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1967-06-27 第55回国会 参議院 農林水産委員会 第19号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十二年六月二十七日(火曜日)    午前十時十八分開会     —————————————   委員の異動  六月二十七日     辞任        補欠選任      村田 秀三君     横川 正市君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         野知 浩之君     理 事                 任田 新治君                 山崎  斉君                 川村 清一君                 中村 波男君     委 員                 青田源太郎君                 櫻井 志郎君                 田村 賢作君                 温水 三郎君                 八木 一郎君                 和田 鶴一君                 武内 五郎君                 鶴園 哲夫君                 達田 龍彦君                 村田 秀三君                 矢山 有作君                 北條 雋八君    国務大臣        農 林 大 臣  倉石 忠雄君    政府委員        農林政務次官   久保 勘一君        農林省蚕糸局長  石田  朗君        農林省園芸局長  八塚 陽介君    事務局側        常任委員会専門        員        宮出 秀雄君    参考人        中央蚕糸協会会        長        山添 利作君        日本繊維産業労        働組合連合会中        央執行委員長   小口 賢三君        坪田織物株式会        社社長      坪田由太郎君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○日本蚕糸事業団法の一部を改正する法律案(内  閣提出、衆議院送付) ○農林水産政策に関する調査  (寒波によるかんきつ類の被害に関する件)     —————————————
  2. 野知浩之

    委員長野知浩之君) ただいまから農林水産委員会を開会いたします。  日本蚕糸事業団法の一部を改正する法律案議題といたします。  本日は、参考人として、中央蚕糸協会会長山添利作君、日本繊維産業労働組合連合会中央執行委員長小口賢三君、坪田織物株式会社社長坪田由太郎君の三人に御出席をいただいております。  この際、参考人の方に一言ごあいさつ申し上げます。  本日は、御多忙中のところ、本委員会に御出席をいただきまして、厚く御礼申し上げます。参考人におかれましては、忌憚のない御意見をお述べくださいますよう、お願い申し上げます。  なお、議事順序について申し上げます。初めに、山添参考人小口参考人坪田参考人の順でそれぞれ十分程度意見をお述べいただき、次いで、委員から御質疑を申し上げるという順序議事を進めてまいります。  それでは、まず、山添参考人から御意見をお述べ願います。
  3. 山添利作

    参考人山添利作君) ただいま御紹介をいただきました山添でございます。  私どもは、最近、中国蚕糸業視察して参りましたにつきましては、その事柄をお話しするようにという御連絡でございました。したがって、その点につきまして簡単に申し上げて、御参考に供したいと思います。  私ども蚕糸代表団として中国を訪問いたしましたわけでございまするが、その中には、養蚕蚕種並びに製糸代表を含めまして、一行六人でございます。四月の二十九日に中国に入りまして、五月の十三日に出てまいりました。都合二週間でございます。参りましたところは、広東から入りまして、北京に行き、南京に行き、それから鎮江、無錫、上海、杭州と回りまして、また広東に出まして帰ってきたわけでございます。その間、蚕糸業に関しまして直接話したり、また、見る機会がございましたのは、北京における私ども受け入れ主体向こう農学会というのでございまするが、その農学会、並びにその席に紡織工程学会会長の陳という人が出ておりましたが、その歓迎会の席上における懇談会、並びに北京におきまして農学会のほうで養蚕方面を担当しておりまする主任者を交えましての懇談会、それから上海におきましては生糸を含みまする繊維品全体の輸出をやっておりまする絲綱公司上海の分会、この三つの懇談会、それから現地視察といたしましては、無錫地区における人民公社並びに生産隊、この現地視察でございました。そういう二週間の間、まことに日程は多忙でございましたが、直接の蚕糸関係といたしましては、ただいま申し述べました程度でございまして、かつ、向こうの人の話というのは、御承知のように統計は発表になりませんし、それからまた、話します人も、自分の担任しておる事柄だけを話すということで、全般的な話をある人がやる、日本におけるたとえば蚕糸局長のような人がいまして全体政策を話すと、こういうことではございません。したがいまして、私どもが得ました知識も、きわめて断片的かつ印象的でございまするが、そういう意味におきましてお聞き取りをお願いいたしたいと思います。  まず、増産状況でございまするが、これは北京で聞きます話によりますると、桑園をつくりますのにつきまして、すでに食糧、綿花、お茶、その他既耕地には、新しく桑園はつくらない。しかしながら、桑園を奨励は大いにいたしておるのでありまして、それはもっぱらいままで利用されていない土地、こういうことでございました。たとえてみますれば、程という養蚕主任者、これは五十かっこうの女の方でございまするが、その人の申しますのに、たとえば山西省におきましては、いままで桑がほんのわずかきりなかったのが、畦畔に桑を植えたというような話、これは群馬県における風よけの桑園といいまするか、周囲に桑を植えて防風にも役立てる、こういうような意味合いがあるかと思います。そういう例でありまするとか、あるいは漸江省、ここは向こうにおける養蚕中心地でありまするが、そこにおいては、河川敷の石を大量に運び出す、十五万立米運び出して、そこに桑園をつくったというような話でありまして、そのほか、畦畔とか沿線とか、こういうあき地を利用いたしまして、桑園増植養蚕振興につとめておる、こういう話でございました。その山西省桑園をつくるとかあるいは漸江省の川原を利用するとかいうのは、まことに困難なことを、ともかく、ああいう国でございまするから、人の労力ということは問題がございませんので、非常な努力を重ねてそういうことをやっておるという話を強調しておりました。そういうところから見ましても、副業たる蚕糸業の地位は変わらないにいたしましても、未利用資源を利用して増産をするということは非常につとめておるようでございました。  なお、また、これは鎮江蚕業試験場等で聞いた話でございまするが、養蚕地域相当広がっております。もとは北支のほうでは養蚕はなかったわけでございまするが、現在はその方面でも蚕業試験場のブランチを置きまして技術指導につとめておる。そういうふうに広く養蚕が広がりつつある。もっとも、それは、非常に薄いとは思いまするけれども、ともかく広く行なわれつつあると、こういう状況のようでございました。  それから無錫で聞きました話でございまするが、無錫地区、これも向こうにおける養蚕中心地でございまするが、無錫地区と申しまするのは、そこの農学会会長説明をいたしまするのに、人口六十二万ということでございます。そうして、そのうちの農家に属する者は、といいますのは、人民公社の社員でございまするが、これは無錫地区におきましては全人口の約四分の一でございます。したがって、これは中国においても相当開けた土地と、こういうふうに考えられるのでございます。無錫地区における耕地面積は、十二万畝(ムー)ということでございまするから、日本でいいますれば七千町歩であります。そのうち、桑園は約一割、九千畝ということでございます。そこでの繭の産額は四十一万八千七百キロと、こういうことでございまして、これを畝当たりに直しますと、四十五キロ、日本流に反当たりに換算いたしますると、一反当たり十七貫と、こういう数字が出るわけでございます。  この現地における話、並びに空気、それから話す人の意気込み等から考えてみますると、農業生産全般が年々非常に進んでおるようでございまして、本年は昨年に比べて一五%増だと、こういうことでございました。解放前すなわち十七年前に比較してみますると、二・二五倍と、こういうことに相なっておるようでございます。これは、ひとり繭だけではございません。米麦においても、ひとしくさように増産が進んでおると、こういうふうな状況でございました。  それでは、蚕がこのように進んでおる、あるいは米などもそういうふうでございまするが、その理由は何かということにつきましては、必ずしも的確な、農薬のせいであるとか、肥料のせいであるとかいうことは、まあはっきりいたしません。日本の戦後の増産ということでありますれば、まず第一に肥料、それから農薬と、こういうことがあげられるわけでございまするが、中国におきましては、一般に水利が非常に進んだとかいうようなことは顕著でございまするが、その他の点において、どういう技術的理由あるいは物的理由で進んだかということは、私どもはっきりいたさなかったのでございますが、ともかくやり方が非常に丁寧である、こういうことでございます。桑園にいたしましても、中耕を三回やるとか、あるいは施肥を四回やるとか、あるいは除草を五回やるとかいうようなことで、まことに丁寧、畑には草は全くはえておりません。施肥と申しましても、金肥はまあ薬の程度、大体は沼のどろをあげてそれをまくとか、あるいは豚の厩肥を施すとか、こういうことでございまして、もっぱら丁寧にやるということでございます。  そこで、そういうふうに丁寧にやるのについては、それでは非常に労働力を費やすのかということになりますると、何しろ、日本流考えますると、一戸当たり耕地面積は三反未満でございまするから、これはいくら丁寧にやりましても、別に労力がどうという問題はないわけでありまして、たいへんまじめに多くの労力をもってやっておりまするがゆえにこのように生産があがっているのではなかろうか、かように考えておる次第でありまして、おそらく、まあ農業生産のことでございまするから、土地生産力という点から見まして、そういつまでも急速な増産ができるとも思いませんけれども、最近数年のところ、また近い将来におきましては、相当のテンポで増産が達成されるのではなかろうかと、かように推測をいたしております。  そういうふうに増産は進んでおりまするが、それでは、技術のレベルといいまするか、全体の水準のごときものはどうであるかということになりますると、同行いたしました養蚕蚕種製糸専門家の御意見は、まあ日本状況から比較してみれば三十年かそれ以上も昔の状態とひとしいであろう、こういうことでありました。それだけおくれているということばを使えば、そういうふうにも言えまするが、まあそういうことであろうと思います。繭等を見ましても、私もあまり専門的な知識はないのでございまするが、日本では見られないような皮の薄いぶかぶかした繭でありまして、これを製糸工場で選繭いたしまする場合には三種類に分けておりまするが、全くのくず繭が若干、そのほかのものも二つに分ける、こういうような状況でございまして、繭の品質はむろん上等ではない。糸目にいたしますれば十三匁そこそこでありまして、先ほど、反当十七貫と、これはむろん無錫地区で最も進んだところと思いまするが、これを日本流糸目考えて、糸目と比較して見ますると、日本流考えでは反当十三貫くらい繭がとれるんだと、糸にしましてですね、まあそういう見当であろうと思います。これは、結局、品種の改良が進んでいないと、こういうことも理由でありましょう。また、養蚕形態そのものも、はなはだ丁寧ではあるけれども、しかし、昔流のことであると、こういうような理由によるものかと思うのでありまするが、蚕の品種、あるいはできました繭等から見まする状況は、そういう程度でありまして、進歩はこれからというところでございました。  無錫で同じく第一製糸場という工場を見ましたが、それは日本でいう多条機、戦争前の多条機を使っておるのでございまするが、人の多いことは全く驚くべきといいますか、非常に人がたくさんでございました。かせをひねくり回してこう透かして見ておる人が十人ぐらいおるんですね。日本でああいうことをやっておるのは見たことはないんですね。そういう意味で、非常に丁寧である。人手ということは全く問題がないからでもございまするが、能率ということは重んずるに値しないと、まあこういうことであろうと思いまするが、そういう状況でございました。  生産隊に参りまして、いろいろ話を聞く、あるいは人民公社で話を聞くと、これはまことにまじめかつ真摯な態度でありました。ああいう態度、ああいう精神、ああいうやり方というものがやはり増産の原動力になっておるんだと、その理由は、いわゆる科学的なものではないと、まあこういうような印象を受けました次第でございます。  そういうことで、だんだん伸びてくると思いまするが、さて、それでは、一体、輸出という問題とどういうことになるか。これは、向こうの人は全般的な説明はいたしませんけれども、私どもの見るところによりますると、増産をしましても、それがそのままに輸出につながるというような様子ではなかったように思います。現在、国内に使いまする生糸は、主として辺境民族、蒙古とか——内蒙古ですね、それから新疆、あの辺に供給をいたしておるようでございまして、国内では一般の人民には使わしていない。また、所得状況から見まして、絹を使うということはできないと思います。また、気風からいたしましても、現在は文化大革命で、みな一様の服装でありまするから、絹なぞ恥ずかしくてとても着られたものじゃない、こういうことでございます。しかし、たとえば、無数に立っておる赤旗でありまするとか、あるいは至るところにございまする毛沢東の写真なぞは大体絹を使っておると、こういうような状況でございまして、国内における消費というものも相当——少なくとも、パブリックといいましょうか、その意味における需要もあるわけでございます。まあ増産ということはされておりまするが、それが直接輸出につながるというようなふうには受け取れなかったというのが感じでございます。  御承知のように、ヨーロッパに対する生糸は、日本は完全に敗退をいたしまして、現在は中共糸でございます。これは安定して向こう供給をしたいというのが中国考えのようでありまして、日本に対してはどうかということにつきましては、いわゆる政経は分離でないと、政経一体であると、友好な国に流すんだと、こういうような口ぶりでありまして、数量的にも、あるいは考えといたしましても、日本にたくさん出したいと、こういう考えはないふうでございました。そういうことで、おそらくこれから相当輸出はするでありましょうが、しかし、海外市場における意味におきましては、直接にそうひどく競合するという事態が急に起こるとは思えません。その理由の大部分は、アメリカには中国生糸が行かない、こういうところにあるのが本質だと思いまするが、そういう点もありまして、急激に海外マーケットにおいてどうこうということはないように思いました。しかしながら、そうは申しましても、また、中国はこれから当分といいますか長い間おそらく国際社会に復帰することはないであろうというふうな印象を受けましたが、そこで、販路としては、ヨーロッパアメリカというように日本中国と分かれておるわけで、この状況は続くと思いまするが、そうは申しましても、経済のことでありますから、生糸と申しましても絹製品を通じやはりグローバルな影響があるわけでございまして、だんだん将来の状況によりましてはそこに問題が生ずるといいまするか、少なくとも日本側から見ての問題の生ずるおそれといいまするか、そういうことは十分あるわけでありまして、われわれといたしましては中国との間にお互い事情を知り、お互い理解を深めていくように将来やっていかなければならぬ。そうして、だいぶん将来のことかもしれないけれども、必要があれば協定をするといいまするか、そういうような了解を具体的なことについても遂げていく必要があるように考えておるのでございます。  そういうことでございまして、日本といたしましては、現在、国内市場を主といたしまして輸出がふるわないという事情でございまするが、将来を考えてみますると、この際何らか強力なる輸出振興策、少なくとも輸出を細々ながらでも確保するという体制をとっておきまして、将来ともに両国相携えてと言うとことばがきれい過ぎるのでありまするが、競争ということばもまた当てはまらないが、ともかく輸出を確保していき、両方の国が協調できる範囲は協調していくと、こういう進め方をしなければならぬと考えておる次第であります。ただいま議題になっておりまする法案につきましては、政府からの御説明等で十分御了承のことと思いまするが、日本といたしましても、この時点におきましては、どうしても輸出を確保する対策をとって、そうして急場をしのぐといいまするか、いまの事態をしのぎつつ将来における海外マーケットを少しずつでも広げていく、そうして内外の市場を広くして蚕糸業を発展さしていくと、こういう必要を痛感いたしておる次第でございます。  簡単でございますが……。
  4. 野知浩之

