。そしてしかも、それが直ちにむち打ち症であるということがわかるのは全体の二〇%くらいだ、あるいは翌日にならなければむち打ち症であるという自覚すらないというように、その間に非常に時間的な経過もあるし、それが大きな災いになって、いわゆる示談の問題にもからんで非常に難航をしている。そしてまた、病気自体も難治症である。後遺症を伴っている。こういういろいろの、いままでかつてわれわれが経験しているような病気とは違った特異性を持ったむち打ち症であるがゆえに、このむち打ち症の根本的な治療をする、そしてまたこれに対する救済を万全にし、ひいてはむち打ち症患者が職場復帰ができるまで、その指導なり育成なりをしていくための国立のむち打ち症センターというようなものをつくる考えがあるかどうか、この点についてひとつお答えを願いたい。
  105. 八木徹雄

    八木政府委員 むち打ち症に限らず、交通安全対策全体について、新しい課題でありますから、それに対する万全の対策が完備できていないことはまことに遺憾でございます。しかし、たびたび申し上げておりますように、安全対策本部といたしましては四つの柱を立てて、これに対する措置を、緊急度の高いものから順次解決していこうという努力をいまいたしておるところでございます。いまおっしゃるとおり、むち打ち症が難治の病気である。その症状が非常に複雑であるし、それに対する治療というものも的確な治療はまだ見出しがたいという状況でございますから、何らかの措置をしなければならぬことは当然だと思いますけれども、これは総理府というよりも厚生省の関係のほうに主として属するのではないかと思いますが、正直に申し上げまして、センターというものをすぐに考えるというところまで協議はいたしておりません。どちらにいたしましても、この救急対策というもので取り上げていく中で検討する課題だと思いますから、救済対策の一環としてそういうものをつくる必要があるかどうか、政府部内におきましてもよく検討いたしまして、善処するようにいたしてまいりたいと思います。
  106. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 重ねてお伺いします。  いまの八木長官のお話の中でも、私のことばを引用されましてお話があった、難治症であるという点、まだそれに対する根本的な治療の方法もきまっていない、こういう点を副長官もお認めでございます。したがいまして、これに対するところの研究センター、いわゆるむち打ち症の研究所というようなものをつくって、そこでいわゆる脳外科専門医あるいは整形外科の専門医を置いて総合的な研究を行なう、その研究所におけるところの研究の成果は直ちに、いま私が申し上げましたところの国立のむち打ち症センターというようなところにおいて臨床実験をして、そうして効果的な治療方法の確立をはかって、そしていわゆる医学的な基準を確立していく、こういったようなむち打ち症研究所というようなものをつくる考えがあるかどうか、この点ももう一度重ねてお伺いいたします。
  107. 若松栄一

    ○若松政府委員 厚生省の医務局長でございますが、むち打ち症という病気それ自体が非常に固定した単一の病気ではございませんで、むち打ち的な動作に伴いますいろいろな障害を複合した病気でございますので、現在すでに脳外科あるいは神経科等でそれぞれの分野について研究が進んでいるわけでございます。これがきわめて単一な病気でございますと、それだけを目当てにという研究も可能でございますが、総合的に申しまして、これはやはり外傷治療研究になります。したがって、私といたしましては、むち打ち症だけを一つ取り上げるというよりは、やはり重症は脳損傷あるいは脳底骨折というようなところまでございます。あるいは軽症は非常に単純な神経障害あるいは自覚症だけの者もございます。そういう意味で、総合的に脳外科あるいは神経内科あるいは精神科というような、いろいろな多角的な面で研究しなければならない。症状もまた非常に複雑多岐でございますので、これはやはり現実にそういう症例をたくさん扱っている医師の方々がそれぞれ研究し、あるいはくふうしていって、その功績を集積していくよりいたし方がないものと存じております。そういう意味で、私どもとしても、専門的な治療機関としての救急医療施設を拡充して、そこで数多くの方々が現場の患者を取り扱いながら研究を積み重ねていくという方法が適切であろうという意味で、本年度からは全国で百カ所程度の脳神経外科の医師を含めた救急治療センター、かなり高度の救急センターというようなものを整備しようといたしておりますので、これがだんだん系統的にできてまいりますと、それらの各専門機関の共同研究というような形で、その治療、診断の方法改善が進んでいくものと考えております。そのような共同研究等を促進するために、厚生省におきましてもできるだけ研究費等を獲得いたしまして、総合的な効率的な研究ができるように配慮いたしたいと存じております。
  108. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 警察庁にちょっとお伺いしたいことでございますが、それは先ほどの大久保さんの御質問の中に、交通渋滞の原因はどこにあるかというような御質問があったように記憶いたしておりますが、これに対するいろいろお答えについて、どうも交通渋滞の原因を完全に握っておらぬのではないかと非常に私不安に思ったわけでございますが、的確にいって交通渋滞の原因はどこにあるのか、これをもう一ぺん重ねてお伺いしておきたいのであります。
  109. 鈴木光一

    鈴木政府委員 交通渋滞という概念が、解釈いかんによると思いますけれども、交通混雑という考え方からいたしますと、先ほどもお答えいたしましたように、道路自動車の数とのアンバランスということから根本的には生じておると思います。それで非常に交差点等で渋滞するということになりますと、交差点におきます信号機の問題に関連してくるわけでございまして、したがって、私どものほうといたしましては、信号機の設置権限を持っておりますので、信号機の最も合理的な現示方法というものを考えておるわけです。信号機が漸次たくさんふえてまいりますと、これを系統化していくというようなことで、なるべく信号機による渋滞をなくしていく、円滑に信号機を通過していくという処置をできるだけやりたいという観点で、先般お答えしたわけでございます。
  110. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 いまの信号機の問題でありますが、現在の信号機の法規の中で、どうも私、こうしたらいいんじゃないかというような考えを、しろうと考えでありますが持つわけであります。それは、黄色に信号が変わりました場合に、完全に停止できないような場合、この場合は安全を確認した上でそのまま通り抜けさしたらどうか、こうしたほうが事故が少なくなるように思いますが、この点については交通局長はどう思いますか。
  111. 鈴木光一

    鈴木政府委員 御指摘のように、黄の信号につきまして、現在私どものほうで御指摘のような方向で検討しております。現在の道交法の施行令によります黄信号の意味は、これが表示されたときにはとまりなさい。それで、その表示されたときに交差点に入っておる車は早く出なさいという意味を持たしておるわけでございます。しかし御指摘のように、黄信号が表示されたときに、あまりに停止すべき位置に接近し過ぎておるために、その意味に従うためには、急に停車しなければいかぬという問題がございます。法令の意味を厳格に守ろうとするためには、急に停車しなければいかぬという事態が出まするので、そのことによって、交差点で信号機によるところの追突事故というものもあるようでございます。  そういう観点からいたしまして、黄信号の意味を、現在のような厳格な意味でなくても、もう少し交通の円滑化を促進するような、また、いま言ったような事故を防止するという観点から、意味を改正してまいりたいということで現在検討中でございます。
  112. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 それから、先ほど大久保さんの御質問の中にあったと思いますが、救急用のセンターが全国三十七カ所できたというお話がございました。これはあとで書類でけっこうでありますが、どこに設置されているのか、どういう設備が整っているのか、その三十七カ所について文書でけっこうでありますから御報告いただきたいと思います。  最後に、お願いいたしたいことは、これは委員長にひとつお願いいたしたいのでありますが、きょういろいろと関係官庁の方々のお答えを聞いておりまして、先ほども厚生省北川医務局次長のお話を聞いておりましても、むち打ち症患者にほんとうに会ったというのはわずかしかないような気もする。まだまだむち打ち症患者に対して、ここにいらっしゃる皆さん方御自身もあまりお会いになっていないんじゃないか。この点八木総務長官も実際にお会いになったかどうか私お尋ねしたいわけでありますが、どうもみんなむち打ち症に対する、非常にむずかしい病だということについての認識が浅いように思いますので、何とか次回の委員会のときに、むち打ち症患者を呼んで、実態はどうなのかということを、委員会として実際の姿を見るということも大いに必要じゃないかと思います。この点委員長に申し上げまして、実施されるようにお願いいたしまして、私の質問を終わるわけであります。
  113. 山下榮二

