運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1967-04-24 第55回国会 衆議院 予算委員会第四分科会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十二年四月二十四日(月曜日)     午前十時十一分開議  出席分科員    主査代理 仮谷 忠男君       加藤 六月君    川崎 秀二君       登坂重次郎君    松野 頼三君       加藤 清二君    阪上安太郎君       横山 利秋君    松本 忠助君    兼務 兒玉 末男君 兼務 堀  昌雄君    兼務 玉置 一徳君  出席国務大臣         運 輸 大 臣 大橋 武夫君  出席政府委員         外務省北米局長 東郷 文彦君         運輸大臣官房長 町田  直君         運輸大臣官房会         計課長     山上 孝史君         運輸省海運局長 堀  武夫君         運輸省船舶局長 芥川 輝孝君         運輸省船員局長 河毛 一郎君         運輸省港湾局長 佐藤  肇君         運輸省鉄道監督         局長      増川 遼三君         運輸省自動車局         長       原山 亮三君         運輸省航空局長 澤  雄次君         運輸省観光局長 深草 克巳君         海上保安庁長官 亀山 信郎君  分科員外出席者         警察庁交通局交         通企画課長   片岡  誠君         外務省中南米・         移住局外務参事         官       山下 重明君         大蔵省主計局主         計官      荒巻与四郎君         大蔵省主計局主         計官      長岡  実君         日本国有鉄道総         裁       石田 禮助君         日本国有鉄道副         総裁      磯崎  叡君         日本国有鉄道理         事       仁杉  巌君         日本国有鉄道理         事       長瀬 恒雄君     ――――――――――――― 四月二十四日  分科員船田中君、横路節雄君、永末英一君及び  有島重武君委員辞任につき、その補欠として加  藤六月君、横山利秋君、竹本孫一君及び松本忠  助君が委員長指名分科員に選任された。 同日  分科員加藤六月君、横山利秋君及び竹本孫一君  委員辞任につき、その補欠として船田中君、横  路節雄君及び永末英一君が委員長指名分科  員に選任された。 同日  第三分科員兒玉末男君、第一分科員堀昌雄君及  び第二分科員玉置一徳君が本分科兼務となった。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  昭和四十二年度一般会計予算運輸省所管  昭和四十二年度特別会計予算運輸省所管  昭和四十二年度政府関係機関予算運輸省所管      ――――◇―――――
  2. 仮谷忠男

    仮谷主査代理 これより予算委員会第四分科会を開会いたします。  本日は、主査が所用のため出席できませんので、指名によりまして私が主査の職務を行ないます。  昭和四十二年度一般会計予算及び昭和四十二年度特別会計予算運輸省所管並びに昭和四十二年度政府関係機関予算中日本国有鉄道関係を議題といたします。  これより質疑に入ります。質疑の通告がありますので、順次これを許します。堀昌雄君。
  3. 堀昌雄

    堀分科員 私は、きょうここでお伺いをいたしたいのは、実は都市の部分における公害というのは工場ができるとか、そういう形の公害というのがこれまでの公害の形でありました。ところが、私がおります阪神間というところは、最近集中的にそれ以外の公害に実は悩まされる段階になっているわけであります。その一つ大阪国際空港離発着するジェット機による騒音の問題であります。もう一つは、これから国鉄がつけます山陽新幹線がこの人口稠密地帯を通過するということで、住民はこれらの公害について非常に強い関心を持ち、公害対策が完全に行なわれない限り山陽新幹線の通過は絶対反対だということに現在なっておるわけであります。きょうはこの二点を伺うわけでありますが、順序としてまず先にこの空港問題のほうからお伺いをいたしたいと思います。  最初にちょっと運輸省にお伺いをいたしますが、最近、ちょっと私、名前をつまびらかにいまいたしておりませんが、航空関係研究団体と申しますか、が新しくいまこれからつくろうとしておる成田空港と申しますか東京第二国際空港と申しますか、これに対しては超音速機離発着は困難ではないかという問題がごく最近提起をされておるようであります。そこで、この超音速機というのは一体いつごろ実用化をして日本にも諸外国から発着をするようになるのか、超音速機離発着するために必要にして十分な滑走路の長さというのは一体どのくらいで、何本くらい滑走路を必要とするのか、ちょっとそれを先にお答えを願いたいと思います。
  4. 澤雄次

    澤政府委員 お答え申し上げます。  超音速機につきまして目下開発されておりますのは英仏共同で開発いたしておりますコンコードと、それからアメリカが開発しておりますUSSST、そのほかにソ連でも開発いたしております。ソ連のは状況がつまびらかでございません。それでこのコンコードは来年くらいに試験飛行を行ないまして、実際に使用に供されるのは四十六年くらいであろうといわれております。それからUSSSTのほうは非常に工程がおくれておりまして、昭和五十年以降になるのではないかといわれております。それでこれらの飛行機の性能その他はまだ明確になっておりません。現在のところ、今度のDC8シックスティーシリーズというものがございますが、それと大体同じ程度離発着距離滑走距離であろうということで三千五、六百メートルを要するのではないかといわれております。
  5. 堀昌雄

    堀分科員 実はこれはまだわからないことですから、問題は非常にむずかしいと思いますけれども、しかしこれから飛行場をつくるとなると、今度つくってこれがはっきりわかってきたころに、この飛行場では使いものにならないということになれば、これは私は実はたいへんだと思う。そこでいま御承知のように成田空港はいろいろな角度からの反対運動もあって、そう早急に、それではこの飛行場に超音速機が着きにくいからもう少しこっちへ広げろあっちへ広げろといってみたところで、そう私はこれは簡単な問題にならないのではないか。この間の研究団体の発表を見ても、この飛行場はとうてい超音速機離発着には不十分だという一つ学問的見解を明らかにしておるわけですから、だからその点は私は非常に問題があると思うのです。  そこでこれはあとの問題にも多少関連があるわけですが、いろいろと運輸省でも航空審議会等を設けて、この飛行場騒音対策については御研究になっておるようであり、ここでは諮問第十二号に対する第一次追加答申というのが昨年の十二月十五日に運輸大臣に提出されております。この中をずっと読んでみてわかることは「航空機騒音については、その影響が広範囲にわたり、これを防止抑制することが以上の施策をもつてしても困難な場合があるので、さらに進んで、空港周辺地域土地利用について、住宅団地造成抑制、非防音構造建築物規制等航空機騒音対策考慮に入れた適切かつ総合的な土地利用計画制度を設けることにつき検討すべきである。」こういう答申が実はされておる。これは新たにつくるところについてはこれでいいでしょう。しかしすでに阪神間のように、ともかく人口にして数百万――あの周辺は百万をこえておると思うのですが、この数百万の者がすでに住んでおるところでは「住宅団地造成抑制、」といってみたって、ほとんど建っちゃっているわけです。「非防音構造建築物規制等」となっておるけれども、建っているやつは全部非防音構造建築物なんですから、これはどうしようもないわけです。そこでそのしまいのほうに「等の航空機騒音対策考慮に入れた適切かつ総合的な土地利用計画制度を設けることにつき検討すべきである。」こうなっておるのです。大臣、私はこの書き方は要するに人口稠密地帯にそういう飛行場が、騒音の非常にひどい飛行場があるということ自身が望ましくないから、そういうものの位置を含めて将来的には考えてみなければならぬのではないか、こういうふうに私はこれを理解しておるわけですが、大臣はどういうふうにお考えですか。
  6. 大橋武夫

    大橋国務大臣 新しくつくります場合には、もちろん仰せのごとくいろいろな騒音に対する対策を基本的に講じた上で処理すべきものと思います。しかし現存ありますものにつきましても、できるだけ周辺地域につきましては、騒音の防止の施設を講じていくというのがいまの対策趣旨であると考えます。
  7. 堀昌雄

    堀分科員 そこで、いま私が成田空港の超音速機の問題を出しておりますのも、将来的に成田空港というのは、御承知のように内陸地帯における空港ですから、どっちから飛行機がおりてこようと騒音を除外することはできないわけです。いろいろな角度からおりてくるでしょう。しかし、どっちから来るにしても、その下及び関係地域はいろいろな形における騒音に悩まされることは間違いない。実は私はその問題を、私自身の近くにある大阪国際空港でいやというほど経験しておりますから、どうしても私は、今後のあるべき飛行場というのは、まず何しろ騒音住民から無関係な形で、できるだけ少ないところへつくるというのが理想だろうと思う。  そういう意味では実は、私のほうには淡路局という、海から入って海へ出られるという、地形としては非常に理想的な一つの島がある。もちろんこの島といえども人間が住んでおるわけですから、これを飛行場に使うについては、やはりここに書かれておるような完全な騒音対策を含めた公害対策が講じられなければなりませんけれども、しかし内陸地帯における飛行場に比べれば、騒音の問題というのは著しく減らされる。そして、面積も非常に広いということになると、将来的におそらく、超音速機が自由におりたり飛んだりすることができるところというのは、日本じゅうでこの淡路島しかなくなるのではないか。成田空港は、超音速機離発着陸について必要にしてかつ十分な面積がとれる、騒音対策がとれるという点で、淡路島と二つ並べてみて、私は成田よりは淡路島のほうがあらゆる意味で、そういう公害の問題、面積の広さ、いろいろな問題はすぐれておるのではないか、こう思いますけれども、これは仮定の、将来の問題でありますけれども、ひとつ大臣の感覚を承っておきたい。
  8. 大橋武夫

    大橋国務大臣 仰せのごとく、淡路島は瀬戸内海の中の一つの島でございまするから、これを飛行場に活用いたしました場合に周辺に及ぼす影響の少ないということは事実でございます。したがって、そういう意味におきまして最近淡路島に関西における第二国際空港をつくるべしという動きにつきましては、私どもも非常な興味を持っておるところでございまするが、何と申しましてもその先決問題といたしましては、淡路島と本土の交通について早急に結論を得る必要があろうかと存じます。ただいまこの問題につきましては調査中でございまするので、この調査の結果良好な結果が得られましたならば、その上で十分淡路島の問題も調査に入りたいと存じます。
  9. 堀昌雄

    堀分科員 いまの橋の問題というのは、これは地域的にいろいろ関係がありますから、所管運輸省ではなくて建設省でありましょうから、ここでお答えをいただこうと思っておりませんけれども、しかし私はやはり空港計画というものは長期的に、いろいろな騒音対策もありますし、新たに開発される超音速機のようなものの発達ぐあいとにらみ合わして、長期的に問題を考えておかないと、あとで非常にまずいことになる。実は大阪国際空港は資金をかけて拡張中であります。万博もありますから、それまでのある時期には必要だと思いますが、これが拡張されて便利になってますますここに飛行機がたくさんおりるということになると、この周辺の受ける公害というものは、実は現状としてもたいへんなものなんですが、それがまだまだこれからふやされるということがはたしてほんとうに適当かどうかという点は、私どもはやはり、すみやかに第二国際空港が設けられて、主たるものはそちらへおりる、そうでないものはしばらくは――これはやめちゃうというわけにいかないでありましょうから、当分の間そうでないものは大阪国際空港のほうにおりるという処置がされることが望ましいと思う。  そこで、いま当面は、そんなことを申しましても先のことになりますから、いま大臣仰せになったような、騒音対策の問題でありますけれども、この中に書いてあります一つに、一番ひどいところは移転補償を含めて考えたらどうか、こうなっております。実は私ども、この前、衆議院の公害対策特別委員会としても調査に参ったことがありますし、この間は運輸省としても学者を呼んでこられて調査をされたようでございますが、どうも偶然かどうかわかりませんが、われわれが調査に行くと、そこを実は飛行機が飛ばないのです。これは、二回あるのですけれども、せっかく騒音を聞きに一番ひどい発進路の下に行くと、行っている時間中飛ばない。それからわれわれがバスに乗ってずっと移動をすると、そのころになってさっとそこを通ってくる。せっかく調査に行ってもその実情がわからないというので、たいへん私は遺憾に思うのであります。二回もそういうことが起きておるのですが、おそらく偶然でありましょう。偶然でございましょうけれども、あまりに偶然過ぎると思うわけでございます。  非常に騒音の激しいところは、ここに騒音関係についての報告が出ておりますが、皆さん常識でちょっと感じられないと思いますが、かわらのずれ、家屋の振動を訴えたものというのが六百二十七あるのです。私が現地でかわらのずれぐあいを見てみますと、これは全くひどいものです。わりに新しい家のかわらがずれるのですね。かわらがずれるというのは、実際そこで騒音をお聞きになった方はおわかりだと思いますが、話をしていようと、何をしていようと、すべての行動は瞬間そこに存在しなくなるくらいに、ひどい騒音なんです。ですから、私どもそのときに、公害対策の前の委員長をしておられた保科さんなんかとも話をしたのですが、少なくともこの発進路のまっすぐ出ていくある距離の間は、これはやはり用地買収をして、そこにいる人は移転をしてもらって、そこは、飛行場ではないけれども、ひとつ緑地帯か何かにして、あの直接の激しい騒音対策というものはすみやかにやってもらわないと、それは子供はノイローゼになるし、あらゆることが起きております。これは大臣も一ぺん飛行場にはお出かけになったようですが、ぜひそこを飛行機を飛ばすようにして――大臣が行かれてまた飛ばなければ意味がありませんから、偶然でなしに、ちゃんと飛ぶようにして、一ぺんあの一番ひどい地域大臣お出かけになっていただきたい。そうすれば、ここは用地買収をして移転補償をしなければだめだということは十分おわかりになると思いますし、この答申にもありますから、これを十分御検討いただきたい。  その次に、非常にいま問題になっておりますのは、テレビラジオ受信料をひとつ基地並みに取り扱ってもらいたいという要求が非常に強くこの周辺にあるわけです。これはもう全くテレビラジオが見えなくなるし聞こえないという回数は相当長時間にわたっておるわけです。私の家はそんなところからはずいぶん離れていますけれどもプロペラ機のときには何ら影響がなかったのですが、現在は毎日ジェットが通る下になっていると見えて、画面はやはりかなりひどくゆれて、音は何とか聞こえますが、画面が非常にゆれる。おそらくそういう被害を受けているのはその付近に非常に広範にわたってあるだろうと思うのですが、特にひどい地域については、テレビラジオ受信料の減免を、運輸省指導性をもって、ひとつNHKその他に働きかけて処置をしていただきたい、こう思うのです。  いまとりあえずこの二点に対して、ひとつ運輸省としての見解を承りたい。
  10. 大橋武夫

    大橋国務大臣 最初の、特に騒音のひどい地域に対して移転補償という問題でございまするが、これにつきましても、まことにごもっともでございますので、十分調査を進めまして、御趣旨の線に沿うてまいりたいと存じます。  それから次の、ラジオ受信料の問題でございますが、この点につきましては、特にNHKに御協力を願わなければならぬ点が多々ございますので、今後NHKに直接接触いたしまして、十分お願い申し上げたいと思っております。
  11. 堀昌雄

    堀分科員 いまの、NHKにひとつ強力にやっていただきたいのですが、私は理論的には基地周辺の問題とこれは少し違いがあると思うのです。基地飛行機というのは、これはわれわれはそんなものは必要ないと思っておりますけれども、まあ一応現在あるわけですし、自衛隊という国の機関がやっているわけで、その行為そのもの利益を伴っていないわけですが、これは民間空港ですから、要するに民間機離発着ということは、そのことによって利益を受ける主体のあるものがある。ところが、ここで、皆さんのほうの答申にも書かれておりますけれども、その離発着をするほうの補償のやり方のところで、「この空港設置管理者航空会社の責任は、いわば共同に生ずるものであるが、補償金等の支払いについては、技術的観点から、空港設置管理者がまとめてこれを行ない、空港利用者に対して着陸料等の形式で分担させるのが妥当であると考えられる。」こうなっておるわけですね。この地域聴視料も、人間が数多いわけですから、もし減免するとしても相当な額にのぼってくるとなると、NHK基地周辺と同じようにはいきませんよという抵抗かなりあると私は思うのです。それならば、やはり離発着をするものからあるものを取って、それをやはりある程度、ひとつこのくらい出すからがまんをしろというような形で何らかの措置が講じら  れないと、ただNHKおまえのところだけ泣いてくれ、こう言ってみても、ちょっと私は筋の問題として、やや筋の違う点があるから、この点はやはり、そういう問題を含めてひとつ御検討願いたい。離発着費用をいま取っておられるわけですから、それらについては、ここに書かれておるように――われわれのほうはNHKが泣いたっていいんですし、運輸省が多少のあれをNHKにされても、受ける側は関係はないのですけれども、そこのところは単に住民要望ではなくして、ここは国会ですから、われわれとしてものの性格から考えてみると、筋としては、やはり基地と同じだというわけにはいかない背景があるということを含めて、運輸省側においても、そういうことが早く行なわれるための措置をひとつお考えを願いたい、こう思うのですが、いかがでしょう。
  12. 大橋武夫

    大橋国務大臣 その点、御趣旨もっともでございます。よく含みまして、十分政府機関の間でも協議いたしまして、できるだけ早く実現いたしたいと思います。
  13. 堀昌雄

