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1967-05-23 第55回国会 参議院 運輸委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十二年五月二十三日(火曜日)    午前十時三十六分開会     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         天坊 裕彦君     理 事                 岡本  悟君                 谷口 慶吉君                 岡  三郎君     委 員                 井野 碩哉君                 金丸 冨夫君                 木村 睦男君                 平島 敏夫君                 前田佳都男君                 中村 順造君                 吉田忠三郎君                 田代富士男君                 中村 正雄君    国務大臣        運 輸 大 臣  大橋 武夫君    政府委員        運輸政務次官   金丸  信君        運輸大臣官房長  町田  直君        運輸省鉄道監督        局長       増川 遼三君    事務局側        常任委員会専門        員        吉田善次郎君    説明員        日本国有鉄道副        総裁       磯崎  叡君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○日本鉄道建設公団法の一部を改正する法律案  (内閣提出衆議院送付) ○参考人出席要求に関する件 ○運輸事情等に関する調査  (日本国有鉄道運営に関する件)     —————————————
  2. 天坊裕彦

    委員長天坊裕彦君) ただいまから運輸委員会を開会いたします。  日本鉄道建設公団法の一部を改正する法律案議題といたします。  まず政府から提案理由説明を聴取いたします。大橋運輸大臣
  3. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) ただいま議題となりました日本鉄道建設公団法の一部を改正する法律案提案理由につきまして御説明申し上げます。  日本鉄道建設公団は、昭和三十九年三月に設立されて以来、鉄道新線建設を推進することによりまして交通網の整備をはかり、もって経済基盤の強化と地域格差の是正に寄与することにつとめてまいりました。  御承知のとおり、鉄道新線建設には、、巨額の資金を必要といたしますので、国及び日本国有鉄道からの資金のほか、民間資金導入をはかってまいりました。これまで、との民間資金導入は、公団鉄道建設債券を発行し、これを関係者が引き受けるという形で行なってまいりましたが、何ぶんにもこの債券元利支払いについては政府による保証の措置がとられていないため、事業規模の拡大につれ、債券の発行による資金調達に困難を感じております。  したがいまして、今後さらに、鉄道新線建設を推進するためには、財政資金の増額につとめることはもちろんのことでありますが、鉄道建設債券元利支払いにつきまして政府が保証できるよう措置することとし、建設資金調達円滑化をはかることが必要であります。  このような見地から、このたび鉄道建設債券についての債務に関し、政府がこれを保証することができる道を開くこととし、日本鉄道建設公団法の一部を改正する法律案を提出いたした次第であります。  この法律案内容は、政府は、法人に対する政府財政援助の制限に関する法律第三条の規定にかかわらず、国会の議決を経た金額の範囲内において、鉄道建設債券にかかる債務について保証することができる旨を定めたものであります。  以上がこの法律案を提案する理由であります。  何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御賛成いただきますようお願い申し上げます。
  4. 天坊裕彦

    委員長天坊裕彦君) 本案に対する質疑は後日に譲ることとします。     —————————————
  5. 天坊裕彦

    委員長天坊裕彦君) 参考人出席要求に関する件についておはかりいたします。  日本鉄道建設公団法の一部を改正する法律案の審査のため、参考人出席を求め、その意見を聴取することに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 天坊裕彦

    委員長天坊裕彦君) 御異議ないと認めます。  なお、この日時及び人選等につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  7. 天坊裕彦