    山下委員長 理事会等で相談をいたしまして、できるだけ善処していきたい、こう考えます。塚本三郎君。
  114. 塚本三郎

    塚本委員 最初に、副長官お尋ねいたします。  きょうは、くしくも交通事故全国的に大きなショックを与えましたあの愛知県猿投の十一名の幼児たちの事故が十二月十五日で、満一周年に当たる日になってきたわけでございます。あの悲惨な事故が全国的な大きな世論を喚起いたしまして、本委員会におきまして画期的な作業が進められて、あの惨事のあとにはすばらしい施設もできておりまして、新聞ではこの活動を大きくたたえております。しかしそれにもかかわらず、国としては相当の金をつぎ込んで施設に対する処置は急速度に伸びておりまするが、事故は一向減っておらないという状態でございます。これは根本的にはやはりその運転者の人間の問題、さらにそれを背景といたします社会的、経済的問題があることは当然だと思っております。これらはそういう自動車の発達した先進各国の例によりまして、多くの施策も講じられなければならぬでございましょうが、しかし、事故が起こったあとの処置につきまして、きょう先輩の皆さん方から具体的な幾多の問題が取り上げられたわけでございますが、私は最初に、特にむち打ち症というものが、すでに流行語のごとくになり、今日重大視せられておる、そういう状態になってまいりました。この数は、先ほども発表なさったようでございまするが、相当の数に及んでおります。しかも、これが治療に対しては、相当長期的な施策というものが必要であるやにも聞いております。したがって、これをひとつ特別に救済するための立法的な措置をおとりになるお考えがないかどうか。このことは、実は将来ともずいぶんこの被害が出てくることを予測しなければなりません。したがいまして、むち打ち症についての救済のための特別な何らかの立法処置を講じていくべき必要があるというふうに私どもは感じておるわけでございまするが、それに対する御見解を最初にお聞きしたいと思います。
  115. 八木徹雄

    八木政府委員 おっしゃるとおり激増の一途をたどっておるむち打ち症であります。また、交通災害全体がそうでありますから、その防止対策、アフターケア、ともにその画期的なことを考えていかなければならぬことだと思いますが、まだこの対策全体が、四原則をきめてからまだ一年少々しかならない、そういうときでございますので、取り急ぎわれわれは四つの柱の一つである救急医療対策の拡充強化というものに懸命の努力を払い、来年度予算もそういう見地に立って前進させていくようにしたいと思っておりますけれども、直ちにそれに対する立法措置というところまでまだ思いが致っておりません。被害の激増を食いとめることができないということであるならば、抜本的——法律をつくったからすぐ解消するということでもないと思いますけれども、しかし、検討すべき課題だと思いますので、今後の推移を見守ってこれに対する根本対策というものを立てるように考えてまいりたい、こう思います。
  116. 塚本三郎

    塚本委員 即断はしかねると思いますが、しかし、もはやこれは一事故の中における病症だというような考え方ではなくして、交通事故むち打ち症、こういうふうにドライバーはもはや頭の中で恐怖的な観念さえも抱きせしめられておるという現状だと思っております。したがいまして、もしそういうことの具体的な方針がまだ——もちろん即断はできないと思いますが、それでは、この医療に対する救済をするにあたりまして、これらを保険ということに相当にウエートをかけておられるようでございまするが、国の負担という考え方、むち打ち症という病気はもう交通におけるところの不可分の被害だということに今日なってきつつある現状から考えてみますると、国の負担というところまでいくべきじゃないか。こんな被害者の声というものは非常に強いわけでございまするが、どうでございましょうか。
  117. 八木徹雄

    八木政府委員 むち打ち症が起こらないような環境整備ということについては、当然国が善処していかなければならぬ課題だろうと思う。また、むち打ち症に対する医学的検討あるいは受け入れ態勢という、そういうことについても、当然やらなければならぬことだと思います。ただ、症状者に対する国家負担というものをすぐにできるかどうかということについては、これはよほど検討しなければならぬ課題だと思いますので、もう少し検討の時期をかしていただきたいと思います。
  118. 塚本三郎

    塚本委員 それでは、長期療養に対する医養施設あるいは社会復帰に対する訓練施設、こういうようなものを大きく設置をして、そして一刻も早く、特にこの被害者の大部分は社会になくてはならない、まあ言ってみますならば若年労働者といいましょうか、若い人たち被害者が圧到的に多いと思うわけです。そうするならば、国家的に考えても、こういう人たちを社会復帰させるため、国としてそういう施設を建設する御意思は持っておいでにならないか。私は、これは具体的にもっと進めていかなければならない、こういうふうに考えますが、どうでしょうか。
  119. 宮崎清文

    宮崎(清)政府委員 むち打ち症が現在非常に大きな社会問題になっておることは御指摘のとおりでございますが、私たちといたしましては、むち打ち症を含めまして、交通事故による身体障害者の社会復帰、これを一般にリハビリテーションと申しておりますが、これにはメディカル・リハビリテーションとソーシャル・リハビリテーションと両方ございまして、後遺的な障害の治癒とそれから社会復帰の問題、これを含めて現在前向きの方向で検討中でございます。
  120. 塚本三郎

    塚本委員 前向きといいますと、もっと具体的に説明していただきましょうか。
  121. 宮崎清文

    宮崎(清)政府委員 率直に申しますと、交通事故による被害者の方のあとの問題につきましては、被害者救済につきましては従来やや立ちおくれていた点がございまして、まず当面は、何よりも生命を救うことが大事であるという見地から、救急用施設の整備に重点を置いてまいりました。これはここ一両年から大体そのめどがつきまして、今後急速に整備されることになろうと思います。したがいまして、次の問題はリハビリテーションの問題でございまして、救急用施設の整備に次いで重点事項として今後取り上げていく、こういうことでございます。
  122. 塚本三郎

    塚本委員 あまりにも抽象的でございまして、もう少し方策がかたまっておりはしませんか。あったらひとつ具体的に救急に次いでということでは——個所について、三十七カ所ということまでは救急センターについてはお聞きしましたけれども、このリハビリテーションのもっと具体的なことについて、構想でもけっこうですから……。
  123. 若松栄一

