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政府委員(
大口駿一君)
食糧管理法の第四条ノ二の第二項で「麦ノ再
生産ヲ
確保スルコトヲ旨トシテ」という
規定があるわけでございますが、このことの
意味を私
どもは次のように理解をいたしておるのでございます。「再
生産ヲ
確保スルコトヲ旨トシテ」ということは、やはり
政府の
買い入れ価格によって麦の
生産のために投下された費用が回収をされて、さらに麦をつくろうとする場合にその
生産に支障を来たさないようにということばの
意味だろうということはもちろんそうでございますが、そういう額を念頭に置いて
政府の
買い入れ価格を定めるべきであるというふうにこの
規定は
規定されておると思うのでございます。したがいまして、これは、分量で、たとえば昨年の麦と
数量において同じ
数量の麦を本年も
確保しなければならないというふうな
意味ではないと思っております。それが第一点でございます。
しかし、そのように考えました場合の
生産費というのは一体どういうものをさすかということが次に問題になろうかと思います。そこで、これは、いろいろな
農産物の
価格を
規定をいたしまする
法律なり
制度でやはり再
生産の
確保というものを旨としてきめるという
考え方が採用されておるわけでございますが、この再
生産確保を旨としてという
意味は同様でございますけれ
ども、その際に念頭に置くべき
生産費というものの
考え方は、個々の
農産物ごとに、その
農産物の
生産事情であるとか、あるいはその
農産物を取り巻く経済
事情によっていろいろ
考え方が違うのではないかというふうに考えております。たとえて申しまするならば、現在の
食糧管理法に基づいて全面的に
政府が統制をして買い入れておるという
制度になっております米の場合、これは
政府以外に売る自由を持たないことになっておりまするので、これは
生産費及び所得補償方式という
算定方式で
価格を
決定をいたしておりまするので、これはほとんど大部分の米作
農家の
生産費が結果的に
カバーされておるという実態になっております。しかしながら、麦は、
昭和二十七年以来いわゆる間接統制方式ということになっておりまするし、米とはその点が一線を画する
制度上の差があるというふうに私
ども理解をしております。
それからまた、
先ほど生産事情並びに経済
事情についての御
質問の際に
お答えをいたしたところでございますが、現在の
食糧管理制度のもとにおける国内麦の
買い入れ価格と
売り渡し価格というものが大きな
逆ざや関係になっているということから、非常に大きな財政負担をしておるわけでございますが、この財政負担云々のことを申し上げるわけではございませんけれ
ども、しかし、このように大きな
逆ざや関係になっておって、さらに
生産費というものを考えて麦の
価格というものを高くするということは、ますます麦の管理の実態からして考えるならば非常に不自然なかっこうになるのではないかということが一つと、それから
外国と
日本との
生産性の差ということを申し上げましたが、
価格は
現実に
外国と
日本は
日本が六割以上も高いというのが実態でございます。しかしながら、
生産性においては非常な差がある。こういうようなところから麦が逐年減っておるというのを何らかの
対策を講じてこれを必要とする麦の
確保をはからなければならないということは当然でございますけれ
ども、これを
価格だけで
生産を刺激をするということについてはいろいろな問題があろうと思いまするし、また、
現実に現在の
日本の麦の
生産事情からして、
価格を若干変えたといたしましても、それが直ちに
生産刺激になるという形にはなっておらないのではないかというふうにも考えるのでございます。
そのようなことを彼此勘案いたしました結果、麦につきましては、近年、
カバーすべき
生産費というものは、麦のような
農産物の場合においては、主産地におい
商品生産を主体とするような
麦作農家の
生産費を
カバーすることをもって足りるのだと麦いう
考え方のもとに
パリティー方式をもってはじいて今日に至っているのでございまして、
先ほど大臣が
お答えになりましたのも、いま私がるる申し上げましたような
配慮を加えた後に到達をした結論ということで申されたものと理解しております。