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1967-06-30 第55回国会 参議院 産業公害及び交通対策特別委員会 第13号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十二年六月三十日(金曜日)    午後一時二十五分開会     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。     委員長         松澤 兼人君     理 事                 石井  桂君                 宮崎 正雄君                 大倉 精一君                 原田  立君     委 員                 植木 光教君                 奥村 悦造君                 木村 睦男君                 黒木 利克君                 土屋 義彦君                 中津井 真君                 柳田桃太郎君                 加藤シヅエ君                 戸田 菊雄君                 中村 順造君                 成瀬 幡治君                 小平 芳平君                 瓜生  清君    国務大臣        運 輸 大 臣  大橋 武夫君    政府委員        経済企画庁水資        源局長      松本  茂君        厚生省環境衛生        局長       舘林 宣夫君        水産庁次長    山中 義一君        通商産業省鉱山        局長       両角 良彦君        運輸省船員局長  河毛 一郎君    事務局側        常任委員会専門        員        中原 武夫君        常任委員会専門        員        小田橋貞寿君    説明員        厚生省環境衛生        局公害部長    武藤琦一郎君        厚生省環境衛生        局公害課長    橋本 道夫君        通商産業省企業        局立地公害部長  馬場 一也君        運輸大臣官房審        議官       鈴木 珊吉君        海上保安庁参事        官        榎本 善臣君        建設省都市局都        市計画課長    大塩洋一郎君        建設省都市局下        水道課長     久保  赳君        自治大臣官房企        画室長      成田 二郎君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○船舶の油による海水汚濁防止に関する法律  案(内閣提出衆議院送付) ○産業公害及び交通対策樹立に関する調査  (産業公害対策に関する件)     ―――――――――――――
  2. 松澤兼人

    委員長松澤兼人君) ただいまから産業公害及び交通対策特別委員会を開会いたします。  船舶の油による海水汚濁防止に関する法律案を議題といたします。  本案につきましては、すでに提案理由説明を聴取いたしておりますので、これより質疑に入ります。  質疑のおありの方は、順次御発言を願います。柳田君。
  3. 柳田桃太郎

    柳田桃太郎君 ただいま提案になっております船舶の油による海水汚濁防止に関する法律案提案されるようになりましたことは、長年の懸案でありましただけに、国内体制整備その他運輸省のその労を多とし、大綱については首肯できる点が多々ございますけれども、方針並びに内容につきまして疑義がございますので、まず、運輸大臣にお伺いをいたしたいと思います。  この法律案は、御承知のとおりに、十三年前に日本が署名をした条約に基づきまして、わが国においてもすでに長い間国内体制整備しながらこの法案提案するに至りましたことは御承知のとおりでありますが、わが国のような大海運国で、しかも油の輸入量は非常に大量に達しており、すでに海水の油濁事件も方々に発生しておる。この状態におきまして提案をいたしますこの法律案が、眼目と言うべき第五条の、船から油を排出してはならないという規定が全面的に適用されるに至りますのは、「条約発効日の翌日から起算して三年を経過する日」ということになっております。これは、附則第二条でこういうぐあいに定めがしてございますから、この法律全面実施を見るには、この法律案が通ってまだほぼ三年有余を経なければ全面適用にならないという、非常に緩慢な実施期日が定めてございますが、十三年の用意をした運輸省としては、非常にこれは閑に過ぎるのではないかと思いますが、運輸大臣はどうお考えでございますか。まずお伺いしたいと思います。 次に、もともとこの法律は、日本の千五十有余の港全部に適用するものではなくて、廃油処理施設整備されてない港で運輸省令で定めるものについて入港する場合の船舶は除外されるのでありますから、廃油処理施設ができたところから逐次本法の第五条の適用がされてしかるべきものと思われますけれども、これを三年間も猶予をとるという意味はどういうようなお考えでございますかということでございます。  第三番目は、予算の点でございますが、昭和四十二年の予算では、廃油処理施設等に約三億円の海水油濁防止対策費というものが見てあり、民間施設に対しても開銀からかなりの融資をするように聞いておりますけれども、一カ年すでに四億余の水産被害等も出ております今日、国際条約を批准して急速に油濁防止対策を立てなければならないときに、予算面からだけ見ますと、政府の気がまえというものはかなりおざなりで、きわめて消極的ではないか、こういうように見られますが、運輸大臣はどう考えておられますか。  聞くところによりますと、三億円で約六カ所の港に港湾管理者のつくる廃油処理施設補助金を流そうという考えだそうでございますが、せめても、特定重要港湾十五港に対して初年度に一カ所ぐらいはつくるぐらいの着意があってもいいのではないかと思いますが、運輸大臣はどういうお考えでこういうような法律提案するに至りましたか、その気がまえをまず運輸大臣に承りたい。
  4. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 仰せのとおり、わが国は世界の一流の海運国であります。ことに油の輸入国としては世界有数でございます。こうした関係上、今日国内海面あるいは外海に面する海面、また港湾港内等廃油による海水汚濁が非常にふえてまいっております。もはや猶予することのできない段階になっておると思うのでございます。そこで、かねてから懸案でございました船舶の油による海水汚濁防止に関する条約を批准し、これに伴う国内法整備しようという次第になったわけなのでございますが、なるほどこの今年度の予算といたしましては、御指摘のごとく、港湾管理者に対し廃油処理施設整備費について三億円を補助するということでございまして、なお、予算外におきましては、民間廃油処理施設整備のため開銀産業公害ワク十五億円のうちから融資をすることにしておるのであります。  さらに船内のビルジ排出防止装置整備費につきましては、中小企業近代化資金の貸し付け及び船舶整備公団からの融資を予定いたしております。これによりまして、本法案の施行のための一応の体制はできておるものと思われるのでございますが、もちろん、これだけで十分であるわけではなく、まず、今年スタートにあたってはこの程度にとどめ、来年度以降においても積極的に必要な予算獲得に努力いたしたいと思っております。  なお、施行期日の点につきましては、政府委員から申し上げさせていただきます。
  5. 鈴木珊吉

    説明員鈴木珊吉君) お答え申し上げます。 ただいま柳田先生の御質問がございましたけれども、この法律適用が、条約発効以後三年たたなければ全面的にならないということでございますが、実は、附則第一条に書いてございますように、その中でもタンカーそれから二万トン以上の新造船につきましては、三年ではなしに、条約発効日から適用があるということでございます。それで、ビルジと申しまして、船底にたまるあかでございますが、そのビルジ排出につきましては、タンカー並びに二万トン以上の船舶条約発効日から一年間の猶予期間がございます。したがいまして、三年間と申しますのは、ビルジ等油でございまして、かつタンカー並びに二万トンの船舶以外のいわゆる一般船船舶につきましては三年がたたないと発効しないということになっております。  こういった差別を設けましたのは、何と申しましても油濁の最大原因はやはりタンカーから排出されまするバラスト水とかあるいはクリーニングしたあとの水、これが一番大きな原因でございまして、試みに一千五百デッドウエートトンクラスのタンカーをとってみますと、バラストというのは大体その三分の一積んでおりまして、約五百トン積めるのであります。しかるに、ビルジは一航海あたり多くて一トンぐらいじゃないかということでございます。したがいまして、タンカーにつきましては、条約発効日より直ちにビルジ以外の油につきまして適用がある、そういうことでございますので、三年間ございますけれども、一番大原因者であるタンカーはすぐということでございますので、そういった意味から、油濁の防止ということは、その程度の、一般船につきましては三年間ということで大かたの油濁がカバーできるんじゃないかというふうに立法技術上は考えておる次第でございます。
  6. 柳田桃太郎

    柳田桃太郎君 さらにこれは希望を申し上げておきますが、幸いにしてこの法案が可決をされまして条約の受諾をいたしましても、なお三カ月後に発効するということになっておりますので、ぐずぐずしておりますと年内の発効は無理だということになりますので、急いでひとつこの手続を進めるよう事前の準備が必要かと思いますので、希望を申し上げておきます。  次に、これは海上保安庁関係かと存じますが、海上保安庁関係が感知したという油濁件数について昭和三十七年から四十一年までの資料をちょうだいをいたして、見ますと、三十七年が百四十二件に対して、三十八年は九十五、三十九年は八十七、四十年は百七、四十一年は百七と、私どもがいろいろうわさで聞いておることからしますと、意外にそういう油濁事件件数が少ないのでございますが、はたしてこうであるかどうか。私は全日空に乗りまして月に二回くらい九州に帰りますが、やはりかなり各灘、湾、瀬戸内にも油濁を見つけるのでありますが、これは港則法の第二十四条に基づく海上保安庁違反取り締まりが組織的にと申しますか、機動的にと申しますか、計画的にできて、定期的な報告がなされておるかどうかということを私は疑問に思うのでございます。たとえば、航空機が事実どう飛んでおるとか、あるいは巡視艇がどういう巡航経過をとっておるか、あるいはヘリコプターでどう確かめておるとかいうような、ああいう油の汚濁巡視日記というようなものがあるのかどうか、それをまずお伺いしたい。
  7. 榎本善臣

    説明員榎本善臣君) いま柳田先生のお尋ねの件数が、先生あるいは一般考えておるよりも海上保安庁で感知したのが少ないというお話でございますが、われわれ巡視船艇あるいは航空機でみずから捜査と申しますか、発見につとめております。しかし、いままでのところ、われわれのほうでみずから発見しましたのはこの程度でございます。それからもう一つ、ほかからこういう事件がある、油が流れておるという通知がございまして、これも合わせまして海上保安庁で感知しましたのが先ほど先生のあげられました数字でございまして、四十一年度におきましては百七ということでございます。  次に、海上保安庁巡視船艇航空機がどういうふうに現在取り締まりあるいは油が流れておるという事実をつかんでおるかということにつきましては、先ほど柳田先先からお話しの、何と申しますか、記録簿のようなのを備えつけておるような体制は現在はとっておりません。できるだけ巡視警戒にあたりまして、油の被害状況、油の流出状況というものの調査につとめておる。発見にはつとめております。しかし、巡視船艇は海難の救助あるいは予防その他の海上の警備に当たっておりますので、まあ現在までのところは、油発見とかあるいは油の調査というようなことだけでは、巡視船艇あるいは航空機で常時発見しているという状態ではございません。お答え申し上げます。
  8. 柳田桃太郎

    柳田桃太郎君 監視取り締まり体制については後ほどまたお伺いをいたすことといたしますが、さらに、海上保安庁がお調べになっております昭和四十一年の原因別海水油濁の発出件数を見ますと、バルブの操作の誤りだとか、ローリングパイプの破損であるとかいうようなものが非常に多くのウェートを占めておるのみならず、原因不明というのが全体の約三割ぐらいを占めておるわけでございますが、これは私も取り締まりが非常に困難なものであるということも承知はいたしておりますが、監視体制が不徹底ではないか、そのために原因不明というものがかなり出るのじゃないかということを憂慮いたしておりますので私は意見をお伺いいたしたいのですが、これは、御承知のとおりに、イギリスは夜間の油の荷役を禁止しておる港もございます。これは日本ではそんなことはとうていできませんので、日本は暗夜にも航行するし、荷役もいたします。これをいまとめるわけにいきません。したがって、イギリス以上に日本船舶廃油排出取り締まりは困難なわけでございます。しかし、イギリスフランスでは、御承知のとおりに、軍官民一体となった油濁の監視、通報、連絡体制というものができておるのでございます。私がさきに申し上げたように、全日空などは瀬戸内海をずいぶん飛んでおりますが、全日空の機長は、どこどこ方面の油がどこに流れておったということを海図の上にしるしをして通報連絡することができますので、これは海上保安庁はうんと助かるのであります。それを記録にとっておけば、大体どの方面にいつごろどの船が航行したということも、今度は油記録簿航海日誌でわかるのでありますから、この協力体制をぜひおとりになる必要があるのじゃないかと思いますが、どうでございますか。まず、そのことをお伺いしておきます。
  9. 榎本善臣

    説明員榎本善臣君) 御指摘のとおり、イギリスフランスでやっておる事情につきまして、私はいまのところ詳細存じませんので申しわけないのでございますけれども、この油の汚濁の問題につきましては、やはり関係皆さまの御協力、特に先ほどの航空機からの発見というのが、一番これは的確と申しますか、発見しやすいのでございますから、なおその点につきましては航空局とも協議いたしまして、できますことなら、そういうこともぜひとも考えてまいりたいと存じております。  なお、御参考までにちょっと現状を申し上げますと、これは、この法律でお考えのような強力なものではございません、また、性質もちょっと違いますけれども、港の海水がよごれることを防止いたしますために、現在全国で二十三港には関係皆さまがお集まりいただきまして、港で油を流さないようにという協議会もございます。しかし、これはどちらかというと、油だけを対象としたわけではございませんし、こういう協議会的な官民を合わせました組織につきましても、これは運輸省のほうとも御相談申し上げまして、今後とも官民あげてのそういう機構と申しますか、それが確立されるとすれば、きわめて有効なことかと思います。
  10. 柳田桃太郎

