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1967-07-11 第55回国会 参議院 法務委員会 第13号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十二年七月十一日(火曜日)    午前十時五十分開会     ―――――――――――――    委員異動   七月十日      辞任         小沢久太郎君   七月十一日      辞任        補欠選任       久保 勘一君    二木 謙吾君       西村 関一君    大橋 和孝君     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。     理 事                 後藤 義隆君                 田村 賢作君                 久保  等君                 山田 徹一君     委 員                 梶原 茂嘉君                 木島 義夫君                 斎藤  昇君                 鈴木 万平君                 二木 謙吾君                 大森 創造君                 亀田 得治君                 西村 関一君    国務大臣        法 務 大 臣  田中伊三次君        国 務 大 臣  木村 俊夫君    政府委員        警察庁刑事局長  内海  倫君        警察庁警備局長  川島 広守君        法務大臣官房司        法法制調査部長  川島 一郎君        法務省訟務局長  青木 義人君    最高裁判所長官代理者        最高裁判所事務        総局事務次長   吉田  豊君        最高裁判所事務        総局総務局長   寺田 治郎君        最高裁判所事務        総局民事局長兼        行政局長     菅野 啓蔵君    事務局側        常任委員会専門        員        増本 甲吉君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○検察及び裁判運営等に関する調査  (東京地裁決定に対する内閣総理大臣異議  申立てに関する件)  (福岡地方検察庁における綱紀に関する件) ○旧執達吏規則に基づく恩給の年額の改定に関す  る法律案内閣提出衆議院送付) ○下級裁判所の設立及び管轄区域に関する法律の  一部を改正する法律案内閣提出衆議院送付)     ―――――――――――――   〔理事山田徹一君委員長席に着く〕
  2. 山田徹一

    理事山田徹一君) ただいまから法務委員会開会いたします。  浅井委員長病気欠席のため、委託により私が委員長代理をいたします。     ―――――――――――――
  3. 山田徹一

    理事山田徹一君) 委員異動について報告いたします。昨十日、小沢久太郎君が法務委員辞任されました。     ―――――――――――――
  4. 山田徹一

    理事山田徹一君) それでは、検察及び裁判運営等に関する調査を議題といたします。質疑のおありの方は順次御発言願います。
  5. 亀田得治

    亀田得治君 私は、昨日の春闘共闘委員会の十一日、十二日の国会周辺デモに対して東京公安委員会がそのコース変更した、それに対してそのコース変更執行停止という決定東京地裁民事二部がいたしたわけですが、これに対して総理大臣異議が出されまして、この点につきまして短時間ですが若干ひとつ見解をただしたいと思います。  政府は、今回は、前回の六月十日の場合と違いまして、相当詳しい意見書なりあるいは資料ども裁判所に提出されたようです。裁判所におきましても、それらの資料をよく検討されまして、それでも政府考えを認めるわけにいかないということで停止決定をやられたようであります。私は、こういう経過をたどれば、政府としてもこの国会周辺デモについて異議申し立ててそれをやらさないというふうなことじゃなしに、裁判所決定どおりにやってもらうということのほうが私はフェアだ、こういうふうに考える。前回も、この異議申し立てをして、相当物議をかもした。今回また同じような異議申し立てをされる。これは国民は、何か政府裁判所に対して意地になってこうやっておるというふうな感じも受けておると思います。私は、こういうことは、行政府司法部の間におきましてはなはだおもしろくないことだと思います。一回ならず二回までも、こういう感じで多数の者は見ておると思うんですがね。なぜこのようなことをやられるのか。裁判所としても、前回異議申し立てが出ましたから、今回は前回にまさる私は慎重な検討をされたと思う。裁判長もそういう趣旨の談話を出しておられます。政府立場も相当考えたと思う。それでも、憲法立場から考えるならば、このような平穏なデモをやらせないということはいけない、公安条例乱用だ、こういう決定をしたのですから、すなおに政府がそれに従う、これが私は法秩序を守るゆえんだと思うんです。なぜこういうことを再度やられたのか、はなはだ遺憾なわけですが、官房長官からその所信を明らかにしてほしいと思います。
  6. 木村俊夫

    国務大臣木村俊夫君) 政府といたしましては、前回と今回の異議申し立て理由について何ら変わるところはございません。したがいまして、この東京地裁が行ないました決定に対して、国会周辺における集団示威行動国会審議の公正を害するおそれがあるという根本方針に基づきまして、東京公安委員会許可処分に与えられた東京地裁決定に対して異議申し立てを行なったのでございます。前回と今回と、根底におきまして、その方針変更はございません。
  7. 亀田得治

    亀田得治君 その裁判理由国会審議のじゃまになるおそれがあるかないか、そういったような点についての検討は、後ほど、最高裁当局も来ておりますから、いたしたいと思いますが、ただ私は、政府態度、たとえば十日の前日九日に、すでに官房長官は、もし裁判所執行停止決定を出すようなことがあれば総理大臣異議申し立てをする、こういうことを表明されておるわけですね。こういうことは、はなはだ私は裁判に対する干渉の印象を与えると思うのです。裁判はあくまでも具体的なケース判断が出てくるわけです。その判断も出ないうちに、異例な権限なんだ、総理大臣異議申し立てなんというのは。まことにこれは異例なんです。世界にもない制度なんです。これは前回法務委員会でそういうこまかい審議をいたしましたが、世界にもない制度なんです。特殊な事情裁判所反対を押し切って入ってきたこれは制度なんです。そういう権限なんですから、そういうものをお使いになる場合にはよほど慎重でなければいかぬ。にもかかわらず、裁判の前に官房長官が、もし裁判所停止をするなら、自分はそれを解除する、こういうことを言われるということは、非常な私は誤解を与えると思う。あのような発言、私は適切だとおそらく言われたあと長官考えておられないと思いますが、どうなんでしょう。政府権限というものをそういう形でお使いになっていいものでしょうかどうでしょうか、ひとつお答えを願いたい。
  8. 木村俊夫

    国務大臣木村俊夫君) 御承知のとおり、行政事件訴訟法によりますと、そういう裁判所決定以前においても、内閣総理大臣異議申し立てができるということになっております。そこで、私どもといたしましては、しかしながら、この異議申し立ての重大なる意義にかんがみまして、やはり裁判所決定が行なわれた後に異議申し立てをやるほうがより妥当であるという方針のもとに、決定後において異議申し立てをいたした次第でございます。なお、私が申しました、もし万一こういう決定が出れば内閣総理大臣異議申し立てを行なうというようなことの私の発言は、必ずしもそのとおりではございません。ある質問に対して仮定として私が非公式に発言したことはございますが、政府方針として発言した意味ではございません。
  9. 亀田得治

    亀田得治君 決定前にも異議申し立てばできます。これはしかし、それならば裁判所に対して正式にすればいいわけですね。それはあとに回しておいて、変な決定をしたらわしのほうは二十七条の権限を行使するぞ、こういう意思の表明というものは、裁判官のほうから見たら、はなはだしくこれは場合によっては脅迫的ととられる。事前にもできるのだから多少のことは言ったって差しつかえないだろう。それならだ事前にちゃんと出したらいいのです。私は、こういう裁判と関連した問題においては、これは政府の言動というものは慎重であるべきだと考えるのですね。だから今後こういうことはひとつ慎重にやってほしいと思います。  そこでお聞きいたしますが、一体二十七条の権限の発動ですね、これは官房長官総理大臣から御一任でも受けておられる問題なんでしょうか、どうなんでしょう。これは私は、司法行政の非常につばぜり合いになる問題でありまして、最後の関頭に立って総理大臣がそれこそおのれをむなしゅうして真剣に考えて発動すべき権限だと思っておる。一体そういう権限を、どうも新聞記事等を見ておると、包括的に官房長官その他関係者にまかしてあるような印象を受けるのですね。内部の関係はどういうふうになっておるのでしょうか。
  10. 木村俊夫

    国務大臣木村俊夫君) 決して包括的に総理から私どもに委任されておるわけでは毛頭ございません。したがいまして、私ども今回の異議申し立てにあたりましては、国家公安委員長並びに法務大臣からの要請に基づきまして、内閣総理大臣の決裁を経て行なったわけでございます。その点については、誤解のないようにお願いいたします。
  11. 亀田得治

    亀田得治君 そういう御一任総理大臣から受けておらないのであれば、なおさら私は、いくら腹の中でどのように思っていても、事前にそのようなことを言うべきではない、こういうふうに思うのです。だから、この点は今後やはり冷静に扱ってもらわないといけないと思います。そういうことを言うてしまえば、それじゃ裁判所から正式に決定が出てきた、なるほどこの決定理由であればその裁判に従わなければいかぬのじゃないだろうかというお気持ちにならぬとも限りませんよ。裁判のことですから、ケースバイケースみんな違うのですから。ところが、そういう気持ちになったって、事前にいま申し上げたような発言があれば、結局は拘束される。私は、こういう異例な総理大臣権限の行使なんというものは、もっと大事な使い方をしてもらわなきゃいけないと思うのですね。そういう点で、十分ひとつ今後はやはり慎重にやってほしい。  官房長官時間があまりないようでありますから、次にもう一、二点お聞きいたしておきますが、それは、どうも長官談話なりあるいは法務大臣あるいは国家公安委員長などのお話しになっておることを聞きますと、今後国会周辺デモ申請がある、裁判所東京公安委員会変更に対する決定をやり、その決定に対してはもう全部総理大臣異議権を発動するのだ、こういうふうな気持ちがあらわれておるように思うのですが、一体そういうことをきめておるのですか、どうなんですか。
  12. 木村俊夫

    国務大臣木村俊夫君) 御承知のとおり、このデモ行進に対する許可その他は東京都の公安委員会できめることでございます。政府は直接これに関与するものでは毛頭ございません。ただ、その東京公安委員会許可処分に対しまして、東京地裁――この場合は東京地裁でございますが、裁判所においてそれに反する決定がなされた場合におきましては、東京公安委員会から国家公安委員長あるいは法務大臣を通じて内閣総理大臣要請がございます。そのときに初めて内閣総理大臣として異議申し立てを行なうべきかどうかを判断するわけでございます。そういう意味におきまして、いまおっしゃいましたような今後のデモ規制に対する一般方針は、政府としてはまだ決定いたしておりません。
  13. 亀田得治

    亀田得治君 それでは、今後こういう同種の問題が起きてきた場合には、そのときに考えるのであって、多少誤解を与えるような記事が見えるわけですが、出てきたものは片っ端から総理大臣異議申し立てをやっていくんだ、その方針はきめておらない、こういうふうに理解していいですか。
  14. 木村俊夫

    国務大臣木村俊夫君) 御承知のとおり、国会周辺におきましても、集団示威行動にわたらない、請願を目的とする集団行進は現在も許可されております。ただ、今回のような具体的ケースで問題になりました、国会審議に重大な支障を及ぼすような集団示威行動に限って、今回のような東京都の公安委員会許可処分になりました。したがいまして、政府といたしましては、一般的にすべてのデモ許可しないとか、そういう方針はもとより、個々の具体的ケースにおきまして、東京都の公安委員会を通ずる国家公安委員長法務大臣要請に基づいて内閣総理大臣が一々これをきめる――異議申し立てをなすべきかどうかをきめるということに御了解を願いたいと思います。
  15. 亀田得治

    亀田得治君 そういたしますと、非常に問題が個別的、具体的になって私はいいと思います。基本的に聞きますが、平穏な国会周辺デモであれば差しつかえないんでしょう、この点はどういうふうに考えているのですか。一つの現象を平穏であると見るかどうか、この点の見解はあるいは分かれるかもしれません。しかし、政府も、このデモであればこれは平穏だというふうに考えた場合には、それは認めなければならぬでしょう、どうなんです。
  16. 木村俊夫

    国務大臣木村俊夫君) 先ほど申し上げましたとおり、その行なわれるべきデモ構成客観条件、いつの時点において――開会中あるいは閉会中いずれか、あるいは従来のそのデモ構成員の行なった過去の経歴、いろいろ具体的ケースがあると思います。したがいまして、私どもでは当初からそういうデモがあるいは国会の静穏な空気を乱すというような断定は行ないません。したがいまして、先ほど申し上げたとおり、具体的ケースに応じてこれを考えていくということに御了承願いたいと思います。
  17. 亀田得治

    亀田得治君 そうしますと、ある申請が出た場合に、それを平穏なものと見るか見ないか、そこの事実認識が非常に大事になってくるわけです。そうであれば、もちろんこのケースバイケース裁判所もそう言うております。これを認めたからといって、どんなデモでも認める意味ではない。平穏なものまでこの東京公安委員会が認めない態度をとるから、それは違憲だと、こう言っているのですね。そういうわけですから、だいぶ意見が、それで両者が近づいてくるわけですよ。裁判所も平穏ならばいい、あなたのほうも平穏ならいいというのですからね。したがっで、私は、そのとらわれた考えをやはり捨てて、具体的なケースについて、これが平穏にいくものかどうか、そういうことを十分検討して、そうして今後のやはり処置というものを考えてもらいたい。もう一律に、何でもこの種の類似のやつは全部総理大臣異議申し立てをやるのだ、こんなことを政府が続けてごらんなさい、一体法律を守ってくれというようなことを政府が言えますか。形式的には、行政事件訴訟法二十七条の権限、これを使っておるのだ、こう政府説明されまずけれど、大衆はそれはやはりりこうなんです。無理をして使っておるかどうかということ、そんなことはもう直観的にわかります。総理大臣までがそういう乱用をするなら、これはあなた法治国として非常に私は禍根を残すと思う。だからぜひ、この二回こういう権限を行使されたことによって与えておる疑惑ですね、こういうものを解くように政府としては今後考えてほしいと思う。ただいまの長官のお答えですと、ケースバイケース裁判所が言うように平穏ということをこちらも考える場合には、別にそれに対して異議申し立てまでするつもりはない、そういう意味にこれはとれる。私はそういう点をもっとはっきりさせてほしいと思う。逆ですよ、いまの話は。ともかく政府は、もう向こうがやればこっちもやる、もう裁判所がいつまでもそれを繰り返すならデモ禁止法律をつくろう。一体そういう平穏なデモを、たとえ国会周辺であっても憲法禁止はできない、公安条例にも反する、そのもとは憲法上反すると、こういう考え方がこう流れているわけですね、もとは。これは最高裁大法廷の判決だって同じことですよ。地裁民事部判決だけがそういう考えではない。この点では一致しているわけなのです。そのできないことを、今度は法律に持っていけば、一体そういう法律をつくっていいのかどうか、そこでまた大きな問題が起こることは、これはあたりまえじゃありませんか。そんなことをわかりながら、個々的にはできないなら法律で一括してやろう――個々的にできないものをどうして一括してやれるのですか。まるで、何と言いますかね、感情的な反発というふうな感じしか受けないわけですね。まああなたは急ぐから、これは法務大臣にもそういったような発言がありますから、後ほど私は大事なことですから聞きたいと思っているのですが、デモ規制法ですね、一々こんなことをやるのはかなわないから、もうさっぱりと、ばっさりといってしまうのだ、そういうふうな、自分で間違った悪いことをしておって、今度はそれをかばうためにもう一つ強いものを持ってくるというふうな考えを持っておられてああいうことを言ったりされておるのかどうか、官房長官のほんとうの腹の中を聞かしてほしい。
  18. 木村俊夫

