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1967-06-02 第55回国会 参議院 沖縄問題等に関する特別委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十二年六月二日(金曜日)    午前十時三十七分開会     —————————————    委員異動  六月一日     辞任         補欠選任      伊藤 顕道君     鶴園 哲夫君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         山本 利壽君     理 事                 内田 芳郎君                 小柳 牧衞君                 岡田 宗司君                 佐多 忠隆君                 黒柳  明君     委 員                 植木 光教君                 大谷 贇雄君                 源田  実君                 谷口 慶吉君                 鍋島 直紹君                 長谷川 仁君                 林田悠紀夫君                 増原 恵吉君                 安井  謙君                 稲葉 誠一君                 加藤シヅエ君                 川村 清一君                 森 元治郎君                 向井 長年君                 春日 正一君    國務大臣        労 働 大 臣  早川  崇君        国 務 大 臣  塚原 俊郎君        国 務 大 臣  増田甲子七君    政府委員        内閣法制局長官  高辻 正巳君        総理府特別地域        連絡局長     山野 幸吉君        防衛庁防衛局長  島田  豊君        防衛庁教育局長  中井 亮一君        防衛庁人事局長  宍戸 基男君        外務省北米局長  東郷 文彦君        郵政大臣官房長  竹下 一記君        労働省職業安定        局長       有馬 元治君    事務局側        常任委員会専門  鈴木  武君        員        常任委員会専門  瓜生 復男君        員     —————————————   本日の会議に付した案件 ○参考人出席要求に関する件 ○宮古群島及び八重群島におけるテレビジョン放  送に必要な設備譲与に関する法律案内閣提  出) ○沖繩居住者等に対する失業保険に関する特別措  置法案内閣提出衆議院送付) ○沖繩その他の固有領土に関しての対策樹立に関  する調査  (沖繩その他の国有領土に関する件)     —————————————
  2. 山本利壽

    委員長山本利壽君) ただいまから沖縄問題等に関する特別委員会を開会いたします。委員異動について報告いたします。昨六月一日、伊藤顕道君が委員を辞任され、その補欠として鶴園哲夫君が選任されました。     —————————————
  3. 山本利壽

    委員長山本利壽君) 次に、参考人出席要求に関する件についておはかりをいたします。  沖繩その他の固有領土に関しての対策樹立に関する調査のため、ただいま沖縄から上京中の琉球政府立法院議長山川泰邦君及び琉球政府立法院議員安里積千代君の両君を、六月五日午後、参考人として出席を求め、その意見を聴取したいと存じますが、御異議ございませんか。
  4. 山本利壽

    委員長山本利壽君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  5. 山本利壽

    委員長山本利壽君) 宮古群島及び八重山群島におけるテレビジョン放送に必要な設備譲与に関する法律案を議題といたします。  質疑のある方は、順次御発言を願います。
  6. 春日正一

    春日正一君 本土放送を視聴したいという沖縄県民要望にこたえて施設をつくり譲与するというこの目的はけっこうなんですけれどもね、実際に譲与したあとの維持管理、それが譲与目的にかなうように十分運営されるようになっているのかどうか、その点について政府説明を求めたいと思います。
  7. 塚原俊郎

    国務大臣塚原俊郎君) 沖縄方々の非常に強い御要望がありましたので、こういった措置をとり、法案の御審議を願っているわけでありますが、その後の、譲与後の問題といたしましての御心配の御質問でありますが、沖縄放送公社というものが、その後の維持管理に当たるというふうに私は承知いたしております。
  8. 春日正一

    春日正一君 その点でですね、この宮古八重山施設をつくってやると、しかし、これが、それを維持するだけでなくて、いま言われた沖縄放送公社ですか、そういう形で、沖繩を全域とする官営局ですね、これを設立するという構想を出して、すでに去年九月ですか、アメリカ民政府許可を得ているという話ですけれども、その間の経緯、許可内容とか条件とかについて、政府、承知していますか。
  9. 塚原俊郎

    国務大臣塚原俊郎君) 事務当局からちょっと。
  10. 山野幸吉

    政府委員山野幸吉君) 御案内のように、本土政府がいま建設しております先島テレビ施設は、本年の十一月に完成する予定でございます。これに対応しまして、そのテレビをいかように運営するか、その受け入れ態勢をどうするかということにつきまして、昨年以来、沖繩のほうで、政府民間機関等を合わせましていろいろ審議機関をつくられまして、この沖繩放送の将来のあり方についていろいろ根本的な検討が加えられてきたわけでございます。それで、今回当委員会にも簡単な要約した放送法資料を差し上げてございますが、そのような内容立法を、政府から今度立法院に勧告いたしまして、いま立法院審議中でございます。で、それによりますと、一般放送事業者と、それからいま長官からお話しがありましたような沖繩放送公社というような、まあいわばNHKに類似したような放送公社を設けまして、そして先島のテレビ施設運営すると同時に、いま直ちにではございませんが、一九六九年一月一日からは、ひとつ全島を含めた放送事業をその沖縄放送公社で実施したい、こういうのがただいま立法院審議されております法案内容でございます。
  11. 春日正一

    春日正一君 いま話のあったその放送公社をつくって、しかも、まあ放送法を制定するということで資料出してもらったんですけれども、私もっとくわしいものを取り寄せて調べてみたんですけれども、この資料に欠けてるものでも重要なものがあるわけです。で、大体、人命もしくは人権を軽視し、または犯罪もしくは暴力を肯定することとならないようにするというようなことで、つまり、いわゆる民主的な運動といいますか、そういうようなものも押えるような内容、そう解される内容というようなものが入っているということ、あるいは青少年の教育云々というような問題が入っている。それから第八条を見ると、これは資料にはないんですけれどもね、非常の場合の放送というところで、「放送事業者は、災害その他非常の事態が発生し、または発生するおそれがある場合には、生命、身体もしくは財産の保護または秩序の維持に役立つ放送をするようにつとめなければならぬ」というようなことで、これは去年こっちでも国会に出て流れた、いわゆる民主的な政策からいえば改悪案というものと、文句もそっくり同じものがそのまま入ってるだけでなくて、いま言ったような点とか、あるいは放送管理監督ですね、「行政主席は、この立法の定めるところにより公社を監督する」というような形で、まあ、NHKに似たようなものといわれるけれども、まあ、NHKでも相当官営的な色彩が強くなっていると私ども思うけれども、それよりももっと強い官営的な色彩を持った法案が出て、これに対しては沖縄野党全体が反対しておるし、あるいは祖国復帰協議会とか、マスコミ関係労働組合ですね、これも反対決議して、反対運動をやってるというような実情になってる。そういうことになりますと、こういう大体沖縄放送というものが、アメリカの直接占領下にあるというような条件のもとで、全体とすれば、米軍二つの布令で規制されている。そして実際上いままでの例を調べてみても、たとえば米軍が必要とすれば番組を取って放送するというような例もあるわけです。そういうところへ持っていって、もう一つ、今度は官営公社ができて、それでいま言ったような形で規制していくというようなことになりますと、ほんとに本土放送を聞きたいんだ、見たいんだ、そして日本国会なり政府としてもそういう希望にこたえてつくってあげる、引き渡すというようにしたものが、実際にはアメリカ沖縄民政府——アメリカ施政下にありますから、そういう政府沖縄県民を支配していく、押えていく、そういうための道具にされて、本来の希望である本土放送を視聴したいというようなものがほんとの飾ざりにされてしまうというようなおそれがないのかどうか。その点どうですか。
  12. 塚原俊郎

    国務大臣塚原俊郎君) 春日委員、たいへん御心配の点を御指摘いたしておるわけでありまするが、私もその文章から見まするといろいろ考える点がありますが、ストレートに私のほうがこうあってはならぬということが言えない立場にあることは、これは御了承いただけると思うのです。ですから、立法院方々良識をもってこれの御審議を願っておる最中でございますので、そこらの御審議にまつ以外に方法がないというふうに私は考えております。
  13. 春日正一

    春日正一君 実際、いま言ったような形のものでこれまであった沖縄民間放送でさえ、いろいろこっちの報道がそのままいかぬというような傾向が幾つか例があるわけですね。たとえば、一九六三年十二月に、日本から沖繩に年末年始の番組を送るということで紅白歌合戦を送ろうとした。それが向こう米軍のほうからストップをかけられて、それでやれなかった。ちょうどあのときにはクイック・リリース作戦がやられておったというようなことで中断されてしまったというような事実もあるし、それから、おととしの一月、NHK年始特別番組新春党首訪問ということで、佐藤総理と、社会党の河上委員長と、それから民社党の西尾委員長、これを訪問して、それを放送した。ところが、それを向こうでやったところが、沖繩放送では、新春総理訪問ということで、総理のやつだけしか放送されていない。こういう事実がいままでにもあるわけですね。そこへ持ってきて、官営になって、放送法が、いま言ったような非常に統制的な強いものができてくるということになれば、こういう事態というものはもっとひどくなるんじゃないか。そう考え根拠が十分あると思うんですよ。それを、いま総務長官が言われたように、まあ、沖縄議会審議しているから悪いようにしないだろうというように言われたけれども、やはり沖繩で、本土から沖縄県民希望にこたえて送ってやるというようなものが、沖縄県民の相当な多数の部分、野党全体合わせたら、あれ得票にするとほぼ伯仲する、そのくらいな勢力が絶対反対というような形で反対運動がやられておる、そういう渦の中で一方的にきめられているというような状態で譲り渡すということになると、本来の趣旨とだいぶ違ったようなことが出てきてしまうんじゃないか、その点で政府がどういう努力をされるつもりなのか、この点ですね。
  14. 塚原俊郎

    国務大臣塚原俊郎君) 内地の番組がいろいろ歪曲されて放送されているというお話でありますが、私の聞いている範囲では、そのもの自体が歪曲されたものはない。ただ、時間的な制約という点は私も承知いたしておるのであります。いまの総理党首というようなすり違えというようなお話もございました。しかし、こういったものは沖縄放送当事者考えでなすったものであると思いますが、私として望むところは、せっかく向こう方々がいろいろなものを見たい、聞きたいという御希望にこたえて七億何がしの金を使ってこれをつくりあげ、そしてお譲りするんですから、私としては、これがほんとう文字どおりNHKのような形で民主的に運営されることを心から望んでおります。しかし、それも、繰り返すようでありまするが、やはり御審議を願っている立法院方々の、いま春日委員のおっしゃったように大多数の者が反対だというならば、これに批判的だというならば、その間おのずからそこに修正なり御意見の開陳があってこれが審議されると私は考えておりまするから、民主的に運営されるよう立法府の方々良識にまつ以外に私は方法ないと考えております。
  15. 春日正一

    春日正一君 その問題とも関連して、現在の沖縄民放でも、たとえば琉球放送なんかとってみますと、一週間にアメリカ民政府放送番組というのが三つ、行政府一つ、那覇市が一つというような形で、広報的なというか、官報的なというか、こういう時間が非常に現在でも多く取られている。これは全部私調べてみて、琉球放送ラジオ沖縄でも、大体そういう形で非常に多くの時間が取られている。そうして、ものによっては、二つ放送局で同時にそれだけ放送するというようなことになるものですから、それを聞きたくない人でも、ほかのものは聞きようがないという形にいまなっている。しかも、あれを見ますと、アメリカ心理作戦本部ですか、第七心理作戦本部とかいいましたね、そういうものが設置されて、そうしてそこでの希望といえば、少なくとも三十時間ぐらいは各放送に対して放送時間を取りたいというようなことを言っているというようなことがある。結局、やったものが、そのアメリカのそういう心理作戦本部宣撫工作ですね——昔のことばを作えば——そういうために大きく利用されていく。あるいはそういった教育目的とかなんとかいう形で政府が一方的に放送を利用して、沖縄県民を押えていくような形に利用される。こういう面が非常に強くなる。そこで、やはり沖縄祖国復帰協議会とか、そういうふうな人たちが、そうなったのでは困るし、いまのままでもやっていけるのじゃないか。たとえば民間放送に委託するというような方法もあるだろうし、あるいは、もっと民主的な形で社団法人みたいな形をつくらせてそれにやらしていくというようなやり方もあるだろう。そういうやり方考えないかということであって、もらうことには賛成だけれども、もらったものがどう運営されるか、管理されるかということで非常に大きな争いになっている。こういう状態のもとだったら、私はこう思うのだけれども、とにかく、日本政府がせっかく好意を持ってそれをつくってやろうということがそういう大きな争いの種になっているというような事態、しかも、これができるのは十一月だというのだから、いまここで採決ということではなくて、各党の代表が沖縄へ行って、県民事情もよく聞いて、琉球政府当局とも話し合って、みなが喜んで受け入れられるような、反対闘争の渦の中で受け入れられるというような形でなくて、みなが喜んで受け入れられるような措置をとるべきじゃないか、それだけの時間的な余裕があるのじゃないかというふうに考えるのですけれでも、政府としてはそれをおやりになる気でありますか。
  16. 塚原俊郎

    国務大臣塚原俊郎君) いろいろな例をあげて尋ねられましたけれども、私はその全部を肯定するわけではございません。ことに、春日委員が見解の相違と言われますれば、それまでかもしれませんが、そういう事実はないと私は考えております。あるいは娯楽番組を放てきをして、何か宣伝だけをやっておるというようなことについては、私はそういうふうには承知しておりません。  それからなお譲渡の問題でありますが、なお、かすに時日をもってして、さらに煮詰めてからというお話でありますが、これは譲渡の時期はいまが一番いいと考えておりますから、これを先に延ばすように考えておりません。なお、その間の事情政府委員説明させてもけっこうであります。
  17. 山野幸吉

    政府委員山野幸吉君) 琉球政府といたしましては、この十一月に日本政府施設が完成いたしますから、それを受け入れ態勢だけはどうしてもつくらなければいかぬ、それからまた、つくるつもりである、こういうことでございまして、先ほどからお話がありましたような、沖繩放送公社というようなもので受け入れていくということになっておるわけでございます。ただ、その過程におきまして、いま御指摘になりましたような民放とのいろいろ関係が出ていることは事実でございます。しかし、これらは琉球政府が責任を持って調整して、日本政府のこのテレビ施設受け入れにいささかも支障を来たすようなことは絶対しませんというぐあいに確約しておられますので、日本政府といたしましては、一日も早く先島の人たちテレビ施設を利用していただくようにしたいという気持ちを持っておりますので、ぜひひとつそういう方向で譲渡法案を御審議いただきたいと思う次第でございます。
  18. 春日正一

    春日正一君 いま長官が言われましたけれども、大体私の言っておるのは、何も娯楽番組その他を全然聞かせんで全部それをやってしまうということを言っておるのじゃないので、そういうものが非常に多いし、また今後多く使われる、そういうふうになっていくおそれが十分あるし、そう判断する根拠がやはりある、いままでの実例から見て。それを言っておるので、だから長官のように、全部そうなってしまう、娯楽番組一つも聞かせないというようなふうに極端にとられて、共産党考えが違うのだからというようなことでは困るので、その点を正しておきます。私はいま聞いていたけれども、結局、政府立場とすれば、琉球政府のこの立場を信頼して無条件でとにかく渡す、うまくやってくれるだろうということになるだろうと思います。しかし私どもは、日本国会状態から見たってそうだけれども、沖縄の場合にはなおさら激しい祖国復帰運動があり、祖国に対する希望が強まっているというような状態の中で、現実にこの問題をめぐって大きな運動が起こっておる。そのことを私ども問題にして、やることにはだれでも賛成するのだろうけれども、そのことが、受け取る側で大げんかして、沖繩県民が半分に割れて、それで気まずい気持ちで受け取ってしまって、それがてこにされて沖縄放送統制が強められるというようなことになったというようなことで、かえってこっちから贈与した趣旨が十分生かされないようなことになってはまずいだろう。そのために政府としてもっと努力する必要があるのじゃないか、余地があるのじゃないか、これを言っておるのですね。だから、そこのところは誤解のないように、共産党だから何でも反対するのだから、だから何でもけちをつけてくる、そういう意味ではなくて、ほんとうにやるなら、みんなが喜んで受け取ってもらえるような形でやりたいものだし、その意味において希望どおりになされなければならぬだろう。そこで質問しているのですね。だから、その点はそういう形で突っぱねるのじゃなくて、政府としてもできるだけそのために努力するということでなければならぬと思いますよ。
  19. 塚原俊郎

    国務大臣塚原俊郎君) 何も春日さんにたてつこうとかそんな気持ちはございません、昔はいろいろとやり合ったことはありますけれども。(笑声)それはおっしゃるとおりでして、ストレートに受けるならこれは直ちにいまでもこう言えるが、やはり立法院の御審議を待っておる。で、私はきわめて民主的な運営になることを心から望んでおりまするし、さらに、公社ができましても、委員会あるいは番組編成会議というようなものができまして、いま春日委員の御心配になるようなことのないような運営が私は行なわれるものと信じておるわけでございます。決して好意があだになるというようなことは考えておりませんし、大いに喜ばれる形でこれが譲渡されて、皆さん方の長い間の熱願がかなえられるということを私は望んでおります。民主的に運営されることを心から望んでおるわけでございます。
  20. 川村清一

