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1967-03-30 第55回国会 参議院 農林水産委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十二年三月三十日(木曜日)    午前十時二十六分開会     —————————————    委員の異動  三月三十日     辞任         補欠選任      北條 雋八君     辻  武寿君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         野知 浩之君     理 事                 任田 新治君                 山崎  斉君                 森中 守義君     委 員                 岡村文四郎君                 小林 篤一君                 櫻井 志郎君                 園田 清充君                 田村 賢作君                 高橋雄之助君                 堀本 宜実君                 森部 隆輔君                 武内 五郎君                 達田 龍彦君                 中村 波男君                 村田 秀三君                 矢山 有作君                 渡辺 勘吉君                 北條 雋八君    国務大臣        農 林 大 臣  倉石 忠雄君    政府委員        公正取引委員会        事務局長     竹中喜満太君        行政管理庁行政        監察局長     稲木  進君        経済企画政務次        官        金子 一平君        経済企画庁国民        生活局長     中西 一郎君        厚生政務次官   田川 誠一君        農林政務次官   久保 勘一君        農林大臣官房長  桧垣徳太郎君        農林省農地局長  和田 正明君        農林省畜産局長  岡田 覚夫君        農林省園芸局長  八塚 陽介君        食糧庁長官    大口 駿一君        水産庁長官    久宗  高君    事務局側        常任委員会専門        員        宮出 秀雄君    説明員        経済企画庁国民        生活局参事官   竹内 直一君        厚生大臣官房審        議官       武藤き一郎君        厚生省環境衛生        局乳肉衛生課長  恩田  博君        農林省畜産局牛        乳乳製品課長   松本 作衛君        農林省畜産局牛        乳乳製品課課長        補佐       田中 宏尚君        農林省畜産局衛        生課長      高村  礼君    参考人        北海道東北開発        公庫総裁     酒井 俊彦君        フジ製糖株式会        社社長      榊原 正三君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○参考人出席要求に関する件 ○農林水産政策に関する調査  (乳価問題等に関する件)  (病菌家畜に関する件)  (甘味資源に関する件)  (長崎干拓事業に関する件)     —————————————
  2. 野知浩之

    委員長野知浩之君) ただいまから農林水産委員会を開会いたします。  参考人出席要求に関する件についておはかりいたします。  農林水産政策に関する調査のうち、甘味資源に関する調査のため、北海道東北開発公庫総裁酒井俊彦君及びフジ製糖株式会社社長榊原正三君を本日参考人として出席を求めることにいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 野知浩之

    委員長野知浩之君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  4. 野知浩之

    委員長野知浩之君) 久保農林政務次官から発言を求められておりますので、これを許可いたします。久保農林政務次官
  5. 久保勘一

    政府委員久保勘一君) このたび農林政務次官に就任いたしました久保でございます。浅学非才まことに微力でございますが、委員各位の御協力をいただきまして職責を果たしたいと存じますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。     —————————————
  6. 野知浩之

    委員長野知浩之君) 農林水産政策に関する調査として、乳価問題等に関する件及び病菌家畜に関する件を一括して議題といたします。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  7. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 乳価について、特に原料乳関係価格中心としてお尋ねをいたしますが、最近の酪農というものを展望いたしますと、生産はきわめてその伸び停滞をし、一方、需要は予想を上回った拡大傾向をたどっておる。したがって、国内で必要とする乳製品の不足を補うために、アメリカを中心とする諸外国乳製品の輸入にまたなければ国内の需給の調整ができない。しかも、諸外国といえども、乳製品のストックは、その傾向停滞の方向にある。酪農家が購入するえさ価格の値上がり等々、あらゆる角度からいって、酪農は、政府のキャッチフレーズである選択的拡大というにかかわらず、現実は崩壊寸前にあり、危機的様相をあらゆる面において呈していると言わざるを得ません。  その間にあって、特に原料乳中心とする主産県が期待しておった不足払い制度が去年の四月から発足をしたのでありますけれども、この一年の実施の経過を顧みますと、酪農民にとっては期待に反する怨嗟の声がちまたに満ちておる実態であります。したがって、私は、そういう情勢の中において、法律の定めるところによって政府が四月一日に価格を告示するその直前の段階において、これから具体的な原料乳中心とする保証価格、あるいは安定指標価格、あるいは取引基準価格焦点をしぼってお尋ねをいたしたいのであります。  まず第一に、政府畜産振興審議会試算として出された原料乳保証価格にありますところの基礎的な資料である一頭当たり平均乳量についていささか納得しかねる点がありますので、この点をお尋ねをいたしたいのであります。これは、時間を省略して、政府審議会答弁をした内容を繰り返し確認をいたしますと、四十年度の平均乳量脂肪率三・二に換算して四千五百七十一キログラムと発表しておられる。四十一年度に対しては四千八百六十五キログラムという平均乳量を出しておるのでありますが、この平均乳量が私としてはこの一年間の間に前年に比べて五%も上がっているということが納得ができないのであります。したがって、この背景となる全国平均乳量昭和三十六年度から年度別に一体どういう数字を示しておるのか、まずこれからお伺いします。
  8. 岡田覚夫

    政府委員岡田覚夫君) 四十年、四十一年の数字につきましては、お話のような形でございまして、四十一年は高くなっております。三十六年以降の統計をただいま持って参っておりませんので、さっそく調べまして御報告させていただきたいと思います。
  9. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 それじゃ、私から申し上げますから、違っておるならその点を訂正してもらいます。一頭当たり平均乳量は、三十六年度は四千三百七十六キログラム、三十七年は四千四百二十九キログラム、三十八年は統計の時期の切りかえでこれは統計に出ておらぬことは御承知のとおりで、したがって、三十九年度は四千五百四十五キログラム、四十年度は四千五百九十二キログラム、四十一年度は四千八百二十六キログラム、こうなっておるはずであります。後刻調べて答弁を得ればけっこうでありますが、これが違っておればあとで訂正する、違っていなければそれで私はこの数字基礎質疑を進めたいと思います。  この政府の発表した平均乳量で毎年の傾向というものをながめますと、三十七年度は前年度に比べて一%のアップであります、乳量が。三十九年は、これは一応三十八年度を統計上ブランクとして見まして、二カ年分として二・六%の乳量アップを示しておる。四十年度は三十九年度に比べてやはり一%の乳量増加を示しておる。しかるに、四十一年度は突如として五%の乳量の増大を来たしているということは、もとよりこれは作為的なものだと私は解釈するのではありませんが、これだけ累年の一%程度乳量上昇が、四十一年度に限って例年上昇率を四倍以上も上回ったという根拠は一体どこにあるのか、これを御説明願いたい。
  10. 岡田覚夫

    政府委員岡田覚夫君) この点に関しましては、実は、乳量が非常にふえておるというふうな点から、統計調査部におきましてもいろいろと検討をしたようでございます。その結果として発表されたわけでございます。おもな理由といたしまして考えられますことは、要するに低乳量の牛が淘汰されておるというふうなことが最大の原因ではなかろうかというふうに思うわけでございます。
  11. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 そんなことで例年の四倍以上も一年の間に急激に乳量がふえるはずはない。それは四十一年度に限った特殊現象でない、局長の言うその事態は。これは通年の現象であって、何ら四十一年度に突如として出たそういう特殊現象ではない。この件については納得のできない答弁である。統計からいっても、乳用牛の三十九年から四十年度、四十年度から四十一年度の頭数は、伸び率がむしろ低下している、頭数が。乳量だけが特に上がるという理由はない。多頭化が進んだという傾向から見ましても、三十九年は一戸当たり乳用牛飼養頭数は三・一、四十年度は〇・三%上がって一戸当たり三・四、四十一年がわずかに〇・二上がって三・六ですよ。多頭化傾向も、三十九年から比べれば、四十一年度はむしろその多頭化傾向停滞傾向にある。どこから見ても、平均乳量が突如として四十一年度で従来の伸び率の五倍近く伸びているという理由は何もない。専門的な立場からもっと納得のいく説明をしてもらえませんか。この平均乳量がすべてを支配するのですよ、生産費の。分母ですからね。
  12. 岡田覚夫

    政府委員岡田覚夫君) お話のように、頭数増加率は非常に低くなっておるわけでございます。それに比べまして、全体の乳量増加しておるわけでございますから、全体の乳量と比較してみますと、結局、一頭当たり搾乳量がふえておるということになるわけでございます。したがいまして、先ほど申し上げましたように、低能率牛が処理されておるとか、または老齢牛が減っておるということになるわけでございます。
  13. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 とにかく、そんなことではこれの説明にはならぬですよ。要するに、老廃牛を処分する、能率の低いものを早く処理をすると。能率のいいのも処理しているのはあなた御存じでしょう。芝浦屠場へ行ってごらんなさい。私も行って見て、あの雑牛の中に妊娠牛がどんどん運び込まれておる。決して低能率の牛じゃないですよ。それなら逆に高等登録の牛がどれだけ一年間で伸びておるか、そういう統計がありますか。
  14. 岡田覚夫

    政府委員岡田覚夫君) 高等登録数字につきましても、いま直ちに数字を持っておるのでございませんので、後刻報告をしたいと思います。
  15. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 もう私はこれ以上この点は繰り返してお尋ねしません。  それでは、この生産費調査は、御承知のように、北海道から内地六県——東北鳥取長野等を入れた地帯の生産費ですね。全国統計ではこういう傾向にあるが、この生産費対象一道六県についても同様の傾向にあるのは、まあこのことを三十六年から一道六県の統計を掌握しておられれば、それを明らかにすると、また全国平均乳量の突然変異が一応納得できるのですが、これはどうですか。
  16. 岡田覚夫

    政府委員岡田覚夫君) 一道六県につきましては、昨年から統計をとっておるわけでございますから、その前はございません。全国的な一頭当たり乳量につきましても、やはり高くなっておるわけでございます。
  17. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 どうもわからないですね。それでは、私は焦点をしぼります。政府がそういうデータがないなら、ないことを聞いたってしようがない。  それでは、一道六県の県別平均乳量を四十年度、四十一年度について明らかにしてください。
  18. 岡田覚夫

    政府委員岡田覚夫君) 県別数字は実は出しておらないわけでございます。全国それから一道六県につきまして出しておりますけれども、県別には出しておりません。
  19. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 何を言うのですか。一道六県の内訳がなしに一道六県というデータが一体出ますか。
  20. 岡田覚夫

    政府委員岡田覚夫君) 一道六県につきましては、生産費調査農家全体をまとめてとっておるわけでございますから、県別統計はとっておらないわけでございます。
  21. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 私はきのう統計調査部にこの資料を求めて、持っているんですよ。大体、全体の統計といっても、突如として全体が出るわけはないでしょう。そんなくだらないことを言わせないでくださいよ。個々のデータがあって全体が出るんじゃないですか。全体というものは何か空中から舞いおりてここに突如として出たのですか。これは、一道六県の各道県別の四十年度、四十一年度の平均乳量がこういうものであるから、冒頭に私が申し上げた乳量になると、こういうことの内訳を聞いているんですよ。
  22. 岡田覚夫

    政府委員岡田覚夫君) 生産費調査基礎になっているのは、一道大県全体の集計をいたしているわけでありますから、したがいまして、県別にどうかということは集計をいたしておらないわけでございます。
  23. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 いや、繰り返しますがね。おかしいじゃないですか。私はこんなところで道草を食いたくないが、一道大県の具体的な数字からいって全体の乳量がふに落ちないから聞いているんですよ。そんな納得いかぬことで国会審議が十分尽くされたとは言えないじゃないですか。生産費調査基礎資料を聞いているんですよ、一道大県の。北海道は四十年度は平均乳量幾らですか。青森県は幾らです。岩手県は幾らです。鳥取県は幾らです。長野県は幾らです。それの加重平均が四千八百キロになり、前年度は四千五百キロということになるはずですよ。
  24. 岡田覚夫

    政府委員岡田覚夫君) 一道大県で三百七十四戸の戸数集計をいたしているわけであります、生産費調査におきましては。その一道六県の三百七十四戸から出しました乳量というものがあるわけであります。三百七十四戸を集計いたしましてこの乳量を出しておりまして、県別には実は計算をいたしておらないわけでございますので、その点で生産費調査のものといたしましては、ただいま申し上げたような程度になっているわけでございます。
  25. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 資料要求をいたします。ぜひきょうということに間に合わなければ間に合わなくてもいたし方がありませんが、一道六県を合わせて三百七十四戸の対象調査というデータがあるわけでありますから、それを県別仕分けをして出せばできるのでありますから、四十年度と四十一年度の平均乳量北海道内地六県についての内訳資料を要求いたします。
  26. 岡田覚夫

    政府委員岡田覚夫君) それは集計をいたしまして後刻提出いたします。
  27. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 北海道青森岩手、山形、福島、長野鳥取飼養戸数飼養頭数を見ましても、四十年度は、三十九年に比べて一戸当たり飼養頭数が一一・二%ふえております。しかるに、四十一年度は、四十年度に比べてわずかに三・六%しかふえていない。こういう大きな動きの中で、一道大県の平均乳量が、こんなにべらぼうに、例年一%ずつしか前年に比べて平均乳量が上がらないのに、突如として四十一年度は五%上がった。上がったその四千八百何キロというものが分母になれば、やはり生産費というものは相対的に低くなる。こういう疑問を国民は素朴に持つわけですから、その疑問にこたえる明らかなデータをもっとはっきり示してもらいたい。こんなことではだめですよ。こういう大きな価格を決定する重要な資料について、何もそういうものに明快に答弁をする準備がないということで十分に畜産行政を遂行できますか。  次に伺いますが、これも非常に素朴な疑問を持つのでありますが、この一道六県の酪農家が投下した労働時間でありますが、この労働時間が、政府説明によりますと、昭和四十年度は百キログラム当たりで八・八六時間を投下したことになっておる。しかるに、一年たった四十一年度の原生産費資料は、七・六四時間と、実にこの一年の間で投下された労働時間が絶対時間で一・二二時間圧縮されておる。その時間が圧縮された割合は一四%に達しておる。これは一体どういうことですか。どういうふうに解釈しますか。
  28. 岡田覚夫

    政府委員岡田覚夫君) 百キログラム当たり計算をいたしておるわけでありますから、乳量がふえますと、当然労働時間はふえてまいる、こういうことになると思うのでございますけれども、先ほどの乳量がふえた問題と関連しておるわけでございます。
  29. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 それでは全国で百キログラムあたりの生産費で、三十六年は何時間投下していますか。三十七年は何時間投下しておりますか。三十九年は何時間投下しておりますか。四十年、四十一年はいま取り上げたとおり。それをはっきりしてください。
  30. 岡田覚夫

    政府委員岡田覚夫君) 一頭当たりの時間はございますが、百キログラム当たりのは別に計算をいたします。一頭当たりといたしましては、三十九年には四百八十二・一時間でございます。四十年は四百五十九・六時間、四十一年が四百十四時間ということになっております。
  31. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 原生産費乳価決定基礎的な資料でありますから、この次に、百キログラム当たりの推移をよく掌握しておられると思うのですが、それを明らかにする資料も追加して出してください。何といいましても、私がおかしいのは、今言った原料乳試算県である——政府がそう言うのですが、私はこの一道六県はその対象としては適正ではないという意見がございますが、きょうはそんなところにさかのぼっている時間がありませんから、省略しますが、一道六県の生産費調査対象の一戸当たり飼養頭数を見れば、三十九年は三・四頭、四十年は三・八頭、四十一年は三・九頭、どう見ても三十九年から四十年の伸びと、四十年から四十一年の伸びでは、乳量がこんなにふえるはずがない、平均乳量が。平均乳量をとにかく多くすることは、相対的な生産費を低下させますから。新聞発表等の記事を見れば、近代化が進んだ結果であるということを言うておるそうです。どこにもこれだけの平均乳量が突如として累年増加を五倍も上回る納得するに足る基礎的な資料が私にはない。したがって、これがもしも取り上げた基礎的な平均乳量の絶対量に訂正を加えるというようなことになったら、これは生産費そのものが大きく変動する。大きく変動する基本的な要素であるから、私はそれに対して政府が明快な答弁をすれば、それなりに納得する前提で伺っているのです。どの個所から聞いても、あなたは納得する答弁をすることができない。大きな疑問を持って次に進みます。  自家飼育労働ということでありますが、これは一体三十六年からどういう投下の時間的な経過をたどっておりますか。最近は三・三時間というものが出ておる。自分でえさをつくるために投下された労働時間が、百キログラムを生産するために、三十六年は何時間間接労働が投下されておるか、三十七年はどうか、三十九年はどうか、四十年、四十一年はどうか。ついでに聞きますが、そのうち一道六県の県別内訳はどうなっているのか。
  32. 岡田覚夫

    政府委員岡田覚夫君) 三十六年からの統計は、実は持って参っておりませんので、その点もあらためて提出いたしますので、御了承願いたいと思います。
  33. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 いずれ資料を出すというんですが、しかし、もうあすの晩告示をせにゃいかんでしょう。そういう国民に深い疑惑を持たせたままでいいですか。私は、従来の傾向からいって、あまりに四十年と四十一年のその動きが激しいから、従来の傾向を知るために伺っている。何もそういうことについて明快な答弁がない。  次に進みます、資料を出すというから。来年のこともありますから、これはわれわれ国会の場で審議をするには今後とも貴重な重大な基礎資料でありますから、これも先ほどの資料とあわせて今後また不備な説明があれば、それを証明するに足る資料を全部出してもらいます。私、どうも納得がいきませんのは、主体労働付随労働というものを分けたことです。確かに酪農に投下された主体家族労働時間というものに評価がえをしたその単価が、五人以上規模の全製造業労賃をとったということは、この不足払い法案を本院で審議をいたしました際に、当時の赤城農林大臣が、原料乳地域における他産業労務者労賃評価がえをするという、過去のそういう答弁に沿うて単価を出したことは、一歩前進としてこれは認めるにやぶさかではありません。しかしながら、この労働が、主体労働付随労働というのは一体何です。まあ、聞けば、いろいろ統計に出ておるものをこう仕分けをしたという答弁があるでしょう。そんなへ理屈をきょう聞く余裕を私は持っていない。酪農家酪農に従事する際に、一日のうちにですよ、これは主体労働だから百七十円の評価がえだと、これは付随労働だから百七円でいこうじゃないかと、そんな器用なことを一体あなた方は——霞ケ関では分類できるでしょう。酪農家はそんなことを考えてもいないし、全然そういうことは常識外の話です。非常識きわまりない分類のし方なんです。えさをつくるために投下した労働時間は、ニコヨン労賃計算をしておる。えさをつくる労働というものはどういう労働だか、あなた知っていますか。酪農中心的な基幹的な作業の一部門ですよ。それらを全部赤城大臣答弁したものの中からずらして、依然として去年と同じような農村の日雇い労賃評価をしておる。そんなことでは国民は絶対に納得できない。五人規模製造業労賃というあなた方がとったその基準は、政府分類したように、あるいは主体労働付随労働があるかもしれぬ。しかし、そんな分類なんかはやっていませんよ。全部突っ込んで五人規模以上の製造業労賃として出しておる。採用する単価はそっちのほうをとりながら、応用する酪農労働というものを主体労働と分けたり付随労働と分けたり、そういうことはこれはナンセンスなんです。予算委員会の都合で大臣が来ていないから、久保次官に伺いますが、米価生産費調査でも、こんな分け方は、もうやるなんていうことは考えたこともないし、政府当局が考えてもいない。稲作労働時間に対して、種子の予措から苗代一切、本田起耕、元肥、本田整地、田植え、追肥、除草、かん排水管理、防除、稲刈り、稲干し、稲こき、もみ乾燥、もみすり、その他すべて畜産局によれば主体的労働付随労働分類するかもしれないが、そんなことはもとより米価の場合にはやっていない。酪農だけですよ、そんな主体労働付随労働なんて。観念の遊戯なんだ。米価だって間接労働時間がある。自給肥料生産自給諸資材の生産、水利、賦役、建物の修繕農具修繕農具の取りかえ、自給畜力等々を全部同じ評価がえをしておるんですよ。いいですか。同じ政府の中で、そんなわけのわからぬ単価をかえるために分類するなんていうことは、初めてなんです。むしろこういうことは全部同じ単価計算すべきものである。局長以下はどう考えようと、次官はより高い次元でものを考えてください、常識的に。私は素朴なことを言うているんですよ。知能犯的な考えはやめてくださいよ。  そのほかに私たちの考えるのは、この酪農に従事する酪農家が投下した労働時間のうちに、あなた方が調査をしてない、大きな要素を見落としておる、意識的にか無意識的にか。それは、管理労働頭脳労働事務学働である。少なくともあなた方が調査した生産費は、農家の記録によって報告されたものの集積であるはずだ。農家が簿記をつける、どこに時間が入っていますか。ないでしょう。酪農に従事する農家技術講習を受ける、どこにその時間が入っていますか。そういう酪農に従事する者の投下した頭脳労働管理労働事務労働というものを一切投下した労働時間から除外をしておる。むしろこういう不足なものこそ、二年にわたってあなた方が調査をしようとすればできるはずだ。そういうものをしないで、実労働をこまかく付随労働とかあるいは主体労働とか分けて、そうして単価を変える。単価を変えなきゃまだいいですよ、分けることは勝手ですから。従主体労働、主体学働とか何とか、いろいろ三つにも四つにも分けたっていいですよ。分けてもいいですが、酪農をやる人がですね、これは五人規模以上の評価がえの労働である、これはニコヨン労働である、そんなことが一体できますか。あくまでもこれは全体の労働というものを全体で評価がえをすべきものなんだ。これは米価審議会でももう試験済みの問題だ。いまここで歴史の歯車を逆転するような議論は私はこれ以上したくない。久保次官、どうです。
  34. 久保勘一

    政府委員久保勘一君) お答えいたします。  先ほど来、乳価の決定に対しまする労賃の問題について御意見を承ったのでありますが、御意見にもありますように、乳価を決定いたしまするいろいろな要素の中で、労賃をどのように規定するか、基準をどこにとるかというようなことは、非常に重大な要素であると存じます。従来、御了承のように、農村における日雇い賃金を基準にして算定をいたしたのでございまするけれども、いろいろ委員会等におきまする御意見もありますし、また、審議会あたりの意見もございます関係もありまして、この際提案いたしておりますように、御説明申しておりますように、一部五人以上の一般の製造工場の労賃基準をとる、一部をやはり従来どおり付随労務として考える、こういう程度で今回の算定をいたしておるわけでありまして、このことがいいのか悪いのかという問題については、いろいろと御意見もあろうと存じます。また、どの程度までの作業が管理的あるいは技術的で、あるいは専門的であるのか、どの程度のどういう作業が付随的な労務であるのかという区分等についても、いろいろこれは御意見があると思うのです。また、それを分類することにつきましても、技術的にもいろいろ問題があろうと思いますけれども、まあ今日のところは一応こういう八対二というような基準にもなっておりますような関係もありまして、こういう基準のとり方で算定をしたいということを御了承願いたいと思います。  なお、将来の考え方に対しましては、十分御意見も承りまして、今後さらに私どもといたしましても研究すべき課題ではないかと、かように存ずるわけであります。
  35. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 それでは全然答弁のていをなさぬと思う。矛盾を明らかにいま次官も認めておられる、答弁の中に。将来にわたって調査研究をするなんて、そんなことじゃいかぬのです。すなおにそういうあやまちを反省して、あさって告示する価格算定には、全体を評価がえする。五人規模以上に。赤城大臣国会答弁した線でやる。しかも、畜産振興審議会の答申には、間接労働であるところの自給飼料に投下した労働時間は入っていない。これも当然えさをつくるために投下した労働時間は直接労働と等質の労働である。私が管理労働頭脳労働と言ったのは、この農林省の統計にはもちろん入っていませんが、これは将来の課題として調査をし、それをやはり尊重すべきものであるということで、今度の告示までこれを入れてくれという、いまのような差し迫った次元でこれを実現するように言うているつもりじゃないのです。それは来年あたりから調査を整理した上で取り上げてほしい。しかし、一歩譲って、そういう頭脳労働というものは来年の保証価格算出のデータに入れるということをお約束願って、ことしの四十二年度の保証価格の算定には付随労働とかあるいは自給飼料投下労働というものを区別をすることはしない。同じ評価がえの単価でやる。百七十七円幾らですか。そういうことぐらいはこの機会に大臣は明快た答弁をする責任がある。従来の公約ですよ、これは法律を通すときの。
  36. 岡田覚夫

    政府委員岡田覚夫君) ただいま御質問の労働問題について、このように分けた理由につきまして若干御説明申し上げたいと思います。
  37. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 いや、それはいいです。時間はないし、そういうことを私は聞くつもりはないです。
  38. 岡田覚夫

    政府委員岡田覚夫君) いまの問題につきましては、こちらの考え方を申し上げたほうがいいのではないかと私は思うわけでございます。そこで、頭脳労働の中には、自給飼料の労働と飼育管理労働と、大別して二つに分けられるわけでありますが、飼育管理労働の中には、一つは熟練性のあるものとそうでないものというふうに分けられると思うのでございます。そこで、自給飼料につきましては、これは一般の農業と同じように考えまして、日雇い労務者というものを考えておるわけでございます。飼育管理労働につきましても、その中を分類いたしますと、先ほど申し上げましたように、熟練度の必要なもの、経験の必要なものというふうなものが分けられるわけでございますから、そういうものを拾いまして、もちろん年間拘束性があるということで飼育管理労働というものは自給飼料の労働とはやや異質的なものである。年間拘束をされた労働の中で、熟練度のあるものと熟練度を必ずしも要しないものというふうに分けまして、それに対しまして、熟練度のあるものにつきましては五人以上の製造工場の労賃を適用する、こういうふうな考え方に出ておるわけでございまして、一般の農業労働というものと同様に考えられるものにつきましては、これは農業の日雇い労賃を使うというふうな考えに立っておるわけでございます。
  39. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 あなたそんなへ理屈を言われれば、私も言わざるを得ないのだが、五人規模以上の労賃の中に、熟練度のあるものと、あなたの言う未熟な労働というものは、どうこれを分析していますか。熟練度のあるものは、五人規模以上は二百八十円になっていますよ、一時間当たり。それを書けますか、それじゃ。
  40. 岡田覚夫

    政府委員岡田覚夫君) ただいま申し上げましたような性格的な分類をして労賃評価がえをいたしたわけでございますが、酪農労働がしからば一体どのような労働と同じであるかということになりますと、はなはだむずかしいわけでございます。したがいまして、これは一般的に五人以上の製造工場の労賃ということで評価がえをするのがいいのではないかと、こういうふうに考えておるわけでございます。
  41. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 そんなことで分けることを理由づけられないんですよ。これは、速記録もあとで出てくるが、それを読んで、国民が、なるほどと、渡辺が何かこういろいろ質問しているが、局長さんの言うほうがもっともじゃわいと思いますか。もっと素朴に酪農というものを見てくださいよ。どこに線を引きますか、それじゃ。そういう特殊技術を必要とする労働はどこにその線を引きますか。科学的に証明できないでしょう。私はそういうことでやりとりする時間を持っていないから聞かない。こう言えばああという想定の答弁もあるでしょう、当然これは聞かれる中心点だから。そういうものじゃないんだ。酪農というものの中に、きょうの午後三時から四時までは日雇い労賃だわい、朝から二時までは主体労働だわいと。それっ、いままでは百七十円、三時からは百七円だ、四時からまた百七十円だわいと、そんな器用なことは霞ケ関の考えですよ。酪農の実態に直結した思想じゃない。そういう点を私は局長から聞いているんじゃない、あとからつけたへ理屈を。結果から出たものと推測するから。私はこの点にもっと重点を置いて、農林大臣は都合があって来れないことは承知ですから、次官に聞いているんですよ。あなたも農民代表でしょう。郷里へ帰って十分説明できますか、こんな局長答弁を。もう少し大臣の立場で答弁してください。
  42. 久保勘一

    政府委員久保勘一君) 先ほども申し上げましたように、乳牛を飼育管理いたしまする作業の内容を、具体的にどういう作業がどの部類で、どういう作業がどの部類かということを科学的に合理的に分類仕分けますことは、非常に至難なことだと存じます。したがいまして、立場によりましてその分類について、仕分けについて、いろいろ御議論のあることは、これは当然でございます。しかし、私どもといたしましては、先ほどから申し上げておりますように、従来は農村における日雇い賃金に全部基準を置いて算定をした。今回はそういう点の不合理を認めておりますために、作業の内容を比較的に分類できる範囲において分類をいたしまして、こういう数字を算出いたしておるわけでございます。  なお、また、将来の問題につきましては、いろいろ御意見の趣旨等も十分私どもとしては検討さしていただきたい、かように存ずるわけであります。
  43. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 この審議会において国会議員をはずした。これは大臣が委嘱するのですから、はずすも入れるもあなた方の権力でどうにでもなる。国会審議する場があるということがその一つの理由のようです、予算委員会での政府側の答弁では。それなら、審議会審議会として、きょうしかないんですよ、これを国会の場で責任をもって審議をするのは。そういうときに、これが明らかに矛盾しておるということをあなたお認めならば、そのあやまちを改めるにはばかるところはないわけですから。赤城農林大臣は、主体労働に限って原料乳生産地帯の他産業労務者の賃金に評価がえするとは言いませんでしたよ。投下された総労働時間、これについて原料乳生産地帯の他産業労務者労賃評価がえする。国民は、素朴に働いた時間について世間並みにわれわれの労働政府評価してくれるのだろうなあと期待しておる。それをせっかく八割程度まで認めながら、あとの二割を去年と同じように選択的拡大と称する酪農民に対してニコヨン扱いをするということは、これは何たる失政ですか。これこそがたださなければならない基本的な問題だと思うのです。次官、どうですか。将来——当分といったって、十月から消費者米価を上げるような政府だから、いつが将来かわからないが、あすまでは将来と見て、今度の四十二年度の原料乳価格を告示する段階でこの点を整理をして、全体の投下された労働時間、直接労働及び間接労働を含めて、米価と同じように、そういう主体とか付随とかいうことをなくして——これは米価審議会で何回も整理をして、こんな問題はだれ一人からも出たことのない問題ですよ。それをここで議論をすることは私はたいへん残念ですが、いまからでもいい、国会におけるこの審議経過からいっても、これは訂正しなきゃならぬ、こういうふうにお考えになりませんか、四十二年度の価格を告示するにあたって。
  44. 久保勘一

    政府委員久保勘一君) 先ほどから申し上げておりますように、仕分けますことは非常に困難な作業である、かように考えます。したがって、仕分けた結果についていろいろな御議論のあることは、これは当然のことだと思うのです。しかし、今日の段階におきましてこれを訂正するということはできません。ただ、将来の問題としては、やはり乳牛管理飼育の技術の向上等についてもいろいろと飼育農民も研究工夫されておりますし、また、私どもとしましてもいろいろとそういう技術的な高度の飼育管理についての指導もいたしておりまするから、そういうものがどういう形で実際の飼育の上に技術的に管理の上にあらわれてくるか、それが作業全体にどういう部面を占めるか、そういう点も十分今後の推移を見まして研究いたさなければならない、かように存ずるわけであります。
  45. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 明確にできないという答弁をした限りは、私は断じてこの問題から引き下がることはできない。政府の与党である自民党がこの点を問題にして、政府原案を修正する意見を出しておる。それを完全にはねつけますね。一切政府原案を無理を通して実施しますね。
  46. 久保勘一

    政府委員久保勘一君) ただいま御発言がありました自民党から修正云々の問題については、私どもいまの時点では存じておりませんので、それについてのお答えはいたしかねますので、御了承を願います。
  47. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 申し出があろうがなかろうが、これはきのうの農政研究会の総会で出ている明らかな回答です。だから私は取り上げておる。個人的に聞いたとかそういう問題じゃない。いいですか。野党が言うから拒絶する、与党との話は裏でやって、そうしてここで拒否したものを内容に取り入れるというようになったら、これは大問題ですよ。私は、それはそれとして、この問題については絶対納得できない。久保政務次官を相手としては不足であります。これは大臣出席したときに大臣お尋ねをします。投下した直接間接を含めての意見ですから、これはよく大臣が来るまでに伝えておいてください。  それから原料乳保証価格に関連しますが、いろいろ私から見ればこの生産費調査には矛盾が散見される。時間の関係もありますから、一々は取り上げませんが、その矛盾の最たるものは、法律で指定した指定団体、単位農業協同組合を含めて、これの取り扱い手数料を一体どのくらい見ておるか。去年と同じように一・二%と言うでしょう。実態はどうですか。
  48. 岡田覚夫

    政府委員岡田覚夫君) ただいま御質問の点でございますが、指定団体について調査をいたしました。平均をいたしまして〇・五%でございます。
  49. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 平均にして〇・五%、それは租税公課等に入っているんですか。
  50. 岡田覚夫

    政府委員岡田覚夫君) 販売手数料としてある中に指定団体の手数料は入っておるわけでございます。
  51. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 それが〇・五%ですか。
  52. 岡田覚夫