    ○若松政府委員 ただいまお話にありましたリハビリテーションの問題でございますけれども、現在医学的なリハビリテーションという問題は、交通傷害後遺症のみならず、いろいろな障害に伴う身体障害者あるいは精神障害者、あるいは手術等に伴いまして機能的な障害の起こったものに対する機能回復訓練といういろいろな面がございまして、それらのものを総合的に、脳卒中のあとの身体障害者も含めまして、リハビリテーション施設の拡充というものが叫ばれておるわけでございまして、そういう意味で私どもも、たとえば国立療養所みたいな施設をできるだけ活用して、リハビリテーションの施設にしていきたい。特に国立の、温泉を持っておりますような温泉病院というようなものも総合的なリハビリテーションの機能を強化していきたいということで、現在計画的に逐次そういう施設をふやしつつあるわけでございますが、むち打ち症だけを専門に取り扱うというようなことになりますと、むち打ち症のリハビリテーションという問題も非常に高度の身体障害を伴いますものと、比較的軽易の神経障害だけのあるものとございますので、これを一カ所に専門的な施設をつくるということは事実上なかなか困難であろう。より一般的な方法といたしまして、数多く至るところにそういうような施設ができるということが望ましい姿であるというふうに考えまして、総合的なリハビリテーション施設の強化という方向で考えております。
  124. 塚本三郎

    塚本委員 それはわかります。確かにむち打ち症だけでつくることの困難性は私ども認めております。しかし、急激にそういうものの数がふえてきましたから、これを受け入れるために早急に、そして具体的に——それがむち打ち症をこういうふうにして受けるためにこうしたんだという、何かなしくずし的にふやしていくような考え方は、予算的にはそれは楽でございましょう。しかし、いまその被害者の声というもの、あるいはドライバー自身の、いつみずからがそのような犠牲者になるかもしれないという心理的影響等を考えてみますと、いわゆるむち打ち症を救うために具体的にかくするんだという、そのことをはっきり目に見えて行なうことが、心理的にも大きな影響を与えてくるんではないかというふうに思うわけです。したがって、そういうことでなしくずし的にという、予算的にはそれが一番楽でございましょうけれども、もっと画期的な施策に踏み切る意思をお持ちにならないかどうか。私どもも、もちろんドライバーの一人としてそんなことを非常に強く考えるわけですが、もう一ぺんお答えいただきたいと思います。
  125. 若松栄一

    ○若松政府委員 このむち打ち症といいますものも、いろいろお話に出ましたように、非常に重症なものから非常に軽いものまでございます。通常、非常に重症なもので、たとえば脳底骨折を起こしたりすれば、これは即死になりますけれども、頸椎の骨折だとか脱臼だとかいうことになりますと、これは相当強い身体障害を伴います。したがって、それらのリハビリテーションというものは、通常のいろいろな災害あるいは脳卒中その他の結果として起こる身体障害者のリハビリテーションと、全く軌を一にするリハビリテーションをやらなければならぬわけでございます。また、中等以下の非常に軽い症状のものにつきましては、そういう高度の身体障害者のリハビリテーションの施設ほどのものはむしろ必要がないということでございまして、リハビリテーションの問題だけに限りますと、むち打ち症だけを対象にする施設というものは実際上きわめて困難が伴いますし、非常に非効率的なものにもなります。そういう意味で、むち打ち症であれ、あるいはその他の交通傷害であれ、あるいは内科的病患に伴う障害であれ、ある程度重度のもので身体機能に相当の損傷のあるもののリハビリテーションというものは、原因のいかんにかかわらず、やはり専門のリハビリテーション施設が必要である。そういう意味で私どもはリハビリテーション施設の整備を急いでいるのでございまして、現にそういう私どもの療養所等も逐次その方向に体質転換といいますか、診療内容の転換をはじめ、温泉その他の利用を強化しているわけであります。
  126. 塚本三郎

    塚本委員 それでは、次に移らしていただきまして、私どもずいぶんこういうことを耳にするのでございますが、交通の、特にむち打ち症などでいわゆる損害賠償といいますか、慰謝料の問題の解決にあたりまして、先ほどお話がありましたように、すぐわからないわけですね。先ほど交通事故相談所がある、こんなことの御説明がありましたけれども、現実に、まず慰謝料なり損害賠償なり、こういうものを話し合う前提として、どんな程度であるかということが全くわからない。だもんだから、結局本人はたいしたことないからといって、あとから出てきてしまうという場合が非常に多いわけでございます。結局、善人が常に損をするという形にこの場合はさせられております。そして逆に変なドライバーにぶつかってこられまして、たいしたことないのにかかわらず、賠償の場合に、文句言うなら病院に入院してやろうか、こんなたんかを切られて、言われただけそのまま賠償を払わなければならないというような、いずれにしましても、この問題に限っては善人が損をする形にさせられております。この相談の方法は次の問題として、まず、これを客観的に把握するという、とにかくぶつかったならば、あるいはぶつけられたならば、すぐに見てもらうということを絶対条件にしていかなければならぬし、これはおそらく警察は十分指導なさっておられると思う。しかし、それがいわゆるレントゲンでといってみたところで、骨で出てくる以外はわからないということで、筋肉から神経からということも——精神まではもちろん無理かもしれませんが、科学的なそういうものを、これから研究するという段取りになるかもしれませんけれども、いずれにしても、まず、最初どの程度かということを判定すべきですね。そういうものが緊急に整備せられる必要があると思いますが、この点どういうふうにお考えでしょうか。
  127. 若松栄一

    ○若松政府委員 むち打ち症という最近非常に便利なといいますか、ことばを使っておりますけれども、これを医学的に見ますといろいろな段階があるわけでございまして、むち打ち的な動作によりまして骨折を起こすもの、あるは脱臼を起こすもの、あるいは靱帯、関節あるいは神経その他、血管その他に損傷を起こすもの、いろいろあるわけでございます。医学的にはっきり客観的に証明できますものは、これは骨の損傷、骨折であるとか脱臼であるとかいうものは、レントゲンその他で客観的に把握できるわけでございますが、軟部の靱部の靱帯であるとか血管であるとか神経の損傷というものは、客観的になかなか把握いたしがたいものでございまして、結局自覚的な症状あるいは客観的な症状から類推していくわけでございます。そういう意味で、診断そのものも非常に画一的にきわめがたいものでございまして、その診断の方法も現在のところ機械的にやりますものは、X線であるとか脳波であるとかいう程度のものしか機械としては活用できておりません。  治療の面におきましても、非常に同じように多種多様でございまして、それに、ちょとお話も出ましたように、心の持ち方によってかなり起こる、いわゆる心因性の症状が相当出てまいります。そういう意味で、症状把握それ自体も客観的に把握できるものと、神経的な、精神科的、神経科的な把握をしなければならないものといろいろございますので、そういう意味で機械その他で非常に明快に診断治療するということはきわめて困難な病気でございます。そういう意味からも、私どもといたしましては、できるだけ救急センターその他におきましては、客観的な判定ができるような方向で将来研究等も進めてまいりたいと思っております。
  128. 塚本三郎