    委員長天坊裕彦君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  8. 天坊裕彦

    委員長天坊裕彦君) 運輸事情等に関する調査議題といたします。  日本国有鉄道運営に関する件について調査を行ないます。
  9. 中村順造

    中村順造君 大臣お忙しいようですから、簡単にひとつ基本的なことだけをお尋ねしたいと思いますが、内容は、もうすでに最近新聞などで盛んに報道いたしております三公社現業の中の国鉄職員に対する賃金の問題、十六日のこの三公社現業関係閣僚会議結論として、大臣出席をされたと思いますが、昨年の仲裁裁定なり定昇四・三%を含めて一〇・八%の賃上げをするようにという結論が出されております、ということが新聞に報ぜられておるわけです。もちろんこれにつきましては、最近きまりました私鉄その他民間賃金の動向なども当然これは加味されるべきだと思いますけれども、その後公労委などで取り扱われておることが報道されておるのを見ますると、国鉄は除外されておるというようなことになっております。現実に、昨晩行なわれた合議ども国鉄は別だという取り扱いがなされておるようですが、大臣としては国鉄総裁に一体どういう指示をなされておるか、この問題については閣議結論と食い違わないのか、いま取り扱われておる公労委取り扱いと、閣議できめられた、一応きめられた結論との関連はどうなっているのか、時間がないようですからかいつまんでひとつお答えをいただきたいと思います。
  10. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) お答えを申し上げます。  今月十六日の労働関係閣僚会議におきましては、当面問題になっておりまする三公社現業春闘による賃上げに対する各公社並びに現業理事者のこれに対応する態度について話し合いをいたした次第でございます。その際の結論内容といたしましては、すでに春闘も、ある程度春闘相場が測定される段階になっておるし、ことに私鉄争議結論を得た段階であるから、今年は例年と異なって、政府においてもできるだけ調停段階において誠意ある態度を示すということによって円満なる解決をはかりたい、こういうことでございまして、しこうして、三公社現業のうち国鉄を除く二公社現業理事者といたしましては、この際、春闘相場一般というものを基準にいたしまして、少なくとも昨年程度賃金引き上げはやむを得ないであろう、こういう申し出調停委員会に対してするということでございまして、その内容は、昨年の三公社現業賃金アップ率平均が六・五%でございまするから、大体において六・五%程度はしかたがないであろう、これは定昇を含んでおりませんので、このほかに、政府の考えておりまする定昇平均は四%でありますから、定昇を含めば一〇・五%、これは大体ことしの春闘相場に比しまして、おおむね政府回答としては適当な標準ではなかろうか、こういう意味で二公五現においてはそういう申し出調停委員会に対してしたいということでございまして、閣僚懇談会においてはこれを了承いたした次第なのでございます。  しかるに、その際におきまして、三公五現のうち、国鉄理事者だけは、国鉄財政現状から見て昨年並み賃上げ申し出るということは困難であるということでございました。御承知のとおり、国鉄財政は今年度においても非常に苦しいのでございまするが、今年度予算編成にあたりましては、大蔵当局との話し合いによりまして、昭和四十三年度の予算編成にあたっては関係者間で十分に協議をしよう、そうして当面国鉄において問題となっておりますところの政府出資、あるいは公共負担の問題まで掘り下げて将来のために妥当な解決策を講じようじゃないか、こういうことが大蔵省を含む関係者間で申し合わせができておるような状況なのでございまして、すでにこの申し合わせに基づきまして、国鉄理事者運輸省当局と連絡をとりまして、大蔵省主計局を中心に来年の予算のための国鉄財政現状についての検討に入っておる段階なのでございます。こういう段階において、今度の調停段階で、国鉄理事者側が、自発的に一方的に賃上げについての申し入れをするということは、その立場上すこぶる困難であり、これによってせっかく話し合いがついて検討に入っておるところの国鉄の来年度以降の財政問題、この話し合いに対してはたしていかなる影響を与えるであろうか、こういう点について国鉄理事者が非常に心配をし、申し出ることを決意することができなかったような事情があるわけでございまして、この事情関係閣僚間におきまして、どうもこの際そういう事情があるならばやむを得ないであろう、こういうことで、この点もあわせて了承されたような次第なのでございます。  そこで、当日以後、調停委員会に対しましては、国鉄を除く二公社現業からは、それぞれ先ほど申し上げましたような方針がとられ、かつまた、それを基礎にして調停段階において交渉も進行いたしておるのでございまして、国鉄だけがそれに参加することができない事情にあるわけでございます。そこで私といたしましては、この結論国鉄を終局的に他の二公五現に対して別扱いにするという趣旨ではないのであって、国鉄の現在置かれておる事情から見て、国鉄理事者が自発的に賃金引き上げ問題について調停委員会申し入れ立場にない、こういう特殊事情からきたので、したがって、これは調停段階だけの問題であるが、いずれ調停段階においてはかような事情結論が出ないのでございますから、この問題は早晩仲裁段階に移るでああう、仲裁段階に移りまするというと、仲裁委員会の従来の態度から見まして、国鉄賃金引き上げ率決定するにあたりましても、一般春闘相場ばかりでなく、他の二公五現の引き上げ率等を十分に勘定に入れ、そしてこれに比較して、決して均衡を失わないような妥当な結論を出されるものと期待いたしてよいと思うのでございます。こういうふうな仲裁裁定が出ましたならば、政府の従来の態度から申しまして、仲裁裁定はどこまでもこれを厳格に尊重し、必ずそのとおり実行するという長年の慣行でございまするから、今年度におきましても決してこれに対して例外的の措置をとるつもりはないのでございまして、必ず仲裁は実行する、こういう考え方でございますから、調停段階において一時国鉄が別扱いになるような感じはいたしまするが、最終的な仲裁段階まで考えまするというと、国鉄といえども他の二公五現と同じような賃上げが必ず期待できる、こういうふうに私としては考えておるわけなのでございます。この考え方に基づきまして、十六日の午後には国鉄関係の三大労働組合の三役の方にお出かけをいただきまして、この旨を申し上げ、どうぞ最終的な段階を期待されて、争議について過激な行動をお選びにならないようにお願いを申し上げると同時に、その後も国鉄理事者当局に対して、国鉄立場はともかくとして、政府の意図はかようなことであって、決して国鉄を別扱いにする意思はないし、国鉄も同じような取り扱いを受けるよう極力努力するという意思であるからということを組合の方々にお伝えいただいておるような現在の段階でございます。
  11. 中村順造

    中村順造君 大臣、時間がございませんからもう一点だけ。お話になった内容では、たくさんの議論が私はあると思いますが、お話の中で、閣議決定閣僚会議決定、それがそのまま国鉄態度として公労委反映をしておらない、これは事実なんですが、昨晩もそういう、いまの段階ではそういうことですが、それはそれで国鉄の副総裁来ていますからあとでお尋ねしますが、お話の中で言われることがわからないこともないわけです。いろいろな問題がある、なかんずく公共負担などという問題は、もうしばしば本委員会でわれわれも議論した問題でありまして、それが前向きで前進しつつあるというようなお話もございまして、そのことについては私は別に異論ないと思います。ただ、結論的にいま大臣お話では、仲裁裁定は出るだろう、仲裁裁定が出ればこれは他の二公社現業と一緒に尊重して実施をする、こういうことで結論めいたことをおっしゃっておるのですが、実は私が心配するのは、もうすでに、これは私のただ心配だけかもしれませんけれども、あす、もうよその二公社現業も同じておりますが、特にあなたの所管されておる国鉄二つ労働組合は何か実力行使——これは国民に非常に大きな影響がある問題であります。そういう問題が準備されておる中で、これは大臣が考えておられるようにきょうの合議なり、仲裁裁定にすらっといくかということなんです。特に私はその間の経過を見ますと、国鉄が別扱いになったということで昨晩協議も何かおかしくなって、合議公労委か、いわゆる鶏と卵の問題で、国鉄が片づかなければよそが片づかない、よそが片づかなければ国鉄も片づかない、こういう不必要な相関関係まで見せておるというような話をけさ聞いているわけです。だからこの取り扱いがよかった悪かったはあと国鉄総裁にいたしますが、私はこれは要望になるかもしれませんが、きょうの状態で、あすを控えて大臣が簡単に、きょう公労委合議が行なわれるであろう、労使が歩み寄るであろう、そうして仲裁裁定になるであろう、出ればこれは完全実施をする、こういうことだけで、組合も静かにしておれ、これだけでは所管大臣としては私はどうも心もとない、やはりこの難局を大臣みずから国鉄の幹部をしてこれを打開させる、こういう一つの気魄を、あなたは、もうあすのきょうですから持っていただいてもいいんじゃないか、それだけひとつお答えいただいて、忙しいようですから大臣への質問は終わります。
  12. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 私といたしましては、今日の段階で形勢を緩和いたしまする実際上の措置は、国鉄問題ができるだけすみやかに仲裁段階に移行することにあるんじゃなかろうかというふうに思っておるのでございますが、しかし、この問題につきまして、運輸大臣として職権によって仲裁移行を申請するべき段階でもないように思いますので、その点については考えておりません。ただ公労委がこれについて議決によって仲裁委員会に移されますることを期待いたしておるような次第なのでございますが、何ぶん国鉄の問題につきましては国鉄財政現状から見て、いろいろな見方もあろうと思いますが、一応私といたしましては、現在の対大蔵省折衝経過から見まして、国鉄理事者が現在のような態度以上に踏み切れない点も了といたし、それを前提にいたしまして、運輸大臣としても最善を尽くして明日の事態に対処いたしたいと考えております。まだ相当時間もございますので、最後まで努力をいたしたいと思います。
  13. 中村順造

