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1967-04-24 第55回国会 衆議院 予算委員会第三分科会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十二年四月二十四日(月曜日)     午前十時七分開議  出席分科員    主査 野原 正勝君       亀岡 高夫君    河野 洋平君       淡谷 悠藏君    北山 愛郎君       兒玉 末男君    小平  忠君    兼務 猪俣 浩三君 兼務 竹本 孫一君    兼務 林  百郎君  出席国務大臣         農 林 大 臣 倉石 忠雄君  出席政府委員         農林大臣官房長 檜垣徳太郎君         農林大臣官房予         算課長    大河原太一郎君         農林省農政局長 森本  修君         農林省農地局長 和田 正明君         農林省畜産局長 岡田 覚夫君         農林省園芸局長 八塚 陽介君         食糧庁長官   大口 駿一君         水産庁次長   山中 義一君  分科員外出席者         大蔵省主計局主         計官      嶋崎  均君         食糧庁経理部長 三浦 善郎君         労働省職業安定         局失業保険課長 増田 一郎君         労働省職業安定         局失業対策部長 上原誠之輔君         会計検査院事務         総局第四局長  小熊 孝次君     ————————————— 四月二十四日  分科員愛知揆一君及び高田富之委員辞任につ  き、その補欠として河野洋平君及び淡谷悠藏君  が委員長指名分科員に選任された。 同日  分科員河野洋平君及び淡谷悠藏委員辞任につ  き、その補欠として愛知揆一君及び兒玉末男君  が委員長指名分科員に選任された。 同日  分科員兒玉末男委員辞任につき、その補欠と  して高田富之君が委員長指名分科員に選任  された。 同日  第一分科員猪俣浩三君、第四分科員竹本孫一君  及び第二分科員林百郎君が本分科兼務となった。     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和四十二年度一般会計予算農林省所管  昭和四十二年度特別会計予算農林省所管      ————◇—————
  2. 野原正勝

    野原主査 これより予算委員会第三分科会を開会いたします。  昭和四十二年度一般会計予算及び特別会計予算中、農林省所管を議題といたします。  これより質疑に入ります。質疑の通告がありますので、順次これを許します。北山愛郎君。
  3. 北山愛郎

    北山分科員 私は、四十二年度の農業予算関連をして、現在の農政の基本問題に関連をしながら、非常に大まかな点についてお尋ねをしたいと思うのであります。  三十六年に農業基本法ができましてから六年たちましたが、農業基本法一つ目標といたしましたところのいろいろな目標は、ほとんど達成をされておらないのじゃないか、自立経営の育成にしても、あるいは当時計画されました所得倍増計画によるところの食糧自給度達成にしても、すべての目標が大幅に食い違っておるのではないか、このように思うのですが、まず最初お尋ねしたいことは、一体農林省としては、また政府としては、農基法農政目標としたものに漸次近づいているとお考えになっておるのか、あるいはその目標がなかなか達成できない事情のほうが非常に濃厚でございまして、農基法農政そのものに問題があるというふうにお考えになるのか、現在の農基法農政をそのまま続けていっていいとお考えになるのか、まず一般的にこの問題について大臣のお考えをお伺いしたいのであります。
  4. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 農基法が制定されましてから五年余でありますが、その間におきまして、わが国経済農基法制定の当時に比べますと、予想よりも一般情勢に非常に変化がありましたことは、北山さん御存じのとおりであります。私どもは、日本産業の全体が調和のとれた形で成長していくことが望ましいし、またそういうつもりでやってまいりましたけれども、御承知のように他産業が跛行的に著しい高度の成長を遂げたというふうなことで、農業面においては御指摘のように若干の立ちおくれた面は見受けられるのであります。しかし、私どもといたしましては農基法に定めてありますあの精神、つまり、生産対策価格対策、そういうことでまず経営規模拡大するために土地基盤造成等に力を入れて、そうして、新しい近代的産業のほうに農村から流出してまいる労働力をどのようにして省力、機械化して近代化していくかということにさらに力を入れてまいって、その跛行的な構造を、日本全体の産業構造にできるだけ早いテンポで追いついていくようにするのがわれわれの義務だと思っております。したがって、農基法に想定いたしております考え方は、結果から見て若干のテンポのずれはありましたけれども、やはりあの方向でいくべきではないか、このように思っておるわけでございます。
  5. 北山愛郎

    北山分科員 それでは、まず問題別にお伺いをいたしますが、まず生産拡大といいますか、農業生産の問題でありますが、これについては、すでに政府農業白書なり、あるいは昨年の農業五年報、そういうものを見ましても、実質的な農業生産というものが伸び悩みになっておる、頭打ちになっておるという傾向が顕著になってきておるわけであります。その中で、従来相当なテンポで伸びておりました畜産果樹等についても若干最近においては停滞をしておるというふうに、全面的な農業生産停滞があり、一方においては自給度がもう一貫して下がってきておる。七六%といいますが、実質カロリー計算でいくともっともっと下回るんではないか、こういうふうに思われて、生産面で決して楽観を許さないという情勢なんであります。いわゆる農基法農政を五年間続けてまいりましても、そういうふうな情勢になってきている。ですから、生産対策としても従来の方針そのものでいいのかどうか。それについては農林省はどのように考えておるのか。まずこの農業生産増大、これについては一体どういう見通しと、また、今年度はその見通しのもとにどういう考え方予算を組んでおるのか、この点をお伺いしたいのであります。
  6. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 お話のように、食糧の中でも米につきましては、御承知のとおり大体生産は横ばいと言っていい状態でありますが、お話の中にありました畜産関係、これは、日本の大体の国民食糧需要に関する傾向が近年非常に変わってまいりました。昭和三十九年とか四十年とかという若干景気が停滞ぎみであった年ですら上昇してまいりました。畜産果樹園芸等に対する需要の伸びというものは一向変わっておりません。したがって、農林省でしばしば言っておりますような選択的拡大方向は、やはり同じような方向で強化していくべきであると考えておりますが、いまお話しの米の問題は別にいたしまして、やはり畜産については、これは御指摘のように需要に追いつかない面がたくさんあります。そこで、これをひとつ、飼料の面において、あるいは畜産家経営の面において、金融の面において、特段の配慮、援助を与えることによって、畜産増強をはかって、そのバランスをとってまいりたい、こういう考え方で、四十二年度予算もそういう面に力を入れた、こういうふうに考えておるわけであります。
  7. 北山愛郎

    北山分科員 ことしも農業生産政策として、土地基盤整備とか、あるいは農地開発とか、そういうものに相当な予算がさかれておるわけですが、毎年々々こういう点に相当な予算を組んでおる。ところが、農地造成なり開発にしても、造成開発はした、片一方のほうではそれよりももっと多い農地がつぶされていくというかっこうですが、昭和三十六年農基法が始まって以来、一体造成をされた農地はどのくらいで、つぶれてしまって減少したものは幾らですか。統計上農地全体としてはどんどん減っていっているのです。このために、さいの川原に石を積むといいますか、確かに投資をした、農地開発をしたが、しかし、それは農地増大にはつながっておらない。だんだん減ってしまっている。それから、土地改良の経費も相当組んでおりますけれども反収は上がってきておるのですか、どうなんですか。だから、土地改良投資なり農地開発投資なりというものが、いわゆる退勢を防ぎとめるにとどまるのであって、前向きに農地拡大なりあるいは反収を向上させるという面に積極的に働いておらない。こういう点については農林省はどのようにお考えですか。
  8. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 政府委員から申し上げます。
  9. 和田正明

    和田(正)政府委員 最初に、耕地面積の推移でございますが、昭和三十六年の田畑合計面積が六百八万六千ヘクタール、四十一年末の面積が五百九十九万六千ヘクタールでございますので、お話がございましたように約九万ヘクタールほどこの五年間に耕地面積減少をしておりますことは事実でございます。  そこで、昭和四十年度を初年度にいたしました土地改良長期計画政府としては定めたわけでありますが、毎年の農地のつぶれ面積等を将来にわたっていろいろなデータで推計をいたしまして、今後四十年から十年間、昭和四十九年までに三十五万ヘクタールの壊廃面積があるという推計のもとに、三十五万ヘクタールの耕地造成をするという計画で、現在土地改良長期計画に基づく事業をやっておりまして、今後耕地面積は、田も畑もそれぞれ総計においては現在と同程度に推移するように考えておるわけであります。  それから、土地改良に毎年いろいろな投資をしておるが、ほんとうに生産性は上がったのかというお尋ねがあったわけでありますが、御承知のように、水田にしろその他の畑作農地にしろ、天候事情というものがある程度左右いたしますし、また、生産のための技術とか、種子の改良とか、品種の改良でございますとか、その他耕種栽培方法でございますとか、いろいろなことがございますので、土地改良事業そのもの効果をその全体としての生産量の中から分析をするということは技術的になかなかむずかしいわけでございますが、先ほど申しました土地改良長期計画では、たとえば水田で申し上げますならば、十年計画最終年次におきましては、現在水田平均反収が四百キログラムでございますので、それの一割増の四百四十ということを考えまして、耕地面積が全体としては現状と同数字であり、かつ全体としては生産量が一割上がるという方向で、現在土地改良事業投資を行なっておるわけでございます。
  10. 北山愛郎

    北山分科員 そうしますと、農地面積全体としては、今後相当な開発事業費を組んでも、農地拡大するというのじゃなくて、むしろ減少を防止するという程度目標を置いている、こういうことでございますか。
  11. 和田正明

    和田(正)政府委員 ただいま申し上げましたように、投資経済効果その他も考え、また食糧の全体としての需給バランス等考えまして、昭和四十九年を終末とする、現在考えております土地改良長期計画では、現在の耕地面積減少しないという前提でやってまいる次第でございます。
  12. 北山愛郎

    北山分科員 その次のいわゆる土地改良ですね。土地改良は、なるほど反収は全体としては若干ずつのぼってきておるようではあります。ただし、土地改良一つ目標というものは、その特定のたんぼならたんぼからあがる反収、収穫がふえるというだけじゃなしに、やはりその土地利用率も上げるということも含まれていると思うのです。利用率においてはどんどん下がってきておる。それでは、総合的な土地改良事業効果というものは、やはりマイナスになっているんじゃないか。少なくともプラスにはなっておらぬのじゃないかと思うのですが、その点について農林省はどのようにお考えになっておりますか。
  13. 檜垣徳太郎

    檜垣政府委員 御指摘のように、最近の日本耕地利用率は年々漸減をいたしておりまして、昭和三十五年当時、たしか一三三%程度利用率であったものが、四十年度に一二三%程度、四十一年は完全に集計されておらないのですが、中間的な取りまとめの数字は一二一・五%、たしかそんな数字であったと思うのでございます。この土地利用率が下がってまいりますのは、少なくとも裏作、なかんずく麦の作付面積減少に負うものでございます。現在の労働事情なり、あるいは麦の収益性の観点から、この裏作作付面積減少を食いとめ、またはこれを伸ばしていくということは非常に困難な事情にあるかと思うのでございますが、少なくとも裏作麦としての適地については、その生産性を上げるような方策を講じることによって、土地利用率の低下を食いとめる。また、御承知のように、わが国では大動物に対する粗飼料の給与が非常に低位にありますので、粗飼料生産基盤として活用していくという方向土地利用率を上げていく、また裏作時期における野菜作等活用等についても配慮をしてまいる必要があるというふうに思っておる次第でございます。
  14. 北山愛郎

    北山分科員 いまの農地開発なり、あるいは土地改良事業というものの総体を通じて、消極的に、農地が減ったり、あるいは土地利用率なり反収が下がるのを防止するということに懸命になっておるというのが農林省の実態で、それ以上、生産政策として、農業生産拡大していく、あるいは農地拡大していくもっと積極的な目標というものを持たないわけですね。どうも総合してみるとそういう結果にしかなっておらぬと思うのですが、そういう情勢の中で、一体農林省はどのような考え方を持っているのか。いままでのやり方をずっと続けていっていいと思っているのか、私ども非常に疑問に思うのです。ずるずる、どんなに毎年予算組み努力をしても、いままでと同じような努力では、農地も減っていくでしょうし、また生産性も必ずしも上がっていかないというような大勢なわけです。いろいろな事情があるのでしょうが、そういう環境なわけです。そういう中で、消極的にそれを防止するという態度でいいのかどうか、また、積極的にどのような考え方でこれから情勢を打開していこうとするのか、その辺のお考えを承りたい。
  15. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 私どもも、そういう点については非常にいろいろ検討いたしておるわけでありますが、第一に、こういう狭い国土の中で、国が無計画にそれぞれの事業を樹立していくということは、私は、はなはだよくないことだと思っております。したがって、ただいま私どもは、農林省内で、構造政策推進会議という名前で、いまお話しのようなことも含めて、将来の日本農業のあるべき姿について鋭意検討いたしておるのでりますが、そういうところでも、われわれが意を用いておりますのは、日本国土をもっと合理的に計画的に使用すべきではないか、したがって、われわれの農林省だけの仕事ではなくて、政府全体として計画的に、たとえば建設事業、あるいは運輸事業、あるいはまた通産関係工場設定等について、もう少し合理的に計画性を持つべきである、こう考えて、調整官庁を中心にして、そういうことに真剣にただいま取り組もうという姿勢を持っているわけであります。  その前提として、私どもは、いまお話しのような点について、農林側としてどのような態度でまいるべきであるかということを鋭意検討中でありますが、やはり、農地利用区分というようなものは、ある程度国として画然とすべきではないか。それから、もう一つは、たとえば、先ほどお話しのように、畜産関係などでも、経済審議会あるいは農政審議会等の答申を見ましても、十年先、十五年先、われわれの食糧についてどういう傾向になってくるかということの、そういう意見を見ましても、われわれは、やはり現状を踏まえて、この上に立って、そういう将来の見通しをわれわれとして実現可能性のある方向計画樹立すべである。そういうつもりで、たとえば畜産についても、いままでの山林、原野等についても、これはやはり合理的に活用することを考え、草地の造成等をいたしまして、そして、あとう限り現在の状態の中でのその利用度を高めてまいることを考えなければならない。同時に、干拓だとか、そういうような事業も、御承知のように積極的に進めて、耕地造成は真剣に取り組んでまいりたい、こんなふうに考えておるわけであります。
  16. 北山愛郎

    北山分科員 いまの生産政策といいますか、そういう点についても、従来漫然と、土地基盤整備とか、そういうものをただ繰り返してきている。そして大勢に押し流されていくという消極的な姿勢であるということには、私は非常に残念であるわけであります。この点についても検討していただきたいと思うのですが、さらに、食糧自給度の問題であります。この自給度は非常に悪化しているということなんですが、例の農業基本法ができましたときの、四十四年度の目標計画というものは、米については一〇〇%、これが四十年度では実質は九二%、小麦は三〇%が二七%、それから特に、いわゆる畜産関係ではございますが、畜産はこれからどんどん伸びるということで、四十四年度の目標計画では一四八%という数字があったわけでございますが、四十年度には八五%になってしまっておるということで、これから伸びていくという牛乳なり乳製品についても、外国からどんどん輸入してくる、自給度が必ずしも上がっていかないということで、食糧についての自給度が全面的に下がってきておる、こういう傾向なんでありますが、この自給度についての今後の目標といいますか、自給度をどうするのか、ひとつ農林省考え方をお聞きしたい。
  17. 檜垣徳太郎

    檜垣政府委員 御指摘のように、日本食糧農産物自給度は最近漸減傾向をたどっておりまして、これはわが国食糧供給を担当する農業行政の立場からも非常に問題であるというふうに、報告の中でも明らかにいたしておるのでございますが、だんだん減少をいたしております農業就業人口傾向の中で、この自給度を維持し、またこれを上げていくのは相当な努力を要する。日本の置かれておりますいろいろな事情から、主要な農作物、つまり、ことばとして適当かどうかわかりませんが、いわば戦略的な農産物については、この自給度を維持し、もしくは向上していくという方策を講じてまいりたい。そういう意味で、米につきましては、今後十年間にほぼ自給度を完全に達成するという方向施策を進めてまいりたい。果樹蔬菜等につきましても、これは一部国内生産できないものもございますが、原則的には高い自給度を維持してまいりたい。畜産物につきましても、生乳、いわゆる飲用乳については、国内完全自給をするほかはないわけでありまして、それに焦点を合わせつつ、どうしても不足の部分は乳製品の形での輸入考えざるを得ないであろう。肉類の豚、鶏肉については国内で完全に自給いたしたい。牛肉については、これは物理的に急速なる頭数の増大をはかることは困難でございますので、考えられる可能な限度までの生産増強をはかりまして、現在の供給量をもっとふやすという方向でものを考えていきたいというふうに考えておる次第でございます。
  18. 北山愛郎

    北山分科員 お考えはいいのですが、しかし、おらそく毎国会、毎年毎年そういう御答弁でもっていままで来たと思うのです。事実はだんだん低下してきている。重大問題じゃないかと思うのです。ことに、畜産などについても、だんだん外国輸入製品が入ってきている、こういう傾向で、しかも輸入総額の二三%ですか、だんだんこの食糧輸入の割合がふえていくということになれば、国際収支の面からも非常に重大問題だと思うのであります。ですから、この自給度を上げていくということには、相当思い切った施策が必要だというふうに私ども考えるのですが、一体、いままで食糧生産を維持するために農林省の中のどの政策が最も効果をあらわしたのか、この点についてどうなんです。いろいろ生産政策なり、構造政策なり、価格政策なりありますが、この予算の中でどの予算日本食糧生産を維持するのに役立っておるのかという点についてのお考えをお聞きしたい。
  19. 檜垣徳太郎

    檜垣政府委員 農林省のとってまいりました政策生産の面で最も効果を発揮したものは何かという御質問でございますが、申し上げるまでもなく、農業生産は、土地労働、資本、それにさらに天候等事情が支配をしていくという、きわめて複合的な要素によって生産が進められるものでございますから、何が最も効果的であったかという判定は非常にむずかしいかと思うのでございます。ただ、私ども農林省考えとしては、やはり生産の基礎は土地にあるわけでございますので、土地基盤整備ということが、生産をささえ、あるいは生産を伸ばしていく基本的な問題であり、また、そのことをおろそかにしなかったということは、これが今日の生産をささえた重要な政策であったろうと思うのでございます。ただ、そのほかにも、いろいろそれぞれの作物によりまして、生産を維持し、あるいは伸長させていくための措置というものにニュアンスの相違がございますので、一がいに言いかねるかと思いますが、基本的には、土地生産基盤整備という問題が本質的であったというふうに思っております。
  20. 北山愛郎

    北山分科員 私は違うのですよ。やはり農業生産担当者農民ですから、農民生産意欲を持たせなければいけないわけで、いわゆる農業の中で何をつくれば一番経営が安定し、所得が上がるかという農民判断に従って、あるいは農家の中の労働力とか、そういうふうな判断に従って日本農業生産がささえられておるわけです。土地政策基盤整備などは外形的な、外部からの施策であって、その結果がいまのように農家生産意欲を伸ばすような条件をととのえられるならば、その土地政策が生きてくるのですが、そうでない場合には、いかに農林省土地基盤に金を注ぎ込んでも、生産増大にはつながらないのじゃないかと思います。そういう意味では、五千億の農林予算の中で一番効果的なのは、私は、食管会計に対する繰り入れだ、こういうふうに率直に思うのであります。その分だけは農民に直接的に影響をする。いわゆる生産者米価なら米価の中に組み込まれるわけですから、直通して個々の農家影響を及ぼすわけであります。生産基盤土地基盤整備などは、ともすると途中の土建業者利益になってしまったりする。あるいは機械投資にしても、機械メーカー利益になってしまう。そういうふうな結果になるのじゃないか。そういう心配を私は持っておる。私、率直に非常に大ざっぱな言い方でございますが、農林省五千億の予算の中で、食管会計に繰り込まれる、いわゆる価格政策予算農業生産をささえる一番効果的なものであるというふうに考えておりますが、その点はどのようにお考えですか。
  21. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 北山さんのお説、私どももわからないではございませんけれども、両方じゃないかと思うのです。もう御承知のように、わが国農業面に対しては諸外国に比べて非常にきめこまかな世話をしておる国ではないかと思うのであります。そういう角度で、日本農業の全体というものを盛り立てていく考え方は、これは政府として変わっていないと思うのであります。いまの価格対策について、たとえば国際競争の中に立っていく農業考えてみましたときに、いまジュネーブで行なわれておりますガットの会議など、そういうケネディラウンドに臨むわが国考え方としても、やはり、いま御指摘のような価格の問題について相当われわれが心配もし、努力もいたしておるのは、そういう問題でありますが、一方においてそういう楽しみを持たせながら生産を上げてもらうにしても、やはり、土台となる土地基盤整備というもの、あるいは経営規模拡大して、やりやすくしてあげるということが前提条件であって、そして、同時に価格対策を並行して考える。つまり、生産対策価格対策を並行してやっていかなければならないのではないか、こういうふうに思うのであります。  いま、たとえば畜産のことに例をとりましても、乳価について、乳製品が諸外国から比較的安く入ってくるということのために、不足払い制度のようなものを設けて、そしてこれは一つ生産対策であり、価格対策でありますが、必ずしも食管のような考え方一般国民税負担において農業を守っていくということよりも、やはり生産意欲を燃やしていってもらうためにはほかのことも並行して考えていかなければならないのじゃないか、こういうことで、先ほど官房長が土地基盤整備等が一番大事だと申し上げたのはそういう精神でありますが、価格対策も私ども農業生産について必ずしも不必要であるとは決して申しておりませんが、ただ、御承知のように、そういうことに重点を置くことになりますと、一方において今度は流通関係で消費者の側から、いまですらいろいろなことが注文が出ておるわけでありますが、われわれとしては、そういう面を大局的に見て、農家の人々が生産意欲増強していくためには生産のほうの面で力を入れてやるということがより大事なことではないか、こういうふうに思っておるわけでございます。
  22. 北山愛郎

