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政府委員(新井裕君)
道路交通法の一部を
改正する
法律案につきまして、補足して御
説明いたします。
まず、第一条の
改正規定から御
説明いたします。
第一は、横断歩行者の保護をはかるための車両等の通行方法の
規定の整備についてであります。
第三十八条第二項及び第三項の
規定は、交通整理の行なわれていない横断歩道を通過する車両等について、横断歩道の直前で停止している車両等の側方を通過してその前方に出ようとするときは、その横断歩道の直前で一時停止しなければならないこととし、また、横断歩道及びその手前の三十メートル以内の部分においては、前方を進行している車両等の側方を通過してその前方に出てはならないこととしようとするものであります。
現行
規定におきましても、車両等は、横断歩道を歩行者が通行し、または通行しようとしているときは、一時停止してその通行を妨げないようにしなければならないこととなっており、また、横断歩道の手前の三十メートル以内の部分は、追い越し禁止場所となっているのでありますが、歩行者の通行を妨げないようにするため、横断歩道の直前で一時停止している車両等の側方を通過してその前方に出たため、あるいは、いわゆる追い抜き等、追い越し禁止に触れない形態で進行中の前車の側方を通過してその前方に出たため、前車の陰になっていた歩行者の発見がおくれ、横断歩道上で交通事故を起こす車両が少なくないことにかんがみ、さらに横断歩道における歩行者の保護の徹底をはかろうとするものであります。
なお、この
改正と
関連して、横断歩行者の保護に関する
規定を第三章第六節の二にまとめて
規定することとし、あわせて現行の第三十八条の
規定と第七十一条第三号の
規定の
関係を整理することとしております。
第二は、大型自動車による交通事故を防止するための所要の
規定の整備についてであります。
その一は、第六十三条の三の運行記録計による記録に関する
規定についてでありますが、これは、道路運送車両法に基づく命令の
規定により大型貨物自動車等に運行記録計の備えつけが義務づけられることとなったことに伴い、これらの自動車を、運行記録計が不備な
状態で運転させ、または運転することを禁止して運行記録計による記録の励行をはかるとともに、これらの自動車の
使用者に運行記録計による記録の保存を義務づけようとするものであります。
その二は、第五十七条、第七十五条、第百十九条等の積載制限違反の防止に関する
改正規定についてでありますが、これらは、積載重量または積載容量の制限に違反して自転車、荷車等を除く車両を運転した場合の罰則を、三万円以下の罰金から三月以下の懲役または三万円以下の罰金に引き上げるとともに、このような違反は、運転者のみに責任を負わせるのは適当でないと
考えられる場合もあることから、安全運転管理者、その他車両の運行を直接管理する地位にある者がこのような積載制限違反の運転を下命し、または容認することを禁止しようとするものであります。
その三は、第八十五条、第八十八条、第九十六条等の大型自動車の運転の資格要件を引き上げるための
改正規定についてであります。
第八十八条第一項第一号及び第九十六条の
改正規定は、大型自動車免許の資格年齢を現行の十八歳から二十歳に引き上げ、及びその運転免許試験は、普通自動車免許、大型特殊自動車免許または軽自動車免許を現に受けており、かつ、これらの運転免許によって運転することができる自動車の運転の経験の期間が二年以上の者でなければ受けることができないこととしようとするものであります。なお、厳重な規律と監督のもとに大型自動車を運転する者については、資格年齢の特例を、一定の技量に達していると認められる者については、運転の経験の期間の特例を認めることとし、この特例を受ける者の範囲をそれぞれ政令で定めることとしております。第八十五条第六項の
規定は、資格年令の特例を認めたことに
関連した
改正であります。
第八十五条第五項の
改正規定は、同項の政令で定める大型自動車の運転の資格要件である運転の経験の期間を二年から三年に引き上げようとするものであります。
第三は、運転免許の行政処分の
制度の合理化をはかるための
改正についてであります。
