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1967-05-23 第55回国会 参議院 予算委員会第三分科会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十二年五月二十三日(火曜日)    午前十時二十四分開会     —————————————    委員異動  五月二十三日     辞任         補欠選任      小山邦太郎君     任田 新治君      柳岡 秋夫君     矢山 有作君      吉田忠三郎君     成瀬 幡治君     —————————————   出席者は左のとおり。     主 査         鈴木  強君     副主査         船田  譲君     委 員                 岡本  悟君                 梶原 茂嘉君                 任田 新治君                 林田悠紀夫君                 成瀬 幡治君                 矢山 有作君                 吉田忠三郎君                 小平 芳平君                 瓜生  清君    担当委員外委員                 北村  暢君    国務大臣        農 林 大 臣  倉石 忠雄君        国 務 大 臣  松平 勇雄君        国 務 大 臣  宮澤 喜一君    政府委員        中部圏開発整備        本部次長      国宗 正義君        行政管理庁行政        管理局長     大国  彰君        行政管理庁行政        監察局長     稲木  進君        経済企画庁国民        生活局長     中西 一郎君        経済企画庁水資        源局長      松本  茂君        農林政務次官   久保 勘一君        農林大臣官房長  檜垣徳太郎君        農林大臣官房予        算課長     大河原太一郎君        農林省農林経済        局長       大和田啓気君        農林省農政局長  森本  修君        農林省農地局長  和田 正明君        農林省畜産局長  岡田 覚夫君        農林省蚕糸局長  石田  朗君        農林省園芸局長  八塚 陽介君        食糧庁長官    大口 駿一君        林野庁長官    若林 正武君        水産庁長官    久宗  高君    説明員        大蔵省主計局主        計官       嶋崎  均君        水産庁生産部長  亀長 友義君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○昭和四十二年度一般会計予算内閣提出衆議  院送付) ○昭和四十二年度特別会計予算内閣提出衆議  院送付) ○昭和四十二年度政府関係機関予算内閣提出衆議院送付)     —————————————
  2. 鈴木強

    主査鈴木強君) ただいまから予算委員会第三分科会を開会いたします。  まず、分科担当委員異動について報告いたします。  本日、柳岡秋夫君が委員を辞任され、その補欠として矢山有作君が選任されました。
  3. 鈴木強

    主査鈴木強君) 昭和四十二年度総予算中、農林省所管を議題といたします。  まず、政府側から説明を求めます。倉石農林大臣
  4. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) 昭和四十二年度農林関係予算について、その概要を御説明申し上げます。  最初に、各位の御協力を得て御審議をいただくにあたりまして、予算の裏づけとなっております農林水産業施策基本方針について申し上げたいと存じます。  最近の農業動向を見ますと、食糧需要動向に対応した農業生産選択的拡大機械化による労働生産性向上農業経営に意欲を持ち、経営規模拡大しようとする農家増加等農業近代化が順調に進んでいる面も見られますが、他方、解決を要する幾つかの重要な問題が生じてきております。  その第一は、農産物需給の問題でありますが、農業基本法制定当時の予想を上回る経済成長により、食糧需要が内容の変化を伴いながら想定以上に増大した一方、農家労働力流出兼業農家増加等により、農業生産の一部に停滞の傾向が見られ、今後ますます増加を続けると思われる食糧需要生産が必ずしも順調に対応し得ないのではないかとの懸念も生ずるに至っていることであります。  第二は、農産物価格の問題であります。最近の農産物需給の引き締まり傾向のほか、労賃の上昇、資本の多投等に伴うコストの上昇要因あるいは流通機構の立ちおくれ等もあって、食糧農産物消費者価格水準上昇傾向を続けており、これが、国民食糧安定的供給確保という農業使命から考えて、決してゆるがせにできない問題となってきていることであります。  第三は、農業構造の問題であります。想定を上回る経済成長により、農家労働力流出には激しいものがありますが、それが必ずしも経営規模拡大に円滑に結びつかず、兼業増大農業労働力老齢化婦女子化を招き、他方農地流動化をはばむ要因増大すること等もあって、構造改善が所期のテンポでは進んでいないということであります。  このような情勢のもとで、農業生産性向上をはかりつつ、需要に即応した農業生産増大確保し、農業従事者所得向上させるという農政の課題にこたえるには、農業基本法の定める方向に従い、生産構造価格に関する各般の施策を総合的に強く推進する必要があると考えておりますが、特にこの際、内外の食糧需給動向から見て、主要農産物について、その生産を振興すること、生鮮食料品価格の安定のため、生産体制整備流通改善合理化を行なうこと、また、農業構造改善を進めるとともに、優秀な経営担当者の養成と農村社会生活環境整備を行なうこと等に留意してまいる考えであります。  このため、四十二年度においては、(一)農業生産基盤整備農業技術開発・普及の促進、(二)農産物生産対策の拡充、(三)生鮮食料品をはじめとする農産物価格の安定及び流通改善対策の強化、(四)農業構造改善促進、(五)農林金融改善、(六)優秀な経営担当者確保農村環境整備等農村対策充実重点を置いて施策推進をはかってまいることとしております。  このほか、林業及び水産業につきましても、それぞれ、最近の需要及び資源の動向や、従事者所得の面から考えますと、問題が多々存在しておりますので、これらにつきましても、生産基盤整備構造改善促進従事者に対する福祉対策充実等、諸施策を強化し、生産性向上従事者所得増大生活水準向上をはかることとしております。  これら施策の的確な推進を期するため、四十二年度予算編成においては、農林水産関係予算充実をはかることに一段と配慮した次第であります。  まず、昭和四十二年度の一般会計における農林関係予算の総体につきましては、農林省所管合計額は四千四百五十一億円で、これに総理府、大蔵省、文部省、労働省及び建設省所管経費並びに新設の石炭対策特別会計に振りかえられる鉱害復旧事業費を加えた農林関係予算合計額は、五千十三億円となり、これを昭和四十一年度当初予算四千五百八十五億円に比較しますと、四百二十八億円の増加となります。  以下、この農林関係予算重点事項について順次触れてまいりたいと存じますが、御質疑の御予定もございましょうし、以下は速記録にとどめ、朗読は省略させていただきたいと存じます。
  5. 鈴木強

    主査鈴木強君) おはかりいたします。農林大臣の御発言中にありましたとおり、以下の説明につきましては、会議録の末尾に掲載いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 鈴木強

    主査鈴木強君) 御異議ないと認め、さよう取り計らいます。  これより質疑に入ります。質疑のある方は順次御発言を願います。
  7. 矢山有作

    矢山有作君 きょう都合で、食糧管理制度関係する問題を中心にお伺いしたいと思いますが、まず最初にお伺いしたいのは、食管制度改廃の問題については、これまでもいろいろな機会に論議をされてまいりましたが、しかし、そうした論議の中で、私どもの見るところでは、食管制度骨抜きにしようという、そういう考え方が、政府にも財界にも、あるいは政府関係機関にもあって、そうしたことが一つ一つ実現されておるんではないかというような感じがしておるわけです。この食管制度の問題について、基本的に農林大臣はどういうふうにお考えになっておるか、まずそのお考えを承りたいと思います。
  8. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) 食管制度につきましては、御承知のように、この制度は、全般の国民経済並びに農家経済等にとってたいへん重要な関係もございますし、その多くは、食糧その他重要なものを取り扱っておるものでありますから、政府といたしましては、この食管法根幹はどこまでも守りつつ、その合理的な運営に力を入れてまいりたい、こう思っておるわけであります。
  9. 矢山有作

    矢山有作君 まあ、食管法根幹は守ると言われたのですが、その食管法根幹というものが、具体的にはどういうことを意味するのかということは、ひとつやはり私は議論になるところだと思いますけれども、それはさておいて、ひとつ具体的にお伺いしたいと思うのですが、食管制度の中で、何といいいましても一つの大きな焦点になっておるのは、第三条と第四条との解釈をどうするか。まあ、第三条と第四条は、それぞれ全然無関係立場からあの条項が設けられておると思っております。それはいわゆる二重米価制度というものを維持しているものだろうと思うのですが、こういう点から考えて、最近の政府のやり方を見ておると、この第三条と第四条を何とか関連をつけさしていこう、こういうような傾向が出てきているのじゃないか。その一つのあらわれは、いわゆる生産者米価消費者米価スライド制というようなことがいわれたことがありますが、そういうようなことにもあらわれておると、こういうふうに思うわけです。特に、なるほど生産者米価消費者米価を、はっきりスライドさせたとは言っておられませんけれども、実際の問題として、生産者米価が上がってくれば、時期的な相違はありますが、それに見合って消費者米価が上げられていく、こういうような実態になっておることを思うと、スライド制をやらないのだと言いながら、実際はスライド制をやりながら、この第三条、第四条という、関係のない条項関連さして、食管制度骨抜きをしよう、こういう傾向があらわれているのじゃないかと思うのですが、この点どうですか。
  10. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) ただいま御指摘の食管制度につきましては、第三条の、生産者米価決定するには、ここにも書いてございますように、「米穀ノ再生産確保スルコトヲ旨トシテ之ヲ定ム」、こういうふうに命じております。それから第四条におきましては、「消費者家計安定セシムルコトヲ旨トシテ之ヲ定ム」、私どもといたしましては、この法の精神にのっとりまして、生産者所得を補償し、そうして生産確保することを旨とする、こういう趣旨米価審議会にもおはかりをいたしまして、生産者米価決定していることは、御承知のとおりでありますが、消費者米価決定にあたりましても、もちろん第四条に申しております趣旨を尊重し、米価審議会意見を聞いて決定するわけでありますが、私どもといたしましては、いま矢山さんのおっしゃったように、スライド的なものの考え方というふうなものよりも、つまり消費者の買っていただく米の価格につきましては、やはり全部、何と申しますか、生産者価格が上がってまいるのを、国民の納めている税だけでこれを負担するという考え方は、食管法の命ずるところではない。したがって、ある程度の、消費者米価というものは、やはりここに書いてありますように、消費者家計考えながら決定をしてまいる、こういうことでございまして、もちろん米のことでありますから、相互が関連がないとは申しませんけれども、やはりこの法の精神に言っているようなたてまえで両方の米価決定してまいることがいいのではないか、こういうふうに思っているわけであります。
  11. 矢山有作

    矢山有作君 いまの大臣言い方の中に、私は、すでにこの第三条、第四条というものが、それぞれ別個の立場から立法化されている、関係のないものだ、いわゆる二重価格制度を採用しているのだ、法的にはそうなると思うのです。ところがそれを、いまおっしゃったような、財政的な立場から言うことによって、実質的には掘りくずしているのだ、こういうふうに私ども考えているわけです。これがやはり将来食管制度のなしくずし的な廃止につながってくるということで、私どもは危険を感じているので、この間の予算委員会のときも、大蔵大臣の話を聞いていると、立法的な立場から言うと、第三条と第四条は別なんです。しかしながら、財政的に考えた場合には、やはりこれは生産者米価消費者米価とはどこかで関連せざるを得ないのだ、こういう言い方をなさっているわけです。それらから、私は第三条と第四条の解釈運用というものは、食管制度を堅持する上から非常に重大だと思っておりますから、あまり財政的な立場に立たないで、むしろ第三条と第四条の立法趣旨を尊重するという立場農林省は立たれたほうが、食管制度を堅持できるのじゃないか、こういうふうに思いますので、大臣がおっしゃるように、食管制度根幹を守るというのであるならば、私は、食管制度根幹一つは、第三条と第四条をいかに解釈運用するかというところにあると思うので、その点をひとつ十分お考えおきを願っておきたいと思います。  これだけで議論していると、すれ違いで、切りがありませんので、次にもう一つ伺いたいのは、たしか昨年の十二月の二十一日から、いわゆる普通外米自由化しましたね。これをデパートやスーパーマーケットあたりで売らせる、こういうことにしたのですが、これはやはり食管制度のたてまえから言うと、ちょっと問題があるのじゃないですか。私はそういうような気がしているのですが。
  12. 大口駿一

    政府委員大口駿一君) 普通外米のいわゆる自由販売を昨年の十二月に実施をしたわけでございますが、実は、この普通外米取り扱いにつきましては、すでに昭和三十四年度から、いわゆる配給基準量ワク外にいたしまして、配給基準量というのは、内地米と準内地米だけでまかなうという取り扱いにいたしたのでございます。ただ、そういうふうな取り扱いにいたしました後におきましても、いたずらに普通外米政府から消費者の手に渡るまでの間に、流通に混乱を来たさないという配慮から、一般配給米と同様に卸売り販売業者並びに小売り販売業者の手を通じて配給をする、流通規制をするという取り扱いになっておったのでございますが、最近の普通外米消費実態を見ますると、やはり日本人固有嗜好の点から申しまして、必ずしも普通外米嗜好が集中するということは見られないのでありまするが、しかし、加工いかんによっては、いろいろ消費の開拓の可能性もあるのではなかろうかということも含めまして、昨年の十月に、従来のような行政指導でやっておりました流通規制というものを広げまして、消費者により選択の自由の範囲を広げるという趣旨で、いわゆる自由販売ということばで新聞等にいわれておりまするような措置をとったのでございまするが、私どもとしましては、国民に必要な食糧配給をするという義務を食糧管理法上持っておりまして、現在の米の需給実態からいたしますると、内地米並びに準内地米で一応配給基準量はまかない得るという現状になっておりまするので、普通外米を三十四年以降、いま申しましたような取り扱いにいたしましたことが、直ちに食管法にもとるというふうには私ども考えておらないのであります。また、昨年の十二月に普通外米をかような取り扱いにいたしましたのは、別に普通外米消費をここで大いに奨励をして、大いに拡大をしようという意図は必ずしも持っておらないのでありまするし、また、現に自由販売にいたしました後の売れ行きを見ましても、いろいろ加工その他の形態を現在くふうがされておるようではありますが、数量的に見まして、特に顕著な売り渡しの増という形ではあらわれておらないというふうに、私どもは現在把握をしております。
  13. 矢山有作

    矢山有作君 まあ、この普通外米自由化食管法趣旨にもとるか、もとらぬかということも、これまた食管法解釈論の問題になってくると思うんですが、私どもは、やはり食管法のたてまえからするならば、この普通外米自由化するということは、私が最初言ったように、食管法を守ると言いながら、その実はだんだんこれを骨抜きにしていこうという一つ考え方から出ているんじゃないかというふうに、曲がって考えるわけじゃないんですが、最近の行き方を考えておると、そういうふうな気がしておるわけです。大体この三十四年から、先ほどおっしゃったような方法をとられておったということは承知しておりますが、本格的にこれを自由販売に持ってこられたという根拠は、あれはやはり物価懇談会等答申ですか、あれがひとつのきっかけになっているんじゃないですか、その点どうですか。
  14. 大口駿一

    政府委員大口駿一君) 物価懇談会でいろいろ御意見を発表されましたことは、私ども承知をいたしております。昨年の時点をとりましたのが、たまたま物価懇談会結論が出ましたと同じ年でございまするので、いま矢山先生のような、直接の結びつきがあったのではないかというふうにおとりになったと思いまするが、私どもは、事務的にだいぶ前から実は準備を進めておりまして、と申しますのは、食糧配給をもっと改善をすることはできないかということで、いろいろな項目について、後ほどお尋ねがあればさらに細目を申し上げますが、部内でも検討をし、また外部の方の御意見も拝承して、準備を進めておったわけでございまするが、その項目の中に、普通外米売却方法改善をする項目についても検討を進めておりましたので、この項目検討項目の中に入れて、外部の御意見を聞きましたのは、物価懇談会結論が出ますよりも以前の問題でございまするので、私どもは、この両者の間に直接の結びつきを置いて考えておるわけではございません。
  15. 矢山有作

    矢山有作君 政府は、何か聞くところによると、準内地米もやがて自由販売にしたらどうかという議論が出ておるというんですがね。その点はどうですか。
  16. 大口駿一

    政府委員大口駿一君) 最近の米の需給状況は、昭和四十一年産米政府に対する集荷がきわめて順調でありました関係上、現在政府の手持ちの内地米が非常に潤沢になっていることは事実でございます。その結果、現在十キロ配給の中で準内地米配給業者を通じて配給いたしておりまするが、それ以前に比べまして、準内地米に対する需要というものが弱くなっておることは事実でございます。しかし、これは昨年産米集荷量が非常に多かったということとの関連もございまするし、また、それ以外の観点で、現在の配給品目をどういうふうにするかという検討もわれわれいたしておりますので、いまこの時点で準内地米取り扱いについてある一定の目標を置いて検討いたしておるという事実はございません。
  17. 矢山有作

    矢山有作君 最近の米の需給状態から見ると、また輸入状態から見て、私どもが心配するのは、やはり普通外米自由販売になり、さらに準内地米自由販売になる、こういうことになると、農林大臣がおっしゃった、食管制度を守るという立場から、やっぱり私は問題が出てくると思うのですよ。だんだん食管制度を守るのだと言いながら、実際の面でこれを掘りくずしていくという結果になるのではないかと思うので、これはまあ配給品目改定検討をやっているということですがね、私は、少なくとも準内地米自由販売のルートに乗せるということだけは、これはすべきじゃないんじゃないかと、こういうふうに考えておりますから、またその配給品目改定に対する考え方がきまったときに、この問題についてはさらに論議をさしてもらいたいと思うのです。  それから最後にこの問題でお伺いしたいのは、農林大臣承知のように、経済企画庁長官諮問機関物価問題懇談会、これが五月に米価の問題で、七項目にわたって提案を行なっておりますので、これ、御承知ですね。これが私は、やはり経済合理主義的な立場からものを考えておると思うのですがね。その中の食管制度に対する考え方というものは、私は、これはもう明らかに、あなた、食管制度を堅持するのだと言われながら、非常に危険なものを含んでおると思うのですがね。これに対してあなたはどういうふうに考え、処理されていくつもりですか。
  18. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) 御承知のように食管制度というのが始まりましたのは、その起源は、消費者を保護するために多くの重点が置かれてああいう制度が設けられたと、私ども当時立法に参画いたしておる者から——そういう考え方でありましたが、だんだんと情勢が変化し、社会情勢が変わってきて、ただいまはやはり、もはや食管制度というものは、何と申しますか、日本の一般国民にたいへんしみついた、なじんだ度であって、しかも、生産者立場を保護するというような性格も出てまいっております。で、こういうときに、ただ単にコマーシャルベースだけで、そろばん勘定だけで、こういう国民生活に密着し、主食の根幹であるものを動かしておるものにつきましては、軽々に論断すべきではない。したがって、われわれは、いろいろな角度から、もちろん、すべての問題を農林省として研究を続けるのは当然でございますけれども、いま現にやっておりますこの食管制度根幹を守って、この運用の妙をやっていくところに、法律の使命を達成することができるのだという立場は堅持しておるわけであります。
  19. 矢山有作

    矢山有作君 ただいまの農林大臣考え方というのは、私は、食管制度を、現の食管の果たしておる役割りからして堅持しようとする決意を示されたものと思います。しかしながら、食管制度を何とかしてなしくずし的になくしようという考え方が、財界にも非常に強いし、また、それを反映して、政府与党の中にも私は非常に強いと思うのです。したがって私は、農林大臣がほんとうにいまおっしゃった考え方を貫いて、生産者を保護し、また消費者を保護する立場から、食管制度を堅持するということになれば、今後これは相当がんばっていただかなければむずかしいのじゃないかと思いますから、十分その点を考えられて、食管制度堅持という立場をくずされないようにひとつお願いしたいと思うのです。さらに、食管制度堅持食管制度堅持といいながら、実体的には私はそれがくずされていくような、先ほど一、二の例をあげましたが、そういうことに対しても十分な配慮をしながら進めていただきたい、こういうふうに考える次第です。  それからもう一つは、米価審議会から国会議員を排除するとか、排除せぬとかいうことがいろいろいわれて、どうも新聞報道等によると、農林大臣のほうは、もう排除しようというくらいの強い考え方があるのじゃないかと思うのですが、最近は与党の一部からも、米審から国会議員を排除するのはけしからぬじゃないかというような話も出ておるようです。一体米審から国会議員を排除する、せぬの問題について、農林大臣はどういうふうにお考えになっているのですか。
  20. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) 米審をはじめ、行政府審議会国会議員をわずらわすべきでない、こういう臨調答申が出ております。そればかりじゃございませんで、ただいまの政府は、できる限り臨調答申趣旨に沿うように、部局をなるべく統廃合して、合理的にやれとかいうことまで、できるだけ臨調の線に沿うように努力せよ、こういうのが一般的方針であります。そこで、政府におきましても、その趣旨をできるだけ研究をいたしまして、事務に支障のない限りはその答申を尊重する、こういうことでありますが、いまお話しの米審委員につきましては、六月の七、八日ごろまで、たぶん任期も終わりのことでありますし、私といたしましては、この任期中にあとをどうするんだなどということを、大体こちらからお願いしておいて、その方の任期中にいろいろなことをとかく言うのは、これは失礼千万じゃないか、こういうことで、全然考えておらないわけであります。ところが新聞には、私を除いて、処士横議すと申しますか、かってな議論が各地で行なわれて、まことにどうも迷惑をいたしておるわけでありますが、近く麦から始まって米価のことの御相談もいたさなければなりませんので、朝から晩まで呼び出されておる予算委員会でも終了したら、時間を得てぼつぼつ研究していきたいと、こう思っております。
  21. 矢山有作

    矢山有作君 政府答申を尊重するというその基本的な態度はいいと思うのですがね。政府答申を尊重するというのは、たいてい自分に都合のいい答申は大いに尊重するんですが、都合の悪い答申はなかなか尊重したがらない。これは最近の政治資金規正法でもその例が明白に出てきた。私はかってなことだけ答申を尊重するというようなことで逃げられてはかなわぬと思うのです。それはなるほど、答申は尊重すべきものが多い。しかしながら、現実の実態から照らし合わせてみて、それを直ちに受け入れてやってみていいのか悪いのかという点は、まだ議論の余地があるだろうと思う。特に国会議員米審から排除するというようなことは、現在の米価決定のあり方から見たら、私は多分に問題があると思う。事実、御存じのように、米審答申が出てくると、政府は政治的な配慮をこれに加えて、政治的に米価決定していく、こういうことをいままでやっておったわけですね。昨年はちょっと事情が違いますがね。したがって、米審から国会議員を排除した場合、どういうことが起こってくるかということは、さしずめ考えられるのは、ことし畜産振興審議会から国会議員を排除した後の審議会のあり方を見ておっても私はわかると思うのです。というのは、できるだけ政府に都合のいい審議会委員をたくさんこしらえて答申を出される。答申は尊重するのだ、こういう隠れみのに立って、政府なりあなた方高級のお役人の方が、こうしなければいかぬのだと思ったことをどんどん押しつけてくる。こういう結果になるので、私は現在の主要食糧である米の国内、国際的に見た需給事情、あるいは将来の見通し等から、また国内の生産状況等から、一体どの程度にその生産米価をきめ、さらに国民生活の状態から、どのような程度に消費者米価をきめるかという本格的な論議を、どうもする機会がないようなことになってしまうのじゃないか、こういうふうに思うので、われわれとしては、米価審議会から国会議員を排除するということに絶対反対の立場を堅持しております。したがって、これは生産農民を守り、それから、さらにまた米の消費者を守るという立場からも、これはわれわれ社会党としては譲れぬ一線なので、これは農林大臣、よく頭に入れておいていただきたい。軽はずみに米価審議会から国会議員を排除して済むのだと思っておられたら、私は大間違いだと思うから、その点よく考えておいていただきたい。私は、たとえば、どうしても米価審議会から国会議員を排除するとおっしゃるなら、やはり米価決定を国会でやったらどうですか。そうすれば本格的な論議の場が出てくるわけです。ところが、米価審議会答申を得て、国会で論議できるじゃありませんかといわれたんじゃ、先ほど言ったように、あなた方は、答申はこうでございますからと、答申を隠れみのに使って、ろくな論議にならない。ですから国会議員を排除してしまって、あなたのほうの都合のいいような米審をつくって、都合のいいような論議をさして、都合のいいような米価決定をやらせるような、そんなことをやらないで、むしろ国会の場で裸にしてもらって米価論議をやって決定をする、こういうふうにしたほうが、むしろ私は全国民考え方というものを公正に米価決定の上に反映できるのじゃないかと思うのですが、どうでしょうか。そこまで勇断がありますか。
  22. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) 矢山さんのような御意見も、私は一つのりっぱな見識だと思いますが、米審をはじめ、いろいろな委員に、政府の思うようになる者を入れるというような意思は、少なくとも農林関係審議会では、さような人選はいたしたくないと思っております。また、従来もりっぱな生産者代表的な方、消費者代表的な方、それからまた、ふだん非常に研究しておられる学識経験者を出しておりますから、そういう点では御心配ないと思います。  そこで、米審意見を聞いて米価決定すると、こうなっておりますので、その米審の方々には、もちろん学識経験並びにそれぞれ豊かな見識を持った方々をお願いするわけでありますが、ただいまやっておりますようなやり方で、答申を得て政府がこれをきめるというやり方は、やはりこれも食管と同じように長い間の習熟いたしましたやり方でありますから、当分の間私どもは、これを変えようということを政府においては考えておりません。
  23. 矢山有作

    矢山有作君 まあ、いずれにしても、最近の食管制度に対する、われわれの目から見れば、これを掘りくずしていくようないろいろな措置が出てくるということ、さらに、米価審議会から国会議員を排除しようという考え方が出てくること、これらのことは、やはり農政の大きな後退だと思うのですよ。特に最近の経済合理主義的な立場に立った力が強い中で、明らかに私は農政後退の一つのあらわれじゃないかと思うのです。決してこれは無関係のものじゃない、私は深い関連を持った問題だと思うのです。したがって、これらの問題を考えていただいて、日本農業の現状認識というものを、農林大臣には十分お持ちになっておるはずですから、したがって食管制度堅持の問題、さらに国会議員米価審議会の中に入れて、公正な米価決定をどんどん論議をやってきめていく、こういう問題については私どもはそのことを強く大臣にひとつ要望しておきたいと思うんです。  次に、食糧管理特別会計の具体的な内容に入って一、二お伺いしたいんですが、食管特別会計の赤字は千二百三十六億ということになっておりますね。そのうちで国内米管理勘定で千百四十八億の赤字が出るということになっておりますが、この内容は具体的にはどういうふうなんですか。これは食糧庁長官のほうがいいと思うんですがね。
  24. 大口駿一

    政府委員大口駿一君) 昭和四十二会計年度予算、現在国会で御審議をいただいておる予算でありますが、この予算におきまする食糧管理特別会計の食糧管理勘定全体の損失、いわゆる通常赤字と言われておりますが、千二百三十六億であります。これを種類別に分けますと、内地米の国内米管理勘定が千百四十八億の損失、国内麦管理勘定で二百五十三億の損失、それから輸入食糧管理勘定で百六十五億のプラス、これらを差し引きをいたしますと千二百三十六億ということに相なっております。  なお、国内米管理勘定の内容についてもお尋ねがあったと思いまするので、これについてだけ内容を申し上げますと、売買損益、すなわち政府の買い入れ価格と売り渡し価格との間の価格の間だけの損失、これが百九十二億、それから経費——運賃、保管料その他の中間経費でございますが、これが九百五十六億、合わせて千百四十八億という内容に相なっております。
  25. 矢山有作

    矢山有作君 この赤字の中にはこの十月から一四・四%消費者米価の引き上げというものも織り込まれておるでしょうし、それから販売手数料、集荷手数料、保管料、これの改定もたしか織り込まれているはずですね。そうですね。
  26. 大口駿一

    政府委員大口駿一君) 全部入っております。
  27. 矢山有作

    矢山有作君 そうすると、この四十二年度の国内米管理勘定の赤字は、これで予算措置は十分に行なわれておるわけですね。というのは、今後この国内米管理勘定の赤字増加要因というのは、あと残されておるのは、私が思うのは、米価審議会が開かれて生産者米価が上がってくれば、それに従って出てくると思うんですが、それくらいのものですか。ほかに何かまだ要因がありますか。
  28. 大口駿一

    政府委員大口駿一君) ただいま御指摘のとおり、本年の予算におきましては、生産者米価は昨年の米価をそのまま据え置いて——据え置いてということばは適当ではございませんが、予算上の単価を昨年の米価を引用いたしておりまする関係で今年の生産者米価改定をされれば、いまのこの計算は狂ってくるということになることは御指摘のとおりであります。そのほか食糧管理特別会計の予算と決算との相違点は、やや事務的なことになるかもしれませんが、買い入れ数量、売却数量その他もろもろのこまかい要因で若干の変動を来たしまして最終的な決算が行なわれるということになることは御承知のとおりでありまするが、大きなファクターとしてはただいま御指摘の問題だけだと承知をいたしております。
  29. 矢山有作

    矢山有作君 私はその売却数量、政府買い入れ数量を予算編成上どう扱うかというところに一つの問題点が出てくるように思っているんですがね。四十二年の国内米の政府の買い入れ数量七百七十五万トンと見込んでおられますね。これはどういう根拠でこの見込みを出されたんですか。
  30. 大口駿一

