運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1967-06-06 第55回国会 参議院 法務委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十二年六月六日(火曜日)    午前十時五十八分開会     —————————————    委員異動  五月三十一日     辞任         補欠選任      横山 フク君     木島 義夫君      内田 芳郎君     小沢久太郎君  六月六日     辞任         補欠選任      加瀬  完君     小柳  勇君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         浅井  亨君     理 事                 後藤 義隆君                 田村 賢作君                 久保  等君                 山田 徹一君     委 員                 梶原 茂嘉君                 木島 義夫君                 久保 勘一君                 松野 孝一君                 大森 創造君                 亀田 得治君                 小柳  勇君    国務大臣        法 務 大 臣  田中伊三次君    政府委員        警察庁刑事局長  内海  倫君        法務省民事局長  新谷 正夫君        法務省刑事局長  川井 英良君    最高裁判所長官代理者        最高裁判所事務        総局人事局長   矢崎 憲正君    事務局側        常任委員会専門        員        増本 甲吉君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○司法書士法及び土地家屋調査士法の一部を改正  する法律案内閣提出) ○検察及び裁判の運営等に関する調査  (法務局臨時職員処遇等に関する件)  (福岡地方検察庁における綱紀等に関する件) ○旧執達吏規則に基づく恩給の年額の改定に関す  る法律案内閣提出衆議院送付)     —————————————
  2. 浅井亨

    委員長浅井亨君) ただいまから法務委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  本日、加瀬完君が委員辞任せられ、その補欠として小柳勇君が委員に選任せられました。     —————————————
  3. 浅井亨

    委員長浅井亨君) 司法書士法及び土地家屋調査士法の一部を改正する法律案を議題とし、本案に対する質疑を行ないます。御質疑がある方は順次御発言を願います。
  4. 後藤義隆

    後藤義隆君 ちょっとお尋ねいたしますが、司法書士会、同連合会及び土地家屋調査士会、同連合会法人格を付与するという主たる理由はどこにありましょうか。
  5. 新谷正夫

    政府委員新谷正夫君) 司法書士法及び土地家屋調査士法規定してございますように、司法書士会司法書士品位保持あるいはその業務改善進歩をはかりますために会員指導連絡を行なうことを目的といたしております。土地家屋調査士会も全く同じ目的で、調査士品位保持業務改善等をはかるため会員指導連絡を行なう、こういうことになっておるわけであります。法律がいずれも制定せられまして後、会員も次第にふえてまいりまして、司法書士は現在全国で約一万二千人でございます。土地家屋調査士は約一万六千人でありまして、会員もどんどん増加いたしておりますし、また会としての活動も年とともに活発化してまいっておりまして、会そのもの充実発展を期さなければならないということになっておるわけでございます。ただ、現行法におきましては、司法書士会も、土地家屋調査士会も、いずれも法人格がございません。そのために、会員指導し、あるいは育成し、また会員相互扶助を行ないたい、特に共済制度のようなものを設けて会員相互扶助制度を確立したいというふうな希望があるわけでございますが、こういったことも法人格がございませんためになかなか思うようにまいらないのでございます。さらに、会自体がいろいろ発展してまいりますと、財産を取得いたしましたり、あるいは債務を負担いたしましたりするわけでございますが、これらも、法人格がございませんために、会長その他の人の個人名前で取引をしておるというのが実態でございます。そのために、かえって会員からいろいろの問題を投げかけられるという場合もあり得るのでございまして、そういったこともなくし、すっきりした形で司法書士会土地家屋調査士会業務運用ができるようにということを考えまして、今回の法人格を付与するための法律案をお願いいたしておる次第でございます。
  6. 後藤義隆

    後藤義隆君 司法書士会並びにこの土地家屋調査士会類似団体でもって法人格を持っておるものにどんなものがありますか。
  7. 新谷正夫

    政府委員新谷正夫君) 類似団体法人格を持っておるものといたしましては、弁護士会、弁、理士会税理士会あるいは建築士会等がございます。
  8. 後藤義隆

    後藤義隆君 ただいま、会が財産を持っておるのに個人名義でもって保有せねばならぬ不便があるということでございましたが、現在司法書士会あるいは土地家屋調査士会でもって財産を保有しておるのは、個人名義であってもどの程度に財産を保有しておりますか、その状態を……。
  9. 新谷正夫

    政府委員新谷正夫君) 司法書士会についてまず申し上げますと、現在会として財産を持っておりますものが東京、熊本、福岡と三つございますが、これは土地建物備品電話預貯金、そういったものがございます。これは現に会のものという趣旨で保有いたしておりますが、もちろん会の名義登記することもできませんし、預貯金をすることもできません。さらに、いま計画いたしておりますものといたしましてはかなりたくさんございまして、東京、横浜をはじめといたしまして全国三十一の会について調べた資料によりますと、土地建物、あるいは備品、自動車、電話、タイプライター、そういったものを三十一の会が保有しようという計画を持っております。現実にはおそらくこれは中には個人名義ですでに取得しておるものもあろうかと思うのですが、正式に会のものとして登記をしたりあるいは電話登録をしたりすることができない現状にございますために、非常に不便を感じておるのが実情でございます。さらに、土地家屋調査士会におきましては、各県の会について調査いたしましたところでは、土地を借りておりますものが八件、また自分で持っておるというもの——これはおそらく司法書士会と同様に個人名義で所有しておると思いますが、これが四件。建物につきましては、報告のないものもございますけれども、手元にございます資料では、二十五の会がそれぞれ建物を借りております。さらに自分のものとして所有しているものが四つございます。電話につきましては、借りておるもの、さらに自己の保有いたしておりますもの、合わせまして四十六のものが電話を持っております。これはいずれも、先ほど申し上げましたように、法人格がございませんために、会長個人名前になっておりますもの、あるいはそういうこともできないままに適当な個人名義を借りてこれを会のものとして所有しているというのが実情でございます。
  10. 後藤義隆

    後藤義隆君 会員の数は先ほどお話があったのでありますが、会の数はどんなぐあいになっておりましょうか。
  11. 新谷正夫

    政府委員新谷正夫君) 司法書士会が、各県単位のものが四十九ございます。その中には北海道地区の四つが含まれております。そのほかに、全国連合会一つございます。したがいまして、合計いたしますと、連合会地方会を合わせまして五十ということになっております。土地家屋調査士会につきましても同様でございまして、地方会が四十九、中央の連合会一つ、合計五十、このようになっております。
  12. 後藤義隆

    後藤義隆君 これは何でしょうか、司法書士並びにこの家屋調査士全国的に分布しているのではないかというふうに考えられるが、その状態は一体どうなっておりましょうか。
  13. 新谷正夫

    政府委員新谷正夫君) 司法書士も、土地家屋調査士も、全国的に分布いたしております。ただ、事件の多いのは当然都会地でございまして、その事件数に応じましてやはり都会地にたくさんの司法書士あるいは調査士の方が集中する傾向にはございます。しかしながら、山間部におきましても相当数司法書士あるいは調査士の方が業務をとっておられるところもあるのでございまして、大体法務局支局あるいは出張所の所在地には司法書士あるいは調査士の方がおられるというふうにお考えいただいてけっこうだと思います。
  14. 後藤義隆

    後藤義隆君 いまのお話で、法務局支局あるいは出張所には司法書士は全部おるようなお話でしたが、現在やはりそういうようなぐあいで、いなくて困るようなことはありませんか。
  15. 新谷正夫

    政府委員新谷正夫君) 確かに、仰せのように、地域の開発等が行なわれます関係で、従来の司法書士さんあるいは土地家屋調査士さんの人員では足りないというところもぼつぼつ出てまいっております。そういうところにおきましては、何とかして適当な司法書士あるいは同時に家屋調査士の方を置いて一般国民の利便に資するように私どもとしては考えたいのでございますが、何と申しましても、これは司法書士あるいは土地家屋調査士方々のみずからの意思に基づいてその事務所を置かれるわけでございます。強制的にどこそこへ事務所を置いてもらいたいというわけにはむろんまいりませんので、その辺が非常にむずかしいのでございますけれども、私どもとしましては、国民の多くの人に利用していただけるようにしますためには、過不足のないように各地に適当な人員司法書士あるいは調査士方々がおられることを希望はいたしているわけでございます。
  16. 後藤義隆

    後藤義隆君 この現在の司法書士会あるいはまた土地家屋調査士会は、何でしょうか、強制加入でしょうか。また、今度法律改正すれば、それが何か変わりますか。やはり強制加入ですか、任意加入ですか。
  17. 新谷正夫

    政府委員新谷正夫君) 現在の司法書士会あるいは土地家屋調査士会は、現行法上すでに強制加入のたてまえをとっております。司法書士会の場合におきましては、司法書士法の第十五条の三にその規定がございます。また、調査士会につきましては、土地家屋調査士法の第十五条の三にその規定がございます。いずれも強制加入制度をとっております。ただ、法人格がございませんために、先ほど御説明申し上げましたようないろいろの不都合が生ずるわけでございます。そこで、従来の強制加入のたてまえはそのままといたしまして、今回の法律改正におきましては、これらの会に法人格を与えていくというのが今回の改正趣旨でございます。
  18. 後藤義隆

    後藤義隆君 いまの会員のことについてもう一回お聞きいたしますが、強制加入になっておりますが、除名か何かの手続規定がありますかどうですか、調べたらわかるかもしれないが。
  19. 新谷正夫

    政府委員新谷正夫君) 会として除名するという規定はございません。
  20. 後藤義隆

    後藤義隆君 そうですか。それから、これは、そういうような業務を開始するために、試験あるいはまたその他の方法資格を付与することになっておると思うのですが、その関係はどうなっておりますか。
  21. 新谷正夫

    政府委員新谷正夫君) 司法書士につきましては、司法書士になろうとする人が事務所を設ける予定地法務局長あるいは地方法務局長選考によりまして認可を受けて司法書士になるわけでございます。土地家屋調査士につきましては、技術的な測量の問題もございますので、これは全国一律の試験によりましてその資格を与える。さらに、事務所を設けるべき地の法務局登録いたしまして、土地家屋調査士資格をもらうわけであります。
  22. 後藤義隆

    後藤義隆君 司法書士になろうとする者が、選考を経て認可されるということでありますが、それが全国的に統一されておるわけですか、それともその地方法務局長が自由にできるわけなんですか。そこはどうなんです、選考基準と申しますか、認可基準は。
  23. 新谷正夫

    政府委員新谷正夫君) 司法書士法の第四条によりますと、「司法書士となるには、事務所を設けようとする地を管轄する法務局又は地方法務局の長の選考によってする認可を受けなければならない。」というふうに規定されております。したがいまして、司法書士になりますには、法務局長あるいは地方法務局長が個別的に選考いたしまして、認可すべきかどうかということをきめるわけでございます。ただこの場合に、この司法書士資質向上等をはかりますためには、やはり全国的にある程度統一された選考方法によることが望ましいというふうに考えまして、実際は選考方法といたしまして、法律関係あるいは実務関係試験をいたしまして、その試験の結果を勘案いたしまして認可する取り扱いを行なっております。
  24. 後藤義隆

    後藤義隆君 その司法書士または土地家屋調査士でもって、大体その試験と申しますか、そういうようなふうな応募者の数とかまたは合格者という、そういうようなのは大体どんな状態でしょうか。
  25. 新谷正夫

    政府委員新谷正夫君) 司法書士土地家屋調査士に分けましてお答え申し上げます。  司法書士の場合におきましては、選考希望申し出をいたしまして、法務局長選考を受けました者の数が、昭和三十九年におきましては二千四百八十三人でございまして、そのうち筆記試験に合格いたしました者が二百七十人でございます。昭和四十年におきましては、選考を受けました者が二千六百二十五人でございまして、合格いたしました者が二百四十人でございます。さらに昭和四十一年におきましては、選考を受けました者が二千九百八十三人で、そのうち二百九十九人が合格いたしております。したがいまして、約一割の人が合格いたしておるという実情でございます。  それから土地家屋調査士試験でございますが、これは昭和三十九年におきましては、受験の申し込みをいたしました人が七千二百五十四人でございます。実際に受験いたしました人の数はこれより下回るのでございますが、申請をいたしました数はそのようになっております。そのうち合格いたしました人が三百二十五人でございます。昭和四十年におきましては、受験申請者が九千三百二十七人に対しまして、合格者が四百四十五人。昭和四十一年におきましては、受験申請者が一万二千六百二十人となりまして、合格者が七百六十八人でございます。このように、年々選考あるいは受験申請者の数がふえておるのが現在の一般の趨勢であると申されると思います。
  26. 後藤義隆

    後藤義隆君 認可されあるいはまた合格した場合に、そういう事業を開始する場合に、全国的にどこの会にでも自由に入会することができるのですか、そこの会はこれを拒否することができるのですか、そこはどうなんですか。
  27. 新谷正夫

    政府委員新谷正夫君) 先ほど申し上げました司法書士法の四条によりますと、事務所を設けようとする地を管轄する法務局長あるいは地方法務局長選考によって認可を受ける。この認可を受けますと、その地に事務所を設けるわけでございます。したがいまして、それぞれの法務局管内ごとにこの認可を受けなければならないたてまえになっております。ただ、先ほど申し上げましたように、法務省といたしましては、司法書士資質向上をはかり、内容を充実いたしますためには、一定の試験方式をとりまして選考一つ方法といたしております。したがいまして、これに合格するかしないかは、全国各地のいずれの地におきましても統一基準によっておるわけでございます。たとえば、甲の法務局におきまして選考の結果認可されたということになりますと、甲の地において事務所を設けることはむろん差しつかえございません。しかし、これを乙地事務所を設けて司法書士業務を行ないたいという場合には、やはり乙地において選考を受けて認可を受けなければなりません。ただしかし、甲地におきましてはこの統一基準という方式による選考に合格いたしております。この点は十分乙地法務局においても考慮の上で認可することになると思います。
  28. 後藤義隆

    後藤義隆君 この司法書士あるいは土地家屋調査士補助者という関係はどうなりますか。自由に許されるわけですか、どんなふうになっておりますか。
  29. 新谷正夫

    政府委員新谷正夫君) 司法書士にいたしましても、土地家屋調査士にいたしましても、その資格を持っております司法書士あるいは土地家屋調査士自身ですべての仕事を処理するということは、これはとうていできないわけであります。そこで、責任はあくまでも司法書士土地家屋調査士にあるわけでございますが、事務補助をする者が必要になってまいります。そうかと申しまして、これを無制限に認めますと、いろいろの弊害が考えられますので、現在それぞれの施行規則によりまして、法務局長の承認を得て補助者を置くことができるというふうにいたしまして、司法書士あるいは土地家屋調査士方々仕事が円滑にいくように配慮をいたしておるわけでございます。
  30. 後藤義隆

