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1967-09-04 第56回国会 衆議院 外務委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十二年九月四日(月曜日)    午前十時三十四分開議  出席委員    委員長 福田 篤泰君    理事 鯨岡 兵輔君 理事 小泉 純也君    理事 永田 亮一君 理事 野田 武夫君    理事 穗積 七郎君 理事 曽祢  益君       青木 正久君    大平 正芳君       中山 榮一君    松田竹千代君       山口 敏夫君    山田 久就君       久保田鶴松君    黒田 寿男君       松本 七郎君    渡部 一郎君       斎藤 寿夫君  出席国務大臣         外 務 大 臣 三木 武夫君  委員外出席者         外務大臣官房長 斎藤 鎭男君         外務省アジア局         長       小川平四郎君         外務省北米局長 東郷 文彦君         外務省欧亜局長 北原 秀雄君         外務省条約局長 藤崎 萬里君         厚生省援護局長 実本 博次君         専  門  員 吉田 賢吉君     ————————————— 八月十八日  一、国際情勢に関する件 の閉会中審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  国際情勢に関する件      ————◇—————
  2. 福田篤泰

    福田委員長 これより会議を開きます。  国際情勢に関する件について調査を行ないます。  質義の通告がありますので、順次これを許します。鯨岡兵輔君。
  3. 鯨岡兵輔

    鯨岡委員 外務大臣に二、三の点についてお尋ねをしたいと思っているわけであります。  まず第一にお尋ねしたいのは、核防条約についてであります。いよいよ煮詰まってまいりました核防条約について、外務大臣現時点においてどんなふうにお考えになっておられるかということをお聞かせ願いたいわけです。日本軍縮委員会メンバーではないのでありまして、各党の方に話を聞いたり、あるいは各界の人に会って話を聞かれたり、いろいろ御苦労を重ねられたようでありますが、現時点でどんなふうにお考えになり、そのお考えをどんなふうな形でこれを国連のほうに影響させるか、軍縮委員会メンバーに入っていない日本としてとるべきことはどういうことか、外務大臣現時点においてのお考えをお聞かせをいただきたい、こう思うわけであります。
  4. 三木武夫

    三木国務大臣 先般来、野党各派、学界、産業界原子力委員会、これは重大な条約でありますので、意見を徴したのでございます。御承知のように、十八カ国軍縮委員会米ソの案が、別々ではございますが、合意が成立をしたから提出することになったわけであります。今後審議を通じていろんな意見が出てくると思いますので、それともにらみ合わすことと、各方面の意見を徴してみて共通点が非常に多い。  一つは、平和利用の面について、日本核兵器開発はやらない、しかし、原子力平和利用の面においては一流の国家にならなければいけない、そういう点で、この条約がいささかも研究開発を阻害するものであってはいけない。ことに気にかかるのは、第三条のいわゆる国際保障という査察の問題ですね、これが空白になっておる。このことは研究開発等にも影響するところが非常に多いし、これがどういうことに成文化されていくかということは、平和利用の面において非常に関連があるわけであります。したがって、そのブランクになっておるところもひっくるめて、平和利用については、単に条約条項ばかりでなしに、これを実際に適用した場合にどういう不安があるかということは、今後専門家等アメリカからいつでも来ると言っておりますので、これを派遣してもらって、平和利用の面でもっと詰めていきたい。条約の上においてはだいぶ日本意向も反映されて、平和利用に対する条項は、かなり核拡散防止条約の中に取り入れられておりますが、なお検討を加えたい、平和利用の面、これは一番注目しておる点でございます。  もう一つは、核軍縮に対する規定が、御承知のように、前文にはそういう意図は出ていますけれども、もっと明白にしてもらいたい。この条約核兵器保育国優位性を正当化し、固定化すようなことであっては、核拡散防止、そういう精神に沿わないのではないか、この条約締結核軍縮の一歩、これがスタートであってほしい、これは核軍縮への第一歩であるべきである、これは各党とも非常に強い意向であります。われわれもさように考えておりますから、この点については、今後もう少し明白に核軍縮意図というものが条約の中に出るように努力したいと思っております。  それから第三には、これは原子力平和利用の面においてもどういうふうなことに将来なっていくか、予測のできないような点もありますので、やはり五年ごとに再審査すべきであるという日本の主張は——五年ごとということにはなっておりませんが、五年たったら再審査をするという規定にはなっておるが、これはもう少し五年ごとというようなことにできないか、これは努力をしてみたい。  それから最後には、非同盟諸国、こういう国々がこの条約加盟をすることが必要である。できるだけ多数の国が加盟をすることが核拡散防止条約の目的を達成できるのに必要でありますので、こういう国々に対しては、核攻撃に対する安全保障という面から、これは条約の中では無理であっても、何か国連決議等で、そういう非同盟諸国核攻撃に対する不安というものに何らかの保障的な決議ができないか、これは努力をしてみたい。こういう点がいま考えておる重要な点でございます。
  5. 鯨岡兵輔

    鯨岡委員 そのお話でさらにお聞かせをいただきたいのは、そういうようにお考えになっていることをどういうような形で反映していくのか。努力目標はわかりましたが、努力方法はどういうことか。軍縮委員会メンバーになるということについて何か特に努力をなさるか。軍縮委員会メンバーにならずとも、こういうような方法でいま言われたようなことを努力されるか。これらについてお聞かせ願いたいと思います。
  6. 三木武夫

    三木国務大臣 いま御承知のように、核拡散防止条約軍縮委員会にかかっておるわけですが、こういう段階において日本軍縮委員会メンバーになるということは、実際問題としてできないことです。一応一段落をしてから後の問題として、軍縮委員会メンバーになるということは別の問題として考えざるを得ない。これは一応改組みたいな形になりますから、そう簡単なものではない。したがって、十八カ国軍縮委員会審議状態ともにらみ合わせて、田中大使をもう一回ジュネーブに派遣をする予定でございます。そうして軍縮委員会メンバーに働きかけて、日本のそうした意向ができるだけ反映するように努力をしてみたい。私もまたこの十日からアメリカに参りますから、そういう機会核拡散防止条約に対して日本考え方を述べ、アメリカの理解と支持を得るように努力したいと思っております。
  7. 鯨岡兵輔

    鯨岡委員 その問題は重要な問題なので、この問題につきまして、なお二点ほど外務大臣のお考えをお聞かせをいただきたいと思うのですが、外務大臣がこのごろずっと御苦労なさって、各政党並びに実業界各界にいろいろ直接お会いになって、かなり時間をかけてお話し合いになったことは、新聞に詳細伝えられております。ほとんど余すところなく新聞を通じて読んだつもりでありますが、特に実業界とは平和利用の面についてかなり詰めての御審議があり、なおこれからも詰めなければならぬと思われておることは、いまお話でわかったのです。各政党との話の中で、政党によっては、軍縮という問題について少しルーズだ、こういうことでは核を持っておる国が固定化され、持たざる国が固定化されて、不平等がますます拡大していく、そこで、核軍縮について、もう少し明確な責任というものを核を持っておる国がとるということが明記されていない以上、これは賛成はできないというような意見もあったやに承ります。それに対して外務大臣は、すでに今日そこには不平等がある。その不平等をこの条約によってさらに拡大しないということがあれば、それで意味があるではないかというようなことを——間違っておるかもしれませんが、言われたようであります。ここら重大なことのように思いますので、さらにこの委員会で明確にひとつお考えをお述べいただきたいと思うのであります。
  8. 三木武夫

    三木国務大臣 確かに、そういう野党政党とのこの問題に対する懇談を通じて、そういう問題が提起されたことは事実であります。核兵器保有国も現在すでに持っておるこの五カ国に押えるわけであります。それ以外の国は核兵器を持ってはいけない、つくってはいけないということになるわけですから、一応五カ国という核兵器保有国の立場を固定化することになるわけであります。それは非常に不平等ではないかという御指摘があることは事実でございます。しかし、私が申しましたことは、現に核兵器を持っておる国と持っておらない国、これは不平等といえば不平等といえるような状態が現存するわけでありますから、この条約を結んだことによってその不平等さを解消するというなら、持っておる国が全部核兵器を捨てる以外に平等にするということはできないわけです。しかし、この条約核兵器を持っておる国が一ぺんに核兵器を放棄するということは、現実問題としてできることではない。そうなれば、この条約を結ぶことによって、持っておる国が核軍備競争を停止して、現在持っておる核兵器もこれをだんだんと縮小し、将来は核兵器を破棄していくのだ、そういうことで、軍縮第一歩にこれをすることが一つ意味があるではないか。それを不平等であるからといって、この条約は要らぬ、核兵器が世界に拡散されるほうがいいという議論は、なかなか成り立ちにくいのではないか。しかし、これは各政党判断にまかすよりほかない。これが不平等だからといって、核兵器を持っておる国が次々にふえるほうがいいのか、不平等であってもこの条約成立機会核軍縮をして、だんだんと核兵器を減らすような第一歩にすることが核戦争防止に役立つのかは、各政党の冷静な判断にゆだねるほかはないということも申し上げたことは事実でございます。しかし、どの政党も、現在の段階において、この条約に対する最終的な態度を表明された政党はないのであります。みな非常に疑義がある。これは今後の十八カ国軍縮委員会審議日本政府努力などとにらみ合わせて、どういうふうになっていくか見守りたいということで、あの段階で反対であるという意思表示をした政党はございません。これだけは申し上げておきたい。
  9. 鯨岡兵輔

    鯨岡委員 各政党とかなり時間をかけてお話し合いになった結果、核をどの国でもどんどん持ったほうがいいというふうに考え政党はなかったのですが、これはお話を直接お聞きになった外務大臣はどんなふうな印象でしたか。
  10. 三木武夫

    三木国務大臣 それは私はない、そういう考え方をお持ちの政党はないという印象を受けました。
  11. 鯨岡兵輔

    鯨岡委員 各政党からも話が出たように承っておりますが、そこで、中国並びフランスは、必ずしも——必ずしもということよりは、絶対にアメリカソ連とこの問題に対する基本的な考えを一にしておらない。要するに、アメリカソ連を中心として持っている国と持ってない国が固定化するということに対しては、同意でないという考え方をむしろ積極的に持っている中国、それからフランス、それらはいまの時点で一体どうしたらいいように外務大臣はお考えでしょうか。
  12. 三木武夫

    三木国務大臣 やはり核拡散防止条約は、ことに核兵器を持っておる国、また核兵器を持ち得る潜在的能力を持っておる国、こういう国々がこれに加盟をするということに大きな意義がある。だから、いまのところは中共、フランスは入らぬという見通しでございますが、これはあきらめないで、最後まで努力をすべきものである、こういうふうに考えております。
  13. 鯨岡兵輔

    鯨岡委員 時間がありませんから、それではこの問題はこの程度にいたしまして、実はあしたから、沖繩等特別委員会においては、衆議院の視察団北方領土のほうに出かけていくわけであります。私もまたその一員としてお供をすることになっておるのですが、外務大臣は、遠くモスクワに行かれまして、コスイギン首相とこの問題についてお話をなさったときに、コスイギン首相は、思いつきだがということを前置きにはしたが、平和条約の前に何か中間的なものをつくってこれを検討してみたらどうだろうという話があった。この中間的なものというのは何か。総理大臣のおとといの記者会見では、これはちょっとよくわからないので、外務省に命じて詰めさせているのですという話がありました。しかし、それにもかかわらず、この中間的なものに非常に大きな期待日本国民は持っている。沖繩の問題もずいぶん煮詰まってきたが、同時に、北方領土のほうも煮詰まってきた、明るい見通しがついたというので、いままでてんで問題にならなかったソ連態度から見て、非常に期待をしておるわけであります。その期待を裏づけにしてわれわれもあした出かけていくわけです。ところが、二日のモスクワ放送によりますと、日本は何も根拠のない領土を要求をしているというような、われわれの期待に大きく水をさすような放送があったわけであります。これは別にコスイギン首相発言を否定するものではないという見解を外務省のほうでは発表なさっておるようでありますが、このことについて外務大臣はいまの時点でどんなふうにお考えになっていますか。もしこれを言うことは国益によくないということであれば別ですが、そうでないようでしたらお話を承りたいと思います。
  14. 三木武夫

    三木国務大臣 いま御指摘の中間的なものというのは、コスイギン首相と私との会談のときにコスイギン首相から出されたものでございます。それはわれわれ日ソ間の関係を長続きのする友好関係を確立したいと願っている。しかし、領土問題が片づかなくて、平和条約締結はできないでおるわけです。そこで、共同宣言によって国交が開かれて以来十一年、にっちもさっちもいかない状態である。これを何か打開する方法はないであろうかという私の質問に答えて、コスイギン首相は、どういうふうに平和条約にアプローチしたらいいか自分にもよくわからぬが、平和条約に至らなくても、何か中間的な措置ができないものであろうか、外務当局をして検討させてみたらどうであろうかというような発言があったことは事実でございます。これに対して私は賛意を表して、外交機関を通じて検討することにしましょうということであった。コスイギン首相も、どういう形でアプローチをしたほうがいいか自分にもよくわからぬが、こう言うのですから、その場合に、中間的措置というものは何だと問い詰めても、自分もよくわからぬが研究してみようじゃないかということでありましたので、そのコスイギン首相との話はそれで終わったわけでございます。しかし、平和条約領土問題に関連をいたしますから、こういう問題については話し合おうというような態度はいままではソ連にはなかったのでございます。それを話し合ってみようじゃないかというわけでありますから、多少従来よりも柔軟性のある度態であったと私は受け取っておるわけです。しかし、これで領土問題に対するソ連考え方を変えたものだとも私は思っていないのです。しかし、とにかく、従来はこれで話し合おうというような考え方向こうは全然持っていなかったのに、話し合ってみようじゃないかということでありますから、これに対して大きな期待を持つことは適当ではない。しかし、それはもう何も意味のないものだといってこれを過小に評価する必要もないのではないか。この一つコスイギン発言というものを手がかりにして話し合ってみることが必要である。私もいま検討を加えておりますが、適当の機会には外交機関を通じてソ連話し合いをさせる考でございます。
  15. 鯨岡兵輔

    鯨岡委員 いまのお話ですと、もうその上質問することはおかしなように思うのですが、平和条約が結ばれれば歯舞色丹は返す、これはもうきまっていることです。平和条約を結ばないでも中間的なもので検討したらどうだろうということは、歯舞色丹をさすのであって、国後択捉はさしてはいないのではないかというような疑問を当初から持って今日に至っているのですが、こういうふうに考えることは無意味、有害なことでしょうか、ちょっと御意見をお聞かせいただきたい。
  16. 三木武夫

    三木国務大臣 コスイギン提案は中間的なものというのですから、共同宣言平和条約の中間的なものという意味だと受け取っておりますが、いろいろな場合、中間的なものということについてはいろいろな角度から検討してみたい。個々の領土についていま申し上げるだけの検討はまだ済んでおらないのであります。
  17. 鯨岡兵輔