    政府委員岡田覚夫君) 先ほどお話がありましたように、全体として一・二%見ておるわけでございますが、その中の指定団体の手数料が〇・五%ある、こういうことでございます。
  53. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 全体を通じて一・二%といいますが、これの取り扱い指定団体、要するに系統組織は、こんな料率でやっていると思いますか。実態を調べましたか。
  54. 岡田覚夫

    政府委員岡田覚夫君) 指定団体につきましては、これは調査をいたしておりますのでわかっております。それ以外の末端の団体につきましては、団体もいろいろございまして、必ずしも十分わかっていない点もあるわけでございます。したがいまして、昨年と同様に一・二%というものを採用いたしたわけでございます。
  55. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 指定団体が〇・五%だというのは、どの県ですか。
  56. 岡田覚夫

    政府委員岡田覚夫君) 一道六県の平均でございます。
  57. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 内訳を言ってください、単協まで含めて一・二%に対応するものとして。
  58. 岡田覚夫

    政府委員岡田覚夫君) 指定団体について、ただいま〇・五%ということを申し上げたわけでございます。そこで、お話をいたしますと、北海道が〇・三三でございます。青森が一・五でございます。岩手が一・〇でございます。山形が一・五でございます。福島が一・六二八、それから長野が〇・二〇〇でございます。鳥取はゼロでございます。
  59. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 大体、あなた方が調べた中にもう現実と違ったデータが出ておる。岩手の指定団体は二%とっていますよ。それだけの労作をやっているんですよ。私は実態を知っている。それが一%というのは、どういうことですか。二%ですよ。
  60. 岡田覚夫

    政府委員岡田覚夫君) 指定団体の手数料といたしましてはまさにゼロということでとっているわけでございます。岩手は一%でございます。
  61. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 二%だと言っておる……。
  62. 岡田覚夫

    政府委員岡田覚夫君) 構成団体の手数料も含めますとそういうことになると思いますけれども、先ほどお話しましたように、指定団体といたしましては一・〇であるというふうに承知しております。
  63. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 てんで実態をあんたつかんでいない。構成団体を見ると、岩手は三%とっておる。いいですか。指定団体を入れて全体で二、三一%の手数料、これは実費ですよ、手数料というのは。その処理をするために従来メーカーが酪農家別に生産費を出しておった事務は一切集荷団体系統にかわってきている。そのために投下する実費というものは、北海道その他六県を入れて二、三一%かかっている、実態は。それが一、二%だというから、そこにまたこの生産費調査の矛盾がある。これは認めますか、実態との矛盾を。
  64. 岡田覚夫

    政府委員岡田覚夫君) 先ほどお話し申し上げましたように、指定団体につきましては、調査が十分できておりまして、はっきりいたしております。それ以下の構成団体につきましては現在のところ確実なデータの持ち合わせがないわけでございます。そこで、私のほうといたしましては、いろいろな点を考えまして、昨年と同様に一・二%ということにいたしたわけでございます。
  65. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 あんた何回も言うけれども、岩手の例をぼくは具体的に言うて、それは一%じゃない。指定団体は、岩手はどこですか。経済連でしょう。二%とっている。単協が一%とっている。合わせて岩手県は三%とっている。それでも事務費をなかなかまかない切れないので、総合的な経営の中でこれをささえておるというふうな実態ですよ。いいですか。それを生産費対象地域全体で手数料を加重平均すれば、二、三一%になっている実態なんです。こういうこまかいような話だけれども、これは全部乳価に響く要素の一つです。それを修正すべきなんだ。どうですか、次官。私のほうは末端まで調べて言っているんだからね。
  66. 岡田覚夫

    政府委員岡田覚夫君) 先ほど申し上げましたように、指定団体の手数料については、調査が行き届いておりますから、十分わかっております。それから構成団体の手数料につきましては、これは聞き取りで入れておるわけでございまして、したがいまして、指定団体の調査のように正確なものではもちろんないわけでございますが、現在の段階では、そういう詳細なデータを持っておりませんので、それを入れまして一、二%というふうに昨年同様といたしておるわけでございます。
  67. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 もうこれ以上こんなことは繰り返したくありませんが、実態とあなたの把握が違っておる。私の言うのが違うなら、それをもっと立証するだけのやはり調査を綿密にしてやるべきなんです。農林省の出先に督励して、あすまでにこの間違った点は修正すべきものです。次官、どうですか。
  68. 久保勘一

    政府委員久保勘一君) 数字的な事務的な問題でございまして、局長答弁で御了承願いたいと思います。
  69. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 私の言っているのは、全部数字の問題ですよ、きょうは。しかし、実態と違うものを採用している矛盾に気がついたなら、それを直しますか直しませんかということを聞いている。間違ってもそのとおりやりますなら、やりますでけっこうですよ。
  70. 久保勘一

    政府委員久保勘一君) お聞きのとおり、農林省としましては、現場に問い合わせまして聞き取りで調査をいたした結果である、こういうことでございますので、そういうことで御了承を願いたいと思います。
  71. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 聞き取りでやったものと、私が少なくとも向こうで現地で実態を調べた調査と、どっちを尊重するかということです。それがはっきりするまで告示を延ばしますか。
  72. 岡田覚夫

    政府委員岡田覚夫君) たびたび申し上げることでございますけれども、昨年は一・二%ということでやったわけでございますが、本年におきましても、指定団体の調査については十分な調査をいたしたわけでございまして、構成団体につきましては必ずしも十分調査をするという段階に至らなかったわけでございます。したがいまして、これは聞き取りによりまして一応調べましたものを基礎にしてやるということ以外にはないというふうに考えておるわけでありまして、そういう点で御了承をいただきたいと思います。
  73. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 了承するとかしないとかということでなしに、そういう聞き取りなんかということでなくて、そういう系統の乳価を取り扱うために投下した実費をもとにして総会等で確認を得ている手数料というものは、単協といわず、指定団体といわず、これは責任あるものですよ。それを、聞き取りであれしたとか、了承願いますとか言ったって、了承できませんよ。
  74. 岡田覚夫

    政府委員岡田覚夫君) 事務当局のほうから……。
  75. 松本作衛

    説明員(松本作衛君) ただいまの渡辺委員の御質問に対して御説明を申し上げたいと思いますが、先ほど来局長が申しておりましたのは、指定団体の、岩手も当然でございますが、指定団体の販売手数料としてとっておるものにつきまして、私どもが県から聞き取りをしましてそれを加重平均したものでございますが、先ほど渡辺委員からお話がございましたように、岩手の経済連におきましては、この販売手数料に相当するもの以外につきまして徴収しておることは事実でございます。定額で五十五銭キログラムでとっておるようでございますが、その内訳は、県営検査費といたしまして十銭、それから集送乳経費、いわゆる地域のプールをいたしますために集送乳経費といたしまして保留しておく部分が十五銭、それに事務費といたしまして三十銭。この三十銭は、岩手の経済連におきましては、ほかの指定団体と異なりまして、単協が実施いたすべき部分の乳代の計算まで一元的に経済連が実施しております関係上、本来単協の事務費に相当するものを岩手の経済連がとっておるというふうな事情がございます。したがいまして、私どもの考え方といたしましては、この定額の五十五銭につきまして、県営検査の部分につきましては賃料料金の中に入るべきものじゃないか。また、集送乳経費のプール部分につきましては集送乳経費のほうに戻るべき部分ではないか。また、三十銭の集計手数料につきましては、これは指定団体の手数料というふうに考えるよりも、本来単位農協の経費というふうに考えるべき性格のものというふうに分類をいたしまして、したがって、定率の一%部分を指定団体の手数料というふうに判定をしたわけでございまして、先ほど来の渡辺委員お話局長説明との食い違いは、この点にあるかと考えます。
  76. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 だから、課長がいま言うたように、推定して勝手にこれを分解したというだけで、何ら私の質問に対する納得のいく答弁じゃないわけです。単協自体も一%をとっておる、それが実態。それならば、集送乳経費も実際かかった分だけ生産費で計上しているかといえば、していない。そっちはしていないで、都合のいいところはそっちでこれを勝手に分解して挿入している。それならば、集送乳経費は、実際担当しておるそういう指定団体がかかっておる経費を率直に認めますか。あるいは、こまかい話になるが、現実にそれぞれの受け渡し場所で牛乳があけられる欠減という現象は現実にある。そういうものは見ていますか。見ていないでしょう。そういういろいろな問題はまだ数限りなくある、この中に。だから、少なくとも公に確認をしておる酪農家の手数料というものは、それは手数料として計算すべきものなんだ。集送乳経費は集送乳経費として実際かかったものを生産費として見るべきものなんです。そっちのほうはどんどん削りながら、実際の集送乳経費は削りながら、手数料の答弁では、手数料の中で分解して集送乳経費のほうへこれを繰り入れる。そんなことで一体これを担当する団体が責任をもってやれますか。責任をあくまでも持たせるには、それに必要な経費は、やはり生産費としてこれは農家が負担しておるのだから、負担しておるものは農家生産費の中に計上するのが当然だということなんです。全然納得できませんが、次に進みます。これも大臣が来たら聞かなければならぬことにします。  次に、安定指標価格でありますが、一体、去年告示した安定指標価格が現市況と照らしてどういう結果になっておりますか。最近の指定乳製品の市況を、畜産局で調べた畜産関係経済統計月報でバターと脱粉について去年の一月からの月別の市況というものを見ますと、時間がないから、私は、答弁を求めないで、政府が出した資料を見ますと、去年告示した安定指標価格を市況は非常に上回っておる。畜産振興事業団を通じてこの異常に高騰した市況を冷やすための操作をやらしておるが、焼け石に水である。そのために、予期せざる牛乳差益が四十七億も計上される、こういう事態でしょう。もっと現実に即した安定指標価格を設定すべきものだ。四十一年度で告示したバターの一キログラム当たり五百七十三円というのは、四十年の一月からもうこの五百七十三円を上回っておる。二月が五百八十二円、四月が五百八十九円、五月が五百八十七円、四十年の九月には六百十三円、去年の一月には六百六十円、去年の十月には、六百八十四円、十二月まで六百八十六円です。五百七十三円に対して輸入バターで市況を冷やすけれども、こういう高値が続いておる。これが実態ですね。  脱粉についてもそういうことが言える。脱脂粉乳が十二・五キロ、四千二百二十九円の安定指標価格を出した。しかるに、市況は四千二百余円なんてものじゃない。四十年の一月からもうこの安定指標価格を上回っいる。どんどん上回っている。いままで事業団の輸入した総脱粉が二万トンに達するでしょう。それだけ輸入して市況を冷やすために法律の定めるところによって振興事業団が操作しているということですが、安定指標価格を上回ってせせら笑っている、市況が。  こういう事態の中で安定指標価格政府はどうきめるか、こういうことが問題なわけです。これは結局原料乳価格にも関連があるから私は伺います。保証価格は、四十一年度の原生産費に対して、四十二年度の原生産費評価がえ計数を乗じて出してますね。保証価格は四十一年度の原生産費を使いながら、安定指標価格をとる基準は過去四年に求めたというのは、これは作為的なものだ。なぜ、生産費と同じように、四十一年一年間を期間として設定しませんか。
  77. 岡田覚夫

    政府委員岡田覚夫君) 御承知のように、安定指標価格というものは、乳製品価格を安定させるということを目的としてつくりました価格でございます。安定指標価格をいかなる形でつくるかというのにつきましては、いろいろ御意見があると思うわけでございます。現実そのものをとるという意見もあろうかと思うわけでございますが、昨年は過去四年間をとったわけでございます。安定指標価格といたしましては、現実からあまり離れていてもいけない、そうかといって、非常に現実そのもので安定させるというふうなこともこれは問題があろうかと思うわけでございまして、やはり従来のような四年間というものをとりまして安定指標価格をきめたほうが適当であろうという判断をいたしたわけでございます。
  78. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 あまり納得のいく答弁じゃないですね。去年もやったからことしもやるというなら、子供だってできるでしょう。去年の実績を検討してくださいというんです、ぼくは。去年政府がきめた安定指標価格は、これはもう何ら安定指標価格の役割りを果たしていないんだ。市況はそれを上回って取引されておるという実態です。あとで問題の核心に触れますが、安定指標価格を上げれば、農林省が掌握したメーカーの標準販売経費を差し引いて取引基準価格をきめなきゃならぬ。取引基準価格政府原案よりはね上がる。はね上がるからあなた方がここで抵抗するのはわかり切っておる。そうでなくて、そういうおもんばかりを捨てて、現実の安定指標価格が権威あるものになる線を四十二年度は設定するのが政府の責任じゃないか。それから言えば、去年一年間実施した安定指標価格というものは何ら歯どめになるような近似値ではなかった、過去四年を求めた結果。したがって、最も権威ある安定指標価格たらしめるためには、市況の動向を勘案して、にせ刃でない権威ある安定指標価格を設定すべきじゃないかというのが私の主張です。生産費調査だけは一年をとりながら、安定指標価格は過去四年を堅持するというのは、一体どこにあるか、納得できない。
  79. 岡田覚夫

    政府委員岡田覚夫君) 御承知のように、四十一年は乳製品価格は異常に高くなっておったわけでございます。過去の三カ年と比べまして非常に高いということになったわけでございますが、これは異常に高かったということでございますので、この異常に高いのをそのまま乳製品の安定さすべき価格としてとることには問題があるというふうに私たちは考えるわけであります。過去の価格の連続的な考え方もございまして、安定させる目標としては、昨年四十一年一年を、異常に高い四十一年だけをとるということについては問題がございますので、その点はやはり四年間をとりまして、その水準に安定させるという努力をすべきものであるというふうに考えておるわけでございます。
  80. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 私も、必ずしも、この安定指標価格を四十二年度に告示するにあたって、前年一年だけ期間を設定して卸売り物価の変動等を係数を乗じて出すことに固執するものじゃないですよ。ないけれども、四十二年なりあるいは四十三年なりの牛乳の生産、需要の伸びというものを勘案すれば、非常に憂うべき傾向が出ておるわけですね、四十一年度に。牛乳の生産停滞をしておる。需要は予想を上回って拡大をしておる。そういう中に、最近時の市況というものを無理に過去四年に延ばすということは、これは現実から遊離した安定指標価格になる、見せかけの安定指標価格になるということで私は取り上げておるわけです。農林省が酪農近代化計画を設定した四十六年度の生産目標は、乳牛が二百十九万頭となっておる。牛乳の生産昭和四十六年度では六百七十三万トンと見ておる。この近代化計画は、四十六年を目途として実際に自信のある展望ですか、どうですか。
  81. 岡田覚夫

    政府委員岡田覚夫君) 近代化目標は、四十一年につくりまして、四十六年を目標としてつくっておるわけでございますが、この目標につきましては、当時の情勢からいたしまして、実現可能であり、かつ努力する目標であるというふうに考えて策定がされたわけでございます。その後の情勢といたしましては、ただいまお話がございますように、生乳の生産停滞をいたしております。停滞をいたしておりますので、われわれとして非常に心配はいたしておるわけでございますけれども、一つは、最近の傾向といたしまして若い一、二歳の年齢の牛がふえつつあるというようなこともございまして、こういうふうなふえつつある乳牛をいかに再生産過程に投入していくかというふうな政策的な努力をいたしますことによりまして、完全にこの目標が達成できるかどうかにつきましては問題があるわけでございますけれども、この目標に沿いましてできるだけ努力をいたしたいというふうに考えている次第でございます。
  82. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 まあ、そう答弁するよりほかないでしょうね。しかし、三十九年が百二十三万頭ですよ、乳牛が。四十年は、五万頭しかふえないで、百二十八万頭。四十一年度は、わずか二万頭しかふえていないで、百三十万頭。四十二年度統計はまだ出ていないでしょう。こういうようなことで、酪農振興の抜本的な施策に政府が全責任をもって取っ組む姿勢をとっても、こんな二百十九万頭なんかにはなりっこない。せいぜい百八十万頭にいったらいいんじゃないか。牛乳の生産は六百七十三万トンを予定しているが、四百万トンも達成が不可能である。それを達成するだけの、意欲ある酪農家が喜んでついていけるような施策を講じましたか、四十二年度に。いや、それは時間の関係で聞きませんけれども、私は何ら見るべきものなし。したがって、四十二年度一年間を展望しましても、牛乳の生産伸びは遅々として進まない。乳製品の需要は一そう拡大する。こういう展望に立ったときに、安定指標価格の設定を過去四年に求めるということは、これは時代離れがしている。少なくとも譲歩して申し上げますと、四十年の一月からの期間で、過去二年を期間として、そうして農林省がいろいろな基礎計算をしている卸売り物価指数、日銀が出している変動率をかける、そういうことになれば、指定乳製品安定指標価格幾らになるか、これは試算しているでしょう。
  83. 岡田覚夫

    政府委員岡田覚夫君) 過去四年のはやっておるわけですけれども、過去二年のは、そういうふうな考え方をとっておりません関係から、計算はいたしておりません。
  84. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 やっておりませんといったって、これはすぐやればできるから、すぐやってください。午後やりますから、これ以上それについて私は聞きません。私が計算しますと、過去二年間四十年度と四十一年度の二年を基準期間として、農林省が計算したいろいろな物価の変動をかけて出せば、政府原案は四年おいたために三十四円七十九銭だが、私のは三十八円三十六銭になる。係数が違ったら、昼休みに計算してください。少なくともこれくらいを設定しなければ、現在の市況を冷やすだけの威力ある標準価格にはならない。どんどん上がる、市況は。そういうことで、期間は過去一年とは申しませんが、少なくとも基準期間を最近時二年に設定して、物価の変動をかけて出されておるこの計算によって安定指標価格を告示する。四年しかやっていなければ、二年にすればどうなるか、これはやってみてください。三年の場合も参考のためにやってみてください。これを午後の委員会ではっきり答弁していただきたい。  そうしますと、これはあとで数字をはっきり確認をして伺いますが、まだありますが、基準取引価格にこれは関係があるが、この安定指標価格で矢山委員が関連質問があるそうですから、私はそれが終わるまで質問を中断します。
  85. 矢山有作

    ○矢山有作君 ちょっとお聞きしたいのですが、過去一カ年間不足払い制度を実施した中で、安定指標価格を設定したその目的というものが達成せられたとお考えになっていますか、どうですか。私は安定指標価格が果たす役割りというのは、当初考えられておったように所期の効果を発揮していないと思っておるんですがね。
  86. 岡田覚夫

    政府委員岡田覚夫君) お話の点でございますが、実は昨年度四十一年度の生乳の生産というものがかなり異常な形で出てまいったわけでございます。年度当初におきましては、かなり高い生乳の生産があったわけでございますが、八月ころを境にいたしまして生産伸び率が非常に低下をいたしてまいったわけでございます。そういうことから、当初乳製品の輸入量もさほど大きくは予定をいたしていなかったわけでございます。ところが、年度の途中におきましてそういう事態が生じたわけでございますが、そういう状態が一時的なものであるかどうかということにつきましても、必ずしも十分な見通しが立たなかったわけでございます。時間の経過とともに、それが一時的なものでないというふうなことにもなります。一方で需要というものが著しく増大しております関係から、不足払いが始まりました当初のことでもございまして、その辺の操作は必ずしもうまくはいかなかった点もございまして、安定指標価格に安定させるということが必ずしも実現できなかったというふうに考えておるわけでございますが、四十一年度の経過にもかんがみまして、四十二年度におきましては、安定指標価格に安定させるということを目途といたしまして十分な対策を立てたいというふうに考えておるわけでございます。
  87. 矢山有作

    ○矢山有作君 いろいろ長たらしい説明があったんですが、要は、安定指標価格設定の目的は、過去一カ年間の実績から見ると、達成できなかったと、こういうことになるわけでしょう。今後の問題をどうかこうかというのは、それは推定の問題であって、わからない。昨年の畜産物の審議会のときに、これで需給がはたして均衡するのかどうか、実際に生乳、国内乳製品がどのくらい不足するのか、こういう問題で推測を立てられたのだけれども、いまあなたがおっしゃったように、全くはずれてしまったんだから、将来のことをここで言ったって始まらないんですよ。現に、問題は、過去一年間の実績で安定指標価格はその役割りを果たさなかったということが明白な事実として出てきた。そうなると、私は、実は安定指標価格をこしらえること自体に大きな疑問を持っておるわけです。このことは、今日安定指標価格というものがどういう役割りを果たしておるかといったら、一般の市況よりも非常に低いところにそれを設定する。そのことによって外国乳製品をどんどん大量に輸入してくる。そのことがひいては国内乳製品を減退させることになっておる。低乳価政策のてこになっておるわけですよ、これが。だから、私はこの安定指標価格を設定すること自体に問題がある。こういう議論は、加工原料乳の法案を審議したときにすでに言い尽くしたことなんです。それが今日あらわれているのです。なぜそういうことになるかというと、安定指標価格というものを過去の低い水準のときにとって、現在の市況よりも低いところで出している。それから今度逆算して基準取引価格を出してくるのでしょう。だから、取引価格というものが非常に低いところに設定されてくるわけです。それで、基準取引価格が非常に低いところに設定されると、今度は保証価格をあまり高いところに設定したらたくさんの補給金が要るからということで、そのことが取引価格をなるべく低く押しつけるという努力につながってくる。それが保証価格の設定のときに出てきたでしょう。あなた方は保証価格をいかに低くきめるかということに努力している。そうでしょう。輸入は増大するわ、生産は減退するわと、こうなってきた。だから、安定指標価格なんという制度自体に問題があるんです。もう一回再検討してください。不足払い自体を再検討する時期に来ていると思うんですが、どう思いますか。
  88. 岡田覚夫

    政府委員岡田覚夫君) 不足払い制度も出発してまだ一年目でございますが、そこでこの一年の経験にかんがみまして、不足払い制度が必ずしも運用上うまくいかなかった点もあるわけでございます。お話のとおりでございまして、この点についてはさらに改善をはかっていくというふうに考えておるわけでございますが、この不足払い制度が果たした意味というものが私は相当あると思います。そういう意味で不足払い制度がつくられたと思っておるわけでございまして、ただ、当初の需給事情というものが年度途中から変わるというような異常な状態もあったものでございますから、運用よろしきを得なかった点は確かにあると思うのでございますけれども、今後そういう点を改善すれば、私は十分目的を達成するのではないかと考えておるわけであります。
  89. 矢山有作

    ○矢山有作君 不足払い制度の意味がどういうところにあったんですか。意味があったといえば、どういう意味があったかというと、現実に出てきた問題としては、不足払い制度をやることによって不当に安い乳価を設定して、そしてメーカーを不当にもうけさせる、これだけの効果があっただけです。あと何にもない。それが現実に酪農の減退になってあらわれている。現実を見てやはりものを言わなければならぬと思う。意味があったというのは、国内酪農にとってはマイナスになる、そういう意味があったということなんです。もし加工原料乳の不足払い制度の実行が、これをやることによって国内生産を増強させていこう、こういうことであるならば、この法律というものはもうすでに役に立たなくなったというそういう意味があったと、私はそういうふうに解釈する。
  90. 岡田覚夫

    政府委員岡田覚夫君) その点については、そういう御意見もあるかとも存じますが、私たちは必ずしもそういうふうに考えておらないわけであります。要するに、酪農家、乳牛の頭数が、三十九年からだんだん伸び率が減ってまいっておるわけです。そういうふうな状態になっておりまして、特に加工原料乳につきましては交易条件が有利でないということがございまして、それに対する対策として不足払い制度ができたというふうに考えておるわけであります。したがいまして、不足払い制度のねらいはそういうところにあるわけでございますから、不足払い制度のたとえば生産に対する刺激的な効果だとかというものは、酪農の場合には、他の作物と違いまして、一年たてばすぐできるというものでもないわけでございますから、若干の時間がかかるわけでございますから、これはこの制度の評価というものはある時間をかけて評価しなければ、直ちに一年やったらだめであったという評価にはならないのではないかと実は私は考えておるわけでございます。
  91. 野知浩之

    委員長野知浩之君) これにて暫時休憩いたします。    午後零時八分休憩      —————・—————    午後零時五十五分開会
  92. 野知浩之

    委員長野知浩之君) これより委員会を再開いたします。  乳価問題等に関する件及び病菌家畜に関する件を一括して議題といたします。  休憩前に引き続き、質疑を行ないます。質疑のある方は順次御発言を願います。
  93. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 午前に提出を要求した基準期間を最近二年前にとったその試算はどうなりましたか。
  94. 岡田覚夫

    政府委員岡田覚夫君) いま計算さしておりますので、でき次第持って参りますので、御了承願います。
  95. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 いつまでにできますか。
  96. 岡田覚夫

    政府委員岡田覚夫君) いま向こうで計算さしておりますので、至急確かめまして御連絡いたします。できるだけ早く出したいと思います。
  97. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 それでは、後ほど出るであろう試算数字を私なりに計算をいたします。政府が算出した方式でやりますと、最近二年の基準期間をとりますと、三十八円三十六銭となるわけです。三十八円三十六銭になれば、過去四カ年を基準期間としてとった安定指標価格としては三十四円七十九銭。キロ当たり三円五十七銭という差が出る。この三十八円三十六銭というものは現実の最近時における市況とにらみ合わせて、なお先ほど展望いたしました生産伸び率、需要の伸び等を勘案いたしますと、一年をとることはより適切であるけれども、おおよそ安定指標価格の役割りを果たすに近い数値になると思います。しかるに、政府の考えておる原案からいたしますと、メーカーの取引基準価格というものは販売経費を差し引いておるわけですが、その販売経費そのものを計算してみましても、適正利潤を大幅に上回るという結果になる。製造業者の利潤というものを、政府は総資本の回転率を一・七七回に見——これは乳業大手三社の有価証券報告で出しておるその資金の回転を一・七七回に見、このメーカーの総資本の純利益率を平均四・四%と見、売り上げ高の純利益率を二・五%と見て製造販売費用というものを見ておる。このコストに計算された平均利潤を大幅に上回るということ、政府の考えておるとおりの取引基準価格をもしも告示するとなれば、不当利潤をメーカーに与えるということになる。現実離れのした見せかけの安定指標価格を設定すれば、これによって外国からの乳製品を容易にする道をさらに拡大するばかりではなくて、それとともに国内の大メーカーに対しては適正利潤をこえた超過利潤を取得させることになるわけであります。また、このことが相関連して、原料乳価格との不足払いの予算単価を幅としてスライドをするという結果的の価格政策自体が酪農民生産意欲を喪失させて、メーカーの独占利潤、寡占利潤に奉仕をするという、大きなこれは政策を背景とした価格として受け取らざるを得ない。こういう政策を去年はやったわけです、政府は四十一年度に。したがって、そういう観点から見ても、安定指標価格というものはあくまでも最近時における基準期間を設定して、それに変動率を乗ずるなら乗じて設定すべきものだと思うのです。その点についてどうですか。
  98. 岡田覚夫

    政府委員岡田覚夫君) お話しのように、四十一年度におきましては、先ほど申し上げましたような理由から事業団の操作が必ずしも円滑でなかったという点もございまして、現実の乳製品の市価は安定指標価格をかなり上回ることになったわけでございます。そこで、この安定指標価格を現実の価格に少なくとも二年程度のもので見るべきではないかというお話でございますが、安定指標価格というものは一つは消費者に対する意味もあるというふうに考えておるわけでございまして、そこで、安定指標価格に安定をさせるというねらいを持って操作をいたしましたけれども、実際は不手ぎわもございまして、そういうふうなことにならなかったわけでございます。そうかといって、直ちに高い水準に持っていくということは適当であるかどうかという点については意見のあるところだろうと私は思うわけでございます。そういう意味で、従来の乳製品価格との連続性ということも考慮をいたしまして、四年を、昨年と同様に、四十一年度の価格算定と同様に四十二年度の価格算定につきましても四年をとったらどうかというふうに考えておるわけでございまして、四十一年の操作の実績にもかんがみまして、四十二年におきましては安定指標価格基準といたしまして安定させるということに努力をいたしたいと考えておるわけでございます。
  99. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 同じ繰り返しですがね。原生産費は一年をとり、市況については四年をとるという矛盾をあなたはどう解釈しますか。
  100. 岡田覚夫

    政府委員岡田覚夫君) 先生のおっしゃいます原生産費は、保証価格でございますか。——保証価格につきましては、これは過去からのをとるよりは、最近のほうをとったほうが、農民に保証する価格でございますから、それは実態に即したものであるというふうに私は考えるわけでございます。
  101. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 抽象的にはそうでしょう。しかしながら、あなたがとった四十一年の原生産費は、四十年度と比べて、その大勢を決するところの分母になる乳量が、毎年に比べて、その倍率は四年分を一挙にここで乳量が多くなったものを分母としておる。だから、抽象的にはわかるけれども、四年にさかのぼれば生産費は非常に高いものが出ておる。ことばは農民に対してはその立場に立って最近時をとったと言うけれども、データそのものを整理してみれば、あなたの言うものとは逆なような数字が出てくる。だから、おためごかしの農民のためにというようなことを言わぬで、一年をとるならとる、私はそれでいいと思う、内容には矛盾点があるのですから。同じように製品の市況をつかむのに、過去四年をとるという従来のあやまちを再び繰り返すということは、これはあくまでもより容易に乳製品の輸入をする道を拡大する措置につながる。現実にまた国内で動いている市況とは遊離した数字が出てきておる。こういう実態を見たら、保証価格において生産費を、過去一年を原生産費としてデータをとるなら、なぜ過去一年の市況というものをとってやらぬのか。生産者のためとか消費者のためとかという、そういう政策目的は捨ててあなた考えるべきじゃないですか。だれのためとか彼のためとかということじゃない、あくまでも冷厳な統計というものの使い方の私は矛盾を指摘している。原生産費を過去一年のなまなましいものを使うならば、なぜ市況を最近時の一年をとらなかったか。その矛盾をあなたは一体どう解明するか。
  102. 岡田覚夫

    政府委員岡田覚夫君) 繰り返してお答えすることになって恐縮でございますけれども、不足払いの制度そのものが、一方では農民の生産費を保証する、一方では消費者価格を安定させると、こういう二つのねらいがあるというふうに考えるわけでございます。そこで消費者価格を安定させるという立場から安定指標価格ができておるわけでございまして、それでは十分乳業者が農民に支払いができないということになりますので、そこで不足払いとして政府生産費を保証するというたてまえをとっておるというふうに考えるわけでございます。そういうふうな観点からいきまして、消費者価格を安定させるという意味におきましては、やはり毎年変動があるというのを、常にその変動に応じて価格をきめるということが必ずしも適当であるかどうかという問題が一つあると思うわけでございます。そこで、ある程度連続的に安定したほうが望ましいのではないかというふうに実はわれわれは考えておるわけでございます。それから生産費の問題につきましては、合理化が進展をいたしましてコストが下がるということはあり得るわけでございますが、現実に考えられます価格をとったほうが私は生産費を保証するという意味から妥当ではないかというふうに考えておるわけでございますが、さらに先ほども申し上げましたように、本年は酪農労働の特殊性にかんがみまして労賃評価がえもいたしまして、そこで酪農としての適正な生産費が確保されるというふうにいたしたいと実は考えたわけでございます。
  103. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 全然答弁にならぬです、そんなことじゃ。もっと単純に答弁してくださいよ、保証価格では一年のデータを使い、基準価格では四年にしなきゃならぬという。それは説明にはならぬですよ。最近時をとるのが現実の価格のこれは権威ある態度じゃないですか。それを現実の市況と遊離したものを出すために——この一年間の不足払いの実施で一番もうかったのはメーカーです。それはあなたも承知なのだ。一方的には酪農を危機に追い込んで生産者に生産意欲を減退させ、一方ではメーカーに巨大な利潤を、不当利潤を確保させたこの価格政策を反省したならば、従来の連続性とか何とか、二年目でそんなことを言うのは早い。少なくともこれは基準年のとり方が問題だ。これをあなたが固執するように過去四年というものを再びとってやるならば、過去二年をとったものよりもキロ当たり三円五十七銭というものがまるまるメーカーのふところに入るのですよ。消費者のためとか生産者のためというよりも、この価格政策にあらわれた限りは、政府の、農林省の姿勢というものは大乳業メーカーに不当な利益を与える価格政策をとっておる。そういう指摘をこの際反省するならば、適正な原料乳製品の安定指標価格というものは最近時に基準を置いて設定して、それでもなおかつ市況が高いのですから。現実に、脱脂粉乳においても、全練においても、脱練においても。しかも、市況が落ちるという保証は何らない。むしろこんな原料乳価格を設定したなら一そう生産が減退することは必至です。需要はそれにかかわらず拡大するでしょう。従来の上昇傾向があるいは政策的に多少はチェックできるかもしれないけれども、相当の勢いでやはり乳製品の市況というものははね上がることは必至だ。であるとするならば、この指標価格基準というものをもっと現実に近いところに価格を設定すべきじゃないですか。過去四年というものはこの際訂正しなさいよ。そうでなければ、これはメーカーに不当な利潤をあなた方が与えることになりますよ。そのことがまた保証価格を一そう低く押えるという相関関係を断ち切るわけにはいかぬでしょう。
  104. 岡田覚夫