    国務大臣木村俊夫君) 先ほどから権力乱用ということでございましたが、私ども政府は決して権力乱用しておると思いません。特に誤解が生ずるといけませんので、その平穏なデモということば、これに二点われわれは注意をしなければならないと思います。第一は、その平穏であるべきデモというのは、私ども憲法規定されております平穏なる請願集団行進というふうに解釈しておりまして、これが示威にわたり、あるいはシュプレヒコールを唱えるとか、あるいはプラカードを持つような集団示威にわたる行動は、私どものほうでは平穏なるデモとは解釈しておりません。また、一見平穏に見えましても、ある場合にはこれが激発いたしまして平穏ならざる行動に移ることは、従来の経験に徴してもよくございます。その点についての解釈につきましては、政府は、いまいろいろおことばがございましたが、政府見解で今後も処理したいと思います。  それから、いまのデモ規制法立法化意思ありゃなしやというお尋ねでございますが、当面政府といたしましてはこれを立法化する用意はございません。ただ、先ほどこういう異議申し立て権世界にも類のない権力だというふうなおことばがございましたが、御承知のとおり、もう世界各国ではほとんど、国会周辺裁判所周辺におけるデモ行為に対する規制法案ができております。したがいまして、当然異議申し立てができるということに私どもは解釈しております。
  19. 亀田得治

    亀田得治君 時間ですから退席願いたいと思ったのですが、いまの一番あとのところですね、これは長官、はなはだあなた認識違いですよ。裁判所決定総理大臣異議によって無効にしてしまう、こういう制度民主国においてはどこにもないということを言っておるのです。ひとりデモの問題だけではありません。それはデモ規制法のあるところとないところ、そんなことは私も知っています。裁判所裁判総理大臣意思でつぶしてしまう、これで一体三権分立と言えますか。政府なり行政機関行為によって権利侵害された場合でも、司法裁判所にその救済を求めることができる、これが民主国法体系なんです。それを、侵害しておる本人が出てきて、それはだめじゃと、こんな体系はないのです。これは法務大臣並びに国家公安委員長に、こういう規定が置かれた歴史というものを十分考えてほしい。新憲法ができて、非常に人権を尊重する憲法ができた。この憲法でいきますと、当時の占領政策人権侵害のことが予想される。一々それにけちをつけられてはたいへんだというのでGHQからこれが挿入されてきたいきさつ、これは政府側は知っておってもなるべくそういういやなことはおっしゃらぬわけですけれども、これはもう歴史的にはっきりした事実なんです。それを受け継いでいるだけなんです。だから裁判所も当時は、司法権侵害になるそういう規定を置くことは非常な反対があったのです。旧法においても、新法ができるときでも反対があった。そういうものなんですよ、これは。それだけの反対があったので、新法ができたあとでも、現在まで一回も総理大臣がこの権限を行使しておらぬのでしょう。事実していないのです。これが初めてですよ。しかし、行政事件において執行停止を命じた裁判は、新法になってからも多数出ているのですよ。それは、裁判所にはやはりおまかせしておこうということで、これだけの立法過程において批判があったので、これが一度も使われないでいままできているのです。これをここへ来て、立法過程どもあまり理解しないで、そうして形式的にこういうものを使われる、私はこれははなはだ心外だと思います。その点を言っているのです。ありますか、こんな政府民主国に。
  20. 木村俊夫

    国務大臣木村俊夫君) まあそういう意味における異議申し立てばないと思います。しかしながら、ただ私どものほうといたしましては、この東京地裁決定なるものは終局的な判決ではございません。いわゆる三権分立における司法作用ではない。そういうものに参ります前の、何と申しますか、暫定措置としてなされる行政処分的な性質のものである、こういう見解をとっておりますので、これが決して行政府司法権に干渉するという見解はとっておりません。そういう意味で御了承願いたいと思います。
  21. 亀田得治

    亀田得治君 時間をお急ぎなのにたいへん恐縮ですが、世界に異例な制度なんですよ。したがって、こういう制度の根拠をどういうふうにつけるかということで、説明されるほうもずいぶん苦心されたわけですよ。したがって、この執行停止の段階における問題は本来行政事件なんだ、こういうふうなへ理屈を述べて、そうしてまかり通っておるのですよ。行政事件じゃありませんよ。行政権による権利侵害救済というものは、これは司法権なんです。司法事件なんです。その前提としての仮の処分なんですね。これは司法処分ですよ。そんなことばだけちょっと適当に行政ということばを入れれば何かものごとがすべて変わってくるような、そういう御説明は、これは日本だけですよ、こんなことをやっているのは、こんな説明をして通っているのは。時間もだいぶ超過しましたから、長官との質疑はこの程度にいたします。
  22. 山田徹一

    理事山田徹一君) 速記をとめて。   〔速記中止
  23. 山田徹一

    理事山田徹一君) 速記を始めて。
  24. 亀田得治

    亀田得治君 最高裁が来るまで若干法務大臣にお聞きしたいと思いますが、法務大臣も、こういう事態になればデモ規制法考えるべきだと、こういう意味のことを言われておるようですね、新聞で拝見しますと。官房長官がそういう考えはいまのところはないと言っておられましたが、それはどういう理由でそのようなことをおっしゃるのか、その辺をひとつはっきり説明願いたいと思います。
  25. 田中伊三次

    国務大臣田中伊三次君) 根本考え方でございますが、国会開会中におけるこの議事堂の周辺というものは、ひとつ静ひつな環境、静かな環境に置いてもらいたいということが根本考え方でございます。したがって、集団行進があります場合でも、先ほどからおことばが出ておるように、まことにこの静かな行進というものがあるならば、これは一向に差しつかえない。たとえて言うてみると、集団示威行進でなくて単なる集団行進であるなら、一向これは差しつかえのないもんだ。しかしながら、集団示威運動がこの国会周辺で行なわれるということは事情のいかんにかかわらず御遠慮願いたいんだという考え方でございます。小規模なものでありましても、集団示威運動国会周辺で行なうことは遠慮を願いたい、こういう態度がまず政府態度にあるわけでございます。同時に、私の頭の中にもあるわけでございます。そこで、今回のようなこの集団示威運動国会周辺において行なわれるというような事態が今後続々出てくる――続々かどうかわからぬけれども、この間も六月の十日に一ぺんあって大騒ぎになった。今月はまた、十一日にもある、十二日にもある、両件の申請が出ておるわけであります。三度あることは四度ないとは言えない、四度あることは五度、六度あるであろう、こう考えるときに、そのような集団示威運動国会開会中の周辺に行なわれるということになるならば、何回でも、残念なことであるけれども、めったに使っちゃならないことではありますけれども、二十七条の発動ということもやむを得ないであろう。そういう二十七条の発動が何回も何回も繰り返されるような事態が国内に発生してくるということであるならば、これは東京都条例に基づいて進行の場所を変更するなどというやり方でなしに、国会を通過した法律によって規制するということにせざるを得なくなるであろう、こういう気持ちを現に持っておるわけでございます。そういう話をいたしましたことが、全部ではありませんが、その一部が新聞の表面に出ておる。確かに私の言うたことばでございます。
  26. 亀田得治

    亀田得治君 しかし、そういう法務大臣のお考えは、最高裁の三十五年の大法廷判決に反するじゃないでしょうか。法治国である以上は、やはりこういう問題についての最高裁決定が出れば、それを尊重していかなきゃいかぬと思うんですよ。三十五年の大法廷判決、御承知のように、公安条例憲法違反ということは退け、これはそういうことまでは言えない。しかしながら、本条例といえども、その運用のいかんによっては、憲法二十一条の保障する表現の自由の保障を侵す危険を絶対に包蔵しないとは言えない。条例の運用にあたり、公安委員会権限乱用し、公共の安寧の保持を口実にして――いま政府がやっているところですよ、口実にして、平穏で秩序ある集団行動まで抑圧することのないよう、極力戒心すべきこと、もちろんである。で、集団行動集団示威行動、これをあなた区別して言っておられるようですが、現実は一つのものです。それをあなたのほうでは、いわゆる請願という立場で来ることまで押えたんでは、これははなはだしく不適当だ、こういうことで、そこに逃げ道をつくっておられるようですが、事実関係はそんなにたいした違いのあるものではございません。いずれにしても、この平穏で秩序ある行動、これがなされたって、ちっともそんな国会審議の妨害にもならぬじゃないですか、事実問題として。そういうものまで押えたら、それは憲法違反になるぞと、こう言っておるわけです。それであれば、そういうものを対象にする立法というものは、当然最高裁の判例からいって、違憲立法ということになるんじゃないですか、違憲立法。いや、そういうことになっても、ともかく多数で強行して、違憲立法でも通ってしまえば、なかなか裁判所はその国会を通った法律にたてつくことはなかろう、そういうふうな気持ちで、そんなものを考えておられるのかもしれませんですね。私はそれはやはり大問題になると思う。そういうことでしたら、政府自身が、何か三権分立、その司法部の最高の頂点に立っておるそのような権威を認めないと、こういう考え方にこれは通ずるわけでして、私はこれは非常に影響の及ぶところが大きいと思うのですよ、先ほどのあなたの考え方は。特に私は、法の秩序を守る責任者である法務大臣立場としてはなはだ不適切だと思うのですが、どうなんでしょうか。
  27. 田中伊三次

    国務大臣田中伊三次君) おことばを返すようですが、私はそういうふうに思わないのですね。先ほど申し上げたように、開会中の国会周辺を静ひつにしてくれ。そこへ集団示威運動が行なわれるということは、規模のいかんにかかわらず――単純なる集団行進ならばともかく、規模のいかんにかかわらず、集団示威運動は困るのだ。それでは民主主義国会における運営に差しつかえが生ずる。国会というところは、申し上げるまでもないところでありますが、言論で審議を行なうのが生命でございます。正式に選挙をせられた国民の代表者が国会に出てきて言論を戦わすということ以外に、デモであるとかなんとか、いろいろな言論以外の、国会以外の国民の正規の代表者以外の力をもって影響されるということは、これは排除すべきものだ、これが民主主義国会を運営する上の中心でなければならぬ、こういう確信を持っておりますので、この周辺を静かであろうがなかろうが集団示威運動が行なわれてよいということは私は言えないんじゃなかろうか。最高裁判所の先生お示しの御判決も、そういうことまで憲法違反だと申しておるのではないであろう。公共の福祉とはどんなことをいうのかというと、国会開会中の国会周辺こそわが国のあらゆる公共福祉の中で一番高度の公共の福祉ではなかろうか。国権の最高機関のある議事堂の周囲の静ひつを守ってもらいたいということほど公共の福祉の底合いの高いものはないでしょうね。そういうところがら申しますと、私はこれを法律をつくったから憲法違反の法律だということにはなるまいと思う、決してならぬものと思います。ただしかし、先生お説のことを胸に入れて反省してみるというと、そんな急いでつくれという態度はよくないと思います、そういう考え方は。はなはだ理想ではないけれども、まあ東京都条例で場所の変更、進路の変更という程度でおさまるものなら、これをひとつ何回かやってみて、そして裁判所にもお考えを願い、どうしても裁判所考えてくれないでこれは停止処分にすると従来のごとくに仰せになる場合は、やむにやまれず、心ならず二十七条の発動をして裁判所の御決定を取り消してもらうという態度に出るべきものであろう。今度でも、六月のことがあったのですが、今度は考えてくださるであろうと思って実は待っておったのでありますが、考えてくださらなかったということ、やむを得ず不本意でありますけれども二十七条の発動を総理大臣に求めるべきものだということを私は決意をいたしましたのでございます。今後こういうことがなるべく起こらぬことを希望する。起こっても、裁判所がこれに対して停止決定などをせられないことを希望する。しかし、あえて裁判所が相変わらず停止決定をあそばすということであるならば、これに対して二十七条の発動はまことに遺憾なことではあるけれどもやむを得ない。こういうことが繰り返されていっている間は、どうも安定しない。やはり法律をもって、国会を通過した法律をもって規定することがやむを得ないということになるおそれがあるのではなかろうか、こういうことを案じておる。案じておることが新聞にちらっと出ておるということでございます。何でもかんでも法律でやってしまえ、こういう軽率な考えは、私の頭脳にもございません、政府考えておりません。やむを得ずそういう結果になりかねない、まことに困ったものだという考え方を持っておるということ、以上でございます。
  28. 亀田得治

