○島上
議員 ただいま
議題となりました
政治資金規正法及び
公職選挙法の一部を
改正する
法律案につき、私は日本社会党、民主社会党及び
公明党を代表し、その
提案理由とその
内容の概略を御
説明申し上げます。
政府は、
選挙制度審議会に対し、
選挙区制その他
選挙制度の根本的改善の方策について諮問しておりますが、同
審議会は、去る四月七日、最近の
政治情勢にかんがみ当面緊急に
措置することを要する事項として、
政治資金の規正及び連座制の強化等を中心とした「
政治資金の規正等の改善に関する件」について、
政府に答申をいたしました。
政府は、この答申を受けた場合、答申を尊重し勇断をもって実行することを再三にわたり公約してきたのでありますが、自由民主党との
意見調整に名をかり、
政府案作成段階で重要な数点に変更を加えて前
国会に
提出してきたのであります。しかるに、そのいわゆる骨抜き案すら廃案にしてしまったのであります。緊急に
措置すべき事項としての答申であり、前
国会で国民が最も成立を期待していたものでありまするから、当然今
国会に再
提出さるべきものと
考えましたが、その
提出も見られず、よって日本社会党、民主社会党、
公明党の三党共同
提案として、答申に沿うた
改正案をここに
提出した次第であります。
次に、この
法律案の
内容について、御
説明申し上げます。
まず、
政治資金規正法の
改正についてであります。
第一に、
政治資金の寄付の制限についてであります。
まず、寄付の総額につきましては、個人のする寄付にあっては最高額を一千万円とし、会社その他の団体のする寄付にあっては最高額二千万円、
最低額五十万円の範囲内において、それぞれ団体の規模に応じて制限を加えることといたしました。この場合、会社のする寄付につきましては、資本金のほか収益をも
基準とし、労働組合等のする寄付につきましては、その組合員数に応じて十段階に区別して制限することとし、その他の団体のする寄付についてはその規模等を表示する尺度を求めることがきわめて困難であるため、一律に前年の支出額の十分の三に相当する額を限度とすることとしたのであります。また、制限額の範囲内において寄付をする場合には、
政党及び
政治資金団体に対する寄付については制限を設けないこととし、それ以外の
政治団体または個人に対する
政治資金の寄付については、同一の者に対して、年間五十万円をこえてはならないことといたしました。
次に、国または
公共企業体と請負契約の
関係にある者及び日本開発銀行等四
政府関係金融
機関から融資を受けている中小企業以外の会社のする寄付につきましては、前の
政府案では請負契約額、融資額の比重が低いものを除外していましたが、本案では一律に一般の場合の二分の一に制限することといたしました。また、国から
補助金等の給付金の交付を受け、または資本金等の出資を受けているいわゆる特定会社その他の特定の法人のする寄付につきましてもこれを
禁止することといたしましたが、これらの場合において国と
関係のない
地方公共団体の議会の
議員または長の
候補者等に対してする寄付については適用を除外することといたしております。
なお、
地方公共団体と請負契約
関係にある者、
地方公共団体から
補助金等の給付金を受けている会社その他の法人等のする寄付についても、国の場合に準じて、制限ないし
禁止することといたしました。
さらに欠損を生じた会社のする寄付、匿名及び他人名義の寄付並びに外国人等のする寄付につきましても
禁止することといたしました。
以上の
政治資金の寄付の制限と
関連して、その違反者に対する
所要の罰則
規定を設けることといたしております。
第二に、
政治団体の届け出並びに収支報告及びその公表等についてであります。
すなわち、
政治団体の届け出があったときは、その
内容を公表して、これを国民に周知することとするほか、会計帳簿及び収支報告書に記載すべき
内容等について改善、合理化を加え、
政治資金公開の
趣旨を徹底することといたしました。
第三に、
政党等の定義についてであります。
今回の
改正によりまして、
政治資金の寄付に関しましては一定の制限が加えられることとなり、かつ、
政党本位の
政治活動の推進をはかるため、
政党に対する寄付と
政党以外の
政治団体に対する寄付を区別して制限することとなりますので、
政党と
政党以外の
政治団体との区別を明確に
規定することといたしました。
また、
政党中心の資金調達を容易にするため、各
政党について
一つの団体を限って
政治資金団体を設けることを認め、これに対する
政治資金の寄付については、
政党と同様の取り扱いをすることといたしました。
このほか、党費、会費及び
政治活動に関する寄付等についても、その
内容を明確にして、規制の合理化をはかることといたしております。
以上申し上げましたほか、これらの
改正に伴いまして、個人が寄付を
政党または
政治資金団体に対してした場合には、その寄付金について課税上の優遇
措置を講ずるとともに、その他必要な
関係規定の整備を行なうことといたしております。この場合、法人の寄付金については、課税上の優遇
措置の必要はないものといたしました。
次に
公職選挙法の
改正について申し上げます。
第一は、公職の
候補者等の寄付の規制についてであります。すなわち、公職の
候補者等が
選挙区内にある者に対してする寄付は、
政党その他の
政治団体または親族に対してする場合を除き、全面的に
禁止することとしたほか、公職の
候補者等がその役職員または
構成員である会社その他の団体がこれらの氏名を表示しまたはこれらの者の氏名が類推されるような方法でする寄付についても、
政党その他の
政治団体に対してする場合を除き、一切
禁止することといたしました。また、後援団体のする寄付等についてはこれを
禁止するとともに、後援団体以外の団体で特定の公職の
候補者等を推薦しまたは支持するものについても、後援団体に関する制限に準じて制限を設けることといたしました。前の
政府案においては、公職の
候補者等がもっぱら
政治上の主義または施策を普及するために行なう講習会等において必要やむを得ない実費の補償を認めることになっていましたが、これは答申を逸脱しざる法化するおそれがありますので
禁止することといたしました。
第二は、連座
制度についてであります。いわゆる連座制につきましては、
選挙運動の実態にかんがみ、数個に分けられた
選挙区の地域における
選挙運動または多数の
選挙人が属する職域または組織を通じて行なう
選挙運動を主宰した者をも連座
対象者の範囲に含めるとともに、公職の
候補者または総括主宰者等と
意思を通じて
選挙運動をした公職の
候補者の父母、配偶者、子または兄弟姉妹については、公職の
候補者と同居の有無にかかわらず、連座
対象者の範囲に含めることとし、同居している父母、配偶者、子または兄弟姉妹については、公職の
候補者と
意思を通じているものと推定することといたしました。
また、
選挙犯罪を犯し罰金の刑に処せられた者については、当該
選挙犯罪がきわめて軽微なものである場合を除き、裁判所が情状により公民権を停止しない旨を宣告することができる
制度を廃止することといたしました。
その他、昨年実施された永久
選挙人名簿
制度の運用上の欠陥にかんがみ、
選挙人名簿の登録回数を増加する等その合理化をはかることといたしました。
また、答申の重要な眼目である本法
施行後五年を目途として
政治資金はすべて個人の寄付及び党費または会費によることを実現するための原則を確立いたしております。
なお、実施時期については、
昭和四十三年一月一日とすることといたしました。
以上がこの
法律案の要旨であります。この
法律の早期成立は国民の至上命令ともいうべき強い要請であることに思いをいたし、かつ前
国会においても相当
審議された事実にかんがみ、すみやかに
審議を進められ御可決あらんことを望みます。(拍手)