    北山分科員 ことばの上の考え方としてはそれでよくわかるのですけれども、実際はその逆にいっている場合が多いのです。たとえば、私どものほうで総合開発で開田事業をやっている。そうしますと、十アール当たり十万円なり十五万円というものを農家が借金をしてその土地を手に入れるわけです。そうすると、その借金を、二年なりあるいは七年というふうな期限でその元利を返していかなければならないということになりますと、その土地がふえることは生産政策としてはそれ自体いいわけです。ところが、そろばんの上から言うと、それだけの借金を返していかなければならぬし、必ずしも経営の上の改善にはならないということになれば、そこから、せっかく耕地はふえましても、生産意欲としては、これは上がってこないのじゃないか。農林省政府施策としては、ただ開田をして土地をふやすという面だけを考えておられるが、その実際のプロセスは、農家の非常な負担であって、そして経営上はマイナスになっている。効果がそういうふうな効果になっているということになれば、私は、必ずしも、ことばの上で生産政策は必要だと言っても、効果的だとばかりは言えないのですね。もし開田なり土地改良なりあるいは農地開発というものが農家のそれほど負担にならないような形で行なわれるならば、それは生産意欲を向上するのですが、現実はそうじゃなくて、その十万円なり十五万円の借金で、一町歩なら百五十万円ぐらい金を出さなければ手に入らぬ。その負担に借金で苦しんでしまうという結果になっているという現実は農林省も知っておられると思うのですが、この点についてはどういうふうに考えておられるのですか。
  23. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 政府委員からお答えさせます。
  24. 檜垣徳太郎

    檜垣政府委員 一般的に申しまして、わが国では耕地価格というものが、いわゆる採算価格という観点からすれば高い傾向にある。これが日本農政を推進する上にいろいろ問題であることは、先ほど先生のお話しの根っこにあるのではないかと思います。で、農地開発をいたします場合にも、やはり農林省としては、国全体の立場から見ます効率の問題も当然考えるわけでございますが、また、個別農家経営の採算の問題も考えつつ、農家の負担等に配慮を払ってまいっておるつもりでございますけれども、個々の具体的なケースの場合には御指摘のような場合もあろうかと思うのでございます。そういう点につきましては、一般土地政策のほかに、たとえば農家耕地の保持が困難であるというような場合には、特別な金融政策、自作農維持資金等による長期の資金を供与することによって、長期間に負担を延ばして、そうして経営の安定、維持をはかっていくというようなことを考えておるわけでございます。  なお、農地開発のための農民負担という問題につきましては、私どもは、今後ともできる限り軽減をしていく、経済情勢に応じて軽減をはかっていくということを考えてまいりたいというふうに思っておるのでございます。
  25. 北山愛郎

    北山分科員 これは私から言うまでもなく、農林省のほうでよくおわかりになっておる問題だと思うのです。要するに、土地改良をやっても何をやっても、結局はそれが農家経営の面においてはマイナスになっていくという実態が必ずしも例外的な問題じゃないのです。至るところそういうふうな事態になっていると私は思うのです。ですから、こういう実態は私よりも農林省のほうがよく知っておるはずなんで、生産政策もいいですけれども、その結果が農家経営を圧迫するとか、借金をふやすとか、赤字をむしろふやすといったような方向になっているという実態をよくお考えになって、そうして、基盤整備をやるならば、借金をさせないでも済むような基盤整備——こういう土地改良あるいは農地開発については全額国庫負担でいくべきである、こういうふうに社会党としてはこの前の農基法の問題のときに主張したわけですが、しかし、現実にいまは農業団体ですらもそういうことを言っておるわけです。岩手県の農協の大会で、土地改良の経費は全額国庫負担にしろという決議を上げております。これは、現実が農林省のいまお話しになったような方向では進んでおらないということを実質に示しておると思うのであります。ですから、この点はほんとうに真剣になって十分お考えを願いたい。  せんだっての総選挙のときにも、私、地方を回っておりましたら、寒い中で開田事業に女の人ばかりが働いておる。なぜあの寒い中で婦人が働かなければならぬかというと、それは、いま申し上げた開田のための負担金の利子と償還金を払わなければならぬからこうして働かなければならぬのだ、この問題を解決してくれる人なら、どの党でもいいから私は投票します、こういう率直な話を受けたんですが、私は、そういうふうな状況が全国的にあると思うので、この点はひとつ、開発土地改良だといって予算をつけさえすればそれでいいというのでなくて、むしろ農家経営あるいは生産意欲を促進するんじゃなくて、むしろ押えつけるほうに働いておるということも、よく実態について御検討願いたいと思うのであります。  時間がありませんから次に進みますが、生産性の問題であります。生産性の向上ということを農林省はずうっと毎年言っておるのですが、生産性というのは何をさしておるのか。労働生産性だけなのか。経済白書の統計で見ると、労働生産性のほうは、昭和三十二年度を一〇〇としまして、労働生産性昭和三十九年度は一五九・一に上がっている。労働生産性は上がっている。しかし、資本生産性のほうは六一・五に下がっているわけですね。要するに、農業投資をすれば、その資本生産性のほうはぐんと下がっておる。労働生産性のほうは上がるが、資本生産性が下がってきたことは、結局両方とも経営影響するのであって、なるほど人手は省ける。いわゆる省力化は進むけれども、実際にそれが農家経営の改善につながっておらないのではないか。機械を買ったり、あるいは土地投資をしても、それが経営の面では、一方で資本生産性のほうは下がっておる。その辺の関連一体どういうふうに考えておられますか、伺いたい。
  26. 檜垣徳太郎

    檜垣政府委員 いま御質問がございました農業生産性の問題でございますが、生産性といいます場合には、一定の生産要素に対する生産効率のことをいうと思うのでございます。でございますから、その場合には、土地生産性ということもございますし、それから資本生産性ということもございますし、労働生産性ということもあるということでございます。労働生産性につきましては、農業の動向に関する御報告でも申し上げておりますが、昭和三十五年を一〇〇にいたしますと、四十年度は一三一・六ということに相なっております。それに対しまして、資本生産性の指数としては、三十五年の一〇〇に対して四十年度八八・三という比率で、御指摘のとおり、資本生産性は指数として下がっておるのでございます。これは、お話にもございましたように、従来の労働多投的な生産方式から機械化の方向に進み、またあるいはその他の省力的な技術の導入が行なわれました結果、労働の多投にかえて資本の多投があらわれてくるということでございますから、当然の結果として、労働生産性が上がり、資本生産性はどうしても下がる傾向になるということだと思うのでございます。  ただ、労働生産性が上がりますことは、これはもちろんわれわれが願っておるところでもあり、また好ましい傾向でございますが、資本生産性をどうして上げていくかということは、資本の投入が一定の合理的な規模において行なわれるかどうかということにかかわるのであろうというふうに思われるわけでございまして、この点が、いわば、先ほど大臣からのお答えにもございました、日本農業構造の問題と関連をすることであろうというふうに思っておるわけでございます。今後、この労働生産性はもとより、資本生産性を上げていくということが、構造政策の中で考えられるべきことではないだろうかというふうに思っておるのでございます。
  27. 北山愛郎

    北山分科員 そのとおりなんです。そのとおりだが、実質は資本生産性が下がっておるわけですね。そして経営規模拡大しない。何年も何年もやってきたけれども拡大しない。いわゆる農基法で言っている、あの当時言った二町五反歩以上の農家自立経営農家を十年間に百万戸つくる、そういう政策は、以来ちっとも実現の方向に向かっておらないのですね。そういう現実なんです。この現実の中で機械化を農林省は進めている。補助金を出したり、融資をしたりして、どんどんトラクターあるいはその他の機械化、もっと高度な機械化を進めておるということになれば、資本生産性は下がりますよ。下がるような政策をやっておるじゃないですか。現実を無視している。だから、機械貧乏だとかなんとかということになるわけですね。ですから、この点について、一体農林省はどういうふうに現実をとらえているか。現実にマッチした政策でなきゃ生きてこないのですから、ただ資本生産性を上げなきゃなりませんからということでは、これは政策になりません。ただひとりよがりなんです。現実を無視しているのです。そういう点はどのように考えてやっておりますか。
  28. 檜垣徳太郎

    檜垣政府委員 機械化の方向というのが規模の拡大に先行して進んでおるという事実が、実はこの資本生産性が指数的に低下をしておる理由であると私どもも思っておるのでございます。ただ、現段階において、あるいは現在までの段階において、わが国農業に機械化が導入されたということ、その機械の活用によって現在の生産が維持されてきたということは見のがせないと私は思うのでございます。御承知のような就業人口の減少過程の中で、機械化を進めず生産を維持するということは、ほとんど不可能ではなかったかと思うのでございます。そういうことから、日本農業の機械化なりその他の資本投入は、零細規模のもとで必要な投入をいたさざるを得ないということの結果から、一面においては、一定面積当たりの機械の投入量は、客観的に見ますとやや多過ぎるという事態を生じておるのでございます。今後の段階としては、小型の機械化から中型ないし大型への移行をはかろうと思うのでございますが、それに対応する施策としては、規模拡大の問題を考えざるを得ないわけでございまして、規模拡大という中には、これは個別経営の規模の拡大と資本投入の関係においては協業ないし協業組織というものを通じての効率の発揮ということを考えてまいらなければいけないというふうに思っておりまして、今後の私ども農政を背負う者の一つの課題であるというふうに考えておるのでございます。
  29. 北山愛郎

    北山分科員 それで、生産性の問題は、まあ大ざっぱな議論でございましたが、総合的に農家のいわゆる農業所得所得率というものはどういう傾向を示しておるか。一貫して下がっておるわけですね。三十五年なり三十年なりを基準にして、その経過をひとつ数字的に御説明願いたい。
  30. 檜垣徳太郎

    檜垣政府委員 年次別の計数は取り調べましてすぐお答えをいたしますが、農業所得率が下がっておることは御指摘のとおりでございます。  農業所得率が下がってまいりました原因の一つは、ただいま申し上げました資本多投の傾向になってまいりますと労働部分が節約をされるわけでございますから、したがって、労働報酬というものの時間的な意味での減少があるわけでございます。ということで、所得率が下がる一つの理由に相なるわけでございます。それから、いま一つは、農業生産の伸びの中で最も著しいと見られます中小家畜の生産増大をいたしまして、中小家畜は、ごく簡単に言いますと、飼料の多投的な農業部門であるということで、所得率は最も低い部門でございます。でございますので、その二つの傾向が合体をいたしまして、農業所得率の低下という傾向が生まれてきたというふうに考えているのでございます。  数字で申しますと、農業所得率は、昭和三十六年度が六六・八%、三十七年が六六・〇、三十八年が六三・三、三十九年六二・九、四十年が六三・三ということでございます。
  31. 北山愛郎

    北山分科員 時間がありませんから要約して申し上げますけれども、やはり、粗収入に対する純収益の割合が下がっているということは、経営費がそれだけふえたということなんですね。粗収入もふえるけれども、それよりももっと経営費の増大のほうが大きいということで、いわゆる手取りが減ってきているということですね。これは、いまお話しになった数字は、ずっと長期に見ればなおさらひどいのであって、前には七〇%以上だったものが、どんどん下がってきて、現在では六〇を割っているのじゃないかと私は思うのですが、そのように下がってきたということは、農業自体としては非常に重大な問題だと私は思うのであります。  先ほども生産性のことをお話しになりまして、資本生産性について規模の拡大ということでお話がありましたけれども、規模の拡大だけじゃないと思うのです。規模の問題じゃない。農業というそれ自体の性格、本質から来る制約があるので、いわゆる回転数が季節の自然的な制約を受けているのですから、ほかの産業と違って、資本投下をすればその効率が上がるというものじゃない。季節的な自然的な条件に左右されておりますから、むしろ資本投下に一つの限度があるというふうに私は考えるわけです。いずれにしても、そういうものが総合されて所得率を低下さしていると思うのです。  私は、結論的に言うと、生産政策も、あるいは資本投資もいいのですけれども、それが農家経営のマイナスにならないような方法を思い切ってとる必要があると思う。それには、土地基盤整備並びに機械化についての農家の負担というものを思い切って減らすという施策に、まず一つ農業政策として重点が置かるべきである。ですから、機械についても、個々の農家が借金をして買うというのじゃなくて、そういうことを奨励するのじゃなくて、どこか公共団体なり農業団体が大型の機械を持ってこれを賃貸しをするというような制度にして、個々の農家に資本負担というものをさせないようにしなければ、借金をさせないようにしなければ、農業経営というものがそれ自体として成り立たない、こういうふうに私は素朴に考えているのですが、そういう方向一体政策を進めるようなお考えがあるのかないのか、お伺いしたいのです。
  32. 檜垣徳太郎

    檜垣政府委員 御指摘のように、農業の一定の土地資本に対する生産の伸びる限度というもの、あるいは伸びる率というものには制約がございまして、いわゆる収穫逓減の法則が働くわけでございます。でございますから、資本の多投がある限度までいきますと非経済投資になるということは、お説のとおりだと思います。でございまして、一つは規模と投資との関係を申し上げたのでございますが、その他の方法として、これは別の形で規模の利益を得させるという意味から、協同組合等の団体による大型機械の保有貸し付けあるいは賃耕等が考えられていいというふうに思うのでございまして、現在でも、農業構造改善事業等の計画の中では一定の条件の備わっておりますところにつきましてはそのような方法も推進をいたしておるのでございます。ただ、機械等のことでございますので、十分平素の管理等がうまく行なわれませんと、また逆に機械本来の効率なりあるいは耐用年数なりに無理が生ずる場合もございますので、一がいにすべて団本保有による機械利用ということをしいるわけにはまいらないと思いますが、条件の成熟に応じてそういう方策をとってまいることは、きわめて有効な方法であろうというふうに思っております。
  33. 北山愛郎

    北山分科員 とにかく、農業というものは所得率が高くなければ成り立たぬ仕事だと思うのでございます。他の産業であれば、原料とかそういうものをたくさん使って加工する。それを一年に何回も回転をするのですから、それで収益が上がるわけです。それが、農業というものは、一回なり二回なり、一年の回転が非常におそいのですから、所得率が高ければ初めて成り立つ。逆に言うならば、土地や水やあるいは機械とか、そういうものがただであればやっていける、非常に安ければやっていけるのであって、これが高くなって、いまのように五〇%といったような、経費が高くつくようなものでは成り立たない仕事だというふうに私は考えているのですが、そういうことが私は農政の基本でなければならぬと思うのです。そうでないと、農業生産を伸ばすにしても何にしてもだめだ、こういうふうに思うのです。これは大きな議論ですから、限られた時間では無理ですけれども、この点については農政の基本として十分お考えを願いたい。所得率がずっと一貫して下がっているという事態、経営費がそれだけ上がっているということ、手取りが減っているということ、これじゃ農家経営は成り立たぬです。土地開発しても、土地改良をやっても、機械をうんと備えつけても、とにかくそろばんが合わないのですから。それじゃ農家が自分の経済が成り立たないということになるから、これは農業生産自体としてもう行き詰まってしまうというふうに考えるわけです。その点も、思い切って機械などは団体保有にするやり方、これは機械の有効な管理から見てもそうでなければならぬ。だから、府県の機械化ステーションなり、市町村のサービスセンターなりを通ずる特に大型機械の有効な利用あるいは管理という面からして、その方向農林省政策を思い切った転換をしてもらわなければ、どんどん農家が機械を買って、機械化貧乏になっているという現実がますますひどくなると思うのであります。この点は十分御検討願いたいということでございます。  その他いろんな問題点がありますが、いずれにしましても、農基法目標とした自立経営の育成にしても、いわゆる規模の拡大だって、いまの農林省考え方ではきめ手がないですよ。いわゆる共同経営にするのか、自立経営を育成するのか、どうするのかという方向がないじゃないですか。協業も、自立経営が主眼であって、協業を補助的にやるというのが農基法当時の考え方だったのですが、今日はどうなのか。今後はどういうふうに持っていくのか。思い切って共同経営にする、これをひとつおもな柱にして持っていくということに相当思い切った構造政策の中心が置かれなければならぬというふうに私は考えるわけです。そうでないと、いわゆる農地を横に移動するにしてもただじゃありませんから、十万なり十五万なり二十万なりの高い金を出して農地を買うことになるのですから、その分だけ結局農家自立経営というものができないような悪条件になってしまう。そういう意味で、いわゆる農地取得に金を使わせないで済むような方法としては共同化以外にない、私どもはそのように考えていますが、一体今後の構造政策の柱をどこに置いていくのか、この点を承りたい。
  34. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 やはり私どもは、自立農家の育成ということを主体にいたしまして、経済効率を高めるためには、あとう限り協業を奨励していくことがいいのじゃないか、方針としてはそういうふうに思っているわけであります。
  35. 北山愛郎

    北山分科員 非常に問題が大きいので論議は尽くせませんけれども農林省としても、ひとついままでの農基法実施以来の農業の実態あるいは農家の実態というものをごまかさないで正しく見詰めて、施策考えてもらいたいと思うのであります。何かいままでの惰性でもって——今年度の予算も、結局基本の考え方は去年と同じです。どんどん進行しておるいまの農業危機といいますか、そういうものに対応した何ものもない、こういうふうな感じがする。それでずるずる現実のほうが進んでしまうということになっておるので、この点はきわめて残念なんです。むしろ農基法農政というものの実態をもっと見詰めていい。これが効果があるのかないのか、それから、農林省予算も五千億も使っているのですけれども、これ以外の財政投融資を合わせれば七千億以上になると思うのです。そういうものが一体それだけの効果を出しているのかどうかという点も、ひとつ真剣に現実と合わせて、ごまかさないで見詰めていただいて、ここに大きな農政の転換というものの方向をひとつ検討していただきたいと思うのであります。  私どもは、社会党としては、三十六年のあの農基法当時に政府に対する対案を出した。そのわれわれの考え方がまさに正しかったというふうに今日で確信を持っております。政府の基本法は完全に破たんした。社会党の基本法でなければならぬのだ。たとえば、あの当時に、われわれは二百万ヘクタールの草地を造成しろということを主張した。ところが、畜産選択的拡大として伸ばすと言いながら、草地の対策を持たなかったわけです。それが飼料輸入増大になってあらわれて、そして、今日いまやっと、その草地をふやさなければならぬというような政策を少しずつ取り上げておるというふうな点一つ考えてみましても、農基法農政目標と実際に数年間やってきたその施策というものはまるで食い違ったというふうに考えております。こういう点も、私は何も政策の失敗というものをおおい隠す必要はないと思うので、やはり農業白書なり、あるいはそういう今日の現実というものをよく見て、この現実をどのように打開したらいいかということを真剣に取っ組んでもらいたいと思うのです。私どもも、もちろんいまの農政の行き詰まりというものを大きく転換するために、これから社会党としては大いに要求し、またわれわれも十分検討するというかまえでございますけれども、その点はひとつ冷静に、しかも深刻に現実に対処していただきたい。そうでないと、これは農民も浮かばれなければ、また、日本農業にとっても重大問題だというふうに考えるのです。  短い時間で、私の意を尽くせませんけれども、私の気持ちだけはわかっていただいたと思うのです。政府をただ責めるという気持じゃなくて、やはりここでお互いに日本農業を何とかしなければならぬ段階ですから、ほんとうに真剣になって取っ組んでいただくということを要望して、時間でございますから私の質問を終わります。
  36. 野原正勝

  37. 淡谷悠藏

    淡谷分科員 去る三月十日にフジ製糖が、青森県につくっておりましたてん菜工場を突如操業中止をするという通告をしましてから以来、地元が非常に混乱し、かつまた困却いたしまして、再三農林大臣にも関係四県の知事や農業会から陳情したはずでございますし、また、参議院の農林水産委員会あるいは当分科会等においていろいろ質問もあったようでありますから、概略は大臣もすでにおわかりだろうと思います。ただ、基本になりますのは、今後どのような施策をするにつきましても、国のてん菜生産に関する基本的な方針がきまっておりませんと、今後の処置についていろいろ動揺があると思います。このフジ製糖の工場の閉鎖に伴って、別段てん菜糖の生産を伸ばそうという基本方針が変わらないとは思うのでございますが、なお念のために、農林大臣からその点のお話を願いたいと思います。  なお、これはほんのうわさにすぎないかもしれませんが、砂糖が自由化される前は、てん菜工場を持った者に外貨のワクやら輸入のワクを優先的にやるといったような暗黙の了解があったので、いろいろてん菜工場をつくる計画も進めましたけれども、自由化以来はその特典がほとんどなくなったので、もう製糖工場を持っております砂糖業者は、これ以上やっかいもののてん菜工場などは要らないというので、やめていこうという計画もあるやに伺うのですが、北海道のてん菜工場の製糖部分と、てん菜部分との分離の問題も起こっているようでございますから、国全体の製糖あるいは国内における甘味資源開発の上から、ひとつ農林大臣の将来における見定めをはっきりお聞きしたいと思うのであります。
  38. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 てん菜糖につきましては、寒冷地の畑作物としては適当なものではないかということで、これの成功を期待いたし、北海道ではすでに、御承知のようにある程度生産をあげておるわけです。北東北の問題につきましては、私どもはそれを期待いたしておったのでありますが、不幸にして、御承知のような結果になってまいりました。そこで、先般来、関係の各県の知事たちも上京いたしまして、これについていろいろのお話がありました。そこで、フジ製糖が工場を閉鎖いたしましたときには、すでに播種期でありまして、農家もそれが当然製糖会社に原料として入るものであるという想定のもとに植えつけをいたしておるわけでありますからして、これはフジ製糖という製糖会社がどのようなことになろうとも、政府としては農民に迷惑をかけないようにしてあげなければいけないのではないか、こういう考えを持っておるわけであります。
  39. 淡谷悠藏

    淡谷分科員 当分科会で米内山委員が質問した速記録がまだ手元にまいっておりませんので、詳しくは存じませんが、関係地の新聞の伝えるところによりますと、ことし一年はやるのだが、来年度からはもうてん菜の栽培はやめさせるんだといったような大臣答弁がなされたごとく伝えられております。そうしますと、ほんとうの緊急措置だけで、国のてん菜に対する基本的な方針はもうこの辺でやめるんだというふうな印象を与えるのですが、その点はいかがでございましょうか。明年あるいはそのあとにだってやはりてん菜の生産は続けさせるつもりかどうか。青森県は、御承知のとおり、てん菜の生産振興地域に指定されているのです。これは農林大臣からも指定されているわけなんです。そういう点もありますが、会社が倒産したからというので——倒産まではいきませんけれども、閉鎖するというので、あとはてん菜の作付はもうおやめなさいと言うつもりかどうか、その点を伺っておきたい。
  40. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 ビートは、御承知のように、契約栽培でございますからして、その相手方の工場が閉鎖するという状態になりました以上は、やはり何とかそういうことのないようにこちらは期待をするわけでありますけれども、その原料をもって製糖するわけにはまいりません。でありますから、私どもといたしましては、いま申しましたように、本年はすでに播種時期も過ぎ、収穫が予定されるわけでありますから、その収穫がどのくらい出るかということがまだ実際はわかりませんけれども、これは農家の人々にお気の毒なことにならないようには、政府としてはできるだけお手伝いをしなければならない、こう思っておるわけであります。
  41. 淡谷悠藏