    委員長野知浩之君) ありがとうございました。  次に、小口参考人にお願いいたします。
  5. 小口賢三

    参考人小口賢三君) 御指名を受けました小口でございます。  私は、製糸労働者労働条件中心とした労働状態はどのようになっておるか、それから労働組合の立場で見た蚕糸業現状及び将来についてどのように考えるか、この二点について感じておることの一端を御報告したいと思います。  お手元に資料をお届けしましたが、急いでつくりましたためにたいへん印刷もきたなくなっておりますが、数字上のことについては、説明するよりか、表でお示ししたほうが理解が得やすいと思いましたので、資料の少しきたない点は御猶予を願いたいと思います。  最初に、現在の製糸労働者賃金水準でございますが、二枚目の「六七年春闘後の賃金水準」という点を見ていただきたいと思いますが、最低賃金は五百八十円、大体熟練工と見られます十八歳三年の女子賃金が七百四十円から八百三十二円、平均賃金で見まして、女子が七百七十円から七百九十円、大体一万九千二百五十円からほぼ二万円少し欠ける水準でございます。それから男子が、これは家族手当その他を除いた基本賃金としまして三万四千円から三万六千円、従業員平均としまして二万一千五百円から二万四千円の水準になっております。  それから労働者は、現在、器械生糸国用器械玉糸その他ございますが、私どもの傘下は、主として国用生糸の一部を含める器械生糸労働者がその組織対象になっておりますが、全労働者数で二万二千人ほどでございます。  それから労働時間について見ますと、一日七時間四十五分の二交代制を採用して、週四十六時間三十分、一ヵ月所定労働時間が百八十七時間に製糸関係ではなっています。  それから退職金は、最近の改訂によりますと、二枚目の表にありますように、婦人で結婚して三年の場合がほぼ二万五千円前後、それから五年で五万円、七年で九万五千円から十万円、十年で十七万円という数字に現在なっています。  私たちは、いま現状、そのような段階になっておりますけれども蚕糸業が戦後たどりました多くの変化の歴史の中で、とりわけ製糸労働者は多くの苦労をしてまいりました。その産業賃金水準は、一つには、労働市場影響需給関係、それから二つ目は、その国がその産業に対する産業政策あるいは金融財政貿易政策、こういうようなものによってその産業自体の投資とか平均利潤率、こういうようなものがいろいろ形成され、それが企業支払い能力という形になってまいりますが、それらの影響も受けます。また、労働組合組織率による団体交渉力というようなものも大きな要素かと思うんですが、われわれ蚕糸業の場合におきますと、第一に、労働条件についてまず大きな影響をもたらすのは、農家所得農民生活水準が直接私たち労働者労働条件に大きな関係を持っております。  それからまた、生産費の中の労務費について見ましても、産業自体農産物加工であるために、相対的に戦後一貫して割り高原料仕入れをせざるを得ない条件に置かれてきました。したがって、その割り高原料のしわが労務費に対する圧迫という影響を長い間受けてまいりました。このことは、また、農産物支持価格制度、あるいは養蚕労働生産性の低さ、こういうことから政策的には農民所得政策の代替を価格で負担するというような傾向が、これはどこの国でも多いのですが、そういうものが結果的に製糸企業に多くの負担を相対的にかける結果になって、そのことがまた労務費を圧迫するという循環を繰り返してまいりました。  それからまた、価格自身農産物について見ましても、農産物の間の価格政策がばらばらであるという影響、たとえば、小麦、米、繭、畜産、これら一つずつ見てわかりますように、こういう価格政策がそれぞれの農産物についてばらばらであるというようなことが、また生糸価格あるいは生糸加工生産費、そういうものを圧迫する結果、それがやがて賃金にも影響をもたらしてまいりました。私たちは、戦前長く、製糸労働者賃金は、紡績労働者賃金とたいへんに関連を持ってまいりました。そうして、紡績労働者賃金一〇〇に対して、製糸労働者賃金はほぼ九五というような比率を多くとっておりました。ところが、表の一を見ていただけばわかりますように、私たちがほぼこのような水準が維持されましたのは、昭和二十二年から二十四年の四月、統制賃金が維持されておった時期だけでございました。二十四年の四月、為替レートがしかれ、当時複数レートで四百二十円のものが三百六十円になりましたのですが、当時、綿紡績は三百二十円レートが三百六十円になりました。この年、私たちは、二五%以上の製糸労働者が、半年の間に首を切られて職場を去っておるわけです。それから二十二年に蚕糸振興五ヵ年計画ができて、五ヵ年の設備計画がほぼ一年半で設備完了を見ましたので、その後長く設備原料とのアンバランスが続きました。国の農業政策も、米の増産、畑作の減退というようなことになって、したがって、繭が相対的に増産がなかなか伸び悩みするという時期が続きましたので、昭和二十四年から二十八年ころまでの間というものは、毎年毎年、工場閉鎖反対首切り反対というような闘争をせざるを得ませんでした。当時の労働者の気持ちは、私たち賃金をきめる場合のそろばんに、せめて繭を買うときくらいのそろばんのはじき方で私たち労働力についての値段を考えてほしいという切実な主張がありました。第一表で見ていただけばわかりますように、急速度に製糸賃金産業別労働者賃金に対しておくれをとっています。一九五〇年の段階になりましても、なお、繊維工業賃金を一〇〇として、紡績労働者賃金は一六一の割合を示しているのに対して、製糸労働者は八三・四という数字になっています。それから製造業平均に対してはすでに五一・一%という状態です。  それで、三十三年ころから順次自動繰糸機が入ってまいりまして、これによって一時私たち設備処理の問題を受けましたのですが、当時労働力不足その他の状態もだんだん出てまいりまして、この時期にはあまり多くの人員整理というものは経験しませんでしたですが、自動繰糸機が入ってまいりまして製糸労働者に与えた影響は、特に雇用面でたいへんに大きな変化をいたしました。一枚目の一九五五年の器械製糸労働者五万八千六百六十名という数字が、その後の五年間では二万九千七百五名、半分に減りました。これは、繊維産業におけるところの一つの業種について労働者の減少傾向では、最も特徴的に最も大きな変化をしています。現在では、二万二千名を割っています。  そうして、この時期に自動繰糸機が導入されまして、生産性の向上がたいへんに飛躍的に行なわれました。それは資料の四枚目にございます「製糸業の生産性向上について」という表をごらんいただきたいと思いますが、この表によりますと、その時期から多条機が自動機にかわる、同時に、繰糸工一人当たりの繰糸量が飛躍的に発展するという状態が図で明らかになっています。しかし、その時期においても、なおかつ、製糸労働者は、直ちに生産性の向上分が賃金にはね返ってくるという状態については、しばらく時間のおくれが出ました。大体、生産性の向上分は、直接的には繭代という形で養蚕農民に返っていきました。おくれて、特に昭和三十五年以降、ようやく生産性向上分の成果が賃金に返ってきました。  しかし、それは、同時に、労働者の自然減によって、企業にとってみれば、生産費は必ずしも上がらない、賃金コストは上がらないという形で、賃金値上げがかなり急速度に行なわれ、最初に申し上げましたような数字について見ますと、現在の繊維産業の婦人労働者に関する限り、大体他の繊維産業並みになっています。特に組合製糸に関する婦人労働者賃金水準は、長野が特徴的に高くなっておりますが、日額八百五十円から九百七円を示しておりますが、この数字につきましては、繊維産業の中で相対的にかなり優位な位置を占めています。私たちの努力によって、相対的には生産性の向上分のおくれをようやく昭和三十五年以降の繭春闘の戦いによってほぼ私たちに分配するような条件が生れてまいりまして、現在におきまして、一表の一九六七年四月の数字にありますように、賃金格差も相対的に紡績賃金との差も縮まり、また、繊維産業との賃金差も縮まり、製造業労働者賃金水準との差は六一・五という賃金格差になってまいりました。  それで、もちろん、これは、私たち団体交渉力、あるいは、人手不足というような労働事情の変化、これらのことも大きな関係があります。しかし、同時に、この期間中に払った製糸労働者の努力というものもたいへんなものがございました。現在、お手元に示しましたような毎月勤労統計の数字というものは、労働力の構成によって、平均年齢が違うとか、男子と女子の比率が違うとか、企業規模が違うとかというような点がございますので、必ずしも実情を正しく示しておりませんが、二枚目の「賃金水準」、及び最後の黄色い紙の資料の下段にあります数字等を見ていただければ、現状におけるところの製糸労働者労働条件、一時金、賃金等の実態が御理解いただけるかと思います。  それで、労働条件に関する今後の問題としまして私たちはなお問題がございますのは、実質賃金水準が、いまだに、戦前から比べましても、とりわけ製造業全体の水準に比べまして、繊維産業賃金水準のおくれがかなり目立っているということでございます。  それから二番目は、いまだに生産性に見合う賃金水準が得られていないということです。  それから工場給食の内容が、私たちの努力にもかかわらず、現在かなり栄養的に問題を含んでいるという点でございます。  それから今後の問題としまして、工場労働力の点で、高校卒業の労働者工場に入ってくる、また、そのような労働力を受け入れざるを得ない態勢にありますが、現在、企業は、そのような条件について必ずしも十分な用意をしておりません。また、一部中小企業においては、中高年齢の経験ある婦人労働者の雇用が目立ってきておりますが、これらにつきましても、そういう状態に合うような企業側の受け入れ条件ということについてまだ必ずしも十分でないという点を持っております。  それから次に、蚕糸業の将来の問題に関してどのように考えるかという点でございますが、これは後ほど質問のところでかなり補強したいと思いますが、要点だけ申し上げますと、最近、資本の自由化の問題が出てきましたけれども、このことは業界に何ら問題にされていない。このことは、現状日本が世界の生糸の六〇%を生産して、技術的にも機械装備の点でも世界に一位を占めてすでに長い歴史を持っているからです。それで、この間に蚕品種の改良とかいうような問題が日本の遺伝学を育て、むしろ改良という面ではたいへんに産業に大きな貢献を実はしているわけです。そのように、技術者、研究者の多くの努力が、また、養蚕農民の方々の努力、製糸労働者の努力、これらの努力が積み重ねられまして、現状日本蚕糸業は、確かに資本の自由化に対しては強いという一面を持っています。それから他の商品と違いまして、絹は、その使用価値あるいは潜在需要について少しも問題がないという点でまた特殊な状態に置かれています。にもかかわらず、現在において、蚕糸業は一体どうなるんだという点については、業界ひとしく心配しています。蚕糸局の存置の問題あるいは現在の輸出の減退の問題、企業の収支の問題、開発途上国との競争の問題、こういうような問題が非常に重なっています。そういう点で、いま、蚕糸業は、将来の問題をめぐって根本的な基本政策というものを確立しなければ、だんだんじり貧になっていく。一応、糸価は高い、つくれば売れる、金融の心配はない、何とかもうかっておる、こういう状態におりながら、産業全体の基盤というものはじわじわと侵食されて、全体的に産業自体が縮小しているというのが実情かと思うのです。そういう意味で、私は、国会におきましても、格段のその面についての掘り下げた検討をお願いしたいと思うところです。  特にこれらの問題を考える上での二、三の点を申し上げますと、何よりも、農業は、日本の経済全体の重化学工業の中で、農業自身のあり方はどうするのかということが問われています。その中で蚕糸業の位置づけというものが明確にされておりません。こういうことが、すべて、蚕糸業全体の諸問題に対してどう対処するかということと関連があるように思います。  それからまた、輸出の問題について見ましても、御承知のように、明治、大正、昭和の初期と違いまして、現在の日本経済の特に貿易収支の関係からまいりますと、農産物加工輸出については多くの問題がございます。特にコストの面におけるところの農産物支持価格制度とコストの問題、それから輸出市場におけるところのとりわけ絹の場合では、外国の合成繊維、人絹その他の競合繊維の影響を深く受けておるわけですが、これらの問題における内外の物価の問題、こういうようなものが、生糸、絹織物段階でコストの面ではたして将来吸収が可能かどうか、こういうような問題がいま問われておると思うのです。  それから国際収支全体の面から見ましても、伝統的に蚕糸業輸出産業ではございましたけれども、多いときで四、五年前に一億ドル、最近になりますと四、五千万ドルの生糸と絹織物を含めても外貨が獲得できるかどうかということが問われている現状でございます。そうなってまいりますと、貿易収支面でも、実は、生糸輸出あるいは蚕糸業自体のウエート、こういうことが問われておるわけです。  したがって、これらの三つの問題を蚕糸政策の基本としてはどうしていくかということが、国の産業の基本として問われなければならない。そうでなければ、部分的に、繭の増産はどうか、あるいは繭の価格はどうか、あるいは輸出は可能かどうかということを取り上げておっても、かなり無理な部分が幾つか重なっておるように思います。  それらの具体的なことについての意見は御質問の中で答えたいと思いますが、いずれにしましても、ここ戦後の蚕糸政策全体の傾向としては、かなり価格政策中心として問題が政策的には推移してまいりました。そのことは、一面、農産物支持価格制度の問題等との関連においてやむを得ない事情があったことも認めますが、反面、また、業界内部においてコストに対するきびしい感覚が少し麻痺していないか、そういう感じもいなめない。そういう意味で、コスト競争全体にどう対応した体質をつけるかどうか、このことについて政府は一体どういう部分を受け持ったらよいか、業界はどのようにこれに対処したらいいか、これらのことが問われなければならないと思います。  私たちは、蚕糸業の中に働き、自分たちが絹の生産をしておる、また、この業界は、長い歴史を持っておるだけに、それだけにまた伝統もあり、まとまりもあり、制度的にもかなり完備した体系を持っています。そういう意味で、私たちは、労働者として、この産業に働くことに誇りを持っておりますが、同時にまた、現状のままで推移することになりますと、将来、組合員の雇用の保障についても、引き続いて向上するであろうところの賃金水準のアップについても、かなり問題を持つという点について危惧しております。  以上で終わります。
  6. 野知浩之

    委員長野知浩之君) ありがとうございました。  次に、坪田参考人にお願いいたします。
  7. 坪田由太郎

    参考人坪田由太郎君) 私は、ただいま御紹介にあずかりました参考人の坪田でございます。多少でも御審議のお役に立てば幸いと存じまして、輸出絹織物製造業者の参考意見として一言申し上げてみたいと思います。  このたび、政府農林省は、われわれ蚕糸、絹関係業界一致の建議要請にこたえて、必要な予算十億円と、日本蚕糸事業団法の一部改正法律案を国会に提出せられ、私ども参考意見を御聴取いただけることをまず感謝申し上げる次第でございます。  今回の政府政策のねらいは、一言で申せば、絹の輸出新体制を確立して、日本蚕糸事業団がその業務として輸出生糸を一定価格で一定期間、一定数量をわれわれ輸絹業者にも引き渡してくださると承りまして、業界はこれを歓迎しておる次第でございます。しかし、実際的方法となりますと、新しい仕方でございますので、何かと困難な問題があることを覚悟しなければなりません。私は、六十年の長きにわたり生涯をかけて輸出絹織物の業界を歩ませていただいた一人といたしまして過去を振り返ってみますと、原料生糸の仕入れが相場の乱高下のため、どうしても投機的な商売となってしまい、いわゆる山高ければ谷深しで、たいへんな不安と苦労を重ねてまいったのでございます。そこで、その体験の中から、感想と申しますか、意見と申しましょうか、若干のことを開陳いたしてみたいと思います。  まず、第一に申し上げてみたいと思いますことは、国が対策の方針として輸出の増進をはかろうというお考えならば、生糸で出すよりも、織物に加工して輸出することに力を入れ、重点とすべきだと思う点でございます。これは私が輸絹業者であるから我田引水のことを申し上げるというのではなく、客観的な諸条件がそういう結論を導いているのではないかと思われます。敗戦後の繊維界は、急激に人絹、化繊が伸びて、各種各様のものがたくさんできてまいりました。世界では、一千万トンから四、五年で一躍一千五百万トンの供給力を持つに至ったといわれていますが、その仕入れ価格は、一定期間、一定価格です。すなわち、生糸以外の繊維は、いずれもみな安定した価格で仕入れができるのでございます。しかるに、生糸のみは、不安定な値段で原料生糸の手当てをしなければなりませんので、どうしても機屋という商売が投機的となり、不安定な商売になりますので、他の繊維に押されぎみとならざるを得ないのでございます。もちろん、値段の点も影響がありましょう。しかし、高い安いの問題よりも、一定した安定価格で手に入るということが、どんなに商売がやりやすくて、お客さまの消費欲に即応することができるであろうかと存じ上げる次第でございます。しかし、このことは、観念的にはよくわかりますが、実際問題となると、なかなか容易ではなく、今回のように政府の御配慮で事業団が一定価格で、一定期間、一定数量を引き渡してくださるという一本の柱が立ちますと、私どもの輸絹業界にとっては一つの光明となるものと信じている次第でございます。願わくは、この価格安定政策蚕糸業安定成長政策となって蚕糸日本の躍進に役立つ起死回生の道を開きますように期待し、私ども業界もできる限りの御協力を申し上げたいと存ずる次第でございますが、目下瀕死の状態でございますので、一日も早く実現の運びに至るよう、お願いを申し上げます。  第二点として申し上げたい点は、蚕糸日本は、いまでも全世界の六割を生産している蚕糸国でありますから、世界の二割生産国といわれているお隣の中国と手を握れば、全世界の八割供給力となりますので、両国は、海外蚕糸国際市場の協定につとめ、不当な価格競争をやめて、協定価格制度を打ち立てる努力をすべきだと思う点でございます。この点は大問題でありますから、すぐに実現するわけにはまいりますまいが、両国の関係業者が相協力して、両国間の業者協定にまでこぎつけるよう、お互いに心すべき課題であろうと思います。さきに、山添中央蚕糸協会長さんらが親しく中国に渡られ、業界に親善友好のムードづくりの第一歩を踏み出していただいたことは、非常によかったと思います。どうか、今後一そうの御推進を御期待申し上げたいと存ずるところであります。  次に、繭糸の増産問題を第三点として申し上げたいと思います。絹の情勢は、今後ますます需要を増大する見通しでありまして、われわれの絹業界の前途は明るいと思いますが、この際ぜひとも検討を加えていただきたいことは、需給アンバランスのために価格を現況以上の高水準に押し上げることなく、この程度で安定基準価格を落ちつかせて、急速に原料繭の増産をはかるようにすることが必要であると思うのであります。政策的にも、現在程度の糸況で繭糸価格が安定することになれば、養蚕農家の繭再生産も可能でありましょうし、経営近代化にいそしむことも可能性が高まってきたと思われますので、政府官民が力を合わせて、一大繭の増産運動を起こす一面、輸絹の海外進出にあらゆる努力をいたし、世界的な需要の拡大均衡に道を開いていくことが現下最も大切な蚕糸対策であると存ずる次第であります。  以上、簡単に国会御審議の御参考のため所見の一端を述べさしていただき、参考人としての意見開陳を終わります。
  8. 野知浩之

    委員長野知浩之君) ありがとうございました。  以上で参考人の方の御意見は終わりました。  それでは、質疑のある方は、順次御発言願います。
  9. 武内五郎

    ○武内五郎君 参考人の方々には、たいへん貴重なお考えをお述べいただいて、ありがとうございました。私は、まず第一に、中共を御訪問されて非常な貴重な資料をお持ち帰りになった山添さんにお尋ねをしてみたいと思います。  御承知のとおり、日本の民族の歴史とともに発達してまいりました日本生糸産業が、最近、政策的にも、経済上の地位等においても、非常に低下していると同時に、特に貿易の面において日本生糸のシェアというのはだんだん落ちてまいったように見られます。それは、かつて日本生糸市場でありました欧米地方において、わずかに米国においてまだようやく日本生糸市場の立場を保持してはおりまするけれども、欧州においてはほとんど失われたと言ってもさしつかえない状態になってまいりました。特に、そういう中で、中国の糸が非常な進出を見せてまいっております。私は、中国や韓国、あるいはその他の東南アジア方面における生糸産業の前進ということは、決して悪いことではないと考えております。したがって、中国の最近におけるそのような進出に対して、われわれ日本蚕糸業としてはどういうふうに対処し処置するかということがむしろ非常な問題であると考えます。このときに、山添さんたちが、日本生糸産業関係ある各業種の代表の方々とともに中国の実態をごらんになって参られたことは、非常にとうといことだと思います。そこで、特に中国において蚕糸事業の中心になっている方々にお会いされて、日本蚕糸業中国蚕糸業との関連、あるいは技術の面において、あるいは市場の調整の面において、したがって、さらに具体的には価格調整の点において、いろいろな問題がお話のおりに話題にのったと考えられます。それらの問題について、できれば具体的にお話しいただきたいのでありますが、時間の関係もございましょうから、まず第一に、私は、今日日本生糸が大きく欧州方面から足を抜いてきた大きな原因というものは、価格の問題であったと考えます。日本生糸が今日最低価格で六千三百円の標準値である。ところが、中国の糸は五千数百円で出ておる。そこに大きな開きがあり、まして実勢価格からこれを見ますると、二千円をこえる格差が出ておるのでありまして、これらの調整が非常に大事な問題であると思うのであります。まず、その点について、価格調整の点で将来中国との協調のできる可能性があるのかどうか、その点についてのお話を承りたいと思います。
  10. 山添利作

