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1967-04-19 第55回国会 衆議院 予算委員会第二分科会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    分科会昭和四十二年四月六日(木曜日)委員 会において、設置することに決した。 四月六日  本分科員委員長指名で、次の通り選任され  た。       相川 勝六君    赤澤 正道君       井出一太郎君    北澤 直吉君       正示啓次郎君    藤波 孝生君       保利  茂君    石橋 政嗣君       大原  亨君    山中 吾郎君       和田 耕作君    伏木 和雄君       谷口善太郎君 四月六日  北澤直吉君が委員長指名で、主査選任され  た。 ――――――――――――――――――――― 昭和四十二年四月十九日(水曜日)    午前十一時九分開議  出席分科員    主査 北澤 直吉君       相川 勝六君    赤澤 正道君       正示啓次郎君    藤波 孝生君       古井 喜實君    保利  茂君       天原  亨君    佐藤觀次郎君       山中 吾郎君    受田 新吉君       伏木 和雄君    谷口善太郎君    兼務 川崎 秀二君 兼務 中村 重光君  出席国務大臣         外 務 大 臣 三木 武夫君         文 部 大 臣 剱木 亨弘君         厚 生 大 臣 坊  秀男君  出席政府委員         外務政務次官  田中 榮一君         外務大臣官房長 齋藤 鎮男君         外務大臣官房会         計課長     鹿取 泰衛君         外務省経済協力         局長      廣田しげる君         外務省条約局長 藤崎 萬里君         外務省国際連合         局長      服部 五郎君         文部省体育局長 赤石 清悦君         厚生大臣官房長 梅本 純正君         厚生大臣官房会         計課長     高木  玄君         厚生省援護局長 実本 博次君         水産庁次長   山中 義一君  分科員外出席者         外務省アジア局         外務参事官   吉良 秀通君         外務省経済局次         長       鶴見 清彦君         外務省情報文化         局文化事業課長 猪名川治郎君         海上保安庁警備         救難監     猪口 猛夫君     ――――――――――――― 四月十七日  分科員井出一太郎君は、委員長指名で第一分  科に所属を変更された。 同日  第一分科員古井喜實君は、委員長指名で本分  科に所属を変更された。 同日  分科員和田耕作委員辞任につき、その補欠と  して永末英一君が委員長指名分科員選任  された。 同日十八日  分科員永末英一委員辞任につき、その補欠と  して田畑金光君が委員長指名分科員選任  された。 同月十九日  分科員石橋政嗣君及び田畑金光委員辞任につ  き、その補欠として佐藤觀次郎君及び受田新吉  君が委員長指名分科員選任された。 同日  分科員佐藤觀次郎君及び受田新吉委員辞任に  つき、その補欠として石橋政嗣君及び田畑金光  君が委員長指名分科員選任された。 同日  第四分科員川崎秀二君及び第一分科員中村重光  君が本分科兼務となった。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  昭和四十二年度一般会計予算中、外務省、文部  省及び厚生省所管  昭和四十二年度特別会計予算中、文部省及び厚  生省所管      ――――◇―――――
  2. 北澤直吉

    北澤主査 これより予算委員会第二分科会を開会いたします。  私が本分科会主査をつとめることになりましたので、よろしく御協力をお願い申し上げます。  本分科会は、外務省文部省厚生省及び労働省所管につきまして審査を行なうことになっております。  審査の順序は、お手元に配付いたしました日程によりまして進めたいと存じますので、あらかじめ御了承をお願い申し上げます。  それでは、昭和四十二年度一般会計予算中、外務省文部省厚生省及び労働省所管昭和四十二年度特別会計予算中、文部省厚生省及び労働省所管を議題とし、関係係当局より説明を求めます。  まず、厚生省所管につき議して説明を求めます。坊厚生大臣
  3. 坊秀男

    坊国務大臣 昭和四十二年度厚生省所管一般会計及び特別会計予算案概要について御説明申し上げます。  厚生行政につきましては、日ごろ各位の御協力をいただき、逐年予算増額を見、厚生行政の進展がはかられつつありますことはまことに喜ばしいことでありまして、この際あらためて、厚く御礼を申し上げたいと存じます。  さて、昭和四十二年度厚生省所管一般会計予算における総額は六千七百十三億七千二百九十四万四千円でありまして、これを補正後の昭和四十一年度予算五千八百七十八億四千六十万一千円に比較いたしますと、八百三十五億三千二百三十四万三千円の増加と相なり、前年度予算に対し一四・二%の増加率を示しており、また、前年度初予算に対しましては、一六・五%の増加と相なっております。  なお、国家予算総額に対する、厚生省予算の比率は、一三・六%と相なっております。  以下、特に重要な事項について、その概要を御説明申し上げます。  まず、第一は、生活保護関係経費であります。  生活扶助費につきましては、その基準額を前年度と同様一三・五%引き上げることといたしており、また、教育扶助費出産扶助費及び生業扶助費につきましてもそれぞれその改善をはかっております。  このほか、保護施設職長処遇改善を行なうなど、生活保護費として総額一千四百五十二億六千余万円を計上いたしており、前年度予算に比し、二百八億二千六百余万円の増額となっております。  第二は、社会福祉関係経費であります。  まず、児童保護費でありますが、収容施設等飲食物費日常諸費改善をはじめ、児童用採暖費支給対象範囲を拡大するほか、保育所及び収容施設職員処遇改善をはかるとともに、職員増員を行ない、また、昨年度新設されました民間施設経営調整費についても増額計上いたしております。  また、重症心身障害児(者)の保護対策につきましては、従来の施策をさらに強化するため所要経費増額するほか、新たに心身障害児(者)コロニーを設けて保護充実をはかるなどの所要経費を計上するとともに、母子保健衛生対策強化並びに身体障害児結核児童等療育対策に必要な経費をそれぞれ増額するなど児童保護費として三百六十二億七千六百余万円を計上いたしております。  また、保育所老人福祉施設等社会福祉施設整備に必要な経費として三十三億円を計上いたしております。  なおまた、身体障害者福祉につきましては、法律の対象内部障害者にまで拡大するとともに、新たに身体障害者相談員家庭奉仕員制度を設けるなど、その施策充実強化をはかることとして所要経費を計上するほか、老人福祉費児童扶養手当特別児童扶養手当経費をそれぞれ増額するなど、社会福祉費として総和六百三億一千六百余万円を計上いたしており、前年度予算に比し、八十一億二千余万円の増額となっております。  第三は、社会保険費関係経費であります。  まず、国民健康保険助成費についてでありますが、昭和三十九年度以降四カ年計画をもちまして進められている家族に対する七割給付実施につきまして、昭和四十二年度は計画最終年度として計画どおりこれを行なうとともに、事務費補助金基準単価を大幅に引き上げるなど、国民健康保険助成費として一千七百四十億七千二百余万円を計上いたしております。  次に、社会保険国庫負掛金でありますが、厚生保険特別会計及び船員保険特別会計への繰り入れに必要な経費として、政府管掌健康保険の財政の健全化に資するための二百二十五億円を含め、五百三十五億三千五百余万円を計上いたしており、前年度予算に比し百三億一千五百余万円の増額となっております。  また、国民年金につきましては、障害福祉年金及び母子、準母子福祉年金年金額をそれぞれ月額三百円、老齢福祉年金年金額月額百円引き上げるとともに、扶養義務者所得制限等支給制限の緩和をはかるなど、国民年金国庫負担金として九百十七億二千三百余万円を国民年金特別会計繰り入れることとし、社会保険費として総額三千二百七億九千九百余万円を計上いたしており、前年度予算に比し四百九十五億五千余万円の増額となっております。  第四は、保健衛生対策費関係経費であります。  まず、ガン対策経費でありますが、従来の施策をさらに推進することとし、専門医療機関整備充実をはかり、ガン研究のための助成費増額し、さらに、医師等専門職員研修充実及び集団検診推進等を行なうための所要経費を計上いたしております。  また、救急医療対策経費につきましては、救急患者収容治療に必要な医療施設整備医師等専門職員養成訓練を行なう等救急医療対策充実強化をはかるための所要経費を計上するほか、血液対策経費につきましては、新たに献血受け入れ機関整備充実をはかるとともに、移動採血単作についての助成を行なうなど、血液対策推進をはかるため所要額を計上いたしております。  このほか、環境衛生関係営業合理化近代化をはかるため環境衛生金融公庫の運営費等を新たに計上するとともに、保健所職員増員移動保健所活動強化に必要な経費疾病予防費保健衛生諸費として八十九億六千余万円を計上いたしております。  さらにまた、結核医療費として三百三十九億八千百余万円、原爆障害対策として二十八億四百余万円、精神衛生費として二百二十一億一千三百余万円、また、国立療養所に必要な経費として三百五十六億六千三百余万円をそれぞれ計上するなど、保健衛生対策費として総額一千百億三千万百余万円を計上いたしており、前年度予算に比し、五億六千五百余万円の増額となっております。  第五は、遺族及び留守家族等援護費であります。  まず、戦傷病者戦没者遺族等援護費でありますが、遺族年金等年金額増額するほか、新たに準軍属の後順位の遺族についても遺族給与金を支給する等、戦傷病者遺族等援護充実をはかることとし、これに必要な経費百六十八億三百余万円を計上するとともに、戦傷病者の妻に対する特別給付金支給範囲を拡大し、また、過ぐる大戦においてすべての子を失った戦没者父母等に、新たに国債を支給するための事務処理費をも計上いたしております。  このほか、戦傷病者特別援護費として九億百余万円、留守家族等援護費として一千九百余万円をそれぞれ計上するなど、遺族及び留守家族等援護費として総額百七十八億六千五百余万円を計上いたしており、前年度に比し二十九億二千三百余万円の増額となっております。  第六は、生活環境施設整備費であります。  明るい生活環境を実現するため、環境衛生施設整備をさらに強力に推進することとし、水道水源開発等施設整備費として新たに七億円の補助金を計上し、水源確保等をはかることといたしております。このほか、ごみ処理施設について大幅な増額をはかる等、清掃施設整備費補助金については二十七億一千六百余万円、簡易水道等施設整備費補助金については十六億九千百余万円を計上するなど、生活環境施設整備費として総額五十一億七百余万円を計上いたしております。  第七は、公害防止対策等経費であります。  公害対策につきましては、公害部を新設し行政体制強化をはかるとともに、地方公害防止体制強化するため、常時監視等制度を設け、公害調査研究費を大幅に増加し、さらに従事者養成訓練強化推進することといたしております。  このほか、公害防止事業団体制強化及び事業推進等をはかるなど公害防止対策に必要な経費として四億円余を計上いたしております。  また、国立公園等施設整備につきましては、従来の施策をさらに強化いたしますとともに、新たに民有地の買い上げに要する経費を計上し、国立公園風致景観の維持の徹底を期することとし、国立公園等施設整備費として、総額七億九千二百万円余を計上いたしております。  以上、昭和四十二年度厚生省所管一般会計予算案について、その概要を御説明申し上げました。  次に、昭和四十二年度厚生省所管特別会計予算案大要について御説明申し上げます。  まず、第一は、厚生保険特別会計についてでありますが、一般会計より五百十八億一千六百十七万九千円の繰り入れを見込みまして、各勘定歳入歳出予算をそれぞれ計上いたしております。  第二は、船員保険特別会計についてであります。  船員保険特別会計につきましては、十七億一千九百一万八千円の一般会計よりの繰り入れを行ない、歳入三百五億三千四百八十八万四千円、歳出二百十億七千三百三十四が一千円を計上いたしております。  第三は、国立病院特別会計についてでありますが、一般会計より四十六億六百三万六千円の繰り入れを見込みまして、歳入歳出とも三百九十四億三千五百九十七万五千円を計上いたしております。  第四は、国民年金特別会計についてでありますが、一般会計より九百十七億二千三百六十九万円の繰り入れを見込みまして、各勘定歳入歳出予算をそれぞれ計上いたしております。  最後に、あへん特別会計についてでありますが、歳入歳出とも九億七千二百四十七万四千円を計上いたしております。  以上、昭和四十二年度の厚生省所管一般会計及び各特別会計予算案につきまして、その概要を御説明申し上げたのでありますが、何とぞ本予算案の成立につきましては格別の御協力をお願いいたす次第でございます。
  4. 北澤直吉

    北澤主査 外務省文部省及び労働省所管についての説明は、再開後聴取することといたします。  午後一時から再開することとし、暫時休憩いたします。     午前十一時二十七分休憩      ――――◇―――――     午後一時十分開議
  5. 北澤直吉

    北澤主査 休憩前に引き続き会議を開きます。  外務省所管について説明を求めます。三木外務大臣
  6. 三木武夫

    三木国務大臣 外務省所管昭和四十二年度予算大要を御説明いたします。  予算総額は三百三十四億二百二十六万七千円で、これを主要経費別に区分いたしますと、科学技術振興費九千七百四十九万五千円、遺族及び留守家族等援護費百七十三万一千円、貿易振興及び経済協力費八十二億九千百八十八万六千円、その他の事項経費二百五十億一千百十五万五千円であります。また組織別に大別いたしますと、外務本省百七十六億二千六百六十二一万六千円、在外公館百五十七億七千五百六十四万一千円であります。  ただいまその内容について御説明いたします。  第一、外務本省一般行政に必要な経費二十八億八千三十五万五千円は、外務省設置法に定める本省内部部局及び付属機関である外務省研修所外務省大阪連絡事務所において所掌する一般事務処理するため必要な職員千五百三十八名の人件費及び事務費等であります。  第二、外交運営充実に必要な経費六億七千万円は、諸外国との外交交渉により幾多の懸案の解決をはかり、また、各種条約協定締結する必要がありますが、これらの交渉わが国に有利に展開させるため本省において必要な工作費であります。  第三、アジア諸国に関する外交政策樹立及び賠償実施業務処理等に必要な経費二千二百十七万三千円は、アジア諸国に関する外交政策企画立案及びその実施総合調整並びに賠償実施の円滑かつ統一的な処理をはかるため必要な経費であります。  第四、対米加外交政策樹立に必要な経費五千五百五十三万八千円は、対米加外交政策企画立案及びその実施総合調整等を行なうため必要な経費であります。  第五 中南米諸国に関する外交政策樹立に必要な経費九千百四万一千円は、中南米諸国に関する外交政策企画立案及びその実施総合調整等を行なうため必要な経費社団法人ラテンアメリカ協会補助金三千七百七十三万三千円、アラサツーバ学園寄舎増築補助金一千八十万円、カンポグランデ日本人会館建設補助金一千三百三十七万七千円及びメキシコ日本人学校校舎難役補助金二千七十三万六千円であります。  第六、欧州諸国に関する外交政策樹立に必要な経費二千三百十三万五千円は、欧州諸国に関する外交政策企画立案及びその実施総合調整等を行なうため必要な経費社団法人北方領土復帰期成同盟補助金五百万円であります。  第七、中近東アフリカ諸国に関する外交政策樹立に必要な経費一千二百二十万円は、中近東アフリカ諸国に関する外交政策企画立案及びその実施総合調整等を行なうため必要な経費社団法人アフリカ協会補助金五百二十万円及び財団法人中東調査会補助金二百四十万円であります。  第八、国際経済情勢調査及び通商交渉準備等に必要な経費四千六百二十五万円は、国際経済に関する基礎的資料を広範かつ組織的に収集し、これに基づいて国際経済を的確に把握するための調査及び通商交渉を行なう際の準備等に必要な経費であります。  第九、条約締結及び条約集編集等に必要な経費一千九百九十万三千円は、国際条約締結及び加入に関する事務処理並びに条約集編集条約典型の作成、条約国際法及び先例法規調査研究等のため必要な事務費であります。  第十、国際協力に必要な経費三億八千六百三十六万八千円は、国際連合等国際機関との連絡、その活動調査研究等に必要な経費及び各種国際会議わが国代表派遣し、また、本邦国際会議を開催するため必要な経費財団法人日本国際連合協会補助金一千九百六十万五千円、社団法人日本エカフェ協会補助金一千九十四万四千円及び財団法人日本ユニセフ協会補助金四百七十一万七千円であります。  第十一、情報啓発事業及び国際文化事業実施に必要な経費十二億三千百九十九万九千円は、国際情勢に関する国内啓発海外に対する本邦事情啓発及び文化交流事業等を通じて国際間の相互理解を深めるため必要な経費並びに財団法人国際学友会補助金六千三十九万八千円、財団法人国際文化振興公補助金一億五千四百六十九万三千円、財団法人国際教育情報センター補助金一千二百六十三万四千円、社団法人日本新聞協会国際関係事業補助金二千五百万円及び啓発宣伝事業委託費三億三千六百九十四が九千円であります。  第十二、海外渡航関係事務処理に必要な経費一億百七万三千円は、旅券法に基づき、旅券発給等海外渡航事務処理するため必要な経費及び同法に基づき事務の一部を都道府県に委託するための経費四千九百九十七万五千円であります。  第十三、海外経済技術協力に必要な経費四十七億三千九百十二万六千円は、海外との経済技術協力に関する企画立案及びその実施総合調整を行なうため必要な経費コロンボ計画等に基づく技術者受け入れ派遣日本青年海外協力隊派遣各種技術訓練センター設置並びに医療、農業及び一次産品開発のための技術協力実施に必要な委託費四十二億一千四百五十五万四千円と、海外技術協力事業団交付金五億八百二十九万二千円等であります。前年度に比し十七億一千九百十五万二千円の増加は、主として海外技術協力実施委託費及び海外技術協力産業団交付金増加によるものであります。  第十四、海外技術協力事業団出資に必要な経費三億円は、海外技術協力事業団日本青年海外協力隊訓練センター建設等に要する資金として同年業団に対し出資するため必要な経費であります。  第十五、国際分担金等支払いに必要な経費二十三億三千三百四十六万一千円は、わが国が加盟している国際連合その他各種国際機関に対する分担金及び拠出金を支払うため必要な経費であります。  第十六、国際原子力機関分担金等支払いに必要な経費九千七百四十九五千円は、わが国が加盟している国際原子力機関に支払うため必要な分担金及び拠出金であります。  第十七、貿易振興及び経済協力関係国際分担金等支払いに必要な経費二十八億五千六百五十三万七千円は、わが国が加盟している貿易振興及び経済協力関係各種国際機関に対する分担金及び拠出金を支払うため必要な経費であります。  第十八、移住振興に必要な経費十七億五千六百三十四万四千円は、移住政策企画立案及び中南米諸国等に移住する者五百名を送出するため必要な事務費並び移住者渡航費交付金二億五千二百九十四万三千円及び海外移住事業団交付金十四億五千九百五十万四千円等であります。  第十九、旧外地関係軍務処理に必要な経費百十九万七千円は、朝鮮、台湾、樺太及び関東州等旧外地官署所属職員給与恩給等に関する事務処理するため必要な経費であります。  第二十、旧外地官署引揚職員等給与支給に必要な経費百七十三万一千円は、四十二年度中の旧外地官署所属の未引揚職員留守家族及び引揚職員に対し俸給その他の諸給与を支給するため必要な経費であります。  在外公館についてでありますが、第一、在外公館事務運営等に必要な経費百二十一億七千八百九十三万四千円は、既設公館百二十三館三代表部千百三十六名と四十二年度中に新設予定の在ネパール及び在マダガスカル両大使館、在カラチ及び在ハバロフスク両総領事館、在オークランド領事館設置のため新たに必要となった職員十九名並びに、既設公館職員増加五十六名計千二百十一名の人件費及び事務費等であります。  第二、外交運営充実に必要な経費十三億三千万円は、諸外国との外交交渉わが国に有利な展開を期するため在外公館において必要な工作費であります。  第三、輸入制限対策等に必要な経費三億四千九百九十七が三千円は、諸外国におけるわが国商品輸入制限運動等に対処して啓蒙宣伝運動実施する等のため必要な経費であります。  第四、対外宣伝及び国際文化事業実施に必要な経費三億十五万五千円は、わが国と諸外国との親善に寄与するため、わが国の政治、経済及び文化等の実情を組織的に諸外国に紹介するとともに、国際文化交流を行なうため必要な経費であります。  第五、在外公館営繕に必要な経費十六億一千六百五十七万九千円は、在フランス大使館及び経済協力開発機構日本政府代表部合同事務所ほか二カ所の継続工事その他事務所公邸の諸工事に必要な経費と在オーストリア大使館ほか三カ所の公邸並びに在セネガル大使館及び在釜山総領事館公務員宿舎不動産購入費等であります。  以上がただいま上程されております外務省所管昭和四十二年度予算大要であります。慎重御審議のほどお願い申し上げます。     ―――――――――――――
  7. 北澤直吉