    鯨岡委員 重ねてその点を申し上げますが、平和条約を結べば歯舞色丹は返す、これはもうはっきりしていることであります。ところが、平和条約に至るまで、そこまで煮詰まっていないから、中間的なものをつくって検討するというのは、それは歯舞色丹をさしているのであって、もっと具体的に言えば、平和条約を結ばないでも何かこしらえて歯舞色丹をお返しするというようなことを言ったのではなしに、歯舞色丹とか、国後択捉というようなことを全然考えに入れないで、そういうふうな単なる思いつきだがというのでコスイギンきんは言われたのだ、こんなふうに解釈してよろしゅうございますか。
  18. 三木武夫

    三木国務大臣 私は、コスイギン提案というものをこの段階においていろいろ揣摩憶測しないで、そうして、こちらのほうとしては中間的なもの——どういうことが中間的なものとして適当かという案をこちらのほうとしても考えてみたい。だから、そのときに言ったのはこういうことだろう。ああいうことだろうという揣摩憶測はいたしておりません。
  19. 鯨岡兵輔

    鯨岡委員 コスイギンが中間的なものと言ったのはどういうことだろうということをあまり神経質に考えることなしに、そういうことを言ったのだから、それを足がかりとして、こちらは積極的にひとつ考えていこう、そうして、こちらからむしろソ連のほうに働きかけて積極的にやっていこうという外務大臣の御意図のように承りました。それはいいことだ、そういうふうに思って明日出かけていくつもりであります。  次は、外務大臣でなくてけっこうです。むしろ外務大臣でないほうがいいのですが、ことしになって、八月二十七日までにソ連に拿捕された船は三十一隻、乗り組み員百六十五人、そのうち、日本に帰ってきた者は五十人、百十何人というものは抑留されたままで、戦後今日までにソ連につかまえられた船は九百十二隻、船は一つも返してくれない、話がついても船は返してくれない、乗り組み員は六千八百七十人、百四十一人はいまだ抑留されたまま、こういうことが伝えられているわけであります。日韓条約締結のときに非常に問題になったのはこの点で、日本の船をつかまえて船員を連れていってしまう、そんな国と条約なんか結ぶ必要はないと言って、日韓のときにはずいぶんこの点が問題になったわけでありますが、あのほうに目を奪われておる間に、北方ではこんなにやっておるわけです。今日日本ソ連とはあらゆる面で非常にうまくいっているのですから、こんなことをあげつらってあまりぎゃあぎゃあ騒ぐことはないのですけれども、しかしながら、日本漁船の乗り組み員、われわれの同胞がつかまって、船はとられてしまうし、それから人間は抑留されるということは見のがすことのできないことです。やはり厳重に抗議をするということが独立国として当然のことであり、それは強く抗議すればするほど、やはりこれは尊敬されるゆえんだ、泣き寝入りしていては決して尊敬されない、日本ソ連との友好のためにも必要なことだ、こう思いますので承るのですが、これは捕獲されたときには、向こうから、こういう理由で何という船をつかまえました、抑留者は何という人です、これは私のほうでつかまえました、裁判の結果についてはまたいずれ御報告いたします、こういうようなことが今日の日本ソ連との間柄でいえば当然あっていいものだと私は思うのです。そういうことが外務省にあるのかどうか。あそこは一体領事か何かが行っているのかなというふうに考えるのですが、これは不勉強でわかりませんが、これをひとつ教えていただきたい。帰れないでいる者は一体向こうで何をしているのか、百四十一人は牢屋に入っているのか、あるいは何か労働でもさせられているのか、いつごろ帰るという目標があっているのか。船は一つも返してくれないと思うのですが、これはこういう場合には、返さなくても一ほかの韓国でさえも、全部が全部ではありませんが、船は返してくれる。これを全然返さないということはどういうことか。また、返してもらえない船に対しては、これは外務省直接ではないでしょうが、日本政府のほうとしては気の毒だったというので、その船をとられたことに対して国家は弁償か何かしているか。もちろん、連中が入っていけないところに入ってとられた場合にはある程度しかたがないとしても、これらの問題についてひとつお答えを願いたい。
  20. 北原秀雄

    北原説明員 本問題は、日ソ共同宣言のできます当時から、安全操業の問題として絶えず外務当局でも苦心してまいったところでございます。本年に入りましてから百三十何名の件につきましては、先般、外務大臣より先方クズネツォフ外相代理に対して、リストを提出いたしまして即時釈放の要請をしていただきました。  現状においてどういう経緯で、どういうからくりでこれが行なわれるかという御質問でございますが、領事条約発効——領事条約は、二、三日前に発効いたしました。その前におきましても、こちらがつかまったらしいという情報が現地から入りますと、直ちにソ連政府に対して、こういうものがつかまったらしいが、すぐ知らしてくれという外交上の申し入れを行ないます。先方は大体において数日を経てすぐ言ってまいります。そこで、無事つかまっているということを確認いたしますと同時に、即時これの釈放外交上の申し入れを必ず行なっております。現在までのところでは、漁労長機関長、この二名を原則として領海侵犯理由裁判に付す、ほかの者は大体一カ月ないし二カ月の間にこちらに返してきております。漁船につきましては、これも年に数回、これまで何百隻というものは返してくれという申し入れを常時ほとんど年中行事として繰り返しやっております。先方はそのつど、こちらのつかまりましたものに対して、その間収容所に入れてこれに食事を与えておるわけでございますが、食事の代金を請求してきております。わが国としては、要するに、理由なくしてつかまえたものを衛生上注意をいたしまして、十分にこれの生存を確保するための世話は捕獲した国が当然負うべき義務であるということで応酬しております。この間の議論は繰返してございまして、いま鯨岡委員が言われました、船舶が全然返されてきていないというのは、少しあれでございまして、少数のものは返った実績もございます。しかし、ほとんどのものは返っていない、こういうのが状況でございます。領事条約が発効しましてからは、先方はつかまえた場合に直ちにこちらに通報してくる義務が発効しております。最近百三十何名、これは色丹島に収容されておりますので、それを在ナホトカの山田総領事を介して訪問させるということを先方といま話し中でございます。  大体以上のような経緯でございます。
  21. 鯨岡兵輔

    鯨岡委員 ものごとはだんだんなれてくると普通になってきて、だれも騒がなくなってくるのですが、しかし、日本の船がつかまるということはたいへんなことだと思うのです。それをことしになってからだけでも三十一隻、百六十五人、これがつかまっている。これは基本の問題ですが、こちらが考えても、なるほどあそこに入っていったのではつかまるのがあたりまえだというふうにお考えになっているわけですか。一々こちらでも検討していると思うのですが、これをつかまえるのは不都合だなというふうにお考えになるケースが多いのか、あるいは魚をとるためとは言いながら、そこまで入っていったのではこっちがまずいなというようにお考えになるケースが多いのか、ばく然とした答えでいいのですが、どちらが多いか、あした出かけるので……。
  22. 北原秀雄

    北原説明員 漁船の行政指導の件は水産庁においてやっておりますので、外務省の直接の管轄事項ではございませんが、長い間のいわゆる安全操業の問題をめぐりまして、大体どの程度までは、つまり、原則といたしましては十二海里でございます。先方は十二海里以内に入ったものは直ちにつかまえるという原則論を繰り返すわけです。こちらは三海里までは漁獲ができる権利があるということで主張しておるわけでございますが長い間の実績からいたしまして、捕獲される大体線というものが日本側にも大体わかってきております。  そこで、先般モスクワにおきましても、外務大臣より、安全操業の問題を、魚をとるという観点からではなしに、いまだにこういう拿捕が行なわれるということは、非常に日ソ関係のために遺憾なことであるから、拿捕を避けるという見地から、この問題を新たに取り上げようではないかという申し入れをされました。それについて今後両政府間で話し合おうということになっております。と申しますのは、ソ連側において、十二海里にあらずして、実際に沿岸警察に対して出しておりますはっきりした拿捕のケースに対する訓令と申しますか、取り締まり規則というものをもし両国間で明らかに明確し得れば、日本の水産当局としても、それだけはっきりした行政指導ができることになるわけでございますが、何とかそういう角度からこれを再検討してみてはどうか。現実には、たとえば国後島の西岸というようなものについては、決して十二海里ではなしに、もっと近くまで現実にみんな入っていっておるわけであります。そこで、それがたとえばXという海里のところでは大体つかまえない。Xよりももう一海里入っている場合には向こうがつかまえるという事態が起こるわけでございます。そこで、遺憾ながらそういうことで、当方の漁船は絶対にX以上に入っていなかったということを主張するわけでございますが、先方は、いやそれより一海里中にいたのだということでつかまえるというのが現状でございます。
  23. 鯨岡兵輔

    鯨岡委員 ちょっとよくわかりませんが、つかまえに行っている船に対して、ソ連当局は、どこまで入ってくればいいけれども、どこから以内だったら遠慮なくつかまえてよろしいという命令を出していますね。その命令はどういう内容のものであるかということは、日本の政府としてわかっていないですか。わかっているのですか。
  24. 北原秀雄

    北原説明員 これは大体長年の経験で推測しておりますが、正式にはソ連政府から取り締まりの内容は通報されておりません。
  25. 鯨岡兵輔

    鯨岡委員 これほど仲がよくなってきているのに、どうしてそれがわからないでしょうか。こんなにつかまえられているのにどうしてわからないのですか。大体の推測ではなしに、向こうでどういう命令を出しておるということを、こちらが承知するしないにかかわらず、それは大体の推測ということでなしに、こんなに仲よくなってきているのに、どうしてわからないのでしょう。この点はわれわれにはわからない。むしろそのほうがわからないです。どうでしょう。
  26. 北原秀雄

    北原説明員 これは正式に議論いたしますと、先方はどうしても十二海里ということを言わざるを得ないという原則論に落ち込んでしまいます。そこで、現実のその行政指導に関する先方の指令と申しますか、取り締まり規則を知らせてもらうという交渉をやろうというのが現在の考え方であります。
  27. 鯨岡兵輔

    鯨岡委員 時間が来ましたので、あと一点だけ、これはもうあとから穗積委員もこの間沖繩に行かれたので、沖繩問題についてのお話があると思いますので、私は簡単に外務大臣のお考えをお聞かせをいただきたいと思うのですが、沖繩へこの間行ってまいりました。初めて正式に衆議院の委員会として行ったわけです。各界の人にもお目にかかりましたが、きわめて短い日程で、向こうとしてはむしろ不満であったろうと深く反省をするわけです。まあしかし、しかたがない、大ぜいの人と会わなければなりませんので、スケジュール上しかたがなかったとも思うのですが、いろいろの方に会ってみて、これは、まあ委員会としての正式の考え新聞記者の方々にも申し上げましたが、私個人として考えましたことは、どんな人に会ってみても、日本に帰りたい、日本人でありながら、戦後二十二年、九十万以上の者が異民族に支配されているということは何としても残念、だからともかく帰りたい、施政権の全面返還ということを考えている、願っている、これはすべての人が同じであります。だがしかし、これのみに力を入れて、これだけができればいいんだというふうに考えて、そういうものの言い方をする人は、感情家かもしくはある種の運動家であって、そうでない、実際にいろんな面で責任を持っておるような人は、そういう考えを持っていながらも、これから先、全面返還になった場合、将来、当面、沖繩の経済はどうなるか、どうあるべきか、このことについて非常な心配をしているようであります。  そこで、とりあえず、外務大臣でなくてもいいのですが、沖繩に何か石油の大きな施設がいまできるというのですが、これは何の意図で、どういうつもりでやっているのか。沖繩の人は、将来基地はいつかはなくなるだろうが、基地がなくなっても、アメリカ資本によってあそこをがっちり押えてしまおうというような意図があってやっているのではなかろうか、何だかよくわからぬけれども、とにかくたいへんなことがいま始まるらしいというふうに思っている。何か九十九年というのですが、いろんなことをお聞きするようですけれども、この沖繩の地主、そういう者から借りちゃって、これから全面返還になった場合も、それが生きて九十九年間そこのところは借りられるものかどうか。そこらは一体法律的にどういうことなんだろうという心配もあるのですが、こういう経済の面について、これは外務大臣でなくてもけっこうですが、お教えをいただきたい。  それから、沖繩の政権をとっている政党の方々に会って話をしますと、そういうふうにずばりは言いませんけれども、その人たちの考えの根底には、自由に使用できる基地、すなわち、核も持っている従来どおりの基地、これが保障されるのならば施政権の返還をしてもよろしいというのなら、これはもう施政権を返還してもらうべきじゃないか、そうすると、日本内地のほうまで核基地になるというようないろんな心配があるだろうけれども、何も沖繩だけを犠牲にしておくことはないじゃないか、いつまでも、いつまでも、どうして沖繩に住んでいる者だけが犠牲にならなければならないか、自由に使用できる基地が保障されるならば施政権を返還してよろしいというのであるなら、それを受けてくれるのはあたりまえじゃないかということを考えているように思う。(「違うよ、そんなでたらめな報告をしては困る」と呼ぶ者あり)これは私の感じですが、そういうような考えは私はわかるような気がするのですが、外務大臣、そのことについてお答えをいただかなくてもいいです、これは私だけの考えですから。これらについて、外務大臣のいまお考えになっていることをお答えいただきたい。
  28. 三木武夫

    三木国務大臣 沖繩の施政権返還の問題は、日米間の非常に重要な懸案事項であります。私も、来たる十日に日米の閣僚会議に出席のため日本を出発いたします。その場合には、ラスク国務長官とも、この問題については十分に話し合いをしたいと思っております。ただしかし、この沖繩問題のごとき問題は、これは政治の最高会談にゆだねべき問題でございます。したがって、佐藤総理とジョンソン大統領、この会談で沖繩の問題というものは十分に話し合わるべき性質のものだと思っておりますので、私の訪米の機会に、できる限り総理大臣と大統領との話し合いを成果あらしめるように、そういう下準備というような会談になろうかと思っております。日本でいろんな意見も出ておりますので、そういうこともアメリカ側もよく知っておるわけで、沖繩問題というものは、これは非常に大きな日本の国内の問題になっていることは十分承知しておるわけでありますから、こういう社会的ないろんな変化、これを背景にして十分話し合いをしてみたいと考えております。  経済の問題については、東郷アメリカ局長からお答えをいたします。
  29. 東郷文彦

    ○東郷説明員 ただいまお話しの、アメリカの石油会社が二つ沖繩に進出するという話は、われわれ承知しておりますところでは、琉球政府の外資審議会のようなところで久しく懸案になっておって、最近、たしかことしになりましてから許可を出した、こういうことであると思います。それで、二つの石油会社の条件等ただいまちょっとつまびらかにいたしませんが、相当大きな製油施設をそこにつくるということでございます。しからば、これが返還後どういうことになりますかと申しますれば、それはコマーシャルベースのお話で、地主から九十九年でございますか、そういう条件で土地を借りて会社を経営する、おそらく返還になる場合にはそのコマーシャルベースの関係が続くことと存じます。われわれも、そういう沖繩に対する外資導入と申しますか、そういう点では、総理府あたりからもわれわれからも、通産省当局にもそういうことを随時話しておりますし、最近では日本から足立会頭以下経済ミッションも行っておられます。そういうことが、米国の資本進出のみならず、わが方からも進出して、沖繩の経済が日本の経済と一体になって発展するということになるように努力したいと思っております。
  30. 鯨岡兵輔

