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1967-06-14 第55回国会 参議院 本会議 第16号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十二年六月十四日(水曜日)    午前十時十九分開議     —————————————議事日程 第十六号   昭和四十二年六月十四日    午前十時開議  第一 緊急質問の件  第二 国務大臣報告に関する件(沿岸漁業等   振興法に基づく昭和四十一年度年次報告及び   昭和四十二年度沿岸漁業等の施策について)  第三 アジア生産性機構の特権及び免除に関す   る日本国政府アジア生産性機構との間の協   定の締結について承認を求めるの件  第四 日本国ソヴィエト社会主義共和国連邦   との間の領事条約締結について承認を求め   るの件(衆議院送付)  第五 所得に対する租税に関する二重課税の回   避のための日本国ノールウェー王国との間   の条約締結について承認を求めるの件  第六 日本鉄道建設公団法の一部を改正する法   律案内閣提出衆議院送付)  第七 下水道法の一部を改正する法律案内閣   提出衆議院送付)  第八 下水道整備緊急措置法案内閣提出、衆   議院送付)  第九 札幌オリンピック冬季大会準備等のた   めに必要な特別措置に関する法律案内閣提   出)     ————————————— ○本日の会議に付した案件  議事日程のとおり     —————————————
  2. 河野謙三

    ○副議長河野謙三君) 諸般の報告は、朗読を省略いたします。      —————・—————
  3. 河野謙三

    ○副議長河野謙三君) これより本日の会議を開きます。   日程緊急質問の件。  中村喜四郎君から、国会周辺デモ規制に関する緊急質問占部秀男君から、東京地裁決定に対する内閣総理大臣異議申し立てに関する緊急質問提出されております。  両君の緊急質問を行なうことに御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 河野謙三

    ○副議長河野謙三君) 御異議ないと認めます。順次発言を許します。中村喜四郎君。     〔中村喜四郎登壇拍手
  5. 中村喜四郎

    中村喜四郎君 私は、自由民主党を代表いたしまして、国会周辺におけるデモ規制に関しまして、総理及び関係閣僚緊急質問をいたしたいと存じます。  私は、まだ国会に出て初めての質問でございます。新人議員でございますので、国会前例にも、あるいは法律の問題にも、うとい者でございますが、ただ、私は、ごく素朴な国民的な感情、国民的な良識の立場に立ってお尋ねしたいのでございます。どうぞ御答弁も、また国民皆さんお答えするように、懇切丁寧に、そしてわかりやすいようにお答えを願いたいと存じます。なお、私の所見におきまして、あるいは野党の皆さん方見解を異にし、あるいはお気にさわるようなことがあるかもしれませんけれども、何ぶん初めてでございますので、あがってしまってのことでございますので、どうぞその点は、お聞きいただきまして、あとでおしかりと御指導をお願いいたします。  さきに、憲法擁護東京都民連合が、日比谷公園に向かう示威行進コースとして、国会周辺の道路を選んだのに対しまして、東京公安委員会は、国会周辺静穏を維持するという見地から、その進路変更条件として許可をいたしました。私は、この東京公安委員会許可条件はきわめて穏当なものであると思うのでありますが、これに対しまして東京地裁民事第二部は、公安条例運用を誤ったものであるとして、公安委員会処分執行停止決定したのでございます。この執行停止が、東京公安条例制定精神にかんがみまして、はたして適正であるかどうかにつきましては、私なりの意見を持ち合わせておりますが、国会の場におきましていわゆる裁判批判を行なうことは、その所でないと考えますので、その点に立ち入ることは差し控えたいと存じます。  行政事件訴訟法の第二十五条第六項によりますと、裁判所が行なった執行停止決定に対しましては、即時抗告をすることができることになっておりますが、何ぶんにも、決定が下されましたのは九日の夜の九時半であり、デモは翌日の十日の朝のことでありますし、また、即時抗告裁判所決定執行を停止する効力を有しないのでありますから、もし放置するならば、十日には、かつてあったごとく、国会周辺は騒然たるデモの波に取り囲まれたのではないでしょうか。ここにおきまして、内閣総理大臣は、行政事件訴訟法第二十七条第一項の規定に基づいて異議を述べ、それによって裁判所もこれを妥当と認めまして、その決定は取り消されることになったのでございます。総理大臣異議を述べるにあたっては、理由を付さなければならないこととなっておりますが、その理由書を拝見いたしますと、国会周辺における集団示威運動公共福祉に重大な影響を及ぼすおそれあるゆえんを理路整然と説明してございまして、良識ある人であるならば、総理処置が適切なものであったことを疑うものはございません。(拍手)しかるに、総理異議を述べたことに対しまして、一部に、これは憲法保障する「表現の自由」を侵したものであるかのごとき言辞を弄する者がございますけれども、まことに不見識であると言わざるを得ません。総理理由書にもありますとおり、国会は、国権最高機関として、いかなる妨害または物理的圧力等をも受けることなく、平穏な環境の中で公正に国政審議に当たることができなければなりません。国会周辺は、一種の神聖なる地域でなければならないのでございます。集団示威運動がこの聖域静穏を害した前例は、枚挙にいとまないことでございまして、今回のデモがそのようなものにならないという保証はどこにもございません。未発の危険を防止する意味で、総理措置は機宜に適したものでございます。これまでにも、国会周辺には、いわゆる請願のための集団行進はしばしば行なわれ、それは許されておりました。私をして言わしむるならば、あの種の集団行進も、その実体は、請願に名をかりた国会への集団示威以外の何ものでもございません。私は、いわゆる請願デモが許されている現状に大きな疑問を抱いているものでございます。集団行動は、いわゆる群衆心理にかられまして、しばしば法秩序の破壊をもたらす危険性をはらんでいるのでありまして、国会審議権の公正な行使を確保するためには、かりに請願に名をかりたものであるとしても、国会周辺における集団行進は、これを禁止するのが妥当であると考えるのでございます。(発言する者多し)聞いてください。  去る昭和三十四年の第三十三回国会におきまして、安保改定阻止国民会議示威行進が、ついに国会構内への暴徒の乱入にまで発展しまして、空前の不祥事件を起こしましたときに、衆議院におきましては、議員提案によって「国会審議権の確保のための秩序保持に関する法律案」を通過させたのでございますけれども、何ぶんにも国会の会期が余すところ二両日にすぎなかったために、参議院においては残念ながら審議未了に相なったと聞いているのであります。  国会周辺における集団行動を禁止する立法は、諸外国に多数の例がございます。私は試みにあげてみたいと存じます。アメリカ合衆国におきましては、議事党を中心とする付近一帯合衆国議事堂区域と称されまして、この区域では行列及び集団が禁止されているのでございます。イギリスにおきましては、十人をこえる人数の者が請願提出目的をもって議院に寄り集まってはならないということに規定されております。また、議事堂の門から一マイル以内におきましては、請願抗議等準備のために集会をしてはならないと規定しているのでございます。フランスにおきましても、西ドイツにおきましても、ほぼこれに似たような規制が行なわれているのであります。民主政治先進国でございます欧米諸国において、このとおりであるのでございます。ひとり、わが国においてのみ、聖域たるべき国会周辺野方図デモの波に取り囲まれるのを放置しているのは、はたしていかがなものでございましょうか。  憲法保障する「表現の自由」も、国会審議権の公正な行使、すなわち公共福祉のうちでも最も重要なものとみなすべきものを確保するためには、ある程度の制限を加えることは当然のことでございまして、いささかも憲法精神にもとるものではないと存じます。そこで、私は、以下数点について具体的に伺いますので、率直にお答えをいただきたいと存じます。  その第一点は、国会周辺デモ取り扱いについてでございます。国会国民全体の代表者によって構成され、国民全体の意思決定する国権最高機関であることは、私がいまさら申すまでもございません。そして、国会国民全体の意思決定するにあたりましては、国民代表者たる議員による自由な話し合いということが最高に尊重されなければならないのであって、これに対するいかなる不法な圧力も許されないことは、言うまでもございません。しかしながら、過去の多くの経験によりますと、不幸にして、国会周辺に来集した多数のデモ隊が、みずからの主張を貫徹せんとするあまり、国会審議に不法な圧力を加えようと企てた事例が決して少なくないのであります。今回問題となった東京護憲デモ隊は、国会に対してこのようなデモをしようと計画されたのでございます。憲法擁護とは銘打ちましても、憲法二十年記念、ベトナム反戦沖繩返還、小選挙区制粉砕自衛隊違憲春闘勝利生活擁護国民行進を目標としての示威運動でございまして、東京公安委員会申請に際しましても、護憲のための請願行進ではなく、あくまでも集団示威行進であって、公安委員会側から通路変更を要請されましたけれども、これを拒否いたしました。都の公安条例憲法違反であって、最高裁がどのような判例を出そうとも、違憲であることに間違いないという立場から、公安委員会の要請も拒否して、集団示威行進主張したのであります。過去におきましても、国会周辺集団示威行進申請におきましては、進路変更条件として許可されました際には、いずれの場合もその許可条件によって進路変更されて実施されたのでございます。今回は、公安条例撤廃を目ざすがゆえに、国会周辺デモを実行に移すべく、これを裁判にまで訴えたのでございます。この事実は、九日に公安委員会許可をしましたのに対しまして、その前日、八日の晩に告訴を提起しているのでございます。それを見ても、その意味と背景が察知されるのでございます。そもそも、デモというものは、一般大衆自分たち主張を訴えるものであります。だれもが認めるように、国会には、主として国会議員及びその審議関係する者しかいないはずであります。これに対しまして示威をするということは、集団威力によって国会審議に何らかの影響を与えようとするものにほかならないのでございまして、これは民主代議政治に対する自殺的な行為でございます。一般国民国会に訴える方法は請願として認められているのでございます。この請願さえも、憲法第十六条には、平穏に行なわれなければならないとされているのでございます。このような意味におきまして、国会周辺でのデモ取り扱いについて政府はいかなる方針を持っているか、お答えをいただきたいのでございます。  第二点としまして、諸外国デモわが国デモ実情を探究しますと、私も何回か外地でしばしば体験いたしております。また、外国新聞報道によってデモ実体を知らされております。決して荒々しい、野蛮的な威力デモは見られません。実に堂々と、静々と行進をいたしているのでございます。それに引きかえ、わが国デモは、かけ足、渦巻き、あるいはフランスデモなどと、しばしば交通を妨害しまして、このため警察官が多数出動して交通整理をしましたり、実力規制をいたさなければならない状況であります。そしてまた、民家や物件や交通人に損傷を与えまして、多くのけが人を出しているのでございます。デモによる警察官負傷者は、椎名外務大臣韓国訪問の際の羽田デモの際には百三十三名、日韓デモの際には百八十三名、原潜デモでは二百七十名、一〇・二一スト学生支援デモでは百三十五名の警察官負傷者を出しているのでございます。このような無軌道な、低次元な、しかも群集心理に動かされまして、公共福祉秩序を乱すようなことが予見されるところのデモ、しかも公安委のつけましたところの規制措置も常に眼中になく、これを踏みにじって、しかも表現の自由を叫び、違憲を唱えるデモに対して、許可すること自体がおかしいのではないかと思われるが、これに対して政府のお考え方を承りたいのでございます。  第三番目、今回の東京護憲デモは、杉並区役所から日比谷公園に至る全コース約十四キロのうち、ごく一部であるところの国会直近コース約一・四キロ、すなわち、赤坂見附交差点−山王下−特許庁前にと変更させたにすぎないのであって、この規制によって、デモ一般大衆にみずからの主張を訴えようとする目的、趣旨には、何らの支障がないのであります。また、裁判所は、デモ条件をつけることによって、国会周辺を通しても差しつかえないと言っているが、条件をつけられたデモが、しばしば違法行為を行なっていることは、日常よく経験するところでございます。今回の裁判所デモの実態に対する認識には、はなはだ不十分な点があると思うが、政府はこの点、裁判所に対してどんな説明をいたしたのか承りたいと存じます。さらに、前段申し述べましたごとく、国権最高機関であります国会の重要さにかんがみまして、その国政審議権の公正な行使を確保し、静穏環境を維持するために、いかなる措置を講じているか、お伺いしたいのでございます。
  6. 河野謙三

