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1967-06-13 第55回国会 参議院 内閣委員会 第16号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十二年六月十三日(火曜日)    午前十時五十一分開会     —————————————    出席者は左のとおり。     委員長         豊田 雅孝君     理 事                 石原幹市郎君                 八田 一朗君                 稲葉 誠一君                 北村  暢君     委 員                 源田  実君                 柴田  栄君                 船田  譲君                 三木與吉郎君                 森 八三一君                 山本茂一郎君                 伊藤 顕道君                 中村 英男君                 前川  旦君                 鬼木 勝利君                 多田 省吾君                 中沢伊登子君    国務大臣        厚 生 大 臣  坊  秀男君        運 輸 大 臣  大橋 武夫君    政府委員        厚生大臣官房長  梅本 純正君        厚生省公衆衛生        局長       中原龍之助君        厚生省環境衛生        局長       舘林 宣夫君        厚生省医務局長  若松 栄一君        厚生省社会局長  今村  譲君        社会保険庁年金        保険部長     網野  智君        運輸大臣官房長  町田  直君        運輸省海運局長  堀  武夫君        運輸省航空局長  澤  雄次君    事務局側        常任委員会専門  伊藤  清君        員    説明員        厚生省医務局看        護課長      永野  貞君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○運輸省設置法の一部を改正する法律案内閣提  出、衆議院送付) ○厚生省設置法の一部を改正する法律案内閣提  出、衆議院送付)     —————————————
  2. 豊田雅孝

    委員長豊田雅孝君) ただいまから内閣委員会を開会いたします。  運輸省設置法の一部を改正する法律案を議題といたします。  本案は、去る二十六日衆議院から送付され、付託されました。なお、提案理由説明はすでに聴取いたしております。  それでは、これより本案質疑に入ります。  関係当局からの御出席は、大橋運輸大臣外政府委員方々であります。  御質疑のある方は、順次御発言願います。
  3. 前川旦

    前川旦君 輸運省設置法の問題、航空局の問題がありますが、いずれにせよ、人の命を預かるといいますか、人命尊重という立場で非常に大きな問題があると思うのです。特に人命を尊重してこれを守っていくということに関しましては、与党とか野党ということを問わず、これは私どもの最も力を入れなければいけない重大な問題だというふうに思います。  そこで最初にお伺いしたいのは、たいへん大きな機構改正になっておりますが、たとえば地方航空局を新たに設置している。たいへん大きな機構改革人事異動もたいへん大きなものがありますが実益というものは一体ほんとうにあるのかどうか。こういうことをやって、いままでに比べて航空安全という面、あるいは航空行政という面でどういう実益があるのか、その辺をどうお考えになっておられますか。
  4. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 御承知のとおり、昨年相次ぐ大事故によりまして、航空界は一種の恐怖状態におちいっておりましたが、これにつきまして航空行政刷新ということを反省しなければならないわけでございますが、何と申しましても、機構並びに人員不足というような面において非常な欠陥があるということに留意いたしまして、その改善のために航空局制度改正並びに要員増加をはかった次第でございます。その中心となりますものが、いま御指摘地方航空局新設でございますが、従来は、各飛行場ごと航空保安事務所を置きまして、それぞれの飛行場管理並びに航空保安業務を行なわせておったのでございます。したがいまして、中央における企画業務が非常に多いところへもってきまして、監督業務も全部中央にあるというような状況でございまして、少し本省の荷が重過ぎるように思われたわけでございます。そこで今回の改正案におきましては、中間官庁といたしまして、東京大阪の両地に地方航空局を置いて、ここに本省監督執行業務を移し、そして中央においてはもっぱら企画並びに高度の監督業務をつかさどるというようにいたした次第でございます。これによりまして各飛行場間の連絡もよく相なりまするし、また、責任体制も確立いたしまするので、今後航空行政改善に裨益するところは相当見るべきものがあろうと期待をいたしております。
  5. 前川旦

    前川旦君 それではお尋ねいたしますが、最初運輸省の案は四つ地方航空局というふうにきめておりました。それがいろいろの折衝の結果、二つになった、こういう話を実は聞いております。実はそのとおりだろうと思うのですが、であれば、いま大臣が言われたように、実効をあげるためには四つがふさわしいんだというのが最初のプランであったように思います。それが二つということになりまして、初めに考えておられただけの効果が一体あがるのかどうか、たいへん疑問に思いますのでお伺いいたします。
  6. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) これは長年の弊風と申しましょうか、政府各省予算編成要求にあたりましては、いつもその全部が最終的に実視されるとは思われませんので、最初はできるだけ理想的な案を出す、実際大蔵省との折衝の過程を通じて、まあこの程度期待相当部分が実現できるだろうという程度のところで折り合いをつけて予算をきめるというのが慣行でございまするので、四つ要求したことは別に不当とは考えられませんが、しかし、そのうち二つだけでも認められれば、これは従来から見れば一大進歩であるというふうに考えます。ことに、御承知のとおり、航空関係は非常に専門家が必要なのでございまして、一時に多数の人員を集めようといたしましても、あまり急いでは必ずしも適任者を得るということもむずかしい点もございますので、まず本年は、航空行政刷新の第一歩という意味におきまして、ただいま御審議を願っている程度のところで折り合いをつけたわけでございますが、私どもは、これを足がかりにいたしまして、今後とも、航空行政は全般的に機構人員におきまして不足であり、ことに今後の航空界の発展ということを考えますと、今後も努力をしなければならぬ事柄だと思いますので、一そう御指導をいただきまして、今後一そう努力いたすつもりでございます。
  7. 前川旦

    前川旦君 ただいま大臣お話から伺いますとですね。四地方局がこれは理想である、しかし、これは折衝する相手もあることであるから、理想はこう言ったけれども、許される範囲でとりあえずスタートする、こういうふうに聞こえたと思いますが、それでは将来の問題として、やはりこの四地方局というものをこの二つでやめるのではなくて、四地方局にこれをやはり指向していくという、そういうこれからの問題としてそういう姿勢であるかどうか、お答えいただきたいと思います。
  8. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 運輸省並びに航空当局といたしましては、最初に要求いたしました東京大阪のほか、福岡、札幌を加えますことが依然として願いでございます。
  9. 前川旦

    前川旦君 それでは、いまの二つ地方局の問題にしぼって少しこまかく伺いたいと思いますが、ただいま大臣から本省企画部門を集中して、実施部門は下へおろすのだという話でございましたが、具体的に航空関係企画部門というのは一体どういうのをさしておられますか。
  10. 澤雄次

    政府委員澤雄次君) 航空局企画部門と申しますのは、長期的な航空政策の決定の問題もちろんでございますが、飛行場、それから安全施設乗員養成等につきましてそれぞれの長期的な計画を立てまして、それを予算化していくということが一番大きな大事な企画面のことであると思います。それからさらに制度的なもの、たとえば航空機の検査という事務検査官が実際の飛行機検査をすることでございますが、どういう基準検査をするかというようなそういう制度的なもの、これをしっかりと確立して、これは検査だけでなくて、すべての安全面につきましてマニュアルの、一定の取り扱い基準というものをつくって安全を確保していくということが本省航空局の一番大事なことである、こう思っております。
  11. 前川旦

    前川旦君 今度のこの二地方局新設で、そうなるとかなりの人事異動があるわけですが、いままで本省で全部やっておりましたのを企画部門本省に集中してあと地方局へ落とすということになれば、主として技術系中心とした方々を大幅に動かすということになるのじゃないかと思いますが、その点を伺いたいと思います。
  12. 澤雄次

    政府委員澤雄次君) 必ずしも技術系でございませんで、本省でやっておりまして地方に落としたらいいという面はいろいろございますが、技術系で申しますと、飛行場のたとえば工事完成検査であるとか飛行場の供用を開始しますときの検査であるとか、それから土木工事仕事、そういうことでございますが、事務系では全国の飛行場の全部の経理補給事務本省でやっております。こういう経理補給事務地方航空局へ落としたい、このように考えております。
  13. 前川旦

    前川旦君 ただいまのお話を伺っても、委譲する仕事内容というのは多分に技術的な内容が多いように思いますし、それから大体普通の常識として企画部門事務系統の方が大体担当して、現場というのは、これは特に飛行機関係技術系の方が中心になるということであると思いますが、常識的に考えてどうしても事務職系統の出身の方が主として企画のほうを担当して技術系現場というような、やはりそうなっていく可能性があるのじゃないか。そうなれば現場企画系統との間のパイプというものが、いまは技術系もずっと本省におりますからかなりいいと思いますが、その点でパイプがやや詰まってくる、スムーズにいかないというような、常識的に考えてそういう心配がされるわけなんですが、この点どうお考えですか。
  14. 澤雄次

    政府委員澤雄次君) 先ほど申し上げましたように、政策的なものと申しましても、技術部系統あるいは飛行場系統のものにつきましてもそれぞれ政策的なものがございますわけでございまして、これはほとんど、この両部の課長技術系統課長でございます。そこで、技術に関する政策的なものを実施いたしますので、技術官だけがその地方航空局に行って地方本省とのつながりが薄くなる、こういうことはないように十分慎重に実施いたしたい、このように思っております。
  15. 前川旦

    前川旦君 もちろん私が申し上げておりますのは、事務系の方ばかりで固めて技術者が全部下へ出るのだ、こういうことは常識ではあり得ませんから、当然技術関係の方も本省へ残るでしょうけれども、しかし、従来に比べてやはりその度合いといいますか、それがどうしても技術系の方が現場にいくことが多くなって、本省がどうしても事務系の方が企画部門として占められていく、そういうことがどうしても出てくるということをおそれるわけです。特にそうなりました場合に、官庁のことはこれはもう皆さん専門家ですけれども、やはりこの事務系の方は二年か三年で次々にポストがかわっていかれますね。普通はいわゆるエリートコースに乗ってかわっていかれる、技術系の方は比較的かわらないという、これは一般論だと思います。そういう意味でやはり企画部門が主として技術系で占められて、しかも二年か三年で次々にポストがかわっていく、こういうことになればやはり現場の問題が企画部門に十分に反映するかどうかということを、これは非常に阻害になるのじゃないかということをおそれているわけです。その点でもう一度ひとつお答えいただきたいと思います。
  16. 澤雄次

    政府委員澤雄次君) それで地方航空局を設置しますことは非常に重大な仕事でございますので、局内地方航空局設置準備委員会というものをつくりまして、これは局内の全部の課長委員にいたしましてただいま慎重に準備を進めておりまして、先生指摘になりましたような弊害の起こらないように気をつけてやってまいりたいと思っております。
  17. 前川旦

    前川旦君 それではもう一つお尋ねいたしますが、この地方航空局設置に伴う定員の増、これは何人でしたか。
  18. 澤雄次

    政府委員澤雄次君) 地方航空局設置に伴う定員増は百六名でございます。
  19. 前川旦

    前川旦君 それではその百六名の新規定員増内容でございますけれども、いわゆる五等級以上の役付というものとそれから普通のいわゆる手足となって働くその係の方との比率は一体どうなっていますか。
  20. 澤雄次

    政府委員澤雄次君) ちょっとただいまの資料あれいたしますので、暫時御猶予いただきたいと思います。
  21. 前川旦

    前川旦君 私のほうの調査では百六人の地方局のうち、これに四人プラスされますから計百十名になるわけです。この百十名のうち五等級以上の役付が六十二名で普通の係員が四十八名、こういう私のほうの調べでは出ておりますが、大体そういうことで間違いありませんか。
  22. 澤雄次

    政府委員澤雄次君) ただいま資料あれいたします。大体先生のおっしゃるような数字でございます。
  23. 前川旦

    前川旦君 普通常識として新規採用する新規定員増という場合ですね、役付とそれから普通の役付でないいわば実践をする方との割合というのは、普通の官庁割合からいっても、やはり役付よりも役付でない実際に仕事をする方のほうが多いというのがこれはもう普通常識だろうと思うのです。常識から考えてちょっとこの比率がおかしいと思いますので、その点お聞きしたいと思います。
  24. 澤雄次

    政府委員澤雄次君) ただいまの資料調査いたしております。調べておりますが、六十二名というのはこれはたしか航空局の今度の定員の増二百五名のうちの数字ではなかったかと思いますが、いま調べておりますのでお待ちいただきたい。
  25. 前川旦

    前川旦君 それではついでにお尋ねいたしておきますが、東京地方局それから大阪地方局発足をいたしましたときの新しい定員増割合です。発足をしましたときにそれぞれ役付役付でない方との比率は一体どうなりますか。
  26. 澤雄次

    政府委員澤雄次君) ちょっと係長までの定数をただいま持っておりませんが、この地方航空局職員は課が八つでございます。それからその上に局長、次長ございますので、課と申しますか、課長相当官八つでございます。それに局長、次長がつきますので十名でございます。それで総数は東京地方航空局が百四十八名、大阪が百四十二名を予定いたしております。課長以上が十名でございます。
  27. 前川旦

    前川旦君 私は課長以上のことを聞いたのじゃありませんで、いわゆる役付の数を聞いたわけです。私がちょっと調べてみましたところが、東京地方局の場合に役付が七十四人に対して役付でない係員が七十四名、大阪の場合は役付のほうが多くて七十三名、ところが、係員は六十九名、私の調査の結果、そういう数字が出ているわけです。大体五等級以上の役付ということで、課長という意味ではありませんが、大体そういうことだろうと思いますが、いかがですか。
  28. 澤雄次

    政府委員澤雄次君) ちょっといま五等級以上の数字を計算いたしておりますが、大体先生のおっしゃった数字に近いものだと思います。
  29. 前川旦

    前川旦君 東京地方局、それから大阪地方局、これは実施部門ですから下へおろす、こういうお話でしたね。実施部門ということになれば、通常の常識から言うと、やはり役付よりも実際に動く係員のほうが、比率から言って多いのが、どこでもそういう実態だろうと思うのです、実際に仕事をやっているところですから。ところが、この内容を見ますと、実際に仕事をやるいわゆる係員比率はあまりにも少な過ぎるということが非常に指摘されると思います。このことは業務に対して支障を来たすのではないかというふうに私は思います。そこで、一つは、業務に一体どういう支障を来たすか、あるいは来たさないでおやりになる自信があるのかどうかということと、一体どうしてこういうことになったのかということ、その二つをお伺いいたします。
  30. 澤雄次

    政府委員澤雄次君) 役付と申しましても、最近の各省局課編成をごらんになりますとあれでございますが、係長と申しましても、係長にしないと、月給が上がらないという制度になっておりますので、係長一名、係員一名というような係が実際問題として非常に多くなっているわけでございます。それで、係長と申しましても、係長という名前ではございますが、第一線で働いているというのが実情でございます。
  31. 前川旦

    前川旦君 航空局長の御答弁ですけれども、それは実際とは違って、ほんとうは当初の人員要求を結局は削られたわけなんです。削られた残り、査定の結果認められた人員の中で役付から順番に採っていったから、係員が減ったということがほんとうじゃないですか。それはどうですか。
  32. 澤雄次

    政府委員澤雄次君) 非常に内情にお詳しいのであれでございますが、役所としましては、やはり級別定数でとりますと、月給の高いものからとるという実情がございます。  それから、ただいま調べました東京大阪航空局は二百九十名でございますが、このうち係長以上は百十二名でございます。
  33. 前川旦

    前川旦君 そこで、やはりさっきの疑問が残りますが、係長なんて言うても、これは現場係員と同じで、飛び回るのだという話でしたけれども、それはそうおっしゃるけれども、実際になると、必ずしもそうじゃなかろうと思います。そういう意味でやはり人数が削られたことと相まって、従来よりも、労働過重ということが当たりますか、非常に仕事がふえて、業務に対する支障というものが、その辺からやはり出てくるのじゃないかということを心配しますので、その辺をお答え願いたいと思います。
  34. 澤雄次

    政府委員澤雄次君) 地方航空局仕事は、御承知のように、現場事務と申しましても、第一線現場事務は、従来の保安事務所——今度は空港事務所名前を変えますが、ここでやりまして、地方航空局には大体本省が行なっておりました現場の、何と申しますか、監督事務と申しますか、中央事務地方航空局に移しますが、このような構成、二百九十名中係長以上が百十二名、このような構成でも、大体本省事務を落としてくるわけでございますので、十分やっていける、このように思っております。
  35. 前川旦

    前川旦君 局長はやっていけるとおっしゃいましたが、これは将来のことですから断言できませんが、いやしくも先ほど言いましたように、従来よりか仕事が多くなって、かえってパイプが詰まって、何のために地方局をつくったのかわからなくなった、こういうことが絶対起こらないように、やはり私は万全の配置をしてもらいたいと思います。いかがですか。
  36. 澤雄次

    政府委員澤雄次君) 先生のおっしゃったように十分留意してやってまいりたいと思います。
  37. 前川旦

    前川旦君 それではこれはたいへん大ぜいの配置転換になりますね。たいへん大きな異動がありますが、こういう異動の場合には、往々にして労使間に紛争を起こすことがありますし、管理者のほうでも頭の痛いこともあると思います、はっきり言いまして。特にいま言ったようなことを考えれば、よほど適材適所というか、その人個人の能力なり、あるいは条件なりをよく見て仕事ができやすいような配慮というものを十分にやってもらいたいと私は思いますが、いかがですか。
  38. 澤雄次

    政府委員澤雄次君) この地方航空局設置に伴いまして、おっしゃるように、相当人事異動がございますが、この人事異動につきましては、適材適所という点はもちろん、これから家庭の事情その他も私のほうでは十分に調査いたしまして、人事異動に遺漏のないようにいたしてまいりたいと思います。
  39. 前川旦

    前川旦君 特にいま勤務している土地を離れて転任する場合に、これはいま住んでいるところに生活の根がしっかりすわっている方もたくさんいらっしゃると思いますので、それはよほど慎重にしていただきたいと思います。いやしくも生活権をおびやかすようなことのないように十分な配慮をしていただきたい、このように思います。  そこで、ちょっとついでにお尋ねしておきます。この二百九十人に及ぶ地方航空局職員、これに対して新たに宿舎は一体幾らプラスされましたか。官舎は幾らプラスされましたか。
  40. 澤雄次

    政府委員澤雄次君) ただいままでに確保いたしました宿舎は二十四でございます。これは二百九十名と申しましても、もう現在東京なり大阪におる人もずいぶんございますので、二十四でございますが、今後航空局現実に設置するまでにまだ宿舎の確保に努力を続けてまいりたいと思います。
  41. 前川旦

    前川旦君 この二百九十人は現地におる人もおりますけれども、それにしてもかなりの配転があるのに二十四月の新規増加、これではあまりにも心もとないという感じがいたします。特にいま住宅は非常に逼迫しておりまして、住宅によって収入に大きく影響するというほど住宅問題は非常に大きな問題ですから、二十四はあまりにもひどいと思いますので、その点、あなたは努力をいたしますとかおっしゃいましたけれども、一体どういう努力をしてふやすという、その具体策というものができているのですか、ふやしていくことについて。
  42. 澤雄次

    政府委員澤雄次君) 現実に符合を要します者は大阪が大部分でございまして、東京は従来からこっちにおった人が多うございます。しかも、大阪地方航空局大阪の現在の保安事務所空港事務所にいる監理部要員相当に移ってまいりますので、あと十戸程度を借り上げその他の措置を講じてやってまいりたいと思います。  それから宿舎が整備できなければ現実人員配置転換ができないということはこれは当然のことでございます。
  43. 前川旦

    前川旦君 この地方航空局実施は十月一日でありましたでしょうか。この原案はこの六月一日からということになっておって、この分だけ十月一日になっているのは、その辺のところをやはり勘案された上でのことなんでしょうか。
  44. 澤雄次

    政府委員澤雄次君) 現実に庁舎を建てまして、それから宿舎を手配いたしますために十月一日という日にちをお願いしたわけでございます。
  45. 前川旦

    前川旦君 これに伴う新しい新規採用がだいぶございますね。彼らをすぐそのまま現場配置できるわけではないと思います。訓練期間というものが必要だと思います。それをやらないと、実際現場に行っても仕事はできませんね。そういう訓練期間というものに対する配慮もこの十月一日の中には入っているのでしょうか。
  46. 澤雄次

    政府委員澤雄次君) 新規採用の人は大体七月と九月に分けて採用をしてまいりたいと思っております。新規採用職員のうち、事務系を除きましては、それぞれ御指摘のように訓練が要ります。で、高度の研修を要するもの、たとえば、管制官等は六カ月から一年の訓練実施いたしますので、それは現在訓練中の——羽田において訓練いたしますので、それの人間と入れかえをやりまして補充してまいりたいと思います。ただ、十月一日施行となっておりますが、十月一日にそれではこの二百九十名の定員が全部一どきにおさまるかと申しますと、これはやはり時間をかけて無理のないように機構を整備してまいりたい、このように考えております。
  47. 前川旦

    前川旦君 それでは、いまのはけっこうですから、いまお話に出ました航空管制官、それから航空管制通信官について若干お尋ねしますが、この勤務内容というもの、これは事故がたくさんありましたあとでテレビでもずいぶん放送されましたし、新聞にもずいぶん出ましたが、その内容というのは、非常に労働密度が高いということが問題になっておりました。特に労働密度が非常に高くて、短時間の間にいろいろな仕事をやらなきゃならない、非常に鋭い頭の回転も要求される、ことばは日本語じゃないことばも使う、労働密度が非常に高い、これは一般的に言われていることなんですね。そうなると、この管制官なり通信官なりの疲労という問題がやはり航空事故というものとつながってくる危険性が、私はこれは常識的に言ってあると思うんです。そういう意味で、これは特殊な勤務として、労働時間の短縮というものを、運輸省令でこれはできるはずなんですから、そういう方向を考えていらっしゃるかどうか、お伺いしたいと思います。
  48. 澤雄次

    政府委員澤雄次君) 管制官、通信官につきましては、飛行場によって違いますが、三直四交代または四直五交代ということで実施いたしております。その勤務も、先生指摘のような事情も十分考慮いたしまして、また、いろいろ国会からも御忠告を受けまして、八時間勤務でございますが、管制官などは、実際に管制の事務に従事する時間は六時間というふうに実施いたしております。
  49. 前川旦

    前川旦君 これは今後の前向きな考え方として、やはり時間短縮をして高い労働密度に十分たえられるようにやっていくと、今後やはり労働時間短縮の方向へいくんだという、こういう前向きな御姿勢がおありなのかどうか、ちょっと念のために伺っておきます。
  50. 澤雄次

    政府委員澤雄次君) 管制官六時間勤務——実際管制をしている時間が六時間であれば、まず現状では、それは短いほどけっこうでございますが、現在の予算その他の状況のもとにおいては、まずまずのところではないかと思います。
  51. 前川旦

    前川旦君 それでは、いまの問題はあとに残して、現場飛行場、空港での定員配置定員増の問題に移りますが、これは一体今年度、現場飛行場、実際現地で仕事をやっているところ、この定員は実際幾らふやしますか。
  52. 澤雄次

    政府委員澤雄次君) 現場定員は九十五名ふやしました。
  53. 前川旦

    前川旦君 それでは、一種空港、二種空港、三種空港に分けまして、二種、三種についての現状はいかがですか。
  54. 澤雄次

    政府委員澤雄次君) いま二種、三種の分だけ取り出して調査いたしますので、時間の御猶予をいただきたいと思います。
  55. 前川旦

    前川旦君 ただいまの九十五名という増員は、新しく開始した業務に対して配置された、査定された人員であるはずです、私の調査では。であれば、いままでの二種、三種の空港、一体これは人員がふえるのかどうか。九十五名ということではふえないという結果になろうと思うのですが、その点お答えいただきたいと思います。
  56. 澤雄次