    参考人山添利作君) 価格調整という問題には、二つの点があると思います。一つは、両国の間で話し合いができるかどうか、協定ができるかどうか、こういう面と、もう一つは、コスト競争という意味において成算ありや否や、こういう二つの面でございます。  話し合いをするということにつきましては、現在のところは、その時期ではないと申しまするか、日本事情と申しますれば、国内消費が多くて、海外に出す余力が乏しい。むしろ枯渇しておると、こういうところに理由があるわけでございまして、したがって、価格調整というのをいま持ち出して、それじゃ日本がどれだけ出せるのかというような点もございまするので、いま日本からそういうことを申しましても、中国側から見れば、何か変なことを言っておると、こういうふうにとられるだけであろうと思います。現在は、やはりそういう時期ではない。言いかえてみれば、できない相談というか、虫がよ過ぎる話といいますか、そういうふうに受け取られるだろうと思います。私ども、実は、向こうに行って申しておきましたのは、いまは日本輸出は非常に少なくなっておる。これは日本における生産事情、あるいは国内の消費の増進の状況、それでそういうことになっておるんだが、さればといってわれわれは輸出をあきらめているのではございませんと。必ず将来生産の増強につとめて輸出を伸ばしていきたいと、こういう政策を持っておる。そこで、いま日本輸出余力がないときに、中国において一定した価格ヨーロッパ生糸供給し、そうしてその需要を保っておるということは、世界的に生糸の消費を維持し、将来伸ばしていくという意味においてはすこぶる有効であると。そうして、われわれの共通の利益としては、何といっても世界的な生糸の需要を伸ばすのが必要であるから、中国においてはこれはまあ国情によりまして世界絹業協会には入っておりませんけれども、そういうところに入ることは国としてむずかしいであろうが、世界における絹の消費増進を目的としておる世界絹業協会の会合のあるたびにはひとつオブザーバーとして出かけていって、消費増進ということのために応分の協力をされることが望ましいと、こういうことを強調いたしました。  価格の点におきましては、先ほど申しましたような事情がございまするので、あなたのところはもっと高く売ったらどうかというわけにもいきません。また、それは現実的な要求でもないと思うのでありますが、日本においてはこういう価格安定制度をとっておると。そこで、これは事業団によるところのコスト保証の制度は、時価よりはだいぶ御承知のように低いわけでございます。これは絶対に信頼してよろしいと。そこで、あなた方が輸出価格をおきめになるときには、この辺の事情は十分御参考になったほうがよろしかろうと、こういう話をいたして来たわけでございまして、お話しのような点は、将来、海外における需要といいまするか、マーケットの情勢によりまして、両方の国でいくらか余りぎみになるとか何とかいうようなことになりますれば、当然そういう問題が起こってくるわけでありまして、現在といたしましては、そういう具体的な話を将来出すことあるべしという地ならし、まあ言ってみれば親善というような、お互い理解を深めたいと、こういう段階で参っておる次第でございます。  それからその次に、コスト上の問題はどうかと、こういう点になりますると、これは全く話がむずかしいわけであります。常識論から申しますれば、農産物のごとき要するに労力が主であるものについては、労賃の低いところが有利にきまっているじゃないかと、こういう常識論もある——常識論といいまするか、原則論としてのそういう事柄は承認しなければならぬと思いまするが、しかし、一体、じゃ中国でどの程度繭をつくるかということになってみますると、最近、日本生糸が上がったために、中国における輸出価格も非常に上がっております。しかしながら、繭そのものの価格は、これは十数年やっぱり据え置きでありまして、それは米その他の農産物との一定の価格関係のバランスから来ている価格でございます。もうかるからそっちへひとつ自由経済のように生産を集中しようじゃないか、あるいは、そういう生産要素が移動しやすいように値段を変えると、こういうことではございません。それからまた、何と申しましても、あれだけの人口を養うというための食糧の自給ということはまずたいへんな業務でありまして、先ほど、非常に進んでおると、進むといいますか、生産の増加を来たしつつあるということを申しましたけれども、その事柄がしかしいつまでもそういうふうに蚕糸だけが進むということは不可能でございまして、やはり全体の経済の中におけるおのずから副業としての蚕糸の地位がある。かつまた、国内の需要ということも、余力があればといいまするか、回していく潜在需要は非常に膨大である。また、輸出政策としましても、無理やりに市場が余るのに中国は押し出さなきゃならぬというような経済態勢でもないわけでありまして、計画的にコントロールできるわけでございます。  まあそういうことで、経済学的にコストを論ずることはこれはちょっと不可能だと思いまするが、一般判断として急速に海外市場状況が両国の関係で顕著な変化を来たす、お互いに何らか特に困ったような事態が近い将来に起こるであろうというような感想は持たなかったと、こういうわけでございます。
  11. 武内五郎

    ○武内五郎君 コストの問題、さらに価格の問題等についての協定あるいは調整というような問題は、これはなかなか容易じゃないと思います。特に中国は国策としての蚕糸事業の問題、それと日本との蚕糸事業関係等の調整というのは、これはもう実にむずかしいことは御承知のとおりであります。しかし、私は、それは同時に努力しなきゃならないでしょうし、その希望はたゆまない努力の結果達成するように考えなければならぬと考えておりますので、特に蚕糸事業の中心になっておられる山添さんたちの御努力をお願い申し上げたいのであります。  さらに、いま山添さんのお話の中にもございましたが、今日の中国技術の問題、これは日本の三十年前ぐらいの水準だと。そうかもしれません。特に糸の質等の関係から考えてみますると、やはり相当技術的な開きがあると考えると。同時に、日本の進んだ技術の交流という点が考えられてこなきゃならぬと思うのであります。ことに、山添さんたち一行の中国訪問の大きな目的の中に、生産技術の交流ということが強く取り上げられておるはずなんでありまして、それらについての現地で把握されてまいりました感想、そういう点はどういうふうになっておるか、お伺いしたいと思います。
  12. 山添利作

    参考人山添利作君) これは、技術交流という意味におきましては、日本中国に学ぶ点はまずないと思います。中国日本に学ぶ点は多々あるわけであります。しかし、私ども参りました際には、広く専門家というわけでもございませんので、そういう具体的な話はございませんでした。ただ、私ども向こうを見せてもらうかわりに、向こうの方もひとつ日本事情をよく見てもらいたい。同じ人数だけ、同じ日数だけ、向こうの都合のいいときに日本に来てもらって日本事情を見てもらう、こういうことにいたしております。向こうにおける品種の改良等、なかなかまだまだといいまするか、これからやるということだろうと思うのであります。鎮江の試験場を見まして、ここは人間が二百人おるわけであります。しかし、研究室等を見ましても、どういう内容の研究か、私どもよくわかりませんが、顕微鏡の数、研究員の数というような点から観察をしてみますると、まだまだということであろうと思います。  しかし、一番大きな問題といたしまして、中国における蚕糸業のネックは、蚕室の問題であろうと思います。蚕共同飼育という点は、非常に丁寧な、特に丸かごのりっぱなやつでやっておられましたが、これを各戸に分配するという段階になりまして、むろんこれは集合的な団体化された養蚕ではございまするけれども、しかし、いまのところ、各戸に分配して飼う場合には、蚕室がネックであります。上海近辺では、農家の建物も若干は新しく建てられておりまして、これは住居として相当不自由はないと思います。しかし、大部分は、旧来のままの例の土の建物でありまして、窓がない、まっ暗な、スペースもなければ、とても蚕を飼える、日本人の頭では少なくとも蚕の飼えるところとは思えません。蚕をふやしていくというためには、まず蚕室ということがやっぱり大きな問題で、これは一つ二つ建てるのは問題ございませんけれども、広範にそういうことになりますると、これは相当の国家投資を必要とする事柄でございまするから、その辺がやはり、これは韓国も同じ事情だと思いますが、ボトルネックであろうと、こういうふうに考えております。  技術交流そのものにつきましては、私ども態度は、これはいろいろ国別に考えなきゃいかぬわけでございまして、日本としては何ら隠すところはない、しかし、やはり物を勉強するのには、自分で努力をして自分で勉強する、こういうのが原則であろうと思います。日中の関係におきましては、そういう意味において、隠しはしないが、勉強してひとつ持っていってもらいたい、こういうフェアな考え方、フェアといいますか、そういう考え方でいきたい、こういうふうに考えておりまするが、先般参りましたときには、たとえば、原蚕種をもらいたいというような具体的な話はございませんでしたし、また、長期の技術者を駐留せしむるというようなことは、いまの国交状況ではこれはできないと、こういうことになっておるような次第であります。
  13. 中村波男

    ○中村波男君 ちょっと関連して。  最初に山添参考人にお聞きしたいのでありますが、最近輸出のほうが少なくて輸入が多くなった、そのほんとうの原因は価格にあると思うのであります。問題は、需要が内需において上回っておるということから来る問題だというのでありますが、そこで、将来を考えます場合に、いま武内委員からも中国との競合を避けるような方策がないかというようなことも提起されましたが、しかし、私は、中国は何といっても社会主義の計画経済をやっておるのでありますから、内需というよりも、何と申しますか、貿易政策として、場合によっては日本と競合して輸出をどんどん伸ばしていく、いわゆる生産費というものが中心にならない貿易というものが行なわれるということも考えておかなければならないのではないかということを思うのであります。そういう立場から言いますと、やはり中国養蚕が伸びるということを前提にして日本産業政策というものを根本的には考えておかなければならないのではないかという感じがするのであります。  そこで、いま、中国等を中心にいたしまして輸入がふえておりますが、品種的には総体的に日本生糸のほうがすぐれておるというふうに承知をいたしておりますが、そこで、蚕糸業振興審議会からも建議として意見が出ておったと思うのでありますが、安い外国の生糸を輸入して、用途によってはそれが適応性を持つというふうにも聞いておりますので、したがって、これを内需に回して、そうして日本のすぐれた生糸輸出すると、そういう、大胆と申しまするか、そういう方向で考えていくことについての問題についてどうお考えになっておるかどうか。  また、そうだとするならば、蚕糸業振興審議会が建議しておりますように、ただ事業団が輸入生糸を買い入れ、売り渡すという事業と同時に、輸入生糸も一括して扱うという道を与えて、そうしてやはり操作をするということが混乱を避ける道ではないかと、こういうふうにも考えられるのでありますが、そういう点についてどのようにお考えになっておるかどうか。  さらに、それに関連いたしまして、坪田参考人にお尋ねをしたいと思うのでありますが、安い中国の糸、韓国の糸を輸入して、それを日本加工をして輸出するという、そういうことについての将来性と申しますか、現実には見通しとしてあるのかないのか、こういう点もあわせて承っておきたいと思うわけであります。
  14. 山添利作

    参考人山添利作君) これは、日本においても糸の品質はいろいろ種類がございまするように、中国におきましてもいろいろあるようでございまして、一がいに中国糸が悪いということではない。むしろ、細い繊維でやりますから、かつ、それを非常に丁寧にやりますから、練り減りの少ないすぐれた糸もできるわけでありまして、したがって、そういう意味において、日本中国とは糸の種類が違うから、品質の悪いものを日本に入れてそれを国内消費に充て、日本の糸もしくはその加工品を海外に出したらどうかということは、これは現実的でないと思っております。ただ、現在の日本状況におきましては、何と申しましても全体的に足りないわけでありまするから、相当程度中国の糸が入ってまいりますことも、これは需給をモデレートに保っておるという意味においては貢献があるわけでありまして、私どもは、立場上、大いに入ったらよろしいとはまあ考えませんけれども、そういう需給を緩和しておるという作用が現在のところはあるであろうと思います。  ただ、この蚕糸事業団体法の改正につきまして振興審議会等で審議をいたしましておる過程におきましては、何と申しましても、輸出といいますことは、海外に出す生糸並びに絹織物の原料をある範囲において一定期間、一定価格ということで安定することを目的といたしておりまするけれども、その背景と申しまするか、前提といたしましては、全体的にある程度生糸価格が安定しておるという安定を強化するということがやはり前提でございまして、その全体的のものがきわめてふらふらしているのに、一部分だけを安定せしめるということは、少なくとも連年にわたってそういう政策をとり得るということは不可能でございまして、そこで、安定ということになりますると、これは輸入物も含めた全体的な操作ということでなければ、安定の完全な効果は期せられない。その意味におきまして、繭糸価格の安定の一そうの強化のためには、これは輸入生糸も管理したほうがよろしいと、こういう思想でございます。しかしながら、先ほど申し上げまするように、現在のところは、輸入生糸があるがために特別の撹乱要素ということをなしておるわけでもございませんが、また、坪田さんは、おそらくそういう糸を使って輸出製品をおつくりになると、こういうような便宜もいまはお持ちになっておるのであろうと思いまするが、まあいろいろの関係がございまして、今回の法案にはその点は盛り込まれなかったのでありまするが、将来、大量に輸入生糸が入ってくるということでありますれば、そのときにはやはり全体的な輸入生糸を含むところを対象としたところの安定ということを考える。したがって、事業団も輸入生糸を取り扱うということが必要になってくると予想をいたしております。そういう際には、また、あらためて国会におきまして十分御審議をいただいて、そういう方途がとられまするように希望をいたしておる次第でございます。
  15. 坪田由太郎

    参考人坪田由太郎君) いま私にどういうことを説明せいとおっしゃいますか、もう一度……。いまの説明をどういうことをせいというお話でございましたか。
  16. 中村波男

    ○中村波男君 坪田さんは、生糸輸出するよりも加工して輸出したほうがいいんだと、さっきそういう御意見があったわけでありますが、その加工して輸出をいたしますのに、いまのところ外国の生糸のほうが安いのでありますから、安い生糸を輸入してそうして加工をするというそういうことを今後の見通しとしてどのようにお考えになっておるかどうか。さらに、加えて、今日、輸入した生糸加工して輸出されておるそういう数量というようなものがわかっておったならば、この機会にお聞かせおき願いたいと、こう思うわけであります。
  17. 坪田由太郎

    参考人坪田由太郎君) それは、生糸加工するということは、織物にして出すということですね。
  18. 中村波男

    ○中村波男君 そうです。
  19. 坪田由太郎

    参考人坪田由太郎君) それは、つまり、そうすればこちらの外貨獲得ができる、こちらで織って出せばですね。それで、先ほど山添さんもおっしゃったように、まず、生糸が、中共から入ってくる生糸も悪いのもありますし、また、日本でできる生糸もいいのも悪いのもあります。そこで、いま、この価格の面で、どうしてもこういう相場は、われわれの考えでは、商人が売った買うたをされてそうして上がったり下がったりするがためにこういうことになったんじゃないかと、私はそういう考えも持っております。相場師が、きょう買うた売ったということを何にもそれに制裁を加えることができぬのですから、売った買うたしては、それで相場を上げては、そして、向こうでは、安定がせぬ相場やから、絹にだんだんと魅力が薄くなってきてそういうことになったんじゃないかと、こういうことも私は考える。  いま、安定相場にして、これよりは日本は上げもせず下げもせぬのだと。養蚕家とし、製糸家としても、これだけの工費がなけねばこのなにはできぬのだと。だから、日本の品物をこの価格でさえすれば、工費に対しては幾らかはいろいろな品物によって工費の差はありますけれども原料としてはこれよりは変らぬのやから、向こうの商人がこれを注文して買えば、一年なら一年だけは、原料は変わらぬのじゃから、これで仕入れて仕事にしてもいいじゃないかと、こういうことになると、私はこう思います。  この辺は、相場が上がったということは、六千万円のものが七千五百万円にもなるということは、これは品物がないからというんじゃなしに、国内でも使うておるんです。相場師があって、相場師を押えることがでけん。それがために、相場師は、向こうは七千万で買ったら、わしは七千五百万円で買うと言うし、また売った買うたのこれをするがために、ほんとうの養蚕家がこれだけなけにゃ売れぬというそのなにじゃないと私は思う。ここで養蚕家も持て製糸家も持てる値段がどの辺であるか、正当の製糸家も養蚕家もこれなら立っていける——まあ養蚕家は、いまいろいろ野菜物をつくったり穀物をつくったりする農家と違いまして、果樹をつくるとかと、そういうものとどうでも比較して、同じことじゃということもこれは考えもんじゃと思います。それで、ある程度は、この値段ならば養蚕家もこれでやっていける、また、増産も、これなら、しても安心して増産ができるという価格をなにせぬことにおいては、これはどうしてもあかん。  それで、われわれは、いま加工してということは、こっちで織れれば、工賃もいくらかはいまは高うはなりましたけれども、外国とはいくらか安うなるんじゃないかと思います。  そういうことを私は考えています。
  20. 武内五郎

    ○武内五郎君 お答えがあるいは重複するようになるかもしれませんが、山添さんに最後の結論の意味合いでお話を承っておきたいと思います。  先ほどのお話の中から私どもくみ取りまして、山添さん一行が中国を訪問されるその場合のいろいろな課題をお持ちになって参りまして、特にその中で、先ほど私も申し上げましたような、技術の交流を中心とした相互交流をはかりたいということが大きな問題であったと存じます。そこで、簡単に申し上げまするが、そういう交流を今後お互いに努力する、日本も努力するし、中国も努力する、この努力を具体的にあらわせるたとえば一つの協議機関、両国の蚕糸業に関するお互いの協議機関というものの設立の可能性があるかどうか、その点と、それから、したがって、第二点は、今後日中蚕糸業の提携のもとに、将来の蚕糸業発展、これは私は日本蚕糸業中国蚕糸業というような意味合いでなく、世界的な意味における蚕糸業の発展というところを考えつつ、将来のそういうお互いの話し合い機関というものができるのかどうか、それらについて特にお伺いしたい。
  21. 山添利作

    参考人山添利作君) 目的とするところは、ただいま武内委員がお述べになりました点には私どもも同感でありまするし、中国においても異存はなかろうと推察をいたしております。協議機関というようなものをつくるかどうかということにつきましては、可能性がないとは申しませんが、私どもは、そういうことになりますると、多少政治的な問題にもなりますので、もっぱら友好的な交流の積み上げによって目的を達したい、こういうふうにただいまのところは考えておる次第であります。
  22. 武内五郎

    ○武内五郎君 次に、私は、小口参考人にお尋ね申し上げます。  日本の各産業の中で、日本労働者の地位というものは、最近、非常に大きく前進してまいりました。しかし、なお、世界の労働者水準から見れば、まだうんと低い。特に蚕糸業界における労働者の地位、生活水準、こういうようなものが非常に低いということを承ってまいりました。これは日本労働者の低い水準をあらわすサンプルのような形になってきておると考えられます。かつて、岡谷の女工さんが、しばしば諏訪湖に身を投げる。岡谷の諏訪湖の水ぎわには、「ちょっと待ってください」という立て札が立っておった。それほど製糸業における女工に対する待遇というものは低かった。女工哀史がつづけられたのも、私はそういうところから来ておると考えます。今日、そういう時代とは大きく変わってまいりましたけれども、まだ低い労働者水準というものは製糸労働者によって代表されておるように考えられます。  そこで、特に私はこの中で、時間の関係もありまするのでかいつまんで申し上げまするが、最低賃金制の問題、ILO三六号ですか、最低賃金制に関する条約がある。これがまだ日本では批准されていないという。しかも、日本最低賃金法は、地域、業者別協定によって、労働者を除外された業者間の話し合いで最低賃金制がきめられておるということがあります。そういうことがまだ依然として続いておる。いま小口参考人のお話を承りましても、この表示の中にも、まことに驚くべき労働賃金の低さが出ております。これは日本のニコヨン労働よりもなお低い。これで生活できるのかどうかということを疑わざるを得ない賃金であります。一体、まだそういう状態が依然として続いておるのか。まことにこの表示を見ましても惨たんたる状態を感じざるを得ないのでありますが、その実情はどうでありますか。
  23. 小口賢三