    亀田得治君 それは、法務大臣のお考えを承りましたが、非常な問題がありますよ、いまの御発言の中に。一つは、ともかく平穏であろうが何であろうが一切やってもらっちゃ困る、こういう一つのきちんとした考えがあるわけですね。これはもう大法廷の判決にも矛盾する。また、先ほど官房長官考えとも若干違う。いわんや、最も重大なことは、国会議員にすべてをまかしておけ、何か国会議員だけが発言権を持っておるようなことに結果はなりますね、結果は。そうじゃないですよ。憲法の認めておる基本的人権、専門家のあなたに申すまでもなく、為政者よりも、国民に与えられておる、保障されておる権利なんです。為政者は、そんなことを言わぬたって、いつでもしゃべりますよ、しゃべる場もたくさん与えられておる。これは、表現の自由というものは、選挙で多数党がきまったら全部そちらにおまかせ、そんなものじゃないですわね。その基本にちゃんと国民の表現の自由権というものがあるわけですよ。事前検閲禁止しているのもその意味でしょう。デモの場合は若干違いますが、ああいう角度のものは多少違うから、扱いが多少違ってくることはやむを得ないが、その平穏なデモというのは書物と一緒なんです。これは私は、いまの法務大臣考えからいきますと、はなはだしく新憲法に沿わない考えだと思うのですね。これは法務大臣もなかなか信念を持っておっしゃったから、私が一回や二回言うてもなかなか直るような信念とも思われないような感じを持って聞いておったわけですけれども、非常にこれは私は重大な問題だと思うのです。それは国会審議は妨害されてなりません。だからというて、いろいろ自分たちの考えていることを、憲法で保障された権利を、それを平穏に出す、それはいかぬのだというような解釈、どの憲法教科書を出したってそんな考え一つも出てきませんよ。よほど右翼的な憲法書にも、そこまでのものは私は出てこぬと思う。もし出てきたら、そんなものは日本国憲法のそれは解説書じゃないですよ。どうなんですか、法務大臣がそういう考えで法務行政をやられては私はたいへんなことになると思いますが、どうでしょう。これを最後にしておきます。
  29. 田中伊三次

    国務大臣田中伊三次君) 私の申しておりますのは、そんな行き過ぎたことを考えているものとは思わぬのです。それは国民を代表する国会議員のみの発言で政治が行なわれてよいものではない。外部の御意見も大いに聞かなくちゃならぬということでございますから、まあ陳情政治と悪口を言いますけれども、陳情くらい私たちが聞きまして実情のわかるものはございませんね。私は陳情聞くことは好きであります。陳情の書物を読むことも大好きであります。非常に効果のあるものであります。これはいいことだと思います。それゆえに、国民を代表する国会議員以外の人々の、国民の要所要所の御意見を承るには、どこの国もそうでありますが、わが国においても請願制度をとっておる。請願は持っておいでになることもよろしいという制度が日本の制度である。フランスのごときは、請願を持ってくることを許さない、持ってきたら刑罰に処する、郵便でということになっておる。しかし、日本では請願書を持ってくることを喜んで受けることになっている。請願デモもよろしいということになっておるのであります。ただし集団示威行動国会周辺でおやりになることは御遠慮願いたいということ、そんなに先生、私の言うておることが右翼的で行き過ぎているでしょうか。どうして国会周辺でそんなにデモがやりたいのかという、ことばはけしからぬということになりますけれども、どうして日本の人々は国会開会国会周辺でそんなにデモがやりたいのだろうというふうに、私は頭が横に行っているのかもわかりませんが、実は腹の中でそう思っておるのです。あまり言うとしかられるものですから、これは言いませんが、そういうことでございますので、平穏なる進行、すなわち単なる集団進行はどうぞ御自由におやりを願いたい。しかし、集団示威運動と認められるものは、規模のいかんにかかわらず、許すべきものではない。それを法律によって将来規制せざるを得なくなった場合においても、憲法違反などというものにはならないものだ。きのうの裁判所判決の中に、たいへん驚いたことが書いてありますね。私はこれを見て驚いておるのですが、同時に感心もしておるのですが、こういうことが書いてある。「(憲法が保障する前記表現の自由も」――いろいろ前に表現があるのです。その「自由も国民はこれを濫用してはならず、公共の福祉のために利用する責任を負うものであるから、国会周辺において行なわれる集団示威運動もまずもって国民の良識ある行動が期待されるのであるが、」とよく書いてありますね。「期待されるのであるが、それはさておき、」に相なるんです。「それはさておき」――これはきのうの決定書の中身であります。「それはさておき、かかる集団示威運動を規制するとしてもそれは特に国会審議を経て成立した法律によってなされるべきものというべきであって、本件のようないわゆる公安条例をもって規制するのは妥当とはいえない。)」、こういう御遠慮をした表現がカッコの中に入れられて、どういうものか裁判所決定書の中に入っておるわけであります。やっぱり裁判所というものはものわかりもいいし、筋が立っておると私は感心をしているわけでございますが、そういう点から言うても、私は、法律をつくってみて、これが憲法違反の法律として無効の宣告を裁判所から受けるようなことはなかろう。国会周辺、ことに開会中だけは、この規制の法律をつくってみても、いまおしかりのようなことはなかろうということを私は実は信じておるのであります。それで、私のような考えを持っておる者が非常にぐあいが悪いということでありますと、これは私も反省をしなければなりません。いま先生からおことばをいただきましたことについては、深くひとつ考えてみたいと思いますが、いまのところ私の心持ちはそういう心持ちでおるわけでございます。
  30. 亀田得治

    亀田得治君 法務大臣けっこうです、時間がありますから。  最高裁にちょっと聞きますが、本来は裁判は各担当の裁判官にまかされておることで、そういう問題について最高裁の事務当局の方に来てもらって見解を聞くということは、これは異例なことなんです。私も十分そういうことは知りながら、しかしこの事態では聞かざるを得ないという立場で聞くわけですから、まあざっくばらんにひとつ皆さんの見解を披歴してほしい。  で、六月十日並びに昨日の七月十日の民事二部の決定、それから五月でしたか、寺尾裁判長判決がありました。私もずっとこれは拝見いたしましたが、これら二つの判決決定とも、三十五年の最高裁の大法廷の判決――東京公安条例に関する判決を認めて、これを前提として、そうしてこの判決なり決定がなされておるというふうに私は理解しているのですが、この点どうでしょう。
  31. 菅野啓蔵

    最高裁判所長官代理者(菅野啓蔵君) 御指摘の最高裁判決と、寺尾判決あるいは杉本決定、その結論においては異なったようなふうに見えますけれども、その内容においては矛盾していない。最高裁判決を前提としてそれ以後の判決決定がなされているものというふうに私どもは見ております。
  32. 亀田得治

    亀田得治君 そこで、最高裁判決、寺尾判決、それから今回の杉本決定、杉本裁判に一貫して流れておる考え方というものはどういうことなんです。
  33. 菅野啓蔵

    最高裁判所長官代理者(菅野啓蔵君) これはやはり東京都の公安条例というもの自体は違憲ではないけれども、しかしながら、この運用にあたりては、行政事件訴訟法の趣旨にのっとってと申しますか、憲法の趣旨にのっとって、何ぶん表現の自由の制限ということでございますので、その点は慎重になすべきであるということを寺尾判決も杉本決定も言っておるのではなかろうかというふうに思うわけでございます。
  34. 亀田得治

    亀田得治君 したがって、この平穏な行動であれば、それを制限するようなことは憲法の精神に反する、こういう点では考え方は一致しているのでしょう、どうなんです。
  35. 菅野啓蔵

    最高裁判所長官代理者(菅野啓蔵君) 寺尾判決と杉本判決との間にはやはり通ずるものがあると思います。先ほど申しましたような意味で、やはり憲法上の自由というものは相当以上に十分尊重さるべきものであるという趣旨でああいう判決なり決定なりが出ているものというふうに見ております。
  36. 亀田得治

    亀田得治君 最高裁としてはと聞くと、これは最高裁でこういう合議をしたこともないとおっしゃるかもしれませんが、皆さんの立場から見て、この杉本裁判決定、これは間違っておると思いますか。先ほど説明からいけば、ちゃんと最高裁大法廷の考え方に立ってやられておる、したがってこれは間違いでない、私たちはこう確信するのですが、皆さんはどういうふうに考えておりますか。
  37. 菅野啓蔵

    最高裁判所長官代理者(菅野啓蔵君) 最高裁判決、すなわち、東京公安条例自体は違憲とまでは言えない、ただその運用にあたっては注意すべき点があるというようなことも判決で申しておったと思うのでございますが、その運用についてどの程度に達すれば違憲になるかというようなことにつきましては、いろいろ見解もあろうかと思いまするけれども、この寺尾判決あるいは杉本判決は、あのような事態については、その制限をすることが憲法に違反しておるという判断をしたのでございます。これがいいか悪いかということについてお答えしなければならないということになりますれば、これは私ども事務当局でございまするので、その点は答える立場にないものでございまするから、その点については私どもも答弁ができませんことを御了承願いたいと思うわけでございます。
  38. 亀田得治

    亀田得治君 しかし、この杉本決定が、最高裁の大法廷判決、その立場を踏まえてやられておるものだ。まあこれだけ各方面の関心が集まっておる問題ですから、杉本裁判長自身もそういう手落ちのないように十分やっておられるあとというものは十分わかるわけですね。だから、その政治的な考慮を払わないで、その限りにおいては、これは最高の判例に合致しているわけですからね。これは是認しなければならないのじゃないですか、裁判官としては。是認しないという議論が出てきますか、最高の判例とこの決定を比べて。積極的に肯定はできなくても、その杉本決定を否定するというふうなことはどこからも出てこぬでしょう。次長、どうですか、あなたからも一。へん見解を聞かしてください。
  39. 吉田豊

    最高裁判所長官代理者(吉田豊君) 私は、このほど最高の事務次長に命ぜられました吉田でございます。どうぞよろしく。  ただいまの御質問でございますが、やはりただいま行政局長が申しましたとおり、事務当局におります者としては、そういう点もお答えを差し控えるべきだと私どもは思っておりますので、ぜひ御了承願いたいと思います。
  40. 亀田得治

    亀田得治君 そういう最高裁がへなへなの態度だから、総理大臣がかさにかかってくるのですよ。私は、普通の判決について、一々事務当局にそういう批判がましいことを聞きませんよ。しかし、何といったって、この異例な権限先ほど来も、法務大臣、皆さんに話している、全く異例な大体規定なんですからね。それを世間の納得しない言い方で発動しているのが現状なんですよ。だから、ほんとうに私は最高裁の使命というものは、司法部を守る、司法の独立を守るということが大きな使命だと思う。そういう立場からこれはお聞きしているのですよ。そういうことを侵害されているわけでしょう。形式的に、二十七条の権限総理大臣にあるからいいと、そんなものではないですわね。実質的な中身が伴わなければ、正当な権限とは言えぬでしょう。これは裁判官の皆さん、よくそういう考え方は平素から持っておられることなんです。それをやられていて、最高裁として何も考えない。私は、ほんとうに最高裁長官以下がやっぱり集まって、こういう事態が下級審において起きておるがどうしようかというくらいの相談をして、政府のやり方が少し行き過ぎだということなら、皆さんのほうから当然これは抗議を申し込んでいい問題でしょう。私が控え目に聞きますと、お答えまでが控え目になってしまって、そんな縮かんでしまっているようなことじゃ、どうして最高裁としての使命を果たすことができるのですか。これは全裁判官が相当大きな関心を持って見ていると思うのです。何もしないで傍観しておるつもりですか、どうなんでしょう。
  41. 吉田豊

    最高裁判所長官代理者(吉田豊君) いまの点でございますが、裁判所といたしますれば、これははっきり意見が申し述べられると思います。また、最高裁判所下級裁判所裁判に対していろいろ合議してしかるべく措置をとるようにというような趣旨のお話でありますが、これも、訴訟手続によって最高裁判所に上訴された場合ですと、これは最高裁判所としても必ず何らかの意見を述へなければいけません。ただ、ただいまの事務当局としては、そういう点について触れるべきでない、かように考えております。
  42. 亀田得治

    亀田得治君 そんな事務的な、官僚的な答弁では通りませんよ。普通のことがやられているのと違うのですよ。第一、裁判官の皆さんは、あの古い行政事件特例法の場合でも、あるいは新法行政事件訴訟法の場合でも、総理大臣異議制度については反対なんでしょう。私たちははっきりそういうふうに意見を聞いております。お二人は一体こういう制度についてどう考えているか。法律があるから賛成と言わなければならぬと、そういうことじゃなしに、ほんとうに司法の独立という立場から考えたら、一体こんな制度はいいものか悪いものか、どっちと考えているのですか、はっきりおっしゃってほしい。
  43. 吉田豊

    最高裁判所長官代理者(吉田豊君) いまお話のありましたように、立法問題といたしまして、私のほうでとかく批判めいたことを申し上げるのはいけないと思うのですけれども、いまお話がありましたので申し上げますが、やはり裁判所立場としては、好ましくない制度ではなかったかと思いますが、しかし、それも大きい国の公共政策の問題から立法されたのであろうと思いますので、裁判所がこの法律に従った結論になるのはやむを得ないかと思います。
  44. 亀田得治

    亀田得治君 初めのほうだけでよしておけばいいのに。あとのそんなことは蛇足ですよ、全くそれは蛇足ですよ。そういうことを言わないと何かやはり都合が悪いのでしょうね。そういう状態にあることが、最高裁判所がたよりないといわれるゆえんなんです。筋は筋で一本でがんばりなさい。この間の最高裁長官の訓示がありますね。長官並びに所長会同、これに何と書いてありますか、初めのほうに。皆さん事務当局だから、検討したでしょう。「法の支配を窮極的に実現するもの、それは裁判所であります。裁判所は、法の適用に関して争いが生じた場合に、何が法であるかを決定する使命を有するのであり、政府も国民も、すべてが裁判所決定を尊重し、それに従ってこそ、はじめて真の法の支配が実現されるのであります。」、おそらく皆さんが原稿をつくって、長官が多少は――横田長官のことですから、多少筆は入れるかもしれないが、皆さんの合議でこういうことはやっているのでしょう。ところが、あなた、最高裁の判例に従った決定でしょう。これは専門家が見れば、ちゃんと矛盾のない決定ですよ。それがあなた、行政権によって踏みにじられるこういうことになった場合、それが形式的には二十七条に該当する、せぬ、そんなことは別に、司法府として決意がなければだめですよ。いままでぼんやりしておったのなら、いまからでももっと検討すべきですよ。それでこそ生きた司法府という印象を受けるわけです。何も下級の一裁判官が出しておる裁判と違う。大法廷できめたその精神に従ってやっておる。それをあなた、見殺しにしてどうなるのです。いろいろな法があなたのほうから来ているけれども、ちゃんとしなければそんな法通したって何にもならないですよ。いまからでもそういう角度で検討すべきじゃありませんか。これだけ立法府あるいはは行政府が、さらに国民が関心を持って騒いでおるのに、肝心のびんたを食らわされた司法部自身がだまっておるということがあるものですか、どうなんです。
  45. 吉田豊