    川村清一君 ちょっと関連してくるわけでありますけれども、実は私はこの法案について賛成とか、反対とか、そういう立場でお聞きするわけではございませんが、手続上、ちょっと私納得できない点がありますので、二、三お聞きしまして、少し解明していただきたい、こういうことで立ち上がったわけであります。  この法律案財政法第九条に基づいて立法されようとしておるわけでございますが、そこで財政法第九条の精神ですね、趣旨、これをひとつお聞かせいただきたいと思います。
  21. 山野幸吉

    政府委員山野幸吉君) 御案内のことでございますが、今回先島につくりますテレビ施設は、日本政府が直接つくった施設でございまして、でき上がったものは国の、日本政府財産でございます。そこで、日本政府財産譲渡する場合には、いま御指摘財政法第九条というのに基づきまして処分がされておるわけでございますが、この第九条におきましては「法律に基く場合を除く外」は適正な対価なくしてこれを譲与その他無償貸付等をすることはできない、譲与することはできない、こういうことになっておるわけでございます。この規定では制限列挙で、それぞれ公共団体等に対しまして無償譲与する場合が列記してございます、限定列挙してあるわけでございます。このいずれにも該当いたしませんので、したがいまして、政府としましては特に特別立法譲与法案を御提案したわけでございます。で、こういう国の財産琉球政府譲与する場合には、過去におきましてもマイクロその他の譲与にあたりまして全部特別立法をお願いして譲与をしておる次第でございます。
  22. 川村清一

    川村清一君 そういう法律の条項に基づいて特別立法をするということはよくわかる。そこで、特別の法律に基づかなければできないというふうに規定しておる第九条の精神は何かということをお尋ねしておるわけであります。特別に法律をつくらなければみだりにできないというふうに規定しておるその精神、これは国有財産でございますから、この管理処分は厳正にしなければならないという精神に基づいて第九条が規定されておるのではないかと私は考えてそういうふうにお聞きしておるわけでありますが、それはいかがでございますか。
  23. 山野幸吉

    政府委員山野幸吉君) その点は御指摘のとおりでございまして、国有財産地方公共団体財産ともにそういう公的財産処分につきましては厳正公正に処分をしなければいかぬというたてまえから規定されたものと考えます。
  24. 川村清一

    川村清一君 この第九条の国有財産というものは、国有財産法に基づく、国有財産法第二条に「国有財産とは」という定義がありますが、この国有財産法第二条に基づく国有財産であるということには間違いございませんですね。
  25. 山野幸吉

    政府委員山野幸吉君) 御案内のように、一般法としましては国有財産法がございますし、また、物品に関しましては、物品無償貸付及び譲与等に関する法律という規定がございます。この場合におきましては、国有財産法国有財産ということで考えておるわけでございます。
  26. 川村清一

    川村清一君 いまつくっておりますテレビ施設は、これは国有財産の中における行政財産でございますか、普通財産でございますか。
  27. 山野幸吉

    政府委員山野幸吉君) ただいまの御指摘は、法制局とかむしろ大蔵省とか、そういうところがら正確な御答弁がされると思いますけれども、私としましては普通財産ではないかと、かように考えております。
  28. 川村清一

    川村清一君 私が手続上疑義があると言うのは、その辺なんで、法案に対する賛成とか反対立場でございませんので、私も法律はしろうとでございますのでよく解明していただきたいと、こういう意味でお聞きしているんですから、よく説明をいただきたいと思うわけでありますけれども、普通財産としますれば、これは国有財産法の第六条によって、「普通財産は、大蔵大臣が、これを管理し、又は処分しなければならない。」という規定があるわけでございますね。それから第三十二条には、それぞれは「国有財産の分類及び種類に従い、その台帳を備えなければならない。」というふうに、ちゃんと規定されておるわけでありますね。したがって、国有財産というものは、私の判断では、実在しているものでなければならないのであって、すでに国有財産として取得されて台帳にきちっと登録されておる、記入されておる、そうして大蔵大臣がこれを管理しておるものでなければ私は国有財産ではないのではないかと思うのです。したがって、その国有財産処分するにつきましては、財政法第九条に基づいて処分するのでありますから、特別立法は必要なんでございますけれども、いま譲渡しようとして第九条に基づいて法律案を出しておりますが、しかし、その法律案内容であるところの譲渡しようとする客体は現在実在しておらないのですね。現在実在しておらない財産譲渡することができるというそういう法律は、私はまあこれは法律のしろうとですからきわめて常識論なんですけれども、これは違法ではもちろんないでありましょうけれども、適当ではないんではないかというような気持ちがするんですが、その辺はどんなもんでしょうか。
  29. 山野幸吉

    政府委員山野幸吉君) 御指摘のとおり、現在完成しておりませんので、いまの時点でテレビ施設というものが国有財産として現存するわけではございません。したがいまして、この法案でも、「昭和四十一年度及び昭和四十二年度の一般会計予算に基づきこれらの地域に設置するものを譲与する」と、こう書いてあるわけでございます。したがいまして、この施設につきまして項目、金額を計上しまして、そうして一定のこういう形のテレビ施設ができるという御説明を申し上げて予算が成立しておりますし、その施設が十一月に完成するわけでございますが、完成した時点でテレビ施設とという国有財産ができるわけでございます。したがいまして、それをその後において琉球政府譲与する、こういうための法律案でございます。
  30. 川村清一

    川村清一君 琉球政府譲与することに賛成とか反対ではないんであります。山野さんのおっしゃっていることわかるのですけれどもね、私の申し上げるのは国有財産として現に存在しておらないのです。十一月にできるのですよ。できた後に国有財産になるわけです。ところが、財政法第九条に基づいてこの法律をつくるというのであるから、財政法第九条にあるところの国有財産というものは現存しておらない。これからできるものが財政法第九条に言う国有財産という、そういう解釈ができるかどうかということに私は疑義を持っているんです、いかがですか。
  31. 山野幸吉

    政府委員山野幸吉君) これは施設の完成いたします時点と国会開会の時点等との関連もあると思いますが、したがいまして、従来、提案申し上げて御可決をいただいてきております譲与法案におきましても、完成前に譲与法案を御可決いただいて、そしてその後に完成した施設をその法律に基づいて譲与してきておるわけでございます。したがいまして、十一月に完成しまして、それから法案を提案いたしますと一年おくれるわけでございます。その施設を半年なり一年遊ばしておかなければいかぬ、こういう問題がございますので、あらかじめこういう法律案を提案しておるわけでございます。
  32. 川村清一

    川村清一君 その気持ちはよくわかるのであります。これは十一月にできるのでありますし、そのころには国会がないのでありますから、それを譲与するには法律をつくらなければならないし、法律をつくるためには国会が開かれなければならないし、そのために臨時国会を開くわけにもいかないでしょうから、前もって法律をつくるという、その気持ちはわかるのでありますけれども、そこで財政法第九条の精神を初めお伺いしたわけであります。国有財産というものを、これはこの処分管理については厳正でなければならないと、事いやしくもいいかげんな処置をしては相ならぬ、こういう精神に基づいて第九条が設けられておるものとするならば、現在ないところの、これからできるものの国有財産を、どんなものができたか、それも確認されないままに、現在まだ台帳にも記載されておらないこのものを、いまから「譲与することができる」というふうにつくってしまうということは、少し便宜主義ではないかと、私はさように考えるわけなんです。法律の解釈がそういう便宜主義でいいのかどうかということに一応疑義を持って私はお伺いしているわけであります。山野さんは、あなたは北海道の総務部長をやられて、地方自治体のこともよく御承知なんで、地方自治法には明らかに、御承知のように、条例で定められた重要な財産につきましては、これを処分する場合においては、選挙権を有する選挙人の投票によって過半数の同意を得て決定される。さらに、議会において決定する場合においては、三分の二の同意を得なければ処分ができないという、地方自治法においては地方公共団体財産の処置についてそういうきびしい規定があるわけでありますね。ところが、国有財産については、いまなお現在ないんですよ、これは。それで、十一月にできるとおっしゃっていますが、そして予算も出ております。これも承知しております。しかしながら、これは二カ年の継続事業でやってきて、そして今年度四億幾らで、合計七億一千万ほどでつくるわけでありますけれども、沖縄という、ああいう台風の多発地帯で、もし十一月までの間に、台風やその他の何かの天然自然現象によってできなくなったと、そうして今年度予算でもって、きめられた予算で施行できなくなった場合においては、当然予算の補正もしなければならないでしょう。十一月にできるとおっしゃっていますけれども、これは一つの仮定の問題でございましょう。でき上がってから初めてこれは検定をいたしまして、そしてきちっとできておるということを検定されまして、そして国有財産としてこれは収納されて台帳に記載されて、本来ならば、それからこの法律をつくらなければならないのではないか。しかしながら、いま便宜処置としてこれはわかるのですが、そういうような国有財産を便宜処置によって取り扱っていいものかどうかというところに、私は一つの疑義を持っておるので、お尋ねをしておるので、どうも山野さんの御答弁では、私もまだ十分解明されないのですが、もう少し御説明を願いたいと思います。
  33. 山野幸吉

    政府委員山野幸吉君) 十分御承知の上で御質問いただくものですから、御納得いただけるかどうかわかりませんが、今度の法案で、十一月に大体できるであろうその施設——国有財産琉球政府譲与することができると、こういう法律案を御審議いただきまして、これが成立いたしますと、その後特別の事情がない限り、現状におきましては大体十一月には完成する。完成しますと、いま御指摘ございましたように、竣工検査をやりまして国有財産として収納して、そうしてその後において交付するということになっておりますので、この国有財産が当初所期した施設として、そしてまた先島の住民がテレビを聴視するのに必要にして十分な施設を完備しているということを日本政府として確認しまして、その後におきまして譲与するわけでございますので、大体そういう手順になりますので、ただいま御心配いただいておりますようなことは生じないと、こういうぐあいに私どもは考えておるわけでございます。
  34. 山本利壽

    委員長山本利壽君) 他に御発言もなければ、質疑は尽きたものと認めて御異議ございませんか。
  35. 山本利壽

    委員長山本利壽君) 御異議ないと認めます。  それでは、これより討論に入ります。御意見のある方は、賛否を明らかにしてお述べを願います。春日君。
  36. 春日正一

    春日正一君 この際、共産党立場を明らかにして賛成したいと思います。  先島群島テレビ放送施設をつくって、これを譲与するということは、沖縄県民の、本土放送を聞きたい、見たいという要求にこたえるものであって、その意味で私どもは賛成するわけです。しかし、いまの質問でも私申しましたように、現実には、この譲与ということが一つのてこになって、官営放送をつくったり、あるいは放送法を制定するというような動きが出て言論統制が強まり、米軍琉球政府が、沖縄県民祖国復帰運動あるいは民主的な運動も押えつける道具として使われるというおそれは、十分な根拠を持って言うことができると思います。だから、沖縄県民がこの官営放送の開設、放送法の制定に反対していま反対運動をやっておる。そういう点については共産党はこの県民立場を支持して、沖縄テレビ放送について、県民の総意によって、県民希望する放送が聞けるようになるように、今後とも努力していく、この態度を表明して賛成します。
  37. 山本利壽

    委員長山本利壽君) 他に御意見もないようでございますが、討論は終局したものと認めて御異議ございませんか。
  38. 山本利壽

    委員長山本利壽君) 御異議ないと認めます。  それでは、これより採決に入ります。  宮古群島及び八重山群島におけるテレビジョン放送に必要な設備譲与に関する法律案を問題に供します。  本案に賛成の方の挙手を願います。
  39. 山本利壽

    委員長山本利壽君) 総員挙手。全会一致と認めます。よって本案は、全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  なお、本院規則第七十二条により、議長に提出すべき報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
  40. 山本利壽

    委員長山本利壽君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  41. 山本利壽

    委員長山本利壽君) 次に、沖縄居住者等に対する失業保険に関する特別措法案を議題といたします。  本法案につきましては、すでに提案理由の説明を聴取いたしておりますので、これより質疑に入ります。御質疑のある方は、順次御発言を願います。  なお、政府側より、早川労働大臣、有馬職業安定局長出席いたしております。
  42. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 まずお伺いしたいのは、沖縄の人々がこちらへ来まして働いておる。これがかなりの数にのぼっております。内地における若年労働力の不足ということが今後だんだんふえてきますけれども、そういうことになると、一そう沖縄から渡航してこちらで働く人が多くなるわけですが、現在どれくらいの人たち沖縄からこちらへ来て働いておるか。そうしてまた、特に中学校、高等学校卒業者の内地へ来て働く人々が今後どれくらいふえていくのか。そういう点についてまずお伺いしたいと思います。
  43. 有馬元治

    政府委員(有馬元治君) 沖縄地域から本土に就職される方々は最近逐年ふえてまいりまして、四十年の実績で申しますと、九千三百八十四名が本土に就職のために渡航しております。そのうち、いわゆる学卒者——中学、高校の卒業生は、合計いたしまして千四百三十二名でございます。これも逐年増加の傾向にございます。さらに今後の見通しでございますが、学卒者につきましては、中学の場合を見ますと、大体進学者を除きまして、就職可能な者のうち相当数の無業者といいますか、卒業直後において就職していない者が中学においては約六千名、それから高校においては三千九百名、こういうふうな数字が出ておりまして、本土における三倍前後の求人難の状態とは相当事情が違っております。もっとも沖縄におきましては、本土のように卒業してすぐ就職するというふうな慣習ではなくて、しばらく——一年程度うちにとどまっておってそれから就職するというふうなケースも相当ございますので、直接比較はできませんが、日本本土状態よりは非常に緩和しておる。したがいまして、私どもとしては、この中卒、高卒を主に考えて今後さらに一そう本土への就職を強化していくべきではないか、また、その可能性があるというふうに見ておるわけでございます。
  44. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 今後増加する傾向にあるということですが、さらにそのうちから内地に、こちらへ来る人たちについて、琉球政府なり何なりで、こちらへ来る渡航についていろいろすすめたり便宜をはかったりしておる。それからまた、こちら側で、沖繩におけるそういう若年労働力が内地と違って相当ある、それをこちらへ勧誘というのですか、とにかく来るようにすすめておるのかどうか、その点はどうなんですか。
  45. 有馬元治

    政府委員(有馬元治君) これは最近におきましては、わがほうもそれから琉球政府側も若年者について本土就職を積極的にすすめてまいっておりますし、この本土就職に対する障害は三十八年当時にちょっとごたごたがございましたけれども、それも、何といいますか、年少労働者の本土就職に対する保護規定が確立されましたので、それ以降はその障害もございませんので、漸次今後も増加してまいる。そういうふうに積極的に両政府間ですすめてまいりたい、かように考えておるわけであります。
  46. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 ときどき新聞なんかで、集団就職でこっちへ来た連中が、いろいろ向こうで聞かされた条件と違って、そのためにトラブルが起こったりあるいは帰りたくなったりするというような例があるようですけれどもね、そういう問題について労働省としては何か特別な措置をおとりになっているのですか。
  47. 有馬元治

    政府委員(有馬元治君) 昭和三十八年当時に沖縄から本土へ就職しました中卒の就職者が、ホームシックあるいは病気等で帰郷いたしました。それが現地の新聞等に大きく報道されて——多少の誤解もあったと思いますが、それを契機に年少労働者の本土就職について米民政府側が相当いろいろな注文を出したいきさつがございます。で、民政府側と琉球政府側と本土のわれわれと一緒になってこの問題を検討いたしました結果、結局、理由のいかんを問わず、年少労働者が本土へ就職して帰郷する場合には帰郷旅費を使用者が負担すべきである、こういう基本線を確認することによりましてこのトラブルも解決いたしました。三十八年時点に若干障害があった程度で、三十九年四月からはまた平常どおり本土就職を促進するというふうに相なりましたので、この点の心配もなくなりました。本土へ就職した者が、その後、若干求人条件と実際とが違っておるというふうなことで、昨年もごく例外的にトラブルがございましたけれども、これも安定機関が現地において中に入り、また、琉球政府の東京事務所も積極的に再就職なりあるいは企業へのあっせんをいたしまして、この問題も大体円満に解決を見ておるという状態でございますので、私どもとしましては、本土の集団就職者以上に、遠隔地から来ておる沖縄方々については、安定機関とも細心の注意を払って就職後の補導について万全を期してまいりたい、かように考えておるわけでございます。
  48. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 とにかく遠くから来ているのですから、これから非常にふえていく傾向にある、そういうことになりますというと、やはり特別にめんどうを見てやらなければならぬという必要が出てくると思うのですね。で、それについて沖繩からこっちへ来られる労働者の人々が——来るのは大阪とか名古屋とかあるいは北九州とか、大体工業地帯で西のほうが多いと思うのですが、特別の何かそういうことについての保護というか、めんどうを見てやる機関とか施設とかいうものについてはお考えになっていないですか。
  49. 早川崇