    参考人小口賢三君) 製糸労働者が歴史的に労働条件が非常に低かった、また、現在も相対的にかなり低いという点については、武内先生のほうから御指摘になったとおりであります。しかし、私どもの組織の努力によってかなり改善されてきた部分もございます。たとえば、先ほど最低賃金五百八十円と申し上げましたのですが、現在、政府の業者間協定は、東京都について五百二十円、それから鹿児島その他熊本、島根等の地方において四百十円になっております。それからこれは十五歳の婦人労働者が直接対象になっておるものでそうなっておりますが、それでは平均賃金について一体どうかといいますと、やはり繊維産業の婦人労働者の低賃金日本の婦人労働者の低賃金を規制しているという点を強く感じております。たとえば、お話の出ました失対賃金ですが、ことしの四月の改定で、東京、神奈川、大阪地区は七百九十円になりましたのですが、鹿児島、熊本等では、四級地で五百六十六円です。こういう状態考えますと、私たちは、現在の賃金に少しも満足しておりません。  それで、私たちは、私たち自身の労働条件を引き上げる戦いの中で、最低賃金制のお話の出ました戦いがかなり重要な役割りを果たしているということを感じ、私もつい最近まで中央最低賃金審議会の労働者委員をやっておりました。また、私たちの組織を通して、製糸労働者最低賃金制の戦いをしまして、最低賃金法十一条の申請につきましては、関東地区一円、その後、埼玉県、福島県、長野県、これらの地域においては、労働協約の拡張適用による最低賃金制をかちとりまして、産業界においては、十一条について成果をあげました点では、綿紡績と並んで繊維産業が最も進んでおります。しかし、その賃金水準につきましては、必ずしも十分でありません。先ほどの一般報告の中で申し上げましたように、製糸賃金は、農村との関係を非常に強く受ける、それから農産物加工という関係もありまして、工場が農村に多い、企業も中小企業が多い、こういうようなことが重なり合いまして、賃金が安くなっておるわけであります。  また、製糸賃金農民所得と非常な関係があるという点で例をあげますと、昨年の農業白書によりますと、農民の総就業時間が千四百八十時間で、一人当たり就業者の農業所得が十九万六千三百円になっておりますが、これは一時間当たりにして百三十三円です。これに対して、製造工業の労働者賃金は、ことしの三月の状態で、三十人以上の、きまって支給される雇用労働者賃金が、一時間二百四円になっております。それから婦人労働者賃金は、これに対して百十四円です。繊維産業女子につきますと、一時間九十九円三十銭、こういうような状態で、これは製糸業自身ばかりではなしに、日本の全体の労働者賃金水準が現在の日本の工業生産力に見合っていないということについて、私は強い抗議の意を持っています。  私たちが主張しております法定最低賃金は、月額一万五千円、一時間にして七十五円でございますが、これは、時間にして、アメリカの米ドルに換算して、一時間二十セント、すでに沖繩では一時間十二セント、アメリカではことし二月から一時間一ドル四十セントという数字が出ています。日本の国民所得アメリカの四分の一を占めています。こういう点から考えまして、私は、国が一ドル二十セントの最低賃金制が実施できないという理由を見出すことが困難です。そういう意味で、コストの問題が先ほど出ておりましたけれども、とりわけ中小企業産業政策考えます場合に、絹織物の場合にもそうでございますけれども最低賃金制と家内労働法の制定というものは、中小企業の近代化政策を進める上で、経済政策の土台に考えていただきたいと思っているところです。
  24. 武内五郎

    ○武内五郎君 全く私もそのとおりだと考えております。  それで、さらにお伺いしたいのでありまするが、欧州を旅行した人々の話を私は聞いておりますと、たいていの国では、日本の品物をあまり好んで買わない。特にイタリーなんかにおいては、ほとんど日本の商品がローマの店頭には見られないという話なんであります。どうしてそういうことなのかと聞いておりますると、最低賃金制もろくに労働者の立場を考えてくれない、あるいは、せっかくお互いにきめたILO諸条約を十分に批准し、あるいは審議していない日本状態では、そこからできる品物は労働者の血と汗をしぼり取ったような品物だから、こういうようなものはわれわれ好んで買うことはできないではないかとかえって反問されたと言われておるのであります。事実、欧州における、ほかの中国やその他の生糸が、いくら日本生糸よりも価格が低いとはいいながら、日本生糸が欧州から足を洗わされたということは、私はそういうところにあるのではないかと実は考えられるのでありますが、そういう点についてはどうお考えになるのか。  それから先ほど小口参考人の陳述の一つの課題でありまするが、日本蚕糸業の将来についての労働者の地位、これは先ほどお述べになっておりまするが、日本製糸業における労働者の低い賃金水準、そこから出てくる生糸に対する、いくら優秀な、品物として優れたものであっても、ついに欧州から足を洗わなきゃならなかったという痛ましい敗北の状態、そういうところに日本生糸の将来の対策、こういうものがやはりポイントとしてあるのじゃないかと考えるのでありまして、そういう点をどういうふうにお考えになっているか、お伺いしたいと思います。
  25. 小口賢三

    参考人小口賢三君) ヨーロッパへの輸出が減ったということと賃金とどの程度関連があるかどうかというのは、にわかにそれ自身をストレート考えることはかなり無理があるかと思います。私は、コストの問題のところで少し申し上げたんですが、蚕糸業の将来の点でいきますと、たとえばコストの問題でぼくの友だちが一つの計算をしたんですが、それによりますと、まず、コストの点で、製糸労働賃金とそれから養蚕の家族労働報酬というものを考えて、将来今後二十年の後には、いまのアメリカ賃金水準日本労働者賃金水準が行くということを想定してみた場合に、生糸価格あるいは繭代、それらは一体どういうことになるのか、こういうことを計算した例がございます。それによりますと、養蚕労働も、一時間当たり現在の家族労働報酬に対して四倍ないし四・八倍、一時間三百二十円から三百六十円、製糸労働者賃金水準も、二十年後には三百十円ないし三百六十円、これはちょっと低いですが、一応そのような一時間一ドルという賃金になることを想定した場合に、一体どうなるか、こういうようなことを仮定して、その前提の上に立って、生糸価格を相対的に見て、この計算では他の合成繊維との競合関係、これらを考慮して六千円というものを考慮し、六千円の糸価水準というものを前提にして、比例配分を八対二にし、かつ十年後には糸部が一八・七%、二十年後には二〇%、こういう改良を仮定した場合に、こういう糸価六千円の水準というものを維持する場合について、一体、合理化目標はどういうことが要求されるか、こういうことを試算しております。それによりますと、十年後には一俵当たり十六人ないし十七人、二十年後には労働生産性が現在の倍上がることを想定しなくちゃならぬ。そうして、俵当たり八ないし九人。それからそういう場合の糸価六千円とした場合の繭元原価というものを考えますと、糸部等も考慮しますと、十年後には一九七五年にはキロ八百五十円、二十年後にはキロ九百円、そうして、生糸加工原価を千二十五円、こういうふうに考えて、いま労働生産性が一六〇%、俵当たりでいきますと十六ないし十七人、二十年後には二〇〇%、俵当たり八、九人にしなくてはいけない。それから養蚕の場合には、十年後に生産性を現在の八割増し、二十年後には二・二倍くらいに高めなければいけないであろう。そうして、養蚕の一経営単位が年産二千キロの繭をつくるというような条件を可能にしなければいけないということを計算上はじいています。その場合には、製糸企業自体としては、十セット年間一工場について五千ないし六千俵の糸、繭の収納量にしますと、千六百五十トンから千九百八十トンの繭を収納する。そうして、そういうことによってそれが可能になるというふうなことを書っています。  それから養蚕でいきますと、現在の稚蚕と壮蚕の分業化を進める。しかし、その場合でも、一定の限度があるので、その次の段階では、栽桑農家つまり桑だけを栽培する農家と同時に、桑を栽培しつつ飼育する農家との分業化というものを進めなければならない。将来、合成繊維その他の競合繊維とのコスト競争に耐えるためには、養蚕も、年間を通して行なわれるような状態というものをつくり出さなくちゃならぬ。栽桑と飼育の分業化の十年後の段階では、年間八回飼育するとして二百日就労、こういうようなことを考えると、一応八百五十円という段階には到達するだろう。しかし、現状のまま二十年後に一時間一ドルということを想定した場合には、労務費だけで計算上六千円になる。糸価は一万円くらいにならないといけない勘定になってしまう。そういうことになると、これは生糸の需要について著しく圧迫する条件もあるので、最終的な二十年後の段階ということになれば、人工飼料による養蚕工場というものをやはり想定をして、製糸工場化あるいは養蚕の共同化その他によって養蚕工場というものを考え、一日一トン当たり飼育労働力百人くらいで、年間三百六十五日毎日毎日掃き立てをし、繭を一トンずつ生産して、乾燥というようなことを経ずして操糸機械にそのまま糸がひかれる、こういうようなことを技術的に可能にせしめなければ、コストの問題について将来問題を生むのではないかということを計算しています。これは一つの試算にすぎませんけれども、やはり私たちの将来には、かなり大きな問題があるということをこの単純な計算だけでも示しています。  そういう点から考えまして、私は、蚕糸業の将来の問題を考える場合に、まず第一に、繭の増産の問題がどうやったら可能になるのか、また、繭の増産を、高まっていく労働賃金状態の中でどのように可能にするか、これが長期的に見た場合に一番大きな問題だと思います。  それで、この点について、政府はいろいろ計画を示し、また、この資料の中にもありますけれども、農業人口の減少の傾向というものを考えますと、年率三・五%ずつ繭を増産して、将来、輸出を十万五千俵にするというような指針を立てていますけれども、かなりむずかしい問題があるのではないか。そういう点を考えますと、従来のような価格にたよっただけの蚕糸政策では、繭の増産はかなりむずかしいのではないかという点を感じます。  それから輸出の問題について見ましても、現在の状況ですと、繭の増産が不十分であるために、供給自体の圧力がありません。したがって、現在の糸価状態が続く限りにおいては輸出はむずかしいのではないか。したがって、輸出を出すということになりますと、繭の供給圧力をかなり高めて、それが輸出のドライブになるような条件がつくり出されるか、そうでなければ、二重価格制をとって重点的に輸出政策について切りかえをするか、こういうことにしない限り無理ではないか。そういう点を考えまして、今回ここに出されています法案につきましては、輸入生糸の取り扱いが事業団からはずされていますけれども、これは当初の蚕糸業振興審議会の討議の経過から見てもたいへんに片手落ちではないかと思うのです。と申しますのは、現在のような価格関係輸出をやろうとしますと、価格におけるところの、ある程度安く輸出市場に出さなきゃなりませんけれども、その辺の差金というものをどのようにするかということが業界内部でも議論になったのですが、その場合の一つの方法として、輸入生糸を取り扱うことによる関税その他の面から浮くあるメリットを、輸出振興の補助金の一つの財源に充てたいということが構想中であったわけです。ところが、これを取ってしまって、そうして、あと、現在のような市況と現在のような繭の増産テンポで輸出をやれといっても、それは法律はできても、実際は業務としては糸は動かないのではないかという感じがするのです。それらのことについてお考えいただきたい。  それからまた、輸出の問題につきましても、コストの問題が長期的に、中村さんのほうからも御指摘がございましたが、やはりあるように思います。そういう点で、たとえば、生糸についてすでに中国からの輸入がどんどん始まっていますが、これは生糸に限らず、最近では綿糸についてもパキスタンから太物の糸がどんどん入っているわけです。タオル地その他については、パキスタンの糸が現在機屋さんにも使われ出してきておる。このような状況の中で、他の紡績、織布業においては、紡績業については四百六十億、織布業については千三百億という体制金融を用意して、紡績については六分五厘、一年据え置きの六年間年賦返済、織布業におきましては三年間据え置きの十年返済、こういうような大きな設備投資をかけて、国際競争力を強化しよう、体質を強化しよう、構造改善事業を徹底的に進めよう、こういうような動きがとられている。そういう点から考えまして、蚕糸業におきましても、長期的な体質改善というものがどうしてもとられないと、当面の糊塗策としての価格政策だけでは乗り切れない情勢というものが蚕糸業の中にあるのではないか。こういう点につきましても、この法案審議の中で長期的な視野に立って国会でも一つの建議をお願いしたいと思います。
  26. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 簡単なことなんですが、山添さんにお尋ねをいたしたいのですけれども中国養蚕をあるいは製糸をごらんになりまして、五、六年の間停滞しているというお感じでしょうか、それとも、どうもそうではないと、やはり伸びつつあるようだというような御感想かという点を承りたいわけなんです。と申しますのは、いま日本に参っております統計数字というのは、ほぼ十年間ぐらい変わらない数字を掲げておるわけですね。繭で言いますと、七万五千トンというのが三十四年から今日まで続いているわけですね。ですから、どうもそういう状況じゃないんじゃないか、やはり繭の生産というようなものは漸次伸びているのじゃないかという推測をするわけなんですが、いかがでございますか。
  27. 山添利作

    参考人山添利作君) 伸びておることは確かだと思います。御承知のように、一九六〇年前後の大災害で、農作物一般に非常に減少したのでありますが、最近ではよほど回復をいたしておりまして一食糧等、何ら懸念はない。主要食糧だけはまだ消費割り当てはございまするけれども、その他のものは一切ございません。繭ももちろん伸びておる、その他の農産も伸びておる、かような印象でございます。
  28. 北條雋八

    ○北條雋八君 私もいまの点を伺いたいと思ったのでありますが、ともかく生糸生産量の二〇%を占めております中国蚕糸業が伸びるか伸びないかによって、わが国の蚕糸業がどうなるかということは、非常に問題が大きいと思うのです。それで、伺いたいのは、現在中国生産しております生糸の需要というのは、内需がどのぐらいあるのか、また、輸出は、欧州がおもでありましょうが、そのほかどこにも行っていないようですね。また、他の共産圏などに行っておるのか、その点がおわかりだったら、伺いたいと思うのです。  それからなおついでに一緒に伺いますが、中国の農業の中で、蚕糸業農家所得が、他の農業の所得と比べてどう違うのか。内地で申しますいわゆる成長農産物として将来持続していけるのか。非常に人手は余っているようなお話を先ほど伺いましたが、そういう点とからんでその点も伺っておきたいと思います。
  29. 山添利作

    参考人山添利作君) 中共の生糸は、輸出に関する限りは、御承知のように、もとはもっぱらソ連に出ておったと思います。その当時、ソ連に幾ら行っておったかということは、共産圏同士でありますから、全然不明でありますが、現在ソ連に行かなくてヨーロッパに行く、この数字は、大体四万俵前後と、かように考えております。国内消費が幾らであろうかということ、これはいったい全体の生産量が幾らであろうかということは統計を全然発表いたしません。また、話も、地区地区では、おれのところはこれだけつくったとか、これだけ増産したと、こういうことは話しますが、全体的なことにつきましては一切ノーコメントでありますから、これはわかりません。  それから価格政策でありますが、これは、十数年にわたって、米と繭、たとえば同じ一キロにしまして、繭は約九倍ですか、そういうふうに固定してございます。これは、日本でも大体そんなところで、いま繭のほうがいくらかいいかもしれませんが、大体同じです。そういう農作物の間のバランスをとって固定をいたしておりまして、動かしておりません。輸出にひとつ振り向けようじゃないか、増産しようじゃないか、価格を上げようじゃないかという政策はとっておりません。食糧生産あるいは綿花生産に向けられておる土地桑園にかえるということはやっておりません。あくまでも、これは、全体的経済計画の見地に立って、長期計画的観点といいますか、そういうことでやっているんだと思います。
  30. 八木一郎

    ○八木一郎君 もう時間ですから、簡単に感想を伺いたいのであります。それは、いま、はしなくも参考人からおことばがありましたように、この法律が通過成立、業務を開始しても、なかなか輸出は伸びていかないのではないかと、こういう警告的な見通しもございました。私どもも審議の過程でそういう点に心配もしていたんですが、しかし、私自身、衆議院段階の御検討や、その他の大かたの皆さんの意見をお聞きしたりいたしまして、現在のいわゆる生産原価で業務が開始されて、それを一定の価格で仕事を始めるという踏み切りが早くつけば、そこを起点にして動き出すであろう、間違いなく伸ばしていけるはずだ、こういうことを信念的に思うわけです。なるほど、蚕糸業の歴史は、いままで、蚕糸興亡の歴史は、暴騰暴落の歴史に終始しております。こんな新しい形で国際商品としての生糸を出していこうというのですから、そこに六十年も輸絹一筋に輸出生糸にいそしまれた坪田さんの素朴なお気持ちの中からも、現在は、高い安いではない、現在の時価、生産原価でよろしいから、一年間動かさずに置いてくれればメーカーとしての手が出せるけれども、そうでないとメーカーとしての手が出ない、そこが一番心配だという御感想ですが、私はそうだろうと思うのです。これは、衆議院の、国民の声だといって、素朴な意見だといって、非常に明るい伊藤委員から御発言が記録にありますが、確かに生糸を消費する消費層、需要層はふえていく。これは間違いなくふえていく傾向がムード的に世界的に出てきておる。ところが、輸出が伸びていかないというのは、消費大衆に向けていく商品をつくるメーカーの段階で、ほかの繊維に比べてあまりに不確定な事情が過去にありますために、だんだん縮んでしまった。だから、ここでひとつ思い切って、一年間、現在の生産原価が、まあ腰だめで言えば、私がこの前も言ったように七千円でしょう。こんな高いところじゃとてもということではなしに、行けば行けないはずはなかろうかと思ったりしたんですが、この点は、坪田参考人には御意見開陳の中で承りましたから、山添さんに代表してお伺いいたしたい。ほんとうに、この法律を通して、いけますよ、そう心配要りませんよという答えなのか、いや、この点が心配だというならば、その点を御指摘してお伺いいたしたい、こう思うわけであります。
  31. 山添利作

    参考人山添利作君) 御承知のように、日本輸出は、ここ三年来、毎年半減をいたしておるわけでありますが、ローシルクにおいて顕著である。加工品においてはまあそれほどでもない。しかし、海外において需要があるということは、たとえば日本生糸ヨーロッパにいま行きませんけれどもヨーロッパの需要が減ったわけではないんですね。これは中共糸でけっこう需要というものは持続しておる。だから、要するに、需要そのものについて疑いをいただく必要はない。要は、日本供給力がない、そのために価格が非常に変動が激しい、こういうところにあるのであります。したがって、この法律ができましても、ヨーロッパ市場を回復するということは、当分そういうことは希望はできないと思いまするが、いま日本の主たる対象でありまするアメリカ市場を目的としてやりまするならば、まず、この辺で減ることを食いとめたい。あるいは若干減るかもしれませんが、食いとめたい。そうして、国内生産増強が達成されるに伴って徐々に伸ばしていきたい。そういう意味におきましては、この法律が施行になりますれば、これは全体の一割程度の数量でございまするから、将来これを伸ばしていくということは、向こうの需要状況といいますか、世界の国の人が持っておりまする絹の観念——向こうの人は、絹をもらえば、オオ・ワンダフルと、こう言うわけですから、これはもう全然心配はないわけであります。ただ、しかし、この制度が成功しまするためには、何といっても需給バランスがはなはだしく年々悪くなるというようなことでは、とてもだめでありまするから、繭の生産の増強ということが第一にやはり根本的な条件である。その上に立ちましてこういう制度を着実にやっていきますれば、ともかく将来に向かって相当の期間持続すればまた何とかなるだろう、こういうふうな八木先生のような専門家と私は全然感じをひとしくしておるわけでございます。
  32. 野知浩之