    最高裁判所長官代理者(吉田豊君) またしかられるかもしれませんけれども、やはり法律規定がそういうふうになっている以上、裁判所としてはこの法律を適用しなければなりません。問題はやはり私は立法の問題だと思いますので、将来ひとつ国会でよろしく御検討をお願いしたほうがいいのじゃないか、かように考えます。
  46. 亀田得治

    亀田得治君 立法の問題でも何でもないんです。最高裁の判例はこれは法でしょう。私があなたにそんなこと言わぬたって当然じゃないですか。判例という方法でみずからつくった法がたいした理由もなく無視されておるのに、それを黙って見ておるという、そんなことはないですよ。それは次長じゃとてもこの答弁だめですからね。何らの悩みすらあなた持っていない。ほんとうに三権分立ということを真剣に考えておらぬからですよ、私に言わせれば。そういう考えだから、行政府がやる、あるいは立法府が出してやってしまう。やってしまうと、みんな最高裁では認められていくのです。それが一体憲法の番人ですか。そんなものだったら、こういうでっかいあいさつなどはせぬほうがよろしいですよ。あいさつだけじゃないですか。だから、急遽裁判官会議などを開くなり――長官はもうお帰りになったかどうか知りませんが、この問題を最高裁としてこのまま放置しておくかどうか。そういう検討すらする気持ちはないのですかね。いくら事務的以上のことは言いにくいと言ったって、はなはだ私は心外ですね。そうして、法務大臣とか行政府の諸君は、かってなことを、最高裁の判例を無視したようなことを言うて、そっちのほうは黙っている。だめですよ。そんなものは。検討する気持ちもないんですか、こういう事態について最高裁として。
  47. 吉田豊

    最高裁判所長官代理者(吉田豊君) 何度も繰り返すことになるのですが、やはり裁判所としては裁判を通じて何らかの結論を出す以外に方法はないと思います。
  48. 亀田得治

    亀田得治君 そうしたら、こういう最高裁の訓示なんというものはやめておいたらどうですか。各裁判官にみんなまかしておいたらいいでしょう。政府なり時の権力者にたてつくような問題になると、そういうことを言って逃げてしまう。ほんとうに司法のことを思っておる裁判官はずいぶん関心を持っていますよ。それは相談をしても結果が政府に対して抗議をすることになるかならないか、そんなことはやってみなければわかりませんよ。相談すらもしない、傍観しているというようなばかな態度があるものですか。そんな次長や局長ではだめだから、長官か事務総長に来てもらって、この一点でいいですから、次回にはっきりこれは最高裁考え方を言ってもらいたい。私はむしろ皆さんに司法部としての考え方をはっきり示すそういう場を与えるつもりで本日は呼んでおった。何たることですか。これ以上質問を続けてもしかたがないから、最高裁に対しては本日はこの程度にとめておきます。
  49. 後藤義隆

    ○後藤義隆君 ちょっと関連。この国会開会中に国会周辺デモ行為をするのを禁止するという法律を制定するとすれば、さっきから問題になっておりましたが、それが従来の最高裁判所の判例に抵触するというふうなお考えですか、どうですか、その点をお伺いしたい。
  50. 菅野啓蔵

    最高裁判所長官代理者(菅野啓蔵君) たいへんむずかしい問題でございまして、即答を申し上げて誤りがあることをおそれるわけでございまするけれども、いますぐここでおまえの意見をということでありますれば、これは規定のしかたによるのじゃなかろうかと思うのでございます。つまり、公共の福祉との、それから表現の自由との関連の交錯する場合でございます。で、どの程度ならという、やはり程度の問題があろうかと思います。したがいまして、この法案の内容いかんによって、あるいは違憲となり、そうでないということになるのではなかろうかと思うのでございます。十分に考えての上での答弁でございませんので、自信のないところでございますが。
  51. 亀田得治

    亀田得治君 まあ後藤委員からちょっとお尋ねがあったのですが、それはあなたのお答えのとおりですよ。最高裁の判例がそうなんです。ところが、政府考えておるのは、全部ストップなんですよ。だから、そんなものは法律として出てくれば、やはりそれ自身が問題になる。とすると、最高裁はしかし法律ができるとそれに弱いのですね。そんな印象を与えていることは、最高裁のいままでのやはり実績ですよね。それは、立法府、行政府行為であっても、憲法に反するものはきちっと結論を出していく、そういう姿勢が足らぬから、それで権力者はもう安心してそういうことを考えるのですな。まあともかく事務総長、長官と相談してください。私の言うことが間違っておるということだったら、長官、事務総長出てきて反駁してください。そんなものじゃ信用落とすだけですよ。
  52. 山田徹一

    理事山田徹一君) 速記をとめて。   〔速記中止
  53. 山田徹一

    理事山田徹一君) 速記を始めて。  午前の質疑はこの程度にとどめ、午後一時まで休憩いたします。    午後零時十分休憩      ―――――・―――――    午後一時十五分開会   〔理事山田徹一君委員長席に着く〕
  54. 山田徹一

    理事山田徹一君) ただいまから法務委員会を再開いたします。  委員異動について御報告いたします。  本日、久保勘一君が委員辞任され、その補欠として二木謙吾君が委員に選任されました。     ―――――――――――――
  55. 山田徹一

    理事山田徹一君) それでは、午前に引き続き、検察及び裁判運営等に関する調査を議題といたします。御質疑のおありの方は順次御発言を願います。
  56. 亀田得治

    亀田得治君 前に議題にしていただきました福岡地方検察庁小倉支部の不始末、それから警察のほうは小倉警察署における不始末、いろいろ質疑したいことがたくさんありますが、時間等の関係もありまして省略いたしますが、最終的に、一体あのような問題を起こして、検察並びに警察当局はどういうふうに現在考えておるのか、またそれらに対する始末のつけ方ですね、具体的にきまっておらなければ、それに対する考え方でもけっこうですが、そこら辺をまとめてひとつ法務大臣並びに警察のほうから一言ずつお答えを願いたいと思います。
  57. 田中伊三次

    国務大臣田中伊三次君) まことに恐縮に存じております。いやしくも検察の部内においておしかりをいただいておりますようなかくのごとき事態が発生をいたしましたことは、真に遺憾でございます。この原因を尋ねますのに、何と申しましても綱紀の弛緩が一番大きな原因であると存じますので、検察会同その他の会議をいたしますたびごとに、全国にこれが徹底いたしますように、指示を与え、努力を重ねてきている次第でございます。近くこの事案の究明も、最も近い機会に明らかになる予定となっておりますので、その結果を待ちました上で、責任の所在を明らかにいたしまして、これを処理いたしたいと考える次第でございます。今後は、綱紀の振粛に十分意を用いまして、かかる事柄が再びないよう監視をしてまいりたいと考えます。
  58. 内海倫

    政府委員(内海倫君) 小倉警察署におきます事件につきまして、前回いろいろな点で御質問をいただき、私のほうからも、さらにいろいろその後におきましても、福岡県警察本部について調査をいたしました。この事件の取り調べに当たりまして、私どもも率直に小倉警察署の取り調べの状況について、反省すべき点のあることを認めざるを得ないのでありまして、特に、留置場に留置いたしてありました被疑者に対しまして看守巡査が不当に面会をさせるというようなことの結果、ついに逃亡せしめるという事態まで引き起こしたわけであります。その結果、警察本部におきまして各面から調査をいたしまして、その上申に基づきまして、警察庁におきましても当時における状態を調査いたしました。国家公安委員会の身分権限に属する警察本部長及び小倉の警察署長――これは警視正でありましたので、国家公安委員会の身分権限に属するわけでございますが、この二名に対しましては、国家公安委員会において監督責任を追及して、懲戒の処分に付し、また福岡県の警察本部におきましては、小倉警察署の次長以下この取り調べ捜査に当たりました者のうち、こういう被疑に関係のあります者のそれぞれ監督責任及び留置責任等の責任を追及いたしまして、十名についてそれぞれ懲戒処分をいたしました。また、当面この犯人を逃走せしめるに至りました巡査につきましては、懲戒免官の処分をとりました。あわせて本人につきましては、司法上の処分も行なわれたわけでございます。警察庁といたしましては、そしてまた福岡県警察といたしましては、かくのごときことの再び起こらざるように十分原因を究明して、将来にわたって一そう適正な取り調べ、適正な捜査というものの行なわれるようにいたしたいと、深く反省をいたしておるところであります。こういうふうな点で捜査の信頼を失なわせるに至ったという点について、つつしんで遺憾の意を表したいと思います。
  59. 山田徹一

    理事山田徹一君) 他に御発言もなければ、本件の質疑はこの程度にとどめます。  速記をとめて。   〔速記中止
  60. 山田徹一

    理事山田徹一君) 速記を始めて。     ―――――――――――――
  61. 山田徹一

    理事山田徹一君) 次に旧執達吏規則に基づく恩給の年額の改定に関する法律案を議題といたします。  本案に対し質疑のある方は順次御発言を願います。――別に御発言もなければ、質疑は尽きたものと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  62. 山田徹一

    理事山田徹一君) 御異議ないと認めます。  それでは、これより討論に入ります。  御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。――別に御意見もないようでございますが、討論はないものと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  63. 山田徹一

    理事山田徹一君) 御異議ないものと認めます。  それでは、これより採決に入ります。  旧執達吏規則に基づく恩給の年額の改定に関する法律案を問題に供します。本案に賛成の方の挙手をお願いいたします。   〔賛成者挙手〕
  64. 山田徹一

    理事山田徹一君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  なお、本院規則第七十二条により議長に提出すべき報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  65. 山田徹一

    理事山田徹一君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ―――――――――――――
  66. 山田徹一

    理事山田徹一君) 次に、下級裁判所の設立及び管轄区域に関する法律の一部を改正する法律案を議題とし、本案に対する質疑を行ないます。質疑のあるお方は順次御発言を願います。
  67. 亀田得治

    亀田得治君 法務大臣何かあちらの採決と本会議があるようですから、先に一、二点ちょっとお聞きをしたいと思います。  それは大学の法学教育の問題ですが、その記事をちょっと持っておらぬのですが、私が記憶しているのでは、何か戦後二十年間ずっと育ってきた司法修習制度ですね、この根底を何かこわすような、そういうふうな角度に立って、そうして裁判官、検察官だけを特殊な教育をするというふうな考えをお述べになったようでありますが、実はきょう問題について、司法修習制度の問題について最高裁に若干お聞きをしたいとこう思っているんですが、だから、本来ならば少しこちらの質疑をやって、関連してあなたの御意見を聞きたいと思ったんですが、時間の都合があるようですから、先に法務大臣に、その点についてどんな考えなのか、これは相当専門家の間にはショックを与えている発言ですが、ひとつほんとうのところをここで御披瀝を願いたい。
  68. 田中伊三次

    国務大臣田中伊三次君) たいへん恐縮に存じます。私は長年にわたって考えておりまする一つの構想は、裁判官、それから検察官、もう一つは弁護士、この法曹三者の場合は、個人個人がどのような思想を持っておるということは、これは憲法の認めるところで自由でございますが、その三者の法曹がそれぞれの職務に携わります場合におけるものの考え方は、右に片寄らずに偏せざる中庸の考え方で職務をとってもらいたい。一体そういうことが可能なのかどうかということでございますが、私は自分の経験から見まして、努力いたしますれば、思想はこうだ、しかし、職場をとるにあたっては中庸でなければならぬという考え方はできるものと実は思うのでございます。そこで、そういうことをいたしますには、高等学校、大学まで、それぞれの伝統のあります学校に入れてそこを卒業いたしました者を、単に学力だけの試験――幾らか人物試験も口述試問というものもございましょうが中心は学力中心の試験でございますが、その学力を偏重した国家試験をいたしまして、それから採用した者を二年間研修所に入れて研修をさすということでは、不十分なものではなかろうか。これはできれば、中学を卒業いたしました者、高等学校ぐらいからこれを預かってやるべきであると存じますが、そうもまいりませんので、高等学校の卒業生を、特別の大学をこしらえまして、この大学に預かる。そうしてその学年の何はこれを六年とする。四年間は普通の大学の教育と同様に行なう、あとの二年間は研修科を設けまして、ここで研修をさすということにして、この法律専門家を養成していくことに努力をしてはどういうものであろうかと。こういう場合に、では通常の大学で法科を勉強した者は検事、判事になれないではないかということになりますが、それは卒業されて法務大学の五年生に入学をなさって、五年、六年の研修を受けられるということでこれはいけるわけでございます。そういうふうな方法で、仮称でございますが、法務大学、法曹大学と称するものを単行法でつくりまして、そうして裁判所または法務省の所管とするということでこれをやっていく道はなかろうかということの構想を実は発表をいたしましたのでございますが、先生のおことばのとおり、意外な反響を呼びまして、けしからぬという意見と、なかなかいいという意見と、反響が、おもしろいほどに千々まちまちの反響を呼んでおる。そこで、私が就任いたしますと、わざわざ省議を開きまして、この問題を省議にかけて、とにかくこれをひとつ構想段階に入ってもらいたいということで、就任直後構想段階に入ることになりまして、目下本省を中心といたしましてその構想を練っておるところでございますが、大体の構想ができました上で、今度は立案段階においてひとつ世論をしっかり聞きまして、裁判所の御意見、ことに弁護士会の意見検察当局の御意見というものを、法務省を中心にしっかりこれを取りまとめさしました上で、いかなる方法でこれをやったらよかろうかということを考えていきたいと思っておるわけでございます。幾らか日の丸の旗を掲げたような考え方でこれをやるように見えるかもわりませんが、そうではないのでありまして、必ず右の思想を理解する能力があると同時に左の思想を理解する能力もある、また両方いずれかの思想にあることは自分の自由でありますが、職務を執行するにあたっては中庸の姿勢でいきたい、そういう理想の法曹三者を養成することを目的にした大学――特殊大学でございますが、そういう大学をつくることがよいか悪いか、よいとするならばいかなる内容を持たすことがよかろうということを目下慎重に検討しておる段階でございます。
  69. 亀田得治

