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1967-11-17 第56回国会 参議院 災害対策特別委員会 閉会後第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十二年十一月十七日(金曜日)    午前十時二十六分開会     —————————————    委員異動  十月四日     辞任         補欠選任      田村 賢作君     堀本 宜実君  十一月十三日     辞任         補欠選任      森 八三一君     佐藤  隆君      小柳 牧衞君     和田 鶴一君      伊藤 五郎君     近藤英一郎君      堀本 宜実君     田村 賢作君      白井  勇君     藤田 正明君  十一月十六日     辞任         補欠選任      藤田 正明君     堀本 宜実君      大森 久司君     白井  勇君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         伊藤 顕道君     理 事                 青田源太郎君                 武内 五郎君     委 員                 近藤英一郎君                 佐藤  隆君                 白井  勇君                 田村 賢作君                 堀本 宜実君                 山内 一郎君                 和田 鶴一君                 中村 波男君                 小平 芳平君    国務大臣        建 設 大 臣  西村 英一君    事務局側        常任委員会専門        員        宮出 秀雄君    説明員        総理府総務副長        官        上村千一郎君        厚生省社会局施        設課長      飯原 久弥君        農林政務次官   久保 勘一君        農林大臣官房参        事官       太田 康二君        農林省農地局参        事官       佐々木四郎君        林野庁指導部長  木村 晴吉君        気象庁予報部主        任予報官     加藤 繁数君        建設省河川局長  坂野 重信君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○災害対策樹立に関する調査  (災害対策基本問題に関する件)  (干ばつ及び集中豪雨による災害対策に関する  件)     —————————————
  2. 伊藤顕道

    委員長伊藤顕道君) ただいまから災害対策特別委員会を開会いたします。  まず、委員異動について報告いたします。  去る十月四日、田村賢作君が委員辞任され、その補欠として堀本宜実君が選任され、今月十三日森八三一君、小柳牧衞君、伊藤五郎君、堀本宜実君、白井勇君が委員辞任され、その補欠として佐藤隆君、和田鶴一君、近藤英一郎君、田村賢作君、藤田正明君が選任され、また昨十六日、藤田正明君及び大森久司君が委員辞任され、その補欠として堀本宜実君及び白井勇君が選任されました。     —————————————
  3. 伊藤顕道

    委員長伊藤顕道君) 次に、本日の理事会の結果について御報告いたします。  本日の議事につきましては、災害対策の基本的な問題及び干ばつ集中豪雨による災害対策について関係政府当局から説明を聴取した後、両件について質疑を行なうことになりましたので、御了承願います。     —————————————
  4. 伊藤顕道

    委員長伊藤顕道君) 災害対策樹立に関する調査を議題といたします。  本年の災害等にかんがみ、政府としてその対策を将来に向かってどのように対処していくか等、基本的な災害対策について総理府から説明を聴取した後、本問題の補足説明干ばつ及び集中豪雨対策について建設省及び農林省から説明を聴取いたします。  まず、総理府からお願いいたします。上村総理府総務長官
  5. 上村千一郎

    説明員上村千一郎君) 政府は、かねがね防災に関する各種計画を策定し、各省ともそれぞれの立場から防災対策に当たっているわけでございまして、毎年の災害の経験にかんがみ、さらに強力な防災対策樹立をはかることは、当然の責務であると考えております。で、本年の主要な災害としましては、七月の集中豪雨、八月の集中豪雨をはじめ、長期にわたる干害等があったのでございまするが、これらの災害による被害が重大であったことにかんがみ、政府といたしましては、各種対策について検討をいたしておる次第でございます。  まず急傾斜地崩壊防止のために法令上の措置を講ずることといたしまして、急傾斜地崩壊の危険を生ずる行為を規制し、あわせて宅地造成等規制法の適切な運用を行ない、これらに万全の措置をとりたいと考えております。また、国土の保全のため、現行治山治水五カ年計画を改定することといたしまして、昭和四十三年度を初年度とする新規の五カ年計画検討いたしております。その中で特に都市河川改修促進を含めた中小河川対策を重点といたして検討を進めておる次第でございます。  次いで、干ばつ対策でございますが、本年の干ばつ状況にかんがみまして、将来の対策といたしましては、ダム建設等規模水資源開発を一そう促進するとともに、ため池等の小規模なこの水源整備事業についても、その重点的効果推進いたすべく努力をいたしておる次第でございます。  その他諸般の事業につきまして、関係各省十分連絡の上、災害対策の万全を期する所存でございます。
  6. 伊藤顕道