    政府委員澤雄次君) 御指摘のように、九十五名の大部分の者は新規施設の供用開始に伴う定員増でありまして、従来の定員はふえないわけでございます。ただ、この施設に対して何名という査定で大蔵省から定員がついてくるわけでございますが、人数全体がふえてまいりますと、従来の人間と合わせまして運用が楽になる、そういうことはございます。ただ、従来の取り不足定員をふやすということは、これはなかなか現在の予算折衝においては困難なことでございます。
  57. 前川旦

    前川旦君 この定員をふやすという問題では、皆さん方も御苦労なさっておることだと思うので、これは皆さん方をいたずらに責めてもお気の毒かとも思いますが、しかし、いま一応一種空港の場合はかなり設備もよくなり、むしろ事故の起こるのは二種空港、三種空港の可能性が非常に強いわけです、松山の例をあげるまでもなく。その二種空港、三種空港で現場定員が少ない、人員が少ないということは、これまた前々から国会でも指摘されておりますし、新聞等でもやかましく指摘をされておるのです。これが今度ふえないということは一体どういうことなのか。一体ふやすということを要求なさって削られたのですか。初めから要求なさらなかったのですか。その辺、なぜふえなかったのですか。
  58. 澤雄次

    政府委員澤雄次君) 飛行場の運用時間の増に伴います定員は要求したわけでございますが、従来の取り不足、従来と同じ運用時間で取り不足を要求はいたしておりません。これは要求いたしましてもまずつかないというのが現状でございますので、取り不足分の要求はいたしておりません。ただ、新規増に伴うもの、あるいは運用時間を延ばすものについては定員を要求いたしました。これがつきますと、従来の定員と合わして人員配置が実際上楽になってくる、こういうのが実情でございます。
  59. 前川旦

    前川旦君 大臣にお伺いいたしますが、いま言いましたように、二種空港、三種空港、非常にこれから危険である。事故の起こる可能性が強い。現地の、いまの空港を守る人たちをやはり一人でもふやすということは、私は、保安上、安全上大事なことだと思うのです。ところが、いま航空局長は、要求してももらえないから要求しませんでした、可能性がないから要求しませんでしたというふうにとれるように私は聞きましたが、必要なものであれば、要求をしてがんばった、その結果だめだということであれば、あるいはまた話はわかるのですけれども、初めからだめだから要求しませんでしたというのでは、ちょっと姿勢としておかしいんじゃないか。特に大臣は、この間ごろからいろんな人とお会いになった会見の中でその点の必要性をいろいろお感じになって、とりあえず二十七名というのは増員に努力しようというようなこともおっしゃったように聞いているんです。いろいろ努力なさったということも聞いておりますので、いまの航空局長の発言はあまり後向きな感じがいたしますので、大臣ちょっとお答えいただきたいと思います。
  60. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 実は私も、いままでありまする空港の事務所の定員そのものがそもそも少ないような気がいたしております。これを一挙にはでき得ませんにしても、だんだんにふやしていくことが必要である、こういうふうに概括的に考えておったわけでございまして、予算の要求におきましても、そういう意味での不足分の要求も入っておると思っておったのでございますが、そうではなく、やはり運用時間の延長とか、新規業務とか、そういうものに伴う定員だけが要求され、そして、ごらんのような結果で査定されておるという事実を知りましたが、近く来年度予算の要求の時期にもなりますので、その際には十分御趣旨に沿うように努力をいたしてまいりたいと思います。
  61. 前川旦

    前川旦君 さすがに大臣の御発言だと思います。どうぞひとつそういう方向に私は精いっぱいの努力をしていただきたいと思います。事故が起こったあと幾ら言ってもしかたないことですから、事前にそういうたんねんに準備するようにお願いしたいと思います。  それでは、いまのもう一ぺん航空局長に戻りますけれども、研修定員というのは、これは幾らぐらいになりましたか。
  62. 澤雄次

    政府委員澤雄次君) 研修定員は、国会の御援助によりまして三十名ついております。
  63. 前川旦

    前川旦君 その三十人は、昨年大臣折衝されて、予備費から緊急に出されたはずなんです。一体今度は、三十人の研修定員に幾ら上積みする努力をなされましたか、幾らつきましたか。
  64. 澤雄次

    政府委員澤雄次君) 今度は研修定員の増はございませんでした。
  65. 前川旦

    前川旦君 普通現場で研修に、たとえば管制官だけ一つとりましても何人ぐらいこれは研修に出しますか。私が調べたところでは六十人ぐらい出す。そうすると、定員の関係でやはりそれだけ現場の人が不足する、こういう話も聞いておりますが、その点間違いありませんか。
  66. 澤雄次

    政府委員澤雄次君) 現在、管制官は五十名研修をいたしております。
  67. 前川旦

    前川旦君 そうすると、その間の現地での不足はどうやって一体、ただでさえ少ないのに、どうやって現実問題として補っていますか。
  68. 澤雄次

    政府委員澤雄次君) この不足は、結局各空港事務所あるいは管制部の定員をこちらに移管いたしまして、そして実施いたしているわけでございます。
  69. 前川旦

    前川旦君 実際に研修に出たあと、その人手不足を補うために、その分をみんながカバーをし合わなければやっていけない。そのためには資格のない人が機械をいじる。たとえば訓練生にやはり同じような交代で勤務につかせる。そうすると、資格のない人が機械をいじるということになります。それからさらに上級の免許状を持っていなければいじれない機械を、下級の免許状を持っている人がやむを得ずいじっている。こういうことも実際に各現場ではたくさん起こっているという話を聞いておりますが、そのとおりであろうと思うのです。それをどういうふうに対処されますか。
  70. 澤雄次

    政府委員澤雄次君) 研修定員が、訓練定員が三十名しかつきませんが、管制官を例にとりましても毎年五十名から八十名程度の人を訓練していかなければならないという実情にございます。それでやむを得ず各管制部あるいは空港事務所のほうから定員をこちらに移しまして、暫定的にここで訓練をしておるわけでございます。訓練が終わりましたらそれをまた現場に帰しまして実施するということで、その間定員定員どおりに実員が配置されていない管制部あるいは空港事務所というものがあるのは事実でございます。ただ先ほど申しました三直四交代あるいは四直五交代、こういうものの原則は変えないようにいたしております。  それから、その定員の借り上げと申しますか、訓練のための借り上げにつきましては、各管制部なり、あるいは空港事務所事務量というものを私どものほうでできるだけ調査いたしまして、各空港事務所あるいは管制部に実際上の予算定員と別に実際上の取り扱い量にそう大差のないようにいたしております。しかし、これはあくまで正規のことではございません。訓練定員増加につきましては、今後ともひとつ努力を続けてまいりたいと思っております。
  71. 前川旦

    前川旦君 実際に現場でいま言ったような人手不足で、資格のない者がいろいろ三直、四直につくというような実態があるということ、もしこれを飛行機のお客さんがそういうことを知れば、それはふるえ上がるだろうと思うのですよね。常識考えてきわめてこれは危険ではないかというふうに実は思います。何とかこれを早く処置をしなければいけない。その処置がいま局長言われたように、努力をいたしますと、非常に議会答弁の通り一ぺんの答弁をされましたけれども、もう一つこれを突っ込んで、もっと何かこういうようにやるのだと、こういうようなやはり気持ちがないと、これは人命を預かっているという重大な仕事なんですから、私はやはり不満なんですね。もう一つ突っ込んだ答弁をいただきたいと思います。これは場合によったら大臣にいただいてもけっこうなんですけれども
  72. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 問題は予算におきまする訓練中の研修者の定員が過少ではないかという点であろうと存じます。この点はお話を伺っておりまして、確かに遺憾の点だと存じますが、航空局機構は、全般的に航空界の大勢に比べましておくれておりますので、航空局の拡張というものは今年度だけの問題でなく、当分は毎年繰り返さなければならない問題だというふうに私は考えております。ことに航空局を昇格いたしまして航空庁にするという話もあったのでございまして、政府部内でいろいろ論議がございましたが、場合によっては航空庁を認められる可能性もないわけでもなかったと思うのでございますが、私自身のつもりといたしましては、ここで航空庁とでき上がったようなつもりで名前だけくっつけることは、将来の航空局の増強の点からいって必ずしも適当でないと、こう判断いたしまして、航空庁の昇格は今年度は行なわなかったような次第でございまして、今年度のところは、御指摘のように、非常に不十分ではございますけれども、後年度におきましてほんとう努力をいたすつもりで、ただいま航空局長からも申し上げた次第でございますから、どうぞ航空局長の答弁をそういう意味に十分御理解を賜わりたいと思います。
  73. 前川旦

    前川旦君 大臣の答弁から受ける印象と局長から受ける印象とだいぶん感じが違うのですが、いま大臣がそう答えられましたからそれは了承いたしますが、これは先年ですか、新聞で出ましたあの松山の飛行場で大きな問題がありました。というのは、飛行機が着陸しようとして航空塔滑走路を指示する塔から見えないという連絡があった。調べてみると消えているわけです、故障でね。ところが、勤務時間外でしたから照明灯を保守する要員というのは、二種空港一人ずつしか配置されてないように聞いている。勤務時間外であればしかたないわけです。保守する人がいないわけですね。電気が消えて、飛行機電気消えたから因ると言ってきて、着陸できない。直す人が、資格のない人が機械たたいたり何かしたら、ぱっとついて助かった。全くひやひやものの話が出ていました。これはかなり有名な話ですね。つい最近ですが、つい半年前になりますね。いまのその照明灯といいますか、電気関係の人をこういう飛行場に一人ずつしか配置しておりません。  それから十人以上研修に出したことがあったはずです。去年の暮れか、ことしの初めでしたか、十四、五人。特に二種空港を中心として半年くらい研修をやったわけですね。そうすると、その間それを出した飛行場は電気が故障した場合に直す人がいない。保存ができないという状況がその研修の期間続いたという話を私聞いております。そのとおりだと思うのです。これも知らないからいいようなもんの、こういう事情を実際乗る人が聞いたら、これはもう飛行機乗るのこわくて乗れなくなる。飛行機がかりに事故を起こした場合、この前の松山なんかでも、全日空関係の方が、ついそのはずみに、責任はおれのほうばかりではないのだ、運輸省もあるんじゃないかと、ついどっかで口すべらしてずいぶんたたかれたという問題がありましたけれども、責任転嫁だといって。やはりそういう気持ちにもなるんじゃないかと思うのです。非常にこの問題は危険だと思いますので、ただいま大臣言われましたが、早急に努力すると言われましたけれどもほんとうに実のある努力をしていただきたい、このこと特に強くお願いをしておきたいと思います。  それからその次にお尋ねしますが、飛行場の運用時間の問題です。いま二種空港の運用時間を見ますと、昔は、これ日没から日出までとかいうような、基準か何か、そんなことだったところもあるようですけれども、いま大体十二時間、それから十三時間半、十四時間、こういったような運用時間というものが行なわれております。ところが、そこに配置されている人々の勤務時間は八時間ですね。勤務時間からは、ずれてる運用時間というものがあるわけなんですね。ということは、先ほど言いましたように、勤務時間が、松山の例のように勤務時間がずれているからということで、係員がいないという、そういうときにもどんどん離着陸をするということが、いま行なわれているから、これ非常に危険だと思うのですが、この運用時間をいまのままでやるんであれば人員ふやさなきゃいけない、ふやすべきであると思いますが、この点一体どういうふうにお考えでしょうか。
  74. 澤雄次

    政府委員澤雄次君) 運用時間に合う交代要員定員を確保しなければならないことは当然でございます。私どももそれにつきましては非常な努力をいたしております。ただ照明要員その他につきまして、ただ、これは実際は照明要員も、ふだんその照明が非常に順調にいっていますときは、ほかのいろいろな飛行場の施設の事務その他を手伝っておりまして、非常に多忙なのではございますが、ただ予算折衝の経過におきまして、照明要員が、照明が故障を起こさない場合にはどれだけの労働力になるか、こういう加算をされますと、なかなかこれを二名にふやすというようなことは、まあ予算折衝上非常に困難な実情にございます。これは古い歴史があります駅であるとか、あるいは鉄道であるとか、あるいは郵政関係の事業所であるとかいうものは、どんなに計算上の労働力が少なくても一名いなきゃいけないものは、必らず交代要員を置くということで積み重なっております。航空は、この民航を始めましてからまだ歴史が浅いと申しますか、そういう関係もございまして、単純な労働力計算の上で、なかなかその完全に交付要員の獲得ができないということでございまして、これはもう非常に遺憾なことでございますし、また先生おっしゃいますように、保安上もゆゆしい問題でございます。この予算定員の獲得につきましては、今後ともほんとうにがんばってまいりたいと思います。
  75. 前川旦

    前川旦君 大臣にお伺いしますが、安全ということはいま幾ら慎重に考えても考え過ぎることは私はないと思うのです。事前の安全策というものは、そういう意味でやはり十分な定員配置されて、安全に空港側として自信が持てるんだ、こういう時間帯に、やはり運用時間をきめていくべきではないか。ということは、いまの運用時間は少し長過ぎる、現場の安全ということから考えて。これはやはり飛行機会社そのものの企業の要求からくるものもあるでしょうけれども、やはり私は、大臣が安全というものに対してき然とした態度で、十分な定員要員が確保されるまでは、飛行場の運用時間を縮めるんだ、それによって、安全であって少しずつ延ばしていくんだと、こういう安全第一のお考えでやはり運用時間というものを考えていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
  76. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) ただいまの前川委員のお説は全く同感でございます。この運用時間に必要な人員配置の問題は、これは単なる事務的な問題ではなく、航空行政としては大きな政治問題でもあると思います。今後そういう意味におきましても、特に私としても努力をいたしたいと思います。
  77. 前川旦

    前川旦君 これはまあ言わずもがなかもしれませんが、大蔵省なんかといろいろ折衝されるときにいろいろ障害があると思うのです、人員の場合ね。私どもこの点はよくわかるのですが、やはり運用時間を削るぞ、これが一番安全に対する強いテコになるというふうに私ども考えます。そういうやはり強いというか、安全に対して絶対強いき然たる態度で、人員増の場合、そういう折衝でも、強い態度でのぞんでもらいたい、強い態度でしてもらいたいというふうに実は思います。
  78. 北村暢

    ○北村暢君 関連して。いま前川委員から、だいぶ運用時間の問題、第二種、第三種空港の安全確保の問題についての勤務体制について質問があったんですけれども、第二種、第三種の空港における運用時間と専門職、専門職が交代制をとっているというけれども、専門職一名しかいないという空港があるんですね。これは日曜祭日なし、ぶっ通し、おらなければそれにかわる人が実際にいないわけですね。そういう専門職が一名、照明なら照明の専門職が一名しかいない空港がたくさんあるんです。これじゃ年がら年じゅうこの人は休まれないですよ、実際問題として。先ほど言われたように、そのうちから研修に行っちまうというのでは、これはゼロになってしまう。これじゃいま言っているようにあぶなくってしようがないんです、これは。そんな空港だったら閉鎖したらいい。閉鎖したほうがいいような空港がたくさんあるということですね、管理上から言って。これは局長が先ほど言われたように、何ですか、新規のものだけの要求はしたけれども、それ以外のものは要求していなかったと、今回はね。そんな問題じゃないですよ、これは。これは松山の事故が起こったときにもずいぶんやかましく言われて、研修生三十名だけは定員確保してもらったというわけですけれども、五十名ないし八十名の研修生が行ったというんでしょう。そうすれば、だれかかれか資格のない者が補わなければならないという状態、しかもこれは、管制官というのは、研修期間が長いんでしょう。一年ないし五年の研修期間であるわけですね。そういうのについて、三十名の研修の定員をもらったからとかなんとかでこれはとても済まない問題なんですよ。大臣も恐縮しいしい努力する旨言われておりますから、わかるような気もするんですけれども、実際問題として、専門職が一名というんじゃこれは不可能ですよ、運営する上において。そういうのはあんた、少なくとも専門職一名だなんということのないように、二名——それは確かにあれでしょう。一日に何回かしか離着陸しないところがあるかもしれない。しかし、何回かだけれども、運用時間が十三時間といえば、その時間はあいているかしらぬけれども、おらなくちゃならないということですね。ですから、これは専門職一名というのはどのくらいあるのですか、第二種空港十七のうち専門職一名だなんというのは。各十七空港について、全部実態を明らかにする必要があると思うのです。ひとつこれは資料として、いま直ちにと言ってもあれですから、資料として出してもらって、その勤務の実態が一体どんなになっているのか。これはやっぱり徹底的にやる必要があるんですよ。あぶなくてしようがない。ですから、この問題は、二種空港、三種空港について、特に二種空港、三種空港——第一種空港はこれまた繁雑でこれはたいへんなんです。二種空港、三種空港は離着陸の回数が少ないけれども運用時間が長い、こういう問題があるのですから、ひとつ航空行政上、安全確保の上からいってきわめて重大な問題でありますから、ひとつこれの実態が、役人の定員もらえるとかもらえないとかで済む問題ではないのです、これは。航空法上で、法律できめていることが守れないのですから、守れない、法律違反のことが常時空港で行なわれているということはこれはたいへんなことですからね。電波法なり航空法なりに違反をした事態が行なわれているということ、そんなことが普通に行なわれる状態で空港を運営しているというのは重大な責任問題ですよ。ですからこれはひとつこまかい資料として出していただきたい。そして実態をここで明らかにして、大臣もひとつ認識をうんとしっかりしてもらって、これはほんとうに決意を新たにしてもらわなければ改善できない。役人ベースじゃこれは解決できないのです。ですから、これはひとつ私ははっきりこの実態がわかるような資料を提出してもらって、そのときまで残しておいてやるということにしたほうがいいと思う。
  79. 前川旦

    前川旦君 いまの問題、それではあとへ残します。次にお尋ねをしたいのは、この前の松山の事故がありましたあと衆議院の運輸委員会、参議院の運輸委員会で非常に松山事故中心にして実は激しい論議が展開されました。その中で特に問題になりましたのに——その松山事故の前の話ですが、連続三回大きな事故がありましたね。ところが、あのあとで全日空なり日航なりが運航規程というものの変更を運輸省に求めて運輸省は運航規程の変更を認めました。ところが、その内容を見ると、従来一日の制限されている着陸回数が、日航の場合たとえば五回であったものが運航規程では六回、全日空の場合四回であったものが六回、前よりか制限の着陸回数がふえているという結果になっているわけですね、大事故あとで。運輸省が認可したこの運航規程、これは当然パイロットの疲労という問題を考えてむしろ過重になっているのではないか、運輸省のほうから逆にこう言って航空会社に詰め寄らなければいけないのに、事故あとで会社から出してきたいまの一日の制限の着陸回数四回を六回にふやすのだというようなことをすっすと認めたということについて非常に衆議院で論議をされまして、運輸省の当局はいわばことばはきたないがたたかれたわけです。あのときはちょうど松山の事故あとですから、皆さん非常に低姿勢で御答弁をなさっておりましたが、一体これその後——これからの検討課題ということであったようですが、だいぶ時間がたちましたか、どう検討されているのか。当初——もう一ぺん言いますと、一日の着陸の制限が全日空では四回から六回、日航が五回から六回に制限されたわけです。こうなっていますが、その後これをもとへ戻すような前向きの御指導がなされたのか、全然それをほうっておかれたのか、その後どういうふうになっていますか、お伺いいたします。
  80. 澤雄次

    政府委員澤雄次君) 全日空につきましては、この規程の改正をいたしましたのは事故のございました昨年の前、四十年の三月に改正をいたしております。それで日航がその後改正をしたわけでございますが、この着陸回数につきましては、御指摘のように、従来四回のものを六回にしたいということを申してきたわけでございますが、これは国内線が六回、国際線五回でございます。これは諸外国の——この規程を出してまいりましたときには諸外国の例を全部航空局で調べたわけでございます。諸外国の国際線、国内線につきましての例から見ましてこれは決して過重な運航規程ではないという判断のもとにこれを認可いたしたわけでございます。実際のあれは、その運航規程に基づいて労働協約で会社と組合とがこの回数をきめた、こういうことになっておるわけでございます。
  81. 前川旦

    前川旦君 諸外国の着陸の制限の回数を勘案したとおっしゃいましたが、諸外国は六回になっておるから、たとえばアメリカが六回になっておるから日本も六回までいいのだ、こういう判断をなされたのじゃなかろうかと思いますが、諸外国の例と日本と対比する場合には、そのほかの条件がいろいろあるだろうと思うのです。たとえば飛行場の設備、飛行場の広さ、全然これは条件が違いますね。そういう点を勘案すれば、着陸回数だけを諸外国と同じにすることはこれは不合理だと思います。この前も衆議院指摘されておりますが、この点はどうお考えになりましたか。
  82. 澤雄次

    政府委員澤雄次君) 諸外国は一般的に申しまして、先生のおっしゃるように、飛行場の設備その他がわが国よりは完備いたしてはおります。ただ国際線につきましては、これは諸外国と日本航空との場合ほとんど差異がないのではないかと思われます。それから国内線につきましては六回となっておりますが、実際の協定その他で四回となっておるように聞いております。
  83. 前川旦

    前川旦君 これはまあ最高限をきめたあれだというふうなお答えで、あとは各会社で自主的に四回に制限をしているようでありますというふうに私聞きましたが、局長、それは実態をつかまえておっしゃったのか。実際全日空にしても日航にしても労使の間で——なるほど最高限は六回なり五回なりにきめたけれども、労使の間でもっと少ないあれでやっておるのだと、こう確信持って言えますか。実際現地の実態を御存じなんですか。現地の実態は幾らぐらいになっているかおっしゃっていただきたいと思います。
  84. 澤雄次

    政府委員澤雄次君) 労使の間の協定上は従前どおりでございます。たとえば全日空は四十年の三月に協定上六回ということにいたしましたが、労使協約上は四回になっております。
  85. 前川旦

    前川旦君 この運航規程についてでありますが、これは航空法の百四条だろうと思うのです。そこで航空法の百四条に基づいてこの運航規程というものを運輸省に出してそして運輸大臣がそれを認可をする、変更するときもそうだというふうに書いてありますが、肝心のそれではそれを認可するときの基準というものは一体どうなっているのでしょうか。この前の、いまの松山事故あと委員会では、——ちょっとこれ言ってみますと、そのときの説明員が「まことに申しわけないのですが、いま準備しておるという次第でございます。」という答弁をしておりますし、そのときにまた「これは省令をちゃんとつくりまして当然やるべきだと思います。そのようにいま進めておる段階でございます。」というふうに申しておりますし、大臣も「はっきりした省令によりましてきめることがもっと妥当であると私は考えます。督励をいたしまして至急に、国際的な基準をもとにいたしながら、日本の実情に合ったそうした基準の作成を促進いたしたいと考えます。」という答弁をはっきりしているわけです。これは前の大臣ですから、あなたに言うのはちょっとあれかもしれませんけれども、だいぶん時間たちましたが、一体このいまの基準運輸省の中における認可基準というものは一体いまできているのですかどうですか。どうなっているのでしょうか。
  86. 澤雄次