    後藤義隆君 ことに司法書士業務関係でありますが、今度のように改正すれば弁護士法との関係は抵触しないかどうか、その点について。ことにこの第一条の改正する「作成し、及び登記又は供託に関する手続を代わって」云々というようなふうになっておるが、そこの関係はどうなりますか、弁護士法との関係は。政府委員新谷正夫君) 現在の司法書士法におきましては、この司法書士業務は、他人の嘱託を受けまして、裁判所検察庁法務局に提出いたします書類本人にかわって作成することがその業ということになっております。しかし、書類を単に作成するだけではなくて、これをたとえば登記所窓口に持っていって本人にかわって申請手続をとるということも付随の業務として差しつかえないという解釈に立って運用されてきたわけでございます。一方、土地家屋調査士のほうにおきましては、「土地家屋調査士は、他人依頼を受けて、不動産の表示に関する登記につき必要な土地又は家屋に関する調査測量又は申請手続をすることを業とする。」、このようになっております。調査士法のほうにおきましては、ただ測量調査のみならず、それに基づく申請手続もできるというふうになっておるのでございます。その辺が司法書士法土地家屋調査士法の間にアンバランスが考えられますので、現在の司法書士法解釈運用実態に即し、かつ土地家屋調査士法との均衡を考えまして、作成しました書類登記所に持っていってその手続をすることを規定の上に明らかにしようというのが今回の改正一つでございます。ただ、この場合におきまして、司法書士業務は、先ほど申し上げましたように、本人依頼を受けまして書類作成する、それをかわって登記所窓口に出してそれの受否を決定してもらうということでございます。ところが、弁護士業務は、これはもうすでに御承知のとおり、紛争の当事者その他の関係人依頼を受けまして、高度の法律知識運用いたしまして、私人間の権利義務を創設したり、変更したり、あるいは確認する。さらにまた、法律上の紛争の解決をはかるために、高度の法律知識を駆使いたしまして、法律判断に基づいた法律事務を行なっておるのであります。そういう意味で、司法書士仕事弁護士仕事はおのずから差異があるわけでございまして、今回の司法書士法改正につきましては、弁護士法との抵触はないものと考えております。なお、この点につきましては、日本弁護士連合会の意見も徴しまして、私どもの考え方についての賛同をいただいておる次第でございます。
  31. 後藤義隆

    後藤義隆君 この規定によって見ますと、司法書士認可について新たに手数料を徴収するようなふうになっておるが、その関係は、どうしてそれが必要なわけでしょうか。
  32. 新谷正夫

    政府委員新谷正夫君) 司法書士認可につきましては選考によるのでございますが、その選考一つ方法といたしまして、先ほど申し上げましたように、筆記試験方法によりまして全国的にこれを統一して運用いたしております。これをばらばらに運用いたしますことはいろいろの弊害を生じますので、先ほど来申し上げておりますように、統一試験の形をとりまして運用いたしておるのでございます。ところが、年々この選考を受ける人の数がふえてまいりまして、先ほど申し上げましたように、四十一年におきましては司法書士認可申請者が三千人ということになっておりまして、これは相当の負担になるわけでございます。試験問題もかなりの数にのぼっております。民法、商法、刑法、民事訴訟法司法書士法、あるいは不動産登記法供託法と、各必要な法律の分野にまたがりましてかなりの数の問題を提起をいたしておるのでございまして、この試験問題の作成選考等につきまして、やはり相当の経費がかかるのでございます。土地家屋調査士試験につきましては、受験手数料を納めていただくことに現行法上なっておるようでございますが、司法書士につきましてはそういうことがございませんために、私どもとしましてもこれは実行上いろいろ困難に遭遇いたすわけでございます。そこで、今回の改正によりまして、認可のための選考についての手数料を徴収し得るようにいたしたいということにいたしたのでございます。大体この手数料も、現在考えておりますのは、五百円くらいのところがまず妥当なところではあるまいかというふうに考えておる次第でございます。
  33. 後藤義隆

    後藤義隆君 いまの手数料の額は五百円くらいが妥当でないかと思うというお話があったのですが、土地家屋調査士はすでに手数料も徴収しておるのだと思うが、それは幾らですか。
  34. 新谷正夫

    政府委員新谷正夫君) 土地家屋調査士の場合にも手数料を徴収しておりますが、これは現行法上五百円になっております。
  35. 後藤義隆

    後藤義隆君 司法書士行政書士はどんなぐあいに違いますか、また両者を一つにまとめるわけにはいかないもんですか、どうですか。もしまとめるとすれば、どういう不便があるわけですか。
  36. 新谷正夫

    政府委員新谷正夫君) 司法書士法は、これは法務省所管になっております。法務省でこの管理をいたしておるわけでございます。行政書士法は、これは自治省の所管でございます。実際の運用都道府県知事に委任されておるようでございまして、業務内容も、司法書士のほうは、裁判所検察庁法務局に提出する書類、いわゆる広い意味での司法機関に対する書類作成業務を営んでおるのでございますが、行政書士は、都道府県あるいは市町村等一般行政事務に関する申請書類、あるいは許可認可等のいろいろの仕事がございますが、こういった関係書類作成に当たっておるのでございまして、担当いたしております仕事内容が全く違うわけでございます。したがいまして、行政書士司法書士とを一本化するということにつきましては、これは相当の困難があろうかと考えます。
  37. 後藤義隆

    後藤義隆君 司法書士並びに土地家屋調査士については、それぞれ何か不正が行なわれるようなことがあり得るのじゃないか、またそれに対する監督はどういうようなぐあいにされておりますか、だれが監督するのか、また現にどういう監督をしておるかという点お聞きしたいのですが。
  38. 新谷正夫

    政府委員新谷正夫君) 司法書士あるいは土地家屋調査士関係不正事件というもの、これは後藤先生の御指摘のように、まことに遺憾なことでございますけれども、現在あとを断たない状況でございます。これは認可を受けました司法書士あるいは登録を受けました土地家屋調査士自身不正事件もございますが、さらにその補助者による不正事件というものもかなりあるのでございます。私どもといたしましては、こういった不正事件がなくなるように、極力会のほうにも連絡いたしまして、会を通じてその指導をお願いいたしておるわけでございます。ただ、現在の司法書士法昭和二十五年に全面改正になったわけでございます。従来は、司法書士法務大臣監督するという一般監督規定法律規定してございました。しかし、現在の司法書士法におきましては、会員指導育成会そのものが自主的に行なうというたてまえになっておりまして、法務大臣のいわゆる監督権というものは現行法上はないのでございます。したがいまして、私どもといたしましては、そういう意味での監督権の行使と、一般行政指導的な意味での監督権の行使ということはできませんけれども、やはりこの法律をあずかっております立場といたしまして、会を通じて司法書士資質向上あるいは指導育成、こういったことをお願いいたしておるのでございます。もちろん、不正事件がございますれば、それに応じまして懲戒処分あるいは認可の取り消しというふうな方法もございます。これは法務局長がやることができ、また法務大臣がこれを監督してやることができるわけでございますが、直接に監督指導ということはできないのでございます。  そこで、司法書士あるいは土地家屋調査士による不正事件でございますが、これはどういうものがあるかと申しますと、各種の報酬の過剰収受——報酬を規定以上多く取るというような案件、あるいは贈賄事件、あるいは登記所に出します書類を偽造いたしました事件、あるいは登録税として依頼者から預かっております金銭を横領するというふうな事件がおもなものでございます。  その状況を数字で申し上げますと、司法書士につきましては、昭和四十年におきましては四十四件ございます。このうち認可の取り消しをいたしましたものが二件、業務停止をいたしましたものが十七件ということになっております。四十一年におきましては合計四十五件ございました。このうち認可取り消しをいたしましたものが七件、業務停止をいたしましたものが二十二件でございます。土地家屋調査士につきましては、昭和四十年におきましては二十五件の不正事件がございました。このうち登録の取り消しをいたしましたものが一件、業務停止をいたしましたものが六件でございます。昭和四十一年におきましては十二件ございますが、登録の取り消しをいたしましたものが二件、業務停止をいたしましたものが六件ということになっております。
  39. 後藤義隆

    後藤義隆君 いま司法書士手数料の取り過ぎというふうなお話もちょっと出たのですが、司法書士土地家屋調査士手数料というのは何できまっておるんでしょうか。
  40. 新谷正夫

    政府委員新谷正夫君) 司法書士会あるいは土地家屋調査士会の会則がございます。これは法務大臣認可を受けましていろいろの事項を規定しておるのでございますが、その中に報酬に関する規程を定めるようになっております。これによりまして司法書士の報酬が定められておりますが、法務大臣認可にあたりましても、全国的に均衡を考え、地域的な特殊事情ももちろん考慮いたしまして、妥当な手数料額を定めるように十分配慮いたしております。おおむね全国的にこれが統一が保たれているわけでございます。いろいろ手数料を多く取り過ぎたというふうな非難も一部にはあるのでございますが、これにつきましては、法務局を通じまして実情を十分調査いたしまして、先ほど申し上げましたような法律に違反するということになりますれば、懲戒あるいは認可の取り消しというふうな処分をいたしておるわけでございます。
  41. 浅井亨

    委員長浅井亨君) 本案に対する質疑は、本日はこの程度にとどめます。  速記をとめて。   〔速記中止〕
  42. 浅井亨

    委員長浅井亨君) それでは速記を起こして。  次に、検察及び裁判の運営等に関する調査を行ないます。御質疑のある方は順次御発言を願います。
  43. 久保等

    久保等君 法務省で他省と違って臨時職員を非常に大量にかかえておられるような状況にあるようですが、それらの問題について若干お尋ねをしますと同時に、法務省としても臨時職員の定員化の問題について格段の御努力を願いたいと思うのですが、その質問に入ります前にちょっと、先般この委員会で四十二年度の予算案について御説明があったのですが——予算案というよりもう予算ですが、御説明があったのですが、その中に、本年度三百五十名の定員増を計画しておられるようですが、その定員増も何か凍結欠員の解除の方法でもあって振りかえていくのだというふうな御説明があったのですが、その凍結欠員というのはどういう状況になっておる者をさすのか、若干御説明をひとつ最初に局長のほうからでも願いたいと思うのです。
  44. 新谷正夫

    政府委員新谷正夫君) これは一般的な問題でございますが、凍結職員と申しますものは、閣議決定によりまして、国家公務員の欠員が生じました場合にこれを補充しないことという原則が確立されたのでございます。これはいろいろの配慮によるものと考えますが、その結果、欠員が生じますと、そのまま事実上は自然減になってしまうのでございます。たとえば、ある組織につきまして十名の欠員ができたという場合に、これは補充ができません。したがいまして、五百人の定員のところ十名の欠員ができますれば四百九十人の定員と同じ結果になるわけでありまして、この十名は私ども行政機関としては採用によって埋めるということはできない、これがいわゆる凍結というふうに一般的に御理解いただければいいと思います。
  45. 久保等

    久保等君 現在、凍結欠員はどのぐらいになっておるんですか。
  46. 新谷正夫

    政府委員新谷正夫君) 法務省全体の凍結欠員は、私のほうではちょっといま把握いたしておりません。いますぐ調べましてお答え申し上げます。
  47. 久保等

    久保等君 何か掌握できる、わかっておる部面もあるんですか。
  48. 新谷正夫

    政府委員新谷正夫君) これは各組織ごとに違いますので、それぞれの組織のものを総括して取りまとめておりますのは官房の人事課でございますので、人事課のほうへいま照会いたしましてお答え申し上げます。
  49. 久保等

    久保等君 いずれにしても、四十二年度の凍結欠員の解除によって三百五十名の増員を行なうということですから、それより以上に凍結欠員があるんだろうと想像するんですが、そうすると結局、三百五十名の増員といっても、かつての定員であった者が復活といいますか、定員としてまあ帰ってくるというだけの話で、本来の定員からさらに増員をするという積極的な増員ということにはならぬような性格のようですね。
  50. 新谷正夫

    政府委員新谷正夫君) 原則的には、久保先生のおっしゃるとおりでございます。従来欠員補充できなかったのを補充のできるようにするというのが凍結の解除でございますので、定員法上定められました定員の数には変動がなくて、ただ運用上の問題として押えられておったものがもとに復する、こういうことになるわけでございます。
  51. 久保等

    久保等君 数がどうもはっきりしないと、あまり的確な質問もできないんですが、そこらはどうもしかし、われわれ外からながめておって、ちょっと不可解なんです。もちろん、冗員であり、定員として必要ないなら、これはまあ当然そういったものは削減すべきだと思うのですが、この欠員そのものを埋めないで凍結してそのままやっていくというやり方そのものが、一般的な制度というか、運用の問題でしょうが、何かちょっと割り切れないものを感じますね。実際の当事者として見た立場からいくと、どういうふうにお考えになるのですか、この凍結欠員というものに対して。
  52. 新谷正夫

    政府委員新谷正夫君) これは、私まあ民事局長の立場で申し上げます。ということは、所管法務局についてというふうな限定した趣旨でお答え申し上げます。確かに、先生のおっしゃるように、仕事がふえているにかかわらず欠員が自然現象として起きた場合、これを押えられて実質的な増員がはかられないということは、法務局の場合には非常に不都合が生ずるわけでございます。ただ、欠員ができましても、何とかこの仕事の性質、内容によりましてはがまんのできるものもないではないということが考えられます。そこで、これは法務省全体として考えました場合に、これは法務大臣の御裁量によりまして、緊急の度合いその他をいろいろお考えになりまして内部の調整をはかられるということも、これは可能でございます。現在、凍結の人員をそのまま押えてございますが、職員の配置転換によって——職員を必要とするところへは不要なところから配置転換を行なってその緊急の事態に対処するようにという一般の政府の指導方針がございます。ただ、予算の段階におきまして私ども増員の要求をいたしました場合、何と申しましても、先ほど申し上げましたような凍結解除という大きなワクと申しますか、原則と申しますか、こういうものがございますために、私どもとしては定員法上の定員をふやしていただきたいのでございますが、政府全体の方針として先ほども申しましたように凍結の範囲内でということでございますれば、これはわれわれ行政機関の職員としてはこれに服さなければならないというジレンマが一つございます。だだ、法務省の組織たくさんございます。法務局も、検察庁、あるいは保護観察所、矯正関係の施設、入管、その他いろいろございます。いずれも人員が足りなくて困っておるのでございますけれども、まあ法務局の場合には事件の増加が非常にはなはだしいわけでございます。そこで、予算の内示に際しましては、法務省の内部で凍結の差し繰りをして必要なところへこれを回してはどうかという——これは政府の一般方針でございますが、そういう方針に従って予算の面での内示があったわけでございます。法務大臣にもいろいろ御配慮をいただきましたのでございますが、法務局の場合には特に職員が不足しておるという実態に即しますように、現在法務局の凍結定員が四十二名でございますが、この四十二名を解除いたしましただけではとうてい法務局事務量に対処するだけのものではございません。そこで、ほかの組織から凍結分を借りまして、合計二百名を採用して差しつかえないということになったのでございます。したがいまして、法務局の本来の凍結分四十二名と二百名との差の百五十八名、これは法務省各組織の内部のやりくりによるものではございますけれども法務局の側から見ますとそれだけは純増ということになるわけでございます。設置法上、法務省の定員は全体のワクが規定されております。そのワクの中で法務局人員を実質増に持っていくことは、いま申し上げましたような方法で可能なわけでございます。大臣の格別の御配慮によりまして、法務局の場合については特に四十二名の凍結解除のほかに百五十八名の人員増が四十二年度において認められておるというのが実情でございます。
  53. 久保等

    久保等君 それじゃ、この問題については、なお現在の凍結欠員の状況等具体的な数字で御説明を願って、後ほどまた質問しますが、一応次へ進めて質問したいと思うのですが、例の臨時職員ですが、これが私の手元にある資料等を見ても千名をこえるような多数の臨時職員がおられるようですが、もちろん、臨時職員が必要なことは、特に法務局関係でいろいろ登記事務等で必要な事情もわかるんですが、ただ、ずっと過去を振り返って見ても、年々若干ずつ臨時職員がふえるような傾向にあるような傾向をたどっているんですが、本来臨時職員というものは、これはもうきわめて短期間のつなぎに雇用する場合に限られる例外的な採用のしかただと思うのです。そういう立場から見ると、少し数が多過ぎるし、そういったことに対して具体的にはどういうふうにこの問題を今後処理されようとしているのか、まあそこらの基本方針をまず最初に伺って進みたいと思うのですが、どんなふうにこの臨時職員の問題を見ておられるのか、御答弁願いたい。
  54. 新谷正夫

