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1967-03-31 第55回国会 参議院 予算委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十二年三月三十一日(金曜日)    午後三時五十五分開会     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         新谷寅三郎君     理 事                 白井  勇君                 西田 信一君                 日高 広為君                 平島 敏夫君                 八木 一郎君                 亀田 得治君                 小林  武君                 鈴木 一弘君     委 員                 青田源太郎君                 青柳 秀夫君                 井川 伊平君                 植竹 春彦君                 梶原 茂嘉君                 熊谷太三郎君                 斎藤  昇君                 杉原 荒太君                 任田 新治君                 内藤誉三郎君                 中津井 真君                 二木 謙吾君                 船田  譲君                 増原 恵吉君                 宮崎 正雄君                 山下 春江君                 吉江 勝保君                 吉武 恵市君                 占部 秀男君                 岡田 宗司君                 北村  暢君                 鈴木  強君                 瀬谷 英行君                 羽生 三七君                 藤田  進君                 矢山 有作君                 山本伊三郎君                 吉田忠三郎君                 黒柳  明君                 多田 省吾君                 中沢伊登子君                 春日 正一君                 林   塩君    国務大臣        内閣総理大臣   佐藤 榮作君        法 務 大 臣  田中伊三次君        外 務 大 臣  三木 武夫君        大 蔵 大 臣  水田三喜男君        文 部 大 臣  剱木 亨弘君        厚 生 大 臣  坊  秀男君        農 林 大 臣  倉石 忠雄君        通商産業大臣   菅野和太郎君        運 輸 大 臣  大橋 武夫君        郵 政 大 臣  小林 武治君        労 働 大 臣  早川  崇君        建 設 大 臣  西村 英一君        自 治 大 臣  藤枝 泉介君        国 務 大 臣  塚原 俊郎君        国 務 大 臣  二階堂 進君        国 務 大 臣  福永 健司君        国 務 大 臣  増田甲子七君        国 務 大 臣  松平 勇雄君        国 務 大 臣  宮澤 喜一君    政府委員        内閣法制局長官  高辻 正巳君        内閣総理大臣官        房陸上交通安全        調査室長     宮崎 清文君        総理府特別地域        連絡局長     山野 幸吉君        警察庁刑事局長  内海  倫君        警察庁交通局長  鈴木 光一君        防衛庁長官官房        長        海原  治君        防衛庁防衛局長  島田  豊君        防衛庁教育局長  中井 亮一君        防衛庁経理局長  大村 筆雄君        防衛庁装備局長  國井  眞君        経済企画庁調整        局長       宮沢 鉄蔵君        経済企画庁国民        生活局長     中西 一郎君        経済企画庁総合        計画局長     鹿野 義夫君        経済企画庁総合        開発局長     加納 治郎君        科学技術庁原子        力局長      村田  浩君        法務省刑事局長  川井 英良君        外務省アジア局        長        小川平四郎君        外務省北米局長  東郷 文彦君        外務省条約局長  藤崎 萬里君        外務省国際連合        局長       服部 五郎君        大蔵省主計局長  村上孝太郎君        大蔵省理財局長  中尾 博之君        大蔵省銀行局長  澄田  智君        厚生大臣官房長  梅本 純正君        厚生省公衆衛生        局長       中原龍之助君        厚生省薬務局長  坂元貞一郎君        厚生省社会局長  今村  譲君        農林大臣官房経        理課長      稲垣 元宣君        食糧庁長官    大口 駿一君        運輸省鉄道監督        局長       増川 遼三君        運輸省自動車局        長        原山 亮三君        労働省労政局長  松永 正男君        労働省労働基準        局長       村上 茂利君        労働省職業安定        局長       有馬 元治君        自治省選挙局長  降矢 敬義君    事務局側        常任委員会専門        員        水谷 国一君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○昭和四十二年度一般会計暫定予算内閣提出、  衆議院送付) ○昭和四十二年度特別会計暫定予算内閣提出、  衆議院送付) ○昭和四十二年度政府関係機関暫定予算内閣提  出、衆議院送付)     —————————————
  2. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) ただいまから予算委員会開会いたします。  この際、一言申し上げます。  本日の委員会が、昨日の瀬谷君の質疑に関し各方面との折衝に時間を要しましたため、開会がおくれ、現在に至りましたことは遺憾でありますが、御了承を願いたいと存じます。  昭和四十二年度一般会計暫定予算昭和四十二年度特別会計暫定予算昭和四十二年度政府関係機関暫定予算  以上三案を一括して議題といたします。  まず、昨日の瀬谷君の質疑に関しまして、佐藤内閣総理大臣及び増田防衛庁長官から発言を求められておりますので、それを許します。佐藤内閣総理大臣
  3. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 政府としては、自衛隊法と、これに基づいて設置され維持されている自衛隊が、憲法に違反するのでないことは、憲法解釈論として一貫して堅持してきた見解であります。いわゆる砂川事件についての最高裁の判決は、自衛隊合憲、非合憲の問題については、これを否定もしておらないし、肯定もしておりません。
  4. 新谷寅三郎

  5. 増田甲子七

    国務大臣増田甲子七君) ただいま総理の御発言のとおりでございます。
  6. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) それでは質疑を続けます。瀬谷英行君。
  7. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 昨日の恵庭問題の判決関連をした事柄については、一応私の質問は打ち切りたいと思います。しかし、後々の審議の都合もありますから、若干の問題について御質問をしておきたいと思います。  防衛庁長官にお尋ねをいたしますが、それでは、自衛隊というのは軍隊と同じなのか違うのか、この点についてお伺いしたいと思います。
  8. 増田甲子七

    国務大臣増田甲子七君) 従来政府発言しておるとおりのことをお答えいたします。すなわち、近代戦を有効に遂行し得る意味軍隊ではないのでございます。ただ、防衛的の、防衛力を発揮できるという意味におきまして、もし軍隊とおっしゃるならば、おっしゃってもよろしいというのが従来の防衛庁政府発言でございます。
  9. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 従来もそういうことを言われておったかどうか、ちょっと記憶にないのでありますが、要するに近代的な戦争を行なえるという意味での軍隊じゃないけれども、そうでないという、近代的な戦争が行ない得ないという意味でならば、軍隊とおっしゃるならおっしゃってもかまわない。つまり軍隊であるということは認めると、しかしながら、近代的な戦闘を行ない得る軍隊ではないのだと、裏を返せばそういう意味になるのですか。
  10. 増田甲子七

    国務大臣増田甲子七君) そういうことでございます。
  11. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 戦力がどうあれ、ともかく軍隊であるということを、防衛庁長官は認められたわけであります。それならば、私のほうから再度お伺いいたしますが、自衛隊法にいろいろ書いてありますけれども軍隊というのは昔は選挙権を持っておらなかった。ところがこの自衛隊自衛隊法によって選挙権は認められております。軍隊任務を行なう者が選挙権を持つということは昔は禁じられておったのだが、いまはかまわない。その趣旨はいかようなものであるか、この点についてお伺いしたいと思います。
  12. 増田甲子七

    国務大臣増田甲子七君) 軍隊という程度のものではございませんから、自衛隊員選挙権を持っているわけでございます。御承知のとおり、治安関係、その他の関係におきまして種々の制約は受けておりまするが、選挙権を持っているわけでございます。
  13. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 自衛隊軍隊であるということを明確にいままで言われたことがあるのか、ないのか、ちょっと私は記憶にないのでありますけれども、本日防衛庁長官は、軍隊であるということを明確におっしゃられたので、その点総理にもう一度念を押してお聞きしておきたいと思います。
  14. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 先ほどお答えしておりますように、いわゆるその軍隊という観念をいかにつくられるか、そこに問題があるのだと思います。したがいまして、この自衛隊の仕事の本務、これはもう申すまでもなく、通常兵器によるその侵略、それも地域的な侵略に対しての抑止力、こういうものでございますから、そういうものを、いわゆる近代戦力を持つものが軍隊だ、こういうものと、これは区別されてしかるべきだと思います。したがいまして、増田長官が、どうしても軍隊だとおっしゃるならというようなことを実は申しましたが、私は、どうも観念的には、通常にいわれる軍隊とは違うように考えております。なお、これ正確を期する意味におきまして、一応法制局長官から答えさしたいと思います。
  15. 高辻正巳

    政府委員高辻正巳君) お答え申し上げます。  自衛隊軍隊であるかどうかという御質疑も、実は私の知る限り、いままでに何べんか出ております。正確に記憶しておるわけではございませんが、いずれにしても、自衛隊軍隊であるかどうかというのは、まず軍隊定義というのは何であるかということが先に立つわけでございます。で、いずれにしましても、自衛隊軍隊であるかどうかというのが実は重要な点ではなくて、自衛隊というものが憲法上の制約を持っておる、これはるる申し上げませんが、そういうものである、そういうものは通常いう軍隊とは性格が違うようだ。いずれにしても定義の問題に帰着するということを、しばしば申し上げておるところでございます。
  16. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 法制局長官の話はね、ことばは並べられましたけれども、何やら弁明めいていて、はっきりわからない。それで、要するに増田防衛庁長官が言ったのは、軍隊とおっしゃるならばと言ったけれども、私のほうで無理に言ったわけではない、決して。軍隊と考えてもよろしいかのようなことを言われた。戦力——近代的な戦力を備えていないんならば、これは軍隊であると、こういうふうに解釈をしてもよろしいのかと言ったら、そのように御返事になったのです。だから、いままで自衛隊軍隊であるということをはっきりと言われたことがないように私は記憶しておるので、そこで総理に念を押したわけなんです。答えとしてはそう長々と言うことはない、イエスかノーかなんです。その点もう一度、法制局長官ことばのようにわからないことばじゃなくて、端的にひとつ総理からおっしゃっていただきたい。
  17. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) いま答えたとおりでございます。
  18. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 じゃ、もう一回言ってください。
  19. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) いま総理が答えましたからね。質問をしてください、瀬谷君。
  20. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 いましゃべったことが思い出せないからそう言っているのです。
  21. 鈴木強

    鈴木強君 関連。私も約十年以上この国会でやっておりますが、いままでこの委員会でも、赤城防衛庁長官当時からもいろいろ論議がありました。軍隊かというと軍隊でない、自衛隊だという、戦力かというと戦力でない自衛力だと、こう言ってきたわけですね。いままでのように、近代的な戦力を遂行する力があるかないかによって戦力軍隊と言うか言わないかというような、そういう解釈法制局長官ないですよ、いままでに。いままでは明確に軍隊でない、自衛隊である、戦力でない、自衛力である、軍隊は持てない、自衛隊は持てるのだというのが、政府の一貫した態度であったはずですよね。  ですから瀬谷委員のおっしゃるように、この委員会で初めて増田防衛庁長官が、軍隊というなら軍隊でいいとみずから認めたのですからね。軍隊は持てないと言ったいままでの政府態度とは違うじゃないですか、そんなばかなことないですよ、いままでだって。総理もおっしゃっているのだが、解釈の問題になるわけですね。軍隊というものの定義のしかたによってと、こう総理もおっしゃいますけどね。いままでそういう御答弁はなかったわけですよ。そもそも吉田内閣当時からの警察予備隊がここまでくる過程というのは、いろいろ紆余曲折を通っていると思うのですが、この長い歴史の中で初めてそういう答弁をしたのですから、われわれは初めて聞くことばですし、それなら政府は、どうして軍隊といってもいいと言うのか、もう少しはっきりしてもらいたい。定義も含めてそこをはっきりしてもらいたい。
  22. 増田甲子七

    国務大臣増田甲子七君) 外国からの侵略に対処する任務の有するものをもし軍隊というならば、自衛隊軍隊ということができる、こういう局限された意味において私は使っておりまするが、なるべくは近代国家としての軍隊ということを言いたくないのでございます。自衛隊と言っておりますのでございます。
  23. 鈴木強

    鈴木強君 おかしいではないですか。軍隊と言ってもよろしいと言っておきながら、いまそこを、何か読みながら言うのには、なるべくは使いたくないのだが、そう言ったのだというのは、それはどういう意味ですか。そんなあいまいな態度防衛庁長官任務がつとまるのですか。もう少し明確に軍隊というのなら軍隊はこうだということを、はっきり定義を示したらどうですか。われわれは初めて、自衛隊というワクから軍隊というワクに入ってきておる。そうでしょう、最近、特車といったものが今度戦車と呼ぶようになったのだから。ここ十数年の間に非常に自衛権ということに名をかりて、九条に抵触する解釈がどんどん進んでいるのですよね。もっとはっきりしてくださいよ、そんなあいまいな答弁じゃ納得できませんから。これは総理大臣からももう少しはっきりしてもらいたい。
  24. 高辻正巳

    政府委員高辻正巳君) 先ほど軍隊であるかどうかというのは定義の問題になる、しかし、ともかくも、自衛隊というものは憲法上の制約を受けての性格があるので、それが特質であるということを申し上げましたが、軍隊といったらどうかということを、過去の国会審議の場でなかったのではないかというようなお話がございましたので、第十九回国会における一つの例を申し上げたいと思います。  昭和二十九年——だいぶ前のことでございますが、木村国務大臣が、一体軍隊とは何であるか、この定義でありますと、私がいま申したと同じことをおっしゃっておられます。「外部からの侵略に対して対処し得るものをもって軍隊ということであれば、まさしくこの自衛隊軍隊であります。……自衛隊わが国防衛任務に当る、不幸にして外部からの武力攻撃があった場合はこれを防ぐことを任務とするのだ、こういうことをうたわれておる」、そうして、そういう観点からの性格をとらえて軍隊というのならば、それは軍隊だろう。しかし、いま申したように、いま私も先ほど申しましたように、自衛隊軍隊であるかどうかという、そこが中心ではなくて、私の考えるところでは、自衛隊本質的性格、それが問題になると、それを軍隊というかどうかということになると思います。そういう趣旨のことを木村長官もおっしゃっております。
  25. 鈴木強

    鈴木強君 その古証文を出してきたのですけれども、それは、おそらく二十五年に警察予備隊になり、二十七年に保安隊になり、二十九年に自衛隊という名前になって今日に至っておるわけですから、おそらく二十九年に自衛隊になるときの、一つの次への過程においてお話が出たと思います。しかし、私は三十一年に当選してきております。その後、防衛庁長官と幾たびか、この問題で論議してきておりますが、軍隊ではない、自衛隊であるということを明確におっしゃってきているわけです。ですから、こういう点をはっきりしておかぬと、これは問題が私はあると思うから、あえて申し上げているのです。もう少し……。
  26. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) いま鈴木君が言われるとおりだと思います。自衛隊を、今後とも軍隊呼称することはいたしません。はっきり申しておきます。
  27. 鈴木強

    鈴木強君 もう一つ
  28. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 関連ですから簡単に願います。
  29. 鈴木強

    鈴木強君 それでは、総理がおっしゃるのですから、おそらく、最高責任者としての御発言ですから、その点は了承しました。  そこで、念のために聞いておきたいのですけれども、近代的な戦争を遂行するだけの兵力を持つか持たないか、自衛隊というものが。そういうことからして観念上の軍隊であるか自衛隊であるか、という論争があったんですが、いま旧憲法における日本の陸海空軍より強い力を持っているということは、これは赤城さんが私の質問のときに答えております。いま自衛隊は旧陸海空軍より強い力を持っている。それでも軍隊ではない、自衛隊だ、自衛力だと、こうおっしゃっておる。いまそういう近代的な戦争に耐え得るだけの自衛力を私は持っていると見ているわけです。その辺のごまかしが、どうも私にはかんにさわってしょうがない。そういうごまかしをして、国民を欺瞞することはもってのほかですよ。そういう点、総理はどうですか、近代的な戦力を持っているのですよ。
  30. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいま軍隊論争はこれでけりをつけていただいて、私は軍隊という呼称はいたしません。  また、わが国が持ち得る自衛力、これは他国に対して侵略的脅威を与えない、侵略的脅威を与えるようなものであってはならないのであります。これは、いま自衛隊自衛力限度だ。かように私理解しておりますので、ただいま言われますように、だんだん強くなっております。これはまたいろいろ武器等におきましても、地域的な通常兵器による侵略と申しましても、いろいろそのほうの力が強くなっておりますから、それは、これに対応し得る抑止力、そのためには私のほうも整備していかなければならぬ。かように思っておりますが、その問題とは違って、憲法が許しておりますものは、他国に対し侵略的な脅威を与えない。こういうことで、はっきり限度がおわかりいただけるだろうと思います。
  31. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 軍隊という呼称を用いないということだけを総理はいま約束されたわけです。ところが性格的な問題については、やはり軍隊であるということを防衛庁長官肯定をされているわけです。それで、足の長い爆撃機は持てるとか持てないとかいう論争衆議院予算委員会でありましたね。しかし、そうすると、足の長い爆撃機が持てるというのは軍隊である、足の短い爆撃機だったならば自衛隊である。こういうふうにもとれるわけです。まあ足が長いとか短いとか言ったって、飛行機の足のことですから、ニワトリの足や馬の足じゃないのだから、そう見ただけじゃわからないでしょう。その認識は、あるいはそういう判定は政府自身がやることであって、国民にわかっても、わからなくても、政府自身がやることである。こういうことなんですか。
  32. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) いま私が鈴木君に答えました、他国に対して侵略的脅威を与えるものであってはならないということを申しました。ただいま足が長いとか短いとかいう論争がございますが、ただいま私ども限度として置いておりますものはそこにありますから、そういう点でいまの足の長い短い、また皆さん方も、これを政府が認定したからといって、黙ってはおられないだろう。国会におきまして、私は責任のあるお話をしておりますので、皆さま方ともお約束したものだと、かように御了承いただきたいと思います。
  33. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 それならば、国会約束をするのならば、足が短いとか長いとか、そういう内容については、これは軍の機密であるというようなことでごまかさないで、今後も明らかにしてもらうということを約束をしてもらいたいと思いますが、防衛庁長官よろしいですか。
  34. 増田甲子七

    国務大臣増田甲子七君) 軍の機密に関すること以外はすべて民主的の原理によって行動いたしたいと思っております。
  35. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 その機密というのはどういうことなんですか。足が長いとか短いとかいう内容を含めて軍の機密に属することなんですか。
  36. 増田甲子七

    国務大臣増田甲子七君) おそらく衆議院における論争になった問題のお話だと思いまするが、将来のF、すなわち戦闘機のX、どういうものを選ぶかというような問題でございます。このFX選定につきましては、総理のいつも、常におっしゃっておるとおり、他国脅威を与えないという範囲において、憲法に触れないように、私どもは慎重に選定をいたす。こういうことを言明いたしておる次第でございます。
  37. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) いまの軍の機密、これは一般的、抽象的なお話をしたと思います。したがいまして、具体的な問題についてこれからいろいろ疑問が起きたりなんかする。そういう場合の質問を前もって押えておるのじゃございませんから、ただいま具体的にいろいろ疑問が出てきた、それに答えるのだ。はたしてただいまのような軍の機密に属するかどうか。そこは具体的に処理したらいい。かように私は思いますので、私からも特にその点の御了承を得たいと思って発言しております。
  38. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 その具体的に処理をする。機密ということはあり得る。予算審議の段階においても、その内容については公にできない問題がある、説明できない問題がある。このように解釈をされるのですが、それでよろしいですか。
  39. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私、さように考えております。
  40. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 これは、これからの三次防の審議にあたってきわめて重要な問題になってくると思う、これは。そのばく大な予算内容について、その必要性根拠等を追及をするにあたって、これは軍の機密である。具体的な問題としては言明できない、説明できない。こう言われれば、国民はその予算内容について全然そしゃくしないまんまこれをのみ込んでしまわなければならぬということになる。長良川のウのようなもので、全然これは内容がわからないまんまにのみ込まなきゃならぬということになるのですが、予算審議の点からいって、こういうことがはたしてあり得るのか、あっていいのか、その点について再度お伺いしたいと思う。
  41. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいまいろいろ原則論的なお話でございますが、私は第三次防衛計画につきましては、いろいろお尋ねがあるものだと、これは用意いたしております。長良川のウと言われますが、長良川のウはのみおろさないので問題なんです。だから、のみおろすわけではございませんから、長良川のウとは違うようです。
  42. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 かまないでのむことを言っているのです、その点じゃ同じことだと、それで、われわれ国会予算審議する場合に、あるいは国民が知りたいと思っていることを、全然そしゃくしないで、まるのみ込みしなきゃならぬということになっている。それじゃ消化不良になってしまう。国会審議もそれじゃいかぬと思うのです。国民は納得できないという問題が、防衛予算が大きくなればなるほど比重が高くなってくるということを心配しなければならない。その点について国民の誤解を招かないという自信がおありになるのかどうか。防衛庁長官、第三次防衛計画をこれから提案をされるに先立ってその点をお伺いしておきたいと思います。
  43. 増田甲子七