    堀分科員 今度は空港騒音対策ということで本年度予算も取っていただいておりますが、私はどうも――これは最初予算でございますから、そうぜいたくも申せないかもしれませんけれども、この程度ではまことにわずかであって、この地域における住民の期待にこたえるのには、あまりにもほど遠いような感じがしてなりません。ひとつこの点については、来年度はもう少し予算を取っていただいて、これはどうにも逃げ出すわけにいかない住民でありますから、ここらに書かれ  ておりますところの子供たちの「学習、保育又は集会の用に供するための施設等の整備」等に補助  しなさいというような答申も出ておることでありますから、やはり補助をしていただくためには、予算がなければ補助ができませんから、ひとつ来年度におきましては、特に飛行機の数がだんだんふえてくる、騒音は減ることはなくて、ふえるほうにばかりいっておりますから、今度空港が拡張されるとまた騒音がふえるわけでありますから、ふえてからでは追いつかないわけですから、ふえる前にふえることを予想した対策を十分講じていただきたいということをひとつ要望いたしまして、空港関係は以上で終わることにします。   次は、山陽新幹線問題でございます。   実は、東海道新幹線ができるときには、この東海道新幹線のもたらす公害というものについては全然わからなかったわけですから、おそらく土地買収その他についてはそんな大きな抵抗はなかったのではないか、現存行なわれているような抵抗  はなかったと思うのでありますが、実は東海道新幹線が通過して、その沿線における騒音なり各種の公害というものは非常に強く訴えられておるものですから、そこでいま私ども地域を通る山陽新幹線については、実は強い反対が行なわれておるわけです。そこで住民が一番要望しておるのは、ひとつ全部地下鉄にしてくれ、こういうことのようでありますが、われわれが新聞で承知をしておる範囲では、国鉄地下鉄にはできません、こういうことのようであります。  そこでちょっと国鉄にお伺いをしたいのですけれども地下鉄にすると普通の形で通すのとでは、費用の差はどのくらい違うのか、まず最初にそれを承っておきたい。
  14. 仁杉巌

    仁杉説明員 お答え申し上げます。  地下鉄にする場合と高架にする場合と、いろいろ条件によって違うわけでございまして、簡単には申し上げかねますが、大体高架にする場合ですとキロ当たり三億から五億くらい、それから地下鉄にする場合には少くとも十億以上、東京付近の非常に高いところになりますと、五十億、六十億、七十億というようなところがあるというふうな状況でございます。
  15. 堀昌雄

    堀分科員 地下鉄にする場合に、私ちょっと感じますのは、一応工事をするときは土地を買い取らなければならないかもしれないけれども工事が済んだら、この土地の上の利用というのは何ら妨げないわけですから、阪神間のような非常に地価の高いところでかなりの幅のものをずっと買い取るほうが有利なのか、いま短期的には費用はかかるけれども、長期に見ると、結局その工事をしたあと、またもとへ売り戻しちゃったほうが問題が簡単な場合もあり得るというふうに思うのですが、そういう上の土地に全部売り戻すという考えをしたら、これはキロ当たりでもっと減るのじゃないですか。
  16. 仁杉巌

    仁杉説明員 お答えいたします。   用地代というものは、普通われわれがやります  東海道新幹線の場合におきましても、大体総工費の一五%くらいに当たっております。ということは、先ほど申しましたように、三億とか、片方が十五億とかいう金になりますと、用地代をプラスマイナスいたしましても、とうてい地下鉄とは比較にならないということになります。
  17. 堀昌雄

    堀分科員 私は何がなんでも地下鉄にしろという論者ではありませんけれども住民にすると、一番被害が少ないのは地下鉄だ、これは常識論としてあるわけですね。ただしかし、いまのように費用キロ当たり非常に違うということになると、これはやはり国鉄側としては採算上とても地下鉄にできないという問題があるでしょうが、これはわれわれのほうでは、何か知事が中に入って、地下鉄にしたいとかなんとかいっていろいろ複雑になっております。そこで、この住民に対して、こうなってそのために地下鉄にはできないということが十分納得できるような措置はとられておるのかどうか、この点をちょっと伺っておきたい。
  18. 大橋武夫

    大橋国務大臣 山陽新幹線阪神地内におきまして、騒音対策として地下鉄にしてほしいという地元の要望につきましては、私どもも、できればさようにすることが適当だと考えた次第でございます。そこで、さような趣旨調査をしてもらいましたところ、御承知のとおり西宮周辺におきましては、北から南に相当量の多い地下水が流れておりまするので、そこで地下鉄工事を実施いたしました場合に、その地下水の流れをさえぎることになりまするので、このために、その地下鉄線よりも南におきましては、地下水の欠乏によりまする地盤沈下現象が起こるでございましょうし、また地下鉄線路の北側におきましては、地下水の水位が上昇することによりまして水害その他が起こりやすくなる、こういうことになりまするので、技術的にちょっと地下鉄につきましては自信がないわけでございます。そこで、そういう危険な工事を避けるという意味におきまして、安全な高架線を採用することが適当ではないか、こういうのがただいま調査に当たりました技術者の結論でございまするので、私といたしましても、この専門的な諸君の多年の経験に基づく結論を尊重することが地元のためにも適切だ、かように存じまして、ただいまできれば高架線ということで進めておる次第でございます。  しかしながらこの高架線につきましては、いままでの例から申しまして非常に騒音の問題が心配されますので、何とか技術的に騒音を最小限度に押える、在来の鉄道以下の騒音にとどめるようにいたしたい、こういう趣旨でその点も調査を進めさせておるのでございますが、ただいまのところではこの鉄けたをやめまして、そしてコンクリでもってしっかり下部を固める、高架線の路盤になるところをしっかり固める、そして線路の両側には相当高い防音壁を設けるということになりますと、相当程度騒音が防止される。ただいま技術者の説明では大体在来線と変わりない程度までいける、こういうことでございます。この趣旨をもちまして地元の皆さまにも十分御納得をいただくようにいたしたい、そのように存じておる次第でございます。
  19. 堀昌雄

    堀分科員 実はすべてに路線が発表になっておるようでありますが、一部は小学校のすぐ近くを通ったり、非常に現在住宅地帯として稠密な地帯を通るということもあるわけです。しかしまた現在いわゆる田畑のような形で残されておるところを通るところもあると思います。ですから通り方についてはいろいろだろうと思いますが、私はやはりいまいろいろと皆さんのほうでその防音のための対策も講じられておると思いますけれども住民の側としますと、やはりそれはできたあとでわかることですけれども、できるまでは皆さんがいろいろおっしゃっても必ずしもなかなか信用はできないのではないか。それがやはり土台になって反対運動かなり強くなる、こう思います。  そこで私はかねてからグリーンベルト方式という提案を実はしておるわけですが、その新幹線が通るところで、特に学校だとか住宅の非常に密集しているところを通る、そういう部分はひとつ国鉄も何とか少し費用を出して、新幹線の両側に土地を確保して、今度はその外側に、ひとつ建設省にも協力をしてもらって、帯状の都市公園をそこにつくっていくということにすると、これは負担は国鉄も一部負担をしますし、さらにその外側の都市公園は地方自治体とそれから建設省三分の一補助というようなことになりますから、負担が非常に分散をされて、そして横にきれいなグリーンベルトができるということになりますと、いろいろな公害対策を講じられた上に、やはりある幅の安定帯というものがあるわけですから、その外側におられる人は、まあ多少のことがあっても、これだけの幅があればまあまあがまんしなければしようがないだろう、こういうことになりやすいのではないのかというので、私はこの地下鉄問題というものが出る前から、やはり可能な範囲というのはそういうことではないか。おまけにこれはやはりそういうグリーンベルトができることは非常に都市対策としても望ましいことでありますから、そういう全体の角度から見て必要な方向だ、こう思うのですが、やはりそれにはまず最初国鉄がある程度協力をしないと、建設省と地方自治体だけで全部やってくださいというのでは、これは話が前に進みません。だからやはりある程度のことを国鉄もひとつ協力をさしていただきましょう、しかし国とかその地域の自治体も協力してくださいという問題提起があってしかるべきではないかという気持ちがあるわけですが、これについてひとつ国鉄側としても協力の用意があるかどうか、運輸省としてそういう指導をなさる考えがあるかどうかちょっとお伺いをしておきたいと思います。
  20. 磯崎叡

    ○磯崎説明員 ただいまの山陽新幹線の都市公害の問題でありますが、先ほど大臣からおっしゃられたとおり、いま私のほうで土木技術的な面、それから車両のほうから出る機械技術的な面と、両方から技術研究所においていろいろ東海道新幹線の例をとりまして検討いたしておりますが、しかし事柄といたしまして、先生のおっしゃったとおり、政府も公害基本法をお出しになるようでございますから、私どもとしても、当然この問題は第一の問題として考えなければならないと思います。そのうちで土木技術関係の、いわゆる鉄道プロパーの問題と、いま先生がおっしゃったように、鉄道の外の問題、二つあると思います。鉄道の外の問題はもちろん国鉄だけではいかんともいたしかねますが、結局道路をどうするか、そのつくった道路の幅をどうするかあるいはそれをある程度公園化するあるいは大きな樹木を植えるという方法につきましても、今後もう少し事務的に建設省あるいは自治省と御相談いたしまして、そう長い区間全部というわけにはまいらないと思いますけれども、先生のおっしゃったような、ほんとうに人口密集地帯等につきましては、十分いままで考えなかった、そういうふうな考え方も取り入れる必要があるのじゃないかというふうに考えておりますが、まだ具体的に実は結論に達しておりませんが、貴重な御意見としてぜひ参考にさしていただきたいと思います。
  21. 大橋武夫

    大橋国務大臣 ただいま国鉄のほうから、一応グリーンベルトの御意向につきましてお答えを申し上げたところでございますが、私どもといたしましても、今後の都市のあり方というような面から申しましても、これは前向きの施策である、かように存じますので、もう少し具体化いたしましたならば、関係各省に十分協力をお願いして実現に努力をいたしたいと存じます。
  22. 堀昌雄

    堀分科員 要するに、きょう私が取り上げました二つは、最初に申し上げましたように、新しい公害の問題としてだんだん出てきた問題であります。ところが空気中の硫黄のような問題とかいろいろなものは、これはわりに目に見えなかったり、害はもちろんあるのですけれども、比較的びまん的にあるものですから、強い感じでは受けないわけですが、音のようなものは非常に強い感覚的障害というかっこうできますから、こういうものがだんだん広がるということは、これは住民にとっての公害感というのは非常に強く実は住民は感じておるわけであります。ただ残念ながら、しかしこれまではそういうものに対する対策は、実質的な被害がないというたてまえに立っておったのかどうかわかりませんけれども、きわめて手おくれであったという感じが私どもはいたしてなりません。実際にいまの飛行場騒音にしても、現地でほんとうに経験をなさってみると、なるほどこれはひどい、こんなところに人間は住めない、こういうことになるのですけれども、実は関係者はお調べになっておるのかどうかわかりませんけれども、やはり私は比較的無関心にこれらの問題は残されて今日に至っておる。しかし問題は非常に緊急を要する段階なんです。事実はこれらすべてがそういう段階でありますから、どうかひとつそういう点で、特に空港騒音問題については適当な時期にひとつ運輸大臣も直接一番激しい騒音地帯には一回おいでになって、なるほどこれはこのままほうっておけないというお感じを持たれる。私はそう思っていますから、地元にいるからとかなんとかを離れて、客観的に見て、これは耐えがたい公害だ、こういうふうな感じがいたしておりますから、そういう点を含めていまの予算も拡張していただくと同時に、もう少しひとつ真剣にこの空港騒音対策に取り組んでいただきたいし、同時にこのことといまの新幹線の問題は無関係ではございませんから、やはりそういう住民の意思はかなり強いものがありますから……。しかしやはり国鉄としても、輸送力の増強の問題からすれば、いつまでもあの地域だけの工事をほうっておくというわけにはいかない問題でありましょうから、至急に私の提案申し上げたような問題も含めて、住民が納得をする方策によって、この問題をすみやかに解決をしていただきたいということを要望いたしまして、私の質問を終わります。
  23. 仮谷忠男

  24. 横山利秋

    横山分科員 LSTに関連をいたしましてお伺いをいたしたいのでありますが、運輸大臣は、二月の半ば米軍の立川基地にベトナムからLST船員の氷詰め死体が到着をしたことを御存じでありましょうか。
  25. 大橋武夫

    大橋国務大臣 LST乗り組み員飯田金治の遺体が送られてまいったということを承知いたしております。
  26. 横山利秋

    横山分科員 米軍立川基地死体安置所で死体の検案を行なったのは警視庁でございますが、その死体の検案はどういう結果でございましたか。
  27. 河毛一郎

    ○河毛政府委員 これは死体の検視の結果は自殺であるというふうに報告を受けています。
  28. 横山利秋

    横山分科員 自殺の原因はどういう原因でございましたか。
  29. 河毛一郎

    ○河毛政府委員 神経衰弱である、こういうふうに……。
  30. 横山利秋

    横山分科員 死んだ者から聞いたのですか。
  31. 河毛一郎

    ○河毛政府委員 これは警察の検視の結果及びその以前におけるMSTSからあった報告であります。
  32. 横山利秋

    横山分科員 MSTSからはどういう報告がありましたか。
  33. 河毛一郎

    ○河毛政府委員 自殺いたしました飯田金治、これは当時LST222号に乗船いたしておりまして、サイゴン付近を航行中でございました。ただいま御指摘のございました二月十三日、船室において監視者のすきを見て自殺いたしております。これは神経衰弱でございますが、その原因は、昨年の十月末本船に乗船した当時から、妻が病床にあって胃ガンの疑いがあるということがございましたために、これが非常に原因となりまして、心痛をいたして、極度の神経衰弱になった、こういうふうに……。
  34. 横山利秋

    横山分科員 この人はもう長年LSTの乗り組み員でありまして、あなたも御存じのようにもうずっと何回も何回も乗っておるベテランであります。奥さんが病床にあるということであるならば、長年の人でありますからかえってよろしいのですね。子供さんはりっぱに成長していろんな仕事をやっておるのでありますから、そんなに心配はないのであります。あなたの言うところは奥さんが病気だから神経衰弱になったというのでありますが、これは確たる証拠があるのですか。神経衰弱というものが、奥さんの病気が原因であるという確たる証拠は何でありますか。
  35. 河毛一郎

    ○河毛政府委員 この点につきましては、私どもといたしまして、先ほど申し上げましたように、検視の結果及びMSTSからの報告に徴しまして、そのように判断いたしておる次第でございます。
  36. 横山利秋

    横山分科員 検視の結果ということが――まあ私の入手いたした警視庁の検視の結果は、首のところに典型的な索溝が認められた、こうあるから、おそらく十中八、九自殺であろうということは意見の相違はない。しかしながらその原因が、ベトナム戦のLST船員として乗り組んでおり、そうして奥さんの病気が原因であったのか、あるいは戦火のちまたにあって、非常な危険の中にノイローゼぎみになっていったのか、神よりそれは知るよしもないではありませんか。何をもってあなたは奥さんの病気が原因だと強硬に言い張るのですか。
  37. 河毛一郎

    ○河毛政府委員 たびたび申し上げておりますように、私どもは当時の状況からいたしまして、まあそのような点が一番大きな原因である、こういうふうに考えておる次第でございます。
  38. 横山利秋

    横山分科員 この間の、一人が死に四人が傷害を負ったという問題にいたしましても、一体このLST乗り組み員の問題について、日本政府の最高責任を負う省はどこでありますか。
  39. 大橋武夫

    大橋国務大臣 いろいろむずかしい問題でございますが、国外におきます日本人の生命、財産につきましては、一応政府の責任官庁といたしましては外務省ということに相なっておることは御承知のとおりでございます。ただしかし、このLSTの乗り組み員につきましては、日本の海員の資格を持っておる人たちもございますので、こういう人たちにつきましては、海員についての所管官庁といたしまして、運輸省もできるだけ責任を持ってお世話をいたしたいと思っております。
  40. 横山利秋

    横山分科員 外務省が責任を一切負うというならば――一切というか、最終責任を負うというならば、おそらく外務省が手続として最も最終的にタッチをいたしますのが旅券であります。いかなる理由で外務省は旅券をLST乗り組み員に出しましたか。旅券法の何条によって許可をいたしておりますか。外務省に答弁を求めます。
  41. 山下重明

    ○山下説明員 外務省が旅券の申請人に対して旅券を出す場合には、旅券法三条一項によって旅券を発給いたしております。
  42. 横山利秋

    横山分科員 運輸大臣にお伺いしますが、今回のみならず、過去におきましても、LST船員の事故が続出をいたしておるようであります。私の提起いたしました自殺をいたしました人も、私の推定するところによっては、戦火のちまたにおいてノイローゼになった、もちろん奥さんの病気もさはさりながら、それだけではない。それだけだったら、LSTに乗り組む必要はないのでありますから、家族も安定しておるのでありますから。したがってLST乗り組み員には常に戦火の危険、生命、身体に対する危険がつきまとっておるということはあなたはお認めでございましょう。
  43. 大橋武夫

    大橋国務大臣 ただいまLSTは現実にベトナム地域において輸送業務に従事いたしておりますし、またこの地域の治安状態は御承知のような状況でございますので、全く危険のない地帯とは考えるわけにはまいらないと思います。
  44. 横山利秋