  7. 太田康二

    説明員太田康二君) お手もとにお配りしてございます資料に基づきまして、本年七月以降の干ばつにつきましての被害概況並びに対策概要につきまして御説明を申し上げたいと思います。  先生方承知のとおり、本年は田植え時、いわゆる四月から六月に干ばつがあったのでございますが、これにつきましては、六月下旬の降雨によりましてほぼ解消を見たのでございますが、九州四国中国等西日本の各地におきましては、七月中旬以降天候が多照寡雨に経過いたしまして、このために特に九州瀬戸内沿岸におきまして農水産物に著しい干ばつ被害発生いたしたのでございます。御承知のとおり、被害調査というのは、干ばつ進行過程では非常に技術的にむずかしいのでございますが、御承知のとおり、天災融資法を発動し、自作農維持資金特別ワク設定いたすためには、やはり統計調査部被害統計がまとまらなければ、関係方面との折衝もできませんので、異例の措置といたしまして、九月二十五日現在を押えまして、統計調査部が中心となりまして、十二の県につきまして中間調査をいたしたのでございます。その結果によりますと、そこにも出ておりますように、被害面積が四十二万五千ヘクタール、一応試算をいたしました被害金額は、約五百三十三億円ということになっておるのでございます。  さらに果樹等の枯死及び落葉等による樹体損傷、これを推定いたしますと、約百六十九億円、その他シイタケ及びほだ木並びに苗畑さらに造林地等にも、相当の被害発生しておりまして、これは県報告によりますと、約三十三億六千八百万円ということに相なっております。  なお、十月以降降雨があったのでありますが、中四国農政局九州農政局におきましては、関係県とそれぞれ協議した結果、一応十一月五日をもちまして干ばつは終息したのではないかというふうに判断をいたしておるのでございます。  第二点に、各県からの報告によりますと、いわゆる干ばつ応急対策事業として実施した事業がそこに書いてございますが、水路の掘さくが約八百二十二万メートル、井戸の掘さくが約二万一千二百カ所、揚水機等設置が約十七万二千台、これらに要しました事業費として約百七億円ということが報告されておるのでございます。  で、農林省といたしましては、かねて中央及び関係地方農政局にそれぞれ災害対策本部設置して、対策の万全を期したのでございますが、特に九月には、両政務次官を長とする現地調査団を編成いたしまして、これを現地に派遣いたしまして、被害の現況及び応急対策事業推進指導に当たらせたのでございますが、さらに十月の二十九日及び三十日の両日には、農林大臣干ばつ地現地視察を行なったのでございます。  次に、とりました措置概要でございまして、第一が資金関係でございます。  融資共済金仮渡しの問題でございますが、まず共済金関係で申し上げますと、米麦及び夏秋蚕繭に関する共済金あるいは保険金仮渡し実施につきましては、九月二十日付で農林経済局長名をもちまして通達をいたしまして、十一月中に仮渡しができるよう、指導をいたしておるのでございまして、すでに福岡、長崎、熊本、大分等におきましては、仮渡し実施を見ておるのでございまして、その他の県におきましても、大体早ければ今月の中旬、おそくとも来月の中旬までには仮渡しができるという情報を得ております。  それから第二に、天災融資法が発動されるまでのつなぎ資金貸し付けと、既貸し付け金償還猶予等条件緩和措置につきましては、九月二十五日付をもちまして経済局長名関係金融機関に依頼の通達をいたしております。  第三に、天災融資法適用政令と、この天災激甚法対象にするという指定政令を、それぞれ三百三十一号、三百三十二号として、十月二十三日に公布をいたしたのでございます。その内容を簡単に申し上げますと、融資総額が百十億、いわゆる三分資金適用のある県としての特別被害県は、農業関係でそこに書いてございます十三県、林業関係が四県ということに相なっておりまして、右の十三県はいずれも激甚災害法適用県になっておるのでございます。  こういったことによりまして、御承知のとおり、貸し付け限度額通常は二十万円ということでございますが、激甚災害法適用県につきましては二十五万、果樹栽培等の特殊な農業経営の方につきましては五十万、激甚災害法適用県につきましては六十万、さらに重複被害の方には五万円の加算が行なわれておるのでございます。  償還期限につきましても、被害程度により、通常の場合は三年ないし六年ということでございますが、激甚災害法適用県につきましては、それぞれ一年を延長して四年ないし七年ということにいたしております。  金利は御承知のとおり特別被害者は年三分、開拓者が五分五厘、その他が六分五厘ということでございまして、この金融措置に伴う取り扱いにつきまして遺憾のないよう、関係県知事に十月三十日付で事務次官名依命通達をいたしております。  それから開拓農家の方で天災融資法による経営資金貸し付けを受けることが困難と認められる農家の方に対しましては、開拓者資金融通特別会計の中に災害対策資金が一億円計上されておりますので、この対策資金によりまして貸し付けを行なう条件につきましては、そこに書いてある条件でございます。  それから次に、自作農維持資金でございますが、自作農維持資金につきましては、天災融資法の発動を待ちまして、新たに貸し付けワク設定をいたしたのでございますが、その金額といたしましては四十七億五千万ということでございまして、各県別貸し付け適格者認定目標額設定及び早急にこれが農家の手に渡るようにということで、十一月八日付をもちまして事務次官名をもちまして関係農政局通達をいたしております。また貸し出しにあたっての条件緩和の問題でございますが、保証人、いわゆる人的担保だけで足りるということに今回いたしまして、さらに保証人の資格も同一市町村内居住者に特定しないという取り扱いにしたからさよう処置をしてもらいたいという意味の通達を、十一月八日付で農林漁業金融公庫総裁あて通達をいたしておるのでございます。  以上が融資並びに共済関係措置でございます。  次に、干害応急対策でございます。干害応急対策事業につきましては、今回の干害規模被害程度が非常に激甚であったということにかんがみまして、従来実施した処置参考として次の骨子内容とした要綱等を定めて、十一月八日付、関係農政局県等通達をいたしたのでございます。  まず助成対象期間でございますが、先ほど申し上げましたように、四月から今年は干ばつがございまして、一応水田及び畑につきましては四月一日から十月二十日まで、それから樹園地につきましては四月一日から一応十一月三十日までということで当初要綱で定めたのでございますが、先ほど申し上げましたように、一応十一月五日で終息したと判断されますので、樹園地につきましては、要綱の一部を改正いたしまして、一応四月一日から十一月五日までというふうにいたしております。  それから補助対象規模でございますが、団地ごと工事費または機械費が五万円以上のものということにいたしております。  それから補助対象は、そこに書いてございますように、水路の掘さく井戸の掘さく動力線の架設、送水管設置及びその他用水確保のための工事並びに揚水機付属部品を含むわけでございますが、それと原動機等の購入、当然借り入れも含むわけでございます。そこで、こういったもので特に注に書いてございますように、今後の干害に備えて引き続き利用できるものということにいたしております。それから共同施行の場合は十アール当たり千二百円、これは水田、畑でございます。樹園地の場合は千五百円をこえる部分について補助をするということで、これは従来の例に準じまして、いわゆる足切りをいたしておるのでございます。  それから補助率はそこに書いてございますように、一般の場合と激甚の場合に分けてございますが、当然今回の干ばつ激甚対象になるということで、県別に違うわけでございますが、事業費査定額が一億円をこえる県で実施いたしました工事費並びに機械費につきましては、激甚適用になるということでございます。  それから樹園地につきましては、これを見ていただきますとおわかりになりますように、稲作なり畑作に比べますと補助率が低くなっております。そこで農家負担が実質的に稲作と均衡がとれるように措置するということでございます。激甚県におきまして地方公共団体が五〇%の負担をする場合に国は四〇%の補助をいたすわけでございますが、差額につきましては特別交付税措置するということにいたしたのでございます。  第二に、この委員会でも問題になりました、燃料費電力費、車の借り上げ等農業用水応急確保のために要した経費、さらに五万円以下の事業費もあるわけでございますが、こういったものにつきまして、市町村産業振興助成した分につきましては、特例的に市町村実態に応じて特別交付税措置するということにいたしたのでございます。  それから第三に、干害応急対策として、飲用水施設事業実施した開拓者ないしその農業協同組合に対しましては、予備費等予算措置によりまして、従来実施した対策参考として措置するということにいたしております。  第三が、災害復旧事業でございまして、今回の干ばつにより亀裂の入ったため池水路水田等を、御承知のとおり農地農業用施設につきましては、国庫補助暫定措置法がございまして、その基準に該当いたすものにつきましては、災害復旧事業としてこれを採択いたしまして、早急に補修を行ない、あわせて地元に就労機会を与える災害復旧対策としての事業実施するということにいたしたのでございます。  それから第四に、救農対策でございますが、ただいま御説明申し上げました災害復旧事業実施することはもちろんでございますが、さらに農林省で所管している事業のみならず建設省等にもお願いをいたしまして、予算措置の講ぜられております公共事業をできる限り被災地域において被災農民就労機会を与えるよう実施する。さらに、あわせて被災農民の方々の所得を確保するため、地方公共団体が道路とかため池改修等、従来の一般公共事業対象とならないよう小規模事業地方公共団体起債等によって行なうことができるよう、いわゆる起債措置を現在自治省にお願いをいたしておるのでございます。  それから第五に、恒久対策でございますが、恒久対策といたしましては、先ほど総務長官のお話にございましたように、ダム建設等の大規模水資源開発を一そう促進する。さらに今回の干ばつで非常にその効用が認識されましたため池等につきましては、従来の基準に必ずしもこだわらないで、小規模水源整備事業というものにつきましても、今後その重点的効果的な推進をはかっていく。このための制度についての検討を進めておる段階でございます。  第六に、食糧対策でございますが、これは従来とも実施いたしておるのでございます。  第一に、予約米の出荷のできなくなった方に対しましては、予約概算金の国への納期までの加算利子については、被害程度によって減免措置を講ずる。さらに生産者予約概算金が返納できなくなった方に対しましては、指定集荷業者が代位弁済するということにいたしておるのでございます。  第二に、等外米規格外米政府買い入れの道を開いたのでございます。これは羽越災害の場合、そういう御要望が非常に強うございまして、九月二十一日付で、そこに書いてございますような告示を出しまして、主食に供するものにつきましては、等外米でも規格外米でも、政府買い入れの道を開くということにいたしたのでございます。  第三に、例年完全保有農家であった者で、災害のため保有米穀に著しい不足を生じた者については、一部保有農家に対する配給に準じまして一般配給を行ないまして、また災害が大きく、広範囲で、一般配給だけでは再生産に支障があると認められた者につきましては、一般配給のほかに、一カ月一人当たり五キログラムの加配を行なうということにいたしたのでございます。  第七に、種苗とえさの対策でございますが、被災農家の次年度用種もみあるいは種イモあっせんにつきましては、被害状況、必要な種もみ数量等調査いたしておるのでございますが、こういったことによって一応対処すると、同時に、御承知のとおり種子対策につきましては従来一定の基準に該当いたしますれば助成等措置も講じておりますので、他の災害の例に準じまして助成措置を講ずるということで、目下その事業量の確認につとめておる段階でございます。  それから果樹と桑の改植用の苗木の問題でございますが、これまた苗の、従来と同様に被害実態等十分把握の上、従来共同育苗経費について助成した例もございますので、これらを勘案して措置するということにいたしております。  それから第三に、酪農地帯飼料対策でございますが、すでに広島、山口、大分鹿児島等から政府所有ふすまの売り渡しの要望がございますので、これを実施いたしますとともに、ビートパルプ等あっせんにつとめておるのでございます。  それから第八に、その他の対策といたしまして、今回の干ばつに伴いましてマツクイムシ等発生が非常に見られたのでございますが、これにつきましては、森林病害虫防除法によります駆除の万全を期するとともに、発生量に応じまして、まだ補助金保留額がございますから、これを重点的に被害県に配分いたしまして、今後の蔓延を防止いたしたい、かように考えておるのでございます。  以上が、今回の七月以降の干ばつにつきましての被害概況並びに対策概要でございます。
  8. 伊藤顕道