    国務大臣増田甲子七君) 瀬谷さんにお答えいたします。でき得る限り申し上げまして、慎重御審議を皆さまにお願いいたしたい、こう考えておる次第でございます。
  44. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 かなりこれは重要な問題について防衛庁長官からも言われましたし、問題があると思いますが、時間の制約がございますからこれはあと回しにいたします。後ほどゆっくりこれは審議させていただくことにいたしまして、先に進みます。  きのうの藤田さんの質問の中で法務大臣がお答えになりましたけれども、自民党のパンフレットが藤田さんのところにも行った。その内容はきわめて露骨に社会党を攻撃誹謗しておるものである。風格なんかちっともないということ。そういうものを発送しておるけれども、日にちが三月十八日だからこれは政治運動であって、法律的には問題にならぬということをおっしゃった。到着したのが選挙が始まった後であっても、発送された日付が十八日であればかまわない、このように解釈をしてよろしいのかどうか。
  45. 田中伊三次

    国務大臣田中伊三次君) お答えを二度にわたって申し上げたので、そういうふうにおとりをいただいたこともやむを得ぬかと思いますが、真意はそうではございませんので、十八日の日付である。大体東京都内でありますと一日ないし二日で到着をする、こう考えますと、二十日には配達ができておるのであろう。そうすると、立候補前であるということになります。すなわち、選挙の始まる以前の政治活動文書である、こういうふうに申し上げたつもりでございますが、なお、ただいまのおことばに従ってその以後はどうかということを申し上げますと、以後でありましても政党の行なう政治活動であれば差しつかえがない。前後を問わず差しつかえがない。前とうしろと意味が違う、こういうことでございます。
  46. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 藤田さんの話によると、着いたのは二十三日だと。そうするとこれはどういうことになるのですか。
  47. 田中伊三次

    国務大臣田中伊三次君) ただいま申し上げましたとおり、選挙期日に入りました後でありましても、政党の政治活動として見るべきものであろう、こう考えます。
  48. 占部秀男

    ○占部秀男君 ちょっと関連。きのう法務大臣は、藤田氏への答弁について、選挙運動期間以前の文書だから問題はないのだ、こういう答弁をされておるのです。速記録にはっきりしておると私は思うのです。いま言われたのは、選挙期間に入っても問題がないのだ、こういう答弁をされたんで、これは答弁が食い違っていはしないかと思うのですが、その点はどうですか。
  49. 田中伊三次

    国務大臣田中伊三次君) 選挙期日以前に到着をしておったとすればさらに問題はない。選挙期日以後になっておりましても、本件のごとき内容を持つものでありますならば、政党の政治活動と見られますのでこれも問題はない、こういう意味でございます。
  50. 藤田進

    ○藤田進君 関連。私の質疑関連いたしておりますので申し上げたいと思いますが、非常に慎重を欠いていると思います。法務大臣について昨日質疑をしたいと思いましたが、時間の都合でできなかったことは残念ですが、あなた自身がお茶会の取り消しだの招集、何万出しましたか。これはだれが見たって非常識ですよ。それは後楽園かどこかの野球場を借りて、望遠鏡を持ってこい、お点前があるからというようなことならいざ知らず、非常識千万です、あなたの言っておることは。それと同様に、発送しておる被疑者が書いておる日付をそのままのみ込んで、捜査も何もしないで、日にちが十八日だからどうという断定があなたできますか。どろぼうだ、どろぼうだと言って巡査をつかまえておいて、どろぼうは逃がしてしまうということさえわれわれ控え室では言っておる人もあるのです。もっと慎重に——当然十八日ないしあるいは翌十九日に受け取っているはずだ、まるっきり二十三日に受け取ったのはうそだと言わぬばかりでしょう。これは事をかまえようと思えば、このケースは少なくとも二十一、二日に出していると見ていいでしょう。けれども出す日付は十八日にしている。そんなことは出す人が自由にできるんです、良心のない人ですから。十八日ではない、十七日にしたかもしれない。ですから、それだけを取り上げてもこれはもう問題なんです。これが一つ。  政党の活動には限界があるはずです、選挙の前後あるいは選挙期間中政党がやれば何でもできるものではないんです。昨日提示いたしました内容からして、あなた見たんですから、軽々に事前運動ないし選挙中の特定候補の投票依頼、たとえ名前は何々と出ていなくても単数の候補である、そういう場合にはそれが許され、法務大臣がここでおっしゃるということになれば、これは各党それをやる、あるいは無所属の議員もやる、候補者もやるということになれば、これはもう選挙法のいう法定選挙費用その他こんなものにむろん抵触するでしょうし問題があるんです。私は時間がないので申し上げませんでしたが、もっと慎重であってほしいと思う。いかがですか。
  51. 田中伊三次

    国務大臣田中伊三次君) きのうの文書は私はこの席で拝見をいたしまして、そうして拝見をいたしましたところが、料金別納となっておりますので郵便局のスタンプがない。何日に発送して何日についたという想定が困難である。そこで中身を見ますと、いま仰せのように十八日の日付になっておる。一応あの文書を、これを見ろといって突きつけられて拝見をしてみると、添書の中身の十八日に出したものと一応推定をする以外にない。しからば、東京都内であると二日内外にして到着するであろうと考えて、選挙前に着いたものとすればこういうものである、選挙後に着いたものとしてもこれは政治活動であるということの見解を述べたのであります。決して詭弁を弄しておるわけではないのであります。  そして一つ重要な、何党にいたしましても、政党の行なう政治活動に関する御所見でありまして事は重大と思います。この種のものがいけないということになれば、これを出しました本件発送の政党のみならずどの政党にとりましても、著しく政治活動を制限されるという重大問題をかもすのでございます。そこで一口申し上げたいと考えますことは、選挙前の原則、ひとつわが国の公職選挙法というものの精神及びその成文のたてまえというものを御了解をいただかなければなりませんことは、一切の政治活動は選挙前後を通じてよいのであります。これは間違いがない一貫した考え方であります。ただし、選挙前と選挙後はどこが違うかと申しますと、選挙前の場合においては、特に重要なのは、選挙がきたら特定の候補をよろしく頼むぞということの依頼の趣旨、本人が出しました文書について申せば、私のためにどうぞ票を入れてくださいという意味の意思表示が含んでおります場合は事前運動として厳格に処断される、そういう文書の意思表示がない限りは、言論の場合でも文書の場合でも大いに戦ってやってよろしいということがわが法律のたてまえでございます。そのたてまえをひとつ頭に置いていただきたい。何もかもいけないんだということでこれは一体何だというふうにお考えをいただかないように、たてまえは憲法のもとにおいて自由である、これを制限している法律はない。ただ一ついけないというのは、選挙のために頼むということを政党の場合なら特定候補をさしておる。本人が出した場合であるというと、本人が得票の意図を表明する文章があってはならぬ、この一点です。一点以外はもう正々堂々とこの政治活動をやってよろしい、そういうたてまえがわが選挙法の基本的たてまえである、こういうことをどうぞお考えいただいて御所論を願いたいのであります。詭弁ではないのであります。
  52. 藤田進

    ○藤田進君 これはそういう抽象的なことではない。第一、政党が演説会を持つ場合、あるいは選挙中でも、あなた政党の活動は自由だとおっしゃる。政党であってもポスターを張る場合でも、これは検印が必要なんです。制限されているのですよ。制限されているから、掲示したものが表面に出ないで各家庭に送ったんです。よもや藤田進が参議院議員で社会党なんて書いてなかったので知らなかったのです、これはね。私にあなたのほうの推薦の候補者を支持するよう求めてくる、またはそれをほのめかしたりは通常の場合はしないです、これね。ですから、私に出したことはミスであったことは間違いない。しかし、不特定多数に相当出ていることは各所で今度点検してみてわかった。ですから、ポスターというものでさえ制限されている。それを補充するために特定政党が特定候補者を支持する、これは政治活動だから自由だとおっしゃれば、これは何をか言わんやです。選挙法には政党といえども、その選挙活動の制限をしてあります。政党の活動として、それがただ、まあそれは政党の活動だといえば、大手を振って通るというのは、これは大間違いです。たとえば佐藤総理大臣、応援に来たるなんということが選挙中あるでしょう。あれはすれすれだと言われておる。あれが何々候補応援のために来たるじゃ、これはだめなんです。政党の活動に総裁が来るんだからね。何々候補の応援だってよさそうなんです、あなたのおっしゃるのでいけば。これは特定候補を支持当選せしめ、または当選せしめないために行なわれることは、たとえ政党であっても、これは禁止してあるのです。あなたの選挙法では何万という人にお茶会の招集しようが、またこれを断わろうが、これは政党活動か何か知りませんが、これは問題ですよ。類似の行為としてこれは禁止されております。どうなんです、あなたは大きい声をしさえすれば、政党活動が合法化されるなんていうと、そうはいきませんよ。
  53. 田中伊三次

    国務大臣田中伊三次君) 先ほど申し上げたとおり、選挙期日以前のものについては自由であると、ただし、いけないのは、投票を得る意図を持った言動はいけない、こういうことです。それからかみ分けていただきたいのは、選挙期日後におけるものは、トラック一つにいたしましても、看板の制限から連呼の制限から時間の制限、みなございます、御承知のとおり。けれども、本件等の出しましたこの文書というものにつきまして申し上げますというと、これは自由が許される。この文書活動はやってよろしいということを申し上げておる。選挙期日の前と以後はそこが違うという意味でございます。それから私の茶会のはがきの問題について規則違反ですよと仰せになりますが、たいへんことばを返して申しわけありませんが、第何条のどこに違反をするか、これをお聞かせいただければ、反省の資料といたしたいと存じます。
  54. 藤田進

    ○藤田進君 取り締まる法務大臣が、審議している議員に聞かなきゃならぬような態度でどうするのですか。国会審議はどういう方式で行なわれるのか、時間をいただけば、私これから選挙法を読み上げてそこに出ますよ、いいですか。そんなわけのものでもないでしょう。あなたたちが公職選挙法の解釈について、これは対立があることは、私は認めます。あなたのお茶会については、これは合法であるという条文は明らかにありませんよ。そんなことをきめた覚えはない。しかし、事前運動としていまおっしゃる政党の活動といえども、選挙期間中であろうが、それ以前であろうが、事前運動として禁止されている事項はあるのです。そうでしょう。あなたのお茶会についても、これは断わり状を出されたということですが、一々数えていません。伝えられるところによると、たいへん非常識な数ですね。これは毎年やっているのだと、そういうようなことが、これはどう判断しても選挙運動につながる。田中さんはたいしたものだ、おれにお茶会の招待状をいただいた、また御丁寧に断わり状もいただいた、名前を売る売名的な選挙の場合には方法は幾つもとられているでしょう。あるいは著書の形で名前を書いて、著者何々と街頭に張る。これも実は選管その他から注意を受けているでしょう、著書で受けています。ただ単独に何々講演会といっても、名前を非常に強く出して、いかにも名を覚えさせるためのというものも、これは注意を受けて撤去を言われている、事前であってもですよ。あるいは今度の北九州市谷伍平なんというのも私も見に行きましたが、駅の周辺から、そのあとは今度いま知事に出ておられる人のあれでしたが、そういうものも好ましい状態ではないという、ほんとうにすれすれだと言われている。こういうことで、あなたのいまのお茶会の問題にしても、昨日提示した文書にしても、これは問題があるのです。問題があるのだが、野党の場合にはすぐ検察活動になっているんですよ、それが現行犯ということで逮捕にもなっているのです、ここに問題がある。選挙は、政権の権力を持つ者も持たない者も公正に行なわれなければならぬはずなんです。これを指摘しているのです。おそらくまだこれから瀬谷君が指摘する具体的な問題もあると思う。これらの質疑の中で事態も明らかにさらになってくると思う。時間をいただければ私そこへ出て、公職選挙法ずっと解釈し、やりますよ。それは私も何年も選挙法取り組んできたのですから、そうしましょうか。
  55. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 関連質問ですから簡潔に願います。
  56. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 大臣のほうから、何条が該当するのか教えてくれ、こういうふうに言われたのだから、大臣のほうから言われたのだから、これは時間をかして、後ほど出してもらうということを委員長に認めてもらいたい。で、その間に私ほかの問題をやります。  都知事選挙の問題についてちょっとお聞きしたいのですけれども、前回の都知事選挙というのは史上空前と言われるほどみにくい選挙だったとこう言われている、にせ証紙であるとかなんとかいって、たいへんに汚名を残したのですよ。今回はきれいな選挙をやらなければならぬということで、テレビやなんかで候補者も出てやっておりますが、きれいな選挙に徹する、こういう気持ちが、自民党総裁としての佐藤さんにもおありになるのかどうか。
  57. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) この点では衆議院本会議におきまして、社会党佐々木委員長から私の所信も聞かれました。両党とも公明正大に堂々と選挙を戦おう、かように私お答えしたばかりであります。
  58. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 財団法人三悪追放推進協会、こういうのがあるのですが、この三悪追放推進協会の会長は菅原通済氏です。この人が三月二十三日の三時から全共連ビルにおいて御懇談いたしたいから御参集願いたい、このいう書面を出した。で、総会か何か知りませんが、そこに行った人の投書というのがある。菅原通済氏の三悪追放の会に出席して実に驚きました。その発起人には佐藤総理、東龍太郎等顔を並べて、ていのいい松下候補の選挙運動です。厚生省の課長、全国婦人相談員代表の謝辞、こういうのがある。菅原氏が婦人相談員の給料予算をとったのですか、筋道から考えて変であるし、厚生省の役人や婦人相談員が、民間の菅原氏にありがとうを言わねばならぬのか、国の費用で役人が松下候補のお先棒をかつぐのか、あまりにもいやらしいやり方で、婦人相談員は見るに見かねて、こういうことを投書するのだ、こういう投書がありました。この会合には福田幹事長が来賓として御出席になって、皆さんの顔が全部票に見えますと、こうおっしゃった。この三悪追放推進協会の発起人代表は菅原通済、総理大臣佐藤榮作、それから東龍太郎、荒垣秀雄、石井光次郎、川島正次郎、鈴木善幸——法務大臣の田中伊三次さんもここに名前を連ねております−福田赳夫あるいは福永健司、坊秀男水田三喜男、山口喜久一郎、こういうふうにお歴々が全部名前を並べている。こういう菅原さんの三悪追放推進協会なるものは事実上自民党の都知事候補の応援をやっておる。こういうことなんでありますが、こういうことは一体よろしいのかどうか、きれいな選挙に恥じないことになるのかどうか、お伺いしたいと思います。
  59. 林塩

    ○林塩君 関連
  60. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 答弁がありますから。
  61. 坊秀男

    国務大臣(坊秀男君) 御質問の三悪追放推進協会と申す協会は、総理府に設置されております売春対策審議会、この売春対策審議会から性病予防対策に関する意見というものを去年の十月に総理大臣及び厚生大臣に対しまして意見を出されたわけであります。その意見によりますれば、今日、日本の社会悪の根源はいわゆる三悪——麻薬、性病、売春といったようなものから発生することがきわめて多い、これをどうしても予防をしていかなければいけないというような趣旨から、もちろんこれに対する政府の指導といいますか、取り締まりというか、これはたいへん大事なことであるが、しかしながら、こういったようなことを防止していくためには、どうしても、政府がやることも必要であるけれども、民間の組織的な動き、組織的な運動といったようなものが、これが大事である、こういうような意見があったわけでございます。そこで、その後、この趣旨を受けまして、いま仰せられましたような発起人の方々が三悪追放推進協会というものをつくるということになりまして、その三悪追放推進協会が、厚生省の主管として、これは正式に東京都を通じて厚生省へ申請がきたわけであります。私どもといたしましては、厚生行政としては、いわゆるこの三悪というものを防止するということがきわめて国家的に重大なることである。また、それを実施していくためにはやはり民間の強力なる組織というものが非常にこれは有効適切であるとかように考えまして、しかも今日までそういったような三悪を、これを一体として三一的関連と申しますか、そういったような関連のもとにこれを実施していくというような組織も機関も今日まではありませんので、そこでこの三悪追放推進協会というものが発足をいたしたわけでございまして、これが二十三日でございまするか、菅原通済会長から通知があって特定の人が行かれた。私はこれは存じておりませんが、その席で福田幹事長がどういうようなことを申されたかということも、これも私は存じません。ただ、厚生省の役人が参りましてそうしてあいさつをするというようなことは、これは厚生省が主管となっておる協会でございまするから、そこで厚生省の役人が参ってあるいはそういった場合に事務的な説明もしなければならないということもございますし、通例、そういったような協会の集まりには厚生省の所管の担当のだれかが参るということが通例となっておる。こういうようなことが決して選挙と関連のあるというようなことは絶対にございませんと私は思っております。
  62. 林塩

    ○林塩君 関連。三悪追放の問題につきましては、従来婦人団体が非常な熱を入れており、それからまた、この問題は、長くこの問題自体に非常に興味を持って個人的にも努力をしてまいりました婦人議員もございます。したがいまして、こういう問題は人道主義の上から立ちまして、一方に偏することなく、やはり超党派的にできるのがほんとうであろうかと思うのであります。その意味におきまして、今回このむずかしい事情のときにいまの問題が理解に苦しむような立場においてなされたことにつきましては私も非常に異論を持つものでございますが、聞くところによりますと、いろいろな意味でこれが厚生省の予算その他にも関係するのだというようなことを巷間聞いております。こういうことがもし行なわれますならば、やはり選挙その他の公正というようなことにつきまして、よき選挙をしますためにも、都民はおろか、やはり何といいましても選挙の公明ということにつきまして大きな影響を及ぼすと思うのでございますが、なぜこういうふうに一党に偏せられたかということにつきまして理解に苦しむのでございますので、その点ひとつ御釈明を願いたいと思います。
  63. 坊秀男

    国務大臣(坊秀男君) 決して三悪追放推進協会は一党に偏しているというようなことはございません。発起人の方々の中には学識経験者等もございますし、それから理事者の中には、党の関係者といったようなものは一人もおりませんから、党と関係はございませんです。
  64. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 厚生省のほうから生活課のほうに二千万円、麻薬関係に二千六百七十五万円、性病関係に二千万円補助金が出ている。つまり、この補助金はこういう協会のほうに用いるための補助金というふうに考えられるそうでありますが、当初はこの予算は計上されておらなかったのが後ほど増額になっている。しかも、菅原通済氏が知事候補として出るという話があったのだけれども、途中でもってどういうかげんか知らぬけれども、菅原さんが辞退をすることになった。菅原さんの辞退ということと厚生省のほうの補助金、こういう関係、しかもこの三悪追放推進協会のメンバー、これは先ほど言い落としましたけれども、西村建設大臣から、剱木文部大臣、増田防衛庁長官、こういうようなところも全部網羅しております。全く自民党オンリー、こういうことになっている。この辺にやはり相当疑惑を持たれてもしかたがない。つまり、自民党オンリーの背景のもとにこの協会を発足させて、しかも、その総会の席上で松下候補の依頼ということが福田幹事長によって行なわれたということになりますと、世間の疑惑というものがこれは解けないことになるのじゃないか、その点、厚生大臣のほうから、そういう心配がないならないというふうにもっと明確に補助金の関係をも含めて御説明いただきたいと思います。
  65. 坊秀男

    国務大臣(坊秀男君) 三悪追放協会には、いまおっしゃったような補助金は出ております。ところで、売春対策審議会から意見が出てまいりましたのが去年の十月の三十一日でございます。そういたしますと、予算編成上大蔵省へ各省が概算要求をいたしますのが八月の三十一日と、こういうことになっておりますので、もちろん、その八月の三十一日までには概算の要求をいたしておりません。そこで、意見が出てまいりましたのが十月の三十一日、で、その後この協会が東京都を通じて厚生省へ参ったのが二月の二十二日か三日ですか、そしてこれを——ちょっとお待ちください、いま調べます。——東京都知事を通じまして昭和四十一年十二月の十五日に厚生省へ申請があった。これをいろいろ検討の結果認可いたしましたのは同月の二十二日でございます。そういうようなわけで、そのときまでにはこれは予算の要求はいたしておりませんが、こういったように、三悪追放の推進母体というものもできまして、それならひとつ厚生省といたしましては厚生行政を外郭団体によって啓蒙宣伝していただいて、そして三悪を追放するということに資していただくというために、予算の要求はおくれてはおりますけれども、そういうような次第で、最初からは要求していないと、こういうことでございます。
  66. 占部秀男

    ○占部秀男君 関連。いまの大臣の説明を聞き、さらに瀬谷議員の福田幹事長云々の問題を聞きますと、何か利益誘導に関係のある、これは非常にとり方によっては大きな問題であるというふうに考えられるわけであります。そこで具体的にこの三悪追放推進協会なるものがどういうような人たちによって設立発起人が占められておるのか、その発起人の名前を具体的にひとつ知らしていただきたい。この名前の構成のいかんによっては非常に重大な問題になると思いますので、その点お願いを申し上げたいと思います。
  67. 坊秀男

