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1967-07-18 第55回国会 参議院 商工委員会 第18号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十二年七月十八日(火曜日)    午前十一時十一分開会     ———————————    委員の異動  七月十四日     辞任        補欠選任      矢追 秀彦君     鬼木 勝利君  七月十五日     辞任        補欠選任      鬼木 勝利君     矢追 秀彦君  七月十八日     辞任        補欠選任      白木義一郎君     黒柳  明君     —————————————   出席者は左のとおり。    委員長          鹿島 俊雄君    理 事                 井川 伊平君                 近藤英一郎君                 柳田桃太郎君                 阿部 竹松君    委 員                 上原 正吉君                 重政 庸徳君                 津島 文治君                 村上 春藏君                 横井 太郎君                 大矢  正君                 近藤 信一君                 竹田 現照君                 黒柳  明君                 高山 恒雄君    国務大臣        通商産業大臣   菅野和太郎君    政府委員        通商産業政務次        官        栗原 祐幸君        通商産業大臣官        房長       大慈彌嘉久君        通商産業省繊維        雑貨局長     乙竹 虔三君        通商産業省鉱山        局長       両角 良彦君        中小企業庁長官  影山 衛司君        中小企業庁次長  金井多喜男君        労働政務次官   海部 俊樹君    事務局側        常任委員会専門        員        小田橋貞寿君    説明員        通商産業大臣官        房参事官     荒玉 義人君        労働省職業安定        局雇用政策課長  細野  正君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○特定繊維工業構造改善臨時措置法案内閣提  出、衆議院送付) ○石油開発公団法案内閣提出衆議院送付)     —————————————
  2. 鹿島俊雄

    委員長鹿島俊雄君) ただいまから商工委員会を開会いたします。  まず、衆議院送付特定繊維工業構造改善臨時措置法案を議題とし、前回に引き続き質疑を行ないます。質疑のおありの方は順次御発言を願います。
  3. 高山恒雄

    高山恒雄君 特定繊維工業改善臨時措置法案に対して質問申し上げたいと思いますが、わが国繊維産業は百年という長い歴史を持っておりまして、戦前までは輸出産業の最高の位置を占めておったことは論を待ちません。なおまた、戦後わが国経済復興貢献をし、特に食糧不足に対する見返り物資として最大の貢献をしたことも間違いのないところであります。ところが、最近における東南アジア等の一部繊維産業の新設、またはアメリカにおいては近代化が非常に進んでおります。しかもまた流通部門改善消費者との直結した近代経営にして繁栄しておることも、これは事実でございます。特に英国等においても五九年以来綿業法等による、特に労働党の適切なる施策のもとに垂直系列化が非常に進んでおる。しかも、その近代化のために、英国経済の有力な一翼をになうことになっておるのであります。それ以前は日本繊維産業が国際的にも優位の立場にあったのでありますが、ところが、わが国繊維産業昭和三十一年以来設備制限法で、むしろ逆にやみ紡機が激増して、過当競争は激化しております。むしろ反対に生産秩序は乱れて不況を招く大きな原因となったのであります。政府は再度過剰設備廃棄目的とするスクラップ・アンド・ビルドによる新法を制定したのでありますが、その実効は、資金の何らの裏づけもないために、その実績があがらなかったというのが現実ではないかと考えております。そこで、今回再び新々法としてこの法案提出を見たのでありますが、この間政府判断の甘さ、また業界の非協力等は、強く自責さるべきであると私は考えるのであります。そうして、今回こそは政府業界ともにその責任重大性にかんがみて、百二十万に及ぶ繊維労働者にもう少し大きな夢と希望を与える必要があるのじゃないか、かように考えております。今後の発展に期待することは非常に重要な問題かと思うのであります。  そこで、私は第一番に、紡機の問題を中心として質問申し上げたいのであります。まず紡績の問題は、政府法案の内容によれば、過剰設備処理重点が置かれておりますが、過去において処理は進まなかった、その理由は一体何があったかということがまず聞きたいのであります。  なお二番目に、今回の改革で百社以上の中小企業者も確実にこれを実施しようという意欲があるのかないのか、そういう点は政府として掌握しておるのかどうかという点をひとつお聞きしたいのであります。まずこの答弁をひとつお願いしたいと思います。
  4. 乙竹虔三

    政府委員乙竹虔三君) 第一に、旧法及び新法におきまして紡機廃棄処理が進まなかった理由は、旧法におきましては封緘格納を主といたして需給調整をいたしておりました。自主廃棄はきめておりましたけれども、アウトサイダー命令はなく、先生指摘のように、買い上げ補償等財的措置も講じておりませんために実効があがっておりません。新法におきましては、スクラップ・アンド・ビルドの方式によりましたために、新法制定当時予定いたしました線におきましてほぼ廃棄は進んでおりまして、当初三百三十三万錘格納いたしましたところ、現在まで百八十四万錘の廃棄が行なわれております。  第二の中小紡につきましては、御指摘のように、非常に多数、三百社余あるわけでありますけれども、この意欲は非常に旺盛であります。今回の構造改善動き中小紡のほうから出てまいっておりまして、不況時におきまして真の体質改善構造改善、これに必要なる過剰設備処理がなければ中小紡を底辺とする日本紡績業は立ち直れないという認識から、今回の構造改善動きが起きてきたと承知しておりますし、その後の意欲も全然衰えておらぬというふうに私たち考えております。
  5. 高山恒雄

    高山恒雄君 二番目に、中小紡績企業は、今後の生産経営規模を大体この法案では五万錘を基礎に積極的に拡大するようですが、このような意思を持っておると思われますか。もちろん内外の情勢にかんがみて大企業に拮抗する実力をつけるという必要はあると思いますが、しかし、現実はもっと深刻なものがあるのではないか。単に規模だけを拡大しても、労働力不足からくる困難性があるのではないかと考えます。この点、特に地域的に中高年齢層雇用をせざるを得ないという状態が起こっておると私は思っておるのであります。同時に、一方、経営者の中には三万錘の基礎ぐらいが適切と思われる意見もあるのではないかという考え方を持っております。これはなぜかと申しますと、労働力からくる今日の繊維産業現状は非常に深刻なものがあるからでありまして、この点についてそういう意見もあるということを御承知だろうと思いますが、政府はこの点いかに考えておられるのか、これをまずひとつお聞きしたいと思います。
  6. 乙竹虔三

    政府委員乙竹虔三君) 御指摘のように、綿紡績業におきまして量産番手適正生産規模は、設備面中心とし、いわゆる経営面中心にいたしました場合に、五万錘は単一番手においてほしいということを基礎にした考え方を実はわれわれは持っております。ただし、労働事情は御指摘のように非常に深刻でございます。また、日本各地におきましても相当違いますので、むしろ人を集める面、ないし定着性から見ました労働面適正規模という考え方も十分これは考えなければいけないと思います。その場合は、したがいまして実情に応じて判断をする必要が十分にあると思っております。
  7. 高山恒雄

    高山恒雄君 もう一つの問題は、労働組合のほうでは、特に全繊同盟等においては時間短縮計画的なものを持っております。しかも週休二日制も実現しよう、こういう考えもあるようであります。その場合に、適正設備は一体どういうふうに考えておられるのか。現在さしあたり二百万錘をやるということでありますが、目的としては三百万錘、こういうふうにも言っておられますけれども、こういう週休二日制、いわゆる先進国と同一の時間短縮をやる、こういうことは、私は、現に実行されるべき段階に日本はきておると思うのであります。そういうことは着々進行すると思います。それに対して、政府としては現在の三百万錘をやっぱり廃棄してやっていこうというこの考え方は適切なのかどうか、この点はどうお考えになるのか、この点をひとつお聞きしたいのであります。
  8. 乙竹虔三

    政府委員乙竹虔三君) 全繊同盟におきまして週休二日の要求のあることはわれわれも承知はいたしております。ただし今回の過剰設備処理におきまして、われわれが計算の根拠に使いましたのは三百八日稼働二交代制という基礎に基づいた計算をいたしております。  なお、週休二日制の場合の労働者週休日とそれから工場操業休止との関係は、この両者を断ち切ることも可能であるというふうに考えております。
  9. 高山恒雄

    高山恒雄君 断ち切ることも考えておられるようでありますが、しかし、この問題はやはりもっと具体的なものを私は申し上げたいのでありますけれども、政府考え方の構想は約五年間における計画一つとして三百万錘を廃棄しようという考えであります。全繊が考えておりますこの週休二日制も三年間にはそれを実現したいという考え方を持っておるのであります。したがって、五年計画の中に、もし週休二日制が実現するということになった場合、廃棄の見通しというものは非常に困難はありましょうけれども、これは適当な方向を私は考えておかないと、再度問題が起こってくるのじゃないか、こういうふうに考えております。それと関連してではございませんけれども、一方においては経営者の中に二十四時間操業をやるべきだといううわさが出ております。また、現実にやろうとしている気配もできておるのではないかという危険を私は感じております。そうしますと、構造改善のあり方についてこれを一体どう考えるのか。むしろ二十四時間の操業ということになりますと、相当のやっぱり過剰生産ということができてきます。したがって、この週休二日の問題と二十四時間操業、もちろんこの二十四時間操業には、繊維産業主体とするような国では、相当の国がやっていることは私も事実承知いたしております。中共等においてもほとんど二十四時間でございますから、この点は両方並行的なものを考えていかないかと、私は問題が起こってくるのではないかという感じをいたしておるのですが、こういう点に具体的に政府は取り組んだ一つの資料でもあるのか、あるいはまだこれからやろうとしてお考えになっておるのか。この点ひとつお聞かせ願いたいと思います。
  10. 乙竹虔三

    政府委員乙竹虔三君) 先進国はもちろんのこと、後進国紡績もすでに二十四時間操業が多数を占めておることは先生も御承知のとおりであります。コストダウンをはかり、国際競争力をつけてまいります場合におきましては、二十四時間操業はやむを得ないというふうにわれわれは考えておる次第でございまして、今回の構造改善のもくろみには、五年間に二百五十万錘ほどの二十四時間操業工場が出現するものという一応の推定で計算をいたしております。
  11. 高山恒雄

    高山恒雄君 次に織布業について質問したいと思いますが、今回の織布業における構造改善対策は、政府としてかつてない産地ごと商工組合計画による改善をやっていこうということですが、しかも、それを大臣の承認によって行なうということになっておるようでありますが、従来にない計画であるということで、私は適当な処置かと考えております。しかし、ここで問題になりますのは、御承知のようにこれは農業政策との関連がございますけれども、政府がいま考えておられるような改善対策をやろうとしておられる問題と、一方には零細企業が蔓延しつつあるという現状、これはなぜかと申しますと、日本農業政策が非常におくれているためにその農業の、最も何と申しますか、農閑期を利用して、そして数台の織機で織布をひとつやっていこう、こういう傾向が今日出ているのであります。したがって、一方には構造改善をして、ある程度の企業らしい企業としての進歩をはかっていこうという政策と、一方には逆行する形の現実が起こっているというこの問題を考えますときに、これは無視できない問題だと私は考えているのであります。そこで政府は、この家内工業的な小規模のものを、いかに今後計画的にあるいはまた指導しようというなにがあるのか、これが一つお聞きしたい非常に私は重大な問題だと考えております。構造改善を一方ではやり、一方ではそうしたものがそうしたものがどんどんふえていく、こういう問題が並行的に現出していくのをそのまま放任したら、いかに構造改善をやってみても、生産秩序の紊乱ということは大きく市況にも影影するし、将来の国際競争にも重大な影響があるわけです。こういう面をひとつどう計画指導を持っておられるか、これをお聞きしたい。
  12. 乙竹虔三

    政府委員乙竹虔三君) 高山委員指摘の点は、織布業構造改善におきまして一番むずかしい点であるとわれわれ覚悟をいたしております。産地別計画をつくり、産地のリーダーに指導をさせて産地の地縁、血縁関係によりまして産地ぐるみ振興をはかっていこうということをねらいました今回の計画も、ただいまの非常にむずかしい問題に対します一つ解決策であるというふうにも思っているからであります。で、零細機屋である場合に、これが適正規模に達していない場合には、この零細機屋は、もし労働条件を特に悪化させるのでない場合におきましては、他の企業、特に海外の企業との競争において打ち勝っていけないのは、これは当然でございますので、何とかしてこの零細機屋規模を適正化していくという努力をいたしたい。今回の措置におきましてグループ化、このグループ化零細機屋同士が集まること、ないし親機中心に集まること、ないし製造問屋中心に集まること等、いろいろのタイプを考えておりますけれども、零細機屋適正規模化組織化に非常に重点を置いた計画をつくってまいりたいというふうに考えております。
  13. 近藤信一

    近藤信一君 関連。いま高山委員から織布の零細企業といいますか、その問題について質問がありました、私それに関連しまして、本委員会に提案されております、あとから御審議になる団体法の改正による協業組合の問題があるわけなんです。おおむね織布業におきましては、いま高山委員も言われましたように家内工業的な零細企業が非常にある、これは各産地にあるわけなんで、団体法が改正されました暁に協業組合ができるわけなんですね。その協業組合産地組合との今後のかね合いの問題、それをどういうふうにやっていくか、これは将来大きな問題として各織布業においていろいろと各地にできてくるだろう、こういうことを私は想像しましてお尋ねするのですが、そのかね合いの問題は、今後どうなりますか。
  14. 乙竹虔三

    政府委員乙竹虔三君) 協業組合は、今後産地組合の有力なる構成員に育っていくことをわれわれは期待をいたします。先ほども御説明いたしましたように、産地ぐるみ構造改善事業計画立案者産地組合でございますし、また、実行者産地組合でございますが、産地組合は当然組合員から構成されており、組合員は個人の企業者、法人の企業者等もございまするが、零細機屋適正規模にまとめ上げて一つ経営体に育て上げていくという場合に、この協業組合が重要な一つの手段になるというふうに考えます。
  15. 近藤信一