  9. 坂野重信

    説明員坂野重信君) このたび新しく十一月の十一日付で河川局長に任命されましたので、どうぞよろしくお願いいたします。  本年発生いたしました建設省所管公共土木施設被害直轄災害で百十四億、補助災害で九百三十億、合計いたしまして千四十四億に達しておりまして、そのうち直轄災害につきましては、現在までに調査を完了してすでに予備費を四十二億九千万ばかり支出いたしまして、本年末におきましては、おおむね五〇%の復旧をはかることにいたしております。補助災害のほうにつきましては、緊急の復旧を必要とする個所につきまして緊急査定を行ないまして、これらに対しましてすでに予備費を支出しまして、復旧工事実施中でございます。現在本査定実施中でございまして、本年度末におおむね三〇%の進捗をはかる予定でございます。なお、特に急傾斜地の問題が非常に重要でございまして、本年度から新しく二億円をもちまして急傾斜地崩壊対策事業実施中でございます。また土石流に対する被害対策につきましては、緊急砂防といたしまして約十億円をもって工事中でございます。急傾斜地崩壊対策につきましては、いま申し上げましたように、今年度に引き続きまして、明年度以降できるだけ急傾斜地崩壊対策事業を格段に推進いたしますとともに、新しく、立法措置を講じまして、警戒、避難体制の確立あるいは建築物規制等につきまして適切な対策を講ずるように、いま検討中でございます。  それから抜本的な対策といたしまして、最近の災害の実情を見てみまするというと、局地的な集中豪雨が非常に大きくなっている、あるいは人口集中によります都市周辺被害の激増、あるいは農村地帯における農業構造改善進捗等によりまして、災害が非常に大きくなってまいりました。また一方におきまして、今年度のような関東、東北あるいは後半における西日本水需要の逼迫、干ばつ等にかんがみまして、新しく現在、現行治水五カ年計画を改定いたしまして、新治水五カ年計画というものを策定いたしたいということで進めているわけでございます。現行治水五カ年計画は、全体の治水投資が一兆一千億でございますが、新五カ年計画は二兆四千億ということで実施いたしたい。この新五カ年計画の考えといたしましては、新しく情勢の変化等に伴いまして全体計画を再検討いたしまして、昭和六十年度までにはでき得れば二十三兆の総事業費をもって対策を講じたい。その一環といたしまして、第一年度として四十三年度以降からこの新五カ年計画をスタートいたしたいと考えておるわけでございます。  その他、干ばつ対策といたしましては、この新五カ年計画の中にすべて含まれるわけでございますが、治水ダム促進あるいは河川総合開発一環としてのダム促進ということによりまして、できるだけ将来の干ばつがないような対策を抜本的に講じていきたいと考えております。
  10. 伊藤顕道

    委員長伊藤顕道君) 以上で説明を終わります。  これより以上の説明に対する質疑を行ないます。御質疑のある方は、順次御発言を願います。
  11. 武内五郎

    武内五郎君 災害対策につきまして本日総理府災害対策本部災害対策に関する基本的な対策の方向を承ったのでありますが、この問題は私はまことに重大な課題でありまして、私は質問に入る前に、特に委員長に今後の取り扱いについて、さらに突き進んだ検討を進めるようにお取り計らい願いたいと存ずる次第であります。それをまずお願い申し上げておきます。  それから本日は非常に時間が切り詰められておりますので、本日承った基本対策についての突き進んだ検討に入ることが、ほとんど困難な状態であります。そういうような関係で、私はいろいろな問題がありますが、先般の八月二十八日災害に関して、前回私が質問いたしました問題に触れつつ、一、二点の課題を取り上げて進んでいきたいと思います。なおこれもほんの骨子だけでありまして、質問の要旨もきわめて簡単にいたしまするので、お答えのほうも、ひとつ要領よくしかも親切にお願いしたいと思うのであります。私が前回特に取り上げました問題は災害予防について、災害防止の問題の核心を特に砂防施設を完備すべきだという点を申し上げ、建設大臣から力強い御答弁をいただき、本日の総理府説明の中にも、特に傾斜地問題を冒頭に取り上げておる点については、私は問題がそこまで進んできておるということを認識するとともに、さらに問題の大事さがやはりわかってきたと考え、感謝にたえないものであります。  私は、実は、本委員会から派遣されまして、同僚委員の諸君とともに新潟、山形等の災害地を視察したのでありまするが、その後私自身が新潟県内の災害地を数日にわたって走り歩いて、特に、私は非常に強く胸を打たれましたことは、本日は新議員として紹介されましたが、佐藤芳男君のなくなった個所等を見まするときに、おのずから身の引き締まり、合掌せざるを得ないのであります。私は、これは、村杉という、北蒲原の笹神村の村杉という小さい部落でありますが、そこへ入る前に、安田町から入っていったのでありまするが、当然都部田部落を通っていかなければならない、この都部田部落というのは、佐藤芳男君が土砂に埋もれたところからわずか一キロ半ばかり離れたところであります。ここは全く地獄という状態、地獄の様相はこんなものであるかと考えるほどのおそろしい状態なのであります。土砂が一面、数千町歩、数百町歩にわたる耕地でありますが、一面土砂で、数トン以上の岩石がその上に、全く足の踏み場の余地のないほど岩石が流れ出している。その岩石も角度を持った岩石ではなくて、ほとんど摩擦をした、まるみを帯びた摩擦した岩石——私どもが知らなければならぬのは、これは今回山から流れ出した岩石ではなくて、何回か重ね重ねて、もまれもまれて角度が取られて流れ出してきている岩石であることを私たちは知らなければならぬ。私はそこに、この摩滅した岩石を見て、特に砂防の重大性を感じざるを得ない。この都部田部落に流れ出した土砂と岩石というものは、今回ではなくて、何回か前に繰り返されているに違いない。しからば、なぜ今日まで、そういう大きな災害をもたらしたような状態になっておるのを、今日まで放置していたかということに私は問題があると思う。私は、そういうものの見方をするとしますると、全く私は、同僚佐藤君が地下で全く泣いているだろうと感ぜざるを得ない。どうかひとつ、その点で、きょうは建設大臣が見えておりますが、災害基本対策というものはここに置かなければならぬじゃないか、治山と治水防災を中心とした治山治水、そして災害対策計画というものが立てられなければならない。私は、これを忘れて、これを無視したりして災害対策の基本がないと考える。幸い今日、傾斜地対策というものが取り上げられていることを非常に感謝せざるを得ないのであります。ところが、今日までこれは法的にもほとんど全く軽視されている。予算の措置においてもほとんど軽視されてきたことは、これは否定できない。日本の災害に対する対策をいろいろ歴史上考えてみても、あの近代的な災害、特に河川対策の基本というものを明治の初年、オランダの技術者を招聘して砂防を中心として進められてきたことは事実である。その前においてもたとえば、徳川時代は、これは全く私の小学校時代からの教科書で河村瑞軒の名前を知っております。河村瑞軒は、治水は治山だとこう言っておる。水を治めることは山を治めなければできないのだということを、彼は喝破しておる。事実、徳川の初めごろにおいては、山を守ることに専念しておったことは事実のようであります。私どもはいささかの農業政策を調べてみてもそれが出ておる。ところが中間においてだんだんそれが忘れられてきた。明治の初年になってしばしば大洪水が繰り返され、オランダの技師の建言に従って治山対策をとるに至った。また最近になってきて治山対策というものは忘れられた。このようなふうに私ども今回は災害現地を見て感じている。こういう状態でありますので、私は先回特に治山対策、砂防対策というものを重視することを要請したわけなんです。建設大臣からも、さっそく私自身にほんとうに力強く感じるほどの誠意ある御答弁があった。それでさらに私はお伺いしたいことは、これは今度は要点でありますが、具体的に砂防対策上、特に災害地を中心とした砂防対策がどう進められていくか、崩壊した傾斜地に対する復旧対策をどういうふうに今度は進めていくのか、もう少し具体的に御説明願いたい、これが一つ。  それから、新潟県から山形県、福島県、今回の災害地の大部分というのは傾斜地である山嶽地帯、ほとんどその大部分というものは禿頭病にかかった頭のごとくにはげている禿赭地帯が至るところにできている。私はこれは今日まで山林対策、完全に山林対策というものが無視されてきておる大きな病根、病がそこに出てきたと思う。なるほど大きな豪雨であったに違いない。大きな豪雨であったかもしれないけれども、あれほどたくさんの禿赭地帯がつくられておる。土砂が生産されて流下しておることの現象というものは、今日まで山林対策、砂防対策というものが、完全に無視されておった。その点で、私はここに大きな問題が出てくる。完全にこれはそういう対策の軽視の結果として出てきたところに責任がある。これらに対する対策は、いまどういうふうにするのか、またどういうふうに感じているのかお伺いしたい。  まずそこからお伺いしていきたいと思う。
  12. 西村英一