    国務大臣(坊秀男君) では、設立発起人を五十音順で申し上げます。敬称は略します。菅原通済、佐藤榮作、東龍太郎、荒垣秀雄、安西浩、石井光次郎、上田常隆、川島正次郎、鈴木善幸、瀬川八十雄、竹内勝、田中伊三次、田辺繁子、塚原俊郎、中野四郎、福田赳夫、福永健司、坊秀男、水上達三、水田三喜男、森清、安田巌、山口喜久一郎、若林清、以上でございます。
  68. 藤田進

    ○藤田進君 婦人団体、だれか入っていますか。
  69. 坊秀男

    国務大臣(坊秀男君) 婦人は入っておりません。いや、田辺繁子……。
  70. 占部秀男

    ○占部秀男君 いま大臣が読まれました発起人はすべてで二十四人であります。このうち、佐藤総理をはじめ現在の政府の大臣あるいは自民党が推薦をしておる東都知事あるいはまた自民党の幹事長、衆議院議員その他がこのうちの、人数にして六割以上を占めておるわけであります。こういうような構成の中のこの会合で、福田幹事長が、みんなの顔が票に見える、こう言うことは、これは明らかにあとの厚生省の予算関連して利益誘導の私は疑いがあるのじゃないか、こういうものこそ検察当局は厳重に調べるべきものじゃないか、かように私は考えるのですが、その点について佐藤総理はどういうふうにお考えになっておるかお伺いしたい。
  71. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) この三悪追放推進協会、これは私は、ただいま坊君からお話しをいたしましたように、性病であるとか、あるいは麻薬であるとか、この三悪、これを追放したいと、社会悪でございますから、これについてはだれも異存はないことだと思います。ただいまそこの発起人が大体自民党が占めておる、こういうことでふに落ちない、こういうお話でございますが、これはしかし他の皆さん方の御協力をはばむものでは絶体にございません。この三悪追放に御賛成ならば、その発起人——これは別ですが、これはぜひとも御協力願って、国民運動としてただいま展開しているのでございますから、その点では誤解のないようにお願いいたしておきます。それが一つ。  それから第二の問題としまして、ただいまこれが東京都知事選に関係がある、こういうことでいろいろ御批判を受けておりますが、私は全然関係のないことだと、かように確信をしておりますので、それらの点についてのいろいろの疑い等については、これは十分それぞれ疑問があれば一そう私どもも反省もし、あるいは取り調べてみますが、しかし、私自身、いまもう一度取り調べるというような必要はないように実は思っておる次第でございます。
  72. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 まあ、自民党以外にも呼びかけるというのですが、都知事選挙が終わってから呼びかけられたのじゃ、これは間に合わなくなる。特に私が疑問に思ったのは、売春とか麻薬とか性病とか、こういうものをだしに使って都知事選挙を有利に導こうといったようなことは、きれいな選挙という趣旨に反するのじゃないかということが言いたいのです。  それから、総理にもう一点お伺いしたいけれども、あなたは三多摩地方を回られたときに、中央に直結する政治ということを盛んに強調された。この中央に直結する政治ということは、総裁をはじめ各地方において自民党の方が言っておられるけれども、中央に直結する政治というのは何かといったら、東知事なんかの場合はもう間違いなく中央に直結した政治なんです。しかし、東京都に都政なしということで、東さん落第しちまったでしょう。中央に直結する政治が落第したわけなんです。それならば何も自慢をして中央に直結する政治ということを強調する必要はないのでありますけれども、それは中央に直結しなければ、つまり自民党の知事でなければ損をするぞということをほのめかす意味で言っておられるのか、社会党の知事、あるいは革新系の知事なり市長であったならば差別待遇されるというようなことがあり得るのか、そんなことはあっちゃならぬと思うのでありますが、その点、総理の見解をお伺いしたいと思います。
  73. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私は中央に直結する地方自治というようなことは、今回の選挙に関する、また、その以前からも特に注意をしてさような発言はいたしておりません。これは他の機会にもいろいろお話がございましたが、この地方選挙は地方住民の福祉、これを念願する地方行政と、かように考えますので、必ずしもわが党の党員であることを必要としない、こういうことはしばしば申し上げておるのであります。ただ、中央と地方、この地方自治が完全に自分たちのところだけで仕事ができるわけではない。そういうことを考えますと、やはり中央との関係、これが密接であることが望ましい。こういう意味で、私は、いわゆる中央に直結する政治、こういうことは申しませんが、皆さん方もしばしば、地方自治は三割自治だと、あるいは一割五分自治だと、こういうことか言われる。これは中央にやはり依存する事情にある、中央との関係におきまして地方行政が万全を期する、こういうものだと思います。私はその点の指摘はいたしてはおりますけれども、そこで私と全然違う立場において、そして地方自治をやろうといったって、それは無理だ。私が政権を担当している限り、私は党派によって区別はいたしませんけれども、私のところにも陳情にも見えないようなそういうようなところだと、これはなかなか私に政治を公平にやれと言われてもそれは無理だと、かように私は思います。ただいまのような、中央に直結する政治、かようなことは私は申しておりません。はっきり申し上げます。
  74. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 いま総理発言のうち、ちょっとぐあいが悪い点があったのですが、私のところに陳情にも来ない、こういうのではぐあいが悪いと言った。陳情に来ればやるけれども、陳情に来なければやらぬというように聞き取れる。陳情政治というものは、やはり排撃しなければならぬ。党派によって区別はしないというふうにおっしゃりながら、陳情にも来ないのではどうもやってやれないんだ、これはまことにまずいと思うのです。誤解を招くことばだと思いますから、これはあらためて総理から言ってもらいたい。
  75. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私も地方の実情についてはいろいろくふうはして、勉強はいたしておりますけれども、やはり地方の実情をじかに聞くという機会がない、そのことを例に申し上げたのです。私は別に区別するつもりはございません。そういう意味でございます。
  76. 占部秀男

    ○占部秀男君 関連して。  総理はいま、都知事の選挙について公正にやるという基本的な考え方からの御答弁がありましたけれども、これと関連して、先ほど法務大臣は、政党の活動、これは選挙期間中の問題についてとそれ以外の問題についての話があって——ちょっと法務大臣聞いてください、いいですか。聖徳太子かな。——あって、選挙期間中といえとも本来の政党あるいは確認された政治団体の選挙法によるところの政治活動は自由である、それがたてまえであると、こういうふうに言われたのですけれども、この二つの問題と相反する問題がいま東京で起きていて、自民党及び自民党政府が美濃部さんの選挙を干渉すると、こういうような問題が起きているので、私はその点をひとつ明確にしてもらいたいと思うのですが、それはけさの朝日新聞に、いわゆる美濃部さんのほうの「あかるい革新都政をつくる会」、この会で会の政治活動の資金を街頭募金をする、こういうことをきょうやろうとしたわけですが、これについて警視庁は、選挙違反の疑いがあるというので、代表に出頭を命じて、そしてこれをやらせないようにしよう、こういうことをしたということを聞いたわけです。そこで私は、この内容について、その代表の方にもお話を聞いたのでありますが、この警視庁のほうの考え方によると、選挙の費用については、これは御存じのように、匿名の寄付行為の禁止というものがあって、これに該当するのではないかという点が一つと、それからもう一つは、この署名を求めて寄付を受けるということは、署名活動の禁止の条項、これは百三十八条の二でありますが、これに該当するのではないかということ。もう一つは、この「あかるい革新都政をつくる会」の看板やあるいはビラ等を立てることによって、公職選挙法の百四十六条、あるいは二百一条の特定候補者の名前に結びつけた文書の禁止の問題、こういう問題にひっかかったり、あるいはまた連呼行為の禁止の条項にひっかかる。そこで、この問題は疑いがあるのでという警視庁の考え方である。ところが、これについては、「あかるい革新都政をつくる会」のほうとしては、選挙の費用ではなくて「あかるい革新都政をつくる会」の活動資金である、これはもう問題はないのです。それから第二番目には、選挙期間中のいまの署名活動にしても、署名活動なんかしないのだ、しかも立て看板その他は一切しないで、袋だけを持っているだけだ、ただ募金をしてくださいということをお願いするので、連呼ではないのだ、それにもかかわらず、こういう形はおかしいじゃないか、こういうことでいま対立をしているわけです。そこで私は総理並びに法務大臣にお聞きをしたいのですが、一体、法務大臣の言われるように、政党なり確認団体の政治活動というものは元来が自由である。自由であるけれども、選挙期間中は法の十四章の三以下によってこれこれこれこれはできないのだということになっている。してみれば、寄付行為というもの、いわゆる募金というもの、これは禁止をされてないのですね。公職選挙法では禁止されていない。確認団体としてのその会の活動資金を募集することは、これは当然なんです。当然の行為として自由であるべき——あなたの言われた自由であるべき行為をやった後に、それが選挙違反の疑いがあるとか何とかいうならば、これはまた別であります。やらない前に、選挙違反の疑いがあるといって、そうして代表者を呼び寄せて、そうしてこれを禁止をしようなんというのは、これはおおよそ総理の言われる明るい選挙、あるいはまた法務大臣が先ほど言われた政党及び確認団体の政治活動は本来自由である、こういうことと全く相反する結果になってきて、そのこと自体は美濃部候補に対する干渉になるのじゃないかと私は考えるのですが、この点はいかがでありますか。  なお念のために、自治大臣にもお伺いをしたいのでありますが、いまの「あかるい革新都政をつくる会」街頭募金、これは選挙違反として禁止すべきものと考えるか、あるいは選挙違反ではないのだと、これはもう当然政治活動としてやっていいものであると、こういうふうに考えるか、どちらか明らかにしていただきたい。いまの二点。
  77. 藤枝泉介

    国務大臣(藤枝泉介君) 警視庁のことでございますので、私からお答え申し上げます。  いまの「あかるい革新都政をつくる会」の問題につきましては、会のほうの責任者の方から警視庁にいろいろ問い合わせがございまして、こうした選挙期間中にこういう運動をされる場合に、特に街頭で募金をされる場合に、公職選挙法に違反になるような関連しておそれもございますので、十分にそういう点は御注意をくださいと、そういう意味のことを申し上げたのでございまして、禁止的な意味においての警告を申し上げたわけではございません。
  78. 占部秀男

    ○占部秀男君 そうすると、いいというわけですね。募金そのものは選挙違反の条項にはない、いま言った連呼その他をやらない限りはいいのだ、こういうことになるのでしょう。
  79. 藤枝泉介

    国務大臣(藤枝泉介君) お答え申し上げます。いま申し上げましたように、公職選挙法の各条に照らして、それにわたらないようにという注意でございます。なお、ただいままでに受けたところによると、平穏に募金をされているやに承っております。
  80. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 三悪追放推進協会の内容について、さらに詳しく事情を知りたいと思います。そこで、これは厚生省の補助金がどういう形でここに行っておるのか。その予算内容はどういうふうになっておるのか。さらに、三月二十三日に行なわれたこの推進協会において、福田幹事長が行ってあいさつをしたということであるけれども、しかも松下候補の応援依頼を行なったということでありますけれども、こういうことが、きれいな選挙ということを標榜しておるところの自民党として、はたしてフェアな行為であるというふうに自信を持って言えるのかどうか、これらの点についてもこの際お答えをいただきたいと思います。それから、その詳細について、後ほど資料を提示してもらいたいということをここで要求したいと思います。
  81. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) この東京都知事選とこれは全然関係のないことでございます。いろいろ誤解を受けておるようでございますから、なお一そう注意はいたします。詳細は、こまかなことは大臣のほうからお聞き取りを願います。
  82. 坊秀男

    国務大臣(坊秀男君) 三悪追放推進協会に対する補助金は、総額六千六百七十五万一千円を計上いたしております。それぞれ、麻薬禍撲滅推進に二千六百七十五万一千円、売春防止思想普及事業に二千万円、性病予防普及事業費に同じく二千万円ということに相なっております。以上が予算の計上でございます。
  83. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 三月二十三日の模様について、少し詳細に述べてもらいたいと思います。
  84. 坊秀男

    国務大臣(坊秀男君) 三月二十三日の模様につきましては、私は存じ上げませんので、これはまたあとで調べまして、しかるべき機会に報告いたします。
  85. 藤田進

    ○藤田進君 関連。これは佐藤総理がみずから御承知かどうかということはつまびらかでありませんが、実は、私が地方選挙に関連して昨日提起いたしましたもので、私のところにもかなり詳細なものが参りまして、党としてもいろいろ協議をいたしました結果、瀬谷委員から問題提起をして事態を明らかにしようと、こういうことになっているわけであります。それで、いま坊厚生大臣は、当日の会合の模様はつまびらかでないから後日ということでありますが、これは当日参加している人からちゃんと名ざしで詳しい事情が来ているんです、ここに。そのあて名その他はここで申し上げませんが、非常に詳しく来ております。出席者のことも、演説のことも書いてある。そこで問題は、たくさんありますが、四十二年三月二十三日午後三時から平河町の全共連ビルで——都電は麹町四丁目でおりてくれとかいうことで、招請状が出ている。その招請者の筆頭、会長が菅原通済さん、三悪追放協会会長、財団法人、これがまあできたわけです、ここで。ここに菅原さんが代表で、以下内閣総理大臣が筆頭で、東さん、それからずっと、昭和電工の社長さんから、三井物産の社長さん、こういう人は非常にまれです。あとは閣僚。もちろん全員じゃありませんがね。こう出ていまして、菅原さんはかねてこういうことな言っておられたことは私も承知しておりますけれども、たまたま建国記念日の審議会会長で非常な功績をあげられ、さらに都知事選挙におれは是が非でも出るという幕がございましたね。これはいろいろ苦心されて、ついにこの人引っ込んだことになっていることも、これは天下周知の事実です。そこで、反対給付か何か、それは別として、おりもおり三月十四日招請で、いまのように二十三日、これは都知事選挙の告示があったあとです。そうしてしかもこのことは、先般社会労働委員会における厚生省が予算要求説明にあたりましては、そのガリ版刷りの予算要求書にはないのですね——厚生省要求ではなかった。いろいろただしましたところ、いや実は厚生省は知らなかったのだと。上から来たこれは予算です。約七千万円ですよ。いま言われたように約七千万来たのです。——ということで、プリントには大蔵省のほうの中へ入っている。本来、三悪と言っても、暴力とか貧乏とか岸さんの三悪とは違いますね、これは。この三悪は、性病だとか麻薬だとか言っているのですね。本来これは厚生省の所管、かりに扱うとしても厚生省の所管でしょう。それが要求も何もしないのに、あれほど——水田さんなかなかさいふはかたかったわけですけれども、これが要求も何もないのに約七千万——七千万くらいそんなものとおっしゃるならば問題はありますけれどもね。これがどういうところからか天下りにつけてきて、そうしてあらわれてきているのが、これはこの文書に出ておりますが、発起人がこういう状態、まあいま言われたとおり坊厚生大臣も入っている。これは何としても、会場に出ていた人——総会に——の言、それから素性、そして予算の経過から見て、明らかに都知事選挙、まあまあという引っ込みの対象になったということは、これはもう田中法務大臣もこのことだけは認めるだろうと思う。ところが総理は、いやそんなことはないのだと、皆さんひとつ広くこれに参加してくれなんというようなことをあなたおっしゃった。会長ができて、何かできて発足して、そして皆さん入りませんかということをここで初めておっしゃるというのは、過去の事例、先例、社会通念から見て、これはもう本末転倒です。そう思いませんか。これほど発足して、あとで団体入りませんか。しかも議会で問題になってから。ここが実は、今度の選挙をきれいにとおっしゃっても、舞台裏ではこのようなことがある。私も知らなかった。これは、以上申し上げた経過に照らして、それぞれあなたの、総理の正当なるここに説明がなければならぬ。あなた御自身名前を出しているけれども、実は知らなかったなら知らなかった、これはやむを得ない。知っているなら知っているで、そのことが明らかに、あれほど予算のやかましい査定、折衝があった中で、これだけはそういうことなんです。坊厚生大臣は、私がいま申し上げたことが、厚生省はいや知っていて、再三要求したが最終段階に入ったというならば、これはまたそれで御答弁いただきたい。一緒にやっておられる方が、これではいかぬ、特定候補にここまで国の財政が出動してくる、なぜそこまでしてあの人をかつがなければならないのかというのが、切々と訴えられているこれは文書なのです。このことは、ひとつ何党にかかわらずきれいに清算して再出発してもらいたいというのが念願なのであります。長くなりますからよしますけれども、そこに問題がある。
  86. 坊秀男

    国務大臣(坊秀男君) 先ほども申し上げましたとおり、三悪追放協会でやってもらう仕事というのは、厚生省にとりましては非常にこれは大事な仕事でございまして、そこで、(「選挙運動やっちゃいかぬ」と呼ぶ者あり)選挙などとは厚生省といたしましては全然関係を持たしておりません。三悪追放協会のやる仕事が、厚生省の今後の、国民道徳、国民保健、犯罪防止、そういったような点にきわめてこれは適切なる団体、組織的団体であると、かようなわけで、先ほど予算がおくれたという理由は申し上げましたが、そういうようなわけで予算の補助金を計上いたした、こういうような次第でございまして、(「予算要求してないじゃないか」と呼ぶ者あり)いや、しております。外からのいろんな、何と申しますか、指示とか、圧力とか、そういったようなものは全然厚生省といたしましては受けておりません。ただ、厚生行政をできるだけ推進してまいりたい、かように思いまして、この補助金を出した次第でございます。
  87. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 趣旨についてはわかったのです。だけれども、私が問題にしているのは、あなたのほうで趣旨を説明してもらうということじゃなくて、そういう組織なり機関というものが松下さんの選挙運動をやったのだということ、ここに問題があるのじゃないか。しかも、その補助金の使い方、補助金の予算の出し方、疑問が出てくる、こういうことでありますし、また三月二十三日には厚生省の役人も出ているということでありますから、どういう人が出て、何をやったのか、来賓としてはどういう人が来てどういうことをしゃべったのか、そういうことはわかると思いますから、後ほどもっと詳細にその内容を資料として出していただきたいということを申し上げまして、私の質問は終わります。(「答弁漏れがある」と呼ぶ者あり)
  88. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) すぐ答えなかったことは申しわけございません。これは、先ほどお答えいたしたように、性病あるいは売春、麻薬、これはもう社会をむしばむものだ。こういうことをなくする、これはだれがやったらいかぬと、こういうものではございません。これはぜひ三悪追放協会、これは国民総ぐるみ運動でぜひやってもらいたい、かように私は念願しております。問題は、そのこと自身には別に御異存はないようですが、どうも非常に片寄っているのじゃないか、これがいまの都知事選に関係があるのだと、こういう判断のもとで御批判なさいましたが、私は全然関係がないということを申し上げておる次第でございます。どうかこの社会をむしばんでおる三悪追放につきましては、どうも発起人が気に食わぬということもあるかわかりませんが、ぜひ御協力いただきたいと思います。(「あなたはそうおっしゃるが……」と呼ぶ者あり)
  89. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) ちょっとお待ちください。発言の許可を受けてから言ってください。藤田君、関連なら……。
  90. 藤田進

    ○藤田進君 答弁漏れなんだよ。それを指摘している。
  91. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私は、三月二十三日に初めて協会が設立された、こういうことをいま聞いて、実は驚いているのです。私がその発起人であるということについては、私は存じ上げません。しかし、この三悪追放そのものについては、この話はよほど以前に聞いておるのであります。昨年でしたか、この三悪追放ということについてぜひ国家の協力を得たい、こういう話を昨年からもう聞いております。十月時分だったと思います。したがいまして、私自身が発起人ということは、いま初めて聞いたのです。おそらく各閣僚ともそういうようなものじゃないかと、かように思います。
  92. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 総理は知らないと言っているのだから、知らないのなら選挙にも関係がないだろうということは無邪気な顔をして言えるのですよ。しかし、投書した人が内容についてちゃんと触れていますが、これらについては私は持ち時間がありませんから詳細な資料を出してもらって後ほどやりたいと、こういうことなんです。
  93. 亀田得治

    ○亀田得治君 ちょっと関連。時間がおそいから私は遠慮しておこうと思っておったが、ただいま総理が、発起人になっておるかどうか知らない——これは国費を使ってやっているのでしょう。普通の私的なことであれば、いつの間にか名前を使われていた、親しい間柄だからよろしいということでも済むと思う。国費を使われてやっておるものについて、知らない、発起人になることがある、おそらくほかの閣僚の方もそうじゃなかろうかと思うというふうな意味のことをちょっとおっしゃったわけですがね。これは私は、六千六百万円というお金が厚生省を通じて出ておる、そういう団体についてまことにけしからぬことだと思う。そんないいかげんなことを、一部の者が人の名前を使ってやっているということになるのかどうか、厚生大臣それをはっきりしてください。並んでおる発起人、あの中でちゃんと了承して発起人になっておるのと知らないのと区別して、そこで答弁してください。国費ですよ、これは。個人がやっているのではない。とんでもない、そんな無責任な話はないですよ。
  94. 坊秀男