    中村順造君 では、大臣の御説明前提にして、時間もございませんから簡単に国鉄の副総裁にお尋ねしますが、いま大臣お話の中にありましたように、国鉄のいろいろな計画、それから去年の実績、それから長い間、お話の中にもありました公共負担の問題、資金繰りだとか、そういうことはもう私は時間がないから申し上げるつもりはないわけです。それからまた非常に総裁以下苦況に立っておられるということもわかるわけですが、いま大臣の話を聞きますと、前半では、この関係閣僚会議というものはいろいろ、数字は若干違いますが、一口に表現すれば、昨年並みという表現は何回かされておるわけですね、これをひとつ調停委員会に対して申し入れをする、これは閣僚会議ですから、閣僚会議から申し入れをするわけにはいかぬでしょうから、当然そのことは国鉄使用者側意見としてその反映がされるべきだと思うのですが、それはされましたか。
  14. 磯崎叡

    説明員磯崎叡君) ただいまの御質問でございますが、大体の情勢はさっき大臣からお話になったとおりでございます。時間がございませんでたいへんあれでございますが、少し詳しく事情を御説明さしていただきたいと思います。ただたいへん申しわけないことには、昨夜から徹夜でずっとやっておりまして、非常にまだ現時点で問題が流動的でございますので、いま私が非常に明確な御答弁ができない点もございます点をひとつお許し願いたい。非常にまだ事態が動いております。率直に申しまして、当局使用者側のほうの事態も、また組合側事態も非常に複雑なようでございまして、新聞の伝えるような簡単な事態ではないようでございます。一方、私どもといたしましても、先ほど先生の御指摘の、明朝の安保以来の大ストライキの宣言も控えておりまして、そうした事態の中で、きょういろいろ御質問がございますことに対しまして、必ずしもそのぎりぎりの明確なお答えができない点があることはたいへん申しわけないのですけれどもお許し願いたい。しかし、私の気持ちはなるべくわかっていただくような御答弁をさしていただくつもりでございます。  まず第一に、ただいまのお話でございますが、その問題は先ほど大臣のおっしゃった先週の火曜日のあの閣議あと関係閣僚懇談会で、今年は何とか実質的に調停段階で話をまとめたいという強い政府内における御意見がございまして、関係閣僚も大体そういう方向でいこうというふうにおきめになったということを了承いたしております。それに基づきまして、二公社——国鉄を除きました二公社現業につきましては、先生指摘のとおり、書面をもって昨年並みのことをやりたいと、ただし形式は仲裁でなければいけないけれども、実質的には調停段階でまとめなさいという書面を、二公社現業調停委員会あてにお出しになったということも事実で、私もその書面を拝見いたしております。ちょうどその前後に、私どもの第三回の調停委員会事情聴取がございました。私どもといたしましては、実は今度の私ども態度に対しまして、いやあれは組合アベック闘争をしているんだ、あるいは予算獲得闘争をしているんだというふうな、非常に私どもにとりましては心外な批判も相当受けております。しかしながら、そういったことにかかわらず、現時点ではやはり国鉄の直面している経営の危機の問題と、それからもっと身近なベースアップの問題、この二つの問題をどう調整するかということに、総裁以下非常に苦心しておるわけでございますけれども、正直な話、ことしの予算をごらんくださいましても、それほど余裕のある予算でないことは、もうおわかりのとおりでございます。簡単に申しますと、一人千円で百億でございます。ですから、もし組合側要求のごとく——これは要求でございますが、一万円のベースアップ要求をいたしておりますが、一万円のベースアップをいたすといたしますれば、一年で千億かかる、こういう非常に膨大な数字でございます。したがいまして、政府のおっしゃるごとく、昨年並みということは約六・五%でございますが、六・五%といたしましても、本年度だけで約三百億の経費が必要でございます。実はこの問題は毎年春闘で、当委員会でも御議論になりまして、御答弁も申し上げておりますが、御記憶のとおり、毎年毎年非常に事情が悪化してきております。昨年はやはり当委員会でも、予算成立後ではございましたけれども国鉄内のやりくりでは非常にむずかしい、何とか年度内に政府に特段の措置をとってもらわない限りできないと、こういう御答弁を昨年はいたしました。その前の年は何とか国鉄予算やりくりをいたしますと、こういう御答弁を申し上げました。ことしは実はもう少し事態が悪くなっておりまして、昨年程度の御答弁もできないほど余裕がない。と申しますことは、この予算をごらんくださいましても、結局もし予算上、資金やりくりするとすれば三つしか方法がないわけでございます。御承知のように、増収を目当てにする、それから次に経費の節約の問題、それから予備費の流用の問題、この三つ以外には方法がないわけでございます。そして、二公社現業、どういう方法でできるとおっしゃったかは存じませんけれども、いずれにしても、この三つ方法以外にできないことは、これははっきりいたしておるわけでございます。私どものほうでは、過般第三回の事情聴取で申し上げましたことは、何も百円も出ない、百円も余裕がないということは申しているんじゃない。ある委員会で、それじゃお前は一円も出ないと言うのかという御質問が出ましたが、そういう極端なことを申しているわけじゃございません。しかし、どう節約してみても、あるいはどう予備費を使ってみても、まあせいぜい百億くらいの余裕と申しますか、ベースアップに回す金しかない。しかし、百億と申しますればせいぜい千円でございます。これではいわゆる政府のおっしゃっている有額回答というものにはならないと。かえって人を小ばかにしたような、問題を巻き起こすような回答になるだけで、これを回答にならないということで、私のほうは調停委員会に対しましては、一銭の金もないとは言わないけれども、幾らしぼり出してみても百億前後以上には捻出不可能である。したがって、その程度のことでは二公社現業並みにいわゆる有額回答として調停段階で話をまとめるというふうな金額にはならない。これはもう常識的にそう思うと。したがって、私のほうとしては、現在時点としての経理事情としては、有額回答、いわゆる二公社現業並みの、昨年並み有額回答をすることはできませんということを申し上げざるを得ない事態であったのでございます。したがいまして、いまのお尋ねの、そういう意見書を出したかということに対しましては、私どもだけが出しておりませんということを明白に申し上げます。
  15. 中村順造