    国務大臣(早川崇君) 御承知のように、労働条件その他は内地と少しも変わっておりませんし、賃金の面では、沖縄の労働賃金の平均よりも約三割、日本では高いわけでございます。ただ、今回御提案申し上げましたように、失業保険というものがございませんので、今回国会で、沖縄方々が失業された場合も、沖縄に帰られても失業保険を差し上げるという措置を講ずることによりまして、沖縄からの労働者に対して労働行政上配慮いたしておるわけでございます。ただ、沖縄からの集団就職について特別な配慮ということはいたしておりませんのでございますが、沖縄の方のみならず、いま中学校出集団就職の青少年の定着問題が起こっております。そこで、受け入れ地の安定所に年少就職者の相談室を設けることになりました。その中で、沖縄の若年就職者に対しましては特別にひとつ配慮をしてまいりたいと思います。
  50. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 それでは、沖縄から学校を出てこっちへ来た人、これが本土にどれくらいとどまっているのか、あるいは中には、ずっとこっちへ落ち着いてこっちで生活をするようになるか。つまり、永住する人もおるわけですけれども、中には、まあ一定の年数たつと帰られる人もあるわけです。大体何年ぐらいこちらで働くのか。
  51. 有馬元治

    政府委員(有馬元治君) 最近の状況は、先ほど申しましたように、一万近く来ておりまして、三千名ちょっと帰っておるという状態でございます。したがいまして、三十年ごろからぼつぼつ本土就職のための渡航が始まっておりますが、これが累積いたしまして現在どれだけになっておるか、それからまた、何年ぐらい日本に滞在して帰郷しておられるというようなことの御質問でございますが、それはなかなか、現在までのところ失業保険の適用もしておりませんでしたものですから、資料が整備されておらない状況でございます。今後は、失業保険の角度から就職後何年くらいの方がどれくらいおるということが正確につかめるわけでございますが、現時点におきましては、そういった資料が私ども手元で整備されておりませんのでお答えしにくい状況でございます。今後は必らず整備したいと思います。
  52. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 まあ、年々一万、だんだんまたふえていくでしょうが、沖縄の人口が九十八万ぐらいですか。それで目ぼしい産業もない。ことに工業が少ない。したがって、沖繩の労働力の過剰という問題は常に存在しておるわけです。年々の本土への渡航で相当緩和されていくと思う。それで、沖縄の働く人たちの生活水準を上げていく上に役に立つ、そういうふうに考えられますか。
  53. 早川崇

    国務大臣(早川崇君) 御承知のように、日本は求人が求職を上回るという状況でございますが、沖縄は職業安定所では大体五万四千、求職があるわけでございますが、求人のほうは逆に三万ということで日本の労働力需給と逆な現象になっていることは事実でございます。したがって、人手不足の現状から賃金が高い日本に労働力が来るということは、必然的に雇用状態を改善し、また賃金上昇に役立つと思うわけでありまするが、ただ一つ気になるのは、沖縄において台湾からの移入を若干やっているのであります。外国人労働力の移入、日本はやっておりませんが、そういった面が非常に大規模になりますと、いま岡田先生御指摘のような賃金上昇、むしろ完全雇用というような面で若干の影響が出てくるのではないかと思いますけれども、御指摘の方向に作用することは、これはいはむべからざる事実だと思います。
  54. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 私ども、そういうことによって沖縄の雇用と賃金の水準が上がっていくことは非常に喜ばしいと思うのです。いま労働大臣が言われました、外国からの労働力の移入といいますか、この問題がやはり将来いろいろトラブルの原因にもなるし、また逆に、いま言った本土沖縄との労働力の移動の問題にも影響を持ってくると思うのですが、この問題について、これは日本政府がどうこうするわけにはいかないのですけれども、琉球政府なり何なりが、米民政府とこの問題についてはどういう考え方で交渉したりあるいはそれを阻止する方向に行くとか、何かそういうことについて御存じですか。
  55. 早川崇

    国務大臣(早川崇君) 先般沖繩の、日本で言えば総評みたいな労働組合委員長が参りましたときに、日本は外国労働力を入れないいまの政府の姿勢は非常にうらやましい。向こうは実は台湾から入れているのでと言っておりました程度でございまして、労働省といたしまして、流流政府なりアメリカ民政府がどういう考えでおるか。アメリカの軍事施設については三万八千人ほど労働力を使っておるようでございます。まあ、その間のことは全然どうなっておるか、事務当局も私も聞いておりません。
  56. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 台湾、それから韓国、フィリピン等からやっぱり入れるようなこともあり得るのです。現在でも少々ずつ入っておるわけですから。また、そういうものがどんどん流入してくるということになると、これまた一つの問題になろうかと思うのですが、そういう点について、私はやはり本土政府琉球政府と十分にこの問題について将来を見越して対策を立てておかれたほうがいいのじゃないかと思うのです。まあ、これは私の意見です。  次にお伺いしたいのは、今度の失業保険沖縄の居住者に出すということ、これはもちろん私ども賛成ですし、もっとほんとうなら早くやるべきことだと思うのです。こういうようなことが今後さらにほかの方面にも及ぼされてくることが望ましいと思うのですけれども、この今度の失業保険に関する特別措法案というものを出されたその根本的な考え方をまずお伺いしたいと思います。
  57. 早川崇

    国務大臣(早川崇君) 根本的な考え方は、沖縄同胞と日本本土のわれわれとは全く同じ日本人である、同胞であると、こういう観点に立ちまして、相互に失業保険を適用しようと、こういう考え方でございます。
  58. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 この相互という問題ですが、これはもちろん日本側のほうから出すほうが多くて、そうして、向こう失業保険を受け取ることのできる権利を持った者がこっちへ来て、今度はもらえることになる。これはそうたいした数ではないと思うのですが、いま両者の見込み数についてはこれはどれくらいになりますか。
  59. 有馬元治

    政府委員(有馬元治君) わがほうでは、月間二百名、年間にいたしまして二千四百名程度、本土で受給資格を持った者が帰郷するであろう、こういう推定をいたしております。逆に、沖縄から本土へ、向こう沖縄失業保険法の受給資格を持った者がどの程度来るか。これは見込みで、現実と少し離れるかもしれませんけれども、一応五十名——四分の一程度というふうな見込みを立てて、相互に予算の計上をいたしております。
  60. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 これらの失業保険の給付のいろんな条件向こうとだいぶ違いますね。この違いのあるのはしかたがないとしても、向こう側からこっちへ引っ越した者はわりあい少ないわけですね、内地で受け取る人は。数も少ないし、その金額も少ないし。で、金額が非常に少ないということからいって、内地においてこの失業保険を受け取る人が生活する上に困るのじゃないですか。こういうような問題についてはどういうふうにお考えになっておりますか。
  61. 有馬元治

    政府委員(有馬元治君) 本邦の失業保険法と沖縄失業保険法とは大体似ているのですが、給付の内容が若干違っております。たとえば扶養加算制度がない。あるいは傷病手当金がない。あるいは就職支度金がない。あるいは通算制度がない。いろいろ違っておりますので、向こう沖縄の受給資格を持って本土失業保険を受ける場合には、向こうの給付の低い内容のものを受けるわけです。したがって、失業保険法は前職賃金の六割保障という考え方でございまして、本土沖縄と比べると、賃金がすでに本土の七割水準である。その七割水準の前職賃金の六割ということになりますと、本邦で受ける場合には非常に少ない金額に相なろうかと思います。しかし、本土へ参りました場合には、失業保険を受給しながら安定所へ求職を申し込んでくれば、大体において就職ができるという状態でもございますので、一時的な生活のつなぎとしての意味は十分にあろうかと思います。  なお、沖縄側の保険法の給付の内容の改善については、この機会の改正におきましても、たとえば傷病給付金をつけるような改正を織り込んでおるとか、あるいは技能習得手当や訓練の給付延長制度を本土並みにするとか、そういった給付内容の改善についても改正案を現在の立法院に出しておりますので、漸次本土並みの給付水準に近づいてくるのだろうと思います。われわれもそれを期待しながら、この特別法を契機に大いに促進をしてまいりたい、かように考えております。
  62. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 もとが三割くらい違っているのだから、そういう多少の手直しをしても相当な違いがあると思うのです。で、来て、いま言われたように、すぐ職業安定所へ来て仕事が見つかるならいいけれども、見つからない。なかなか自分の思うようなところへ働けないということになると、その間のやはり生活に足りないということになってくると、これはまた犯罪の原因にもなってくるわけですね。そういう点で、何かこれは、もう少し内地で、こっち側で、それは何かプラス・アルファをつけるとかなんとかして内地並みにするということはできないのですか。
  63. 有馬元治

    政府委員(有馬元治君) 今度の特別措置法ではそこまでは考えておりませんで、沖縄法の給付水準を逐次改善をしてもらうという努力は、今後とも続けたいと思います。  それから、向こうで失業して本土へ来て、失業保険を当てに就職活動をするというのはごく例外でございまして、やはり向こうを出て、本土へ入域する場合に、縁故あるいは安定機関の就職あっせんという形で、何らかの形でめどをつけて来る場合が多いかと思います。かりにめどをつけて来ない場合においても、安定機関に求職の申し込みが当然あるわけでございますから、それらについては、積極的なあっせん活動によって一日も早く再就職するという方向へ指導してまいりたい、かように考えておるわけであります。
  64. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 次に、今度の法律案が成立をするに至るまでの手続、これは琉球政府とだけの話し合いなら簡単ですけれども、その上に米民政府があって、その米民政府との間の話し合い、そうして向こうがうんと言わなければこの法律はできないわけですね。今後も、こちらで沖縄側に対していろいろなことをしようとして法律なり行政措置をとる場合に、やはりその琉球政府並びに米民政府とも交渉しなければならない、折衝しなければならない。そのいきさつ、今度の法律ができるまでの、向こうとの折衝、手続、そういうものについてお聞かせ願いたい。
  65. 有馬元治

    政府委員(有馬元治君) 今度のこの特別措置を講ずるに至りました経緯は、相当長い期間がございまして、三十六年にすでに琉球政府側からこの問題を解決してもらいたいという要請がございまして、それから最近におきましては、昨年の四月に松岡主席が上京されまして、労働大臣にお会いして正式にこの要請をいたしたわけでございます。その間、随時向こうの労働局長その他が来まして、この要請がございましたのですが、御指摘のように、この問題を解決するについては米民政府側と折衝しなければ解決にならないという性質のものでございまして、私どももその機会をうかがっておったのでありますが、幸い民政府側も、この問題については次第に、最近に至りまして、了解といいますか、理解を深めていただきまして、昨年の十二月に民政府側から労働局長のフェーラー氏が参りまして、この機会に、私どもの考え方をお伝え申し上げましたところ、民政府側としても異存がないということがはっきりいたしましたので、それから、ことしの一月になりまして、労働省と厚生省と連れ立って沖縄に参りまして、琉球政府側と民政府側との関係者間において、この考え方の意見の一致を見た。その意見の一致を見たことを背景にしながら、それぞれの政府間において立法措置を、予算措置を講ずるという段取りをつけまして、今日特別措置法の御審議をお願いいたしているわけでございます。これが成立いたしましたら、すでに成立しております予算と合わせて実行ができますので、最終的な日米琉三者間の覚書を取りかわしまして、七月一日から全面的な実施に踏み切ってまいりたい、かような段取りを考えているわけでございます。
  66. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 いまのお話を伺いましても、三十六年からの話ですね、それで、こちら側でも、琉球政府側でも、早く執行してもらいたい、こういうような、だれが考えても早急に施行すべきものがおくれておったということは、やはり、これに対してあまり急ぎたくない、あるいはこのものはよけいなことだというような考え方が米民政府にあって、そうして今日までぐずぐず引き延ばされてきたんだと私は推測するのですが、一体、どうしてこんなに長い間、アメリカ側がこのくらいのものについてもうんと言わなかったのですか、そこのところをひとつはっきり聞きたいのですが。
  67. 有馬元治

    政府委員(有馬元治君) 私も三十八年以来この仕事をやっておりまして、その以前の緯経はよくわかりませんのですが、先ほども申しましたように、三十八年という年は、キャラウェーの時代で、スタウトという労働局長がおりましたが、先ほどの中卒者の本土就職事件を契機といたしまして、本土へ就職するについて多少消極的な態度を民政府側が示しておったことは事実ございまです。これが、失業保険のこういった考え方にまで反対をしておったかどうか、そこら辺ははっきりいたしませんけれども、私どもも最終的に腰を据えて民政府側と当時交渉したわけでもございませんので、何となくまだ時期が来なかったというふうな状態が続いておったわけでございますが、昨年四月の松岡主席の上京を機会に、わがほうとしても本腰を入れてこの問題を解決しようということに労働省としてはなりました。それ以来、まあ、今日のような特別措置法の立案になったわけでございます。
  68. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 いまキャラウェー高等弁務官の名前が出たのですけれども、あの時代には、日本側から沖縄側に対していろいろなことをするのに対して、いろいろと、何といいますか、これを阻止するような、あるいは喜ばないような傾向があったことは、単にこの問題ばかりでなくて、いろいろな面に出ていたと思うのです。で、こういう一高等弁務官の恣意でもってこういうような問題が左右されるということはまことに不可解である。私どもとしては遺憾に思うのです。こういうようなことは今後他の問題にも及ぶことですから、ひとつそういう場合にも日本側としては、キャラウェーが反対だったからというようなことから、何となく消極的になって押しもしなかったというような、そういう態度は今後とらないで、やはり、向こうがどう言おうと、こっちがこれやらなければならぬことだというふうに考えたら、もっと積極的に押す態度をとってもらいたいと思うのです。これはひとり労働大臣に言うだけでなく、総務長官にもほかの大臣にも、私、言いたいことなんですよ。どうか、この問題について、いままで長いことかかったそのことから反省して、そういうことのないようにしていただきたいと思います。まあ、私の質問はこれで終わります。
  69. 山本利壽

    委員長山本利壽君) 他に御発言がなければ、本法案に対する本日の質疑は、この程度にいたします。     —————————————
  70. 山本利壽

    委員長山本利壽君) 次に、沖縄その他の固有領土に関しての対策樹立に関する調査中、沖縄その他の固有領土に関する件を議題といたします。  質疑のある方は、順次御発言を願います。
  71. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 私は、漁船拿捕問題について、総務長官とそれから外務省の方にお伺いしたいのです。  インドネシアの方面でもって沖縄の漁船が二隻捕えられておる。それが起こりましたときに、私はこの委員会において、あるいは外務委員会において、日本政府としてインドネシア政府に対してこれの釈放方の交渉をしたかということをお伺いした。そのときに、日本政府としてはインドネシアに対して交渉してそういう努力をしているのだということを言われたのですけれども、いまだに釈放されたということを聞いておらぬのです。今回沖縄から上京されました立法院の代表も、こちらに参りまして政府側にそのことを陳情しておる。その後一体それがどうなっておるのか、その交渉の経過ですね、それをお伺いしたい。
  72. 東郷文彦

    政府委員(東郷文彦君) 第八南琉丸が拿捕されましたのは五月五日のことでございます。さっそくその情報が外務省に参りますと同時に、われわれのほうから在ジャカルタの西山大使に訓令を出しまして、返還についてかけ合うように、時を同じうしましてジャカルタにおいては、米国大使館のほうからわがほうの大使館にも、こういう問題があるが一緒に釈放のために努力しよう、こういう話がございました。いわば、日米一緒になりましてインドネシア政府とかけ合いました。西山大使も、事務的のみならず、五月の十六日にはマリク外務大臣と直接会いましてこの話を提示しまして、即刻釈放を申し入れたわけでございますが、ところが、この話の最中に、また十九日に第三八洲丸が拿捕されたわけでございます。これに対しましても、日米同じような形で手を組んで、一緒になりまして依然として交渉中でございます。なお、そのために大使館からインドネシア側の外務省に書面をもって抗議すると同時に、また二十九日には西山大使はスハルト大統領代行とも会いまして、インドネシア側としては内水宣言及びこれに基づく国内法もあるからいろいろ事情はあろうけれども、こういうことは日本のほうはむろんそういう内水宣言というものを認めておらぬし、国際法上もそういうことは認められていないことであるから、国内法上の問題もあろうが、そういうことは遺憾なことであるから即刻釈放するようにということで、強い態度で交渉を続けておるわけでございますけれども、この報告によりますと、先方も、これが日イ友好関係にかんがみて遺憾なことであるから何とか研究しようということのようでありますが、遺憾ながら今日までアンボンに拿捕されておりまする二隻の漁船はまだ釈放を見るに至っておりません。きのうもこの問題に関しまして、山川琉球立法院議長及び安里社大党委員長が外務大臣と長時間お話しされました。外務大臣も、この問題は、漁船のたまたま拿捕されておるこの釈放のみならず、今後のいわば安全操業というようなことについても、これは沖縄だけの問題ではないし、大いに努力したいと、こういうお話もございましたので、われわれといたしましては、できる限り努力を続けておる段階でございます。
  73. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 問題になりますのは、インドネシアが島の多い国で、あそこを領水と認めて、そうして沖縄の船が入ってくるのを拿捕したわけなんでしょうけれども、この問題については、いままで日本側としては、これはひとり沖縄の船のみならず、日本の漁船にも関係する問題ですが、ずっと何か交渉をやっておったのですか。今度そういう問題が起こって初めてこの問題について向こう側と、その解釈の相違といいますか、そういうものについて交渉、折衝をしだしたのか。  それから第二は、二隻ともアンボンの港に抑留されておるわけでありまして、これらの人々が一体、拘置所か何かにほうり込まれているのだろうと思うのですが、それに対して日本の大使館は、その人々と連絡をとって、たとえば向こうの裁判にかけるというような問題の場合に、弁護士の依頼だとか、あるいはその中にいる人たちの便宜、いわゆる差し入れの問題だとか、そういう何か拘置所の中における生活の問題についてのめんどうを見るとか、あるいは、行ってその抑留されている人たちに会って、そういうことはやっているのですか。
  74. 東郷文彦