    北澤主査 次に、文部省所管について説明を、求めます。剱木文部大臣
  8. 剱木亨弘

    剱木国務大臣 昭和四十二年度文部省所得予算案につきまして、その概要を御説明申し上げます。  まず、文部省所管一般会計予算額は、五千八百四十五億八千六百二十九万円、国立学校特別会計予算額は三千二百七十二億八千六百四十八万一千円でありまして、その純計は六千二百二十九億六千九十二万八千円となっております。  この純計額を前年度当初予算と比較いたしますと、およそ八百三億円の増額となり、その増加灘は一四・八%となっております。  以下、昭和四十二年度の予算案におきまして特に重点として取上げました施策について御説明申し上げます。  まず第一は、教育費負担軽減育英奨学事業拡充であります。  このことにつきましては、かねてから努力を重ねてまいったところでありますが、明年度は特に父兄負担軽減に留意し、教材整備促進教科書無償推進学校給食普及充実就学援助強化遠距離通学費補助拡充につとめましたほか、地方公共団体超過負担の解消を促進し、育英奨学事業拡充を行なう等の施策を進めることといたしました。  そのうち、まず教材整備促進につきましては、国庫負担対象となる教材基準の設定を行ない、当該教材基準の七〇%までの充実を十カ年計画整備充足することといたしました。また、教科書無償につきましても、国、公、私立学校を通じて、中学校及び特殊教育諸学校の中学部の第二学年までの児童、生徒に対して教科書の無償給与の措置を拡大することにいたしました。  次に、就学援助強化につきましては、要保護、準要保証児童生徒の就学奨励として、通学用品費を新たに支給品目に加えるとともに、学用品費の補助単価の改訂を行なうことにいたしております。  次に、遠距離通学費につきましては、対象人員を一万人増加いたしまして、その拡充につとめました。  次に、地方公共団体超過負担の解消の促進につきましては、公立文教施設の単価の引き上げ及び構造比率の改善に特に配慮し、また、義務教育費国庫負担金の給与費のうち、政令都府県の給料定額の是正をはかることといたしました。  また、育英奨学事業拡充につきましては、大学院奨学学生及び大学特別奨学生の増員を中心として引き続き事業拡充し、また、大学特別奨学生で私学に進学した者について特別な配慮を加える等、全体で二十五億円余を増額いたしております。  第二は、義務教育の充実と後期中学教育等の拡充整備であります。  まず、僻地教育の振興につきましては、僻地の教育環境の改善等のため、引き続き各種の施設、設備の充実をはかりましたほか、給水施設の補助、眼科医の派遣、一、二級僻地学校給食の特別措置等、新しい試みを加えて、総合的かつ重点的に施策推進することといたしております。  次に、特殊教育の振興につきましては、養護学校及び特殊学級の計画的な普及と就学奨励費の内容の改称のため必要な経費増額いたしますとともに、特殊学校担当教員の待遇の改心を行ない、また、社会生活への適応性を一そう助長するため、職業教育の充実をはかり、さらに特殊教育の振興に資するため、新たに特殊教育の総合的調査、特殊教育推進地区の設置及び心身障害児総合実態調査を行なうことといたしております。  次に、後期中等教育の拡充整備につきましては、引き続き定時制教育及び通信教育の振興をばかるとともに、新たに定時制通信制併置高等学校を設置し、高等学校教育の多様化に対処するための施設及び設備等に必要な経費を計上しております。  次に、理科教育設備及び産業教育の施設設備の充実につきましては、引き続き新基準による計画的な改善充実を行なうことといたしましたほか、自営者養成のための農業高等学校の整備をはかり、また、新たに高等学校の衛生看護科教育に対し施設費の補助を行なうことにいたしております。  次に、学級規模の適正化と教職員定数の充足の推進につきましては、学級編制の基準を原則として、小・中学校いずれも最高四十六人に改めるとともに、特殊学級の増設、充て指導主事の充実等のための増員をはかっております。また、給与改善につきましては、管理職手当、特殊学級担当教員の給料調整額、旅費の増額等を行ないました。  次に、幼児教育の重要性にかんがみ、父兄の要望にこたえて、引き続き幼稚園の普及整備のために必要な助成強化いたしますとともに、所要の教員を確保するため、公、私立大学及び短期大学の教員養成課程に対する設備の補助を行ない、また、新たに私立幼稚園に対し施設費の補助を行なうことにいたしました。  また、公立文教施設につきましては、引き続き既定計画の線に沿ってその整備を進めることとし、公立文教施設整備費二百九十五億円を計上いたしました。  このほか、前年度に引き続き、教育課程の改善、道徳教育及び生徒指導の充実並びに教職員研修及び研究活動推進に必要な諸経費を計上いたしております。  第三は、大学の整備拡充と高等専門学校の拡充であります。  国立学校特別会計予算につきましては、前年度の当初予算額と比較して三百十九億円の増額を行ない、約二千二百七十三億円を計上いたしました。その歳入予定額は、一般会計からの繰り入れ千八百八十九億円、借り入れ金二十、五億円、付属病院収入二百四十七億円、授業料及び検定料五千六億円、学校財産処分収入二十八億円、その他雑収入二十六億円であります。歳出予定額の内訳は、国立学校運営費千七百、五十七億円、施設整備費四百九十八億円などであります。  国立大学の拡充整備につきましては、まず、大学入学志願者の急激な増加を予想して、大学及び短期大学の入学定員の増加をはかり、三千九百八十五人の増募を行なうことにいたしました。このため大学について、二学部の創設、三文理学部の改組、三十一学科の新設及び十九学科の拡充を行ない、短期大学について、一医療技術短大の創設及び一学科を新設することにいたしました。  なお、昭和四十三年度から九州芸術工科大学を設置することとし、これが準備のため必要な経費を計上いたしました。  次に、教官当たり積算校費、学生当たり積算校費、設備費等各大学共通の基準的経費につきましても、引き続きその増額をはかっております。  また、新制大学における大学院修士課程の拡充、付属病院、付置研究所の整備につきましても特段の配慮をいたしておりますが、特に付属病院につきましては、三公立医科大学付属病院の国立移管、五歯学部付属病院の創設及び病院教官の増員等の措置を講じております。  次に、専門的技術者育成のため、一工業高等専門学校の創設及び既設六校に学科を新設する予定であります。このほか、船舶職員の資質の向上をはかるため、既設の五商船高等学校を転換して、商船高等専門学校を創設することにいたしました。  次に、国立学校施設の整備につきましては、財政投融資資金及びその他の収入を財源の一部に含めて予算額を四百九十八億円と大幅に増額し、一段とその整備促進をはかることといたしておりますが、なお、施設整備の円滑な実施をはかるため、後年度分について、百八十五億円の国庫債務負担行為を行なうことができることといたしております。  第四は、私学の振興であります。  私立学校の振興は、今後の文教政策の重要な課題であり、その基本的な助成方策につきましては、なお慎重に検討中でありますが、現下の状況等にかんがみ、昭和四十二年度の予算案におきましても、特に重点として取上げたところであります。  まず、私立学校振興会に対する政府出資金及び財政投融資資金からの融資につきましては、合わせて二百六十億に拡大し、私学全般の施設の改善充実に充てることといたしました。  また、私立大学理科等教育設備整備助成及び私立大学研究設備整備助成につきましても、合わせて四十四億円を計上し、前述の私立大学特別奨学に関する特別な配慮、その他私立幼稚園に対する施設費の補助の新設等の施策を講じております。  第五は、家庭教育、社会教育の振興と青少年の健全育成であります。  宵少年の教育問題は、近時ますますその重要性を加えており、これに対処するためには、学校教育及び社会教育の両面にわたって深く意を用いるべきところであると存じます。  まず、社会教育は、国民の教養の向上に大きな役割りを果たすものであり、その普及振興は、学校教育の充実とともに、きわめて重要なものであります。このため社会教育指導者の養成確保に一段と意を用い、社会教育主事等の講習会のほか、各般の指導事業充実強化につとめ、国立社会教育研修所の整備充実を行なっております。  また、特に家庭教育を重視して家庭教育学級を充実強化する等の措置を講じました。  次に、青少年に団体宿泊による研修、訓練の場をより多く与えるため、国立第六青年の家を新設いたしますとともに、公立青年の家につきましても、その機能の拡大を考慮して、整備を進めることといたしております。また、青少年の団体活動を一そう促進するため、青少年団体等の育成も強化したいと考えております。  このほか、青少年に対する映画、テレビの影響力にかんがみ、積極的に優良な映画、テレビ番組の製作の奨励及び普及を促進することといたしました。  また、社会教育の施設につきましては、再少年施設のほか、公民館、図書館、博物館等の施設、設備の整備を一そう推進することといたしております。  次に、体育、スポーツの普及につきましては、広く青少年一般にスポーツを普及奨励し、その体力の向上をはかるため、水泳プール、体育館、運動場及び柔剣道場等の整備促進し、また、スポーツテストの普及、スポーツ教室等の実施、スポーツ団体・行事の助成、指導者養成等について、引き続き必要な経費を計上いたしております。このほか、登山研修所の設置、オリンピック記念青少年総合センターの建物の整備、本年度開催されるユニバーシアード東京大会の実施のための経費、及び昭和四十七年度開催予定の札幌オリンピック冬季大会の準備経費等、それぞれ必要な予算を計上いたしております。  次に、学校給食普及充実につきましては、完全給食の実施を目途として、引き続き単独校及び共同調理場の給食施設、設備の充実をはかるほか、夜間定時制高等学校の食堂の設置、栄養職員増員等の施策を行なっております。さらに小麦粉及び脱脂粉乳につきましては、従来のとおり補助を継続することとし、所要補助金を計上いたしております。  第六は、学術研究の推進であります。  わが国の学術の水準を高め、ひいては国民生活の向上に寄与するため学術研究の推進につきましては、引き続き努力をいたしております。  昭和四十二年度予算につきましては、まず、科学研究費の拡充を行ない、特にガン特別研究費は一段と増額をはかっておりますほか、引き続き研究所の新設、整備を行ない、また、ロケット観測、南極地域観測及び巨大加速器の基礎研究及び建設に伴う準備研究等につきましても、それぞれの目的に応じて必要な経費を計上いたしました。  なお、在外研究員の派遣のための経費についても増額計上いたしております。  第七は、芸術文化の振興であります。  すぐれた芸術を広く国民に普及し、また、わが国の伝統的な文化財を保存いたしますことは、民生活の向上の上からもきわめて必要なことであります。  まず、新しい試みとして、新人芸術家の開発育成につとめ、地方文化施設費の補助及び青少年のための芸術活動推進等を行なうために必要な予算を計上するとともに、芸術団体に対する助成を行ない、さらに国立の美術館、博物館の整備を進めることといたしております。  次に、文化財保存事業につきましては、文化財の修理、防災施設の整備等を一そう充実することといたしておりますが、特に最近国土開発の急速な進展に伴ってその必要性を痛感されております史跡、埋蔵文化財の保護につきましては、特段の配慮を加え、平城宮趾の買い上げ及び発掘調査につきましても必要な予算を計上することといたしました。さらに、無形文化財の保存活用等につきましては、引き続きその強化をはかることとし、わが国古来の無形文化財である歌舞伎、文楽等の保存と振興をはかるための国立劇場に対する助成につきましても、万全を期するよう配慮いたしました。  第八は、教育、学術、文化の国際交流の推進であります。  まず、外国人留学生教育につきましては、その受け入れ体制の強化をはかっております。また、国際学術文化の交流を促進するため、新たに日米間の文化教育に関する人物交流の促進をはかるとともに、引き続き教授、研究者の交流を推進することといたしました。  なお、最近、特にアジア、アフリカ諸国に対する教育協力の要請が高まってまいりましたおりから、教育指導者の招致、理科設備の供与及び指導者の派遣等を行なうために必要な経費を計上いたしております。  さらに、ユネスコ国際協力につきましては、国内ユネスコ活動普及促進下葉の実施国際大学院コースの継続等、一段とその事業推進をはかることといたしました。  以上のほか、沖繩の教育に対する協力援助費につきましては、これを大幅に増額し、別途総理府所管として計上いたしております。  以上、文部省所管予算案につきましてその概要を御説明申し上げた次第でございます。     ―――――――――――――
  9. 北澤直吉

    北澤主査 労働省所管についての説明は、来たる二十一日に聴取することといたします。     ―――――――――――――
  10. 北澤直吉

    北澤主査 引き続いて、昭和四十二年度一般会計予算中、外務省所等について質疑に入ります。  質疑の通告がありますので、順次これを許します。佐藤觀次郎君。
  11. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)分科員 三木外務大臣にお尋ねするのですが、御承知のように、いま世界で非常に大きな問題になっているのは軍縮会議とそれから拡散防止の問題であります。近く外相も行かれるらしいのですが、実は先日ウイーンに行きまして、ちょうど法眼大使とベルグラードの曽野大使も来ておられまして、いろいろ話したのですが、日本は一体どういう方針でおやりになるのか。この間、野党の諸君にも会われたようでありますけれども、これは非常に重要な問題でありますので、まだ日本の意見が固まっていないかもしれませんが、重要な問題でありますから、時間の都合がありますのであまり詳しいことはどうかと思いますけれども、ひとつ簡単に御説明願いたい。
  12. 三木武夫

    三木国務大臣 佐藤君も御存じのように、まだ米ソ案というものは固まってはいない。各国のいろんな意見、これをアメリカもソ連もいろいろ意見を調整しておるさなかであります。日本もまた、大町特使がワシントンに参りまして、日本の希望も日本の見解も十分に伝えて、先方も十分考慮しようということになったようであります。詳細は大野特使が帰ってきて報告を受けたい。しかしこの条約の基本は、核兵器の拡散を防ごう、いま五カ国が核兵器を持っておるわけでありますが、第六、第七と核兵器を持つことが次第にふえていくことが核戦争の危険を増大するから、これを防ごう。この根本のねらいは、これはむろん悪いものではない。しかしその防ぐについて、日本は防ぐことはいいけれども、また持っておる国も一ぺんには、中共もフランスもちょっと入らないのではないかという情勢でありますから、核軍縮、――急激な軍縮は世界の軍事バランスにも影響しますからできませんが、だんだんとやはり核兵器を減らしていくという努力はしなければいかぬ、そういう意図がこの条約の中で明らかにさるべきである。  それからまた平和利用については、日本も原子科学あるいは原子力産業が相当発展しておりますから、将来発展していくこういう原子力産業の発展を阻害することがあってはならぬ。原子科学の発展のための研究、原子力産業の発展のための開発、こういうものがこの条約によって阻害をされないだけの十分な保証は取っておきたい。これが日本のいま核拡散防止条約に対する基本的な態度であるわけであります。
  13. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)分科員 問題になっておりますのは、中共を除いたのでは、拡散の防止は米ソだけではどうも不安じゃないかという声もあるのですが、これはフランスの問題にもなると思いますが、この点は外相はどのように考えておられますか。またあとで説明を求めますけれども、どういうようにお考えになっておりますか、伺いたい。
  14. 三木武夫

    三木国務大臣 これはもう中共とかフランスとか、核兵器を持っておる国は当然この条約の中に入ってもらうことが非常に必要であります。だから、これはわれわれもそうだし、世界もまたそれを望んでおると思います。しかし、どうもいままでの言動からして中共もフランスも、残念なことではありますが、入ってこない公算が多い。しかし、これはあきらめないで、できるだけ入るような努力を続けていくべきである、そういうふうに考えております。
  15. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)分科員 実は先月の末に私らのホテルで一緒におられたソ連の代表団の団長ぺーべさんという人と副団長の人と、たまたま私どもの団長の大石君と私の二人、四人で、実は秘密と言ってはおかしいのですが、いろいろ意見の交換をしたのですが、そのとき、向こうのほうもいろいろな話をしたのですが、その中で、どうも中共の核問題については、ソ連側の言うのには、そうたいしたものではないのじゃないか、そういうニュアンスを聞いたのです。そこでその問題は、これは日本では多少過大評価している点もあるのですが、ソ連側ではそう過大評価していないような点もあるということと、もう一つは、ドゴールのフランスでは、これはいろいろ意見を言って一緒にやらぬような傾向もあるが、こういうような傾向になってくると核のないような日本なんかは――日本と西ドイツが問題になっておるのですが、どうもソ連とアメリカだけが、自分だけが保有しておって、どんどん自分のほうでは核の増産をやる、その間に非常に大きな差ができて、そして持ってない国がますます危険にさらされるというような、こういう批判論も一面にあるのですが、その点はどういうようにお考えになっておられますか、お伺いしておきます。
  16. 三木武夫

    三木国務大臣 いま五カ国が核を持っております。その保有国を押えようというのですから、これはちょっと優位な地位に立つことはいなみがたいと思います。それはけしからぬから、それならみな核兵器を持とうじゃないか、けしからぬ、みな持て、こういう立場もあり得ると思いますが、私どもはそういう立場はとらぬ、不徹底でも五カ国に押えておいて、そうしてこれ以上次々に核兵器を持っておる国がふえていくことはやはり核戦争の危険を増大するのではないかというので、いま佐藤君の御指摘のように、どうも米ソはけしからぬ、われわれも持とうではないかという考え方を私どもはとりたくない。まず不徹底であっても五カ国で押えて、これを軍縮をやらせながら、ほかの第六、第七の国をつくらない、このことが核戦争防止の一歩前進ではないか、これがわれわれの考え方の立場でございます。
  17. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)分科員 これは外交上の秘密になるかどうか知りませんけれども、現在御承知のように法眼大使が国際原子力機関の理事としてウイーンにおられるのですが、そういう点について本省のほうの大臣なんかからは、この方針でいけというような、そういう指令を出しておられるのかどうか。これは雑談程度の話で終わったんですが、そういうような情報なんかもいろいろ入っていると思うのですが、そういう点については、大臣はどのようにお考えでおられるのか、これはあとでもう二、三点伺いたいことがありますけれども、その点をちょっと伺ってみたいと思います。
  18. 三木武夫

    三木国務大臣 これは重大な政策決定でありますから、私の考え方、これはやはり各在外公館に伝えて、その考えに従って在外公館は動くべきものである、その情報は絶えず流しておるわけでございます。
  19. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)分科員 これからの問題でありますから、その問題はまた大臣が帰られてから、また何かの機会にお尋ねしたいと思うのです。あと川崎委員からもいろいろ質問があると思いますが、私が最近ヨーロッパへ行きましていろいろ感じたことについて、四、五点伺いたいと思うのです。私どもが外国に行って、出先の大使館や公使館あるいは総領事館の人などにも非常にお世話になりますが、十五年前に行ったときとは雲泥の差があって、非常にうまくやっていただいておるわけです。その中で、いまの外務省から出ておる大使について、定年制の問題がいま日本で問題になっておりますが、一体大使などについて定年制をどういうように考えていかれるのか、いろいろ先輩、後輩という問題があるし、同時に私たち昔、われわれの学生のころには、たとえば石井菊次郎とかあるいは林権助とか、古い大使がなかなか長い閥権限を持ってやっておられたような思い出があるのですが、いまの大使はどうも何か事務的なことをやるだけの大使のような感じを受けるのです。そういう点については、もちろん大臣は、いま政党内閣でございますから、政党から出てくる人がなるので、本省の大使なんかやった人が大臣になるようなことがなくなったんですが、そういう点の考え方は、まあ三木外務大臣は初めて外務大臣になったわけですが、そういう点の御意見なり、何かそういうことについてお考えを持っておられるかどうか、ちょっと伺っておきたいと思います。
  20. 三木武夫