    淡谷分科員 いまお話のあった契約栽培ですが、これは農業生産物が自給的な要素の多い間は問題もないのですけれども、商品的なものに変わってきている段階、特に加工しなければ商品価値を生じないといったビートあるいはビール麦、ホップ、かん詰め用のくだものといったものは、会社そのものとの取引が非常に大きなウエートを占めているのです。今回問題になりましたビートの契約というものは県の経済連でやっているようです。この契約の内容を大臣はごらんになりましたか。まことに一方的な、たよりない契約です。生産地に指定しておきながら、こういう農民には非常に不安定な安心のならないような契約に対して、どうしていままで適当な御指示をしなかったのか、ふしぎに思ったくらいです。その点いかがですか。単にビートだけではなくて、農産物の契約栽培全体に関する問題でございますから、契約の内容あるいはその条件についての農林省のしかとした方針を承っておきたい。
  42. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 政府委員からお答えいたさせます。
  43. 八塚陽介

    ○八塚政府委員 ただいま淡谷先生のほうから御指摘になりましたように、ビートのみならず非常に多くの作物が工場を通してしか最終消費物にならないという場合には、契約ということになるわけでございます。私どもの所管いたしております作物は特にその点が多いのでございます。その点については、かねがね私どももいろいろ研究をいたしておりますが。今回のビートについては、いまお話がありましたように、まず第一次的には会社と経済連が契約を結ぶ、その経済連は単協と委任契約を結ぶ、その単協はまた生産者と契約を結ぶという重層的契約になっております。これは農協の組織が大体そういう販売委託というものを理想とするということにもなっておるせいもございます。そういう意味におきまして、今回の契約が農民側にとって特別に不利であるというふうにも見受けられないのでございます。しかしながら、こういう事態になりまして、会社は買わない、あるいは買う資力がないという形になりますと、つくりつつある農家にとっては非常に迷惑なことに相なるわけでございます。したがいまして、農林省といたしましては、つくりつつある原料をそういう不利な状態におちいらせないように、その原料の処理を善処したいということになっておるのでございます。
  44. 淡谷悠藏

    淡谷分科員 大臣は契約書をごらんにならなかったと思いますが、あの契約書を不利じゃないという認識をされる農林省では先が思いやられますよ。ビートは理想から言えば五年間輪作でしょう。三十六年に工場がつくられて、その輪作がやっと一回り回ったところで——あるいは四年にする、三年にする、こう言っておりますけれども、原則的には確かに五年間輪作なんです。一回り回ったところですぐやめる。内容を見ると一年契約ですね。少なくとも他の作物の関係もあって五年輪作であるべきものが、一回りしたところですぐ一方的にこれをやめられるというような契約の内容であれば、農民利益はどこで守られるのですか。これはビートだけではありません。山形県のかん詰めを見てごらんなさい。かん詰めが不況であるといえば、一キロ四円とか五円とかいうばかみたいな話になってしまったり、どうにもならないというのが契約栽培の一つの形なんです。ですから、これは過ぎたことはしようがありませんが、ビートの将来についても、そういう契約の内容をもう少し農民が安心してつくれるような立場に直さないと、こんなことは続きますよ。  それから、突如このことがあらわれたように農林省では言っておりますが、突如じゃないでしょう。あのフジ製糖の神原さんが参議院の農林委員会で渡辺勘吉委員に答えた内容を見ますと、「実は二年ほど前から何とかこの事業が継続できるように政府筋におかれましてもまた各県等におかれましても御援助をしていただきたいということをいろいろお願いしてまいったのでございますが」、こういうことを言っております。その記憶はございますか、農林大臣はかわっておりますから、私は無理に責めることはいたしませんけれども、少なくとも人間が変わりましても農林大臣は農林大臣としての職責がある。しかも、同じ自民党政府、内閣の農林大臣なんですから、一貫した責任においてそれをお考え願いたいのですが、二年前からこの事態をあらかじめ心配しまして会社からさまざまに言われておるという証拠があります。はっきり速記録に出ているのです。
  45. 大口駿一

    ○大口政府委員 東北ビートの問題につきましては、実は最終的には三月十日に工場閉鎖という申し出があったわけでございますが、ただいま御引用になりました榊原社長の従来からの私どもに対する要望その他がいろいろあったことは事実でございます。  基本的に東北ビートの問題の経過を申し上げますと、もちろん甘味資源の自給度向上という基本的な考え方から、東北のあの寒冷地においてビートを生産振興することが非常に望ましいという見地から農林省が指導してまいったわけでございますが、御承知のように、ビートは加工して砂糖にする、いわゆる加工農産物でありますので、工場が一定の採算のレベルに達しますためには、栽培面積生産量等が、将来ある程度一工場の操業を満たすに足るところまで生産増強の可能性があるかどうかということが一つの大きなかぎになると思うのでございます。そこで、青森、岩手両県、秋田も若干ございますが、年々その目標に向かって努力をされ、また、われわれも大いに期待をいたしておったのでございますが、最近いろいろな事情、他の農産物生産の伸びとか、いろいろな条件があると思いますが、当初考えておりましたようなテンポでは栽培面積が伸びない。むしろ逆に最近一両年では減少傾向すらあるというような事態が、この最終的な、きわめて不幸な事態に立ち至った直接の契機だと思うのでございます。そこで、現地のフジ製糖といたしましては、もちろん、北海道のごとくすでに相当な長い歴史を持っておりますところと、それから比較的歴史の浅いところでは、当然に生産性その他に差がありますので、現在砂糖の価格安定法に基づいて政府が買い入れております製品たるビートの価格に北海道と東北と若干差をつけてもらいたいというようなことが主たる要望の中心であったのでございます。  私どもといたしましては、そもそも基本的な考え方といたしまして、操業当初に非常に条件が不利である、一定の期間を限って将来完全に古い歴史を持っておるところに追いつくということであるならば、その追いつくまでの期間特別の措置を講ずるということを研究することには、もちろん理屈の上でも同調し得る面があったのでございますが、生産面積の伸びその他からいたしまして、将来とも、はたしててん菜が現在の先進地域において達成をしておりますような生産性に到達をする可能性があるかないかという問題については、遺憾ながらきわめて疑問視せざるを得ないという事態になっておりますやさきに、本年の会社の最終的な決心ということに相なったのでございまして、私どもとしましては、てん菜の基本的な考え方といたしまして、国内自給度をできるだけ高めていくということで、北海道を含めたてん菜生産に対する基本的な考え方を持っておるわけでございますが、北東北におきましては、ただいま申し上げましたような生産の伸びが、栽培面積から見ましても予定どおりにはまいっておりませんし、所要期間が長くかかるということであればともかくといたしまして、逆にむしろ後退をしておるというようなかっこうに近来なっておりまするので、あるいはここで重大なる決心をせざるを得ないのではないかというふうな考えを持ったような次第でございます。
  46. 淡谷悠藏

    淡谷分科員 非常に遺憾な御答弁ですな。ビートは北海道を除いてはほとんど失敗でしょう。暖地ビートもだめでしょう。北海道と比べると、立地条件、それは確かに北東北のほうが劣っておるということはわかっておるはずなんです。しかも、作付面積が伸びないということを言われますけれども、内容を見ますと、青森県は伸びないけれども、岩手県は伸びていますね。同じ北東北で、青森が伸びなくて岩手が伸びたとすれば、伸びたところには伸びただけの理由があるはずです。詰まったところには詰まっただけの理由があるはずです。わずか五年か六年の操業期間の中で、この一つの作物がちゃんとぺースに乗って伸びるというのは、相当な歴史が要るのです。あれだけ有利な青森のリンゴだって、今日の隆盛を来たすためには、五十年近い歳月がかかっています。新しい作物を国が奨励をして、五、六年で成績が上がらないからまずやめにするなんという、そんな考えを持っておるビート政策ならば、私はまさにこれは質問するのがばかばかしいくらいに誠意がないと思う。そうじゃないですか。岩手県は伸びているのですよ。しかし、作付が伸びないから会社がだめだということを再々言われますけれども、私はその考え方は非常に違っておると思うのです。むろん作付が伸びないことも一つの原因でしょう。北海道東北開発公庫に榊原社長からごく最近実に切実な手紙が行っていますよ。これは農林省ごらんになっていますか。昭和四十二年一月三十日付で北海道東北開発公庫東北支店の赤木勝利あてに榊原正三から、「不動産の売却、抵当権設定に関しお願いの件」という、もう切々たる文書が行っているのです。これを見ますと、この会社をやめなければならないのは、基本的には作付面積の少ないところもあるでしょうけれども、それ以上に、資金繰りが困っているから何とか二億ほどめんどうを見てもらえまいかということをはっきり書いてあるのです。これは大臣お手元には行っていないでしょうな。もしなければ、きょうはもう時間が非常に制限されておりますから、ほんとうはここで読み上げたいのです。けれども、もうそれができませんが、大体こういう書類が出ている。資金繰りの点で非常に困っている。しかも、この会社は、ビートの会計とクリーニングの会計、精糖の会計が一本の会計ですね。その点はいかがですか。ビートだけの損失、精糖だけの損失というふうにはっきり出ますか。それはまあ現場の計算はあるようですが、本社関係においてそれがどうなっているかということが問題です。私はこの財務諸表を取り寄せて見ましたけれども、会計は一本ですね。ですから、その点から見ますと、私は、作付は今後融資の処置さえつけば伸ばすような方法も講ぜられると思うのですが、非常にせっぱ詰まった、もう持ちものを全部売って資金をつくらなければしようがないということを切々と訴えている。農林大臣にもこれは訴えているはずですよ。参議院の速記録を見ますと、試験している段階でも、「当時政府におかれましても非常な御激励をちょうだいいたしました。」ということをはっきり言っている。政府で奨励しているんです。それから、これは農林大臣おわかりでしょうけれども、こういうことも言っていますね。「実際わがほうといたしましては資金的な面とかいろいろな問題からしてやむにやまれずこういうような事態を引き起こしたということで、その旨を先般三月十日の日におそれなが大臣にも申し上げまして、私どもとしては会社の血の一滴までがんばってまいりましたけれども、もうこれ以上はがんばりたくてもがんばり得ない」のだということを言っている。これは大臣お聞きになったでしょう。ひとつそのときの御感想を伺いたい。
  47. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 三月十日だと思いますが、フジ製糖の社長がお見えになりまして、そういう詳しいお話は時間の都合でございませんでしたけれども、残念ながら会社は工場を閉鎖せざるを得ない、こういうお話でございました。で、私も突然のことではありますし、それは困ったことですということでお別れをいたしました。
  48. 淡谷悠藏

    淡谷分科員 これは榊原さんもまた、「実は二年ほど前から何とかこの事業が継続できるように政府筋におかれましてもまた各県等におかれましても御援助をしていただきたいということをいろいろお願いしてまいったのでございますが、いろいろ御親切な御指導等はございましたのですが、いかんせん、結論的に申し上げますると、私企業の限界にまいりました。」と言っているんですね。ですから、さっきの御答弁だと、会社がやめればこれはしかたがないのだというふうに、実に投げやりな御答弁のようですが、国がほんとうにビートというものを振興し、国内における甘味資源を開発するために法律までつくってやるんですからね。これは共和製糖みたいなものが出てくるでしょう。ですが、やはり法律までつくって腹をきめたならば、会社が採算が合わないというなら、合わない原因がどこにあるのか、作付が伸びないならば、伸びない原因がどこにあるのか、それまで検討してめんどうを見てやらなければ、新しい会社は伸びませんよ。わずか五、六年やったからといって、会社もやめる。その事業もやめる。一体、農村その他の開発のために融資しなければならない北海道東北開発公庫とかあるいは農林中金は、この仕事にはばく大な融資をしたのでしょう。この資金を、困っている農村、直接農民にはやらないで、会社にやったのですが、これも農民が助かればというのでやったのでしょう。それを、わずか五年か六年で、もうやれません、私企業の限界にまいりましたといってやめるような私企業に依存して、一体国策としてのビートの生産の振興ができますか。一体大臣はどうお考えですか。さっきの御答弁じゃどうしても満足いかない。もう少し腰を据えてこの事業には取っ組んでもらわないと、農民はかわいそうですよ。
  49. 大口駿一

    ○大口政府委員 先ほど私がお答えいたしましたのを、会社がやめたと言えばそれですべて終わりでやむを得ないというふうにおとりになったとすれば、非常に私の真意と違うわけでございまして、もちろん、政府といたしまして、北東北にビートを振興しようという一たん決心をいたしました以上は、予算的措置その他いろいろの面でこれが所期の目的を達するようにあらゆる努力を続けてまいったつもりでございます。単に作付面積だけの問題を先ほど申し上げましたが、ビートが加工農産物といたしまして将来のビジョンとして一本立ちになりますためには、やはりある程度一定の規模の生産量に将来時間がかかっても到達をするということが一つの大きなきめ手になるのではなかろうか、その間においてかりに財政的な援助をするにいたしましても、あるいは金融的な援助をするにいたしましても、やはり将来施策よろしきを得れば必ず一定数量の規模に到達するという目標があるかないかという見通しの問題は、一つの大きなきめ手になるのではなかろうかという趣旨で申し上げたのでございます。もちろん、会社が、砂糖業界全体がいま非常に糖価の低迷によって苦しくなっている最中でございますので、いわば環境が必ずしも非常によくなかったという一つの観客的情勢もございますが、しかし、ビートの部門だけについて見ましても、公的な機関に変えたらどうかとか、いろいろな案もその間において研究もされ、また、われわれも御相談も受け、御相談にも乗ったのでございますが、いろいろな経過を経まして、ついに増資の点について必ずしも成算がないというのが三月前後における関係者の考え方であったわけでございまして、決して私ども生産振興地域に指定しっぱなしで、あとは会社まかせというふうなきわめて安易な考え方ではなかったのでございますが、いろいろな条件その他を総合勘案いたしまして、ここらでひとつ将来の方向を改めるなら改める、あるいは継続するなら継続するという非常に重大なる判断をすべき時点に立っておるのではないかというふうに考えて、先ほどお答えいたしたのでございます。
  50. 淡谷悠藏

    淡谷分科員 これは大臣にぜひお考え願いたいと思うのですが、最近一体官庁は無責任ですよ。たとえば、私はそれでかたきをとるわけではありませんけれども、むつ製鉄の問題なんかも、あれくらい現地に先行投資をさせておいて、おしまいになると、鉄鋼の景気が悪いからこれでおしまいだと、ぽんと投げ出している事実がある。ビートも、あと一体どれだけ融資しましたか。これは三十七年の借り入れ金で、幾分償還していますけれども、北海道東北開発公庫で出した金が十九億七千万円です。農林中央金庫が大体三億円。日本興業銀行が一億六千万円。青森銀行という地元の銀行が約二千四百万円に三千万円ですから五千四百万円。静岡銀行がまた出しているのが一億九千万円。それから住宅金融公庫まで千五百万円出しているのです。これくらいの資金を集めて工場をつくらして、わずか五年で、ちょっと引き合いませんから投げ出しますということに対して、黙っている手は農林省ないと私は思うのです。もう少し基本的にこの対策を考えませんと、これは農政上大きな問題になります。特に、ビートは甘味資源としてやっているだけでなくして、ビートパルプが非常に重要な畜産飼料になっている。えさがほとんど輸入されておる場合に、この自給のビートパルプを出しておることは非常にいいことなんです。緊急対策の面でも、このビートパルプをどうして還元するかということが、いま地元では問題になっております。ところでこのビートパルプの試験研究ということは非常に大事だと思うのですが、会社自体においてこの試験研究をやっているのです。  これは主査にちょっと伺いたいのですが、野原牧場というのはあなたの牧場ですか。そこでも調査研究をやっている事実を御承知ですか。大体、野原牧場、これはどこの野原牧場か知りませんが、ちょっと私、主査に聞いてみたのですが、かなりな量が、四十一年と四十二年、各二百四十コリずつ、社長から特に電報で指令があって、庶務用として、しかも調査研究費の中に繰り入れて出されているのです。金高は少ないものですけれども。これは私は言ってかまわないと思うのですが、一体この牧場での調査研究の結果はどうなっております。
  51. 野原正勝

    野原主査 非常にいいですな。
  52. 淡谷悠藏

    淡谷分科員 たいへんいい。やめたら困るでしょうな、調査研究上。
  53. 野原正勝

    野原主査 やめたら困りますね。
  54. 淡谷悠藏

    淡谷分科員 困りますね。そういう御答弁を伺いたいのです。ちゃんと主査がそう答えているのです。これは甘味資源としてもビートパルプとしても非常に農業上は有効なんです。  時間がだいぶ過ぎておりますけれども、もうしばらく御猶予願いたい。四十二分までしか私の時間はもらっておりませんから。  そうなりますと、工場の閉鎖する原因についても、もう少し農林省自体が突っ込んで考慮する必要があると思う。作付が伸びないことも事実でしょう。作付が伸びないことには伸びない原因がある。糖価の問題が一つでしょう。金融の面が一つ。これはそれぞれ関係があるのです。一体糖価がどんどん下がったのは自由化以来でしょう。確かに糖価が下がったから作付が伸びない。また、あるいは補助金を出すとしても、だんだん負担が多くなってくるでしょう。この自由化とビート生産の問題なんかも非常に重大な関係があると思うのですが、農林大臣どうお考えですか。
  55. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 北東北のビートにつきましては、私どもの念願としては、工場の生産が続行されて、予定のとおりに逐次ビートの生産もふえていって、そして製糖会社としてのコマーシャルぺースに乗ってやっていってもらえることを期待いたしておったわけでありますし、また、昨年末以来こういう問題について有力な方々からいろいろ心配をされてお話がありました。しかし、現実に、こういう加工原料であるものがその対象になっておるただ一つの工場が閉鎖されたというのが、先ほど申しましたように播種期に入ってからのことでありますから、やはり私どもの立場としては、その作付をいたしておる農家に御迷惑を及ぼさないように最善の努力を払ってあげるということが大事な仕事だ、このように考えておるわけでありますが、数日前に四県の知事が来られまして希望を述べられました。私どもといたしましては、大ぜいの農家の方々のことでありますから、実態をよく把握したいということで、いまから一カ月余り前だと思いますが、三月に関係の知事たちが見えましたときに、なるべく早くこちらから一ぺん調査したいと思うのだという話をしましたら、いまはちょっと準備が整っておらぬからということで、先方から連絡のあるのを待っておったわけでありますが、数日前連絡もあったようであります。そこで、わがほうといたしましては、ひとつ調査をいたしまして、これをどういうふうに農家の人々のために考えるべきであるかということについて調査をいたしたいと思うのであります。  それから、もう一つは、いまの糖価のことでございますけれども日本国内における糖価が現状のようになっておりますと、糖価そのものについてはもちろん自由化は大きな関連性がありますけれども日本の糖業が今日のようになっておるのは、私は自由化だけの問題ではないと思うのです。淡谷さんも御承知のように、自由化されましたのは三十八年の八月です。それから約一カ年近いものは、糖価というものは非常に景気がよかった。その間に財界の人々は、それぞれそのうしろに糸を引く有力なる商社及び財閥系列がおりまして、われ勝ちに競争した。糖業ばかりではありませんけれども、大体日本産業界においてはそういう傾向がある。そういうことのために、つまり設備過剰をかかえておって、それの金利負担であるとか、そういうことに追われて、いま苦しんでおるということでありまして、かたがた、やはりわが国の糖業界の状況は憂うべきことであると思っておりますが、これは自由化だけの問題ではなくして、糖業界、彼ら自身がみずから反省して経営を立て直すことに努力すべきではないか、こういうふうに理解しておるわけであります。
  56. 淡谷悠藏

    淡谷分科員 確かに砂糖の問題は非常にむずかしくて、これに入ったらどこまで行ったら果てがあるかわからないような伏魔殿だといわれているのは自由化以前からですけれども、特に自由化後糖価がさまざまな理由で落ちてきたのですが、そうなればなるほど、従来のクリーニングの砂糖に比べてビートは確かに利益は少ないのです。したがって、これは国の政策としてやるならやるように腹をきめなければだめですし、それとも私企業にまかすとなったら自由にまかせなければならない。  主査、ちょっと時間をおかりしたいのです。どうせ読みかけたのですから。東北北海道開発公庫へ出した榊原さんの手紙をごらんになると、今日の糖業界の混乱がどれぐらいかということがわかると思うのです。幾らも時間をとりません。「不動産の売却、抵当権設定に関しお願いの件、拝啓貴店益々御清栄の段慶賀に存じ上げます。毎々格別の御高配を賜わり有難く厚く御礼申し上げます。さて、御高承のように糖業界は依然苦境を脱しきれず製品市況は低迷を続けております。ここにおいて当社は関係各位の手厚い御支援の下に出来うる限りの合理化を図りながら、この危機を乗りきるべく努力を重ねておりますものの、販売価格が今後も瓩当百円程度で推移する場合には当社第四十期及び第四十一期の二期一年間の損失は」とあって、精糖部門で損失額が三億八千万円、資金欠損額が三億三千万円、ビート糖部門で損失額が四億六千万円、資金欠損額が三億三千万円。両方の損失があるわけですね。「となることが予測され、これが補填の方策が緊急の重大事となっております。過去三年間において十二億円にのぼる巨額の損失をうけた当社は、すでに自力によってこの予測される資金欠損を補填することは不可能となっており、新規借入に提供しうる担保資産も皆無の状態であります。資金欠損六億六千万円のうちビート糖部門の三億三千万円は既に農林中央金庫よりのビート糖運転資金借入金の担保不足となって現はれており、この不足額は当社の関係先である三菱商事、日商両商社の債務保証を頂くべく交渉中であります。」、——非常な金繰りの苦労です。「一方、精糖部門の資金欠損三億三千万円は本年六月以降運転資金の不足として現はれることが推測されます。これにつきこの度清水市村松所在の遊休土地五千坪(静岡銀行に対し抵当権設定)が約二億円で売却可能となりましたので、この処分代金を静岡銀行に返済し、資金の不足する六月以降において新たに三菱商事、日商両商社の御保証を得て、静岡銀行より二億円の融資をうけるべく銀行、両商社に交渉致しております。」、こういうような交渉がずっと続くのですね。そうしますと、作付の問題もありますが、どうも私企業の限界にきたという大臣に対するいろいろなお願いや何かを見ますと、国策でやったビートの仕事なのか、一商事会社の営利事業としてやったのか、この辺が非常にあいまいなんです。東北開発会社などのこれまでの失敗もそういうきらいがあった。ですから、当面の問題は、これは農民に負担を与えないこと。特に労働省からも来ておられると思いますけれども、二百名の従業員は一体どうなさるつもりですか。毎日のように団体交渉ですよ。すわり込みですよ。もう具体的にいっているのかどうかわかりませんけれども、やめた場合の労賃不払いを考えて、製品さえ労働組合が押えているんですよ。農民だけではありませんよ。農民はいろいろ長い間いじめられてきましたから、つらいのをがまんするでしょうけれども、、いまこの会社をつぶしてしまったら、どうにもならない労働者はどうするのですか。農民もたいへんですよ。来年度からはもうやらないと言われたら、いままでの作付計画ががらっと変わってしまう。さしあたり労働者はどうしますか。
  57. 上原誠之輔