    政府委員岡田覚夫君) 先生のお話がございましたが、保証価格を低く押えるために安定指標価格を低くしておるということは私はないと思っております。安定指標価格というのは、たびたび申し上げますけれども、そこへ安定させるという政策的な価格でございますから、私はその年々の変動によりまして著しく変わるという形は必ずしも望ましくない。一方で安定させるということにつきましては、事業団の操作によりましてそれは可能となるわけでございます。たまたま四十一年につきましては、先ほど申し上げましたような事情がありまして、必ずしも十分にはいかなかったわけでございますけれども、その経験にかんがみまして四十二年には安定させるという考え方で努力をいたしておりまして、現にそういう準備をいたしておりますので、私は四十二年度におきましては安定指標価格に安定さし得るものというふうに考えておるわけでございます。
  105. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 安定指標価格に安定させるというのはいつからできますか、責任をもって答弁してください。抽象的じゃだめだ。
  106. 岡田覚夫

    政府委員岡田覚夫君) そういうことで私は努力いたすつもりでおります。
  107. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 努力をするということは、言われなくたって、努力をふだんしていないわけじゃないでしょう。しかるに、現在の市況は飛び離れて高いでしょう。その間は努力しなかった、この問題を追及されたから今度から努力するというのじゃないでしょう。それだけに見せかけだと言うんです。従来の基準年を四年に設定した安定指標価格は、それがより一そう輸入の口実を与える価格には役立っております。そうして想像もしなかったような輸入の増大を来たし、想像もしなかったような輸入差益を生んだでしょう。あなた方が努力をしておるんだ、しておっても、こういう価格の設定の努力は何ら効果をあげないという過去一年のこの実績というものをここで反省をしなければいかぬじゃないですか。全然そういう反省もない。あくまでも政府の原案に固執して、あすまで何とかかんとか、委員会なりあるいは院外からの働きかけは三猿主義でも押し通す、官僚独善でまかり通すというならもう国会も要りません。官僚が一切をやればいいんだ、そういうものじゃないはずです。少なくともぼくが言っておるのは、あなたの琴線に触れておるはずだ。それをすなおに取り入れて安定指標価格を現実化したものにこれを置きかえる、それくらいの前向きの努力がなくて一体何ですか。いたずらに質疑に時をゆだねてのらりくらりと答弁して、あとは政府の構想どおりこれをやるんだというならば国会はこれは見せかけです。これは大臣が来てから言いますけれども、赤城大臣がああいう評価がえを約束をした、去年は何ですか、全然じゅうりんしているじゃないですか。ことしやっと八割をやっておる、八割とは一体何ですか。ここには大蔵省からも来ておる、もう少し国会審議というもの、われわれは個人として言っておるのじゃないですよ。私は私なりに東北の酪農家にかなり日常接触をしておる。不足払いに対する期待が大きかっただけに、東北の農民は非常に大きな不満を持っておる。不足払いじゃない、不満払いだといっておる。それを是正して少しでも酪農民に増産意欲を持たせる、そういう大きなきめ手が当面は価格政策じゃないですか。保証価格とは何ら関係がないといったが、五円二十二銭という予算単価をこれは動かしませんか、動かしますか、その点はどうです、不足払いの単価を。
  108. 岡田覚夫

    政府委員岡田覚夫君) ただいまの御質問でございますけれども、保証価格基準取引価格の差額は五円ということになるわけでございます。試案として審議会に提案いたしました計算によりますと、差額は五円ということになるわけでございます。
  109. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 予算での単価は五円ですか。
  110. 岡田覚夫

    政府委員岡田覚夫君) 予算単価保証価格がまだ議論されていない前の段階でございますので、幾ら組むかということについてははっきり申し上げられないわけでございますので、一応、前年単価を踏襲いたしまして五円二十二銭ということにいたしておるわけでございます。
  111. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 予算単価は五円二十二銭ですね。農林省の保証価格取引基準価格の幅は五円ですね。そこで、私が聞くのは五円が五円二十二銭にもなるし、六円にもなるし八円にもなるべきものですね。何らこれは関連がないんですよ。業者の最低を義務づけられている取引基準価格生産者が再生産をするに要する保証価格とは、価格関係は直接には関係がない、ないから保証価格保証価格としてその問題点を整理すれば一つの合理的なものが出てくる、取引基準価格取引基準価格政府基準期間等をずり変えることによってまた違いが出てくる。それによって生じたものは、五円二十二銭という予算単価の幅には影響なく、差し引きした結果、それが六円になり、八円になり、あるいは四円になるということもあり得るし、当然そう流動的に考えていいかということをあなたに聞いておる。
  112. 岡田覚夫

    政府委員岡田覚夫君) 一応、保証価格は、生産費から積み上げまして出してくる価格でございます。基準取引価格は、きめました安定指標価格から逆算をして出てくる価格でありますから、何らかの関連をつけながらきめていくという性質のものではないと私は思っております。それぞれ計算いたしました結果、その差額が交付金として出されるという性質であるというふうに考えております。
  113. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 したがって、保証価格政府試算したものと違った場合は、当然すなおにそういう方向でやれるわけですね。取引基準価格が変われば、また変わっていいわけですね。いいですね。大丈夫ですか。
  114. 岡田覚夫

    政府委員岡田覚夫君) 四十二年度の計算によりまして価格がきまります場合に、私たちのほうで試算をいたしましたものは差額が五円だということに一応なっておるわけでございますが、これはたまたま生産費計算いたしましたものと、基準取引価格計算したものとの差額が五円であったということから、原案として五円ということになっておるわけでございます。
  115. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 とにかく、わかったようなわからないようなことだが、いずれそういう予算単価には拘束されない。そうでしょう。予算単価で一切が拘束されるならば、われわれは何も消費者米価だって何だって国会で論議する必要はない。それは弾力的に見ましょう。そうなれば、やっぱり関連があるのは、安定指標価格取引基準価格はこれは関連ありますわね。そこで、繰り返しますが、四十一年度の各メーカーの考課状はこれは出ていないからわからないけれども、明らかに政府が考えたスタンダードの販売諸経費の中の平均利潤なり、そういうものは考え方と実態とは非常に違ったものが出るわけですよ。これは明らかにそういうことが出てくる。平均利潤以上を出す価格をことしもやらないためには、安定指標価格というものを現実の市況に即応するような最近時の期間を設定しなきゃならない。まだその数字が出てこないようですから、その数字が出たら、その数字に関連してもう少しこれに触れていきます。  そこで、次に伺いたいのは、これは矢山委員中心で取り上げる飲用乳価格です。これはかりに原料乳価格との関連で見ますと、原料乳だから安くていい、飲用牛乳だからそれよりも格差があっていいという理屈はない。牛乳はただ一つ。大体、原料乳だけの法律にしたのは、これは政府の考え方に問題がある。それはそれとして、去年において現実に飲用牛乳の生産者の手取りと、原料乳価格保証価格との間に差がある。それがさらに飲用乳価格では一・八七五キログラム当たりで十二円アップ政府が認めたんでしょう。それと今度の保証価格政府が一応試算したものを出せば、その飲用牛乳と市乳との格差が一そう拡大するという結果になり、将来の展望に立てば、飲用牛乳の兵たん基地は原料乳地帯に求めるほかにない。そういう場合に、この二つの間の価格の開きというものを拡大することが、どれだけ将来の飲用牛乳と乳製品との間に混乱を惹起するか、はかり知れないものがある。そういう観点から考えても、この政府試算した原料乳保証価格は低きに失する。まさに不権衡、アンバランスだ。私はこの点については計数を追うて問いませんけれども、その点をどう考え、どう行政的に措置しようとしますか。
  116. 岡田覚夫

    政府委員岡田覚夫君) 私が申し上げるまでもなく、先生よく御存じだと思うのでございますが、一応、加工原料乳につきましては、生産費政府が保証するという考え方をとっておるわけでございます。保証価格でございます。一方、市乳につきましては、これは生産者とメーカー、メーカーと小売りというふうな段階ごとにおいて、需給の実勢に応じまして自由な価格形成が行なわれるというふうなたてまえになっておるわけでございます。したがいまして、価格のあり方それ自体が基本的に違いますという関係から、そこを格差をつけて常に一定の形で考えるということは、私はなかなかむずかしいのではなかろうかというふうに実は考えておるわけでございます。まさに、しかし、そうは申しましても、市乳価格と加工原料乳価格との間には極端に相違があるということは、必ずしも好ましいとは考えておりません。しかし、一方でまた市乳化促進という要請もございますので、かなりな格差というものも当然あり得るというふうに考えておるわけでございます。
  117. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 いまちょっと聞き漏らしておったのですが、だれも聞かないことを長く時間をかけて答弁するから、悪い頭が一そう混乱するのですが、四十一年度に原料乳と飲用乳との間の価格の開きがある。それを今度飲用乳の一升当たり十二円の値上げによって、政府の四十二年度に告示しようとする保証価格の原案からすれば、さらに格差が拡大するが、それを一体どう解釈するか、その点だけ要点をひとつ答えてください。
  118. 岡田覚夫

    政府委員岡田覚夫君) 市乳化促進という要請もございまして、一方では自由にきめる価格であるという点から考えまして、やむを得ないのではないかというふうに考えております。
  119. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 それはまた市乳化を促進する方向は全体の方向でわかるわけですが、それでは、去年の格差よりもさらに拡大しても、原料乳地帯における原料乳生産には混乱は起きない、そうあなたは確信をもって言えますか。
  120. 岡田覚夫

    政府委員岡田覚夫君) 現在程度の格差でございますれば、混乱が起きるというふうなことはないのではないかというふうに考えております。
  121. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 警告を発しておきますが、そんななまやさしいものではないですよ。非常に大きな混乱ができる、こういう原案をあなたが無理押しをするならば、私ははっきり警告をしておく。そういう点からいっても、断じて原案は納得できない。もう、この点は、あなたにこれ以上聞く気はしません。大臣に締めくくりで聞くことにします。  次に、畜産に至大の関係のあるえさの点をちょっと伺います。四十二年度に輸入飼料勘定に対する一般会計からの繰り入れを五十二億計上していますね。そうして、六月からふすまなり、あるいは大麦についてキログラム当たり一円の値上げを計上しておる。まあいろいろな理屈はあるでしょう。しかし、このことによって及ぼす影響はどうだかということを考えてやったんですか。業者はえさを値上げしたくてむずむずしている。それを政府もいろいろ注意をして押えてきた経過も知っているはず。政府が六月からみずからの責任で国家管理価格を上げたということになれば、業界はえたりや応と値上げをすることは必至な情勢である。政府の出方を待っておる。乳価は思ように手取りがふえない。依存する購入飼料は値上がりをする。政府が先べんをつける。これが酪農家に与える心理的、物的影響というものは、あなた方が想像する以上のものがあるんですよ。どう思いますか、これに対して。一体、この原案である六月からの一円値上げをやめれば、どれだけ一般会計の繰り入れ財源を必要としますか。
  122. 岡田覚夫

    政府委員岡田覚夫君) 政府の原案では、六月からお話しのような値上げを考えておるわけでございます。これは、御承知のように、麦の値上がりが著しいということもございまして、その点から——畜産の経営の問題なり畜産物の価格なりという状況から考えまして、できるだけ値上げを抑制するというふうなことを考えておるわけでございまして、その値上がりした率をそのまま値上げをするというふうなことを考えておるわけではないわけでございます。そこで、政府が値上げをすると、他に値上げが波及しないかどうかというお話だと思います。昨年の暮れから配合飼料の値上げ問題がやかましかったわけでございますが、しかし、これはメーカーのそれぞれの努力によりまして一応値上げをしないで済んだわけでございます。トウモロコシの価格は最近やや安定を取り戻してきておるわけでございます。一方、小麦、大麦の価格はかなり騰貴をしておるという実情にあるわけでございますので、今後の推移を見ないと何とも申し上げられないわけでございますが、配合飼料の中心である原料につきましては、やや安定をしておるのではないかというふうに考えておるわけでございます。それから、畜産に対する影響といたしましては、政府の操作飼料というものの全体に占める比率というものは必ずしも高くないわけでございます。したがいまして、その影響というものはそれほど大きいものではないというふうに考えております。
  123. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 とんでもないことを言う。だから酪農は一そう危機の状態に追い込まれるのです。私の質問にまともに答えてください。政府の原案になっておるふすまなり大麦の一円値上げを思いとどまるためには、一般会計からあと何ぼ財源が要るかと聞いておる。
  124. 岡田覚夫

    政府委員岡田覚夫君) 約十二億程度だと考えます。
  125. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 十二億という金は、確かに大きい金額ではありますけれども、大きな国の予算のワクそのものから見たなら、十二億を出し惜しみをすることによって与える影響というものを阻止するためには、きわめてこれは、金額は少ないが貴重な役割りを演ずる十二億だと思う。業界にも、連鎖反応で便乗値上げを阻止するき然たる行政庁としての態度も堅持できる。酪農家にも、これ以上の値上がりを防いでもらったという一つの安心感が出てくる。一体、政府は、物価安定に、選挙の公約とはうらはらの、逆行することを総選挙が済めばやり出しておる。これを十二億ぐらいの予算をさらにさいて、えさの値上げはしないで、えさ勘定に六十四億を、これは修正して、政府がみずから価格安定の範を示す、そういう決意をこの際表明してもらわないといかぬと思う。次官、どうですか。これも似たような返事ですか。そうじゃないでしょう。
  126. 久保勘一

    政府委員久保勘一君) お答えいたします。  飼料の値上げの問題につきましては、お説のように、影響するところが非常に大きいことは私どもも認めておるところでございます。したがいまして、この問題につきましては部内におきましても慎重に検討をいたした次第でございますが、先ほど来、局長説明をいたしますように、やはり飼料の需給の安定をはかりまする上から、この程度の値上げはこの際やむを得ぬのじゃないかという考えに現在のところはあるわけでございまして、この点を御了承願いたいと思います。
  127. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 同じ答弁なら、もうこれからはあなたには聞きませんがね。国の五兆円になんなんとする大きな予算の中で、ほんとうに畜産というものに愛情のある政治姿勢を示すならば、えさの値上がりを政府がまず阻止するために、管理価格を据え置くという措置を講ずべきだ。十二億円ぐらいは、これは私は金額に比例してその果たす意義はきわめて大きいと思う。これも何ともならぬ、原案どおりとなれば、どれだけの影響を与えると思いますか、乳価に。局長
  128. 岡田覚夫

    政府委員岡田覚夫君) 乳価に及ぼす影響というものは比較的少ないと思っておりますが、一応、価格計算の中に織り込んでおりますので、いま調べましてお答えいたします。
  129. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 これも大臣が来ないとだめだ。四十一年度に不足払いが実施されてから、畜産振興事業団による輸入数量は、三月末までの予想を入れて、各品目別にどんな実態であらわれていますか。
  130. 岡田覚夫

    政府委員岡田覚夫君) お答えいたします。  バターが一万二千トン、脱粉が約二万トンでございます。
  131. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 その輸入金額と売却入札価格との差益はどういうふうになっていますか。
  132. 岡田覚夫

    政府委員岡田覚夫君) 四十一年度の末におきまして四十二億程度と推定いたしております。
  133. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 内訳はどうですか。
  134. 岡田覚夫

    政府委員岡田覚夫君) いま調べておりますので、ちょっとお待ち願います。——それではお答えいたします。正確な計算が三月末までは決算がまだ終わりませんので、管理費その他正確な計算ができませんので、十二月末で計算をいたしておりますので、御説明いたします。バターが九億六千七百二十七万四千円でございます。まるめまして九億六千七百万円。それから脱脂粉乳が二十四億四千二百万円でございます。それから全粉乳が一億八千八百万円。ホエイパウダーが一億二百万円でございます。合計いたしまして三十六億九千九百万円でございます。
  135. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 四十二億と言ったり、三十六億と言ったり、だいぶ荒っぽいことをいいますね。
  136. 岡田覚夫

    政府委員岡田覚夫君) 先ほど申し上げましたように、四十二億というのは三月末までの推定でございまして、これは不確定数字でございます。品目別の正確な数字は十二月末ということで一応計算をいたしているわけでございまして、十二月末の数字が先ほど申し上げましたような数字でございまして三十六億九千九百万円と、こういうことになっているわけでございます。
  137. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 私のほうはもっと具体的な数字を持っているのですがね。二月までの実績と三月の予想と、それを入れれば、脱脂粉乳だけで、トン当たり従来の実績からいけば、三月の予想をそれとみなせば約二万トン、トン当たり二十万、四十億が出る。その他を入れて四十七億ないし四十八億。一体、これを何に使うのか。
  138. 岡田覚夫

    政府委員岡田覚夫君) 事業団の差益につきましては、予想をこえて相当程度出てまいったわけでございます。したがいまして、これを酪農生産対策に使いたいということで、現在いかなるものに使うべきかということについて検討いたしておるわけでございます。
  139. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 予想は幾ら立てました、当初。
  140. 岡田覚夫

    政府委員岡田覚夫君) 三億ないし五億でございます。
  141. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 そうしますと、私は問題をここで明らかにしなければならぬ。年度当初に三億というものを。輸入差益を見て不足払いがスタートした。したがって、四十二年度に輸入差益を使うのは、予想を上回ったものを使うという答弁ですから、少なくとも四十億はそっくりこれは生産増強のために使うべきものである。しかるに、今度の予算であなたが不足払いに一般会計から幾らを注入し、輸入差益に幾ら依存しましたか。
  142. 岡田覚夫

    政府委員岡田覚夫君) 不足払いとして、一応、四十二年度に予定されるものは四十億というふうに想定をいたしたわけでございます。そのうち、一般会計から二十億を出しました。二十億を差益から不足払いの財源に充てるというふうに考えたわけでございます。
  143. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 おかしいじゃないですか。輸入差益が予想を上回って出た。上回ったものは酪農生産振興のために使うというたてまえをとっているのに、実際は、いまの答弁は二十億というものを輸入差益で充てた。何たることですか。三億ないし五億をこれにさくならまだわかる。その不足払いの半額を輸入差益に充てるということは、どう考えたってこれは筋が通らぬ。ちょうど不足払いというものはタコが足を食うようなものじゃないか、私はそう考えておる。自分が腹が減れば、タコは自分の足を食う。酪農家のこの不足払いというものは、輸入差益に依存して不足払いを受けるということは、自分のからだを食うような結果になるのじゃないか。なぜ当初の考えどおりそういうことをやらなかったかということであります。もうこれ以上私はあなたに質問はしません。     —————————————
  144. 野知浩之

    委員長野知浩之君) 倉石農林大臣から発言を求められておりますのでこれを許可いたします。倉石農林大臣
  145. 倉石忠雄

    ○国務大臣(倉石忠雄君) 農林大臣に就任いたしまして以来、委員各位にごあいさつを申し上げる機会にめぐまれずに三カ月余を経過いたしましたが、農業をめぐる内外の諸情勢がまことに容易ならざるときに農林大臣を拝命いたし、その職責の重大なことを痛感いたしております。つきましては、農林漁業の国民経済に占める役割りの重大性に思いをいたしまして、全力をあげてこの重責を果たしてまいる覚悟でありますので、何とぞ皆さま方の理解あるご協力を賜わりますようお願い申し上げます。  本日この機会をかりまして、農政の基本方向について私の所信の一端を申し述べたいと存じます。  最近の農業の動向を見ますと、食料需要の動向に対応した農業生産選択的拡大、機械化による労働生産性の向上、農業経営に意欲を持ち、経営規模を拡大しようとする農家増加等、農業の近代化が順調に進んでいる面も見られますが、他方、解決を要する幾つかの重要な問題が生じてきております。  その第一は、農産物需給の問題でありますが、農済基本法制定当時の予想を上回る経済成長により、食料需要が内容の変化を伴いながら想定以上に増大した一方、農家労働力の流出、兼業農家増加等により農業生産の一部に停滞傾向が見られ、今後ますます増加を続けると思われる食料需要に生産が必ずしも順調に対応し得ないのではないかとの懸念も生ずるに至っていることであります。  第二は、農産物価格の問題であります。最近の農産物需給の引き締まり傾向のほか、労賃上昇、資本の多投等に伴うコストの上昇要因、あるいは流通機構の立ちおくれ等もあって、食料農産物の消費者価格水準は上昇傾向を続けており、これが国民食糧の安定的供給の確保という農業の使命から考えて、決してゆるがせにできない問題となってきていることであります。  第三は、農業構造の問題であります。想定を上回る経済成長により農家労働力の流出には激しいものがありますが、それが必ずしも経営規模の拡大に円滑に結びつかず、兼業の増大、農業労働力の老齢化、婦女子化を招き、他方、農地の流動化をはばむ要因が増大すること等もあって、構造改善の所期のテンポでは進んでいないということであります。  このような情勢のもとで、農業の生産性の向上をはかりつつ、需要に即応した農業生産の増大を確保し、農業従事者の所得を向上させるという農政の課題にこたえるには、農業基本法の定める方向に従い、生産、構造、価格に関する各般の施策を総合的に強く推進する必要があると考えておりますが、特にこの際、内外の食料需給の動向から見て、主要農産物についてその生産を振興すること、生鮮食料品の価格の安定のため生産体制の整備と流通の改善、合理化を行なうこと、また、農業構造の改善を進めるとともに優秀な経営担当者の養成と農村の社会、生活環境の整備を行なうこと等に留意してまいる考えであります。  このため、四十二年度においては、一、農業生産基盤の整備と農業技術の開発、普及の促進、二農産物の生産対策の拡充、三、生鮮食料品をはじめとする農産物価格の安定及び流通改善対策の強化、四、農業構造改善の促進、五、農林金融の改善、六、優秀な経営担当者の確保と農村環境の整備等、農村対策の充実に重点を置いて施策の推進をはかってまいることとしております。  このほか、林業及び水産業につきましても、それぞれ最近の需給及び資源の動向や従事者の所得の面から考えますと問題が多々存在しておりますので、これらにつきましても、生産基盤の整備、構造改善の促進、従事者に対する福祉対策の充実等諸施策を強化し、生産性の向上と従事者の所得の増大と生活水準の向上をはかることとしております。  これら施策の的確な推進を期するため、四十二年度予算編成においては、農林水産関係予算の充実をはかることに一段と配慮した次第であります。なお、四十二年度農林水産業に対する施策及び農林関係予算の詳細につきましては、別途御説明申し上げたいと考えております。  以上、今後の農政を担当するに当たって所信の一端を申し述べた次第でありますが、大方の御協力を仰ぎ、最善の努力を払ってまいりたいと考えております。何とぞよろしくお願いいたします。     —————————————
  146. 野知浩之

    委員長野知浩之君) 引き続き質疑を行ないます。
  147. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 先ほどからただしておりました問題を大臣にそのものずばりで伺います。原料乳保証価格について、この法律が国会審議をされました最終段階で、時の農林大臣赤城宗徳氏は、私の質問に答えて、原料乳保証価格を算定するに当たっては、原料乳地帯における他産業労務者労賃評価がえをする、そういう答弁がありましたので、われわれは大臣の言明を満幅に信頼をして、この法律を賛成して成立した経過がある。しかるに、昨年この不足払いが実施された際に、この赤城農林大臣国会を通じて国民に公約をしたことを裏切り、投下された家族労働時間、間接労働時間については農村の日雇い労賃をもって評価がえをし、これを実施した経過があります。第二年目を迎えるに当たって、倉石農林大臣はこの点を反省し、保証価格における家族労賃、あるいは自給飼料に投下した間接労働の時間を、五人規模以上の製造工業労賃単価をもって評価がえをする。そういう御意思をもって四月一日の原料乳価格を告示される御意思だと思いますが、間違いがあってはいけませんので、その点を確認の意味でお尋ねをいたします。
  148. 倉石忠雄

    ○国務大臣(倉石忠雄君) 私、就任いたしまして、いろいろ事務の引き継ぎをいたしましたときに、ただいまお話しの乳価に算定されておる労賃計算につきまして、赤城元大臣の議会におけるお話も承りました。で、その後いろいろ検討いたしまして、やはりこの際主要な作業に従事する面を、とりあえず都市近郊の労賃計算にすることが妥当ではないかというふうに考えるようになりまして、たぶん私がこちらにまいります前に、いろいろ事務当局も御報告申し上げたと存じますが、そのような趣旨で判断をいたす次第であります。
  149. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 私は、いまの大臣答弁にはもう絶対納得できません。答弁には主要な労務についてということがあったんですが、赤城さんは主要ななどというまくらことばを冠して言うたのじゃない。酪農に従事する農民が投下した労働について、それを適正に同一区域内における他産業労務者の従事する労賃評価がえをすると言っておる。それを、主たる労務についてとは何たることですか。全体の労務についてやらなければいけない。あえて公約をここで破棄するつもりですか。
  150. 倉石忠雄

    ○国務大臣(倉石忠雄君) 赤城元大臣のおことばをよくかみしめて見、また速記録を拝見いたしますというと、赤城さんという人はなかなか理想主義者でございまして、ああいう御意見をお持ちになる。そのお気持ちはよく私どもも理解できるのでありますが、渡辺さん御存じのように、今日の一般の農作物の状態を見まして、私どもがやっぱり現実に逐次行なっていくことのできるような制度をやっていったほうがいい、こう思ったわけであります。
  151. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 いまの答弁はもう全然納得できません。赤城さんが理想主義者で、倉石さんは理想主義者ではないなどという、そういう異なった答弁は、私は国民の立場において断じて納得できません。これ以上時間のむだでありますから、委員会を休憩して、委員長、直ちに理事会を開いてこの善後措置をとってください。私はあくまでも最高責任者である大臣国会審議を通じて国民に公約したものをいまのようにすりかえるということには、断じて納得できません。
  152. 野知浩之

    委員長野知浩之君) 速記をとめて。   〔速記中止〕
  153. 野知浩之

    委員長野知浩之君) 速記をつけて。  暫時休憩いたします。    午後二時一分休憩      —————・—————    午後二時十三分開会
  154. 野知浩之

    委員長野知浩之君) これより委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き質疑を行ないます。質疑のある方は御発言願います。
  155. 矢山有作

    ○矢山有作君 まず、農林大臣に一つ申し上げておきたいのですが、先ほどの渡辺委員からの質問に対して、農林大臣は、赤城農林大臣は理想主義者だから、まあ不足払い法審議のときに他産業並みに労賃評価をやると言ったのだ、こうおっしゃるのですが、これは私は非常に重大な問題だと思うのですよ。少なくとも大臣国会の場で言明したことであり、さらにその言明をする経過については、労賃部分をどう評価するかということで、政府当局とそれからわれわれのほうと意見が食い違ったときに、与野党の理事の間でいろいろ協議をされて、しかも、その協議の中に私は当然政府当局も加わっていたと思うんですよね。その協議をされた結果として、赤城農林大臣のほうからああいう発言があったんです。したがって、これはそのことの経過から見て、当然、酪農民にすれば、これは政府が公式に約束をした労賃評価の方式である、こういうふうに受け取っているわけですよ。ところが、それが昨年の四十一年度ですか、四十一年度の審議会ですか、そのときに全然守られなかった。それでまた今回も、一部前進の姿は見られますけれども、しかし、赤城さんが言ったとおりのところにはいっていない。こういうことで、これはやむを得ぬのだ、おれは現実主義者だからというんじゃ、これはちょっとおかしいと思うんですよ。この点はやっぱり大臣の約束ですから、それを守るような方向で御検討願わなければならぬと思うのです。しかし、この問題については、もう朝来、非常に微に入り細に入って渡辺委員からも質問のあったことですから、私はもう触れません。  私がお伺いしたいのは、最近の飲用向けの乳価をめぐる問題についてお伺いいたします。しかし、相当時間が経過いたしまして、もう非常な制約がありますので、ごく簡単にやってまいりますから、御答弁のほうもそのつもりで、要領よく、よくわかるようにごまかさないような答弁でやってもらいたいと思います。  まず、第一点は、四十二年度の飲用向けの牛乳の取引価格が、今月の二十七日に全国乳価対策協議会と大手乳業四社との間で話し合われた結果、四月一日から現行価格に一升当たり十二円上乗せをするということで意見が一致した、こういうふうに新聞には各紙に報ぜられておるんですがね。これは局長のほうからお答え願ったらいいと思うのです。これは事実ですか。
  156. 岡田覚夫

    政府委員岡田覚夫君) そういう報告を受けております。
  157. 矢山有作

    ○矢山有作君 そうすると、そういうふうな話し合いが行なわれ決定を見たということは事実であると、こういうふうに理解していいだろうと思うのですが、こういうふうになるについて、一体、農林省はどういう役割りを果たされたのかということが私は問題だと思うのです。農林省はことしの春以来、「飲用原料乳価格の形成等について」という題目で中酪会議の議長あてに回報を出していますね。それで、飲用牛乳の製造販売経費等についての標準的な数値を示して、飲用向け牛乳の取引価格の交渉については、これをひとつ基準にして交渉をやってくれということで指導し、ただ単なる外からの指導だけでなしに、農林省自体もその乳価交渉の中に入って積極的にやっていたはずです。これとの関連はどうなんですか。こういう努力の結果としてこれが出てきたのか、それとも、それとは全然無関係に今日のあの話し合いが行なわれ、決定を見たのか、そことの関連はどうなんですか。
  158. 岡田覚夫

    政府委員岡田覚夫君) 昨年の乳価交渉については、御承知のとおりだと思うわけでございます。で、知事が中に入りましてあっせんをするようにという依頼をいたしたわけでございますが、その結果、各県とも生産者と乳業者との間に入りましてあっせんをいたしました結果、十二月の末におおむねきまったわけでございます。きまりました価格につきましては、現下の酪農事情から必ずしも適当なものでないということになりまして、生産者といたしましては、四十二年度の生産価格についてはさらに引き上げをするようにということでメーカーに対する要請をいたしたわけでございます。私たちといたしましても、生産者の価格を上げるべきであるというふうな観点から、メーカーに対してもいろいろと意見を述べまして、生産者の希望が達せられるような努力はいたしたわけでございます。
  159. 矢山有作

    ○矢山有作君 いまの話を聞いていると、農林省が指導をして今回の引き上げがきまったような印象を受けるような話なんですがね。昨年の交渉経過から見たら、農林省のあの示した標準的経費なんというものは、全然メーカーから問題にされなかったですわね。頭からもう無視されちゃった。それで、農林省が最初中に入っていくら話し合いをしてもまとまらない。そこで、とうとうさじを投げて、各県に通達して各県でも積極的に交渉をやってくれ、こういうことで逃げたようなかっこうになっているわけですよ。だから私どもは、農林省の指導の結果としてああいうふうな乳価が出てきたのじゃない。農林省のこの飲用向けの原料乳に対する価格の指導については全く無力だったと、私はそう考えているんです。農林省はメーカーにくわえて振られただけだ。面目まるつぶれですね。私はそう思いますよ。その点を深く反省して、これからのやはり原料乳向けの牛乳にしても、飲用乳向けの牛乳にしても、問題を考えていかなければならぬと思うんですよ。  そこで、次に聞きたいことは、聞くことだけ答えてもらいたいんだが、十二円アップをやったその根拠はどこにあるんですか。いまのお話ですと、農林省が全然ノータッチじゃなかったような印象を受ける御答弁なんですから、そこをあなたのほうで多少タッチしておったということを前提とするならば、十二円アップの根拠は、あなたのほうはあなたのほうなりに考え方を持っておられるだろうと思う。その点はどうですか。
  160. 岡田覚夫

    政府委員岡田覚夫君) 御承知のように、市乳価格につきましては、それぞれ生産者、卸売り、メーカーと申しますか——と交渉して自由にきまるべき価格でございます。したがいまして、私たちが幾らになるべきであるというふうな指導はいたしておりません。しかし、生産者のメーカーに対する交渉の過程におきまして、できるだけ生産者の希望に沿うようにメーカーとしても努力をしてもらうような要請はいたしておりますけれども、幾らにすべきか、幾らが妥当であるかということにつきましては、私たちは直接タッチをいたしておるわけではございません。
  161. 矢山有作

    ○矢山有作君 まあ、幾らになるという指導はしてないとおっしゃるんですが、昨年の乳価交渉の経過からみれば、わざわざ標準的な費用を示して、これは自信が持てる計算なんだということで積極的に乳価交渉を推進されたんですから、これは指導をしてないということは言えないだろうと思うんですよ。しかし、あなたのおっしゃるとおりをそのまま受け入れておきましょう。そうなると、十二円アップの根拠については、あなたのほうではわからぬということですね。  それでは、その次にお伺いしたいのですが、農林省は、たしか二十七日ごろに、三十七年、三十九年ごろに飲用乳の価格指導をやる通達を出しましたね、あれはもう廃止するんだという声明をしたとかせぬとかいうことが新聞に出ておりますが、あれは実際にああいう価格指導をしないということにしてしまうんですか、どうですか。
  162. 岡田覚夫

