運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1967-05-22 第55回国会 参議院 予算委員会第四分科会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十二年五月二十二日(月曜日)    午前十時二十九分開会     —————————————  昭和四十二年五月十九日予算委員長において、  左のとおり本分科担当委員を指名した。                 井川 伊平君                 内藤誉三郎君                 新谷寅三郎君                 山下 春江君                 吉江 勝保君                 吉武 恵市君                 占部 秀男君                 小林  武君                 小柳  勇君                 多田 省吾君                 山高しげり君     —————————————    委員の異動  五月二十二日     辞任         補欠選任      山高しげり君     石本  茂君     —————————————   出席者は左のとおり。     主 査         多田 省吾君     副主査         内藤誉三郎君     委 員                 井川 伊平君                 新谷寅三郎君                 山下 春江君                 占部 秀男君                 小林  武君                 小柳  勇君                 石本  茂君    国務大臣        厚 生 大 臣  坊  秀男君        労 働 大 臣  早川  崇君    政府委員        厚生大臣官房長  梅本 純正君        厚生大臣官房会        計課長      高木  玄君        厚生省公衆衛生        局長       中原龍之助君        厚生省環境衛生        局長       舘林 宣夫君        厚生省医務局長  若松 栄一君        厚生省薬務局長  坂元貞一郎君        厚生省国立公園        局長       大崎  康君        厚生省社会局長  今村  譲君        厚生省児童家庭        局長       渥美 節夫君        厚生省保険局長  熊崎 正夫君        厚生省年金局長  伊部 英男君        厚生省援護局長  実本 博次君        社会保険庁長官  山本 正淑君        社会保険庁医療        保険部長     加藤 威二君        社会保険庁年金        保険部長     網野  智君        労働大臣官房長  辻  英雄君        労働大臣官房会        計課長      東村金之助君        労働省労政局長  松永 正男君        労働省労働基準        局長       村上 茂利君        労働省婦人少年        局長       高橋 展子君        労働省職業安定        局長       有馬 元治君        労働省職業訓練        局長       和田 勝美君    説明員        厚生大臣官房企        画室長      首尾木 一君        厚生省人口問題        研究所人口資質        部長       篠崎 信男君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○主査及び副主査互選昭和四十二年度一般会計予算内閣提出衆議  院送付) ○昭和四十二年度特別会計予算内閣提出衆議  院送付) ○昭和四十二年度政府関係機関予算内閣提出、  衆議院送付)     —————————————年長者井川伊平主査席に着く〕
  2. 井川伊平

    井川伊平君 ただいまから予算委員会第四分科会を開会いたします。  本院規則第七十五条によりまして、年長のゆえをもって、私が正副主査選挙管理を行ないます。  これより正副主査互選を行ないますが、互選は、投票によらず、選挙管理者にその指名を御一任願いたいと存じます。御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 井川伊平

    井川伊平君 御異議ないものと認めます。  それでは、主査多田省吾君、副主査内藤誉三郎君を指名いたします。     —————————————   〔多田省吾主査席に着く〕
  4. 多田省吾

    主査多田省吾君) ただいま皆さまの御推挙によりまして、本分科会主査をつとめることになりました。ふなれではございますが、皆さま方の御協力を得まして、責務を全うしたいと存じますので、よろしくお願いいたします。  速記をとめてください。  〔速記中止
  5. 多田省吾

    主査多田省吾君) 速記をつけて。  審査に入ります前に、議事の進め方についておはかりいたします。  本分科会は、昭和四十二年度一般会計予算、同特別会計予算、同政府関係機関予算中、文部省厚生省労働省自治省及び科学技術庁所管を審査することになっております。議事を進める都合上、本日は午前労働省、午後厚生省、明二十三日は自治省、二十四日は午前科学技術庁、午後文部省という順序で進めていきたいと存じますが、御異議ございませんか。  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 多田省吾

    主査多田省吾君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  7. 多田省吾

    主査多田省吾君) これより昭和四十二年度総予算中、労働省所管を議題といたします。  まず、政府から説明を求めます。早川労働大臣
  8. 早川崇

    国務大臣早川崇君) 昭和四十二年度一般会計及び特別会計予算中、労働省所管分につきまして、その概要を御説明申し上げます。  労働省所管一般会計歳出予算額は、一千五十一億六千八百四十五万四千円でありまして、これを前年度当初予算額一千十五億五千百六十八万円に比較いたしますと、三十六億一千六百七十七万四千円の増加となっております。  次に、そのおもな内容について概略を御説明いたします。その一は、積極的雇用対策推進に必要な経費であります。今後のわが国の労働力需給は、新規学卒労働力の減少を中心労働力不足基調が一そう強まることが予想されますが、他面人口構成高齢化技術革新進展等により中高年齢槽の職業転換問題など、労働力需給について種々の不均衡や摩擦現象の発生が予想されるのであります。このような情勢に対処し、このたび雇用対策基本計画を策定し、政府全体が雇用問題に取り組む体制を確立し、この計画に沿って、労働者の有する能力を有効に発揮することができるようにするという観点から、労働市場センターの機能の整備、求人、求職者に対する雇用情報の迅速な提供、中高年齢者雇用促進職業転換対策充実移転就職者用宿舎大量建設雇用促進融資拡大等措置を講ずることといたしております。  次に、当面の問題に対処する雇用政策といたしましては、まず、炭鉱労働者に対しましては、炭鉱離職者が独立して事業を開始する場合に、自営支度金を支給すること、及び金融機関から借り入れる資金の債務を保証する制度新設することのほか、就職促進手当最高額引き上げ移住資金拡充など従来の援護措置充実するとともに、炭鉱離職者緊急就労対策事業等を引き続き実施することといたしております。また、港湾労働者に対しましは、港湾労働法に基づく諸施策実施するほか、雇用調整手当支給額改善港湾労働者福祉センター簡易宿泊所建設雇用促進融資の活用、職業紹介体制充実強化などの措置を講ずることとしております。以上、これらに必要な経費として、二百五十六億二千七百四十七万五千円を計上いたしております。なお、炭鉱対策関係予算のうち、行政事務費を除く五十億三千三百五万五千円につきましては、今国会において新設が予定されている石炭対策特別会計に計上することといたしております。また、財政投融資計画中に雇用促進融資として百二十億円を計上いたしております。  その二は、失業対策推進に必要な経費であります。失業対策事業就労する者に対しては、雇用奨励制度中心として、一般雇用への復帰を引き続き促進するとともに、失業対策事業につきましては、就労者賃金引き上げ超過負担の軽減等積極的な改善を行なうこととし、これらに必要な経費及び失業保険国庫負担金に必要な経費として七百五十九億三千五百八十一万六千円を計上いたしております。  その三は、技能労働力質的向上対策推進に必要な経費であります。最近における技能労働力不足の激化にかんがみ、積極的に技能労働者養成をはかるため、事業内職業訓練につきましては、補助対象となる訓練人員拡大補助単価改善訓練施設に対する融資拡充等、その助成強化するとともに、公共職業訓練につきましては、総合職業訓練所一般職業訓練所身体障害者職業訓練所増設を行なうほか、就職困難な中高年齢失業者等に対する職業訓練などを実施することとし、さらに、技能水準を一そう向上させるため、技能検定職種拡大技能競技大会に対する積極的な指導援助技能者表彰制度新設技能オリンピック開催準備のための技能センター拡充整備等を行なうこととしております。以上これらに必要な経費として百三億八千九百六十八万八千円を計上いたしております。  その四は、労働災害防止対策及び労働条件近代化推進に必要な経費であります。労働災害防止につきましては、人命導車基本的観点から、労働災害に関する諸施策を強力に展開することとし、安全衛生局新設第一線監督指導機関強化等行政体制整備、第三次産業災害防止五カ年計画の策定、監督指導及び検査、検定充実労働災害防止団体活動充実強化等につとめるとともに、労務管理面からする交通災害防止対策をも進め、総合的に労働災害防止対策推進することといたしております。また、経済、労働事情の変貌の過程における賃金労働時間に関する問題の合理的な解決をはかるため、実効ある最低賃金制推進賃金制度改善指導、長時間労働の排除、社内預金管理指導等措置を行なうことといたしております。以上これらに必要な経費として十三億五千二百二万円を計上いたしております。  その五は、労働保険拡充整備に必要な経費であります。昭和四十二年度から労災保険失業保険を五人未満事業所に対しても全面適用することとし、今国会関係法案を提出いたしております。また、この際、事務組合による未適用事業主の加入の促進労災保険適用範囲拡大を行なう等、全面適用実施に万全を期することといたしております。なお、失業保険につきましては、低所得層に対する給付内容改善沖繩帰郷者等に対する失業保険相当納付実施等により、失業保険制度の健全な運営をはかることとしております。以上、これらに必要な経費として五十九億一千三百七十四万六千円を計上いたしております。  その六は、労働者福祉の増進に必要な経費であります。労働者福祉を一そう増進するため、労働福祉施設に対する雇用促進融資等拡充港湾労働者建設労働者に対する福祉施設拡充等をはかり、また、中小企業退職金共済制度について、その普及促進につとめるとともに、清酒製造業退職金共済制度新設し、さらに勤労者持ち家中心とする勤労者財産形成に関する施策検討啓蒙をはかることとし、これらに必要な経費として十六億三千三百七十二万九千円を計上いたしております。  その七は、恵まれない労働者層に対する対策強化に必要な経費であります。恵まれない労働者層に対して積極的な配慮を行なうこととし、これらの労働者層のうち、身体障害者については、労災リハビリテーションセンター増設義肢センター新設身体障害者職業訓練所増設をはかるとともに、身体障害名雇用する事業所作業施設、設備に対する融資制度新設し、その労働市場への復帰促進することとしております。出かせぎ労働者に対しましては、就労前の職業相談強化主要地における出かせぎ相談所新設通年雇用促進のための行政指導強化融資拡充内職相談員新設等その援護充実をはかることとしております。家内労働者に対しましては、最低工賃の決定、家内労働手帳制度普及等行政措置推進をはかるとともに、家内労働審議会において総合的家内労働対策の樹立のための検討を進めることとしております。また、愛隣地区に対しましては、公共職業安定所福祉センター等を設置し、同地区における労働者福祉就職対策とを総合的に推進することとしております。以上、これらに必要な経費として十二億九千六百六十万九千円を計上いたしております。  その八は、合理的労使関係促進に必要な経費であります。労使相互信頼協力精神基調とし、企業の実態に応じ、平和的、合理的な話し合いを通じて労使問題の解決をはかる慣行を樹立するため、労働教育等指導啓蒙に意を用いるとともに、労働紛争議の予防とその円満な解決につとめることとし、これらに必要な経費として十億五千五百九十七万八千円を計上いたしております。  その九は、婦人及び年少労働者対策に必要な経費であります。婦人及び年少労働者に対しましては、婦人が有する能力を有効に発揮するための条件整備家事サービス職業訓練実施内職相談施設拡充等婦人職業対策充実をはかるとともに、勤労青少年ホーム及び働く婦人の家の増設年少労働者職場適応対策推進など、婦人及び年少労働者福祉対策強化するほか、出かせぎ労働者留守家族対策推進農村婦人過労対策をはかるための調査の実施など、農村婦人に対する指導援助婦人地位向上対策を進めることとし、これらに必要な経費として三億九千六百八十一万二千円を計上いたしております。  その十は、中小企業労働対策推進に必要な経費であります。最近における中小企業の深刻な労働力不足等事態にかんがみ、事業内職業訓練実施、及びその施設設置等に対する助成拡大し、技能労働者養成確保とその技能水準向上をはかるとともに、中小企業集団に対して助成強化し、労働力確保労働条件改善労使関係の安定、労働福祉向上等に関する行政指導を統一的、一元的に実施することとしております。また、各種福祉施設増設福祉施設に対する融資拡大中小企業退職金共済制度普及、効果的な最低賃金制推進小規模事業場に対する労災保険及び失業保険全面適用等福祉対策充実をはかるなど、中小企業労働対策を総合的に推進することとしております。以上、これらに必要な経費として二百七十八億一千九百八十四万三千円を計上いたしております。以上のほか、国際労働行政充実、その他一般行政事務費等に必要な経費が計上してあります。  次に、労働者災害補償保険特別会計について御説明いたします。この会計歳入及び歳出予算額は、ともに一千三百十五億六千六百七十三万六千円でありまして、歳入のうち、保険料収入は八百五十一億六千八百五十八万一千円で、また、一般会計よりの受け入れは十五億円であります。また、歳出のうち、保険給付に必要な経費として六百八十七億五千二十三万一千円、労災病院等施設整備拡充のための労働福祉事業団出資に必要な経費として二十九億三千八百六十八万円を計上いたしております。  最後に、失業保険特別会計について御説明いたします。この会計歳入及び歳出予算額は、ともに一千九百五十億三千七百三万八千円でありまして、歳入のうち、保険料収入は一千四百三十六億七千七百万円であり、失業保険国庫負担金受け入れば三百九十億六千九百万円であります。また、歳出のうち、保険給付に必要な経費として一千五百四十三億六千八百万円、総合職業訓練所整備拡充移転就職者用宿舎建設等のため、雇用促進事業団に対する出資に必要な経費として百四十八億五十九万円を計上いたしております。  以上、昭和四十二年度労働省所管一般会計及び特別会計予算につきまして、概略説明申し上げたのであります。何とぞ本予算の成立につきまして、格段の御協力をお願い申し上げる次第であります。
  9. 多田省吾

    主査多田省吾君) これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  10. 小柳勇

    小柳勇君 労働大臣に質問いたします。  公労協関係労働組合賃金紛争中でありまして、二十四日には実力行動を含む行動を起こして、最終的な折衝段階にあるようでありますが、調停委員会進捗状況並びに解決見通しなど、政府見解をお伺いいたします。
  11. 早川崇

    国務大臣早川崇君) 公企体につきましては、日林労を除きまして、調停段階に入っておるわけでございまするが、その後労使公益の合議が非常に進んでおりまして、今明日を山といたしまして、調停がまとまるか、万一不幸にまとまらない場合には仲裁というようなことも考えられまするが、政府といたしましては、従来のような方式を今回は廃止しまし、あくまでも労使が誠意を持って、しかも、かなり具体的な二公社現業回答をいたしておるわけでございます。労働大臣といたしましては、こういうふうに労使公労協の場合にも調停段階の場において非常に歩み寄っていっておるという姿を私は非常に喜ばしいことだと思っております。
  12. 小柳勇

    小柳勇君 従来までも調停委員会労使がやっておったのでありますが、労働省は見ておられたのでありますが、現在の調停進捗状況は、今明日にでも解決する見通しでございますか。いま仲裁移行のこともちらっと漏らされましたが、どういうふうでしょうか。
  13. 早川崇

    国務大臣早川崇君) 見通しと言われますと、これは申し上げることはできないわけでありますが、まとまるように非常に強く私たちは望んでおるわけでありまするし、また、まとまる可能性労使公益一生懸命やっておりますから、可能性は十分あると期待いたしております。
  14. 小柳勇

    小柳勇君 調停委員会段階でまとまる可能性がある、こういう見解ですか。
  15. 早川崇

    国務大臣早川崇君) そういう可能性も非常に強いと……。
  16. 小柳勇

    小柳勇君 公労協の中で一部の組合に対しては、調停もなかなか問題にならぬというような情勢でありますが、そういう点についてはいかがですか。
  17. 早川崇

    国務大臣早川崇君) おそらく御質疑のことは国鉄のことだと思いまするが、御承知のように財政が非常に赤字で、国鉄自身としては、二公社現業のように六・五%、いわゆる前回の仲裁裁定のベースアップという意思表示使用者側はしておらない実情にあることは御存じのとおりでございまするが、まあこういうものも含めまして、二公社現業とそう差別の扱いというわけにもまいりますまい。それは公労委の場におきまして、労使公益三者の間で何らか国鉄人たちも納得するような線が出るかもしれない、また出ることも期待して公労委調停進行状態労働省としては見守っておる、こういう段階にございます。
  18. 小柳勇

    小柳勇君 国鉄赤字でありますから、政府のほうで何らかの措置を考えなければ調停は進まないのですが、政府としてはそういう方向解決をはかるというようなことですか。
  19. 早川崇

    国務大臣早川崇君) 使用者側はむろん国有鉄道総裁でありますが、担当大臣運輸大臣は国労その他動力車委員長に対しては、ほかの二公社現業と非常な差別待遇みたいな処置をしないから、まかせてほしいというところまで労働組合の幹部には言っておると聞いております。
  20. 小柳勇

    小柳勇君 運輸大臣政府を代表して、できるだけの措置をやるからまかしてほしい、こういうことでございますか。
  21. 早川崇

    国務大臣早川崇君) まかしてほしいということばまで言われたかどうか存じませんけれども、それに類したお話をされたということは聞いております。
  22. 小柳勇

    小柳勇君 いまの大臣見解としては、したがって、きょう、あす——あさってになりますと汽車電車がとまるということでありますが、きょう、あす中ぐらいには調停段階で一応のめでがつくであろう、いま労働省としては強制仲裁移行などの措置を考えていない、そういうことでございますか。
  23. 早川崇

    国務大臣早川崇君) これは公労委がきめることでありますけれども、まあ例年と違いまして、非常ないい線に進んでおるというように、私は多年の経験から見まして思っておるわけであります。しかし、これは使用者側だけでもいかないので、労働組合側も譲るべきものは譲る、使用者側も良識と常識によってまとめるようにしていく。ことしは非常に画期的な私は有額回答をされたと思います、従来の例から見まして。平均四千円を上回る公労協回答を、定昇分を含めまして出したということは、いままでにない画期的なことではないでしょうか。したがって調停の場というものが非常に自主的な前向きの話し合いの場になっておるわけであります。まあここまでくれば、労使公益ともまとめなきゃ、せっかくのこの非常な前向きの事態が実を結ばないということは非常に残念なことですから、非常に一生懸命にやっていただいておると聞いております。
  24. 小柳勇

    小柳勇君 最後の問題は公労委の問題でありますから、大臣からの見解は無理でしょうが、政府として汽車電車がとまりませんように最善の努力をされることを期待いたします。  次の問題は、最低賃金法の問題でありますが、先般答申が出まして、これがこれから実現していくわけでありますが、この答申に対する大臣見解を聞きます。  その第一は、答申が、三者構成でありながら、総評側委員が欠席のまま答申がなされておる点、それからいままでの業者間協定中心とするいままでの最低賃金法は反対であるということを私どもも主張し、労働組合側も主張して、全国一律の最低賃金制を主張してきたのです。かつて大橋労働大臣のときには、一、二年うちには全国一律の最賃ができるように善処したいという発言もあったような状態ですが、この二点について、今度の答申ではまだほど遠い感じがいたしますが、大臣見解をお聞きいたします。
  25. 早川崇

    国務大臣早川崇君) 最賃審議会の御答申は、総評側委員が欠席せられましたが、労使公益満場一致で御答申をされました。その内容は、ILO二六号の精神を尊重した方向への改正案でございまするので、政府としては非常にけっこうな答申であると存じまして、今国会に法案化いたしまして、御審議を願いたいと思っておるわけでございます。総評の、審議会最後段階に欠席されましたことは、そういう意味では非常に残念なことでありますけれども、有澤会長はじめといたしまして、労働大臣からも総評の堀井さんやその他代表者にも再三お願いをしたのであります。残念ながら最後の採決の場に出られませんでしたことは遺憾でございますけれども、今後最低賃金審議会はそのほかの、全国一律にするとか、地域別業種別にするとかというような問題も引き続き御検討願うわけでありますので、やはり民主主義というものは、自分の意見が通らなくては参加しないというようでは、これはもう審議会というのは成り立たないということは、それは大新聞の論説で私も拝見いたしました。そのとおりでございます。審議会に参加されて大いにひとつ御意見を述べてもらいたいと思っております。大橋労働大臣が、かって全国一律全産業一律というものは理想案であるということは申されたと承知いたしております。むろんこれは理想案でございます。私もそう思います。が、同時に大橋労働大臣も直ちにそういう立法をしろとは言っておらないので、現実にいろいろ格差もあれば、あるいは中小企業零細企業と大企業との差もございます。現実というものを見ろという御意見審議会委員の中にたくさんあるわけであります。こういう問題は最小限度業者間協定廃止というこのワクをまず立法化をいたしまして、ILO二十六号に適応するということをまずやる、これが今回の方針でございます。今後そういった問題につきましては、引き続き審議会で御検討をいただきたいと思っております。
  26. 小柳勇

    小柳勇君 昭和三十四年に、いままでの現行法ができますときに私どもは、私も審議に参加した一人でありますが、業者間協定では、日本の賃金の上昇なり労働者の生活安定には足かせになるということを主張してまいりました。今回審議会でこれが廃止になることは喜ばしいのでありますが、これでは欠点は除去しましたけれども、ほんとうの意味の最賃制というものは確立しない。一番大事な点は、いまILO条約とおっしゃいましたが、賃金労使対等できめるという原則がどうしても生かせてこない、審議会の最賃方式ではですね。そのことを私どもは主張しているわけですから、重ねてその全国一律最賃方式に対して労働大臣はどのような見解を持っておられるのか。この答申には、はっきり今後検討するということを明記してありませんから、そういう点に対する、答申のときに政府に対してどのようなことが述べられておるか、お聞きしておきます。
  27. 早川崇

    国務大臣早川崇君) 全国一律、全産業一律方式というのは諸外国でも採用しておらない理想的な一つの考え方でございます。労働大臣といたしましては、こういう意見も一つの意見、また日本の実情に合った地域別方式、産業別、職業別方式という御意見も、公益側あるいは使用者側、あるいは一部の労働組織の側の意見も出ておるわけでございます。したがって、そういうものも含めまして、日本の国情に合った最賃制のあり方を審議会で御検討をいただきたい、こういう意見を持っておる次第でございます。
  28. 小柳勇

    小柳勇君 もう一ぺん、第二点は三者構成であるべき審議会に一者欠席のまま強硬に答申がなされて、これが政府で採用されるということは、今後各種審議会答申のあり方にも大きな影響があります。こういうことで労働省は、三者構成であるべき答申が二者でなされたのを取り上げて今国会に上程されるということは、他の審議会に悪例をつくりますが、この点についてどうお考えになりますか。将来どうしようとお考えになりますか。
  29. 早川崇

    国務大臣早川崇君) 小柳さんは誤解があるのでありまして、審議会におきましては、中立系労働組合の代表、同盟系の代表も賛成されまして、労使公益全会一致でこの答申がなされたわけでございます。ただし、遺憾ながら総評側の中から出ておられます委員が欠席された、こういう実情でございまするので、その点は誤解のないようにしていただきたいと思います。
  30. 小柳勇

    小柳勇君 総評というのは日本でいえば一番大きい組織です。しかも全国一律最賃方式を唱えているのも総評が主流でございます。そういうものをオミットしながら、一部の労働者の代表が入ったから、これで労使双方の意見が合致したというそういう取り方について私は納得できません。労働大臣としてのとるべき見解ではないと思いますがどうでしょう。総評を無視するような答申を、これは労働者側の意見が入っております、そういうような取り方については納得できないのですが、いかがでしょう。
  31. 早川崇

    国務大臣早川崇君) これは審議会が御決定されたので、その事実をありのまま申し上げておるわけでございます。同時に、一つの労働組合総評はなるほど一番大きい労働組合でございますけれども、あの審議会の報告を聞いておりますと、全国一律、全産業一律でなければ一切審議会に入らない、こういう前向きのILOに沿った改正でも参加して賛成しないというのでは、もう審議会をつくらぬほうがいいですな、民主主義というものは。ですから、やむを得ず欠席のまま答申がなされたわけでありまして、むしろ小柳さんも労働組合の御出身でありますから、ひとつ審議会というものは使用者側もあれば、公益もあれば、中立労働組合もあれば、同盟もあるのですから、オール・オア・ナッシングという考え方でやられますと、これは審議会というものはやめたほうがいいので、もう少し、一歩でも二歩でも前向きの今度の方針というものは、たとえ全国一律、全産業一律の御意見を持っておりましても、これとは矛盾しないわけですから、民主主義のルールに沿って御参加されるように、いろいろ説得していただきたいと思っております。
  32. 小柳勇

    小柳勇君 そういう感覚が私は困るんですよ。労働大臣は行政についてはベテランと考えておられる、私どももそれは認めますが、一番大きな組合の意思というものをここに書いていないんですね、答申の中に。たとえば、総評全国一律最賃方式を最後まで主張されたが、ついに加わることができなかったが、そういうものについては将来も検討しようとか、書いてあれば、もっと考える余地もあったでしょう。そういうものを考えないまま、もう欠席したからやむを得ず、あと同盟が入っております、だから労働者意見も入っておりますが——というようなことでは、努力が足りなかったのではないかという気がいたします。もちろんその間の事情についても聞いておりますけれども、私はこの答申されたことは、これは審議会の責任でありますから、私どもがここで、それはもちろん意見がありますが言いません。私政府に言っているのは、これをそのまま取り上げて、これから全国一律のほうがはるかに理想論でありますというような考え方について、私は納得ができないわけなんです。全国一律方式についてもさらに検討するとか、あるいはさらに答申をするとか、そういうことを私は期待するわけです、どうでしょう。
  33. 村上茂利

    政府委員(村上茂利君) 基準局長でございますが、審議会の経過もございますので、私からお答え申し上げます。  答申をまとめるまでに、審議会会長の有澤先生、小委員長の所澤先生などが中心になりまして、総評代表の方々とも会われたわけであります。最初は公益委員全員が会われまして意見をお聞きになった。次は、会長と小委員長公益委員の考え方を内示いたしまして、意見を聴取した。こういう形をとったのでございまして、審議会の場には出席されませんでしたけれども、実質的に総評に対しまして審議会長、小委員長以下非常な考慮を払われまして、手を尽くしたというような経過に相なっております。しこうして、小柳先生御指摘の全国産業一律という考え方があるということすら答申に書かなかったというのはどういうことかという御指摘でございますが、この点、会長以下各公益委員としては非常に苦心をされまして、その点については、審議会答申の中にも「未だ審議を尽くしていない面もあって、現在までのところ委員の間で意見の相違もあり、また、わが国の経済、労働事情の推移の展望や諸外国における最低賃金制運営の実態等なお検討すべき問題も残っていると思われる。」という見解を示されまして、全国産業一律という問題、その他いろいろな問題につきましてここでは触れないんだ、そして答申の本文の末尾におきまして、「最小限の改正を行なう」と、そして「将来の最低賃金制のあり方については、その間においてできる限りすみやかに結論を得られるよう、引き続き検討を行なう」、こういう考え方を述べられまして、何とか事態を収拾いたしたいということについて、会長以下非常に苦心をされたように私ども承知いたしておるのでございます。しこうして、その答申を出した総会におきましても、全国産業一律といったような問題についてどうなるか、こういう点につきましては、今後における引き続き検討項目といたしまして、小委員会に審議を継続するにあたりまして、どういうことを検討してもらうかということを、答申を行なった総会におきまして、小委員会で検討すべき事項といたしまして、全国産業一律方式、あるいは地域別、職種別、産業別方式といったような方式の問題を今後の継続審議事項の第一にあげられまして、これを総会できめておるのでございます。そういう意味合いにおきまして、答申の本文には出ませんでしたけれども、今後の継続審議ということを答申しておきまして、その総会で今後の継続審議事項として何をあげるかという決定について、そういった方式についてまずあげておられる、こういうことでございますので、そういったいろいろの事情がございますことを御了承いただきたいと存じます。
  34. 小柳勇

    小柳勇君 ただいまの発言を速記に残しておいてもらいます。そのことを私は聞きたかったわけです。この本文の「将来の最低賃金制のあり方について」ということの中に、ただいま基準局長の言ったことは論議されておるし、確認されておるということを記録に残しておいてもらいます。  次の問題は、十六条方式中心にやりましても、現地のいわゆる最低賃金委員会の活動が十分でないとできないのです。十六条方式に移行しましても、十分にそのおのおのの最賃のきまりが非常におそい。時間的にもおそいし、いまのように大企業中小企業零細企業との格差の激しいときには、これが非常に大きな産業の発展にも足かせになっておりますので、今後希望するのは、これから二年間移行段階がありますけれども、その中で労使対等の原則を最賃審議会が十分に尊重してもらって、労働者意見を十分に聞く、その啓蒙活動を労働省としてやっていただきたい。このことを期待しておきます。いかがでしょう。
  35. 早川崇

    国務大臣早川崇君) 今度の改正は、まさに小柳委員のいわれる線に沿った改正でございまするので、十六条方式によるこういう労使対等の審議会につきましては、常に対等の立場で御意見を述べていただき、妥当な最賃が出るように心から期待もし、また労働行政としては指導してまいりたいと思っております。
  36. 小柳勇

    小柳勇君 第三の問題は、一酸化炭素中毒法の問題について質問いたします。去る十六日に労働災害補償保険審議会の会長から大臣答申がなされました。この法案についての取り扱い問題です。この内部についても若干問題がありますけれども、まずこれからのこの国会における労働省の取り扱いについてお聞きいたします。
  37. 早川崇

    国務大臣早川崇君) 一酸化炭素中毒特別立法につきましては、労災保険審議会から答申が出ましたので、社会保障審議会にまだかけなければなりませんので、社会保障審議会にかけまして、今国会に提案をいたすつもりで準備をいたしております。
  38. 小柳勇

    小柳勇君 それから内容に、国庫補助の金額、支給方法など、具体的にきめなければならぬことになっておりますが、話は済んでおりますか。
  39. 村上茂利

    政府委員(村上茂利君) 御指摘の点は、労災保険審議会答申の第六の項目にあるわけでございます。その指摘されております内容は、この特別措置に要する費用をどうするかという費用の問題については、「石炭鉱山に係るメリット保険料の問題として処理することが適当である」、まずこう述べております。それはつまり保険料の問題として考える。しこうしてその収支については、石炭鉱業における保険料率の収支の問題として考えるというのが第一になっておりますが、「なお今後その一部について国庫補助を図ることが望ましい。」、こういう指摘をいたしております。これは今後の問題として指摘しておるわけでございますが、これは先生御承知のように労災保険におきましては、昭和三十五年の大改正をいたしました際に、従来のけい肺等臨時措置法を廃止いたしましたが、あの従前の特別法によりまして、一部国庫負担があったわけであります。それが労災保険法の三十五年の改正におきまして、国庫補助という形で繰り入れられております。そこでそういう根っこがございますので、将来の問題として検討しろ、こういう趣旨を述べておるのでございます。いま直ちに予算その他どうこうしなければならない、ここまでは要望されていない、今後の問題として要望しておる、こういうふうに私ども理解いたしております。
  40. 小柳勇

    小柳勇君 一つの問題は、初めから問題になりました解雇制限の延長、それから配置転換、配置転換前の賃金保障及び障害補償についての特別措置などでありますが、これは今後に残されたと解しておるのです。この問題非常に重要でありますが、労働省見解を聞いておきたいと思います。
  41. 村上茂利

    政府委員(村上茂利君) 答申におきましては、労使公益三者が意見の一致を見ました点を八項目にわたりまして答申をされて、その答申の末尾に、「以上のほか、労働者委員から、基本的事項として解雇制限の延長、配置転換、配置転換前の賃金の保障及び障害補償についての特別措置について強い要請があったが、いろいろな意見があったので結論を得るにいたらなかった。」、こういう答申になっておりまして、この答申の表現どおり、いろいろ議論が戦わされたのでありますが、結論を得なかった、こういう形の表現になっておるわけでございます。で、この点、答申を受けました労働省側としまして、いろいろ検討しなければならないわけでありますが、この答申の表現にもございますように、いろいろ意見があって、非常にむずかしい問題であるということについては審議会の認識と私どもの認識とは全く一致いたしておるようなわけでございます。今後においてどうするかという点につきましても、審議会で結論を得なかった問題でございますので、直ちに労働省におきましてこれをどうこうするということについては、なお検討を要する問題だろうと存じます。ことに、解雇制限延長の問題、あるいは配置転換等の問題につきましては、労働条件の基本にかかわる問題としまして、労働基準法の解雇制限等とのかかわり合いが生じてくるわけでございます。そこで非常にむずかしい、困難な問題があるわけでありますけれども、答申は五月十六日に出たわけでございますが、まだ答申か出ましたその直後、一週間もたっておらぬわけでございます。社会保障審議会にこれから諮問いたす、こういう段階でございますので、まだこれについては私ども意見がまとまらなかったという状態のまま、これを受けとめておる、こういう次第でございまして、いま何とも申し上げられない段階でございます。
  42. 小柳勇

    小柳勇君 すでに起こっておる事故にも関連ある問題でありますから、ひとつ配慮していただきたいと思います。なお、この法律案は、政府で拘束するだけではなくて、ほかの私企業の問題もありますから、十分通産省などとも連絡をとられて、炭鉱災害に対する今後の予防措置並びに事故発生後の措置に十分な法律としてつくっていただきたいことを希望いたします。  次に移ります。次は婦人労働と育児施設の問題、先般からしばしば問題になっております育児休暇制度というものがありますが、全電通なり日教組の婦人部のほうで育児休暇制度をしたいという案が検討されつつある。私はいまの婦人労働、この労働力不足のときに婦人労働は、育児施設が職場にあれば、一緒に育児と労働と併存するほうがいいのではないかという見解を持っておる。したがって現在の婦人労働に対する需要状況及び育児施設について関係者から意見を聞きたい。
  43. 高橋展子

    政府委員(高橋展子君) お答えいたします。  近年の婦人労働のたいへん著しい動向といたしまして、既婚婦人がふえております。家庭を持ちながら職場に出て働いております婦人が全婦人労働者の四七%というような情勢を見せておるわけでございます。そこに当然に職業と家庭生活の二重の責任をどのように調和させていくかという問題が起こってきておるわけでございますが、御指摘のように、全電通その他では休職、休暇制度を試みられておられるように存じております。また一方におきましては、企業の中で保育施設を設けるということも見られまして、現在労働省が調査したところによりますと、企業内で保育施設を持つものが全国で約八百カ所というように数えられております。このような施設が設けられますことは、既婚婦人労働者がその能力を有効に発揮していくという上から、きわめて肝要な条件整備の一つであると考えますので、労働省におきましても託児施設等の設置につきましては、企業に対しまして融資等も行ないまして、その普及につとめておるところでございますが、今後も一そう強化してまいりたいと存じております。
  44. 小柳勇

    小柳勇君 いま融資の話がありましたが、その点もう少し詳しく話していただきたいと思います。同時に、企業内の育児所、いわゆる託児所、保育所に対して労働省としては援助する方向にあるというのかどうか。  それから厚生省のほうに聞きますと、正規の施設でありませんから、いわゆる知事公認じゃありませんからということでありますが、労働省として積極的にこれを育てようとしておられるのかどうか、その点。それからいまの融資の点をもう少し詳しく御説明願いたいと思います。
  45. 有馬元治

    政府委員(有馬元治君) 育児、託児施設融資の問題でございますが、これは昨年から実は福祉施設として雇用促進融資の対象に加えてまいりました。昨年は六カ所六件ほどの実績がございますが、今後ますますこういった施設充実のための融資拡充をしてまいりたい、かように考える次第であります。
  46. 小柳勇

    小柳勇君 たとえば電通なり教組なりで託児所をつくりたいという場合に、それに対してどこから貸すのですか。
  47. 有馬元治

    政府委員(有馬元治君) 電通のような大企業の場合は、この促進融資はほとんど自力でやっておりますので、いままで実績はほとんど中小企業に限られておりますけれども、大企業といえども、これは貸し付けの対象から除外されておりませんので、今後御申請があれば考慮したい。ただ、これは雇用促進するという観点からの融資でございますので、その制約はあらゆる場合にかぶっておるわけでございます。
  48. 小柳勇

    小柳勇君 わかりました。その点もう少し私のほうでも具体的に検討してみましょう。  それから「働く婦人の家」を今度増設するというようなことで、婦人労働者の待遇の改善の一部に列記してありますが、私ども見るところ、「働く婦人の家」というものが十分この労働省の文章に書いてあるように使われておらぬと思うのですが、いかがでしょうかね、状況を把握しておられますか。
  49. 高橋展子

    政府委員(高橋展子君) 「働く婦人の家」は、主として中小企業に働く婦人のために、その余暇時間の活用あるいは就業の相談、あるいは生活指導、あるいは託児サービスなどをあわせて持っているものでございますが、現在全国に十三カ所ございますが、その利用状況という点のお尋ねであるかと思いますが、私ども毎年館長を集めまして会議をいたしまして、その運営について指導を行ない、また随時おもむきまして、その運営状況等を調査しておりますが、私どもといたしましては、地域によってある程度利用の繁閑等あるようでございますが、総体的には館長以下非常に熱意をもって運営されておりますし、また地域の利用というものも婦人労働者の増勢とともに高まっておりますので、かなり効率的に運営されている、このように考えております。
  50. 小柳勇