    近藤信一君 その場合に、協業組合がつくられますね、それから一方産地構造改善のために産地組合に全部責任を持たせるでしょう、融資の問題なんか。そうすると協業組合としてやはりまた中小企業振興事業団ですか、このほうから融資してこの協業組合でやっていく場合、産地組合責任を負わせる面とそれから独自にやれる面と二つ出てきやしないかと私は思うのですが、その場合にはどうなるのですか。
  16. 乙竹虔三

    政府委員乙竹虔三君) 現在私たち考えておりまするのは——もっとも協業組合が今後どういうふうなかっこう発展をしていくか、その辺はわからない点もございますけれども——現在私たちの頭の中にありますのは、協業組合は、いま申し上げましたように、産地組合の他の構成員と同様の立場に立つ、したがいまして、中小企業振興事業団から融資を受けます主体は、産地産地組合でありまして、協業組合は、たとえば新鋭の織機におきましては産地組合からリースのかっこう織機の賃貸を受ける、こういうふうな姿になると思います。
  17. 高山恒雄

    高山恒雄君 まあその問題、非常に重要な問題だと思いますが、次に進みたいと思います。  この家内工業的規模企業の問題は、ほんとう政府も十分つかんでないのではないかというふうな私は感がしておるのです。そこで、これは繊維局だけで問題が解決がつく問題ではないのです、実際を申し上げますと。けれども、少なくとも繊維局労働省においては——私は前から繊維局労働部をひとつ置けというくらいまで主張したいのでありますが、この零細企業のためにそういう考えを持っている一人でありますが、労働省にもお聞きしたいのですが、家内労働法というものは答申が出て久しくなるのです。いろいろ予算委員会でも質問をして答弁をしておられますけれども、一体これどういうふうにお考えになっているのか、これも法案をつくっていこうというお考えであるのかどうか。それから特に産業別の最賃ですね、これが非常におくれているのですね。いまだに三十二歳くらいの中高年齢労働者組合もようつくっていないというようなところで一日に五百二十円の給料で働いて、失対労務者の賃金よりも安いという実態は、これは見のがすことができないのです。したがってこの中小企業規模の問題が解決がつかないと、そういう条件を立て直すことができないので、通産省もこういう問題に対してはどういうふうに考えておられるのか、労働省もまたこれに対してはどういうふうにお考えになっているのか、この点お聞きしたいのです。これは実は大臣にお聞きしたいのですが、きょう要求したのですけれども、衆議院のほうで多忙のようで、しかたがないのですが、実りのある、実現できることを私は答弁してもらいたいのです。これは何回となしに問題となっている問題で、いまここで中小企業の問題以外の零細企業をどうするか、この零細企業こそ今日日本では大きな問題になっているのでありますから、この点、労働省からも、また通産省はこういう問題についてどういうふうに労働省と折衝をして将来持っていこうとお考えになっているのか、この点をお聞きしたいのです。
  18. 海部俊樹

    政府委員海部俊樹君) 大臣が来られませんので、ほんとうに申しわけございませんが、政務次官かわってお答え申し上げます。  先生指摘家内労働法についてでありますが、特に繊維産業の織布業実態というのは、まさにこの家内労働法が最も必要とされる状態ではなかろうかと、私もその実情検討いたしまして感じておるところでありますが、御承知のように、ただいま家内労働審議会というものを発足いたしまして、一応のめどは昭和四十四年の三月までに何らかの答申をもらうということで発足いたしておりますけれども、いかにもそれでは時期が長過ぎるということで、明年の三月末までに答申をしてほしいということを労働大臣から審議会にお願いをいたしまして、明年の三月までに何らかの答申を受け取ってそれを検討した結果、家内労働法の成立に全力をあげたいというのがただいま労働省の基本的な考え方でございます。もちろん、これができますと問題になっております最低工賃の問題であるとか、家内労働というものをどの点に重点を置いて、中小零細企業家内工業とをどう区別していくか、いろいろ問題が出てくると思いますが、ただいまは審議会答申待ちと、こういう状態になっております。
  19. 栗原祐幸

    政府委員栗原祐幸君) ただいま労働政務次官からお話がありましたことと、私ども考え方は同じでございます。今後労働省とよく協議いたしまして善処してまいりたい、かように考えております。
  20. 高山恒雄

    高山恒雄君 労働省、もう一つ聞きたいのですが、むろんその家内労働法の問題はそれで、まあ答申も早く出すような方向で促進しておられるようですから了としますが、産業別の最賃をやっぱり確立すべきだと思うのですよ。全国一律最賃ということは、もう御承知のようにこれは何回となしにこれも質問が出ております。ところが、全国一律もいかぬ、産業別賃金分もいかぬというようなことでは、これはもうどうにもならないと思うのですね、やっぱり全国一律が無理であるならば、産業別賃金の確立をはかっていくと、こういう問題を一体検討されておるのかどうか私は疑うのですが、労働省検討されておるならその具体的な問題をひとつお知らせ願いたいと思うのです。
  21. 海部俊樹

    政府委員海部俊樹君) 先生指摘のようなことをいろいろと検討はいたしております。そういたしまして、製造業の中で重点的な職種として繊維工業、衣服その他の繊維製品製造業、こういったものを取り上げまして、使用者数とか労働者数とか、いろいろなものから検討はいま続けております。
  22. 高山恒雄

    高山恒雄君 それじゃ次に進みたいと思いますが、今度の新法に基づく法案の第六条の二項、第十八条の二項、「労働者職業の安定につき配慮する」とあるのですが、その裏づけとして了解できるのは何かという問題なんです。これは労働省もやっぱり検討されたのだろうと私は思いますが、労働省並び通産省の、この問題に対して具体的にどういうふうに安定する方法の配慮というものがなされるのか、これをひとつ御説明願いたい。
  23. 乙竹虔三

    政府委員乙竹虔三君) まず計画策定面におきまして、労働省と十分御相談をしてまいります。すなわち、紡績業におきましては基本計画及び実施計画をつくりますが、この中身には、重要な労働関係事項があるわけでありまして、十分労働省と御相談をしてまいりたい、同じように織布業につきましては、産地別に作成され提出される構造改善事業計画通産大臣は承認するわけでございますが、その際にも労働省と十分御相談をしてまいりたいということでございます。  第二に、具体的な事項といたしまして、雇用促進事業団の業務につきましては、特定繊維工業関連労働者実情を十分に考慮して実施をしていただくということ。さらにまた、公共職業安定所における広域職業紹介強化等によりまして強力なあっせんをしていただくというようなこと。  さらに第三点といたしまして、職業転換給付金制度を活用いたしまして、特定繊維工業内からの離職者の再就職につきまして本制度を活用するということ、以上につきまして労働省と密接に連絡をし、お話し合いを進めております。
  24. 高山恒雄

    高山恒雄君 ただいまの説明で、万遺憾なきを期していきたいということでありますから、今後の問題としてわれわれも監視していきたいと、こういうふうに考えております。  次に、今回は紡績並びに織布業構造改善の対象の中心になったわけです。ところが並行的にどうしてもやらなくちゃいかなかったのは、私はやっぱり染色加工だと思うんです。これをどうして入れなかったのか。染色加工こそ日本では最も国際的な競争にたえられる産業としていかなければならない問題があるのです。それはいまから数年前は、デザイン等においてもこれは一年も日本はおくれてやっておったというのが、最近は六カ月ないし五カ月に縮んできたと。その点は非常に優秀な国際競争にたえられる技術を擁したと私は思っておるのであります。ところが、技術だけではこれは発展しないのでありまして、またそこにおる労働者も恵まれない状態にあるわけです。それは何かといいますと、やっぱり近代的な産業でないために、加工賃もたたかれる、そのために労働者は非常な不幸な立場にある、こういう問題があるわけです。そこで、私は、繊維局としては、染色加工並びにメリヤス、魚網、これら最も——特に今日のような資本の自由化というような問題になってきますと、一番先にそういう国が目をつけるのは何かといいますと、日本の技術なんです。技術を先に目をつけるんです。これは染色加工もそうでしょうし、魚網も、日本の魚網としては一時は悪かったですけれども、今日は世界でも優秀な技術を持っております。こういう作業を並行的にやらなければ、単に紡績と織布業をやっただけでは、その効を発することはできぬ、こういうように私は考える。この点についてはすみやかにやる必要があると思うが、また、これに対してどういう施策を政府としては持っておられるのか、お聞きしたい。
  25. 乙竹虔三

    政府委員乙竹虔三君) 繊維産業構造改善をいたしますために、紡績及び織布だけで不十分なことはわれわれも十二分に考慮しております。特に製品を高級化いたしますために染色、整理が必要であると存じます。染色、整理につきましては目下検討中でございまするが、事態の緊迫性及び業界の盛り上がり、熱意も相当なものでございまするが、問題は、いかなる方法いかなる手を用いれば構造改善ができるかという知恵が、実はまだわれわれに十分出てこないという点で、目下勉強をしておる最中でございます。  第二に魚網でございまするが、魚網におきましては、業界の盛り上がりもだんだん出てまいりまして、今回一致した体制もでき上がりつつございますので、近代化促進法に、今年指定することに内定をいたしました。近く指定の運びになりました。ここにおいて、まず問題を洗いまして、次に本格的な構造改善をするまで盛り上げてまいりたいと考えております。メリヤスにつきましては、これは染色と同様でございますが、本年度正式に調査費を要求いたしまして、調査を進めております。
  26. 高山恒雄

    高山恒雄君 次に、これもいつも問題になる問題ですけれども、念のために申し上げたいんですが、韓国による保税加工の問題ですね、この現実は、日本政府としては十分な資料も私はないんじゃないかと思うんです。しかも大阪通産局、名古屋通産局としての資料はありますけれども、集約したものがあるのかないのか、この保税加工の問題がものすごく中小企業に大きな影響がある。特に新聞でも発表されましたように、韓国の二億ドルの借款の問題等が出ておりましたが、これらの問題は、日本中小企業に大きな影響があるのじゃないかという私は心配をしている。このことはあまり心配せぬでもいいのかどうか、また、この借款問題は実現するのかしないのか、見通しはどうお考えになっているか、これをひとつ聞きたい。  それからもう一つは、もう時間がありませんから申し上げたいのですが、蚕糸業の問題で、一つだけ触れておきたいと思います。今度も蚕糸事業団法の一部改正をやっておられます。これはもう言うまでもございませんが、戦前戦後を通じての最大の高値のいま糸が出ていることは皆さん御承知のとおり、これは農業等の政策もあるでしょうけれども、七千六百九十円なんというべらぼうなことは、これはかつてなかったのですが、これが維持できるような方向に今度の繭価で私はなったと思うのです。繭を買うのには製糸の値段がどうしても——繭価を製糸の値段に並行して高く買わにゃなりません。そうすると結果的にはもし日本の国内の消費、輸出等が伸びないというような状態になった場合に、糸高の生産安、あらしが必ず来ると思うのです。こういう問題を一体通産省としてはどうお考えになっているか。むろんいま韓国なり中共あたりから輸入もしているようでありますけれども、この高値のままで製品も安定した方向を打ち出していくことができるかどうか。これは業界も心配するところでしょうが、私はこの点はよく通産省としてはお考え願わないと、万一の場合があった場合に、ものすごい倒産も起こるのじゃないかという危険すら考えるのです。どうお考えになっているか、この二つの問題、ひとつお願いします。
  27. 乙竹虔三

    政府委員乙竹虔三君) 第一に、韓国に対しまする保税加工の問題でございまするが、これは国内の同業者に非常に大きな損害を加えるようなことには絶対にいたさないように、われわれ十二分に配慮をして、この問題を進めてまいりたいというように考えます。それから二億ドルの問題でございまするが、これは本年五月張副総理が来られましたときに、民間供与を促進して、今年じゅうに二億ドルに達する輸出承認を出してほしいという要請が非公式にあったということをわれわれは聞いておりますけれども、公式な話としては何らわれわれ聞いておらぬ、こういう段階でございます。  それから第二点の生糸の値段、ほんとうにわれわれも実はこれはいまのような生糸高では輸出もできませんので、適正な値段で国内産の繭が増産になるように、さらにまたこうなりますと、必要なる繭ないし生糸を海外から入れる必要があるというふうに考えまして、農林省とも十分に打ち合わせを進めている状況でございます。
  28. 高山恒雄

    高山恒雄君 その問題については、私もっと追及してお聞きしたいのですけれども、一つだけそれではお聞きしたいのですがね、農業政策からいえば、たばこ一アールつくって年収十三万あげる、桑園ならいままでは九万円しかあがらなかった、こういうなにがあったのですね。ところが今日の値段ですと、やはり桑園でも十三万円程度の収入があがるわけです。したがって、たばこをやるよりも養蚕をやったほうがいいという結果が生まれるわけです。ところが農地を使用している桑園は、私は平たん地の十分な土地じゃないと思うのですよ。そういう十分な土地でないものを十三万円あげるような——繭価にして……。そうしてこの日本の製糸値段というものが決定されるということになると、輸出の面からも国内の産業の面からも大きな打撃がくるのじゃないかという心配をするのです。この点はひとつもっと突っ込んだ、農林省との話し合いの中で私は考えておいてもらいたい。希望意見として申し上げておきます。  最後にお聞きしたいのですが、開銀融資の問題です。これは次官からひとつお答え願いたいのですが、金利あるいはまた貸し付けが非常に不十分だと思うのです、これは。しかも、五年計画あるいは十年計画というような長期の計画を、いまのような金利の問題あるいは貸し付け期間の問題、私は、政府がやるからには、もっと徹底した重点的なやり方をするのでないと、しかも、今度は産地組合計画に入れておられる限りにおいては、これで不成功となればとんでもないことになるのじゃないかという心配がありますから、その裏づけには何といっても金利、貸し付け期間の問題が問題の焦点になるだろうが、この点はひとつもっと十分長期的に改善をする考えがあるのかどうか、これをひとつお聞きしたい。
  29. 栗原祐幸