    ○国務大臣(西村英一君) いま武内委員から治水の重要性につきまして、こもごもいろいろお話も承り、また今回の羽越水害につきまして新潟県、山形県で被害者を出しましたこと、まことに残念しごくに思っておる次第でございます。  そこで、先生の言われることは、このように災害がひどく起こったのじゃ、どうも治水対策について抜かりがあるのじゃないかということが第一点でございまするが、今回の災害を見まして、また、新潟のみならずあるいは呉だとか、あるいは神戸だとか、長崎あたりに起こった災害を私は見まして、現在の砂防工事等も重要であるが、現在の治水五カ年計画のやはりワク内では、どうもこれに対処することができないと考えまして、建設省といたしましても、現行計画を改定したいということを考えておるものでございます。したがいまして、これは今後の問題になりますけれども、もう少しやはりこの従来も怠っておったわけではございませんが、さらにここで考え直さなければならないのじゃないかということを思っております。  それから最近の災害の事情を見まして、いま先生からお話がございましたように、この山が崩壊して、土石流の流出というものが非常に大きい規模であります。したがいまして、このためには農地をつぶし、またはその下に人家があれば被害を受けるのでございます。非常に土石流の流出ということは顕著なように見受けられます。もう一つ最近の災害で急傾斜地の崩壊による被害が非常に大きいように見受けられるのでございます。犠牲者も七、八割はこの急傾斜地の崩壊、こういうようなことにあるように見受けられるのでございます。  どうも集中豪雨に非常に弱い、また集中豪雨が非常に最近はひんぴんとある。一体どうして集中豪雨がこんなにたびたびあるのだろうか。また集中豪雨というものが、何と申しますか、周期性があるんじゃないだろうかというようなことも、私たちとしてはいろいろ科学的に、技術的に進めておる次第でございますが、なかなかむずかしい問題でございます。しかしながら、ぜひともこの土石流の急傾斜地対策というものは講じなければならぬと思っております。新潟県の災害について今度一体どうしたのだというお尋ねでございまするが、新潟県は非常にこういうような現象が多いので、まず今年度とりあえず緊急の砂防事業といたしまして、事業費約三億円ぐらいを投下しまして、緊急に二十四カ所の砂防工事をやっておる最中でございます。引き続きまして、今後の対策緊急砂防事業として取り上げるものと、一般砂防事業で取り上げるものと、計画的にやっていきたいと思っております。たいへんに被害個所が多いのでございまして、これは山形、新潟にかけてたいへん多いのでございまするが、急速にこれらの事業をやっていきたいと考えておる次第でございます。五カ年計画の改定ができますれば、さらに規模を大きくいたしましてやりたいと、かように考えておる次第でございます。
  13. 武内五郎

    武内五郎君 いま建設大臣から新五カ年計画に織り込む砂防対策のお話がありました。これはいままでの砂防対策について体系がくずされ、私はむしろ対策をおくらせておったのではないかと考えられる点がある。それは今日まで、砂防対策というものは、予算上においても全く零細、ほとんどこれは軽視されておると言っても過言ではないほど零細なものである。したがって、直轄工事等の推進というものは、私はむしろ困難であったのではないか、できないようなものであったのじゃないか。そこに私は砂防対策体系というものができてなかったと考える。したがって災害が起きた、勢い緊急砂防工事というものを組み立てていかざるを得ない、それより砂防対策推進ができなかったという実態があるんじゃないか。私が新五カ年計画検討にあたって、大臣に特にお願いしたいことは、そういう体系の中で砂防が扱われてきておるのなら、これをやっぱり検討して、そういう体系を直すことが大切じゃないか。砂防対策というものはむしろ地方にまいりますと、災害待ちである、災害がこなければ砂防対策推進ができなかったというのが実態じゃないか。その点はひとつ改めていただくように、構想を改めていただくようにお願いしたい。  今度の災害で禿赭地帯が造成された地域というものはほとんど国有林。私はやはりこれはもう重大な当局の責任であると考える。御承知のとおり、私はこの前指摘いたしました、われわれが水を張ったふろに入る、そのふろが水があふれて流れ出すのは、これは当然。土砂、岩石が川の中に落ちてまいりまするときに、どうしてもこれは洪水になってはんらんせざるを得なくなることは避けがたい事実だと思う。その原因というものは、山林対策というものがなっていない。禿赭地が造成されて、できる。土砂が造成、生産されて、増加している、こういう実態ではないか。そういうふうなことについてどういうふうに考えているか、災害についてどう考えているか、今後どういうふうに対策を講ずるか。
  14. 木村晴吉

    説明員(木村晴吉君) ただいま御指摘のように、特に新潟県内におきましては地質的に、ぼい山地帯が非常に多いのでございまして、禿赭地の発生状況も、ほかの地域に比べて比較的多いことも十分把握いたしておりまして、これが対策といたしましては、ぼい山特殊造林事業推進を、従来から積極的に推進いたしておるのでございますが、何ぶん特殊な集中豪雨によりまして、傾斜禿赭地が非常に多くなっておるというのが、現在の姿でございます。やはりこれの対策といたしましては、砂防と同様、治山事業を積極的に進める、またその投資効果を十分に発揮し得るように、現在具体的な治山計画樹立のために調査も進めておりますし、また恒久対策といたしましては、先ほど大臣も触れられましたように、治水とあわせまして治山新五カ年計画樹立いたしまして、四十三年から実施いたしたい構想を持っておる次第でございます。
  15. 西村英一

    ○国務大臣(西村英一君) いま農林事務当局からお話がございましたとおりでございまして、やはり農林省関係は、植林のほうの関係で農林砂防事業をやりますし、私のほうも建設省のほうの関係も、やはりやらなければならぬと思っておるのでございまして、いずれにいたしましても政府といたしましては、従来から河川に対する砂防は、農林省にせよ建設省にせよ、おろそかにしておったわけではございません。ございませんが、やはり今回被害がありますように、なかなか個所が多いのと、それに対処し得る資金の問題になるのでございますから、これは今回の例にかんがみまして、今後もさらに両方とも河川の上を治めるということに十分に力を尽くさなければならぬと、かように思っておる次第でございます。
  16. 武内五郎

    武内五郎君 いま大臣は、問題の私の質問の要点の把握がちょっとできなかった。私の言うたことはこうなんです。今日までとられてまいりました砂防対策の体系というものは、地方では災害待ちだ、災害が起きることによって、初めて砂防工事実施されてきたんだというのが大部分である。したがって、これは砂防対策体系というものがそういうふうにできておるのじゃないか。それを直す考え方がないか。  それから、したがっていま大臣が言われた、何ぶんにも金がかかりますのでと、こう言う。今回のこの災害で、新潟県の受けました被害額というものは、一千七百億——もっと計算しますと、二千億に達するのではないかと言われている大きな災害だ。ところが、これはこの前も申し上げたように、新潟県の北蒲原郡に黒川村——この災害の中心、そこに、蔵王川という小さい渓流がある。この蔵王川に、八月二十八日から一カ月ほど前に、ようやく一つの砂防堰堤ができた。その堰堤があったからこそ、その下流の部落が流失しないで助かっている。土砂の流れはあったけれども、そのために助かっている、下流の部落が。もし、そこに堰堤がなかったら、その部落が全部流れて、都部田部落のようになってしまうのは避けがたい。都部田部落では、十一戸の開拓部落であったのに、一軒も家はない。完全に土砂につぶされてしまった、あるいは、岩石に打ちこわされてしまった、一軒も家はない、こういうような災害なんです。だから、その小さい砂防堰堤というものは、どういうくらいにかかってできたか知らんが、二、三百万はかかってはいまい。かりに三百万かかったとして、三百万の堰堤で何千万円あるいは何億の被害を防止することができたとするなら、これは、もう安いことこの上もない。一文惜しみの百文損ということばがあるが、このくらい、私は考えるべき問題ではないかと思うのですが、大臣はもう少し、その辺をどういうふうに考えておられるか。
  17. 西村英一