    小柳勇君 婦人労働者と育児の問題、もう少し質問しとうございますけれども、私の見解は、婦人労働者が必要になっておるのに、育児のために働けないという人がたくさんありますから、内職するよりもやはり正規の労働の陣営に入って、託児所なり保育所を十分活用するという方向労働省としてもひとつ十分力添えをしていただきたいということを希望しておきたいと思います。  次の問題は、この前総括質問でもちょっといたしましたが、農業協同組合の職員が労働組合を結成しておりますけれども、どうもまだ十分活動しておらぬのと、基準法違反などで摘発されている、もう少しPRする必要があるし、基準法違反など摘発しながら待遇改善してやらぬと、農村の民主化はできないという見解でありますから、基準局長からひとつこの救済措置について聞いておきたいと思います。
  51. 村上茂利

    政府委員(村上茂利君) 従来労働基準法施行の監督につきましては、いわゆる工業的職種が監督の重点に置かれておりましたが、近年非工業的職種につきましても、問題のある業種につきましては、これを重点事項に取り上げまして監督をいたしておる次第でございます。ところで先生予算委員会、本会議で御質問がございました件に関連いたしまして、私ども昨年来からこの点について関心を持ちまして、ある県につきましては、かなり総合的な監督を実施したという実績を持っております。その結果労働時間、休日、あるいは割り増し賃金の支払いといったような問題につきまして、違反あることを把握し、その是正方を勧告しておる、こういう事実がございます。しこうして、これは特定の県だけの問題じゃなくして、全国的な問題でもあるというふうに考えましたので、労働省といたしましても、農業協同組合中央会に対しましてこの点申し入れをいたしたわけであります。しこうして、単に基準法違反だけにとどまらず、労務管理全体の問題につきまして、さらに近代化の努力が必要であると認めましたので、その点につきましても、あわせて農業協同組合中央会に申し入れをいたした次第でございます。しかし、いま先生御指摘のように全国的なPRなり、そういった努力についてさらに問題があるのじゃないかという点につきましては、私どももさように考えておりますので、監督行政実施上の——行政能力の問題はございますけれども、すでに問題のある業種といたしまして、私どもも十分な関心を払っておるわけでございますので、労務管理指導とあわせまして、法違反についてもさらに厳重に監督をして、指導をしてまいりたいと、かように考えております。
  52. 小柳勇

    小柳勇君 次の問題は、五人未満事業所失業保険労災保険の強制適用の問題について具体的に二、三点質問いたします。  一つは、事業所の把握及びその実態調査が十分できておるのかどうか、また具体的な例として、たとえばお手伝いさんなり、あるいは旅館の女中さんなり、すべて新法に入る。バーのホステス、そういう人も全部入るのだということで新聞でのPRはありますが、そういうものをもう少し詳しく御説明願います。
  53. 有馬元治

    政府委員(有馬元治君) 五人未満の事業所の把握、実態の問題、これは非常にむずかしい問題でございますが、私どもの推定によりますと、事業所の数が約百万、それに使われておる雇用労働者が約二百万、こういう推定をいたしております。したがいまして、現在五人以上の強適の事業所が五十七、八万の事業所に達しておりますが、事業所の数からいっても約二倍、被保険者の数は千九百万に及んでおりますが、二百万というのは約一割、そういう状態に相なっております。後段のほうのお手伝い、女中さんの問題は、これはあくまで雇用労働者を被保険者に考えておりますので、いわゆるお手伝いさんの家事労働者、家事使用人、これは入っておらないわけでございますが、ホテル、族館等の女中さん、ホステス、これは雇用関係にある方々が多いわけでございますので、今度の適用の対象に相なるわけでございます。
  54. 小柳勇

    小柳勇君 現在の強制適用の事業所で何割くらい未適用なんですか。
  55. 有馬元治

    政府委員(有馬元治君) これも失業保険労災保険事業所の把握のしかた等が違いますので、多少数字の出入りがございますが、失業保険の例で申しますと、五人以上のいわゆる当然適用——強適の部分につきましては、被保険者、労働者の側からいいますと、対象数が千九百四十四万七千人、こういう推定をいたしまして、これは三十九年の調査でございますが、これに対してすでに適用されておるものが千八百七十六万三千人、率としまして適用率は九六・五%、これを事業所で見ますと、五人から三十人程度のいわゆる小零細規模の事業所がたくさんございますので、対象事業所数が六十七万四千と推定されておるわけでございますが、すでに適用されているものが四十五万四千、したがって六七・四%、事業所の面から見ますと、五人以上の強適の部分についても一〇〇%ではないという状態でございますが、労働者の側から見ますと、九六・五%相当の捕捉率、実績をあげているつもりでございます。
  56. 小柳勇

    小柳勇君 私どもの調査と少し違いますけれども、三十九年の調査ですから。強制適用指導官というのが県下におられるようですけれども、非常に少ないという話です。現地の府県、皆さんの会議ではまあまあやっておられるでしょうけれども、私ども調べますと、なかなかむずかしいということですが、これの定員拡充の予定はありますか。
  57. 有馬元治

    政府委員(有馬元治君) 現在五人未満は任適になっておりますので、これを任適の制度のもとで適用拡大という方針で、御指摘の適用指導官というものを数年前から置きまして、その促進をはかっておるわけでありますが、現在のところは労災関係が六十五名、失保関係が六十名、合計百二十五名で、一県当たり平均いたしますと二・七名という状態でございますが、今年度の予算におきまして、それぞれ十五名ずつ増員をいたしまして、三十名の増員をはかっておるわけでございます。もちろんこの指導官だけで適用を促進するということは非常にむずかしい問題で、事務量からいってもむずかしい状態でございますので、今回の五人未満の拡大にあたりましては、失保と労災両保険の調整の一元化をやる。それからまた両保険でそれぞれ事務組合を結成さして、組合として適用把握をいたしておるわけでございますが、これらの事務組合も両保険統合いたしまして、そこで合理化をして、その余力をもって全面適用に踏み切っていく、こういう基本的な方向で対処してまいりたいと思っております。
  58. 小柳勇

    小柳勇君 大臣のさっきの方針にも、この事務組合のことが書いてございましたが、これで現在奨励金が失業保険の場合、五人未満の事業所の場合は保険金の一割、五人から十五人未満は保険金の五%ということで奨励金が出ております。労災保険には奨励金がないということですが、こういうものをもう少し引き上げまして、事務組合の結成なり活動を十分にしたらどうかと思うのですが、いかがでしょう。
  59. 有馬元治

    政府委員(有馬元治君) 現行の報奨金の交付基準は御指摘のとおりでございますが、今回の改正にあたりまして、両保険の事務組合の統合、しかもこれを積極的に活用して、五人未満の拡大適用に備えるという基本方針でございますので、御指摘のような方向で今後努力してまいりたいと思います。
  60. 村上茂利

    政府委員(村上茂利君) 労災保険につきましても報奨金制度があるのでございます。あるのでございますが、制度が発足しましてまだ一年ちょっとしかたっておりませんので、具体的に支給していないということでございますが、本年度からその支給条件が整いますので、整いましたものにつきましては報奨金を支給する……。
  61. 小柳勇

    小柳勇君 ちょっと内容説明してください。
  62. 村上茂利

    政府委員(村上茂利君) 予算的には九千百万円用意してございますが、その交付基準は政令で定めることになっております。
  63. 小柳勇

    小柳勇君 まだ政令がない……。
  64. 村上茂利

    政府委員(村上茂利君) 政令がございませんが、失業保険の場合の報奨金につきまして、低いとか、いろいろ問題もあるわけでございます。そこでどのような報奨金交付基準をきめるか。いろいろな意見も聞きまして検討いたしております。いずれ近くこの交付基準に合致する事務組合が出てまいりますから、それには当然間に合いますように政令を定めたい、かように考えております。
  65. 小柳勇

    小柳勇君 今度失保と労災が統合されるそうですから、それに一括されるのでしょうけれども、政令がないというのはもったいないことですから、早くしてください。現地で苦労しているのですよ。だから早急に政令をつくられることを希望します。  それからそれは強制適用指導官だけでは間に合いませんので、民間でいろいろ労務保険士などというようなことで手伝わしているわけですが、これを昨年か一昨年一つの案が出てまいりましたけれども、私どものほうで少し押えたのですが、もうこの際この労務保険士とか、まあ名前は適当でいいのですが、そういうものをつくったらどうかと思うのですが、それはどうでしょうか。
  66. 早川崇

    国務大臣早川崇君) 議員立法で前の国会で出ましたときに、私も党の政調会におりまして賛成をいたしたのでございますが、その後これは立法化まで至らないでそのままになっておりましたが、その後労務士とか何とか、名前をかたって不正をやるというような面も出てまいりましたので、いま小柳先生の御意見のように野党の方々も賛成してやろうというような空気やに聞いておりますので、労務関係、それから厚生省の保険関係、たいへん重要な仕事が、特に五人未満なんか実施いたしますと出てまいりますので、できましたら労務保険士というものを公的に一つの認定された職業としてできましたならば、非常に労働行政、厚生行政に役立つと思っております。よく検討さしていただきまして、議員立法でやっていただくか、あるいは政府で出すかということは、御趣旨に沿いまして検討いたしたいと思っております。
  67. 小柳勇

    小柳勇君 次は失業保険の改正の問題で、季節労働者の問題がまだ十分納得されておりませんが、先般も予算委員会で問題になりましたが、もう一回大臣から扱いを御説明願います。
  68. 早川崇

    国務大臣早川崇君) 季節労務者は御承知のように五十八万人現在おるのでございますが、主として積雪寒冷地帯、あるいは鹿児島のように非常に農業が貧弱なところが主体でございまして、今回五人未満の適用に関連いたしまして、御承知のように五十八万人が大体三百億円毎年給付金をもらっておるのでありますが、これに対して被保険者の払う保険料は大体約八億円になっておるわけであります。そういたしますと、結局八割近い膨大な給付金というものがいわゆる大会社に働く労働者や、あるいは使用主や、そういうものの不公平な負担によって出されている。こういう実情にあるわけでございます。したがって今回の改正におきまして、一部には保険の原理からいえば、こういう必ず毎年失業するというのは、これは保険じゃないじゃないか、これをぶったぎれという御意見も学者の中にもまた有識者の中にもあったのでございますが、まあ事実原理からいえばそうでしょう。火災保険にしても生命保険にしてもそうでしょう。しかし政治は現実でございますので、われわれといたしましては、現にこの五十八万人の保険を受けた実績のある人には既得権を認めてそのままにしようではないか、こういう基本線で出ておったわけでございます。これに対して中央審議会におきましては、さらにこの三十五才以上のいわゆる中高年者に対しては従来どおりという答申が出されたわけでございます。それ以外の三十五才以下の者には二回同じように従来どおりやるけれども、三回目からは二分の一に保険金の支払いを削減しよう、それでも十数倍の手取りになるわけですけれども、そういう答申が出されました。しかし、さらに今度の国会に出しました案では、もう一歩あたたかい措置を講じておるわけであります。それは三十五歳未満でも家族持ち、いわゆる世帯主ですね、この方にはやはり従来どおり引き続き非常に有利な保険給付を続けていこうというところまで配慮をいたしておるわけであります。そうなると、結局三十五歳未満で家族持たない、いわゆるひとり者の青年、こういうことになるわけでありまして、こういう人たちはいま何ぼでも人手不足で職業があるわけであります。むろん、その地域ではない場合がありますけれども、たとえば東京、大阪に行くと、付近幾らでもあるわけでありますから、まあひとりの青年という場合には三べん目から半分に減らす、その間に通年雇用される世帯主の場合は、幾ら仕事があっても、冬場は北海道に行く、今度は夏場大阪や仙台、東京へ行く、一ぺんも家族と生活する日が一年のうちにない、これは残酷じゃないか、こういう配慮をいたしまして、三十五歳未満でも家族持ちは従来どおりしていこうじゃないか、もうあとへ残るものはなくなっているような状態、そういうところまで妥協をいたしましたのでございます。なるほど三百億に近いその人たちだけの給付金というものは、今度五人未満に踏み切りますと、五人未満の失業者の多い階層でございますが、赤字が出てまいります。若干保険会計の将来については心配をいたしておりますけれども、その程度の妥協——これまた政治でございます、そこまで妥協いたして提案いたしておるのが実情でございまするから、決して季節労働者という人たちに冷たい、冷酷な仕打ちではないということだけは御理解賜りたいと思います。
  69. 小柳勇

    小柳勇君 この問題は納得するのじゃございませんが、長期に安定した仕事に全部をつかせるというのが原則でなきゃならぬと思いますから、そういう方向労働省としてもその抜本策を考えてもらいたいと思います。  最後に、いまの労災補償保険の農林水産関係業務に強制適用するかどうかという問題、これは前に農業に従事する人でも、法人の場合に機械を使うものは労災保険の適用になったのですけれども、その後農林水産業のものに強制適用するかどうか、この点を質問しておきたいと思います。
  70. 早川崇

    国務大臣早川崇君) 失業保険につきましては、いま任意適用でございますし、農業は季節的な事業がほとんどでございますから、任意適用の面でできるだけ配慮をいたしてまいりたいと思っております。  労災保険につきましては、基準局長からお答えいたします。
  71. 村上茂利

    政府委員(村上茂利君) 労災保険失業保険とちょっと保険の成り立ち方が違うわけでございます。雇用労働者である限りは今回の全面強制適用という線に乗せて検討いたしております。農業、非農業その他いろいろございますけれども、ちょっとたてまえは違います。ただ、政令で具体的にその内容を定めることにいたしておりますので、それを失業保険の場合とどのような形で歩調を合わせるかという問題がございます。かりに強制適用からはずすという場合におきましても、任意適用事業として扱うという場合もあるわけでございます。いずれにいたしましても、政令で具体的にきめる際に明らかにいたしたい、かように考えております。
  72. 小柳勇

    小柳勇君 農事法人、いわゆる雇用者である農業労働者全部適用するという方向ですか。これが一つ。  それからもう一つ、これはけさ陳情がありましたんで、通告しておりませんでしたが、緊急就労事業のワクの拡大と、これを期限をつけてくれるなという要望が切にありますが、緊就事業に対する労働省見解、以上で私の質問を終わります。
  73. 早川崇

    国務大臣早川崇君) 緊就事業につきましては、今回石炭対策に対する抜本政策を実施することになりました。期間、これは大体三年期限になっております。来年の三月で期限は切れますけれども、政府といたしましてはさらに三年間平仄を合わせまして緊就事業を継続してまいりたい、このように考えております。
  74. 小柳勇

    小柳勇君 ワクの拡大
  75. 早川崇

    国務大臣早川崇君) 内容につきましては、人員をさらにどんどんふやしていくという考え方はございません。ただ内容につきましては、緊就事業が自治体で非常に評判がよくていい仕事をずいぶんやられておるようでございます。そういう関係から自治体が非常にやりやすいんじゃないか、こういう御希望をよく耳にするわけでございます。できればいい仕事をしてもらうにこしたことはございません、せっかく国費を三十億も出しておるわけでありますから。また地方自治体がいまは二割負担をしておるわけであります。この負担の問題でも、ほんとうにいい仕事をしてもらうということであれば、これはもっと負担してもいいわけでございます。しかしこういった点をあわせまして、緊就事業というものをほんとうにいいものにしていくという考えは私は委員会でも申し述べておるわけでございます。せっかくの御意見でもあり、分科会は国民との対話という非常に実質的な委員会でございますから、十分御意見検討して、来年度から考えていきたいと思っております。
  76. 有馬元治

    政府委員(有馬元治君) 前段の農業法人の問題、これは非常にやっかいな問題が御承知のようにございまして、農林省当局とも今後の農政のあり方と関連いたしまして、私ども対処してまいりたいと思います。ただ御承知のように農業法人を設立して、失業保険目当てに設立しようという動きが三年ほど前にございまして、これはいま沈静化しておりますけれども、やはり私どもの考え方としましては、そういう形式的なものよりも企業の継続性なり、あるいは雇用関係の明確化なり、こういう実体を備えておらなければ、失業保険の適用問題としてはこの前提がくずれてまいりますので、その辺は農政当局とも十分今後連絡をとりながら、りっぱな農業法人の育成という方向で農林省も考えておるようでございますので、私どももその限りにおいては御協力を申し上げたい、こういうふうに考えております。
  77. 小柳勇

    小柳勇君 労災はどうですか。
  78. 村上茂利

    政府委員(村上茂利君) 労災の場合は、たとえば農林水産と申しましても、水産のほうは現在でも総トン数五トン以上の漁船による水産動植物の採補の事業、これは強制適用になっておるのです。それから農業につきましても、これはもちろん任意適用で加入できるわけでありますが、農業の中では雇用労働者でないものでトラクターなどの運転をするものは特別加入という方式で入る制度が現在あります。そういうことで現段階におきまして強制適用になっているもの、任適のもの、特別加入、こういう三つの制度がございまして、失業保険の関係とはパラレルになっておりません。そこで今後どうするかという問題がございますが、労働災害につきましては、季節性という問題は問題にならないのであります。先生御承知のように労働者であれば、常用でも臨時工でもパートタイマーでも何でも、労働者であれば補償するという、こういうたてまえでございます。問題はむしろいま職業安定局長から御答弁申し上げましたように、失業保険の場合にはいろいろ問題があるわけですけれども、したがいまして今後どうするかという点につきましては、筋としては労働の季節性というものは労災保険の場合においてはさして問題にならない、こういうふうに考えておりますが、その点御了承いただきたいと思います。
  79. 小柳勇

    小柳勇君 私の言っているのは、機械だけは、いまあんたが言っているように、労災適用は任意適用できるんだけれども、その他のものも、機械というワクをはめないで、農業労働者に対しても、今度の強制適用の際に労災に加入させますかと、こういう質問をしているわけです。
  80. 村上茂利

    政府委員(村上茂利君) その点につきましては、一昨年、法改正をいたしました際にも御論議があったのでございますが、一般の産業でございますと、基準法の適用を受けまして、災害防止についても使用者の義務が課せられておる。そういう災害防止努力にもかかわらず災害が発生した場合にどうするかという、災害の防止と一体の関係にあるわけでございます。ところで、農民の場合どうかと申しました場合に、そういう形になっていない。しかも、保険技術上、業務上の認定というものは非常に困難であるということからいたしまして、労災保険の本体であります雇用労務者に対する災害補償よりも、むしろ特別加入方式の雇用労働者にあらざるものに対する補償が、具体的な認定基準もない、ルーズに行なわれるということについては、均衡を失するじゃないかという労災保険審議会答申もございましたので、雇用労働者の場合に比して考えたときに、相当と認められる作業に従事するものについて、ひとつ特別加入方式を適用してみようということで、動力機械を使用する一定の作業について、まず特別加入を認めたわけでございます。  そこで、今後どういうふうに拡大していくかという点については、そういった観点から見ました実績をもう少し確認をいたしたい。そうしてまた、これは保険でございますので、保険経済的にどういうふうにはね返ってくるかという点も知りたい。もっと基本的には農業災害の災害率というものを考えるという問題もございますので、必要があれば拡大するという前提に立ちまして、基礎的な資料をさらに把握いたしたい、こういうことで農林省とも寄り寄り検討いたしておるような次第でございます。したがいまして、これは五人未満の強適とは切り離しまして、今後とも検討を進めていきたいと考えております。
  81. 小柳勇

    小柳勇君 ありがとうございました。
  82. 多田省吾

    主査多田省吾君) 以上をもちまして小柳委員の質問を一応終わりまして、次に、占部委員の質問に入ります。占部君。
  83. 占部秀男

    占部秀男君 総括質問のときにもお伺いした問題なんですが、地方事務官制度の身分移管の問題について二、三お尋ねしたいと思います。  この問題は、総括質問の中でも明らかになったように、総理は、事情が自分としてもうとい点があるので、この問題を研究して早急に決着をつけたいと、こういう答弁をされておるんですが、聞くところによると、労働省厚生省、運輸省が反対である。それから、自治省と行政管理庁はこれを賛成しておる。こういう中で労働省自治省との間に話し合いが行なわれておるというふうに聞いておるんですが、そういう事実はあるかないか、まずお伺いしたい。
  84. 有馬元治

    政府委員(有馬元治君) 行管、自治省等との間には、こういう問題についてかねがね意見の交換はいたしております。
  85. 占部秀男

    占部秀男君 そこで、労働省がこの臨時行政調査会の答申に事実上反対すると、そういうおもな理由はどういうところにありますか。
  86. 早川崇

    国務大臣早川崇君) 予算委員会でお答えいたしましたように、この職安行政というものは全国一律の需給調整ということになっておるのでございます。したがって、府県割拠主義、モンロー主義では職安行政は達成できない。第二番目には、ILO八十八号条約におきましても、職業安定行政は国の機関でやることをたてまえといたしておる次第でございます。さらに、最近は諸外国におきましても、御承知のように職安行政は、アメリカを除きまして中央機関でやっておる。アメリカは洲でやっていますけれども、これはステートでやっている。このステートでやっているのもうまくないので、連邦政府に移せという声も出ておるのでございまして、まあそういった特殊事情から、にわかにこの地方公務員にしろという答申には賛成できないので、慎重に検討いたしたいと申し上げたのでございます。  ただ、現地をずっと私視察してまいりまして感ずることは、そういうことよりも、いわゆる人事の渋滞、いわゆる職安は職安だけでずっといくと昇進、配置転換でほかの人は課長になっておる、あるいは部長になっている。地方公務員であればそういう点で、主として職業の内容よりも、そういう昇進とか、配置が変わるとか、あるいは課長になれぬとか、そういうことが不平のようでございます。これは非常に重要な問題でございますので、こういったことは労働省の行政として十分に検討の価値あることではないだろうか。そこでわれわれとしては、むしろ前向きに、労働基準監督局というのがございます。それから監督署がございます。片一方には職安というのがあるわけであります。こういったものの統合というようなことも、一つの検討していい問題ではないだろうか、労働行政機関としてですね。まあそういった重要な問題も含めまして、臨調のせっかくの答申でございますけれども、これはよほど慎重に検討してまいるべき問題だと、こう考えておる次第でございます。
  87. 占部秀男

    占部秀男君 いまの大臣の御答弁の中の最後に、統合ということも考えてみたいというお話がございました。これは現在の知事に対し機関委任しておる、そのことをやめて、国が一本化していこう、こういう考え方でありますか。
  88. 早川崇

    国務大臣早川崇君) これは二通りございまして、県の中へひとつこの労働基準監督署、監督局を統合して、いわゆる強力な労働局、労働部というものにするか、あるいは前段、私申し上げましたように、本来この職業安定行政というものは割拠主義ではいかないから、むしろ地方公務員からはずして国の出発機関にするか、まあどちらがいいか、私は後者のほうが妥当だと思いますけれども、また地方の知事あたりにお世話にならんならぬ問題も多々あるわけでございます。これはなかなかむずかしい問題で、この分科会で直ちに私はどちらとも申しかねるという重要な問題だと思っております。
  89. 占部秀男

    占部秀男君 まあこれはむずかしい問題であることは事実で、そのために二十年近くも未解決になっているわけですから、大臣の御答弁も、わけのわからないという感じは私は持っていないのです。ただ、いま大臣の御答弁の中で、労働省が反対しておる一つの大きな理由として、職安行政というものの全国一律の調整、いわゆるモンロー主義であってはならない、こういう御答弁があったわけでありますが、これはもう行政が広域的になっていく、労働の需給という問題が全国的にだんだんなっていく、こういう中において、私はこの全国的な調整は必要ではないということを言うわけじゃなくて、これはあると思うのであります。しかし、職安の実態自体を調べてみると、必ずしもですよ、今度の石炭の失対における形のような形ではなくて、そのうちのほとんどというものは、地域的な職業紹介という形がとられておるのが私は実態じゃないか。特に日本の場合には交通事情、住宅事情、いろいろありまして、求人は求人のほうで、地元の人を雇いたい、また求職をする人も、大部分自分の住まっておる住居から通勤の可能な範囲内でやっぱりつとめたい。これは今日職安の紹介行政といいますか、求職求人に対する行政の実態ではないかと私は思うのですが、確かに、中央において一つの調整的なコントロールをする機関といいますか、国の方針というかそういうものを私は必要であるということは認めますけれども、窓口業務、いわゆる日常業務自体は、これは現在のような地方的な形ででき得る問題であるし、また、できる必要がある現実状態になっているんじゃないかと、かように私は考えておるのですが、この点、大臣でなくてけっこうですから……。
  90. 早川崇

    国務大臣早川崇君) 実は、地方事務官制というのは、実にうまいことを考えたもので、実はこれは官選知事から民選知事に移った、そこで、百選知事の場合には、内務大臣命令で一元化がぱっとできたわけなんですが、民選知事に移ったわ、国の行政機関というものは、特に職安行政は人が事実移動するわけですね。だから、これは国で当然しなければならぬというので、まあ、厚生省の保健所などもそうかもしれませんが、もっと深刻に人が動いていくわけなんですね。そこで、国家公務員でありながら、地方事務官というか、民選知事移行の、巧妙なというか、日本だけの産物ができたわけでございますが、職安行政については、もう一つお忘れになっていただきたくないのは、憲法における職業選択の自由という問題が引っかかるわけなんです。ある県で、これは保守系の知事の県でありましたが、県内に中学校卒業生をとめておこうという考え、これは一つの考えでございます。そこで、中学校で県内に就業さす学校の補助金は、そういう学校のものは補助金をつけてやる、そうでないものはつけないということで、その県に若年労働力を固定化さした、現在おる知事ではございませんが。こうなりますと、いわゆる憲法の職業移動の自由を実質的にチェックしているというかっこうになるわけですね。だから、そういったことで、まあ職安行政だけはどうしてもやはり全国の国の機関として需給がなされるということ、それから失業保険の支給問題でも、そこの職場におると、今度こっちで払わなければならないのを一カ所に、労働市場センターで電子計算機を備えつけまして全国的にやっておるわけでありまして、これがなかなかむずかしい問題で、建設行政とか農林行政とか、あるいは厚生行政なんかは、別に人が移動してしまうわけではありませんので、そういった特殊事情をひとつ頭に入れて、この問題に取り組まなければならない困難性があることを、ひとつ御理解いただきたいと思います。
  91. 占部秀男

    占部秀男君 ただ、大臣が言われるように、困難性のある複雑な問題であるということは私もわかっておるのです。また、いまセンターを設けられて、全国的な需給の流動の状態を処理されようという、そういう方法にも私は賛成なんです。ただ、日常業務が、それだからといって、労働省労働事務官でなければできないか、ここに私は問題があると思うのですよ。いま言ったように、全国的な調整あるいは全国的な流動状況の情報、こういうものはもちろん、中央の労働省がやって地方に流して差しつかえない問題だし、また、行政指導もできる問題だし、特に機関委任の問題でありますから、大臣の行政方針というものは、これは直接知事に響く問題である。団体委任の場合とは違うのでありますから、相当これは強力にできると思うのです。ただ問題は日常業務で、現在のように知事に指揮監督権はあっても人事権がない。金の問題についても、知事には責任が持ちようがない。こういうような状態の中では、実際問題としてこれは日常業務自体に支障が、私はこのままいけば起こるのじゃないかということを心配しているわけです。  労働問題関係のいろいろな問題については、これは限られた時間でありますから、私はこれ以上は申し上げませんけれども、いずれにしても、どちらかに結着をつけなければならない段階にあることは明確なんです。その場合に、一体地方に日常業務を渡すか、渡さないかというところが急所になってくると思うのです。これは労働省意見とわれわれの意見とは違うかもしれませんけれども、やはり日常業務自体の主任を持たせる、責任体制をつくるためには、知事が責任を持てるような形に人事権をしていくか、それとも国のほうで全国的にやるか、どちらかをやらなければ、中途半端な現状になっていることば明らかなんでありますから、そういう意味で、私は、これは知事に責任を全国的に持たして、日常業務ができやすいようにしていくのが正しいのじゃないか。特にわれわれの統計、労働省の統一でも、求職の実態というのはやはりその地域地域にあって、全国的に流動させていくというような、物質的な条件もいまはないし、住宅、交通機関その他、ないし、当面やはり地域的に解決をしていかなければならない。これは全体を私言うのじゃありませんよ。ほとんどはそういう形で九割以上が行なわれているのじゃないか。こういう実態から見ても、この際は地方事務官制度に移行すべきじゃないか。こういう考え方で私は主張しているわけであります。  また、大臣は、ILOの八十八号条約のことを申されましたが、私もこの条約は知っておりますが、やはりその国によっていろいろ条件が違うと思うのです。労働省はどうもILO問題を出されておりますが、ほかのILOの条約では、そのわが国の特殊性というところで、非常にぼくたちにしたら心外な国内法をつくっている。ところが、事この問題に関すると、八十八号条約を金科玉条のような形で出されているというのは、私は納得できないですよ。そういう点、重ねて、非常にしつこいようですけれども、大臣でなくてけっこうでございます、ほんとうの事務の衝に当たる方でけっこうですから、お伺いしたい。
  92. 早川崇

    国務大臣早川崇君) ILOというものはあくまでもあれなんで、私は決してILOの条約をたてにとるわけじゃない。実は野党の皆さんがILOILOと言われるものだから、今度逆に申し上げたので、これは日本の国情に沿ってやるべきもので、むろん絶対的なものではございません。そういう意味でひとつお聞き賜わればけっこうだと思います。  ただ、地方事務官制というものの理解だと思うのでございますけれども、私は、職安の職員の士気をどう上げていくか、いわゆる人事が渋滞したり、昇進が県庁職員よりもどうこうというようなことを、ちょいちょい耳にするのです。むしろそれを私は非常におそれているわけでございまして、よく占部先生の御意見は御意見として承りまして、今後職安の職員の人事、身分というものはどうしていくか、よくひとつ、ここでは結論は出ませんけれども、よく承知いたしておりますので、検討してまいりたいと思います。
  93. 占部秀男

    占部秀男君 その場合に、大臣なりあるいは局長にぜひ検討していただきたいことは、いま大臣の言われた人事の渋滞の問題なんですが、これは一般職の——一般職といいますか、いわゆる地方事務官の係長以下の一般の吏員、事務官ですか、これの人事が渋滞しているのであって、課長級以上の人事はそのわりあいに渋滞してない。これは職安の場合でも社会保険の場合でも同じである。特に社会保険の場合には、社会保険の部長ですね、それから課長連中は、これは全国的な形で——部長といっても、これは東京の場合ですがね、各県は課長になっているが、これは全国的な形で異動しているのです。ところが、それ以下の職員は異動ができない。そうして職安行政なら職安行政の範囲内でぐるぐる回っている。社会保険の範囲内でぐるぐる回っている。そこで、地方別には状態は違うと思うのですけれども、私の知っておる限りでは、東京都をはじめ各府県では、もう五十くらいになってしまうと、みんな、かりに社会保険の場合でも、社会保険出張所ですか、事務所ですか、そこの所長も上げてしまって、そうして民間の社会保険関係との間の事務ですね、そういうような協会とか、あるいは何とかに入っていってしまっておる。これはつかえちゃっている。ところが、課長以上は全国的に流動しますから、これはつかえないですね。人事の渋滞というのはそういうところにある。むしろ地方事務官であるために人事の渋滞をしているわけです、率直に言って。というのは、各局の場合には、その財務局から保険あるいはまた衛生あるいは建設という、広いですね、一県なら一県という場が。都庁の場合なおさら広い。ところが、その一部分の社会保険なら社会保険、労働なら労働という、職安なら職安という、その限りにおかれておるのですから、したがって、よそに出ていくことができない。そういうところに人事の停滞の事実があるわけであって、むしろ大臣の言われた人事の渋滞というのは、私から言わせると、身分移管をしなければならない条件の一つではないかと逆に私は考えるわけです。しかし、これは御答弁は要りません。大臣も真剣にこの点については検討していただけるというのでありますから、きょうは分科会でありますからこれ以上結論は出しようがないわけでありまするので、私はこの点は念を入れて、どうかひとつ官庁のなわ張り根性でこういう問題が解決され、結着をつけたというような、そしりのないように、ひとつフェアな形でやっていただきたい。特に業務には人事が大事であり、人事の中心はやはりうませないということが中心なんです。大臣の言われた渋滞をさせないということが中心でありますから、業務をよくやらせるためにも、人事の渋滞を一そう避けていかなければならない。そのためにもひとつこの点は真剣に御検討願いたいと思うわけであります。どうぞひとつよろしくお願いいたします。  続いて私は、この身分移管の問題を打ち切りまして、職業紹介の問題について最近改善すべき問題が相当あるんじゃないかということを感じておるものでありますから、この点について一、二伺いたいと思うわけであります。というのは、労働力不足をしておるというこのことは、一方には若年労働の問題もあって深刻化しておるわけですが、他方には離職をするという人が相当出てきておる。特に最近中小企業の倒産というものがひどい。こういう中で何というのですか、労働力不足に対する対策が私は相当まだ不十分なものがあるんじゃないか。で、最近労働省でも、雇用基本計画等をつくって相当努力をされておるということについては、私も評価をするわけでありますが、まだ足りないんじゃないかという点が考えられるわけであります。  そこで、まず第一番にお伺いしたいことは、六大都市における職種別、年齢別に見て求人求職の状況がアンバランスが相当あるんじゃないかと思うのですが、そういうような実態があればそういうような現状と、これらの職業紹介上のいま問題点があればそういう点をひとつ明らかにしていただきたいと思います。
  94. 有馬元治

    政府委員(有馬元治君) 六大都市に限定いたしまして職種別、年齢別の需給関係の御質問でございますが、御指摘のような資料が、必ずしも六大都市に限っての資料が整備されておりませんけれども、六大都市に限って求人求職の倍率を見てみますと、これもやはりアンバランスがございます。東京で見ますと、求職の倍率がちょうど一・〇でございます。横浜も同じく一・〇でございます。名古屋は、これは非常に求人が殺到しておる状況で〇・四になっております。それから京都はやや緩和いたしまして一・五でございます。大阪は〇・八、神戸が一・五、北九州になりますと三・七というふうに非常に需給が緩和いたしております。それは六大都市を中心に見ましても、こういうようなアンバランスがあります。と同時に、これは全国的に見ますと、地域的なアンバランスが、御承知のように東北、九州、四国あるいは山陰、北陸というようなところと京浜、東海、近畿という工業地帯と比べますと、非常に大きなアンバランスがあって、六大都市内部においてもアンバランスがある。こういうふうな状態であります。
  95. 占部秀男

    占部秀男君 なお特別な職業紹介上の問題点はございませんか。
  96. 有馬元治

    政府委員(有馬元治君) 一般的に言えますことは、大都市においては、事務系の求職者が多くて技能系の求職者が求人に対比して少い。これは全国的にも言える傾向でございますが、都市部においても、大都市地帯においてもこの傾向は非常に著しいわけでございます。したがいまして、学校教育あるいは職業訓練の面における技能労働者養成確保ということが非常に大きな問題でございます。  それからもう一つの問題は、年齢別に見た場合の求人求職の倍率の違いが相当大きくあらわれております。これも全国的に見ても、都市部に、大都市について見ても同じ傾向が出ております。というのは、要するに、人口構成高齢化しておる、中高年についての求職求人の倍率がアンバランスになっておる。したがって、雇用政策の重点の第二点は中高年対策である、こういう観点から、基本計画においてもこの問題を重視いたしまして、各般の対策を講じていこうと、こういうことに相なっておるわけでございます。
  97. 占部秀男

    占部秀男君 大都市で事務系よりは技術系が少ないという問題は、あとで私は訓練所の問題に関連してお伺いしたいと思うのですが、これも資料をひとつ、きょうは突然の質問ですからごもっともだと思いますが、私の先ほど申し上げましたような点についての資料をひとつ後日出していただきたいと思います。
  98. 有馬元治

    政府委員(有馬元治君) できるだけ取りそろえて提出いたします。
  99. 占部秀男

    占部秀男君 そこで、一般的に言って中卒の人や高卒の新規の就職者といいますか、卒業生については、労働省も力を入れていると思いますが、各方面で職業選択の指導がやや積極的に行なわれていると私は考えておるのですが、この再就職をする人についての指導は、どうも単なる、何というのですか、求職者の希望を面接してそして受け入れをつくるというような点だけに終始をしておると私は思うのですが、現在のように再就職の多い場合には、この範囲というものをもうひとつ考えて、何らか新しい、新機軸というと少し大げさなんですが、対策を、もっと新しい対策を考えていかなければならぬじゃないかと、こういうふうに思うのですけれども、局長はどういうふうにお考えになっておりますか。
  100. 有馬元治