    政府委員大口駿一君) 食糧管理特別会計の予算を編成いたしまする時期、すなわち例年でありますれば年末でありまするが、本年は特殊な事情で若干年が明けたわけでありまするが、この際に予算上国内米の買い入れ数量を見込みまする場合には、作柄がまだ全然見当もつかない時期でありまするので、一応通常の作柄を前提といたしまして、生産量に対する政府に集まりまする米の割合というものを過去の実績その他を勘案をいたしまして推算をいたすわけでございます。そこでそのようにして推算をいたしまして、その結果、実績との多少の食い違いが出ておるのが従来の例でありまするが、さほど大きな食い違いがないように、つとめて正確を期してやっておる次第でございまするが、昭和四十一年産米すなわち昨年産米予算編成の際に推計をいたしました数量と実際に政府に集まりました米の数量とに著しい相違がもたらされまして、その意味で補正予算等で国会に御迷惑をおかけをいたしたような次第でございまするが、私どもとしましては、生産量を一〇〇といたしまして、政府の買い入れ数量が何%ぐらいになるかというのは過去の趨勢からいたしますと、年を追うてその率が上がってきております。これはいろいろな原因があると思います。農家人口の減少による農家保有米の需要の減とか、いろいろ配給米といわゆる自由米との価格関係とかいろいろな関係があると思いまするが、昨年の米はいろいろな観点からやや異常な状態だと思うのでありまするが、四十二会計年度の予算におきましても特に異常と思われるようなものを除いて、通常の作柄において政府に七百七十五万という数字を推計をいたしておりまするので、現時点すなわち予算を編成いたしまする時点において推計をいたしました限りにおいては正確を期したつもりでおります。
  31. 矢山有作

    矢山有作君 その点についてこれからずっとお伺いをしていきたいわけなんですが、まず第一に出てくる問題は、四十一年産米政府の買い入れ数量というのは統計で見ると、四十一年の十二月末では七百八十七万八千トン、たしかこうなっておるはずなんですね、現在ではもう——四月末ですかの時点では八百万トンをこえておるようです。そうすると、私は過去の実績を考慮しながらやられたというのであれば、やっぱり七百七十五万トンの政府買い入れ数量を見込んだということは、ちょっと買い入れ数量の見込みにおいて低過ぎるんじゃないか、こういうふうな気がしておるのですけれども、ことしは何か特別に四十一年並みの生産はできないというような見込みをやられたのか、あるいは農家から政府への売り渡しの数量がそれほどは伸びぬだろうというような何か見込みをやるような具体的なものがあったわけですか、どうでしょう、その辺は。
  32. 大口駿一

    政府委員大口駿一君) 四十一年産米が私どもの当初の見込みから著しく数量的に多くなった原因等についていろいろ私どもの機構その他駆使をいたしまして、つかめる範囲の原因の分析につとめたわけでございまするが、四十年産米と四十一年産米生産量の相違を来たした原因としましては、まず生産量が若干ふえておりますること、それから農家人口の減による農家消費の減等のほかに、昭和四十年産米農家の古米の手持ち量が非常に多かったということも一つの原因ではないかというふうに私どもは見ておるわけでございます。そこで、私どもとしましては、農家の米の手持ち数量等もいろいろな方法で調査をし、推計をいたしておりまするが、昨年の生産量をもとにいたしまして、八百万トンをこえる集荷を見た現在における農家の古米の手持ち量が、四十年産米の古米の手持ち量が、四十一年産米が出ますときに持っておりました数量よりも同じか、もしくは多いということは、ちょっととうてい考えられないのではないかというようなことも考え合わせまして、一応七百七十五万トンという数量は、私どものいろいろな勘案事項をもとにして判断をいたしまする限り、現時点では正確を期し得るのではないかというふうに考えておる次第でございます。
  33. 矢山有作

    矢山有作君 私は、先ほどあげられたような問題から言うならば、生産量において四十一年度は大体これ平年作だと言われておったわけですから、三十七年は史上最高と言われた。それから三カ年ぐらいは不作が続いた。四十一年産米についてはまあまあ平年作と、こう言われておるわけですから、したがって、その平年作の中で八百万トンをこえる政府売り渡しがあるということになると、あなのおっしゃったような今後の生産量が、特にこれは減ってくるかもしれぬというような見込みなり、あるいは農家消費がふえてくるというような確実な見込みがない限りは、この四十一年産米の買い入れ数量八百万トンをこえるよりも二十五万トンも少ないような見積もりは私は出てこぬように思うのですがね。これは考え方の相違ですから、これ幾ら議論しても、あなたのほうはそういう見込みになるのだ、私はそうはならぬと思う。で、別の点で一つお伺いしてみたいのですが、先ほど言いましたように、史上最高の年と言われたのが三十七年、これは千三百万トンですね、それから三十八、九、四十年は三年続きの異常天候だ。で、生産が減少したわけですが、四十一年は先ほど言いました平年作でございます。千二百五十万トンの生産量ですね。で、生産量が、四十二年度、先ほど言ったように、私は減るとは思わない。減るとは言えない。それから、いままでの統計からずっと調べてみても、この不作だと言われた年でも政府の買い入れ数量が減っておるということはないのですね。これは常時伸びてきておる。そうすると、私は四十二年産米について特別に生産量が落ちるんだという見込みの立てられない限り、あるいは農家消費が特別にふえるんだという見込みの立てられない限りは、過去の統計の推移から見て、買い入れ数量が減るというのはどうもうなづけぬのですがね、どうでしょうかね。
  34. 大口駿一

    政府委員大口駿一君) ただいま矢山先生が御指摘になりましたとおり、米の生産量につきましては、年ごとに若干の変動があるにもかかわらず、政府の買い入れ数量はコンスタントにふえておる。その結果、生産量に対する買い入れ量の比率、こういう比率を使うことが理論的に適当かどうかということは一応別といたしまして、一応その比率が、昭和三十五年ごろは五〇%以下だったものが、逐次年を追うてふえてまいりまして、現在では六〇%以上になっておる。昨年の四十一年産米の数字で見ますと、生産量に対して最終現時点でつかんでおりまする買い入れ数量の比率が六二%以上になっておるのが現状でございます。そこで、昨年私どもが事務的に推算をいたしました数字と実績が狂いましたことはきわめて申しわけない次第であるということから、従来予算に編成をいたしまする際の買い入れ見込み数量は、全国ベースで生産量と買い入れ数量との比率を一応過去のトレンドを推計をいたしまして、大体幾らくらいというふうに見ておいたのでございまするが、これを地方別、ブロック別に分解をいたしてみますると、生産量に対する政府の買い入れ数量の比率が著しく変動しておる地域と、必ずしもそれほど変動しておらない地域とに分けられるのであります。たとえて申し上げますれば、東北地帯のごときは、従来から非常に政府の買い入れ比率は高いのでありまして、これがあまり変動はないというようなことから、ブロック別に推移を見てそれを分解したものを積み上げて計算をするということで正確を期するような手だても講じたのでありまするが、ただいま御指摘になっておりまする昭和四十二年産米生産量に対する政府の買い入れ数量七百七十五万トンを平年作の生産量に比較をいたしますると、四十一年のわれわれが異常と見ております六二%よりは、正直申しまして、低い比率をとっておりますが、これはブロック別等にいろいろ計算をしました結果、昨年のやや異常と思われる要因だけを除いて計算をしてみた結果でございまして、それ以外の他意は全くないのでございます。
  35. 矢山有作

    矢山有作君 私は、その昨年のブロック別にいろいろ検討してみた場合問題があるということ、異常な原因があって、こういうふうに大きく買い入れ数量が伸びたんだんとおっしゃるのですが、やはり生産量の動向なりあるいは農家消費動向等から見て、やはりある程度全国的に見ていかなければならぬのじゃないかと思うのですがね。あまり特殊的な地域的な現象の中で出てきた問題だけを大きく扱っておると、また、買い入れ見込みに私は大きな狂いがくるんじゃないかという心配があるのです。というのは、たとえば生産者の米穀消費量、これは年々減少しておりますね。これはちょっと調べてみたんですが、三十七年度を一〇〇としてみると、四十年度では約二〇%ぐらい減っておるのですよ、生産者の米の消費というのはね。これから判断するというと、今後農家消費が急にふえるというふうな情勢というものは、私は特別考えられないような気がするのですよ。むしろ農家消費は年々減ってきておりますから、減る現象が強く出てくるんじゃないか、こういうふうな気がするのですね。それから最近政府自身で言っておるように、やみで売るよりも価格関係政府に買い上げてもらったほうが有利だ、事実政府に買い上げてもらったほうが有利だというので、統計数字でも政府買い入れ数字がふえておるのですから、そういう点から見てちょっと低過ぎると見るわけですが、農家消費動向はこれはどういうふうに見ておられるわけですか。
  36. 大口駿一

    政府委員大口駿一君) 農家消費の減少をもたらす要因としましては、生産者人口の減少と一人当たりの消費量の減少と二つの要因があると思います。そこで生産者人口の減少は、私どもでは大体二%ないし三%くらいのテンポで生産者人口は少なくとも現在までは減ってまいっておることは数字的に把握できるのでありますが、一人当たりの消費量はわずかでございまするが、少しずつ減っております。そこで大体年々減っておりまする数量は、二十万トン余りの数量がいわゆる農家消費としての消費量の減というふうに数字的には私どもは把握をいたしております。
  37. 矢山有作

    矢山有作君 ですから私は今後の傾向としては、農家消費がふえてくる要素というものはないと思います。これはやはり減っていく傾向のほうが強いだろう。しかも価格関係から政府への売り渡しが減ってくるという要素もない。そうすれば私はやはりいままでの統計を踏まえていった、初め七百七十五万トンという買い入れ数量見込みというのはちょっと実情に沿わぬ面が出てくるんじゃないか、こういう感じをやはり強く持っているわけです。むしろ逆にこういうふうに昨年から、昨年というのは四十一年産米に比してことしは二十五万トンも政府買い入れ数量が減ってくるんだということになると、最近新聞などで報ぜられているような需給動向ですね、米の。こういうようなものから考えて、あるいはまた、米価論議等がやかましくなっておるときですから、農民のほうがかえって不安感を持つんじゃないか、実際にはそれは売り渡し申し込みがあれば買い上げてはおりますが、政府のほうは米の増産増産ということを最近あらためて言い出したわけですから、増産増産というかけ声をしながら、一方では買い入れ数量は統計の動向に照らしてむしろ減ってきておるんだということになると、私はちょっと不安を感ずるんじゃないか、こういうふうな考え方がぬぐえないんです。で、大体ずっとこう見てみますと、売り渡し申し込み数量よりも買い入れ数量のほうがもう三十五年以降私調べたんですが、四、五十万トンずっと上回っておりますから、そうなると、やはり私は予算編成のときにはそういうようないままでの統計等をもとにしてできるだけ的確な買い上げ数量というものを出していって、これを当初予算に計上していくというのが予算編成の本来の姿ではないかと、こういうふうに私は考えるわけです。そこで、なぜそれを政府がやらなかったか、その理由が私は問題になるのですが、その理由はむしろ私は財政的な配慮の面にあるんじゃないかという気がしておるわけです。というのは、御承知のとおり、十月から消費者米価の一四・四%という値上げが行なわれてくるわけですね、そしてそれに伴って一般会計から千二百三十五億円の繰り入れ、こういうことになるわけです。ところが、買い入れ数量を、これはいままでの統計から考えて的確に計上していくということになれば、これだけの一般会計からの繰り入れじゃどうにも足らないということは明らかになると思う。それから、しかもそういうときに一四・四%の消費者米価の値上げをやらなければならぬ、そこらで何とか消費者米価の値上げに対する抵抗もまあひとつやわらげにゃならぬじゃないかというようなことがあって、はっきりと見込まれる買い入れ数量すらことさら低く出していったんじゃないか、これはちょっと性根の悪い見方かもしれませんが、私はそういうふうな見方もあるいは成り立つんじゃないか、こういうふうに思うんです。むしろ私はこういう予算の組み方というのはちょっと問題がある、問題がある根拠は財政法二十九条からいって私はやはり許せないんじゃないかと思う。というのは、米価審議会によってその審議結果で今後米価が上がってくる、これは補正要因としてこれは認められるでしょう。しかしながら、当初予算で当然いままでの、過去の実績またそれを裏づける実績なりそれに基づく統計から見れば当然上がってこなければならぬ買い入れ数量というものを故意に低くしているわけですから、そうすると、これは補正予算を組むところの要因としては財政法上問題がある、こういうふうに思っておるんですが、その辺はどうでしょうね。これは農林省なり、大蔵省も見えておるんだろうと思うのですが、大蔵省の話も聞いておきたいんですが……。
  38. 大口駿一

    政府委員大口駿一君) 四十二会計年度の米の買い入れ数量の見込みにつきまして、私どもとしましては、現時点においてつとめて正確を期したつもりでございます。決して他意はございませんということを先ほど来申し上げておるわけでありますが、その他意はございませんの中で、先生がいまおっしゃったような他意はこれは全くないのでありまして、そういうあるいは御指摘があるのではなかろうかと思いまして他意はございませんということを申し上げておったのでございまするが、そういうことではないかという前提に立って財政法の御質問がありまするので、私はちょっとお答えにくいわけでございまするが、食管特別会計の食糧の買い入れ費にはもちろん予備費の制度がございまするし、従来とも補正の時点において実行見込み等も見ました上で、実際にそれで調節をいたしておるわけでありまするから、専門的な財政法の解釈の問題等については、私ども正確ではございませんから、あまり想像で申し上げることはいかがかと思いまするが、しかし、少なくとも赤字を少なく見せるためにやったことではないかという前提で仰せられるとすれば、私どものほうではそういう意図は全くございませんということを申し上げる以外に方法はないわけでございます。
  39. 嶋崎均

    説明員(嶋崎均君) お答えいたします。  先ほど来、四十二年度産米の政府買い入れ数量の見込みについての先生の御議論があるわけでございまするが、実は予算編成の過程で毎年この数量の問題というのは非常に議論になるわけでございます。私が来ましてからも、思い起こしてみますと、どちらかというと、大蔵省のほうは数量をもう少し、しろうと考えで、よけい出てくるのじゃないかという議論をする場合が多かったように思うのでございます。したがって、われわれのほうで財政的配慮からこの数量を過小に見積もる、あるいは査定したような記憶は全く持ち合わせておりません。ところで、四十二年産米についての御議論でございますけれども、確かに予算編成上の非常に大きな問題でございますので、私自身もこの議論に参加をしまして、いろいろ内容的な吟味をやりました、特に四十年産米と四十一年産米の買い入れ数量の増加、それが一体どういう原因によって生じたのであろうかということについて原因を分析しなければいかぬという議論をしたことを記憶しておるわけでございます。で、いま手元にある統計で見ますと、四十年の生産量は千二百四十万トンでございまして、四十一年度はいまの見込みでは千二百七十四万五千トンということになっておるのでございます。で、数量的に、まあ三十四万トンくらいの差異があるわけでございますけれども、現実の買い入れ数量での差というものは、その前の年のたしか予算編成の実行見込みが七百五万トンでございまして、結果的に、補正予算議論したときに七百五万トンということだと思います。それが結果的に七百二十万トンになったわけでございますけれども、まさか四十一年の買い入れ数量が八百万トンに及ぼうというようなことは全然想像をしていなかったような次第で、その原因を、先ほど来申しましたように、どういう原因だろうかということをいろいろ考え検討してもらった結果、どうやら四十年産米の四十一年への持ち越し数量というものが非常に問題点で、結局、古米の持ち越しがあったために消費者米価生産者米価関連ということもこれに加わって、結局四十一年産米の新米としての供出数量、これが非常に大きくなったということに原因がありそうだということが明らかになったのでございます。そこで、四十二年の数量を算定するに際しまして、北海道、東北、関東、北陸、東海、近畿、中国、四国、九州というようなことで、規則では過去五年間の最高査定の数量を除いた平均数量というものを一応の収獲量に査定しようということを地区別に積み上げまして、その結果、千二百七十五万トンという生産数量、これは去年の数量よりもわずかに多目になっておりますけれども、四十一年産米より多目になっております。それに過去の三カ年の買い入れ比率の趨勢というのですか、だんだん買い入れ比率が地域別に上がっていることがありますから、そういう趨勢を織り込んで推計するとどういうことになるかという計算を立ててもらいまして、その結果その買い入れ数量が、先ほど来御説明にありますように七百七十五万トンという数字になったわけでございます。積算の根拠もまた推計の方法としてもそういう妥当なやり方をやっておる次第でございますが、したがいまして、いま御質問になりました財政法のいわゆるこの補正予算との関連でございますけれども、御承知のとおり、予算は積算を明らかにして組むわけですが、以上のような積算でもって推計をし、それからその後生じた、たとえば買い入れ数量の変動というようなものがあれば、それはこの補正予算に組むということになっておりますけれども、御承知のように、予算総則で買い入れ数量の変動に伴う歳出額の増加というものは一応弾力条項が働くことにはなっております。しかし、価格の面につきましてはその点で問題がありますので、価格の面で四十二年産米価格が非常に上がるかというような事態になれば、その際はいまの予備費で補足するということになれば、買い入れ費をセーブしなければならぬし、また、いままでの食管制度運用の原則から申しまして赤字が増大をするということになれば繰り入れの問題も生ずるでしょうし、というようなことで補正の要因になるかもしれませんけれども、数量の点につきましては必ずしも二十九条の補正予算項目について問題があるというぐあいには考えておらぬような次第でございます。
  40. 矢山有作

    矢山有作君 いずれにしても、買い入れ数量が現実において、私が言っておるように、七百七十五万トンという見込みが低いか高いかということは、これ四十二年産米の買い入れをやってみなくちゃわからぬので、その論議の正否についてはこれは私はあらためて補正予算を編成するときにやったらいいと思うのです。私は低いと思っているわけですから、低いという前提に立って、当然八百万トンぐらいな政府買い入れは見込むべきだと、仮定の問題ですからね、そうした場合に七百七十五万トンの政府買い入れで予算編成するということは財政法二十九条からいって適当なのか適当でないのか、これは仮定の問題として聞いておきたいのです。
  41. 嶋崎均

    説明員(嶋崎均君) 仮定の問題で、その初めの仮定が全く私のほうの考えていることと違っておりますのでお答えできませんけれども、初めから間違っているという予算をわれわれのほうで組むはずがありませんので、そういうことを前提とするならば、将来買い入れ数量がふえるということは二十九条の規定と何ら相反するものではないということになります。私のほうもどうも仮定でもってお答えをせざるを得ないというふうに思います。
  42. 矢山有作

    矢山有作君 それはあなたの買い入れ数量の見方が正しいか正しくないかということについては、またあとで少しばかり考え方がありますから言いますけれども、それはそれとして、あなた方は仮定でものを言ってくれというと、きわめて用心をして言わないのですがね、これは何もそう束縛を感ずる必要はないので、要するに、買い入れ数量が確実にこれだけ見込めるというのに、それを下回って私は予算編成をするということは二十九条からいって問題があるんではありませんかということだけを聞いておるわけです。だから私はあなた方が七百七十五万トンを見たことを直ちにいいわるいを言って、そういうことをお伺いしているのじゃないのです。これは別個に論議すればいいんですから、だからあなた方の見る七百七十五万トンは正しいとおっしゃるのですからそうしておきましょう、それはそれでいいんです。それは議論からもう除いて、もし見込み違いであるということがはっきりしておったような場合に、それを承知で組むというのは間違いでしょう、これは。簡単にそれだけ言ってもらえばいいんですよ。だからあなた、七百七十五万トンが正しい、正しくないということは、これは議論を別にしましょう。別にして、買い入れ数量がこれだけだというのに、それより下回って見込みを立てて予算を組むというのは財政法二十九条からいって間違いじゃありませんか。これはあなたが専門家の立場から私に教えてくれればいいんです。何もこだわり持たなくてもいいんですから、それだけ教えてくれませんか。
  43. 嶋崎均

    説明員(嶋崎均君) 財政法二十九条の規定は御承知のように、補正予算ということでございまして、「内閣は、次に掲げる場合に限り、予算作成の手続に準じ、補正予算を作成し、これを国会に提出することができる。」ということで、先生の御質問はたぶん次の一号の「法律上又は契約上国の義務に属する経費の不足を補うほか、予算作成後に生じた事由に基づき特に緊要となった経費の支出又は債務の負担を行なうため必要な予算の追加を行なう場合」にできるのだ、こういう条文がある。したがって、現在の時点でもし予算が正鵠を得ていない、明らかに間違っておるということで生じた補正予算の必要性というものは、補正予算の何というか、編成の原因たり得ないという論議ではなかろうかというぐあいに思っております。その点につきましては、御承知のとおり、われわれは現時点において最も正確を期した——少なくとも予算編成時に最も正確を期した予算を編成しておるわけでございまして、それが先ほど来るる御説明申し上げておるとおり正確であるということを信じておるわけでございます。したがって、それとは別の、いろいろ天気のぐあい等によりまして四十二年産米増加をするというようなことになれば、当然この一号に該当するわけでございます。したがって、ごく抽象的に申しましても、御審議願っている予算というものは正しいということが前提でございますから、もしそういう事態があるならば、当然二十九条で、補正予算を組む原因になるというぐあいに思っておるわけでございます。
  44. 矢山有作

    矢山有作君 頭脳明晰な嶋崎主計官だから、ちょっとでもあとに問題を残すような答弁はなかなかなさらぬでしょう、なさらぬ立場もわかりますからそれはよろしい。しかし、私の立場だけは明確にしておきたいと思うのは、過去のいろいろな政府買い上げの統計数字、あるいは売り渡しの申し込み数量の動き、農家消費動向等々いろいろな問題から考えて、今年度の政府買い入れの予定数量はきわめて低いというふうに考えております。だからそれが明確なのに——明確だと仮定するのですよ、仮定するのに、なおそれより下回る政府買い入れ数量で予算編成をやるということは、私は二十九条からいって問題になると、こういうことを言いたかった、しかし、これはあなたのほうで、あくまで予算編成は正しいと言わねば、自分のつくった予算が少しでもおかしいということになったらたいへんだから、それはいいでしょう。  次に、私が調べたところで七百七十五万トンということは問題があるということを申し上げてみたいのですが、四十二年度の政府買い入れ数量、四十一年度並みとしたとき、これはいままでの買い入れの推移から見て、私はこれは間違いのない数字だろうと思うのです。そうした場合にはまずまず政府買い入れ数量というのは八百万トンには見ていい、したがって、二十五万トンの不足である、こういうふうに私は思います。したがって、そういう立場に立つならば、トン当たりの値段というものは十一万八千何がしですから、大体大ざっぱに十二万円程度が買い上げ価格、これを考えた場合には大体三百億くらい不足してくる、こういうことがまず第一に言える。それからその次に統計からずっと調べてみて、政府買い入れ数量というのは天候不順による不作の年であっても、対前年比一%は伸びております。それは統計をお持ちでしょうから御承知のとおりで、ただ例外は三十九年、このときには〇・三%しか伸びておりませんから、これは例外です。しかし、あとは大体一%以上全部不作の年でも伸びておる。たとえば三十八年度は一・五%の伸び、四十年は四・五%の伸びというふうに伸びておりますから、したがって、四十二年度がこの統計の実績からして一%買い入れが四十一年産米に比べてふえるとするならば、大体八万トンは確実に伸びる。そうすると、この増加分を加えて適正な予算編成するとすると、さらに九十六億要ることになりますね。そうすると、合わせて三百九十六億ですから、大体四百億の予算措置ができてない、こういうことになる。これは私の計算ですからね。それからさらに、対前年度の政府買い入れの増加率を三十七年度以降四十一年度までの五年間の平均で見ます。そうすると、これは大体三・六%になります。これは単純な算術平均をやったわけですから、その程度になる。この数字を四十一年度の政府買い入れ数量約八百万トンに掛けてみますというと二十八万八千トン、大体このくらい政府買い入れ数量は八百万トンよりもふやさなきゃならぬ、こういうことになる。この増加分に先ほどのトン当たりの単価約十二万円を掛けると、約三百四十五億円という数字が出てきます。これを、先ほど言いました二十五万トン減になっているわけですから、その分の三百億円を加えて予算編成するとすると、六百四十五億円予算編成上不足しておる、こういう計算になってくる。これが一つの前提で、そこで、そういうところから私が言いたいのは、統計上明らかになっておる政府買い入れ米の数量の増加の状況を考慮して毎年度の当初予算を編成するというのが私は正しい予算編成のあり方だと思うわけです。農林省も、自分たちで統計調査部を持ち、そして統計調査事務所を置いて、精密な統計をいろいろやっておるんですから、自分が出したこれらの統計数字すら政府買い入れ米の数量決定にあたって使えないというんでは、私はいささか問題なんじゃないか、これが一つです。  それからさらに、逆に、ことさら前年度より政府買い入れ数量を減らして予算編成をやるというのは、現在米増産政策をとっておられる立場からするならば、政府農政の行き方としてはいささか矛盾してくるところができてくるんじゃないか、こう思います。そのことは、先ほど嶋崎主計官のほうの答弁から出ましたように、ことしの生産者米価決定の次第によって、非常に買い上げ数量がふえてくるということになると、買い入れ費のセーブをしなきゃならぬというような意味のことを言われたわけです。——言われましたよ。これはもし疑問なら、速記録を調べてください。そうなると、私は、こういうような予算編成をやることがことしの生産者米価決定一つのセーブの役割りを果たす、そういうふうなうがった見方もできるんじゃないかと思うわけです。それからまた、法的に見て補正予算に回すことの許されぬ、当然私は当初予算で措置すべき性格のものだと考えておりますが、それをやらぬというのは、私が先ほど指摘したように、消費者米価一四・四%の値上げをやりよくしようとする考え方がそこにひそんでおったんだと、私はそういうふうに見ております。  それともう一つは、もし買い上げ数量をできるだけ統計上見込まれる正しい線に近づけていけば、いまの予算編成では相当な不足数が出るわけですから、そうすると、それを正しく見て予算編成に組み込んでいけば、中立予算だといった五兆円のワクが破れることになるわけです。そこらにも、こういう買い上げ数量というものをことさらに低く見積もったというふうなことが出てきておるんじゃないか、私はそう思うのです。したがって、以上申し上げたような点から、私は、ことしのこの買い上げ数量を中心にした政府食管予算編成というのは問題点がある、こういうふうに考えざるを得ないわけです。どうでしょう。
  45. 大口駿一

    政府委員大口駿一君) 先ほど来申し上げておりますように、生産量と政府買い入れ数量との比率は、確かに御指摘のとおり、年々上がってきておることは、統計計算をすればそのとおりでございます。ただ、昨年私どもの見込みが狂いましたことは、非常に反省をいたしておるわけでありまするが、昨年私どもが大体当初見込みましたよりも約八十万トン近い数量が買い入れ増となってあらわれました結果、比率がその前の年よりも一挙に約五%近くふえておるわけでありまして、この原因はいろいろあると思いますが、中でも非常に大きな原因として、その前の年の古米の手持ちが非常に多かったのではないかというのが原因の一つとして考えられておりまする結果、私どもとしましてはその要素だけは若干勘案をしてみるべきではないかということも考えた次第でございます。また、全国ベースでばかり議論をいたしておりますると問題があるということから、新たにブロック別に比率の動向等も見ました上で正確を期するようなつもりであったのでございまするので、私どもとしましては、たびたびの御指摘ではございまするけれども、この数量は現時点において見まする限り正確を期したつもりでおります。また、その数量を推定をいたしまする方法は、先ほどから申し上げておりますような方法によっておるわけでありまして、それ以外の財政的な配慮その他がこの数量算定の配慮事項になったということにつきましては、私どもは全くそのような配慮からこの数字の算定に臨んだわけではございませんということを申し上げたいわけでございます。
  46. 矢山有作

    矢山有作君 この論議は、私は一つの問題を提起しただけであって、実際は、ことしの米審生産者米価決定なり、さらに現実に行なわれる政府の買い上げ数量を見てからでなければ、本格的な論議にはならぬと思います。したがって、その時点で、きょう私が申し上げたことをもとにしながら、さらにこの問題については、予算編成上の問題もありますから、明らかにしていきたいと思っております。  次の質問に移りますが、ここで最初にお示し願いたいのは、過去三年間の国内米の政府買い入れ数量、それからその過去三年間の同じく政府配給米として売り渡した数量、これを等級別に示してもらいたいのです。
  47. 嶋崎均

    説明員(嶋崎均君) 先ほどちょっと私はそういったことを言った記憶がありませんでしたけれども、もし議事録でそういうことになっておると、たいへんな誤解を招きますので、ふえん説明をしておきたいと思うのでございますけれども、御承知のように、先ほど四十二年産米価格が上がったというときには、これはもちろん予算の歳出権の範囲内なら問題はないのでございますけれども、歳出権をオーバーをするというような要因価格上昇にあったというような場合、食管会計の形からいって買い入れをセーブをするというような説明にとられたようでございますが、そういう意味じゃ決してありませんので、そういう場合には補正予算を組む形になるだろうということで、現在の食管法のたてまえから見て、買い入れは無制限に行なうわけでございますので、決して買い入れ費の不足を理由に買い入れをセーブするというようなことはありませんから、その点だけ御説明申し上げておきたいと思います。
  48. 大口駿一