    中村順造君 副総裁ね、その予算のことをいろいろ言われますがね。まあこれは予算予算委員会でもやっていますし、私は時間がないから、別に予算内容についてとやかく言いたくないのですよ。ただ、その予算というのは、政府国鉄の企業の中で、当局側が立てられる予算ですからね。だから、収入、増収の問題にしてもですよ、あるいは金の使い方、これはわれわれも何回かそういうことはタッチしていますけれども、これは立場が変わった立場でタッチしているわけでね。いま私が申し上げているのは、先ほど大臣にも言ったように、あしたのきょう、しかもあしたのきょうを迎えて、あなたのことばでも事態は非常に流動的だ。なるほど、私もただ新聞だけ読んでいるわけじゃないのです。昨晩状態がどうだったか、あるいはどういう公労委状態になっているかということもいま聞いてきたばかりなんですがね。なるほど流動的ということはわかりますがね。私が一番理解に苦しむのは、従来と変わっているわけですよ、今回は国鉄態度が。いま大臣が言われたように、いわゆる閣僚会議結論としては昨年並みということを調停委員会申し入れをしなさい、こういう決定をしたと大臣は言っている。ところが、諸般の事情で、国鉄立場としてはそれは言えなかった——まあこれはいろいろ理由はあるでしょう。非常にむずかしい大きな計画を持っておる限りにおいて、それは何百億という職員賃金引き上げをしなきゃならぬ、それについて、一千億だとかという話もありましたけれども、五百億でも、一千億でも、これはこれでみてくれ、それから国鉄計画についてはこれこれの金が必要だということは、それは大蔵省折衝では、なるほどあなた方の立場としては私は言えないということはわかるのですがね。しかし、だからといって、いま三公社現業の中で二公社現業がそういう書面申し入れをしたとあなたはおっしゃっているが、従来になく国鉄だけなぜ除外しなきゃいけないか。予算がないからそれはおまえも見たらわかるだろう、この予算の中で、どこに五百億円の賃上げ予算が出てくるかとあなたは言いたいところでしょうけれども、しかし、それでは国鉄職員というものは一体どうなる。予算はあなたのほうで立てる、金もあなたのほうで使う、計画もあなたのほうで立てる、その結果が予算がない、ここに五百億の予算がない、一千億の予算がないからわれわれは回答できない。これは従来そういうことはなかったのですよ。お互いにそれは従来の、長い間この仲裁裁定という制度が設けられてもなかったこともあります。赤字のときもありました。それから黒字のときもありました。しかし、そういう長い歴史の過程の中でも、国鉄だけ除外してものを申さないということはなかったわけですよ。私はその点をどうしてことしだけ——それは去年だって、いつでも国鉄財政はこれは楽です、一千億の賃上げができますという年は一年もなかったわけです。ことしに限って、なぜそれを強調されて、国鉄だけ、そういう閣僚会議決定にもかかわらず、別の態度をとられたか。そのことがまたどういう影響を与えるか。すでにもう影響しているのです、作用しているのです、今日のいまの時点では。その点をどういうふうに考えておられるか。
  16. 磯崎叡

    説明員磯崎叡君) ことし国鉄だけが、他の二公社現業に歩調をそろえなかったということについての御質問でございますが、もちろん私ども国鉄法二十八条によりまして、職員の給与というものはかくあるべきだという法律があることはもうよく承知をしております。ただ、いま申しましたとおり、ことしどうしてそうなったかということは、やはりことしそれだけ、去年に比べて、あるいはおととしに比べて財政状態が非常に悪くなったということは、さっきも申しました節約あるいは予備費の流用等は別といたしまして、結局収入増に対する見通しの問題と私は考えております。この点いわゆる独占企業として法律的に独占権を持っている電電の事業、あるいは郵政の事業、その他いわゆる政府の五現業という純粋な独占事業と、国鉄現状のように、明らかに独占性を放棄して、純粋に一般の民間輸送機関と競争的立場にあるこの企業との差だと私は思います。やはりそこまで国鉄経営はきたんだということが、ことし国鉄の独力だけで回答できなかった一番大きな私は原因だと思っております。そのほかにいろいろございますけれども、やはり現時点におきまして収入状況がよくない。しかもよくない原因は、公共負担等の問題はきょう除きますが、やはり同じ政府の三公社現業といいながらも、二公社現業は、完全に、政府の力により、あるいは法律の力によって独占性を持っておる。国鉄だけがもう完全に独占性がなくなったという意味における、収入、将来の経営に対する非常な不安、またことしの予算の非常な悪化ということが、やはり調停段階でよそさまのおつき合いのできなかった一番大きな原因だというふうに思っております。したがいまして、この問題は、昨年のやはり運賃改定のときにいろいろ先生方から御議論がございましたが、やはり国鉄の、もとをさかのぼれば、根本問題に触れざるを得ない問題であるというふうに考えます。しかしいま、かといって、根本問題をやっていたんでは、目前の労働問題は解決できないということになりますれば、私どもといたしましては、非常にその、他力本願的なとこを申しますけれども、幸い公労法の三十五条にございますように、仲裁裁定が出ますれば、政府としては、仲裁実施に努力をしなければならない。現在の国鉄の経営状態が悪化しておるということが私は全部政府の責任だとは決して申しませんけれども、少なくとも、仲裁が出れば、政府はその実現に努力をしなければならない努力義務があるわけでございます。したがって現時点におきましては、どうしても政府の努力義務に期待せざるを得ない。そうしなければ、職員賃金も上げられないし、また国鉄の経営の健全化も期せられない。この二つを両立させるためには、どうしてもやはり公労法の三十五条できめられました法律におたよりする以外にない。こういう見解で、私どもとしてはあえて政府の御勧奨にそむきまして、調停の委員会に対する意思表示をいたさなかった、こういう次第でございます。
  17. 中村順造