    柳田桃太郎君 次に今度は、油性混合物排出基準の問題についてお伺いいたしますが、一〇〇PPM以上の油性混合物排出してはならないということになっておりますが、いま、海水の中に捨てられていく一〇〇PPM以上の油性混合物を簡易に測定するということは困難であることは御承知のとおりであります。一々その排出物をサンプルを取って試験所に持っていって数日かけてこれを検査すればわかるのですが、したがって、これは気休めにここに書いておるだけであって、事実上、海上保安庁ではそれを探知する施設もなければ、そういうような陣容もおそろいになってはいないと思いますが、どうでしょうか。
  11. 榎本善臣

    説明員榎本善臣君) 先生指摘のとおり、現在のととろ、一〇〇PPM以上か以下であるかということを検定いたします機械は、海上保安庁にはございません。ただ船舶技術研究所にその計器がございますので、まあそれも活用をいたしまして、最小限度のことは、とりあえずさせていただきたいと、こう思っております。今後につきましては、先生も御指摘のような、でき得れば簡易に持ち運びのできますそういう計器を開発するようにお願いを申し上げたいと、こう思っております。
  12. 柳田桃太郎

    柳田桃太郎君 これが今度業として近く登場するかもしれませんが、タンカークリーニングバージというものがいま開発されておりますが、このクリーニングバージは、船舶法による船でもない、陸上施設でもない。そういうものからどんどん捨てられているという場合に、これは港則法第二十四条の適用は受けるのですが、それが一〇〇PPM以上であるかどうかということは全然わからない。そうすれば、本船からタンカークリーニングバージに積みかえて捨てさえすれば、九十二・六キロというような遠くまで行って捨てないでも、一万メートルのところへ行って捨てられるという業が成り立つという抜け道がここにできるわけです。したがって、私が申し上げたいのは、この一〇〇PPMということはもちろんこの法律で残しておくが、そういう水は、その機械といいますか、油水分離機といいますか、清浄装置というか、それを通さなければならないという、そのまま生まで捨ててはならないという、何かそこに一つ機械操作を加えて排除しなければならないということにすれば、おのずからそこで船自体が気をつけるのではないかと思いますが、どうですか。これは非常に法として不備があるのではないかと思いますので、いずれ、注意をされて、しかるべき機会にそういった予防措置考える必要があるのではないかと思いますが、どうですか。
  13. 鈴木珊吉

    説明員鈴木珊吉君) ただいまの先生の御懸念でございますけれども、たとえば本船が捨てまするクリーニングの汚濁池水を受け入れるバージがございます。本法施行されますと、そういった施設も、本法の中に条文で規定しておりまする廃油処理施設というふうに考えます。したがいまして、それがバージだろうと、あるいは陸上施設だろうと、廃油処理施設というふうに考えますので、本法廃油処理施設監督規定適用するということに相なります。  そこで、監督規定につきましては、たとえば、かってにそれだけやりますれば、許可なしにやることになりますので、これは違反になりますし、かりに許可を受けましてそういうバージ廃油を受け入れる、そして処理して流すという場合でも、許可基準に合っていれば許可しますけれども、その後、まあいいかげんな機械油水分離機にかけてしまうということでは困りますので、やはり二十四条にございますように、そういった運輸省で定めます技術上の基準がございまして、その基準に適合させる義務がある。もしそれに適合させないようなことであれば改造命令を出すということで、そういう規定もございますので、そういった面で監督できるというふうに私ども信じておるものでございます。
  14. 柳田桃太郎

    柳田桃太郎君 その件につきまして、私は石油連盟外国における海水油濁調査団報告書を見まして驚いたんですが、アメリカでは海水油濁事件のうち四七%が外国船で、そのうち五〇%は条約批准国船舶から出ておるということが書いてあるわけです。そうしたらば、日本に入ってくるタンカーは、御承知のとおり、五〇%以上外国タンカーが入ってきておると思いますが、その船がいろんなものを排出する場合に、日本側がその排出液をチェックする方法がないということになりますと、厳密にこれを取り締まることはできない。油濁の事件ができて、もう逃げたあと公害が発生しておるということが出た場合に、その責めはやはり日本政府が漁民やその他に対して負わなければならぬという変なかっこうになるんじゃないか。私は、もしこのアメリカ報告が正しいならば、外国船取り締まりを厳重にするという意味におきましても、この排出基準というものを厳重に検出できる体制だけはとっておかなければ取り締まりができないんじゃないかと思いますが、どうですか。
  15. 鈴木珊吉

    説明員鈴木珊吉君) 確かに、外国の、ことにタンカー等が相当数入ってきております。ただ国際法一般概念でいきますと、領海外につきましてはこの法律適用が及びません。したがいまして、五十海里と申しましても、外国船の場合は五十海里全面的に適用あるわけじゃございません。領海内しかできません。領海内であれば国内法邦船と同じように取り締まることはできるわけでございます。それから五十海里以内で、しかも領海外の場合につきましては、この条約締約国でありますれば、やはりその旗国国内法に従うわけでございますが、条約では、そういった場合に、その沿岸国がその旗国政府に対しまして、何丸という船が領海外で流したということを発見した場合には、これはあくまでもその事実を、その旗の国、要するに国籍国のほうに通知いたしまして、国籍国国内法で取り締まるようにということを要請できるようになっております。いまのところは、実はそういう程度しかございませんのでして、五十海里内であっても、領海外外国船が流した場合は国内法では直接取り締まりができないのでございます。
  16. 柳田桃太郎

    柳田桃太郎君 次に、廃油処理施設のことについてお伺いいたしたいと思いますが、衆議院産業公害対策特別委員会におきまして、政府初年度において川崎、千葉、横浜、神戸、和歌山、水島の六カ所に港湾観測所の建設と廃油処理施設をつくるのに対して五〇%の補助をするということを答弁しておられます。大臣も、いまさき六カ所と言われましたので、このことが正しいことを私も判断をいたしますが、さて、海上保安庁調べによりますと、やはり船舶出入数の多い東京湾、大阪湾紀伊水道関門港に油濁事件は多発しておるようでございます。したがって、港湾管理者の設置する廃油処理施設は、まず、この特定重要港湾に優先的に建設されるべきではないかと思いますが、大臣はいかが考えられましょうか。それが一つ。  それから第二番目は、大臣衆議院のこの委員会にもしばしば同じことを答弁されておりますが、石油コンビナートなどのような油を排出する危険のある源泉となる工場はそれぞれ各地で自家用施設をつくらせたいということを言っておられます。議事録を読んでみますと、通産省両角鉱山局長は、運輸省がそう義務づけるならば施行します、運輸省判断に従いますと、こういうことを言っており、また運輸大臣は、これは義務づけるかどうかは通産省できめることであって、運輸省方針としては義務づけたと同じような効果があるように、御協力を得てやりたいということで、両方で逃げ合っているわけです。これは、きょう両角局長も来ていただきましたが、この廃油防止法ができました場合に、もし石油コンビナート等のように油を非常によけい扱うところが自家用処理施設を持ってないということになりますと、大型、小型を問わず船舶運航能率が非常に低下をする。それを低下させないということになれば、廃油排出を認めてやらなければならぬというようなかっこうになりますので、これは私は、はっきり申し上げたいことは、石油コンビナート造船所のようなものは、この法律ができたと同時に廃油処理施設必置制を義務づけるような方向に持っていかなければ励行が困難ではないか。あえてこれを無理をすれば、今度は船舶所有者なりあるいは船舶側に非常に大きな負担をかけて違反者をつくっていく。また、違反者をつくらなければ、ざる法になる、こういうきらいがございますので、今日ただいま必置制に義務づけるということは困難でも、そういう方向に持っていくことでこれは御研究をなさるべきじゃないか。これは通産省鉱山局長にも御意見を伺いたいと思いますし、運輸大臣にも、それをどういうぐあいにお考えか、もう一度これを確かめておきたいと思います。
  17. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) まず第一点は、初年度において廃油処理施設を設置する港をどうするかという問題でございますが、この六ヵ所につきましては、東京、大阪等四大港のうち二つは入っておりますが、名古屋、関門が抜けておるような状況でございます。実は、この法律にもありまするとおり、廃油処理施設の設置は港湾管理者の仕事になっており、これに対して政府補助するたてまえになっているんですが、現在のところでは、港湾管理者も、一体この事業がどういうふうに動いていくものであるか、その辺の見通しについて迷っておる状況でございます。しかし、せっかく予算が取ってあるのでございますので、ぜひ六ヵ所は必ずつけたというので、全国二十港ばかりの担当者を集めていろいろ相談をいたしました結果、先ほど来申し上げておりますような港は一応今年度で設置しようという考えに固まった。そこで、政府といたしましては、これらの港に設置しようということに相なったわけでございます。結局、これらの港は、しさいに調べて見まするというと、多量の石油輸入が行なわれておるということになったわけでございますが、これは、ある方針でもってそれに当てはめて打ち出したというより、現実に地方の港湾管理者が設置したいというところと当方との相談でまとめあげたものがこういう港になったわけでございます。  それからもう一点は、石油コンビナートにおいて石油関係業者が廃油処理施設を設置することを義務づける必要はないかという点なんでございますが、元来から申しまして、この油濁防止についての第一次の責任者は船舶でございまして、したがって、船舶所有者が義務づけられることはこの法律によって明らかになっておるのでありますが、石油業者はその船舶によって油を運送してもらう単なる荷主の立場にあるわけでございます。ただしかし、石油運送を引き受けておる海運業者と、それから荷主であるところの石油化学の業者の資力の違いからいって、石油コンビナートの経営者に義務づけることが資力面からいって有効であろうということはよくわかりますが、ただいまの段階では、私どもはそういう理由によって、義務づけされたと同様な実をあげ得るよう十分通産省にも御協力をいただいて行政指導をやっていきたい。これを義務にするかどうかということは、ただいまのところはなお将来の問題にしてみたい。現実にいろいろな処置をやってもどうしても義務づけなければだめだということになりましたならば、その段階においては、やはり油濁防止のために思い切った措置も必要だろう、こう思いますが、ただいまのところでは、義務づけたと同様の実効があがるような行政指導をやってみたいという段階でございます。
  18. 両角良彦

    政府委員両角良彦君) ただいま運輸大臣の御答弁もございましたように、この法律におきましては、港湾管理者廃油処理施設の設置運営をいたすことをたてまえといたしておりまするので、石油業者といたしましては、そのような港湾管理施設の有効な運営ができるように、たとえば運賃面その他で協力を申し上げるというのが筋合いではあるまいかと考えておる次第でございます。したがいまして、義務づけということが妥当かどうかという点につきましては、新しい問題といたしまして十分運輸当局とも連絡をとりまして慎重に検討いたしたいと考えます。
  19. 柳田桃太郎

    柳田桃太郎君 この問題についてはさらに御研究を願いたいと思いますが、港湾管理者廃油処理施設をつくることは、これは勧告を受けてやらなければならぬようでありますが、国が二分の一だけ建設費の国庫補助をつけ、国が条約を批准したために、財政力の弱い港湾管理者廃油処理施設をつくることを勧告までやらせることは少し無理ではないですか。廃油処理施設としては、自家用もあり、民間の営業者のものもあり得るわけでございますから、外国の例を見ましても、あまりペイしないものである。これは外国の例から見ても私は低いと思います。さらにまた、これを低くいたしまして、独立採算制をあえてやれということになりますと、料金面でかなり高いものを認めなければならぬ。一体どのくらいかかるか、うわさによって聞いてみますと、トン三十円、トン四十円、あるいは神戸の助役の証言などによりますと、五十円くらいかかる、そうすると、国内の瀬戸内なんかのタンカーのトン当たりの運賃は二百三十円くらいで運んでいるんですが、それに対して四十円も五十円も処理手数料がかかるということになりますと、これは非常にタンカーの運賃を引き上げることにもなるし、あえて引き上げないということになりましたら、また内航の小型船主に非常な負担をかけるということになりますので、政府は二分の一の補助というのは低きに過ぎるから、これをもう少しふやしてやる、あるいはドイツなどでやっておるように運営費の一部を補助をしてやるか、何か方法を講じえなければ、この間鈴木説明員からお話があったように、欧米では有料の便所がありますが、たまたま便所に行こうと思っていきますと金を出せといいますので、小銭がないのでやめていった経験も私は持っているんですが、ちょうどそれと同じように、共同便所をつくってやったけれども、行ったら高い銭を取るというので、みんな避けてここを通るということになれば、やっぱり海に捨てるということで、これはざる法になることは必定ということになるわけですから、むしろ、補助を厚くして償却費を少なくして使いやすくしてやるという着意が運輸省に必要ではないか。したがって、最初に述べたように、本法は形式だけはつくるけれども、気がまえがまだなっておらぬじゃないか、気が乗っておらぬのじゃないかということを申し上げておりますので、いや、そうじゃないのだ、しっかりやるのだという気がまえをひとつ政府からお示し願いたいと思う。
  20. 鈴木珊吉

