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国務大臣(
三木武夫君) おそらくこれは、北のほうがああいうことで一つの休戦ラインのようなものを、十七度線を境にして引くことによって
和平がもたらされるというなら一つの方法だと思いますが、いま言われたように、ベトコンというものもいるわけです。そこでもう境界をはっきりして、それが南と北とが遮断されるということになれば、実際問題として、ハノイとしてもそういうものをやはり受けにくいでしょうね。だから
考え方としては、
事情が違う、杉原さんの言われたように、
事情は違いますよ、一九五四年とは。しかし、それだから私は精神である、こう言っておるわけです。
ジュネーブ協定の精神に、まあ振り出しに戻るよりほかはないだろう。というのは、あの十七度線で一応の休戦をもたらす以外にいまのところ方法はないのではないか。そういうことで、カナダの
提案もそういう
意味において一つの価値のある
提案かもしれぬが、実際的に考えたら、北と南と、そうやってちゃんと、
国境をきちんとして、そしてある距離の境界線を置くということになれば、北と南との関係というものが遮断をされるわけですから、ハノイはなかなか承知をしないというところに実際的ではないというような
——実際的ではないのじゃないかという杉原さんのオブザーベーションはそのとおりだと思うのです。それは北からすれば、
ベトナムは一つだと考えておるわけですよね。だから、なかなか浸透ということも、あまり北のほうはコミットしてないですよね。浸透しているということは、それがもうちゃんと境界ができて、ある距離をつくって境界がはっきりするということになれば、ハノイとしてはなかなか
現実的には受諾しにくいことになる。
現実的にはこれはなかなか解決案にはなるまい。しかし、ものの
考え方として、十七度線を境にして暫定的な
ベトナムのこの
和平をもたらすというカナダの
考え方は、結局、そういうところに
国境線をどうするとかいうことの技術的な問題は別として、それよりほかにあるまいと私は思っておるのです。北が南のほうを共産化するといったって、それはできませんよ。南はまた、
アメリカ自身に対しても、北の政権を転覆させるということはできるものではないわけです。一応現在の
状態というものをお互いに尊重し合って、その上で将来の
ベトナムをどうするかということは、もっと安定した基礎の上において考えるよりほかにないのではないか。だから、カナダの言うような、十七度線を境にして何か
和平をもたらせという
考え方は、まあ、技術的な問題を別にして、まあ、そこへ行く以外には解決はなかろうと私も思っておるわけです。その限りにおいては一つの示唆を与えるものだけれども、
現実的には、その案はなかなか
現実には適用できぬということは、杉原さんと私とは同じ考えです。