    政府委員(有馬元治君) 私どもの行政で一番力を入れておりますと同時に、非常に困難な問題は、御指摘の中高年、特に高年者、五十前後からの年齢層の再就職問題と、それから身体にハンディキャップを持っておられる身体障害者の方々の就職問題、これが非常に重要な問題でございます。したがいまして、ここに重点を置きながら今後の職安行政を展開していきたいと思いまするが、前段の問題といたしましては、すでに全国主要な安定所十四カ所に、中高年の就職コーナーをつくっております。今回、大臣の御指示によりまして、本年度から、いわゆる人材銀行を、さしあたり東京、大阪、名古屋、この大都市に新たに設置いたしまして、五十歳以上の年齢層について積極的な職業紹介体制を確立したい。身障者につきましては、ケースワーク方式によって適性の判定相談ということを窓口において懇切に展開してまいりたい、かように考えております。
  101. 占部秀男

    占部秀男君 今度の国会でですね、保険法の改正ですか、これがなされて、五人未満の事業所の適用拡大がされるというわけでありますが、これはまあいいことであると思うのですけれども、現在でも、職安の窓口といいますか、事務所自体は、失業保険業務の占める割合というものが多くて、相当事務量のうちの大きな部面を占めておって、本来の職業紹介といいますかね、これは相当圧迫されておるような形に置かれておるのですね。ところが、今度のこの適用拡大になると、ますます前者のほうの事務量が多くなって、何か紹介措置というものがなおざりにだんだんなってくるのじゃないかという心配があるわけです。これに対して、現状そういう心配があれば、そういう心配についての問題と、もしこれをどうするかということでさらに予算措置の問題がこれは改善の場合には含まれるわけでありますけれども、こういうような点についてひとつ考え方を明らかにしていただきたい。
  102. 有馬元治

    政府委員(有馬元治君) 職安行政の中核は、何といっても職業の紹介にあるわけでございます。したがいまして、御指摘のような心配が現在あるわけでございますが、率直に申しまして、安定所の窓口の業務量の点から申しますと、本来ならば七、三ぐらいの割合で、職業紹介に七のウエートをかけて保険に三というふうなウエートが理想だろうと思います。現実はこれが逆になっておるような現実もあります。したがいまして、私どもとしては、こういう状態の中でさらに五人未満に手を広げるということになりました場合に、安定行政の主客が転倒するのではないか、こういう点を非常に懸念をいたしまして、二、三年来、この状態をどうやって改善していくかという点に重点を置いて業務運営の改善をはかってきております。  その第一は、労働市場センターを設置して、機械化、合理化を徹底的にやる。この効果は一番失業保険業務にあらわれるわけでございます。それから第二は、現金扱いをできるだけ金融機関に扱ってもらう。口座振り込み制ということ。これはまあ若干組合筋に抵抗がございましたけれども、今後の行き方としてはこの方向をやはり徹底していくべきではないか。これによって相当の業務量が改善され、受給者の側から見ても時間のロスが非常に大きく節約される、こういう結果が出ております。で、今後の五人未満の拡大については、先ほどから申しましたとおり、徴収の一元化ということで徹底的な合理化をはかってこの事態に対処してまいりたい、かように考えておるわけでございます。
  103. 占部秀男

    占部秀男君 いま局長からのお話ございましたように、事実、扱いの事務量というものは逆のような形になっておるのでありまして、これに対して労働省としても、当面の対策を立てておられることは、私も了承したいと思います。ただしかし、いまの労働の需給状況から見て、ますます職業紹介の面は複雑になり、非常に事務量としても人手——人手が要るという言い方はおかしいのでありますけれども、量的にはふえてくるのではないかと思うのですね。そこで、いま局長の言われたような機械化の問題、あるいは現金の民間扱いへ委託の問題、いろいろ当面の何といいますか措置はあると思うのでありますけれども、いまのうちに抜本的にこの問題に入らぬと、私は相当あとで悔いを残すようなことがあるのじゃないかというふうに心配するわけです。これはもちろん予算面を伴う問題ですからそう簡単ではないと思うのですが、ひとつこの点については、もう大臣労働需給とそうした方面の客観的な条件というものをよく検討されて、この際抜本的にひとつこの問題と取り組んでいただきたいと思うのでありますが、その点、大臣、いかがですか。
  104. 早川崇

    国務大臣早川崇君) 確かに職業安定所は、私も現地をしょっちゅう見ておりますが、よくやっていると思います。今後雇用というものが日本の経済を動かす時代になってまいりましたことも御承知のとおりでございます。したがって、職業紹介、雇用行政ということが非常に重要な事態になってきておるわけでございます。保険行政もむろん大事でありますけれども、お説のように、コンピューターを利用しまして、これはアメリカの労働長官が来てびっくりして感心したような市場センターの設備でございます。これから、人をふやすよりは、そういう電子計算機による機械化というものを労働省は率先垂範して各省にはかっていきたい。それでどうしても人が足らぬ場合には、予算で来年度人員の要求もありますけれども、われわれ安易に人だけをふやすという考えは持っておりません。
  105. 占部秀男

    占部秀男君 私も安易に人をふやすということを言っているわけではないのです。機械化の問題ももちろんけっこうなのでありますが、やはり機械には限度がある。そこでお願いをしているわけですから、それでその点よろしくお願いしたいと思います。  次に、職業訓練の問題点についてお伺いをしたいと思うのでありますが、先ほど局長からのお話しの中にも、大都会でアンバランスの事情の中に、年齢別、あるいは学歴、あるいは求人求職の何といいますか率の問題等もありましたが、大都会の中じゃ特に事務求職は多いけれども、技術系の系統が少ないと、こういうふうに言われておるわけですが、私もまあそうだろうと思うのであります。その中のこれは主要な原因になるかどうかわかりませんが、やはり労働省職業訓練のあり方の問題が、やはりこれを解決するためには改善をしてもらわなければならぬ問題があるんじゃないだろうか。というのは、どうも最近、特に技能労働力不足に対処するための職業訓練ということでありますけれども、職業紹介とこの訓練とが必ずしも私は密着していないのじゃないかという感じを受けるのです。というのは、企業が技術を持った労働者を必要とするその技術と、そしてこの訓練所のほうで教えておる技術科目ですか、これとの間に必ずしもマッチしていない点が相当あるんじゃないかと、こういう点が結局この大都会における技術の系統の求人に対する求職を満足させる、その点が少なくなってきているのじゃないかと、こういう点を実は私は心配をしておるわけなのであります。  そこで、一つお伺いしたいことは、現在行なわれておる訓練施設と訓練の科目ですね、ずっとありますね、訓練科目は、公共職業安定所で扱っておる求人求職のアンバランスの状態とは必ずしも私は合致してないと思うんで、そういう点の実態的な問題を、何かありましたらお伺いをしたいと思うんです。
  106. 和田勝美

    政府委員(和田勝美君) ただいま御指摘のありました実際の需要と訓練の訓練職種あるいは訓練の内容の食い違い、こういう問題はこれはもう技術革新とか非常に産業形態、産業構造が日々変わってまいりまするので、どうしても宿命的にある程度の食い違いがあるということは、まことにやむを得ないことだと思う。また国としましても、一定のものを設備しまして、それを即刻変えていくということもまあできかねるわけでございます。そういうこともございますが、しかし、何といいましても現実の需要との調整をとっていくということは、これはもう訓練で当然必要なことでございますし、今後におきます技能の発展の傾向というものを見ながら、それに合わせて職業訓練を実行していくということは、当然私どもとして心がけなければならないことだと、かように考えております。そういうことからいたしまして、訓練をやります場合には、職業訓練法の定めるところによりまして設備の基準とか訓練内容とか教材とか、そういうようなものにつきまして、訓練基準というものをつくっております。これは中央職業訓練審議会に基準部会というのがございまして、そこで各専門家にお願いをいたしておりまして、各部門別に現在の訓練基準が妥当であるかいなかについての審査をいただいております。原則的に申し上げますと、三年に一回の割合で基準についての審査をいたしていただいておりまして、おおむね三年に一回ぐらいずつ、必要があればその訓練基準を変えていくと、しかし、もちろんその途中におきましても、いろいろの具体的な変えるべき現象が出てまいりますれば、三年にこだわらず変えてまいりますが、そういうことをいたしまして訓練と実際との乖離をできるだけ少なくするようにしていきたいと、かように考えております。もちろんその間におきましても、新しい機械設備、こういうようなものが導入をされるような場合におきましては、視聴覚教材、まあ見たり聞いたりするようなもので、実際のものはこういうものがあるというようなことをよく訓練生に教えるような措置を講じたい、こういうようなことでできるだけいま申しましたような方式によりまして、訓練と実際との食い違いのないようつとめてまいりたいと考えております。
  107. 占部秀男

    占部秀男君 いまの御答弁の中で、私、訓練行政をあまりよく知らないほうなんですけれども、訓練基準というのは、一つの訓練科目があって、その科目の中でどうどうどうしていこうという訓練基準ですか、それとも科目を選定することを含めての訓練基準ですか、どちらですか。
  108. 和田勝美

    政府委員(和田勝美君) 訓練基準それ自体は、ある科目についてどういうものをやるかということですが、基準部会では、単にあるものについての基準変更だけでなく、新しい職種についての訓練基準をつくるかどうか、どういう内容にするかということも審査をしていただいております。
  109. 占部秀男

    占部秀男君 実は最近、私赤羽の王子訓練所ですか、りっぱなやつができましたね。あれを聞いて行ってもきましたけれども、見てきたんですが、何か応募者が定員に満たないというような、そういうようなことがあると言うんですね。せっかくあれだけのものができていながら、この時代にまことにもったいない話であると、やはりそういうことを考えてみると訓練科目の選定といいますかね、これは相当施設施設によって、その地域における技術の需要の状況を見て変更がこれ行なわれておるものでありますか、それとも行なわれていないんでありますか。その点はいかがですか。
  110. 和田勝美

    政府委員(和田勝美君) ただいまお話しのございました赤羽の訓練所でございますが、実はいままで養成訓練は主として中学の卒業生から訓練生を募集しております。しかし、東京あたりはもうすでに進学率が九割をこえているというような実情でございまして、相手方が絶対的に不足をしてくるというような問題がございます。単にこれは、東京が一番極端な例でございますが、そういう趨勢にあることは確かでございます。ただ、全国的に見ますると、現在訓練所の応募率は、一般訓練所で二・二倍、総合訓練所で二・九倍の応募率がございまして、全国的には心配がないと思いますが、大都会におきましては、進学率との関連で相当問題があるし、なお職種によって、非常に応募する者に評判のいい職種と悪い職種がある。しかしながら、必要性からいいますると、実は評判の悪いほうがむしろ需要が多い。まあこれはいまの青年諸君の職業選択の気持ちの問題もございますので、にわかに言えませんが、確かにいろいろの変化があるようでございます。
  111. 占部秀男

    占部秀男君 そういうような事情でありますから、これは一つには生徒の問題もあるのですが、私は、やはり企業がいろいろ設備を改善しているんで、それに対応できるような訓練指導員といいますかね、先生ですね、これの研修制度というものが年々やはり必要じゃないか。新しいものに対応する新しい技術の指導ですね、こういう点は一体行なわれておるのかいないのか。あるいはまた、この企業の設備改善に対応できるような訓練設備の改善というものは、もちろん予算の幅があるとは思いますけれども、改善されておるのかどうか、そういう点をひとつ。
  112. 和田勝美

    政府委員(和田勝美君) 訓練の先生であります指導員につきましては、その素質の向上をいたしませんと、このごろのように非常に変化の激しい今日にはとても対応できませんので、そういう点からいたしまして、私どものほうで経営をいたしております職業訓練大学校で指導員の養成を行なっております。これは高等学校を卒業した者につきまして、四年間教育をして指導員をつくっているということでございますが、需要に応じ切れないのが現在の状況でございます。なお既存の指導員、すでにやっていただいておる指導員につきましても、新しい技術、技能に適応していくためには、どうしても労働省あるいは訓練の総訓を経営しております雇用促進事業団、あるいは一般の訓練所を経営しております各都道府県で、それぞれ指導員の研修ということについて重点を注いでいかなければならないと思っております。従来とも労働省におきましては、中央再訓練講習会というようなかっこうで労働省で行なっておりますし、各都道府県におきまして、あるいは雇用促進事業団において、随時指導員の再訓練を行なっておりますが、特に四十二年度に、実は千葉に中央技能センターというのが完成をいたしまして、その目的の主たるものは、技能競技大会を行なうところではございますが、年間を通じてあいておるところがございますので、これを利用いたしまして指導員の中央再訓練講習会をひとつ大々的にやっていきたい、こう思いまして、大体四、五年計画を立てておりますが、四十二年度におきましては、十一職種の指導員の方五百人に対して十一回の研修を行ないました。一回は大体二十日間程度の研修を行なうことにしておりますが、こういうようにしまして研修をさらに強化することによって指導員の素質向上、あるいは現状に合った指導をするような体制を整えていきたい、かように考えております。
  113. 占部秀男

    占部秀男君 で、この六大都市における国と地方公共団体と、いわゆる事業団経営があるわけですが、この経営別におもな訓練科目別の応募者の数と、それから訓練生徒の数と、終了後の就職状況を知りたいのですけれども、まあいまそれをすぐ、こう言ってもなかなか無理だと思いますので、これはひとつ資料として出していただきたい。ただ、最後の、訓練が終了後の就職状況は、一般的にどういうことになっておるか、この点だけひとつお聞きしたい。
  114. 和田勝美

    政府委員(和田勝美君) 資料としては後ほど差し上げたいと思いますが、一応私どものほうで調べておりますものをここでかいつまんで御説明をしてみたいと思います。  従来の六大都市のほかに北九州を加えまして、公共職業訓練で各部門の代表的なもの六種目についてとってみたものによりますと、要するに、少年、青年諸君の養成訓練につきましては、一般訓練所も総合訓練所も、応募者がおおむね三倍程度でございます。その中で一番人気のありますのが、人気と言いますと語弊があるかもしれませんが、一番多いのが自動車整備工でございまして、相当の競争率でございます。  それから就職でございますが、就職はほとんど一〇〇%と言っていいと思いますが、九七・何%という、これは特殊事情のある方もありますが、ほとんど一〇〇%の就職を遂げた、こういうことでございます。
  115. 占部秀男

    占部秀男君 この再就職をするために訓練受講をする必要があるわけですが、この就労後に、就職した後の待遇、条件といいますか、賃金、そういうものが、就職前の場合と開きがあるかないか、そういう点を何か調査されたことはございませんか。もし資料があったらちょっと知らしていただきたい。
  116. 和田勝美

    政府委員(和田勝美君) 転職をされる方の訓練につきましては、転職訓練ということで実行しておりまして、その間訓練手当を支給をして、それぞれ生活のごめんどうを見ておるというようなことでございます。ただ、転職訓練の場合には、なかなかいろいろむずかしい問題がある。従来続けておられる職種にそのままかわっていかれるような方は、前の賃金とそれほど……、ある程度上がったりなんかするわけですが、全く新しい職種につかれる、大体転職者の半分ぐらいは前職と関係のないところにつかれるようでございまして、これはもし訓練とか何か間にはさまりませんと、賃金が下がるのは一般的だろうと思います。ただ、私どものほうで転職訓練ということで訓練をしておりますのを、傾向を見てみますと、平均的なことを申しますと、離職時には大体二万八千円ぐらいの賃金でありましたものが、訓練をしたときは同じか、多少上回る程度、同じじゃ困るじゃないかというお考えは、いま出しましたように、全く違った職種についてまいる関係もございまして、その新しい職種については新人であるというようなことを考えますと、今後とも努力をしますが、まずまずのところにいっているのじゃないか、かように考えております。
  117. 占部秀男

    占部秀男君 念のために、ぐっとダウンするような場合はあまりありませんか。
  118. 和田勝美

    政府委員(和田勝美君) いま具体的ケースについては詳細に知りませんが、ぐっとといいますよりも、多少下がっておる場合はもちろんあるだろうと思います。
  119. 占部秀男

    占部秀男君 最後に、これは大臣にお願いをして御意見を聞きたいのですが、身体障害者訓練施設の問題ですけれども、最近は交通災害が非常に多くなってきておる、あるいは労働災害も減ってはいない、こういうふうなところから、身体障害者職業訓練施設というものは、私は対策強化する必要が至急にあるんじゃないか、かように考えるんですが、概略でけっこうですから、そうした点について、大臣のお考え方をひとつ聞かしていただきたいと思います。
  120. 早川崇

    国務大臣早川崇君) 先ほどの職業訓練についてのいろいろな御意見を拝聴しておりまして、結局、いまの職業訓練は中卒を中心にしておるわけです。で、中卒を中心にした十二万五千人くらい毎年養成をいたしておるわけでございます。ところが、中卒というものは、職業訓練しなくても、もうどんどん飛ぶように売れるのが現在の状況でございます。もちろん、この技術を訓練してよりよき日本をつくるということが主体でございますが、今後の課題といたしましては、むしろ中高年、身体障害者、ほうっといたら就職できないという層に目をつけなければなりません。あるいは中年を過ぎた三十五歳以上の婦人とか、まあそういう労働力の需給関係から申しまして、当然職業訓練所の活用というものを再検討しなければならぬ段階にきておるわけでございます。で、そういう立場で事務当局に指示をしまして、いま申しましたような、むしろ就職がむずかしいような層に対する職業訓練というものをひとつうんと拡充していこうと考えておるわけでございまして、その中に身障者も入るわけでございます。現在八カ所訓練所がございますけれども、なおひとつ占部委員の御意見を体しまして、一そう、そういうほうっといたら就職しにくい人たち職業訓練に思い切って力を入れていく、中高年、あるいは中年過ぎた老人という方向に指導してまいりたい、かように考えております。
  121. 多田省吾

    主査多田省吾君) 占部委員の質問を終わりまして、次に、小林委員質疑に入ります。小林君。
  122. 小林武

    小林武君 私の質問はなるべく時間を短縮する意味で、簡単にやります。  大体、私の立場は、ひとつは雇用基本計画というようなもの、それから先ほど労働大臣が御説明になった一般会計のこの問題、それの中の問題を大体中心にしてやりたいと思います。  それで一番先にお願いをいたしたいのは、労働力の自由化という問題にからんでくると思いますが、万国博ですか、の中に三万人とかの外国人労働力を入れようという御意見があるわけです。私は、大体雇用基本計画というものを見た場合に、あるいは政府の出した四十年への挑戦に関する問題、それらを見ると、大体雇用の関係はかなりむずかしくなると思うのですよ。何かの雑誌で、大臣も、労働政策といえば雇用政策が最重点だという御発言もなさっている、ごもっともだと私は思う。そう考えると、あまり簡単にも考えられない雇用のこの労働力の自由化という問題についてどんな見解を持っているかということにもつながってくると考えますが、その問題をあまり長々とやると時間がかかりますから、当面、いまだれが一体三万人入れろということを、どこから出てきたのか。労働大臣は何か反対なさっているようですが、それはわかっております。わかっておりますが、どこから出てきて、一体賃金の関係ではどういうことになっているのかというようなことを、ちょっとお知らせをいただきたいのです。
  123. 早川崇

    国務大臣早川崇君) 実は万博に伴いまして、三万と言わないで十五万不足だと初め出てまいりまして、それ以後、土建業界とかいろいろ当たってみると三万人ということでございますが、これは片方、韓国、フィリピンその他で労働力を入れてくれという要請とからみまして、外国人労働者をぜひ入れてほしい、まあこういう要望が業界からあったわけでございます。
  124. 小林武

    小林武君 その場合どうなんですか。大体業界は、それについてまあ何かはかのところでもあったのですか。労働大臣としても、土工が足りなくてまあ万国博はたいへんだということを言っておられることをちょっと見たのですが、この場合は万国博側ですか、まあそう言っておけば一番いいと思いますが、万国博側では、これを入れることを、入れたいという気持ちがあったわけですか。
  125. 早川崇

    国務大臣早川崇君) 万国博側は政府の側でございますので別に聞いておらないわけでございますが、オリンピックというあれだけの施設も日本の労働力でやったわけであります。すぐ万国博だ、人手が足らぬというので、安易に、労働力がもう非常に豊かな時代の気持ちですぐ外国の労働力に飛びつく、そうすると、賃金がかえって安くあがる、ところが、外国労働力を入れましても、賃金に格差をつけるわけにいかないことは御承知のとおりなんで、政府といたしましては、この要請に対しては、はっきり閣議でも確認をいたしまして、お断わりをいたしておるのが現状でございます。
  126. 小林武

    小林武君 将来これは経済の自由化ということになりますと、当然企業は利潤の問題がからみますから、いわゆる低賃金のところにおいて労働力を求めるというようなところから、労働力の自由化なんということを言い出すのじゃないかと私は思う。まあ労働大臣も、遠い将来のことになると、それはわからぬというようなことをおっしゃっているようだが、そういうことで、私は将来のことはひとつさておいて、そういうことを頭に入れながらひとつお尋ねいたしたいのです。  日本は低賃金か低賃金でないかということですがね。私の考えでは、日本の高度の経済の成長政策というものは、やっぱり低賃金の基盤の中においてなし遂げられたと見ているのですよ、私は。そういう見解について、労働省側は一体どういうお考えを持っているのか。このこともあまり、じゃ、そうでない、そうだというような議論はあまりやろうと思いませんが、まず考え方として、あるのかないのかということを聞いておきたい。
  127. 早川崇

    国務大臣早川崇君) むずかしい御質問でございまして、過去の日本は労働力が非常に余っておりましたので、要するに、使用者市場を形成しておりましたが、最近は労働者側の市場に変わってまいりました。そういう意味では、製造業の平均ではイタリア並み、鉄鋼業なんかはイギリス並みとかなんとかいわれております。したがって、日米の賃金比較でも、十年前は日本はアメリカの八分の一の賃金でありました。先般最終的なレポートでは、五分の一ないし四分の一、しかも、向こうの物価差というものをあれしますと、かなりのところまで賃金がきておる。そういう意味ではもう低賃金時代ではないと言えるのであろうかと思います。ただ、いまなお中小企業あるいは農民所得、あるいは零細企業、あるいは家内職業に携わる婦人とか、こういう例を考えますと、残念ながら先進国、まあ先進国の取り方ですけれども、東南アジアや中共とか、そういうところに比べれば高賃金ですけれども、西欧先進国に比べますと、低賃金、低所得と言えるのではないでしょうか。
  128. 小林武

    小林武君 まあ私も、これは東南アジアとか韓国と比べて低賃金か高賃金かというようなことを議論することは、それはないので、米国とかあるいは西独、イギリス、それからイタリア、フランスぐらいまでまあ大体考えている。そうすると、私はやっぱり日本ではまだ低賃金だと言って言えると思います。しかも、この低賃金というような問題をとらえて、先ほど大臣のおっしゃるように、これを中小企業、零細な企業等を見てみたり、あるいは農家の農業の所得なりということを考えるというと、これはずいぶん問題点がたくさんある、こう思っているのです。そこでこれから、そのことの議論は抜きにして、そういう考え方を一応頭に置いて私は質問するわけです。  その前に、もう一つちょっとお尋ねしておきますが、日本の失業問題についても何か予算はずいぶん取っていらっしゃる。失業対策推進に必要な経費というものがあって、七百五十九億余りの予算を取っている。日本の完全失業者というのは何%ぐらいになっておりますか。
  129. 有馬元治

    政府委員(有馬元治君) 四十二年の一月現在で完全失業者が四十八万人でございます。失業率は一・〇でございます。
  130. 小林武

    小林武君 この失業率、この失業という問題を統計法上に考えるというと、日本の場合はほかの国と違うのですかね。たとえばアメリカならば、週においてどれくらいの時間働けば失業者になり、日本の場合どのくらい——私の知っておる限りでは、いままでは日本の場合は非常に、ちょっとでも働けばもう、だめだ。これは厚生省の問題にもいつでも引っかかる問題だと私は思うのですけれども、統計が、基準が違って統計をとったってだめなんであって、この点はどうなんです。
  131. 有馬元治

    政府委員(有馬元治君) 御指摘のように、欧米の先進国においては、経済構造が非常に近代化されておりますので、いわゆる失業率というものが、完全雇用状態測定の一つの基本的な判断資料になるわけですが、日本の場合、同じ定義の厳格な意味の失業者という調査をやって、いま申しましたような失業率になっておるわけでございますが、このほかに、いわゆる不完全就業の状態あるいは潜在失業と言われる状態がございますので、この失業率だけで日本の失業状態を判断するわけにはいかない。完全就業の状態をあわせて考慮しなければならぬという特殊事情があるわけでございます。
  132. 小林武

    小林武君 アメリカはあれですか、週に十五時間以上働かないと失業者、こういうことを私はものによって見ているのです。日本の場合、週一時間働けばこれはもう失業者の中に入らない。そうすると、四時間働けばいいのですか、大体月に。そうするとこれはたいした違いが出てきちゃって、実はきのうテレビでちょっと見たんだけれども、高橋圭三さんが、何かルンペン、浮浪者を相手にやっているのを聞いたら、あの中でも失業者に入らないのがあるわけですね。中には、たまに体の調子がよくなれば行商に出ますなんという人がいましたけれども、そういう人も失業者に入らない。私は、その点ではもう少し失業者というものに対する厳格な世間並みの統計をやっぱりやる必要があると思うのです。もし日本の場合に、私のやつはたしか昭和三十九年かごろのあれを見ているのですけれども、近いやつがわからなかったものですから、もし間違っていたらたいへんけっこうなことだと思うのですが、いまでも一時間なんということを考えているのですか、統計上は。
  133. 有馬元治

    政府委員(有馬元治君) 月のうち一週間、最後の一週間に一時間でも収入を伴う職業についた場合は、失業者でないというふうに厳格に規定されておりますので、日本の場合のように、食うためには働かなければならぬという場合には、そういう方々が失業者に入ってこないわけでございます。現に私どもがやっております失対労務者も、この中に入っていないというふうな状態でございますので、その辺の状態を勘案して雇用、失業の情勢を判断しなければならぬ、こういう特殊事情があるわけでございます。
  134. 小林武

    小林武君 これは労働大臣はその点ではあまり古くさい考えをお持ちのような方じゃないから申し上げるのですが、やっぱりこれは改めにゃいかぬですよ。どうですか労働大臣。週に一時間働けば失業者でないなんていうようなことをやって、雇用の基本計画なんというのを立てたら、これは妙なことになると私は思う。やっぱりその点ではもう少し近代的にものを考えなければいかぬですよ。それだからやはり失対の問題をお聞きすれば、今度は厚生省のほうに行けば、今度はちょっと何か働いたからといって取り上げたとか取り上げないとかという議論も出る。そういう点はひとつ改める気持ちを出すのが、やはり何といっても労働大臣の腕次第ということになるわけですから、どうです。
  135. 早川崇

    国務大臣早川崇君) 失業統計のあれは改められませんけれども、こういう国会の資料に提供するためには、不完全就業という数字がはっきり出ておるわけであります。これは大体昭和三十八年まで出ておりますが、大体二%内外ある。これを小林先生は頭に置いて言っておるかと思いますが、これは不完全就業ということで、はっきり統計上は出しております。
  136. 小林武

    小林武君 まあ改められないというお話なら、それは改められない理由がわからない。私はやはり雇用基本計画というようなものを、やはりこれから経済の先進国として日本が立っていくという場合には、そんなあいまいなことをやっちゃいかぬと思うのです。やっぱりもっときちんとした統計の上に立ってやるというかまえがなければ、私は問題にならぬと思う。これはひとつここらでやめましょう。  そこで、労働力の問題でひとつお尋ねしたいのは、定年制の問題ですね。これについて労働大臣は、定年制の延長ということをおっしゃっている。これはおもに民間のことだというのを、この間労働省からお伺いをいたしましたけれども、これは民間のことだろうが何だろうが、国のほうにもこれは影響してくることでございますから、これについて、どの程度のお考えを一体お持ちなのか。また、延長するとしたら、これは何か障害点のようなものがあってなかなかむずかしいのか、その点をお尋ねしたい。
  137. 早川崇

    国務大臣早川崇君) 定年制の延長は、主として定年が民間企業実施されておりまして、国家公務員、地方公務員には、特殊な裁判官その他を除きまして、定年制をしいていないのでございます。  そこで、御承知のように、民間企業に対しましては、若年労働力不足、他方日本人も寿命が伸びまして、五十五歳定年というものが現状に合わなくなってまいりまして、五十五歳以上の人の平均余命率が、戦前に比べましてやはり四、五歳延びておる、こういう状態から、もう大正時代からの定年制、それに首切りするということは、国全体の雇用から申して望ましくないというので、労働省見解を四月の六日に出しまして、広く企業、国民に訴えたわけでございます。そのときの障害は何かということでございますが、これは各企業企業自身のことより考えないという点が障害でありまして、大企業の場合には、若年労働力がこんなに枯渇しておりますけれども、優秀な企業には、率直に申しまして、中卒、高卒、あるいは大学卒のあれを優先的に雇用できる状態でございます。そういう立場からいえば、何も中高年をさらに五年延ばしてというよりも、若年労働力を持っていったほうがいいじゃないか、こういう議論がやはり一部に潜在的に残っているわけで、これに対して、私といたしましては、日本全体の雇用の状況を考えてもらいたいということを、いわばマグロのとろだけ食わないで、全体をひとつ状態を考えて定年延長をしてもらいたい。ただし、その場合には、もう一つの障害は、年功序列型賃金というそのままでは、どうしても五十五歳から六十歳になりますと能率も落ちてくる。特に、単純労働では落ちてくるわけで、そこでアメリカ、ヨーロッパ式のいわゆる能率給、職務給というものを加味されて、そのことによって企業が非常に経営上損することのないように、あわせてお考えになったらどうですかとアドバイスしておるのが労働省見解でございます。  国家公務員、地方公務員につきましては、定年制はございませんが、実際上五十五くらいで勧奨退職が行なわれておる。これもそういうものをなくするためには、佐藤臨調の答申どおり、六十歳前後の定年制をしくということによって、学校の校長さんとか教員とか、あるいは地方公務員、五十五歳くらいになるとびくびくしておるという状態をなくするように、はっきり老齢年金につながるくらいのところまで定年延長ということをお考えになったらどうですか。かように私は思っておるわけでございまして、目下行管、あるいは総理府あるいは自治省におきまして、その線で検討をしていただいておる、こういう実情でございます。
  138. 小林武

    小林武君 やっぱり年功序列型賃金というやっと、定年とはいっても、やや零細というより中小ですね、中小の企業というようなものは定年制をしかれておる。大企業といえども一種の終身雇用制のように考えているのですよ。これはまあ五十五とか幾らとかいうことはあっても、とにかく入れば大体定年が来るまでじっとしておられるという考え方がある。そしてそれに年功序功型賃金というものがついていると、でありますから、これは労働省ですから、ぼくが言わぬでもわかっていると思うが、一体、初任給なんというのは、いまのような状況の中からそんなに差はないはずですよ。だんだん初任給の幅というものは狭まってきている。しかし、どこらへ来たら打っちゃられるかというと、大体三十歳か四十歳ぐらいになると、ぐっと差がつけられる。これは年功序列型賃金、終身雇用制のうま味なんですね。とろを食えるわけはそこなんです。大企業が。とろを食えないようにできている、中小、零細は。だから、まあ労働行政としてほんとうに労働力の配分といいますか、そういうことを考慮した場合には、もうそろそろ定年制の問題を、ひとつ延長のことを私も賛成します。賛成するが、そこでやっぱりもう一つ考慮しなきゃならぬところは、日本の賃金体系なり何なりに労働省が積極的な一つの見解を持たぬというと、うまくいかぬと思うのですよ。労働者は得しているかというと、私はそうは思っておらない、ほんとうのことをいうと。大体年功序列型賃金なんというものは、総括してみれば損している、労働者が。これはもう教員の問題一つとらえてみましても、ソ連の教員の賃金体系とわれわれの賃金体系を比べてみましても、わが日本の場合は、これはもう損しています。計算してみればすぐわかる。だから、ぼくはそういう意味でひとつお考え願いたいと思うし、なお、大臣はそう言わなきゃならぬ立場にあると私は思いますが、率直にいって、国家公務員には定年制ございませんというようなことをおっしゃる。しかし、ないからなおひどいですわ。これは教員とか、自治体の人間の、ある特殊なところで話を聞くというと、定年制しいてくれというのがものすごい希望なんです。私はかつて日本教職員組合という組合にいたときに、五十五歳の定年をしいてくれという陳情を受けて閉口したことがある。なぜかといったら、男の教員でも、とにかく五十五歳になる前にとっくりやられてしまうのです。婦人局長、とっくり聞いてください。御婦人になればまだものすごい。いまお調べになっていると思うが、女教員はどのくらいで一体勧奨を受けているか。勧奨即これはやっぱりやめるということですよ、役所でも同じでしょうが。そうすると、これはもうまだそれよりか低い線でやられておる。だから、五十五歳の定年制なんというものは、定年制を延ばしてくれということじゃなくて、定年制をしいてもらいたいというぐらいのところに追い込まれておる。でありますから、私はまあ国家公務員の場合も地方公務員の場合も、定年制について、もう六十見当でというのはきわめて恵まれたところの、これはまあ線でありますから、私はひとつ国が模範を示さなければいかぬと思うのですよ。そういう点で大いにひとつ御検討いただきたい。これが一つです。  それからもう一つ、予算の面から見ましても、雇用基本計画から見ましても、問題になっておりますことは、技能労働の問題なんです。この技能労働の問題については、ちょっと私もまだふに落ちないところがあるんです。どういうことなのか、技能労働というのは。先ほど何か大臣がちょっと占部君の質問でやりとりしておるのを承っておるというと、何かなかなか雇用の機会をつかめないような者に技能労働をやるというようなふうにもちょっと聞こえたのですけれども、私は、技能労働というのはそうじゃないのじゃないかと実は思っておるのですよ。技能労働を重視するという新たなあれは、これは教育の問題から何から一切にからまってくる問題で、これはまあたいへんなことをやっている。予算面から見れば、これは大体、何というか、ちょっとつぎはぎだらけのような、急場の対策のようなことに見えますけれども、私は、とにかく政府の四十年の調査か何か見ると、昭和四十六年になると、中卒というのは一九%、高校の五五%、大学が二二%ですから、新規学卒労働力というものは高校と大学で七七%になるのですよ。もういまや中卒なんというのはものの数に入らないようになってしまいますね。その場合に、大卒とか高卒というようなものが技能教育というものの中でどう扱われるか。これは全くの社会主義の国で計画的に教育をやって——中国とかソ連の人間に聞いたら、日本の国民はわからぬ、なんであんなに文科系をたくさんつくって、そしてあとで就職できないなんということはおれのほうでは理解できないということを言った。私は、日本はそういう制度の中にあるからかまわないのであって、おまえのほうとは違うのだということを言ったわけですが、しかし、これは技能教育というものは、一体大学卒に対して技能教育をやろうとしておるのか、高卒に対して大いにやろうということなのか。そういう計画というものが、どうも私には雇用基本計画の中で読み取れないわけです。もしそうだとするならば、一体どんなめどがあるのかということをちょっとここでお伺いしたい。
  139. 早川崇

