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1967-07-11 第55回国会 参議院 農林水産委員会 第24号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十二年七月十一日(火曜日)    午前十一時三分開会     —————————————    委員異動  七月十一日     辞任         補欠選任      高橋雄之助君     中上川アキ君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         野知 浩之君     理 事                 任田 新治君                 山崎  斉君                 川村 清一君                 中村 波男君     委 員                 青田源太郎君                 岡村文四郎君                 小林 篤一君                 櫻井 志郎君                 田村 賢作君                 温水 三郎君                 堀本 宜実君                 森部 隆輔君                 八木 一郎君                 和田 鶴一君                 武内 五郎君                 達田 龍彦君                 鶴園 哲夫君                 村田 秀三君                 北條 雋八君    政府委員        水産庁長官    久宗  高君    事務局側        常任委員会専門        員        宮出 秀雄君    説明員        水産庁漁政部長  池田 俊也君        水産庁漁政部協        同組合課長    関根 秋男君        水産庁漁政部調        査官       小関 信章君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○漁業協同組合合併助成法案内閣提出衆議院  送付) ○漁業災害補償法の一部を改正する法律案内閣  提出衆議院送付)     —————————————
  2. 野知浩之

    委員長野知浩之君) ただいまから農林水産委員会を開会いたします。  委員異動について報告いたします。  本日、高橋雄之助君が委員を辞任され、その補欠として中上川アキ君が委員に選任されました。     —————————————
  3. 野知浩之

    委員長野知浩之君) 漁業協同組合合併助成法案及び漁業災害補償法の一部を改正する法律案を一括して議題といたします。  両案について質疑のある方は、順次御発言願います。
  4. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 まず、漁業災害法律についてお伺いをいたしますが、この法律が制定されまして、三十九年と四十年と損害率が非常に高いわけです。三十九年が一三二八%、四十年が一五八%、非常に損害率が大きいわけですが、この法律が施行されます前の三十二年から試験的に七年ほど実施をしているわけです。その場合の損害率というのはどの程度のものになっておりますか、一番最後の年でありますと言っていい三十八年度はどの程度損害率になっているか、お伺いをいたします。
  5. 池田俊也

    説明員池田俊也君) 三十八年度の試験実施のときの損害率でございますが、二〇六%でございます。  それから参考までにほかのやつを申し上げますと、さかのぼって申し上げますが、三十七年が二六六、三十六年が二四二、三十五年が一八六、三十四年が二五三、三十三年が二〇五、三十二年が四〇六、以上でございます。
  6. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 先ほど申し上げましたこの漁災法が施行されましてからの三十九年一三八、あるいは四十年の一五八という損害率は、どういうわけでこういう損害率が生じたのか、お尋ねをいたします。
  7. 池田俊也

    説明員池田俊也君) ごく大ざっぱに申し上げますと、損害率の比較的高いのはノリ養殖共済についての損害率が高いわけでございますが、特に四十年におきましては西日本一帯に非常に異常な気象あるいは海象の状況がございまして、そういうふうなことでノリ損害が大きかったわけでございます。大体以上のようなことでございます。
  8. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 損害率の問題については、いまお話しのようなことですが、もう少し先へいってお尋ねをいたしたいと思います。  その次に、加入状況ですけれども、これは相当に低いわけですが、漁獲共済が三%——三%というと、これは危険分散にはならないというように思うのですが、漁獲共済が三%、養殖共済が四七%、漁具共済が一〇%と加入率がはなはだしく低いように思うのです。相当に低いように思うのですが、そればかりではなくて、この内容を見ますと、中身がまたいろいろ顕著に目につく内容になっているように思うんですね。さらにまた、地域的に言いまして非常に大きな片寄りがあるというふうに思うのですが、漁獲共済で見ますというと三%という加入率なんですけれども、採藻と採具というやつは三六%、養殖共済は四七%というのですが、その中の九割八分ぐらいはノリ養殖だというんですね。しろうとが見ますと、異常な感じを受けるわけなんです。漁具共済は一〇%というのですけれども中身を見ますと、流し網は一〇〇%入っているんですね、あとは入っていないで、四%、一%。だから一〇%になるのだと思うんですけれども地域的にも非常に片寄っておりますね。漁済連がついこのあいだ出しましたものを見ましても、非常に片寄っているんですね。  そこで、そういった点について、一体どういうわけでこういうことが起こるのか。これは、私は、行政指導上の問題もあろうと思うし、共済運営上の問題もありましょうし、漁済連運営の問題とも関係の深いものじゃないかと思いますので、少し立ち入って伺いたいわけなんです。先ほど申し上げました採藻関係は三六%入っているが、それ以外のものは二%だ、三%だという異常な状態ですね、これは一体どういうことなんですか。
  9. 久宗高

    政府委員久宗高君) 漁業共済制度の一番基本的な問題に触れての御質問でございますが、御承知のとおり、この問題が試験過程に入ります段階におきましては、政府といたしましては、実は非常に自信がございませんで、いわばへっぴり腰でかかったような感じがいたします。さようなことで、漁業関係者の非常な熱意によりまして、試験段階に入り、さらに機が熟しまして、三十九年から実施に入ったのでございますが、その際、本院におかれましての附帯決議で欠陥につきまして詳細御指摘がございましたようなことで、実は非常に内容をしぼりまして実施いたした経緯がございます。  そこで、基本的に申し上げれば、やはり損害が起こりました場合に必ずしも十分な補てんでないということ、そういう問題がございまして、漁業関係者相当保険需要がありながら、どうもこの制度に不満がございまして、加入が伸びにくかったという事実があるように思います。  それからもう一つの問題といたしましては、御質問でも御指摘がございましたように、制度仕組みのみならず、運営上も問題があるのじゃないかというお話でございますが、まさにそのとおりでございまして、漁民の組織を通じまして、これの普及宣伝なり、また加入促進なりをいたしてまいったわけでございます。御指摘のございましたような採貝・採藻でございますとかあるいはノリといったようなものにつきましては、組合末端漁場におきまして、漁場管理の必要がございますために、組合が中心になりまして漁場管理をしたい、こういうようなことから、多数の人が組合単位に入る入らないという形のものになるわけでございますので、結果におきまして、加入率が、それも不十分でございますが、比較的いいように思われるわけでございます。  それから申し落としましたけれども先ほど給付内容が十分でないということにつきましては、今回の改正でお願いをいたしておりますように、政府保険事業がこれをバックしておりませんでしたので、団体としては背負い切れないような異常な災害が起こりました場合におきましても、それを補てんする可能性がございませんために、保険経営上は普及を進めたいと思いましても、それがこわいために、多少危険度の多いものにつきましては普及につきましてややちゅうちょするといったような面もあったように思うわけでございます。さような点が、実績といたしまして、ただいま御指摘にもございましたように、漁獲共済で申しますと、三%といったような、ちょっと体をなしていないわけでございます。ただ、これが農業災害制度のような形の仕組みになっておりませんので、私どももこのようなパーセントでは保険設計そのものにも問題があるのではないかとまで考えたわけでございますが、一応現在の改正におきまして、試験実施時代計数とその後の実施計数から考えまして、漁獲共済につきましては約一万二千件、養殖共済におきましては約四千件をこえます資料に基づきまして全国的単位で危険の分散をいたしまして、それをさらに政府が、異常な災害について、つまり団体の内部ではとても負い切れないと思うものについて保険裏打ちをいたしますれば、そして給付内容を今回の改正のような形で改善できますならば、この加入の異常な片寄りにつきまして相当思い切った改善ができるのではないか、こう考えまして今回の提案をいたしておるような次第でございます。
  10. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 いま長官のおっしゃったような問題は、私は、ある程度もう少し中身に入りまして、結論として重ねてそういう問題についてお尋ねをしたいというふうに思っております。  それで、養殖共済の大部分九八%がノリ養殖だと、それ以外のものは非常に低い、はなはだしく低い加入率になっているわけですが、これは一体どういう理由なんですか。ほとんどがもうノリだと、あと養殖関係は非常に少ないというのは、一体どういう理由か。これもいま長官のおっしゃったようなことになるのですか。いままでは、しかし、養殖共済は、個人加入だったのじゃないですか。個人的な加入と言っていいのじゃないですか。
  11. 久宗高

    政府委員久宗高君) 詳細にはあと漁政部長から補足させますが、基本的には、ノリ養殖につきましては、漁場の集団的な管理が必要でございますので、たいていの組合漁場管理規則をつくり、それによって運営をいたしているわけでございます。したがいまして、実際問題といたしましては、ノリ共済に入ります場合に、その漁場関係者が実質上は全部入るような形で組合指導したと思いますし、結果におきましても、ノリにつきましては加入率が非常にいいということになったわけでございまして、これは主としてノリ漁場管理実態から見ましてそういうことになっておるのではないかというふうに一応理解をいたしております。
  12. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 漁具共済ですが、これは、いただいた資料によりますというと、一〇%の加入になっておりますが、これも体をなさないというふうに思うのですけれども、まあしかしこれから国が保険を行なって本格的に漁災法を実行していくというわけですが、いずれにいたしましても、一〇%という加入で、流し網が一〇〇%入って、あとは、まき網一%、定置網四%という加入なんですね。これは一体どういう理由ですか。流し網は残らず全部入っているわけですね。ですが、定置網とかまき網は、全くお恥ずかしい、お話にならない加入率になっておるわけですが、これはどういう理由ですか。
  13. 池田俊也

    説明員池田俊也君) これは基本的には各業界指導力というようなこともいろいろ影響しているように思いますが、たとえば定置網等について考えてみますと、これはその地域によりまして災害を受ける程度というものがかなり違うわけでございますけれども、たとえば台風等の影響がほとんどないというような地帯もかなりあるわけでございます。そういうところでは、初めから加入するという考えがないわけでございます。それからもう一つ原因といたしましては、これは現在の制度にも若干関係があるように思いますけれども共済団体経営基盤の安定と申しますか、そういうような観点から、共済金額最高限度をある程度押えているわけでございます。そういうような場合に、かりに定置というような相当価格の高いものにつきましては、ある程度のところに押えられるということで、加入者としてあまり魅力がない、こういうようなことも一つ原因ではないかと思います。そういうようなものに、あるいは業界指導力というようなものがからみ合いまして、著しく加入率が低い、こういうようなことではないかと思います。
  14. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 いまお話のありました漁済連なりあるいは漁業共済組合熱意といいますが、そういうものが一つ原因だというお話ですが、流し網北海道ですが、漁済連会長理事が安藤さんで北海道の人だというんですが、それだから北海道はそれ以外のものでも加入率がほかの県よりも目立っていいように思うんですけれども、いまお話し定置網が四%でまき網が一%だということは、これはいまお話のあったようなものだけではないのではないか。指導に熱心であるかどうかというだけではなくて、共済設計に問題があるんじゃないか。災害がそんなにひんぱんに起こらないなら、それにふさわしいものをつくればいいわけですし、そういうものができ上がれば、これは毎次の災害を防ぐということはいいことですから、入るだろうと思うんです。そういうものがないのではないか。したがって、先ほどお話のありましたように、積極的に熱意をもって奨励できない。だから、一%とか、四%とか、全く対象にならない。しかも、約十年の歴史を持っておるわけですね。漁災法が施行されて二年ちょっとになるんですが、そういたしますと、これはどうも簡単ないまの御説明のようにはいかないんじゃないかと思うんです。  そこで、お伺いをいたしますのは、漁具共済を今回国の保険から除外をした。三十二年から三十九年まで七年間の試験的実施を経て、さらに漁災法が施行されまして二年余にわたって、十年近くにわたって漁具共済が行なわれてきたわけですけれども、今回これを国の保険からはずした理由はどういう理由なのか、お伺いをいたしたいわけであります。
  15. 久宗高

    政府委員久宗高君) 漁具共済につきましては、御指摘のように、関係者熱意と申しますよりは、基本的に設計そのものにもやはり問題ありというふうに考えざるを得ない実態でございます。さような意味におきまして、私どもといたしましては、昨年も一部やったわけでございますが、四十二年度におきましても、予算を組みまして、委託調査によりまして、基本的な設計そのものにつきましての難点につきましてもう少し掘り下げて検討してみたいという実は準備をいたしておるわけでございます。確かに、御指摘のように、内容を見ましても、業種別にも片寄っておりますし、また、危険の分散が十分はかられないような体制に制度そのものがなっているように思われますので、給付内容の問題を含めまして、もう少しこの制度の基本的な形につきまして検討を加えまして、それから保険のほうにつなぐような形をとりたい。現在のままではどうも直ちに組み入れることには相当難点があると考えまして、若干の研究期間をいただきたいという意味におきましてはずしたわけでございます。
  16. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 いまの長官お話ですと、共済設計についてもさらに調査研究をして、そして国の保険につなぐ、そういうつもりでおるんだというお話なんですが、そこのところをもう少し聞いておきたいと思いますが、それは後ほどお答えをいただくことにいたしまして、四十二年度の漁具共済加入計画はどうなっているのでしょう。私が承知をいたしておりますところによりますというと、「漁災制度第四年度にあたって」ということしの六月に出たやつですね、これを見ますというと、この漁災計画はあまり奨励しないというようなふうに見取れるんですね。また、計画を見ますというと、数字的にはそういうふうに推定される、ほうっておくんだと。いま長官お話しのようないろいろ不備な点もあるだろうし、これからもっと調査をしなければならない点もあるからということなのか、どうもあまり奨励はしないのじゃないかというようなふうに計画から見ますと見取れるわけですね。いかがでしょう。
  17. 久宗高

    政府委員久宗高君) 計画数字につきましては後ほど漁政部長から申し上げますが、基本的な考え方といたしましては、まあ本件と申しますか、漁獲共済そのものにつきまして非常に中途はんぱな形になってここ二、三年の実施計画を経ましたので、その際に一番基本的な難点でございました保険裏打ちをつけまして給付内容をよくする、それによって加入促進をいたしまして、まず共済制度をやっていきます基盤そのものをつくりたい。御指摘のように、地域的にも片寄っておりますので——全国的に三%というような数字それ自体も問題でございますが、さらにそれを地域に分けますと非常な片寄りをしておりますので、本体の確立をはかりたいというのを当面の目的にいたしたわけでございます。  したがいまして、漁具共済につきましては、実は相当の年数はたっておりますけれども、どうも仕組み難点がございまして、その間におきます加入促進も必ずしも十分でなかった。また、このままの内容加入促進をいたそうといたしましても、根本的に無理がございますので、できるだけ早期委託調査によりまして保険内容を固めてまいりたいということを実は考えまして、その経過期間という意味におきましてあまり積極的な加入計画を組まなかったわけでございます。いま、私どもで、さような意味におきまして検討したいと考えておりますのは、一つには、普遍的な多数の加入をはかりますための共済価格水準てん補方式等給付内容についての改正方法、これが一つでございます。もう一つは、給付反対給付の均衡をはかるための危険区分方法共済掛け金率水準等共済設計内容についての改正方法、こういった点に重点を置きまして、できるだけ早期にこの調査を進めまして、そうして全体としての設計を考え直しまして組み入れてまいりたい。そういう過渡期でございますために、積極的な普及計画は立てなかったわけでございます。
  18. 池田俊也

    説明員池田俊也君) 四十二年度におきます加入見込みでございますが、具体的な数字を申し上げますと、私どものほうで一応予定しております全体の共済金額は二百六十二億でございます。この中で少し区別をして申し上げますと、漁獲共済が百五十六億、養殖共済が九十一億、漁具共済が十四億でございます。これは、実は、計画といいますよりも見込みでございまして、従来の実績を一応参考にいたしまして、従来の傾向を取り入れまして、この程度はいくだろうと、こういうことで出した数字でございます。
  19. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 これは漁済連水産庁がある意味では一体になって編集されておるわけですが、それによりますと、加入計画というものが出ておるわけです。いまのお話のように、これは後ほどもう少し立ち入ってお尋ねをいたしますけれども漁具共済についてはわずかに五%程度の伸びをみているわけですね。それ以外のところには二倍とか五割とか七割という計画を立てられておるのですが、漁具共済については五%ですから、まあこれはほっておくという形になりますね、という感じがするわけですよ。かたわらにおきまして、養殖共済は、三十二年から七年間、試験的に行なわなかったわけですね。試験的に行なわなかったにかかわらず、漁災制度が三十九年に成立すると、突如として養殖共済が入ってきたんですね。これは一体どういう理由なんですか。漁具共済は十年にわたった実績を持っているわけです、ともかくとして。しかるに、これは国の保険からはずす。しかし、養殖共済は、試験的な七年の経過もなくて、突如として漁災制度の中に法律制定のときに組み入れている。これは一体どういう理由に基づくのですか。
  20. 小関信章

    説明員小関信章君) 御説明申し上げます。  試験実施の当時におきましては、養殖関係についてはノリだけ漁獲共済の中で小規模に実施したことはございます。それで、本格的には新法ができて以来実施をしたいということになっております。
  21. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 私が伺っておりますのは、漁具共済については試験実施期間というのは約七年ある。漁災制度が成立しましてから二年という経歴がある。ですから、約十年の実績を持っているにもかかわらず、今回は国の保険から落とした。一方、養殖共済を見るというと、これは七年間の試験実施についてはほとんど行なわれていない。いま小関調査官からお話がありましたように、一部やったことがあるというお話ですが、それが突如として漁災法を制定するときに出てきた理由を伺っているわけです。  ついでに伺っておきますが、これは三十九年の十月に事業を開始するわけなんですが、開始すると同時に、ノリ養殖は殺到するんです。たちまちのうちに全体の三分の一が入るんです。どういう指導をしてこんなになるのか、何か奇妙な手があるように思うんですよ。たちまち殺到するんです。そして、わずか六カ月の間に膨大な赤字を出すわけです。とてつもない赤字を出す。ですから、私は不思議でならないのは、漁具共済は十年の歴史があるのにかかわらず、今回はずして、これからまだ慎重に調査をし、検討するんだ、そういう態度をとりながら、一方においては、養殖共済については先ほど私が申し上げたとおりです。その差異をどういうふうに説明されるのか、ありのままに聞きたいわけです。
  22. 池田俊也

    説明員池田俊也君) これは私ども一つの見方でございますけれども、こういうような事情があるのじゃないかという気がいたします。  その一つといたしましては、現在におきます漁災制度の問題でございますけれども一つには、網の漁具共済というものが、流し網等の場合には一〇〇%の加入を得ておりますけれども、その他の場合が非常な低い加入率になっているという点は先ほども申し上げたわけでございますけれども漁具価格等が場合によれば非常に高いものになる場合があるわけでございます。そのような場合に、共済団体に非常に高い支払いを来たすような場合があるということは危険でございますので、一定金額で押えている。これが必ずしも実際の漁業者需要にマッチをしないという面があるのじゃなかろうか。  それから一方、ノリ共済について考えてみますと、今回はこれについては若干の改正を御提案申し上げているわけでございますが、同じような点から考えてみますと、かなり漁業者に有利な形になっている。これは農業の場合と一がいに比べることは困難かと思いますけれども一つのあれとして比べてみますと、農業の場合には相当程度自家保険部分見込みまして、それ以下の災害のときには共済金支払い対象にしない。ところが、ノリ共済の場合におきましては、その点についてほとんど全額を支払い対象にする、こういうような仕組みになっているわけでございまして、そういうような点で漁業者から見た場合にかなり魅力のある共済制度になっているのではなかろうかというような点が一つあるわけでございます。  それからさらに、漁業の種類あるいは性質から見まして、はたしていわゆる保険需要と申しますか、そういうものが十分あるのかどうかという点でございますが、ノリ共済につきましては、農業の場合と非常に似ている点がございまして、ある意味では栽培的な漁業でございます。そうして、もちろん相当程度収獲の変動はございますけれども種つけをいたしまして一定期間後に収獲をするということで、通常の漁獲と違いまして、かなり農業に近い性格を持っているわけで、また、その漁業者がこれに依存する程度もかなり大きいわけでございます。専業といいますか、あるいは専業に近いようなかっこうの経営が多い。こういうような点からいたしまして、やはり災害に対する対策についてかなり関心が強い。したがいまして、ことばをかえて申しますと、保険需要がかなり強い、こういうことがあるのじゃなかろうか、こういうことでございます。それに対しまして、漁具共済の場合におきましては、先ほども若干申し上げたわけでございますが、場所によりましては、災害の危険の非常に少ない地域もあるわけでございます。したがいまして、一般的にいえば、保険需要の点でノリ共済と比べるとかなり低いのではなかろうか、こういう感じがいたすわけでございます。  そのほかに、先ほども申し上げましたノリ共済の場合には漁協が大体ノリ漁業というものを管理いたしておりますので、漁協の指導力というものが大きく影響をいたします。  こういうようないろいろな事情によりまして、両方の加入率に大きな差異が出てくる、このようなことではないかと考えております。
  23. 久宗高

    政府委員久宗高君) 御質問に直接お答えする意味におきまして補足いたしますと、発足当時に急速に伸びました事情といたしましては、御承知のとおり、三十八年にノリの異常な災害がございまして、また、当時、その前後に構造改善におきましてノリ一つのチャンピオンというふうな形で相当そこに力が入っておりました経緯もございまして、それと同時に、そういうようなことが、三十九年度から制度を本格的に実施しろという強い力の根拠にもなっておったように思うわけでございます。さような意味におきまして、発足いたしますと、相当な勢いで実は伸びたわけでございます。不幸にいたしまして四十年度におきましてまた異常な災害にぶつかりましたために、相当赤字を出したわけでございますが、また、部長から申しましたように、一応現在の仕組みにおきまして、二、三年の経験を経て考えますと、必ずしもノリ共済設計があのままでよろしいかどうかという問題もございますので、若干の改訂を加えまして今回の提案にいたしておるわけであります。  もう一つの問題といたしましては、御承知のとおり、ノリにつきましては、他の共済と違いまして、価格関係を入れません。施設そのものの共済という体系をとっているわけでございます。さような意味におきまして、現在の段階におきまする普及が異常な形で急速に伸びる可能性を持っている。しかし、実際には、先ほどもちょっと申し上げましたように、ノリ漁業管理という意味におきまして組合が本来これをタッチしている問題でございますので、この制度普及いたしてまいります段階といたしましては、組合が中心になりまして加入促進するのに一番実態にも合っておったというふうに思われるのであります。
  24. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 私、伺いたい点は、そういう点もあるのですけれども、たとえばもう少し前へ進んでお伺いいたしますが、ノリ共済は、三十九年の設立と同時にまさに殺到するという状況にあるわけですが、そこでたちどころにして五千四百万円という損失を生ずるわけですね。一体、その付保率はどうなっておるんですか。付保率というのですか、共済限度額に対する共済金額の割合ですね、これはノリ共済の場合はどういうふうになっておるのですか、実績は。四十年度でよろしゅうございますが、ノリだけでいい。問題はノリですから、あと、カキとか真珠とかいうのはちょびっとしか入っていないですから、いまのノリについてどういうことになっておるのか。——どうも、総体として、まだお答えのない間に感想を述べておきますと、どうもこの漁災について水産庁は少し消極的なような感じがしますね、ような気がしてならないですね。もっと正確に答弁をいただきたい。
  25. 池田俊也