    ○副議長河野謙三君) 中村君、時間が経過しております。
  7. 中村喜四郎

    中村喜四郎君(続) 現在、心ある人々、いな、国民の多くの声として、公安条例法制化、あるいは国会周辺における秩序保持について法的規制措置をせよとの声が高まっているが、デモの行き過ぎの実情や、諸外国事例にかんがみ、どのような検討を行なっているか、政府見解を承りたいのでございます。  社会党の諸君は、総理異議申し立ては、司法権侵害であり、指揮権発動だと声明しているが、総理のこのたびの措置は、過去のデモ実情申請の要旨を十分勘案し、さらに地裁決定を慎重に検討し、内閣総理大臣は法の認めるところに従って異議申し立てをし、地裁もまた、三裁判官が慎重合議の上、総理異議を法的に認めて、取り消し処分をしたのでありまして、すべてこれらは法的に処置されたのであって、司法権侵害指揮権発動ではないと私は考えのでございますが、法務大臣考え方を伺いたいのでございます。  最後に、護憲代表星野助教授は、今後も国会周辺デモ申請を何度でも行なうと言っておりますが、国家公安委員長の今後の対策をお伺いいたします。  時間が過ぎまして、まことに申しわけございません。(拍手)    〔国務大臣佐藤榮作登壇拍手
  8. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) お答えいたします。それぞれの御意見を伺いましたが、特にお尋ねのありました点についてお答えをいたします。  国会周辺デモ取り扱いを一体どうするのか。お説のとおり、国会国権最高機関でありますし、国政審議の場であります。こういう場所において、十分権威が保たれ、また、静粛が保たれる、こういうことでなければならないと思います。したがいまして、国会開会中はもちろん、この周辺におきまして、当日それが土曜日でありましても、国会議員の方々の登院はありますし、また、緊急の場合にどういう会合が持たれるかもわかりませんし、そういうことを考えますと、この国会周辺デモにつきまして、われわれがいろいろの不測の事態を考え、それに対処することは、これは当然でございます。そういう意味から、行政事件訴訟法という法律がございまして、その法律によって——すでにお読みになったことがあると思いますが、その二十五条において、裁判所一つ決定もできますし、また、その第二十七条によりまして、総理大臣異議申し立てをすることもできるのであります。今日の民主政治、そのもとにおきましては、りっぱに成立した有効な法律を守ることが何よりも大事でございます。私は、その法律に基づいて処置をいたしたのでございます。別に、いわゆる司法権に干渉したわけでもございませんし、これはもう当然の私どものなすべきことを、法律の命ずるところでしたというほかありません。今後とも、この国会周辺集団示威運動等につきましては、特に私どもは気をつけまして、この国会皆さん方の御審議が平穏に、円満にできるように、この上とも努力するつもりでございます。  第二点は、わが国各種デモ行進について、いろいろ外国にも見ないような、ずいぶん違法なデモ行進をやっておるではないか、あるいはかけ足、フランスデモ、あるいはすわり込み、一般交通を阻害しているこのような事態がある、こういうような御指摘であります。こういうような点について公安委員長がたいへん苦労しておること、これはもうすでに御承知のとおりでありますから、私は多くを申しませんが、たいへん苦労して、そしてこういう違法行為がないようにというのが、ただいま政府が指導しておる第一でございます。なお、詳細は公安委員長からお聞き取りをいただきたいと思います。  最後に、この国会周辺関係につきまして、今後法的の規制をするかどうか、こういうお話であります。その必要性が全然ないわけではございません。政府は、そういう意味でこれらの問題とも取り組んでおりますが、ただいま法案を提案して皆さん方の御審議をいただくと、そういうような段階ではないことも申し上げておきます。(拍手)    〔国務大臣藤枝泉介登壇拍手
  9. 藤枝泉介