    政府委員(東郷文彦君) 第一の最初の問題につきましては、従来、ここ数年の間に本土の漁船も十八隻ほど銃撃され、あるいは拿捕されたような事件がございまして、その都度返還等についてかけ合いまして、一ぺん没収の判決を受けたものの、あとから釈放されると、曲がりなりにも解決されてきたわけでございますが、御承知のように、インドネシアの内水宣言のみならず、フィリピンにも同じような問題がございますし、南米諸国にも二百海里漁業水域の問題があるというようなわけで、これらの問題全般をわがほうの漁業政策からどういう解決をしたらいいかということで、政府といたしまして大いに研究をしておるわけでございまして、インドネシアの問題につきましても、最近政権もかわりまして非常に友好的関係もますます深まろうというときでございますので、この問題も、何とか安全操業について両方のいわば立場を留保したまま具体的な解決をはかりたいと思って、いろいろ具体案を研究しておるわけでございまして、特定の案について、将来の全体の問題として交渉するという段階にはまだ至っておりません。これは大きな問題としてわがほうとしての結論を出して話し合いをしたいと考えておるわけでございます。  次に第二の問題、現地において——現在まではもっぱらジャカルタにおいて相手国政府の最高レベルと話をしておるわけでございますが、今後状況によりまして館員を派遣して、実際どういう環境におられるかということ等についてもさらに手を尽くすようにする考えでございます。なかなか交通も不便で、そこにわがほうの館員が行って直接どうこうしたというところまでは、まだこの段階ではいっておりません。
  75. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 第一の船がつかまってから約一カ月になりますね。幾ら交通不便だってね、アンボンにジャカルタから飛行機が行ってないことはないんです。私は、やはりこういう問題が起こったならば、もちろん向こう側の政府に対して釈放の交渉をすべきであると思いますが、それと同時に、やはりつかまった場所に行って、そうしてつかまった人から直接事情を聞くなり、あるいは、つかまって拘置所にほうり込まれている人々に対して保護の手を差し伸べるのが、これが出先外交機関の役目だと思うのですよ。一カ月もほっといたということは、私は少し怠慢じゃないかと思うのです。どういう状況でもって捕えられたかということは、インドネシア側のほうから聞くだけでこちら側から全然聞いておらぬわけですか。
  76. 東郷文彦

    政府委員(東郷文彦君) 御指摘の点まことにそのとおりだと存じますが、第八南琉丸が拿捕されたという情報を聞きましてから相手国政府にかけ合いまして、相手国政府の現場の海軍当局との連絡その他に非常に手間がかかりました。まず、第八南琉丸はテルナテというところに行ったということをこちらが突きとめるまで相当時間がございました。その後アンボンに抑留されたということが十六日になってわかったような実情でございまして、しかし、それからもうすでに二週間以上たっております。出先の大使に対しましては、なるべく早く現場にも行って手を尽くすようにということを言っております。御指摘の点、まことにそのとおりで、フィリピンの場合など、すぐ行ったこともあるのでございますが、このインドネシアの場合にも、できるだけ早くそういう措置もとるようにいたす所存でございます。
  77. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 私はそれをすぐやってもらいたいと思うのです。その点については、来週開かれる外務委員会あるいは沖縄特別委員会において、その問題がどういうふうになったかということをぜひ御報告願いたい、そう思います。  それからもう一つは、いま言った内水面の問題ですが、インドネシア側はそういうふうに言っている。日本側はそれを認めない。根本的な解決は国際問題としてこれは大きな問題の一つですけれども、インドネシアと日本との今日の友好関係の事態からいって、先ほどあなたが言われましたような暫定措置というものもとれないわけではないと思うのです。そういうようなことについての交渉は、すぐに釈放の問題と並行に行なわれますか。
  78. 東郷文彦

    政府委員(東郷文彦君) この釈放のほうは寸刻を争う問題として、先ほど申し上げましたように、努力を尽くしておるわけでございますが、全体の問題は、これはただ日本とインドネシアの間だけの問題と考えるわけにいきませんし、いろいろ世界各地における関係もございますので、どこへ出してもあとから困るようなことのないような案で、向こう側と話をする必要があるわけでございます。そういう見地から、いま外務省、水産庁とも、どういったことが最もいいかということで、まだ案を研究中の段階でございます。今日、それと並行してという段階にはまだ立ち至っておりません。
  79. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 そうすると、沖縄の船が二隻五月のうちにつかまった、もうそのあと沖繩からの船は、事実上インドネシア方面に漁に出かけられなくなる、こういうことになりはしないですか。それからまた、日本から行く漁船も、従来漁業をやっていたところでも行けなくなる。だから、あなた方が、交渉はそういう根本問題があるから、またそうして案ができていないから、したがって交渉ができない。その間に、現実の問題としては、もう日本の船も沖縄の船も、インドネシアの領水には、内水の方面には近寄れなくなるということになりはしないのですか。これは日本にとりまして非常に不利なことになるのじゃないか。これは日本とインドネシアの友好関係の上から見ても非常に遺憾なことですし、こちら側も、すいぶんインドネシア側の、いろいろな経済授助の問題についても向こう側の要望をいれているのですから、こういう問題について、やはり日本側としても何らかの方法で、日本の漁船なり沖縄の漁船なりが漁業が続けられるような便法、あるいは暫定措置、そういったものを講ずる交渉をされたらどうでしょう。
  80. 東郷文彦

    政府委員(東郷文彦君) ただいま私申し上げましたのは、長期的にどういう最終的な安全操業に関する取りきめがなされるかいうことでございますが、西山大使がマリク外務大臣なりあるいはスハルト大統領代行なりと話をされる場合に、ただいまお話しのような問題も、当面つかまっている二隻の釈放とともに、むろんそういう伏線で話をしておられるわけでございますが、まあ今日までの話し合いでは、当面それではどういうことで認めるかというところまで話が詰まって、解決が出たというところまで行っておりませんが、いまの御指摘の点はまことにそのとおりでございますので、今後も、最終的な長期的な問題と同時に、当面の問題についても、何らかの了解ができるようなことにしたいと考えております。
  81. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 いずれにいたしましても、来週のこの委員会かあるいは外務委員会かで、交渉についての経過を御報告願いたいと思います。これで私の質問を終わります。
  82. 山本利壽

    委員長山本利壽君) 速記をとめて。
  83. 山本利壽

    委員長山本利壽君) 速記を起こして。
  84. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 最初に総務長官にお尋ねするのですけれども、沖縄から山川立法院議長等がおいでになって、あなたに対していろいろと御要望があったわけですね。あなたにというよりか、佐藤内閣に対してどういう点の要望があったのかという点からちょっとお話し願いたいと思います。
  85. 塚原俊郎

    国務大臣塚原俊郎君) 昨日午前、山川さん、安里さん、そのほか随員と申しますか、一行の方とお目にかかりました。要請の点は三点に分かれると思います。第一は、施政権の返還であります。第二は、沖縄方々の国政参加の問題であります。第三点は、インドネシアに抑留されている漁船の問題でございます。
  86. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 それに対するあなたのお答えですね、どういうふうにお答えになったのか、お聞かせ願いたいと思います。
  87. 塚原俊郎

    国務大臣塚原俊郎君) 第一の施政権の問題につきましては、佐藤総理もこの国会でたびたび申しておりまするし、政府の態度として打ち出されておる施政権の全面返還、これは沖縄方々ばかりでなく、日本の全国民が非常に心配いたしているこの問題に取り組んでいるということ、極東の情勢その他から困難な面もあるが、何とかこれを押し切って、沖縄方々の熱願にこたえたい、それができるまでの間は、本土との格差の是正、その他、できるだけの処置をとるというのが、わがほうの方針であるというのが第一であります。  第二の国政参加の問題でありますが、ちょうど私が衆議院の議運の委員長当時にもおいでになった方もございますので、当時国会といたしましても、皆さん方お話を承ったという話が出ましたが、これは現在の憲法のもとにおいては、直ちに国会に議席を持つことは困難である。それはできない。しかし、何らかの形において、沖縄方々の声を日本国会に反映させる方法については従来からも研究いたしておるし、今後も研究を続けなければならないであろう。しかし、それはむしろ政府よりも国会——衆議院あるいは参議院、国会法、両院の議事規則等によってこの問題は従来も検討されたし、今度おいでになった機会にさらに検討を加えられて、どういう形ででも皆さんの意見が反映されることを望んでいるというようなことで話し合いをしました。  第三の問題は、これは私も重大関心を持っておりまするが、実際は外務省がやる処置で、午後の四時に三木さんにお会いになるというので、ひとつ三木さんともよくお話し合いを願いたい。今後の操業というものにも非常な影響をもたらすものであり、先ほど御質疑にもありましたように、今日までこの問題がそのままになっているということはまことに遺憾であるから、最大限の努力をして不安をなくさしめる。また、拿捕されている二隻の戻ってくることを心から望むよう努力するということでございます。そのほか、何か漁業関係者の方おりましたけれども、これは省略いたします。
  88. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 第一の、全面返還に取り組むという中で、極東の情勢からいうといろいろあるけれども、むずかしい、いろいろあると言うけれども、それを押し切ってやられるというお話がいまございましたね。具体的にどういうふうにするということなんですか。ただ口の上だけで押し切ると言ったって、具体的にどうやってどうするということがなければ、何のことやら意味がないですね。そういうものを押し切ってまで全面返還と取り組むというような、そこのところはどうなんですか。
  89. 塚原俊郎

    国務大臣塚原俊郎君) 沖繩百万の方、本土一億の方々のこれは強い熱願であることは言うまでもない。しかも、一日も早い全面返還を望んでおるこの気持ちを達成させるために、政府としてもできるだけの処置はとらなければならない。またとりつつあるが、今日極東の情勢がこれをはばんでいる。ですから、そこに具体的なプログラムがないとおっしゃられると思うのでありますが、しかし、あらゆる角度からあらゆる問題をとらえて沖縄方々の熱願にこたえたいという政府の決意は非常に強いものがあるということを申したのでございます。
  90. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 何だか初めの答えといまの答えとが何か内容的にだいぶん違うようにも考えられるのですが、そこで、問題になりますのは、政府の全面返還に対する考え方ですね。これが統一を欠いていると、こういうようなことが再三言われるわけですね。たとえば松岡琉球主席や、それから大浜さんが帰ってこられてから、沖繩返還方式についての日本政府の統一的見解をまとめてほしいというようなアメリカ側の意向があった。それがどの程度のことかは別として、そういう意向があったというふうなことが佐藤総理に伝えられておる。こういうようなことも言われておるわけですね。政府の中にもいろいろな考え方があるようなんですけれども、そうすると結局、全面返還に取り組む具体的な方針ですね。というものは統一したものは一体いまの内閣にあるのですか。具体的なプログラムをどうやってやっていこうというところが一番大事なところだと思うのですね。そこはどういうふうになっておるでしょうか。
  91. 塚原俊郎

    国務大臣塚原俊郎君) 施政権の全面返還に向かって努力するということは、たびたび佐藤総理以下政府が申し上げておる点でございます。これはあらゆる機会をとらえまして、もちろんトップ・レベルの会談においても、また、私の立場から言うならば、これはそういうものをなし得る場所は、プライベートな問題は別でありまするが、日米協議委員会等の場を通じまして、できるだけの施政権全面返還についてのアメリカの理解と協力ということを求めておるわけでございます。
  92. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 いや、あなたのお答えがそういうお答えだったら、日本の国民も沖縄県民も、何のために沖縄対策特別委員会をつくり、何のためにここで論議をしておるかということについて、ぼくはがっかりすると思うのですね。あなたのお話だったら、これは全くもう抽象論ですよ。三十一日に佐藤総理があなたに対して、沖縄小笠原問題解決のための青写真のつくり方を急ぐように指示した。これは内容は、青写真ということばがあったかどうかは別として、三十一日に総理があなたに対して、沖縄の返還についてのある程度の具体的なプログラムというか、目安というか、そういうふうなものをつくるようにという、こういうお話があったのですか。
  93. 塚原俊郎

    国務大臣塚原俊郎君) おとといでありまするか、私、官邸で総理にお目にかかりました際、いろいろな問題が出ましたけれども、特に小笠原の問題と沖縄の問題について所管省であるので、非常に重要であるし、この問題はもちろん今日までも十分に検討はしておるであろうが、さらにしっかり取り組むようにという程度のお話がございました。そのことをマスコミにもお話をいたしましたが、新聞の書きようはいろいろな書ぎようがあったものと私は考えております。総理が非常に強い関心を示され、青写真とかプログラムとかいうことばは使いませんが、できるだけのことをおまえのところでもやらなければいかぬ、こういう意味に私はとったのであります。
  94. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 そこでさらに、しっかり取り組むといっても、できるだけのことというのは具体的に何なのかということなんです。いろいろありますね。たとえば総理アメリカへ行くならアメリカへ行く、そのときに具体的に一つの提案をするとかいろいろあるわけですね。あなたのお話を聞いておりますと、それはまあ国際情勢もなかなかいろいろであるし、そう野党の言うようにうまく行きっこないという議論は、これはぼくは確かにあると思うのですけれども、それにしても具体性がないですね。ただしっかりやります、ああしっかりやりますというだけの話でね。そこら辺のところは、たとえば総理アメリカへ行くときにこうするのだ、させたいのだと、いろいろ問題があるのじゃないですか。それから分離返還の問題というのは、いろいろいままで議論はあったけれども、そういうような行き方はとらないんだとか、いろいろ問題点があるのじゃないですか。そういう点についてはどういうようにお考えなんですか。
  95. 塚原俊郎

    国務大臣塚原俊郎君) いろいろな方法があることはこれはもちろんであります。政府の方針として、施政権の全面返還、いわゆる観念的抽象的にわたるものはなるべく避けて、できるだけ全面返還が望ましいということはたびたびこの国会でも打ち出されている点でございます。これを、稲葉委員はいま抽象的であるというふうにおっしゃっておるわけでありまするが、私は、この全面返還ができるための措置、その前提としてあらゆる角度からあらゆる問題をとらえてこの努力はいたしておるつもりでございます。なお、私のところにも、教育の問題に関してでありまするが、大浜委員会というようなものができまして、ただいま御審議を願っておることはもう御承知であると思いまするが、あらゆる角度からあらゆる問題をとらえてこの問題の解決に当たる努力はいたさなければならないと考えております。
  96. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 あらゆる角度からあらゆる問題をとらえて解決に努力する、これはもう非常に当然過ぎるくらい当然なんですが、そうすると、全面返還ということがある段階で非常に困難だという場合には、場合によっては部分的な返還ということも考えられないことはないんだと、そういう点についてはまだしっかりとしたものはでき上がってないんだと、そのときの情勢に応じて、場合によっては分離返還ということもあり得るんだと、こういうふうになるわけですか。
  97. 塚原俊郎

    国務大臣塚原俊郎君) まあ、ファンクションと申しますか、機能別分離返還という考え方もあるでしょう。あるいは基地を別としたというようなことも論議されておるとおりでございまするが、こういう重大問題であり、沖縄方々の熱願にこたえるためには、あらゆる場合を想定しあらゆる角度から検討するということがこれは私は当然であり、また、私はそのつもりでいま想を練っておる、また、関係者とも御相談をいたしておるところでございます。
  98. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 あらゆる角度から想を練るのはもう当然でしてね。それはどうなんですか。そうするといつごろ一体どういうふうにして返還方式というものをしっかり立てるのか、これについての結論が出るのですか、これは最後の最後まで出ないのですか、そこはどうなんですか。
  99. 塚原俊郎

    国務大臣塚原俊郎君) 先ほども極東の情勢ということばを申し上げましたが、きわめてむずかしい問題でございまして、いわゆる極東にブルースカイが来る日はということまでいわれておるのでありまするが、そういう百年河清を待つようなことであってはならないのであります。ですから、極東の情勢が好転することが望ましいし、また、返還の日が一日も早いことはほんとうに望ましいのでありまするが、そこに、繰り返すようであるが、極東の情勢のむずかしさということのために、いま直ちにということはこれはできないことは御承知いただけると思います。しかし、先ほどから繰り返しておりまするように、あらゆる場合をとらえて、あらゆる場合を想定してひとつこの問題の解決に当たりたいという気持ちを強く持っておるわけでございます。
  100. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 論議が発展しませんから別のことに進みますけれども、たった一つだけお聞きしておきますが、いまの極東の情勢とかいろいろな話がございましたね、それは極東に脅威があるとかないとかいうことにつながると思うのですが、そういうことは一体平和条約三条の中にはっきり書いてあるのですか。平和条約三条の中の条件にそういうことが入っているのですか。
  101. 高辻正巳