    政府委員大口駿一君) いまの資料ちょっとさがしておりますから、時間御猶予いただきたいと思います。
  49. 矢山有作

    矢山有作君 それでは、これはすぐ資料があるいは出ないかもしれませんから、一応資料にして提出をしてください。また機会をかえてのときの質疑に、さらにそれをもとにしてお聞きしたいと思いますから。  それから、先ほどの嶋崎主計官のお話は、議事録を調べてみればわかることです。しかし、それを、私が言ってないものを言っているというふうな言い方をしたわけでもないので、それは、あなたのいまのお考えをね、もしそういうことを言っておられたとすれば、訂正の答弁として考えていただいたらいいのじゃないかと思います。  それではね、いまの問題にあわせて、資料を調製していただきたいので、同じく注文しておきます。過去三カ年間に消費者が売り渡しを受けた配給米ですね、これを、特選米、普通米、徳用米、それから、並びに、途中で配給制度の改正がありましたから、この上米、並み米、徳用米、この品目別に数字を示していただきたいと思います。  一つは、過去三カ年間の国内米の政府買い入れ数量と、政府配給米として売り渡した数量を、等級別に示してもらいたい。それから同じく、消費者配給米を受け取るときに、特選米、普通米、徳用米、及び上米、並み米、徳用米として受け取るようにしておりますから、その数量がどういうふうになっておるか、それを明らかにしていただきたいと思います。
  50. 鈴木強

    主査鈴木強君) よろしゅうございますね。
  51. 大口駿一

    政府委員大口駿一君) さっそく資料は調製をいたしまするが、過去三年間の政府の買い入れ数量を等級別に数字を整理することは、これはできまするので、調製をいたします。  それから、政府が売却をいたしました数量の過去三年間の等級別という仰せでございまするが、私どもは、特選米、普通米がありましたときにはそのような区分、現在では上米と並み米という区分になっておりますからその区分、この区分は可能でございまするが、その中でさらに等級区分をしてお示しすることはちょっとできませんので、御容赦をいただきたいと思います。  それから、消費者のほうの買いました数量、これは、私どものほうで、食糧事務所の機構を使いまして、消費実態調査というものを、一定のサンプルを置いて、約一万世帯の消費世帯をつかんでやっております。したがって、このサンプル調査に基づきまして、母集団たる全体の数量を推計をした数量と申しますか、比率と申しますか、こういうものはできまするので、そういう前提を置いた資料というふうに御了解をいただきたいと思います。それから、消費実態調査の取りまとめは、昭和四十一年度の取りまとめを現在まだ三月に終わったばかりでございますので、取りまとめ中でございまするので、その最後の年度だけはあるいは若干時間的におくれて御提出せざるを得ないことがあるかもしれませんが、その点もあわせて御容赦いただきたいと思います。
  52. 鈴木強

    主査鈴木強君) ひとつ質問者とも十分御相談いただいて、その上ですみやかに出すようにお願いしたいと思います。
  53. 矢山有作

    矢山有作君 それでは、いまおっしゃったように、売り渡すときの区分はそれでけっこうです。ですから、その区分に従って。それから配給を受けたほうの側の調査、いまおっしゃったような抜き取り調査をやられたわけでしょうから、それから推計したものでよろしい。それでひとつ出してください。  それから次は、四十年度中に配給された米が大体六百二十五万トン、これはちょっと数字が違うかもしれませんがね。このうちで一、二等米が大体三十四万トンだと言われておるのですね。そうすると、これは三十四万トンということになると、大体六%足らずになると思うのですが、ところが食糧庁が先ほどおっしゃった消費実態調査をしたところによると、一、二等米、これが特選米ですから、その特選米を食べていると言った者が約二〇%あったということを言われているのですが、これはあなたのほうでやられたのだから御存じだろうと思いますが、こういうふうに私は大きな数字の開きができてきていると思うのですが、この数字の大きな開きというものはどういうふうに解釈したらいいのでしょうか。
  54. 大口駿一

    政府委員大口駿一君) 昨年の一月に配給品目改定をいたす前の段階では、特選米と普通米という配給米の区分になっておったことは、御承知のとおりであります。そこで、特選米は一、二等の米だけを特選米として、それ以下の等級のものは普通米ということにしておりました。私ども消費実態調査に基づいて、消費者が特選米として買ったという数量を比率で推計をいたしました数量が、食糧庁が卸売り販売業者に売りました比率と符合しないということは、事実でございます。それから、昨年の一月に配給品目を改正をいたしまして、現在では一、二、三等を上米、それ以外を普通米ということに等級区分を改正いたしました結果、上米に充当する米の比率は非常に多くなっておるわけでありまするが、これも最近時点消費実態調査で見ます限り、消費者が実際に上米として買ったという数量の比率が政府が売った比率よりも高いという現象が出ておることも、これも御指摘のとおり事実でございます。消費者の米に対する嗜好が、非常に米の窮迫時代から逐次ゆるやかになってまいりました結果、従来の量に対する需要よりも、さらに最近では質に対する需要が非常に強くなっておるということは、一般的な食糧事情のもとにおいては当然のことであると思いまするが、消費者が実際に米屋に米を注文いたしまする際に、政府がきめておりまする配給品目の区分を必ずしもつまびらかにしない関係で、単においしい米を持ってきてもらいたいということでばく然と注文をし、米屋さんがお得意さんであるためにおいしい米を持ってまいりますということで行なわれているのが大部分でございまして、その結果、私どもが本来期待すべき姿と若干かけ違った姿が出ておると思われることは、遺憾ながら事実としてある程度容認せざるを得ないのでございまして、私どもに与えられました課題としましては、今後いかに、いかなる方法と手段によって、このような形を防ぐとともに、消費者が量よりも質へ非常に強く要望しておるという、その要望にこたえるべきであるかということについて、実は日ごろ頭を痛めておる次第でございます。先ほど最初のほうの御質問の際に、配給品目の問題の検討ということを申し上げましたが、このような実態を前にいたしまして、私どもとしては、いま申し上げましたような観点から、いろいろな配給の問題を検討いたしたいと思っておりまするので、そういう趣旨で申し上げたのでありまするが、ただいま先生が御指摘になりましたような事実は、私どもも私どもの調査でややそれに近い形を把握していることは事実でございます。
  55. 矢山有作

    矢山有作君 そういうような配給実態が非常に乱れておると、特選米と言いながら特選米にあらざる普通米や、ひどいときなど徳用米を売りつける、上米と言いながら上米にあらざる徳用米を売りつけると、こういう問題が起こっている。さらに、そればかりではない。最近はいわゆる自由米と称せられるものまで配達をされておる。これは上米に比べてはきわめて高い相場で売られているわけですが、この自由米と称するものは、これは消費者がいい米をいい米をということで、これはいい米だと言って売った米だ。ところが、その自由米の品質を調査してみても、非常にこれが、上米どころではない、並み米のようなのがたくさんある、こういう結果になっておるわけですがね。ただ、こういう実態調査をやったものは、食糧庁は積極的にこれは報告すべきだと思うのですがね。これどうして発表されないのですか。私は、こういうことを発表してですね、政府はこういう配給制度をとっておると、しかしながら現実の配給においてはこういう大きな問題があるのだということを国民の前に明らかにすることが、国民生活に非常に大きな影響を持っておる米の配給制度のあり方を将来改善していくことにも非常に重要だと思うのですが、何か政府は、この実態調査の資料出せと言うと、これは内部の検討資料でございますとか、まだ調査不十分でございますとか、いろいろな口実をつけて出さないのですが、これはどうして出さぬのですか。
  56. 大口駿一

    政府委員大口駿一君) 食糧庁が食糧事務所の機構を使いまして配給実態調査をやっておるわけでありますが——昭和三十九年以来、いろいろ事務能力の限界等もありまするので、現在では一万消費世帯をサンプルにとっておるにすぎないのでございます。もちろん私どもは、今後のいろいろな行政の改善その他のためにそういう調査をいたしました結果をある程度行政の判断の基礎にいたすつもりではございまするが、何せサンプル数との関係で、世の中に公表をいたしまして、しかも自信を持ってお示しをするというには、若干サンプルが足りないのではないかということもございまして、これを公表する際の受け取られ方と申しまするか、いろいろ私どもが予期しないような影響が起きることは、これはまたむしろ逆な意味で慎しむべきことだと思いますので、できるだけ部内において取り扱いを慎重にするように、つまりそういう前提の調査であるということがわかっていただける人だけ利用していただくという趣旨でございまするので、これまたぐあいの悪いことをできるだけ隠そうというふうな根性ではございませんことを申し上げておきます。
  57. 矢山有作

    矢山有作君 しかし、食糧庁長官のお話ですが、あなた方がそれを発表すれば大きな影響があると思って心配しておるだけの話なんで、大きな影響があるというのは、農林省の米の配給制度はなってないじゃないかという批判を受けるほうに大きな問題があるので、この実態というのは消費者のほうがよく知っていますよ、あなた方調べる前に。おそらく、あなたが食糧庁に帰って職員に聞いてごらんなさい、うちのは上米と言うても並み米くらいしかない米を持ってくるということはたくさん出てきますから。だから、あなたが言われるよりも、消費者のほうが実態をよく知っておるのです。私は、それならばむしろ、こういうことを発表して、そして国民と力を合わしてこういった配給制度上の欠陥を直していくことに努力すべきなんで、あなた方が発表しないというのは、私は何もいじめるわけじゃないけれども、発表すれば、これはおまえたちのやっている配給制度というものはてんでしょうがないじゃないかと言われることのほうがこわいから、発表なさらないのでしょう。私は、これはできるだけ発表すべきだと思うのです。  それと、私はこの際もう一つ考えなければならぬのは、じゃそういうような配給上の不公正を直す方策があるのかないのかということです。ありますか。
  58. 大口駿一

    政府委員大口駿一君) ただいまの発表する、発表しないの問題は、あまりここで言いわけを申し上げてもいかがかと思いまするから、言いわけ申し上げませんが、実はいまのような調査は、食糧庁の調査にとどまらず、総理府のほうの調査であるとか、あるいは一般の会社等で手がけた調査とか、いろいろな結果が出ておりまするので、何も私どもの調査を押えてみたところでたいしたことではないという見方もあるいは成り立つかと思いまするが、やはり役所の調査となりますれば、公式の調査ということになりまするので、先ほど申し上げたような取り扱いをするのがいかがかと思っておるだけのことでございます。  なお、食糧庁の職員のことが出ましたので申し上げますと、昨年の秋に食糧庁の職員に匿名でアンケートをとりまして、同じような調査を実はいたしました。これが特に一般消費者と異なった結果が出ておるということではございません。したがって、私どもはひざ元の職員にもそういう調査をいたしておることは事実でございます。  なお、このような事態をどのように防ぐか、手段があるかというお尋ねでございまするが、すべての問題が解決をする名案という意味で申し上げるわけではございませんけれども、実は昭和四十二年度予算におきましても、大精米所を推進するという予算措置を実は講じております。この大精米所と申しまするのは、京浜地区、あるいは京阪神、北九州等のいわゆる大消費地において、数百馬力の大きな精米所をつくっていこうということでございます。こういうことを推進する効果は、実は二つあると思います。一つは、現在の小売り店の店頭で、きわめて小規模な旧式な精米機で精米をした上で消費者配給するという形は、あるいは場合によっては品質上のやや不明朗な操作を残す余地もあると思いまするし、大精米所で近代的な設備でやれば、むしろ均質のものが消費者に行き渡るという点でははるかに現在よりよいのじゃないかと思いまするし、また、この大精米所で、むしろ消費者の家庭に直接届けるような形で、小さな適当な大きさの包装の容器のものに直接入れて、それを配給するという形を将来伸ばしていってはいかがか。現にそういうことで伸びておる地方もございまするが、これを全国的な規模で伸ばしていくよすがだと思って予算措置を講じておる次第でございまするが、このことの効果のもう一つは、現在の米の卸売り、小売り販売業者の業態が他の産業と比べてきわめて近代化がおくれておるということから、やはり将来の合理化近代化をはかる一つのよすがにもなろうかと思って予算措置を講じておる次第でございまするが、このことばやはり、長い目で見て、現在の配給制度がやや乱れておるという御批判にいささかなりともこたえ得ると思うのであります。なお、このほか、小売り販売業者の登録の制度の問題でありまするとか、いろいろな研究課題を私どものほうとしては逐次実現に移すべく現在検討をいたしておりまするので、それらのいろいろな方策を総合した上で、できるだけこの問題について将来明るい方向に持ってまいりたい。また、これがためには、消費者に対するPR並びに米屋さんの協力ということも不可欠であると思いまするので、そういうようなこともあわせて私どもは今後努力してまいりたいと思っております。
  59. 矢山有作

    矢山有作君 農林大臣にお伺いしたいのですが、私は、現在の品目別の配給制度、これは、御承知のように、米の精白度、ぬか切れ、胚芽の残存度、あるいは粒ぞろい、被害粒、あるいは砕粒、異物の混入度、こういうようなもので分けているわけです。これが上米と並み米と徳用米となり、その米の食味それ自体、味といいますか、それ自体には関係のない問題なんです。だから、こういうような品目別の配給制度をやっておるということが問題の根源になっておるのじゃないか。かつてこういう制度をやらずに配給をやっておったことがあった。ですから、こういう品目別の配給制度自体が私は問題にさるべきじゃないかと思うのですが、先ほど長官が言われたように、いろいろな方法を講じてみたところで、なかなか私は配給の乱れを是正することはむずかしいと思うのです。その点でどうお考えになりますか。特にぼくがそれを考えるのは、こういうような品目別の配給制度をやっておると、最近特に食管会計の中で輸送費なんか非常にふえておる。これは、こういう配給制度をとるために、二重輸送をやるわけです。たとえば北海道から近畿のほうなら近畿のほう、近畿のほうから北海道のほうと、詳細のデータは食糧庁にあるでしょうが、そういうような二重輸送の問題が起こって、非常にこれは輸送費を高めておるわけです。それらの関連から考えましても、この品目別の配給制度というのはこの辺で再検討したほうがいいじゃないかと思うのですが、農林大臣どうですか。
  60. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) 食管制度の末端の大事な仕事は配給制度でございます。そこで、先ほど食糧庁長官が申し上げましたように、とにかく消費者が期待しておるものをそのまま入手できるという方向を考えるべきだ。これはほかの牛乳等についても同じようなことが言われるわけですが、そこでそういうことの御期待に沿うようにやるにはどうしたらいいかということで、先ほどちょっと大精米所の話もございましたけれども、そういうことについて、農林省、ことに食糧庁では鋭意検討をいたして、この配給制度一般消費者に納得のいくようなことに改まるように大いに力を入れようということにいたしておるわけでございます。
  61. 矢山有作

    矢山有作君 時間が来まして、主査のほうからもうやめろやめろと言われておるので、しかたがないこのくらいでやめますが、私は農林大臣食糧庁長官と同じようなことを言われたと思いますが、そういうことでこの配給の乱れというのはいままでの経過から見て私直らぬと思うのですよ。食味に関係ないのですからね、かれは。ですから、むしろ品目別の配給制度のあり方というものは、やはり基本的に検討し直したほうがいいと、このことは中間経費節減——特に食管会計上問題になる中間経費の節減上からも真剣に検討さるべき問題だと思いますので、この点は十分、まあお前の言うことだから知らぬというのでなしに、私はやっぱり考えておいてもらいたいというのですよ、実際に食管制度改善しようというなら。  それからあと、まだ私は消費者米価が引き上げられたときの問題等いろいろあるのですけれども、いまもう時間が来たからやめろということなんで、これでやめますが、あとは消費者米価の切りかえ時における問題点、さらに食管会計の赤字の問題に関連して問題になるのは、私は中間経費をどう考えていくかという問題だろうと思いますので、重要な問題についてはまたときをあらためてお伺いしたいと思います。それからなお、きょうは林野庁の長官に御出席を願っておるわけで、林野庁に対しては国有林の販売方法等についていろいろお伺いしたがったわけですが、これもまた農林委員会にでも譲りまして、私の質問はきょう主査に協力をいたしましてこれで終わります。
  62. 鈴木強

    主査鈴木強君) 大臣、ちょっと。いまの御意見ですから、何かございますか、それに対して。
  63. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) 私は、農林大臣に就任いたしまして、それまで消費者の一人として、家庭で米を扱っておったことについて少し家で聞いてみましたが、やっぱり食管配給ということについては、これは再検討することが必要ではないかというようなことを当時食糧庁長官とも話しておったわけであります。食糧庁におきましても、同じような趣旨でいろいろ検討いたしておるようでありますから、先ほど申しましたように、消費者の期待されるものをそのまま配給のできるような方法についてひとつ検討いたしてまいりたいと思います。
  64. 吉田忠三郎

    吉田忠三郎君 農林大臣せっかく御出席ですから、たくさんの質問が予定されておるわけでございますけれども、この分科会の限られた、制約された時間がございまして、特に私は二十分という主査のほうから時間を制約されておりまする関係から、ごく簡単に二つほどをお伺いしたいと思います。あとあと、農政に対する政府の基本的な姿勢の問題であるとか、あるいは農産物価格の問題は、国民生活にたいへん深い関係を持っていますから、こういう問題とか、あるいはもう半身不随になっています米価審議会関係の問題ですね、こういう問題、あるいは農産物自由化の問題等々は、追って機会を得まして私は農水委員会などで伺いたいと思いますから、きょうは会議に協力するために省略をいたします。  問題をしぼって第一番目に伺いたいのは、大臣の先ほど説明された中でも、最近のわが国の農業動向と、それから食糧需要動向について、かなり問題点を一、二、三と分類をいたしまして分析をしているわけです。たいへん率直に問題点を出しておりますることについて、私非常に勉強になるとこう思っておりますが、寒地農業については多少は触れておるようでありますが、具体的に寒地農業を営んでおる農家の諸君ですね、この人人に理解ができるようなことになっていませんから、冒頭申し上げたように、時間の関係がございますから、問題点だけ私が羅列をして申し上げますので、寒地農業の確立に対する政府の御所見を、時間がありませんから再質問するということはできませんから、わかりやすく答えていただきたいと思う。  その第一点は、畑作農業に対する資金制度の問題でございますね、これがないのですよ。ですから、これはやっぱり確立をしていただかなければならない問題が存在していると思う。これが一つです。  それから二つ目には、畑地帯における総合的な土地改良事業の実施ですね。いまやっていますけれども、まことにこれはまだまだ問題にならない程度よりやっていませんから、こうした問題ですね。  それから、本年度予算を見てまいりますと、国営の大規模な草地改良事業ですね。やるということになっていますが、多少従前から見ますとかなりのものが表面に出てきました。寒地農業振興樹立のためにはたいへんいいことでございますけれども、これはまだまだ少ないと私は思うのですね。で、これについて、将来の展望を含めて、政府の見解を私は求めておきたいというふうに思う。  それから、非常に大きな問題になりますのは、畑作農業についても、つまり畑作共済とまあ一般的に言われているわけでございますが、畑作共済制度の確立の問題ですね。これは政府はいま試験的に市町村に委託をしてやらしている向きがございますけれども、これでは問題になりません。解決にはならぬわけですから、これについてどう一体政府が取り組んでいるのか、あるいは将来またどう取り組むのか、この点を明らかにしていただきたい。  それから、北海道に限るわけでございますが、年々冷害を受けておるわけであります。この対策の一環として、冷害を防ぐための備林造成という問題があるわけですね。雪ですと、防雪林といいますけれどもね。ですから、こういう関係の事業というものを積極的にやはり実施をしていかなきゃならぬのじゃないかという気がするのですが、こうした関係についての政府の踏まえ方ですね。  それから六番目には、固定化負債をこれからどうするのかですね。負債整理の対策ですね。これはもう大臣御存じのように、たいへんな負債が固定化をしているわけです。この問題は、やはりひとつ対策として具体的なものを樹立をして解決をしなければ、せっかく大臣は今度提案理由の中で問題点は指摘をいたしておるようでありますが、これらを克服をして完全な日本農業の中における寒地農業というものは私は確立されないと思う。  この六点について御所見を伺っておきたいと思う。
  65. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) 寒冷地につきましては、きょう申し上げました中で、速記にとどめてという中に若干触れておるはずでありますが、北海道及び東北地区その他の寒冷地は、御承知のように、非常な寒冷地でも水稲耕種の研究をして、それである程度の収穫を得ている地方もありますが、一般論といたしまして、私どもはこの寒冷地に適する作物、ことに北海道を例にとりますというと、冷害に耐え得る水稲、それからして特別なものであるビート、そういうものを奨励いたすことによって年間の所得をコンスタントに獲得し得るようなものを研究し、それを増産することによって、寒冷地に対する農業所得を維持し、拡大していくことのできるようにつとめてまいる。一般的にはそのように申せると思うのでありますが、いま六つほどおあげになりました。そこで四十二年度予算で、とりあえず、われわれがこういう地帯に対して、どういう施策をやろうとしておるかということについて、政府委員のほうから御説明申し上げます。
  66. 檜垣徳太郎

    政府委員檜垣徳太郎君) 第一の、寒冷地における畑作金融の問題でございますが、御案内のように、現行制度では北海道等寒冷地畑作営農改善資金制度というものがあるわけでございまして、これで一定の営農改善目標に到達するためのセット融資をいたしておるわけであります。ただこういうことで対応し切れるかどうかという問題につきましては、農林省におきまして、南九州の畑作問題と合わせ、四十一、四十二年の二年間にわたりまして、畑作営農についての問題点の究明と畑作改善の方向についての調査検討をするということで所要の予算も計上し、目下調査続行中であります。その結果に基づきまして、畑作振興に対する方策並びにそれをささえるための金融対策についても検討を加えてまいりたいということを考えているわけでございます。  それから土地改良につきまして、特に寒冷地の土地改良事業の推進が不十分ではないかというお話でございますが、御指摘のとおり、北海道等寒冷地帯は、総じて言えば、気象条件が悪い上に、土壌にしましても特殊な土壌の分布が多いということでございまして、土地改良の必要性は非常に強い地域でございます。でございますので、全国的には御承知のような土地改良法に基づく土地改良十カ年長期計画を樹立いたしまして、それの早期完成をはかるということで、毎年度予算の計上等にも努力をしてまいっておるのであります。今後も地方におきます土地改良計画の樹立に即応いたしまして、必要な予算措置等講じてまいるつもりでございます。特に寒冷地につきましては、そういう現地における準備といいますか、体制の整っているところについて力を入れてまいるようにいたしてまいりたいというふうに思っておるわけでございます。  それから草地改良事業につきまして、御案内のとおり、草地改良事業が土地改良の事業として法定化されましたのが昭和四十年度以降のことでございまして、ある意味でまだ事業創設間もない際でございますから、国営草地改良事業につきましても順次準備は進みつつあるのでございますけれども、目下のところ、事業のほうはそれほど大きくはございません。この草地改良事業は、どうしても国営という大規模のものは北海道、東北のほうの地域に重点が置かれてまいることに相なると思いますが、現在はそういう意味では準備の展開中である。長期的な展望といたしましては、草食性の動物の今後の飼育見通し頭数というものを基礎にいたしまして、優良粗飼料の理想給与率というものを計算をいたしまして、所要の牧草地、それから既耕地における既耕作物の作付ということを考えて、ただいま申し上げました土地改良長期計画の中で、昭和五十年までに累積五十二万町歩の草地を造成するということで計画的に推進をはかっておるのでございます。また、これについては、昨年度も補助率の改定、あるいは補助対象の内容の充実等につとめてまいっておるのでありまして、今後も草地改良事業の推進については、農林省としては一そう努力をしてまいりたいというふうに思っておるわけでございます。  それから四番目の畑作共済につきましては、御質問の中にもございましたように、現段階におきましては、個々の畑作物の生産分布、あるいは被害の態様なり、そういうものが共済という保険設計をやるに足るだけのデータがないという段階でございまするために、四十二年度につきましても調査費を計上いたしまして、共済事業ができるかどうかというための資料の整備につとめてまいるということでございます。そういう結果を待ちませんと、共済制度という非常に複雑なといいますか、非常に精密な設計を要するものにつきましては実施は困難なわけでございますので、現在はその準備の段階にあるわけでございます。  五番目の、冷害防止のための防災林と申しますか、それがまた農業生産上非常に重要な役割りを果たすものであるという点につきましては、吉田先生の御指摘のとおりでございますが、現段階におきまして、農林省といたしましては、耕地防風林という名前をつけておりますが、近代化資金の融資対象として取り上げておるのでございまして、大きく言えば、一般的の造林が冷害防風林としての役割りを果たすこともございますが、耕地あるいは耕地の集団のための防災林につきましては、近代化資金の制度を適用することにいたしておるのでございます。  それから、六番目の北海道におきます固定化負債に対する対策でございますが、御質問にもございましたように、三年にわたる冷害のために北海道における農家の借り入れ負債が固定化の傾向にある、累増してかつ固定化の傾向にあるということも私ども承知いたしております。最近北海道が負債固定化の傾向について調査をいたしました結果を農林省に報告いたしてまいっておりまして、これに対する対策の協議を始めておるのでございますが、農林省としても調査結果についての検討を行ないますと同時に、道庁の調査になお若干当方から見れば不備な点もございますので、補足調査を依頼いたしまして、その結果も待ちつつ結論を出したいということでございますが、いずれにいたしましても、農林省としてもある程度の固定化が明白である農家の負債につきまして、これを長期的な長期返済の金融、融資に切りかえるというようなことを含め措置をいたしてまいりたいということでせっかく検討中でございます。
  67. 吉田忠三郎

    吉田忠三郎君 時間がありませんが、答えに対する意見がたくさんあるのですよ、ぼくは。たとえば共済制度の問題についても、これはいま始まって問題にしたわけではないのだ、ぼくは。五年かかっているのですよ。五年ですよ。ただいま準備中ということですが、時間がありませんからしようがない。これは言いませんが、松野農林大臣のときに、倉石農林大臣ね、この問題については昭和四十二年度を目途として実施する方向でやりますという答えを私は得てあるんですよ。ところが、いま聞いてみると、そうした冷害とか何かの時期が過ぎてしまうと、今度は準備をせねばならぬとか、共済の保険の性格のようなものに当てはめるためにはむずかしいとか、たいへん役人らしい、あんたは答え方をしておりまして、私は時間がないから黙っていますがね。これはもう一回時間を十分とりまして具体的にやりますが、大臣、これはやろうと思えば作目をきめてできるんですよ。それは畑作農業農産物全般にわたってやろうとすれば、あなたがいま言われたような問題が出る。ですけれどもね、作目をきめて、たとえば小豆であるとか、バレイショであるとか、あるいは大豆であるとか、いま農林大臣が冒頭言いました寒地農業の、つまり適地適作という関係から作目を申し上げたら、ビートの問題がありますね。たとえばビートだってそうじゃないか。政府みずからが寒地農業を確立していくという前提に立てば、適地適作で作目はビートがいいということをいま言ってるわけでしょう。ビートを奨励していることも間違いないわけです、農林省としてね。これが間違いだということをぼくは言ってないんです。言ってないが、畑作共済を制度化していくという場合に、やろうと思えば、いま申し上げた例によって、作目を選定して、漸次その方向からやって、そのあとはいま答えられたような長い期間ある程度かけてですよ。調査検討を加えていって、準備段階から実施をしていくというやり方はあると思うんですね。これは農林大臣、この点を答えてもらわなきゃなりませんよ。これは長年私はずっと一貫して言ってきた問題でね。たまたま時間がありませんというものだから、さらさらとおさらいの程度で答えられて、私はそうかというわけにはまいりません。
  68. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) 農業共済というのは、私は一般論としてはたいへんいいことだと思っております。ただ、先ほど政府委員からも申し上げましたように、いま吉田さんおっしゃったように、作目さえきめればそれでいいじゃないかというお話ですけれども、やはり保険としては、それぞれ保険の対象となり得るかどうか、それからまた、保険をするのにはたしてその目的が達せられるかというふうなことについては、たとえば漁業の——全然性格が違いますけれども、漁業共済なんかでも、長い間試験過程を経ました。今度やろうといたしておる果樹の保険でもそうであります。したがって、内容につきまして私はまだそれほどつまびらかにいたしておりませんけれども、原則論としては、農業共済というものはあとう限り、できるだけやるべきものであると思っておりますが、一ぺんよく研究いたしたいと思います。
  69. 吉田忠三郎

    吉田忠三郎君 大臣、十分研究するということですからね、時間ありませんから多く言いません。ですけれどもね、水稲だってですね、これは大臣承知のように、限られた作物でしょう。水稲のつまり共済制度というものはね、作目限られていますね。麦も入ってますね。ですから、今日ある共済制度というものが、それをもって完ぺきだというふうには政府も思っていないだろうし、われわれも思っていません。いまあるものでも作目が限られております、御案内のようにね。ですから、畑作の場合でも、政府が奨励をしておりまする寒地農業の確立のたてまえから、あるいは冷害を防ぐたてまえから奨励している作目があるわけですよ。作目がね。ですから、そういうものに限ってのみやろうと思えばもうできるわけですよ、これが。そこで私は、政府のほうは、これは私は確かに、去年の暮れの災害対策委員会で質疑をいたしましたように、——ここにいま速記録持ってきておりませんけれども、かなりこれは農林省としても進めているのですよ、市町村単位に委託はしておりますけれどもね。かなり調査を実施しているわけです。その結論がもう出る段階に来ているのですよ。ところが、なかなか大臣やろうとしない。ですから、せっかく検討するということですから、十分ひとつそこらあたりの前のいきさつから御研究なさいまして、前向きでこれとひとつ取り組んでいただきたいことを要望しておきます。  そして、こう言っている間にもう時間なくなりましたから、もう一つだけ聞いておきますが、最近日本の遠洋漁業に対する各国の風当たりが非常に強くなっているように私は感ずるのですよ。そのことは、五カ月もかかってやっとことしの四月の下旬に妥結した日米の漁業交渉を見ても明らかだと思うのですね。それは一体どんなところに問題が起きてくるかというと、大臣承知のように、専管水域の問題ですね。で、アメリカとの関係は一応曲がりなりにも妥結はしたわけでございますけれどもね。それ以外に、この専管水域の問題で紛争を起こしている国があると思うのですが、これはどことどこの国か。ひとつ、大臣でなくてもけっこうですが、お答えいただきたいと思うのです。
  70. 亀長友義