その一は、第百三条の二等の運転免許の効力の仮停止の
制度に関する
規定についてであります。
第百三条の二第一項の
規定は、運転免許を受けた者が、負傷者の救護等の義務に違反したとき、酒酔い運転をして死傷事故を起こしたとき、または居眠り運転等危険性の高い違反行為をして死亡事故を起こしたときは、その交通事故が発生した場所を管轄する警察署長が、その者の運転免許の効力を、その交通事故があった日から起算して二十日を経過する日まで仮停止することができることとしようとするものであります。
第二項から第八項までにおいては、仮停止をした後の弁明の機会の供与、仮停止を受けた者の運転免許証の提出義務、仮停止を受けた者が都道府県公安委員会によって運転免許の効力の停止を受けた場合の処分期間の通算等、この
制度について必要な事項を
規定することとしております。なお、運転免許が取り消された場合の運転免許の欠格期間への通算については、第八十八条第一項第六号の
改正によることとしております。第百七条の五第九項の
規定は、国際運転免許証を所持する者に対する準用
規定であります。
その二は、第百十四条の二の
規定についてでありますが、これは、運転免許の取り消し、停止等の
事務が激増している現状に対処して、これらの処分の迅速化をはかるため、運転免許の保留及び効力の停止に関する
事務を都道府県公安委員会が警視総監または道府県警察本部長に行なわせることができることとしようとするものであります。
その三は、第百二条、第百四条等の
改正規定についてでありますが、これは、
精神病者等の身体的免許欠格者であることの認定は、医師の診断に基づいて行なうべきものであることにかんがみ、臨時適正検査の方法を総理府令で定めることとするとともに、処分の迅速化をはかるため、指定の医師の診断に基づいて身体的免許欠格者であると認定した者については、聴聞を行なわないで運転免許を取り消すことができることとしようとするものであります。
第四は、その他所要の
規定を整備することについてであります。
その一は、第七十五条の四の
改正規定についてでありますが、これは、片側三車線の構造を有する東名高速自動車国道が新たに建設されることに伴い、高速自動車国道の左側部分の高速通行路に三の車両通行帯を設けることができることとしようとするものであります。
その二は、第五十三条及び第百二十条の合図違反の過失犯の処罰
規定を設けるための
改正でありますが、最近における高速交通の発達によって重要度の高くなっている合図の励行をはかろうとするものであります。
その三は、第七十一条、第百二十二条等の
改正規定についてでありますが、これは、現行の第七十一条第二号から第四号までの横断歩道における歩行者の保護等に関する
規定の違反について酒気帯び加重の
規定を適用できることとしようとするものであります。
次に第二条の
改正規定について御
説明いたします。この
改正規定は、交通反則通告
制度を新設するためのものであります。
第一は、第百二十五条の通則
規定についてであります。
第一項は、この
制度の対象となる反則行為について定めようとするものであります。反則行為は、自転車、荷車等を除く車両等の運転者がした違反行為で別表の上欄に掲げるものとしておりますが、別表の上欄に掲げられている違反行為は、比較的軽微なものであって、現認、明白でおおむね定型的な交通方法に関する違反行為であります。なお、反則行為の種別は、政令で定めることとしております。
第二項は、この
制度の適用を受ける反則者について定めようとするものであります。同項各号に掲げる者は、反則行為をした者であっても、反則者としないこととしております。
第三項は、反則金の意義及び反則金の額について定めようとするものであります。反則金は反則者がこの
制度の適用を受けようとする場合に国に納付すべき金銭でありまして、反則金の額は、別表に定める限度額の範囲内で、反則行為の種別ごとに政令で定めることとしております。
第二は、第百二十六条の告知に関する
規定についてであります。
警察官は、反則者があるときは、反則行為となるべき事実の要旨及び反則行為の種別を、また、原則として出頭の期日及び場所を書面で告知するものとし、告知をしたときは、その旨を原則として反則行為が行なわれた地を管轄する警視総監または道府県警察本部長に報告しなければならないこととしております。なお、居所または氏名が明らかでない者及び逃亡するおそれがある者については、この