    説明員池田俊也君) 四十一年度の実績でございますが、ノリの付保率でございますが、四六・四%でございます。
  26. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 これは突如として出てくるわけなんですが、共済設計はどういうふうにしておつくりになったのですか。繰り返しますが、先ほどから私が疑問にしているのは、漁具共済については十年の歴史を持っている。しかし、養殖共済については、内容ノリ、カキ、真珠、それから真珠母貝、ハマチ、こういう種類に分かれるわけですが、こういう養殖共済が試験計画なくして、突如として法律ができるときに割り込んできたというような感じすら受けるわけです。その場合に、研究結果なくして共済設計はどういうふうにしておつくりになったのですか。
  27. 関根秋男

    説明員(関根秋男君) 最初に、漁具共済について保険事業をやらないで、試験実施をやらなかった養殖共済について保険設計をやるというのはおかしいではないか、こういう点についてお答えをしたいと思います。  今度の政府保険設計をやるにつきましては、学識者に委嘱をいたしまして、漁具共済も含めて実は保険設計をやる姿勢で御依頼をしたわけでございますけれども保険設計のしかたといたしまして全国的な規模での災害を統計的な処理によって考えたわけでございますが、漁具共済につきましては、そういった保険設計が当てはめにくい事情があったわけであります。と申しますのは、漁具共済の中心をなしておりますものが、御承知のように、母船式のサケ・マス漁業に使います流し網でございまして、これが昭和四十年度の共済金額でほぼ漁具の中で九割を占めておるわけであります。母船式のサケ・マス漁業について見ますと、これは同じ時期に同じ海域で操業をしておる。ところが、漁獲共済養殖共済というのは、全国的にその漁業なり養殖事業というものがばらまかれておるので、全国的なバランスをとるというような形で保険設計がなされておるわけであります。それに対しまして、漁具共済というのは、いま申し上げましたように、地域的に限定されておるということから、同じような保険理論が適用できなかったわけであります。こういう点が、漁具共済が長い間やってきたにもかかわらず、今回の保険設計に取り入れられなかったということの理由でございます。したがいまして、われわれは、漁具共済を初めから保険設計に入れないという考えではなかったわけであります。  それからノリ養殖共済でございますけれども、これが突如としてやったのではないか、こういう点でございますが、ノリ養殖共済につきましては、正確には記憶しておりませんけれども、この実施の前に数年にわたりまして全国的に被害状況調査をいたしました。そうして、その被害率などを算定いたしまして今回三十九年の本格実施の際に取り入れた、こういう経緯でございまして、いろいろな調査の上に基づいて設計をされておる、こういうことでございます。
  28. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 いまの説明を聞いておりますと、私の質問と若干ずれておる点もあるのですけれども、それはあと伺いますが、いま説明を聞いておりますと、そういう状況では漁具共済保険共済にならないということにならないですか。
  29. 関根秋男

    説明員(関根秋男君) この点につきましては、ことしの予算で、そういった被害の起こり方をしており、また、加入状況にある漁具共済につきまして、どういうような設計ができるかというようなことで委託費を計上して学識者に調査を委託する予定にいたしております。その場合に、これは委託の内容でございますけれども、考えられる方法といたしまして、サケ・マスだけでなく、もっと普遍的な加入がやられるような形というものも一つ考慮に入れていいのじゃないかというふうに考えております。いずれにいたしましても、この問題につきましては、学識者に委託をいたしまして、漁具共済にふさわしいような保険設計というようなことで検討を進める予定にしております。
  30. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 じゃ、十年の経験があるのに——三十二年から試験的に七年間実施をして、法律が制定されてから二年という年月があるんですね。今年で四年目になるわけですね。そうして、昨年は若干予算を組んだが、ことしはもう少し予算を組んでこれから漁具共済調査なり何なりをして委託をするという話では、さっき申し上げました政府の漁災についての取り組み方に私は疑問を持つわけであります。はなはだしく不誠意であり、消極的であるというように言わざるを得ない。  もう一つ養殖共済については、先ほど調査官の話によりますというと、ごく一部について試験的にやったこともあるというお話ですが、いままた課長の話だと、数年にわたっての被害状況調査という話なんですが、一体どういうことなんですか。共済設計というのはそんなに簡単にできるものですか。しかも、話が食い違っておるんですね。だから、両方合わしたのがほんとうかもしれないですね。
  31. 小関信章

    説明員小関信章君) いま私の申し上げたことと、課長の申し上げたこととが若干食い違っているようなふうにお受け取りいただいたかと思いますが、そうではございませんで、試験実施当時に、ノリ養殖というのは、現行の仕組みとは異なりまして、その当時の漁獲共済の方式でやった事例があるということを私は申し上げたわけでございます。ですから、これは共済実績であるということでございます。  それから先ほど課長のほうから御説明申し上げましたのは、三十九年度以降の共済制度仕組みをつくるにあたって、三十八年度におきまして、それから以前約五年間にわたってのノリ養殖業者に対しての被害調査というか、掛け金率の基礎になる資料を全国各府県に委託をいたしまして調査収集したということを申し上げたと思うのでございます。
  32. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 それでは、調査官のお話とそれから課長のお話と二つを合わせてほんとうのことになるんですか。  それでは、お尋ねをいたしますが、私は、養殖共済については、とても五種目にわたって——ノリ、カキ、真珠、真珠母貝、ハマチをそのときにみんな一緒にやったかどうか知りませんが、共済設計がそう急にできるものではなかろうと思うのです。この共済設計には問題が多かったんじゃないかと思うのです。したがいまして、三十九年五月までの間にたいへんな損失を生ずるわけです、五千六百万円ですか。これはどういうわけですか、設計が悪いんじゃないですか、どういうふうに考えておられますか。このときは、全国的に平年作であるというふうにいわれているのですが、全国的に災害が起こったことになっている。そして、たちまちにして五千四百万という赤字を出してしまった。まるで一挙に殺到して取っていかれてしまったというような感じを持つわけなんです、悪いことばで言えば。四十年は、何か災害があったというので、二億八千万くらいのものを持っていかれた。持っていかれたというのもまずい話ですが、赤字になるんですね。ですが、どうもこの点が理解がつかない。私は漁船保険の審査のときにも非常に疑問を感じたのですが、漁災保険についても非常に疑問を感じますね。何か国がえらいバックアップしているんだからということで安易に寄りかかって、共済という精神が非常に薄いんじゃないか。自分らで自分らの共済をするんだ、危険分散をするんだという考え方が非常に薄いんじゃないか。そこへもってきて設計がまずいということになりますと、これはたちまちたいへんなことになってしまう。ですから、五億一千万の中の半分以上がノリ養殖赤字だというように言われるわけですね。四十年に改正をされて、さらに今回もまた改正をされるようでありますけれども、ですから、もとをただせば、漁災制度が三十九年に発足するときに、私のことばで言えば突如として試験研究の措置なり試験共済の中にも入ってなかったものが出てきた、そこにノリ共済についての設計に非常にあいまいなところがあったというふうに感ずるわけです。事実はわかりませんけれども数字等から見まして感ずるわけなんです。そのことが漁災制度に対する政府なり水産庁の態度というものを示しているというふうに思うのです。ですから、実際の点はいかがなんですか。三十九年発足のときに突如として出てきた共済設計について、昭和四十年に改正され、また今回改正されているわけでありますが、どういうことなのかよくわからないですね、これは。
  33. 久宗高

    政府委員久宗高君) 私も、今回の改正を手がけますについて、最初におっしゃるような疑問を持ちまして、発足の経過とその後の事情を調べてみたわけでございますが、確かに設計上の問題もあるように思います。  ただ、御質問の中にございました、全国的に豊作であるにかかわらず、相当の被害が出ているというお話ですが、これを今回直そうと考えたわけでございます。御承知のとおり、現在のやり方は、ノリの期間ごとに独立してやっておりますので、年間を通じての形にはなっておらないのが一つ。もう一つの問題といたしましては、三割以上の被害が出ました場合に、その下から、根っこから全部裏打ちをするというやり方をとっているわけであります。さようなことから、平年作におきましても、ある地域、ある場所におきましては、また、個々の経営につきましては、そのノリの期間につきまして三割以上の被害が件数として相当多く出てくる可能性もあるわけであります。そういうことが全体のノリ経営から見てよろしいかどうかということに疑問を持ちまして、今回の改正におきましては、三割以上の被害につきまして本格的に見る。しかも、ノリの期間ごとではなくて、周年を通じて、たとえば冬はまずかったけれども春ので盛り返すということもありますから、ノリ経営者の観点に立ってみると、年間を通じて一体どうであったかということについて、しかも三割以上の相当な被害が出た場合にそれを全部補てんする、こういうことがノリ養殖業者のためにもなるし、また、保険運営上の本来のあるべき姿ではないだろうかというふうに組みかえようとしているわけでございます。現行制度におきましてはその点に若干問題がございまして、相当小さな被害までぼつぼつ拾い上げたので、おびただしい件数になるということもございますので、それで運営上粗漏な点もなきにしもあらずというやはり疑問を持たれてもいたし方がない事態があったわけでございますが、その点は思い切って改正しなければならない。これをいたしませんと、漁業共済全体の姿勢といいますか、体系にもひびが入るというふうに考えましてこれに取り組もうといたしているわけでございます。  御指摘のように、発足当時には、そこまでの準備が十分でございませんでした。今日までの被害の中には、若干さような御批判を受けるような内容のものが含まれているというふうに思わざるを得ない実態でございます。この点につきましては、私どもはまだ最終的には腹をきめておりませんが、今回の改正と関連して、全体としての価格関係も入れたような形のものに組み直す必要があるのじゃないかという問題も含めまして、今後これらの問題につきましては慎重に検討いたしたいというふうに考えている次第でございます。
  34. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 次に、いまの養殖共済あるいはノリ共済についてなんですが、いま長官お話のように改正をされまして万全を期そうというお話なんですが、若干疑念があるのが二つありまして、これは外側から御質問するわけですけれども一つは、実施の時期が、ノリ共済については四月一日から、それ以外のものは一月からです。ですから、どうもノリ共済については依然として自信をお持ちじゃないんじゃないか。いうなら、この十月からおやりになったほうがちょうどいいわけなんですよね、ノリとしては。ところが、これだけ来年の四月一日になっておるという点、どういうわけなのか、技術的な問題があるのかどうかということと、もう一つは、こういうふうに改められまして、これからの計画が、ここで言いますと、四十二年度の加入計画といいますか加入見込みというのがうずうずしている。それ以外のものは、先ほど申し上げましたように、二倍になるところもありますし、五割ふやすところもありますけれどもノリ養殖については、二〇%減になっておる。ふやすのじゃなくて、減らすという計画になっておる。これは、改正をしたことによって技術的に減っていくのか、あるいは、慎重を期されたのか。この実施の時期を四月一日とされました点と、それから四十二年度のノリ養殖についての加入見込が二〇%減っているという——減っておりませんですか、私のところにあるのでは減っているのですが、件数として四十一年度は約五万入っている、それが四十二年度では四万になるわけですね。二割程度減少するわけですね。これは、一体、改正による技術的な点から来るのか、あるいは、非常に問題のあった養殖共済についての改正をされたけれども、なお問題を感じておられるのかという点ですが。
  35. 久宗高

    政府委員久宗高君) 最初の問題でございますけれども、四月一日からとしておりますのは、これは純粋な技術的な問題でございます。ノリの今回の改正を国会でおきめいただきますと、私どもといたしましては、直ちにこれの準備にかかるわけでございますが、相当準備に時間がかかるわけでございます。考え方といたしまして、単なる改正と申しますよりは、今回から本格的な実施という程度に考えておりますので、御承知のようなああいう加入率でございますので、もう一回改めまして本制度を今日からやり直すぐらいのつもりで普及にもつとめまして、十分な仕切りで仕事に入りたいと考えておりますので、一般的には来年の一月一日から実際上実施しようと考えておるわけでございますが、ノリが十月前後から始まりますので、これには間に合わないわけでございますので、やむを得ずこれが一時期ずれるかっこうになりますので、さような意味におきまして四月にいたしたわけでございまして、これは全く準備の時期の関係から来ておるものでございます。  なお、第二の点で、計画が内輪になっているんじゃないかという御質問でございますが、どの資料で御質問になっているか私どものみ込めませんので、御指摘いただきますれば……。
  36. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 それは、「漁災制度第四年度にあたって」という漁済連がことしの六月に出した資料の中に、四十一年度の加入実績と、四十二年度の加入計画というので、「漁協系統(くみあい)の総力を挙げてぎょさいを大きく育てよう!」というのが載っているわけですが、その中に、養殖は、四十一年度実績は約五万件、それに対して四十二年度は約四万件、約二割件数が落ちるわけです。これは技術的なことですか。
  37. 池田俊也

    説明員池田俊也君) 漁済連のほうで作成いたしました資料では、確かに、御指摘のように、件数が二割ぐらい落ちているわけでございます。どういう理由でそういうふうに出したのか、詳細なことは存じないのでございますけれども、これは下のほうの共済組合数字を積み上げたということのようでございます。その間、どういう理由で下がるような見込みを立てているのか、実は私どもよく知らないのでございますが、私どものほうで一応予定しております数字は、必ずしも落ちていない。まあごく大まかな感じで申し上げますと、横ばい程度、こういうようなことでございます。
  38. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 それにいたしましても、いまの水産庁の予定では横ばいというわけですね。漁済連は二割減るわけですね。そんなに食い違ったのではとてもたまったものではない。漁済連数字が間違っているのか、いずれにしても、横ばいという程度に考えておられるというのは、どうもまだまだ問題を残しておられる。それはけっこうです、残したって。当然です、これからの実施の中でやはり改善をしていかなければならぬわけですから。ですが、問題は、五億一千五百万という膨大な巨額の赤字の大部分、半数以上はノリ養殖にあるのですから、その点を私は心配をしているわけなんです。むしろこの程度にこの際は押えたほうがいいという感じすら私としては持っているわけなんです。二割程度落とすぐらいで押えたほうがいいという考え方を持っているわけです。あるいは、水産庁お話のように、横ばいという形でここではっきりした態度をお示しになることが運営上いいのではないかという感じを持っているわけです。いかがでしょうか。
  39. 久宗高

    政府委員久宗高君) 御指摘のように、ノリにつきましては、設計上のいろいろの問題がございましたけれども、その設計上の不備と、たまたま四十年度の災害というような問題と重なりまして、全体としましては御指摘のように制度のやや安易な考え方があるようであります。ただ、この点は、共済団体におきましても、事態が非常に重大でございますので、また、今日の段階でこのような制度の補完をしていただきますれば、思いを新たにしまして本格的にこれをものにしたいという気持ちが相当醸成されてまいっておりますので、私どもといたしましても、本制度保険事業裏打ちができましたのを機会に、あらためまして本格的な普及宣伝と制度仕組みを考えてまいりたいと、こう考えております。ことに、ノリにつきましては、いろいろの難点指摘もございますので、特に運営上もいろいろくふうが必要ではないかと考えますので、慎重な態度でこれに臨みたいと考えているわけであります。
  40. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 どうも、私、見ておりますと、名目的な加入が多いという感じがするんですがね。つまり、共済制度を盛り上げていくために名目的に加入しているのではないかという懸念が非常にするんですがね。その一つは、地域的に片寄っているという点ですね。つまり、共済連というか漁業共済組合熱意指導というものによって相当左右されるという点等からいいましても、どうも名目的な加入というものが多いのではないかという感じがしてならないわけですが、と思うと、ノリみたいなものもありますしね。ですが、三十九年十月から四十年の十二月までの付保率が出ておりますね。共済限度額に対します共済基金の割合ですね、平均して三五%だと書いてあります。今回限度額を引き上げられるわけですが、付保率が三五%といいますと、どうも名目的に入っているというような感じがしてならないんですね。なお、漁済連のほうは、毎年、第一事業年度、第二年度、第三年度、第四年度といいましてそれぞれ計画を立てて推進しておられるようですけれども、これを見ましても、計画に対してその件数の伸びはいいんだけれども金額計画より著しく低い。このいずれを見ましてもそうなんですが、件数は計画を上回って、たとえば漁業共済でいいますと、計画をはなはだしく上回って加入しているわけです、一一二%と。ところが、その契約金額というのは低いんですよ。ですから、どうも名目的に入っているのが相当あるんではないかという考え方も持っているんですけれども、これはいかがですか。
  41. 久宗高

    政府委員久宗高君) 一番痛いところでございますが、御指摘のとおりでございます。と申しますのは、先ほど申し上げましたように、政府といたしましては、試験実施をいたしましてまた本格的に制度に踏み切りました段階におきましても、やはり自信がございませんでしたので、まあ制度を高手小手に縛り上げた形で実施をいたしたように結果的には思われるわけでございます。さような意味におきまして、三十九年段階のこの実施におきましては、やはり漁業者のこの制度に対する要望が強くて、政府が引きずられてやったというのが実態であったように思うのでございます。さような意味におきまして、保険給付内容も必ずしも十分でございませんが、漁業者のほうではぜひこの制度をものにしたいということで、名目的な加入というおことばがございましたけれども、まあつき合って加入してくれたというような実態であったように思うわけでございます。さようなことから、御指摘もございましたように、件数は伸びておりますけれども金額試験実施時代よりもむしろ落ちるというような経過をたどってきたわけでございます。さような経過を経ておりますだけに、私どもといたしましても、ここまで来ればまず保険の体系を、はっきり政府保険を裏づけまして、相当給付をいたしまして、全体として体系の持てるような体系に組み入れますと同時に、それが保険給付内容がよくできる根拠でございますので、それによって今回本格的な加入促進に進みたい、こう考えておるわけでございまして、確かに、御指摘のように、今回までの経過は、地域的に非常に片寄っておりますのは、この地域におきまして団体が熱心に普及をされたと思うのでございますけれども、それにもやはり限度がございまして、制度が十分でございませんと普及におきましてもちゅうちょせざるを得ないといったような経緯があったように考えます。  今回、先ほど実施時期の問題につきまして申し上げましたように、相当の準備期間を置きまして、徹底的な普及宣伝と、内容を十分理解した上での本格的な加入促進いたしたいと、かように考えておるわけでございます。
  42. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 私はいまいろいろの点をお伺いをいたしたわけなんですが、結論としてここで申し上げたい点は、いま水産庁長官お話しになったようなことだろうと思うのです。共済制度というのはどの程度漁民の間に浸透しているかという点になりますと、十年の歴史を持っているわけなんですけれども、はなはだしく疑問な点があるわけですし、さらに、水産庁の態度としましても、十年の間の態度というのが非常に消極的だという感じを持つわけなんです。漁済連漁具の問題にいたしましてもそうですが、非常に消極的だという感じを持つ。非常に困難な、漁済連のこれによりますと世界に類がないのだそうでありますが、そういうものだけに、非常にむずかしい問題であるために、たいへんな慎重な態度をとられたというふうに解釈されますが、しかし、七年という試験、さらに共済制度ができてこの法律ができて二年半あるいは足かけ四年もになるという段階では、いささかさびしい感じがするわけですし、漁民の側にとって見れば、共済制度というのは本来自分らが危険の分散をして、自分らで助け合うんだという、そういう考え方が浸透していない。何となく国がやってくれるんだというような感じが強いのじゃないか。養殖共済なんかはどうもその最たるものではないかという感じがしてならないし、さらに、漁業共済の中の北洋のサケ・マスの流し網が全部入っているわけです。そうして、ごっそりと持っていっています。これも赤字が出ているという点等から見ますと、まだまだほんとうに遺憾な点が多い。  そこで、若干こまかくなりますが、災害の査定はどういうふうにしてやられるのですか。私はかつて漁船保険のときに若干調べて見たのですけれども水産庁には漁業災害制度に従事しておられる職員は何人おられるのですか。漁済連には、そういうような損害を査定するというような点について数人しかいない。それから県の段階の、三十八か三十六ありますものの、県の漁済の組合の職員は、平均して五、六人、その中で査定をする人が何人いるのか。これは非常にずさんな査定が行なわれているのじゃないかという感じがするのですけれども、組織的にいってそうなっていないんだという御説明をいただきたいんです。私は、かつて、漁船保険の場合にも会計検査院が指摘しているわけですよね。漁船保険の問題について会計検査院の直接検査した人に会って話を聞いてみたんですよ。そうしますと、はなはだしく漁船保険の場合は不備なんですね。会計検査院に言わせますと、船が損害をこうむった。そこで、工場で修理をして、それを漁業共済のほうへ持っていく。ちょっと確かめればわかることを確かめない。現場に行って見て、船の修理工場の受け取りを見て、それだけでぽんぽんと出してしまう。中央のほうの検査機構というものはどうなっているかというと、中央から出るというのはほとんどないというんですね。どこが災害の査定について責任を持ち、十分な組織になって、遺憾のない組織になっているのかという点を非常に疑問に思ったことがあるんです。もう三年ぐらい前なんですけれども、漁船保険について。この漁災の場合について、どうもそういう疑問がしてならないのですけれども、どういうふうな機構的には遺憾のないようになっているんでしょうか。
  43. 池田俊也