    ○上原説明員 ただいまの淡谷先生の御質問でございますが、フジ製糖の経営不振に伴う離職者の発生状況につきましては、まだ現地から詳細な連絡を受けておりませんが、かりに大量の離職者が発生するということになりますれば、全国の職業安定所を動員いたしまして、その就職対策につきましては万全を期したい、こういうふうに考えておる次第でございます。
  58. 淡谷悠藏

    淡谷分科員 三月十日に工場が閉鎖されようという場合に、その労働者の離職、失業に対してまだ知らなかったなんというのは、一体労働行政はどうなっているのですかね。もうじゃんじゃんやっているのです。まあ、あなた方の罪じゃないかもしれない。地元がやっているぐらいのあれかもしれないが、農林大臣、お聞きのように、非常にこれは影響のあることなんです。当面の問題は、ことし作付をしました農民の措置をどうするか。その原料買い付けにつきましても、運搬して処置をつけるか、現地で処置をつけるか、これまたたいへんな問題になるでしょう。それから、あとの組み合わせ作物の関係もあります。何でもかんでも輪作には組み合わせができるというわけではないのです。禾本科の次には荳科のものをつけるとか、さまざまな組み合わせをしませんと、作物がだめになると同時に土質も落ちてくるのです。だから、一ぺんビートをはずしますと、全作付計画が狂います。百姓だから何でもできるというわけにいかないのです。そういう関係もある。労働問題はいまのとおり非常に困難です。   〔主査退席、亀岡主査代理着席〕  ですから、これはやはり影響するところが非常に大きいし、一方会社は会社で、自由化以来の非常に困った金融事情で、財産を売ってまで何とかという四苦八苦の状態です。こういう中で、ビート、てん菜の生産振興の指定をされ、国内の甘味資源を開発しますという法律をつくっておいて、この会社はどうもやっていけなかったようですから、会社がなくてはつくっても買い入れがないから、もう君たちやめなさいと言ったのでは、農政はどこにありますか。農政がむしろこの生産工場なんかも動かし指導するようなところまでいかなければ、かりに継続しましても、会社の営利のために農民が食われてしまうというような状態を起こしてくるのですね。ですから、この際あまりに早く結論を出さないで、いま大臣が言われたとおり、現地の調査もされ、会社の実態も十分おはかりになって、そして今後継続すべき方法が見出せるならば継続する。むしろ百姓のほうでは、五年間やってやっとビートというものになじんで、これならば増産ができるという機運にいま来たところなんですね。百姓に対する施策というのは、五年や十年ではまとまりがつきません。それを絶えずやってはやめ、やってはやめしたのでは、へたな魚釣りみたいなもので、魚がくっつくのを待っているのではなくて、しょっちゅうさおばかり上げておりますから、ついてくるはずがないのです。もしやるならば、少なくとも十年ぐらいの年度を切って、じっくり農民にやり方を教えて、品種改良もしなければならないでしょう。それから農具の問題もあるでしょう。やっとその準備ができて、これから本気に取り組もうといっているときに、ただ会社が、運転資金がないからこれで私企業の限界が来ましたといってぽんと投げ出すということになれば、私は、将来の農政のために、何をおやりになっても非常に不信を買うと思う。その点、きょう私あえて大臣のこれに対する答弁を求めませんが、あまりに簡単に善後措置をとらないで、各経済連とも、あるいは知事諸君とも、あるいは農民とも、それから労働組合の諸君とも、さらに会社当局に対しても、万全の配慮の上にこの問題を善処していただきたいと思うのであります。きょうはあえて御答弁を求めませんが、この要求を申し上げまして、私の質問を終わります。
  59. 亀岡高夫

    ○亀岡主査代理 兒玉末男君。
  60. 兒玉末男

    兒玉分科員 私は、本年度農林省が講じようとする農業施策関連する問題として、二、三お伺いをしたいと思います。まず第一に、先般東京、大阪、京都あるいは神戸等で問題となりました血清豚の問題につきまして、特に現在消費者が一番信頼をしているのは、農林関係のJASマーク、特に食用品に関するこの表示でございますが、本日の新聞でも発表されましたとおり、昨年の四月から約一年にかけまして、行政管理庁が、不正商品の誇大広告を中心としまして、特に食品関係でもかなり緻密な調査をいろいろいたしております。そして、本日、行政管理庁が監察の結果を、経企庁、公取、警察庁並びに農林省など関係の省と、それに関連する二十四都道府県に対してきびしく勧告をする、こういうことが報道されておるわけでございます。特に、先般の血清豚肉を使った問題については、庶民大衆は非常な不安を持ち、また、いままでほんとうに信頼してまいりましたJASマークの権威というものが非常に失墜しておるのじゃないかと考えるわけでございますが、この食肉行政に対し農林省としては今後どのような措置をとろうとしておるのか、まず第一点にお伺いしたいと思います。
  61. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 先般来、ワクチンメーカーと、そこから出ました斃獣の問題につきまして、世間に御心配をおかけいたしましたことは、まことに遺憾千万でございますが、私がしばしば申しておりますように、大体ああいう仕事というものは、その従事者が善意と信頼の上に立って普通のことが行なわれるという想定のもとに、あのようなことでいままでは無難であったかもしれませんが、全然そういうことを無視した悪らつな考えを持つような者が出てまいりました以上は、政府側といたしましては万全の措置を講ずる義務があると思うのであります。で、とりあえず、全国に七つございますワクチンメーカー、そのうち一つだけは工場内に焼却する設備を持っておって、あとはないということでありますので、緊急に残りの六工場にも工場内に焼却の設備をいたさせまして、再びああいう不祥事の起こらないようにいたしたいと思っておるわけであります。なお、政府は、先般検挙されました、不正な行為をいたしました者たちはどういう間隙を縫ってああいうことをいたしたかということは、捜査面できわめて明白になると思いますので、それを調べまして、もし必要があれば、われわれとしては行政措置だけでなくて立法措置もいたして、再発を未然に防ぐようにいたしたい、こう思っておるわけであります。  もう一つは、ただいまマークのお話がございました。これも私ども気がついておりまして、これにつきましては、政府委員のほうから、ただいま考えておりますことを御説明申し上げさせていただきます。
  62. 檜垣徳太郎

    檜垣政府委員 JASマークといわれております日本農林規格の制度は、兒玉先生も御案内のとおり、食料品の合理的な消費を促進するという見地から、食品の品質についての格づけ検査を行ないまして、合格品についてJASマークの表示をするということになっておるのでございます。元来食品衛生法の規制とは別個の性格を持つものでございますが、従来から食品衛生法上好ましくないものについてはJASマークの表示を行なわないようにという指導をしてまいっていたのでございます。たまたまといいますか、某食品会社が血清豚の肉をハム、ソーセージの原料に使ったという事実が判明をいたしまして、これが消費者に不安を与え、またJASマークに対する信頼を失墜するということになりましたことは、まことに残念に、遺憾に思っている次第でございます。ただいま大臣からもお答え申し上げましたように、血清豚肉の市中への流通は今後は絶対にないというような措置をとってまいっておりますので、再びこういうことの起こることはなかろうかと思いますが、なお細心に注意をする必要があろうというふうに思っているのであります。  なお、ハム、ソーセージのJASの改正につきましては、ただいま原料に用いました肉の表示を新たにさせるということを準備を進めておりまして、近く施行する予定にいたしているのであります。
  63. 兒玉末男

    兒玉分科員 行管から出される勧告を正式に見ておりませんので、一応新聞報道に待つ以外にないのでありますけれども、少なくとも行管がいままで調査した中によりますと、農林省が二十三の公益法人に検査を委託をしている。ところが、この委託された法人の中においては、いわゆる格づけ検査をするための検査員がいないとか、あるいは千三百店のうち抽出調査をしましても、三〇%がその表示をしてない。こういうことなどは、やはり監督官庁である農林省が、そういう点に対しての積極的な指導なりすべてを、委託ということでもってまかせっきりの状態なのではないか。やはり定期的な検査状況というものを十分指導する必要があるのではないかと思うのですが、その辺はどういうふうな指導を行なってきたのか、その点明らかにしていただきたいと思います。
  64. 檜垣徳太郎

    檜垣政府委員 御案内のとおり、JASの格づけにつきましては、業界の自主性というものを基礎にいたしまして、業界の申請に基づいて格づけ機関について農林大臣が承認をするという形をとってまいっておるのでございます。農林物資の格づけにつきましては、非常に数多くの品目があげられており、また、御指摘のように、格づけ機関についても、それぞれ品目ごとに数多くの格づけ機関があるということで、私どもとしては、格づけに関する基準を明確にいたして、それを十分理解をさせました上で自主検査をさせるということにいたしておりまして、従来厳密な意味での監督について十分手が回らなかったということも認めざるを得ないと思うのでございますが、今後、JASの信用を保持し、食品流通の合理性を確保するという意味で、十分反省すべきは反省し、気をつけてまいりたいというふうに思っております。
  65. 兒玉末男

    兒玉分科員 これは、食品衛生法は厚生省の所管であり、おそらくなかなか微妙な立場もあると思うのですけれども、大体このJASの基準が、外観、内容、重量、乾燥度ということになっているようでございます。しかし、これを機会に農林省が、その指導的立場から、この衛生基準といいますか、その規格に衛生方面の基準を盛り込んだ形におけるJASマークにしたほうが、私はより庶民大衆に対して安心感を与えることになるのじゃないかと思うのですが、そのような基準規格の引き上げといいますか、改革ということが非常に必要じゃないかと思うのですが、この点どのようにお考えか、お伺いしたいと思います。
  66. 檜垣徳太郎

    檜垣政府委員 JAS規格は、先ほど申し上げましたような趣旨で実施をいたしておるのでございますが、一般国民の消費の性向、需給の実際に応じまして、JASの規格も再検討すべきものは再検討すべきものと思っております。ただ、食品衛生法に基づきまする衛生基準というものは、およそ販売にかかる食品については、一切のものに基準が定められて、これを守るべきもとされておるのでございます。したがいまして、それの違反がありましたときには、食品衛生法上の措置を、いかなる食品であるとを問わず規制を受けるわけでございます。そういう意味で、たとえばハム、ソーセージにいたしましても、JASマークがあろうがなかろうが、食品衛生法上の規制は全部受けるのでございます。でございますので、制度としては、食品衛生法上の規制、それの順守義務というものは全部背負っておるというたてまえの上で、実はJASマークもJAS規格も、社会的に信頼をされるという、そういう考え方に立っておるわけでございます。でございますので、JASマーク、JAS規格の中に衛生基準を入れるかどうかという点は、ちょっと制度上問題があろうかと思うのでございますが、衛生の見地からは、JASの規格の取り上げ方という問題については、今後厚生省とも十分連絡の上、考えの中に入れておきたいというふうに思います。
  67. 兒玉末男

    兒玉分科員 時間の制約もございますので、この点十分ひとつ御配慮していただきたいということを要望しまして、次に、特に現在国内の食肉関係の問題として、非常に肉牛が不足するために肉類の高騰を来たしている。この点、私は、特に現在まで農林省畜産の中でも和牛対策ということがどちらかというと長期の展望に立つ対策は怠慢であった。この点ははっきり指摘せざるを得ないのでありますが、本年度の農林省の講じようとする施策にも、非常に意欲的なものが見られるわけでございますが、大体これからの生産需要の関係についてどういうような展望を持っておられるのか、この点もお聞きしたいのであります。
  68. 岡田覚夫

    ○岡田(覚)政府委員 御質問の点につきましては、国内の和牛というものは、主として農業労働手段ということで振興されている形が相当多かったわけでございますが、農業の機械化の進行に伴いまして、逐次和牛が減ってまいりました。一方、旺盛な肉の需要に対しまして供給をされて、減少してまいったということでございます。しかし、国内の肉の需要は、一方で所得増大するにつれまして、さらに増大するというふうに考えられます。もちろん、肉全体の中での比重はやや減ってまいるとは思いますけれども、絶対量としましては、かなり増大してまいるというふうに考えられますので、これに対しまする生産対策というものを四十一年度から強力に講じてまいっておるわけでございますが、まず第一に、御承知のように、和牛の繁殖育成センターというものを四十一年度からつくったわけでございますが、四十二年度におきましてはさらにこれを拡大をいたしております。それから、地方競馬全国協会から、子牛供給センターということで、四十一年度から助成をいたしておりますが、四十二年度も引き続きこれを助成をすることにいたしております。さらに、和牛の飼養につきましての基盤といたしまして、草地改良事業につきましては、これを拡大をするということをいたしておるわけでございますが、さらに、四十二年度からは国有林を積極的に使いまして、肉牛の子牛の生産をやるというような形で、全国四カ所に国有林自体の和牛の生産のための実験牧場を設置するということで、和牛の生産拡大につきましても格別な努力をいたしたいというふうに考えておるわけでございます。
  69. 兒玉末男

    兒玉分科員 大体現在の需要の伸びというものから判断した場合に、生産需要バランスがとれる目安というものをどの程度に置かれているのか、お聞きしたいと思います。
  70. 岡田覚夫

    ○岡田(覚)政府委員 肉の需要につきましては、その年々には大体その市場の需要というものはわかりますけれども、長期的に見ますと、牛肉だとか豚肉だとか鶏肉だというふうな形での明確な需要量の想定というものはなかなかむずかしいわけでございます。最近数年間を見てみますと、肉の中で牛肉の占める比率というものが低下をいたしてまいっておるわけでございまして、そのかわりに、豚肉と、それから鶏の肉が非常に伸びておるわけであります。そういうふうな形で、肉の消費自体も相当代替性があるわけでございますので、確実な把握というものはなかなかむずかしいわけでございます。肉牛につきましては、御承知のように、従来生産がずっと減りまして、飼養頭数が減って、現在百五十七万頭程度になっておるわけでございますが、生産政策的な努力もございまして、あるいはまた価格等の問題もございまして、やや生産減少過程から横ばい、ないし上向きの過程に入っておるようにわれわれは感じておるわけでございます。需要としましては、昨年度は十五万トン程度であったと思われるわけでございます。これはもちろん今後伸びてまいるわけでございますから、できるだけ国内の和牛をふやしてまいりたい。所得増大するにつれまして、牛の肉の需要というものも相当伸びるだろうというふうに考えられますので、ここ当分それに完全に即応するのはなかなかむずかしいと思いますけれども、できるだけ努力をいたしてまいりたいというふうに考えておるわけでございます。
  71. 兒玉末男

    兒玉分科員 先ほど言われました和牛飼育の一つの方針として、今度は草地改良の国営なりあるいは県営の選択基準の対象が、この施策によりますと基準を下げておるわけでございますが、単に県営事業だけでなくして、今日南九州等におきましては、市町村の独自の立場から、町有林なり国有林の活用ということで積極的に取り組んで、相当成果をあげておる町村もあるわけでございますが、ここにいうところの都道府県の草地改良事業というのは、市町村関係の場合はどの程度までその基準を対象とされておるのか。今後こういう草地改良によって相当多頭の和牛の飼育可能な地域があるわけでございます。その点はどういうふうに理解されるのか、お聞かせをいただきたいと思います。
  72. 岡田覚夫

    ○岡田(覚)政府委員 県営の場合と、それから団体営の場合は、採択の面積基準が違うわけでございます。一方は、県営の場合は二百ヘクタールというのを百五十ヘクタールに下げたわけでございます。団体営の場合は十ヘクタール以上のものを採択するということに原則としていたしておるわけであります。もちろんこれには、離島でありますとかその他につきましては特例で五ヘクタールまで下げている場合もございますけれども、原則として十ヘクタール以上ということで採択をいたしておるわけでございます。国有林の問題につきましては先ほどもお話しいたしましたが、繁殖育成タンターにいたしましても、子牛育成センターにいたしましても、これは民有林はもちろん、公有林、国有林を積極的に活用するというたてまえから助成をいたしておるわけでございます。
  73. 兒玉末男

    兒玉分科員 これは大臣にもあわせてお伺いしたいのでございますが、先般、農業白書が出されまして、大臣がこれに対する見解を出されておりましたが、特に農村の労働力の流出というものが依然として続いておるわけでございますし、いま言われました和牛飼育にいたしましても、ほとんど青年がいない。そのために、今後の地域における和牛の飼育につきましても、やはり労働力が不足する結果、まず第一に、導入資金に対するところの積極的な保護政策、さらには、集団的な飼育対策、または飼育の共同化、こういうことに積極的に取り組んでいかなければ、いま言われましたような成果というものをあげることはなかなか困難ではなかろうかと思うわけでございますが、この辺の、集団飼育あるいは共同化、また導入資金に対する積極的な保護政策、こういう点等についての御所見を承りたいと思います。
  74. 岡田覚夫

    ○岡田(覚)政府委員 お話のように、和牛の生産につきましては、個々の農家で飼育しておる形態が非常に小さいわけでございます。そこで、相当程度量的にふやしていこうということになりますと、どうしても集団的な飼育を行なう必要があるというふうに考えられるわけでございます。したがいまして、集団飼育は、たとえば市町村だとか、農協であるとか、まあ公共的な性格を持っております団体を中心といたしまして、集団的な飼育を行なうようにいたしたいというふうに考えておりまして、そのために、先般申し上げました繁殖育成センター、子牛供給センターというものにつきましては、こういうふうなたてまえから積極的な助成をいたしておるわけでございます。今後につきましても、そういうふうな考え方で進んでまいりたいというふうに考えております。
  75. 兒玉末男

    兒玉分科員 岡田局長にお伺いしたいのでありますが、いままで畜産について熱心な地域から、いま言われました繁殖センター等について、私は相当設置の要望があったと思うのですが、現実に、農林省のほうで指定された地域と、それから要望されている地域というのはどういうふうな状況になっているのか、お聞かせ願いたい。
  76. 岡田覚夫

    ○岡田(覚)政府委員 設置をいたしました地域は、四十一年度に二十三カ所でございます。四十二年度に予定いたしておりますのが三十カ所でございます。大体要望に沿って行なわれてまいっておりますし、行なわれるのではないかというふうに考えております。ただいま申請の件数と書類を持っておりませんので正確には申し上げられませんけれども、大体需要を満たす程度に達しておるというふうに考えております。もちろん、これは一年間だけでやるということではありませんので、数年にわたって要望が出てまいると思うのでございますけれども、大体必要なところの要求をおおむね満たしておるのではないかというふうに思うわけでございます。
  77. 兒玉末男

    兒玉分科員 時間がございませんので、あと農林関係を一点だけお聞きしたいと思うのであります。  大臣にお伺いしたいのでありますけれども、和牛に関連しまして、特に過渡的の現象として子牛価格というものが非常に高い。これはいいことではございますけれども、やはり私は、長期の展望に立つ場合、いわゆる子牛価格の安定制度といいますか、このことにやはり積極的に取り組んでいく必要があるのじゃないかと思うのです。大臣でも岡田さんでもどっちでもけっこうですが、今後の和牛育成の上においてきわめて重要な課題であろうかと存じますので、これは当然国の施策として安定制度と取組んでいく必要があるのじゃないかと思うのですが、この点をひとつ。
  78. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 お説のとおりでございまして、いま局長から申し上げましたように、農林省といたしましては、和牛の減退を防ぎ、さらに増殖をしてまいるために、いまさっき冒頭に申し上げましたように、鋭意これについては生産努力をいたすつもりであります。具体的な計画については局長から申し上げます。
  79. 岡田覚夫

    ○岡田(覚)政府委員 ただいまのお話の子牛価格の安定でございますが、子牛価格が不安定なために子牛の生産がはばまれておるという事態もあったわけであります。こういうふうなことにかんがみまして、四十二年度から肉用牛対策の一環といたしまして、肉牛子牛価格の安定基金制度の設置をしたいということで現在、具体的な内容について検討を進めておるところでございます。
  80. 兒玉末男

    兒玉分科員 次に、これは果樹園芸の関係でございますけれども、特に、選択的拡大といいますか、最近果樹、中でもかんきつ類の生産増強ということが非常に主張されておるわけでありますが、これは少なくとも五年なり十年後にほんとうの生産があがるわけでありますが、現在奨励されながら構造改善に取り組んでおる私ども宮崎県等においては、すでに三年、五年生のミカンを持っておる農民心配は、すでに生産過剰の状態を招き、一体これから先はたしてミカン等の価格がどの程度安定されるのかということです。やはりこの点は、生産増強はもちろんけっこうでありますが、問題は、需要とのバランス、さらには加工あるいは外国向けの輸出など総合的な対策というものがなければ、単に生産増強なり品質の改善ということだけでは、農民の不安というものは解消できないし、流通部面の改善とともに、生産増強関連してどういうふうな展望と対策を持っておられるのか、この点を明らかにしていただきたいと思います。
  81. 八塚陽介