    説明員鈴木珊吉君) 規制の対象は船舶でございますし、特に国内船は、先生おっしゃったように、いわゆる中小のタンカー業者が多うございまして、したがいまして、この施設をつくって義務づける、要するに排出の禁止を義務づけますと、そのために油を海に捨てに迂回するとかいうことで船の稼行率が下がる、さらに、三十円ないし、四十円の処理手数料を取られるということで、確かに内航タンカー業者にとっては相当経済的に痛いということはよく承知しております。しかし、他方、公害という問題、これまた社会的に大きな問題になっております。したがいまして、やはり第一原因者たる船主もある程度の負担は持つべきではないか、それから港湾管理者といたしましても、自分のところの港の中がよごれるということは、要するに港湾を良好な状態に維持できないということではいかぬと思いますので、ある程度やはり地方の自治体もそれにつきましては応分の負担を持って責任を持つべきではないか、さらに国も建設費の半分を国民の税金から持つのだということで、やはり三者一体となってやっていくシステムが最も適当ではないかとわれわれは考えた次第でございます。特に、まあ地方の港湾管理者も、もちろん財政上非常に苦しゅうございます。しかし、われわれといたしましては、二分の一国が補助をするのであれば、港湾法その他の体制等から見まして、足りないというものではないのじゃないかというふうには思っておりますけれども、また事実、金が要ることでございます。したがいまして、先ほど荷主の問題も出ましたけれども、運賃は多少それによって上がります。それは荷主さんにそういった趣旨でやはり御協力を願わなければならぬかと思っております。そういうことで、まあ三者一体になって、あくまでも遂行するんだということでいくように十分指導いたしたいと思っております。
  21. 柳田桃太郎

    柳田桃太郎君 港湾管理者のつくる廃油処理施設があまりへんぴなところにあっては利用者が少ないし、各種船舶が接岸をできるところで、しかも千坪余の遊休地を持っておる港湾管理者は、いまのところきわめて少ない。しかも、港湾管理者のほとんど全部が赤字で苦しんでおる実態でございますので、さらにこういった施設を義務づけると、財政的にも非常に影響を与えるということもお考え願って、おざなりでなしに、もう少しこういう施設については補助率を上げることに将来御尽力を願いたい、私はそう考えておりますから、この際申し上げておきます。  次に、本法適用外になる小型船舶の問題でありまして、これは、衆議院でもしばしば質問が出ておりますので、詳細は省略をいたしますが、現在、海上保安庁港則法第二十四条の違反事件として摘発をしております船舶は、昭和四十一年の例で見ますと、百トン未満の船舶が十二件で、一番多いのであります。その次が百トンから三百トンが五件、三百トンから五百トンが三件、五百トン以上はなしということになっておりまして、海上保安庁は小さいのばかりこうしてつかまえておるわけです。まあ、小さいのに違反が多いということです。そうすると、小型を適用外に置くということになりますと、港則法上の取り締まりも今後ますます困難になりますし、せっかく大きなものを押えても沿岸の清掃ができないという心配がございますので、あえてこれを適用外に置くならば、油水分離器等、あるいはビルジの受け入れ制度をつくるとか、何かこれに少額の補助を与えるか、指導を与えて、小型船の油を流さないような指導が必要ではないか。さらにまた、百トンぐらいまでこれの適用を下げるべきではないかという気がいたしますが、どうですか。これは運輸省海上保安庁から……。
  22. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) いまの柳田先生の御意見はまことにごもっともだと存じます。だんだんに汚濁防止対策も完全を期するべきものだと思うのでございますが、今回の法案は、条約を批准するためのどうしても必要だという限度で、とりあえず条約を批准しようという意味で、これが第一歩のスタートであるというつもりで立案をいたしております。今後第一歩がしっかり足が固まるにつれ、そのうち公害を一そう手厚く処理しなければならぬ状態が差し迫ってまいりますと思いますので、必然、先生のお考えのようなところに進んでいくものではないかと考えております。
  23. 柳田桃太郎

    柳田桃太郎君 次は、廃油処理の問題でございますが、一件一件と見ますと、廃油というものは大したものではございませんけれども、現在のタンカーに残留するタンカーの中の残留油は〇・二%から〇・四%あると言われておりまして、これがたまたま大型船が修理のために油を抜くとか、あるいはバラスト水を抜いて処理するとかということになりますと、かなりの油の量が回収できるわけでございます。これはどういった輸入手続をするのか、輸入関税はどうするのかというようなことを一々やると、非常にその船舶の出港に影響を来たしますので、イギリスなどではこれは輸入関税を免除して、輸入手続を免除しておりますが、日本の税関はなかなか行き届いておりますので、事前にこういうことを処理しておきませんと、非常にトラブルが起きる危険がありますが、どういう措置にしてあるか。関係の法令を見ますと、ほとんど運輸省設置法その他改正がしてありますが、関税法については何ら触れておりませんので、これは大蔵省あるいは運輸省に質問をしておきたいと思います。  次に、これも最近勉強してわかったんですが、わが国では、ロード・オン・トップ方式が非常に少ない。これは意外に思ったのですが、世界の国はほとんど一ぺん積んだ油をスロップ・タンクに入れて、また積んで持っていっておりますから廃油の問題が少なくなってきておりますが、ものの本によりますと、世界の二七%がロード・オン・トップ方式を採用していない。その中で主たるものは日本とギリシャであると、こう書いてある。なぜそういうぐあいに日本ではロード・オン・トップ方式が少ないのですか。そのためにタンクの中の油を洗浄して排出し、海域をよごしているようなことはありませんか。日本ではこういう海水汚濁防止条約を批准していないからロード・オン・トップ方式をやらないということはないかどうか。なぜそういう方式が日本ではとられないか。このことが日本の海域をきたなくする原因になっていないかということが心配になりますので、同時にお聞きしておきたいと思います。
  24. 鈴木珊吉

    説明員鈴木珊吉君) 最初の第一問の御質問でございますけれども、輸入関税の問題でございますけれども、これにつきましては、大蔵省との間で事務的に目下検討しております。施行するまでに統一見解を出していただきたいというふうに考えております。  それから第二点でございますけれども、日本タンカーがロード・オン・トップ・システムをとっていない。しかし、日本タンカーの場合は、日本近海をよごすのではなしに、外航船の場合ですけれども、まあペルシャ湾ならペルシャ湾へ行って油を積みます前にバラストの水を流すわけでございます。したがって、日本の外航タンカー日本の沿岸ではそういう水は流しません。ただし、修理をする場合は別でございます。したがいまして、日本タンカーが現実にイラン、ペルシャ湾に行きますときは、ペルシャ湾の近くじゃなしに、ずっと奥のインド洋のほうで、ずっといままで捨てていたというのが実情でございます。それから、こういう条約がありまして、日本は入っておりませんでしたけれども、外航船につきまして、日本の船がよごした、そういう事例で抗議を受けた結果まさに日本の船がよごしたのだという事例は聞いておりません。しかし、今度こういう国内法ができますので、そういう油を流さぬでもいい便利なスロップ・タンク方式というものにつきまして、これから船の改造を行なう船主もあろうと思います。また、新造船もそういう方向で新造していくということに相なると思いますが、その点につきましては今後指導いたしたいと思いますので、よろしくお願いいたしたいと思います。
  25. 柳田桃太郎

    柳田桃太郎君 次に、海水油濁についての救済措置についてお伺いしたいと思いますが、これは新聞で拝見いたしたのでございますが、英国の西南海域でトリー・キャニオン号という十二万トンのタンカーが座礁して大破をして十二万トンの油を流出して、英仏両国の海軍空軍が出動して非常な大騒動をして、二カ月にわたってこれをやったんですが、私はあれを見まして、もし日本の瀬戸内でそういう事故が起こったならば、これはたいへんなことになる。瀬戸内海全部が油濁されるということで、非常に戦慄を感じたのですが、この場合の措置等について十分調査をして、後日報告書をわれわれはいただきたいものと思います。  これはその程度にいたしておきますが、さて今日の問題ですが、今度の油濁法におきまして違反にならないという場合、非常に量的に多くて非常に因りますのは、パイプの操作を誤った、あるいはタンクの操作を誤った、しかしすぐに気がついてそれを措置したというような場合は、これは善意に解釈されまして、これは違反にはならない。しかし、民法上の賠償責任をまぬがれることはもちろんできないと思います。その賠償責任の問題ですが、千葉で最近こういう事例を聞いております。三十トンのタンカーが転覆して約三十トンの油が流出した、そのためにノリにばく大な被害を及ぼしたのだけれども、それは小さい船主であって、四十万円の補償を出すことがいっぱいであった。事実そうであろうと思う。それ以上は、商法六百九十条で、船をくれてやってしまえば、あとは船腹所有者の責任はないということになっているのが、御承知のとおり、船舶所有者の委付の規定でございます。それでは、迷惑をこうむった漁師というものはどうにもならない。そこで、私調べてみますと、PI保険というのがあるんですね。PI保険というのは、これは運輸大臣おいでになっておりますが、自動車のほうは、陸上におきましては、いま六千六百円くらい払いますと一千万円くらいの事故保険がつくわけでして、非常に陸上では事故が多いものですから発達しておりますが、海の場合、調べてみますと、出光丸のような二十万トンのタンカーで年間の保険料が三百十万円、そして損害を及ぼしたときの補償限度は一億二千九百万円ですから、これは最大最高と思います。そうすると、出光丸が二十万トンの油を流しても、極端に言いますれば、保険は一億二千万円しかついていないから、あと船舶の所有者が出すか、あるいは船舶を投げ出すかしなければならないということになるのですが、このPI保険というものを、日本に二千五百隻くらいある小型船にも適用して、一種の強制保険ということにしますか、自賠法のようなものができたならば、日本の漁師もその限度においてあきらめてもらう。それでなければ、二そうか三そうしか持っていない小型船主が事故を起こした場合に、与えた損害があまりに多い、だれも救済しないということに現在なっておるようですが、このPI保険制度をもう少し実情に合うように、自賠法のようなものにこれを改善するような御意図はないかどうか。これは運輸省だけではわからぬかと思いますが、大蔵省でもお考えを願いたいと思います。
  26. 鈴木珊吉

    説明員鈴木珊吉君) ただいまの点は、先生指摘のとおりでありまして、実は、この点はまさに盲点でございます。われわれといたしましても、これにつきましては、現在のところは、手当てはPI保険しかございません。それもいわゆる任意保険でございますので、とても自賠法のようなシステムじゃございません。御指摘のとおりで、まことに申しわけございませんですけれども、現状はそういうことであります。したがいまして、たとえばいまのPI保険というものを義務制にするとか、あるいは先生おっしゃったような自賠法に似たような、新しいそういった、いわゆる昔の第三者損害救済のための制度というものをつくるべきではないかという御意見でございます。十分検討いたしたいと思っております。  以上でございます。
  27. 柳田桃太郎

    柳田桃太郎君 その件について、ひとつ簡単に、重要なことをお伺いしておきたいと思いますが、現在、この法にはふれないけれども、法の適用外になるいわゆる無過失で油濁を起こす場合があるわけですが、その場合の救済措置について、一体どこに訴えればよいか。農林関係は農林関係にいけばよいのか、運輸省関係運輸省に、厚生省関係は厚生省に行って訴えるべきかと思いますが、その場合に、被害者の立場に立って救済措置に協力してやるような態勢がどこかに必要ではないか。これは公害本法の問題にふれることですが、油濁の場合は一体どこに訴えて協力を要求すべきかということを、非常に簡単なことですけれども、御説明を願いたい。
  28. 榎本善臣