    政府委員岡田覚夫君) 御承知のように、三十九年に牛乳の小売り価格が著しく騰貴をいたしました場合に、小売り価格の抑制をいたすために、二円以上上げるのは抑制するというたてまえで指導通達が出されたわけでございます。したがいまして、指導通達といたしましては、実質的な意味は、当時の——三十九年の小売り価格の値上がりを抑制するというのがその通達の趣旨だったと思うわけでございます。その後、国民生活審議会等から、政府価格指導に対するあり方等の検討がなされまして、指導通達を廃止したらどうかというような御意見もあったわけです。で、最近の実情から見まして、政府が法律的根拠なしに直接に価格の内容にタッチするということが、はたして妥当であるかどうかということで検討をいたしました結果、この問題につきましては、具体的な中身に入って指導するということはいたさないという方針をきめたわけでございます。
  163. 矢山有作

    ○矢山有作君 そうすると、国民生活審議会からの要望に従って、一応、従来の価格指導というものはやめたと、こういうふうに解釈できるような御答弁ですが、国民生活審議会がそういうふうな意思表示をしたことによって、もうそういう価格指導をやらない。そうすると、実質的には、飲用乳の価格決定というものは、全く自由にまかされるわけですね。形としてはそうなりますね。そうした場合に、はたしてその小売り価格が、審議会側が考えているように消費者のほうに有利な方向にきめられてくる可能性があると思いますか、どうですか。私はこの点に非常に大きな疑問を持っておるんですがね。
  164. 岡田覚夫

    政府委員岡田覚夫君) ただいま申し上げました点を繰り返すようなことになるわけでございますけれども、国民生活審議会の意見がございましたので、直ちにそれに従ってやめたというわけではございません。最近の小売りの段階だとか、メーカーの段階だとかいうふうなものを考えてみまして、必ずしも政府が直接価格形成の中身に入って、幾らにすべきであるというふうなことをきめる必要はないのではないか、こういうふうなことから、直接、価格形成の内容にタッチすることはやめるべきであるという考え方に立っておるわけでございます。そこで、生産者に対しましては、まあできるだけ支払ってもらいたいということをメーカーにわれわれとしても希望しておるわけでございますが、その結果、それが卸売り価格、小売り価格にどのような影響を与えるかということは、最近の牛乳の流通の実態によってきまってくるものであろうというふうに思っておりまして、特にこの価格形成について関与する必要はないのじゃないかというふうに考えておるわけでございます。
  165. 矢山有作

    ○矢山有作君 だからね、回りくどい言い方をしなくても、要するに、小売り価格の形成についてはもうタッチしないんだということでしょう。そうなると、私の言っておるのは、現在のいわゆる乳業界の状況で、はたして国民生活審議会が期待するように小売り価格の抑制ができるだろうかどうだろうかというところに非常に問題があるのじゃないか。むしろ、価格のつり上げのようなことになってくるのじゃないか。もっと言うならば、管理価格的なものが生まれてくるのじゃないかというふうな心配があるわけです。その心配をする根拠は、御承知のように、現在、集乳量の大体七割は大手乳業四社で占めておるでしょう。それから、市乳の流通量の六割くらいは大手乳業四社で占めておるわけです。しかも、その市乳処理の占有率はもうどんどん上がろうとしておるわけです。いま、雪にしても、森永にしても、明治にしても、ばく大な設備投資をやって新工場をどんどん建てておるわけです。そうすると、これら四大乳業による市乳処理の占有率というものはどんどん上がってくる、そういうふうに占有率が拡大してくる中で、こういう形で小売り価格をきめていった場合に、消費者に不利が起こりはしませんかということを私は言っている。
  166. 岡田覚夫

    政府委員岡田覚夫君) 法律の根拠なしに価格を規制をしましてやるという形が消費者のためになるのか、あるいは、自由な価格形成にゆだねたほうが消費者のためになるのかという点については、まあ御意見のあるところだろうと思うわけでございますが、しかし、現実の小売りの体制なり、メーカーの体制なりを考えてみまして、そういうふうな形で政府価格に介入するということが、必ずしも全体の利益にならないのではないか、むしろこの際、政府が直接、価格内容等にタッチしないで、需給の実態なり地域の実態に応じまして、自然の価格形成にまかしたほうが妥当なのではないかというふうに考えておるわけでございます。
  167. 矢山有作

    ○矢山有作君 法的根拠なしに価格形成に介入することがいいとか悪いとかという議論をいまさらする必要はないんじゃないですか。それは、現実に三十七年、三十九年の値上げのときにあなた方が通達を出してやっているわけですから。三十九年のときに現実にそれをやって、二円以内の値上げなら認めるということで二円の値上げを認めて、十八円で食いとめまして今日まで来ているわけでしょう。こういう実態があるのですから、だから法的根拠なしに介入することがどうとかこうとかということは、この実態的経過の中には出てこぬのですよ。現実に通達でもって介入したことが、ここ三年ほどの間、普通牛乳の価格を押えておったのですから。こういう現実があるんです。だから、そういう議論は成り立たないんです。私が言っておるのは、それを取っ払ってしまうと、今度は自由に小売り価格が決定されるようになる。ところが、あなたのおっしゃるように、自由な競争をやっておるから、そこで適正な価格が生まれてくるんだ、それが消費者には有利になるんだということは私は言えないのじゃないかと言っておるんです。いまの大手の市場占有率から見て、この点、大臣、どうお考えになりますか。私は必ず価格協定的なものが出てくるおそれがあると思う。現実に乳を買うときでもそうでしょう。たびたび公取委員会に提訴された。かつて公取委員会だって、価格協定のおそれがあるのじゃないかと買い上げ農家に対して調査したこともあるのだから、そういうことが起こってこないという保証はない。それを私は心配しておる。どうなんですか。
  168. 倉石忠雄

    ○国務大臣(倉石忠雄君) ただいま畜産局長が申し上げましたのは、一通りの農林省としての事務的な心がまえ及び取り扱いについて申し上げたことでありますが、今般乳価の値上げのことにつきまして、業界でいろいろ、メーカーと生産者またはメーカーと小売り店、こういうようなものたちがしばしば会合いたしておった模様でございます。その間においても、改まってまいったわけではありませんが、たとえば、私が、農業生産物というものは生産も大事であるけれども、流通も同じ程度に大事なことなんだ、したがって、小売りの幅などについてもし合理化が行なわれるならば値上げせずにうまくいくのではないかというふうな断片的なことを言っただけでも、だいぶ刺激をいたしまして、私のところにいろいろ申し出てまいったような事例もあります。ことに、御承知のように、乳牛の生産にいたしましても、飼料その他で政府にめんどうを見てもらっている点もたくさんございます。不足払い制などというものも明らかにこれは行政府にめんどうを見てもらっているわけでございますから、今日のように、いま畜産局長が申し上げましたように、審議会の勧告等もございましたけれども、やはりまあ自由な価格形成の行なわれる範囲でありますからなるべくタッチしないが、要するに生産者に生産意欲を続けてもらえるような方向で努力してくださいよということは常に言っておったわけであります。  そこで、ただいまのお話でございますが、法的にいま畜産局長が申し上げましたように、われわれがこれを押えるとかなんとかいう権限はないかもしれませんが、いま申し上げましたように、実質的にはいろいろ政府の協力も得なければならない問題でありますし、同時にまた、牛乳のようなものが一般家庭の消費生活に甚大な影響を持ってくる社会的世論もございますので、これをたとえ自由な価格形成にまかせるといたしましても、やはり政府側の意向もただし、われわれの見解も尊重しながらやっていかれるものである、このように期待もし、またできるだけそういう方向で私どもは相談にあずかってまいりたい、私どもはこう思っておるわけであります。
  169. 矢山有作

    ○矢山有作君 いまの問題について、経済企画庁はどう思っておられますか。
  170. 金子一平

    政府委員(金子一平君) 矢山委員お話のとおり、生産者の値段を引き上げましたものがダイレクトにそのまま小売り段階にはね返りますと、お説のようなことになるのでございますが、その中間段階で、たとえば処理の段階あるいは流通の段階におきましてマージンが圧縮できれば、そのままはね返ることは少しでも押えられるのじゃないか。そういうような点につきまして、昨年の暮れ、物価問題懇談会におきましても幾つかの提案をいたしておりまするし、また、ただいま御指摘のありました国民生活審議会の消費者部会におきましても幾つかの提案をいたしております。たとえて申し上げますと、最近のように冷蔵庫が普及した今日において、毎朝早朝の牛乳配達をやる必要があるかどうか、隔日配達でもいいのじゃなかろうか、それによって相当人件費が節約できるのじゃなかろうか、あるいは、容器につきましても、一々一合びんじゃなくて、大口需要者については一升びんや五合びんで配給したらどうか、ガラスびんじゃなくてビニールの袋に入れたらどうか、特に最近は滅菌の方法も相当変わっておりまして長もちをするものができておりますから、そういう点でのコストの低減ができやしないかというような問題、あるいは、処理の段階におきましても、農山村におきましては簡易な滅菌制度が認められておるのでございまするけれども、まだ十分普及する段階に至っておりません。そういうような点につきまして、もっと行政指導でそれを広めるようなことをしたらどうか。あるいは、最近東京都で相当広範囲にやっておるようでございますけれども、集団で町内ぐるみで牛乳びんを受け入れるような組織、あるいは、無人の牛乳スタンドを設けたらどうかというような、いろいろな提案をいたしておりますので、関係各省の間でこういった点につきましてもきめこまかい指導をいたしましたならば、価格形成は自由になりましても、中間マージンにおいてもまだ節減ができる点が十分あるんじゃないか、また、そうあってほしいとわれわれは非常に期待しておる次第でございます。
  171. 矢山有作

    ○矢山有作君 あのね、ちょっと私の質問の観点を取り違えられているんじゃないですか。私は、何も、市乳、原料乳の値上げが小売り価格にどうはね返るかということの議論をいまやっておるんじゃない。それはあとでやるつもりです。私がいま言っておるのは、いわゆる小売り価格についても従来通達を出して、小売り価格の形成に対して農林省は指導してきた。ところが、それをやめてしまうわけですね。やめてしまった場合に、小売り価格の形成というものが自由競争だから消費者に有利になるように形成されるんだということが言えますかと言っておる。現実は四大乳業というものが市乳市場の六割から占有しておる状態である。さらに設備の拡張によってこの市場占有率は拡大の方向をたどるであろう。そうなったときに、四大乳業のもとにおいて管理価格的なものが生まれてきやせぬか、小売り価格の形成が必ずしも消費者に有利に形成されることにならぬじゃないか、このことだけを聞いておるんです。私は心配があると思う。どうなんですか、経済企画庁、ちょっとあなた取り違えておるんじゃないか。
  172. 金子一平

    政府委員(金子一平君) お話のような場合もあり得ると思いますけれども、価格の形成が公正に行なわれる、つまり自由競争を取り入れて行なわれるようなことになりましたならば、場合によると値段が上がる場合もありますけれども、競争によって下げ得る余地もあるから、必ずしも全部そのままはね返ることはない、かように考えておる次第でございます。
  173. 矢山有作

    ○矢山有作君 考え方はそれでいいんですよ。ところが、実際の経済の動きというものは、必ずしもそう動いていないでしょう。少数企業による市場占有率が非常に大きくなってくると、そこで価格操作をやるということが現実に起こっているんじゃありませんか。そういう方向に行くおそれがあるんじゃないですか。公取さんは見えておりますか。公取さん、いままでこういう問題をよく調べておられるんですが、どうですか。私はその危険性があって心配しておるんです。
  174. 竹中喜満太

    政府委員竹中喜満太君) 私どもの立場から申しますと、価格というものは、自由主義経済体制のもとでは自由競争価格であるべきである、これが原則でございます。ただ、いまお話しのような場合には、それぞれの業界の需給の状況、あるいは企業の規模等によりまして、場合によりましては矢山委員の言われるようなことも起こり得る、こう考えております。
  175. 矢山有作

    ○矢山有作君 この点は私は十分今後注意してほしいんです。なぜかといいますと、かつて、夏ですよ、こういう事実があったんですね。大手メーカーと生産農民との間に乳価の値上げの交渉がなかなかまとまらなかった。ところが、中小メーカーのほうは原乳不足で困っていたわけです。市乳の中小メーカーですよ。困っておったものだから、大手と生産農民の間で価格がきまらぬうちに、中小メーカーのほうは高い値段を出すから乳をくれと酪農団体にどんどん言ってきて、高い値段で事実売った例がたくさんあります。そうしたところが、大手はどういう態度に出たかというと、おれらが払っている乳価よりも中小企業が高い乳価を払うのはけしからぬ、そんなことはするなということで、口で言うだけならまだいいのですが、その中小メーカーのいわゆる乳価の引き上げをとめるために、中小メーカーの販売店をつぶしたわけです。販売店の横取りをやるんです。そうしてたたきつけて、中小メーカーは販売店を取られたら乳をつくったって売れないのですから、しかたがない、中小メーカーも大手並みに合わせて、そうして一たん上げた生産農民に支払う乳代を下げたという実例がある。これは名古屋で行なっております。やった大メーカーは森永乳業です。こういう事実があるんですよ。したがって、小売り価格についても、この価格形成を自由に放任したら必ずそういうことが起こるのではないか。大手のメーカーが市場占有率が非常に大きい。ほとんどもう乳業界の発言権は大手が握ってしまっているのですから、したがって、価格協定をやって値段をつり上げて、それよりも安い値段で中小メーカーが自分のつくった市乳を売ろうとすると、今度は中小メーカーのその販売店をたたく、同じようなことをやるのではないか、それで価格のつり上げをはかっていくのではないか、こういうおそれがありますぞ、こう言っているんです。決して小売り価格の形成について、自由放任にしたら消費者に有利な価格形成ができると思っておったら、大きな認識不足の欠陥が出てくる心配がある。このことをなお強く指摘しておきます。今後、経済企画庁なり公取なり、さらに農林省も、この小売り価格の形成には十分注意していてほしい。  時間を食いますから、次に移りますが、飲用牛乳の一弁当たり十二円の値上げの場合には、小売り価格は大体どうなるのですか。私は、新聞の報ずるところで見ると、小売り価格は一斉に二円上げるということが前提になっているように聞いておりますが、そうしてその二円値上げした分の配分の内容まできまっている、こういうことのようですね。もうすでにここに、はや大手四大メーカーによる欠陥がでてきているじゃありませんか。本来なら、十二円市乳向けの原料乳乳価を上げたら、一斉に小売りも全部二円上げなければならぬ、四大メーカーそろって上げなければならぬという性質のものじゃない。経済企画庁なり公取なりあるいは農林大臣のおっしゃった論法でいくならば、そういうものじゃないわけです。ところが、一斉に二円引き上げがきめられたというように新聞に書いてありますね。これは事実なんですか、どうなんですか。
  176. 倉石忠雄

    ○国務大臣(倉石忠雄君) 小売り価格をどのようにするかということについては、まだあらためて報告を受けておりませんです。
  177. 矢山有作

    ○矢山有作君 畜産局長は知っているでしょう。事務当局はおらぬですかね。全然タッチしていなかったのじゃないようだから・知っているはずだが。
  178. 田中宏尚

    説明員(田中宏尚君) 乳業者からの、生産乳価引き上げに伴います乳業者販売価格について若干の調整をせざるを得ないという点につきましては、報告は受けておりますけれども、その結果、小売り価格に何円はね返るかという具体的な点については、まだ報告は受けていません。
  179. 矢山有作

    ○矢山有作君 報告は受けておらぬで逃げられちゃ困るんです。現実にどの新聞も全部書いています。正式な報告がないといったって、すでに原料乳の一升当たり十二円値上げによって二円小売り価格が上がるのだということが、大体もう話し合いがついた。その配分内容まで、生産者取り分が一円二十銭、メーカー取り分が三十銭、それから小売り店の取り分が五十銭、ここに詳細に書いてあるわけです。公取は御存じでしょうか。消費者の団体のほうから、こういうふうに一律値上げはけしからぬじゃないかといって、何か話が行っておるはずですがね。どうなんですか。それを知らぬじゃ済まぬですよ。公取に行っておるでしょう。
  180. 竹中喜満太

    政府委員竹中喜満太君) 先般来、消費者団体から、今回の値上げは独占禁止法違反ではないかというような話が参っております。私ども、現在のところでは、新聞紙上で承知しておるだけでございますけれども、あれが事実であるとすれば、独占禁止法違反の疑いが相当濃いのではないかと、こう考えて、重大な関心を持っております。
  181. 矢山有作

    ○矢山有作君 経済企画庁も知りませんかね。これは知っているでしょう、経済企画庁は。知らぬ知らぬで逃げたんじゃ……。
  182. 金子一平

    政府委員(金子一平君) 新聞で読んでおる程度でございます。まだ具体的な話は聞いておりません。
  183. 矢山有作

    ○矢山有作君 そうすると、これがもし事実として出てくるとするならば、どういうことになるのですか。いままで、消費者にできるだけ安い価格で市乳を供給しようということで価格指導をやってきた。それをはずしたとたんで——ぼくは原料乳の農民の手取りをふやさなければいかぬと思いますよ。いまの酪農の衰退状況から見たら、これはふやさなければいかぬと思いますよ。しかし、だからといって、それのふえた分をすぐ小売り価格の値上げに持っていって消費者にしわ寄せをすると、こういう形が、それもしかも足並みをそろえて二円と、こういう形が出てくるというのは、非常に問題だと思うんですよ、私は。経済企画庁だって、これはやはり問題だと思うでしょう。そういうことが現実に出てきた場合に、どうするのですか。特にいまの政府の最大の政策は物価抑制ということにあるでしょう。私は、小売り価格原料乳を値上げしたからすぐそのまま二円値上げしなければいかぬのだという根拠がないと思う。先ほど企画庁はいろいろ言っておられましたが、この点はどうですか。これは政府の物価政策の上からも重大な問題ですよ。経企庁はどうですか。
  184. 金子一平

    政府委員(金子一平君) 先ほど来御説明申し上げましたように、私は中間段階において経費の節減ができることを期待いたしておるのでありまするが、したがって、一律にそのまま生産者の乳価の値上げが小売り価格にはね返ることはないと思っておるのでございまするけれども、もしその間に大メーカーの価格協定その他の独禁法違反の行為があるような場合には、公取において法律の運用においてしかるべき措置がとられることと存じます。
  185. 矢山有作

    ○矢山有作君 先ほど経済企画庁がおっしゃった中間マージンの縮減ですね、加工流通過程の合理化という問題については、これはいまに始まったことじゃないんですよ。かねがねこのことはもう論議になっておるんです。すでにもう三十七年の畜産局長通達で飲用牛乳の価格指導をやったとき、三十九年にやったときも、ちゃんとそのことが、加工流通過程の問題については、あなたがおっしゃったことは全部ここに書いてある。ちゃんとそういう通達が出ておるのです。しかもですね、しかも、酪農近代化基本計画を定めたときも、加工流通過程の経費縮減のための整備ということはちゃんとうたってある。これも、はやもう三年も四年も昔からの問題なんです。一体、これが一つとして実行されたのですか、いままで。何も行なわれていないじゃないですか。もし、現在までに加工流通過程の合理化のためにどういうことをやって、その結果どういう効果があったという証拠があるなら、おっしゃっていただきたい。言うだけは言うけれども、何もやっていないというのが現実なんですよ。どうなんですか、その点。
  186. 金子一平

    政府委員(金子一平君) 事務当局からお答えさせます。
  187. 竹内直一

    説明員(竹内直一君) 先ほど政務次官からお答えいたしましたように、住宅団地等において集団購入、こういった購買の方式が逐次普及しております。これはまだこれから普及する段階かと思いますけれども、部分的にそういった動きがあるということで、私どもはこういうものが逐次普及していくことを期待しておるわけであります。
  188. 矢山有作

    ○矢山有作君 農林省、別に……。
  189. 倉石忠雄

    ○国務大臣(倉石忠雄君) ただいま御指摘のいろいろ通達も出しておるところでございますが、農林省の側といたしましては、先ほど私が申し上げましたように、まず第一に、生産者の生産意欲を増強してもらうようにやってくれよ、こういうことを一番多く期待をいたしておるわけでありますが、その後、乳価のことについて、いま伝えられておりますように、値上げのことがしばしば論議され始めておりましたので、やはりそれについての行政指導をやりたいと思いまして、いろいろ指導もいたした模様でございますけれども、結局、いまになって見ますというと、行政指導があまり徹底していなかったんではないか、こういうふうに思われます。たとえば、先ほどちょっとどなたかのお話にございました、一合びんで配達しなくても、これをまとめて大きなびんで配達することによって手数を省いて、小売り価格を上げないで済むようにならないか、いろいろなことをいたして苦労をいたしておったわけでありますが、その点についてあまりに成果はあがっておらないことは、私どもまことに残念に思います。
  190. 矢山有作

    ○矢山有作君 私は、生産者の乳価は、これは絶対に上げなければいかぬと思うのです。これは今朝来論議されましたが、あんな低い生産者の乳価では、とても酪農は増大できません。酪農振興できませんから、当然上げなきゃならぬ。ところが、流通加工過程の合理化ということも、これは消費者に高い牛乳を飲ませないというためには、これはやらなければならぬことなんですが、その部面で農林省自体がやらなければならぬことはたくさんあるんですよ。集送乳路線が錯綜しておるあの問題だって、何とかして集送乳路線の整備をやらなければいかぬ、たくさん小さい乳業者が群立しておる。会社会社によって工場の大きなのも小さいのもある。いろいろ問題を含んでおる。その問題についても、農林省は、かねてから、集送乳路線の整備であるとか、あるいは乳業企業自体の合理化とか、いろいろ言ってきたわけですが、何一つできていない。ただしゃべっただけなんです。やりますやります、近代化計画ということをやりますと書いてあるが、何にもやっていない。また、経済企画庁におきましては、集団飲用が始まって、いかにもこれでおれたちは流通加工過程の合理化に力をかしているんだ、指導をやっているんだという言い方ですが、集団飲用は、消費者のほうがいまの物価高にたまりかねて自分たちでやりかけたことなんで、当然行政指導としてやるのだとあなた方のほうでおっしゃった。やろうとすればすぐやれるような包装の問題だって何だって、一つもやってないじゃありませんか。こんなもの、私に言わせれば、流通加工過程の合理化というものは空念仏に終わっている。それをやらぬから生産乳価の引き上げが困難になるし、引き上げるならば、それが直ちに小売り乳価にはね返って消費者を困らせるという結果が出てくる。あなた方は、空念仏ばかり唱えないで、物価問題懇談会の答申もあるから、あんなことでは合理化したことになりませんが、根本的には、農林省は農林省としてやらなければならぬ流通加工過程の合理化とかその他をやらないのかやるのか。また、経済企画庁は、物価抑制という見地から本格的に取り組まれるのか取り組まれないのか。口で言っているだけではだめですよ。やるのかやらないのか。もう三年、四年やっているんですから、われわれはあなた方の、やりますやりますというだけでは信用できない。やるならやりますと責任をもって言ってください。
  191. 倉石忠雄

    ○国務大臣(倉石忠雄君) 個人のことを申しましてまことに失礼でございますが、私の郷里は非常に乳牛の多いところでありますが、実際を見ておりますというと、なるほどメーカーの集乳の区域は分かれておるようなものでありますけれども、実際は非常に錯綜してきて、競争しております。そういうことについても、実は農協その他と話し合いをいたして、これがやはり系統的になるべくロスを省くようにしようではないかということを言っておるわけでありますが、農林省では、来年度の予算で、ただいま御指摘のような集乳の制度につきまして、いままでやっておりました補助率、たしか五分の一を三分の一に引き上げました。それからして、また、指定生乳生産者団体の地位の強化について、いろいろな設備に対する助成をいたすことにいたしました。ただいまお話のございましたような、ロスを省いて生産者の所得がなるべく多くなれるような施策を講じてまいりたい、こう思っておるわけであります。
  192. 金子一平

    政府委員(金子一平君) 物価対策はなかなかむずかしい問題でございますけれども、特に最近は政府全体が一丸となってこの問題に取り組もうという決意を佐藤総理も示しておられまして、随時閣僚懇談会があり、あるいは各省の事務的な連絡といたしましての物価担当官会議を随時開いて、連絡を緊密にしてやっておるような状況でございますので、ただいま御指摘のありました牛乳の問題につきましても、今後強力に推し進めまして、御期待にこたえるようにしてまいりたい、かように考えております。
  193. 矢山有作

    ○矢山有作君 まあ今度は気持ちをひとつ引き締めてやろうというんですから、やるんだろうと思いますがね。さしずめ物価問題懇談会で指摘されている事項が数項ありますね。これなんか、やろうと思えば、すぐやれるんです。たとえば簡易処理の問題。たしか三十年ごろに公衆衛生局長、環境衛生局長の通達で一部ゆるめたということがあったんです。ところが、もとになる食品衛生法関係の法令自体がそのままになっておる。だから、簡易処理の普及ができない。末端において簡易処理をやろうとしても、ストップがかかってしまう。なかなかむずかしい。この点、やはり簡易処理なんかの問題でも、前向きに食品衛生法の再検討をやって取り上げてやるかやらぬか、この点なんかも出てくる。物懇あたりでは、無人スタンドかなにかこしらえてこれで売ったら安くなるだろうという言い方をしておる。ところが、無人スタンドに行って買ってごらんなさい。安くないです。ですから、ああいうふうな形式で売る場合、あるいは、店頭売りにする場合、これははっきり何かの指導によって価格差を設けさせぬことには、販売方法一つだって合理化することにならぬですよ。その辺をお考えになっているかどうか。  さらに、包装改善だって、いま、牛乳は、明治、大正ごろに考えられた薬と違うんです。食品ですから、この食品としての扱い方の規制のしかたが、食品衛生法を見ると、きわめてきびしいのです。ですから、包装上の問題でもいろいろ問題が出てくるのです。こういうあたりを今後やはり積極的に進めていく。ここら辺なんかでもすぐできることです、やろうと思うと。やるんですか、やらぬのですか。これは食品衛生関係にも関係してきます。厚生省はどうお考えでしょうか。まあ農林省、経済企画庁とか……。
  194. 倉石忠雄

    ○国務大臣(倉石忠雄君) そのような問題につきまして、実は経済企画庁長官も、厚生大臣に向かって、ひとつこの流動過程を近代化しようではないかということについていろいろ相談をいたしておりました。食品衛生法のことについていまお話がありましたけれども、そういうようなことも含めて、ひとつ真剣に検討いたしたい、こういうことでございますから、なお促進して、流通機構の改善整備に努力いたしたいと思っております。
  195. 矢山有作

    ○矢山有作君 食品衛生行政の担当のほうはどうですか。かねてから問題になっておったところです。
  196. 武藤き一郎

    説明員(武藤き一郎君) ただいまの包装等の問題につきまして、合成樹脂等につきましても、一昨年二月以降、厚生省で積極的に実施するようにいたしております。  それから高温殺菌の問題につきましても、この問題についてやるように指示いたしております。
  197. 矢山有作

    ○矢山有作君 ところが、やるように指示しただけでは、現実にできてないんです。やはり、もとの法令というものがきびしく締めていますから、だから、上のほうでは、あなた方は、これはやってもよろしいんだという通達を出しても、末端のほうへ行くと、第一線の行政をやっている人は、それをゆるめて、高温殺菌なんか簡易処理施設を認めて、もし何か事故が起こったら困るという考え方のほうが先に立っちゃって、やっぱり法令をたてにしてそういうことをできるだけ押えよう、こういうことになってくるわけです。ですから、一部包装用器の改善をやったことは認めます。これは何か規則を改正していますわね。  そういうふうに、流通過程の合理化の問題についても、あるいは加工過程の合理化の問題についても、食品衛生法関係の法令自体をいらわなきゃならぬ問題がたくさんあると思うのです。それをいらうだけの腹を持ってこの中間マージンの増大を押えていくのかどうかというんです。
  198. 武藤き一郎

    説明員(武藤き一郎君) ただいまの御意見でございますけれども、私どもといたしましては、つとめてそういうふうにやるように指示いたしておりますけれども、実態を調査いたしまして、さらに検討いたしてまいりたいと思います。
  199. 矢山有作

    ○矢山有作君 農林大臣、問題点はおわかりだろうと思うんですね。これは厚生省に言って、牛乳は薬とは違うのですから、もう少し実態に即したような取り扱いに改めるようにこれはやっていただかなければならぬと思うのです。  それから、次にお伺いしたいのは、生産乳価が上がったからすぐ小売り乳価を上げるという問題については、これは私は問題があるので、この生産乳価の値上がり分は、先ほど言いました流通加工過程の合理化で吸収できるのじゃないか、さらに、メーカーの現在の経営の状況からいったらこれは吸収できるのじゃないかと、こう思っておるのですがね。この点の検討をあなたはやったことがありますか。話を聞いただけだというので、正式に報告を受けていないとおっしゃるから、これは聞いたというだけで、検討しておらぬというなら話はそれまでだけれども、しかし、少なくとも生産乳価アップすれば小売り乳価にはね返るおそれがあるということは、もうとつくからわかっておる点だ。だから、その長期流通過程の合理化、あるいはメーカーの経営状態等から考えてみても、これは吸収できるかできないか、吸収される余地があるのかないのか。それから、小売り価格にははね返りゃせぬと、そういうことができるのかできないのか、その辺を調査をしてみたことがありますか。
  200. 岡田覚夫

    政府委員岡田覚夫君) ただいまの点でございますけれども、生産者に対する支払い乳価が上がってまいりますということになれば、メーカー、小売り側が一体吸収できるかできないかという問題になるわけでございますけれども、昨年乳価闘争をやりまして、相当長期間にわたって乳価闘争をやったわけでございます。その結果、やはりなかなか生産者側の要求する乳価が実現しない。これは私たちも不十分ながら努力はいたしたつもりでおりますけれども、生産者の意識といたしましては、これ以上はなかなか乳価が払えないと、こういうふうな気持ちになっておると思うのでございます。メーカー、小売りが一体幾ら支払えるか、支払えないかという問題につきましては、なかなかこれはむずかしい問題でございますけれども、まあ三年間据え置きになっておりまして、その間労賃の値上がり等も相当あるわけでございます。そういうふうな事情からいたしますと、全部吸収できるかどうかということにつきましては、これはやはりいろいろ問題があるのじゃないかという感じはいたしております。
  201. 矢山有作

    ○矢山有作君 最近の大手の乳業メーカーの経営状況はどういう状況ですか。私は非常に業績があがっているのじゃないかと思うのですがね。それもお話にならぬほど業績があがっていますよ。不況の最中だって、もうけっぱなしなんだから。株の配当も一割二分やり、さらによけいに記念配当かなんかで四分も五分もやっているようなメーカーがたくさんあるんですからね。経営実態を一体調べたことがありますか。
  202. 岡田覚夫

    政府委員岡田覚夫君) 四十年の経営につきましては、これはもう有価証券報告等でわかっておりますから、これは存じております。四十一年につきましては、これはまだ、明らかにならないわけでございますが、いずれにいたしましても、昨年の乳価闘争の結果、そういうふうなことで、なかなか支払い得るという力はなくなっておるんではないかという一般的な認識を持っておるわけでございます。
  203. 矢山有作

    ○矢山有作君 それは、少なくとも、局長、不足払い制度を発足さしたのでしょう。それで、補給金の支払いまでやっているんですからね。そうなれば、やっぱりメーカーがどういう経営の実態にあるのか、これくらいのことは私は徹底的に調査すべきだと思うんですよ、調査を。調査できる権限はあるんでしょう、法律によってもね。なぜ調査しないのです。そういうことを徹底的に調査して実態をつかまぬから、口の先で何だかんだ言われて、もうかってない、ああそうですか。もうかってないから値上げできない、ああそうですか。そんなことではメーカーの一人芝居じゃないですか。メーカーの一人芝居に農林省は踊らされておるだけですよ。そんなことじゃどうにもならぬ。経済企画庁だって、やっぱり物価問題を考えるなら、そこら辺はもう少し押えませんか。これは大手のメーカーのもうけは最近たいへんなものですよ。酪農民乳価が低いといって困っておるその最中にも、大手の乳業メーカーだけはぼんぼんもうかっているじゃないですか。なぜ調査しないのですか。一体、加工経費にどのくらいかかり、販売経費がどのくらいかかっているのか、そういう中で水増ししてもうけている余地はないのか、そういう点を調べてみなさいよ。それを調べないで不足払い制度をやって金を使うなんて、もったいない話です。
  204. 岡田覚夫

    政府委員岡田覚夫君) 不足払い制度につきましてはメーカーの調査権限がございまして、これは基準取引価格をつくります場合にも、   〔委員長退席、理事任田新治君着席〕 そのコストの計算をいたしておるわけでございます。しかし、全部に対して調査をする権限があるわけではございませんので、昨年にも、御承知のように、乳業者の中から市乳をやっておりますものにつきまして資料の提供を受けまして、一応その標準的なコストというものは調べておるわけでございます。で、そのコストからいたしますと、昨年乳価闘争によってできました乳価は、おおむねぎりぎりのところまできておるのではなかろうかというふうな感じを持っておるわけでございます。
  205. 矢山有作