    塚本委員 医療の問題はもちろん最も大切でございますけれども、被害者にとってだけじゃなく、善意の加害者にとっても実に大きな問題になってきておるわけですね。その場合、全く外科的な外傷でありますならば、それはどんな程度ということがすぐ出てまいります。しかし、むち打ち症に関する限り、何にもなくても、先ほど申し上げたような悪いやつにかかりますと、病院へ入ってやろうか、こう言われると、すぐ何万、ひどいのになると何十万という金をそのまま無条件で出さざるを得ません。こういう形の状態に——これは被害者の場合も加害者の場合もいつでも共通のそういう心配がございます。実にこのことが、いわゆるむち打ち症として当局に報告されておるおそらく何倍かにわたりまして、こういう問題が陰で片づけられておるという実態があろうかと思います。したがってこういう場合、たとえば県に一つの、すぐここへ持っていったらここで判断されるのだ、ここの判断が基準になるのだというような、そういう一番外傷的にあらわれにくい問題であるこのむち打ち症に関しては、県に一つぐらいそうものがあって、そこで相談することがいわゆる賠償の裁判になった場合におきましても、大体一番大きなきめ手となる。もちろん例外はあるでしょう。しかし、基準となるべき何らかそういう医学的なものをつくってやらないことには、それはむち打ち症として出てきた数のほんとに何倍というものが、もう自動車の修理屋に車が持ち込まれる数だけそういう問題が起きておるといってもいいくらい大きな問題としてドライバーの中に恐怖心を与えております。したがって、この問題をどういうふうに解決していくかということは、やはり可能な限り、少なくとも各県に一つぐらいは、緊急を要しなくても、いわゆる損害賠償に関する資料としてのそれを確立すべき方策が必要だと思いますが、どうでしょうか。
  129. 若松栄一

    ○若松政府委員 むち打ち症という病気が非常に多種多様の原因で起こってくる個々的な症状であるということと、それから、先ほど申しましたように、客観的に証明できがたいような原因が非常に多いという問題と、それから、この症状がかなり流動的に動いている。普通の身体障害で固定している症状でなしに、症状が非常に流動的であるというような条件がからみまして、これをある時点で、採来永久にわたるような診断あるいは基準というものをすることがきわめて困難であるという点がこの病気一つの特徴であろうと思いますので、これはやはりまだ相当そういう治療に従事している医師の経験を積み重ねながら、学会その他で討議をして、そして将来そういうものがおのずから固まっていくものと思っておりまして、これをいま人為的にきめるということはかなり困難であろうかと思っております。
  130. 塚本三郎

    塚本委員 事情よくわかります。ただ、ドライバーの立場になってみるとき、これは何度も申し上げるようですが、加害者被害者ともに、それならそれで流動的な、その賠償に対する修正をしてもいいと思います。それはかまわぬと思います。しかし何らかの形で、権威あるいわゆる基準というものが、たとえば県に一つなら県に一つ、ここの判断でこういうふうに動いてきたのだというようなものがあるならば、それは被害者によらず、加害者によらず、ある程度納得すると思うのです。こちらの医者へ行って診断を書いてもらう、こちらに行ってというようなことをやって、お互いに最後には強い者勝ちになってしまう、こういうことで——実はそんなことを申し上げてたいへん恐縮ですけれども、一般の紳士としての話し合いができないのが、今日のドライバー同士の事故の実態です。そうであるとするならば、何らかの形で権威ある、それは確定的なものでなくて流動的でもけっこうです。あとから出てきたからもう少しふやすということも可能でしょうし、そういうふうなことを何らかの形で権威あるものを各府県に一つぐらいずつ設置をして、判断は常にここの判断が基準になるのだというようなものを、たとえば救急医療センターならそれでけっこうです。そういう基準的なものを設けてやるというような考え方は妥当ではないかどうか。私はそういうものがあったならば、この事故に対しては相当数かけ離れたような要求というものはでき得なくなってくるのではないか、かように思いますが、どうでしょうか。
  131. 若松栄一

    ○若松政府委員 労働災その他の補償におきましても、障害等級別の規定がございますけれども、それらはすべて客観的な判断が基本になっております。むち打ち病におきましては非常にはっきり、重症の場合は客観的な基準に基づく判定ができますけれども、ある程度、中等症以降になりますと、自覚的な症状が一番大きな訴えの中心になりますので、そういう意味で自覚的な訴え、したがって、客観的になかなか基準のつけがたいものについて、一つのセンターあるいは権威ある機関でやろうというのは、理論的にはまことにごもっともだと思いますけれども、現実にはまだなかなか困難な状態ではないかと私ども考えております。
  132. 塚本三郎

    塚本委員 いみじくも言われた。軽症ならば困難だと言われた。それならば、困難な軽症だということぐらいな判定を出してもらうだけでもどれだけドライバーは助かるかもしれない。現実はそんなにドライバーにとってけた違いな要求をされる場合がずいぶん多いのでございますよ。ですから重症ならばわかる、軽症ならばわかりにくい、わかりにくいほどの軽症だというくらいの判断でも与えられたならば、どれだけこれがドライバー人口にとって救いになるかということを考えるのですけれども、そういう点はどうなっておりましょうか。
  133. 若松栄一

    ○若松政府委員 症状の判定と補償の問題がからみますと、これは私どもが補償の問題に口を出す筋ではないと思いますけれども、症状がどの程度かということは当然医療機関として診断すべきものと思います。ただ流動的な病気でございますので、症状の移り変わりというものは当然ある、現時点においてはこうだということはこれは医療機関として医師として当然その診断をすべきものと思っております。
  134. 塚本三郎

    塚本委員 次に進みます。  いまの問題の解決にあたりまして、具体的に何らかの、交通事故相談所というものがあるという話でございますけれども、何らかのこれに対する強制力、というとこれは法的な措置が必要になるかもしれませんけれども、何らか強制力的なものが必要ではなかろうか、これは感じでございますがどうでしょうか。
  135. 宮崎清文

    宮崎(清)政府委員 ただいまの、先ほど申し上げました都道府県でやっております交通事故相談所は、一般的な損害賠償をどれだけ——非常に端的に申しますと、事故被害者の方に、あなたはどういう賠償が受けられる、どういう手続をして、どこからとれるのだということからお教えしまして、最終には、法律問題に入りますと、これは弁護士でなくてはできませんので、法律問題に入るまでの段階を懇切丁寧に指導するということになっております。したがいまして、その過程におきまして、当然損害賠償額が大体どれくらいになるかということを、ある程度教えなくてはならないわけでございますが、むち打ち症等につきましては、先ほど医務局長からるる御説明がありましたように、それをしろうと判断するということは非常に危険でございますので、その点そこで現在実情といたしまして、いたしておりません。最終的には、これは当事者間で——大体交通事故の損害賠償は訴訟に持ち込まれるケースが非常に少のうございまして、大部分は当事者間の示談によっているわけでございまして、その点確かに先生御指摘のような問題もあろうかと思いますが、将来だんだん医学のほうの研究が進みまして、ある程度そういうものが定型化してまいれば、それを根拠にして、示談の場合でもそれを使って示談額をきめる、こういう方向に進むのではないかと思っております。
  136. 塚本三郎