    ○八塚政府委員 ただいまお話がありましたように、ミカンにつきましては、特に既存産地において生産過剰のきざしがあるのではないか、ないしは近い将来くるのではないだろうかという危惧の念を抱いておられる生産者の方が相当多いわけであります。従来ミカンの新植の勢いは、もちろん農林省のいわゆる選択的な作物の一般的に言いますと随一と言っていいような推奨もございましたが、しかし、それにしても、この程度であればという勢いをだいぶ突破いたしまして、最近におきましては約一万町歩前後の新植の勢いになっているわけでございます。昭和四十年現在で十万ヘクタールございますから、年々いまの勢いでありますと、一万ヘクタールというのは相当やはり考えるべき栽植の率ではないだろうか。そこで、御承知のように、昨年改正になりました果樹振興法によりまして、本年その後作業をいたしまして、三月三十一日の農林大臣の公表いたしました果樹基本方針におきまして、一応需要の予測をいたしまして、その需要の予測に対応して、どれくらいであればいいだろうかという植栽の目標一般にお示しをいたしたわけでございます。大体いま申し上げましたような事情で、生産は伸びておりますが、一方、もちろんやはりミカンの需要は、今後の所得の伸びあるいは消費生活の向上等で伸びると考えなければなりません。ただ、その伸びの計数はなかなかあれでございますが、大体十年先、昭和五十一年度は約三百三十万トンから三百七十万トンぐらいの需要になるであろう。現在の生産量が三十九年で百二十三万トン、あるいは四十年で百三十一万トンということでございますが、そのくらいは需要はあるであろう。ただ、これはもう御承知のように、植えたからすぐその生産量に響くわけではございませんけれども、そういうことを計算いたしましても、樹齢別に結果年齢がどうなるというようなことをかなり詳しく計算いたしましても、一万ヘクタールの現在の勢いは、やはり五十一年ごろでは、需要をオーバーするのではないかということで、公表いたしました基本方針の中では、四十一年度から五年の間は、従来の一万ヘクタールを年間約六千ヘクタール、それからあとの五年間は、三千ヘクタール程度にひとつ植栽を落としていく、調整していく必要があろうということになったわけでございます。しからば、どういうふうにして今後そういう調整をしていくかということでございますが、四十二年度、各府県で、この基本方針に基づきました各府県の果樹農業振興計画というのをつくっていただくことになっております。その振興計画は、この基本方針に即するということに法律上なっております。各府県の御協力を得まして、そうして各府県ごとのそういう見通しをさらにつくっていただく、そうしまして、その振興計画の中では、また各府県の地域ごとのそういう適地における集団的な濃厚な産地をつくっていくようなことを考えておるわけでございます。  なお、しからば需要を、たとえば加工であるとか、あるいは輸出であるとか、そういう点で伸ばすことはどうだろうか。ただいま三百三十万ないし三百七十万トンと言いましたのは、一応国内の生食用の需要の伸びだけではなくて、加工、輸出の伸びを一応内訳で含んでおるのでございます。なお、詳しいことは省略いたしますが、現在の加工及び輸出用を合わせますと、大体全体の一六%程度、残りが生食用ということになっております。生食用の輸出は、これはもちろん、御承知のように、主としてカナダでございます。目下アメリカの北部三州でどうだということを外交ルートを通じて交渉いたしておりますが、これは植物防疫上の問題がありましてなかなかむずかしい。カナダにつきましても、やはりカリフォルニアでいわゆる日本の温州ミカン、すなわちサツマを栽培いたしておりますので、今後はそういう競争の問題も出てくる、こういうことでございますが、なお今後とも生食用の輸出は伸びていくべく努力をいたしたい。加工についても、やはりだんだん加工食品というものは伸びていくと思います。そういう意味で、加工の販路につきましても、輸出用、生食用、特に輸出につきまして今後なお努力をいたしたいと思っておりますが、そういう見通しにつきましては、私どもの一応計数的なもの、さらに輸出を現実に取り扱っておられる方の感触等を入れまして見通して、そういうことに相なっておるのでございます。
  82. 兒玉末男

    兒玉分科員 特に大臣に御答弁を求めたいのでありますけれども、いままでの農林省のいろいろな施策を見ておりますと、生産奨励というものは技術改善を含めて非常に熱心にやられるけれども、肝心の需給関係の見通しというものが、いわゆる総合的な立場からあまりなされないで、各県のそれぞれの実勢に応じたやり方によって、しかも流通機構というものが非常に不備なために、地域的に非常に価格のアンバランスがあり、せっかく増産しても、全く豊作貧乏、こういう形態は依然としてあるわけでありますし、また、生産農民もこれに対して非常な危惧の念を持っております。でありますので、先ほど申し上げました特にミカン等につきましても、農民は県の指導に全幅の信頼を置いて生産に取り組んでおるわけですけれども、やはり農林行政の高い視野から、今後、加工なり輸出面なり、いわゆる販路の拡大ということについてひとつ積極的な取り組みをされることについて、私は特に大臣の御所見を承りまして、次の水産関係の問題に入りたいと思います。
  83. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 ただいま政府委員から申し上げましたように、生産につきましては、新興産地と申しますか、そういう地域が非常に急激に伸びてきておるわけでございますが、オーバープロダクションになって生産者が困ることのないように、われわれがいろいろな意味で、用途の拡大需要拡大について、これからも積極的な努力を続けてまいりたいと思っております。
  84. 兒玉末男

    兒玉分科員 水産庁のほうにお伺いしたいと思います。  時間がもう経過しましたので、簡潔に御質問したいと思いますが、先般、公害問題に関する公害審議会並びに産業構造審議会産業公害部会の中間答申というものが、昨年の十月と十二月、それぞれ出されておりまして、これによりますと、特に水産関係におきましても、かなり工場排水等による被害が出ておるわけであります。もちろん、水産庁のほうは受け身の立場でございますけれども、たとえば熊本県の水俣、あるいは先般問題となりました新潟の水俣病、また最近宮崎県の延岡、ここには御承知のとおりに旭化成という大きな工場がございますが、沿岸の魚族資源のきわめて豊富な地区でございまして、宮崎県におきましても、あるいは新潟の場合におきましても、これは非常な政治問題に発展する状況にあるわけであります。でありますから、特に廃液を流す工場側としては、それの施設にばく大な金がかかるし、かりにたくさんの魚族が死滅しても、これはおれの工場の排水だけが原因じゃないというふうに、それぞれ大学の専門家を通じた調査によりましても、利害が相対立する関係で、まあ言いのがれをやって、積極的な工場排水等に対する施設をしないというようなことについて、特にわが国内における魚族資源というものはきわめて重大な立場に立たされておるわけでございますが、概括的に、水産庁としてはこのような魚族資源の保護についてどういうふうな措置をとっておるのか、まず第一点、お伺いしたいと思います。
  85. 山中義一

    ○山中政府委員 水産庁といたしましては、ただいま先生の御質問にございました水産資源の維持、環境の保全という点で考えております。水産資源の維持と環境の保全、これはもちろん密接不可分の関係でございますけれども、消極的には、水の関係では経済企画庁が水質基準を設定いたしておりまして、公共用水域の水質の保全に関する法律によって、河川等の水質基準を設定するためにいろいろの調査をしておられます。それに対しまして、水産庁のほうは、これに並行して、特に生物の面の調査——川などでも、単に経済企画庁のほうでおきめいただいております基準のほかに、生物としてはこの水質がいいのかどうかというような面で、水産資源の保護という観点から特に必要な水域を、四十二年度におきましては十二水域でございますけれども、関係の水産試験場等に水質の実態調査を委託する処置をとっております。それから、さらに、工場等で出します汚染水、これを常時監視いたしておりませんと、魚が死んでから初めて騒ぎが起こるというようなことでは手おくれでございますので、この被害と紛争を未然に防ぐ意味合いにおきまして、四十一年度からは内水面の五十水域と、さらに四十二年度からは新たに沿岸の水域につきましても、常時水質を監視するための水質汚染監視事業というような事業を始めるように予算を作成いたしておる次第でございます。  いまのは防ぐほうでございましたのですが、さらに、積極的に資源の保護、培養というような点を考えまして、構造改善事業の一環といたしまして、漁場改良造成事業という、これは俗に魚のアパートとか言っておりますが、大型の魚礁とか、あるいは並み型の魚礁というようなものを積極的に沿岸の適当な水域に設置いたしまして、そこで水産資源の維持と増大をはかって沿岸漁業の経営の安定に役立てたいというふうに考えて、予算を組んでおるわけでございます。  以上でございます。
  86. 兒玉末男

    兒玉分科員 特に私は次長さんにお伺いしたいのは、現に新潟なり宮崎県の延岡においても具体的に損害が発生しておるわけです。ともすれば水質関係の調査の主体というものが、どうしても水産庁のほうが受け身の立場に立っておるように私は常に思えてならないわけです。しかも、沿岸漁民というものが、そういうふうな法的に対抗したりあるいは科学的な調査をするという能力もない。現に宮崎県等の場合におきましては、全く工場側と県側が対立し、そして損害を受けるのは沿岸の漁民であるわけです。漁民の行くえというものは、科学的な結論が出たとしましても、その補償というものはどこまでできるのか、ほとんど一年間の自分の生活の基盤というものが脅かされるというような実情にありますし、おそらく新潟の場合も同様な状況が発生しておるのじゃなかろうかと思うのでありますが、こういうような具体的に発生する事件等につきましては、水産庁としても、魚族資源保護という立場から積極的な取り組みをして沿岸漁民の立場というものを守っていく、こういう積極的な取り組みが必要ではなかろうかと私は存じますが、この点についてどういうふうなお考えをお持ちか、お伺いしたいと思います。
  87. 山中義一

    ○山中政府委員 ただいま先生が御指摘のように、まさしく私どもは一応被害者の立場なのでございます。漁民ははっきりした調査をすることもできないというような点もございますので、私どもがその調査をする。ただし、その被害を及ぼす工場そのものに関しましては、われわれの手は少なくとも直接的にはなかなか及び得ない。したがいまして、その被害の実態を明らかにして、被害の軽減あるいは埋め合わせというようなものを要求するという態度、それから、もう一方、現に資源が減ってしまっておる場合に、それを再び更新する、培養してなるべくもとに戻すという、そういう考え方をもとにいたしまして、先ほど申し上げました漁場の改良あるいは維持増大という面で努力しております。  ただ、具体的に申し上げますと、延岡の場合には、漁場改良事業等で魚礁をよけいに設置するとか、あるいはもっと沖合いのほうへ大型魚礁を設置するとか、何かそのような点を、漁業者の要望あるいは県当局との折衝を通じまして、なるべく漁民の要求に沿ってまいりたいというふうに考えております。
  88. 兒玉末男

    兒玉分科員 最後に大臣に御要望申し上げて、私の質問を終わりますが、いままで水俣の場合あるいは新潟その他各地域における工場排水がもたらした被害というものが、常に工場側がばく大な資本力にものを言わして、沿岸漁民あるいは農漁民が常に被害者の立場にある。特にわが国の場合は、水産資源においても年間三百七十数億の水産物を輸入する、こういう状況から判断しましても、国内のこのような水産資源の確保ということはきわめて重大な問題でありますし、今後このような工場排水がもたらした魚族資源の死滅というものについては、十分農林省としましても、工場側に対する排水の規制等について積極的な取り組みと指導をしていただきますように要望いたしまして、私の質問を終わります。
  89. 亀岡高夫

    ○亀岡主査代理 以上をもちまして午前中の質疑を終了し、午後二時から再開することとし、これにて休憩いたします。    午後零時四十五分休憩      ————◇—————    午後二時五分開議
  90. 野原正勝

    野原主査 休憩前に引き続き会議を開きます。  昭和四十二年度一般会計予算及び特別会計予算中、農林省所管について質疑を続行いたします。猪俣浩三君。
  91. 猪俣浩三

    猪俣分科員 ごく簡単にお尋ねいたします。  それは米の輸送に関しまする日通と農林省の関係でありますが、戦時統合によりまして日本通運なる独占企業が発生いたしましたが、戦後も日通は巨大なる、ほとんど独占企業として存在いたしておるわけであります。そうして政府関係の物資も多量に輸送しておるわけであります。農林省関係でも、国内産の米、麦、輸入の米、麦、でんぷん、輸入飼料等、専売公社で、たばこ、塩、防衛庁の兵器、そういうものをみな独占的に輸送しているわけであります。このうち、いま米の輸送運賃につきましてお尋ねしたいと思うのであります。  それは、消費者米価生産者米価、その関係で赤字が千数百億円あるということで、十月から消費者米価を上げるというような政府の方針であります。ところが、「新日本新聞」という新聞の報道するところによれば、この政府が日通に払いまする運賃、これが千三百七十九億円になる。ちょうど赤字の千三百億円とつり合っているような金額。そういたしますと、米の輸送賃なるものがなかなか消費者の立場から見ましても重大な問題だと思うわけであります。そこで、政府と日通との米の輸送関係につきましてどういうふうな状態になっているのであるか、御説明をいただきたいと思うわけであります。
  92. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 概括的なことを最初に申し上げますが、政府所有の主要食糧の運送につきましては、昭和十五年以来日通に一括契約を締結いたしておるわけでありますが、これは、きわめて大量の食糧を全国的規模で責任をもって操作をするためには最も適切な方法と考えておるわけであります。しかしながら、一社に独占させておるからと申しまして、いわゆる独占利潤が生ずるような結果にならないように万全の配慮が払われておるわけでありますが、また、政府政府管理経費の節減という見地から各般の措置を講じておるわけでございます。詳しくは事務当局から御説明申し上げたいと思います。
  93. 大口駿一

    ○大口政府委員 ただいま大臣がお答えになりましたように、政府所有の米麦の輸送につきましては、昭和十五年、いわゆる食糧統制発足以来、食管特別会計と日本通運との間で一括元請契約というものを締結をして運送に当たらせておるわけであります。  現在食糧庁が運賃としていかほど支払っておるかという数字を申し上げますが、ただいま先生が申されました金額が、ちょっと私の持っております資料の数字と著しく食い違っておりますので、ちょっと私、後ほどその資料の点についてお聞かせいただきたいと思いますけれども、現在国会で御審議願っております昭和四十二会計年度の食管特別会計の中間経費の中で、いわゆる内地米、国内産米の運送賃として組んでおります金額は百十七億円でございます。  そこで、現在日本通運との間に一括契約を結んでおりまする理由は、次のとおりでございます。すなわち、現在食糧庁所有貨物で国内食糧並びに輸入食糧合わせまして、国内での輸送を要する数量が約六百万トン程度と思いまするが、ことに、国内の米麦につきましては、産地が全国にまたがっておりまするし、また産地と消費地との配置が御案内のように違っておりますので、年間を通じまして全国的な規模でこれを需給操作に基づいて輸送をいたすというわけでございまして、輸送と申しますると、産地の倉庫から食糧を出しまして、これを消費地まで運んで、消費地の倉庫の中へ蔵入れをするまでの仕事をいわゆる輸送と申しておりますが、これが全国的な規模で行なわれまする関係上、鉄道を使うもの、あるいは船舶を使うもの、あるいは自動車輸送をするもの、あるいは鉄道の両端にトラック輸送が含まれるものというふうに、非常に複雑多岐な運送形態を持っておるわけでありまして、これらを一貫した方針で責任を持って一括して間違いなく——国民の重要な主要食糧でありますので、間違いなく需給操作をやってもらうということにいたします場合に、現在のところ、全国的な規模を持っており、しかもそのような緊急の輸送等にも耐え得る機構として最も適切な組織と力を持っておるものが日本通運であるということで、一括契約を結んで今日にまいっておるわけでございます。  しかし、およそ一社にものごとを独占させるという場合に、当然考えられまする弊害というものがいろいろ考えられるわけでありまするが、現在の日通に支払っておりまする運送賃の内容は、たとえば鉄道を使いました場合には鉄道からの運送実費をそのまま日本通運を通じて鉄道に支払っておりまするので、この点は、日本通運に何ら、単なる勘定が通り抜けるだけでございます。それから、それ以外の、たとえば倉庫の入出庫賃でありますとか、あるいは通運料金でありますとか、いろいろなものは、運輸省所管でそれぞれの業態について法定料金がきまっておりまして、この法定料金に従って支払っておるものが大部分でございます。それから、それ以外のこまかい作業につきましては、一々個々のケースに実費を計算することが非常に技術的にも困難でありまするので、いわゆるプール単価制というものをとっております。このプール単価制というものはどういうことかと申しますと、ある年のすべての食糧の運送形態の実態を全部こまかく調べまして、その実態を基礎といたしまして、いろいろさまざまな形の運送形態を全部一個当たり幾らというプール単価に計算をし直しまして支払っております。もちろん、この実態は年によって若干ずつ違いますので、毎年毎年その実態調査によってその補正をするというやり方でやっておるわけでございます。したがいまして、日通に支払っております実費以外の部分につきましても、いわゆる法定料金等で、当然運送業者が公正な利潤として法定料金の中に認められておりまする利潤部分がありといたしますれば、その利潤部分は当然日通の利潤として見るわけでありまするが、それ以上の利潤が日通において結果的に生ずるような形にはなっていないというふうに私ども考えております。
  94. 猪俣浩三

    猪俣分科員 私は法律屋でありますために、その観点からお尋ねいたしますが、食糧輸送に関するこの日通との契約はどういう名前の契約になっておるのでございますか。
  95. 大口駿一

    ○大口政府委員 「政府所有食糧および農産物等運送契約書」という表題がついた契約でございます。
  96. 猪俣浩三

    猪俣分科員 ところが、会計法第二十九条を見ますると、大体原則として、各省各庁において売買、貸借、請負その他の契約をなす場合においては、すべて公告して競争に付さなければならないということが書いてある。ただし、場合によっては随意契約でもいいということになっておるわけですが、ただし、これが随意契約は例外であって、競争入札が原則である。これは会計法の原則でありますが、いま答弁なされたようないろいろな事情から日通と随意契約をなさっておるのだと思うのでありますけれども、これも予算決算及び会計令なる政令を見ますると、その九十九条には、随意契約によろうとするときは、なるべく二人以上から見積もり書を徴さなければならないとしてあるのですが、こういう手続はなさっておるのですか。
  97. 大口駿一

    ○大口政府委員 日通と運送契約を随意契約によって結んでおりまする根拠につきましては、ただいま御指摘のとおり、会計法二十九条の三第五項の例外として規定されておりまする予算決算会計令の九十九条の第八号の「運送又は保管をさせるとき」という規定に基づきまして、一般競争もしくは指名競争によらないで随意契約に基づいてやっておるということでございます。  そこで、ただいま御指摘の見積もり書を徴するという問題でございまするが、これは実は予算決算会計令の九十九条の六の規定で、なるべく見積もり書を徴するようにという一般的な訓示規定がきめられておることは、私ども承知をいたしておるわけでございますが、ただいま申し上げましたような全国的な規模で、きわめて複雑かつあらゆるケースを包含をした一年間の輸送を契約いたしておる関係で、それらの契約のすべてのケースについて見積もり書を徴するということは事実上非常に困難であるということもございまするし、また、見積もり書を徴するということは、やはり随意契約の場合においても不当に多くの金を支出しないということをその立法の趣旨としておると思うのでございまするが、ただいま政府が支払っております運送賃の単価の決定につきましては、法定料金もしくは精密な実態調査に基づいて計算せられたプール単価によっておるという関係等もあわせ考えまして、現在の実際のやり方としましては、日通から見積もり書を徴するという、この予決令できめております手続はとっておらないでやっております。
  98. 猪俣浩三

    猪俣分科員 なお、同令の百二条によりますれば、随意契約をしようとする場合には、あらかじめ大蔵大臣と協議しなければならないとあるのですが、これは協議なさっているのですか。
  99. 三浦善郎

    ○三浦説明員 ただいまの点でございますが、毎年大蔵省と毎年の運送契約につきましては契約の内容について相談をいたしました上で、契約を締結するということをいたしております。
  100. 猪俣浩三

    猪俣分科員 どうも、私の聞いておるところによれば、この見積もり書を出させるということはなさらなかったといういまの話ですが、大蔵大臣との協議というものもしていない。そうして、いわゆる元請契約と称して、大まかな契約で、ほとんど独占的に日通にやっておる。何かそこに、たとえば他の業者から見ると、日通と政府とが特別な何か了解でもって事を簡略にやっておるように見えるふしもあるかと思われる。昨年でありますか、日通以外の運送業者の大会がありまして、その大会で論議されました。そして、事の真実はわかりませんが、どうも約三十億円くらいの不当な料金が農林省から日通に支払われておるということを大会で公に論議されたのです。その大会と申しますのは、全国消費者団体連合会、いわゆる消団連と称しまする大会で、さような報告がなされ、論議されておる。なおまた、新日本新聞を見ましても同じような記事が出ておるわけでありますが、もちろん何が不当料金であるかということの詳しいことも報告が来ておりますけれども政府の側から、さようなことがあるのかないのか、御説明願いたいと思います。
  101. 大口駿一

    ○大口政府委員 昨年、ただいま御指摘の全国消費者団体が食糧庁と日通との運送契約についての内容にわたりまして数字をあげていろいろ批判の声明を出されたことは、私ども承知をいたしております。そこで、私どもといたしましては、そこに掲げられておりまする数字の根拠等について、直ちに、必ずしもつまびらかでない点もございましたが、十分に向こうの計算の基礎等も伺いまして、私ども考えております数字との突き合わせもいろいろやりまして、詳細にわたってこの声明に対するわがほうの数字的な根拠に基づいた見解も実は整理を現在終わっております。本日この席で、非常に詳細な数字等にわたりまするので、一々数字をあげて御説明をさせていただく時間的な余裕があるかどうか存じませんが、私どもといたしましては、その声明の中に言われておりまする部分で、相当程度誤解に基づいたものもございまして、私ども数字をあげてこれについてお答えをする用意は持っておりまするので、いずれ機会を与えていただくならば、猪俣先生もしくはそれ以外の諸先生に十分御説明をいたす機会を与えていただきたい、かように考えております。
  102. 猪俣浩三

    猪俣分科員 なお、これは経済企画庁の諮問機関でありまする物価問題懇談会で、何か日通が多額の土地を買い占めたために相当土地価格をつり上げる作用をやっておるというようなことが指摘されたそうでありますが、その実情はどういうことになっておりますか。
  103. 大口駿一