    政府委員新谷正夫君) 法務局業務でございますが、一般の経常事務は別といたしまして、現在、事務量の激増に対処いたしますために、制度の合理化あるいは事務の簡素化ということをいろいろ計画いたしております。制度の合理化と申しますと、現在登記所で管理いたしております仕事に、登記事務土地台帳と家屋台帳の事務がございます。これは御承知と思いますが、昭和二十五年に国税から地方税へ移管されましたときに地租法等が廃止されまして、その際に税務署の保管しておりました土地台帳、家屋台帳が法務局に移管になったのでございまして、これは不動産の保存登記をいたします際に、台帳に記載されております物件を基礎といたしまして、それをまず登記簿の表題部に登記いたしまして、これを基礎として所有権の登記あるいは担保物権、用益権の登記が行なわれる、こういう仕組みになっておりましたので、法務局が移管を受けました以上は、二つの制度をそれぞれ別個のものとして維持していくよりは、むしろこれを一本化して合理化する必要があるのではないか。そのことによって、国民の負担が非常に軽減いたしますし、仕事も能率化いたすわけでございます。そういう趣旨から、登記制度と台帳制度との一元化という措置を講じまして、これは不動産登記法その他の関係法律改正をいたしまして、昭和三十五年から現在実行に移しているのでございます。要するに、現在の台帳制度と不動産登記制度とを一つのものにいたしまして、いろいろの面での重複不便を避けて合理的な事務の簡素化をはかっていこうというのがそのねらいなのでございます。ただ、その作業をいたしますにつきまして、経常的な登記事務あるいは台帳事務と違いまして、従来の台帳用紙に書いてありますことを登記簿に引き写す作業等が中心でございます。したがいまして、これはまた全国千七百余りあります法務局の本局、支局出張所すべてにわたって計画的に実施いたしております。各登記所ごとに定員の職員として採用してその仕事をやってもらうにはふさわしくない。どうしてもこれは臨時の仕事になるわけでございまして、そこでその一元化のために臨時職員を採用いたしておるのでございます。さらにそのほかに、登記簿が戦後非常に粗悪用紙によって作成されて、これが機械化するに非常に大きな支障を生じておる。機械化と申しますのは、複写機によって登記簿の謄本、抄本をつくろうという場合に、粗悪用紙のために複写がうまくできません。そこで、いい紙質のものに書きかえまして能率的に複写ができるようにという趣旨で、これも書きかえ作業でございますが、そういったことをいたしております。さらに、商業登記簿が非常に閲覧にもまた事務の取り扱いにも不便な点がありますので、これも新様式に改めましてその様式に直していく、こういった問題、あるいはさらにまた、農地報償制度が先般実施されました、その証明事務、これなんかもすべて臨時の仕事でございます。そういった関係で、法務局仕事がふえるに従いまして、こういった臨時職員がだんだん増加してまいったというのが実情でございます。そこで、私どもとしましては、こういった臨時の仕事でございますから、臨時は臨時なりに、政府の方針に従いまして、なるべく短期間にその仕事を処理するようにという方針でやっておるわけでございますが、しかし、有能な職員は臨時職員と申しましても非常に練達な職員になる素質もございますし、また長い経験の間にはそういうふうに一般職員と差別のつかないほどの有能な職員も出ております。こういった人たちをどういうふうに待遇したらいいかということは、確かに御指摘のように大きな問題でございます。現在の公務員の採用につきましては、もう申し上げるまでもなく、人事院の初級、中級、上級の試験を合格した者の中から採用するというたてまえになっております。臨時職員を直ちに右から左へ定員化することは、これは困難でございます。しかし、そうは申しましても、法務局といたしましては、せっかく職場にもなれた職員でございますから、できるだけ機会をつかまえ、あるいは方法を考えまして、定員職員に組み入れるような方向で努力はいたしておるわけでございます。毎年相当数臨時職員が欠員補充の承認を得まして定員職員に組み入れられているというのが実情でございます。今後も、私どもといたしましては、そういう方向でできるだけ臨時職員を定員職員として安定した地位が与えられますように努力をいたしたいと考えておる次第であります。
  55. 久保等

    久保等君 その定員に繰り入れることについて、年々やられたあとを振り返ってみましても、最近数年間の経過をながめてみると、年々歳々数が減少してきているのですね。だから、いま言われる御答弁の、努力をしておるとはいうのだけれども、ここ数年間をとってみても、だんだん減ってきておる。すなわち、三十九年の場合には、試験に合格して繰り入れられたような場合、これは比較的問題ないと思うのですが、選考でもって定員化する場合の数字を見ますと、三十九年が五十六名、それから四十年も大体同じですが五十九名、四十一年ががたっと減って二十五名というような数字になってまいっておりますし、さらにさかのぼって三十五年から三十八年ごろを見ると、年に平均百人余りぐらい定員化しておったような実績もあったようですが、そういったような点を見ますと、なかなかこういったことでは定員化といっても実際問題として、これは遅々として、定員化どころじゃなくて、むしろ臨時職員のほうがふえているのじゃないかというふうな感じもするのですが、ここらをもう少し思い切って選考でもって定員化することができないのですか、どうなんですか。
  56. 新谷正夫

    政府委員新谷正夫君) 原則といたしましては、試験に合格していただくことが原則でございますが、人事院の名簿を提示を受けることのできないような場合に、相当期間法務局につとめ、また勤務成績も良好であるという者につきまして、個別的に人事院の承認をいただきまして定員職員に採用することを許されているわけでございます。ただいま久保先生のおっしゃいました四十一年度の定員組み入れの人員は、確かに三十九、四十と比べますと少ないのでございますが、これは四十一年度分につきましては十二月十三日ごろまでの数字でございます。その後の採用もあると思うのでございますが——この表では、その時点におけるものが十二月一日現在でございますので、その後の数字の変動がさらにあるはずでございます。したがいまして、この数字よりももっと多くなるだろうと思うのでございます。私どもとしましては、できるだけ可能な限り定員職員に組み入れるように努力はいたしておるわけでございます。たとえば、ある地方で人事院の名簿の関係でどうしても採用できないという場合には、ほかの法務局に一応採用いたしまして、その法務局で人事院の承認を得て定員職員に組み入れるというふうな措置まで実は講じているのでございまして、でき得る限り現在の臨時職員の待遇をよくするという努力はいたしておりますし、今後もそういう方向でやる所存でございます。
  57. 久保等

    久保等君 一つには、やはり賃金日額がきわめて低い、これは現状に合わないのじゃないかと思うのですね。これは大蔵省との関係がある問題ですが、現在予算上認められている一体賃金日額というのは幾らですか。
  58. 新谷正夫

    政府委員新谷正夫君) 昭和四十二年度におきましては、一日六百円の平均単価になっております。四十一年度におきましては五百五十円でございましたが、五十円増額になったのでございます。
  59. 久保等

    久保等君 これ六百円になっても、現状から見ると、やはり安過ぎると思うのです。日額だから、もちろん一ヵ月まるまる三十日なり三十一日分もらえるわけではない。当然祭日なり日曜日があればその日はもらえないわけですから、金額にするとおそらくやはり一万五千円前後くらいにしかならぬと思うのですね。しかも、非常に何かほかに魅力がある職種なら、これまた多小賃金が安くてもつとめる希望者もいるかもしらぬけれども、賃金日額だけこっきりもらって、それで身分はもちろん不安定、いつ首切られるかわからない一まあ首切られるというか、臨時ですからいつやめてくれと言われるかわからぬし、またそのことが日額賃金の場合のむしろ性格ですからね、そういう性格のものなんですから、非常にその日その日のいわゆる賃金もらって暮らしていかなければならぬというような不安定な職種であればあるほど、私はあまりにも六百円では安過ぎると思うのですね。特に大都会なんかの場合だったら、六百円——七百円でも今日では希望者はないと思うのです。ちょっと大学生あたりのアルバイトでも、八百円、九百円あるいは千円近い少なくとも日当を出しておるのが現状じゃないですか。そうすると、ただ単につじつま合わすために六百円とか、五十円上げたとかいう程度の扱いをしておったのでは、実際の執行者の立場からいうと、現実には合わぬから苦肉の策を講ずるようになって、金額は六百円になっておるけれども、実際の支出はまた別なんだということになってくると、せっかくある程度の基準を置いておきながら、それが基準になっておらない現状じゃないかと思うのです。まずこの賃金の安いこともいろんな矛盾を生んでくると思うのです。すなわち、あまり優秀でない人を雇わなければならぬ、あるいは特別な事情のある人でなければ来てくれないというようなことになるものだから、これまた、試験を受けてもらうといっても、試験もこれなかなかパスするわけにはいかぬというような問題も、また悪循環を繰り返すような形になってくると思うのです。だから、まず賃金の日額をもう少し今日の実情に合ったように引き上げていくこと、これも一つの解決の方法だと思うのです。だから、五十円前年度よりも上げたというものの、六百円という金額は、一体月額にならしたら、個人個人の現実にもらう金額にするとどのくらいになるかというと、いま言ったように一万五千円ですね。一万五千円で一ヵ月働かないかといって来る人は、おそらく東京なんかだったらほとんど絶無、御婦人なんかの特別なアルバイト的なような意味でやっていかれようとする人なら別だけれども、少なくとも、生きがいを感じ、仕事にある程度興味を持って働こう、できればひとつ将来定員化してもらって法務省で働きたいという希望を持った人が入ってくることはちょっと期待できないと思うのですね。これらの問題については、大きな問題ですから、一民事局長に要求する問題じゃないですけれども、大臣の——私は、こういった臨時職員に対する日額賃金なんかの問題について、これは政府そのものが、よほど現在の経済情勢なり、それから一般の雇用状況なりを考えながら、こういった問題とやはり取り組んでいかなければならぬ問題だと思うのです。小さい問題のようだけれども、実は非常に大きな問題だと思うのです。あまりにも現状に合わないような単金で予算を組んでみても、実行できないと思うのです。実行しようとすれば、要するに人が来ないということになるわけですし、もしたまに来るとなると、率直に言ってどうも一人前とは言い得ないような人が来ることになるだろうと思うのですが、それでまたやっぱり仕事が非常に支障を来たすということになると思うのです。六百円程度では話にならないと思うのですが、こういったことに対して、やっぱり政府として大いにひとつ考えてもらわなければならぬ問題だと思うのですが、どんなふうにお考えでしょうか。
  60. 田中伊三次

    ○国務大臣(田中伊三次君) 先生お説の日額の問題につきましては、本年も苦労をしたのでありますが、六百円という限度にとどまったわけでございます。これはお説のとおりと考えますので、今後十分に実情に沿うようにこれを引き上げることに努力をしていきたい。それから、ただいまのおことばにもありましたように、臨時職員ではありますけれども、それは地位が臨時職員であって、朝から晩まで勤務中にやっております仕事内容は定員化された職員とちっとも変わりはないというような者が多数でございます。いかにも臨時職員らしい者もございますが、そうでない者が多数にございます。それから、これらのつとめております者の心情を、どうしてそんな少額の金額で一日働いてくれておるかということをだんだんと調べてみますというと、将来は定員化していただくことができるんだと、国家試験には合格せぬでも、選考によってそういう、一生懸命にやっておればそれを認めてもらって、選考による採用をしていただくことができるんだというようなことに希望を抱いて一生懸命に働いておるという臨時職員相当数おります。そういう者につきましては、私からも人事院にすでに話を通じておるのでありますが、これは極力欠員の生じまするたびにこれをひとつ、むろん国家試験に合格してくれればこしたことはございませんが、そうでない場合におきましても、日ごろの仕事の実績にかんがみまして、またその臨時職員としての勤務の年限にかんがみまして、これを選考による採用ができますように、この点についても人事院の承認を求めることに一段の苦心を払っていきたい、こう考える次第でございます。理想を申し上げますと、臨時職員は漸次減少していって、定員化される数がなるべく漸次年々ふえていくということが理想でございますが、一方の臨時職員の数が年々減っていくという方向は、この仕事の増に伴いまして、なかなかそうはいきにくいかとも存じます。これを定員化する方向に、年々これがふえてまいりまするように、せっかくの努力をしていきたいと考える次第でございます。
  61. 久保等

    久保等君 この臨時職員の問題については、私はやっぱり大きく分けて問題が二つあると思うんです。  一つは、いまの大臣の御答弁にも含まれるわけですが、要するに現在ある臨時職員の問題ですね。このことについては、先ほど来申し上げておるように、何とか一日も早く、いわば従来までの臨時職員に対するあと始末といいますか、そういうような意味を含めて、緊急にひとつ処理をしてもらいたい。というのは、採用時にあたって、六ヵ月以上おつとめになれば将来はひとつ定員の中に組み入れるようにしますからひとつ働いてもらえぬだろうかというような話をされた事例が相当あるようです、実情を調べてみますと。そういうことになってきますと、これはもう当然、私は、いろいろ事情はあるでしょうけれども、それこそ大臣あたりのひとつ政治力を発揮していただいて、ぜひそういったものについては、ぜひもう定員化するんだということでひとつ御努力を願わないと、個々のやっぱりケース、ケースとしてとってみますと、中には、うそをついたのじゃないかと、一体いつまで臨時の形でほっておくんだというようなことになってきますと、これは私は人道上の問題にもなってくると思いますし、しかも賃金が非常に安いというようなことだと、まあむしろ賃金が臨時だから高いんだと、定員の場合は、定員化されれば身分のほうは安定するから多少賃金は安いけれども臨時職員の場合は高いんだというなら、これはむしろ常識的に普通だと思う。臨時職員であり、しかも賃金は非常に安いということになってくると、これは一体何が希望かというと、将来できるだけ早い機会にせめて定員化してもらって、お役所つとめをしているんだとせめて世間に言えるということに希望を持ち、期待をして私はつとめている人だと思うんです。それが一こうに行く先まっくらだということだと、いま申し上げたような事例などを見ると、これは明らかに法務当局としても、極端なことを言えばうそをついて、その場限りで人をつってつとめさしているということになるわけですから、だから、従来からの臨時職員に対する問題については、ぜひ、試験を受けてパスすりゃこれは非常にけっこうなことだと思うし、あるいは、そういうことで御本人にも御努力願うとして、そのことに対してあまり大きな期待をかけられないとすれば、やはり政治力で選考の形で定員化するように最大の重点を置いて御努力願いたい、これがひとつ。  それから、これから新しく採用する臨時職員については、やっぱりけじめをある程度きちっとする必要があるのじゃないか。人手が足りないものだから、何かつい甘いことばで、期待を事実持ってもらって実現できる自信があればけっこうだけれども、あまり確たる見通しもないのに、何か長期的に雇って、行く行くは何か身分が安定するように思わせるような状況のもとで採用するというようなことは、きちっとけじめをつけてやめて、これは臨時の仕事なら臨時の仕事ですがひとつつとめてもらえないでしょうかというようなことで、条件を事前に明示すべきだと思う。何か前に、昭和三十六年の閣議でもはっきり決定しておられるようですがね。要するに条件を明示しろ、それから期限も明示しなさいということになっているんですが、これもさっきの賃金の安いことにこれは善意に解釈すれば関係がある。賃金が非常に安いから、そんなことを言ったらだれも来やしない。そこで、多少甘いような、期待を持てるようなことを言って、現場に人を採用する。したがって、いつかは定員化してもらえるという期待を持って入ったところが、実際はそうなっていないということになってまいっておるんです。だから、一がいに悪意があったとは言いませんが、しかし、やっぱり雇用契約というものは事前にはっきりすべきところははっきりしないと、むしろあたたかみのあるような気持ちのはからいだったと思ったことが、結果的にはあだになるということになると思う。したがって、その点については、今後非常にむずかしい面があると思います。いま言ったように、物価高の時代に、生活の非常にしにくい時代に、六百円でひとつ来てくれませんかと言ったら、おそらく来る人はいない。したがって、人を何とか確保しなければならないという立場から言えば、実は非常に苦しいというふうなことで、条件をぼかして、何とか将来は将来のこととして考えますからさしあたって来て手伝ってもらえませんかという話になるのじゃないかと思うんです。しかし、そこら辺はやっぱりはっきりする必要があるのじゃないかと思う。これが今後の臨時職員を採用するにあたっても問題だと思う。ところが、従来の、いままでの実績を見ると、そこら辺が非常に不明確であった。むしろ逆に、はっきりと将来は正式の職員として採用しますから働いてくれないかというような話まで持ち出されているケースが相当あるようです。だから、今日までのところではいま申し上げたような経緯もありますから、大臣のところでひとつ格段の御努力を願いたいと思うんです。  それから、この臨時職員については、交通費だとか、それから特に休暇なんかの問題についてはどういうことになっておりますか、全然見ておらないようですが。
  62. 新谷正夫