    国務大臣(坊秀男君) いまの発起人の中でだれが了承しているかいないかということは、これは私はわかりません。ただ、そういったような書類が出てきてまいっておるということで御了承願いたいと思います。  なお、この三悪追放の予算は、今日厚生省から、まだこれは四十二年度予算が成立した上のものでございまして、今日の段階におきましては全然予算は出ていない、そういうことでございます。
  95. 亀田得治

    ○亀田得治君 委員長、調べて報告してもらえますか。そんな了承をしたかせぬかわからないような発起人でやって、そして四月以降そういう金を出すというふうなことは、とんでもない話だよ。調べて報告してください。明日小林委員の質問時間がありますから……。
  96. 坊秀男

    国務大臣(坊秀男君) できるだけいたします。
  97. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 以上をもちまして瀬谷君の質疑は終了いたしました。     —————————————
  98. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 次に、多田省吾君の質疑に入ります。多田省吾君。(拍手)
  99. 多田省吾

    ○多田省吾君 私は、公明党を代表いたしまして、最初に昭和四十二年度暫定予算、次に政治姿勢、さらに外交、防衛政策についてお伺いいたしたいと思います。  初めに、今回の暫定予算は四月、五月分の二ヵ月分となっておりますけれども、私は特にその財源問題について質問をいたします。  第一に、公債金として千八百八十億円を計上しておりますけれども、歳入総額が八千百三十五億円、歳出総額が九千三百億円となっております。千百六十五億円の歳出超過となっておりますけれども、国庫の資金繰りとして五千億円の減税をしようとするところの大蔵省証券を発行することになっております。そうしてみますと、この千百六十五億円の歳出の超過額というものを蔵券でまかなうということにしますと、五千億円の蔵券から千百六十五億円を引きますと、ちょうど三千八百三十五億円の歳入超過となっておることは明らかでございますが、これでは三千八百三十五億円も歳入が多いのですから、どうして千八百八十億円の公債発行が必要か、こう言わざるを得ません。総理はこの点はどう考えてやっていらっしゃるのか。お金を余分に残せばそれでよろしいというようなお考えがあったならば、そんなでたらめな、ずさんな予算はないということになりますけれども、その点をお伺いします。
  100. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 私からお答えします。  御承知のように、大蔵省証券は年度内の歳入歳出のズレからくる一時的な資金不足というものに対処するための手段でございまして、暫定予算予算総則にきめておる五千億円というのも同じようなことでございまして、暫定予算期間中の歳入歳出の資金繰りを考えてピークのときはどのくらい要るかというようなことを考えてきめたものでございます。現に昨年も四月、五月の大蔵省証券の発行ピークは三千何百億ということになっておりますので、五千億の資金繰りを考えたわけでございますが、したがって、これは昭和四十二年度全体の歳出の財源としてのこの公債収入、これにとってかわるべき性質のものではございませんので、歳出の財源ではございません。
  101. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 ちょっと関連して。  いまの大蔵大臣の答弁だと、四十二年度全体の歳入歳出の問題であるからして、蔵券五千億の発行を歳入と見るべきではないと、そんなふうな変な話だったのですけれども、暫定予算という前提から考えれば、公債金千八百八十億円を見込むよりも、この性格上から、公債の発行よりも、いま言われたような短期証券のその発行をもってこれはやるべきではなかったか。金融そのほかの都合でもって財政として大体筋、つまり四——五月の暫定予算に、将来本予算が成立したときには消滅する予算、そういう予算の中に公債を入れるというような考え方はおかしいじゃないか。本来ならば、暫定予算性格から見れば、どうしても財政の筋を正すということから言えば、これは短期証券の発行であるべきじゃなかったか。どう考えても大蔵大臣の考え方はよくわからない。
  102. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) かりに短期証券で泳いだといたしましても、これはすぐ返済しなければなりません。返済するためには、今年度の予算を見ましても、公債の発行ということはやらざるを得ませんでしたので、公債の発行によってこれを返済するということになりまするというと、いつこの公債発行の時期が一番いいかと申しますと、これも御承知のとおり、例年四月、五月というときが一番金融のゆるむときでございますので、このときをはずして公債の発行をしないというと、六月以後の月別の調整というものが非常にむずかしくなって、市中発行という原則が貫かれない心配もあるということを考えまして、昨年の実績どおりのものはどうしてもこの四月、五月という時期に発行しなければいかぬ。これを発行することは、もうどうしても最低限必要なことだということから公債の発行を予定したわけでございますが、無理に泳げというなら、これは泳げないこともございませんが、しょせん、これは歳出の財源ではございませんので、どうしてもこの四月、五月に公債発行を見送るということが実際上は私はできないということからこういう措置をとったわけでございます。
  103. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 四月、五月の二ヵ月にやらなければ金融操作上非常に無理だ、緩和期だからということで公債を発行する、私はそれが無理じゃないかと思う。四月、五月に発行するということになれば、本来、国債を月平均でならして発行できるものならばわかりますけれども、多少ともゆとりがある四月、五月に埋めなければいけないということになれば、それはもうそのほかの月に無理やりに消化できない、こういうふうに考えます。これはもうすでに民間の消化というものが限界にきている、非常な無理をやっている、こういうことになりませんか。しかも、短期証券ではぐあいが悪いというなら、蔵券をいまこそ発行して、蔵券なら年度内償還ですから、やれるわけじゃないですか。
  104. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) おっしゃいますように、公債の発行は、資金量を勘案して、月別に調整して発行しておりますが、その場合、たとえば昨年の四月、五月を見ますというと、千九百億円の公債を消化しても、なおかつ資金が残つたので、日本銀行が六百億円以上でしたか、売りオペをやるというような、最も公債をまとめて市中に消化してもらう一番いい時期が四月、五月ということでございますので、この時期に公債発行をしないで過ぎますというと、月別の調整というものは先にいって非常にむずかしくなるということは、これはもう事実だろうと思います。
  105. 多田省吾

    ○多田省吾君 この公債発行は財政上からの理由ではなく、どうも政策的な施策のにおいがするわけです。本予算と違って、暫定予算というものは、どうしても政策的な公債発行を入れるということは、予算措置として筋が通らないのじゃないか、その点に関してはどうですか。
  106. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) まず一つは、すでに一昨年から公債の発行はやっておりますので、昨年の実績を私どもは考えて暫定予算を組んだわけでございますが、もう政策としては、実際上に新規政策ということには実はならないものであるというふうに思いましたことと、もう一つは、公債は、必要な財政需要に対して全部税金という形の財源で対処することはやはり適当であって、国民の蓄積の中から公債という形で活用するということは必要でございますので、本年度も、本予算に示しましたように、公債発行を私どもはすでに予定しております。予定しておりますが、今年度の額による二ヵ月分というのではなくて、昨年度のすでにもう実施している政策でございますから、この二ヵ月分の実績というものを基礎にして計上したということになります。
  107. 多田省吾

    ○多田省吾君 すでに四十一年度は租税収入が増加したということで公債発行を減らしているのでございますけれども、四十二年度についても、予算よりも租税収入のほうが、いま予算は低目に見積もっているというように考えられておりますから、千億、あるいは千五百億の租税収入が増加するのじゃないかと、そう考えられますけれども、一体、大蔵大臣は租税収入をどの程度見ていらっしゃいますか。
  108. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 私どもは租税の伸びを、自然増収の伸びをことしは二割以上見ておる。いままで何年かの間にそこまで自然増を多く見た年はございませんが、今回はそういう見方をしているということで、私どもは相当これは過小の見積もりとは思わない。そういうことで当初は出発しましたが、昨年予算編成方針を最初につくったときからみて、今度の編成時までの動きを見まして、まだ二百億前後の税収は見込めるということで、この分だけ公債を削減するという形で今度の予算を編成いたしましたが、経済の伸びが非常にいいというようなことでしたら、あるいは今後税収の伸びがまだあるということも考えられますが、いまのところは、当初予算としましては私どもは相当目一ぱいの税の見積もりをしたというつもりでおります。
  109. 多田省吾

    ○多田省吾君 千八百八十億円の公債発行をこの暫定予算で行なおうとしておりますけれども、これを季節的な金融緩和期であるという理由をつけておりますが、最近設備投資計画が政府の予定でも倍近く行なわれている、それは押えようとしているようでありますけれども、そうなりますと、設備投資がいまのように倍近く増加するような姿においては、もう設備投資の資金を確保するとか、在庫投資の資金を確保するということはもうできなくなっちゃう、どう実情を把握しておられるか。
  110. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 設備投資につきましては、いろいろのいま調査が出ております。私ども政府の見方は、もう御承知のとおり、設備投資は大体一五%ぐらいの増加というふうに考えておりますが、民間のいろいろな調査からはもう少し大きい数字が出ております。しかし、これは数字のとり方、調査のし方が大企業を中心に調査したものでございますし、また、私どものほうの見積もりは着工ベースの見積もりでございましたが、民間の銀行を中心としたりする調査は、これは支払いベースの調査でございますので、そこらに若干数字の食い違いはあろうと思います。あろうと思いますが、しかし、いずれにしましても、いろんな指標の示す方向は、設備投資は非常に強くなりそうだという気配があることは事実でございますので、これについては、私ども、民間にも節度ある設備投資の態度を守ってもらうと同時に、政府自身もこれについてはいろいろ成り行きを注視して、その時々に間違わない措置をとっていくつもりでおります。
  111. 多田省吾

    ○多田省吾君 先ほどからもお話出ましたけれども、この四月、五月といえば二ヵ月分、一年十二ヵ月分の六分の一でございますけれども、ほとんど八千億円の公債発行予定の四分の一に相当する千八百八十億円を発行するということ自体は、もう非常に無理がある、そのように考えられる。で、このように四月、五月に四分の一に達するような国債の民間消化をはかろうという事情は、相当民間に強大な圧力が加わり、あるいは日銀引き受け、あるいはインフレというような姿になる可能性が非常に強いわけです。大臣は、その点をどう考えられますか。
  112. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 私は、やはり四月は散超の月でございますし、昨年の様子を見ましても、さっき申しましたように、公債を消化しても、なおかつ、日本銀行が売りオペをやったという時期でございますので、昨年と同じ額程度のものを市中で消化するということは、私はできるのじゃないかと思っております。
  113. 多田省吾

    ○多田省吾君 昭和四十一年度の国債発行のときには、政府は景気刺激のため、そのようにおっしゃっております。ところが、今回の昭和四十二年度の国債発行に対しては景気調節だと、あるいは景気鎮静のためだと、そのような考えにも聞こえる。同じ国債発行がどうしてそのような二枚舌のような理由になるのか、両極端になるのか、その点をお答え願いたい。
  114. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 公債の発行ということによって、いわゆるフィスカルポリシーというものは一つのまた手段を得ているということでございまして、こういう制度のもとにおきましては、おっしゃられますように、民間の需要の強いときには公債の発行を減らす、民間の需要が非常に弱いというときには政府の需要を強くするという、このいろんな弾力性のある手がむしろ公債というものによって打てるということでございまして、これは矛盾しないと私は考えております。
  115. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 関連。四十一年のときには確かに景気刺激といわれて、確かにそのとおり景気が起きてきました。ところが、四十二年のときには景気調節、そういいながら、鎮静をはかるといっても、二ヵ月なり三ヵ月後には公共事業費として支出されているから、やはり景気刺激になるのじゃないですか。それがそういう意味で景気刺激になるということで一向変わらない。景気調節といい、あるいは景気刺激といい、二枚舌を使ったけれども、ほんとうは同じ景気刺激でございますと、こういう意味でございますか、大蔵大臣。
  116. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 今度公共事業費の伸びも、御承知のとおり、昨年よりは非常に私どもは圧縮しておりますし、それに対応して、公債の発行額も、私どもとしては今度非常に抑制しまして、初年度同士の比率を見ますというと、昨年の公債依存度と本年度の依存度で、私どもは今年のほうは依存度を落として公債の発行を予定したわけでございますが、昨年度の税収が非常に予想よりも多くなりましたので、その分だけ四十一年度の公債の発行を私どもは削減しましたから、そうしますというと、公債の依存度がことしのほうが予定が少し高いという事態も出てきますので、これは私は運用によって、やはり今後公債の依存度は年々低くしていくという方向の運用を私はやりたいと思っております。
  117. 多田省吾

    ○多田省吾君 当然千八百八十億円の公債発行によって、二、三ヵ月たてば公共事業費となって相当景気刺激になってくることは、これはいなめない事実だと思う。そうしますと、いま依存度を低くするとか、あるいは政府が景気中立警戒予算といっていますけれども、結局は景気刺激になってしまう、こういう景気上昇期にそれでは大臣のように依存度を少なくして、公債発行を非常に少なくしていく。いま公債発行を永久に続けようとしておられるのか、それとも、こういった景気上昇期にだいぶ公債発行を少なくして、そしてまたは全然取りやめて均衡健全財政に持っていこうとしているのか、そういう気持ちは少しもないのか、その点をお伺いします。
  118. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 公債を発行したのは、景気対策というだけでは私はなかったと思います。このおくれた社会資本を取り戻すための財政需要というものは非常に強うございますし、それをやることも財政の任務でございます。そこで、たとえば道路にしましても何にしましても、社会資本の蓄積、これはこの資産は将来長く国民経済に寄与する、貢献するものでございますので、したがって、そういう長きにわたって国民経済に役に立つ資産を税金だけでやっていくか、それとも、民間に蓄積された中からこれを活用していくという方法で対処していったらいいかということになりますと、公債というものを発行することは決して悪いことじゃないだろうと思います。で、これを発行するかしないかが非常に問題でございましたが、一ぺん踏み切って公債を発行するということにしまして、それに対応したいろんな減税というような措置をとってしまいました以上は、私はすぐにこの公債発行をやめるということはできない。だんだんにいま申しました公債の依存度というものをできるだけ低目にするような運用をやって、やはり相当しばらくこの政策は続けるべきものではないかというふうに考えています。
  119. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 そのいまの大臣の答弁で、社会資本がおくれているから、当分の間は公債発行はやむを得ないということになりますと、健全均衡財政にいつ戻るか。均衡健全財政に戻すというときは明示されていない。  それから、いまのように社会資本に云々ということになります。そういうことの答弁であれば、暫定予算のうち、公債金の対象となっておる投資的経費の金額はどうなっているんですか。予算説明書の中にもそのことが明示されていない。千八百八十億円の公債金、その金額が公共事業や、あるいは出資金などに使われていくのだと思いますが、その内訳を示してもらいたい。この二点。
  120. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 公債発行の対象の公共事業費関係は、いまの公債発行額よりもはるかにいまのところ多くなっておりまして、大体四十二年度八千六百億円以上、こえるのじゃないかと思っております。
  121. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 私は、暫定予算の公債金の対象となっておる投資的経費の金額はどのくらいかと聞いている。それを明示してもらいたい。政府に提出していただいた予算の説明書にもそれは載っていない。それじゃ審議もできないじゃないですか。
  122. 村上孝太郎

    政府委員村上孝太郎君) お答え申し上げますが、暫定予算性格上、歳入と歳出ともバランスしておりませんし、それから、また、いま申し上げました公共事業及び出資、貸し付け金等の金額と、それから公債の発行高とはバランスしなくても私は違法ではないと思いまするが、かりに数字を申し上げますと、ことしの四月、五月の暫定予算におきまする公債対象事業に相当するものは二千百六十億円でございまして、千八百八十億円の公債限度額と十分にマッチしております。
  123. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 鈴木君、関連質問ですから、簡単に。
  124. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 簡単にしたいのですが、答弁をちゃんとしてくれないので困る。その投資的経費の内訳をはっきり言ってほしいと私は言ったが、それ言ってくれない。それじゃおさまらない。
  125. 村上孝太郎

    政府委員村上孝太郎君) その中身を申し上げますと、これ所管別に出ておりまするが、総理府におきまして三百六十二億円、それから、大蔵省におきまして三百九十億円……。
  126. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 投資的経費は幾ら、公共事業費は幾らあるというのです。
  127. 村上孝太郎

    政府委員村上孝太郎君) それでは、所管別ではなくて、公共事業費、出資金、貸し付け金の別に申し上げます。公共事業費の関係で千七百十九億円、出資金で四百十億円、貸し付け金で三十二億円、計二千百六十一億円でございます。
  128. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 簡単にしてください。
  129. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 いまの答弁から、出資金が四百十億円ある。その出資を暫定予算で行なうという、そういう緊急性はないだろうと思う。産投会計あたりへも繰り入れをしておるのです。三百億をこえる繰り入れをしておると思いますけれども、それは全部輸出入銀行のほうに投資されるものでしょう。出資されるものでしょう。その間はほかの融資でつなぐことができるんじゃないですか。緊急性のないものを織り込んで公債の対象にするというのはどういうわけですか。そんなあいまいな、いいかげんな性格はちょっとおかしいと思う。
  130. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 仰せのとおり、三百七十億大部分が輸出入銀行への出資になりますが、これを四月に入れることと、あとになって入れることでは輸出入銀行の採算が違ってまいりますので、私どもは、いろいろいま予定している金利計算も変わってくるということで、どうしても輸出対策としましては四月に入れる必要があるというふうに思っております。
  131. 多田省吾

    ○多田省吾君 国債の発行額についてお尋ねしますけれども、まあ四十一年度の国債発行は税収が伸びたから減らしたのだ、また四十二年度においても税収が伸びれば減らしていく。もちろんそれは限度額以内で減らすことは財政法上からも差しつかえないことだと思いますが、当然国債が国会の議決で認められて施行されている以上は、国債の償還計画表も変更しなければならない、これがたてまえだと思う。ところが、まあ違法ではないとしても、当然補正を行なって、限度額の修正を再び国会審議するのが当然ではないか。もしそういうことを行なわないということを前提とするものであるならば、初めから修正含みの予算としか言えない。それで、国会審議をほんとうに尊重するのであるならば、四十一年度の補正も提出すべきではないか、このように思いますが、大臣、どうですか。
  132. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) この公債の発行は、国会で議決をいただきますものは発行権の最高限をお願いするということになっておりますので、それ以前に発行をとめるということは別に差しつかえないことでございますので、四十一年度の場合の補正予算は要らない。同時に、借り入れをする場合に、いわゆる償還計画表というようなものを御審議の参考につけることになっておりますが、これは、この表自身は議決の対象ではございませんので、これはいままでも変更があっても国会に別に提出しないということになっておりますので、これもさしつかえないだろうと思います。
  133. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 関連。いまの大蔵大臣の答弁で、公債のいわゆる償還計画表は、まあ変更があっても出さないでもよろしいということですが、財政法の第四条で、公債発行については国会の議決を経る、そのときの第二項で、必ず償還計画表を国会に提出しなければならんとなっておる。同時にこれは扱ったものです。そうすると、公債のほうが変わってくれば、当然償還計画も変わってくるのですから、だから、ただの参考書類ということでここで載っておるわけではない。当然出さなければならんものとして載っておる。それがあれだけの数字のままで今後ずっといく。変わってくるなら変わってくるで、たとえ財政法上、法律上拘束されないとしても、予算委員会でもって権威を持ってきちんと議決したものを当然減額されたならば、発行の最高限度額を減少した補正予算を出すのが当然じゃないですか、予算委員会に提出するのが。政府の姿勢はどうなのか。
  134. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 償還表は、さっき申しましたように、国会の議決の対象そのものではございませんので、従来からそういう取り扱いをしてまいりました。また、国会から与えられた歳出権をこえて歳出をするとか、あるいは国債の発行権をこえて発行するということは、これはいけません。当然補正をもって国会の議決を要しなけりゃいかんと思いますが、それの範囲内でやることにおいては補正は要らないというのが従来の例でございますし、これは一向差しつかえないと思います。
  135. 多田省吾

    ○多田省吾君 この国債発行について、また、財源問題について、最後に総理にお伺いしますけれども、このように千八百八十億円の四月、五月における国債発行額というものは、非常に民間償還にも無理があると思われるし、また、景気過熱等も生じている以上、インフレにもなりやすい、そういう心配が非常に強いわけです。これに対して、総理はどのように考えておられるか。
  136. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 先ほど来一貫してのお尋ねは、今回の予算編成あるいは公債発行等がインフレになるんじゃないか、非常な膨張じゃないか、こういうような御懸念からのお尋ねかと思います。私は、今日の経済情勢が上昇過程にある、で、今日よほど経済情勢に目を光らしていないととんでもないところに持っていかれる、こういう危険もなきにしもあらず、かように実は思っております。ただいまの公債発行については、これはもう毎度申しておることですが、公債発行の限度を一体幾らにするか、また、市中消化できるかどうか、こういうのが一つ限度であります。このワクが十分守られ、しかも、これは借金でございますから、できるだけ少ないことが望ましい、こういうところで今後とも流動する経済情勢に対処するように十分気をつけてまいらなければならない、かように思っております。
  137. 多田省吾