    国務大臣藤枝泉介君) 過去の実例で、集団示威連動がいろいろ違法行為をやった例をあげられまして、そのような集団示威運動そのもの許可するのがおかしいではないかというお話でございますが、東京都の公安条例におきましても、許可の場合には非常に厳格な条件がつけられておるわけでございまして、したがいまして、そのような違法行為のないような幾多の条件をつけて許可をいたしておる次第でございます。今回の護憲連合路線変更につきましては、東京公安委員会がその変更をいたしました理由について詳細述べておりましたが、それが裁判所のいれるところでなかったことは非常に残念に存じておりますが、そのようなことでございますので、内閣総理大臣異議申し立てをいたしたような次第でございます。護憲連合は今後もどんどんこういうことをやると言っておるがどうだというお話でございますが、国会周辺につきましては、集団示威運動は今後も許可しないつもりでございます。(拍手)    〔国務大臣田中伊三次君登壇拍手
  10. 田中伊三次

    国務大臣田中伊三次君) 中村君の御意見では、本件事件内閣総理大臣行政権発動して司法権侵害したことになるのではないかとの御所見でございます。本件の問題についての一つの注目すべき考え方であるかと存じます。  そこで、これを争いのない学説等見解を加えて所見を申し上げますと、法律上の見解では、申し上げるまでもなく裁判所の行なう停止決定という一つ決定でございます。司法処分でございます。形式上は司法処分であるけれども、実質をよく眺めてみると、東京都の公安委員会進路変更という行政処分に対して変更を加えるという内容を持っておりますので、形の上では裁判所処分でありますが、内容行政処分に等しいものである、こう判断をすることができますので、行政上の判断に対して行政権をもってこれに対抗してまいりますことは、何ら行政権によって司法権侵害するものではない、こういう判断でございます。(拍手)     —————————————
  11. 河野謙三

