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政府委員(内海倫君) 警察
関係につきまして、ただいま亀田先生から、判決文に書かれてある点についてお述べになりました
内容につきまして、当時警察のほうで、
福岡県警察についてこれらの事柄の報告を求めました
内容につきまして、順を追ってお答えを申し上げたいと存じます。
まず、約四ヵ月間監獄法に違背して同被告人を代用監獄としての小倉の警察署に移監して長期間にわたって調べた、こういう問題でございます。弁解するつもりはございませんが、そのような事実は確かにあるわけでございますが、ただ、これは十分御承知のように、捜査上必要があります場合は、現に刑務所に収監されております者を代用監獄としての警察署に検事の指揮によって移監してもらって取り調べをいたすことはしばしばあるわけでございますが、これは法の
規定にもありますように、一ヵ月以内であるということでございます。この点につきましては、一応当該警察におきましても、その間一ヵ月ごとに一応小倉の拘置所のほうに帰す、再び指揮を得て代用監獄としての小倉署のほうに移監をしている、こういうことを四回繰り返しているわけであります。一応法の定めるところに違背しない形はとっておりますけれ
ども、確かにこの点につきましては、私
どもも決して適当な措置であったとは言えないかもしれません。しかしながら、捜査の必要上こういうふうなやむを得ざる措置をとったものと考えるのであります。
次は、松本という
本人について——義母でありかつ情婦であるといわれておりますが、これに連日のように昼食を差し入れさしている、あるいはまたしばしば面会をさしておる、こういう問題でございますが、これは確かに四ヵ月間の間に二十回くらい、取り調べ官の立ち会いのもとに一回十五分ないし三十分程度面会をさしておると、こういうふうな報告をしてまいっております。
また、食事の問題でございますが、
福岡県警察の報告によりますと、被疑者である是沢が非常に胃弱であったために、十数回かゆ食の要求がありましたので、これを許しましたが、連日にわたって食事の差し入れ等について特別扱いをしたということはないというふうに報告をいたしております。
それから
電話の使用の問題でございますが、これにつきましても、いろいろ報告を聞いてみましたところ、十四、五回取り調べ官が指示をして
本人に
電話の使用を認めた、こういうふうな報告を受けております。
それからテレビを見させたという問題でありますが、
福岡県警察の報告してまいりましたところによりますと、この被疑者の是沢の義弟がたいへん競輪にこっておる、いわば競輪狂ということのために、何もかも入質して換金するというふうなおそれがあるので、
本人の
希望によって、テレビのみならずその他若干のものを保管してくれというふうなことの要求がありましたので、これを保管し、その際、取り調べの終了後に、あるいは途中たまたま大相撲の名古屋場所をやっておったようでありますが、こういうときに一回、その他終了後に数回見させたことがあるという事実を申しておりますが、私
どもとしましては、たとえ
本人がそういうふうな換金云々というふうな要望がありましても、それを預かる、あるいは預かった上でたとえそれが取り調べに支障あるなしのいかんを問わず視聴を許すというふうなことは、私は決して妥当な措置ではない、かように考えております。取り調べ後に、取り調べ官が被疑者と雑談をしたり、あるいは自由にたばこを吸わせたというふうなことのようでありますが、これはまあ確かにそういう事実はありますが、取り調べが終了しますと、取り調べ官と被疑者が対話をしたり、あるいはその提供するたばこを喫煙を許すというふうなことも通例があるようでございまして、特に今回のこの被疑者に特別の扱いとしてそういうようなものを認めたものではない、こういうふうな報告をよこしております。
押送時に被疑者に手錠をしないというふうなことで特別に便宜をはかったというふうな点でございますが、これも事実でございます。さりながら警察官が一名だけで押送したときは必ず手錠をしておったようでございますが、二名で押送するときは手錠をしなかったこともあるというふうに報告をしてまいっております。しかしながら、私
どものこういう被疑者押送に対する基本方針としましては、逃走のおそれもあり、あるいは反抗その他に出るおそれもありますので、必ず手錠をするようにというふうな
指導をいたしておるところでございます。たとえ二名で付き添いましても手錠をしなかったということについては、私
どもも遺憾な点だと考えております。
次に、義父あるいは義弟の就職をあっせんした、こういうことであります。その事実はあるようでございます。ただ、私
どもに接しておる報告で、どういうところにどういうふうな
方法であっせんしたかということの
内容は、私ただいま聞いておりませんが、報告によれば、被疑者等から懇望されて、取り調べ官が情にほだされてあっせんをしてやった、いわば善意の処置であるというふうな報告をいたしております。
それから、検察官の取り調べにあたって、捜査に当たった警察官が立ち会いあるいはノートしたというふうなことが判決で言われておるようでありますが、
福岡県の報告によりますと、この場合一応検察官の了解を得て
本人を押送した警察官が立ち会ったことがあるということでございます。本来こういうことが、自白についての任意性を疑われる、あるいは検察官のとるべき心証を阻害するおそれもあり、私
どもも決してこういうことがあっていいとは思いませんが、
福岡県の報告によりますと、この場合においては自白を強制するような結果ということは起こっておらないというふうに報告をよこしております。
最後に、留置場の監房の係の者がこの松本イシとたびたび密会させ、ついに
本人をして脱獄させるに至った——これはそのとおりの事実でございまして、永芳という看守係の巡査がそういう逃亡を幇助したことになります。松本イシという女から数回にわたって酒、洋酒等の贈賄も受ける、しかも二人を会わさせておるときにその看守をことさらに怠ってついに
本人を逃亡させたという事実がございます。これは直ちに懲戒免職に付しますほか、永芳巡査につきましては
事件として送致し、すでに判決もすべて終わっておるところであり、また本部長以下責任のある者につきましても、全部それぞれ必要な行政処分を行なったところでございます。
以上が、ただいま亀田
委員から判決について述べられました事柄についての
福岡県警察について
調査させました結果の報告を申し上げたところでございますが、まあ私
どもといたしましては、捜査というものについては非情なようでありましても、厳格に、遺憾のない取り調べを行なうべきもので、それぞれの点につきましても何らかの形における遺憾の点のあることは、はなはだ私
どもとしましても残念に思うところであります。
しかしながら、一言弁解をさせていただきますと、私
どももこういうふうな問題につきまして、取り調べに当たる者の心理、心境というふうなものをいろいろな形で聞いておりますが、やはり長く調べておりますと、どうしても人間対人間という
関係で情が移るというふうなこともあって、それがもっと厳格でなければならないという意識のほかに、やはり人間という気持ちで、まあいわば善意ある行為というふうなことも出るようでございまして、十分今後も慎まなければならない点だと、かように存じます。はなはだ弁解めいた点でございますが、一応御報告を申し上げます。