    ○多田省吾君 それと同時に、先ほどから、大蔵大臣が、依存度を少なくしていきたいと。これはどうしても均衡財政に持っていきたいという姿勢のように受け取られますけれども、八千億という公債発行予定は限定額にしましても非常に大きい。この点をもっともっと減らしていこうという前向きの姿勢はないのかどうか。
  138. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ことしの予算は、ただいま御審議いただいておりますが、大体けっこうな規模であったと思っております。ちょうと選挙の前でございましたが、五兆円以内にとどめようというかたい決心をいたしまして、まあそのとおりにできた。公債発行も、当初はもう少し多いようでしたが、これも減らすことができた。今後考えられますのは、税の自然増収がある。そういう場合に一体どうするのか。その自然増収分を今後使っていくか、あるいは公債発行を減らしていくか、あるいは減税に充てるか、こういうまあ三つの問題があるわけであります。これは、やはり、御指摘になりましたように、公債発行を減じていく、これはまず第一に考うべきことだと、かように私は考えておる次第であります。大蔵大臣が申しましたように、健全、安定、均衡のとれた財政、そういうものでなければならぬ、かように思っております。
  139. 多田省吾

    ○多田省吾君 次に、若干、政治姿勢についてお尋ねいたしますが、総理は、施政方針演説におきましても、「政治に携わる者が、全国民の代表者たるにふさわしい道義感のもとに行動することを期待する」とか、あるいは「公党の体質改善を促進してその倫理性を高め、もって国民の信頼にこたえる清潔な政治の実現につとめる決心であります。」とか、いろいろきれいなことばを並べておられるようでありますけれども、その後においても、共和製糖事件の問題とか、あるいは、今度の衆議院の選挙戦においても、件数は少なくなったといっても、自民党の候補者自体あるいは家族等においても相当な違反者あるいは違反容疑者を出しておるようでございます。このような政治姿勢の問題に対して、総理の御所見をあらためてお尋ねしたい。
  140. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 基本的に、ただいま多田君が御披露になりましたように施政演説等におきまして私の所信は表明いたしております。過去におきまして、共和製糖事件をはじめ、その他の問題が批判を受けた。で、まことに残念に思っております。したがいまして、これらの事柄は、いわゆる正すべきは正す、きわむべきはきわむと、こういう態度で臨んでおりまして、ただいま検察庁の捜査もそういう意味で厳正に行なわれており、公正に法の権威を保つべくいまやとり行なわれておると、かように考えます。また、さきの選挙は、たいへん自粛されて、前回に比べれば変わった結果を招来したと、こういう意味で喜ばしいことではございますが、まだまだこれで十分だというものではございません。私はただいまの心境を率直に申しますと、前回の選挙、これが出直し選挙と、かように私考えておりますので、新たに議会制民主政治は決意を新たにしてその第一歩を踏み出したと、かように考えております。したがいまして、今後の問題におきまして、あらゆる努力をいたしまして国民の期待に沿う、また、国民の至上命令にこたえる、こういうことでいかなければならないと、かように決意をいたしております。いろいろの問題がまだまだこれで根を断ったというものではございません。ようやく第一歩を踏み出したばかりでございますから、今後とも一そう努力してまいるつもりでございます。
  141. 多田省吾

    ○多田省吾君 総理は、いつも、政治の姿勢を正したい、正すべきものは正したい、こうおっしゃっている。しかしながら、事実は、だんだんとどろ沼に落ち込んでいるという姿さえ見られる。特に政治腐敗の根源は、やはり財界と政界とのくされ縁にある、政治資金の授受にある、そのように思われるわけです。特に財界から多額の政治献金を受け取った自民党において、国会対策費、あるいは組織活動費、あるいは会議費というようなお金がばく大に使われている。昨年の十一月十日の参議院予算委員会で、公明党の鈴木委員からもこの国会対策費の問題が質問されております。で、四十年度の自民党の国対費というものは、日韓条約のときの昭和四十年十二月二十日、二十一日前後において、六千万円、七千万円という国対費が田中角榮氏というような方に出ている。国会対策委員長や幹事長の手に渡されている。そうして、鈴木委員の質問は、非常にふしぎだ、国会国会対策費がどうして必要なんだと。もう一つは、国民の側から見ると、どうしてそんな巨額の金を使わなければならないのか、そういう点からも大きな疑惑というものが持たれている。どのように国会対策費をお使いになったのか、総理国民の前に明らかにしていかれる必要があると思うが、これはどうかと、そういう質問に対して、総理は、この会議録によりますと、「実は私つまびらかにいたしておりません。これは総裁の責任だと、かように形式論で簡単にお話になりましても、私自身答えられない問題でございますからお許しを得たい」と、こうおっしゃっている。さらに、鈴木委員が、国民がそういう点について非常に疑惑を持つだろうから、新聞紙上なり何かに、この六千万円はこういうふうに使われた、この三千万円はこういうふうに使われたということを公表する御用意はありませんか、そういう指図はできないかと、こういう質問に対して、総理は、「ただいまの鈴木君の御意見は、よく党の経理を担当しておる者に話しまして、十分考えさすようにいたします。」と、このように答弁しておられる。さらに、この前の衆議院予算委員会においては、公明党の矢野委員からその国対費の明細について尋ねたのにもかかわらず、総理はそれを拒否なさった。また、この前のNHKの国会討論会等においては、福永官房長が、国会対策費の使用の明細については別途発表するというような発言もしております。で、総理が、この前、党の経理を担当しておる者に話して十分考えさすようにいたしますと言われたその具体的な方法を講ぜられたのか。そして、疑惑が持たれている以上、国民の前にそれを発表していただきたいと思います。また国民もそれを聞きたいと願っている。で、総理が正すべきものは正したいとおっしゃっている以上、その方法を講ぜられたほうがよろしいのじゃないか。
  142. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 会議録、ただいま読み上げられたとおり、私、鈴木君にお答えしたようでございますが、また、ことし衆議院におきまして矢野君からいろいろ質問がこの問題でございました。当時、問題は、私が総理であり、また総裁でございますから、総裁として御返事を申し上げたのでございますが、この種の問題は党の問題でありますし、十分、衆議院の場合に、いかに処置するかということで党でも研究したようであります。しかし、これはまあ、これ以上、法が命じております届け出の範囲、それより以上を発表しない、こういうことに党の態度はきめたのでございます。その党の意向をこの機会に総裁として御報告をいたしておきます。
  143. 福永健司

    国務大臣(福永健司君) この種の問題は正確に申し上げないと誤解を生ずる。誤解を生ずることがわが党にとってはなはだ残念であるのみならず、先般の矢野君の発言等においては、社会党さん、民社党さん等から非常に誤解を招きやすいことばであるということで、御承知のような措置が衆議院予算委員会においても行なわれたわけであります。ただいま向っておりますと、「別途発売する」と言われましたが、私は断じてさようなことは言っておりません。私は、こういうこともあらんかと思いまして、みずから討論会に出て、その記憶もよくいたしておりまするし、放送のときに自分の言ったことを聞き直しておきました。「別途考慮してもよろしい」と、こういうことばを使っております。「お見せする」というようなことは言っておりません。「お見せする」ということになるについては、いろいろの点を考慮しなければならない。かくのごときこともあらんかと存じまして、正確にことばづかいをいたしたのであります。
  144. 多田省吾

    ○多田省吾君 それじゃ「別途考慮する」というのはどういう内容か、この際はっきりしていただきたいと思います。
  145. 福永健司

    国務大臣(福永健司君) 先ほどもちょっと申し上げましたように、衆議院委員会におきましては、社会党さん、民社党さんが、はなはだ迷惑なことであるということでかなり強いことばでの御発言がございました。そして一日半もかかりまして、いろいろの協議等が行なわれ、その最後に衆議院予算委員長から——これも正確な表現がよろしいかと思うのでございますが、誤解を招く言辞があったり、あるいは議院の品位を害するようなこともあったというようなことに触れられて、速記録から削除する、さらにその場合に取り消しを命ずる、かような措置等が行なわれておるのでございます。私が「別途考慮いたします」と申し上げたことは、先刻、総理大臣からもお話がありましたように、法律的にこういうものはどう入ってどう出たかということを明らかにしろというので、法の要求するところのものは、もとより明らかにいたしておるわけでございます。それ以上のことにつきましては、これは、私は政府責任者でございますので、党のことにつきましては、党のほうともよく相談したり、そしてまたかようなことが世上誤解を招くようなことに使われたのでははなはだ残念でございまするから、そういうことを別途考慮の上でないと、いかんとも、どうするということは申し上げ得ない、こういうことで、私は別途考慮いたしてもけっこうと、こういうことを申し上げた次第でございます。
  146. 多田省吾

    ○多田省吾君 公党がそのような国民の疑惑の的にさらされているのに、それを何ら考えないということはまことにむざんな話である、私はそう思います。かつて、有名な話でありますけれども、アメリカ大統領選挙のときにケネディと争ったニクソン氏は、夫人のミンクのコートのことについて疑惑を持たれて、家計簿あるいは財産等を公開して清潔な政治家であるということを証明したというような事実もございます。まして公党が疑われているのにそのままで済ます、まことに残念なことです。遺憾なことであります。  私は次にお尋ねしたいのは、自民党には国会対策費のほかに組織活動費、会議費というものがございます。で、総理は、この前の矢野委員の質問に答えて、国会対策費というものは議員の活動費に一人十万円としても想像以上の金が必要だ、多数の党員、事務職員の慰労としても多額の金がかかる、こういうふうに答えていらっしゃる。それじゃ国会対策費と組織活動費はどのように違うのか、明確にお答えいただきたい。総裁としてお答えいただきたい。
  147. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) これは自民党のことですからこの機会には申し上げません。
  148. 多田省吾

    ○多田省吾君 私はこの二つをあげられている以上、同じものではない、このように思います。たとえば日韓国会の幕切れ十二月二十日、二十一日の両日におきましても、二日間で国対費は六千三百万円出ております。ところが組織活動費として七千三百万円出ております。ですから、私は、この総理衆議院予算委員会でお答えになった国対費の内容というものは、私は少し違うんじゃないか、このように思っております。総理がそういうことは答えたくないとおっしゃるのでしたら、ますますそれは国民の疑惑が増すばかりでありますけれども、たとえばまた祝日法成立の昭和四十一年六月二十五日におきましても、国対費が五千万円出ておりますが、そのほかに組織活動費が四千九百万円出ている。総理が国対費の内容をおっしゃいましたけれども、その国対費と組織活動費の内容というものは私は違う、このように感ずる次第です。また国民の多くもそのような疑問を持っております。この際重ねてお尋ねいたしますが、その疑問をお晴らしになるおつもりはございませんか。   〔委員長退席、理事平島敏夫君着席〕
  149. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私は、衆議院でお答えいたしましたのは、なかなか金がかかるんですと、その一つの例として、四百二十名もおりますと、一人十万円ずつ出しましてもすぐ四千二百万円になるのですと、こういう実例を申し上げた。例を一応想定いたしまして、そんな金がかかるんですということを申し上げた。これは何に金がかかるという話はいたしておりません。で、それはただいま申し上げますように、党の問題ですから、まあ、それぞれの党の問題を、他党からですね、こう尋ねられて、そうしてこの予算委員会で説明する、これはどうも不穏当だと、私、かように思いますので、お尋ねがありましてもそれはお断わりいたします。
  150. 多田省吾

    ○多田省吾君 それではこの予算委員会ではなくしてですね、この前も鈴木委員に対して、経理にも話して、また考えるということをおっしゃっておられるのですから、一般の新聞紙上、あるいはそのほかの公開の雑誌等において、ほかのものによって、媒介によって発表なさるつもりはないかどうか。
  151. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 先ほどお答えいたしましたように、ただいま法が要求しておりますその届け出はいたします。それより以上はいたしません。
  152. 多田省吾

    ○多田省吾君 まあ、この問題については、またこちらも考えますが、次に、永久選挙人名簿について若干お尋ねいたします。  この前の衆議院選挙におきまして、登録の期間が年に二回しかないために、満二十になってから六ヵ月以上たつにもかかわらず選挙権がないという人もございました。また四十数万の新成人者が選挙権を行使できない姿がございました。あの審議会の答申というものは、年三回登録日を設けるということでございましたけれども、年二回に削った。そのためにこういった弊害があらわれているわけでございます。もし年四回に登録日を設けるとすれば、こういった弊害は非常に少なくなる。こういった成人者対策等の改正案を今国会に出すおつもりはないかどうか、自治大臣に。
  153. 藤枝泉介

    国務大臣(藤枝泉介君) 登録の回数を二回にいたしましたのは、選挙人名簿についての大改正でございまして、選挙管理委員会等の能力を考えまして二回にいたしたわけでございますが、先般の総選挙における新有権者が投票できないような立場になりましたこともあわせまして、登録回数の増加等を、一方、名簿の正確性を期しながら、前向きで考えまして御審議をいただくようにいたしたいと考えております。
  154. 多田省吾

    ○多田省吾君 総理がいらっしゃらないので、あとにしますが、共和製糖事件についてその後の推移を、法務大臣。
  155. 田中伊三次

    国務大臣田中伊三次君) 今月の終わりというときょうになりますが、おそくとも来月の初旬までには詳細な御報告を申し上げることができる見込みで、その御報告の方法は、捜査当局の手によってこの詳細を公表したい、こう考えております。
  156. 多田省吾

    ○多田省吾君 次に、このたびの衆議院の選挙違反については特に件数が少なかったのでありますが、候補者あるいは親族一統に及んでいる違反容疑が非常に多かった、そのことについて大臣からお答え願いたい。
  157. 田中伊三次

    国務大臣田中伊三次君) おことばのとおり、このたびの選挙の一つの特徴でございますが、同居の家族が選挙事犯を起こした事例が比較的に従来と比べますと多うございます。たとえば配偶者が事犯を起こしたものが、全国に残念なことでありますが、二十件に及んでおります。それから兄弟が起こしたものが十二件、子供が起こしたものが六件、さらに両親が事犯を起こしましたものが四件という事態でございます。公明選挙のたてまえからは、肉親の情とはいいながら、まことに遺憾なことであります。したがって忍びないことでありますが、これらの諸件に関しましては例外なく厳正な処置をしたい、こう考えております。
  158. 多田省吾

    ○多田省吾君 検察庁の違反追及につきましても、あるいは裁判につきましても、非常に裁判が長過ぎる。イギリス等においては十日裁判とか言われて、すぐ判決を出すようでありますけれども、日本においては最終的な判決が出るまで四年もかかる。判決が出るときにはもう次の選挙が始まっている、そういう事例が幾多見られるわけでありますが、その裁判の迅速化という点に関して法務大臣はいかに考えておられますか。
  159. 田中伊三次

    国務大臣田中伊三次君) おことばでございますが、選挙違反の事犯は、被告事件といたしまして全体としてはおことばのようには時間がかかっていないのでございます。大部分のものは、一年半ないし二年で判決ができておりますことが実情であります。ただ少数につきまして、わが国の選挙の取り締まり法規がたいへん複雑なものでございますから、これを立証する関係等がございまして、少数のものについてはおことばのごとく数年を要しておりますものがございますが、極力少ない人員の間で苦心をしておるわけでございます。検察におきましても裁判におきましても、今後は一定の人員の増加に努力もいたしまして、できるだけ急速に御要望に沿うごとく裁判を進めたい、検察の立場からそういう努力をしてみたい、こう考えます。
  160. 多田省吾

    ○多田省吾君 次に、政治資金規正法の問題についてお尋ねいたしますが、いまも審議会で答申案をつくろうとしておられるようでありますけれども、その問題とは別に、すでに第一次、第二次の選挙制度審議会において政治資金の問題につきましては、政治献金は個人に限り、会社、法人、団体、労働組合等の政治献金は一切認めるべきではない、そういう答申もすでに出ております。今度の審議会の状態を見ておりましても、ややうしろ向きのような傾向にあると思われております。総理として、ほんとうに政治の姿勢を正すために、そういう政治献金に対する疑い、あるいはそういう政治献金が政治を腐敗させるもとになるということは、これは当然でございます、審議会の答申は答申として、政府でその案をつくられるときには、もっと前向きに政治資金規正法の改正案をつくっていくのだ、そういう姿勢がほんとうにおありかどうか、その点をお尋ねいたします。
  161. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) これは前向きでこの問題等を真剣に取り上げなければなりません。先ほど多田君は、使い方についてもいろいろお話がございました。私は使い方も問題だと思うし、また金の入ってくるほうにも問題があると思います。かように思いますので、真剣に取り扱っていくべきだと思います。
  162. 多田省吾

    ○多田省吾君 たとえばいま新聞等においても、相当具体的な提案をしているようでございます。たとえば国会議員、あるいは後援会が選挙区に対しては寄付することを一切禁止する、そういった提案を朝日新聞等はやっております。そうして、こういう寄付には、冠婚葬祭の花輪、祝儀、香料なども含むものとする。政治献金を受け取って、その使うにつきましても、一般新聞には、ある議員等は月に百万円も冠婚葬祭に、選挙区のために金を使うというような報道もなされている現状でございます。そういった点に関して、それは答申の中にも一部、少し一歩前進のような案を盛り込もうとしておるような傾向も見られますけれども、そういうざる案ではなくて、そういった提案に対して、総理としてどう思われますか。
  163. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) これは党として、あるいはまた個人として、金の使い方がどうも納得がいかない、政治に幾ら金がかかるにしても、政治活動以上、政治活動と言えないような金の使い方は、これはよくないじゃないか——これは御指摘のとおりだと思います。いまの個人の選挙区に対するサービス、どうもサービスが過剰になっているということがしばしば言われております。また先ほどここで問題になりました、国会対策費というものはなっていないじゃないかという御指指があった。党自身としても、そういう意味で出るものを考えなければならない。しかし同時に、それは一体どちらが先なのか。出るものを制限するのか、金があるからそういう使い方をするのじゃないか。だから入り方もとめたらどうだ、これがただいま議論になっていると思います。今回も、いま結論に近づいておるとは思いますが、しかし、それにいたしましても、まだ明確に私も把握いたしておりません。これも党に対する献金と、個人の後援会に対する献金と、二通りに分けているようであります。いずれそのうちに詳細がわかるだろうと思います。そうしたら、これと真剣に取り組んでまいります。
  164. 多田省吾

    ○多田省吾君 いま政治資金規正について、おもに総理を中心に、総理から答弁をいただきましたけれども、最後に私の感想を申し述べたいと思うのです。国会対策費にしましても、またいまの政治資金規正法等の問題にしましても、私はいまの総理答弁からは、少しも前向きの姿勢が見られない。そういった姿であるならば、いつまでたっても政界に対する疑惑というものが、政治に対する不信というものが晴れない、こう思わざるを得ません。私どもはあくまでもこの政治の腐敗をただすためにあらゆる面で戦っていきたい、このように思っている次第でございます。  次に、外交、防衛政策についてお尋ねいたします。まず、沖繩の返還につきまして、総理は昨年は分離返還について同調なさっているような姿があったのでありますけれども、一月以降全面返還のほうがよろしいというように変わられた。沖繩の分離返還をやめられて全面返還に変わられた理由というものをお尋ねしておきたいと思います。
  165. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 分離返還というのはどういうことをおっしゃるのか、私にはわかりませんが、分離返還というものを閣議できめたことはございません。森君のいわゆる教育権返還と、こういう問題がございましたけれども、私はいわゆる分離返還に私が乗り出した、こういうものじゃないことだけ御了承おき願いたい。したがいまして、これは変更したと、こういうようなものではございません。
  166. 多田省吾

    ○多田省吾君 それでは、昨年の森前総務長官のいわゆる教育権の返還を先にしようというお話というものは、総理は全然納得しておられなかったということでございますか。
  167. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) いまこの問題を沖繩問題懇談会においていろいろ審議しておる最中でございます。私もまだはっきりかようなことをきめたということはございません。
  168. 多田省吾

    ○多田省吾君 私がお尋ねしているのは、昨年森前総務長官が、だいぶ教育権の返還を先にすべしという意見を述べられた。それに対して総理は全然御関知なかったのか、同調しておられなかったのか。
  169. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私は森君にいろいろ注意いたしております。こういう事柄は外交問題だから、外務省を通じてやらないと間違ってきますよと、こう申し上げております。
  170. 多田省吾

    ○多田省吾君 総理がそうおっしゃるのですから間違いないだろうと思いますけれども、あの大浜さんが書いたものによってこの間横路委員が読み上げましたけれども総理も森前総務長官の教育権の返還の推進ということに対しては理解を持って大いに応援しようとそう言っていた、そういったことは全然それでは誤りでございますか。
  171. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 佐藤内閣の基本方針は、ただいま私が申したとおりでございます。
  172. 多田省吾