    政府委員新谷正夫君) 臨時職員につきましては、この給与が日々雇用の形式をとっております。したがいまして、交通費を支給するとか、あるいは休暇を与えるとか、定員職員並みの取り扱いはできないわけでございます。現在のところはそういうことはいたしておりません。
  63. 久保等

    久保等君 しかし、非常勤職員という形の者には、ある程度交通費なり、それから有給休暇といいますか、そういったものについての扱いをやっておりますね、局長。
  64. 新谷正夫

    政府委員新谷正夫君) おそらくそれは、法務局で現在採用しております臨時職員のような形のものではなくて、たとえばある委員会の委員とか、その他常時勤務を要しない職員で、給料は月額できまっておるというふうな場合ではないかと推測いたすのでございます。その場合と、この現在の臨時職員の場合と、多少事情を異にしております。これは毎日一日ずつ雇用していくというたてまえでございます。休暇というふうなことは、臨時職員については考えていないわけでございます。
  65. 久保等

    久保等君 それも形式的な解釈をすればそうだと思うんですけれども、しかし、実際問題として実情を考えた場合に、それもきわめて形式的な扱いで、あたたかみのあるというか、非常に情けのあるような扱い方ではないわけですね。一日一日といっても、完全な、それこそ先ほど大臣のお話にもあったように、いわゆる日雇い労働者、これでも御承知のようにだんだんと最近は年末のもち代の手当を出すとかいうようなことで、だんだんある程度働かない分に対する何らかの給与というものをやってきているわけですし、だんだんそれも積み上げてきているような状況にあるわけです。それはここで答弁しにくい面もあろうかと思いますが、しかし、日々といってみても、それはなるほど形は日々であるが、長いものは一年以上あるいは二年以上という、実質的にはその本人にとってみれば法務省のほうにつとめている、法務局のほうにつとめている、毎日とにかくつとめているんですからね。だから、そういう実態を考えた場合に、これはやはり扱い方としては私はむしろ不合理だと思うんです。形は日々雇っているんだから、あるいは臨時の職員だからということではなく、実態の雇用関係はどうかというと、先ほども申しましたように、仕事そのものは定員化された人と同じような仕事をやっている。勤務も相当期間にわたっている。雇用の形式は別として、実態というものはやはり相当の年月にわたって勤務しておる。おまえは一日も休みがなくたっていいんだと、ほかの人には交通費は出す、おまえには交通費は出しませんよ、こういう人の扱い方は、私は非常に不合理であるし、また非常に情け容赦のないやり方だと思うんですね。非常に形式的な問題があると思うんですよ。特に、法務省のほうでやっておられる臨時職員というものの実態をお考えになったときに、仕事そのものは少なくとも数年間はある——五年か六年か十年か知らぬけれども、とにかく数年間はあるという前提のもとで臨時職員をお雇いになっているんですからね。そういう問題を考えた場合に、いまの経済情勢、いまの社会情勢の中では、そういうものの考え方では私はやはりちょっと適当でないと思うんです。したがって、方法としては、法務省単独にやれる問題じゃないですから、むつかしい問題はあると思うんですが、そこらのやはり問題も片づけていくような前向きの姿勢で取り組んでいただかないと、実際人を採用しようと思ってもやはり人が来ないということに落ちつくんですよね。しかしそのままほうっておくわけにはいかぬから、何か苦肉の策を講ずるということになると、少しやかましく言うと、問題が起こってくるようになるんです。だから、そこのところをやはり現状に合うようにやっていかなければならぬと思うんですが、これは民事局長のもとだけでやれる問題じゃないと思います。これもやはり大臣の特別な御努力を願わなければならぬと思うんですが、そういう交通費にしたって実際かかる金なんですからね、休暇にしたってぜいたくでも何でもないんで、年百年じゅうあなたは臨時職員だから毎日働くのが当然なんですというような扱い方は、これは私は非人道的だと思うんですね、やり方として。これらの問題についても何かやはり方法をお考えになるように、大臣のほうでもひとつ御努力願いたいと思うんですが、いかがでしょうか。
  66. 田中伊三次

    ○国務大臣(田中伊三次君) 十分苦心して、御期待に沿うようにいたします。
  67. 久保等

    久保等君 それから、法務省というところは、法務省の性格もあるんでしょうが、特に労務管理なんということばはおたくの場合にはあまり使うことばじゃないのかもしれませんが、人事管理というのか、そういった面について、一般の官庁なり、特に一般の現業官庁なりとは違った気風があるように思うんですが、外で見ておっても、何か冷ややかなものを感ずるような気がするんです。それは要するに、検事という身分を持っておられた方々がほとんどだというようなことになってくると、特別な有資格者でもあるし、特別なコースを歩んでこられた方々、こういった方々が人事管理なり労務管理をやっておられる。そうすると、実際の一般職員の人たちとはやはり違った気風の中に育っておられるもんだから、これは別に悪意があってという意味ではなしに、自然にそうなっておるんだろうと思いますが、それだけやはり一般職員の気持ち、一般職場におけるやはり気風というものも十分に理解していく必要があるんじゃないかと思うんです。いろいろ給与の面でも、これは臨時職員と比べるのはどうかと思いますけれども、そうでなくても、一般職員の場合と、それから検察、あるいは裁判所の場合でもそうですが、そういった裁判官なんかの場合と、それはもちろん給与体系も何も全然違いますが、しかしやはりそこに人のつながりという問題は、そういう制度なり何なりをこえて、そこにやはり心のつながりというか、そういったものがなければ役所の仕事というものはうまくいかないと思うのです。したがって、具体的に言えば、私は、たとえば厚生施設だとか職場環境なんかの問題についても、特別な配慮を払っていく必要があるのじゃないかと思うのです。そうでなくても、比較的かたい役所と思われている法務省なんかの場合には、何か殺風景のような感じ、施設なんかの場合についてもどうも軽視される傾向があるのじゃないかと思う。事業官庁と違って、仕事の性質上とかくそういうふうになるだろうと思うのですが、したがって、今後そういう方面についても特別にひとつ関心を持っていただきたいと同時に、いま私が申し上げたように、歩んできているコースはそれぞれ個人個人別であっても、やはり法務省なら法務省という中で仕事をする場合には、人間的には上も下もないのですから、仕事の面で持ち場持ち場は違っても、人間的な面で上下はないのですから、そういう面でお互いにあたたかさを感ずるような職場の空気、そういうものをつくられるように心がける必要があるのじゃないか。職員の数といっても、大きな他の現業官庁に比べれば、数は比較的少ないと思うのですが、少なくとも、一万数千の職員をかかえておられる法務省の立場からすれば、一人一人の職員の気持ちというものも、十分上に立つ局長にしても、課長はもちろんのこと、あるいは大臣はじめそれぞれの幹部の方々、そういう職員に対する思いやりというか、そういうものを常に考えておられる必要があるのじゃないかと思うのです。これは、単に私は老婆心的に言っておるのではなくて、ぜひそういった点について格別の御配慮を願って、厚生関係の施設等についても、職員の希望なりそういったものは十分にひとつ具体的に取り入れて、それは希望があったから一〇〇%実現できるかどうか、これは国家予算の中でやっていることですから、これはまた私は職員だってそこまでは期待しておらないと思うのです。言ったことが何でも実現できると思っておらないと思うのですが、やはり誠心誠意努力をせられることがこれまた必要なことだと思うのです。そういった点について、ひとつ格段のこれまた御努力を願いたいと思います。これは臨時職員の問題ではなくて、全般的な職員に対する人事管理というか、労務管理というか、そういう問題として、これは大臣なり民事局長にもお願いを申し上げておきたいと思うのですが、それらのことについて大臣のほうから一言御努力の今後のことについて……。
  68. 田中伊三次

    ○国務大臣(田中伊三次君) おことばはたいへんよくわかりました。私は役人生活をしたことのない男で、ずぶの庶民から出てきた大臣でございます。したがって、就任当日のごあいさつの中にも、いまちょうど先生の仰せになりましたような気持ちの話をいたしまして、たいへん親切なあたたかい役所であるという感じを全国法務省の役所で持つようにしよう、そしてあたたかい気持ちでこの役所の仕事ができるようにしていきたい、国民のお客さんを大事にしようと申しておりますことばは、おいでになる国民の皆さんに対する態度は恋人に対する心持ちを持て、礼儀は雇い主に対する礼儀をとれ、たいへん妙なことばでありますが、私の持っております独特の味を持たしたことばを述べまして、このことをどの会議に参りましても徹底して努力をしておりますので、いま先生の仰せになることばはよく腹にしみてわかるわけでございます。今後十分にそういう気持ちで役所を運営していくことに力を入れてまいりたいと思います。
  69. 久保等

    久保等君 さっきの答弁……。
  70. 田中伊三次

    ○国務大臣(田中伊三次君) 数字が出てまいりましたから……。
  71. 新谷正夫

    政府委員新谷正夫君) 法務省の全体の凍結人員の数をただいま人事課で調べてもらいましたところ、本年の四月一日現在で百九十八人となっておるようでございます。
  72. 浅井亨

    委員長浅井亨君) 午前の質疑はこの程度にとどめます。午後一時まで休憩いたします。    午後零時三十五分休憩      —————・—————    午後一時二十三分開会
  73. 浅井亨

    委員長浅井亨君) ただいまから法務委員会を再開いたします。  旧執達吏規則に基づく恩給の年額の改定に関する法律案を議題とし、提案理由の説明を聴取いたします。田中法務大臣
  74. 田中伊三次

    ○国務大臣(田中伊三次君) 旧執達吏規則に基づく恩給の年額の改定に関する法律案について、その趣旨を御説明申し上げます。  この法律案は、一般の公務員の恩給の増額に伴い、旧執達吏規則に基づく執行吏の恩給を増額しようとするもでのあります。  御承知のとおり、執行吏を退職した者には、一般の公務員の場合と同様に、恩給が支給されることになっておりますが、今回、政府におきましては、一般の退職公務員の恩給年額について所要の是正を行なうため、その恩給年額の計算の基礎となる仮定俸給年額を、受給者の年齢に応じ、六十五歳以上七十歳未満の者についてはその二〇%を加えた額に、七十歳以上の者についてはその二八・五%を加えた額に、それぞれ改定する等の措置を講ずることとし、恩給法等の一部を改正する法律案を別途今国会に提出いたしております。そこで、退職執行吏の恩給につきましても、これと同じ割合により恩給年額を是正する必要があると考えられますので、その恩給年額の計算の基礎として、一般公務員の仮定俸給年額に見合って定められております現行の十五万三千六百円を、受給者の年齢に応じ、六十五歳以上七十歳未満の者については十八万四千四百円に、七十歳以上の者については十九万七千五百円に、それぞれ引き上げることとし、なお、この措置は、一般の退職公務員の場合と同様、本年十月分から実施することにしたのであります。  以上が旧執達吏規則に基づく恩給の年額の改定に関する法律案趣旨であります。  何とぞ、慎重御審議の上、すみやかに御可決くだされますよう、お願い申し上げます。
  75. 浅井亨

    委員長浅井亨君) 本案に対する質疑は後日に譲ることにいたします。     —————————————
  76. 浅井亨

    委員長浅井亨君) 午前に引き続き、検察及び裁判の運営等に関する調査を行ないます。御質疑のある方は順次御発言を願います。
  77. 亀田得治

    ○亀田得治君 私は、三月二十三日の法務委員会で、小倉地検の嶺崎事務官が是沢より収賄をして、そして収監を延ばしていたという問題についてお尋ねしたわけですが、本日は、法務大臣の出席を得まして、重ねてこれに関連する問題を若干お聞きしたいと思います。初めに、昭和四十一年八月二十九日の日豊線汚職事件に関する判決、この判決の中で、嶺崎事務官に対する贈賄事件、こういうものがあったことが指摘されたわけでありますが、その判決を見ますると、単にそれだけじゃなしに、非常に重大なことが指摘されております。それは小倉警察署に留置されておる是沢に対する異常な当局の扱いという問題でありまして、その該当の部分を若干読んでみたいと思います。そのあとで質疑をいたしたいと思います。判決の一部でありますが、「同年」——同年というのは昭和三十八年ですね——「五月二十五日までの約四ヵ月間監獄法第一条第三項の規定に違背して同被告人を」——これはつまり是沢ですね、是沢を「前記刑執行の形のまま同留置場に留置し、その間、前叙のとおり度々参考人として取り調べている松本イシをして、殆んど連日の如く昼食を差し入れることを許容し、又同警察署二階取調室において自由に同被告人と面会させ、或いは同被告人において同警察署備付の電話を使用するのを黙認し、同被告人所有のテレビ受像機を同警察署取調室等に持ち込ませてこれを視聴させ、取調後はそのまま雑談、喫煙を許すなどしたうえ、更に、同留置場と同警察署取調室或いは福岡地方検察庁小倉支部との間の同被告人の身柄の護送に際しては、他の既決囚に対する場合と異って殆んど手錠を施すことをなさず、又、同被告人の義父や義弟の就職をあっせんする等種々便宜を与え、他方、同検察庁小倉支部における検察官の取調べに当っては、事前に取調べをなした警察官又はその指揮下にある警察官において同室したうえ同被告人の供述を筆記したりなどし、その内容を前記捜査主任に報告する等して、同被告人をして司法警察員に対する供述と異る供述をなし得ない状態に陥らしめ、遂には、取調官の命によったとはいえない迄も同留置場監房係において、同年四月中旬、同年五月上旬、同月二十五日ごろの各深夜、同被告人の求めに応じ同留置場非常口付近で、手錠はおろか立会人もなく、同被告人と前記松本イシとを密会させ、その結果同被告人が脱獄するに至ったことが認められ、」、こういうことが判決の中に書かれておるわけです。私たちこの判決を実は問題にしたのは、是沢から嶺崎事務官に対する贈賄の事実、そういうことをしてこの収監さるべきものを収監を延ばしていた、こういうことでこの判決を問題にしたわけですが、精細に調べてみますると、いま私が申し上げたような非常に重大なことがこの判決の中に書かれておるわけです。おそらくこのことは、私が前回質問しなくても、この判決を検察も警察もお調べになってるでしょうから、当然ここに書かれておる事実というものについてこの出先のほうの調べをやられたと思いますが、その結果をここでひとつ御報告を願いたいと思います。事実どうなっておるのか。
  78. 内海倫