    鯨岡委員 その問題、不勉強でなんですが、ちょっと教えてください。日本領土を私有地だからといって外国人に地主がかってに貸すことができるのですか。九十九年もあなたに貸しましょうということを地主がかってにやることができますか。もし日本の内地でもできるならしかたがないですが、日本の内地でできますか。もし日本の内地でできないとすれば、沖繩は、いまは施政権は向こうにあるとはいえ、日本領土ですから、それはやってはいけないのだと思いますが、日本の内地でできますか。たとえば私が大きな地所を東京に持っている、これを九十九年貸してあげましょう、そんなことできますか。
  31. 東郷文彦

    ○東郷説明員 日本の私有地をコマーシャル・ベースで貸すということは、本土でも同じようにできることであると存じます。
  32. 鯨岡兵輔

    鯨岡委員 それじゃ終わります。
  33. 福田篤泰

  34. 穗積七郎

    穗積委員 三木外務大臣、久しぶりですから、いろいろお尋ねしたいのですが、最初に議事進行について大臣の御協力をお願いしたいと思います。それは、きょうも残念ながら時間制限を受けております。お互いに問題は理解しているわけですから、お互いに結論だけお尋ねし、お答えをいただきたいと思っております。  最初に、沖繩の施政権問題について、これは戦後いままでの願望がようやく政治的日程にのぼってきたというので、いま鯨岡委員からもお話がありましたように、本土内は言うまでもありませんが、現地におきましてはそれ以上今度の対米交渉に非常な期待をかけております。あなた方の責任は重大でございましょう。まず、その自覚をしていただきたい。  そこで、佐藤・ジョンソン会談で政府間のあれはいたしましょうが、今度経済協議会へ臨まれるあなたの立場が、この問題に関連をいたしまして、内容的には実は非常に大事なんですね。相手はラスク並びにマクナマラ、ことごとくこの問題については事前討議をして、そしてアメリカの方針を十分用意してあなたの来訪を待っているわけです。そういう国民の期待アメリカ側の準備態勢、これらから見まして、当然あなたはこの問題についてはすでに統一の方針というものを持って臨まれるはずですが、それをこの際結論だけでけっこうですから、最初に明らかにしていただきたいのです。
  35. 三木武夫

    三木国務大臣 私が今回訪米する場合に、日本政府の統一した見解は持ってまいらないのでございます。
  36. 穗積七郎

    穗積委員 そこで、はなはだ僣越でありますが、時間がありませんから結論だけ申し上げますが、私どもは、沖繩訪問の前からいろいろな情報を総合して考えてみ、また沖繩訪問をいたしまして、いろいろな事実調査や、高等弁務官等々とも会談をしてみまして、今度のアメリカ側の対日交渉の大体の方針というものは、こういう点が基本方針になっているのではないか、それはおそらく間違いないというふうに私どもは政治家の見通しとして判断をしておるわけです。その中には非常に危険なものがありますから、この際結論だけ申し上げて、それに対して逐次あなたのお考えを聞いておきたいと思います。  施政権返還については、いま申しましたとおりに、日本の国内並びに沖繩県民が非常な期待をかけておること、したがって、それに対して施政権返還というえさを与えて、その引きかえに新たな軍事的協力を差しかえにとりたい、こういうのがまず間違いのないアメリカ態度であるというふうに私は思うわけです。  その内容を現時点におきまして整理してみますと、まず第一は、日本本土に帰属しても沖繩地区に限って核基地を認めろ、それから第二は、事前協議を免除する、自由にしよう、特に事前協議の作戦行動についての免除であります。それから第三の大きな眼目は、アジアの防衛を共同でやるのだという精神に立って、これは安保条約のときわれわれが指摘したとおりに、共同軍事同盟のアイデアというものが条約の基礎になっておる、アメリカの対日政策、極東政策の基礎になっておるというふうに判断いたしまして、この沖繩施政権返還を転機として、えさとして、そして日本の自衛力の増強とアジアの作戦に対する協力の見通しをつけていきたい、これは私は、前の二つは基地に対する条件であり、もう一つは、日本外交路線に関して、ベトナム戦争、米中関係考えてみまして、作戦上重要な意味を持っておると思う。私どもは、そういうことが今度の交渉の経過の中で出てくるのではないか——のではないかではなくて、もうすでにここまできますと、国際的観点を分析してみますと、アメリカの方針というものは、この三つに大きく整理できるのは間違いないところではないか。おそらくは、今度佐藤さんが行って具体的日程にのせてよろしいということを、あなたが副大統領と話をしておられるわけだから、議題にのぼるでしょう。のぼって、何もなくて一ぺんで終わったり一ぺんで帰ったりするのではなくて、その問題については、アジアの安全保障、極東の情勢等共通の大きな問題があるから、それぞれ適当な方法、たとえば外務省の一部にお考えがあるような特別の日米閣僚会議というものをつくって、そしてその中で逐次共同研究をしていこう、その中でこれが出てくる。このことを私どもは非常におそれている。  したがって、もう一つつけ加えますが、羽田に帰りまして、私は、これは委員会としてではなく、私の個人的判断としてまず間違いないと思われるのは、佐藤さんの訪米に対しておみやげとして、つまり、施政権返還の強い国民世論に対する緩和剤として主席公選を認める、来年または一年延ばして再来年主席公選を認めるということが出てくるのではないか、以上、判断いたしております。  そこで、逐次お尋ねいたします。今度いらっしゃったときに、あるいは佐藤総理——その原案は外務省でつくられるのでしょうが、そのときに、主席公選についてこちらから要望を述べられますかどうか。このことを第一に具体的にお尋ねいたします。
  37. 三木武夫

    三木国務大臣 御承知のように、日米間で正式の政治の議題として沖繩問題というものが——いままでも話が出ましたけれども、今回は正式の議題として話し合うということは、いままでよりもこの問題に対して非常に取り組み方が違ってきておることは御承知のとおりでございます。——初めてではないにしても、こういうふうに沖繩問題というものが初めから議題として論ぜられるわけでありますから、いろいろこちらのほうの政府の案をきめてそして向こうと話し合うというよりかは、率直に日米両国において私は会議を通じて話し合いをしてみたい。いろいろ穂積さん御心配のようでありますけれども、私はあなたの御心配には取り越し苦労が多いと思う。アメリカの極東戦略、それに対して日本が軍事同盟的な、アジアの問題に対してアジアに対する共同防衛の軍事的な同盟を強化するとかいろいろお話がありましたけれども、御承知のように、やはりこれは日本の憲法の厳重な制約を持っておりますから、日本の防衛ということに焦点を合わさないで、日本の防衛というものを別にして、アメリカの極東戦略のために日米の軍事提携を強化するというようなことは容易に考えられないわけで、やはり日本の憲法のワク内における日米の協力ということでありますから、厳重な憲法の条章を離れていろいろと取り越し苦労をされる必要は私はないと思う。  それからもう一つは、何かえさにして、こういうようなお話がありましたが、日米関係というものは、基本的に考えが違うかもしれませんが、われわれは、この沖繩問題解決も日米友好の基盤を増進する形においてこれを解決したい。したがって、何かえさでつられているとか、そういうふうには沖繩問題を考えていないのであります。やはりそういう立場から、この問題の解決というものをいま申しましたような見地で解決をしたいのですから、えさでどうのこうのという考え方は持っておりません。そういう点ではあまり御心配にならなくても、さようなことは日米両国とも考えるようなことはないと考えております。  主席公選、この問題は、私のほうである一つの案を持っていくわけではございません。こういう問題全般を話し合って、いろいろな問題の決定は政治の最高会談において決定をすべきものである。ジョンソン大統領と佐藤総理との会談において、もし決定する問題があるならばその場合において決定することが適当である。あくまでも私が参っていろいろ話をするのは、両方の率直な意見の交換を通じて、佐藤訪米の場合に何らかの結論が出得るならば結論を出したい、そのための準備的な会談だと私は予定をいたしております。
  38. 穗積七郎

    穗積委員 学のある三木さんが、取り越し苦労だなんという、国民をごまかすようなことを言ってはいけません。われわれは客観的に感情にとらわれず、かつてはイギリス、今日はアメリカのアングロサクソン民族の帝国主義の歴史を学んでおります。したがって、友好といい、あるいは平和といって、その場合におけるアングロサクソン諸君の外交政策というものは、ころんでもただ起きないというのがいままでの実績でありましょう。終戦後もそのとおり、一々証明ができる。  そこで、そういう議論をしておるいとまはありませんから、前へ進みますが、それじゃあなたは、日本友好の精神に立って、みずから沖繩には安保条約にない核基地を置くほうが日本のために適当であると思われるのか。それから自由使用を認めるのか。これはアメリカの要求によるのではなくて、日本の積極的な要求として、それを置くのが必要だからそれを置こうとしておるのですか、どうですか。友好の精神に立って日本政府は積極的にそれを推し進めようとしておるのですか。そういうことは話がおかしいですよ。しかも取り越し苦労と言いますが、この二つは、一昨日の佐藤さんの外国訪問に先んじてのみずから求めた記者会見の中で、これが一番ごまかされている。だから、各新聞あげて、この不明確な態度に対して疑惑を持ち、不審を抱きつつあるわけであります。友好で相手まかせでいいというような、そんな外交交渉がありますか。あなたともあろう者が、そういうことでことばでごまかして通ろう、そして国民の心配をごまかそうとするようなことは、これはひきょうですよ。お尋ねいたします。核とそれから自由使用について。
  39. 三木武夫

    三木国務大臣 こういうものは国民をごまかせるものではありませんよ。この問題は、国民をごまかして沖繩問題の解決ができるでしょうか。これだけの世論、野党の諸君もいろいろな意見を持っておる。これはごまかして通せるような問題ではございません。したがって、政府が方針をきめた場合には、これはもうごまかせるというような問題でなくして、これはやはりみな国民の批判の前にきらされることは明らかでございます。この友好関係というのは、アメリカの言うことを何も全部聞くというのではないのです。日本の言うことだって聞かなければ友好は成り立たないので、アメリカの言うことをいつも何でも聞いて、それが友好関係だって、そんな友好関係はありませんよ。アメリカはまた日本考え方を尊重しなければいかぬ。最初に申し上げたように、核基地であるとか、あるいはまた自由使用とか、そういうふうなことを政府の方針をきめて私はアメリカを訪問するのではない。(穗積委員「それじゃあなたまかせか」と呼ぶ)あなたまかせということじゃなくて、言いなりといっても、こちらは最初でしょう。この問題を議題として。(穗積委員「最初といって、日本領土ですよ」と呼ぶ)したがって、これは率直に話し合って、そうして佐藤総理が訪米をされたときに何らかの方向が打ち出せるような、私とラスク長官の会談はそういうことに役立てたい、こう考えておるわけであります。こちらから方針をきめて、それでアメリカ沖繩の施政権返還の交渉に行くような会議だとは、私はラスク長官との会談を考えてはいないのでございます。
  40. 穗積七郎

    穗積委員 ラスク長官、マクナマラ長官との話し合いに対する態度は、そのことは政府の責任でやることだから、私はそんなことは一々言いません。いま私が聞きたいのは、沖繩返還にあたって、これは人のものじゃない、自分のものですよ。一番責任を持って考えなければならぬのは日本政府でしょう。その日本政府が、いよいよ政治的な日程にのぼってきた沖繩問題について、核基地をつけていいと思っているのか、悪いと思っているのか、聞きたい。その話をどういうふうに腹の中に置いて、ラスク長官、マクナマラ長官とどう話をするかは別として、国民との対話の中では明らかにしてもらいたい。そうでなければ信頼できません。だから、外務省は一体核つき返還というものに賛成するのですか、しないのですか。もう問題は具体的ですから、イエス、ノーをもって答えてもらいたい。
  41. 三木武夫

    三木国務大臣 この問題は、下田君の発言があったときに、そういう考え方は政府は持っておりませんとお答えをしておる。これは下田君の個人的見解であって、政府の見解ではないということを申し上げた考え方は、今日も変わっておりません。
  42. 穗積七郎

    穗積委員 それは談話の形式ではなくて、内容について、下田発言、すなわち核つき返還については、その部分については政府は考えていないということでいいですね。
  43. 三木武夫

    三木国務大臣 政府の方針ではない。
  44. 穗積七郎

    穗積委員 それではその次にお尋ねいたしましょう。  実は、自由使用と核つきというものは、条約法理上解釈すると、ことばは違うけれども、同じことなんですよ。ただ、そのときに核つき案が先に出て、それとは違う自由使用と言ってきたから、おそらく核の持ち込みに対する事前協議はもうこれは問題ない、譲れない。あと残るのは自由使用、すなわち、事前協議免除は、沖繩基地を使っての米軍の作戦行動に対して、一々その事前協議の義務を負わせない、そういう意味に理解されておるわけです。あるいは自由使用については、事前協議でケース・パイ・ケースにはイエス、ノーを与えないけれども、包括的に事前に与えておく、それで事前協議権は放棄しなかったという、ちょっとごまかし的な解釈もできないことはない。そういうおそれが現在のベトナム戦争と沖繩基地との関係をわれわれ向こうの兵隊の説明でちゃんと見てきました。聞いてきましたが、そうなると、そういうことも考えられるわけですね。それじゃ、核基地については日本政府はそれを否定する。一昨日佐藤総理は、それに対しては、一番中心のむずかしい問題で、国民の意向を聞いた上で云々と言って逃げたから、国民はあげて不安を持ち出したわけです。いまあなたはそれは認めない、核つきは政府の方針ではないということが明瞭になりましたので、次に残るのは、いま申しました核つきはもう事前協議の対象に初めからならない、もう持ち込ませないという原則だから、残る問題は、自由使用のことばに残るのは、作戦行動の事前協議権を確保するか、免除するか、この問題については外務省どうお考えですか。向こうと話をするのは別です。国民との対話の中で明らかにしてもらいたい。
  45. 三木武夫

    三木国務大臣 御承知のように、沖繩の施政権返還の問題については、いま沖繩問題の懇談会もございますし、各方面でこれは検討を加えておるわけでありますので、政府がここに何らかの方針をきめて、そうしてこういうことだということをきめる段階ではないのでございますので、この機会にいろいろな案を出して、これをどう考えるかということにお答えをいたす適当な時期だとは私は考えておらないのでございます。
  46. 穗積七郎