    政府委員(高辻正巳君) 平和条約三条に極東の情勢云々ということが書いてあるかということでございますが、御承知のとおり、平和条約三条そのものには別に書いてはございません。
  102. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 ですから、いまの平和条約三条の解釈からいっても、そういうことは予定されてないわけなんですよ。それから、まだ非常に疑問があるのですよ、論議は。たとえば信託統治にするとかいったって、戦略的信託統治といったって、これは安保理事会のあれですから、拒否権を発動すればできないのです。しかし、普通の信託統合にしようとすれば、沖縄の住民の意思を尊重しなければならないという国連憲章に引っかかるわけですから、そうしなければ沖縄の住民が日本本土へ帰りたいということになってきまずから、だから、信託統治ということも通常のものもそういうことに行きっこないのですよ。非常にこれは一種の、平和条約三条というのは、何と申しますか、ダレスが考え一つのまやかし、ごまかしなんです。しかし、それをここで論議しても始まりませんから、これは別の話を進めて、せっかく防衛庁長官がおいでになっておるのですから、そちらのほうに話を進めたいと思うのです。  私が疑問に思いますのは、安保条約がある、それからアメリカに核抑止力があるから日本は戦争に巻き込まれない。大体大ざっぱな考え方ですね。そこで、アメリカの核抑止力が一その前に、一体核抑止力というのは一体何なのか。たいへん失礼なことを聞いて申しわけないのですけれども、核抑止力というのは何なのかということなんですがね。
  103. 増田甲子七

    国務大臣増田甲子七君) 核戦争を抑止する力だと思います。(笑声)
  104. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 そうするとね、核抑止力というのはどこにあるのですか。
  105. 増田甲子七

    国務大臣増田甲子七君) いま、御承知のとおり、核を開発しておる国があるわけでございますが、そのうち米ソが一番ICBM等を持っておるわけでございます。そこで、やはり武力の均衡といったような関係が成り立つならば、核を使う戦争というものは阻止できる、こう私どもは考えておるわけでございまして、それがいわゆる核戦争を抑止する力、すなわち核抑止力と、こう考えておる次第でございます。
  106. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 いや、だから、どこにあるのですか、それを聞いておるのです。どこにあるのですか、核抑止力というのは。
  107. 増田甲子七

    国務大臣増田甲子七君) 核を開発した国が四つ、五つあるわけでございまするが、そのうちで、繰り返して申して恐縮でございまするが、稲葉さんの御存じのとおり、北アメリカ合衆国とソ連とが一番核兵器を開発しておるわけでございまして、それはICBMもあれば、IRBMもあるし、MRBMもありますし、また長距離爆撃機の中に核弾頭を塔載して相手方を攻撃し得る力——これは日本ではございませんから断わっておきますけれども。それからその次にナイキ・ハーキュリーズ等の核、非核両用のものがあって、もっともナイキ・ハーキュリーズというのは、その射程距離から申しましても、幾ら飛んでも百五十キロということでございますから——普通は百三十キロでございますけれども——これは防衛的なものでございます。それからABMというものも相当開発されておるようでございますが、これは成功の段階になっておるかどうか。また、どれくらいICBM、IRBM、MRBM、もう一つ加えますと、核弾頭をつけたポラリス型ミサイルというもの、これは両方の国が開発しておりまするが、現にフランス等でもこれからやろうとして相当起工式等もやったようでございます。核弾頭をつけたポラリス型のミサイルを水中から発射し得る潜水艦二隻というものの起工式をやったようでございます。そこで、これらのものに対抗するものの究極のものはABMである、こう考えておりまするが、ABM——アンチ・バリスティック・ミサイル——このABMというものはまだ完全には開発されておりませんし、また、経済的な費用も相当かかるからどうかやめてくれないかということを、アメリカのほうでソ連のほうへ頼んだのですけれども、まだソビエトのほうはどういうわけか返事がありません。これは世界平和に貢献するならば、アメリカのほうが何といったって経済力もありますし、ABMの開発といったら、偉大なる力を持つABMの開発はできると私は思うのですが、それをやめてくれぬかと言われてまだ返事をしないということはどうかと思うのです。これはソ連に関係のある方もあまりないでしょうが、関係のある方から私はお聞きしたいと、こう思っているんです。
  108. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 非常に有益なお話を聞かしていただいてありがたかったんですけれども、そうすると、抑止力というのは相対的なものだということは認めるわけですか。向こうの力がうんと強くなってくれば、それに伴ってこっちの力もある程度大きくならないと抑止としての効果をあげないと、そういうことは言えるわけですか。
  109. 増田甲子七

    国務大臣増田甲子七君) これも日本のことを離れて言うわけですけれども……
  110. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 日本のことを中心に言ってくださいよ、日本のことを聞いているんだから。
  111. 増田甲子七

    国務大臣増田甲子七君) 日本のことでしたら、日本の防衛庁はいろんなこと考えておりません。そこで、日本におりまする軍事評論家は、いまのところ相互の核兵器の武力の均衡が抑止の作用をなすということを言っております。しかし、それとまた違った考えを申しておる人もあります。その上にまた軍事評論家というのがおりまして、いろいろ軍事評論家はおりまするが、防衛庁に関係のないことでございますからそこはお断わりしておきますが、要するに、バランスということによって抑止ができるのであるということが常識——普通の知識のあんまり高くないほうの常識程度を持っておる軍事評論家の説であるということを申し上げておきます。
  112. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 軍事評論家のことを聞いているんじゃないですよ。ここはクラブじゃないんですから、防衛庁長官であるあなた——あなたは防衛庁長官でしょう。そうでしょう。だから聞いているんで、常識的であっても何でも、あなたの考えはどうなんですか。核の抑止力——抑子力によって日本は安全だと言うんでしょう。だから、それならば、たとえばこっちの力が百である場合に相手の力がかりに百だった場合、これなら抑止として力を発揮するけれども、向こうが千になっているのにこっちが百で一体抑止力の効果があるかどうかということですね。それは、なるほど数字は議論がありますよ。議論がありますけれども、相対的なものであるということはこれはもう認めざるを得ないんじゃないですか。軍事評論家の話じゃなくてあなたの話、あなたの考え——そんなことを聞くのがおかしいんですよ、ぼくはおかしいと思うんだけれども、あなたがほかのことばかり答えていてそのことをぴちっと答えないからばくも聞かざるを得ないことになってくるんで、そうならそう、違うなら違う、イエスかノーか、分けて答えてください。
  113. 増田甲子七

    国務大臣増田甲子七君) 相対的なものだと思います。
  114. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 そこで、あなた非常に警戒されてなかなか答えない、警戒し過ぎているんですけれども、決してそんなものじゃないんですから。そうすると、抑子力は——ぼくが核の抑止力というのはどこにあるかということを聞くのは、アメリカやソ連にあるという話を聞いたつもりじゃないんです。アメリカのどこにあるかということですね。と同時に、じゃ、沖縄にそれがあるかどうかということですね。それをお聞きしているわけです。沖縄委員会だからそういうところへ来るんだけれども、そこをいきなり聞いてもあれだから、順序を踏まないと悪いからずっと来たわけです。沖繩には核の抑止力というものがあるのかないのか。
  115. 増田甲子七

    国務大臣増田甲子七君) 沖縄のことは、ほんとうの正確なことは米軍に聞いてもらわないとわかりませんけれども、われわれの知っている範囲のことをお答えいたします。われわれの考えでは、ある程度の核の抑止力はある、こういうふうに想像をいたしております。想像といったって夢のような想像じゃございませんが、そう推察をいたしております。
  116. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 そうすると、これはどなたにお聞きしたらいいのか。沖縄アメリカが施政権持っているわけですね。だから、日本の領土ですね。いいですね。そうすると、アメリカ沖縄を三つの権利を持って施政権を行使するというには、日本の領土ではあるけれども、日本の憲法に違反をしてそれを行使してもかまわぬということですか。
  117. 増田甲子七

    国務大臣増田甲子七君) 私は、施政権と平和条約三条とそれから立法・司法・行政権との関係のことを詳しくは存じませんから、むしろ稲葉委員のほうがよく御存じでしょうが、私は、いま施政権の及ばないということはやっぱり憲法も及んでいないということではないかと思っております。
  118. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 そうすると、憲法が及んでないんだから沖繩日本国憲法に違反をして使用されても日本としてはかれこれ言えないと、こういうことにお聞きしてよろしいですか。
  119. 増田甲子七

    国務大臣増田甲子七君) 私はそう思っております。これは遺憾であるかないかは別問題でありますが。
  120. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 そうすると、沖縄に核基地があるということは一つの常識としてまあ認める、認めざるを得ないというふうにいまのお話ではお聞きするわけですね。そうすると、それをそのままの状態日本に返還をするということは、日本の憲法としてそれが受け入れられるんですか。これはまあ防衛庁長官そこまではあれならば、これは法制局長官でいいですよ。むずかしい問題だと思う、ぼくは。むずかしい問題だけれども、大事な問題だと思うんですよ。
  121. 高辻正巳

    政府委員(高辻正巳君) 平和条約三条のいわゆる沖縄の領域、まあ、三条の沖縄の問題に限って、沖縄の領域について憲法が施行されているかどうかという問題につきましては、結論的にさっき防衛庁長官がおっしゃったとおりでございますが、ただいまのお話は、もし施政権が返還された場合、日本の憲法との関係はどうかということであると思います。
  122. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 いや、現状のままでですよ。
  123. 高辻正巳

    政府委員(高辻正巳君) 現状のままで……。結局、そういう核兵器というものは、これはまあ武器一般の問題でしばしば御答弁申し上げておりますが、要するに、憲法九条の一般的な解釈、政府がとっておる解釈といたしましては、要するに、自衛の正当な目的の限度というものを非常にやかましく言っておりますので、そういう限度のものを越えるということになりますれば、これを日本政府が保持するということであれば、これは日本国憲法に直ちに違反するということになると思うんです。ところが、これはいつか稲葉先生御自身だったと思いますが、日本の領域内でかりにアメリカがそういうものを持っている場合にどうかという設問を私いただいたと思うのでありますが、それにつきましては、前の最高裁の判例を引用いたしまして、それは政治的な問題はむろん残るけれども、憲法の九条のぎりぎり一ぱいの解釈としては必ずしもそうと断ずるわけにいかぬだろう、それは最高裁の判例からいうとそうであるということをお答えいたしましたので、いまの御質問も、その辺を分けて実はお答えしなきゃならぬと思いますが、いままで申し上げたことで大体おわかりだと思いますので、一応それでとどめておきます。
  124. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 いや、わからないですね。あなたのお話は抽象論ですよ。抽象論としてはわかるんです。ぼくは具体的な問題として聞いているわけですよ。だから、沖縄に核基地があるということは常識になっていると、これははっきり言ったような言わないようなものですけれどもね。その状態日本に返還されるということは、日本の憲法から見てそれが認められるか認められないかと聞いているんですよ、ぼくは。抽象論ではなく聞いているつもりですがね。
  125. 高辻正巳

    政府委員(高辻正巳君) 私の申し上げたことに含まれていると私は思っておりますが、それが先ほど申し上げましたように、日本国民がその核兵器なりを、あるいは日本政府がといいますか、あるいは自衛隊がといいますか、そういうものが保持するということになれば これは先ほどの自衛の目的の正当な限度を越えるというものであれば、これはむろん憲法に違反するということになります。しかし、これをアメリカ合衆国が持っているということになります場合には、憲法九条との関係は直ちに出てこないだろうということを申し上げたわけで、そのこまかくと申しますのは、それがどっちの範疇に入るのか、それによってお答えが二つに分かれるわけです。
  126. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 いや、私の聞いているのは、ぼくの理解のしかたが悪いかもしれませんが、なぜこういうことを聞くかというと、火曜日の内閣委員会で外務省設置法に関連をして私が三木さんにそういうふうな問題を聞いたわけですね。そのときの三木さんの答えはこういう答えなんですよ。「アメリカが、核基地だということを正面から言ってないですけれども、」——これは沖繩に関連してですよ——「だけど、常識的にはそういうことを言われておるわけです、それは、そういうことになってくれば、憲法というよりかは、政府の方針に反しますね。核の持ち込みは認めませんと、こう政府は言っているのですから、それは反しますね。憲法ということになってくると、これはいろいろ法律的には言い分があろうと思いますが、言い分があろうというのは、いろいろ解釈があると思いますよ、憲法では。そのことよりは政府は持ち込みを認めませんと、こう言っていることが、これは端的にその政府の方針が変更されなければ、これはやはり抵触する。」ということを言っているわけですね。ですから、いまの沖縄にある核基地がいまの状態日本に返還されるということになってくれば、日本の方針に、政府の方針に抵触する、これは言っているわけでしょう。それはいるんですよ。それはわかりますよ。そのことがいまの日本の憲法との関連でどうなるかということなんですよね。なぜ、その憲法の解釈というものを、沖縄の、現在、アメリカの持っている核基地との関連において、ごまかすのかというか、あるいは、非常にはっきりさせないで、結論を出さないでいるかということですね。そこがぼくは問題だと思うのですよ。だから、核兵器をいまのようなアメリカが持っていることは、これは最高裁の判決にありますから、これはわかりますが。それから、小型の何とかかんとか核兵器で、自衛のためならとかなんとか、これは持ち込んでもいいとか、これは国内の一つの解釈でしょう。この二つの問題はわかりますよ。私の言うのは、しかし、そうじゃない。いまの沖縄の核基地の問題、それをそのままの状態で返還されたときに、政府の方針では認めないと言うのだけれども、日本の憲法にも抵触するのかどうかということ、この点をいつもあいまいにしているわけですね。だから、私はそれを聞いているわけなんです。
  127. 高辻正巳

    政府委員(高辻正巳君) 私の言い方があるいは悪いのかと思いますが、大体、私はそういうふうに理解して、御質問の趣旨はそうであろうかと思っておりますが、やや自分でまるく理解をしていたのかもしれませんが、そういうことを全部踏まえて申し上げましたからごちゃごちゃになったのかもしれません。要するに、沖縄の基地に核兵器がある——まあ仮定でございましょうが——で、それは現にアメリカの指揮、管理のもとにある。それが、施政権が返還をされた場合に、日本国の憲法は、おそらく全面返還になれば憲法が施行されることになるだろう。ということになれば、その法律関係はどうであるかということでございまして、いまそういうつもりでお答えをしているつもりでございますが、稲葉さんがおっしゃいますように、この日本国民、日本政府、自衛隊等がその戦力を保持するということになれば、特に憲法九条というものの問題が生じてまいりますが、それを、それ以外のもの、外国の軍隊というものが持つ場合には、これは、くどくど申し上げるまでもなく、最高裁の判例の趣旨から言えば、憲法違反ということはないだろう。しかし、そこまでの御質問かと思うのでありますが、ただ、それにつきましては、例の安保条約との関係で、事前協議というような問題がございますから、その問題の関係はむろん出ると思いますが、憲法の関係では、いま申し上げたとおりではないかと私は思っております。
  128. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 もう一つの問題は、あまり仮定に入ってしまうからぼくもしなかったのですけれども、返還される場合、アメリカの持っているものが、それが日本の自衛隊に返還という形で返還されることが考えられるわけです。その場合に日本の憲法との関係がどうなるかということが、ぼくはまた重要な一つのポイントになると思うのです。そういう点も踏まえてぼくは聞いているつもりなんです。アメリカの持っているものなら、これはわかっておりまするけれども。だから、ぼくの言うのは、いまの沖縄で持っているアメリカの核基地というものが、日本に返還されるとか、日本の自衛隊に返還される、こういうようなことになったときに、まあ、譲渡というか、それがなされたときに、日本の憲法との関係でどうなるかということなんですよ。そこに来るわけです。
  129. 高辻正巳

    政府委員(高辻正巳君) わかりました。  なお、お話しのあった点は、核基地がそのまま返還になったという場合のことを仰せになっているのかと思ってそのお答えをいたしましたが、なおいまの御質問で、その核兵器が、先ほど申した日本国民、日本政府、自衛隊というふうなものがそれを保持する主体になったらどうかというお話がございましたようですが、これは確かに一つの論点で、これも先ほど触れましたように、それこそしばしば論議の対象になっておりまする自衛の目的と限度を逸脱するかどうかというような問題が、法律論としては一度クッションが入ると思いますが、概して言って、いまの原子核兵器というようなものがそういう目的と限度内のものである、私は専門家ではございませんからよくわかりませんが、そういうことのぼどのものではあるまい、したがってやはり逸脱するものとして、もし、それを日本国が、あるいは日本国民が保持の主体になるとすれば九条違反という問題が出てくるであろう、これははっきり申し上げられると思います。
  130. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 そこで、あまり法律論に入ってしまってはあれになりますから、もとに戻しますが、そうすると、いまの自衛隊が持っておる兵器がございますね、兵器で、核兵器とそれから非核と両方併用できるものがあるわけです。併用というか、核をつけることもできるし、つけなくてもやれるというものがあるわけです、一つのもので。それはどういうふうなものがあるわけですか。
  131. 増田甲子七