    ○国務大臣(西村英一君) とにかく、その砂防が災害待ちではないかと、こういうようなお話でございまするが、決して、そういうことではございません。これはもう砂防は予防のために、予防砂防でございます。ただ、それは非常に個所が多いのだというようなことで災害を起こしておるのでございまするから、私たちとしましては、現在のような集中豪雨に対してきわめて弱い状況ではいかない。かような意味で今度の治水計画の改定をやり、砂防につきましてさらに重視していきたいと、かように申しておるのでございまして、いずれにいたしましても、これは私たちの河川事業といたしましては、最も砂防は重視いたしておるのでありまして、事故を待ってからというような考えは毛頭ないのでありまして、あくまで砂防は治水計画の第一義的なものだと、かように考えて、今後強力に進めたいと、かように思う次第でございます。
  18. 武内五郎

    武内五郎君 どうかひとつ、そういうふうな構想で進めていただきたいと思います。  それで、実はこの前私神戸の災害を視察して質問して、宿題としてひとつ残しておいた問題があります。それは市原の傾斜地の崩壊、あれはあそこは国立公園。この復旧と、それからその災害を起こした原因というのは、上にゴルフ場がある。ゴルフ場から急激に水が落ちてきてあの痛ましい災害を起こした。その対策を一体どういうふうにやっておられるか、その処理をどういうふうにやるかということをこの前質問しておいたのですが、明確な答弁がなかったもので、この傾斜地に対するゴルフ場から流れ出してきた土砂の崩壊を防止する施設がなくて流れ落ちた。あの災害にどういうふうに対処するか、それを宿題にしておったのですが、厚生省来ておりますか、どういうふうに考えておりますか。
  19. 飯原久弥

    説明員(飯原久弥君) ただいま先生の御質疑にございました神戸の件につきましては、私、社会局の施設課長でございますので、ただいま直接所管の局のほうを呼んでおりますので、そちらのほうからお答えをいたしたいと思います。
  20. 西村英一

    ○国務大臣(西村英一君) いまのお話ですが、関係者がいないから確めたいと説明員も申しております。私の聞いたところでは、これは私も確認しなければいけませんが、あのゴルフ場は経営者がいろいろなことにかんがみまして廃止をするというようなことを聞いておりますが、確認は私もいたしておりませんから、担当者が来るまでお待ちを願います。
  21. 武内五郎

    武内五郎君 それは、じゃこの次の委員会でひとつお伺いしたい。  時間もあまりありませんので、砂防関係はひとつこういうことですから、ぜひ大臣並びに災害対策本部としても十分御検討願っていただきたい。  次に私は農地の復旧、これは簡単にしておきたいと思う。ほかの質問者もありますので、その時間に食い込んでは申しわけありません。  実は私、この前もその問題を心配いたしまして、お考えを伺っておったのでありますが、実はそれも非常に農林省のほうから力強いお答えをいただいた。どういうふうに伺っておったかというと、査定が未完了であっても、復旧工事は積極的に進める考えでありますという、これも私、非常に力強く承って安心しておったところが、二、三日前に新潟県の県当局の話では、まだ三〇%も進んでいないと、これでは私は来年の植えつけがもう心配にならざるを得ない。今度の八月二十八日の災害の個所というものは去年七月十七日の災害を受けた個所。そのときに農地の復旧は、じんぜんとしてはかどらなかった。勢い苗は一尺以上にもなるので、半分以下にちょん切ってようやく植えつけたのです。まあとにかく植えつけて、できる米で今年の口しのぎをやっていこうという考え方で植えつけた。ようやく植えつけてみたら、あのとおり八月二十八日の災害だ。御承知のとおり新潟県はもう雪です。やはり今度の災害地の大部分というものは豪雪地帯、山間、山寄りの豪雪地帯です。もうそろそろ雪が降る、来月になってくると、雪に包まれてしまう。これでは私は復旧工事も困難になってくることはあたりまえです。来年の植えつけもおぼつかない状態になると思う。私は、それを心配して、何とか方法をとって来年の五月の植えつけに間に合わせるような形にしていただきたいということをお願いしておったわけです。そのときに、いや、査定のいかんにかかわらず工事は進めていく考えだと、こう言ったから、大いに安心しておったら、一向進んでいない。これはひとつどういうふうになっているか、伺いたい。その点をひとつお願いします。
  22. 久保勘一

    説明員(久保勘一君) 御指摘の今年八月下旬の羽越水害は、新潟、山形、福島県をはじめといたしまして、七県にまたがる非常な甚大な災害でございまして、これらの地域は、御指摘のようにいずれも積雪地帯でございまして、工事期間の短い関係もございまして早期に査定を終わり、早期に工事に着工するたてまえのもとに努力をいたしております。特にこの査定につきましては、数少ない技術者でございまするけれども、隣接県の応援等も求めまして、農政局が中心になりまして努力をいたしております。御指摘のように、新潟県におきましては、三一・二%という査定状況でございましたが、これもその後の努力によりまして、十一月二十二日の報告では五〇・四%になっております。さらに、年内にはすべてが完了するという予定でございます。なお、山形県でございますが、この県も先般七二・五%程度進捗でございましたが、十一月二十五日にはこの県は完了を見る予定でございます。その他の五県につきましては、現在すでに完了いたしております。  なお、この復旧工事でございますが、御指摘のように積雪地帯でございますし、来春の作付に間に合わせなければなりませんので、極力工事を急いでおるわけでございまして、特に緊急を要するものにつきましては、査定前の着工を認めてそれぞれ対策を講じております。なお、査定が済みましたものにつきまして、現在のところ二二%程度着工いたしておるように報告を受けておるわけでございます。しかし、まだ数多くのものが残っておりますので、明春の作付に間に合いますよう極力努力を傾けてまいりたい、かように考えておる次第でございます。
  23. 武内五郎

    武内五郎君 ひとつぜひそういうふうに進めていただきたいのですが、そこで実情について十分考慮に入れて計画を進めていただきたいことは、まずあの地域は豪雪地帯であるという条件を無視することはできない。  第二は、そういう地帯の農村では出かせぎ者がたくさんおる、もう村に働き手がなくなる、これからもういないです。そうすると労働力の供給ということは不可能なんです。労働力の需要を満たすことはできない状況なんです、そういう悪条件。したがってこれも最近伺った話なんですが、そういう地域における農地の復旧工事というものは、もうどの請負師も必ず損する。したがってもうみなしり込みし、できるだけ逃げようとする、何かそこにやはり単価の問題があるのじゃないかとも考えられる。そういう点を私はここでこうせい、ああせいとは言わない、十分検討する資料として申し上げているので、検討していただくようにお願いしたい。これできようは質問を打ち切ります。
  24. 小平芳平

    ○小平芳平君 災害のつど、個人災害の問題について、政府はどう対処をするかという点についていろいろ論議されてきたわけでありますが、この前の委員会のとき、私はその点については総理府に対しての御質問はしなかったわけでありますが、大体県やあるいは市で見舞金を出した場合どうするかというようなことをお尋ねして終わったわけでありますが、これは新潟、山形地方の災害にしましても、結局農家の方が多い。その農家の方がお金を借りても、実際利息も払えないような現状にあるわけですが、それで個人災害に対してどのようにお考えか、これについてまずお伺いしたい。
  25. 上村千一郎

    説明員上村千一郎君) 小平先生、個人災害の問題につきましては、先回も御指摘があったわけでございますし、また参議院並びに衆議院の災害対策特別委員会におきましても、個人災害に対して、どう政府は対処するかということにつきましては御指摘があり、重要な問題としまして、その後も取っ組んでいるわけでございます。その経過につきまして御報告申し上げておきたいと思います。  実は、災害によりまして被災された個人に対する援護措置の必要性につきましては、しばしば当委員会におきましても御指摘をされたとおりでございます。私ども災害対策本部といたしましてもその重要性を認識いたしまして、関係各省連絡の上、何回も協議をいたした次第でございまするが、しかし結論といたしまして、現在のところの大体の結論といたしましては、現在の私有財産制度のもとでは、災害による個人の損害は、各人の自主的な回復に待つのがたてまえであると言わざるを得ないのでありまして、政府といたしましては側面的に、個人の自立更生に資するために、たとえば災害救助法による応急救助とか、低所得者に対する生活再建のための世帯更生資金及び母子福祉資金貸し付け、生活困窮者に対する生活保護、住宅金融公庫による被災住宅に対する災害復興融資、被災者用の公営住宅の建設、租税の減免等の措置を講ずることといたしてまいったわけでございます。で、これらの援護措置についても、災害の実情に応ずるように、さらに適切な改善をはかることといたしまして、今後とも十分検討を加えてまいる方針でございます。  最近これら各般の措置のうち、改善を加えたおもなものを御報告申し上げますというと、第一点といたしましては、災害救助法による救助の費用限度額を、再度にわたりまして相当程度引き上げた。第二点といたしましては、住宅金融公庫による災害復興の住宅の建設等にかかる貸し付け金の限度額を引き上げた。第三点としましては、中小企業信用保険法による災害関係補償につき、保険の限度額を相当限度引き上げたというのが、政府といたしまして最近とりました措置でございます。  しかしながら、個人災害というものにつきましては、非常に重要度というものが高まって、これに対する対策につきまする重要度は、ますます認識をされておりまするし、各諸先生の御意見も強くあるわけであります。衆参にわたりましてその意見が強いということでございまするので、何らか政府としましても、いまのような基本的な結論には一応達してはおりまするが、何らかひとつ前向きに検討いたしたい、こういうわけでございます。
  26. 小平芳平