    中村順造君 話を聞いておりますとね、なるほどもっともらしく聞こえるのですがね。いま何かその、他の二公社は独占企業であって、——まあもちろん国鉄とは違いますよ、電電、専売公社はね。違いますが——その議論を延長していくと、何か国鉄が一つのトラック会社みたいなことに聞こえるわけですよ。よその会社は経理内容がいいからそれは二二%でも一五%でも上げてもらう、かってなことを放言しているが、うちの会社は経理内容が悪いから、いわゆる収入が少ないから、あなた方の期待に沿えられないからものが言えない。こういう言い方ですよね。同じことですよね。それはしかし、そのことがいい悪いは別にして——私はけしからぬと思うのだけれども。実際がそうなら、予算がそうなっておるとこう言われるが、予算はあなたのほうでつくられる。そのことが私はうなずけない。いま結論的に言うなら、副総裁は当事者能力の限界に突き当たったんだ、こういうふうに理解せざるを得ないのですね。それは、仲裁裁定というのもことしが初めてじゃない、いままで何回も出されている。裁定が出されれば、なるほど法律に書いてあるとおりだ、いわゆる仲裁裁定が出たって、それなら政府が、これは仲裁裁定の分ですといって最近円滑に金出しましたか。私は出していないと思う。やはり国鉄の経営の中で、何らかのいわゆる経費の節減だとかいうふうなやりくりでやれというふうな、まあ基本的にはそういうやり方をずっと仲裁裁定が出てもやられている。ことしはもうそれすらもできない。やはり仲裁裁定がかりに総額五百億円なら五百億という金が出れば、それはもう公労法に基づくいわゆる政府の義務として国会に別な予算でこれが提出をされるというふうな見通しに立たれますか。いままでの仲裁裁定実施の現実の問題のやり方としてですね。それは、ことしは違うのだ、ことしはもうここまで、私あえて副総裁のことばをかりて言うならば、あえてこの関係閣僚会議決定にも違背をしてまでわれわれはものを申さなかった、それはもうどうしようもないと、この法律上のいまの経営では。だからもしかりに大臣仲裁裁定が出ればというお話もありましたけれども、ことしは仲裁裁定が違うわけですね、出ましたら。完全に政府国鉄の裏づけを予算外にやる、予算外にというと言い方が悪いかもしれませんけれども、別ワクとして政府が手当てをする見通しが立たなければ、いまのような議論にならない。私はあまりに仲裁裁定に対する期待感が大きいと思う。これは仲裁になるかどうか、あなたのほうのものの言い方一つでは合議が成立するでしょう。そうすれば調停が合わなければ仲裁ということで、最終的な決定はあしたの事態が回避されるかもしれないけれども、あしたの事態を回避するには前提が必要なんです。まとまる前提。私はこの問題は労働組合がやっているから深入りしたくないけれども、とにかく私の受けた感じは、従来の労働問題にあったと違う、国鉄は。なぜそれが違うのか。いま一応説明がありましたが、その点私はわかったようなわからないような、一応わかったですが、これからさきどうなるか、来年はどうなるか。来年のことを言う必要ありませんが、国鉄はかつて労働組合要求に応じただけの余裕があった年はないと思う。来年のことまで私は別に聞いているわけではないのですが、議論としては来年のことを言わざるを得ない。さしあたってことしはどうなるか、あしたの事態は完全にあなた方の責任によって回避できるかどうかということをひとつお答えいただきたい。
  18. 磯崎叡