    政府委員栗原祐幸君) 開銀融資の問題につきましては、先生お説のとおりでございます。私どもも予算折衝の段階におきまして御期待に沿うように懸命にがんばったのでございますが、結果的にはまあこういうことになったわけでございます。今後御趣旨を体しまして十分に善処していきたい、かように考えております。
  30. 高山恒雄

    高山恒雄君 これは労働省にお聞きしたいのですが、先ほど最賃の問題、あるいは家内労働の問題についてはいろいろやっておられるようですけれども、極端に婦人労働者をどうしても必要とする産業に非常に若年労働が不足しておる。ところが、日本産業は非常に密集地帯がある。たとえば中部圏あるいは近畿圏、中国圏、北陸、こういうふうに非常に密集しておる。したがって、地域労働者をここに収容することは非常に困難だと思うのです。たとえ労働者中高年齢層を雇うにしてもないわけです。こういう状態になりますと、労務倒産は必至だと私は思う。したがって、労働省は一体しからば中高年齢層も働ける環境をつくろうという計画があるのかないのか。たとえば、国際的におくれておる日本の保育園、こういう問題を厚生省とどういうふうにお考えになっておるのか、もっと具体的なものをやはり私は政府としては責任をもって厚生省と話し合いをして、産業密集地帯にまず全面的にこれをやるならやるとか、方向を私は定めるべきじゃないかという考えを持っているのです。こういう点についてどのような処置をされるのかお聞きしたい。
  31. 海部俊樹

    政府委員海部俊樹君) 御指摘のように、繊維産業における女子、特に若年労務者の不足は最たるものがございまして、最近では先生も御承知のように、特に中部圏の繊維産業に例をとってみますと、中高年の婦人の方にパートタイムで来ていただくとか、いろいろなことをやっております。その実情を見ておりますと、やはり家庭を持っている婦人の立場というものは、職場の責任と家庭の責任と二重になってくるわけでありますので、労働基準法に定められた監督だけではどうしても保護においては十分ではございませんので、企業内に保育所を設けるとか、あるいは送り迎えに何か便宜を考えるとか、いろいろ労働省といたしましても善処いたしておりまするし、雇用促進事業団融資を通じてこれらの施設に行なうべき働く家庭婦人の環境整備ができるようにも努力しているわけであります。ただ、保育所の問題につきましては、御承知のように主管官庁が厚生省でございますので、厚生省と労働省の間の話し合いも十分いたしていると思いますが、数字その他の詳しいことにつきましては、婦人局から参っておりますので、事務局のほうからお答えをいたします。
  32. 高山恒雄

    高山恒雄君 所管が違うからということですが、それは私も知ってお尋ねしているのですが、私はそれがいかぬと思うのです。所管が違ってもやはり日本産業をどうするかという問題、産業発展のないところには国民生活の向上とか安定とかいうことはないわけです。そういう面からいって、厚生省のほうにひとつお考え願って、もっと所管が違っても私は産業のやはり育成強化のためにこの際やってもらう、ただし、いまちょっとお話が出ましたが、託児所をつくられる場合に、事業団法に基づく処置をやっていきたいというふうに言っておられますね。それで、この問題で、もしそういうなにがあって、託児所で法人の資格をとったとしますならば、これは保育園に切りかえることができるのかどうか、その点を検討しておられるかどうか、お聞きしたい。
  33. 細野正

    説明員(細野正君) ただいまの点にお答えをいたします。御説明申し上げましたのは、雇用促進事業団融資として、各企業でおつくりになる託児所についての融資をするということを申し上げたわけでございます。事業団が直接託児所をつくるというところまで現在踏み切ってはおりません。
  34. 高山恒雄

    高山恒雄君 融資だけですね。
  35. 細野正

    説明員(細野正君) そうでございます。
  36. 鹿島俊雄

    委員長鹿島俊雄君) 速記をとめて。   〔速記中止〕
  37. 鹿島俊雄

    委員長鹿島俊雄君) 速記を起こして。  瞬時休憩いたします。    午前十二時休憩      —————・—————    午後一時四十五分開会
  38. 鹿島俊雄

    委員長鹿島俊雄君) これより商工委員会を再開いたします。  先ほど委員の変更がございました。  白木義一郎君が辞任され、黒柳明君が選任されました。     —————————————
  39. 鹿島俊雄

    委員長鹿島俊雄君) 休憩前に引き続き特定繊維工業構造改善臨時措置法案質疑を行ないます。質疑のおありの方は順次御発言を願います。大矢委員
  40. 大矢正

    ○大矢正君 先日の委員会に引き続きましてお尋ねをいたしますが、まず第一点は、昭和三十九年に現在の新法が成立をいたしまして今日に至っておりますが、新法目的とするところ、それと、今度の俗称新々法といわれる、ただいま議題となっているこの法律、この法律の目的と、この二つの目的の中に私は違いはないと、こういう判断をいたしているわけでありますが、通産大臣繊維相当詳しいようで、先日来非常に当を得た御答弁をいただいておりますから、きょうはまずひとつ、その目的の上において、現行の法律と新たに提出された法律の違いは私はないのではないか、こういうように思うのでありますが、もちろんこの中身の上においては、片方はスクラップ・アンド・ビルド計画の対策、それから設置の制限、今度の新々法は御了承のとおり近代化企業の集約化、そしてスクラップ計画、このように政策的な目標とするものは、両方ともそれぞれの違いはあるが、私は目的においては、二つの法律はいささかも相違はないのではないかという解釈をいたしておりますが、私が相違がないという解釈をする考え方と、通産大臣が相違がないとする考え方の中に違いがあっては困るので、この際、念のために承っておきたいと思うのであります。
  41. 菅野和太郎

    ○国務大臣菅野和太郎君) ねらいは相違はないと思います、目的は。ただ、この法案を特別につくらなきゃならないようになったのは、この前も申し上げたと思いますが、時勢の変化と申しますか、対外的な事情ということと内部的な事情の二つによって、前の新法ではとうてい目的を果たし得ないというところから、今度また新しい法律をつくって目的を達成しようということで考えたので、ただ今度の臨時措置法では、前と違っておるのは織布業についての構造改善の問題でありますので、その点だけが前とは違っております。しかし、全体は、やはり繊維産業を何とかして改善しようという大目的のためにそれぞれとった法案であるということで、目的としては私は違っていない、こう存じておる次第でございます。
  42. 大矢正

    ○大矢正君 私は、昭和三十九年の現行法が審議をされた段階におきまして、当時法律が目的とするところは何か、特に紡績業に限って言えば何かということを尋ねましたら、これはすみやかに今日の日本紡績というものが自由な競争ができるようにしなければいかぬ、長い繊維の、歴史がたどってまいりました、常に操業短縮というような、あるいはまた長期格納というような、こういうやり方ではなしに、自由な競争ができる体制を日本紡績業の中につくり上げることが目的であると、こう言われたのです。自来今日まで三年を経過しているわけでありまして、本来からいきますと、昭和三十九年の法律の趣旨、そしてその目的から言いますると、明年度から日本紡績業は自由な立場で、もちろん設備の設置は自由でありまするが、あらゆる意味で自由な立場競争を通して紡績業発展をはかれる体制になるということを当時言われた。  そこでいま大臣は、対外的な環境の変化とか、あるいは国内の変化とおっしゃられるが、少なくともいま出ておるたとえばパキスタンを中心とした太番手の糸が日本の国にかなり量が多く漸次入りつつあるというようなことは予測できたことでありまして、これはあくまでも価格上の問題があるだけなんだと私は思うのです。それからまた、機械が近代化するにつれて能率が上がる、あるいは操業体制の変化とか、こういうことによって生産構造の上においても大幅な変化があるということは、当時から予測ができたし、当時から予見されていることであります。にもかかわらず、今日これからなお紡績業においては昭和四十五年の秋まで設備の設置の制限をする法律、それ自身を残さなきゃならぬということは、日本紡績業を一日も早く自由競争をさせようとする本来の意味とはかなり後退をしたというか、かなり情勢分析の誤りがあったということを私は指摘せざるを得ないのです。なぜそうなったかということについては、大臣のお答えをいただいてからまた私自身の考え方を述べたいと思いますが、とりあえず私が申し上げた点について御答弁をいただきたいと思うんです。
  43. 菅野和太郎

    ○国務大臣菅野和太郎君) 三十九年と本年に入ってから、私は経済情勢が非常に変わってきたと思います。で、わが国よりむしろ自由をとうとんでおる英国が、すべての産業について完全な自由主義をとらずして、政府がいろいろと国策的な経済政策をとってきたということは、英国自身においても時勢の変化ということを認識して、そういう政策をとらざるを得ないことになって、産業を民間人だけにまかしておけないという情勢になってきたと思うのでありまして、その点は日本も同じことでありまして、三十九年までは、ことに紡績業者などは、私自身紡績業者から声を直接聞いておりますが、三十九年、四十年ごろまでは紡績業というものはあくまで自力でやったので、政府のやっかいにはなってないということを彼らは常に豪語して誇りとしておるし、また今後においても政府のいろいろのやっかいは、くちばしは欲しないということまで、私にもしばしば言っておったのでありますが、最近になってきて、われわれだけで自主的にこの紡績業改善ということをやろうとしてもそれはだめだ、やはり政府がこれに助成をしてもらわなければならぬというようになってきたということを、彼ら自身も自覚してまいりまして、そうして今度の法律などもこの民間人の要望というところにやはり基礎を置いておるのでありまして、そうしてこういうような特別措置法を考えなきゃならぬことになってきたと思うのであります。要するに、わずか三、四年の間ではありますが、世界の経済情勢が変わってきたというところに根本な原因があるというようにお考えくださってよいのではないかと、こう思うのであります。そういう点からしてこの前の新法は、あくまで自主的な彼らの行動によって紡績業改善をはかろうと企てたものでありまするけれども、十分な目的を達成しなかったので、今度は自主的じゃなくして、そこへ政府の助成を得てやりたいということで、今度のような法律をつくったということでありまして、根本は時勢の、経済情勢の変化ということをお考えくださったらよいと思いまするし、また私自身としては、今後の産業というものはあくまでも官民一体になってやるべきものであるという考えを持っておりまして、民が主としてやるべきことであるが、民がやることについて足らざるところは官がこれを補うというやり方で今後すべての産業というものを導いていかなければならないのではなかろうかという考えを持っておるのでありまして、そういう意味において官民一体になって今後の産業指導していきたいという考え方でおるのでありまして、やはり今度のこの繊維産業の特別措置法も、その官民一体でやるという一つのあらわれであるというようにお考えくださってよいと思うのであります。
  44. 大矢正

    ○大矢正君 私は、今日の日本繊維産業、特に紡績業に限定をして考えれば、日本紡績業というものは国家的な立場で何ら政策上の配慮の必要はないんだというような意味で申し上げておるわけじゃない。逆です、私の立場は。なぜかといいますと、「この法律は、繊維工業の経済的諸条件の著しい変化に対処して」という目的が書かれている、経済的諸条件が著しく変化したと、こういうが、一体何が変化したというか。私に言わしめますならば、たとえば日本紡績業が労働集約的な産業であって労働力を必要とするが、しかし若年労働力が今日不足で、とうてい紡績業に必要とする若年労働力を確保することができないなどということは、今日に起こった問題ではなくて、現在の新法がこの場で議論されました段階においても十分議論の対象となったことなんです。あるいは当時から、中国あるいはまたパキスタンその他東南アジア諸国から安い糸が入ってくる、この問題にもやはり対処していかなければいかぬということも当時言われておるわけです。一体どこにこの経済的な諸条件が変化したからこの法律を必要とするのだと、こういうことになるのか私にはわからない。むしろここに書かなければならぬことは、いままでの国の施策がよろしきを得なかったがゆえに、今日すみやかにこういう法律を制定して、国家的な立場で、それが紡績といわず、機屋といわず積極的に政策を打ち出していかなければいかぬということに私はなってきておるのだと思う。当時でも私の記憶でありまするが、開発銀行が日本紡績業あるいは機屋、こういうものに対する融資のワクというものが非常に少ない、こういうことでは近代化が進まないだろうし、労働力を削減する方向で合理化をしようとしても実際的には金が不足でできないという問題が出てくるじゃないか。したがって、もっと積極的に政府はこれらの企業に対して金が借りやすいような、そうしてまたその企業近代化しやすいような方向でやるべきではないかということを私ども主張したつもりでいるのです。ところがそれをやらないから、今日この法律を再び出さなければならぬような事態に結局なっておるわけでしょう。幾ら違うと言ったって三十九年の法律制定のときには、現在の新法、この新法ができれば必ず日本紡績業は安定をして自由競争ができるんだということを政府は繰り返し強調したんだから、このことは間違いのないことなんです。しかしそれができなかった。なぜできなかったか。あなたのほうは目的の中で「経済的諸条件の著しい変化」によってなどと言って逃げようとしているけれども、その実はそうではない、国の施策がよろしきを得なかったからなんだということを率直にこの際私は表明すべきだと思うんです。  そこで、大臣に再三同じような立場から質問してもなんですが、局長はどう思いますか。あなた、「経済的諸条件の著しい変化に対処して」といったって、三十九年の新法が議論をされた段階と今日の時点で、経済的諸条件が著しく変化した、どこが変化している、具体的に言ってもらいたい。われわれが指摘をしない部分で、変化があったならあったと言ってもらいたい。
  45. 乙竹虔三

    政府委員乙竹虔三君) 先生指摘のとおり繊維産業特に紡績業に対します政府、通商産業省の指導方針につきまして、十分なる反省をしなければならないと思っております。で、その一つは、旧法のたびたびの改正にもかかわりませず、依然として需給調整中心にしてきた繊維政策が、新法の自由経済への展開、これが新法の期間をもってしては、非常に遺憾ながら過去の需給調整政策から抜け出すことが非常にむずかしかったということが、深刻なるわれわれ反省をしなければいけない根本でございます。しかし、さしあたり今回の法律を出さねばならなくなりました直接の動機になっておりますのは、三十九年の経済不況があまりにも深刻でございまして、新法路線をそのまま進めていった場合に、日本紡績業が崩壊をするという危険におちいったわけであります。したがいまして、新法制定当時から申しますならば、若干異例とも考えられたのでございますけれども、四十年の十月に不況カルテルを設けざるを得ず、さらにそれの第二次延長をも考えざるを得なかった、ここに今回の率直なる、法律をつくらなければならない直接の動機があったと思います。
  46. 大矢正

