○小柳勇君 私は、
日本社会党を代表して、ただいま上程されました二つの
法案に対しまして、内閣
総理大臣及び関係大臣に質問いたします。
この二つの
法案は、ともに、総合エネルギー調査会の
答申に基づいて、
石油エネルギー及び原子力エネルギーの長期的な安定供給を目標といたしておるものであります。したがって、これから十年先、二十年先の
日本のエネルギー
確保については、これらの構想を基礎にして十分検討しなければなりません。ところが、現在、
石油エネルギーの大部分を依存しておる中東諸国において
戦争が起こりまして、現在なお、平常に復しておりません。いわば足元に火がついておるのでありますから、この問題を先に質問いたしまして、逐次、将来の問題に質問を展開いたしたいと思います。
通産省の
報告によりますと、現在、
日本における重油及び
石油の備蓄量は、それぞれおよそ二十日分だと言われておるのであります。したがって、早急に中東の状態が平常に戻りませんと、
日本の経済に大きな打撃を与えることは必至であります。
わが国は、
石油の九〇%を、ペルシャ湾を経てアラブ諸国及びイランから
輸入しており、中東は
わが国のきわめて重要な
石油供給源となっております。アラブ諸国の
石油輸出禁止措置が、
わが国の
石油輸入にも相当の
影響を及ぼしました。また、スエズ運河の閉鎖が長引くようなことがあれば、
わが国と欧州方面との貿易が重大な
影響を受けることは必至であります。中東の
戦争は、単に
石油などの経済的
影響だけの問題ではありません。あるいはベトナム
戦争以上に
世界の平和に対する危険をはらんでいると言えましょう。かつてそうでありましたように、現在も中近東は
世界の火薬庫であります。
総理は、日ごろ、
世界平和を念願し、そのためにあらゆる努力をすると言っておられますが、今度の中東の
戦争が勃発した以後、どのような平和維持、または回復のために、積極的行動をとられたか、
総理がとられました措置についてお伺いをいたした、いのであります。
また、三木外務大臣は、紛争不介入、厳正中立を置くと、方々で述べておられますが、その紛争不介入、厳正中立という意味について、外務大臣にお飼いをいたしたいのであります。
停戦は一応受諾されましたが、今後の事後処理のため、紛争当事国の間はもとより、米国とソ連との間にも、激しい意見の対立が予想されます。
日本はその間にあって、どのような態度をとるのであろうか。紛争当事国の一方に偏せず、米国、ソ連のいずれにもくみせず、
日本が独自の立場に立って、平和の回復と
確保のために、
日本の国際的地位にふさわしい積極的貢献をするよう努力するのであるか。それとも、局外に立って、紛争当事国及び米ソ間の話し合いを傍観して、話し合いがついたらこれに従うということであるのか。厳正中立と言いながらアメリカに引きずられるようなことはないのか。ベトナム問題に関する
政府の親米的な態度から見て、この点について危惧の念を禁じ得ないのは、今後の外交方針を明らかに表明してもらいたいのであります。
また、通産大臣に対しましては、非常に緊急な問題でありますから、具体的な質問をいたします。いま紛争の解決がおくれまして、あるいはさらに悪化して、万一、原油の
輸入が激減するようなことが起こりましたならば、一体、
日本はどうなるか、原油の
確保対策をどのように措置するつもりであるか、その方針と
確保の見通しを伺っておきたいのであります。一応停戦になりましても、また激突しないとも限りませんが、原油
輸入の安定
確保のため、当面どのような措置をされるか、具体的にその方策を伺います。さきにも申し上げましたように、
わが国の原油
輸入の九〇%が中近東に依存しており、しかも、今回のような政情不安な地域に偏重しておりましては、
わが国のエネルギーの安定供給は
確保できないのであります。たまたま本日議題になりました
石油開発公団と
動力炉・
核燃料開発事業団を設立して、民族資本による海外原油の
開発、あるいは原子力エネルギーの
開発を急いだといたしましても、原子力で五十年度に総所要エネルギーの二・四%、六十年度に一〇%、また、海外
開発原油では五十年度が一四・九%、六十年度わずかに二一・七%を占めるにすぎません。西欧諸国におきましては、
昭和三十一年のスエズ動乱の経験から、原油
輸入の中近東への依存度を低める努力を重ね、着々とその成果をあげているのが
現状であります。しかるに、
わが国は中近東偏重の危険性を認識しておりながら、
石油業界の特殊事情のために、中近東への依存度をますます高くいたしているのであります。早急に、しかも積極的な、海外油田の
開発と
輸入先の転換を検討する必要があると思うが、この
法案では、東南アジア地区及びカナダ地域を問題にしているようでありますが、海外原油の
開発について相手国側との交渉の進みぐあいはどうか、また、相手国の政情不安によって長期展望が困難ではないか、この点について具体的な
説明を求めたいと思います。あわせて、ソ連原油の
輸入の見通しと、積極的にソ連原油の
輸入を進める方針はないか。
社会主義圏に対しまして、自由主義諸国は相当制限をしておるようでありますが、
政府の考え方をお伺いしたいのであります。
なお、昨年の日ソ経済合同
委員会で、ソ連側から、ウラルの西にあるチューメニ油田からナホトカまで七千キロの輸送用パイプと、採掘機械など