    ○多田省吾君 総理は沖繩の返還に対する努力として、経済援助あるいは民生の安定ということを強くおっしゃっておるようでありますけれども、私は沖繩の返還の問題と経済援助の問題は、全然異質のものである。何も私は経済援助をしなくてもいいということを言うわけじゃありません。そうじゃなくて、そのやっている事柄は異質の問題である。経済援助を最高幾らやっても、最大限たとえやったとしても返還にはつながらない、返還とは全然別個の問題である、こう思いますが、総理はどう思われますか。
  173. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私は返還とただいまの財政援助、これは同質のものだと言った覚えはございません。御指摘のとおりこれは異質のものでございます。私どもはしかし、沖繩必ず返還、祖国復帰、これを実現さす、これを考えております。それで、その復帰するそれの日に備えて、ただいま本土との一体化並びに行政あるいは経済、住民生活等々の格差をなくするように財政援助はいたしていくつもりでございます。
  174. 多田省吾

    ○多田省吾君 それでは経済援助は別にして、総理は施政方針演説の中にもはっきりおっしゃっているのでありますが、「沖繩の祖国復帰なくしては戦後は終わらない。」、あるいは「この国民の念願が一日もすみやかに達成できるように、あらゆる機会をとらえて努力してまいりました。」、この返還に対してどういう努力をなされたのか、お聞きしたい。
  175. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) これは歴代内閣がこの返還についてたいへんな努力をいたしておるわけであります。あらゆる場合に、あらゆる面からいわゆる総合的に実現するようにいろいろ努力しております。これは過去におきまして、岸内閣以来ワシントンに出かけていろいろ交渉した、その例も御承知のとおりであります。また最近になりましては、日米協議会、こういう席を借りまして、ただいまの実現への努力をいろいろはかっておるわけであります。しばしば申し上げますように、沖繩の返還、これはやはり沖繩がわが国を含めての極東の安全、アジアの平和確保のために貢献していることを絶えず頭の中に置きながら、この沖繩の返還の実現を期する、こういう意味でございまして、あらゆる総合的な努力を続けているのでございます。
  176. 多田省吾

    ○多田省吾君 総理はいつも、ことばではあらゆる努力をしていかれる、そういうお話をしておられますけれども、具体的なお話を聞いたことはないわけです。で、この前も前駐日大使であったハーバード大学のライシャワー教授が、一月三十一日のアメリカ上院外交委員会の聴聞会で、沖繩問題に対して次のようなことを述べております。われわれの基地は、日本国土にあるわれわれの基地に対して課されているような一定の制限を課されていない、制限を課されていない基地は極東における安定を強化しようというわれわれの役割りや極東全体におけるアメリカの軍事的立場にとって重要かつ貴重なものであるばかりでなく それからまた私の見るところ日本自体の防衛のためにも重要である、だからこそ日本はこれら諸島の返還要求でがむしゃらな態度はとらず自制してきたのである、みずから制してきた、このようにライシャワー前駐日大使が述べております。ほんとうに総理が駐日大使あるいはアメリカの大統領等に対して真剣にあらゆる機会をとらえて努力してまいりましたという、おっしゃるとおりの具体的なことをやってきたのかどうか、非常に疑問に感ずるわけです。相手のほうは、日本はむしろ返還問題に対しては自制してきた、結局、自制ということと努力ということはまさに正反対なことです。評価がこのように正反対になるということはまことにおかしいじゃないか、総理はこの点に対してどのように思われるか。
  177. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私はライシャワー氏がどういう気持でそういう発言をしたか存じません。私の知っておりますのは、ジョンソン大統領と私が交渉した、これが私の経験としてはっきり言えることであります。これは当時の模様は私とジョンソンとの共同声明ではっきり中にしるして声明しておりますから、それで御承知を願いたい。
  178. 多田省吾

    ○多田省吾君 まあ、声明等は幾らでもできるわけです。私たちはそういう声明こそあぶないものだ、声明だけあって、その具体的な努力の事実がないということは、アメリカ追随の危険性があるのじゃないかということを感ずるわけです。きのうの委員会におきましても、沖繩の返還に対する具体的なプログラムはまだつくっておられないという御答弁がありましたけれども、ほんとうに総理が沖繩の返還をあらゆる機会をとらえて努力していかれるならば、当然プログラム等もつくる努力、また、つくっておられる姿もあってしかるべきだ、このように感じます。今後そういったものを、早くプログラムをつくっていくという、そういう意思がおありかどうか。
  179. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 多田君御承知のように、政府は、一つはやはり財政援助、多田君は関係ないと言いますけれども、われわれはそうも思わない。沖繩がいつか返ってきたときに、本土とあまりにも格差があるということは、むしろ沖繩の人のためにも不幸なことでありますから、これは返還と直接ということではないけれども、非常に関連がある。愛情を持って考えるならば非常な関連を持った問題であります。あるいはまた自治の拡大、自治の拡大がだいぶ実現をして、主席などに対しても直接立法院で選挙するように、いろいろな自治の拡大、あるいは日の丸の旗であるとか、国籍であるとか、旅券の問題であるとか、外交保護権の問題とか、こういういろいろな点で具体的に積み上げていっておるわけでございます。こういうことが施政権の返還ということに向かって、これは一歩前進であることは事実でございます。この全面的に返還ということは、時間をかけなければなりますまいけれども、これはプログラムといっても、一ぺんに極東情勢というものを無視して施政権の全面返還という、そういうプログラムというものはなかなか私はつくり得ない。しかし一歩一歩、いま言った自治の拡大であるとか、あるいはまた、いま言った小さなことであっても、それは施政権の返還につながる問題に努力を積み重ねていくということが、ここでとりも直さずプログラムであると言ってもいいのではないかと考えるのでございます。   〔理事平島敏夫君退席、委員長着席〕
  180. 多田省吾

    ○多田省吾君 私は、いまの外務大臣の答弁をお聞きして、まあ総理は先ほどはっきりと、経済援助と、それから返還問題は異質であるということをはっきり述べられたわけです。これは当然だと思う。アメリカの政治学者でダビッド・ラーヘルという教授がおりますけれども、彼が指摘して言うには、経済的満足は民族統合主義、これは沖繩住民の方々に当てはめれば、祖国復帰論ということも言えると思うのです。経済的満足と民族統合主義というものが代替できるものじゃない。この二つは、人間の動機の二つの異なったカテゴリーに属するのだ、こういうことを言っております。かえって彼は、経済的満足はせいぜいのところは、民族統合主義の政治的実現をおくらせることができるにすぎないとさえ言っているわけです。私は何も経済援助が役に立ってないということを申し上げるのじゃありません。ただ、いま外務大臣がおっしゃったように、その経済援助だって、返還に対する努力の一つのあらわれだということをおっしゃいますけれども、私は全然、総理がお答えになったように、異質のものであり、経済援助は経済援助としてそれはやるべきでありますけれども、それと同時に、それ以上に沖繩の基地ということを、施政権返還ということを強力に推進してこそ、努力してこそはじめて言えるのじゃないか、こう思います。で、いまいろいろ旅券の問題等ありましたけれども、これもほんとうに本質的な返還にはかかってこない。むしろ私は、総理衆議院委員会において横路委員等にお答えになったように、核基地の返還と、それから施政権の返還とをどういうふうに取り扱う、こういう問題に対して答えておられる。それから矢野委員の質問に対しても、核基地つきの返還というものは近い将来考えられるのだと、そういうことをおっしゃっておられるのであります。それでは核基地つきの返還というものを将来考えていらっしゃるのか、どのくらいの将来を考えていらっしゃるのか、近い将来を考えるのか。また、その核基地の返還と、それから施政権の返還の、別々に返還する問題にしましても、ほんとうに別々に返還するのか、一緒に返還を要求するのか、その点に関して、総理のお考えを聞きたい。
  181. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) なかなかむずかしい問題を御提起になりましたが、これは私申し上げますように、アメリカがまだ沖繩で施政権を持っておる。その結果、日本を含むアジア、極東の地域の安全に寄与している、これを絶えず念頭に置きつつ施政権の返還を要求するのだ、それを返還を求めるのだ、実現するようにするのだ、こういうことをしばしば申し上げております。そこで一番問題になりまするのは、いまのわが国の基本的な態度でございます。わが国自身は核兵器は自分で持たない、また持ち込みも許さない、こういうはっきりした態度をとっております。したがいまて、ただいまのような核基地つき返還ということは、これは考えられない問題だと思います。で、沖繩が軍基地としての役割り、これを果たしておるということは、ただいまの国際情勢、また現代の兵器からそういうことがいわれるわけであります。安全確保に役立っておる。しかし、これから国際情勢も変わってくることがあるかもわかりませんし、また兵器の発達が、沖繩に軍基地を必要としない、こういう時期があるかもわかりません。そういうことをいろいろ勘案しながら、とにかく沖繩が果たしておる役割り、これは現在においては無視はできないのだ。また、日本もアジアの一員、一国としてアジアの平和のために非常に役立っておる。そのことは認めざるを得ない。その上でただいまのような返還を考えておるということでありますから、矢野君の質問に答え、いまの核基地つき返還ということは一切考えられない、また、横路君からもそういうお尋ねがあったと思いますが、それについても、その点は了解されておる、かように私は思っております。
  182. 多田省吾

    ○多田省吾君 じゃ、核基地つきの返還は考えられない、遠い将来も考えられないということですか。
  183. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私どもの、日本の考え方が、もう核兵器は持たない、核兵器は持ち込みを許さない、これはもうはっきりしておる約束でございますからして、これが変わらない限り、ただいまのようなことはやれるわけはないのです。このことを私は申し上げておる。
  184. 多田省吾

    ○多田省吾君 横路委員の質問に答えられて、核基地の返還と、それから施政権の返還とを別々に考えることも決して不可能なことではないという意味に受け取れましたけれども、それでよろしゅうございますか。
  185. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私は、いまのままということよりも、将来の兵器の発達、あるいは国際情勢の変化、こういうことが考えられる。だから、返還ということが非常に遠い将来、全然見込みがないのだと、こういう結論を出すことは早いんじゃありませんかと、かように申したのでございます。
  186. 多田省吾

    ○多田省吾君 いまの答弁をお聞きしておりますと、結局、国際情勢が変わらない限りはもう絶対に沖繩の返還は不可能であるということをおっしゃっている。また、努力してもむだだから、もう、ことばでは努力するとはおっしゃいますけれども、実際には努力してもしようがないのだと、そのように受け取れるわけでございます。もしほんとうにそうでないならば、何らかのプログラム、何らかの方法というものを考えてしかるべきである、そのように考えますけれども、いかがでございますか。
  187. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 以上答えたとおりでございますから……。
  188. 多田省吾

    ○多田省吾君 総理は日米安保条約に対しまして、一九七〇年以降といえども堅持していくという立場を述べておられます。それでは、交換公文にあるところの核兵器等の持ち込みを事前協議なしには行なわないという、事前協議事項ですね、交換公文の事前協議事項もともに、一九七〇年以降も交換公文の内容もともに堅持する、これは当然ですね。
  189. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 当然でございます。
  190. 多田省吾

    ○多田省吾君 ベトナム派兵につきまして、ウ・タント国連事務総長の新しいまた提案が出ておるようでございますが、外務大臣はそれをどのように考えておられますか。
  191. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) ウ・タント事務総長の和平への努力は、高く評価しておるわけでございます。最近における三提案、アメリカはこれを受諾いたしたのであります。ハノイはこれを受諾いたさなかったのでございますが、非常に残念なことだと私は思っておるわけであります。ウ・タント提案の三原則というものは、現在の時点で早くベトナム紛争を終わらすための非常に示唆に富む提案であると考えておるわけでございます。しかし、常にいろいろ政治は動くものでありますから、こういう線で一日も早く戦争が終結を告げることが、われわれの非常に強い願いであるわけでございます。
  192. 多田省吾

    ○多田省吾君 ウ・タント提案につきまして、新しい提案は北爆の停止ということに対して一歩後退したようなふうに受け取られる、そのために北ベトナムが反対しているようにも受け取られるわけでございますが、大臣はどう考えますか。
  193. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) ウ・タント事務総長の提案は、北爆の停止も含んでおると、現状において軍事行動を凍結するというのですから、それも含んでおる提案でございますから、非常に一方的に片寄った提案だと私は思わない、非常に合理性を持った提案であると考えております。
  194. 多田省吾

    ○多田省吾君 私は、このようなウ・タント提案の新しく行なわれた機会に、日本政府として、いまこそもっと北爆の問題も関連して、そしてアメリカあるいは北ベトナム当事者に対して、もっと積極的な提案をなすべきであり、努力をなすべきである、そのように思うわけでございます。私どもは前にも、早く即時停戦して、もちろん北爆を停止した上で即時停戦して、そうして当事国同士で東京において平和維持会議を開くべきである、それを日本が努力すべきであるということも唱えております。この提案に対して、総理は、昨年のこの予算委員会における宮崎委員の質問に対しまして、なるべく東京においてそういう平和維持会議を持つことは、将来そういう情勢が出てきたら賛成であるというような意味発言をなさいました。ところが、今度の国会において竹入委員長の代表質問に対しては、いまそういう状況じゃないと全く後退したような姿すら見られるわけでございます。この際、ほんとうに積極的にそういった提案も含めて、具体的にベトナム和平に対して努力する意思はおありかどうか。
  195. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 多田君の御意見も十分伺っておきます。
  196. 多田省吾

    ○多田省吾君 これからの具体的なお考えについてお聞きしたいと思います。
  197. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私は、三木外務大臣からもお答えいたしましたように、政府自身といたしましては、十分できるだけ早く事態が平和になることを心から願っております。したがいまして、タイムリーと申しますか、そういう点でチャンスをつかむ、そういう考え方でいまの情勢の変化を見守っておるのが、今日の状況でございます。
  198. 多田省吾

    ○多田省吾君 じゃ、まだ時期が来ていない、その情勢の変化を見守っておる。そして、結局その情勢が変わるまでは何も具体的な努力はしないという、そういうお答えでございますか。
  199. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私は、いまベトナム問題についてウ・タントさんが二度目の提案をした。これは確かに一つの新しい事態が生まれつつあると思います。ことにソ連から昨年グロムイコ外相が日本に来た。今度のロンドンにおいてコスイギン首相とウィルソン首相と話し合った、これなどは、相当の変化でございます。したがいまして、それなども考うべきだと思いますが、一面、ちょうど旧正月爆撃停止、そういう停戦の際、ジョンソン大統領が北に呼びかけた。しかし、それに対する返事は、木で鼻をくくったような状態だ、かようにも見るのでございます。これらの問題、楽観すべき情報もあるし、また、何ら変わりがないという、固い、冷たい状態だというふうな情報もございます。そういう間におきまして、私は、結論的にはまださような時期でないだろうと思います。しかし、われわれは、あらゆる機会にこの話し合いの情勢をつくるべき努力はしなければならない、かように考えております。最近、サイゴン駐在の中山大使が帰っておりました。最近赴任、現地に参りましたので、そういう際にも、よくこれらの問題に関して見通しを立てるように注意をいたしております。これらのことについて、私は絶えずそういう情勢について、事態を把握するということで最善の努力をしておりますし、この点では、多田君のいまの御指摘とあまり変わらないのじゃないか、かように私は思っております。
  200. 多田省吾

    ○多田省吾君 防衛庁長官にお尋ねいたしますけれども、「國防」という雑誌の一月号に対談をやっていらっしゃる。その中に、最後に、「これはほかの政治家もいっているから私もいって構わんと思いますがね。日本も核装備しようと思えば、中共の何倍かのものができるんです。」こうおっしゃっております。これはどういう意味です。
  201. 増田甲子七

    国務大臣増田甲子七君) お答え申し上げます。  「國防」という雑誌で対談した事実はございまするが、その内容は、必ずしも私の言わんとするところを正確には伝えていないのでございまして、私が言わんとするところは、こういうことでございます。すなわち、日本の高い工業技術水準にかんがみまして、核装備をしようと思えばすることができるという人もあるが、しかし、私は反対である。政府の、岸内閣以来の伝統的の方針は、核兵器を製造せず、保有せず、持ち込まずという方針でございまして、それを堅持しているのでございますということを、はっきりそちらへ重点を置いているのでございます。
  202. 多田省吾

    ○多田省吾君 この対談は、写真も出ている対談ですが、そう言うだろうと思いましたけれども、また一面、「旧安保条約の国力に応じて防衛力の漸増を図らなければならないという、あの文句が一ばんいいです。つまりスライディング、スケールですよ。ああいうものをつくるのが一ばんいいと思いますね。すると大蔵省の連中もしゃんとしてくるんじゃないかと思うんですがね。」こういうことをおっしゃっています。これはどういう意味でございますか。
  203. 増田甲子七

    国務大臣増田甲子七君) 旧安保条約をつくったとき、私も多少関係しておりましたから、おそらくそういうことに及んだと思いまするが、新安保条約の第三条に同じ趣旨があるということをこの際申し上げたいと思います。
  204. 多田省吾

    ○多田省吾君 それからそういうことをおっしゃるんでしたら申しますけれども、「三次防の文章はあまり長くてよくわからない。」とおっしゃっているのですが、どういう意味ですか。
  205. 増田甲子七

    国務大臣増田甲子七君) 防衛庁長官になりましてから七日目の対談でございまして、ほんとうによくわからなかったのは事実でございます。
  206. 多田省吾

    ○多田省吾君 もう一点だけお聞きいたしますけれども、「国防会議の事務局がもうちょっと大きくて、スタッフも沢山いれば、そういう問題も検討してもらえばいい」というのですが、それはそういう御意向はあるのですか。
  207. 増田甲子七

    国務大臣増田甲子七君) そのことは、おそらく私が言ったんじゃなくて、相手の対談者がおっしゃったことだと思います。
  208. 多田省吾

    ○多田省吾君 防衛庁長官は、わが国の軍備というものはいまどういったランクにあると思いますか。
  209. 増田甲子七

    国務大臣増田甲子七君) 今日は第二次防末期でございまして、私のただいまの認識は、通常兵器による局地的侵略を阻止し、あるいはこれを排除する防衛力だと、こう考えております。
  210. 黒柳明

    ○黒柳明君 関連。先ほどの「國防」の雑誌についての長官の御答弁でございますが、先日の新聞でも、英国的ユーモアが日本の国会にもあったほうがいいと、このようなある評論家のおことばを私も拝見しました。非常にユーモアも必要だと思うんですけれども、やっぱり真剣に答弁していただくところは真剣に答弁をしていただく必要があると思います。長官はこの「國防」の対談、これはあくまでも御自分で責任を持たれるおつもりか、あるいはこの発言に対しては、いやこれは「國防」の編集がかってにやったことだと、このようにお感じになるのか、どうでしょう。
  211. 増田甲子七

    国務大臣増田甲子七君) 黒柳さんにお答えいたします。  私はこの「國防」の対談というものは、大体において率直に認めます。ただ最後のくだりの核装備の点につきましては、いま多田さんにお答えしたとおりでございます。
  212. 黒柳明

    ○黒柳明君 そうすると、三次防の文章は長くて私はよくわかりませんでしたと、こういう長官が日本にいるとなると、今後は自衛隊がどういう方向に向かっていくのか、私も非常に憂えるわけですが、いま現在三次防のその文章、はっきりおわかりでしょうか、非常に変な質問でおそれ入りますけれども、現在はどうですか、おわかりですか、はっきり。三次防の文句は長過ぎますか、それとも……。いかがでしょう。
  213. 増田甲子七

    国務大臣増田甲子七君) 私の発言したことは事実でございまして、また対談者も相当の国防通といわれておりますが、私もよくわかりませんということをおっしゃっております。そこでいまはどうかと、いまはそのときに比べましてはるかによくわかっておるわけでございまして、お答えもできます。
  214. 多田省吾

    ○多田省吾君 これで締めくくりしますけれども、この「國防」という雑誌の対談というものは、非常にふまじめな姿に受け取られます。で、一週間たってからの問答だということを言いますけれども、あなたは最初のほうに、私は第一回安保条約も私が幹事長のときにほとんど全責任を背負ってその草案なりをやったと、第二回目のときも委員であったというようなことを申されているわけです。そして、だいぶ気負い立ったような問答をなさっているのに、突然、いま黒柳委員が申したように「三次防の文章はあまり長くてよくわからない。」と、この三次防に対してまことに不見識な、まことにおちゃらかしたお話をなさっていることは、まことに私は遺憾だと思う。私は遺憾の意を表すべきであると思いますが、いかがですか。
  215. 増田甲子七

    国務大臣増田甲子七君) 相当長い文章でございまして、要するに常識人としては、私は安保条約の関係の安全保障問題調査会というものが党内にございまするが、相当完ぺきの立場で三年間勉強もしております。でございまするから、常識の線で言えっていえば、そのときだってできたのでございまするが、別にふまじめではございませんで、長文なものでございます。それから、最近決定されました三月十四日に国防会議を受けまして閣議決定ができました、その文章でしたならば相当短文になっております。関係経費というようなことはことに短い文章でございまして、そらで暗記してもあなたに申し上げ得るわけでございます。
  216. 多田省吾