    説明員亀長友義君) 十二海里を領海あるいは専管水域という立場で宣言している国は相当ございますけれども、実際日本がその水域に出漁している国、すなわち、日本が実績あるいは国の権益として確保したいという国は非常に限られておりまして、韓国との間には、すでに御承知のように、日韓漁業条約で、李ラインの撤廃と同時に、相互に十二海里には入らないということになっているので、これは一応問題外でございます。そのほかには、一つはアメリカでありまして、アメリカのアリューシャン列島あるいは太平洋の島には、昔から日本が操業をいたしております。カナダには全然ございません。それから南米の四国につきましても、十二海里あるいはそれ以上の宣言をしておる国がございますけれども、これはほとんどないと言って差しつかえないと思います。それから、太平洋の島ではニュージーランドに若干ございます。それから豪州につきましても、ほとんどございませんので、一隻か、二隻であります。その他の国ではスペイン、あるいはモーリタニアというふうに、アフリカの南大西洋に面したところに日本のトロール漁船の実績が相当ございます。現在特に紛争が起きているわけではございませんが、日本が十二海里の中に入って操業しておる区域というのは以上のとおりでございます。
  71. 吉田忠三郎

    吉田忠三郎君 いまスペインとモーリタニアのお話が出ましたがね、ニュージーランドはそうした紛争の相手国になっていませんか。
  72. 亀長友義

    説明員亀長友義君) ニュージーランドは相当数の実績がございまして、ただいまお互いに平和的な交渉をするということで交渉中でございます。
  73. 吉田忠三郎

    吉田忠三郎君 そうしますと、平和的にというようなことばを使われましたが、その結果、やってみなきゃわからないけれどもね、せめてこの日米の漁業交渉で妥結したような内容で妥結される可能性があるのですか。
  74. 亀長友義

    説明員亀長友義君) 大ざっぱに申しますと、日米と大体同様の線であろうと思います。ただ、ニュージーランドの場合には、非常に実績、すなわち向こうが十二海里を宣言する前に日本がやっておった期間というのがきわめて短期であります。アメリカの場合には、戦前あるいは戦後、ずっとやっておる長期のものであります。そこら辺の長期の間やっており、片一方は短期の間やっておるという面が交渉の結果によっていろいろ出てくると思いますけれども、性質的にはやや似たようなものであろうとわれわれは考えております。
  75. 吉田忠三郎

    吉田忠三郎君 まあ、この問題はそこら辺でとめておきますが、国際的に見て、専管水域を設定している国は何カ国あるのですか。
  76. 亀長友義

    説明員亀長友義君) 外務省の調査によりますと、現在のところ領海を十二海里としているものが二十四カ国、そのほかに専管水域あるいは漁業水域という名目で、自分の領海よりもさらに十二海里の海域まで五言している、いわゆる専管水域としている国が十四カ国ということでございます。
  77. 吉田忠三郎

    吉田忠三郎君 そうしますと、合計合わせまして、専管水域設定に類似するものを含めて、三十八カ国ということになりますね、あなたのいまの報告では。この三十八カ国というのは、かなりの国だと思うのです。このことは、米国に限らず、国際的な趨的な趨勢としては、どこの国でも漁業の専管水域を設けて、他国の漁船を締め出していくという趨勢にあるのじゃないかと思うのですがね。わが国として、これはたいへんな問題だと思うのですよ。今日、わが国の水産業は、御承知のように、沿岸漁業の場合は、もう漁族が枯渇したという問題もあるし、あるいは沖合い漁業の魚場の領域等の問題がございまして、あまりふるっていませんね、御承知のように。ただ一つ、非常に依然として伸びておりまするものは、遠洋漁業だと思うのですよ。この遠洋漁業も、いま、あなたが答えられたような三十八カ国ですね、しかもアメリカが、先ほど言ったように、この問題にかなり固執したために、五カ月もかかったわけですね、日米の漁業交渉というものは。こういう趨勢からながめてみると、わが国の遠洋漁業についてのたいへん大きな壁があるような気がするのですよ。その場合、わが国は三海里を主張しているのですが、三海里を主張いたしておりますことのよしあしは、私触れませんけれども大臣、どうですか。これは、いま時間がありませんと催促されておりますから、これも機会を譲りまして詳しいことをやろうと思いますが、とにもかくにも、日米の漁業交渉でまとまったというものは、いわば双方のメンツを立てた、つまり政治的な解決よりその域を出ていないのですよ。したがって、専管水域をめぐる法律論というのは、たな上げしたものなんですね、日米の漁業交渉というものは。これは確かに、一面、政府側から見て、あの交渉妥結の内容は、わが国の漁獲の実績を認めたのであるから、成功であるという評価のしかたもあると思うのです。その面では私は決してとやかく言うものではないのですよ。ですけれども、いま申し上げたように、問題の専管水域というものをめぐっての法律論争、法律論というものが全くたな上げされてしまった。こういうような方式が、今後この専管水域交渉で生かされてくるということになれば——あれは二年ですね、あの交渉の妥結した期限は——やがて二年後に、必ずしも今度の日米漁業交渉が妥結をしたということによって、楽観を許さないようなものがひそんでいるのじゃないか、こう私は思うのです。これが一つです。  それからもう一つは、とりあえずニュージーランドあるいはスペイン、モーリタニア、アフリカのこうした関係に、依然としてやはり問題が残っておりますことと、さらには、いま答えられた三十八カ国にわたって専管水域を設定している事情等を考えてみるときに、わが国として、日米の取りきめてまいったものが、外交上先例になるのじゃないか。いま答えられて、平和的に何とかいま問題のあるところは解決しそうだ、日米の漁業交渉の結果の、協定の内容ぐらいのものは得られるのじゃないか、こういうお話がございましたけれども、アフリカの沿岸諸国というものは、大臣御案内のように、わが国とあまり縁のない国ですよ。私は、外交はしろうとでありますけれども、あまりこうした縁のない国との交渉、折衝というものは、やはり外交上の、アメリカと結んだ——ぼくに言わせれば、いいかげんな妥協が先例になるのじゃないかという危惧を持つので、この点は外務省の関係になるのかどうか別としても、生産を所管する農林大臣も無関心ではいられない問題だと私は思うから、大臣から答えていただきたいというふうに思うのです。  あとあとは、この西アフリカの漁場の問題であるとか、あるいは南氷洋の捕鯨の漁獲制限であるとか、あるいは既得権の保障の問題ですね、これは日米の関係が中心でありますけれども、こういう問題は、追って私は、主査に協力をする意味で、農林水産委員会であらためてまた伺いたいと思いますが、いま大別して二つ申し上げましたが、この点の見解をお聞かせを願いたいと思います。
  78. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) 日米の漁業協定で締結されましたのは、両国の善意と信頼のもとにああいうことが行なわれたと思いまするが、御承知のように、アメリカもロシアも、十二海里専管水域を主張いたしている国であります。その他、先ほど政府委員から申し上げましたように、ありますけれども、日米間の取りきめが必ずしも私はよい先例だとは思っておりませんが、私どもから見ますというと、日本の漁業の、やはりこれは日本だけではありませんけれども、従来よりもさらに国際的な、外交的な問題がかなり大きなウエートを占めてくるものだろうと見ております。したがって、そういう面におきまして、わが国の漁業の発展のために、どう対処すべきかということにつきましては、外務省ともよく協議をいたしながら、わが国の漁業の拡大のために、ひとつ十分に検討し、取り組んでやらなければいけない、このように思っております。
  79. 吉田忠三郎

    吉田忠三郎君 先ほど申し上げたように時間が経過していますから、まことに残念でございますが、一つだけ時間をかしていただきたいと思います。
  80. 鈴木強

    主査鈴木強君) 最後に一つだけ。
  81. 吉田忠三郎

    吉田忠三郎君 もう一問ということで制限されていますから、もう一つだけ伺っておきますが、大臣も、外務省とも十分連携をとりながら、わが国の漁業が衰退しないような努力をしていきたい、こういうことですから、それはそれとして、私は了としますけれども、まじめに考えて、いま私が言ったような心配があると思うのです。いまのわが国の遠洋漁業を見てまいります場合、どなたさんが見ても、じりじり押されてきて、受け身の立場になっているわけですね。一つには、韓国漁船の問題がありますね。ソビエトは御承知のとおりです。それからいま、先ほど触れました低開発国のアフリカ沿岸諸国も、そういう動向がこれは顕著になってきておりますね。ですから、そういう客観的な情勢考えてみても、じりじり押されてきているのですよ。ですから、ここでやはりわが国も専管水域というものは、よいか悪いかという問題は別にして、わが国が言っておる三海里ですね、この問題についても、やはり大臣ひとつ十分検計を加える段階にきてるんじゃないかというように私は思うのですよ、これは。  それともう一つは、攻められてばかりおってはいけませんから、逆に今度は相手に攻め込んでいくという、私は妙な考え方じゃなくて、未開発の資源を開発をしていくという立場で、深いところに生息をしている魚族の開発ですね、あるいは南米沖合いにおける、まだどの国も手をつけていない、利用していない魚田があるわけでございます。こうしたところに対して、積極的にやはりわが国は魚田を開発していくという、具体的なやはり施策をとらなければならぬじゃないか、こう思うのですが、この点はいかがでございますか。
  82. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) いまお話しのように、専管水域十二海里を主張している国はかなりございますけれども、わが国ではこれを認めておらないわけであります、御承知のとおり。そこで、わが国の漁業は、長年の間、先ほどお話しのように、たとえばアメリカの沿岸十二海里以内で操業しておる実績も持っておるわけでございまして、したがって、そういうようなことも考慮しなければなりませんし、それから北海道地方の安全操業の問題などを考えてみましても、いまにわかに十二海里説をわが国が取り入れるというふうなことについては、やはり慎重にいろいろな事案を前提に考えて、研究していかなければならない問題であろうと思っております。したがって、この問題は、研究課題でございますが、いま、にわかに私どもは、わが国も十二海里説をとるべきじゃないかということについては、なお慎重に対処しなければならないと思います。  それから吉田さんのお説で、たいへん専門的になってまいりまして、実は私にいろいろ漁業のことを注入する専門家たちの間で、深海漁業についていろいろな意見を持ってきてくださる方があります。私どもは、先ほどちょっと申しましたように、各国の持っておる背後の国家的力、こういうものもやはり将来は、私は陸上のいろいろな問題と同じように、海上においても漁業を進めてまいるにも、いろいろな影響がありますことを見のがすことはできないと思います。しかし、その間に処して、われわれは、未開発の漁場を開発する研究はもちろんしなければなりません。それからまた、低開発国とのなるべく有利な条件のもとに、わが国の漁業拡大のために努力をしなければなりません。そういうことについて、先ほど申し上げましたように、われわれは、ここで心を新たにして、日本の漁業権拡大のために大いに検討いたしてまいりたいと思っておるわけであります。
  83. 鈴木強

    主査鈴木強君) 午後一時三十分まで休憩いたします。    午後零時五十四分休憩      —————・—————    午後一時四十四分開会
  84. 鈴木強

    主査鈴木強君) ただいまから予算委員会第三分科会を再開いたします。  まず、分科担当委員異動について報告いたします。  本日、吉田忠三郎君が委員を辞任され、その補欠として成瀬幡治君が選任されました。     —————————————
  85. 鈴木強

    主査鈴木強君) 休憩前に引き続き質疑を行ないます。質疑のある方は、順次御発言願います。
  86. 林田悠紀夫

    林田悠紀夫君 農林関係予算農林大臣説明にも農業構造の問題につきまして、想定を上回る経済成長によって農家労働力流出が激しいけれども経営規模拡大に円滑に結びついていないということが書いてございます。それで農地管理事業団法案が二回にわたって審議未了になりましてから、農林省では構造政策の推進会議を設けておられまして、現在鋭意検討しておられるように承っておるのでございまするが、今後の構造政策の進め方につきまして、大臣にお伺いしたいと思います。
  87. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) いまお話のございましたように、農業基本法制定当時から考えてみますというと、やはり他産業の分野が予想外に急速に伸び、低生産性部門といわれておる農業、中小企業等が若干の立ちおくれを見ておることは御承知のとおりでありますが、そこでこの産業構造全体の推移の中で、私ども農業基本法趣旨を貫徹しながら、日本農業をさらに生産性を高め、そして生産拡大し、また、従業者の所得を増進していくというためには、やはり今日の状況に応じて再検討しなければならない面がたくさんある、こういう見地に立ちまして、ただいまお話のございましたように、農業政策全体の、これはいわゆる構造改善というようなことばに通じる構造政策ということではございませんで、わが国農政全体についての時代に即応した考え方を立案していくということで、いまお話のように、構造政策推進会議というものを持ったわけであります。で、これについてみんなが協力し、努力をいたしておるのでありますが、ただいまお話のございましたように、わが国の経営規模拡大して、そうして労働力が流出いたしてまいるのに備えて、省力並びに近代化をいたしてまいるためには、どうしてもやはりそれに支障になっておるような問題を是正していかなければならない、そういうことから農地管理事業団法というような考えを持ったのでありますが、御承知のように、二回にわたってこれは成立いたしませんでした。そこでやはり違う角度からそういう精神を取り入れて規模拡大近代化、省力、そういう総合的施策を行なって他産業に劣らないような農業所得を獲得いたしてまいる方途について再検討したい、こういうことで取り組んでおるわけであります。
  88. 林田悠紀夫

    林田悠紀夫君 現在農地法というものが、かえって農地の流動を阻害しておりまして、農家のほうではあくまでも農地にしがみつくという考え方を持っておるわけです。それで、農地法をこの際改正いたしまして、農地の所有権とか利用権の移動をもっと円滑にしたらどうかというようなことにつきまして御意見を承りたいと思います。
  89. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) 農地法は御承知のごとく、もうすでに制定されましてからかなりの年月を経ておるわけでありますが、いま申しました時代の進展に伴ってやはりお話のように、先祖代々の農地をその効率を上げないままにやはり持ち続けておられる面もございます。これはやはり土地に執着するということもさることながら、やはり黙って持っておれば地価が上がってまいって自然に財産がふえていくというふうな、そういうような傾向も見られるわけでございます。私どもといたしましては、どうしても規模を拡大いたしてまいるには、やはり流動性を持たせることが必要であると考えます。それから同時に、いまの農地法につきましていろいろ考えさせられるわけでありますが、そこでこの農地法というものについて私どもが期待いたしておるような規模拡大近代化等にマッチするように農地法についても再検討をする必要があるのではないか、こういうふうに見ておるわけであります。
  90. 林田悠紀夫

    林田悠紀夫君 その際、小作料統制につきましてこれもあまりに低いということで、小作にも出せない、したがって、かえって農地を使わずに持っておるというようなことが多いと思うのでございますが、その辺はいかがでしょう。
  91. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) したがって、小作料というようなこの統制会につきましても、やはり非常に時代離れいたした面もございますので、こういうこともあわせ検討し、それから請負制度というようなことも同時に取り入れて農地の効率化を考えていくべきではないか、このように考えております。
  92. 林田悠紀夫

    林田悠紀夫君 農民の離農促進のための、経営移譲の転職年金制度と申しますか、年金制度の調査費が四十二年度からつくようになっておりまするが、大体何年ぐらい調査をしてこれを実施させていくというような方針でございますか、お伺いします。
  93. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) 御指摘のように、昭和四十二年度の予算で農民年金制度の調査費を計上いたしてありますが、私ども農林省側が考えておりますいわゆる農民年金というのにはいろいろな効果を考えておるわけであります。まず第一に、私どもとして農林業的立場から考えてみますと、いまお話のように、やはり農地の流動性を高めるというような意味において、外国ではやはり同じ農民年金という名前の中で離農年金的な作用をいたしておる国がございます。そういうようなことは、やはり構造政策全体の中で考えるべきものである、こういうことで、一つのわれわれのねらいはそういうところにも着目いたしております。もう一つは、いわゆる恩給的な考え方で、長年の間農業を守っていただく後継者に老後の安心感をもって農業にいそしんでいただくために与える農民年金、こういうようないろいろな意味を含めた農民年金制を農林省としては考えておるわけでありますが、御承知のように、政府部内には、他の役所ではやはり年金を取り扱っておる所管省もございますので、そういう方面とも十分に意見を交換いたしまして、そうしてわが国の土壌に合ったような年金制度を設けてまいりたい、こう考えております。
  94. 林田悠紀夫

    林田悠紀夫君 現在農業構造改善事業はだいぶ進んできておりまして、第二次農業構造改善事業にも入っておるのですが、これはすべての市町村を対象にして、その市町村の中で構造改善をやりたいというところはすべて行なう、したがって、第三次も第四次もやっていくんだというような御方針でありますか。
  95. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) 御承知のように、ただいまの構造改善事業は一応十年間ということで、昭和四十三年が最後に申し込みの期限でありますが、今日になってみますというと、部分的にはやはりいろいろ批判はされる向きもありますけれども、四十二年度予算の編成にあたりましても全国各地からたいへんにこの構造改善を要望してくる、申し込みがふえておりまして、いまや多くの地方の農村の人々がこの構造改善事業に対する認識を非常に強めてまいっておられます。  そこで私どもといたしましては、一応四十三年が最終の期限といたされておりますけれども、これをもう少し広げていくことが必要ではないか、延長していくことが必要ではないかと思いますし、また、農業経済圏というもので、本年とあわせて十カ所指定をいたしまして、これはすでに過去二年ほどの経験はございますけれども、これがまだ成果を評価する段階にきておりませんけれども、やはり構造改善の事業と、この経済圏の構想とが道路、水路その他のもので接続されることによって、地域的には非常な革新が行なわれるのではないかと私ども想定いたしておるわけでありますが、それらの実験とも相まってやはり構造改善事業というものは、地方の要望もございますことでありますから、将来の懸案として考えてまいりたいと思っております。
  96. 林田悠紀夫

    林田悠紀夫君 農産物の自給率の問題でございますけれども、自給率がだんだん減ってきておる、カロリー計算では七〇%になっておるというような状況です。ところが、農産物需要生産の長期見通しを昨年十一月でしたか提出をされましたですが、その中で五十一年には耕地の利用率が向上してきて一二五%になるというようなことが出ております。それでこの裏作をこれからどういうふうにして多くしていくか、そういう施策につきましてどういうお考えを持っておられるかお伺いしたいと思います。
  97. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) 御承知のように、農作物全体としてはそれぞれまちまちでありますが、主食の米につきましては一応九二%くらいな自給率を持っておるわけでありますが、近来国民の食料に対する嗜好がだいぶ変化いたしてまいりまして、最近は野菜、果実、肉類、酪農、そういうものの利用度が非常に拡大されてきております。そこで同じ肉類でもたとえば鶏、豚等は十分充足されておりますけれども、肉牛については御承知のような状態にある、私どもといたしましては、そういう面に特段の力を入れて自給度を高めてまいりたい、こういう計画で、いわゆる選択的拡大の方向に進めておるわけでありますが、政府委員のほうからひとつ数字的なことをもう少し御説明申し上げたい。
  98. 林田悠紀夫

    林田悠紀夫君 それではちょっともう少し質問をして……。  裏作をすすめようとしますると、農家が裏作を放棄しているというのがいまの現状なんでございますから、請負耕作とか、あるいは協業とか、そういうことを進めていかなければならぬだろうと思うのです。それでそのためにはもっと農協を利用いたしまして、それが指導してやっていくとか、あるいは農協が請け負ってやっていくとか、何かそういう方策がなければ進まないであろうということが考えられるのですが、そういう農協の指導費なんかについて助成していくお考えはございませんですか。
  99. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) 私は、政府の労働政策を進めてまいりますために、農業団体というものの協力をもう少し強化していただくということは必要であるということを痛感いたしておるわけであります。林田さん御承知のように、いまの農業団体にもいろいろございますけれども、えてしてやはりああいう団体になりますというと、その団体の経常面に間違いのないようにということに主力をそそいで、販売、購買というようなところにとかく力を入れられ過ぎておるのではないか、むしろ私は政府と一体になって、そしてわれわれの施策農業団体に協力してもらう、そのためにはそれ相当のお手伝いを政府側からもして、そしてその力を十分に発揮してもらうことが必要ではないかと考えております。したがって、本年度の四十二年度予算にはございませんけれども、将来はそういう方向で農業団体の力を活用してまいりたいと、こう思っております。
  100. 林田悠紀夫

    林田悠紀夫君 農林大臣の御答弁でけっこうでございますので、ひとつぜひそういうようにお進めをお願いしたいと思います。  それからその場合に、現在農業改良普及員が専門技術員とか、あるいは末端の一般的な改良普及員というようにあるわけですが、末端の農業改良普及員を、むしろ農協の営農指導員にして、そして農協が中心になって営農指導をやっていくというようなことが、最近の農業の経営状況からいって必要なんじゃないかと思われるんですが、いかがでございますか。
  101. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) 林田さん御承知のように、普及員はたしか地方公務員でございます。したがって、いまお話のようなことが望ましいことだと思いますけれども、農協というものと身分的に若干違いますので、それがむずかしいのではないかと、そのように思っておりますが。
  102. 林田悠紀夫

    林田悠紀夫君 次に、地方市場の整備の問題についてお伺いしたいんですが、四十年、四十一年と地方市場の実態調査をやられまして、四十二年からその整備について体系的に決定していくんだというようなことを承っておるんですが、どういうようにお考えになっておるか。
  103. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) 政府委員からお答えいたします。
  104. 大和田啓気

    政府委員大和田啓気君) 地方市場の問題は、実は私ども最近いろんな形で調査をいたしましたが、全国野菜、水産物あるいはその双方を兼ねるものを含めまして約三千ほどございます。これはたまには地方公共団体がやっておるのもございますけれども、株式会社等の会社自体がまた地方市場を経営しているというものが大部分でございまして、中身を調べますと、中央市場にやや類似しているものから、全くそうでない、類似市場とも言えないものまで種々雑多でございます。したがいまして、私ども中央卸売市場が何といいましても生鮮食料品流通のかなめでございますけれども、地方市場の受け持つ部分も相当な量に達しておりますことから、地方市場の整備ということも、今後の生鮮食料品の対策として重要であると思いますけれども、いま直ちにこの雑多な、きわめて未整理のものをそのまま法律等の形で全国的に統制するといたしますか、あるいは造成することがきわめて困難でございますので、しばらくの間地方市場の実態が調査いたされましたから、それに基づきまして今後の運営について検討して、その上の成果に立って問題を処理してまいりたいというふうに考えております。地方市場がきわめて重要であるということは私どもよく承知いたしておりますけれども、何せ問題があまりに複雑でありますし、また、地方的に変化が多過ぎますので、いますぐはどうこう行政的には動きがたいような情勢でございます。
  105. 林田悠紀夫

    林田悠紀夫君 そこで中央卸売市場のほかに、今度生産者団体の生鮮食料品の集配センターがつくられるようになるという予算になっておると思うのですが、これは生産者団体が調整保管をすると、それからまた、その調整保管したものを中央卸売市場へ出していくのだ、あるいは大きな消費者へ直接販売するのだというようなことが目的になっておるようですが、中央卸売市場のほかにこの集配センターを設けていくということについての意味はどういうところにあるのか承りたい。
  106. 大和田啓気

    政府委員大和田啓気君) 私ども生鮮食料品流通対策あるいは流通改善合理化のかなめとして中央卸売市場がきわめて重要であることは心から信じて疑わないのでございますけれども生鮮食料品流通改善考えます場合に、中央卸売市場だけではどうやらカバーできない面が若干あるという感じを持っておるわけでございます。したがいまして、中央卸売市場としての役割りを決して否定するものでもあるいは批判するものではございませんけれども、今回は四十二年度の予算といたしまして、全販連に補助をして東京周辺に集配センターをつくって、そこへ荷を引いて一極のストップ・ポイント的な機能を果たしますと同時に、中央卸売市場にも出荷することがございますが、また、病院あるいはその他の大口消費者に直結して、いわば生産消費とをもう少し緊密にする方法がないだろうかということの実験的な試みでございます。したがいまして、これはあくまで実験でございますから、そうたくさんのところに置くというつもりはございませんので、四十二年度は東京に一カ所、まだ敷地等について確定はいたしておりませんけれども、大体全敗連では埼玉県の戸田町付近に相当な土地の面積を買ってそこで事業を始めるという予定をいたしておるわけでございます。
  107. 林田悠紀夫

    林田悠紀夫君 それで中央卸売市場を東京に大きなのをまた場所を選定して設けるのだというふうなことも考えられておったようですが、それは現在進行しておるのですか。
  108. 大和田啓気

    政府委員大和田啓気君) 二、三の市場について現在土地の買収を進めておって進行しております。それと同時に、東京都の人口集中等の将来を考えまして、大井埠頭その他相当大きな規模の市場の建設についても現在検討している最中でございます。
  109. 林田悠紀夫

    林田悠紀夫君 蚕糸の問題についてお伺いしたいのですが、まず蚕糸局長に最近の生糸の価格の動きにつきましてお伺いいたします。
  110. 石田朗

    政府委員(石田朗君) お答え申し上げます。生糸価格の最近の動きにつきまして御質問があったわけでございます。実は最近の生糸は、国内需要がきわめて強調でございまして、そのようなことのために昨年以来価格がかなり上昇を来たしてまいっております。一応これを申し上げますと、昭和四十年の歴年平均は五千百八十五円でございましたが、四十一年平均では六千二百六十一円と、こういうふうなことになっております。かつ最近におきましては端境期でもございますが、このような需要強調によりこれよりさらに上昇を来たしておるというのが実態でございます。
  111. 林田悠紀夫

    林田悠紀夫君 三十八年の六月に生糸の価格が暴騰をして消費者が困ったことがあるわけですね。そのときには六千六百三十一円に上がりまして、大手商社の中で買いあおりをやったというような事態があったわけです。最近の値段は七千五百円ぐらいになっておるということで、現在の取引所においてそういう過当投機が行なわれておるというようなことはありませんか。
  112. 石田朗

    政府委員(石田朗君) ただいまお話しございましたように、三十八年におきまする糸価の暴騰暴落は、一部仕手の介入がございまして、買い占め等の事態があった、こういうようなことでございます。最近の取引所の情勢からいたしますると、必ずしもそういうようなある特定の人間が買い占め等を行なっているというようなことはないようでございます。ただ、このような、全体として糸価が強調であり、かつそういった意味で投機が過当投機におちいり、あるいは過熱しそうなおそれがあるというようなときにおきましては、取引所に対します指導、監督等を特に注意して行なわなければなりませんので、昨年来、実は九次にわたりまして、取引所の協力を得まして、取引所において規制措置等を講じ、過当投機にわたって、そのために混乱を起こすようなことがないように指導を行なっておる次第でございます。
  113. 林田悠紀夫

    林田悠紀夫君 この前、二十二日から実施するというので、生糸の規制を強化されまして、これは大いに多とするわけですが、大体あの措置によって、今後生糸価格はこの程度で押えられていくというような見込みをお持ちでございましょうか。
  114. 石田朗

    政府委員(石田朗君) 価格の変動について将来を申し上げますことは、なかなかむずかしい面もございますけれども、ただいまお話しございましたように、五月二十日に新規売買玉の規制、あるいは臨時増し証拠金の増徴、あるいは両建て証拠金の増徴といったような規制措置を強化いたしまして、過当投機におちいることがないようにいたしておるわけでございます。一面においては、このような措置と、かつまた近く春繭が出てまいりますし、現在のところ、春繭の状態は、気象条件その他からいたしましても、相当、統計調査部等で予測いたしておりました七、八%の増産という線は、おおむね実現できるのではないかというふうにも考えますので、それらも含めまして、今後の糸価につきましてはおおむね穏健に推移する可能性が多いのではないかというふうに考えておるわけでございます。
  115. 林田悠紀夫

    林田悠紀夫君 その場合に、生糸の価格を安定していただくということは、機業地にとって死活問題になっておるわけです。ことに、機業地が零細な業者が多いわけですから、何としても価格安定をお願いしたいわけですが、京都の西陣と丹後の機業地というのは、大体九万俵を年間使用しておりまして、国内消費の三分の一をここで消費しておるわけです。特に、丹後の機業地のほうでは、二十八中が七、八割を占めておるというような状況でございます。糸価安定のために、現在二十一中だけが標準になっているというのでなくて、もう一つ二十八中を標準として使うということになったら、安定するんじゃないかということもいわれておるのですが、そういうことについて検討していただいておりましょうか。
  116. 石田朗