    穗積委員 そんな逃げ口上を言っちゃいけませんよ。こんな懇談会なんというものは政府の全くの諮問機関にすぎない。意思の決定の責任はすべて政府にある。すでに朝日新聞などがスクープした記事として出ておりましたが、核つきはあきらめて、国民を納得きせるために、基地の自由使用、すなわち、核を取り除いた事前協議を免除するということになれば、作戦行動に対する協議を免除する、そういうことに理解される。そこらが外務省の案ではないかということが推測記事として大きく報道されるに至った。一昨日の総理の会談の後においも、各紙ともこれはそうでたらめな見当違いでない政府の腹ではないかという印象で、この問題は報道しているわけです。これらのいわゆる自由使用について外務省はどういうお考えですか、具体的に聞かしてください。いいですか。懇談会との関係は、政府が意見を持ってはいかぬということじゃないですよ。懇談会の意見に政府は従わなければならぬということじゃないですよ。懇談会があっても政府は意見を常に持たなければならない。そうでなければ責任ある政治はできない。しかし、懇談会から違った意見が出たときには、政府の考え方の参考として、あるいは修正するかもしれない、あるいは修正しないかもしれない、そんなことはあり得ることです。意見を持たずしてどうするのですか。それなら訪米をお延ばしになったらどうですか。行かれるにしても経済問題だけに限って、この問題に対してはノーコメント、ノータッチで帰られるのが適当でしょう。大体予備会談といっても、予備的な話し合いといっても、そのときのニューアンスで相手は態度をきめるわけです。お互いにアプローチしつつ相手の腹をサウンドするわけですから。あなた大事ですよ。そんな子供だましを言っちゃ困る。だから、自由使用についての外務省意見はどうであるか。これはイエス、ノーでいいから、はっきりしてもらいたいのです。
  47. 三木武夫

    三木国務大臣 この問題は重大な問題ですから、政府においても、総理大臣をはじめこの問題に日夜いろいろ頭を痛めておることは御承知のとおりでございますので、そういう政府全体の方針もまだきまらないときに、一々穂積君の御質問に答えて、これはどうだ、あれはどうだというお答えをする適当な時期だとは思わない。いろいろ次々に案をお出しになって、私の見解を求められても、そういうお答え以外にはないと御承知を願いたいのでございます。
  48. 穗積七郎

    穗積委員 あなたは外務大臣ですよ。しかも副総理をもって自他ともに任じておる。それでこの外交交渉であなたは政治的評価を高め、総理になろうという考えを持っているでしょう。三木さん、そういう人が、しかも立場上からいっても、外務大臣はこの問題に対して日本政府のリーディング・ヒッターですよ。責任者じゃありませんか。国民のあなたに期待しておるところはそういうことなんだ。あなたの責任はそこにあるのです。二十年間これだけ国民の中で論議され、国際的にも論議をされて、そうして特に昨年来はアメリカの有力な与党、国会の中においてもこの問題が出ておるときに、自分の子供の捨て子である沖繩に対してどういう意見を持っておるかを言うことは当然なことでしょう。だから、自由使用についての政府の考えをもう一ぺん明らかにする責任がある、義務がある。特にここは国会です。国会軽視をしないように——そういうことでうやむやにほおかぶりで立たれちゃ困りますよ。三木さん、しっかりして大胆率直に……。
  49. 三木武夫

    三木国務大臣 私も国会は尊重をしておる一人であります。国会尊重をしておる一人でありますが、いろいろ適当な時期があるわけですからね。適当だと思わないというときに、それをどうしても国会尊重だから言えとおっしゃることは、国民が聞いても、私がここで言うのに適当な時期であるにかかわらず言ってないとは国民も思わないのではないでしょうか。やはりいまはなかなか重大問題ですから、政府の方針もいろいろ相談をしなければなりませんし、したがって、外務大臣個人の見解を言えと申されましても、それはやはり言うのには適当ではない。適当な時期が来れば、これは当然に国民にも政府の考え方を述べて、国民の御批判も受けなければなりませんが、適当な時期でないのに、それを国会尊重だから言えということも、少しお考え願わなければならぬのではないかと思うのでございます。
  50. 穗積七郎

    穗積委員 そうすると、大体これは考えておるということだ。自由使用は外務省は考慮の中に置いておる案であるということですね。だから、これはアウト・オブ・クェスチョンなら言うて差しつかえないことでしょう。ところが、これは構想の中にあるから、言うのは不適当だ。それをひっくり返せば、これは三木さんの腹の中にある一案である、こう解釈せざるを得ない。そうなると、私どもは、この問題は非常に重要ですから、さっき鯨岡先生の個人的な観測、報告がありましたが、私は、一部の買弁的な宦官、沖繩政府、琉球政府のそういう人々以外には、もし自由使用で事前協議を免除して、いつ戦争に日本の意思にかかわらず巻き込まれるかわからぬような、そんな自由使用の条件で返るなんということはもってのほかだというのが圧倒的ですよ。日本の国内においては圧倒的です。だから、各新聞社あげて、この問題については絶対に譲歩してはいかぬ、だから、党派を越え、階級を越え、思想を越えて、民族的な立場で核つき自由使用は排除しなければならぬというのが世論ですよ。最大公約数の世論だ。三木さん、このことをぜひ思い返していただきたい。お立ちになる前に、私はあなたに強制するわけにいかぬけれども、あなたがそういうことで沖繩返還の条件をもし事前懇談の中で見出すことになりますと、あなたの政治家としての責任は重いですよ。私は、あなたに対していささかの期待を持ち、あなたの勇気に敬意を表したいと思って、これだけ激励して言うのに、なぜ答えられないか。はっきり答えなさい。あなたはかってに行ってはいかぬよ、日本の世論を背景にして行かなければ、佐藤総理も言っておるじゃないか。これは国民の世論にと言っておる。多数決ならきまっておる。何でもでき得るということだ。民主主義の政治を誤解をしてはいけません。三木さん、どうですか。答えられないですか。
  51. 三木武夫

    三木国務大臣 答えましょう。この問題は、日米両国が非常に賢明な解決を出す必要がありますよ。きわめて慎重に、日米両国のためにも賢明な解決を見出さなければならぬので、われわれとしても非常に真剣にこの問題には取り組んでおる、これは申し上げておきたいのでございます。  ただしかし、いまは、自由使用のことにも関連をして、そういう考え方があるから言わないのだろう、それはそういうことでなくして、考えがあるとかないとかそういうことではなくして、一切の具体的な沖繩の施政権返還の方式について、この段階で私がいろいろあなたの質問にお答えをすることは適当でないということを申し上げておるので、ああいうことを腹に思っておるからそういう答えをするのだろうというような、そういういろいろ想像的なことはなさらないで、いま一切のことが適当でないのだ、ただ、核兵器のことについては、核基地つきということには、下田君の見解を述べたときに、政府の見解ではございませんという答えをしておるので、それを繰り返して申し上げたわけでございます。一切の問題について、いまここでいろいろ具体的にああだこうだと申し上げることは適当とは私は思わない、そういうことでございます。
  52. 穗積七郎

    穗積委員 それじゃ後々のために、ちょっと法理論になりますけれども、用語上の食い違いがあるといけないから申し上げます。  核基地には反対、認められない、そういって、次に別の案として、自由使用という場合には、基地を初めからつけないけれども、核兵器を持ち込むことの事前協議をその中に含まれておるかどうか。核基地をつけて返さないけれども、あとになって核の持ち込みが必要なときには事前協議の対象になりますね、向こうが申し出たときには。なるけれども、核に反対だという本国政府の原則はあらゆる場合の原則であって、例外はない。これは事前協議の対象の外に出て、初めからアウト・オブ・クェスチョンであるという解釈でよろしゅうございますね。したがって、自由使用という場合には、作戦行動の事前協議だけ免除する場合があり得る。自由使用つきの基地という意味を、これはことばの食い違いでは内容が違ってきて意味がありませんから、後々の審議のためにこの際はっきり伺っておきたい。自由使用ということばの内容は、カッコの中にあるものは何ですか。私の解釈はそういう解釈です。したがって、私の解釈でよければそのとおりと言っていただきたい。追加があるなら追加を言っていただきたい。
  53. 三木武夫

    三木国務大臣 自由使用ということが外務省の方針として——いろいろそういう前提のもとにお尋ねでありますから……。
  54. 穗積七郎

    穗積委員 そうじゃない、用語上を聞いている。
  55. 三木武夫

    三木国務大臣 語用上は、自由使用と世間にいわれておるのは、事前協議の対象からはずすという意味で、自由使用と世間一般に言っておるものだと解釈いたしております。
  56. 穗積七郎

    穗積委員 いや、その場合、事前協議の対象になっているのは、安保条約で、一つは、核その他の兵器を持ち込むとき、あるいは装備の重大な変更をする大部隊が入ってくるとき、それからもう一つは、戦闘作戦に基地を使うとき、その二つになっている。そのとき、核基地は認めないということであれば、これは初めから論議の対象にならないで、拒否にきまっておるわけですね。だから、核つきを否定して自由使用といえば、作戦行動に対する問題だけが免除される意味である、こう解釈するのが論理上当然だと思いますが、核の事前協議も免除するという意味ですか。
  57. 三木武夫

    三木国務大臣 私が自由使用ということを提案しておるわけではないのですから……。
  58. 穗積七郎

    穗積委員 いや、外務省がどう解釈しておるか、いま行なわれているものに対して。
  59. 三木武夫

    三木国務大臣 外務省の案でもないわけですから、自由使用ということを言われる人の概念がどういうものか、私は聞いたことがないが、おそらく自由使用という概念には、安保条約でいう事前協議の対象からはずすということを自由使用と言っておるものだと解釈をいたしておるわけでございます。
  60. 穗積七郎

    穗積委員 条約局長、そこだけとればそうなんだ。安保条約による事前協議のアメリカ側の義務を免除するのを自由使用という。その中は、いま言ったように、装備と作戦と二つあるわけです。ところが、前の装備、特に核についてはアウト・オブ・クェスチョンで、出てきてもそれは初めから拒否にきまっておる。したがって、あとの自由使用というものを別にいうならば、おもに作戦行動の事前協議についてのみ免除する、そう解釈するのが、解釈上、条約解釈ですから、条約局長どう思いますか、私の論理は正しいと思うが、いかがですか。
  61. 藤崎萬里

    ○藤崎説明員 自由使用ということばは、条約上の用語でもございませんので、それを使う人が適宜自分で好きなように意味をつけて言っているわけだろうと思います。自由使用ということばを最初に言ったのはだれか知りませんが、やはり先ほど大臣が言われたように、事前協議条項の適用からはずすという意味で使われたのじゃないかと思います。それをまたもっと制限的な意味にこれからも使いたいと言われるのだったら、そういう使い方ももちろん可能だろうと存じます。
  62. 穗積七郎

    穗積委員 そうすると、あなたはさっき核については否定したわけでしょう。だから、ここでいう自由使用は、おもに作戦行動の事前協議免除ですね。そうあるべきですね。私とあなたの問答ですから、あなたに聞きましょう。誤解があっては議論してもつまらぬから……。
  63. 三木武夫

    三木国務大臣 自由使用というのは、条約局長が言っておるように、きわめて政治的な用語で、条約上の用語ではないわけです。言っておる人によって、自由使用という中に、いろいろなものを入れたり、あるいは制限的に考えたり、いろいろな解釈があり得ると思いますが、とにかく基本にある考え方は、事前協議の対象からはずすことだと思いますが、言う人によって、いろいろ自由使用という中にどこまでを自由にするのかということが違う場合もありますが、いま申したように、これはやはり法律的な用語でもございませんから、きわめて政治的な用語だから、人によって解釈が違うと思います。
  64. 穗積七郎

    穗積委員 さっきからあなたとの下田発言に対するやりとりがこれではむだになってしまう。だから、もう少しはっきり聞きましょう。自由使用ということばの概念を聞く前に、もっと具体的に聞きましょう。  それじゃ、あなたの話によれば、核持ち込みの事前協議を免除する場合もあり得る、それは絶対にないとは言えないということですか。
  65. 三木武夫

    三木国務大臣 それはお答えしておるわけです。下田氏の核基地につき返還というものは、政府の方針ではございません、こういうことを言っておるのでありますから、われわれの方針は、その場合の御質問に答えたとおり、何もいま変更する考えはありません。
  66. 穗積七郎

    穗積委員 はなはだ残念ですが、時間が迫りましたから、いずれまた帰られてから報告を受けながら、委員長にもお願いして、外務委員会を開いて、お尋ねをしたいと思います。  逐次お尋ねしますが、われわれは即時返還を要求しておるのです。平和条約第三条は事実上失効しておる。それからもう一つは、極東の緊張のために備えなければならぬというが、実は極東の緊張を激化せしめる根源は沖繩の基地あるいは施設であるというふうに考えて、これを要求しておる。しかしながら、もし即座に返されない場合には、それがどのくらいの期間かは別にしまして、その期間におきましても、即時やはり主席公選を伴う自治権の拡大は必要だと思っておる。これについては、与党、あなた方の所属する自民党の委員の諸君もあわせて、強い国会の決議としてこれがきまっておるのですね。だから、あなたはこれに対しては当然積極的な賛成の意思を表せられるものと思いますが、念を押しておきます。
  67. 三木武夫

    三木国務大臣 沖繩特別委員会決議も行なわれておるようでありますから、国会でそういう決議が行なわれておることは、これはそういうこちらの側の希望は伝えなければなりませんが、こういう一切の沖繩問題に対する最終的な決定は、日米の合意は、総理とジョンソン大統領の場合に、いろいろな問題に対する決定すべき事項があるならば、それにゆだねたいと考えております。
  68. 穗積七郎

    穗積委員 総理の懇談の中に、主席公選の問題も持ち出すことを外務省はアドバイスするつもりはありますか、ありませんか。
  69. 三木武夫

    三木国務大臣 これは私の会談でも、こういう決議が行なわれておるわけですから、向こうにも伝えて、総理がどういう会談になりますか、総理自身の判断にもよることでございますから、総理が訪米される前に、十分に私が今回訪米したときのラスク長官等との会談も参考にしながら、政府の方針は、そういうときにきめることになると思っております。
  70. 穗積七郎

    穗積委員 この問題に対する日米交渉は、佐藤訪問一回だけでできるものとは、問題の内容が重要かつ多岐でありますから、できがたいと思う。包括的な前向きの討議をしようという約束ですね。そうなりますと、いまの日米外交機関を通じてやる、それから日米の協議委員会がある、それからもう一つは、別に日米間のこの問題に関しての閣僚会議をつくるといういろいろなケースが考えられるわけですね。その場合に、外務省としては、この問題が継続の討議の対象になったということに佐藤・ジョンソン会談でなれば、あとのそれは、いま言ったような特別の閣僚協議会をつくることが適当だとお考えになっておられますかどうか。私見でけっこうですから……。
  71. 三木武夫

    三木国務大臣 閣僚会議というのはどこから出てきたのか存じませんが、これは一切今後アメリカといろいろ話をして、どのようにして沖繩の施政権返還という問題を解決していくかという場合に、いろいろなことが考えられるでしょうが、しかし、これはいまの段階で、そういう閣僚会議をつくるというようなことも、日本のほうの案としては考えていないのでございます。これからいろいろなことを両方の話し合った結果によって、沖繩の施政権返還の促進に役立つようないろいろな方法考えられるでしょうが、いますぐに日米の閣僚会議を開いて施政権の返還問題を話し合うというような案は、われわれとしていまのところ持っていないのでございます。
  72. 穗積七郎