    説明員池田俊也君) 漁災の損害査定の問題でございますが、これは、ただいま御指摘をいただきましたように、非常にむつかしい問題だと存じます。現在やっております一応機構といたしましては、県におきます共済組合がまず第一次的な損害の査定をする、これは当然関係のあります機関、たとえば漁協でございますとか、あるいは水産試験場でございますとか、そういうところの御協力をいただきながら現地で損害の認定を行なうということでございますが、さらに、共済組合が行ないました損害の評価の結果を全国の連合会が再共済という立場から審査をするということになるわけでございます。その場合に、全国の共済連合会が全部現地に出向きまして損害の評価を査定をするというところまでいきませんので、比較的支払う額が大きいものとか、あるいは二県に関係があるようなものについては、必要に応じて現地に出向くというようなことをいたしておるわけでございます。全国の連合会の損害関係に直接タッチしております人間は、現在では五人程度でございます。それから具体的な査定のやり方に若干触れるわけですが、それはよろしゅうございますか。
  44. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 具体的な査定は聞いていない。どの程度チェックする組織力、機構力があるかということを伺っているんです。
  45. 池田俊也

    説明員池田俊也君) それからいま申し落としましたが、農林省の機構でございますが、これは水産庁に協同組合課がございまして、その中で共済関係をやっております班があるわけでございますが、全体の人員は八人でございます。農林省のほうは、従来は再保険ということがございませんので、直接損害の評価にはタッチいたしませんで、これは、組合の監査でございますとか、あるいは事業指導でございますとか、そういうことをやっているわけでございます。
  46. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 私のいまの人員配置、漁済連の五人という配置ですね、それから県にあります漁業共済組合の五、六人の人数の中で、査定というのはどの程度いるのか、大体想定がつくわけです。漁協の協力を得てということになるわけですが、漁協と漁済というのは、組織的には関係はないのでしょうか。どうも、これを見ますと、これだけの六万件に近いものが加入しているわけですが、そうして被害額も金の出し入れも大きいわけですね。そういう場合に、こういうようなシステムでは、これは非常に問題があるというように思いますですね。大事なことは、査定をする、金を出すことにあるわけですから、その査定が妙だということになると、これは共済制度そのものが遺憾な状態になりますから、いいかげんになってしまいますね。取ったほうがもうかり得だというような、妙な話ですけれども、これは何とかくふうをこらされる必要があるのではないかという懸念がするんですけれどもね。これはどだい無理だという感じがしますですね。
  47. 久宗高

    政府委員久宗高君) 御指摘の点は、この制度の根幹に触れる問題で、私どもも非常に苦慮いたしておる問題でございますが、ただ、この制度が発足いたします場合に、漁協と漁済との比較におきまして価格関係を入れた形をとっておりますので、もちろんこれは関係者共済制度を基本にいたしましたものであるという認識の徹底が第一に必要なわけでありますけれども、具体的なチェックの方法といたしましては、むしろ物的施設を目で見て処理いたしますよりは、価格関係を証明いたします幾つかの資料は、比較的現実の経済の中でつかみいいわけでございますので、それを前提といたしましてかような設計をいたしたと思うのでございます。  ただ、今回の改定でも考えておるわけでございますが、何と申しましても単位の組合が一番しっかりしていただかなければならぬわけでございますので、従来の制度でございますと、単位の組合におきましても比例で責任を持っておりました関係で、結果的には負えきれない問題もしょっておったように思うわけであります。今回の責任分担の関係から申しますと、比較的浅い被害で組合がそれを十分チェックいたします場合には、組合といたしましての経理の面から見ましても、相当的確な処理をいたしますことが同時に組合運営にもプラスになるだろうし、また、関係者にもそれが料率になってはね返っていかないという問題もございますので、責任分担の関係におきまして、浅い被害につきましては単位組合相当保険経営者としての立場を貫いていくことに関心を持つような仕組みにいたしたわけであります。なお、比較的大きな被害の場合におきましては、実は査定はむしろ比較的しいいわけであります。関係者の横の線もございますし、大きな被害のほうは案外実はつかまえいいわけであります。一番すれすれの浅い被害のところが実は件数も多いし、問題が多いように思うわけであります。単位組合が、共済運営者の立場におきまして、関係者の自覚と相まちまして、損害につきましての的確な指令が出せるような仕組みに変えたつもりでございます。この点が今回までにも相当赤字が出ておりますので、今後の運営につきまして、特に損害査定が十分な体制がとれない場合にはこの制度自体がくずれるといった点も強調いたしまして、関係者の自覚を促したいと考えております。御指摘のような、価格が入っておりません物的施設の関係は、実はこれは相当見ませんとわかりませんですので、特に養殖関係におきましては相当問題があるように考えておるわけでございます。したがいまして、これらの点が、特に私どもといたしましては、単位組合相当重点を置きまして査定に心を配ると同時に、養殖共済におきましては、単位組合——単位組合と申しますよりは漁協が事実上関与いたします部面が非常に多いわけでございますので、今度の制度改正と関連いたしまして、漁協におきましても、この種の制度切りかえにあたりまして、そこをおろそかにいたしますと、当然高い料率になってはね返ってまいりますので、何年かの計画によりまして、料率改定によって相当強くそれをはね返しでいきながら関係者の自覚を促してまいりたい、こう考えておるわけでございます。
  48. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 重ねていまの点につきまして、単位共済が支払う分と連合会が支払う分と分けまして考えると、連合会の支払うのは多いわけですね。単位共済は県に一つしかないわけでしょう。そうすると、自分の県を考えるということになる、おかしな話ですけれどもね。ですから、連合会と単位共済、県の組合との一体化ということがはっきりしてこないというと、非常にまずいと思いますね。これはまだ浅いから、単位共済の検査はないと思うけれども、いずれ検査があるようになると思いますけれども、私はこの点はいま非常に問題があるように思いますね。これはそれだけにいたします。  次に、一トン以下の漁船漁業ですね、これの加入率が非常に低いですね。膨大な数になるわけなんですが。入っているのはわずかに二%という状態ですね。これがこの制度の根幹をなす問題だと思うんです。漁災制度をどうしてもその姿を確立するためには、こういった二号漁業というのですか、あるいは一号漁業という、こういうものが漁済の体をなさないというと、二%というのでは、これはもう体をなさないわけです。最も根幹であるべき十トン以下の漁船漁業加入率というのは非常に低い。一号漁業というのは採貝・採藻業関係ですが、これは三六%という入り方ですけれども、これはどだい私はどうも共済事業というのが全く軌道に乗っていないという感じを受けるわけなんですけれども、どういうことなんでしょうか。一号漁業は三六%というまずまずというところですが、二号の十トン以下の漁船漁業というのは、わずかに二%ということでは、漁民の間に漁済というのがいかに浸透していないかということを物語っているような気がしましてならないわけですし、今後の運営の場合におきましても非常に大きな問題だと思うのですが、これはどういうわけでこういうことになっているわけですか。
  49. 久宗高

    政府委員久宗高君) 基本的には、やはりこの制度保険裏打ちがございませんでしたために、非常に給付内容をもしぼらざるを得なかったという発足の経緯が根底にあるように思います。ただ、十トン未満で考えますと、どちらかと申しますれば、家族経営的なものが多いように思いまするので、いわば企業と私経済との区分がつきにくいといったような形態の方が多いのではないかと思います。したがいまして、客観的に見ますれば非常に危険があるにかかわりませず、経営者としての保険需要まで熟さないというような点もあろうかと思います。同時に、この種の関係の方が非常に数が多いのでございますので、普及いたします場合にも、どうしても、たとえば県の組合で申しますれば、単位漁協に参りまして、単位漁業協同組合の責任者の御理解なりそれを得て組合員にアプローチしていくというような過程をとると思うのでございます。その辺の普及促進におきましても、保険裏打ちがないものでございますから、相当危険がありますことも含めまして必ずしま十分今日まで末端まで普及宣伝が意にまかせなかったということがあろうかと思います。  今回の改正におきまして保険裏打ちもできましたので、全体の経理の安全性が保たれたということになりますれば、私どもまず何をおいても十トン未満層のいわゆる本来の漁民の方々の加入促進を第一義的に考えてまいりたい。これがございませんと、御指摘のように全く体をなさないわけでございますので、この点に一番重点を置いてまいりたいというふうに考えているわけでございます。また、同時に、この部分につきましてはやはり給付内容をよくいたしますと同時に、掛け金につきましても、国庫補助で若干のくふうを加えまして負担をできるだけ少なくするような形で加入しやすいようにしてまいった経緯もございますし、今回の改正を機会にこの層をいかに獲得するかという点に最重点を置きまして運営してまいりたい、かように考えております。
  50. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 漁獲共済の中の定置漁業、これは二%ですね。しかし、この定置漁業の中の大部分漁業協同組合の共同漁業権に基づくものなんでしょう。その漁業協同組合が直接自分で共同漁業権でやっている定置漁業というのが二%だというのでは、これは漁協そのものの中にも共済制度というものが入っていないという感じを非常に強く持つんです。裏づけの点で言いますと、採貝なり採藻の点についてはある程度裏づけがあったから入った。しかし、こういうような定置漁業については、そんな裏づけがなかったから入らなかったという理屈にはならないのじゃないかというような気がするんですね。そうしますと、漁協が直接共同漁業権を持っている定置漁業についてこういう非常に低い加入というのは、一体どういうことなんでしょう。重要な漁協の中に共済制度というものが浸透していないことなのか。
  51. 久宗高

    政府委員久宗高君) これは分母が非常に大きくなると思うのでございます。つまり、定置漁業の中でたとえばまき網のような小さなものにつきまして、たとえば内湾にそういうものが多いといいまする場合に、比較的危険の度合いが少ないものも入ると思うのでございます。それに対して、その辺のくふうが十分でございませんで、いわば保険需要が少ない、しかも件数としてはおびただしいものが分母に入りますので、その結果、定置につきましてパーセントが非常に少なくなるという一般的な背景はあると思います。ただ、結果におきましては逆選択的な要素も強いということも言えるわけでございますので、その辺につきましてはなるべく被害と給付内容との関連を個別化することに努力をする必要があるのではないかと思うわけでございます。  おそらく、定置のこの比率が非常に少ないというのは、さっき申しましたような形の小さな網で件数としては大きなものが分母に入りますので、それと保険需要に大きな違いがございますために、こういうような結果になったのではないかというふうに一応考えております。
  52. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 定置漁業は、母数が大体一万五千ですね。それで三百六十入っているわけです。それから二十トン未満の漁船漁業、これは母数が十一万で、二%しか入らない。それから定置漁業、これも、ほとんど九〇%近く漁業協同組合の共同漁業権でやっているわけなんですが、これはもうやめたほうがいいという感じを受けるんですね。協同組合がやっているのにかかわらず、わずかに二%しか入らない。最も推進しなければならぬ漁協が行なっているものがわずかに二%しか入らないということになりますと、これは根本的にこの漁獲共済の中の定置漁業については問題があるのじゃないかという感じがするのですが、二十トン未満の漁船漁業がわずかに二%だということについては、これからどうしてもこれは努力してもらわなければならぬと思うのです。定置漁業では、いまの長官の答弁を聞いておりますと問題がある、これは漁協がやっているわけですから。
  53. 久宗高

    政府委員久宗高君) 答弁に困るわけでございますが、実は、今日までのデータを読みます場合に、今日までの不十分な形で運営いたされました数年間の問題と、それから制度改正いたしました場合の問題を分けて考える必要があるのじゃないかと思います。特に協同組合が組織として実際にはバックしていただいておりますので、そこの認識があればもっと普及すべきではないか。また、事実、ある県におきましては相当普及した県もございますので、努力が足りないのではないかという問題もあるわけでございますけれども、やはり制度そのものを考えてみますと、かりに私が末端の担当者でございましても、相当これを思い切って普及するのにはちゅうちょせざるを得ないような問題があったと言わざるを得ないように思うわけであります。今回、保険制度裏打ちしていただきますと同時に、給付内容相当改善さしていただきますので、今回あらためて協同組合にもこの制度の実質上の末端を受け持っていただく意味合いにおきまして認識をしていただきまして、もう一回やらしていただきたい。それによりまして次の段階の問題を考えたらいかがかというふうに考えておるのでございます。
  54. 野知浩之

    委員長野知浩之君) これにて暫時休憩いたします。    午後零時四十二分休憩      —————・—————    午後一時四十六分開会
  55. 野知浩之

    委員長野知浩之君) これより委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、両案を一括して議題とし、質疑を行ないます。質疑のある方は、順次御発言願います。
  56. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 午前中に引き続きまして、三十九年の十月に漁災法が制定されまして以来の赤字、損失額が五億一千五百万あるわけですが、今回の国の保険という一応本格的な漁災制度が発足するにあたって、この損失額をどういうふうになさるのか、お尋ねをいたします。
  57. 久宗高

    政府委員久宗高君) 御指摘のような赤字があるわけでございますが、御承知のとおり、共済制度といたしましては、長期の計画に基づきまして料率の見通しを立て、実施をいたしておる経緯がございますので、今回の制度改正に伴いまして新しい保険裏打ちができるわけでございますが、旧赤字につきましては、この段階で直ちに処理するということは理論的にも問題があるかと思うわけでございます。しかしながら、新しい制度によりまして運用してまいりました場合におきましても、なおかつ、先ほどお話が出ましたように、一部の被害につきましては超異常的な性格のものもございますので、さような過去の赤字が実際の保険運用に重大な支障を来たすような場合がございますと、これは放置できないわけでございます。さような意味におきまして、私どもといたしましては、料率の改定もいたしましたし、保険設計も変わりましたので、今後の保険の推移を見まして処理につきまして検討いたしたいと考えておるのでございます。したがいまして、この段階におきまして直ちに旧赤字について何らかの措置をするということは考えておらないわけでございます。
  58. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 確かに長官のおっしゃる点は理解できる面があるのですが、私も、この段階で直ちにこれを処理するということについては、いままでの漁済の運営のあり方から言いまして、確かに問題があるというふうに思います。ですが、反面、政府は、共済制度をつくって、補助金も出して、そうして監督をして指導して漁済連という団体にこの仕事をやらせた。そうして、赤字の多くの面についてはいろいろの点がございましょうけれども、やはりこれは設計等の問題について考えなければならない点が多いのではないかというふうに考えますときに、このままに置いておくというのも、これからの運営に大きな支障がある場合にというようなことでは割り切れないものを感ずるわけなんです。もちろん漁済連運営の中にも問題はあったろうと思うのですけれども、どうも基本的に言って政府漁災制度の運用について問題があったのではないか。試験的にやりましたときの赤字をあの際に受けて、法律の発足と同時に補てんをして出発したんですが、それとは違う面があるんですけれども、国が補てんをして一応本格的にこの漁災制度が出発をするというような段階でこれは考える必要があるのではないか。でありませんと、五億一千五百万という金は非常に大きいですね。私ども新しい資料がないんですが、四十一年度の純共済掛金というのは約七億ですね。ですから、五億一千万円というのは非常に大きな金ですし、これから新しく発足する共済運営についてそういうものがあるがゆえに運営にあたって非常に慎重な態度をとるという面があると同時に、反面においてはマイナスの面も相当出てくるのではないかというふうに心配をするわけなんです。ですから、長官のおっしゃる面は確かに私もそういう感じがするけれども、この際やはりその程度の重荷をしょって出発をしたほうが共済の今後の運営にはいいのではないかという気もしますけれども、いま言ったような面について疑念があるわけなんです。赤字だから、あるいは共済保険赤字になるからということで、いろいろ共済加入について積極的でなかったといいますか、あるいは消極的であったとかいうような面が指摘されておるわけです、いままでの運営の中で。そうしますと、非常に大きな五億一千万という損失をしょっておりますから、そういう面が出てくるのではないか。ですから、確かに国が補てんをして一応本格的に発足するんだが、予想と違ったようなことが進捗したら出てくるのではないかという懸念をするわけです。いかがなものでしょうか。
  59. 久宗高

    政府委員久宗高君) 私ども、実感といたしましては、御指摘のとおり、三十九年度の実施の場合におきましても、前に試験実施はあるといたしましても、初めて取りかかるわけでございますから、料率そのものが妥当であったかどうか若干の疑問も残ると思いますし、また、特にいまの赤字の大きな原因になっております四十年度のノリ、これはまさに超異常的な災害ということもわかるわけでございますし、さような意味におきまして新発足にあたってこの問題をはっきりするのも一つ方法かと思うわけでございます。一応、たてまえといたしまして、長期の計画を立てて、その最初の年に偶然に大災害がああいうかっこうでかかってきたという理論的なたてまえになっておりますので、この際にこの中の今後長期に見ても持ち切れない部分というものを分析してはじき出しますのには、若干資料的にも問題があろうと思うわけでございます。他の制度におきましても、やはり赤字をかかえながら制度改正をいたしました場合に、結果においてどう処理したかということを見てみますと、改正をいたしましてから数年の間、それを注意深く要因を分析いたしまして、過去の赤字原因を分析いたしまして、新制度になっても、理論的なたてまえから見ても、その部分保険の設定の中で見られる問題、この部分はこのような設定の中に入れるのが無理な問題、というのを計数的に分離いたしまして処理をいたしておりますのが実例でございます。さような意味におきまして、どうも具体的にいまの補償制度を考えました場合に、料率の問題の難点なり、四十年度の超異常の災害の問題といった問題もございますので、これをもう少しあとで分析いたしますれば、要因として長期の保険設計の中で見られる部分と見られない部分というのは理論的にも計数的にもある程度仕分けられると思うわけでございます。またさような吟味がぜひ必要だと考えているわけでございます。この段階におきましてそれが仕分けることができませんのと、また、この段階におきましていかなる措置をとるかということにつきまして具体的なお答えができにくいわけでございまして、この点はぜひ御了承いただきたいわけでございますが、同時に、国といたしましても、今度、保険という形で共済制度の中に入り込むわけでございますので、利害関係者の一人にもなるわけでございます。全体の保険運用が、何らかの意味赤字が新しい設計においても解消されにくくて、しかもそれが今後の保険運用に支障があるという場合におきましては、さようなことを頭に置きましてしかるべき措置が必要であろう、こう考えるわけでございます。この段階ではそこまでしかお答えができないと思います。
  60. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 そういたしますと、二つお伺いをいたしたいですが、一つは、五億一千万円という赤字があっても本年なり来年なりの漁済の運営には何も差しつかえないということかどうかという問題と、もう一つは、これから若干長期にわたって、先ほど長官お話のように、異常災害あるいは設計のどうだこうだという点で仕分けをして、そして国が補てんする面と補てんしない面と区分するんだということのようにも受け取れたわけです。その二つについてお尋ねをいたします。
  61. 久宗高

    政府委員久宗高君) 御承知のとおり、支払い関係につきましては、基金制度がございますので、かりに純粋な保険計算上の問題がございましても、保険運用、特に共済金支払いにつきましては、支払いに事を欠くようなことにはならぬと、こういうことでございます。そのことと保険としてそのままでよろしいかどうかという問題は一応別問題で、それが同時に第二の問題のお答えになるわけでございますが、第二の問題は、まさに保険運営上どうするかという問題でございます。これにつきましては、先ほども申し上げましたように、今回は、料率も改定し、さらに保険制度も加えまして新しい設計で発足すわけでございますが、その新しい保険設計と経理の見通しから見まして、過去の赤字をしょいきれるかどうか。これは、今後、過去の赤字の要因分析をきわめてまいりました場合に、新しい保険設計の中でも赤字の大部分が当然に見られる部分と見られない部分というのが場合によっては出てくると思います。そのような場合に、その見られない部分というのがはっきりいたしますれば、それについては何らかの措置をいたしませんと、保険運営上も支障が来たされますので、そのような段階において考えるべき問題であろう。いずれにいたしましても、私どもは、この赤字をほっておくという意味じゃございません。さような要因分析と新しい制度との関連を計数的に明らかにいたすことができる段階におきまして何らかの措置が必要であろう、そういう考え方でこの問題を吟味してまいりたい、こう考えております。
  62. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 四十二年度の加入計画、これは漁済連で出したものでありますが、それを見ますと、四十一年度の実績と比べまして非常に大きなものになるようですね。共済金額で、四十一年度の実績が百四十五億、それが二百五十三億という非常に大きな伸び率を示すような計画になっているわけですが、こういうことにはまあならない、なかなか計画どおりにいかないという点もあろうかと思いますが、しかし、国が保険を行なって、まあ発足は来年の一月からということですから、四十二年度の分については問題があろうかと思うのですけれども、四十三年度になりますと、この計画に掲げたよりももっと大きなものになってくるのではないかというふうに思うんです。そういたしますと、確かに基金制度がありますけれども、運用上支障がないというようなことに問題点が生じてくるのではないか。本年はともかくとして、来年になるとずっと問題になってくるのではないかという気がするわけですけれども、そうではないのかどうか。
  63. 久宗高

    政府委員久宗高君) いままでの基金の運営から見まして、基金の絶対額とそれから共済団体の手持ちの関係がございますので、残高といたしますとそう大きな金額にならないわけでございます。現在程度赤字でございますれば、私どもといたしましては、直ちに基金をもっとふくらましておかないと支払いに事欠くという判断には現在のところ立っておりません。おっしゃるとおり、計画金額もふくらんでいくと思うのでございますけれども、いま直ちに基金をふくらましておかないと支払いにこと欠くとは一応いまのところ考えておらないわけでございます。おそらく、残高の関係から見まして、基金のほうの手当てをいたしますまでにはまいっていない。これは災害の出方にもよりますけれども、現在のところ私どもはそこまで考えておらないわけでございます。
  64. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 掛け金が、いままでと今度制度改正になりまして国が補てんする場合とで違っておるようですが、これは私よくわからないので伺いたいんですけれども、漁民全体としての平均して三・六%の掛け金から五・八%の掛け金になる。計数的にはじいてあるんです、平均してですね。これは、簡単に言って、三・六%から五・八%になるということは、掛け金だけについて言いますと、四割五分、四五%程度上がるということになるのですか。
  65. 池田俊也

    説明員池田俊也君) 来年から漁獲共済については制度改正が行なわれるわけでございますが、それに応じまして過去の実績を織り込みまして現在料率の改定につきまして案をつくっているわけでございます。これによりますと、御指摘のように、各漁業種類あるいは変動類型によりましてそれぞれ上がる率は違うのでございますけれども、ものによりましては倍程度上がる——あるいは、極端な場合にはたしか二倍半ぐらい上がるものがあったかと思いますが、上がるものもございます。それからまた、中には、従来の料率より下がるのもございます。六割程度になるのもございます。これは、要するに、過去の実績を反映いたしますということが一点でございます。それと同時に、今度の制度改正によりまして、給付内容がかなり厚くなるわけでございます。ごく大まかなことで申し上げますと、漁獲共済につきましては、大体給付内容としては二倍程度になると私ども思っております。そういうことでございますから、まあ全体といたしまして先ほどお話がありましたような状態になるわけでございます。
  66. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 いや、私が伺いましたのは、今度の掛け金で平均して漁民の負担というのは三・六%から五・八%に上がるということになっているのだが、それは、私の簡単な質問から言えば、四割五分掛け金が上がるということになるのかというお伺いをしているわけです。
  67. 池田俊也

