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1967-04-20 第55回国会 衆議院 予算委員会第三分科会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十二年四月二十日(木曜日)    午前十時十一分開議  出席分科員    主査 野原 正勝君       亀岡 高夫君    松浦周太郎君       岡田 利春君    角屋堅次郎君       金丸 徳重君    北山 愛郎君       芳賀  貢君    華山 親義君      米内山義一郎君    斎藤  実君    兼務 加藤 清二君  出席国務大臣         農 林 大 臣 倉石 忠雄君         通商産業大臣  菅野和太郎君         国 務 大 臣 松平 勇雄君         国 務 大 臣 宮澤 喜一君  出席政府委員         行政管理庁行政         管理局長    大国  彰君         北海道開発庁総         務監理官    小熊  清君         北海道開発庁主         幹       窪田  譲君         経済企画庁水資         源局長     松本  茂君         農林大臣官房長 檜垣徳太郎君         農林大臣官房予         算課長    大河原太一郎君         農林省農政局長 森本  修君         農林省農地局長 和田 正明君         農林省畜産局長 岡田 覚夫君         農林省園芸局長 八塚 陽介君         農林水産技術会         議事務局長   近藤 武夫君         食糧庁長官   大口 駿一君         林野庁長官   若林 正武君         水産庁長官   久宗  高君         水産庁次長   山中 義一君         通商産業大臣官         房会計課長   矢島 嗣郎君         通商産業省公         益事業局長   安達 次郎君         気象庁長官事務         代理      小田部 康君         労働省職業安定         局長      有馬 元治君  分科員外出席者         北海道開発事務         次官      堂垣内尚弘君         外務省欧亜局東         欧課外務事務官 秋保 光孝君         厚生省公衆衛生         局栄養課長   坂村 堅太君         大蔵省主計局主         計官      嶋崎  均君         農林省大臣官房         技術審議官   原  政司君         通商産業省企業         局産業立地部長 馬場 一也君         海上保安庁警備         救難監     猪口 猛夫君         気象庁予報部長         期予報管理官  和田 英夫君         日本国有鉄道副         総裁      磯崎  叡君     ————————————— 四月二十日  分科員高田富之委員辞任につき、その補欠と  して岡田利春君が委員長指名分科員選任  された。 同日  分科員岡田利春委員辞任につき、その補欠と  して金丸徳重君が委員長指名分科員選任  された。 同日  分科員金丸徳重委員辞任につき、その補欠と  して華山親義君が委員長指名分科員選任  された。 同日  分科員華山親義委員辞任につき、その補欠と  して米内山義一郎君が委員長指名分科員に  選任された。 同日  分科員米内山義一郎委員辞任につき、その補  欠として高田富之君が委員長指名分科員に  選任された。 同日  第四分科員加藤清二君が本分科兼務となった。     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和四十二年度一般会計予算農林省所管  昭和四十二年度特別会計予算農林省所管      ————◇—————
  2. 野原正勝

    野原主査 これより予算委員会第三分科会を開会いたします。  昭和四十二年度一般会計予算及び特別会計予算農林省所管を議題といたします。  これより質疑に入ります。質疑の通告がありますので、順次これを許します。加藤清二君。
  3. 加藤清二

    加藤(清)分科員 けさの新聞並びにテレビのニュースを拝見いたしますと、西独アデナウアー首相が御逝去されたということでございます。これについてわが党の国対でもただいま検討をいたしましたが、いずれにいたしましても、弔意の誠をささげなければならぬと存じますが、閣議におかれては一体これに対してどのような措置をとられましたか。まず、西独に対する敬意の意味で承りたいと存じます。どなたでも……。
  4. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 加藤さんのお話アデナウアー西独首相の御逝去については、われわれもつつしんで哀悼の意を表すると同時に、まことに残念だと思います。しかし、電報がまだ入って——先新聞に出まして、政府としてはそのことについて閣議として御相談を申し上げるという時間もございませんので、別にまだ何も決定いたしておりません。
  5. 加藤清二

    加藤(清)分科員 わが党といたしましては、日本国民並びに日本国会アデナウアー氏に対する弔意の誠を表現するにふさわしい具体策を至急政府側においては検討され、葬儀その他の参加についても、それにふさわしい方を直ちに決定されて派遣されることを要請して、この問題は次に進みます。  次にお尋ねいたしますが、中部九県下の開発促進するための法律が、先年の国会におきまして、これは与野党一致し、住民の意思が結束されてできあがったわけでございます。この問題につきまして、通産農林経企等関係主務官庁におかれましては、この促進法に沿った具体策を樹立され、それぞれそれを本年度四十二年度予算予算化されているはずでございますが、その内容をまずお示し願いたい。これは退席なさる方もおありかと思いますから、お急ぎの方からどうぞ。
  6. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 この中部圏開発整備計画については、まだ決定されていないので、したがいまして、私どものほうといたしましては、電力工業用水関係、水の関係もありますけれども、もちろん、そういう問題については協議して決定することに相なる、こう思っております。
  7. 加藤清二

    加藤(清)分科員 まだ決定されていないとおっしゃると、それは四十二年度予算には実行予算おろか調査費も何も計上されていない、こういうことでございますか。
  8. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 中部圏開発整備計画自体については、私ども所管ではありませんが、問題は、私のほうとしては、電力工業用水ということについては、まだ四十二年度については全然何も予算を計上いたしておりません。
  9. 加藤清二

    加藤(清)分科員 全然手がついていないといったら怠慢ですよ。それは促進じゃない、遅延ですよ。お話にも出ていないのですか。そういう状態だから、中部電力発電をしようと思っても知多半島では二年もおくれ、いまの尾鷲の海岸では三年もおくれて、今度は原子力発電をやろうとすれば、調査に行ってもおっぽり出されるということになるのですよ。一体何をやっているのですか。調査もしなければ、あそこは名古屋通産局という出店まであるじゃないですか。何をやっておるのですか。促進法というのは、これは野党が無理押しで押しつけた法律じゃございませんよ。益谷御大陣頭指揮でやられたことなんだ。皆さんよくおわかりのはずなんです。全然ないのですか、なければいつやるのです。
  10. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 私のほうの所管電力の問題については、電力の問題は予算関係ありませんから、したがいまして、四十二年度予算には何も計上いたしておりません。
  11. 加藤清二