    政府委員澤雄次君) この基準につきましては、航空局の中にマニュアルの作成委員会をつくりまして順次——実は基準ができていないのはこれだけではございませんので、ほかにもございますので順次整備いたしております。この運航規程の基準につきましては、これは運航会社のエキスパートを入れまして、ただいままだ作成準備中でございます。
  87. 前川旦

    前川旦君 急がせて督促して早急にやるというはっきりした、しかもこの事故あとの非常に大事な委員会で答弁していらっしゃいますが、だいぶ長い間たっております。これは去年の十一月の委員会ですよね。半年以上たちますが、目下——いまの答弁何と言いましたかね、準備中と言いましたか。
  88. 澤雄次

    政府委員澤雄次君) 作成中……。
  89. 前川旦

    前川旦君 作成中。これはたいへん長く時間がたっておりますが、一体これは見通しはどうなんですか。いつごろまでにでき上がるめどが立っているのですか。
  90. 澤雄次

    政府委員澤雄次君) 大体のドラフトができ上がりましたので、早急に実施をいたしたいと思います。
  91. 前川旦

    前川旦君 たとえばことしじゅうだとか、そういったような見通しというものは一体立つのかどうか、お尋ねします。
  92. 澤雄次

    政府委員澤雄次君) 二、三カ月のうちには必ず実施いたします。
  93. 前川旦

    前川旦君 それでは一体この認可基準がないのに、運航規程は一体何を基準にしてそういった認可をなさっていらっしゃるのですか。基準がないのに認可したりなんかするの、なかなかできぬだろうと思うのですが、どういうものを基準にしてなさいましたか。
  94. 澤雄次

    政府委員澤雄次君) これはまず会社からの労働状態に関する説明を聞きまして、それから諸外国のエアラインの実例、あるいは実績を見まして認可いたした次第でございます。
  95. 前川旦

    前川旦君 その諸外国の何とかを見てとおっしゃいますけれども、何か具体的なやはり基準がないと、全くヤマカンでこれはいいだろうとか、これは悪いだろうとか、まさかあなた方、そんなことはないと思うのですよね。もっとやはりしっかりした、たとえここの運輸省基準ができていなくても、何かを参考にしてやはりきめるときにはなさっただろうと思うのですが、それがないというとヤマカンできめたということになりますよ。一体それはどうなんでしょう。
  96. 澤雄次

    政府委員澤雄次君) このような運航規程の着陸回数であるとか、あるいは勤務時間につきましてはICAOなりその他国際的にきまった基準というものがございません。それでやはり各エアラインの実例を全部私のほうで詳細に取ってございますので、その各エアラインの実例から見まして、そのエアラインの平均的なものを越えるものはもちろん許可いたしませんが、平均的なものの以下であればこれを許可するというやり方でやっております。
  97. 豊田雅孝

    委員長豊田雅孝君) 速記とめて。   〔速記中止〕
  98. 豊田雅孝

    委員長豊田雅孝君) 速記再開。  それでは午前はこの程度にいたしまして、午後は一時に再開いたします。しばらく休憩いたします。    午後零時六分休憩      —————・—————    午後一時十六分開会
  99. 豊田雅孝

    委員長豊田雅孝君)  委員会を再開いたします。  厚生省設置法の一部を改正する法律案を議題とし、前回に引き続き質疑を続行いたします。関係当局からの御出席は、坊厚生大臣政府委員の方方であります。御質疑のある方は、順次御発言を願います。
  100. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 この法案について、前回大臣から提案理由の御説明を承ったわけですが、最後の段階で、何とぞ慎重に御審議の上云々と、心からなる御要望があったわけです。そこで、私もその御趣旨を十分かみしめながら、以下慎重に御質問申し上げたいと思います。  まず順序としてお伺いいたしたいのは、この提案理由説明を承りましたその提案そのものについてお伺いしたいと思います。この、今回厚生省設置法の一部改正案は公害部の新設、そして定員改正ということであるわけですが、この公害部設置の理由については提案理由で一応承っておるわけです。そこでお伺いしたいのは、この公害部設置の経緯、それと別途この国会に提案いたされましたいわゆる公害基本法、これと公害部との関連について、ひとつ具体的に御説明いただきたい。
  101. 舘林宣夫

    政府委員舘林宣夫君) 公害行政に厚生省が特に力を入れて、行政対象として努力をいたしてきたのは比較的近年のことであります。公害行政をやり始めた当初は、それを主務とする課もなければ部もないという状況であったわけでございまするが、昭和四十年から公害課ができることになりました。ようやく公害の仕事に専念することになったわけであります。しかしながら、一つの課をもっていたしましては、公害行政の内容がさらに複雑となり、広がるということで、すでにその当時から組織の充実が必要と感じておったわけでございまして、当面の実施事務といたしまして、ばい煙規制法の施行だけでなくて、公害の各種の調査あるいは公害を予防的に実施するための事前指導というようなことから、非常に現在の事務能力では不足を来たしておったわけであります。近年に至りまして、さらにその対象が騒音とか、自動車の排気ガスとかいう分野、さらには河川の汚濁、阿賀野川の事件の処理というふうな、非常に広範な事象が出てまいりましたので、公害基本法に直接必ずしも関連なしにも、厚生省の公害行政の分野をさらに充実する必要を認めまして、公害部を設置いたしまして、課を増設し、しかも環境衛生局は、この公害事務のほか、水道、汚物処理、清掃問題、あるいは食品衛生全般、牛乳あるいは豚肉の事件、あるいは添加物、あるいは環営法の環境衛生の各種営業の指導監督というような、非常に広範な事務を所管をいたしておりますので、公害に専念する、中心となって専念する課長職以上の責任ある体制をとる必要を感じまして、今回公害部をどうしても必要とする、やはり各省の公害行政を十分連絡をとり、中心となって厚生省が実施に当たるためには、すでに通産省には産業立地部というものがありまして、これが中心になって公害行政を担当いたしておる。そういうところと十分な連絡調整をはかりながら部長職として当面する諸問題を解決するためには部が必要であるということで、部を設けることといたしたわけでございますが、その予算要求の計画が出ましたすでに後におきまして、各委員におきまして、公害基本法の関係の公害対策会議という、閣僚が委員となります会議の、公害の最高の中央会議の庶務を担当し、また、公害の非常に重要な施策に対して内閣総理大臣の諮問に答える公害審議会の庶務も合わせて厚生省が行なうということにいたしましたので、その事務もこの際は会わせてこの公害部にまかせるということで、今回このような計画を考えておるわけでございまして、経緯から申しますと、当初は公害基本法の庶務を担当するということを必ずしも想定しないで、そういうものがない場合でも部が必要であるということで計画を進めてきたわけでございます。
  102. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 公害部設置の経緯については大体わかりましたが、さらにあわせて、その公害対策基本法と今度設置されるであろう公害部との関連ですね、いま一点だけは触れられておりますが、もう少し具体的にお聞きをしたい。
  103. 舘林宣夫

    政府委員舘林宣夫君) 公害基本法が制定されました暁に、この基本法に基づく各種の施策というものは、各省それぞれの分野におきまして実施せられることは申すまでもないことでございまして、通産省が通産省としての立場において各種事業所、工場の指導監督をし、あるいは運輸省が航空機あるいは新幹線の騒音、あるいは海面の油の汚濁の防止というようなことを実施し、あるいは建設省が公害的見地に立ちまして都市計画を進めるという事務は、それぞれ各省に所管が分かれ、それぞれ各省の責任において実施されるわけでございますが、それらの施策を公害という観点から調整をいたしまして、国の施策を総会的に進める場合に、これがただいまも申し上げました公害対策会議というもので施策が決定するわけであります。その施策を決定するにあたっては、その対象とすべき地域をまずそれらの会議においてきめ、また、その対象となった地域をどうするか、総合対策として何をどの程度に進めて調整をとっていくかということがきまるわけであります。その際に、やはり行政の目標といいますか、基本といたしましては、環境基準というものができてまいるわけでございますが、そういう施策は当然に必要に応じては審議会に諮問をし、その諮問を参考にしまして施策がきまっていく、こういう段階になるわけでございますが、それらの施策を直ちに閣僚ぺースの会議に雑然と出すわけでなくて、その事前の幹事会というような形のものが下ごなしといいますか、各種資料を集め、閣僚会議の審議に値いするだけの準備をするということになるわけであります。その幹事会、これはいまから予測いたしますと、各省次官ペースで行なわれる予定でございます。その各省次官ぺースの会議の処理あるいは必要に応じてその会議の資料を集める。あるいは総合的にその会議の結果を整理し、会議の総合判断といいますか、会議の総意を集約するというような作業、これらの作業が必要になってくるわけでありまして、したがって、それらのことが庶務として、単なる資料の印刷、会議場の設定ということのほかに、ただいま申しましたいわゆる官庁におきます庶務課の行なう総合処理というようなことが必要になってくるわけでありまして、そのような見地から公害部が各種の下準備、必要な資料の収集ということに当たることになるわけであります。
  104. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 そこで、この際さらにお伺いしておきたいのは、いま御答弁の中にも出ました公害対策基本法についてですね、もちろんこの法案はこの内閣委員会の審議案件ではございません。したがって、多くを申しませんが、ただ、きわめて重要な案件が幾つかあるわけです。その中で、二点ほど特にしぼってお伺いいたしたいと思うわけです。  そこで、この国民の健康と、それから公害から国民を守ろうと、こういう趣旨でこの公害対策基本法ができたと思うのですが、ようやくまとまったのは大体本年の二月ごろであろうと思うのです。そこで、総理府がですね、この所管から、総理府のいわゆる試案要綱なるものをつくられたわけですね。で、この国民の健康といわゆる企業利益をどのように調和させていくかと、こういうことが一つの大きな問題点であったと思うのです。で、この点については、いま御説明もございましたが、十五ほどの関係省庁が集まって十分その調整に乗り出したと思うのですが、そこで、この法案と、いわゆる総理府のつくられた試案要綱、これを比べてみますと、いま申し上げた二つの大きな問題点が提出されるわけです。そのことをまずお伺いするわけです。  その一つは、第二条のいわゆる定義のところですね。定義のところで、「この法律において「公害」とは事業活動その他の人の活動に伴って生ずる相当範囲にわたる大気の汚染、水質の汚濁、」云々と、ここで問題なのは「相当範囲にわたる」云々ですね。「相当範囲にわたる」これを要綱と比べてみますると、健康を守るという点では、この試案要綱に比べてですね、この法案はうんと後退をしているということを申し上げたいのです。いま申し上げたように、この試案要綱には、ここにある「相当範囲にわたる大気の汚染、」云々という、そういう制約はなかったわけですね。ところが、この法案にはそういうワクがはめられておるわけです。いわゆる要綱には全然なかったそういう「相当範囲にわたる」という条件がつけられておるわけです。こんなことでは、大気の汚染もそれから水質の汚濁も、相当範囲にわたらないと公害にならないということになると解釈せざるを得ないわけですね。「相当範囲にわたる大気の汚染、水質の汚濁、」と、「相当範囲」です。その「相当範囲」というまことにあいまいもこたる表現をこの法案には使っておるわけですね。ところが、試案要綱には「相当範囲」なんという、そういうワクは、条件は全然なかったわけですね。これは総理府のつくられた試案要綱に比べてはるかに後退しておる。国民の健康を守るために公害を防がねばならぬ、そういう視野から言うなれば、これは大きな後退ではないか、そういうことを申し上げたいわけなんです。なぜせっかく総理府が国民の健康を守ろうという立場から、また、厚生省そのものの存在意義も国民の健康を守るためということが大きなテーマになっておると思うのです、目標ですね、そういうことからあわせ考えて、厚生省としてはなぜ総理府がせっかくそういういいいわゆる試案要綱をつくっているのに、それを相当後退させておる、改悪させておるか、これはまことに遺憾じゃないか、こういう点をいまお伺いしておるわけです。こういうことではなかなかもって青い空、きれいな水を取り戻すことはとうていできないではないか、そういうことを指摘せざるを得ないわけであります。これはもう繰り返し申し上げるように、この法案がそういう点でまずもって総理府のいわゆる試案要綱から非常に後退しておる、なぜか、厚生省はその点どういうふうに対処してきたのか、こういう点をひとつお答えいただきたい。
  105. 舘林宣夫

    政府委員舘林宣夫君) 御指摘になりましたのは、二月二十二日の公害対策連絡会議におきまして十五の省庁が集まりましてまとめました、総理府においてまとめました案に比べまして、御指摘の公害の定義の部分で「相当範囲にわたる」という文章が法律には入っておるという御指摘でございますが、これは要綱のほうでは「地域的に」という文章になっております。で、これはどういう意味でこれが入ったかと申しますと、もしもこの部分がございませんで、単に大気汚染、水質汚濁というようなことが入りますと、この公害の定義の中では発生源者は必ずしも多数であるということを限定してございません。たとえ一つの発生源でありましても被害が生ずるわけでございますから、発生源が一つの場合で被害が一人というような、非常に極端な場合、隣の家の煙突がその隣の干しものをよごす、こういう種類のものを公害という定義で公法上何らかの規制をするというようなことになるわけでございまして、これらのものを特に法律を設け特段の規制をする必要は必ずしもなくて、今日でもすでに私法上の各種の制約があるわけであります。したがって、ここであらためて公害の基本法として国の施策をきめ、公法上の制約をする必要があるとするのは、これが相当範囲にわたるものでありまして、公的に諸種の施策をする必要があるということから起こるわけでございますので、この法律の対象といたしましては、被害はかりに一つの源でありましても、被害のもとは一つのものでございましても、その被害を受ける範囲が相当広がりを持ったもの、これを対象にする、こういう観点からこの要綱案におきましては「地域的に」ということばでそれを示してあるわけであります。一定地域がそのような被害を受ける、かような表現であったわけでありまして、これを法案にする段階におきまして、やはり同じくこの表現を用いても何ら差しつかえはなかったわけでございますが、法律の法文上の表現の形からいたしまして、「地域的に」ということよりは「相当範囲にわたる」ということばのほうがより適切であるということからこの字句が用いられたわけでございまして、法案作成の過程におきまして「地域的に」ということばと全く同義語に使うということでこの字句が選ばれたわけでございます。
  106. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 そこで、「相当範囲にわたる」と、これはどなたが判断するか。それと、「相当範囲」というのは、わかったようでとてもわれわれにはわからない、「相当範囲」。そうして、いま一つわからないことは、相当範囲にわたらないと大気汚染も水質汚濁もこれはもう公害じゃないことになるわけですね。そんなばかなことはない。小さな公害、大きな公害ということはあり得ても——それはあり得るわけでしょう、それは当然あるでしょう、公害にもいろいろの程度の差があるから、そうですね。大きな公害についてはこれは公害だが、小さな公害についてはこれは公害でないということにも通ずるわけです。そうでしょう。相当範囲の大気汚染、水質汚濁、ほかにもありますが、それが相当範囲でなければ公害にならぬ、こういうことになるとこれは問題ですね。相当範囲にわたらない公害だってあり得るのでしょう。相当範囲とか、その相当範囲もわれわれにはちょっと見当がつかない。どの程度相当範囲というか、まことにあいまいもことしておる。よくわかるようにひとつ説明してください、相当範囲というのはこの程度だということを。
  107. 舘林宣夫

    政府委員舘林宣夫君) そもそも公害の定義の中で公害と私害とをどう区別するかという問題がまずあるわけでございます。公害ということばとか私害ということばそのものの概念が、必ずしもすべての人が同じ観念を持っておるものではないと思うわけであります。  この際、この基本法を制定するにあたりまして必要でございましたのは、公害基本法という法律をつくって、国の各種の規制をしていくという場合に、その規制を受ける対象を何にしようかということでございまして、この定義の中にはたとえば日照とを電波とかそういうものの障害は含まれてないわけでございます。こういうものが含まれてないからといって政府は決してこれが公害ではないと思っておるわけではございませんで、ただ公害基本法という法律に基づいて施策を、一つの各種の規制を行なって処置していきたい、当面最も大きな公害というような事象に対して国が大方針をきめてやっていくということの対象としては、とりあえずこれが目標であるということで、あそこに限定した公害の種類をあげてあるわけでございます。同じく公害と私害の境というものも必ずしも明確ではなくて、通常、私害と思われておるものにつきましても、公害対策の対象としては決してゆるがせにできない種類のものもあるわでございまして、この点は御指摘のとおりでございます。  そこで、この公害基本法として対象とするものは一人一人の個々のもののさばきにこの公害基本法を持ち出して施策をきめると、こういうことではなくて、これがある程度の広がりを持ち、ある程度の範囲に被害を生じたというようなものに対して各種の公法上の規制をかけ、救済措置を講ずる、こういうことになるわけでございまして、そういう意味合いからこの定義においては政策目標、対象としてこのように限ってあるわけでございまして、決してこの定義からはずれたから政府は公害対象とは思わない、公害の施策は一切しない、こういうことではないわけでございます。そういう意味合いにおきまして、ある程度の広がりを持ったものに対して施策をするということでございまして、その場合、相当範囲とは何ぞや、こういう御質問がございましたが、これは公害を公害と認知する場合はどういう場合があるか、公害と認知するのはそもそもだれかという問題にも関連することでございまして、これは公害の規制をする場合にはその規制の主務に当たる者が公害の認定をいたしますし、公害の救済をする場合にはやはり公害の救済に当たるところがこれを対象として取り上げるということでございまして、その意味合いから、相当範囲とは何十人以上とかいうような必ずしも限定した数値ではございませんで、これがある程度の社会問題になって提起されておるというような事態、また、客観的に考えても政府なり地方公共団体が施策として対象とする必要があると、かように考えたときに対象として取り上げる、かように考えておるわけであります。
  108. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 まあ一応その問題はおいて、いま一つこの総理府の試案要綱と法案を比べてみて、法案のほうが後退しておる問題があるわけです。それは第二十一条でですね。第二十一条は費用負担について規定しておるわけですが、事業者は費用の全部または一部を負担させるとしておるわけですね。そうしながらも、負担額、その方法などは別の法律で定める、こういう項目が加えられておるわけですね。別の法律の内容が一つは問題になるわけですね。別の法律の内容が実は問題、その内容によっては空文化するおそれも多分に出てくるわけですね。他の法律の内容によっては空文化するおそれも出てくる。この総理府のいわゆる試案要綱は、出されたときでさえも企業側の責任が軽過ぎるではないか、こういう強い批判が出たと聞いておるわけです。ところが、これよりはるかに後退しておるわけですね。で、法案が、先ほど指摘した点もさりながら、ここでも要綱から大きく後退しておるではないか、こういうふうに指摘せざるを得ないわけです。そこでお伺いするわけですが、全部または一部を負担させるといっておきながら、今度は別の法律の面では、この内容については、また方法については別の法律できめる、この別の法律とはどういう法律をさしているのか、このことを具体的に……。
  109. 舘林宣夫

    政府委員舘林宣夫君) そもそもどういう場合に一部を負担させるか、あるいはどういう場合に全部を負担させるかという内容も必要でございますし、その負担のさせ方がどの程度の強制を持たせるか、費用を負担しない場合にはどういう措置をするか、また負担の対象となるべき範囲はどの程度の範囲であるかというような詳細な内容の設定があって初めてこれが動くわけでございまして、その意味合いから、この強制的に費用の負担を公共的事業に対して持たせるという部分は、当然にはっきりした法律の制定が必要であるということでこのような規定をいたしたわけでございまして、要綱では非常に簡単に、別に法律で定めるというような記述でございましたが、さらにその点はやや詳細に法律におきましてはその部分を書いてあるわけでございまして、内容的に両者に相違はございませんし、また、このように詳細に別に法律で定める規定を設けましても、決して内容的に後退したことを意味するものではございません。
  110. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 事業者側が一部もしくは全部を負担する。どういう場合に一部、どういう場合に全部か、そういうことをこまかく規定する必要があるから、その額——いわゆる負担額ですね、負担額、方法等については別の法律で定める、そういう意味のいま御答弁あったわけですが、それではその別の法律案を、もちろんあるでしょうから、それをさっそく資料として出していただきたいんですがね。それを見ないとわからない。内容によっては、どういう内容のものか、それはそこへ用意ございますか、用意なければ、さっそく資料として——時間の関係もありますから、別の法律で定めるというのだから、別のもうきまっておるのでしょう、案はできておるのでしょう。
  111. 舘林宣夫

    政府委員舘林宣夫君) この公害基本法の実施を具体的に行ないますためには、この費用負担の部分に限らず、騒音に対する規制とか、あるいは環境基準の設定とか、内容によりまして別途の法律を新たに設定する必要が生ずるものも出てくるわけでございまして、それらのものは今後この基本法の精神、方針を体して、その方針に沿った法律がつくられるわけでございまして、きょう今日直ちにこの第二十一条に即応した法律、法案あるいはそれに関する要綱のようなものを今日準備しておるわけではございませんが、たとえば四日市あるいは市原等におきまして緩衝地帯の設定に対して、企業側が相当程度負担をいたしておりますから、そういう種類のものを考えてこのような法文を設けたわけでございまして、その詳細な内容については、なお今後検討した上で法制化をはかりたいと、かように考えております。
  112. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 そうしますと、この公害対策基本法がかりに成立した場合、これはさっそく施行されると思うんですね。そうして、さて一つの相当広範囲の公害が出てきた、そういう場合、事業者がその費用の一部もしくは全額を負担するという条項がございますから、二十一条で、そういう場合、法律がもう一緒にできるものならそれによってやるということですが、それができるまでは公害部が中心になってやるわけですか、今度できる公害部——とこがそういう判断をし、その負担額とか、その方法を法律にかわって決定するのか、その過程が、法律ができてしまえばいいんですね——いい悪いは別として、法律ができるまで、どこが責任を持ってやるかと、そういうことが明確になっていないと、どうも了解しがたいわけですね。
  113. 舘林宣夫

    政府委員舘林宣夫君) ここに、第二十一条に書いてございますのは、第二十一条の第一項に基づいて、企業が公共的事業に対して負担義務がある場合についての制定があるわけであります。したがいまして、この条項に基づいた措置としては、企業は持たなければならないという義務を生ずるわけであります。そのような義務は、ただいま申しました費用負担に関する特別法がない限り、現行法では強制徴収ができないわけでありまして、したがいまして、この特別法の制定までの間は各種関係者が集まりまして協議をして持つ、こういう形がとられることになるわけでありまして、現に先ほど例にあげました事例は、いずれも関係者が集まりまして、知事が中心になりましてまとめまして、そうして企業側の負担を大体設定する、かような措置を講じてきておるわけでございます。
  114. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 なお、この基本法についてはいろいろ問題点がまだあるわけですけれども、この基本法案は当委員会の審議案件ではございません。そこで、そういう関係もございますから、その基本法案についてはこの程度にとどめておきたいと思います。  次にお伺いしたいのは、現在公害行政は非常に複雑多岐となっているわけですね。たとえば大気汚染防止関係については、厚生、通産、運輸省が関係していると思うんです。それと水質保全関係は経済企画庁ですね。それと工場排水の規制が、大蔵、厚生、農林、通産、運輸というふうにわたっておる。なお、騒音防止関係では、自動車の騒音に関係しているのは警察庁と運輸省ですね、それといわゆる航空騒音については運輸省、それから基地の騒音については施設庁。なお、都市開発ともからむ下水道の整備の問題ですね、こういうものは建設省、自治省が分担している。こういうことで、まことに複雑多岐にわたっているわけですね。文字どおり幅広く各省庁にまたがっておるということが言えると思うんです。そこで、この公害行政の推進には、総合政策の確立がまず考えられなければならないと思います。それと行政機構の一元化が先決でなければならぬ。それから公害基本法案の中に、総理大臣を長とする各省寄り合いのいわゆる公害対策会議というものがあるわけですね。こういう公害対策会議というようなものでは、なかなか敏速かつ機動的な措置がとれないと思うんです。この点については、一体厚生省としてはどういうふうに考えておられるのか。いま御指摘申し上げたように、公害行政を推進するためにはどうしても総合政策とかあるいは行政機構の一元化ということが強く望まれているわけです。にもかかわらず、いま私が指摘したように、非常に複雑多岐にわたっておる。これではなかなか所期の目的を達することは至難ではなかろうかと指摘せざるを得ないわけです。この点についてはいかがですか。これは基本的な問題ですから、せっかく大臣お見えになっているんですから、大臣からひとつ。
  115. 坊秀男