    ○大矢正君 あとからの質問関連が出てまいりますからお尋ねをしておきますが、現行の新法をこの法律によって昭和四十五年まで二カ年間延長をするという根拠は一体何なのか、これをお答え願いたい。
  47. 乙竹虔三

    政府委員乙竹虔三君) 新法の延長は、施行の時期によりまするけれども、一年八、九カ月の延長になるかと思うのでございまするが、この直接の構成は、今回、紡機の一括処理を終局的には民間の経費をもって一括処理を行なう。しかし、終局的には民間の経費でありますけれども、現時点としてその多額の経費調達が民間では困難でございまするので、政府繊維の事業協会に金を融資いたしまして、その融資した金をもって過剰設備の買い上げ廃棄を行ないます。この買い上げに要した経費を五年間かかって民間から事業協会に分割納付させるというたてまえになっておりまするが、この一括処理に要します経費を、いわば返還せしめるわけでございまして、返還せしめますために、制限登録制のある程度の延長はやむを得ない、つまり制限登録制によりまして、返還に要します経費分を収益より生み出させる、こういう構成にしたわけでございます。
  48. 大矢正

    ○大矢正君 次に、今度の法律の中にはもちろんあらわれてこないことでありますが、三百万錘を目標にして廃棄をする、ことしは単年度で二百万錘は一括処理をする、こういう考え方のようでありますけれども、そこでその生産と需要との関係から考えてみて、三百万錘を廃棄すれば、生産と需要の関係が、これから将来ともに一致をするという何か根拠があるのか、この点をお伺いしたい。
  49. 乙竹虔三

    政府委員乙竹虔三君) お答え申し上げます。現時点におきまして、綿糸を中心といたしまする紡績業の糸需要をはじき、計算をいたしました。その算出によりますると、四十二年度の糸需要は百七十万三千トン、うち紡績糸が百三十万三千トン、うち綿、スフ、合繊糸が百十万トン、うち第一区分の糸が九十五万八千トン、これを生産するに要します第一区分の所要錘数が、一応二交代で換算をいたしまして、一錘量の生産増加を織り込みましてそろばんを入れますると、一応千百万錘弱というふうになります。この千百万錘弱と、それから現存いたします第一区分のこの四十二年の二月の登録錘数でございますが、千二百五十万錘、この差額は約百六十万錘でございます。で、百六十万錘は過剰設備でございますし、さらに今回の措置によりまして第四区分から第一区分に編入がえになる設備分の過剰分、さらにまたスクラップ・アンド・ビルドの方式によりましてスクラップをしておりまして、なおビルドをしていないいわば復元の権利を持っておりますものが十万錘、さらに三交代が約四十万錘分ぐらい本年見込まれますが、これによります能力増加十万錘以上を足しますると、二百万錘のものが本年度過剰ということになるわけでございます。  それから以上のような同様の計算を、四十六年度すなわち本目標達成年度でいたしますと、過剰度が約二百八十万錘というそろばんが出ます。この程度のものが過剰であろうということで、これを目標にして廃棄をいたしたいと考える次第であります。
  50. 大矢正

    ○大矢正君 本年度はこの二百万錘を一括処理する、すなわち廃棄をするということでありますが、いつの時点でこの廃棄をすることになるか、これは政府側が考えることでありますけれども、しかし四十二年度で一括廃棄になるか、あるいはこの法律が実施施行されてから一年以内ということになると、四十二年度という年度は関係がなくなるわけでありますが、いずれをとりましても一年以内に二百万錘を廃棄するという方針においては変わりはない。とすると、そこで心配なのは、なるほど漸次この在庫がふえていることは間違いがないようでありますけれども、しかし今日なお二百円を上回る糸の値段、その中で二百万錘を一括処理をしてしまうということになりますと、なるほどそれは現に使用されていない紡機もあることでありますから、全部が生産に影響あるものとは思わないが、それが理由となってまた再び糸の値段が上がるという事態が起こりはしないかどうか。たとえばこれから五カ年間に三百万錘を状況と必要に応じて廃棄をするということであれば、市況に照らし合わせながら十分考慮をすればいいのでありますが、しかし、考え方としては一年間のうちに二百万錘廃棄するということでありますから、それがこの市況に影響をして今日よりなお高い糸の市況ができ上がるような心配がないのかどうか、この点お尋ねしておきたい。
  51. 乙竹虔三

    政府委員乙竹虔三君) 御指摘のように、五年間にわたりまして緩やかなかっこう廃棄を人為的に進めるということは一つの方法でございますけれども、すでに過去の経験によりまして、需給調整に堕するということは、新法の本来の目的と背馳する方向になります。したがいまして、できるだけすみやかな期間に一括廃棄をいたしたいというのでございますが、御指摘のように、この廃棄のしかたいかんによりましては、市況を非常に硬化せしめるおそれがございます。われわれといたしましては、関連需要者、特に最終需要者たる消費者に対する影響を十二分に考えなければなりませんので、市況の鎮静を待ちまして、市況の許す限りにおいて市況を刺激しないような時点、かつ数量、かつやり方によりまして本来の願っております廃棄をやってまいりたいと思うわけでございます。
  52. 大矢正

    ○大矢正君 あなたは市況を見ながらやるとこうおっしゃるが、一年以内に二百万錘を廃棄するということははっきりしているわけでしょう。   〔委員長退席、理事近藤英一郎君着席〕  それは一年以内の中で市況を見たって、そんな簡単なものじゃないと思うのですよ。だからどういうわけで一年間で集中をして二百万錘を廃棄しなければならぬのかという理由なり根拠なりというものが私にはわからないんですよ。将来三百万錘廃棄をしなければ生産と需要の関係からいって、あるいは設備の近代化を行なったという前提のもとに計算をしていけば、需給のバランスがとれないんだと、こういう意味で言われることはわかるんです。しかし、二百万錘というものは単年度でやるということは、これははっきりしているわけだから、単年度の中であなた市況を見るとか見ないとか言ったって、そんなごく短期間のうちにやれるような内容のものじゃないんじゃないかというふうに思うが、どうか、とこういうわけです。
  53. 乙竹虔三

    政府委員乙竹虔三君) 御指摘のとおりでございまして、需給計算上は確かに二百万錘程度の過剰が現在——これは程度と申し上げるよりしかたがないのでありますが——存在すると思いますけれども、いまのような四十番手で二百円というふうな相場では、私はこれはもう現在においては百万錘も廃棄ができないと思います。ただしかし糸値が必ず落ちると思います。と申します根拠は、コストから考えまして、さらにまた現在のような糸の値が続く場合におきましては、相当海外からの多量の輸入のおそれがございます。その二点から考えまして、糸値は近い将来において必ず鎮静をしてまいる、でその鎮静した状態におきまして、これを乱さないような程度を限度として二百万錘程度を目標に一括処理いたしたいと、こういうわけでございます。
  54. 大矢正

    ○大矢正君 次に大臣にお尋ねしたいのでありますが、二百万錘は当面、将来は三百万錘、この目標に向かって廃棄するわけでありますが、法律の中にもあらわされておりますとおり、この廃棄についての買い上げの資金は、全額業者が負担をしなければならぬことになっておりますね。実はたとえばいま同じような例が石炭企業にもあるわけでありますが、これはもちろん業者も納付金を納めますが、国もある程度の資金を出して両方の金をあわせて、御存じのように、炭鉱は閉山をしていって、そのつぶした炭鉱に金を払うというやり方をしております。ところが今回のこの紡績に関しては、スクラップについて何ら政府が金を出さないという、この点はスクラップを進めていく上において私は非常な障害になるのではないかという感じがするのであります。たとえば法律ではあとに残った業者が一錘当たり千百円をこえない限度においてと、こう書いてある。たとえば千円と仮定いたしますと、百万錘持っている工場の九大紡の中の一つの会社を考えてみた場合に、これはたいへんな金額になるわけですね。一割かりにやるということになりますと、結果としては、百万錘であれば千円と仮定しても十億の金をスクラップに投入しなければならぬ、こういうことになるわけです。ですから、それが大きな企業であっても、小さな企業でありましても、私はその経済的な負担というものは、なるほど将来はそれによって業界が需給の安定をはかることができるのでありますからプラスになることは当然のことではあったとしても、政策的にそれを国が行なわしめるというのであれば、単に融資ではなしに、国が半分は金を出す、半分は業界が出しなさいというような考え方があってしかるべきだと思うし、そういうことをやらないと、私は、この紡績のスクラップ計画というものは九大紡、新紡、新々紡その他のそれぞれの立場もあるし、私はむずかしいのではないかという感じがするものでありますから、どうお考えになっているか、これはひとつ大臣からお答えいただきたい。
  55. 菅野和太郎

    ○国務大臣菅野和太郎君) 今度の資金の問題ですが、大体紡績業者のほうからは、あくまで自力更生でやりたい、だがしかし、いま直ちに全部の廃棄の金を調達することは困難だから、五カ年の間に返却するが、その間だけ融資をひとつあっせんをしてくれということでおるのでありまして、私は、その繊維紡績業界もさすがに日本の重要産業として今日までやってきたのでありますからして、彼らは相当なやはり自力を持っていると私は思うのであります。したがって、かれらが自力でやるという確信を持っている以上は、私はやはり自力でやらすべきだと考えております。決して政府のごやっかいにならぬが、融資だけひとつお願いしますということを申し出ているわけでありますからして、まあ産業界というものは、できればもう民間にやらすのが私は一番いいと思っているのでありますから、しかし、先ほど申し上げましたとおり、経済事情の変遷によりまして、民間だけでは今日ではすべての産業が動かないという情勢になってきたのでありまして、紡績業がとにかく政府の援助をお願いしたいということを申し出たこと自体が、すでに彼らの自力では全部がやれぬということを意味しているのでありますが、しかし、この廃棄に必要な資金は自力でやりますということを申し出ておりますから、十分自力でやらしても彼らはやれるのではないかと、こう私は考えておるのであります。
  56. 大矢正

    ○大矢正君 繊維局長ね、この法律を出すにあたっては、当然のことながら、業界と十分な話し合いの上にここまで進めてきたものだと私は解釈するわけですよ。そこで、その前提であなたに質問をしたいわけでありますが、かりに二百万錘単年度のうちで廃棄をすることについて二つの方法があるわけですね。業界が自主的に事業協会との間に話し合いをして二百万錘が廃棄されるという場合と、それから通産大臣の共同行為、これによってやる場合と二つ考えられるわけですね、現在までの時点で、あなたが業界と話されている経緯から判断をすれば、どういう方向にこれが進んでいくのか、この際ひとついままでの業界との話し合いも含めて御答弁をいただきたい。
  57. 乙竹虔三

    政府委員乙竹虔三君) 過剰設備の一括処理を自力でやりたいというこの自主精神と申しますか、大臣答弁されたとおりでございますが、もうちょっと若干補足いたしますと、最初は英国の例によりまして政府が補助金を出してほしい、廃棄補助金を出してほしいという要請が非常に強くございました。これは事実でございます。しかし、他の業界との関連ないしまた政府が他の方法をもって、てこ入れといいますか、力を貸すということであるならば、終局的には業界の負担で過剰設備一括処理ができるということを業界が納得いたしたわけでございます。で、できるなら自分たちでやろう、こういうふうに立ち上がったわけでございますが、納得いたしましたのは、業界の大部分は自力でこの際競争力の強化をせねばならないという覚悟はきめておるのでありますけれども、若干でも例外と申しますか、人がございます場合には大多数の考えはくずれてしまうわけでございます。くどくど申し上げるまでもなく、つぶさない人があり、ないしは納付金を納めない人があれば、その人だけが非常に有利な地位に立つわけでございますので、大部分の人の意思が実現できるような突っかい棒を政府が与えてあげる必要が出てきたわけでございます。そういうやり方が今回の法律の中に組み込まれておりまして、すなわち過剰設備廃棄業界の共同行為によってやるけれども、これは必要ある場合には大臣が指示をするということで、この指示は遺憾ながら私は若干例外の人がないことはないと思いますので、指示は出さざるを得ないというふうに考えておるわけでございますが、指示によりまして、事実上大部分の人の意思が、例外的な少数の人にも強制をされるということになると思います。そういうやり方が現在のところ考えられるというふうに思います。
  58. 大矢正

    ○大矢正君 こまかいことをお尋ねするようでありますが、この法律が施行されて、具体的にスクラップ計画が進められる段階で、この二百万錘というものはあくまでも個々の業者の自主的な申し出によって、とりあえずやってみようという立場でお考えになっておられるのか、あるいはそうではなしに、特定精紡機の数に対してスクラップする錘数が結局のところ一割なり一割五分なりという数字が平均値として出てきた場合には、全企業にわたって一割なり一割五分というようなかっこうでスクラップを進めるというお考えなのか、その辺の今日の見通しをこの際承っておきたいと思います。
  59. 乙竹虔三

    政府委員乙竹虔三君) 任意供出のものも今回は有償でございまするし、それからまた大多数の方々は進んで自分らでこの過剰設備処理をやらなければならぬというふうに覚悟をきめておられますので、任意供出の紡機相当あるかと思いますけれども、共同行為の指示は先ほども申し上げましたように必要であると思います。で、その場合共同行為のやり方が、すなわち大臣の指示となりまして、任意の供出に加わらない人にも指示するということになるわけでございまして、その共同行為のやり方がどういうかっこうでできるか、これがいま先生のお問いただしになられたポイントであろうと思うわけでございますけれども、どういうふうになりますか、ちょっと想像はできませんけれども、ときによりますればやはり現有設備に対して、それを基準にして共同行為のもとと申しますか、ものさしができるということは、想像することは可能であると思います。
  60. 大矢正