    加藤(清)分科員 じゃ工業用水はどうなっている。
  12. 馬場一也

    馬場説明員 お答え申し上げます。  ただいま大臣よりお答え申し上げました中部圏整備計画工業用水との関係でございますが、ただいま大臣が申し上げましたように、中部圏整備計画そのものはまだ関係のところで検討されておるのでございます。したがいまして、工業用水関係を申しますれば、中部圏整備計画にのっとった将来長期の見通しに立っての工業用水水資源関係というものをどういうふうに予算化していくかという問題は、整備計画と並行して進められておるものと存じておりますが、ただ、実際現実は、その中部圏整備計画以前から、中京地区におきます工業用水確保のためにいろいろ愛知県その他におきまして工業用水計画が進められておりまして、この事業費につきましては、昨年度に引き続きまして今年度もそれぞれ予算継続費として組まれております。なお、これは中部圏整備計画ができましたときに、それとの関連でどういうぐあいになるのかわかりませんが、西三河の工業用水を供給いたします水源といたしまして、矢作ダムというのが多目的ダムとしてつくられることになっておりますが、この矢作ダムには工業用水もアロケーションを受けておりますので、工業用水が実際に引かれますのは相当先のことになりますが、水源確保という意味では工業用水路関係をいたしますので、そのために、水源に乗っかるための補助金といたしまして、本年度から矢作ダムに大体六千七百万円という将来の工業用水水源に充てられるための水源費補助という予算は計上いたしております。
  13. 加藤清二

    加藤(清)分科員 大臣にお尋ねする。中部圏開発促進法が行なわれない以前においても、なおこの地区工業用水飲料用水不足でございます。非常な不足をしておる。したがって、地盤沈下が激しい、こういう状況になっておる。最もひどいのは、農業用水として用意をされたところの愛知用水の水が、工業用水に別に逆用されておる。また、その価格の問題において、だんだんあとで説明しますが、地元においてはとんだ問題が起きておる。つまり言えば、工業用水飲料用水ともに非常に払底している。ただ、農林省のほうは歴史が長いゆえか、かんがい用水については非常な御努力をいただいておりまするので、かんがい用水から工業用水に水を回している。これが実情なんです。農業予算でできたところの用水工業用水のほうに盗用しているといっても差しつかえないんだ。したがって、これは、今後の開発促進されるということは、農業開発されるよりは、むしろ工業開発のほうが多いと思う。同時にまた、工業開発されれば住宅がふえる。住宅がふえれば飲料用水、同時に下水、これが必要になってくるはずなんです。つまり、上下水道が必要になってくるはずなんですが、一番大量に一括して使うのは工業用水なんです。それの将来計画が全然できていないなどというようなことでは怠慢と言わざるを得ないのです。至急これについて手を打たなければ法律違反と心得るが、一体大臣はどう考えるのか。
  14. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 加藤委員も御承知のとおり、中部圏開発整備計画につきましては、関係中部圏開発整備本部というものがありまして、そこで関係県でいろいろ協議をいたしまして、その上で決定をするのであります。いま協議中でありまして、その決定に基づいて工業用水なりあるいは飲料水などの計画が樹立される、こう思うのです。いま関係県で協議中でありますからして、私のほうとしては、いままだ決定しないものに対して工業用水をどうするこうするという計画は、まだこちらで立てるわけにはいきません。
  15. 加藤清二

    加藤(清)分科員 決定しない前にすでに不足しているということを私は申し上げているのです。決定すればなお不足するということなんです。したがって、この工業用水確保については、工場ができてしまってから、さあ水、水というものだから、かんがい用水を引っぱっていかなければならないことになる。事前になぜ工業用水必要量電力必要量試算されて、そうしてそれの試算に見合うような計画が立てられないのか。それは怠慢ですよ。冗談じゃない。地元から上がってきたからと言っておったって……。  答弁がないから、次に進みます。それでは、地元から上がってきたら、それをまるのみにいたしますか、受けて立つのだったら。
  16. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 地元から、大体協議がまとまるについては、もちろんこちらでも相談がありますからして、したがって、決定したものについてはそのとおりにやります。
  17. 加藤清二

    加藤(清)分科員 まるのみにしますね。
  18. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 決定したとおりやります。
  19. 加藤清二

    加藤(清)分科員 決定とは、地元決定どおり……。
  20. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 そうです。協議会決定したとおりやります。
  21. 加藤清二

    加藤(清)分科員 わかりました。  それでは、飲料用水についてもお尋ねしたいのですが、主務官庁厚生関係が来ていらっしゃらないようでございますので、次に進めますが、この問題について経企庁としてはどうお考えでございますか。どのように対策が立てられておりますか。中部圏開発促進法に伴うところの計画はありやいなや。予算措置は行なわれたかいなか。もしないとすれば、それはいつからこの調査にかかられますか。
  22. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 従来から、木曽川の系統では木曽川総合用水三重用水、それから長良川河口せき、その三つ仕事をやっておるわけでございます。それの関係予算も本年度も計上されております。で、中部圏開発整備計画が今後できてくるわけでございますが、大体私どもは、この従来の仕事をそのまま進めていくということが、できてくるであろう計画の線におそらく沿っているであろうと考えておるのでございますけれども、もしそうでないときは、それに対応して調整をいたさなければなりませんが、おそらくはやはりこの三つ仕事を進めていくということが基本ではないか、そう思って従来やっておりますし、今後もそうしたいと思っておるのであります。
  23. 加藤清二

    加藤(清)分科員 経企庁長官数字に明るいお方でございますから、よくおわかりのことと存じますが、大体日本産業経済を発展させるにあたっては、非常に前進のしかたがびっこになっているのですね。工場だけが何より先にできる。ところが、そこに住宅がない。かりに住宅があったとしても、水道、下水がない。それが今度行なわれたとしても、道路が整備されていない。道路が整備されたとしても、今度はその子弟を教育する教育施設が、十年たってもなお行なわれてない、それが今日の東海製鉄実態なんです。川崎製鉄の実態なんです。そのことは、やがて工場生産を能力以下に停滞させる原因になっておるわけなんです。このことは、さきの藤山長官のおりも懇々これを長官みずからがこぼし、みずからが座談会で言い、みずからが経済雑誌に発表して、そのびっこの進み方を是正せんければならぬ、こういうことを宣伝しておられたはずなんです。そのあとを受けて立たれたあなたでございます。頭のいい宮澤さんの、バッジのないうちからやいのやいのと重宝がられたあなたのことでございます。したがって、その要望にこたえるべく経企庁としては計画が進められていることと私は信頼したいのです。いかがですか。
  24. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 及ばずながら、そういうつもりでやっております。
  25. 加藤清二