    ○矢山有作君 それはまああなたがおっしゃった不足払い制度に従って調査する加工経費等の調査、たとえば普通向けの原料乳を何ぼで買って、したがって、普通向けの分はどういう状態だ、そういうつかまえ方をしていれば、あなたの言うよなメーカーに引きずり回されることになるんですよ。大体、乳業会社というものは、八百屋みたいなものですから、普通牛乳だけやっておるのじゃないんです。加工乳もやっておる。乳製品もつくっておる。菓子もつくっておる。そういう中で、もとは農民のつくった乳ですよ。農民のつくった乳を安く買って、そして普通牛乳をつくったり、加工乳をつくったり、乳製品をつくったり、菓子をつくったり、こうしてもうけているんですよ。ですから、やはりそういう経営の全体の中からつかんで、少しもうけ過ぎがあるのじゃないかということまで考えてみないといけないのじゃないかというんです。それをしないというと、いまの不足払いの制度では、これは乳業メーカーをもうけさせるだけなんですよ。早い話が、安定指標価格があんな低い価格できめられている。したがって、基準取引価格は低くなる。乳製品安定指標価格乳製品の市価よりよほど低いから、したがって、それから逆算して出せば基準取引価格は安くなるわけでしょう。安い基準取引価格で乳を買って、それで乳製品をつくってもうける、また、菓子をつくってもうける、そういうやり方でもうけているんですよ。だから、そういう点から考えて、やはり生産者にわずかの乳価の値上げをやったら、直ちに消費者にはね返さなければならぬのかどうか、その点をよく検討してほしいと思うんです。いまの農林省の態度、あるいは政府の態度、経済企画庁もそうですが、これだったらメーカーに引き回されているだけじゃないですか。どうなんです。
  206. 岡田覚夫

    政府委員岡田覚夫君) メーカー並びに小売り関係につきましての合理化ということはできるだけやっていかなければいかぬということでそれぞれ指導をいたしておるわけでございますが、しかし、御承知のように、小売りの段階につきましてもいろいろな提案がなされておるわけでございますけれども、なかなか現実の問題としてむずかしいわけです。実現をしないというような点があるわけでございます。これは、一つは消費者の態度も関係をしていると思うわけでございます。そこで、小売りにだけ、たとえば隔日配達をやれとか、あるいは大びんの配達をやれと、こういうふうに言いましても、消費者が協力しないとなかなかできないわけです。そこで、何とかこういうふうなことを両者あわせて合理化させる道はないかというようなことをいろいろ考えまして、そして昭和四十二年度の予算にも小売り改善モデル施設ということで、一定の地域を限りましてそういうふうな合理化ができないかどうか、できる場合には一定の施設に対して助成をしようというような形で、問題を具体的に解決していきたいというふうに実は考えておるわけであります。口でいくら申しましても、なかなかやはり実現はできがたいという点があるわけでございます。そういう意味で、合理化をはかっていくという努力はいたすつもりでおるわけでございますが、現実問題といたしまして、生産者から聞いておるわけですけれども、おおむね、先ほどお話しのように、十二円の値上げになるというふうなことになってまいりますと、はたしてこれは全部吸収できるかどうかという点につきましては、これは全部おまえのところは吸収できるというふうなことを私のほうが申し上げるということは、これはなかなかむずかしいわけでございます。たてまえとしまして、自由に形成される価格であるというたてまえからいいまして、内部に立ち入ってそこまで指導するということはなかなかむずかしいのではないかというふうに考えているわけであります。
  207. 矢山有作

    ○矢山有作君 それはむずかしいとおっしゃれば、それだけの話なんですよ。私は何も小売りのマージンが高過ぎるとか何とかいう議論をいたしているわけじゃないんで、流通機構の過程の合理化ということについては先ほど議論が済んで、あなた方はそれをやると言ったんです。やるについては、それは消費者の問題も必要でしょう。それはあたりまえの話です。しかし、消費者がそういう方向に向いていくような指導というか、PRが必要なわけですよ、実質を伴った。店頭売りの場合は配達よりも下げていくのだとか、そういう実質を伴った指導も必要なんです。それはそれで大いにやってください。ところが、私の言うのは、メーカーのいまの業績から見て、メーカーは口では採算が合わぬとか、あるいは十二円の引き上げを吸収できないとかいろいろ言っているけれども、非常に大きな利益をあげておるではありませんか。しかも、「週刊東洋経済」ですか、それなんかを見ると、今度十二円引き上げられた後にどういうことになるかということで、森永、雪印、明治の分析をやっていますよ。十二円引き上げられても、ばく大な利益になっちゃう。というのは、消費がどんどん伸びるというのだから。そういうところを考えたら、これは乳業のほうで大幅に吸収できるのじゃないか。実態からそういうふうに言っているわけです。あなたのほうでは、それは価格の指導はできないとか何とかおっしゃる。おっしゃるけれども、それはいまおっしゃっていることで、三十七年、九年、二度にわたって価格の指導をやってきたんですよ。だから、小売り価格の指導をやろうといったら、やれないことはない、やる腹がまえさえあれば。そして、やれるだけの根拠をつかむことですよ。根拠もなしに、おまえ上げるのはいけないとか、下げるんだと言ってみたところで、それは水かけ論だ。政府は、経済企画庁にしたって、農林省にしたって、どこにしたって、膨大な組織人員をかかえているでしょう。それで徹底的に調査してみなさい。確たる根拠をつかんで、そうして大もうけをしている乳業メーカーに吸収させるんですよ、そのくらいの値上げ分は。そのくらいやらないと、いまの乳価政策のもとで犠牲になるのは酪農民と消費者だけだ、ぬくぬくとしてもうけているのは大企業だけだ、こういう議論になってしまう。こういうことを私は言っている。口先だけではだめですよ。やる気にならなければ。どうですか、農林大臣と経済企画庁はやれますか。そのくらいの腹がまえでやらないと解決がつかない。
  208. 倉石忠雄

    ○国務大臣(倉石忠雄君) 大事なことでありますから、なおひとつよく検討して、ただいまお話しのように、生産者の生産意欲を増強することと消費者の利益を考えるということの方向に向って努力をいたします。
  209. 金子一平

    政府委員(金子一平君) ただいま農林大臣からお話のございましたとおりに考えておりますが、特に大メーカーについては、もしもうかっておるなら利益の一部を消費者のほうに還元してもらいたいと、かように考えております。
  210. 矢山有作

    ○矢山有作君 この議論を繰り返しておっても水かけ論になりますから、乳業業界の実績はあなた方よく御承知だから、それをつかんでひとつ処置していただきたいと思います。  その次にお伺いしたいのは、これは時期はぼくははっきり記憶しておらないですが、たしか河野一郎さんが農林大臣のときだったと思うのです。そのときに、普通牛乳と、加工牛乳の価格に二円の格差が設けられた。それがずっと今日まで続いておる。たとえば、三十九年の小売り価格を指導したときに、普通牛乳は十八円、加工乳は二十円、こういうような指導をやってきた。この二円の格差をつけた理由はどこにあるのですか。
  211. 岡田覚夫

    政府委員岡田覚夫君) おそらく、加工乳のほうがコストが高いということによって格差が出たものと私は考えております。
  212. 矢山有作

    ○矢山有作君 加工乳のほうがコストが高いのですか。
  213. 岡田覚夫

    政府委員岡田覚夫君) そうでございます。
  214. 矢山有作

    ○矢山有作君 何ぼ高いですか。
  215. 岡田覚夫

    政府委員岡田覚夫君) 標準的な牛乳の処理加工経費の水準でございますが、普通牛乳が当時三円六十二銭といわれておったときに、加工乳は四円六十銭と、こうなっております。
  216. 矢山有作

    ○矢山有作君 それは会社の資料ですね。会社の言ったそれをうのみにしてそうおっしゃっているのでしょう。ところが、酪農団体その他農業団体でいろいろ調べたところによると、ビタミン入りの牛乳だとか何とかいって、あれを加工乳といっている。あのビタミンなんかを添加するのに一びんで三十銭か四十銭だそうです。それが卸売り価格では普通乳と加工乳と比べて一円二十銭の開きがある。これは、会社のいったことをそのままうのみにするのではなしに、もう少しやはりもっと調べたらいい。というのは、いま、酪農団体だって、乳業工場を持っているところがあるから、その乳業工場でも、普通牛乳ばかりつくってはいないで、加工乳もつくっている。加工乳のほうが非常にもうかるんですよ。だから、その辺のところも調査してみる必要があると思うんですがね。
  217. 岡田覚夫

    政府委員岡田覚夫君) 直接法律に基づいて調査をする権限がございませんので、結局、メーカーから協力を願って資料を提供していただきまして、それによってコストを求めるということ以外にはないというふうに思っておるわけで、昨年もそういうことで御協力を願ったわけでございますが、今後もそういう形で協力を願いまして、しっかりとコストについてはつかんでまいりたいというふうに考えております。
  218. 矢山有作

    ○矢山有作君 協力をしてもらってなんていつもおっしゃるのですが、いま酪農民としては非常に困っておりますから、これはメーカーばっかり相手にして協力してもらってその報告を受けてやらないで、酪農団体自体がいま乳業工場を持っている。でありますから、ひとつそういうところに行ってなにしてごらんなさい。そのほうが実態がつかめますよ。これは、大きな乳業メーカーだけの報告を受けてどうこう言って議論をしても始まらない。そういう調査ができていないから、こういう議論をやるときにさっぱり話がズレてきてどうにもならない。大事なところの調査だけはあなたのほうでやらなければならない。  それから次にお聞きしますが、普通乳、加工乳、乳飲料の現在の比率状況はどうですか、流通の割合は。どのくらいの率でこの三つのものができているか。
  219. 岡田覚夫

    政府委員岡田覚夫君) ただいま御質問の点でございますが、実数といたしまして、四十一年の統計を申し上げますと、飲用牛乳でございますが、牛乳が九十九万三千キロリッターでございます。
  220. 矢山有作

    ○矢山有作君 パーセントで言ってくれませんか。
  221. 岡田覚夫

    政府委員岡田覚夫君) 九十九万三千キロリッター、加工乳が百一万九千キロリッター、それから乳飲料が四十三万五千キロリッターでございます。
  222. 矢山有作

    ○矢山有作君 最近、農業団体で普通牛乳とそれから加工乳と乳飲料の流通の割合を調べたのがあるんですよ。それを資料としてもらったのですがね。それによると、三十六年で普通牛乳が五二%です、全体の。加工が三二%、乳飲料が一六%、こういう状況だったようですね。ところが、四十年にはそれが四三%、三九%、一八%、こうなっているわけです。ところが、さらに四十一年の八月ころの調査では、三六%くらいに落ちているんですよ、普通牛乳が。こういうことです。ところが、さらに大阪、東京の実態を調べたら、大阪では、普通牛乳がわずかに二割二、三分しか流通していない、それから東京では、三割五分ほどしか流通していない、こういう状態になっているわけです。この数字がそのものずばりで正しいか正しくないかは別として、普通牛乳の比率が非常に落ちてきたというのは事実なんです。それで加工乳その他の乳飲料が非常に消費がふえてきたようです。しかも、これは皆さんもおそらく感じられた方があると思います。駅のスタンドでも小売店でも行ってごらんなさい、普通牛乳は朝のうちになくなってしまう。あとは加工乳と乳飲料です。また、自分のところでとってごらんなさい。ぼくは自分のうちで牛乳をとれと。そうしたら、一カ月ほどしてから、普通牛乳よりも加工乳のほうがよほど滋養があるし、得ですよというようなことを言って、加工乳をとってくれ、とってくれと言ってくるんですよ。そういうふうな実態というのは何を意味しているかということです。それで、小売店のほうもメーカーのほうも、むしろ普通牛乳をつくるよりも加工乳や乳飲料のほうに非常に力を入れているということですよ。売るほうの側でも、普通牛乳を売るよりも加工牛乳や乳飲料を売ったほうがいいから、それに非常に力を入れている。だから普通牛乳はなくなるんですよ。これは何を意味しているか。これは明らかに普通牛乳よりも加工乳や乳飲料をつくったほうが、メーカーにも利益であるし、それから小売店にもマージンが有利だ。だからこれをやっているんです。そう思いませんか。ほかに原因がありますか。
  223. 岡田覚夫

    政府委員岡田覚夫君) 確かに、おっしゃるように、小売り段階等を見てみますと、加工乳を売るという傾向が強いと思います。私も、最近、家をかわりまして——個人の話をして恐縮でございますが、家をかわりまして売りにきたときに、やっぱり加工乳をすすめにきましたけれども、私は普通牛乳をとることにしました。(笑声)そこで、どうして加工乳をすすめるかといいますと、やはり普通牛乳のほうが非常にきつくなっているのじゃないかという感じもするわけです。全体としてきつくなっているような感じもいたすわけでございますけれども、特に普通牛乳のほうがきつくなっている。そういうことでございますので、おのずからそこに妥当な価格関係が成り立たないと、普通牛乳がだんだんなくなってしまうのじゃないかという心配も実はいたしているわけでございます。
  224. 矢山有作

    ○矢山有作君 普通牛乳のほうがうまいということはほんとうですよ、あなたのおっしゃるとおり。私も、いなかで飲んでいる牛乳と東京で飲む牛乳と、普通牛乳ですら味が違うのだから。いなかの農家から直接買って飲む牛乳と、東京で普通牛乳でも買って飲む牛乳と、これはもう味が全然違う。そういう実態ですから、したがって、そのことが、普通牛乳だって、一般に市販されているやつは、いろいろ手を加えて脂肪分を抜いたりするとか、あるいは、ほんとうの牛乳を使わないでパターと粉ミルクとをまぜ合わせているとか、いろいろなものがあると思うんですよ。加工乳だって私は問題があると思います。それで、そういうふうに加工乳なり乳飲料がはんらんしているのですが、この普通牛乳なり乳飲料、加工乳の成分というものがどういうふうになっておるのか、それから、さらに、ほんとうにそれを国民の健康保持増進の立場からいって、一体どれがいいのかということを調べてみたことがありますか、厚生省は。
  225. 恩田博

    説明員(恩田博君) 牛乳は、牛からしぼったままの牛乳が一番よろしいわけでございます。そこで、私どもといたしましては、そのようなことを業界にも非常に要望しておるのでございますが、先ほどお話がございましたとおり、何か濃いほうがいいというような希望があるようでございまして、仰せのようなことが出ておりますことにつきましては、非常に残念だと思っております。考え方といたしましては、牛乳が足らぬ分をやむを得ぬから加工乳で補うというふうな考えでございます。ですから、加工乳の場合は牛乳と同じ規格でなければならない、こういうふうにきめておるわけでございます。なお、乳飲料につきましては、嗜好性がございますので、これはつくるほうあるいは買うほうの嗜好もあることでございますので、つくりました場合は、中に入っておりまする牛乳の成分、あるいは砂糖を入れますならば砂糖の成分等をちゃんと表書きに書くようにきめてございます。  いずれにしましても、牛乳につきましては、しぼったままのかっこうがよろしいので、あまり手をかけないというような指導は従来からいたしております。
  226. 矢山有作

    ○矢山有作君 それはおっしゃるとおりで、その指導をやっているのだろうと思うのですが、出回っておるものの実態を究明してみたことがありますかというんです。出回っているものの実態は、牛乳だ、牛乳だと言いながら、非常にまやかしものが入っておる、こういう実態が日本乳業技術協会あたりの調査で言われておるわけです。そういう点を厚生省自体が調査して、これはいかぬじゃないかということで強力な行政指導をやったことがありますか。ないでしょう。
  227. 恩田博

    説明員(恩田博君) そういう強力な指導はいたしておりません。しかし、牛乳業者としては、牛からしぼった乳をそのまま出すのが業者の道義というふうに、これはそういう指導は常にいたしております。
  228. 矢山有作

    ○矢山有作君 まあさっぱり自信のない話ですが、現実の状態がそういうことですから、ひとつよくこれは食品衛生の立場から厚生省は実態を調査して、そしてそういう不良品を追放するように方法を考えなさい。  それからもう一つは、一般の人は、加工乳のほうが栄養分があるのだという解釈をしている人が多いのです。ところが、成分を分析してみると、あの高い加工乳が栄養の点においてはちょっともいいことはない。へたすると悪いやつもある。だから、その点もやっぱり今後普通牛乳を正しく伸ばしていくのだという立場から取り上げていかなければならぬ問題ですよ。そうじゃないですか。
  229. 恩田博

    説明員(恩田博君) いま先生のおっしゃるとおりでございますので、そういうふうな強力な指導をいたしたいと考えます。
  230. 中村波男

    ○中村波男君 いまいろいろ質疑応答を聞いておりまして、どうも政府の態度がはっきりしていないように思うのでありますが、重ねてお尋ねいたしますが、牛乳を飲むということは栄養という立場で国民が飲むのではないかと思うわけでありますが、加工乳になれば、嗜好ということもありますし、牛乳以外の栄養といいますか、体にいいという立場で飲むのもあると思いますが、この問題が、矢山委員から提起されたのは、農家生産費を無視した価格できめられようとしておる。また、今回値上げをするけれども、その値上げがどこに吸収されるかというならば、農家に全部が吸収されなくて、加工業者に配分されて、その結果としては消費者が二円の値上がりをまたこの物価値上がりの中で受けなければならぬというところにこの論議が進んできたと思うのです。  そのことは別にいたしまして、農林省なり厚生省なり、いわゆる政府が、牛乳を飲用するという立場で、今後いわゆる生牛乳を飲ませることが望ましいのかどうなのかという立場をまずはっきりして、それからおのずから行政指導というものが行なわれなければならぬと思うのであります。いまのままで放置しておって、さっき局長は生牛乳がきつくなったという表現をなさったと思うのでありますが、きつくなったということは、加工牛乳のほうに多く回りまして、そうして生牛乳のほうの生産量が減るということを意味しておるのだと思いますが、そういうことを放置しておったならば、さっき矢山委員が指摘しておったように、だんだん生牛乳の流通が少なくなって加工牛乳が多くなってくるということはいいのか悪いのか、そういうことが望ましいのかどうかということからはっきりして、それから議論をせぬと、指導しております、生牛乳のほうがうまいです、牛から出た牛乳はうまいですという議論じゃ、これは矢山委員の質問に答えておらぬと思うのですが、どうですか。
  231. 岡田覚夫

    政府委員岡田覚夫君) 加工牛乳がふえる一つの原因としましては、生乳が生産停滞している、しかしながら需要が非常に顕著である、こういうことから加工乳がふえておるという事実は一つはあると思います。先ほど言いましたような形で、普通牛乳のほうがきつくなってきておるというふうな事情もあるのではないかというふうに考えているわけです。私たちは、まあできるだけ普通牛乳が飲まれるということがよいというふうに考えております。しかし、これは国民の嗜好の問題なり、そういった問題もからむものですから、何を飲むべきであるという強制はなかなかむずかしいというふうに考えております。
  232. 矢山有作

    ○矢山有作君 まあこれは何を飲むのがいいという行政指導はできないだろうけれども、やはり食品衛生行政に携わっておる立場から、厚生省はいまのまがいものが流通しておる実態、これをやっぱり明らかにして、普通牛乳がどんどん飲まれるようにすると、こういうことを考えぬといかんと思うのです。いま中村さんが指摘されたことは、おっしゃるとおりなんで、これは最後に申し上げますが、もう少しそういう点を厚生省はしっかりと踏まえてやりなさい。現実に栄養分析をやってみたら、加工牛乳に比べると普通牛乳のほうがいいくらいな結果が出ているのですから、そういう点を踏まえてこれからの消費促進に取り組んでいかなければならぬだろうと思います。  それから公正取引委員会のほうにお伺いしたいのですがね。これは最近の新聞だと思うのですが、普通牛乳、加工乳、飲用乳、乳飲料について厚生省令できめた成分規格に満たないものがあるのじゃないかということで調査を始めたという報道を見たんですが、これは調査をやっておられますか。
  233. 竹中喜満太

    政府委員竹中喜満太君) 私のほうに不当景品類及び不当表示防止法という法律がございまして、不当表示を禁止しております。したがいまして、加工乳につきまして不当表示があるのではなかろうかということで、先般来コーヒー牛乳等につきまして検査を進めております。
  234. 矢山有作

    ○矢山有作君 実態はどうですか、いまの段階で。
  235. 竹中喜満太

    政府委員竹中喜満太君) まだ結論が出ておりませんので、よく承知いたしておりません。
  236. 矢山有作

    ○矢山有作君 これは調査を進められればわかるでしょうが、だいぶ成分規格に合わぬおかしなものがありますよ。それは加工乳だけの問題ではありませんよ。乳飲料、普通牛乳だって最近はあやしいですよ。全体をひとつ取り上げて徹底的に調査をやってごらんなさい。経済企画庁にしたってそういう考え方をとるべきですよ、物価問題を論議するなら。そういう実態を知らないで物価問題は論議できないでしょう。そういう立場で大いにひとつ調査を進めてほしい。で、不良品が出れば、これはどしどしそれ相応の処理をしてほしいと思うのです。  それから次にお伺いしたいのは、最近の酪農行政を見ておると、何と言ったって酪農民生産費所得補償をたてまえとした乳価は出ていないんですよ。これは現実にけさほど来論議されたことなんです。ということは、結局、酪農民には低乳価を押しつける。だから生産減退が起こっている。生産が減退するという原因はほかには何もありゃしませんよ。要するに、ほかの仕事と比べてみて、酪農が引き合わぬからやめてしまうのです。引き合えば、だれもやめ手がない。これは単純な理屈なんです。その引き合わぬというところは、低乳価であるというところに原因があるのですから、それで生産が減退する。生産が減退すれば、輸入がふえてきます。輸入がどんどんふえてきます。最近脱脂粉乳にしても、バターにしても、ばく大な輸入のふえ方でしょう。輸入量がふえてくる。それが国内生産をますます圧迫する、そういう状況を起こしておる。国内生乳が不足する、もうけているのはメーカーだけ、こういう形になりよるんですよ。だから、牛乳の小売り価格の問題を考えるにしても、そういうところを徹底的につかんで考えていかぬと、ただ単に生産者の手取り価格が少し上がったから、小売り価格を上げさえすればそれでいいんだという形では、私はものごとは解決つかぬと思うのです。十分その点を今後配慮しながら私はやっていただきたいと思います。   〔理事任田新治君退席、委員長着席〕  ところで、私のほうから一つ提案があるのですがね。なかなかこの問題は解決はむずかしいと思うんですよ。一気に解決する方法としては、これはもう牛乳に対する二重価格制をやるのが一番いいと思うのです。あなたのほうで体制が整うまで二重価格制をとる。そうして、生産者には十分な乳価を保証する、消費者には安い価格で牛乳を供給する、こういう体制を当面とっていく。そうして、あなた方はどんどん調査をして、改めるべきところは改め、いいところはどんどん伸ばしていって酪農振興をはかっていく、こういうことにならなければ解決つかぬのじゃないかと思うのですが、どうですか。これは大臣から……。
  237. 倉石忠雄

    ○国務大臣(倉石忠雄君) 生産者の意欲を増強していくことの必要なことは、もう政府も十分考えておりますし、そういうことに力を入れておるわけでありますが、ただいまお話しのようなことになりますと、食管会計みたいなものでありまして、これはただいまの実情ではたいへんおもしろい御提案だとは思いますけれども、政府としてはそれをただいま実行する意思はまだございません。     —————————————
  238. 野知浩之

    委員長野知浩之君) この際、委員の異動について御報告いたします。  ただいま、北條雋八君委員を辞任され、その補欠として辻武寿君が委員に選任されました。     —————————————
  239. 矢山有作

    ○矢山有作君 それは食管の問題にもからんでくるということはわかっていることですし、あなたのほうですぐやりましょうという答弁はなかなか出ないだろうとこっちも思っておるんですがね。しかし、そういううしろ向きの形ではほんとうの酪農の振興になりません。だから、私は、真剣に検討すべき問題だろうと、こういうふうに考えて御提案申し上げたのです。そうでなしに、まあとてもできそうにない話だから投げちまえというのでは、これは国内酪農生産は破滅的状態に陥りますよ、いまの状態のままだったら。  次に移る前に一つだけ注文をしておきますが、いままでの論議を通ずる中で私が申し上げたいのは、生産者の手取り乳価はこれは上げなければいけない、これははっきりしております。ところが、直ちにそれを消費者価格にはね返させることにおいては問題がある。そういう形をとらなくても、流通加工過程の合理化等によって、さらに大メーカーの現在の経営状態からして、その辺で値上がり分を吸収できる余地があるのではないか。その点の検討をしながら今後この問題に対処していただきたいということを最後に申し上げておきます。  それで、次の質問に移りますが、実はこれはまあこれまでも衆参両院でいろいろ論議された問題のようです。しかしながら、私はまた私の立場として一、二お伺いしておきたいことがあるのでお伺いするのですが、最近非常に問題になった病菌家畜の問題なんですが、この病菌家畜の問題に関連してまず最初にお尋ねしますが、ワクチンメーカーの製造業者は、聞いておるところによると、全国七カ所だという話ですね。この製造業者ごとに、四十年と四十一年とで処理された患畜の焼却した分、埋却処分にした分、それから斃獣取り扱い場に移して処分をした分、それから化製場に渡した分、これは数字が明らかになるはずだと思うのですが、なりますか。
  240. 岡田覚夫

    政府委員岡田覚夫君) 処分別の数字はございません。各メーカーごとの数字がございます。非常にたくさんでございますが、申し上げましょうか。
  241. 矢山有作

    ○矢山有作君 ええ。
  242. 岡田覚夫

    政府委員岡田覚夫君) 順序に申し上げますと、Aメーカーは、四十一年でございますが、三千三百四十五頭、これは焼却をいたしております。それからBメーカーは、二千五百五十頭、これは化製場に売却をいたしております。それからCメーカーは、千八百八十五頭で、これは化製場に売り渡しております。それからDメーカーは、二千六百九十二頭、これは化製場に払い下げております。Eメーカーは、二千二百四十五頭でございまして、これは化製場に払い下げております。Fメーカーは、千五百二十三頭で、これは化製場に払い下げております。Gメーカーは、千二百五十二頭で、これは化製場に払い下げをいたしております。
  243. 矢山有作

    ○矢山有作君 そうすると、A、B、C、D、E、F、Gと七つあるメーカーは、その患畜を全部化製場に払い下げをやったわけですか、それ以外の処分をしているものはありませんか。
  244. 岡田覚夫

    政府委員岡田覚夫君) 一社だけが焼却であります。最初のAメーカーだけが焼却です。
  245. 矢山有作

    ○矢山有作君 焼却ね。そうすると、ワクチン製造に使った頭数がいまおっしゃった頭数で、その処分が、Aメーカーは全部焼却、あとは全部化製場送り、こうなったんですね。  では、次の質問は、家畜伝染病予防法の二十一条によると、患畜の死体の処理は焼却または埋却を原則として義務づけておりますね。ところが、動物用生物学的製剤の製造許可を受けるときの死体処理施設を備える基準ですね、これはどうなっていますか。つまり、ワクチンメーカーですね。
  246. 岡田覚夫

    政府委員岡田覚夫君) ちょっと、いまの御質問は、消毒の基準でございますか。
  247. 矢山有作

    ○矢山有作君 二十一条によると、焼却もしくは埋却を原則として義務づけられておるでしょう。患畜の死体は。ところが、もうややこしいから法律の正式の名前は言いませんが、ワクチンメーカーの製造については省令があるでしょう。正式の名前は動物用生物学的製剤の取扱いに関する省令、これのメーカーにはどういうふうな処理施設を持たせるようになっているんですか。
  248. 岡田覚夫

    政府委員岡田覚夫君) 生物学的製剤の取り扱いに関する……。
  249. 矢山有作

    ○矢山有作君 動物用……。
  250. 岡田覚夫

    政府委員岡田覚夫君) 薬事法に基づきます生物学的製剤の取扱いに関する省令によりましては、焼却または消毒をしなければならんということになっておるわけでございます。
  251. 矢山有作

    ○矢山有作君 ワクチンメーカーは、動物用医薬品等取締規則によると、焼却または消毒及び浄化のための設備を備えなければいけないということになっておるでしょう。つまり、法律の原則としては焼却、埋却をしなきやならんということになっておる。ところが、そのワクチンメーカーに対しては、消毒と焼却の設備だけ持ちゃいいと、こういうことになっておる。ここら辺にやはり今度の病菌家畜の問題の発生の一つの原因があるんじゃないかというふうな気がするんです、私は。というのは、なぜ原則どおりに焼却、埋却をやらせるということにしなかったのか、その理由は何ですか。
  252. 岡田覚夫

    政府委員岡田覚夫君) 生物学的製剤の取り扱いに関します規則は、ワクチンメーカーは構内におきまして焼却または消毒をするというたてまえになっております。家畜伝染病予防法におきましては、焼却または埋却ということが原則になって、政令に基づきまして化製場で化製する場合はよろしいということになっておるわけであります。したがいまして、ワクチンメーカーといたしましては、まず構内にあります場合には焼却をする、あるいは消毒をして置いておく。それを出して外に出します場合には、家畜伝染病予防法の二十一条の規定を受けまして、焼却または埋却あるいは化製場行きと、こういう三つになるわけでございます。
  253. 矢山有作

    ○矢山有作君 焼却施設を持っておるのは、現在一つですよね。それで私はもう一つ問題があると思っているのは、ワクチンメーカーが使った患畜ですね、これは全部消毒、焼却をしなければならんのですか、どうなんですか、法的には。
  254. 岡田覚夫

    政府委員岡田覚夫君) それは消毒または焼却をしなければならんということになるわけです、構内においては。今度は構内から外へ持って出ましたら、焼却か埋却か化製場行きか、どちらか。つまり、構内で焼いてしまえば、これはもう問題はないわけです。消毒をしましたものを外に出します場合は、家畜伝染病予防法の規定に従いまして、焼却、埋却、化製場行きと、こういうことになるわけであります。
  255. 矢山有作

    ○矢山有作君 そこに問題があるのは、いいですか、省令の——省令というのは、動物用生物学的製剤の取扱いに関する省令ですよ、この省令の第三条によると、「製造業者は、生物学的製剤の製造又は検査の用に供する動物(その死体を含む。)及びこれらの動物以外の物であって、動物の伝染性疾病をひろげるおそれのあるものを当該製造所の構内において消毒し、又は焼却しなければならない。ただし、次の各号に掲げる場合は、この限りでない。」とあって、その第二号に、家畜伝染病予防法施行令の第三条の二号、三号を引用しておるでしょう。これとの関連はどうなんです。これで見ると、化製場送りの場合は——化製場送りの場合というのは、家畜伝染病予防法施行令の第三条第二号による場合ですね、この場合には、その省令の第三条によって、消毒または焼却しなくてもいいことになるわけですよね。焼却はしなくてもいいのはわかるんですよ。これは消毒しなくてもいいというように解釈されるんですがね。どうなんです。
  256. 高村礼

    説明員(高村礼君) 最初に、といいますか、実態的にまず申し上げます。  材料に使いました豚は、豚コレラにかかっておりますので、当然家畜伝染病予防法に言う患畜でございます。こういう家畜伝染病予防法の患畜の処分は、焼却するか埋却するか、それでなければ化製場に送られて完全消毒されるか、この三つが実態的には一般に通用する原則でございます。化製場で処理されるということは、この法律の全体を通じまして、そこへ持っていくまでの間は十分に衛生的に取り扱われておれば、化製場の中で煮沸消毒というような形の意味で完全消毒される、こういうことでこの法律は考えられておるわけでございます。この原則にすべて当てはまっておるわけでございます。ただ、薬事法におきます動物用医薬品の材料等につきましては、このほうの省令では、申されますように焼却または消毒で、構内でやる場合の消毒というのは、その後やはり外へ出さない以上は腐りますし、あるいは無毒にしなければならぬので、いわゆる完全消毒ということがたてまえになると思いますが、製造所から化製場へ送られます場合には、とにかく安全に家畜伝染病の病原体が散らばらないような措置をやれば可であると、こういうことで、終点といたしまして化製場で完全消毒が要するに最終的には処理がされる。この間は、輸送のための消毒ということもございますし、輸送の消毒につきましては、それぞれ家畜伝染病予防法のやはり省令の焼却、埋却の基準等に書かれておりまして、そういう基準に準じまして処理することになっております。
  257. 矢山有作

    ○矢山有作君 ですから、私の言うのは、化製場送りの分については、法的に言って製造業者が消毒をしなくてもいいということになるのかならぬのかと、この一点を聞いているわけですよ。
  258. 高村礼

    説明員(高村礼君) 法的に言えば、家畜防疫員がそのような指示をしなければそれでもよろしゅうございますし、家畜防疫員が運搬の途中あぶないと思えば、運搬の途中あぶないような指示をすればそれで足りるわけでございまして、要するに、家畜防疫員がいかなる指示をしたかということに問題が法的にはなるわけでございます。
  259. 矢山有作