    穗積委員 この問題は、一般的な願望をお互いに理解し合ったということで終わるべきではなくて、返還問題は具体的日程として政治的に解決しなくてはならなくなっておる。そのことがおそらく今度のジョンソン会談の最高の、最大の約束ごとになろうと思う。内容の検討については、私は、続けてそういう積極的な意欲があるならば、当然外交ルート一般を通じてやるがいいか、いままである日米協議会のいろいろな機関を通じてやるがいいか、特別にこれだけに限って精力的かつ効果的に進めるがいいか、その問題は必ず出てくると思う。そういうようなことについても、多少の外務省内における予備討議があってしかるべきだと思うのですが、さっきから伺っていると、まるであなたまかせだと思うのですね。あなたともあろうものが、それもすぐ数日後にして行こうというのでしょう。しかも、この問題について予備討議をしようとしておるのでしょう。どういうことですか。
  73. 三木武夫

    三木国務大臣 それは、外交機関でいろいろ話し合いを続けてやる必要がある場合には外交機関でもできますし、必ずしも閣僚会議という別のそういう新しい機構を持つ必要があるかどうかということは、それはまた別個の問題だと思う。外交機関を通じて話を詰めていくということは、これは可能でありますから、必ずしもそういう特別な閣僚クラスの会議体を持たなければならぬとも考えていない。
  74. 穗積七郎

    穗積委員 はなはだ残念ですが、時間がありませんし、ぜひお尋ねしたいと思うことがまだあるので、前に進みましょう。  もう一つ北方領土の問題でございます。これに対して中間的なものとは何だ。それは形式とともに内容を持っておると思うのですね。共同宣言から平和条約のほんとうのトリーティーの形式に移ることの中間という意味だけでなくて、内容についてやはり一歩前進の中間的なものということが含まれなければならない。内容と形式と両方とも含んでおるのだ、こう私は理解したが、あなたの印象はどうでしたか。
  75. 三木武夫

    三木国務大臣 それは内容の伴わないということはないですよ。それはやはり内容を伴います。
  76. 穗積七郎

    穗積委員 そうですね。それではお尋ねいたします。  ここでそれについて一歩前進については、あなたは、その話を出した以上は、当時から前進の、グラジュアルに、段階的に進む内容というものは、頭の中にお持ちになったと思うのです。時間がなくてその問題を意見交換ができなかった。それからお帰りになって、この問題は大きく日本北方領土に対する何らかの糸口として非常に関心を持たれておるわけです。だから、外務省は、その後まだ全然やっておりませんか。討議があったら中間報告をしてもらいたい。素材だけでもけっこうです。
  77. 三木武夫

    三木国務大臣 これは重大な問題でありますから、あまりあわててというふうには考えていないのです。じっくり腰を落ちつけて、そして、コスイギン首相外交機関で研究してみようではないかというので、いま研究の段階でございまして、日本はこう思うとかいうことを申し上げる段階には到達していないのでございます。
  78. 穗積七郎

    穗積委員 この問題は、実は当時の事情をあなたもよく御存じだと思う。鳩山内閣が大きな政治問題としてお取り上げになって、歴史的な功績を残された。この方針については、他の外交方針、中国問題その他については非常な対立がありますけれども、この問題については、これは社会党も協力すべきであるということで、鳩山・鈴木——当時は鈴木委員長時代でしたが、会談をして、そしてこの問題に対するできる限りの協力をしようと言ってきた。それで、私ども党内で外交関係を担当しておる者も、不十分、微力ではありますけれども、精神的にも、あるいはこの問題を進めるために意見を言うたことがあります。特に松本大使と向こうとの間で平和条約形式でなければだめだと言ってから後に、実は私ども鈴木委員長を先頭といたしまして、そしてあの共同声明に持ち込んで、国交回復することにいささかの協力をしたわけですね。その因縁がありますし、その後、この問題については、平和条約を目がけて私ども機会あるごとに話を出しております。  そこで、これは御参考までに、中間的なものとしてでありますから、いずれあらためて——ぜひ外務省も謙虚にひとつ聞いてもらいたいと思う。外務省が非公式に話しておる材料もわれわれに知らしてもらいたい、この共通の日ソ間における平年条約締結のために。  そこで、実はいろいろな使節団が参ったりいたしましたが、私が責任を持って報告できる基本的なことが実は一つあるのです。それは、鈴木委員長委員長を辞退された後、浅沼委員長時代でしたが、鈴木さんに私が同行いたしまして、ミコヤン氏と会った。次いでフルシチョフ氏と会った。そのときに領土問題を出した。そうしたら、例の調子で、領土問題はもう解決済みです。何が解決済みだと言ったら、平和条約云々の問題が出た。そこからが大事なんです。で、そのとき、私どもはこういうことを言ったのです。およそ社会主義国ともあるものが、領土の問題については、戦争による不拡大方針というものは確認しなければいけませんよ。そうなれば、われわれも合法的かつ合理的でなければならない。感情で言っているのではない。降伏文書で、われわれは武力をもってとったものは返すということになっておる。千島列島全体が武力をもってとったものではない。合意によるものである。平和的かつ合意によるものであるから、これは固有の領土権は存続しておる。だから返してもらいたいと、こう言った。そうしたら、平和条約で放棄しておると言った。平和条約では千島列島と書いてあるが、南は除外するのか、千島列島全体なのか、はなはだしく不明確です。われわれの解釈では、これはどっちでも解釈できると思う。国際法的にいままでの用語からいたしまして。後になって、吉田内閣が、これは北だけのことだと言って言いのがれをされました。私どもは、全千島列島は固有の領土という立場でおります。そうなりますと、平和条約三条で日本政府がみずから固有の領土を放棄した、これは非常な誤りですから、これを変えなければいけませんね。  それから、もう一つ重要なことは、日ソ間の領土問題ですから、その返った領土が、日本が安保条約に縛られていて、その安保条約の仮想敵国は当時はソ連にも向かっておる。そういう状態のもとでは返しがたいという政治的理由もわかるというので、そこで、われわれは、理を尽くして、これは済んだ問題ではありません。これが日ソ間のほんとうの平和共存のために、まず第一に解決しなければならない宿題ではないかということを強く主張して、そして平和条約のこの北方領土に関する条項の修正、もう一つは、われわれがソ連を仮想敵国としない、仮想敵国として一方に偏した軍事的な取りきめを他国としないという外交方針、すべての国との平和共存の方針、こういうことを明瞭にするならば、これは当然考慮すべきであると言った。それに対してフルシチョフは、こういうふうに言っております。日本がそういうふうな状態になってくれば、それは日本とソビエトとの関係は根本的に違ってくる、そして、あなた方の願望である領土の問題についても、いまここで結論は言えないけれども、少なくともその願望について友好的に話し合う用意がありますと、こう言った。これは、私どもは南千島だけではない、千島列島全体を含むと思う。  それで、二つの障害があるが、一つは、平和条約で、実はこれで放棄されておる。ソビエトは調印をしてないけれども、回内における所有権と同様に、不動産に対する所有権というものはすべての人に対抗できるものです。すべての人に効力があるものです。債権とは違いますから、あの人には約束したが、あの人には約束してない、登記はAに移っておる、だから、Bには譲った覚えはないから、あれはおれのものであるかもわからぬという議論は、国内における不動産の所有権についてできません。国際的に領土権についても当然です。平和条約の締約国の中にソ連が入らなくても、日本が客観的にこの領土権を放棄しておるという問題です。  それからもう一つは、それに対するソビエト側の理解の問題、しかも日本外交路線というものが、安保条約の軍事同盟条約によってソビエトが少なくとも政治的に仮想敵国になっている。——それから、私は、沖繩問題と関連してひとつぜひお尋ねしたいと思ったのは、実は政治的にもう一つ加えて考えますと、沖繩の米軍基地の問題が問題になるわけです。これはお互いに向こうもこっちも政治的判断をしなければ国を代表する外交はできないでしょう。そうなりますと、北の領土が返ったら、すぐ安保条約の適用範囲になって、それで米軍の基地が置かれる。それから、南の米軍の沖繩における基地は、相変わらず残るどころか強化されつつある。こういう状態で唯々諾々として返すということは考えられない。ここらがお互いに討議すべき内容ではないかということで、ずっと実は今日に至るまで、私ども社会党の関係者は、平和条約締結についての一応障害である領土問題に関する日ソ間の問題として心にあたためておったわけです。    〔委員長退席、永田委員長代理着席〕 そのときに、代はかわりましたが、同じ外交路線をとっておるコスイギンが、内容を含む中間的なものを考えてみようではないかということになった。そのときの議事録は、ここに持ってきましたからございますが、もっとこまかいやりとりがあるのです。だから、そういうことがソビエトの言う大体中間的に討議すべき内容ではないか。そうなると、私は、そういうことを政治的に予約をした、いわば潜在主権ですね、それを言って、共同宣言を一歩前進せしめる、平和条約に至らない友好条約で一歩前進ができないか。これは私の個人的試案でございます。もしあなたが、この問題は国益全体にかかわる問題として、党派のエゴイズムにとらわれないで、ともに実現をしたいという念願を持たれるならば、率直にこの際あなたの御感想を伺いたい。すなわち、結論を言えば、この領土問題は、いま言ったように、お互いの条件が整うならば将来解決しよう。——例の松本さんのレターがありますね。条約局長、あるでしょう。例の共同宣言締結前に、あれは一九五六年九月二十九日付ですね、グロムイコ次官から松本大使にあてたもの、これは国後択捉についても話し合うことを同意したレターですね。ところが、その後、十月に共同宣言ができたときに、これはもう消滅したと向こうは言っておるわけだ。これは私は復活する可能性があるし、それは中間的なものだと考える。そういうことを明確にもう一ぺん生かして、そうして友好条約を形式として——その他でもいいですけれども、友好条約を形式として、内容をそういうものに一歩前進せしめる、これは私は検討していただくべき一つの案ではないかといささか自負しておるわけです。三木さん、率直にひとつ御感想があったらお答えいただきたい。
  79. 三木武夫

    三木国務大臣 穂積さんの、これは非常にいい案だと自負された案を、私も非常に興味深く拝聴をいたしました。これは重大な案件でありますので、各方面の意見も参考にしながら、外務省としても、中間的なものを検討を加えたいという非常に貴重な御意見として感謝いたします。    〔永田委員長代理退席、委員長着席〕
  80. 穗積七郎

    穗積委員 感謝でなく、ぜひ検討してもらいたいと思う。局長、少しアルバイトを進めてください。これは政治的には南の沖繩返還問題と相関関係がありますよ。法理上はありませんけれども……。そういう判断に立ってやらなければ、潮どきを失うとこういう領土問題というものは解決できませんよ。また何年かずるずると延びちゃう。だから、ぜひこれは勇を持ってやってもらいたい。そのためには、さっき言ったような、国民のすべての世論、最大公約数である自由使用だとか核基地ということは、三木さんは渡米にあたって一言も言ってはいけませんよ。私はそのことを強く要望いたしまして、時間がありませんから、次に最後の問題に触れておきたい。  それは在日朝鮮人の帰還協定の問題です。二十五日以来、モスクワにおきまして両赤十字代表が折衝をしておる。この両者の発言と交渉の経緯は、われわれも大体おぼろげながら伺っておりますから、時間があれば外務省の正確な報告を受けてからと思いましたけれども、お互いにアウトラインはわかっておるという前提に立って議論を進めたいと思うのです。  これは第一に、当然なことでありますが、あなたの韓国との間の共同声明の中にそれをうたった。これははなはだしく私はまずいと思ったんです。あのときに関係ないことじゃありませんか。北朝鮮赤十字と日本赤十字との取りきめの問題は、韓国の外務大臣、総理とあなた非公式に話せばいいので。——よくはないけれども、聞こえないからしようがない。あなたがこの共同声明の中ではっきり書いたことは、これはもう日本外交の自主性を疑うものです。しかも協定の当事者である両赤十字が会談前ですよ。日本の方針を明らかにするのはいい。こういうことでいきたいと思う。それを外国と約束するとは何事ですか。これはもうモスクワ会談で取り上げられておるのは御承知のとおり、非常な誤りだと思います。これは注意を申し上げておきます。  そこで、こういうものを事前にやったということは誤りでありますから、したがって、こういうものにとらわれないで、この問題は人道的立場に立ってのみ判断すべきだと思うのです。韓国との政治的取引の犠牲にすべきものではない。そこで、日本政府のいままでわれわれが各委員会でお尋ねいたしたときの唯一の理由は、帰国希望者が少なくなったということであった。ところが、八月十二日の締め切り現在においてすら——援護局長、おそれ入りますが、締め切って登録は何人になっておりますか。
  81. 実本博次

    ○実本説明員 八月十二日で締め切りました現在におきます帰還希望者の数は、概数で恐縮ですが、約一万七千名になっております。
  82. 穗積七郎

    穗積委員 一万七千八百名をこしていますね。
  83. 実本博次

    ○実本説明員 約一万七千八百です。
  84. 穗積七郎

    穗積委員 この数字は、継続するんじゃない、八月十二日に締め切った現在においてなおかつこのとおりです。政府の理由は、政治的な理由ではありませんね。政治的理由によって韓国との取引上これを材料にするのだということは、一ぺんも言われたことはない。ただ、共同声明の中でこういうことをいうのは、さっきも言ったように、私どもは不当だと思う。こういうものにとらわれないで、人道的立場に立ってのみ両国赤十字は話し合うべきだと私は理解いたしております。両国赤十字の話し合う理由、これは文書の中にも明らかなように、政治的理由によって断わるとは一言も赤十字のレターの中にも書いてない。帰国希望者が少なくなったというのです。ところが、締め切ってチェックしてみても、一万七千をこえる者がある。こういう事実が明らかになった以上、これを打ち切る理由というものはなくなったのではないでしょうか。それ以後継続する場合出てきたのは別としてですよ、少なくとも現時点においてこれだけを処理するためには、旧協定によって——政府からいえば旧だ。しかし、効力を失っていない現協定にのっとって受け付けた者が一万七千。この一万七千は旧協定によって出たのであるから、当然旧協定の取りきめに従って送り返すべきである。そうなりますと、物理的にこれはできない。そのことを懸念したから、再々私どもは外務省、法務省並びに厚生省にお尋ねしたでしょう。そのときは、あらためて検討いたしますとはっきり約束しておる。きょうは田川さんに来てもらうようにお願いしましたが、旅行中だというので、援護局長をわずらわしました。援護局長もそのことはお聞きのとおりです。これは予定が狂ってきたのです。打ち切りの理由が変わってきたのです。唯一の理由が変わってきたのですから、これは当然延長すべきものでございましょう。もしそれができないというならば、韓国との政治取引に使ったから取り返しがつかぬのだ、こういう誤った答弁をしなければならなくなるわけですね。三木外務大臣、御所感を伺いたいと思います。
  85. 三木武夫