    ○大矢正君 通産大臣にお尋ねしますけれども、まあ特定精紡機といいましょうか、この法律の対象となるもの、かりに千二百五十万ないし六十万錘と計算をすると、そのうち三百万錘は廃棄するわけでありまするからして、九百五、六十万錘が一残る。そのうち百五、六十万錘はすでに近代化がある程度終わっておる。したがって、これからその設備それ自身の近代化なり合理化なりというものを進めなければならない対象となる紡績機械というものは、錘数でいうと約八百万錘だ、こういう御説明が前に一度あったわけですね。この八百万錘の、いろいろ機械も違いますから、うんとおくれておるもの、あるいはほとんど近代化あるいは合理化したもの、いろいろあると思いまするが、その近代化のための所要資金というものは四百億円かかるんだ、四百億円のうちの半分の二百億円は、これは事業主といいますか、業者それ自身の手によってひとつ金は集めなさい、あとの二百億円は開発銀行なりその他の政府関係金融機関を通して金を融資してやる。この四百億円で八百万錘のまだ近代的になっていない今日の紡績機械を近代化する、こういうことでありますね。そこで、これはやはり四百億円という金もなるほど膨大ではあるが、業者それ自身において二百億円の金をひとつみずからの力で、借りるのか内部留保を取りくずすのか、いろいろあるだろうと思うが、とにかく自主調達をしなさい、こういうことでありますが、これ自身私は非常にむずかしさがあるんではないかという問題が一つと、それから政府紡績業に対して融資をするといわれる二百億円の資金の確保についても、現在のような状態では、その資金の確保というものは、なかなか私はむずかしかろうという気がする、金融の面からいきますとですね。それからそれがまたある意味でコストにはね返ってくる場合に、政府がかけ声をかけて近代化近代化といっても、そううまく今日近代化が進むような情勢はなかなかこないのではないかという感じがするが、大臣のお答えをいただきたいと思います。
  61. 菅野和太郎

    ○国務大臣菅野和太郎君) 問題は、やはり業者自身の近代化の必要性を感じておるかどうかというところに私は問題があると思うのであります。先ほどもちょっと申し上げましたが、業者自体はこの際にこの構造改善をやらなければ紡績業というものは今後浮かばないということについては、彼らはそれを認識し、また覚悟しておると思うのであります。そこで二百億円は自力でやりますと、で、二百億円は政府のほうのあっせんによって融資をもらいたいということを言っておるのでありますが、今日紡績会社というものは、新しくできた紡績会社はいざ知らず、古くからある紡績会社というものは、もうほとんど帳簿上では資産がみなそれぞれゼロになっておりますし、でありますから、土地の価格なども評価額というものはほとんどわずかでありますからして、したがって彼らはそういう点においてもいわゆる担保能力は十分持っておりますし、また、彼らの力で二百億円の資金というものは私は紡績業界ならばできるのではないかという考えをしておりまして、   〔理事近藤英一郎君退席、委員長着席〕 要は、先ほど申し上げましたとおり、紡績業界自身が、この際何とかしなければいかぬという覚悟を持ってすれば私はできるのではないか。もし彼らがそういう覚悟がないのであればまたうやむやになってしまうという危険があると思うのでありますが、幸い、私はこの法律を出すについては、業界の人と二度も三度も会って彼らの覚悟を尋ねて、そして彼らが十分な覚悟をしておる。いままで繊維産業については政府はいろいろ施策をしたが、みな効果が出てない。効果が出てないというのは、業界自体が政府の施策に共鳴せずして、むしろ違反した行動をとってきたじゃないか。だからして、せっかく繊維産業改善をやろうとしてもみな失敗をしているじゃないかと。だからして、今度はほんとうの腹を聞かしてもらわなければやらないということを私は念を押したのであります。でありますからして、私の見たところでは、彼らはよほどの覚悟をしていると思いますから、したがって、御心配のようなこれほどの多額の資金も彼らの力をもってすればできるように私は考えている次第であります。
  62. 大矢正

    ○大矢正君 政府融資は。
  63. 菅野和太郎

    ○国務大臣菅野和太郎君) 政府融資は、先ほど申し上げましたが、担保力を紡績会社自体は相当持っておりますから、したがって、私はそれだけの融資は十分にできると、こう考えております。
  64. 乙竹虔三

    政府委員乙竹虔三君) 本年度四十五億の金を開銀のワクに計上いたしておりまするが、これにつきましては、五カ年計画を大蔵財政当局に説明をいたしまして、そのおおむねの了承を得た上で本年度分といたしまして四十五億を計上したということで、私たちは二百億は大蔵として見てくれるものというふうに考えております。なお、御指摘の好景気であるという点、その点につきましては、一面におきまして業者の心持ちがゆるむというおそれがなきにしもあらずでございますが、しかし、それよりもむしろ収益力の増大とともに投資意欲が起こってまいりまして、むしろ近代化、合理化のピッチないし可能性は進むというふうにわれわれは考えております。
  65. 大矢正

    ○大矢正君 通産大臣の話を聞いていると、今日、日本紡績業というものは力があるのだと、力があるから自分でやれるんだ、だからそんなに心配することはないというふうに私には聞こえるのだが、それならば何のためにこの法律を必要とするのかということになると思うわけですよ。近代化もしなければいかぬ。スクラップもやらなければいかぬ。それからある意味については新々紡等においてはグループ化しなければいかぬ。いろいろ目標を設定してこの法律が出されているわけでしょう。あなたの言う答弁だと、日本紡績業界というものは長年つちかってきた力があるのだから自主的にやれるし、担保力もあるし、やっていけるのだ、こういう御説明なんだが、それならば何もこの法律を必要としないわけですよ。担保力があって、力があれば金は黙っていたって貸すわけで、ただそこに金利の差の問題が出てくるかもしれぬけれども、その必要性はないわけでしょう。だから、どうもあなたの発言からいくと、この法律は要らないからやめてくれというふうに私には聞こえるんです。
  66. 菅野和太郎

    ○国務大臣菅野和太郎君) 二百億円のそれだけの力があるかどうかという御質問だったから、二百億ならばそれだけの力はいまの紡績業界はあるということを私は申し上げたわけであります。しかし、全体としていま彼らが自分だけの力ではいかぬから政府にたよってきているということなんであります。がしかし、政府もやるが、われわれのほうでもこれだけのことはやりますということで今度のこの法律案ができているのであります。全体的に見て彼らの力ではやれないということを彼らは覚悟して、そういうように彼らは考えたからこういう法律ができたのであります。そういうふうにひとつ誤解のないようにお願いしたいと思います。
  67. 大矢正

    ○大矢正君 この間委員会が浜松へ行って、私どもが視察をし、そうして業界の代表の方々と意見を交換した際にも聞かされたことでありますけれども、この近代化というものについては、資金面で非常に苦しみがあることがやはり述べられているわけですね。この間たまたま、私は三万錘の業者でありますがという前提で話があったが、やはりこの金繰りの面ではそんなに簡単なものではないという説明をしているわけですよ。そこで私は申し上げたいと思うのは、かりに三万錘持っていて一万錘売ったとすると三千万円ですわね。三千円で買い上げるわけだから三千万円ですわね。ところがあとに自分のところには二万錘残るわけだ。二万錘は残るのだけれども、今度は二万錘が納付金として納めなければならない。金額は幾らかというと二千万になるわけでしょう。一錘当たり千円だから、そういうことになるわけでしょう。そうすると一万錘廃棄して協会に買わせて三千万円もらうけれども、そのうち二千万円は——それは五カ年間だから年次の相違はあるにしても——二千万円は協会に持っていかれて、手元には千万円しか残らないわけでしょう。それで合理化をやれとか近代化をやれといってもなかなかたいへんだと、私はこう思うのですよ。ですから、さっきの質問に戻るようだが、やはり政府自身、炭鉱がやっているように、半分なら半分、まあ四割でもいいですわ。とにかく国が金を出してその負担を軽くしてやるような道、これは私は単に紡績だけじゃなくて、機屋の場合だって通用することだと思う。なるほど機屋の場合は半分は国が助成するということになっているが、もっとこの際やはり思い切ったことをやる。そのかわり近き将来には自由な競争繊維産業の中で行なわれるというような体制をすみやかにつくり上げてやるべきだし、そのためにはいまのような、業者にお前たち負担をしなさいということになると、なかなか業者の段階といえども数多い中でありますから、自分のそろばん計算もあるだろうし、あるいは九大紡がどう出るだろうかという見方もあるだろうし、私は非常に複雑なものがからまってくるから、もっと国はそういう意味でこの廃棄についての、特に紡績の場合には廃棄についての資金面に対する考え方があってしかるべきじゃないかと思うのですが、私のいま申し上げておることは、これは無理ですか。これ一万錘廃棄して三千万円もらったって二千万円持っていかれるのですよ。一千万円しか残らないのですよ。それでどうやって近代化がやっていけるのです。
  68. 菅野和太郎

    ○国務大臣菅野和太郎君) まあ大矢委員がいろいろ御心配になっておられる点は、私もそういう心配はなきにしもあらずでありますがしかし、業界のほうでまあこれだけは私どものほうでいたしますからということを説明してきておりますから、一応私たち業界のことばを信じて、彼らでできるだけのことはやらしていきたい。足らぬ部分は政府が助成するということでいきたいと考えておりますので、まあ現時の段階においては、業界のそれだけの申し出をわれわれはそのまま信じて、それで彼らの力でひとつできるだけやらすようにして、足らぬものだけは政府が助成するというやり方でいきたいと思います。なお、しかし、繊維産業は石炭産業とは違いまして、私はこれはやはり依然として日本の重要産業でありますし、また、繊維産業自体は私は日本人に向いておる産業だと考えておりますからして、したがって、私は繊維産業がこの際構造改善をやればりっぱに私は生き返り得る産業だと考えておりますし、したがいまして、この際、近代化についてできるだけの援助をしてやるということ、しかも彼らは自力でやりたいのであるが、自力でできぬ分だけひとつ政府が援助してくれということできておりますから、私は、これが繊維産業というものが将来性のないものであれば、それはいろいろ問題があるかもしれませんが、将来性のある日本産業としてりっぱに育ち得る、また、いままで育ってきたし、今後もとにかく輸出面においても二割を占めておるのでありますから、日本産業としてりっぱに育ち得る産業でありますからして、したがって、そういう点において、私は金融界もまた援助もするし、してくれると思うのでありまして、そういう意味でできるだけやはり彼らのできる範囲内において自力でやらすという方針で私はいったほうがいいんじゃないかという考えを持っておる次第でございます。
  69. 高山恒雄

    高山恒雄君 関連一つ質問したいのですが、大臣の言っておられます、その自力自力と言われるのは、私は三十五、六社であると思うのです。三十五、六社は自力はあると思うのです。あと百社前後がどうなるかというのがいまの大きな問題というか、大矢さんの質問だろうと思うのです。したがって、これに対する処置というのは私はやはり長期資金、政府はこの長期資金——大臣は見えなかったのですけれども私の質問に対しては…。この長期資金をやはり融資する必要があると思うのです。まだ短期ですよ、いまのやつは。これを大臣はやはり自力のある産業と自力のない産業を一緒にしてもらっちゃ困るのですから、そこでその長期資金をどうするかということ、これは百社前後の私は弱小産業だと思う。これをやることがすでに弱肉強食を食いとめる一つの手段なんですよ、これは。ほうっておいて力があるものだけがやるというなら、何もこんな法律は要らないのです。やはり力のないものをいかにして近代化して日本産業としてやらすかというところに問題があるので、この点をひとつどうお考えになっておるのか、御答弁願いたいと思うのです。
  70. 菅野和太郎

    ○国務大臣菅野和太郎君) いまのお話のとおり、これは短期の金融でありまして、したがって、われわれは五年間でまあうまくやってくれればいいという念願を持っておるわけであります。がしかし、中にはそれだけではいけないものもあるということは想像ができますから、そういう場合には開銀の融資などでも、業者に応じてやはり貸し付け期限を少し長くしてもらうというようなこと、あるいは金利の点などもできるだけひとつ安くしてもらうとかということについては、実はこれはわれわれとしても努力したいことだと、こう考えておる次第であります。
  71. 大矢正

    ○大矢正君 大臣、私は考えるのに、日本紡績というものが企業として安定をすれば他にどういう影響を及ぼしてもかまわないというものではないと思うのです。特に、この春以来のように糸値が暴騰するということになると、それが国民の生活に及ぼす影響もまことに甚大なものがあるわけですよ。したがって、糸の値段というものは、やはり紡績業者というものが赤字にならない限度で安定をする必要性がそこに存在するわけです。それを無視してものを考えるわけにいかないから、私どもはここで無理な形で、おまえら力があるのだから、その力を利用して金を借りてやればいいじゃないかというやり方をしていけば、必ずそれが糸値に響いてくるという問題が出るでしょう、企業である限りは、自分の会社をつぶすわけにはいかないのだから。そうなれば操短をやるか何をやるかは別にしても、やはり糸値をつり上げて合わせなければならないという問題も出てくるわけですよ。ですから、そういうことが輸出の上や国民の生活に与える影響が大きいから、もっと国家的な視野に立ってものを考えてやるべきで、単に土地を持っている、建物を持っている、不動産を持っているから担保には十分間に合うから金借りてやればいいじゃないかと、こういうことじゃいけないのだということを私は強調しているわけです。衆議院のほうとの関係もありまするし、あまり長時間この質問をしてもなんでしょうから、おおむねあと二、三点でやめたいと思いますけれども、ただ午前中、高山委員が労働問題について指摘をいたしまして、一方においては若年労働力の確保を、また一方ではスクラップを進めていくわけでありますから、それが逆に、新たに出るほかの企業体なりその企業体の中で吸収できない部面の労働力をいかにしてこれを吸収していくかという問題も派生してくるわけです。したがって、こういう点については、法律の中に、なるほど職業の安定について配慮せいとか、いろいろありますが、単にこれは精神的な規定ではなしに、通産省みずからも繊維産業紡績業というものをかかえておる立場から、十分にひとつ考えてやってもらいたいと思うのであります。  そこで、最後に大臣の決意のほどを承っておきたいと思うのでありますが、私は現在の新法、それからこの新法もそうでありますが、そのねらいとするものは国際競争にもたえ得る、そうして自由な競争ができるような企業をつくり上げなければならぬということが最大の目的だと思うのであります。だといたしますれば、それは法律があるがゆえに、これから三年、五年などという長期にわたって設備の設置制限をしたり、あるいはまた法律に基づいて措置をするのではない、ほんとうに自由に設備の設置も強化できるし、しかもそれでなおかつ国際競争にも、それから企業自身の経理状態についても安定できるような体制をつくり上げておく必要性があるとすれば、法律の期限が四十五年度まであるいは四十六年度までであるというようなものであったとしても、ことしの予算はもうすでに決定を見てやむを得ない部面もあるけれども、明四十三年度以降の予算編成にあたっては、政府はもっと前向きに、いかにして紡績——機屋を含めて——企業の負担を軽くして、自由な競争が一日も早く確立できるかということのための助成なりそれから融資なりというものの道を早く見つけて、新法なり新々法という法律が必要のない事態を一日も早くつくるために私は最善の努力をすべきではないかと、こう思いますが、大臣のお答えをいただきたいと思います。
  72. 近藤信一