    塚本委員 交通局長さんにお尋ねいたしますが、もちろん警察にそんな権限はないと、そういう腹で見えると思いますけれども、しかし、ドライバーにとって警察はたいへん権威あるものでございます。だからこういう事故で、おまえのほうが間違っておるのだぞ、こういうふうだぞと、一言警察のほうで判断の材料というものを明確にしてくれることが、この問題を解決する大きな力になり得ると思うのです。ところが警察はきわめて民主的になってしまいまして、この問題に関する限り、ややこしいから立ち入りたくない。もちろんどうせよということはでき得ないと思います。しかし、事故に対する現場検証をなさったときに、大体そういうことを、どちらの過失がどんな程度だということは明確に指導するということくらいは、なさるほうがいいのではないか。それはその現場の係官によって、やっておられるところとやっていないところがありますが、これに対する見解はどうでしょうか。
  137. 鈴木光一

    鈴木政府委員 警察官がそういう場合に、一般的に事故の賠償等について介入しないという方針でございます。特に先ほどからいろいろ論議されておりますように、むち打ちの場合には非常にむずかしい問題がございますので、御指摘のように警察官が消極的だということは、方針からいっても当然だと思います。ただ、警察官がそういう事故が起きた場合に、どちらに事故の原因があったかという判断はいたしております。
  138. 塚本三郎

    塚本委員 その判断が最も大きな問題になりますが、ややもいたしますると、けんまくが強いと、現場によりましてその判断というものはきわめてあいまいになる場合がある。それはむずかしいところだと思います。そして、することによって、非常にいろいろな問題も出るかもしれません。しかし、これはやはりいまおっしゃったような判断というものは最も大きな基準になりまするから、この点は明確にこれからもやっていただくように希望申し上げたいと思っております。  ついでに警察の問題で、私、自分自身でも、それから多くのドライバーからも訴えられるところでございますが、信号の問題でございますね。特にむち打ち、追突というものの最も大きな要素としては、わき見運転が非常に多いと思います。このわき見運転で、私、常々そう思うことでございまするが、いわゆる指示するところのあらゆる掲示でございますね。スピード何キロ、一たんとまれ、一方通行、いろいろなこと、これがことごとく路面の左側に出ておるわけでございます。これはドライバーにとってはきわめて不親切に思うわけでございます。これは経済的にたいへんなことかもしれません。路上に書いてあれば、われわれは前を見ておるのですから、だからすぐわかるのでございますね。ところが、横に三角で一たんとまれと書いてあるだけ、前を見ておる者にとってはそれに気がつかない場合がずいぶん多いのです。そのときには一本線を引いておいてくれたら、こんなことにはならないと思うことがずいぶんあるのでございます、とまれと書いてないときには。線が引いてあって、そうしてとまれと書いてあればいいが、線が引いてない場合がずいぶんあるのでございます。あるいはスピード制限でも路上に何キロと書いてあれば、これはすぐわかるのでございますね。ところが左にどれだけと書いてあると、そうすると、これになかなか気がつかない。こういう点なんか常にドライバーは左、横を気をつけておらなければならない。こういう点はどうお考えでございましょうか。
  139. 鈴木光一

    鈴木政府委員 御指摘のように、道路標識それから道路標示等につきまして、ドライバーから非常に見にくいという御指摘が交差点に限らずございまして、私ども現在これは最も大事な問題で道路標識、道路標示等につきましてはドライバーから見えやすいものにしていく。したがって点検を常にして、ドライバーの立場から見えやすいものにしていくという方向でやらしておりますが、御指摘のように、交差点等で道路標識があっても見えにくいということだと思いますけれども、これはなるべく大きなものに、高いものにしていくということで、技術的にも十分検討してまいりたいと思います。
  140. 塚本三郎

    塚本委員 特に一たん停車だとか、スピードなんかはすぐ消えてしまいますから、経済的にたいへんかもしれませんが、横に書かずに、前に書いおいてくれたら、ドライバーはわかると思いますが、その点はどうでありましょうか。高速道路なんかはずいぶん前に書いてあるところがございますけれども、大部分はほとんど左の標識でございまして、前というものは、特に夜間になりますと、それがライトの範囲に入らなくて、そういうことがずいぶん多いのでございますが、この点はどうでございましょうか。
  141. 鈴木光一

    鈴木政府委員 道路標識と道路標示と二種類ございまして、道路標識がある場合に、さらにたとえば一時とまれという道路標識があった場合に、とまれの指導線をさらに引いておいたほうがドライバーの立場からはよろしいと思いますので、こういう方向に極力進めてまいりたいと思います。
  142. 塚本三郎

    塚本委員 もう一つ、関西のほうにおきましては、信号が変わる場合にウインクの青の点滅がなされておりますが、これを来年の七月から廃止するとかいうことを新聞でちょっと見たわけでございます。しかし、新聞にもそのことが多少出ておったようでございますけれども、確かに悪質な運転者にとってはウインクというものは危険だ。このうちに渡ってしまおうと思ってスピードを出します。その悪質な運転者を基準にしてこれが廃止されるというふうに実は私ども悪くとるのでございますけれども、まともに私たちがやっておりますると、ぱっと黄になりますると、ぐっとあわててわれわれはブレーキを踏みます。そうすると、まだいいと思っているうしろからどんと来る。これが圧倒的に多いのではなかろうか。ウインクがあれば、もうこれはすぐ変わるのだからと思って徐行もいたします。ところが黄にすっと変わってしまいますと、たいへんでございます。何か八割は関西においてはウインクを残してほしいという意見が強いということを新聞紙上でも見たわけでございます。全く私自身過去の経験に照らし合わせてみて、こういう急に信号が変わった場合に、追突事故というものがかえってマイナスになるのではなかろうか。確かにそれはスピードを出すために大きな事故が起こるということは私も否定はいたしません。しかし、あくまで善意の人大部分対象にして、これを悪質な者に対してはまた次の別のことを考えるということで、ウインクというものを私はすすめたほうがいいのではないかという見解でございますが、どうでしょうか。
  143. 鈴木光一

    鈴木政府委員 御指摘のように、青点滅の信号が大阪を中心に関西のほうに多く採用されておりますが、これは現在の黄信号の、御承知のように予告という意味で採用されたわけですが、これは現在の黄信号の意味が、先ほどお答えしたわけですけれども、とまれということで、非常に赤に近い意味を持っているわけです。したがって、それを厳格に守るためにはやはり予告してもらわなければいかぬということで、確かにこれが採用された当時におきましては、黄信号時における進入を抑制するという効果があったと思いますが、漸次、御指摘のように運転者の反応が一様でございませんので、悪質な者という御指摘でございましたけれども、要するに青点滅があったら加速して早く通ろうという事態が出ますし、また、とまろうとする人がおるということで、追突事故が起こる。それから最高裁の判決で、青点滅の意味が法令に規定されておりませんので、そういう意味の明記されておらない信号をこのまま存続することは適当ではないというような判決もございましたし、あれこれ考えまして、結局現在の黄信号の意味に問題がある。現在の黄信号の意味をむしろ赤の予告的な意味の信号に変えていくということであれば、青点滅の存在理由はなくなるのではなかろうかという考え方で、黄信号の意味の改正を現在検討しておるわけでございます。したがって、黄信号の意味がそういうことに変わりますれば、青点滅の存在理由はなくなるであろうという考え方で、その際には、青点滅という法令に規定のないものを廃止していくという考え方で作業を進めておるわけでございます。
  144. 塚本三郎