    説明員榎本善臣君) お答え申し上げます。 いま御審議をいただいている法律施行になりまして、油による汚濁、そういう事実があったという告発が海上保安庁に出されますれば、海上保安庁といたしまして、取り調べ、法の命ずるままに手続をいたしまして検挙等を当然いたします。なお、法律施行にあたりましては、海上保安庁といたしましては、与えられた責務につきましてはできる限りの力を添えて取り締まり、あるいは検挙等をいたすつもりでおります。
  29. 柳田桃太郎

    柳田桃太郎君 最後にひとつお伺いいたしますが、この海水汚濁防止というのは、船舶側の乗り組み員の道義心と法律に関する知識というものが非常に効果をあげる上において必要なことなんでございます。すでに外国では、海技免状試験の科目の中に、条約であるとか、あるいは関係法令が入っておりまして、試験科目になっているわけです。そして、船員たる者はすべてこの公害関係、油濁関係のことをよく知っておらなければならないことになっているんですが、日本ではどうなっているか。もし、なってなければ、これを取り入れる必要があるのじゃないかと思いますので、御意見をお伺いしたい。  それからもう一つは、すでに海水の油濁に関係のある船主団体や石油業者をもって打って一丸とした協力体制はございますが、さきに申し上げたように、防止をかねて、官民を一体とする、千九百五十九もあるたくさんの港単位に、そういった協力体制が得られるように、運輸省としては早急に措置すべきじゃないかと思いますので、一ぺん御意見を承っておきたいと思います。
  30. 河毛一郎

    政府委員(河毛一郎君) ただいまお話のございました、このような問題に関します船舶職員の海技試験の試験科目の現状でございますけれども、現在すでに、ある程度、先ほどお話のございましたような港則法のある部分につきまして、油濁防止のために必要な規定がございますが、これらのものにつきましては、船舶職員試験の中で取り入れられておるところでございます。で、今後この法律が実施されますれば、私どもといたしましては、直ちにそれを試験科目の中へ入れまして、実際の運用に遺憾なきを期してまいりたい、こういうように考えておる次第でございます。
  31. 鈴木珊吉

    説明員鈴木珊吉君) ただいまの先生の第二点でございますけれども、これにつきましては、法律を守るということでなしに、そういったものを捨てるということは社会道徳に反するのだということも含めまして、主要港単位に官民で、そういったPRをかねましたり、あるいはそういう指導もかねたような、さらに強力な機関を運輸省でつくりまして、万全を期していきたいというふうに考えます。
  32. 柳田桃太郎

    柳田桃太郎君 最後に、希望だけを申し上げておきますが、こういった海水油濁防止ということは、船舶業主あるいは油の取り扱い業主、あるいは一般生活環境にも非常に影響するものでございますから、十分に思いやりのある実行のできるような体制を考慮しつつ、漸次改善を加えて、より完全なものにすることを希望して、私の質問を終わりたいと思います。
  33. 松澤兼人

    委員長松澤兼人君) 本案に対する本日の質疑はこの程度といたします。     ―――――――――――――
  34. 松澤兼人

    委員長松澤兼人君) 産業公害及び交通対策樹立に関する調査を議題とし、産業公害対策に関する件について質疑を行ないます。  質疑のおありの方は順次御発言を願います。成瀬君。
  35. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 厚生省の資料になると思いますが、例の陸軍の毒ガス製造を広島県の大久野島でやっておりまして、ここに従事しておった人たちのことでいろいろな問題が起きたということをこの間テレビがやっておりましたですがね。そのくらいのことしか私にはわかりません。ですから、これはその後どんなふうになっておるのか。あなたのほうで、実態なりあるいは対策、そういうようなものについて何かの資料がございましたらお願いしたいと思います。  それから二つ目の資料としてお願いしたいのは、あなたのほうの公害課がお出しになっております「公害対策の現状と課題、四二・三・二〇」の九ページの8番に「水俣、阿賀野川流域におけるメチル水銀中毒の経験から第三の水俣病を防ぐ目的で同種の製造工程を有する三工場とその流域における水銀汚染実態調査を行なった。」――こういう報告が出ております。そこで、十ページにあるように、私もその水銀中毒患者はゼロだというふうに思っておりますが、四十一年に行なわれて、非常に簡単な調査、その後も引き続いて調査されておりますが、これはどんなものになっておるのか。三工場等のものも私も承知しておりますから、そういうことはいいですから、それがその後どうなっておるのか。これをひとつお願いしたいと思います。  それから三番目にお願いしたいのは、これはどこがおやりになるのか、僕もちょっとわかりませんが、一体土地行政というのはどこが中心になってやっておいでになるか、そのことはよくわかりませんけれども、何にいたしましても、住宅をやっても、あるいは交通対策、道路等を考えてまいりましても、あるいは物価の問題を考えてまいりましても、結局土地の問題に突き当たってまいります。ですから、このことについては、もうどなたにも異論のないことだと思いますが、そこで、中心の行政庁がないわけですから、どこにということになって私宅非常に迷っておりますが、建設省あたりでやっておいでにならぬかと思いますが、一体諸外国は土地行政というものをどうしておるのか。ほんとうに日本みたいに野放しにしておるのか。若干、たとえば市町村のこういうようなことについて、土地行政に対する対策を何か諸外国等でやっておる、変わったことをやっておるというようなものがあるなら、資料としてお出しを願いたい、こう思います。これはよろしゅうございましょうか。
  36. 松澤兼人

    委員長松澤兼人君) いま見えておるのは、橋本公害課長と大塩計画課長でございます。  いま成瀬委員の御希望、ひとつよろしくお願いいたします。
  37. 大塩洋一郎

    説明員大塩洋一郎君) いま先生のおっしゃる土地行政ということの意味でございますが、非常に広いと思うのでございますけれども、いわゆる地価対策なんかとの関係における土地行政なのか、あるいは収用とかなんとかという公共事業を推進していく上での土地行政なのかによって、外国の所管も実例も違うと思いますので、お確かめいたします。
  38. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 ぼくは、あなたのおっしゃる後者のほうの意味を大体中心としております。
  39. 橋本道夫

    説明員(橋本道夫君) いま先生のほうから御要求になりました陸軍の毒ガス製造工場の跡で、この被害者が現在なお残っておるではないかというお話でございますが、このことにつきましては、きょうは急でございましたので、私どものほうで資料をぜひ集めまして、どういう状態になっておるかということについて若干期間をいただいて御報告申し上げたいと思います。  二番目の「公害対策の現状と課題」に書いてございます、水俣、阿賀野川の同種三工場の調査の結果でございますが、この結果につきましては、いまの御要望は、あの調査結果の資料でございますか。
  40. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 そうです。
  41. 橋本道夫

    説明員(橋本道夫君) それでは資料を提出いたします。
  42. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 簡単に騒音関係のことについて、どうなっておるかということよりも、むしろ意見を申し上げて、公害本法が通り、そうして八月から予算編成に入る、それについての心がまえとして要望を申し上げるという形に終わると思いますけれども……。  そこで、騒音対策のことで申し上げたいと思いますが、直接規制法規はございません。あるとするならば、市町村の、といいますか、自治体におけるところの条例ですべてやっておるようでございます。しかし、騒音が市民生活に私は一番密着しておると思います。だからこそ、人権擁護局でいろいろ取り扱われた公害事件一覧表というものがございますが、これを見ますと、騒音、振動が一番多いようでございます。そこで、居住地域からそういう工場は出ていきなさいということが人権擁護局のほうから勧告され、県あるいは市当局がその中に入ってやられる。そうしてこういうものは中小企業が多い。そこで結論が出て、それじゃひとつ出ましょうということになる。出るということになりましたときに、工場を他に移転するということになりますから、それに対するところの資金の問題が一つ出てまいります。そこで、団地問題はいまのところ承知しておるからよろしゅうございます。個人の問題については利子補給のないことも承知しておりますし、新たに出るときに、名古屋市が条例で固定資産税を免税しておることも承知しております。これはそうなっておるが、これじゃ私は事が解決する問題じゃないと思います。あるいはばい煙規制法の関係で言うならば、これはなるほど人間の生命に直接影響があるから近代化資金の中で長期資金を出しておりますし、無利子でやっておることも承知しておりますが、しかし、騒音にはそういうものがないというようなことでございますから、一体、こういう問題について、今後――条例はすでにできて施行されておる。そこで今度、基本法ができたということなら、ことし一体何をやろうとするのか、こういう問題について自治省はどういう指導をされておるのか。基本法ができて来年から取り組もう……。四十三年の話になるのか。いままでやってきた中で、ずいぶんといろいろ問題が出てきておりますから、こういう問題が十分上がってきて、それに対する対策は立てられると期待もし、もしやられておらぬとするならば、四十三年にはぴっちりやってもらわなければならぬと思いますから、こういうことについてどうなっておるのか、まずお伺いいたしたいと思います。
  43. 成田二郎

    説明員(成田二郎君) お答えいたします。  ただいま先生がお述べになりました、私どものほうから差し上げました各府県あるいは各市の公害防止条例の施行状態は、先生御存じのとおりなんでございますが、特に騒音関係につきましては、やはり環境整備を徹底させなきゃいかぬと、こういうふうに思うわけでございます。やはり環境整備を徹底するということになりますと、特に大都市内外のこういう市街地の整々たる整備が的確に施行せられませんと、本来の公害防止の実施がいきません。こういうような観点につきましては、われわれといたしましても十分注意をいたしておるつもりでございます。現在すでに、公害対策基本法施行される以前に、御案内のとおり、各地方自治団体といたしまして、要請があるために、思い切った相当強いきびしい規制を設けまして、公害防止のための条例等を施行しておりまして、住民の福祉の向上に少しでも役立つ、こういう措置をとってまいったところでございます。今度の公害防止本法施行されました暁はなおのこと、この法の趣旨にのっとりまして、自治省といたしましても、快適な生活環境が確保されますような都市の再開発なり、あるいは都市周辺のスプロール化の未然防止というような点について、関係各省と連絡しながら適正な指導を行なっていきたいと存じます。
  44. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 騒音防止条例というものがあることは、あなたがおっしゃっているとおり、そうなんです。たとえば、一般騒音の、夜ラジオを大きくするというのを規制するとか、そういうのは行なわれているわけです。ところが、工場騒音――まあ交通騒音のほうはなかなかできないというなら、工場騒音について、立ちのきをと、こういう問題になっている。現にそういうことがやられておるわけです。ですから、その場合に立ちのきをやったとすると、中小企業の人が多いわけです。これはなぜかというと、住宅地に工場がある人が多い。そうすると、土地を購入するそのときの金融は、いろいろと条例があって、めんどうは見てもらえる。あるいは、利子補給も大体二分の一くらいずつやっておるわけです。ですから、かりに日歩二銭ちょっとで借りたらば一銭三厘くらいにつくれるわけですね。それはそれでいいと思うんです。ところが、片一方のほうのばい煙規制のほうは近代化資金の中でこれは無利子で貸されておるわけです。これはどっちかというと、中小企業の人もあるけれども、大体大きいほうが対象が多いわけですね。それにならった中小企業の人たちに対する近代化資金で無利子でやる金融のほうはとうなっておるかということ――大体三十九年のときから四十一年と一、二年ずつ伸びてきておるわけです。ところが、いま言ったように、騒音関係で工場を移転をされる場合、個人の場合ですね、一つの企業、一単位の企業がやる場合には何らそういう恩典措置がないわけなんですよ。だから、それをどうするかということをお尋ねしておるわけです。
  45. 成田二郎

    説明員(成田二郎君) お答え申し上げます。 おそらくは、各府県でも、特に公害防止の観点から、関係のある、加害者と思われます中小企業の適正な立地誘導につきましては、おそらく、通産省もお見えでございますから、そちらのほうからもお答えがあるかと存じますが、直接その衝に当たりますところの府県なり市町村は、おそらくいろんなあらゆる手を尽くしまして、政府のほうの助成も希望しましょうし、今度の公害対策基本法案が日の目を見ました暁におきましては当然のこととしまして、それらの点につきましても万全の措置をとるようなふうに、わが省といたしましても指導いたしたいと思っております。
  46. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 この利子補給も、あなたどういうふうに把握しておいでになるかわかりませんが、市なり県が自己資金でやっておる、と言うのですか、独自の費用でやっておるわけですよ。御案内のとおり、特交の中に行政費を若干見ておりますけれども、全部自治体の独自の財源でやっておるわけですよ。通産省がどうこうとかいうのじゃなくて、私は、自治省の立場から言えば、当然、こういうことになっておるのだ、だから自治省は地方自治団体の要請を受けて働きかけをしておる、こう思っておったところ――あなたのセクションじゃないんですか、この問題は。いまお答えを聞いておると、ちょっと歯車が合わないから、あなたのセクションでないとおっしゃるなら、これでこの問題は打ち切りたいと思います。
  47. 松澤兼人