    ○矢山有作君 ですから、要するに、法的にはその製造所において化製場に送る場合には消毒しなくてもいいと。ただ、その輸送途中においてある程度の病原菌をばらまかぬための消毒というのですか、そういうものがこの家畜伝染病予防法施行規則にありますはね。これは、鼻の中へ消毒した布きれを詰めるとか、しりのほうへ詰めて落ちぬようにするとか、あるいはからだをふくとか、そういうことをやって運ばせるということになっておりますね。そうすると、今度の事故が起こった原因ということは、そういうところにあるのじゃないですか。そういうような危険な家畜を製造所において消毒しないで化製場に送ってもかまわぬとなっているところに今度の事件を惹起した大きな原因があるのじゃないですか。どうなんです。
  260. 岡田覚夫

    政府委員岡田覚夫君) お尋ねの点につきましては、各メーカーとも消毒槽を備えておりまして、消毒をするように指導はいたしておったわけでございます。
  261. 矢山有作

    ○矢山有作君 ところが、消毒槽を備えて消毒するように指導しておったんだが、こういう事件が起こったと。しかも、病菌豚事件で豚肉から豚コレラビールスが検出されたという新聞報道がありますよね。これは御存じでしょう。事実検出されたんです。それで、しかも当然検出されるはずの消毒薬が全然検出されなかった、こういうのです。どういう意味でこうなる。そうすると、消毒槽は備えておったが、消毒をして出さなければならぬ法的な責任がないから、消毒をして出さなかったと、こういうことになるのでしょう。消毒をしないでもいい。だから、消毒して出さない。ですからこういうふうな事件が起こったんじゃないですか。
  262. 岡田覚夫

    政府委員岡田覚夫君) 先ほど申し上げましたように、消毒は化製場に行って完全消毒をするわけですから、その途中において病毒を流さなければ足りるという考え方であったわけであります。もちろん、これは、化製場の善意を信じて法律ができているとまあ思うわけでありますが。したがいまして、消毒も中まで徹底的にやるという消毒ではないわけです。要するに、外部に豚コレラが伝染しないというための消毒でございますから、したがいまして、徹底的に中まで消毒して、全く使いものにならないというふうにするものとはやや性質が違っておったわけです。そこで、こういう問題が起きたことにかんがみまして、今後は、化製場に送るということをしないで、ワクチンメーカーの製造所の中において完全に焼却をするというふうなことにいたしたわけでございます。
  263. 矢山有作

    ○矢山有作君 それは、そういう通達を出されたことは承知しております。ところが、問題は、この事件は、法令が徹底的に消毒義務を課しておらなかったところに発端があるのでしょう。化製場の善意を信ずるといったって、製造所から出た段階で流れているのですから、化製場へは行かない。なぜ化製場へ行かないで流れたかといえば、消毒が義務づけられておって完全に消毒されておったら、これはもう使いものになりませんよ。食えないのだから、こんなものはものはくさくて。そうでしょう。ところが、法令上消毒義務がないから、消毒しない。ただ病菌をまき散らさぬように鼻の穴かどっかのほうへ消毒薬を含めた綿を詰めたりなんかして運んじゃったから、それだから化製場へ行くまでにどこかへ流れちゃったのでしょう。だから、この事件の原因は法令の欠陥にあるということを私は言っているんです。その法令の欠陥が、一片の通達で直るでしょうか。私は、この点は大きな問題だと思う。通達を出したから、焼却の施設、埋却の施設をつくらせることにして、焼却、埋却をさせることにしたから、もうこれで今後事件は起こりませんという保証がありますか。私はそこが問題だと思うのです。
  264. 岡田覚夫

    政府委員岡田覚夫君) お話のような点でございますが、これは警察当局の調査の結果をまたないと十分にはわからないわけでございますけれども、メーカーと化製場の間においては契約はできておったわけであります。で、その途中におきまして外部に流れていったというふうに聞いているわけでございます。そこで、先ほど申し上げましたように、外部——化製場に流すということは一切しないというたてまえにいたしますためには、焼却炉を設置するということが必要になるわけであります。そこで、焼却炉を設置するということにつきまして、通達を出しますし、また、メーカーも協力をすることになりましたので、今後一切病菌豚が外部に出ることはないと確信をいたしておりますけれども、なお、先生がおっしゃっておられますような点もございますので、私のほうといたしましても、法律並びに政令、省令等につきまして検討を加えまして、今後そういう事件が起きないようにいたしたいと考えておる次第でございます。
  265. 矢山有作

    ○矢山有作君 これは今度はそういう厳重な通達を出しておられますね。ところが、これは通達だけでは非常に危険だ。というのは、この病菌豚の問題は、すでに、なんでしょう、報道されるところによると、三、四年前から出ているんですよね。それでずっと三、四年もやられておって気がつかなかったんですよ、防疫員がおりながらね。そうすると、いくら通達で埋却施設を持ち、焼却施設を持って、そうしなさいと、こう言っても、もとの法令をそのままにしておいたんでは、これはだめですよ。こんな立法措置を伴わないような一片の通達だけで、今後この事件の発生が防げるという保証はないんですから。したがって、いまのあなたの答弁、今後このような不祥事件を絶対起こさないというその基本的な問題は、こういうような病菌家畜が外に出ていく根を断ってしまわにゃいかぬのですから、その根を断つためには、家畜予防法の二十一条の原則に即して、焼却、埋却をやらせる。だから、予防法施行令の三条だとか、あるいは動物用生物学的製剤の取扱いに関する省令だとか、こういったものは改正する、これ確約できますか。その確約をしなければ、いくらあなた方が大きな声をして安全性を叫んだり、閣僚が豚の肉を食べる試食会をやるんだというようなことを言って宣伝したって、これはここまできたら国民の不安感は解けませんよ。省令、政令の改正をやるかやらぬか、大臣からはっきりおっしゃってください。
  266. 倉石忠雄

    ○国務大臣(倉石忠雄君) まことに残念なことでございまして、そこで、いま局長が申し上げましたように、ただいま捜査当局で捜査の終点に近づきつつあるようでございますから、その不正なことをやりました者どもの経路を、捜査の結果にかんがみまして十分こちらでも検討いたしまして、その上でひとつ必要があれば欠陥がないようにするために立法措置もしなければならないと、こういうふうに考えております。捜査当局の結果を待っておるわけであります。
  267. 矢山有作

    ○矢山有作君 まあ捜査当局の結論を待たれるのもよろしい。しかしながら、事態が起こった原因というのはもう明らかになっておるわけですからね。したがって、捜査当局の結論がどう出るか、それを待つまでもなく、要はこういう事件を起こさないためには、その起こってくる根源を断つことなんだから、それは一片の通達ではだめだ。これは法令の改正まで踏み切るべきだということを私は申し上げたい。だから、その点は、今後の国民の食肉全体に対する不安感を解消するために、ぜひこれはおやりなさい。やらなきゃどうにもなりませんよ。大体四年も三年もこんなことをやっているというのは、こういうようなのが出てこぬ保証はないんですから、きちっと締めぬと。  それからその次は、まあいろいろ今度の事件を考えておると、家畜防疫員がおり、環境衛生監視員ですか、こういう者がおって、それぞれの仕事をやっておるのにこういう事件が起こってきた。一体、あとでいろいろ触れますが、家畜防疫員というのはどのくらいおるのですか。全国に。
  268. 岡田覚夫

    政府委員岡田覚夫君) 八千四十名でございます。
  269. 矢山有作

    ○矢山有作君 それで、私が家畜防疫員に接触して実際に話を聞いてみますと、まあ本来の業務の家畜予防ですか、のほうに手をとられちまって、実態としてはワクチンメーカーのそうした実態を監視しているなんということはほとんどできないんだ、こういう話なんですが、実際そうなんですか。
  270. 岡田覚夫

    政府委員岡田覚夫君) 家畜防疫員といたしましては、まあいろいろな仕事を行なっておるわけでございます。家畜の伝染病の発生の予防から、それから蔓延の防止ということの一連の仕事をやっておるわけでございます。で、法律の規定に従いますれば、家畜防疫員の指示に従って埋却とか焼却をするとか、あるいは化製場に持っていくということになっておるわけでございます。たまたま今回の事件にかんがみてみますと、その中におきまして、こういう事件が起きたということを考えますと、家畜防疫員の指示につきまして必ずしも十分なところがなかったのではなかろうかということで反省をいたしておる次第でございます。
  271. 矢山有作

    ○矢山有作君 ですから、だいぶ長年にわたってこういう問題がずっと継続して起こっているわけですよ、三年も四年も。そうすると、防疫員が十分な製造業者に対する監視監督ができなかったのじゃないかと思うんですね。  それと、もう一つは、指示に従って搬出をするというのですが、指示は一体どういう指示をいままでやっておったのですか。文書の指示か、口頭の指示か。それで、指示をする場合に、かなり厳重な形で指示しておったのか、まあ通り一ぺんの指示をやっておったのか、どうなんですか。
  272. 岡田覚夫

    政府委員岡田覚夫君) この指示につきましては、口頭だとか文書だとかという特に規定はございません。しかし、まあしょっちゅう発生するものでございますから、毎日行って指示するということは、これはなかなかできないことでございます。したがいまして、各県の報告によりますと、おおむね口頭の指示をやっておったというふうに了解をいたしておるわけでございます。
  273. 矢山有作

    ○矢山有作君 いままでの指示は、きわめてずさんであったろうと思うんですね、それが証拠には、今度の通達では、文書指示をすることにして、その記載内容までいろいろ示されておられますから、それはまあ反省に基づいてそういうことをやられたんでしょうが、問題のもう一つは、製造業者を監視監督している防疫員と、それからもう一つ化製場の監視官、これは環境衛生監視員がやっているわけでしょう。ここらの連絡がうまくいかなかったというところにも大きな問題があるんじゃないですか。たとえば、製造所において防疫員がそれぞれ指示をして、その結果がすぐ化製場のほうを担当しておる環境衛生監視員のほうに伝達をされるという体制が確立されておれば、これはある程度防げたはずなんです。ところが、一方の製造業者の監視をやっておる防疫員のほうの人手が足りぬとか——人手が足りぬだけじゃない、いろいろなほかに原因があるかもわかりませんが、きわめて不十分な監視監督しかしなかった。一方には、化製場を監視しなければならぬ環境衛生監視員のほうも非常に不十分であった、また、相互の連絡もできていなかった、こういうこともあるわけでしょう。
  274. 岡田覚夫

    政府委員岡田覚夫君) そういうふうな連絡の点にも欠くるところがあったんじゃないかというふうな反省をいたしておるわけでございまして、通達にもございますように、報告を十分やりましてその間の連絡を十分とるということによりまして、今回のような事件を未然に防止をするというふうに考えておるわけでございますけれども、先ほど申し上げましたように、全部あげて構内で焼却をいたすことになっておりますので、その点につきましては、今後は問題はなかろうかというふうに考えております。
  275. 矢山有作

    ○矢山有作君 時間の関係で飛ばしますが、行政管理庁にお伺いしたいのですが、行政管理庁は、今回のこの事件が一つの発端だろうと思うのですが、食品行政全般についてどういう実態であるかということを調査を始めた。この結果が、何か新聞の報道では二十九日ごろには出るのだということが報ぜられておったのですが、行政管理庁のほうで実態調査をやったとするならば、そのやった結果、行政上どういうふうな欠陥が出てきたわけですか、その所見を承りたいと思います。
  276. 稲木進

    政府委員(稲木進君) この豚コレラの問題が出ましてから、私どものほうでも、そういうような事件が起こった原因について、いろいろとまああると思いますけれども、いわば行政上の法令上の盲点と申しますか、あるいはその他運営上の欠陥、こういうものがあるのかないのかというような観点で一応の調査を進めております。で、調査した結果につきましては、実態はただいまいろいろお話が出ましたようなふうに私どもも承知しておるわけでございますが、それについての結論といいますか、そういうものはまだ出しておりません。
  277. 矢山有作

    ○矢山有作君 行管にお伺いしますが、いずれにしても、実態調査をやられた結果としてどういうふうな見解か、ひとつ具体的に一、二お伺いしたいんですが、私は、先ほど触れましたように、やはりこの事件の発端というのは法令の不備にあるのだと、こう解釈しているわけですよ。だから、この事件の発端のその根本を改めなければどうにもならぬのです。したがって、行政管理庁として、調査の実態に基づいて法令の改正を必要とするとお考えになっていますか、それとも、法令の改正はやらぬでも、いまの通達による農林省なりあるいは厚生省の指示だけでいいと思っておいでになりますか、どうですか。
  278. 稲木進

    政府委員(稲木進君) ワクチン製造用に使った豚を製造所外に出さないというようなことをはっきり方針としてきめるということになれば、当然に法令の改正が必要になってくるんじゃないかというふうに考えます。
  279. 矢山有作

    ○矢山有作君 私は、製造所の外に出して化製場送りなんていうものをやる必要はないと思う。全部焼却、埋却処分をやってしまえばいいと考えておるんですがね。この点については、聞くところによると、化製場送りについても、資源の利用の問題からどうとかこうとかいうような議論があるようですが、この点、局長、どうですか。
  280. 岡田覚夫

    政府委員岡田覚夫君) この家畜伝染病予防法が制定されたのがたしか昭和二十六年だと思いますが、その当時におきましては、やはり国民経済的に資源は有効に使ったほうがいいではないかという考え方があったわけでございます。これは国によりまして必ずしも同一ではございませんけれども、現在においてもなお資源として利用するというふうな形の法制をとっておるところもあるようでございます。そこで、わが国の家畜伝染病予防法も、そういう趣旨で、昭和二十六年の当時のことを考えますと、まあそういうふうなことは一応考えられるわけでございます。したがいまして、そういう形の法制がとられたと思うのでございますけれども、今回のような経験にかんがみて、今後のことを考えてみますと、むしろ資源として使わないで、焼却をしてしまったほうが適当ではないかというふうに考えておる次第でございます。
  281. 矢山有作

    ○矢山有作君 そういうお考えなら、私と同じなんです。私も、いまの頭数を見ておって、これだけのものを現在の段階で資源活用だ何だといって化製場送りをするというような危険なことはもうやらぬほうがいいと思う。むしろこの及ぼす影響というのは全部の国民の保健衛生上の問題ですから、したがって、私は、今後とういう事件の発生を防ぐために、やはりぜひ法令の改正をやってもらいたい。そのことを重ねて申し上げておきます。  それからもう一つは、これは厚生省にお伺いしたいんですが、この事件については厚生省も大きな責任がありますよね、これは何といったって。ところで、厚生省は、この事件を今後発生をさせないというために、厚生行政上どういうふうなことを考えておられますか。
  282. 田川誠一

    政府委員(田川誠一君) この問題につきましては、私どものほうも反省をしております。で、今後こういうような事態が絶対に起こらないように、あらゆることをしなければならないのでございますけれども、私どもといたしましては、ワクチンメーカーに対する規制をできるだけ強化していきたい。焼却とか消毒というようなものもひとつ厳重にやっていかなきゃならぬ。さらに、斃獣の受払簿などの整備、そういうこともやらなければならないと思います。それから斃獣処理業者に対しましても、運ばれます斃獣の受払簿というようなものも厳重にやりまして、あやまちのないようにするつもりでございます。そういう指導もしております。  それから各都道府県に対しましても、食肉販売業者に対する監視であるとか、あるいは斃獣処理場、そういうようなところに対する監視の強化を強める。また、一方、厚生省とも十分連絡をとるように。こういうことで万全を期するつもりでございます。
  283. 矢山有作

    ○矢山有作君 厚生省の場合ですはわかりましたが、この問題になる患畜ですね、これについては、いま行政管理庁やそれから農林省のほうから言われたように、もう製造業者のところに焼却施設なら焼却施設をこしらえて、そこで全部焼却処分してしまう、こういう考え方でお行きになるのでしょうね。
  284. 田川誠一

    政府委員(田川誠一君) そういうことがいいかどうかということですか。
  285. 矢山有作

    ○矢山有作君 そうしてもらいたいんです。
  286. 田川誠一

    政府委員(田川誠一君) 私どもとしましては、そうしてやっていただくことはたいへんけっこうだと思います。
  287. 矢山有作

    ○矢山有作君 それからもう一つは、厚生省のほうで問題になるのは、食品衛生法ですか、これの規制が、なんでしょう、店舗を持ったりあるいは加工施設を持って食肉業をやっておる者の取り締まり、いわば衛生的な見地からの取り締まりになっておりますね。だから、食肉業をやろうとする者の取り締まりということにはなっていないわけでしょう。その点でやはり食品衛生法の上から考えるべき問題があるのじゃないでしょうかね。衛生的な見地からだけこの食品衛生法を適用していくということになると、その取引自体というものはもぐりの業者がいくらでも動けるわけです。食肉業をやれるわけですね。電話一本あれば、肉を集めてそれで売れるわけですから。だから、その辺を規制する必要があるのじゃないですか。その点はどうですか。
  288. 武藤き一郎

    説明員(武藤き一郎君) ただいまの御指摘は、今回の事件につきましての一つのポイントだろうと考えております。現在、食品衛生法では、衛生的な観点から施設の規制ということが中心でございます。したがいまして、御指摘のようなブローカー等の問題をどういう規制をするかということは、ただいま鋭意検討中でございます。
  289. 矢山有作

    ○矢山有作君 それから、時間の関係で、もう最後の質問に入りますが、この事件が起こってから、これはまあいろいろな方面に大きな影響を及ぼしておるわけですよ。一番困るのは養豚農家なんですよね。さっぱり豚が売れないんですよ。私の手元に調査したものが届いておるだけでも、青森は三月中旬以降出荷停止になっておる。それから茨城も三月中旬以降販売が全面ストップしておる。それから長野も三月下旬には取引中絶状態。それから三重も全般に需要が減退したために販売に大きな支障を来たしておる。それから熊本のほうも加工向けの販売について売れ行き不振から取引中止の申し入れにあって対策に苦労した、こういう状態なんですね。この事件というのは、食肉業者にも大きな影響を及ぼしたが、養豚農家に対してはたいへんな打撃なんですね。一体、これをどうしますね。これ何とか処理しないとたいへんな問題になってくると思うのですがね。その点をどうお考えですか、農林省なり厚生省は。
  290. 倉石忠雄

    ○国務大臣(倉石忠雄君) 上肉につきましては、御承知のように、畜産振興事業団は、ただいまのところは一日四千五百頭ぐらいは買い入れをやっていると思いますが、そのほかに一般の養豚業者が困っておりますのは、中肉についてが一番困っているだろうと思います。そこで、ただいま、農業関係の議員さんたちの間で、これを何とかひとつ救済しようではないか。で、政府側でも、その事情を心配いたしまして、どういう対策を講じたらいいかということについて一つ二つ案を持ちまして、いま大蔵当局とも相談している最中であります。何とか養豚家の一時的な救済に充てなければいけないんじゃないか、こう思っております。御承知のように、こういうふうな一般的に豚について不安感をかもし出しておるのを、好機逸すべからずというので、つぼ買いに出て、ブローカーが買いたたきに出ておる傾向もたくさんございます。私自身が、くにのほうの小さな養豚組合の顧問をいたしておりまして、その害がひしひしと胸にこたえている本人でありまして、中肉のことについてはいま超党派的に結成いたしております農政懇談会の議員さんたちでいろいろわれわれと話をいたしておる最中であります。
  291. 矢山有作

    ○矢山有作君 大臣のほうで先におっしゃっていただいたのですが、私も言いたかったのはそれなんです。現在、買いたたきを受け、それで買い上げの場合に上肉しか買わない。畜産振興事業団がたくさんの買い上げをやったというようなことから規格がやかましくて、締めておるわけです。だから、中肉と上肉との価格差がどんどん開いてしまって、どうしても中肉の買い上げをやってもらわなければ危機を抜けられぬと思うのです。これをやることに踏みきってもらえますか。これはぜひやってもらわぬと、当面の危機は切り抜けられませんよ。大蔵省に相談したって、そのくらいのことはやらないと、養豚家は大打撃を受けますよ。
  292. 倉石忠雄

    ○国務大臣(倉石忠雄君) これは、実は昨晩も農協の中央会、それから全販連の幹部の方々とも相談をいたしまして、みんなで話し合って一番いい方法でできやすいことを考えようと、そういうことについて、まず、農林省の希望もさることながら、財政当局の了解を得なければなりませんので、そういうことで議員さんたちも入れて、よりより相談をいたしておる最中でございます。
  293. 矢山有作

    ○矢山有作君 見込みはどうなんですか。実現しますかね。ぜひ実現さしてください。
  294. 倉石忠雄

    ○国務大臣(倉石忠雄君) 買い上げということになりますかどうか、それも農協、農業団体の方々とも相談しておる最中でありますが、何とかしていまの差し迫った状態を打開していくために一番いい方法を見出そうと、そういうので頭を集めて相談しておる最中でございます。
  295. 矢山有作

    ○矢山有作君 ぜひこれは買い上げを実現してもらいたい。事業団がたくさん持って困っておるという話もありますけれども、いま食肉全体に不安感があるときですから。事業団が保管しているやつは絶対にだいじょうぶです。太鼓判つきです。ですから、これの処理のほうは私はやはり考えられると思うのです。さらにまた、事業団の買い上げた肉の処理については、一般事業を抑圧しないような処理の方法だってある。たとえば、学校給食に回すのだって、いろいろある。学校給食だって病菌豚がいま行っているんですからね。そんなに危険なことをやらないで、事業団が買い上げたものをやっていれば絶対だいじょうぶです。そういう点を考えれば、事業団の手持ちだってそう心配したことはないと思う。中肉はぜひ買い上げて危機を突破してほしい、こういうふうに考えておりますから、ぜひひとつどうぞよろしく。
  296. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 ちょっと関連。いまの点を私はもう少し具体的に伺いたいのですが、もう緊急中の緊急の措置をとらなければいかぬ。もう全く、差し迫った状態なんです。そこで、いま大臣答弁は、事業団の買い入れ規格の中に中肉も入れてやるか、あるいは農業団体の意向も聞くというが、どっちを中心に進めるのですか。しかも、いつからやるのですか。もう三月もあと残り少ない時期ですが、今月からやるというような姿勢でやってもらわないと、産地の混乱は目に余るものがある。一体、いつからどっちの手段でやるか。事業団の買入れ規格を政令で直して中肉もやるか、それができなければ、とりあえず四月、五月の短期間でも自主的な集荷団体にやらして、金利、倉敷あるいは冷凍、減耗等は全部政府で負担するという声明ぐらいはきょうここで発表しないと、養豚農家の不安というものを押えることができない。そういう差し迫った時期に来ている。もっと具体的にその点を明らかにしてほしい。
  297. 倉石忠雄

    ○国務大臣(倉石忠雄君) 渡辺さんがだいぶ具体的なお話をお出しになりましたが、実は、ゆうべ農業団体の方々と話をしておりましたときに、いまあなたがお話しになりましたようなお話も出ました。そこで、それについては、端的に申せば、結論として、そのよってきたるところの差損は国がみろということになるわけであります。それなら農業団体もひとつ一はだ脱ごうと、こういうようなこと、それも一つのやり方だと。しかし、そうなりますというと、農林省だけではきめかねますので、やはり財政当局も入れて御相談をしなければなりません。もっと緊急にやれる手はないか、こういうことで、先ほど申しましたように、なるべく早く何らかの手を打てるように、ずっといま続けて相談をいたしているわけであります。
  298. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 いつまでにその政府の明確な方針というものを期待できますか。あすあたりまでにもう結論を出してもらわないと困るんです。
  299. 倉石忠雄

    ○国務大臣(倉石忠雄君) 実は、私のほうの長野県とか群馬県なんかの養豚家の人々が、トラックへ豚を百匹ぐらい乗せて、豚に陳情させようというので、その庭へ豚を持って来るなどというような話まで私のところへ来ております。みんな困っていることはもう私自身よく承知しているわけでありますから、なるべく早くひとつ相談をまとめるようにいたしたいと思っております。
  300. 矢山有作

    ○矢山有作君 時間がどうもなくなってきたので、最後に一つだけお伺いしたいのですが、いま、例のニューカッスルが蔓延して、これも御承知のようにたいへんな問題になっているわけです。それで、今度生ワクの試験使用に踏み切られたようですが、今後これはどうされますか。生ワクを正式に使用さしていくようなお考えですか。
  301. 岡田覚夫

    政府委員岡田覚夫君) ニューカッスルの生ワクチンの使用につきましては、昭和三十六年以来、家畜衛生試験場で研究を続けてきたわけであります。その結果、本年の二月末に、一応使ってもいいのではないか、こういう結論が出たわけであります。しかし、結論が出ましても、これは試験室の結論でございますから、実際においていかなる使用基準に従ってやるかということにつきましては、なおこれは検討すべき余地があるわけであります。したがいまして、来年度四十二年度におきまして予算も計上いたしているわけでございますが、本格的に野外実験をやりまして、それによって使用基準等を明らかにいたしまして使用するということにいたしたいというふうに考えているわけでございます。御承知のように、生ワクチンの使用につきましては、余病の併発その他の問題があるわけでございます。そういう点も明らかにいたしまして、それらの対策もあわせてやるような形で使用ということを考えなければならないのではないかというふうに考えているわけでございます。
  302. 矢山有作

    ○矢山有作君 いろいろ検討する点はあるんでしょうが、外国ではもう生ワクは本式に使われているようであります。私の聞いているところでは、農林省内でも、二、三年前から生ワクの使用を許していいのじゃないかというような意見もどんどん出ているようでありますから、実際経費の面からも手数の面からも生ワクの使用のほうがいいということですから、研究研究で時を過ごさないで、やはり早くやる必要がある。毎年毎年発生しているのですから。聞くところによると、生ワクの使用をちゅうちょしている問題について、いろいろな問題も出てきているわけです。大手の製薬会社が死毒ワクチンをどんどん製造する設備を持っているので、そこへ生ワク使用に踏み切られると困るのだというような圧力もあるとかいうような話もありますが、これは話ですから、とにもかくにも毎年大量に発生しているのですから、これは早急に生ワクの使用に踏み切ってもらいたい。  それから畜産全般を見てみましても、病菌家畜発生の原因というのは、畜産奨励奨励ということでその量だけふやすことに一生懸命になって、家畜の衛生管理という面が抜けておったということから出てきているわけです。だから、この点も、今後、畜産振興という点から衛生管理という問題も取り上げてやってほしいと思いますが、こういう点も出てきたわけですが、どうですか。
  303. 岡田覚夫

    政府委員岡田覚夫君) お話のように非常に家畜がふえてまいりまして、多頭飼育、それから家畜の主産地化ということになりまして、昔とは家畜の飼育形態が非常に変わってきておるわけです。こういう状態におきまして一たび伝染病が発生いたしますと、非常に被害を及ぼすということになるわけでございます。こういう事態に対応いたしました家畜衛生対策というものをとらなければならないわけです。そのために、数年前から家畜保健衛生所の広域化というふうなこと、あるいは家畜衛生総合対策というふうなものを講じまして、これに対する体制を整えてまいっておるわけでございますが、なお今後におきまして十分検討いたしまして、お話しのような形で進んでいきたいというふうに考えております。
  304. 野知浩之

    委員長野知浩之君) 加工原料乳及び飼料の価格等に関する本日の審議経過にかんがみ、政府は、四十二年度の保証価格並びに指定乳製品安定指標価格及び飼料価格を決定するにあたっては、次の事項の実現につき遺憾なき措置を講ずるよう、理事会の申し合わせにより、委員長から強く要望いたします。  一、加工原料乳保証価格については、飼育管理労働並びに自給飼料投下労働を、五人規模以上製造業労賃をもって統一的に評価替えすること。  二、指定乳製品安定指標価格については、算出の基礎となる基準期間を過去四年に遡及することなく、極力短縮すること。  三、政府管掌飼料の売渡価格については、値上げを来たさないよう措置すること。  ただいまの要望に対し、倉石農林大臣から発言を求められておりますので、これを許可いたします。倉石農林大臣
  305. 倉石忠雄

    ○国務大臣(倉石忠雄君) 委員会の皆さん方の御要望につきましては、とくと検討いたします。
  306. 野知浩之

    委員長野知浩之君) 両件については、本日はこの程度にいたします。     —————————————
  307. 野知浩之

    委員長野知浩之君) 次に、甘味資源に関する件を議題といたします。  なお、参考人として、北海道東北開発公庫総裁酒井俊彦君、フジ製糖株式会社社長榊原正三君が出席されております。  参考人の方にはたいへん長らくお待たせいたしました。ただいまから質疑を始めますが、最初に参考人に質問をいたします。それが終わりましたら、お帰りのほどをお願い申し上げたいと存じます。  質疑のある方は御発言願います。
  308. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 要点をしぼってお尋ねをいたします。  実は、北東北四県、特に青森岩手、秋田の三県は、今月の十一日、突如としてフジ製糖会社から操業閉鎖、買い上げ破棄という不当な一方的措置を受けて、北東北の混乱は想像を絶する状態に置かれております。政治不信これよりはなはだしい事態はない。関係耕作者約二万名並びに関連する農業従事者の不安動揺は、まさに言語に絶する状態であります。  そこで、私は、そういう一方的に契約をじゅうりんして操業を放棄する方針をとるに至ったフジ製糖会社当事者にまず経過を簡単にお述べいただきたいと思います。
  309. 榊原正三

    参考人榊原正三君) ただいま先生の御質問に対しましてお答え申し上げる前に、御指摘のような事態を招きました会社の責任者といたしまして、まことに申しわけないというふうに衷心思っておる次第でございます。つきましては、会社の事情について説明をしろという機会を与えていただきましたことにつきまして、これまた私ども非常に幸いと思っておる次第でございます。  お話のように、三月十一日に、フジ製糖といたしましては、創業以来あらゆる努力を継続してまいったわけでございますが、こういう事態が起こらないように、実は二年ほど前から何とかこの事業が継続できるように政府筋におかれましてもまた各県等におかれましても御援助をしていただきたいということをいろいろお願いしてまいったのでございますが、いろいろ御親切な御指導等はございましたのですが、いかんせん、結論的に申し上げますると、私企業の限界にまいりました。と申しまするのは、私ども、昭和三十年ころから、あの地域において何とか畑作改善、寒冷地農業というような問題で、当時の状況といたしましては国産糖の一助としてでき得べくんばというようなことでいろいろ試作をしてまいりましたところ、三十四年ころには寒冷ビートが理論的にはできるというような結論が、学者の先生方、また私どもの研究機関においても、大体確証を得られてまいったわけであります。しかし、私どもといたしましては、これを経営に取り入れるためには、試験的にできても、一たん畑に入って農家の方に御迷惑かけるというようなことに相なってはならぬというふうに考えまして、さらに慎重を重ねまして、ある程度の単位の大きいものでもやってまいったわけであります。そうして、工場を建てますには、それも北海道の同業の方々の御協力を得まして、ある程度数字をふやした量でも農家の方に安らしてつくっていただけるというような試験もしてまいりまして、当時政府におかれましても非常な御激励をちょうだいいたしました。われわれも、何とかここでもってがんばってやっていきたいということで、三十六年に工場を青森に建てました。しかし、青森に建てましてからいろいろ御支援をちょうだいしたのでございまするが、いかんせん、なかなか経済単位まで伸び悩んでおったことは事実でございます。品種の改良だとか、あるいはいろいろ技術的な実際の試験もしてまいったのでございまするが、なかなか伸び悩んでおることは事実でございます。   〔委員長退席、理事任田新治君着席〕  一方、砂糖業界の状況も、諸先生方ご存じのとおりでございます。そういう事態になりましたので、私どもといたしましては、二年ほど前から、私どもの力だけでは、せっかく国においてもまた各県におかれましても非常な御鞭撻、御指導をいただき、また、政府資金を多額に借用いたしましてつくりました工場の運営にそごを来たすようなことに相なったのではまことに申しわけないというふうに考えまして、また、かたがた、各県におかれましても、そういうことが必要であろうということで、私どもも長年企業として努力し、また考えていたことでございましたが、でき得べくんばより有力な力を借りて所期の目的が達成せられるような体質の企業ということにしたほうが、従業員のためにも、また農家の方にも、またビートの将来性を考えた場合においても、より有効な手段であるというふうに考えまして、それぞれの方々にそういうようなことも申し上げまして、御協力、御指導、御鞭撻をいただくようにしてまいったのでございまするが、また、その間私どもがやっている間におきましても、何と申しましても、ビートとしての後進性からいたしまして、ビートの品質が悪い。ビートの品質が悪いために歩どまりが悪い。したがって、コスト高になる。しかも、ビートにつきましてはやはり育成していかなければなりませんので、農家の方にビートが悪いからといって安い値段で買うというわけにもまいりませんので、同じような値段で取引をし、さらに同じような値段で政府にお買い上げいただくというような形になりますと、どういたしましても会社の負担にたえないというような形になります。かたがた、そういうことは私ども社運を賭してかかってきた仕事ではございますが、会社企業といたしましても、おのずからもうこれ以上は金融上の問題におきましても、実際採算点に達し得れば金融の道も開けてまいるわけでございますが、現在の形でありますると、今後におきましてもなお採算点に達し得ないというような事象が出てまいりますので、今後このままではなかなか金融措置もむずかしいのではないかというようなこともかねがね言われております。そういうことで、何とか早くいわゆる買上価格を特別的に考えいただくか、あるいは、大根の質が悪いというようなことで、しかも畑作農家経営上の施策として多少はそういう地域的な特別措置をお考えいただけるかというようなことをお願いにあがっていたわけでございまするが、そういうことも、いろいろな御事情もあろうかと存ずるのでございますが、なかなか目安が立たないということで今日に至り、なお、実際問題といたしまして、三月は新ビート年度に入りまして、種まきをするというような寸前の時期で、まことに遺憾な時期ではございまするが、私どもこれから種をまいて農家の人にやっていただくというようなことになりましても、以上申し上げましたような会社の経営実力からいたしまして、これ以上御迷惑をかけるということは、まことに申しわけない上にも申しわけない結果になるおそれが多分にある。また、そういうことをしておりましても、実際わがほうといたしましては資金的な面とかいろいろな問題からしてやむにやまれずこういうような事態を引き起こしたということで、その旨を先般三月十日の日におそれながら大臣にも申し上げまして、私どもとしては会社の血の一滴までがんばってまいりましたけれども、もうこれ以上はがんばりたくてもがんばり得ない状況をどうぞ御賢察願って、せっかく国家資金を多額に使ってそれがまだ全部返済していないというような状況でもございますし、この期の途中に農家の方もすでにペーパーポット等についてはその準備もしておられる、それから畑作等においてはすでに四月に本まきをするという準備もあるさなか、また、いままで何とかがんばっても反別がふえなかったというようなことについても大いに奮起して、より一そうやろうというさなかではございますけれども、これ以上は会社としてはどうしても私どもの力だけでやれば一そう御迷惑をかけるという危険性が多分にあるというふうに判断いたしまして、何とかお助け願いたい旨のことを大臣にお願いにあがったようなわけでございます。  大臣におかれましては、事重大であるから、関係県と十分協議するから、しばらくは会社も協力したらどうかというような意味の話もございましたので、私どもとしてももうがんばれるだけはがんばらなければいかぬというふうに考えまして、お金の点等についてはもうがんばりようもございませんけれども、せっかく従業員もおりますことでございますし、また、施設もあることでもございますので、何らかの方法によってこういう事態が少しでも好転し得るようなことで会社もいままでの御縁がつながり、御協力もできるような形にしていただければ、これ以上幸いなことはないわけでございます。そういう点もお願いいたしまして、今日に至っているわけでございます。  したがいまして、私どもといたしましては、いま先生から契約上の問題の破棄というようなことをおっしゃられたのですが、もちろん、最悪の事態になって、どうしても完全閉鎖というやむなきに至った場合には、そういう私の申し上げましたように、大根を買い上げる実力もございませんので、この旨はさっそく大臣お話しすると同時に、各経済連の責任者の方、知事にもお話しして経過を十分御説明しますが、現状においては、いませっかく農家の方が種まきの準備をしておられるのですから、しばらくはわれわれの従来の仕事は続けさせていただきます。何ぶん早くしていただかないと私どもとしてもやりようもございませんという旨をお話をして、現地におられる知事さん方、また、経済連の責任者の方も、会社の実情等には御理解をちょうだいしていただいております。したがいまして、私どもは、こういうときにこそ農家の方の御準備に身をもって少しでもまたお役に立てばということで、各職員につきましては一そう勉強してということを指示して、日常業務は日常業務として現地もさせておるわけでございます。しかし、こういう事態は、働く者にとりましても、農家の方におかれましても、非常に御心配でありますので、私どもだけの力をもっていたしましてはこの不安を解消するすべもないというふうに存じておりますので、こいねがわくば一日も早く何とか窮状をお察し願いまして、せっかくの施設、せっかくの従業員、せっかくの農家の方の御希望を入れていただけるような御措置がとられることを心からこいねがう次第であります。
  310. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 時間がありませんから、簡単に御答弁をひとつあらかじめお願いします。  私ははなはだ不審に思いますのは、現実に生産者の代表である団体といろいろ工場閉鎖という意思表示をする前に、三月十日に農林大臣に届け出をしたというその点は、会社としてはどういうために大臣にまず意思表示をしたのか、そこら辺を少し明らかにしてください。
  311. 榊原正三