    三木国務大臣 佐藤君御承知のように、大使は特別職になっておるわけであります。この大使に一定の定年制をしくのはどうかということについては、なかなか疑問な点もあるのです。いろいろ諸外国との関係もありますしね。したがって一定の年齢で定年制を大使にしくことがいいか悪いかということは、これはやはり検討しなければならぬ問題である。しかし、言えることは、大使の中にも有能な者と、必ずしも有能と言えない――言えないといってはいけませんが、だいぶんくたびれておる人もおるわけですから、そういう人事の交流を――人事の沈潜を来たさないようにやるということが実際的ではないか、ある一定の定年制で、それ以上はみなだめだというよりかは、まあ大使の活動なども見て、人事の停滞を来たさないようなやり方というのが実際的ではないか、こう考えておるわけでございます。
  21. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)分科員 いま委員長席におられる北澤さんも外務省の出身でありますが、いまアフリカに大使が非常にたくさんふえたので、いまでは大使も五等大使まである。三等大使ということは聞いたことがありますが、五等大使ということは用いたことがないのですが、こういうように大使がたくさんできて、そうしていろいろその時に応じ、変に応じて仕事をやっておられるのですけれども、私たちが考えるところでは、どうも行き詰まっているのではないか、先が行き詰まっているのではないかということを感ずるのです。というのは、実は私ども大蔵委員を長くやっておるのですが、大蔵省の役人は五十五、六で局長、次官になって、社会に出て相当活躍する。ところが、外務省の人は六十ぐらいまでおって、まあ門脇大使がいまはホテルニューオータニの社長か会長をやっておられますけれども、どうもよそに使い道がないような形になってしまう。そうして中堅の法眼君、これは若いと思ったら五十七、八らしいのですが、ああいうような優秀な人でもなかなか上に、第一等の大使館に行けないような状態があって、外務省だけが、特別職でありますけれども、各省に比べて非常に年齢的にもバランスがくずれているように思うのです。そういう点について、この間いろいろ懇談の席で、われわれは議員ですからいろいろな各行のことを知っておるのですけれども、どうも局長クラスの中で、外へ出て活躍できる年齢というのは、大体五十五くらいまでならまだいける、六十過ぎるとちょっとむずかしいように思うのですが、そういうような人事の停滞というのがあるんじゃないかというような気もするのです。こういう点について、いまの相当年配の大使、たとえば荻原大使とかあるいはブラジルへ行っているああいう人たちに会って話をしているんだけれども、そういう人がいいとか悪いとかいうのでなくて、そういう問題について、いま中堅といわれる人でさえ、五十五くらいの人が、外務省には大使が多いのですが、こういう点について、初めてあなたは外務大臣になられて、そういうような何か方針を立てておられるのかどうか、またそういうことを何か積極的に一ぺんやるべきじゃないかというような気もするのですが、その点はどのように考えておられますか、伺いたい。
  22. 三木武夫

    三木国務大臣 私も、外務省に入って、人事が停滞しておるという感じを非常に受けました。相当思い切った人事の異動を考えておりますが、ほかの省とは違って、一ぺんにはできない。アグレマンも要るだろうし、任期もあまり短いと――今度相当な異動をやはりいま計画をしておるわけです。人事の停滞、これはやはり外務省の人たちにも、あまり先がつかえておる状態はよくないですから、そういう点はやろうと思いますが、しかし、どうも私は、各行がみな若くして次官になって、次の第二の人生というものを在任中に考えること一これはやはり、ひとつみな考えてみる問題を含んでおるのではないか。だから一生公務員として、そしてリタイアしたら恩給、こういうふうな考え方もひとつ考えてみる必要があるのではないか。若くして次官になってしまって、次の人生をみな役人が考える、こういうこともいいのか悪いのかという問題は、やはり一つの問題点である。これは一外務省の問題でもないから、国会議員の方々も、これは御検討に位する問題である、こう考えております。
  23. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)分科員 もう一つ伺いたいと思うのですが、感ずることは、これから外交官の中で、これは今度たしかスペイン大使からタイのほうに行かれた関さん、あれは経済局長をやっておられたのですが、あの人は一家言を持っていて、いろいろな議論をしたのですけれども、外務省の中で経済的な、貿易のベテランというのはどうもおらぬ傾向がある。それはなぜかというと、いまちょうど一等書記官なんかでは大蔵省や通産省から出てきて、部下のようになってやっておられるのですけれども、これは実際は外務省のはえ抜きの人から、そういう経済外交がやれるような人を養成すべきじゃないか。何か借りもののような形でおれば、当然外務省の中では、大使館におってもたいした仕事ができないような形が出てくる。それだから、そんなことを言っちゃ、これは外務省の人がたくさんおられるのですけれども、どうも世間では働きが鈍いような感じを持たれると思うのです。そういう点でやはり外務省自然、大使の中にも、経済的な、貿易のできるような大使ができるようにするには、やはり外交官の中からそういうようなことのできるような道をつくっていかなければ、なかなか簡単にはできない。だから、いまこの関係を見ると、御承知のように、大蔵省、通産省それからまた運輸省の人が来て、それでいろいろな仕事をやっておる、大使や公使の補佐をやっておるのですが、そういうようなことをしても、何だか借りものを受けておって、上だけは大使がおっても、実際はそういうような、各省から来ておる人が仕事をやるような形になってくると思う。それだから外務省は弱い。これは北津さんに悪いけれども、外務委員長をやったり、田中さんのように外務政務次官をやると、落選するというようなうわさをされる。外交というのは非常に重要なことで、これは日本では昔から――昔の外務省の大使をやった人は、実績を残した人が相当あると思うのです。だけれども、これから日本は経済外交とか、経済的なことをやらなければならぬという意味で、やはりこういうときに転換をすべきじゃないかと思うのですが、そういう点はどういうふうに考えておられるか、伺っておきたい。
  24. 三木武夫

    三木国務大臣 いま国際政治というものは非常に専門化されて、背よりかこまかくなったのです。そういう点で専門的な知識というものが要って、各省から大使館に出てくるような、そういう必要性というものも確かにあるわけですが、しかし外務省の守備範囲というものは非常に広くなっておる。昔よりもずっと広いわけですから、外務省研修制度というものは検討を加えたい。もう少し広くして、いろいろな問題に、なるべく各省の手をわずらわさなくてやれるならば、それにこしたことはないのですが、いまのような時代では、なかなか全部そういうことにはならぬと思いますけれども、外交という守備範囲はずっと広くなっておるので、その時代の変遷に即応したような外交官の養成をしなければならぬ。研修制度というものには検討を加えたいと考えております。
  25. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)分科員 それからもう一つは、これは私は、岡崎さんが外務大臣をやっておったときに私ちょうど予算委員会の理事をやっておって、いろいろ分科会で質問をしたのですが、どうも日本の外務省自体が非常に劣悪だ――ということは、予算の取り方が少ない。だから外国へ行っておる者は、これは非常に不自由なことをやっておる。公務員のベースアップの問題もあるけれども、非常に上不自由な生活をしておるというようなこと、特にアフリカだとかタイなんかへ行くような、ああいう暑いところで仕事をする人に対して、私は、非常に気の毒な感じがすると同時に、子弟の教育ということが非常に問題になっておると思うのです。そういう問題について、三木外務大臣はよそから来ておる、何か外務省に足跡を残す必要があるのじゃないかという気もするのですが、そういう問題、これはもう日本の公務員の問題についても、給与を上げよということをわれわれも主張する中に、特に外務省の大使や公使、外国へ行くような人に対しては、やはり待遇をもっとよくすべきではないかと存じます。そういうような感じを行くたびに思うのですが、そういう点について、何か抜本的にもう少し検討する必要があるのじゃないか。これは、きょう官房長も来ておられますが、そういう点、あるいは具体的に外へ出る者についてはもっと思いやりがあってもいいのじゃないかという感じも受けるのです。これは一般的にどうか知りませんが、私は、大使、公使ばかりでなくて、せっかく外交官に希望を持って、行っても中途で気持ちが挫折するような場合もありはせぬかという気もするのです。これは大臣でなくても、官房長でもけっこうですが、この辺についてどういう方法を講じておられるか、伺いたいと思います。
  26. 齋藤鎮男

    ○齋藤(鎮)政府委員 佐藤先生が指摘されましたことは、まさにわれわれ目下努力中のことでございまして、大蔵当局におかれましては、特にことしにつきましては、そういう点で非常に協力をいただいております。  まず第一点は、子弟教育のことでございますが、昨年学校を六校、主としてアジア地域に設けましたが、ことしはそこの先生とか、あるいはその先生の旅行とか、あるいはその先生に対する謝礼といった問題について、かなりな金を見積もっていただいております。また子弟を日本に置いていく方々のためには子弟寮というものを、これは現在もございますが、これを拡大をしたものを目下延段中でございまして、ことしの末にはこれが利用できるようになるわけでございます。その他、宿舎、あるいは大使、公使につきましては公邸について、これは借家で不自由な生活をするのでなくて、もっと権威のある立場に立った公邸なり事務所なり、あるいは宿舎を持てるようにということで、これもことしの予算にかなり多額に盛られております。また、たとえば医者でございますが、低開発地におきましては十分な医療を行なうことができませんので、従来ナイジェリア及び中近東に医者を一人ずつ置いておりますけれども、さらにこのたびアフリカのナイロビに一人ふやしました。医療の点についても今後とも意を用いたい、かように考えております。あるいは熱帯地にあってレクリエーションのない地域につきましては、海岸に家を借りるとか、いろいろそういう点を努力しております。
  27. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)分科員 私たちは外国へ行っての思いつきの面もありますけれども、行くたびにそういう気を持たされる。内容はどういうことか知らぬけれども、どうも暑いところや寒いところへ行くようなことについてはいろいろ問題があると思うのです。ただこういうようなことについて、これは官房長からもう一つ聞きたいのですが、何か一貫した、たとえば英語の系統なら英語の系統のほうのそういうところへ行くのか、あるいはスペイン語ならスペイン語の関係で行くのか、ドイツならドイツ、フランスならフランス、そういうような一定の基準があって転任させるのか、そういう人事の交流というのはどうなっているのか、これを伺いたいと思います。
  28. 齋藤鎮男

    ○齋藤(鎮)政府委員 基準と申しますものはいろいろございまして、そういったものを総合してやっておるわけでございますが、たとえば英語の系統につきましても、アメリカとイギリスでは非常に違っておりまして、この人事を交流する、あるいはラテン系の国とアングロサクソン系の国、これも風俗、羽旧慣あるいはやり方も非常に違いますので、できるだけ交流したい。また最近のように低開発地勤務というものが非常に多くなりますと、単にその健康上の問題だけでなくして、低開発地で勤務することそれ自体が外交官の養成のためにきわめて重要であるということで、低開発地と先進国との間の交流を交互にやるわけにまいりませんので、ある人については不公平はございますけれども、できるだけそれにつとめるということで、われわれは昔のように、ある地域の専門家ということは維持しながらも、できるだけほかの地域の風も吸わせるというふうに努力しております。
  29. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)分科員 同僚の川崎委員も時間を急がれておりますから最後にしますが、核拡散防止については、ヨーロッパでも西独の立場とアジアの日本の立場というのは非常に大きな問題になるということを言っておりましたから、これは外務大臣、近々に外国へ行かれるらしいから、それを十分に検討してやっていただきたいということと、同町に私、最近十八日ばかり海外へ行って感じたことは、外務省の役人、外交官についてもう少し思いやりのある態度をとってもらいたいということを痛切に感じたことが二、三ありまして、私は外務委員ではありませんが、特にいろいろな問題について感じたことがたくさんあります。まあわれわれが十五年ぐらい前に行ったときと雲泥の差がありまして、いろいろ便宜をはかってもらうような、そういうような総領事館大使館などのあれもだいぶよくなったんですけれども、まだまだ望むところの多いことがあるわけです。幸いにしてぼくら三木外務大臣とよく知っておる仲でありますから、さすが三木外務大臣はいい足跡を残したという意味で、何らかのいいおみやげを置いていってもらうようにお願いをいたしまして、私の質問を終わります。
  30. 北澤直吉

  31. 川崎秀二

    川崎(秀)分科員 先日来、国際学生スポーツ大会、ユニバーシアードというものが日本の新聞で大きく取り上げられているわけです。私はそれほど重大視しない。というのは、結局IOCの総会で、国名は北朝鮮ということにきまるだろうと思っておりますから、日本の新聞で騒ぐほどのことはないと思うのですけれども、しかしこれがためにもしも将来、ユニバーシアードを主催しておるところの国際学生スポーツ連合、FISUというのがあるのですね。それが分裂でもするようなことになると、これはひいてはメキシコ・オリンピックヘも響くことになりますので、日本の取り扱いも非常に慎重に、かつ国のたてまえ、筋というものを通していかなければならぬじゃないか。実は私も組織委員の一人をしておるので、きょうはその総会があるわけですけれども、やはり国会議員として三木外務大臣の御見解を伺って、国の正式な、北朝鮮チームの入国に対する態度というものもはっきりしておいたほうがいいと思います。これは、まあ御案内のように、下田発言というものがありまして、近ごろ下田発言が大から小まであって、なかなかりっぱなものですけれども、けっこうだと思うのです。ただそのことについて世間にも誤解があるし、北朝鮮を差別待遇しておるというふうに考えておる者もあるわけです。これは差別待遇ではないんだ、スポーツだからむしろ国に入れることは許しているわけですから、そういうことの予備知識を十分持っておられると思いますけれども、どういうわけでユニバーシアード参加について北朝鮮という呼称でなければ困るのか、朝鮮民主主義人民共和国というものでは困るというわけを、この機会に外務大臣の口からはっきり示していただきたい。これが質問の第一点であります。
  32. 三木武夫

    三木国務大臣 これは川崎君よく御存じのように、オリンピックの場合もそういう方式によったわけであります。この問題は、第二次世界大戦後分裂国家というものが出てきているわけです。国名というものはやはりいろいろと問題が起こるわけですね。やはり何らかの基準があったほうがいい、そういうことで、オリンピックの場合は、御承知のように、北朝鮮という名前を使った。一応ああいう一つの先例もありますし、そういうことで参加もしたわけでありますから、そういうあれで一つ解決できておったわけですから、今回もそういうもので解決したほうが一番妥当なのではないか。理屈を言えばこれはいろいろな理屈があると思いますが、一応オリンピックの方式というものがあって、それで一応問題を解決したんだから、今度の場合もそういう方式によったほうが妥当ではないかというのが理由でございます。
  33. 川崎秀二

    川崎(秀)分科員 スポーツと国際政治というものにはいろいろ関連があるわけで、しかし純粋にスポーツの大会を開きたいというときには、でき得る限り多くの国を参加させる、これが原則であろうと思うのであります。そういう意味で北朝鮮にもぜひ参加してもらいたいし、北朝鮮は現にFISUの加盟国なのであります。問題は、むしろ日本側で騒いではいますけれども、実はFISUが加盟をさせるときに、オリンピックのIOCの委員会のように、北朝鮮地域を代表しておるものだということで、北朝鮮にあるナショナル・オリンピック・コミッティというものを代表しているんだという形でオリンピックでは認めておるにもかかわらず、FISU総会では、どういう風の吹き回しであったか、去年加盟をしたときに、国名そのままを使わしたというところに今日の混乱があるわけなんです。FISUの役員というものは、私どももよく存じておりますが、現に学生である者もあるし、学生から成り上がってと言っては悪いが、先輩、それが大部分ですから、IOCの委員のように外交常識を十分消化しておるというもののようにも思えない。ただ非常に純粋性は、むしろIOCよりもあるでしょう。そこで、現にそれを許可したところに今日の問題が起こってきておると思うので、日本側で、その話を持ち込まれて、きょうあたり委員の一部の者には、北朝鮮が参加しないと、先般のバレーボールの大会のときと同じように、ソ連、東欧圏も参加しないんじゃないか、そうすれば、オリンピック大会をほとんどの国が参加して開いたあの大盛典のあとに、学生競技のほうは片肺とまで言わないけれども、四分の三だというようなことになれば傷がつくという意味で、返上論を言う者もあるのです。しかし、これは私どもの見通しでは、IOCで再び前回のオリンピック大会と同じように可決をされるし、またFISUの委員も、日本を除いてあとの国が全部東欧、ソ連も入ってオリンピック大会の委員にまかせるということになったのですから、先行きは、大体見通しはさまっておると思うのですけれども、開催ができないということになると、これはわれわれ関係者の責任はもとより、体育協会、さらには外務省自身もこのことで相当に責任を感じなければならぬことになるのでありまして、そういう点で、三木外務大臣にお伺いしたいと思うのですが、先般実は会議がハバナであったわけです。これは共産国とカストロは言っているわけですから、共産国的であることは間違いない。妙なところで実は会議を開くものだと、北澤君にも、東京大会を一控えてできればヨーロッパあるいは東京で開いたらどうだという提案をしておいたのですが、何だか片道はキューバで持つというようなこともあって、あんなところに行ったということで、まことに残念ではあったのです。  そこで、ぜひ伺っておきたいのは、オリンピック方式のもあるけれども、日本の政府としては、現在朝鮮半島で認めておる国は南朝鮮、韓国だけである。北朝鮮とは将来国交を開くことについての気持ちはあるけれども、現在認めておらぬ。そういう関係もあって、日本政府としては朝鮮民主主義人民共和国の代表チームという名称を認めることはできないという見解もあるのですか、それはただオリンピックの方式ということだけでなしに。
  34. 三木武夫

    三木国務大臣 スポーツにはやっぱり国際政治の介入はできるだけしないほうがいい。またそのことが国際的にいろんな波紋を描くということはスポーツ本来の目的ではない。だから、今回の場合は、そういう波紋を描くであろうということよりも、一ぺんオリンピック委員会で解決したのですから、そしてまた今度もこの問題は来月ですかのテヘランの国際オリンピック委員会の決定にゆだねようということがハバナでもきまっておるようでありますから、そういう会議の結果等も必ず何か良識のある解決がされるのではないかと思うのです。そういうことで、今回はやはりそういう問題を起こすような名前じゃなくして、オリンピックのときの方式が適当ではないか、こういう考えを持っております。
  35. 川崎秀二

    川崎(秀)分科員 いまのお答えで大体私は満足しておるわけですけれども、外務大臣としては、これはスポーツのことであるからIOCにまかす、日本の国内の運営については組織委員会にまかせて関与はしない、けれども大体その見通しとして外務省は良識のある答えが出るだろう、それはやっぱりIOCがいままでやってきたことそのままいくだろうというふうに受け取ってよろしゅうございますか。
  36. 三木武夫