    近藤信一君 関連して。もう終わりらしいから関連してちょっと。いま大矢委員からも御質問がございまして、特に小零細企業、機屋、織布関係というのは非常に多いのですよ。機屋の関係におきましては五カ年計画なんですね、このことは昨年、私が少なくとも三カ年でこれをやれ、そうでなければその間に、五年なんという長いことを言っておると、その間に経済的変動があった場合、一体どうするのだ。一昨年から繊維関係はおよそこういう左前になって傾きかけておったところが、ベトナム戦争の結果、また中国における文化大革命の結果は、香港の紡績関係が一応ストップした、そこで日本に対するところの注文がずっと入ってきた。私が聞くところによりますと、そこで若干今日は息づいているわけですよ。それで、いまのところの見通しからいけば、若干上向いているからいいようなものの、これが一たび経済的変動があって、がたっときた場合に、この中小零細な機屋なり紡績というものは直ちに私はお手あげになると思うのですよ。構造改善をやっていく過程においてお手あげになっていくという現実が私は出てくるのじゃないかと思うのであります。  それからもう一つは、先ほど高山委員も言っておられましたように、これも昨年局長にいろいろと注文もつけいろいろとお尋ねもしたのですが、やはり繊維関係を論ずる場合に、染色、整理を抜きにしての問題はあり得ないのじゃないか、こういうことを局長に昨年よく言ったのです。局長もごもっともだと、こう言って見えたのです。ところが、今度いよいよ法律化された場合には、そういう問題は一つも取り上げられていない。特に染色、整理の構造改善をやろうとすれば、局長も先ほど御答弁なさっておられましたように、非常にそれは問題は大きいと思うのですね。だから、今度の法律の場合には出てこなかったと思うのですけれども、いまなおそういうことを研究しているというおことばでございましたけれども、勉強したり研究したりしているうちにどんどんと倒産の方向へいく場合もあるのだから、そういう長期の展望に立って私は法律というものを立てなければいかぬと。  それから、先ほど大臣は、まあ何とかうまくやってくれるだろう——これは、うまくやってくれるだろうというのは、大企業はうまくやっていけるかもわからない。しかし、中小企業においてはそううまく簡単にいかぬと私は思うし、法律が一応改正になってしまって、今度は制定下になってしまえば、これは政府は法律によって今度責任を持つわけなんで、うまくやってくれるだろうという、あわいあなたの考えだけでうまくほんとうはいけるかどうか、これはちょっと私は心配になるのですが、この点をあわせて大臣の決意のほどをひとつお聞かせ願いたいと思うのです。
  73. 菅野和太郎

    ○国務大臣菅野和太郎君) 先ほど大矢委員より、今度の法律案についてのいろいろ御批判並びに御教示を仰いだのでありますが、なるほどわれわれは内外の需要に応じて今度の法律案というものを考えたのでありまするが、さていよいよこれを実行して、はたしてそれだけの効果を上げるかどうかということについては、これはわれわれまあ上がるという自信を今日は持っておりますけれども、しかし今後の情勢などによって、あるいは不都合の点があるとすれば、これはもちろんそれを改正をするのにやぶさかではありません。  また、もう少し近代化を早めるということは、これは必要なことはわれわれも痛感しておるのでございまして、何も五年を待たなくても、できれば早くやったほうがいいという考えをいたしておりまするからして、そういう点についての予算化などについては、これはひとつできるだけわれわれも考えて、来年度につきましては、本年度の実績を見てよくひとつ予算化の問題も研究してみたいと、こう考えておる次第でございます。  なお、染色、縫製員の問題については、今度の法律案に出ておりませんが、この必要性については私たちも痛感いたしておるのでありまして、まず基本的なもの、業界である紡績業と織布業に今度は着手したのでありますが、次には染色、縫製員については考えなければならぬというように考えておりますから、これは必ず私は近い将来においてこの問題について皆さん方のまた御協議をお願いしたいと、こう存じておる次第でございます。  で、まあいずれにいたしましても、この繊維産業のこの近代化の問題は、これは時を争うときであり、私は本年度から早々にこれに着手しなければ時を逸するという考えでおるのであります。それが内外の情勢がそういう情勢になってきたということについての逼迫感を、急迫感を私は持っておるのでありまして、したがいまして、この繊維産業の今度の特別措置法というものは、ひとつ皆さん方の御了解を得て、皆さん方の御賛同を得てこれを実現化して、そして日本繊維産業というものをりっぱにひとつ構造改善をして、あるいは低開発国との競争、あるいは先進国との競争にもたえ得るし、国内においては自由競争をやって、そして適当な市価を持ち、適当なまた価格をもってよい織物が売買されるというふうにしていきたいという考えを持っておるのでありまして、で、この繊維産業日本の重要産業であるゆえに痛切にそういうことをわれわれは考えておる次第でありまして、そういう点についてわれわれは業界ばかりにまかす——私は自力更生ということを彼らに言っておりますけれども、しかし彼らの自力更生に待つことはもちろんでありますが、同時に、政府自体がやはりこれに対しては大いに指導して、そして彼らがほんとうに自力更生でやっていけるように指導したいという考えをして、先ほども申し上げましたとおり、あくまで繊維産業についても、官民一体でひとつ新しい繊維産業を生ましめるように努力したい、こう考えておる次第であります。
  74. 鹿島俊雄

    委員長鹿島俊雄君) 他に御発言もなければ、本案に対する質疑は尽きたものと認めて、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  75. 鹿島俊雄

    委員長鹿島俊雄君) 御異議ないと認めます。  それではこれより本案の討論に入ります。御意見のおありの方は、賛否を明らかにしてお述べを願います。——別に御意見もないようでございますが、討論はないものと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  76. 鹿島俊雄

    委員長鹿島俊雄君) 御異議ないと認めます。  それではこれより採決に入ります。特定繊維工業構造改善臨時措置法案を問題に供します。本案に賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  77. 鹿島俊雄

    委員長鹿島俊雄君) 全会一致と認めます。よって本案は、全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  なお、議長に提出すべき報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  78. 鹿島俊雄

    委員長鹿島俊雄君) 御異議ないと認め、さよう決定いたしました。     —————————————
  79. 鹿島俊雄

    委員長鹿島俊雄君) 次に、衆議院送付石油開発公団法案を議題といたします。  本案につきましては、すでに提案理由説明を聴取いたしておりますので、まず政府委員から補足説明を聴取いたします。両角鉱山局長
  80. 両角良彦

    政府委員(両角良彦君) 補足説明を申し上げます。  エネルギー革命の進展と、わが国経済の著しい発展によりまして、石油は今日わが国の最も重要な基礎エネルギー資源でございますが、本年二月総合エネルギー調査会の答申によりましても、今後ますます石油の重要性が増すことが予測されております。かような意味合いから、これをいかに確保してまいるかということが、今後のわが国の石油政策の最も重要な課題であると存じております。しかるにわが国におきましては、原油の九九%は輸入に待っております。また、そのうち八六%は外国資本からの供給に仰いでいる状況でございます。さらに地域的に申しますと、中近東から全体の九〇%を輸入をいたしておる、かような供給体制の上に幾多の問題がございまして、今後原油の供給確保につきましては、自主的な体制を整備するということがきわめて肝要になってまいったと考えております。さような見地から、諸外国におきましても、国の力によりまして石油の海外開発というものに対して強力な施策を展開をいたしておる次第でございますが、わが国も今後の安定低廉な原油の供給の確保のために、海外における原油の開発、国内における原油の開発を一そう促進し、これによりまして外貨の節約ないしは経済協力にも資そうということを考えるわけでございます。かような見地で、今日まで石油資源開発株式会社によりまして、わが国におきまする石油及び天然ガスの開発が推進をされてまいって、その成果も見るべきものがあったわけでございますが、今後は総合的な開発の推進母体を石油開発公団という形体において設立をいたしまして、石油資源開発株式会社をこれに改組をいたしたいというの炎今回の石油開発公団の大体の趣旨でございます。  以下法律案の内容につきまして、簡単に補足をいたしますと、  第一に、石油開発公団は、石油の探鉱に必要な資金の供給その他石油資源の開発に必要な資金の融通を円滑にする、こういった目的のために必要な業務を行なうことといたしております。それによりまして石油資源の開発を促進し、石油の安定的かつ低廉な供給の確保をはかることを目的といたすものであります。  第二に、石油開発公団の業務は、そのような目的を受けまして、海外における石油の探鉱に必要な資金を供給するための出資及び資金の貸し付け、海外における石油の探鉱及び採取に必要な資金にかかる債務の保証、石油探鉱機械の貸し付け、石油の探鉱及び採取にかかる技術に関する指導、国内における石油及び天然ガスの探鉱に必要な地質構造の調査等を行なうことになっております。  第三に、公団の資本金は昭和四十二年度に産業投資特別会計出資といたしましての四十億円と、石油資源開発株式会社に対し、すでに政府から出資されておりまする百二十八億五千六百万円との合計すなわち百六十八億五千六百万円といたしまして、政府全額とすることになっております。なお、今後必要によりまして公団に対しまして政府が追加出資を行なうことになっております。  第四に、公団の役員は、総裁、副総裁各一名、理事五名以内、監事二名以内といたしまして、総裁及び監事は通商産業大臣が任命し、副総裁及び理事は通商産業大臣の認可を受けまして総裁が任命することにいたしております。役員の任期は三年、再任されることができることになっております。  第五に、公団の予算、決算その他財務及び会計、公団業務に対する通商産業大臣の監督等、公団の業務、経理の適正かつ妥当な運営を期するための必要な規定を設けておる次第でございます。  第六に、国策会社石油資源開発株式会社の石油開発公団への移行に伴いまして、その移行の円滑化等につきまして必要な規定を置いております。すなわち石油資源開発株式会社は、株主総会の決議を経まして、公団に対し営業の全部を出資することができることといたしておりまして、政府以外の株主の所有株式は会社が買い取って消却する。会社の一切の権利義務は、公団の成立時において公団に承継され、会社はその時に解散するものとし、解散時までに政府から会社に出資された額は、公団の設立に際し、政府から公団に出資されたものとすることといたしております。また公団は、この法律の施行後三年間は、本来の業務のほか、通商産業大臣の認可を受けまして会社の従来の業務を行なうことができるものといたしておりまして、臨時にその業務を実施するための組織を設け、その経理を区分して整理することといたしております。  以上、石油開発公団法案につきまして補足的な説明を申し上げた次第であります。
  81. 鹿島俊雄

    委員長鹿島俊雄君) 速記をとめて。   〔速記中止〕
  82. 鹿島俊雄

    委員長鹿島俊雄君) 速記を起こして。  それではこれより質疑に入ります。質疑のおありの方は、順次御発言を願います。
  83. 竹田現照

    ○竹田現照君 この法律案の質疑に入る前にひとつお伺いしておきたいのですが、実はこれは衆議院委員会でもそうですが、この前の参議院本会議で、与党の代表質問の中にもありましたけれども、この石油の問題に関連をして、特に中東問題に関連をして、国防上いろいろなことについて再三の御質問があったわけでありますが、それとこの開発公団法案とどんな関連があるのですか。特にこれは衆議院委員会でも与党の最後の質問の中にありましたし、政務次官がきわめて国防上ゆるがせにできない云々というようなかっこうで御答弁がありました。ですからその点、最初にひとつ質問しておきたい。
  84. 菅野和太郎

    ○国務大臣菅野和太郎君) この石油開発公団は全く産業的な立場から私たちとしては考えておるのでありまして、軍事的なことは一つ考えておりません。
  85. 竹田現照

    ○竹田現照君 そこで、石油の備蓄問題でありますが、いま中東問題を契機にして、この問題が、あとの質問でも触れますけれども、特に国防上非常に重要な問題なので、国防会議に出席されている大臣に、今後こういう観点からもひとつ話し合いを進めるようにお話しをしたい、そういうふうに政務次官はお答えになっているわけです、どうですか。
  86. 菅野和太郎

    ○国務大臣菅野和太郎君) 通産大臣は、どういうわけか知らぬが、国防会議の委員ではありませんので、したがいまして国防会議でそういうことを言うチャンスはないわけでございます。
  87. 竹田現照

    ○竹田現照君 そうすると、ちょっと念のためにお伺いしますが、これは与党の樋口さんの御質問で、国防会議には云々ということで、最初政務次官は、出ておりません、こういうことを言っておったのですが、重ねて、「これは非常に失礼かもしれませんが、通産大臣は国防会議の一員として席を連ねておるはずでございますが……。」という質問に対して、政務次官は、「どうも間違いまして申しわけございません。いままで出ておりますが、その席においてはまだ話が出ておらないということでございます。」こういう答弁ですから、通産大臣は国防会議に出席をされていることになっているのですが、どうなんですか。
  88. 菅野和太郎