    政府委員(石田朗君) ただいまのお話は、現在、生糸取引所の供用品として二十一中がこれにあてられております。このことを言われたものと考えますが、現在の金糸の生産消費実態からいたしますと、全体の約七割が二十一中でございます。したがいまして、二十一中が標準物として上場されているわけでございます。これは、このような二十一中を基準物といたしまして、他の生糸を含めまして価格形成に寄与する、こういうことが考えられているわけでございます。ただいまお話のありましたように、二十八中をこの生糸取引所の供用品に加えたらどうかという種類の御意見は、一部ございました。その点については、私ども検討を加えているところでございます。  二十八中は、最近かなり量がふえてまいりましたけれども、なお、全体に対します比率は二割程度でございます。で、これを供用品に加えることを考えます場合に、取引所供用品は、これは取引高に対しまして供用し得る量ができるだけ多いほうが安定化するのではないかという種類の問題は、確かに基本的にあるわけでございますけれども、実は二十八中が注文生産が多いということ、それからもう一つは、基準物と二十八中との格差が、ときにより非常に大きく変動いたしますので、こういうような点で、これをあえて供用品といたします場合の問題点がございます。したがいまして、それらの点、まだ問題が煮詰められておりませんので、現在検討中でございますが、さような点に問題があって検討を進めているという点を御了承いただきたいと思います。
  117. 林田悠紀夫

    林田悠紀夫君 ひとつ十分検討をお願いいたします。  次に、日本蚕糸事業団が今度輸出業務をやられるということになっているわけですが、いま中共とか韓国から相当生糸を入れている。そういうような場合に、現在の市場が急迫している、放出する生糸を持っていない、ということが非常に困ったことなんですね。それで、輸入物をこの日本蚕糸事業団が買い入れておいて、それを必要なときに放出していくというようなことは考えられないのでございますか。
  118. 石田朗

    政府委員(石田朗君) お話しございました輸入物の取り扱いでございますが、現在、生糸の輸入は自由化しております。したがいまして、国内生糸がかなり高値に推移しております現在の過程におきましては、輸入が引き続き増加をいたしているわけでございます。その意味では、実は輸入がふえておりますことは、蚕糸業全体としてはこれは残念なことではございますけれども価格の面におきましては、若干とも国内糸価を冷やす役割り実態上はしているということも言えるわけでございます。さらにこれを事業団をして扱わしめるかどうかにつきましては、いろいろ検討いたしたわけでございますが、現在直ちに輸入物につきましてこれを取り扱い品目とするという点について、現在までのところ結論が出ておりません。これにつきましては、輸入事情の推移その他を十分検討いたしまして、今後その点について検討を進めてまいりたいというふうに思います。
  119. 林田悠紀夫

    林田悠紀夫君 いま生糸が足りなくて困っているわけですが、関税を引き下げるとか、あるいは撤廃するとか、そういうような考え方はないのですか。
  120. 石田朗

    政府委員(石田朗君) 生糸につきましては、現在一五%の関税がかけられております。これにつきましては、やはり基本的には日本の絹織物生産というものは、国産生糸の基礎の上に立って発展をしてまいったのでございます。今後ともこのような姿において発展をすべきものと考えるわけでございます。そのような国内繭及び生糸生産の側面を考え、かつまた、それをめぐる蚕糸業全体の情勢考えますと、このような関税につきまして、これを全面的にやめるというようなことは、これはできないのではないかというふうに考えてまります。これらにつきましては、さらにそれらの各業種間の調整等をはかるということにつきましては、今後とも検討をいたしたいと思います。
  121. 林田悠紀夫

    林田悠紀夫君 大いに繭をひとつ増産をしていただきまして、農業構造改善とか、あるいは開拓パイロット、振興山村、そういう事業でもっと桑園をふやしていただくように積極的な施策をお願いしたいと思います。
  122. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 特に長官、お忙しいようですし、ですから端的に伺いたいと思います。  愛知用水公団をどうするかという点。他にもこれは経済企画庁のほうにも伺わなければならない、農林省のほうにも伺わなければならないのですが、地元は、何といっても残しておいてくれよということで、その経過は私があまりくどく言わなくても、水資源公団があのときに、法律を制定するときにどうだったとか、その後制度的にどうなっておるか。あるいは整理するといいながら、環衛法の関係でいえば環衛公庫までつくろうということで自民党さんは選挙公約をされた。そんなことでいろいろなことがあると思いますが、要は、ああいう臨調答申が出たことによるとともに、愛知用水公団の職員の人たちは、とにかく四十三年には完了してしまうのだ、だから少なくとも四十二年の八月ごろですか、少なくとも予算編成ごろまでには何らかの結論というものを出さなくちゃならぬ、こういうところにきておるのですが、それなら、まあ臨調答申どおりいくのだよとこうおっしゃるなら、ぼくも幾らでも文句を言わなくちゃならぬ。しかし、長官も、それはもうやめですよとも言えぬだろうと思う。そこで一体これはどこへ持っていこうとするのか。検討中だ検討中だといってずっといっちまっても、それではならぬ。何としても、ことしの八月ごろまでに結論を出してもらわなければならない。そこで、どういうふうにしようとされておるのか。実地監査もされたこと等も新聞等を通して知っておるわけです。どうしようとしているのか。その点をひとつ伺いたいと思います。
  123. 松平勇雄

    国務大臣(松平勇雄君) ただいま行管では水資源の開発並びに利用に関する行政監察というのを本年度の初年度の中央監査として指令を出してやらしておりまして、大体二月ごろから準備をして、四月から本格的にかかっておるわけでございます。その監察の一つとして愛知用水公団並びに木曽川の総合開発の問題も含んでおります。同時に、御承知のとおり、百八の現存の特殊法人に対しましてただいま検討をいたしておりまして、来年度の予算の編成が始まる前すなわち八月までに、そういった監察の結果を出しまして、行政監理委員会及び行政改革本部にはかりまして処置をするということになっておりまして、お尋ねの愛知用水公団に関しましても、そういったものを含めましてただいま検討いたしておりまして、御指摘のとおり、本省からも審議官が参りまして調べてまいりました。現在の段階におきましては、中部管区でさらに突き進んで調べておるわけでございまして、現段階におきましてはいまどうするかというような結論はまだ出ておりませんが、しかし、少なくとも八月末までには結論を出したいという考え方で進んでおるわけでございます。
  124. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 長官、時間がもうございませんから、私一言で終わりたいと思いますが、いろんなことあると思います。あると思いますが、行管のことしの方針なりいろんなことわかるわけです。しかし、いま申しましたように環衛金融公庫をつくろうとしておるそういうときに、道路で申しますなら首都圏があり近畿圏があって、中部圏にはない、地元のことを言うとですよ。あるいは外航埠頭の問題では、東京もでき大阪もできるが、そういうものはどうだということになっている。そういうところで地元感情というもの、あるいは理屈でいえばいろいろなことがあるが、地元感清というものはどういうふうに行管では見ておられるのか。理屈は抜きにいたしまして、地元感情というものはどういうふうに見ておるか、このところをお答えいただきたい。
  125. 松平勇雄

    国務大臣(松平勇雄君) いま成瀬委員のお話のとおり、地元からいろいろ要望なりご意見が出ておりますが、したがいまして、行政管理庁といたしましては、臨調答申を尊重して、特殊法人の再編成のことを考えることになっておりまするが、しかし、地元の御要望もよく検討いたしまして、そして結論を出すということでございまして、よくその御要望なんか私のほうでもよくわかっておりますから、そういったものを勘案いたしまして、まあ結論を出したいというふうに考えております。
  126. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 これはね、長官、いろいろなことばのあやあると思います。そういうようなことはやめて、私も大体わかりましたですからけっこうでございます。  そこで農林大臣に伺いますが、——長官はけっこうです、あなた何か三時半か約束があるそうですから、またあとでいろいろ御質問いたします。  農林大臣に伺いますが、愛知用水のああいう施行方式は、一番問題は資金の問題が一つあるわけです。ですからぼくは愛知用水のあの方式というものは、地元は非常に喜ぶわけですね。いわゆる資金が先に公団のほうでいろいろとやってもらえることになりますから、そういう点が非常に私は高く評価されて、実は非常に地元としては喜んでおる点だと思うのです。そこで農林省としては、愛知用水の過去の業績なりああいうやり方なりというものは、非常に評価されて、私は農林省ならこれはもう残しておきたい、このほうがいいだろうという結論だと思っておりますが、どうでございますか。
  127. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) 愛知用水公団の事業の経過を見てみますというと、やはりきめこまかに仕事もやる、その後の維持管理もやっておるわけでありまして、したがって、地元ではやはりこのようなやり方を存続してもらいたいという要望が出ておるわけであります。
  128. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 あの大臣、それだけ、要望が出ておるというだけじゃなくて、農林省としては、愛知用水公団は残すべきだというふうに了解していいかどうか。そうじゃないのか。そういうふうなことはないのですか。農林省の態度というものは、違うのですか。
  129. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) 大体世の中のことは、理屈だけではうまくいきませんで、やっぱり政治でありますから、いろいろなことでやっぱり地元の者が要望するにはそれ相当の理由もあるし、われわれは愛知用水というものが今日やってまいりました業績はほめられてしかるべきものであると思っておりますので、こういう形で継続ができるならば望ましいことであると、このように思っております。
  130. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 大臣も御案内のとおり、このたびの中部圏の開発整備法の施行令がつい最近出ているのですね。あの中に、まず事業主体としての愛知用水公団及び水資源公団が行なうというような、そういう項目の中に愛知用水公団というものが入っておるのですね。これをお出しになったのは、特に何か次官レベルなら次官レベルの間で連絡があって、打ち合わせがあって出ておるものと了承しておるわけですが、これは施行令が出たことは、これは大臣何もおれは知らぬぞよ、こう言われるか。これを見ると、もう残しておくということが前提で大体話が進められておるように受け取れてもいいと思うのですが、これはどうなんですか。
  131. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) 政府委員から調べて申し上げます。
  132. 国宗正義

    政府委員国宗正義君) 水資源の開発につきましては、中部圏開発整備法におきましては、本年度におきまして、まず基本計画におきまして、土地その他の資源とともに水の資源の開発、利用に関することをあげるように規定いたしております。かつ、根幹となります事業の中にも、事業の区分といたしまして、同じく水資源の開発をあげております。その場合に予想せられる事業といたしましては、国、地方公共団体のほかに、事業主体といたしまして、愛知用水公団、水資源開発公団が予想される旨の政令の規定でございまして、ここに政令といたしまして規定いたしましたがゆえに木曽三川において愛知用水公団がやり、水資源公団がやり、あるいは国みずからやりということを積極的に規定するものではないわけでございます。
  133. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 もう一回言ってください。積極的に何ですか。
  134. 国宗正義

    政府委員国宗正義君) ここに政令を規定いたしましたがゆえに事業主体が具体的にだれになるというふうな規定ではなくて、いまやっております、あるいは法律上やると予想されておりまする事業主体全部をあげたものでございます。
  135. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 これは政令ですから、建設省から出ておるわけですか。
  136. 国宗正義

    政府委員国宗正義君) 政令でございますから、総理府から提案いたしまして、閣議決定されたものでございまして、この計画の所管は総理府ということに相なっておりますが、事業の実施にあたりましては、農林省、建設省その他の各省が当たることになっております。
  137. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 そうすると、閣議決定であるということなんですね。そうすると大臣なり、あるいは両大臣ですね、御相談にあずかっておるわけですね。これはどういう経過なんでしょうか。まあせっかくあるのだから、そのうちになくなるかもしれぬけれども、あるうちに入れておけということなのか、もう少し実を持たして、この愛知用水公団なり、あるいは水資源公団という名前があがっておるのか、その辺はどうなんですか。
  138. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) いまも御説明がありましたように、この政令は現状を確認するという趣旨でございます。
  139. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 そう言われれば、現状あるのだから書いておいたということだと思うのですけれども、もう少し積極的な意味はございませんですか。あくまでも現状確認なのか。もう少し、いやそうじゃなくて、どうせ臨調答申もあったりいろいろなこともあるのだ、そこで愛知用水公団の問題等も議論をされなかったのか。何にもなくてまあ政令のことだからばんばんと簡単にどこかの事務レベルで打ち合わせされたら、そこですっといってしまったというかっこうになっておるのですか。これは農林大臣というよりも、国務大臣として承っておるわけです。そこら辺のところあまり何も積極的な発言等もなくしてすっといってしまったように御記憶なんですか。
  140. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) いま事務局から申し上げましたように、その主体をどこにするかということをあらためて宣言している政令ではございませんで、現状の確認であります。御承知のように、愛知用水では木曽川水系の水利事業をやることになっておりますから、現状を確認するという意味ではそれを肯定していると私どもは理解しております。
  141. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 私も衆議院のほうで加藤君からいろいろ質問があり、大臣が御答弁になっておる、そういう趣旨等を、地元の要望等を尊重してやっていかなければならぬじゃないか、それが政治じゃないかというような、いま御発言になったような趣旨承知しておりまして、大体農林大臣の態度というものは了承しておりますから、念を押したりいろいろなことをするなんという必要はさらさら実はないものと思っておりますが、しかし、そうは言うけれども、実際問題として愛知用水、豊川用水というふうに八百五十名もあったものが六百名に減ってしまっている。またどうなるのかというそういう不安が公団に働いておる人たちにあると思うのです。そして、愛知用水の業績は非常に高く評価すると言っていたけれども、仕事ができたから、はいさよならだ、いやそんなことはない、どこかに持っていく、それは間違いないよという、働いている人の身になってみるとたいへんな不安な問題だと思います。それからもう一つは、私の見解によれば、地元がひとつどうなっておるかということがあなたのおっしゃるように非常に大きな問題のウエートを一つ持っておる。それからもう一つは、水資源のああいう方式というものを私はいいことだと思います。しかし、愛知用水のようなああいう開発方式というものも非常にいいものだというふうに考えております。  そこで経企長官にお伺いいたしますが、とにかく中部圏といえばたいへんなことですが、これからどうなっていくかということですが、まず水の問題がひとつ一番大事な問題になってくる。それから道路の問題をどうするかということですが、促進法に基づいて木曽三川は指定が行なわれておるわけです。ところが、あなたのほうから基本計画というものが出てこない。どうして基本計画が出てこないのか。中部圏のほうの基本計画、そういうものが上がってこないからやらないといういろいろな事情があると思うのですけれども、あるいはそうじゃなくて、事業主体をどこにするかとかということがきまらないからどうにもならぬというようないろいろなことが言われておりますが、基本計画というものが、なぜ開発の基本計画というものが出てこないのか、その辺の事情を承りたいと思います。
  142. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 何か特段のほかの理由があって基本計画の決定をおくらしておるようではない様子でございます。各県間の水の配分の問題であるとか漁業との関係であるとかそういうことがございまして、なお、検討しておる様子でございまして、特別の理由でこれを延ばしておるということはない様子でございます。
  143. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 そうすると、それはいつごろ、基本計画の素案というものはたしかできていると思うのです。ですから発表の機会に来ていると思う。そうすると、事業実施主体を明確にしなければならぬということになる。そういうことになると、行管の立場というもの、そういうものと合わせながら適当な時期を選んでおられるのか。そういうものとは無関係にひとつ発表されようとしておるのか。いつごろなんですか。
  144. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 特に事業主体について不確定要素があるので基本計画を延ばしておるというのではございませんが、漁業等との調整の問題もございますから、そういう問題の調整が終わりましたから大体基本計画を具体化する。目下建設省に実際上お願いをしておるわけでございますが、できるならば昭和四十三年度の予算の施行に間に合うような時点でこの基本計画をきめたい、こういうふうに準備をしておるようでございます。
  145. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 それはあなたがおっしゃることはことしの八月ごろには出せる、こういうことですか、予算編成と合わせて……。
  146. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) そういう水あるいは漁業関係で、なるべく早く各県地元との調整をつけまして、仰せのように四十三年度の予算編成はそのころになりますので、そのころまでにはきめたいという考えで建設省にお願いをいたしておるような次第でございます。
  147. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 宮澤長官、実際は建設省がどんな計画を持って予算をつけておったか、あるいは通産省が発電関係でどんなものをやっておったか、あるいは農林省がどうだということは私が指摘しなくても十分御承知のはずです。それでどうもそれはあなたは関係ない、そうおっしゃっても、やはり何か漁業補償だけの問題じゃないようなのです、実際は。ですから、私もそうおっしゃるならそれをすなおに受け取るのがいいことだから、そういうことにしますが、それで長官に私も特にここでは要望等を申し上げたいのですが、地元はやはり用水公団を残してほしいということを非常に要望しておるわけです。それは単にあそこの仕事が業績が非常によかったということもありますけれども、資金の先取りというのが非常に魅力なんですね。早くやるということ、それから一貫の施工ですから、一貫造成ですから非常に魅力なのですよ。ですから中部圏の一つの大きな目的というのはこの水をどうするかということと、道路をどうするかということになってくるわけです。ですからそういうことになるなら、基本計画も大事ですが、実施をどうするかということも非常に大事なんです。そういうことになるなら、やはり政治は、農林大臣がいま言われるように、地元の感情的なものを非常に尊重していくということが政治というものじゃないか、やはり民主政治というものはそういうものじゃないだろうか。しかし、野方図に地元の言うことを何でも聞いていくという、そういうことを私は言っているのじゃなくて、それには良識と申しましょうか、良識のある地元の陳情と申しましょうか、意向というものを十分尊重したっていいじゃないかということを申し上げておるわけですが、長官の態度も大体そういう態度と受け取ってよろしゅうございますか。
  148. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 政府としては、臨時行政制度調査会の答申を原則としては尊重するという態度は幾たびか表明をいたしておるわけでありますが、他方で、先刻から成瀬委員の御指摘のように、地元が当然持つであろういろいろな希望というものもございます。また、地元との協力関係というものがこういう場合に特に必要であろうということも常識的にはよく理解できるところでございます。そこで、先ほど行政管理庁の長官から答弁もございましたように、ただいませっかく特別の行政監察をやっておられます。おそらくその所見においては、ただいま成瀬委員の御指摘の地元の要望、あるいは地元との協調態勢といったようなことも含めての上で監察の所見が出てくることと思いますので、政府全体といたしましては、それらを参考にしながら、なるべくならば昭和四十三年度の予算編成時期までに、この問題についての終局的な決定をいたすべきものであろう、こういうふうに考えております。その点につきまして、私としては別段かくあるべし、あるいはかくあるべからずという予断はただいまのところ持っておりません。
  149. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 農林大臣、愛知用水公団のことについて、少しぐらい、何かほかの立法関係の用意はしておいでになりましょうか。
  150. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) 愛知用水公団に関係して立法を必要とする面がございます。そこで、そういうことについても、先ほど来、お話のありましたように、行監の最初にお出しになりました勧告の次に、さらに最近また実情調査に行っておられますので、それの報告がただいまお話のように八月ごろには出される、こういうことでございますので、それを見ました上で対処してまいりたいと、こう思っておるわけでございます。
  151. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 そうしますと、農林当局としては、あるものに対して予断をしつつ一つ準備はされておるということはお認めになるのですね。愛知用水公団に関する法律改正については準備をしておいでになる、簡単にはそういってよろしいのでございますね。
  152. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) そのとおりでございます。
  153. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 中部圏関係のことについて。水の問題については、基本計画が経審を中心として大体八月ごろ出てくる。道路の問題も、これは早くきめていただかないと非常に問題になってまいりますが、そのときに特に問題になるのは東海北陸自動車縦貫道路という名前まであげていろいろとやってまいりましたのですが、これはその後どんなふうになっておるのか、何か御存じになっておったらお聞かせ願いたいと思います。
  154. 国宗正義

    政府委員国宗正義君) 中部圏開発整備法に基づきます本本開発整備計画におきましては、水の需要供給、広域にわたる計画を決定し、書くように相なっておりますと同時に、道路につきましても、交通体系の重要なものとして基本計画に書くように相なっております。いまお話の東海北陸自動車道につきましては、北陸と東海を結びつける重要な幹線自動車道といたしまして、基本計画が策定せられますときには必ずその根幹となって記載されることと私は予想いたしております。なお、基本計画につきましては、地元にございまするところの地方協議会の調査審議を経まして、九県の知事が協議に基づきまして原案を作成いたしまして、おおむね本年の十二月を目標といたしまして内閣に提出することに相なっております。東海北陸自動車道につきましては、調査は建設省が所掌いたしておりますが、私の承知するところを申し上げまするならば、昭和三十九年から調査をいたしまして、特に四十一年度につきましては相当調査を詳しく進めておったところでございまして、昭和四十二年度につきましても引き続き調益を継続する予定になっております。それの目標といたしましては、できるだけ早く基本計画を策定することを目標にいたしておるわけでございます。なお、基本計画整備計画、さらに事業着工ということにつきましては、一両年ぐらいまだ確定ではございません。
  155. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 そのときに道路五カ年計画というようなものと、そうした基本計画に出てきた道路の問題、たとえばいま申しました東海北陸自動車道との関連ですが、そればどういうふうになりましょうか。
  156. 国宗正義

    政府委員国宗正義君) 東海北陸自動車道につきましては、すでに調査を実施しておるところでございますから、もとよりその調査費及びその中業を前提としたものは道路五カ年計画の中に含まれておるものと私ども解釈いたします。
  157. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 そうすると、六兆六千億ですか、の中に大体そういうものが入ってくれば、当然入るのだというふうに了解していいわけですね。
  158. 国宗正義

    政府委員国宗正義君) 私ども公の立場から、基本計画が、いまも申し上げますように確定いたしておらない状況でございます。したがいまして、建設計画、事業計画についていま私のほうからだけ申し上げるのは適当ではございませんが、いま申しましたように、事業費、調査費を含めて五カ年計画の中に入っておるという前提で作業いたしております。
  159. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 大体私はこれでまあ不満足ながらいろんな点が大体わかってまいりました、これで終わりますが、最後に、長官に物価対策の面から一言だけ伺っておきたいと思いますが、諸外国なんかで主産地契約というのをやっております。中身のことは御承知だと思いますが、長官、これは農林がおきめになりますが、これは農林のみの面じゃなくて、物価対策の面からこういうようなものを取り上げられるお考えというようなものはございませんでしょうか。
  160. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 野菜を中心といたしました主産地形成の施策につきましては、実は昭和三十八年ごろであったと思いますが、私ども消費者物価安定の見地から、私どもとしても農林省にお願いをいたしまして、お取り上げをいただいたわけであります。そして今日までその規模またそれに要します予算措置等も漸次拡大をしてまいりまして、主要消費地における蔬菜類の供給の安定化には非常に役立っておる施策だと考えております。したがって、産地の数並びにそれに採用されます蔬菜等の種類についても漸次拡大をしていっていただくことが消費者物価の見地から非常に大切なことである、今日もこのように考えております。
  161. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 主産地形成ではなくて、契約ですね、一歩進めて……、その点をお考えになっておるかどうかということです。
  162. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) その点はむろん考え方といたしまして、そういう蔬菜類がいわゆる食糧管理の対象になるというようなことまで考えることがはたして適当であるかどうか、まあそういうことが技術的にそもそも可能であるかどうかという問題もございましょうけれども、ものの考え方として適当であるかどうかということになりますと、私としてはある程度生産者のみずから助けるといいますか、自助の意味をも含めていまのような制度がその基本の上で広げられることが望ましい。いわゆる価格維持といったような直持国が支持価格を約束するというようなことまで進まないことが望ましいのではないか、これは消費者物価だけの狭い見地から申し上げるのではございませんで、全体の私どもが市場経済を基礎とするとの考え方から申しまして、私としてはその辺に限界があるのではないかという気持ちを持っております。
  163. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 まああなたのおっしゃる自由経済の中で一つの主産地契約ということになれば、ある程度の物価というものが先にきめられるということも私はわかる、だからこそ物価対策としての意味もあるのじゃないか、片方で言えばそれは統制じゃないか、あるいは一つのタマネギならタマネギの値段をきめることじゃないか、しかし、物価の変動に伴ってそれはある程度また修正もできる、しかし、たとえば東京都はどこどことタマネギを何月には何万トン買うということをやれば、農民のほうで言えば契約されたんだからそれに基づいて計画輸送ということができてくる。だから私はミスというものが省かれてくるし、いろいろな点でいい点が非常にあるのじゃないか、あなたのおっしゃる弊害というものもあるわけです。もっといえば思想の問題も一つある。それは当然の話ですが、どちらかいわゆる消費者もよければ供給者もいいし、農民もよければ消費者もいいということで何か思い切った抜本的なここらあたりの対策というものが、たとえば野菜もそうであって、あるいは肉でやってもいい。そういうことに対して地方自治体が倉庫とか冷蔵庫が必要になってくるということになれば、そういうような援助というものもやって、少なくとも地方の市長——市が多いのですから市長なら市長というものが中心になってのそういう主産地契約というようなものを進めていくのも一つの対策ではないか。あなたのおっしゃるように、基本的な問題として問題があるのは前に進まぬほうがいいと、そういう含みじゃなしに、それについてはいろいろと議論がしてみたいのですが、そうおっしゃるのなら、そういうイデオロギーの問題も抜きにして、思想問題を抜きにして、両方がいいということなら、やったらいいのじゃないかと思うのです。
  164. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) それはただいまの米を中心といたしました米の管理制度というもの、これはもう成瀬委員に申し上げるまでもない、饒舌になるかもしれないと思いますけれども、これは本来消費者保護のために出発をいたしたと考えておりますけれども、現在の段階では同時にこの面が、かなり保護のウエートは生産者のほうにかかっておるのが実情であると思います。私はそのことを、いまの姿を決して悪いとは思っておりませんので、この制度を維持することに賛成でございますけれども、他面で、それならそれが消費者の利益に当初の目的どおり現在第一義的に奉仕しておるかといえば、そうではなくて、ねらっているところは現在おのずから変化してきたように思います。したがいまして、経済政策の問題としてそのような同じ制度を蔬菜等に広げました場合に、それがいつまで消費者の第一義的の利益に奉仕することになるか。おそらく生産者の目的に沿うことは間違いございませんから、即消費者のということに言えそうに思いますけれども、必ずしもただいまの米の管理機構を見ておりますと、それが即というふうには言いにくい点もあるように考えます。もちろん特定の生産者と特定の私企業としての需要家が契約栽培をやるというようなことはしばしばございますが、これは相手が公共団体であり、あるいは国であるということになりますと、その価格支持はやはり納税者の負担において行なうということになると思います。そういたしますと、納税者の負担においてそこまで政策を進めることがいいであろうかどうであろうかということについては、経済政策の問題としてはやはり何がしか問題があるのではないだろうか。私としては、にわかにそこまで踏み切れないという気持ちがいたしておるわけでございます。     —————————————
  165. 鈴木強

    主査鈴木強君) この際、分科担当委員異動について御報告いたします。ただいま小山邦太郎君が委員を辞任され、その補欠として任田新治君が選任されました。     —————————————
  166. 任田新治

    任田新治君 十八日に農林水産委員会で農業の後継者の問題につきましていろいろ御意見をちょうだいしましたが、これに関連しまして主として山村の農道あるいは林道についてさらにお伺いしたいと思います。後継者の問題につきましては、先日のお話でいろいろ対策が講ぜられておることはよくわかっておりますが、特に生活改善関係であるとか、また住宅の融資の問題であるとかいうようなことがあげられておったわけであります。私は山村について特に考えられることは、その山村の中の個々の農家生活改善、あるいは住宅の問題ということもさることながら、どうも山村自体の振興のためには、何といっても道路の開発とか改良、この面の仕事が非常に大事じゃないかというふうに思うわけであります。いまこの四十二年度の予算を見ますと、山村振興のための農免道路が約四億、また同じく林業関係のガソリンがわりの予算が三億というようなものが計上されておりますし、また建設省の町村費で山村振興のための分として十九億があがっておるわけですが、こういうような内容であります。したがって、これらのことで政府自体が、この山村振興——もちろん法律もございますので、その法律に基づいて強力に進めようという態勢はよくわかるのでありますけれども、さらに明年度のことを考えてみた場合、私は実はガソリン税の身がわり農道あるいは林道というものの関係を見ますと、どうもいよいよことしが——昭和四十二年度が、ガソリン税の身がわりというものからいきますと、その身がわりの一ぱいのところまで行ったという感じがするわけであります。したがって、農道におきましても九十七億五千万円というようなことになっておりますが、このガソリン税に見合う農免道路というようなもの、こういうものを越えてですね、四十三年度までさらに大きくしていかなきゃならぬというような気がするわけであります。いまの方式でいって、一定のワクの中で、すなわちガソリン税の身がわりというものを限度にして考えた場合には、これより以上の、いわゆる町村三分の一、国三分の二の負担による、この制度による農道というものの進歩がないというか、大きな拡大というものが期待されないわけでありまして、こういう点について、担当の局長でもよろしいですが、どういうふうにお考えになっておるか、お伺いしたいと思います。
  167. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) たいへん大事な問題でありまして、山村の振興をはかりますためには、いまお話しのように、山村振興法の趣旨にのっとりまして、従来からもその立地条件等に応じていろいろの事業をやってまいっておるわけでありますが、御指摘の山村における農道及び林道の開発につきまして、ガソリン税身がわりの農免道路、林道、そういうことについて政府が鋭意努力いたしておることはお認めくだすったとおりでありますが、さらに私どもは、いま山村の実態から見まして、そういう面について、お話のように、限られたものを目当てにいたしておったのではやはり立ちおくれがよけい加わるんではないかということを、任田さんと同じように心配いたしております。これにつきましては、やはり他のほうの農業、たとえば水稲、果樹その他のほうにおいては、御承知のように、大体手当ての目算もついておる。われわれはやはり、立ちおくれのないように、山村についての発展を期待いたしてまいるには、どうしてもまず道路が先行しなきゃいけない、そういうことにつきまして、私どもも鋭意、来年度予算にはそういう方面に力を入れてまいりたいと思っておるわけであります。
  168. 任田新治