    国務大臣増田甲子七君) こまかいことは政府委員からお答えさせますが、ナイキ・ハーキュリーズは、沖縄にあるものは核、非核両用でございます。日本が三次防でこれからつくろうとするものは非核用でございまして、核用に、あなたのおっしゃるように、転用はできないしかけ、核弾頭というものは一切つけられないしかけにいたします。ただの弾頭でございます。それから発射装置——ランチャーというものも、核弾頭用のものを発射できない装置、つまり、ただの弾頭を発射するという装置、ブースターというものもただの弾頭を発射する装置、そういうものを最初からつくるわけでございます。でございますから、両用というのは、沖縄にあるナイキ・ハーキュリーズのことでございまして、現在、そういうふうにわれわれは、これも先ほど申したように、正確なことばで言えば、推察でございます。想像よりは少し現実的な意味を持った推察をいたしておりまするが、新たにこれからつくろうとするものは、ナイキ・ハーキュリーズは両用にはできないものでございます。
  132. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 そこで、自衛隊が日本で使っておるナイキ・ハーキュリーズ、今度は三次防のものは違うかもしれませんが……。それからランチャーにしろ、アスロックにしろDASHとかいろいろなものがあるようですが、ぼくも詳しく知りませんが、そっちの話は。それらのものは、いまあなたの言われるように、核を全然つけられないのじゃなく、修理をすれば、それは核をつけようと思うならばつけられるのじゃないですか。絶対つけられないですか。そうじゃないじゃないですか。どうもそこら辺のところが何かあれなんですがね。つけられるのじゃないですか。
  133. 増田甲子七

    国務大臣増田甲子七君) 一応私がお答えしますが、何と申しますか、自然科学的というか、機械的につくろうと思えばつくれるのじゃないかという御質問は困るのでございまして、政府が、やはり防衛庁を含む日本政府が、方針としてそういうようなものはつくらないし、やらない、こういうことで、ただサイエンスの上からいってこうなるじゃないかという御質問には、ちょっと幾ら政府委員でも、ここに相当エキスパートがおりますけれども、答えにくいのじゃないかと思います。やらないのですから、われわれは。
  134. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 やらないというのはあなたが言うのであって、もっと小型の核兵器は持てると言っているでしょう。持っていいと言っているのかどうか知らぬけれども、持てると言っているのです。やらないというのはあなたが言うだけの話で。
  135. 増田甲子七

    国務大臣増田甲子七君) ぼくだけじゃない。
  136. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 ぼくだけじゃないというのじゃなくて、ちょっと、いま聞いているのでありますから、あまりあわてないでください。私が聞いているのは、増田さん、ぼくはやはり問題があると思うのです。まじめに聞いているつもりですが、そういうようなものが核をつけようと思えばつけられるのだ、科学的につけられるのだけれども、これは政府の方針だからつけないというだけの話かもしれませんけれども、つけるということは、簡単につけられるか、いろいろな科学的な操作をしてつけるようになるのかこれは別ですがね。絶対に核をつけられないというものじゃないはずですよ、みな。そこのところはどうなんです。
  137. 島田豊

    政府委員(島田豊君) わが国の自衛隊が持っております、あるいはこれから持とうといたします兵器につきまして、米国の装備しておりますものを導入するということはございますけれども、ただいま御指摘の、核を発射できるかどうかということは、非常にこれは複雑な機構が要るわけでございまして、先ほど例を長官が申し上げましたナイキ・ハーキュリーズにつきましても、これは要するに、わが国としては核弾頭を装着できない、そういう装置をいたすわけでございます。アスロックにつきましても、これも要するに、核を発射するにつきましては、それに必要ないわゆる発射装置という非常に複雑な機構が要るわけでございますが、そういうものは、わが国が持っておりますアスロックには装置してございません。しかも、これは将来とも装置をすることは考えておりませんし、改造するということも全く考えておりませんので、そういう意味におきまして、われわれ自衛隊が持っております兵器が両用であるということは、これは全く事実に反するというふうにわれわれは考えております。
  138. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 私どもの聞いているのは、そこのところがちょっと違うのです。それは複雑かどうかは別として、つけようと思うならつけられるのです。大体、六−四から七−三くらいの割合で非核のほうがもちろん多いのですよ。多いけれども、核をつけようと思えばつけられるのだ。大体六−四か七−三で非核の場合のほうがもちろん多いので、核をつけようと思えばつけられるということを聞いているのですけれども、ここは沖縄委員会ですからあれですけれども、そこで私お聞きしますのは、四十年、四十一年、それからことしですね、自衛隊が陸海空ございますね、これが沖縄へ行っているのはどのくらいあるかですね。どういう名目で行っているか、いろいろあると思いますので、そこら辺のところを説明願いたいと思います。
  139. 中井亮一

    政府委員(中井亮一君) お答えいたします。  沖縄現地研修ということで、沖縄の第二次大戦の戦跡の見学、在沖縄米軍施設の見学等のために、防衛研修所、陸上自衛隊、航空自衛隊の幹部学校及び幹部候補生学校並びに統幕学校の学生等が昭和四十年度は約八百四十名、それから昭和四十一年度は約千二百七十名沖縄に出張しておりまして、昭和四十二年度は昭和四十一年度とほぼ同様の計画をしておりますが、まだ行っておりません。そのほかに、昭和四十一年度につきましては、海上自衛隊の遠洋航海の帰途に、約千五十名の者が沖縄に立ち寄っております。また、護衛艦の「あまつかぜ」がターター射撃訓練を行ないますために約二百八十名行っておりまして、昭和四十二年度も、護衛艦「あまつかぜ」につきましては同じような計画で射撃訓練のために沖縄に行く予定にしておりますが、まだ行っておりません。
  140. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 これはあとで年度別に陸海空と分けて資料として出してもらいたいと思うのですが、そこでお聞きをするのは、航空隊はあすこの管制塔ですか−のところへ三十人くらいを去年からことしにかけてずっと行って何か訓練を受けているのですか。航空隊は向こうへ行って何をしておりますか。何人くらい行っておりますか。
  141. 中井亮一

    政府委員(中井亮一君) うちのほうでは行っているとは思っておりませんが。
  142. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 いや、四十年、四十一年、四十二年に航空隊行っておりませんか。
  143. 中井亮一

    政府委員(中井亮一君) 航空自衛隊は四十年度、四十一年度それぞれ行っておりますが、いずれも幹部学校、幹部候補生学校の沖縄現地研修ということで行っていることでございます。
  144. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 だから、いままではあなた方の説明は現地研修という説明ではなかったでしょう。史跡の調査という説明でしたよ、いままでは。現地研修というのだから、これは訓練を受けるのでしょう。——ちょっと待ってください。これは航空なり陸なり海が向こうへ行って何をしているのか。いま言った三カ年間の、ことしはまだ行ってないのか。向こうへ行って何と何をやったのか、全部一覧表にして出してください。これは向こうアメリカ軍の指揮下に入って航空管制塔に従事しているのが三十人くらいいるはずですよ、これが一つ。調べてごらんなさい。これは沖縄の人は、現地の人は、もうほとんどの人というかがそのことを事実だということを認めているようですよ、航空機のほうですよ。  それから、もう一つありますが、あなた方のほうが言うのは、いままで史跡の調査だと言っていましたよ、戦史の調査、田中義男さんなんかもそう言っているでしょう。いわゆる戦史の調査と現地研修と、両方同じかもしれませんけれども、現地研修というのは何をしているのか、遊びに行くのじゃないのだから、何をやっているのか。
  145. 中井亮一

    政府委員(中井亮一君) 現地研修といいますのは、先ほどもお答えいたしましたとおり、沖縄の第二次大戦の戦跡を見学をし、それから在沖縄米軍施設の見学等を実施している、そういうことが目的でございまして、まあ四、五日から一週間ぐらいの間沖縄の島内をいまのような目的で見て歩いているというのが主とした行動でございます。
  146. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 その沖繩の戦跡か何かを見て歩くことが日本の自衛隊にとってどういうふうにその自衛隊の仕事に役立つのですか。
  147. 中井亮一

    政府委員(中井亮一君) 幹部自衛官の教養を高めるという意味におきまして、非常に高く私のほうでは考えております。
  148. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 それでは抽象論で、ぼくの聞いているのは、第二次大戦で沖縄が、これはもちろん日本の領土であった沖縄で非常に苛烈な戦争が行なわれ、たくさんの方が犠牲になられたわけですね。私も去年沖縄の戦跡へ行ってまいりましたけれども、それをただ回って歩いて見学しているだけですか。あそこでアメリカ軍が南のほうで敵前上陸しましたね。LSTに乗っていって敵前上陸の演習しているのじゃないですか、自衛隊は。それが一つの戦史の見学の中に入るかもわかりませんよ。それもやっているのじゃありませんか。
  149. 中井亮一

    政府委員(中井亮一君) ただいまの、LSTに乗って沖縄に行くことはやっておりますけれども、米軍が第二次大戦の際に上陸をしたあの海岸に上がるというようなことはしておりません。那覇港へ入るということで、普通のとおりの扱い、手続でやっております。
  150. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 それは那覇港に入るのは普通の入り方ですけれども、LSTで行くときの——行きは飛行機で行けば帰りは船で行くというような形をとって訓練しているわけでしょう。それはもうわかっていますよ。LSTで行っているということも、上陸用の一つの練習に行っているのだということが現地ではいわれている。それは私らの聞いた範囲ではそうなんですが、いま言った陸海空が沖縄へ行って、いまの人数が沖縄で戦史の見学を、じゃ、全部がどういうふうなプログラムでやっているかということを詳しくあとで資料で出してください。ぼくらの聞いているのは、そうじゃないように聞いているのですよ、それが一つ。それから、ばらばら行くのじゃないでしょう。ある程度人数がかたまっていくこともあるでしょう。ある程度人数がかたまって行くことがありますね、その点どうですか。
  151. 中井亮一

    政府委員(中井亮一君) 仰せのとおり、幹部候補生学校、たとえば幹部候補生学校ですと、一般の大学を出た人たちのグループとそれから下から上がっていったような人たちのグループとかというふうに、グループを分けて行っていることは事実でございますが、先ほどのお話のように、LSTあるいは飛行機C46に乗るような輸送の訓練といいますか、乗るような訓練ということは訓練として考えておりますけれども、それを使って上陸演習をやるというようなことは全然考えていないものでございます。
  152. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 いま言ったように、ある程度の人数がかたまって行って、現地研修ですね、いいですか、研修というのは過去の史跡をただ見学して歩くだけが研修じゃないはずですね。いま米軍の何か施設を見学するという話がありましたね。見学の中で訓練を受けているのじゃないですか。当然ですよ。いや、それは訓練の受け方が、内容がいろいろあるかもわからないけれども、ただぼやっと見ているわけじゃないでしょう。アメリカの指揮下に、それは見学に付随をする訓練かもわかりませんよ。だけれども、それはちゃんと受けているのじゃないですか。それが一つ。  それから、日本の自衛隊だけじゃなくて、韓国やフィリピンやタイやそれらの国々、台湾も入って、それらの国々から来る軍人と一緒になって訓練を受けているんじゃないんですか。それは沖縄の現地の人はそういうことを言っている人も相当おりますよ。それは場所なんかもわかっておりますよ。
  153. 中井亮一

    政府委員(中井亮一君) どういうことを言っておられるのか、どうも私自身わからないのでございますれけども、一週間以下くらいの期間を区切って、バスで、島内の戦跡地であるとかあるいは部隊、そのときによって違いますけれども、ときによってはナイキ、ホークの発射をするところを見せてもらう、あるいは戦争中日本軍がどういうふうに島内を行動していたかということを勉強しながら歩くというようなことでございます。
  154. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 それなら、あなたのほうのそれが行った詳細な経過と、それらのものがどういうプログラムで沖縄で歩いているというか、見学しているかということを資料として出してください。ぼくらの聞いているのとだいぶ違うんですよ。ぼくらの聞いているのでは、これは北部に山岳地帯があるわけですが、あそこで韓国や台湾やフィリピンなどと一緒になって日本の自衛隊がアメリカの指揮下でゲリラ戦の演習をしているということが伝えられている。それは私どももっと知りたいと思うのですが、それ以上の詳しいことはここで聞けないですけれども、ばくはそれはどうも疑問でしょうがないのです。ぼくは去年行ったときも言われているのは、日本の自衛隊がかたまって来たときには、同じときに韓国や台湾の兵隊が町にあふれてくるというのです。自衛隊と一緒に、同じような時期にみんなが来て、そこで一つの訓練を受けているんじゃないかという疑問が非常にするのです。だから、視察はしていいですよ。視察に伴って、米軍の基地の中での台湾や韓国やフィリピンやなんかと一緒になってのある程度の訓練というものを受けているんじゃないですか。そういうことは絶対ないですか。
  155. 増田甲子七

    国務大臣増田甲子七君) 稲葉さん、別に私が教育局長をかばうわけではございませんが、四、五日しかいないのですから、四、五日の間にあなたの想像するようないろいろなことはできないと思っております。お互い政治家としてのあなたの良識に訴えます。それからもう一つ、われわれがお互い政治家として考えてみて、沖縄の南部のほうにアメリカが上陸したということでございますが、LSTは御承知のとおり上陸艦ではございますが、運送船として使われるだけでございまして、アメリカ日本に上陸したときのようなことをやるということは、ちょっとお互い日本人の感情をさかなでするようなことでございまして、ちょっとわれわれもやりたくないし、向こうもそんなことはさせるはずがない。こちらでしなければならないと言うなら、私のほうでは断わるべきだと思いますよ。アメリカがこういうふうに日本に上陸してきたということと同じことを、四、五日中にやれっこありませんよ。こまかいことは教育局長でなくちゃわかりませんが、お互いに良識上、そういう日本人の感情をさかなでするようなことはしないと私は考えておりますが、いかがでしょうか。ほかに演習しようと思ったら幾らでも日本に場所があるんですから、至るところ四十六都道府県にあるのですから、何も沖縄を選ぶことはない。しかも、アメリカがこんなふうに来たというようなことを、私はちょっとあなたの御想像が過ぎやしないかと、良識ある稲葉委員にお訴えをいたします。
  156. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 私もそういうふうに信じたいですよ。信じたいけれども、そういう話がいろいろな角度から伝わってくるんですよ。だから、ぼくはいまの場合にこういう事実があるということを断定するんじゃないですよ。そういうふうな話も伝わってきているからということで、お断わりをしているつもりです。それだけ良識を持って私は聞いているつもりですが、そういうことが盛んにいわれている。沖縄に行ったときもそういう話が伝わってきた。日本の自衛隊が行ったときに何をやったかというと、ただそこで戦史の件だけじゃないんだ。あそこで訓練を受けているという。それは、あなたの言われているように最初は四、五日だったですよ。いまは一週間になってきたでしょう。四、五日でも一週間でもいいけれども、そういう話も伝わってきて、どうもあそこで訓練を受けているんじゃないか。だから、訓練というのはどの程度のものかということは疑問だと言っているんです。最初は戦跡見学と言ったのです。今度現地研修と言うから、研修というのは具体的に何かがそこで行なわれるんじゃないかというふうに考える、常識的に。現地研修ということばは、訓練を受けるというのが一つの現地研修と常識的にとられる場合もあるでしょう。史跡の見学と言うなら別ですけれども。だから、ぼくはそういうふうに聞いておるのですが、これは、あなたの良識とぼくの良識と合わないときもありますし、合うときもある。いろいろですから、だから、なかなかむずかしい問題だと思います。そういうことがないことを祈っておりますよ。だけれども、そういうことも考えられる。言われてくるのですから。けれども、それは断定しませんよ。そういうことを聞いておるのです。だから、それは問題になるのは、田中義男さんが団長になって行きましたね。二カ月も三カ月も沖縄に行っていたでしょう。沖繩の史跡見学の視察団というので行っていたでしょう、三十六年ごろです。そのときの調査報告書というものがあるんですよ、田中義男さんが出した。これなんかもかなり問題があるんです、率直に言えば。中を見ていないが。田中義男さんの恵庭事件における証言などを見ても問題がある。それは防衛庁にしまってあるわけでしょう。そのときに非常に長くいたわけですね。ですから、そこで私は問題に思いますのは、これからまた質問になるわけですが、自衛隊の出動する範囲というか、領域線というのがありますね。日本の領域があるでしょう。その領域にとどまっておるものかどうかということです。この点はどうですか。たとえば、日本の領域はいまは三海里でしょう。まだ九にならないでしょう。これは十二海里という説もあるし、三もあるし、九もあるでしょうが、まだ三じゃなかったですか。ソ連は十二でしょうーそれは別ですが。そうすると、自衛隊はあれですか、変な質問ですが、三海里のところまで行って、ここは日本の領域だ、これ以上出ちゃいけないといってそこでとどまっておるのですか。これはどうなんですか。戦争になってもそうですか。そこら辺は。
  157. 増田甲子七