    ○国務大臣菅野和太郎君) 私が通産大臣になってから、国防会議というものに私出たことありません。
  89. 竹田現照

    ○竹田現照君 そうすると、メンバーじゃないのですか。
  90. 菅野和太郎

    ○国務大臣菅野和太郎君) メンバーではありません。
  91. 竹田現照

    ○竹田現照君 国防会議に関する衆議院商工委員会におけるこの公式のやりとり、しかも与党の委員政府委員とのやりとり、これは明らかに間違いなら間違いだということで、いまここではっきりしておいていただきたい。
  92. 両角良彦

    政府委員(両角良彦君) 補足的に説明申し上げます。国防会議の議員の中には通商産業大臣は含まれておりませんが、関係国務大臣の出席は必要に応じてあり得ることになっておりまするが、今日まで通商産業大臣の出席はございません。なお、通商産業事務次官は、国防会議の幹事といたしましてこれに参加をいたしておるということになっております。
  93. 竹田現照

    ○竹田現照君 そうすると、これはあれでないですか。鉱山局長もこの委員会に出ていますけれども、政務次官がこんなことを答えて、しかも今後きわめて国防上非常に重要な問題であるから、話し合いを進めるように大臣に申したい、こういうお答えをしているわけですね。これは通産省の事務当局との話し合いが全然ないまま、政務次官は答えているのですか。
  94. 両角良彦

    政府委員(両角良彦君) ただいまの政務次官の答弁につきましては、通商産業省といたしましては、事務次官が出席をいたすという趣旨でお答えいただいたつもりでございます。
  95. 竹田現照

    ○竹田現照君 そうすると、大臣に言う必要はないわけですね。ところで最初からお話ししましたように、特に最近与党側の質問の中にこういうことがある。石油の備蓄に関連をしてお伺いいたしますが、衆議院商工委員会で答えている、この国防上の見地から、また産業、経済の見地から云々ということで、すみやかに二カ月の備蓄をはかりたいと考えているという御答弁があるわけです。これはあれですか。総理は参議院の本会議の八田さんの御質問には、たいへんうまくお答えをかわしていますけれども、この二カ月の備蓄をはかりたいという政務次官の答弁の内容というのは、とりわけ国防の見地からという一点にしぼってお伺いいたしますが、これはどのぐらい必要とするのですか。この二カ月の備蓄の中には、国防上の見地から必要とするところの石油の備蓄というのは、どのぐらいあるのですか。
  96. 菅野和太郎

    ○国務大臣菅野和太郎君) 二カ月の備蓄ということは、産業上の意味でわれわれは言うております。かりに二カ月もタンカーが来ない場合には、たちどころにもう電気がとまってしまいます。そういうことになると、日本産業はすべて大打撃です、われわれの生活自体が混乱しますからして、そういう意味で、二カ月分の備蓄は必要だということを言うておるわけであります。
  97. 竹田現照

    ○竹田現照君 これは私は会議録に基づいてお伺いしておるのです。その備蓄の最初に「国防の見地から」、それが「産業」、「国民生活を守る」、こう続いておりますから、国防上の見地から、二カ月のうちのどれくらい必要とするのですか。
  98. 菅野和太郎

    ○国務大臣菅野和太郎君) 私はいま初めて承ったのでありまして、政務次官がそういう答弁をしたということをいま聞いたわけでありますが、もし国防上ということになれば、おそらく二カ月どころか一年ぐらいは備蓄しなければならぬのじゃないかと思いますが、二カ月というのは、私は産業上の意味で、二カ月がぜひ必要だということを考えておるので、国防というものは全然私の頭の中にはありません。
  99. 竹田現照

    ○竹田現照君 これはしかし少なくとも衆議院の資疑応答の中で、このことが出ていまして、私がいまこういうことをお聞きしなければ、これははっきりしたものとして国民の前に示されるわけです。ですから、いま大臣がお答えになりましたけれども、そうかといって、いま現に陸海空の自衛隊を持っておるわけですから、しかも本会議で参議院でも御質問があったように、ああいう中東のような問題が起きたときに、大部分石油を輸入しなければならないといういまの日本状態の中で、この陸海空の自衛隊が必要とする石油、こういうものは、かなりの量であろうと思うのです。いま大臣がお答えになったように、二カ月や三カ月どころの話じゃないと思うのですね。これは石油の備蓄という面では、少なくともいまの政府与党としては、全然度外規して考えていくわけにはいかない問題ではないかと思うんですよ。そうすると、二カ月なら二カ月というのは、純然たる経済上の問題だという御答弁だとすると、国防上の見地からの備蓄問題というのは、どういうふうに考えられているか。両院における与党の質問があるから、あえて私はこの議会に聞いておきたいと思います。
  100. 菅野和太郎

    ○国務大臣菅野和太郎君) そういう見地は、おそらくあるいは防衛庁長官が考えるかもしれませんが、私のほうは産業一点ばりでありまして、二カ月もしタンカーが来なかったら、電気はとまるし、日本産業が全部とまる、われわれの生活もめちゃめちゃにこわれてしまうので、せめて二カ月ぐらいは備蓄したいということを考えて、二カ月ということを申し上げた次第であります。
  101. 竹田現照

    ○竹田現照君 きょうの日本経済にもちょっと出ておりましたけれども、備蓄の問題について、通産省がお考えになっていらっしゃるということを、いろいろと資金面あるいは税法上の問題で出ていますが、これはやはりこの問題を所管しておる通産省と防衛庁との間に、全然話がないということは私はないのじゃないかと思う。防衛庁がかってに石油を持ってきて、どこかに貯蔵しておくわけではないのですからね。少なくとも通産省が所管をしておるのですから。そういうようなことがありますから、私は本会議の質問なんていうことも出てくるのじゃないかと思うのです。ですからこれは触れたくない問題でしょうけれども、お答えとしては、いわゆる国防上の見地からちょっと明らかにできないと言いたいところなんでしょうけれども、やはりこれはぼくが社会党というようなことを離れてずっと見ましても、最近のような自衛隊の装備だなんていうことになってくると、大多数、石油、ガソリンを使うああいうものがぴたっととまってしまえば、日本の自衛隊なんというものはまるっきり用をなさないのじゃないかと、すなおに国民は考えていると思うのですよ。そうすると、どうしても自衛隊を動かすというにはこれはそういうものが必要である。だからこそ中東の問題が出てきたようなときも、いまの段階において衆議院における委員会、あるいは参議院における防衛二法に対する代表質問の中でこの問題が触れられたと私は思うのです。ですからこれが全然らち外の問題であるというふうには私は思えないので、政府、与党との間にこういう国防上の石油の問題についてどんなような話がなされているのか、こういう点について最初に聞いておきたいと、こう考えて最初の質問にしているわけです。
  102. 菅野和太郎

    ○国務大臣菅野和太郎君) 防衛庁長官からそんな話は全然私聞いておりませんし、私自身が防衛上の立場から考えたこともありませんし、問題は、防衛とか何とかいいますけれども、日本の電気がとまったら防衛どころではない、われわれの生活自体が混乱のうちにおちいってしまう。私の考えでは、産業という立場から石油はせめて二カ月分備蓄したいという考えでいるわけであります。これが私はもうすべての基本だと思います。われわれの生活を安定さすことがすべての基本だというふうに考えておりますから、そういう意味でせめて二カ月分だけは石油の備蓄をしたいという考えでおるのであります。
  103. 竹田現照

    ○竹田現照君 それではいま国内の石油の消費の中に占めるいわゆる国防上の必要とする自衛隊の消費量というのはどのぐらいあるのですか。
  104. 両角良彦

    政府委員(両角良彦君) 昭和四十二年度におきまして内需全体といたしましては一億五百万キロでございますが、そのうち防衛庁が購入をいたすと予定をされておりまする数量は六十六万キロでございます。すなわち一億五百万キロに対しまして六十六万キロが防衛庁の購入予定量でございますから、全体の〇・六%ということに相なっております。
  105. 竹田現照

    ○竹田現照君 そうすると、これは防衛庁の話ですから通産大臣にお聞きしてもわかりませんが、これは国内消費量の中に占める〇・六%という比率は、これは四十二年度ですね。
  106. 両角良彦

    政府委員(両角良彦君) さようでございます。
  107. 竹田現照

    ○竹田現照君 そうすると、この両三年の中における率というものは変わっていないのですか。
  108. 両角良彦

    政府委員(両角良彦君) 昭和四十年度、四十一年度過去二年度は〇一七%でございました。それが四十二年度におきまして〇・六というふうに落ちてきております。
  109. 竹田現照

    ○竹田現照君 その落ちた原因というのは通産省でわかりますか。
  110. 両角良彦

    政府委員(両角良彦君) 主たる原因は内需の需要が上回ったということ。需要の伸びが上回ったということでございます。
  111. 竹田現照

    ○竹田現照君 そうすると自衛隊そのものが使っている消費量には変わりはない、そういうふうに理解していいのですか。
  112. 両角良彦

    政府委員(両角良彦君) 微増でございます。
  113. 竹田現照

    ○竹田現照君 国防上の問題は、いま国会最終段階における一番山場の防衛二法の問題が関連をすることですから、特にこの問題はっきりしておきたいと思ったんですけれども、きょうは防衛庁がおりませんからあさって防衛庁にお伺いをいたします。  時間がきょうはあれですから二、三だけ簡単にお伺いいたしますが、この総合エネルギー調査会の答申関連においてお伺いをいたしますけれども、この答申衆議院においては一次答申とか何とかいろいろなことを言われて、早い機会に二次答申が出て、それを閣議においてはかりたい、こういうことになっていますが、答申というものは一次とも二次とも何とも書いてないわけです。しかもこれは昭和六十年度を一応の目安にして、約二十年に近い展望の上に立って答申がなされておりますし、その答申に基づいて法律案の提案をされる趣旨の説明の中にもいろいろと書かれているわけですけれども、これは政府のどの機関において答申というものは確認をされているのか、どういう扱い方になっているのか、この答申そのものが。その点についてひとつお聞きをいたしたい。
  114. 両角良彦

    政府委員(両角良彦君) 本年の二月、総合エネルギー調査会から出ました答申通産大臣あてに提出をされておる次第でございます。したがいまして、通商産業省といたしましてはエネルギー施策の樹立、展開にあたりまして、この答申の内容を尊重いたしまして具体的な対策を立てておる次第でございます。
  115. 竹田現照

    ○竹田現照君 通常、答申というものはたとえば米は農林大臣、労働問題であれば労働大臣、あるいは医療問題であれば厚生大臣、そういうところに出されて、それが閣議にかかったり何とかして政府全体のものとしてその答申を確認をするという手続、手順を踏まれるのが常道なんですけれども、先ほど大臣がお答えになりましたように、きわめてこのエネルギーの問題はそれこそ石油がとまれば電気もとまって国民生活がそのままストップしてしまうというくらい大事なものの答申が、どうして閣議の確認をとるという他の各省大臣にあてられている答申のような手続をとられないのですか。
  116. 両角良彦

    政府委員(両角良彦君) 総合エネルギー調査会は通商産業省に設置をされておりまする調査会でございまして、したがいましてその取り扱いまする問題、検討を願います内容も通商産業省の所掌行政を中心といたしておるものでございます。したがいまして、これを受けました通産大臣が、通産省の施策の中におきましてその答申の趣旨を尊重しながら具体策を展開をいたす、かような手続になっておる次第でございますが、今後はさらに広範な問題にも及ぶことも考えられまするので第二次答申等が出ました際におきましては、一括いたしまして国全体としての権威づけるということを検討いたしたいということを考えております。
  117. 竹田現照

    ○竹田現照君 ところがこの答申の最後の結語の四項目に「政府においては、この答申の線に即してすみやかに所要の措置検討樹立し、絶えず長期的総合的考慮の下に」云々と、ずっと書いて「エネルギー政策の目標の達成に遺憾なきを期すべきである。」と政府に対する一つのあれが出ているんですね、とすれば、これは、私はやはりこの答申というものは第二次答申がどんなことになるのかわかりませんけれども、国民生活にきわめて重要な関連性を持っている答申であるだけに、いま私が言いましたこの結語の四項目に載っているようなことから見て、政府全体としてこの問題を認め、これに対する政策を明らかにすべきではないか、そういうふうに思うのですけれども、どんなものですか。
  118. 菅野和太郎

    ○国務大臣菅野和太郎君) ただいま局長から答弁がありましたとおり、先般のは第一次でありまして、第二次にまた答申があるので、その第二次を待って閣議決定をしたいと思うのでありますが、しかし第一次の答申は、これは日本の石油の問題に関する根本策でありまして、これをやはり一日も早く実現したほうがいいということで石油開発公団という案を考えて、この点については公社公団の新設は認めないという政府の方針でありますけれども、この石油問題は一日もおくらしてはいかぬということで、総理大臣と私は大蔵大臣とに談判——談判といってはおかしいが、話をしまして了解を得て、ほかの公社公団は別にしまして、石油開発公団は、これはぜひ百年の大計を立てる国策としてやるべきであるということで、御賛成を得て今度のこの国会に法案を出した次第であります。でありますからして、第二次を待つまでもなく、そういう基本的な問題は、ここで大体答申になっておりますから、これだけ早く、開発公団をつくって早く海外の石油資源を、油田開発をしたほうがいいという、民族資本で開発したらいいというようなことから石油開発公団法案を出したような次第でございます。
  119. 竹田現照

    ○竹田現照君 これはあとで大蔵省あるいは、きょうは行管を呼んでいませんけれども、行管等にもお聞きをすることに関連をするのですけれども、二次答申というのはいつ出てくるかわかりませんが、これほど重要な答申だとすれば、一次であろうと二次であろうと、これはやはりその指針に従ってこれを尊重するという意味において、閣議でこれを確認をするというか、了承するというか、そういうことをするほうが、たとえば大蔵省、通産省、すべての関係する省とも一体となって一つの大きな計画というものが打ち立てられるべきものではないか、そう思うのです。あとの質問関連をするものですから、これは閣議で確認をしていないということになると——これは閣議に報告をされていないわけですね、この答申は。
  120. 菅野和太郎