    国務大臣早川崇君) 先ほど占部委員にお答えいたしましたのは、あくまで従来の若年者に対する技能訓練を中心にするが、なお就職困難な人にも技能をつけるようにしたいと、こういう意味でございますので、その点は誤解のないようにお願いいたしたいと思います。  ただいま小林委員が御指摘のように、中卒を中心にした職業訓練、技能訓練というものは、御承知のように、もう東京では一割もいなくなっている。そこで労働省といたしましては、高卒を含めました技能訓練というものを来年度から実施し、来年度の予算課題として目下検討をいたしておる次第でございます。ただ、技能尊重という機運は明治以来、文科系尊重という非常に長い明治革命以来の風潮がございまして、菜っ葉服、ブルーカラーというものは御承知のように会社でも職員さん扱いされておらない、こういうことでいいんだろうか。また、学校教育の面におきましても、最近非常に改まってまいりましたけれども、技能あるいは技術というウエートが欧米諸国、むろんソビエトなんかは別ですけれども、これとは比較になりませんが、非常にウエートが低かったわけですが、最近逐次改善されつつあるわけであります。しかしながら、これをさらに技能を社会全般として評価するためには、大学出でもまだホワイトカラーで就職の機会があるのです。それで五年後を見越しておりませんのでそっちのほうの圧力がまだ加わっておらない。しかし、雇用基本計画その他を通じましてわれわれが一番心配しておるのは、技能者、ブルーカラーのなり手というものがだんだん少なくなってくる。そこで、中卒だけにたよっているのじゃなくて、高卒も——しかし学校教育自身ももっと技能を尊重していただく、会社ももっと技能を尊重していただく、こういう社会風潮を醸成していかなければならないわけでございまして、本日、ここへ来る前に、訓練局長がマスコミの人たちの——本日、技術オリンピックで、七月三日からスペインの技能オリンピックに行く二十名の選手がきまったわけでございまするが、マスコミでもひとつ、そういう技能オリンピックの人たちをスポーツの選手のように、やはりもうちょっと取り上げて——日本人はこの前、金メダル九つも取ったのですから——野球のプロ選手や肉体的なスポーツのオリンピックに比べて、あまりマスコミがそういう技能の英雄というものを大きな扱いをしないというんでは、社会が技能者を尊重しない、ブルーカラーを尊重しない、よごれた仕事をしないという社会になってしまうので、ひとつこういうものは大いに取り上げてくれということを、いま局長が言ってきたばかりなので、これは社会の明治以来の風潮、会社の考え方、学校教育の考え方、こういうものを総合的に全部を含めて、その中で労働行政というものの技能尊重——ちょうどドイツのマイスターやゲゼーレの制度のところまでいくのはたいへんですけれども、そこまでいく気はありませんが、技能院の創設とか、いろいろ考えておるわけでございまして、これはたいへん大きい問題で、労働省だけではまいりません。学校教育、文部省も御協力願わなければなりませんし、マスコミにも御協力願わなければならない。また、会社にも御協力願わなければならない、そういう時代にきておる認識でこの問題を取り上げておるということを御了解賜わりたいと思います。
  140. 小林武

    小林武君 マスコミの話も出ましたが、私は、やはり何でもかんでも大学出でなければならぬというようなことを、いまの教育の実態と、それから社会の状況の中ではとめるわけにいかぬと思うのです。教育ママなんて悪口を言うけれども、私は教育ママの悪口を言う気持ちに毛頭ならない。なぜならば、いまの社会の組織というものはそういうものなんです。大学さえ出れば何とかなるという仕組みになっておりますよ。それから労働大臣がおっしゃるように、何とか就職先があって将来を見ればやはり大学を出たものが得だ、こうなればやはり子供の将来を考えれば、だれだって親は教育ママになるのはあたりまえです。でありますから、ほんとうに教育というものが、その能力に応じたような、自分自身の好きなことをやって国のためになるとか、自分の成長発展のためにもなるとかいうためには、根本的に変えなければならぬのだが、それをマスコミに変えろということは少しおかしい。一番先に変えなければならぬのはどこかといったら、政府なんです、私に言わせれば。政府が変えなければならぬ。政府が変えろと言ったって、政府だって変えられぬ人があるから、これは総理大臣とか、政権を握っておる政党が責任を持たなけれ、ばならない。私は文部大臣に、一体、有名校、有名校というのははなはだぐあいが悪いから、有名校に偏重した教育をやめるためには、私学を出た役人が損するというやり方をやめたらどうかと言ったら、それは採用の制度を変えなければならぬから、とてもできないという話だった。これは私的な話し合いのときですが、こういうことです。政府ができないことを企業にやれとか、どこにやれとか、マスコミがやらぬのはけしからぬということを話したってだめだと思うのです。私はやはりそういうことが必要だということと、もう一つは、やはり身分とか賃金とかいうものがからまないところに、おまえさんたちはりっぱな腕を持っていますとか、オリンピックに行って何をもらってきましたということを幾ら強調したってだめなんです。賃金とか身分というものを尊重する。とにかく優秀な技能を持ったものにはそれを尊重する。私はあるパルプ工場の重役と汽車の中で一緒になって話をしたら、中卒ぐらいのところにほんとうに特殊な技能を備わせる、中卒ぐらいからやらなければならぬということを言うのです。こういうのがスイスの場合にはりっぱに実を結んでおるということをぼくに聞かしてくれた。そういう教育を受けた労働者というものがほんとうに社会的に尊重されておるかどうかというと、そういうことが実現されないで、おまえら一生懸命にと言ってもだめだと思うのです。そういう点は、いまのような時代にまでなったら、やはりきちんとそれに見合うところの待遇、賃金というようなものを裏づけした計画というものを立てられなければ私はだめだと思いますよ。この問題についてはこれでやめます。  次にお伺いいたしますのは、予算のその八のところに、合理的労使関係促進ということがあります。私は労使関係なんというものは、なれ合いなんということは、いまの資本主義社会の中においてやるなんということは間違いだと思う。お互いにルールをきめておいて、そのルールを駆使してお互いがやるべきだと思うのですよ。資本家は、肩をたたいてどうしてやろうという根性を起こしてはいかぬ。同時に、労働者は、おかしいことをやって陰で取引してやろうという根性もだめだ。はっきりとしたそこに労使のルールをつくって、そのルールを駆使してお互いががんばるのだ、その中にこそ私はほんとうに生産の高まりということが出てくると思うのです。早川労働大臣とぼくと共通の面があるとするならば、日本の経済これから発展させようという点ではこれは共通だ。そのためには一体どんなことをやるということになると、だいぶ違ってくる。特に違ったところは何かといったら、私は労使関係だと思うのですよ。この労使関係というのは、私の考え方だというと、労働者を従順に飼いならしてネコのようにするということではないと思う。これがこの予算の項目でなければならぬと思うのです。だから日本の労働者もむちゃくちゃやっちゃいかぬ、国際的な視野に立ってものを考えるということに、日本の労働者も早くならなければいかぬ、そういう観点に立っていったら、いまのあれはむちゃくちゃだと思うのです。これも一番先に政府がやらなければいかぬ、日教組に会うとか会わぬとか言っているのはどういうことですか、と私は言いたい。文部大臣は私の所管と違うからとおっしゃるなら、私はそれについてひとつ忠告を、閣議の際、国務大臣ですから、労働政策一般の面から見てもたいへんどうもぐあいが悪い、労働大臣が、大いに反省すべしというような意見をひとつ述べてもらいたいと思うのです。一体ああいう関係がどういうことになる。たとえば今度人事院と公労関係、あるいは公企労であるならば公企労の関係、みんなあるわけです。あなたのおっしゃるこの「合理的な」、ここは気に入りました、「合理的」というやつが。「合理的」ということが気に入った。やはり合理的でなければいかぬですよ、労使ともども。合理的関係というものから見て、一体いまの労使関係をどう御指導なさるおつもりかお聞きしたいのです。いまの日教組というのは代表的ですが、これについて何か御感想があったら承りたい。
  141. 早川崇

    国務大臣早川崇君) なかなかむずかしい労使関係の哲学みたいなものを述べろということでございまするが、私の考えは、結局労働大臣になるときに、総理に私の労働行政は何かと問われましたときに、一切の労使関係は同じ日本人であるという信頼感を基礎にしてやることだとお答えを申し上げました。いまでも変わりありません。そこで、私の労使関係と異なる労使関係の考え方というのは、いわゆる共産主義者の言うような、何でも階級闘争と革命路線というものをとらないということでありまして、対立は必要だけれども、対立の上に一つの共同の、共通の利益というものを、いわゆる対立だけで分かれてしまうのじゃなくて、対立の上に一つの合意という姿が望ましいのではないか。と申しますのは、企業に例をとりましても、果実が豊かにならなければ分け前も大きくならない、そこから考えると、いわゆる会社がつぶれても、非常に損してもという戦後十年までの労使関係というものは私たちはとらない、いわゆる革命的。そうでなくて、やはり企業も繁栄さす、そして配分も豊かに労働者がなっていく、いわゆる対立の中の共同ということを言っておるのでございます。問題は、官公労あるいは公務員の問題でございまするが、そういう観点から、公労協の問題は、調停委員会で実質的な回答もさせましたし、いいところまで労使関係が、今回初めて調停の場で実質的な合議が行なわれておる。これは私は非常な前進だと思う。まとまろうがまとまるまいが、そういう関係をつくるということが、労使の間で真剣に討議されておる、初めてでしょう、おそらく。そういうことを考えておるわけでございます。問題は日教組の問題でございまするが、ドライヤー報告に書いてありますように、中央交渉か、地方交渉か、政策的に御自由に選びなさい。そのかわり地方交渉でできた分は、国としても賛成しろ、中央交渉の場合には中央交渉で、地方にも強制力を持たせろ、こういう勧告でございます。ですから、日教組のほうも必ずしも中央交渉にこだわる必要はないではないか、法律のたてまえ上、地方教育委員会とやればいいわけであります。何か中央集権的に教員組合も考えるということは、この行政委員会の地方分権という本来の、かっての文部省で総括しておった時代の幻影を、組合のほうも持っておるということも言えるのでありまして、この問題がこじれて公務員審議会が開かれる、あるいは中央交渉、ほかの定期会合も開かれるということは、あまり好ましいことではないんじゃないかと思っておるわけであります。ただこの問題は、使用者側というか、当事者の、文部大臣の所管でございますから、私は一般論より申し上げられませんけれども、何か深い事情があるやにも聞いておりますけれども、私のほうから文部行政まで介入して、いまここで意見を述べることは差し控えたいと思います。
  142. 小林武

    小林武君 まあこれから長々やりませんけれども、ひとつやはり労働大臣労働行政をあずかる方ですから、御理解いただきたいと思うわけです。これ中村文部大臣のとき——これはひとつ聞いておいてもらいたい、文書交換をやっているんですよ。文書交換やってそしてその際に、いま問題になっております倫理綱領とか何とかそういうことをいま問わないで、結局そういう問題を条件として会うとか会わないとかいうことは言わぬ。とにかくこれからお互いに憲法と教育基本法をひとつ土俵にして、憲法と教育基本法をはずれたような話はやってもしょうがない。だから憲法や教育基本法というものを一つの土俵にして、とにかく話し合いしよう、どのくらい話し合いするかといったら、大体年に五、六回のことだと文部大臣も言っておるわけです。私はその間において多少ものを合理的にやろうとするならば、多少お互いにそこに意見の一致がなくても、やはり次々の大臣はそれを踏襲して、そしてあなたのおっしゃる合理的な労使関係、望ましい労使関係をつくるべきだと思うのですよ。ところがそれができないのだね。この間ぼくは、今度剱木さんが出て、剱木さんを苦しめるようなこともやりたくないから、剱木さんに提案した。剱木さん、いま団体交渉だとか何とかいってたくさん行ってやったらやりにくいだろうから、やはり代が変わったといってもスムーズにやるには、どうだ、最高幹部の二人くらいに会って、そこでそういういままでとにかくやったことについて両方とも引っかかるところがあったらその話し合いをして、そこを一つのとにかく何というか、これからのよりどころにして、少し仲よくやっていくようなやり方はできないかと言ったら、文部大臣熟慮しました。文部大臣二、三日考えられて、どうしてもできない。こうなると、これはやはり私は問題だと思うのですよ。何ぼ前の文部大臣の約束でも、文書交換したものをやらないというようなところに、合理的な一体労使関係は生まれるはずはない、これはけんかを売ったのと同じだと私は思うのです。これは労働大臣のお立場としてはなかなかむずかしい、それはけしからぬというようなことは言いかねるだろうと思うけれども、やはり国務大臣の一人として、一切の労使関係をやはり見るという目と、もう一つは、やはり教育というものはこれからの労使関係、経済の一切の中心になることは間違いないのです。その中で一体正常な労使関係ができ上がるということは、両方にとっての大きな前進だと思う。それをどうも何か共産党の手先みたいなことを言うのはどうもおかしいと思う。そんなことをやったら一つの労働組合小柳さんの国労だって、ぼくのほうだって——ぼくのほうと言っちゃ悪いけれども、ぼくの出身の労働組合にしたって、そんなことやったら持つもんじゃない、そんなばかなことをやったら。とにかく政党にも何も関係のない人間が九〇何%おるのですから、一%にも満たない数だ、政党に関係ある人間なんかは。そういう労働組合の中で、特に教員の場合には、インテリの数がわりあい多いわけですから、そんなことを言ったって通らないようなことを、あまり政府が目にかどを立ててやるというようなやり方は、やはり労働行政としてひとつお考えを願うように御発言を願えれば幸いだと私は思うのです。あとのところはやめます。だいぶみんなあきたようですから……。
  143. 早川崇

    国務大臣早川崇君) 私からお願いしたいのは、労使関係というのは任命権者、いわゆる人事の権限を持っている人と、雇われている人の会合が中心でありますので、いわゆる教員組合が県の教育委員会とそういった会合を真剣に持つことに御熱心でなくて、使用者でない文部大臣とは御熱心だと、こういう点が、私は労働行政はわからないですね。ですから、あくまで主体というものは、どうしても労働条件というのは人事と給与ですね。これは県の教育委員会ですから、その点も組合のほうもひとつ反省を促してもらわなければいかない。それから文部大臣と会うということなれば、むしろ政策全般ということになりますと、総理の定期会合というのがあるわけです。ですからドライヤー報告の線に沿いまして、それで片づくのじゃないか。こういうようないろいろな疑問を持つわけですが、いずれにしても小林委員の御提案でございますから、労働大臣としてもこの問題はよく検討いたしまして、文部大臣とも御相談してみたいと思っております。
  144. 小林武

    小林武君 一言。誤解があるといけませんですから申しておきますが、各県の問題ではそれぞれやっていますが、しかしそれは必ずしもうまくいっていないですよ。和歌山県をごらんになればよくおわかりになると思いますが、これはなかなかうまくいっていない。しかしそのほかの教育の問題については、これはユネスコ、ILOの教員の地位に関する問題、政府としての見解はともかくとして、日本政府は拘束されますよ、日本の政府ががんばっても。ILO関係において、無視はされません。これについては、ここでこれ以上述べませんが、これの精神は、話し合いを相互でするべきだということだけは間違いないですよ。年に五、六回と言っている文書を見ると、のべつ行って、交渉して、何でもかでもやろうというのではない、中央でやるべきもの、地方でやるべきものはおのずからあるということ。  もう一つ、この道では、全くあなたの場合は、とにかくしろうとでないから申し上げるのだけれども、戦前のとにかく文部省のあり方と、いまの文部省のあり方は全然違うということは、ここはやはりおかしい、専門家が見れば。これは少なくともいまの教育委員会の制度が変わり、それから文部省との人事の交流の問題、私は証拠を持って言うのですが、時間がないから言わないけれども、そういうことから言って、あまり早川さんらしからぬことを言うと、ぼくも気持ちがよくない。そこらでひとつお互いに努力することにしましょう。
  145. 多田省吾

    主査多田省吾君) 以上、小林委員質疑は終わりました。  次に石本委員の質問に入ります。石本君。
  146. 石本茂

    石本茂君 時間もあまりございませんので、簡単に二、三のことについてお尋ねいたします。  まず初めに母性保護を中心にいたしまするところのILOの百三号条約、これがなぜわが国におきましては今日批准に至っておりませんのか、その間の事情につきましてお尋ねいたします。
  147. 早川崇

    国務大臣早川崇君) この問題は、非常に技術的な条約でございまして、その基準になっておる問題が、わが国において必ずしも条件を満たしておらないわけでございます。と申しますのは、産前産後の休暇期間及び出産期間中の金銭というものの給付の基準を定めておるわけでございますが、御承知のように産前産後五週間という問題が、向こうのILOでは六週間、金銭給付は日本の健康保険では六〇%支給されておるのでございますが、条約では、ILOでは三分の二となっておりまして、そこにも条件が備わっておらない。こういう次第でございまするので、今日までまだ批准をしておらない状況でございます。
  148. 石本茂

    石本茂君 そうしますと、ただいまの女子労働者のためにきめてあります産前産後の取り扱い規定、そういうものの中に合致しないものかあるのだという具体的な御意見でございましたが、そのはかに何かさらに、たとえば児童手当のようなものにつきましても、これに関連があるものでございまするのかどうか、このことも一点お伺いしておきたいと思います。
  149. 村上茂利

    政府委員(村上茂利君) 大臣が申し上げましたのは、産前産後の休暇期間及び出産期間中の金銭及び医療給付に関して云々ということでございます。たとえば労働基準法の例をいま大臣が申し上げましたが、労働基準法の第六十五条で産前産後の休暇の定めをしておりますが、御承知のように産前六週間産後六週間になっておりますが、その産後のほうにつきましてただし書きがございます。これも先生御承知のように「五週間を経過した女子が請求した場合において」云々という、「医師が支障がないと認めた業務に就かせること」ができる、こういう例外がございますので、この条約の第三条の第二項を見ますると、「出産休暇の期間は、少くとも十二週間とし、」云々、こうなっておりますものですから、このただし書きがあるということがひっかからぬか、こういうような問題。それから、これは法律上の問題ですが、出産期間中の金銭及び医療給付を労働者のすべてに行なわしめるということにつきまして、もちろん条約では適用事業所をある程度限定いたしておりますものの、現在の健康保険等のたてまえから申しまして、この点が条約の備える要件を満たしていない。こういう問題がありますので、そういった制度的面におきましてなお相当改善をしなければこの条約批准は困難だ、こういう実情にあるわけでございます。
  150. 石本茂

    石本茂君 そういう事情のもとにありますがゆえにもちろん批准はいまできない、しかし将来のこのいまおっしゃいました事柄、いわゆる制度上の問題につきましては再検討なり、あるいはその段階に近づけるといいますよりも、合致させる時点というものについてお考えになっていらっしゃるのか。しかたがないからこのままでいいというお考えでございますのか。どうぞひとつ当局の御見解をお伺いいたします。
  151. 早川崇

    国務大臣早川崇君) 労働行政は、政府といたしましてはできるだけ国際機関でございまするILO条約というものを批准するという根本精神に立っておるのでございます。御承知のように百五号条約をすでに国会に提案しているわけでございます。百三号条約につきましても、そういった問題がなかなか日本の国情からいって直ちに結論に出ませんけれども、前向きに検討いたしまして、特に婦人の地位向上というのは私の労政の基本でございますので、よく検討いたしまして、条約の批准ができるように今後検討してまいりたい。いま直ちにここでこの条約に沿ったように産前産後の問題、金銭給付の問題につきましては、そのとおりすると申し上げかねる点も、よく慎重に検討してまいりたいと思っております。
  152. 石本茂

    石本茂君 どうも御意見をありがたいと存じますが、なお関連でございますが、日本の現在あります労働基準法等によりますと、非常にこれは女子労働者のためには恵まれたということばはちょっと行き過ぎかもしれませんが、非常によい制度であろうといつも考えて、ある意味におきましては感謝もしているわけでございますが、たとえば生理休暇などが認められております。これは非常に幸いなのでございますが、ところがこの産休代替、先ほど来雇用状況の問題等も含めまして女子雇用者がふえておりますことと、特に既婚者が相当程度職場の中に進出しております現段階におきまして、この産休代替要員制度というようなものが絶対に考えられないものでありますのか、あるいは検討し得る条件を持っておりますのか、これをお尋ねしたいのです。と申しますのは、これは女子教員の場合は、相手方は文部省というところがありますので、文部省の定員法の中にもうすでに産休代替員の制度が設けられております。予算的にも計上されております。ところが、その他の一般女子労働者、特に病院等に働いておりますところの、医療従事者である女子職員、この人々はその背景がいわゆる経営自体が非常にばらつきが多うございまして、国のものもございますが、ほとんど小さい事業所の経営でございます。ところが、この者が当然とることができる産前産後の休暇をとりますことによりまして、現場は現在非常な混乱をいたしております。特に不足ということから発生しておりますが、こうしたことから考えまして、いまそうした職場におります人がたの念願といたしまして、どこにこの問題を持っていっていいのだろうか。どう考えてみましても、持っていくところは労働省ではなかろうか。はたして労働省にそういう問題を持ち込みましたときに御検討願えるものかどうかということが一点出てきておるのでございますが、この点お伺いしたいと思います。
  153. 早川崇

    国務大臣早川崇君) 産前産後の有給制というのは、実は労働協約で病院でもやっておるところもございます。御指摘の点は、労働基準法で、法律でそこまでやれ、こういう御意見でございますか、そうじゃございませんか。
  154. 石本茂

    石本茂君 考えられますかどうかということを聞いているんです。
  155. 早川崇

    国務大臣早川崇君) それじゃ婦人局長からお答えいたします。
  156. 高橋展子

    政府委員(高橋展子君) お尋ねの点は、代替要員制度、それを制度化するという意味でございましょうか。現実には、任意な形で病院等におきましても、出産で休んでおります看護婦さんのかわりに、また別の方を配置しているというような努力は見られるように思われるのでございますが、それをたとえば教員の場合のように制度化したいというような御趣旨でございましょうか。
  157. 石本茂

    石本茂君 そういうことが女子教員の場合なら文部省という対象になる役所がありますので、いわゆる陳情なり請願、あるいは話し合いの場があるのでございますが、その他の一般女子労働者、いま申しました医療関係等におきましては、国のものもあります、県のものもあります、その他ばらばらにございます。経営主体そのものが、ものすごい格差がございますので、別々になっておりますので、どこにこの問題を持っていっていいのか、現在わからぬわけでございます。そういう意味でこういうことを制度化できるものかどうか。もしできるものとすれば、どこに持ち込んだらよいだろうかという——私はいまここで非常に、どう言いますか、ほんとうのしろうとの質問をしているわけで、そういうことができるものかどうか、できるなら、一体どこへ持っていったらいいでしょうと、いまの日本の役所のたてまえにおきまして、労働省に持ち込んでよいのかどうかということを、実は聞いているわけでございます。
  158. 村上茂利

    政府委員(村上茂利君) 生理休暇に限って申しますと、外国にも生理休暇の規定がおいてない国がずいぶんあるわけでございます。この点について、基準法上の生理休暇の制度を十分理解し、これが普及するということは、立法当初から私どもこいねがっておったわけでありますが、ただ、生理自体を病的なものとしてとらえるか、正常なものなんだというふうにとらえるか、そういった点について、社会の慣行なり認識がどうも必ずしも十分でないというようなこともございまして、この制度が的確に労働生活の中に浸透し、この規定どおりの休暇がとられるかいなかという点について、従来私どもも心をくだいてきたのでありますが、いまや普及段階を終わりまして、この規定が実際に生きてきた、こういう段階になってまいっておると思います。ただ、監督実施をいたしました結果、こういったものに抵触する事案も出てきておるわけであります。そこで、法律の条文はあるが、具体的な生理休暇をとり得るような客観条件整備されておらないということから、石本先生御指摘のような、いろんな問題が出てくるわけであります。  そこで、ここ数年来私どもやっておりましたものを申し上げますと、特に病院とか保育所勤務の女性の方々が、定員が少ないことによっていろんな問題を生じてきておる。実は生理休暇よりも肝心の休暇そのものが、休日そのものがとれないといったような問題があるわけでございまして、例年予算編成期に至りますと、労働基準局長命をもちまして、関係各省の担当局長にその点善処方を毎年のようにここ数年要望してきたところであります。そういうのが私どもの現状じゃないかと思っております。しかし、理解のある事業所におきましては、大臣が申し上げましたように、労働協約の中で生理休暇の際の代替要員を設けるという制度を設けておるようなところもございます。そこで六十七条の生理休暇をとらすように、この規定を守らすようにするというのは、結局私どもの行政責任でございますから、そういう観点で問題を進めていきたいと思っておりますが、ただ会社に強制をいたしまして守らすという場合には、会社の定員その他の問題ともからみ合う問題でございまして、直ちに行政的な、ないしは法律的な強制を加えるということは困難ではありますけれども、しかし指導といたしまして、この生理休暇に関する条項に違反するとか、違反するおそれがあるというような場合についての指導面ではいろいろ考えられ得ることでございますから、先生いま政府のどの機関に行ってこういった問題についての善処方を要望してよいかという御疑問がございましたが、生理休暇そのものに関連する問題といたしましては、私ども行政府としてできる限りの努力をいたしたいと思います。
  159. 石本茂

    石本茂君 いま私が申しておりますのは、生理休暇の問題ではございませんで、生理休暇もとれるほどに御配慮をいただいております法律がありますのですから、もし将来女子労働者雇用の確立をはかっていただきますためには、産前産後の休暇期間中におきます代替職員でございますね。この代替要員制度というものを国家のたてまえにおいて制度化できるものでしょうかできないものでしょうかということを聞いたわけでございますから、関連ではございましたが、そのことを聞いたわけではなかったわけでございます。
  160. 高橋展子

    政府委員(高橋展子君) 付言いたしますと、産前産後の休暇を婦人が安んじてとり得るように、またその間関連の業務が停滞しないために代替要員が必要であるというお話だと思うのでありますが、その点につきましては、私ども従来から一貫して啓発活動の中におきまして企業側がそのような配慮をするようにということの監視を啓発、指導を行なってまいったところでございまして、そのようなこともございまして、先ほど来話されておりますように、一部の企業ではそのような協約が成立して、代替要員がいわば制度化しておるというふうな状態でございます。今後のことにつきましては、この問題自体が重要になってまいると思いますので、私どもも検討させていただきたいと思いますので、またどこにというお尋ねでございましたが、私どものほうに御相談いただければ、私どもも勉強させていただきたい、そのように思います。  なお看護婦に限定いたしまして、国立病院の場合になりますと、またおのずから違うアプローチが出てまいると思いますが、一般的な行政ベースといたしましては、私ども婦人労働の問題として取り扱ってまいるということができるのではないかと思います。
  161. 石本茂

    石本茂君 どうも御意見ありがとうございましたが、ぜひこの一般女子労働という問題とあわせまして、産前産後の休暇をとられるようになっておりますが、しかしながら代替要員がおりませんために、職場をその時点においてやめるとか、あるいはまたそのことのために本人の意思でなくやめさせられるということが、現実にはたくさんあるわけでございますから、結婚してもよろしい、しかし妊娠をしたらやめてほしい、これは雇用契約ではありませんが、はっきりとそういうことが横行しておるわけでございますから、そういう意味で私はこのことをぜひ御検討願いまして、法律のどこのところに訂正して入りますのか、あるいは特例法が設けられますのか、それはわかりませんが、特に婦人少年局長さんにこの問題をひとつふところに入れていただきまして、何とか御検討願いたい。特に大臣におかれましても、女子労働者の問題を非常に配慮願っておりますが、いま申しておりますことは非常に具体的な、そして経営者との関連もありますのでむずかしいかと思いますけれども、これが将来の女子労働者にとりましての一つの大きな柱のような問題だと考えますので、御検討くださることを心からお願いしたいと思うわけです。  次に、この問題を打ち切りまして、本年度の、四十二年度予算を拝見しておりますと、婦人労働者労働力の有効な活用ということで、新しく新規予算も三点ほど、金額はたいして大きくありませんが、入っております。この予算書を拝見いたしますと、四六ページでございましょうか、非常にうれしいと思うんでございますし、特にここで女子パートタイムの雇用に関します適正化をはかるための促進費として、百五十万円近い金が入っておりますし、それからもう一つ、これも同じく金額は小そうございますが、看護婦とか助産婦などの夜勤の勤務実態を調査するということで経費が入っておりますが、これは具体的にどのようにこの予算を使われようとされておりますか。具体性でございますね、それをひとつお伺いしたいと思います。  なお重ねて、このパートタイムによりますところの女子労働者雇用が非常に大きく伸びてきておりますが、そこから発生いたします問題点として、何がいま労働省としてあるということをお考えになっておりますか、お伺いしたいと思います。
  162. 高橋展子

    政府委員(高橋展子君) お答えいたします。  第一の点は、新規の予算で女子パートタイム雇用条件適正化促進をあげております。その項目につきましての私どもの事業計画というお尋ねであるかと思います。最近非常に女子パートタイムの雇用が増加しておりまして、特に今後もいろいろな情勢からこれは増加してまいるのではないかと思われております。また、この女子パートタイムの特徴といたしまして、パートタイマーの多くは、比較的年齢が高い主婦であることが多いわけでございます。そのようなことを背景にいたしまして、従来から婦人少年局では、数次にわたりまして調査を行なってまいっておりますが、その結果、たとえば雇用の諸条件が明確でない場合であるとか、あるいは婦人自身が技能を持たないで、非常に安易に就職するためにその条件が低劣であるとか、いろいろな問題点が出てまいっているわけでございます。それで、今年の計画といたしましては、女子のパートタイム雇用の諸条件整備していくために、従来の調査に重ねまして、特に専門家によりますところの研究会議を設けまして、この問題についての総合的な研究をお願いしたいと、このような構想で予算を計上いたしたものでございます。その御研究の成果によりまして、今後のパートタイムの雇用条件であるとか、あるいは労働条件、あるいは社会保障、労働保護等の点につきまして、一つの指導的な理念が出されました上で、それを行政の上に乗せまして、パートタイム雇用についての指導を行なってまいりたい、このような構想で予算を計上いたしたものでございます。  それから、第二点の看護婦、助産婦等の夜勤等の調査でございますが、これは昨年の国会で先生から御要求並びに御指導のございました看護婦等の夜勤に関するところの問題、またそれに対処するべき行政の努力目標と申しますか、それらにつきまして、その後検討いたしました結果、昨年の十一月に、これもまた専門家会議でございますが、看護婦等の夜勤等に関する専門家会議というものを設けまして、労働衛生の立場の方々、あるいはお医者様の方々、あるいは人間工学と申しますか、そのような分野の先生、さらにまた厚生省等もお加わり願いまして、ただいま数次にわたりましてこの専門家会談を行なってまいったところでございますし、また、近くこの専門家会議の立案によりまして、全国的な規模で看護婦等の夜勤の実態、またそれが肉体的にどのような影響を及ぼすものかということの科学的な調査を実施する運びになっているわけでございます。で、予算はこれの会議を開催する経費でございます。
  163. 石本茂

    石本茂君 いろいろ気にかけていただいて、そして着々と方針に向かっていてくださることをほんとうにありがたいと思いますが、いろいろ調査の段階等におきまして、これは人の話でございますし、また実際見て知っていることでもありますが、いろいろな、女子労働者の場合には、何といいますか、雇用主との間に人間的なつながりといいますか、関係といいますか、案外そういうようなものが出まして、特に医療労働者——いま人も足りません、看護婦等特に足りませんが、そういうことから、かつての女工哀史以前のような問題が出てきている。まあ手かせ足かせといいますか、本日ここで具体的に言いたくありませんけれども、そういうことも調査の段階においてつかんでいらっしゃるようなことを承知しているわけでございますが、そういうものが浮かび上がってまいりましたときに、個々の現象でありましても、当局におかれましてはどのような、そういうものについての指導なりあるいは取り締まりなりをなされようとしておるのか、あるいは現にしておいでなさるのか、お伺いしたいと思います。これは基準局長さんからひとつ……。
  164. 村上茂利

    政府委員(村上茂利君) 労働時間、休日等の違反があることは、御指摘のとおりでございます。これについては是正勧告をいたすという手続をとっておるわけでありますが、国あるいは地方公共団体の施設になりますと、予算等の措置も伴いますので、民間の同一事業場とは違うという点もございます。それで先ほど申し上げましたように、いろいろ予算その他の点について改善方をお願いしておるような次第でございます。
  165. 石本茂

    石本茂君 先刻も御論議があったわけでございますが、たとえば五人以内の小さい事業所におきますところの被用者、これは一種の家内労働者と同じことに扱われておりますが、そういうものが非常に女子労働者の場合多いと思うのです、男子の場合もあると思うのですが。で、特に先ほど来申しておりますこの医療業者というのは、案外そういう小さな企業が多うございまして、そういうところにおります看護婦とか准看護婦とか、あるいはその他の助手とかというものが、もう私どもが言うまでもありませず、地域におきましても、みんなが目をそばだてるくらいにこの実例があるわけでございますね。朝五時ごろから起きまして、夜の十二時ごろまでも働かされている。しかしながら、それは法的な根拠を受ける労働者ではないのだということで見過ごされてしまっている。こういうことが、今後とも労働基準当局におかれましても、あるいは監督署当局におかれましても、いつも申しておりますように、法律があるじゃないか、法律に根拠するものなんだ、それはしかたがないんだというようなことで放置されてまいりますのか。やはりこの際、そういう零細企業におります者の、労働に従事する者に対しても何らかの特段の配慮といいますか、そういうものがなされようとしておるのか、もう一ぺん聞かせていただきたいのですが。
  166. 村上茂利

    政府委員(村上茂利君) 私どもは御指摘のように、むしろ零細な医療機関とか、そういうところに問題があるというふうに考えております。したがいまして、監督方針としましても、工業以外の、非工業的職種の中の問題業種と申しますか、そういうものを選びまして、重点監督を行なっておりますので、先生御指摘の問題は、まさにそういうような受けとめ方を私どもはいたしておるわけでありますが、したがって、今後その方針をさらに徹底いたしまして、十分監督指導を加えていきたいと思っております。
  167. 石本茂

    石本茂君 このことに関しまして、もう一つお伺いしますが、そういう監督なり、あるいはいろいろな対策をなさる場合、都道府県にあります婦人少年室あたりがなさるのか、あるいは地域にあります労働基準監督署あるいは基準局あたりが、何らかの方法でそれをなさるのか、その具体的な実際の方法をお聞きしたいと思います。
  168. 村上茂利

    政府委員(村上茂利君) 婦人少年局長は、法令解釈その他について法律上の権限がございますが、監督実施ということになりますと、労働基準局で行なっております。そこで先ほど申しましたように、労働基準監督の方針を立てまして、そしてそれに従って監督を実施しておるわけでございますが、先ほど申しましたように、看護婦、准看護婦の問題は、監督の重点にいたしておりまして、昨年六月ころの時期に、かなり徹底した監督を実施した実績がございます。監督実施の報告なども出ておりますけれども、時間の関係上この際は省略したいと思います。
  169. 石本茂

    石本茂君 できましたらその資料、後ほどでけっこうでございますから、ありましたらちょうだいしたいと思います。  次に、問題がちょっと変わりますが、最近しばしば大臣も申されておりますが、ILOの百号条約の批准が近いうちになされそうなように聞いておりますけれども、はたしてこの条約が批准されました暁には、いま地域におきましても、あるいは大企業におきましてもそうなんですが、必ずしも男子労働者と女子労働者が同じ待遇を受けていないと思うのです。先ほどありましたように、定年制の問題等についても、男子と女子の差がはっきり出てきている実態すらもございますし、それから賃金体系におきましても、同一職にありましてもやはり格差を持っておりますが、はたしてこれが批准されますことによって、現在労働基準法に示されてありますことが現実に実行されておらない時点において、この批准がなされますことによりまして、どの程度までそういう問題が整理されますのかどうか。何かそのことにつきまして、おおよその予想といいますか、なぜ批准するのか、批准することによってこういう利点が出てくるのだ、こういう点が改善されるであろうという御方針なり、御方策を伺いたいと思います。
  170. 早川崇

    国務大臣早川崇君) 百号条約の批准に踏み切りましたのは、先ほどるるお話のありましたように、どちらかといえば、婦人労働というものに対して現実には初任給は同じだけれども、だんだん格差が出てまいる。同じ労働の価値に対しても婦人のほうが報酬が少ない、こういうのは労働基準法の第四条によりまして、現実にたとえば超勤手当も婦人のほうが少ない、それから、同じ高等学校を出ておりながら、婦人なるがゆえに、男子の高校生よりも、初め採用するとき給料が少ないというような、企業でどんどん違反しておるわけでございますが、これは表に出てきただけの問題であって、潜在的にはたいへん多いと思うのです。百号条約を批准することによりまして、そういう婦人がどんどん雇用に出てきておる現状を踏まえまして、この条約の批准による婦人の勤労者の地位を高める世論を喚起していく。こういう意味では、宣言的、勧告的効果というのはたいへん多いと思うわけでございます。また、労働省といたしましては、従来大企業あるいは大きい労働組合の組織を持っておられる方々というのは、一応もう政府がとやかく言う——まあ、一人立ちになっておられるわけでございます。ところが、まだ未成年の勤労者といえば、婦人勤労者それから中小企業零細企業に働く勤労者の方々、また家内労働、パートタイムや内職の方々、こういう人たち労働行政の手をもっと差し伸べていく、こういうことが現時点における労働行政の基本姿勢でなければならないと存じます。いまお話のありました看護婦の方々のいろいろな、超過勤務なりあるいは産前産後の問題なり、こういうものをひっくるめまして、ILO百号条約を批准することによって、具体的に法律上どういう関係——たとえば女子の三十五歳の定年問題がございます。これは、労働基準法第三条の労働条件というものには婦人が入っておらない。ILO百号も賃金だけの問題である。直接関係はございませんけれども、この条約の中に流れる婦人平等という思想は、法律的な関係はないけれども、非常に大きい影響を与えてくるものだと、私たちは受けとめているわけでございますので、せっかく百号条約を国会で御批准願いましたならば、広範な婦人のそういう地位向上のために、いろいろ問題が出てくる一つの刺激剤になる、かように考えております。
  171. 石本茂