    ○多田省吾君 総理も外務大臣も最近超党派外交ということをおっしゃっております。特に核拡散条約に対しまして、その超党派外交を求められているようでありますけれども、核拡散防止条約に対して、大臣は具体的にいかなる要望を政府としてなさろうとしているのか、項目をあげていただきたい。
  217. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 御承知のように、核拡散防止条約はまだ草案もでき上がってないのでございます。したがって日本政府の基本的な態度は、こういう核の拡散を防止しようというこの趣旨には賛成であり、しかしそのことによって日本の原子力の平和利用というものが妨げられることがあってはいけない。また、核の拡散を防止するばかりでなく、核保有国も軍縮をして、核兵器の人類の脅威を、これを減らしていく努力をしなければならぬ、これが基本的な態度でございます。
  218. 多田省吾

    ○多田省吾君 いままで、それは草案がまだできてないということは当然です。しかし、いままで論議尽くされております。相当論議がやられております。その中において、特に政府としてこの点はどうしても主張すべきであるという項目をあげていただきたいと申し上げたわけです。
  219. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) かなり私は簡単に項目をあげたので、いろいろ述べたのではないのです。第一番には平和利用、これは日本のような、こういう科学技術の水準の高い国が、将来日本の原子力の平和利用に対する研究開発の機会を奪われることがあったら、これはたいへんな国家民族の損失でありますから、この点については、いささかもこの条約が原子力の平和利用の面における研究開発を阻害しない、これはもう絶対の条件でございます。
  220. 多田省吾

    ○多田省吾君 期限の年数、五年なり十年なりという年数に対しては、どういう主張をなさるのですか。
  221. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 年数の問題は、やはり科学技術の進歩が非常に激しい時代ですから、ある年限ごと、まあ五年なら五年とい三期間ごとに、こういう条約ができた場合には再検討する機会を持たなけりゃならぬ。年限よりも時代の進歩とともに、この条約に対する再検討というものが大事であるというのがわれわれの考え方でございます。
  222. 多田省吾

    ○多田省吾君 ですから、再検討すべき年数、それは年限になると思うのです。
  223. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 五年くらい——五年ごとにやったらいいと考えております。五年ごとくらいの期間でやったらいいというのが考え方でございます。
  224. 多田省吾

    ○多田省吾君 原子力の平和利用について科学技術庁長官はどういう態度でおられますか。
  225. 二階堂進

    国務大臣(二階堂進君) いま三木外務大臣からお答えされたとおりでありまして、御承知のとおり、わが国は平和利用の目的に限って研究開発を行なっております。その精神はあくまでも日本も主張すべきものだと思っております。かりに平和利用に対して、今後もどういう条約ができるかわかりませんが、制約を受けるというような措置でも考えられる場合には、あくまでも平和利用は持てる国も持たざる国もあるべきだ、こういう主張はなすべきだと考えております。
  226. 多田省吾

    ○多田省吾君 平和利用の核爆発についても外務大臣は当然権利は保留すると思いますが、その点はどうですか。
  227. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 私はいまこの段階で軍事、平和区別つかないのですけれどもね。核爆発ですから、核爆発を観念的に平和、軍事に区別をして権利があるのだというようなことは、私はあまり有益な議論ではない、とにかく日本はやらぬのだ、核爆発の実験はやらぬのだ、こういう態度のほうが今日の場合私はよろしいと考えておるものでございます。
  228. 多田省吾

    ○多田省吾君 その代替として、相当強い平和利用についてのいろいろな核大国からの援助と申しますか、そういったものが必要だと思いますが、それは具体的にどういうふうに臨むつもりですか。
  229. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 多田さんと私少し考えが違うのは、何かよそへ、この条約に賛成したならば何か援助をもらえと、そういう考え方は持っていない。核兵器を次々に持つ国がふえることが核戦争を防ぐために役立つのかどうか、そういう立場に立って賛成反対ということで、これに賛成とか、日本のためにも核戦争が起こったら困るのですから、これに賛成したことによって何かこう反対給付みたいな援助を待つということは考えるべきではない。ただ日本が平和利用の研究や開発のための機会、そういうものを奪うようなことがあってはいけないということで、この条約に賛成したからよそから援助をもらうという、そういう考え方は私はこの条約に対する基本的な考え方ではないと思うのでございます。
  230. 多田省吾

    ○多田省吾君 この条約については、初めから不平等条約だということで、いまの非核保有国がずいぶん——西ドイツ等においても反対しているわけです。やっきになってアメリカやソ連等がそれを説得しようとかかっているわけです。核大国に対する軍縮の要望といい、年限といい、あるいは平和利用の問題といい、何も、もらえるのだというのじゃなくて、不平等条約じゃない、そして核拡散防止条約が真の核拡散防止条約になるような姿でいかなければならない、そういう点から私は申し上げている。決してそんなこじき根性で言っているのじゃない。その点を了承願いたい。それとともに日本の国益を強力に主張し、そしてまた言うべき点は言い、少なくとも不平等条約のような姿にならないために私は要望しているわけです。その点に関して最後に外務大臣また総理の所見を聞きまして終わりたいと思います。
  231. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 私は、この問題に対して国民としての問題の整理のしかたが、やはり日本は次々に第六、第七、第八の核兵器保有国がふえることが世界の平和のためにいいのか。これを五カ国に押えておいて、中共もフランスも入らぬのですから不完全です。不平等といえば、核を持つ国と持たない国と両方あるのですから、すでにそういう意味から不平等かもしれない。しかし、五カ国に押えて、五カ国を軍縮をやっていく、核軍縮を。そして、第六、第七の核保有国をふやさないということが核戦争防止に役立つのかどうか、こういう観点からこの問題に対処する態度が私は日本として好ましい。これを不平等だ不平等だと言って、こういうことでこの問題をとらえるべきではないと考えておるのでございます。しかしながら、一方、核を持っておる、核兵器を持っておる国に対する軍縮の誠実な履行というものは当然に要求しなければ、持つものは持って、次に第六、第七を持たさぬだけでは、これは核戦争の危険は防止することができませんから、それに対しては努力しなければならぬが、不平等不平等と言って、この条約の持つ本質的な意味を取り違えることはいけないというのがわれわれの考え方でございます。
  232. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいま三木君がお答えいたしましたから私から重ねて申し上げる点ございませんが、私ども最もこの際に強く主張したいことは、核戦争の危険、これをなくする、これが何といっても一番の理由で、核爆発禁止条約に、核保有拡散防止条約に賛成するゆえんでございます。核戦争脅威をなくする……。また、核物質の利用におきましては、どこまでも人類の平和と繁栄のためにこれが使えるように、そういう道は残しておくべきだ、かように私ども考えておる次第でございます。
  233. 黒柳明

    ○黒柳明君 関連して。
  234. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 時間がないのですが、一問だけ。黒柳君。
  235. 黒柳明

    ○黒柳明君 先ほど関連質問をしそこなったので、さかのぼって申しわけございませんが、国対費の問題ですが、総理がきっぱりわが党の台所は公表しないと、こう理解したのですが、先日官房長官が、御要望があれば別途出す用意がございますと、このようなおことばを聞いているわけなんです。いかがでしょうか。何か食い違っておりまして、官房長官と……。
  236. 福永健司

    国務大臣(福永健司君) 先刻きわめて正確にお答えを申し上げました。
  237. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 以上をもちまして、多田君の質疑は終了いたしました。(拍手)     —————————————
  238. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 次に、小林武君の質疑に入ります。小林武君。
  239. 小林武

    小林武君 大蔵大臣にお尋ねいたしますが、暫定予算ですね、今度のように政策的なものの経費を盛り込んだというのは前例がございますか。
  240. 村上孝太郎

    政府委員村上孝太郎君) 過去の前例でございますから、私からお答え申し上げますが、昭和二十八年と昭和三十年におきまして、前者は七月分、後者は六月分につきまして、大体御提出いたしておりまする本予算の月割りを組んだ例がございます。
  241. 小林武

    小林武君 それは財政法上妥当だと大蔵大臣はお考えになりますか。
  242. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 本予算に計上した項目のうちで暫定予算に何が入れられるかということについては、全く法律上の規定はございませんので、そのときによってこれは考えられるということで、違法ではございません。
  243. 小林武

    小林武君 財政法の三十条ですね。しかし、それを一体、今度の新しい財政法、戦後の財政法に盛り込まれたという理由は、一体どういうところにありますか。
  244. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) ちょっと質問を聞き漏らしましたが、いままでなかったのを、暫定予算の条項が新たにできたのはどうかということでございますか。もう一ぺん……。
  245. 小林武

    小林武君 違います。
  246. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 小林君、再質問を願います。
  247. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 御承知のように、旧憲法ではそういう規定はございませんでした。もし本予算が成立しないというときには前年度予算をもつて執行すると明確になっておりましたので、三月三十一日に予算が通らなくても困らないというわけでございますが、新憲法ではそういうことがございませんので、もし本予算が通らないというときにはこれはたいへんなことでございますので、一定の期間を切って暫定予算というものを出すことができる、そうでなければ国政の円満な遂行ができないということから暫定予算の規定ができたわけでございます。
  248. 小林武

    小林武君 旧憲法の施行予算というものとは違った性格の第三十条による暫定予算というものが新たに入った、このことの理由ははっきりしておらないということで、違法ではございませんというようなことを軽くおっしゃるようなことになる。その点について明快にひとつお答え願いたい。
  249. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) その暫定予算に盛るべきものが本予算との関係においてどうなっておるかということについては、規定がございません。これは新規政策にかかるものも国政の必要によって入れてもいいということになりますし、ただ、暫定予算の性質上から申しますと、これは本予算のできない間の暫定の措置でございますので、できるだけ国会の御審議を短期間にしていただけるようにという意味から、前年度の基礎にした経費の計上とか、あるいは事務費というような、もう欠くべからざるものを計上して、なるたけ新規の施策にかかるものは計上しないというのが原則だろうと思います。
  250. 小林武

    小林武君 私は、専門家でいらっしゃる大蔵大臣にひとつお教えをいただこうと思っておりましたけれども、あまり親切でないですな。あなたのいまおっしゃったことで大体、三十条の設けられたことはわかりました。そうすると、そのことは一体どういうことなんですか。そのことの意味はどこにあるかということをお考え願いたいのです。それをひとつお聞かせください。
  251. 村上孝太郎

    政府委員村上孝太郎君) 財政法の解釈でございますので、私から申し上げたいと存じます。  旧憲法第七十一条におきましては、政府責任で、新会計年度の始まりまするまでに予算が成立しないときには前年度予算を施行するということになっておったわけでございますが、新憲法の財政法のもとにおきましては、おっしゃるように議会尊重のたてまえから、国会審議を経まして暫定予算、こういうふうな制度ができ上がっているわけでございます。  暫定予算というのは、本予算が成立しないということが大体わかったころに提出いたしますので、確かに審議期間は短こうございます。したがって、その短かい審議期間でもっともだと納得していただけるような国政遂行上不可欠の経費を盛るのが原則だろうと思うのでございます。  ただ、最近におきまする福祉国家におきましては、財政とそれから国民生活あるいは国民経済との間の関係は非常に密接に相なっておりまするので、前年度の予算のように経済条件、社会条件の違いましたときの予算をそのまま施行するというわけにはなかなかまいりませんし、それだと支障もございまするので、できるだけ審議期間の短かい間にも御納得のいただけるような新規政策についてはこれを盛ってもよろしいと私どもは考えておりますし、財政法三十条の規定は何とも書いてございませんけれども、彼此勘案いたしますとそういうことになるのではなかろうかと、こういうことでございます。
  252. 小林武

    小林武君 審議期間がきわめて短かいから暫定予算は法律的に事務的な経費だけを盛るという考え方はいかがなものでしょう。それはそうではないのじゃないですか。旧憲法の施行予算というものと暫定予算というものは財政法の中に置いたそのねらいは明らかに違うのじゃないですか。あなたはそういう便宜主義的におっしゃっているのですが、それはほんとうですか。
  253. 村上孝太郎

    政府委員村上孝太郎君) 先ほどの私の御説明が悪かったかと思うのでありますが、前の、旧憲法の七十一条におきましては、議会の協賛を経ずに政府責任で施行いたしておったのであります。ところが財政民主主義というたてまえから、新しい憲法及び財政法のもとにおきましては、国会の協賛を経て暫定予算という制度をつくりまして、これによって予算の空白期間における国民生活なり国民経済の支障を除こうと、こういうふうになっておるわけでございます。  ただ、暫定予算を提出しまするのは、本予算が成立しないということが明らかになったときに出すわけでございまするから、過去の例におきましても本予算審議のように二カ月というふうな審議期間はございません。したがって、短い審議期間の間において御納得のいただけるように、必要不可欠の、国政遂行上どうしてもこの経費はやむを得ないというふうなものが盛られるということでございます。いわばそうした議会民主主義と、それからもう一つは、最近における福祉国家における、財政と、国民生活なり国民経済に非常に深い影響を持っておるという予算性格と、その二つをどう調整するかということが、私は暫定予算編成上の問題であろうかと思っております。
  254. 小林武

    小林武君 調整の問題は、それはひとつ取っておいて、私は調整の問題よりかも、旧憲法のいわゆる施行予算というものから暫定予算というものが認められるように——その設けられたことは、いまのその予算というもの、財政というものの民主化、議会中心主義、議会主義を貫くという意味から出されているものだと私は思うのです、でありますから、この原則はきわめて財政法上の重大なたてまえなんです。それを最近においては、財政が国民生活に密接な関係を持つのだということは、これはわかる。大体そういう財政をやっておる。しかし、それによってこの原則が、特に新しい財政法に三十条の暫定予算を認めたというところの原則を破るということは、これは私はたいへんな問題だと思う。施行予算のような性格のものを一体今度の財政法のもとでやろうなんという考え方が間違いなんだ、その点についてはどういう考えを持っていますか。
  255. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 本予算が年度末に通過しないという見通しのついたときでなければ、暫定予算は事実上できませんので、どうしてもこれはせっぱ詰まったときに提出するというのがいままでの例でございまして、したがって、国会に対して十分に審議期間を与えられないで、非常に短い期間になっておるということは、いままでの例で申しますと、極端なのは二日、三日、四日、一番長いので一週間というのがいままでの例のようでございますが、私どもはできるだけ急いで編成をやったわけでございますが、これはどうしても御審議を願う期間が短くなるのはやむを得ないのではないかと思います。
  256. 小林武

    小林武君 これはもう審議の長短の問題ではないですよ。しかし、暫定予算というものが法の中できめられていることは、これは予算が年度初めまでに成立しないということがあり得るという前提の上に立っているわけです。したがって、これは暫定予算性格上、政策的な予算は組まないというのが原則である、そのことをあなたたち認めなければいかぬです。今度の場合でも、私は、わが党が年内解散をやれというのにやらないから、今度のような状態になったのです。その意味では、あなたたちの政治的責任だと思う。それによって原則を破られるということはどうかと思う、どうですか。
  257. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいま解散論が出ましたので、解散についてのお答えをいたします。  この解散というものは前もって予定されるような解散だとたいへんよいのでございますが、解散はそのときの情勢によってきまるものでございますから、これはどうも好まないし、また、そういうときに解散になるから、暫定予算がこういうような期間にかかるということは、どうもまことに残念でございますが、どうぞよろしく御審議のほどをお願いいたします。
  258. 小林武

    小林武君 まあ、このことについてはあまりやる時間もございませんから、しかし、やはり暫定予算というものに対して、もっと厳格な態度を財政当局は持つ必要があるということだけは忘れないでもらいたい。
  259. 亀田得治

    ○亀田得治君 関連して。今回の暫定予算審議の方法ですが、これは二十日に提案したわけですけれども、なぜ二十日に提案してすぐ暫定予算審議に入らないのか。これはもちろん、国会の扱いの問題になると政府は言われるかもしれませんけれども、これはもう政党政治で、そんなことはそういう形式論で逃げられる問題じゃない。暫定予算の中にいろいろな重要な新規の経費等が組まれておることも事実、これは例外的に許されることだという御説明もいまあった。それは私は、それなりに一つの考え方でやむを得ないと思いますが、しかし、この一般の予算をやって暫定予算を三十一日ぎりぎりに詰めて審議日程を組ましておる。こういうことは私は暫定予算を非常に軽く扱うものだと思います。なぜ、提案したのをすぐ、暫定予算自身を、これは優先的に急ぐわけでしょう、三十一日までに上げたいわけでしょう、本来ならば本日ですよ。そうすれば、衆議院五日、あるいは参議院の場合も五日なり、相当余裕を持った審議ができるわけです。なぜ、そういうことをしないで、こういうぎりぎりの窮屈な日程でやって、そうして、差しつかえがあるから早うやれやれ、こういうのでは、はなはだ私は筋が通らぬと思うけれども、これは日程を組む過程においても、ずいぶん理事会等でも問題になりましたが、しかし、ちょうどいまその暫定予算についての質疑がなされておりますから、私は政府側の考え方を聞いておきたいと思います。こういうことは、はなはだこの国会審議を事実上拘束する、追い込む、こういうことになるわけでして、二十日から始めて、まあまあというところまで審議ができたら、これはあなた、二十九日でも三十日でも上げてもいいわけでしょう、実際は。だから、その辺の考え方というものの中に、暫定というものをはなはだしく軽く考えておる。先ほどの財政法三十条の非常に民主的な説明と、私は実際のやり方とが違うと思う。大蔵大臣でもけっこうですが、ひとつ忌禅のないその説明をしてほしい。
  260. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) いま申しましたように、私はできるだけ御審議の期間を長くしたいということで編成を急いで、例年の例を見ますと、さっき申しましたように、二日が一番短いことでございましたが、普通、衆参両院が三日、四日の、四日というぐらいのときに暫定審議を願っておるというのが過去の例でございますが、私どもは急いで、できるだけ御審議の時間を与えるようにと、編成を急いで、十日以上の余裕を与えて国会に私どもは提出いたしました。これを御審議する日程の作成は、これは国会側でございますので、これはどうも私どもの、私どもはできるだけ急いでお願いしたがったのですが、これは日程をやるほうは国会側でございますので、これは私ども責任ではございません。
  261. 亀田得治

    ○亀田得治君 ちょっと矛盾がありますね。総理もそういう考えだったのですか。できるだけ急いで暫定の審議を爼上にのせてほしいという考えがあったのですか、総理として。ちょっと大事なことですから……。
  262. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) いま大蔵大臣から実情を申しましたように、二十日に政府が暫定予算を出した、また、皆さん方のたいへんな御苦心によりまして、衆参両院でどういうような日程で審議しようか、ずいぶんあんばいしていただいた、これはもう皆さん方の御協力でようやくこの日程がきまったと、私はかように理解しております。その審議等につきまして、十分皆さま方も御協力願っておりますから、私ども、とやかく言う筋はございませんが、ぜひ、ただいま申しますように、予定どおりこの審議が終わるようにぜひともお願いしたい、こういう考えでございます。
  263. 亀田得治

    ○亀田得治君 もう一つ、まあ関連ですから長くはやりませんがね、国会に出して国会の扱いにまかしたんだ、そういう言い方は、私は、単なる形式的な言い方ですよ。ほんとうに暫定予算というものは、先ほど大蔵大臣が説明されたような立場で考えておるのであれば、二十日からやはり暫定の審議に入るような努力を政府みずからがこの国会に注文すべきだし、そうあるべきなんです。国会に注文するいうたって、あなた、みんな政府総理が両方を兼ねておる最高責任者ですからね。やはり今後はそういうことを十分考えてほしいと思うのです。その普通の予算審議がおくれてきて、途中いろいろな支障があって、思わざるところでどうしても三、四日、四月にかかると、これはどうもいかぬから、急に暫定予算を組まなきゃならぬ。そうして、その三月の末にそれが出てきたというような場合は、これはどうしたってぎりぎりの審議になりますよ。そうじゃなしに、あなた、これはもう解散したときから大体のめどがわかっているわけなんです。そういう性格の場合には、じっくり審議できるようなスケジュールをお組みになるのが私は当然だと思う。それが今度はできておらぬのですよ。これは衆議院の諸君にも私はわれわれなりに意見は出しました。しかし、これは一党派だけの問題じゃなしに、全体としてこれはもっと考えなければならぬことだと思う、財政法三十条がそういう民主的な立場でつくられたという趣旨からいったって。だから、そういう意味では、はなはだ今度のやつは不満なんです。不満ですよ、暫定予算の扱い方は。衆議院はまあ一般の予算と並行してやっておるから、実質的には相当長期にわたっていろんな問題点の論議はしているわけなんです。しかし、参議院の場合には、そうはいかぬのでしょう。だから、実際上非常に無理な審議をここへ要求したということになっておるのですよ。こういうことは十分今後反省してもらいたいと思うのです。どうですか、総理、考えますか、今後、実際上。大蔵大臣でもいいですよ。
  264. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) おっしゃるとおりだと思います。したがって、私どものこの暫定予算審議はできるだけ早くお願いすることに努力しました。ところが、いままでの例もございますせいか、衆議院、参議院大体三日ずつの審議期間を置いて、六日でこの暫定予算を上げるというようなお話でございましたので、それなら十分審議が願えると思っていましたら、事実上、衆議院にああいう少し問題が起こりまして、参議院の審議日程が削られたということは、私は非常に残念だったと存じますが、政府としましては、さっき申しましたように、もう旧憲法ならともかく、新憲法で国政の空白を置かないために暫定予算という制度を置いております以上は、私どもとしましては、これは本日成立しないというものを、これが成立しなくてもいいということは憲法でも事実予想していないという答弁がしばしば過去にあったようでございますが、それくらい私は暫定予算というものはやはり重要なものであると考えておりまして、ほんとうなら国会は今晩私はこれを通していただくのがいいんではないかと思いますが、しかし、これは参議院のせいではございませんで、参議院の日程がおくれたという事情を承知しておりますから、私どもはこれもやむを得ぬと思っておりますが、本来なら国会は暫定予算だけは三月三十一日に通すということが、これがやはり新憲法趣旨であるというふうに私どもは考えますが、日程がこういうふうになったからいまのところはやむを得ぬと御審議をお願いしておる次第でございます。
  265. 藤田進