    参考人榊原正三君) その点につきましては、御指摘のように、あるいは順序が逆であったかと思いますが、とにかく、私どもといたしましては、実情等については随時各経済連の方にも会社がこういうふうに困っているということも申し上げておりまするので、あるいは御賢察をいただいているものと存じまして、御指摘の順序が逆じゃないかというおしかりであると思いますが、そういう点につきましては、私どももそれほどさように非常に混乱をしているということでお許しをちょうだいしたいと思います。
  312. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 もう一点だけフジ製糖の社長に伺いますが、これ以上迷惑をかけないというのだが、すでに、基本契約では、双方から契約を破棄する意思表示がなければ存続するという内容を持った契約がある。そうして、四十二年について、フジ製糖がその他関係団体等と合同で、昭和四十二年度てん菜生産奨励事項というものを発表してこれを生産者に浸透しておる。そうして、現在、ペーパーポット等については、もう種まきの最盛期を過ぎておる。そういう段階で一方的に相手側の了解を得ずに契約を破棄するというのは、これは私は非常に無責任だと思う。その点はどうですか。   〔理事任田新治君退席、委員長着席〕
  313. 榊原正三

    参考人榊原正三君) 御指摘の奨励事項等につきましては、私どもも十分誠意をもってこれから具体的な問題について経済連のほうと御相談をしてまいりたい。私ども、いま申し上げました事情で、初めから計画的に今年度は途中でやめるということは、毛頭思っていた次第ではないのでございます。いろんな状況からして、最後の血の一滴もなくなろうということでやむにやまれぬ状況でそういうことになった次第でございます。したがって、いまの奨励事項、農家の方についての問題、そういう問題につきましては、経済連の方とできるだけ会社の事情を御理解願いつつ、私どもはやらなければならないことは当然やらなければならないかと思いまするので、誠意をもってお打ち合わせをしていくつもりでございます。
  314. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 公庫総裁に伺いますが、このフジ製糖が青森に工場を設置する際に、設備資金として十三億五千万円の融資をした。その設備融資をするに至った経緯と、特に監督官庁である大蔵省との折衝のあらましをこの際ひとつ明らかにしていただきたいと思います。
  315. 酒井俊彦

    参考人酒井俊彦君) 当社のビート工場は、御承知のてん菜糖臨時措置法によりまして、凶作に強い北方作物であるということでビートが適当ということで農林省のほうに申請されて、あそこに処理工場をお建てになったわけでございます。当時の砂糖価格は、キログラム当たり百二十二、三円から百三十何円というところにありまして、これがその後自由化とともに非常に下がってまいりまして、ことに非常に関係があるのでございますが、輸入精製糖のほうがその間に不況カルテルをしいたにもかかわらず、シェア競争で設備が非常に過剰になったということもありまして、最近におきましては、と申しましても、昨年ごろは、九十九円ぐらいに砂糖が下がってしまった。三十八、九年ごろまでは相当の価格でありましたので、採算がとれる、これならあの地区にビートをやってもいいんじゃないか、そういう国策に沿いまして、私どもとしてはこの工場に対して、おっしゃいましたように十三億五千万円の融資をいたしたわけでございます。ただ、融資をいたします場合に私どもは必ず担保をとりますが、この工場だけでは担保に不足いたしますので、会社本体のあります清水にあります輸入精製糖の工場も第一順位にして、協調融資に一緒に担保として踏み切ったという経緯がございます。一々の貸し付けについては、当時私はおりませんでしたから、大蔵省とどういう折衝があったかということはわかりませんが、一々の貸し付けについてはいまでも大蔵省と何ら打ち合わせをいたしておりません。ただ、農林省でこれはよかろうということで農地転用の御許可がありましたので、私どももこれはけっこうな話であるということで貸し付けをいたしたわけでございます。
  316. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 そうすれば、大蔵省、農林省、多少ニュアンスが違うようですが、農林大臣からは貸したらいいだろうという意思表示があったんですね。大蔵省はなかったですか。あったとすれば、それは公文書で融資依頼があったのか、口頭であったのか、その辺を明かにしていただきたい。
  317. 酒井俊彦

    参考人酒井俊彦君) 私が申し上げましたのは、個々の貸し付け案件について大蔵省と私どもとは相談をするということはございませんということでございまして、大蔵省の了解を得るとか、そういう問題じゃないと思います。  それから農林省につきましては、農地転用の許可が必要でございましたので、そのときに、たしかあれは口頭で御連絡をしたというふうに伺っております。
  318. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 事態がこういう状態に立ち至って、公庫はどうされる方針ですか。
  319. 酒井俊彦

    参考人酒井俊彦君) いま、榊原社長から、ビートの含糖率が悪いとか、いろいろ御指摘がありました。そういう点の改善ももちろん必要でございましょうし、同時に、一番大事な砂糖業界全体が過剰設備を持って糖価が下がり過ぎているというところが問題でございまして、この辺がある程度回復してくれば、また望みなきにしもあらずじゃないかということで、ただいまのところは期限の来ますものにつきましては金利はお払いくだすっておりますが、元本について条件変更をしている、延滞ですか、少し先に回収を延ばす、めちゃくちゃに回収するというようなことはしないという方針で臨んでおります。
  320. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 農林大臣に伺いますが、北海道はビート産業については、およそ百年の歴史を持って、これは地域の産業として定着をしている。しかるに、北東北の場合は、十分なる立地条件に対応する品種の改良等もなく、急激に政府の方針の中にこれが進められたものと理解をするわけであります。例の共和製糖事件で世間を騒がせた甘味資源特別措置法案を審議いたしました際に、特に北東北の生産の見通しについて、政府原案にはなかったけれども、議員修正をいたしまして、自給度の向上というクローズを原案に挿入した経緯があるわけであります。したがって、この点について、政府が真剣に北東北のビート生産についても自給度の向上を考えておるかどうかということをただしたのでありますが、なかなか抽象的で要を得ない。もっと具体的にその点を明らかにしなければこの法律はむしろ国民のためにはマイナスになってもプラスではないという角度で、参議院では二回も審議を未了にし、継続審議した経過がある。その最終ラウンドで政府がしぶしぶ出したのは、砂糖類自給の長期見通し及び三十九年度の生産見通しという資料国会に出されました。その資料を見ますと、昭和四十三年度を目標として青森県は五千ヘクタールの作付、岩手県は四千ヘクタールというものが出まして、そういう目標に対して、自給度の向上ということで政府はがっちりと取っ組んでいくから、こういう答弁がありましたので、私たちは政府のその姿勢を了承してその問題については、それ以上の審議をしなかったという経過があります。ところが、その後における政府の施策というものを見れば、はなはだこれは絵にかいたもちになってしまっておる。四十三年の九千二百ヘクタール、そういうものは四十一年度ではわずか三千七百四十一ヘクタールにすぎない。一体この法律を成立させるときには、国民には耳ざわりのいいような内容の答弁をするけれども、一たん法律が成立したあとには、その審議を通じて国民に公約したことがきわめて不十分にしか行なわれてない。私はやっていないとは申しません。これは一体国民としては見のがすことのできない、政治に対する不信である。いろいろな原因がありましょう。大臣はこの甘味資源特別措置法と、その中で大臣が約束をした四十三年度の生産目標九千二百ヘクタールというものが半分以下に低迷して四十一年度が終わっておるという経過をどういうふうに御理解をされておりますか。
  321. 倉石忠雄

    ○国務大臣(倉石忠雄君) 北東北のてん菜につきましてはもうすでによく御存じのとおりでございますが、甘味資源に対する政府の基本的な考え方は、なるべく甘味資源については自給度を高めたいということが一つ。もう一つは、北東北の地域から考えますというと、ほかの農作物よりもああいう畑地にやはりてん菜が最も適しておるというか、これは地元の県知事その他の要望と一致をいたしております。そういう見解のもとに、ただいまお話のように、政府は北東北においてもてん菜による甘味資源自給度を高めようという方針を立てたわけでございますが、いま参考人の一人がお話しになりましたように、わが国の現在の糖価がただいまのようなことで、しかもこれが自由化されたのが三十八年の八月ごろであったと思いますが、これが自由化されましてもしばらくの間は御承知のように糖価は非常に高かったわけであります。一年以上非常に高い価格で維持されておった。したがって、そういう市況の状況もありまして、やはり政府の初め立てました方針に沿うて地元の県当局なども農村に働きかけて、てん菜の供給量増大について努力をいたしてまいったのでありますが、その後ただいまのような状況になってまいりまして、そこでいろいろな困難が出てまいった、私どもはそのように理解をいたしておるわけであります。
  322. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 抽象的にはわかるのでありますが、もっと具体的に申し上げますと、お尋ねをいたすために申し上げますと、この甘味資源特別措置法の審議で一番問題になりましたのは、最低生産価格と実取引価格の相違問題であります。現実に法律で定めるところの最低生産価格がはたしてこの取引価格と同じか、あるいはそれ以上か、ここら辺が問題の中心である。そこで、私たちは、この法律が制定されるときに、衆議院では三十八年度の最低生産価格を制定することを内容とした附帯決議をつけました。それが参議院に回付され、時日が経過をいたしました時点で私たちは三十九年度の価格を設定するための附帯決議をしました。その附帯決議は、三十八年の農林大臣の勧告価格、これが六千五百円でありました。農林大臣が勧告をした価格が六千五百円。それと、三十九年の取引価格、これが北東北では七千二百五十円。これはすでに決定しておった。七千二百五十円が。決定しておった時点において附帯決議をつけたのでありますが、この三十八年の農林大臣の勧告価格と三十九年の実取引価格を参酌してきめなさいという決議に対して、赤城農林大臣は、速記録にあるんですが、「政府といたしまして、その趣旨を尊重して措置を講じます。」と、こういう答弁をしておる。で、法律が通った。ところが、決定された三十九年の価格は、前年の農林大臣が勧告した価格六千五百円を下回り、いわんや、三十九年に生産者団体と会社とで団体交渉して決定した価格をさらに大幅に下回った六千四百五十円という価格を告示した。私は、附帯決議に対して農林大臣が尊重するということを真に受けて、さだめしこれは、前年の六千五百円の勧告価格は当然下回らないだろう——常識ですよ。いろいろ計算の根拠は、低くしようとすれば幾らでも資料は出るでしょう。しかし、三十九年の実取引価格七千二百五十円にも近いものが最低生産価格として出るだろう、こういう期待を質疑経過のニュアンスからして法律を制定したわけです。しかるに、法律が実施されると、価格は、前の年に大臣が関係者に意思表示をした六千五百円すら下回った。全くもって、これは踏んだりけったりじゃないですか。それで自給度の向上に努力していますということを言えますか、一体。生産者がこのビートの生産に従事するのは、いろいろな阻害要件はありますけれどもそれを排除してやるのは、もちろん、総合的な酪農経営の一環として、ビートパルプ等の還元配給、総合的な農業経営の中で、五年に一回ずつビートをつくって、営農計画を立ててやっておる。そういうときに、再生産どころか、縮小生産を強行するような最低価格国会の附帯決議を無視して政府が決定したということは、これは許しがたい態度である。当時の大臣ではないが、倉石大臣は、これをどう考えますか、この経過を。
  323. 倉石忠雄

    ○国務大臣(倉石忠雄君) 当時の事情をつまびらかにいたしませんので、食糧庁長官からお答え申させます。
  324. 大口駿一

    政府委員(大口駿一君) 当時の甘味資源特別措置法の審議経過の際に、ただいま渡辺委員が御指摘になりましたような経過がありますことは、私どもも食糧庁に参りましてから経過承知をいたしたわけでございます。この段階でこういうような価格の決定が自給度の向上をはかるという姿勢と相矛盾するではないかという点の御指摘、ごもっともだと私も存じまするが、今日の北東北におけるてん菜の生産が、当初、政府を含めまして県当局並びに関係者がすべて考えておりましたような速度で生産伸びなかったということにつきましては、私どもいろいろその原因を探求をし、また反省をすべき立場にあるわけでございまして、ただいまの実際の取引価格というものは北海道と同じような価格で取引をされておったわけでありまするが、しかし、なおかつ競合農産物との比較においててん菜が相対的に有利でないというような条件等もいろいろ重なりまして、栽培面積等の増加が当時関係者が予想しておりましたような速度でふえず、むしろ逆に減っておるというような事態を招いたものというふうに私どもは理解をいたしておるわけでございまして、この時点で当時の模様をいろいろ反省をしておるわけでございまするけれども、ここであまり言いわけを申し上げても、なかなか一つだけの原因ではないと思いますので、私ども、現時点において現在の事態を率直に注視をし、今後どのような対策をとるべきかという問題で現在頭を悩ましておる実情であることを御理解いただきたいと思います。
  325. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 大臣は、甘味資源国内自給度の向上は捨てない、そういう方針を貫いていくという答弁ですし、食糧庁長官は、過去のそういう点は十分反省して今後の施策に反映する、まことに耳ざわりのいい前向きの話で、けっこうだと思います。すなおにその答弁を受け取ります。そこで、私は、これは長官に伺いますが、ビートの収益性というものを、北海道と北東北に分けてみますと、一日当たりの家族労働報酬で、北海道は冷害の三十九年に九百二十五円であります。ところが、北東北は五百九円。翌四十年には、北海道の千七百二十七円に対して北東北は五百八十六円。北東北は非常に収益性が低い。私は、ここで、従来の附帯決議もじゅうりんした政府が、反省すると言うから、それを期待してお尋ねをするんでありますが——甘味資源審議会国会議員が締め出されたので、四月十日の告示までに機会はきょうしかない。そこで、私は、ない時間を無理をしてお尋ねをするわけです。一体、四十二年の最低生産価格をどうきめようとしているのか。北海道生産者の意思表示は、トン当り七千七百五十三円というものを要求しておる。法律であなた方が告示する最低生産価格に対して、七千七百五十三円というものを要請しておる。これは従来の歴史をさかのぼれば、御承知のように、北東北は北海道相場で支配されておる、安いか高いか適当であるかは別として。それに北東北のマイナス要素をトン当たり五十円上積みしておる。これは御承知のとおりであります。そこで、こんな操業停止をするようなこういう会社を相手とする段階ではないので、一体政府は、四十二年の最低生産価格を決定するにあたり、北海道から具体的な資料を添えての要請があるが、どういう態度でこれを消化し、十日の告示に持っていこうとするのか、これを、まず、大臣に伺う前に、長官に伺っておきたい。
  326. 大口駿一

    政府委員(大口駿一君) 本年度の糖価安定法に基づきまするてん菜の最低生産価格は、法律の規定並びにそれに基づきまする政省令の規定に基づきまして四月十日までに決定をいたすべく目下作業を進めている段階でございまして、基本的な考え方といたしましては、法律の規定にございまするように、パリティ価格基準といたしまして、物価その他の経済事情等を参酌をし、例年やっておりまするような手順を経まして決定をいたすつもりでございます。ただいま渡辺先生が、北東北のてん菜の問題の御論議の一環として四十二年のてん菜の最低生産価格についてお尋ねがございましたので、やや一般的なお答えを申し上げて恐縮でございまするが、最低生産価格の決定は、いま私が申し上げたようなタイミングと手順で決定をいたしたいと思っております。  ただ、本年の北東北における生産農家が栽培をいたしまするてん菜を、会社が閉鎖をするという意思表示をいたしておりまする現在においてどのような措置を講ずるかという問題は、後ほどいろいろ御質疑があろうかと思いまするが、それについては私どももまた御質疑を通じて私どもの心がまえを申し上げたいと思っておりまするが、いま私がことしの最低生産価格についてどう考えるかという御質問に対しましては、むしろ北海道、東北等を通ずる一般論としてのお答えをさしていただきたいと思います。
  327. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 その次に私が思い起こしていただきたいのは、三十九年に本院でこの法律、その後の四十年の糖価安定法で意思表示をした実取引価格、去年の、そういうものを十分これはしんしゃくをする、こういう考え方でないと、これはおそらく会社としても——私は時間がないから聞かなかった。最低生産価格政府が逃げを打つというようなことになればこれは大問題である。一体、こういう世界的にも砂糖の相場で四苦八苦をさせられるその要因は、だれがつくったか。政府でしょう。突如として貿易自由化を断行した、世界広しといえどもこんなストリップの砂糖の自由化をした国は日本以外にはないじゃありませんか。あれば、香港かそこら辺のものだ。どこの国でもこれに対して強い規制をして、国内の砂糖の育成強化をはかっている。そういう政府のとった一方的な措置があらゆる点において国民経済にしわ寄せになっている。自由化率を九〇%台に上げるための、世界に対していいつらをする、そのしわ寄せが現実にこうした工場閉鎖とかいろいろそういうものにきているのじゃないですか。  もう時間がありませんから、私は大臣お尋ねをします。会社は、工場は閉鎖をした、買いませんと言う。四十二年度の奨励措置も講じながら、途中でしりをまくる。この事態は、三月十日に会社から意思表示をしたときに政府は初めて知ったのではない。去年のうちに知っていないはずはない。正式には三月十日でしょう。私のようなしろうとでさえ、会社は年が明ければ、二月、三月に一応しりをまくるだろうと見ておった。いいですか、去年からわかっておる。そこで、正式に会社から三月十日に操業停止、閉鎖という措置をとった。あわてたのは地元ですよ。青森県、岩手県、全部当時開かれておった県議会に緊急決議をして、そうして四県の知事が十四日に倉石農林大臣に会った。県会ではもうこの質問で持ち切り、そういうときに四県知事が倉石大臣に会ったときに、大臣から四十二年の生産ビートについては生産者には迷惑をかけない、こういう言明をとって、翌十五日に、青森岩手、秋田では、県会にそれを答弁しておる。前々からこれがわかっておった。それが、予定の行動が現実に十日に表面化しておる。  そこで、大臣に伺いますが、四十二年の生産についてはいささかも生産者に迷惑をかけないと四県知事におっしゃった。知事はそれを県会に報告して、まあまあとにかくその問題については押えにかかるきめ手に使ったわけです。いいですか、私は、先週、北岩手の九戸郡、二戸郡を歩いてきました、この問題を質問するために。移植の対象とするペーパーポットはすでに種子をまいておる。一体どうすればいいのか。知事は、大臣はああいう答弁をしているけれどもほんとうだろうか、いままで政府の言うたことを真に受けて当たったためしがない、今度もこれは大きい裏切りをされるのじゃないかという農民のこれは政治不信に高まっておる。しかし、一体作付けを捨てるには、五年輪作のこういう営農体系を根本から変えなければならぬ。会社は赤字だからもうやめますで済むでしょう、私企業は。生産者は、毎年連作をするものじゃないだけに、長期の営農計画に立って、北奥羽では畑作振興の主幹作物にしておる。大臣、あなたが四県知事に言った、四十二年については迷惑をかけないということについて、一体どういう具体的な内容であるか、いますでに種をまいておる、まこうとしておる、そういう農家に安心を与えるために、きょうこの場でその内容を明らかにしてほしいのです。
  328. 倉石忠雄

    ○国務大臣(倉石忠雄君) 北東北地方のてん菜につきましては、先ほどここでフジ製糖の社長が申されましたように、たとえ工場が閉鎖されるようなことはありましても、てん菜をつくっております農民に迷惑をかけるようなことはあってはなりませんからして、私どもはてん菜の取引価格について迷惑のかからないように措置をいたすつもりであります。
  329. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 いや、そういう抽象的なことじゃ農民はわからぬのですよ。そこで、先ほどちょっと聞いたように、四十二年の最低生産価格は告示する。しかしながら、それとイコールじゃなく、団体交渉の実取引価格北海道できまる。いいですか、四十二年に、北海道が——これは相場の建て元だ。従来、北海道がそういう相場を建てたなら、従来の例にならって、四十二年の北海道の団体交渉で決定した価格に、従来、北海道との地域格差といいますか、それが北東北ではトン当たり五十円というものが加算されておった。その他の各種奨励金、そういうものも従来と同様に四十二年の実取引をそのまま踏まえて、四十一年度と同じように政府は責任をもって処理をするということであれば、きょうはこれで私は緊急対策はこれ以上お尋ねをする必要がないし、農民はそれで安心をする。四県の知事はそれで責任が果たせる。そのことを、そうだと言ってください。
  330. 倉石忠雄

    ○国務大臣(倉石忠雄君) 多くの農民に不安を持たせることはいけませんから、先ほどお話しのように、四県知事が上京いたしましたときにも先ほど申しましたように答えたわけでありますが、いまお話しのように、北東北のてん菜は、北海道のてん菜といままで同一の価格でございました。したがって、本年も、御指摘のように四十二年度産につきましても、同様なやり方でその実現をいたしますように、それを目途として私どもが責任をもって対処いたしてまいるつもりであります。
  331. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 了解しました。ただ、従来も、繰り返しますが、大臣の御答弁にちょっと漏れておるのは、北東北は操業以来のスタートが浅いし、立地的な条件に適応した品種もない、あるいは葉腐れ病というような東北に特有のマイナスな現象もあるということで、たとえば岩手で暖地ビートが廃業になった、その技術者を二名県の試験場に配置して、四月からこれらの品種改良に取り組む、地元はそういう前向きの姿勢をとっておる。しかし、条件が北海道より悪い。そこで、トン当たり五十円のプラス・アルファがある。それも当然いまの大臣答弁につけ加えて四十二年を実施する、こう理解してよろしゅうございますか、大臣
  332. 大口駿一

    政府委員(大口駿一君) ただいま大臣がお答えになりました基本的な考え方をもう一回別の角度から申し上げますと、従来の北東北における生産者とそれを加工する会社との間に最終的に話がつきまする価格、これは北海道の加工する会社と生産農民との間で話がつきまする価格と同一の価格が最近実現されておりまするので、それを目途として、まだことしの栽培されるてん菜がどういう形で加工されるかという問題は、今後緊急に結論を出すべき問題でございまするので、この緊急に結論を出す内容によっては、その大根をどういうふうな形で加工するかというような問題も含めて私どもは緊急に研究しなければならぬと思っておりますので、私どもの目下のところで基本的に申し上げ得ますることは、会社がかりに操業を停止しなかった場合に生産農民が期待し得たであろう価格というものを、かりに会社が操業停止をした場合といえども農家に期待できるような措置を講ずるというのが大臣の御答弁の基本的の考え方でございまするので、現時点においてはその基本的な考え方を申し上げる点で御了承いただきたいと思います。
  333. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 これは北東北にすぐに伝わることでありましょうから、農民の受け取り方としては、やっとほっとするのじゃないかと思います。その政府の態度の表明に至るにはかなりの御苦心があることも推測をいたします。しかし、この後段の処理のしかたということがひっかかります。これは今後の恒久対策についての政府の施策にも大きな関連のある御発言であります。聞きようによっては、現地では引き取らないで、船輸送等をして北海道に送る、永久に北東北の基地は撤去をするというケースと、現地でさらにやるというケースがあるようであります。もしも前者であるとしたなら、大臣の言う自給度の向上は、これは政府は明らかに背信行為をしたということの方向をこれは将来の展望に立って決定したということになる。これは私は大臣の最初の言明とは大きく矛盾する態度だと思う。現地でビートが総合的な農業にとっては欠くべからざる主幹作物であるという認識の上に、政府の指導方針で地方庁や団体がばか正直にやっているのです。私企業が赤字だから、それでさしあたりことしの処理はどういうことになるかわからぬが、もしも現地で加工しないとなれば、恒久対策は一体どういう方向になるのか、ここまで考えませんと、私はこれは国民納得する内容にはなってこないと思う。恒久対策は一体どうおとりになっておるのですか、今後の。
  334. 倉石忠雄

    ○国務大臣(倉石忠雄君) 先ほど私が自給度の向上と申し上げましたのは、もちろん原則論でございまして、われわれの理想はやはりなるべくすべての農作物の自給度を高めるというたてまえであることには変わりはないわけでありますが、砂糖が今日のような状況になりましたのは、国際価格の低落もございますけれども、本日の議題ではないかもしれませんが、業界でも申しておりますように、その設備の過剰ということが非常に大きな原因をなしておるわけでございます。そこで、東北の地方においては、ビートを奨励いたしましたころは、今日のような砂糖の状況になろうということについてはおそらくだれも想像しておらなかったんではないかと考えられます。さればこそ、御承知のように、このことにもっぱら長年やってきました糖業界の人たちみずからが困っておるような始末であります。そこで、私どもは、北東北の農村の方々がこのいまのフジ製糖が閉業しましたことによって野菜工業が先行き暗いということにつきましては、先ほど来お話し申し上げましたように、四十二年度分においては農村の人々に迷惑をかけないような措置を政府は責任をもっていたしますと同時に、これから先は、その地域地域の状況に従って土地改良その他に全力をあげまして、もちろん地方の知事とも相談をいたしまして、農村の人々の立ち行くように農林省としては鋭意努力を傾けてまいるつもりでございます。
  335. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 あと二問だけお尋ねをして、私のこのフジ製糖関係の問題を打ち切りますが、まず第一点は、いろいろいままでの答弁で明らかになったことは、四十二年の応急措置としては、四十一年度までフジ製糖会社がとってきた措置、すなわち、北海道の相場に準じて、それに地域の加算をし、各種奨励金を出しておった。それらを、そのまま、受け渡し場所も従来どおり、生産者の。そういう条件で四十二年度は処理をする、こういうことに確認をしておきたいのでありますが、それで間違いがないかどうか。  それから時間がありませんから、もう一点伺いますと、恒久的な施策については、いまここで私は時間をかけてお尋ねをするわけにはまいらんので、速急に政府の責任ある現地の調査団を編成して、現地の実態をまず調査をし、その調査の上に立って恒久施策を速急に確立する、その調査団の派遣の用意ありや、意思ありや、この二点をお尋ねをして私の質問を終わります。——大臣から……。
  336. 大口駿一

    政府委員(大口駿一君) 前段だけちょっと私答えさせていただきます。やや事務的なことも含んでおりますので、恐縮でございます。  先ほど私申し上げましたように、ことしの栽培されるてん菜をどういう形で加工するかという手続等はもちろん急いできめなければいかんことでございますけれども、結論が出ておりません現在において、ただいま渡辺先生がきわめて正確な表現でおっしゃったことがそのとおり当てはまらないようなことになるかもしれない、技術的な問題といたしまして。したがって、精神として先ほど申し上げたことは私どもそのとおりだと思いまするが、加工の形、場所、その他いろいろのことで、先ほど渡辺先生のおっしゃった字句が一字一句違わないように確認をされますと、若干また食言等の問題が起こってもいかがかと思いますので、基本的精神はまさにおっしゃるとおりであるということで御了承いただきたいと存じます。  後段につきましては、大臣からお答えになると思います。
  337. 倉石忠雄

    ○国務大臣(倉石忠雄君) 先般四県知事が上京いたしましたときも、まだだいぶ、何と申しますか、動揺混乱いたしておるようでございますので、こういうことを申していいかどうかわかりませんが、正直に申し上げますと、いますぐ調査団というよりも、安定をしてよく見てもらいたいという率直な御希望でございました。私どももさもありなんと思っておりますが、四十二年度の始末をまずつけて、安心をさせて、そして広範囲にわたる地域のこれからの再建でありますからして、もちろん地元とよく相談をいたしまして、さらに再建方策については親切にお世話をいたしたいと思っております。
  338. 渡辺勘吉

    渡辺勘吉君 最後に、長官の答弁について、もう少し納得のいく答弁をいただきたくて質問するのですが、今度は問題を少ししぼりますが、農家から見れば、四十一年度に実際取引をした経過、いろいろ受け渡し場所も農家として集荷場所がある。そこまでの時点で、それから北海道との格差がついておる。奨励金があった。今度八千百万の新しい補助金が出ておる、これも当然直接的に北東北に使う。そういうふうな内容は変わりがない、こう理解していいですか。
  339. 大口駿一

    政府委員(大口駿一君) 非常に私の言うことまで全部かわって言っていただいたようなかっこうで、恐縮でございます。私が申しておりまするのも、農家の側から見ての表現にしていただきたかったので先ほど申し上げたのであります。会社のほうからの表現にいたしますと、やや今後の措置の問題に関連をいたしますので、特に先ほどのようなことを申し上げたわけでございます。  それから予算の問題は、人の所管に口出ししてもいかんので……。
  340. 八塚陽介

    政府委員(八塚陽介君) 本年度約八億のてん菜に関係いたします予算を要求いたしております。一応そのうちで積算の中に北東北分といたしまして約八千三百万円ということが積算の基礎に入っておるわけであります。まあ積算の基礎どおり例年まいりませんで、北海道あるいは北東北等現地の受け入れ体制等に応じまして、そのワクが実行の段階で多少動くのでございます。今年も、今後情勢の推移等を見まして、あるいは地元とも相談をいたしまして、予算もまだ通っておりませんが、執行につきましては適正な施行をはかりたいと思っております。
  341. 野知浩之