    説明員磯崎叡君) まず、ただいまの御質問の初めの問題の、当事者能力が限界にきているのではないかというお話がございました。私どもは過般調停委員会に、いまの国鉄の財政状態というものは当事者能力以前の問題だということをお答えいたしました。先生も御承知のとおり、当事者能力と申しますのは、金があっても出せないという意味の当事者能力であったわけであります。国鉄自身も、実は昭和三十八年度まではその問題で毎年もんでおった。金があるのに出せないというだけの問題だった。現に昭和三十六年度は、御承知のとおり、三月二十七日に仲裁が出まして、四月にすぐ国鉄資金需要で補正予算を組んで、そして承認案件を取り下げたりした。三十六年、三十七年、三十八年は金があっても出せないという意味の当事者能力の問題があったのですが、現時点はもう当事者能力以前の問題。よその公社はやはりいままでの国鉄状態だと思いますが、いまの私どもの財政状態は、当事者能力があったとかなかったとかという問題よりも、極端にいえば、支払い能力の問題だ、当事者能力以前の問題だというふうに申し上げざるを得ない。二、三年の間に急激に事態が悪化しているということであります。  しからば、それでは去年の仲裁裁定をどうやって実施したかという御質問でございますが、これは昨年の暮れに補正予算を組んでいただきました。所要額二百六十一億のうち百億だけは政府からはっきりめんどう見てもらった、補正予算で。たとえ百億でもこの分は仲裁裁定の分でございますといって正式に国会に出したのは、実は去年が初めてでございます。それまでは先生のおっしゃったとおり、補正は出しましたけれども、一種の流用、経費の節約、あるいは工事の削減というふうな表面の理屈で補正予算出しましたけれども、昨年は御記憶のとおり、二百六十一億のうち百六十一億だけは予備費なり節約になります。しかし、あと百億だけはどうしても足りませんので、この分は政府の財政措置でお願いしたいということで、百億これは初めて補正予算の中で、仲裁裁定のために政府が金を貸してくれたという初めての例でございます。ことしは実はその分がもう少しふえてくるという見込みである。去年は百六十億の節約をいたしましたけれども、とてもことしはそこまでできない。去年は多少運賃を上げましたのでもう少しふえるという意味の運賃収入の増加も多少期待できました。実際はだめでございましたけれども、そういう増収の期待もあって、百六十億というものを自己資金で計上いたしましたが、ことしはそれがぎりぎり百億ぐらいしかないということで、あとは去年初めてやっていただきましたような、政府の三十五条による努力措置を期待する以外にない。しかし現時点で、ただいま先生の御質問のごとく、おまえは完全に政府がそれじゃ一〇〇%めんどうみる、おまえの言うとおりめんどうをみてくれるという自信があるか、こうおっしゃれば、これはもう申すまでもなく、まだことしは特殊事情予算が成立しておらないのは御承知のとおりでございます。したがいまして、大蔵省としては予算が成立前に、たとえば財投の余裕があるとか、あるいは政府出資余裕があるとかいうことは、これはもうさかさまになっても言えないことだと思いますので、少なくとも予算成立前には残念ながら政府と私のほうとの間でたとえば書面を交換するなどということは、これはもう絶対できないということはおわかりのとおりでございますが、先ほど大臣がおっしゃったとおり、大臣のほうから組合の責任者をお呼びになって、必ず仲裁になれば実行してやるというお話大臣のほうから積極的になさったということにつきましては、もちろんある程度大蔵大臣とのお話し合いもあっての上だというふうに私は思っておりますし、また一昨日総裁が就任いたしまして、いまあいさつに回っておりますが、そのときも必ずこの問題を持ち出して、関係の閣僚にお願いいたしておるような次第でございまして、全努力をあげましてあしたの事態は私は回避いたしたいというふうに考えております。ただ一つ心配なことは、多少事務的にわたりますが、いわゆる定率、定額の問題が出ていることは御承知のとおりでございます。これにつきましては、定額で出ますことは非常な問題でございます。また一方、定額いいじゃないかという説も一部にあるようでございます。国鉄を除きまして。まあそれらの事態が実は私いま非常に心配しておる。これ以上ちょっと申し上げるわけにまいりませんが、その問題が実はいま非常に第一の問題として気にやみまして、何とかその事態を少なくともいままでどおり定率一本ということでもって仲裁に移行していただくことが私どもとしては最善の努力をいたす結果だ、こういうふうに考えておりますが、まだそこまで確定的に申し上げられませんが、そういう方面の努力を今後数時間のうちに全力をあげてやってみたいとは考えております。
  19. 中村順造

    中村順造君 だいぶ長くなりましたから、これでやめますが、いろいろ説明を聞きまして、一応私は国鉄がどういうわけで、特にことしは異例な態度なり方法をとられたかということも多少わかったわけですが、いま大臣お話になったように、何か大臣は非常に時間を急がれておって、仲裁裁定になれば完全実施をするから心配するなというふうな話で席を立たれたのですが、いままで進められておる作業もおそらくそのとおりになろうと思いますがね。しかしこれは、私は最後に国鉄当局に申し上げたいのは、いろいろ労働組合といっても、単に、この時点になりますと、国鉄労働組合とか、あるいは国鉄動力車労働組合とか、中にある企業内の組合だけの動向できめられない状態ということも考えられるわけです。これは最後にお話ありましたけれども、私は中身は言いませんが、それは公益側委員にしても、使用者側委員にしても、労働者側委員にしても、やはり何かそういうことなのか。それはもう問題は別だ、別ならわれわれももうそういうことは理論の外だ、断固汽車とめてもやむを得ないというふうな、大衆の行動というものはややもすればそういうことはあり得るわけです。だから、せっかく今日まで、昨晩も夜も寝ずに御努力なさったと言われておりますが、きょうの数時間後に迫った事態考え方を間違うと、せっかくなさった努力がだめになっちゃう心配があると思うのですよ。それはまあ経験者である井上さんもおられるから、まずそういうことはないと思いますがね。私はあくまで国民的な立場に立つならば、あしたの事態は何としてでも回避してもらわなければならぬ。そのためには、しかく簡単に仲裁裁定にはいかない情勢だから、それを軌道に乗せるためにはまた格段の努力をしてもらわなければならぬ。まして私ども申しましたように、その額でいくか率でいくかなどというつまらぬ議論にこだわって、いや国鉄がきめないからよそもきめない。よそがきまらないから国鉄もきまらない、そういう空転をやっておったらどんな事態が起こらないとも限らぬと思うのです。だから私はそういう面を心配するから、いままで説明のあったように、国鉄が特に当局が今回は違う態度に出ざるを得なかった。またそのために一体どういう前向きの姿勢が出てきたか。これはわれわれの主張にも近い線が出ていると大臣も言っておられるから、中にわれわれが公共負担などの問題についてはやはり国がめんどうを見るべきだという本委員会の主張が逐次前進をしたというお話があったからこれはいいのです。いいけれども、これに関連をして、おれのところはさいふがないから組合が何を言ってもだめだということはまずないと思いますが、とにかく時間がないということでありますからやめますが、きょう聞くところによると、昼から国鉄を中心にした合議がなされるということでありますから、しかし、今日までも努力されたと思いますが、あくまであしたの事態は責任をもって回避をするという基本的な態度でひとつ努力をしていただいて、国民に大きな迷惑のかからないような私は措置をあなた方に要望して、強くそのことをいたしまして、私のこの国鉄を中心にする春闘賃上げの問題の質問を終わります。
  20. 岡三郎