    ○大口政府委員 ちょっと私、その問題について承知をいたしておりませんので遺憾ながらお答えをすることができません。
  104. 猪俣浩三

    猪俣分科員 これはあるいはあなた方の所管でないかもわかりませんので、あるいは御存じないかもしれませんが、こういう政府の物質を非常に多量に取り扱って独占的な事業をやっている日通が、私の会社なりといえども、そういうふうに相当公の事業をして政府から信任されておるのでありまするが、いろいろな子会社をつくりまして、そして利潤追求に奔走しておる、その一つのやり方として、いま言ったように、相当の土地の買収をやっておるということが物価問題懇談会で指摘されているわけでありまするが、あなた方の所管でなければ御答弁もできないと思いまするから、私はそれは差し控えます。  なお、今日独占企業というものに対する弊害も相当あらわれてきておるのでありまして、競争によって運賃その他を引き下げるということも考えなければならぬと思うのでありますが、政府としては日通以外の運輸会社に何か分担させるというような方針はいまおありにならぬのでありますか。
  105. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 私、就任以来、この問題につきましては、いろいろな方面から御注意もありましたし、御要望もしばしばございましたので、農林省部内でもそのことについて十分検討をするように命じてあるわけでありますが、先ほど食糧庁長官から詳細に、契約の内容その他、取り扱いをさせておる一般につきまして御報告いたしましたようなことでありまして、私どもといたしましては、いままでのやっておりますことは妥当ではないかと、このように考えておるわけでありますが、なお、猪俣さん御承知のように全国的な農作物、この米を輸送させるわけでありますからして、たとえば一つの路線を考えますというと、その路線では非常に赤字が出るかもしれない、しかし、全般としてそろばんがとれてやっていかれるという全国的な規模を持っておるものに適当にやらせなければ、部分部分でやるということになりますと、なかなか運営が円滑にいかないのではないか、そういうおそれもございますので、ただいままでのようなやり方をいたしておるわけでありますが、政府といたしましては、そういう独占的事業でございますので、国の不利益になるようなことのないよう常にきびしく監督をいたしまして、国民の期待にそむかないように常時心がけてまいりたいと思っておるわけであります。
  106. 猪俣浩三

    猪俣分科員 要するに、さっきもお話がありました「政府食糧および農産物等運送契約」と称せられるものがあるわけでありますが、その内容は、運送賃、それから保管料、そういういろいろなものが含まれておると思うのですが、その保管料とか、そういうものについては、またこれはそれぞれの機関で許可なり認可なりしなければならぬと思うのでありますが、そういうものは一々それぞれの機関の許可をとってお払いになっておるのかどうか、これをお尋ねいたします。
  107. 大口駿一

    ○大口政府委員 日本通運との間の運送契約の中には、いわゆる運送賃と称するもの、内容はいろいろ種類がございますが、保管料は入っておりません。保管料は別に倉庫業者との寄託契約で支払うわけでありますから、保管料は入っておりませんので、運送は、先ほど申しましたように、産地の倉庫から品物を出しまして、トラック、鉄道等で運んで目的地の倉庫に品物を納めるまでの契約になっておりますので、保管料は入っておりません。それから、運送賃と称する中で、たとえば通運料金とか、あるいは港湾荷役の料金とかいうものは、それぞれそういう事業形態を監督をするそれぞれの法律がございます。通運事業法とか、あるいは港湾運送事業法とか、そういう運輸省所管のそれぞれの事業ごとに監督の法律がございまして、それぞれ法定の料金を運輸大臣が認可をしてきめておりまするので、その法定されました料金を使って単価を払っております。運送契約の単価そのものを運輸大臣の許可を受けるということの形式ではなくて、運輸大臣が、あらかじめきまっておりまする法定料金を運送契約で引用して、その単価で支払っておるという形であると御理解いただきたいと思います。
  108. 猪俣浩三

    猪俣分科員 これも新聞の言うことでありますから、ただお尋ねするだけでありますが、この新日本新聞というものを見ると、いわゆるいまおっしゃった通運事業法の認可運賃をこえた運賃が支払われておる、これがさきの消団連の問題にもなったのだというふうにありますが、さような点はいかがでありますか。
  109. 大口駿一

    ○大口政府委員 法定料金のきまっておりますものに対しまして、その単価をこえた単価の契約をまず結んでおることもございませんし、また、支払っておる例もないのでありまするが、ただ、法定料金がきまっておらない非常にこまかい作業に対する支払い、たとえば大量の食糧を輸送する場合には、あるいは俵がくずれたり、あるいは麻袋がくずれたりした場合に、たとえば乱袋手直し料という名目で、運送業者の責任において新しい資材と取りかえたり、内容を詰めかえたりするというような作業も請け負わしておりますが、そういうようなケースが起きる割合というようなものを過去のデータに基づいて想定をいたしました上で支払っているような単価がごくわずかございますが、これらは、いわゆる運輸大臣の認可料金というものにそういう該当するものがございませんので、実態調査等に基づいてやっておる支払い形態が若干ございます。そこで、それらについて認可料金をこえて支払ったというような意味での指摘をされておるわけでありますが、先ほど申しましたように私どもとしては、その声明で指摘されたものについては、逐一こちらで事務的な数字をあげての御説明をするだけの用意をいたしておりますので、もしいずれ時間なり機会をお与えくださいますならばその点を御説明をいたしたいと思いますが、少なくとも法定料金がきまっておるのに、その単価をこえて契約を結んだり、あるいは実際の支払いを行なったりというようなことは全くございません。
  110. 猪俣浩三

    猪俣分科員 私の受け持ち時間がまいりましたので、私はもっとお尋ねしたいことはありますがやめますが、最後に要望として申し上げておきますことは、巷間いろいろのことが伝わっておる。そんなものを一々信ずるあれもないけれども、この数十年にわたって独占的な利潤を日通は占めてきておる、相当の配当をやっておる、そして、その間長い間政府と特別の関係に立っておる、そしてまた、会計法あるいはその他の法令に厳重に準拠した取り扱いもやっておらぬ、一括契約、元請契約というようなことで、相当の金額を国民の税金から払っておる、そしてそれは、いわゆる政党の相当のドル箱になっておる、相当の政治献金が日通からなされておるというような説をなす者もあるわけであって、だから、この問題が自民党の交通部会その他にたびたび取り上げられるけれども、いつもそれがつぶされてしまうというような、新日本新聞なんか見ると記事が書いてありますが、われわれはそれを信ずるわけでありませんけれども、長い間にわたりましてかような大量な独占的な事業政府と一営利会社の間でやっておりますと、いろいろな疑惑が出てくるわけでありますから、慎重の上にも慎重に、いやしくも国民の疑惑が起こらぬような処置をとっていただきたいことを要望いたしまして、私の質問を終わりたいと存じます。
  111. 野原正勝

  112. 竹本孫一

    竹本分科員 私も、いま猪俣委員が御質問になりました問題について、同じように国民に誤解を与えてはならないといった心配から、二、三の質問をいたしたいと思います。重複しないように簡単に要点をしぼってお尋ねをいたしたいと思います。  第一点は、大体食管の関係の運搬費というものが百五十億円前後になるだろうと思いますけれども、消費者米価の値上げでいろいろ問題が起こっておるこの際、それを節約するために農林省としてはいかなる検討と努力をされたか、それを伺いたいと思います。
  113. 大口駿一

    ○大口政府委員 米麦の管理のための運送賃あるいは保管料、あるいは食糧管理のために働いております人の人件費等について、絶えず中間経費の節減ということに心がけておることは特に申し上げるまでもないわけでございますが、その中で特にただいま御指摘になりました運送賃につきましては、おおむね次のようなことをやりましてこの節減につとめておる次第でございます。  すなわち、たとえば国内米を例にとりますと、米の産地は東北、北陸、九州、全国にまたがっておりますが、消費地は東京、大阪を中心としまして、生産地とまた別の場所に存在する。ところが、同じ県の中で、生産地帯で生産された米を消費地帯まで持ってこなければならないという問題で、米の生産地と消費地の結びつきというものをどういうふうに結びつけたならば最も運送賃の節減になるかということは、計算からいたしましてもきわめて複雑でありますので、私どもといたしましては、国内米につきましては、昭和三十七年産米以来、いわゆるLP計算と申しまして、電子計算機を導入いたしまして、どういうような結びつき方をすれば最も運送賃の節減になるかというような計算をしました上で、それに基づいて運送計画をつくるというような仕事を導入いたしております。国内産米以外のものにつきましても逐次電子計算機の導入を考えておりまして、麦につきましても、昭和四十年からこの方法を採用して運送賃の節減につとめておる次第でございます。  いま申し上げましたようなことは、いわば運送費の節減の中で運送計画をいかに合理的にするかというための一つのわれわれの努力でございますが、次に、具体的な運送方法をできるだけ合理化をするということでもいろいろな努力を払っておるわけでございまして、たとえば、伝統的な方法の、トラックを使い、鉄道を使い、またトラックを使うというような方法によらないで、トラックだけでやったほうが低廉かつ有利であるという場合があればそういうふうにするとか、あるいは、輸送事情と運送賃とを比較をして最も安い方法につとめてやっていくとか、あるいは、トラックが逐次大型化になっております関係上、なるべく大きなトラックを使って一ぺんによけい運ぶような方法によって、単に小さなトラックで何台も運ぶような不合理なことをやめていくとかいうような、運送方法についても合理化の努力を進めております。  それから、次に、運送手段、たとえば世界じゅうの小麦の流通が現在日本以外ではバラによって運送するというのがきわめて多くなっておることは御案内のとおりでありますが、日本国内食糧は、遺憾ながらまだ生産の段階できわめて零細でありますために、包装に入ったものの流通というのが普通の形でございますが、外国から入ってまいります輸入食糧等につきましては、バラで入ってまいりまして、それを一々袋詰めにして国内で運送しておりますが、それをバラのままで輸送したほうがはるかに運送賃が安いのではないかということから、バラ輸送につきましても現在試験を実施いたしまして、結果がよろしいということになりますれば、このバラ輸送を実行に移すことによって運送賃を節減するというような、運送の手段についても研究を重ねております。  したがって、運送計画、運送方法、運送手段、各般にわたりまして運送賃をできるだけ節減をして米麦の中間経費の節減に貢献をしようという努力をわれわれとしてはいたしておる次第でございます。
  114. 竹本孫一

    竹本分科員 会計検査院にひとつお伺いをいたしますが、先ほどもお話がありましたように、消団連の大会等において、あるいはその他においても、日通関係の問題がいろいろ問題を起こしておるというこの際において、食管関係の運搬費の問題について会計検査院で御検討があったか、あるいは御検討のあった上でいろいろ注意、忠告をされたような場合があるのか、その辺の経過についてお伺いをいたします。
  115. 小熊孝次

    ○小熊会計検査院説明員 お答え申し上げます。  先ほど来お話がございましたように、食糧管理の中におきますところの輸送費のウエートというものは相当のウエートを占めておりますので、検査院といたしましても輸送費の検査というものを相当重きをなして検討しておるわけでございます。ただいま先生からお話のございました輸送関係につきましての指摘事項と申しますか、そういう点につきましては、昭和二十五年当時からある程度検査報告にも掲記されておるわけでございます。その相当部分は、需要供給の測定と申しますか、具体的なそういう測定におきまして必ずしも十分でないために運送が経済的に行なわれなかった、こういうようなものでございます。  それから、運送諸掛かりの積算につきましては、先ほど来お話がございましたように、単価そのものと申しますか、それはほとんどが認可料金とかそういうものでございまして、ただ、こちらが契約をいたします際におきましていろいろな経済情勢の推移に伴いましていろいろ形態が変わってくる、そういう場合に即応した計画が必ずしも十分でないという点におきまして、その一例といたしましては、四十年度におきましての検査報告によりまして、包装別の俵とか、かますとか、麻袋とか、そういうようなものをいままで平均一袋幾らというような計算で契約をしておりますが、こういうようなものにつきましては、俵が漸次減ってまいりまして麻袋とかそういう軽量のものがふえてまいっておる、こういうような状況でございますので、そういう包装形態別に個々に単価を適用して計算をするほうが適当ではないかというような御注意を申し上げておるわけでございます。  以上申し上げましたように、不経済運送というようなものも、昔に比べますと、そういうような見地から、電子計算機の活用というようなことに伴いまして漸次減少してきております。また、ただいま申し上げましたような意味での検討というものをお願いしておる、こういうような状況でございます。
  116. 竹本孫一

    竹本分科員 そうしますと、会計検査院にひとつお尋ねいたしますが、日通との関係においては、架空の輸送だとか、架空の作業だというものは全くなかったと理解してよろしゅうございますか。
  117. 小熊孝次

    ○小熊会計検査院説明員 われわれの検査の結果によりましても、そういう架空の輸送というようなものは全然見当たりません。架空の作業というものも、われわれといたしましては、検査の結果から申しまして、架空の作業があったということはいままで確認したことはございません。
  118. 竹本孫一

    竹本分科員 それではひとつ具体的なことを伺いますが、看貫荷役費用というものは、ことしの予算のうちで計上されておりますか、おりませんか。また、計上されておるとするならば、どういう方法でそれをおやりになるか、御説明を願いたい。
  119. 三浦善郎

    ○三浦説明員 先ほども食糧庁長官のほうからお答え申し上げましたとおりでございますが、食糧庁の運送が、御案内のように発地と着地がきわめて多くの地域にわたっておりまして、契約を行ないます場合の運送賃、これを支払います方法といたしまして、長官から先ほど申し上げましたように、一応プール単価というものを設定してやっております。これは、たとえば四十二年度で申しますと、四十一年度の荷役は、食糧庁で実際に運送いたしました運送実績を全部食糧事務所で実態調査をいたしまして、その中には、ただいま御指摘になりました看貫荷役と申しますか、そういうものも全部実態のとおりに入って報告されておる。それで、その実態調査に基づきまして、それぞれ、法定の定額料金なり、届け出料金なり、あるいは認可料金なりという定額の料金がございますので、その実態調査と定額料金との積算に一応基づきまして、いわゆるプール単価というものを設定しておるわけでございます。したがいまして、そういう方法で実際の実態に合った運賃の支払いを行なっておるというふうにお考えいただいていいのじゃないかと思います。
  120. 竹本孫一

    竹本分科員 まだ御説明で納得できませんけれども、時間がありませんので、もう一つほかの例で伺います。  先ほどの御質問のときに、認可料金と契約料金との差はないという御答弁でございました。当然しかあるべきだと思いますけれども一つの例で伺いますが、米の場合に、貨車の運送の諸掛かりの場合に発地の諸掛かりといったようなものが幾らになっておるか、認可の料金と、それから契約の場合、具体的な数字はありますか。
  121. 三浦善郎

    ○三浦説明員 たとえば四十一年度の運送契約書で申し上げますと、その中で運送諸掛かりといたしまして、たとえば米の場合の発地諸掛かり、これは、発地におきまして、あるいは車馬を使いましたり、肩を使いましたりして、発地における諸経費がかかるわけでございますが、それを、いま申し上げましたような実態調査に基づきまして、それぞれの数字を(竹本分科員「金額だけ言ってもらえばいい」と呼ぶ)——たとえば米六十キロで申しますと、県間運送の貨車運送のうち発地諸掛かりというのは三十九円四十四銭ということにきまっておりまして、これに基づいて運賃の支払いを行なうわけであります。
  122. 竹本孫一

    竹本分科員 時間がありませんから、これらの数字につきましては、先ほど長官の御説明にありましたように、また機会を改めて検討することにいたしまして、きょうは特に元請契約の問題について先ほどの御質問に続いて少し一、二伺っておきたいと思います。  食糧庁と日通との間の契約関係というものは、これは大体元請契約であると解釈してよろしゅうございますか。
  123. 三浦善郎

    ○三浦説明員 ただいま、先ほど申し上げましたように、(竹本分科員「結論だけ言ってください」と呼ぶ)——運送契約書でございます。(竹本分科員「それはわかっておる」と呼ぶ)元請という趣旨をよく了解できないのでございますが、総括的な運送の契約書であるというふうに考えております。
  124. 大口駿一

    ○大口政府委員 先生が元請契約というおことばをお使いになりました。それは別に契約書にそういうことばを使っていないわけでございますが、一般的に元請契約ということばが使われておることは承知しております。これは、ただいま経理部長がお答え申し上げましたように、まず年度の初めにあらかじめいろいろ単価その他を総括的に契約を結んでおきまして、具体的にこの俵をどこまで運べという個々の運送契約に該当するものは、運送の必要が起きたつど、その総括契約に基づいて実際の運送が行なわれるという総括的な契約であるということと、相手が一つであるということを含めて、元請契約ということばが生まれたのではないかと私は想像しておりますが、法律的には、ただいま経理部長が申しましたように、いわゆる運送契約ということで、元請契約という名前のついた法律用語はないというふうに私は理解しております。
  125. 竹本孫一

    竹本分科員 同一の荷主の多数の荷物を荷主の希望する着地まで届けるため、その履行手段を総括的に荷主から委託される契約、こういう意味で元請契約と申している。おっしゃるように法律的にそういうことばがあると言っておるわけではないのですが、元請契約と解してよろしゅうございますかということを、念のためにもう一度伺っておきます。
  126. 大口駿一

    ○大口政府委員 総括的に運送の契約をするという意味で、いまのような趣旨と私どもも理解をいたしております。
  127. 竹本孫一

    竹本分科員 そうしますと、日通のほうと今日食糧庁が結んでおられる契約は、会計法でいえば第何条の何項に基づく契約でございますか。
  128. 大口駿一

    ○大口政府委員 会計法二十九条の規定に基づきまして、予算決算及び会計令という政令の九十九条の第八号に基づく契約というふうに理解しております。
  129. 竹本孫一

    竹本分科員 そこで、少し問題があるのですが、まず予決令のほうでいきますが、第九十九条の八号の問題、これは「運送又は保管をさせるとき。」とある。これですね。この場合の運送というのは、私の解釈では、総括的ないわゆる元請契約といったようなものではなくて、個々の場合、個別的な場合のことであって、総括的なものはこれに入らぬと思いますが、その点はどういう解釈ですか。ここに書いてある随意契約を結ぶというこの随意契約というものの性質から見て、全国の米の輸送、麦の輸送といったようなものについての元請契約的な総括的なものはこれの中には入らぬ。ただ単に個々の場合、具体的なケースをいっているだけじゃないか、こう思いますけれども、その点食糧庁の解釈はどうですか。
  130. 三浦善郎

    ○三浦説明員 ただいまの運送の考え方でございますけれども、御案内のように、私どものほうで日通のほうと締結いたしております運送の契約書をごらんいただきますと、発地、着地が非常に多岐にわたりますために、いろいろな条件を定めまして、食糧事務所長が運送指令を出した場合にはその運送指令のとおりに運送を行なうという契約の内容になっております。したがいまして、あと個々の運送の行為は、この運送契約書に基づいて、事務所の運送指令が出れば当然行なわなければならない、そういう前提に立った運送契約書でございまして、これは運送を行なうこと、そのことを総括的に契約しておる契約だ、そのように了解しております。
  131. 竹本孫一

    竹本分科員 私の質問の意味がまだよく徹底していないようですけれども、問題は、随契でやるべき性質のものじゃないのじゃないですか。随契でやっていくことには矛盾と無理があるのではないかということを聞いておるわけです。随契というのは、少額である場合とか、個々の場合でたいした影響がない場合、そういったもので、先ほど二人以上の者から見積もり書というお話も出ましたけれども、そういったようなきわめて簡単なケース、小さな問題の場合に随契というのができるのであって、いまお話しのとおり、日通と百億をこえる大きな話をする、その総括的な契約をするということが随契でできる性質のものであるかどうかということを聞いておるのです。私はそれは無理であると思う。もう一度その点を伺っておきます。
  132. 三浦善郎

    ○三浦説明員 ただいまお答え申し上げましたように、日通との間の契約は運送に関する契約でございますので、そういうふうになりますと、予決令の九十九条の八号で、これは随意契約で行なうことができる場合ということに該当する。それで、実際問題といたしまして、どうしてそういう取り扱いになるかと申しますと、先ほども申し上げましたとおり、また長官からいろいろ御説明がございましたように、非常に複雑多岐にわたる契約の内容でございますというような関係もございます。そういったような関係、それから、料金の点におきましては、これは競争というものがほとんど制限された形でしかあらわれてこないということもございまして、そこで、この八号によりまして随意契約を行なって差しつかえないということになっておるというふうに了解しております。
  133. 竹本孫一

    竹本分科員 この九十九条の八号の中に、「運送又は保管」、こういうことばがあるから、運送に関する契約は何でもこれでいけるのだ、こういうような意味の御説明だと思うのですけれども、そういうものじゃない。随契はこういう性格のものであって、随契はこういうものでなければならぬ、こういう場合でなければならぬという大きな制約があって、その中に運送の場合も入るのだ、こういう解釈ですよ。「運送」ということばがあるから、運送に関することはみなここに持ってくるという、そんな乱暴な法の解釈はない。随契でそういう総括契約ができる性質のものであるかどうか。随契というものの本質と、それから総括的なという——ことばの説明は要りませんよ。問題は総括的な契約であるという先ほど答弁があったのですから、総括的な運送契約が随契でできる性質のものであるかどうか、その法律的なことを聞いているのですから、問題点をはっきりしてください。
  134. 大口駿一

    ○大口政府委員 私どもの理解では、会計法の原則は、政府のやります契約は、一般競争入札もしくは指名競争入札が原則で、随意契約は一定の場合だけ随意契約が許されておる、その一定の場合というのが、ただいま引用されております予算決算及び会計令の九十九条に、会計法第二十九条の三の規定を受けまして、「(随意契約によることができる場合)」として、すなわち「政令で定める場合」というのを受けまして、いろいろな列挙がございまして、第一の「国の行為を秘密にする必要があるとき。」ずっとこういきまして、八号に「運送又は保管をさせるとき。」という規定があるわけでありますので、私どもといたしましては、運送契約並びに保管の場合の寄託契約というのは、この根拠条文に基づいて随意契約になし得るというふうに理解をいたしております。
  135. 竹本孫一