    ○小平芳平君 貸し付け金のほうは、これは限度額を引き上げてくださっても、結局返さなければならないお金ですから、これは実際問題、災害地の一軒々々の状況をお聞きになれば、これは十分おわかりのように、いろいろな形で住宅金融公庫なりあるいは自創資金とか、その他農協関係の金融にいたしましても、借りることは確かに借りる道は開かれていても、実際農家で五十万、百万という借金をしましても、いつ払えるか見通しもないような状態、現にそういう状態の上に、また災害を受けて、そしてまた借りる道は開かれていると言われても、これはどうしようもないわけですね。まあ前向きに検討なさるという御答弁でありまするが、これは去年の十月の委員会におきまして、当時の森総務長官が非常にその点については、個人災害については、はっきり結論を出していく、与党においても、政調会においてもこの問題は取り上げて検討しておるし、来たる通常国会には、もうその成果を出そうという段取りになっておるというような発言もしておられますが、この点は立ち消えになったわけでしょうか。
  27. 上村千一郎

    説明員上村千一郎君) 実は小平先生おっしゃるとおりでありまして、私も当時、森総務長官の御就任当時副長官をいたしておりまして、このいきさつを承知しております。その答弁は、昨年の十月に静岡県下その他を襲いました、また山梨県下を襲いました集中豪雨の際の被害に対しまして、当委員会で森総務長官答弁をされたかと思います。それで実は私どもといたしましては、いま小平先生がおっしゃるとおり、非常にこれは重要な問題である。何となれば個人のたとえば減税措置、あるいは融資の問題その他いろいろなことをはかっても、それに十分な援護措置というものはできない、立ち上がりも実際上できぬような実情にあるのだから、何らかひとつ個人災害というところで大きくひとつ前向きな措置を講じなければならぬのではなかろうかというわけで、再三にわたりまして、関係各省と協議をしました。そうしたところが、個人災害の場合には、非常に災害被害の態様というものが複雑でございますし、また、どの程度補助をしていくか、またどういう態様で補助をするのかという問題につきまして、各省の意見が非常に多種多様に出てくる。従来、個人災害につきまして、補助の形態で参考になりますのは、農地関係の場合が一つございます。それで、私実は当委員会でございましたか、あるいは衆議院の災害対策委員会かと思いましたが、先生方の御質問に対しまして、そういう一つの対象を固定しまして、そしてひとつ検討を進めていくというような方法もあるであろうということを答弁申し上げたことがございます。それで、そういう問題につきましても大きく取り組んでおるわけでございますが、現在の状態としましては、先ほど申し上げましたように、この程度で実は結論が出ておる、そうして非常に先生方の御要望に対しまして申しわけございませんが、決して今後の検討を打ち切っておるわけではございませんけれども、非常にむずかしい問題でございまして、各省の意見がはっきりまとまるという状態に至っていないということを、御報告を申し上げるわけでございます。
  28. 小平芳平

    ○小平芳平君 各省の意見がまとまっていないというのですか。それはちょっとふに落ちないのですけれども、いま御答弁なさっている御趣旨は、よくわかるわけでありますが、要するに大きな問題であると、またこれは非常に複雑な問題であると、またいろいろ制度上の問題もむずかしいというような点はよくわかりますが、それを各省の意見がまとまらないからということになりますと、じゃ具体的にある省ではこういう個人災害はこういうふうに見てあげるというのに対して、別の省ではそれは反対だと、そういうところへ金を出すべきじゃないというような論議なんでしょうか。
  29. 上村千一郎

    説明員上村千一郎君) ことばが不足しておるかと思いますが、実はたとえば大蔵当局の点等も考えますれば、どの範囲でやるかということにつきましては、非常に財源措置としても大きな問題になってまいりますし、またいろいろな災害の形態によりまして、先生も御案内のように、現在各省の縦割りの予算措置が結局なされておるわけです。ですから、総合調整と申しましても、総理府災害対策本部に予算がついておるわけではございませんのです。こういうようないろいろな問題もございますから、各省の方々の御意見というものも相当出てまいりますし、もちろんそれに対しましては、従来とっておりました政府の個人災害に対する考え方は、私有財産制度のもとにおいて、災害による個人の損害は、個人の自主的な回復に待つのがたてまえであって、それに対して政府は側面的に個人の自立更生に資するために各措置をとっているというようなことで、ずっとなっております。この大きな壁をどういうふうに打開していくかという問題につきまして、実はなかなか適切な意見がまだまとまっていないというのが実情であるわけであります。
  30. 小平芳平

    ○小平芳平君 それで、実際の現状はこれはよく御承知とも思いますので、そうした災害のたびに、もうそれは道路も橋も堤防ももちろん大事でありますが、とにかくそこに住んでいる人たちが生活ができなくなってしまったんじゃ、これもう人間が住めなくなって、住む人がなくなったんじゃ何にもならないのであって、この点ひとつ十分、先ほどの御答弁でもおっしゃっておられましたので、ただ金を借りる道が開かれているというだけでなくて、いかにして生活を建設していくかという点で御検討願いたいと、このように思う次第です。厚生省としては、どのようにお考えか。厚生省としては、災害救助法に対するいろいろな活動といい、また仮設住宅といい、こういう問題は厚生省の関係はほんとうにぎりぎりの線しか出していないわけですね。これはこの前の委員会でもほかの委員の方から指摘されましたので、重ねて私は申し上げませんけれども、実際問題厚生省はぎりぎりのもうほんとうの応急措置をとっていらっしゃるだけだ。そこでもって見るに見かねて全壊した家庭に対しては何万円、十万円というような見舞金を差し上げていくと。地方にはそういう例さえ出てきているわけですが、厚生省としてはどういうふうにお考えですか。
  31. 飯原久弥

    説明員(飯原久弥君) ただいまの御質問に対しましてお答えいたしますが、先ほど総務長官からのお話もございましたように、先生の御指摘のございました災害救助法に基づきます大体十六種類くらいの応急救助の種目、種類がございますが、これにつきましては、逐次改定をしてまいっておるわけでございます。それとそれから先生御案内のように、低所得になった方々には世帯更生資金制度というものがございますので、この世帯更生資金の、たとえば自力更生資金でございますとか、そういった自力更生を促す資金適用するということで補完をいたしまして、進めてまいっておるわけでございます。現在の災害救助法の中に応急救助の中の何らかの別の救助ということでございますと、御案内のように、災害救助法の任組み自体が、一定規模以上の災害について適用になるわけでございますから、そういたしますと、救助法の適用の場合と比べますと、ますます開きが多くなってくるというふうな行政上の、技術上の問題もございまして、きわめて至難なことでございます。そういう点から私どもといたしましては、蒸し返しますが、災害救助法の基準の改定なりあるいは世帯更正資金の改定ということで検討してまいっておるわけでございます。
  32. 小平芳平