    加藤(清)分科員 それでは、中部地区における水の問題についてはいかがでございますか。
  26. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 その整備計画は、国務大臣を長とする整備本部目下検討をしておられるわけでございますが、水については、おそらくは水資源確保という点では、ただいま私どもが従来から進めておりますような基本計画で大体いいのではないか、それが取り入れられることになるのではないかと考えておりますけれども、しかし、それに加えるものが出てくれば、それに即応して私ども計画もそのようにやっていくということになるのではないか。おそらくは、ただいまやっておることを進めていくことが、大体基本的にはどなたが考えられてもいいのではないかと思っております。
  27. 加藤清二

    加藤(清)分科員 促進法ができない前でさえもなお水は足りなかったのです。今度その促進がされる。政府のてこ入れで東京地区関西地区、この中間の産業地帯が盛り上がってくる、こうなりますると、ますます電力、水は不足がち、こういうことになるわけなんです。ほかのものはよそから持ってこれるのです。船で持ってこれるのです。まさか水だけは船で持ってくるわけにはまいりません。だから私は、船で持ってこれるもの、空から運び込めるものはあとにして、その地区でまかなわなければならない不可欠な条件を持った水についてだけお尋ねしているわけなんです。この水を中部地圏でまかなわなければなりませんが、将来の開発は必要であるのかないのか、ありとすればどの程度必要なのか、この点はいかがです。
  28. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 専門家の大局的な話を聞きますと、関東すなわち利根川、それから京阪神淀川でございますが、それに比べますと、中部圏水資源の点においては三川を持っておりますために、開発さえすればその資源はある、こういう見通しだそうで、ございます。それで、専門家の意見によりますと、昭和五十年度目標とする新規需要については、おそらくは上水、工水農業用水合わせまして毎秒六十トンないし七十トンであろうというふうに推定をしておるようでありますが、それらはいま申しました三つの、木曽総合用水三重用水長良川河口ぜき、これの仕事を進めてまいるということを中心にしまして、なお将来に必要な開発を進めていく、こういう方針だと考えております。
  29. 加藤清二

    加藤(清)分科員 その方針はわかりますが、現在用意されている長良川河口ぜきをはじめとする、あるいは飛騨川のダム等をはじめとするその計画だけで、はたしてよろしいものかどうか。特にあなたは毎秒六十トンとおっしゃられましたが、それだけで中部圏開発に必要な水はまかなえるのかどうなのか、この点の見通しを。  それから通産大臣にお尋ねいたしまするが、工業用水の将来の需要増、これは一体どの程度に見込んでいらっしゃいますか。
  30. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 五十年度目標にいたしましたただいまのは推定でございまして、はっきり最終的にそうだという結論が出ているわけではございませんけれども、上水道が二十トンないし二十五トン、工業用水が三十五トンないし四十トン、農業用水が五トンくらい、総計六、七十トンであろうという大まかな見通しを持っておるようでございます。しかし、この点は、やはり中部圏整備開発計画というものができます段階で、もっとしっかりした需給の見通しを立てなければならないと思いますので、ただいま申しましたのは一種の推定で、ございます。それも五十年目標推定でございますから、現実中部圏計画を立てまして、どうも足りないというようなことであれば、これはそれに対応する開発計画をまた考えなければいけない、こういうことであろうと思います。ただいまのところはそういう推定をしておるようであります。
  31. 加藤清二

    加藤(清)分科員 この試算は、実はわが党の政審会でも綿密にやっております。したがって、わが党の試算したものとあなたのほうの計画を照らし合わしてみて、論を進めるのが妥当だと思いまするけれども、時間の関係抽象論で進めていきまするが、通産大臣、今後の開発に相マッチするには、工業用水通産省としてはどの程度要望なされるかということ、これは特に承っておきたい。と申しまするのは、かんがい用水の中にあとからあとから割り込んでこられるのが過去の例だからで、ございます。
  32. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 昭和五十年を目途といたしまして、大体岐阜、愛知三重三県でそれぞれ工業用水が大体どれだけ要るかという調査をいたしておりますが、概算では、先ほど経済企画庁長官が言われたように、六十トンのうち、約半分以上は工業用水として必要なのではないか、こう考えております。
  33. 加藤清二

    加藤(清)分科員 それはそのはずでしょう。東海製鉄一社だけでもって毎秒三十トン、愛知用水の約半数はそちらに持っていくのです。それで、今後なおここだけでも増設するというのだから、鉄の増産をするというのですから、これはますます工業用水が必要になってくるので、農業用水目的としてできたところの愛知用水はほとんど工業用水に使われてしまうという結果になるのですから、毎秒三十トン程度工業用水が今後の需要が満たされるという試算がもし行なわれたとしたら、そのスケールは、もはや中部圏開発整備法によらずに、ここ十年を出でずしてそれ以上になるという数字を私のほうは持っております。したがって、これは、いま毎秒三十トンでよろしいなんということはもうお取り消しになったほうがおりこうですよ。十年先になって、申しわけありませなんだと言わなければなりませんから。まあ、それはいいとして、かりに毎秒百トンとしましても、木曽川の水は十一億トンもロスして流れておるのです。したがって、これを利用すれば中部地圏だけは水の心配がない。したがって、中部地圏に今後の工業開発のウエートを置こう、これが東大の学者のみならず、世界のその道の権威が調査された結果の結論なのです。したがって、開発を主管するところの通産省としては、これはよほどふんどしを締めてかかってもらわなければならぬと思いますが、開発をするとすれば、これは淀川ではないはずです。利根川でもないはずです。たよる先は木曽三川と心得ますが、これは経企庁長官いかがですか。
  34. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 これは申し上げるまでもないことでございますが、先ほど六十トンないし七十トンと申し上げましたのは、今後の新規需要でございます。  それで、お尋ねの点は、先刻申し上げましたように、専門家はやはり利根川淀川供給力、それにたよっております。現在の需要というものから考えますと、開発いかんによってはおそらく木曽三川が一番供給力を持っておる、そういうふうに見ておるように私ども聞いております。
  35. 加藤清二