    国務大臣(坊秀男君) 実は私より担当局長のほうが要領よく説明ができるかと思っておったのでありますが、公害と申しましても、これはさっきから御指摘のように、公害、たとえば大気汚染にいたしましても、水質汚濁にいたしましても、公害の発生源というものは各省にまたがっておるということでございます。たとえて申し上げるならば、たとえば大気が汚染するということは、工場の煙突といったようなものから大気が汚染することもございます。それからまた交通関係、たとえば自動車の排気ガスといったようなもの、これが非常に激しくなって大気が汚染される。工場の排水の場合には、これは御案内のとおり、通産省が所管をしております。自動車の排気ガスといったようなものになりますと、あるいは自動車ということになりますと、自動車をあまり汚染するようなものを出さないような車にするというようなことで、これは通産省。それからまた交通を取り締まるという点につきましては、これは警察なり。それからまた、さような自動車がしょっちゅう走っておる道ということになりますと、これは建設省の問題になる。かようなことでございまして、そういったような公害が発生してくるということは、その公害を防止する点におきましては、これは一つの防止あるいは予防の構想ということでございますけれども、いまも申し上げましたとおり、自動車をつくるにあたって排気そのものもあまり空気を汚染しないようなものをつくるというようなことになってきますと、これは通産省の問題であり、それからあるいは建設省の問題であり、そういったようなことがきわめて複雑多岐に行なわれておりますので、そこで今日の経済、産業あるいは交通といったこと自体がそういうものを必然的に発生しておる。そこで厚生省といたしましては、また公害防止の立場から申しますと、そこで発生される公害というものをつかまえて、そうしてこれを予防あるいは防止する、こういう立場にあるのでございますが、そういったような発生された公害だけをつかまえてみましても、そうしてこれを防止するといったような機関よりも、むしろそういった発生原因といったようなものを所管しておるそれぞれの役所なり機構といったようなものがございますが、そういったような機構と関係各省と、そうしてもっぱら被害者的立場にある厚生省といったような役所、それが、それぞれの責任者である関係各省の責任の地位にある大臣でございますか、関係各省の長が集まりまして、そうして総合的にやって、それに総理大臣がそれの長として、そうしてやっていくということが最も適当な行き方であろうか、かように考えまして、そうして、そういった委員会といったようなものではなしに、各省の責任ある長が集まり、そこに総理大臣を長としたところの公害対策会議といったようなものでやっていくのが、これが一番至当、妥当ではないか、かように考えまして、そうしてこれを一元化するために公害対策会議といったようなものをつくった趣旨でございます。
  116. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 私は、先ほど申し述べたように、この公害の種類によっては、各省庁にまたがって、所管が変わっておる、非常に複雑になっておる。そこで何といっても、公害行政を推進するためには、総合政策を確立することが必要であり、また機構を一元化することが必要ではなかろうか。もしそうだとすると、いま大臣は公害対策会議が一番いいんだというふうにおっしゃっておられたわけですけれども、これではなかなかそういう所期の目的を達成することが至難であろうから、何かこれ以上のいい方法を厚生省としては考えていないのか。特にいわゆる総合政策ですね、総合政策の確立とか、機構の一元化、これは各省から集まって総理を長とするいわゆる公害対策会議、これは行政機構の一元化でもないし、また総合政策を打ち出す大きな原動力ともならないと思う。そこで、繰り返してお伺いしておるように、こういう広範な複雑なものになっておるから、これは機構は一元化する、そうして公害行政はいわゆる総合性を確立する、こういう点のお考えはないかと伺っておる。これはきわめて厚生行政の一環としての公害行政を担当する厚生大臣としての当然それに対する基本的なお考えがあろうかと思いますね。その点を伺っておるのです。
  117. 坊秀男

    国務大臣(坊秀男君) 先ほども申し上げましたとおり、公害の発生してくる原因というのは、その原因者を所管しておるのが非常に、先ほども指摘があったように、十四も十五も関係各省があるということでございます。そこで、そういったような各省がある。それで、これを何か委員会とか、あるいは機構を改めて一元化すると、こういうことにいたしましても、その発生者を所管しておるところの各省の長というものが、これに対して別個の委員会といったようなものができましても、これにその線に沿ったような行政を、行き方を協力してやってもらわなければ、まちまちではとうていこれはその実効を得られない。かような観点からいたしますならば、それらの発生原因を所管しておるところの各省の長が一堂に集まりまして、そうしてお互いに検討審議を重ねて、そうしてやっていくということが、これが私といたしましては一番妥当な行き方ではなかろうか。何かいろいろ異質の、たとえば大気汚染の場合の公害といったようなものを捨てておきましても、先ほど申しましたとおり、これは建設省に関係があり、警察に関係がある、あるいは通産省に関係がある、そういったようなものでございますので、そこでそれらのものを所管する責任者が集まって、そうして会議をつくって、そこで検討をしてまいったほうが、一つの委員会といったようなものをつくるよりも、そのほうが効果が大きいのではないか、かように考えまして、そうしてその対策会議といったようなものをつくったのであります。
  118. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 そうしますと、厚生大臣としては、公害行政を推進するためには、総合政策を打ち立てるとか、あるいはいわゆる行政の一元化、こういうことには賛成であるのか反対であるのかということであるわけですが、ただ結論としては公害対策会議、これは総理を長とする、いわゆる各省から集まってもらって、総理が責任者となってこの会議を推進する、それがいまのところ一番いいんだという意味の御発言。したがって、これはわれわれは不十分だから、もっと行政の一元化、総合政策を確立すべきではないかと伺っておるわけです。大臣は公害対策会議がいいんだというので、これは幾ら時間をかけても並行線を行くと思うのです。そこで、もうこれ以上多くは言いませんが、ただここではっきりしておきたいのは、公害政策を推し進めるためには、いわゆる機構の一元化とか、総合政策を打ち立てるとか、そういうことはどうなんです。大臣としては基本的に賛成なんですか、反対なんですか、このことだけははっきりひとつ……。
  119. 坊秀男

    国務大臣(坊秀男君) 公害防止ということは、これは統一的に一元的にやっていかなければならない、防止ということにつきましてはこれはやっていかなければならない、こういうことを考えております。
  120. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 その防止について一元化する場合は、総合政策についてはどういうお考えを持っているのですか。
  121. 坊秀男

    国務大臣(坊秀男君) 公害の防止ということ、それからその公害防止をやっていく諸般の施策、大きく申しますれば公害防止政策、これは強く一元的にやっていかなければなりませんけれども、そのためには、私は今日この基本法できめられておるところの公害防止対策会議によってやっていくことが、これが実効をあげることのできる方途だと、かように考えております。
  122. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 私がいまお伺いしておるのは、公害行政を強く推し進めるためにはいわゆる総合政策を打ち立てるべきではないか、このことは大臣は賛成か反対か問いておるわけです、このことだけについて。
  123. 坊秀男

    国務大臣(坊秀男君) 総合政策を打ち立てていくということは、私はそうしなければならないと、かように存じております。
  124. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 時間が制約されておりますから、次にお伺いしたいのは、この公害基本法によると、内閣総理大臣を長として公害防止の基本政策を策定するために総理府に公害対策会議を設置しておる、いま御指摘のとおりですね、大臣が。この点ですが、公害防止委員会というような権限のもっと広い行政委員会を設置する考えは厚生省にあるのかないのか。厚生省部内には、公害防止委員会、そういう案があったように伺っているわけです。そこでお伺いするわけです。厚生省内に大臣が繰り返しお答えになった公害対策会議よりももっと権限の広いいわゆる公害防止委員会を設置すべきだという、そういう論議が厚生省内部にあったということは事実であろうと思う。もし間違いなら、御訂正いただきたい。そうだとすると、せっかくそういう有意義な意見があったにもかかわらず、それが設置できなかった理由は一体那辺にあったのかということを御説明いただきたい。
  125. 舘林宣夫

    政府委員舘林宣夫君) 御指摘のように、総理府でつくられました今回の法律のもとになりました要綱の、そのまたもとになりますたたき台の厚生省試案というものが昨年の暮れに厚生省から提出されたわけでありますが、その中では、公害行政の中心となってこれを推進する行政機関として、行政委員会を想定いたしておったわけであります。それが各省連絡会議で非常に再三にわたる審議検討の上、最終的には今回法案に提出されたように対策会議という、国家行政機関としては八条に該当する機関になっておるわけであります。この点は、伊藤先生指摘のとおり、それぞれ利害得失があると思います。考え方によりまして、公害対策を強く打ち出し、総合的に一貫性を持たしめて、しかも迅速に推進しようとするときには、行政委員会のほうがいいかもしれないということで、厚生省としましては、省の案としてはそのような見解を披瀝をいたしたわけであります。しかし、実際問題としますと、先ほど来大臣が申し上げておりますように、各種行政の中から公害部門だけを引き出す、それだけを取り出すということは、実際問題としては非常に容易でない。たとえば自動車の構造の中で公害を発生させない部分の構造だけを取り出す、その部分の所管だけを取り出す、あるいは道路政策の中から公害防止に役立つ部分の道路政策だけを引き出す、そういう施策を実際問題として各省から引き出して集めてくるということは容易でないわけでありまして、やはりこれらのものは各省本来の、道路行政ならば道路行政との一貫性のもとで公害的配慮をするということでないと、実際問題として公害対策を総合的に打ち立ててみてもうまくいかないかもしれないといういろいろ配慮があります。したがって、本来の行政はその所管省がやる、しかし総合計画はこの対策会議で計画を立てて、その立てた総合計画に沿って各省が必ず実施をする、こういう方向で今回の法案が出されたわけであります。ただ、この点は、御指摘のように、二つの危険をはらんでおります。一つは、なかなか総合政策がまとまらない。寄り合い世帯の単なる各省大臣が集まったという形で、それぞれの利害得失が相反したりなどいたしまして、なかなか総合計画が立たない、おくれるという問題があります。でき上がった総合計画を推進するというのが、公害の責任たる行政機関ではない。もちろん各省それぞれ公害の対策を進める責任はありますが、一般行政の一部として公害施策を進めるという意味合いからうまくいかないのではないかという、危険が二つあることは、御指摘のとおりでありまして、それらの点を配慮して、行政委員会とどちらがよろしいかということは慎重に審議した結果、今日の体制下においてはやはり政府の案の対策会議という方式が一番よろしいという結論において、これを実施することになったのでありますので、したがいまして、この案の問題点と思われる点は十分配慮いたしまして、この案をつくるときには、かなり思い切った各省の協調、総理の裁断というようなものが必要になりますし、またその推進にあたっては関係各省が公害施策を強力に推進するという決意が必要であるし、またそれの推進役たる厚生省としては相当努力をして各省の推進をはかる努力をする必要がある、かように考えているわけであります。
  126. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 私がここで申し上げるまでもなく、国民は青い空、きれいな水を熱望しておるわけですね。そのためには、公害を何とか片づけなければいかぬ。この公害政策を強く打ち出すためには、先ほどから御指摘申し上げている総合政策でなければならない、機構一元化をする必要があろうということを繰り返しお伺いしたわけですが、もしそういう政策なり機構の一元化は必要だという前提に立つならば、先ほど来申し上げた、総理大臣を長とする公害対策会議よりは権限の広い、いわゆる行政委員会である公害防止委員会をつくって、これを総合的に、しかもそこで一元的にこの公害政策を打ち出したほうがより成果があがるのではなかろうか、こういう角度からお伺いしたわけです。ところが、そういう点いろいろ検討の結果いわゆる公害対策会議になったのだと、そうお答えになれば、これもまた水かけ論になってしまうわけですね。私はいまでもこの行政委員会である公害防止委員会のほうがはるかに強力に成果をあげ得ると確信をしているわけです。いまの御答弁では、そういうこともいろいろ考えた末ということであるわけですね。そうしますと、総理大臣を長とする公害対策会議で十分今後公害行政を強力に推進することができるという確信がおありですか。そういう確信があれば、話は別です。
  127. 坊秀男

    国務大臣(坊秀男君) ただいまの段階におきましては、私はいま法案にきめられております公害対策会議でもって総合的に一元的に推進することができると、かように考えております。
  128. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 そうしますと、大臣は総理大臣を長とする公害対策会議を運営することによって現時点に立っての万全の施策を講じ得る、そういうことでありますから、ひとつその会議を持って、公害対策会議を強力に推し進めて、国民に青い空ときれいな水を与えていただきたいということを強くひとつこの際要望申し上げておきたいと思う。  なおここでお伺いしたいのは、厚生省の付属機関である公害審議会というものがありますね。これはもう昭和四十一年八月四日に、公害に関する基本的政策について中間報告をしておるわけであります。また、四十一年の十月七日ですか、公害に関する基本政策について第一次答申をしておると思うのですが、この答申を受けて公害基本法が今国会に提案されたのだと私どもは理解しておるわけですが、その点はどうなんですか、この経緯をひとつお伺いしたい。
  129. 舘林宣夫

    政府委員舘林宣夫君) 公害審議会は、国民の健康保持、快適な心身ともにさわやかな生活環境をつくる、かような観点からの公害施策を進める上での厚生大臣の諮問にこたえて審議をしていただく審議会でございまして、その観点から昨年の十月七日に公害対策の基本的な施策についての御答申をいただいたわけであります。この基本的な国民の健康保持ということを中心に公害施策を進める御答申をもとにいたしまして厚生省が試案をつくりまして、これを各省に提示し、内閣に提出したわけであります。この厚生省の案がたたき台になりまして、各省それぞれの立場において公害基本法に対する意見を開陳し、その結果、関係各省の一致した意見として今回の法律のもとになりました要綱ができたわけでありまして、したがいまして、あくまでも今回の基本法案の骨であったことは間違いございませんけれども、しかし、公害対策は国民の健康保持ということが柱ではございますけれども、そのほかの各種の各省が分担いたしております施策の視野からも検討を加える必要がございまして、その検討もあわせまして国としての法案がつくられた、かような経緯であります。
  130. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 この基本法によりますと、公害対策の基本的事項を調査審議するために、総理府の付属機関として、これは学識経験者二十人ほどで組織するところの公害対策審議会が設置されることになっておるわけであります。また、現在公害審議会がありますが、これは生活環境審議会と改称することになろうと思うのですが、しかし改称されてもその設置の目的は変えていないわけですね。そこで、公害対策審議会が今度設置されれば、在来の公害審議会は不要となれば廃止してしかるべきだと思うのですね。行政組織の簡素化ということは、あげていま佐藤内閣によって強調されておるわけであります。したがって、具体的には審議会の整理ということは強く望まれておるわけです。そうだとすると、この審議会をいつまでも存続さしていくのはおかしいではないか、こういう論議が出てくるわけであります。その点を明らかにしていただきたい。
  131. 舘林宣夫

    政府委員舘林宣夫君) 今回総理府に公害対策審議会ができますにつきまして、従来厚生省にございました公害審議会の名称を生活環境審議会に変えるということでございまして、内容的に申しますと、公害の各省を包含した国としての総合施策のきわめて重要な事項を審議するために公害対策審議会が設けられるということでございまして、従来の各省にございます公害関係審議会、ただいまお話のございました厚生省にあります国民の健康という立場からの審議をいただく公害審議会、あるいは産業政策の見地から公害問題を審議する通産省にございます産業構造審議会、あるいは水質汚濁防止法関係の水質汚濁防止を行なう意味合いでの審議を行なう経済企画庁の水質審議会というようなそれぞれの機能を持った審議会は、従来どおりそれぞれの立場において審議が行なわれるわけでありまして、それらの全体を総合した国としての公害施策の最高方針ということについての審議をするのが公害対策審議会でございます。そういう意味合いにおいて、内容的には従来のものとのダブリは全くないわけでございます。  なお、公害審議会は、名称は公害審議会でございますが、法律の規定によりまして審議の内容は公害並びに一般生活環境という問題を審議しておりまして、部会は今日でも公害部会、水道部会、汚物処理部会、それから生活環境部会というような各種部会によってそれぞれ審議が行なわれておるわけでございまして、むしろ実体は生活環境審議会のほうがふさわしい、また今回総理府にできます公害対策審議会とまぎらわしいということから、本来の内容にむしろ最も適切であると思われる生活環境審議会に名称を変えたわけでございます。
  132. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 次にお伺いしたいのは、公害がそこにあるということになると、そこに公害発生源が必ず考えられるわけですね。そこで、責任はすべて企業にあるのだという意見も現実にあるわけですね。それと、公法上の基準を守っておれば責任はないんだと、また責任は免れるんだと、こういう全く相対立する意見が現実にいまあるわけですね。そこでお伺いするわけですが、厚生省としては、公害防止の第一次的な責任はいまの企業にあるのか、あるいは国にあるのか、この点をはっきりさしておかぬといかぬと思うのですが、公害対策基本法を見てもこの点はどうも明確に規定された部分がないわけですね。この点については、厚生省としては一体那辺に責任があるのか。これはもちろん、先ほども繰り返し申し上げた公害行政の基本的な考え方でありますから、大臣この点はいかがでしょうか、厚生省としてはどちらに重点を置いておるか。
  133. 坊秀男

    国務大臣(坊秀男君) 公害防止の第一次の責任者というものは、これは申すまでもなくその公害を発生したところのものである。そうして、公害を発生したものといたしましては、工場から公害を発生するということになりますと、その工場活動をやっておるところの企業であると、こういうことに相なるわけでございます。ところが、その公害と申しますものは、たとえば四日市をとりましても、川崎をとりましても、確かにその企業には違いございません。その企業が一つの場合にはまだこれは公害とまではいかないといったようなものが幾つもできてくるというようなことで、同じ煙突の高さでも一つの場合にはまだ公害とまではいかない、ところがそれが十も二十もできてくるということになりますと、これはまさに質的な変化と申しますか、いままでは公害でなかったのが質的な変化をして公害になってくるといったようなことで、そういったような場合がしばしばある。これがまたいわゆる公害であろうと、こういうふうに考えます。そこで、そういったような場合には数々の原因者というようなものがこれが公害の責任者であるということに相なるわけでございますけれども、さらにまた、そういったような公害と、たとえばその工場立地とか投資計画といったようなものについて、これはまたそういったような公害を起こすような計画といったようなことに相なってまいりますと、これはまたそれに対してその公害が起こったことに競合して原因者が生じてくるといったようなこともあろうと思いますけれども、いずれにいたしましても、私はその工場公害といったようなものが起こる場合には、この発生をさせました原因者が、これが第一次の公害発生の主たる責任者と申しますか、公害発生者、こういうことになろうと思います。
  134. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 今度この法案が通るか通らぬか私存じませんが、もし通ったと仮定すると、公害部が新設されるということになるわけですね。公害部が新設されて、いわゆる公害行政の主管は厚生省ということになるわけですね。そうしますことに対して、産業界では、これは厚生省に産業公害政策の主管が移ると環境衛生面への配慮が優先してくるであろう、こういうことは当然産業界には出てくる意見だと思うのですね。そこでお伺いするわけですが、国民の健康保持を厚生省は任務としておるわけですね。そこで、産業の育成と国民の福祉の保持、これはいずれも大事なわけですが、これの両者の調和をはかることはなかなかもって容易ではないと思うのですが、この両者の調和をはかることにとってどういうふうに基本的に厚生省としては考えておられるのか。
  135. 坊秀男

    国務大臣(坊秀男君) 公害の防止と産業の健全なる発達との調和ということは非常にデリケートな問題でございますが、厚生省といたしましては、もう公害防止につきまして、いやしくも人間の健康なり生命にかかわるというような場合には、これはもうその産業との調和といったようなことをこの法律の性質上考えてはおれない。いやしくも健康にかかわるといったような場合には、絶対に健康を優先する、公害の防止ということを優先する、こういう考えを堅持いたしております。ところが、一歩進みまして、たとえばそういったような場合から一歩進みまして、生命はこれは保持される、しかしながらわれわれの生活環境というものも少し快適なものにしていこう、あるいはわれわれの生命のみではない、あるいは動物、植物といったようなものもそんなに被害をこうむらないようにしていこう、つまりその生命、健康の保持というところから一歩を進めまして生活環境をよくしていこうといったような場合には、これはやはり産業の健全なる発達との調和ということをこれ考えてまいりませんと、たとえば川崎、四日市でございますが、これは工業地帯として非常に発達しておる。だから、ここの公害がいやしくも人命に、生命に非常に障害になるということでありますならば、これはもう絶対にあらゆる手段を尽くしてそれを防止をしていかなければならない。しかし、それをもっと進めて、非常にいい空気にしていこうと、必ずしも観光地の空気にはこれはなりっこはありませんけれども、もう少しまあたとえば高尾山あたりの空気にまで持っていこうというような生活環境をよろしくしていこうという場合には、これはやっぱり産業との調整をはかっていかなければならない、こういうふうに考えている次第でございます。
  136. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 私がお伺いしているのは、そういうことではないわけです。大臣は盛んに産業公害、公害と言いますけれども、私が最後にお伺いしたのは、いわゆる産業の育成と、それと国民福祉の保持、この両者を調和さしていかにゃならぬと思うのです。その調和させるためにはどのような基本的な施策を持っておられるかと伺ったわけです。  そこで、まず公害ということと離れて、産業の育成、それと国民福祉の保持、これは後者は厚生省の責任分野ですね、国民福祉の保持を厚生省は使命としているわけです。一方また他の官庁は産業の育成に——通産省、経済企画庁、この辺が産業の育成に懸命になっている。それぞれ分野分野があるわけであります。この両者がいつも融和していける状態ならいいわけです。そこで、たとえば公害なんという問題があるから、この産業の育成と国民福祉の保持をはかるためには両者の調和がはかりがたい条件にあるわけですね、はかりがたい状態にあるわけです。何もそういう問題がなければ、お伺いする必要がないのです。しばしば相反するような、非常に対立するような状況に置かれているのが現実ですね。そこでお伺いしているわけです。  だから、いま一度言うと、産業育成と国民福祉の保持、この二者を調和させるために厚生大臣としてはどのような基本政策を持っておられるかということなんです。
  137. 坊秀男