    ○国務大臣菅野和太郎君) 答申は閣議に報告しておりませんけれども、石油開発公団をつくるということについては、予算閣議で決定したわけであります。
  121. 竹田現照

    ○竹田現照君 ですから、談判をして公団をつくられるのはいいのですが、ただ政府全般として、非常に大事なものだから閣議で報告をし、それを確認をして政府の方針として、その中の一環としていまこの石油開発公団なら公団というものをつくる、それでごうごうという計画に基づいて進めるのだ、こうなってくると金の問題も何もこれは政府全般の問題としてそれを進めるためにそれが付随してついてくると思うのですが、あとで触れますが、これがはっきりしていないために、どうも納得がいかない面がありますから聞くのですが、それじゃこの次二次が出たときには、今度は閣議にかけるのですか。その次には三次があるから三次が出たら一次、二次、三次をひっくるめてそのときに閣議で政府の方針として確認をしますと、こういうことになるのですか。
  122. 菅野和太郎

    ○国務大臣菅野和太郎君) 二次が出ますれば、それで一次二次とあわせて閣議の決定をしたい。お話のとおりやはり閣議で決定したほうが私のほうもやりやすいのであります。がしかし、二次の決定を持ち出さないでも私から言うと今度の予算、四十二年度にこの法案を出すについてはそこで二次の答申を待たずして一次の答申だけで幸い総理や大蔵大臣の御了解を得て石油開発公団の法案を出すことができたのでありまして、でありますからして、大体もう皆さん方がこの石油開発公団の必要性ということについてはみな閣僚の御了解を得ておる、こう私は考えておるのであります。
  123. 竹田現照

    ○竹田現照君 そうすると、この二次というのはいつ出るのですか。
  124. 荒玉義人

    説明員荒玉義人君) 大体いまのところ来年の夏ごろを目標にしています。
  125. 竹田現照

    ○竹田現照君 これはまあ二月に答申が出たときは今度の中東動乱のような問題が起きていませんからあれですけれども、中東問題が起きてから非常に日本としてはこの石油資源の確保というものが、きわめていままで以上にたいへんな問題としてお互いに検討され理解をされてきている時期なんですね。とすると、来年の夏ということになればまだまだたいへんな日数があるのですけれども、こういう国際情勢の変化の上に立って、これは当然——第一次の答申は変えないでこの開発公団の法案というものは出ていますけれども、この第一次答申に基づく日本のエネルギー資源の確保という問題は、来年の七、八月ごろに想定をされるであろう第二次答申を待つまでもなく、当然政府全般としてこれは検討をすべき段階に国際情勢の変化に伴ってきておるのじゃないか、そう私は理解するのですけれども、通産省としてはそういうふうな理解の上に立って、これはおそまきではありますけれども、第一次答申を確認するとかしないとかいうのじゃなくて、この情勢の変化に伴ってわが国のこういう問題の進め方についてどうすべきであるかということをやっぱり検討すべき段階に追い込まれておるのじゃないかと思うのですが、どうなんですか。
  126. 菅野和太郎

    ○国務大臣菅野和太郎君) 中東の問題が起こる前にこの法案については言っておるのでありまして、私は法案をつくったのがよかったと思うのです。中東問題が起こってから、早くこちらが決意したことがよかったと、こう私自身は思っておるのであります。したがいまして先ほども申し上げましたとおり、早く百年の大計を立てなければならぬという必要性に迫られてきておるということを感じまして、第一次の答申を尊重して石油開発公団をつくったのであります。第二次のまた答申がありますれば、またそれによって、あるいはどういう内容のものか私まだはっきりいたしませんが、それによってこの石油開発公団の内容もあるいは変えなければならぬ問題が起こるかもしれません。がしかしながら、第一次の答申を尊重して今度は石油開発公団をつくった、私は早くつくったことがよかったというふうに私自身はそう考えておる次第であります。
  127. 竹田現照

    ○竹田現照君 この公団法案法案としてあれですけれども、いま私が言っているように、新たなる国際情勢の変化に伴ってこの資源確保という問題、エネルギー問題について当然に政府政策を進めていく上に考えるべき立場に立たされていると私は思うのですけれどもね。ところが、それについて具体的に政府検討されておらないようですから——おるのかおらないのかわかりませんけれども、おらないのでしょう。先ほどからのたとえば与党が質問をしている国防の見地だなんということだって関係する通産大臣何もあずかり知らないわけですからね。しかも緊急なるがゆえに国会における代表質問の中にも当然に織り込まれていると思うのですよ。とすれば、この開発公団は別として、答申の一次は一次、来年なら来年、たとえば第二次の答申でも、石油部門なら石油部門だけでももう少しテンポを早めて答申を早く出してもらうとか、大臣が先ほどお答えをしたように一次と二次とあわせて閣議にかけるとこう言っておるのですから、とすれば、これを出したときの情勢とはもうかなり違ってきているわけなんですから、そういう点をあわせて閣議にかけることを早めるためにも、二次答申を早目に出してもらうという努力を通産省もなされると同時に、いまの段階で、あれじゃないですか、中東のほうの石油がくるのは、多少いま楽観的なようですけれども、日本は西欧の国と比べて。まあしかし値上がりが避けられないというようなことになっているわけですね。五百円も七百円も上がるのだ、あるいはまた売り込みも、売るほうでたいへん強気になった。いままで弱気だったけれども逆に中東問題が起きてから強気になってきているのですから、だからカフジの石油の引き取りの価格がどうだこうだといって、重要なこの問題については、いまちょっと、まるっきり攻守所を変えたような状態に置かれているというようなことも聞いておりますけれども、そういう状態もあわせて、やはりいまの段階でこの問題を閣議の段階において検討されるべき時期でないのか、そう思うのですけれども、これはどうなんですか。
  128. 菅野和太郎

    ○国務大臣菅野和太郎君) 公団自体については、一日も早くこの公団法の成立をお願いして、そうして中東問題で教えさせられたことは、石油の供給源を中東に限って仰いでいること自体が危険性があるということを教えられましたからして、したがって、石油の供給源を各方面に求めたいという考えをいたしておるのであります。あるいはアラスカ、あるいはインドネシア、あるいは将来はシベリアなども考えられると思いますが、そういうことで石油供給源を各方面にして、そうして中東ばかりにたよってはいかぬということが今度の中東問題で痛切に教えさせられた問題でありますからして、そういうことにおいて、今後各地の油田開発のことについては、一そうひとつ促進して仕事を始めたい、こう考えている次第であります。
  129. 竹田現照

    ○竹田現照君 それでは通産省としてことしの二月二十日に出された、言うところの第一次答申ですか、これのおもな内容というものをどういうふうに把握をされ、それに基づいてエネルギーの需要計画というものをどういうふうに示そうとされているのですか。
  130. 荒玉義人

    説明員荒玉義人君) 二月の答申のおもな内容をかいつまんで申し上げます。大体この答申は将来の日本のエネルギー政策の基本的な方向を示したわけでございます。  まず第一に、エネルギーの供給というものは、低廉かつ安定、これが原則でございます。ただし、エネルギーが国民経済的に非常に重要でございます。したがって、国全体の利益というものはやはり考えなければいかぬ。このために総合的な長期的な観点に立って国際収支の安定あるいは公害の防止あるいは雇用の問題あるいは地域振興といいますか、特に産炭地等の問題、関連産業振興という、それぞれの国全体の利益を調整しながら、先ほど申しましたような低廉かつ安定の供給を確保する、これが一言で言えば骨子でございます。  その次は、非常に複雑な国際情勢でございますので、エネルギー供給につきましては、わが国の対外的な自主性を確立するということを考えております。大体そういった基本原則に基づきまして、それぞれのエネルギー種別ごとにつきまして将来どういうふうな姿になっていくかという見通しをいたしました。まず、石炭あるいは水力、こういった国内エネルギー資源を十分活用いたします。それから準国産エネルギー、これはたいへん今度の法案関係いたしますが、日本みずからの手で海外資源を、特に石油資源を開発する。自分の力でやれるわけですから準国産資源、こういったものも特にひとつ重点を置いて開発する。あるいはそのうちではさっき言いました石油のみならず原子力。で、そういった考え方に立ちまして、量的に将来の供給をながめますと、まず水力につきましては年間百万キロワット程度の開発を進めていく。それから石炭につきましては、種々なる論議の結果、一応五千万トン程度の出炭規模を今後確保していく。それから海外開発原油につきましては、大体昭和六十年度におきまして、わが国の必要な原油の三〇%を確保する。原子力につきましては積極的に開発を進めまして、六十年度末には四千万キロワット程度の原子力発電をやっていく。そうして、そういった原子力発電に必要なウラン燃料の確保をはかっていく。以上が基本方向並びにそれが各種別のエネルギーにあらわしました長期的な構想でございます。
  131. 竹田現照

    ○竹田現照君 それで、その計画の中でいま最後にちょっと触れられましたからお聞きをいたしますが、この原子力の関係ですね、これ六十年というのは昭和六十年のことですか。
  132. 荒玉義人

    説明員荒玉義人君) さようでございます。
  133. 竹田現照

    ○竹田現照君 これは原子力は一九八〇年ごろになると、むしろかなり何といいますか、実用化というのか商業化というのか、こういうようなものがなされるというようなことも言われているのですが、この石油は昭和六十年度に海外に三〇%、こういうようなことを海外開発に求めているわけですが、その場合の石油の海外開発に占める位置というのか地位というのか、そういうものはどういうことになるのですか。原子力との関係、ちょっと私の理解では石油のほうが五年ぐらいおくれているのじゃないかという気がしますけれどもね。これは科学技術庁にお尋ねをしておりませんからわかりませんが、一九八〇年というと、この石油の昭和六十年と比べると五年早くなるわけですけれども、最近の原子力の急激な発達ということを考えましたときに、原子力と石油その他を含めた総合エネルギー政策の樹立の面から考えて、いま通産省が法律案として出されておる海外開発との関連性というようなものは、どういうふうに検討をされているのですか。
  134. 荒玉義人

    説明員荒玉義人君) いま先生のおっしゃった点は二つ問題があったと思います。一つは、将来原子力と油との関係はどうなるか。その次は、そういった場合に、なおかつ三割程度確保するというのはどういう意味を持っておるか、大体二点じゃないかと思います。  最初の問題点につきましては、実はいろいろ調査会でも議論がございました。いまは油の時代ですが、むしろ原子力の時代という議論がずいぶんございました。したがって、当初いま先ほど申しましたように六十年度四千万キロワットという数字というものは、これは科学技術庁といろいろ相談いたしまして、いま現在の原子力の予想される発電コストを一応頭に描きまして、それを日本の現在置かれております電気事業者の設備の面から見まして一番合理的な線は何かというのを作業いたしました結果、先ほど申しました四千万キロワット、ただし、これにつきましては原子力技術というのは日進月歩でございます。したがいまして、ますます経済性が高まってくるということになれば、もう少し規模は大きくなるということは当然考えられます。したがいまして、答申にもございましたように、客観的なエネルギーの情勢の推移に応じまして改めていくという面は、一つはここにもあるわけでございます。ただし、そういうことになりましても、やはり油の地位というものは、当分やはり主要な地位であることは間違いないと思います。といいますのは、御承知のように原子力の問題は、主として原子力発電の問題、したがって油というものは何もそういう電力の原料だけではございません。御承知のように化学原料あるいはガソリンその他つまり固有な固定需要を持っております。それは日本の経済成長とともに、やはり今後伸びていくわけです。少なくとも結論を申しますと、やはり六十年度までには位置はやや原子力は伸びるかもしれませんが、油の地位というものは依然として量的には一番大事であるという点においてはやはり変わらないのではないか。したがいまして、依然としてやはり海外開発を進めて三割を確保するという政策的要請は依然として変わらないのではないか、こう考えております。
  135. 竹田現照

    ○竹田現照君 それでは、その公団の設立案とともに具体的な国の内外のたとえば五カ年計画だとかあるいは十カ年計画といわれるべきものを、今の段階で明らかにすべきではないかと思いますが、それはどういうことになっているのですか、この答申の扱いの中では。
  136. 両角良彦

    政府委員(両角良彦君) 御指摘のございましたように、内外の石油の開発が計画的に遂行される必要があるということは全くそのとおりでございまして、国内につきましては現在第三次の五カ年計画に入っております。すなわち石油及び天然ガス開発五カ年計画の第三次の二年目に入っておるわけでございます。そのような計画は今後とも国内開発については設定をいたしてまいりたいと考えております。また海外につきましても、海外の探鉱事業計画といったものは、事務的には昭和四十六年度ぐらいまでを見越しまして、現在作業をいたしているわけでございますけれども、海外計画のほうは国内と多少事情が異なりまして、相手国の事情あるいは国際的な資金調達の問題、あるいは外国企業との競争等々、日本側だけで決定できない要因がたくさんございますので、きわめて確定的な計画としてこれを遂行することはいろいろ困難な事情もあるわけでございます。しかしながら、可能な範囲におきまして海外開発の計画的な推進をはかるということには十分つとめてまいりたいと考えております。
  137. 竹田現照

    ○竹田現照君 それでは、ちょっと時間のこともあるようですが、最後に、きょうの最後ですけれども、衆議院でお答えになっているように、二次を待ってから具体的な計画を立てられるというお答えがありますね。そうではなかったですかね。この何カ年計画というようなものは、これは二次答申を待ってそういう具体的な計画を立てられるという方針なんですか。これはちょっと私の記憶違いであれば別ですけれども……。
  138. 両角良彦

    政府委員(両角良彦君) 内外の石油の探鉱開発計画はエネルギー調査会の答申とは別個に推進をいたしたいと考えております。
  139. 鹿島俊雄

    委員長鹿島俊雄君) 本案の質疑は本日はこの程度にとどめます。  本日はこれにて散会いたします。    午後三時五十四分散会      —————・—————