    三木国務大臣 締め切りまでの八月十二日までに帰還を希望した人は、これは送り返したいと思っております。本人が帰りたいという希望、これは人道的な見地からいっても返してあげるようにすることが適当である。したがって、モスクワの会談はこういう問題について話し合いが行なわれるものと期待をしております。しかし、協定は再延長する考えはありません。締め切りまでに申し込まれた人は、これを送り返す努力はいたす考えでございます。
  86. 穗積七郎

    穗積委員 その場合、二つお尋ねしましょう。送り返すシチュエーション、待遇、条件、コンディションは、この協定によって認められておる手続と条件によって送り返しますか。
  87. 三木武夫

    三木国務大臣 協定そのものはなくなるわけですね、十一月までで。しかし、送り返すのは、協定そのものによるものではないが、協定の例に従って送り返すということになります。
  88. 穗積七郎

    穗積委員 そうなりますと、何もあわてて打ち切る必要はないじゃないですか。少なくなってきて、最近の統計を見ればかくかくだ、だから、およそこれだけでできるつもりだから、八月十二日締め切り、十一月十二日打ち切ると、こういう案を出してみた。ところが、それではたいへんだ、打ち切られるのでは、門を締められるのではたいへんだというので出てきたのですから、そうすれば、その事実に従ってこれはやっぱり十一月十二日の打ち切りは自動的に延長していいと思うのだ。何も政府の方針を固執する理由はないではありませんか。そうしてこそ初めて、このことが政府の言うとおりに政治的な偏見によるものではないということがやや証明される。そうでなければ、口では何と言おうと、客観的事実として、これは政治的偏向、取引に使われたものである、こう解釈せざるを得ないでしょう。これが一点。  それから、もう一つお尋ねします。外務省でもどっちでもいいですが、十一月十二日以後、慣例に従うという場合はどうなるか。相手の協力または第三国の協力なくしてはこの事業はできませんよ。そうなりますと、ふん詰まりで、ここでとめてしまう。しかし、国内の社会問題が起きます。政治問題にも発展しますよ。その責任はすべて政府にあるということを自覚していただきたい。その責任はとりますね。  そこで、事務当局にお尋ねしたいのは、もしそういうことになったときに、十一月十二日以後は慣例に従うというけれども、相手国、第三国の協力なくしてはできないことをやるのに、何かの事務取りきめがなければできませんよ、そんなことは。常識的に見たってそうですね。それはぜひ明らかにしてもらいたい。  それから、もう一つ事務当局にお尋ねしたいのは、今度の案ですと、十一月十二日が済んだ後においては、一切を市町村の取り扱いから法務省の入管に移してしまうわけでしょう。いままでは市町村を通じて、実際はあなたのほうの厚生省でやっておった。日赤が協力して、日赤を指揮し、日赤を援助し、いわば役所の中ではあなたのほうが所管であった。それを冷酷むざんな、しかも最近は悪質きわまる法務省、公安ののさばっておる法務省に移すということは、これはさっきの方針に反しますよ。だから、協定はどうであっても、この一万七千八百というものは、旧協定にのっとって、手続上、待遇も条件もこれで送るというのなら、あなたのほうでやるべきだと思う。大臣の御答弁を引用すれば、そういうことになります。その覚悟がありますかどうか。それが正当であると思う。  以上三つについてお答えをいただきたい。まず大臣から……。
  89. 三木武夫

    三木国務大臣 これは韓国と日本との閣僚会議で、その圧力でということはありません。政府の方針はすでにきめたわけでありますから、したがって、圧力というようなことではございません。(穗積委員「共同声明の中に書く必要はないじゃないか、国内問題じゃないか」と呼ぶ)したがって、これは第三国の協力を得なければ円滑には行なわれないことは御指摘のとおりでございますから、第三国の協力を期待をいたす次第でございます。
  90. 小川平四郎

    ○小川説明員 現在までに帰還希望を提出しておりますのは、十一月までに帰りたいという希望でございますので、これをなるべくその希望に沿うように速急に帰還ができるようにするということが原則でございますので……。
  91. 穗積七郎

    穗積委員 そんなことはわかっている。それからあとのことを聞いている。大臣もあとのことを答えているのだから、その部分について答えてもらいたい。何らかの取りきめなくしてできますかというのです。
  92. 小川平四郎

    ○小川説明員 第三国の協力が必要なことはもちろんでございますので、その点を現在日赤が朝鮮赤十字と話しているのでございます。
  93. 穗積七郎

    穗積委員 話したことは何らかの文書にしなければ、あとで実行にあたってお互いに責任が持てないじゃありませんか。名前はどうでもよろしい。業務のための取りきめが必要ですよ。それを聞いているのです。
  94. 小川平四郎

    ○小川説明員 これは具体的の配船その他でございますので、特に取りきめということをする必要はないかと思います。具体的にそれが詰まりますれば、そのとおり実行できる問題でございます。
  95. 穗積七郎

    穗積委員 そんなことありませんよ。それは小川さんともあろう聡明な人が、国際間の取りきめをお互いにかってに解釈しておって、しかもいろいろの起きる場合を想定もしないで取りきめておいて、事態が詰まったときはどっちの責任になりますか。したがって、お互いの責任分担というものは、取りきめておかなければならないのです。それをしも拒否するのですか。そういうことをやるのは政治的偏向ですよ。事務当局はもってのほかだ。
  96. 小川平四郎

    ○小川説明員 取りきめということばでございますが、現在のような取りきめをつくる必要はないと思います。具体的の配船計画その他について話し合いがつけばよろしい問題でございますので……。
  97. 穗積七郎

    穗積委員 だから、それを何でもいいから取りきめをしなければできないでしょうと言うのだ。権利義務関係を伴っていますからね。現協定の援護、手続、それから待遇その他のコンディション、すべて現協定どおりにやると言っているのですよ、大臣は。そうであるなら、ブランクになって白紙になったあと何も取りきめがない、そんなことでお互いに権利分担、義務分担ができますか。白紙になった、そんな非常識なことを言ってはいけません。
  98. 三木武夫

    三木国務大臣 私が言っているのは、この現在ある協定そのものを延長する考えはない。しかし、いままでに帰還希望を申し出た人を円滑に帰すために赤十字同士が話しをする、そういうふうな話の形式については、私はこだわらぬつもりです。しかし、協定そのものを延長する考えはありません。
  99. 穗積七郎

    穗積委員 そうなれば、大臣に返ってきますよ。だから、それを聞いておったのだ。あなたの答えのとおりが正しいのです。局長、そうなれば、協定は事実上生きておるのですよ。現協定は生きるのだ。同じ条件、同じ手続、同じ経路で継続するのですからね。それは日本政府は韓国に対して共同声明でうたったんだから、そのメンツの手前上、政治的偏向によって、あれは十一月十二日で切れてなくなった、なくなったとかっての解釈をする。ひとり言を言うのはかってだ。だけれども、協定は実効上延長されています。それで、あとのこの取り扱いは、冷酷むざんな法務省でやるのか、政府の中で一番心あたたかき援護局がやるのか、局長、厚生省を代表してのお答えをいただきたいのです。
  100. 実本博次

    ○実本説明員 先ほどから大臣からもお話がありましたが、八月十二日、現協定の中で帰りたいということで出てまいりました一万七千八百七十七人の方につきましては、現協定の例によりましてお帰しを申し上げ、その後の希望者につきましては、これはもうすでに告示も出ておりまして、一般の外国人のケースと同じように、入管、法務省の系統でお帰り願うというふうなことに相なるわけでございます。
  101. 福田篤泰

    福田委員長 曽祢益君。
  102. 曾禰益

    ○曽祢委員 だいぶ私の前の二人の同僚委員が熱心に質疑をされたので、片方は十五分、片方も十五分、両君とも十五分ずつ超過していますから、私並びに渡部委員の質問の時間は妥当に許していただきたいと思います。  そこで、最初にまず日ソ問題について伺います。  要点だけに集中していきたいのですけれども、この間のモスクワにおけるコスイギン会談で、とにもかくにも、言うならば、タブーであった平和条約問題について何らか話し合いを始めてもいいような弾力的な姿勢を示した。その内容が何であるか、領土問題について実質的にソ連が血の出るような歯舞色丹以外の南並びに北千島に触れて、条件つきでも返還の意図ありや等についてはいろいろ非常にむずかしい問題があろうかと思いますが、しかし、とにかくそういう態度を示してきて、しかもその一つのサゼスチョンとして中間的な措置あるいは中間的な文書ということを言った以上は、こちらはとにかくそれに応じて、平和条約の問題、すなわち、その難点である領土問題について、向こうも認めておる歯舞色丹はむろんのことですけれども、北千島を含めた日本固有の領土の問題について話し合いをもう一ぺんやる、私はこれは当然だと思うのです。それは当然であるが、われわれよほどその点を注意してやらないと、いわゆる中間的文書というものの中できめる内容が非常にこれはデリケートだ。そこで、いま穂積君から言われた点にあるいは触れるかもしれませんけれども、それに触れるのが目的でなくて、一般抽象的に言いたいのですけれども、この文書の中で、たとえば歯舞色丹みたいに、言うならば、平和条約を結んだときには返す、日本領土であることは向こうは認めておるけれども、国後択捉以下を正式に平和条約で放棄されるときまで人質にとっておく、歯舞色丹については返すということがかりにあるとすれば、それは中間的文書でもらうほうだけは書いてもいい。しかし、歯舞色丹でなくて、国後択捉からあるいは北千島に関連した問題については、よほどわれわれは慎重でなければならない。中間的文書というといろいろあるでしょうけれども、大体平和条約を結んだのではどうしても南千島、国後択捉から北は放棄しなければならない。領土条約の付属文書で国境線が書かれてしまうのですから、完全に放棄しなければならないというので、当時の打開の一つのアイデアとして、平和条約は残念だがしばらく待って、そして共同宣言によって国交回復をしようという中間的な方法をとったわけですね。もう一つの中間的な方法が絶対ないとは言えないでしょう。それは、友好条約歯舞色丹だけ返す協定もけっこうでしょう。その場合に、もし領土問題、すなわち、国後択捉から北の問題に触れるならば、北の問題について条件つき返還の原則、たとえば日本の政治姿勢、防衛条約をだれと結んでおるからということに関連さしたような条件をつけた返還、潜在主権ということばを使う人もありますが、そういう他の条件をからめたような領土問題の取り扱いをやることは非常に危険ではないか。領土問題については困難であっても貫徹する、政府は国後択捉、いわゆる南千島は日本固有の領土である。これは絶対に譲れない。われわれ野党においては、むしろ北千島までは固有の領土であるという考えを持っておりますが、いずれにしても、少なくとも政府の国後択捉に対する主張は、中間的文書というようなものであいまいにして、かえって累を後世に残すことのないようにする必要があるのではないか、かように考えるのですが、日本側から何か案を出せというような、向こうからサゼスチョンをしておるようですが、それなるがゆえに、私はこの問題非常に基本的だと思うので、外務大臣意見を伺いたい。
  103. 三木武夫

    三木国務大臣 曽祢君の御指摘のように、これはきわめて慎重でなければ、将来に禍根を残すようなことはいけない。非常に慎重な態度でこの問題に対処したいと、同じように考えております。
  104. 曾禰益

    ○曽祢委員 沖繩問題ですけれども、私は率直に言って、おとといの総理の新聞記者会見の際の沖繩問題に対する総理の締めくくり的態度といいますか、つまり、沖繩問題について、まだいま政府にがっちりした具体案がない、それはいろいろな意見を聞いてからきめる、私はこれは一がいに非難する理由はないと思うのです。だけれども、非常に残念だと思ったのは、質問者のほうから、沖繩問題等はやはりなるべく超党派といいますか、野党意見とも合致を求めて、そのバックでアメリカに交渉したらどうかという意見に対しては、私はかなり冷たい返事だったと思うのです。その理由が、たとえば安保条約に対して、特に社会党を意識して言ったんだろうと思うのですけれども、評価が全然違う、しかるに、この沖繩問題は、安全保障条約の問題とやはり共通の基盤があって、日本アメリカとの防衛上の協力という面もあるんだから、したがって、この沖繩問題だけで超党派を考えても、安保の評価、すなわち、アメリカとの軍事的な協力をある程度考慮する者と絶対にいかぬという者との間に超党派外交はあり得ないのだ、つまり、安保については社会党と超党派の見込みはないのだから、ついでに坊生憎けりゃけさまでとは言わなかったけれども、沖繩問題については超党派に乗り切れないような印象を聞いている人は皆受けたと私は思うのです。これは非常に残念だと思う。ただいま同僚の穗積委員が非常に激しい口調で外務大臣に明確化を求めておられたけれども、私は内容的には一つも激しくないと思うのです。内容的には常識のラインだと思うのです。ただ、アメリカに対する評価については、アメリカ意図がこうだのああだの、必ずしも私と意見が一致じゃありませんけれども、しかし、少なくとも現状において、沖繩については沖繩本土を含めて日本国民全体がすみやかに全面的な返還を求めている。その場合に、核兵器沖繩における効用については、いろいろ中国の核武装の進展その他から非常に評価が変わりつつある。流動的であるし、しかも日本国民の気持ちは不動なものがあるので、まあ核基地だけはごめんだ。これはまずアウトにする。その次に、いま返ってくるならば、これは当然に無条件で返ったとしても安全保障条約の適用基地になるのが普通だ。そうなると、なるほどいま本土にある基地とは内容、規模等が非常に違うけれども、法理的な性質からいえば、やはりこれは安全保障条約下の基地、簡単に言うならば、事前協議の対象として、完全な自由ではない。装備の重要な変更についても相談するであろうし、日本沖繩に対する攻撃の場合は別であろうけれども、ほかの地域にアメリカ軍が沖繩から発進して、作戦行動として沖繩の基地を使う、こういうことはやはり困る。少なくとも日本側としてはそんなことはごめんだということ、私はこれはコンセンサスじゃないかと思う。だから、交渉される立場からいえば、そんなことはきちっときめてそれから行くんだというんじゃアメリカの顔もないだろうしということもあろうし、その点わからぬではありませんが、私は、こういう意味において、これは沖繩を含めてですけれども——沖繩の方はどうしても何でもいいからまず全面返還、それから基地の問題を話せばいいじゃないかという気持ちになりがちなことは、心理的にはよくわかる。しかし、われわれの言っていること、何も民社党が先に出したとかそんなこと問題じゃなくて、どう考えても核基地づきの返還は困る。自由使用というけれども、これはペンタゴンから見れば自由使用が都合がいいだろうけれども、現実にこの沖繩からベトナム戦争に直接たとえば52Bを爆弾を積んで発進きせて、もう一ぺん沖繩に帰ってくるというような、特別に刺激的なまずいことは、法理的にはできても、アメリカ側でも実際は自制しているのではないか。自由基地といい、あるいは事前協議によって直接他の地域に戦闘作戦行動として沖繩から飛び出すことについて日本と相談するということについては、私は現実にはたいして違わないと思う。法理的には違うと思う。私はそういうふうに考えるのでぜひひとつ外務大臣にお願いしたいのは、総理大臣がおとといの時点において、政府の案はまだきまってない、おれは十一月に行くんだからと言われるのは、時間的にもわかります。しかし、その前に、あなたが手回しと言っては俗になっていけませんけれども、地ならしですか、何でもいいから、きめるところはほんとうのハイエストレベルで十一月の佐藤・ジョンソン会談できめるのだけれども、両方がサウンドするときに、総理はああ言ったけれども、少なくともあなたは、超党派外交については、そういうことばはお使いにならなくても、核拡散防止条約についても非常に熱心に野党との意見の合致を極力つくるように努力されておる。しかも外交の当事者であるあなたとしては、やはり沖繩問題については日本のコンセンサスを頭に入れて、そうして少なくとも核兵器もしようがないのだ、自由使用もやむを得ないのだ——これもいろいろ段階があるかもしれないけれども、返還のプログラムについてはいろいろな問題もあるかもしれないけれども、原理原則として、やはりあまりに譲ったというか、アメリカのほうを考え過ぎたような案は日本国民から総反撃を食らうんだというようなつもりで、ぴしっと腹をきめて出かけられるのが必要ではないか。あえて内容についてのイエス、ノーは聞きませんが、基本的には、あなたも総理に対して、こういう問題こそ、一九七〇年のいわゆる安保再検討時期が日本の民主主義の危機であるとか、外交について国論がまっ二つに分かれると言っておる前に、もしそれならば、そういうことを避けるためには、まず沖繩問題で具体的な一つの挙国体制をつくるように、超党派体制ですか、努力すべきではないか。それだけの価値があると思うのです。あまり事務的な返事は要りませんけれども、ひとつ超党派的に沖繩問題をとらえるという気持ちで、それから、日本国民の大体の方向は、やはり核基地と自由使用、つまり、直接作戦行動に使うやつは困るということ、それから沖繩をむしろてことして——沖繩についてはある意味では安保条約以上に現実約にならなければならない。それほどせっついた国民の早期返還の要求がありますから、これを機会に、あるいは野党の一部にはそういうのは迷惑だというのがあるかもしれないが、かまわないから、政府としては超党派外交のつもりで沖繩問題をとらえて推進していただきたい。この意見についてのあなたの所信を伺いたい。
  105. 三木武夫