    委員長野知浩之君) ほかに御発言もないようでございますので、参考人に対する質疑はこれをもって終わります。  参考人の方には、長時間にわたり本委員会に御出席くだされ、貴重な御意見をお述べいただくとともに、委員の質疑にもお答えいただき、ありがとうございました。     —————————————
  33. 野知浩之

    委員長野知浩之君) この際、委員の異動について報告いたします。  ただいま、村田秀三君が委員を辞任され、その補欠として横川正市君が選任されました。  それでは、これにて暫時休憩いたします。午後一時三十分に再開いたします。    午後零時三十五分休憩      —————・—————    午後一時五十八分開会
  34. 野知浩之

    委員長野知浩之君) ただいまから委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、日本蚕糸事業団法の一部を改正する法律案議題とし、質疑を行ないます。  質疑のある方は、順次御発言願います。   〔委員長退席、理事任田新治君着席〕
  35. 武内五郎

    ○武内五郎君 本年の六月に資本の自由化に踏み切って、もう九三%をこえるものが自由化圏内に入ったわけでありますが、私はその資本と貿易の自由の中で日本の蚕業のあり方について質問したいのでありますが、その前に、去年の十二月八日に、日本製糸協会が理事会を開いて、操短を決定しております。これによって私は日本蚕糸業界にいろいろな波紋が出てきておると考える。特に私が伺いたいことは、そういうような操短がなぜ行なわれたか。しかも、糸の値段がぐんぐん上がってきておる今日を機会に——それは一時去年の末から今年の一月にかけてやや下がった。やや下がったが、また繰り返して上昇を続けているのが今日の状態なのですが、こういうような繭糸の市況の中で糸の生産を切り詰めるということはどういう理由があってやったのか、私はまずその点をお伺いしたい。
  36. 石田朗

    政府委員(石田朗君) ただいまお話がございました十二月ないし一月に製糸業界で操短が行なわれたではないか、こういうお話でございます。この点につきましては、私ども聞き及んでおりますのは、製糸協会で十二月に会議がございました際に、操業がその当時の状況で続いていく場合に、年度末における繭の持ち越しがどの程度になるであろうかという検討がなされた。それがどうもかなり少なくなるのではないかというような議論がなされた、こういうことを聞いております。そのような関係で、正月休みをどうするかというようなことで操業が若干例年よりも一月が少なかったのではないか、こういうことがいわれておるわけでございます。いままたお話がございましたように、この点、各業界の操業状況等、生糸の値段その他に必ずしも常に影響を及ぼすわけじゃございませんけれども影響を及ぼす場合があり、特にいまお話がございましたように、十二月から一月にかけまして生糸の値段が値上がり傾向でございました。そういうことでございますし、かつ繭の持ち越しにつきましてもいろいろ計数のはじき方その他問題もあるように私ども考えましたので、一月になりましてからでございますが、農林省といたしまして、これはもちろん製糸業界において話し合いをして操短をはかっておられるということでなかったようでございますけれども、操業状況等について糸価の値上がりに拍車をかけるというようなことのないように十分配慮をしていただきたいということを要請いたしました。製糸業界におかれても、この要請を理解されまして、いろいろ内部においても協会として指導をされたようでありまして、その結果、本年の一月の末から糸価の値上がり状況になりましたが、二月、三月と糸価が鎮静をいたした、こういうようなのが、昨年末から本年の三月ごろまでにおきますただいまの糸価の情勢及び製糸業界等の動きであったというふうに私ども考えております。
  37. 武内五郎

    ○武内五郎君 私は、この操短が次のような形で業界にいろいろな影響を残してくるのではないかと考えているわけなんですが、その点はどうなんです。  その一つは、操業を短縮したりあるいは操業を停止したりして生産を減退しなければならないほど日本では生糸があり余っているのか、市場にあり余っているか、その点が第一。  その次は、そういう操短をやって、市場の——その当時、やや下がった形だったが、その下がったという谷間に操業短縮をやることによって価格のつり上げをはかったのではないか、その点が第二。  第三は、いま操業を短縮しなければならないほど糸が余っておって、やがて春蚕の生産を目の前にして、繭の価格をたたく形をとるのではないか。  第四は、中小製糸家——施設も古い、小さいものでくるくる小さくやっている製糸たちの苦境をさらに強めて、あるいは倒産させたりなんかする波をつくるのではないか。  こういうようないろいろなことが心配があるわけなんですが、これは心配であってくれることを実は望んでいるわけなんですが、こういうことが考えられるわけなんですが、局長はどういうふうにお考えですか。
  38. 石田朗

    政府委員(石田朗君) ただいまお話がございましたように、現在の生糸需給の事情というのは、生糸があり余っているといったような状態ではないと思います。ただ、おそらく製糸業者の方々全部か、あるいは一部かわかりません、その方々に、原料が一定であるとすれば、それを平均的に使用したいという傾向のあることも、これは事実であろうかと思います。したがいまして、それが第二点に言われましたように価格のつり上げとして作用するというようなことに相なりますと、これは一つの問題であると言わなければならない。したがいまして、先ほど申し上げましたように、価格上昇の傾向に対しましては、これに対する製糸業界の協力を要請し、これに対して協力をいたされたという次第があるわけでございます。  第三の、この時期において引き上げて、出回り期の前の価格をたたくのではないか、こういうお話でございます。こういうような傾向があるのではないかということが従来かなり言われてまいっておりますが、しかし、ここしばらくの情勢は、実は、全体的に価格が強調と申しますか、じわじわ上がってくるというようないまの情勢におきまして、繭の出回り期と否とを問わず、価格がどうも上昇を続けているというのが実態でございます。したがいまして、全体としていま言われましたように操業調整等によって価格が上がるというようなことがないように、私どもとしても、今後十分に実情をながめ、必要な指導をいたしてまいらなければならないかと考えておるわけでございます。  大製糸と中小製糸関係でございますが、これはただいまの波動の問題もございますけれども、むしろもっと根本的な生産性の問題、あるいは全体が非常に多数の業者の方をかかえ、設備もいろいろな規模のものがあるという事態の中に根本的な問題が横たわっておろうかと思います。これらの問題につきましても、これは業界内部の問題でございますけれども、私どもといたしましても、十分実態を把握して、指導を怠らないようにいたしたいというふうに思います。
  39. 武内五郎

    ○武内五郎君 第二の問題の、価格のつり上げを考えてやったとすれば問題ですよ。これは具体的に政府は業者のそういう機関に対して、何か具体的な注意をやったかどうか、お伺いしたい。
  40. 石田朗

    政府委員(石田朗君) ただいまお話がございましたが、これにつきましては、政府として一つの権限を持った措置というものを実施するということが、必ずしもそのような措置を行なうことが適当であるかどうかという点については、問題があるかと思います。しかしながら、これにつきましても、業界の実際の操業等が正常に行なわれまして、価格の点におきましてもできるだけ順当なかつ波動の少ない形になっていくことが適当であると思います。これらの点につきましては、われわれとしても、従来から業界に必要な連絡をとってまいっておるわけでございます。
  41. 武内五郎

    ○武内五郎君 とったのですか。
  42. 石田朗

    政府委員(石田朗君) これにつきましては、正常な操業が行なわれるように要請をいたしました。
  43. 武内五郎

    ○武内五郎君 そういう正常な状態になることを要請したことに対して、業界では何か返事があったのですか。
  44. 石田朗

    政府委員(石田朗君) できるだけその趣旨に沿ってやりたいということでございます。
  45. 武内五郎

    ○武内五郎君 資本の自由化を前にしてそういうような操短等をやらなければならなかったという日本蚕糸業界のとった態度に対して、海外、特に日本生糸輸出市場でありますアメリカとかあるいはその他の国々では、どういうふうな影響が出ているのかどうか。ことに、最近の日本生糸産業が、あるいは欧州で足を洗ってしまうとか、アメリカでさえも漸次減ってきておる、こういうような状態の中で操短をやらなければならなかった日本蚕糸業界の態度について、そういう市場の反響というものはあったかどうか、お伺いしたい。
  46. 石田朗

    政府委員(石田朗君) ただいまお話がございましたが、何か協会において協定をして相談をいたし、それが価格に直ちにはね返ったという形であるかどうかについては問題があるかと思います。しかしながら、値段の異常な変動を防止するためにはあらゆる側面から手を打たなければなりませんので、関係各業界にそういうことを要請いたしておるわけでございます。で、このようなことがアメリカにどう影響を及ぼしたか、いま言われましたことは非常に短期の変動でございますので、これについてどうこうという結論を出すことはいかがかと思います。  ただ、これは最近におきます価格変動とは比較にならない大きな変動であったわけでありますから、その点で現在の情勢とは違いますけれども、たとえば三十八年におきまして非常な生糸価格の暴騰、暴落がございまして、それをきっかけに日本輸出生糸が非常に減少してまいったというような従来の経験に徴しましても、価格の高下、値上がり・値下がりというものをできるだけ少ない幅にとどめてまいるということが必要なことは申すまでもなかろうかと思うわけでございます。
  47. 武内五郎

    ○武内五郎君 ちょうどそのころ、アメリカ日本生糸に対する発注をちょっとやめたことがある。もしそういうことがあったとすれば、そういうことがやはり影響しておるのじゃないかと考えられるのだが、そういうことはなかったのか。
  48. 石田朗

    政府委員(石田朗君) 最近におきまするアメリカからの日本への生糸の発注はかなり小口でございますので、個々のアメリカの業者の方がいろいろな反応を示され、かつまた、アメリカアメリカでニューヨークの生糸市場がございまして、ニューヨークの生糸市場価格の変動ということが日本生糸の値段とも関連いたしますが、これまた独自の価格の動きを示しておるわけでございまして、それらとの関連におきましてただいまお話しのようないろいろな反応を示す方があろうかと思いますが、私どもといたしまして、その際特にそれを契機として発注を中止したという特別な事例をいまのところ材料として持ち合わしておらないのであります。
  49. 武内五郎

    ○武内五郎君 著しくそういう反応、反響が出ていないということは幸いだと思うのでありますが、しかし、そういうことがかなりいろいろな面で影響のあることは考えられる。私たち蚕糸振興を今日問題にするときに、やはり政府としてもはっきりした態度で臨む必要があるのじゃないかと思うのでありますから、特に注意しておきたいと思います。  六月一日から資本の自由化が行なわれ、この自由化によって日本蚕糸業に対する影響というものを政府はどういうふうに痛感しておられますか。
  50. 石田朗

    政府委員(石田朗君) 全体の自由化の問題といたしまして貿易の自由化と資本の自由化があるわけでございまして、貿易の自由化につきましては、生糸については三十七年から実施されております。それで、資本の自由化につきまして、最近、製糸がその中に入っておるわけでございます。これにつきましては、現在、日本製糸、これは生糸は世界の半分以上を日本生産いたしております。技術的にも、最近におきまする自動繰糸機の導入その他によりまして、世界的にひけをとらない姿を呈しておるわけでございます。かつまた、現在の製糸業につきましては、免許制度が確立されておりますので、その面からも正常な全体の業界の体制整理がなされ得る体制があるわけであります。その意味におきましては、最近における資本自由化によって、従来からの貿易自由化その他の全体的な国際的な問題がございますけれども、ここで資本の非常な流入が始まる、こういうようなことは私ども必ずしも考えておらないわけであります。しかしながら、日本生糸は世界の大部分を生産いたしておりますが、これが国際場裏においていろいろ競争いたさなければならないことも事実でございまして、これらの点を考えまして、今後業界体制の整備、あるいは合理化の推進、そういった施策等につきましては、十分今後配慮いたしてまいらなければならないというふうに思っております。
  51. 武内五郎

    ○武内五郎君 だいぶ局長はのんびりかまえておるようでありますが、資本流入についてそれほど心配がないようなお話なんですが、むしろ外資審議会で出した答申にはもっと心配なことが書いてある。農業関係についてちょっと読んでみても、「農林水産業等第一次産業原料を依存する産業の自由化対策は、関連する第一次産業生産性の向上、構造改善等の施策の一そうの推進とともに、企業性の確立、徹底を主眼として実施する必要がある。」ということを言って、その前に、「技術力や資本力の格差からくる外資の支配力によって、企業あるいは産業の支配が生ずるおそれがあること。」と、こういうようなことが憂えられている。だから、のんびりかまえて、それほど資本流入については御心配は要りませんというようなお話であっては、私はほんとうにのみ込めない。もう少ししっかりした考え方をお聞かせ願いたい。
  52. 石田朗

    政府委員(石田朗君) ただいまお話がございましたように、全体の自由化の問題、これはいろいろな問題をはらんでおります。これは、ただいまお話しのとおりであります。かつまた、農産物原料としたものについていろいろ問題があり得ることも、これまた事実であります。で、私どもは、製糸業等々という具体的な問題について、関係業界とも十分話し合いをいたし、十分な検討を経まして、ただいま申し上げたような、全体の技術水準、及び直接原料とそれから大部分の需要を日本国内に持っております特殊な産業体制、それから免許制度をしいております現在の法制的な体制の問題、それらを各種考え合わせまして、この問題についてこのような措置をとることが現在の業界体制に支障を与えるものではないという結論に到達いたしましたので、現在のような措置をとっておるわけであります。
  53. 武内五郎

    ○武内五郎君 この答申、それにも出ておるのですが、特に対内直接投資の自由化に対処する基本的な姿勢、これはいろいろな文句がありますが、私はこの基本的な姿勢をとらねばならない時期が来ていると考えるのですが、一体その基本的な姿勢が組まれているのかどうか、ひとつ伺いたい。
  54. 石田朗

    政府委員(石田朗君) ただいまお話のございましたように、蚕糸業界において、この問題について、各種の制度的な問題及び現実のものの流れの中で、ここにおいて非常に独自のものを持っていると考えておるわけであります。先ほども申しましたように、今後さらに農業の生産性の向上につきまして、従来からかなりの成果をあげておると思いますけれども、今後さらに一そう合理化を進める。及び、製糸業におきましても労働生産性の向上はかなり著しいものがございますけれども、これをさらに推進し、さらに構造的な問題についても今後さらに一そうの改善を加えることを配慮いたしてまいらなければならないのではないかというふうに考えております。
  55. 武内五郎

    ○武内五郎君 その具体的な対策というのはまだできないのか、それとも、もうできておるけれども、まだその発表の段階でないのかどうか。
  56. 石田朗

    政府委員(石田朗君) 先日来申し上げておりますが、農業部面におきましては、現在の技術の一そうの高度化をはかるということにつとめましす、現在すでに十年間に四割の労働の節約を見ております。かつ、今後におきましては蚕の飼育そのものも自動化する、こういうような方式を現在導入するように努力をいたしておるわけでございます。さらに、製糸の部面におきましても近代化の計画を樹立いたしまして、これによって製糸業を一そう近代化した体制にもっていこうと、こういうことで努力を進めておるわけでございまして、労働生産性の向上はやはり最近相当に著しいものがあるというふうに考えてよろしいかと思います。
  57. 武内五郎

    ○武内五郎君 資本の自由化、貿易の自由化ということで、特にそういう点での国境というものはもうなくなった。そこで、まず考えられる形は、外資が日本に入ってくる普通の形、外資が日本企業に投資する、日本企業日本で新しい企業をつくる、そういうような大体二つの形がある。そこで、日本の既存企業に外資が入ってくるという形は、大体、資本と同時に技術力を持って入って来ることは当然なんです。そういうような状態に立ち至ったときに、日本蚕糸業としては立っていけるか、あるいは、より発展のステップになるか、そういう点の見通しはどうか。
  58. 石田朗

    政府委員(石田朗君) 先ほども申し上げましたように、最近におきまする製糸業の自動繰糸機の導入ということ、これは現在すでに自動繰糸機による繰業が九〇%をこえているわけでございまして、これの技術改善の点におきましては、私ども、諸外国の製糸業に必ずしもひけをとらないと考えております。したがいまして、現在、私どもといたしましては、特に外国から新たなる技術が導入されるという可能性は必ずしも大きくないというふうに考えております。
  59. 武内五郎

    ○武内五郎君 多くないかもしれぬけれども考えられることである。そこで、まあかりに日本製糸企業だけの問題で考えてみても、今日、日本には、製糸業法というものがあって、これは農林大臣の免許がなければ新しく営業を開始することができない。また、蚕糸業法があって、種や繭の買い付けや、そういうことも簡単にできない。こういうようなことになると思うんですが、自由化の形態とそういう製糸業法、蚕糸業法と衝突することがないのか。衝突するならば、自由化が主であるとすれば、その衝突する在来法律の改正ということが考えられる。その点はどう考えておるのかどうか。
  60. 石田朗

    政府委員(石田朗君) 私ども理解いたしておりますのは、自由化ということは、貿易の自由化にいたしましても、資本の自由化にいたしましても、必ずしも向こうのものを大いに導き入れようということを直ちにもって意味するものではないというふうに考えております。国家権力をもってそのようなものを押えないということが自由化であろうかというふうに私ども理解いたしております。したがいまして、国家権力をもってこれを押えないということにいたしましたといたしましても、現在の業界体制の秩序を維持し、かつ、農業部門との関連を調整し、蚕糸業全体を順当に発展せしめるのに必要な制度につきましてもこれをやはり維持していくべきであろうか、こういうふうに私ども考えておるわけでございます。
  61. 武内五郎

    ○武内五郎君 私は、かなり入ってくるのではないかと思うのであります。ことに、私の心配するのは、百尺竿頭一歩を進めて、製糸企業ばかりでなく、繭、種に手を入れ、足を踏みつけるときが来るのではないか。いま、幸い、そこまでは考えられない。そういうときが来るのではないかと思うのですが、そういう心配はないのかどうか。そうなったら、最も弱い農業の一部門である養蚕というものは、非常に窮地に陥ることが避けられないと思う。その点はどうなのか。
  62. 石田朗

    政府委員(石田朗君) 現在、養蚕業そのものが、これは資本家で営まれておるわけではございませんで、多数の零細農民によって営まれておる。これが日本の現在の蚕糸業の実態でございます。したがいまして、ここにたとえば外国資本が入るというようなことにつきましては、私ども、なかなかそういう想定はつかないのでございます。いずれにいたしましても、現在、その問題は資本自由化の日程にはのっておらない。現在はまだそういうふうなことは考えておらない、こういうことであります。   〔理事任田新治君退席、委員長着席〕
  63. 武内五郎