    三木国務大臣 よろしゅうございます。
  37. 川崎秀二

    川崎(秀)分科員 ただ、こういうことになりまして、実はスポーツと政治の関係から、いままでの政治がスポーツに関与するということがよくないことはもとよりであります。ちょうど官房長も見られたように、インドネシアのアジア大会のときにはスカルノが台湾とイスラエルを入れないということを覆ったことのためにああなったが、政治がスポーツに関与した最近では唯一の例ですね。戦前ではヒットラーのスポーツ利用でしょう。今度の場合はこれは差別待遇をしたものでないのだということをもう少し徹底して外務大臣なり外務省が方々に説明をされる必要があると私は思うのです。何かスポーツ関係者、それも国際情勢あるいは見通しあるいは解釈等に暗い人が堂々めぐりの議論ばかりをしておったのでは、非常に国民によくわからない点がありますから、積極的に外務省は、外ではIOCやFISUに日本の立場というものも説明しておいてもらったほうがいいし、国内でも竹田氏なりあるいは大庭体協専務理事を、こういうような問題であまり混乱にならないように、外務省のほんとうの腹を、きのう新関局長は何か記者団会見をしておりましたけれども、してもらいたいと私は思うのです。そういう点でひとつ。
  38. 三木武夫

    三木国務大臣 そういうことは必要に応じていたすことにいたします。
  39. 川崎秀二

    川崎(秀)分科員 それから、これは少し専門的になりまして恐縮なんですが、何らか打開策というものもひとつ考えたらどうか。もちろん開催国の日本として譲れない点、それから国際オリンピック委員会の決定に待とうという線は譲れないでしょう。それと、たとえば北朝鮮ができる限り参加できるようなことでは、国名は、一応入国する際あるいは開会式の際におけるプラカードというものは国名を表示するわけですから、それは従前どおりということにしましても、各競技団体が主催をしておる、また各競技団体が管理しておる競技が九つばかりある。その中にまた弱ったことには、北朝鮮で加盟しておるのと朝鮮民主主義人民共和国で加盟しておるのとあるようです。陸上などは北朝鮮で加盟しておる。水泳はまた違う。こういうので、会場によってはそういうことを許したらどうかという、これは一つの妥協案ですね。そういうものも出ておりますが、そういうものに対する見解を、これは文部省の体育局と相談願わぬと困るのでしょうけれども、私が考えられる一つの方策として、どうだろうか、そういうものが世論の中にも少しずつあらわれてきておるものですから、伺っておきたい。
  40. 猪名川治郎

    ○猪名川説明員 説明員として御説明申し上げます。  ただいま川崎先生のおっしゃった点につきましては、私ども組織委員会と絶えず連絡をとっているわけでございますが、ただいままでのところ、そういう御提案のことを耳にいたしておらないのでございます。したがいまして、やや現実的なものではありませんが、ただ当初から組織委員会が申されておりますことは、たとえばいまプカラードのお話がございましたけれども、結局その国名のほかに国旗の問題に関連してのお話だと存じますので、その際の考慮といたしましては、私どもは、今般のユニバーシアード問題につきましては国名のことでございまして、国名は韓国がコリア、北朝鮮がノースコリア、これだけを申しておるわけでございます。いわゆるオリンピック方式なるものは国名が中心でございまして、自余のことにつきましては実は一つの案として考えられるかとも思うのでございますけれども、私どもといたしましては提案を受け取っておりませんし、また検討もいたしていない次第でございますので、御了承願いたいと思います。
  41. 川崎秀二

    川崎(秀)分科員 よくわかりました。これはおそらく、いわゆる公開の席上で発案的に申したのは私が初めてかもしれません。論説などではそういう、私のいま出しました案に近いものは出ていますけれども、しかしそれもなかなか困難だとは思っています。しかし、このことのためにソ連や東欧が参加しない――これはバレーボールの場合と少し違いますのは、参加国が四十数カ国、そのうち自由主義国ないし中立国に属するものは三十五、六はあるわけです。バレーボールの場合は、実は競技の実力からいいましても、共産圏のほうが、日本を除いては強いし、多いというケースだったものですから、あれは流れた。このたびは全然規模が大きいし、オリンピックに次ぐものであるし、自由国の関係国が多いという関係もありまして、私に関する限りは、見通しをそんなに暗く持っておりません。外務省の考え方と大体同じでありますが、何らか最後のところまで譲歩した、そして北朝鮮も円満に参加させ、東欧共産圏が参加しやすい形をとるならば、そういう策も考えられないではないという意味で申し上げたわけです。たいへんこまかくなりましたので、――分科会でありますからこまかくてもいいのですけれども、そのくらいのところで終えたいと思います。  他に一つだけ伺っておきたいことは、実は最近外国との貿易の各国別のものを調べてみました。これは通産大臣の所管ではありますけれども、外務大臣は先般来まで通産大臣をされておって非常に詳しいのだと思うのです。いまや百億ドル、三兆六千億円をこえる貿易の収支というものは日本にとってはきわめて大きな国家活力源ということが言えると私は思うのです。そういうのをずっと輸出入のバランスをとってみると、ものによっては非常な片貿易の国もあるし、アメリカのように二十九億七千万ドルのような大きな輸出をし、また二十六億九千万ドルのような大きな輸入をして、しかもバランスがとれておる国もある。州、ニュージーランドのように輸入ばかりで輸出はなかなか伸びないという国もあって、それぞれ特色はあるのですが、韓国やあるいは台湾、これは輸出超過で輸入はほとんどない。けれども、これは経済的に日本がいろいろな形で援助し、またインドネシアのように借款を与えておる国もあるわけですが、見のがせないのは北欧諸国ですね。これは小さな数字ではあるけれども、ノルウェー、スウェーデン、デンマーク、フィンランド、この四国は全部日本の輸出超過、ことにフィンランドなどという小さな国は二千万ドルも輸出しておる。自動車が非常に出ているわけです。そして輸入がわずかに四百二十四万ドルといいますと、輸入は輸出の五分の一なんです。それからデンマークが五千三百八十六万ドルの輸出で輸入が千五百九十九万ドル。スウェーデンが四千六百九十九万ドルの輸出で、輸入が三千三百六十万ドル。ノルウェーが輸出は一億八百九十六万ドルで輸入が二千一百三十九万ドル。これはどえらい輸出超過で、しかも小さいけれども、これから先やはり見のがせないことですが、こういう国のためには、輸出も大事だし輸入も大事なのです。両方とも大事だけれども、輸出超過で、近隣の土地ではないけれども、かなり日本とのおつき合いを十分にしてくれておるという国に対する何らかの反対給付みたいなものとして、芸術文化の交流あるいは青少年の交流に対して、外務省文部省と内閣総理府等と関係して援助してやる必要はないか。たとえばスウェーデンやフィンランドから日本へ青少年が相当来たいということを言ってきております。これは、われわれはそういうことを名誉的にしておる関係でよく知っておるわけですけれども、そういうようなことに対する外務省の政策をこの際明示していただきたいと思う。非常に建設的な話であります。
  42. 三木武夫

    三木国務大臣 実際、いま言われたように、ノルウェーは少し船があるのです。ノルウェーの国籍の船があるもので、これはちょっと異常な数字にはなるわけですが、総じて日本の輸出超過であります。これを貿易でバランスをとるということは非常にむずかしいので、川崎君の御提案のような、何か文化交流の面でこういういい日本のお得意に対して、こちらも何らかの――やはりこれに対して貿易面ですることがなければ、それは文化面でそういう北欧諸国に寄与するという考え方は、これはやるべきだと思います。いままででも少し文部省がやっておるようでありますが、しかしこの点は考えてみる御提案であると拝聴をいたした次第であります。
  43. 川崎秀二

    川崎(秀)分科員 もう一つ、これは最後のいまの問題なんかと関連してですが、近ごろ青少年の海外旅行希望者というものは非常な数なんですね。中には好ましくない面も出ておる。たとえば東京からシベリア鉄道を旅行してストックホルムへ行くと、スウェーデンは非常に人員不足、労働力不足というので、あそこで皿洗いで金をもうけて、そしてまたヨーロッパをごろごろ旅行しておる者もおる。なかなか気持ちはいいですけれども、スウェーデンの大使館あたりが迷惑しておるような向きもあります。しかし、海外旅行をしたい、あるいはもう少し高いランクでいうと留学をしたい、さらには青少年の国際交流に選ばれて参加したいというのもある。私が会長をしております世界青少年交流協会が、本年ドイツへ行く青少年を募集しておる。これは、文部省体育局が予算をつけておいてくれるので、選ばれると十八万円で行けるというので、二千四百人志願者がある。その中からわずか新客しか選ばれないということで、非常な競争ですが、そういうことについてはぜひ外務省では理解を持って援助をしていただきたい。これは、金の面でなしに、現に援助をしていただいております。協力していただいておる。その一番源はドイツとの青少年交歓であったのです。これは本年で十四回に及ぶ。それについては、実は近くブラント外務大臣が見えるわけですが、ドイツ側では今度三木外務大臣との協議の際、政治、経済、文化の三分野にわたっていろいろな打ち合わせをしたい、その中に、文化の中では青少年の国際交歓というものを一つの柱として、今後さらに大きく伸ばしていきたいという希望を持っておるのですが、これを十分知悉をされて、そういう面について十分御協力をいただき、また青少年の夢を大きくふくらませるように御協力を仰ぎたいと思います。この点に関する大臣のお答えを伺って、本日の質問を打ちどめにいたします。
  44. 三木武夫

    三木国務大臣 青年の交流というものは非常に必要だと思いますし、有益であると思います。したがって、これは日独の交流、これは川崎君も非常なお骨折りでありますが、非常にうまくいっておる。これは、単に日独に限らず、広く青年の交流ということは、これは外務省だけでなしに、文部省、総理府も関係いたしますが、青年の交流ということについては積極的に推進をしていきたいと考えております。
  45. 北澤直吉

  46. 受田新吉

    ○受田分科員 私は、つい十七日に外務省の牛場次官が記者会見においてモンゴルとの国交問題についての発言をされたことを根拠にして、質問をさしていただきたいと思います。  新聞報道によると、十七日の記者会見で牛場次官はモンゴルとの国交回復は、国際情勢も現時点において許さないし、また外交上の利益もないものと思われるので、現状以上に進める必要はないという発言をされたと承っておるのですが、これは事実かどうか。大臣としても御存じだと思いまするので、お答え願います。
  47. 三木武夫

    三木国務大臣 牛場君は、いまジュネーブのケネディ・ラウンドに参りましたから、詳細なことは開いておりませんが、モンゴルの承認問題、これは今後の課程として検討いたしてまいりたいと思いますが、いますぐに承認という考え方は持っておりません、そういうことを端的に言ったものだと思います。これは将来の課題として――承認というのは少しことばがなんですが、外交上の関係と申しましたほうがもっと適当かと思いますので、外交上の関係をいますぐに開くという考えは持っておりません、今後十分検討してみたい、そういうことを端的に牛場君も発言したものと考えております。
  48. 受田新吉

    ○受田分科員 モンゴルとの国交回復という問題は、これはすでにモンゴルが国連に加盟をしたときに、日本国政府もこれに賛成した国家です。アメリカも賛成した。ソ連も賛成した。中華民国だけが棄権をしたというかっこうで、一応れっきとした国連加盟国なんですね。その国との国交回復をこれ以上進める必要がないという形に外務省の方針をおきめになっておると了解してよろしゅうございますか。
  49. 三木武夫

    三木国務大臣 これは、これ以上進める必要はないときめたというわけではないのです。今後の問題としてこの問題は検討いたしたい。いますぐに国交関係を開くという考えは持ってないが、将来の問題としては検討いたしたいというのであります。時間的の考え方を申し述べたわけでございます。
  50. 受田新吉

    ○受田分科員 実は、私、昨年八月、政府墓参団で自民党の長谷川峻君と二人で、御遺族八名を連れてモンゴルを訪れました。私は、あまりにも濃厚なモンゴルの印象が脳裡をかすめまして、ルブサン第一副首相以下アジア局長などは、日本との国交回復を非常に切望しておる。そうしてわれわれが祖国へ帰ったときに、この旨を日本政府の責任右にも伝えてもらって、すみやかに回復の方向へ国論を持っていってもらいたいという希望を聞いております。また、当時外務省の秋保係長補佐もあちらへ同行をされて、その事情をよく知っておられるはずです。それは単なる中共の国連加盟のむずかしさなどと比較して簡単に片づける問題ではないと私は思います。外務大臣といたしましてモンゴルというすでにりっぱに国連加盟国として国際平和に寄与しつつあるこの独立国家を、なぜ、いますぐという問題でなくして将来の問題としてお考えになっておるのか。もう一つは、私がおたずねしたときに、あのモンゴルの丘に宏らかに眠っておられる千六百八十四柱の英霊は、この日本とモンゴルとの外交関係が戦争状態の継続というような形でほんとうに残念に思っておるはずです。中共とモンゴルと比較論の上から、外務省としても、自民党政府としても、台湾政府に気がねをして、何らかの圧力があるのではないかという世論がいま巻き起こっておるわけです。この点、形の上でりっぱに国連加盟国であり、その国連加盟に堂々と賛成投票した日本が、しかも、あちらの国の責任者たちが日本との国交回復をあれほど切実に願っておるときに、台湾政府への気がねというようなことでこれを無視されるような筋合いのものでないと思うのでございますが、外務大臣、いかがお考えでしょうか。
  51. 三木武夫

    三木国務大臣 国民政府に対しての気がねからではありません。そういうことではなくして、むろん日本の外交が、そういう国民政府の制約を受くべき性質のものではないわけですが、この問題は、いろいろ受田君の言われたことも頭に入れながら、いますぐ外交関係を開きたいとは考えていないが、将来は十分検討しなければならぬ課題であると考えております。
  52. 受田新吉

    ○受田分科員 外務大臣、それはあなたは非常に消極的なんです。前の下田次官はこの問題についても非常に前向きで考えようとされておった。牛場次官になって、いかにもこの十七日の記者会見においてこの全身をはばむような発言をしておる。外務省の官僚がそのポストを移動することによって、個人見解をあたかも国家の意思のように平然と発言するような形のものは、これははなはだ不愉快な官僚独裁ということになって、非常に外交が危険であると思うのですが、下田次官発言とそれから牛場次官発言との間に、単なるニュアンスの相違ということでなくて基本的な考え方の相違がある。大臣としてお使いになられた前次官、現次官の考え方の中に何か相性点があるとはお認めにならなかったかどうか。
  53. 三木武夫

    三木国務大臣 格別相違点があると思いません。下田君自身もいますぐに外交関係を開けという意見ではない。やはりモンゴルというものに対して接触をもっていこうという考え方で、エカフェの総会に向こうの外務次官が来たときにも、外務省から小川アジア局長を出席せしめたのでありますから、そういう基本的な考え方の相違はありません。したがって、今後十分にいろいろなことを頭に入れながらこの問題は取り組んでいきたい、ピリオドを打ったというものではないということであります。
  54. 受田新吉

    ○受田分科員 私、昨年モンゴルを訪れた後に日本へ帰ってみて、八月の末の外務省の動き方についてはなはだけげんさを持ったものです。秋保課長補佐が行かれて、政府墓参団として外務省のれっきとした外交官が行っておられる。私も国民外交という立場から、ルブサン第一副首相以下東北局長、その他向こうのラハムスレン赤十字社総裁などともしばしば会談をしたけれども、これはまことにわれわれを心から歓迎をしてくれて、日本とモンゴルとの国交回復に対する意欲歴然たるものがある、それを将来の問題として考えるということでなくして、直ちに国交回復の問題はすぐこれへ日本の政府として乗り出していい問題ではないかと私は思ったのです。いまは考えない、将来の問題として考えるのだというような、そういうまことに冷酷な考えでモンゴルを見ておるということになると、モンゴル国民はどんなに残念かと思うのです。せっかく外務次官がここへ来られたその機会に、何らか具体的な前進を見るであろうと私も期待しておった。そして向こうさまとしても、おそらくエカフェの総会に向こうの外務次官が来たことによって、何らかの日本、モンゴル間の国交回復の前進を見るものだろうと期待していたはずです。それを日本の外務大臣、外務次官が依然としていまは考えていない、将来は何とか考えたいというような、こんななまぬるいことで、世界の平和を確立しようと願っている日本国として責任ある政府の態度と言えますか。外務大臣、モンゴルという国はもはやりっぱな独立国である、私はかように考える、その点についてちょっと御意見を確かめておきたいと思います。
  55. 三木武夫

    三木国務大臣 これは国連においてもああいうふうに日本も加盟に賛成をしたわけであります。独立国だとわれわれも考えております。ただ、しかし外交関係の樹立という、外交関係を開くということに対しては、それまでの間にいろいろな接触も深めていく必要もありましょうし、だから先般の場合も打ち切ったということではない、いますぐにはやらないということは打ち切ったというのではなくして、小川局長の私に対する報告も、今後接触を深めていこうということでありましたから、やはり接触は続けていくのでありまして、いまここで全く打ち切って、モンゴルとの関係というものは、何かこれ以上深めていかないのだという考え方ではないわけでございます。
  56. 受田新吉

    ○受田分科員 モンゴルと日本国が前向きでその国交を回復することについて、台湾政府としては何か横やりを入れた事実があるかないかお答え願いたい。
  57. 三木武夫

    三木国務大臣 私は何も台湾政府から私自身干渉を受けておりませんし、また受けるべき性質のものではないと考えます。
  58. 受田新吉

    ○受田分科員 非常にりっぱです。その態度で前述をされるならば、私はこの問題は前向きで直ちに解決策を講ずべきであると思うのです。中華民国という台湾政府は、まだモンゴルは私の国の宗主権のもとに属しておると言明しておるわけです。これははなはだおかしな話で、蒙古族が漢民族の支配下にあるというような旧時代的な観念が台湾政府の中にある、そういう考えがひそんでおる。これはそういう考えがあるとあなたはお認めになるかどうか。
  59. 三木武夫

    三木国務大臣 そういうことは私言っておるとは思いません。国民政府が言っておることを一々知っておるわけではありませんが、そういうふうに言っておることは承知しておりません。
  60. 受田新吉

    ○受田分科員 モンゴルとの国交回復について、国際情勢も現時点においてはなかなか許されないという事情というものがあるかないか、これもお答え願いたい。
  61. 三木武夫

    三木国務大臣 一国との国交関係を開くということは、いろいろなことを頭に入れて考えなければならぬのですが、こういう場合に一々――これは総合的な判断でありまして、いろいろ一つの問題を取り出して、これはどうだ、こうだと言うべきものでなくして、全体としての総合判断というものが外交関係を開く場合の基礎になる、一々指摘してこれはどうだ、あれはこうだというふうには考えられないわけでございます。
  62. 受田新吉

    ○受田分科員 かつての外務大臣大平さんは、はっきりと公式の席で、中共が国連の場において歓迎されるような状況になったときは、中共をわれわれ承認するにやぶさかでないという発言をされておりますね。御存じのとおりです。ところが、モンゴルという国はすでに国連加盟国である、日本はそれに賛成しておる、中共とは立場が違うのです。もう完全な、国連憲章のもとにりっぱな独立国として、日本と同じような立場で世界平和に寄与しておる国家である。このことについて、いまさらモンゴルとの国交を現在は考えないが、将来の問題として考えたいなどというようなはなはだ消極的な態度であって、そしてそのことが世界平和に寄与し、世界の国々の民族間の融和をはかっていくという外交政策になるのかどうか。もうちゃんと形はできておる、向こうも希望しておる、こちらも千六百八十四柱の英霊が異国の丘に眠っておる。祖国を思い起こして、われわれが訪れたときにほんとうに地下でどれだけ喜んでくれたか。いま私たちの胸中を去来するものは、英霊のお気持ちでもあると思うのです。それからもう一つ、政府墓参団の参拝を、これは向こうさまの赤十字社の御尽力もさることながら、政府墓参団という形でわれわれはもうモンゴルへ行っておるのですね、そこまで前進しておるのです。だから前向きでできるだけ国交回復に前進しましょうという形をおとりになっていくほうが、日本の外務省の態度としては、日本国家としては最もとるべき道ではないでしょうかね。これを現在はそのまましばらく見送ってというような形のお考えでは――現在見送るお考えであるという事情はどこにあるのか。
  63. 三木武夫