    委員長松澤兼人君) はっきりここのところを言ってください、あなたの所管でなければ所管でないと。
  48. 成田二郎

    説明員(成田二郎君) 公害対策は、これに対しては、実は私のほうといたしましては、財政面につきましては財政局、行政面の関係は、たとえば条例制定等につきましての指導は行政局が担当しておるわけでございますが、との基本的な公害対策の問題につきましては、私どものほうの官房は調整的な立場にあるわけでございます。いまおっしゃいました個々の中小企業に対するところの態度でございますね、こういうものにつきましては、実は自治省といたしましては直接には、ストレートには、扱うような態度はとってないのでございます。まとめまして団地形成とか、あるいは土地造成とか、こういう点になりますと、私のほうでその問題を担当します府県市町村を相手にしましていろいろ財政上行政上の助成措置は講じておるわけでございます。ですから、いま申しました趣旨にのっとりまして、公害防止の観点からいたしまして、どうしても中小企業の工場等が、事業所等が、適正な場所に立地するように誘導する必要がありました場合につきましては、それぞれの具体の形式によりまして判断いたしまして適正な措置をとってまいる、こういうふうな考えでおるわけでございます。
  49. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 自治体が独自の財源を出してまで一生懸命でやっておるということに対して、自治省のほうは何にもせずにおるというのはおかしい話だ。それに、団地形成の問題にしても、自治省はただトンネルじゃないかもしれないが、私には自治省とは無関係のような気がする。それよりも、個々の問題に対して、条例をつくらしておいて、条例をつくれと指導をしておいて、これだけで、事が、公害対策というものは進むもんじゃございません。それなら、そういうものについての財源をどう見るかということが大きな仕事だと思いますから、一度お帰りになりましたら、自治省としてのいろいろな問題についての研究もし、それに対する対策、努力もしていただきたいということをお願いをして、この問題はこれでおしまいにいたします。  そこで、続いてそれに関連をして申し上げたい点は、一番困っておられることは、中小企業の人が他に土地を買われます。そして新しい土地を取得されることはそれでいいとして、それに対する資金関係の問題をいまの条例関係で見れば、一番問題になりますのはそのあと地をどうするかという問題で一番困るわけです。あと地が売れれば企業としては金利負担等も安くなりますし、その土地を売ることによって、借りた金が全額償還できるというふうなことになったら、金利負担というものが全然なくなる。ですが、このあと地が売れないと企業としては成り立たないわけです。そこで、いざ移転をしてすぐあと地を買う人があるかというと、なかなか容易じゃないわけです。そこで、道路を拡張するような場合でも、立ちのきの問題等も出てまいったり、あるいは子供の遊び場をつくる場合でも土地の取得が一番困難な情勢なんですから、そこで、そのあと地を自治体が購入できるような、そういうふうにしていただけないものだろうか。建設省のほうはそういうことについて一番土地を取得されるのに苦慮されておりますから、建設省のほうとしても、自治体が土地を、そういうあと地を積極的に取得しやすいような方法に自治省に対して御協力を願うというかっこうで自治体の土地取得ということを進めていただけないもんだろうかどうだろうか、こういうことに対しての見解をこの際承っておきたい。
  50. 成田二郎

    説明員(成田二郎君) 先ほど先生から、個々の企業の移転に対しましての自治省の態度がはっきりせぬと、こういう御指摘でございますけれども、そういう個々の団体がなけなしのさいふの底をはたきながら助成いたします場合につきましては、私どものほうといたしましては、別途特別交付税等におきましてその応分の助成はしてまいっておるということは申し上げてよかろうと存じます。その場合、参考までに申しますと、こういう関係で、四十一年度におきましては、府県分といたしまして一億三千五百万円、市町村分といたしまして三億三千二百万円、合計いたしますと四億六千七百万円。で、今年度は、こういう関係市町村が一般単独事業としてどうせ施行されますので、それに対しまして換地土地対策のための起債措置としまして七十億円のワクを設けてございます。それが先ほどの御指摘の一応現在の私どもの態度であります。  それから、いま御質問の工場移転あと地の問題でございますが、これにつきましては、今年度公共用地の先行取得の地方債のワクが六十億円でございます。すなわち、使いようでございますけれども、いま御指摘のような点につきましては、十分適切な考え方だとわれわれ考えておるわけでございますので、そのような点につきましても、積極的に関係市町村団体のほうに協力してまいりたいと思っておるわけでございます。で、参考までに申しますと、いま申し上げました公共用地の先行取得のワクが地方債計画上数字として出ましたのは今年度が初めてでございますけれども、すでに三十九年度から、先生御存じのとおり、東京都に対しましては、そういうあと地の買い上げに対しまして、合計しますと百億円起債を許可してございます。
  51. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 ちょっとあなたの答弁でどうもわかりにくいのですが、丁寧に説明してもらえぬですか。都市開発資金のワクが三百何十億資金がありますね。七十五億は何ですか。六十六億という数字と二ついま言われましたが、六十六億は何で七十五億は何ですか。
  52. 成田二郎

    説明員(成田二郎君) 六十億と申しましたのは、今年度の地方債で、この中で工場あと地等の関係も入るわけでございますが、公共用地の先行取得の起債ワクでございます。その一環として、お尋ねのような点につきましてはやっているわけであります。それから七十億の数字は、一般的に公害対策、過密都市対策等の問題がございます。過密都市対策のために関係市町村団体が単独事業をやっておりますので、そういうものに対しまして関係の事業を行ないます地方団体に対して起債ワクを許可していきたい、そのワクが七十億でございます。
  53. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 私は、そういうことし初めて六十億の地方債のワクがある、全部ではありませんけれども、それであと地の問題も解決されるんじゃないか、あるいは七十億もあるじゃないか、だからその中であと地の問題は大体解決するのじゃないかというように考えますが、こういうことについての対策は立てておるということになれば、これからあと地の問題については、一応市町村あるいは県がそういうものを買うのだということを奨励――と言ってはおかしいのですけれども、認められて、いくという、そういう態度ですか、大体自治省の態度というのは、方針というものは。
  54. 成田二郎

    説明員(成田二郎君) 認めてまいりたいと思っておるわけでございますが、まだその辺が大蔵省と折衝中でございますので、まだ確然たることは一般的には言えないわけです。そういう方針は持っております。  なお申し上げますと、一応公共用地の先行取得のワクは六十億でございますけれども、六十億ではどうせ間に合わぬでしょうから、そういうようなワク内の縁故債をやはり融通するようなかっこうで処理したい。こういうふうに思っております。
  55. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 建設省のほうにも、ついでに、意見があれば伺っておきたいのですが、一つは、工場あと地等いろいろなものが出てまいりますね、その問題は、今後地方自治体が買っていくのだと、そういう方向なんだというプリンシプルを立てるかどうかという問題、ただ場当たり的に、何か知らぬけれども、いましょうがないからやっておこうじゃないか、そういうことなのか。プリンシプルとしてこれを立ててお見えになるのか。そこら辺のところを討議されて、十分話し合われてやられているのか。当面の糊塗策となっているのか。いろいろと私は論議があったと思うのですから、その辺のところを承りたいと、こう思っているわけです。ぼくはこれは個人の気持ちなんです。希望なんですが、ぜひプリンシプルとしてこれを立ててもらいたいという考え方があるわけです。
  56. 成田二郎

    説明員(成田二郎君) 建設省も後ほど説明されると思いますけれども、都市開発資金は建設省所管でございまして、これは一応都市計画事業等が決定した地域について工場のあと地を優先的に買い上げるために長期低利の資金ワクを設けておるわけでございます。わが省が、先ほど申しましたように、すでに東京都に対しまして百億円くらいのあと地買い上げの起債を許可しました趣旨は、都市計画事業が必ずしも決定していない、しかし早晩いずれはその当該関係地域におきまして都市計画事業その他の関係事業が遂行されます場合に、これを公共的にリザーブしておきまして、そしてその段階に至りましたならば、あるいは公園、あるいは街路、あるいは公営住宅、そういうような関係で公共的な使用目的に供するために使うような方針許可してございます。その辺が建設省の立場とちょっと違うのでございますけれども、そういうような点で考えているわけでございます。
  57. 大塩洋一郎

    説明員大塩洋一郎君) 建設省は、先般「都市開発資金の貸付けに関する法律」によりまして初年度十五億円でございましたが、出発いたしましたのは、工場あと地の買い上げと、それから都市計画で決定してしておりますところの一定の大規模施設について権利制限をいたしますので、その権利制限の身がわりといたしまして買い取りにも応ずるという意味の二種類につきましての金を公共団体が支出するにあたりまして特別会計を設けさせまして、国から全額融資するという制度を確立いたしまして、初年度はわずか十五億で発足したのでございますが、四十一年、四十二年――四十二年の要求はまだこれからでございますが、これを拡大してまいりたいと思っておるわけでございます。四十二年は三十五億、初年度が十五億でやったわけでございます。この貸し付け資金の考え方といいますのは、いま申しましたように、二つの性格に分かれておりまして、前者の工場あと地の買い取りといいますのは、首都圏、近畿圏等で工場の設立が禁止されておりますものですから、あるいは抑制されておりますものですから、外に出ていかなければならないというものに対しての買い取りというふうに、制限というものとリンクしております。と同時に、後者のほうの買い取りも、大公園あるいは大街路で都市計画が決定しているけれども、まだ事業決定してない、したがって事業がいつかわからない、当分先であるというものについて、そこに家を建てられては困りますので、一応建築制限しておりますから、それで困るという人に対しまして買い取るという趣旨のものでございます。  この二つのほかに、最近、四日市等におきましては、都市計画域内におきまして、工場を移転してほしい、あるいはその工場が移転できないならば周辺の住宅が集団移転しようとしている、集団移転したあとを買い取って、まだ計画は確定していないけれども、そのあと地が再開発の計画に即応したものであるならば、そのあと地を買い取る――どこでも買い取るわけじゃございませんけれども、再開発計画を立てて買い取るというような制度を立ててほしいというようなことが地元のほうからも強く要望されております。これは、ここにいらっしゃいます厚生省の公害課長さんなんかにも御相談申し上げまして、こういう要求を出したのでございますが、今年度認められませんでしたので、そういう趣旨のことを今後も要求してまいりたいと思っておるわけでございます。  現在きめられているのは、その二種類に制限をされている。近畿圏、首都圏のあと地の買い取りで、神戸の長田町のゴム団地の移転のあと地というものは優先的にその資金を充当いたしまして買い取る計画になっております。
  58. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 大都市及びその周辺ということになっておって、それは大体東京、大阪――いまの神戸のゴム団地のことは、その周辺ということは以西の市だろうと思っておりますが、この思想はいま私が申し上げたプリンシプルの問題ですから、大臣でなければいけないかと思いますが、私はこういうものを発展さしてもらうことがいいじゃないか、こう思っておりますが、これは政策の問題になりますから、実態だけお伺いしまして、わかったのですが、どうぞあなたたちが議論の中心になられると思いますから、こういう問題については、そういうものと関連して、私が諸外国の問題がどうなっておるかということで資料要求しておるのも、実はそういうところにありますから、ぜひ一度、土地行政というものに対して今後どうしていくかというプリンシプルというものを打ち立ててもらいたい。自治省でも、あるいは建設省でも、十分討論を積み重ねて何らかの結論を出していただく、もういい時期に来ておるのではないか。せっかく公害本法というものができました。しかし、それは御案内のとおりの頭の問題で、足は一つもないわけです。ですから、足をつけるという意味でも、その柱になるのはやはり土地の問題が一番大きな問題になってくるだろう。したがって、そういう問題についてぜひ結論をお出しいただくように要望を申し上げまして、きょうはこの程度で質問を終わります。
  59. 松澤兼人

    委員長松澤兼人君) 植木君。
  60. 植木光教

    ○植木光教君 宇治川水域の水質基準の設定問題について質問いたしたいと思います。  この問題で、流域の企業はもちろんでありますけれども、京都の産業界が死活問題に関するというので、深刻な事態になっております。これは京都だけの問題ではなしに、全国的にいろいろあろうと思いますし、また今後そういうことが起こることが十分に予想されますので、この際、関係所管省の御意見と、今後の方策についてお伺いをいたしたいと思います。  まず、宇治川水域の水質調査をなさったようでありますけれども、その結果はどうであったかということについて、経済企画庁のほうから御答弁をいただきたいと思います。
  61. 松本茂