    ○小平芳平君 時間的にきょう午前中にということでありますので、繰り返して申し上げませんが、いまの厚生省の施設課長さんの御答弁からしましても、結局世帯更生資金等で、というふうにおっしゃるわけですが、これは私は再三申し上げているように、借りるだけではもうどうにもならないという現状ですね。その上に立って、ひとつ今後御検討願いたいと申し上げておるわけですが、たとえば新潟県の荒川町という例ですが、再度災害及び山津波という、そういう特殊災害を受けて、個人の被害があまりにも悲惨であるというところから、町では一世帯平均十万円の生活資金を見てあげたというようなことも報道されているわけです。そういうときに災害ですからいろんな状態もそのところによって違いますけれども、こうした去年災害を受け、ことしも受け、来年また受ける、そういうような——来年はまだですけれども、そうして去年ことしというように連続災害を受けたと、しかも去年全滅して、またことしも全滅したというようなところに対する特別のそうした考え、特別な方策というものを、これを検討していただきたい。これはもちろんきょう出席していらっしゃる政府委員の方も、また大臣の方も御同感だと思います。  で、次に、もう一つそうした被災地の方の生活を守っていくために、救農土木事業というものを起こしていただいたらどうか。これも地方からもそうした御要望があり、前回委員会のときに私が申し上げたのに対して、農林省当局の方は起こしますということでありましたが、起こすことは起こしたけれども、もう打ち切りになっちゃったというふうに聞いておりますが、これはいかがでしょうか。
  33. 久保勘一

    説明員(久保勘一君) 救農土木に対しまする現地要望は非常に高いのでございまして、その点に対応いたしまして、政府といたしましては、従来配分いたしております公共事業について、できる限り被災地に優先するように、なおまた工事をいたします場合は、被災農家の方々に就労機会を優先して確保するようにというような指導をいたしているのでございます。  さらに救農土木の特別な事業といたしましては、県市町村要望のありますものにつきましては、起債をもちましてその工事ができるように措置をいたしている次第でございます。
  34. 小平芳平

    ○小平芳平君 ですから考え方は、そうした考え方でたいへんけっこうだと思いますが、この新潟県の場合は、それじゃどのように実施されたのでしょうか。
  35. 太田康二

    説明員太田康二君) 新潟県の羽越災害の場合に、確かに救農土木の要望があったのでございますが、ただいま政務次官のお答えになりましたのは、今回の干ばつ地帯につきまして救農土木事業を起こしまして、起債によって措置をするということをいたしたのでございまして、羽越水害の場合には、御承知のとおり農地の災害復旧、農業用施設の災害復旧事業が行なわれるわけでございまして、まさにこれは地元で行なわれる事業でございますので、この災害復旧事業に従事していただきまして、できるだけ就労機会現地で得ていただくということが、一番適切な措置ではないかというふうに考えまして、この災害復旧事業に従事していただくということによって就労機会を得ていただく。そこで、先ほど武内先生の御質問にもあったわけでございますが、多少他の県に比べますと、新潟県の場合には査定がおくれているというような事情もございましたが、先ほど政務次官の御説明にもございましたように、本年中には全部査定も完了して着工もいたすわけでございますので、くどいようでございますが、災害復旧事業就労していただく、これによって対処してまいりたいと、かように考えているのでございます。
  36. 小平芳平

    ○小平芳平君 私は問題を分けまして、新潟県の場合は、災害復旧事業に今後とも吸収して、そうして収入の道が絶えないようにしていかれる。しかし、大きな建設会社などが入って行ないますと、これはもう実際問題農家の、そうしたどっちかというと、そうした土木事業には、しろうとの方々はそういう建設会社が使ってくれないんじゃないですか。そういうようなことがあったとしても、だいじょうぶですか。
  37. 佐々木四郎

    説明員佐々木四郎君) お答えいたします。災害復旧事業は、一般的に工事規模がそう大きくないのでございまして、大土建業者等が入ってきてやるような大規模工事というのは少ないわけでございます。御承知のように、農地の土砂の堆積あるいは流出を直すとか、あるいは中小規模水路とか、井ぜきを直すというような比較的工事規模が小さいものでございますから、一般的に災害復旧工事は、地元のその地域地域の業者等がその地方の農業に従事する人たちを使いながら工事を進めていくことになっております。災害復旧事業で地域の人々の就労機会を与えまして、賃金収入の道はそういうことでもって解決できるというように考えております。
  38. 小平芳平

    ○小平芳平君 それは小さい事業もあるし、大きい事業もあるわけですよ。それは農地の、いま御説明のような事業は、確かに大きな土建業者が請け負うような事業ではないと思いますので、こういう点はひとつ具体的に各地方からの要望が出てくると思いますので、ひとつ十分認めていただいて、とにかく収入の道が絶えないような、そういういま御答弁がありましたから、そういうように私自身も承知してまいりたいと思いますが、収入の道が絶えない、そういうことを考慮していただきたい、こう思うわけです。  それから九州、中国方面のこの干ばつについての具体的な対策は、これはいかがですか。
  39. 太田康二

    説明員太田康二君) その点につきましては、先ほど私が「昭和四十二年七月以降の干ばつについて」という資料に基づきまして御説明申し上げたのでございますが「措置概要」の第四といたしまして、救農対策事業を今回起こそうということでございまして、御承知のとおり、一つには、今回の干ばつによりまして亀裂の入ったため池水路水田等は一定基準によりまして災害復旧事業として採択することにいたしておりまして、まず第一次的には、この事業にも就労する機会があるのではないか。それから先ほど政務次官もお答えになられたわけでございますが、土地改良事業とか林道事業、漁港整備事業等の農林省の所管している公共事業等ございますし、建設省等の道路の公共事業もあるわけでございますが、これらをできる限り被災地域において、被災農民就労機会を与えるように実施していただくということも一つでございます。それ以外に、あわせて被災農家の方々の現金収入の道を確保するというために、地方公共団体が、道路とか農道なりが中心になると思いますが、農道の新設、改修、あるいはため池改修等、従来公共事業対象にならなかったような小規模事業につきまして、地方公共団体起債を認めまして、これによって就労機会を得ていただくということを現在考えておるのでございます。
  40. 小平芳平

    ○小平芳平君 それで、特にこちらの西日本の場合はこうした干害という、干ばつという災害で、老朽ため池をしっかりしておけばよかったんじゃなかろうかとか、いろいろそういう点は実情をよく御承知でもあると思いますので、一々申し上げませんが、こういう水資源の問題について、またもう一つは大きく水資源の確保という点から、そうした公共事業も起こされる必要があろうと。そういう点で、いまお尋ねした点は、農家の収入という点からお尋ねしてきたわけですが、この点については西日本の場合も十分配慮していかれる。その点で具体的には地方といろいろ御連絡の上でおやりになると思いますから、ぜひこれも羽越の場合と同じように、農家の現金収入がなるべく確保できるようにという点から申し上げたわけであります。  それで、次にダムについて、建設省ですか、ダムを多目的ダムとしてつくります場合、これが実際農家が期待したような結果を発揮できているかどうか、こういう点についてはいかがでしょうか。
  41. 西村英一

    ○国務大臣(西村英一君) たいへんできております。五月でしたか、ことし第一回の干ばつが関東地方にあった。そこで矢木沢のダムがありましたので、このダムが威力を発揮した、そのために植えつけができた。ことに千葉県のごときは、あれだけ雨が降らないと、潮が押し寄せまして絶対にできないのです。それで矢木沢の放流を農林省関係の官庁と打ち合わしてやったわけであります。栗橋の水位があのくらい下がりまして、矢木沢の放流をやりましたら、ほんとうにもう雨が降ったと同じぐらいな量になりまして、ようやく千葉県等の植えつけができた次第であります。たいへんな威力を発揮したのです。私はしかしながら、ああいうような大きなダムはそうどこもここもできるわけじゃありません。九州におきましても、筑後川の総合開発をやっております。やっておりますが、筑後川の総合開発で使われる水というのはやはり限られております。しかし、九州地方で申しますると、あのような干害というのは、七十年ぶりだとか八十年ぶりだと言っておりまするが、こういうようなこともあり得るのでございまするから、いま言われておるように日本に水がないんじゃない、水はあるけれども、それを利用する方法は、やはりいまの社会生活には追いついていかぬのじゃないかというようなことがありますので、建設省といたしましては、ことしから初めて新規の事業として実は多目的にあらざる治水ダムをやったんです、十カ所。これは実は正直に申しますと、大蔵省が初めての事業ですから抵抗したのです、なかなか。しかし降った水はためておかなければしょうがないじゃないかということで十カ所やった。これは武内さんにも申し上げますが、実は新潟県の河川もおくれておりますので、この十カ所の治水ダム——多目的じゃございません、単目的です、ただ水をためる。それがやはり予防にもなるわけですが、それを三カ所新潟県に割り当てたんです。十カ所だけそういうようなことをしたのですが、来年はさらに相当な個所、建設省としては大蔵当局に要求したいと思う次等でございます。また農林省も、いろいろだめ池を新規につくる、あるいはいままでのため池を大きくしようとか、ことに果樹あたりにつきましては、今後利水の問題をうまくやらないと、こういうことがあると、非常にたいへんな農家被害を受けると思いますので、小平さんが言いましたように、今後は、治水をかねて利水ということに、相当に意を用いなければならぬと思っておる次第でございまして、一生懸命政府としてはやるつもりをいたしております。
  42. 小平芳平