    三木国務大臣 ある国との外交関係を開くためには、いろいろと話し合いをしなければならぬ問題があるわけですね。だから、いきなり、なぜやらないのだ、すぐやれと言っても、それまでの間には、二国間にもいろいろ問題もあるし、それから、そういうことも世界一般の情勢、あるいは二国間の関係、そういうふうな準備をする必要が必ずどこの国でも起こってくるのであります。そういうことで、モンゴルとの間にも、できる限り今後接触をしていこう、そういうある時期が要る。いま、いきなり国交回復ということにはいたしませんけれども、将来、そういうふうにして接触をいたしながら、この問題を解決の日に備えて検討していきたいというのが態度でございます。
  64. 受田新吉

    ○受田分科員 私、そこのところが解せないのですけれども、ちゃんとおぜん立てができておる。それから、外務省からも、昨年われわれ政府墓参団が行くとき、せめて局長クラスの人ぐらいは同行さすべきであった。チャンスは幾らもある。秋保課長補佐も、非常に御苦労されたことはよく知っておる。チャンスは幾らでもある。そのチャンスをなぜ利用しないのか。外務次官がこっちへ来られて、公式には二回の接触です。そして、向こうさんの御意向も、モスクワあるいはニューデリーという共通の友好国家の適当な場所で話し合いをすることはいまでもできる。にもかかわらず、何らかの接触を漸次かためていきたいとおっしゃるけれども、何らかの接触をかためるという具体的なスケジュールというのは、一向承ることができません。具体的な接触は、どういう形で非公式な接触をされようとされるのか、お答えを願います。
  65. 三木武夫

    三木国務大臣 いろいろな方法がありましょう。それは出先でやる場合もありましょうし、日本が行く場合もありましょうし、今後、とにかく接触を深めて、この問題の解決をはかりたいというのでありますから、いろいろ、できる可能な範囲内で接触を深めていくということであります。
  66. 受田新吉

    ○受田分科員 昨年八月のせっかくの政府墓参団の機会に、外務省はなぜそういうチャンスに、向こうが歓迎しておるときに、責任の地位にある局長クラス程度を派遣されなかったのか、お答え願います。
  67. 吉良秀通

    吉良説明員 その間の狂信につきまして、私、そのころアジア局におりましたので、私の感触を申し上げますと、昨年八月のは墓参団でございまして、墓参ということが主体になっておりました。したがいまして、外務省としては、極力この墓参団のお手伝いをするということで、事前から蒙古政府と連絡をとりまして、墓参団の派遣にあたりましてできるだけのお手伝いをするということで、気のきいた者をつけるという趣旨で出したわけでございます。先生御指摘のような、蒙古がかねてから外交関係の設立を非常に熱望しているということも仄聞しておりましたので、そういう話が出ましたときにも、話がわかる者をつけなければならないということで、秋保課長補佐をつけてやったようなことでございます。あくまでも墓参ということが主体でございましたので、その程度の人を出したのでございます。御了承願います。
  68. 受田新吉

    ○受田分科員 外交交渉というものは、チャンスをつかんではやるべき問題です。それで、公式の交渉をやるという、一応前踏みが要るわけです。政府墓参団が派遣される機会などは、非常にいい機会である。そして向こうと虚心に話ができる。事務屋の外交折衝というもののあまりにも儀式的なのに比較して、こういう政府墓参団のようなときに一緒に外務省から責任のある局長クラスの人でも一行に同行して、そうしたざっくばらんに話のできる雰囲気の中で、互いに腹を探るのでなくして、さらけ出して虚心に話をするというのは、非常にいいチャンスだと思う。そのチャンスをわざわざ失わしめ、また、こちらに戻ってみると、秋保課長補佐の発言、モンゴルとの国交回復の向こうとの話し合いの発電を、あたかも外務省はあわてふためいて、独断でこういうことをやったような、おしかりをするような新聞記事も、当時私は読んでいるのですが、せっかくいいチャンスを、しかもせっかくいいかっこうで話し合いをしておる。われわれが話し合いをしておるのは、そこには向こうが非常に好意を持って、日本との行きがかりを捨て、あなた方が来られた機会に何とか日本との間の接触を保ちたい、次の段階に発展するよりどころにしたいという熱情を持っている。そのことは、外務省にも長谷川君からも私からもお伝えがしてあります。にもかかわらず、せっかく墓参団の入国を認め、りっぱな墓をつくり、墓守もつくり、政府としてもあたたかい迎えをしてくれたモンゴルに、外務次官がこちらに来られた機会に、一向外交交渉上の前進を見ないで、将来の問題などという、こういう行き方は、日本国政府としては、平和憲法の前文の規定の平和愛好国家としての本質にももとるのではないかと私は思うのです。向こうも双手をあげて受け入れ体制ができておる。こちらもどうぞという空気が国民世論の中に起こっておる。何にも妨げるものがない。台湾も妨げる圧力は全然ないと外務大臣は言われた。妨げるものがないならば、国連加盟国同士がなぜいつまでもこの戦争状態を続けておるのですか。私は、一週間、ほんとうにあのモンゴル国民が日本に好意的な、新しい前向きの世論を巻き起こしていることをよく聞き取ってきました。そうして赤十字社の責任者たちを通じての日本に寄せる好意というものは非常に大きいものがあったと思うのです。それをなぜまだ足踏みをして、将来の問題として考えたいと言うのか。外務大臣、あなたはひとつ大もの外務大臣の御就任の機会に――何か妨げるものがあるかということですよ。モンゴルと日本の関係において、どこにももう壁はないじゃないですか。台湾政府にも何も気がかりがないかっこうだといまおっしゃった。モンゴルと国交回復することにおいて、台湾政府には一切関係ないとおっしゃったが、そのとおりでございますか、もう一ぺんお答え願いたい。
  69. 三木武夫

    三木国務大臣 台湾政府に日本の外交政策に干渉を受けるとは私は思っていない。
  70. 受田新吉

    ○受田分科員 それがはっきりしておれば、もう外交上気がねの国家は一つもない。米国も承認しておる。そういう関係のモンゴルとの間に、国交回復に何の壁があるのですか。
  71. 三木武夫

    三木国務大臣 外交関係を樹立するということについては、やはりいろいろと協議もしなければならぬものもある。それは何もたいして障害がない限りすぐやれ、こういう議論もあるでしょう。しかし、やはりそれまでの間には、いろいろな協議も深めていって、そして話し合いもしなければならぬ点もあって、その一つの時期というものが、必ずしも見たところたいして障害もないから、すぐにやったらいいじゃないかというわけにはいかない。やはりいろいろ今後接触を深めていこうというのでありますから、ある程度の時間的な経過というものは要ると私は考えております。
  72. 受田新吉

    ○受田分科員 向こう様の意思も私は確認しておるから言います。日本政府と公式な外交ルールに乗せて、国交回復をはかるように御尽力願いたいと、公式の席上でわれわれは注文を受けております。そしてモスクワでもニューデリーでも、そういう正式交渉をする場は幾らでもあるのです、こう君うておる。そして日本からここに来られて、なくなった英霊の永久にわたる墓を国家としてつくって、墓のお守をしてあげますと言うておる。どこに気がねがあるか。いろいろあるとおっしゃったが、それは日本側のほうにいろいろあるので、向こう様にはない。日本側にいろいろあるというのが私はわからない。もうすでにソ連とさえも国交回復はできておる。中立宣言ができておる。そしてモンゴルとは、政府墓参団もああして派遣されておる。外交上気がねをする国家は一つもない。これと国交回復をすると、どこかの国がつむじを曲げるという気がねは一つも要らないのだと、いま日本の外務大臣がはっきり言明されたわけです。そうなると、一体どこに壁があるのか、私にはわからないのです。責任のある外交官を、適当な場所で、向こうの責任ある外交官と会談させるというスケジュールはお持ちなのかどうか。もう群は前向きの段階でありますから、そういう考えを持っておるかどうか。
  73. 三木武夫

    三木国務大臣 まあ、今後、受田君の言ういろんな熱心な向こうの意向等も頭に入れて、いろいろスケジュールは、ここで、受田君、こういたしますというタイムテーブルを示すべき性質のものではないと私は思います。
  74. 受田新吉

    ○受田分科員 それは大臣、ここまで機が熟しておる。だれにも気がねがない段階で、そのスケジュールはまだ考えてないというのでは、それは将来の問題でもない。将来そういうことを考えるという筋合いでもない。山のかなたに置き忘れたようなかっこうになってしまいますよ。何をどういう方法でやるという、具体的な、ある程度の一応の構想だけは持っていただかないと、前進はしませんね。前進をさせるいろいろな方法というものの中に、モスクワにはちゃんとりっぱな双方の外交官がおいでる。そこで話し合いをするチャンスは幾らでもできておる。外交交渉の正式のルールに乗せるという心がまえはお持ちなんですね。
  75. 三木武夫

    三木国務大臣 いま言っておることは、これから接触を続けていこうということで、どこでどうするのだということは、この席上で私は申し上げない。ただ、これから接触を続けていくということを申し上げておる。受田君のような熱心な愚見も国内にある、こういうことも頭に入れながら接触は続けていくんだ。どこでいつ会うんだということをこの席で申し上げることは必要でないと思います。
  76. 受田新吉

    ○受田分科員 どこでいつ会うというようなことを私は聞いているわけではないのです。そんな具体的なスケジュールは聞いておりません。せっかく、双方の外交機関がちゃんと駐在している適当な場所で、いつでも話し合いができるじゃないか、チャンスをつかんでやるという心がまえがなければいけないじゃないかということを御注恋しておるのです。いまの政府の考え方では、モンゴルとの国交回復をいますぐやらないというはっきりした態度をいま承ったのですが、私は非常にこれは残念です。何とか国交回復を前向きで、できるだけ前進して考えていくという、そういうお考えにある程度はなっておるのですね。前向きでモンゴルとの国交を考えたいということではあるのですね。それは間違いないですか。
  77. 三木武夫

    三木国務大臣 今後むろん前向きで、うしろを向いたりしてものを考える余地はない。みんな前向きで考えるという以外にはない。考えるということは、うしろを向くということはありません。前向きに考えていくということは当然であります。だから、そういういろんな、受田君の言われるような熱心な御意見、これは国内にも多かろうと思うのです。そういうことも頭に入れながら、前向きでこの問題を処理していきたい。また、その具体的なことについては、これはモスクワでやったらどうか、あそこでやったらどうかという、いろいろ御親切な御指示は承っておくことにいたします。
  78. 受田新吉

    ○受田分科員 私は、われわれの気持ちを、外務大臣がもっと前向きで――前向きというのは、前進ですからね。いまのところは停止しておる。停止と前進は迷うのですよ。前向きというのなら、もう接触を具体的にどうやるかということを終始考えるのが前進です。いまは停止ですよ。しかも向こうからも働きかける気持ちができておることを――私ははなはだ残念だけれども、せっかくモンゴル政府の意思がはっきりされたことに対して、日本政府は、外務省としてモンゴル政府のあの国交回復に対する意欲を、秋保課長補佐の発言、あれはわれわれはタッチしておるからよく知っている。そういうものをなぜ外務省は握りつぶしたのです。ちょっとお答え願いたい。
  79. 三木武夫

    三木国務大臣 私は、そのときの経過は聞いておりませんが、しかし、握りつぶしたということはないと思います。この問題はピリオドを打ったのではない。ピリオドを打ったとしたならば、考慮する必要はないのですからね。いますぐに国交回復はいたしませんけれども、この問題は将来の問題として、前向きに検討いたしたいということは、ピリオドを打っていないということであります。
  80. 受田新吉

    ○受田分科員 この議論は、あまり繰り返すのも、時間が惜しいので、すかっと最後にお答えを願いたいのですが、モンゴルとの国交回復の条件は整っている。これは一応おわかりですね。ただ、それをいま急いでやるかどうかということが問題だけであって、一応整った条件にある、これはお考えですね。
  81. 三木武夫

    三木国務大臣 これは受田君、整っていると言うが、われわれからすれば、もう少し話し合いをしたいこともございます。だから、全部整っているとは考えない。やはりもう少し接触を重ていく必要を持っている。いろいろなもので、もう少し話をしてみたいと思っておる。十分話し合いができているというわけではない。もう少し接触をしたい面があります。
  82. 受田新吉

    ○受田分科員 モンゴル政府が出したノモンハン事件に対処する賠償問題ということを、外務省は過去においてお聞きしているかどうか。
  83. 吉良秀通

    吉良説明員 ただいまの御質問でございますが、蒙古政府といたしまして、ノモンハン事件のみならず、一九三五年から一九四六年の間にわたり蒙古が日本から受けた損害についての賠償というものを、極東委員会のほうに報告している事実がございますし、そのほかの機会にも、多少金額等は違いますが、蒙古政府としては、対日賠償請求権はあるのだということを申している事実はございます。その意味で承知しているわけでございます。
  84. 受田新吉

    ○受田分科員 過去において二回ほどそうした意思炭木が向こうの国から外交の機関にされている。賠償に対する金額が二回に分かれてされている。御存じかどうか、ひとつ伺いたい。
  85. 吉良秀通

    吉良説明員 たしか二回にわたり……。一回は極東委員会に対する報告、一回は外蒙が国連に加盟を申請した場合に、蒙古の国際関係について国連に報告した書類の中にあったように記憶しております。
  86. 受田新吉

    ○受田分科員 しかし、現時点におけるモンゴル政府の日本に対する考え方というものは、当事よりは著しく前進している。これは私は、国民外交の立場で動いてきた一人として外務大臣に報告します。すでにモンゴルは日本と国交が事実上回復されたような立場で、あちらの国を国連加盟を、承認していただいたことを非常に感謝している。そういうふうに、日本が事実上モンゴルを承認したような形に、つまり、国家として認めて、国連に加盟を認めているのだということを感謝している。そこまでいっている。だから、賠償の問題などということも、もはや具体的な話にちゃんと乗せて、そういう問題を話をすればもう解決する段階になっている。はっきり申し上げます。そうむずかしい問題じゃない。したがって、外務大臣、あなたにひとつ希望しますが、単なる中立外交だけで、この問題の解決というようなことでお進みなさるべき問題ではないと私は思います。政治的な立場で外交関係をりっぱに樹立する、そういう方向で、われわれが政府墓参団でお伺いしたときなども、これは一つの国民外交のチャンスだ、いろいろな機会をつかまえなければいけないということで――チャンスをつかんでは、向こうの真意も伺い、こちらの意思も向こうに披瀝して、前向きで具体的にいろいろ接触を深めていく、こういう形で外務大臣はお進みなされると了解してよろしゅうございますか。
  87. 三木武夫

    三木国務大臣 繰り、返し言っておりますように、このモンゴルの問題は、前向きの姿勢で取り細みたいと考えております。
  88. 受田新吉

    ○受田分科員 前向きであって、そして、いまは考えないというのはどういうことですか。私は、はなはだおかしいと思う。
  89. 三木武夫

    三木国務大臣 いま受田君が御指摘になったような、こういう賠償の問題なども、これはやはり話をいろいろすべきでしょうね。いろいろな問題が、まあこれは気分としては受田君の言うのはわかりますよ。現地へ行かれて、そういう気分はあっても、また外務省外務省として、国交を回復する前にいろいろ話し合っておきたいということがあることも当然でありますから、したがって、いますぐという、国交を回復する条件ができておるとはわれわれは考えていない。将来の問題として話をすべきものは話をし、今後の接触を通じて将来の問題としてこの問題と取り組んでいきたい、こう申し上げておるわけでございます。
  90. 受田新吉

    ○受田分科員 その接触を深め、話を進めていくことは、外務官僚だけの話し合いによるのか、あるいは別の立場の、いわゆる専門家でない外交官を通じてでも機会があれば話し合いをしようとするのか、お答え願いたい。
  91. 三木武夫

    三木国務大臣 私は、専門家というか、外務省の当然のいろいろなルートを使うべきであって、それ以外のルートを使ってこの問題に対して接触しようという意図は持っておりません。これはいろいろな機会に国民外交がいろいろ成果をあげたと受田君は言われますが、そういうときには、むろんいろいろ外交的な役割りもありましょうが、この問題については外交のチャンネルを使いたいと考えております。
  92. 受田新吉

    ○受田分科員 そういうことで、大臣の御愚息は正式の外交交渉に乗せていきたいということですね。前向きで正式の外交交渉に乗せていきたいということに了解してよろしゅうございますか。
  93. 三木武夫

    三木国務大臣 外交交渉というか、接触を深めていきたいということであります。まあ外交交渉とおっしゃってもけっこうでしょう。
  94. 受田新吉

    ○受田分科員 それじゃ、、正式の外交交渉で前向きにこの問題の処理をはかっていきたい、そういう大荒の御意思だと了解します。そのことについて、はるかかなたということでなくして、ひとつできるだけ積極的にこの問題と取っ組んでもらう、積極的に前向きで取っ組んでもらう、こういうことを私希望したいのでございますが……。
  95. 三木武夫

    三木国務大臣 ずいぶん形容詞が幾つもつくわけですが、あまり形容詞はつけないほうがいいんで、とにかくこの問題は、前向きで取っ組んでいきます。しかし、相手もあることですからね、相手もありますから、何もこちらの希望するとおりの――いろいろなこういうことに将来なるかということは、相手もあることでありますから、あまり瞬間を切ってものを考えないほうがいい。外交交渉は相手がありますから。やはりできるだけ前向きで臨んではいきますが、相手もあるので、いつまでとか、これはもうあまり長い時間でないぞとか、瞬間を切って考えることは、外交交渉としてよくないと私は思っておりますので、できる限り前向きでこの問題と取り組んでいく。現在はいろいろ接触をはかって、向こうの真意などももっと確かめたい、こういうふうに考えておる次第であります。
  96. 受田新吉

    ○受田分科員 それと同時に、モンゴル国家は日本人の来訪を非常に歓迎しておる。したがって、外交官がモンゴルを訪問するということを非常に歓迎しておると私は見たのですが、この点については、接触を保つ上においては、モンゴル国家を、ソ連駐在の外交官でもけっこうだし、また、何らかの機会をつかんで、別に正式の派遣というのではなくて、何らかの機会を利用して外交官がそうした接触を保つ機会を、モンゴル国家から今度外務次官が来たように、こちらからもモンゴルを訪問するという御意思はおありかどうか。
  97. 三木武夫

    三木国務大臣 必要があったらそういうことをわれわれはいとうものではございません。
  98. 受田新吉

    ○受田分科員 そういう機会があればそういう方法をとりたい、かように了承してよろしゅうございますね。ではその問題はこれだけにしておきます。  残った問題はまた別の機会にやるとして、もう一つ、今後の外交交渉で、私、人道的な問題としてひとつ考えてもらいたいことは、昨年フィリピンその他の東南アジアの諸国を訪問したときに、たとえばフィリピンでは陸海空四十七万の英霊が眠っておられる。あちらさんの軍人さんにはばかに堂々たる墓地があるが、日本の英霊四十七上方が祭られておる慰霊塔一つもない。これは私残酷だと思うのです。沖繩がようやく本格化して各具の墓地ができつつありますが、南方のその他の国々、インドネシアに行っても、シンガポールに行っても、またタイ国に行っても、マレーシアもそうですが、ああいう東南アジアの諸国の中では、日本人が眠る墓地――山田長政の墓地が日本町にあるようでありますが、タイはもちろん戦争をしていないからということが言えるわけですが、ビルマにしても、そういう日本人の墓地を、墓地としてでなくて、慰霊塔という形のものを外交交渉でぜひ成功させなければならないと私は思うのです。これは外交交渉のルールの上に乗せる筋合いではない、これはもう赤十字社などがやるべき問題だという考え方をお持ちだとすれば私は別問題だと思いますが、これは外交交渉の上にこの人道問題の解決を乗せるべきではないかと思うのですが、どうですか。
  99. 吉良秀通