    国務大臣増田甲子七君) 自衛隊というふうに稲葉委員おっしゃっても、自衛隊の中でも海上か陸上か航空かということを分けてお聞きにならないと、それぞれみんなかなり違うのでございますから。そこで、一応航空自衛隊というふうに考えてあなたの質問があったという前提でそれでお答えいたします。  日本の自衛隊が、これはほかの委員会においても聞かれたことであります、衆議院の沖縄委員会において。そのときに、スクランブルをかけるかどうか。スクランブルということがありました場合に、あそこに与論島という島があります。ここから見れば荻窪辺と同じでありまして、二十三キロしか離れていない。そこで、国籍不明の飛行機が来た場合に緊急発進ということをいたします。ここは緊急発進するかどうかわからないが、これは理論上のお答えをいたしますが、緊急発進いたしましても、与論島から見て三海里の海域の上の領空ですね、それ以上は出ないということになります。
  158. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 私の聞いておるのは、戦争になったときに、ここまでは領空だといって、三海里でとまっておるのですかということを聞いておる。自衛隊はそれ以上は行けませんからといってそこにとまっておるのですか、それを聞いておる。これは変な質問でしょう。変な質問だけれども、それがぼくは大事な問題だと思うのです。その辺のところが非常に怪しいのです。怪しいというか、くるくる変わるのです。ぼくの質問しておるのは意識的に質問しておることがあるから、それははっきり言いますが、ということは、領域線というものと、それといわゆる防衛線といいますか、国防線といいますか、そういうものと違うのじゃないかと言うんです。違わなければもちろんおかしいと思いますが、そうお思いになりませんか。
  159. 増田甲子七

    国務大臣増田甲子七君) 日本が平素やっている航空自衛隊のことで一応お話しいたしますが、海上自衛隊のことはまた御質問があればお答えをいたします。一たん緩急があるとき、有事のときでなくても、平素からADIZという、エア・ディフェンス・アイデンティフィケーション・ゾーンですね、これがありまして、相当の日本の領海の上の領空といいますか、公海上の公空といいますか、その辺の公空の辺もやらないわけではないんです。しかし、沖縄の辺には特にこれはデリケートな配慮が必要でございまして、向こう立法、司法、行政の三権、すなわち、われわれは潜在主権を持っておりまするが、施設権は持っていないところでございまするから、そこは向こうのほうにも相当力がありまするから——現在の、現時点におけるお答えをいたしますよ——現時点において、何か事があっても、与論島の領空並びに領空の上から向こう向こうにおまかせをするということでございまして、ほかはやらないわけじゃないんです。ほかは公海の上の公空——公の海の上も、われわれのADIZというものはあることはありますけれども、特にデリケートな配慮を、与論島と琉球本島との間について配慮をいたしておりまして、向こうのほうには参らないということを、この際、あなたの御質問がございましたから明確にさせていただく機会に利用させていただくわけでございます。明確にいたしておきます。
  160. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 私はそういう質問をした覚えはないんですけれどもね。そこまで質問してないんだけれども、あなたのほうで言われたんですが、それはあなたのほうの立場上そういうことを言われるのは御自由ですけれども、私の聞いているのは、海にしろ、空にしろ、日本の領域線というものはありますね。領域線というものといわゆる防衛線といいまするか、そういうようなものとは違うんじゃないかということを聞いているんですよ。領域だけにしか出られないというんじゃないでしょう。なぜ私はこういうことを聞くかと言うと、たとえば田中義男統幕会議事務局長ですか、あれなんかもはっきり言っているんですよね。「日本の領域の中で戦争をするというんでは、敵に決定的打撃を与えられない。これは軍事上の初歩的常識である。」と、こう言っているんですよ。これはあたりまえの話ですよね。それから、佐伯君は防衛研修所長をやっていたでしょう。あれはどういうことを言っているかというと、「今、国防ラインと領土とは一致していない。日本を防衛するために、日本の領域でやっておるのではまにあわない。さらに前へ出て、守らねばならない。防衛線と領域線とはちがう」と言っているんです。だから、防衛線と領域線とは違うんですかと聞いているんです。領域線というのがあるでしょう。防衛線とは違うのかと聞いているんです。違うこともあり得るんでしょう。普通の場合は一致するけれども、一致しない場合もあり得るんだ、こういうことなんでしょう。
  161. 増田甲子七

    国務大臣増田甲子七君) あり得ますし、現在ADIZというものは領域線よりちょっと出ております。ということも、ただし与論島のところは明確でございまするから。
  162. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 それはね、あなたの立場もあるから、あなたの立場もぼくは尊重しますよ。あまり言うと悪いからね。そこで、じゃ、日本の防衛線というのはどこまでなのかということなんですよね、問題は。あなた、違うと言ったでしょう。領域線と自衛隊の防衛線とは違うと言うんだから、それじゃ自衛隊の防衛線とはどこまでかということですよ。それが問題ですよ、それがね。だから、何とかいう地図だけの問題じゃないでしょう。防衛線と領域線とは違うということをあなたが認められたんだから……認められたんでしょう。それじゃ防衛線はどこまでかということなんですよ。
  163. 増田甲子七

    国務大臣増田甲子七君) 私はまだ防衛長官になって日も浅いわけですから、そこで、自分の知っておる範囲の戦時国際公法であるとか、そういうような見地からお答えいたしますが、ADIZと言ったのは——防衛線というのは私はほんとうは聞いておりません。ただ、エア・ディフェンス・アイデンティフィケーション・ゾーンというものはあると、通常ADIZと言っておりますが、これは領海よりは広いということでございまして、このADIZが防衛線であるかどうかということは、ただADIZ、ADIZと言っておりますが、われわれがスクランブルをかけるところの線でございます。それはこちらのレーダーにかかってくる線は、領海の上の領空よりは広いということだけは申し上げまするが、それを防衛線というふうに定義づけるだけの私は知識はございません。それから、稲葉委員もよく御存じのとおり、船舶というものは、外国の領海へ入るまでは日本の領土なんですから、日本の船舶は。それから日本の護衛艦がどうかということは、これは問題でございまするが、外国では、おそらく外国の港へ入っても日本の領土という扱いをしてくれるのじゃないかと私は思っております。そこで日本船舶が急迫不正の侵害等を受けた場合は、領海よりもさらに遠いほう、すなわち公海のところで不正なる侵害を受けたる場合には、海上保安庁はもとよりのこと、海上自衛隊はこれを守り、侵略を阻止し排除する権利と義務とがあるということは私は申し上げられるのでございます、あとこまかいことまではわかりませんけれども。
  164. 島田豊

    政府委員(島田豊君) 領域と申しますか、わが国の領土、この範囲は一応はっきり明確にしております。先ほど御質問の防衛線というものは特に定まったものはもちろんございません。海上自衛隊の主要な任務は、たとえば一例を申し上げますと、周辺海域の防衛ということを非常に重視しておりますけれども、この周辺海域というものは何も三海里以内の防衛ということでなくて、やはりそれに隣接する海域につきましては、当然相手方の武力侵攻があります場合は、そこまで出向いていって事前に攻撃を加えるということは当然必要なことでございます。それを防衛線と言うのかどうか、これはちょっとそういう防衛線ということばをわれわれ使っておりませんので明確ではございませんけれども、とにかく領土線、領域線というものとそれから自衛隊が行動します範囲というものとは、これはやはり観念的にもまた実際上も違うことはあり得る、こういうように考えております。
  165. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 時間の関係もありますし、あまり話が同じことをやっておっても切りがありませんからあれしますが、沖縄の近辺では、陸はないでしょうけれども、海ですね。それから空は合同演習はやったことはないですか。
  166. 島田豊

    政府委員(島田豊君) 私ども承知しておる限りにおきましては、航空自衛隊の防空演習をあの辺まで延ばしたということは聞いておりません。海上自衛隊の演習は、これは鹿児島の南方海域において実施するということはございます。
  167. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 あなたのほうで、何といいますか、毎年毎年の戦略計画というか、ことばはどういうのかぼくはよくわかりませんけれども、統合防衛計画ですか、そういうふうなものに見合うというか、それとは違うかもわかりませんけれどもね、正式の名前はどういうふうに言うのですか。統合戦略見積と、こういうふうなものがあるのですか。統合戦略見積というふうなものをつくることがありますか。
  168. 島田豊

    政府委員(島田豊君) 統合戦略見積ということばを使うことはございます。これは要するに、わが国の防衛計画を立てます場合に、年度年度の防衛計画のみならず、ある程度の長期的な見積もりをいたすわけでございます。わが自衛隊の能力はどの程度であるか、それが有事にどの程度の力を発揮できるかというふうな見積もりをある程度長期的にやります。そういうものを統合長期見積、こういうふうに言っております。
  169. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 いま言った統合戦略見積があるということでしたね。それには、自衛隊の行動方針として「(行動の)対象区域は、わが国の施政下にある全領域とし、自衛隊の行動区域は、防衛目的達成のため必要な範囲とし要すれば外国領域を含むものとする」と、こういうふうにあるのじゃないですか。そこで問題は、「対象区域」と「行動区域」ということばですが、こういうことば使っていますか。自衛隊の行動区域、それから対象区域——対象区域というのはまあ狭いでしょうね。それから行動区域なら広いでしょう。「自衛隊の行動区域は、防衛目的達成のため必要な範囲とし要すれば外国領域を含むものとする」と、こういうふうに昭和四十年度の統合戦略見積にあるというんですね。そういうことをはっきり書いている人がいるからぼくは聞くんですが、そこがどうなっているか、統合戦略見積というものをぼくは資料として出してもらいたいんですよ。そうすればわかりますからね。
  170. 島田豊

    政府委員(島田豊君) 統合戦略見積、これは自衛隊の中の内部的な作業でございまして、しかも、これは一応高度の機密事項に属しますので、この資料を提出するというわけにはまいりません。  それと、いまの行動区域、対象区域というふうなことばがその見積の中で使われておるかどうか承知しておりませんけれども、少なくとも外国を対象区域に考える、あるいは行動区域に考えるということは、これは全くあり得ない、こう私は考えております。
  171. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 いや、統合戦略見積というものは、ぼくは、そういうものはございませんと答えが出るかと思っていたんですよ。そうしたらあなたのほうで、あると言うんでね、それじゃあるなら聞こうということになっちゃったんですがね。対象区域ということと行動区域ということをはっきり分けている。それは対象区域というものと行動区域、違いますよね。これは違ってぼくはいいと思うんです。いまの領域の問題と、それから、防衛線ということばぼくは使ったんですけれども、それとの違いがあると同じようにあっていいはずだと思うんですよ、ぼくは。だから、場合によれば、自衛隊は防衛目的達成のために外国領域を含むんだということは、これはもうあり得るんじゃないですか。防衛目的を達成するためには外国領域を自衛隊の行動範囲とするんだということはあり得るんじゃないですか。これはどうなんですか。別に秘密とかなんとかじゃなくて、そういうふうにあり得ると答えるとこの次はこういう質問が出るだろう、こういう質問が出るだろうということは抜きにして。
  172. 増田甲子七

    国務大臣増田甲子七君) 対象ですか、行動ですか。
  173. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 「対象区域は、わが国の施政下にある全領域」だと、それはそのとおりですよね。行動区域というのはそれよりも広いんだと、その行動区域というのは、「防衛目的達成のため必要な範囲とし要すれば外国領域を含むものとする」と、統合戦略見積昭和四十年度に書いてあると、こういうんです。だからぼくの言うのは、防衛目的達成のためには外国領域を含むということもあり得るんじゃないかと言うんですよ。
  174. 島田豊

    政府委員(島田豊君) どういう資料お話しになっているか知れませんけれども、外国を行動区域として考えるというふうなことは、自衛隊としては全く考えておりませんし、そういうものが見積の中に入っているということはもう全くないというふうに考えております。
  175. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 全くないと言うならその資料を、その部分だけでもいいから出してください。そんなことはないですよ。
  176. 島田豊

    政府委員(島田豊君) これは機密に属することでございますので、御提出できません。
  177. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 それはどこがどういうふうに秘密なんですか。どうして秘密なの。
  178. 島田豊

    政府委員(島田豊君) 先ほど申しましたように、これはわが自衛隊の能力というものをどういうふうに評価するか、有事の場合にどれだけの行動ができるかというふうなことにつきましての、これは非常にシビアな見積もりをやっているわけでありますので、それにつきましての内容を公表するということは、自衛隊の能力評価ということに関連いたしますので、これはできない。
  179. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 自衛隊の能力の評価といったって、自衛隊の能力を評価しなければ、自衛隊動員してくれといったってどういうふうにしていいかわからぬでしょう。三次防通してくれといっても、どうしていいかわからない。そんなにあれですか、秘密を守らなければならない何かがあるんですか、そこに。だからぼくは、いいですか、そのもの全部出せとは言いませんよ。それはそんなことを言ったら、それはあなたのほうの立場もあるでしょうしね、そのある部分を出したから、自衛隊が海外派兵をもくろんでいるとは、ぼくは論理の飛躍ですから、そんなことは言わないですよ。言わないといったって、ほかの人は言うかもしれないけれども、ぼくは言わぬですよ。そういうふうに対象区域と行動区域がある中で、行動区域はここまでなんだと、外国領域を含むんだというふうに書いてあると、その文章を引用している人がいるから聞くんですよ。押し問答しても始まりませんし、もう私の時間がありませんからこれ以上ここではお聞きしませんけれども、いま言われたように、領空というか、それから出た範囲のものもちょうど考えているんですよね。まあ、時間があれですから、これで質問終わります、きょうはね。終わりますけれども、問題になってくるのは、自衛隊の対象区域と行動区域というものの、行動区域がどこまでなのか、これはやっぱりはっきりしていかないと、将来いろんな問題が起きてくるじゃないかと、こういうことを私は考えるからお聞きしているわけなんです。
  180. 増田甲子七

    国務大臣増田甲子七君) 博学な稲葉委員の御質問でございますから、そういうものはあるということは私はきょう初めてでございますが、これからだんだん見てみますが、むしろ、あなたのおことばと私のことばとが、お互い政治家として常識の線を行った場合に、対象区域というならば考えられるけれども、行動区域のほうがあべこべに広いということはこれはおかしな話で、むしろ逆なんじゃないですか。対象ということは、私は衆議院においても参議院においてももろもろのお答えをいたしておりますが、対象国ということばを使わせないことにいたしました、二月前から。対象国ということばを使わせないことにしたのです、二月前から。対象国——これはあなたが御存じであるかないか知りませんが、恵庭裁判のときに、田中義男証人が、対象国というものがある云々と、それは長官許可を受けなければ言えないということを言っておりまして、それから長官は、対象国はあるにはあるけれども、機密であるから答えられないということを札幌の地方裁判所に答えている事実がございます。そこで、対象国というのはおもしろくないというのが、私の前からの世界観、人生観なんで、(笑声)つまり、侵略者というものは、皆さまがお笑いになりますけれども、海賊もある、交戦団体もある、オーソリティーもある。それから第四番目にステートというものが来るのですから、それらの中のつまりこれは侵略者と言えということを二月前から言っている。それから一週間前に文献を調べたところが、まあ、英米の文献ですが、アグレッサーということばが書いてあります。それですから、必ずしも外国というふうに国に限りませんですから、われわれはやはり日本の国の安全を守り、一億の国民を枕を高くして眠らせるということが政府なり防衛庁の責任でございますから、可能的侵略者といったほうが一番日本語として正確なんですが、しかし、侵略者ということばを使いなさいと言っておりまするから、その行動範囲と対象範囲ということは、むしろ対象のほうが広くて行動のほうが狭かるべきはずのものなんです、いまの自衛隊の力から見て。それもあべこべになっておりますから、どうもこれはあなたのお勉強は十分——根拠がちょっと乏しいのじゃないか。私も勉強します。しかし、機密に属することは申しかねますから、これは稲葉委員も御了解願いたいと思います。  それから、先ほど教育局長が私のところへ来まして、ひとつ質問に対する御答弁を補足いたしますが、沖繩におきましては、共同演習もなければ、ゲリラ部隊の、外国の——つまりアメリカは外国ですから——外国のゲリラ部隊の演習を見ている事実も何もないということでございますから、どうか詳細に出せという文書のことはお許しを願いたい。ただそれだけのことでございますから、ほかに何もない。四、五日ぐらいのことですから、見物に行くだけのことでございますから、どうぞあと詳細にこまかく出せと言われても教育局長も困ってしまいますから、私もあまり機密でないならばそれは出したっていいですが、いつも見物に参りますという文書を書いて出せばいいのですから。しかし、そんなことはやはり稲葉委員をばかにしたようなことになりますから、この範囲の私の答えでお許しを願いたいと、こう考えている次第でございます。
  181. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 これで質問終わりますけれども、せっかくあなたが長口舌ふるわれたわけですから、それにお答えしなくちゃ私の義務を果たせぬような気しますからね。  勘違いされているのじゃないですか。対象区域というのが、施政下にある領域ということで書いてあると、こう言っているので、対象国ということで言ってるのじゃないです。対象国がすぐアグレッサーだとか、それから何か仮想敵国であるというふうに、あなたは非常に論理が飛躍するんですね。考え過ぎるんですね。神経過敏になっているのじゃないですか。少しそういう点がありますね。ですから、対象区域ということは領域だと、領域以外に行動区域というのがあるのだと、それは防衛目的達成のために外国領域も含むのだと、こういうようにいまの統合戦略見積に書いてあると、ぼくは資料があるからそれでお聞きしているわけなんですよ。それで、統合戦略見積があるということが出ておりましたから、ぼくは、そういうものはないという答えがあると思っていた。あると答えられたからお聞きするわけなんですが、そこが秘密ならば、秘密などというものが日本にあるのかないのか議論があるけれども、ここではペンディングしておきます。  それから、あとの教育のことで、見学に行くのか遊びに行くのか、ぼくが言うのは、一つなら一つの例でいい。一つの幹部学校なら幹部学校が沖縄に一週間なら一週間行っていた。その日程はどうなのか。どこへどう行っていたか。そいつを出してくださいと言っている。全部出せとは言いません。それを出したって、何ともないでしょう。いつ幾日どこへ着いて、アメリカのどういうところを見学した、そんなものは出せますよ。出せないと言うなら、おかしなことになってくる。それなら出せるはずじゃないですか。それでいいです。その答えだけ。
  182. 増田甲子七