    ○岡三郎君 関連してちょっと一言。まあ毎年こうなるわけですが、第三次長期計画をいまやっているわけですが、それでまあ先般運賃の改定もやった。そして昨年の傾向から見ていてどのくらい運賃の収入がふえるのか、あるいは減るのか、ある程度傾向値というものがわかっていると思います。ところが物価というものを国鉄はどう考えておるのか、運輸省政府自体。いまの賃上げの根本は、私は何といっても物価の値上がりにあることは間違いないと思います。特に食料品を中心とした値上がりがこれが直接の原因ではないかということになるというと、物価の動向というものを累年見てくれば、特にことしはさまざまな物価値上げの要因というものが介在しておったと思うのです。ということを考えれば、やはり国鉄当局として当然賃上げというものが起こってくることはこれは間違いない。それに対して第三次長期計画のずれといいますか、運賃収入の見込み違いというか、そういうものを相関的に考えたときに一体何を先に考えるのかということですね。つまり多くの労働者を使っていて、そうしてその人たちの生活がどうしても物価の値上げによって左右されてくる。必然的に賃上げが起こる。それを前提にしてものを考えていかないというと私はそごが起こると思う。だからそういう点で予備費をこれこれあるいは節約するといっても、これは限度があると思うので、そういった場合に大体の傾向値として、やはり予備費を三百なら三百億、四百なら四百億というふうに見込んでおかないということは一体どういうことなんだ。困ることがわかっていてそれが計上できないのがいまの現状だろうと思うのですが、しかし、それでは愚を繰り返すということになるのじゃないか。結局同じことの延長になるというふうに考えるわけですが、この点について、まあ政府自体にほんとうは聞きたいのですが……。思い切ってそれでは第三次長期計画を延ばす。もう政府が金を出してくれないのです。国鉄として運賃値上げをして苦労していても現状において独占的な企業としての採算が出てこないということになれば、どこか一つやっぱり抜本的な改正をしなければ、改革をしなければ、ストライキをやって混乱を起こしてくるということは一体どこに責任があるのかという問題が私は出てくると思うのですがね。そういう点でいろいろといままで論議せられてきておると思うのですが、私は根本的にいうて、物価政策といいますか、物価対策上における現状の労働争議という問題について、どういうふうに考えておられるのか。これは政府自体もそうですが、国鉄意見をちょっと聞いてみたいと思う。
  21. 磯崎叡

    説明員磯崎叡君) 全般的に物価の上昇の傾向という一つの客観的な事実を踏まえて、それに対して各企業の人件費をどう見るべきか。ことに国鉄のように、予算制度という厳重なワクがあるときに、どう見るべきかということについては、これは根本問題になると思いますが、たとえば公務員の場合で申しましても、御承知のように、人事院勧告による公務員のベースアップによる人件費の増というのはみない。人事院勧告が出たあとでみる。こういうたてまえになっているのは御承知のとおりです。ただ、予算技術的に申しますと、春闘仲裁裁定の出る時期が非常に予算制度と食い違っているということが一つの問題点だと思います。これはむしろ人事院——これは全く個人的な意見で、国鉄としては問題でないということを御了解願って、もし人事院勧告のように、予算編成の前に出ますれば、むしろ実施時期だけの問題が問題である。しかし、いまのように予算が、ことにことしのように予算成立前に、予算編成が済んで衆議院を通ったあとで、しかもここで仲裁が出るということになりますと、非常に予算制度とのからみ合いがおかしいので、その点はむしろ私どもでなしに、大蔵省の責任者から答弁するようなことで、申し上げるべきじゃございませんが、私どもから申しましても、いま先生がおっしゃったとおり、非常に率直に申しまして矛盾があると思うのです。いま御審議中の、まだ成立していない予算の中の相当大きな部分を占める人件費を数日中に上げろ、こういう仲裁裁定が出るわけでございますから、予算制度との関係は非常に筋が通っていないような気がいたします。したがいまして、いま申しましたとおり、いろいろ節約だとか、流用だとか、あるいは増収だとかということで理屈をつけて捻出するわけでございますが、結局捻出できなくなればある時期に補正をしてもらう、予算措置をしてもらう、こういうことになるわけです。したがって、それならば初めからかちっと予算措置で、年度当初から、予算編成のときからその問題を踏まえてやったほうがこういう予算とのからみ合いというごたごたした問題なしにやれるのじゃないか。事柄からいえば、ずっと昔のように、予算編成前にこういう問題が起きたほうが筋が通っていると思います。承承知のとおり、昭和三十年以前はそうだったわけでございますが、三十一年か二年か、あと春闘ということになりまして、時期がずれてきたわけであります。その意味で予算編成大蔵省当局もずいぶんその問題には頭を悩ましたようでございますが、ベースアップがあるであろうということを予見して予算を組むということもこれまたおかしな話だという見方もあるように聞いておりますが、やはりいまの四月から三月までという予算の時期と、仲裁裁定なり人事院勧告の出る時期というものがもう少し調和がとれなければ本質的にいけないのじゃないか。これは技術的な問題でございますが、そういうふうに思います。  それから、いま先生のお尋ねの根本問題といたしましてはまさにそのとおりで、たとえば第三次計画をうんと延ばすということになれば若干の利子も減ってまいりますし、あるいは借金額そのものも減ってくる。しかしながら、一方、いま三次計画でやっておりますことは、御承知のとおり、保安対策にしましても通勤輸送にいたしましても、あるいは幹線の輸送力増強にしましても、いずれも先行投資どころではない。ほんとうに肩に振りかかる火の粉を払う。極端にいえばすぐ人命にでも関しないとはいえないぐらいの工事をいまやっておるわけでございまして、これを延ばすということは私どもとしてはどうしてもできない、こういうふうに考えるわけでございます。したがって、そこでいまおっしゃったように、じゃ、経営の問題と、ことに労働問題を含めた経営の問題と、それからいま言った国鉄の輸送力増強の問題、いわゆる公共性の問題との調和をどうはかるかということは、結局もう空理空論をやってもしようがないということで、根本問題はいま主計局の事務当局数字を突き合わせて、一体国鉄をどうするかということについて本質的な数字的な検討をやっておる次第でございますので、やはりずいぶんその会議議論が百出いたしまして、まあ、しかし何とか七月一ぱいまでに結論を出したい。四十三年度予算は八月から組み始めますから、四十三年度予算には、そういう矛盾を、一挙にはできないでも、少しずつでもあるいは何年か計画でもその矛盾を取りくずすという方向で進む以外にないというふうに考えておりますが、いま先生のおっしゃったことは私どもは実は一番頭にある問題でございまして、その問題を中心にして今後国鉄経営の問題を発展さしていく以外に将来の問題はない、こういうふうに考えております。
  22. 岡三郎