    加藤(清)分科員 これは全く同感でございます。それじゃ通産大臣、もうこれでけっこうです。  農林大臣にお尋ねいたします。中部圏開発整備法によりますと、農業用水の今後の需要増、これはどの程度でございましょう。同時にまた、農業開発食糧輸入が二十二億ドル、八千億円にもなんなんとするというこういうやさきに、この地区では美田が次から次へと工場に変わり、住宅に変わりつつある。ますます自給自足のバランスをくずしつつある。こういう時期において、一体農林省としては、この東海、北陸の美田を今後どうするか、反当収穫を上げるには一体どうするか、それぞれ計画が行なわれていることと存じまするが、特に今回この席では、水は今後かんがい用水に必要であるのかないのか。必要でありとすればどの程度必要とされるのか。この点について……。
  36. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 中部圏開発につきましては、ただいまのほかの閣僚が申し上げましたように、協議会から成案が出ますれば、それに従って実行していく、こういうことでありますが、農林省といたしましては、前々からその趣旨に沿いまして、ただいま御指摘のようなわれわれの考慮を必要とする血で、関係県、たとえば長野県、静岡県、愛知県、そういう圏内に入っております地域に対して、水系数が十二水系地区は二十一地区でございます。すでに着工中のものが十五地区でございまして、調査中のものが三地区、完了いたしておる一つのものは愛知用水でございます。そこで、農林省といたしましては、いまここでお話のございましたような豊川用水が完了いたしました暁においては、いまお話のございました木曽川水系についてもこの用水を着工いたしたい、そういうふうに一応考えておるわけであります。あの地区は、申すまでもなくおわかりのとおりに、非常に農林関係にとっては大切な豊田でありますから、どうしてもこれをあとう限りわれわれは確保してまいりたい、こういう方針で進めておるわけであります。
  37. 加藤清二

    加藤(清)分科員 いみじくもいま農林大臣通産大臣と同じように、地元協議会要望があればそのとおりに、こう言われましたが、経企庁長官はどうお考えでございましょうか。地元要望があれば、開発についてはその線に従って額面どおり実行すると通産大臣は言われたんですね。ところがいま農林大臣もそうおっしゃられたんですね。ちょっと中部圏の人だから反対は言いにくいですね。あなたはどうなんです。
  38. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それはおそらく非常に含意の深いお話ではないかと思うのでございますが、実際需要供給の関係から申しまして、さらに開発しなければならないということであれば、開発をしていくべきだと思うのでございます。その開発の方法をどういうふうにしてやっていくかということは、また別途の問題であろうと思います。
  39. 加藤清二

    加藤(清)分科員 地元要望を額面どおり受け取って、これを実行されるやいなやと言いましたところ、そのとおりいたします。もう一度私は念を押しました。そうしたら、そのとおりやりますと通産大臣はおっしゃられました。そこで、もう一度あなたにお尋ねいたします。経企庁長官としてはいかがでございますか。
  40. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それはどういう要望が出てくるかということは将来の問題でございますから、おそらく通産大臣の答えられました意味は、現実に将来の需要があるということであれば、その需要を満たすだけの供給はしなければならない、そういう意味での地元結論というものはできる限り尊重していく、こう言われたものと私は了解をしておるのでございます。
  41. 加藤清二

    加藤(清)分科員 あなたはどうですかと聞いておる。通産大臣からは私が質問して私が聞いたのですから、そのニュアンスの.取り方をあなたに限定されたり、指導を受けたりする必要はないと思います。私はあなたの意見を聞いておる。
  42. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 通産大臣の答弁をそういう意味に私は了解をいたしまして、その点ならば私も大きな異見は持っておらない、こう申し上げております。
  43. 加藤清二

    加藤(清)分科員 農林大臣にもう一度お尋ねいたします。将来この中部九県と申しましょうか、中部地区における農業かんがい用水、あるいは農産加工用の水、あるいは農家の生活改善からくるところの上下水道の必要、いま農家でも愛知県あたりではみんな水道を使っておるのです。それが農家の生活改善の一つのポイントにされておるわけです。そういう観点からいって、上下水道、農業かんがい用水等は、農林省としては開発にあたって増量をされるかされないか、これを聞いておる。
  44. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 ちょっとお尋ねよくわかりませんでしたが、新しく開発すればという意味でございますか。
  45. 加藤清二

    加藤(清)分科員 中部圏開発促進法という法律ができて行なわれる。これは主体は工業ではある。しかし、工業開発されれば住民がふえる。住民がふえれば野菜の需要はもっとふえる、こういうことです。いまでも足りない。いまでも移入されなければならぬ。そういう立場にあって農業開発はどうなるかという点と、もう一点は、農民の生活改善によって上下水道の水の利用はふえると思うのです。井戸からくみ上げておったのがだんだん水道にかわりつつあるから、したがって、水の需要はふえると思いますが、農林省としては、農業かんがい用水並びに飲料用水下水用水等は今後需要がふえると見込んでおられますか、そうではございませんかとお尋ねしておる。
  46. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 いまお話のございました中部圏のうちの愛知県、これはいまお話のように中心になってまいりますから、工業も伸びてまいりましょう。そういう意味から、いま出しておる以外に五トンの水は必要である、このように思います。
  47. 加藤清二

    加藤(清)分科員 それでは今度は行政管理庁にお尋ねいたしますが、おたくのほうでは公庫、公団の整理が進められているようでございます。まず、その趣旨は私はごもっともだと思います。趣旨は賛成でございます。特に任務が終わったものとか、あるいは国税、国民の金をむだ使いするというようなものは、これは生かしておく必要はないと心得ます。そこで、整理統合を進められるにあたっての基準をまず第一番にお尋ねしたい。基準はどうなっておるか。
  48. 松平勇雄

    ○松平国務大臣 行管では、特殊法人について実態調査を実施する考えで、おおむね今年の八月末ごろまでに調査結果をとりまとめまして、行政改革本部を中心にして検討を行なう方針でございます。この場合、統廃合の具体的な基準についても、御承知のような臨時行政調査会の改革意見がございますので、その趣旨を十分にしんしゃくしてきめていきたいと考えております。
  49. 加藤清二