    国務大臣(坊秀男君) 非常に大きな問題でございます。申すまでもなく、厚生省は国民の福祉生活ということを、これをあずかっているのが厚生省でございまして、厚生省は国民の福祉ということについては、これはもう常に重大なる使命としてその福祉を、福祉行政を遺憾なくこれを実行していくというのが厚生省なんでございます。そこで私は、その基本論を申しますと、国民の福祉生活といったようなものもこれは向上進歩さしていかなければならない。そのためには、いろいろ社会保障の問題もありましょうし、その他の固有の福祉増進といったような問題もございましょう。そういったような常に国民の福祉生活というものを向上させていくというためには、これはやはり私は、産業と申しますか、経済と申しますか、そういったようなものも、これはもう経済はどうでもいいのだ、福祉生活がさらに進んでいけばそれでいいんだというような考え方では、国民の福祉というものが向上するわけには——それは幾らかはいたすにしても、大いにこれを向上さしていくというようなことにはまいらないと思います。そういうようなこと。  ところが、この二つの福祉政策とそうことと産業政策ということとは往々にしてその進路にあたりましてこれがぶつかるということは、伊藤委員指摘のとおりでございます。そういったようなぶつかったときにどうするかということでございますが、本来は私は、この産業とそれから国民の福祉生活というものは両々相並行してこれは向上していかなければならない問題である。それで、本来これは常に対立したりぶつかったりするものではない。その進んでいく進路においてまあそれがぶつかるということもこれはあり得るわけでございますけれども、私は何としても、この公害とかなんとかいうこととは離れましても、両々相まって国民の福祉というものが向上進歩していくものであろう。しかし、私といたしましては、厚生省といたしましては、国民の福祉ということについての行政をあずかっておるものでございまするから、私はどこまでも国民の福祉というようなことについて非常に重点——ウェートを置いてまいらねばならぬと思いますけれども、本来これがぶつかり合うものであるというふうには私は考えていないのでございます。
  138. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 まあ大体大臣のお考えはわかりましたが、私が特にお伺いしておる点は、いま大臣の言われたとおり、両者が本来対立したものではない、やはり相提携して初めて成果をあげ得る。それはそのとおり、こういう場合は問題ないわけです。相衝突した場合、相反した場合どうするかという場合に対する厚生大臣のお考えを伺ったわけです。大臣は立場上国民の健康保持に重点を置いてやっていきたいということであるから、これはこの問題が主体ではございませんから一応了承して、次の問題をお伺いいたします。  次に、公害部の所掌事務の中で、「ばい煙の排出の規制その他環境衛生に係る公害の防止に関すること。」とあるわけですね。提案理由にもあるわけです。そこで、「環境衛生に係る公害」とは一体具体的にはどのような公害をさしておるのかという点、まず一つ。  それから、公害審議会の答申では、大気汚染、水質汚濁、騒音、振動、悪臭、この五種類を行政上の公害として指摘しておるわけですね。そこでお伺いするわけですが、所掌事務の公害とは、これらのほかに日照り障害というのがある、あるいはまた電波障害等々のこれ以外の公害と言われるものも含まれるのか、こういう問題ですね、これらの問題をあわせてお答えいただきたい。
  139. 舘林宣夫

    政府委員舘林宣夫君) 公害部の所掌事務の中の「環境衛生に係る公害」と申しますのは、公害対策には、ただに衛生の観点あるいは厚生省的観点のみの対策にとどまらないわけでありまして、たとえて申しますれば、石油の中から硫黄を取る、その硫黄を取る脱硫の技術開発、あるいは自動車のエンジンの音を低くするようなエンジンの開発をするとか、飛行機の騒音を低くするような装置の開発とか、飛行場の規制をするとかいうような、厚生行政に関係はゼロではございませんけれども、本来の健康を守る行政の主管の範囲内にあるものばかりではございません。したがいまして、厚生省におきましては、その各種広い分野の公害施策のうちの国民の健康を守り生活環境を快適にするという見地からの公害施策を行なうという意味合いで「環境衛生に係る公害」と、かように書いてあるわけでございます。  それから、御指摘の日照りあるいは電波等の障害もこの公害部の所掌事務の公害という範囲に入るかという御質問でございますが、これは、公害基本法にあります大気汚染、水質汚濁、騒音等のもののほか、この基本法に載っておりません、ただいま先生指摘のような日照り等の、人の健康あるいは生活環境を脅かす公害全般をやはり所掌事務としておるわけであります。
  140. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 この所掌事務の中で、下水道の終末処理場に関することがあるわけですね。これは、今国会に別途提案しておるいわゆる下水道法の一分改正案、さらにこれを下水道の終末処理場の維持管理に関することと改めているようですが、これは一体理由はどういうところにあるわけですか、この点をお伺いいたします。
  141. 舘林宣夫

    政府委員舘林宣夫君) 先般、下水道の建設事務は従来建設省が担当しておったわけでありますが、ただ終末処理場だけは、その処理場がきわめて衛生に関係が深いということから、処理場だけが厚生省の所管で建設が行なわれておったわけであります。今回内閣の方針といたしまして、その他の下水道一般と処理場をも含めて建設事務を一貫して行なう。ただこの処理場は、その維持管理が悪いときには直ちに環境衛生に障害を与えるということから、これは厚生省の所管に残すと、こういうことになったわけでございまして、これはきわめて公害に関係する重要な行政でございますので、この部分を今回公害部の所管に入れることといたしたわけでございます。
  142. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 それでは、私の質問はまだだいぶ残っておるわけですが、時間の関係もございますので、あと一問お伺いしてきょうのところ質問は終っておきたいと思います。  きょう最後にお伺いしたい点は、いまの下水道行政に関係しては、昭和四十一年に行管が勧告しておるわけですね。それによりますと、下水道の整備を円滑かつ強力に推進するためには、下水道行政の所管を建設省に一元化することが適当である、こういう四十一年九月行管の勧告があるわけですね。そこでお伺いするわけですが、そういうことになると、なおこのし尿処理との関連については、厚生大臣の意思を尊重するよう法的措置を講じよ、こういう勧告があるわけですね。この勧告とこの所掌事務とはまっ向から相反すると思うのですが、いま行管の勧告によれば、下水道行政は建設省に一元化せよと、こういう勧告をしているわけですね。しかし、この公害部の所掌事務の中にやはりそういうことは入っておるわけですね。そうすると、行管の勧告は軽く聞き流すということであれば、これは問題ないわけですけれども、行管の勧告に対して大臣はどういう態度で臨んでおるのか、まずその基本的な考え方をお伺いしたい。これだけです。
  143. 坊秀男

    国務大臣(坊秀男君) 行管の勧告は、御指摘のとおりであります。そこで、今日まで下水道、つまりパイプのほうですね、下水道というものは、これは建設省がその所管をしておったわけでございます。これに連結しておりますところの終末処理場だとかというものが、これが厚生省の所管になっておったことは、御案内のとおりでございます。これが両方が別の役所になっておるわけでございますけれども、それを建設していくという意味におきましては、これが二つの役所に分かれておるということが、新設、建設をしていく上においては非常に一元化されてないので、そこで建設がはかばかしくいかないというような議論があったわけであります。そこで、この際に、下水道も終末処理場も含めたものを、これをできるだけすみやかに、財政の問題もございましょうけれども支障なく建設をはかどらしていくというためには、これは一つの役所で所管さしたほうがいいんじゃないかということが、一方におきまして非常に強い議論が従来あったわけです。それを行管、つまり行政監理委員会なりが取り上げまして、これを建設省に一本化して所管をする、こういうような段階に相なったわけでございます。しかし、それは建設でございまして、終末処理場で処理されるところの汚物、汚水といったようなものは、これは完全に処理されておりませんと、あるいは伝染病の病源がそこから発生したり、あるいは海水、河川が汚染されるといったようなことに相なりますと、これはそういったような場合の責任は厚生省にある、こういうことでございまするので、そこで、その建設をするためには、なるほど一元化したほうが建設ははかどるであろう。だがしかし、処理場における処理、処理場の運営ということについて、そこまで建設省がやるということは、これは今日の建設省といたしましても、それを管理するとかあるいは運営していくといったようなことは、建設省はそういうふうになっていない。そこで、そういったものをつくる。つくることは建設省がつくりますけれども——下水道と処理場とを一貫的につくりますけれども、しかしながら、終末処理場の運営管理といったようなことにつきまして万遺憾なきを期していくためには、これは厚生省が所管をしていくということでございます。  それからもう一つ、下水道とは連結していないところのし尿処理場、これは下水道とは連結しておりません。そういったようなし尿処理場はやはり従前どおりその終末処理場が建設省に行ったということは、水道と下水道と連結しておるがゆえにその所管を一本化したわけでございますけれども、終末処理場でないし尿処理場とそれからじんかい処理場、そういったようなものは、別に下水道などとは連結していないということで、これは申すまでもなく厚生省でいままでどおり所管していく、こういうことになったわけでございまして、私は、そういったようなことで運営していけばこれについての大きな支障はないじゃないかと、むしろ建設がこれによって非常にはかどってくれればこれはたいへんけっこうなことであり、またそのし尿処理場とそれから終末処理場との間の、あるいは厚生省の清掃の仕事とそれから終末処理場の仕事とがお互いに連絡をし合って、そうして建設のほうも運営のほうもやっていけることになれば、これは決して支障が起こらないものである、かように考えております。
  144. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 私がお伺いした本旨は、行管は、下水道行政についてはこれを建設省に引き受けさせたほうがよろしい、そういう意味の勧告をしておるわけですね。しかしながら、この勧告の有無にかかわらず、いまこの下水道行政は、終末処理場の管理運営、こういうものは厚生省所管でりっぱにやっていけておるなら、問題はないわけですね。行管がそういう勧告を出しておる以上、何か不十分の点があるから勧告しておると思うのです。りっぱに運営されておる個所に行管が何も勧告する必要はないわけですね。そこでお伺いするわけなんですが、結局厚生省が公害部を新たにここに設けて、この下水道行政、終末処理場の管理運営をりっぱにやっていき得ると、そういう確信があれば——やってみなければわかりませんかね。今後そういう確信のもとにやっていくこともけっこうだと思うのです。ただ繰り返し指摘申し上げておるように、行管が勧告を出すからには、何か根拠がなければ勧告を出す必要はないわけですから、どうも十分うまくいっていないから、これは下水道は建設省がやったほうがいいのだ。しかし、もう建設省がつくってくれさえすれば、あと運営管理は厚生省がりっぱにやっていく。そうは言われても、人間がつくるものですから、そのうちまた修理も必要でしょう、修理はまた厚生省でやってもらう、そういうことをもあわせ考えて、行管が勧告したと思うのです。しかしながら、繰り返し申し上げておるように、これは建設省であろうと厚生省であろうと、下水行政をりっぱに運営して終末処理の運営管理がりっぱにやっていけるということであれば、これは問題ないわけですが、そこのところに厚生省確信を持ってやっていけるのかどうか。し尿処理場とかこういう問題についての苦情が相当多く伝えられておるわけですね。そういう国民の要望に強くこたえて、厚生省は公害部も新設したのだから、今後十分国民の苦情など出ないように、十分終末処理の運営管理、そういう点については国民の心を心として、十二分にやっていける、そういう確信が大臣におありならけっこうです。そこでこれについての大臣の最後の決意のほどを、ひとつ伺っておきたいと思います。
  145. 坊秀男

    国務大臣(坊秀男君) 行管が勧告をしたといいますのは、私は行管ではありませんけれども、その趣旨は、とにかく下水道及び終末処理場、これに連結する終末処理場の建設をしていくという上においては、これが建設省と厚生省の両省にまたがっておると建設上一貫性がないであろうと、そういったような御議論が一般にもあったわけであります。ところが、私はしからば厚生省が終末処理場の建設及び運営をやっておったときに、むろん財政の制約は受けます、財政の制約は受けますけれども、厚生省が終末処理場を所管しておったときに、非常に大きな遺憾があったということは私は考えておりません。しかしながら、これを一本化することによって、さらに建設がはかどるのだ、こういう御意見ならば、私もそれならば終末処理場をこれを下水道と連結したところの、その下水道を所管しておる建設省にやってもらっても、それに一歩前進するならば、それはそれでけっこうだと、私はかように考えております。さような意味におきまして、今度すでにもうこの終末処理場を建設省に移すということにつきましては、法案を作成いたしまして、御審議を本国会においてお願いをする、こういうことに相なっておるのでありまして、それがうまくいけば、私はあえてそれを厚生省がやらなければならぬ問題だというふうには考えておりません。ただしかし、それの管理運営は、これは何といってもそれは一つの人間に有毒有害なものを、有毒有害でないものにつくり上げるところの工場みたいなものでございまして、それの結果における責任というものは、これは人間の保健衛生上の責任を厚生大臣は持っておりますから、そこの管理運営ということは、これは厚生大臣がやるということに相なっておる次第でございます。  それから終末処理場に大きな修理をしなければならないといったような場合になりましたならば、これは建設の一部みたいなものでございますので、建設省がやっていく。しかし、日常の管理運営上、小さい故障が生じたというような場合には、もちろんこれを管理運営をしておるところの厚生省がやらなければ機動性を失ってしまう、かように考えます。
  146. 豊田雅孝

    委員長豊田雅孝君) 速記をとめて。    〔速記中止〕
  147. 豊田雅孝

    委員長豊田雅孝君) 速記を始めて。
  148. 鬼木勝利

    ○鬼木勝利君 まず、私は本法案について、そのものについて二、三お尋ねをいたしまして、それから公害対策基本法についてまたお尋ねしたいと思いますが、今回の設置法の改正でございますが、環境衛生局に公害部を置く、ところが、その旧来の経緯から見まして、現在公害に関連するところの各行政機関が幾つ設けてあるか、幾つ現存しておるか、その点をちょっとお尋ねしたい。大臣でなくてもけっこうですよ。
  149. 舘林宣夫

    政府委員舘林宣夫君) 従来公害関係の、関係各省庁の数は、省が十二、庁が三、合わせて十五の省庁が公害に関係をいたしております。
  150. 鬼木勝利

    ○鬼木勝利君 先ほど伊藤委員からもその点お話がありましたが、公害行政の一元化が叫ばれておる今日、これらの機関とここで言う公害部との関連ですね、その点について御説明を願いたいと思います。
  151. 舘林宣夫

    政府委員舘林宣夫君) たとえば今日自動車の排気ガスの問題が大きくクローズアップされておりまして、大原町の第七環状線と甲州街道との交差点が、おそらく日本で最高の自動車の排気ガスの公害を起こしておるということでありますが、このことは、一番本命の対策としましては、ここを立体交差にするということであります。しかし、いまひとつ根本にさかのぼりますと、自動車の構造を変える、そしてそれを、法的措置を講じて強制する、こういうことが必要になってくるわけであります。それに対しまして、立体交差をする役所は建設省であります、自動車の構造を変える関係官庁は通産省並びに運輸省である、そしてそのような装置をつけたかどうかということを取り締まるのは警察庁である、こういうふうに所管が分かれております。この場合に厚生省といたしましては、この大原町における排気ガスの被害はどの程度まで及んでおるか、いつごろから激しくなってきておるか、どのような対策をすればこれが除去できるかというような観点から公害の施策を立てるわけであります。このように公害対策は各省庁にたった一つの事象をとらえましても関連することが多いわけでございまして、その中で厚生省は人間の健康を守る、あるいは快適な生活環境を守るという観点から、各種の施策を講ずるということでありまして、したがって、人間中心の公害施策をする意味においては、あくまでも公害対策の中心になって推進していくということであります。その意味合いにおいて、公害部がその事務を担当していくという任務を持っているわけであります。
  152. 鬼木勝利

    ○鬼木勝利君 そこで問題は、公害対策基本法の問題になりますが、主務大臣を厚生大臣にした、これは先ほどからも論議されておるようでございますが、普通であったならば、権限をみなほしがるというと語弊があるかもしれませんが、権限を求めることが普通であるのに、今回はみな厚生大臣に負わせて、そうして結局厚生大臣がいまのお話のように、人間の健康を守るという意味において基本法の作成に当たられたと、まあ率直に申しますと国会の答弁を引き受けるのだ、公害対策の全般の推進役をするんだ、世話役になるんだ、こういうふうに解釈されている向きもあるようでございますが、したがって、産業界のほうでは、あとで申し上げたいと思うんですが、産業との利害の調整という見地から、これは厚生省ではなくして、経済企画庁などに持っていくべきではないかというような声すらある、こういうことを聞いておりますが、この点に対して大臣はどういう御見解を持っておられるか。
  153. 坊秀男

    国務大臣(坊秀男君) この公害基本法の主管大臣及び公害対策会議の庶務等につきましては厚生大臣がこれを主管する、こういうことになったのでございますが、別に私はこれを避けるとか、あるいはこれを自分がやりたいとか、そういったようなことでこういうふうになったのではございません。公害というものは、申し上げるまでもなく、発生原因者があるわけでございます。その発生原因者を所管しておる、大体におきまして発生原因者と、その発生によって被害をこうむる側、つまり両方の側があるわけでございますが、これをいまの日本の行政機構考えてみまするというと、公害を発生する原因者というものは、産業公害からいえば通産省がございますし、それから騒音等からいいますと運輸省どもございますし、それからこれはまた都市公害の生じてくる排気ガスといったような点から申しますと、都市における道路の状況といったようなことでこれは建設省と申しますか、あるいはまた自治省と申しますか、そういったようなところの整備の不備といったようなところもございますし、公害発生の原因側が非常に多岐多省に分かれておるということでございます。ところが、それを受ける被害のほうを所管しておる、これを防止する、被害者の健康を公害から守っていくというような立場にあるのがこれが厚生省でございます。そうすると、被害者側といたしましては、これは非常に普遍的な立場に厚生省があるわけなんです。そこで、そういうふうに発生者の側から申しますと非常に多岐多省に分かれておる。ところが、被害者という立場からいきますと厚生省が一つである、こういうようなときに、しからばどこを主管にするかといいますと、たとえば原因者であるところの通産省あるいは建設省、あるいは農林省といったようなところを主管にするということよりも、被害者の立場において一つの普遍的な立場を持っておる厚生省がこれをやるのがまあ妥当ではないかと、こういうような御意見もありまして、そういうような点におきまして、いま経済企画庁というお話もございましたが、経済企画庁は何しろ経済の、書いて字のとおり、企画ということを主たる仕事としてやっておるところでございまして、実際の行政事務と申しまするか、そういったようなことは企画庁におきましてはやってない。全然やってないとは申しません、やっておる部面もございますけれども、大体におきましてまあ企画をやっているということが経済企画庁でございます。さような意味におきまして、公害に対して、ある一方の側において普遍的立場を持っておる厚生省がこれの主管に当たる、こういうことに相なったわけでございまして、決して厚生大臣がこれをほしいとか、あるいはまた、これをはねるとか、そういったようなことであったのではございませんことを御了承願いたいと思います。
  154. 鬼木勝利

    ○鬼木勝利君 大臣の御説明で大体その点は私了承しますが、なるほどおっしゃるとおりに、各省は加害者で厚生省のほうは被害者である、まことに御説ごもっともなお話でございますが、具体的な場合に、厚生省が中心となってこれを完ぺきにその被害を処理していく、そうした公害行政が厚生省において十分にできるだろうかどうか。いまお話のように、各省ばらばらの問題を、厚生省が被害者の立場において十分人間の健康を守るという意味から、いままで今日までの状態を見まするというと、必ずしもわれわれが満足するような公害処理はできていない。むろんそれは、まだ厚生省が中心でなかったとおっしゃるかもしれないけれども、人間の健康を守るという点においては非常に遺憾な点が多い。将来は、公害対策基本法でもできれば、厚生大臣は十分国民の健康を守ることができますという確約がおできになるかどうか、大臣の御確信を承りたい。
  155. 坊秀男

    国務大臣(坊秀男君) この行政の機構、仕組みの問題と、それから能力と申しますか、その問題は、これは必ずしも一致したものではない。機構がりっぱによくできておっても、これに携わる人間がそこまでいかぬ場合には、機構がりっぱでもなかなか実効はあげられない。また機構がそこまでできてなくても、それに携わる人が非常に優秀な能力のあるという者でありますならば相当機構の欠陥というものをカバーすることができると、これが私は人間社会の当然のことだと思います。そこで私はこういったような機構の仕組みをつくりまして、公害防止という大事な非常に重要な役割りを引き受けることと相なったのでございますが、私といたしましては、全力をあげて、そうしてこの使命を果たしてまいりたいと、かように考えております。
  156. 鬼木勝利

    ○鬼木勝利君 次に、現在環境衛生局には環境整備課ですか、それから環境衛生課、水道課、食品化学課、乳肉衛生課、食品衛生課、公害課と、七つ課があるようでございますが、現在公害課には事務職員が何ぼおりますか。
  157. 舘林宣夫

    政府委員舘林宣夫君) 現行の定員は九名でございますが、他課等との併任職員を含めまして十四名でございます。
  158. 鬼木勝利

    ○鬼木勝利君 いままで公害課に九名ぐらいおって、にわかに公害がたいへんなことになった、それで公害部を置かなければならぬと、これはえらいおかしな話で、だったら、公害部を今度新設すればどれだけ増員するんですか。公害部というのはどういう組織機構になるんですか。それでどれだけいままでの公害の行政事務をカバーすることができるんですか。
  159. 舘林宣夫

    政府委員舘林宣夫君) 今回公害部の設置に伴います定員の増は部長外十名でございまして、その結果、公害部の構成は庶務課、公害課並びに環境整備課という三つの課を含むことになります。
  160. 鬼木勝利

    ○鬼木勝利君 それで全部で何名ですか。
  161. 舘林宣夫

    政府委員舘林宣夫君) 職員は全部で三十二名、そのほか併任が四名でございます。
  162. 鬼木勝利

    ○鬼木勝利君 いままでわずかに九名でやっておって、急に公害部を設けなければこれはたいへんだ、公害問題は今日盛んに国民のこれは大きな問題になっているんだが、これはいまわかったんですか、これは大臣御答弁願いたい。
  163. 坊秀男

    国務大臣(坊秀男君) 数年来日本の経済産業が非常に成長発展いたしまして、それによって産業設備というものが非常に充実整備されてきた。それからまた、それに関連がありますけれども、都市に人口が飛躍的に集中してまいったといったようなことが、いま卒然として行なわれたことではありません。数年来、日本の国の社会、経済発展の実情に伴いまして、こういったような事象が生じてまいりまして、これに伴って、何と申しますか、必要悪とでも申しましょうか、そういうようなわけで、近来に至りまして公害が非常にふえてまいったということでございまして、何も卒然として起こってきたことではございません。
  164. 鬼木勝利

    ○鬼木勝利君 卒然として起こったのではないとおっしゃるけれども現実問題としてはいま初めて起こった問題なんです。これは厚生大臣の責任とは申しませんけれども、佐藤内閣の責任だと私は申し上げたい。一方においては人間の健康を守るとおっしゃっておりながら、いままで人間の健康を守っていないということのこれは実証である。まことに私は遺憾だと思うんです。現在の九名を今度は三十二名にして、いままでの公害行政よりもずっとこれは推進ができることはわかりますが、現在まで公害課が九名おって一体どういうことをしたのか、その実績をここでひとつはっきり明確に申し述べていただきたい。
  165. 舘林宣夫

    政府委員舘林宣夫君) 公害の所管をいたしております法律といたしましては、ばい煙規制法がございまして、ばい煙のすなわち大気汚染の進展の状況を調査いたしまして、必要が生じた個所は地域指定をして、地域指定をした地区に対しましては、煙突等から排出する煙の質、内容の規制をいたしてきております。すでに全国で十数都市、そのような指定をしてきております。そのほか、公害の現状を調査するための調査網を全国の枢要な地に国の直接施設として張りめぐらすと同時に、各都道府県にそのような調査の指導をいたし、あるいは関係職員の講習等をいたして技術力の向上につとめております。また、他面、公害の人体に及ぼす影響の調査を専門の学者に委託して進めております。その調査結果を行政に反映する努力をいたしております。  また、四日市に対しましては、特別調査班をつくりまして、四日市の特別公害対策を推し進めておりますし、一方、公害防止事業団を新設いたしまして、その事業団を監督いたしまして、各種の公害防止事業をさせるということをいたしておりますし、また、新産、工特等の都市における工場設置に際しましては、これらの都市が公害を起こさないように事前調査をいたしまして、通産省の調査とあわせて今後の立地規制といいますか、公害対策の指導をいたしておりまして、いままでは大体このような行政を担当いたしてきております。
  166. 鬼木勝利