    石本茂君 たいへん御方策といいますか、方針に対しましては、私どももほんとうにしかるべきでありますし、ぜひ批准されました暁におきましては、このことを多くの国民にしっかりわからせるような方策といいますか、具体的な方法をおとりいただきたいことをお願いしておきたいと思います。  最後に一つ、これは関連したようなかっこうでございますが、女子労働者、特に中高年層の人に対します雇用のあり方といいますか、確立といいますか、そうした時点におきまして、現在、看護婦とか家政婦の紹介所がございます。あそこに働いておられます——看護婦の場合は非常にごく少数でございますが、家政婦の方はほとんど高年齢層の方でありまして、こういう人がたのために職業安定所の窓口業務の一部をあずかりましたようなかっこうでいるのが、あの紹介事業だと私は思うのでございますが、あの事業所労働省当局は今後育成していきなさる御予定なのか、好ましくないものであるから、ああいうのはだんだんと取り締まりを強化いたしまして、縮小していきなさろうとしておりますのか、その辺ちょっとお聞きしておきたいのでございます。
  172. 有馬元治

    政府委員(有馬元治君) 職安行政といいますか、紹介の仕事につきまして、公的機関だけでやる考え方と、民営事業と共存共栄でいく考え方と、二つあるのでございます。国際条約においても、そのいずれでもいいということに相なっておりますので、わが国としては後者のほうをとっているわけですが、私どもの考え方といたしましても、安定機関だけでは不十分な点もございますので、民営の職業紹介所と共存共栄の形で積極的に指導していきたい、かように考えております。
  173. 石本茂

    石本茂君 私はここで申し上げておきたいと思いますのは、同じ紹介業でありましても、マネキンの方とか、その他のモデルとか、そういうのは毎日何時から何時まで、はっきりわかるでしょうが、家政婦だとか看護婦等になりますと、時と所、場所を問いませず、いつ何どき要請があるかもわかりません。これは将来とも民営でなかったら、とても職業安定所の窓口の役人のお仕事としては、非常に困難な仕事だろうというふうに思うわけでございます。そうした意味におきまして、いま、派遣先の雇い主と派遣されていった者との雇用契約といいますか、こういうものにつきまして、かって野放しであったといえば語弊がございますが、そのころには、この紹介事業の経営者自身がかなりそのところからの利潤もありまして、あたかも労働搾取のようなかっこうであったと思うのですが、現在、私の知っております限りを見ておりますと、非常にこの経営者自身が雇用開拓の道を開かなければなりませんし、相当の労力と資金を使ってその仕事を経営していると思うのです。一種の救済事業のようなかっこうまで出てきてまいりまして、七十歳を過ぎた老人が職を求めてきた。あなたの歳ではだめだと言っても、帰る家がありません。家に帰っても嫁が私を安心しておらしてくれませんというような、老人対策の面までしているというような事例が出てきておりますので、ぜひこういう面におきましても、いまありますこの制度、たとえばさっき私が申しました雇い主と雇われていった者との条件を背景にして、そうして紹介事業者でありますところの者と、それから派遣をしますその登録された者との関係でございますが、いまでございますと三カ月の時限を切りまして、その辺の契約が切れてもしかたがないかっこうになっておりますが、その辺もう一度よく御検討願いまして、そうしてこういう人間の労働搾取をするような経営状態でありますなら、私全面的に反対するものでございますが、最近の事業所を見ておりますと、そうではなく、ほんとうに路頭に迷っている高年齢の女子の方に職業を与えるために非常に大きな福祉的な役割りをしているというふうにも、一面見受けますので、ひとつ特段の御配慮、御検討を願いたいなあという気持ちがしてきたのでございますが、この辺はよろしくお願いします。そのことにつきましてちょっと御意見伺います。
  174. 有馬元治

    政府委員(有馬元治君) 民営の紹介所の経営が、御承知のように求職者といいますか、家政婦の求職者が非常に少なくなってきた関係で経営が非常に苦しい。三カ月以上たちますと手数料は取っていけないことになっていますが、そういう経営が苦しいために三カ月更新で手数料を脱法的に取ろう、こういうふうな実情もございますし、それから、御指摘のように非常に高齢者で、ぜひ何とか家政婦で就職したいという方々に対して献身的といいますか、救済的な、そろばんを無視した紹介活動を民営の紹介所でやっておる、こういう実情も私どもはわかります。それから求職者、家政婦等の求職者は、先ほども申しましたように、紹介先において雇用関係に入らないで、家事使用人としての立場が多いわけでございまして、社会保障から見捨てられておるというふうな面もございます。かれこれ私どももそういういろんな事情を考慮いたしまして、この点については、何らかの対策を講じていかなければ、一番目の当たらないといいますか、見捨てられた層ではないかと、かように考えて、この点についてはできるだけ積極的な施策をとりたいと、かように思います。
  175. 石本茂

    石本茂君 主査、終わります。
  176. 多田省吾

    主査多田省吾君) 石本委員質疑は終わりました。  他に御発言がなければ、以上をもちまして労働省所管に関する質疑は終了したものと認めます。  午後二時四十分まで休憩いたします。    午後二時十三分休憩      —————・—————    午後二時五十分開会
  177. 多田省吾

    主査多田省吾君) ただいまから予算委員会第四分科会を再開いたします。  昭和四十二年度総予算中、厚生省所管を議題といたします。  まず、政府から説明を求めます。坊厚生大臣
  178. 坊秀男

    国務大臣(坊秀男君) 昭和四十二年度厚生省所管一般会計及び特別会計予算案の概要について御説明申し上げます。  厚生行政につきましては、日ごろ各位の御協力をいただき、逐年予算の増額を見、厚生行政の進展がはかられつつありますことは、まことに喜ばしいことでありまして、この際あらためて厚く御礼を申し上げたいと存じます。  さて、昭和四十二年度厚生省所管一般会計予算における総額は、六千七百十三億七千二百九十四万四千円でありまして、これを補正後の昭和四十一年度予算五千八百七十八億四千六十万一千円に比較いたしますと八百三十五億三千二百三十四万三千円の増加と相なり、前年度予算に対し一四・二%の増加率を示しており、また、前年度当初予算に対しましては、一六・五%の増加と相なっております。なお、国家予算総額に対する厚生省予算の比率は、一三・六%と相なっております。  以下、特に重要な事項について、その概要を御説明申し上げます。  まず第一は生活保護費関係の経費であります。生活扶助費につきましては、その基準額を前年度と同様一三・五%引き上げることといたしており、また教育扶助費、出産扶助費及び生業扶助費につきましても、それぞれその改善をはかっております。  このほか、保護施設職員の処遇改善を行なうなど、生活保護費として総額一千四百五十二億六千余万円を計上いたしており、前年度予算に比し、二百八億二千六百余万円の増額となっております。  第二は、社会福祉関係の経費であります。まず、児童保護費でありますが、収容施設等の飲食物費、日常諸費の改善をはじめ、児童用採暖費の支給対象範囲を拡大するほか、保育所及び収容施設職員の処遇の改善をはかるとともに、職員の増員を行ない、また一昨年度新設されました民間施設経営調整費についても増額計上いたしております。  また、重症心身障害児(者)の保護対策につきましては、従来の施策をさらに強化するため所要の経費を増額するほか、新たに心身障害児(者)コロニーを設けて保護の充実をはかるなどの所要経費を計上するとともに、母子保健御生対策強化並びに身体障害児、結核児童等の療育対策に必要な経費をそれぞれ増額するなど、児童保護費として三百六十二億七千六百余万円を計上いたしております。  また、保育所、老人福祉施設等の社会福祉施設整備に必要な経費として三十三億円を計上いたしております。  なおまた、身体障害者福祉につきましては、法律の対象を内部障害者にまで拡大するとともに、新たに身体障害者相談員、家庭奉仕員の制度を設けるなど、その施策充実強化をはかることとして所要の経費を計上するほか、老人福祉費、児童扶養手当、特別児童扶養手当の経費をそれぞれ増額するなど、社会福祉費として総額六百三億一千六百余万円を計上いたしており、前年度予算に比し、八十一億二千余万円の増額となっております。  第三は、社会保険費関係の経費であります。まず、国民健康保険助成費についてでありますが、昭和三十九年度以降四カ年計画をもちまして進められている家族に対する七割給付の実施につきまして、昭和四十二年度は計画の最終年度として計画どおりこれを行なうとともに、事務費補助金の基準単価を大幅に引き上げるなど、国民健康保険助成費として一千七百四十億七千二百余万円を計上いたしております。  次に、社会保険国庫負担金でありますが、厚生保険特別会計及び船員保険特別会計への繰り入れに必要な経費として、政府管掌健康保険の財政の健全化に資するための二百二十五億円を含め、五百三十五億三千五百余万円を計上いたしており、前年度予算に比し百三億一千百余万円の増額となっております。  また、国民年金につきましては、障害福祉年金及び母子、準母子福祉年金の年金額をそれぞれ月額三百円、老齢福祉年金の年金額を月額百円引き上げるとともに、扶養義務者の所得制限等の支給制限の緩和をはかるなど、国民年金国庫負担金として九百十七億二千三百余万円を国民年金特別会計へ繰り入れることとし、社会保険費として総額三千二百七億九千九百余万円を計上いたしており、前年度予算に比し四百九十五億五千余万円の増額となっております。  第四は、保健衛生対策費関係の経費であります。まず、ガン対策経費でありますが、従来の施策をさらに推進することとし、専門医療機関の整備充実をはかり、ガン研究のための助成費を増額し、さらに、医師等専門職員の研修の充実及び集団検診の推進等を行なうための所要経費を計上したしております。  また、救急医療対策経費につきましては、救急患者の収容治療に必要な医療施設整備、医師等専門職員の養成訓練を行なう等、救急医療対策充実強化をはかるための所要経費を計上するほか、血液対策経費につきましては、新たに献血受け入れ機関の整備充実をはかるとともに移動採血車等についての助成を行なうなど、血液対策推進をはかるため所要額を計上いたしております。  このほか、環境衛生関係営業の合理化、近代化をはかるため環境御生金融公庫の運営費等を新たに計上するとともに、保健所職員の増員、移動保健所活動の強化に必要な経費、疾病予防費等の保健衛生諸費として八十九億六千余万円を計しいたしております。  さらにまた、結核医療費として三百三十九億八千百余万円、原爆障害対策として二十八億四百余万円、精神衛生費として二百二十一億一千三百余万円、また、国立療養所に必要な経費として三百五十六億六千三百余万円をそれぞれ計上するなど、保健衛生対策費として総額一千百億三千五百余万円を計上いたしており、前年度予算に比し、五億六千五百余万円の増額となっております。  第五は、遺族及び留守家族等援護費であります。まず、戦傷病者戦没者遺族等援護費でありますが、遺族年金等の年金額を増額するほか、新たに準軍属の後順位の遺族についても、遺族給与金を支給する等戦傷病者遺族等の援護充実をはかることとし、これに必要な経費百六十八億三百余万円を計上するとともに、戦傷病者の妻に対する特別給付金の支給範囲を拡大し、また、過ぐる大戦においてすべての子を失った戦没者の父母等に、新たに国債を支給するための事務処理費をも計上いたしております。  このほか、戦傷病者特別援護費として九億百余万円、留守家族等援護費として一千九百余万円をそれぞれ計上するなど、遺族及び留守家族等援護費として総額百七十八億六千五百余万円を計上いたしており、前年度に比し、二十九億二千三百余万円の増額となっております。  第六は、生活環境施設整備費であります。明るい生活環境を実現するため、環境衛生施設整備をさらに強力に推進することとし、水道水源開発等施設整備費として新たに、七億円の補助金を計上し、水源の確保等をはかることといたしております。このほか、ごみ処理施設について大幅な増額をはかる等清掃施設整備費補助金については二十七億一千六百余万円、簡易水道等施設整備費補助金については十六億九千百余万円を計上するなど、生活環境施設整備費として総額五十一億七百余万円を計上いたしております。  第七は、公害防止対策等の経費であります。  公害対策につきましては、公害部を新設行政体制強化をはかるとともに、地方の公害防止体制強化するため常時監視等の制度を設け、公害調査研究費を大幅に増加し、さらに従事者の養成訓練の強化推進することといたしております。  このほか、公害防止事業団の体制強化及び事業推進等をはかるなど、公害防止対策に必要な経費として四億円余を計上いたしております。  また、国立公園等の施設整備につきましては、従来の施策をさらに強化いたしますとともに、新たに、民有地の買い上げに要する経費を計上し、国立公園の風致景観の維持の徹底を期することとし、国立公園等施設整備費として、総額七億九千二百万円余を計上いたしております。  以上、昭和四十二年度厚生省所管一般会計予算案について、その概要を御説明申し上げました。  次に、昭和四十二年度厚生省所管特別会計予算案の大要について、御説明申し上げます。  まず、第一は、厚生保険特別会計についてでありますが、一般会計より五百十八億一千六百十七万九千円の繰り入れを見込みまして、各勘定の歳入歳出予算をそれぞれ計上いたしております。  第二は、船員保険特別会計についてであります。船員保険特別会計につきましては、十七億一千九百一万八千円の一般会計よりの繰り入れを行ない、歳入三百五億三千四百八十八万四千円、歳出二百十億七千二百二十四万一千円を計上いたしております。  第三は、国立病院特別会計についてでありますが、一般会計より四十六億六百三万六千円の繰り入れを見込みまして、歳入歳出とも三百九十四億三千五百九十七万五千円を計上いたしております。  第四は、国民年金特別会計についてでありますが、一般会計より九百十七億二千三百六十九万円の繰り入れを見込みまして、各勘定の歳入歳出予算をそれぞれ計上いたしております。  最後に、あへん特別会計についてでありますが、歳入歳出とも九億七千二百四十七万四千円を計上いたしております。  以上、昭和四十二年度の厚生省所管一般会計及び各特別会計予算案につきまして、その概要を御説明申し上げたのでありますが、何とぞ本予算案の成立につきましては、格別の御協力をお願いいたす次第であります。
  179. 多田省吾

    主査多田省吾君) これより質疑に入ります。質疑のある方は、順次御発言願います。
  180. 小柳勇

    小柳勇君 第一は、重症身体障害児及び障害者について御質問いたします。ただいま大臣が御説明の五ページにもありますが、保護対策について「従来の施策をさらに強化するために所要の経費を増額するほか、」云々と書いてあります。重症身体障害者及び障害児の現在把握されている人員及びこれを収容しあるいは保護するため収容している人員、施設、その内容などについて現況を御報告願います。
  181. 渥美節夫

    政府委員(渥美節夫君) 重症心身障害児、者に対する対策につきましては、昭和三十八年以来国におきまして取り上げたのでございますが、その取り上げ方がややおそきに失しておりましたために、現在まで非常な施策が講じられたとまではいかないと思うのでございますけれども、ただいま私どもが行なっておりまする施策内容につきまして申し上げたいと思います。  その前に、昭和四十年の八月に厚生省におきまして身体障害者あるいは身体障害児の実態の調査を行なったのでございますが、この調査によりますると、重症の心身障害児、つまり重度の精神薄弱と重度の肢体不自由を重複して背負っておるという子供の数が約一万七千三百名と推定されるわけでございます。またそういった重複した障害を持っておりまする十八才以上のおとなの方々の数が約二千名、こういうふうに推定されたのでございます。しかしながら、こういった子供なりあるいはおとなを、すべてがすべて施設におきまして収容し保護するということにも問題がございまして、家庭がそれを望み、またそういった方々をどうしても施設に収容しなければならない、かように考えられるいわゆる要収容者の数は、この総数をやや下回りまして一万六千五百名、かように推定されるのでございます。そこで、こういった一万六千五百名の子供なりあるいはおとなの人たちに対して収容保護の方法を講じなければならないのでございますが、先ほど申し上げましたように、厚生省におきましては、昭和三十八年来こういった施設収容の施策を講じてまいりまして、現在まで国立の療養所に付設いたしましたこういった施設のベッド数が五百二十床、それから社会福祉法人立、つまり民間の方々の施設が十二施設ございまして、その有するベッド数が千百十一床、合計いたしまして現在まで二十三施設、千六百三十一床というのが現有のベッド数に相なっておるわけでございます。しかしながら、先ほど申し上げました一万六千五百という要収容者に対しましてきわめて微々たるものでございますので、私どもといたしましては、これから昭和四十五年までの年次計画をもちましてこの要収容者の約半数に当たりまする八千床の確保をいたしたい。かように現在努力をしておるわけでございまして、本年度、つまり四十二年度におきましても、国立の療養所及び肢体不自由児協会に委託する国立の委託ベッドも合わせまして、つまり国立関係が六百床、それから民間の社会福祉法人あるいは県立の施設等の増設も考えまして、これが約五百床、合計いたしまして本年度におきましては千百床以上を確保したい、かように思っておりまして、最終的に昭和四十五年におきましては約八千床近くのベッド数を用意したい、こういう計画をもって進めているわけでございます。なお、そうなりますと、この間きわめて時間がたつわけでございますので、在宅の重症心身障害児あるいは障害者に対しましては、児童相談所等からケースワーカー等を派遣いたしまして、訪問指導をいたしましたり、また当然特別の児童扶養手当等の支給等も考えまして、在宅、収容ともども馬力をかけてやってみたい、かように思っているわけでございます。
  182. 小柳勇

    小柳勇君 ただいまの概要はわかりましたが、昭和四十二年、今年度末でも一割に充たないわけです。一万七千人に対して千百床。四十五年になってやっと半分という現状です。それにまたそういう発生もありましょうし、四十五年といいますとこれから四年かかりますが、現在の医師及び看護婦及び職員の充足状態はどうですか。
  183. 渥美節夫

    政府委員(渥美節夫君) 重症心身障害児に対する収容状況等につきましては、ともかく他の一般の精神薄弱児なり、あるいは肢体不自由児等に対する介護の方々よりも、実は非常に困難かつ苦労の多い仕事であるわけでございまして、私どもといたしましては、こういった重症心身障害児施設自体を医療法による病院という性格を持たせまして、医師が総合的な総括責任者となりまして、そういった医学的な総合判断の上に、看護婦なり、あるいは保母なり、あるいは児童指導員、あるいはPTとか心理相談員、かような、こういった子供の性格に応じましたいろいろな職種を動員いたしましてこれに対処するということでございます。そして一般の医療法の基準よりも、さらにこの介護の質を厚くするということで、先ほど申し上げました、看護婦、保母あるいは児童指導員、PT、児童心理相談員、こういうふうな子供に直接接触する方々、いわゆる介護職員と称しまするが、これらを子供二人、つまり収容者二人に対しまして一人の割合で当たらせる、こういうふうな方針をとっておるのであります。実は、昭和三十八年から三十九年、四十年くらい、また四十一年、実はこの半年くらい前までは、だいぶこういった介護要員の充足につきましては、その困難な仕事の性格もありましてか、なかなか確保が容易でなかったのでございますが、最近の調査によりますと、いま私が御説明いたしました介護職員が、患者二人——患者といいますか障害者二人に対しまして一人の数を、ほとんどのすべての施設において充足をしておるという状況でございます。これにつきましては、国立の施設におきましては、本年度から本俸に調整額が加算されることになっております。そういった国立の施設における職員の加算額と同様な予算措置を、民間の施設の者に対しましても行なうというふうなことも影響があったのであろう、かように思っておりまして、そういった処遇の改善につきましては、本年度予算におきましても重点的に考えたわけでございます。
  184. 小柳勇

    小柳勇君 職員の待遇の問題、またあとで聞きますけれども、いま施設に対して職員、医師、看護婦など充足しておるという話であったけれども、私ども調べておるところでは、まあ国立だけの問題かと思いますけれども、たとえば県、私立など、地方のやつも含めますと、医師、看護婦、いわゆる介護する者が足らぬために収容できない。ベッドはありますけれども、それに収容できないというのが実態です。実は具体的な例ですが、私の近所に十二才になる、重症児がありまして、最近北九州の施設に収容できました。これはもう数年申し込んでおってやっと入ったのでありますけれども、その両親が家に一回か二回参りまして、非常に介護に対して感謝して、私にも手を合わせんばかりにして感謝をしておりますが、そういう子供が北九州だけでもまだ十倍あるといっておられます。そういうふうな会がございます。県でもやっぱりそういうことだと聞いております。十倍ぐらいあると聞いております。いまおっしゃっておりますと、私どもがそれをなぜ収容できないかと聞きましたところが、介護員が足らぬ、医師も看護婦も足らぬ。だから、結核療養所の隅に建てますけれども、結核療養所の医者もそこまで手が出ない、看護婦さんももちろんそこにも行きたがらない。ベッドができても収容できませんというのが実態であると聞いておりますけれども、その点、違うでしょうか。
  185. 渥美節夫

    政府委員(渥美節夫君) こういった施設は、実は私ども、先ほど申し上げましたように、民間につきましては十二施設ございまして、こういった施設が建物を建てました当初におきましては、こういった仕事の困難性にかんがみまして、施設ができ上がって直ちにその収容定数を全数入れるというふうなことは、その施設の運営上なかなか困難でございまして、やはり初めての新しい施設の経営というふうなことに、その施設におきましてはなるわけでございますので、少しずつ試験的にそういった収容者、収容児を入れながら、少しずつその仕事になれていくというふうなこともあろうかと思います。しかしながら、そういうふうな過程を終えましたこの民間の十二の施設のうち、六施設につきましては、いま申し上げましたように、職員はほとんど完全に二対一の数を確保できておるわけでございます。また、いま国立の施設に対する御質問がございましたけれども、それもおそらくそういった施設建設を終わりまして、直ちにその収容施設の収容定員を全部一ぺんに満たすというふうなことではなしに、順次やはりお医者さんも、あるいは看護婦の方もそのほかの職員もなれながらその仕事をやっていくと、そのことがまあ当座におきましては、やはり施設の収容定員を割ることで残念ではあろうと思いますが、将来の施設のりっぱな経営につきましては、そういうような方策が必要なために、国立施設につきましては、一挙にその収容定数を満たすというふうなことにはならないのではないかと思います。いずれ医務局長からお話があると思いますが、医務局、国立の療養所につきましては、やはり私ども児童家庭局と相談いたしまして、収容者四十人につきまして三十人の職員を確保するようなたてまえで進んでおるわけであろうと思います。
  186. 小柳勇

    小柳勇君 どうも答弁がうま過ぎてそんなんじゃ論議にならぬのです。いま一万七千三百人現在でも把握しておると、そして現在は千百人ぐらいしか収容しておりませんと、しかもその心障者を自分の家の柱にくくりつけて生活しておる家庭などを考えましても、そんなのんきなことを言っておれぬのですよ。だから、金がないから施設ができぬのですかと、これが一つ。いや、施設はできましたけれども、医師、看護婦が足らぬというのか。医師、看護婦はおりますけれども、まだ勉強が足らぬというのか。金がないから看護婦が足りません、医師も足りませんし、施設もありませんというのか。とにかく、二万七千三百人いるのですが、千百人しか収容しておりません。あとどうしますかと、こういうことです。あなた方の話では、四十五年にはどうしますか。ここでも八千床、一万七千三百人を収容すると言っているのですよ。こういうことでに役人ならいいですけれども、政治家では済まされないのです。どうでしょう、大臣大臣から見解を聞きましょう。
  187. 坊秀男

    国務大臣(坊秀男君) 御指摘のとおり、重症心身障害者を、なかなか十分に施設に収容できないということにつきましては、私も非常に遺憾に存じております。そこで、数年来、できるだけこれを整備強化していくということでつとめてまいったのでございますけれども、いずれにいたしましても一ぺんにこれを充足するというわけにはまいりませず、鋭意努力を重ねながら、できるだけ収容していこう、こういうことで四十五年に八千床という目途をもってやっておりますけれども、それでもなお非常に足りない、半分にしかならないということも、これは否定できない事実でございますので、そういったものに対しましては、できるだけその在宅しておるそのままこれをお世話申し上げるという措置を実行しようと思っておるのでございますけれども、私どもといたしましては、何とかしてできるだけ遺憾のないように持っていきたいと、かように考えております。
  188. 小柳勇

    小柳勇君 遺憾な遺憾なということばかりなんですよ。去年もこれは国会でずいぶん問題になりました。もう総理大臣の答弁までありましたから、そんなことを引用する必要はございませんが、この予算だって飛躍的に多くなっているかというと、そうでもございません。四十五年度に八千床だけ準備いたしますということだけ、これが去年の予算できまりましたね。六千床コロニーがきまりましたから……。それじゃあとの場合の一万七千三百ですから、あと一万人ぐらい、そのままほおり出すんでしょう。ほんとうにやっと生活しているような家庭もたくさんあるので、私もたくさん知っていますけれども、そんな人が陳情にきますから家に行きますと、ほんとうにざるの中に入れて、あるいは柱にくくりつけて、やっと家族が生活しているような状態、それをもし施設に収容してこれを入るようにしてもらったら、その人は全部仕事に打ち込めるわけですよ。そうして月に一回か二回面会に行って安心して生活に打ち込めるわけですから、私はこういうことこそほんとうの急がなければならぬ政策じゃないかと思うのですが、いま大臣は家庭の身症児なり身症者の世話をするとおっしゃったが、どう具体的にお世話なさるつもりですか。
  189. 渥美節夫

    政府委員(渥美節夫君) 在宅の方の数のほうが、おっしゃるように非常に多うございます。したがいまして、まず登録の管理をいたしまして、児童相談所から専門の指導員が訪問いたしまして、たとえば家庭内におきまする生活のあり方とか、あるいは訓練の方法なり、あるいはそういった指導員によりましてきわめて重篤な子供たちがございますれば、それを施設にも収容するというふうなことで、家庭の看護する方々に対する御相談なりあるいは子供に対する指導上の知恵、知識、こういったものを指導しておるのが現状でございます。
  190. 小柳勇

    小柳勇君 ずっと一人の人がついているわけにもまいりませんし、ときどき行って見てやるということでございましょうけれども、そんなものでは家庭の人がこれはもう目がはなせません。相談するくらいのものですよ。そんなものでいまの対策なんとおっしゃっても、私は対策にならぬと思います。したがって具体的に聞いてまいりますが、現在——これは三月一日現在ですが、国立の施設で定員が五百二十です。これに対しまして現在員が四十くらいしか入っていないのです。ベッドはあいているでしょう。こういう実態は把握してあるんでしょうか。
  191. 若松栄一

    政府委員(若松栄一君) 国立の施設を四十一年度に十カ所設置いたしました。その収容定数が四百八十でございます。そのほかには児童家庭局のものが四十床ございますので、先ほどの五百二十床になるわけでございます。国立療養所に併設いたしました四百八十床につきましては五月六日現在で三百十八名だけ入っております。したがって、まだかなり欠員がございます。この理由といたしましては、かなりの施設が非常に慎重でございまして、たとえば重症者を一人入れます場合に、小さな子供でございますので、親が連れてきましても、親をはなしますと、すぐ泣き出してしまって一日じゅう泣いておるというような状況でございます。また食事一つにいたしましても、普通の食事のできない子供が大部分でございまして、一人の子供に一時間も食事がかかる。また野菜ならば食べるけれども、肉類はほとんど食わないというような、子供の一人一人に非常に状況が違います。そういうために、一ぺんに何名か入れますと、どうしても手が回らない。一人一人の癖を十分にのみ込んでなれさしてから次のものを受け入れるというような、非常に慎重な態度をとっておりますので、まだ欠員がございますが、これは毎日毎日の欠員が減少いたしつつあります。なお、このための職員につきましては、職員が総数で三百二十四名の定員でございますけれども、現在まだ充足しておりませんのは八名だけでございます。この中には医師とか、あるいは理学療法士とか児童指導員というような特殊な技能者が大部分でございまして、一般の看護婦あるいは看護助手というような職種は、ほとんど全部埋まっております。そういうことで、受け入れ側が非常に慎重を期したのと、それから一部には県側でも非常に選定に困りまして、なかなか選定が決定しないために手続がおくれるというような状況もあったようでございます。
  192. 小柳勇

    小柳勇君 あなたの発言の最後のほうからいきますと、県側で選定が困るのは、申し込み者が多くてベッドが少ないから困るのです。だから軽いのからずっと入れて重いのはあと回しになっておるのです。それは医師や看護婦の問題、介護する人がいないからです。いま医師も看護婦も充足しておりますし、職員もおるけれども非常に慎重に入れております——そんなのは答弁にならぬのです。施設もあるし、医師もあり、看護婦も職員もあれば、ベッドをあけておく必要はないのですから、全部入れなければならぬわけです、国費ですから。極端に新聞にも書いてあるように、看護婦も手が回らぬし、医師も足らぬ、そういうことでしょう。率直にやはりものごとを考えて、それじゃどうするかということを論議していきませんと、この委員会の答弁にはなりますけれども、問題は先に進まぬのじゃないかと思うのです。決してあなた方を責めるのじゃありません。どうしたらよろしいかということを論議していかないと、来年はこの委員会ではこれだけ真剣に論議したくないわけです。去年も一生懸命やったわけです。それがちっとも前進しないのですから、また論議しておるわけです。  したがって、今度は、労働省婦人局長に待ってもらっていますから質問しますけれども、私は去年から再三厚生省にも労働省にも言っておるのは、中高年齢者職業訓練といいますけれども、四十才、五十才になりましたら、男女ともなかなか新しい職業を得ることは困難なんです。私は島田療育園にも参りましたけれども、非常に大切なひどい仕事であるけれども、なれたら人間の愛情があるならば、夫婦で行って介護することができはせぬか。したがって炭鉱離職者はたくさんおられますし、その他転職する人もたくさんあるから、そういう人を半年なり一年なり国が特別に准看護婦的なものに教育して、集団的にそういう施設に入ってもらってはどうか、あるいは産炭地などにそういう施設をつくって千名なら千名の施設をつくって、そこで閉山になった人たちの家族全部で介護するような方法はとれぬだろうか。私は一年半前から検討をお願いしておるわけです。まず労働省のほうから、せっかく婦人局長待っておられますから、見解を聞きます。
  193. 高橋展子

    政府委員(高橋展子君) お答えいたします。  労働省のほうでは、中高年齢婦人の就業援助と、このような立場から広く仕事しているわけでございますが、中でも特に新しく技能を翌得するということが中高年齢婦人の場合にはたいへん困難なものでございますので、比較的婦人がその生活経験の中から、無理なく習得することができると思われます家事サービス的な作業につきまして特別な訓練施設を持っております。全国八カ所に家事サービス職業訓練所というものを設置して、家事作業の基礎的な技術を訓練しております。これは原則的に中高年齢婦人のためのものでございます。そしてこの家事サービス職業訓練強化の科目の中に、特にただいまの問題と関連のございますところの看護業務に、まあ看護業務それ自体は私どもの施設で訓練することはできませんが、看護の助手的といいましょうか、補助的な仕事、これを習得させることが可能な科目がございます。たとえば病人、乳幼児、妊産婦、老人等の世話といったようなことについて、これは講義と実習と両方かなりの時間をかけてやっております。この訓練の施設を修了いたした者の中には、看護業務に関しての補助的作業に就労しております者も約四分の一ほどになっているわけでございます。なお、この施設の訓練は三カ月で行なっているところでございます。このような制度を持っておりますので、ただいま御指摘の炭鉱等の離職者の未亡人の方々などがこの訓練所を活用くださいまして、そして訓練をお受けになりました上で、身体障害者施設なども含めまして一般に医療関係の看護のお手伝いというような役割りで就労されることは可能なことでもございますし、私どもとしても大いにそれはおすすめしているところでございます。
  194. 小柳勇

    小柳勇君 何か厚生省のほうで具体的にございますか、そういう点で。
  195. 渥美節夫

    政府委員(渥美節夫君) そういった中高年齢層の方々、特に炭鉱の離職者等の方でこの重症心身障害児施設中心といたしまして、そのほかたくさんの児童福祉施設なんかございますが、そういったところにいまお話しのように保母さんなり、あるいは看護婦さんということになりますと、当然一定の資格要件が要りますので、その資格要件が満たされない場合には保母の助手とか、看護婦の助手とかいうような立場で加勢していただく、御協力いただくということそれ自体は非常に歓迎すべきことであるわけでございますが、たまたま現在のところは、先ほど来御説明いたしましたように、重症心身障害児施設の数もまだまだ足りないわけでございまして、実際にはそういった離職者の方々が職員としてお入りになっていないようでございます。私どもといたしましては、そういった助手的なことで加勢していただくということは、これ当然喜んで受け入れなければならない、かように考えております。
  196. 小柳勇

    小柳勇君 それで問題は、早急に施設をふやしてもらって、職員を養成してもらって、医療法の保護より手厚くするということはわかりますけれども、私は社会福祉施設としてまず出発してもらいたいと思います。家庭において不なれな両親が柱にくっつけて育てるよりも、もう半年、一年訓練された准看護婦ならそのほうがいいし、また集団で見るなり聞くなりのいろんな訓練ができましょうし、あるいは介護ができましょうから、早く家をつくって、早く職員を養って、そうしてもう一万七千三百の人を一日も早く収容する方向政府は動いていただきたい。もちろんこれはコロニーでなければならぬでしょう。あの人々が全快をして社会に復帰することは望みないことでございましょう。そういうことを考えましたら医療保護よりも手厚くなどというようなことでは私はこの問題は前進しないのではないかと思います。だから看護がまずいから入れないなんという親はいないと思いますから、そういう社会福祉的な、いわゆる政治の手を伸べるという方向厚生省もひとつ考えてもらいたいと思いますが、大臣いかがでございましょうか。
  197. 坊秀男

    国務大臣(坊秀男君) 現在のこの状況から見ますと、御指摘のとおり施設もまだもちろん足りないし、いまの施設に対して収容している人たちに対しましては、先ほどから担当局長から御説明申し上げました大体その介護員は充足しておるということでございまするけれども、これからとにかく収容しなければならない対象者が非常に多い、そこで施設もふやしていかなければならないし、また、これを介護する従業員、従事員というものもふやしていかなければならない、こういうことでございまして、両者ともどもにこれを充実整備していかなければならぬといったような事態に処しまして、いまの御意見の中高年齢の婦人の方、特に炭鉱の離職された方や未亡人といったような方々を、これを一定の教育と申しまするか、指導訓練をいたしまして、そうしてそういった仕事に当たってもらうということは、私もこれは非常にそういうことに持っていくべきだと、こういうふうに考えております。
  198. 小柳勇

    小柳勇君 医務局長に質問いたしますが、この重度身障児が生まれる原因ですね、いろいろあるようでございますが、私どもはしろうとでございますから、そういう点の統計なり、あるいは学者の意見ありましたらお聞かせ願います。
  199. 若松栄一

    政府委員(若松栄一君) この問題につきましては児童家庭局が専門学者の意向等を聞いておりますので、児童家庭局からお答えいたします。
  200. 渥美節夫

    政府委員(渥美節夫君) 重症心身障害児でありますとか、あるいは先天性の心身障害児の発生原因につきましては、いろいろな学者の方々がいろいろ御研究をされておるわけでございますが、非常に概括的に申し上げますと、その原因というのは非常にまだ究明が足りない点ございますし、また、いろいろな要因が複雑でございまして、単純に割り切るわけにはいかないというふうに言われております。しかしながら一応大ざっぱにその原因となるものにつきまして大きく分けますと、一つは遺伝的な原因によるもの、もう一つは環境的な原因によるもの、こういうふうに大きく分かれるわけでございます。遺伝的原因によりますものは、たとえば蒙古症といいますか、ダウン氏症というようなことで染色体に異状があるものでありますとか、あるいは遺伝子に問題がある、こういうふうなことが言われておるわけでございます。  それから環境的原因によるものにつきましては、これをまた大きく三つに分けられるのではないかというふうに言われております。その第一は、主として妊娠中の母体側に原因がある、こういうふうなことでございます。そうしてその妊娠中の母体側に原因があるものの中には、たとえば風疹であるとか、あるいはインフルエンザ等のビールス性疾患等によるいわゆる感染によるもの、こういうもの、それから第二といたしましてはレントゲンとか、ラジウムとか、あるいはラジオアイソトープ等の放射線によるもの、第三といたしましては睡眠剤とか性ホンモン等の薬物の副作用によるもの、それから次に貧血でありますとか、あるいは糖尿病というような栄養とか体質障害によるもの、こういうようなことが原因となりまして、妊娠中のおかあさんの母体にいろいろな異状ができてくる、こういうふうに言われております。  それから次に、妊娠中の母体側に原因があるものでなしに、分べん周辺期の障害によるという第二の部類があるわけでございますが、これはたとえば妊娠中毒症でありますとか、あるいは妊娠時の、出産時の出血とか、異常分べんであるとか、あるいは血液型の不適合による重症黄疽によって、そういった分べん周辺期に障害が起こる、こういうような部類が第二としてあげられます。  第三としては、当然これは分べん後、つまり生まれた後の原因といわれるものでございますが、たとえば交通事故等によりますところの首部損傷、あるいは日本脳炎、あるいは脊椎性の小児麻痺、そのほかウイルス性疾患、あるいは細菌性の疾患に伴う脳の後遺症、こういうようなことでございまして、大ざっぱに言いますと、いま申し上げましたような原因によりまして、こういった重度の心身障害児であるとか、あるいは先天性の心身障害者ができるのじゃないか、かように言われているわけでございます。なお、現在生存中の重症心身障害児につきまして、先ほど申し上げましたような調査と同時に調査したものがございますが、その調査によりますと、先天性であるものが六四%近くに相なっておる、こういう結果が一応出ておるのでございますが、いま申しました点につきましても、まだいろいろなこれから究明すべき問題が非常に多いということを申し上げて、一応の御説明といたしたいと思います。
  201. 小柳勇