    亀田得治君 いま大臣の構想がこまかいところまできまっておらぬのかもしれませんが、きまっておらぬところはおらぬとお答え願っていいんですが、そういう大学を出れば、裁判官、検察官、弁護士、どれにでも自由になれるんですか、何かさらに国家試験を受けるんですか、どうなんですか。
  70. 田中伊三次

    国務大臣田中伊三次君) まだ具体的なところまでは構想が進んでおりませんけれども、その卒業生は検事、判事、弁護士となる資格がある、こういう構想でいきたいのでございます。そういうことでございますので、他の大学を卒業……。
  71. 亀田得治

    亀田得治君 試験受けなくていいんですね。
  72. 田中伊三次

    国務大臣田中伊三次君) 受けなくていいんです、卒業生は。そういう大体の構想です。他の大学を出ました人は、五年生に入学の試験を受けてもらわねばならぬ。それで、五年生に入学をして、六年生を卒業するときには同様の卒業になるわけです。試験は要らぬという形になります。
  73. 亀田得治

    亀田得治君 そうすると、この大学を出なければ法曹にはなれない。途中で入ってきてこの大学に二年間おるというのでもいいとこれがなっておりますが、そうじゃなしに、どこか普通の大学を出、法学を勉強して、そうして法曹になりたいといっても、なる道はないわけですね。
  74. 田中伊三次

    国務大臣田中伊三次君) 私の構想では、なる道はない。大学を卒業すれば、必ず五年生の研修科の入学試験を受けて入学をする。これがちょうど資格を取ることになるわけでありますが、そうして卒業いたします。
  75. 亀田得治

    亀田得治君 初めの構想では、大体検事と裁判官と、こういうことじゃなかったんですか。
  76. 田中伊三次

    国務大臣田中伊三次君) いいえ、これは三者でございます。
  77. 亀田得治

    亀田得治君 その骨子はわかりましたが、どうでしょうか、そういう高等学校卒業して、そうしてそういう特殊の大学に行くと、それが大部分になりますね、おそらくそういうことになれば。その裁判検察、弁護士というのは、何といってもいろいろな素養豊富に備わっておるほうがいいわけですね。で、そういう職業から考えて、高校卒業程度でこの一つの方向づけをきめなければいかぬわけですね。何か非常に幅の狭いものになる感じがするんですがね。おそらく、そうじゃないんだと、入った後にいろいろなものを教えるんだ、それで幅を広げていくんだと言われるでしょうが、やはり一番大事なのは本人自身の考え方ですね、これがしつかりしていなきゃいかぬわけですね。自分は法曹としてしっかりやろうと。これは、高等学校卒業段階でそんなことを求めるのは私は無理だと思う。ほかの技術関係のことでしたら、わりあいそういう決意が出るでしょう。なかなかこういう複雑な社会を相手にする法曹という立場から見ると、ちょっと私は疑問に感ずる。そうすると、何か当面の就職とか、先が安定するとか、そういう狭い気持ちの者だけがそこへ集まってきてということになりまして、非常に全体の水準というものがそういう中で一体上がるものだろうかという疑問を持つんですが、教え込めばいいというものじゃないと私は思うんです、素養というものはね。そういうような点、私は現在のようにいろんなのがこうやってきまして、そうして相当きびしい、関門を通るわけですね、国家試験。通った後に裁判官、検察官、弁護士といろんなものになる人が全部一緒になって研修すると、その段階で初めて専門的になっていくんでしょう。それまでは私はできるだけ広いほうがいいと思う。裁判所なり検察庁の空気にしても、もう高等学校卒業から一緒の者だけがずうっとやっているというのでは、何かこう昔の幼年学校から士官学校へ行く、そういうような感じで、どうもそういう点を懸念するのですが、だいじょうぶですか、そういう点は。
  78. 田中伊三次

    国務大臣田中伊三次君) ひとつ法曹になろうと考えてこの学校に入ったと、入ってみたがどうも会社につとめたいと、こういうことであります場合は四年で卒業する制度になっておりますから、四年で卒業してくれれば、他の大学を卒業したのと同様の資格を得まして、大学卒業生となるわけでございます。  それから、他の大学で勉強しておったが、これはひとつ法曹になりたいと考えてくださるという殊勝な学生があれば、これは五年生に入学をさせるのだ、そうして卒業すれば資格を得られるということで、まあいま先生仰せをいただくようなことは、なるほど幅の狭い教育ではたいへんマイナスがあろうかと思います。これは大いに反省をしなければならぬ。この点については、深い配慮が必要であろうかと思います。私の素朴な考え方では、たいへん幅が広いようなたてまえを持たしておるように思うのでございます。いやな者は、研修科に行かなければ、普通の大学卒業生として会社でもどこでも採用されるのだ、こういう形でいきたい。入っております者はそういう考えですし、それから法曹大学に入らない人は、いままでも大学を卒業して試験を合格しただけでは判検事、弁護士になれない、研修二年を経なければならぬ。そういう次第でございますから、研修をやっていく理屈が合っておるように私は思っております。いま御意見伺いますと、そう幅の狭い窮屈な馬車馬的な学生を育てるようなことになっては、国家のためにたいへんなことかと思います。この点は反省を要することと思います。
  79. 山田徹一

    理事山田徹一君) ちょっと速記をとめて。   〔速記中止
  80. 山田徹一

    理事山田徹一君) 速記を始めて。
  81. 亀田得治

    亀田得治君 六月十五日、高裁の長官ですか、地裁と家裁の所長会同がありまして、その訓辞をずうっと私見たわけですが、その中で、司法修習制度の運営ですね、このことについて相当触れておられ、その会議自身もそういう問題でいろいろ論議されたようであります。その模様をまずお聞かせを願いたいと思います。
  82. 寺田治郎

    最高裁判所長官代理者(寺田治郎君) ただいま亀田委員からお話のございましたとおり、去る六月十五、十六両日、全国の高裁長官、地家裁所長の会同を最高裁判所において開催した次第でございます。これは、御承知のとおり、毎年一回、大体においては予算を通していただいて、最高裁判所の予算が確定いたしました後において、その予算の説明なりあるいはその年度における諸種の施策について説明し、また協議をするという趣旨で開かれる会合でございます。  本年度は、いろいろ予算の成立がおくれました等の関係で、例年より若干おそくなっているわけでございます。それで、本年取り上げました問題の重要な一つとして、いま亀田委員から御指摘のございました司法修習制度の運営及び改善についてという議題についていろいろ討論がされたわけでございます。ただ、御承知のとおり、この裁判所の会同は、検察庁もほぼ同様と思っておりますが、いわゆる会議ということばを使っておりませんところからも御推察いただけますとおり、いわゆる会議というような方法によって、つまり決をとるというようなことはいたさないわけでございます。これは、裁判官がそれぞれ独立の身分を持っておるということ等もございまして、いろいろ意見を交換する、そうして意思の疎通をはかるというところに主眼がございますので、必ずしもどういう意見が多数であり、どういう意見が少数であるということを申し上げるような形には運営がなっていない次第でございます。しかし、一般的な空気というものはそこに出てまいるわけでございますが、それに先立ちまして、いま亀田委員からお話のございましたように、長官が訓示をされたわけでございますが、この長官の訓示と申しますのは、申すまでもなく、最高裁判所裁判官会議で慎重に検討し、練られましたものでございますが、これはいわば最高裁判所の公式意見と御理解いただいてもよいわけでございます。その中で長官が述べておりますことは、要するに現在の司法修習制度というものは相当な成果をあげてまいっておるということを申しておるわけでございます。「司法研修所を中心とする新しい法曹教育制度が、法曹三者の資質を高め、法律実務の水準の向上に大きな成果をあげてきた既往二十年の実績は、高く評価されるべきであると思います。」というふうに述べておるわけでございまして、これが基本的な立場になるわけでございます。ただ、そのすぐあとでも申しておりますとおり、たとえば法曹人口をもう少しふやすというようなことに関連いたしましてそういうことをやるとすれば、それについてはいろいろ技術的にさらにくふう、検討する問題があるのではないかと、こういうのがまあ最高裁判所立場でございますし、裁判官の会同におきましてもおおむねその線に沿った意見が出ておったものというふうに御理解いただいてけっこうではないかと、かように考えるわけでございます。
  83. 亀田得治

    亀田得治君 だいぶん先ほど法務大臣の方向と違うようでして、ちょっと法務大臣も実はいてもらいたいところなんですが、まあ後ほどまた大臣来られたら聞きますが、そこで、大体おっしゃったような方向で進むということが私も正しいと思うのです。具体的にはどういうふうなことが問題が出ておるのか、そういう立場に立って、そういう点を、おもなものでいいですから、若干ひとつお答え願いたい。
  84. 寺田治郎

    最高裁判所長官代理者(寺田治郎君) 御承知のとおり、裁判官の代表者で、専門家ばかりございますので、話がどうしても非常に専門的になり、また技術的になるわけでございまして、そういう点では、いわばこの国会で御審議いただきますのには、ややこまかい問題だというふうなおしかりを受けるかとも思いますが、いま亀田委員のお尋ねがございましたので、一、二その例を拾って申し上げますと、まず、司法修習生はある程度数をふやさなければいけないのじゃないか――これはいろいろ法曹人口というような点から関連いたしまして、ある程度ふやさなければいけないのじゃないかというのがかなり強い意見でございます。しかしながら、この点につきましても、具体的な数ということになりますと、現在五百二、三十でございますが、これをたとえば六百程度というのも一つのふやす意見でございますし、まあもっと思い切って千人という意見もないわけではございませんが、こうなればおのずから素質の低下という問題にもなってまいりますので、なかなかそこには踏み切れない。そうすると、自然に漸増というようなところが一つの中心的な考え方ではなかろうかというようなことになるわけでございます。そうなりますと、それを教育するために、たとえば現地の問題といたしましても、現在五百数十名を全国大体三、四十くらいの裁判所にまかせて実務修習をやっておるわけでございますが、おそらくこれは亀田委員現地で御承知のとおり、相当指導には裁判官が苦労しておる面もあるわけでございます。そこで、ことにまた、いまのやり方でまいりますと、二回交代制になりまして、同時に二つの期の人間が来るというようなことになりますと、非常にその間に指導に無理が生ずる。そういう点で、そういう支障をなくするためには、たとえばある程度現地修習の期間を短くすることはいかがなものであろうかというような意見もあるわけでございます。しかしながら、これに対しましては、裁判所の内部にも、いまの特色は実務修習にあるのであるから、これを短くすることについては疑問があるという意見もむろんあるわけでございまして、その点は今後の検討問題であるというふうに考えておるわけでございます。そうして同時に、そういう実務修習の期間を短くいたしますると、おのずから研修所における教育期間が長くなるということになるわけでございます。現在は八カ月程度でございますが、これをたとえば一年にするというような議論もあるわけでございます。しかしながら、また、一年にいたしますと、それでなくてもいま指導のための教官というものが非常に手不足でございますのに、さらに教官の増員という問題になってくるわけでございます。しかも、その教官は大部分が裁判官の資格を有する方でありまして、これを現場から引き抜いて教官にする、教官をふやすということについては、やはりかなりまたそれについての疑問もあるわけでございます。こういうふうにいろいろ問題がございます。そのほかにも、さらにもう少し思い切った改革の方法はという意見もないではございませんが、大体中心的な意見としては、そういうきわめて技術的と申しますか、そういう立場での討論がされておるのが実情でございます。     ―――――――――――――
  85. 山田徹一

    理事山田徹一君) 質疑中ですけれども、この際、委員異動について御報告いたします。  本日、西村関一君が委員辞任され、その補欠として大橋和孝君が委員に選任されました。     ―――――――――――――
  86. 山田徹一

    理事山田徹一君) 質疑を行ないます。
  87. 亀田得治

    亀田得治君 この司法研修所の中身については、どういうふうな問題が出ているでしょうか。
  88. 寺田治郎

    最高裁判所長官代理者(寺田治郎君) 司法研修所の中身と申しまして、いま申し上げました期間をどうするかという点も一つの中身でございます。それからまた、教官を現在五十人に一人ずつ置いておりますが、これをもう少し大ぜいに対して一人、つまり集団的な教育ができないものであろうかというような点、先ほど少し申し上げました、これもまあ中身でございますが、おそらくいま亀田委員のお話しになりましたのは、教育内容そのものだと思いますが、その教育内容そのものにつきましても、もう少し、何と申しますか、一般教養的なものをふやすべきだと、あるいは法曹倫理というようなことについても十分教育すべきだというような議論もございますし、それから実務教育の中身そのものについてももう少しくふうの余地があるのではないかという点の意見も出ておるわけでございます。
  89. 亀田得治

    亀田得治君 一般教養というふうなのは、これはどういうふうにやられていますか、現状は。時間数なり、内容ですね。
  90. 寺田治郎

    最高裁判所長官代理者(寺田治郎君) 私、ただいま手元にそのこまかい時間割りは持っておりませんが、しかしながら、一般教養につきましては、いろいろな考え方が実はあるわけでございます。一般教養というものは、たとえば芸術についての話を聞くとか、あるいは能を見にいくとかいうことのような、そういう方法で得られるものではなくて、もう少し法律学をじっくり勉強する中からおのずから一般教養が高まるのだという議論もございます。しかしながら、研修所におきましては、従来から、そういう法律学の研修と並びまして、いろいろ、先ほど申し上げましたような、たとえば能を見にいくとか、あるいは芸術家に講演をしてもらうとか、そういうようなやり方もあわせてとっておるような次第でございます。
  91. 亀田得治

    亀田得治君 なるべく若い間にいろいろな専門のものに接触しておくということは、これは私は非常にいいことだと思います。裁判官になってからといっても、なかなかそういう余裕もない、そういう意味で私は賛成です、そういうやり方は。もちろん見たからそれが全部自分のものになるわけではありませんが、少なくともきっかけくらいにはなっていくわけです。教養といえば、それは実際は一生かからなければだめな問題ですが、そんなことを言ったらちっとも進まぬわけですから、いいのですが、そういうもののプランの立て方ですね、これはどこでそうきまってくることになるのでしょうか。
  92. 寺田治郎

    最高裁判所長官代理者(寺田治郎君) これは大体において、司法研修所のいわゆる教官会議というものが中心でございます。その司法研修所の教官会議の構成は、御承知のとおり、裁判所の出身の者、法務省、検察庁出身の方、さらに弁護士の御出身の方、かなりお入りになっておりまして、そういう方々から構成されております教官会議が主体でございます。
  93. 亀田得治