    塚本委員 これはいずれがあれか、結論は出にくいものだと私は思っておりますけれども、ただもう、いままでのドライバーにとって黄信号ですぐしかられて注意を受けたものでございます。そういう事例が関西においては非常に多いわけでございます。だから、もう黄に変わったらふっとブレーキを踏むという、そういう慣習がドライバーにできてしまっているわけですね。これを直すまでには相当たいへんだろうと私は思っております。これはなれてしまえば、いまおっしゃったとおり、いいということになろうと思いますけれども、見解だけ申し上げておきます。  建設省、おいでになりますね。——時間も少のうございますから、簡単に一、二お聞きしておきたいと思います。  交通の渋滞をなくすために、特に今日の有料道路の料金をできるだけ安くすることによって、そちらへ車を流すことによって、一般道路の渋滞をできるだけスムーズに流すようにする、こういう考え方も、せっかくある道路でございますから、一つの考え方ではないかと思うのですが、どうでしょう。
  145. 豊田栄一

    ○豊田説明員 有料道路についてのことでございますが、有料道路のたてまえといたしましては、つくりましたお金の償還にあれしておる。そういう点で、ただ利用率を高めるために、部分的にたとえば夜間割引とか、あるいは回数券云々によってその利用効率を高めることはやっております。そういう点で利用効率を高めるということについては、私どもやぶさかではございませんが、ただこれはまた、渋滞との関連という御質問かと思いますが、渋滞現象、これは道路の容量の問題、総合的なもので関係してまいります。そういう点で、ただいまの現行制度の中での運用の中で、できる範囲のことは現在やっておる段階でございます。そういうものも採算割れしてまでというまでには制度としてまいりませんものですから、そういう点現在の運用は、そういうものをはかりながらやっておるという段階でございます。
  146. 塚本三郎

    塚本委員 しろうと計算でございますけれども、かえって、半分にしたら倍以上に利用率が高まり、採算の点からいってもいいし、一般道路からいってもこれは渋滞をスムーズにしていく、こういう感じでございますが、いかがでしょうか。
  147. 豊田栄一

    ○豊田説明員 これは御案内かと思いますが、容量曲線をずっと分析しましたものですと、だんだん上がってまいりますけれども、あるところで頭打ちになりまして、それからかえって下がっていくものでございます。そういう点で一番適正段階にそういうものをねらっての料金の体系というものを考えておりますので、そういう点はただ多くすればいいというものではございません。
  148. 塚本三郎

    塚本委員 わかるのですよ。たまっておって、だんだんだんだんと車が一ぱいになれば、全部有料のほうにはみ出していきますから、そうじたばたしなくても、採算の点からいくならば、それはすばらしい効率をもって伸びていきます。しかし、金の問題だけではなくて、あいているうちはできるだけそうするということにして、そして次に道路の拡幅もしていく、そういう道もとられておるでしょうし、あらゆる施設というものはもう解決の手を建設省は打っておいでになりますが、当面片一方が相当すいておって、一方において実に数個の信号でなければ通れない、こういうような事態が大都会においては慢性化しております。そうであるとするなら、有料道路から考えるならば、だまっていてもどんどんふえてきます、よそからあぶれてきたやつがこちらへ入ってきますから。これは単なる商売であるにすぎない。したがって、交通問題解決の大きな一つの、いまそこにスペースがあるのだ、こういう観点に立ってそういう方法を勇断をもってといいますか、そういう措置をとることも一つの方法ではないかと思いますが、重ねて……。
  149. 豊田栄一

    ○豊田説明員 私、直接そういう所管のあれではございませんので、有料道路課長のほうが適当かと思います。そういう点で私の御説明が当を得たあれではないかもしれませんが、私ども全体として、道路の立場で見ますならば、やはり混雑解消、これは念願でございます。そういう意味での、また道路投資が足りないためのいろいろ混雑現象なんかについては、逐年の交通量の分析や何かを通じまして混雑度係数として出ております。そういうことは認める次第でございますが、そういうものを解決するためのいろいろの運用のしかたというものについては、やはり現行制度の中で適宜運用をはかっていくのがたてまえだと思っております。精神的には私どもそういう点は十分理解し、またそういうもののあらわれとして、たとえばすいているときの容量のほうを存分に活用できるような夜間割引を試験的に、暫定的にやっておるわけであります。そういうことの方法などは私ども採用しておるところでございますので、御指摘の、現場でいろいろ現象があるかと思いますが、臨んでいる姿勢としてはそういう姿勢でございます。
  150. 塚本三郎

    塚本委員 最後にもう一つだけ建設省に、駐車場の問題でございますね。先ほどちょっと交通局長にも申し上げたわけでございますけれども、わき見運転による追突事故が最も大きい原因の一つに数えられております。車を駐車するところはないかということで、ドライバーはわき見運転を一生懸命しておる。そしてどかんとやってしまう。こういうことが経験からずいぶん多いわけです。これは都心に入るときに、どこか駅のところに公の駐車場というものを相当数つくっておいて、ここからはもう駐車場をさがすのはめんどうだから、駅から乗りかえて、電車なりバスなり地下鉄なりとこうやって、大都会においてはそういう交通機関がずいぶんあるのでございますから、結局持っていって、会社の中のどこかへ置かないことにはどうにもならないということで、そういう置き場所さがしのためのわき見運転がずいぶん多いわけでございます。そういう意味で、いわゆる都会の中におきまする交通渋滞を防ぐだけではなくて、そういうわき見運転というものを避ける意味からも、もうぼつぼつ都会の入口なんかや駅の前とか裏とか、そういう所に公共の駐車場を設けるという段階に来ているのではないか。これは相当の予算が要るとは思いますが、そういうことを御検討なさったことがあるかどうか。
  151. 豊田栄一

    ○豊田説明員 私お答えいたしますが、これは所管が私のところではございません。都市局のほうで現在そういう意味での勉強をいたしております。また、そういう点で駐車場のいろいろな方策をとっております。先生御指摘のような点については、ちょっと私いま正確な答弁ができませんのでたいへん恐縮でございます。
  152. 山下榮二

    山下委員長 関連で太田一夫君。
  153. 太田一夫

    太田委員 たいへん時間がおそくなりましたから、井上君のことで関連して質問をやりたいと思ったのですが、これはまたあとに回します。ただ二つ三つお尋ねをしておきたい。  まず最初に、八木長官お尋ねをしますが、むち打ち症というものは、首の骨のうしろのほうが痛むのか前が痛むと思うか、あなたはどちらが痛むとお考えになりますか。
  154. 八木徹雄

    八木政府委員 どうもメンタルテストを受けておるようですけれども、いろいろな症状があるのではないかと思うのです。常識的には、首の骨のうしろか前かといえば、前側ではないかと私は思っている、自分自身体験しておりませんからわかりませんけれども。とにかく自分の周辺にその症状者がおりませんので的確でないかもわかりませんが、ただ、テレビで対談を見たり何かしている範囲でございますので、御了承願います。
  155. 太田一夫