    政府委員(内海倫君) 警察関係につきまして、ただいま亀田先生から、判決文に書かれてある点についてお述べになりました内容につきまして、当時警察のほうで、福岡県警察についてこれらの事柄の報告を求めました内容につきまして、順を追ってお答えを申し上げたいと存じます。  まず、約四ヵ月間監獄法に違背して同被告人を代用監獄としての小倉の警察署に移監して長期間にわたって調べた、こういう問題でございます。弁解するつもりはございませんが、そのような事実は確かにあるわけでございますが、ただ、これは十分御承知のように、捜査上必要があります場合は、現に刑務所に収監されております者を代用監獄としての警察署に検事の指揮によって移監してもらって取り調べをいたすことはしばしばあるわけでございますが、これは法の規定にもありますように、一ヵ月以内であるということでございます。この点につきましては、一応当該警察におきましても、その間一ヵ月ごとに一応小倉の拘置所のほうに帰す、再び指揮を得て代用監獄としての小倉署のほうに移監をしている、こういうことを四回繰り返しているわけであります。一応法の定めるところに違背しない形はとっておりますけれども、確かにこの点につきましては、私どもも決して適当な措置であったとは言えないかもしれません。しかしながら、捜査の必要上こういうふうなやむを得ざる措置をとったものと考えるのであります。  次は、松本という本人について——義母でありかつ情婦であるといわれておりますが、これに連日のように昼食を差し入れさしている、あるいはまたしばしば面会をさしておる、こういう問題でございますが、これは確かに四ヵ月間の間に二十回くらい、取り調べ官の立ち会いのもとに一回十五分ないし三十分程度面会をさしておると、こういうふうな報告をしてまいっております。  また、食事の問題でございますが、福岡県警察の報告によりますと、被疑者である是沢が非常に胃弱であったために、十数回かゆ食の要求がありましたので、これを許しましたが、連日にわたって食事の差し入れ等について特別扱いをしたということはないというふうに報告をいたしております。  それから電話の使用の問題でございますが、これにつきましても、いろいろ報告を聞いてみましたところ、十四、五回取り調べ官が指示をして本人電話の使用を認めた、こういうふうな報告を受けております。  それからテレビを見させたという問題でありますが、福岡県警察の報告してまいりましたところによりますと、この被疑者の是沢の義弟がたいへん競輪にこっておる、いわば競輪狂ということのために、何もかも入質して換金するというふうなおそれがあるので、本人希望によって、テレビのみならずその他若干のものを保管してくれというふうなことの要求がありましたので、これを保管し、その際、取り調べの終了後に、あるいは途中たまたま大相撲の名古屋場所をやっておったようでありますが、こういうときに一回、その他終了後に数回見させたことがあるという事実を申しておりますが、私どもとしましては、たとえ本人がそういうふうな換金云々というふうな要望がありましても、それを預かる、あるいは預かった上でたとえそれが取り調べに支障あるなしのいかんを問わず視聴を許すというふうなことは、私は決して妥当な措置ではない、かように考えております。取り調べ後に、取り調べ官が被疑者と雑談をしたり、あるいは自由にたばこを吸わせたというふうなことのようでありますが、これはまあ確かにそういう事実はありますが、取り調べが終了しますと、取り調べ官と被疑者が対話をしたり、あるいはその提供するたばこを喫煙を許すというふうなことも通例があるようでございまして、特に今回のこの被疑者に特別の扱いとしてそういうようなものを認めたものではない、こういうふうな報告をよこしております。  押送時に被疑者に手錠をしないというふうなことで特別に便宜をはかったというふうな点でございますが、これも事実でございます。さりながら警察官が一名だけで押送したときは必ず手錠をしておったようでございますが、二名で押送するときは手錠をしなかったこともあるというふうに報告をしてまいっております。しかしながら、私どものこういう被疑者押送に対する基本方針としましては、逃走のおそれもあり、あるいは反抗その他に出るおそれもありますので、必ず手錠をするようにというふうな指導をいたしておるところでございます。たとえ二名で付き添いましても手錠をしなかったということについては、私どもも遺憾な点だと考えております。  次に、義父あるいは義弟の就職をあっせんした、こういうことであります。その事実はあるようでございます。ただ、私どもに接しておる報告で、どういうところにどういうふうな方法であっせんしたかということの内容は、私ただいま聞いておりませんが、報告によれば、被疑者等から懇望されて、取り調べ官が情にほだされてあっせんをしてやった、いわば善意の処置であるというふうな報告をいたしております。  それから、検察官の取り調べにあたって、捜査に当たった警察官が立ち会いあるいはノートしたというふうなことが判決で言われておるようでありますが、福岡県の報告によりますと、この場合一応検察官の了解を得て本人を押送した警察官が立ち会ったことがあるということでございます。本来こういうことが、自白についての任意性を疑われる、あるいは検察官のとるべき心証を阻害するおそれもあり、私どもも決してこういうことがあっていいとは思いませんが、福岡県の報告によりますと、この場合においては自白を強制するような結果ということは起こっておらないというふうに報告をよこしております。  最後に、留置場の監房の係の者がこの松本イシとたびたび密会させ、ついに本人をして脱獄させるに至った——これはそのとおりの事実でございまして、永芳という看守係の巡査がそういう逃亡を幇助したことになります。松本イシという女から数回にわたって酒、洋酒等の贈賄も受ける、しかも二人を会わさせておるときにその看守をことさらに怠ってついに本人を逃亡させたという事実がございます。これは直ちに懲戒免職に付しますほか、永芳巡査につきましては事件として送致し、すでに判決もすべて終わっておるところであり、また本部長以下責任のある者につきましても、全部それぞれ必要な行政処分を行なったところでございます。  以上が、ただいま亀田委員から判決について述べられました事柄についての福岡県警察について調査させました結果の報告を申し上げたところでございますが、まあ私どもといたしましては、捜査というものについては非情なようでありましても、厳格に、遺憾のない取り調べを行なうべきもので、それぞれの点につきましても何らかの形における遺憾の点のあることは、はなはだ私どもとしましても残念に思うところであります。  しかしながら、一言弁解をさせていただきますと、私どももこういうふうな問題につきまして、取り調べに当たる者の心理、心境というふうなものをいろいろな形で聞いておりますが、やはり長く調べておりますと、どうしても人間対人間という関係で情が移るというふうなこともあって、それがもっと厳格でなければならないという意識のほかに、やはり人間という気持ちで、まあいわば善意ある行為というふうなことも出るようでございまして、十分今後も慎まなければならない点だと、かように存じます。はなはだ弁解めいた点でございますが、一応御報告を申し上げます。
  79. 亀田得治

    ○亀田得治君 これは、判決に指摘されたこの点、ほとんどいまのお答えから見ましても事実に間違いないようであります。これは、一つずつ聞いておりますとたいへん時間がかかりますので、いまお答えした中で特にこの点と思う点だけを確かめておきたいと思います。それは、一ヵ月ごとに是沢を刑務所に帰して、そうしてまた連れてきた、そういうことで一応法律には違反しないたてまえをとっておるというふうに言われましたが、これは、刑務所に帰して、そうして新たに連れてくる、その間にどれくらいの時間が置かれておるのですか。
  80. 内海倫

    政府委員(内海倫君) ちょっと日時を申し上げたいと思いますが、第一回目は、三十八年の一月二十三日から同年二月二十二日までが第一回目の移監でございます。第二回目は、二日後の二月二十四日に移監いたしまして、同年の三月二十三日まで移監をしておる。第三回目は、昭和三十八年の三月二十七日から四月二十五日まで、第四回目は三十八年の四月二十七日から五月二十五日までで、小倉警察署からそのあとは逃走しておるわけであります。したがいまして、二日ないし三日という間を置いて拘置所に帰し、また小倉警察署へ移監しております。
  81. 亀田得治

    ○亀田得治君 この判決が違法な措置だと言っておるのは、一日や二日帰してもそれはただ一ヵ月という法律規定に反しないように形式を整えておるだけであって、そういうことではいけないという点を指摘しておるわけですね。だから、これは十分ひとつ今後ともそういうことのないようにやってもらわないといかぬと思います。  それから、松本イシですね、これがたびたび是沢に留置場の警察の調べ室で面会をしておる。これ二十回と言われましたが、これは記録によって明らかになっておるのですか、何日ということが。
  82. 内海倫

    政府委員(内海倫君) いま私の手元に持っております資料では、約二十回くらい出ておりますので、この回数の基礎はおそらく記録によって出しておるものと思いますが、いまその基礎になるものを持ってきておりませんので、ちょっとお答えいたしかねます。
  83. 亀田得治

    ○亀田得治君 判決では、ほとんど連日のごとく云々とこう書いておるわけです。こういう問題については、裁判官もなかなか慎重で、やむを得ずこれは書いているんだと思います、供述調書の任意性に関連して。したがいまして、ちゃんとお調べになった上での結論だと思いますがね。ひとつその点をあとでいいですから、資料によって知らしてほしいと思います。面会の日にちと時間と、そうして昼食を入れた日、できますか。
  84. 内海倫

    政府委員(内海倫君) 福岡県警察のほうに命じまして、連絡しまして、わかる限りにおいて資料を整えたいと思います。
  85. 亀田得治

    ○亀田得治君 それから電話を使用させた——先ほどは警察官のほうで何か用件などを聞いて使わせたというふうな意味のことを言われたわけですが、これは何かちゃんと記録でもあるのでしょうか。
  86. 内海倫

    政府委員(内海倫君) はたして一回一回電話をさせたという記録をしておりますかどうか、なお確めてみたいと思いますが、これを徴しましたときの報告によれば、捜査上の必要があって取り調べ官の指示によって十四、五回くらい許した、こういう報告に相なっております。
  87. 亀田得治

    ○亀田得治君 これは、捜査上の必要という意味がちょっとわかりかねるわけですがね。これは是沢の私の用件のために使うのを大目に見ておったのじゃないでしょうか。捜査上の必要ということになれば、必要があれば警察官がその相手のほうに行って尋ねたらいいわけでして、ほんとうに捜査上の必要ということなのか、どうなんでしょうか。
  88. 内海倫

    政府委員(内海倫君) はなはだずさんなのでございますけれども、私どもが徴しておる報告の中では、ただいま申し上げたような報告をしておりますので、私用上の電話をかってにかけることを黙認しておったというふうなことが報告には参っておりません。
  89. 亀田得治

    ○亀田得治君 そうしますとね、どんな捜査上の必要なのか、これを私は明らかにしてもらわなければいかぬと思います。普通は、警察官なり検察官がどこかへ電話しておったならば、それはどういう中身か、そんなことまで一々聞きません。しかし、原則としてそんなことのできない立場の人が黙認されてかけているわけですからね。その捜査上の必要ということの意味がわかるように、ひとつこれもはっきりしてほしいと思います。いいですか。
  90. 内海倫

    政府委員(内海倫君) できるだけ調べてみたいと思います。
  91. 亀田得治

    ○亀田得治君 それから、検察官の取り調べにあたって、警察官が立ち会ったという問題について、検察官の了解を得てそのようにしたと言われておりますが、これはもちろん検察官もそのつもりでなければそういう場面はでき上らぬわけですね。だから、そのことを了解を得てという意味になれば了解かもしれませんが、この検察官はだれなんです、柴田検事ですか。
  92. 内海倫

    政府委員(内海倫君) ここのところでは、いま私具体的な検察官の氏名を承知しておらないのでございますが、一応検察官の了解を得た、こういうことでございます。
  93. 亀田得治

    ○亀田得治君 これはたぶん柴田検事だと思いますが、明らかにしてほしいと思います。調べればわかるはずです。
  94. 内海倫

    政府委員(内海倫君) 後刻調べてお答えいたします。
  95. 亀田得治

    ○亀田得治君 最後の密会させたという件ですが、これはいわゆる肉体関係まで黙認したという意味でしょうか。
  96. 内海倫

    政府委員(内海倫君) これは詳細に報告を私ども徴しておるところでございますが、その報告の中では、そういうふうな肉体関係に及ぶというふうな具体的な点には触れておりません。
  97. 亀田得治

    ○亀田得治君 そういう点は、報告にはないかもしれぬが、確めておらぬのでしょうか。普通は、会わすとかね、そういうふうなことばを使うわけですね。それを特に厳格である裁判官が密会ということばをことさらに使用しておるわけなんです。私たちも非公式には裁判官にどういう意味かということも多少聞いてもらうようなこともしましたがね。当然、これは警察署の中で起きたことですから、あなたのほうはそういう報告書だけに満足しないで、事実どういう程度のことであったかということを私はこれははっきりすべき問題だと思います。そういうことからお尋ねしておるのですが、報告書だけじゃなしに、再度確かめてみるということはしてないんでしょうか。
  98. 内海倫

    政府委員(内海倫君) 特に、この被疑者を逃走させました事件につきましては、当時におきまして、逃走させました看守の巡査の送致をいたさなければいけませんので、そういう観点からも詳細に取り調べを行なっておりますし、また本人の懲戒免官及び監督の立場にある本部長以下関係者の行政処分を行なっておりますので、それに際しましても、詳細に捜査または調査を行なったところでございますが、その中におきまして、それらの書面から、松本イシと是沢をひそかに面会させたというふうなことは出ておりますが、両者が肉体関係に及ぶというふうなことの便宜を取り計らい、またそういうことをさせたというふうな意味合いのことは出ておらないようでございます。
  99. 亀田得治

    ○亀田得治君 これはあまり理屈を言うておるとちょっと話がややこしくなりますが、もっと念を押して調べてみてください。それだけここで要求しておきます。
  100. 内海倫

    政府委員(内海倫君) ずいぶん調べたあとでございますが、なお御要望に応じまして、もう一度念を押してみたいと思います。
  101. 亀田得治

    ○亀田得治君 裁判官の印象としては、肉体関係までに及んでおるというふうに——これははっきり言いませんよ、裁判のことですから——というような感じのすることを、この某氏から聞かれて答えておる。それを私たち聞いておるわけです。密会ということばの意味から大体想像はできるのですが、もう一度明確にしてほしいと思う。  それで、これは警察における扱いも異例ですね、何といっても。あなたさっき、情が移るとか移らぬとか言っておりますけれどもね。そんな簡単に感情論というものを持ち出されたのでは、これはなかなかしめくくりが私はつかぬようになると思うのです。これだけの異常な、普通とは違った扱い、これは当時日豊線汚職事件の捜査並びに公判を担当していた柴田検事などが私は知らないはずがないと思うのです、これだけの一連の扱いというものを。この点はどういうふうに見ておりますか。これは刑事局長お答えいただきたい。
  102. 川井英良

    政府委員(川井英良君) 柴田検事もこの辺の事情は十分に承知していたはずだと思います。と申し上げますのは、先ほど警察庁のほうから御説明がありましたように、この監房から逃走したことが、逃走幇助と収賄の事件で小倉支部の検事が調べて起訴しておりますが、これが日豊線の汚職の派生事件として、その一環の事件となっておりますので、この事件を調べた以上、その間の事情というものは当時の検事としてはおおよその概要をつかんでいたのではなかろうかと、容易に推察できることだと思います。それからなお、この事件につきまして、四名のうち三名が無罪の判決を受けましたので、検察官として判決を十分検討いたしまして、自白している調書についての任意性という問題について、控訴趣意書の写しをとりまして検討いたしますというと、その中に、外形的には、先ほど内海局長から詳細御説明がありましたような、いろいろな判決に指摘されているような部分的な事実があったことをあげて、なおそれにもかかわらず本件の自白調書は任意性があるのだと、こういうふうな主張のもとに控訴趣意書ができ上がっておりますので、さようなところから申しましても、こういうことについて、当時並びにその後において検察官がある程度のことを承知しておったということは、当然申し上げなければならないことだと、かように考えております。
  103. 亀田得治

    ○亀田得治君 一体、検察官がこういうことをある程度知っていて、黙ってやらしておいていいのでしょうかな。この人は何でしょう、刑の執行中でしょう。刑の執行の責任は、これは検察官でしょう。私は柴田検事はあまり当時は知らなかったのじゃないかというふうにお答えになるのかと思っていたのですが、それは知っていたはずだと、その点、刑事局長のお答え、まことに率直で、私はいいと思うのですが、しかし、知っていてこういうことが四ヵ月も続いているということは、はなはだ心外なわけですが、その点については刑事局長どうお考えですか、やむを得ぬと思うのですか。これは法務大臣にちょっと聞いてみましょう。
  104. 川井英良