    ○小平芳平君 大臣のおっしゃるのと、私も全然別な意見を持っているわけじゃないのですが、結局矢木沢ダムのようなああした大建設をしまして何の効果もないなんていう、そんなばかなことがあるわけがないのであって、ただ私がずっといま申し上げてきたことは、農家生産農家の生活ということを主体に考えた場合に、多目的ダムなるがゆえにこの目的が相反するような面が起きやしないか、それは十分大建設をやれば、ダム建設をやって、それが何の効果もないというようなことは毛頭考えておるわけじゃないわけですが、こういう点は治水、利水、また利水の中でもいろいろな面がある。こういう点について御検討願いたいと思います。また西日本の場合は、そうした今回の干ばつについて、はたしてこの程度干ばつ被害をもっともっと少なく食いとめるためにどういう方法があるかという、特に日本は建設大臣がおっしゃるように水がないわけじゃないわけですから、それはどういう建設をしていけばどういう被害を食いとめることができるか、こういう点を御検討願うことが大事だという趣旨から申し上げたわけです。大臣そういうふうにおやりになるということでありますので、次にまいります。  次に、今度全然問題違いますが、最後に気象庁の方から……。結局気象庁で発表なさった中にでしょうが、干ばつはことしも西日本干ばつがあったが、来年もまたそうなりそうだというような見通しなんでしょうか。
  43. 加藤繁数

    説明員(加藤繁数君) 実は、気候の予想ということになりますと、一年先ではっきりしたことは申し上げられないのですけれども、たとえばその一つの資料としまして、太陽の黒点の変化との関係をちょっと申し上げたいと思います。御承知のように太陽の黒点の数は、大体十一年ぐらいの周期でもって変動しております。短い年には間隔が七、八年に縮むこともございますし、長い年には十五、六年に延びるようなこともございます。それでその黒点数の少ない年を極小年と言っております。また多い年を極大年と申しております。そういう極小のときとか極大のときとかになりますと、太陽からくるエネルギーが多くなったり少なくなったりして変動がございますから、地球上の気候、天候も不順になってくるわけでございます。  大正以来の変動を調べてみますと、極小年の、少ない年には、たとえば一九一三年、二三年、三四年、四四年、五四年、六四年、大体十年くらいで近ごろははっきり変化してきたわけであります。それから多いほうの年は一九一八年、二八年、三七年、四七年、五七年、それからことしの六七年でございます。こういう年には、多かれ少なかれ災害が起きるような異常天候が出ているわけでございます。少ない年のほうでございますと、一九一三年、二三年、三四年のほうは著しいほうで、どういうわけかよくわかりませんけれども、この極小年のときには干ばつと冷害とが同時に起こっている傾向がございますし、それから多い年のうちでは二八年、三七年、五七年、ことしの六七年、この四年が顕著でございますが、このときには干ばつだけが起こっております。そういうことがございますし、それからもっと長い目で申し上げますと、実はこの黒点数の観測というものは、一七〇〇年からことしまでございまして、二百七十年の長い間世界で観測を続けているのでございます。そうしますと、こまかいいま申し上げましたような周期の変動はございますけれども、その黒点数の多いときと少ないときとの幅の変化がまた多いときと少ないときとがあるわけなんです。それは長い年月の間の変化でございます。このうちで一番いままでで振幅の大きくなったのが一九五七年、十年前のときでございますが、一番大きくなりまして、これは昭和三十二年でございますが、そのときに北陸の豪雨がありましたし、それから三十八年から四十一年まで三カ年間続いて北海道の大凶作、冷害が起こったわけでございます。それから第二の災害が安永七年に実は起こっておりまして、その振幅の最大のときの、小さい周期の下になったところですね、小さくなったとき、それが天明四年でありまして、天明の大飢饉になったわけでございます。それから第三番目に大きかったのは昭和二十二年でございまして、このときは冷害が起こっているわけでございます。こういうように見ますと、太陽黒点と気候との間には非常に密接な関係があって、しかも周期的に変化してきますから、一見非常に簡単に異常気象が出るということが予想できる、あるいは次の年の天候が予想できそうにも見えますけれども、実は大陽のエネルギーが地球へ入ってきてどういうように作用して、どういう因果関係で気候変動が起こっているかということが、全くわかってないのでございます。ですから、安心して使うことはできない。  それからもう一つは、太陽活動の周期が、最初に申し上げましたように、変動がかなり大きゅうございます。そうして、現実に、先ほど言いました十年周期がはっきりしていると申しましたけれども、ここ数年変動がだいぶ狂ってきて、おそらくこのあと十年のときには、これと同じような変化が出るかどうかは疑わしくなってまいりましたから、来年の天候がどうなるかということも、それまではっきりできないわけでございます。ただ極大、極小のその年に起こるということでなくて、その起こるようなときには前後一、二年の間どうせエネルギーがたくさんくるとか少なくくるとか変動がございますから、一年起こると二年続くというようなことは非常に起こりやすいと、そういうことでございます。
  44. 小平芳平

    ○小平芳平君 そういう点は、過去のいろんなデータからいま御説明をいただきましたが、またいろんな実際の研究も必要だろうと思いますが、そういう研究をしていただいて、また、そういう現状にあることを前提にした政治というものも必要だと思うわけですが、最後にもう一つ。これは人工降雨ということをだいぶ期待を持つような報道なり、そういうことがあったんですが、この点についてはいかがでしょうか。
  45. 加藤繁数

    説明員(加藤繁数君) 人口降雨の研究は、各国盛んにやっておりまして、アメリカでは人工降雨会社までできているくらいなのでございます。わが国では、日本人工降雨研究協会というのがございまして、科学技術庁、気象庁、大学、それから電力会社、水道局なんかが集まりまして協力してその研究をやっておりますし、また実験もやっておるわけでございます。  で、ざっと人工降雨のお話をいたしますと、人工降雨といいますのは、雲のある水滴とか氷の小さい粒のあるところへ沃化銀とか、沃化鉛とか、ドライアイスとか、水をまいてその水滴の成長を早くさせるとか、あるいはその落下速度を大きくするというようなことによって、その効果を出そうというものでございます。いま申し上げましたその沃化銀とか沃化鉛、ドライアイスをまいて、有効なときは雲の中の水滴の温度が零下十度くらい、——零度よりも下がっているところにまいてやりますと、そこへ雪ができるわけなんです。そうしてその雪の成長を大きくするような作用を起こさせまして落下させる、そうして落下してくる途中に雨になるという方法でございます。水をまくときには、これは零度よりも高いかあるいは零度近くの比較的温度の高い雲の中へまいてやるわけなんでございます。でないと効果が出ないわけでございます。したがって晴れた日とか雲の非常に薄いような空模様のときに、そういう種まきをやっても雨が降らないのでございます。人工降雨を成功させるということになりますと、気象条件が非常にそろったとき、どちらかといえば、もう雨が降るような条件に非常に近づいておるけれども、雨が降り出さないといったときにショックを与えて、刺激を与えて降らせるといった程度のものでございます。それでその種まきをするのにも、適当な雲の状態を調べまして、適当な高さのところへまいてやるとか、そうしてまくときもどの種類のものを使ったら効果があるとかいうことを調べてまくとか、それからその量もあまり多くまき過ぎますと、小さな粒がたくさんできまして落ちてこないですから多くてもいけない、また少なくてもその効果がないというように非常にむずかしいものでございます。そういうことを適当な時期に適当な量だけ雲の中へ種まきするということをしないと、成功しないという非常にむずかしいものでございます。実際にやってみて、その効果があるかどうかということ、これはもうはっきり効果は出ておりまして、何%かは余分に降るわけでございますけれども、干ばつで天気がいいのに雨を降らせるとか、そういったことはまずいまのところでは不可能と申していいと思います。  以上でございます。
  46. 伊藤顕道

    委員長伊藤顕道君) 本基本問題に対する質疑は、本日はこの程度といたしますが、本委員会における未解決の課題については、今後も本委員会において検討を進める必要があり、政府においても向後引き続き積極的に取り組んで、これが早期解決に最善の努力をいたすよう希望いたします。  本日は、これにて散会いたします。    午後零時二十分散会