    ○岡三郎君 だから国鉄も、結局予算編成の時期に、いま中村君のほうから、予算国鉄がつくる、で大蔵省折衝する、しかし、つくるときに、仕事はいま言われたように、これは国鉄が好き好んでやっておるわけじゃなくて、そうして過密化の中から生まれてきておる大きな要因というものをどう国鉄が処理するか。それもすでに国鉄自体としては限度を越えておると私は思うのです。ですから大都市制度全般の中でこういう問題をとらまえてもらわなければ国鉄としてはもう限界を越えておるのだ、財政的においてもそうなんだという点について、しかし、やはり現状において物価がそれだけ具体的に値上がりしてきておる、そういうふうなことで国鉄職員の待遇を片手落ちするような印象を与えてしまえば労使関係もおかしくなり、国全体、国民全体について迷惑をかける、そういうことを考えたときに、やはり大都市に人口集中しておるというこの大都市制度の問題の基本的な問題をとらまえて抜本的なメスを入れてもらう以外にないということになれば、何か、資金上いま余裕がないから国鉄はそういうことを、幾ら上げますというわけにはいかぬということ自体が私はおかしいと思う。そこのところだと思うのです。金がなくたって出さなければいかぬのです。これは国鉄職員だけ労働力を低下させるわけにもいかぬし、増員を押えてきておるというたてまえからいってもかなり限度にきておる。合理化もやるべきことはかなりやってきておる。そうなるというと、やはり何といってもいまの現状において国鉄が国全体の責任をしょって輸送力の増強を全部いまの国鉄の独立採算制の中でやるのだといってもこれはだめなんです。だからそこまでいくならば、やはり現状において賃金なら賃金というものをある程度保障して、その中でやはり勤労の意欲を高めつつ収入増加をはかっていくという逆の一つの考え方から積極的に一歩抜け出して、金がなくてもやらなければならぬ。このくらいのパーセンテージは三公社現業としてはあたりまえのことなんです。それで仕事ができなかったら、それはしかたがないのだ、これはぜいたくな要求ではない、ぎりぎりの問題であるという一つの姿勢の問題がいまいわれてきたのではないかと私は思うのです。特別に国鉄が金がない中から国鉄の待遇を一五%も六%も上げるというならば、これは容易なことではないけれども、電電とか、あるいは専売とか、こういうところと比べて均衡のとれた率でもっていけということになれば、これは世間が許すと思うのです。特に国鉄のような職場で働いておる立場におるものはかなり過重な労働です。それを他の二公社現業と比べて金がないからいけないなんという、そんなへっぽこな態度では私は切り抜けられないと思うのです。そういう点で、やはり五百億なら五百億かかる、やむを得ませんと、その必然的に出てきたところの赤字というものは解決されない。政府が見てくれなければ、いやおうなしに仕事を延ばさざるを得ない。しかし、それを延ばすことができないというならば、抜本的に考えてもらわなければならぬ。これは何も居直った形ではなくして、国民に迷惑をかけないという国鉄としての積極的な立場というものがそこに位置づけられるのじゃないかと思うのですがね。そこのところを中村君も言ってると思うんです。私もそう思います。だから、そういうちゅうちょした態度ではなくて、やっぱり世間並み国鉄の労働者に対してもやっていくんだという姿勢の中から、国鉄がぜいたくしているわけじゃないわけですから、そういう点のひとつ意気込みを持って、やっぱり積極的にやっていただきたいと思うんです。これは大蔵省大蔵省なりの財政のワクというものを踏んまえていろいろと問題を出してくることはわかってるとしても、差し迫った中において、やはり国民に迷惑をかけない、ストライキを一応中止させるということ以外は、ということは、それ以外に私はやっぱりないんじゃないかという気がするんですがね。以上で終わりますが、これはひとつ金丸さんからもお聞きしたいと思うんです、いまの点について。どうなんですか。
  23. 金丸信

    政府委員金丸信君) 先ほどから、大臣あるいは副総裁からいろいろお話がありまして、また中村先生の、わかったようなわからぬような気もするというようなお話もあったわけでありますが、私はことしの国鉄の状況というものは特別の状況であろうと思うわけでありまして、ことにことしの予算編成のおり、大蔵省とも私もいろいろ折衝をいたしたわけでありますが、政府出資というような問題につきましても、いろいろ折衝いたしましたが、壁に突き当たったというような問題もありまして、ただいまお話しのとおり、確固たる態度で臨むべきだ、それがまた労働者の意欲を向上させることになると、こう私も思うわけでありますが、本来であれば国鉄自体、理事者、労働者と一緒に先頭に立ってそういう方向にいきたいという考えだと思うのでありまするが、ことしは特別の事情であろうと思うわけですが、われわれもできるだけひとつ御期待に沿って、あすに控えるこの問題点を何とか乗り切れるような最善の努力をいたしたいと考えておる次第であります。
  24. 岡三郎

    ○岡三郎君 まあ磯崎さんのほうは大体先ほどのでいいです。
  25. 天坊裕彦

    委員長天坊裕彦君) 本件に関する調査はこの程度にいたしまして、本日はこれにて散会いたします。    午前十一時四十二分散会      —————・—————