    ○副議長河野謙三君) 占部秀男君。    〔占部秀男登壇拍手
  12. 占部秀男

    占部秀男君 私は、日本社会党を代表して、去る十日行なわれた憲法擁護都民連合示威行進に対する国会周辺デモ規制につきまして、佐藤総理をはじめ関係大臣に、三点にしぼって緊急質問をいたしたいと思います。  質問の第一は、今回の事件に対する佐藤総理政治責任についてであります。  憲法二十一条に規定されました表現の自由を保障することと、公共福祉のためにそれを制限する程度につきましては、憲法制定以来、学説の上からも、事実の上からも、争われ続けてきた問題でございます。しかしながら、今回の事件は、こうした法律解釈範囲を越えて、より高度な、より重大な政治問題に発展しておるのであります。それというのも、この示威行進に参加した人々が、自分権利としての表現の自由の保障と、公共福祉により制限される程度とを、裁判の公正な判断に求めました結果、判決によって許された表現の自由の範囲を、逆に総理異議申し立てにより、国会審議を阻害するとの理由のもとに、政府の一方的な判断によって否定されたところに問題の核心があるからであります。もともと国会周辺デモ規正は、いわゆる東京都の公安条例制定されて以来争われ続けてきた問題でありまして、去る昭和三十五年七月には、最高裁大法廷は、この条例自体については合憲の判決を下しましたが、その運用のいかんによっては違憲のおそれが生まれることを初めて指摘したのであります。次いで、本年五月の東京地裁における寺尾判決は、日韓デモをめぐる都条例運用について違法のあったことを問題にいたしたのでありますが、さらに今回の杉本判決は、これに一歩を進めて、進路変更をする条件をつけたことは、東京公安委員会条例運用を誤まったものであって、違法であり、このデモ行進国政審議の公正な行使を何ら阻害するものとは言えないと断じて、したがって、同委員会が行ないました進路変更部分については、執行停止を命じたのでありますが、行政事件訴訟法第二十七条による、総理異議申し立てによりまして、この判決そのものが取り消されたのであります。公安条例運用に関して、行政府裁判所の間に、これほど判断に隔たりができました以上は、国会周辺デモ行進について、今後問題が次々と起こることは、先ほどの国家公安委員長答弁によっても明らかなところであると思うのであります。したがって、この際、総理のとるべき態度としては、地裁判決を不満とするならば、上訴する道は開かれておるのでありますから、第二の指揮権発動とも言うべき、異議申し立てなどという、非常手段によるのではなく、判決判決として尊重し、他方、都の公安委員会をして、デモ許可条件必要最小限度を越えているかいなかを最高裁判断に仰がせて、デモ規制に対する国民の疑問を法的に明確に決着させるよう指導するのが、法治国家行政責任者としての、とるべき態度であったと私は考えるのでございますが、佐藤総理見解を伺いたいと思います。  今日、国民は、総理異議申し立て以来、自由と権利保障に重点を置いた裁判所判断が正しいのか、政治秩序を守るためと称する行政府判断が正しいのか、いずれが正しいのかに迷っているありさまでありますが、こんなことが平然と行なわれるようでは、三権分立は名だけであって、事実は、どんな公正な判決が行なわれたとしても、結局、政治権力によって壟断されるに至るであろう危険を、国民は、はだで感じ取っておるのでありまして、ことに、今回の事件の性格が、国民基本的権利一般に関するものだけに、まことに法治主義の危機と言わなければならないと思うのであります。(拍手国民の間に、かかる疑惑と、かかる混乱を引き起こした原因は、言うまでもなく、総理の無謀な異議申し立てによるものでありまして、その政治責任はまことに重大なものがございます。総理はこの責任をどうお考えになっておられますか。また、国民に対して、どうとろうとしておられますか、率直に心境を聞かしていただきたいと存じます。  また、このことは、立法府としての国会立場からも問題であります。国会周辺デモ規制につきましては、かつて議員立法として、昭和三十七年の国会に提案されましたが、本院において審議未了になったことは御存じのとおりであります。今回の政府のやり方は、国会立法化できなかったものを、地方条例運用に関連をして、行政府の独断によって実現したと同じ結果を生んでおるのでありまして、そのこと自体が、国会立法権に対する冒涜行為であると私は思うのでありますが、総理大臣の御見解を承りたいと思います。  なお、このことに関連をして、法務大臣にお伺いをいたします。  杉本判決総理異議申し立てとを比べてみますと、国会に対するデモ行進影響については、両者は全く正反対な判断に立っているのであります。杉本判決は正しくないと考えて異議申し立てを行なったかどうか、お伺いをいたしたいと思います。  また、集団示威運動の扱いについてでありますが、先ほど中村議員質問の中で、デモ行進することがあたかも暴徒のごとき質問がございましたが、非常に問題であります。なぜかと申しますと、最高裁見解は、集団行動の性格につきまして、やり方によっては暴力に発展する危険性のある物理的力を内包していることを明らかにしながらも、そうした集団行動に対して、条例運用にあたっては、公共の安寧を保つことを口実に、平穏な集団行動まで抑圧してはならないと述べているのでありますが、総理異議申し立て理由の中に示された扱いは、平穏と不穏とを闘わず、デモという大衆行動自体が、すでに潜在的な暴徒の行動としてとらえられているとしか考えられないのであります。法務大臣の御見解を承りたいと思います。  また、国家公安委員長にお伺いをいたしますが、今日、国会周辺進路許可する基準として、集団行進の場合は許すが、集団示威運動の場合は許されないのが、政府の従来の方針であります。本来集団行進すること自体が対外的な示威の性格を持つものであると、私は考えますが、一体、政府は、集団行進集団示威運動との区別をどんな基準で具体的に分けられているのか、明らかにしていただきたいと思います。  質問の第二は、行政権の司法に対する不当な圧迫についてであります。  総理異議申し立てをするには、それだけのやむを得ない緊急事態が必要であることは、法の規定しているところであります。杉本判決は、この点につきまして、危険防止と秩序の維持に、厳重な条件がつけられていること、その目的憲法擁護の記念デモであること、さらに参加人員はわずかに一千人で、警察力によって容易に対処することのできる範囲のものであること、こうしたいろいろな条件をあげて、国会審議を阻害するような緊急やむを得ぬ事態など全く予想する余地のないことを明らかにしているのであります。事実、十日は土曜日でありまして、両院とも本会議も、委員会もなく、登院した議員は、本院がわずかに十七名、衆議院も十四、五名に過ぎないといわれており、この事実は十日以前に公報その他で明らかにされているところであります。したがって、から同然の国会のこの姿を緊急やむを得ざる事態にあるとは、被害妄想狂ならいざ知らず、常識ある者にはとうてい考えられないことであります。先ほど、中村議員は、異議申し立てをしなければ、おそらく国会周辺は騒然となったであろうと述べられましたが、一体どこの国の国会周辺の問題でありますか、私は了解に苦しむのであります。総理はこれに答えて、緊急の事態の起こることを心配してと言われましたけれども、一体どんな事実から緊急やむを得ない事態が起こると考えられたのか、総理大臣にお伺いをいたしたいと思います。  また、この二十七条自体が、三十七年国会における法審議の過程におきまして、乱用のおそれあるものとして、反対意見の集中したいわくつきの条項でございますが、現に緊急やむを得ざる事態がないにもかかわらず、この条項を発動させることは、法の乱用であり、行政権の司法に対する不当な圧迫干渉であり、総理みずから法治主義を破壊したものであると考えられるのでありますが、(拍手総理大臣はどんな御見解を持っておられるか、明らかにしていただきたいと思います。  最後に、質問の第三は、今後の問題点であります。  ただいま総理は、中村議員質問に対して、国会周辺デモ禁止をする法律は、いまの段階では考えていない、かようなことを言われましたが、それでは将来考えるのでありますかどうか、その点もお伺いをいたしておきたいと思います。新聞の伝えるところによりますと、この機会に国会周辺デモ禁止法案を出せという動きが、中村議員だけではないと思いますけれども、自民党の中にあるということであります。したがって、この点をはっきりとお伺いをいたしたいと思います。  また、いわゆる公安条例は、地方自治法第十四条の規定によりまして、地方公共秩序を維持する必要を名として、各府県、市町村等で制定されているのであります。国会周辺秩序の維持も、都条例から見まするならば、地方公共秩序の維持でありまして、府県議会や市町村議会の周辺秩序の維持と共通したものがあると政府は解釈をしておるわけであります。そこで、国家公安委員長にお尋ねをいたしますが、地方議会周辺において今後今回と同じような問題が起きた場合に、総理は、そのつど、そのつど、異議申し立てを繰り返して行なう方針であるかどうか、この点を明らかにしていただきたいと思います。というのは、旧行政事件訴訟特例法時代におきましては、吉田内閣によって、一地方議会の除名処分まで異議申し立てが乱用された事実があるのでありまして、かような乱用は許すべきでないと考えますがゆえに、特に藤枝国家公安委員長にお尋ねを申し上げる次第であります。  以上をもって、私の質問を終わります。(拍手)    〔国務大臣佐藤榮作登壇拍手
  13. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) お答えいたします。  今回の処置をとったことについての私の政治責任、かようなお尋ねでございますが、私は、率直に申しまして、私、初めて私の責任を果たしたような気がするのであります。(拍手)御承知のように、行政事件訴訟法、これでは、その二十五条の規定もございますが、同町に、二十七条の規定もございます。したがいまして、私は二十七条の規定によって総理異議申し立てをいたしたのであります。ただいまの占部君のお話では、むしろ即時抗告をすべきではないか、こういうお話ではないかと思います。確かに即時抗告の方法もございます。しかし、即時抗告では裁判所決定を停止する力はございません。ことに、当日は九日の夜九時、ようやく裁判所決定をしたわけであります。デモの行なわれるのは十日であります。したがいまして、私は、公安委員会決定した状態を持続する、そのためには、二十七条の規定による異議申し立てをする以外に方法はない、かように結論を出したのでございます。したがいまして、私は、たいへん重大なる政治的な責任、それを取って、あたかもやめろというようなお話ですが、私は今後ともやめる考えはございません。これは、国民に対して当然なことをした、かように私は考えております。  次に、行政司法権を圧迫したのではないか、あるいは干渉したのではないか、こういうお話でございます。私は、さようなつもりはもちろんございません。ただいま憲法に基づいてできました法律、その法律に、二十五条の規定もあれば、同時に二十七条の規定もあるのであります。これは、いかにも両者がお互いに、決定した事柄についての反対をする、こういうようなことで、この形だけから見ると、司法権に対する行政権の干渉のように見受けられますけれども、しかし、この法のたてまえが、こういう場合には、二十七条の規定によって、最高責任者が異議申し立てをして差しつかえないと、このとおりをすること、これは当然のことでございまして、私が占部君に法律お話を申し上げることは、いかにも筋道が違っておりますが、どうかそういう法律を守る、これが民主主義の要諦だと、かようにひとつ御了承をいただきたいと思います。  また、デモにつきまして、これはその表現の自由、その方法として基本的権利だと、かように言われております。私は、今回の都公安委員会がとりました措置は、いわゆる表現の自由を拘束したものだとは思いません。御承知のように、デモ自身は刑に禁止したわけではありません。ただ、その路線を変更しろ、また、公益の立場から、公共福祉のために、その違法なるデモ行為はひとつやめてくれ、こういう条件をつけたのでございます。私は、これは当然のことだと思います。そういう点も、直ちに表現の自由を圧迫したと、声を大にされることは、どうも当たらないように思います。どうかここらにも、十分私ども処置の真意をおくみ、取りいただきまして、誤解のないようにお願いをいたします。  次に、今回のデモは、現にわずか二百名が実施して、別に問題なかったじゃないか、こういうお話であります。これは結果論と言うべきものでありまして、私どもが肝前に、いろいろ不測の事態に対して処置をとるということ、これはあたりまえのことであります。これは行政官として、不測の事態を予想してそれをやることは、これは当然であります。また、緊急事態が起きた場合という、これは、私は、国会が七曜日で休みであったが、しかし、国会には、開会中、どんな緊急な要務が起こるかわからぬ、こういう意味で申し上げておるのでありまして、緊急事態云々は、デモそのものについてではありません。これは、もうしばしば皆さん方も御経験のように、緊急委員会等が開かれることはしばしばございます。また、国会内におきまして、休みの日でありましても、皆さん方は会合を持たれる。また、国会周辺には議員会館がございます。したがって、そこらには皆さん方つめていらっしゃる。国会というところは、いわゆる本会議委員会だけの場所ではございません。その辺まで私が説明するのはいかがかと思いますが、どうか誤解のないようにお願いしておきます。  次に、この法律、今後規制をするのかということでございますが、私、ただいま中村君にも、そういう考え方をただいま持っておりませんということを申しました。将来のことを一体どう考えるかという重ねてのお尋ねでございますが、ただいまの段階のことを私は申し上げる。将来のことを私は申し上げません。(拍手)     〔国務大臣藤枝泉介登壇拍手
  14. 藤枝泉介

    国務大臣藤枝泉介君) 御承知のように、平穏な請願権の行使である集団行進は、国会周辺についても認めておるわけでございます。これは、集団行進というのは、集団が移動するということ、その単なる集団の移動によって意思を表示するということでございます。集団示威運動と申しますのは、その単なる集団の移動によるばかりでなく、それに気勢を示す行為を加えて行動をする、これが占部さんの御引用になりました三十、五年の最高裁判決の中にも、そうした集団のエネルギーにささえられているそういうものは、国会周辺においては危険ではないかということで考えておる次第でございます。  地方議会につきましても、もちろん地方議会が平穏に保たれなければならないことは当然でございまして、その地の公安委員会が適当な処置をいたすと思いますが、それに対しまして、どういう、行政事件訴訟法二十七条の異議申し立てを今後するかということでございますが、これはその場合場合によって判断しなければならないものと考えております。(拍手)     〔国務大臣田中伊三次君登壇拍手
  15. 田中伊三次

    国務大臣田中伊三次君) 停止決定をいたしました杉本裁判意見内閣総理大臣意見が対立しておるではないか、一体その異議申し立ては、杉本裁判は誤りと考えて異議申し立てをしたのかという御意見でありますが、そのとおりでございます。杉本裁判裁判の誤り、当を得ざるものと考えて、内閣総理大臣は、これに対して異議申し立てを行なったのであります。なお、念のために申しますと、誤解があるようでありますから念のために申し上げておきますと、両者の意見が対立して、両者の意見が異なる場合には、内閣総理大臣意見を優先せしめるということが、二十七条の立法趣旨でございます。(拍手)      —————・—————
  16. 河野謙三