    竹本分科員 大臣一つお伺いしたい。  一般的に、会計法の根本精神から言って、こういうものは一般競争の原則というものが会計法で強くうたわれておるわけでしょう。これは間違いないでしょう。一般的には、一般競争の原則で契約をしなければならぬ、競争入札でなければならぬ、これがたてまえなんです。だから、一定の場合だけに随意契約を許すという、これは例外的場合なんです。一般原則によることが不可能な場合、あるいは必要がない場合、そういう特定の場合なんです。だから、解釈は、そういう大原則を無視して解釈してはぼくはだめだと思う。一般には競争原則でいくのだ、こういう場合だけ例外的に随契でもよろしい。たとえば随契の、いまの予決令の第九十九条を読んでごらんなさい。一番前にあるのは、「予定価格が百五十万円をこえない工事又は製造」というのが二号に書いてある。大体この程度の、価格が小さくて一般的な競争をやらせることに無理があるか、あるいはむだがあるという場合でなければならないのです。だから、法の大前提によって大きな制約を受けて、その中でこういう特定の場合には運送とか保管といったものも随契でやり得る場合がある、こういう規定なんです。でありますから、日通と大きな何億、何百億の取引契約をするというような問題は、この百五十万円の予定価格なんという問題とはまるっきり性質が違うのです。根本が違う。それを、この中にたまたま「運送」とか「保管」ということばがあるからこれによったなんということは、全く法律の解釈としてはナンセンスだと思う。大臣のお考えを伺いたい。
  136. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 私は、政府が取り結ぶべき諸般の契約につきましては、やはり競争入札を妥当だと思っておりますし、また、そのようにすべきものだと思いますが、先ほど猪俣さんの御質疑にも申し上げましたとおり、ただいま全国的な規模で円滑に農産物の輸送をいたし得る能力を持っておる事業会社というものが、遺憾ながら全国的には御承知のようにございませんので、私もそれらの点についてしばしばいろいろ考えてみましたけれども、やはり非常にやむを得ない状態でありますので、その契約内容についてはきびしく考えるとして、政府がいままでやっておりました処置はやむを得ないことである、また法律的にも不当でないという見解でございますので、いままでのようなやり方をとってまいっておる、こういうふうに御理解をいただきたいと思います。
  137. 竹本孫一

    竹本分科員 全国的に一貫して輸送ができるものは日通以外にはないかどうかということについては、大臣と私の意見が若干違いますから、またあとで議論します。しかし、そういった場合がかりにあったとしても、全国的に一貫的な輸送ができるのは日通だけしかないのだ、だからやむを得ず随契によるのだ、いまこういう御説明でございましたね。そうしますと、それは予決令第何条第何項によるのですか。それが問題なんですよ。
  138. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 ちょっと専門的になりますので、政府委員からお答えいたさせます。
  139. 大口駿一

    ○大口政府委員 ただいま大臣が申されましたことは、日通が結果的に一社だけが契約の相手方になっているということの事情を大所高所から判断されておっしゃったのでございますが、そのことと、先ほど来私が事務的な見地からお答えをいたしておりまする予算決算会計令の随意契約によることができる場合という九十九条の第八号の規定によって随意契約ができるという法的根拠と、両者あわせて現在の仕事を実際やっておるというふうに御理解をいただきたいのでございまして、私どもの理解といたしましては、この九十九条の八号に「運送又は保管をさせるとき。」というふうにあります規定は、結果的に運送の契約金額あるいは支払い金額が、その前のほうの各号にありますように、金額がそれほど多くないときが随意契約で、多いときは別だというふうな、金額によって随契による場合とよらない場合が二つ起きるという解釈の起きる余地のない規定であるというふうに理解をいたしております。
  140. 竹本孫一

    竹本分科員 はなはだふしぎな理解です。  大体、この随契なら随契ができるという場合は特定の場合だと先ほど御答弁がございました。特定の場合でなければならぬ。特定の場合というのは、たとえば少額で一般競争をやらせるだけの必要もないというような場合、あるいはそれが困難な場合、どちらかにちゃんと限定してあるはずです。でありますから、第二号や三号のほうは百五十万円か百万円であるけれども、運送に関しては百億であってもそんなことは関係ないんだ、「運送」と書いてあるじゃないか、こういうふうな解釈は、法律解釈としては全くナンセンスだと思うのです。一号から二十四号までありますけれども、全体の法律の性格というのがありますから、随契でできる場合ということを書いて、それでその前のほうに例があれば、三番、四番、五番、六番、大体同じ調子でいかなくちやいけないですよ。そこだけとっぴに、事運送に関しては何百億でもしかたがないということだったら、全国的な場合で特定なものにはどうにもならないから、それは随契でいいという項目を別に立てなければだめですよ。随契でできる場合には、少額で問題にならない、こういうふうな場合ということとともに、競争入札をやらせることができない場合は随契でいくんだという項目が特にあって、それに基づいて日通との間にはこれをやるんだ、こういう根拠がなければ、いまの御説明では法律の解釈としてはぼくは納得できないですね。
  141. 大口駿一

    ○大口政府委員 会計法並びに予算決算会計令の法的な解釈を下す権限が私にあるかどうかいささか疑問でございまするが、私がこの立法趣旨をそんたくをいたしまするに、なるほどこの九十九条の各号には、それぞれ随意契約によることができる理由がある。金額が特にうたってあるものについては、金額の多いものを随意契約でやるのは不適当であり、小さいものはわざわざ煩瑣な手続をとる必要がないという趣旨できまっておる。それから、国の行為を秘密にする必要のある場合に、競争入札にしたのでは秘密が守られない。それぞれ別個に理由がある。運送並びに保管というのは、運送事業並びに保管の事業というものは、それぞれ公正な発展を期するために運輸大臣の監督のもとにそれぞれの事業を監督する法律があり、それぞれ料金も公定されておるという事態になっておりまするので、事実上競争の余地があまりないということから、運送並びに保管の場合には随意契約でいいんだという規定が設けられたんだと私はそんたくをいたしまするが、したがって、この運送の場合に、金額の大小で再び解釈が二つに分かれるということでないと私は理解をし、また、日ごろ、仕事はその理解に基づいてやっておるつもりでございます。
  142. 竹本孫一

    竹本分科員 これから先は法制局とやるべきことかもしれませんが、ただ、最終的にひとつ私の立場をはっきりしておきますが、おっしゃるように、金額——私は前の問題に返りますけれども、運送事業というものは特別に監督がしてある、だから運送に関しては金額が多くなろうが少なくなろうが随契でいいんだ、極端に言えばそういう御答弁のように聞こえますけれども政府が監督しておるものであろうとなかろうと、ある意味においては、一般的に監督はどの官庁だって一通りやっておるわけですから、それにもかかわらず、会計法の原則から言って、一般競争の原則の例外としていく場合には少額である。ここに例示してあるような特定の場合以外は許されないのですよ。監督官庁が別にある、あるいは単行法できびしく制限されておるから、そことの契約ならば随契でいいなんという、そういう会計法の解釈は、ぼくはきわめて乱暴だと思うのです。しかし、これは長官よりも法制局と論議すべき問題であろうと思いますから、私このくらいでやめますけれども、これは大臣、ぼくは非常に重大な疑問があります。監督しておるのだから、そことの契約なら随契でいいという議論は成り立ちませんよ。幾ら監督はきびしくあろうとも、会計でお金を使うということには、会計法並びに予決令の制約があるのですから、その制約を排除して、一般競争の原則を排除していくには排除するだけの理由がなければならぬ。これはその事業が監督されておるかされていないかというようなことには関係がない。やはり、金を使うという、金だけの問題ですから、その金の出し方について、随契の一般的な性格から飛び抜けて、この場合は百億であろうとかまわないというような場合は考えられない。したがいまして、これはもう一度当局において十分検討していただく、私どもも法制局その他について検討してみましょう。非常にこれは解釈がおかしい。また、そういう契約の解釈のしかたであるから、いままで日通の独占ということが許されてきておったのじゃないか。きょうは残念ながら法制局を私ども呼ばなかったのですから、時間もまいりましたからこのくらいにいたしておきますが、非常な疑問があるということだけを申し上げて、大臣のほうにおいてぜひ御検討を願いたいと思います。あらためて、また法制局も呼んで論議を深めてまいりたいと思います。  それから、先ほどお話にありました、日通以外には全国的な一貫的な輸送能力がないのだ、こういうお話でございますが、はたしてそうであろうか。私の調べたところによりますと、全国の貨物駅が五千三百七十六駅あるうち、日通が通運の免許を受けている駅は四千三百二十三にすぎない。そのうち作業員や運搬具等を全く配置していない管理の委託の駅が四百五十三ある。こういうものを差し引いてみると、実際に日通が免許を受けて機能を果たしておるのは三千八百七十であって、全体の七〇%である。したがいまして、日通といえども、初めから、三〇%、千五百六の駅については、ほかの通運事業者に下請をさせておる。こういう事実を御存じでございますか。
  143. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 そのとおりの模様でございます。
  144. 竹本孫一

    竹本分科員 したがいまして、日通が独占しておるという、あるいは独占させておる理由というのが、だんだんこの面からもくずれておる。ことに、船の輸送といったような問題になりますと、もちろん日通は船を何隻持っておるか私も知りませんが、ほとんど問題にならない。こういう点を考えてみると、日通に独占させなければならぬという理由は、私はあまりないと思いますから、この点もひとつ将来検討してもらいたい。  それから、もう一つ、時間がないから結論だけを言うわけですが、元請契約、総括契約だ、こういうことになっておる。そういうことについては長官もお認めになりました。そうしますと、随契ができないという問題が一つと、それから、もう一つは、総括契約であるならば、極端な例を言えば、一般の商社でも、あるいは国鉄でも、相対で契約ができるのではないか。この点についての解釈も承りたい。
  145. 大口駿一

    ○大口政府委員 現在の運送の実態からいたしますと、運輸大臣の認可を受けておりまする通運免許を持っておるかおらないかということが、鉄道輸送と結びついた輸送形態を実質上やり得るか得ないかという分かれ目になっておるわけでございまして、倉庫から倉庫まで持っていく間に鉄道輸送が入って、通運免許を持っているものでなければ駅との関係の仕事はできないということからいたしますと、どこかそこら辺の総合商社を取っつかまえて一年間の総括契約を結ぶということは、事実上通運事業法の免許との関係でできないので、現在、そういう免許を持っております、しかもほぼ全国的な組織を持っておりまする日本通運と契約を結んでおる次第でございます。
  146. 竹本孫一

    竹本分科員 なお質疑を深めてまいりたいと思いますが、時間になってまいりましたから、きょうはこの辺で終わりたいと思います。
  147. 野原正勝

    野原主査 林百郎君。
  148. 林百郎

    ○林分科員 私は主として倉石農林大臣にお聞きしたいので、あなたから答えていただきたい。  いま日本農業の直面しておる重大な問題はいろいろありますけれども、時間の関係もありますし、予算分科会ですから、三つほどに限って、あなたが日本農政を担当しておる最高の責任者ですから、お聞きしたいと思います。  一つの問題は、何としても兼業化の問題ですね。非常に顕著に兼業化があらわれてきている。このことは政府もすでに認めているところであります。これに対してどういう政策を持つかという問題が一つ。それからもう一つは、いわゆるケネディラウンドと言われていますけれども、アメリカからの農産物並びに農業資本の自由化、関税の一括引き下げ、さらには、後進国に対する食糧援助の問題が新しく入ってきています。こういう問題が一つあります。それから、もう一つは、東南アジア農業開発会議ですか、あなたも昨年暮れに会議を持っているのですけれども、要するに開発輸入の問題があると思うのです。そのほかいろいろ重大な問題がありますけれども、時間の関係上、この三つの問題について大臣の所信を聞きたいと思います。  まず兼業化の問題についてでありますが、数字だけ見ましても、この五年間に兼業農家となって農業から離れて働きに出た人口が約四百四十三万人、これは東北六県の農家人口と同じだと言われているわけです。それから、一家をあげて村を出た農家戸数が約三十九万戸、これは四国四県と鳥取県の農家戸数と同じだ、こういう著しい数字が出てきているわけです。その約八割がどうしても兼業でなければ農家経営ができないという状態。その兼業農家のうちの八割が工場の労働者、人夫、日雇いに雇われている、こういう状態。こういう兼業の農家にとって、ことに出かせぎをしておる農民にとっては、その出かせぎによる賃金の収入は自分の生活を維持すると同時に、農業経営を守っていく上から言っても、これはやっぱり決定的だと思うのです。そういう中で、いま季節的な出かせぎ農民に対する失業保険の打ち切りというような問題もからんできて、結局この兼業農家の出かせぎによる賃金収入全体が打ち切られようとしている。このことは、単に自分の生活ばかりではなくて、農業経営全体を守るためにこそやむを得ず出かせぎに出ておるのですから、もしこれが、季節的な出かせぎ農民に対する失業保険の打ち切り、したがってそのことが兼業農家として賃金収入の打ち切り、要するに兼業農家はやめなければならないという事態とからんでくると思うのですけれども、まず三つの問題のうちのこの一つの問題について、農林大臣としてはどう考えるか、農政の最高責任者としてのあなたはどう考えるかということをまずお聞きしたいと思います。
  149. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 日本農業がだんだんと兼業農家がふえてくる、これは最近の日本産業構造の中で必然的にそういう傾向が起きてくると思います。そこで、林さんも御存じのように、いわゆる第一種、第二種と分けてみますと、両方を合わせて兼業農家が全体の七一%に達しているようであります。私どもは、いわゆる第一種の兼業といわれる、農業にあまり重点を置かない方々で、他の産業に従事をして、そうしてそのほうの所得農家経営を助けているというような方々には、その能率的に田畑を耕していただかない方々にはできるだけお手伝いをして、そうしてその土地の移譲を促進していただいて、そうして自立農家を大きくしていきたい。それで、構造規模を拡大して、他産業に劣らない農業所得を得られるような方向で自立農家を助けていきたい、こう考えております。第二種のいわゆる農業のほうがおもで、兼業がよくよくわずかで若干家計を助けておるというような人々は、やはりそれなりに、この兼業農家というものがその生活を保持し、所得増大していかれるように、これは助けなければならぬ、こう思っておりますが、いま、さて、農業経営の今日の状態で、いわゆる兼業農家の一部の人々が、お話のように出かせぎにまいって、そうして家計を助ける。この日本農業経営形態というものは、ごらんのとおり、非常に多い幾つかの種類を持っております。で、農業それ自体が裏作まで十分にやっておる農家は、それほど年間を通じてひまがあるわけではありませんけれども、やはりもう裏作を放棄して他産業に出ていって現金収入を取るほうが、その農家全体の経済としてはそのほうがいいという考えを持たれる方が出かせぎをしておられます。  いま失業保険のお話がございましたけれども、私どもは、本来申しますならば、数日前にこの委員会でも私は申したのでありますが、失業保険というのは、その対象範囲を拡大するということについては、失業保険制度自体から考えますと、私はあまりいい傾向ではないと思うけれども、いま農家の人々が周期的に出ていって、そうしてまた周期がくれば帰られるというような方々には、すでにわが国では失業保険法が均てんすることになっておりますからして、そういういわゆる既得権を持っておられる人に対して、その既得権を侵すような制度の改廃ということがあるとすれば、われわれにとっても軽々しくそれを見過ごすわけにはいきませんので、ただいま失業保険法の改正の議が出ておりますので、そういう点についても政府部内で労働省とも十分なる打ち合わせをいたしまして、あとう限りそういう心配のないようにしてもらいたい、こういうことを考えておるわけであります。
  150. 林百郎

    ○林分科員 あなたがこの委員会で答弁されたことも一応読んでおりますが、そこで、問題になるのは、根本的にこの出かせぎ農民の真情をあなた理解されておらないのじゃないか、こういうように思うのです。ということは、いまのあなたの答弁の中で問題になるのは、この農業人口が都市へ流動していくのは、最近の人口の分布の動向から言って必然だと言っておりますが、これは必然であるかどうか。これは必然ではなくて、あなたの属する自民党の農業政策が、農村から入口を流動させているという政策の結果ではないか。そのことを意図した農業政策が行なわれるからこそ、農村から人口が流動していくのじゃないか。もし農民を農村へ定着させるという政策を自民党がとられるならば、農民は喜んで農村に定着しているのではないか。このことをひとつ、あなたの根本的な考えとして、私お聞きしておかなければならぬ。それはやむを得ない必然なのか、政策の結果なのかということですね。そうして、そういう中であなたは、本来もう農業をあきらめて、より高い収入のある雇用を求めて出るのが出かせぎの農民だから、その人たちには格差のない所得を保障してやるようにしたい、あなたは通年雇用の道を見出してやりたいという答弁をしているわけです。しかし、そういう保障が一体できるのかどうか。通年雇用というものが、資本主義の自由経済のもとで、だれを何年雇うかというのは、これは政府が責任を持ってきめることじゃなく、それは企業者がきめることですから、幾ら倉石さんが年間八十万に近い兼業農民を通年雇用にしたいと言ったって、それだけの労働市場があって、しかもそれが安定した雇用関係が出ておらなければ、あなたのそれは抽象的なことばだけであって、何らの保証もないということになるわけです。そういう中で失業保険に責任を負わせることは本来のたてまえではない、これは労働省もそう言っているわけです。現在の兼業農家の責任を失業保険制度にあまりにも過重な負担をかけさせるのは本来でないということを言っております。これは労働省のほうは労働省でそう言うかもしれない。しかし、これは農林行政の側から言えば、私のほうの調査で見ますと、出かせぎ農民農業外でかぜいできたその収入というのは、大体農機具の購入代金を支払うとか、あるいは農業構造改善事業で借金をしたので、それを払うとか、あるいは選択的拡大畜産をやってみたけれども、思うようにいかないで、借金ができたからこれを払うとか、これは自分の生活のというよりはむしろ農業経営を維持するために出てきた赤字を農業外でかせいできて、それを埋めて農業を維持したい、こういうことが本来で、あなたのおっしゃるように、都会の生活と格差のない生活ができれば何をやってもいいという、こういうことではないわけなんです。だから、農民はやむを得ず、いまの制度の中で、そういう貧困な農業政策の中で、農業経営から出てきた借金を埋める道がないので、失業保険法で規定されている規定のとおりに、六カ月行って働いて、規定のとおり三カ月分の失業保険をとる、こういうことをやっているわけなんです。ですから、あなたも農相として、制度の改正については私のほうもそういう農村の実情から言っても意見を言うつもりだということは若干あとで触れていますけれども、本来のたてまえが農業経営を維持するための農民としてのそういう措置なんですから、農相としては、この制度にかわる保障があれば別として、その保障が見出せない限り、この道を確保してやることが、現在では農民農業経営のためにはやるべきことじゃないかと思います。  そのことが一つと、それから、あなたが失業保険制度の改正にあたって農相としての意見も言うつもりだということを言っておられるわけです。これもこの分科会で幾度かあなたも答弁されているわけですけれども、御承知のとおり、ことしの三月に労働省のほうから職業安定審議会のほうに諮問があり、それからこの四月十九日に安定審議会から答申が出たわけですけれども、これがいま社会保障審議会のほうで審議され、いずれ何らかの形で立法化されると思うわけです。そういう中であなたが意見を言うというのですが、意見のその具体的な内容を、農相としては具体的にこうするつもりだということがあれば、その点もひとつあわせて答弁してもらいたいと思います。どういうことを言おうとしているのですか。
  151. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 林さんのおっしゃるお立場と少し私ども考え方の違っているところがあるかと思います。  いま、自民党政府農業政策の貧困から出かせぎなどが多くなる、それから農村人口が他産業に流出しているんだ、こういうふうにおっしゃいました。私はそうは思わない。つまり、いかなる産業でもそうですけれども、やはり経済というのは国際的な中に立って、そうして十分にその国際競争力に立ち向かって立っていかれるだけの体質を持つようにしなければならないというのが、基本的に言われなければならぬことだと思うのです。あとで農業のことは別に議論も出るでしょうが、私どもは、日本農業それ自体を比較してみまして、やはり、日本の全体の産業構造の中で、非常な勢いで鉱工業生産が伸びてきました。それに要するところの労働力供給源を農村に彼らは求めておる。これはそのほうの面では当然なことだと思うのです。そこで、そのほうの割りのよい所得を得るために、若者たちがそのほうに転換していく。つまり、年に百三十万人くらいずつ出てくる新規学卒の人たちが、毎年毎年、ここ数年来新しい職場を獲得し得たのは何であるかというと、日本経済成長の結果である。あれがなかったならば、やはり今日の日本全体の雇用状態というものは非常に変わっておるだろうと思います。われわれは、日本全体としては、やはり日本経済力に国際経済力を持たせ、優位な立場で競争し得るようにはからなければならない。それは原則であります。  さて、そこで、しからば農業のほうの労働力というものは、いま申したように、必然的に流動していく傾向にあります。ところが、日本農業が、たとえば平均四人家族ないし五人家族で、いままでのような生産力であれだけの人数が食べていろと言われましたら、あなたの選挙区でもそれは不可能だと思う。だんだんと格差が出てくるわけであります。ですから、われわれは、全体的に言って、農業から労働力が流出するということを悲しむべきこととは思っていないのであります。むしろ一方の産業を成長せしめるのに必要なことなんです。それは必要なことなのであります。そこで、欠除してくる労働力に向かっては、人間の労働力ではなくて、機械力なりその他省力をどうしてやるかということを考えてやって、そして生産性をあげていく。それがつまり政府のいままで言っておりました構造政策で、経営規模拡大して一戸の単位当たりの所得をふやしていって、そして農家全体の所得が他産業に比べて劣らない程度の体質のしっかりした農業をつくりたいというのが基本法の考え方でありますから、私は、いま全体の就業人口の中で二三%ぐらいだといわれております農業従事者というものの数は、もっと減ってもりっぱに太刀打ちができるように、経営規模をしっかりし、体質を改善していかなければいかぬのだと思うのです。先ほど北山さんのお話の中に、そういう希望ではあるが、実質はそれに伴っておらないではないかというお話がございましたけれども、私はやはり、目標はそこに置かなければいけないと思うのです。したがって、どのようにして省力——つまり、労働力がなくなっていくことに対する補いを、どのような資本投下によって経営規模をしっかりさせていくかということが、農政の基本の問題だと思うのです。  さて、そこで、もう一つあなたの御見解と私と違いますのは、そういう農家の方が他産業に転換していくということを出かせぎだというふうに規定づけてしまうところには、私は大きな誤りがあると思う。出かせぎばかりじゃありませんよ。いま申しましたように、年に出てくる学卒の百三十万人のほとんどが余らない。足りないほど他産業に行ってしまうのであります。そのほかの出かせぎをいたしておりますのは、主として北陸の日本海沿岸、それから東北地方にややその傾向が見られる。その傾向というのは、皆さんも御存じのように、その地方の農業がああいう状態であるところにその大きな理由があると思うのです。したがって、私は、そういう面における出かせぎの方々については失業保険というものの恩典に浴することになっておるんだから、これはなるべく不安感を持たせないように失業保険法の改正に当たってもやってもらいたい、こういうことを言っているわけです。  さて、そこで、たぶんきょうは労働省もお呼びになっていらっしゃると思いますけれども労働省の原案というものは、いまお話しのように、社会保険審議会で最終的に決定をしたかどうか、まだしてないと思いますから、彼らの考え方はよくわかりませんが、大ざっぱに聞いているところによりますと、三回目には半額にする、それも年齢三十五歳以上はその適用から除外すると、こういうのでありまして、これは私がとかくの批判をいたしますより、労働省より説明があるでしょうから、その上でまた私どもの見解を申し上げるほうがいいと思います。
  152. 林百郎