    説明員池田俊也君) ただいま先生の御指摘のございました点は、従来のものが全体を平均いたしまして掛け金率で三・六%でございますが、これは漁獲共済についてでございますが、これが現在検討いたしております案では五・八%に上がるということでございます。
  68. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 そこで、先ほど漁政部長の答弁の中に、たとえば漁獲共済の場合には補償が二倍程度になるというお話がありましたが、これはどうも解せない。ここに漁済連の図解をしたものがありますが、確かに三割減程度のところは二倍近くなるが、漁獲皆無とか、九割減、八割減、七割減、六割減というようなところは、微々たる増額にしかならない。いま、掛け金がこういうふうに四五%程度上がるわけですが、それではその補償が一体どうなるのかというと、四五%程度上がるというふうに見えないわけですけれどもね。ちょっぴりじゃないか。限度額は確かに上がっておりますが、限度額の上がり方は、漁獲共済の場合、これもここへ図解をしてありますが、安定型の場合は一五%ぐらいの増額ですね。そうしますと、掛け金は先ほど申し上げたように四五%程度上がる。だが、限度額等を見ますると、一五%程度の引き上げにしかなっていないというようなところから矛盾を感じてきているわけですよ。しろうとですから、よくわかりませんけれども、図解を見ての私の解釈なんです。こういうことなのかどうなのか。  もしそういうことだとすれば、私が先ほど指摘した五億一千万という損失、純掛け金でいえば四十一年度約七億ですね、七億の中の五億一千万円という損失は非常に巨大ですね。さらに、つけ加えて、共済設計に対していろいろ不安定な要素が多い。私も指摘したし、水産庁のほうからも御答弁があったとおり。したがって、発足をした漁済は大きな赤字をかかえておる。さらに、設計等についてもなお検討していかなければならぬ面が多々あり、不安があるというところから、非常に慎重な態度をとらざるを得ないということになりますと、いま言ったような掛け金も上がって、そうしてその補償のほうはそのようにはならない。うんとそのようにはならないというような気がしてならないものですから、その点を御説明いただければ幸いだと思います。
  69. 池田俊也

    説明員池田俊也君) ただいま先生が御指摘になりました給付内容の厚くなることの中身の問題でございますけれども、これは限度額率が一つあるわけでございます。限度額率からだけ見てまいりますと、確かに御指摘のように二倍にはならないわけでございます。若干程度給付内容が厚くなるわけでございますけれども、それだけではとうてい二倍にはならないわけでございます。  それからもう一つ大きな原因といたしましては、基準漁獲金額というものの算定方法がございます。これは法律の問題ではございませんけれども、従来から漁業者方面からの要望が強いわけでございますけれども、要するに、最近、魚価が非常に上昇をしておる。ところが、この基準漁獲金額をきめます場合に、過去三年なり六年なりの漁獲金額をとりまして単純に平均をするということを従来やっておりますので、どうも年次のそういう魚価の上昇を織り込まないために、給付内容が実際より薄くなる、こういう点が指摘されておりましたので、今回はこれを改正する。最近の漁獲金額にいわばウェートを重く置きまして、一般の漁獲共済でございますと過去三年の数字をとっておるわけでございますけれども、その場合に、最近年次に三のウェートをつける、それからその次の年次に二、それから当初の第一年に一のウェートをつけるというようなことで、ウェートを置きかえておるわけでございます。そういうようなことで、実際的にはかなり給付内容が厚くなる。そういうようなものを全部足し合わせますと、これは正確な数字ではございませんけれども、大体二倍程度になる、こういうことでございます。
  70. 久宗高

    政府委員久宗高君) 御質問の前提になっております最初の御質問の三・六が五・八になったという問題でございますが、これはいろいろな前提に立って平均数値を出しておるわけでございます。その中にはもちろん国庫負担も含めました全体の料率でございまして、現実の漁民負担で申し上げますと、もちろんそれより内輪になるわけでございます。直ちに三・六と五・八でお考えいただいてはまずいのじゃないかと思うのでございます。  結論といたしましては、先ほど部長から申し上げましたように、漁民負担につきましてなまの数字を一応私どもであげてみました上で、先ほど申し上げましたように、加入促進といったような問題も含めまして、比較的零細な規模の方々の国庫負担を増加いたしまして給付内容がよくなっても、現実の実感といたしましては、掛け金率というよりは掛け金の金額そのものがやはり加入の抵抗にもなると思いますので、わりに絶対額が上がらないような形で給付内容の充実と関連して納得いただけるようなものに組み合わしたというのが現在の計算しております料率でございます。
  71. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 三・六%が五・八%に掛け金がなるというその中には、ここにも書いてございますが、国庫の負担分が書いてあります。確かに、国庫の負担分もふえておりますが、しかし、漁民の負担分もやはり私が申しました四割程度ふえる、これを見ますと。そして、その場合、漁獲共済で見ますと、全体として補償は一体どの程度です。これは計算しにくい点もあろうと思うのですが、まあ簡単にいえばそういうものがはっきりしなければ困るわけでして、そういう意味から言うと、どうも私の見たところでは——それもここに書いてあるんですよ、この共済連のやつにですね。書いてあるんですけれども、ちょっぴりしかふえないんです。どうなんですか、そういう点の計算はしておられるわけですか。問題は、漁民の負担が従来よりもうんとかかっちまうんです。平均して四割五分も大きなものになっちまう。しかし、補償は平均してみるというと、そんなものにならないということですね。いま二倍というお話がありましたけれども、とても二倍ということは全然考えられないんです。それはそういうことから全然考えられない。漁獲皆無の場合のごときはもう一割もふえない。九割減、八割減、七割減と、いずれを見ましても、そんなにふえないですね。ですから、どういうふうな感じなんでしょうか。どうも、私どもが心配するところは、いま申し上げたように、五億一千万という大きな赤字があるということ、それから保険設計等についてもいろいろまだまだ検討を加えていかなければならない不備な点もあるということ、そういう点等から考えます場合に、しわが寄るところは掛け金になるのではないかという心配をするもんですから、そこで、若干それに該当するような数字を見た。ところが、どうも私が心配するようなことになっておるのではないかという懸念があるもんですから伺っているわけなんです。そうではないというお話であれば、それはそれでけっこうです。
  72. 池田俊也

    説明員池田俊也君) ただいま先生から二倍になっていないじゃないかというお話があったわけでございますが、先ほど申し上げましたように、限度額率の引き上げ、それから基準漁獲金額の計算方法の改定、これによりまして大体そういうことになるわけでございます。  もうちょっと数字を分けて申し上げますと、限度額率の引き上げに伴う給付内容の変更につきましては、私どもといたしまして計算いたしてみますと、従来に比べて一・三倍程度にはなる。それから額のほうのあとのほうの改定でございますが、これにつきましては一・五倍程度になる。掛け合わせてみますと、大体一・九五倍のようなところで、ほぼ二倍になると、かように考えております。
  73. 小関信章

    説明員小関信章君) 部長のお話にちょっとつけ加えさしていただきたいと思います。  先生は漁済連で出しましたグラフでいろいろ御指摘のようでございますので、その上でお答えしたいと思います。現実に漁獲皆無というふうなものが漁獲共済のような場合にはまず見当たらないわけでございますが、そこで、三十九年から四十年度の事故のあったものの平均の漁獲金額の割合というものを見てまいりますと、大体減収率が四〇%というものが普通でございます。したがいまして、四割減のところの数字でもって一応御判断いただくというのが正しかろうかと思います。そういうふうなところで四割減の数字を見ていただきますと、この縦の棒グラフの中で一番上にある黄色い部分、これが改正後にてん補される部分が増加する部分でございますが、それと現行の補償金の額の緑色の濃い部分、これと対比しますと、それが五〇%くらい増になると、こういう話なんでございます。
  74. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 いや、四割減のところを見て、これが五〇%になるのですかね。五〇%にならないですよ。まあそれは別にしまして、いまの調査官の説明で、大体理解がつきました。理解がつきましたが、どうも私はこの心配が消えないですね。まあこれは理解がつきました。  それからその次にお伺いをしたいのは、今度の改正案では、全く窓口は広げないわけですか。大幅に縮まったわけです、漁具共済がはずされましたから。これが、逐次検討されまして、窓口を広げるという方針なんでしょうか。それにしては、どうも四十二年度の調査委託費というのはあまりに少ないように思うんですがね。当分この程度調査委託費で、窓口を広げるということについては考えないということなんですか。
  75. 関根秋男

    説明員(関根秋男君) ことしの委託費におきましては、漁具共済をまず保険対象に取り上げると、こういうことで共済予算を組んでいるわけでございます。
  76. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 まあ漁具共済を取り上げられて、それ以外のものは来年は考えない——それ以降はどうなんですか。逐次やはり窓口を広げていこうという考えでしょうか、もうこの程度ということですか。
  77. 関根秋男

    説明員(関根秋男君) まず現在取り上げております漁具共済対象につきまして、加入率の低いものを、新しい保険制度のもとにおきまして加入をふやしていく。それと同時に、損害査定なりそういった共済仕組みに乗り得るものにつきましては、あわせて検討を進めていくという考えでございます。
  78. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 それなら、漁具共済だけではなくて、漁具共済は、北洋のサケ・マスの流し網は一〇〇%入っているが、あとのものは二%、四%という程度加入率になっている。しかし。それには保険設計上いろいろ問題点があるので問題になるんですが、しかし、同様なことはそれ以外のすべての面に言えるんじゃないでしょうか。定置漁業の問題につきましても、十トン以下の漁船漁業の問題にいたしましても、あるいは、養殖共済におけるノリ以外の問題についても、それらの点についても、やはり調査をされて、完備したものにしていかれるわけですか。しかし、どうもそういう予算が組まれていないように思うんですがね。
  79. 久宗高

    政府委員久宗高君) 窓口を広げるという意味がちょっとのみ込めないので、答えられないのでありますが、漁業のたとえば漁具でおっしゃっておられるか、漁具共済の種類をふやすかという御質問でしょうか。その辺がちょっとのみ込めないのですが。
  80. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 どうも失礼いたしました。漁具共済保険の中に繰り入れていくということも窓口を広げることだし、あるいは、養殖共済にいたしましても、いまあがっているもの以外のものを加えていくこともありましょうし、あるいはまた、ここには全然載っていない業種別漁業の問題についても考えられぬこともないだろう、考えてもいいんじゃないかというように思いますし、そういう意味の窓口をどうなさるのかというふうに伺ったわけなんです。そうしましたら、漁具共済については明年度予算を組んでやるんだとおっしゃるから、しからば、その後の問題についてはどうなさるおつもりかというお尋ねをしたわけです。ところが、漁具共済については、流し網は別として、定置まき網等についても、さらにこれからも検討してみようというお話。つまり、加入率の非常に低いもの、極端に低いもの、それはそれ以外にも一ぱいあるじゃないか。十トン以下の問題についても、二%という極端な低さにあるじゃないか。あるいは、養殖共済についても、ノリ以外については著しく低い。そういう面についても保険設計なり共済設計について検討されていく必要があるのではないかという疑念が生じたものですから、もう一つつけ加えて御質問いたした、こういうことになるわけです。
  81. 池田俊也

    説明員池田俊也君) 先ほど組合課長からお答えを申し上げたわけでありますが、漁具共済につきましては、当面のわれわれの課題といたしましては、いかにして政府保険事業に乗せるか、その場合のいろいろな問題点が先ほどからの御質問にもございましたようにあるわけでございますので、これについてまず明らかにしたい。その漁具共済について、その後さらに共済事業の範囲を拡大するかどうかという問題でございますけれども、これは、私どもの当面の気持ちは、とにかく現在ある三種類の網でございますが、これについては保険事業に乗せるのがまず第一、その他につきましても、将来の問題としては、全くないわけではございませんけれども、当面のあれとしては、具体的なプログラムとしては現在においては考えていないわけでございます。  それからその他の種類の漁獲共済あるいは養殖共済でございますが、基本的な考え方といたしましては、私どもの希望から申し上げますと、やはりこういうようにいろいろ従来運営をいたしまして問題が多いわけであります。今回御審議を願っております法案によりまして改正を加えることによって事業経過を見守りたい。こういうことで、まず足元から固めていくのがいいのじゃなかろうか、こういう感じでございますので、いたずらに範囲を広げるという気持ちは、正直のところを申し上げますと、あまりないわけでございます。  ただ、養殖共済関係いたしまして、たとえばいろいろ御要望のございますのは、現在はハマチの養殖につきましては小割り式養殖方法をとっておりますものを対象にしておりますけれども、その他の方式をとっておるものも対象にできないのか、あるいは、最近三陸方面等でいろいろワカメの養殖というようなものもふえておりますけれども、これも対象にできないか、ウナギは何とかならないだろうか、といったようないろいろな御要望があるわけでございますが、これらにつきましては、それぞれ若干ずつ問題がございますので、いますぐこれを具体的なスケジュールとして調査を行なう、こういう用意は実はいたしておらないのでございますけれども、やはりわれわれの将来の一つの問題としてはそういうところにはできるだけ手を伸ばしたい、こういう気持ちで研究はしていこう、こういうような気持ちでございます。
  82. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 次に、漁協の合併促進法案につきまして若干お尋ね申します。  整促法によりますところの都道府県知事の勧告による合併、一口に言って不振組合を解消していくというその合併は、言うならば不振組合の解消の併用手段ということになるのでしょうが、これは三十五年から四十二年まで七年間になるわけです。この三月三十一日で申請の期限が切れるわけですね。これを見ますと、六百十六の組合が合併をして百九十八の組合になっておるわけですが、私の伺いたい点は、整促法によりますところの目的であった不振組合を解消していくというそれは結論はどういうことになったのか、つまり、一言で言って不振組合というのはほぼ解消したのかという点であります。
  83. 池田俊也

    説明員池田俊也君) これは三十五年に協同組合の整備促進法ができまして、ただいま先生からお話がありましたように、事業がほとんど終末に近づいておるわけでございますけれども、従来の実績を見てみますと、いわゆる不振組合の固定化負担の整理それから欠損金の補てんということで利子補給等のいろいろな助成をしてまいったのでざいますけれども、これの実績は、四十一年度末で二百四十五組合でございます。当初、私どもが県の方々と御相談をいたしまして、これを一応対象として取り上げたらどうであろうかというお話がありましたのが二百七十三組合でございます。したがいまして、数字の上からだけ申し上げますと、約九割が一応その事業対象として取り上げられたわけでございます。そういうような点から考えますと、私どもといたしましては、整備促進法でねらっておりました不振組合対策というようなことは、大体ねらっていた目的をほぼ達したと言えるのではなかろうかというふうに考えるわけでございます。それからなお、その関連でさらに知事が合併を勧告しましたものも、これは当初の予定を大幅に上回りまして、四百九十九組合の合併が終了した、こういうことでございますが、現在、不振組合がないかということになりますと、これはいろいろ見方がございますけれども、必ずしも漁協の経営状態は全般的にはいいとは申せないのでございますけれども、少なくとも当初予定をしました組合について大体終わったという点からいたしますと、ほぼ目的を達したと言えるんではなかろうかと考えておるわけでございます。
  84. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 私、こういうお伺いをしますのは、水産庁からいただいた資料の中に分析が載っていますね。それを見ますと、これは若干古いものになるんでしょうね、三十九年度しか出ておりませんから。これを見ますというと、不振組合というのはどういうことを言うのか、まずはっきりさせなければならぬ点もありますが、一応それをおきまして、常識的に言ってあまりよくなっていないように思うのです。利益組合、損失組合、損益なき組合ということで損益状況調査されておりますが、いただきました資料の九ページですが、二千五百四十三の調査組合、これはほとんどと言っていいでしょうが、その中の二四%、大体四分の一というのが約百二十万円の損失組合だ、こう出ていますね。その損失の度合いというのは、一年一年大きくなっていますね。三十五年当時の五十八万円というのが、物価の値上がり等から見ても二倍以上の赤字になっているわけですね。利益組合というのは、それほど大きなものにならないですね、一組合当たりの利益というのは。そうしますと、いまおっしゃったように、整促法というのが不振組合についてどの程度の効果があったかという点については、おおむねその目的を達成したというお話なんですが、それは三十五年の整促法が発足するときにこの組合とこの組合対象にしようという計画を立てられて、その組合に対する施策としてこれが運用されてきた。そうしますと、その後の経緯の中で赤字に転落していくという組合も出てくるわけですし、漁協全体として見た場合に一体どうなったのかというふうなものを見ますと、私はここに出ている資料から言うと、いま部長のお話しの点についてうなずけないわけなんです。なおこの点がこれからの新しい法律の合併の場合に大きな一つの障害になるんじゃないかという気がするものですから、前に振り返ってお尋ねしているわけなんです。
  85. 池田俊也

    説明員池田俊也君) 私ども、当初三十五年に整備促進法ができましたときに、確かに、御指摘のように、一つの基準を設けまして、これの対象になる組合を拾ったわけでございます。そのときの基準は、欠損金が一定額以上あるもの、それから欠損金の額が自己資本に対しまして一定率以上のもの、こういう二つの基準をつくりまして拾ったわけでございます。そういう拾ったものにつきましては、ほぼその事業が完了した、こういうことになるわけでございます。ただ、これはいろいろな見方があると存じますけれども、ただいま御提出申し上げました資料でごらんいただきますと、利益組合、損失組合、損益なき組合、これのそれぞれの比率を出してございますけれども、これは当然のことと言えば当然のことでございますが、利益組合は比率といたしましてはかなりふえているわけでございます。損失組合はその反対に減っているわけでございます。だから、全体といたしましては、確かに整備促進法ができました効果はあったということも言えるわけでございます。  特に、私どもが最近団体の方々の御意見を伺い、そういう不振組合対策を今後どうしたらよいかというようなことの御相談をいろいろしたわけでございますけれども、その場合に、大体の認識といたしましては、現在協同組合全体として非常に好成績をあげているとは言えないわけでございますけれども、その中で比較的成績のよくない組合原因は一体どこにあるのかということをいろいろ御討論願ったわけでございますが、結論としては、やはり経営基盤が非常に弱いというのが一口に言えば大体の結論だったわけでございます。経営基盤が弱いといいますのは、要するに、漁協の歴史的な過程から来ることでございますけれども漁業管理団体というような性格が非常に強くて、いわゆる弱小組合が乱立をしている、経済事業的な観点から漁協の設立が必ずしもなされなかった、こういうような事情もあるわけでございまして、全体として今後の漁協を育てていくためには、むしろ合併というような点に重点を置いて対策を進めていくのがいいんじゃなかろうか。単に従来の欠損金なりあるいはそれの自己資本に対する率というような点に着目しまして、それに対する利子補給をやっていくいわば消極的な方法より、全体として漁協の体質を強めていくというような方向に持っていくべきではないか、こういうような御意見が強かったわけでございまして、それに基づきまして、今回はそういうような線で法案を御提出申し上げたわけでございます。でございますから、現在におきましても、見方にもよりますけれども、不振組合は、もちろんないわけではございませんけれども、その不振というものの原因を考えてみますと、いま言ったような見地からやっていけば当然立ち直れる、こういうふうな組合が多いんではなかろうか、こういう感じでございます。
  86. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 私がお伺いしたのは、漁協の不振の原因とかあるいは法案を提出した理由とかを伺っているのではなくて、整促法を七年実行してみて、その結果として漁協全体を見た場合に一体どうなったのかということを見てみると、おっしゃるよう、に当初整促法を発足するときに、不振組合を二百七十なら二百七十という指定をされた。そのものについては、これは整促法の効果があったということも言えるんでしょう。しかし、二千五百ある漁協全体として見た場合に、一体どうなってきたのかというのを見ると、法律としてはほとんどその効果をおさめていないのではないか。確かに、利益組合というものは、若干のふえ方をした。そして、損失組合というのが若干減った。しかし、損失の状況というものを見ますと、より深刻になっている。損失状況というのは、より深刻になっているのじゃないか。利益がある組合というのも確かにふえているが、その利益状況というのは決して好転をしているというふうには言い切れない。全体として見た場合に、漁協の状況というのは、整促法というものをつくって不振組合というものをなくしていくということだったのだが、一体結論はどうなったかという点を伺っているわけです。そうしますと、これはいま漁政部長から答弁があったこととは相当食い違っておりまして、私のほうは法律運営した結果どうなったかという詳しいことはわからぬわけですから、この表をいただいて見た結果、どうも不振組合というのは若干は減っているが、しかし、深刻だ。前よりも深刻な状態じゃないかという印象を受ける。そこで今度の法案が出てくるということにもなるのでしょうけれども、そういう点を伺ったわけなんですが、どういうふうに見ておられるのですか。
  87. 関根秋男