    小柳勇君 いまのようなものを防止するために、大臣のさっきの施策の中にありましたが、母子保健衛生対策強化と書いてありますが、そういう予防措置の費用などもことしの予算に入っておりますか。
  202. 渥美節夫

    政府委員(渥美節夫君) いま申しましたような、その重症心身障害児の原因となります大きな部分が、その先天性の障害であるというような結論が一応出ておるわけでございまして、したがいまして、私どもといたしましては、母子保健の施策拡充強化ということをまず考えなければならないのでございまして、そのために御承知のように、昭和四十一年の一月に母子保健法が制定せられたわけでございますが、したがいまして、各保健所なり、あるいは児童相談所、そういった機関を中心にいたしまして母子保健、あるいは母子衛生の施策、いろいろございますけれども、こういった各般の、たとえば妊産婦、乳幼児に対する保健指導でありますとか、あるいは三才児の検診であるとか、あるいはその前の、婚前なり、あるいは新婚の方々に対する衛生教育、こういった点につきまして、保健所なり、あるいは母子保健センター、こういったところを拠点といたしまして、やっておるというのが実情でございます。ただしこの経費は保健所費の中に組まれておりましたり、あるいは母子保健の指導費の中に含まれておる、こういうようなことでございまして、重症心身障害児関係の予算の中に組まれておるというようなことはしておりません。
  203. 小柳勇

    小柳勇君 これと少し違いますけれども、重度の精薄児の出生時における問題、あるいは妊娠中における問題など、やはり問題になっておるようですが、これはきょうは論議しませんけれども、最後の日に、あさって身障児教育のところで問題にしたいと思っておりますが、重度の精薄児も早期診断、あるいは早期治療によってこれを治療し得ることができるということで、日本の市町村でも特別に出産のときに検査をしておるようなところもありますが、こういうものについて国が、いま申し上げたような母子保健、あるいは重度精薄児をなくするための早期診断など、国が全国的な対策として取り組むということはお考えでございますか。
  204. 渥美節夫

    政府委員(渥美節夫君) ただいまのお話の点、具体的にどの点か、ちょっとそのわからないのでございますけれども、たとえば先ほど申し上げましたように妊娠中毒症によりましていろいろな疾患で子供に対する影響があるとか、あるいは重症黄疸によりまして交換輸血をすればその子供は助かる、あるいは脳性麻痺にならないで助かる、こういうような点につきましては従来からもたとえば妊娠中毒症対策経費として計上しておりますし、また今回は全身の交換輸血費用等も新しく計上するというふうなことを予定しているわけでございます。なおいまのお話はフェニルケトン尿症の問題ではなかろうかと思いますが、現在のところ各特定の県なり、あるいは市におきましていろいろと考えられて、あるいは一部実施されたようなところもございますが、そういった実施の状況なり、あるいは先ほど申し上げました関係の学者の方々の御意見等を徴しまして、それが全国的に実施ができるというふうな段階になりますれば十分検討した上で実施に踏み切るものももちろんあるというふうに考えておるわけでございます。
  205. 小柳勇

    小柳勇君 母子保健対策を進めることによってこういう子供が減少し予防することができれば、あとの施設をつくることを論議するよりもっと根本問題でありますから、十分にひとつ対策を立てて予算もうんととってもらうように期待をいたします。まだたくさん問題がありますけれども、ほかの問題もありますから一応この重症身障児及び身障者対策の問題はこの程度にして問題を先に進めたいと思います。  次の問題は、この間総括質問で質問しました阿賀野川の水銀中毒だと言われる事件の結末について質問をいたしますが、その後の各省及び科学技術庁審議状態はいかかでしょうか。
  206. 舘林宣夫

    政府委員舘林宣夫君) 新潟水銀中毒事件に関しまして科学技術庁の研究調整費に基づきまして、厚生、農林両省がそれを元にして調査をいたし、また関係各省寄りましてこの問題を討議いたしたわけでございますが、この研究調整費に基づきます厚生省の分担の部分、疫学、試験、臨床の三部門に関しましてはそれぞれ専門の学者にお願いをいたしまして研究を進めておったところでございますが、これが先ごろの四月七日に報告があったわけでございます。そこでさきに熊本県の水俣病の際に実施した前例に従いまして、ただいま厚生大臣の諮問機関でございます食品衛生調査会の意見を聞いているところでございます。この調査会の審議が、これは専門の学者の審議でございますので、どの程度の期間続くかわかりませんけれども、水俣病の前例を考えますと、このときにはおおむね二カ月間の審議期間を要しておりますので、今回も同じ程度の審議が行なわれるといたしますと、四月七日から二カ月ということで審議の結果の結論がいただけるかということを期待いたしておるわけでございます。厚生省といたしましてはこの審議の結果をちょうだいいたしましたところで早急にこれを科学技術庁に報告をいたしまして、おそらくはこれが厚生省意見の基礎になるということで科学技術庁に各省のこの試験に関しまする意見がまとめられまして、科学技術庁主宰のもとに関係各省寄りまして国としての意見を出す、こういうことになる手配でございます。
  207. 小柳勇

    小柳勇君 この前私が総括質問で質問いたしましたが、私はあのときに質問いたしましたのは、結論が出るのに相当時間がかかるようであるが、行政責任もあるものと思うから、現在生活保護で生活も非常に苦しい人もあるようだが、その人に早急に何らかの手は打てないであろうかということを質問いたしておきましたが、その後何か措置をなされたでしょうか。
  208. 舘林宣夫

    政府委員舘林宣夫君) 現在までこの罹災者は、罹患者全員二十五名、このうち五名死亡いたしておりまして、これらのものは生活保護世帯が五世帯十名、それから生活程度が下のものが一世帯一名、生活程度中のものが十世帯十三名、上のものが二世帯二名というようになっておりますが、これらに対しまして援護の状況は県及び地元の市あるいは町村が折半いたしまして、死亡者五人に対しまして、見舞い金県一人当たり十万円、市または町一人当たり三万円、すなわち一人当たり十三万円を出し、それから患者の治療費はそれぞれ各種保険等で、あるいは生活保護の医療で行なわれておるわけでございますが、患者の自己負担分につきましては県及び市町村で二分の一ずつ負担をいたしましてやられておるわけでありまして、入院または外来の治療費に充てておるわけでございますが、そのほかに通院費、日用品費といたしまして、生活保護適用者六名に対しまして月千五百円、その他の者に対しまして月千円というものが与えられております。それから胎児性の水俣病の危険のある新生児に対しまして一年間のミルク代、それから県から患者世帯への生業資金の貸し付けが二十五万円、また漁業協同組合への見舞い金が五十万円ということでございまして、総額では、いままでに治療費関係で八十五万三千円、生業資金二十五万円、見舞い金五十万円、合わせて四百三十三万三千円が支出されておる状況でございまして、国といたしましては、直接補償金のような援護費は与えておりませんけれども、ただいま申しました五家族の生活保護に対して生活保護の形を通じて国が保護しておる状況でございます。
  209. 小柳勇

    小柳勇君 この問題は早急に解決して、同時に再び同種の事件が起こりませんように十分の措置をしてもらいたいと思います。  次の問題に入ります。時間がありませんもんですから、少し質問が簡単になってすみませんが、午前中に婦人労働と保育所の問題で労働省にも質問いたしましたが、保育所の問題で私は、いま婦人労働者から育児休暇という制度の確立についても希望が出ておりますけれども、むしろ私はいまの婦人労働力が足らないんだから、職場に保育所や託児所をつくってもらいたいという意見を持っておるものでありますが、保育所及び託児所などの設置について厚生省としてはどういうように考えておられるか。また私がただいま申し上げたような線に沿って保育所や託児所を職場の近くにつくるとすれば、どういうような特別な措置を考えていただけるか、御説明を願います。
  210. 渥美節夫

    政府委員(渥美節夫君) お話しのように最近におきまする婦人労働力の需要というものが非常に高まっております。私ども昭和三十九年にこういった保育所に通わなければならない子供たちの数の調査をしたのでございます。そのときでも約百二十万人程度の子供さんを早急に保育所に通わせなければならない、かような結果が出たのでございます。現在全国で一万一千六百七十八カ所の保育所がございまして、その定員が九十二万名をこえております。したがいまして、なおいまの数字から見ますと、三十万人程度の要保育児童というものがあるということがわかったのでございます。したがいまして、本年度を初期といたしまして年次計画をもちましてこの保育所を、三十万人の子供に対して適用するように保育所をつくっていきたい、かような計画を持ったのでございます。この勘定から考えてみまするに、約四千カ所近い保育所を全国的に都市におきましても、農村におきましても設置する必要があるわけでございます。そこで、本年の予算におきましても約四百五十カ所程度の保育所を新設増設等いたしますと同時に、そのほか国民年金の還元融資等の社会資源を利用いたしまして、約七百カ所以上の保育所をつくらなければ、それらの子供の保育に欠けるという状況が出るわけでございまして、そういった線に沿いまして鋭意がんばっておるわけでございます。なお保育所に対しまする国の経費の支出、つまり児質保護措置費が本年におきまして約百七十三億というふうなことに相なっております。
  211. 小柳勇

    小柳勇君 保育所の問題は午前中少し論議しましたから、これは婦人労働者が職場で働きやすいような方向で援助してもらいたいと思います。たとえば知事の認定などで正式の厚生省の認可などいろいろ問題ありましょうが、労働組合や各民主団体がつくる託児所もございましょうし、できるだけの援助をしてもらいたいと思います。  次は、ガン対策でありますが、私ども昨年の暮れに社会党の案としてガン対策促進法を出しました。そして二百億円程度の予算の裏づけで早期診断、早期治療をやる。そして各地方の医者、専門医の養成及びレントゲン技師などの養成、早期診断、早期治療の万全の対策を立てるという促進法をつくったのでありますが、今回の厚生省予算を見ますと、昨年より五億程度予算はふえましたけれども、変わった施策はないように思うが、いかがでございましょうか。
  212. 坊秀男

    国務大臣(坊秀男君) ガン対策は、これは今日の事態に即しまして非常に重点的な対策である、こういうふうにわれわれも考えておりまして、厚生省もそういう線に沿いまして対策検討いたしまして、その対策充実をはかってまいってきておりますけれども、いまガン対策について特に立法措置を考えなければならないということにつきましては、今後さらにこれは検討を要する問題であろうと考えております。
  213. 小柳勇

    小柳勇君 去年の委員会でも私が申し上げましたのは、結核対策が、かつての軍部が強力に政府を動かして結核対策をつくりまして、日本では非常に結核予防が前進してまいっております。精神衛生法もできまして、精神病患者につきましては強制入所の制度もできました。ガン対策につきましては、なお研究については万全の対策をとっておられると思いますけれども、諸外国に比べますと予算もわずかしかないような現状であります。したがって、ガンと認定されますというと、もう手をあげて死ぬのを待つという現状で、私どもの周囲にたくさんそんな人はおりまして、本人に知らせないまま、周囲の人はあの人はガンだと、死ぬのを待っているのが現状であります。まことに哀れな実態でありますので、何とか早く対策を立ててもらいたい。専門医並びに識者の意見を去年の社会労働委員会で聞きましたところが、二百億ぐらいの予算を年間組んでもらえばもっと早く徹底的なガン対策ができるのであろうと意見が一致しておりますものですから、私どもその線に沿ってガン対策促進法という一つの案を示しておるわけです。それも政府としても十分取り上げてもいないようでありますし、議員立法するという手もございますが、まだ私どもは政府の取り組みに頼っておる、見ておるような実態であります。したがって予算もことしは五億ぐらいふえましたが、もう少し徹底的なガン対策を立ててもらいたい。できれば早急に私どもの社会党案のガン対策促進法をごらんになりまして、政府でもひとつ立案する方向に動いてもらいたいと思いますが、いかがですか。
  214. 坊秀男

    国務大臣(坊秀男君) いま結核とか精神病とかいったようなものと同様に、ひとつガン対策立法化しろと、こういうお話しのように承ったのでございますが、小柳委員十分御存じのことと思いますけれども、とにかくガンは早期に発見して、重くならぬうちに早期に治療するということでございまして、結核とか、あるいは精神病とかいったようなものは、非常にこれは何と申しますか、病気の性質上、社会性と申しまするか、結核は非常に他人に伝染をする。あるいは精神病は自他、自分なり他人なりに、そのままにほうっておきますと、障害を及ぼしていくといったような性質もこれありまして、そういったようなものは、社会的な観点からいたしまして、特別の立法ということが必要になってくるわけであります。ガンにつきましては、私は不必要だということは申し上げませんけれども、そこいらの点におきまして、若干のこの対策に違いがある。そこで、ガン対策としてですね、予算の上で予算が少ないじゃないかと、こういうことは、これは私は確かにもっと予算をつけるべきだと思いますけれども、このガンの対策につきましては、早期発見にしても、研究にいたしましても、あるいは治療施設にいたしましても、治療にいたしましても、目下のところはですね、これは予算上、できるだけ予算をふやしていくということによってただいまのところはやっていけるんではなかろうか。しかし、その予算が少ないじゃないかと、こういうおしかりは、確かに予算は私はこれでもって十分だと、かようには考えておりません。
  215. 小柳勇

    小柳勇君 御存じのようにですね、東大の宇宙研のロケットの研究費だけでも三十四億円あるんですから、これはガンの、この重要な一億の人たちのガン対策費が二十五億八千二十万円です。金額の多寡では言いません。文部省にも五億くらい研究費がございますから、三十億はございます。金額ではございませんが、もう少し政府をあげての取り組みを私は希望いたしておるわけでございます。  それから、結核の医療費が今年は二十八億八千九百四十六万八千円減ったんですが、これはどういうわけでございましょうか。
  216. 坊秀男

    国務大臣(坊秀男君) 御案内のとおりですね、結核の治療をしなければならないという対象人員が、これは非常に幸いなことでございますが、だんだんと減少してまいっておるということで、したがいまして、これに対処する予算が若干減ったということでございますけれども、詳細は担当局長から説明いたさせます。
  217. 中原龍之助

    政府委員中原龍之助君) ただいまの結核の予算が減りましたという問題につきましてお答えを申し上げますが、この結核の医療費につきましては、四十二年度は四十一年度に比べまして約二十九億円の減という形になっております。しかし、このうち四十年度の清算不足分というのがございまして、大体十四億でございます。そして、それがございますので、全体として四十一年度に比べて減ったというのは約十五億円でございます。  その内訳は、先生御存じのとおり、命令入所患者のものと、それから一般の患者のいわゆる適正医療と、通院患者に対する適正医療のもの、こういうものでございまして、命令入所関係が十億円で、一般患者の医療費が五億円という形になっております。  で、これが減りました主たる理由は、実績の上におきましても、命令入所患者、こういうものはやはり減りつつございます。したがいまして、その実際の実績を勘案をいたしまして、命令入所患者は大体前年度よりも五千人減ぐらいになるだろう。それから一般患者につきましてもやはり実績上減っておりますが、これが六万八千件ぐらい減になっている、こういうところから、その医療費につきましては減っておるわけでございます。しかし、このことは結核の対策の上で後退しておるのじゃないかというような印象を、予算の面だけでは減ったということによって与えると思われますけれども、実質上におきましては、これは実際の実績をもとにしてそれをやっております。したがいまして、対策それ自身の後退ではないというふうに私は考えておりますし、また結核の対策は、現在減少しつつありますけれども、この際になお一そう対策を進めていくということによって、再びぶり返すことがないようにということはもちろん、なお一そう減少を早めていこうというような考え方をとっておるわけであります。そのためには、たとえば取り上げた一つの対策といたしましては、BCGの普及がなかなか思うようにいかない、少し減ってくるとかというようなこともありまして、多年BCGに対する研究をやりまして、その結果、従来のいわゆる皮内接種よりも経皮接種でもってやったほうが副作用も少ないというようなことから、これを積極的に取り上げまして、この四十二年度からBCGの予防接種をいわゆる経皮方法に全面的に改めた。あるいはまた結核の医療の内容といたしましても、新しい治療薬を取り入れた、新薬を採用したというようなことで結核対策推進をはかっておるということでございます。
  218. 小柳勇

    小柳勇君 どうもはっきりわからぬのですがね。医療費は減少しておるけれども、結核の対策は進んでいるんだというような話のようですけれども、医師会の人の意身を聞いてみますと、まだ在宅患者もいるし、入所希望者もいる、結核医療費はこんなに減っていいはずはない、こういうことを言っているわけですよ。あなたの説明を聞きますと、まあ減りましてもちっとも医療に差しつかえないというような説明ですけれども、そこのところよくわからぬのですが、それは入所希望者、あるいは在宅患者、強制人院の命令入所の数は減ったとおっしゃいますけれども、そんなことも、数によってもう少し具体的に説明願います。
  219. 中原龍之助

    政府委員中原龍之助君) 結核患者につきましては、先生御存じのとおり、全体的の結核患者数というものは、これは実態調査は五年ごとに行なっておりまして、その結果が発表されておりますので、先生よくおわかりのことでございまして、これは現在までは、いわゆる最近に行なわれたのは昭和三十八年度に行なわれている。今度は、五年たちますから、四十三年に行なわれるという形になっております。この実態調査の結果に基づきましても確実に減っておるわけでございます。それから、問題は、入院患者数につきましても、入院者につきましてはこれは三十八年、三十九年、四十年と比べましても、入院者はやはり年々で約二万くらい減りつつございます。それから問題は、在宅患者、在宅医療というものがございます。在宅医療の状況は、三十八年、三十九年、四十年といたしまして、これはたとえば三十八年が五十六万人、三十九年が五十六万人、それから四十年が五十五万人ということになっております。  次に、結核患者の治療につきまして、私どもといたしましては、できるだけ入院をして治療を受ける。ことにこれは活動性のものでございます。そういうような方針をとっているのでありますが、実際上家庭の事情によりまして、これはまあ入院しなくて、自宅でやってもよろしいというような、医師との話し合いによって自宅でやっているのもあります。そういうふうにやっているのもありますけれども、一部におきましては、医療をどうしても要するにかかわらず、医療を受けないというものも中にありますけれども、これは統計上若干出ておるわけです。しかし、それの実態につきまして一部いままでに調査したところが、それは統計上のいろいろ問題から、そういう数字があらわれてきている。したがって、実際には医療を受けているのだけれども、統計を取る時点において医療をやめたというようなことがありますので、私どもといたしましては、今後の結核対策を進展する上におきまして、そういうものを確実につかんで、そしてそれに対していろいろ手を打っていく。いわゆる患者の管理であります。それが非常に大事でありますので、統計上の数字はそうでありますが、一そうそれにつきまして注意をして、いろいろよく調べるようにというようなことで、府県を督励をしている次第でございます。
  220. 小柳勇

    小柳勇君 説明は大体わかりましたけれども、まあまだ十分納得できませんけれども、医師会や患者が納得するようなことを厚生省としてもおやりになる必要があろうかと思います。私にそう言われますから、二十八億円も結核医療費が減りましたよ、と。何か国が、結核の患者及び担当の医師に対して、もう対策を手を抜くような印象を与えておりますから、この点厚生省もひとつ十分注意して、啓蒙をしてもらいたいと思います。答弁はいいです。あと、医療保険の問題を質問したかったのでありますが、もう私の担当時間もまいりました。また社会労働委員会に入りましてから、法案で十分論議さしていただきますが、以上で私の質問を終わります。
  221. 多田省吾

    主査多田省吾君) 小柳委員質疑を終わります。小林君。
  222. 小林武

    小林武君 最初にお尋ねいたしたいのは、言語障害児竜のセンターがございます。ただいまちょっと、予算のことで厚生省のほうにお尋ねしたら、六千三百万円、そのくらいの額でした。実はこれをもっと拡張する意思がないか。拡張というか、一カ所じゃなくて、全国的に考え、やはり交通の便とかいろいろ考えますと、三カ所でも四カ所でも置く意思がないかということ。  なぜそういうことを言うかというと、実は私の同僚の一人のこどもが、三年ぐらいかかってようやくあのセンターにたどり着いた。大学病院もあるところでありますから、大学病院にも行ったし、いろいろ行きましたけれども、結局何といいますか、医学的に見て、耳の関係というのはあまり欠損のあれもないというようなことで、努力をするというか、練習をすればなおるのじゃないかというような考え方なんです。ところがいよいよ困りはてて、三年ぐらいかかって、六歳になってから、ようやくその障害センターにたどり着いた。これは、しかし心身障害児童というような、言語障害のような者は、数はそれほどたくさんあるというわけじゃございませんけれども、困っている者はずいぶんあるわけです。これが早期に発見されると、そこで、颯田先生からもお話を承ったのだが、これが三歳ぐらいのときならば、まだ少しよかった。やはり五歳六歳になってからくるというと、これはなかなか容易じゃないというお話です。そういうところから、なお私は東京都内のそれの研究指定校といわれる小学校にも行ってみた。で、非常にその面についての、国がどういうふうにそれに対して援助を与えるかということもありますけれども、それにより先に、一体そういう前の、もっとその問題をはっきりさせるような施設というものが、東京一カ所というのはどう考えてもこれはどうも妥当でない。予算を見ればそれほど膨大な予算でもないから、これはかなり計画的にやってよろしいから、だんだん三カ所とか四カ所とかいうようなところにこれをふやしていくことができないのかどうか。そういう考え方はないかどうか。ちょっとそれを厚生大臣にお尋ねしておきたい。
  223. 坊秀男

    国務大臣(坊秀男君) お説のように、言語障害で非常にお気の毒な人がだんだんふえてきているということは、これはもう否定できまいと思います。さような意味におきまして、私は東京一カ所で十分であるなどということを考えておりません。私は逐次、これは一ぺんに四カ所も五カ所もというわけにはまいらんにいたしましても、漸次御意見のように、これはそういったような施設をふやしていくべきだと、かように存じます。
  224. 小林武

    小林武君 その点については、ただいまの私の関係した問題では、結局親たちがこちらのほうへ転任してきて、この一カ所のところのいろいろ御指導を仰いで、さらに小学校に通って、こういったことが、なかなか時期がおくれているようなことでたいへん苦労しているようです。転任することは転任しました。転任というよりも、受け入れてもらったわけですね。こういう事情を考えると、私が旧帝大といったようなことをいまごろ持ち出すのは何だけれども、そういう大学がある個所もあるわけですから、かなり準備段階はできていると思う。金を出すか、出さんかの問題です。私は、いまそれを九カ所つくれとか何とか言いませんけれども、漸次そろえていくということを、本年度はできなくても、来年度あたりはやはり御考慮願いたいものだと、このように考えます。それはそれで終わります。  もう一つお尋ねをいたしたいのは、児童手当の問題ですけれども、児童手当の予算というのは、たしか九百七十万ですか、調査費がついているように思うのですが、前年度が六百九十一万ですか、この調査費でいまのところ一体どういうところまで調査をしようということになっているのですか。
  225. 首尾木一

    説明員首尾木一君) 児童手当の基礎調査といたしましては、四十一年度における児童のいる家庭につきまして、公的年金の支給状況でありますとか、あるいは市区町村民税の課税状況、所得税の課税状況、それから児童のいる家庭についての貯蓄とその目的それから家族循環と生活周期といったようなことに関しまして四十一年度に調査をいたしたわけであります。四十二年度におきまして考えておりますのは、なお細目といたしまして、児童手当の給付の方式をどんなものにすることがいいかというような観点から、児童のいる家庭につきましての消費構造というものを調査をいたしたいというように考えております。
  226. 小林武

    小林武君 子供を持っていると金がかかるというのはきわめて簡単なことでございまして、貧乏人の子だくさんというのもあるし、子供を持つということはたいへん親にとって負担だ。これを子供を生んだ者が一体育てるのがいいだろうというようなぐあいでないところに児童手当のいいところがある。これはすでに、日本でこれから初めてなろうというものじゃなしに、もうすでに実施した国がたくさんあるわけですから、その方式もたくさんあるわけですね。これは一々申し上げなくてもわかるとおり。それに日本の場合、これちょうど厚生省の前は労働省との関係で、労働力の問題かこれはやはりたいへんな問題です。これは即人口問題ということにもなるのですね。いろいろ考えてみれば、これ憂慮すべき状態だとも言える。こういうことから考えて、一体これ急速にやるべき問題だと思うけれども、そうなれば大体子供の養育に対して、国がこれについて、とにかく社会全体でめんどうをみる。めんどうをみると言っては悪いけれども保障をするというやり方。こうなると調査は私はむだな調査と思わないですよ。そういう非常に行き渡った調査をされることはけっこうだ。しかし、これについてはやはりいろいろな制限を加えてやるということでなしに、子供を育てていることに非常に不安感がなくなるということと、それから子供をたくさん持っているということについて、一つのやはり昔の、戦前の生めよふやせよというあれじゃないけれども、まずとにかくりっぱに育てるということに意義を感じさせるというような意味で、まあまあ目的の問題になるとすでに大体わかりきったことじゃないかと思う。こういうふうにはやはり考えられませんか、厚生省の考え方としてはいままでの調査の上から。これは厚生大臣の問題になるわけですけれども、役人の方はそれぞれいろいろ調査なさる。しかし、ぼくは来年になってまだ調査というようなことを言うならばこれはちょっと手おくれだと思う。来年はもうすでに児童手当を出すというような、これは何か総理大臣も四十三年度からは出すというようなことをおっしゃったようなことをちょっと聞いたような気がするのですけれども、そうなるとここらで一つのめどが出てもよろしいというように思うのですが、どうでしょう。
  227. 坊秀男

    国務大臣(坊秀男君) 児童手当の問題は、日本の社会保障、所得保障の中で世界の先進国に比しまして一つこれは欠けておるということが常に言われる問題でありますし、また御指摘のとおり、日本の人口問題、雇用労働といったような問題についても将来これは相当考えなければならない大きな問題であろうと思います。で、総理大臣も前向きの答弁をしておられたということは、これは御案内のとおりでございますが、さて、これを実際実施してまいりますと、先進各国におけるいろいろな児童に関するあるいは税金の面における控除なり、あるいは家族手当だとかいったような問題もこれは日本でももちろんあるのでございますが、そういったようなことだとか、いろいろ児童に関する諸般の手当といったようなものもこれありまして、実際これをやっていくという上におきましては、それから、そのやり方が全部の児童に及ぼしていくか、あるいはまた若干これに対して制約を加えていこうかといったようなこともありまして、何にいたしましても児童手当というものを実施いたしますと、それだけこれは全部または一部ということになりましょうけれども、財政でもってこれをつっかい棒をやっていくというようなことにも相なりますし、実際これを、もちろん前向きに考えていかなければなりませんし、できるだけすみやかにこれを実施していかなければならない問題でございますけれども、そのやり方、範囲等につきましては、今日の段階におきましては相当のこれはまだ調査を要する問題である。ただしやらなければならない問題である。しかも、最もすみやかにこれを実施しなければならない問題である。かように考えております。
  228. 小林武

    小林武君 だいぶん何だか慎重になられたようで、後退したような気がするのですね。前の厚生大臣鈴木さんのときは、第三子からとか、ずいぶんこれは具体的な話が出たんですが、全部の子供にやるわけにはいかないから、日本の場合は第三子からと言われた。私は第三子からやるということに賛成ではないのですよ。賛成ではないのですけれども、少なくとも厚生省の関係ではかなり具体的なところまで調査が運んだんじゃないかというようにあの答弁の中からぼくは推察しておるのです。それが一体その範囲をどうするかという問題、これは具体的な問題ですよ、額がどうなるか、その負担のあれがどうなるのか、国が全部しょうのかどうか、あるいは別なやり方でいくかどうかということを考えますと、ちょっと具体的になっておったと思っておったのがまたここへきてそこまで逆戻りするということなのか、どうなのか、これはどうなんですか。
  229. 坊秀男

    国務大臣(坊秀男君) ただいまもおっしゃられましたとおり、第三子からということには賛成でないと、こういう御意見……。
  230. 小林武

    小林武君 私はね。
  231. 坊秀男

    国務大臣(坊秀男君) そういったような意見が方々に、第三子からというような意見もありますし、そういうようなことでは日本ではいけないんだと、こういう意見もありますし、実際やっていくという上におきましてはいろいろな各方面に意見がございます。だからそういったような各方面の意見をお聞きいたしまして、最も妥当なる案をつくっていくというためには、私はいましばらくの調査、しかしながらできるだけすみやかに実施していかなければならない問題として扱ってまいりたいと、かように考えます。
  232. 小林武

    小林武君 その慎重にやられることはけっこうでありますけれども、大体概算要求の時期というのはあまりこれから時間がないのですからね。そうするとそろそろ準備をしていかなければならぬ。私はいまここで言ってもらいたいということではないのですよ。ないのだけれども、概算要求が始まるのは、この予算が通ればぼつぼつ始めるということになれば、私はやはり具体的な面では四十三年度からやるのならば具体化の面ではやはりかなり速度を早めていかなければならぬ、具体化しなければならぬのじゃないか。それをひとっここで考えたからいまのような質問をしておるのです。いまどういう範囲になるか言えと言ったところで言えそうもないので、顔を見ていると、それは言いません。ただ私は厚生省に人口問題研究所というのがあるわけですね。ここが一体こういう問題をとらえてどの程度のあれを持っておるのか。たとえば労働省ならば昭和四十六年までの間に一体労働力というものがどういうふうに推移していくかということを言うんです。さらにはもっと先のことを見ておるわけですね。経済企画庁で今度は経済問題と取り組めばやはりそうなんです。四十六年度へ持っていくか、あるいはもっと先のほうまで推定していくのです。だから純粋に言えば研究的な立場から検討されておると思うのだが、この人口問題研究所では、日本の人口問題というものをどんなふうに、これは労働力との関連だとかいろいろなところの関連から見られておると思うのだが、これはちょっと、あったら要点だけでもひとつ答弁してもらいたい。
  233. 篠崎信男

    説明員(篠崎信男君) 戦後の人口問題につきましては、第一期の転換層が昭和二十七年から二十八年に起きたことは御承知のとおりだと思います。つまり、戦前の多産多死から少産少死に移った時期が、昭和二十七年から三十年の間に転換を遂げたと思います。最初が死亡の減少、引き続いて出生の減少。その後昭和三十二年以来、御承知のとおり少産少死型の人口動態になりまして、これが安定した比率で昭和三十九年まで続きました。しかしながら、その中身につきましては、多々問題があるかと思いまするが、多少、受胎調節をはじめ好ましからざる人工妊娠中絶によりまして、少し少産のほうを実現せしめていたと。ところが昨年のひのえうまで減少を見ましたように、昭和四十年からは第二の変動期を迎えたと、こう判断しております。と申しまするのは、戦後生まれた人口が青少年人口の約七五%を占めておりまして、これはつまり質の転換である。と申しまするのは、戦後生まれた人口で戦後の社会教育、経済教育並びに教育環境に育った人々が、いまやだんだんと育ちまして、そういう形でものの考え方が変わってきた。したがって、表面的な数だけでものを律しては相ならぬという立場を私たちはとっております。と同時に、この労働力の問題でございまするが、昨今若年労働力不足しているといわれておりまするが、確かにその傾向はございまするが、ただいまの青少年労働力人口の源というのは昭和十九年、二十年、二十一年に出生した者が出ている。それは絶対的に統計的にわからないのです、あの三年間はブランクで。はたしてどのくらい子供が生まれたものやら、どのくらい死んだものやら、それはわかりません。しかしながら、御承知のとおり、昭和二十二年から二十四年にかけましては、ベビーブームが、合計八百三十万でございますが、これが大体中学校を卒業し、一番下がいま高校の三年におりますが、これは、進学率の上昇のため労働市場に出ない。そのために一時若年労働力不足が訴えられるやにうかがいますが、これが二、三年たちますると、ホワイトカラーになって労働市場に出る。したがいまして、それを過ぎましたあと、昭和二十八年生まれの者が労働市場に出る。それが中学校で出るか、あるいは高校で出るか、大学で出るか、この三段階の道がございます。現在の進学率の上昇を見ますると、どうしても大学を出て出る割合が多いのではなかろうか。そうすると、その問題は昭和の四十七年ごろから本格化して、若年労働力不足があらわれてくるであろう。と同時に、現在は、大きく見まして、純再生産率が〇・九四でございまするので、やや行き過ぎの感がなきにしもあらず。この状態はハンガリーと日本だけでございまして、昭和三十二年を境として起こっておりまするが、イギリスやフランスはそれを境にいたしまして純再生産率は一をオーバーしている、こういう逆転的な現象がございまするので、やや行き過ぎの傾向は認めざるを得ません。しかしながらその内容は、あの人口過剰に押されて、あの恐怖感から、結局無理をしてそういうことをしたという国民的な努力でございまして、それを今後はどういう形にして適正化していくか。ただし、いまそれをムードといたしまして出しますことはまことに遺憾でございますし、と申しまするのは、私どもが調査いたしました結果、住宅が確かに足りない。それが大きな理由であると思いましたところが、モチベーションは案外違ったところにあるのではなかろうか。そして二DK、三DKの小さな問題だけで子供を生むとか生まないということを決定しているようではないようでございます。その点はもう少し分析いたしたいと思いますが、非常に複雑なモチベーションが若い人々の中にあるようでございますので、この点はもう少し私どもも研究いたしたいと存じておりますが、まあこういう点につきまして、若干、われわれ労働力の本格的な不足昭和四十七年ごろからあらわれるのではないかと思っております。  以上で大体お答えになりましたかどうか、また御質問ございましたらひとついたしたいと思います。
  234. 小林武

    小林武君 なかなか何といいますか、さすが研究所だけあって研究の視点がやはり一般的なこととちょっと違うようだと思います。私はそのまじめさは大いに買います。  しかし、児童手当を出すという厚生省全体のあれは、研究所の意向できまったのかどうかわからぬけれども、研究所も一つのやっぱり役割りを果たしていると思うのです。しかし、何のために児童手当を出すかということになると、これはやっぱりもう少し考えなければならぬのです。われわれもそうたくさん生めよふやせよなんということをやっているとは思わない。しかし、労働力不足になっているということも事実だし、それからまた非常に母体の立場から見ても、いまの一体子供を中絶するということの上から見れば、どうも非常に危険なこともあるというようなことを聞いている。なお女性の議員がそういうことについて発言もなさっているから、私はまあそういう点でも信じていいのではないかと思う。こうなりますとね、やはり政治として児童手当を出すということの目標だね、やっぱりこれは一つは、やはり日本の子供をある程度日本のみんながというような気持ちもあるだろうし、もう一つは、やはり別な意味があるのじゃないだろうか。やはり人口問題というものもこれにからんでいると、こう思うのですが、厚生大臣は一体どうなんですか、それについて。
  235. 坊秀男

    国務大臣(坊秀男君) 児童手当を出すということは、もちろんいま説明のありました人口問題ひいては雇用の問題、就業の問題というようなことも私は一つの大きなデータであろう。しかし、児童手当はそれだけではない。一般国民の社会保障と申しますか、福祉生活と申しますか、そういったような点からも考えなければならないというようなことでございまして、これはいろんな各方面の角度から考えまして、私も児童手当の必要性というものはこれは痛感しておるところでございます。
  236. 小林武