    政府委員(川井英良君) 注意して述べたつもりでありますが、判決に書かれているようなことを全面的にすべてこの事件の当時柴田検事が知っていたかどうかという点については、これはもちろんそこに検討が必要だと思いますけれども、このいまの逃走幇助なり収賄なりというような事件が現実に起訴されて、有罪の判決を受けて、したがって、その間永芳巡査の当時の状況をめぐっての捜査、これは捜査官として当然尽くされておると思いますので、全部であったかどうかということはもとよりはっきりいたしませんけれども、その当時の是沢の留置場における取り扱いというようなことについてはある程度の認識はあったのではなかろうかというような考え方でございまして、その後控訴趣意書なんか見ますと、判決にも書かれておりますので、検事がその後調べたところに基づきまして、先ほども内海局長が述べられたような事実のある部分についてはこれを認めながらも、なお任意性があるのだと、こういうような主張をしているということでありますので、当時とまたその後における控訴趣意書を出す当時における認識は、もちろんその間に多少は相違かあろうかと思いますけれども、当時におきましても全く全然知らなかったということは、これは申し上げられないんじゃなかろうか、こう思います。そこで、その当時この事件を調べてそういうような事情がわかった以上は、その後その点について深く私どもとして特に念を押して調べておりませんけれども、検察官としては当然控訴維持にも結びついてくることでありますので、警察に対してその辺のところを十分に念を押して間違いのないように連絡をした、こういうふうに確信しております。
  105. 亀田得治

    ○亀田得治君 柴田検事は、是沢を調べる際に、小倉警察署に検事から出張してきて調べていたんだと思いますが、そうでしょうな、その点どうなんです。
  106. 川井英良

    政府委員(川井英良君) こまかく、何回警察へ出張したか、あるいは被疑者を検察庁へ呼んで調べたかというふうなことを承知しておりませんが、おそらく警察にも出張して取り調べをしたことがあろうと思います。事件の性格なり、あるいは相当長期にわたっての取り調べでありますので、この間申しましたとおり、七回にわたって追起訴が約四ヵ月の間に行なわれておりますので、実情から申しましても当然、すべて検察庁に呼んで調べたということではなくて、場合によってはみずから出向いていって調べたということも、これは捜査の常道からしてあったのではないかと思います。
  107. 亀田得治

    ○亀田得治君 柴田検事が何回是沢を調べ、そうしてその場所は検察庁であったか警察署であったか、それをひとつ明らかにしてください。いましてもらうと一番いいんですが。
  108. 川井英良

    政府委員(川井英良君) いま資料がありませんので、できるだけ調べて結果をお答えしたいと思います。
  109. 亀田得治

    ○亀田得治君 是沢は刑の執行中の人ですから、この身分というものは、これはもう検事側にあるわけでしょう、一切の責任が。どうなんです。これは法律的な問題として、執行中に調べておるのであって、刑の執行ということがむしろ重いわけでしょう。確定判決の執行なんですから、検事の掌中にある人なんで、これは検事としては一刻も目を離すことのできない人物なんでしょう。その点、法律的にどういうふうに理解しておりますか。
  110. 川井英良

    政府委員(川井英良君) 御承知のとおり、確定判決がありまして、検察官が刑の執行を指揮いたしまして、そしてその結果、この被告人が、この刑を受けた人が、結局拘置所に、ないしは刑務所に入って受刑者となる、こういうかっこうとなっておりますので、刑の執行した後におきましてその身柄をどこに移してどういうふうな処分をするかということにつきましては、必ずしも検察官が一々これに関与して、どういうふうにしろ、こういうふうにしろというふうなことはいたさないことは、これは御承知のとおりだと思います。ただ、その執行中の者について別な犯罪の容疑が発覚いたしましたために、その刑の執行中の身柄を拘束されている者について別なまた犯罪容疑でもってその者を取り調べるというふうな必要性が生じたというふうな場合に、たまたまその受刑中で身柄が拘束されておりますので、それを適宜代用監獄というふうなかっこうで警察の留置場に移して、その間において検事並びに警察官がはっきりした余罪について取り調べをしたというふうな事情に法律的には本件の場合には相なっているのではなかろうか、こう思っております。
  111. 亀田得治

    ○亀田得治君 先ほど警察署における是沢の取り扱いを具体的にお聞きしたわけですが、ああいう扱いはけしからぬということは、これはもう明らかですね、法務省としてどうですか。聞くまでもないことですが、是沢に対して、先ほど私が判決を読み上げた、あのような扱いを警察でされた、これは明らかに間違ったことだということははっきりしているでしょう、法務省としても。
  112. 川井英良

    政府委員(川井英良君) 判決理由に示されたところのとおりであるという、そういうことを前提として考えてみますというと、通常の疑いを受けた容疑者を取り扱い中の身柄の処遇としては外形的に見てまことに適当でないものがあったのじゃなかろうかと思うことは、全く同感でございます。ただこれは、前回に詳しく申し上げましたとおり、非常に変わった特殊な性格の是沢という人は人であって、どうも役者が一枚も二枚も検事や警察よりも上の人で、これに振り回されたという感が多分にございますので、通常の場合ですとたいへんおかしいのですけれども、そのことのゆえに私どもの責任がなくなるとはもちろん申し上げませんけれども、非常に特殊な事例であるということを前提にしてひとつお考えをいただきたい、お願いでございます。
  113. 亀田得治

    ○亀田得治君 私は、これは柴田検事に直接聞いてみないとわからぬことですけれども、これだけ長期的にわたって異常な扱いを受けておるわけですから、これは当然柴田検事も、普通の扱いではないということは、これはわかっていたと思うのです。しかも、そのことは正しいことではない、不当なことだというところまでは、皆が一致して認めておる。検事がうすうす知っていて、不当なことを黙っておるということになれば、これは私はいわゆる黙認というのはこれなんで、これで私は十分上司としての責任を果たしたと言えるかどうか疑問を持つわけです。で、みずから、どうもおかしいじゃないか、どんなことをしているのか、こういうて聞けば、これはすぐわかることなんです、わかってくることなんです。そういうこともしないで——おそらくしておればこういうことにはならぬでしょう。だから、そういうこともしなかったのだろうと思いますが、まあ悪く考えれば、是沢に贈賄についての警察や検察官が考えているような供述をさせるためにことさらにもてなしをしたり、ほかにもありますが、そういう問題を起こしているのが、そういうふうに取れるわけですね、推測すれば。そうすれば当然、これはそういう推測が成り立つとしたら、これはもうことばのいかんにかかわらず、むしろ検事が指揮してやらした、こういうことに積極的にむしろなるわけですね。これは非常に重大な問題だと思う。だから、柴田検事がもしこんなことに気づかなかったといえば、これはまことに勘の悪い、とてもそんなことで手練手管の人間なんか調べるわけにゆかぬ。これは検察官適格審査会にでも出さなければいかぬぐらいの問題だと思うのですよ。こんなことがあっても何もわからぬ、感じもしなかったし、感じていて黙っていたというなら、これはやらしているのだと、どっちかになるのですがね。これいくら突き詰めて考えても、この辺は大所高所からやはり判断しなきゃならぬ問題点でして、法務大臣どういうふうにこれお考えですか、ひとつ忌憚のないところを……。
  114. 田中伊三次

    ○国務大臣(田中伊三次君) この是沢判決の理由書の中に示されておる数々の行き過ぎでありますが、これを本件を担当しておりました柴田検事がどの程度に知っておったものであるか、これを詳細にいたしませんとお答えを申し上げかねるのでありますけれども、いやしくも本件のような事件があることをおことばのように全く察知し得なかったということは、言い得ない事情があるのではないか。そう考えてみるというと、これはまことに重大なことで、そういうことが黙認されておったなどということが事実かりにあるといたしますと、これはゆゆしい問題として、法務省においても取り上げずにはおれない事柄になろうと思います。ただ、この重要な検事の職務に関する問題を、仮定の上に立って私がこれはけしからぬとかこれは責任があるということをここで直ちに申し上げることは軽々であると存じますので、柴田検事に関してはただいまのお話をめぐるひとつ問題を詳細に調査をいたします。どういう状況のもとに柴田検事が察知し得なかったものであるか、あるいは察知しておったものであるかということをつまびらかにひとついたしまして、その上で御報告を申し上げると同時に、反省すべきは虚心たんかいに反省をしてみなければ申しわけがないと、こう考える次第でございます。
  115. 亀田得治

    ○亀田得治君 私がこのことを非常にやかましく言い、明らかにもしたいと思うのは、この前の質疑にこれがやはり関係があるわけなんです。というのは、前回は、是沢が嶺崎事務官に贈賄をして収監を延ばしておった、こういうことを初めから柴田検事は知っておるのに、検察内部のことだからというので隠してきたのではないかと、こういうことが前回の質疑の中心点であったわけですね。しかし、その点については、刑事局長は、どうもいろいろ調べたが感づかなかったようだというふうにお答えになっているのです。しかし、私はそのお答えにはまだ実は承服しておらぬのです。それで、事実嶺崎事務官が三十八年の三月やめた——ちょうどきょう質疑をした、警察におけるいろんな不当な問題が出ておるそのころですね、嶺崎事務官がやめた。これは金をもらったといううわさがずっと検察庁の中に広まったわけですね。そうしてやめた。そのころ柴田検事が是沢と嶺崎の間に入って、ともかく十万円返してやれと、これで話をつけたのですよ、やめた直後に。しかし、その事実はあなたのほうはお認めにならぬわけだ。つけたけれども、それを実行しないので、後ほど是沢のほうから民事訴訟が起きてくると、こういう段取りになるのですが、その民事記録などには、柴田検事がそういう動きをしたことが書かれておるように、これは間接的に聞いたのですよ。だから、これも私は調べてほしいと思うんです、そういう点を。  それから、それだけじゃなしに、その後、これも間接的に——地元に行けませんから間接な伝聞ですが、公判の記録には載っておらぬけれども、何回も是沢が柴田検事に食ってかかって、そうして嶺崎の問題のことについて公判廷でしゃべったようですね。だから、これは柴田検事は三十八年の秋まで公判に立ち会っておるわけですから聞いておるわけなんです。しかし、それは物的な証拠がないということで、刑事局長はお認めにならないんですけれども、しかし、そういう柴田検事と是沢とのいろんな関係ですね——嶺崎を通じてできた関係です、結局。そういうものが入りまじって、そうしてこういう不当な警察における扱いにつきましても柴田検事としては注意もできないというふうな私は事情にあるというふうに見ているんですが、私の見方は少し片寄っていますか。どうですか、刑事局長。
  116. 内海倫

    政府委員(内海倫君) いろいろ具体的な資料を合理的に整理されての推理でありますので、ごもっともな点もあると思います。私のいままで調べた範囲では、先ほど申し上げました永芳巡査の事件が問題になって検察庁に送られてきましたのは三十八年の六月の初めのことでありまして、六月八日に起訴になっておりますので、二月の四日に第一回の事件送致を受けて、それから六月の二十五日に最後の追起訴が終わっておりますので、その一番最後のほうの六月の初めごろにいまの永芳巡査の逃走幇助の事件が送られてきた、こういうふうな関係になっておりますので、私当時これを調べた検事はその間の事情の概況を知っているはずだとまつすぐに申し上げましたけれども、これはまた、いまの調べの当初からそういうふうなことについて十分知っていたのか、調べが終わりに近づいたころにそういう事情を承知して、おそらく、いまは警察と検事との間は指揮関係ございませんので、御承知のとおり協力関係でありますから、適当な範囲と程度でもって警察の身柄の扱いについての注意を喚起したということは当然あったことだろうと思うわけであります。それから、検察官として事件を捜査いたしましておるときに、これは裁判の法廷へ持ち出すことになりますので、取り調べをする検察官として一番こわいことは、取り調べの過程において不正なり不当なりというようなことがあれば、必ず公開の法廷でそれが暴露されますので、これは検察官としては最も致命的なことでありまするし、それから、その事件が有罪になるか無罪になるかということはかりに一応別問題といたしましても、検察官としては信頼のおける公正な取り調べをしなかったというらく印を裁判所によって押されるような結果になりますので、私ども自分の経験から申しましても、そういうふうな取り調べにあたって適当でないことがあったということが一番こわいことでありますから、柴田検事といえども、その前の経歴並びにその後の経歴を見ておりましても、なりたての検事ではございませんし、かなりな経験を積んだ検察官でございますから、私はそういうことを知りながらしかもなおかつ仰せのように検察官がこれを黙認しておったというふうにはとうてい考えたくないのでございます。もちろん、先ほど大臣からも弁明されましたように、なお念を入れてその辺のところは、私当面の責任者として、現地についていろいろ取り調べ、また捜査をさらに徹底をさせますけれども、今日の段階といたしましては、柴田検事がさようなことを知ってこれを黙認しておった、こういうふうなその最初の仮定なり断定なりというふうなところに私もう一つ疑問を持つものでございます。
  117. 亀田得治

    ○亀田得治君 だから、ひとつ検討してみてください。私がいま指摘した民事記録の関係、是沢からの贈賄の話並びにそれをまとめたいきさつの問題です。それを調べてみてください。  それともう一つは、本日問題になったことについての関係ですが、一番大事なのは、どういう状況での捜査をやっていたか、検察庁に是沢だけ来ていて、そうして警察には全然柴田検事が足を入れておらぬという関係であったのかどうか。これは記録によって明らかだと思いますから、総合的に一ぺんこの点についてははっきりさせてもらって、場合によっては法務大臣としてもこれはほうっておけない、処分をしなければならぬ問題でしょう。だから、これはひとつ次回までにきちんと整理してお答えを願いたいと思うのです、非常に疑問がかかっているものですから。よろしいですね、大臣どうですか。
  118. 田中伊三次

    ○国務大臣(田中伊三次君) 先ほど申し上げましたように、非常に重大な意味を持つ御質問でありますので、はたして柴田検事が事実を黙認する事情にあったかどうかという根本の問題について、これをひとつ詳細に調査をいたしました上で、御報告を申し上げます。
  119. 亀田得治

    ○亀田得治君 例の是沢の嶺崎に対する贈賄事件がいつ検察当局ではっきりしたかという問題に移りたいと思いますが、この柴田検事の時代には一応わからなかったのだ、こういままでおっしゃっているわけですね。しかし、吉永検事が公判を担当しておるころ——昭和四十年三月十五日ですね、この公判では、この贈賄事実というものが是沢から述べられて、そのことが公判調書にまで載っているわけでしょう。前回のお答えでは、その公判調書をじゃひとつ出すように努力しましょうというふうにお答えがありましたものですから、私もそれが来るものだと思って、地元の弁護士にもそこまでは要求はしなかったのですが、公判調書にまで書いてあるわけですからね。それでもなおかつ検察当局としては判決が出るまではこのことはわからなかったのだというふうなことで一体済まされるのかどうか、どうなんでしょう。
  120. 川井英良