    任田新治君 この道路の問題は、平地の農村の場合も、また山村の場合も含めてのことにもなりましょうが、どうも農地流動化とか、また農村そのものの振興ということを見てみた場合に、西欧諸国におきましてもいろいろな苦心をしておるわけでありますが、ごく最近の状況を見ますと、とにかく農道は農道としてあっても、特に道路の——農道の舗装ですね、舗装というものに非常に力を入れておる。舗装ができれば、すなわち市街地との距離が短縮されるというようなことであり、それが直接生活改善に結びつくわけでありまして、こういうような政策が西欧諸国の農村にとられてまいりましてから、非常に農村が振興されていったというようなことが特に目立って私ども聞いておるわけでありますが、いま大臣のお答えをいただきましたので、ぜひとも明年度は、農免道路というようなワクを越えて、特にまた舗装というものに重点を置いてぜひひとつお願いしたいと思います。  それから次は、災害復旧の問題であります。これは必ずしも農林省だけの問題ではございませんけれども、いま農林省の災害復旧の進度を、昭和四十二年度の予算で目標を拝見しますと、三十九年災は一〇〇%、四十年災は八八%、四十一年災は七一%と、こういうような数字が出ておるわけであります。私考えてみますと、十五年ほど前に、災害復旧の一つの各省共通してのルールでありますが、緊急を要するものが初年度三〇%、次年度五〇%、三年目が二〇%、それから緊急を要しないものというのはないでしょうけれども、その他というようなものが二・二・三・三の比率でいくというようなことでやっておりました。そういう緊急のものが大体八割ある、その他のものが二割あるというような勘定をしてみて、その当時、当年災については二八%、二年目のものにつきましては七二%、三年目のものは九四%、四年目で初めて全部完成するのだというようなことに一つのルールが何となくあったと思います。その時分のルールといまの災害復旧進度とを比べてみますと、まずまずほとんど同じような進度になっておるわけであります。十五年もたった今日、しかも経済成長の非常に高い今日におきまして、あの当時のルールがいまもなお守られておるような感じがするわけであります。一方いま、きょう突然飛び出してきたものでありますのでこまかいデータは持っておりませんけれども、国の公共事業の中に占める災害復旧の費用というものは、昭和二十五、六年あるいは七年ごろと、昭和四十二年の今日——十五年たった今日と比べてみますと、明らかに災害復旧の事業の率というものはずいぶん低下しているのじゃないか、減っておるのじゃないかと思います。そういう点からいきまして、この際ひとつ農林省におかれましても、これは農村の振興にも通ずることでもありますが、ひとつ災害復旧におきまして、この四年間で全部完成するというようなことではなく、大部分のものはその災害発生年とその翌年くらいで完成する、特別の事情のものは三年目で完成するというようなところまでいかないものかと、私はこう思いますが、御見解をいただきたい。あわせて、ちょうど大蔵省の嶋崎主計官もおられますので、大蔵省の御意見も聴取したいと思います。
  169. 和田正明

    政府委員(和田正明君) 災害復旧をなるべく早く完成をさせるべきではないかという御意見、まことにごもっともだと思いますが、非常にわずかでございますが、四十一年度の予算編成と四十二年度の予算編成の場合の編成方針から考えますと、二年目あるいは三年目につきまして、ほんのわずかでございますが、全体としての復旧進度は四十一年度に比べますれば少しずつ高めておるわけでございますが、今後のことにつきましても、いまお話しの緊急を要するものにつきましては、重点的に予算配分をいたしまして、早期に完了するように努力をしてまいりたいと思います。
  170. 嶋崎均

    説明員(嶋崎均君) 災害復旧関係の復旧進捗率の推移でございますけれども、最近における災害の態様にもよりまして、従来の基準から考えて、結果として出たところの総合的な進捗率と内容から見た進捗率とは必ずしも同じではないと思います。最近におきましては、これは実は私自身の所管でありませんので詳細な数字は持ち合わせておりませんけれども、四十一年災におきましては、二年目の進捗率を上げるとともに、債務負担行為等において操作をしまして、少しでも円滑に災害復旧の進捗が行なわれるように処置しておると聞いておるわけであります。  なお、御質問の趣旨につきましては、よく内部的にも検討し、今後そういう方向に沿うて努力できるかどうか吟味してみたいと思っております。
  171. 任田新治

    任田新治君 それでは次、国有林野の中で肉用牛の生産育成をはかる、こういう新しいアイデアが出てきて、本年度から実施されるようになっておるわけでありますが、この内容はどういうことでございますか。私若干気にかかることがありますので、一応その運営の方針といいますか、そういうものについてお伺いしておきたいと思います。
  172. 若林正武

    政府委員(若林正武君) 最近におきまする肉用牛に対しまする需要増大ということにかんがみまして、国有林野におきましてその草資源の活用をはかり、肉用牛の生産育成を行なうための実験を本年度から行ないたいというふうに考えておるのでございます。この実験は、森林の施業と肉用牛飼養との調整、森林内における肉用牛飼養の技術的、経済的問題の解明、国有林野における肉用牛飼養と地元経済との関係の調整等を目的といたしまして、国有林野内で適地を選定いたしまして、四カ年計画をもちまして実験を行なうものでございます。で、ただいま予定をいたしておりまする個所は、岩手県の盛岡営林署管内、福島県の郡山営林署管内、岡山県の新見営林署管内、鹿児島県の加治木営林署管内を予定をいたしておるのでございます。この四カ所の実験牧場に要しまする経費は、四カ年間で約二億七千万というものを一応予定をいたしておりますが、このうち四十二年度分といたしましては約一億百万円を計上いたしておるのでございます。  なお、この実験実施の細部事項というものにつきましては、目下畜産局から出向してきております技術者を中心といたしまして、現在現地調査を実施中でございます。この調査の完了を待ちまして、具体的な計画を策定をして実験を始めたい、かように考えております。
  173. 任田新治

    任田新治君 概要はわかりましたのですが、これからの実験によっての結果が出ないとわからないということでありましょうけれども、この実験をやる以上は、一体今後の方向としてはどうだということもあろうかと思いますが、たとえて申しますと、極端な場合は、国がそれだけの牧場を国有の林野の上に持って、そして経常をしようというようなことでありますのか、それともそうじゃなくて、とにかくいわゆるその国有林野の里におる畜産農業に対して国有林野を貸し付けるというような方法で、放牧の用に供するというようなことも考えられるわけです。これらのことについて、何か方向づけがありましょうか、これを一つ
  174. 若林正武

    政府委員(若林正武君) 私ども考えておりますのは、この実験結果に基づきましてこういう方式がいいんだというふうなことに相なりまするのならば、国有林地内はもちろんでございますが、一般の民有林等におきましてもこういう方式による肉用牛の育成というふうなことをやっていったらいかがなものかというふうに考えておる次第でございます。
  175. 任田新治

    任田新治君 私がお聞きしておるのは、いわゆる貸し付け方式でいくのか、あるいは国自体が畜産の経営自体をやるような方向にいくような気持ちがあるのか、その点をお聞きしておるわけです。
  176. 若林正武

    政府委員(若林正武君) この実験につきましては、国みずから実験をいたすわけであります。一般の民間畜産関係者、農民等に対しましての貸し付けというのは、これは別途に必要に応じましてそれぞれ活用をはかっておるのでございます。この実験とは直接関係がないのでございます。
  177. 小平芳平

    ○小平芳平君 初めに、農林省のその資料にもありまする「家畜衛生の強化」というところのニューカッスル病について、「予防注射につき助成を行ない、法定予防措置に先立つ組織的な自衛防疫の推進を図る。」とお述べになっておりますが、この病気についての御説明をお願いいたします。
  178. 岡田覚夫

    政府委員(岡田覚夫君) ニューカッスル病について簡単に御説明申し上げます。御承知のように、ニューカッスル病というのは鶏の病気でございまして、これにかかりますと、この病気はビールス性の伝染病でございまして、全身にビールスが蔓延いたしまして、下痢をいたしますとか、奇形を発するとかいうふうな状態になりまして、産卵の上に非常に大きな影響を持つわけでありますが、アメリカ型とアジア型とございます。アメリカ型につきましては、比較的病勢の進行が緩慢でございまして、死亡率が少ないのでございますが、アジア型につきましては、非常に急性でございまして、死亡率も非常に高いというふうな特徴を持っておるわけでございます。昭和二十六年でございましたか、戦後日本で初めて埼玉県におきまして発生を見たのでございますが、その後二十九年に関西地方を中心にしました流行がございまして、それ以後非常に減少を来たしておったわけでございますが、四十一年になりまして  〔主査退席、副主査着席〕 急激な発生を見たわけでございます。四十二年も引き続きまして爆発的な発生を見ておるわけでございます。従来のものはアメリカ型でございましたが、昨年四十一年からのニューカッスルはアジア型というふうなもので、形が変わって出てまいっておるわけでございます。
  179. 小平芳平

    ○小平芳平君 それで、爆発的な発生状況につきまして、四十一年はどのくらい、それから四十二年はどのくらいということがおわかりになりますか。
  180. 岡田覚夫

    政府委員(岡田覚夫君) 被害の状況でございますが、四十一年におきましては約百一万羽。被害農家の戸数は一千二百七十戸でございました。四十二年におきましては、五月十八日までの現在、発生羽数は百十九万羽でございまして、発生の戸数は千四百三十五戸となっております。
  181. 小平芳平

    ○小平芳平君 それで、病気が発生した場合に、これが結局百万羽の発生の中で死んだのが何羽ということがおわかりになりますか。
  182. 岡田覚夫

    政府委員(岡田覚夫君) この病気にかかりまして、発生の報告がございますと、直ちに殺処分をいたすことにいたしておるわけでございます。
  183. 小平芳平

    ○小平芳平君 何羽という資料ください、殺したの。
  184. 岡田覚夫

    政府委員(岡田覚夫君) 病気の発生がございますと、一応家畜保健衛生所に届け出があることになっております。届け出がありましたものについては、直ちに殺処分に処するということにいたしておるわけでございます。
  185. 小平芳平

    ○小平芳平君 ですから、四十一年では百万羽でしたか、四十二年は百十九万羽全部を殺処分にしたわけですか。
  186. 岡田覚夫

    政府委員(岡田覚夫君) そうです。
  187. 小平芳平

    ○小平芳平君 そういうようなおそろしい病気であるということをお聞きしているわけですが、そこでもって、昭和二十六年にすでにもう発生をしていると、それからしばらくは下火であったというわけですが、四十一年、四十二年、そうしたもう百万羽という大きなものが殺処分にされなければならないという、これはもう養鶏をなさっている農家にとっても、あるいはまた消費者立場に立っても、非常に重大な問題だと思いますので、以下若干質問をしていきたいわけであります。  まず予防措置についてですね、防疫体制はどういう防疫体制になっているか、したがって、病気の発生する前に、ここに予算説明に書いてあるような予防措置をどのように講じていかれるか、そういう点についてはいかがですか。
  188. 岡田覚夫

    政府委員(岡田覚夫君) ニューカッスル病に対する防疫措置といたしましては、まず予防措置と蔓延防止の処置と二つあるわけでございます。予防措置につきましては、各県に家畜衛生保健所というのが置かれておるわけでございますが、家畜衛生保健所の職員を中心にいたしまして、発生のおそれのある地域に対しまして予防注射を実施いたしておるわけでございます。そのような処置によりまして極力発生の防止をはかっておるわけでございますが、ニューカッスルが発生をいたしましたというふうな場合におきましては、これが蔓延の防止の措置をとるということにいたしておるわけであります。  蔓延防止の措置といたしましては、ニューカッスル病の発生があるという通告を受けますと、直ちにニューカッスルの病気にかかっております鶏を殺処分を命じましてこれを殺すわけでございますが、局時にその鶏舎等を消毒をいたします。それからなお、蔓延のおそれのある地域の鶏につきましては、蔓延防止のための注射を実施することにいたしておると同時に、蔓延防止のために必要があります場合には、地域を限定をいたしまして移動禁止措置を、移動の制限措置をとることにいたしておるわけでございます。  まあこれによりましてニューカッスル病の発生予防並びに蔓延の防止の措置を講じておるわけでございますけれども、最近御承知のように鶏の飼育羽数が非常に膨大になってまいっておるわけでございます。この措置のみをもってしては必ずしも十分の目的を達しがたいという点もございますので、何といたしましても飼育者が自己の飼育いたします家畜の経済的価値というふうな点に十分思いをいたしまして、自力で防衛をするというふうな態勢をとることが必要であるというふうに考えておるわけでございます。そういう意味で、自力防衛態勢ということにつきまして指導いたしまして、特に四十一年度からは家畜衛生技術総合指導対策というものを実施いたしまして、自衛的なワクチンの接種ということの指導をいたしまして、漸次増加してまいっているわけでございますが、四十二年度におきましては、特にこの自衛防疫態勢を助長いたしますために、新たに生産者団体の自衛的なワクチン接種に対しまして助成をいたすことにいたしております。  なお、ワクチンの製造につきましては、これは需要と供給とのバランスをうまくとるようにという、つまり必要な数量が十分に供給されるようにということで、ワクチンの製造者に対しまして計画生産の実施を指導いたしますとともに、緊急用の備蓄の指導を行なっておるわけでございます。なお、ワクチンの数量が足りない場合には、必要に応じまして外国製のワクチンの輸入措置をも講じておる次第でございます。
  189. 小平芳平

    ○小平芳平君 その防疫員でありますが、この新聞では、神奈川県でも六十人、千葉県でも四十三人という状態で、神奈川県では保健所の整理統合をして十三カ所を十一カ所にしたにすぎないと、こういう状況では問題にならないというふうにも書いてありますが、農林省としてはこうした家畜防疫員は現在の人員でよろしいというようなお考えでいるか、それともさらにこれを拡充していくというようなお考えでいらっしゃいますか、この点について。
  190. 岡田覚夫

    政府委員(岡田覚夫君) 鶏の飼育羽数の増加というものは、先生御承知のように、きわめて著しいものがあるわけであります。そのほか乳牛、豚等につきましても、毎年増加をいたしておるわけでございます。畜産物の需要増大に対処いたしまして生産増大するためには、さらに家畜の頭数をふやしていかなければならないという状態にあるわけであります。そこで、それに対します衛生的な指導をいたしておりますのは家畜衛生所を中心といたしました技術者でございますが、これは頭数がふえますともちろん人数が必要になるわけでございますが、しかしいくらふやしましても頭数の増加にはなかなかこれは及びません。したがって、できるだけ最小の人員で最大の効果をあげるようなことをする必要があるというふうに考えておるわけでございます。従来保健衛生所は五百数カ所あったわけでございますけれども、非常に小さい保健所が分散をいたしておりますと、技術者の指導という面から必ずしも合理的ではございません。できるだけ合理的に、機動的にできるようにする。しかも、技術が非常に高度に進歩してまいっておりますので、専門的な指導をする必要がある、こういうような点から、家畜保健衛生所を集中合理化をいたしまして、専門的な技術にも対応できるし、また機動的にも対応できるというふうな形にするのが適当ではないかというふうなことで、家畜保健衛生所の整備計画を立てまして、現在実行いたしておるわけでございます。この整備計画ができ上がりますれば、これは非常な機動力を発揮して、現実の問題に対応できるというふうに考えておるわけでございます。
  191. 小平芳平

    ○小平芳平君 非常に抽象的に御説明してくださったわけですが、人員がどの程度——家畜が非常にふえているのはよくわかりますけれども、そこてもって現にこうしたおそろしい伝染病も爆発的な流行をしているという、こうした現在の立場に立って、このような県で四十人とか六十人というような人員で、いま整備計画によって、いわば現在の人員で十分やっていかれるという考えなのか。それとも、もう少し具体的に、現在の人員なら人員で、それをどう機動的に、あるいは組織的に対処していくというようなお考えはありますか。
  192. 岡田覚夫

    政府委員(岡田覚夫君) 現在の態勢を強化をいたしまして、具体的に現実に対応してまいりたいというふうに考えておるわけでございます。
  193. 小平芳平

    ○小平芳平君 したがって、人員についてはいかがですか。
  194. 岡田覚夫

    政府委員(岡田覚夫君) いま申し上げましたように、人員を集中いたしまして機動力を発揮するという形になれば、相当な対応力があるというふうに考えておりますが、まずそのような合理化をいたしまして現実に対処するというふうな措置をとることが前提であるというふうに考えております。
  195. 小平芳平

    ○小平芳平君 とにかく防疫態勢について、局長さんはこれでだいじょうぶだと言われますが、非常に防疫態勢自体も心細い状態じゃないかという見方もあるわけなんですが、この点は局長さんの言い方でよろしいでしょうか、安心して。
  196. 岡田覚夫

    政府委員(岡田覚夫君) もちろん、人員が多ければ多いほど効果があがるということも間違いはないと思いますけれども、しかし、現存は家畜保健衛生所が分散をいたしておりまして、必ずしも機動的に十分な能力を発揮するという態勢までいってないと思うわけです。したがいまして、できるだけそういうふうな態勢をつくり上げまして、フルに活動するというふうな状態にいたしまして対処するということがまず第一じゃないかというふうに考えておるわけでございます。
  197. 小平芳平

    ○小平芳平君 それでフルに機動的に活動する、それはもう当然必要なことだと思いますので、要は防疫態勢に手抜かりがないように、その点をひとつ私からに申し上げたいわけなんです。  次に、生ワクチンの使用をめぐって、生ワクを使う使わぬで業者と農林省が対立して、それで非常に被害が拡大されたようにも聞いておりますが、この点はいかがですか。
  198. 岡田覚夫

    政府委員(岡田覚夫君) お話のような点は、私はないと考えております。若干経過を申し上げますと、ニューカッスルにつきましては、御承知のように、死毒ワクチンと生ワクチンと両者があるわけでございます。死毒ワクチンにつきましては、非常にまあ効果が確実であるという点がございますが、一羽一羽ごとに注射をしなければならぬ、こういうことで、労力がかかるという点と、それから価格が比較的高いという点に難点がある。生ワクチンにつきましては、価格がかなり安いという点と、それから水に溶かしてやることができると、あるいは噴霧をして鼻から吸収させるというふうな措置ができる、点眼でやるというふうな措置ができるということで、労力的に見ますと、死毒ワクチンよりはるかに労力が少なくて済むのではないかというふうな問題があるわけです。ところが、一方で生ワクチンにつきましては、余病を併発するという問題もあります。たとえばCRDというような病気がございますが、これは普通の場合にはそれほど大きな力を発揮しないわけですけれども、たまたま生ワクチンを接種をいたしました場合におきましては、CRDが非常な力を発揮して顕在化しまして非常に強い力を発揮してくるということのために、かえって被害が大きくなるという問題もございます。したがいまして、一方ではまあ経済的であり、労力も比較的少なくて済むというわけでございますけれども、他病併発の問題がございます。そういうふうな点から、この両者につきましては、いろいろまあ問題はあるわけでございます。農林省といたしましては、昭和三十四年以来生ワクチンの研究を試験場において続けてまいったわけでございます。その結果、本年二月に一応研究室におきましては、使用が可能であると——特定の型の生ワクチンにつきまして使用が可能であるというふうな結論に達したわけでございます。したがいまして、その結論に達しましたので、これを現実の野外において実験をするというふうな措置をいたすことにいたしたわけでございます。一方、昨年ニューカッスルが発生いたしまして、民間におきまして生ワクチンの使用につきましての要望なり陳情というものがかなりあったわけでございますが、ことしに入りましてまあニューカッスルの発生と同時に特にその要求が強くなったと、しかし、生ワクチンの使用につきましては、実験室的には可能であるということが証明されておるわけでございますけれども、実際の使用につきましては、現在アメリカ等で使用いたしておりますけれども、非常に細心の注意をいたしまして使用しなければ、かえって被害が出るというふうな実情にもあるわけでございます。したがいまして、野外において、日本の場合におきましては、アメリカ等と飼養形態が非常に変わっておるわけでありますから、したがいまして、日本の場合におきましては、どのような使用をしたらいいのか、使用の基準につきまして明確な方向を明らかにしなければ、これを使用させるということはかえって問題を起こすのではないかというふうに考えておりまして、現在実験をしておるわけでございますが、あわして民間におきましてもこの実験に協力するというものにつきましては、一定の制限を設けまして、これに協力をしていただくということにいたしておりまして、現在六県二十一カ所におきまして民間におきましても実験をいたしておる次第でございます。近くその結果が出ると思いますので、実験の結果が出ました場合におきましては、使用基準等を明らかにいたしまして、現実のニューカッスルの発生の際にこれが使用できるようにいたしたいというふうに考えておるわけでございます。
  199. 小平芳平

    ○小平芳平君 要するに、この死毒ワクチンのほうはすでにもう広範囲にわたって行なわれている、生ワクチンについてはいま野外でテストが始まったところだというのが、いまの御説明だと思います。ところで、言にことしに入ってから半年もたたないうちにもう百万羽というような大きな被害を受けている。こういう状態にありますときに、先ほどの防疫の態勢といい、また生ワクチンが是か非かについても、これはもう、それは昭和二十八年ごろの段階ではこういう大量発生ということはあまり考えられなかったことかもしれませんけれども、それにしてもいかにも手おくれのような感じがしませんですか。よほどここでもって新しい防疫態勢なり研究態勢なり手が打たれないことには、これはまた非常に重大な問題、事態がさらに重大化していくおそれがあるのではないかということを心配するわけでありますが、いかがでございますか。
  200. 岡田覚夫

    政府委員(岡田覚夫君) 先生御承知のように、死毒ワクチンにつきましては、これを完全に使用いたしますればニューカッスルの病気にまずかかるということはないというふうに言われておるわけです。現実には、なかなか注射をしないという問題があるわけであります。そこで、今回等のニューカッスルの発生を見ましても、注射をしていないところをねらって流行している、伝染しているというような点があるわけであります。それが、非常に畜産物の流通が激しくなってまいった関係から伝染をしていくというふうな経路をとっているように考えられる。何といたしましてもその注射を、みずからの家畜に対しましてはみずからその防衛をするために注射をするということをまず認識をするように指導をしなければならないと思うわけであります。そういう点で、現在一億数千万羽も現存する鶏に、さらにこれが増大するということになっておるわけでありますから、これに対しましてはやはり自衛態勢をしくということをまず最大の前提にしなければいかぬというふうに思われるわけでございます。そういう意味で、その自衛防疫態勢としまして、みずからそのワクチンの注射をするということを徹底的に指導いたす、こういう考えでおるわけでございまして、今回四十二年度から自衛防疫態勢のために助成金を出したいと考えているのもまさにそれであるわけでございます。
  201. 小平芳平

    ○小平芳平君 ですから、この自衛防疫態勢にしましても、また助成にしましても、手おくれにならないように、実はさあいまからやろうということ自体がいかにも手おくれみたいな、百万羽もだめになってからさああわててやろうというような感じを受けるわけですよ。ですから、それに臨む農林省として、とにかく家畜を飼うにはまず自分で病気の予防をしなければならないぞということをそうした農家に向かって呼びかける、またそれをきびしく実行させるということも一つありますけれども、やはりそこのところは、農林省として、研究などは一歩先んじて研究をし、進めるべきことは一歩先んじて進めていく、こういうことがより必要じゃないかという点についていかがですか。
  202. 岡田覚夫

    政府委員(岡田覚夫君) 先生のお話のとおりでございまして、現在試験場においてもさらに新しいワクチンの開発ということで努力をいたしておるわけであります。先ほど申し上げましたように、生ワクチンにしましても、死毒ワクチンにしましても、いろいろ長短があるわけでございます。問題は、ひなのときに注射をすれば最後まで効力を持つというふうなワクチンが開発できれば、それが一番理想的だと思われるわけでございます。そこで、そういうふうな新しいワクチンの開発ということにつきまして、試験場におきましても研究をいたしておるわけでございます。そういう点で、私たちのほうもできるだけ、このニューカッスル病に対しましては、今後こういうものが起きないような対策をとっていきたいというふうに考えておるわけでございます。
  203. 小平芳平

    ○小平芳平君 それで、その結果、これも今後の見通しになるわけですが、卵が値上がりするんじゃないかと、これだけばたばた鶏が死んでしまえば、そのことによって消費者が今度直接それを卵の値上がりという形で被害を受けるんじゃないかというようなおそれについてはいかがでございましょうか。
  204. 岡田覚夫

    政府委員(岡田覚夫君) そういうことに関しましては、決して心配はないというふうに私は考えておるわけでございますが、多少中に立ち入って申し上げますと、先ほど申し上げましたように、五月十八日現在で百十九万羽の発生を見ておるわけでございますが、その中で採卵鶏が九十五万羽で八〇%、ブロイラーが二十四万羽で約二〇%になっておるわけでございます。採卵鶏につきましては、現在飼養羽数が九千三百万羽でございますから、その大体一%程度でございます。それからブロイラーにつきましても、これは二十四万羽でございますから、これも大体一%足らずということになるわけでございます。したがって、数字から見ますと、さして大きな数字ではないわけでございます。その結果鶏卵ないし食鶏の価格がどういうふうに変わってきておるかと申しますと、大体ニューカッスルの発生いたしました昨年の十一月から見まして、対前年の価格の比を見ますと、大体九〇%から八〇%程度に推移をいたしております。ブロイラーにつきましても九〇%程度の推移をいたしておりますので、このニューカッスルの発生によりまして鶏卵の価格が上がっておるとか、あるいはブロイラーの価格が上がっておるというような事実は全くないわけでございます。
  205. 小平芳平

    ○小平芳平君 それから次には、このニューカッスル病が人体にも感染をすることはなかろうか。いままでは人体に影響はないと言われていたが、厚生省や東京都衛生局の関係者の中には、ニューカッスル・ビールスによるものではないかと見る人もいて調査を始めた、高熱や結膜炎を起こすというような報道がありますが、この点についてはいかがですか。
  206. 岡田覚夫

    政府委員(岡田覚夫君) このニューカッスル病が人体にどのような影響を与えるかという問題につきましては、これは厚生省の所管でございますので、私のほうから断定的なお答えはいたしかねるわけでございますけれども、現在まで聞いておりますところでは、ニューカッスル病の人体に対する影響はないものであるというふうに了解をいたしておるわけでございます。
  207. 小平芳平

    ○小平芳平君 ですから、いままではないと言われていたけれども、高熱や結膜炎がこのニューカッスルのビールスによるものではないかという疑いをもって調査を始めたという、こういうような事実は、これは直接農林省がやったとはなっておりませんけれども、やはり農林省当局としても、そう関係なしにいらっしゃるのか、あるいは少なくともそういう点については気を配っていらっしゃるのか、全然御存じないか。
  208. 岡田覚夫

    政府委員(岡田覚夫君) この人体に及ぼす影響につきましては、厚生省の所管でございますので、その意見というものにわれわれとしては従わざるを得ないというふうになるわけでございまして、先ほど申し上げましたように、人体に対する影響はないというふうにわれわれとしましては了解をいたしておりますので、あるいはどのような影響があるかということについては厚生省のほうで研究されているかもわかりませんけれども、現在の段階におきましては、われわれとしては人体に対する影響はないというふうなことで了解をいたしておるわけでございます。
  209. 小平芳平

    ○小平芳平君 ちょっと大臣が席はずされておりますので、次官に最後にお尋ねいたしたいことは、いま申し上げたように、農林省のおやりになっていることはいかにも後手後手で、もう少し先手先手にいかれないものかということを非常に歯がゆくも思うわけですが、実際こういうような爆発的な発生をしたということが報告されている、そういう段階へ来て、さあ急いでどうしようというよりも、もう少し、十数年前からのことならば、もっと先手をとって予防措置なり、徹底的な研究なり、そういう点にもっとかかっていかなくてはならなかったんじゃないか。また、現在はもうこういうような半年でも百万羽というような現状で、いま局長さんのお答えになった程度の対策が、より一そうの力を入れた対策をもっていかれるおつもりか。
  210. 久保勘一

    政府委員(久保勘一君) 先ほど来、御質問に対しまして、局長よりも再三にわたりましてお答えをいたしておりますように、何を申しましても、第一は、やはり養鶏農家自身のこういう病害に対する認識といいますか、技術といいますか、対策というか、そういうものがまず徹底いたしますることが先決であろうと存ずるわけでありまして、従来もそういう点について指導いたしておるつもりでありますが、今後さらにそういう自衛措置に対しての指導を強化する必要を感ずるわけであります。さらに防疫態勢につきましても、御説明を申し上げましたように、県にございまする家畜保健所の広域的な態勢を整えつつありまする段階でございまして、今後さらにこの保健所に従事いたしておりまする獣医師等の、これらの病害に対する技術、知識と申しますか、そういうものについても十分ひとつ研修、啓蒙いたしてまいりまして、今後さらにこういうものに対する防疫態勢を強化する必要を痛感するわけでございます。一段の努力をいたさなきゃならぬと考えておるわけでございます。
  211. 小平芳平