    国務大臣増田甲子七君) その範囲でしたら、出します。  それから、いま私も勘違いしておったことは事実でありまして、別に神経が高ぶっておったからじゃございません。そこで、たとえば自衛隊法には「わが国の」と書いてあります。それから日米安保条約には、施政権下にある日本のあるいはアメリカの基地もしくは施設に対して武力攻撃がありたるときと、こう書いてありますから、そういう意味の、つまり防衛庁が、自衛隊が活動して保護すべき対象という意味でしたらおっしゃるとおりでございます、「わが国の」ということですから。ですから、「わが国」というところには、領海も入りますし領空も入る。その範囲ならよろしいのですが、あとの行動範囲というのは、私は何とか見積というのはよく存じませんけれども、何とか見積というのは、私もこれから検討してみますが、大体機密に属することであることはあるでしょう、いま政府委員が言ったのですから。しかし、外国まで行動範囲ということは絶対にありません、またさせませんということを申し上げておきます。
  183. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 あなた、統合戦略見積があるということは、政府委員が言ったから認めるでしょう。
  184. 増田甲子七

    国務大臣増田甲子七君) あることはあるでしょう。
  185. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 政府委員がそういうふうに言ったから認めたわけだから、あることは。あなたが中を見て、そういうふうに書いてないと言うならぼくは納得します。見もしないで、そういうようなことはないでしょうと言うのは、いかん。そういう態度はいかん。
  186. 増田甲子七

    国務大臣増田甲子七君) よくない。
  187. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 よくないと言うが、あなたも防衛庁長官ですし、いまの内閣では最長老です。最長老のりっぱな方なんだから、ぼくは尊敬しているのです、まじめにね。だから、見て、そういうものがあると言うのだから、見たけれどもそういうことは書いてなかったと言うならぼくも納得します。見もしないで、そんなものはありませんなんと言うのはいかん。そういうことでは日本の防衛というものもどうもあぶなかしくなってくる、そういう考え方では。それは冗談ですけれども、とにかくいま言ったような、論議はやめますけれども、そのものを見て、そういうものはないならないというふうに答えてください。見ないで答えられたんじゃぼくも困るから。きょうはあまり話があれしてもいけません、この程度で終わりますがね。また機会を見て、もう少し別な角度からいろいろお聞きをしたいと思っております。
  188. 黒柳明

    ○黒柳明君 私は、これは連絡局長に御答弁願うことだと思うのですが、沖縄本土で自衛官の募集はやっておりますでしょうか、どうでしょうか。
  189. 山野幸吉

    政府委員山野幸吉君) 自衛官の募集が行なわれているのは聞いておりません。
  190. 黒柳明

    ○黒柳明君 沖縄では自衛官の募集はやっていないと言うのですか。沖縄の人が自衛隊員になっているということはございますですね。
  191. 山野幸吉

    政府委員山野幸吉君) ございます。
  192. 黒柳明

    ○黒柳明君 そうすると、現地では募集していない、連絡事務所のほうでも現地に公募の指示はしていない、こういうことだと思うのですが、現実には沖縄の人が自衛官になっている。そうすると、どのような過程を通って沖縄の人が自衛官になっているか。
  193. 山野幸吉

    政府委員山野幸吉君) 沖縄の人が本土に来られまして、試験を受けて自衛官になられることは、これは自由でございます。
  194. 黒柳明

    ○黒柳明君 それは何人ぐらい、いま現に沖縄の人が自衛官になっているか。あるいは年間どれくらいの人数がそういう該当者になっているか。
  195. 宍戸基男

    政府委員(宍戸基男君) 沖縄に本籍を有する自衛官は、四十一年度で四百十五名おります。その前を申し上げますと、四十年度では四百二十九名でございます。
  196. 黒柳明

    ○黒柳明君 そうすると、累計は大体千名ですか。
  197. 宍戸基男

    政府委員(宍戸基男君) いいえ、そういうことではございません。四十年度では四百二十九名でございます。四十一年度現在では、減ったりふえたりいたしますので、少し減りまして四百十五名になっております。累計ではございません。
  198. 黒柳明

    ○黒柳明君 これは推測じゃないのですけれども、現実のことなんですが、沖縄の南方連絡所というのですか、特別連絡所というのがございますね。あそこに自衛官の募集のポスターが張ってあることを御承知ですか。
  199. 宍戸基男

    政府委員(宍戸基男君) 防衛庁のほうで、向うから——沖縄のほうからの要望がございまして、自衛隊の地方連絡部から特別地域連絡局南方事務所のほうに、ポスター、あるいは志願の案内のパンフレット等をお渡しした事実はございます。その一部が張ってあるかもしれません。
  200. 黒柳明

    ○黒柳明君 そうすると、いま沖繩の南方連絡事務所には公募を指示したことはないと、こういうことですね。ですけれども、ポスターをやはり配付し、南方連絡事務所の中あるいは附近の電信柱にも張ってあるということは、やはり意図して沖縄の人を自衛官に募集をした、こういうことになるのじゃないですかね。
  201. 宍戸基男

    政府委員(宍戸基男君) 沖縄に本籍を有せられる方も、自衛隊——ほかの公務員も同様でございますけれども——自衛隊員になる資格はございます。で、さっき特連局長から申されたように、現地で積極的な募集はいたしませんけれども、そういう自衛隊員になることを希望される方々の便宜のために案内等をいたすわけでございます。実際に手続をして試験を受けたりしますのは、東京に来たり、鹿児島に来たりして受けておる。募集はしていないと特連局長が言われましたのは、普通の府県と違いまして、普通の府県の場合には、法令上募集の事務を委託してあります。あるいは自衛隊で地方連絡部を置いて積極的に募集をやっておりますが、そういう意味の募集体制は沖縄ではやっていない、こういう意味でございます。
  202. 黒柳明

    ○黒柳明君 連絡局長は、いま人事局長のおっしゃったこと、そのとおりでございますか。
  203. 山野幸吉

    政府委員山野幸吉君) そのとおりでございます。
  204. 黒柳明

    ○黒柳明君 そうすると、もう一回、人事局長の話を、連絡局長、反復していただきたいのですが。
  205. 山野幸吉

    政府委員山野幸吉君) 沖縄の住民の方も本土日本人と同様に自衛隊員になる資格を持っておるわけでございますから、したがいまして、自衛官はどういうぐあいにしてなれるかとか、そういう手続なり募集のしかたなり、応募のしかたなりを知りたいということを現地からおっしゃいますと、事実上の問題として南連事務所にポスターを張る、あるいはそれを周知徹底する、そういうことはやっておられるようでございます。しかし、それが具体的な募集事務であるかと申しますと、具体的にそれによって現地で自衛官を募集しているというふうには考えられない、言われないと、こういうぐあいに考えます。
  206. 黒柳明

    ○黒柳明君 私も日本国内を歩きまして、各市町村の掲示板、あるいは市ケ谷の自衛隊の前には自衛隊募集と、こう出ておりますね。あの範囲を越えて、日本でも自衛隊募集ということは目につかないわけです。要するに、自衛官がデモンストレーションをしたり、あるいはアドバルーンを上げたり、あるいはビラをまいたりということは目につきませんし、あるいは大々的に新聞広告をしたり、チラシを配ったり。あくまで市町村の掲示板ぐらいのものじゃないでしょうか、本土においても。ところが、いま連絡局長の話ですと、それ以上越えて大々的に募集をやっていませんと言っても、じゃ、国内の募集と沖縄本土の募集とどこが違うのか。国内だってビラを張るぐらいのものじゃないですか、掲示板に。それ以上のことをやっていますか、募集の要領として、具体的方法として。さっき連絡局長お話ししていましたが、どういうことをおっしゃったかわからないけれども、適当にお答えになったんですけれども、人事局長の先ほどおっしゃったことははっきりそのとおり断定できなかったんですけれども、要するに、大々的に公募していないという点をポスターで公募するぐらい、それが唯一の大々的な公募のしかたじゃないでしょうか。まして、どれだけポスターを配ったのか、これもお聞きしたいと思うわけです。あるいはどこに張るように指示したのか、これもお伺いしたいと思うわけです。あるいは、それによってどのくらいの沖縄人たちを自衛隊員に、ほんとうにいま局長がおっしゃいましたように、向こう手続を知りたいと、こう言うから送ってやっただけのものだと、こういうことであるか。あるいはもっと、悪意なのか善意なのか、大々的に募集しようとしてのポスターを配付しているのか、そこら辺を知りたいんですが。
  207. 宍戸基男

    政府委員(宍戸基男君) 内地の場合と沖縄の場合との募集方法は違っております。比較して言えば、内地のほうはもちろん大きくやっております。つまり、自衛隊の地方連絡部が府県に必らず一カ所ございます。あるいは出張所もございます。そこで大々的にといいますか、いろんな募集施策をやっております。もちろんポスターを張りますし、ビラもいろいろ配りますし、新聞広告その他の募集ももちろんやります。沖縄の場合には、そういう府県に事務を委託するというふうなやり方ではやっておりません。あるいは地方連絡部も置いてやっておりません。ただ、向こう方々の便宜のために事務所を通じて御案内をするということをやっておるわけでございまして、その手段としてポスターをお配りしたり、パンフレットを若干お配りする。こういう程度のことをやっておるわけであります。  それから何人ぐらい来ているかということでございますが、沖縄在籍の方で自衛隊に入られる方が、大体年間概略申し上げて百名前後でありますが、これは沖繩に現に住んでいる方はその中の一部でございまして、沖縄本籍であって、すでに東京なり大阪なりにずっと住んでいるという人で自衛隊員になった人を含めまして、大体百人から百二、三十人程度でございます。現に沖繩に住んでいる人でこっちへ渡ってきた人は何人かという資料は現在ございませんけれども、大体一部の、東京地連の資料によりますと、昨年、東京地連だけで言いますと、沖縄在籍者が四十数名入っておりまして、その中で、本土に渡ってきて入られた人が十数名でございます。半分足らずでございますので、さっきの数字をそれに充ててみますと、大体百名前後毎年入ってくる中で三、四十名かと思われます。大体そういう経過でございます。
  208. 黒柳明

    ○黒柳明君 ポスターの枚数、あるいはどういうところに張るように指示したか。
  209. 宍戸基男

    政府委員(宍戸基男君) こちらからどこどこというふうに指示はいたしておりません。向こうの御要望によって、東京地連から数十枚程度のポスターを渡したというふうに聞いております。どこにどういうふうに張れというふうなことを指示したわけじゃございません。それを適宜お使いになっているというふうに聞いております。
  210. 山本利壽

    委員長山本利壽君) 速記をとめて。
  211. 山本利壽

    委員長山本利壽君) 速記をつけて。
  212. 黒柳明

    ○黒柳明君 ポスターは三十枚かそこらだ、それで大々的にあまりやっていないと。ところが、いまの稲葉委員の話じゃないが、現地に行きますと、非常に大々的に行なわれている、こういう感覚を受ける。こういうことになるのです。いま四百人のうちの沖縄から渡ってきた人は半分あるいは厳密に調べてみますと、三分の二あるかどうか。それにしても、九十万島民ですから、四百にしても、三百にしても、一億に自衛隊二十万、その比率から見れば、数の上じゃ確かに百と何十万ですからその分母が違うんですね。その面からいきますと、これはばかにできない数字であるし、これからもますますこういう方向に——ただ単に向こうから要望があったから配ったんだ、こういう簡単な意図でお配りになられること自体が、現地においてそういう簡単な感覚で受け入れられているか、どうか、その点もしっかりキャッチしていただきたいと思うんです。  また、南方連絡事務所というところは、御存じのように、いろいろな人がこう出入りするわけですね。そういうところにポスターが公然と張ってあるということは、これはもう大々的に公募している、はっきり公的に公募をしている——入りなさい、こういうことを指示していると同じ結果になるわけです。ちょっと送っただけだ、こういうわけにはいかないんですからね。ですから、やはり現地の実情を絶えずよく把握して、この自衛隊員の公募の問題は誤解のないようにしていただきたい。この点至急に連絡事務所のほうのその状況をキャッチして、それでまたしかるべく、現地の誤解を招かないように、何か沖縄から自衛官をどんどん募集しているのだ、仮定の話ですけれども、何か一朝事あるときにはというようなことを——いま沖縄問題のがたがたしているときですから、かえって神経が高まってくるわけですから、そういうことのないようにひとつくれぐれも善処していただきたい。これ、どうです、防衛庁長官総務長官
  213. 増田甲子七

    国務大臣増田甲子七君) 私は不幸にして黒柳さんと多少見解を異にするわけでございます。大いに異にするわけじゃありませんが、それは沖縄方々には日本人なんですから、日本人としてでき得る限りあらゆる機会を均等に見まして、日本政府の親切な配慮も必要だと思います。そこで、自衛隊員は、隊員といいますか、防衛庁を含めて二十五万人ぐらいあるわけでございまして、これで一億を割ってみますというと、百万の人口で二千五、六百人の人です。こういう見地から見ますと、四百二十人足らずでございますから。私は、日本の役人になっている人も相当あります。そういうことは非常に沖縄の自衛官の人が喜ぶわけでございまして、甲子園の野球に来たってあんなに喜ぶんですから。そこで、自衛官になるということは、やはり祖国日本だなあという感じがあって、私は祖国の守りにつくのだということで、一百万人いるとしたら二千五、六百人出てもいい。ただ、大々的というおことばはいかがかと思います。ただ違う点は、自衛隊法によって、法律並びにそれを基礎としての政令によって都道府県なり、市町村の機関、知事あるいは市町村長等には委任してございます。でございますから、連絡部の諸君が参りましてお願いすることはございまするが、琉球政府へ行ってお願いするわけではないわけでございます。ただポスターを送るだけのものである。この四百二十人が自衛隊員になってほんとうに喜ぶんじゃないでございましょうか。これはあなたの愛国的のお心持ちにお訴えいたしますが、大体御意見において同じでございますが、ちょっと違う点があるということだけを申し上げておきます。
  214. 塚原俊郎

    国務大臣塚原俊郎君) 本土との一体性ということを常日ごろ口にしているのでありますが、いまのお話よく拝聴いたしましたので、適切な措置をとりたいと考えております。
  215. 黒柳明

    ○黒柳明君 いま防衛庁長官は、沖繩に対する親切ということを言った、たしか。そういう点は親切であるか、不親切であるかわからない。いまのインドシナの問題こそ、これこそほっぽっておかないで、もっともっと親切な扱いをしなければならぬわけです。ですから、はたして現地の沖縄の人が自衛隊員になることがほんとうに、防衛庁長官考えているように、親切心であるかどうか、これは非常に大きな問題があるし、現実問題としてはそのリアクションのほうが強い。この点も防衛庁長官がよくキャッチしていただきませんと、親切だ親切だ、日本人だからといったって、これは現地の感情というものと反した方向に向かっていったんじゃあうまくないと思うんです。その点私も心配して言ったわけですよ。ですから、防衛庁長官、見解を異にする。私もその点若干見解を異にするわけです。もっともっとほかの面で沖縄の人に親切にしていただきたい。こういう何か自衛官募集、こういうことに対して親切である以上に、まだ親切にしなきゃならない場合が一ぱいある。こういうように思うわけです。よろしくお願いします。
  216. 山本利壽

    委員長山本利壽君) ちょっと速記とめて。
  217. 山本利壽

    委員長山本利壽君) 速記を始めて。  それでは、本日の質疑はこの程度で終わりまして、次回の委員会は六月五日午後二時開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後一時五十五分散会