    ○副議長河野謙三君) 日程第二、国務大臣報告に関する件(沿岸漁業等振興法に基づく昭和四十一年度年次報告及び昭和四十二年度沿岸漁業等の施策について)。  農林大臣から発言を求められております。発言を許します。倉石農林大臣。    〔国務大臣倉石忠雄君登壇拍手
  17. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) 「昭和四十一年度漁業の動向に関する年次報告」及び「昭和四十二年度において沿岸漁業等について講じようとする施策」につきまして、その概要を御説明申し上げます。  まず、「昭和四十一年度漁業の動向に関する報告書」の概要について申し上げます。  昭和四十年における漁業生産は、過去二ヵ年にわたる減少から回復し、六百九十一万トンと過去の最高を記録いたしました。他方、水産物に対する需要は、所得水準の上昇とともに増大し、国内生産を上回る傾向にあります。このため、水産物の輸入は、高級魚介類、魚粉等を中心として増加しており、また、水産物の消費地価格は高級生鮮品を中心として上昇傾向が見られるのであります。  漁業の経営体数と就業者数は、昭和四十年には、経営体数二十二万余、就業者数は前年と同水準の六十一万余でありましたが、近年いずれも減少の傾向にあります。  沿岸漁家の経営を見てまいりますと、その所得水準は、ノリの不作もありまして昭和四十年度にはやや低下いたしましたが、近年の傾向としては上昇を示しております。  中小漁業の経常におきましては、昭和四十年度には概して収益性の好転した業種が多かったのでありますが、近年業種間及び階層間における収益性の格差が目立ってきております。また、就業者の賃金水準は、かなり上昇しておりますが、労働条件及び労働環境にはなお一そうの改善の余地があると考えられるのであります。   次に、「沿岸漁業等について講じた施策に関する報告書」でありますが、これは昭和四十年度を中心といたしまして、政府沿岸漁業等について講じた施策をおおむね沿岸漁業等振興法第三条の項目に従って記述したものであります。  最後に、「昭和四十二年度において沿岸漁業等について講じようとする施策」の概要について申し上げます。  ただいま御説明申しました漁業の動向を考慮しつつ、政府といたしましては、水産資源の維持増大、漁業生産基盤の整備を積極的に推進するほか、漁業協同組合の合併の促進、漁業災害補償制度の改善、中小漁業の近代化の促進等を重点として沿岸漁業及び中小漁業の振興をはかるとともに、水産物の流通加工の合理化、沿岸漁業及び中小漁業従事者の福祉の向上につとめることといたしているのであります。  以上、「昭和四十一年度漁業の動向に関する年次報告」及び「昭和四十二年度において沿岸漁業等について講じようとする施策」についてその概要を御説明申し上げた次第であります。(拍手
  18. 河野謙三