    吉良説明員 ただいまの問題につきまして、われわれが平素思っておることは全く先生と同じでございまして、たくさんの英霊が南方各地に眠っていることについては、われわれはいつもそのことを考えるわけでございます。そのためには、先生も御承知のとおり、遺骨収集団も出まして、できる限り収集することにつきましては、所管の厚生行とも協力いたしましていろいろやってきたわけでございます。ただ、その墓地と申しますか、そういうものがもしできれば非常にいいわけでございます。いままでにも現地でそういう話があったかと思います。ただし、もうだいぶ戦後、日はたちましたが、まだ東南アジア諸国民の太平洋戦争と日本の果たした役割りについてのいろいろな特殊な感情がございますので、基地の建築等については、十分その土地土地の国民感情を考えていかなければならない非常にむずかしい問題があるように思っております。ただし、具体的な問題として、どこにこういう日本人の墓地をこしらえたいということはまだ聞いておりません。ただ、私一つだけ聞いておりますのは、マニラのかなり市内の目抜きのところに、そういう慰霊神的なものを建てたいという話がある程度動いておるのは聞いております。先ほど申し上げましたように、十分相手国の国民感情というものを考慮に入れて慎重にやらなければならない問題かと思います。
  100. 受田新吉

    ○受田分科員 シンガポールの華僑を殺戮した、それを埋葬したあと始末の処理は、先般椎名さんが行かれて解決しておられます。しかし、そこへ日本人の慰霊塔を建てることはまだ認められていない。マニラの問題にしても、最近の国民、感情というのは、マルコス大統領の就任以来、日本ヘラウレス三世を大使に送ってきておる。これは非常にいい機会で、前向きですぐ片づけられる問題だと思うのです。慰霊塔を建てることは国民感情の上からもこれは許されることです。相手の国の戦没者をいたわる意味においては、これはあまり遠慮されなくて、国民感情のさめるのを待つというような問題じゃないと思うのです。どの国にしても、ちゃんとそうした国交回復のできている国に、日本の英霊をまつる忠霊碑、慰霊碑のごときものを設けることについて、どの国だってそうむずかしく考える問題じゃないと思うのですがね。これはやはり日本外交の上に、何かひとつ人道的な、また戦没者をいたわるというあたたかい愛情の欠けている点があるのじゃないかと私は非常に懸念しておるのです。外務大臣、単なる事務外交上の問題だけではこういう問題はなかなか思うようにいかないのです。そういうときに、あなたのような民間人出身の外務大臣がその地位におられる間に、単なる事務官僚の官僚独占のような形の外交でなくして、もっと大もの外交、もっと高い立場の外交をお進めになって、こういう問題の処理をはかられるべきである。事務官僚にまかせないで、外務大臣の意思によって何らかの形でこれを成功させるような御努力をしてもらわないと、ただ事務交渉というのは実に時間がかかって、そうして言いたいこともよう言わぬで、相手の腹の探り合いというところに日本外交の従来の大きな欠陥があったわけだから、それをひとつ明らかにあなたの力でやっていただきたい。したがって、その意味では、大使などに少し民間から人材を起用して、幅のある外交、腹のある外交、もっと高い人道外交というようなものも合わせた思い切った外交をさせるような措置をされるべきじゃないか。外務省事務外交官以外のキャリアの問題、つまりそれ以外のほんとうの幅のある高度の外交実力を持つ民間人を起用して、七十人をこえる認証官を持つ大使の中に、せめて一割や二割くらいは民間から起用し、また外務省以外の官庁から幅のある立場で人材を登用するというような高度の外務人事をおやりになる気持ちはありませんか。この二つをお答え願いたい。
  101. 三木武夫

    三木国務大臣 いま外交官について受田君からいろいろお話になりましたけれども、現在の外務省の大公使は十分御期待に沿える人材だと私は思っております。腹がないとかいろいろ言いますけれども、腹ばかりでも外交はできませんし、いろいろ日本的な考え方ばかりではいかない時代に来ておる。こういう複雑な国際情勢のもとにおいて、現在の外務省の大使連中は、有能な人々が多くて、外交官としての職責は十分果たしておると思います。しかし、民間でもいい人があれば、私は民間からでも大使を起用していいと思っておるのであります。しかし、そういうためには、民間も第一流の人材を出すという心がまえがなければ、民間で遊んでおるような人は、大使にといってもそれは何も目的を達しない。ぴちぴちと第一線で働いておるような人で、大使となって国のためにやってみようという人があれば、それは起用する余地は私はあると思いますよ。ただ民間であれば何でもいいというものでもない。民間の人のやはり実力ということでありますので、この問題はそうこだわっては考えていない。ほんとうに実力ある民間人で、第一線で働こうという人があるならば、それは考えてもいいのではないか。しかし、何でも民間のほうがいいのだというそういう考え方は、私は気分としてはわかるけれども、実際的に外交の目的を達成できるものではないと考えております。  それからまた、前段に述べられました、まだ海外に日本の同胞の英霊が眠っておるというこの事態は、これはだれでも頭を痛めることであります。こういう問題に対して、何らかこれに対する慰霊塔のようなものを考えたらどうかという受田君のお話は、私も十分にこの問題を頭に入れて、何らかの形で日本のこの海外に眠らなければならぬ霊に対して、これを弔うような方法というものは検討を加えることにいたしたいと思います。
  102. 受田新吉

    ○受田分科員 後段のほうは検討の段階というお答えでございました。  前段の問題について、私は、事務外交官ではつまらぬということを言っておるのではない。だから私は、大体認証官たる大公使の一割程度は民間人から起用するくらいのワクをとってという意味は、八割、九割は事務外交官にまかしてもいいということを言うのであって、全部切りかえろと言っておるのではない。ちゃんと数字まで言っておる。だから、あなたは人材を発掘する能力があると思う。民間人はみんな大使になる資格のあるような学者――ライシャワーだって学者だった。大学の先生だったが、一応ケネディはすかっとやった。そういう人材を、あなたは長い政治生活をやってこられて、民間人の中から優秀な人材を何人か発掘できないような無能力者じゃないと思う。そのくらいの外交に筋金を入れて、腹を持った人間を一割か二割大公使に起用するという努力をしてもらいたい。人材発掘の努力をしてもらいたい。いまあなたは、民間人にはおらぬ、つまらぬやつばかりだ、大公使は、外交官としてはいまの外務省のほうがりっぱで、わざわざ持ってくるような人材がおらぬからやらぬのだという裏の意味のような発言があったのだが、これは女子の大使にしても、われわれが見てもすばらしい女性で、外交上の成功をする可能性のある舌もあるわけです。女子の大使、こういう者もどこの国か女子の大使でいい国もあるわけです。外国語が達者で、また、そういう外交上の力を持っておる人がおるわけです。そういう人を何人か起用して、日本外交陣に新風を送る、そういうことを大もの外務大臣が御就任の機会にやってもらいたいのです。私はそのことを申し上げておる。時間も迫ってくるからあまり申し上げませんが、私の意見に反論があるならお答え願いたい。
  103. 三木武夫

    三木国務大臣 反論もありませんけれども、民間の者はみなつまらぬと私が言ったということは、事実を曲げるものであります。そういうことを言った覚えはないので、やはり民間から入ってきて――確かにそういうことで人材が民間から入ることも私自身は意味のあることだと思っておるのです。しかし、その入ってくる人が、みずからもパブリック・サービスのために挺身しようという意欲がないと――やはり有能な人はみなそれぞれの仕事についておりますから、そういう仕事についておる人でも、ひとつ外交官として国のために働いてみようという、これはアメリカなんかはそういう点がわりあいに簡単にみなやろうといって出てきますが、日本にもやはりそういう慣習をつける必要があると思っておる。私は、みながもっと身軽に国のためにやってみよう、サラリーやいろいろな点からいったら条件が悪いでしょうけれども、それでもやってみようという、パブリック・サービスに対して国民が献身しようという気持ち、これはやはりつちかったらいいと思います。だから、あなたの言う一割とか二割とかいう数を、そういうふうには考えませんが、できる限り民間における有能な人材で国家のためにひとつ働いてみたいという人があったら、起用することに対してはちゅうちょしない考えを持っておることだけはお答えをしておきます。
  104. 受田新吉

    ○受田分科員 もう一つだけ。中共にはこれまたたくさんの英霊が眠っておられる。モンゴルの国においては、すでにいまあなたのお説のような、まだ非常に気がねがある国家においても墓参団の歓迎をしてくれておるわけです。外交努力によって、これは正式な外交ルートができておらぬと言えば、モンゴルだってそういうことなんです。満州、シナ大陸で御苦労された英霊の御家族の墓参団というようなものもひとつ前向きで私は検討する段階にきておると思う。どうですか。
  105. 三木武夫

    三木国務大臣 この問題については、昭和三十九年に一回あったわけです。その後は行なわれてないが、私はけっこうなことだと思っています。これは外務省だけでもいかない、厚生省の関係も非常にありますから、よく厚生省とも相談をして、まあ国交回復しておりませんから、なかなか回復国のように簡単にはいきませんけれども、私はそういう機会があることはけっこうなことだ。厚生省ともよく相談をいたすことにいたします。
  106. 受田新吉

    ○受田分科員 厚生省はどういうお考えですか。
  107. 実本博次

    ○実本政府委員 受田先生の、中共地域に眠っております方々の墓参についてのお話でございますが、いま外務大臣からお答え申し上げましたように、三十九年に向こうの戦犯の方の一部の者の墓参が認められたケースがございますほかは、いまだ国交回復いたしておりませんので、ほかの場合に見ますようなわけにはなかなかまいりませんので、大体日赤とかあるいは中国紅十字会でございますとか、そういう民間ルートで実現ができますように、政府といたしまして、そのルートでいろいろ努力をいたしてまいっておる、こういう現状でございます。
  108. 受田新吉

    ○受田分科員 前向きの問題……。
  109. 実本博次

    ○実本政府委員 これからもそういうルートでできれば――それは国交の回復ということが早期に実現すれば、そういう問題は解決するわけでございますが、現状といたしましての墓参の実現については、やはりそういう民間ルートによりまして実現をはかっていくということで努力している次第でございます。
  110. 受田新吉

    ○受田分科員 終わります。
  111. 北澤直吉

  112. 中村重光

    中村(重)分科員 貿易の問題についてお尋ねをしたいのですが、その前に、最近新聞報道で、国際問題化するような事件であると思われるのですが、亡命米兵がキューバ大使館に亡命を求めた事件、これについて外務省は「わが国はいかなる国の在外公知も政治亡命者について保護権をもたないという国際法上の原則をとっている」こういうことで引き渡しを要求しておるようです。ところが、キューバ側はこれを正式に拒否する、こういうことで非常に国際問題化しておるようであります。この点に対する考え方を外務省から明らかにしていただきたい。
  113. 藤崎萬里

    ○藤崎政府委員 大使館で、その駐在国の公権からのがれようとする者に対して庇護を与えることが国際法上認められるかどうかということにつきましては、一般国際法上の権利としては認められないというのが、国際法の一般的な見解でございます。ただ、中南米諸国の間におきましては、これらの国ではよく革命騒ぎがあるというような事情からもきたことかと思いますけれども、こういう国の間の条約では、お互いにそういうことを認めようということで、大公使館の庇護権というものを認め合っておるという事実はございます。しかし、一般国際法上の原則としては、御指摘のように、そういう権利は認められておらないということでございます。
  114. 中村重光

    中村(重)分科員 ちょっと前段聞き漏らしたのですが、新聞報道によると、私が読み上げたところは「政治亡命者について保護権をもたない」こういう解釈で、引き渡しを要求している。ところが、あとには政治亡命舌ではないのだという判断をとっているように報道されて、ちょっと新聞報道が、何といいますか、前段と迷うのですね。ですから、これは政治亡命者であるから、したがって、そうした保証権はないのだという理解に立っておるのかどうか、その点どうなんですか。
  115. 藤崎萬里

    ○藤崎政府委員 いろいろな用語が、正確を欠いておるために混乱が生じておると思いますが、庇護権という観念は、先ほども申し上げましたように、大公使館の庇護権、これはよく外交的庇護権と申します。それからもう一つ、領土的庇護権と申しまして、ある国が外国人がその領土内に逃げ込むことを認めるという、いわゆるいまおっしゃいました亡命の場合それは領土的庇護権と申します。その二つ別々なわけでございまして、外交的庇護権の場合には、逃げ込む者は政治犯罪人であるかどうかということは全然関係がございません。いずれの場合でも、一般国際法上の権利としては、大公使館に庇護権は認められておらないということでございます。政治亡命者が特別の扱いを受けますのは、いわゆる領土的庇護権の場合でございまして、そういう名がかりに領土内に逃げ込んできて、それを本国が引き渡してくれと言った場合に、政治犯罪者は引き渡さないということが、いわゆる逃亡犯罪人引渡条約なんかでもうたわれておりまして、そういう場合は引き渡しを拒絶することができる、そういうことになっているわけでございます。政治犯罪なりやいなやの区別は、もっぱら領土的庇護権の場合にのみ考慮に入れられるわけでございます。
  116. 中村重光

    中村(重)分科員 そうすると、キューバ大使館との間に交渉をやっているんだろうと思いますが、キューバ大使館が「政治亡命者を他国へ引渡さないというハバナ条約に加盟しており、この立場からも米兵を引渡すことができない」こういうことを述べておると新聞は報じておりますね。こういうことなんですが、いま交渉をした経過としては、向こうはこういう態度を堅持して話が前進していない、こういうことですか。
  117. 藤崎萬里

    ○藤崎政府委員 キューバ側は、向こうのキューバに逃げていきたい、そういうのを、これは政治的亡命だという観点からキューバに引き取りたいから、大使館にかくまっておる者に安導券を与えて無事にキューバに渡航できるようにしてもらいたい、こういう要求をしておるわけでございます。  日本政府の立場は、元来大使館でそういう者をかくまって日本政府の引き渡し要求を拒絶するということが、国際法上の権利としては認められておらない、だから引き渡しに応じてもらいたい、こういうことでございます。
  118. 中村重光

    中村(重)分科員 そこで、これは新聞報道ですから正確かどうかわからないのですけれども、連れ出したらその安全は保障しない、こういうことを新聞には報道している。そういう考え方であるのかどうか。だとすれば、連れ出したらその安全を保障しないという意味はどういうことをさすのか、その点どうなんですか。
  119. 藤崎萬里

    ○藤崎政府委員 そういうことを誓ったはずはないと存じます。引き渡しを受けたら、当然身辺の保護は十分にいたして、実情を取り調べるといことになると思います。
  120. 中村重光

    中村(重)分科員 お尋ねしたのは、そういうことを言ったのじゃない。引き渡しに向こうが応じたら、それはそのとおりですね。しかし、引き渡しに応じないで、先ほどあなたがお答えになったように、キューバに送り込む、そのためいろいろな手段をキューバ側がとるだろうと思うのです。そこでそういう場合、生命の保障、そういうことはできないのだということだろうと思うのですが、引き渡しに応じなかった場合はどうなるか、こういう場合はいろいろな事件が惹起するということを予想しておられるのか、そういう場合の保障は持たないというふうにお考えになっておるのかどうか、その意味はどうなのかということを聞いているわけです。
  121. 藤崎萬里

    ○藤崎政府委員 ちょっと御質問の意味を取り違えましたが、大使館でかくまっております限りは、日本は大使館に踏み込んでまでつかまえるというようなことは考えておりません。また大使館からその者が出てまいりましたら、それは日本としては、日本の法律上できる措置をとるわけでございます。別に本人に危害を加えるなんということはもちろんないわけでございますけれども、法律上許される措置をとるのは当然であると思います。
  122. 中村重光

    中村(重)分科員 私の質問に対しての正確な答えじゃないですね。あなたのおっしゃるとおりですよ。大使館の中に踏み込んで連れ出すなんということはできない、これははっきりしていますね。ところが向こうは引き渡し交渉に応じない。応じなくて、何とかしてキューバの本国へ無事に連れていこう、こういうのです。そういうことをやるのだけれども、ところが大使館の外へ一たん出るのだから、その場合は事情が日本の立場として変わってくるであろうと思うのです。そこでどういう事態が惹起するかわからない。だからして、そういう場合はどういう事態が惹起してもその責任は日本は食わないのだぞ、安全の保障はできないのだぞというようにお考えになっているのか、新聞はそのように書いてあるのだが、そのとおりであるかどうか、日本政府の態度としては……、
  123. 藤崎萬里

    ○藤崎政府委員 どうも大使館から出てキューバまでその者を送り届ける実際上の方法としまして、全然日本の官憲の手の触れないようにできるはずがないと思うのでございます。だから先ほど申し上げましたように、日本の官憲がその者を押える機会があったら、日本の官憲としては法律上正当な権力を行使するのは当然だと申し上げたのはその意味でございまして、それを向こう側は安全を保障しないというふうに受け取るかもしれませんけれども、それは向こうの受け取り方でございます。
  124. 中村重光

    中村(重)分科員 日米安保条約の地位協定によって、脱走兵の刑事裁判権は米国側にある、こういう解釈の上に立ってこれの引き渡しを求め、そしてこれを地位協定に基づいてアメリカ軍に引き渡す、そういうお考え方の上に立っておられるのじゃないかと思いますが、そのとおりですか。
  125. 藤崎萬里

    ○藤崎政府委員 その者が実際にアメリカの軍人でございましたならば、そういうことになるわけでございます。
  126. 中村重光

    中村(重)分科員 いや、であったならばというのじゃなくて、アメリカ軍との交渉だってあるのでしょう。アメリカ兵であるかどうかということだけは確認してあるのじゃありませんか。
  127. 藤崎萬里

    ○藤崎政府委員 念を入れて申し上げておりますが、ほんとうにいまキューバ大使館に入っておる者が、アメリカから何か要請が来ているその者と全く同一であるかどうかというようなことは、日本の官憲がみずから取り調べて確認するまでに至っておらないわけでございます。
  128. 中村重光

    中村(重)分科員 アメリカとしては、これも新聞報道ですが、引き渡しがおくれておることは非常に残念だ、だがこの引き渡しについては、これは日本政府とキューバ大使館との間の問題である、こういうので、日米安全保障条約による地位協定によって当然アメリカに引き渡すべきものであるという積極的な意思表示をしておるようには考えられないのですが、この点はどうなんですか。
  129. 藤崎萬里

    ○藤崎政府委員 ちょっとまた質問を取り違えておるかもしれませんが、日本政府の立場は、もしその者が実際にアメリカの軍人であるとすれば、それは地位協定上の義務として米軍の逮捕に協力する義務がありますので、これは引き渡さなければならない。しかし、もしそれが実際は米軍人ではなくて、普通の外国人であったとすれば、出入国管理令違反を犯しておる容疑があるから、日本官憲としてそれを取り調べる必要がある。あるいは逮捕に至るかもしれません。いずれにしましても、まだ本人がどういう身分の者か、日本官憲がみずからの手で取り調べておりませんので、取り調べた上でいずれかに決定されることでございます。
  130. 中村重光

    中村(重)分科員 米軍との間には、このいわゆる亡命したグリッグスという陸軍一等兵の問題について、何か話し合いというのはなされていないのですか。
  131. 藤崎萬里