    ○林分科員 あなたの考えで根本的に問題になるのは、それは自民党の農業政策で、あなたのように、省力の農業で、近代的な国際的な農業に太刀打ちできるような農業で、近代的な機械も入れて、そこで残ることのできる農家はいいですよ。倉石さんはそういう農家を保護しようとしている。しかし、それは日本農業のうちの何割をあなたは対象にしているのですか。それ以外の人は好んで都会に出ているわけじゃないです。あなたは中卒のことばかり言っていますけれども、そういう若い労働力は、それは日本の大きな資本家にはほしい労働力かもしれない。しかし、全般的には、労働省の発表から言っても、約六百七、八十万から一千万近くの失業者が潜在的にいるのですよ。それへもっていって、一部の二割か三割の自民党農政に保護された農家だけが残って、あとの人が都会へ出ていって、あなたどういう健康にして文化的な最低の生活をその人たちに保障するのですか。その道を私はあなたに聞きたいと思うのです。自由主義経済のもとで一千万もの失業者があるときに、あなたの言うように、農業に残っているよりは出ていったほうがしあわせだからといって、年間六十万から七十万もの農民が兼業農家の形で出ていった場合に、どこで就職を保障するのでしょうか。そこが問題だ。だから、あなたのことをはっきり言えば、二割か三割の国際的な農業に太刀打ちできるものは残すつもりだ、あとは農業をあきらめて出ていったほうがいいんだ、農業をあきらめなさい、こういうのが倉石農政の本質だ、こう私は理解しておきます。また長野県へ帰ってから、倉石さんはそう言っているから、そういう農林大臣だから、あなた方どうぞよろしく、こう言うつもりです。  ということは、ある東京の一流新聞に出ていたのですが、選挙区は長野県四区になるのですか、北安曇郡美麻村の高地八十六戸の農家のうち四十四戸が挙家離村しているわけですね。付近では幽霊村と呼んでいる。挙家離村ですから、家はだれも住んでない。もうあばら家になっている。耕地は草だらけになっている。そこから出てきた一農民のことばが出ているわけですね。こう言っているのです。「山にいるほうが何ぼか安心だった。町では心もとのうて、心もとのうて。わしがもう十年若ければ一ふんばりして残るところだったが、むすこに食わしてもらわにゃならぬと思うと歯を食いしばって出てきたんだ。だがいまはその日の賃金でおかずを買ってくるような暮らしさ。高地にいればまずいもの食ったって心は安楽だったが……。わしはからだが弱くなって働けないから、飼ってもらっていると思ってがまんしている。だが腹の中は何ぼう切ないことか。」これが農村から出ていった農民のほんとうの気持ちなんですね。農村から出ていったほうがしあわせですよ、農林大臣がそんなことを言ってごらんなさいな、この次の選挙はえらいことになりますよ。  もう一つ新潟の小学生の作文があるから、農林大臣、ぜひひとつ、農民の気持ちを理解するように読みますから聞いてください。「外では風が吹いている。少しの音にもびっくりしてそのほうを見るわたし。父がいれば小さな音など苦にしないのに。それがどうしたことか、少しの音にもビクビクする。早く出かせぎというものがなくなり、家じゅうそろって暮せるように毎日願っている。」これはやはり一家農村に残って生活したいんですよ。また、そういうことは、憲法で保障されているわけですね。農業をして暮らそうと、外へ行って暮らそうと、これはあなた生活の保障は憲法で保障されているわけです。それをあなたの主観的な、あるいは自民党の農業政策によって、おまえたちは町へ出ていったほうがしあわせだから出ていけ出ていけという政策をあえてやろうということは、これはあんた農民を切り捨てる農業政策、富農的な、あるいは資本主義的な発展を保証された一部の農民以外は、農業を切り捨てるという農業政策だと言って過言でないでしょう。そういう中で、あなたのさっき言った社会保障審議会からの答申に対して、それじゃあなたはそれはそのままでいいと言うんですか。何か二回だけは認めて、三回目は半分にするとか、あるいは積雪寒冷地帯の三十五歳の人には、それも当分だ、当分見合わせてやるとか、あるいは既設の権利は認めるが、新しいものにそういうのを適用しない。これはもう審議会の答申で出ているわけです。それに対してあなたは何か意見があるかどうか、農林大臣としてもそれはそのままですとおっしゃるのかどうか、この点をお聞きしたいと思うのです。
  153. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 あなたと私は考え方にもうたいへんな開きがありますよ。私はあなたにいま牽強付会なことを言われているんだ。私は農民に、百姓はだめだからどんどん都会へ出ていってしまえなんてことを一ぺんも言っているんじゃない。それからまた、いまの構造政策を推進して経営規模を大きくして、経済単位を大きくして所得をふやしていこうという考え方というのは、農民はみんな要求していることなんですよ。たとえば、朝日新聞だとかNHKだとかでこのごろ全国の優秀な農業のあと継ぎの若い御夫婦を集めて表彰したり何かしておられるが、そういう諸君に会ってみるというと、非常な意気込みでこの農業を守っていこうという考えを持っているんです。農業を守っていこうという情熱を持った多くの人たちに、そういう農村の人たちの所得をどうして大きくするかということに一番主力を注いでいるのがわれわれの農業政策なんですよ。いま貧農切り捨てということばを使われましたけれども、前々回の総選挙のときにはそんなことばもあったけれども、いまそんなことを言っているのは日本じゅうで共産党の林さんだけです。林さんという人はとても個人的にはいい人だけれども、共産党の演説になるとまるで違ってしまって困るのですけれども、私どもが言っているのは、そういうことじゃなくして、いいですか、経営規模を大きくして所得拡大していって、そして、いま国際的に劣らない農業と申しましたのは、何も農産物を全部十文字の風の吹きさらす中で競争しろと言っているんじゃないんであって、つまり、数多くの消費者というものは日本国内におるんですから、農業生産性が低くて、そうして野菜でもすべての農作物の価格が非常に高くなっておるにもかかわらず、それを多くの消費者に食えというふうなことは、それは農林政策としてはそんなことを言うべきではないのであって、したがって、わが国生産性を上げて高くない価格を維持するような農業政策をしていかなきゃならない。そのためにはやはり国際競争力に耐え得るような農業の体質を整備しなければならない。だからして、その体質が整備されるまでの間には、たとえば乳製品の例を一つとりましても、御承知のように、安いものが入ってきて競争ができませんからして、不足払いみたいな変わった制度をやって、そうして日本乳製品価格外国とのレベルを合わして、国内の消費者に対する便宜をはかっている。こういう考え方で、農業政策については、共産党が何と詭弁を弄しようとも、私は日本農業政策ほどきめこまかな心配をしている農業政策はないと思う。それは、一、二あなたの選挙区にも、私のほうの山地のほうにもございます。非常に急傾斜のところで農作物がろくなものはないところはたくさんあります。そういう地域については、それなりに、やっぱり私どもはその所得をふやしていくということに全力をあげなくちゃならない。  ですからして、いまあなたは、失業保険のことをおっしゃるためにそういう例を引かれたのでありましょうけれども、失業保険につきましては、主として出かせぎ、季節労働者、こういう人たちの問題でありますからして、そういうことについては、農林省としては、労働省と十分な打ち合わせをいたしまして、既得の権利を阻害しないようにしてもらいたいということを折衝しているわけであります。ひとつ誤解のないように。
  154. 林百郎

    ○林分科員 あなたも興奮していろいろ言われますけれども、そんなにきめのこまかい、世界に類例のない農業政策をやっているとするなら、何で四百何十万もの、農村から離れて農業外の収入にまたなければ農業経営ができないような農村人口の流動が起きてくるのですか。そのことを考えてください。あなたは先ほどから、一つの非常に抽象的なイメージを農業経営に持ってきている。しかし、それに妥当する農家というものは、ほんのわずかなものじゃありませんか。国際的な農業に太刀打ちができて、しかも省力ができて、機械を取り入れて、そして格差は都会の相当の生活基準に沿うような農家経営考えているのだと言われるが、それに該当する農家は何軒ですか、あなた。そんなことはほんの一部の農家だからこそ、年間何十万という農民農業から離れて都会へ流出している。それをしかも政府は円滑にやると言っているじゃないか。
  155. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 それが違うのだよ。
  156. 林百郎

    ○林分科員 まあいいですよ。いいですか、経済審議会の答申には、そういうことを、「農業から他産業への職業転換を円滑にすることも、構造政策を推進するうえでの重要な課題である。」と言っているじゃないですか。倉石さん、はっきり言いますが、結局、低賃金の労働者をつくる、資本家をもうけさせるためにはうんとたくさんの余剰労働力をつくっておくほうがいい。それには、農村からどんどん人口が流動したほうが、豊富な低賃金の労働力があるのだ。それを自民党は、一貫した政策として、経済の高度成長だとか、人口の流動だとかやっている。農林大臣はその任務を負わされている。だから、あなたは、農民をどうして農村から切り離して都会へ流動さして、そして豊富な労働力を都会へ集中するか、そういう任務のために農林大臣になっているのだよ。そこをあなたよくわきまえたほうがいいと思うのだ。  そこで、この問題をやっていると限りありませんけれども、一例を言いますと、たとえば青森県を例にとっても、八万二千人に及ぶ出かせぎ農民があって、この失業保険だけで四十三億だ。そして県民が県外へ出ていってかせいできた金と失業保険を合わせますと、リンゴの収入と同じくらいになるのですよ。だから、リンゴをやっていても割りに合わぬわけです。そういう形になっている。それじゃリンゴを、農業をあきらめるかというと、農業は維持したいわけだ。だから、やむを得ず出ていくという状態です。また、それを持ってきてもらわないと、県の財政も地方財政もできないということで、これは各県や東北の村々が出かせぎ農民の失業保険の打ち切りの反対の決議をしているわけです。全国で六県と百に近い市町村議会で反対決議をしている。同時に、酒造業者や建築業者や水産業者までが一緒になって反対しているわけです。だから、これは、もういまの貧困な農政のもとでは、この制度はどこまでも維持する。しかも、失業保険は千三百億くらいの余剰積み立て金があって、資金運用部ではこれを運用しているわけです。赤字じゃないのですよ。しかも、政府の負担金をまた減らそうとしているわけですから、赤字でできないのじゃない。黒字で、資金運用部資金はこれを運用しているのです。それを、こういう農民に対して過酷な処置をしているということは、結局、農民に、農業をあきらめて町場へ行って低賃金と無権利の労働者として人口流動しろということだと私は思います。  時間の関係で、その問題だけだと、三つの柱の一つだけで終わりそうですから、次の問題に移りますが……。
  157. 野原正勝

    野原主査 ちょっと申し上げます。時間がまいりましたから、なるべく結論を急いでください。
  158. 林百郎

    ○林分科員 それに追い打ちをかけるように、アメリカからの農産物輸入が非常に激しくなってきている。同時に、そのことが日本農業の自給率を非常に低めてきている。このことが政治的にもアメリカヘの従属を深めることになるわけです。現に、昭和三十五年から四十年の六年間に、農産物全体の輸入額は八・七億ドルから十九・四億ドルと、実に二・二倍になっている。米だけ見ますと、ここ五年間に輸入増大率は五・六倍になっている。バナナは八・三倍、干しブドウは二・七倍になっている。一方、主要食糧の自給率は、この五年の間に実質価格では八七%から七六%に低下している。熱量計算でいくと七〇%を割っているという数字まで出てきているわけです。自給率を昭和四十年度現在で見ますと、小麦が二七%、大豆は一〇%、雑穀は五%、濃厚飼料は四四%という憂慮にたえない状態になっている。あなたは先ほど、日本農政ほどこまかい配慮をしているところはないと言っているけれども、こんなに自給度がだんだん低くなっている発達した資本主義国の農業というものはないですよ。どこでも農業に対しては保護政策をやっていますよ、倉石さん。その上に、今度のケネディラウンドから出てきている問題は、たとえば農業資本を投入しているアメリカ側から、出資の外資がこれを全般に支配しているのが十六社、合弁が二十社ですが、この合弁の二十社を、いままではアメリカの資本が五〇%程度の資本を保持していたのですが、これを七〇%から八〇%に外資の部分を上げろということを、日魯ハインツだとか、あるいは豊年リーバなんか、言ってきているわけです。ますます日本農業のしかも非常に重要な部分に対する外資の支配力を高めようという交渉がいまなされている。もう一つ、日米カルパックというようなのがトマトの契約栽培を直接日本農民とする。さらには、伊藤忠ドールというような、かん詰め用の果実をつくる会社が、日本と合弁で、直接日本の公有地や共有地を借り受けて生産をするというような形がずっと出てきているわけです。この問題をどういうようにあなたはお考えになるかという問題が一つ。それに対してあなたは日本農業の最高責任者としてどういうようにされるか。  もう一つは、いわゆる開発輸入。これは昨年、あなた農相になって最初会議を持ったわけですけれども、これも、アメリカの負担をなるべく少なくして、日本をはじめアメリカの従属国が負担を持って、そして安定した進歩をはかるということで、向こうの安い農産物を入れる、見返りに日本の資本を進出させる、いわゆる開発輸入という問題になっているわけです。これも日本農業に非常に大きな影響を与えてくると思うのです。これは非常に素朴な原始的な農業経営ですから、日本農産物よりはずっと安いものが、もしここで一定の保護政策をしなければ野方図に入ってくる。それを見返りにして日本はいろいろの資本を進出させるという問題が出てくると思うのです。最近では、ケネディラウンドでは、さらにこういう国に日本独自が別な意味食糧も提供する、たとえば小麦を提供するというような交渉をやっている。これはあなたも十分御承知だと思う。こういうアメリカの農産物輸入と、アメリカの農業資本の直接投資の強化の問題と、一方では開発輸入まで迫られてきている。これはまた、日本農業全体を大きく破壊する作用を及ぼしてくると思いますけれども、これについてあなたはどういうようにお考えになりますか。
  159. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 ただいまゼネバで行なわれておりますケネディラウンドの交渉では、農林関係の小麦協定等がわれわれの一番重大な関心を持っているところでありますが、日本の農作物は、御承知のように、まだ野放しの国際競争というふうなわけにはいかない面がたくさんありますし、いろいろ日本農業にも影響がありますので、ケネディラウンド一般としては成立することがわれわれとしては望ましいと思いますけれども、農作物についてはこちらの主張を十分に貫徹するように訓令をいたしておるわけであります。  それから、日本のたとえば豊年リーバとか、そういうことに対しては、ちょっと林さんのおっしゃることが間違っているのでありまして、これは共同の出資で始めましたけれども、やはり事業がうまくいかないのです。ケチャップにしてもそうです。ですから、日本の既存の業界に太刀打ちができなくなりましたので、赤字続きです。したがって、こういうものは、わがほうの投資をしている会社が、むしろこれは過半数を外国資本のほうに譲りたいということを申し入れているわけでありまして、向こうから圧力がかかって、こちらが押えられてしまったという状況ではないわけでありますから、その辺は少しお話が違うようであります。  それから、いまのケネディラウンドに続いて、低開発国を援助するという問題は、これはやはり、アジア全体について私ども見ますと、もっとさらに、たとえばインドネシアにしましても、その他の諸国がもっともっとみずからの力で自分の国の農業開発して、農産物を多量に生産するようにしなければ全体としては食糧が不足している傾向なんでありますから、われわれは早く彼らが立ち直ってくれることを希望するわけでありますけれどもケネディラウンドでいま話の出ておりますように、アメリカその他の諸国が、わが国もそういうことから言えば先進国扱いでございますが、そういうところが一致してこの低開発国を援助しようではないかという話でありますが、わが国といたしましては、事情が若干違っておりますので、そういうケネディラウンドのワク内でそういう拘束を受けることについては、にわかに賛成をしがたい、こういう態度をとっておるわけであります。したがって、いま行なわれておりますジュネーブの会合というものには、私どもとしては非常に注目はいたしておりますけれども、いま申しましたように、低開発国の援助については、わが国はそのワク内で拘束を受けるようなことは困る。しかし、一般論として、私どもは、林さんはいま農業のことについてお話がありましたけれども、全体としてはやはり、わがほうでケネディラウンド全体の構想を研究してみれば、わが国の輸出産業と、それからわが国の農作物輸出等を勘案いたしますと、私は、日本全体としてはケネディラウンドを成立させるほうが望ましい結果になる、このように見ております。
  160. 林百郎

    ○林分科員 倉石さん、日魯ハインツだとか豊年リーバが、日本の企業家のほうから要望して資本の持ち分を増加してもらいたいという話をしたんだと言いますが、大きな資本が小さい資本を支配するときには、いつもそういう手を使うのですよ。それが資本主義の原則なんだ。いけなくなるまでじっと見ていて、頭を下げさせて、それならおれが救ってやろうといって指導権を握るのが資本主義の原則です。あなたのほうが間違っている。よくそこのところを考え直してもらいたい。それは、アメリカのそういう農業資本が日本に入ってきて、しかも合併がいま二十社くらいあるのです。それで、アメリカの資本の持ち分がだんだん多くなって支配してくると、日本農業全体が資本的にもアメリカに支配されることになる。その点をあなたよく考えてください。  それから、ケネディラウンドの問題がありましたけれども、先進国と言われている。これが後進国の食糧を見てやらなければいかぬといいますけれども、しかし、日本農業がいまこのような重大な時期になっているときに、東南アジアのよその国の農業を見るだけの余裕がある話でないのじゃないですか。ことに、一雨降れば日本一つの県くらいが水についてしまうというようなところを農業再建してやって、それまでは日本食糧を見てやる、その食糧日本農民がつくる食糧じゃなくて、アメリカから小麦を買って、自給率二六%という小麦をアメリカから買ってまでして、どうしてそんなところを見てやらなければいけないのですか。これはあなたも若干意見があったようですが、その点はあなた農林大臣としてもう一度考え直してみる必要があると思います。それは日本の資本家としてみれば、それをえさにして日本の資本を進出させるために利益があるかもしれないが、日本農業だけ守るということに徹すれば、あなたもう少し考え直す必要がある、私はそう思います。  最後に、私の意見ですけれども、やはり農民を農村に定着させるということ、これはわが党は早くから言っているわけです。やはり、その村に救農土木事業を起こし、政府や公の費用で地盤整備や道路の整備の仕事を起こして、そして農業基盤整備全体を国の費用で見てやる、そして仕事につかして、農民をどのようにして定着させるかということは、具体的にはもっとこまかいことがありますけれども、基本的に考える必要がある。それから、そのような農産物輸入については、どこの国をとっても、EECだってどこだってやっていることです。自国の農業を保護するためには、一定の関税を設けて外国農産物輸入に対して風に当てないようにして育成していくこと、これはやはりあなた十分考えなければならない。  それから、開発輸入については、これは日本農業の存亡の危機のときに、何もアメリカから小麦を買ってきてそれで見てやるとか、あるいは大事な国民の税金をそういう大きなリスクのあるところに農業開発という意味投資するということは、絶対やめなければならない、共産党はそう考えています。それがほんとうに日本農業を救う道だと考えています。  最後にあなたの意見を聞いて、時間がまいりましたので私の質問を終わりたいと思います。あなたは興奮していろいろ言われましたけれども、われわれもまた真剣に考えている。どうしてもあなたの考えている自民党の農業政策では日本農業は救われない、こう考えているわけです。
  161. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 林さんのお立場で御自分の意見を速記録に残せばいいということだけなら反論しませんけれども、私は、あなたの言われていることは、私が言っていることを全然そのとおりすなおに受け取らないから困ると言っておる。私どもは、やはり農業というものは原則としては守り抜かなければならぬというのがすべての政策の基本なんですよ。それが理想どおりにいっているとは、先ほど北山さんのお話にもあったとおり、私はあえて申しません。しかしながら、私どもは、調和のとれた形で日本産業というものを伸ばしていくためには、やはり構造政策をやって、そして経営規模を大きくすることによって農家所得を維持していきたい、こういうことなんです。同時にまた、日本農産物というものが国際的に比較をして決して劣らない体質を持つことによって維持していくことができるのだ。  そこで、すなわち、いま林さんの言われましたことと非常に違うところは、農業というものはいま定着しておる人々が全部農業におらなければならぬという、そういう見解がおかしいと私は言っている。農業というものを維持して、農家所得拡大して、他産業に比べて劣らないものにするというためにこそ構造政策が必要なんで、このことはすでに農基法についていろいろ御意見もありますけれども、現に社会党の言っておられることでも、そういう点においてはりっぱに……。   〔林分科員「じゃ、農業があって農民がないことになるじゃないか」と呼ぶ〕
  162. 野原正勝

    野原主査 発言は許可を得てやってください。
  163. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 なおいずれ私は機会を見てお話をする機会もございますけれども、私ども政府といたしましては、現在の農業を守り抜くために全力をあげて努力をいたしておる。そのことは共産党の林さんといえども反対をする余地がない、こういうことを最後に申し上げて終わりたいと思います。
  164. 野原正勝

    野原主査 以上をもちまして、昭和四十二年度一般会計予算及び特別会計予算中、農林省所管に関する質疑は一応終了いたしました。  次会は、明四月二十五日午前十時より開会し、通商産業省所管について質疑を続行することといたし、本日はこれをもって散会いたします。    午後四時十分散会