    ○武内五郎君 どうも、私は、その先が心配なんだな。ことに、最近の養蚕技術というものがかなり進んできた。全く、局長でないけれども、また、けさ午前中に山添氏が言っておりましたが、日本養蚕技術が非常に進んでおる。もっとも、中共の養蚕技術なんかとは比較にならないけれども。そういうように進んだ養蚕技術であります。十年前と今日では、倍以上の生産量になっておる。そういう状態の今日の養蚕技術、これは、実に、政府あるいは研究機関のいろいろな苦心もあるし、農民の実に苦心した独創のたまものである。その技術が最近考えられることは、工業化されることが考えられる。もう畑も要らない養蚕考えられるときが来る。すでに人工飼料の研究がいろいろな方面で研究されておる。そうなったら、もう畑は要らない。畑のない養蚕が持たれると思う。これはもう工場でやっていけるのだ。そうなったら、日本農民養蚕技術から離れてしまうわけです。私はそれが必ずしも遠い将来ではないと思う。しかも、その飼料の研究によっては、桑の葉で養蚕をやっているよりもより一そうのよい糸質を持った豊富な糸量を持ったこの虫の育成できるようなことになったとするならば、これはもう大きな問題になって、農村問題ではなくなってくる。そういうことが考えられるのだが、資本の自由化、貿易の自由化に伴ってこういう形が出てくることも私は考える。一体、そこまで日本政府考えておるのか。私はこれも重大な問題だと思う。そこへ行くまで日本農民養蚕というものを守ってやらなければならぬ。日本製糸家の事業というものを育成し、発展させる対策を立てていかなければならぬ。その対策というものを具体的にやっていかなければならぬ。その具体策というものを持っているのかどうか、伺いたい。
  64. 石田朗

    政府委員(石田朗君) ただいまのお話にございましたが、私どもは、現在の養蚕業、これがやはり現在の農民養蚕業の発展の上に一つの今後の展開を持つべきではなかろうかというふうに考えておるわけであります。ただいま人工飼料のお話がございましたが、これは最近かなりいろいろな研究が出ております有名なものであります。これは農林省の蚕糸試験場で三十二年に成功いたしましたものでございます。研究的には非常にすぐれた成果でございますが、これが直ちにもって経済的に世の中に実現できるというものでは必ずしもないわけであります。したがいまして、人工飼料の研究の一部の完成ということから、直ちにもって工場養蚕、こういったようなことには相なってこないのではなかろうか。かつまた、養蚕における労働力の半分以上六割程度くらいが飼育労働、むしろ桑の労働のほうが少ないわけであります。したがいまして、それらの点を考え合わせまして、今後、やはり、農家の桑の栽培、これに基づく養蚕というものが、日本蚕糸業の根幹をなしていくべきものである。また、実際の発展もそのような方向をたどるであろうというふうに考えております。  したがいまして、ただいまお話がございましたが、今後どういうふうにやってまいるか、農業そのもの、あるいは農家養蚕業そのものにそういった問題をどういうふうに考えていくか、これは確かに大きな問題でございますが、これに対しましては、全体的な、ただいまお話にございました、次第に国境がなくなってまいりますところの経済体制にも対応できるように、この体質を強化し、生産を合理化して、従来から進めております合理化の一そうの発展をはかってまいるということこそが必要なのではないかというように考えております。
  65. 武内五郎

    ○武内五郎君 貿易自由化の問題に当面して、日本のいまの蚕糸業の世界における立場、特に私はこれを従来日本で確保しておった欧米の市場の様子から考えてみると、かつてのフランス、スイス、西ドイツ、イギリス、アメリカ等の欧米の大きな市場において、先ほど申し上げましたように、最近日本生糸の後退が著しく見られる。それに伴って、中共の糸の進出、また、韓国の糸の進出も考えられる。こういうふうな状態になってまいりましたことはいろいろな原因があるでしょうが、私は数点の問題を考えておりますけれども、まことに重大な問題でありますので、一体、蚕糸局は、そういうふうな日本の後退の状態になった原因についてどういうふうに考えますか。
  66. 石田朗

    政府委員(石田朗君) この問題につきましては、いまお話のございましたように、各種の要因が考えられると思います。その中で一つの大きな原因は、国内生糸需要、これが最近きわめて急激に増大をした。また、いま一つは、現実の日本生糸の値動きが非常に激しいということが各国の信頼を必ずしもつなぎ得なかったというような残念な点がございます。これらの点と、競争国の出現、その他各種の要因がからみ合いまして、いまお話がございましたように、ヨーロッパにおいてはかなり著しい減少を示しており、アメリカにおいても減少を続けてまいっておるという事態が出てまいっております。したがいまして、ただいまお話しいたしましたような国内需給の情勢、価格の動き及び国際競争国の存在、こういうことが原因になっておる、こういうふうに考えております。
  67. 武内五郎

    ○武内五郎君 いま局長があげた数点の原因について、たとえば内需が旺盛になった、この盛んになった内需を日本生糸だけでは供給ができない、満たすことができないというようなことは、これは大いにいいと思う。そういう需要の増大してくることはいいことだと思う。それに応じてやはり生産の増強というものが考えられなければならない。  次の価格の不安定、これが海外における大きな原因の一つになっただろうと思います。価格の不安定な状況を克服して、常に安定された、とにかく安心して買って、買いつけた糸が翌日はがたがたと下がったというようなことのない状態、また、きょうは安いから思い切ってきょう買おうと思っていると、もう明日にはそれがぐっと上がって、その翌日には買いつけもできなかったというようなこと、そういうような不安定な状態にさらしておかれた日本生糸というものは私は確かにそうだと思う。そこで、そういう不安定な価格状態を克服して安定していく具体的な対策というものが今日一体どういう形でとられましたか。
  68. 石田朗

    政府委員(石田朗君) この点につきましては、従来から、糸価安定特別会計による価格安定に努力をいたしてまいったわけであります。しかしながら、それにもかかわらず、なお三十八年のような価格の大幅な変動がございました。三十八年の場合には、これは取引所における仕手の介入による人為的な価格変動もあったというふうに現在から振り返って考えられるわけであります。これらの点につきましては、昨年、蚕糸事業団法を御制定いただきまして、その蚕糸事業団によって小幅な変動の中におさめたいという趣旨の改正が一つできてまいっております。いま一つは、先ほど来御意見もございましたが、生糸取引所における三十八年のような事態は避けなければいけないというようなことで、これにつきましても、それ以後取引所当局と十分連絡をとり、問題のあります場合には取引所に対する規制強化などの措置によりまして過当投機を防止し、これによる大幅な変動が起こらないように努力いたしているわけであります。その面におきましても、最近におきましては、取引所におけるいわゆる仕手介入という人為的な大幅な価格変動ということはあまり見られなくなるのじゃないか、こういうふうに考えているわけでございます。  しかしながら、全体の内需の強調等によりまして価格水準はかなり高いところを動いております。このような高価格水準におきましては、価格の安定等も従来のような小幅安定だけではなかなかむずかしいわけであります。その意味で、特に価格の変動に対して敏感に反応いたしまするアメリカ等の諸国に売り込みますためには、できるだけ一定の価格を動かさないで輸出をはかってまいる、こういう措置を講じてまいらなければならないのではないかということで、今回蚕糸事業団法の改正をお願いして、これによってそのような体制を整えたい、こういうことを考えているわけであります。
  69. 武内五郎

    ○武内五郎君 この前の委員会で、同僚の鶴園君が、安定対策の発動がなかった、動かなかったということを指摘しておりましたが、私はそれでその措置は正しいと思いますが、むしろそういう発動はないほうがいいんだ。ほんとうを言うと、そういう必要がないほうがいいんだ。けれども、いろいろな条件で糸価の微妙な動きの中で、やはり発動するほうが安定を強化させる、こういう考え一つあるわけです。ほんとうから言えば、そんな必要がないことが一番いいんで、要するに医者の薬が必要でないほうがその人の健康であることである。私は、そういう事態が望ましい。しかし、今度、いろいろなそういう発動しにくい状態があったと思う。法文ばかりでない、いろいろな機構上、政治上のいろいろなしにくい形があって発動しなかったのじゃないかということ、私は鶴園君が指摘したことはそこだと思う。そういういろいろな発動しにくい状態のものを清算していかなければならぬと思うんだが、私はそれは答弁は求めないが、勇気を持ってやっていただかなければならぬ。局長の勇気を要求する。いろいろなことがあるに違いない。私はその清算のための勇気を要求する。  そこで、私は、問題になると思うことは、安定した価格、ただ単に安定したというだけの表現ではこれは困ると思う。特にこれは農林の委員会で、製糸も農林で取り扱っている問題なんだ。要するに、これは農産物の一環だと、こう考えている。そこで、繭から製糸に至る生産過程で最も重大な部分を占めているのは、要するに繭だ。繭がよくできなければ、糸もよくできるはずがない。そういう一貫した農産物、その一貫した農産物価格対策というものについて私はこの際明確な態度考えていただきたいと思うのですが、ただ単に安定した安定したと、こう言うだけでは問題の解決にはならない。その安定したという形は、製糸家も損をしないように、農民生産費を補償できた形でやるということだと思う。そういう形の安定された農産物としての養蚕形態、製糸形態というものが考えられるのかどうか、ひとつ……。
  70. 石田朗

    政府委員(石田朗君) ただいまお話がございました趣旨は、価格の安定と同時に、その安定の水準というものについてこれが適正なものでなければならないというお話であろうかと思います。そういうお話といたしましては、私もそのとおりだと思っております。
  71. 武内五郎

    ○武内五郎君 私はその内容を聞きたい。生糸生産過程まで含まれるいろいろな費用の中で、製糸家も労働者もまた農民も、ひとしくその安定された形における補償が必要だ。それに対する具体的な政策を持っているのかどうか。
  72. 石田朗

    政府委員(石田朗君) この点につきましては、生糸価格は、従来はかなり変動もございます。これ自体が、全体の、あるいは国外市場における、あるいは国内市場における需要とそれからこれに対しまする供給の需給の関係もありまして、変動をいたしてまいっております。したがいまして、私ども考えていかなければならない点は、一つには、そういうような需給の中に変動いたします価格をどこに安定させるかという、かつまた、そのような需給に応じた価格形成並びにそれが安定した形でできるだけ形成されるその水準をできるだけ適正なものに持っていくと、こういうことでございます。その場合、ただいまお話がございましたように、農民所得考える、あるいは製糸の手取りを考える、こういうことは当然であろうと思います。その場合に、一つには、現在繭価格の決定においてとられておりますような、たとえば比例配分方式といったような方式がとられております。製糸養蚕の間にこれが適正に配分されるということ、かつまた、その水準におきましては、生産者としてはできるだけ所得の多いことが希望でございます。これを全体の需給の間において適正に定めますと同時に、価格水準、それから生産性の向上、この両面からできる限り生産者の所得を確保いたしていくと、こういう政策を進めてまいらなければならない、こういうふうに考えております。
  73. 武内五郎

    ○武内五郎君 そこで、伺いたいことは、繭の生産についての全国の平均された費用が投入された項目についての費用、それから製糸のそういう費用、要するに加工費、それらの一応説明をしてください。
  74. 石田朗

    政府委員(石田朗君) その点につきましては、先日、先生より御要求がございまして、繭及び生糸生産原価につきまして先ほど提出いたしました資料の中に掲記してございます。繭生産費につきましては三ページ、それから生糸の繭以後のいわゆる販売加工費、これにつきましては五ページに掲記しているわけでございます。それらを構成いたしまして繭の生産費及び生糸生産費がどのようになるかという点は、二ページに掲記してあるわけでございます。この最後の結論をもって申し上げますと、四十一年度の調査によります繭の生産費は、上繭一キログラム当たり、取扱手数料を加えまして七百四十二円九十九銭、それから生糸生産費につきましては、一キログラム当たり五千五百三円、こういう計数に相なっております。
  75. 武内五郎

    ○武内五郎君 そこで、繭の生産費の小計七百四十二円九十九銭のうちの農民の手取り、諸経費を抜いた純粋の手取りというものはどれくらい、それから生糸の場合における労働賃金の算定をどのくらいに見ているか。
  76. 石田朗

    政府委員(石田朗君) 繭生産費のうちの手取りがどれだけかというお話でございますが、この三ページの中の項目に載っておりますが、このうち、家族労働費として四百二十六円七十五銭が計上してございます。その他、資本利子とか、土地資本利子、これらのものももちろん農家の収入になるわけでございます。計算上のものでございますから、これも農家の手取りと相なるわけでございます。生産費は計算上はそのようになっております。  それから生糸の販売加工費でございますが、これにつきましては、六〇キロ、一俵当たり数字が出ております。一俵当たりの数計におきまして二万七千百九十四円、これが労働費になっておるわけでございます。
  77. 武内五郎

    ○武内五郎君 午前中の委員会小口参考人からの陳述の中で、製糸女工の賃金製糸労働者賃金について説明があった。その際に、全く驚くべきことは、これはもうほとんど平均された賃金だと思いますが、二十歳以上のところで女子で七百七十円、しかも最低賃金で五百八十円、こういうような非常に低い賃金が構成されているわけでございます。製糸過程においてそういう安い賃金でやられている。こういう製糸過程において安い賃金で行なわれているということと同時に、繭価格の算出が生糸価格から逆算されて出されている今日、繭生産に含まれる労働賃金というものがこれはもうお話にならない低いものじゃないかと思うのですが、それらについて、それが正しいのか、それからどうしてそういうふうに安くできているのか、これをどの程度まで持っていくべきであるか、最低賃金制というものはどの程度をレベルとしてやっていけばいいのか、ひとつそういう点の調査があったら教えていただきたい。
  78. 石田朗

    政府委員(石田朗君) ただいまお話がございましたが、かつてはいわゆる消費掛目方式によりまして生糸価格から逆算されて、価格の変動が全部養蚕農民にしわ寄せされるのではないかという議論がされたことがございました。現在の方式は、いわゆる比率配分方式によって製糸及び養蚕家の手取りがきまることになっております。養蚕農民価格変動がしわ寄せされるという議論は、その方式をとりまして以後はなくなっておろうかと思います。  製糸賃金及び農村の賃金、これがどの程度になるべきかというお話でございます。私ども、もちろん、実際に労働にいそしむ人の所得が増大いたすことを願うものでございます。現実には、全体の経済の情勢の中で、かつまた、個別的に労働需給との関係等におきまして、製糸労働賃金はかなり安いものになっていることは事実でございます。しかしながら、本日午前中の小口参考人の御意見にもございましたが、全製造業と、それから製糸業、この間の労賃較差は、これは年々改善を見ていることもまた事実でございます。したがいまして、私どもといたしましては、このような全体の糸価及び繭価の現実の市場における形成のされ方の中で、かつまた、他面におきましては、合理化の推進によって投下労働量が少なくて済むような労働生産性の向上によりまして、この両面から現実に労働に携わる人々の手取りが次第に多くなるように努力をいたしていくべきものではなかろうかというふうに考える次第でございます。
  79. 武内五郎

    ○武内五郎君 生産性の話が出てまいりましたが、生産性というのは、生産施設と労働、それから生産施設と労働をスムーズに快適に運転ができる諸条件、こういうものが総合されたのが生産性、そういうものが向上していくところに生産性の向上があると考える。そうすると、機械施設、これが優秀なものであり、それに労働力がスムーズに入り、運転されていく、それを動かす環境の諸条件というものがいい状態でなければならない。特に、私は、その中で労働生産性が強く働かなければならないと思うのと、その労働生産性を上げている諸条件というものは労働条件というものがよくなければならないと思う。  そういうことを考えてまいりますると、私は、実は、数日前、茨城県のある製糸工場を見に行った。最も進歩した機械なんです。HR3型、非常に優秀な機械で、普通のいままでのMR型の機械では四人か五人ついている時代にもたった一人ついている。そういうような優秀な機械が入っておる。そのある工場の食料が一日百二十円。一日百二十円で一体カロリーはどのくらいかというと、二千カロリーせいぜいという話です。肉体労働をやる人が、二千カロリーで、生産を進めていくよい条件になっているのかどうか、私は疑わざるを得なかった。そういうようなこれは優秀な工場です。優秀な工場でこのとおりな形になっている。そのほかのところを考えると、実はこれ以上のものがあるだろうと思って心配しているわけです。そういうふうに、労働生産性を上げることを労働者に肉体だけ要求するが、肉体を補充するものが足らぬ。条件が悪い。私は、今日、そのような条件がたくさんそういう労働者の周囲を取り巻いていると考えております。もし、繭の生産について、農民が自分が働いたものが返ってくる、自分が快い環境のもとに働く、こういう繭の生産条件農民が置かれるとするならば、繭の増産なんというものは易々たるものである。増産計画はこれを基礎としなければならぬ。午前中の山添氏のお話にもあり、また、小口君のお話にも出ておったように、いまの大事な問題は、だれが何といっても、りっぱな増産計画を立てる、科学的な基礎の上に増産計画を立てて、その増産計画を思い切って国の力で社会の力で進めていくという形が必要だと考える。山添氏なんかも、ことばは足らなかったけれども、私はそういうことを言っていると思う。今日、私は、もうそのとおりだと思う。増産することが第一だと思う。そうだったら、政府は一体どういうふうに考えているか。増産はまあその次だ、何とかしていまのはなやかな糸の値を持っていけるだけでたくさんだというものの考え方であったら、これは大間違いです。いまの糸の値なんというものはいつくずれるかわからない、このままでいったら。どろ船に乗って花見酒を飲んでいるようなものです。酔っぱらっていつどうなるかわからない。そういう先ほど局長も言ったように不安定な状態だ。これを克服するには、まず第一に増産することと私は考えるのだが、あなた方はどう考えるか。そして、増産するならどういう計画増産するか。その計画があったらはっきりしていただきたい。
  80. 石田朗

    政府委員(石田朗君) ただいまお話がございましたように、現在の国内需要はきわめて強調であります。増加の傾向が著しいわけでございます。すべての産物、農産物についても同じでございますが、みなこれは需要に即応して生産をいたしますことが産業発展の基礎であろうかと思います。したがいまして、現在のような需給の実勢にかんがみますと、養蚕業におきまして繭の生産増強ということに重点を置いて施策を進めるべきだというお話は、私どももそのとおりに考えております。従来、衆議院及び本委員会においても、そのような御説明をいたしてまいったつもりでございます。
  81. 武内五郎

    ○武内五郎君 計画を立てるというのですか、そういう増産計画を。
  82. 石田朗

    政府委員(石田朗君) 最初にお配りいたしました資料、今後の需要の増大及び生産の見通しについての資料を御配付申し上げてあるかと思います。このように、現在の生糸の需要が大体三十万俵でございます。十年後にはこれが大体五十万俵までふえてまいる、内需、輸出含めてですね、こういう考え方がそこに出ております。したがいまして、このような需要に即応した生産を推進いたしてまいらなければならない、こういうことを考えております。  これにつきましては、すでに中央蚕糸協会及び全国養蚕農業協同組合連合会においてそのような方向で推進をはかり、運動が展開されておりまして、これについて下から盛り上がった生産の増強についての実際の各地域における進め方が現在展開されておるわけであります。
  83. 武内五郎