    三木国務大臣 内容については私はコミットはいたしません。けれども、アメリカ沖繩問題を話すときの一つの政治姿勢としては、あなたの言うとおりに考えております。この問題は、最初に申し上げましたように、日米の友好的な基盤というものをこのことによって傷つけない、むしろ増大するという現地に立つと同時に、日本の国民の世論の動向というものに対しては、われわれとしてはきわめて注目をしなければならない。私は、沖繩問題に関する限りは、細大漏らさず各政党意見あるいは個人として出される意見というものを非常に検討を加えておるわけであります。したがって、この問題の解決は、日米関係のためにも日本の国民の世論の動向も見きわめつつ解決することが必要であるという見地で、沖繩問題というものをアメリカ側とも話をしてみたいと考えております。この問題の解決を誤ることは、日米関係のためにも非常に将来に禍根を残すものもありますので、態度全体としては曽祢さんが言われるとおり。内容について御指摘になったことは、この機会にコミットはいたしません。  それから、超党派の問題については、総理も、できれば、外交問題というものは、超党派に扱えるならばこれは扱いたいという考え方は、政党政治家としてだれでも持っておる原則であることは間違いなのですけれども、いまは超党派外交を進めていく条件は成熟しておらないことは、曽祢さん御承知のとおりであります。沖繩問題についても、私はなかなかむずかしい面があると思うのでありますが、穂積さん沖繩でいろいろ御発言になったことも、社会党でいろいろこれを問題というとおかしいですけれども、いろいろ御検討になり、また穂積さんの発言も社会党として取り上げておったようですから、安保条約といいますか、沖繩における日本の安全、極東もひっくるめての安全との関連において考えようということ、安保条約を破棄しようという立場に立たれておる社会党は、沖繩問題はこの問題とは別だと申しましても、なかなか沖繩問題には安全保障の問題というものが関連を持たざるを得ないですね。これを切り離してということにならないわけでありますので、ここに沖繩問題を超党派的な取り扱い課題とするということには、私は非常に無理があるように思うのです。しかし、これはできるだけ、いろいろ社会党の言われるようなことも、これは社会党を支持する国民、相当な部分がおられるわけでありますから、それはその意見も参考にはしなければなりませんけれども、一つの超党派の議題として沖繩問題を取り扱うということにはかなり無理があるということで、総理大臣発言もそういうことになったのではないかと考えております。
  106. 曾禰益

    ○曽祢委員 これは社会党の問題が出たので、これ以上進めるのは適当でないと思いますけれども、私の言わんとするところは、われわれの聞いているところでは、基本的な姿勢は、やはり日本全体が強く権利として返還を要求すべきだ。しかし、いま現にもし返ってくるとすれば、それは安保基地以外ではないのじゃないか。ある意味では非常に現実的な考慮もあるやに伺うのです。これであまり気負いすぎて安保に関する地点まで超党派外交できるのかと思ったら、これは私は飛び上がっていると思います。安保のむずかしさよりもやさしいということは言っても差しつかえないのじゃないか。ことに当面の問題であるので、あきらめずに、ひとつぜひ国内の世論、いわゆる大政党意見もなるべく集約できるラインを念頭に置きつつやっていただきたいと思います。  私はこれで。あと、渡部さんに……。
  107. 福田篤泰

    福田委員長 渡部一郎君。
  108. 渡部一郎

    ○渡部委員 だいぶ時間もおそくなっておりますし、私は、端的に二点についてお伺をしておきたいと思います。率直にお答えをいただければしあわせでございます。  まず第一に、北方領土の件でございますが、今回中間的なものを日ソ両国間で討議するというふうに伺っております。この中間的なものというものは、やがて結ばれるであろう平和条約と現在の日ソ共同宣言との間の条約であるという意味なのか、それともまた時間的に中間的なものであるというのか、またあるいはこれは新たなる別の政治的な折衝の結果としての中間的なものであるというのか、その中間的なものであるという意味合いをどのようにおとりになったのか、明らかにしていただきたいと思います。
  109. 三木武夫

    三木国務大臣 私はこのようにとったわけであります。現在、日ソの共同宣言によって国交が開かれておる。しかし、平和条約というものになってくるとなかなか困難な問題がたくさんあって、どのようにこれはアプローチするかということが、日ソ両国ともなかなかいまこうだと言い切れないような状態なので、何かこう平和条約に至らなくても、その共同宣言——共同宣言は現にあるのですから、平和条約に至らなくても、中間的な措置というものを何か研究することも考えられぬだろうかという提案でございますから、何かこう、いまの共同宣言平和条約に至る中間的なものというふうに私はとったわけでございます。
  110. 渡部一郎

    ○渡部委員 そうしますと、先ほどモスクワ放送の件がございましたけれども、モスクワ放送では、領土に関する日本の要求というものは取り上げられないというような姿勢が表明されておりますけれども、これに関しては、そういう事実にもかかわらず、領土問題についての一歩前進が行なわれるとお考えになっておられますか。その辺をお伺いします。
  111. 三木武夫

    三木国務大臣 前進かどうかという評価は、これはわかりません。しかし、外交機関を通じて話し合ってみようということでありますので、これが一体前進になるかどうかということは今後の問題でありますが、まあ何か外交機関を通じて検討しようではないかということに私は賛成をして、そしていま検討を加えておるわけでありますので、これは前進かどうかという評価は、結果を見なければわかりませんが、とにかくまあ話し合ってみようという糸口ができたことは事実でありますので、その糸口ができた事実の上に立って、外交機関を通じて話し合ってみたい。その結果非常な前進かどうかというようなことは、今日まだそういうことは言えない段階であると思います。
  112. 渡部一郎

    ○渡部委員 今回このような動きがあった後、これは新聞社の報道でありますけれども、ワシントンからの報道として、今回のコスイギン発言については、アメリカ側としては、ソ連がことさらにあいまいな表現を使っているという事実、また従来ロシヤ政府ないしソ連政府というものが領土を返還したという事実が全くないという事実等をあげて、要するに、日本沖繩、小笠原の施政権返還要求をこの際あおり立てて、そうして北方領土問題を進めた印象を与えることによって、日本人の親ソ感情をわき立たせ、アメリカを困らせようという一石二鳥をねらったものだ、そういうようにアメリカ政府筋が警告しておる、こういう報道が行なわれております。私は、この報道の真偽についてはこれを問うものではございませんけれども、事実ソ連の交渉というものがこういう次元において考えられることも十分予想されるのではないかと日本国民の一人として考えるのであります。したがいまして、私は、この北方領土の返還の問題に関する交渉というものは、おそらくは十一月ごろからと予定されているようなお話でございますけれども、もしこういう含みをソ連政府が持っておるものならば、むしろそのほんとうの真意が沖繩の返還を側面からあおり立てるために計画されておるものだとするならば、かえって沖繩の交渉よりも先立たせることによって、ソ連政府態度をより明らかにすることができるのではないか、私はかように存ずるのでございます。この辺について、もちろん外相としては見通しも立てられていることであろうとは思いますけれども、こういう問題に関する見解についてひとつ伺っておきたいと思います。
  113. 三木武夫

    三木国務大臣 私は、北方領土北方領土沖繩問題は沖繩問題、この問題の両者の間に関連性を持たしては考えておりません。
  114. 渡部一郎

    ○渡部委員 それはちょっとおかしいのじゃないかと私は思います。外交交渉が、外相がおっしゃいますように単一に一国ずつを相手にして行なわれるものだとは私は思いませんし、密接な関連性と、そうして密接な連関を持って行なわれるものであるということは、前々から外相が何回もここでおっしゃっていることでございます。私は、いまそういう立場でしかお返事ができないであろうことは、当面予想されることでもございます。ですから、私はあえてそれ以上の御返答は求めるものじゃありませんけれども、少なくともそういうような一番幼稚なグレードでのお話をなさる必要はないのではないか、それはもう外交的常識の問題ではなかろうかと思うのであります。  私は、別の問題に移りたいと思うのですけれども、日本政府といたしましては、過去に非常に問題になっているのは、条約にある千島列島の範囲について、何回も当国会において議論が行なわれております。千島はサンフランシスコ平和条約においてこれを放棄したということになっておるそうでありますけれども、昭和二十六年十月十九日、当時の吉田総理大臣は、千島列島の範囲については終戦以来研究してきめておる、そして、西村条約局長をしてこの返事をせしめておりますが、その条約にある千島列島の範囲については、北千島と南千島の両者を含む、こういうふうに当時の条約局長は返事をしているわけでございます。ところが、池田内閣総理大臣に至りますや、これは条約局長の言うたことは間違いである。「千島のうちに中千島、北千島、南千島があろうはずはありません、条約上からも歴史からも。そこで条約局長の言うたことが間違いというのは、平和条約の千島のうちに択捉国後は含まないのだということは、重光外務大臣等たびたび私は言っておられると思います。しからばどっちがほんとうか、どっちが間違いかということになれば、結論的には、私はいままでの歴史から考えて、条約局長の言うのが事実に反しておる。」こういうふうに日本を代表する二人の総理大臣の見解は相反しておるわけであります。私は、こういうような総理大臣お二人がまっ二つになって意見の分かれた問題について、ここで三木外務大臣に軍配を上げさすのは非常に酷だとは思います。しかしながら、現実の対ソ交渉の締めくくりをする現段階になりまして、佐藤内閣また三木外相がこの問題を扱われるに際しましては、これに対する見解を明らかにせられなければぐあいが悪いのじゃないかと思います。したがいまして、千島の範囲というものはどのようなものか、そしてこれに対してはどう考えられるか。平和条約において明確に放棄をされた千島列島の範囲について、外相の見解を伺いたいと思います。
  115. 三木武夫

    三木国務大臣 私はこういうふうに考えております。  日本が放棄した千島の中には歯舞色丹はもちろんのこと、択捉国後も入ってない、こういう解釈でございます。  それと、最初の沖繩北方領土の問題ですが、これはソ連がどういう意図であろうか、ワシントンの電報をお読み上げになったのですけれども、そのワシントンの解釈も、それは政府筋の解釈ではないでしょうし、いろいろな憶測があると思います。しかし、私は、ソ連がどういう意図であったろうかというようなことをいま揣摩憶測したくない。コスイギンの提案を額面どおりに受け取って、そして外交のルートで検討を進めたいと思っておるわけでございます。したがって、私自身としては、沖繩とこの北方領土とをからましては考えていない。コスイギン発言をそのまますなおに受け取って、その上に乗って外交折衝をしたいと考えておるわけでございます。
  116. 渡部一郎

    ○渡部委員 私は、両者を無理やりからませろと言っているのではなくて、そういうことが予想される外交交渉の段階なんだから、それについて弁解することよりも、むしろ大事なのは、そういうことも含んで、引っかからないようにしていただきたいということを外相に申し上げているわけです。  それから、千島の問題については、吉田総理大臣当時、千島列島の範囲については、北千島と南千島の両者を含むと言われた問題が、今日そのように変転しても、まるっきり解釈と違った路線に変わったとしても、それは外交交渉上成立し得るものかどうか、私はその辺についてはっきりしていただきたいと思います。
  117. 三木武夫

    三木国務大臣 それは、今後成立するかどうかという問題については、今後の折衝に待たなければなりませんが、政府の解釈はかように解釈している。こういう政府の解釈の上に立ってソ連とも話し合いをするんだと申し上げておるのでございます。
  118. 渡部一郎