    亀田得治君 これは教官会議ですから、司法研修所の教官をしておる人の会議ですね、結局。
  94. 寺田治郎

    最高裁判所長官代理者(寺田治郎君) そのとおりでございます。
  95. 亀田得治

    亀田得治君 そうすると、何ですね、人数も相当多いようですが、この司法修習運営諮問委員会というものを最近おつくりになったようですね、長官訓示の中に書いてありますが、これとの関係というのはどういうふうになるのでしょうか。
  96. 寺田治郎

    最高裁判所長官代理者(寺田治郎君) 亀田委員のお話のとおり、昭和四十年の十二月二十五日の最高裁規則で、司法修習運営諮問委員会というのを設けたわけでございます。これは御承知の臨時司法制度調査会の意見もございまして、それはさらにさかのぼりますれば日本弁護士連合会等からも強い要望のあったものでございます。そして、いろいろ各方面ともお話し合いがつきまして、昭和四十年十二月に規則ができ、昨年の春から発足しておるわけでございます。委員は十五人ということになっておりまして、裁判所検察庁、それから弁護士会、それから学識経験者の方というような構成で運営されておるわけでございます。この諮問委員会の規則では、「委員会は、最高裁判所の諮問に応じ、司法修習生の修習についての基本方針の樹立及び実施に関する重要事項を調査審議する。」と、かようなことになっておるわけでございます。必ずしも制度の改正ということばかりではなしに、もう少し広い意味で運営全般にということでございますので、当然いまお話のような問題も議論に出てまいることを期待はいたしておるわけでございます。ただ、何と申しましても、現在司法研修所の建物が相当古くなっておりますことは御承知のとおりでございますが、そうして近い将来には、これの改築と申しますか、新営をしなければならないという関係がございまして、そういうような関係からも、これをどういう形で持っていくかという、もう少し基本的なところについて十分各方面の御意見を伺いたいという気持ちが私どものほうにはあるわけでございます。しかしながら、現在諮問委員会自体としては、もう一つその前提として、それではどういう問題点を中心にこれでやってまいることがこの修習を成果あらしめることであるかというような立場から討論がされておるわけでございますが、すでに四回ほど開かれておりますので、かような問題が逐次討論が終わってまいりますれば、またあらためて諮問等が発せられまして、さような方向についてもいろいろ検討がされるという手はずになろうと、かように考えておる次第でございます。
  97. 亀田得治

    亀田得治君 諮問委員会のメンバーはどういう人ですか。
  98. 寺田治郎

    最高裁判所長官代理者(寺田治郎君) 大体から申し上げますと、部内のほうは最高裁裁判官、現在は奥野裁判官がこれに入っておられますが、これが委員長でございます。それから裁判所側からは、最高裁の事務総長と、それから地家裁の所長というのが加わっております。法務省のほうからは、法務事務次官と、それから次長検事、それから地方検察庁の検事正というような方にお入りいただいておるわけでございます。それから弁護士会からは、東京及び関西の弁護士さん合わせまして五人お入りいただいておるわけでございます。それから大学のほうから、東大の三カ月教授と中央大学の木川教授がお入りになっており、そのほかに司法研修所長と、かようなメンバーでございます。
  99. 亀田得治

    亀田得治君 なかなか肩書きのりっぱな、いかめしい人ばかりで構成されておるような感じがするのですね。私は、司法修習の中の一般教養という問題、これ非常に重視しなければならぬと思うのです。だから、何かもう少しそういう点について突っ返んだ検討ができないものだろうかという気持ちを持っているわけですね。これはなかなかむずかしいですよ、どなたになってもらっても。おのおの自分のくせなり傾向というものがあるわけですからむずかしい問題でありますけれども、どうも、諮問委員会をつくったり教官会議を持ったりということをやりましても、一般教養ということについてどれだけ突っ込んだ論議ができるだろうかという点、疑問に思っておるのです。非常にりっぱな人が一人でもおれば、その人に一切まかせれば非常にいい指導をやっていくという場合もあるでしょうが、しかしこれはまたある意味では危険です。そういう点の研究が十分されておらぬのじゃないかと思うのですがね、たいへん失礼な言い方ですが。いや、それはやっているんだということかも知れぬが、しかし、いま聞いたような顔ぶれでは、結局は司法修習についてのほかの法律的な問題等がやはり前面に出てきて、ついでに教養の関係をつけ加えていくと、こういうことになると思いますよ。そこら辺、そうなっておらなければいいが、やっぱりそうでしょうな、どうですか。
  100. 寺田治郎

    最高裁判所長官代理者(寺田治郎君) 先ほど来の私の御説明がやや不十分であったかと思うわけでございますが、いま亀田委員からいろいろお話のありました点、まことにごもっともでございまして、実は、私どもとしては、この修習生に関する規則の第四条にございます「司法修習生の修習については、高い識見と円満な常識を養い、法律に関する理論と実務を身につけ、裁判官、検察官又は弁護士にふさわしい品位と能力を備えるように努めなければならない。」、こういう規定そのものとしてはおそらく申し分のない規定ができておるわけでございます。結局、それの運用ということになるわけでございまして、先ほど司法研修所の教官会議と申しましたのは、教官会議でもって一般教養の指導についての方針をきめるということを申し上げたつもりであったわけでございます。直接にたとえば講義とか講演をしていただきます方は、むろんその教官ではなくて、教官が人選いたしまして、そうしてやってもらうと、こういう手順になるわけでございます。そしてこれは、実は私ただいま網羅的な資料を持っておりませんので、多少断片的になりまして片寄った説明になると、あと司法研修所からしかられることになるわけでございますが、一応手元にありますものを一時申し上げますと、たとえば学習院長の安倍能成先生であるとか、あるいは小説家の伊藤整さんであるとか、あるいは成績大学教授の佐藤功先生であるとか、あるいは近代美術館の河北先生であるとか、こういういろいろな各方面の方々を講師にお願いして、そうして講義なり講演をやっていただいておるわけでございます。その人選は教官会議でやっておる、こういうのが実情でありまして、法律家以外にもできるだけ幅広く講師を求めてやっておるような趣旨のようでございますが、むろんまだ十分ではないと思いますけれども、ねらいとしてはそういう考えを持っておるわけでございます。
  101. 亀田得治

    亀田得治君 たとえば、この思想傾向などはどういうふうに考えておるでしょうか。
  102. 寺田治郎

    最高裁判所長官代理者(寺田治郎君) これは、先ほど法務大臣からもお話がございましたとおり、右に偏せず左に片らず、こういうことであろうと思いますが、講師についてはできる限り幅広くという気持ちでおると考えております。
  103. 亀田得治

    亀田得治君 じゃあ、左の人の意見も聞き、右の人の意見も聞き、こういうシステムになっていますか。
  104. 寺田治郎

    最高裁判所長官代理者(寺田治郎君) このいま亀田委員のお話が、右というのをどの程度の方を右といい、また左というのをどの程度の方を左というのかということになりますと、これはおそらく、まあ暴力団の方などというものが右としても、そんなものはむろん問題外でございますし、左はどういう方か存じませんが、しかし、たとえば都留重人教授なんかはまあかなり進歩的な御意見の方だと思いますが、そういう方もおいでになっておることは間違いございません。もっと左の方があるかどうか私も詳細に存じませんが、まあそんなことでございます。
  105. 亀田得治

    亀田得治君 まあ暴力団などは、これは一つの論外でしてね。裁判所があるいは多少そういうことも考えておるのだったら、これはたいへんなことなんです。それはやはり社会にはいろいろな傾向の者があるわけですからね。思い切ってやっぱりそういう人に来てもらって、そうしてその考え方を知ってもらい、また別な人も来てもらう、そういうふうに私はやっていくべきだと思う。まん中の人だけというのじゃ、これはほんとうの教育になりません。まん中というのは、これは結果として出てくることであって、それは検察官、裁判官、弁護士になろうかという人は、あらゆるものに触れていき、それが理解できる人じゃなければ、ほんとうの弁護も裁判もできないわけですからね。だから、ちょっといまお聞きしただけでも、やはり左右への広がりがちょっと少ないです、どうしても。だから、私は、その辺をやはりもっと検討してみる、冷静にそういう左右の意見を聞くということは、これは非常にいいことなんです。それから芸術関係などでもね。どうしても、政権とっておれば、その政権につながるそういう人が多く出てくる。それはそういう傾向をどんな場合でも持ちますよ。しかし、それでは将来は育たぬです、いつまでも自民党じゃないのだから。まあ大臣おられますが、その点は否定されぬと思うのです。やっぱり日進月歩変わっていくのですからね。そういう立場で、この教養面というものを私はうんと司法修習の間にやってほしいと思うのです。そういう広がりのないやつで、何か一つのワクにはめてやろうというのだったら、かえってせっかくの人材というものを私は殺してしまうと思う。まあだれを採用するかは別として、そこの考え方はどうですか。これは事務次長、あなた総長の代理ですから。これは大事なところですよ。法務大臣に遠慮しないでもいいですよ。
  106. 吉田豊

    最高裁判所長官代理者(吉田豊君) いまのお話は、ごもっともだと思いますので、将来大いに検討したいと思います。
  107. 亀田得治

    亀田得治君 それでは法務大臣、いまの制度は私は非常によく運営されていると思うのです。最高裁長官も六月十五日の訓示で述べておりますが、私はこの部分はそのとおりだと思っている。二十年間の司法修習制度の実績と功績というものは、非常にやはり大きかったと思うのです。それは前の古い法曹の時代よりも相当やはりいろいろな面ですぐれたものを持っていると思いますね。中身をよくするということは、これはもっとつとめなければいかぬですよ。そういう意味で議論しておったのですが、どうも大臣のさっきおっしゃったああいう考え方が、このせっかく育っておる、そして途中にはいろいろな批判もありましたけれども、やはりこの制度の根幹は維持していかなければいかぬ、これは最近は裁判官、検察官、弁護士みんなほとんどその点では一致しておりますけれども、そういうことに対して何か水をかけるような感じがするのですが、その点どうでしょうか。
  108. 田中伊三次

    国務大臣田中伊三次君) 私の大ざっぱな構想でありますが、これが一つの学校に入れて教育をするという、しかもそれは四年間もやろう、あと二年間は研修でやろうというのでありますから、そういうきらいがどうしてもにじみ出てくるような感じでございますが、日本の国の一番うれしいというか、ありがたいというか、感じをありのままに申しますと、思想が文字どおり自由である――どの国も自由とは言うておりますけれども、日本の思想のみはほんとに文字どおり自由である。また、意思の表示のしかたも文字どおり自由、表現の自由も、日本の国くらい自由な表現を持っている国はございますまい。そういう意味から、左右両翼――ことばはおかしいのでありますが、右左両方の意見が日本国民に聞く機会が常に与えられている。そういう機会が常に与えられておるということが、非常に日本人の幸福感を味わっておるよいところではないかと考えておるのでございます。ただ、私の構想によると、一つの学校に入れて四年間ということになりますと、先生のおっしゃるとおり、いかがかと考える。ただ、学校の分野でありますから、たとえばいまちょっとお話の出ました教員の招き方、講義のやらせ方というものによりましては、一定のところに置きましても、左右両方の思想を理解するのに足る能力がある。しかし、事に処しては職務を執行することに処しては中道をやる、中道でなければいかぬのだという訓練を施していくと、私はさらに一そう、左右両翼自由なものを聞き入れながら、おのれを持していく上に中道ということができれば、たいへんすばらしい存在になるのではなかろうか、こういうふうに実はあまり窮屈でなしに考えておるわけでございます。四年間同じものに入れておくということがいかがであろうかと、よほど反省を要するところであるとも考えております。
  109. 亀田得治

    亀田得治君 大臣の考えでは、現在この二十年間やっておる制度がどこが一体悪いか、それでこういう対案を考えるのだということでなければ、ほんとうの対案でないですね。現在のどことどこが欠点なのか、その点はどういうふうにお考えですか。
  110. 田中伊三次

    国務大臣田中伊三次君) それがたいへん言いにくい。(笑声)いや、ほんとうにこれは法務大臣の言うことばとしてたいへん言いにくい。裁判所おられるとたいへん言いにくいことなんです。言いにくいことですけれども、しかたがないから申し上げますと、いままで研修を熱心にくふうしておってくれるのですが、私の構想とは逆に、思い思いの学風、思い思いの校風、思い思いの伝統のある大学で教育された区々まちまちの考え方を持った者が、学力試験だけ――だけでもないでしょうが、学力試験を中心として採用されて二年間の研修に入る、こういうことでありますので、右の思想を持った者は右の思想を持ったまま、左の思想を持ったやつは左の思想を持ったまま――やっと言うと悪いが、右の思想を持っていらっしゃる諸君は右のまま、左の思想を持った者は左の思想を持ったままで試験を受けて二年間やっておる。法務省はどういうふうな者をとっているかというと、検事になろうとする人はなるべく右寄りの者を選び、裁判所は左寄りの者を選ぶかどうか知らぬが、大体そういうふうになっておる。私のほうはあまり左の者は選ばないような方針になっておる。そういう結果は、裁判を見ても――それは裁判所を批判しちゃいけないが、これはこの場限りの話としてないしょにお聞きを願いますが、職務執行について左の立場でそのままで裁判をしていらっしゃるというように思えることがだいぶ具体的に出ておる、裁判の結果が。それは上の最高裁判所に行きますとちゃんと是正はされるのですが、しかし下級裁判所裁判官の中にはそういうふうな裁判官がなしともしない、ここらが言いにくいところなんです。しかし言うてしまうことになるんですが、そういうふうなことを私は考えますときに、職務執行は中庸だ、おのれは思想は左右両翼どちらでもいい、これはあまりむずかしいことではなしにいけるというように判断をいたしております。これは私自身の体験から見てもやれる、これは訓練によると、こういうふうな考え方でありますので、私の言っておるような構想に立って苦心しておるのであります。
  111. 亀田得治