    小林武君 まあ大体その点ではどんなことを考えているかわかりましたが、何しろ私は実施段階を目の前にしていると理解しているわけですから、具体的な問題でやはり、範囲をどうするか、額をどうするか、その負担の形は一体国だけなのかどうなのかという具体的な問題について、早急にやはり結論を出さなければならぬような時期にきていると思いますので、ひとつその点で御協力をいただきたいと思うわけです。  それからもう一つ、幼児教育の問題でお尋ねいたしたいのでありますが、先ほど来小柳委員から質問ございましたが、私の場合はちょっとこれは角度が違いまして、この教育的な立場からいって、幼児教育の場合、保育教育と幼稚園の関係というものはずいぶんこれは議論されているのですよ。これはもういわゆる文部省厚生省の問題じゃないけれども、結局現場のいわゆる幼稚園の教育をやっている者が一体保育の問題をどうするか、この関係どうなるかということで議論した、指摘したのですがね。実際問題としてどうなんであるか。先ほど担当の局長さんからお話があったのですが、二つの関係はもうこれ何だかこんがらがって、われわれの調べたところでは、幼児教育と保育教育というようなものの差がもうなくなっちゃったのだという感じをしているわけです。これはとにかく片っ方厚生省で、片っ方が文部省だということについては、実際現場にいる者はわずらわしいというような感じを一つ持っているのですが、これについてはどうでしょう。
  237. 坊秀男

    国務大臣(坊秀男君) 基本的には、この日本の国の将来を背負って立っていくという幼児の教育なり保育なりということは、これはもう非常に大事なことでございまして、私は幼児のときに、これは学者諸先生なども言っておるわけです、岡潔博士なども言っておられるが、大体三歳ぐらいまでの間に、非常にむずかしいことでございまするから私も記憶もいたしておりませんけれども、十分な教育ということをしておかなければ、ある面においてはもう四、五歳になったらその教育を受け入れないというような性格さえ出てくるようなことを何かの本で見たようなことがありますが、さような意味におきまして、私は幼児の教育、今日日本でやっております教育、むろん家庭教育から始まりますけれども、幼稚園における教育また保育所における保育だけではない、保育所におきましては教育もやっておるわけでございますが、さような意味におきまして、本質的にはこれは教育という面から言えば、私は両者非常に差異があっちゃいけないと、かように考えております。ただ、しかし今日の制度におきましては、何も文部省厚生省とがなわ張り争いをするというようなことではございませんけれども、いまの制度といたしまして、幼稚園はまあ教育専門であると、そこで父兄なり保護者のこれはほんとうに自発的と申しますか、何と申しますか、そういったような要請に従って幼稚園はやっていくと、ところが保育所のほうは、これはもう御案内のとおりでございますけれども、むろんこれは強制しているわけでも何でもありませんけれども、いろんな諸般の保護者あるいはその父兄といったような方々の社会的なもの、何と申しますか、社会的な立場における必要というようなところでこの保育というものをやっておるというようなことでございまして、保育所と幼稚園というものは、今日におきましてはいささかその趣旨を異にしておるというので、そこで私は今日におきましては、保育所においてもそういったような立場を踏まえまして、保育所におきましても幼児教育というものは非常に大事なことでございまするから、そういったような幼稚園に比べてはやや恵まれないというような家庭の幼児を、これを保育していく上におきまして、できるだけその幼稚園の教育に劣らざる、幼稚園の教育に準じたような教育をやっていくということが今日の私は大事な問題であると思います。
  238. 小林武

    小林武君 保育所と幼稚園の目的というのはやっぱりちょっと違ってますわね。保育所は乳幼児を入れて、だから百二十万、先ほど説明があったが、百二十万の保育所の子供がいるとすれば、乳児がこの中にどのくらいいるのかという問題もあるんですが、私はまあほんとうのことを言うと、これを一本化したほうがいいというような意見もあるんですが、若干それに迷いがあるんです、私個人は。もっとやはり厚生省文部省の分担の区域というものをおのずからやっぱりいままでの目的の上にもつけられるんではないかと、もう大臣の言われる乳幼児というようなものをかかえて働かなきゃならぬおかあさんというものはたいへんですから。さらにまあまた労働問題とからみ合わせますけれども、今後婦人労働者というのは補助的労働ではなくなるわけですがね、将来。そうすると、どんどん各界に出ていくということになると、一そうこれは子供はどうなるかという問題がある。この間新聞で見た話ですけれども、農家の嫁さんは子供を持つことをしゅうとさんに禁じられているという新聞記事を見て、ぼくはぎょっとしたことがある。これは笑えないような事実が学校の中にもあるんですよ。某校長が来たら女の先生の腹が全部大きくならなかったというんです。その校長が転任をしたら突如としてどしどし産んでいったという、そういう話が出て、それでまあこれはたいへん重大な問題だというような話題がある会にも出たことがある。まあしかし、そういうようなことはだんだんこれから私はなくしていかなければならぬと思うんですが、そういうようなことを考えると、私は働く場所にどんどんこういうものをつくらなきゃならぬということになると、やっぱり厚生省と、文部省が別になわ張り争いとかなんとかということでなくて、分担すべきものをひとつやったらいいんじゃないか。保育というものを目的としたものと、それからさらに心身の発達というようなことをつけ加えた——保育をやりながら身心の発達ということを入れたいわゆる教育的な幼稚園というものと、何とかどっかでもって切って、そして両方がやるということが適当じゃないか。その証拠に、その間の関係が明らかでないから、みんなが指摘するように、もう保育所は即幼稚園みたいな形になっているところもあれば、それからまた幼稚園が非常によく発達しておって、そうして保育のほうはどうもあんまりぱっとしないというようなところがあったりいろいろあるわけですわ。これがやはり幼児教育の不統一ということを現場の人たちがみんな考える。そしてやはり苦労していると思うのですよ。でありますからこの際、私立の何とかということも必要でしょう。それから事業所内のいろんなあれも必要ですけれども、国がまずやはりその面ではっきりしなければならないのじゃないかと実は思うのですが、その点はどうなんでしょう。これはまあ大臣も御答弁にお困りなような小さいことだから、小さいことというより、具体的な話ですから、これはひとつ担当の局長さん、どうお考えか。
  239. 渥美節夫

    政府委員(渥美節夫君) 先ほど大臣がお答え申し上げましたように、保育所と幼稚園というのは、現在のところはこれはもう制度的に違っておるということは、先生も十分御承知と思います。しかしながら、私どもといたしましては、現在の制度におきましても幼児教育の充実というものを、保育所の場所においても向上していくという必要を十分感じているわけでございます。したがいまして、保育所の機能自体が全般的にはあるいは幼児教育とも言えるかもしれませんが、同時に、やはりそういった環境に恵まれない方々、子供さんの何といいますか環境の改善を指導するとか、あるいは健康管理的な機能を打っておるとか、まあ純粋な学校教育というか、純粋な教育よりもさらに内容的にはほかの要素も加わっておるというふうな解釈をしているわけでございますが、しかし、幼児教育という教育の面につきましては、幼稚園の教育要領に準じて行なえ、さらにまた保母さんの資格等におきましても、たとえばインサービストレーニングを置きまして、こういった幼稚園の教育要領がその保育所においても実現できるように勉強せいというふうなことまでも実はやっておるわけでございますが、しかしながら、やはりその保護者が労働のためにいないとか、疾病のためにいないとか、あるいは刑務所に行っているためにいないとか、そういうような制度的な問題は、これはどうしても違っておるというふうに解釈はしておるわけです。しかしながら実際問題といたしまして、ある地方に参りますると、幼稚園の非常に発達しているところにおきましては保育所が少ない、あるいは保育所が非常に発達しておるところにおきましては幼稚園が少ないというふうな実際上の問題があることも事実でございます。したがいまして現在のところ、私どもといたしましては、保育所にやはり入るべきもの、それから父母の希望によって幼稚園に入れるというふうな希望のあるそういった子供については、お互いにはっきりその立場を、そり制度を生かすようにやっていこうじゃないかということで、私どもも都道府県の民生部長なり、あるいはまた文部省におかれては教育委員会のほうにそういうふうな通牒等も出しまして、そうしてその点の、まあ私どもから言いますれば、保育所に入る子供たち措置の厳正を期するというふうな態度でまあ進んでおるわけでございます。  しかし、いずれにいたしましても、現在全国におきまして三千数百の市町村がございますけれども、なお保育所がない町村が約八百もございます。そういったところにおきまして、労働のために子供を預けなくちゃいけないというふうな実情もございますので、当面は保育所の整備、おそらくまた文部省におきましては幼稚園の整備というふうなことを現実におきましては重点の事業といたしましてやっておると思いますが、まあ幼児教育の重要性からかんがみまして、その向上というのは当然期していかなくちゃいけない、そのように考えております。
  240. 小林武

    小林武君 幼児教育の重大性というのは、われわれが最も従来から強く主張してきたところなんですがね。これはもう幼稚園も、いまのようなことから言えばかえって幼稚園のほうが普及してないですよ。これを一体私立幼稚園にまかしておくといういき方がいいかといったら、私はだめだと思う。文部省で七カ年計画とかいったけれども、これも全部計画を立ててみたところでそれはもうたいしたことはない。でありますから、私はそういう点ではとにかく国がこれについてかなり大幅の責任を持つ、私立幼稚園がなくなっていいというわけじゃないのですよ、何も、大幅の責任を持つということは。それからいまお話しの、大臣もあなたも話すんだが、恵まれないものという考え方は、これはもうそろそろ幼稚園自体というものが恵まれるもので、保育所が恵まれないものだというような考えに立つ時代はもう過ぎたと思うのですよ。私はずっと昔に、片方に保育所があって、片方に私立の幼稚園があった、そのときに確かにそういうことがあったのですよ。あの幼稚園に行っているのは比較的恵まれている家庭、保育所へ行っているのはとにかく親が働いている労働者の子供で金のない子供だ、そういう者に対するそういう子供自身の劣等感みたいなものが出ておって困ったと言っておりました。私はそういうあれじゃだめだと思うのですよ、それがなくなりつつあるんじゃないか、いまは。そして両方が何だか重なり合ったような形になっている。これが新聞なんかで取り上げている問題として出ていると思う。第一、長野、高知といったらこれは保育所でもって幼稚園を代表しているあれでしょう、この二県は。これはあなたのほうお調べになればわかるわけですよ。だから、こういう形になっているときに一体どうするかという問題は、ぼくはもう同じ政府の中にある厚生省文部省がもっとやはりこの問題についてやらないというと、幼児教育全対としてぼくはやはりうまくいかないのじゃないか。一本化の説を言う人はどこかに移せと言うかもしれないが、私はその問題についてはやはり問題点があるのじゃないか、そうばかりいかないのじゃないかと思います。しかし、十分両方でひとつ御検討いただく、これは大臣にお願いするが、やはり文部大臣とこの問題についてひとつ政治的なお話し合いをしてもらいたいと思うのですよ。これは早急に幼稚園というものはいまのようないわゆる義務制下のものになっていくだろうと思います。たとえば就学年齢をどうするかという問題も含めて、教育制度の問題について検討を加えるという問題がある限り、この問題をぼくは厚生省だけがかかわりなくやるというようなことはできなくなっていくと思う、両方がやはり話し合って、この問題について十分現場でいろいろ問題を持っている人たち意見を聞きながら最善の方法を確立する必要があるのじゃないかということで私は質問をしているわけです。どうぞひとつ……、聞いているとやはり自分のほうの立場を強く主張されるような気がするのですけれども、どっちということはありません。私何も文部省の肩を持って言っているわけではありませんから、誤解のないようにしてひとつ御研究をお願い申し上げたいわけであります。  最後に一つだけ、これは厚生大臣にお尋ねいたしますが、経団連からは公害基本法か何かの問題について反対の意思表示があったというようなことを新聞で見たわけですが、これはどんな意思表示でありますか、新聞の記事どおりに理解してよろしいんですか。
  241. 坊秀男

    国務大臣(坊秀男君) 私はまだその新聞の記事を読んでおりません。私に関する限りは経団連から何か公害基本法に対して申し入れがあったということは全然私はさようなことはここでなかったということをはっきり申し上げます。なお、関係各局、課長に対してもおそらく経団連からさような意思表示があったとは思いません。  以上でございます。
  242. 小林武

    小林武君 まあ、私の持って来ているのは朝日と読売ですね。読売のほうは「公害基本法に不満」「経団連、企業活動を阻害と」という理由で不満を持った。これは公害対策委員会の委員長大川鉄雄氏が小委員会を開いてこれを政府に申し入れを行なうことをきめたと書いてある、そして要点を書いてあります。朝日のほうも同じ意味です。山陽パルプ会長が大川公害対策委員長である。というのは、これは経団連の方でありますが、同じく「きびし過ぎると反論」公害に。こういう反論を政府に申し入れた——これは申し入れなかったのですかね、厚生省に関する限り知らないわけですか、政府にそういう申し入れがあったら閣議で話は出なかったわけですか、これはどういうことになりますか。
  243. 坊秀男

    国務大臣(坊秀男君) 厚生省に関する限りはございませんし、他のあるいは総理府、あるいはその他の関係大臣については、これは私は、あなたのほうにそういう申し出があったかということは聞いておりませんけれども、少なくとも、閣議ではどっから何か申し入れがあったということを聞いた覚えはございません。
  244. 小林武

    小林武君 私もその点はちょっと理解に苦しむのですが、これは主務官庁についての文句があるというのですよ。何か記事によると、総理府にせい、こういうふうに言っている。私はほかならぬ公害の問題について経団連からこういう態度を示されるとしたら、これは公害問題と取り組む立場のほうの政府機関は、これはたいへんなことだと私は思っているのですよ。これはよほどふんどしを締めてかからないと国民はとにかく、この公害のために一体どうなるかわからぬと私は思います。まあ大体基本法の趣旨がだいぶおかしくなってきたということは新聞記事なんかにも見るのでありますけれども、私もいまのようなことではこういうことが事実だと私は思う、新聞がうそを書くわけはないですから、これはたいへんなことだと思うのです。経済の健全な発展と調和をはかりつつ公害防施策推進するということ、経済の健全な発展というようなものはきびし過ぎるとかなんとかいうようなこと、そういう言い分を通させるあれがあるのか、それが経済の健全な発達なのかどうかということを新聞記事を見て言っているんですよ、基本法で健全な発達というのは企業の立場を考えるということになるのか、私は非常に不思義なんです。たとえば、あなたも御存じだと思うが、いまパルプの工場、北海道の場合でも内陸から去って行くという状況です、オホーツク海のほうに一つの小さい工場ができたり、旭川にある工場は何か小松島に移転をして、内陸から沿海に、海の沿岸に出て行く、私はあの王子製紙というあの工場のそばに住んでおったことがあるのですが、とにかくあの古い歴史を持ったあれが一本の川を全く死の川にして、そして海に流してきた、内陸にいて川に流せば公害で、海に流す分には何でもないということになるのかどうか。私は瀬戸内海はどろ海になってしまうのじゃないかということを考えているんですよ。そういうことになりますと、これはそういう何か内陸から沿岸に移せばいいという、これはパルプ工場のことです。そのほか一番問題になるのは、何と言っても石油産業だと思うのですけ和ども、一体こういう考え方でいって不安がないのかどうか、これは厚生大臣はどうお考えになっておりますか。
  245. 坊秀男

    国務大臣(坊秀男君) いつも経済の発展と調和してと、こう文句ございますが、これにつきまして、厚生省は後退したのじゃないか、こういうおしかりを受けるのでございますけれども、今度の基本法の趣旨とするところは、いやしくも人間の生存でございますね、生存の一番要件になるものは、基礎は健康、そういう、その健康だとか生命といったようなものにいやしくも公害が悪影響を及ぼす、障害を及ぼすというような場合には、これはもう経済発展との調和というようなことは、これは考えないで、総力で公害を排除していく、こういう趣旨が公害基本法にもあらわれておると私は思います。経済発展との調和というのは、もう少し、われわれの生活環境と申しますか、これを快適なものにしていこう、ここまで公害を排除すれば、これはもう生命、健康には害がないのだ、われわれの生存にはここは脅かされないのだというところまで、これはもう何ら無条件で公害を排除していきまして、そこから上もう少し——もう少しか、もっと大きくか、とにかく生活環境というものを快適なものにしていこう、こういう段階におきまして、これはやはり経済の発展との調和をはかっていくべきじゃないか。経済の発展そのものは、これは確かに経済によって公害は生ずるものでありますけれども、一面におきまして。他面におきまして、また、その経済というものはわれわれの生活、これは経済生活でございますが、社会経済といったようなものを、これを進歩発展せしめていくのも、これが経済とか産業とかの活動によるものでございまするから、そこで、われわれの生活環境というものをもう少し快適にしていこうというような段階におきましては、私は、経済活動、産業活動というものとある程度の調和を求めていくということは、必ずしも公害切除の面から申しましても、後退とか、あるいは骨抜きだとかというものではないように理解をいたしております。
  246. 小林武

    小林武君 新聞の記事はかり申し上げて、あまり御信じにならないようですが、京葉工業地帯で、ある新聞記事によると、病人が六倍にふえておる。それは大学の専門の調査の人の調査によるものですが、それが直ちに公害によるものかどうかということは、私も別に自分がやったわけじゃありませんけれども、少なくとも病人がふえた、六倍もふえた。これはたいへんなことだと思うのです。ある町では何か三倍になったというようなことを言っている。あるいはまた、よく例を引かれるところですけれども、三重県へ行くというと、あそこの公害はかなりすごい。そうなりますと、私は、何といっても、経済の発展というものが、それは日本の国民全体にいろいろな意味で寄与していることは、これは認めるのです。先ほどもだから言っている。労働大臣と私の考え方の一致点は何かと言ったら、経済をより以上発展させようということが一致点です。厚生大臣も同じことを言っている。ただ、しかし、経済の発展というものが人間の命を縮めるとか、公害によって一体住民が困るとかということを、そういうことをあたりまえのようにしていくということが間違いだ、こう言うのです。立場の違いはそこだけです、強調点は。どうもこれはあまりやかましく言ってもらっては困るというような考え方が経団連のようなところから出たとすれば、私はこれは重大な問題だと実は思うのです。そして大体新聞の論調というものは、大体骨抜きになっておる、公害はなかなかこの法律によっては避けることはできないだろうというようなことを書く。私も、しかし、いまのような態度の中から見ると、そう思うのです、それから過去に例ありますから。たとえば北海道の旭川のいまのパルプ工場のことを言えば、かつて神居古潭と言われた水のきれいなところ、岩の美しいことで有名なこの名勝の土地が、いまや行ってみれば、あなたもごらんになったかもしれませんが、まっ黒けのあれになって、惨たんたる光景です。石狩川の水清くとわれわれ歌ったけれども、いまや、どこ見たって水清くなんて言われない。そういうあれがあるのですよ。それがいろいろな産業上にも、農業上にも影響を及ぼしているということは事実なんです。それに一体お互いがどのように強力に取り組むか、そして、それをとにかく、できるだけ排除しながら産業を発展させていくか。そのことのためには、それだけじゃいかぬですよ、地域的な配置の問題もありましょうし、いろいろな政治的施策があると思う。そういう努力が、私は今度の場合に、だいぶ企業の利益ということが優先させられるところに重点が置かれるのではないかということを心配しておるわけです。そういう点、絶対あなたがないとおっしゃれば一応は信頼しておいて、できた結果、しかし、エネルギーというようなものの場合に、石油というものがどういう立場を占めるかというようなことは、これはエネルギー資源の調査会でちゃんと出している結論ですね。その場合に、一体どんなことが起こるのかということは御存じのとおりなんです。どういう対策を立てるかということによって、われわれ、やっぱり結果には相当の心配をしなきゃならぬと思うのです。そういう点、あなたのこれに対する決意と、主務官庁としてそれが絶対もうそういうことは許すものではないというような御決意であれば、私もたいへん安心して御協力申し上げ、企業の横暴は断固許さぬというようなあれでやりますが、そう理解してよろしいですね。
  247. 坊秀男

    国務大臣(坊秀男君) 北海道等について、数々の例示を御提示になったわけですが、実は私自身のことを申し上げましてたいへん恐縮でございますが、私の選挙区の和歌山県も、東亜燃料、丸善石油、それから住友金属といったような大工場がございまして、これは内陸ではございません、まさに海岸地帯でございまして、そこの石油会社の存在するところの海は、これはもう魚も何もすまぬようになっております。それから、住友金属からも、何でございますか、あれはばい煙でございますか、まあ住友金属はよくこれの防除をしておるように私は見ておりますが、さようなことで、私も公害の被害者の一人でございます。そこで、先ほど申し上げましたように、私もこういったような公害がいやしくもわれわれの生命を脅かし健康を脅かすといったような場合には、そういったようなケースは、これはもう産業との調和といったようなことを考えておる余地がない。これは絶対に防除しなければならない。ただ、しかし、こういうことがあろうと思うのです。実は、住友金属が私の和歌山港辺でやっている。東亜燃料、丸善石油があそこでやっておる。そこの空気なり海水が汚濁をしておる。一体和歌山の、もうそういったような、あるいは大気の汚染だ、海水の汚濁だというものを、これを絶対に排除してしまって、海は昔からの海のようにする。それから和歌山の住友金属のあそこらの空気を、それがなかった徳川御三家の時代にまで持っていくといったようなことになりますと、これはどうも産業が私は成り立たないと思う。逆戻りだと思うのです、日本の社会経済というものが。そこで、しかし、現状ではよろしくない。あの海で魚をつっておったのがつれなくなったじゃないかというようなことでございますので、なるほど、人命とか健康とかについては、これは心配の要らぬところまで、これは企業者も地方団体も国も一緒になってその公害は排除した。しかし、せめて——もう魚がつれぬ海になった。魚がつれないといったような海になっている。だから、そういったようなところで魚はつれないけれども、せめてウナギぐらいはつれるというような程度にまでこれを持っていくということに、私は生活環境をよくしていくことだと思うのです。そういったように持っていくというためには、この生活環境をよくしていくということについては、私はそれらの工業なり産業なりというものとここに調和を求めていかなければ、絶対に前々のとおりにしてしまうんだということでは、産業が成り立たない、ここに調和が必要ではなかろうかと、かように考えておるのでございます。
  248. 小林武

    小林武君 これで終わりましょう、終わりますが、そこの最後のところをどう理解するかということがちょっとやっぱり問題なんですけれども、ただ、私が言うのは、産業が発展するということになれば、それは太古の日本のようなことを言ったってだめです、人口がふえただけでもいろいろな問題が起きてくるから。しかし、それだけにまた、科学的な知識も進歩しているし、技術的にも進歩しているのですから、それに対してお互いが一体どれだけとにかく誠意を持って国民の健康を守るとか、あるいは日本の風土を守るとかということの努力をするかという問題にかかっておると思うのです。それをあんまりやかましく言われたら一体成り立つか、おまえのためにだって産業は貢献しているんだぞという、開き直るようなやり方をすると重大な問題だと思うのです。それはしかし、おとな同士の話でありますから、何にもなくなって前と同じになったということはできないとかできるとかという論争はやる必要がないと思います。お互いにできるだけの、われわれの力でもってどこまでできるかということは、国もがんばらなければならないし、企業もそれに対して協力しなければならない。また、それによって受けた漁業——あなたの場合は漁業関係の者がどうやっているか知らないが、漁業関係の者に対してどういう道を開いてくれたか。私は、オホーツク海の沿岸にできた一つの工場が、オホーツク海全体をきたなくするとは思わないが、しかし、あそこは漁業の盛んな場所の一つでありますから、これはしかし、やはり漁業に従事している者はかなり心配しているのじゃないかと思います。そういう点の配慮というものが、やはりみな産業ですから、そういうものが公害基本法なり、あるいは政府施策の態度として、もっと厳格に持たるべきじゃないか。企業はこれについて厳格な態度で協力を誓わなければならぬ、このように考える次第であります。大いにひとつ、大臣のこれからの御奮闘をお願いいたしまして、私の質問を終わります。
  249. 多田省吾

    主査多田省吾君) 小林君の質疑を終わります。石本茂君。
  250. 石本茂

    石本茂君 私は、まず初めにお伺いしたいと思いますのは、健康保険の赤字対策についてでございますが、現在ただいま論議されておりますところの七百四十五億の赤字に対しまして、国庫負担額二百二十五億、そして被保険者の納めておりますところの保険料金の千分の七の増額、あるいは薬価の一部負担というようなことが言われておりますが、これはあくまで単年度の分に対する対策でありますのか、来年度あるいは再来年というようなものを見込みましての対策でもありますのか、あるいは、そのようなものはさらに別途、来年は来年のこととして対策を立てられますのか、お伺いをいたします。
  251. 坊秀男

    国務大臣(坊秀男君) 今度の御審議を願おうとしておる対策が、四十二年度限りのものか、さらに、そうではなくて、四十三年度、四十四年度と延びていくものかどうかという御質問でございますが、今度の対策は、四十二年度における政管健保の巨大な赤字が出ておりますので、それをしのいでいく、どうしてもしのいでいかなければ、政管健保が崩壊の危機にある、支払い遅延さえあるいは生ずるのではないかというおそれがございますので、緊急の対策といたしまして、今度の措置をとった次第でございまして、これを四十三年度まで延ばしていこう、四十四年度まで延ばしていこうといったような、そういう考え方は全然持っておりません。四十三年度からは御承知のとおり、これは根本的な立て直しをやらなければならない、かように考えております。
  252. 石本茂

    石本茂君 いま申されておりますように、これはあくまでも四十二年度という単年度の対策でありまして、大臣も申されておりますように、それでは一体来年四十三年度からはどのような方針のもとに対策をお立てになっておりますのかということは、この保険に加入しております被保険者の人々のやはり考えることでもありますし、国民としましても、毎年二百何十億、あるいは三百何十億という赤字対策のためにということで、次の年も、またその次の年もということで出されてまいりますと、非常にこれは不安な保険行政でございますので、この際、もし長期対策として、抜本的な構想をお持ちでございますなら——詳しいことをお聞きしようとは思っておりません。簡単に、ただこういう柱がありますということでもお聞かせ願えたらと思います。
  253. 坊秀男

    国務大臣(坊秀男君) 石本委員、十分御案内のことと思いますけれども、今日の日本の医療保険制度には、非常に多くの何と申しまするか、是正をしなければならぬ点がございます。その一番大きなものは、やっぱり給付率が本人によって、あるいは家族によって違うと、国民皆保険のたてまえから申しますと、これは非常におかしな話でございまして、その給付率というものをどうしても格差のないものに持っていかなければならない。それからもう一つは、経費負担でございますが、これも非常にバランスがとれていないというようなこともございます。それからまたもう一つは、やっぱり保険内部の財政というもの、これをしっかりしたものにしていかなければならないというようなことが構想の大きな柱だと私は思いますが、さらにまた、周辺の問題と申しますか、これに関連いたしまして、診療費体系というものがはなはだいまのところではまともな姿ではないように思うのでございますが、この体系も是正をしていかなければならぬといったようなことが、今度の根本的立て直しの大きな柱になるんじゃないかと思いますが、なお、こまかい点につきましては、関係局長からお答え申させます。
  254. 石本茂

    石本茂君 そこで関連としてお伺いしたいんでございますが、いま抜本的対策の中に、不均衡の是正ということも考えられる。特にまあ医療費等のあり方につきましても問題がございますということでありましたが、現在、たぶん九種類ぐらいの医療保険組合の数がありまして、そのために、非常に医療経営者、いわゆるそういうところにおきます医療事務のふくそう化といいますか、なかなか単純になっていない。そのために、診療、治療に要する人員よりも、いわゆる医療事務に専任する人々をたくさんかかえ込まなければならぬといういびつな形が一つ出ておりますので、その際には、ぜひ、こうしたものも統一いたしまして、そして、いま申しておりますような医療経営上の時点にもありますし、加入しております国民一人一人の納めております料金の不均衡というものの是正、二つの是正対策があると思うのですが、このことにつきまして、御当局の意見をあわせて聞いておきたいと思います。
  255. 熊崎正夫

    政府委員(熊崎正夫君) 日本の医療保険は、御承知のように、被用者保険と地域保険といいますか、農民、それから自営業者を主体にいたしました地域保険というのに二つ分かれてございまして、地域保険は、国民健康保険一本で各市町村でやっておるわけでございますが、被用者保険のほうでいろいろと国家公務員、あるいは中小企業、大企業というふうに分かれておりますし、また、船員あるいは日雇い、いろいろと分かれておることは御指摘のとおりでございます。ただ、私ども、それぞれの被用者保険につきまして、これを一本化したらどうかというふうな御意見があることはよく承っております。しかし、それぞれの制度につきましては、歴史的な沿革がございまして、これをただデスクプランとして一本にするということについては、理論的には確かに可能でございますけれども、これを直ちにそれじゃここ一、二年の間に一体できるかどうかということについては、利害が相錯綜する問題でもございますし、また、それぞれの被用者なり、あるいは事業主のほうにつきましても、いろいろと問題があることは十分おわかりいただけると思います。したがいまして、医療保険制度の抜本的改革という問題につきましては、これをどのようにコンデンスしていくかということが一番むずかしい問題だろうというふうに考えておりますが、方向としましては、御指摘のような形で今後の医療保険制度の改革に手をつけていくべきじゃないか、こういうふうに思っております。
  256. 石本茂

    石本茂君 そこで、医療費の算定について承りたいと思いますが、現在の医療費の算定構成を見ておりますと、ほとんどが技術といいますか、目に見えますところの診断治療行為あるいは薬というようなものにつきましては、明らかに、それが適正であるかどうかは別にいたしまして、算定基準になっておりますが、サービスの部門、たとえば特にこれは入院患者について言えることでございますが、観察を要する長時間のこととか、あるいはまた、寝たり食べたり着たりという、生活にからまりますところのサービス、そういう部門が非常に医療経営の中で大きなウエートを占めていると思うのですが、こういうものがはたしてどのように医療費の算定の中に分析されて繰り込まれておりますのか、簡単でけっこうでございますが、承りたいと思うんです。特に看護という多くの人間が従事し、大きな労働力を提供して、しかも、そこには知識と技術が要るわけでございます。もちろん栄養士もそうだと思います。そういうようなことにつきまして御意見を承りたいと思います。
  257. 熊崎正夫

    政府委員(熊崎正夫君) 現在の医療費は、社会保険につきましては、社会保険診療報酬点数表という形で厚生大臣が告示をして、それぞれの行為につきまして何点というふうにきめておるわけでございます。そのもとになります中身につきましては、これは全部それぞれの医療行為につきまして、平均的な経費の算出をいたしまして、それで収入、社会保険診療報酬の点数と、それから各医療機関におきまする平均的な経費支出とのバランスをとってきめておるという形になっておるわけでございます。したがいまして、病院につきましては、まず院長並びに各医師の給料がどのくらい出ておるか、また、看護婦あるいはその他の方々の医療補助者の平均的な経費がどのくらいの支出だ、その他、減価償却あるいは薬その他の材料費というものをそれぞれ積み上げて平均的な経費を出しまして、それについて診療報酬点数に基づきます各医療機関の収入と対比いたしまして、それで採算点をどのようにするかということで算定をいたしておるわけでございますから、個々のいわゆる——現在一点単価十円になっておりますけれども、この一点単価十円を基礎にいたしました、たとえば入院料等につきまして、御指摘のような看護婦のサービスがどのような形で入っておるかということにつきましては、包括的な入り方をいたしておりまして、個々的にそれがどうなっておるという形にはなっておらないわけでございます。つまり、平均的な経費としてこれが算出をされておる、こういうことでございます。  ただ、そういうことでは非常におかしいではないかという御指摘があることは私ども十分承知をいたしておりまして、やはり医療費の算定につきましては、それぞれの診療行為あるいはそれぞれの診療部門につきまして、原価計算的な考え方によって算定をしていくという方法もあろうかと思いますので、そういった点は、現在中央医療協議会におきまして、調査部会の中で、今後医療費の積算の基礎をどのように実態調査とからませて考えていくかということを検討いたしておりますので、その検討の結果によって、御指摘のような点も今後逐次明らかになっていくだろう、こういうふうに考えております。
  258. 石本茂

    石本茂君 ぜひ、こうしたことにつきましても、平均的ということばは、これはうなずけるわけですが、たとえば、いま医療労働者がそうですが、医師、薬剤師もそうですが、ほとんど全部、いまの給与に対しまして、いまの労働条件に対しまして一体満足をしているかどうか。満足なんということばはそこにあり得ませんで、ほとんどがしかたがない、人間がおり、人の命をさばくところだというので、しかたがないという妥協観の中で日々使命観に生きているわけでございますが、そうしたことになりますと、もうそういうがまんして耐えているものも全部込めて、そんなものは見て見ぬふりをして、それで平均的なものが出てきているということにもなりますので、ぜひ、これは今後の審議過程におかれまして、そうしたことも十二分に御配慮願いませんことには、正しい医療のあり方、正しい医療費の算定というものは出てこないと思うのですし、同時に、中央医療協議会でございますか、あるいは医療審議会でございますか、そういうところには医療業務に従事しておられますところの医師、歯科医師、薬剤師も当然メンバーとして入っておられますが、しかし、先ほど申し上げておりますサービス部門は、非常に大きなウエートを与えられ、その中で権限を持って働いておりますところの看護業務に従事するものにつきましては、全然こうしたメンバーになれない。また、どんなにお願いしてみても、過去においてなることができないということで今日に至っておりますけれども、なぜ、こうしたものをメンバーに加えていただけませんのでしょうか、なぜ加えられないか、加えられない問題というものがあると思いますので、この際お伺いしておきたいと思います。
  259. 熊崎正夫

    政府委員(熊崎正夫君) 現在の中央社会保険医療協議会構成メンバーにつきましては、これは社会保険医療協議会法の法律の中で規定をされておりまして、医師、歯科医師並びに薬剤師を代表する者、こういう形になっておるわけでございまして、看護婦その他のいわゆる医療関係従事者の方々は、医師の代表をもってその方々の立場は代表し得るというふうな考え方のもとに、そのような法律構成をとっておる、こういうふうに考えております。ただ、中央社会保険医療協議会での審議事項も、従来ともずっと経過を見てみますと、必ず、たとえば入院料をどのようにするといった場合におきましても、また、医療実態調査をどのようにするかという場合におきましても、病院等におきまして、あるいは診療所においても同様でございますが、看護婦さんの勤務時間なり、あるいは人員をどのように考えていくかということは、常に日本医師会側の代表の方々から出題点として提起されておりますので、私どもとしましては、日本医師会の代表の方々が病院、診療所すべての職種を含めた方々の意見を代表し得ると考えておりますので、現在そのような仕組みのもとに審議を進めておるわけでございます。
  260. 石本茂

    石本茂君 そういうふうな法律のたてまえもありますし、また、医療の立て役者でありますところの医師、特に日本医師会の代表である方々が非常によくわかってくださると信じておりますけれども、実際、病院等におきまして仕事をしております部門におきまして、医師が医療業務従事者全部の立場に立って正しい理解をしておいでになりますかどうか、私疑問に思っております。なお、この協議会でございますか、審議会のメンバーの中に渡辺華子先生が入っていらっしゃるのが一つあると思います。これは家庭の主婦という代表だと思うのでございますが、この方がしばしば言われますのは、なぜ看護婦の方々が入らないのだろうか。私はい正看護婦の代弁者のつもりで、問題が提起されますごとに一生懸命に言わせていただいておりますけれども、やがてこの私がいま持っております場は看護業務従事者の手に渡されることが至当であろうということを、両三回、私個人の対談の中で伺っておりますが、そうした第三者の声を聞きましても、正しい一本の医療を打ち立てていきます段階において、私は看護婦さんだけと言いません。医療業務に従する医師、歯科医師、薬剤師が入るのでありましたら、すべての医療業務に従事しております方々ももう少し入ってもいいじゃないか、そうして、おのおのの分限におきまして自主権で仕事をしておる場面もございます。それらを話し合って、その話し合いの上に立ちまして皆さんで御検討願うのがほんとうじゃなかろうか。せめて、ときどきには分科会方式のようなものの中で呼んでいただきまして意見を聞くなりでもしていただきたいと日ごろから思っておるのでございますが、法律があるからと言われますけれども、法律は人がつくったものでございますので、それをいますぐ変えてくださいとは私申しませんが、国民のために最も正しい、よい医療をしていくというたてまえに立ちまして、もう一つここでこのメンバー等につきましても御検討いただきたいと思う一人でございます。重ねてのことでございますので、御意見はちょうだいしたいとは思いませんが、そのことをお含み願いたいということをこの際申し上げておきたいと思います。  それから次に話は移りますが、この医療従事者の需給対策に関連することでございますが、政府当局におかれましては、いま日本の医療現場の中では医者も足りない、その他の医療従事者、看護婦等も足りないと言われておりますが、一体どれくらい足りませんのか、その数をまずお伺いしたいと思います。
  261. 若松栄一