    ○藤崎政府委員 話し合いという段階まで行っているかどうか存じませんが、要請が来ているということは承知いたしております。
  132. 中村重光

    中村(重)分科員 そうすると、要請が来ているというならば、これは米軍人であるということの意思表示というものがあって――要請という意味はどういう意味なのか、早くキューバ大使館から引き渡しを受けて、そしてアメリカに引き渡せというような要請であるのかどうか。まあ先ほどの御答弁では明確でないというようなことをおっしゃった。いまは要請があるということだから、その点、確認していいんだろうと思うのです。どうなんです。
  133. 藤崎萬里

    ○藤崎政府委員 アメリカとの間では、ちょっと名前は忘れましたが、そういう米軍人の脱走した者の逮捕について協力してもらいたいという要請があるわけでございまして、キューバ大使館にいる者を引き取って引き渡してくれというような意味の要請ではございません。
  134. 中村重光

    中村(重)分科員 いずれにしても、問題は、新聞報道のとおりであるとすれば非常に重要であると思います。やはり日本政府としても間違わないように対処してもらわなければならない。この前、例の海上で暴力事件を起こし、日本に入港した――これは金それがしという人物であったと記憶するのですが、これが、自分は北鮮に行きたいというときに、外務省としてもこれに対してはいろいろと抵抗しておられたという経過もある。だから特別に外務省が、アメリカの軍人であるからというようなことで、国際法上のいろいろな関係なんというようなことでごり押しをするというようなことがあってはならない。同時に、亡命をするということは、これはやはり人権でもあるわけですから、その点は十分ひとつ慎重に対処してもらわなければならぬと思うのですが、最後にひとつ大臣のお考え方を聞かしていただきたい。
  135. 三木武夫

    三木国務大臣 この問題は慎重に対処することにいたします。
  136. 中村重光

    中村(重)分科員 次に、貿易の問題についてお尋ねをしたいのですが、四十二年度の輸出入貿易は、現状ではどの程度になるという見通しを立てておられるのか。
  137. 鶴見清彦

    ○鶴見説明員 外務省自体といたしまして、四十二年度の輸出の見通しがどの程度になるかということは具体的にはまだ出ておりませんが、中村先生御存じのように、六月六日に最高輸出会議が開かれることになっておりまして、現在それぞれの業種別あるいは部会別に積み上げの作業をやっております。通産省が主体となってやっておることは御存じのとおりでありますが、大体六月六日の最高輸出会議のときに出してくる数、字というものが、たしか五十二、三億ドルということであるかと思います。御存じのように、四十一年度につきましては百億ドルをちょっと切りまして、九十九億六千万ドルであったこと、御存じのとおりであります。
  138. 中村重光

    中村(重)分科員 貿易計画というのは、国際収支の上からいっても、経済計画とか、あらゆる点に重要な関係を持つわけですから、それでお尋ねするわけです。  そこで、アメリカとの貿易、いわゆる対米貿易の見通しというものをどのようにお立てになっているのか、現在アメリカは工業生産というものが非常に低下している、不況の状態にあるということですが、その点は当初お考えになっておられたことと狂いが来ておるのではないかと思うのですが、その点はどのようにお考えですか。
  139. 鶴見清彦

    ○鶴見説明員 中村先生御存じのとおり、昨年におきましては、一昨年に比較いたしまして約一九・八%ばかりの伸びを示しました。非常に大きな日本側の出超になったことは御存じのとおりでございます。問題は、ことしがそのような傾向を引き続き持続するかどうかということでございますが、現在のところ、私どもの試算しております、あるいは見込みとして考えておりますところでは、一昨年から昨年にかけまして伸びましたほどの伸び率は達成し程ないのではないか。しかしながら、やはり品目構成等から考えまして、一一%程度の伸びは見込み得るのではないかというふうに考えております。  ただいま先生の御指摘のとおり、最近アメリカの景気が停滞傾向を示しております。しかしながら、アメリカの経済関係者、すなわち経済諮問委員長その他民間のエディ社その他経済専門家の指標によりましても、今年後半期からはまたずっと持ち出してくるということもいわれておりますので、そういう観点に立ちまして、当初立てました大体二%程度の伸びを示すのではないかという点につきましては、現在のところ修正する必要はないのではないかと思います。こう考えている次第でございます。
  140. 中村重光

    中村(重)分科員 お答えのとおり、昨年度は前年度比一九%強ですね。ところが、四十二年度の一-三月は、これはプラス・マイナス・ゼロ、こういう好ましくないような数字を示しております。したがって、いまあなたがお答えになったように、一一、二%程度になるかどうかということは、これは問題であると思います。そこで、日本の対米貿易の輸出の伸びる条件というのをどのようにお考えになっておられますか。
  141. 鶴見清彦

    ○鶴見説明員 御存じのように、最近になりまして非常に伸びておりますのが鉄鋼でございます。昨年たしか六億ドルを少しこしたかと思いますが、その鉄鋼もございますし、またさらに最近におきましては自動車も非常に伸びてまいっております。さらには電子機械器具類、これは非常に伸びていることは先生御存じのとおりでございます。しかしながら、繊維の面におきましては、最近におきましてはだんだん停滞傾向になっていることはこれまた御存じかと思いますが、綿製品につきましては大体毎年一億ドル見当、また合成繊維品につきましては一億ドル見当、毛繊維品につきましても一億ドル見当でありまして、繊維全般といたしまして三億ないし三億五千万ドルというところでございます。これが将来またさらに大きく伸びていくということは必ずしも考えられないと思います。したがいまして、わが国といたしまして、対米輸出を大きく伸ばしていく期待品目といたしましては、鉄鋼とかあるいは電子機械器具、自動車も含めますが、そういうもののウエートの伸びが大いに期待されるわけであります。そういう観点に立ちますと、現在進行中のケネディラウンドにおきましてそういった品目についての関税率が下がるということについて、私たちは大いに努力いたしておるわけでございます。  また条件といたしましては、先生御指摘のとおり、アメリカの景気がどういうふうに動いていくかということが非常に大きな影響を持つわけでございますが、先ほど申し上げましたとおり、現在は若干停滞状態になっておりますが、今年下半期になりますとこれがさらに伸びていくであろうということをわれわれも期待いたしておりますし、アメリカの経済専門家もそういうことを言っておるわけでございます。
  142. 中村重光

    中村(重)分科員 条件としてはいろいろあると思うのですよ。アメリカの購買力がどうなってくるかという点であるとか、あるいは日本の輸出競争力というのがどの程度高まってくるか、あるいは日本経済の景気の局面あるいはアメリカ経済の景気の局面、いろんなことが作用してくるであろうと思われるのですね。その点になってくると、どうもアメリカの工業生産というものも低下しておる、したがって消費動向というものも勢い低下してくるということになってくると、必ずしもあなたがお答えになったような明るい面というものがないのではないかというようにも考えられるわけですが、きょうはしかし時間の関係もありますから、あらためてまた突っ込んでお尋ねしたいと思うのです。  このベトナム戦争、これは特需の関係にもなってくるわけですが、直接間接の特需というものも、このベトナム戦争の動向というものによっていろいろ動いてくるであろうと思われるわけであります。このベトナム戦争というものが終結をした場合、アメリカの経済構造というものが転換されることになることは必至であると思うのですが、その場合に、日本の貿易に及ぼす影響というものをどのように判断しておられるか。
  143. 鶴見清彦

    ○鶴見説明員 ベトナムの戦争が日本の貿易にどの程度の影響を及ぼしていくかということ、いろいろの観点からいろいろの試算が出てくることは御存じのとおりでございます。一説によりますと四億五千万ドルばかり、ベトナムの戦争がなかった場合に比較いたしまして、日本の貿易なり特需なりが伸びておるという説もございますし、民間の一部筋におきましてはそれが約十億ドルになるという説のあることも、先生御存じのとおりでございます。問題は、いまの御、質問の、ベトナム戦争が終わりました場合にアメリカの経済が大きく構造的に変化するかということでございますが、御存じのとおり、現在のアメリカのベトナム関係の支出というもののアメリカのGNP、国民総生産に占める比率というものは、朝鮮事変のときに比較いたしますとまだはるかに低いという関係もございますので、ベトナム戦争が終わりました際に、アメリカの経済が大きく構造的に変化を遂げるということは必ずしも予想されないと考えておるわけでございます。またアメリカ政府自身も、そういうことを予想しまして、増税の問題につきましても、あるいはベトナムのために使っております戦費のうち、たとえば偉大なる社会の方面への支出の転換ということも、すでに現在、今年度の年頭教書あるいは大統領の経済報告の中にもそういう準備をうたっておる関係もございまして、大きく構造変化を起こし、アメリカの経済が大きく影響を受け、したがって日本の貿易も大きく影響を受けるということは必ずしも予想されないと存じます。しかしながら、もちろんベトナムの関係で、現在特殊の産業分野におきましては、アメリカの出産は必ずしも十分でない、日本あるいはその他からの輸入に待っているという分野もございますから、そういう面につきましてはもちろん影響を受けてまいるかと存ずる次第でございます。
  144. 中村重光

    中村(重)分科員 これからは、ひとつ、大臣お疲れでしょうけれども、大臣にお答えを願いたいと思います。大臣とは、通産大臣としてお答えを願って以来初めてのことですから……。  そこで、いまアメリカに対するところの輸出貿易の伸びる条件、これは申し上げるまでもなく、その一つとしては、アメリカの景気の局面あるいは日本の景気の局面ということによって相当左右されてくるであろうということは私は言えると思う。ところで私は、日本経済が非常に好景気になってきた、好景気になってきたということになってくると、内需というものがふえてくることは間違いないわけですね。ところがどうも企業家というものは、内需がふえるから輸出努力ということをやらない。これは通産省、外務省も十分関心を持ってこれに対処さるべきであると私は思うのですが、もっと計画的に、国内景気というものがどうあろうとも、やはり輸出というものは日本経済を健全にする上にとってきわめて重要なものであるから、この点はもっと政府も指導力を持って十分指導していく必要がある。貿易はやはり計画的に進めていくことが私は非常に重要であろうと思うのですが、その点、現状をお考えになって、大臣はどのようにお考えになりますか。
  145. 三木武夫

    三木国務大臣 まあ近く輸出会議なんかも開こうというのも、計画性を持たそうという一端のあらわれだと思いますが、やはり中村君の御指摘のように、国内景気がよくなってくると輸出に対する熱意というものがそがれるようなことは事実あり得る。不景気の場合は輸出が伸びるわけですね。好景気になってくると国内で売れるものですから――めんどうな手続をしないでも国内で売れるものですから、どうしても輸出の熱意というものがそがれる傾向を持ってくるのですね。しかし日本の経済の場合を考えてみると、どうしたってやはり輸出が伸びて、国際収支の面で日本が相当なゆとりを持たなければ、日本経済のスケールは小さくなってしまうものですから、今後、いろいろやってはおるけれども、もう少し計画的に輸出を伸ばしていくという努力は、お説のとおり必要だと思います。だからもう少し市場別に、全体としての輸出会議というばかりでなしに、きめこまかく輸出進策というものを政府も民間と協力して推進せなければならぬということは、御指摘のとおりだとわれわれも考えております。
  146. 中村重光

    中村(重)分科員 そこで大臣としては、買切の重要性を認識して、計画的に進めていかなければならぬというお考え方のようです。その中で出てまいりますのは、日本の貿易というものを健全に進めていくという観点に立ちますと、単に、アメリカが停滞であるからアメリカの貿易が非常に小振になるということで、ほかに貿易の活路を見出すというようなことでなくて、先ほど触れました、要するに健全な貿易を推進する、日本経済を健全にするという立場からは、共産圏との貿易というものはより積極的に推し進めていかなければならないと私は思うのですが、現状はどうも、特に中国貿易がいろんな障害にぶつかって、健全な伸びを下していない、こう思うのですが、その点に対して大臣はどのようにお見えになりますか。
  147. 三木武夫

    三木国務大臣 停滞しておると私は思ってないのです。中共貿易も三二%くらいの伸びがある。六億二千万ドルくらいですからね。伸び率が三二%というのは、これはやはりたいへんな伸びですよ。そういうことから、中共貿易というものがいまは日本でも四番目の貿易対象国になったですから、だからこれは、中村さんのお考えからすれば、まだ足りぬとお考えになるのかもしれないが、世界から見ればびっくりするような数字ですね。だから、中共の貿易というものは、これは将来重要な市場ですから、伸ばしてはいかなければならぬけれども、現在までの伸びがそんなに低い伸びだとは思わない。今後も、将来を考えていくならば、日本の貿易構造、将来の市場の有望性、そういうことを考えれば、中共貿易というものは伸ばしていくべき性質のものだと思います。  しかし、中共も御存じのような状態で、だいぶん文化大革命で中共自身も国内問題をかかえているようでありますから、いろんな点で貿易を促進していく障害になるような事態もございますけれども、大きく見れば、中共貿易というものは、多少の紆余曲折はあっても伸びていくもので、中村さんの御期待に沿うようにやっぱり歴史は動いていくのではないか、こういうふうに考えております。
  148. 中村重光

    中村(重)分科員 どうも私は、あなたのいまのお答えは、実は真意じゃないと思うのです。  中国の化学工業プラントというものはいま非常に不足している。それで、現在西欧諸国が中国の市場を求めてきわめて積極的な取り組みをやっているということも御承知のとおり。現在の三十数%の伸び率ということで満足すべきじゃないということをあなた自身はお考えになっている。通産大臣のときもきわめて意欲的な取り組みをしておられた。外務大臣になったから、しいて視野を狭くしていこうなんというようなことはお考えになっておられないと私は思う。そうだとすると、中国のいま一番欲しておる化学工業プラントというものを、より積極的に輸出をする。そして西欧諸国に市場をじゅうりんさせぬというためにはどうしたらよろしいかということは、私はおのずから答えが出てこなければならぬと思う。その点に対してのお考え方はどうでございましょう。
  149. 三木武夫

    三木国務大臣 中村さんはおっしゃらないのですけれども、気持ちの中で考えていることはよくわかります。ただ、そういう問題は、具体的に今後いろいろ問題が出ればそのときに検討するという――いまから、西欧がいろいろ進出してきているではないか、日本もこれに対応するようにやったらどうだ、お気持ちはわかりますけれども、日本政府の方針は、そういうプラント類は延べ払いが伴うわけですから、これについては問題の具体的問題ごとに検討をする。延べ払いそれ自体は輸銀の問題が結びつきますから、そういうことでこの問題は具体的問題ごとに処理しようという方針は何も変わってはいないですから、きょうのお答えはそういうふうにお答えする以外に方法はないのであります。
  150. 中村重光

    中村(重)分科員 あなたが通産大臣のときに――これはついに私は口に出さなければならぬようになりましたが、吉田書簡の問題について、もう吉田書簡ということは口にしないでくれ、具体的な問題が出てきたらそのつどこれは前向きに処理するから、そういうことをお答えになりました。それからもう一年以上になると私は思う。ところが、問題がないじゃない、やはりあのプラント延べ払いの輸出というものは、業界も非常に強くこれを望んでいる。政府自体もそれをおわかりにならないはずはない。その必要というものはお認めになっていらっしゃる。ましてや、あなたは通産大臣になられたときに最も積極的であった。そのあなたが外務大臣におなりになったの、だから、そうした問題は一挙に解決をしていくであろう、こういうような期待というものは、私は、業界、経済界の人たちばかりではなくて、国民がひとしくそういう点を期待しておったのではないかと思う。ところが、いまのあなたのお答えは、はなはだ失礼な言い方ですが、旧態依然として一つも前進してないということは、あなたに期待をしておるだけに非常に残念に思うのですが、もう少しどうですか。いわゆる輸銀が伴う。そのとおりです。延べ払い輸出ということについて問題を積極的に克服してこれの解決に当たる、そして貿易を促進するというようなお考え方をお持ちではないのでございますか。
  151. 三木武夫

    三木国務大臣 中村さんの言われること、わからぬわけではありませんけれども、やはりそうは急に大きな転換はむずかしいですからね。これはまあ実際問題として漸進的にいくよりほかにはない。しかし、あまりうしろへ向いてはいけませんから、前へ向いて漸進的にいくよりほかにない。あまり急に大きく転換というわけにも、いろいろそういうことにいかない場合が外交問題などにも多いわけですから、そういうことで漸進主義をとりたい。
  152. 中村重光

    中村(重)分科員 この中国の貿易というのは、友好貿易とLT貿易がある。ところが、友好貿易というのは、あなたも御存じのとおり、中国ぺースということになる。日本にとって、LT貿易と比較をすると決して有利ではないわけです。そうすると、LT貿易を伸ばすということになってくると、勢いこの輸銀というものが対象にならなければならないということは、私ははっきりしていると思うのですよ。輸銀を使用していくということは常識でしょう。ところがその常識を全然実施に移していかないというようなことは、私は、いまあなたのお答えの漸進主義だということにも、積極面というものは少しも出てこないと思うのです。もっと積極的におやりにならなければ、七億の人口を持っている中国の市場というものを遠い西欧諸国に席巻されてしまうということ、これは後世に悔いを残すということになると思いますよ。あなたに対するところの評価というものは、与野党を通じて高いのだから、やはりそれにおこたえにならなければいけないと私は思うのです。答弁は同じであるかもしれないのですが、どうですか、もう少し積極的な取り組みはできないですか。
  153. 三木武夫

    三木国務大臣 少し時間をおいて見れば、この問題は必ず解決していく日があると思うのです。したがって、実際問題として多少の時間的経過、そういうものが必要だと私は思っています。それだけの多少の時間をかけて考えれば、これは国民の各位も納得のいくような解決が将来はできるだろう、いま、いままでの考え方を大きく転換をするということは実際問題としてむずかしいが、しかし、将来の問題としてはこの問題は解決されなければならぬ問題である、現在の時点においては、問題が具体的に起これば、その問題を具体的問題ごとに処理する、それ以上の考え方を変えるということは考えておらないのであります。
  154. 中村重光

    中村(重)分科員 いまあなたは大きく転換することは無理とお答えになった。ところが、輸銀を使わないことになったのが大きく転換したんですよ。吉田書簡という個人の手紙一本によって、日本政府の外交方針というものは大きく転換させられたんだから、そのことにまず思いを置かれなければ、いま輸銀を使うということはもとに戻すことなんです。これは決して転換することではありません。あやまちをここで改めるというようなことに勇断をもって当たらなければならぬと思う。その点は、中国がどういうような体制の国であろうとも、アメリカだっていま中国貿易を検討しておる状態のときに、日本がいまのようなていたらくではどうするのかと私は言いたいのですけれども、あらためてまたこの点に対してはお尋ねをし、御意見を伺っていきたいと思います。  次に、水産庁の力はお見えでしょうね。――韓国警備艇の日本漁船の拿捕というのが起こってきている。これは外交上の問題も関連をしてまいりますからきょうお尋ねをするのですが、ついに最近はあまり事件は起こっておりませんが、第五十三海洋丸の銃撃拿捕事件ということから続いて、ごく小さい漁船が拿捕されるというような事件が起こってきたのでございます。これに対してどのようにお考えになって、どういう対策を講じておられるか。  それから、時間がございませんから続けてお尋ねをいたしますが、韓国の海軍が日本の専管水域の中で射撃訓練をやっておる。これは数度にわたって行なわれてきた。これに対しては、外務省から抗議をするといったようなことも数回行なわれたようでありますけれども、それを顧みないで射撃訓練を続けたという事件が起こっておるのですが、その後この点に対してはどのような折衝をなさったのか、それから、再びこういうことが起こってこないのかどうか、そういう保障があるのかどうか、その点に対してひとつお答えを願いたいと思います。
  155. 吉良秀通