    政府委員(川井英良君) 前回にもあれですが、三十八年のいま問題になっております五月から六月ごろ、その追起訴が終わる時分ごろにはいろいろうわさが飛んでおりまして、その件について検事が是沢ないしは嶺崎についていろいろ事情を聞いた事実があるわけでございます。ところが、その当時は両者の言い分がいろいろ食い違っておったりしたというようなことで、検事としては心証を得るに至らなかったということで、捜査から公判に事件が移っていったわけでございます。そこで、四十年の三月十五日の五十七回公判で、是沢が非常にショッキングな表現で、いまの嶺崎に対する贈賄というよりは、むしろおどかされて金を取られたというふうな表現で供述があったということが、公判に立ち会っておった吉永検事からの報告で検察庁に明らかになったようでございます。そういうふうないきさつがありまして、さっそく当時の検察庁の幹部がその問題についていろいろ協議をした模様でございますけれども、これはその前の年の三十九年の十二月の十二日に柴田検事は鹿児島地検に転任になっておりまして、柴田検事を証人として喚問するためにこの裁判所が鹿児島地裁に出張いたしております。出張して柴田検事の取り調べをしたときにも、是沢から、それほどきつい表現ではありませんけれども、同じような趣旨についての供述が出ている、こういう事実も報告になっているわけでございまして、その当時のこの事件を柴田から引き継いだ吉永検事、あるいは前の支部長からこの庁をまかされた青山支部長というような人たちは、また是沢が同じようなことを言い出している、そろそろまたこの捜査官に牽制の矢を向けてきたぞというようなことを話しているという報告になっているわけでありまして、たびたび同じようなことを申し上げるようでございますけれども、この人、役人と見れば手当たり次第に買収をしたり、あるいは自分の弱点を握られますというとこれを牽制するために常にいろいろなことをやっているということは、何回にもわたっての前科の記録を調べてみても、日豊汚職の先ほど指摘されました四十一年の八月二十九日の判決書の中にも一部その片りんが出ておりまして、あらかじめ積極的にこの証拠をつくっておいて、そしていかにも贈賄をしたように組み立てたけれども、調べてみると、これはつくられた物的証拠であって、これは信用を置けないというようなことを一つの理由にいたしまして、先ほど申し上げました四人起訴して三人無罪になったというその一人の無罪は、そういうようなことを裁判所が見破って無罪の認定をしている、こういうような事実もございますので、私直接調べたわけではございませんからあんまり確かなことは申し上げられませんけれども、そういうふうないろいろな、もろもろの事実を総合して考えてみますというと、この是沢という人には、いろいろ非常に特異な才知というか、そういう道についての特別な能力があったというような人でありまして、結果から見ましてまことに申しわけないことでございますけれども、当時この渦中に巻き込まれておった柴田検事なり吉永検事というふうな者は、また牽制のために——裁判所を牽制し検察庁を牽制し警察を牽制するためにまたこんなことをこの公判で言い出したというようなことで、何回も出ておりますので、あまり真剣にこれを問題にせず、当時の支部長としては、前の支部長時代にこの問題は一応検事が取り上げて調べて、その結果心証を得なかったということで一応事件をおさめてありますので、あらためてあとを引き継いだ者が、先ほど申し上げましたように軽く受け取って、再びこれにメスを入れて調べるという措置に出なかったというのが真相のようでございます。今日、結果から検討いたしまして、私どもの立場から見まして、これを引き継いだ人たちの措置としては、まことに措置は徹底を欠いておるというふうにもちろん私どもでも考えておりますので、ごらんいただきましてまことに適切でないというふうな御批判が出ますのは、まことに私はごもっともなことだと思います。しかしながら、事情を私どもの手でしさいによく調べてみた関係におきましては、当時の状況としましてはそういうふうなことでもって事をおさめておった、こういうことが調査の結果としましては私どもの立場からの真相であったように考えておるわけでございます。
  121. 亀田得治

    ○亀田得治君 そうすると、検察庁では三十八年の上旬には一応そのうわさがあって調べた。それから、四十年のその公判で是沢が発言したときにも、一応関心は持った、関心はね。しかし突っ込んだ調べにはならなかったのは遺憾であった、そういうことのようですが、外から見ておると、これはまるで紙一重のようですね。もう答弁自体からわかるように、全然知らなかったんじゃない。やはりそういううわさもあり、知っておったんだと、ある程度。何かがあるかもしれぬということを——かもしれぬということを、その段階では。だから、結局世間が見るのは、これは検察庁だから、検察庁内部の犯罪だからこう隠しておくと、そして初めて判決で終局的に書かれて、新聞が書き出したので、手をつけ出した、こういうふうに見ておるわけですね。そう見るのが筋が通るのじゃないですかね。たとえば、裁判官が判決でこういうふうに贈収賄のことを指摘しましたけれども、材料自身は警察や検察官のほうがよけい持っているわけでしょう、私はそう思いますな。裁判官はいろいろ聞いての判断ですからね、間接ですよ。間接の人がぴしゃと判断できるくらいにはっきりしているものを、捜査にはなれておる警察、検察官が、二回も関心を持つ場があったけれども、結局はものにしなかったといっても、これちょっと世間は通りにくいように思うのですがね。ここの判断は、これは法務大臣どうです。そういうことで、世間は隠したと言うし、検察庁はそうじゃないと、こう言うてもめておるわけですがね。法務大臣どっちに軍配上げますか。あなたの立場からすれば、それは法務省の立場もそう無視もできぬかもしれぬが、純粋にこう……。
  122. 田中伊三次

    ○国務大臣(田中伊三次君) 私は、この本件のような疑念が生じてまいりましたときの態度としては、おおい隠そうとする態度が一番よくない。今後のこともあるわけでありますから、やはりこれはあらためてひとつ調査をいたしまして、調査の結果に基づいて御報告を申し上げたい、この態度が一番よかろうと思います。
  123. 亀田得治

    ○亀田得治君 それではひとつ慎重に調査してください、大臣がそうおっしゃるわけですから。  この件に関する本日の質問はこの程度にしておきまして、あとからほかのことを若干お聞きしたいと思いますが、ちょっと小柳さんから関連して……。
  124. 小柳勇

    小柳勇君 いまのに関連して、私も二点質問しておきたいと思います。この事件は、私の地元で起こっておる事件でありますし、見たり、聞いたり、事実も調査しておりますので、ただ私は訴訟問題はしろうとでありますから、くろうとである亀田委員が二回にわたって質問されましたので、私は議員というへ国会議員の感覚で調べて、こういう点はどうかという点を質問いたしたいと思いますが、いまの問題にも関連しているのですが、嶺崎事務官が収賄して、そうして是沢を一年数ヵ月外に出しておった——これは逮捕されないで一年数ヵ月間も外に出ておって、その間にいろいろ汚職が起こっている。そうして画策して歩いている。その間是沢は、小倉の市長に会ったり、あるいはその他の幹部の諸君に会ったり、小倉のステーション.ホテルを根城に置いて奔走している。また、日豊線関係では、東京に出てきて国鉄の幹部ともいろいろ折衝している。しかも、収監状は出ているはずでありますのに、どうして一年数ヵ月も逮捕されなかったであろうか。いまは直接は嶺崎事務官が起訴されて、当面の責任者として法のさばきを受けようとしておりますけれども、私は嶺崎事務官だけの責任ではないのではないか、そう思うわけです。収監状も出ている是沢という者が、一年数ヵ月間、しかも小倉ステーション.ホテルに根城を置いていろいろ画策してもうけようとしているのに、どうも私にはふしぎでならないのですが、国鉄で四人起訴されたのを私は全部知っている。一人は、大学を出ているそのほうの専攻で。そして優秀な国鉄の幹部。あと三名は、現場で営々としてまじめに仕事をしている、生活の将来の安定のない役人です。その者が、是沢からほんろうされて、そういう罪人になろうとしているのでありますけれども、そういう悪人が一年数ヵ月も逮捕されないで走り回って悪いことをやってほっつき歩いたということは、どうしても私は納得できない。それほど日本の警察なり検察陣というものはだらしのないものであろうか、ふしぎでならないわけですね。その点、大臣どうお考えになりますか。
  125. 田中伊三次

    ○国務大臣(田中伊三次君) 逮捕のできなかった事情をひとつ刑事局長から説明させます。
  126. 内海倫

    政府委員(内海倫君) 正確には、三十六年の十一月二十四日に福岡の高等裁判所で是沢の事件が控訴棄却になりまして、したがいまして、一審の小倉支部の懲役五年の実刑の判決があった——確定はいたしませんけれども、浮かび上がって生きてまいりまして、これについて収監の必要が生じてまいりましたので、その年の十二月十三日に小倉の小林検事の名前でこの収監指揮書が発付されて、本人を収監する手続に着手したわけでございます。その当時所在不明のために二、三日収監は不能になっておりましたが、二月十六日に是沢みずから検察庁に出頭してまいりまして、小林検事に面会を求めて、この前申し上げましたような事情を申し述べて収監の延期を懇請しております。そこで、その事情をよく取り調べ、市役所との関係で、講堂を設置するということで、そういうような公益としての収監を延期するための事情があるかいなかということについてこの市役所当局等に照会をいたしまして、その事実の確認につとめております。これを取り扱ったそのときの検察官といたしましては、しばらく収監の延期をしてやるのもやむを得ない事情だと、こういうふうに認定をいたしまして、長らくではないけれども、急いで事を始末しなさいということを申し渡して、延期を認めております。その後、三月十五日と翌月の四月十九日、是沢ないしは先ほど問題になりました是沢に近い者である松本イシがそれぞれ検察庁に出頭いたしまして、まだ事が済まないのでもう少し頼むというふうなことで同じように懇請をいたし、そのつどこれを認めて、その経過を見ているというふうな状況が続きまして、正確には三十七年の十月十日になりまして、東京のほうでまた別罪でこれが逮捕されているということがわかりまして、直ちに小倉のほうから、この当時はすでに上告が棄却になりまして懲役五年の刑が確定しておりますので、今度は普通のいままでの収監と違いまして、受刑者としての、刑の執行としての収監指揮を出しまして、そして十月の十二日に東京のほうへ刑の執行の指揮の嘱託をいたしまして、十一月九日に刑の執行のための収監を終了した、こういうふうな事実になっておりまして、確かに、御指摘のように、約十ヵ月間にわたりまして、収監すべきものを、本人の具申に基づきまして刑のないしは収監の延期をしておったということ、あまり長きに過ぎたというふうなこと、それから是沢の申し立てたこの事情が検察官として刑の執行ないしは収監の延期にはたして客観的に適当であったかどうかということについては、私どもの立場としても若干の批判を持っているものでありますけれども、外形的な事実としてはさような関係で、その当時の検察官といたしまして、その事由は収監延期に相当する、こういうふうに認めて、収監の延期が重なっておった、その間にそういうふうな事実が出ておった、こういう事実関係でございます。
  127. 小柳勇

    小柳勇君 昭和三十七年の十一月の十一日には、国鉄本社で日豊本線の土地交換の調印をしようとしているわけです。したがって、二日間逮捕がおくれますと、彼が野望を遂げるわけですね。もしもいまのように収監延期しないでおれば、これらの犯罪は起こらなかったのではないか、そのように考えるわけです。そうしますと、いまの収監延期を許可いたします検察官について、もう少し事情を調査してもらわなければならぬと思うのですが、十一月の十一日に調印をするはずのが、九日に逮捕されたものですから、残念でしょうがなくて、小倉に護送されてまいりまして、そのあと松本イシと山本豊というのを釈放してもらうために柴田検事といろいろ話をしておるわけです。これは公判証言にありますから、ここで申し上げてもいいと思うのですけれども、柴田検事と取り調べておりました高口という主任刑事が相談をして、松本イシと山本豊を釈放するという条件で自白するかどうか、それじゃよかろうということで、この前の委員会でいろいろ問題になったと思いますけれども、是沢が自白をしておる。ところが、その条件の中に、二年の刑にしようということを柴田検事が言った。執行停止にしようということも言った。ところが、実際は執行停止にならなかったし、四年の刑であったということで、おこりまして、裁判のときに開き直りまして、是沢は証言台に立って開き直っておるわけです。そのときに——これも裁判所の法廷で証言しているのですから、お調べになったらわかると思うのです。是沢は証言台に立って次の証言をしておる。  是沢 自分は小倉に護送された時最初に柴田検事に本当のことを云ったが取上げてもらえなかった、そしてやってもいない者にやったと云えと云はれた  裁判官本当の事とはどんなことか   注 是沢は小野木・山口その他のことに就て話し(詳略)嶺崎事務官のことについて語り始めた  是沢 嶺崎には収監を延期してもらうために十万円位づつ三回に渡って金を要求され、その後又十万円を要求されたので、俺を強迫する心算か、勝手にせ、と言って自分は上京したと話したら、柴田検事は、そのことは内密にしてくれ金は後で嶺崎に返させるからと云はれた。その後返って来たのは二万円である。   東京の小野木氏には云々。   注その他色々と証言していたが記憶せず  裁判長 何故今頃になってそんなことを言うか、そんな過去のことは言はないでよい、このことに関係あること丈けを言えばよい  是沢 この者達にはやっていない  次期判決は追って通知するとして閉廷となったこれは公判廷の記録です。そういう事情であります。  逮捕されて小倉に参りましたあとの取り調べの中で、柴田検事から自白を強要されておるような——この文面から言いますと、自白を強要されておる。あるいは、極端に言いますと、だました。われわれしろうとのことばで言いますと、柴田検事にだまされて自白を強要されたのだということを是沢は裁判所で言っておる。さっきの刑事局長のお話では、彼の性格上牽制する面もあったと言われますけれども、公判の証言として出ておりますから、これはお調べいただきたいと思うのです。  そういう点で、第二に質問したいのは、当時の柴田検事が是沢をそういうことでお調べになったけれども、ほかの四名のいわゆる収賄のほうの被告についてもそういうような調べのことがあったんではないかという疑惑を持つわけですね。自白をさせるためには、ほかに便宜を供与するとか、そういう面があったのではないか。それが頭にありますものですから、さっきの是沢を自由に松本イシに会わせたというようなことを、柴田検事としては全然知らなかったことはないのではないか、こういうことを感ずるわけです。さっき亀田委員の質問を聞きながら、私もこういう法廷の証言を頭に入れて聞きますと、是沢を自由にしてあったのではないかということを感ずるのですが、そういうことについてお調べになったことがあるのかどうか、これは刑事局長からお答え願いたい。
  128. 川井英良

    政府委員(川井英良君) 結果を総合いたしまして観察いたして、まことに長い期間、懲役五年という重罪が確定した者について、申し立てるような理由を原因として収監の延期を重ねておったということは、この措置が違法とまでは言えませんけれども、妥当ではない、こういうふうに私は思います、確かに御指摘のように。  そこで、その原因でございますが先ほどもちょっと申し上げましたとおり、最初から嶺崎事務官がこの収監延期にタッチをしておったものではなくて、むしろほかの執行係の事務官が最初タッチし、また小林検事の名前で当初その収監の延期がなされておったことも、これは記録上、また私ども調査によって間違いがございません。その延期を重ねておった途中において、執行係長であった嶺崎事務官がこれに介在をいたしまして、そうして是沢との間に特殊な関係ができまして、そうしてこの収監延期がさらに日を重ねていった、こういうふうなできごとの結果がこういうふうな妥当でない結果にあらわれてきたものだ、こういうふうに私ども調査の結果にらんでいるわけでございます。
  129. 小柳勇

    小柳勇君 もう一つ、さっきの脱獄事件に関連して、これは青山弁護士が公判廷で証言しておられるのですけれども、さっき言ったように、柴田検事と是沢とは約束があった、是沢はそう思い込んでおるものですから、約束が違うではないかと柴田検事に強く抗議するよう弁護士依頼したので、弁護士は検事にその旨を話したら、検事は、そういうことはできない、自分一人で刑の執行停止はできるものではない、だから弁護士から是沢に了解させてください、それで三人——是沢と弁護士と柴田検事と会って、そのときに、「三十八年五月二十三日頃弁護士控室で三者で会った。検事が執行停止が出来ない旨を話し、なおかわりに求刑を短くしてやると言はれ是沢の顔色は急に変った。自分は」——これは弁護士ですが、「自分はそのとき是沢は逃げると思った。是沢は監房の出入は自由であったのでそのように直感出来た」と、こういうことを公判廷で青山弁護士が証言しておる。この直後、二日後に脱走しておるわけです。是沢が監房の出入が自由であったというようなことを公判廷で弁護士が証言しておられるということ、さっきの亀田さんの質問と同じなんですね。ということは、やはりその検事なり警察官が是沢にいろいろ脅迫をされたりいやがらせをやられたりして、是沢は監房の中でも殿様のような生活をしておったんではないか。これはあとで是沢が証言しているのですが、しゃばの生活よりよかったのだということを証言しているようでありますけれども、そういうことが許されるものであろうかと、私どもしろうとなりにそう思うわけです。もしそれをもっときびしくしておったら、警察官永芳君が脱走事件で起訴されることもなかったであろうと思うわけです。そういうことについてどういうふうにお考えになりますか、刑事局長。
  130. 川井英良