    横山分科員 これは米国海軍省極東管区軍事海上輸送司令部並びに全日本海員組合との労働協約・日本人船員人事管理規則書でありますが、これによりますと、H節に危険手当が支給されることになっておる。それからL節には船舶被撃慰労金が支給されることになっておる。それからさらにQ節では特別区域慰労金が支給されることになっておる。本質的にこのLST乗り組み員に対しては危険があることを予想しておる。さればこそ給料も多い。被撃手当も、いろんな手当が想定をされて支給を現にされておるということは、LST乗り組み員に対しては本質的に生命、身体に危険があるということを想定に入れなければならぬ、こう考えるのでありますが、大臣御異存ございますまいな。
  45. 大橋武夫

    大橋国務大臣 米軍当局と海員組合との間の契約内容から見ましても、これは通常の業務よりも相当危険度の高いものであるということを認めざるを得ないと思います。
  46. 横山利秋

    横山分科員 運輸大臣がそうおっしゃるのでありますが、外務省にお伺いいたしますが、旅券法の十九条第一項の四号、「旅券の名義人の生命、身体又は財産の保護のために渡航を中止させる必要があると認められる場合」は、すなわち第一項において「外務大臣又は領事官は、左に掲げる場合において、旅券を返納させる必要があると認めるときは、旅券の名義人に対して、期限を付けて、旅券の返納を命ずることができる。」となっておるのでありますが、運輸大臣は本質的に危険があると言っておる、旅券の名義人に、なぜ返納させないのでありますか。
  47. 山下重明

    ○山下説明員 旅券法十九条にこういうようにございます。申請人の生命、身体、財産に危険がある場合ということでありますが、この危険の条項というのは非常にむずかしいものでありまして、この判断に……(横山分科員「現に死んでおるじゃないか。爆撃を受けておるじゃないか」と呼ぶ)たとえばヒマラヤに登るとか南極に行くとか、いろいろ危険というものも十分検討されて行かれる場合が非常にありまして、これを役所のほうでこれは危険だからというようなことを判断するというのは非常に慎重にしなければいけないわけで、いままでまだ一回もこの海外渡航は危険であるからやめろというようなことを判定したことはありません。現在の場合におきましても、渡航の自由、今回は職業の自由まで制限することになりますので、役所といたしましても運輸省その他関係方面と十分慎重に検討して、今後の取り扱いをはかっていきたいと考えております。
  48. 横山利秋

    横山分科員 ヒマラヤへ行くとか南極に行くとかいうのは、戦争に行くのじゃないのです。ここでは戦争が行なわれて、日ごと夜ごと幾百、幾千、幾万の人が死んでおるのです。戦争というのは人を殺すところなんです。人を殺すところに連れていこうというのに対して本質的に生命、身体の危険があるといって行こうとするのをとめようとしておるのが旅券法の十九条じゃありませんか。それを危険があるかないかわからぬというのは何事ですか。どうなんです。
  49. 山下重明

    ○山下説明員 現在南ベトナムにはわが国から大使はじめその他商社の人も――去年旅券を発給したのが(横山分科員「話が違いますよ。外交官と従軍は違う。」と呼ぶ)六千六百八十八名あります。またかつてダムの建設に従事した方が一人なくなられました。(横山分科員「それも戦争に行くのじゃないのです」と呼ぶ)いずれにいたしましても、ある程度の危険があることは事実でありますが、現在私たちはその地域が非常に危険である、旅券の返納をさせなければならないというところまでは判断しておりません。
  50. 横山利秋

    横山分科員 あなたは外交官やあるいは平和建設のために行っておる人と、戦争のお手伝いに行く人との区別ができないのですか。明らかにこれは戦争のお手伝いじゃないですか。LST、上陸用舟艇に乗り組んで兵器を輸送し、兵員を輸送するというのを、ヒマラヤや南極や外交官と一緒にするような外務省の役人がどこにありますか。何が違うか、あなたにはわからぬのですか。明らかに戦争に従事しておるじゃないですか。現に死んでおるじゃないですか。これからも死ぬかもわからぬじゃないですか。あなたは今後もLST乗り組み員には引き続き、ああこれはいいと言って判こを押すつもりでありますか。どうなんですか。
  51. 山下重明

    ○山下説明員 現在のLST乗り組み員が行なっておる輸送業務に従事している人たちの状況は、常時危険というふうに私たちは判断をしていないので、どこまでも御本人の方がその危険性と職業から受ける収入などを十分検討されて判断され、また海員組合なんかとも十分相談してきめられるということが適当であると考えております。もちろん私たちも運輸省その他とも今後とも検討して、非常に危険であるということになれば新しい方針を打ち出していきたいというふうに考えております。
  52. 横山利秋

    横山分科員 非常に危険であればではなくて、現に日本人が撃たれて死んだのです。けがをしたのです。そういう現実の事態を踏まえることができないのでありますか。  これは仮定の問題でありますが、私は運輸大臣に聞きますが、こういう上陸用舟艇が爆撃の対象になったということになれば、上陸用舟艇としても装備をしてこれに対する対応措置をしなければならなくなる、これは容易に想定されると思いますが、どうお考えですか。上陸用舟艇については戦備、装備をしていないとお思いですか。するとお思いですか。
  53. 大橋武夫

    大橋国務大臣 私、ベトナム方面でLSTの活動しておる実情をつまびらかにいたしておりませんし、また現実その地方におけるLST舟艇の兵  火から受ける危険の状況につきましてもつまびらかにいたしておりませんので、残念でございますけれどもお答えいたしかねるような状況でございます。
  54. 横山利秋

    横山分科員 そうしますと運輸大臣も外務大臣も、現地の事情はつまびらかにしないから、危険があるかないかわしにはわからぬから申請があったらどんどん判こを押す、危険があるかどうか判断するのは本人の御自由だ、やむを得なければ死んだって本人の責任だ、こういう態度でございますか。少なくとも日本人の生命、財産――本人の利益やその他は別として、日本人の生命、財産を守るべき日本政府の代表者が、それは本人のかってだ、死ぬのは本人のかってだ、そういう態度をおとりになるのでありましょうか。それとも、いまお話のようにつまびらかにしないのは残念だから、これからつまびらかにするとおっしゃるのでありましょうか。
  55. 大橋武夫

    大橋国務大臣 私は御質問に対してお答えいたしたのでございます。御質問の御趣旨を私は、現実のLSTの危険の程度から見て、LSTがそれに対抗して武装をするのが適当かどうか、こういう御質問でございましたから、私はよくわかりません、こう申し上げた次第でございます。
  56. 横山利秋

    横山分科員 それでは大臣は、ひとつ想像を交えてといっては語弊があるのだけれども、少なくともいま戦争しているのですね。戦争して、一方の上陸川舟艇がねらわれて人が死んだのです。死んだとなれば、LST乗り組み員なり米軍としても、LSTの防護措置を講じなければならなくなることはあたりまえのことなんです。これはあたりまえのことですよ。それとも、今後やられるかもしれぬからそういう仕事を全部しないとかというわけには、戦争ですからいきませんよね。そうすると、機関銃を設置するかあるいは大砲を装備するか、何かの装備をしなければならなくなる。つまり当然のことのようにLSTに対する戦備なり装備がされることになるだろう。この問題は、日本国内はもとよりアメリカにもベトナムにも、南北ベトナム、世界じゅうに、日本の船員がLSTに乗って攻撃を受けて死んだということはまたたく間に広がっておる。どうするかという問題は、単にこの死んだ人の慰謝をどうするかということだけでなく、ここからさらに加速度的に問題が発展をしておる現実であります。ですから私は装備をしておるかどうか聞いておるのですよ。御存じないとするならば、これから装備をすることになるだろうという私の判断についてどうお考えでございましょうか。判断ができませんか。私は、するとなるとどういうように発展していくかということを、大臣の所見とその対応策をお伺いしておる。
  57. 大橋武夫

    大橋国務大臣 ただいまのところ、対抗的な装備はLSTにはないということを聞いております。  また、今回の事件を契機としてそういう装備ができるかどうかということにつきましては、先ほど申し上げましたように、私のほうからただいま何とも想像することができないわけでございます。
  58. 横山利秋

    横山分科員 元来、LSTはどういうものを運んでおるのですか。大体想像されるのはもちろん食糧品やそういうものであるけれども、武器弾薬を運搬していないと判断されますか、その明確な証拠がございますか。
  59. 河毛一郎

    ○河毛政府委員 LSTが従来運んでおります輸送物資でございますが、これは米軍関係の衣類、雑貨等を主として輸送しておる、このほかに軍需物資も輸送しておる、こういうふうに私どもは報告を受けております。
  60. 横山利秋

    横山分科員 軍需物資というのは、もちろん兵器弾薬を含むことですね。
  61. 河毛一郎

    ○河毛政府委員 この軍需物資の中身につきましては、私どもはこれ以上詳細なことを了知いたしておりません。
  62. 横山利秋

    横山分科員 中身はもちろんあなたのほうとしても調べがたいのだけれども、少なくとも軍需物資を輸送しておるとするならば、武器弾薬を輸送しておるということは明らかに想定されることであります。一番最初は、なるほど協約にもドラムかんのガソリンを運搬しないことにしようという項目が確認書の中にありますけれども、戦火が拡大をしてそうして恒常的になれば、LSTの中に武器弾薬が運搬をされる。そのことは、乗り組み員については一々検査するわけにいかぬから、当然それが含まれると推定をするべきなのがこれは普通であり、われわれの対策もそれは考えられることだと思うのであります。したがいまして、運輸大臣に、しつこくてえらく恐縮でございますが伺いたいのでありますが、武器弾薬を輸送する、いま現に砲撃をされて死んだ、いままでこういうような事例はたくさんある、そして行った人はノイローゼで自殺をする。こういう状況のもとに、LST乗り組み員に対する日本政府のあり方について、今後も何ら変更の必要を認めませんか。
  63. 大橋武夫

    大橋国務大臣 従来LSTの事故といたしまして今回のような事故は初めてでございまして、したがって、今回こういう事故が現実に起こったということは、LST業務の危険度に対する認識について、この際よほどしっかり再調査をする必要があるのじゃないかというふうに感ずる次第でございまして、運輸省といたしましても、できるだけ関係方面に連絡いたしました上で、LSTの業務の内容につきまして、一そう詳細に調べてまいりたいと思います。
  64. 横山利秋

    横山分科員 LSTの乗り組み員に対する認識でございますが、大臣、乗り組み員というものは本来的にアメリカとベトナムとの戦争、そのアメリカに従軍をしておる、こういう判断が的確だと思うのですが、どう思いますか。
  65. 大橋武夫

    大橋国務大臣 私どもは、LSTという特定の船舶の乗り組み員となるという契約がございまして、これが従軍ということになるかどうかは、LSTの現実の業務によっておのずから決定される、こう思うのでございます。ただいまのところ、どういう形でLSTの輸送業務がやられているかということでございますが、もう少し調べてまいりたいと思います。
  66. 横山利秋

    横山分科員 そんな不確かなことを言ってもらっては困る。現実に日本内地からあるいは沖繩から主としてベトナムに向けてLSTが行き、そしてベトナムの周辺を船は動き回り、そしてベトナムへ行っておるアメリカ軍人の補給物資やあるいは武器弾薬を輸送しておる。これが従軍でなくて何でありましょう。一体何ですか、LST乗り組み員というのは。あなたの言うように、名目上はなるほど米軍との直接雇用である。面接雇用ではあるけれども、戦争目的のために、戦争目的遂行のために、その中で給料をもらって働いておるのが従軍でなくて何ですか。どういう表現をあなたはなさるおつもりですか。
  67. 大橋武夫

    大橋国務大臣 私にはその従軍という意味がよくわからないのです。(横山分科員「軍に従うと書いて従軍という」と呼ぶ)だから、軍に従うということがよくわからないのでございまして、具体的な問題としては、LSTの乗り組み員はLSTに乗り組んで、そしてLSTの乗り組み員として仕事をやっておる、その仕事が従軍に該当するかどうか私にはわからない、こう申したわけでございます。
  68. 横山利秋

    横山分科員 学識豊かな大臣にしては、えらいとぼけた御返事をなさると思うのですが、従軍と  いうことは軍に従う、つまり一つの戦争をするという目的に対して、直接戦争の渦中に入って、その戦争目的のために従ってやっておる、これが従軍です。きわめてありふれた話じゃありませんか。あなたがその従軍ということばを使いたくないという意味がようわからぬのでありますが、それでは、従軍でなければこれは何と表現するのでありましょう。何でありますか。雇用契約だって、給料をもらっておれば、これは従軍ではないのですか。
  69. 大橋武夫

    大橋国務大臣 直接的に申しますと、日本の人がベトナムにおける極東米軍に雇用されて特定の業務に従っておるということであります。それがいわゆる従軍というものであるかどうかは、私にははっきりわかりません。
  70. 横山利秋

    横山分科員 ことばのやりとりは避けたいと思うのでありますが、私の言いたいことはあなたもわかっておるだろう。言いたいことがわかっておるから、何とか逃げようと思って、従軍というのはわからぬという。大臣、小学校からもう一回やり直したらどうですか。いくさに従事することを従軍という、きわめて平凡、簡単な話であります。  外務省にお伺いしたいのですが、いまベトナムの戦争にアメリカの軍に従って参加をしておるその人に旅券を出す、こういうわけですね。これは一体戦争に参加しておると認めますか認めませんか。戦争に参加しておるというのだから、そのとおりじゃないか。――何を考えて相談しておる。隣の人間は何だ、あれ。
  71. 東郷文彦

    ○東郷政府委員 先ほどからのお話のように、LSTの船員は、米軍との契約によって、米軍の輸送船の運航に当たっておるわけでございます。
  72. 横山利秋

    横山分科員 従軍して、いくさに従事しておる。
  73. 東郷文彦

    ○東郷政府委員 その間に、米国政府との間に義務、たとえば徴兵法というような義務の関係はないものだと思います。そこで、いまのそういう状態で輸送船の運航に当たっておるということは、いまお話しのような戦争に日本が参加しておるということにはならぬと考えます。
  74. 横山利秋

    横山分科員 全くおかしな奇態な――あなたはどういうことを言いたいの。米軍に徴兵の義務がないから従軍とならぬ……という。あなたは外務省の何局長さんですか。――北米局長ですか。だからアメリカびいきかもしれぬけれども、それ  にしたって、徴兵の義務がないから軍に従事してない、従軍とは言えないという。大東亜戦争で日本の兵隊以外にたくさんの人が行きましたね。あれは何ですか。少なくとも軍属やいろいろ軍属以下の人もあった。あったけれども、みんなそれは戦争に参加して行ったのですよ。いまここでLSTの千数百名の人がベトナムへ行っておるのは一体何であるか。給料をもらって働きにいったのである、それはわかった。しかしながら、その給料をもらってやる仕事は何であるか。アメリカの戦争目的に対して、給料をもらって、そして奉仕をしたのである。それ以外に何がある。どうなんです。あなたのようなとんちんかんな、徴兵の義務がないから従軍と言えないというようなばかなことを言っておったのではだめですよ。
  75. 東郷文彦

    ○東郷政府委員 おことばを返すつもりは毛頭ございませんが、いま、これは一体何が戦争に参加しておるか、こういうお話だと思ったわけですが、実情は、先ほどからもお話しのように、米軍との契約によって輸送船の運航に当たっておるということだと思うのであります。それがLST船員の実情だと私は考えるわけです。
  76. 横山利秋

    横山分科員 どうもあなた自信のないような顔で、まゆにしわを寄せながら答えておるのは、ほんとうに自信がないような話だと思うのでありますが、それでは逆に伺いますけれども、北ベトナムヘ、私に言わせればいわゆる従軍、あなたに言わせれば給料をもらって行く、旅券出しますか。
  77. 山下重明

    ○山下説明員 北ベトナムに行く船に乗り組むために旅券をほしいといった場合に、われわれのほうは断わる意思はありません。
  78. 横山利秋

    横山分科員 そうすると、北ベトナムへ従軍するに際しても旅券を出すというわけでございますね。
  79. 山下重明

    ○山下説明員 従軍ではありません。直接の戦争参加ではありません。たとえば義勇兵とか何かで直接そこの戦闘に参加するという場合は、これを違う判断で検討されることになると思います。
  80. 横山利秋

    横山分科員 もう一点聞きますが、義勇兵とは何ですか。
  81. 山下重明

    ○山下説明員 義勇兵とは、現在戦っている戦闘部隊に直接入って戦闘するという申請のある場合と思います。
  82. 横山利秋

    横山分科員 直接戦闘に参加するということと間接的に戦争に参加することとの区切りというものをこの際明白にしておいてほしい。
  83. 山下重明

    ○山下説明員 われわれのほうでは、先ほどからも御説明ありましたように、米軍との間の役務契約によってLSTに乗り組んで輸送業務に従うという目的が明記してありますので、事実そのとおりだという判断でこの場合は業務渡航として判断しております。もし、申請者の方から、自分は米軍もしくは北ベトナム軍でも、この軍に入って戦闘行為に参加するという申請がありますれば、この人は義勇軍に入って戦闘するということになると判断しております。
  84. 横山利秋