    政府委員(松本茂君) 淀川につきましては、昭和三十四年度に調査をいたしまして、その後三十五年度に補足調査、また再調査を四十一年度にいたしております。三十四年度、三十五年度の調査の結果、昭和三十八年一月に淀川につきまして水質基準を設定いたしておるわけでございます。あと、宇治川につきましては、昭和四十年度に調査をいたしたわけでございます。その結果、流水の状況でございますが、宇治川の御幸橋のあたりにおきまして、BODで申しまして、三十八年が三・九、三十九年度が三・八、四十年度が二・九、大体こういった推移をたどっておることが判明いたしました。
  62. 植木光教

    ○植木光教君 いまの調査によりましても汚濁状況がわかるわけでありますが、この汚濁源というものは、家庭用の排水によるものか工場排水によるものか、どういうふうに見ておられるか、お聞きをいたしたいのであります。といいますのは、この流域というのは最近非常に住宅がふえておりまして、いまお話のありました御幸橋のあたりの調査で、大腸菌群が非常にふえているというような結果が出ているというふうに聞いております。また、京都の商工会議所が調査をいたしましたところ、宇治川の流域の工場の排水は日量百トン以上で、工場の排水量は宇治川全流量の一・〇六%というような数字が出ております。これは、家庭用の一般下水に対して三〇%というようなことも言っているわけなんで、したがって、この汚濁源というものについて、一体家庭用の排水によるものか工場排水によるものかということについては十分調査をしていただかなければならないわけでありますので、その点についてお伺いをしたい。
  63. 松本茂

    政府委員(松本茂君) 淀川全体につきまして昭和四十年度に調査をいたしましたところによりますと、下流のほうの大阪市等の上水道の通っております柴島の地点におきまして、はかってみましたところ、汚濁付加割合は、工場事業場の割合が全体の大体八三%ぐらい、家庭下水によります分が大体一七%ぐらい、こういうことになっておるわけでございます。  宇治川それ自身につきましての一つ調査によりますと、家庭下水の割合が一五%ぐらい、工場排水が大体八五%程度、こういうことになっております。
  64. 植木光教

    ○植木光教君 いまの調査の数字と商工会議所などの行なっておりますものと、だいぶ違うと思いますが、厚生省に伺いますけれども、この宇治川の下流というのは飲料に多く使われておるわけなんですが、一体厚生省はどういうふうに見ておられるか、お伺いをいたしたいと思います。
  65. 武藤き一郎

    説明員武藤琦一郎君) 淀川におきます柴島浄水場の三十年以降の原水水質の動向を見ますと、BODにつきましては、三十年初めからしますと、あまり変わってはおりません。それから酸化物につきましては汚染の程度が増加しております。それからアンモニアにつきましても増加の傾向をたどっておるような状況でございます。
  66. 植木光教

    ○植木光教君 そうしますと、いま京都の産業界が非常に深刻な影響を受けておると申しますのは、宇治川の水域に対して、都市河川方式による規制をする作業が進められておる、あるいはまた、規制対象を排水日量百トン以上の事業場まで引き上げる、そうなると、現在の排水日量二百五十トン以上の規制措置ですらいろいろ問題があるので、たいへんな事態になるということを心配いたしましてその対策を練っておる。この流域は、非常に零細な友禅業者でありますとか、その他いろいろの工場があるというような状況でありまして、非常にきびしい規制を加えられると死活問題にかかわる。また、商工会議所などの調査によれば、先ほど申しましたように、家庭用の下水道が完備していない、家庭用の排水によって汚染されているにもかかわらず、工場排水の規制というようなことばかりを考えられてはどうにもならぬじゃないか、こういう点からも非常に大きな問題を起こしておるわけです。ひとつ宇治川水域の水質基準の設定につきまして、今後どういうふうにお考えになっていくか、お聞きをいたしたいと思います。
  67. 松本茂

    政府委員(松本茂君) 水質基準の設定のやり方でございますが、これは、従来は汚濁源になります工場等のわりあい数の少ないところを対象にいたしておりました。そういうようなことで、個々の業種、個々の工場別に、たとえばパルプの場合は幾ら、医薬品の場合は幾ら、セメントの場合は幾ら、こういうふうに水質基準を設定いたしましてまいってきたわけでございます。しかしながら、淀川でございますとか、あるいは寝屋川でございますとか、あるいは神崎川でありますとか、そういった大都市の諸河川、それからまた京浜で申しますならば、鶴見川でありますとか、城南の諸河川でありますとか、多摩川でありますとか、荒川でありますとか、そういった川につきましては、非常に工場の数もたくさんございますので、そういった個々の工場につきまして基準を設定するということはできないことでございます。それで、一括方式と申しますか、一つ基準をいずれの工場にも適用するという方式を採用いたしまして水質基準を設定することにいたしておるわけでございます。すでに設定いたしましたのは、東京の、首都圏の諸河川についてすでに水質基準を設定したわけでございまして、近畿圏のそういった都市河川につきましては、これから原則としてそういう方向でやっていこうということでいま作業を急いでおるところでございます。ただ、近畿圏の諸河川につきましては、やはり従来からの経緯なり地元の事情なり、そういった点もございますので、そういった点も十分考慮してやっていかなくてはならないということで、そういった事情をいろいろ勘案いたしまして一つの試案を作成いたしまして、その試案につきまして、府、市あるいは業界の方々の御意見をお伺いしておる、こういう段階でございます。  それで、たとえば淀川につきましてやっていきたいと思っております方法は、まず、既存のものと新設のものと二つに大別いたしまして、既存のものにつきましては、その工場があります地域の下水道整備ということから考えまして、その地域の性質によりまして三つに分類いたしております。  まず、下水道がすでに整備されておる地域、これにつきましては、BODで申しますならば二〇PPM以下にしてもらいたい、こういうふうに考えております。これは下水道がすでに整備されておるわけでございますから、それに流し込まれればそれで事足りるわけでございます。特に事情があって川に直接放流される場合には、下水処理場から出ているのと同程度にしてもらいたい、こういう趣旨でございます。  次に、下水道の整備計画区域、今後三年の間に下水道が設置される見込みがきわめて確実である、こういう地域につきましては前処理基準のところまで下げてもらいたい、こういうふうに考えておるわけでございます。これは、下水道がその水を受け取りますその程度といたしまして定めておる基準でございまして、東京の場合などは、これがBODで三〇〇PPMでございますが、京都の場合は六〇〇PPMになっておりますので、その六〇〇PPMにしてもらいたい。三年間ほどの岡はそういうふうに六〇〇PPMということで水が流れていきますので、非常によろしくないという意見もあるわけでございますが、三年以内には下水道が完備いたすわけでございますから、汚水処理のためにいろいろ費用を使われるということも重複投資になりまして非効率ではなかろうかというふうな観点から、そのようにいたしておるわけでございます。  それからそれ以外の一般地域でございますが、これは、たとえば首都圏の川についていたしました場合は、一括二〇PPMとか、あるいはまた場所によりましては一二〇PPMとか、そういったふうにいたしておるわけでございます。しかしながら、この淀川につきましては、従来すでに三十八年度に水質基準を設定いたしまして、七つの業種につきましてはそれぞれ水質基準をすでに設定いたしてきておるという事情もございますので、原則的にはその他のものを一括いたしまして、B○Dでは一〇〇PPM以下にしてもらいたい、こういうふうに考えておるわけでございますが、個々の業種につきましてその事情を検討いたしました結果、たとえば食料品、染色整理業、パルプ、染料、合成樹脂、医薬品、ガラス、セメント、ガス供給業、セロハン、そういった業種につきましては、それぞれの事情を勘案して決定する。たとえば食料品につきましては二五〇以下にするというふうに、それぞれの業種の実態に即し、またその今後の改善の程度考えまして、そういった基準を設定していく、そういうふうに考えておるわけでございます。  それから、いままで申しましたのは既設のものについてでございますが、新増設、今後新しく工場ができる、あるいはまた増設されるというその増設のものにつきましては、これは下水道の整備地域につきましてはBODで二〇PPM以下、それから下水道の計画されております地域、これは前処理基準の六〇〇PPM、それからそれ以外の一般の地域、これにつきましては二〇PPM、こういうふうに考えておるのであります。特にこの一般地域につきまして二〇PPMというのははなはだきついではないか、こういう御意見があるわけでございますが、しかしながら、すでに水質基準が設定されて、そういう規則もあるという、そういう地域に今後工場ができるということでございますから、すでに既存の、町の中に工場がありまして、いろいろ制約があるというところとはおのずから事情も違うと思いますので、こういう基準を守っていただきたい、こういうふうに思っておるわけでございます。ただし、これにつきましても、技術的なあるいは化学的な現在の処理技術の水準からいきまして、どうしてもむつかしいというものにつきましては、それぞれの産業の主務官庁からの申し出もあることと思いますので、そういった点につきましては十分実態に即したやり方を考えていきたい、こういうふうに思っております。ただ、その場合の、たとえば中小企業の場合に、個々の工場がばらばらにそういったところに工場立地するということではなしに、所管官庁等と十分相談されまして工場団地等のようなやり方で集合して出ていく、そうしてそこで共同して処理施設をつくってもらう、その場合には公害防止事業団等の助けをかりまして、そういった処理施設がつくりやすいような体制のもとにそういった施設をしていただく、そういうふうによく現地現地におきまして指導していただきたい、こういうふうに思っておるわけでございます。
  68. 植木光教

    ○植木光教君 いまの既存の一般地域の場合ですね、食料品なんかの場合二五〇PPM以下とおっしゃいましたが、染色の場合は……。
  69. 松本茂

    政府委員(松本茂君) 現在考えております案では、染色整理業、これは一日に排水いたします水量が五千トン未満の場合はBODで二五〇PPM以下、同じく染色整理業でありますが一日の排水量が五千トン以上の大きいものにつきましては、処理能力もあると思われますし、また排水される量が多いだけに、少しでも十分な設備をしていただく必要がありますので、BODで二〇〇PPM以下、こういうふうな基準考えております。
  70. 植木光教

    ○植木光教君 建設省の下水課長さんにお聞きいたしますが、いまのお話に出ておりましたように、下水道の整備ということは非常に大切だということはよくわかるわけなんですが、この地域で今後どういうふうに下水道整備していかれる御予定であるか、ちょっと伺わしていただきたい。
  71. 久保赳

    説明員(久保赳君) 御指摘のように、京都市における下水道につきましては、水質基準が設定をされているというだけでなく、下流側に阪神間の大部分の方の飲料水の供給源、取り入れ口がございます。わが国におきましても、非常に地理的な条件からいきますと、異例なところであろうと思っております。したがいまして、従来から、京都市の下水道の整備の仕組みにつきましては、下水道整備第一次五カ年計画でもことに重点を入れて整備をしてきたのでございますが、一つの問題といたしましては、京都市が比較的財源的にも必ずしも富裕の団体ではございません。したがいまして、特に昭和四十年度からは、京都市のみのために国の補助率を当時は六大都市が四分の一でございましたけれども、京都のみにつきまして三分の一に引き上げる、こういう異例な措置も大蔵省にお願いしてとった次第でございますが、三十八年度から四十一年に至る間は、総事業費といたしまして約百三十八億円というものを投下をしたわけでございます。なお、投下の方針といたしましても、京都市の中心地域を受けます下水の処理場が鳥羽というところにございますが、鳥羽の処理場の拡張並びに京都の西側、商瀬川周辺のところに中小工場地帯が密集して淀川に対する水質の汚濁原因をなしている地域がございますが、その地域に吉祥院――地名では吉祥院でございますが、そこに処理を設けまして、四十一年度末に約八万五千トンの処理能力を持つ吉祥院の処理場が一応完成をいたしました。並びに鳥羽の処理場は、四十一年度末で一日約三十万トンの水を浄化し得る設備を設けるというところまで、やっとこぎつけたわけでございますが、なお京都市全域に下水道整備が非常におくれておりますので、先般国会で御審議をいただきました下水道整備緊急措置法が制定公布をされましたので、それに基づく五カ年計画の中で京都市の下水道整備に重点を置いていきたい、かように考えております。  なお、下水道整備緊急措置法の第一条の目的のところに、下水道の整備を進めまして、都市の健全な発達及び公衆衛生の向上とあわせまして、公共用水域の水質の保全に資することを目的にするということを明記いたしておるわけでございまして、そのような地域の下水道整備には特に重点的に整備を進めてまいりたい、かように考えております。  なお、数字的な詳細につきましては、五ヵ年計画の閣議決定をするまでの間、これは四十三年度の予算要求と並行する時期にきまってくるかと思いますが、その時点で、大蔵省当局あるいは企画庁、厚生省と協議の上、限られたる予算の範囲内では十分な配慮をしてまいりたいと、かように考えます。
  72. 植木光教