    政府委員(川井英良君) ただいま御指摘のように、いろいろ証人ないしは是沢が法廷で証言をしておるわけでございます。その青山弁護人の証言についてとやかく言う資料はいま持ち合わしておりませんけれども、是沢本人の法廷における供述というものは、どの程度、またどの部分を信用していいかどうかということは、これはこの人たくさん前科がございますからいろいろな記録を調べてみましても、非常に検察官も裁判官も事実の認定にそのつど困っておるというくらいに、供述が変わっている人であります。これは私どもの調べではございませんで、お調べくださってもわかることでありますけれども……。ですから、是沢の法廷における証言でありますので、何といいますか、法廷における証言というものはまことに神聖な場における供述でありますから、これを信用して裁判が行なわれていく、その法廷の証言ないしは供述の中から事実の真相が発見されてくるというのがいまの訴訟法のたてまえであるし、理想であると思いますけれども、この現実は必ずしもそうではございませんで、一例でございますが、本件の日豊汚職の事件の中で、是沢の供述の中に、腹が立って偽証した、それはうそだというふうなことを言っている部分が現に出ているという指摘もできるわけでございまして、そういうようなところから申しましても、たいへんどこを信用していいかわからないような供述の特殊な人であると、こういうことでございますので、私どもその是沢の供述だけを重点に置いて事実の真相を確かめるということはたいへん間違いを起こすもとだと思いますので、片や検察庁の検察官ないしは事務官、そういうふうな者たちの供述も十分に検討し、またしんしゃくいたしまして事の真相を明らかにしたいということでいままで努力を重ねてまいった、こういう次第でございます。
  131. 小柳勇

    小柳勇君 三名無罪で、一名有罪であります。裁判進行中でありますから、裁判の内容については国会としてはあまり触れないのが至当だろうと思いますから、内容については触れませんが、取り調べの段階で私が聞いて、あるいは取り調べられた者の告白書など見まして、しろうとなりに疑問を感じている点を、人権問題としてそこまで発展するかどうかわかりませんが、聞いてまいりたいと思うのですが、もちろんこれは被疑者でありますから、被疑者として調べるのは当然でありましょうが、朝から——娘がいるのですが、しかも自分の娘も逮捕されてきた。そして「夜の十一時頃まで取調べをし、その間娘は生後六ヶ月の子供を家に残して来たので一度帰してくれる様頼んだが、おまえが本当のことを云わねば帰さない、と帰してくれなかった。一方娘の夫は仕事にも行けず家にいたが、妻が帰ってこないので、仕方なく泣きさけぶ子供を連れて、雪の中を寒さを押して門司水上署に行き乳を飲ましてくれる様刑事に頼んだが、聞き入れられず、仕方なく夫は、ミルクを買って与えたが、日頃母乳で育てていたので受付けようともしないので、黒崎の母の実家に連れて行き、近所の子持の婦人にもらい乳をして」云々と、こういうことを警察で——いろいろ警察官でもあるいは刑事でもあたたかい思いやりのある人もあろうし、あるいはきびしくこれはやったのでありましょうけれども、生後六ヵ月の赤ん坊に乳を飲ませてくれというようなことが、取り調べの中で聞けないのであろうか。たくさんありますがね、そういう問題が。常識としてどうでしょうかね、刑事局長。これは大臣に聞くまでもありませんが。
  132. 川井英良

    政府委員(川井英良君) 私その事実関係つまびらかにしておりませんけれども、いま御指摘のような事実関係があるということを前提として私の印象を申し上げれば、もしもそのとおりであったとするならば、いかに捜査のためとはいえ、適当な措置とは申せない、そういうふうにお答えせざるを得ないと思います。
  133. 小柳勇

    小柳勇君 これは警察庁の刑事局長にも——これは刑事と検事が、検事は隣の部屋におりまして、刑事が調べているわけです、連絡をとりながら。したがって、警察庁の刑事局長にもお聞きしておきたいと思います。
  134. 内海倫

    政府委員(内海倫君) ただいまの法務省刑事局長の御所見と全く同様でございますが、つけ加えておきますと、私どもとしましては、とにかく警察官の捜査、取り調べにあたって一番大事なことは、人権の尊重という問題でございます。それに違背するというような取り調べなどは、厳につつしむべきものである。そういうふうな事実を前提としまするならば、たいへん遺憾なことだと思います。
  135. 小柳勇

    小柳勇君 さっき亀田委員からのほかの調査の提案もありましたから、私もこの警察に行って調べる余裕がありませんでしたから、まだそう古いことではありませんから、一ぺん警察庁としても調べていただきまして、このようなものが、国会に私が発言すること自体すでに問題だと思うわけです。全国の警察官の諸君にもそういう問題ひとつ教えてもらいたいので、事実の有無をお調べ願いたいと思います。その他この公判に関係して問題がたくさんございます。たとえば証拠も十分調べがなかったそのまま第一審の判決がなされたというような不満もありますが、これは裁判所の問題でありますから、きょうは省略いたしますが、そういうことで検察陣なり警察に対して不信を持っている。警察や検察からの調べを、もう悪いことしたからしょうがないといってすなおに受け入れ、あるいは若干取り調べがひどくても、それは国民としてやむを得ない場面もありましょうが、不信を持って、こうやって国会議員に訴えるということは、これは若干問題がありはしないかと思いますから、さらにこの問題は、あと亀田委員がお調べになりました問題と同時に、また私少し事実を調べまして問題にしたいと思いまして、きょうはこの程度にしておきたいと思います。
  136. 亀田得治

    ○亀田得治君 から出張に入る前に、昨年の九月二十七日ですか、東京地方裁判所の刑事法廷で、窃盗犯人ですがね、こういうことを言っているのですね。警察でビールやウイスキーを飲まされ、女房を抱かせてもらいました、そこでうその自白をした、こういうことを公判廷で言い、これは当時新聞にも出たはずでございますが、「自由と正義」の三月号にもこれは載っておりますが、こういうやり方、これはどうなんでしょうか、警察ではちょいちょい適当に使ってるんじゃないですか。
  137. 内海倫

    政府委員(内海倫君) 私も「自由と正義」の三月号詳細読みまして、これらのいずれにつきましてもそれぞれの県また警視庁につきまして実情の報告を求めたわけでございますが、中にはこの雑誌に書かれてあるとおりのような事実もございますが、女の肉体関係等につきましては、いずれも警察のほうはそういうことは絶対にないということを法廷においても当該警察官は証言いたしておりますし、また当該警察の監察官のほうで調べました結果も、そういうことは行なっておらない、あるいは積極的に行なわせるというふうなことはやっておらないということを申しております。この「自由と正義」を読みますと、数個の例について、しかも判決の形でいろいろ述べられてありますので、私どももさらに真剣にこういう問題は過去の実情について調査もいたしておりますし、今日以降におきましてかりそめにもこういうふうな疑いを持って論ぜられるようなことのないようにきびしく戒めておるところでございます。権威あるこういう雑誌に、しかも権威ある人が判決の内容を引用しての論述でございますから、読まれるほうでさように思われることは私はいたし方ないと思いますが、しかし、警察側の調べにおきましては、いま申しましたように、それに該当するような事実もございますが、女のような問題に関しましてはいずれの例におきましてもそれぞれの件で否定をいたしております。
  138. 亀田得治

    ○亀田得治君 これはちょっとついでに聞いておくつもりでお聞きしたわけですが、判決でもちゃんと事実を認定しているわけですね、東京地裁の場合でも。それを警察官が否認するということになると、警察官というものは都合の悪いことはともかく否認しておりゃいいんじゃというふうな印象を与えるんじゃないですかね。いやどうもやり方がまずかったならまずかったとか、まずかったと言うて頭をかいてくれりゃ、これは今後はそういうことはしないという意味にも通ずるわけで、これほどはっきり裁判官が——なかなかこんなことの認定は慎重ですよ、裁判官は。それを認定しておるのに、それでもそんなことはないんだというふうな言い方で、これは通るのでしょうかな。
  139. 内海倫

    政府委員(内海倫君) 先ほども申しましたように、裁判において認定されておる事実でございますから、その限りにおいて判決を見なければいけないと思いますけれども、ただやはり、被告がいろいろな形で法廷において述べました事柄の心証が裁判官によって採択されたものと思いますが、されば警察官のほうでそういうふうな行為をさせるべく二人を会わせたと、あるいはそういうふうな行為の行なわれておることを警察官が見ておるわけではございませんので、警察の調べにおいて、あるいは警察官の法廷における証言において、さような事実をさせ、またはそういうさせるような積極的な便宜を与えたことはないと、こういうことを強く言っており、また部内における監察におきましてもそういうふうに事実を言っておりますので、まあ私どもはその限りにおいてこれをそういうふうに受け取っておると、こういうことでございます。  しかしながら、客観的に考えますと、いやしくもそういうことの起こる可能性のある状態を少なくとも警察が引き起こしておるというその事実については、やはりその結果を、あるいはその現実を警察官が見ておらなかった、知らなかった、あるいはそういうことを意図してさしたものでは決してないというふうにいたしましても、決していいことではございませんので、私どもとしては十分に厳戒をしていきたい、かように思うのでございます。
  140. 亀田得治

    ○亀田得治君 どうもお答えがすっと簡単にいかぬですね。しかし、ヌード写真まで見せたようですね、この東京の場合には。こんな必要ないじゃないですか。
  141. 内海倫

    政府委員(内海倫君) いま私手元に詳細な資料を持ってきておりませんので、それの一々についてお答えいたしかねますが、調べました範囲で、同じ取り調べる場所にあったそういうものを見せてくれというので見せたことがあるということを当時の取り調べ官が述べております。そういう意味では、私否定をいたしません。ただ、そういうものを見せた状況が、たとえば、おいこういういいものがあるぞと、これを見ろや、見たら何とか言えと、こういうふうなものでは決してないというふうに申し上げたいと思います。先ほどもおしかりを受けました変な意味の情が移るということ、決していいことではございませんし、いやむしろ戒めなければならないことでありますけれども、長い間調べておると、そうしたうかつなあやまちをしかも重大なあやまちをおかすことがあるということで、私どももきびしく注意をしておるところでございます。
  142. 亀田得治

    ○亀田得治君 調べ室にたまたまあったのをお見せになったようなことを言われますけれども、たまたまそういう警察庁の調べ室にはそういうものがあるわけがないでしょうが、第一。見せる直前にはそれはそこにあったということになるでしょうが、降ってわいたわけでもないしね。だから、それは行き過ぎですよ、何といっても。だから、こういうことがまだあちこちでやられておるのかと思いましてね。よくたばこを吸わしたり、いろいろ気分をほぐらしてしゃべらせるようにするというふうなことは、これはよくあるものです。これは行き過ぎですわ、何といっても。だから、これはひとつやはり反省をしてもらわぬといかぬ。  それで、時間もありませんので、次にから出張の関係についてお尋ねします。これは事実関係は、前回並びにその後の資料を拝見しまして、その経過等は、これはもうはっきりいたしております。で、きょう法務大臣に来てもらいまして、こういう問題についての責任関係といいますか、考え方をお聞きしたいと思ってお越し願ったわけです。  最初に、告発が二つ出ておるわけですね、公文書偽造と横領という立場で。この処理はどういうふうになっておるか。刑事局長からでけっこうです。
  143. 川井英良

    政府委員(川井英良君) たいへんおくれておりまして申しわけございませんが、前回のときからその処理を急がせておるわけでございまして、ごく最近すべての調査を終わりまして最後の処理をきめる段階に来ておるということが最高検のほうから報告になっておりますので、ごく近い機会に検察庁としてこの告訴事件についてどういうふうな処分を、結末をつけるかということを御報告ができることだと考えております。
  144. 亀田得治

    ○亀田得治君 必要な事実関係の調べは終了しておるんですね。
  145. 川井英良

    政府委員(川井英良君) 終了しております。
  146. 亀田得治

    ○亀田得治君 で、起訴、不起訴、起訴猶予と、こう三つ考えられるわけですが、その点がまだ、最終結論が近く出るということですか。多少御説明願うわけにはいきませんか。
  147. 川井英良

    政府委員(川井英良君) 仰せのとおりでありまして、起訴、それから不起訴の中に、嫌疑なしとなりますか、起訴猶予となりますか、その辺のところが現在いま最後の詰めの段階に入っておるということで、ごく近い機会に法務大臣に対してその結果を報告することになろう、こういうことに相なっております。
  148. 亀田得治

    ○亀田得治君 まあその結論を待つことにしましよう。  そこで、問題は、大臣にお聞きしたいんですが、この問題が起きた直後新聞にばっと書かれた。そうすると、検察内部——まあこれはもちろん全部じゃないでしょうが、一部でしょうが、こういうことはよく役所ではあることなんだと。それから、今度の場合でも、初めから原鶴温泉の「なおみ」旅館で、そこを会場にして、そこへみんなに集まってもらえば何も問題ないことなんだ、だから形だけがちょっとまずかったんだという、どちらかというと軽く見る意見が新聞等にも載ったわけなんです。で、これを法務大臣としてはどう考えておるのか。それは役所から出された金を個人的にどうこうしたというふうなことはないことは、私もよくわかっております。しかし、それならもう、形がちょっと間違っておった程度にすぎないというふうに軽くこれは考えていいものかどうか、ここをひとつ責任者として承りたいんです。
  149. 田中伊三次

    ○国務大臣(田中伊三次君) この事件を同情的にながめてくださる方面からは、いまおことばのように、場所を置きかえただけなんだ、決して違法ないし悪いことはしていないという意見は確かにあるので、本件以外にどこかにそういうことが全く絶無であるとも言えぬかもしれません。しかし、私は、いやしくもほかの役所でない、裁判所とか法務省とかいうような役所におきましては、これはそういうふうに軽く言いわけをして事が済む筋のものではない。原鶴に行っておりながら、小倉に出張した——ちょうど小倉と原鶴とは距離が同じでありますからして、旅費その他の計算も一致するということでありましょうが、原鶴に行って会議をしておりながら、小倉で会議をしたように装うということは、これは間違いである、以後かようなことは私たちの役所においては断じてあるべきことでない、これを機会に深く反省をする必要があるというふうに、私は最近に法務省に参りましたものでありますけれども、過去を振り返ってみて、この事件の真相も見て、これは軽々に扱うべきものじゃない、こういうふうに判断をしておるのでございます。事件の事自体といたしましては、そのあやまちをはっきり認めまして、そして、当時の検事正でありました者から、その不当の支出をいたしましたものを全額を、一厘も残さずこれを返還せしめておりますような事情がありますので、これをどう処置をするかということについては、その情状は同情をしてくんでやるべきものがあろうかと存じますが、事柄自体としては軽々には見るべきものでない、今後これを根絶しなければならぬ、そしておわびをして反省の実をあげなければならぬものだと、こういうふうに、たいへん言いにくいのでありますけれども、そういうふうに判断をしております。
  150. 亀田得治

    ○亀田得治君 法務大臣、率直にお答えいただきまして、たいへんけっこうだと思います。やはりいろんなうわさを聞くんですがね。ほかの官庁ではもっとルーズな点もあるんじゃなかろうかとか、いろんなことを聞きますよ。だから、やはり最初はちょっと形式だけを変えておくというふうな程度に考えて出発してやっておると、今度ば形式がいつの間にか実質的なごまかしにまで発展するというおそれもやはり出てくるわけでして、これはいつでも変化するものですわ。だから、そういう意味で、大臣が実情はわかりながらも軽くは考えないと言われたことは、私は非常に高く評価したいと思うんですよ。したがって、この問題はこれで終止符を打つことにしたいと思います。
  151. 浅井亨

    委員長浅井亨君) ほかに発言もなければ、本日はこの程度にとどめて、散会いたします。    午後三時三十分散会      —————・—————