○井上説明員 御説明申し上げます。
最近海上輸送
状況が非常に悪くなってまいりまして、ということは、
日本の沿海を航行いたします船舶の量が著しく多くなった、また、船の態容が大型化あるいは高速化する趨勢にあるとか、またフェリーボートとか、押しはしけとか、新しい形態の船も進水しておりまして、こういった
状況でございますので、海上の船舶の流れが多くなったことに対処して、いままでの交通規制のやり方でいいかどうかということを、私
ども反省したわけでございます。
そこで、これにつきまして、運輸大臣の諮問機関でございます海上航行安全審議会に、本年、先ごろ諮問いたしまして、いろいろ御検討いただいたわけでありますが、その答申が先月出されたわけでございます。その骨子をかいつまんで申し上げますと、先ほど申しました
ように、交通の激しさという
事態から
考えて、現行の法制では不備である。したがって、新しい法制を整備する必要があるということでございます。現行の法制と申しますと、先ほど水産庁の方から御説明がございましたが、大づかみに申しまして、三つございます。
その
一つは、海上衝突予防法という法律でございます。これは世界共通の条約で、
規定されたものを国内法に持ってきているものでございます。これは主として
一つの船対
一つの船、ワン・ツーワンの航行に際しまする航法の秩序化といいますか、権利義務を骨子としてつくったものでございます。それからもう
一つの法律は、航則法でございます。これは港の中、あるいは港の付近におきまする交通の規制を主とする法律でございます。それからもう
一つは、法律ではございませんが、海上衝突予防法によって得ましたところの政令で、特定水域航行令という政令でございまして、これは特定の水域に関します特別の航行を規制したものでございます。
そこでこれらの法規は、海上衝突予防法では、一船対一船の
関係にあるので、いまの船舶の大きなかたまりの流れというものを規制するには不十分である。しかしながらこれは国際法規でございますので、そのまま存続する必要がある。第二の港則法につきましては、これは港の内外だけでございますので、現在交通量のふくそうしております港の外の狭水道等までには及びませんので、その空白を埋める必要がある。特定水域航行令につきましても、ある
意味では狭水道を指定してございますが、これでも不十分で、よって港則法と特定水域航行令と二つを、この際
発展的に解消いたしまして、
一つの仮称でございますが、海上交通法という形で規制することがよかろう。こういう趣旨でございます。
かいつまんでこの内容を申し上げますと、まず港内
関係の規制でございますが、これは現行の港則法で一応ございますけれ
ども、現在の
状況をよく調べまして、実情に合う
ように、規制の内容を整備していきたいというふうな
考えでございます。その例といたしまして、たとえば港内におきまする危険物の積載船舶に対する取り扱いが、現在では行政指導でやっておりますが、これを規制の内容といたしまして、危険物積載船舶付近に通行することをある
程度制限を加える。また危険物積載船舶が荷役をいたします場合には、その当該船舶に対して何か事故があります場合には、即時移動することができる
ように、待機の姿勢をとらせることを義務化する。あるいは引き船等の準備をさしておくという
ようなことを
考えております。また危険物を積載いたします大型船が入港あるいは出港いたしますときには、予定時刻をあらかじめ港長に通報させる。そしてその時間帯をよく認識いたしまして、それの十分な措置をとる。本船といたしましては、必要な引き船を持たして入出港させるという
ようなことを
考えております。そのほかこまかい事項が
考えられると存じます。また港の外の狭水道等の場合でございますが、これは現行法では空白の地帯でございます。したがいましてこの点を埋めたい。その内容といたしまして、大体港内の規制の
方法を準用いたしたいと
考えております。しかし港内と狭水道は事情が違いますので、その違った点を、特殊性に応じた規制をとっていきたいというふうに
考えております。具体的に例を申し上げますと、狭水道等におきまする航路の設定の問題が出てまいりますが、これは審議会といたしましては、できるだけ航行の区分帯を設けて大型船、小型船の摩擦がない
ように
考えていくという
ような要望をされております。また必要なる航路標識を設置すること、あるいは信号所を設ける、こういった
ような御要望がございます。また狭水道を行きかいいたします大小船舶の権利義務の問題になりますが、これにつきましては先ほど申し上げました危険物を積載していく大型船につきましては、これは操船が非常に不自由でございますので、これに対するいき方といたしましてなるべくこういう船舶は航路の中央を通す
ようにしむけていく。また航路の曲がりかどだとか特殊な地域におきましてはそこにアテンドするところの引き船を配備させる。そのためにはそういう水域を通りまする予定時刻をあらかじめもよりの保安部長のほうに通告させるという
ような義務を課していきたいというふうに
考えております。
それからその他、大型船と小型船の
関係でございますが、一応一定の大きさ以上の船舶に関して航路を守らせる。それ以外の船舶同士につきましては対等の
関係で
一般航法の
原則に従っていくというふうに
考えております。
また漁船の
関係でございますが、特に交通量のふくそうする水域におきましては漁業の漁種に応じましてある
程度制限あるいは禁止という
事態もあるいはあるかもしれませんが、そういったことを
考えたいと思います。
それからもう
一つ申し上げますことは、
一般海上におきまして
一般船舶の航行に支障を与える
ようなおそれのある工事だとか工作物の設置だとか、そういったことに対しましては許可事項にいたしたいというふうに
考えておる次第でございます。
こういうことが内容でございますが、これらの法律を制定いたします場合に、たとえば制限だとか、禁止だとか、こういった場合も
考えられるわけでございますが、これにつきましては個々の水域の特殊性がございますので、政令または省令におきましてこれを水域ごとに検討していきたいと思いますし、その場合に
関係者の
意見は十分に伺って制定していきたい、こういうふうに
考えております。