    ○武内五郎君 どうも全く困った話だと思う。その増産計画が立って力強くこう推進されておるという話なんだが、これは「蚕糸統計月報」ですが、これを見てもわかるじゃありませんか。減っていっている、年々。一九五九年、昭和三十四年、このときは三十一万八千六百七十七俵。ところが、これが年々減っていっている。一九六六年は二十八万四千五百四十三俵、こういうふうに年々減ってきているんです。増産計画は一体どこへ行った。年々何%を増産して、五年とか十年とかの後には五十万俵を達成するんだと、こう言っておりますけれども、減っているじゃありませんか、事実は。一体、これはどうその増産計画を遂行していっているのか、遂行しているとすればどこに狂いがあるのか。
  84. 石田朗

    政府委員(石田朗君) 二つのことをお答えいたしたいと思います。  最近におきまするここ数年の生産状況をながめてみますと、これは農産物全体について見られるところでございますが、これは気象的条件も必ずしもよくございません。そのような諸条件のもとに、ここしばらく生産が停滞を見せておりますことは事実であります。しかしながら、この間におきまして、たとえば桑園の新値等もかなり一面においては進んでまいっております。その場合に、新植桑園は、植え付けて数年間は生産力が必ずしも高くございません。次第に生産力を発揮いたしてまいることになるわけでございます。それらのことを考え合わせますと、今後その発展の契機をはらんでおると考えますが、実は、先ほどお話しいたしました将来の見通しにつきましては、将来の需給の見通しについてわれわれとしても極力正確を期した見通しを立て、指導をいたしてまいらなければなりませんので、現在、農産物全体の需要と生産の見通しを農林省として立てつつございます。その中間段階として、昨年末にそれらの点が農政審議会の懇談会の議に付されたわけでございます。その場合、蚕糸に関係ありました分もそこで御議論に相なったのであります。そのような御議論に基づきまして算定いたしましたものを実はこの参考資料として御配付申し上げておるわけでございまして、そのような最近におきまする需要の増勢を見通しつつ、生産面について今後十分対策を講じ、このような方向に生産を推し進めてまいりたいというふうにただいま考えて指導を進めようといたしております。  先ほど申し上げましたが、全養連等におきまする対策が昨年秋に策定を見まして、本年三月、これにつきまして全養連としても各系統団体に指示され、これが下からの盛り上がりを見つつある段階でございます。
  85. 武内五郎

    ○武内五郎君 そういう下からの盛り上がりを期待しているだろうと思うのですけれども、その期待は、なかなかこれではだめなんです。幸い大臣がお見えになったのでありますが、この問題について農林行政の担当者でありまする大臣にほんとうの腹を、いま私が質問しておりますのは、日本の民族の歴史とともに発達してきた日本蚕糸業です。これが今日衰退の形になっている。欧州の市場からほとんど足を洗わされておる。アメリカ市場もだんだん減ってきておる。こういうような状態になってきて、しかも幸い内需がいま旺盛だといわれて、内需に供給が足らぬと、こういつておる状態なんですが、しかし、これは内需であるが、同時にいままでの海外日本生糸市場というものを守っていかなければならぬ。このままではもうなくなってしまう。それを私は心配していままで質問を続けてきた。  そこで、大臣に伺いたい。たとえば昭和四十二年度にとらるべき農林水産政策についてというようなパンフレットがある。それを見ても、わずか実際数行の記事よりないのであります。どこに日本の蚕糸政策がとられているのかどうか疑わざるを得ない。私は、この前、蚕糸事業団法の審議の際にも、そのことを繰り返して訴えたわけです。同じようなことをやはりやっておる。一つもないじゃないですか。一体、農林行政担当者である大臣は、日本の重要な歴史的な民族とともに発達してきたこの蚕糸業をこれからどういうふうに持っていくか、もうなくしてしまうのか、発展させる考えなのか、まずその腹をはっきり伺っておきたいと思います。大臣、どういうふうにお考えですか。
  86. 倉石忠雄

    ○国務大臣(倉石忠雄君) 養蚕を含めました蚕糸業全体についてたいへん御心配いただいておりまして、私も心から感謝申し上げておるわけでございます。  そこで、私がここへ参上いたします前にもいろいろお話し合いがあったかと存じますが、要は、蚕糸業の見通しをどういうふうに持つかということが大事なことだと思います。私どもといたしましては、私は農林行政を担当いたしておるからというばかりでなくて、日本の国会議員の一人としては、蚕糸業というものに失望感を持つような考え方は私どもは同調し得ないわけであります。御承知のように、ひところ化学繊維が非常に発達をいたしまして、もう天然絹糸の時代が去ったといわれましたのは十数年前のことであります。しかし、そのころでも、私ども日本の一番得意先であるアメリカのそれぞれの人々に会って聞いてみますと、日本生産しておるぐらいなものについては少しも需要が減退していなかったのであります。ただ、この前もここで私が申し上げましたけれども一つは、品質の改善についてもっと真剣に取り組まなければならないということと、相手方が大きな企業でやっておるのでありますから、原料である生糸の仕入れについて相場の激変があることが日本生糸の売れ行きの大きな支障でありましたし、蚕繭事業団であるとか、あるいはだんだん移り変わりまして日本蚕糸事業団というようなものができて糸価安定について力を入れるというこういう政策は、私ども、農林省に入ります前から必要な考え方であると思っておったわけであります。基本的に、いま申し上げましたように、日本もやはり一般社会が安定し、経済も伸びてまいるに従って、日本人は、食い物でいえばパンみたいなものを食い始めたにもかかわらず、世の中が安定してきたら米の需要量がふえてきましたことは、御承知のとおりであります。日本人が、家庭にあっても、あるいはよそを婦人が訪問するときでも、あるいはお祭りなどのときでも、天然絹糸による絹の着物を着る率が非常に多くなりましたことは御承知のとおりでありますし、ヨーロッパにおいてもアメリカにおきましても、やはり天然絹糸が化学繊維の糸に対して特殊な味わいを持っておることに対するあこがれは非常なものであります。われわれの努力のいかんによっては、日本蚕糸業というものは将来明るいものであるという認識に立っておりますので、そこで、私は、こういう際に空間地をほうっておくようなことなく、桑畑を増植していただいて、そして繭の生産に励み、生糸増産をし、しかも、内需にこたえるばかりでなくて、輸出を確保しようということで考えておるわけでありますが、そういう見地から申しまして、まあことしの夏蚕もそうですけれども、秋蚕の相場を見ましても、たいへん先高な状態であります。これはひとしくやはり自分の生活に即して将来の蚕糸業関係者が考えて、生糸の将来に大きな見通しを持っておるからであると思いますが、われわれはそれにこたえるようにいたさなければなりません。  そこで、どのようにして増産をするか、これは事務当局からもいろいろ申し上げたと思いますが、繭の生産対策といたしましては、蚕業改善普及事業というようなものの活動を活発にいたしまして、養蚕農家に対する適切な指導もいたさなければなりません。また、養蚕技術の普及指導ということにわれわれは特段の力を入れてまいりたいと思っております。そうして、生産増強と生産性向上の目標に向かって普及組織を大いに活用してまいりたいと思うのでありますが、それにつきましては、地方にそれぞれの養蚕家の組合等もございまして、彼らも一様にわれわれと心をあわせて増産に協力をいたすわけでありますから、こういう方面の活動とも相まって、ぜひ生産拡大をいたしてまいりたい。そのためには、四十二年度予算もさることながら、来年度の予算においてはこういうことに力を入れて私どもの所期の目的を達成されるような方向に努力をいたしてまいりたいと、こう思っておるわけであります。
  87. 武内五郎

    ○武内五郎君 大臣、まことに私もそうなんですよ。絶対滅びない。滅ぼしてはもちろんいかぬ。数千年の間日本民族を育ててきたこれを滅ぼしちゃいけない。これは滅びない産業だと私は考えております。そこで問題がある。蚕糸振興政策とか対策というものは数年前から立てられております。ところが、先ほど指摘しましたように、振興しておるんだと申しましても、減産されておる。事実において数字がこれを物語っておるのであります。これがどういうことであるんだかということを実は明らかにしていただきたかったのです。これはそういうどこかに狂いがあるんじゃないか。そういう振興対策を持っておりながら、こういう事実において数字がはっきり示すように、減産されておる。どこかに狂いがある。その狂いを指摘して摘出して、それには私は大臣に蚕糸業対策というものを明確に持っておられることをお願いしたい。これは重大な問題だと考えますので、ひとつ大臣もよくお考えになっていただきたい。  そこで、この振興の第一のステップは増産なんです。繭を中心にした増産だ。ところが、その繭は、先ほどから私申し上げておりますように、技術が非常に進歩した。大臣も、信州で、養蚕地におればよくわかると思います。実に進歩した。たとえば十年前の二分の一の桑の葉を使って倍以上の繭の生産をすることができる状態になっておる。それほど技術が進歩し、品質もよくなってきた。日本養蚕技術者の非常な研究の努力、農民の苦心、これが結びついてそういう状態になってきた。こういうようないい技術と能力を持っておりながら、生産が減退して、せっかくいままでわれわれの先輩が苦労して確保してきた欧州の市場から追っ払われてくるという、こんなみじめったらしい話はないのであります。これは何とかしていかなくちゃならぬ。これは私は大臣にそういう点をしっかりしてもらいたい。  そこで、このポイントは増産だと。増産するためには、やはり農民に働きがいのあるものにしなきゃならぬ。今日、繭の価格は、糸目がきまってから、掛け目がきまってから繭の値段がきまってくるんだから、だれが何と言ったって、逆算するのは間違っていますと言ったって、それは事実なんです。そうでなければ、繭値から先にきまっていくわけなんだ。原料としての繭の価格が初めきまって、そうして糸の値がさまってくるのがほんとうだ。ところが、いまはそうじゃない。糸の値がきまって、そうして繭の値がきまっている。これは逆だと言ったって、それはそうなっている。局長がいくらそういう御意見を言っても事実なんです。そういうような状態で、とにかく今日の糸価のしわ寄せは一番農民の繭生産にかかっている。だから、要は、結局、農民が繭を生産してああよかったと、こういう状態になっていくものがなきゃならぬ。それを保証しなければならぬ。中には、繭の二重価格制をとれという意見の人もあります。そうして繭の価格を保証し安定させることが第一だと考える人もある。私も、ある点まではそれもいいことだと思う。そういうふうな考え方の人がある。それは、理屈は、米や麦が保証されている、われわれの繭もそういうふうに保証されるのは当然じゃないか、こういう考え方なんです。  しかも、農林省が力を入れて、農基法制定以降、選択拡大の農業政策をとってきて、有畜農業を強力に推進してきた。今日の有畜農業はやはり飼料によって支配されて、その飼料がほとんど日本産ではなく外国から輸入した飼料で、一生懸命に農民が牛を飼い、豚を飼って働いたら、結局は外国の飼料に金を払っておるということになっておる。それから見たら、この養蚕というものは、農民が働いて製糸家に繭を供給し、それは日本を富ましておる。外国に払う何ものもない。このくらい国策的な政策はないと思う、これを育てることは。これを無視した農業政策というものは私はないと思う。  それで、何といっても、農民価格を保証し、働きがいのある繭価格を保証して、増産をさせる対策をとらなければならぬが、その対策が一体どこにあるか、それをはっきりしておいていただきたいし、より明確にしていただきたい。ことに私はここで取り上げていかなければならぬことは、そういう繭の値段をきめるその根本は、糸の値段をきめる関係になってくる。私はそこで問題を取り上げたい。蚕糸業振興審議会、これは繭の価格を安定させ、そうして生産の推進をはかっていくという機関のようであります。これには生産部門と価格部門の二つがある。特に私は価格部門について問題を取り上げてみたい。今日、農産物価格をいろいろな機関で決定するものがある。米価審議会もそれの一つである。その他いろいろあるが、繭の価格、糸の価格を審議する機関がこの審議会。この審議会の私は構成が問題だ。この審議会を構成しているのが製糸業者の代表、それから政府機関の代表、それから農民代表というようなことですが、政府機関代表二人、何といっても絶対多数で入っておる。この運営がまた実に問題だ。そこで審議され決定される糸価、繭価というのは、全く秘密のうちに審議されて、その内容が全然明らかになっていない。こういうような審議の方法、審議会の構成、ここに私は繭と糸の決定に対する民主的な形がくずれているということを発見すると同時に、これが非常に大きなあやまちのもとになってきておる。こういうようなことをいつまでもやっておっては、これはもう生産の増強なんというものはこれはできるはずがない。そこで、問題になることは、繭の生産者、糸の生産者、これが明らかにされていない。こういうようなことで、こういう機関でこういう運営の方法で決定することは間違いである。その点はどうなんですか。まず、間違ったことは間違ったで、はっきり直したほうがいいと思うのです。
  88. 倉石忠雄

    ○国務大臣(倉石忠雄君) いまお話しの蚕糸業振興審議会でございますが、これは、長年の間専門的にそれぞれのお立場で業界で実際の経験を積んでおられる方々、それからそういう点についての学識経験者の方々、こういう方々にお願いをして、先ほど来ここでお話しのございましたように、養蚕並びに製糸業の将来の見通しなどについてもそれぞれ御検討なさるでありましょうし、また、生産コスト等につきましては農林省の担当者がいろいろな資料を差し上げて御判断の資料といたしたい、こういうことで運営いたしておりますので、私どもはこの蚕糸業振興審議会というものはたいへん権威のある御研究をなさって政府に答申していただいているものであると存じておりますので、これはやはり蚕糸業振興についてかなりな成果をあげていただいているように理解いたしております。
  89. 武内五郎

    ○武内五郎君 局長に伺いますが、その審議会の構成、運営について明らかにしてもらいたい。
  90. 石田朗

    政府委員(石田朗君) 審議会と価格安定帯、価格の決定の関係でございますが、これはかっては繭糸価格安定審議会というのがございまして、その繭糸価格安定審議会において御議論をいただき、価格の決定のための基礎をそこで御議論いただいておったわけであります。本年三月、蚕糸業振興審議会——従来ございました蚕糸業振興審議会と繭糸価格安定審議会の二つの審議会をいわば合併いたしまして全体として蚕糸業振興審議会という名前と相なったわけでございます。  安定帯価格の審議につきましては、蚕糸業振興審議会の繭糸価格部会において御議論をいただくことになっております。この蚕糸業振興審議会の繭糸価格部会の構成は、養蚕農民代表及び製糸関係代表、それから流通関係代表、それと第三者として各種の方々が入っておられます。これらの構成によりまして安定帯価格の御審議をいただき、その答申に基づきこれを尊重いたしまして価格決定を行なっておる次第でございます。
  91. 武内五郎

    ○武内五郎君 その審議内容が明らかにされているかどうかをひとつ……。
  92. 石田朗

    政府委員(石田朗君) 振興審議会繭糸部会に対しましては、価格の審議につきましての諮問を農林大臣からいたしまして、これに対する答申を毎回いただいております。諮問及び答申につきましてはこれを常に公表しておりまして、これに基づいて後の価格決定が行なわれるというような形に相なっております。
  93. 武内五郎

    ○武内五郎君 きょうは、私は、これで保留しておきます。
  94. 野知浩之

    委員長野知浩之君) 速記をとめて。   〔速記中止〕
  95. 野知浩之

    委員長野知浩之君) 速記を起こして。
  96. 中村波男

    ○中村波男君 いろいろお尋ねしたいことがありますが、また同僚から次の機会に質問されるようでありますから、せっかくの機会でありまするから、二、三関連的に質問をいたしてみたいと思うわけであります。  今回の法改正は、国内生産の停滞の中で内需が強含みでありまして、それで、糸の価格は高くなって、輸出はこれまた伸びない、輸入がふえて輸出が伸びない、そこで、輸出の長期に安定をはかりますために事業団法の改正を行なうというその趣旨については、異議を差しはさむものではありません。問題は、事業団が輸出を安定させ、さらに伸長させますために、糸価をまず適正な価格に安定させるという機能を持たなければならぬと思うわけであります。その機能とは、具体的に言うならば、蚕糸事業団が糸を手に持つということであろうかと思うのであります。昨年の蚕糸事業団法の問題のときにも私は指摘をしたのでありますが、絵にかいたもちでありまして、しからば、いつどこでどのようにして輸出に振り向ける生糸を確保するかというこの点で具体的な対策があるならば、この際示してもらいたい。そして、とりあえず本年度はどれだけの数量をどの価格で買おうといたしておるのか、これが明らかにされなければ、この法案がいいか悪いか、また、どのような実際に実効を上げるかということは明らかにならない。こういう立場ですでに質問があったと思うのでありますが、重ねて質問をいたす次第であります。
  97. 石田朗

    政府委員(石田朗君) ただいまお話のございました、価格安定のために事業団の生糸手持ちが必要ではないか。昨年の法案審議の際にも、その旨やはり中村先生より御質問あったことも、私は承知しております。この点につきましては、ただいまの価格安定機構、事業団の中間安定も同じでありますが、これは下値のときに買い入れる、上値のときに売り放す、こういうことによる安定を考えております。その点からいたしますと、下ささえのほうがより効果的に動く、上値押えはなかなかむずかしい面があるということも、これは事実でございます。それで、現在のところ、事業団において生糸の手持がございません。その点、価格の上値押えが非常にむずかしい事態にあることも事実でございます。しかしながら、先ほど来御説明をいたしておりますように、現在の価格の動きが、市場条件の中で動いております。また、その中に生糸取引所といったようなものも価格形成に関与いたしております。たとえば値上がり等が取引所の過当投機によって激成される、こういうようなことは極力これを避けなければなりませんが、これに対しましては、たとえば昨年等におきましても、九次にわたり取引所に対する規制措置を取引所当局の御協力のもとに行ないました。そのため、昨年も仕手介入等による取引所の混乱というようなことは避け得たかと考えております。したがいまして、この上値押えのむずかしさを各種の手段によるところの指導によりましてできる限り実施いたしてまいりたいというのが現在考えておるところでございます。
  98. 中村波男

    ○中村波男君 説明としてはそれ以外にないと思いますし、そういう趣旨、そういう目的で事業団法の改正を行なわれたことはわかりますが、十億の政府が出資をして今後糸価の安定をはかり輸出の増大をはかりますために機能を持たせるような見通しというのは全くないのじゃないかと思う。たとえて申し上げますならば、今日糸価が停滞しておるというときであるならば、これは一番いい機会でありますが、それでなくても強含みのときにさらに事業団が輸出用の生糸を確保するということになれば、国内需要が強含みでありますだけに今度は国内価格がさらに輪をかけて上がりまして、政府のいわゆる物価安定、物価抑制という政策に逆行するような経過というものが出てくるのじゃないかと思う。問題は、輸出振興も長期に見れば大事でありますが、物価全体の体系の中で糸価というものも考えていくという必要があるのではないか。そういう点、この法案は、絵にかいたもちのような法案になってしまうのじゃないか、こういうことを私は強く批判をいたしてみたいと思うわけであります。  そこで、いつどのように行なうかという具体的な内容がいま局長として答弁ができなければ、かりに買うときの買い入れ価格をどういうふうにきめるのかということ、これは蚕糸業界等から政府に建議あるいは陳情、要請の形で申し立てられたものによりますと、一応の意向が明らかになっておりますが、農林大臣が許可するということになるのでありますから、まず、農林省蚕糸局としてどのような認可基準を持っておられるのかどうか、これは次官からでも局長からでもけっこうでありますが、このことをひとつ明らかにしていただきませんと、ただ大ざっぱに買い入れるというだけじゃ、これは法案の具体的な審議にならぬというふうに思いますので、質問をいたします。
  99. 石田朗