開発資材を
日本が供結し、原油を長期にわたってソ連が
日本に供給するシベリア油田
開発協力を望んできたといわれているが、きょうから開かれております今年度の日ソ経済合同
委員会では、どのような回答が出るように考えておられるか、外務大臣及び通産大臣から
見解を伺いたいのであります。
わが国のエネルギーの総
需要量は、現在一億六千五百万キロリットルでありまして、その構成比は、
石油が五八・四%、石炭が二七・三%、水力が一一・三%、原子力は残念ながらゼロであります。しかるに、
昭和四十五年度に二億一千九百五十万キロリットル、六十年度は五億五千十万キロリットルに
増大するものと推定されております。その構成比は、
石油が七四・八%、原子力が一〇%、石炭が九。五%を占めるものと推測されているのであります。これから二十年の間に、
石油エネルギーと、原子力エネルギーを海外に求めて、
日本の財力と知力を総動員しなければ、これらの推定はあくまで推定に終わる危険性があります。いわば、この提案された
法案の自主
開発のエネルギーは、遠い将来の夢物語といわなければなりません。したがって、とりあえず、ここ二十年の間、
わが国は
国内エネルギー
資源を有効に
活用する努力を
最大限にいたさなければならぬと考えるのであります。
国内エネルギーは石炭と水力であります。中でも、石炭の
活用を再検討する必要があろうと考えておるのであります。石炭は理論可採埋蔵量二百億トンといわれ、実際に採掘できる炭量だけでも二十年分はあると推計されているところであります。たまたま、石炭は、
石油との
競争において、炭価の引き下げと急激な
合理化の中で累積赤字が
増大したために、今度の
国会で、石炭企業の借金のうち一千億円を財政資金によって肩がわりして、私企業の再建をはかっているのでありますが、このことは、とりもなおさず私企業としての限界を示すものであり、このようなばく大な国費を私企業に投ずるくらいなら、エネルギーの安全供給の観点からも、石炭鉱業を国有化しなければならぬと考えておるのであります。現在、石炭関係には、各種事業団及び電力用炭販売会社がありますが、これらも統合一元化して、大石炭公社を設立する考えはないか。また、石炭火力発電所も、緊急事態に備えて増設をする必要があると考えるが、通産大臣の
見解を伺いたいのであります。
次に、
動力炉・
核燃料開発事業団法案での問題点は、いろいろあります。たとえば、核燃料を民間に野放しにする点、
動力炉の
研究過程で
開発された実用炉の
利用を除外している点、及び電力会社が米国から軽水炉を独自に購入して原子力発電を急ごうとしている点など、いろいろ問題がありますが、これらは
委員会で十分に論議したいと思います。
きょう質問しておきたいのは、新型転換炉及び高速増殖炉の
開発のために、十年の長い歳月を民間の協力にのみ依存しながら
研究を続けようとする、中途はんぱなこの事業団構想についてであります。
大蔵大臣は、三ヵ年ごとにチェックして、悪かったら手直しすると言っておるそうでありますが、そんな不安定な基礎では長期的な
研究はできないと考えるのであります。学者も
研究者も生活しなければなりませんし、安定した
研究体制を求めることは当然であります。私は、むしろ、現在の原子力
委員会の権限を
強化して、その傘下に、原子力
研究所、原子力燃料公社、原子力発電会社を統合一元化して、強力な
研究体制をつくるべきであると考えるのであります。
研究開発の段階で、民間の発電会社が、これと無関係に原子力発電
体制に移行することを抑制しながら、新型転換炉及び高速増殖炉の
開発を急ぐべきであると考えるがどうか。科学技術庁長官の
見解を求めます。
また、原子力発電は通産省関係が所管、
動力炉開発は科学技術庁の所管であります。この所管の不統一にも原子力
開発の隘路があると考えますが、これらの連携調整はだれがどのようにしてやるのか。通滝大臣と科学技術庁長官の
見解を求めます。
最後に、行政管理庁長官にお伺いいたします。公社、公団の整理統合については、さきの臨時行政調査会でも
答申され、その後、
各種委員会でも問題にされ、
佐藤総理は内閣の責任においてこの機会に断行すると言明しておられます。昨日も議運で問題になったようでありますが、臨時行政調査会の
答申の中で、「
政府関係機関等の設立は、人事管理の行き詰まりと、何らかの政治的圧力に原因が求められる。このため無秩序に乱設する
傾向がある」と指摘しているのであります。結論として、「乱設を抑制するとともに、既存のものの
実績を検討して、その統廃合を促進すること、統一的な設立基準の確定がぜひとも必要である」という
見解を述べているところでありますが、本日提案されたこの事業団と公団は、これらの意見を排除してまで設立しなければならないものかどうか、その根拠は何か、また、設立基準は何か、お伺いをいたします。
総理大臣に対しましては、特殊法人が各省庁の植民地となり、役員人事が各省の私物化してしまっていると極論されているやさき、これらの特殊法人が新設されようとしておりますが、その運営なり役員人事の決定にいかなる措置をとられるか、また、既存の特殊法人の役員人事の問題になっている点についてどう解決されるか、お伺いいたしまして、私の質問を終わります。(
拍手)
〔
国務大臣佐藤榮作君
登壇、
拍手〕