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政府委員(
乙竹虔三君)
特定繊維工業構造改善臨時措置法案の補足説明をいたします。
提案理由及び概要について説明いたしました
特定繊維工業構造改善臨時措置法案に関し、さらに条文に沿って補足的に御説明申し上げます。
第一に、この
法律案の目的でございますが、これにつきましては、第一条に規定されておりますとおり、繊維工業の経済的諸条件の著しい変化に対処いたしまして、その国際競争力を急速に強化するため、繊維工業の中核的地位を占めておりまする特定繊維工業すなわち特定の紡績業と特定の織布業につきまして、その構造改善をはかり、国民経済の健全な発展に寄与することを目的といたしております。これは提案理由の説明中でも述べましたとおり、
国内におきます労働力の逼迫と、これによります賃金の急上昇、
外国におきます発展途上国の急速な追い上げなど、繊維工業を取り巻く内外の経済的環境が一段ときびしさを加えておりますので、この
わが国の国際競争力を急速に強化することをねらっております。
次に、対象業種でございますが、特定繊維工業すなわち綿糸、スフ糸、合繊糸及び混紡糸を製造する特定紡績業と、綿スフ織物及び絹人繊織物を製造する特定織布業を
考えております。これらは、いずれも繊維工業の
中心的業種であり、かつ、現在のところ国際競争力の低下が現実の問題となっていることから、対策実施の
必要性が大きく、一方、業界の熱意とこれに対する準備が整いつつあることも考慮したためであります。
第二章以下は、この
法律の目的を達成するための具体的な措置の内容について定めているのであります。このうち、第二章は紡績業の構造改善について、まず、基本
計画及び実施
計画を策定し、これの達成をはかるため所要の助成措置を定めるとともに、過剰設備の処理についての法的措置を定めるという構成をとっているのであります。
なお、特定過剰精紡機につきましては、現在過剰があるとされております部門に属する精紡機を政令で指定いたしまして、過剰設備の
計画的な処理を行なおうとするものでありますが、これは
通産大臣の指示を受けた業界の共同行為をもって行なわせたいと思います。
第二の部分は、基本
計画及び実施
計画の実施が円滑に行なわれまするよう、
政府が実施
計画に定める設備の近代化等に必要な資金の確保等につとめることとし、また、基本
計画に定める過剰設備の処理に関し、現行スクラップ税制による課税の特例と同様の特例を認めることとしていることであります。これとともに、構造改善対策については、一方において労働者の減少を招くとともに、他方において労働力の確保が重要な
意味を有するので、これらの施策を講ずるにあたっては、関連労働者の職業の安定について
配慮することとしているのであります。
第三章は、特定織布業の構造改善に関する種々措置を定めているのでありますが、ここではまず、特定織布業構造改善事業
計画の承認を
通産大臣が行なうこととし、次いでこの承認を受けた
計画の実施についての助成措置を定めるという構成をとっているのであります。
特定織布業については、それが産地ごとに異なった構造上の特性を有し、かつ、商工組合を
中心にまとまりをみせていることから、産地主義組合主義をとることとし、産地ぐるみの構造改善に関する事業を実施するため特定織布業構造改善事業
計画を産地ごとに作成し、
通商産業大臣の承認を受けて行なうことといたしております。
そして、第二の部分におきましては、この改善事業について、
政府が所要の資金の確保等につとめ、設備の近代化に伴ってする設備処理の事業につき、繊維工業構造改善事業協会を通じて
補助金を交付することができるものとし、また、特定織布業商工組合による特定織布業構造改善準備金への積み立てに関して課税の特例を認めることにしております。
なお、特定織布業の構造改善に関する施策を講ずるにあたっても、特定紡績業の場合と同様に関連労働者の職業の安定について
配慮することとしております。
第四章は、繊維工業構造改善事業協会について定めているのであります。協会は、特定繊維工業の構造改善に関する業務を行なうことを目的とし、特定繊維工業の構造改善に関する措置を実施するについて重要な
役割りを果たすものであります。
協会は、この
法律の規定に基づき、業界関係者、関係都道府県知事及び学識経験者が発起人となって定款を作成し、
通商産業大臣の認可を受けて設立されるものであります。このような
民間設立方式をとることとしたのは、業界の構造改善に対する意欲と主体性を協会の設立とその後の運営に反映させようとしたためであります。
協会の資本金は、その設立時等に
政府が出資する金額をもって構成するものとし、この資本金は、すべて、特定織布業構造改善事業に必要な資金についての債務保証、及び融資に関して設けられる信用基金に充てられることとなっております。
協会は、特定紡績業における過剰設備の処理のための特定精紡機の買い取り及び廃棄、特定紡績業及び特定織布業の事業廃止者からの設備の買い取り及び廃棄、特定紡績業にかかる納付金の徴収、特定織布業構造改善事業に必要な資金調達をはかるための債務保証および融資その他構造改善に関する業務を行なうものとしております。
このうち、特定紡績業における過剰設備の処理のための特定精紡機の買い取り及び廃棄は、特定紡績業構造改善基本
計画及び実施
計画に基づき、協会が設備を買い取って代金を支払うこととなるので、その代金、金利等相当額につき協会が特定紡績
事業者から納付金を強制徴収手続の裏づけをもって徴収できるものとしているのであります。
また、特定織布業構造改善に必要な資金調達をはかるための債務保証および融資の業務は、もともと財政基盤が強固でない特定織布業商工組合が主体となって実施する特定織布業構造改善事業の円滑な
推進をはかるため、特に重要な意義を有するものであります。協会によるこの業務に関しては、前述の
政府からの出資金及び特定織布業商工組合からの出捐金によって構成される信用基金が設けられこととなっております。
次に、協会の監督については、その業務の公共的性格から、
通商産業大臣の強い監督のもとに置くものとしております。
第五章及び第六章は、この種の
法律の通例に従い、報告徴収、不服申し立ての手続等の雑則及びこの
法律の実効を期するための所要の罰則を規定したものであります。
附則では、この
法律の施行、廃止、経過措置および関係法令の改正等について定めております。
このうち、この
法律の廃止については、構造改善対策が五年間にわたって実施されることと関連して、
昭和四十七年六月三十日までに廃止することとしております。
また、本
法律の附則により、繊維工業設備等臨時措置法の一部改正を行なうこととしております。同法は、
昭和四十三年に失効する限時法であり、精紡機等の制限登録を行なうとともに、当初格納せしめた過剰精紡機の廃棄を条件とする二対一のスクラップ・アンド・ビルドによってその廃棄を促進し、しかる後に、繊維工業を自由競争にゆだねようとしたものでありますが、今回、特定繊維工業の構造改善対策を進めるにあたり、従来の制限登録を、なお当分の間存続させることなどが必要であり、構造改善対策の円滑な実施を確保するため、同法の存続
期間を
昭和四十五年六月まで延長する等所要の改正を加えることとしたものであります。
本
法律案の内容の主要な点については、以上御説明申し上げたとおりであります。