    説明員(関根秋男君) 昭和三十五年に漁協整促法ができたわけでございますが、そのときに、欠損金を抱えておる組合は約八百あったわけでございます。先生御指摘のとおり、三十九年ではこれが六百組合になったわけでございます。二百組合が数の上では減っているわけでございます。そうして、漁協の整促法でいわゆる不振組合というものは、欠損金が百万円以上、そうして、欠損金の自己資本に対する比率が百分の三十以上。漁業協同組合の出資金は、平均いたしまして約五百万円でございますから、一番欠損金の低いもので対象になりますものは百五十万円以上という程度になるわけでございます。そういった意味で、漁協整備促進法に基づきまして、欠損金の大きい組合対象に取り上げていったわけでございます。それは、やはり政府がある程度の金を出す、系統団体がある程度の金を出すわけでございますから、そういう援助をしなければ立ち上がれないという協同組合対象にいたしまして漁協整備促進法の対象としたわけでございます。そういう意味から申しますと、先ほど部長のお話がありましたように、二百七十というような目標に対しまして、九割以上のものが整備を終わった、それ以下のもの、残されたものにつきましては、ほぼ自力で再建はできるであろう、こういうような判断のもとに漁協の整備促進法というものはほぼその目的を達成したのではないかと、こういうふうにわれわれは理解をしておるわけでございます。
  88. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 議論がこまかくなりまして恐縮なんですけれども、私は平均値で見ておりますから、若干いまの課長の答弁と食い違う点もあろうかと思います。ですが、いま課長のおっしゃった、不振組合が八百ほどあった、その中で百何十万円程度の損失を生じている組合対象にやったということでありますが、三十五年当時の損失というのは平均して一組合五十八万円、それが今日百二十万円になっている、一組合について。そうしてみますと、二百七十かのその組合はよくなったんでしょう。ですが、漁協全体として見た場合にはどうもそのように受けとれないという点を言っているわけなんです。その点はいかがですか。  いずれにしても、ここで私が言いたいのは、約四分の一の漁協が、一組合当たり約百二十万というそういう損失を生じている。これは整促法をもう一ぺんやり直さなければならぬぐらいの状態にあるということが言えると思います。そうしますと、どうなんですか、効果をいったら、やらなければもっと悪くなったのをいくらか食いとめた、そういう意味ではわかります。ですから、漁協の状況というものは、これから見ますというと、三十五年整促法ができた当時と比べてさらに不振な状況だ、こういうふうに言っていいのじゃないかと思うのです。
  89. 関根秋男

    説明員(関根秋男君) 現在でも損失組合の平均が非常に金額として高いではないか、こういう御指摘だろうと思いますが、この不振組合の平均が高くなっております中身でございますが、実は、大きな組合でこの整促法の対象にまだ乗らないものがあるわけでございます。それが平均額の上で大きな数字というふうにあらわれているわけでございます。  それでは、そういった大きな組合をなぜ対象にしないかという問題が出てくると思いますけれども、それは、整促法の対象にいたします場合には、その当該組合で、自分たちもこの組合の再建のために一緒になってある程度の努力をする、こういうふうな執行体制なり漁協の体制というものが整わないと整促法の対象には乗せない、こういうたてまえになっておりますので、そういう大きな組合が若干残っているということの反映で大きな数字になっているわけでございますが、漁協系統全体の姿勢といたしましては、そういうものは個別に解決をしていただいて、全体としては新しい系統運動の旗を立てるという意味で合併助成法というふうな前向きのものに踏み切ろう、こういうことが今度の法律を出す理由であるわけでございます。
  90. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 次に、この問題はあとでまたもう一ぺん振り返りますけれども、三十六年の三月にできました農協の合併促進法、その一年前にできた、三十五年にできた整促法、それから今回の合併促進法、この三つを比較いたしました場合に、農協が入っているから水産庁とは別問題の点に入りますけれども、農協については常識的でよろしゅうございますが、この三つを取り上げた場合に、どういう点に根本的な差があるのですか。ということは、私の伺うねらいとしては二つありまして、根本的な差異というものをはっきりさしてもらいたい。それは、一つはどうも農協と比べた場合に、漁協というものに対する政策がおくれているのではないかという印象を持つということ、それを理解するために伺っているわけです。農協については若干の知識がありますけれども、漁協についての知識がないものですから、どうもそのような印象を強く受ける。もう一点は、整促法ができましたときには、三十五年なんですが、それによって不振組合を解消するということで、合併はその併用手段というふうにとられているわけです。勧告によって合併はしたわけですが、その合併は一体二百程度組合が合併して新しくできたわけですが、これは今回出る促進法とは別にあるものなのか、それとも入れてやっていくのか、どうも私は整促法というものとこの促進法というものとの間に非常に疑問を感ずるものですから、そういう二つの意味から、先ほど申し上げた三十六年にできた農協の合併促進法と、その一年前にできたこの整促法と、いま出しておられる漁協の合併促進法と根本的にどこが違うのですか、伺っておきたい。
  91. 池田俊也

    説明員池田俊也君) 農協のほうにつきましては、十分に知識がございませんので、はたして的確にお答えできるかどうか疑問でございますが、私ども感じといたしましては、本質的に違うという点はないのじゃなかろうかという気がいたします。ただ、農協なり漁協なりが置かれておりますいろいろな条件から考えまして、私どもが従来承知しておりますところでは、農協は、設立当初、大体旧町村単位くらいで設立されているものが大部分だったように存じます。そこにまいりますと、漁協のほうは、旧町村以下のものが九割を占めておるような状況でございまして、設立の当初から地区の広さが違っていたわけでございます。そういうような意味で、やはり経営の基盤というような点から見ますと、農協のほうが漁協に比べましてもはるかに当初から強かったんじゃないだろうか。しかし、本質的にはおそらくそう違いはないと思うのでございますが、そういうようなこともいろいろ原因になったのかどうか、そこいらはよくわかりません。経過をたどってみますと、やはり漁協のほうがどうも一歩ずつおくれて、農協のあとを追っていると、こういうような結果になっているわけでございます。  それから第二の点でございますが、整促法でとらえました対象になりました組合で、これが今回の合併助成法の対象として考えられるかどうかという御質問でございますが、私どもといたしましては、特に区別をして整促法で対象になったものを今回は取り上げない、こういう考えはございません。しかし、実際問題としましては、整促法のときに合併の対象にならなかったものが割合としては大部分になるのじゃないだろうかと考えておるわけでございます。
  92. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 どうも私の若干あちこちひっくり返してみた印象では、いまおっしゃるような回答が予想できるわけですが、しかし、これは漁協にとっては非常にまずいという感じがするわけです。三十五年以来、整促法によりまして合併を併用したといっても、与えている影響は、相当多数の組合に対しまして、六百か七百の組合に対して合併を推進されたわけですが、さてこれからまたその合併が今度全体に及ぶわけですね。そうすると、漁協のその組合員の統率力といいますか、固まりといいますか、そういうものが長年にわたって不安と動揺を来たされるという結果になるのじゃないか。ですから、やはり整促法のときに合併促進法というものは出されるべきだった、特に農協よりも一そうその区域の狭い地域ですから。三十五年といいますと、経済情勢もはっきりしている情勢なんですから。いま合併促進法を出されまして、そうしていまの経済情勢に合ったようにというような意味で出るわけですね。そうしますと、どうも私は相当ずれておるような感じがしまして、いささか遺憾の意を表せざるを得ない。思わしくないものがある、遺憾な状態であると言わざるを得ないように思うのであります。  なお、ついでながら申し上げておきますと、整促法によってできました二百くらいの新しい組合ですね、合併してできた組合、これは農協の場合もそうですが、合併してさらにまた二つ三つ合併するということはほとんどないのですね。やっぱり合併というとたいへんなんですね、漁協にしても農協にしても、合併するということは。そこで、もう一つ二つ入れよういうことは、農協の場合にもほとんどない。それから言いますと、このできた二百くらいの新しい漁協というものが、また一つ二つ吸収していこうということはなかなか容易ではないという感じを持ちますが、それは一応おきます。  次に伺いたい点は、今度の合併促進法によりまして、水産庁としての合併の計画といいますか、あるいは、数字的に言ったらどの程度のものを対象にして合併しようとしておられるか、これは四年間ですね、四年間の間にされようとしているか、それを伺いたいと思います。
  93. 池田俊也

    説明員池田俊也君) 合併は、ただいま先生のお話のありましたように、これは非常に実際問題としてたいへんなようでございます。それぞれの地区によりましていろいろな条件が違いますので、私どものほうで一律にこういうようなかっこうの合併をすべきである、こういう基準を設けるというのは、どうも適しないんじゃなかろうか。実際問題といたしましては、県はそれぞれの地区の状況に応じましていろいろ御指導をする、こういうことになると思いますが、私どもといたしましては、まああまり個別について具体的な基準をきめるという考えはないわけでございます。  ただ、全体の事業量といたしましてどの程度のものを考えるかということがいろいろな点で必要でございますので、そういう点で一つの目安みたいなものはつくって持っているわけでございますが、それも非常に抽象的な基準でございますけれども、私どもといたしましては、四年間に、現在あります沿岸地区の漁協は約二千五百ございますが、その中で、半分強に当たる千三百組合くらいを対象に考えたらどうだろうか。これが一応平均的な姿でございますが、かりに三組合一つに合併するということになりますと、合併いたしまして約四百ちょっとの数になるわけでございます。  その場合に、一体どういうところから千三百組合対象にするということになったかと申しますと、これもやはり抽象的な基準でございますが、現在の漁協の平均的な数字を拾ってみますと、たとえば販売事業を取り上げてみますと、販売事業の全体の平均が八千万円強くらいになるわけでございます。それから組合の実際の事業をやります常勤の役員なり職員の数でございますけれども、これは平均的なものが六人強くらいになるわけでございます。したがいまして、それ以下の組合が非常に多いわけでございます。それ以下の組合というものは、やはり一つの経済単位としてどうも十分な事業活動が期待できないんじゃなかろうかということから、そういったような平均的なものにそれ以下のものを持ち上げるという意味でそれ以下のものを取り上げる。こういうような非常に抽象的な取り上げ方でございますけれども、目安を立てたわけでございます。
  94. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 四年で、いまのお話の目安として、漁協として千三百の組合を取り上げて、大体三つの組合一つにして四百三十くらいの組合にしていくという目安が考えられているようですが、そこで、水産庁が依頼して総理府が広報室を通じまして漁協の組合員の世論調査をおやりになっているわけですが、これは貴重な調査だと思います。その調査を見ますというと、どうも漁協の組合員の考え方というものは合併については否定的だというふうにとれるんです。この調査は、限られた二百三十の組合対象にして、三千名の組合員について世論調査をやっておられるわけですが、これについて、御承知のように、水産庁の解説も幾つも出ておりますし、「農林省広報」にも出ておりますし、それ以外のものにも出ておりますが、確かにそのように載せるくらいに貴重なものだと思うんですけれども、過去のものについては、「合併してよかった」というのが三二%、「よくなかった」というのが一六%、「一概に言えない」というのが五二%ですね。ですから、合併したところについての組合員の気持ちというものはこれで大体わかる気がしますね。それから、これから合併というものについては、「賛成」が一七%で、「反対」が二一%、こういう数字が出ているわけですね。そうしますと、漁協というものの本来の原則というものから言いますと、組合員の考え方、これがもう何といっても原則ですが、組合員の考え方としては、すでに合併したもの、現在論議を行なっているもの、これからの合併というものについての組合員の考え方というものは、わりあいにはっきりしているというふうに言っていいと思うんですよ。  ところが、先ほど漁政部長からお話がありましたが、あるいは水産庁の方々が出しておられるいろいろな解説みたいなものにも出ておりますが、都道府県なりあるいは漁連なり、そういうところの人たちの意見というのは、合併の空気が非常に盛り上がっておるというお話なんですね。そういう都道府県の関係者なりあるいは漁連なり等の合併の空気、ムードが高まっているということと、いまの水産庁がやられました世論調査に出てくる漁協組合員の考え方というものとのズレは、どこから来るのかという点ですね。これは私は専門家の水産庁はどういうふうに考えられておるのか、お尋ねをしておきたいと思うんです。そうでありませんというと、これから合併をこの法律によってやられるわけですが、四年間という短い期間の間にやられるわけですから、私はこれは非常な努力が要ると思うし、たいへんだと思うんですね。そういう立場から、このズレは一体どういうことなんですかということをお伺いしたい。
  95. 池田俊也

    説明員池田俊也君) 私どももいろいろな理由があると存じますけれども一つは、指導者と実際にこの調査対象になりました漁民との間の意識のズレと申しますか、そういうものがあるんじゃなかろうかという気がいたします。これは一般の漁民の方が合併というような問題に常時頭が向いておるわけではなかなかございませんで、合併というものを指導者が相当指導をして、それがいいんだという説得をしまして、はじめてそこに踏み切る、こういうようなのがどうも実態のようでございます。そういう意味におきまして、そういう指導者と直接世論調査対象になりました方との意識のズレが一つ出てきておるんじゃなかろうかという気がいたします。それからもう一つは、これはあたりまえのことでございますけれども、現在の漁協の中でも、先ほど二千五百の中で千三百程度考えているということを申し上げたわけでございますが、現状においても、組合の気持ちとしてはこの程度でいいんじゃないかという組合もかなりあるわけでございます。先ほど計画から言えば、約千二百くらい、半数弱がそういう状態にございまするので、そういう組合におきましても当然この世論調査対象になっているわけでございますから、あるいはそういう組合は現状でよろしいという言い方をしたのかもしれない、かように思うわけで、そういったようないろんな理由がこの数字にあらわれているのではなかろうかと思うのでございます。
  96. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 時間の関係もございますから、はしょりまして、次に、いまの問題と関連いたしまして、農協合併促進法は三十六年から四十一年まで五年間でやったわけですが、なお不足だということで、これが改正を行ないまして、三年延長したわけです。したがって、八年ということになるわけですけれども、漁協の場合におきましては四年ということですね。これは非常に問題があるというふうに私は思うわけです。なにせ千三百という対象ですから、ほとんど半数以上ということになりますから、でかいですよ。それで、漁協の場合は、農協よりもっと困難な面があると思うんですね。これは共同漁業権がやはり一つの大きな柱になっておりますから、農協よりも困難な面があると思います。そういたしますと、これは初めから無理じゃないか、四年という年限では。しかし、四年という間にこれを遂行されるとなりますと、これはどうしても天下り的に無理押しをするということになってくるのじゃないか。先ほど部長もお話しのように、漁連なりあるいは県の漁業組合関係の方々と実際の漁協の組合員と——合併するときには、組合員の三分の二以上の賛成が要るということになっていますね。そうしますと、これは相当のやはりズレがあるというふうに見なければならない。しかし、事態はやはり合併しなければならない、しかも四年だということになりますと、相当無理押しをする、天下りになってしまうという懸念をするわけですね。それは、漁業の協同組合の原則からいって、はなはだしく憂慮すべき、考えなければならない点だと思いますので、この四年という年限について、また三年延長する。農協の場合もそうだったんです。五年だったのが、三年延長して八年になったわけですから。どうも私はその点が問題だと感じますので、その点について一つお尋ねします。  それからもう一つは、合併の促進指導費等補助というのがありますね。二分の一補助で一万二千円。合併施設費補助金、これが三分の一で十万円。農協の合併の先例もありますから、似たようなワクだと思うのですが、御承知のように、予算編成の過程におきまして、全国知事会が、漁協合併を零細補助金だということで断わろうということもあったわけですね。確かに私はこれは少ないと思いますね。そういう全国知事会の経緯もあるわけですから、何らかのやはり考え方があってよかったのではないか、そう思うんですね。  その二つにつきましてお尋ねします。
  97. 久宗高

    政府委員久宗高君) 先ほどから、先生の御質問の根底に、やはり漁協は本質的に違うのじゃないかという御疑問がずっと貫いているように思うのです。私は、やはり、これはむしろ農協とは相当本質的に違うという考えで見たほうが実態に近いのではないかと実は考えているわけでございます。今回の四年にいたしておりますのも、それと関連いたすわけでございます。と申しますのは、何と申しましても、漁協の場合におきましては、漁業権の管理主体であるという点が非常に色濃く出ているわけでございまして、特に終戦後に旧制度から切りかえました場合に、占領下でもございましたので、漁業権の帰趨いかんということが非常な焦点になりまして一連の制度改正が行なわれた経緯があるのでございます。さような点で今日振り返ってみますと、旧町村以下が約九割であるというようなことは、これははなはだ現在の経済状態から見ますと異例なことでございまして、特に職員がいない組合でございますとか、あるいはおっても一人しかいない組合といったようなものも相当あるということは、むしろ漁業権の管理に非常にこだわりました結果といたしまして経済行為を実質的にほとんどやっていない、しかもそれが体制的にそうなっておるということだろうと思います。さような意味から、先ほど指摘もありましたような、三十五年段階ですでに経済成長も始まっておったことだから、経済問題を中心として合併その他の、いま裏打ちしたようなことをなぜやらなかったかというような反省もあり得ると思うのでございます。さような意味におきまして、私どもといたしましては、一応現体制のままで不振組合の解消をやってまいりましたけれども、この段階で見ますと、明らかに漁業権の管理団体という形で実は非常に大きなものを逸しておるんだということを考えるわけでございまして、この段階におきましては、あくまでも現在の経済発展との関連におきまして、漁民の組織が経済活動の主体となるためにどういう合併をすべきかということに焦点を合わせまして促進をする必要がある。かようなことで考えますと、時間的に考えましても、あまりこれはだらだらとやるべき問題ではないだろう。おっしゃるように、これは合併問題でございますので、単なる経済理論以外のむずかしい問題があることは重々わかるわけでございますが、ちょっとものごとの考え方を変えまして、漁業管理については別の方式があり得るんだ、現在の調整の過程におきましても、また、今回の改正におきましても、十分な特例措置をとっておりますので、それにこだわるよりは、やはり思い切って経済活動の主体になるような努力をしようじゃないかという新しい運動を起こしまして、それの熟する過程におきまして一連の体制の切りかえ——個々の組合の合併問題と申しますよりは、漁協体制の切りかえというようにむしろ考えるべきであろうと、そういうふうに思いますと、やはり横の関連もございますので、もちろん運営のしかたは徹底的に民主的にやる必要があろうと思うわけでございますけれども、時間的にはある組合がどっちに動くかという問題と関連いたしますと、ぼつぼつやるのでなくて、準備には相当の期間を使いますので、やる場合には相当の気運の中で盛り上げて一つのけじめをつけていく、こんなような観点から一応四年ぐらいの期間の中で早くこの経済体制に組み入れられるのがよかろうと、こういう考え方で実は年度の問題も考えておるわけでございまして、必ずしも四年にこだわるつもりはございませんけれども、そういった気持ちが実は強いわけでございます。時間を切りました結果、いま御注意いただきましたような上からの形になることは当然まずいし、また、今回の改正内容から申しまして、漁村の末端から、ことに漁業権という一つの何と申しますか固定観念を振り切りましたおよそそこに一つの経済態様というものが浮かび上がるように思いますし、各県の担当者のお話を聞きましても、ほぼ、何と申しますか、予想図と申しますか、こういったものもある程度熟しかけてきておるように思いますので、これを全国的な一つの運動に盛り上げて、なるべく早い時期に漁協の体制を漁業管理一つの束縛からのがれまして、現在の経済の体制に即応したような形に持っていきたい、そういうつもりで実は四年というふうに考えておるわけでございます。  なお、補助の形につきましては、担当者のほうから御説明申し上げさせたいと思います。
  98. 池田俊也

    説明員池田俊也君) 補助の額が非常に零細ではないかと、こういうお尋ねでございますが、確かに、現在の経済情勢からいたしますと、決して多くないわけでございます。かりに三組合が合併をいたしました場合には、その施設費に対しまして、一組合当たり十万円で、全体として三十万円、それからあるいは三分の一の範囲内と、こういうことでございまして、非常に低いわけでございます。私どもといたしましては、実はもう少し施設整備のための予算をとりたかったわけでごごいますけれども、実は、御承知のとおり、農協等がそういうような線になっておりますので、どうもやはりそれ以上の額をとるというのが実際問題としてできなかったのでございますが、ただ、これもあまりたいして比較にもなりませんけれども、従来整備促進法でやっております場合には、合併一件当たり十万円ということでございましたので、その点から見ると若干ながら改善をされておる、こういうわけでございます。
  99. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 先ほど長官お話しになりました四年という短い年限の間に今日の沿岸漁協の合併を促進していこうという、その短い期間の間にやっていこうという考え方につきましては、非常によく理解できるわけであります。しかし、先ほど以来私が申しておりますように、何ぶんにもたいへんな数字でございまして、千三百という組合を四百幾つかの組合にするわけでありますから、これはやはり非常な無理押しが出てくる。しかも、農協と違いまして、共同漁業権が一つの大きな柱になっておりますから、そういう意味で確かに新しい沿岸漁協の理想を描いておられるわけですけれども、そのとおりだと思います。ですから、これは運営上協同組合の原則ということを十分お考えの上に、無理押しのないように進めていただくように切に要望いたしまして、この点については終わります。  二番目の問題、こういう合併についての補助金の問題でありますが、お話しのように、先に出ました農協なりあるいは森林組合等の問題との関連もあってこういうふうになったということについては理解できるのですが、ただ、農協と漁協との間には非常な差があるわけでありますから、たとえて言いますと、いま長官お話しになりましたが、職員のいない組合が一割もある。あるいは、一人、二人しか職員のいない漁協というのが三割という状況ですね。これは農協には考えられないことなんですし、それから事業程度につきましても、これはうんと落ちるわけですね、農協とは。しかも、先ほど以来話になっておりますように、四分の一というのは平均して百二十万円という赤字をかかえておるという状態なわけですよ。ですから、農協とは非常に違う。ですから、それだけにやはりもっと手厚いそういう援助が必要だというふうに私は思うんです。農協という形で前例があるからということで押し切るほうも押し切るほうだし、困ると思うんですが、そういう意味ではなはだ残念ですが、これはやはりもっと手厚い援助が絶対に必要だと私は思いますですね。  以上申し上げまして、時間の関係もありますので、私の質問は終わることにいたします。
  100. 北條雋八

    ○北條雋八君 私は、災害補償法はあと回しにしまして、組合の合併助成法案についてお尋ねします。  そのまず第一は、「漁業協同組合に関する世論調査」、これで見ますと、組合の合併に対するアンケートで、「賛成」が概数で言いますと一七%、それから「反対」が二一%、「一概に言えない」というのが二九%、「わからない」というのが三三%ということになっております。漁民が非常に消極的であり、また、無関心であるということが、これをもって見てもよくわかるわけでありますが、その反対の理由をよく見てみますと、これは全体で二千七百二十五人の回答でもって、反対が五百六十六人。その中で、「漁業権の問題で紛糾する、漁場を荒らされる」というのが百二人、それが一番多い。その次が、「現状で十分だから特に必要ないから」というのが八十九人。それからまた、「他の漁協の組合員と意見が合わないから、統一がとれないから」というのが八十二人。それから「小さい漁協との合併は損だから、分担金がふえるから」、これが八十人。このほかは、非常にずっと減ってくるわけであります。主としてそういうのが理由のおもなものになっています。また、養殖漁業に非常に反対者が多いということもこの調べではっきりしておりますのですが、そういうようなことは、沿岸の漁業組合組合員が、漁協に対して、経済団体としてよりも、むしろ漁業権の管理主体としての活動によって漁業権に強く期待をしているということから来ることがうかがわれるわけであります。この点について、政府はどういうふうに考えておられますか、まずもってその点を伺いたいと思います。
  101. 久宗高