    ○植木光教君 それじゃ、通産省にお伺いいたしますが、先ほど申しましたように、この流域の工場というのは非常に零細でして、おわかりだと思いますけれども、今後水質基準というものを厳守していくためには、浄化設備その他いろいろな設備をやらなければならない。しかし非常に零細であるがゆえに、いろいろな融資考えられますけれども、その融資を受ける能力すらないというような状況がある。この点について、今後通産省としてはどういうふうな方策をとっていかれるのか、ちょっとお聞きしたいと思います。
  73. 馬場一也

    説明員(馬場一也君) 先ほど来企画庁のほうからお答えがございましたように、こういう大阪とか東京とかという大都市の近辺の河川につきましては、非常に工場が密集をしておりますので、従前の普通の河川で水質基準をきめられますときのような、きめのこまかいといいますか、名工場ごとの実情も勘案した水質基準の設定のしかたというのがなかなか困難であろう、したがって、ある程度平均値と申しますか、都市河川処理方式的な措置が必要であろうということは、私どもも全くそのとおりだと思っているのでございます。ただ、しかしながら、この京都の、ただいま先生御質問の淀川、宇治川、桂川というような水域におきましては、非常に伝統的な染色整理業がたくさんございます。これは非常にたくさんございます上に、非常に零細なものが多いというのが、この水域における産業分布――ほかの都市河川と違っているところではないかと私ども存じております。したがいまして、そういうところで都市河川方式を採用して企画庁が水質基準をおきめになりますときには、私どもといたしましては、十分そういうような京都の伝統産業の実情が反映するような水質基準の設定のしかたをお願いをいたしたいと思っております。いろいろこれから詳細な基準の設定――すそ切りと申しますか、何トン以下の工場までをとるかということにつきましては、十分そういうような考え方に基づきまして企画庁とお話をしてまいりたいと、かように存じております。いずれにいたしましても、非常に零細な工場に水質基準が都市河川方式で設定をされますと、これを守らなければいかぬのでございますけれども、零細な工場は、ただいま先生指摘のような融資ベースでこれの必要な処理施設をやっていくということも、なかなか困難なものがございます。したがいまして、根本的には、ただいま建設省のほうからお話等もございましたようなこの地域における下水道の整備というのを特に重点を置いてやっていただくということが、私は一番根本的な解決策であろうと思っておりますので、水質基準をおきめになるときは、そういうような配慮もしていただきたい、業者にとっても十分たえられる、あるいはそこまでは責任を持ってついていかれるというような水質基準をきめていただきたい、かように思っております。
  74. 植木光教

    ○植木光教君 最後にお願いをしておきますけれども、いま、通産省のほうのお話がありましたような水質基準を設定される場合に、やはり現地のいろいろな実情に即した、これを参考にした基準の設定のしかたをおきめいただかないと、先ほど来お話ししておりますような、いろいろな産業関係の混乱が起こってしまう。また同時に、水質が汚濁されるということは、これまた非常に困ることです。したがって、下水道の完備のために全精力をあげていただくことをお願いするとともに、通産省に対しましても、たとえば浄化設備をつくったりなにかするときには、やはり、こういう零細な業者の密集しているところに対しては、ただおざなりに、融資だとかあるいは近代化資金があります、あるいは公害防止事業団があります、というようなことでなしに、きめのこまかい、ほんとうにこういう零細業者が生きていかれるような公等防止策というものを十分考えていっていただきたい。これを強く要望いたしまして、私の質問を終わります。
  75. 原田立

    ○原田立君 ちょうど環境衛生局長もお見えですから、関連してちょっとお伺いしたいと思うのですが、去る二十七日の新聞に発表されておりますが、今月の二十六日に、福岡県大牟田において、同市の公害防止対策委員会の席上において、久留米大学の山口教授からいろいろと大牟田川の水質について報告がなされました。それまで、無機水銀が多量に検出されておる、こういうような発表があって一時市民は非常に心配をしたわけであります。それから間もないこの二十六日の会議においては、微量ながら有機の水銀が検出されたというようなことが表明されて、無機水銀で非常に不安を感じていたのが極度の不安に襲われたというのが現状であります。御承知のように、有機水銀は、水俣病の原因であるアルキル水銀と同質のものと言われておりまするし、非常におそれられております。また、過日この委員会で取り扱った痛い痛い病なんかも、従来水銀が病原であると、こういうふうにも言われております。それで、すでに厚生省のほうでも、ある程度状況がおわかりだろうと思いますが、この大牟田川の有機水銀の検出についての状況、どういう実態なのか、お教え願いたいと思います。
  76. 武藤き一郎

    説明員武藤琦一郎君) 大牟田川の水銀の問題につきましては、厚生省として過去どういうことをいたしましたか、概括的にお答え申し上げます。  昨年、四十一年の夏、福岡県から大牟田川の流域及び川のどろの中に微量の水銀が含有されておるとの報告を受けました。それにつきまして有機水銀の分析を行なうように県のほうに指導したところでございます。それから厚生省では、県当局と連絡をとりまして、大牟田関連水域の河川水、どろ、ノリ等の海産物に含まれております有機水銀の調査分析報告について、県、市、大学等に資料を提供いたしまして、県自体の調査をいろいろ援助いたしました。それから、昨年末からたびたび、厚生省といたしましては、担当官を県のほうに派遣いたしまして、県のいろいろの調査等につきまして援助をいたしております。  ただいま先生の御指摘になりました新聞記事につきましては、けさほど、県と大学のほうに電話をいたしまして確認いたしましたが、いまのところ有機水銀とは断定できないということでございます。しかしながら、いろいろ社会問題として不安を生じているようでございますので、引き続き有機水銀の確認方につきまして分析調査を行なうよう指示いたしております。先日、私この席で先生にお答えいたしましたように、厚生省といたしましては、本年度の公害関係の研究委託調査費の執行につきまして、大牟田川の水銀問題につきまして調査をするように現在県のほうと打ち合わせ中でございます。
  77. 原田立

    ○原田立君 微量の水銀が出たのでいま調査をさしているというようなことですが、その点については、また後ほど申し上げるとして、このような有機水銀が身体に入ると、ものすごい奇病を発生する。そのことはすでに御承知のとおりでございますが、ノリ業者は直接海水に絶えず手を入れて作業している、こういうふうな状況ですが、この影響があるのじゃないかということで、非常に心配しております。その点はいかがですか。
  78. 橋本道夫

    説明員(橋本道夫君) 有機水銀がどういうぐあいにして人のからだに影響を及ぼすかという問題でございますが、いまおっしゃいましたような、海水の中に手を入れて経皮的に吸収されて入ってくるということは、従来までの私どもが聞きました有機水銀中毒の形態では、そういう経路のものはございません。食品を介しまして、食品の中にかなり濃縮した存在で、それを常時食べるということによって、摂食によって生じてくるということでございまして、私どもいまの考えでは、海の中に入って経皮的に中毒を起こしはしないかということについては、従来の経口的に入るものとはかなり違い、それで中毒を起こすとは考えておらないのであります。ただ、海産物につきましてどうかという問題もございますが、この点につきましては、衆議院におきまして公明党の岡本先生からの御指摘を受けまして、直ちに県当局に連絡いたしました。私どもは商品にならないと思っておりましたが、商品になって市場に販売されておるということでございますので、県当局に連絡し、調査をいたし、また県の課長を呼びまして、そうして詳しい検査をさしております。ただ、この場合、やはり有機水銀かいなかという分析は非常に時間がかかります。そういうことで、ノリについて有機水銀があるかということにつきましては、直ちに分析して出し得るということは私ども約束できませんが、ノリがどのようなもので汚染されておるかということについては、近く御報告ができるのではないかというように考えております。
  79. 原田立

    ○原田立君 その点もお聞きしたがった点でありますが、近日中に報告できるということで、それではその報告を待つといたしまして、山口教授の話の中で、ただ微量であるので現在電子捕獲装置で追跡調査中であるというようなことが発表されておりますが、いつごろになったら大体わかるのかというようなことが言われておりません。それはいつごろ判明するのか、おわかりだったらばお教え願いたいと思います。
  80. 舘林宣夫

    政府委員舘林宣夫君) きわめて微量の水銀の、ことにその中の有機水銀の含有量を分析する方法は、まだわが国においては確立されてないわけでございます。先般の阿賀野川の水銀中毒事件におきましても、ある程度の量をこしたものにつきましては、それがメチル水銀であるかどうかということの確認はできておるわけでございますが、非常に微量になりますといろいろの手法で、有機水銀らしい、ことにメチル水銀らしいということはある程度は推定できる根拠は生ずるわけでございますが、それがはたして確実に有機水銀のしかもメチルであるかどうかということの確認は、現在の技術能力範囲ではできないということで、それはそれで別個の新しい研究題目としてかなり大がかりな調査が必要であるというのが今日の段階でございます。したがいまして、大牟田川におきまする水銀量がかなり今日のところ微量のようでございまするので、その意味合いにおきまして、これからさらにこの中の有機水銀の含有量を明確に出すということは、なかなか今日の技術水準ではむずかしい問題でございますので、いまの段階におきまして、いつごろそれが確立されるであろうかということを申し上げることは困難な状況でございます。
  81. 原田立

    ○原田立君 先ほどの御説明の中に、四十一年に微量の水銀が検出されたというようなことですが、無機水銀が、今回の調べですと川の水の中に〇・二六PPM、それからどろの中に一〇〇PPMというのが含まれておったというように聞いております。これは他の河川から比べてみれば非常に大きい数値であると専門家も言っておるのですけれども、そういうように専門家が他の河川に比べてみて非常に大きい数値であると言っているのを、厚生省当局としては非常に微量なものだと言うのは、何かちょっとそぐわない感じがするのですが、その点はどうですか。
  82. 舘林宣夫

    政府委員舘林宣夫君) 総水銀量から申しまして、一〇〇PPMという数字は相当な量でございます。問題は、この一〇〇PPMの水銀量の中に、有機の水銀、有機化合物としての水銀がどの程度あるかということが、これが相当人体に有害であるかどうかということのきめ手になるわけでございます。その意味合いで、いまのところの検査では、それが有機水銀が幾らということがわかるほどの有機水銀は含まれていないようである、ただ、有機水銀がそれでは完全にないかと言えば、そうは言い切れないという程度でございまして、その意味合いから、これが直ちにきわめて有害な作用をするというようなことを確実にするような資料はないけれども、しかしなお検査をこれから続行する必要がある、このような段階でございます。
  83. 原田立

    ○原田立君 これから研究の段階だということですが、この無機水銀はそんなに人体に影響はないというふうに言われておりましたけれども、最近の研究によりますと、無機水銀が多量に認められた場合、この無機水銀がカーバイトあるいは濃硫酸あるいは濃塩酸との化学反応をさせると有機化する実験も証明されているというふうに聞いております。こうなると、無機だけの検出であるから大した心配はないということは言えなくなってくるのじゃないかと思うのです。それで、実におそろしい話でありますが、この大牟田川の川底の汚濁物、これは見るにたえないほどきたない。現に一〇〇PPMも無機水銀が検出されております。これで、この回りに工場等でカーバイトとか濃硫酸あるいは濃塩酸などを排出する工場がもしあった場合、これは非常におそろしい結果になるのではないか。直接有機水銀の排出はなくても、化学反応されると非常にこわい状況にあるんだというふうに化学的にも言われていますけれども、そういう状況はいかがなものですか。
  84. 舘林宣夫

    政府委員舘林宣夫君) 通常の反応では、無機水銀が有機水銀に変わることはないわけでございますが、水俣病あるいは阿賀野川下流の水銀中書に関連して諸種の実験をいたしました結果によりますと、無機水銀も条件によっては有機に変わることはあるということはお説のとおりでございまして、その意味合いにおきまして、無機としてあるものが永久に無機のままあるとは言い切れないということは考える必要があるのじゃないか。ただ、自然の状態排出されたものが、自然の状態のままで、特殊な圧力とか高温とかいうものがない状態で自然にまじったような形のままで、まあ特殊な化学薬品を加えたぐらいで有機に変わるという結果はまだ得られておりませんけれども、しかしそういうことを考えまして、川に排出されて、どろの中に含まれておる現状は調査をいたしまして、その中で知らず知らずの間に無機と思っておった一〇〇PPMのものが相当程度有機に変わるかもしれない、こういう配慮で有機かもしれない部分の検出ということは考えて、今後私どもも調査を進めてまいりたい、かように思います。
  85. 原田立