    ○渡部委員 それでは、私は、それに関する政府の解釈、むしろ政府の主張というものがこういう路線であることは了解いたしましたけれども、少なくとも、平和条約が結ばれた当時はこういう解釈であった。この解釈については、おそらくはアメリカとも合議の上でこのような弁明が行なわれていると思うのです。そうしますと、このサンフランシスコ講和条約の第二条の(c)項による千島列島の主権の放棄の問題に関しては、これについて議論が進められる場合には、きわめて容易ならざる返答を要するであろうと私は思うのであります。したがいまして、十分な御検討を願いたい。少なくとも、この場所で言われた程度のお答えであるならば、これは外交交渉においては非常にぐあいが悪いのではないか。これは私たち日本人としての大きな心配の種でありますがゆえに、あえて指摘して申し上げたいと思うのであります。  それから第二番目に、今度は沖繩の問題でありますが、このたび沖繩に同僚議員多数行かれまして、いろいろな問題について明らかにされた点につきましては非常に喜ぶものであります。しかし、総理が今度の記者会見でいろいろと御説明になっておりますことのうち、核基地問題についての構想について、非常に私は危惧の念を持っておる一人であります。それはなぜかといいますと、下田構想は一応は否定されたごとくでありますが、そのあと、場合によっては核基地つきの返還も考えますかという問いに対して、これは一番むずかしい点である。さらに進みまして、沖繩問題の中核をなす問題である核基地を持つのか持たないのかという三度にわたる質問に対しては、今度はそれを否定しようとはなさいませんで、検討の中に入れるというような意味合いの御返事がありました。総理は、この際国民的合意が得られるならば、最善の策でなくても次善の策でもやむを得ない、また何をかいわんやであるという表現で言われました。私はこの意見を伺っておりまして、実は非常に怪しげな御返事のしかたであるという印象をぬぐえないのであります。少なくとも、沖繩日本に返還するにあたりまして、核基地を持たないようにしたいというのは、まさに国民的合意の結晶だと私は思います。また、核というものについては、日本核兵器使用の違法性についてはさらに主張すべきものでありまして、昭和三十八年の東京地裁の判決文におきましても、広島、長崎原爆判決文を引用いたしまして、広島、長崎両市に対する原子爆弾の投下行為は国際法に違反するものである、このような主張すら行なわれております。これは地裁の判決であります。私は、こういうような見解が出てくるゆえんというものは、核に対する、核兵器に対する国民的な怒りと、そうして、絶対平和を達成して世界の戦乱を食いとめなければならぬという、日本民族の平和、文化国家に対する強い要請があるものであると感ずるのであります。もしも総理がこのような国民的な世論を背景にして立たれるのであるならば、沖繩問題の基本方向について、少なくとも核の問題だけについては、私はこういう見解であるということだけでも述べるべきではなかったか。外交交渉の通例として、言わない外交、秘密外交というものが予想されるということも十分考えられますけれども、少なくとも核兵器については私は持ち込まさない、核基地の撤廃だけは私は断固主張するつもりであるけれども、国民の皆さんいかがですか、あるいは核基地についてはやむを得ぬからこれは引き取ることにすると主張するか、その点だけについても国民の前にもっとフランクにこの事態を説明して、その見解を明らかにして、そうして大きな世論の背景をもって交渉するのが当然ではなかろうか。特に沖繩の返還の問題については、諸外国から領土返還を要求した際において、それこそ、まさに燃え上がるような国民的な背景がなければ、このような領土問題の解決はうまくいったためしがいまだかつてない。わずかにアラスカ等においてこれが売り渡された例があるのみである。こんな自国の領土を取られて取り返す際に、かくのごとく世論の動向というものを放置しておいて交渉ができるものではないと私はかえって思うのであります。したがいまして、私がここで長時間の演説をぶつようで恐縮ではありますけれども、外務大臣に対して私要望したいことは、先ほどから政府の統一方針として、下田発言についてはこれは政府の統一見解ではないと再々説明をされました。私は、一歩進んで、核基地つき返還の問題についてはこれをとらないということを明確にしていただくか、そうでない方針があるならば、その基本方向について明らかにしていただくか、私は国民の名において要望したい、このように思うのであります。
  119. 三木武夫

    三木国務大臣 総理がいろいろ慎重にこの問題を検討されて、私もそういうふうに思うのですが、あの段階で政府がこういう方針だということを述べる適当な機会ではない、世論の動向に対しても、きわめて鋭敏にその動向というものを総理は観察をいたしておるわけでありますから、したがって、国民的な世論の動向がどういう方向にあるかということは十分に知っておるわけであります。  ただ、この機会に、こうだとあの方針というものをきめる場合には、いろんなことが——たとえば私が今回訪米してアメリカの首脳部と話をするということも、総理が腹をきめる場合においては何らかの参考になることは明らかでありますし、また沖繩問題の懇談会、これはきめる機関ではないと言いますが、あれだけの学識経験者といわれる人々が寄って熱心にやっているわけですから、そういう意見もこれは参考にすべきでありましょうし、あの場合に、いろんな内容についていろいろ申し上げることは適当でないという、私も同じような判断であります。したがって、これは十分に国内の動向、世論の動向というものを考えながら、この問題が日米間の友好関係をさらに深めていくというような方向で解決できますように、われわれとしても十分な総理の補佐をいたすつもりでございます。
  120. 渡部一郎

    ○渡部委員 私は、いまのような御返事しか外務大臣としてはこの場所ではお話ができないであろうことは、十分想像ができますし、私が述べました見解については、賢明なる外務大臣は一を聞いて十を知られていることと思いますけれども、国民の名において、再検討せられることを私は要望しておきます。  それから、南ベトナムの停戦の問題についてでありますが、この南ベトナムの問題につきましては、このたび東欧諸国にも行かれまして、ずいぶんと御苦労なさったようでありますが、その件について一言だけお伺いしておきたいと思います。  それは、私は、一つは、南ベトナムの訪問については一これは総理のベトナム訪問についてはいろいろ説明が行なわれましたけれども、結局はよくはわからない。結局、総理としては、米国に対する日本発言力を増すためにこれは行くのであるというような言い方をされておりますけれども、もしも、ちょっと行くことが発言力を増すゆえんであるとするならば、その際において、非常な援助等の手続が行なわれることは当然だし、これはきわめて危険なことである。もしも、二十四時間行くだけで、経済援助も何も行なわないというのであれば、これはもう行ったって全然意味のない、単なるお遊びにすぎない。また逆に言って、今度は南ベトナムの首脳と会うということは将来の停戦にとって非常にプラスになると総理は説明をされておりますけれども、顔を見なければその国に対する外交政策が立たないということは外交のしろうとの言うことであって、これまたうなずけないと、私はこう存ずるのでありますが、これについての御見解を承っておきたい。  それからもう一つ、次は北爆の停止の問題であります。    〔委員長退席、永田委員長代理着席〕 これは何といっても、交渉開始にあたりましては、北爆の停止というのが前提条件になるのではないかということについては、もう世界的な世論だと私は思います。ところが、北爆を停止させる条件等について、いろいろ意見が左右したり何かするのではないかと思います。したがいまして、私は、まず北爆停止が交渉開始の前提条件になるかどうかの問題について、三木外相の見解を承っておきたい。特に東欧諸国を回られてその見通しをつけられたと思うのでありますので、それを伺っておきたい。  それから、三番目に、もう一つ伺っておきたいのですが、ベトナムにおいて北爆を停止するためには、もとのジュネーブ協定の精神に戻らなければならぬということを外相はどこかの国で説明されておるようでありますが、ジュネーブ協定を破ったのはどちらの国かという問題についてはいろいろな紛争のある問題だろうと思います。そこで、外相はその点についてどう考え、どう対処されるおつもりであるか。  私は、この三つの点について、南ベトナム問題に対する政府の基本方針を知りたいためにお伺いいたします。お願いします。
  121. 三木武夫

    三木国務大臣 南ベトナムにおいては大統領選挙の開票がいま行なわれており、大勢は大体きまったようでありますが、まだ最後の決定ということにはなってない。このように、まあすぐに模範的な民主政治の体制ができるとも思いませんが、しかし、八〇何%も投票して、人民の手によって大統領が選ばれたということは、一つの前進であることは間違いがない。その新しい政権も、今度の選挙を通じて、できるだけ和平を実現したいという熱意というものは、各候補者に共通して流れておったようであります。いつまでもこの戦争をあくまで継続するのだというのではなくして、方法論に違いはありますけれども、早期和平の実現というものが、各候補者の一つの政策の底を流れておったように受け取っておるわけであります。したがって、総理が訪問をされて、そういう新しい選挙によって選ばれた新しい指導者と、このベトナムの戦争の収拾について話をするということは、私は意義があると思う。アメリカも確かに戦争の大きな相手国ではありますけれども、しかし、ベトナムだってこの戦争の当事者であることは間違いがないわけであります。そういうことで、アメリカに行かれる場合においても、実際に新しいベトナム指導者と話をする、しかも、日本もアジアの一員でありますし、ベトナムもそうだし、そういう点で率直な話し合いをしておくということは、ベトナム和平というものが、この訪問によって非常に何かの糸口が見出されるという期待は持ってはいないにしても、何かやはり役立つ場合があるのではないか。ベトナム問題を話をした場合に、何も行きもしないで、東南アジアを旅行したけれどもあそこだけはよけて通ったというのではなくして、実際に話をしておるということは、アメリカに参って話をする場合においても、発言一つのある重みを加えることは事実でしょうね。そういうことで、ベトナムを訪問するということは一つの意義がある。やはり外交関係も開いておる国を、何かあの国は行ってはいけぬ、この国は行くべきだ、そういうふうに考えないで、何とかして早く和平を実現したいと総理は考えておるわけですから、そういう考え方の上に立って訪問することは、私は悪いことではないというふうに考えております。  それから、北爆停止の問題は、北爆停止をしておる間に北からの南に対する兵力とか物資の増強があったのでは困る、だから、北のほうもアメリカが北爆停止に進む場合には戦線を縮小してもらいたい、こうアメリカが言って、一方は無条件、一方はそれに見合う戦線の縮小をしてもらいたいということで、話がつかずにおるわけでございます。したがって、この北爆問題は当事者の間に話がつかないのですから、北爆を停止することは、一つの和平の話し合い、戦争収拾のための話し合いのきっかけにはなると私は思いますよ。しかし、それが、やはり相手が北爆を停止しておる間に兵力や物資を増強するようなことがあっては北爆を停止しても意味がない、こうアメリカが言っておるので、この問を両当事者がそういうことに対して賛成しないと実現ができないわけでありますから、何とかして——いまどうにも両方の話が合わないのですが、この話を合わせるような方法はないかということをみなが考える必要があると思います。いいとか悪いとか言っても、これは両方が話し合い、うまが合わなければ実現できないのですからね。そういう点に北爆の問題のむずかしさがある。  それから、ジュネーブ協定は、それはどちらが破った、こちらが破ったということは、いろいろ議論のあるところだと思いますが、この問題を処理することは、そういうジュネーブ協定の違反者はだれだといった、うしろへ向いて探索するのではなくして、このベトナム戦争を解決するために前向きに考えた場合に、それなら解決する一つのよりどころは何かというと、ジュネーブ協定の精神に帰るというよりほかにはないということは、世界のだれもが一致しておる意見でありますから、むしろジュネーブ協定を破ったのはだれかという議論に花を咲かすよりかは、将来のこの戦争の解決ということに、ジュネーブ協定の精神に帰れ、やはりこのジュネーブ協定の振り出しに戻って、ここから南と北との間に一つの和平を実現せよということのほうがずっと意味があると思うのであります。
  122. 渡部一郎

    ○渡部委員 ベトナム問題に関しての考え方につきましては、外務大臣の立場もいまの御説明である程度了承いたしましたが、そのお話のしかたの中で、私は、南ベトナムの訪問についてもう一言だけ申し上げておきたい。それは、いままでわが国においては南ベトナムの参戦国会議にも代表を送りませんでしたし、少なくとも不介入の方針を明らかにしてまいりました。この期に及んでその不介入であった国へ首相が乗り込むという意味は、私は重大であると思うのであります。また、総理が南ベトナムを訪問される際に言われておったことは、カンボジアの国へも行くのだ、だから南ベトナム一つだけ抜かしちゃこれは問題だ、いま外務大臣が言われたのと裏返しの意見でありまして、すでにカンボジアからは断わられましたし、カンボジアも断わられたのに、南ベトナムをもう一つ抜かしても悪いことはないのじゃないか。そういうように非常に矛盾撞着する説明が行なわれておる。また、南ベトナムに行った首相というものは、いずれも参戦国のちゃきちゃきの総理だ。こういうときに総理がその一方の当事国に対して乗り込むということ自体が、戦争協力への一環と受け取られることも当然であるし、今後の東南アジア外交に対して日本を妙な立場に追い込むおそれがあるのではないか。少なくとも三木外相がASPACにおいてあれほど懸命になりまして対共産軍事同盟ではないと力説したのを、片方でひっくり返すようなことになるのではないか。私は外務大臣外交方針を支持するがゆえにこのような憎まれ口をきくのでありますけれども、外務大臣はどうお考えなのか。私はそう思うのであります。  それから、ジュネーブ協定のことに関しては、ちょっとおかしくはないか。それはジュネーブ協定の精神を守れというのだったら、どうしたってそれを守るためには、前回のジュネーブ協定がどうして破られてしまったかという議論になってしまうと私は思うのであります。ところが、このジュネーブ協定の精神は、両者によっていまや粉みじんのように打ち砕かれてしまっておる。こわれたところにもう一つその廃墟の上に家を築くようなものであると私は思うのであります。したがって、ジュネーブ協定にかわる協定をつくるべきでなかろうか。しかも、それは、日本がその当事国家としてこのようなジュネーブ協定にかわる協定をつくるには最も適した国家なのではないか。少なくとも東京協定のごときものにすべくわが国政府が主導権をとって主張すべきなのではないか、私はこう思うのであります。これは提案でありますが、以上お伺いしたいと思います。
  123. 三木武夫

    三木国務大臣 一つは、南ベトナム訪問に対していま御心配のようでありますが、日本総理大臣、憲法の条章のもとにある総理大臣が、そんなに南ベトナムに行って軍事的にこれを激励するなどという、そういうことのできることはとても考えられることではありません。総理大臣は厳格に憲法のワク内でしか行動は許されていないのであります。したがって、日本総理大臣がベトナムに行ったからといって、これが軍事的にどうこうというようなことは絶対に御心配御無用でございます。やはり総理が訪問した場合に、その言動を通じて和平の早期実現に結びつく言動以外のことはない。また、これを軍事的に激励などはできるものではない。あんまりこのことは御心配にならぬように。  カンボジアの問題は、これはまことに残念でしたが、まあ問題が未解決でありますので、両方が相談して、こういうふうな未解決のときに総理大臣が訪問するということ、問題をかかえておるときに総理大臣が行くということは、歓迎する側としても、何かやはり歓迎する場合において懸案があるということは、少しいろいろな歓迎の場合において心からというわけにいかぬような場合がありますからね。そういうときは適当な時期でないということで延ばしたわけであります。これはまことに残念なことだと考えております。しかし、カンボジアがそういうふうに延ばしたから南ベトナムはやめなければならぬとは考えていないのでございます。  それから、ジュネーブ協定は、こういうものを御破算にして、新しく日本がイニシアチブをとって何かの会議を招集せよ、こういうわけでございます。しかし、ああいう一つメンバーというものがいろいろ違う場合もあるでしょうけれども、大体ベトナムの和平を実現するためには、ジュネ−ブ協定というものがよりどころになる。そうでなくして初めから御破算にということになれば、よりどころがないですから、したがって、メンバーがジュネーブ協定のときのメンバーそのものであるかどうかということは検討する余地はあるのかもしれませんが、とにかく解決をする一つのよりどころというものは、ジュネーブ協定というものが適当であろう、これはもうだれもみなそのように認めておるわけでございます。日本も役割りがあれば、果たすのにこれは労を惜しむものではないですけれども、この機会日本がイニシアチブをとって、関係者を集めてベトナム和平の実現をはかるということは、どうも適当だとは思わないのであります。
  124. 永田亮一

    ○永田委員長代理 本日はこれにて散会いたします。    午後一時三十一分散会