    ○鬼木勝利君 公害課にわずか九名で、全国的にそういう指導ができているとあなた方はお考えかもしれませんが、事実においては指導ができておりません。しかも、各都道府県を指導していると、公害に対しては人体に及ぼす影響あるいは環境整備というようなことに対しては十分万全の策を講じているとおっしゃっておりますけれども、できていない、事実は。一例をあげて、河川なんかもほとんど今日全国の河川はあたかもごみ箱のような状態になっている。それによって人体に及ぼす影響というのは非常に大きなものがある。あるいは密集地帯に非常に臭気を放っている、あるいは汚物が流れているというような点も全部ほったらかしている。地方の保健所あたりは全然巡回指導をしていない。わずか九名ぐらいであなた方はやったとおっしゃっているけれども、それは単なる通牒や、書類なんかではやっておるかもしれぬと思いますけれども、実際あなた方は、それで地方はできていると思っていらっしゃいますか、その点をもう一度。
  167. 舘林宣夫

    政府委員舘林宣夫君) 公害施策は比較的近年緒についたばかりでございまして、地方における公害担当部局というものもようやく近年ぼつぼつでき始めたということで、地方現実に公害に対処し、それの処理に当たる地方の公共団体の組織あるいは人員等が今日において不十分であることは御指摘のとおりでございまして、したがいまして、騒音とかあるいは河川の汚濁、あるいは臭気等において今日きわめて不十分なものがある点は御指摘のとおりでございます。
  168. 鬼木勝利

    ○鬼木勝利君 最初からそう言えばいいのです。九名で全国的に完ぺきを期しているようなあなたの答弁だから、どうもあなたのおっしゃることと、九名で完ぺきを期しておるなら公害部なんというのは部に昇格する必要ない。全然なっていないのです。幾多の例を持ってしるのです。時間があれば……私事実調査に行って、そして法務局の人権擁護課やあるいは保健所あたり全部連れていって各所を私は回っている。あなた方がそういう机上論でただ答弁のための答弁では、それはよろしくない。  次に、公害部を新設された場合には、環境基準の設定とかいろいろあるでしょうが、大体規制が主体になるのか、それともあなた方が監視をする、実際に指導巡回監視をするのであるか、ただ単に規制によって指令を出すのか、公害部の主たる任務をお話ししてもらいたいと思います。
  169. 舘林宣夫

    政府委員舘林宣夫君) 公害は、公害の中でも騒音のようなものは、必ずしも役所が調査をしなくても住民自体が被害を訴え、現に各種公害の訴えの中では騒音の訴えが最も多いわけでありますが、知らず知らずの間に慢性的に人の健康をむしばむような大気の汚染のようなものは役所が十分監視をし、現状を把握しない限り、公害対策は後手に回り、大事に至るおそれがあるのでありまして、その意味合いから、公害対策の出発点は、公害の現状把握あるいは調査、こういうものであるわけでございまして、その意味合いから、公害の常時監視ということは非常に重要な部門でございます。しかし、具体的に公害を防ぐ措置を講ずる場合には、規制もさることながら、予防的な政策を進めることが大事でございます。一たん公害ができ上がった都市を再開発的に住宅の移転をするとか、グリーンベルトをつくるとかいっても、金がかかるばかりでございまして、実際の効果がなかなかあがらないし、もはや工場が相当な施設をしてしまったものはあとから規制をかけるといってもなかなか守られにくいという問題がございますので、まず公害の進展を調査の上で予測をいたしまして、公害が起こらないような計画をさせる、都市の配置をする、工場の規制をしていくということが必要であるわけでございまして、第三番目には公害の規制をかけていく、こういうような順序になるかと思います。
  170. 鬼木勝利

    ○鬼木勝利君 あまり時間がないのでその次に進みます。  提案理由説明を見ると、「総合的な公害防止施策を策定する」とありますが、これは当然策定の案はあると思われますが、その案を具体的に明示していただきたい、法案の説明だけではね。
  171. 舘林宣夫

    政府委員舘林宣夫君) 先ほど例をあげて大原町の交差点のようなところの自動車の排気ガスの公害防止の案を申し上げましたけれども、これが一つの都市になりますと、その総合施策は非常に広範であり、かつ複雑であるわけであります。たとえばかりに四日市あるいは千葉のようなところで大気汚染のための総合対策を進めるという場合には、個々の工場の煙突から出る、煙の処理をする、あるいは煙突の高さを増す、あるいは使う石油をもっと硫黄の少ない石油にかえるというような方法もございますし、また、工場に非常に近いような住宅地区を移転させて、そのあとへグリーンベルトをつくらせるというようなこともございますし、あるいは公害を特に発生しそうな工場は今後つくらせないというようなことをする方法もございますし、あるいは工場から流れ出る油が魚を汚染しまして、ほとんど売り物にならないようなくさい魚にするということで、廃油の処理の装置をする、あるいは公害患者らしい患者が出た者の収容をする、その治療をはかるというような総合施策が必要になるわけであります。これらの総合施策はその地域地域の特性に応じまして、今後その規模に応じて小さいものは地方が独自で検討し、大きな施策につきましては公害対策会議が基本方針を示しまして、その基本方針に応じて各地方公共団体が具体案をつくっていくと、かようなことになるわけでございまして、公害部はその庶務をつかさどるものとして各種各様の調査資料を集め、それをもとにした各種各様の案のようなものもこれも資料としてつくるというようなことをするわけでございます。
  172. 鬼木勝利

    ○鬼木勝利君 それは一、二の例をいま聞いたわけですがね。じゃ、各種各様の当然その方策が、対策が全部考えられておるのですね。考えられておればそれを資料としていただきたい。
  173. 舘林宣夫

    政府委員舘林宣夫君) この一定の地域、ただいま申しましたような四日市地区とか京浜地区の対策——汚染防止とかあるいは隅田川の水質をよくする方策というようなものはそれぞれその地区地区にあるわけでございまして、今後この基本法の制定に応じてつくってまいる、かようなことになるわけでございまして、いままでの間にこの公害課が実施に当たってまいりましたのは新産、工特地区の予備調査をしまして、その予備調査をもとにして予防的な意味合いでの総合的な判断を下し、それによってその地元の地方公共団体を指導してまいったわけでございます。
  174. 鬼木勝利

    ○鬼木勝利君 じゃ、公害対策基本法ができて、それのつまり公害防止行政の推進のために将来はそういう策定をする、こう了解していいですか。  じゃ、次に移ります。  総理府の中にも公害庁を設けるという案があると承っておりますが、その点はどういうふうに考えておるのか。
  175. 舘林宣夫

    政府委員舘林宣夫君) 今回この公害基本法を制定するにあたりまして、公害対策を強力に進める行政機関について相当慎重な検討が行なわれたわけであります。その検討の内容といたしましては、ただいまお話のございました総理府に公害を特に担当する公害庁のようなものをつくるという案、あるいは公正取引委員会のような行政委員会をやはり総理府のようなところにつくっていくという案、あるいはこの法案に盛られておりますように、国家行政組織法の中の第八条のような附属機関すなわち対策会議というような会議方式の審議会のような性格の協議体をつくっていく、こういうような案がいろいろ論議されたわけでございまして、御指摘のような総理府に公害庁をつくるということも検討されたわけでございますが、最終的には法案に示されましたように、公害対策会議という方式が一番よろしいということで、このように意見の一致を見たわけでございます。
  176. 鬼木勝利

    ○鬼木勝利君 公害が起きた場合の被害者の救済方法といいますか、救済策として何か保険制度というか、あるいは何か基金制度というようなものをつくるというような案は現在厚生省にはお考えないんですか。
  177. 舘林宣夫

    政府委員舘林宣夫君) 実は公害の今後の施策を進めるにあたりまして、最も検討を必要とするといいますか、もっと端的に言えば研究がなお十分なされてない部分が、被害者の救済の部分でございます。それは公害の原因者が明確であり、被害者との因果関係も明確であれば、これは今日、裁判所の裁判、司法的な方法によって解決ができるわけでございますが、公害の原因が必ずしも因果関係が明確でない。因果関係が明確でなくてかつ被害者が必ずしも明確な被害者とも言いがたい。たとえば四日市におけるぜんそく患者というようなものは、ほんとうに公害によるぜんそく患者であるのか、あるいは四日市に住んでなくともぜんそくを起こしたかもしれないぜんそく患者であるのかということは、医学的には必ずしも明確でないわけでありますが、もちろん大部分のぜんそく患者は公害によって起こったろうと想像はできるわけでありますが、このような対象に対して救済としてどういう措置を講じていくか、また、加害者といいますか、原因者といいますか、原因者としてもどことどこの工場がはっきり原因であるということは必ずしも科学的に明快に割り切れるものではない、損害賠償を要求するという形で補償を求めることができない、そういう必ずしも厳密な因果関係が結びつかない関係に対して、補償なり救済なりの措置をどう講じていくかということは非常にむずかしい問題でございまして、たとえば天災等における被害者に対する救済制度、そのほかいろいろな障害を受けた人の救済制度というようなものとの関連、そういうものを考えていく必要もあるし、救済の範囲、方法、そういう問題がいろいろあるわけでございまして、ただいまお話のございましたような保険制度というものも、救済制度の中に考えていく一つの問題であろうと、かように私ども考えておるわけでありますが、今日の段階で、それでは具一体的にこれをどう応用していくかということはなお今後検討してまいりたいと、かように考えます。
  178. 鬼木勝利

    ○鬼木勝利君 その点においてはまだ具体策がないと、十分将来研究課題として残っておるというお話でございますので、十分ひとつ検討していただきたいと思いますが、これは具体的な問題として、近ごろの地下街の衛生管理ということに対して厚生省はどのように考えておられるか。ビルが非常に今日建っておりますが、これはビル病というものは戦前からもあったかと思いますが、冷暖房設備の非常に高度な進歩によって不適当な温度による健康障害あるいは通風、換気の風量、そこで、したがって室内の空気が汚染する、あるいは不潔なごみの問題とか、こういったビル街の建築物の衛生問題、これは外見は非常にモダンなりっぱな住宅でございましょうが、マンションみたいな。ところが、いざ住んでみると、天井やあるいは壁の中にはネズミがおるとか、あるいは地下街はほとんどそういういろいろな虫の巣くつになっておる。こうした実情をどういうふうに——人間の健康を守ると、人間の生活を守るという点からどういうふうに皆さん考えておられるか、ほとんどこれは等閑視されて放任されておる形になっておる。昨年の八月でしたか、公害審議会がこれを問題に取り上げた。こうしたビルに住んでいるたくさんの方々の衛生上の指導をすべきだと、公害審議会から昨年でしたか、中間答申が出された。しかし、その後何ら厚生省の動きはないように私は思いまするが、それはいろいろ研究はされておるかもしれぬけれども、実際にそういうことをやっておられるかどうか、その点をひとつ承りたいと思います。
  179. 舘林宣夫

    政府委員舘林宣夫君) 御指摘のように、最近窓のないような鉄筋のビルができたり、ガラス窓があかないような建物ができ、あるいはお説のように、地下一階、二階、三階というような、地下に商店街、住宅ができるというようなことで、人造環境といいますか、もはや自然環境の中の住居あるいは事務所でなくて、人間が環境をつくり出すところに住む、あるいはそこで十時間前後を暮らすという事態が起こってまいりました。したがって、この人造環境がはたして適正であるかどうか、これが不適正であれば非常に健康障害も起こすであろうし、また、実際の調査上も相当な障害があらわれておるわけであります。いまのうちからこれを何らか規制をしておかなければ公衆衛生上ゆゆしい事態になるということを私ども懸念いたしまして、御指摘のように、昨年審議会からの御答申もいただきまして、その御答申をもとにいたしまして、こういう建築物の衛生管理をすることを管理者に義務づける、また、その管理にあたり専門の技術者というものの制度というようなことを規定するように、いま法的規制について検討を加えておるところでございます。
  180. 鬼木勝利

    ○鬼木勝利君 アメリカやヨーロッパあたりではそれぞれビルディングエンジニアというのですか、そういう者がおって、十分空気の調節とかあるいは冷暖房などの衛生関係の全責任を持っておる、こういうことでございますが、日本においては、遺憾ながら私はゼロに近い衛生管理だと思う。こういう点、大臣が、人間の健康を保つんだ、これがその公害対策の根本目的だと、こういうふうに言っていらっしゃるが、事実はそうなっていない。そういう点について非常に遺憾に思う。大臣のお考えをお聞きしたいんですが、どういうふうに考えますか。
  181. 坊秀男

    国務大臣(坊秀男君) 御指摘のとおり、近来われわれの生活様式が非常に複雑になってまいりまして、したがいまして、新しい生活の環境がそこにつくられてきた。その環境の中におきまして、われわれの生命、健康というものを保っていく、保持していくというためには、そういったような新しい環境に対処すべき何らかの手だてを講じていかなければ、それが置き忘れられていくというようなことであってはならない。一種の公害と申しますか、そういったようなものは、どうしても新しい見方において、新しいやり方においてこれを除去していかなければならないということは、もうそのとおりでございまして、先ほど来、担当局長がお答えを申し上げましたとおり、これをいま鋭意検討をいたしておるのでございますが、できればそれに対する対処策というものを策定いたしまして、今国会または遠からざる機会に国会で御審議を願いたいと、かように考えております。
  182. 鬼木勝利

    ○鬼木勝利君 最後に、時間がありませんので、ちょっとお尋ねしておきたいのですが、一番大事な問題だと思うんですが、公害対策基本法の基本理念ですが、試案要綱の「目的」というところを見ますというと、「国民の健康を公害から保護するとともに、経済の健全な発展との調和を図りつつ、生活環境を保全し、公共の福祉の確保に資することを目的とすること。」と、こうなっておる。問題は、この「経済の健全な発展との調和を図りつつ、」ということでありまするが、「国民の健康を公害から保護する」というのは、私は絶対的な保護であると思う。そのあと生活環境の保全のほうは、必ずしも絶対的なものではなくても、「経済の健全な発展との調和を図りつつ、」と、こうなりますというと、経済の健全な発展は生活環境が保全されるということになる、経済の健全な発展が生活環境の保全を保つことになると、つまり経済が健全に発展するというと生活環境が汚染されてもいいというような考え方ですね。これは高度経済成長期の誤れる日本経済政策の思想だと私は思う。この点大臣はどういうふうにお考えになりますか。これに私は非常に疑問を持ちます。
  183. 坊秀男

    国務大臣(坊秀男君) 先ほど伊藤委員にもお答え申し上げましたが、公害基本法の立法された趣旨と申しますか、理念と申しますか、これはおっしゃるとおり、人間の健康というものはもう絶対である。いやしくも健康に障害を及ぼすといったような公害は、絶対に排除しなければならない。また、さような公害をでき得べくんば手助していかなければならない。そこで、健康にかかわるといったような公害につきましては、経済の発展との調和といったようなことは、これにかかわりなく、生命、健康といったようなものを守るためには、公害を除去していかなければならないと、こういうことがこの公害基本法の趣旨だと心得ております。ただ、そこで「経済の健全な発展との調和」ということをうたっておりますることは、生命、健康を守っていく、そういったようなことからさらに一歩推し進めて、たとえばわれわれの生活環境といったようなものをなおひとつ快適なものにしていこうじゃないかと、こういうふうに考える場合には、これはやはり経済との調和をはかっていかなければならない、産業との調和をはかっていかなければならない。たとえば、この間、私体験したのでございますけれども東京の隅田川が二、三年前までは非常に臭気ふんぷんとして、あそこの両側に住んでおる方々が、この臭気のために非常に生活環境が障害を受けておった。そこで、この臭気を取り去るために利根川から水をあそこへ流し入れまして、そして、その臭気がきれいな利根川の水によって除去されておった現状でございますが、隅田川の水が少しくさいぐらいでは、これは生命、健康には関係がないけれども、われわれの生活を快適なものにしようというためには、水を流し入れまして、そして、この隅田川の臭気を取り去っておったということでございますが、最近、また、非常な干ばつによりまして、千葉県やそこいらの水田が田植えも何もできない、こういったような事態におちいったわけでございますが、このときに利根川の水を隅田川付近の生活環境をよくするために流しておった、ところが、それを隅田川に流しておったのでは、千葉県やそこいらのたんぼに対してかんがい用水がなくなってくる。そこで、一時隅田川へ流しておった水をとめまして——これは隅田川の水はくさくなります。しかしながら、農業という産業でありますから、米がつくれないということに相なりますと、これによって農業が死んでしまうというような場合には、隅田川の水がくさくなって、生活環境がその限りにおいて悪くはなるけれども、そこで妥協をしてもらって農業生産との調和をさして、そしていままで隅田川に流しておった水を流さないことによりまして田植えができるようにしようといったようなことが、これは私個人の考えでございますけれども、そういったようなことが、つまりその生活環境については、産業との調和をはかっていこうと、こういうようなことで、そこにそういう文句がうたわれておるのだと私はさように理解をいたしておるのでございます。
  184. 鬼木勝利

    ○鬼木勝利君 いや、それは大臣のおっしゃることはよくわかりますよ。それは、目的はそうだと思いますけれども、経済が健全に発展すると生活環境が破壊されると、こういう、ふうにとられるこの条文ですね。そうですよ。この条文をよく見ますと、やはり依然として、何か高度成長期の間違った考え方の遺物のように私は思うのですけれども大臣はそこをそのようにお考えになりませんか。
  185. 坊秀男

    国務大臣(坊秀男君) どうも私はさように考えないのでございますが、いまおっしゃったのは、経済が健全な発達をすると生活環境が害されると、こうおっしゃるのですか。
  186. 鬼木勝利

    ○鬼木勝利君 ええ。
  187. 坊秀男

    国務大臣(坊秀男君) どうもそこの規定は、私はさようには解釈をいたさないのです。
  188. 鬼木勝利

    ○鬼木勝利君 ではよろしゅうございます。それでは私は申し上げますが、私は原則として公害関係法は、あなたのおっしゃるように、健康の保護と生活環境の保全のみを目的としておらなければならないと思うのです。だったら各産業の保護という点におきまして他の産業立法はたくさんあるはずです。もしもこの公害関係法の目的にまで産業を持ってくるならば、逆に今度は産業関係法の目的の中にも健康の保護と生活環境の保全というものをうたう必要があると思う。これはおかしいじゃないですか。国民の健康保護ということを目的とした公害基本法に産業の発展をうたっていく必要がどこにあるのですか。あなたの考え方は少しおかしいじゃないですか。だったら他の産業立法にも、たくさんの産業立法があるはずですが、その中に国民の健康保護ということをうたっていますか。おかしいね。ただ公害基本法にのみうたっている。他の産業振興の立法には国民の健康保護というようなことは明示していない。ただ公害関係法の目的だけにそういうことをうたっている。おかしいじゃないですか。どう思いますか。
  189. 坊秀男

    国務大臣(坊秀男君) これはたいへん大きな問題でございますけれども、先ほども私申し上げましたけれども、本来は人間の健康を保持するということと産業の発達ということは、これがお互いにぶつかるようなものではない。ところが、無制限に産業の発達ということだけを考えまして、そうしてもうほかのことは一切かまわないのだ、こういうような考えでもって、それで産業の成長発展ということをのみ考えてまいりますと、これは人間の健康を、生命を阻害するような公害が必ず出てくるわけであります。ところが、産業というものは、人間が生活していく上における一つの手段方法であり、目的はわれわれが健康にして健全なる生活をしていくことが人生の目的でなければならないと私は思います。さような意味におきまして公害基本法はわれわれの生命、健康にかかわる場合にはこれはどんなことがあっても公害を除去していこう、こういうたてまえをとっておるのでございますけれども、しかしながら、それならさらにもう一歩進んで、われわれの生活が非常に快適であるというような環境をつくるためには、もう産業というものを顧慮しないで、われわれは東京の空気というものを全く利根川の奥の空気にまでもっていこう。これは東京地方あるいは川崎地方には産業が非常に興っておりまして、東京の空が、川崎の空が非常に、いまのところ非常にと申しましょうか、汚染されておる。しかし、それをどこまでも利根川の奥のような環境にまでもっていこう、こういうことになりますと、東京の大都会あるいは川崎の工業地帯といったようなものが、その大都会であり、また工業地帯であるというそういう立地ができなくなってしまう。それではどうも行き過ぎじゃないか。それではかえって角をためるというような結果になるのではないか。そこで一歩進めてそこまではいかないにしても、ある程度東京の空をきれいにしよう、川崎のばい煙をもっときれいにしようといったように、積極的にわれわれの生活環境といったようなものをいいものにしていこうといった場合には、やっぱり産業の立場も顧慮いたしまして、それで産業がやっていけない、あるいは大都会が大都会であることができないといったようなところまでもっていくことはやや調和を欠くことでございますから、産業も生活環境も調和して、そうして並立していくというような場合のことを私は産業の健全なる発展と調和していく、こういうふうにうたっておるのだと理解をいたす次第でございます。
  190. 鬼木勝利

    ○鬼木勝利君 だからその点がわれわれはどうしても疑問を持つんです。だったら産業そのものがやっていけないというならば、人体に及ぼす公害はやむを得ぬ、こう解釈しなければいかぬですね、あなたのお説でいけば。あくまで人間の健康を保つということは、公害基本法でありますから、産業の発展、経済の健全な発展というものの調和をはかるというところに私は問題があるということを申し上げている。調和をはかっていくから、ある程度までは被害があってもがまんをしろということにこれは解釈されるような場合が出てくる。そうすると、あなたの人間の健康を守るという点が第一義である公害対策基本法の目的からそれていくことになる。こういうことを入れられるならば、あらゆる産業関係法の目的の中に、健康の保護と生活環境の保全をうたう必要があるんじゃないか。こういうことを私は申し上げておるんですね。ところが、他の産業関係法規には国民の健康保持ということはどこにもない。ただ、国民の健康を守る公害法案に対しては産業の発展と調和しつつとある。だから、産業による公害をこうむっているものに対する処置としてはこうするんだということになればこれはわかりますよ。その点は、これは私は大いに疑問に思うんです。どういうふうに考えられますか。
  191. 舘林宣夫