    ○副議長河野謙三君) ただいまの報告に対し、質疑の通告がございます。発言を許します。達田龍彦君。     〔遠田瀧彦君登壇拍手
  19. 達田龍彦

    ○達田龍彦君 私は、日本社会党を代表し、ただいま報告されましたいわゆる漁業白書に対し、内閣総理大臣並びに関係大臣に若干の質問をいたしたいと存じます。  昨年九月、内閣総理大臣官房において、沿岸、沖合い、遠洋のすべての漁業について、漁業協同組合に関する世論調査を行なっておりますが、その中に、今日の漁業が今後よくなるか悪くなるかという質問がございます。これに対して、よくなると答えた者はわずかに一三・三%でありますが、悪くなると答えた者は驚くなかれ四六・二%もあり、半数に近い数字を示しているのであります。この数字が示しているように、これが現実に漁業に携わる人たちの漁業の今日と将来に対する実感であります。しかるに、白書は、このような日本の漁業の苦悩する現実を的確にとらえることなく、事務的かつおざなりな分析の中で、こま切れに、何ら生きた姿としてとらえていないのであります。  私は、今日国民や漁業者が漁業白書に最も期待していることは、たとえば、なぜ魚が高くて、国民は魚が食えないのか、その原因、あるいは、新鮮な魚が安定した価格でなぜ供給できないのか、その仕組みと過程など、直接身近な食化活の問題を知りたいのであります。この最も知りたいことが知らされないばかりでなく、他の分野の白書と比較して、たいへん見劣りのする、きわめてお粗末な白書と言わざるを得ません。  今日、わが国の漁業の生産量は、昭和四十一年において初めて七百七万トンと、ようやく三十七年の水準に回復しました。このように、この数年間、沿岸及び遠洋漁業の生産量が横ばいの状態を続け、しかも、わが国漁業総生産量の増減は、沖合い多獲性魚の豊凶によって大きく左右されるという状態であります。このような計画の見通しのない不安定な局面は、今日に至るもまだ打開のための方向すら立て得ず、さらに、海況、海温、海流等の気象現象の良否にたよる、いわゆる神頼み、お天気頼みの、全く原始的漁業がまだ多く取り残されている現状にあるのであります。  他面、経済成長のもたらした需要の増大は、消費構造の高度化を伴いながら、著しいものがあり、ために、水産物消費者価格は高騰を続け、輸入は激増しております。さらにまた、国際漁業においては、開発途上国や後進国の進出もあり、要資源は国際管理化への方向を明らかにし始め、沿岸国による漁業専管水域設定は増加しており、規制はますます強化され、新規漁場の開発も見るべきものがなく、わが国漁業の現状と将来は、まさに夜のやみの中でいずくへ行くべきか、とほうにくれて立ち尽くしている年寄った旅人の感があるのであります。  そこで総理にお尋ねいたしまするが、総理は、この日本漁業の現状と将来をいかに認識し、日本の経済社会開発の中でわが国漁業をどう位置づけていこうとしておられるのかお伺いをいたす次第でございます。さらにまた、このような事態に対処するために、この際、漁業の抜本的振興をはかるために漁業基本法を制定する情勢と段階がすでに来ていると考えるが、総理の決意と御見解を承りたいのであります。  質問の第二は、今日、漁業は、農業とともに、わが国経済の高度発展と成長の中で大きく取り残され、他の産業と比較して、経営構造の分野でも、生産手段においても、所得水準においても、いよいよその格差は拡大し、行き詰まりつつあるのであります。しかも、日本の産業の中で一番取り残され、行き詰まっているのが漁業であり、その中でも、わが国漁業構造の中で九割五分を占める沿岸漁業者と漁家及び漁村の経営と生活はさらにきびしく、前途はきわめて憂慮にたえず、まさに破局的、危機的様相を呈していると言っても、決して過言ではない実情にあるのであります。白書もこのことを反映して、漁業就業者の激減、漁業生産の低下、若年労働力の流出、漁業収益の減少など、若干の現象をとらえているのであります。まさに今日のわが国漁業、とりわけ沿岸漁業は、全く希望も魅力もない漁業となり、衰微、衰退を続ける漁村となり果てているのであります。同時にまた、このことは、中小漁業も、程度の差こそあれ、同じ方向と実態に推移しております。しかるにその反面、遠洋、沖合いを中心的漁業とするいわゆる大資本漁業は、政府の手厚い援助と資本力にものをいわせて、その支配力と収益率を拡大しているのであります。申すまでもなく、産業としての漁業の使命は、国民の食生活に必要な動物性たん白質をより多く供給することが最大でありまするが、今日の大資本漁業とその経営者は、白書も指摘しているごとく、生産量はほとんど横ばいの状態にあり、たん白質資源の国民への供給度合いは拡大していないにもかかわらず、その収益率は生産率を大きく上回り、ばく大なる収益を示しているのであります。この収益率の増大原因は、大資本漁業者による独占と支配力を背景とした生産、加工、流通過程を通じての収奪、市場価格形成の場における収益、さらには沿岸及び中小漁業の分野への進出による生産の増大等によるものでありまして、この意味では、今日の大資本漁業経営は、まさに沿岸、中小漁業の犠牲の上に安定していると言っても、これまた決して過言ではないのであります。このことがわが国漁業構造上の根本的な矛盾であり、最大の問題点であり、また同時に、大資本漁業と沿岸、中小漁業との格差を拡大している原因であります。しかるに漁業白書は、四十二年度の講じようとする施策の中でも全然触れられていないのでありまして、これら格差と矛盾に対する総理の御見解と方針を承りたいのであります。  さらにこの際、農林大臣にお伺いいたしたいことは、ことしはいわゆる指定漁業許可の一斉更新の年に当たるのでありますが、今回の一斉更新は改正漁業法に基づく第一回目の更新であり、最近指定漁業をめぐる内外諸情勢も大きく変動しているときでもあり、今後の指定漁業の基本的方向についても、総合的、抜本的に検討すべき漁業情勢と問題点を指摘できるのであるが、この際、私は、今日の指定漁業の大部分が大資本漁業と中小漁業に集中的重点的に許可されているこの弊害を除去するため、種類と内容によっては、沿岸漁業経営の安定と沿岸漁家の所得の向上をはかるために、沿岸の漁業協同組合に指定漁業の許可の一部を認めるべきであると考えるが、これに対する農林大臣の御見解を伺いたいのであります。  質問の第三は、わが国遠洋漁業は、これまで領海三海里と公海自由の原則を方針として、諸外国の沿岸で操業してきたのでありまするが、世界の大勢は、沿岸の水産資源の利用については沿岸国の優先を認める方向に向かっております。いまや領海十二海里及び十二海里漁業専管水域を設定する国々は六十四ヵ国の多きに達し、わが国の領海三海里、公海自由の原則の主張は、国際的に通らなくなり、いよいよ孤立化しつつあるのであります。このような傾向に対して、政府は今日まで、国際漁業の問題解決のために、関係国間の話し合いと実績尊重を基本方針として交渉を進めてまいっている実情でありまするが、ニュージーランド、米国、スペイン等に見られるように、一方的に、国内法により十二海里専管水域を設定することが慣行となってきており、わが国の話し合いと実績尊重も相手国がなかなか容認しない実情であります。さきの米国との交渉においても、わが国の原則論はたな上げとなり、実績をとることのみに専念する交渉をやらざるを得なかったと聞いております。有数の水産国である米国による一方的専管水域の設定には、わが国が好むと好まざるとにかかわらず、今後、世界各国が追随するでありましょう。わが国の国際遠洋漁業は、ますますきびしい規制を受けることが容易に想像されるのであります。  しかるに、近年、わが国の沿海にも外国漁船が沿岸三海里近くまで数十隻の船団を組んで接近し、操業を始めたのであります。政府は、今日までの攻めるのみの主張から、追い払われる立場、守る立場の両面を考慮した主張をせざるを得ない羽目に追い込まれておるのであります。このような事態の進展に対して、なぜに実績を尊重した資源量に基づく漁業専管水域十二海里をとり得ないのか、総理の所信を承りたいのであります。同時にまた、今後いかなる基本方針のもとに海洋政策及び国際漁業政策を進めていかれるのか、お伺いをいたします。  また、国際間の海洋及び漁業の秩序を樹立する目的で、一九五八年ジュネーブで開かれた国連主催の国際海洋法会議では四つの条約を採択し、昨年までにすでに四条約とも発効を見ております。昨年、同じこの白書に対する質問で、わが党の川村清一君がこの問題をただしたとき、総理は、四つのうち領海及び接続水域に関する条約及び公海に関する条約の二条約については、政府も批准する準備をしていると答弁しておられるのでありまするが、国際漁業情勢の流動が激しく、日本の孤立化も一段ときわ立っている事態の中で、世界一流の漁業国であるわが国が、いまだにこれに加盟していないのは、いかなる理由によるのか理解できません。私はむしろこの際、国際漁業におけるわが国の指導性と主体性を確立するためにも、早急に加盟すべきであると考えるが、なぜに、昨年の五十一回国会で約束しているにもかかわらず、今国会に批准を求めようとしないのか、総理の御見解を伺いたいのであります。  質問の第四は、白書も明らかにしているように、漁業においても農業と同様に、若年労働力の流出率がきわめて高く、新規労働力の補充も困難となっており、ために年齢構成は中高年層に著しい片寄りを示すに至っているのであります。漁村では老人漁家が増大をし、沖合い、遠洋漁業では、乗り組み員の奪い合いが行なわれております。漁業の将来は労働力の面から崩壊の危機に瀕しているとさえいわれるのであります。特に、日本で発達した在来の漁法は労働集約的な性格のものが多く、一貫した作業工程の機械化、省力化には、かなり多くの困難な問題をはらんでいるのでありまして、何よりもまず労働力の確保というのが漁業者の偽らざる声であります。しかるに、現在これが対策としては、ほとんど見るべきものがない実情であります。沿岸漁業の労働力の現状について農林大臣はどのように認識しておられるのか。現在とられている程度の施策で十分にやっていけるという見通しか、お伺いをいたす次第でございます。  質問の第五は、昨年ジュネーブで開かれた第五十回ILO総会は、漁船内の設備に関する条約を採択しております。この条約内容は、漁船員の職場である漁船内部の設備を整備し、その労働条件の改善をはかろうとするものであります。わが国の漁業においては、今日なお、その大部分は乗り組み員の給与に歩合制をとっており、これがため漁獲の積載が優先され、船内設備は顧みられず、海難を招くこともあり、若年労働者をして漁船を忌避せしめる大きな要因の一つとなっているのであります。沖合い・遠洋漁業の優秀なる乗り組み員を得ることがこれら漁業の発展の因をなすものでありますから、早急にこの条約を批准することが必要であります。しかるに、一九四九年のILO総会で採択された一般商船の船員設備の整備を規定した船内船員設備に関する条約は、一九五三年に発効を見ているのでありまするが、日本政府は採択以来二十年になんなんとする今日、いまだに批准をしていないのであります。この事実は、いかに、政府が、船舶、船主に対して優遇措置をとっている反面、船舶労働者に対して冷淡であったかの証左だと思うのであります。こうした政府態度が今日の漁船等の労働力の需給逼迫を招来した根本的な要因の一つであるのでもあります。そこで、外務大臣にお尋ねしますが、これら二条約の批准のための作業はどこまで進んでいるのか、いつ国会提出する予定か、お尋ねをいたします。  さらに、運輸大臣はこれに対して、運輸行政立場からどのように国内法の整備に対する所信をお持ちであるのか、お尋ねをする次第であります。  以上で私の質問を終わります。(拍手)    〔国務大臣佐藤榮作登壇拍手