    加藤(清)分科員 私は基準をお尋ねいたしているのでございます。
  50. 松平勇雄

    ○松平国務大臣 大体の基準は、先般行政監理委員会、それから去る四月十八日に行政改革本部で方針をおきめ願いましたが、それはまず第一に、ただいまお話がございました、設立当初に目的とした機能を現実に果たしていないものは廃止する。第二は、同種の業務を行なうものがあるときは統合する。第三は、財務的または経営的に自立できる運営能力を持たないものは本省の付属機関に改組するとか、またはこれらの業務を地方公共団体に委譲する。四は、その他の特殊事情。以上四つの基準を掲げまして整理統廃合を行なうというように考えております。
  51. 加藤清二

    加藤(清)分科員 それではお尋ねしますが、いま通産省経企庁、それから農林省、各主務大臣にお尋ねをいたしまして、中部圏開発に伴って水の有効利用はますます増加する見込みである。その数量は増加量だけでも毎秒六十トン以上、私のほうの政審会試算では、これは六十トンではなくて、毎秒百トン以上に相なっておる。さて、それは工事をしなければ降ってきません。その工事は一体どのようにさせることが、国家の費用をより削減させ、その工事をよりりっぱに完成させる道であるとお考えでございましょうか。だれかにやらせなきゃならぬですね。長野県に降った水、岐阜県に降った水を利用するところへ運ばなきゃならぬでしょう。
  52. 松平勇雄

    ○松平国務大臣 ただいま行政管理庁といたしましては、水資源の総合的な開発と利用の合理化を促進するために、水資源開発利用に関する行政監察を実施することになっておりまして、今期それを行なうことになっております。そうして限られた水資源を各方面に有効適切に使っていただきたいというような考えのもとに、この調査を行なっておるわけでございますが、ただいま調査中でございまして、実際問題としてどういうふうな、たとえば、水資源公団にそういった問題をまかせてやるかどうかというようなことも含めて検討いたしております。いま現在のところではまだ結論は出ておりません。
  53. 加藤清二

    加藤(清)分科員 現在この地区で水を有効利用するために行なわれている状態は、通産大臣は帰られましたけれども工業用水、特に電力、水力発電については通産省が管理をしておるのでございます。水資源ができたからというてそれを手放そうとはしておりません。飲料用水は厚生省がこれを管理いたしております。水資源木曽川水系の指定が行なわれたからというて、厚生省はこれを手放そうとはしておりません。農業かんがい用水主務官庁農林省でございます。その農林省かんがい用水を手放そうとはしておりません。ここが問題でございます。あなたは水資源とおっしゃられましたが、過去、現在の開発の実情並びに主体、これがどうあって、将来これをいかにしたならばより有効であり、より国家利益の目的に合致するかの問題について御検討なさったことはございますか。私ども地元ですから、生まれ落つるときから、先祖代々から水については一生懸命なんです。あなたの先祖の徳川もそうなんだ。
  54. 松平勇雄

    ○松平国務大臣 いま仰せのような問題がございますので、慎重に検討いたしまして結論を出したいと考えております。
  55. 加藤清二

    加藤(清)分科員 慎重ではわからぬですね。そうすると、目下のところは海のものとも山のものともわからぬと、こういうことでございますか。
  56. 松平勇雄

    ○松平国務大臣 先ほど申し上げましたように、いま監察をやっておりまして、その結論の出次第申し上げることにいたしたいと思います。
  57. 加藤清二

    加藤(清)分科員 農林大臣に承ります。愛知用水公団の第一条の精神は何でございましたか。
  58. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 第一条、「愛知用水公団は、木曽川水系及び豊川水系水資源をそれぞれ総合的に開発してその利用の高度化を図り、食糧その他農産物の生産の増進と農業経営の合理化に資するため、政府及び国際復興開発銀行から資金の融通を受け、大規模なかんがい排水施設の新設及び管理、開田、開炉等の事業を行うことを目的とする。」、以上であります。
  59. 加藤清二

    加藤(清)分科員 そのとおりでございます。ところが、この目的が、だんだん行なわれている間に多目的に変わりました。そうして愛知用水公団のつくりましたところの愛知用水並びに現在着工中の豊川用水、これは必ずしも農業かんがい用水並びに農民の飲料用水だけではございません。むしろ、先ほど通産大臣が言われましたように、海製鉄をはじめとする工業、これに利用される量のほうがだんだん多く変わりつつある。そうして農業用水工業用水需要のバランスが目的とは変わりつつあるのです。私はそれを問題にしておるのではございません。お百姓さんのつくったものでも、工業のほうでより有効に使っていただける、それが国家目的であるということならば、何も反対ではございません。しかし、今後需要がますます伸びるということに相なりますと、木曽三川水系はますます開発が必要と相なってくるわけでございます。そのおりに、愛知用水公団の任務はこれで終了したと考えられましょうか。それとも今後この技術、このチームワーク、これをますます利用したほうが、農業並びに国家目的に合致するものであるとお考えでございましょうか。まず農林大臣に承りたい。
  60. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 愛知用水公団につきましては、その目的はただいまここで申し上げました第一条に示すとおりで、ございますが、愛知用水公団について、行政管理庁のほうでいまもちょっとここで御説明がございましたが、私どもといたしましては、愛知用水公団が三十六年度から実施しております豊川用水事業は、御承知のように四十二年度に終了して、四十三年度から通水を行なうとともに、農民負担金の賦課徴収を行なうこととなっておるわけであります。それで、豊川用水事業終了後の同公団の将来につきましては、同公団の経験と組織はきわめて貴重なものであるとの観点から、今後ともこれを分散させることなく、一括して積極的に活用する方途を講じて、現在周辺地域において四十一年度から農林省直轄事業として行なっている木曽川総合用水事業等は、同公団が実施主体となることがきわめて適当であるとの地元要望も強いわけでございます。他方、世銀の借款返済等の関連で、愛知用水事業の農民負担金の徴収を早急に軌道に乗せる必要がございますが、これには受益面積の減少、それから都市用水の転用の問題等、あわせて解決すべき問題が幾多からんでおるのであります。そこで、愛知用水公団につきましては、このような地元の強い要望等を十分考慮いたしまして、新規事業を引き続き存続させることがきわめて妥当であるという方向で農林省は対処いたしておるわけであります。
  61. 加藤清二