    ○小平芳平君 特に防疫態勢と研究、これは養鶏をしていらっしゃる方にあれもこれも研究しろということ自体は無理な話であって、これはひとつ農林省として大いに力を入れてやっていただかなくちゃならないと思います。  次に私が御質問いたしたいことは、農薬の問題についてですが、   〔副主査退席、主査着席〕 この点についてはもう非常にいろいろ論議もされてきたことでありますので、私から特に新しい問題について詳しくという考えではありませんが、農民の四二%は農薬中毒にかかっているとか、十回の散布に一回の割合で中毒をして、慢性中毒のおそれがある、こういうことが実態報告がされているわけであります。こういう点について、農家が個々に注意しろ注意しろ、あれも気をつけろこれも気をつけろという以上に、農林省として研究をしていく、指導をしていくという面がなくちゃならないと思うのですが、その農林省として、現在の農薬のこうした中毒の問題、これについての研究なり、お考えなり、まずお聞かせいただきたいと思います。
  212. 森本修

    政府委員(森本修君) 農薬問題についてのお尋ねでございますが、御案内のように、農薬によります中毒は二色ございまして、一つは、いわゆる急性中毒といいますか、急性の毒性による被害、それから一つはいわゆる慢性の毒性による被害ということでございます。急性のいわゆる中毒は、最近の数年の傾向を見てまいりますと、農作業中におきますところの事故はやや件数としては減少してきておるのであります。ただ、なお絶対的な数量といいますか、件数におきましては、われわれとしても十分注意をしなければならぬというふうな段階であろうと思います。それで、御案内のように、私どもとしましては、できるだけ農薬の取り扱いについて間違いを起こさないようにということで、いろいろな手段方法を通じまして周知徹底をはかっておるつもりでございます。たとえば、農薬の登録をいたします際に、そういった危害を加えるおそれのある農薬については十分表示をするように義務づけております。あるいはまた、毎年一定の月を限りまして、特に集中的に、県あるいは末端の段階におきますそういった農薬の取り扱い方について慎重を期する使い方、あるいは保管の方法について十分注意を促しておるということでございます。それから第二番目の慢性の毒性につきましては、いわゆる水銀問題等がございまして、しばしば国会でもお答えを申し上げたことでございますが、いもち病用の水銀農薬については非水銀農薬に切りかえるという方針をすでに決定をし各方面に通達をいたしております。  なお、その実績等を見てまいりましても、ほぼ所期のようなテンポで切りかえがされつつあるというような段階でございます。
  213. 小平芳平

    ○小平芳平君 ですから、農薬による慢性中毒なり、そうした中毒というものが必要悪のように、こういうものが薬として使われる以上はこういうような中毒の危険性があるのはやむを得ないのだいうような考えはよくないと思います。ですから、もちろん農林省としても、そういうような必要悪のようなお考えは持っていらっしゃらないと思うのですが、かといってこの問題がなかなかみな安心してもうだいじょうぶだぞという段階に至らないというのは、一体どういうところに原因があるのですか。
  214. 森本修

    政府委員(森本修君) 農薬によりますところの危害を防止いたしまするところの方法は種々あると思います。一つは、毒性の少ない農薬を開発をし、普及していくということが根本的な対策であると思います。ただ、何といいましても、病虫害なり、そういったものを殺虫をする効力がなければ、また一面農薬としての効果がないわけですから、人体に毒性がなくて、しかも殺虫効力があるという、いわばある意味では相反したようなところを科学的に解明をし、開発をしていくというふうなむずかしさがあるわけでございます。従来から、そういう点につきましても、農林省としてもいささか努力してきたつもりでございます。たとえば、毒性の強さ別の農薬の生産の割合を見てまいりましても、この数年来、いわゆる低毒性農薬の生産の比率が増大をしてきているという状況でございます。なお、そういった関係にはございますけれども、人体に対して毒性を与える農薬をやむを得ず使用しておるというふうな関係がございまして、そういう点につきましては、もちろん一面には厚生省で、いわゆるそういった観点からの毒物の取り扱いについての取り締まりをやっていただいておりますが、私どもとしても取り扱いについて注意して、決して事故を起こすことのないように、先ほど申し上げましたように、できるだけの努力をいたしておるわけでございます。  それから、慢性の毒性につきましては、端的に言いますと、いままでは農薬の登録の際にそういったことを検査をするということになっておりません。最近のように、いわゆる慢性毒についてもきわめて国民の保健衛生上重大な問題であるということになってまいりましたので、農薬の登録の際にはそういうものを新しく検査対象に加えて、危害のないように登録の面からも防止していきたいということで、目下その方針も含めて準備しておる、こういう状況でございます。
  215. 小平芳平

    ○小平芳平君 この問題は何回も論議されたことでありますので、水銀の量とか、そういう点、私は一々申し上げませんし、またお聞きしませんけれども、結局農薬問題がやかましくなったころからですね、農林省ようやく動き始めて、それで先ほど御説明のあった非水銀糸農薬に切りかえる方針をきめたというふうな感じを受けるわけです。それで、その切りかえる順序といいますか、三年計画ですか、それは。そのような見通しについてお尋ねします。
  216. 森本修

    政府委員(森本修君) 先ほどお答えを申し上げましたが、四十一年度から非水銀糸の農薬に切りかえるということにいたしまして、四十三年度からは水銀系農薬を非水銀糸農薬にほぼ完全に切りかえをしたいというふうなことで目下指導いたしております。大体の経緯を見ますと、四十一年度は約四〇%ぐらいが非水銀系農薬に切りかわっておる。四十二年度は約六〇%ないし七〇%は切りかえをするというふうなことで目下督励をいたしておるわけでございます。
  217. 小平芳平

    ○小平芳平君 そういう点、政務次官に、やはり先ほどの家畜の予防の面といい、こうした農薬の問題といい、農林省としては、こうした問題を研究する研究機関ではないわけですけれども、やはりそういう研究を、手おくれ手おくれにならないように、この問題は人間の生命に関する——農薬といい、またさっきのニューカッスル病といい、人間の生命に直接影響する問題ですから、そう後手後手にならないように、研究開発というものはもう先手先手にいくような、そういう態勢がなくちゃならないと思うのですが、所管外のことがあれば、やはりそれは所管外のほうも総動員してそれに対処していかなくてはならない、そういう基本的な態度というものが大事じゃないかと思いますが、いかがですか。
  218. 久保勘一

    政府委員(久保勘一君) 御了承のとおり、農林省といたしましては、農薬の研究につきましてはそれぞれ機関がございまして、たとえば農事試験場あるいは家畜の試験場等において、新しく出ますものはもちろんのこと、従来のものについても、それぞれ試験研究を実施いたしておるわけでございます。なお、今後とも、それらの試験研究につきましては、先ほど来の御意見にもありますとおり、やはりいろいろな点を勘案いたしまして、十分努力をいたしてまいらなきゃならぬと考えるわけであります。
  219. 小平芳平

    ○小平芳平君 まあ十分努力をしていただくことと、そういう点こそ、そうした研究開発こそ力を入れて——何か百万羽鶏が死んだからさあ対策を急いで立てようとか、あるいは水銀中毒がやかましくなったからさあ対策を立てて三年計画でやろうというような、後手後手でない研究というものが常時行なわれていくような態勢、政治の姿勢というものが大事ではないかということをお尋ねしているわけです。
  220. 久保勘一

    政府委員(久保勘一君) 十分努力をいたしてまいりたいと存じます。
  221. 鈴木強

    主査鈴木強君) それではちょっと私からひとつ関連をしてお尋ねしたいのですが、ちょうど病原菌豚肉事件がやかましく言われておりましたおり、先般名古屋で日本医学会の総会が開かれました。そのときの御発表の中に、この農薬を米をつくる場合に使うわけですね。そうしますと、その米の中に水銀が含有される。そのことによって中毒を起こし、肝臓を害する、こういう報告がなされたということを新聞で見たのですがね。これは日本人にとっては、白米というのは主食であり、なくちゃならぬものですから、その米の中に、肝臓を害する水銀中毒が起こるというようなことになりますと、これはたいへんだという、そういう感じが私は強くしたのですけれどもね。これらの結果については、農林省は御存じですかね。
  222. 檜垣徳太郎

    政府委員檜垣徳太郎君) 有機水銀等、農薬の成分の中には、人体に累積されまして危険を生ずるというおそれのあるものがあるわけでございます。その中で、水銀がいま最もやかましく言われております。また、米との関係では、水銀の問題が一番大きな問題になっておるわけでございます。そこで、この問題は厚生、農林両者にわたる問題でございます。厚生省では、本年度の四十二年度予算で、農薬の人体に入る許容限度はどの程度であるかという研究調査をすることにいたしまして、その予算を計上いたしておるはずでございます。  一方農林省のほうでは、どのような農薬の使用方法をとると作物の中にどの程度の農薬の有害成分が残留しておるかということの調査をするため、農業技術研究所等に予算を計上いたしまして、研究をすることにいたしておるのでございます。そこで、保健衛生の立場からの許容限度量というものがきまりますれば農薬の使用方法としては、こういう使用方法をすれば許容限度の程度の残留毒性でとどまるということが、農林省研究で出るわけでございますから、その二つを結びつけて、農薬の使用方法あるいはその後のその他の措置というものを指導することが可能になり、危害を避けることができるということになりますので、厚生、農林両者関係機関の共同的な研究でその問題を詰めたいということにしておるのでございます。
  223. 鈴木強

    主査鈴木強君) これは、米を食べる消費者国民立場からしますと、これは非常に困ったことで、百姓はおそらく農薬を使わなければかなわぬということが出るでしょうね。しかし、それが一方、人体に影響を与えるということになりますと、消費者立場からすれば困ったものですね。だから、農林得と厚生省とそれぞれ所管が違うような印象をそのとき私も受けましたが、それは国民の知ったことじゃないのですよ。要するに、行政が相互に相連携して、少なくとも白米を食べてそのことが肝臓を害するというような、そういうことがないようにしてもらうのが政治でしょう。ですから、厚生省だ、農林省だと言ってみても、国民にはぴんとこないわけで、大きに迷惑なんですね。ですから、私は、そういう点は、少なくとも権威ある学会からそういう結果についての報告がある以上は、すみやかに手を打つ——なるほど両省とも調査研究費をもってやっておりますから多としますけれども、いまの小平さんの御質問にもありましたが、水銀を使う場合に人体にどういう影響があるのかという、そういう点を、いまあなたの言われた許容量ですね、許容量が一体どうなのかということを、もう少し先手をとって研究をしませんと、医者のほうからどうもこれは肝臓を害しますよというような報告が出て、あとを追いかけるようなことでは、私は農林行政としてお粗末だと思うのですよ。ですから、いまお話もありますけれども、早急にひとつ、国民も安心するような方法で、自信のあるところを発表してもらって、われわれも米を食ってどうも肝臓を害するなんということになるとたいへんですから、安心感を与えていただくように、すみやかに御配慮をいただきたいと思います。これは政務次官からちょっと、ちゃんとしてもらいたいと思いますが、どうでしょう。
  224. 久保勘一

    政府委員(久保勘一君) 先ほど官房長よりお答えいたしましたように、ただいま厚生省と連絡をいたしまして、それぞれの機関におきまして実験研究をいたしておりますので、御指示のように、非常に重大な問題であると存じまするから、早急に結論が出るように善処いたしてまいりたい、かように考えます。
  225. 鈴木強

    主査鈴木強君) 分科会担当委員外委員北村暢君から発言したい旨の申し出がありますが、これを許可することに御異議こざいませんか。  〔「異議なし」と呼ぶ者あり。〕
  226. 鈴木強

    主査鈴木強君) 御異議ないと認め、発言を許します。北村暢君。
  227. 北村暢

    担当委員外委員(北村暢君) 発言を許していただきまして、ありがとうございます。  ごく簡潔に御質問いたしたいと思いますが、大臣見えませんから、その間に、畜産関係のこと、特に畜産事業団の問題について御質問いたしますが、現在まで畜産振興事業団が、ことしは非帯に大きな役割を果たしたようでございますが、いわゆる不良豚肉の問題が出ておりまして、最近の新聞報道によるというと、百五十トン程度のものが、これは廃棄するわけじゃないようでありますが、一般の販売はやらない、それから六トン程度のものはこれは廃棄するということで、都の衛生局からそういう通告が、行政処分が出たようでありますが、これは畜産振興事業団が豚肉を貯蔵する上において、また市販において、どうもこういうことが出るということは、売れ行きその他に精神的な影響を非常に与える、こういうふうに思われますが、政府で監督するこの事業団にそういうことが起こったということについて、その原因を究明せられているのかどうか、それから今後の対策としてどういうことをお考えになっているか、まずお伺いしたい。
  228. 岡田覚夫

    政府委員(岡田覚夫君) ただいま御質問ございました豚肉の問題でございますが、御承知のように、事業団は畜産物価格安定法に基づきまして豚肉の買い入れをいたしているわけでありますが、買い入れをいたしました際には、品質保全とか、保管経費等の点から、枝肉で買い入れたものを部分肉に処理加工して冷蔵するということにいたしているわけでございます。そこで、事業団といたしましては、部分肉にいたします場合に、資力、信用を有しまして、一定の水準以上の設備技術を備えた加工場を指定いたしまして、この事業を委託するというようなことをやっているわけであります。  今回問題になりました南九州畜産商事というのは、昨年八月以降指定をいたしまして、委託をいたしているわけでございますが、その後経営不振のために倒産するという事態が出たのでございます。その際に、事業団が委託した豚肉を不良豚肉に差しかえて出すということにしたという悪徳行為があった。事業団としましては不測の損害をこうむったわけでございますけれども、一方から申しますと、信用を失堕するとか、一般にいたずらな不安を巻き起こすということで、はなはだ遺憾に存じているわけであります。  結局、不良業者が委託の規定に反しましてそういうことをいたしたわけでございますので、業者の監督ということにつきましてさらに十分指導いたしたいというふうに考えているわけでございます。今後は絶対そういうことがないようにいたしたいというふうに思っているわけであります。
  229. 北村暢

    担当委員外委員(北村暢君) 絶対そういうことのないように——まあちょいちょいあっちゃ困るわけですが、いわゆる枝肉から部分肉にしなければ貯蔵が困難だということで、部分肉にするわけですね、加工するわけです。その加工業者が、指定業者をもってやるというのでありますけれども、事業団が直接それをやるわけじゃありませんから、この加工業者の選定を誤るというと、こういう結果が起こるわけですね。したがって、今後、加工業者の指定等について、やはり相当事業団としては慎重にやらなければならない、私はこのように思うのですが、聞くところによるというと、この豚肉関係についての事業団の人員というのはまことにお粗末であるというふうにお伺いしているのですが、一体どのくらいの人で、どのくらいの加工業者を指定して検査してやっているのか、この点をひとつ御説明いただきたいと思います。
  230. 岡田覚夫

    政府委員(岡田覚夫君) 事業団の食肉関係を担当いたしております者は約十名でございます。先生御承知のように、豚肉はビッグ・サイクルという価格変動がある。三年ないし四年に一回価格が低落をいたしまして農家経済を圧迫いたします際に、事業団が買い入れをいたしまして、価格のささえをするということになっております。したがいまして、三年か四年に一度買うという状態でございますから、常時多数の人員を擁しましてこの仕事に当たるというわけにはなかなかまいらぬわけであります。したがいまして、現在十名程度の職員を置いているわけでございますが、今回は、従来見ましたよりは相当買い上げが長引いて量も非常にふえておると、こういう事態になりましたので、そこで、指定加工業者も相当ふやさなければならぬという問題もございまして、かような事件があったわけでございまして、この点につきましては、いろいろと、こういう問題が起きないように事業団にも検討をいたさしております。お話しのように、慎重な指定をいたしたいというふうに考えておるわけであります。
  231. 北村暢

    担当委員外委員(北村暢君) この問題は、事業団の運営そのものの問題もありますから、後ほどまたお伺いすることにいたしまして、いまお話しのあったビッグ・サイクルの問題ですか、ことしの場合、これは相当量ですね、現在までに七十四万千九百二十七頭、これは十九日現在ということで新聞に出ているようですが、相当たくわえている。しかも、貯蔵が約一年にものぼる、こういうことがあり得るようですね。肉の場合、技術的に言って、一体どのくらい保管ができるのか、品質の面においてですね。技術的に見て品質が完全であるというのにはどのくらい保管が可能なのか。ところが、魚であればもう六カ月くらい冷凍すると質がうんと落ちてしまう。肉の場合は一体どのくらいですか。そうして、その一カ年ということになれば、買うほうからも、相当値において値下がりをするという問題が出てくるんじゃないか、そういうような状況なんでありますが、いま物価の問題と関連して非常に問題になっているのは、このように豚肉を事業団が貯蔵するために豚肉が下がらない。事業団のほうから言わせれば、豚肉を安くするために事業団をやっているんじゃない、生産者価格安定のためにやっている、こういうので、消費者価格を安くするためにやっているんじゃない、こういうことを堂々と言っている。こういう問題からして、この事業団のあり方について検討をしなければならない。間接的には若干価格安定、小売り価格に影響しているのでしょうけれども、それほど役立ってないと、こういうことですね。したがって、お伺いしたいのは、先ほど三年に一回のビッグ・サイクルと、こういうふうに言われましたけれども、これほど買い入れても、なかなか生産者価格が上がってこない。いつまでたっても三百二十円でどんどん出てくるという状況ですね。そうすると、従来のビッグ・サイクルに対するものの考え方をだいぶ変えなければならない。生産態勢が変わってきているという問題が出てきてるんじゃないか。こういうことで、事業団のあり方そのものについて問題があるように思われるのですが、これに対してどのような検討が行なわれて、今後どのような方針を持っていこうとしているのか、この点お伺いしておきたい。
  232. 岡田覚夫

    政府委員(岡田覚夫君) ただいま御質問の点でございますが、実は豚肉の価格につきましては非常に価格変動が激しかった。そのために農家経済に対する影響も非常に極端なものがあった。そこで価格を安定させまして生産を安定させると同時に、消費にこたえていくということにするのにはどのようにしたらいいかということで、畜産物価格安定法ができまして、上限価格と下限価格との間に豚肉の価格を安定させるというふうなことで法律が制定された。そして現実に運用されてまいったわけであります。たまたま三十七年に買い入れをいたしたわけでございますが、その当時は三年のビッグ・サイクルという形がまさに典型的に出ておったのであります。今回の場合は、通常のビッグ・サイクルでまいりますと四十年が低落をしなければならぬという時期に当たるわけでありますけれども、実は四十年はかなり価格は高水準でございました。四十一年から低落を始めたということで、従来の三年ビッグ・サイクルが四年に延びたんではないかというふうに実は考えられる点もあるわけです。そこで昨年の三月から買い入れが始まったわけでありますけれども、一年を過ぎまして現在なお買い入れが続いておる、価格低落が続いておるという状態になっておるわけであります。この原因は一体何であるかということになるわけでありますけれども、三十七年当時からわが国の豚肉の生産形態がかなり変わってまいっておる点があるわけです。かなり急速に生産拡大をいたしますと同時に、構造的な変化が相当出てきておるんじゃないかというふうに考えるわけです。もちろん、その価格安定制度は極端な価格変動をなくして安定した出荷をさせようということでありますから、そういう意味で、価格安定制度が養豚経営の下ざさえをなしておることは、もちろん、それによる安心感というものがあるわけでありますが、一方では飼養規模の拡大、飼養管理技術の向上によりますところの養豚経営の変化によるところが非常に大きい。それからまた、生産者がビッグ・サイクルというものの考え方から、先高期待が出てきたというふうな点、あるいは拡大過程におきます資本負担にかられました生産の継続ということもその要因ではないかというふうに考えておるわけであります。いずれにいたしましても、今後とも供給過剰、価格低迷ということが長期にわたって継続するということになりますと、いままで安定的な発展を始めておりましたわが国の養豚の基盤がこわれることになるものでございますから、そこで、現在どのようにこれに対処すべきかということにつきましては検討いたしておる段階でございます。
  233. 北村暢

    担当委員外委員(北村暢君) ですから、上限価格と下限価格が現在のきめ方で適正なのかどうなのかという問題。構造的なものであるとすれば、生産原価が、コストが非常に下がってきているのか、いまの三百二十円でどんどん出てくるわけですから、まあこれで価格支持になっていると、こう言えばあれなんですが、実際は、ビッグ・サイクルから言えば、価格上がってくる、相当買いつけていればね。支持ができて自動的に高くなっていくわけでしょう。ところが、いまのままでずっと続いているわけでしょう。ですから、それでも生産者は採算とれるのじゃないか、減ってこないのだから、という見方がどうしても出てくると思うのですね。消費者から言えば、そう思う。それから、いまの上限価格、三百九十円ですか、三百九十円になるというと、放出するわけでしょう。いまのところ三百九十円になりっこないですねこれ、放出するといっても。一年以上も買い続けている。そうするというと、上限価格、下限価格というものがどうも実情に合わなくなってきているのじゃないか。これは当然考えられるところなんですよね。ですから、いま検討中というこういうことをおっしゃられましたけれどもね、なかなか、価格の問題ですから非常にむずかしいので、簡単に結論出すわけにはもちろんいかないでしょうけれども検討中でね、もう一年を。ずっとこれからどういうふうに続いていくか、ちょっと予測できない状態ですわね。しかも、構造的なものというのが、いわゆるこの上零細な農家が二頭、三頭と飼っている、飼育している時代と、企業的に大量で飼育するという構造的な問題が出てきているのですね。生産コストがどんどん下がってきている、こういうことになれば、私は、三百二十円というものをもう少し下げてやってもいいのじゃないか、こんなようにも思うのですけれどもね。で、価格検討されているというのはどういう点を検討されているのか。これをひとつ具体的に説明していただきたい。
  234. 岡田覚夫

    政府委員(岡田覚夫君) ただいま御質問のように、事業団の豚肉の買い入れが長期にわたって継続いたしまして、依然として供給過剰の基調で推移をしております関係から、お話しのように、安定基準価格が高過ぎるのではないかという批判が一部に聞かれますことは確かでございます。そこで、私たちのほうでは、長期低迷の要因は、ただいま申し上げましたような構造的な問題もございまして、一がいに安定基準価格の水準いかんのみによるものではないというふうには考えるわけでございますけれども、去る三月の畜産振興審議会におきまして、その価格問題についていろいろ討議がございました。それからまた、答申に附帯事項もございまして、今後さらにこの生産出荷がふえるようなら早急に審議会を開くようにするようにというふうな意見もございました。そういうこともございましたので、私のほうも、今後の生産出荷の推移と動向を注視しながら、安定基準価格も含めまして現行制度のあり方につきまして検討をしたいということで、いろいろデータも集めつつあるという段階でございます。たまたま先生御承知のように、ことしの二月、三月、四月と、病菌豚の問題ございまして、消費もやや減退したという問題もございます。そこで、やや異常な状態にあったものでございますから、正常な判断がなかなかしにくかったわけでございます。最近、消費ももとに復活をいたしまして、正常な状態になってまいったというふうに思いますので、この辺でその生産なり消費の今後の動向につきまして的確な見通しをつくりまして、それでただいま申し上げましたような安定基準価格を含めまして、現行制度のあり方につきまして検討するというふうな考えでおるわけでございます。
  235. 北村暢

    担当委員外委員(北村暢君) その下限価格の問題は若干答弁いただきましたがね、上限価格一年以上低迷しているわけで、それが続いているわけでしょう。そうすると、品質の問題が出てきてね、私は、これ以上持てない段階が出てくるのではないか、したがって、三百九十円だなんということを待っていられないで、これ放出したほうが消費者も安いものが食えるのではないか、こういう感じがするのですけれどもね。持っていて腐らせてこれ投げてしまうのではこれ意味がないので、そこのところはどういうふうにお考えになっていますか。
  236. 岡田覚夫

    政府委員(岡田覚夫君) お話しのように、もう法律のたてまえからいたしまして、下限価格で買いまして、そして上限価格価格が越えるとき、あるいは越えるおそれのあるときに売却するというのがたてまえになっておりますけれども、管理上の必要その他の特別な理由がある場合には、これは必ずしもそういう状態ではなくても売り渡すことができるという規定になっております。そういう意味で、いつまで保管冷蔵できるかという点につきましては、わが国も、もとより国際的にも、いつまで保管できるという的確な期間の限度というものははっきりしておりません。しかし、常識的に考えまして、そういつまでもというわけにはなかなかまいらぬわけでございますから、まあ、品質が極端に低下いたしますと売るということもむずかしくなってまいるわけでありますから、そこでわれわれといたしましても、売り渡しの問題につきまして、できるだけこの市場価格に影響がないように売却をすることができればそれが一番適当なのではないかというふうに考えておりまして、現在どのような形で売却をするかという点につきまして検討をいたしておる段階でございます。
  237. 北村暢

    担当委員外委員(北村暢君) すべて検討検討のようでございますがね、まあ、結局不良豚肉の百五十トンの処分の問題については、加工用としてはこれはいいと言っているわけですから、加工用となれば品質ずっと低下、価格も低下せざるを得ないわけですね。そうすれば、やはり事業団の収支にも影響してくるわけでありますから、これはいま検討されるということですから、あまり長続きしなくなってくるような感じがいたします。したがって、消費者から言えば、何もたくさん持っていて腐らせてまで価格上げてもらわなくても、安い肉をまず農林省の放出ということで、ほかの価格に影響がない程度、べらぼうに影響があればこれはたいへんなんですけれども、影響のないようにくふうをされるということは必要であろう、まあ、このように思いますから、この問題はそのくらいにさせていただきます。  それから次に、北洋の安全操業の問題についてお伺いいたします。去る十七日の午後に根室海上保安部への捜索願いが出されております第八金幸丸ほかのソ連監視船に連行された問題について、どの程度水産庁は状況を把握されておるか、このいきさつをひとつ御報告願いたい。
  238. 久宗高

    政府委員(久宗高君) ただいまの第八金幸丸の詳しい状況につきましては、まだ海上保安庁のほうから詳しい御連絡は実は受けてrおらないのでございます。
  239. 北村暢

    担当委員外委員(北村暢君) まあ、海上保安庁から詳しい御報告を受けておられないというのでありますが、すでにこれは新聞に出ているんですよね。ですから、沿岸漁民の北洋における安全操業という問題について、しかも、これは私、質問をするからということで通告をしてあったのですがね。ですから、わかっていていただかないというと、これはぐあいが悪いんですね。
  240. 久宗高

    政府委員(久宗高君) 北洋の安全操業の御質問があることは存じておったのでございますが、担当のところで直接の御連絡を受けたかもしれないのでありますが、私自身不用意で聞いてまいりませんでしたので、お許しを得れば至急連絡をとりまして御報告申し上げたいと思います。
  241. 北村暢

    担当委員外委員(北村暢君) 新聞の報道によるというと、十三日の夜らしいのですが、四隻の三トンクラスの小さな船ですが、それが四隻連行されたらしい。そして人員は大体十七名、そのほかにカニ漁船のこれは二十九トンくらいの船で八人乗っていて、計二十五人の人が連行されたようだということで捜索願いが出ているようでございます。したがって、これは新聞に出ているんですから、水産庁でわかっていなければならないはずのことなんですが、おわかりにならなければ、これはやむを得ないのですが、そういう問題が最近起こっているわけです。それで、この最近の北洋の安全操業の問題について一体どのような状況になっているのか。このことをいまやはり具体的な事例はわからないとしても、傾向的なことはおわかりになるんじゃないかと思うのですが、御説明をいただきたいと思うのです。
  242. 久宗高

    政府委員(久宗高君) 北洋におきます拿捕の問題はいろいろな経緯をたどってきているわけでございますが、数字的に見ますと、三十九年、四十年ころから比較的減ってきておりまして、四十二年の現在におきましては、ただいまの御報告がございましたのは別でございますけれども、未帰還のものが、隻数で申しますと九、それから人員で申しますと四十八という数字になってきております。これは最近三年間の状況を見ますと、だんだん減る傾向にあるように考えております。
  243. 北村暢

    担当委員外委員(北村暢君) その原因は一体何なのか。向こうは領海を侵犯したということで連行しているわけですね。それで、いま私がお話ししました第八金幸丸の場合も、領海三海里を侵したのではないかという疑いですね、そういうことなんですが、したがって、原因が領海三海里を侵したということで連行されるのか。さもなくば、領海十三海里説もあるわけですから、そこら辺のところの話し合いがソ連との間についておって、日本の政府は漁民に対してどういう指導をしているのか。その指導を踏み越えて漁民があえて領海侵犯というものをやっているのか。そこら辺の事情をちょっと説明をしていただきたい。
  244. 久宗高

    政府委員(久宗高君) これは御承知のとおり、ソ連が領海十二海里説を現にとっているわけであります。私どもは三海里ということで、根本的に食い違いがあるわけでございます。いままでずっと、特に最近年の問題で申し上げれば、その二つの食い違いから、要するに、十二海里を侵した場合に起こるわけであります。ただ一部につきまして、たとえばコンブ漁につきましての民間協定ができた部分というようなものは、これは話し合いによるものでございますので、さような扱いを受けないわけでございますが、政府間で話し合ってまいりましたいわゆる安全操業の問題は、先生御承知のとおり、いろいろな経緯がございまして、いまだに話し合いがついていないわけなんですが、したがいまして、拿捕されます場合には、やはり十二海里を踏み越えました場合に拿捕問題が起こるわけでありますが、海上のことでございますので、もちろん拿捕のありましたときは、海上保安庁なりそれぞれの機関におきまして位置の確認その他について努力をいたしておりますけれども、海上のほんとうの実情につきましては、漁民は入っていないと言う、しかし、片一方では入ったと言って捕えるといった紛争が絶えないわけでございます。ただ、件数から申しますと、最近年におきましては比較的件数が少なくなっておるのが実情でございます。
  245. 北村暢