    ○原田立君 立ち入ったお伺いをするようでありますけれども、こういうふうなものを科学的、技術的、専門的に研究なさっておる機関は、厚生省でおつくりになっておるのですか。
  86. 舘林宣夫

    政府委員舘林宣夫君) 先般水俣病の調査をいたしました場合に、この検査、検出のための班を結成いたしたわけでございまして、その班の班長は国立衛生試験所の部長がいたしたわけであります。で、この検出の主体をなしまして、それに東京大学、東京物理大学等に応援していただきまして、その方面の専門家が加わって調査をいたしたわけでありますが、今日のこの有機水銀の分析という部分は、必ずしも広い範囲の学者が研究いたしておるわけではございませんで、かなり限られた範囲の先生方が調査をしておる段階でございまして、これは内輪の雑談でございますが、この微量の水銀の中から有機の水銀を明確に検出する方法が発見されればこれはノーベル賞ものであるというほど、これらの学者の間ではむずかしい実験であるということが言われておったわけであります。その意味合いから、今後、水銀中害防止の観点から、この微量の水銀の検出ということは私どもも十分に考えてまいる必要があるし、また、工場排水あるいはそれらがまじった川の検査にあたりましても、たとえ明確に有機水銀量がわかりませんでも、そういう懸念のある場合には、その周囲における中毒の発生状況等もあわせて警戒をする必要がある、かように考えております。
  87. 原田立

    ○原田立君 そうすると、専門の機関という研究所というのではなしに、委嘱をしておる、そこで研究されておると、こういうことに理解していいわけですね。  ちょっとその点について感じるところがあるのですが、実は水俣病にしても、あるいは阿賀野川の水銀事件にしても、あるいは痛い痛い病にしても、すべて微量ながら長期にわたってなされている問題です。それで当委員会でも非常にそのことを問題にしたわけでありますが、この大牟田川も、そういう面で言えば、いわゆる初期の発見であったのではないか、ある面で言えば非常に進んだと言えるわけですけれども、これがただ、その検出方法、無機の中から有機を検出するのはノーベル賞ものであるなんというような、内輪の話ということでありますけれども、これがこのまま放置されているようなことに、もしなれば、第二、第三の水俣あるいは痛い痛い病、あるいは阿賀野川事件のようなことに発展していくのではないか、こう心配するわけです。それで、この際これは国として徹底した研究機関等を設けてやっていくべきじゃないか、ただ各大学に委嘱したというようなことだけではなしに、もっと専門機関をつくり上げていくような、そういう構想はないんですか。
  88. 舘林宣夫

    政府委員舘林宣夫君) これは、事例は水銀でございますが、今後各種の公害対策を進めていきます場合に、たとえば、先般の痛い痛い病におけるカドミウムというような重金属、あるいはそういう金属数でなくてガスというようなものの分析、そういうものも含めまして、今後公害対策を科学的に進める上でどうしてもしっかりした研究機関が必要であるということはお説のとおりでございまして、従来は、厚生省に所属する研究機関としては、化学分析におきましては国立衛生試験所が中心になり、また、国立研究所の中にそういう環境汚染の化学分析に関する特別な部を設けまして、その拡充強化につとめてきておるところでございまして、当分はそれの増強という措置で進むわけでございますが、お説のように、公害をはっきり目標とした特別の研究機関を国として設置する必要がようやく迫ってきておると、かように私どもも考えております。
  89. 原田立

    ○原田立君 あまり時間がありませんので、ごく簡単にお伺いしていきたいと思うんですが、先ほど取り上げたノリ業者等の中で水俣病に類するような病気を発生しているような人はいないのかどうか、お調べになったかどうか。あるいはまた、厚生省は七月末より県、市協力して調査を実施なさるということでありますが、これらの人の健康診断等なんかもやるのかどうか。その点はいかがですか。
  90. 橋本道夫

    説明員(橋本道夫君) いまお話のございましたノリ業者であるかいなかは私明らかには存じませんが、水銀中毒ではないかといわれたものが病院に入ってまいりまして、それにつきまして精査をいたしましたところ、水銀の含有量はもう全然低い、問題はないということで、神経的に非常に心配をしてそういうことを言ったのだということを大学の教授のほうからも聞いております。そのほかには、そのようなケースは私どもは了知しておりません。  で、そのようなことについて新しく健康診断をやる考えはあるかというお尋ねでございますが、私どもは直ちにその健康診断をやるという考えはございませんで、先ほど申し上げましたような環境、食品の汚染を、まず徹底的にいま調べています。もう一つは、いま申し上げましたような病院のようなところでそういうお話があるかどうかということは、これは常時の問題として警戒をいたしたいと思っておりますが、直ちに有機水銀中毒としてこの健康診断を周期的に始めるべき問題ではない、そういうふうに思っています。
  91. 原田立

    ○原田立君 こういうふうな川があることが市民にとって非常にショックなんでありまして、そこで、こういうふうな川の処置をどうするのか。沿岸の工場に対する規制は当然であると思いますが、今後どういうふうな監視をしていくのか。あるいは、工場排水に対する規制の中で、六十四業種中三十四業種が知事の立ち入り権限を認めているようになっているようでありますが、他の業種については、この中で、水銀取り扱い業者及び工場排水のひどい業種たとえて言えばパルプ業種等々は直接大臣監督下にありますが、これを知事の監督下に入れたほうがより市民の側に立って監視ができるのではないかと、こんなふうに考えるのですが、厚生省としてはどう考えておられるか。あるいはまた、通産省もおいでになりますから、その点はいかが研究なさっておられますか。
  92. 舘林宣夫

    政府委員舘林宣夫君) 今後、これは河川に限らぬわけでございますが、公害の発生の分野ということは非常に広いわけでありまして、それを一々国がすべて監視監督をするということは容易ではございませんので、できるだけ地方の公共団体の手を活用するといいますか、国ももちろん責任を回避するわけではなくて、国の範囲で実施はいたしますけれども、また、地方公共団体の能力あるいは責任、これもあわせてそのような監視に当たってまいりたい、かように思っております。
  93. 馬場一也

    説明員(馬場一也君) 先生が仰せになりましたのは、工場排水に関する国と県との業種区分のことであろうかと存じておりますけれども、工場排水等、そのもとになります水質保全法に基づきまして、水質基準がそれぞれの業種についてそれぞれきめられております。これは、きめられましたものをそのように規制いたしますということにつきましては、これは国がやる業種でございましょうと、あるいは府県にまかした業種でありましょうと、どちらがやっても同じである。ただ、いろいろ工場の数その他におきまして国だけで手が回らないという面につきましては、もちろん府県の力を借りる、府県へおまかせをするということは当然でございますけれども、府県がやったからきびしい、国がやったからゆるいということは私どもはないと思っております。
  94. 原田立

    ○原田立君 このことを議論するのが主でありませんので、いまの部長のお話は納得しがたいところでありますが後日に譲るとして、厚生省にお伺いしたいんですが、厚生省が国民の衛生、健康保持のためにいろいろと努力しているわけでありますが、いままでのいろいろな動きは、事件が発生してからのみ取り扱われている。こういうふうに、きわめて消極的な姿勢であるというふうに私は思うのであります。あとからあとからとやるようになっておりますが、厚生省としてはもっと積極的な姿勢でやらないのか。たとえば、水銀等の取り扱い工場に対する規制はもちろん行なわれているでありましょうが、定期的な検査をするようにすべきだと思いますが、その点はいかがですか。または、その際の検査の取り扱いは、いまの問題と関連いたしますが、国ももちろんやるでありましょうが、地方自治団体にも当然参加させてやらせるようなことをすべきではないか。そのほうがより市民に密着した検査等ができるのではないか。市民感情にも合うものができるのではないだろうか。厚生省としては、こういうような常時の計画実施の現状、現在どういうふうになっているのか、あるいは、いろいろ予算面でも、もし言い得るならば言っていただきたいと思うんですけれども、わからなければ予算面はけっこうです。
  95. 舘林宣夫

    政府委員舘林宣夫君) お説のとおり、ややもすれば、従来の公害対策が事件が起こってから後手に回っていろいろ措置をするという傾向が強かったわけでありますが、事前に公害発生しない措置を講ずることが公害対策では最も大切なことは御指摘のとおりでありまして、その意味合いで、最近は開発地域等におきましては事前に調査をいたしまして、これは通産省と相協力いたしまして事前に調査をいたしまして、公害が発生しないというように計画を指導してまいっておるわけであります。その意味合いで、従来から開発地域の特別の調査費等を持っておるわけでありますが、御指摘の水銀に対しましては、特に水銀を対象といたしまして本年度特別調査をいたしまして、阿賀野川のような中毒事例を起こさない前に、具体的に、それらによって食中毒が起こらないための実態調査をいたしたい。そのようにいたしまして、もしも危険があるならば事前に何らかの措置を――厚生省だけでできる問題じゃございませんが、関係各省にお願いをいたしまして、ともどもに防止の措置を講じてまいりたい、かようなことでございまして、これは、いまのところ、まだその調査費を幾らこれを配分するかということは決定いたしておりませんが、確実に本年度において調査をいたしたい、かように考えております。
  96. 原田立

    ○原田立君 先ほどもちょっと申し上げたんですが、無機水銀、これはまあそれほど危険ではないと言われておりますけれども、それでも、体内に多量に蓄積された場合、まぶたがひりひりしたり、手がふるえてきたり、そういう神経症状を起こしたり、あるいは肝臓障害、あるいは尿毒症等々を引き起こす、こう言われております。それで、こういう有機にしても無機にしても、水銀取り扱いをする工場及び廃液を放流されている川等なんかについては、もっともっと厳重な規制等が必要だろうと思うんですが、現在日本全国において、そういうようなのは一体どのくらいあるのか。そうしてまた、それらについては、その一つ一つについてどういうふうな調査をなさっているのか、現状は。また、今後どうなさろうとするのか。その点はいかがですか。
  97. 舘林宣夫

    政府委員舘林宣夫君) お説のとおり、無機水銀といえども中毒を起こすわけであります。もはやどの程度の無機水銀が障害を起こすかという数値も、労働衛生上も、あるいは、WHOの数字としても明確になっておる。先ほど申しました有機の水銀のように、検出方法がわからないというものではなくて、もっと明確になっておるわけであります。で、この水銀を排出する工場数は二百余全国にあるということでございまして、今日までの段階では、どの場所にそのような何という工場があるかということを調査をいたしております。それに基づきまして、本年度はその全部につきまして具体的に実情を調査をしてまいる。あわせて、それによって障害が起こっておるかどうか、排出量はどの程度であるかというような調査を本年度実施する予定でございます。
  98. 原田立

    ○原田立君 大牟田川の有機水銀の問題についてはまだ調査段階というようなことからいって、はっきりしたことが言えないのだろうとは思いますが、いずれにしても、このニュースによって地元民は非常に大きいショックを受けていることは、これは事実であります。これで、厚生省としてもこの問題を重視してひとつお取り扱い願いたいと思います。  なお、水資源局長にもしばしば以前からこの大牟田川の水質規制のことについてお願いはしているのですが、事こんなような問題が起きるまで放置しておったこの責任は免れないと思うのですが、それよりか、まず先にこの川をどうしていくのかということを、もっと明確な態度でもって臨んでいただきたいと思いますが、その点いかがですか。
  99. 松本茂

    政府委員(松本茂君) 大牟田川につきましては、昨年水質基準調査を実施いたしまして、最近、詳細なその調査報告書を受け取ったわけでございまして、現在、その解析を急いでおるわけでございます。そのうち一部におきまして全水銀の検出が見られるわけでございますが、この点につきましては、先ほど来厚生省からお答えになっておりますように、企画庁といたしましても、厚生省、通産省共同いたしまして、さらに詳細な調査を本年度継続してやっていきたい、こういうふうに思っております。で、全水銀の問題は、そういうふうにいたしまして、大牟田川全般につきましてはその解析を急ぎまして、できるだけ早い機会にその調査結果を取りまとめ、関係各省また水質審議会の御意見を聞きまして、今後の方針を打ち出していきたいと思っております。
  100. 松澤兼人

    委員長松澤兼人君) 本日の調査はこの程度といたし、これにて散会いたします。    午後四時四分散会