    政府委員(若松栄一君) 特に戦後におきまして、日本経済の成長と同時に社会保障、特に医療保障が非常に急速に発展いたしましたために、医療需要が非常に急速に多くなってきた、そのために、医療サービスを提供すべき量が急速に膨張して、その供給に現在追いつかないということは事実であろうと思います。そのために、医師をはじめ、あらゆる職種の医療従事者が不足しているという実情でございます。医師につきましては、御承知のように、現在約十二万名の医師がございます。これがどのくらい足りないのかということは、これはもうきわめて困難なことでございまして、いや、絶対数は足りるのだけれども、偏在しているから事実上需要を満たせないのだという論もございます。いや、絶対数も足りないのだという論もございます。一つのめどは、国際的に医師の数が日本と諸外国と比べてどうなのかということも一つのめどでございます。日本が人口十万対百十一に対して、アメリカは百五十近い、イスラエルは二百にも近いという状態でございます。それならば、日本の一・五倍のアメリカと、約二倍に近いイスラエルがそれぞれ日本と比べて、一・五倍程度楽なのか、二倍程度に楽なのかということを言いますと、必ずしもそうではございません。そういう意味で、どれだけ足りないかということは、需要をどう見積もるかということによって違いますので、需要をより多く見積もれば一そう足りなくなるということで、現在私どもとしても、どの程度に一体医師の供給をするのが適当であるかということは常時研究いたしておりますし、また、私どもでできない分野は専門的な学者にお願いして、どのようなところにめどをつけたらいいかという検討をいたしております。現在絶対的に相当足りないということは、もう、はだをもって感ずる感覚でございまして、これをある程度埋めるために、相当最近医師の養成定員をふやしまして、現在のままでまいりましても、昭和六十年ごろには、人口十万対百十一のものが、百二十程度までになり、昭和七十年には百二十六くらいになり、さらに増員して百五十くらい、少なくとも昭和七十年くらいまでには、現在のアメリカの水準くらいまで持っていくことは絶対に必要だというような観点でいろいろな作業をいたしております。  なお、その他の医療従事者につきましても、これも非常にむずかしゅうございます。きわめてこれも端的に簡単に申しますと、たとえば看護婦はどれだけ足りないかというようなことになりますと、これも医療機関によって患者四対一のところと、五対一のところと、六対一のところもありますし、あるいは二対一でなければならないところもございます。これらの点を最も合理的にやるにはどうすればよいかという計算もいたすわけでございますが、これは端的に現在の医療法の基準というようなものをそのまま当てはめたといたしましても、約一割程度足りないという事実がございます。しかし、この問題は、最近の養成力の拡充等によりまして、四十五、六年ごろになりますと、少なくとも現在の医療法の基準の程度まではいける。しかし、それでも不足なことは間違いない事実であります。また、そのほかに、たとえばエックス線技師、衛生検査技師というような職種がございます。たとえばエックス線技師が一体どれくらい必要だということは、エックス線の機械の台数というようなことから計算もできますが、大ざっぱに言いまして、病院における医師とエックス線技師の比率というものを頭に考えていただきますと、大体の見当はおわかりになると思いますが、これもいままで非常に少なかったために、現在養成を非常に急ピッチにやっております。したがって、たとえば医師が現在三千名程度卒業いたすのに対して、エックス線技師の養成は九百名をこえております。したがいまして三分の一ちょっと弱ということでございます。また、衛生検査技師につきましても、医師が三千名出てまいりますのに、現在の衛生検査医師の養成定員は二千名でございます。そういたしますと、これは医師の半分ということになりまして、現在の養成規模でいけば十年後には相当余裕のあるものになるであろうということは予想されます。しかし、現在の時点においては、まだかなり不足があるということは事実でございます。
  262. 石本茂

    石本茂君 いま局長のお話を承りまして思ったことですが、医師といいましても、医学校を出ただけでは医者にはなれませんので、現在でございますと、国家試験を受けて初めて医師になれる。ところがこの春ああいうふうな問題がございまして、国家試験を多くの人が受けなかった。もちろん、これは当面の問題でありまして、来年あるいは再来年、ずっと先にそうなるということではないと信じておりますけれども、はだで感じて足りないと言われます医師が国家試験を受けて医師になりたくないということでございます。この時点に対しまして、どのようにこれを一体さばいていこうとしておられますのか。もうすぐ秋の国家試験が近づいてまいりますが、今度は全員医師国家試験に臨まれる気配がありますのかどうか、非常に国民の一人としまして心の中で不安の感じを持つものでございますから、お伺いいたします。
  263. 坊秀男

    国務大臣(坊秀男君) 現在すでに医師、医療従事者が足りないというおりから、最近このインターンの諸君が試験をボイコットする、国家試験をボイコットして、数多くの者が参加しなかったということは、これは非常に憂うべき状態だと私は思っております。そこで、どうしてもこれらの人たちに国家試験を受けてもらって、りっぱにお医者さんとして卵からかえってもらうということが、国といたしましても大事なことでございますので、厚生省といたしましても、あらゆる手を尽くして、この秋の試験にはひとつ参加してもらうということにつとめておりますが、ただ口で試験受けてくれ試験受けてくれと慫慂しても、これは実際、客観的な情勢自体というものが変わらないと、それは期待どおりにはまいらないということもございますので、そこで、このインターンの制度というものを、これを何とか改善をしていかなければならないということで、今日ただいま医学教育懇談会でどういうふうにしていくかということを御検討を願っておるわけでございますが、この検討の結果が、私はきわめて近いうちに御答申が得られるというふうに思っておりますが、その御答申を受けまして、そしてインターン制度というものを、これを、学校を卒業した方々が喜んでやってもらえるといったような制度にこれを改善いたしまして、そういった措置を通じまして、ひとつ国家試験を受けてもらうというように、これを極力慫慂してまいりたい、かように考えております。
  264. 石本茂

    石本茂君 ぜひ何とかいい方法を講じていただきまして、安心して多くの医師が、そうして多くの医療従事者が日本の医療の前進に努力していただきたいと思っておりますが、ここで一つ伺いたいと思いますのは、看護婦等の就業届け出でございますが、これが二年ごとということになっておりまして、しかも、個々ばらばらでございますために、ほんとうに、はたして正しく二年ごとに一人一人が就業届けを出しておりますかどうか、疑問を持っております。そういう意味で、政府当局が今日持っておられます数字というものが、ほんとうにわれわれの立場からして信頼してよい数字かどうか、疑問を持つわけでございますが、需給対策の基本的な条件は、現在はたしてどれだけの人間がその仕事に従事しているかということをごらんになるのが大きな対策の一つであろうと存じますが、なぜ看護婦等につきまして就業届け出の年月日を、たとえば一月一日にしてください、医師、歯科医師、薬剤師と同じに扱ってくださいと言っておりますのに、今日までできませんのかという理由をちょっと聞きたいと思います。
  265. 若松栄一

    政府委員(若松栄一君) 御指摘のように、医師、看護婦の届け出の制度が異なりますし、また、その他の医療従事者についての届け出も違っておりますので、これらの点は一括して同じような形にすべきでないかということが、行政管理庁からの勧告にもございますので、現在検討して、そのような方法でもってやりたいというふうに思っております。
  266. 石本茂

    石本茂君 たまたま、行政管理庁の方針といいますか、うかがい聞いたことでございますが、看護婦等につきましては、何も国家管理する必要ないじゃないか、むしろ、医師、歯科医師、薬剤師以外は全部地方庁に持っていけという意見もあるやに聞いております。かつては、それが大きく上に上がりまして、私ども医療業務に従事する者の一人といたしまして、ぜひ、国家の行政所管の中で、国家試験を受けている看護婦につきましては、ぜひそうしてくれと、それはなぜかということをるる申し上げたこともございますが、地方自治体に持っていかれるということになりますのでしたならば、私はこの点この場で強く反対しておきたいのでございますが、局長、そのことにつきまして、どのようなお考えを持っていらっしゃいますか、お伺いいたします。
  267. 若松栄一

    政府委員(若松栄一君) 行政管理庁とのやりとりについても、先生の大体御承知のことと存じますが、私どもといたしましても、少なくとも国家試験をし、厚生大臣免許を出している職種については、これが少なくとも国が直接把握していく必要があるというふうに存じておりますが、その点は、都道府県知事に免許を委任しているものとは分けて考えたいという気持ちを持っております。
  268. 石本茂

    石本茂君 美容師とか理容師という方と違いまして、医療機関、特に病院等には人間の命がそこで左右されるわけでございますので、ぜひ、医師、歯科医師、薬剤師以外のものでありましても、直接患者に接触して技術を提供する場所におります者につきましては、どうしてもこれは国家行政の中で処理していただきませんと、私はやはり国民のためによい医療ができないんじゃないかというふうなことを考えますので、いまおっしゃいましたおことばを信じまして、ぜひともこれが地方移管になりませんようにお願いしておきたいと思います。  なお、重ねまして、この看護婦学校、養成所等の指定規則の改正方は昨年来お話しになっておりましたが、そのまま据え置かれましたし、それからまた、今年度の予算背景を見ましても、公立学校の看護婦学校、養成所等につきましては、補助費等もございます。運営にはつきませんでしたが、設備につきましては、従来ともついております。そうして増員、卒業生の増強方をはかっておられるのでありますが、本年度の学校、養成所の設置あるいは改造等につきましての国家の予算背景を見ておりますと、申請書のありましたもの全部をとてもこなすことができませんので、せっかく地方自治体あるいは国等がここで看護婦学校をきちんと整備をして、あれを新しく建てまして、そうして現在要請されております需給対策に即応していこうという気持ちをやっと起こしましたときに、いや補助費がありませんので来年まで待ってくれというようなことは、一体どうしたことかと思うのでございますが、どうしてこういうふうなことになりますのか、非常にアンバランスな行政施策ではなかったかと思うのでございますが、お伺いいたします。
  269. 若松栄一

    政府委員(若松栄一君) 御指摘のように、国が助成して施設をつくっておりますものについては、同じような例が多々あるわけでございます。たとえば保健所を設置をしてくれという地元の要求が非常に強いのに、現実には国の補助金が足らないために設置ができないというような例、あるいは保育所についても同じような問題が起こっております。看護婦の養成施設につきましても、国の補助金が少ないために、逆に県が、設置したいという意欲の足を引っぱっているという事実も確かにございます。そういう意味では、補助金制度がいいのか、あるいは、むしろ融資制度がいいのかということを考えて、いっそのこと、むしろ融資制度に切りかえたらどうであろうかという提案を衛生部長会議等にいたしたこともございます。しかし、これも財政力の大きい県でございますと、国からのちょっとの補助金よりは融資がいいという意見もございますし、また、比較的財政力の小さい県でありますと、融資ではいずれ返さなければいかぬ、それよりは、ある程度の補助金があったほうがいいというような意見の対立がございまして、結局、どちらとも割り切らずに現状に来ている。しかし、できるだけそういう足を引っぱるというようなことのないようにということで、この予算を増額いたしたいという努力をいたし、年々多少ずつでも増額をいたし、本年度も二千万補助金の額を増額いたしたわけでございます。
  270. 石本茂

    石本茂君 ぜひ、地域の要請にこたえていただけるだけの予算措置確保していただきたいということをお願いいたします。  それから次に、非常に細部的なことをお伺いいたしますが、現在わが国で男子の看護者資格を持った人が約二千人、あるいはそれをこえているかと思うのでございますが、この看護学校を出ました男子の方が現在保健婦の養成所等に全然進学できないたてまえになっております。ところが、ここの卒業生のほとんどは精神患者さんの指導に当たっております。看護というよりも、むしろ指導的な役割が大きいのですが、そういうことを考えますと、やはり彼らはどうしても保健衛生方面の学問もしておきたい——保健婦の資格がほしいのではありませんが、さらに進み得るそういう上級学校に進みたいということを非常に切望しておるのでございますが、なぜ、この男子が、看護学校には、臨床看護ならば男子でもよろしい、しかし、保健衛生看護の場合には男子をシャットアウトしていることについて、そこに何か意味があるのかと思うのでございますが、お伺いいたします。
  271. 若松栄一

    政府委員(若松栄一君) 看護という業務の特性から言いますと、やはり女子のやさしい態度でもって接していくということが理想的ではないかと思いますが、そういう意味で、名前が女へんの婦の看護婦になっておりますが、これに夫という字を書いた夫もあり得るというたてまえにし、しかも、それは実際上、また伝統的に、精神障害者等非常に腕力的な力まで要するような業務の面に男の看護人があったわけでございます。さらに、そういう問題から進んで、いわゆる保健婦というところまで男性の職域にするほうがいいかどうかということについては、私は必ずしも、保健婦に相当するものまで男性に持っていくということは、将来の保健指導全般の運営のためには、かえって異物的なものが混入するという感じが出てこないか、また、保健婦行政全般の指導に支障を来たしはしないかという気持ちを持っております。むしろ、いわゆる大学の保健学科、衛生学科というようなものに進んだ男子の保健衛生職員ができて、これがむしろ衛生教育というような面を主にして担当していくというような職種に進むほうが望ましいのではないかという考えを持っておりまして、現在男性にいわゆる保健婦の職場を開放してはという気持ちは現在のところ考えておりません。
  272. 石本茂

    石本茂君 よく御意見、納得はちょっとしにくいのですが、一応の意見はわかりました。ただ、やはり看護学校に男子を入れることを許可しても、そこに入ってくる者は全部腕力で看護する精神科に行こうとばかり思っていない。やはり保健衛生看護に興味を持った男性がそこに入っているのでありますから、いま言われますように、何十年前の、五十年前あるいは三十年前の看護というものは今日生きておりませんので、特に精神病患者の看護におきましては、もはや暴力にひとしい腕力は要らないのでございまして、そういうことも前もってお考えいただきまして、私は、必ずしも保健婦になりたいとか、保健衛生業務に従事したいという意味ではなくて、せっかく臨床看護の資格を持つ看護婦等がさらに進み得る保健衛生学問を学び得る場所があるにもかかわらず、彼らがそこに行くことができないということについて、非常に精神的に何とはなしにおれたち男は行くところがないのだという、ひがみ根性といいますか、男性の多いところは男の人が常に優越感を持ってどの職場でもおられますのに、看護の場合だけは、別に優越感ではありませんで、悲しみにも似たような意識を持って働いておられますので、私は男だから特別によくしてくださいと言っているのではございませんが、人並みにこの職務におります者を、その職務におりますすべての人を同等同系に扱っていただくことを希望するものでございます。そういう意味で本日お伺いしたがったわけでございます。  それから次に、もう数年前になりましたが、例の病院のストライキがございまして、その後、厚生省の中に病院管理課が発足されましてすでに数年たちますが、病院管理課におきまして、どういうように、日本国じゅうの病院に対して指導管理方策とか、あるいは労務管理方策につきまして、どのような対策のもとに、どのような具体性を持って業務を進めておられますか、お伺いしておきたいと思います。
  273. 若松栄一

    政府委員(若松栄一君) 三十五、六年の病院ストライキに端を発しまして、病院の管理指導が必要であるということが言われまして、特にその時代指摘されましたことは、病院というものが、近代企業の中であまりにも取り残された前時代的な経営方針をとっており、その労務管理財政管理等、すべて近代的産業からは全く想像もつかぬような低い次元のものであるということが指摘されまして、そのために、特に当初におきましては、労務管理中心にして、労働省その他とも十分打ち合わせをしながら、労務管理面の指導を行ないました。特に労使の関係の教育、団体交渉、その他の基本的な問題等の普及をやりまして、さらにその後、労務問題は一時かなりおさまってまいりまして、むしろ病院経営という面が非常に表に出てまいりました。その後は、経営管理という問題を特に行ないまして、経営管理の中にも、業務管理面としての、病院それ自体の経営上の業務管理、それから財務管理等を中心にして指導を行なうことにいたしました。一昨年、指導要領等もつくりまして、現実にその指針を与えているわけであります。さらに最近は、指導課の業務指導と同時に、病院管理研究所の講習と密接にかみ合わせまして、病院の幹部職員の講習あるいは研究という面にも非常に力を入れてまいってきているのが現状でございます。
  274. 石本茂

    石本茂君 いろいろと病院管理等につきまして指導されておりますことはわかりましたが、たまたま、ストライキが起きましたその後におきまして、非常に大きく問題視されてまいりましたのが、病院等に働く労働者の中の例の女子深夜勤務に従事する看護婦等の夜勤問題でありますが、幸い、労働省におかれまして、今年度からわずかでございましたけれども、予算もつきまして、調査の段階に入ってくださいましたが、なぜ、こうふうなものの具体性について、病院管理課なり指導課のほうで食いついていただけなかったのか。私は非常に残念だと思いますが、これはやはり全然労働省所管のものでありまして、病院管理方式の中ではそういうことはらち外のことだったのでございましょうか。その辺ちょっと聞いておきたいと思います。
  275. 若松栄一

    政府委員(若松栄一君) 夜勤の問題その他、看護婦の勤務体制の問題を病院管理の中の対象外と決して考えたわけではございませんで、むしろ、当初におきましては、もっと基本的な問題に、もう少し総論的な問題にむしろ集中しておりまして、このような各論的な問題にまでなかなか手が伸びないというのが実情であろうと思います。また、管理課、指導課それ自体といたしましては、なかなかそういう各論的なものにまで手を出していくということは、役所の性格あるいは規模、能力からいいましても、困難がございますので、各論的な問題は病院管理研究所なり、あるいは専門的なそれぞれの職域団体なりと協力し、あるいは、そういうところにお願いするなり協議なりしてやっていくことのほうがよくはないかというような考え方もございまして、管理課自体がそういう非常にこまかな問題にまで突っ込んでいくというのは、むしろいままでやっておらなかったのでございます。
  276. 石本茂

    石本茂君 それ、ぜひ今後、労働省のほうで、そういう調査段階に入りましたので、厚生省当局におかれましても、共同でやはりこの問題の解決ができるように、あらゆる資料の提供あるいは御意見等もぜひいれていただきたいことをお願いしておきたいと思います。  次にお伺いしたいと思いますのは、これは保健所の機能についてでございますが、日に日に保健所の活動配下にあります業務がふえてきておるように思うのでございますが、現在、地域の各保健所におきまして、指導の面と、それから取り締まり的な面と、二つ大きく出ておりますが、この業務比率といいますか、指導のほうにどれくらいの比率があり、それから取り締まりにどれくらいの比率か、この二つの比率をお伺いしたいと思います。どちらにより多くのウエートがかかっておりましょうか。
  277. 中原龍之助

    政府委員中原龍之助君) 保健所の業務は、ただいま先生お話しになったとおり、非常にいろいろの種類がございます。しかし、ただいまおあげになりましたように、大きく分けますと、サービスといいますか、それと取り締まり、そういう方面に分けられるかと思います。現在取り締まりと申しましても、その中には、当然指導の面が含まれております。そういう面を考えてみますと、大体行政的ないろいろな事務といいますか、これらが一で、その他が四というふうな形に事務局としては考えております。
  278. 石本茂

    石本茂君 そこで私がお伺いしたがったのは、先ほど来、公害対策の問題も出ておりましたが、日に日に地域住民の生活環境が非常に複雑になってきております。こうした人々の公衆衛生的な見地におきます指導の立て役者は、これはやはり保健婦の活動ではないかと思うのでありますが、たとえば新しく保健婦学校を出まして就職した人の声を聞きますと、希望に胸をふくらませておったのですが、真の保健業務がそこにありませんで、ほとんどいすにすわりまして、そして机の上の書類を見る仕事が非常に多いのだということをしばしば言っておりますし、片一方、国保の保健婦さんの意見を聞いてみますと、非常に実際の実践活動をしておりまして、むしろ机の上の仕事が非常に少ないというようなことから、給与とか身分の格差が相当ございますが、そういうことも一つ問題になりますが、それを抜きにしましても、保健所の役割りの中でやはりサービス的なこと、特に保健婦の業務は一体何かというようなことをもう一度再検討願いまして、今後保健活動をどのようにしていこうとされておりますか、いまのままでいかれますか、さらに、実際活動の面を拡大強化していこうとせられておりますのか。定員等の問題も関係しているのでございますが、お伺いしておきたいと思います。
  279. 中原龍之助

    政府委員中原龍之助君) この保健所の業務が最近多岐にわたりまして、それをどのようにしてだれがやっていくかという問題につきましては、非常に最近業務が多くなったということは、こちらから別につくるわけではなくて、やはり住民から要望がある。で、保健衛生のたてまえからいって、その要望にこたえていって、その地域住民の保健の万全を期するというのが筋でございます。その点でいろいろやっております。しかし、御存じのとおり、保健所の定員なり何か、そういうことから言いますと、非常に業務量が過重になってきているという問題がございます。ことに保健所におきましては、保健所のいわゆる発展の歴史から言いますと、いわゆる指導といいますか、保健指導、相談、そういうような業務が主体で大体保健所が発展してきたわけでございます。しかしながら、漸次世の中が進歩してまいりますと、先ほどあがりましたような公害の問題、住宅の問題、そういうような問題までいろいろだれに相談するかと言いますと、やはり手近な保健所が便利なものですから相談をいろいろ言ってくる。それに対して、やはり需要にこたえてやらなくちゃならぬという形になっております。ところが、従来は、いわゆる環境関係につきましては、全体の業務から見ると、その中の一部、ほんの一部であったという関係で、どうもやはり手薄な感じがあります。それで、将来はこういう方面が、おそらくこれから公害基本法ができて、それから次にいろいろな業務がきまってきて、保健所の役割りというものがどの辺になるかという見当はいずれはついてくると思いますが、いずれにいたしましても、この方面の業務というものが私は非常に重要になってくるのじゃないか。ことに、まあ食品の問題であれ、公害の問題であれ、これは住民からいいますと、その人個人では調べることもできないし、処理することもできないという問題が非常に多いわけです。そうしますと、やはり保健衛生を守るという立場からそれを代表しまして保健所の者がやっぱりやらざるを得ないという関係にあると思います。  それで、なお、ただいま保健婦のお話がございましたけれども、保健婦の業務も非常にふえていっております。ことに保健婦の中におきましては、最近は講習を受けられまして精神衛生のいろいろ相談を扱う、指導相談ばかりじゃないです。実際に出向いて家族といろいろ打ち合わせて指導をしていくというような、非常にむずかしい面にまでいろいろタッチされている。で、活動範囲というものは、決して机の前にすわっているのじゃなくて、ますます外に出て活動するという要求が私は多くなっていく、また、それにこたえていくというのが当然であろうと思います。それで、保健婦には現在、国保の保健婦と、それから保健所の保健婦とおりまして、国保の保健婦はいわゆる市町村におるわけであります。それで、全体的な組織をどうするかという問題ではなく、当面といたしましては、ぜひとも保健所のものと、それから国保の保健婦とお互いに共同し合ってやっていかなければならないたてまえにありますので、それにつきましてのいわゆる仕事の分担なり何なりというものは、私は今後うまくいくように指導していきたいというふうに考えております。
  280. 石本茂

    石本茂君 いま申しておられますように、地域住民がそれを要請しているのでございますから、本年度はもうしかたがありませんが、ぜひ来年度予算等におかれましては、もちろん、自治体との関連もございますけれども、抜本的に保健所機能の拡充強化ということをお考えいただきたいことを、この際お願いしておきたいと思います。  それから次に、一つ二つまだお願いしたいんでございますが、いまの保健婦の活動とあわせてですが、例の母子保健法が施行されまして、一年とちょっと経過いたしました。こういうような新しい法律ができまして、しかも、それが都道府県に委任されたということになりますと、やはりそういう指導なり、あるいはどう言いますか、サービス的なものが大きくなってきていると思うのでございますが、この法律ができまして一年を経過した今日、この法律ができたことによりまして、どのような実際活動が行なわれ、また、その結果——効果とは申しません。結果から見まして、この法律があることによって、母が子が、どの程度までに安心して自分の健康を守るようなことができるようなきざしといいますか、出てきましたかどうか、お伺いしたいと思います。
  281. 渥美節夫

    政府委員(渥美節夫君) 昭和四十一年の一月一日、母子保健法が施行されたわけでございます。もちろん、こういった法律ができる前から母子保健の活動の充実というものにはつとめてまいったのでございますけれども、法律施行を機会といたしまして、母子保健の水準の向上、したがいまして、わが国の母子衛生の画期的な飛躍を期待しようというふうなことであったわけでございます。法律の実施に伴いまして、たとえば妊産婦とか乳幼児に対する健康診査あるいは保健指導、さらには訪問指導というふうなことも充実をされますし、また、母子栄養強化対策、つまり、低所得者層の妊産婦、乳幼児に対する牛乳の無償支給という制度も、法律上の制度というふうなことで取り扱われるようにもなりましたし、また、妊娠中毒症に対する医療の給付なり、あるいはまた、未熟児対策につきましても、本年度からは、たとえば血液型不適合のために重症黄だんになって、それによるいろいろな疾患を防ぐための交換輸血という制度予算上は出てくるというふうなことでもありますし、また、たとえば先天性の心臓疾患に対する予算的な裏づけというものが非常に飛躍的に増大する、さらにまた、母子健康センターも、保健所よりも非常に遠いところの遠隔の地の地域的な母子保健活動の拠点といたしまして、その数もふえてくる。さらにまた、家族計画あるいは受胎調節の指導の実施という点につきましても、さらに向上してまいる、こういうふうなことで、もちろん、こういった法律ができる前から行なわれていた施策もございますが、しかし、法律の制定実施ということになりまして、こういった各般の制度というものが具体的にさらに地についてまいってきたということが言えるかと思うのでございます。
  282. 石本茂

    石本茂君 だんだんとそういうふうなことができることによって効果があがるでありましょうし、また、あがっていただかないと困るのでありますが、これは前からありました制度——これは制度といいますか、ことでございますが、例の新生児などの訪問指導料でございます。非常に小さいことを聞きますけれども、あれは従来が百二十円でございましたのが、四十二年度の予算では百五十円というような、まあ三十円の増が計上されておりますが、この三十円というのは一体どこから割り出されましたものか。この百五十円で一体そういうことができますものかどうか。あまり実績がないからとおっしゃいますけれども、実績がないというのは、こんな百二十円や百五十円もらって、わざわざ半日も一日もひまをつぶして指導に出かけるということ自身に問題があると思うのでございますが、いかがでございましょう、このことにつきまして。
  283. 渥美節夫

    政府委員(渥美節夫君) 保健婦の方々の訪問指導の手当なり旅費の問題でございますが、もちろん、これはその実情に合うように増額するということに越したことはないわけでございますけれども、しかしながら、毎年毎年の実績なり、あるいは他との関係等におきまして、逐年少しずつの増額がはかられるというふうなことになっておるわけでありまして、本年度もそういった趣旨によりまして増額がされたのでございまして、これ自体として足りるというふうなことは考えておらないわけでございますので、今後とも、こういった点につきましての増額をはかるように努力いたしたいと、かように思うわけでございます。
  284. 石本茂

    石本茂君 、ぜひひとつ十分に活動できるように、当局におかれましては、御配慮方をお願いしておきます。  なお、続きまして、先刻、心身障害児の問題については相当御論議がございましたので、私はここでただ一つだけ、先ほど十二の民間における福祉団体によってこの心身障害者等が収容されておるということを聞いたわけでございますが、こういうところに対しまして相当程度の国庫助成がされておりますことを承知はしておりますけれども、実際には、その施設を見ますと、非常にもう不健全な財政を背景にしていると思います。寄付行為に相当程度たよっている、そうして年間計画をされているというようなことを見ますにつきましても、国立、国営のものができつつあります時点でもございますので、もっともっとこういう機関に対しまして国が助成なさる意思があるのかないのか。あるいはまた、こういう特定なものに対しまして、国家の責任でそういう恵まれない人々、子供たちを運営管理していこうということでございますならば、いまあります民営のものにつきましても、やがて国家の機関に統一したほうがよいのかどうか、そうしたことにつきまして御意見をちょうだいしたいと思うのですが。
  285. 渥美節夫

    政府委員(渥美節夫君) 重症心身障害児施設で現在重症心身障害児のためにいろいろ御苦労をいただいておるわけでございますが、その経費につきましては、これが実施されました昭和三十八年来、新しい施策でもございましたので、経費等につきましていろいろと実情の把握等つとめてきたわけでございますが、本年度におきましては、医療費をさらにアップするとともに、特にこういった困難なお仕事に携っていらっしゃる医師なり、あるいは看護婦なり、保母なり、そういった職員の方々の給与の、処遇の改善を重点的にはかったのでございまして、もう少し詳しく申し上げますと、医療費のほかに指導費と称するものを補助しておるわけでございますが、その指導費は医療費の三〇%を考えておったのでございますが、昭和四十二年度におきましては、さらに、先ほど申し上げました職員の処遇改善内容も込めましてさらに八%増額をするという措置を講じまして、こういった施設の円満な運営をはかるとともに、子供たち福祉が保たれるようにいたしたわけでございます。しかしながら、おそらく、こういった面につきましては、なおまだ問題があろうかと思いますので、さらに実情を把握した上に、この施設の経営がもっとうまくまいりますように努力してまいりたいと、かように思います。なお、こういった施設はさらにさらに増設を必要とするわけでございます。したがいまして、国立療養所におきます施設あるいは病棟の増加ということもさることながら、やはり民間の方々のとうとい意思を実現化するというふうなことも考えなければならないわけでございまして、公私ともに、こういった恵まれない子供のためにベッドの増設をお願いしたい、かように考えております。したがいまして、私どもといたしましては、児童福祉法の改正を考えておりまして、民間の方々に対しまして、こういった重症心身障害児施設増設あるいは新設ということに対しましても、国の補助金を出すことができるような制度も考えたいと、かように思っているわけでございます。
  286. 石本茂

    石本茂君 それからもう一つ具体的なことをお伺いしておきたいんですが、先刻お話の中に、聞いておりましたら、児童相談員と申しますか、施設に収容することのできない人のために設けられております制度だと思うんですが、そういう人たちに対しまして、いまちょっとどんなにめくっても見つからなくなったんですが、ものすごい安い単価の、何ですか、手当といいますか、何かちょっと出ておりましたけれども、あれはどんな制度でございましょうか。
  287. 渥美節夫

    政府委員(渥美節夫君) 在宅の重症心身障害児の方々に対しまして、児童相談所から専門職員を自宅に訪問させまして、日常生活等の指導をさせるわけでございますが、これは、この経費といたしまして、児童相談所に対しまして、いまちょっと手元に正確な数字がありませんが、約五百万円程度の補助金を児童相談所に差し上げておるということでございます。
  288. 石本茂

    石本茂君 重ねてお伺いいたしますが、この今年度の予算書のこの中を見ておりますと、四九ページでございますか、身体障害者相談員設置費、これは設置費でございますが、これを見ておりますと、人員二千人に対しまして一人月三百円というようなものが出ておりますが、これは設置費でございますので、指導費とは違いますけれども、これは一体どういうものでございますのか。
  289. 今村譲

    政府委員(今村譲君) これはいまお話しのものとだいぶ性格が違いまして、今年度から初めて予算に入りましたので、これは身体障害者全国に百四万ぐらいおりますが、その中で肢体不自由とか、盲人とか、ろうあ者、いろいろ地方地方によりまして団体のようなものをつくっておりまして、その中のいわゆる何といいますか、いろいろ世話をしてあげる、いわゆる肝いり役のような人が現実におるわけでございます。たとえば義肢をほしい、あるいは補聴器がほしいというときに、個々の障害者が福祉事務所なんかになかなか行けないというときに、そういうお世話役さんが福祉事務所にかけ合ってくれるということを、県によって最近やっているところがございますが、そういう人を新しく知事のほうから任命しよう、委嘱しよう、こういうものでございまして、これは国家公務員なり地方公務員ではございませんで、いわば身体障害者の民生委員のようなものでございます。ちょうどこれは月に三百円、非常に安いのですが、人権擁護委員とか、いわゆる民間のそういうお世話役さんの単価というのは、こういうふうなほんとうの車代にもなりませんにしても、こうした単価というふうになっておりまして、ちょっと性格が違います。
  290. 石本茂

    石本茂君 よくわかりました。  最後にもう一点お聞きしたいと思いますのは、老人福祉対策に関しましてでございますが、何か予算細目の項目を見ておりますと、全国一斉に健康診断費を補助するというようなことがありますが、これは一体、具体的にでのような健康診断を、どのような年齢以上の人にされようとしておりますのか、お伺いしたいと思いますが。
  291. 今村譲

    政府委員(今村譲君) 健康診断費は予算書で一億七千万ほど計上してございますが、これは六十五歳以上の人々につきまして、市町村が四十一年まではまあ二年に一回するということでありますが、本年度につきましては、二年に一回では待ち遠しい、毎年一ぺんにしたいというような要望もありまして、総数の六五%、早くいえば三年に二回ということになりますが、市町村が実施する。これは保健所にお願いする場合もあり、開業医さんにお願いする場合もあり、直営の診療所にお願いする場合もあり、いろいろございますが、二つに分かれておりまして、一般健康診査というのと、それから精密診査、二つございます。それで、一般健康診査に来ておかしいなというふうな場合には、あなたは精密診査を受けていただきたい、これはたとえば県庁所在地の病院とかなんとかに行って、ある程度精密な、いわゆる尿中のたん白の計量検査とか、あるいは血色素の検査とか、いろいろな十数項がありまして、こういうものを調べていく、こういう検査です。それでこれは三分の一国庫補助です。
  292. 石本茂

    石本茂君 たいへんありがたい制度でございますが、三分の一補助でございまして、あとの三分の二が地方自治体が持ちますのか、個人負担でございますのか、その辺もまた御検討願いまして、老人になりますと、非常に喜びが少なくなってきておりますので、せめて自分の健康に対して国が気をつけてくださるのだということだけでも、非常に希望を持って生きていけると思いますので、どうか、この制度をもっと充実できるように進めていただきたいと思います。  それからもう一つお伺いしたいのは、老人クラブの助成費でございますが、これも三分の一の国の補助だったと思うのでございますけれども、この場合も、非常に農村に行けば行くほど、ものすごく老人の方が喜んでおられますし、それから、ないところの地域の方々が非常に隣の村にあるのを、町にありますのをうらやんでいらっしゃるという傾向がございますけれども、これも何かもう少し何とか地方財政とにらみ合わせまして、三分の一という打ち切りでなくて、貧乏なところにはもっと助成するというようなことはできないものでしょうか。非常に老人の方喜んでいらっしゃるこれは制度だと思いますけれども。
  293. 今村譲

    政府委員(今村譲君) これは四十二年度の予算案におきましては、全国に五万五千クラブで、いまお話しのように、一クラブにつきまして月千五百円ということで、三億三千万予算を組んでおるわけでございますが、この問題は、全国に実際にはいろいろな形態がありますが、六万クラブ、あるいはもうちょっと上、どんどんいま数がふえてきておるというふうな状態でございますので、単価というよりも、むしろ、そういうふうなように数をどんどん伸ばしていく、伸びているものについて何らかの補助を追っかけてしたいという気持ちのほうが先でございましたので、単価は四十一年から変更しておらないということでございます。それで、これは五万五千クラブ、約六万として三百六、七十万、四百万近くも会員があるのじゃないかというので、非常に喜ばれておりますので、今後につきましては、その数なり単価なりということについて努力したいと思いますが、やはり市町村が三分の一、県が三分の一、国が三分の一、これは全額国費というわけになかなかまいりませんが、そういうふうな意味で、地方公共団体がそれぞれ応援体制をしくというかっこうで、三分の一というふうにきめたわけでございます。
  294. 石本茂

    石本茂君 どうもありがとうございました。いろいろお伺いさせていただきましたが、最後大臣に一言だけ承りたいと思いますが、ほとんど厚生行政の対象は非常に幸多く恵みの豊かな人々というわけじゃございませんで、むしろ、その反対の人々の対象の御指導も多うございますのですが、今年度は相当額いままでに比べますと予算等もふえておるようでございますけれども、大臣、今後ともに厚生行政問題につきまして、どのような点にどのような重点施策を置いていこうとしておられますのか、一言御意見を承りたいと思います。
  295. 坊秀男

    国務大臣(坊秀男君) 厚生行政はただいま御指摘になりましたとおり、比較的生活等に恵まれない方々に対する行政が多い、そういったような観点からいたしまして、一番大事なことは、社会保障をきめこまかくやっていくということ、それから福祉生活がよく行き届いていくということであろうと思いますが、そういったようなことにつきまして、今日日本の国の厚生省が受け持っておる行政が、先進各国に比べまして、まだまだ開きがあるということは、私も痛感いたしておりますので、一挙にはいきませんけれども、逐次そういったような先進国に追いついていくような施策を鋭意考えてまいりたい、かように考えております。
  296. 石本茂

    石本茂君 どうもありがとうございました。終わります。
  297. 多田省吾

    主査多田省吾君) 石本委員質疑は終わりました。  他に御発言がなければ、以上をもちまして厚生省所管に関する質疑は終了したものと認めます。  本日はこれにて散会いたします。    午後六時二十五分散会