    加藤(清)分科員 としますると、農林省としては、愛知用水を端的にいえば存続させる、こういうことですね。しかもその存続の理由は、非常に高度な技術を持っている、過去の実績はよかった、この技術、チームワークを今後の開発に利用すれば、それがより高度な国家目的に合致する、しかるがゆえに存続させる、こういうお考えでございますね。もう一度念を押しておきます。
  62. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 そのとおりでございますが、技術云々の問題で私ども若干考えさせられますのは、愛知用水についていろいろな意見が出ておりますことの中で、すでに完了いたしたものを地方庁に管理を委譲しろという意見が出ております。こういうようなことは、農業用水あとその効果を減殺させないために、一体それでうまくいくだろうか、こういうことについて、私はもう少しそういう論者の検討を願いたい、こう思っているわけでありまして、そのような意味におきまして、愛知用水につきましては、先ほど申し上げましたような考え方でただいまは対処いたしておる、こういうことであります。
  63. 加藤清二

    加藤(清)分科員 完了したものについての地方自治体委譲の問題については、あとで論を進めたいと思いまするが、問題は、愛知用水が生まれるにあたっては、たいへんな歴史があるわけなんです。徳川時代にさかのぼるのですよ。松平さん、これは事実なんです。しかも愛知、岐阜、長野、この三県にまたがる問題なんです。愛知県に委譲するというだけで事の足りる問題ではございません。すなわち、雨の降るのは長野県、岐阜県であり、通ってくるのは岐阜県であり、使うのは愛知県、こういうことでございまするから、したがって、この間に県民同士のいさかい、犠牲を背負う人の問題等々がございまして、これは時の県知事たちのみならず、もういまはなくなられましたが、大野伴睦老までが先頭に立ってこの推進に当たったのです。しかし、あの人といえども最初は反対であった。なぜ反対かというたら、木曽川は常に愛知県側が得して、被害だけを岐阜県側が受けたんだ。それはかつて栄えた岐阜を滅ぼして、名古屋にその主体を置くところの徳川の義直公以来の政策であった。しかるがゆえに、尾張が親藩になったら、とたんに木曽川の堤は東側が三寸高うなった。その結果は、洪水だけは常に岐阜県側が受けた。利水のほうは常に愛知県が受けた。これは不合理である。したがって、これを是正せんければならぬ、これが愛知用水をつくるときの一つのポイントになっておる。ごもっともでございますということで、そのために、愛知用水用水路を引くだけでなしに、頭首工から堤、ダムから下のほうの堰堤から、いわゆる用水だけから考えてみたら、余分な国家費用がずいぶん使われておる。しかし、それは平均化するための問題でございまして、これは結果からいえばけっこうなことであると私どもは思うておるわけでございます。  そういうものを水資源公団に移行させるやいなやの問題については、歴史が古いし、問題が複雑であるし、諸官庁がなわ張りを主張するし、したがって、歴代の大臣はそのつど意見が変わったものでございます。これは本会議の記録を読んでいただいたらよくわかるはずです。あるいはこの問題をあれするときには、必ずもう一人厚生大臣も来ていただいて論議を進めたものでございます。一例を言えば、河野農林大臣は、自分が農林大臣のときには、これは絶対に永続させるんだ、水資源ができてもこうするんだ、こういう話だ。ところが、自分が建設大臣になられますと、今度意見が変わってきた。建設省にやらせるんだ。ところで、水資源ができて、これを経済企画庁で音頭をとるということになりましてから今日に至るまで、その帰属は決定されずにおるわけなんです。そういうものを単純に——その行政監理委員会の意気たるやもって壮とすべし、けっこうでございますが、どの程度研究されて、どの程度結論、どの程度の条件のゆえにかくしなければならないという結論に到達したのか、地元側では一向にわからない。したがって、愛知県議会をはじめとするその他その他は、全部廃止すること相ならぬ、あくまで存続である、任務は終わったんではない、こういう意見でございます。木曽三川の水利事業、治水事業はこれからのほうが問題になってくるわけです。いま終わったなどとはこれは噴飯ものなんですよ。だれがそういうばかなことを言っているんです。名前を聞きたいんだ、ほんとうは。だれがそんなばかなことを言うのか。それは東京で机の上で月給だけよけいもらって論議しておったら楽なものですよ。一度実地調査をやってごらんなさい。長野県の山奥に行って、二子持ダムがいいのか、それとも牧尾ダムがいいのか、これを検討して、ごらんなさい。これだって二つ合わせたら毎秒六十トンはおろか、百トン近いものがとれるはずです。へたな横やりを入れるものだから、当然わいて出るはずの水がわかなくなってしまうんだ。よく検討してもらいたい。
  64. 松平勇雄

    ○松平国務大臣 愛知用水公団につきましては、ただいま加藤委員お話がございましたが、まず臨調の答申をわれわれは尊重して、それに基づいて行政監理委員会がその実行の推進に当たっております。  臨調の答申では、御承知のとおり、愛知用水公団の豊川用水が四十二年度には大体完了する予定でございますので、それが済んだならば借り入れ金の償還事務を水資源公団に吸収するのがいい、また工事終了後の施設管理事業は地方公共団体に委譲すべきものと考えるというような答申が出ておりました。さらに昭和三十六年十月三十一日の参議院建設委員会の附帯決議では、愛知用水公団の事業は、水資源公団の発足の後可及的すみやかにこれを統合するというふうになっておりまして、また衆議院建設委員会におきましても、昭和三十七年二月二十八日の委員会におきまして同じような趣旨の附帯決議がついておるわけでございます。行政管理庁といたしましては、先ほどちょっとお話し申し上げましたように、今期の監察目的といたしまして、水資源開発利用に関する行政監察をやっておりまして、いま仰せのようなあらゆる問題を含めて監察をいたしまして、その結果によって勧告を申し上げたいというふうに考えております。
  65. 加藤清二