  20. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) お答えいたします。  わが国の漁業の現状並びに今後の対策という点についてのお尋ねでございます。私が申し上げるまでもなく、わが国の動物たん白質、その約半ばはこの漁業が供給しておる、さように考えますと、国民経済的にもたいへん重要な価値、意義を持っておる漁業でございます。また、経済社会発展計画では、四十六年におそらく、国民の所得もふえておりますから、そういう意味で需要は九百万トンをこすのではないか、しかし、それに対する供給は七百七十万トンと、一応そういう予想が立てられております。そこで、今日、各漁業はどういう状況に置かれておるかという問題でありますが、沿岸漁業だとか、あるいは遠洋漁業だとか、こういうような区別をしてみますると、沿岸漁業、これはもう申すまでもなく、所得も少ないし、なかなか困難な状況、魚族はだんだん減っておる、こういう状況であります。また、中小の漁業はこれまたたいへん苦しい立場に置かれておる。また、遠洋漁業の場合は、これは大企業でありますが、何とかなるだろうと考えましても、最近は、御指摘にありましたように、各国とも漁業に関心を向けてまいりましたので、なかなかその規制がむずかしくなっております。十二海里問題などもその一つであります。そういうことを考えますと、漁業が置かれておる現状は決して楽なものではない、かように思います。  しかも、将来のことを考え、需給のバランスをとるようにするためには、政府は積極的にここで生産をふやすこと、これをしなければならない。そこで考えられるのは、沿岸漁業におきましては養殖に力を入れる、あるいは魚礁をつくるというようなことに特に力を入れて、それぞれある程度の成功はしているように思います。また、沿岸漁業については、もちろん、新漁場を開拓する、新しい技術を導入する等々によりまして、わが国の地位をさらに高めていくというような努力を続けているわけであります。しかし、今後予想される問題は、なかなか楽な状況ではないと思います。したがいまして、関係の方々の奮起と同時に、政府のこれに対する施策よろしきを得たいと、かように私は考えている次第でございます。  そこで、基本法というものは一体どうかというお尋ねでありますが、ただいま、漁業基本法というところまでは考えておりません。しかし、三十八年につくりました沿岸漁業等振興法、これは、もう御承知のことだと思いますが、この沿岸漁業等振興法がいわゆる漁業基本法のようなものでございますので、沿岸漁業の方向としては、この振興法の示す方向であらゆる準備をし、また、そのほうで努力をしているということでございます。しかし、さらに、これでは不十分だと、こういうような点が今後考えられれば、置かれております漁業のことを考えるにつけましても、さらに積極的な方策を立てる必要があるのではないかとも思います。  また、その場合に、地域的な沿岸、遠洋等の区別もございますが、同時に経営規模の問題がございます。沿岸漁業は主として中小漁業企業形態でやっております、そういう場合に、やはり大企業との一つの分野を明確にすること、これは必要でありますし、分野を明確にし、同時に、お互いに調整し合い、あるいは協力し合うということで全体を盛り立てていくと、こういう方向でありたいものだと思っております。そういう意味の協業関係その他構造改善については、特に政府は努力をしておる次第でございます。  また、いろいろ国際条約等についてのお尋ねがございましたが、これらの点は外務大臣からお答えさすことにいたしますので、お聞き取りいただきたいと思います。(拍手)    〔国務大臣倉石忠雄君登壇拍手
  21. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) 指定漁業の一斉更新についてお尋ねがございました。この際、政府態度を明らかにいたしておきたいと思います。指定漁業の許可の有効期間は原則として五年間でございまして、本年八月から十二月にかけてその一斉更新が行なわれますことは御指摘のとおりであります。そこで、この一斉更新に対処する方針といたしましては、指定漁業をめぐる内外の諸情勢を総合的に勘案いたしまして、指定漁業の今後の基本的な方向に沿った許可の一斉更新をいたしたいということで研究をいたしておりますが、  第一には、今回の一斉更新は、改正漁業法による第一回目のものでございますので、現行法のワク内で措置することといたしております。  第二は、漁獲努力は、一部北洋における遠洋底引き網漁業を除きまして、資源及び漁業調整上、原則として増加いたさないというたてまえをとりたいと思います。  第三には、各漁業種類ごとに、操業区域、操業期間その他について、実態に応じてできるだけその合理化をはかりますけれども沿岸漁業等との間における漁業調整にかかるものにつきましては、大幅な変更をこの時点において加えることについては、これをなるべく避けるように配慮いたしたいと思っております。  第四は、今回の一斉更新を機会に、新たに建造される二十トン以上の漁船につきましては、漁船船員設備基準及び漁船載荷基準、荷物を積みます基準でございますが、これを強制適用し、船員の労働環境の改善と船舶の安全性の確保をはかること。こういう方針でございますが、なお、本件に関しましては、中央漁業調整審議会において慎重な検討を重ねられたものでございます。こういう態度で一斉更新に臨みたいと思っております。  それから、もう一つ御指摘の漁業労働力の確保につきまして、これは全く御指摘のとおり、今日の、ことに沿岸及び中小漁業におきましては、時代の流れにつれまして、労働力が流動的でございます。私どもといたしましては、やはりどうしてもこの漁業の従業者を確保いたすためには、この従業者に対して漁業に対する魅力を持たせるようにしなければならない。この点におきましては、御存じのように、たとえば労働条件を改善する、あるいはまた、先ほどILO条約のこともお話がございましたが、なるべく、そういうような理想に近い基準の設定をいたしまして、雇用条件を改善いたしてまいること、同時に、また、消費者物価を考えることによって、配給機構はもちろん考慮いたさなければなりませんが、この漁家の所得をふやすという意味で、やはり漁業を近代化すること、機械化してまいって、そうして一人当たりの生産性をあげることによって各個人の所得をふやしていくという、このことは、ただいま国会で御審議を願っております中小漁業振興特別措置法案等の内容でも御存じのとおりでございまして、そういうようにいたしまして、経済的にも魅力を持たせるような方向をとると同時に、漁村における若者たちの生活環境を改善してあげるとか、いろいろそういう施設を行なうことによって、漁業というものに魅力を持っていただく。これは農業と同じように、そういうふうにしむけてまいるように政府が鋭意努力をいたしておることは、御存じのとおりでございます。  あと、専管水域等の問題につきましては外務大臣にもお尋ねのようでございますから、それらの閣僚からお願いいたすことにいたします。(拍手)    〔国務大臣三木武夫君登壇拍手
  22. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 第一点は、漁業交渉に対するわが国の基本的な態度についてお尋ねでございます。領海の幅員は三海里、また、関係国間の特別の合意のない限り、漁業水域の設定は認めない、さらに、特別の合意のある場合においても十二海里以上は認めない、これが漁業交渉をいたす場合の日本の厳木的原則でございます。しかし、達田君の御指摘のごとく、世界的に一方的な漁業水域を設定する傾向というものは非常に顕著になってきている。日本の漁業権益が押されぎみであることは御指摘のとおりでございます。しかし、こういう事態において、結局この各国の利害が一致いたしませんから、漁業水域の問題を世界的に解決するということは非常に困難でございます。したがって、日本は二国間の交渉を通じて従来の漁業実績を守っていく、こういうことで実際的に解決をするという態度が日本の国益を守る道である、かように考えて、外交交渉を通じて一本の漁業権益を守りたいと考えております。  第二は、海洋法会議で採択をされた四条約、これは一体批准はどうなっているのかという御質問でございますが、その中で、領海及び接続水域に関するもの、公海に関するものは、これはできるだけ早く、次の国会には提出をいたしたい考えで準備を進めております。しかし、資源保存と大陸棚に関する条約は、遠洋漁業に非常に重大な利害関係がございますので、これはさらに慎重な検討を加えたいという所存でございます。  お答えいたします。(拍手)    〔国務大臣大橋武夫君登壇拍手
  23. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) ILO条約百二十六号は、昨年、第五十回ILO総会で採択された際にも、わが国では、政府、労使一致してこれに賛意を表したものでございます。したがって、政府としましては、条約の趣旨を尊重し、漁船船内船員設備基準に関する国内規制制定をできるだけ早期に実現いたしまして、条約批准が可能になるよう努力いたす考えでございます。すでに、政府といたしましては、昭和三十九年に、漁船をも含めまして、船舶船員設備に関する法規制について、船員中央労働委員会に対して諮問を行なっており、同委員会でも、商船に関する設備基準の結論は大体これを得るに至っておりますので、漁船に関する設備基準の審議も近く行なわれる見通しとなっております。これらの審議を一そう促進いたしたいと存じます。(拍手
  24. 河野謙三