    吉良説明員 ただいまの第一の御質問、漁船拿捕事件の現状ということでございますが、一昨年の十二月に国交正常化いたしまして以来――それ以前におきましては、季ラインの設定は二十七年で、国交正常化の四十年までの間に実に二百三十三隻という拿捕漁船があって、非常な問題になったわけでございますが、国交正常化以来起こりました余捕事件は、ただいま先生が御指摘になりました第五十三海洋丸、これは昨年の三月でございます。それから昨年の十月に小さなイカ釣り漁船宝栄丸というのがつかまりました。そのたった二件でございまして、国交正常化以来この点では非常に成果をあげたと申しますか、拿捕漁船が激減したということは非常にけっこうなことだと思っております。それぞれのケースにつきまして、政府といたしましては、外務省といたしましてとるべき手段は一応とっておる。第五十三海洋丸については二週間後に釈放を見ましたし、宝栄丸につきましては、遺憾ながら先方の裁判にかかりまして、懲役刑執行猶予ということの結末を見たのは遺憾でございますが、たったその二件であったということは、その前の正常化以前の状態に比べますと非常な進歩である、そういうふうに信じておる次第でございます。  その次の御質問、韓国の海軍が対馬を含む海域におきまして射撃訓練を従来実施しておりましたところ、昨年の十月ごろかと思いますが、わがほうの漁業水域にその射撃演習の最中にたまが飛んできた。日本の漁船はそばにはいなかったのですが、こういうことになると非常に危険だというこを発見いたしまして、その後韓国政府に申し入れまして調査いたしました結果、先方の手違いと申しますか、わがほうの漁業水域に若干ひっかかるような演者区域を設定しておることがわかりました。そこで外務省といたしましては、これは非常に危険である、ここは日本の漁業水城であるからその演習区域を修正してほしいという申し入れをいたしました結果、韓国政府はこれを快諾いたしまして、現在のところ先方の海軍の射撃演習区域とわがほうの漁業水域との抵触は全くなくなっておるわけでございます。さらに、外務省といたしましては、わがほうの漁業水城にひっかかるような演習をやらないにいたしましても、朝鮮海峡一帯は日韓双方の漁船や、ほかの船舶が往来する、非常に船舶のふくそうするところでございますから、この演習自体が不測の危害を日本の漁船その他船舶に与えるかもしれないから、こういう射撃演習につきましては十分に事前に通報を願いたいという申し入れをいたしましたところ、これも先方政府の快諾するところとなりまして、自来神岡海軍の演習のありますそのつど、十分余裕をもって、外交チャンネルを通じまして通報してきている次節でございます。  以上、お答えいたします。
  156. 中村重光

    中村(重)分科員 そうすると、演習水城を修正をした、このことは、いわゆるわがほうの専管水域で演習をしないということは、いまのお答えではっきりしたわけですが、それの保障はある、取りつけたということであろうと思う。ところが、共同規制水域、それは演習水域として認めることになるのですか。
  157. 吉良秀通

    吉良説明員 お答えいたします。  共同規制水域と申しますのは、漁業に関して日韓双方の規制を行なう地域でございますことは先生御承知のとおりでございますが、一方、この海域は公海でございますので、その公海におきまして韓国海軍が射撃演習をするのは、別にいろいろ苦情を申し立てる筋合いのものではないと思っております。事前に十分の予報がなされる限りにおいてはやむを行ないのではないか、そういうふうに思っております。
  158. 中村重光

    中村(重)分科員 そういうお答えになってくると、また日韓条約の審議の際の問題に返ってくる。それは正確なお答えじゃないのではありませんか。条約局長どうですか。
  159. 藤崎萬里

    ○藤崎政府委員 いまのでいいように私は思いますけれども、何か特に御疑問の点がございましたら、お示しいただきたいと思います。
  160. 中村重光

    中村(重)分科員 それは季ラインの問題との関係で出てくるのですよ。これは時間がないので、そこまでいくとたいへん時間をとるのです。季ラインを撤廃したのですね。その際はいかなるライン――私の質問にはあなたが答弁したのだ。漁業ラインというものは、なるほど漁業ラインとしての李ラインは撤廃されたであろうけれども、国防ラインという形のものが残されるのではないか。ところが、そういうものはありません、いかなるものもないのでございますというように、大平外務大臣当時、あなたが条約局長でしたが、お答えになったのです。ところが、専管水域というのはわかるのですけれども、共同規制水域が、これは季ラインのその範囲に入ってきているということは間違いないです。だから、それを一がいに公海であるということだけにきめつけていくことは私は問題があると思う。いまの参解官の答弁で正確ということには私は異論があるのですが、一応お答え願って、これは相当時間をとりますから、あらためてまた質問をしたい、こう思うのですが、一応お答え願います。
  161. 藤崎萬里

    ○藤崎政府委員 公海使用の自由ということの中には、演習の目的で公海を、適当な範囲、期間に限定されるわけでございますが、そういう目的の使用の自由もあるわけでございます。関越の水域がたまたま李ライン以内であったからそういうことになったということでなしに、公海の一部であるから、日本としては法律上は文句が言える立場にないというわけでございます。
  162. 中村重光

    中村(重)分科員 あらためて議論します。  そこで、先ほどお答えがありました宝栄丸の生捕、これは韓国裁判で懲役刑ということに処せられたわけですね。これはどうなんですか。日本の専管水域であったのか、あるいは韓国の専管水域であったのかということは議論がある。あなたのほうとしては、宝栄丸は確かに韓国の専管水域を侵しておったという判断の上にお立ちになっておりますか。
  163. 吉良秀通

    吉良説明員 私の了解しておるところによりますと、その宝栄丸は完全に先方の漁業水域の中に入っておったものと思います。
  164. 中村重光

    中村(重)分科員 入っておったとか入っていないとかという判断は、どうしてするのですか。韓国の巡視艇の十四隻のうち、七隻は何らの設備もしてないのですよ。向こうの一方的な判断によって宝栄丸を拿捕した。だから、完全に韓国の専管水域に入っておったというあなたの判断は、私は日本政府の立場からすると問題があるのじゃないかと思うのですが、何によってそれを証拠立てますか。
  165. 吉良秀通

    吉良説明員 これは裁判にもなったケースでございますので、先方の記録及びわがほうの記録を照合して、やはり先方の漁業水域に入っておったものだということになったわけでございます。
  166. 中村重光

    中村(重)分科員 私はきょうはこの問題には入ろうとは思わなかったのだけれども、ともかく外務省は全くどこの外務省かさっぱりわからない。この前の銃撃で、韓国船が銃撃したときにも、領海、が完全に侵されている、二キロだから。そういうときにも何ひとつ抗議をしないで、御無理ごもっともで引き下がっている。それといまの宝栄丸の事件だって同じじゃありませんか。向こうは何にも設備してなかったのです、宝栄丸を捕した船というのは。どこにおるのかわからない。そうでしょう。大体日本の漁船も、これはビーコン局でもって声の灯台はある。しかし、漁船には肝心かなめの通信機は備えてないじゃありませんか。三笠に一隻か、五隻に一隻か、十隻に一隻かくらいしか通信機は備えていない。だから、まわりに一緒になっておって、声の灯台から信号があったならば、お互いに話し合って、そうして注意をして、自分の専管水域に帰りなさいという指導をやっておる。そんな机の上でものを考えるようにはいきませんよ。そうでしょう。きちっと日本の漁船に対してもそれだけの通信設備をやらせる。そうして韓国の巡視艇、警備艇にも、きちっとした設備を日本と同じような性能のものを設備させる。そうでなければ、正確じゃございませんよ。先ほど申し上げたように、十四隻のうち七隻は韓国警備艇というのは何の設備なんてないんでしょう。それで、自分はどこにおるのか、自分の専管水域におるのか日本の専管水域におるのかわからないでしょう。そうして、かってに自分の専管水域におるというようなことで判断して拿捕して、そうして引っぱって裁判にかけて懲役だ、これは対馬の漁民というのは非常に憤激している。それをいまあなたがきっぱりと、いや確かに向こうの専管水域に入っておったと断定なさった。それじゃ納得するだけの資料がありますか。向こうさんの資料だけ見たんでしょう。これは、先ほど申し上げたが、これだって外務省何をやったんです、この銃撃事件に対して。自分の領海を侵犯されながら、何一つ抗議をしないでおいて、そういうような不見識なことは、もう外務省としてはなっておらぬ。どうですか。
  167. 吉良秀通

    吉良説明員 御指摘の問題でございますが、日韓の漁業に関する協力は私は非常に進んできたと思いますので、先ほども申し上げたとおりに、正常化までには二百三十三隻という拿捕があったにかかわらず、正常化後はほとんどないというような状態で、先生御指摘の第五十三海洋丸と宝栄丸が不幸にして起こったわけでございます。その問題につきましては、第五十三海洋丸のときにも、その位置がどこであったかということにつきましては、日韓間に紛争といいますか、問題が起こりまして、正確な位置測定の機材を韓国船が持っておったかどうかということも問題になったことは事実でございます。その後日韓双方非常に努力いたしまして、そういう設備を装備いたしまして、位置測定については間違いないような方法になってきておりますので、宝栄丸の件につきましても、大体のところこれは先方の主張を信頼してもいいし、わがほうの記録を照合しても、大体韓国の漁業水域を侵犯しておったことは間違いないというような心証を持っておるわけでございますが、日韓間のいろいろな漁業に関する協力は今後も進められていくわけでございまして、近くまた日韓漁業合同委員会も開かれますので、こういう問題とあわせて検討していきたい、そういうふうに考えておる次第でございます。
  168. 中村重光

    中村(重)分科員 あなたは、国交、正常化の前に拿捕が相次いだが、正常化後はわずかに二件にすぎないのだ、そればかりおっしゃる。大きな代償を払って正常化をやったということについては、これは失うところもあるのだから、得るところもあるのはあたりまえです。それは強調する理由になりません。それよりも、あなたが後段にお答えになったことが一指大事です。大体、対馬の海域で何のために共同規制水域とそれから公海がないのですか。向こうの専管水域と日本の専管水域がタブっているのです。重なり合っている。これは大きな問題です。外務省にしても、農林省にしても、ましてや水産庁は――きょう御出席ですが、こういうことに対して思いをいたして、これを何とか是正するということに最大の努力をすべきです。大体、原案のときは、釜山からはかって、また対馬からはかっていって、その間に共同規制水域にするところがあった。あったのを、済州島の関係でこれを渡って、そして鴻島と干汝岩との間に直線基線を設定したから、そのためにずっと対馬水域に寄ってきたのです。そのために公海もなくなり、共同規制水域もなくなった。向こうの専管水域と日本の専管水域が重なり合ったのです。そうすると、漁船というものは何も通信設備というものは持たない。そうすると暖流によって流されたり、風が強かったら流される。ここに公海なり共同規制水域があれば何も危険がないものを、ちょっとした油断で向こうの専管水域に入ってしまう。これは善意の過失です。それを一方的に、おれのほうの専管水域に入っておったというので、向こうが一方的に判断して拿捕してしまう。これに少しも矛盾を感じない、そういうことであっては、外務省としても水産庁としてもっとまらないと思う。こういう問題の解決に対してどうするのか。あなたは、こういう問題はいま二件しか起こっておらぬと言うけれども、こういう問題を根本的に解決しない限り、どんどん起こりますよ。今度は予算でもうんとつけて、そして零細なそういう漁船に対して通信機でも全部設備させればいざ知らず、三分の一くらいしか金を出さないでおいて、そして漁民のみを犠牲にさせるなどということが大体許されますか。これをふしぎに考えないということだって私はおかしいと思う。大体こういう問題は、日韓条約の審議の際に私がやる予定であった。質疑打ち切りになって、とうとう私はこういう問題に触れることができなかったけれども、どうですか、外務大臣、こういう問題は、対馬に一度あなたも民主的な大臣だからおいでになって、農林大臣だけにまかせないで、みずから行って血の叫びをお聞きになったらどうですか。
  169. 三木武夫

    三木国務大臣 この問題は、漁業上の漁区についてのいろいろな紛争というものは、実際問題として起こり得ると思うのです。しかしこれは、やはり紛争が起こってからどうするというのではなしに、起こらないような処置は外交的にも絶えず考えていく必要があると思います。
  170. 中村重光

    中村(重)分科員 短いことばですけれども、そのとおりなんだから、それをいかに実行に移すかということでしょう。  それではあとでまたこの問題はあらためてお尋ねします。  次に、厳原町の海難事故について海上保安庁の方に伺いたい。十一月二十日五時ごろ、厳原豆殿沖合いで海難事故が起こった。そして親子がついに死亡するという事件が発生をした。そのとき、あなたのほうの第一管区の大型の船がその豆殿湾に入って停泊しておった。事故が起こったものだから、あなたのほうの船に、大型の照明器を持っているから、夜だから何とかひとつ海難救助に乗り出してもらえないかというので、漁業協同組合、地元の救助隊が四回にわたって懇請これつとめた。ところが、あなたのほうの船は、いやこれは第一管区所属の船なんだから、本部長の命令がない限り出動するわけにはまいりません、こう君ってみすみす殺してしまったのです。報告を受けていますか。
  171. 猪口猛夫

    ○猪口説明員 先生のただいまの事件につきましては、私現在まで報告を受けておりませんので、至急に調査いたしまして、またあらためて御報告申し上げたいと思います。
  172. 中村重光

    中村(重)分科員 事故が起こったのは、先ほど申し上げた十一月二十日の五時十分、あなたのほうの船が出港したのがあくる日の朝。ところが、大型の照明器を持っていたのですから、出動してこの照明でずっと照らして救助に当たってくれたら、これは救うことができたと私は思う。それを、いや本部長の命令がないのだからということであった。大体、海難救助というのが最も主要な使命じゃないのですか。どういう指導をしているのです。この事故の報告を受けておらぬという答弁だけではだめなんです。どういう指導をしておるのか。あなたのほうの指導よろしきを得ておれば、間違った指導さえしておらなければ、出動できたはずなんだ。それを断わったというのは、あなたのほうの指導が誤っているということになる。この点が問題なんだ。
  173. 猪口猛夫

    ○猪口説明員 もし先年のおっしゃいましたとおりでございましたならば、私たちの海上保安官として崇高な人命救助の任に当たる者として、まことに遺憾しごくに思います。私たちのほうで、そういう事件が起こりましたならば、直ちに上司に報告して、上司の指示を仰ぐのが当然でございますが、事故に応急の措置をとることがきめられてございます。でありますので、とりあえずはその船でなし得るだけのあらゆる力を尽くして救助に当たるというのが私たちのほうの海難救助の指針になっておる次第でございます。いまの事件につきましては、まだ詳しくは報告を受けておりませんが、そういうことであるといたしますれば、まことに心外にたえませんし、残念に思っておる次第でございます。
  174. 中村重光

    中村(重)分科員 私は現地へ行ったんだ。そして捜査に当たった漁業組合の幹部の諸君、それから地元の人たちに直接会っていろいろ話を聞いた。だからうそでも何でもないのです。だからこれは調査をして、適当に処分するなら処分しなさい。  それともう一つ、これはずっと出先に海上保安部というものがありますね。これは対馬の浅茅湾というところに避難していった。これもあくる朝やってきた。そして一晩じゅう、肝心の捜査に当たったのは小さい漁船です。大体そのときは海が非常に荒れておった。しかし、小さい漁船だって捜索はできるのですよ。それならば保安庁のその船もできるはずです。連絡したにかかわらず、これはあくる朝出てきて、その捜査に当たったのです。これも問題です。先ほどの第一管区の船だけでなく、至急に調査をしてその結果をひとつ報告してもらいたい。
  175. 猪口猛夫

    ○猪口説明員 この事件につきましては、私どもで至急に調査をいたしまして、その内容あるいはその後とりました私のほうの処置をあわせまして御報告申し上げます。
  176. 中村重光

    中村(重)分科員 最後にもう一点お尋ねしますけれども、第五十二源幅丸が四月四日未明、船籍不明の貨物船に引き当てられて沈没、尾野上船長以下十一名が殉職した。私は実は葬式に行ったのですが、実に気の毒です。台湾のどこかの船であろうというのでいろいろ調査をしたりしておるようですが、その報告を受けておられましょうから、その経過をひとつ御説明願いたいと思います。
  177. 吉良秀通

    吉良説明員 ただいま御指摘の第五十二源幅丸の事件はわれわれは承知いたしておりまして、早速どこのどういう船がこれをやったのか、調査する手段といたしまして、台北、香港、マニラ、サイゴン、シンガポール、このようなもよりのわがほうの在外公館のありますところに電報で、こういう事件があった、そこでその害を加えたと思われる船が入港しているかどうかにつきまして、それぞれの政府関係当局の協力を得て調査するように、こういう訓令を出してございます。いまのところ、まだこれとおぼしき情報は入っておりません。
  178. 中村重光

    中村(重)分科員 この船は、御承知のとおり金子漁業、自民党代議士金子岩三さんの所有の船ですね。それで、私はその合同葬にも行ったのだけれども、金子岩三社長は、悲痛そのものです。それはそうでしょう。それはどこの船かわからない。当て逃げされてしまった。こういうことでは夜の操業なんてできはしませんよ。これは調査調査としてしておられると思うのだが、再びこういうことが起こってはいけないのだから、保安庁としてはこの点に対してどのようにこの後対処していこうとしておるのか。また、外務省としては、調査してわからなかったということだけで終わりになるのか。心当たりの対策というようなものもあろうと思いますが、どうなんでしょうか。
  179. 吉良秀通

    吉良説明員 お答えいたします。  海上のこういう不測の事故につきましては、いかんともしがたいことでございますが、一たん起こりました以上、どこの国の船であるか、それを早くつきとめて、損害賠償等適当な措置につきまして、外務省としてもできるだけのことをしたい、こう思っておる次第でございます。
  180. 猪口猛夫

    ○猪口説明員 この種の事故につきましては、御承知のように一にも二にも三にも見張りということが必要だと思います。ただし、くだんの五十二源福丸の事件につきましては、相手船が何であるか、外国船であるか、日本船であるかもつぶさでありませんから、はっきり申し上げにくいのでございますが、日本船舶につきましては、先ほど申しました公海上の見張りを十分やるように機会をとらえて講習などをし、また、海上での指導もやっております。今後ともこれを強化いたしまして、お互いに衝突事故を起こさないように、まず事故を起こさないようにつとめていきたいと思います。  また、事故が起きましたならば、当然船員法その他で救助する義務もございますし、そういう海上法令の励行ということにつきましても大いに啓蒙していきたいと存ずる次第でございます。
  181. 中村重光

    中村(重)分科員 水産庁の方がお見えでしょうから、水産庁としても、先ほど来いろいろと関係があることを指摘なり質問もしたわけですから、これに対して水産庁の考え方、決意というものをこの際明らかにしてほしい。
  182. 山中義一

    山中政府委員 ただいま先生の御指摘の源福丸群件につきましては、たいへん気の毒なことでありますので、私どものほうといたしましては、この船が幸い以西底びき網漁業でございまして、漁船保険にも相当の額、満額入っております。したがいまして、請求書類が整い次男、きわめて近い機会においてすみやかにこの保険の支払い等をして、せめてもの埋め合わせに役立ててあげたい。  それからなお、海上の漁労その他の行動につきましては、海上衝突予防法その他もございまして、ただいま保安庁からの御指摘もございましたが、わがほうとしても手落ちのないように十分注意して指導するようにしてまいりたい、こういうふうに考えております。  それからなお、この捜査その他にあたりまして、あの場所が台湾とそれから中国に比較的近い海域でございましたので、日中漁業協議会のほうから相手側の中国のほうの漁業協議会あてに、こういうような船の遭難の徴候あるいは乗り組み員等の生存、あるいは遺骸というようなものがないかということをすぐその翌日連絡いたしまして、依願いたしました。  以上、そういうことでございます。
  183. 北澤直吉

    北澤主査 明二十日は午前十時より開会し、外務省所管について質疑を続行することといたします。  本日は、これにて散会いたします。    午後四時五十三分散会