    政府委員舘林宣夫君) 同じような書き方が環境基準のところで述べられておりまして、環境基準のところは、健康とか生活環境、あるいは産業との調和というものが比較的理解といいますか、読みやすく書かれておりますが、これを一つの文章にまとめて目的の条文に書いてありますために、やや内容が把握しにくい点があるわけでありますが、この目的の文章を分解して申し上げますと、公害の防止は国民の健康を保護することが目的である。いまひとつ、生活環境を保全することも目的であるが、その保全のしかたは「経済の健全な発展との調和を図りつつ、」保全する、こういうふうな意味合いを含んでおるわけであります。これがもし「経済の健全な発展との調和を図りつつ、」という文章がない場合を想定いたしますと、「国民の健康を保護する」という、その保護のしかたと、「生活環境を保全する」という保全のしかたとは、同じ意味合いがここにあらわれるわけであります。もし生活環境を保全するということに重点を置いてこれを解釈すれば、健康の保持というものはほどほどにするのだという印象も受けるし、国民の健康を保持するというほうに重点を置いて読むとすれば、生活環境の保全というものはそれほど——日本ではほとんど産業の発展の余地はないであろう。かように解釈できる。したがって、これを単純な並列でかけないで、後段の生活環境の部分は、経済の健全な発展との調和をはかる程度の保全である、こういう形容詞をつけた、こういうふうに御理解いただきたいのであります。すなわち、これは目的ではなくて、生活環境の保全の程度である、こういうことでございます。したがいまして、決して目的において国民の健康を粗略にし、経済の発展を願うということではなくて、国民の健康はあくまでも守ります、その上に快適な生活環境を守るようにいたします。ただし快適な生活環境というのには切りがありませんから、その程度は産業の発展との調和をはかりながら守っていきます、こういうことを、うたっておるわけであります。
  192. 鬼木勝利

    ○鬼木勝利君 どうも、しかし、それは、「経済の健全な発展との調和」ということばは、その前にある「国民の健康を」「保護」ということに私はかかっていないと思う。だから、国民の健康を公害から保護するというのは絶対的な保護である。しかし、これに対して、あと生活環境の保全のほうは、私は必ずしも絶対的なものではないように解釈する。そうじゃないか。
  193. 舘林宣夫

    政府委員舘林宣夫君) そのとおりに書いてあるわけでございます。というのは、生活環境の保全ということは、非常に幅のあるものでございまして、東京都内をせめて八王子か三鷹の程度にしようとするのか、上高地ほどきれいにしようとするのか、富士山の頂上ほどきれいにしようとするのか、非常に幅の広いものがあるわけであります。したがいまして、その程度は産業の健全な発展——この場合の健全なという意味は、国民的視野において、常識的に、あるいは世界的視野において当然考えられる程度の発展を考慮しながら生活環境を守っていく、こういうことを書いてある  わけでありまして、たとえ産業がどうなろうと、国民の健康はあくまでも守る、ここのところには  はっきり区別をつけて書いた文章でございますが、文革の書き方によりましてここがややこしいように読めるわけでありますが、内容はそういう  ことを意味しておるわけであります。
  194. 鬼木勝利

    ○鬼木勝利君 どうも、だから私はそこが……、それで日本の国民生活、国民経済の政策が……、どうもその点はわからぬね。この文は、私はむしろ経済の健全な発達ということではなくして、私企業といえば私企業の健全な発達と生活環境保全の調和をはかりつつと言えば多少わからないことないような気持ちがするけれども、日本の国民経済の健全な発達との調和をはかりつつということになるというと、意味が違ってくると私は思うがね。だから、国民経済の健全な発達がだんだんと発展してくると、国民の生活か保全される——経済か発展すると保全される。——やはりどうしてもその点が、生活環境が経済の発展によって破壊されるのだということを逆に考えられるわけですね。この点はひとつ私もなお研究しますから、どうもこれを私は疑問に思う。目的ということに対して非常に私はこれは、それているような気持ちがする。目的は、人間の健康を守るということが公害基本法のこれは要綱ですから、これがもう一番目的なんですから、それに産業の発展と調和をはかりつつということになりますと、どうしても私はそこに違った考えが、違った観念が出てくる、生まれてくる。だったら他の産業関係立法にも産業の発展をはかるとともに人間の保全を保っていく、人間の健康を保っていくということを産業立法にも全部入れなければならない。そういう考え方が私は浮かんでくる。ところが、他の産業関係法の目的の中には、健康の保護と生活環境の保全をうたっていない。そこに私は疑問を持つのですが、どう考えるのですか、どう考えますか、局長
  195. 舘林宣夫

    政府委員舘林宣夫君) 御指摘のように、企業体の——個々の企業の健全な発展というほうかわかりやすいかもしれませんが、これをあえてわざわざ経済の健全な発展との調和を書いたのは、個個の企業は、場合によれば、かなり強い規制を受けるかもしれない。しかし、国民経済の、国民的視野においての国の経済の健全な発展をこいねがう、それとの調和は、やはり生活環境を守って、ある程度はかっていかざるを得ない、かようにここで述べているわけでございます。どうしてこんな文句がここにあるかという疑点はおありでありましょうが、これは本来であれば、公害基本法をつくる目的は、産業の保護育成のためであるばかりではなくて、国民の健康を守り、生活環境を守るためではありますけれども、その政策を実施する過程において産業との調和をはかるということが政策の非常に重要な部門を占めるということが一点であります。すなわちこれが今後のあらゆる総合政策を立て、環境基準をつくるというときの中心議題になる。産業との調和をどこではかっていくかということは、公害政策の重要ポイントであるということが一つと、いま一つは、先ほど私が申し上げましたように、これがない場合には、国民の健康の保護と生活環境の保全は同一、同様というような解釈になるということで、それを排除する意味合いにおいても、ここへ挿入したものでございまして、もしそういう必要があれば、この字句はないにこしたことはないということは御指摘のとおりでございます。
  196. 鬼木勝利

    ○鬼木勝利君 これは何ぼ議論したって——まだこの法案は別にここで審議されるわけではないから、私の考えはそういうふうに考えております。  大体私の質問はこれで終わります。
  197. 豊田雅孝

    委員長豊田雅孝君) ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  198. 豊田雅孝

    委員長豊田雅孝君) 速記をつけて。
  199. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 舘林局長お帰りになるようですけれども、先ほどの鬼木さんの質問の答弁でちょっと耳ざわりの点が一点ございましたので、厚生大臣でけっこうでございますが、先ほど、四日市ぜんそくは、あそこに住んでいる人がもしほかに住んでいてもぜんそくになったかもしれない、何も四日市に住んでいたから四日市ぜんそくになったのではないかもしれないという御答弁があったわけです。実は、この間一週間か十日前の、「こんにちは奥さん」というNHKのテレビに厚生大臣は御出席になっていた。あのときに実は私の親戚の者が一人あそこに出ておりました。実は、大阪の堺市に住んでおりますけれども、堺の公害でのどがすっかりやられてしまいまして、もうほとんど声が出ないような状態になっております。あの中に厚生大臣おいでになっておられましたけれども、先ほどの御答弁を伺いますと、あれは、あの公害のひどい堺に住まなくとも、やっぱりあの年齢になれば声があのようにかれたかもしれないというように受け取れたわけです。これは私はたいへんな御答弁だと思います。厚生大臣はあの席におられましたので、大臣はどうお考えになられますか、御答弁をお願いしたいと思います。
  200. 坊秀男

    国務大臣(坊秀男君) 環境衛生局長が答弁しているのを私もそばで聞いておりました。たしかおっしゃるとおり、四日前ぜんそくは、これは必ずしも四日市に住まっておったからであるということではないかもしれない、あるいは四日市に住まっていなくても、なっておったかもしれない、しかし、あとでそれは速記を見ていただけばわかろうと思いますけれども、そういうことを申しましたけれども、結局は四日市ぜんそくが大きな原因であろうというような、あとで注をつけておったように私は聞いておるのでございますが、実際に四日市ぜんそくは何十名か何百名かいるわけでございますが、あるいはその中には、ひょっとすると、これは全部四日市だということ、あるいはこれはそういうことはないかもしれませんけれども、厳密に言えば、あるいは人間が百人か二百人おればその中にはぜんそく患者もいるわけでございますから、全部が全部これは一人残らず四日市ぜんそくのためだということでも——あるいはそうかもしれませんか——そのところははっきり断定はできないのではなかろうか、環境衛生局長の御答弁もそういうことでなかったかと私は思うのでございますが、そういう意味でひとつ御了解を願いたいと思います。
  201. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 局長、よろしいですか、それで。
  202. 舘林宣夫

    政府委員舘林宣夫君) たばこの害による肺ガンの発生とか、あるいは大気汚染によってわりあい起こってまいりますのは閉塞性の気管支炎を起こしてくるわけでありまして、その場合に、初めの間は器質的な変化がなくて、せきとかたんとかというものが臨床症状として出てくる。そのうちに器質的な変化があらわれ、心臓を侵食されてくるという順序でありますが、これは一般的な慢性気管支炎の病状を呈してくるわけでありまして、こういう症状があれば、これは公害である、これが一般の慢性気管支炎であるという区別は現在の医学ではつかないわけでございます。したがいまして、今日四日市におきまして数一名の方が公害病患者といわれて、公害病として治療を受けていますが、それは施策の対象でもあるし、今後十分これらに対して保護をする必要はあるけれども、厳密に医学的な、あるいは裁判上の区別をするとなれば、いま申しましたように、一般の地区における、公害にあらざる慢性気管支炎の患者と、四日市における慢性気管支炎の公害に惹起すると思われる患者との差異は認められない、こういう点を申し上げたわけでございます。
  203. 石原幹市郎

    石原幹市郎君 関連して一言。その場合、公害ということがはっきりわかったように認定された場合に、国はそれらの治療その他についてやはり責任を負うという気持ちですか、どうですか、そこのところを。
  204. 舘林宣夫

    政府委員舘林宣夫君) 公害に対して国がどの程度責任を負うか、どのような救済政策を講ずるかということの先ほどの御質問に対して私が、必ずしも国はまだはっきり確定していないと申し上げた点でございます。それはしばしば話題になりますのは、公害と断定できるかどうかがわからぬものも議題にのぼるし、公害と断定できるものであった場合に、第一義的には、先ほど大臣がお答え申し上げましたように、原因者がすべて負担すべきものである。原因者が明確であれば、治療費であろうと、あるいは生活の保障であろうと、あるいは見舞い金のような種類のものであろうと、一切、当然に原因者が負担すべきものである。国が一般国民の税金から出すべき筋合いではない、かように思っておるわけであります。問題は、完全には原因者の追及ができない。その場合に原因者の追及のできない程度が、九五%ぐらいはわかるが、あとの五%がわからないものもあれば、八〇%ぐらいはわかるが、二〇%ぐらいはわからぬというものもあれば、五〇%ぐらいはわかるが、五〇%ぐらいはわからぬというものもあれば、あるいはもしかというものもある。その程度の度合いに応じて国がやはり持たなければならぬかどうかという問題があります。  で、具体例をあげて申しますと……。
  205. 石原幹市郎

    石原幹市郎君 それはいいんだ。国がある程度考えていく方向であるかどうかという考え方をぼくは聞いておる。
  206. 舘林宣夫

    政府委員舘林宣夫君) 国の考え方は、従来は水俣病のときには国が治療費の一部を持ちました。それから四日市におきましては、今国会で御審議いただきました予算案で治療費の一部を持つようにいたしております。ただし、これは治療研究費という形で持っております。治療費という形でなくして、治療研究費という形で持っております。
  207. 石原幹市郎

    石原幹市郎君 もう一言。私は、そういう場合、水俣病とか阿賀野川のようなものはそれはきちっとするが、ただ一般に多発的にどうも公害から四日市のぜんそくみたいなことを言われたのですが、そういう場合、これはやはり個人もいろいろ迷惑を受けるかもしれぬが、その市町村なんかの財政にも非常にこれは大きな影響を来たすと思うのです、やはり社会保険その他の面から考えてみても。だから私、公害であろうと認定されるような場合には、これはやはり国が——さっきからいろいろ議論があったように、産業もある程度伸びていかなければならぬのだから、国がある程度責任を持つというような考え方にしていくのがいいんじゃないかと私は考えているわけで、だから、政府なり厚生省としては、そういう場合にどういう方向で考えていこうとするのか、その考え方をちょっと聞いているので、具体的に、これはどうしなければならぬ、どうしなければならぬということじゃないんです。
  208. 舘林宣夫

    政府委員舘林宣夫君) 原因者が明確であり、原因者に負担させることができれば原因者に持たせる。原因者に持たせることが困難である場合においては国が一部を持つ、かような方針をいまのところ立てております。
  209. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 それでは、私は自分本来の質問をさせていただきますが、四月一日の予算委員会のときに被爆者のことについて私はちょっと厚生大臣に質問をいたしましたが、そのときに、秋ごろには大体実態調査がまとまるから、その上で何か考えよう、こういうふうな御答弁でございましたが、その実態調査は、秋といっても、一体何月ころに完了なさるんでしょうか。そうして、それがほんとう考えていらっしゃるとおりまとまるものでしょうか、ひとつ伺いたいと思います。
  210. 中原龍之助

    政府委員中原龍之助君) 実態調査につきましては、これは基礎調査、それから生活面の調査、それから健康面の調査と、こういうふうに三つに分けた調査が行なわれているわけであります。で、基礎調査につきましては、一部集計がある程度まとまった段階におきまして、ことしの二月でございましたけれども、それにつきまして発表をいたしておるところでございます。その他の医学面の調査から生活面の調査につきましては、ただいま集計中でございます。そうして、それが発表になるのは大体秋ということになっております。で、私どもできるだけ早くということで急いでおります。
  211. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 その調査が発表になりましたら、そのあとでどういうふうに対策を立てられるのですか。たとえば審議会のようなものをおつくりになられるのか、どういう目的でそれを調査されたのか、それをお伺いしたいと思います。
  212. 中原龍之助

    政府委員中原龍之助君) これは集計がまとまりますれば、当然に発表をいたします。で、その発表した内容につきましてこれをどうするかという問題が次に起こる問題でございます。それにつきまして、私ども、あるいはこの関係学者もおりますので、いろいろ相談をした上でどうするかということをきめていきたいということでございます。
  213. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 あの被爆者の人たちは援護法を制定してほしいということはずいぶん強い要望でございます。何とか援護法をつくる、そういうふうな方向に私は運んでいただきたい、このように思いますが、いかがでございましょう。
  214. 坊秀男

    国務大臣(坊秀男君) 調査をいたしまして、そうして、その調査の結果に基づきましてあとの措置をよく考えたい。具体的にいままだ調査が完了しておりませんので、どういうことにするということは、一にその調査を待ってこれをきめていきたい、かように考えております。
  215. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 鈴木厚生大臣のときは大かた審議会をつくろうというようなところまで行っておられたのですが、そのことを被爆者の方々から坊厚生大臣に陳情をされたときに、厚生大臣は、それならば一ぺん鈴木前厚生大臣にそのことを聞いてみようとお約束をされたやに私は承りましたが、聞いてごらんになっていただいたでしょうか、どうでしょうか。
  216. 坊秀男

    国務大臣(坊秀男君) 鈴木前大臣とはそのことにつきましてはまだ話しておりません。
  217. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 せっかくお約束をされたようでございますから、早く一度前厚生大臣お話し合いをしてみていただきたいと思います。そうして、戦後もう二十二年たっておりますのに、いまだに被爆者のことがそのままになっておりますが、いろいろ医療保険とか対策は立てられておりますけれども、これは自民党の中で、被爆者の問題を口にすると赤だと、あなたはいつの間に赤になったのですかと言われるような空気があるということを私はほんとうは自民党の人に伺ったことがあるのです。これは神戸の市会議員の方でございますけれども、あなたはいつの間に赤になったのですかと、こう言われるので、被爆者の問題をうっかり口に出せませんと、こういう話を私は十一日の日に実は聞いたのです。それで、私どもも非常に残念に思いますのは、原水協というような団体がございますけれども、ああいう団体か——こういうことを申し上げると、ほんとうはいけないかもしれませんけれども、共産主義を押しつけるために、まあ、言ったら、被爆者の人たちを何か一応ひっかき回したと、こんなようなうらみがなきにしもあらずということを私ども感じるわけですね。それで、その十一日の会合のときも、ほんとうはそういう人たちが被爆者にどういう手を差し伸べたらいいか、そのことは全然わからない、だけれども、原水協というような一つの団体でうしろから応援したことは応援したけれども、それならばどうしたら被爆者の人たちが救われるかということは全然いままで考えていたことがなかったので、ずいぶん勉強不足だった、こういう話を実は私どもの前でされたわけです。まあ、そういうような、何か思想的な問題や何かがあって、いままで自民党のほうではやはりこの問題をあんまり熱心にさわっていただかなかったのではないかなあ、まあ、このように私どもそれとなく感ずるところがあるわけですが、これは被爆者の問題はそういうことではなしに、赤だの白だの黒だのという以前の問題で、人道上の問題でもあるし、人権上の問題でもありますので、厚生大臣、もう少し熱意を持ってこの問題に対処していただきたいと、このように思いますが、その御意思がおありになりますでしょうか。
  218. 坊秀男

    国務大臣(坊秀男君) 原爆被爆者の扱いについて、これにタッチをいたしますと、何か思想的な背景があってやるのじゃないかというようなことをどなたが言っておるかは私は存じておりませんけれども、さような考えは毛頭ございません。とにかく実態調査の結果を待ちまして、そうしてきめるべきものはきめていきたい、かように考えております。
  219. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 被爆者に渡されている被爆手帳というのですか、健康手帳、あれには二種類ありますね、特別手帳というのと一般手帳というのと。これは一体どういうふうに違うのですか。被爆者の方に伺うと、一般手帳ではたいした効力がないから、どうか一般手帳の人も特別手帳に切りかえてほしい、こういうふうに言っておられたのですが、いかがでございますか、この問題。
  220. 中原龍之助

    政府委員中原龍之助君) 被爆者の手帳の中に一般被爆者とそれから特別被爆者の手帳がございますことは先生お話しのとおりでございます。この被爆者というものが規定されまして、それにさらに特別被爆者というものがあるわけでございます。そうして、実際上の手帳によりましての、何といいますか、医療上の効果といいますか、そういうものの差異としましては、一般手帳の所持者は健康診断を国の費用で年二回いたします。そのほかに、希望によりまして二回をいたすという形になっております。  それから特別被爆者につきましては、これは健康診断ももちろんでございますが、そのほかに、疾病が発見をされました場合に、その疾病の治療に対しまして、これは保険のある者は保険が優先をいたします。しかし、この自己負担分につきましては、これは国で見るという相違がございます。  なお、この被爆者の中で、被爆者の患者というものにつきまして、もう一つ、いわゆる認定患者というのがございます。これは特に原爆に基因すると思われるというようなものをいわゆる認定患者といたしまして、これにつきまして、入院に要する費用、治療に要する費用というものは全部国費で持つという形になっているのでございます。これのいわゆる範囲の問題というか、いろいろ法律ができましてから、一般被爆者とそれから特別被爆者の比率がだんだん変わってまいりまして、現在は特別被爆者のほうが多くなっている状況でございます。
  221. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 そうすると、一般手帳を持っている人を特別の中に入れることができないのでございますか。  それからもう一つ。この間五月十六日の社労の委員会で、社会党の柳岡さんの質問に対して、胎児というものも特別被爆者として拡大をしている、こういう答弁があったようですが、親が希望すれば、その胎児はもう大きくなっておりますけれども、そういう子供にも特別手帳というものが交付されるものでございましょうか。
  222. 中原龍之助

    政府委員中原龍之助君) ただいまの御質問でございますが、その前に、いま一応、被爆者の定義といいますか、私それを参考までに申し上げたいと思います。  この被爆者、いわゆる一般被爆者と申すものは、これは四つに分かれておりまして、第一番目は、直接の被爆者、原子爆弾投下時に爆心地から約五キロ以内の地域にあった者というものが一つ。  それから二番目が入市者。これは原子爆弾投下後二週間以内に約五キロ以内の地域に立ち入った者。  三番目が死体処理及び救護に当たった者でございまして、これは原子爆弾が投下された際、またはその後において、身体に原子爆弾の放射能の影響を受けるような事情のもとにあった者。  それから四番目に胎児。この胎児と申しますものは、先ほど一、二、三と申し上げました者の、いわゆる被爆した際にすでに胎児であった者ということでございます。  それから特別被爆者は、これは近距離被爆者、これが一つの問題でありまして、これは三キロ以内にあった者及びその胎児。  それから二番目が認定患者。先ほど申しました放射能に直接基因する疾病として厚生大臣の認定を受けたいわゆる原爆症の患者。  それから三番目が特定の疾病があると認められた者ということになっている。この特定の疾病というものは、たとえて言うならば、健康診断の結果、造血機能の障害、肝機能の障害があるというような一つの疾病から見た分類でございます。  それから四番目は入市者でございまして、原爆が投下されたあと三日以内に、しかも二キロ以内に立ち入った者及びその胎児。  それから五番目に、放射能の濃厚地区にあった者。これは、いわゆる三キロ以上であっても特に濃厚な放射能があった区域内にあった者がいわゆる被爆者として認定をされている。  したがいまして、結局、放射能を強く受けたというふうに思われる者、そうでなくて、まあ軽かったと思われる者、大体こういう二つの分類でございます。
  223. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 その被爆二世には健康手帳というものは渡されませんかと伺ったのです。
  224. 中原龍之助

    政府委員中原龍之助君) したがいまして、ただいま申し上げました胎児というものにつきましては、その爆弾が落ちたときにすでに胎内に入っていた、そうして被爆を受けて生れたという者につきましては、被爆者手帳が渡されておるわけであります。
  225. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 被爆者でいま一番困っているのは、お医者さんに行っても、病院に行っても、被爆手帳を出してそれで診断をしてもらうとき、健康診断をしてもらったりなんかするときに、お医者さんが非常にめんどうくさがる。普通の健康保険でかかりますとカルテにいろいろ書きますね。その上に、被爆手帳の中に書くものがあって、そういうことをしなければならない。そういうことでお医者さんが非常にめんどうくさがる。あるいは、これはマル原の患者だということを非常に大きな声で言われる。そういうようなことで、たくさん人がいると、非常に恥ずかしいような、侮辱されたような感じを受ける。非常につらい。それで、できることならば、お医者さんのほうも、かかる患者のほうも、もう少し書類を簡単にしてもらうわけにはいかないだろうか、こういうような要望があるわけであります。  それから、広島とか長崎ではどこの病院に行ってもいいようでございますね。そうですが。そこまで一ぺん答弁してください。
  226. 中原龍之助

    政府委員中原龍之助君) 原爆の被爆者の方々が健康診断を受けられたり、あるいは治療を受けられるところにつきましては、実は指定をしてあるわけなんであります。これは広島、長崎、ここに居住する人たちが非常に多いわけで、当然そういう指定された医療機関が多いわけでございます。それから他の県におきましても、もちろん指定した機関がございます。しかし、そこに居住するところの被爆者の数はわずかでございまして、非常に分散をしているという関係がございまして、あるいは場所によっては若干そういう医療機関が遠いところにあるかとも存じます。ただ、先ほどおっしゃったいわゆるお医者さんが不親切であるかどうかにつきまして、私は実はただいまはじめて聞くわけでございまして、患者を見る上におきまして、ほかのそれと差別があるということはあまり好ましくないことでございます。私どもも、そういう御忠告がありますならば、これは心がけて善処いたしたいと思います。
  227. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 厚生省の指導を、お医者さんのほうにももう少しなんとか指導してほしいというような要望があるわけなんですけれども、いま御答弁の中にもありましたように、地方にいる方は担当分散をしておりますので、お医者さんに行くのに担当遠いわけですね。そうすると、仕事を休んで行かなくちゃならぬ。仕事を休んで行くとその日の賃金がカットされる。あるいはまた、あまり遠いので交通費が相当かかる。いろいろな隘路があるわけです。そこで、その人たちは私ども普通の人間とはだいぶ健康状態が違うわけですね。外側から見てはたいして変わったところはなくても、相当大きなハンディキャップを背負っておるわけですから、すぐに疲れるとか、あるいはすぐにおなかをこわしやすいとか、かぜを引きやすいとか、いろいろのハンディがあるわけです。それで、そういう人たちに保健手当、そういうようなものは出せないでしょうか、どうでしょうか。それからまた、労働力を失ったような被爆者に対しては障害年金というようなものを支給することができないでしょうか。あるいはまた、身体障害者と同様の国鉄の割引、そういうものはできないものかどうか。その三点について一応お答えをいただきたいと思います。
  228. 中原龍之助