    横山分科員 この種の問題はきわめてデリケートな問題ですから、本人がうそのことを言って申請したという場合には、これはもう調べればすぐわかることだ。しかし、ほんとうのことであっても、義勇軍に参加する、直接戦闘に参加する、間接的に戦闘に参加する、ことばは明白であるけれども、実態というものはそんなに明白ではないですよ。直接戦闘に参加と間接に戦闘に参加と、現に現地にあってどのくらいの違いがあると思いますか。騎兵と輜車兵、空軍と輜重兵、輜重兵が直接戦闘に参加するとはいえないという言い方もないではないわけですね。私が言いたいことは、憲法によって、日本は交戦権を持たない、こういうことになっておる。その交戦権を持たない日本政府が、片一方の軍隊に参加する、直接にしろ、間接にしろ参加することに対して旅券を出すということは、本質的に間違っておると私は思う。あなたの答弁によれば、間接的なら南も北も旅券を出しましょう、間接的な雇用契約であるなら南も北も出しましょう。その間接的なものによってどんどん死んでいく可能性がある。LSTもこれに対して装備をたくわえるに違いない。そうして間接的なものが徐々に直接的なものにいく。その境というものは明白でない。こういう危険性が今日あるということを外務省としてはお考えにならないのですか。
  85. 東郷文彦

    ○東郷政府委員 今回の事件はまことに遺憾なことでございましたが、ただ、先ほど移住局参事官からも申し上げましたように、将来こういう事件が非常に頻発するということになれば、またお話のようにむろん考えなければなりませんけれども、現在の状態をもってしては、まだすぐその旅券をとめるということまでは考えておりません。
  86. 横山利秋

    横山分科員 大臣の答弁と外務省の答弁と違いますね。大臣は、先ほどあなたもそばで開いておられたと思うんだけれども、今日のLSTの状況については少し考える必要がある、そうおっしゃったじゃないですか。あなたのほうは運輸大臣と意見が違うのですか。
  87. 東郷文彦

    ○東郷政府委員 LSTの運航の実情その他につきましては、運輸大臣と同じく、いままでもあるいは今日からもむろん検討いたします。(横山委員「何を検討するんだ」と呼ぶ)LSTの運航の実情でございますとか、あるいは現地の実情、そういうことは、運輸大臣のお話と同じく、LSTのあり方というものについては検討いたします。しかしながら、ただいま申し上げましたのは、今日あしたからでも旅券をとめるかという点に関しては、まだそこまでは考えておりません。
  88. 横山利秋

    横山分科員 大臣御存じだと思うが、LSTの乗り組み員は個々の直接雇用契約ではあるけれども、もうすでに船長以下全部が日本人で、船だけがアメリカのものである。指揮命令は直接船長が受けるけれども、まるごと全部が日本人の乗り組み員で輸送しているのですよ。船長がアメリカ人で航海長もアメリカ人で、そしてかじを動かすということだけが日本人というじゃないのですよ。まるごと日本人なんだ。そして日本人部隊のようなかっこうでLSTは動いているものがある。それは初めはそうではなかったわけだ。初めは一人ずつだ。だんだん力が多くなっていって、そして日本人が全部でLSTを動かしているのがあるのです。そこで砲撃が行なわれておる。われわれだって戦争の体験を持っておりますけれども、直接向こうから向かっておるものをたたくのもあれば、態襲を討つより新羅を討てというふうに後方基地をたたくということが大切であれば、LSTがアメリカの戦闘行為の中の重要な要素を持っておるとするならば、しかもだんだん奥のほうに行くとするならば、かっこうの攻撃材料になる、またなった。そのことを、いまごろになってもう一ぺんよく調べますと言っておったのではいかぬじゃないか。本来日本人の生命財産を守るのが日本政府の義務であるとするならば、これ以上深入りをしていってやるということは考えなければならぬと私は声をからして、憲法から旅券法からあらゆる点を引用して言っておるのであります。重ねて御答弁をいただきたい。
  89. 大橋武夫

    大橋国務大臣 いままで長い間、LSTにつきまして、面接銃砲撃によるLST乗り組み員の死者の発生ということはなかったわけでございます。ところが今回御承知のような事態と相なったわけでありまして、今後こういう新たな事態が当然頻発するような事情になるべきものか、それとも今回のような事態はたまたまのできごとであって、また従来のごとくかようなことは考えずに済む事態であるか、これは十分調査すべきものと思うのでございます。調査の結果、今後かような危険が頻発するものであるという認識をしなければならぬとすれば、われわれといたしましても、そういう認識のもとに今後の対策考えていくということが当然であろうと思います。いずれにいたしましても、今後の事態と成り行きにつきましてもう少し調査をしなければならぬと考えておりまするのは、私どもも外務当局と同様でございます。
  90. 横山利秋

    横山分科員 そこで、いまの大臣の御答弁でありますが、いかなる方法をもって、だれが、どこの省が責任を持ってそれをするのでありましょうか。海員組合は運輸大臣に会って三項目の要望をしたそうでありますが、今日の状態であるならば、いまのやり方であるならば調査の方法がない、日本政府はお手あげだというような感じがしてならぬのであります。口頭禅だけでなく、大臣調査をする、外務省も調査をする、その調査の方法と責任はだれが負うのでありますか。運輸大臣でありましょうか、外務大臣でありましょうか。またアメリカ政府に対しまして、この所管のところに対しましてどういうような要望をなさるおつもりでありましょうか。具体的にお聞かせを願いたいのであります。
  91. 大橋武夫

    大橋国務大臣 運輸省といたしましては、外務当局と十分協議をいたしまして、そうして共同の責任としてこの調査を進めてまいりたいと思っております。方法につきましては、十分外務当局と協議さしていただきたいと思います。
  92. 横山利秋

    横山分科員 本件に関しまして、アメリカ政府並びに現地当局に対していかなる措置をおとりになりましたか。
  93. 大橋武夫

    大橋国務大臣 運輸省といたしましては、四月二十一日、外務省を通じましてアメリカ大使館に対し、今回起こりました災害に対する補償並びに今後LST船員の安全を最大限度確保されるために適切な措置をしてくれるように特に要請をいたしております。
  94. 横山利秋

    横山分科員 アメリカ政府のそれに対する回答はどういうことでございましょうか。
  95. 大橋武夫

    大橋国務大臣 まだ具体的な回答に接しておりません。
  96. 横山利秋

    横山分科員 すみやかにその回答を得られ、そうして今後かかることがないように特に希望をいたしたいのであります。同時に、外務省に対しましては、旅券法の十三条並びに十九条はだてや酔狂にあるわけではありません。十三条の第一項五号は、外務大臣において著しくかつ直接日本国の利益または公安を害する行為を行なうおそれがあると認めるに至った相当の理由のあるとき、抽象的ではありますが、少なくとも交戦国の一方に従軍している人に対して旅券を堂々と出しておるという事態認識を、とぼけて言を左右にするがごときことは許されないことだと私は思うのであります。かかる事態になれば法務大臣と十分協議をしろと後段に書いてある。また十九条の第一項の四号におきましては、名義人の身体あるいは生命保護のために渡航を中止させる必要に至ったとき、現にもうすでに幾らもそういう現象があると想定されるのでありますから、この点についても明白な措置をとられんことを私は要望いたしたいのであります。  時間の関係で、もう一つだけ簡単にお伺いしておきたいと思うのでありますが、昨年全日空の事故が二月四日にございました。その直後の三月十一日に全日空が申請をしてきた航空規程の改悪を運輸省はお認めになったようであります。さらに八月一日には、同様の改悪を日本航空についても認められた模様であります。その改悪の措置は、驚いたことに、国内線、東京―香港間、バンコク―シンガポール―ジャカルタ、東京―ソウル間にはは不時着水に備えての救命胴衣、救命いかだ、救急食などを搭載しなくてもよいことにされたそうであります。それからまた労働時間におきましても、離発着回数並びに飛行時間を大幅に延ばしておるという点もきわめて私は不可思議な点だと思う。休息に関する規定もずいぶん短くされた。これらの問題は当時私は承知をいたしておりませんでしたけれども、一体あれだけ世間を騒がした大航空事故の直後に、常識的にも解釈に苦しむようなこの改悪を認可された理由は何であったか、伺いたいのであります。
  97. 大橋武夫

    大橋国務大臣 日本航空の昨年の七月の乗務時間等に関する航空規程の改正は、ジェット機についての運航経験にかんがみて、必要とした改正を認可をいたしたわけでございます。これらの改正の内容につきましては、政府委員から詳細にお答えさせます。
  98. 澤雄次

    澤政府委員 日本航空は昨年七月に、ただいま先生おっしゃいましたように、乗務時間の改正をいたしたわけでございますが、全日空は、四十年の三月――事故のありましたのは四十一年、四十年の三月に改正をいたしております。全日空はそれまでこの規定がなかったものを、四十年三月に従来の経験にかんがみて作成したものでございます。日本航空の改正の要旨は、一組編成と二組編成と申しておりますが、交代要員の乗っていない場合、交代要員の乗っている場合と分けまして、  それから国際線と国内線を分離いたしまして、勤務時間を定めたものでございます。それからまた機内の乗務員の仮眠設備に関する規定を明確にいたしたこと、それから安全上支障があるときは機長が運航中止義務、これはフライト自身、飛行自身をキャンセルする権限まで含みまして、この運航中止義務を規定したものでございます。   それで、これを認可いたしますに際しましては、運輸省といたしましては、主としてこれは国際関係の規定を明確にするための改正でございましたので、諸外国の法規あるいは諸外国の航空会社の乗務規定等を参照いたしまして、日航の改正はいずれもそれより下回っておりますので、これを認可いたした次第でございます。
  99. 横山利秋

    横山分科員 時間の関係で簡潔に伺うのですが、国際的な水準にしたというのですが、私が端的にお伺いしているのは、あれだけの大事故があった直後に、国際条約を無視して、救命用具の搭載を必要なしと、こういうことをする、その改悪の気持ちが知れぬ、こう言っている。それから労働時間につきましても、国内線と国際線とに分けたけれども、いずれもこれ改悪ではないか、もっと長く乗れということではないか。休息時間も短くしたではないか。時もあろうに所もあろうに、そういうことをその時期にやるという気が知れぬ、こう言っている。
  100. 澤雄次

    澤政府委員 救命道具の設備は、ICAOの規定どおり、また運輸省令どおりにいたしたわけでございます。それから休息時間を短縮したと言われますが、休息時間は変更になっておりません。
  101. 横山利秋

    横山分科員 ICAOの規定に戻したといって平然としていらっしゃるのだけれども、少なくとも救命用具をいままでつけておったものを、もう持たぬでもいい、事故の直後に。その感覚を疑うと言っているのですよ。
  102. 澤雄次

    澤政府委員 救命道具についての規定は改正になっていないのでございます。
  103. 横山利秋

    横山分科員 国内線、東京-香港間、バンコク-シンガポール-ジャカルタ、東京-ソウル間には、不時着水についての救命胴衣、救命いかだ、救急食などを搭載しなくてもいいことにしたんじゃありませんか。
  104. 澤雄次

    澤政府委員 規定上は改正いたしておりません。
  105. 横山利秋

    横山分科員 それでは、この飛行時間の問題ですね。飛行時間は、従来は、国内線、国際線の別を問わず、離着陸一回のときは飛行時間九時間、勤務時間十三時間、離着陸回数は連続して勤務する場合四回まで、四回のときは飛行時間六時間、勤務時間十時間となっていたものを、八月一日以降は、国内線と国際線に分けて、国際線は十時間でありますからいままでよりも一時間ふえたことになります。勤務時間が十五時間でありますから二時間です。離着陸回数五回。国内線は飛行時間八時間、これは一時間減ったのであります。勤務時間十三時間というように、改悪になっているじゃありませんか。
  106. 澤雄次

    澤政府委員 これは、先ほどお答え申し上げましたように、国際的な各航空会社の例等も参照いたしまして認可いたした次第でございます。
  107. 横山利秋

    横山分科員 つまりそのことは、国際的ということばを使われるのですけれども、現状より悪くなったということはあなたはお認めになるのですか。
  108. 澤雄次

    澤政府委員 いままでの運航経験に照らしまして、この国際的な水準よりむしろ以下でございますが、ここまで上げることが危険ではないと判断したわけでございます。
  109. 横山利秋

    横山分科員 ようやくにしてその改悪を認められたというわけですが、少なくとも大臣、あれだけの大事故のあった直後に――時間がないものですからあまり詳しく申しませんけれども、休息時間やあるいは勤務時間を延ばすということの感覚を、大臣、その当時大臣でありませんでしたが、どうも私は感覚を疑うというのが、私のきょうの質問の焦点であります。一ぺん事情を大臣精査をされまして、従業員の諸君の間に非常に不満と、世間にも非常識じゃないかという声がありますから、一ぺん大臣の手元で十分その経緯を明らかにしてもらいたいと思います。いかがでございますか。
  110. 大橋武夫

    大橋国務大臣 よくわかりました。
  111. 仮谷忠男

  112. 玉置一徳

    玉置分科員 海難救助につきまして、政府の抜本的対策をお伺いしたいのですが、御承知のとおり、年々歳々六百人以上にのぼりますこれら海難の被害者がありますが、特にそれは北洋に多い。しかもそれは全損海難の事例が多いわけであります。そこで、炭鉱爆発等による世論は非常にきびしく、応急対策を政府も直ちに講じられるのでありますが、年々歳々このような数にのぼりますにかかわらず、この種の海難事故を完全に防止するための抜本的対策としては、なまぬるいんじゃないか、こう思われるわけです。そこで御質問を申し上げたいのですが、大型巡視船の配備状況に遺憾の点がないかどうか。大体巡視船の整備の基準は、二十九年、三十年ぐらいのわが国の漁船並びに船舶の状況に応じてつくった基準でありますが、それが一つも伸びてない。したがって、それから数倍に及んでおります今日の漁船、船舶の状況に照らし、大幅な巡視船の計画を立てなければならないわけですが、これを抜本的に整備をはかる方策としてどういうことをお考えになっているか。  時間の関係がございますので、もう一つついでに聞いておきます。  飛行機、飛行艇による海難救助でありますが、御承知のとおりビーチクラフトでおやりになっていただいておったが、何か別にYS11、これはことしから三機整備されますが、これはマリアナ方面である。北洋方面は自衛隊のを借りまして、これを使おうと思いますけれども、それらは軍用であるから、ソ連ソ連領域に近づくことを非常に好まない。どうしてもYS11を整備して、北洋にも使う必要があると思いますが、この三点につきまして、大臣の所感をお伺いしたいと思います。
  113. 大橋武夫

    大橋国務大臣 巡視船艇の現有の勢力といたしましては、巡視船八十八隻、巡視艇二百八隻、合計二百九十六隻であります。海上保安庁のできました当時、旧海軍等から移管されました老朽船、老朽艇は、昭和二十八年以降代替建造に努力いたしてまいりましたが、なお約三側残存いたしております。また海上保安庁が初期に建造した船艇は、当時の情勢から見まして性能上の制約を受けた低性能船である上、年を経るとともにその性能も劣ってまいっております。したがって、当面はこれらの老朽もしくは低性能船の船艇の代替建造による質的改善をはかり、警備、救難業務の要請にこたえるようにいたしたいと思っております。なお、昭和四十二年度には巡視船三隻、巡視艇八隻を建造する計画であります。  それから航空機につきましては、現在十六機持っております。今年度さらに二機、うち一機は前年度からの継続分でございます。これを合わせまして二機増強する計画と相なっております。
  114. 玉置一徳

    玉置分科員 巡視船、特に大型巡視船の建造が少ないと思うのです。ひとつ努力を重ねてもらわなければいかぬですが、そこで海難事故と事故防止につきましてですが、船舶検査官並びに労務官が、出航時の船舶の安全設備あるいは人命救助あるいは健康管理等に必要な、法に命ぜられました諸設備、施設というものを完備しているかどうかを立ち入り検査をするということの励行が、私は海難救助を最小限にとどめる非常に有効な方法であると思うのですが、これはこういう方々の人員の関係上、全般十分には実施されていないと思われるわけです。そこでこれの増員というものをお考えになっているかどうか。  その次に、その増員が望ましいが、急速にこれができないとすれば、警察等にありますある種の補助制度を設ける意思はないか。たとえば海員組合の支部の実情を、私はマリアナ群島のときに焼津に行って見てみましたが、海員組合に入っている船はほぼこういうものを整備して出航せなければいかぬということをかなり忠実に厳守されているが、そうではなしに、ただ、もうけでやっているところに不備が非常に多く見られます。しかしながら、人員の関係で海運局のほうで一々検査するということは事実上不可能であります。そういう意味では、補助制度をとりあえずつくるということも私は有効な方法ではないか、こう思いますから、この二点についてお答えをいただきたいと思います。
  115. 大橋武夫

    大橋国務大臣 労務官の増員はまことに必要な事柄でありますけれども、なかなかいろいろ各省との振り合いもございまして思うようにまかせぬ実情でございます。今後その補助員的な制度についても十分検討いたしたいと思っております。船舶検査の業務の増大につきましても同様でございます。どちらにつきましても、政府委員からなお詳しく申し上げさせていただきます。
  116. 河毛一郎

    ○河毛政府委員 ただいま大臣からお話のございましたとおりでございますが、現在船員労務官は総数八十名でございます。全国の海運局における対象船舶も非常に多く、必要度の高い支局四十九カ所に配置されている次第でございます。これら船員労務官は、日々海難の防止あるいは労働災害の防止に関連いたします事項につきまして業務を行なっているわけでございますが、私どもといたしましては、現在の定員でできるだけ仕事を能率的に行なうために、特にこの種の事件の発生の非常に高い中小企業に属する船舶または漁船を中心にいたしまして重点的な検査を行なっている次第でございます。またオートバイその他の機動力を利用しておるわけでございます。今後船舶の増強、あるいは一般的な労働条件の改善のために、労務官の仕事は非常に多くなってくると日ごろ考えておるわけでございます。なお増員に努力してまいりたい、こう考えております。
  117. 玉置一徳