    亀田得治君 横のほうで最高裁が手をあげたがっているようでありますが、それは大臣の誤解があります。それは、大臣のようなことをおっしゃったら、これは一体裁判官の要がないということになる。裁判官は両方の意見を聞いてそうして判断をするわけですから、ときに検察官の意見をいれないということもあります。しかし、それは数は少ないですよ。ただ、そういうのが出ると数が少ない証拠になる、ニュースになるのだから。大部分は反対なんですよ。私たち、そういう検察官の考えをいれない裁判官と話をしておりましても、決して大臣がおっしゃるような感じは受けません。法律そのものに取り組んで、それ以外のものには影響されないという立場でやっている。大臣のような考えですと、みんな検事の言うとおりにしろ、こうなるわけであります。これは自民党の場合でも、選挙違反もあれば、いろいろあるし、それは自民党の中でも文句が出ますよ。それは大臣のそういう点は、多少私は一ぺん聞いてみたいと思う。やはり現状認識においてもっと御検討をお願いしたいと思います。司法修習制度が改革の余地があるというふうなものならば、これは当然検討しなければならぬと思います。だけれども、私は、ともかくいろいろな方面の人があそこに寄ってそうしてともかく司法全体の中身というものを豊かにしてきている、非常にいい点だと思う。中身をもっと豊かにしなさいと言うて議論しているのですが、そういうことですから、これは大臣も評価してもらいませんと……。
  112. 田中伊三次

    国務大臣田中伊三次君) ちょっと一言だけ。ありままの話がたいへん誤解を招いてもいけませんが、私は司法修習生過去二十年の長きにわたってたいへんよい成績をあげてくれておるものと信じております。また、法務省にもその一半の責任があるわけで、発言権もあるわけでございます。非常によくやってくれておる。それから、裁判官も非常な努力をされて、苦心をしていただいているということもよくわかるのであります。もう一段、私流の欲を言いますと、法務大学を提唱しておる私の心理から、一つの欲を言いますというと、もう一段職務の執行に際しては中庸で行っていただく道がなかろうかということを実は私は考えておるのであります。これは検事にもよく申し聞かしておるところでありますが、裁判官のほうでもそういうひとつ心がまえを一段と強めていただくことができれば万歳だと、こういう気持ちを持っているのでございますから、先ほどのようなことを申し上げたわけでございます。日ごろの御精進に対しても心から敬意を表し、裁判所のおじやまにならぬように、ならぬようにということを、どこに行っても私はそういう立場をとっておることで一貫しておるわけであります。
  113. 亀田得治

    亀田得治君 大臣が新聞に発表されたああいう構想ですね、これは何とか制度化しようという立場で推進されるつもりなんですか。
  114. 田中伊三次

    国務大臣田中伊三次君) ただいま構想段階でございますが、構想段階で信念が持てます場合は、ひとつあらゆる方面と御相談を申し上げながら、立案段階に推し進めていきたいと、こういう考え方でございます。
  115. 亀田得治

    亀田得治君 そうすると、まだ構想であって、案というところまでは行っておらぬと、そういうふうに聞いてよいですか。
  116. 田中伊三次

    国務大臣田中伊三次君) そのとおりでございます。
  117. 亀田得治

    亀田得治君 どうもこま切れになってしもうて、質問がスムーズにいきませんが、それで最高裁ではよく問題になるんですが、司法人口ですね、これをどの程度にめどをつけておりますか。これは臨調はじめなかなか議論の存するところですが、しかし、一応皆さんは現実の制度を担当しておるわけですからね、よかれあしかれめどをつけなきゃ、じゃことしは何人にしようとか、予算はどうしようとか、そういうことが出てこぬわけですから、そういう点についてのひとつ皆さんの研究の結果をここでお聞かせを願いたい。
  118. 寺田治郎

    最高裁判所長官代理者(寺田治郎君) これは、亀田委員つとに御承知の、臨時司法制度調査会におきまして相当論議された問題でございます。そうして、その調査会におきましても、いわば最終目標をどこに置くかという結論が出なかったような問題でございますので、私どもとしてもいまここで何名という具体的な数字は持っていないわけでございます。ただ、これまた御承知のとおり、日本の法曹人口というものは諸外国に比べますときわめて少ないわけでございます。一例をとりますと、たとえば弁護士の一人当たりの国民の数が、日本では一万二千人余りでございますが、それに対しまして、イギリスでは二千人、アメリカでは六百人と、このように格段の差がありまして、たとえば西独のようなところでも三千人ぐらいで一人の弁護士ということでございます。そういう点から申しますと、いわば幾らでもふやさなければならないということになるわけでございます。ただ、そうは申しましても、一面これは国民の法律生活の伸展ということともかね合いになるわけでございまして、諸外国のように一つ契約を結ぶのにも必ず弁護士さんに頼むというようなところと、日本ではむしろ問題が起こってから弁護士に頼むというところとでは、弁護士の必要数も変わっておるわけでございます。将来として、私どもはやはり契約を結ぶ際には弁護士に頼むという方向にいきたいと思うわけで、そういう意味では、現在約八千人ぐらいの弁護士が、少なくとも一万人をこえないことにはと考えておるわけでございますが、しかしながら、かようにふやそうということになりますと、これは消耗もございますので、相当大幅に増員しなければふえないわけでございます。ところが、一方では試験の成績等からまいりますと、なかなか現在の五百三十人というものを六百人にふやすということは実は容易ならざることでございます。そういうことで、これは可能な範囲で成績等ともにらみ合わせながら漸進的に増加するという方向が穏当ではないか。同時に、これは、しかしながら、いま私ども一応の考えを申し上げましたが、当然法務省なり内閣においてお考えになるべき問題であり、また日本弁護士連合会でもお考えになっておることと思いますので、さような方面と十分話し合いをしながら具体的な施策は考えてまいらなければならない問題であると、かように考えておるものでございます。
  119. 亀田得治

    亀田得治君 この臨時司法制度調査会で、例の法曹一元の決定がされておりますね。これは方向としては、一応法曹一元制度を認めて、そしてその基盤を培養するということを特に主張しているわけですね。そういう立場から最高裁は努力しているのですか、あまりしていないんじゃないですか。
  120. 寺田治郎

    最高裁判所長官代理者(寺田治郎君) ちょっと、いまの御質問に答えます前に、先ほど私、亀田委員のお尋ねのときに、暴力団云々ということを申しました。まことにこれは、少し極端な例を出そうと、ことばが走りまして、これは本意にないことを申しまして恐縮でございます。  それから、いまの臨時司法制度調査会の決議の問題でございますが、これは実は、亀田委員もつとに御承知のとおり、当時内閣のほうから最高裁に対してはこれを尊重して施策することについて協力してほしいという公文書が参りました。御承知のとおり、これは内閣総理大臣に対する答申と申しますか、報告でございますので、最高裁判所はいわばわきの立場にあるわけでございますが、内閣のほうからさような書面をいただいたわけでございます。そこで、私どもとしても、これは司法制度調査委員会としてはいわば明治以来きわめて画期的な規模で行なわれた委員会であると理解しておるわけでございます。つまり法律に基づきまして内閣に置かれた――法務省ではなく内閣に置かれた委員会であり、しかも国会議員がきわめて多数にお入りになっており、また各方面の識者もお入りになっておって、決していわゆる法曹だけの委員会ではないという意味で、権威のあるきわめて重要な委員会であるというふうに理解したわけでございます。そこで、さっそく法務省の当局ともお打ち合わせをして、また日弁連の当時の事務当局ともお打ち合わせをして、そうして、いわゆる司法協議会というものを設けるべきことをこの答申そのものでうたわれておりますので、その司法協議会というものの開催に努力を始めたわけでございますが、ところが、これまた御承知のとおり、いろいろその間に誤解もあったことと思いますが、日弁連のほうで、臨司意見というものに対するかなりの感情をお持ちになった向きがございまして、司法協議会の準備幹事会に対する幹事の派遣を取りやめる、そしてその準備を進めることはまかりならぬというような御決議が出たわけでございます。そういうところから、いわばその決議をすぐそのままでどんどん推進するという作業はやや行き詰まって、そこでしかしながら、弁護士会におかれても必ずしも全面的に反対という御趣旨でもないように伺っておりまして、そうして差しつかえない範囲では協力しょうというような御趣旨もございまして、いろいろ連絡の会議を持ちまして作業を進めておるような次第でございます。ただしかしながら、これまた御承知と存じますが、きわめて最近におきましては、たしか本年の総会であったと思いますが、臨時司法制度調査意見書批判というものを、日弁連の総会で御決議ですか、あるいは御承認ですか、何かそういうことでおきめになったようで、その内容につきましては、かなり臨司意見に対する批判的な意見が出ておるわけでございます。むろん、私どもといたしましても、この個々の条項につきましては、相当に問題を含んでおるものがあるというのは理解しておりますが、しかしながら、全面的にこれがそれほど司法制度の発展の上について望ましからぬもの、反対の方向のものとは考えておらないわけでございまして、その間においては日弁連内部のいろいろな御事情もあるようでございますので、十分お話し合いの時間をかけまして、逐次可能なものから実現に移してまいりたい、かように考えておるわけでございます。個々の条項についてもしお尋ねがございますれば、かなりの条項がすでに実現しつつあることは、これは御承知のとおりでございます。
  121. 亀田得治

    亀田得治君 臨司に対するいろいろな批判が出ておることは承知しておりますが、しかし、この法曹一元制度をやろうという前半のところですね、ここには別に異議がどこにもないと私は思っております。これは若干異論も出ておりますが、大勢はそんなことはないと思うのです。しかし、その基礎になるのは、やはり在野の法曹ですね、この層が厚くならぬといかぬです。だからそういう面、基盤を培養するというのは、私はそういうことが一つの具体的な仕事だと思うのですよ。在野の弁護士から裁判官を出していくとしても、在野の弁護士自体がもう手が一ぱいだというふうな状態じゃ、なかなか事実動きがとれないわけですね。現在のような状態というものはいつまでたっても同じに続いていく、これじゃ基盤の培養も何もできやせんです。だからそういう意味で、法曹の数をひとつうんとふやしていく、そういう具体案を検討してほしいのですよ。それはやっているのだ、修習生をできるだけふやしている、これも知っております。しかし、あまりふやすと、どうも地方の実務研修の段階で今度は裁判官自体が時間をとられて困るというふうな現象も起こるというふうなことを言っておれば、これはふえないのですわ。だから、その辺はやっぱり克服していかなければ、いつまでもふえませんよ。だから、その辺のめどをどういうふうに考えておられるのか、去年よりもことしは幾らかふやせばいいんだというふうな程度で、実際上それしかできないのだというふうな気持ちでやっておられるのか、その辺を聞きたい。
  122. 寺田治郎

    最高裁判所長官代理者(寺田治郎君) 亀田委員のお話は、私どもは非常によくわかり、また全く同感するわけでございます。ところが、法曹一元の基盤培養のために法曹人口をふやすということ自体が、日弁連は必ずしも積極ではあられないわけでございます。法曹一元にはむろん御賛成でございますし、また法曹一元の基盤培養というのはそう御反対ではないと思いますが、そうかといって、法曹人口をふやすということには必ずしも積極であられない、反対か、むしろどちらかといえば消極的のような印象を私ども受けるわけでございます。と申しますのは、先ほど説明申し上げましたいわゆる司法修習運営諮問委員会等におきましても、これは必ずしもその法曹の数をそこで論議してきめていただこうという趣旨の委員会ではむろんございませんけれども、おのずから修習の問題につきましては、修習生の数の問題がある程度の話題にはならざるを得ないわけでございます。そうなってまいりますときに、弁護士会からおいでになっておる委員の方は、必ずしも法曹人口をふやすということについては積極的ではあられない。それからまた例の、二、三年前でございましたか、この臨司意見の直後に司法試験の改正問題というのがございました。これは法務省の御所管でございますし、調査部長がおいでになっておるところでございますので、私から申し上げるのはやや越権かと思いますが、私どもも非常に関心を持っておる問題でございますが、その司法試験の改正の具体案がはたして司法試験の合格者をふやすのにふさわしいものであるかどうかという点は一応別にいたしまして、そういう論議の際に、何とかして司法試験法を改正してでも法曹をふやそうという熱意が、どうも日弁連は必ずしもお強くないように見受けられるわけであります。そういう点が、内閣なり政府のほうは別でございますが、私ども最高裁判所としては、できる限り弁護士会の御意見も十分伺いながら、また納得をしていただいて進めていこうといたします際に、なかなかその点についての御理解が得られにくいということが、実際問題としてこの施策の進展にやや隘路になっているような印象を受けるわけでございます。むろん私どものほうとしても、裁判官のあるべき数は何名だ、あるいは弁護士のあるべき数は何名だということをぴたりと出してお話をするべきものであることは心得ておりますけれども、しかし、要するに方向として、少なくとも相当程度ふやさなければならないというところで話がつきますれば、それからあとの作業は、いわば事務的な作業とも言えるわけでございますが、そういう点についてなかなか十分なお話し合いができないというのが現在の率直な実情になっておるわけでございます。
  123. 亀田得治

    亀田得治君 弁護士側が必ずしも法曹人口をふやすことに賛成しないと言われるわけですが、その根拠は何ですか。
  124. 寺田治郎

    最高裁判所長官代理者(寺田治郎君) これはいろいろあろうと思いますが、直接にはやはり質の低下ということをおっしゃるわけでございます。
  125. 亀田得治

    亀田得治君 たとえば、合格者を五百名採っておる。これを八百とか、そういうふうにふやすということになると、質が低下する。一応それは、いままで五百一人以下は落第なのが、入ってくるわけですからね。全部まざるわけですから、そういう感じはしないわけでもないですが、どうなんですかね、司法部門にも入っていきやすいということになれば、ずいぶんいろいろな人がたくさん受けに来るようになるのじゃないですか。試験はへただけれどもなかなか力があるという人もいるでしょうし、しかも受験者の数は非常に多いでしょう。多い中の五百と五百一番目というのは、たいした違いはないのじゃないですか。その辺は突っ込んで検討する余地があるのじゃないですかね。千人受けて五百名合格、それを八百までにふやすということなら、それはだいぶん質の低下ということになるかもしれないが、事実どうなんですか。
  126. 寺田治郎