    太田委員 それではとまっておる車の運転手さんに発生するのか、走っておるほうの車の運転手さんに発生するとお考えですか。
  156. 八木徹雄

    八木政府委員 もちろんとまっている車のほうです。
  157. 太田一夫

    太田委員 しからばトラックにタクシーがぶつかった場合にどちらに……。
  158. 八木徹雄

    八木政府委員 どのような場合にも前のほうの側に症状が起きるということでございます。
  159. 太田一夫

    太田委員 いまのようなお答えでは不十分で、われわれとしては納得できませんから、ひとつ総理府としては、このむち打ち症というものは大いに——きょうは大臣もいらっしゃいませんが、幹部総動員で大いに研究をしていただきたいと思います。  それから、ついでに関連して鈴木さんにお尋ねしますが、交差点においてとまっている車にブレーキをかけたほうがむち打ちになることは少ないですか、ブレーキのないほうがむち打ちになることが少ないですか。ドライバーの心がまえとしてあなたの所見を伺いたい。
  160. 鈴木光一

    鈴木政府委員 一般的にはとまっている車にうしろから追突した場合に、前車のほうに乗っておった者にむち打ち症が多いというふうに聞いております。
  161. 太田一夫

    太田委員 そうじゃないんだよ。とまっておる車がブレーキをかけておったらむち打ちになることがなくて済むのか、ブレーキをはずしておったほうがならなくて済むのか、研究所の科学的結論を聞きたい。
  162. 鈴木光一

    鈴木政府委員 ブレーキをかけておいたほうがいいというふうに検討の結果出ております。
  163. 太田一夫

    太田委員 先ほど総理府長官お尋ねしました幾多の問題、それからいまあなたにお尋ねしました問題等、むち打ち対策というものの科学的な検討というものは不十分なんですね。ですから、これは科学的にぱりっとしたものをあなたがぱりっとおっしゃっていただいて、そしてそれがあらゆるPRになるように正確なお答えをいただきたい。ほんとうにやってみなければいかぬ。いま塚本さんがおっしゃったけれども、二十キロや三十キロの徐行運転で走っておる運転手さんがぶつかった程度のことで、そんな大きなむち打ちはできませんよ。そうでしょう。だからそういう点からいっても、とにかくむち打ちというのは、あらゆる衝突事故から出てくるのだというふうに考えますと、先ほど厚生省のお方がおっしゃいましたように、むち打ち症なるものの概念というものが混乱をしてくる。こういう点について、ひとつ正確なものを、観念の統一をお願いしたいと思う。  それから、これもついでに厚生省の局長さんにお尋ねしますが、一週間安静にして治療に専念すれば、まず一カ月ぐらいでどうやら働けるようになる、このむち打ち症に対する常識というものは正しいのですか、正しくないのですか。
  164. 若松栄一

    ○若松政府委員 むち打ち症という病気そのものが非常に多種多様でございますので、一がいにということはなかなかむずかしゅうございます。いわゆるむち打ち症といわれるものの中には、比較的軽いものが大多数でございます。したがって、受傷直後一週間程度安静を守るということがこの病気の経過を非常によくする。したがって、大部分のものは受傷直後安静を守るということによって、将来の後遺症とか、その他の症状の悪化というものを非常によく防止できるということはいままでわかっておるところでございます。
  165. 太田一夫

    太田委員 いわゆる医学の定説ということでございますね。  しからばバイブラバスというものの効果はどうですか。
  166. 若松栄一

    ○若松政府委員 バイブラバスというものも一つの機械的なマッサージ療法でございますので、これを安静を要するような時期にやることはむしろ適当でない。ある程度古くなって、そしてマッサージその他の機械的な刺激療法等を加える段階においてはある程度有効なことでございます。
  167. 太田一夫

    太田委員 バイブラバスは泡沫マッサージです。そうむやみに外力を与えるのじゃないから効果があるという臨床例が非常にたくさん出ておるわけですから、いまあなたがあまり効果がないようにおっしゃることについても、私はどうも専門外でずぶしろうとでございますけれども、納得ができませんね。もうちょっと御検討をいただきたい。  しからばトラジンという薬を塗布するのは効果があるのですか、ないのですか。
  168. 若松栄一

    ○若松政府委員 私も役人を二十年もやっておりまして、現実の診療から離れておりますので、トラジンという薬については現在存じておりません。
  169. 太田一夫

    太田委員 二十のとびらじゃありませんから、そういうわからぬ人を相手にしてやってもしようがないけれども、とにかくトラジンの塗布方法というのは、これは頸部に塗布することによって非常に効果があるということを、これまた相当権威ある報告書で私は見たことがあるのですが、これは厚生省は、専門のお医者さんのほうの医療担当でございますから、そんなようなことも的確な御回答をいただけますようにひとつ御検討をいただきたいと思います。私もしろうとでございますから、お互い知らぬ同士で話をしておる。象というものはこれくらいなものだ、これくらいなものだということで、群盲象をなでるというやつで、まことに残念であります。  それから、ノイローゼ克服法について、これは厚生省お尋ねするよりも労働省、いらっしゃいますか。——それじゃ保障課長のほうから、自賠保険のほうでよろしいが、自賠保険のほうで何か思い切った対策を考えて、ある程度金を、むち打ち症なる概念の患者が発生したらぽんと渡す。たとえば二十万なり三十万、四十万渡して、これでなおしなさい、もともとの治療のほかになおしなさい、あなたの家族の生活や何かは心配要りませんよ、こういうおつな制度というものは考えられませんか。ノイローゼ克服法としてこれをお尋ねするが、いかがですか。
  170. 菅川薫

    ○菅川説明員 強制保険のほうの後遺症等に対する保険金の支払いは、先ほどからいろいろ医学的なお話もございましたが、むち打ち症というそれ自体に対するものではなくて、その結果の後遺症として神経系統に障害を生じたかどうか、そういう症状に応じて支払っていることになりますので、まあそのむち打ち症だけということではちょっと問題があろうかと思いますが、ただ、むち打ち症から生ずるいろんな症状に対して、適切な後遺症に対する保険金等は支払われていくべきであろうかと思います。  ただそういう、どういう症状を何等級に評価して幾らくらいの金を出すべきかということになりますと、そういう評価の問題は、先ほどからのいろいろなお話のように、相当専門的な医学的な検討の結果を待って措置する必要がございます。その点については労災関係等で検討が行なわれているというので、その結果を待ってまた検討いたしたいと思います。
  171. 太田一夫