    玉置分科員 それに関連いたしまして、規則で規定されておりますなま水あるいは生鮮野菜、そういう健康管理上必要なものまで検査するのには、増員を必要とする以外に、とても増員だけではめどがつかないというふうな感じが私はいたします。つきましては、中小企業の、ことに漁業の経営者、それから乗り組み員の代表者、それからあなたのほう、こういうものが一緒になって、補助員というのもおかしいでしょうけれども、やっていくような形を早く進めないと、なかなか増員も大臣お答えのように思うにまかせないだろう、こう思いますから、ひとつ御検討いただきたいと思います。  そこで、これにまた関連するんですが、漁船にはようやく二十トン以上の船の乾舷マークが実施されましたが、一般の船舶にはまだしていないはずであります。これはいつごろ実行されるか。
  118. 芥川輝孝

    ○芥川政府委員 国際条約によりまして、かねて百五十総トン以上の船舶につきましては、乾舷マークを表示いたしまして、それを越えました場合には罰金を取るという制度をとっております。それで、ただいま御指摘の小さな船につきましては、現在やっておらないわけでございます。そこで、一挙に乾舷マークを引きまして、それを越えたら罰金を取るという制度をしくことの可否を検討いたしました結果、一挙にそこまで持っていくのは少し酷であるという結論を得ております。そこで、積み荷の指導のためのラインを船体横に表示して、そして事故発生の未然防止につとめるということにいたしまして、この四月からこれの実施に着手しております。これにつきましては、関係省庁全部同意を得てやっておるものでございます。
  119. 玉置一徳

    玉置分科員 漸進的にものを実施することも必要かもしれませんけれども、人命のほうは酷どころの話じゃないんだから、ひとつ順次それを厳守していくような方向に御指導をいただきたいと思います。  そこで、遭難時の救命いかだの問題でありますが、各社で違った形のものが使われておる。こういうものを統一するということはなかなかむずかしいことだと思いますけれども、だれもが操作に習熟するためには、ある一定の規格だけは将来そろっていったほうがいいんじゃないだろうか、こういうように考えられるんですが、そこはどうお考えになっておるか。なお、その次に、それに関連いたしまして、救命いかだの上で何日ぐらい人間というものは生きられるのか、そしてそのときになま水と海水の関係がどうなのか、そういうことを当局として実験されたことがあるかどうか、お答えいただきたい。
  120. 芥川輝孝

    ○芥川政府委員 救命器具につきましては、一昨年国際条約が発効いたしまして、それで炭酸ガスを使用しまして急膨張させる膨張型救命いかだというものが最近非常に使用されてまいりました。しかし、ただいま申し上げましたとおり、一昨年国際条約にきまったという程度のものでございますので、救命いかだ自体につきましては、ただいま改良開発の途上にあるものでございます。したがいまして、各種の特許、考案が非常に出ておりますので、特許に触れない部分につきまして、極力これの規格統一をいたしまして、使用、保管の便利につとめたいと存じておるわけでございます。  それから、この救命いかだの上でどの程度生命が維持できるかという問題でございますが、これは非常にむずかしいものでありますし、また、それそのものを実験することも非常にむずかしいわけであります。現在のところ、救難食糧といたしましては、食い延ばしをいたしますと、一週間程度はこれが生命を元気に維持できるというものを研究いたしまして、たとえばそのビタミンの含有量であるとか、あるいはカロリーの保有分であるとか研究して、そういう救命用の食糧をこの救命いかだに積み込むことにさしておるわけでございます。
  121. 玉置一徳

    玉置分科員 船舶の大型化、ことに大型タンカーの事故対策でありますが、去る三月十八日に米国のタンカーがイギリスのコーンウォール沖で座礁して事故を発生した。さらに、前には、川崎の港内で油送船が事故を起こしたのはわが国でも御承知のとおりであります。この種のタンカーによる海難事故というものがこれから考えられるべきじゃないか。これに対する対策があらかじめ用意されなければならないと思うのですが、そこで、大型タンカー事故防止にどのような対策をお持ちになっておるか。それから、関連いたしまして、タンカー事故はわが国だけではいかぬのでありまして、各国の船との協定を結ばなければいかないと思うのですが、こういう取りきめを結ぶ必要があると思うがどういうお考えであるか。  その次に、わが国で最も危険視されるのは瀬戸内海の航行安全であります。名称の船が錯綜して入りまじって、どの航路ということなしに動いておるわけでありますが、早急に瀬戸内の航路調査を実施して、この内海の航行船舶の安全をはかるべきであると思うが、どういうようにお考えになるか。  それから、先ほど申しましたいわゆる油送船の火災に対して、化学消防艇のわが国の整備の現状と対策をお聞かせいただきたいと思います。
  122. 大橋武夫

    大橋国務大臣 運輸省といたしましては、昨年の十一月、タンカーの大型化に伴う災害対策要綱というものを決定いたしまして、危険性の高い狭水路、港湾等における環境の整備、船舶の安全性の向上、船舶職員及び水先人の質的向上、航法規制の強化等、事故防止のための施策と、災害の起こった場合の救助及び損害補償のための対策を推進いたしておるところでございます。しかして、このタンカーの大型化に伴う対策につきましては、国際的に措置する必要があるという御意向は全くそのとおりでございまして、三月の英国海峡における大型タンカーの災害に関連いたしまして、来たる五月四日、五日の両日ロンドンにおきまして、政府間海事協議機関第三回臨時理事会が開催されることになりました。この臨時理事会におきまして提出されると予想される議題は、事故発生防止のためとるべき措置、事故による被害局限のためとるべき措置、第三者に対する損害の補償責任の問題並びにこれらに伴う国際法改正の必要性について等でありますが、わが国といたしましては、従来独自の立場からそれらについて検討を加えてまいりましたが、問題の国際的な性格にかんがみまして、このような国際的な場において検討いたしますことは非常に有益と考えますので、積極的にこれに参加をいたしたいと存じております。  それから、瀬戸内海におきまする航路の設定についての問題でございますが、瀬戸内海等の海上交通の特にふくそうする水域につきまして、航路を設定し、大型船と小型船の航路を分離する等の交通規制を強化いたしますことは必要であると考えますが、現在の海上衝突予防法及び特定水域航行令は、このような交通規制を行なうためには法制として十分でないと考えますので、海上交通に関する法規を急速に整備したいと存じまして、現在検討を加えておる次第でございます。  次にタンカー火災に対処するための化学消防艇の建造計画でございますが、タンカー火災に関しましては、従来から巡視船に化学消防施設を整備し、これに対処してまいったのでありますが、最近のタンカーの大型化に伴って、これが対策については、技術的にもいろいろ問題が多いので、化学消防艇を整備し、大型タンカーの航行を規制し、構造、設備の改善、石油荷役設備の整備等、いろいろの問題について総合的に検討をしなければならぬと存じまして、そのような検討を進めておりますが、特に百五十トンの化学消防艇を整備したいと存じます。これにつきましては今年度設計をいたしたいと存じまして、そのための調査費を予算に要求中でございます。
  123. 玉置一徳

    玉置分科員 たとえば、ある石油会社の構想だったと思いますが、鹿児島なら鹿児島まで大型タンカーで持ってまいりまして、交通のふくそうするあぶない内海その他には小型で運んでいくというような構想があったように新聞で承知したのでありますが、そういうこともあわせてひとつお考えをいただきたいと思います。  そこで、大臣のいまお話しになりました人命救助を船舶相互間でやるのは当然で、船員法の第十四条ですかに義務づけられておるわけですが、米国のタンカーの問題と同じでありまして、この義務に基づいて救助いたしますが、この救助費に対する補償というものは、いまでは商法以外にないわけであります。私はマリアナ群島の災害のときに現地に参りまして、よく見さしていただいたのですが、ほとんどの船舶が自分の漁業を放棄して、全部で相当の長日月、遺体の収容に当たったわけで、お互いに自分の操業をやめて疲れて帰ってきたわけであります。相互扶助ですからその点はやむを得ないといたしましても、そういった一般の救助が十分に期待できるような補償措置について特別の取りきめが要るんじゃないだろうかということが第一点。  第二点といたしまして、海上保安審議会から答申されました人命救助基金の問題を実行に移す御意図があるかどうか。この二点について大臣の所見を伺います。
  124. 大橋武夫

    大橋国務大臣 ただいま海難救助の費用負担につきましては、海商法の規定によりますと、積み荷が救助された場合、あるいは船体が救助された場合ということでございまして、一番尊重を要する人命救助の場合の経費の負担について、法的な規定がないわけでございます。これにつきましては、海上人命救助基金の制度が唱えられまして、運輸省といたしましても、これが設立について検討を進めてまいったのでございますが、これを実施するにあたりましての賦課金の徴収のやり方、それから救助費用の支払い方法等についてなおいろいろ問題がございますので、四十二年度の予算案に計上するまでに至りませんでした。しかしながら、海難の実清から見まして、民間による海難救助意欲を促進することはきわめて有益、適切なことであると存じまするし、そのためには海上人命救助基金のごとき制度について今後とも検討をする必要があると存じますので、今後引き続き検討を進めたいと思っております。
  125. 玉置一徳

    玉置分科員 海難者の遺族の対策でございますが、海難による遺族は現在約一万世帯と推定されます。その上に年々六百世帯ずつ増加しておるのが現状でございますが、この遺族の対策はわずかに船員保険にたよるほかはないということで、先般この実情を視察されました民社党の中沢伊登子参議院議員ですか、これが遺族の対策につきまして総理に質問をされたわけでありますが、総理は、不幸にして事故が発生した後の遺族の援護につきましては万全を期していきますという答弁をしておいでになりますけれども、具体的にどのようにする方法があるのか。   なお、宮城県で現在県の副知事が中心になりまして、関係業者あるいは船の乗り組み員の代表者等々が集まりまして、海難事故対策委員会というものを設けておいでになります。そういう実情を御存じかどうか。それがうまくいくのだったら、関連の多い主要な府県にはこういうものをつくってもらう意図があるかどうか。   三つ目は、私が常に主張しておりますが、海難の遺族の問題でありますけれども、相当大きな基金制度でも設けまして、国と業界と、それに従業しております船員あるいは漁船と申しますか、その三者が一体になりまして基金制度でも設けていかなければ、現在のいろいろな救助できるような法令だけではとうてい十分でないというのが実情じゃないか。働き手を全部なくしてしまうわけで、マリアナ群島の場合なんかを見ましても、親と兄とかいうように全損の場合が多うございますから、普通の保護世帯のようなことだけではなかなか遺族の救済ができないというのが現状であります。ただいま申しましたように、総理が万全を期していくというようにおっしゃっておるのは、所管大臣としてはどういう方策をお考えになっておいでになるか。
  126. 大橋武夫

    大橋国務大臣 この海上遭難者、ことに船員の遺家族の補償の問題につきましては、先般佐藤総理が参議院の予算委員会において答弁いたしたとおりでございますが、現状といたしましては、厚生省所管の船員保険がすべてでございますけれども、その実施の状況から見てきわめて不十分であるというふうに認められての御質問であり、またそれに対する総理の答弁であったと聞いております。船員保険の給付につきましても、一そうこれを十分にしていただくようにすべきではありましょうけれども、ただいま御指摘のような運輸省としての――特に船員というものに対する立場からの特別な方法につきまして、今後運輸省としても検討を進めてまいりたいと思っております。
  127. 玉置一徳

    玉置分科員 普通の陸の健康保険との関連もあるでしょうけれども、こういう海難による遺族というような問題は、陸の健康保険とあまり類例のないことでありますので、実情に合うように思い切った改革を御要望しておきたいと思います。  そこで、同じ遺族の補償でありますが、先般来相次ぎました航空事故の対策につきましては鋭意進めておいでになると思いますが、遺族の補償の問題に限ってであります。わが国では御承知のとおり、ワルシャワ条約による三百万円限度というのを採用しておるわけですが、過般の富士山ろくで事故を起こしましたBOACの補償に一億二千万円、一人当たり払われたということを新聞に報ぜられて、それまでに全日空の六百六十万円の補償を受けられた御遺族に非常に不可解な気持ちを起こさせておるわけであります。わが国も六百万円の、せめてへーグ条約の批准をすべきでありますが、もうすでに諸外国の例はこれを上回っておると思うのです。そこで、日本航空が世界一周航路も開きまして、わが国の航空業務としても大いに外人の乗客を獲得して、外資の獲得にがんばろうというやさき、このような状態では私は外人客を取りにくいのではないか、こう思います。日本人としても、よその飛行機でもしも事故があった場合はこのような手厚い補償が得られるにかかわらず、日本航空に乗らなければいかぬと思って乗っておけば……というような問題が起こるのではないか。もうここらで根本的に考え直していい時期だと思いますが、どういうようにお考えになっておりますか。
  128. 大橋武夫

    大橋国務大臣 御趣旨に全く同感でございまして、最近におきまするわが国の損害賠償額の一般的水準の上昇、また世界的な責任限度額の引き上げの傾向、こういう点から考えまして、政府といたしましても、へーグ条約をまず至急に批准をするようにいたしたい、かように存じまして、目下検討を進めておるところでございます。
  129. 玉置一徳

    玉置分科員 最後に、外人観光客その他の観光政策についてでありますが、四十一年には四十三万人、四十五年には約七十万人の外人観光客を予定されておるわけでありますが、これにつきまして問題点は一体どこにあるのか。私たちがヨーロッパその他を歩いてみましても、非常に日本のホテルの値段が高うございます。これをもう少し安くする方法がないかどうか。  二番目には、ニューヨークからハワイまでと、ハワイから東京までの運賃のレートと申しますか、勘定のしかたが全然違う。安くなればいいのに、逆に長く乗れば高くなるというようなことでは、観光客を受け入れるのには非常に支障があるのではないだろうか。これを改定する必要があると思いますが、どういうふうにしたらいいか。  それから観光基本法にございます観光ルートでありますが、ルートの設定をいたしましても、なかなか予算が伴わないといううらみがあると思いますけれども、ある一定の金額を定めて、道路五カ年計算の中でワクを設定することができてないか。  なお、観光地の整備について対策をどういうふうにお考えになっておるか、これについてお答えをいただきたい。
  130. 大橋武夫

    大橋国務大臣 国際観光施設を整備いたしまして観光客を招致するということは、国際収支の面から申しまして、わが国といたしましても、最も力を入れるべき施策の一つであると存ずるのでございます。  外客誘致上、一番問題になると思われるものの  一つとして宿泊料が高いという点でございますが、宿泊施設につきましては、施設、サービス等を含めました総体的なお値段といたしましては、必ずしも高いとは言えないかもしれませんが、何といたしましても絶対額が高く、しかも今後増加する中小所得層の外人客向けの宿泊施設ということになりまするというと、それに向いた宿泊施設考えなければならぬのでございますが、これが不足いたしておるところに問題があると思うのであります。日本は地震国で、他国に比べて建築費  が高くつきますし、また金利が高いという点もございますので、今後はできるだけ低利の融資を  あっせんすることにつとめるほか、部屋の広さを  かげんするというようなことで、建設費自体を安くするように指導いたし、さらにはユースホステ  ルのような低廉なものとホテルとの中間的な宿泊施設の整備をするということを検討してまいりたいと存じております。   それから次に、航空運賃でございますが、何ぶん日本は外国から遠隔でございまするので、航空運賃が高くつくということが外客誘致上の難点の  一つでございます。航空運賃につきましては、昨  年若干の引き下げがあり、またオフシーズンの割  引きが強化されたのでございますが、今後飛行機の大型化等に伴いまして、航空料金の引き下げも逐次行なわれるものと期待をいたしております。   それから観光ルート等の問題でございますが、これにつきましても、今後は十分に道路計画等と連絡をとりまして、急速に完備するように努力をいたしたいと存じます。
  131. 玉置一徳

    玉置分科員 最後に一つつけ加えまして、成田の新国際空港あと十年もすれば狭くなるというように新聞に報じられておりますが、相当な思い切った国費を使うわけでありますので、もう一回再検討するお気持ちがあるかどうか。もしも、それで多々ますます弁ずるというのであったら、十年後のことを想定して、いまからまた次のものを、思い切った計画をつくっていかなければ、成田国際空港をつくるときのような不手ぎわをもう一度繰り返すことになると思いますが、この二点についての大臣の所見をお伺いしたい。
  132. 大橋武夫

    大橋国務大臣 新東京国際空港は、東京国際空港の行き詰まりを打開するために三里塚地区につくるものでございますが、四千メートル、二千五百メートル及び横風用の三千二百メートルの三木の滑走路を建設いたす計画でございます。この規模の空港の離着陸能力といたしましては、年間約二十六万回ということになりまするので、新空港の運用開始の時点からおおむね十年間は大体需要に耐え得るものと考えられます。このように、新空港が能力の限界に達しまするのはいまからおよそ十五年ほど先と推定されるのでございますが、その後航空がどういう姿で発展していくかということを今日の時点において予測を立てるということは、現実にきわめて困難であると思います。したがって、その後の対策はある程度先の時点において別途に考慮いたしてまいりたい、これが現在の実情から考えて現実的ないき方であろう、こう考える次第でございます。
  133. 玉置一徳