制度を適用することができないので、告知をしないこととしております。
また、少年につきましても、告知をしないこととしております。
第三は、第百二十七条の通告に関する
規定についてであります。
告知の報告を受けた警視総監または道府県警察本部長は、告知を受けた者が告知されたとおりの反則者であるときは、
理由を明示して反則金の納付を書面で通告することとしております。この通告は、反則者が告知された出頭の期日及び場所に出頭しないときは、通告書を送付して行なうこととなりますが、この場合には、通告書の送付に要する費用もあわせて通告することとしております。
また、告知を受けた者が告知されたとおりの反則者でないときは、その旨を通知することとし、この場合に、告知が反則行為の種別を誤っているときは、正しい種別の反則行為について通告することとしております。
第四は、第百二十八条の反則金の納付及びその効果に関する
規定についてであります。
反則金の納付は、任意でありますが、その納付は、通告を受けた日の翌日から起算して十日以内に、政令で定めるところにより、国に対してしなければならないこととしております。通告書の送付に要する費用の納付についても同様としております。そして、この手続に従って反則金等を納付した者は、その通告の
理由となった行為について公訴を提起されない、すなわち刑事訴追をされないこととしております。
第五は、第百二十九条の仮納付に関する
規定についてであります。
告知を受けた者は、告知を受けた日の翌日から起算して七日以内に、反則金に相当する金額を仮納付することができることとし、仮納付をした後に、通告を受けたときは、通告に従って反則金を納付した場合と同様の効果を受けることとしております。なお、仮納付をした者に対する通告は、通告書によらずに、公示の方法で行なうことができることとしております。
また、誤った告知に基づいて仮納付をした者に対しては、仮納付された金額をすみやかに返還しなければならないこととしております。
第六は、第百三十条の反則者にかかる刑事事件に関する
規定についてでありますが、この
規定は、この
制度の適用を受けることができる者が、直ちに刑罰を科されることがないようにするため、反則者の刑事事件に関する訴訟条件について
規定しようとするものであります。
第七は、第百三十一条及び第百三十二条の
規定についてでありますが、これらの
規定は、道警察本部長の方面本部長に対する権限の委任及びこの
制度の実施に関し必要な事項の政令への委任について
規定しようとするものであります。
次に、第三条の
改正規定について御
説明いたします。
この
改正規定は、第一条の
改正規定中第九十六条第二項において軽自動車免許について
規定し、第二条の
改正規定中別表において軽自動車について
規定することとしておりますが、運転免許の種類としての軽自動車免許及び自動車の種類としての軽自動車が、
昭和四十年の
道路交通法の一部
改正によりまして、
昭和四十三年九月一日から廃止されることになっておりますため、これらの
規定をさらに
改正しようとするものであります。
最後に、附則の
規定について御
説明いたします。
第一項の
規定は、この
法律の施行期日について
規定しようとするものであります。
第二項から第六項まで及び第十二項の
規定は、大型自動車の運転の資格要件を引き上げるための
改正、運転免許の効力の仮停止の
制度の新設、交通反則通告
制度の新設等に伴い、必要な経過措置を設けようとするものであります。
第七項から第十一項まで及び第十四項の
規定は、交通安全対策特別交付金の交付及びその中途、その毎
年度分の総額、本来の用途に充てたかった場合の返還命令等について
規定しようとするものであります。
第十三項の
規定は、自動車の保管場所の確保等に関する
法律の違反行為のうち、
道路交通法の違反行為と同一に取り扱われているものについて、交通反則通告
制度を適用するため、同法を
改正しようとするものであります。
以上が、
道路交通法の一部を
改正する
法律案のおもな内容であります。何とぞよろしく御
審議をお願いいたします。