    委員長野知浩之君) 本件については、この程度にとどめます。     —————————————
  342. 野知浩之

    委員長野知浩之君) 次に、長崎干拓事業に関する件を議題といたします。  質疑のある方は御発言願います。
  343. 達田龍彦

    達田龍彦君 たいへん長い時間になっておりますので、私はポイントをしぼって御質問をしたいと思うのでありますが、それは、干拓行政が今日いろいろな問題をかかえておるようでありまするけれども、政府ではとりわけ大長崎干拓を、約三百億ないしは五百億ともいわれておりますけれども、国費を投じて干拓行政を行なう、こういう計画で今日実施をされておる段階にあるのであります。そこで、先般の委員会において、この大長崎干拓に対して、特に地元の沿岸漁業者から、干拓を中止しろ、ないしはやめろという意味での強い陳情が行なわれたのは、皆さんも御承知のとおりだと思うのであります。したがいまして、今日、そういう意味でも干拓行政の中でいろいろ問題点がありますので、今日のこの問題に対しての現状と将来の見通しについて若干この段階でお尋ねをしておきたいと考えておるのであります。  まずお尋ねをしたいのは、この大長崎干拓に対して、政府はこの数年にわたって工事のための予算が組まれてつけられておるようでありますけれども、一体三十九年、四十年、四十一年、三カ年にわたってどれほど工事予算がつけられたのか、お伺いしておきたいと思います。
  344. 和田正明

    政府委員(和田正明君) 工事費は、四十年度、四十一年度とも実際には御承知のように漁業補償ができませんでしたので、支出をいたしておりませんが、現在御審議をいただいております四十二年度の予算では、一応工事関係として十億円を予定いたしております。
  345. 達田龍彦

    達田龍彦君 実際にはこの補償が行なわれていない、ないしは工事が行なわれていないという状況にあると私も実情を見て知っておりますけれども、かつて四十一年の四月十四日に衆議院の決算委員会でこの問題が取り上げられておるのであります。当時の坂田農林大臣、それから大和田というのですか、農地局長が、これにある程度お答えをいただいておるのであります。で、いまこの干拓に対して反対をしておるのは一体どういう団体なのか、それはどういう理由に基づいて反対が続けられておるのか、承知しておれば説明していただきたいと思います。
  346. 和田正明

    政府委員(和田正明君) 長崎干拓につきましては関係の漁協が相当多数ございまして、そのうちのたしか現在の段階では三組合と承知をいたしております、その組合が反対をいたしておりまして、その他の組合につきましては、一応補償等に関しまする金額等も含めて、条件が自分たちと納得ができれば応ずるという考え方でおるようであります。  その三組合につきましては、先般一部の代表者が私のところへも参りましていろいろ話を聞いたのでございますが、主として組合の反対をしております人たちが言っておりますことは二つございまして、一つは、この干拓は調査をし計画をしておりました段階からずっと時間の経過を経ております関係もあって、ごく最近は割合にノリの生産業が多いわけでございます。ノリの生産を引き続き自分たちとしてはやりたいので、干拓をすることによってノリの漁場がなくなることがいやである、したがって、自分たちとしては、ほかの組合のように補償に関する条件で折り合えば干拓事業をやってもらってもかまわないという考え方ではなくて、あくまでもノリを引き続きつくりたいのだという考え方を主張をしております。それからさらにるると話をしました過程の中で、特に県庁側がたいへん高飛車であって、そういうことが非常に心証上もよろしくないというようなことをあげて反対の理由を述べておるわけでございます。  私どもといたしましても、御承知のように、すでに工事開始をする予定で予算を計上すべく準備をいたしましてからたしか三年くらい経過をいたしておりますので、でき得べくんば本年四十二年中にものごとの結着をつけまして、できるだけ早い機会に当初の計画どおり干拓の工事に着手をいたしたいといま考えておりますので、先般も長崎のほうへ私のほうの担当の部長を出しまして、県知事にも会うていろいろお話をし、また、現地にございます、熊本にございます農政局を通していろいろとこの干拓事業の概念なり何なりにつきまして関係者にお話をいたしまして、補償の条件等につきましての問題ならいろいろと御相談にのるということで現在せっかくとくと努力をいたしておる段階でございます。
  347. 達田龍彦

    達田龍彦君 これは私はいまの農政局のやり方について非常に不満があるんです。それは、当時、衆議院の決算委員会でありましたけれども、四十一年の四月の十四日にも同じ答弁がなされ、その後、三組合の状況は、全然今日進展いたしておりません。煮詰めるための出先を使い、県を使い、自分たちも力をあげて解決のために努力をするということを一年前に、あなた国会答弁をされた。あなたが当時答弁されたと思うのでありますが、その後、全然進展をいたしておりません。したがって、一体具体的にどういう努力をされたのか、努力努力と言っておりますけれども、私は現場の実情をよく知っておりますけれども、まだその後実際に反対をしておる漁民の皆さんとひざを突き合わして話し合おうという機会が、ほとんど持たれていないのであります。こういう状況で三回にわたって五億、十億、十億と——今回も十億の予算もつけたようでありますが、そういう予算をつけながら、現実には内容は全然進まない、使えない。それは、きわめて怠慢であり、怠慢なやり方であると考えております。そういう意味で、再度三漁協の反対の真意でありますけれども、私は、いま言われた中に確かに三漁協については、とにかく漁場を失うことが耐えられない。したがって反対なんだ、補償の問題ではない、こう言っておるのであります。あとの九つの条件つき賛成といわれる立場の方々も、賛成ではないのです。基本的には反対だけれども、条件が整えばよろしい。その条件というのも、私が知っている範囲では、きわめてきびしい内容である。今日の農林省がいろいろな場合に補償をしている補償の条件では解決の見通しが非常に困難、暗いという内容をもっていると私は判断をいたしておるのであります。そういう意味で、たいへんこの問題はややっこしい問題でありますけれども、一体この問題に対して、私は大臣お尋ねをいたしますけれども、こういう状況の中でこの問題に対する解決の見通しをもっておられるのかどうか、そのためには具体的にどういう施策を講じようとしているのか、お伺いをしたいと思います。
  348. 和田正明

    政府委員(和田正明君) 実は、私、昨年秋に農地局長を拝命をいたしましたので、前回の答弁は私から申し上げたわけではないのでございますが、御指摘のように、国の意思としてこの工事をやるということをきめまして以来数年を経ましておりますことは、私としてもまことに遺憾だということに考えてはおります。そこで、どのような努力をしたかということにつきましては、実は、この干拓が、御承知のように、造成されます農地の面積等から考えましても、長崎県の全耕地面積の一割ぐらいの面積に当たりますし、あの付近は非常に土地の少ないところでございますので、総合開発的な見地で地元の諌早市や長崎県もこの干拓を非常に推進をしてまいりました経過もございますので、ノリをつくるのがいいか、水田に切りかえるのがいいかということは、個々のケースとしてはいろいろ問題はあろうかと思います。やはり、いま申しましたような総合開発的な見地で干拓をし、土地を造成していくことが適当であるという判断の上で国の意思を決定をいたしたのでございますから、私どもとしては、できるだけ早く問題を解決して、着工していく方向に進みたい。ただ、残念ながら、いまお話もございましたような三つの組合の反対等もございまして、補償等に関しまして、また、実際の工事完了後の漁民に対する対策等をも含めまして、現地の立ち入り調査もできない部分等も一部現在ございます。そういうようなこともございまして、最終的にどのような補償条件、どのような今後の漁民の対策を具体的に考えたらよろしいかということについては、なお若干の問題を残しておるわけでございますが、先ほど申し上げましたように、そういつまでも国の意思を決定したままで放棄さしておくつもりもございませんので、ごく最近は、私のほうの担当部長も現地に派遣をして、いろいろと説得の努力をいたしておりますが、今年中に私どもとしては漁民との間で十分話し合いをし、補償に関します漁民側の条件等につきましても十分聞くべきものは聞きまして、問題の解決をはかっていきたいという決心をしております。
  349. 達田龍彦

    達田龍彦君 水産庁から長官おいでですか。水産庁は、この長崎大干拓について、賛成の立場ですか、反対の立場ですか、お伺いいたします。
  350. 久宗高

    政府委員(久宗高君) 先ほど農地局長からお話しいたしましたように、本件につきましては、二十七年以来長い調査の段階を経まして、いろいろな経過を経て今日に至っておるわけでございます。水産庁といたしましては、もちろんこの総合開発につきましての国の意思を決定いたしますのについて、御相談も受け、御相談に乗ってきておるわけでございますが、いずれにいたしましても、総合開発をいたします場合に、最終的には関係者の納得が得られるかどうかというのがぎりぎりの問題になるわけでございます。さような意味におきまして、今日この案そのものに反対という立場はとっておりませんが、しかし、これに伴います漁業者に対する処置につきましては、特に今回それが非常に問題になりまして、事業計画そのものが進行できないという段階にございますので、農地局とよく御相談をいたしながら処理に当たりたい、こう考えておる次第でございます。
  351. 達田龍彦

    達田龍彦君 重ねてお尋ねいたしますけれども、有明海岸の、とりわけこの諌早北高ですね、これは魚海藻類の最適地だと言われておる。こういう条件に恵まれたところにあるがゆえに、沿岸漁業者としてはこの漁場を手放すことについて非常に執着を持つのであります。そこで、一体、今日有数の浅水漁業の伸長地区であり、この数年間にわたって水産庁あたりでも漁業の構造改善の一環として相当に投資活動も活発に行なわれておるし、それから生産も非常に急上昇をしておる、漁民もやっと食えるという状態が出てきた、こういう状態にあることを水産庁としては十分知っておられますか。
  352. 久宗高

    政府委員(久宗高君) 御指摘のように、この計画が始まりました当時より、特に養殖漁業、ノリにつきましては技術が急速に伸びましたので、漁民のその地域に対しまする執着と申しますか、希望と申しますか、そういうものには質的な変化があると思うのでございます。確かに、さような意味におきましては養殖の適地でもございますが、しかしながら、私どもといたしましては、そのことと総合開発の問題の調整は、総合開発の方針がきまりました以上、その線に即してそこにおられます漁民の将来の問題につきまして懇切な処置をとる以外にないというふうに考えております。
  353. 達田龍彦

    達田龍彦君 私は水産庁の水産行政に対してこの問題等の関連で問題があると思うんですけれども、一方では漁場の改良事業と称し、漁業投資を非常に盛んに奨励をしておきながら、他方では国家的あるいは国民的な利益ということで干拓事業のためにこれを放棄をしろ、こういう立場で水産行政をやられるところに、私は、干拓の問題といつも関連して出てくる漁業者の反対の立場があると思う。そこで、こういう状態をどうしたら解決していけるだろうかということを水産庁としてはいつも干拓と沿岸漁民との関係において考えなければならぬ。こういう状態は、大長崎の干拓の問題は、まさに沿岸漁民が干拓に対する反対の典型的なものだろうと思うのであります。これを手放して単に補償で解決しようという解決のしかたでは、私は最終的には解決をしない問題を残すと思う。こういう状態に対してどういう解決の方法をとったら最適と思うか、漁民の立場はどういう立場で立っていくのか、こういう点についてあなたのお考えを伺っておきたいと思います。
  354. 久宗高

    政府委員(久宗高君) 御指摘の通りな問題がございまして、一つの水面を二つの目的で使わざるを得ないということから、かりに総合開発が進みます場合に、必ず漁業被害が起こるケースが非常に多いわけであります。そこで、私どもといたしましては、あそこの関係の漁民の中にも、専業的な方、あるいは兼業の度合いの非常に強い方、あるいはその中間の方と、漁業種類によりましてもいろいろあるわけであります。したがいまして、先ほどお話の出ました関係組合の中で、三組合が特別にいま反対であるという意思を強く表明しておりますのは、この漁業種類なり形態とも関連しているものと思うのであります。したがいまして、干拓が進みました場合におきまして、完全に漁業ができなくなるのかどうか、これは現在県でもお考えのようでございますけれども、干拓ができました上におきます養殖業の問題でございますとか、あるいは内水におきます増養殖の問題でございますとか、あるいは堤防外におきますノリが可能であるかどうかという問題も含めまして、転換してまいります方途につきましてもこれと並行して考えていくべきものではないかというふうに考えておるわけでございます。  繰り返し申しますように、かりに総合開発が進みます場合には、全然漁業に影響なしにはできないと思うのでございますが、その影響をできるだけ緩和し、かつそれが漁業の将来につながるような形で処理をしてまいりたいというふうに考えております。
  355. 達田龍彦

    達田龍彦君 私はもう少しきちんとした御説明をいただきたいのです。これは補償で解決ができる問題でない場合の解決のしかたです。私の言っているのは、いいですか、沿岸の漁業者がいわゆる漁業投資をやっている。そして、いままでほとんど生産が上がらなかった沿岸漁業が、戦後のいわゆる漁業の改造事業によって、いまの場合、ノリだけで五億程度上げている。その他のものを含めると、大体十億。長崎県のノリの生産量の約五五%は有明海の諌早湾でとれている。こういう状態に今日ある漁業者が、農業に転換してみてもいまよりも生活が安定しない、所得が拡大しないという見きわめが立ったとき、あるいは将来ノリ養殖がさらに拡大するという展望を持ったとき、彼らとしてはどうしても漁業を手放すわけにいかない。したがって、補償の問題ではないということになったときに、一体どう解決するのか。私は、三漁協の真意は、補償ではなしに、漁場を与える、いま以上の漁業所得ができるところを与えるというのが最終の気持ちであろうと判断いたしております。このことの解決なしには長崎干拓は前進しないのです。その見通しがあるならば、私はここであえて問題を提起いたしません。  ですから、水産庁としては、一方では漁場の開拓、あるいは構造改善事業を進めながら、干拓という国家的な事業であるがゆえにこれを放棄せよという形だけで、補償だけで解決しようとするならば、長崎干拓の場合は、いま言ったような非常にいい条件の中で恵まれた条件の中にあるがゆえに、この問題の解決しない大きな原因があるということと私は指摘をしているわけでございますから、そういう状態の中における解決の方途をあなたはどうお考えになっているかということを明確にお尋ねしたい。
  356. 久宗高

    政府委員(久宗高君) おっしゃる意味はよくわかります。もちろん、どの場合におきましても、この種の問題が起こりました場合に、金が出たらそれで片づくという問題ではない、そういうところから出発するのでありまして、この場合におきましても、さような問題が煮詰めてまいりました場合に私は起ころうと思うのであります。金だけで解決する問題ではございませんので、県におきましても、現在ここに専業的に従事しておられる方、あるいは兼業の度合いということを考えまして、それの方の転換、あるいは漁業の種類の転換につきましても具体的に委員会を編成して検討されているように思うわけでございます。私どももその御相談に乗って御一緒に話を進めてまいりたいというように考えております。
  357. 達田龍彦

    達田龍彦君 あなたは実態を知らなさ過ぎるんです。これは話し合いの場に乗ってこないんです。また、農林省の指導というのは、補償をどうきめていくかという話し合いに乗せようとしておる。ところが、補償の問題ではないということから三漁協は乗ってこない。ですから、あなたが認識しているような実態ではない。  それからこの問題は非常に大きな問題になっておるのでありますけれども、この沿岸に諌早市があるわけでありますけれども、諌早市が最近権威ある学者によって都市診断を行ないました。そのときに学者が「諌早の発展」という内容の中で取り上げておるのでありますけれども、この干拓が取り上げられたのは、皆さん御承知のとおり、食糧難のときに、これは昭和二十八年だと思うのでありますが、当時計画をされたのでありますけれども、そのときにおいてはここの浅水海域というのはきわめて漁業生産の低いところであった。ところが、その後この数年間のうちにいま申し上げたように長崎県の半分以上のノリの生産をここであげている。しかも、全体としては約千三百の漁民で年間十億以上の生産をあげておるという今日の状況にあるわけであります。そういう状態にあるから、この問題は、今日と二十八年当時とにおいては、比較にならないほど漁業価値が高められ、その条件も変わっておるんですから、この際干拓については再検討をしたらどうかというのが諌早市都市診断の中で権威ある学者が指摘しておるのであります。こういう意見なんですが、あなたはこういう意見に対してどうお考えになりますか。
  358. 久宗高

    政府委員(久宗高君) ノリの技術が進歩をいたしまして、急速に拡大いたしておりますので、さような御意見も出ることはあり得ると思うのでございます。しかしながら、同時に、この総合開発に踏み切りました段階におきます総合開発の効果というものとの比較における問題ではないかというふうに考えるわけでございまして、現在、御賛成の方もあり、御反対の方もありということでございますので、私どもといたしましては、今日補償問題のお話に乗ってこないということにつきましても、最初にこの問題についてどういうアプローチをしたかということにも関連があると思いますので、その辺のところは、水産庁も含めまして、もっと関係者と突っ込んだ御相談が要るのではないかというふうに思います。
  359. 達田龍彦

    達田龍彦君 再度水産庁にお尋ねしておきたいと思いますけれども、干拓行政というのは確かに前向きの行政であると思います。しかし、そのために漁場が狭められる、これは水産行政にとっては後向きの行政だと思う。そこで、相いれないものが出てくるのである。そこで、水産行政として考える場合においては、農地は拡大される、これは前向きでしょう、しかし、つぶされていく漁場をどこに代替を求めるかということを今日考えなければこの問題は解決をしないということを私は指摘しているのであります。そういう意味で、この問題の解決のためには、水産庁が中心になって、これらの反対している漁民に対して漁業として立ち行く方法を解決の方法として具体的に提示しなければこの問題の解決にならぬ、そう思うがゆえに、この問題に対して、いま言ったような簡単な、協議会の中で話をする、あるいは対策委員会の中で話をするという程度では解決をしません。もし解決をするとするならば、今日までに解決しているはずであります。そういう意味で、私は、水産庁として、いまも申し上げたような問題を中心にして、前向きの、干拓に伴うところの漁業者の立ち行く方法というものを明確に樹立をし、そうしてそういう立場から水産行政のあり方を明確に立て直さなければならないと思うのでありますが、そういう点についてあなたはどうお考えになりますか。
  360. 久宗高

    政府委員(久宗高君) お説のとおりでございまして、干拓をいたしました場合に、それに伴う補償の問題はもちろんでございますが、それで片づかない問題につきまして漁業の中で解決できる道をきわめるということは必要だと思います。しかし、これはそれぞれの地域によって条件も違うわけでございますので、その地区で申せば、いま県でいろいろ御検討いただいておりますのは、あの地区についてどのような漁業の漁民がおりまして、どういう種類の漁業について干拓が進行した場合にもなおかつ可能であるかということを検討しているというふうに考えます。それについての技術的なそれぞれの御援助につきましては、私どももいつでも御相談に応じたいと考えているわけでございます。
  361. 達田龍彦

    達田龍彦君 私は、農地局長にしても、水産庁長官にしても、地元の漁民の気持ち、それから出先機関との折衝の経過をあまりにも知らなさ過ぎると、したがって、解決がおくれている一つの要因はそこらにあるような気がしてなりません。そこで、大臣に私は最後に二つだけお聞きをしておきたいのであります。  私は、いま申し上げましたように、この問題が補償で解決するということであるならば、まだ明るい見通しを持つのでありますけれども、私の調査によりますと、三漁協は最終的には補償では解決しないという見通しを持っているのであります。その意味では、この問題の解決は非常に暗いと考えております。むしろ、この干拓に関する今日の条件というものは、先ほど申し上げたような条件にあるがゆえに、私は再検討することが必要ではないかという気がしてならないのであります。将来の展望を含めて、大臣はいま申し上げたような実情の中でこの問題をどういうふうに解決しようとされておるのか、展望を明らかにしてもらいたいと思います。
  362. 倉石忠雄

    ○国務大臣(倉石忠雄君) 国が必要と認めて計画を始めたことでありますし、国がそういう決意をするときには、長崎県当局にも、諌早市も地元の多数の人々の要望があった模様であります。いま聞いておりますと、反対しておる方は少数のようでありますが、少数であっても反対は反対ですから、全力をあげて説得につとめて、国の立てました方針を、やはり国全体としても長崎県としても利益であろうと思いますから、方向を変える考えはありません。
  363. 達田龍彦

    達田龍彦君 じゃ、最後に、私は、ひとつ実情を含めて大臣に提案をしておきたいと思うのであります。それは、先ほど、農地局長ですか、言われた中に、漁民の特に三漁協の反対は補償では解決したくないと。もう一つは、県に対する感情的なわだかまりがあると。私もそのことはそうであると考えておるのであります。長崎県と漁業者との立場というものは、非常に悪い感情的な状態にあります。今日どういう状態に報告をされているか私は知りませんけれども、確かに干拓推進の同盟というのがつくられておるのであります。この同盟というのは、県や市や、あるいは商工団体や、言うなれば干拓によって利益を得る人々、受益者団体の集まりであります。こういう人々があげて干拓に賛成だと、こう言っておるのであります。私も、原則的には、干拓というのは国家的な事業として考えてみた場合に、原則的に賛成だと思います。しかし、あまりにも問題点が多過ぎるのであります。この問題をどう解決していくかということが干拓の成功か不成功かにかかっていくと考えておるのであります。そういう意味で、今日の三漁協が反対しておるところは、いま申し上げたように、県に対する感情的な不満もありますけれども、もう一つは、代替の漁場を与えなければとにかくわれわれとしては反対だというのがその本旨になっておるのであります。でありますから、いま推進協議会なんというものがありますけれども、これはまさにいま申し上げたように受益者団体であって、利益を得るがために賛成をしている、あるいは推進をしているという状態でありまして、この人々がいくら賛成だ賛成だと言ってみても、漁協の皆さんはこれによって賛成という立場をとることはないのであります。私は、そういう意味で、このいまの推進同盟というものを対策委員会的なものに切りかえ、そうして、県や、市や、商工団体、あるいは漁協その他の団体もこれの中に含めて、一体どうしたらいいかということを反対の人々の意見もこの中で出させて、そうしてみんなで漁民の反対の意見をくみ取りながら対策をともに考えるという場にしないと、問題の解決にならないと思います。いまの場合は、あの連中が反対するから大長崎干拓という国家的な大きな事業がつぶれていくのだというので、むしろそね者扱い、村八分的な扱いになるがゆえに、感情のもつれがさらに強くなるのであります。私は、出先の農地局にいたしましても、あるいは県にいたしましても、場合によっては圧力でものを言おうとか、あるいはあるルートを通じてこれに力を加える、こういう形がある限り、感情的な不満はますます拡大をしていくであろうと思うのであります。でありますから、そういう立場ではなくて、漁民のそういう人々の意見を、言うなれば、漁民の皆さんは、干拓によって犠牲を受けるのであります。この犠牲を受ける人々を中に入れて、受益者の皆さんが一緒になって対策を考えるような空気と体制というものをつくらない限り、問題の解決にはならぬと思います。いまの県にいたしましても、あるいは出先の機関の皆さんにいたしましても、干拓課長が行ってちょっとものを言ってみたり、あるいは知事が行ってちょっとものを言ってみたり、あるいは熊本の農政局の皆さんが行ってちょっとものを言ってみたり、そうして、条件について一応話し合いに乗るということでなければ話し合いはしません、こういう立場では問題の解決にならぬのであります。  でありますから、私は、具体的にこの問題の解決のためには、いま申し上げたようなすべての受益者団体、あるいは犠牲になる団体も含めた対策協議会を早急に開いて、その中で、漁民の反対している人々の意見を中心にして、どう具体的に解決をしていくか、こういうものを本腰になってこの際検討していかないと、問題の解決にならぬと思います。こういう点について、農林省としてこの私の提案に対してどういう態度をとられるか、お伺いしておきたいと思います。
  364. 倉石忠雄

    ○国務大臣(倉石忠雄君) そういう推進協議会ですか、それを対策委員会に切りかえるということを政府がやるわけにはいきませんで、地元の方の間でこの問題を打開していくためにそれが必要であるという御構想はたいへんけっこうなことだと思います。
  365. 達田龍彦

    達田龍彦君 では、最後に、そういう意味で、この干拓の問題については、地元の漁業者はもちろん、県にとっても市にとっても、大きな関心と、また問題点をかかえている内容でありますので、私は、先ほど、できれば今年一ぱいに解決の方向を出したいと、こう言われておりますけれども、今年一ぱいではなしに、きわめて早い機会に解決の見通しを立ててもらいたい、そうして、いま申し上げたように、賛成している団体だけではなくて、ほんとうに反対している皆さんとどうしてひざを突き合わせて解決のための話し合いをしていくか、そういうことについて、いまみたいな単なるお役所の役人さんが行って上からものを言うというような立場ではなくて、ほんとうに漁民の立場になってその人々の考え方をどう解決していくかという、そういう気持ちになって解決するような方向を早急に立ててもらいたいということを要望して、私の質問を終わりたいと思います。
  366. 森中守義

    ○森中守義君 ちょっと、いまのことに関連しまして、農地局長水産庁長官に、一言だけ意見を交えてお尋ねしておきたいと思います。  いま達田委員からいろいろと具体的な問題が出されておりました。全国的に非常に多いんですよ、こういうケースは。長崎ばかりではない、私の地元にもあります。また、そういういろいろ話を聞いておる。そこで問題が、どういう経過をたどったかということの前に、すべて結果から何か結諭を割り出そうというところに相当無理があるのじゃないか、私はそう思う。農地局からすれば、農業生産を高めるために、あるいは、水産庁からすれば、漁業生産を高めるために、それぞれ行政をやっておいでになるわけですが、いまの長崎干拓の場合は、漁業者は明らかにこれは被害者ですよ、極端な言い方をすれば。そういうように、被害者、加害者というこういう関係が生じない前に、計画の当初にいま少し慎重な配慮あるいは総合的な計画というものが立てられないものかどうか。もう数年前からどんどん計画を立てて、いまになって漁業が困る、反対が起こる、しかしこれは国の方針だからこれに従えというのでは、少々これは国のやる仕事としては無責任というのか、あるいは放漫というのか、少なくとも適切な措置だとは考えられません。その辺がおよそ農林省が一体の責任のもとに仕事をやられるという認織に立つ限り、漁業、農業、同じ省内のことですから、そういう問題が結果的に起こらないように、計画の当初にいま少し合理的なことが考えられないのかどうか。そんなことをやっていたら、しょっちちゅう問題が絶え間がありません。私はそういう点がどうしても合点がいかない。だから、いま達田委員は、すみやかに解決しろと、こうおっしゃる。それはまたそうしてもらわなくちゃ困りますが、その前になぜ総合的な計画を立てないのか、このことを意見を交えてお尋ねしておきたいと思います。
  367. 和田正明

    政府委員(和田正明君) 御承知のように、土地改良法で実行をいたします土地改良事業というのは、地元の当該事業の関連のある人の三分の二の同意を得て申請を受けて国が採択をするという制度になっておるわけでございます。でございますので、最初から私どものほうで干拓の仕事をここでやるのだぞ、こういう形をとっておるわけではありませんので、おっしゃるような点は私もよく理解はできますが、そういう申請が出てまいります前に、先ほど達田委員からも御提案がありましたようなことも含めて、地元でも相当調整をした上で計画の申請というものがあるべきではないかということが一つあろうかと思います。そういう点も、地元の申請等にあたりましても、十分現地の県なり関係町村なりでも考えてもらわなければいけない問題ではないかということを一つ考えます。  それからたいへん一般的なことを申し上げて恐縮でございますが、農地局でそういう地元の要望を受けて干拓をいたします場合も、非常に水深の深いところなどを直ちに工事をいたすわけではございませんので、一般的には、背後地の河川から砂なり何なりが年々にわたって流れ出てまいりましてだんだん海が浅くなってくる、そういうことが歴史的にも常に繰り返されておりまして、古くに歴史をひもといてみましても、百年に一ぺんとか五十年に一ぺんとかいうことで、そういう浅い海の地帯につきましては、先へ先へと土地が伸びていくという形をとらないと、背後地の排水が悪くなるとか、そういう問題が現実の問題としてあるわけでございます。私どもといたしましては、そういう条件のあるような場所につきまして干拓をするという形で現地からの要望は当然出てまいりますので、そこでの干拓をして、背後地の排水の問題を考えなければ非常に大きな悪影響があるということで先へ出てまいりますので、その場合に干拓地がある程度漁業の適地という場所であることも当然でございますけれども、あまり浅くなってまいりますれば、そこで漁場としての価値もだんだん後退傾向をたどる場所が多かろうと思うのであります。  私どもといたしましては、そういう形で干拓事業を今後進めていきます場合に、浅海漁業、特にノリの養殖漁業との間の調和をはからなければなりませんので、漁業者に単に犠牲を強いるだけで背後地の排水不良を解決していくということだけでは適当でないことは、先ほど来の御指摘のとおりでございますので、ノリ漁業の開発保全に関する研究ということで、現在、国立の農業土木試験場とそれから佐賀県の水産研究所に委託をいたしまして、両方が共存していく方向ということについて何か技術的にあり得ないかということについても検討をいたしております。たとえば、背後地から流れてまいりました堆積等によりまして非常に浅くなって、その結果背後地の排水を不良にしておるから、それを干拓をするとすれば、さらに沖へ漁場を出す場合に、沖でどのような漁業がやられるのか、干拓地の代替地として沖でノリができるような方向というものが何か土木技術的にあり得るであろうかというようなことも現在検討いたしまして、今後の問題としてはそういうことも調和もはかりながらやっていきたいということで検討もいたしておる段階でございます。
  368. 森中守義

    ○森中守義君 局長、こういう例もあるんですよ。地元で、自治体でですね。いろいろ計画を立てて持って来る場合に、ずいぶん飾りが多い。実情とは全然違うような場合がある。これは全部そうだというわけじゃありませんが、たとえば私のほうでいま空港関係が問題になっていますが、県が空港の移転の申請をしてきた場合に、不毛の土地である、電柱一本なければ道もない、しかも土地の所有者はみな賛成だ、こういうことで申請をしてきたわけですよ、知事をはじめ。それで、運輸省はがぶっと乗ってしまった。ところが、実際問題として現地で起きている事情はどうかと言えば、約四カ町村にわたっていますが、四カ町村の議会の議決もとっていない。あるいは農業委員会の承認も得ていない。もとより、系統団体等の了解もなかった。しかし、中央段階ではそのままそっくり話をのみ込んでしまっているものだから、いまさらのようにあわててどうにもならぬという、こういう例もある。  なお、長崎干拓も、いろいろこの前陳情団が見えて聞いてみると、県が農林省あたりに持ち込んだ話と現地の事情というものは、だいぶ違ったようですよ。つまり、熊本のいまの空港の話と長崎の話はよく似ている。悪いところはひた隠しに隠しておいて、いいことばかり持って来るものだから、そういうことが結果においてこういう問題にぶつかると思う。なるほど、筋道からいけば、三分の二の同意があったから文句はないだろう、こういう意見になるかわかりませんが、何といっても、これは、漁民といい、あるいは農民といい、茶わんとはしの問題ですから、一口に数だけでは片づきませんよ。だから、私は、自治体等から持って来る話というのは、よほど慎重に、しかも裏づけをつけた実情の調査等でより慎重に事を運んでいかないと、大きな大問題を起こすのではないか、こういうことを非常に懸念をする。長崎の問題もその一つの例だと私は考えております。これは将来の仕事の面によほど慎重に取り運んでいただくように、これは要望ということになりますが、特にお願いをしておきます。
  369. 和田正明

    政府委員(和田正明君) 地元がいろいろ飾って来ることの真実をよく見きわめて慎重に扱うようにという御意見でございます。まことにごもっともだと思いますので、先ほど申しましたことに加えまして、私どもとしても、今後新規の干拓づくり等を採択するにつきましては、単に地元の意見ばかりでなしに、よく水産庁当局とも打ち合わせをいたしまして、統制のとれていきますように十分努力をいたしたいと思います。
  370. 久宗高

    政府委員(久宗高君) 御指摘の二点、私ども全く同感でございまして、現在水産庁関係で補償問題で困っております問題はたくさんあるわけでございますが、その大部分が御指摘のございました最初に十分に話がなかったのが多いのであります。いま問題になりました干拓のほうでございますと、同じ省でございますし、また、農民と漁民との問題でございますので、いろいろ話し合いができるわけでございます。他省の関係で出てまいりましてこじれております問題の大部分が、事前に御連絡がなかった場合であります。それから事実が進行いたしまして、目的はいいんですが、手段を非常にはしょりました結果、非常な感情問題がそこに出ましてどうにもこうにもならぬという問題が非常に多いのであります。私どもとしましてもその点の処理に苦慮をいたしておるわけでございますが、他省の関係も含めまして事前に御連絡をいただきますようなことをそれぞれ関係の多い省庁には申し伝えておりますので、できるだけさようなことのないように処理をいたしたいと考えております。
  371. 和田正明

    政府委員(和田正明君) 私、先ほど、土地改良事業というのが一般的に地元の申請で成り立っておるということを申し上げましたが、若干言い過ぎをいたしまして、三分の二の同意云々というところまで申したのでございますが、これは私の間違いでございまして、干拓事業については三分の二の同意というようなことはございません。土地改良法の精神として、地元の申請を受けて仕事をするという趣旨でございますが、言い違いをいたしましたので、訂正をさせていただきたいと思います。
  372. 野知浩之

    委員長野知浩之君) 本件については、この程度にとどめます。  本日はこれにて散会いたします。    午後六時三十七分散会      —————・—————