    玉置分科員 終わります。
  134. 仮谷忠男

    仮谷主査代理 一時三十分より再開することとし、暫時休憩いたします。    午後零時二十二分休憩      ――――◇―――――    午後一時三十六分開議
  135. 仮谷忠男

    仮谷主査代理 休憩前に引き続き会議を開きます。  運輸省所管について質疑を続行いたします。兒玉末男君。
  136. 兒玉末男

    兒玉分科員 まず、航空問題について大臣にお伺いしたいと思います。  実は先般十九日の午後に、九州の宮崎にある航空大学の航空機の事故が発生をいたしたわけでありますが、この点についてどういうふうな報告を受け、どのような処置をなされておるのか、まず大臣にお伺いしたいと思います。
  137. 大橋武夫

    大橋国務大臣 詳細につきまして政府委員から申し上げさせていただきます。
  138. 澤雄次

    澤政府委員 教官二名が航空大学校のメンター機によりまして慣熟飛行を行なっておりましたところ、エンジンのスロットルを入れましても馬力がかかりませんので、やむを得ず大淀川の中州に  不時着をいたしました。乗員は教官二名とも無事でございます。飛行機も格納をいたして収容いたしました。原因は目下エンジンの詳細について調査中でございます。
  139. 兒玉末男

    兒玉分科員 御承知のとおり、昨年から一昨年ですか、最近非常に航空事故というものが多いわけでございまして、宮崎の場合におきましても、国内航空路線としてはこのほかに全日空、東亜航空、それに航空大学の練習機、こういうことで非常に発着の回数も多いわけでありますし、また三十八年でございましたか、新田原の航空自衛隊のF86ジェット戦闘機が実弾装てんのまま、わずか一分早かったならば宮崎市の上空において非常に重大な事故を発生するという問題がございまして、このときは本会議でも緊急質問をいたしたわけでございますが、この宮崎航空大学の場合はこれが三回目の事故であるわけであります。特に今回は幸いに沈着な教官の措置によって、大淀川の中州に胴体着陸して事なきを得た。しかしながら、この空港を中心とする地域の市民の恐怖感というものは非常に重大なる問題があるわけでありまして、これは技術的にも相当問題があろうかと存じますけれども、すでに三回の事故で、しかも唯一の国立の航空大学でありますから、このような飛行機の整備等についてどういうふうな指導をいたしているのか、この点お聞かせをいただきたいと思います。
  140. 大橋武夫

    大橋国務大臣 航空大学校の訓練機は常に安全に留意して飛行を実施するようにいたしております。その飛行の経路は、主として海上において訓練を行なうよう配慮いたしておる次第でございますが、特に陸上を飛行する場合におきましては、不測の事故に備えまして大淀川の川原に不時着できるような飛行経路と高度をとるように指示をいたしております。
  141. 兒玉末男

    兒玉分科員 現在、専門的な立場は抜きにしましても、これからまた、民間航空にしましても全日空が727ジェット機を乗り入れるやに聞いておりますし、滑走路状況等も、先般幾らか整備をされたわけでありますけれども、こういうふうな事故が発生することによって、もちろん航空路の開発ということは非常に必要でありますけれども、やはり地域住民の不安を解消するということも私は決して見のがしてはいけない問題じゃなかろうかと思うのであります。それで、地域におけるみんなの要望としては、現在着陸するコースというものが、学校の教育なり、騒音について住民も非常な被害を受けておるわけでありますし、同時にまた、これから非常に着陸の増大が予想されるところの飛行機の経路といいますか、新聞等では専門語で場周経路と表現されておりまするが、こういうような場周経路を変更して、できるだけ市街地上空を避けるような形のものにできないのかどうか、こういう技術的な点についてひとつお聞かせをいただきたいと思います。
  142. 澤雄次

    澤政府委員 いま先生から御指摘の点につきましては、ここの飛行場長も、また航空大学校のほうでも、十分気をつけているものではございますが、大体入るのは海のほうから入りますが、風向きによりましてはどうしても、離陸の場合にも、町のほうに離陸せざるを得ないというあそこの事情がございますので、できるだけ町の住民に御迷惑をかけないように研究はいたしておる次第でございます。
  143. 兒玉末男

    兒玉分科員 少なくとも今回は、幸いにして中州に不時着できたけれども、私はこういう条件というのは万に一もないのじゃないかと思うわけでございます。加えまして、今後民間航空の着陸がふえるならば、ますますその危険性というものが増大する可能性があると思うのです。でありまするから、特に地域住民騒音に対する問題、あるいは学校等においては授業もできない、こういう不満が今回の事故を契機として一ぺんに爆発したような形になっておるわけであります。もちろん私たちは、宮崎が観光都市であり、特に航空路の開発には県も相当力を入れておるわけでございますけれども、何といいましても人命、財産の安全保障ということを最優先してしかるべきではなかろうかと思うのであります。このような騒音対策なり安全対策ということについて、航空局としてはどういうふうな指導を今後とろうとしているのか、この点お聞かせをいただきたいのであります。
  144. 澤雄次

    澤政府委員 安全対策につきましては、航空大学校の中に伊藤忠の整備工場を設けまして、各フライトごとに十分のチェックをいたしておったのでございますが、このたびこのような事故が起きまして、今後絶対にこのような事故を二度と起こさないように厳重に保全に留意いたしております。  また、騒音の問題につきましては、訓練機の騒音に対する住民の不満が非常に多いことも了知いたしておりますので、これは飛行経路の方法その他によりまして、なるべくその騒音を少なくするように今後とも検討を続けてまいりたいと思っております。
  145. 兒玉末男

    兒玉分科員 これは大臣にひとつお聞きしたいのでありますけれども、たまたま航空大学の飛行機が過去三回こういうふうな事故を起こしたということで、その大半が航空大学に責任が転嫁されるように思うわけでありますけれども、むしろ私が非常に心配をするのは、これから回数もふえ、大型化されるところの一般の、東亜航空なり全日空等の今後の安全保障ということについて、特に問題がこれに関連して提起されてきようかと思うのですが、そこらの総合的な立場からの大臣の御所見をひとつ承っておきたいと思います。
  146. 大橋武夫

    大橋国務大臣 航空大学のいままでの航空機事故につきましては、十分にその原因、経過等を調査いたしまして、今後宮崎空港利用いたしまする民間機に対しましても、他山の石として留意せしめるよう指導をいたしたいと存じます。
  147. 兒玉末男

    兒玉分科員 特にこの際運輸省当局としましても、地域の意向というものをひとつ十分尊重して対処していただきたいことを要望しまして、次に国鉄関係の問題について御質問いたしたいと思います。  国鉄総裁にお伺いをいたしたいと思いますが、今年度の国鉄関係予算を見まして、非常に多くの問題点があるわけでございますけれども、まず第一点は、第三次長期計画を遂行する上におきまして一番懸念をされるのは、財政上の問題であろうかと思うのです。たとえば大都市における周辺の通勤輸送対策とか、あるいは踏切安全対策または複線化、電化の問題等、多くの困難な問題をかかえておるわけでございますけれども、この第三次長期計画の遂行にあたって、現在の国鉄の財政状態というものから判断いたしまして、私たちは非常に多くの危惧の念を持つわけでございますが、総裁としては、これを国民の期待にこたえるように完全に遂行するところの御自信を持っているのかどうか、この点についてまず総裁の御所見を承りたいと思います。
  148. 石田禮助

    ○石田説明員 お答えいたします。  第三次長期計画の実現につきましては、兒玉さんがおっしゃるとおり、財政上国鉄はいまや壁にぶつかったようなかっこうになっておるのであります。ということは、最近における国鉄の収支の状態を見ますと、収入のほうは、輸送の収入というものは年々ふえてはおりまするが、そのペースはきわめて緩慢、われわれが予想したような増にはなっておらぬ。そこへもってきて支出のほうはどうかというと、人件費の増その他によりまして、非常に、予期した以上にふえておる。収入は減り、支出はふえる、こう両方からわれわれははさまれておるというようなことで、いままでのようなやり方ではとてもいかぬ、どうしてもこれは、ひとつ政府の出資なり特別な援助を願わなければならぬ。ことに通勤通学の問題につきましては、第三次計画を作成するときのわれわれの想定というものは、年々のふえ方を百分の七ということに見ておったのでありますが、最近における政府その他の団地の造成というのは、えらい勢いで進みつつあるということで、ことに東京近辺における人口の増加というものが予想以上である、そのために、百分の七というような年々のふえ方ではこれは間違っておる、結局百分の九ということに見なければならぬということで、通勤の問題その他につきましては五千二百億という予算でもってかかったのでありますが、とてもこんなことではいかぬ、さらにこれを約七千億にふやす、しかも、その完成時期というものを四十六年まで待たないで、その前にやらなければいかぬ。しかも、この通勤の問題につきましては、御承知のとおり非常に建設費がかかる。そこへもってきて、収入というものははなはだ貧弱である。そういう収支の合わない仕事をわれわれがやるにつきましては、利息のつく金をもってしてはとてもこれはペイせぬ、どこかからか利息のつかない金を持ってこなければならぬ。どこにそういう金があるかといえば、政府の援助を仰ぐ以外に方法はない。  そこで、われわれが政府に要求しておることは、つまり政府が出資してくれということ。さらに、これからわれわれが要求しようとするところは、公共負担というものの是正をひとつしてくれ、大体この二つであります。この公共負担ということは、結局政府というものは、みずからの政策を国鉄の犠牲においてやっていることになる。ヨーロッパ各国のごとき、国有鉄道の存するところ必ず公共負担というものがありますが、これはみんな政府が国鉄補償している。補償しないのは、世界じゆう日本あるのみである。こういうお荷物というようなものを、何とかひとつ国鉄の肩からはずしてもらいたいということと結びつけまして、何らかこれを出資してくれということを要求しておるのであります。  この問題につきましては、われわれは何も出資ということを初めて政府に要求しているわけではない。すでに内閣によってつくられた例の国鉄基本問題懇談会におきましても、政府は国鉄のこの投資に対して、出資と、さらに公共負担の是正というものは必ずここで考えなければならぬということをうたっておりまして、これは私は、国鉄の事情がよく大蔵省あたりにわかれば、必ず救いの手を差し出してくれるのじゃないか、こういうことに考えておる次第であります。
  149. 兒玉末男

    兒玉分科員 いま総裁が、現在の国鉄経営上の責任者としての立場を申されたわけでありますけれども、この際大臣にお伺いしたいのは、国有鉄道は公共企業体として昭和二十五年に発足したわけでありますけれども、現在の国鉄全体の路線の状況を見ますと、現在着工なり、あるいは調査線にいたしましても、その経営の結果というものが明らかに採算を無視した形において、やはり政策路線として新設される路線も相当あるし、現在まで運行されておる路線も、多分に政策路線的な意味を持つ部分が多いわけであります。そこに、公共性と企業性の、いわゆる双頭の馬みたいな、どちらに力点を置いて運営していいのかわからない、こういうふうないびつな状態に今日の国鉄が置かれておる。であるとすれば、国の政策上の赤字路線なり国の政策上の公共負担というものは、当然国の責任において持つべきものではないのか、また公共性と企業性のどちらに一体国鉄は重点を置いて運営されてしかるべきなのか、この辺の、一見いかにも公共企業体ということで名が通るようでありますけれども、特に国鉄の運営の場合にそういう一つの矛盾というものをはらんでいるように私たちは考えるわけでございますが、これについて大臣として、特に問題となっておる公共負担を中心とする点、あるいは政策上赤字路線ということがわかっておっても、この路線の建設がなされなければいけないという国家的要請の前に、今日の経営が非常に苦しい状態にあるものと私たちは考えるわけでございますが、これらについて大臣見解を承りたいと思います。
  150. 大橋武夫

    大橋国務大臣 まず第一に、いわゆる国鉄の黒字線と赤字線という問題だと思うのでございますが、国鉄運賃というものは、赤字線をも含めまして国鉄線全体の原価を償うということを原則として定められておると思うのでございます。したがって線区ごとに原価計算をした場合に、東海道線等の幹線に黒字線が多く、地方線区に赤字線が多いということは事実でございます。しかし現在の国鉄全体の経営の困難ということの原因を考えますると、むしろ全体としての収入の伸び悩み並びに利子負担、それから人件費の増加等による経営費の増加というものを考えるべきであろう、こう思うのでございます。   次に、国鉄の公共負担の問題でございますが、独立採算制をとりまする公共企業体の性格からいたしまして、国鉄における公共負担は、公共的な要請と企業採算との見合いにおいて考えるべきものだと存ずるのであります。したがって、過度と認められる公共負担については、今後逐次その負担を軽減する方向に指導してまいるべきものだと存じます。
  151. 兒玉末男

    兒玉分科員 いま大臣の御答弁を聞いたわけでありますけれども、先ほど申し上げました、はっきりと赤字路線ということがわかっておっても、国鉄が公共性を持つがゆえに新線建設、それをも鉄道建設公団から引き受けて営業をやっていかなければいけない、こういう点等は単なる原価計算ということじゃなくして、その原価計算による赤字は出たとしましても、そこの地域住民に及ぼすところの政治、経済、文化、そういう貢献の度合いというものは、単なる原価計算による黒字、赤字という数字の問題だけではっきり割り切れない問題があるのじゃなかろうか。そこに人件費の増  大も見なければいけないし、鉄道を敷くための相当の投資もしなければいけない。問題は、その国鉄が与える貢献度ということ等がもう少し政府当局に理解されてしかるべきではなかろうかと思うのでありますが、その辺はどのようにお考えか、お伺いしたいと思います。
  152. 大橋武夫

    大橋国務大臣 仰せのとおり、いわゆる赤字線というものが、現に年々相当の分量にわたりまして建設されつつあり、またこれが国鉄の経営に移されつつあるわけでございますが、これらは鉄道経営の黒字、赤字の問題以前の問題として、特定地域の開発、その他公共的に非常に大きな意味を持っておるものだと思うのでございます。しかしながら、国家的にはいかに大きな意味を持つといたしましても、現実にそれが国鉄の経営を悪化せしめておる原因であることは確かでございますので、こういう問題については、やはり国家的見地で考えるべきであろうとは存じますが、しかし何と申しましても現状の国鉄の経営の状態は、先ほど申し上げましたるごとく、個々の線路がどうこうという問題よりは、収支全体にわたって非常なアンバランスが出ておる点に問題がございますので、そういう見地から国鉄全体の経営として考えるべき時期がきつつある、こう考える次第でございます。
  153. 兒玉末男

    兒玉分科員 大蔵当局にお伺いしたいのでありますが、ただいま大臣も答弁されましたとおり、国鉄経営というものが単なる企業体という立場だけでなくして、高度の公共性、国策上の政策路線、こういう面等から判断しましても、国鉄自体だけがその赤字をしょっていかなくてはいけないというはっきりとした理論的な解明は、私はできないものと思います。そういう立場から考えます場合に、特に今回長期計画に、きわめて国家的要請によるところの遂行の上で、当初国鉄が政府出資九百億を要求しておったものが全くゼロという形になっておるわけでございますが、これはやはり政府出資こそ私は積極的に行なうべきものではないかと考えるわけでございますが、この辺はどういうふうなことでこういう結果になったのか、その辺の経過をひとつ明らかにしていただきたいのであります。
  154. 荒巻与四郎

    ○荒巻説明員 国鉄昭和二十四年に特別会計から独立いたしまして、公共企業体として発足いたしましたが、企業体であることは当然独立採算で経営していくということを前提といたしておる、こう思います。したがいまして、国鉄としてはやはり自前の収入をもってその支出をまかなって円滑に運営していくというのが本来の筋でございます。ただ国鉄は非常に全国的に大規模な経営をやっておりまして、そこに当然公共的な性格を持っており、いろいろと国の施策のお役にも立っていただいておるわけでございますので、政府といたしましては、出資はいたしませんけれども、たとえばただいま提案いたしております四十二年度予算案におきましては、二千百五十億円といった低利の財政融資を行ないまして、国鉄の経営を支援申し上げておる、こういう状況でございます。そういうようないろいろな施策を講じまして、国鉄は今後大いに経営上努力願いましてこの難局を打開していっていただきたい、こういうふうに願っておる次第でございます。
  155. 兒玉末男

    兒玉分科員 いまの御答弁は、私は非常に理解がしにくいわけであります。それから現在国鉄は、本年度の予算で市町村納付金百三十三億円というのを納める予定になっております。これは先ほど大臣もお認めになったとおりに、過去百年近くの間に国鉄の果たしてきた役割り、あるいは地域住民に貢献した度合い、地域の政治、経済、文化の発展、こういうところに寄与した成果というものは、私は相当大なるものがあると思うのです。その点から考え、また同時に、現在の国鉄が赤字路線をたくさんかかえながらも、公共性というものと国家的要請によって運行せざるを得ない。もしいま主計官の言われたとおり、完全独立採算ということだけを言うのであれば、おそらく多くの路線は全廃しなければいけないだろうという理屈にもなるわけであります。そういうような情勢を踏まえながらも、なお百三十三億の市町村納付金等というものは、当然これは国が肩がわりしましても決しておかしくないしろものではなかろうか、あるいは当然この納付金等は今後減免される筋のものではなかろうかというふうに理解をするわけでございますが、この辺の見解について大蔵当局の御所見を承りたいと思います。
  156. 荒巻与四郎