    政府委員久宗高君) 先ほどお話があったわけでありますが、協同組合に対する世論調査は、私どもも非常に興味をもって読んだわけでございますが、予想いたしましたよりも正直にと申しますか、的確に組合員の感じが出ているように私どもは受け取っておるわけでございます。ただ、お話の中にもございましたように、この中でもやっぱり漁業権の問題に非常にこだわっているなという感じがいたすわけでございますが、逆に申しますと、漁業権の管理主体にとどまっておるために、漁民の組織としてもう一つの大きな経済問題をむしろ逸してしまっているという点につきましては、相当根強い普及宣伝と申しますか、そういうものが要るのではないかというふうに考えておるわけでございます。お読みいただいたと思いますが、この調査の中で、「漁協は必要であるかどうか」という調査があるわけです。非常に多数の者が当然これは必要であると言っておるわけでございますけれども、それでは漁協に何を期待するかというところになりますと、実は相当ぼやけておりまして、それが、先ほど申し上げましたような現在の漁協が、このような経済発展段階におきましてもなおかつ旧町村以下の段階に九割がとどまっておるということを証明しておるようにも思うわけでございます。  そこで、私どもといたしましては、現実のこの段階におきまして関係漁民がその組織を考える場合におきましても、沿岸におきまして漁業権の管理がどういうふうになるのかということに相当こだわっているということを頭に置きまして、その上でなおかつその心配を十分説得しながらもう一つ大きな問題点でございますいまの経済活動に即応できるような体制に移っていくような指導を根本にいたしまして今回の合併問題を進めてまいりたい、さように考えておるわけでございます。  すでにお読みと思いますけれども、合併いたしました組合員につきまして調べてみますと、これもまたよかったよくないという二つの答えが出てくるわけでございますけれども、それぞれの事情をもう少し立ち入って見ますと、それぞれの事情がございまして、漁業権の処理につきまして適正を欠いて合併が行なわれたために、合併後におきまして依然としてその合併について難点を持っている漁民が相当数あるように思われますが、一方、非常に漁業権問題がもめておりましたところで、合併によりまして経済活動が軌道に乗りますとともに、漁業権が現在持っております経済的意味が逆にそれによってわかりまして、むしろそれにこだわるよりはもっと合併によって組合の中におきます十分な運営も可能であるとともに、組合での経済活動も十分できるということがわかりまして、漁業権も片づき、経済活動も非常に活発にできた組合の事例もございますので、これは現実に成功いたしました組合の具体的な事例を詳細に関係漁民にお話しすれば、いま漁民が観念として持っております漁業権に対します執着と申しますか、とらわれた気持ちというものと引きかえに経済活動を失うのは非常に問題が多いと思いますので、その辺のところを十分指導いたしたいと考えておるわけでございます。
  102. 北條雋八

    ○北條雋八君 漁業権への執着というものは、どこへ行っても非常に強いのであります。古い制度漁業権もそのまま組合が引き継ぎをしたために、事業活動を行なう上にいろいろな弊害があらわれておると思うのです。組合には、大規模企業の漁業権所有者と、また、独立の小漁民、あるいは雇われ乗組員も一括して含まれておりますので、おのおの立場が違う関係から、利害の一致がむずかしく、組合が一グループのための奉仕の組織に終わってしまって、全体の利益を考える組合でなくなるのではないかというふうに思います。そういう点に対しまして、政府は、どういうふうに考えておられるか、また、今後その漁業権に対してどういうふうに整理をされていこうとされておるか、その点を伺いたいと思います。
  103. 久宗高

    政府委員久宗高君) 前段の御質問はよくのみ込めなかったわけでございますが、おそらく漁民の組織の中に相当階層が分化いたしておりますので、大きな方、また、小さい方、あるいは、雇われる方というのが混然として入っていて、そのために漁協としての統一的な意思決定が非常に困難だという御指摘だろうと思います。これはまさにそういう問題がございまして、農業よりも商品経済に組み込まれておる度合いも強うございますので、いわばいろいろな階層が入っておるわけでございまして、ただ、沿岸におきましてはまだまだ相当未分化な情勢もございますので、協同組合の中を幾つかの階層に分けて処理するところまで必ずしも熟していないように実は思うわけでございまして、いましばらくこのような形で考えてよろしいのではないかと、少なくとも現段階ではさように思っておるわけでございます。  ただ、その場合に、階層間におきますあつれきが漁業協同組合運営あるいは漁業権行使との関連で問題となるようなことがあってはいけませんので、この点については十分な指導上の注意が必要だと思うわけでございますが、漁業権そのものにつきましては、もう制度改正をいたしましてから相当時間もたっておりますので、特に多数の漁民が入り会ってやりますような権利の内部的な処理と申しますか、組合の中におきます関係者の行使方法の問題は、ほぼ固まっておると思うのです、現在の組合の中で。ただ、それが合併というようなことでよその組合と一緒になった場合にどうなるかという問題が関係漁民の一番心配される点だと思うわけでありますが、何と申しましても、漁業権は、やはり実際にそれを行使する方々の横の調整が必要でございますので、それを越えてこれをいじるわけには現実の問題としてまいりません。したがいまして、今回の合併におきましては、旧行使者と申しますか、そういうグループが新しい団体に含まれました場合においても、なおかつ従前と同じような利用形態がとれますように、格段の特例措置を設けておるわけでございます。この点の御心配はまずないだろうと、また、これが心配ないということになれば、漁民のほうでも相当踏み切って新しい経済活動のほうへ気分が向いてくるのではないかと、こう思いますので、その辺の誤解のないようにひとつ十分な指導をいたしまして、むしろ合併のほうに気運が向くような指導をしてまいりたいと考えておるわけでございます。
  104. 北條雋八

    ○北條雋八君 そうすると、漁業権について合併後にいろいろごたごたが起きてそうして組合が満足に運営できなかったといったような成否の割合というものは、みんなそれぞれうまくいっている、中にはまた再び漁業権を取り巻いていろいろごたごたが起きてうまくいかないというところも必ずあると思うのです。それはもう別に心配するに足らないごくわずかなものでありますか、そのうまくいっているところといかないところの割合というものはどの程度なんですか、その点がわかったらお知らせいただきたいと思います。現在において、問題になって、うまく組合運営ができないと言っているところはありませんですか。
  105. 池田俊也

    説明員池田俊也君) 合併をいたします場合の一つの大きな障害は漁業権の問題でございますけれども、従来合併しております例を見ますと、漁業権につきましては、従来の権利者といいますかの権利の既得権を尊重するというようなかっこうで話をつけました上で合併をしていくというような事例が非常に多いようでございます。したがいまして、そういうような点の一応話がありますので、まあその後におきましていろいろなごたごたが起きたという例は、若干あるかもしれませんが、私どもといたしては、ほとんどそういう例は非常にまれなんでなかろうかというふうに考えます。
  106. 北條雋八

    ○北條雋八君 そうすると、現在合併が促進されないでおるところで、やはり漁業権の問題で合併ができないというところはありませんか。
  107. 池田俊也

    説明員池田俊也君) これは、個別の例は私はあまりよく知らないのでございますが、一般的な考え方といたしまして、まあ比較的自主的に合併ができますようなところは、漁業権についてわりあいに問題の少ないところであります。それで、それぞれの指導者の間でうまく話し合いができたものが合併を実現していくというようなことかと思います。したがいまして今後におきます問題を考えますと、何らの措置もなしに——たとえば今回の法令では一つの特例措置を認めているわけでございますけれども、そういう特例措置がなしに合併するということになりますと、これはなかなかうまくいかない、話し合いがつかないというような事例はかなり多いのじゃないかと思います。
  108. 北條雋八

    ○北條雋八君 私は二、三そういう例を聞いたことがありますので、あるいは合併の促進がいかない原因相当なっているのだと思いましたが、いま皆さんからお話を伺うと、この点はそう心配するには当たらないという程度だということを伺いましたので、そのように承知してよろしいのでございますね。
  109. 久宗高

    政府委員久宗高君) これは、現在合併しております組合では比較的問題がない。つまり、合併するにつきましては、いろいろ話し合いがついて合併したものが多うございます。じゃ、漁業権の問題は全然心配ないかと申しますと、漁民の意識といたしましては、やはり相当こだわっておるわけでございます。むしろ合併とかそういうことをまず頭に考えていないというのが相当あるのじゃないか、こう思うわけであります。つまり、漁業管理団体というところでとどまってしまって、あまり他の経済活動までしようと考えておりませんので、合併ということは意識のうちに全然考えていない、こういったのが実は相当多いのではないか。その結果、現在、九割にもなるような数字が旧町村以下にとどまっておるということでございますが、実は、合併を進めますについては、漁業権の問題はこういうふうに処理するから心配はないのだぞという点をよほど慎重に、かつ理解できるような形で浸透させませんと、そこでつっかえてしまうおそれがある。ただ、私ども感じといたしましては、そういうようなことで漁業管理団体にとどまっております結果、もう一つの経済活動をしないという結果が出まして、それが漁民にとってむしろマイナスになるという事実をできるだけはっきり示しまして、さような経済活動をするについて組合が幾つか合併したほうがいい場合においても、なおかつ、漁業権の行使については、旧行使者がそうとんでもない形に、その行使関係からはずれるということはないんだ、そういう心配はないんだということを具体的によくわかってもらうように指導いたしたい、かように考えております。
  110. 北條雋八

    ○北條雋八君 いま長官からお話がありましたが、やはり、組合の効果と申しますか、また、組合の経済上の利点ですか、組合を組織したほうが経済上のまあ利点を得るわけでありますから、そういうもののいわゆるPRですか、それが足りないのだと思います。もう一つは、また、漁業権に対するいろいろ話し合いの世話をやくといったような努力も足りないと思います。こういう点が、今後、もうちょっと、指導ですか、あるいはPRをやってやらなければいかぬというふうに思います。  次に伺いますが、今回の合併の方法も、漁協整備促進法によります合併の方法も、いま話がありましたように経済団体としての強化に重点が置かれているようであります。今回の法案提出にあたって、いままで述べた漁業権その他の現実問題がどの程度考慮され、どのような対策が立てられておるか。このような環境の中では、目的達成にかなりの困難があると思われます。政府はどの程度の自信をもって先ほど来言われた成果をあげられるつもりでありますか、その自信のほどをもう一度伺いたいと思います。
  111. 久宗高

    政府委員久宗高君) 御指摘のように、客観的に見ますと、現在の漁協が置かれております立場から見まして、漁業権の管理主体にこだわるために経済活動の大部分を逸してしまっておるということを改正することは当然必要なわけでありますが、何ぶんにも長い習慣でございますのと、また、すでにそういうような管理団体として一応組合というものがそこにございますので、これをあらためて経済団体として組み直してまいりますについては、相当な努力が要るであろうと思うわけでございます。したがいまして、まあ形は合併でございますけれども、全く新しく漁民組織をつくるくらいの気持ちでかかりませんと、この仕事はできないというふうに私ども腹をきめておるわけでございます。幸いにいたしまして、連合団体におきましても、最近の経済情勢等から考えまして、この時期に思い切ってやはり合併をやるべきだということで、団体のほうでも相当の意欲をもってこの問題に取り組もうとしておりますので、私どもといたしましては、相当の困難がありましても、機は熟しておるというふうに思うわけでございます。あとは、ただ、漁業管理その他につきましての一連の誤解のないように、すでに今回の特例措置の内容も詳細にお話しをいたしまして、漁民の決意を促すというところに集中をしてまいりたいと、こう考えておるわけでございます。
  112. 北條雋八

    ○北條雋八君 次に、漁協は、組合員の下層よりも上層に利用しやすくなっているのではないかというふうに考えます。たとえて言うならば、組合の最も重要な業務の一つでありまする金融について見ますと、事業資金や生活資金をここ二、三年のうちに漁協組合から借りた者の比率が、水揚げ高の低い者やあるいは漁船の総トン数の小さい者ほど低いといいますか、少なくなっておるのです。このような事実が、特に下層の組合員等に、組合の経済団体としての機能に対してあまり関心を持たせず、その強化を目的とする合併に消極的な態度をとらせておるのではないかというふうに思われるわけであります。この点について、政府のお考えと、その対策について所信を伺いたいと考えます。
  113. 池田俊也

    説明員池田俊也君) これは、確かに、御指摘になりましたように、そういうような傾向が一般的にございます。これは金融事業というもののある意味では一つの必然みたような気がいたすのでございますが、やはり、漁協も、そういう信用事業運営をやるという観点からいたしますと、一つの金触機関でございますので、貸し付けをいたします場合に、どうしてもある程度信用力といったような点に着目をして貸し付けをする、結果といたしましてどうも上層のほうに貸し付けが片寄ると、こういう傾向があるのであろうという気がいたすわけでございます。まあ本来から申しますと、組合員の共同組織体という観点からいたしますと、必ずしもそうでなくて、実際に資金の必要な方には、多少そこらはあまり厳格な考え方でなしに資金の融通をしていただくのが私どもは適当であると、こういうふうに考えるわけでございますけれども、実際問題といたしますと、なかなかそこらがうまくいかないと、こういう点があると思うのでございます。これにつきましては、そういう信用事業の適正な運営という趣旨から、われわれ御趣旨のような下層の漁業者に対しましても資金が行きますような指導を当然すべきでございまして、今後ともさらに一段とそういう点を考えに入れて県等の指導をいたしたいと考えておるわけでございますが、やはりおのずから限界もございますので、私どもといたしましては、その他のいろいろな事業、これは、たとえば沿岸漁業でございますと、沿岸漁業構造改善事業という事業がございます。その一環といたしまして制度融資が行なわれているわけでございますが、そういうものを実際にそういう方々に行き渡るようにする。あるいはまた、漁船の建造等でございますと、その他のいろいろな施設もございますが、公庫等を通じまして制度金融の道があるわけでございますので、そういうものも、いま御指摘をいただきましたような点の欠点を極力是正する、こういう感じ指導をしてまいりたいと考える次第でございます。
  114. 北條雋八

    ○北條雋八君 その点が、農業でも同じでありますが、特に漁業に対しては、そういう零細業者の金融というものに非常に不親切じゃないかというふうに思います。この点は、できるだけ善処方をお願いしたいと思います。  次に、合併の補助金が少額過ぎるということは、先ほど鶴園委員のほうからもお話がありましたようでございますが、私も、この点は、当今においてはなおさら少額過ぎると思うのです。現在、一組合に十万円でございますかね。そうすると、三組合を平均しますと、一合併当たりが三十万円ということになるわけです。これは、予算の関係とかそういう点でふやすことができないのですか、あるいは、他のいろいろ農業関係の場合とかそういうつり合いからふやせないのですか、その点はどうですか。
  115. 池田俊也

    説明員池田俊也君) 御指摘いただきますように、非常に少額でございまして、施設の整備という観点からいたしますと、実際問題としては非常に不足であると私ども存じておるわけでございます。従来、予算折衝の際に、財政当局ともいろいろその点について折衝したわけでございますけれども、財政当局の立場からいたしますと、ほかに同種の合併助成等の例がございますので、従来の例から言うといわば最高限のところまでは認めよう、しかしどうもそれ以上の額を出すということは困ると、こういうような話がございまして、結局、その線以上に出なかった、こういうことでございます。
  116. 北條雋八

    ○北條雋八君 これは、先ほども話がありましたが、二千五百組合のうちに六百組合赤字を出しているということでありますが、六百組合全部に十万円出しても六千万円ですね。ですから、これを十万円を五十万円にしても、三億円ですね。そう大したお金ではないと思うのです。ですから、これは、ほかの農業にしろ、やはり少ない少ないで昔から訴えられておるわけなんですが、こういうものの折衝にもっと強力に折衝されて、上げるべきものはどんどん上げられたらいいんじゃないかと思うのですがね。そういう点について、長官は、いままでどういうような折衝をされてきたのか、また、またその可能性についてどう見通されておるのか、その点を伺います。
  117. 久宗高

    政府委員久宗高君) これは、今回の予算折衝におきましても、長官の担当という項目になっておりまして、ずいぶん長い論争をいたしたわけでございます。私どもといたしましては、その実情から申しまして、他の農業なり林業なりの場合と比べて特殊な困難さがございますので、どうも十分な力がございませんで、ある程度のところで話し合いをせざるを得なかったわけでございまして、私といたしましても遺憾に思っておるわけでございます。ただ、考え方といたしましては、自主的な組織、みずから本来やるべきものというたてまえがございますので、農業との比較もございますけれども、一般行政と比較いたしました場合に、比較的農林関係は特殊性ということで、一般の中小企業よりは比較的よく見られておりますので、さような意味で予算折衝におきましては他のバランスの問題で実は非常にやりにくい壁がございまして、私もさらに努力を続けたいと思いますけれども、実は非常に困難な問題の一つであります。
  118. 北條雋八

    ○北條雋八君 それは、なんですね、漁業だけというわけにはいきませんから、これは農業、林業みな連合で、特に漁業については合併を急いでおるのですから、極力長官が先に立って大いにこれを促進して、それこそ促進をしていただきたいと思います。  なお、政府は、先ほどから、合併は一応成功したと言われておりますけれども参考資料のアンケートによりますと、「合併してよかった」というのが三二%に対し、その半分の二八%は「よくなかった」と答えております。これでも一応政府としては成功したと言えるのでありましょうか。  私は、この際、もう一度合併のおもな得失を明らかにしていただこうと思うのです。組合組合として活動していけるための事業費は大体どれくらいなのでありますか、また、常勤役員は何名くらいがよいと思われておりますか、その理想の形を一応伺いたいと思います。
  119. 池田俊也

    説明員池田俊也君) 合併をいたしました場合の一つの規模の見通しでございますが、私どもといたしましては、非常に抽象的な基準でございますけれども組合の役職員の数から申しますと、常勤役員一名、それから職員五名程度、合わせまして六名程度事業運営をいたすような規模の組合を考えたらどうだろうか。そういうような事業体制の組合のたとえば販売事業におきます事業量をはじいてみますと、ほぼ六人程度運営する規模として現在沿岸漁協の販売事業の扱い高の平均が八千万円強でございますが、その八千万円程度事業運営するのにちょうどいい執行体制になるのではなかろうかというようなことで、常勤役職員六人程度の規模を一応指導の目標にいたしたらどうだろうかと考えておるわけでございます。
  120. 北條雋八

    ○北條雋八君 だけれども、前段に伺いましたアンケートの「合併してよかった」というのが三二%ですね。その半分の一六%が「よくなかった」という答えなんでありますが、それで合併は一応成功したと言っていらっしゃるのですが、その矛盾が私はあると思うのですが、その弁明をひとつ…。
  121. 池田俊也

    説明員池田俊也君) お答えを落としましてどうも申しわけありませんが、従来、合併の結果が必ずしもよくなかったというものが相当程度あるわけでございますが、その理由を洗ってみますと、従来のセクショナリズムといいますか、あるいは部落感情といったようなものが非常に影響しているような感じを持つのでございます。そういうものの中を少し見てみますと、たとえば、組合長をよその地区にとられたとか、どうも小さい組合を追い込んだために自分のほうの従来比較的多かった収入の割合が減ったとか、あるいは勢力争いが従来より激しくなったとか、そういうような事例をあげているようでございます。
  122. 北條雋八

    ○北條雋八君 現在、組合中に、職員のいない組合が二百七十四組合あるとこの表に出ておりますが、これはこういうもので漁協としての使命は果たせるのかどうかですね。こういう組合こそ優先的に整備強化すべきものと思いますが、この点について長官からお答え願いたいと思います。
  123. 久宗高

    政府委員久宗高君) 漁民の組織として考えました場合、ちょっと考えられないわけでございますが、漁業権の管理主体ということでできましたために、漁業権の管理だけということになりますと、あるいはそういう形でも処理ができたのだと思うのでございます。しかし、これはほんとうの意味の漁民組織として又考えてよろしいかどうか、おそらく経済活動などというものは全然手をつけていなかった、形だけで、漁業権の管理主体というものがあったにすぎないというふうにも考えられますので、私どもといたしましては、さような形でしか漁民の組織がないことをぜひこの際改めまして、おそらく、さようなところにおきましても、漁民は、全然組合の恩恵を受けずに、経済活動を個別にやっているんだろうと思うんで、この機会に、まず合併の促進という形におきまして、もし経済活動をやるとしたらどういう組織がよろしいか、そのためにはどういう合併がよろしいか、しかし、それによって漁業管理はかように心配が要らなく処理できるんだということを明らかにいたしまして、経済活動のほうに考え方を振り向けてまいりたいというふうに思うわけでございます。
  124. 北條雋八

    ○北條雋八君 従来は、こういう組合に対して、いろいろ指導をされたことがあるんでありましょうか。もちろん合併促進に一番力を入れて指導しなければならないものだと思いますから、こういうものをほうっておいたのじゃないと思いますが、その点はどうですか。
  125. 池田俊也

    説明員池田俊也君) これは、ただいま長官からお答え申し上げましたように、漁業管理だけを目的にしているような団体でございますが、こういうものに対しても、経済事業をやるという指導は、一般的には県等においてもやっているわけでございますけれども組合成立の過程等から、なかなかそちらのほうにみんなの頭が向かないと、こういうようなことでございました。なかなか、県のほうでも、これを減らしていくというようなことがむずかしいようでございます。
  126. 北條雋八