    加藤(清)分科員 時間が迫ってきましたから、簡潔にお尋ねいたします。  私の考え方としましては、あるいは中部九県下でこの問題を討議しました与野党の議員の間の意見といたしましては、木曽三川の治水、利水、この事業はまだ終わったのではない、これからのほうが大きいのだ。特にこれをもっとしぼって、愛知用水公団関係の発生するときの理由からいっても、なお残りは管理の事業だけではない。すなわち、岐阜県側のほうが堤が三寸低いではないか。これも直せ、こういう大野伴睦翁の意見もまだ実行に移されていないわけです。三寸高くするのがいいのか、あるいは低くても護岸工事をがんじょうにするのがいいのかは今後の研究に待つとしても、まだそれは行なわれていない。それから今後毎秒六十トンないしは百トン、この水を利用するにはやはりダムをつくらなければならない。この事業は残っているわけです。    〔主査退席、亀岡主査代理着席〕 したがって、任務が終わったとは考えられない。愛知用水公団法第一条にうたってあるところの木曽水系並びに豊川水系、これの総合開発工事は終わっていないわけだ。ただ順番に予定していくのですから。経企庁だってそうです。何をやらしたって百年先まで事業をあてがうということはあり得ないことですから、さしあたって予定された事業が終わった、こういうことだけなんです。目的は達成されていないわけです。十分御検討願いたい。  それからもう一つ、地方自治団体に移行する、こういうことでございますが、そういう意見はけっこうでございましょう。そういう意見も成り立つところもありましょう。しかし、この問題は長野県と岐阜県と愛知県にまたがる問題なんです。必ずしもこの三県の意見は一致していない。だから、三県統合といっても、統合はなかなかできないから、まず中部圏開発を先にやろう、こういうことになったわけです。利害が相反する問題が包含されているからで、ございます。もし行政管理庁の指導に基づいて地方自治団体に移行するのだとおっしゃるならば、何県に委譲されますか。
  66. 松平勇雄

    ○松平国務大臣 ただいまの問題は、仰せのとおりいろいろ問題がございますので、検討いたしておりまして、必ずしも臨調の答申が絶対であるというふうには私ども考えておりません。これから監察の結果、結論を出したいと思います。
  67. 加藤清二

    加藤(清)分科員 それでは最後にもう一つだけ。水資源開発公団の主務官庁は、ただいまのところ経企庁でございますね。経企庁長官にお尋ねします。
  68. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 法律の五十六条で、「内閣総理大臣は、政令で定めるところにより、この法律の規定によるその権限の一部を経済企画庁長官に委任することができる。」、こういうことになっております。
  69. 加藤清二

    加藤(清)分科員 ということは、総理大臣が主管をするとはいうものの、実質整理統合するのは経済企画庁ということでございますね。もう一度念を押します。
  70. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 常識的な意味でそのとおりで、ございます。
  71. 加藤清二

    加藤(清)分科員 それではお尋ねせんければなりませんが、たとえば愛知用水公団の管理事業に属する問題で、ございますが、いま農民はこの受益者負担として反当四万五千円ずつ提供しなければなりません。新開地であれば反当七万円余に相なるわけでございます。とうてい営農ができるものではございません。もう一つの問題は、同じ時期に同じようにできた水を大きな工場の中で飲みますと、一立米四円でございます。ところが、へいの外で飲みますと四十四円でございます。この矛盾ですね。その四十四円で飲まなければならないほうの人が、実は計画をし、これをつくるにあたっての基礎の調査費やらいろいろの金を負担しておったのでございます。つまり、その計画をし、その資金を負担した連中が、今度いよいよ水がいただけるころになったら、十倍余のたいへんな高い値でいただかされて、あとから割り込んできたほうは、四円で事が足りておるわけでございます。だから、通産大臣にもう退席してもらった、責任をとらなければならぬから。ところで、この管理の調節は必要だとお考えですか。それとも、そんなものはほうっておけばいいとお考えですか。まず、経企庁長官にお尋ねします。
  72. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 工業用水につきましては、事業者がある程度計画のときに負担をしておったりする点もございますから、一がいには申せませんけれども、一般論といたしまして、上水に比べて、工水がどうもだいぶ格差があって安いというようなこともありまして、この四十二年度から、上水につきましても、水源開発のための補助であるとか、あるいは広域に施設をするときの補助であるとかいうことを初めて政府がするようになりましたので、こういう施策が今年度から行なわれるということは、確かにどうも上水が高い、ことに工業用水とは格差が大きいということは私ども認識しておるから、こういう施策を始めたものと、こう考えております。
  73. 加藤清二

    加藤(清)分科員 そのとおりでございます。水資源開発公団、これができまするときの、特に水資源の問題、多目的ダムを初めとするあまたの法律ができまするときの審議の一つのポイントがそれでございます。調節をとるということです。それには経企庁に持ち込むがよろしい、縄張り争いをしておってはいけない、こういうことでそこに移行されてきた。しかるに、まだまだ木曽三川の利用についてもそれぞれが縄張りを主張する。それぞれが自分のところの法律を主張する。その結果がこういう値段になっているわけなんです。工業用水法によって片や四円、厚生省の飲料用水、片や農業改良事業その他の法律によって反当四万五千円、こういうことになってきておるわけです。これを本省に持ち込んでおいてもなおうまく調節ができない、そういう問題を地方の自治団体に移行してうまくいくとお考えでございましょうか。松平さん、いかがでございましょうか。
  74. 松平勇雄

    ○松平国務大臣 ただいま地方の自治団体に委譲するという問題は、先ほどもお話し申し上げましたように、必ずこれが正しいというような考え方、絶対だという考え方は持っておりませんので、そういったものも含めましていま監察いたしております。
  75. 加藤清二

    加藤(清)分科員 わかりました。  それでは結論的に農業大臣にお尋ねいたします。農民の負担は重いとお考えですか、軽いとお考えですか。反当四万五千円と申しますと、土地の値段よりも高いくらいなんです。これは長野県の犠牲者の方々、つまり、水底に埋没された方々が開墾をやっていらっしゃるところの負担金の話なんです。営農ができないというのです。反当四万円もなお高過ぎるという。片や一立米四円で飲んでいるのに、お百姓さんがこれを飲むと四十四円、ひどいところは五十五円でございますよ。何という倍率だ。だから、実は愛知用水神社をつくって、これをつくっていただいた人の功績を未来永劫にたたえようという空気があるにもかかわりませず、それが今日できないのが実態なんです。農林大臣、これについてどう対処なさいますか。
  76. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 いまお話のように、地方農民が負担をいたしておる水道は、確かに非常に高い面がございます。そういうようなことを加えて、現在の中部圏を中心にした愛知用水の問題を考えてみますと、非常に多くの問題をかかえております。第一、負担金がまだ一銭も入っておらない。かたがたいろいろな問題をかかえておりますので、私どもも、これをどのようにしたらいいかということについて、関係県の県知事等とも御相談を申し上げて善処するようにいたしたいと、よりより協議をいたしておる最中でございます。
  77. 加藤清二