    政府委員中原龍之助君) ただいまの国鉄の運賃の割引あるいは障害者の保険手当という問題、それから年金の問題等お話がございましたけれども、現在は被爆者に対しまして、被爆者であるというだけでそういう年金とかいうものはございませんです。ただ肢体不自由者であれば、これは肢体不自由者としてのそういう恩典は受けておられると思います。で、原爆被爆者のそういう点についての問題は、私どもは今後の一つの——ただいま先生が仰せになったことは若干援護の形になっておると思います。現在の法律は、医療のほうの関係から、いわゆる原爆を受けたということによって身体に特別の異常があるかもしれない、したがって、それによって来るいろいろの疾病その他についてめんどうを見るという形になっておりますので、そういう医療のほうの点についてはめんどうを見ているのでございますが、ほかの点につきましては、ほかのほうで他法によって該当するものについてだけでございます。これは将来の問題であるというふうに私は考えております。
  229. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 その将来の問題ということで、先ほどもちょっと申し上げましたように、保険手当とか、障害年金とか、国鉄の割引、あるいは所得税とか地方税とかを減免してほしい、こういうようないろいろの問題があるわけですね。その被爆者というのが私どもの健康体とは違った立場におられますから、同じ一日働いても、私ども八時間労働なら八時間働きますけれども、あの人たちはそれが半分くらいしか働けないかもしれない。あるいは三分の二くらいしか働けないかもしれない。そういうようなところで非常に大きなハンディキャップを背負っているわけですから、そういうものをいろいろひっくるめて、せっかく生活調査、健康調査の結果がこの秋に出るわけですから、そういう時点に立っていまから、そういう援護法ですか、援護法みたいなものを考えていただきたい、このように思いますが、そういう御意思がございますか。もしもそれがないとすれば、暫定的に、県とか市とか、町とかそういうところで、条例で何とかこの人たちにもう少しあたたかい手を伸ばせるような指導ができないものかどうか。
  230. 中原龍之助

    政府委員中原龍之助君) ただいま先生の仰せられたこと、そういう問題がいろいろございます。その他にもいろいろ問題があると思いますので、それで、この実態調査の中におきまして、いわゆる生活面の調査というものを加えて、そこで調査の結果をもとにしていろいろこれから対策を立てていきたい、こういうことになっておるわけでございます。
  231. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 もう原爆病が発病してしまった、あるいは寝込んでしまった、あるいは入院をしている、こういうような人は、いまさらどうしようもないと言ったら申しわけないのですが、そういう人はそういう人で適当な手当がなされているわけですけれども、それ以上に、いま健康体に見える人たち、そういう人たちがこれから発病をしないように予防をしてやるような予防医学を徹底させるべきだと思いますけれども、おそらく日本にはまだほんとうに原爆病の専門家というようなものがそうたくさんはないように見受けていますけれども、何とかそういう予防医学を徹底をさしていただきたい、このように思いますが、そういうほうのお考えはございますか。
  232. 中原龍之助

    政府委員中原龍之助君) 原爆被爆者につきましての医療、そういう問題につきましては、私ども審議会を持っております。それは患者を認定するという観点が現在おもでございますが、その方面の関連の学者先生方は、この原爆症というものについての研究をいたして、大体毎年一回ずつ集まって研究を発表し、そうして今後のやり方を検討するという形をとっております。ただ、私がいままで聞いている範囲内の印象といたしましては、原爆に被爆された方々が他と特に特別な、異常なあらわれ方をするかどうかという問題につきましては、なかなかわからない面も多いのでございます。通常その疾病として表にあらわれてくる状態というものは、ほかの病気とあまり変わらないわけでございます。だから、ほかの病気でもそういう病気はやはりある。原爆の被爆者の方が病気になったその病気のあらわれ方というのは、やはりあまり差がない——差かないというのじゃない。病気のあらわれ方として、どうも全然別個のものというふうに考えるというようなものは非常に少ないというような症状のあらわれ方であります。したがいまして、こういうものの治療なり予防なりというものにつきましては、やはりそういうような疾病の一つの予防という、そういう面に連なっていく公算が非常に多いわけでございます。ただ、私どもといたしましても、被爆したという特別の状態によりまして、何かその状態を除去し得るような方法が発見できれば、これにまさるものがないわけでございますので、そういう方面にも関心を持ちまして、いろいろな学者の方々お話して検討しているわけでございます。
  233. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 ちょっと話が戻りますけれども、さっきの認定基準というのがありますね。病院に入院さしてあげるような基準があるわけですね。そういう認定をもう少し緩和するわけにはいかないのでしょうか。
  234. 中原龍之助

    政府委員中原龍之助君) その認定を緩和する、緩和しないというのではありませんで、これは原爆に非常に関係が深いのだというふうに疾病のあらわれ方として認められるというものにつきまして認定をしてまいっておるわけでございます。これは、学問的ないろいろの結果などの上に立ちました上でやっておりますので、ただいまのところは、認定患者を一体幅広くするかどうかという問題については、私はなおもっと検討しなければならないことが多いのじゃなかろうかと考えております。
  235. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 それからもう一つは、いままでの過去の病歴調査ということをやったことがございますか。原爆を受けてから、たとえばきょう発病しますね。きょうまでにどういう病気をずっとこの人が繰り返してきているか、それは被爆をしたためのいろいろな病気か、そういうような病歴を調査したことがございますか。
  236. 中原龍之助

    政府委員中原龍之助君) 現在一般的にそういうようないわゆる疾病を全部集めているかという問題につきましては、私どもとしては現在ございませんです。しかし、患者を認定する場合におきましては、さかのぼりましていわゆる既往歴というものを全部調べました上で認定をするという形をとっております。
  237. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 この間の予算委員会のときもちょっと例をあげて御質問しましたけれども、遺伝研究を十分PRしてほしい、あのときも申し上げましたけれども、おふろ屋さんに行ったら、前から入っていた人が、被爆者が来たから原爆病がうつるからと言って逃げてしまうとか、息子さんが結婚しようと思っても、よく調べて見たら、あの人は終戦当時広島にいたらしい、ひょっとしたら被爆しているから、結婚をしたら、そのうちに白血病になって死ぬかもしれない、あるいは子供が生まれたら、それも原爆の遺伝があるのではないかというふうな、何といいますか、考えたらおかしいようなことですけれども、そういうことを言う人があって、息子はもう適齢期になっているのにいまだにお嫁さんの来手がない、おふろ屋さんに行ってもみんなに逃げられる、こういうような話があるということも、私はあのとき申し上げたわけですけれども、そこで、何とか遺伝研究というものを十分PRしてほしい、あの人たちは非常に強く訴えられるわけですが、そういうお考えはございませんでしょうか。
  238. 中原龍之助

    政府委員中原龍之助君) ただいま先生の仰せられた、結婚のときに差別を受けるとかというようないろいろの問題が現在までございましたので、そういう問題につきましても、どの程度であるかということは実態調査をしたわけでございます。そうしてこれは二月の基本調査の発表のときにも発表いたしたわけでございます。確かに御婦人のほうについてはどうもでございますが、それから男のほうにつきましては、あまり御婦人ほどではないようでございます。参考までに申し上げますと、この結婚についての差別待遇を受けたことがあるかというような意識の調査でございますが、これは差別を受けたと答えた人は全体の二・六%ございました。特別手帳を持っている者ではこれは三・二%、これが一般手帳では一・七%。一般手帳のほうは低くなっております。それから、あの実態調査の際に、全然いままで手帳を持っていないで新たに申請をしてきたグループの人たちがございます。そういう人たちも調べてみましたところが、その中にやはり一・五%においてあるというふうな数字が出ております。これも現在配偶関係別に見ますと、配偶がある、あるいは死別したケース、これでは現在夫婦になっている者二・四%、死別のケースでは一・一%でありますが、未婚であって現在なお未婚である、あるいは離別をしたというようなケースは、それより若干高くなっております。四・一%、五・七%、こういう形になっております。年齢的に見ましても、未婚や離婚のケースでは三十歳から三十九歳の年齢層が一番高くなっているということであります。ただいままでのあれでは遺伝的な問題、そのものについてはあまりはっきりしたあれは出ておりません。したがいまして、こういう方々が結婚されるということにつきまして、できるだけ支障がないようにいたしたいと思います。
  239. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 そこでABCCの資料というものがありますね、原爆傷害調査委員会——ABCCの全資料を公開することはできませんか、そしてまた、もしも公開することができるならば、それを公開して原爆症の治療法の前進に役立てるわけにはいきませんですか。
  240. 中原龍之助

    政府委員中原龍之助君) ABCCが現在長崎とそれから広島にございます。そこは国立の予防衛生研究所にも、支所と一緒になって仕事をしているわけでございまして、そこでやる研究というものは、いわゆる寿命の調査、死亡調査というのがあります。寿命の調査とかいわゆる成人の健康調査あるいは病理学的調査というようなものを対象にいたしておりまして、治療そのものにつきましては、できるだけそっちのお医者さんの方々にやっていただくというような形をとっているわけでございます。それから、これの構成の中で、日本の学者の方々にも多数これに参加していただいて研究を進めていくという状況でございます。その研究の成果につきましては、必ず毎年発表いたしております。また、その道の学者になりますと、自由にそこに——由と言うと語弊かございますけれども、十分に資料を見せてもらったり、あるいはまたディスカッションをする、できるだけ日本の学者の方々とフリーにひとついろいろ研究を進めていきたい、こういう方針であるように私は伺っております。
  241. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 日本でただ一つの原爆記録映画、これは日本映画社のプロデューサー加納竜一さんという人が、原爆のあった次の日にとられたと私は聞いておりますけれども、その記録映画がアメリカに保管されている事実を御存じでございますか。
  242. 中原龍之助

    政府委員中原龍之助君) これは私ども新聞で承知をいたしたわけでございますが、これにつきましては、実際は仁科財団が中心になって、いろいろ外務省その他と交渉をしてやっておるというふうに伺っております。
  243. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 仁科財団が返還要求を行なっているようだと私も承っておりますけれども、世界にたった一つしかない記録映画ですから、政府はこの映画を当然日本で保管すべきであって、アメリカに返還要求をなさる御意思がおありになられますか。
  244. 坊秀男

    国務大臣(坊秀男君) おっしゃるとおり、非常に貴重なもの——と言うとおかしなことですが、貴重なものには間違いありません。そこで、それの返還につきましては、外務省で検討してもらっておる次第でございます。
  245. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 原爆の問題はこれくらいにさしていただきます。  次に、坊厚生大臣は、特別養護老人ホーム、ああいうところをごらんになったことがありますか。
  246. 坊秀男

    国務大臣(坊秀男君) 老人ホームは、私は視察いたしましたが、特別養護老人ホームはまだ私は視察いたしておりません。
  247. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 私どもはメーデーのときいつでも特別養護老人ホームを訪問するわけです。ことしも行ってみましたけれども、そういうところの寮母さんといいますか、付き添いさん、そういう人たちは非常な過重労働にいまあえいでいるわけです。この人たちは一体何人の病人に一人つくわけですか。
  248. 今村譲

    政府委員(今村譲君) お答え申し上げます。三十八年からこの老特養ができましたときからこの制度ができましたものですから、全国に四十くらいしかございませんが、当時は、病人といいますか、御老人八人について一人ということで発足いたしましたが、早速審議会にいろいろ諮問しまして、何人が適正かというので、ストップ・ウオッチまで使いましていろいろやりました結果、五人に一人が適正であると、百人定員なら二十人要るということで、その後毎年大蔵折衝してまいりまして、昨年度は八人に一人を六人に一人に直し、四十二年度の予算におきましては五人に一人と答申どおり直していただきました。
  249. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 そういう基準ができても、ほんとうに五人に一人の割合のそういう付き添いさんが集まりますかどうか。
  250. 今村譲

    政府委員(今村譲君) これは現在のところはこういう実態でございます。昨年の十二月三十一日現在でございますが、施設数が四十二カ所、収容定員が三千百三十二名、それで寮母さんの定員が、収容六人に対して一人という四十一年度の予算でありますから、それの人員は五百二十二名、その当時における寮母の実数は五百十六名でございますから、五百二十二名と五百十六名で、六人ほど足らない。その当時は一応九八%ぐらい行っておった。ただ、五名に切り下げましたから、新規にまた人を集めなきゃならぬというので、県を督励いたしております。
  251. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 そういうところに行ってみますと、たとえば入浴のときに、あの老人をおふろに入れますのは、未婚の若い人ではちょっとそういうことはできません。やっぱり既婚の相当年をとった人でなければ手伝えないわけですね。そういう人は体も、若い人よりも体力が少ない。そういう中で非常にあの人たちは過重労働にあえいでいるわけです。百人ぐらい収容している老人ホームでも、おとなですから、一ぺんに大きなおしめを三枚ぐらいずつ当てるわけです。一日に三回当てても九枚。そうすると、大かた一日には千枚ぐらいのおしめを洗わなくちゃいけない。洗うときには洗たく機に入れて洗いますけれども、今度干して取り込んでたたむときには、非常に労力が足りない。そういうことで、看護婦さんの問題をあとで少し質問さしていただくわけですけれども、ボランティア活動を私どもに要求されるわけです。一カ月に一ぺんでも三カ月に一ぺんでもいいから、婦人会の人たち、あるいは教会の婦人たち、そういう人たちが来て、おしめをたたむ手伝いぐらいしてほしいとか、あるいは病院で子供に配繕をしてほしいとか、あるいは子供がむずかって困る人には本を読みに来てほしいとか、うちで花をつくっていれば花を持ってきてほしい、いろいろそういうボランティア活動をわれわれに要求されるわけです。それは私どももやりたいと思います。お手伝いはしますけれども、そういうことが、人手が足りなかったりなんかすることが、そういう一般の国民の善意にまかされるということは、私はやっぱりこれは考え違いだと思います。そういうところで人手が足りなければ十分人手を補うように、また、そういう人手はどうしたら集まるか、そういう方面の対策を考えていていただけないものでしょうか。それから、その人たちの賃金は一体どれぐらいになっているでしょうか。
  252. 今村譲

    政府委員(今村譲君) 第一点の、寮母さんでも御老人をおふろに入れるのに非常にたいへんだ。これは重度の身体障害者の場合にも最近一生懸命やっておりますが、手押車みたいなものに乗っけてきまして、機械で持ち上げてふろにすうっと入れる、そして洗ってあげて、また機械で持ち上げて上へ乗せるというようなのが、重度の身体障害者についてはどんどんやっておりますので、それもふろ場の改造から入りますけれども、そういうようなものも考えられるんではないかというふうなことをいま盛んに研究いたしております。  それから、おっしゃるように、私ども毎年毎年、百名ならば二十名の人というところでやってきたわけでありますが、今後ともいまおっしゃるように、たとえば寮母さんばかりじゃなしに、それ以外の、いわゆるおしめをのしたり広げたりというふうな人方の定員というふうなものも要るんではないかということで検討いたしております。ただ、非常にありがたいことには、各その周辺からいろいろなお手伝いあるんですが、私ども決してそれでいい気になって、これでいいんだという気持ちはございません。  それから給与でございますが、四十一年度は、特別養護老人ホームの寮母さんというのが、本俸が二万七千二百円、それから扶養手当といいますか、これが七百十六円、それから暫定手当千三百四十円、合計二万九千二百五十六円、こういう予算積算単価で来ておりますが、四十二年度は、昨年の九月に公務員のベースアップがございました。これは職種によって約六・何%から最高八%くらいまで、違いますけれども、それで上がりまして、本俸が四十二年度は二万九千一百円、それから扶養、暫定、合わせて全部で三万一千三百二十三円、こういう予算積算単価でやっております。
  253. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 今後ますます老人というものはふえていくわけです。私どももやがて老人にならなくちゃならないわけですけれども、そういうことでございますから、十分こういう問題に心をとめて遺漏のないようにお願いをしたいと思います。  次に、看護婦さんの問題について質問をさせていただきます。初めに厚生大臣にお伺いをいたしますが、大臣は看護の概念をどう考えていらっしゃいますか。
  254. 坊秀男

    国務大臣(坊秀男君) 看護というものは、私は、医療の、何と申しますか、非常に密接な関係のあるものでございまして、治療のためにはどうしても看護というものは不可欠の問題である。ことに看護することとともに、これはお医者さんのすることとは別に、その患者を、何と申しますか、快方に向かうようによく精神的な指導といったようなことも看護の大事な一つの要素である、かように考えます。
  255. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 そうすると、看護婦の役割りというものはどう考えていますか。
  256. 坊秀男

    国務大臣(坊秀男君) ただいま申し上げましたような、患者に対してそれを治療していくために重大なる役割りを引き受けているのでございますから、看護婦さんの仕事というものは国民医療の上においては非常に重大なる仕事である、かように観念いたします。
  257. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 先ほど付き添いさんの不足の問題をお伺いをしましたし、付き添いさんが過重労働であるというようなお話をちょっと伺ったわけですけれども、看護婦さんも同様に非常にいま看護婦不足で重労働をやっておられるわけです。この間稲葉委員の御質問のときに、看護婦さんの問題がだいぶ出たわけですが、いま現在の不足数は大体三万名くらいだろう、こういうふうにお伺いをいたしましたけれども、これを一体どうして補充をなさるか、その対策はどうなっておられますか。
  258. 若松栄一

    政府委員(若松栄一君) 看護婦の不足は最近の医療問題の中の一つの慢性的な状況でございますが、これが非常に緊急な事態になってまいりましたのは、御承知のように、昭和三十六年、七年ごろに病院争議というものが、病院ストライキが頻発をいたしました。そのころに、昔は白衣の天使であるとかナイチンゲールというふうにいわれておりましたものが、いかにも重過酷労働者であるというような印象を与えまして、そのために看護婦に対する志願が非常に減ってまいりました。その影響があらわれてまいりましたのが三十八年、九年ごろでございまして、そのころが一番大きな不足を見ておりました。その後しかしかなり努力をしてまいりまして、養成施設をふやし、また養成の定員増加する等のことに努力をしてまいりました。その結果といたしまして、たとえば数字で申し上げますと、三十六年には看護婦並びに準看護婦の養成施設の総数が六百七十八でございまして、その養成定員が一万六千三百八十という数でございます。それに対して四十一年におきましては、約二百五十カ所の施設がふえまして、九百二十五施設になり、養成定員も二万六千三百八十七、約六年前に比べて養成定員が一万人ふえております。そういうことで、最近は若干緩和の傾向にございまして、私どもさらにこの勢いを強めてまいる所存でございますので、昭和四十六年ごろには一応理論的に計算できる数といたしましては大体充足するのではないかという予想を立てております。
  259. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 看護婦さんを大幅に志願をさせたりあるいは質的に向上を目ざさせるのにはいろいろ苦労をしていらっしゃるかと思いますけれども、今度の出された設置法の中で、看護婦養成所の専任教員増というのがわずかに三人だけ要望されておられますが、これで間に合いますか。
  260. 若松栄一

    政府委員(若松栄一君) 養成所における三人といいますのは、これはいわゆる専任教員というものでございまして、看護婦の資格があって、しかも、看護教員として相当の経歴並びに訓練を経た者を少なくとも三人は常置させる。常勤させるというのが三人の指導員でございまして、そのほかにもちろんいろいろな教科がございますので、その教科に必要な方々は、それぞれ非常勤の形で先生をお願いしておるわけであります。
  261. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 最後に、看護婦さんはすき間のない勤務の連続で、ときには疲れてしまったり、あるいは勤務意識が低下したり、それでもやはりいつでも死と対決をして、そして休養も残務整理も、討論も、研究をする時間も不足しているようでございます。事務員や雑務員の仕事までも背負っているような看護婦さんのいまの状態の中で、私の住んでおります兵庫県の山奥の県立病院でございますが、結核療養所でございましたが、最近はその結核患者がだんだん減ってきまして、外来患者が相当ふえてきた。その中で、十六年間にわたるいろいろな苦労を克服して、十六年間の記録をたよって、今度二年がかりで一つの大きな論文を書かれたわけです。その論文を私のところに送ってまいりましたので、これを本日は少し御披露してみたかったのですが、それは社労でやれとか、あるいは時間がおそいとか、いろいろ言われるものですから、これははしょりますけれども、私どもは、いろいろ、実は社労の委員になれないものですから、こういうところを使って質問をさせていただいておるわけです。この看護婦さんの論文を見ても、看護婦数の十分でない現状においては、病院全体の看護機能を円滑に運営するためには、まず入院患者に対する法定看護婦数の充足が先んじられることはやむを得ないにしても、外来部門の看護婦業務については、代替要員の活用とか超勤時間の縮小化等の検討と同時に、業務内容の分析による能率化の研究が、今日ほど切実に要請されるときはないと思われる。こういうようなことから、看護婦さんが一定の場所にとどまっていないで、あいている時間にはもうどんどん交替をして、動的に看護婦不足を克服しておる、こういうようなことは、都会の病院とはまた違って、看護婦さんに来手のないようなそういう山奥の病院では、特に看護婦不足というものがはなはだしい状態にいまあるわけであります。こういうところにもどうぞ目を向けていただいて、いかにいま看護婦さんが過重労働にあえいでいるか。しかも、だんなさんを持った人が四四%も看護婦の仕事についておる。こういう中で、夜間業務もあるし、いろいろな点で看護婦さんの問題は非常に重大だと思います。相手はいつでも死と対決しているような病人もあることでありますから、どうか看護婦さんの問題については、せっかく看護課長でいらっしゃる婦人の永野課長さんもいらっしゃることでありますから、看護婦さんの問題は十分心して今後早急に解決していっていただきたい。このように思いますが、永野さんから御意見を伺いたいと思います。
  262. 坊秀男

    国務大臣(坊秀男君) 御意見のほどは、これは非常にごもっともなことだと思いまして、御意見の線に沿うて努力をしてまいりたいと思います。
  263. 永野貞

    説明員(永野貞君) わが国の看護事業は、法制的には必ずしも外国と比べて劣っておるとは思われませんが、実際の業務の面におきまして、非常におくれていると存じます。特に患者数に対する看護婦の人数が——国民に対する看護の濃度と申しますか——そういうものがたいへん薄いこと。それからまた、必ずしも看護婦が、その業務を十分にできるように仕組まれていないということで、これはもちろん行政上の責任でもございますので、大いに今後努力していきたいと思っております。ありがとうございました。
  264. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 ありがとうございます。それで、いつでも厚生省のほうから資料をいただきますから、せっかくこれだけの膨大な資料を送っていただきましたから、これを今度私のほうから一度厚生省のほうに差し上げますから、どうぞこれを参考になさっていただきたいと思います。私の質問を終わります。
  265. 豊田雅孝

    委員長豊田雅孝君) 速記をとめて。   〔速記中止〕
  266. 豊田雅孝

    委員長豊田雅孝君) 速記を起こして。  本日はこの程度にいたし、散会いたします。    午後五時十七分散会      —————・—————