    ○北條雋八君 すると、二百七十四組合というのは、ずっと前から変化はないのですか、あまり。
  127. 久宗高

    政府委員久宗高君) 今日までやりました組合合併につきましては、先ほど申し上げましたように、整備促進と関連してやりましたので、ある負債が残っている、その場合には、何らかの経済活動をしておりまして、その結果負債ができて、それの処理と関連して合併の問題が出た、こういうことであろうと思います。したがいまして、現在、御指摘のございました職員のいないいわゆる純然たる漁業管理組合というものにつきましては、従来も、経済活動の指導なり合併の指導におきましては、先ほど申しましたように、むしろ経済活動をやった結果の失敗を何らか調整しなければならぬという形で、県の指導も抜かっておったように思うのです。したがいまして、漁民のほうからも働きかけもないし、県のほうからもそこまで実は手が及ばなかった。こういうものが主として僻遠の地に相当多いのじゃないかと、こう思うわけであります。  さような観点から申しますと、今回手をつけます場合に、いわゆる僻遠の地におきます協同組合をどういうふうに取り扱うかという一つの特殊問題にもなろうかと思いまして、いきなりただ経済活動をすぐやりなさいと言いましても、おそらく、いま御指摘のような漁業管理組合だけで終始しておりました組合は、地域的には立地条件のいわば経済活動から申しますと悪い地域ではないかと思うわけでございまして、背後地の道路の問題でございますとか、あるいは運搬船その他の活用というような問題で手がけますと、これは農協のようにその地域に限りませんで、海でございますので、中心漁港地域等も船によって結びつけられる可能性もございますが、われわれの考え次第で、具体的な経済活動のやり方について十分な案を持って御相談すれば、そういうふうなところが案外早く経済圏の中に入ってくる可能性も実はあるわけであります。今日までのところ、必ずしもそこまで手がついていなかったように思うわけであります。
  128. 北條雋八

    ○北條雋八君 そうしますと、当分は合併の対象にしないでいい組合と思ってよろしゅうございますか。
  129. 久宗高

    政府委員久宗高君) 必ずしもそう言い切れないわけでございまして……。
  130. 北條雋八

    ○北條雋八君 それは、中にはね。大部分は…。
  131. 久宗高

    政府委員久宗高君) 条件が相当整いませんと、特に現在の条件で僻遠の地域にあります協同組合につきましてどういう形の経済活動をやったら最も組合員のために有利であるかという問題につきましては、一般の漁協とは違った構想と申しますか、あるいは準備と申しますか、さようなものが要るであろう、こう思うわけであります。
  132. 北條雋八

    ○北條雋八君 その点がどうもはっきりわからないのですがね。そういう職員のいないというのは、結局、経済活動をしていないところ。また、しないで済むならいいが、非常に地域の不便なところが多いわけですね。できるだけそういうのは合併さしてやる、できるなら少しぐらいの犠牲を払っても合併さしてやるというふうにして、みそっかすにしないでやっていただきたいと思います。  次に伺いたいのは、合併の方針としまして、たとえば、赤字組合は優先的に合併の対象とするとか、また、利益をあげている組合同士の合併はあと回しにするとかあるいは避けるとか、また、赤字組合は黒字組合と組み合わせて合併をするとか、そういったいろいろな場合があると思うのですが、政府としてどういうような順序をもって合併を促進されているか、その点を伺いたいと思います。
  133. 池田俊也

    説明員池田俊也君) これは当然のことでございますが、合併は各漁協の組合員の考え方を基礎にいたしまして、必要がある場合には府県あるいは府県の連合会というようなものも助言をいたすわけでございますけれども、根本はあくまでも組合員の考え方に基礎を置くわけでございますので、私どもといたしましては、実は、いま先生のおっしゃいますような点について、一般的な基準みたいなものは考えておらないわけでございます。たとえば、赤字組合を優先するとか、あるいは有力な黒字の組合を中心にして合併を進めるとか、そういうような画一的な実は考え方はないわけでございます。おそらく、地域によりまして非常に違うのではなかろうかと考えるわけでございます。  ただ、一般論を申し上げますと、私ども対象として頭に描いておりますのは、平均的な姿よりも著しく落ちるような、区域も狭く職員の数も少ないというようなものは、やはりこの際合併の対象として、特に経営基盤を強化するための合併の対象として考えてほしいと、こういう希望があるわけでございますので、そういう点から言いますれば、従来、区域が狭く、経営基盤が弱いような組合を合わせて適正規模に持っていけるようなものが一応中心になるのではないかと思いますけれども、特に私どものほうで何かそういうものについての方式みたいなものを考えておるわけではございません。
  134. 北條雋八

    ○北條雋八君 大きい赤字組合同士が合併をどんどんしてくると、それもけっこうでありましょうけれども、そうなってきますと格差がますます開いてきますし、できるだけ赤字組合と黒字組合と組み合わせをするということをやはり優先的に考えていいんじゃないかというふうに思います。現在、利益をあげている組合が約千七百、六四%もありまするし、また、損失組合が六百、とんとんの組合がパーセントにして七%ということが記録に出ておりますが、そういう意味からいって、これは場所によって一概に言えませんが、できるだけ早く組み合わせをして促進されることを望みます。  なお、この際、最近の漁協は、魚価の上昇に依存するきらいがあります。魚価の上昇には限界があり、暴落もあります。で、沿岸漁業全般にわたる生産性の向上をはかるため、生産意欲の高まる措置を極力講じなければならないことは明らかでありますが、三十五年四月十五日の参議院の農水の附帯決議の中にも、「沿岸漁業の振興のため抜本的な対策を講じ」云々という附帯決議がありますけれども、それ以来、この決議案にこたえてどんな対策をとられましたか、それを伺いたいと思います。
  135. 池田俊也

    説明員池田俊也君) 沿岸漁業の振興と申しますか、ただいま、魚価の上昇にささえられていて、物的生産性の伸びは非常に低いんじゃないかという御指摘があったわけでございますが、一般的には、確かに魚価の上昇にささえられている点が多いわけでございます。私のほうといたしましては、沿岸漁業の振興というのは、何といいますか、じみちなもろもろのそれに関連する施策を積み重ねることによって達成できるのではないか。何か一つの具体的な方策だけでそういうような事態を達成できるとは考えておらないわけでございます。  従来、私どもが重点的に考えております施策の一つとして、最近におきます沿岸漁業は、水質の汚濁その他の理由によりまして漁場が失われているような点が多いわけでございます。それで、そういうような点から、新しい漁場の開発をはかる必要があるのではないかということで、これは三十九年であったかと存じますが、浅海漁場の開発を今後相当規模を大規模に考えたらどうかということでまず調査事業を始め、そして、ノリでございますとかあるいはその他の養殖を中心といたしましてそういう漁場の開発のための調査を始めたわけでございます。これは近く明年度あたりから事業実施に入るわけでございまして、これができますと、私どもといたしましては、たとえば農業におきます土地改良事業に匹敵するような性格の事業として、かなりの効果が期待できるのではないかと考えておるわけでございます。その他いろいろこまかい事業は、従来よりさらに事業量を拡大いたしまして、いわゆる沿岸漁業構造改善事業でございますが、これは従来ともやっておる事業でございますが、これにつきましては、経営の近代化のための施設に対する助成等を中心に事業量の拡大をはかっているわけでございます。  それからこれはいまさら申し上げるまでもございませんが、漁港の整備につきましても、整備計画を逐次改定いたしまして、その充実をはかっているわけでございます。
  136. 北條雋八

    ○北條雋八君 それでは、次に、時間もありませんから、災害補償法のことを二、三伺います。  現行制度実施されましてから三年になります。ようやくこのたび国の保険事業実施されることになりました。その間、共済団体赤字が五億円を超過するといわれております。だんだんふえてきまして、遂に五億一千五百万円になったわけであります。現行制度が発足するときに、漁業界はもちろん、私どももまた、国の保険事業を行なうよう、強く主張いたしました。参議院の附帯決議にも、衆議院では三年というのを、参議院では一両年中に実施することとして、そして非常事態に備えるための財政措置も講ずるようにという要請をしたのであります。先刻来、鶴園委員よりも質問があり、それに対して政府からもいろいろお答えがありました。また、衆議院の質疑を通して見ましても、この赤字問題というものが非常に大きな比重を占めているということがわかります。これが今後大なり小なり本事業の推進に障害になることは、これは想像にかたくないと思います。長期的均衡をその設計に織り込んでおります以上、政府としては、現行制度におけると同様にこの改正案でも一連の責任を遂行する義務があると思います。先ほど政府のほうとしても、極力この赤字の解消に善処するという答えはありましたけれども、どこまでその責任を感じておられますか、その点を局長からひとつ御答弁をお願いします。
  137. 久宗高

    政府委員久宗高君) 赤字の処理の基本的な考え方につきましては、先ほどお答えをいたしたわけでございますが、いずれにいたしましても、長期的な計算に基づきまして、その中で考えるべき性質の問題でございますので、この段階での処置につきましては、具体的なお答えができないわけであります。ただ、繰り返し申しますように、これはやはり長期的な観点の中で、このような初期におきます赤字が後半で解消できなかった場合に、当然全体の運営に支障ができますので、さような支障は来たさないように、政府といたしましては当然の処置をしなければならぬ、こう考えておるわけでございます。発足いたしまして三年の間に、特に四十年度にはいろいろな異常災害がございました点もございますし、また、発足当時の料率がはたして妥当であったかどうかという吟味も必要でございましょうし、さらに、特に加入の、つまり保険のすそ野と申しますか、非常に片寄った形で運用しました経緯もございますので、さような要因を十分分析いたしました上で、かつ、それが御指摘のように共済制度全体の運営に支障を生ずるかどうかという問題を十分頭に置きまして処置を考えたいと思っておる次第でございます。
  138. 北條雋八

    ○北條雋八君 次に、これも先ほどちょっと問題が出ましたけれども、今回の改正で、災害赤字因子でありますが、ノリ養殖業のことについて伺います。このたびの保険設計で大きな変更を見ておりますノリ養殖業のことでありますが、すなわち共済金支払いにあたって三割足切りを行なうとすることでございますが、組合加入率がそのためにかえって減ってくるんじゃないかというふうにも考えるのであります。この三割足切りについてどういうふうに政府は考えておられるか、その点の説明をお願いします。
  139. 池田俊也

    説明員池田俊也君) ノリ養殖業につきまして今回三割足切りの制度を設けることにいたしたわけでございますが、これはまあいろいろな理由がございますけれども、基本的に申し上げますと、ノリ漁業というものの一つの性格でございますけれども、非常に自家労働を中心にいたしまして、まあもちろん相当大きな経営になりますと雇用労働も入るわけでございますけれども、一般的には非常に自家労働のウェートが高いわけでございます。それで、私ども感じといたしましては、まあある程度の自家保険、要するに災害程度が非常に低い場合におきましては自分のところでそれを切り抜けられると、こういう程度が他の漁業種類に比べましてかなり高いのではないかという感じを持っておるのでございます。そういうような観点からいたしまして、従来の制度は、先ほど来いろいろお話がございましたが、一定率以上の被害のときには根元からてん補の対象になると、こういうことでございますが、まあこれは手厚いといえば非常に手厚いわけでございますけれども、一面からいえば、また、どうも必要以上のてん補をしているのではなかろうか、こういう感じを持つのでございます。漁業者の立場だけからいたしますと、あるいはてん補の程度が厚ければ厚いほどいいということもあるかと存じますけれども共済事業運営の本来の趣旨からいたしますと、どうも従来の制度というものは若干手厚過ぎたんじゃないかという感じも一部ではあるわけでございます。  それから、やはり共済事業でございますので、これは過去の被害の状況を基礎にいたしまして料率の算定をいたすわけでございますけれども、今回来年度から新料率になるわけでございますが、その場合の基礎データは、先ほど指摘いただきましたような従来の赤字のものが反映されるわけでございます。したがいまして、従来の制度のままで計算をいたしますと、これは大幅な引き上げになる可能性がございます。それで、漁民の立場からいたしましても、あまりにも多額の掛け金を払うということには抵抗がございますし、一面から申しまして、先ほどのような制度の趣旨からいたしまして、ある程度の自家保険を見込んでもいいのではなかろうか、こういうようなことがございますので、そういうようなことを勘案いたしまして、今回、足切りの措置をとったらどうだろうかということを御提案申し上げたわけでございます。  これは、当然御承知のわけでございますが、農作物共済におきましても、大体同じような趣旨が行なわれておるわけでございます。
  140. 北條雋八

    ○北條雋八君 漁業期間約半年の間の収獲金額の三割減というのは、その養殖専業としている者には相当痛手でありますことは言うまでもないわけなんですが、これを三割にしたという根拠は何によりたか。二割ではどうなのかというふうに思いますが、その点、もう一回説明をお願いします。
  141. 池田俊也

    説明員池田俊也君) これは、率直なところを申し上げますと、三割以外は一切適当でないと、こういうような非常にはっきりした基準があるわけではございません。ただ、私どもは、従来の事故発生率の実績、それから先ほども申し上げましたノリ漁業経営におきますいろいろな経費の構成等を見まして、先ほど申し上げましたように自家労働のウェートがかなり高いわけでございます。そういうようなことで、経営の内部でカバーできるようなものを考えて、そういうような点が一つの判断の基準になっておるわけでございます。  それからさらに、これは直接比べることがいいのかどうか若干問題もあるかと存じますけれども、たとえば農業共済保険におきまして、農作物共済あるいは蚕繭共済におきましても三割と、こういうようなこともございますので、これは一がいに比較はできませんけれども、それやこれやいろいろ勘案いたしました結果、三割程度が適当ではなかろうかと考えたわけでございます。
  142. 北條雋八

    ○北條雋八君 三割だとまあ赤字が出ないという大体の見込みを立てられたわけですね、掛け金に対してですね。そうじゃないのですか。ただ農業のほうで三割だから、漁業でも同じように三割にしたという根拠なんですか。私は、補助に重きを置くか、あるいは赤字に重きを置くかということになってくるわけです、そうなると。ですから、やはり何か根拠があるのだろうと思うのですが。
  143. 池田俊也

    説明員池田俊也君) 必ずしも三割の線で切れば赤字が出ないであろうということではございません。先ほど申し上げたことをまた違ったかっこうで繰り返すことになりますが、一例をあげて申し上げますと、これは非常に的確な資料ではございませんけれども、ある統計資料から出してみますと、たとえば十アールから二十アール程度の面積のノリ漁場におきまして経営をやっている漁家の資料でございますが、全体の経費が五十万円程度でございますが、その中で見積もりの家族労賃、これまたいろいろいろ評価のしかたがございますけれども、それを見ますと二十五万円程度で半分くらいを占めておるわけでございます。いわゆる物的経費というものが比較的他の漁業種類に比べますと少ないわけでございます。そういうような点等を考え、さらに、足切りをしなかった場合に一体どういうような掛け金になるかというようなこともいろいろ勘案をいたしました結果、やはり三割程度の足切りが一番妥当なところではなかろうか、こういう結論になったわけでございます。
  144. 北條雋八

    ○北條雋八君 掛け金の引き上げでもってカバーするということは、そうでなくても今度は掛け金は上がるわけでありますから、これはできないと思いますが、二割ではどういうことになるのですか。できるだけやはりこの割合は低くしてやるべきが共済の本旨だと思うのですが、その点をもうちょっと軽くすることができなかったのかどうか。
  145. 久宗高

    政府委員久宗高君) 先ほど漁政部長から申し上げたわけでございますけれども、一応、基礎といたしましては、現行制度におきます共済金を支払う場合の最低損害割合と、これをこえる事故発生率の実績、それから料率算定基礎資料によります損害程度別の事故件数の分布、それから共済掛け金率水準、農作物共済の場合の足切りの程度、こういったものを勘案いたしまして三割の線を出したわけでございますが、それを逆算いたしますと、物的費用の割合でいけば、少なくとも物的費用が昭和四十年度におきましては大体三割二分程度のところにとどまっておりまして、他の養殖漁業を見てみますと、たとえば、真珠母貝でございますと四八%、真珠養殖でございますと四六%、カキ養殖でございますと三八%といったような数字が出ております。一応三割程度のところを見れば、いわばこの制度の基本でございます再生産の阻害の防止に適切な給付が確保できて、また、同時に、共済事業の健全な運営をはかり得る、こういうところをめどにいたしまして三割をみたわけでございます。  と申しますのは、先ほどもちょっと申し上げましたように、三割をこえました場合にその根っこから見るということになりますと、実はわりに低い被害をこまごまと見るという形になるわけであります。しかも、現行制度におきましては、養殖の時期別にそれを計算いたしますので、年間を通じました養殖経営から見ますと、実はそんなところをこまごまと見るために高い料率を出しますよりは、年間を通じてたとえば三割以上の被害ということになりますと、これは相当の被害になります。そういう場合に相当思い切った補償のできますようなことが、実際の経営をなさる方のほんとうの経営から見ますと実はそのほうが大事ではないか。また、そういうことで考えれば、料率につきましても、そのような危険率がどれだけ出るかというところで料率がきめられますので、根っこから非常にたくさんの件数で多数の方にばらまいて相当金額になるけれども、実際にはそういう補てんを受けるよりは、相当ひどくやられたときに思い切って見てもらえるということが、実際の経営をなさる方から見ればむしろ得であろう、こういう観点に基づきまして、三割以下のところは、たまたま物的経費はそこで十分まかなえますので、そこで線を引いて、それをこえて相当経営的に痛いというところに思い切った補償のできますような計画にいたしたわけでございます。また、そういうふうにいたしませんと、今日までの実績から見まして、根っこまでずっと見ることになりますと、料率計算上、非常に大きな料率になりまして、さような料率にするのでは、とてももう続けるのはいやだ。逆に、加入につきまして、料率が、赤字がすでに出ているくらいの給付がすでに行なわれておりますので、はね返りが大きいわけでございます。逆にノリ経営者から見ると、そんな負担まで負って小さい災害をぼつぼつ見てもらってもつまらぬといったようなことが起こり得るのじゃないか、こういうふうに考えまして、思い切ってむしろここで足切りをいたしまして、ほんとうの被害のときは十分見られるような体制にして、しかも、今回の赤字を頭に置いた料率のはね返りを受けてそれが今後の掛け金負担のときに加入の抵抗にならぬようにしょう。また、同時に、こういうふうにいたしますと、実は件数が非常に少なくなります。いままでのようなやり方でございますと、ほんとうは経営的に痛くなくても、たまたまこれのケースに当てはまってしまいますために、非常にたくさんの件数についての金をばらまくかっこうになりますので、保険運営上のいろいろな支障がございますので、保険経理と実際に経営をなさる方の御便宜と両方考えまして、三割という線を実は出したわけでございます。
  146. 北條雋八

    ○北條雋八君 実は先ほど鶴園委員からもお話がありましたが、漁具共済について、いろいろお答えがございましたから、この際ごく簡単に私も伺いたいと思います。先ほど漁具共済保険事業から除いたということについて、政府調査のデータが不足しているということも理由にあげられました。しかし、漁具共済赤字の大半がサケ・マスの独航船の流し網によるものとすると、これらの漁種は、日ソ漁業条約に基づき、大臣許可漁業になっております。漁獲物に対する検量もぴっちりと行なわれておりますし、漁具に対する損害査定もできるわけでありますから、漁業上の監督、監視官等もいるのでありますから、きちんとごまかしができないようになっていると思うのであります。ただ、先ほどの、これを入れないという理由は、試験的のデータがそろわないからということでありますが、それがおもな理由なんでありましょうか。損害の査定がうまくいかないからという理由もあるんじゃないかと思うのですが、そういう点はないのですか。
  147. 池田俊也

    説明員池田俊也君) これは、損害の評価につきましても全く問題はないわけではございません。非常に遠い沖でとれます漁業をいたしまして、その間操業中に網がいろいろな事故によって損害を受けるというものでございますから、損害の評価についても若干の問題はあるわけでございますけれども、これにつきましては、現在、母船に漁業監督官がおりますし、そういうものを活用いたしまして、査定についてもそういうような方法がございますので、まあ方法もあるわけでございます。したがいまして、私どもが現在いますぐ政府保険事業対象にすることができないと、こう申しておりますのは、評価の関係ではございませんで、むしろ保険設計をする基礎になります被害の実績と申しますか、そういうようなものから、やはり保険事業でございますので、危険の分散という点を考えまして保険事業仕組みをする必要があるわけでございます。そういう点から申しますと、これは北洋という一つの限られた漁場で、三百数そうの船が操業しているわけでございまして、何と申しますか、地域的な広がりが限られているわけでございます。保険設計をいたします場合に、一つのデータのとり方といたしまして、期間をとりまして、過去の一定期間の被害の状況参考にするということと、それからもう一つ方法でございますが、これは地域的な広がりをとりまして、そこから一つの規則性の発見をするという、こういう二つの設計方法があるわけでございますけれども流し網等におきましては、そういうような意味でいずれの点におきましても非常にデータが少ないわけでございます。それで、私どもといたしましては、まだいまの段階ですぐ保険にのせるような設計をするだけの自信がない、こういうことで、もう少し調査をさしていただきたいと申しているわけでございます。
  148. 北條雋八

    ○北條雋八君 じゃ、これで終わります。
  149. 和田鶴一

    ○和田鶴一君 ただいま、鶴園、北條両議員から詳細に質疑が行なわれましたので、時間の関係等もございますから、私はきわめて簡単に二、三お尋ねいたしますので、どなたからでもけっこうですから、簡単にお答えいただきたいと思います。  漁業災害補償法が国会で審議されました昭和三十九年に、衆議院では委員会で五月に、また本院では六月に、附帯決議がつけられて採択されておるわけでございます。六項目ある中で、一項目についてはただいま保険の審議をやっておりますし、二項目についてはすでに予算で措置済みだと思うのですが、あとの四項目ですね、これについてその後どういうように措置されたか、簡単にお答え願いたいと思います。
  150. 池田俊也