    担当委員外委員(北村暢君) そこで、これは大臣、指導上の大きな問題なんですが、ソ連の十二海里説と——領海ですね、それから日本側の三海里説、これが話し合いがついていない。そうすると、当然漁民は日本の指導に基づいて三海里まで行くわけです。そうすれば、これはもう必ずと言っていいくらい拿捕されるという問題が出てきますわね。したがって、この三海里説を守るがゆえに、漁民は三海里までいいのだということで行くと、ソ連側から十二海里越えればもう拿捕だと、こういうことで、この指導面はどういうふうにされているのか。いま漁業権の問題をめぐって釧路地裁で公判中ということのようでございますが、実際に日本の主張で皆さんは漁民を指導しているのかどうかという問題、この問題解決していないですから、どういうふうに指導されているか。
  246. 久宗高

    政府委員(久宗高君) この問題は長い懸案でございまして、御承知のとおり、日本側といたしましては、数次にわたって安全操業の問題について申し入れをし、検討してまいったわけでございます。それがなかなか困難でございますことから、先般いわゆる赤城試案という形で歯舞、色丹につきましての特別な区域につきまして話し合いを持ちかけたのでございます。これにつきましては先方も検討するということであったわけでございますが、昨年イシコフ漁業相が参りまして、さらに引き続いて外相が参りましたときも、やはりこの問題出まして、これがいわゆる日本の漁港に対する寄港問題と関連がありまして、そのために非常に困難な問題になりましてペンデングになっておるわけでございます。私どもといたしましては、日本の漁港に対する寄港問題とこれとの関連ははっきり困るので切り離したいと考えておるわけでございまして、その考えで一貫しておるわけでございます。その間の指導といたしましては、話し合いが継続しておりますので、本来から申せば、それぞれの主張する立場は違うわけでございまして、こちらの主張では三海里のところまで行ってもいいということかもしれませんが、いずれにいたしましても、懸案の問題で相当突っ込んだ話をしておりますので、実際問題としては、十二海里内に入れば先方が拿捕するという考え方なので、その辺のところには手かげんをして漁業をするように実際問題としては指導しております。しかし、それと継続いたしまして、政府間におきましても、いまの安全操業の問題につきましては、たまたまそういう漁港への寄港問題とからみましたために交渉が非常に遷延いたしております。何らかの機会、きっかけをつかんで具体的な話し合いをさらに進めたいと考えております。
  247. 北村暢

    担当委員外委員(北村暢君) いまの赤城試案の問題をめぐりまして、現在川島さんが総理の特使としてソビエトに行ってきのうもコスイギン首相と会見したという新聞報道がきょうなされているわけですね。それについて、政府はこの前の予算委員会等の質問においても、直接この問題についてどういう案で交渉するということについては、指示もしていなければ何もしていない、こういうふうにお答えになっているようでありますが、いわゆるモスクワからの特派員の報道によるというと、核拡散防止の条約あるいは国際情勢、それと関連して、北洋の安全操業の問題が話の中心になるだろうということがモスクワの特派員の報道で出ているわけです。一体政府は、その案なるものが単なる赤城試案で、個人的な案なのか、また、それを持っていっていないと否定されるのか、また案があるのだろうけれども、折衝の都合があってこういう席では言えないというのか、ここのところを一つ明らかにしていただきたい。明らかに総理大臣の特使として正式に行っているわけですからね。北洋の安全操業の問題は打診する程度のことなのか、何かの案を持っていっているのかどうかということですね。これをひとつはっきりさしていただきたい、このように思うのです。
  248. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) それは総理大臣でないとわかりませんがね。私の聞き及んでおるところでは、特別な任務を持って特定の事柄の折衝をするために派遣されるのではない、こういうふうに伺っております。したがって、ほかの、私の所管でない問題は別といたしまして、少なくとも農林関係の事案に関する限りは、どのようなお話し合いがあろうとも、政府は何らの拘束を受けるものではありません。このことは明確にしておきます。ただ、有力な政治家たちの話し合いですから、われわれが将来施策を進めてまいる上においてこれはよい思いつきだというようなことがあれば、やがて公式な場面において取り上げられる参考にはなるでありましょうけれども、特別な任務を委託して、農林関係でそれに束縛を受けるということはありません。  それから、これは北村さんはよく御存じだと思うのだけれども、わが国は、歯舞、色丹というものはわが国固有の領土なんだということをずっと主張しているわけです。したがって、それが十二海里であろうが、三海里であろうが、わが国の漁船を拿捕したり妨害をするということは不当な行為なんですよ。しかし、現在の国際情勢の中における日本という国の立場は、残念ながら、われわれの考えが十分に実現することができないということを非常にわれわれは残念に思いますけれども、ソ連政府が拿捕をやっておるとすれば——これはまあ先方は国家の管理仕事でございましょうから、政府が関与していると思わなければなりませんけれども、不届き千万であるとわれわれは思っているのです。ですから、そのつど政府は抗議をいたしておりますが、残念ながらその実現は今日まで実現しておりません。したがって、貝殻島近海におけるコンブ漁等については、政府政府間交渉でそれをやることによって、もし誤解を生じて、北海道附属の島嶼の領土権に若干でも譲歩したような印象を受けることは、政府としては困ることでありますから、ただいまは、御承知のように、民間協定で実際のある程度の操業をいたしております。私どもはこれは外交上の正式のルートに乗せるか、またはどのようにやるかは別として、やはりわが国固有の領土の周辺における不当な行為は何とかしてこれを排除することに努力をしなければならない義務を政府は負っておると思うのです。現実の問題が御承知のようなことである、こういうことでございますので、私どもは機会あるごとにやはりわが国の立場は正々堂々と主張すると同時に、相手方にも反省してもらって、そうして隣国のことでありますから、平和裏に双方が操業を安全にやっていくことのできるように続けて努力をすべきである、そういう立場をとっておるわけであります。
  249. 北村暢

    担当委員外委員(北村暢君) 歯舞、色丹だけでなしに、私どもは千島列島全部を日本と思っておりますから、見解は若干違うようでありますけれども、とりあえず歯舞、色丹の問題になるでしょう。ところが、十三日のやつは歯舞、色丹ではなしに国後島なんですよ。それの領海を侵犯したのであるかどうかということが問題になっている。それでもなおかつ三海里説と十二海里説の問題が私は論議に出てくると思うのです、歯舞、色丹以外に。歯舞、色丹については、いまおっしゃたように、固有の領土であるということであれば、日本の領土に行くのになぜ悪いかという問題で、それは確かに大臣のおっしゃるとおりの理屈は成り立ちますね。しかし、実際問題として、歯舞、色丹に関しても、国後島においても、いま問題が起こっているのは歯舞、色丹だけでない、十三日のやつは国後島らしいですね。そうしますと、これはまたそれなりに解決しなければならない問題が出てくると思うのです。  そこで、いま大臣のおっしゃるように、歯舞、色丹の問題はそういう見解でいいと思うのですけれども、赤城さんに対して政府として何らサゼスチョンも何もない、こういうようなお話でございますが、実際にいわゆる入り会い権による保障をする、現金もしくは取ったものについて三割出すとかいう案があったとかなかったとかという問題が出ているわけですね。それを区域に限ってやるという案があったとかなかったとかという問題が出ていますが、それは水産庁長官は何かそれに似たような問題について見解を若干発表しておるわけです。したがって、いま大臣のおっしゃるようなことが根本的に解決しないんじゃお話にならないという問題、次善の策として何かこの入り会い権その他によるような解決の方法というのを考えておられるか、ここら辺のところはどうもはっきりしないようですがね、この点をひとつ明らかにしていただきたい。それから歯舞、色丹以外の地域における公海の領海三海風説と十二海里説が意見一致しておりませんから、ソ連は十二海里を侵犯すれば拿捕するという問題が出てきている。こういう問題を分けて、どのような見解を持っておられるか、ひとつ方針をはっきりさしていただきたいと思います。
  250. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) 歯舞、色丹は、いまお話がありました択捉、国後につきましても、わが国は講和条約できめてある千島列島という中に南千島は含まないものであるという解釈をいたしておることは御承知のとおりであります。したがって択捉、国後の領土権もわれわれは主張いたしておるわけでありますが、現実はすでに不当な占拠が行なわれておるわけであります。先方はもうこの問題については解決済みだとすら言っておる。わがほうは解決済みではない。こういうことになりますというと、やはり講和条約締結当時からの歴史にさかのぼらなきゃなりませんけれども、きょうはそこまで行かないとしても、やはりソビエトロシアという国は、おそらく択捉、国後のようなところに対して何らかの処置をとるということは、あの国がヨーロッパ諸国においてやっておること等を勘案して、なかなか譲歩するということは非常にむずかしいのではないかと想像はいたしますが、このことは別といたしましても、わがほうは何らかの平和的協定によって安全操業ができるように最善の努力はいたしたい。おそらく赤城氏なども種々苦労していろいろな案を出されたのもそういう解決の方途を見出したいとして努力されているからだと思うのですが、これはなかなかむずかしい問題であります。そこで、十二海里と三海里でありますが、先ほどからお話があったと思いますが、アメリカも十二海里説をとっており、ロシアもとっておるということのようでありますけれども、わが国は特定の国の距岸十二海里以内に長い間の漁業の実績を持っておって、それもまた認められておるというような特殊の事情もあり、われわれは十二海里説を認めておらないのでありますから、その辺の利害得失を考えてどのように対処すべきであるかということについては、研究を常に進めていかなければなりませんが、そこで私どもはそういう複雑な国際関係の中に立って日本の安全操業をどのようにしていくかということは、やはりそれぞれの国との特殊な関係に立って現実に対処していくことが必要ではないか。御承知のように、アメリカとの問にはああいう、あるいはあまりはっきりせんじゃないかというけれども、現実にはこちらの主張をいれられたああいう協定が二年間結ばれたという実例もありますし、ただいまはまたニュージーランドともいろいろな話を同じようなことでやっております。ロシアという国に対してはやはり相手方の国内事情、国際関係におけるお家の事情があることは十分われわれもわかりますからして、そういう点を考慮しつつ、ひとつねばり強い交渉を続けてまいりたい、理屈だけでこっちが腹を立てたら負けでありますからして、そういうことでやっていきたいと思っておるわけであります。
  251. 北村暢

    担当委員外委員(北村暢君) それではいまの大臣の御答弁で、時間があればもっとやりたいのですけれども、きょうは飛び入りでございますから少し控えまして——ただ私は十三日に起こりました五隻、二十五人がとらえられているという問題について、水産庁がどうもその事情もはっきりしておらぬ。十三日ですから、十七日の日に捜索願いが出ている。もう日にちも相当たっているわけですね。漁民はやはり命をかけてあそこで、漁をやっているわけですよ。それに対してもう相当時日がたっても、安全操業の問題について慢性化してしまって、行く者が悪いような形でほうっておかれたのじゃ、やはり漁民は気の毒だと思う。これはやはり抗議するという問題についても、やはりそういうこまかい神経を私は使っていただきたい、政府は。そういうふうに思います。全く十三日に起こっている問題をただいま聞いても、何のことだかさっぱりわかっていないというようなのじゃ、もう怠慢と言うか何と言うか、どうも私にはちょっと了解できない。したがって、そういう点について、もう少し漁民に対してあたたかい思いやりがいただきたい。抗議するものはする。事実を確かめることすらまだやっていないというのですから、これはもう論外だと思います。今後十分ひとつ注意していただきたい、このように要望しておきます。  次に、国有林特別会計の問題について、主査から御注意がありましたから、ごく簡潔にお伺いいたしますが、従来の国有林特別会計は、ずっと黒字を続けておるわけです。純利益において損失を出しておるのは、伊勢湾台風のときと、北海道の大風害のとき、この二回ぐらいではないか。一昨年ですか、四十年も若干赤字出たようでございますが、いずれにしても、そういうことで黒字をずっと続けてきているわけです。ところが、私の質問したいのは、その従来の国有林の運営の中において、伐採と造林、それから天然更新含めての更新関係ですね、これがどういうふうになっておるか。それから林道の開設、伐採、造林、林道の計画量に対する実績というものが一体どのような傾向になっておるかということをひとつ御説明いただきたいと思う。
  252. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) 政府委員から申し上げます。
  253. 若林正武

    政府委員(若林正武君) 初めに伐採量について申し上げます。過去三カ年間について申し上げます。三十八年標準伐採量が二千九十一万三千立方メートル、これに対しまして伐採量は二千百九十万九千立方メートル、三十九年標準伐採量は二千八十五万三千立方メートル、伐採量は二千二百九十四万八千立方メートル、四十年標準伐採量二千五十二万七千立方メートル、伐採量二千二百八十二万九千立方メートルであります。  次に造林でございますが、三十八年、更新だけについて申し上げます。九万八百六十七ヘクタール、実行量八万二千五十九ヘクタール、三十九年必要年度造林量九万三千三百八十八ヘクタール、実行造林量八万四千六百六十九ヘクタール、四十年必要年度造林量九万三千九百七十ヘクタール、造林実行量八万八千七十八ヘクタール。  林道につきましては、三十八年一千二キロメートル、三十九年一千百三十五キロメートル、四十年一千九十二キロメートル、林道のほうは大体計画量の確保がはかられております。
  254. 北村暢

    担当委員外委員(北村暢君) いまのそういう数字言われたんですが、私はこの計画量と実行とについて傾向を聞いたわけなんですから、その数字もいま読まれましたものを聞きましても、造林というのは、大体計画量を毎年下回っておる。これは昭和二十年からずっとです。それから、林道も計画量を必ず下回っている。わずかでありますけれども下回っている。伐採量は計画量を常に上回っている。この傾向は認められますか。
  255. 若林正武

    政府委員(若林正武君) 北村先生の言われるような傾向は最近ございます。
  256. 北村暢

    担当委員外委員(北村暢君) それで標準年伐量という問題出ましたけれども、これは成長量というのではなくて、三十三年と三十六年にこの標準年伐量が改定になっておりますね。そうして増伐ができるように標準年伐量というものができている。それを上回って実は切っているわけですね、これはもう事実だ。したがって、成長量からいえば約二倍切っている。最近では二倍切っている状況でございます。でありますから、計画量に対して伐採は常に上回り、特に成長量に対しては、現実の成長量に対して倍切っているという状況です。特に造林がそれに伴っていない。計画量を下回っているということは、山が荒れているという結果でありますし、林道が計画量を下回っているということは、奥地林の開発がおくれて、  〔主査退席、副主査着席〕 伐採が里山に集中しているということです。したがって、結局、国有林の特別会計は黒字ということでずっときておりますけれども、この黒字を出している原因は、帳簿上は黒字ですけれども、結局、国有林の山が荒れてるという結果になっているということ、これはもう統計の数字からいって明らかなわけです。この点はひとつ大臣、国有林の経営について十分御理解をいただきたいと思うのです。この点が最近における国有林の生産の停滞、十年間非常な無理してきましたから、したがって、もう最近においては、無理して切りようにも切りようがなくなって、生産が停滞してきてますね。特に北海道はひどいわけです。もう義理でも何でもやれと言われても、増産できない段階になっている。切る木がなくなっているという段階に来ているのです。これは私は、国有林運営上非常に重大な問題だと思いますから、一体、こういう傾向について、私も、いわば国有林にとっては一つの運営上の危機に来ているのではないかとすら思っておるものでありますけれども、そういう点について政府考え方というものを、どのようにあるのか、ひとつはっきり御答弁いただきたい。
  257. 若林正武

    政府委員(若林正武君) ただいま北村先生から伐採超過、造林不足の御指摘があったわけでございますが、御承知のように、最近におきまする木材需要の急速な増大ということに対しまして、御承知のように、国有林の使命といたしまして、長期的には、より多量の木材を持続的に、しかも安定的に供給する。短期的には、景気の変動というものに即応いたしまして、需給、あるいは価格の安定に寄与してまいるという国有林野事業としての使命があるわけでございます。最近の民有林の伐採傾向というものを見てまいりますと、停滞、むしろ針葉樹等におきましては、生産量は減少傾向にございます。そういった面で、国有林といたしましては、その使命達成のために、広葉樹にかえまして、針葉樹の増伐を行なわざるを得なくなったということによりまして、伐採超過というものが出ておるのであります。先ほど御指摘のございました成長量の倍くらい切っておる。これはまた事実でございますが、私どものほうで算定いたしております標準伐採量と申しますのは、将来の森林の体質改善が行なわれました場合の期待成長量というものも勘案をいたしまして、保続計算をやりまして、現在のような標準伐採量というものを算定しておるのでございまして、そういった面で保続という面では標準伐採量については心配はないのでございます。  それから造林不足ということにつきましては、ただいま申し上げましたように、需給安定あるいは価格安定に資するために広葉樹の伐採にかえまして、針葉樹の伐採を若干ふやしてやったというふうなことに伴いまして、単位面積当たりの蓄積量の差があるわけであります。そういった面で皆伐面積の減少を生じる。したがいまして、造林の必要量というものを前提にいたしますと、造林不足というものが出てまいるわけであります。また保育につきましても、造林必要量の中で予定をいたしているわけでございまするが、最近の林地肥培なりあるいは除草剤の使用等々によりまする新技術の導入等によりまして、保育の回数というふうなものもだんだん減少してまいるというふうなことがございまして、そういったところから、造林必要量との差が出てくるということでございます。経理の決算上、数字としてはそういうことになるわけでございまするが、現実の山の姿としましては、伐採あと地につきましては植栽を行なっておりまして、造林不実行というものはないというように考えておるのでございます。以上でございます。
  258. 北村暢

    担当委員外委員(北村暢君) ただいまの説明で、いかにも国有林の経営うまくいっているように聞こえますけれども、標準年伐量の算定のしかたも、計算上はそれで保続することに計算はできているわけです。しかし、先ほど言ったように、造林、林道が計画どおりいった場合の話であって、それは先ほど認められましたように、伐採は必ず上回っている、造林、林道というのは計画量を必ず下回っているというこの問題が相当将来大きなしわ寄せになって出てくるのじゃないか、このように思っているのです。特に先ほど申しましたように、北海道の場合はたいへんな事態であります。造林やりました結果がよくないわけですね。期待成長量というものが、将来期待できないような状態にいまあるのじゃないかと思います。したがって、そう楽観を許さない、こういう問題があるということをひとつ認識しておいていただきたい。  そこで特別会計の赤字、黒字の問題でありますが、先ほど申したように、従来、特別会計はずっと黒字を出してきているわけですが、そこで私どもその黒字というのが、先ほど言ったように、結果的には山が荒れる形で黒字が出ているといって差しつかえないと思うのですけれども、そういう無理をしての黒字でありますから、最近まで林野当局は、国有林特別会計の運営面において非常に苦しい。特に将来の見通しに至っては、相当長期間にわたって特別会計は赤字に転化するのじゃないか。赤字経営に転化するのじゃないかということが想定されているわけです。その見通しについては一体どのように見ておられるのか、これをひとつお伺いしたい。
  259. 若林正武

    政府委員(若林正武君) 国有林野事業特別会計の収支につきましては、何と申しましても伐採量の動向というのに左右されることが大きいわけでございます。その基本になりますのは、全国森林計画、これは現在改定期に至っておりますが、さらにまた、四十一年度の決算の結果等につきましても、現在の時点におきましては、十分にまだ判明をしておらないわけでございます。したがいまして、現在直ちに今後の長期の展望ということを申し上げることは困難な状況にございます。しかしながら、現行の全国森林計画に基づきまする伐採量の推移並びに最近におきまする木材価格動向等から見ました場合、四十二年度予算案におきまするように、治山事業の一部を一般会計負担といたしますとともに、より一そう各種事業の合理化ということを進めまして、国有林野事業の健全な運営をはかってまりいたいというふうに考えておるのでございます。で、私ども、長期の収支につきましてはいろいろと試算をいたしたものがございます。しかしながら、ただいま申し上げましたように、伐採量の関係、あるいは木材価格関係その他歳出面等におきましても、計算の前提条件というものが、最近の経済情勢その他の推移に伴いまして非常に変わってまいっております。で、ただいまそういったものを修正をいたしまして試算をやっておるような状況でございます。ただ、傾向的に言えますことは、先生も十分御承知のように、今後の林業の林道の投資あるいは拡大造林の推進のための造林の投資その他相当の事業費は要るわけでございますが、こういった投資というものが一段落いたしますると、その前後以降におきましては、非常な単年度収支におきましてもものすごい黒字が出てくるというふうな一応の試算を持っておるのでございまするが、そういった資本を投下いたします過程におきましては、相当収支は苦しいというのが実情でございます。
  260. 北村暢

    担当委員外委員(北村暢君) いまの試算はやっておるけれども発表をされないわけですけれども、試算をしたものをこれは発表されてないものですが、私も見ましたけれども、いまの拡大造林、林道等に投資を要するもの、これが今後約二十年間くらいは続くのじゃないですか。そうすると、二十年間くらいは投資のほうが上回って、会計自体は赤字になるのではないかというふうに思うのです。それで大体、林業がそんなにもうかる産業なのかどうなのかということですね。そんなにもうかるならば、農業よりも比較してそんなにいい産業だったならば、まだまだこれは林業というのは発展していくだろうと思うのですが、そんなにもうかるような産業じゃないですよ、これは。ということは結局、国有林という膨大な財産を食いつぶしつつある。それで見かけによる黒字が出ておるのだろうと、このように想定してまず間違いないのじゃないかと思うのです。それを続けていく限りにおいて、私は、国有林が荒廃していくということを言っておるわけなんですから、そうした試算をされて、安全性見てやっておるというふうに言われておるようですけれども、決してそうじゃないと思います。必ず行き詰まる段階が来るのじゃないか。それでなおかつ、従来から国有林なるがゆえに国土の保全機能というものを確保するために、民有林であれば全然そういう投資をしない。一般民生安定に必要な治山事業、これも二十億、ことしは大規模治山等は一般会計から持ってくるようになっておりますけれども、民有林で治山をやりながら、林業採算とれるなんというところはありはしない。すべてこれ民有林の治山事業は国でやっておるわけで、それを特別会計では自まかないでやっておりますね。  〔副主査退席、主査着席〕 それでなおかつ、ことしは五十一億円、一般林政に協力するという形で森林開発公団に対する出資が四十三億、林業基金に一億、治山その他で七億、五十一億というものは一般会計へ逆に繰り入れておるわけですね。特別会計から持っていっているわけです。それは積み立て金を取りくずしておるようでございますが、この積み立て金もだんだん底をついてきておるような状況です。そうすれば、昨年の段階において森林開発公団に対する出資金は手切れ金として三十八億ですか、出資してこれで終わりです。今年度は預金部資金から持っていくということで要求したのだが、木材の値上がりで特別会計また黒字になりそうだということで、一般会計に特別会計から繰り入れたわけです。これをやっているということは、私は将来国有林で上がった収益はやはり国有林へ返さないと、民有林へ持っていったのでは国有林は荒れる一方、そんな余力はとてもないのじゃないか。林業はそんなにもうかるものではないと私はそう思っているわけなんですが、こういう点について、特別会計の運営の問題について、国有林でありますから、ある程度の公共負担というものは、これは国鉄なり何なりがやっているようにやむを得ないと思いますけれども、年々歳々こういうことを繰り返していくということは、私は国有林特別会計の将来のためにとってたいへんな問題が起こるのじゃないかと、このように思うのでございます。こういう点についてひとつ大臣はどのようにお考えになっておるか、ひとつ方針を承りたいと思います。
  261. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) この国有林野の特別会計はいまお話しのありましたように、時期によっても違いますが、かなりの黒字が出てそれを一般会計に繰り入れるという方針をとってまいりましたが、最近においてはいろいろな事情で諸物価も高騰し、かたがた、いろいろ非常に黒字の出た時代とは情勢が違っておるような風潮もございますが、結局、国有林というものの重要性にかんがみまして、私どもはこの特別会計がなかなかむずかしいのですけれども、造林をさらに進め、民有林の助成もいたしながら健全な財政状態を維持していかれるようにひとつ努力をしなければならないと、こう思っております。
  262. 北村暢

    担当委員外委員(北村暢君) いま大臣一般論としてお話しがありましたがね、物価の値上がり等について苦しくなるというのですが、実は物値の値上がりの中で一番他の物価より高いのは、上がっているのは木材なわけですね。木材の値上がりでいままで何とかやってこられたのです。これからも木材だけは上がっていくのじゃないかということを今度の経済社会開発発展計画ですか、新経済計画でもそのように言っているようですが、木材価格の異常な値上がりでいままで何とか特別会計をささえてきたわけです。ところが、昨年、一昨年あたりは木材価格は横ばいになったからとたんに特別会計の収支が悪くなってしまったわけですね。ですから、ことしなんかもどうやら黒字でいけるというのは、木材価格の値上がりによるのです。異常な値上がりなんです。これにささえられてきた。しかし、これも限度がありますからね。私はそういう木材価格の横ばいだというような結果になれば、とたんに特別会計が危機に瀕する段階がすぐ来ると思っております。ですから、一般論として言われた大臣の感覚は、どうもちょっと受け取れないのですが、どうも特別会計に対する危機感というものは大臣お持ちになっておらないようでございますがね。私は相当危機に来ていると、このように思いますので、ある程度の公共負担はやむを得ないとしても、これは約百億以上です、現在。林政協力その他治山関係の買い入れ等についても、治山関係の保安林の整備の買い入れなんかも全然使いものにならない、生産性のあがらない山をいま特別会計で買い入れをしているわけですから、これをいま十年間やって、十年間継続されて、また二十年間買うわけでしょう。総体にしてみればこれは相当なものであります。そういう公共的なマイナスの投資をやらざるを得ないということでやっているわけですから、また、林政協力という形で一般会計から繰り入れている。これもそうは長く続きはしないと思います。したがって、国有林特別会計の危機感というものをひとつ持っていただきたい。そして十分今後の特別会計の将来の見通しについて、いま言いにくくて言わないのだろうと思うのですけれども、長官もわからないわけじゃない、試算をしているというくらいですから、わかっておる。わかっておるのですけれども、自信がなくて発表できないというわけですから、相当これは苦しい結果になるだろうということが想像できるのであります。でありますから、ひとつこの点は、まだまだこまかく伐採、造林等について経理面で論争すればいいんですけれども、時間の制約を受けておりますから、きょうはこれでやめますけれども、とにもかくにも国有林特別会計というものは、いわゆるしぼればしぼるほど出てくるということ、黒字が出ると思ったらお間違いで、その出てきた黒字というものは、山が荒れるという結果になって今日蓄積されているということも十分ひとつ御理解いただきたい。これは目に見えておりませんので、また山はものを言いませんからね。荒れたなら荒れたなりになっておるわけなんです。こういう点をひとつ認識を十分改めていただきたい。特にきょうは大蔵省の主計官、来ておりますかな。
  263. 鈴木強

    主査鈴木強君) おりますよ。
  264. 北村暢

    担当委員外委員(北村暢君) 大蔵省の主計官は、ひとつそういう面十分考慮して、今後の特別会計の上において、昨年の林政協力費なんかも手切れ金ということで約束ついているやつをまたことし出さしたわけですからね。そういうことわかっておるわけですから、大蔵省がしぼればしぼるほど出るという認識を改めない限り特別会計はよくなりませんし、国有林はよくなりません。そういう点でひとつ、いま国鉄が大きな借金で悩んでいると同じように、まだ一回も特別会計は借金政策はとっておりませんけれども、それはいま言った山は荒れる結果になって残っておるという形で、借金政策もやり、また林野庁の幹部も相当大きな拡大造林なり、林道の投資をやらなければならない。これは私は借金政策をとってもいいと思うのですけれども、自信がなくて借金政策をとれない。それくらい憶病になっておるわけですね。ということをひとつ十分理解をして対処していただきたいということをくれぐれも要望いたしまして私の質問を終わりたいと思います。
  265. 鈴木強

    主査鈴木強君) たいへん恐縮ですけれども、私も多少の質疑をしたがったのですが、実はここでこういうことを、明日、たいへん恐縮ですけれども、建設省の審議の際に関係の方がおいでいただきたいのですが、大臣、お聞きになったかどうかわかりませんが、富士山の山の姿が自然崩壊といいますか、大沢くずれといいますか、そういうことによって霊峰富士の山容が、山の姿が変わりつつある、これについて何か対策をしてくれないかということで、山梨県側の知事からの要請が先般の政府与党との連絡会議の席上でそういう話が出て、総理大臣も善処を約束したという話がある、知っておられるかどうかわかりませんが。そこで、千メートル以上は農林省と建設省の所管になるそうですから、たいへん済みませんが、そのことについて建設省と十分連絡をとっていただいて、あす質疑をやりますので、どなたかおいでいただくようにお願いしておきます。  以上をもちまして、農林省所管に関する質疑は終了したものと認めます。  明二十四日は午前十時より委員会を開き、午前は郵政省所管について、午後は建設省所管について質疑を行なうこととし、本日はこれにて散会いたします。    午後五時四十一分散会      —————・—————