    ○藤田進君 関連小林委員の時間三十四分でしょう。おそらく、この問題については、暫定予算であと機会がないかと思いますので、いままで御答弁になりましたものがそのままで成立いたしますと、今後何党内閣におきましても悪例を残すことになると思うので、以下要約して申し上げることについてお答えをいただきたいと思います。  それは、主計局長答弁になりましたが、旧憲法その他の引用があった。しかし、現行財政法のもと、あるいは憲法のもとでは、少なくとも財政法三十条につきましては、お説のとおり、多くを書いておりません。しかし、憲法第八十六条、これは明らかに年度予算をたてまえにしていることは御承知のとおりであります。財政法三十条ないし憲法第八十六条が示すように、その原則、立法の精神というものは年度予算を出す、これがたてまえ。したがって、過去四回出されておりますものをつぶさに調査してみますと、政府提出の説明には、そのためにいわば例外、年度予算に対するやむを得ざる例外中の例外であるということで政策予算は組んでいない。骨格である、当然支出であるという趣旨のものが、過去四回ありますが、書かれているのです。ところが、今回のは、国債発行のみならず重大な政策予算が含まれている。これが所論のように、お答えのように、まかり通るということであれば、この憲法八十六条の精神なり、財政法三十条の精神というものは、もうこれはどこへやら吹き飛んでしまう。これは好ましい姿ではないけれども、今回は長期暫定になり、今後はこういうことはとるべきでないという趣旨答弁くらいは、それでわれわれが了承するしないは別ですが、時の内閣としては、これはやはりお出しいただかなければ、これが当然だということになれば、憲法解釈自身にも問題が出てきますし、過去の四回の政府の理由書にも、これは大きな食い違いがある。新例を残すことになります。この点は立法の精神、憲法の年度予算のたてまえというものから見て、決して好ましい姿でないということをお認めになるだろうと思う。この点について、いや、もう絶対にこれが正しいんだということになりますれば、おいおい、これがゆるんできて、将来三月三十一日年度内成立が危ぶまれればまた暫定というようなことで、イージーに暫定というものに移行する可能性を私どもは非常におそれるものであります。以上にいたしまして、これが金科玉条、あるべき姿というふうには私はよもや思っていないと思うので、重ねて、くどいようですが、その辺を明快にしていただきたい。
  266. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 暫定予算性格から見て、新規施策にかかる予算の計上はしないほうがいいと、これが原則だと思います。しかし、御承知のように、国民生活に非常に密接した問題で、あと二ヵ月の暫定予算執行の間にどうしても本予算の中に盛られている新規施策によって二ヵ月していくほうがいいと思われる、もうこれはやむを得ないだろうと思われる事項に限って、今度は私どもはこの内容に取り入れましたが、その中には、実は私どもも新規を取り入れるとすれば、どういうものが国民生活の上で必要かということを、野党、与党、皆さま方に御相談する機会もあったのですが、たとえば北海道というような積雪寒冷地帯というようなものは、去年予算の繰り上げ執行をやった経験から見ますと、やはり早目に事業を始めることが非常に経済にとっては効率的だというような経験もございますので、こういう地帯はもう二ヵ月分ということに限定しないで、少し多目にこれを盛ることが国民生活上はいいんだというような、これだけはやむを得ないだろうと言われたいろいろのことも私どもは参考にいたしまして、今度これを取り入れたということでございますが、今後も暫定予算の必要が起こるという場合はあるかもしれませんが、あった場合に、やはりもう一切新規施策はこの暫定期間中は取り入れないんだという原則を全部貫くということは非常に無理じゃないかというふうに考えております。
  267. 小林武

    小林武君 きのうも与党の質問の中に、この問題が私は取り上げられたと思います。これに対して宮澤さんが御答弁なさった。新規のものを取り入れたことについて、非常にまあ両方とも、これは当然そうあってしかるべきだ——礼賛論がぶたれた。しかし、これについては、もう一ぺんやはり財政法の本来の筋に戻ってわれわれはやっぱり考慮すべきである、そのほかにやる手がないというなら別でありますけれども。まあ、そのことをあまり言っていると時間もございませんが、いずれ、このことについては、どうぞ——十分われわれの討論の機会もございましょうから、次に移りたいと思います。  米価を中心にした問題でございますが、生産者米価、それから消費者米価、まあ食管会計の赤字の問題というようなこともございますし、これがまた物価の問題と非常に大きな関連を持つ。まあ大きく考えれば、日本の食糧の問題もありますから、そういう角度から総理にお尋ねいたしたいのですが、わが国の食糧政策というものについて総理はどういうふうにお考えになっているか、ひとつお答えを願いたい。
  268. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 食糧政策についてどういうふうに考えるかと、ずいぶん広範な問題でございます。いま、あるいは国産で食糧はどういうふうに考えるか、まあ、そういうことに限定してお答えいたしますれば、わが国の自給度は大体八二%、これはもう米麦についてでございます。その他の食糧、いわゆる飼料まで入れますと、これは外国に依存しているところが非常に大きい。七八%あるいは七六%しか自給度がない。こういうふうな言われ方をしております。わが国の農業政策の基本におきましては、この自給度を安定さすというか、一定のところで確保していく、ここにまあ特に力を入れていく。特に、いま言われておりますのは、大体八〇%程度にこの自給を確保していこう、これが、いま農業政策の根幹として諸政策が立てられておる基本でございます。そのもとにおける価格政策、あるいは農業構造改善事業、あるいは土地改良、あるいはさらにその他の肥料政策等々、流通関係まで含めて、そこらを実はねらいにしておる。かように御了承願いたいと存じます。
  269. 小林武

    小林武君 それでは、八〇%という自給度というものは落としたくない、こういうお考えだとまあ受け取って農林大臣にお尋ねいたしますが、いまのような考え方でいった場合に、生産者米価の問題ですが、これはどうでしょう。一体、いまのように農業の生産性が低い場合に、生産者米価というのは、将来、といってもあまり遠い将来までいかぬでもいいですが、当面どういうあれをとっていくのでしょうか。
  270. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) 政府の、農林政策に対する基本の考え方は、ただいま総理がお答え申し上げました。消費者米価のことにつきましては、米価に限らず、私どもは、再生産の意欲を持たせることが大事だと思っておるのであります。しかし、米価のことにつきましては、まだ御承知のように米価を相談すべきいろいろな資料は、いままだ出ておりませんからして、米価についてどういうふうに考えるか——生産者米価です。これについて、どういう考えであるかということは、お答えいたしかねる時期であります。
  271. 小林武

    小林武君 私の聞き方が悪かったかもしれませんが、農林大臣がそういうことでは困ると思います。生産者米価というものは、いまのような形でどんどん上昇していく。国際価格の約倍ぐらいになってるんですね。それをどうするのか。総理の演説の中に、消費者米価の場合は、受益負担というのは当然だから、米は上げなければいかぬと、こう言う。そういう考え方に立ったら、一体、八〇%確保していかなければならぬ、すなわち日本の国の食糧で自給していかなければならぬということになったら、それはもうたいへんなことになると思う。これが物価に及ぼす影響、国民の生活に及ぼす影響というのは、はなはだ大きいと思う。そういうことで聞いているわけです。
  272. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) ちょっと私、誤解がありました。ただいま総理が申し上げましたように、食糧自給度を八二%程度に維持してまいりますには、御承知のように、私どもは、農業基本法に定めました方針で、生産対策、価格対策、あるいは構造対策等をやってまいりました。これの経過を見ますというと、一〇〇%成功だと決して申すわけではありませんが、逐次その成果をあげておるわけでありますが、ただいま、御承知のように、意想外な日本の経済の成長の伸びに伴いまして、労働力が農村からわりあいに楽に流出いたしまして、そこで、ただいまのお話趣旨にもそれはあると思うのでありますが、農業政策としては、この労働力不足ということに対処して生産を確保していかなければならぬ。そのためには、やはり、いかにして省力をして生産性を維持するかということが、われわれに与えられた大きな任務であると思います。  もう一つは、最近農村の都市化傾向等も手伝いまして、国民の食糧の嗜好の方向というものは、畜産物あるいは果樹、野菜等の需要が非常にふえてまいっております。したがって、農政審議会等の答申を見ておりましても、これから先十年の状態を見ますというと、私どもは、食糧自給という立場から考えまして、日本の農業政策の中では畜産等については非常に大きな問題だと思っております。したがって、国民の食糧を確保していくという立場に立って、農業基本法の制定された方向に従って生産を確保していく、これは米ばかりではありませんで、いま申しましたような畜産、野菜、あるいは果樹、そういうものの生産を確保してまいるということに全力をあげていきたいと思っております。
  273. 小林武

    小林武君 雇用対策基本計画という案がありますが、労働大臣は、一体、農業の労働力というのは、どのぐらい必要だと考えておりますか。
  274. 早川崇

    国務大臣(早川崇君) 具体的には数字をあげられませんが、現在、千二百万ほど農林漁業人口があるわけであります。ただ、これは農業の近代化ということの速度と並行しましてどれだけ要るか、こういうことに試算されるわけでありまして、具体的に、六百万がいいとか、あるいは五百万がいいとかいうことは、ここでは申し上げられないと思います。
  275. 小林武

    小林武君 それではちょっと困るのですがね。農林大臣は、もう農家の労働力がなくなって困ると、こう言う。労働大臣ははっきりしたことを言われないと、こう言う。しかし私は、雇用計画基本計画の中には、やはり労働力の配分というものはやらなきゃいかぬ問題だと思う。われわれが考えれば、農家から一体労働力をどれだけ供出できるかという問題は、やはり労働基本政策の中で考えられなきゃならない。農業の近代化というものは、そういうものと、やはりかかわり合いを持っていると私は思うのです。そういうことからいって、農林大臣としては一体どのぐらいが一番適正な労働力確保ということになるのか。
  276. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) 労働省の毎月勤労統計の示すところによりますと、ただいま、全就業人口の中で農業人口は二三%と申しております。小林さんも御存じのように、ヨーロッパ諸国なぞでは、たとえばイギリスなぞは四%ぐらいに減ってきている。しかし、そういうふうに、農村における就業人口が減っておるにもかかわらず、生産力は逆に若干ふえております。私は、やはり日本全体の産業構造というものをびっこにしないで、調和のとれた方向で日本の経済の国際競争力を維持してまいりますためには、ほかももちろん省力が必要でございましょうが、農業については必然的に労働力というものはだんだん減ってまいると思います。それなるがゆえに、そのことによって生産力を落とすようなことでは相ならぬのでありますから、やはりこれからわれわれがやるべきことは、近代産業構造の中で農業が国際的に立ちおくれないためには、やはり、どこまでも省力、機械力、近代化等に全力をあげて、ある程度の自給度はどこまでも維持していかなければならない、このように考えておるわけであります。
  277. 小林武

    小林武君 どうも、いまのような状況だというと、農業の改革というものは何だかばくとしたものであって、そして生産性をどういうように高めるということについての見通しが、農林大臣のところにもないし、全体的な労働力の配分についての労働省の考え方にもないように思うのです。とにかく、都市労働者の収入の二五%というのが、農業の労働者のあれでありませんか。これ、違っておったら、数字の違いは教えていただきたいのですが、二五%。こういうことでは、とにかく高度成長政策の中で、非常に大きな開きができてしまって、これをどうするかという問題を解決しないうちにおいては、私は、米価という問題、農業生産物の価格の問題は解決しないと思うのです。生産性を高めない限りにおいては。そうすると、食管会計の赤字——この場合は米のことを言うわけでありますけれども、食管会計の赤字というものを大ごとに考えるというのは、農政というのはどういうことなのか。また、大蔵当局はそれに対して、これは受益者負担でなければならぬと、そういうことを言っていたら、私は、いまの産業の状態、経済の状態から言えば、これは重大なことになると思うのですが、どうですか。百姓は死に、一般国民は高い米を食わなければならぬということになるのではありませんか。どう解決するか……。
  278. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 食管制度は、国民の食糧確保と国民の生活安定ということを目的としてできた制度でございます。この中で、米の、食糧の需給を調節し、価格を調節し、配給を完全にするという機構でございますので、その機能が果たせるように、やはり米価もしかるべく決定されるべきもので、これが赤字を出しっぱなしでもいいとかいうような、最初からそういう制度ではございませんでした。物価と経済事情を考えてその年々に決定しろということは、この会計を破綻させないように、それを国民生活のためによく運営しろという意味の制度だと思っておりますので、これは、社会保障の機関だということで、出る赤字は全部一般会計が持つ、それを予定した一つの機構だというふうには、私は考えておりません。
  279. 小林武

    小林武君 私は、ここ二、三年のうちに、農業のこの大革命ともいわれるようなものが起こって、そうして直ちにわれわれは農業生産物については心配がないというところが目の前に来ているなら、ここ一、二年のところ、がまんせいというようなことも、それは可能だと思う。お先まっ暗だ。その中で、食管会計の赤字、それを、いまのような目のかたきにされるというのは問題だと思う。千二百億くらいの問題じゃないですか。これはもう、第三次防のあれと比較するというと神経をとがらす方もいるかもしれませんけれども、二兆何千億というものから比べれば、私はこれは、手軽に米価を上げていこう、消費者米価を上げるというような考え方はどうかと、大蔵省の見解に対しては非常に疑問を持っている。それと同時に、農業というものの根本的なあれはどうするのだ。生産性を高めるために抜本的な対策というものがないのか。たとえば、日本の鉱工業生産にたずさわっている企業というようなものが戦後あれだけの期間に世界の一流並みに伸びていったという、そういう施策を政府がとり得るのに、農業に対して何もないのですか。これ、どういうことですか。
  280. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) 農業政策の基本に関するお話でございますが、その前に、ただいま食管の話がございました。食管会計は、小林さんもよく御承知のように、私ども終戦直後国会に席を占めました時分は、とにかく国民は、敗戦の結果、食いものがなかった。そこで、何がなんでも食わせろ、こういうのが第一。職業のない者に職業を与えることによって現金収入を取らせる、これが失業保険法である。ところが、三十年ごろに、御承知のように非常に大きな増産がありました。そこで、この食管会計というものの前後を見ますというと、それ以来、わが国では非常な全体の、国際的にも産業構造の変化がございまして、貿易は自由化されてきた、あるいは資本自由化ということを目の前に控えております。初めは、食管会計というものは、御承知のように消費者の便宜のためにあれはつくったものでございますが、いまでは二つの意味を持ち出してきているように私どもには感じられるのであります。現在のような農村の生産の状況で食管会計というものについて手を触れるというふうなことは、およそ混乱を招くことであり、私どもは考えたくないのでございます。そこで、いま、そういう米につきましては、もうすでに御承知のように、昨年はいわゆる新佐賀段階というようなことで、非常な増産が出てきております。非常な増反収が出てきております。鋭意新しいあと継ぎたちが非常に農業に関心を払い、興味を持ち、誇りを持ちながら農業生産に従事していてくれる者がたくさん出てきておりますので、私どもはこういう者に力を得て、その人たちがやはり食糧の自給を確保するための最大の努力をし得るように、土地改良だとか、あるいは構造改善等に精進をいたしてまいるわけでありますが、おそらく、ただいまおっしゃいました「革命的」というおことばが、どういう趣旨か存じませんけれども、私どもも、世界的な食糧の自給度を考えてみますと、そういう点から考えても、農業政策としては、ここで一奮発しなければならないときだと自覚いたしております。したがって、米については、申し上げるまでもなく、御承知のように、毎年平均を保って一定の生産を続けておりますが、非常に不足を感じておるのは、先ほど申しましたように、畜産関係でございます。したがって、私どもは、そういうものの増産には、たとえば、いままでよく見ておりまするというと、裏作地帯など不作地がたくさん出てきている、こういうようなところや、あるいはまた国有林などについてこれを活用することをいたしまして、何しろ草をつくらなければならない。そういうことで、私は、計画的に進めまして、新しく需要の非常にふえておるものにうんと力を入れてまいりたい。そういうことによってある程度の食糧の自給確保は可能ではないか。そういうふうに考えております。  もう一つ、土地の利用について。日本の農業というものは、やはりせっかく構造改善に着手している最中に、ぼかっとそこに工場ができたりいたしておるようなことを、農村は非常に憤概しているものもございます。政府は、そういうことについて、いま実は非常に勉強しておる最中でありまして、日本の農業を維持し、食糧の自給度を高めていくためには、革命的といいますかどうか、画期的な方向をとっていこうということで、政府部内では一生懸命で勉強、計画いたしておる最中であります。
  281. 小林武

    小林武君 三つほどの、農業の革命的——画期的でもどっちでもよろしいのですが、そういうプランをぼくは見ておるのでして、農林大臣のおっしゃることも、そういうプランの中になかなかいいことが書いてあっても、具体的にそれをどういう順序で一体展開していくかということは、はっきりしていないと思うのです。たとえば、その三つのプランを見れば、大体当時は、十八年間くらいの間ですか、たしかその間に、十一兆とか十兆、大体十一兆から十二兆くらいのあれを見込んだことを書いてある。こういうことをすれば一体どうなるか。その場合に労働力はどのくらい入れるとか、いろいろなことが書いてあります。私はやっぱり、農林大臣を責めるなんていう気持ちは毛頭ございませんけれども、日本の農政というものは目の前に火のついたような状況にありながら、やり方はきわめて手ぬるい。おっしゃることは一々やってくれれば、たいへん都合がいいと思う。私の出ている北海道なんていうようなところを見ましても、草地がどうだといったところで、草地のあれは、われわれが見たのじゃ、さっぱりわからぬ。そういう実情ですから、私はやっぱり食管会計に問題を起こして、一体いまの米作農民なり麦をつくる農民たちが困るような状況の中に放置しておいて、そうしていろいろなことを言うのはだめだと思う。同時に、それによって受益者負担だなんというので、赤字を解消するために国民に負担をかけるという考え方は、これは政治じゃない。それに対して、一体総理大臣はどうなんですか。お約束は、当分上げないというようなことをおっしゃって、これは十月までだというようなことで、だいぶ憤慨している者もあるようですが、私はやっぱり、それだけの手当てというものを示して国民にそういうことを言うならともかくですね、何もなしにそういうことを言うと、ずるずるこれから政府の言いなりになっておったら、たいへんなことになると国民は考えるが、どうでしょうか。
  282. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) いまの食管制度の根幹を守っていく、こういうためにも赤字をいつまでも続けていくと、こういうわけにはいかないんです。だから、そこらに一つのやっぱり応益者負担、そういう限度があるということを御了承願いたいと思います。
  283. 小林武

    小林武君 農業のそういう対策は、一体どうするんですか、前半のほうはそういうことですが。
  284. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 小林君……。
  285. 小林武

    小林武君 いや、聞いている。質問したことに答えてない。いわゆる農林大臣がおっしゃったけれども、農業に対する、農政に対する政府の思い切った処置というものは可能なのかどうか、いつそういうものが実現するのか、そういうことを聞いているのです。
  286. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 小林君の質疑は、総理大臣に対してですか。
  287. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) 先ほど申し上げましたような趣旨で、実は革命的といいますか、画期的な農政はぜひ必要であるということは私どもは感じておるわけです。そこで、昨年の暮れに、農林省の中に構造政策推進会議というものを設けまして、私はこの構造政策推進会議という名前はまあ構造政策でありますが、全体の農政にとって画期的な方途をとっていかなければいけないという考え方から、ただいま農林省部内においては鋭意努力をしておりますが、七、八月ごろになれば大体の構想が出てまいります。そういうことについては、なお、われわれ農林省の官吏ばかりでなくて、いろいろな学識経験者の御意見も聞いておるわけでありますが、そういう方向に基づいて、政府全体の御了解を得て、私どもは、食糧自給度、農業の維持につとめてまいりたいと思っております。
  288. 小林武

    小林武君 ぼくの質問は、これで終わります。この項に関する……。
  289. 新谷寅三郎

    委員長新谷寅三郎君) 小林君の残余の質疑につきましては明日行なうことにいたしまして、本日は、これをもって散会いたします。    午後八時八分散会