    ○荒巻説明員 国鉄の負担しております市町村納付金につきましては、民間鉄道に比べましてやや負担が重いと思われる点につきましては、四十二年度におきまして、運輸省当局におきましていろいろ御努力をされた結果、三億円程度の軽減をはかるということになっております。やはり国鉄は企業体として運営されている以上、その納付金を全部ゼロというわけには、民間との権衡等も考えますといかないのではないか。これは逐次考えていく、こういう問題ではないかと思います。
  157. 兒玉末男

    兒玉分科員 運輸大臣にお伺いしたいのであり  ますが、現在国有鉄道と名のつくような諸外国の例をとりますと、たとえばフランス、西ドイツ、イタリア、ベルギー等は、先ほど総裁が言われました項目別な公共政策による割引運賃なり、貨物運賃等、その点については全額これを国庫が補償し、イギリスなりスイスの国有鉄道においては、  一括補償の対象として国鉄の経営が行なわれておるわけであります。特に日本の国有鉄道の場合は、おそらく一千億をこえる公共割り引きによる損失があるのじゃないかと思うのです。こういう点の解消があってこそ初めて私はやはり純然たる企業体といいますか、公共性と企業性のミックスされた形の運営というものが可能になってくると思うのであります。公共割り引きについて先進国のこういういい例はどしどし取り入れてしかるべきではなかろうかと思うのでございますが、これに対して大臣の御所見を承りたいと思います。
  158. 大橋武夫

    大橋国務大臣 御承知のように、国鉄というのも一つの経営体でございまして、できるだけ独立採算でもってやれるだけやっていくというのがたてまえになっておるのでございますが、御承知のように、いろいろな事情で、最近の国鉄の経営は非常に困難になってきておるのでございます。したがって、現実にはどういう方法でこの収支のバランスを合わしていくかという点が問題になるわけでございまして、その意味において、通勤対策に要する資金について政府の出資を仰ぎたいというような考え方であるとか、あるいはまた割引運賃による過度の公共負担について政府の負担をお願いしたいというような考え方が出てきておるわけなのでございます。これらの考え方は、それぞれ理由のあるところでございまして、私どもといたしましては、現実に国鉄の収支のバランスがつくようにするということが、この事業の経営を可能にするゆえんでございますから、そういう意味で役立つ限り、理屈の通るあらゆる財源を考慮して差しつかえないものと思うのでございます。幸いに大蔵当局におきましても、この趣旨について理解をお示しくださいまして、今年度においては公共負担の問題、あるいは政府出資の問題については、早急な結論を予算編成までに出すことができなかったのでございますが、来年度予算の編成までには、これらの問題について適当な結論を得るよう慎重にともども検討しよう、こういう約束をしていただいておりまするので、私どもこの線に沿うて、次の予算までにぜひ適当な結論を出すように努力をいたすつもりでございます。
  159. 兒玉末男

    兒玉分科員 国鉄当局にお伺いしたいのでありますけれども、私たちの調べた範囲によりますと、同じ国有鉄道である西洋各国の旅客運賃なりあるいは貨物運賃についても、かなりの開きがあるように聞いておるわけでございますが、この運賃制度について、国鉄としてはどういうような御所見を持っておるのか、お伺いしたいと思います。
  160. 石田禮助

    ○石田説明員 長瀬常務理事からお答えいたします。
  161. 長瀬恒雄

    ○長瀬説明員 ただいまの諸外国の運賃につきましては、わが国で申し上げますと、国鉄の場合は、昭和四十一年の見込みでございますが、一人キロ当たり二円八十七銭、アメリカが七円二十銭、イギリスが五円十三銭、ドイツが四円六十八銭、フランスが四円六十六銭というようなことで、国鉄を一〇〇といたしますと、アメリカが二・五倍であります。イギリスが一・八倍、西ドイツが一・六倍ということでございまして、この計算の基礎といたしましては、輸送の量という関係と、運賃との関係がございます。今後、逐次こういう問題につきましてはさらによく検討したいと思います。
  162. 兒玉末男

    兒玉分科員 貨物は……。
  163. 長瀬恒雄

    ○長瀬説明員 貨物につきましては、日本の場合は、四十一年度の見込みでございますが、三円八十七銭、アメリカが三円二十四銭、イギリスが八円七十七銭、西ドイツが七円六十五銭、フランスが五円八十三銭、指数にいたしますと、日本の場合を一〇〇といたしますと、アメリカが八四、イギリスが二・三倍です。それから西ドイツが一・九倍、フランスが一・五倍ということになっております。
  164. 兒玉末男

    兒玉分科員 ただいまの当局の説明によりますと、やはり運賃の比較にいたしましても、大体同じような条件にある各国と比較した場合に、相当低運賃政策をとっていることは、十分大臣も御理解いただけるものと思うわけであります。それだけに、私は、国鉄運賃の与える社会的な影響というものを十分考慮した運賃制度をとっているからにほかならないと思うわけでありますが、こういうふうな情勢の中において、現在国鉄が借り入れ金約一兆三千億、この借り入れ金に対する利子債務の返済が約一千四十七億、それから借り入れ元金の返済が八百九十三億、市町村納付金が百三十三億、これを合計いたしますと二千七十三億というばく大な金額を国鉄は返済していかなければいけない。しかも独立採算というきびしい条件と、国家的な要請と、こういう点から考えますならば、やはりこの際、こういう借り入れ金等を含めて根本的な検討をしなければ、おそらく国鉄はどうしても将来赤字をかかえながら、その借金の利子を、あるいは元金を返すために、どんどん赤字をふやしていくという悪循環を繰り返すのみであって、国家的要請であるいわゆる大都市周辺交通緩和、または踏切等を含めた安全対策、こういうもの等の国民の要請、国家的要請に対処する国鉄の経営というものは、ほとんど行き詰まってしまうのではなかろうかと思うのでありますが、これに対して大臣の御所見を承りたいのであります。
  165. 大橋武夫

    大橋国務大臣 ただいま国鉄当局から御説明のありましたように、国鉄運賃が欧米各国の鉄道運賃に比べまして非常に安いということは事実であります。またその安いことが、国鉄の経理を困難ならしめておる理由の一つでもあろうかと思うのでございますが、何と申しましても、この運賃は金額だけの比較によって軽々に結論を下されないのでございまして、やはりその国の国民の一般の生活程度であるとか、あるいはまた物価の一般的な水準であるとか、あるいはまた輸送面に対する国の負担力、こういった面を総合して、運賃の比較をしなければならぬ問題だという点にむずかしい点があろうかと思うのでございます。しかし、いずれにいたしましても、国鉄が今日日本の経済社会の発展の上におきまして負担しております重大な使命というものを考えますと、その経理をできるだけ健全に維持し、そして諸般の対策また安全の施設等を十分に行なっていく必要があると存じますので、さような意味におきまして、来年度予算の編成までには、各方面の要素を総合いたしまして、国鉄運輸省、大蔵当局一体となって、適切な結論を出すように努力をいたしたいものと考えます。
  166. 兒玉末男

    兒玉分科員 あと二点だけに限定させていただきます。  先般、南海線に発生いたしました踏切事故に見られますように、非常に多くのとうとい生命が失われておるわけでありますが、国鉄におきましても、その後二回でしたか三回でしたか、踏切事故が発生しております。この事故の原因はどういうふうに究明をされ、対処されているのか。さらにまた本年度の予算においても、踏切対策に相当の予算が組まれておりますが、この国鉄の踏切対策は、大体何年度ぐらいを目安にほぼ解消できる見通しがあるのか。また特に問題が多いといわれている私鉄関係の場合におきましては、その経営能力なり財政的な面において、おそらくその踏切の改善にも相当な困難が予想されると思うのでありますが、運輸省当局として、踏切改善対策にどういうふうな取り組みをいたしておるのか。国鉄、私鉄、それぞれの立場から、ひとつ対策をお聞かせいただきたい。
  167. 大橋武夫

    大橋国務大臣 踏切事故は、昭和三十五年度をピークといたしまして、幸いにも減少の傾向を示しておるのであります。すなわち、昭和四十年度の踏切事故件数は、国鉄、私鉄合計で四千二百八件、死傷者数も同じく三千八十八人で、これを昭和三十五年に比較いたしますと、それぞれ二四%、二五%と減少を示しておる状況でございます。  踏切事故の原因の大部分は、踏切を横断いたします側の不注意または無謀な横断によるものでありまして、これが全体の七一%を占めております。また事故原因となった障害物別では、自動車が過半数を占め、特に乗用車によるものが増加しておりますが、重大事故の原因となるトラックによる事故が、自動車によるものの過半数を占めております。  踏切事故の防止のためには、従来から踏切道改良促進法に基づきまして、立体交差化による踏切除却と保安設備の整備の促進をはかりますとともに、関係方面の協力を得て、踏切道の整理統合並びに交通規制を強力に推進いたしておる次第でございます。  昭和四十二年度の予算による踏切保安対策といたしましては、国鉄予算における踏切対策費は百四億円を計上いたしており、その内訳及びこれにより整備される踏切道は次のとおりでございます。一、立体交差化、高架化を含めまして、四十四億円、二百五十八カ所、これは踏切除却数であります。二、既設立体交差の改良二億円。三、構造改良四億四千万円、六百カ所。四、踏切保安設備三十一億六千万円、千九百八十三カ所。その他踏切整備二十二億円。  私鉄関係昭和四十二年度踏切保安対策費、工事費といたしましては、約四十八億円が予定されておるのでありまして、これによって整備される踏切道は次のとおりであります。一、立体交差化、高架化を含めまして約二十カ所、踏切除却数約百四十カ所になります。二、構造改良約百カ所。三、保安設備の整備約七百カ所、このうち中小私鉄の純赤字会社の保安設備については、踏切保安設備整備費補助金を交付いたしており、二十八社、八十三カ所について三千二百十万円、補助率三分の一を計上いたしております。  また私鉄に対する開銀融資としては、大部市再開発及び流通近代化ワク二百二十億円の中で措置することといたしており、その融資比率は五〇%、金利は七分に軽減することにいたしております。  なお、以上による国鉄、私鉄の踏切道の整備については、危険度の高い踏切道からできるだけこれを行なうよう、指導してまいる所存であります。
  168. 兒玉末男

    兒玉分科員 では最後に、もう時間がだいぶ経過しましたので、要望を含めて申し上げたいと思います。  いままで、短い時間でありましたが、とにかくいずれにいたしましても、国鉄の当面する一番の問題は、やはり財政的なこの再建をどうするか、そして国家的な要請であるいわゆる第三次長期計画の完全遂行、これには相当の隘路が予想されるわけであります。その運賃政策、公共性と企業性の問題、さらにまた政策路線の新線建設の問題など、多くの課題があるわけでございますが、いずれにいたしましても、昭和二十四年に国有鉄道の大改革がありましてから、国鉄労働者の生産性にいたしましても、当時を一〇〇とした場合、二三九という高度の生産性をあげておるわけであります。こういう情勢を踏まえながら、財政的な問題である一兆三千億円にいたしましても、何らかの形をつけなければ、今後の長期計画の遂行はきわめて困難な状況にあるということは、運輸当局も認めておるところであります。過去において、イギリスの国有鉄道が約一兆二千億の借り入れ金のたな上げをしまして、イギリス国有鉄道の再編に乗り出したこともよく示されるところでありますが、日本国鉄の場合におきましても、こういう借り入れ金の問題あるいは利子、債務の問題等も含めて、問題となっておるところのいわゆる市町村納付金あるいは政府出資等の問題につきましても、今後の負わされている国鉄の第三次長期計画の完成に続いて、国民にサービスする機関として国鉄が発展する過渡期の問題として、十二分に慎重な検討をして対処すべき問題であろうかと存じますので、運輸当局並びに大蔵当局におきましても、国鉄の持つ高度の公共性を十分御理解をしながら対処されますことを最後に要望申し上げまして、私の質問を終わりたいと思います。
  169. 仮谷忠男

    仮谷主査代理 次に松本忠助君。
  170. 松本忠助

    松本(忠)分科員 運輸大臣にお尋ね申し上げますが、都市の交通麻痺の解消並びにラッシュの緩和等のための方策として、何らかの手を打つべきときと考えておりますが、現状から見まして、国鉄も私鉄もまたバスもあるいは路面電車等、一切が飽和状態と考えられます。今後の人口の増加並びに都市への集中化等を考えましたときに、当然新しい交通機関一つとして、モノレールが都市交通の将来のにない手になるというふうに考えるわけでございますが、この点につきまして、大臣はどのようにお考えでございましょうか。
  171. 大橋武夫

    大橋国務大臣 現存、都市交通機関としてモノレールを整備しようという計画は、現実にはないようでございます。モノレールは、現在わが国におきましても八路線、二十六キロメートルが営業中でございますが、そのうち東京モノレールを除きましては、主として観光用もしくは遊園地用に利用されておる状況でございます。外国におきましても総計七路線が営業されておりますが、西ドイツのウッぺルタールにおけるところを除いて、営業キロもおおむね短く、遊覧用ないしは実験用の域を出ているところはいまのところないようでございます。  ところで、モノレールの都市交通機関としての役割りでございますが、その建設費が安いこと及び機能、性能等の点からして、大都市における高速鉄道網の補完的な役割りをいたしますので、通勤輸送機関、業務連絡用交通機関などとしての機能が期待されると思うのであります。しかし、現在建設されておりまするモノレールの性能から考えますと、いずれも、いまの段階のものでは、直ちに都市交通用として使用するには疑問点が数々指摘されておるのでありまして、これを都市交通に適当したものに改良いたしますためには、今後技術的、制度的な点におきまして一そうの解明が必要であろうかと存じます。  これらの状況にかんがみまして、運輸省としては、今後モノレールが都市交通機関として採用されるにあたってのさらに必要な技術の開発、適切な型式の決定等、十分に研究していくべきものであると考えておりますが、その成果のいかんによりましては、都市交通行政におけるモノレールについて指導に乗り出すべき時期もあろうかと存じます。
  172. 松本忠助

    松本(忠)分科員 ただいま大臣の御説明で、いろいろ将来の交通機関としての点は考えられるが、早急には考えられないという話でありますが、われわれもモノレールの利点につきましていろいろ検討を加えました結果、運行に際して路面交通を阻害しないという面、それからいま問題になっておるところの踏切事故、衝突事故等があり得ない、こういう点は大きな利点であろうと思うわけであります。また線路の設置に川地が少なくて済む。そしてまた地下鉄よりも建設の費用が安い。また車輪にゴムタイヤ等を使用できますので、高加速あるいは高減速が可能でありまして、平均速度が上がるだけでなく、いわゆる不愉快な騒音が非常に少なくて快適である。こういう点はモノレールとしては非常に利点であると私ども考えるわけであります。またその建設の過程におきましても、脚やけた等を工場で生産して運搬するというふうなことになりますならば、建設の期間が非常に短くて済むし、また特質があると考えられます。このような都市の交通機関としての適格性は十分あるものと私ども考えるわけであります。ただ問題点は、停車場、停留場と申しますか、そういう点につきまして、現在地下鉄のようないわゆる一両二十メートルで十両編成、こういうふうな長い編成のものの停留場を空間に設けることができないであろうという点については、これはまだ研究を進めなければならないと思いますが、せいぜい一両二十メートルで五両編成程度ならば、まだ高速道路の下の日陰になったところが相当東京でもあるわけでありますし、そういう点も考えるならば決してできないわけじゃない、こういうふうに考えたわけでありますが、私ども見解としては、十分適格性あり、これに対して運輸当局としては、先の見通しは、実用化はまだなかなかたいへんだとは思いますけれども、現在八路線のうちで、常業路線としてはわずかに東京の浜松町-羽田でありますか、それ以外ないようでありますけれども、将来の交通機関として十分適格性ありと判定を下しているわけであります。この点いかがでございましょう。
  173. 大橋武夫

    大橋国務大臣 先ほど、一応運輸省としての考え方を申し述べた次第でございますが、何ぶんにも技術の開発はわれわれの予測以上の非常なスピードをもって進んでおる今日でございまするので、将来、在来の交通機関の行き詰まりというような時期も考えられまするので、お説のようなモノレールの将来については、十分に検討いたすようにいたしたいと存じます。
  174. 松本忠助

    松本(忠)分科員 なおお尋ね申し上げますが、現在、運輸省に、モノレールによるところの旅客の輸送についての免許申請を出している会社はございましょうか。この点伺います。
  175. 大橋武夫

    大橋国務大臣 政府委員から申し上げさしていただきます。
  176. 増川遼三

    ○増川政府委員 現在出ておりますものは、広島モノレール、それから名古屋鉄道、日本電波管理塔、日本モノレール電鉄、日本モノレールそれから全日本モノレール電鉄、東京モノレールその他全部で十三件申請が出ておりますが、なお現在におきましては、各種の資金の点あるいは用地の取得の可能性その他難点がございますので、審査に手間どっておりますけれども、この中で、ある程度のものが実現の可能性が出てくるのではないかと考えております。ただ、これらにつきましては、半数以上が観光的な用途に使われるものでございまして、先ほど大臣から申し上げましたように、純粋に都市交通機関としてのものは、数はまだ少のうございます。
  177. 松本忠助