    太田委員 私の質問に簡単に答えてもらえばよろしいのです。  先ほど、一級の場合は三百万円の後遺障害に対する給付金が出るということをおっしゃったが、一級のその次は七級にしかない。この七級というと百二十五万円、その次は十二級の三十一万円「局部に頑固な神経症状を残すもの」、その次のは十四級の一番ビリッケツの十一万円、これも「局部に神経症状を残すもの」、これは神経系統ばかりですけれども、緑内障とか目が見えない、難聴、耳が聞こえないというようなものもあるのだから、あらゆる病気があるのだから、もっと十万円、二十万円、三十万円、四十万円、五十万円、百万円、百五十万円、二百万円というふうに、相当のところにむち打ち症なるものの障害後遺症的な補償のランクがあってしかるべきだ、ひとつそれを研究してくださいよ。これはいまのやつの説明じゃないのですよ。そうすることによってノイローゼというのはなおるのですよ。先ほどだれかおっしゃったですね、厚生省が何かおっしゃったですが、自賠保険か何かの保険で解決するとなおってしまう。それは催眠術じゃありませんが、金を出すことによって簡単に、そんなことでなおるのだったら早く出したほうがいい。  それからついでに、労働省はいらっしゃいませんから宮崎さんにお尋ねいたしますが、総理府としては、これは自賠保険は運輸省だ、労災保険は労働省だと言ってはいかぬけれども、そういうことをひとつ統合する立場に立ちまして、休業補償の金額、これが労災の場合は労災には認定されていても六〇%、しかも四日間はもらえぬということでありますが、しかし、法改正はすべきかどうかということは別にしても、技術上の点は別として、これを一〇〇%に近づけるというようなことを考えてやるのもノイローゼ克服法の一つだと思う。そうすると、非常にたくさんの方がなおっていくような気がするのです。ひとつお考えいただくようなお気持ちがいただけますか。ひとつ御検討いただきたいと思うのですが、御所見を……。
  172. 宮崎清文

    宮崎(清)政府委員 労災保険の問題は、それ以外の保険関係にも非常に密接な関係がございますので、簡単にここで私お答え申し上げるわけにはまいらぬと思いますが、そういう問題点があることにつきましては、今後十分に検討さしていただきたいと思います。
  173. 太田一夫

    太田委員 最後に、鈴木さん、交通渋滞の解決法ですね。いろいろ交通局長、交通局として渋滞を解決するためには信号だとか何だとかおっしゃったけれども、大体もとをいえば、車が多いから渋滞するのじゃないですか。車の多いのを無視して、信号をどんなふうに変えたって解決するはずがないじゃないですか。車を制限したらいい。どうですか。そこで車間距離の確保というところに主眼を置いて、主要道路はある車間距離がなかったら——拳闘ではレフェリーが入りまして分けるでしょう、そういう規制はできませんか。ある程度無責任な御回答でもけっこうです。
  174. 鈴木光一

    鈴木政府委員 車が多いことが交通渋滞の原因であることは間違いがないと思います。しかし、この車を道路上に、特定の地域に入ることを規制するという問題になりますと、これは現在の道交法の立場では、現在程度のものしかできないと思います。  それから、車間距離の問題につきましては、御承知のように道交法の中には、前車が急に停車した場合に追突をしない程度の車間距離を保持しろということになっておりますけれども、御指摘のように、漸次交通が非常に混雑してまいりますと、車間距離をかりにとっておった場合にも割り込んでくる割り込み運転というものがございまして、こういうものから、また運転者の心理ということで、簡単に前車に近づいて先を急ぐという心理が働いておりまして、なかなかむずかしい問題でありますけれども、やはり運転者の安全運転という観点から、運転者の自覚に待つという点が非常に多かろうと思います。
  175. 太田一夫

    太田委員 あなた方法律を守っていく人が、急停車してもぶつからないような適当な車間距離を保てという法律をつくっておいて、そんな実際には割り込み運転があって割り込んでくるのだからしようがない、自覚に待つほかない、そういうことでは信号無視だってやっていいことになってしまう。バスが通ったからいいと思って行ったところが、バスの陰に入って信号が見えなくなったために、おいおまえ信号無視だぞとやられているけれども、そんなことも問題じゃないことになる。法律はそうなっているけれどもやむを得ぬなどと言わず、法律を守らせなさいよ。車間距離を適当に保たせる、これだけをおやりになるだけでもむち打ち病というものは半減するのじゃないかと思う。  私は、通産省の田中自動車課長いらっしゃいますから、ちょっと御所見もあわせてお伺いいたしたいのですが、通産省がいまの日本の自動車製造を制限して、そうして自動車を過密から過疎にと引き戻す政策をおとりになる道理がない。あとあるものはコントロールしかない。それからお互いに事故を防ごうじゃないかということしかない。神わざを期待することは無理でしょうから、結局現行法律でできることをおやりなさいという以外にない。田中自動車課長いかがですか、こういう状態になって、むち打ち症がたくさんできる、たくさんの方が身体に障害を残して、いろいろ不幸な立場になられる、中には死ぬ方もある、それがもうことし六十万を突破してしまった。しからば、自動車は凶器でございますからもうつくらせませんと言えますか、言えないでしょう。
  176. 田中龍夫

    田中説明員 自動車産業は御承知のとおり総合工業でございますから、いまつくっております部品等の工場は、関連企業を集めますと大体四千にのぼります。特に、部品はその大部分が中小企業であるという実態でもございますので、これを健全に発展させていきたいということもわれわれの念願でございます。また、今後のわが国の輸出をになう有望なあれで、現在たしか八、九億ドルの外貨しかかせいでおりませんが、将来は数十億ドルの外貨をかせげるものだ、こういう形で、適当な育成ということを考えておるわけでございます。  ただ御指摘のとおり、最近の国内の事情が、いま申しましたような社会的に非常に深刻な問題を惹起しておるということは、私どもといたしましてはなはだ遺憾なる状況であると思います。通産省といたしましては、道路事情をできるだけよくしつつ、もちろん自動車産業におきます過当な競争を非常に刺激的な形でやるということは、これに対してはかねてより自粛ないし行政指導を通じて極力押えておるわけでありますが、長期的にはそうした道路の開発等を通じつつ、適度な発展を遂げさせてまいるつもりでございます。ただ当面、こうした事情につきましては、私どもといたしまして、先ほど申し上げましたように、こうした状況に対処いたしますためのあらゆる技術開発と申しますか、そうした面に総力を結集して、できる限り早く、自動車の構造それ自体をこうした情勢に適合できるようなものをつくりたい。かたがた警察庁あるいは検察庁、運輸省、関係官庁等と、総理府のもとに十分密接なる連絡をとりまして、交通のコントロールその他につきましても御協力を申し上げていきたい、かようなふうに考えております。
  177. 太田一夫

    太田委員 そういうことだろうと思います。だから鈴木さん、宮崎さん、通産省としてはそういうことですよ。いわゆる輸出能力というものを拡大して、日本の経済と日本の国民の所得とに貢献しなければならぬ自動車というものをつくることを、いまやめてしまうなんということにはいかぬ。道路をつくってちょうだいというけれども、建設省のほうでは六兆六千億、その上に十二兆というわけにいかぬでしょう。そうしてみれば、日本じゅうの道路自動車が充満して、一歩も動けぬという時代が二十年くらい先にくるわけだ、そのときは、車が動けないのだから道交法も要りませんけれども、現在ではコントロールによって安全を保つという一つの道があるわけで、そのコントロールの中心警察庁だから、警察庁がしっかりしなければだめだ。あなたがおやりできなければ、ひとつ新しい機関でもつくらなければならぬということになるが、あなたのほうでできますよ。ひとつやってください。時間がおそくなりましたから御答弁は要りません。終わります。
  178. 山下榮二

    山下委員長 次回は公報をもってお知らせすることとし、本日はこれをもって散会いたします。    午後零時四十分散会