    政府委員(石田朗君) ただいまお話のございました今回の法案が、蚕糸業振興審議会の建議に基づきまして、これの法制的に構成すべき点を法律といたしたものでございます。この点につきましても、ただいまの蚕糸業振興審議会の建議の中に掲げてございますものの考え、これが現在の考え方であるというふうに申し上げてよろしいかと思います。  それで、蚕糸業振興審議会の建議におきまして、輸出生糸買い入れ、売り渡しの考え方は、生糸の製造原価を基準とし、国際糸価等の経済情勢を参酌してきめる、こういうことに相なっておるわけでございまして、そのような方針に基づいてこの糸価が定められ運用されていくというのが私ども現在考えておるところでございます。
  100. 中村波男

    ○中村波男君 関連でありますから、もう一点だけ質問しておきたいと思うのでありますが、午前中の参考人の御意見の中にも、山添参考人に私は御意見を求めたのでありますが、蚕糸業振興審議会の建議の中には、輸入生糸についても事業団で取り扱わせるようにしてくれというのがあったと思うのであります。これは、私は、国内における糸価の安定、また供給輸出の確保という立場からいいましても、これをおっ放しておいて、これを事業団の事業の中に繰り入れずして、完全な機能を発揮させるということはできないのではないか、こういうふうに考えるのであります。特に輸入生糸が安いのでありますから、一括操作をさせることによって畜産振興事業団等がとっておりますように利ざや等が出た場合には国内のいわゆる養蚕振興に使うという、こういう公的な立場でこういう問題を処理することが望ましいというふうに思うのでありますが、少なくとも蚕糸業振興審議会から強く建議された問題を政府が聞き入れなかった。それにはそれの理由があろううと思うのでありますが、その理由をひとつこの機会に明らかにしていただきたいと思うわけであります。
  101. 石田朗

    政府委員(石田朗君) ただいまお話がございましたが、輸入生糸についてもこれを蚕糸事業団に取り扱わせることが適当ではないかということが、確かにいまお話しのごとく、蚕糸業振興審議会の建議の一部として入っております。これにつきましては、私どもも、これをどのように実現いたすべきかについて十分に検討をいたしたわけでございます。実は、輸入生糸につきましては、現実の全体の量がまだ生糸全体の中から申せばそう大きくない点もございますが、輸入経路等もかなり複雑であり、かつ輸入の今後の見通し等におきましても、先ほどの山添参考人の御意見等々によりましても、今後必ずしも十分この見通しを把握し得るだけの材料を持ち合わしておらない。かつまた、現在、輸入生糸の輸入は自由化されておりますけれども、これが輸入が多くなることはまことに残念ではございますが、需給に現実的にはある程度緩和剤に相なっておるという実情におきましても、興は値段はかなり強調に推移いたしておる。したがって、輸入生糸がいま現在直ちにもって生産者に悪影響を及ぼしておるというような事態では必ずしもないわけでございます。将来長きを考えまして輸入生糸問題をどう取り扱うかというのはいろいろ検討し、これについて考えなければならない問題がございますが、これについてはなおいま少しく現在の輸入生糸の実態及び今後の趨勢等を十分ながめまして検討をいたす必要があるのではないか。一方、輸出生糸の取り扱いにつきましては、現在の輸出が非常に減少いたしており、国際的な市場を全く失ってしまうおそれさえございますので、これにつきましては緊急に手を打つ必要があるということで、今回の改正法案におきましては輸出生糸の取り扱いについて法案改正をお願いをし、輸入生糸問題につきましては引き続き検討をいたす、こういうことにいたしておる次第でございます。
  102. 野知浩之

    委員長野知浩之君) 本案については、本日はこの程度にとどめます。     —————————————
  103. 野知浩之

    委員長野知浩之君) 次に、農林水産政策に関する調査として、寒波によるかんきつ類の被害に関する件を議題といたします。  質疑のある方は、順次御発言願います。
  104. 温水三郎

    ○温水三郎君 主としてミカンの寒波による被害の関係について質問をしたいのですけれども、その前に、ミカンの増植が非常に進んでおる。このミカンの増植をやっている農家自体が、今後長期にわたるミカンの供給とそれから消費との関係等について若干の不安を持っておるのでありますが、今後かなり長期にわたるミカンの供給がどうなるか、それからその需要が国内の需要がどうなるか、さらに、他の果実、ことにバナナ等の関係はどうなるか、さらにまた、輸出関係はどうなるか、この見通しをひとつお聞かせ願いたいと思います。
  105. 八塚陽介

    政府委員(八塚陽介君) ただいま温水先生のお話のとおりに、最近のミカンの栽植は、相当大幅と言ってよいわけでございます。最近三ヵ年は、年約一万ヘクタールという速度でふえているわけでございますが、現在のミカン園がおよそ十一万ないし十二万ヘクタールということでございますから、これが成園になりまして現実にミカンを結果するというときにどういうふうなことになるだろうかということは、これは生産者の方も当然のこととして非常に危惧を持っておられることは、全く御指摘のとおりでございます。私どもといたしましては、昨年の国会で御改正いただきました果樹振興法に基づきまして、本年の三月に、そういう需要の見通しを立て、それに対して生産をどういうふうに指導していくかということで、基本方針を三月三十一日に農林大臣名でもって定めたのでございますが、やはり需要といたしましては今後なお相当伸びるであろう、これはほば確実に言い得るのではないかと思います。大体現在の需要の見通しの方法いかんでございますが、果実というものは、現在、所得がふえるに応じて一応需要もふえるという傾向に過去の趨勢から相なっておりますので、今後の国民経済における成長率、あるいはそれに基づく消費の弾性値というものから計算をいたしてみますと、やはり十年くらい先には三倍程度の伸びは考えられるのではないだろうか。それにいたしましても、いま申し上げました年一万ヘクタールのスピードで生産が伸びてまいりますと、もちろん植えた年から物がなるわけではございませんけれども、やはりここ十年先の段階では、相当供給が超過をするであろう。さらに、ミカンのようなものは当然永年作物でございますから、それから先の需給ということを考慮に入れなければならないと思いますと、やはり年一万ヘクタールの植栽のスピードというのは押えなければならないというふうな計算をされるわけでございます。そういう意味におきまして、その基本方針におきましては、今後五年間は、従来の一万ヘクタールのスピードを年六千ヘクタール、さらにその先五年は三千ヘクタール程度のスピードにダウンをさせなければならないだろうということで計算をいたし、かつ、それを示したわけでございます。  それについては、国が別に供出割当であるとか、作付割当であるとかという手段を持ち合わせていないわけでございますから、はたしてそういう数字を示しただけで実効性が確保できるかという問題が別にあるわけでございますが、ただ、従来、三十七年にやはり長期見通しを政府が行ないまして、リンゴについてそういう警鐘を打った。それに対応いたしまして、やはり新植は相当押えられてまいったという経緯もございますし、かたがた各県にやはり基本方針に基づきました果樹振興計画というものをつくらせることに相なっておりますが、そういう面におきまして指導をいたしていくということで、できるだけその生産の調整ということについては今後指導の面で力を加えてまいりますれば、ある程度の実効があがるのではないだろうかというふうに考えているのであります。  なお、需要の内訳でございますが、現在約三倍になるであろうと申し上げましたものは、加工なり輸出なり生食用なりを含めてでございますが、御承知のように、現在の段階では、大部分が生食用でございます。日本のここ十年くらい先のいわば嗜好性という点を考慮いたしますならば、やはり生食用が一番多いというふうに考えられるのであります。現在、生食、加工輸出を加えまして、一人頭にいたしますと、二十九基準年度で申しますと、ミカンで十二・六キログラムでございます。約三倍ということになりますと、三十キログラム程度、これは年間の消費量でございます。そのうちでもやはり圧倒的に国内生果が多い。加工は大体二割くらいに現在なっております。将来も加工の割合はふえると思いますけれども、御承知のように、加工と生食用との関係は、結局、加工に回すためには原料の値段がある程度押えられるわけでございますから、生食用の値段が非常にいいと、なかなか加工用に回らないということもございますが、加工も今後ある程度伸びていくだろう。ただ、加工につきましては、加工の半分程度輸出でございますから、何ぶん相手国のいろいろな事情があるので、なかなか計測はしにくい。このあたりにつきましては、むしろ経験者の意見を聞いてまいる必要がある。  生輸出でございますが、生輸出は、現在、カナダ等に出ておりますが、現在のところさらにアメリカ合衆国向けに生輸出の道が開けてまいる。これは当初でございますし、かつ、植物防疫上の問題がいろいろ制限がございますので、数量的に当初からそれほど多くを期待できないかと思いますが、いずれにしろそういう道が開けてまいるということでございます。  それからバナナについてでございますが、バナナについては、御承知のように、自由化以後、急速に一人当たりの量はふえております。しかし、現在は、国内果実のほぼ一割程度になっております。そういう意味で、特にミカンのほうがある意味ではバナナより強いという感じがいたしておるのでございます。しかし、影響なきにしもあらずでございますので、今後とも数量については慎重に措置をしてまいりたいというふうに考えております。
  106. 温水三郎

    ○温水三郎君 いま輸出関係をちょっと承ったのでありますが、もう少し詳しく答えてほしい。世界のミカンの生産国、そういうものはどこどこであるのか、あるいはまた、輸出は将来大いに伸びる可能性があるか、あるいはそうでないか、それらの点について、もうちょっとお尋ねしたい。
  107. 八塚陽介

    政府委員(八塚陽介君) 温州ミカンということになりますと、世界的には日本が一番多いというふうに考えられます。ただ、かんきつ類ということになりますと、たとえばアメリカにおきましても、カリフォルニア、フロリダ等にございます。それから地中海におきましても、ギリシャ、イタリア、スペイン。あるいは、スペインでは、最近、日本の温州ミカンが若干植栽をされております。それから南アフリカ連邦。もちろん、たとえば台湾等におきましても、かんきつ類ということになりますと、ポンカンであるとかタンカンであるとかいうことで相当あるわけでございます。ちょっといま数字がございませんが、世界で一番大きいかんきつの生産国ということになりますれば、これはアメリカであろうというふうに考えます。
  108. 温水三郎

    ○温水三郎君 輸出の見通しは……。
  109. 八塚陽介

    政府委員(八塚陽介君) 日本の国から輸出をいたします場合には、一つはかん詰めであり、一つは生果でございますが、現在の段階では、かん詰めのほうが量が多いのであります。  かん詰めにつきましては、最近ようやく年間約五百万箱という量になっておりますが、市場といたしましては、アメリカ、カナダ、それから西独、英国というようなところでございまして、今後とも努力をいたしたいと思いますが、端的に言いますならば、それほど急激にかん詰めがふえるというふうに期待するのはいささか無理であろう。しかし、着実に伸びていく。  それから生果の輸出でございますが、これは、ただいま申し上げましたように、主としてカナダに従来出ております。最近、植物防疫上の問題が一歩前進解決いたしまして、アメリカでも北の五州だけは入れてよろしいということに相なったのでありますが、その点につきましては、アメリカのカリフォルニアにおきましても日本の温州ミカンを植栽いたしております。等々で、まあまだアメリカに対する需要の将来ということについてはいまのところ実績がございませんので、もう少し努力をいたして考えていこうということでございます。  なお、ソ連等に昨年十トン程度成約があったわけでございますが、これは現在の段階では試験的輸出でございます。私どもといたしましては、ソ連は北の国でございますから、かつ、シベリアのほうは日本との交通の便利がよいわけでございますから、将来有望ではなかろうかと思いますが、値段、品物等の関係でまあいまのところは試験の段階と言っていいのではないだろうかと思います。
  110. 温水三郎

    ○温水三郎君 いまお答えになったことを、大体そういうふうになるであろうという、生産から輸出からそういうことを前提として考える場合に、これは非常にむずかしい質問だけれども、数年後のミカンの値段はどういうふうになると予想されますか、価格ですね。
  111. 八塚陽介

    政府委員(八塚陽介君) 私どもの需給見通しのときには、ミカンの価格というものは一応その他のくだものとの相対的な関係は変わらないという場合の需給はどうなるかというふうに計算をしたわけでございます。ただ、年々の価格というものをどう見通すかはなかなかむずかしいわけでございますが、四十一年産につきましては、実は四十年産に比べて約三割の増産になったわけであります。したがいまして、私ども価格については相当影響があるのではなかろうかと心配をいたしたのでありますが、まあこれはもっと下がったほうがいいという消費者のお考えもございますけれども、あまり下がらない。前年の価格の九七、八であったということでございます。一年だけの例をもってどうこうと言うのは必ずしも適切ではございませんが、四十一年産は四十年に比べて三割の増で、価格的には九七、八であったということから、それほど近い将来に価格が下がるということは一応考えられないのではないだろうかと思っております。ただ、年々の価格はどうかということになりますと、あまり確実に申し上げるのはちょっと差し控えたいと存じます。
  112. 温水三郎

    ○温水三郎君 それでは、時間もあまりないようですから、簡単に伺いますが、本年の一−二月の寒波によるところの被害で果実の損害がかなりあったと思いますが、樹体損傷による被害がかなり大きいので、三十八年にもやはりそういう被害があったと思うのですが、三十八年の被害と比較して、本年一−二月の被害、ことに樹体損傷による被害を農林省ではどういうふうに見ておられるか、それを伺いたい。
  113. 八塚陽介

    政府委員(八塚陽介君) 三十八年の被害は、やはり四十二年の被害よりはかなり大きかったわけでございます。ただいまのお話では、樹体損傷のお話でございますが、果実の被害状況から申しますと、夏ミカンを除きまして、ミカンだけについても、三十八年では約七十一億、本年は十一億、夏ミカンを加えますと、三十八年は九十億、本年は二十六億ということでございます。  それから樹体につきましては、樹体の損傷のあった面積につきましては、樹体が損傷して改植をしなければならないという、いわゆる統計調査部の「甚」という、はなはだしい被害の起こった部分は、三十八年では約八千四百ヘクタール、四十二年では四千四百八十ヘクタール、大体そういうことで、もちろん本年の被害も決して少ないというようなものではございませんけれども、三十八年に比べましては幸いにしてやや軽かったと存じます。
  114. 温水三郎

    ○温水三郎君 三十八年の被害、ことに樹体損傷の被害について何か対策をとられたと思うわけでありますが、実は本年の樹体被害に対する改植措置の関係で、農家におきましては苗木の手当て等に対する高額な助成措置を強く要望しておるので、三十八年の場合のような措置と比較して今年講じようとする措置があれば教えてもらいたい。
  115. 八塚陽介

    政府委員(八塚陽介君) ただいまも申し上げましたように、はなはだしく樹体が損傷するというような場合には、改植をする必要が当然あるわけでございます。それに対しまして、三十八年当時も当然天災融資法によるあるいはその他の公庫資金等による改植の金資の手当てをいたしたわけでございますが、さらに、三十八年におきましては、まだ苗木がつまり優良な苗木が十分に市場に出回っていなかったというようなこともございまして、共同育苗をやる場合に対して国のほうから補助するという措置がとられたわけでございます。本年につきましても、当然のことでございますが天災融資法がすでに発動になりまして、八億の融資のワクがきまっており、天災融資法によりましても当然改植用の苗木の購入等ができるわけでございますが、さらに、本年度、ただいまお話がございましたような、相当高率の苗木の購入の補助をほしいという要望が被害各県からあるわけでございます。私どものほうといたしましても、被害の状況、あるいは苗木の手当ての状況、あるいはまた、他の農産物に対する種苗購入の補助とのバランス等を検討いたしておるのでございます。すでに寒波が襲来いたしましてから相当の期間がたったのでございますが、それあたりにつきましても、検討を近く終えて、何ぶん態度をきめたいというふうに考えております。私のいまの感じでございますが、従来三十八年のような被害の場合にとっておりました共同育苗というような事業に対しまして補助をするというようなことができればというふうに現在考えておる次第でございます。
  116. 温水三郎

    ○温水三郎君 農家は共同購入に対する補助を強く希望しておるのですが、これはできませんか。
  117. 八塚陽介

    政府委員(八塚陽介君) 現在入手の手当てが相当いろいろあるわけでございますから、資金的にそういうものを利用すれば対応できるのではないだろうかということが一点でございます。それからもう一点といたしまして、先ほど来申し上げましたように、相当な勢いで年々新植がふえております。そういう意味におきまして、それだけの苗木の手当てがある程度あるわけでございますから、そういう点から考えますと、共同購入をするものについての手当てというのはまあ可能であるわけでございますが、一面、ミカンというようなものとそれから他のいわゆる農産物の種苗というようなものとのバランスから考えますと、そういう米等に対するものと同じように扱うのはどうであろうか。先ほど来申し上げましたように、果樹生産者にとっては、現在の新植の勢いでははなはだ前途不安であるという不安はあるわけでございますが、一般農産物生産者との対比から言いますと、どうも共同購入に対して補助をするということまでいまの段階ではちょっと踏み切れないという状況でございます。
  118. 温水三郎

    ○温水三郎君 そうすると、農林省としては、共同育苗に対して助成をするという方針であるかどうか、その点を、感じではどうも心もとないので、はっきり御答弁を願いたい。
  119. 八塚陽介

    政府委員(八塚陽介君) まだ形の上でそういうふうにきめておりませんので、感じというようなばく然とした申し上げ方をして失礼をいたしたわけでございますが、私の気持ちとしては、共同育苗の補助をやりたいというふうに現在の段階では考えておるわけでございます。
  120. 温水三郎

    ○温水三郎君 久保政務次官に質問いたしますが、ただいま局長の答弁のように、感じとか、そういうつもりだとかいうお話で、どうも心もとないのですが、政務次官は、これを積極的に財政当局ともみずから交渉する用意があるか、御答弁を願いたいと思います。
  121. 久保勘一

    政府委員(久保勘一君) 局長より先ほど来御説明申し上げておりますような事情でございます。しかし、たいへん御熱意のある御要望でございまするから、事務当局とも十分協議をし、なお、財政当局にも当たりまして折衝いたしまして、最善の努力をいたしてまいりたい、かように思います。
  122. 野知浩之

    委員長野知浩之君) 本件につきましては、この程度にとどめます。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時二十八分散会      —————・—————