    ○副議長河野謙三君) これにて質疑の通告者の発言は終了いたしました。質疑は終了したものと認めます。      —————・—————
  25. 河野謙三

    ○副議長河野謙三君) 日程第三、アジア生産性機構の特権及び免除に関する日本国政府アジア生産性機構との間の協定の締結について承認を求めるの件。  日程第四、日本国ソヴィエト社会主義共和国連邦との間の領事条約締結について承認を求めるの件(衆議院送付)。  日程第五、所得に対する租税に関する二重課税の回避のための日本国ノールウェー王国との間の条約締結について承認を求めるの件。  以上三件を一括して議題とすることに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  26. 河野謙三

    ○副議長河野謙三君) 御異議ないと認めます。  まず、委員長の報告を求めます。外務委員長赤間文三君。    〔赤間文三君登壇拍手
  27. 赤間文三

    ○赤間文三君 ただいま議題となりました条約三件につきまして、外務委員会における審議の経過と結果を一括して御報告申し上げます。  まず、アジア生産性機構の特権及び免除に関する協定について申し上げます。  アジア生産性機構は、アジア諸国における生産性の向上を目的として、昭和三十六年に設立された国際機関でありまして、わが国は、設立当初からこれに参加しており、その本部もわが国に置かれておるのであります。  本件協定は、わが国が、国内において、アジア生産性機構に法人格を認め、機構、その職員、及び専門家、並びに加盟国政府代表者に対し、一定の特権及び免除を与えることを規定したものでありまして、特権及び免除の内容は、若干の点を除き、国連または専門機関の特権免除条約と同様でございます。  次に、ソビエト連邦との領事条約は、戦後わが国締結をする領事条約としては、日米間及び日英間の条約に次ぐものでございまして、領事館の設置、領事の任命手続等のほか、領事館、領事及び領事館職員の特権免除、並びに領事の職務内容を定めたものでございます。  また、交換公文におきまして、わが国の漁民が北太平洋において、領海侵犯を理由といたしまして、ソ連当局に逮捕拘禁された場合のわが国領事の職務、権能について、特に定めております。ソビエト連邦は、その国内体制において、わが国と異なる点が多いのでございまするが、近く両国間で相互に領事館が設置される場合、この条約締結によりまして、わが国領事の地位及び活動に条約上の保障が与えられることとなるのでございます。  最後に、二重課税の回避のためのノールウェーとの条約は、現在両国間に締結されております二重課税防止条約の規定に全面的改正を加えたものでありまして、特に、相手国に支店等恒久的施設を有する法人の利得に対して、相手国の課税は従来より制限されること、公海漁業の利得に対しては、相手国で免税とする旨の規定が新たに設けられたこと、使用料等の投資所得については、軽減税率が引き下げられたこと等の特色が見られるのであります。  委員会におきましては、以上三件につきまして慎重審議、特に日ソ領事条約に関連をいたしまして、ソビエト連邦に対するわが国の外交方針、その他両国間の懸案事項等につきまして熱心な質疑が行なわれましたが、詳細は会議録によって御承知を願います。  六月十三日質疑を終えまして、討論採決の結果、三件は、いずれも全会一致をもって承認すべきものと決定をいたしました。  以下御報告を申し上げます。
  28. 河野謙三

    ○副議長河野謙三君) 別に御発言もなければ、これより採決をいたします。  まず、「アジア生産性機構の特権及び免除に関する日本国政府アジア生産性機構との間の協定の締結について承認を求めるの件」及び「所得に対する租税に関する二重課税の回避のための日本国とノールウエー王国との間の条約締結について承認を求めるの件」全部を問題に供します。両件を承認することに賛成の諸君の起立を求めます。    〔賛成者起立〕
  29. 河野謙三

    ○副議長河野謙三君) 過半数と認めます。よって、両件は承認することに決しました。      —————・—————
  30. 河野謙三

    ○副議長河野謙三君) 次に、日本国ソヴィエト社会主義共和国連邦との間の領事条約締結について承認を求めるの件を問題に供します。本件承認することに賛成の諸君の起立を求めます。    〔賛成者起立〕
  31. 河野謙三

    ○副議長河野謙三君) 総員起立と認めます。よって、本件は全会一致をもって承認することに決しました。      —————・—————
  32. 河野謙三

    ○副議長河野謙三君) 日程第六、日本鉄道建設公団法の一部を改正する法律案内閣提出衆議院送付)を議題といたします。  まず、委員長の報告を求めます。運輸委員長天坊裕彦君。    〔天坊裕彦君登壇拍手
  33. 天坊裕彦

    ○天坊裕彦君 ただいま議題となりました日本鉄道建設公団法の一部を改正する法律案について、審議の経過及び結果を御報告申し上げます。  日本鉄道建設公団は、鉄道建設に要する資金を政府及び国鉄からの出資金等によるほか、鉄道建設債券の発行によってこれをまかなってまいりましたが、本法律案は、公団の事業規模の拡大に伴い増大する所一要資金の調達を円滑ならしめるため、その発行する債券にかかる債務について政府が保証することができることとしようとするものであります。  委員会におきましては、新線建設の現状及び今後の建設方針、公団に対する機能強化の方策、鉄道建設債券の引き受け先、ことに建設業者との関係、新線建設にかかる不採算路線の運営等、国鉄の公共負担に対する政府の財政的対策、新線建設長期計画とその資金計画等について質疑が行なわれましたが、その詳細については会議録により御承知願います。  以上で質疑を終了し、討論に入りましたところ、別に発言もなく、直ちに採決に入りましたところ、本法律案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  以上御報告申し上げます。(拍手
  34. 河野謙三

    ○副議長河野謙三君) 別に御発言もなければ、これより採決をいたします。  本案全部を問題に供します。本案に賛成の諸君の起立を求めます。    〔賛成者起立〕
  35. 河野謙三

    ○副議長河野謙三君) 過半数と認めます。よって、本案は可決せられました。      —————・—————
  36. 河野謙三

    ○副議長河野謙三君) 日程第七、下水道法の一部を改正する法律案。  日程第八、下水道整備緊急措置法案。  (いずれも内閣提出衆議院送付)  以上両案を一括して議題とすることに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  37. 河野謙三

    ○副議長河野謙三君) 御異議ないと認めます。  まず、委員長の報告を求めます。建設委員長藤田進君。     〔藤田進君登壇拍手
  38. 藤田進

    ○藤田進君 ただいま議題となりました二法案について御報告を申し上げます。  まず、下水道法の一部を改正する法律案は、下水道行政の一元化を骨子とするものであり、下水道整備五ヵ年計画を骨子といたします下水道整備緊急措置法案、この両案につきまして一括質疑を行ないましたが、その詳細は会議録に譲ります。  昨日、質疑を終わりまして、討論に入りましたところ、下水道法の一部を改正する法律案に対しましては、何の御発言もなく、下水道整備緊急措置法案に対しては、日本共産党を代表して春日委員から、反対の旨の発言がございました。その理由会議録に譲ります。  討論を終わり、採決の結果、下水道法の一部を改正する法律案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定をし、下水道整備緊急措置法案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  以上御報告申し上げます。(拍手
  39. 河野謙三

    ○副議長河野謙三君) 別に御発言もなければ、これより採決をいたします。  まず、下水道法の一部を改正する法律案全部を問題に供します。本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  40. 河野謙三

    ○副議長河野謙三君) 総員起立と認めます。よって、本案は全会一致をもって可決せられました。      —————・—————
  41. 河野謙三

    ○副議長河野謙三君) 次に、下水道整備緊急措置法案全部を問題に供します。本案に賛成の諸君の起立を求めます。    〔賛成者起立〕
  42. 河野謙三

    ○副議長河野謙三君) 過半数と認めます。よって、本案は可決せられました。      —————・—————
  43. 河野謙三

    ○副議長河野謙三君) 日程第九、札幌オリンピック冬季大会準備等のために必要な特別措置に関する法律案内閣提出)を議題といたします。  まず、委員長の報告を求めます。文教委員長大谷藤之助君。    〔大谷藤之助君登壇拍手
  44. 大谷藤之助

    ○大谷藤之助君 ただいま議題となりました法律案につきまして、文教委員会における審査の経過と結果について御報告いたします。  本案は、来たる昭和四十七年に開催される札幌オリンピック冬季大会に備え、その準備と運営並びに選挙の競技技術の向上等に資するための特別措置を定めるものであります。  委員会におきましては、本大会に要する経費及びその負担区分、競技施設及び関連施設の整備、選手の育成強化と学校体育との関連、スポーツ資金財団の資金調達計画等の問題について、熱心な質疑が行なわれましたが、その詳細については会議録により御承知願いたいと存じます。  別に討論もなく、採決の結果、全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  以上御報告申し上げます。(拍手
  45. 河野謙三

    ○副議長河野謙三君) 別に御発言もなければ、これより採決をいたします。  本案全部を問題に供します。本案に賛成の諸君の起立を求めます。    〔賛成者起立〕
  46. 河野謙三

    ○副議長河野謙三君) 総員起立と認めます。よって、本案は全会一致をもって可決せられました。  本日はこれにて散会いたします。    午後零時一分散会