    松本(忠)分科員 ただいまの十三社の中では、旅客輸送についての申請はないのでございますか。全部観光用でありますか。
  178. 増川遼三

    ○増川政府委員 現存、羽田-浜松町間をやっておりますあの会社が延ばしますものは、通勤あるいは空港連絡用、こういったものに考えられます。
  179. 松本忠助

    松本(忠)分科員 それはいつごろ免許申請は出ているわけでありましょうか。
  180. 増川遼三

    ○増川政府委員 申請が出ましたのが、昭和三十七年の九月に横浜-羽田空港間について出ております。それからその前に、昭和三十七年三月に蒲田-羽田空港間、この申請が出ております。
  181. 松本忠助

    松本(忠)分科員 三十七年三月、蒲田-羽田間ですか、それから三十七年九月、横浜-羽田間、これはいずれも旅客の輸送を主たる目的としておるわけだ。いま昭和四十二年でありますが、相当の長年月にわたりまして、いわゆるたなざらしになっておるように見受けるわけでありますが、この点、御当局の事務の渋滞、このように申し上げては失礼でございましょうか、あまり長くなる、だめならだめとはっきり言って取り下げをさせるべきじゃないかというふうに私ども考えます。この点についていかがでしょう。
  182. 増川遼三

    ○増川政府委員 当該会社の資金的な事情が非常に問題でございまして、現在の既設浜松町-羽田間につきましても相当な赤字をかかえております。さらにこれに巨額な投資をすることにつきまして、非常に危惧の念を持っておるわけでございますが、また技術的に申しまして、用地の獲得あるいは河川の使用、こういった点につきまして、関係当局との話し合いがまだついていないところが相当ございますので、こういった点で延びておる次第でございます。
  183. 松本忠助

    松本(忠)分科員 いろいろ理由はあろうとも思いますが、とにかく五年ごしあるいは六年ごしにならんとするわけでありますので、こういう点についてよくいわれることは、お役所へ申請を出してもいわゆるなしのつぶてである。いいのか悪いのかさっぱりわからない、こういう点がたまたま世間で言いふらされておりますし、お役所の評判を回復する意味からいっても、こういうものに対しては、はっきりこういう点が悪いからこう直してどうだというふうな指導をし、そしてまた取り下げをさせ、新規に出させるというふうに指導してはどうかと思うわけであります。なお、先般も交通安全対策特別委員会におきまして、大臣が御病気で出席がなかったので、自動車局長から答弁をいただいたのでございますが、個人タクシーの認可につきましても三年も放置してある。こういう点につきましても、何らかこれに対して中間で、こういう点がまずいとか、あるいはこういうふうに直せとかいうふうな、あるいはいつごろ認可になる、こういうふうに、ひとつ国民のために奉仕する役所という立場からも、ぜひ中間的に、これに対する取り扱いのあり方を話してやるようにしていただきたい、こう思うわけであります。きょうは幸い大臣が御出席でございますので、この個人タクシーの問題についても、関連いたしまして、お伺いするわけであります。
  184. 大橋武夫

    大橋国務大臣 ただいま松本委員の仰せのありましたような取り扱い方は、免許関係の行政事務につきまして、まことに今日の時勢の考え方からいって適切なことであろうと存じます。できるだけ御趣旨に沿うように善処いたしたいと存じます。
  185. 松本忠助

    松本(忠)分科員 次に、外航コンテナの問題についてお伺いいたしたいわけでありますが、きょうは船舶への積みおろしあるいは輸送等について論及いたしませんが、問題点は、これらの8×8×20のような大きなコンテナの日本国内における陸上輸送についてお伺いしたいと思うのでありますが、コンテナ本来の姿というのは、いわゆる戸口から戸口までコンテナのまま輸送し、そして庭先でこれを開いて貨物を取り出す、あるいは貨物を積み込む、こういう点が利点でありますし、またそうでなければならないと思うわけです。アメリカにこのコンテナが行った場合は、道路事情もよろしいし十分活用できると思うのでありますが、御承知のような日本の道路事情の悪いところ、しかも狭いところ、こういうところで、混雑をしている中にこの大型コンテナが走り回るというようなことになりましたならば、波乱に一そう輪をかけるのではなかろうかと思うわけでありますが、この点いかがでございましょうか。
  186. 堀武夫

    ○堀(武)政府委員 コンテナの内陸輸送について御質問があったわけでございますが、日本の道路事情から申しまして、日本の国内すみずみの道路すべて8×8×20のコンテナが通れるようになっておるということは申し上げられません。それで現在基準がございまして、道路の制限がございまして、車両制限令及びその保安基準というものがございまして、高さにつきましては三・五メートル、それから車両の総重量につきましては二十トンというような制限がございますが、8×8×20のコンテナをトラックの台車に乗せますと、三・八メートルになりますので、この基準からはみ出すわけでございます。また、重さにつきましても、トラック自体の重さを加えますとやはり二十トンをこえる場合が出てくるおそれがございます。したがいまして、これらの点を直さなければ、国内のどこでも輸送は可能だという状態にはなりません。今後コンテナが戸口から戸口に大いに利用されるようにするためには、そういう面をこれから直していく。それでとりあえず、現在のままの道路でもいまのような8×8×20のコンテナが通れる場所、そういうところに限りまして、これが実際一々許可を受けないで、包括的な許可で輸送できるように考えることが必要だということで、関係の向きと相談をいたしておる次第でございます。コンテナ輸送は、さしあたって阪神それから京浜地区というふうに見ております。大阪、兵庫県、それから東京、神奈川県内の主要道路というふうに、さしあたってこれが利用されると思われますので、これらの重要の道路につきましては、現在でも輸送可能な道路がございますので、そういう道路につきましては、包括的に許可をとって輸送できるようにいたしたいと考えております。
  187. 松本忠助

    松本(忠)分科員 わかりました。コンテナを乗せて走るところのいわゆる牽引する自動車、これについての研究はどのような程度までいっているのですか。
  188. 原山亮三

    ○原山政府委員 コンテナの大型トレーラーの輸送につきましては、東名高速道路なり名神高速道路なりの通行という問題もございますので、日本トラック協会で、その関係研究を現在進めておる次第でございまして、東名高速道路が開通の時期までには、そういう面の研究の成果が出てくるのじゃないか、かように考えております。
  189. 松本忠助

    松本(忠)分科員 実際上に、自動車の会社では研究は進めていないのですか。
  190. 原山亮三

    ○原山政府委員 もちろん運送事業者のほうも、それから自動車を製造するメーカーのほうも、両者が協議しつつ研究を進めておる次第でございます。
  191. 松本忠助

    松本(忠)分科員 それでは、次に大蔵省関係の方にお伺いしたいのですが、外航コンテナが入りました場合の、税関の検査とか、あるいは税関の手続等のことについては、どのようなことになっておるのでございましょうか。
  192. 荒巻与四郎

    ○荒巻説明員 私、実際の者ではございませんが、運輸省のほうから、コンテナ輸送になりますと、いままでのような一品別の検査ではぐあいが悪いので、もっと簡素化できないかというようなお話があると聞いておりますが、この点については、なお運輸省と大蔵省とで協議するということを考慮しております。
  193. 松本忠助

    松本(忠)分科員 わかりました。それでは、いまのところは、まだ何らそれに対して検討は進められていないわけですね。これからの問題ですね。
  194. 荒巻与四郎

    ○荒巻説明員 今後の検討の問題であります。
  195. 松本忠助

    松本(忠)分科員 わかりました。  次に、道交法の問題について警察庁の方にお尋ね申し上げたいわけですが、近く提出を予定されております道交法一部改正法律案につきましてお伺いしたいわけでありますが、世上で一番問題になっておるいわゆる反則金の制度でありますが、この反則金制度を設けました理由についてお伺いいたしたい。
  196. 片岡誠

    ○片岡説明員 反則金を設けました理由につきまして、大きく言って三つがあげられるのではないかと思います。第一点といたしましては、現在大体年間五百万人を上回る道路交通法違反者があり、しかもその五百万の方が大部分罰金刑に処せられておるという現状であります。それで、この間一億総ざんげという議論もマスコミで取り上げられるような現状になっております。これはもちろん車の数がふえ、あるいは運転者も多くなるわ  けでございますから、違反がふえるのはそれなりに理由はあろうと思いますけれども、方では道路交通環境が必ずしもよくない。車の増加に比して道路環境が必ずしも整備されていない。したがって、日ごろは善良な市民としての生活をしておられる方が、たまたまひょっとした拍子に違反する場合も相当あるのではなかろうか。それを犯罪者として扱うのはいかがであろうかというのが  一つの問題でございます。それからもう一つの問題は、そういうふうに大量の違反者を扱います関  係上、どうしてもその違反者の処理が定型化してまいりまして、ケース・バイ・ケースに審理を尽くすということがむずかしくなってきておる。隅田の裁判所をごらんいただければおわかりのとおりな状態になってまいっております。そういうことで、そういう多くの違反を大量に処理する場合には、軽微な違反については定型化するほうがかえって妥当性があるのではなかろうか、こういう考え方でございます。それから、しからばそういうたくさんの違反があっても、裁判官の数をふやしあるいは検事の数をふやしてやればいいではないかという議論もございましたけれども、やはり国家なり地方を含めましての国民経済的な節約の問題という角度から見まして、そういう軽微の違反につきましては、一々必ずしも裁判をしなくて、定型的に処理をしていくということが、国家経済的に見ても妥当なのではなかろうか。大体そういう三つの考え方から、ああいう制度考えるに至ったわけでございます。
  197. 松本忠助

    松本(忠)分科員 大臣が外に出かけられるようなお話でございますので、先に大臣にお伺いしておきたい点がございます。一点だけでありますが、去る二十二日の新聞紙上に、この反則金をめぐりまして、自治省と大蔵省が反則金の奪い合いを演じているというような報道がございました。私は罰金とかいわゆる反則金とか称するものは徴収したくない。しないで済む世の中をつくらなければならない。だれもが交通規則を守って、少しの違反者も出さない世の中をつくり出すための指導を忘れて、いわゆるとらぬタヌキの皮算用式に、この反則金の帰属をどこにすべきかというようなことでお役所が争いをしている。非常にこの点を私は残念に思う次第でございますが、運輸大臣といたしましては、この点どうお考えでございましょうか。また、反則金について運輸省はどうお考えでございましょうか、この点を明らかにしていただきたい。あとは御退席くだすってけっこうでございます。
  198. 大橋武夫

    大橋国務大臣 この反則金につきましては、相当な年額にのぼるものと思われまするが、どうも反則事犯の起こりまするもとは、やはり道路というものの施設が十分でない、道路がよくなればおのずから反則も少なくなるだろう、こういう点も相当あろうかと思うのでございまして、そういう意味で、この反則金の収入が道路の施設費に回るということは、私は財源の使い方として必ずしも不適当ではないと思うものでございます。そういう意味で、道路の財源に悩んでおります自治体に、そういう財源を与えようという自治省の考え方もよくわかりまするし、また一般財源として国の道路以外のいろいろな交通安全の対策の財源に回そうという大蔵当局の考え方もよくわかります。要するに、話し合いが円満に妥結いたしまして、国民のために有益に使われることが、個人としても望ましいと思う次第であります。
  199. 松本忠助

    松本(忠)分科員 それでは、たいへん有益なお話をありがとうございました。  この際、ひとつ私の意見を申し上げておきたい点があります。これは現在の自動車の自賠責でございますが、これに対して、死亡によるところの保険金額が百五十万円、これを増額したいという点は、政府といたしましてもお持ちのようでございますが、この反則金をこの保険金の中に繰り入れて、保険料をあまり増額しないで保険金をふやしてあげられるようにしたらいいのじゃなかろうか、こういうふうな考え方を持っておりますので、この点もあわせて今後御検討願いたい、このように希望するわけであります。  それでは片岡さんにお伺いいたすのでありますが、いまのお話をお伺いいたしまして、単なる事務処理、それに終わってはならないと思います。要するに、違反者も、金を納めれば解決したというような安易な気持ちになってしまうと困るわけであります。順法精神を麻痺させることになると思いますが、この点についてはいかがでございましょうか。
  200. 片岡誠

    ○片岡説明員 反則金の対象といたしております違反行為からは、重大な違反、たとえば酒酔い運転だとか、そういう重大な違反は除いてございます。それから違反の累犯者、これも大体除いてございます。それから交通事故を起こした場合、これも除いてございます。したがいまして、そういう非常に重大な違反以外の違反に限定してあることと、それから従来よりも、金を納めればあえて訴追しないということで、いわば即罰的な効果と申しますか、そういうことも私どもとしては期待いたしております。したがいまして、金さえ納めればいいんだということで、順法精神が少なくなるということのないように、私どもとしても配慮いたしております。
  201. 松本忠助

    松本(忠)分科員 その違反者に、事実その場にあたって、交通警察官の問題でありますが、警察官が、当該違反事項を十分に指導して納得させて、今後二度と再びやらないように親身になって指導しないと、これは再びまた起こすのじゃなかろうか。またそうしたことが大きな事故や違反につながるような気もするのであります。この点について、警察官がその場で単なる事務処理に終わらないような、そしてその指導と申しますか、やっていただけるような方途を考えていただきたいと思いますが、この点いかがですか。
  202. 片岡誠

    ○片岡説明員 この制度を実施いたしますまでに、十分その御趣旨に沿うように、現場の警察官に対する教育を徹底いたしてまいりたいと思っております。
  203. 松本忠助

    松本(忠)分科員 警察官が、そうした場合に、ともすれば感情の問題等からエキサイトいたしますと、いわゆる昔のおいこら式の警察官になりかねない。民衆の警察官でなくなってくると、われわれとしても非常に困るわけでありますが、こういう点についての、ある種の権力が加わるような考えがあるわけでありますが、この点について、警察行政のあり方が問題を持つのではなかろうかと思います。この点はいかがでありますか。
  204. 片岡誠

    ○片岡説明員 現場の警察官の措置といたしましては、交通違反がございました場合に、現在も交通切府を使用いたしておりますが、その一枚目が現在も告知表になっておりまして、それを相手に渡す、そういう仕事をやっております。したがいまして、この反則金の通告制度ができましても、現場における警察官の行為そのものは、現状と全然変更がございません。私どももそういうことで、現在以上に現場の警察官に権限を与えるという制度とも考えておりません。しかし、先生のおっしゃる御趣旨はよくわかっております。そういうおそれのないように、十分注意をしていきたいと思っております。
  205. 松本忠助

    松本(忠)分科員 なお、この制度を単なる事務処理に終わらせないために、現在も交通違反の累犯者その他に対しては、呼んでそれを指導するといいますか、教育するというような施設があるわけでありますが、この反則金を支払ってから後一、二週間後に出頭を命じて、事故防止のための研修制というようなものを設けて、交通事故を再び起こさないように指導する、こういうふうにしてはどうかと思いますが、この点はいかがでございますか。
  206. 片岡誠

    ○片岡説明員 今度の制度一つとして、軽微な違反については、なるべく裁判所にも出ていかなくていい、あるいは警察にも出ていかなくていいという制度にいたしたいと私どもは思っております。しかしながら、累犯者、違反を繰り返すような者に対しては、現存どおり行政処分と申しますか、免許の停止、取り消しということはやってまいりたい。現在も免許の停止をいたしました場合に、本人の申し出により講習を行なうことになっております。講習をやれば停止期間が短縮されるという制度もございます。この行政処分の一環としての講習をもっと拡大していって、中身をりっぱにしていきたい、こういうふうな方向で現在考えております。
  207. 松本忠助

    松本(忠)分科員 お伺いいたしますと、たいへんけっこうなのでありますが、現在でも重い違反者に対しましてはこういう制度があるわけであります。ところがそれが、話に聞くところによりますと、きめられた日さえ出ていればそれでいいんだ、実際問題として、居眠りしている。何の効果もあがらないように思われるわけであります。これでは交通違反者に対するところの指導といいますか、有名無実に終わってしまっているようなのが現状でございます。これに対しても、もう少しきびしく、再びそういう事故を起こさないために、単にその場に出ていればいいんだ、出席さえしていればいいんだというようなことではなく、もう少しこれに対して親身になって指導をしてもらいたい、こう思いますが、この点についていかがでしょうか。
  208. 片岡誠

    ○片岡説明員 仰せのように、現在の講習の中身は必ずしも十分だと私思っておりません。中身をさらに充実するために、たとえば映画を見せるとか、あるいはスライドを使うとか、あるいは運転者によって中身を変えていくとか、もう少しきめのこまかい講習の制度を確立してまいりたい、かように思っております。
  209. 松本忠助

    松本(忠)分科員 なお、現在の交通違反によるところの罰金は、国の収入になっているわけですね。大体これは年間幾らぐらいございますか。
  210. 片岡誠

    ○片岡説明員 法務省のほうの調査によりますと、罰金額総額で三百億、そのうち交通関係が大体七割五分ぐらいであろう、そういたしますと、約二百二十五億ぐらいではなかろうか、このように言っております。
  211. 松本忠助

    松本(忠)分科員 わかりました。ありがとうございました。
  212. 仮谷忠男

    仮谷主査代理 次会は、明二十五日午前十時より開会し、運輸省所管について質疑を続行することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後三時二分散会