    説明員池田俊也君) ただいまお話がございましたように、衆参両院で附帯決議がつけられているわけでございますが、参議院——当院におきます附帯決議につきまして御説明を申し上げますと、ただいまお話にございましたように、第一の保険事業、これは、今回実施するところでございます。  それから第二項といたしまして、委託に基づいて行ないました事業赤字の処理でございますが、これも補てんをいたしたわけでございます。  それから共済掛金に対する負担率の引き上げをする、あるいは漁業共済団体事業費に対する負担金の増額及び無事故掛け金割引ということでございますが、これにつきましては、特に沿岸の小規模漁業者の掛け金に対する国庫補助率の引き上げということで従来努力をいたしているわけでございまして、たしか、お手元に差し上げました資料の中にも、四十二年度におきまして引き上げをいたしましたものをお示ししていると存じます。それから無事故掛け金割引でございますが、これは実は非常にこまかい話になりますが漁獲共済につきましては、制度仕組み上非常にむずかしいわけでございますが、養殖共済につきましては、過去一定期間状況に応じまして掛け金の割引を実施しているわけでございます。  それから次に、保険事業実施するまでの間において、漁業共済団体共済金及び再共済金支払いに不足を生じたときは、政府の財源で措置することという項目がございますが、これにつきましては、先ほど来、赤字の問題についてはいろいろ御議論がございましたが、私どもといたしましては、共済基金の運用等によって従来は必ずしも支障を生じていないというふうに考えているわけでございます。  それから補償制度に関する免税措置でございますが、農業共済制度と同様の免税措置を講ずるようにという決議があったわけでございますが、これにつきましては、固定資産税については、四十年度におきまして免税といたしたわけでございます。それから印紙税につきましても、今国会において改正がなされたわけでございます。  それから次に共済限度額の算定をいたします場合に、魚価の実勢を反映させるようにという御決議でございますが、これにつきましては、今回の制度改正と関連をいたしまして、過去におきましては、過去一定期間漁獲金額の総和平均をとっていたわけでございますが、これにつきましては、今回改正をいたしまして、最近年次にウェートを大きくする。一般の漁獲共済でございますと過去三年をとりますが、その場合に、最近年次に三のウェート、それから次にその前の年次に二、その前に一というようなことで、ウェートをつけまして魚価の実勢を反映させるようにいたすような措置をとることといたしておるのでございます。
  151. 和田鶴一

    ○和田鶴一君 委員長から、非常に短い時間の制限の指令が出ましたので、簡単に御質問いたします。  漁獲金額の算定、ただいまお話のありました共済限度額の引き上げ、そういう問題について、この前、中小漁業振興特別措置法の一般論のところでも、漁獲高の把握等について、業種別のパーセンテージを即答できなかったわけですね。あれは、どの先生だったか、櫻井議員の質問に対して、すぐできなかった。そこで、つかみ方として、現在の経済の実態の把握に、経済界全般における指数をはじき、それをただ単に漁業へ持ってきて掛け算するといったようなそういう考え方ではいけないと思います。たとえば年率八・五%魚価が上がっておるというような把握のしかたにおいても、限度額の割合を考える場合でも、最近、沿岸漁場の荒廃等によって、漁獲量が非常に減少しておる。そこで、漁民が、鮮度保持とか非常なくふうをして、とれた魚を少しでも高く売れるようにという涙ぐましい努力をしておる。そのことのために協同組合では冷蔵庫を建てたりいろんなくふうをしているために、魚価が上がるけれども、それなりの投資が別に行なわれておるということを常に念頭においてそういう問題と取り組んでもらいたいと、こう思います。ただ単に通念的な指数を持って掛け算をしてやるということではなしに、そういうふうにお願いしたいと思います。  それから漁災制度の本格実施後の加入支払い状況等の議論について、赤字の問題でいろいろ両先生から政府に熱心な要望をされたわけでございます。これに対して、当局の説明としては、共済基金とか、これはまあ支払いにことかかないとか、長期的な展望とか、分析の上に立って方法を将来考える、こういう御説明で、あるいは理論的にそうかもしれませんけれども、この漁業災害補償制度を審議するときに、業者は、保険事業を即時に同時に実行してもらいたいという強い熱望、運動を続けたわけです。ところが、当時、政府としては、まだ準備ができておらないというようなこと等もあって、今日に延びた。そこで、一部技術的な問題が含まれるということもよくわかるのですけれども、その間ノリ等の異常災害として見られる状態の実態もあるわけで、ですから、そこに出たそれだけの共済団体の負担というものについては、やはり政府としても一半の責任を感じてもらって、できるだけこの機会に強力なこの団体に対する赤字解消の助成措置をとってもらいたい。時間がありませんから、要望いたします。  それから先ほど鶴園議員からも非常に強い御発言がありましたが、漁業災害補償というもの、特に漁獲共済の場合、二十トン未満の最もたくさん入らなければならないものが、二%というような、まことに共済の体をなさない姿で現在おる。そこで、保険制度が設けられ、異常の場合のそれに対する安心感といいますか、それが漁民の間にあるし、あるいは給付内容その他も改善されるから、今後大いに漁民も加入するだろうということも考えられるのですけれども、私はこれまたいろんな別なことから考えまして、この前、中小漁業振興措置法の場合の議論の中に、川村先生だったか、漁獲実態を階層別に分けたときに、二十トン未満の沿岸に属するものが九六%あるということで、当委員会としても附帯決議として指定の業種をできるだけ早急にふやしなさいというあれをやりましたね。そういう九六%のものが三十何%の漁獲を得て、それの分配問題等についてもいろいろ議論があったのですけれども、その最も入らなければならないものが二%だということでは、共済の体をなさない。そういう点から考えまして、技術的にあるいは非常にむずかしい点があろうかと思うのですけれども、まあ簡単にことばを拾っていえば、入らなければ損だ、あるいは、ほっておいても入ってくるというような姿にまで手厚い国の手を伸ばして、さらにもう一歩進めて、二十トン未満の沿岸の部分だけでも義務加入といったようなところまで推し広げていくというそういう考え方がかりにあった場合に、いま皆さんが協同組合の合併を促進して適正規模の経済行為を行なわせようということを強く考えておられるわけで、まことにけっこうなんですが、その場合、こういうことをこの階層に広く推し広めていくことが、沿岸協同組合の中心をなす漁民の集まりですから、そうすると、この制度実施するために、漁獲量の把握ということ、それが今度は共販体制に強く結びついているということ、同時に、これが信用事業との相互的な関連をもって、協同組合が自然と強化されていくという方向にも結びついてくるわけですから、私は、何か一つそういう体をなすべきものであるという部分でもとらまえて、一日も早くそういう姿に持っていくことなどが共済事業の基礎を固めるのに一番早い手じゃないか、こういうふうに思うのです。漁船保険の場合、義務加入というものが実施されて、そのときが基礎固めの出発点であります。もちろん、それには、制度発足以来、まるで簡易保険の勧誘員のように、関係者が沿岸をずっと歩いて、毎日のように漁民を相手に説いて回って、そうして、途中、制度改正等が行なわれて今日の制度を得ておるわけです。これには長い歴史がありました。そういうようなこと等を考え合わせますと、私はそういうような考え方でこの問題と将来取り組んでやってもらいたいと思いますが、長官のお考えをお聞きします。
  152. 久宗高

    政府委員久宗高君) 全く同感でございまして、御指摘のように、沿岸漁業の中核になります一番基礎のところが、加入が、制度の不備のためにできていないという事情でございますので、ただいま先生がお述べになりましたように、この層の経営を確立いたしますことが、同時に他の諸制度の基礎にもなって、相互に関連して沿岸漁業の中心をなしていると思いますので、さような観点に立ちまして、また、さような展望をもって事に当たりたいと考えております。
  153. 和田鶴一

    ○和田鶴一君 先ほど、両先生の質問に対する御答弁の中で、企業的な考え方とか、保険需要とかといったような説明がありました。ところが、合併も促進しなければならないというように、やはり旧態依然たる地域があって、沿岸の漁民は、企業的なものの考え方というのは、陸上のそれほど進んではいないのです。自分たち、きょうはこれだけ魚をとってきた、それに対する自分たちの労働賃がどれだけという計算なんかしていない。それから油の消費量だって、計算していませんよ。漁船、機械のその投資に対する償却なんていうような計算はしていない。それを一切含めて、きょうとってきたサバが一匹幾らについているというような計算をしながら市場へ持っていって共販する業種なんていうのは、あまりないですよ。だから、そこまでやはり指導しなければいけない。国なり県なり組合なりのその系統を通じて指導しなければいけないのだけれども、ただ自然発生的にそういうようなことでいつかなるであろうということでは、なかなかこれは進まないと思うので、いいことならば、私はある程度積極的に促進する方法を考えてもらったらいいと思います。その点をひとつよろしくお願いいたしたいと思います。  それから先ほどちょっと私触れました、今回政府共済事業実施するにあたりまして、単独の特別会計というものを設けないで、漁船再保険特別会計に組み合わせてやられるということでつないでおるわけですね。それで、予算のときの折衝の過程や、あるいは法律の準備のためにいろいろ関係当局とも話し合ってこうなったと思うんですけれども、そのいきさつと考え方を簡単にひとつ御説明いただきたいと思います。
  154. 久宗高

    政府委員久宗高君) 特別会計でございますので、本来、当然独立でよろしいと思うわけでございますが、御承知のとおり、公団、事業団の問題ないしは特別会計の乱立をできるだけ避けたいという政府の基本的な方針もございます。たまたま、本制度におきましては、金額的にも一億に満たないといったような形になりますので、独立の特別会計を設置するのはいかがなものかという政府部内でのお話もございました。一応漁船保険法律改正いたしまして、そこに「及」ということで共済制度の特別会計をそこに設けた。ただ、これと関連いたしまして、両特別会計の混淆が行なわれるという両関係者の御心配がございます。さようなようなことは特別会計の性質上当然ないわけでございますので、経理の区分を明確にいたしまして、さような御懸念のないことを国会においても言明いたしまして処理をいたしたいと考えておるわけでございます。
  155. 和田鶴一

    ○和田鶴一君 ただいま御説明をいただきましたが、特に漁船保険関係の方々の心配するのは、共済保険勘定で損失が出た場合、ごっちゃにして漁船保険の特別会計で補てんされるのではないかというような心配があるんです。これに対して、はっきりと長官の考え方を伺っておきたい。
  156. 久宗高

    政府委員久宗高君) ただいま申し上げましたように、両特別会計におきます経理の区分は明確にいたしておりますので、会計が混淆いたすようなことは絶対にないのでございます。
  157. 和田鶴一

    ○和田鶴一君 もう一回繰り返し、漁災のあれで連合会としては一番赤字を背負って歩くという問題ね、あれが将来にわたって私はもう大きなガンだと思います。それで、漁災法の審議のときにも、国会関係で、漁災法の第百九十五条に三項をつけ加えて、国の助成として「前二項の規定による補助のほか、漁業共済団体が行なう事業の円滑な運営に支障を生じないよう適切な措置を講ずることに努めなければならない。」という第三項目を加えてまで、これは政府案になかったものを国会でつけ加えたわけですね。だから、そういういきさつ等もありますので、この点は十分考えていただきたいと思います。  それでは、合併の問題で伺います。  合併のねらいは、「適正な事業経営を行なうことができる漁業協同組合を広範に育成」するということが目的である。そうすると、「適正な」というその考え方はいろいろございましょうが、たとえば、先ほどの御質問に対して、組合の役職員の人数は大体六人ぐらいだとか、あるいは組合員の人数、いろいろそういうふうにあると思いますが、これは経済行為を行なうのですから、水協法の第二章の第十一条の一から十二まで協同組合が行なう事業についての規定がありますけれども、そういうようなものをその地域の状態に応じて行なっていくわけですが、適正規模の把握のしかたとして、出資金の規模、組合員の数、あるいはまた、別な面から考えて、行政上考えて、一市町村一組合、たとえば特に漁業の場合には、公共施設である漁港の管理者が市町村長であるというようなこと、また、構造改善事業等を推進する場合に市町村長を通じてやってきておるというようなことで、一市町村一組合というような目標の立て方もいろいろあると思います。だから、そういう総合的なあれがあると思いますけれども、国は特にまたこの法律を出して、大体、資本金は幾ら、組合員の数はどれだけ、地域はどれくらいと、そういうふうなことについてどの程度のものを考えておるか。
  158. 池田俊也

    説明員池田俊也君) 先ほどもお答えしたわけでございますが、一応私どものほうで考えております目安でございますが、いまもお話がございました常勤の役職員の数、これは大体六名程度、それから販売事業で申しますと、八千万円を一応目標にしたらどうだろうかということでございますが、実は、組合員の数あるいは出資額等につきましては、いま申し上げたのと同じような意味の目安は立っておらないのでございます。それはその地域によりまして非常に違うんじゃなかろうかということと、それからやはり事業の種類によりまして、漁協の場合は、おそらく私どもの考えでは、販売事業が一応中心になりまして、それから信用事業あるいは購買事業といろいろあるわけでございますが、やはり何と申しましても中心になるのは漁協共販というのが中心的な漁協の任務ではないだろうかというように考えますので、そういうような目安を考えておるわけでございますが、その他の事業をどの程度までやるかということは、これはいまの段階ではっきりした実は目標は立てにくかったので、その辺については、私どものほうでは、いまのところではそれぞれの地域に応じて県等で指導してもらいたい、こういう感じでございます。  ただ、地域の点について申し上げますと、これはやはり理想といたしましては新市町村の区域ができるならば一番いいのではなかろうか。これは行政庁との連絡その他の利点がございますので、やはりできるならばそういうような地域が最も好ましいだろうという感じは持っております。
  159. 和田鶴一

    ○和田鶴一君 これもお二人から強い要望がありましたんですが、第五条に国の合併等の助成のことが書いてありまして、「適正な事業経営を行なうことができるように施設の統合整備を図るに当たって、これに必要な施設を改良し造成し又は取得するのに要する経費を都道府県が補助するときにおけるその補助に要する経費」というように、非常に大きなものが期待できるような文章が書いてあるんですがね。そうして、どういう考えを政令によって規定するのかということを参考に聞かしてもらいたいということで見込みの事項を書いていただいて、見ると、先ほどから議論になるように、「国の補助の額は、当該整備費の三分の一に相当する額」というならまだ楽しみがあるんですが、その次に、「又はその合併により合併した組合の数を十万円に乗じて得た額のいずれか低い額」と、こういうんですから、これはもう話にならぬですな。大きなことを法律で書いておいて、そうして政令にまかしておいて、それで政令で書くことはどうかといったら、皆さん方が大蔵省とこちょこちょと相談して、それできまっちゃうんだから。そうすると、法律を審議する場合の国会の非常に熱心な意図なんというものは、みな政令にまかせちゃうもんだから、何というのか、反映しないんだよ、これは。そうして、非常に熱心な合併を意図しながら、肝心なところでたった十万円ぐらいずつしかもらえないのなら、あわててすることないわというようなかっこうになっちゃう。やはり、合併のうまみというか、小さいところほどそういうものによって助成してやる。これはまあ単純なあれですけれども、そういうことも大事ですよ。ただ農協の関係は十万円だったから右へならえだと、こういうことでは、漁業の特異性というものについて当局に対して説明するだけの皆さん方には数的な準備ができていないとぼくは言いたいわけだ。ただ右へならえ、農林省だから農協も漁協も林業組合も一緒だ、そういうことでは、措置するのにはあまりにも画一的で積極性がない。法律までつくってということにはならぬと思う。この点は、どうもきまっちまってどうにもならぬような顔をしているから、何ぼ言ったってしようがないと思うのだけれどもね。何か別な方法ででもそういうことをひとつ考えてもらいたいと思います。  それからこれは希望になりますが、中小漁業振興特別措置法の場合でも、一般論で皆さんから非常に熱心に議論された中に、沿岸漁業の振興をはかるために漁港の整備というものを積極的に取り組んでいかなければならぬ。その場合に、ただいまやっている第三次漁港整備計画を最近改めたらどうだという団体の意見等もあるので、それについて長官は考慮したいということでございますが、私は、この新しい整備計画を考えていくときに、組合の合併というようなことなんかもあわせて考えて、中核漁港ですね、合併した幾つかの組合——必ずその組合は船だまりとか漁港を持っているわけですよ。それで、そういう連中が、半島や山、そんなものを間にはさみましてつながっているわけですね。それでは、小さな船だまりはもう要らないかというと、絶対にこれは要りますよ。漁業者が命の次に大事なのは、漁船です。これは何といったって資本なんです。それで、漁船の管理ということについては命がけなんですね。ちょっと風が吹くというと、すぐともづなをとったり、いかりをやったりということですから、すぐ家から飛び出していったら手の届くところに船を置くというのが漁業者の熱烈なあれなんです。だから、ネコのひたいのように小さな船だまりでもつくってやらなければならない。これに対しては、局部改良とかいろいろ手当てもあるわけですけれども、ただ、そういうことをやりながら、中核漁港なんというものをまた合併なんか考える場合考える。幸いに、ガソリン免税道路ですか、農免道路というようなことばで言われておりますけれども、そういう漁港と漁港をつなぐ道路の整備にも新しい国の助成措置ができているわけですから、そういう第四次というか、新しい漁港整備計画の中に組合の合併を想定したそういう中核漁港等の姿をかね添えてやってもらいたいと思うわけですが、長官のお考えをお伺いしたいと思います。
  160. 久宗高

    政府委員久宗高君) 先日も漁港の問題が出ました場合にある程度お答えしたわけでございますけれども、私ども全く同様に考えておりまして、第三次計画を次に改定いたします場合には、第四次計画の中では、いまお話の出ましたような問題をできるだけ織り込みまして、総合的な施策を打ち出したいと考えているような次第でございます。
  161. 和田鶴一

    ○和田鶴一君 この合併を推進するために、そういう気運の強いところを漁港整備の序列を優先的に取り上げていくとか、あるいはまた、構造改善事業実施していく場合に、そういう気運の強いところに割り当てをしてやるとか、いろいろな方法を講じて苦労しながら促進をはかっているようなところもあるようです。まあむちゃくちゃに無理をして漁民のいやがるものを押しつけるというわけにはまいりませんけれども、そうでなくて、少してこ入れをすれば合併が著しく促進されるというようなものについては、いろいろなワクという問題もあろうと思いますけれども、そこらあたりは、長官、適当に現地の状態等をしんしゃくしながら、やはり、組合の合併、経済行為の強力にできるということは、何といっても漁民の生活を豊かにするもとですから、そういうことを考えていただきたいと思うと同時に、先ほど漁災の問題でも申し上げましたが、もちろん農業の場合でもそうですが、農業の場合は、組合経営というものが漁業の場合とちょっと違うわけですよね。農業の場合は、たんぼでも畑でも山でもそれぞれみな自分のものですよ。だから、一本の大根が盗まれても、法の保護が受けられる。ところが、漁業の場合は、そうでなくて、何のたれべえの魚というのは一匹もいないわけだ。それが組合に集まってきたら、「やあ兄弟」と言ってやっているのだが、船に乗って沖に出ると、漁場においては敵味方ですよ、これが。しかも、それが、規模の大小や、あるいは漁法の別、そういうあらゆるいろいろな角度でもって総合的に入り乱れてやっている。だから、その瞬間には、憎しみもあるでしょうし、いろいろな不平不満もあるだろうが、一たん港に帰ってきたら、「やあ兄弟、よかったな」ということで組合経営をやっているのだから、漁師ぐらいあっさりしたものはないと、私はこう思うわけだ。しかも、沿岸、半島、地域が違えば感情も違うのに、幾つもの組合が集まって連合会というものを組織しちゃって、そうして仲よくやっている。これなんか、まことに漁業者の、何というか、非常にいいところだと思うんですよ。そういうことをよく考えてもらって、それだけに、反面、しんぼうしなければならぬという面も大いにあるわけです。これは自分のでないものをとりに行くという非常に宿命的なあれに置かれているわけですからね。  それと、もう一つ、この点はえらいよけいなことかもしれませんけれども、古い漁業からいえば、やはりいまだに地びきもあれば、いろいろあります。そういうものから、南極の捕鯨なんというのは、これはもう漁業というのじゃなくて、工業ですよね。行っている船自体が大きな工場ですわ。だから、そういうきわめて原始的な漁業から、最も近代化された工業に類するいわゆる漁業まで、これがもう一平面の上で行なわれておる、行政上措置されておるという、それだけに水産当局の苦労もなみなみではないと思いますけれども、それだけにまた、漁業者そのものが行き届かざるところにあえて忍んでおるという点もこれは大いにあるわけですわ。だから、絶えずこういう点をも考慮に入れていただいて、すべては総合的に実態そのものは入り組んでおるわけですから、そういう点の問題解明には御苦労をなさるのでありますけれども漁業者自体もそういう宿命的な非常に恵まれざる環境において毎日努力をしておるということでありますので、ほかの類似的な行政はこうだから右へならえといったようなことではなしに、関係当局を説得するだけの資料準備を整えて、大いに漁業の振興のためにがんばっていただきたいと思います。最後に、そういうことについて長官から一言……。
  162. 久宗高

    政府委員久宗高君) 御鞭撻いただきまして、まことにありがとうございました。非常に錯雑した行政でございますので、行き届かぬ面もあるわけでございますが、今回、宿題になっておりました四つほどの法案を手がけまして、御指摘を受けましたような一連の難点がまだたくさん残っておるわけでございますが、四法案が通ります時期におきまして、私どもも新たな決意で沿岸漁業の振興その他これを基礎にいたしました一連の制度につきまして促進をはかってまいりたいと考えておる次第でございます。
  163. 和田鶴一

    ○和田鶴一君 実は、日曜日に、いなかでちょっと会合がありまして、そこへある偉い人も一緒に行っていただいて話をされたんです。そのときにお話の趣旨として、明治百年は明治二百年を考える出発点でなければならぬということをいろいろお話がありました。東京に人間が集まってくる、これに必要な水をどこから運ばねばならないか。東京にいろいろな企業が集中してくる、これに対する工業用水をどう確保しなければならぬかという時代でなくて、人間を水のあるところへ、いい環境のところへ運ぶ計画をこれから考えなければならぬという、まことに示唆に富んだ話をされたんですけれども、私は、いま申し上げましたような観点に立って、非常に問題の多い漁業でございまして、それなりに水産庁の皆さんもお骨折りだと思うんですが、今度非常に御努力いただいて、四つも法律を出して、この国会で熱心な審議を繰り返ししているわけでありますけれども先ほど来申し上げましたように、まことに恵まれぬ状態で魚をとってきて、そうしてこれが生産費が幾らについているから何ぼで売らなければならぬというのでなくて、とってきたら、共販体制で、相手に値段をつけてもらう。あなたまかせですね。そういうきわめて原始的な面も兼ね備えた状態でありますので、もちろん漁業者自身の自覚にまって大いに発奮改革をしなければならぬ点もありますけれども、それなりに国の手厚い援助というものをいましばらくやっていただきたい。そのことのためには、漁災制度等の保険事業実施がややおそきに失したかのごとき感がある。この際やっていただいて非常にけっこうなんですが、先ほど来言いましたように、もう一歩助成措置をして、団体が楽に行なえて、そうして共済の姿が体のいい形に一日も早くなるような努力をお願いいたしたいと思います。
  164. 野知浩之

    委員長野知浩之君) 本日の質疑はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。    午後五時二十二分散会      —————・—————