    最高裁判所長官代理者(寺田治郎君) これは五百人と五百一人では違いはないと思いますし、五百十人でも違いはないと思います。これは八百人ということになれば、それは当然このままの形であれば質が低下すると思います。しかし、それがしんぼうできる程度の質の低下かどうかということは、やはり批判をされるべき問題だろうと思います。そうしてその上に、これは実際問題として、たとえば本年度に八百採るということになりますれば、たとえば研修所の施設等の点からも隘路がございますから、私どもも必ずしも本年度において八百採る、千採るということを申しておるわけではないわけでございます。これは亀田委員の御趣旨にあるいは合わないかもしれませんが、数年計画で将来の方向として、たとえば千人の方向にというような議論が議論としてあるわけでございます。その際に、いまの試験のやり方そのままで、かりに五百を千ということにいたしますれば、これはおのずから質の低下を招くことも考えられるから、それでは試験のやり方を少しくふうしてみては、どうかというのが前の司法試験制度の改革の一つの問題点であったろうと思うわけでございますが、その点については、なかなか各方面の御理解が得られにくいということで、もう少し謙虚に、たとえば司法試験のやり方も検討して、そうして何とかならないかということを議論する余地はあろうと思いますが、その辺がなかなかむずかしい問題になっているわけでございます。
  127. 亀田得治

    亀田得治君 何人採るというのじゃなしに、何点以上取れば全部合格させるというたてまえなんでしょう、たてまえとしては。
  128. 寺田治郎

    最高裁判所長官代理者(寺田治郎君) これは所管としては法務省のほうであろうと思いますので、私正確なことは申し上げられませんが、私ども承知しております範囲では、むろん何点以上でございましょうが、その何点というときに、つまりそれが動かすべからざる線ではございませんから、ある程度の余裕を見て、つまりたとえば六十点を一点くらいは下げるということが可能かどうかという議論があるように伺っておりますが、これは私直接所管ではございませんので、もし間違っておりましたら訂正いたします。
  129. 亀田得治

    亀田得治君 それは一点の程度ですか、二点とか。二点動かすとそんなふうに違ってくるのですか、人数が。そういう程度のものだったら、そんなにあまりこだわる必要ないように私思うのですがね。
  130. 寺田治郎

    最高裁判所長官代理者(寺田治郎君) 先ほども申し上げましたとおり、私ども意見も、必ずしもたとえば四十三年度においていまの制度のままでは何名にということを強く主張しているわけではございませんので、そういう点で、たとえば点数を下げることに弁護士会に御反対があるというふうに御理解いただくと、私の申し上げた趣旨に合わないかと思います。私はもう少し長期的な問題として申し上げたつもりでございます。  それから、それぞれの年度における試験の問題としては、これは法務省の人事課のほうで御担当の問題かと思いますが、いろいろ試験委員会で御議論になって、一点下げるとか一点五分下げるとかいうような問題があるように間接に伺っておるわけでございます。そして、それは多くの場合、研修所の収容能力というようなこともにらみ合わせながら、しんぼうできる程度の点数ということでやっておられるように伺っておる次第でございます。
  131. 亀田得治

    亀田得治君 そこで、先ほど法務大臣から新説を聞いているわけだが、最高裁としてはどういうふうに思いますか、ああいう構想を。
  132. 寺田治郎

    最高裁判所長官代理者(寺田治郎君) 法務大学構想というものを私ども初めて伺いましたのは、大臣が関西へ御旅行になりまして、京都で記者会見をされまして、記者会見の席でお話しになったのが最初で、初めてそのときその構想を知ったわけでございます。その後一、二度この国会の御審議の場でも大臣の御発言を直接あるいは議事録で伺っておるわけでございますが、私ども事務当局としては、法務省の事務当局に、たとえばその構想でもあれば、その構想の印刷物をいただいて、そして十分検討したいというふうに申し上げておるわけでございますが、私ども承知いたしております範囲では、まだその印刷物になったものがないようでございます。したがって、政治家であられる大臣が記者会見なり国会でのお話で伺う程度でございますので、これについて私どもとして具体的にそれを議案としてたとえば最高裁意見をまとめるという段階には至っておらないわけでございます。ただ、先ほども申し上げましたような考えでございますから、大臣の先ほどお話しになりましたような趣旨から申しますれば、必ずしも私ども考えとは一致しておらないように考えるわけでございます。特に私ども、これは別に大臣のおいでにならない席で申す必要もないかと思いますが、思想的にはあるいはいろいろの考えのものもあろうかと思いますが、いやしくも裁判をいたす場合におきましては、これは憲法の精神にのっとり、また法律を忠実に適用するという気持ちでやっておることは間違いないわけでございまして、それが一部の方々からあるいは左のように見え、また一部の方々からは右のように見えるということもあろうかと思いますが、私どもの信念においては憲法および法律の精神でやっておることでございまして、それが右であるとか左であるとかいうことは夢にも考えておらないような次第でございます。
  133. 亀田得治

    亀田得治君 そうすると、大臣の構想はこれは反対――反対というよりも、私は、いまの制度をせっかくうまくだんだん充実していくのに、ああいう構想が出てくるとじゃまになるのじゃないかと思うのですが、あれで法曹がふえると思いますか。私はかえってそんなところへあまり行かぬようになるのじゃないかと思いますがね。行くとすれば、こちこちの検事みたいたタイプの者だけ集まっていくというようなかっこうになってしまって、法曹という非常に幅の広い――いろいろな人がおりますよ、それは実際、それでいて集まると何か一つの雰囲気ができる、そういうふうなものに私はならぬと思うのですね。どうです、もうちょっとはっきり言いなさい。
  134. 寺田治郎

    最高裁判所長官代理者(寺田治郎君) あの構想でふえるかどうか、これは大臣にお聞きいただかないと、私どもの構想ではございませんので申しかねますが、それから賛成か反対かというお話をいただきましても、先ほど来申し上げますとおり、私どもはやはり、何か印刷物のもので構想案というものでもあれば、これを右から左から検討して、あるいはここに長所があり短所があるということになるわけでございますが、何ぶん国会における政治家の御発言というものだけをあれにして意見を述べるというのはちょっと私どもまだ資料が不足のように思っておるわけでございまして、将来法務省のほうで、いま構想段階というお話でございますので、もう少し具体的な構想がわかりますれば、それについてまた意見を述べられる機会もあると思います。ただ、私どもは、先ほど来申し上げましたように、現在の司法修習制度の大筋においてそれほどに欠陥があるとは考えておらないわけで、種々改善すべき点はあろうと思いますが、しかしながら、それがそれほど本質的なものとも必ずしも考えておらないのが現在の実情でございます。ただし、将来各方面からいろいろ御批判もあろうと思いますので、それを十分伺いましてまた検討しなければならない、かような謙虚なつもりでおるわけでございます。
  135. 亀田得治

    亀田得治君 大体司法修習制度の問題この程度で終わりますが、もう一つだけ聞いておきますが、この簡易裁判所という名前改めたらどうか。これは臨司等でもずいぶん出ておったわけです。裁判をやるのに、大きい事件だから慎重にやる、小さい事件だからまあ簡易にやるんだ、そういう印象を与えるような名前というものは、これはもうはなはだしい不愉快ですね。大きかろうが、小さかろうが、簡易裁判所に来る本人にとっては非常に重大なんでしてね。これは前から問題になっているんですが、どうなんですか。私はこれはやはり自明だと思うのだがね。変えたら判こでもよけいつくりかえなければならぬとか、それは事務的な面ではたいへんだろうと思いますが、しかしそんなことを言っておればそれはいつまでたってもできないわけですね。どうなんですか。
  136. 寺田治郎

    最高裁判所長官代理者(寺田治郎君) これもまことに申しにくいことでございますが、実は亀田委員も弁護士であられるわけでございますが、日本弁護士連合会がこの名称変更にかなり強く反対しておられるわけでございます。私ども実は、簡裁という名称、これはおっしゃるとおりだと思います。しかし、また一面では、もう現在かなり簡裁という名称が国民に根をおろしている。確かに、文理的に読めば、簡易な裁判所ということで、非常にまずい表言でございますが、そういうことを離れて、何となく簡裁、簡裁ということで、かなり国民に根をおろしている面はあろうと思います。しかしながら、やはりことば自体としては感心しないので、実は私どもも、亀田委員承知のとおり、臨司の幹事をやらせていただいておりまして、その際、名称変更ということで、幹事会では地区裁判所という案を出したことはたぶん御気憶と存じますが、地区裁判所というような案もあったわけでございます。なぜ区裁判所というのを避けたかと申しますと、区裁判所というのは、やはり戦前の区裁判所のイメージがある。そうすると、いわゆる区裁判所化するということについては、これは各方面にかなり異存がございます。そこで、区裁判所はまずい。しかし、そうかといって、簡易裁判所もどうかということで、地区裁判所とでもしたらどうかというのが幹事のほうのいろいろの議論の中に出たわけでございますが、結局臨司の意見としては、地区裁判所というのもわかりにくいから、いっそのこと区裁判所でいいじゃないかというような意見になったように理解しておるわけでございます。私実はその当時に、区裁判所というふうに答申が出ますと、おそらく区裁判所というものに対しましてはまた反対があるのじゃないか、実現困難ではないかというふうに心配するのでございますが、それが実際そうなりまして、区裁判所化するか、それはけしからぬというのがどうも在野方面の強い御反対一つ理由になっておるようでございまして、外国にありますように、たとえば少額裁判所というのも一つの案だと思いますが、しかしながら、刑事関係をやる面では少額というのがぴんとこないんで、区裁判所ということで各方面の御理解がいただければ、それが非常にありがたいと思うわけでございますが、現在はそういうような状況で行き悩みの状態でございます。
  137. 亀田得治

    亀田得治君 そこの自治体の名前だけをつけたらどうですか。高槻市裁判所とかいう、市民裁判所みたいなものですな。
  138. 寺田治郎

    最高裁判所長官代理者(寺田治郎君) そういうことも考えられるかもしれませんが、たとえば甲府なら甲府の場合に、甲府地方裁判所と甲府市裁判所ということになるわけでございますか。
  139. 亀田得治

    亀田得治君 そういうことです。
  140. 寺田治郎

    最高裁判所長官代理者(寺田治郎君) それがどういうものでございましょうか、十分検討したことがございませんから、十分検討いたしますが、いままでそういう案はございませんでした。外国にはそういうものがあるようでございますから、検討の問題だと思います。
  141. 亀田得治

    亀田得治君 簡易裁判所というのだけは、なかなか裁判官も行きたがらぬですよ。簡易裁判所の判事になれと言っても、よほど軽い人じゃないと。やっぱりそういう感じを与える。名前だけでどうこうということはないですがね。だから、やっぱり早くできる改革はもっとやっていかなきゃならぬ。この法案見ても、もうやむを得ずというやつだけ一部改正出してくるわけですわね、ほんとうにこれはやむを得ずですね。こういうことじゃなしに、やはり懸案事項というものは一つでも片づけていく。どうしても懸案はたまっていくんですからね、片づけなかったらふえていくだけですよ。  名称のほかに、もっとほかにないですか。簡易裁判所でたまっている問題は、どういうような問題があるんですか。
  142. 寺田治郎

    最高裁判所長官代理者(寺田治郎君) 一番強い反対を受けております問題は、簡易裁判所判事に法曹資格を与えるという問題で、これは非常な強い反対があるわけでございます。それから、それほど反対を受けておりません問題で、これはぜひとも私どもとして実現いたしたいと思っておりますのは、簡易裁判所の事物管轄の拡張の問題でございます。現在、民事では十万円となっておりますが、これをできれば二十万円なり三十万円に拡張したいというのが臨司の意見の中に出ております問題点でございますが、これにつきましても、いろいろ問題点がございまして、まだ結論を得ていないという状況でございます。
  143. 亀田得治

    亀田得治君 いま御指摘のような二つの問題は、なかなか抵抗があると思いますが、しかし、名前についてはほとんど抵抗がないと思いますがね。まあ、ひとつ研究してください。この程度にしておきます。
  144. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 きわめて簡単なことですけれども、別の機会に質問をしたいということに関連するのですが、きわめてささいなことです。提案理由説明書の中に、「静岡県の吉原市」とありますね。この静岡県の静岡に「しずおか」とふりがながふってあるのですね。古い内閣の告示を見ますと、原則的にふりがなはやめろという告示があるのです。私は、提案理由なり法律案にふりがなをふってある例はあまり見つからないのですけれども、これはどういう事情でしょうか。
  145. 川島一郎

    政府委員川島一郎君) 提案理由書にふりがなをつけないということになっておりますことは、私実は不用意で承知いたしておりませんでして、あるいは慣例を破ったことになったといたしますと、はなはだ申しわけないことだと思います。これは地名でございますので、中に読みにくい地名もある場合がございますので、そういう場合のために、一応地名につきましてはふりがなをふるということで最初の原稿をつくりましたので、そのようになっておるものと思います。
  146. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 それはそれで私はけっこうだと思います。ただ、その内閣の告示の趣旨は、ふりがなはやめるべきであるということがうたわれておるわけであります。したがって、最近、雑誌・新聞等でもふりがなは姿を消しまして、しかし、どうしてもふりがなをつけたほうがいい場合は、わざわざカッコ書きにしまして、ふりがなじゃなくて、ふりがなであるべきものをカッコ内に入れておるわけですね。なぜ内閣の告示でそういうことをしておるか、これは基本的に非常に問題が実はあると考えておるわけであります。それに関連することは、別に機会があれば私は伺いたいと思っていたわけですが、たまたまこれにあらわれてきたものですからお伺いしたわけであります。
  147. 山田徹一

    理事山田徹一君) 速記をとめて。   〔速記中止
  148. 山田徹一

    理事山田徹一君) 速記を始めて。他に御発言もなければ、質疑は尽きたものと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  149. 山田徹一

    理事山田徹一君) 御異議ないと認めます。  それでは、これより討論に入ります。  御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。――別に御意見もないようでございますが、討論はないものと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  150. 山田徹一

    理事山田徹一君) 異議ないと認めます。  それでは、これより採決に入ります。  下級裁判所の設立及び管轄区域に関する法律の一部を改正する法律案を問題に供します。本案に賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  151. 山田徹一

    理事山田徹一君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  なお、本院規則第七十二条により議長に提出すべき報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  152. 山田徹一

    理事山田徹一君) 異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後二時五十八分散会      ―――――・―――――