    加藤(清)分科員 最後に、長時間どうも御苦労さんでございました。そういう次第で、愛知用水公団並びに愛知用水、豊川用水は問題が歴史的にも長うございますし、地域的にも広域でございます。また将来それをあえて解決をし、なお開発をしなければならぬという大きな任務を背負っているわけでございます。それをよく御勘案の上対処されるよう要望いたしまして、私の質問を終わります。
  78. 亀岡高夫

    ○亀岡主査代理 斎藤実君。
  79. 斎藤実

    ○斎藤(実)分科員 私は、特に最近国民の多くの方の注目を集めております政府機関の畜産振興事業団の運営並びにあり方について、数点お尋ねをしたいと思います。なお、時間があれば輸入食糧行政について若干質問をしたいと思います。  さて、政府は、畜産物価格安定政策の一環として、事業団に豚肉を買い付けさせておりますが、現在までの在庫数はどの程度になっているのでしょうか。さらにまた、買い付けば当分続けるのかどうか、今後の見通しについて農林大臣のお答えをお願いします。
  80. 岡田覚夫

    岡田(覚)政府委員 御承知のように、畜産物価格安定法によりまして、豚肉の価格を支持をいたしておるわけでございますが、安定基準価格を下回りました場合には事業団が買い入れるというたてまえをとっておるわけでございます。昨年の三月十八日から事業団が買い入れを開始いたしまして、現在買い入れを続行中でございますが、四月十五日までの買い入れ数量は六十二万六千頭でございます。肉にいたしまして二万六千トンでございます。  今後の見通しでございますが、今年度見通しといたしましては、前半期につきましてはまだ相当な出荷があるというふうに見込まれまして、下期になりますと、やや減ってまいるというふうな見通しでございます。したがいまして、前半期につきましてはなお買い入れをすることになろうかというふうに考えておる次第でございます。
  81. 斎藤実

    ○斎藤(実)分科員 いま畜産局長の答弁によりますと、昨年の三月十八日から買い入れている。そうしますと、最初に買い付けたときからすでに一年も経過しておる。その間の豚肉の品質の管理、この点についてはどのようにされているのでしょうか。さらにまた、変質する危険性については、研究したデータがあれば、御説明をしていただきたいと思います。
  82. 岡田覚夫

    岡田(覚)政府委員 御承知のように、事業団で買い入れました豚肉につきましては、これを部分肉にカットいたしまして、急速冷凍で冷凍いたしまして、冷蔵庫に保管をいたしておるわけでございます。前回、事業団が昭和三十七年に買い入れを行なったわけでございます。その際は大体六カ月程度の保管であります。ところが、今回の買い入れにつきましては、すでに一年を経過をしておるということで、そこで、どの程度保管ができるかということにつきましては、いろいろ検討はいたしておるわけでございますが、過去の経験からは半年くらいの経験しかないわけでございます。したがいまして、大学等に委託をいたしまして検討いたしておるわけでございます。確実な結果は出ておりませんけれども、大体一年半程度はだいじょうぶであるというふうに考えておるわけでございます。
  83. 斎藤実

    ○斎藤(実)分科員 いまの局長の答弁ですと、大体半年の経験はある。実際に現在までは一年経過しておる。その中で、たとえば八ヵ月あるいは十カ月のものを抽出して品質を調査するということは可能じゃないか、このように考えるのですけれども、その辺はどうでしょうか。
  84. 岡田覚夫

    岡田(覚)政府委員 その点につきましては、事業団としましては、品質保全の万全を期するために、学識経験者、業界代表等から食肉検査委員会というものを設置いたしまして、その委員会の諸先生が随時保管豚肉につきまして食肉の検査をいたしております。すでに五回にわたりまして、各冷蔵庫につきましては調査をいたしておるわけでございますが、その結果は、現在のところ問題があるということはないわけでございます。なお、事業団の職員が随時冷蔵庫に参りまして、開函をいたしまして調査をいたしておるわけでございます。
  85. 斎藤実

    ○斎藤(実)分科員 大学に委嘱して検査しているというお話がございましたけれども、ひとつ後ほど資料として提出をしていただきたいと思います。  では次に移ります。  先般、これは各新聞社も取り上げている問題です。なお、東京都の衛生局で発表したところによりますと、畜産振興事業団の保管肉の中に汚染肉、病菌肉があったということで、先般来国会でも大きな問題になりまして、論議も尽くされたところです。その中に腐敗豚肉がまじっていたということが明らかになりました。今回の病菌豚事件で、国民は大きな不安とショックを受けました。それが大きな社会問題となって、国民に不安を与えたことは周知の事実であります。政府もしばしば対策を講じたようであります。前回の予算委員会におきまして、わが党の広沢委員も、まさか政府保証の政府機関の事業団の豚肉の中に汚染肉が入っているということは考えられない、そういうことがあってはたいへんだということで、この点について農林大臣に指摘もいたしました。どうなんだ、不安がないのか。これは農林大臣も御承知のとおり。ところが、今回の事業団の指定加工業者である南九州畜産商事が納めたものを保健所が検査した結果によりますと、二十五ケースのうち五ケースも腐敗肉が冷蔵庫の中から出てきたという事実が判明をいたしました。約二〇%です。南畜商事が納めたケースは約八千三百幾つというふうに報道されております。二割というとばく大な数量になる。先般来警察庁、検察庁あるいは厚生省、農林省等が国民の不安を一日も早く解消すべきである、安全宣言をすべきである、こういう動きもある折りからであります。なお、厚生省等も八都府県の全食肉店あるいはハム、ソーセージの工場を中心に立ち入り検査をいたしまして、国民も政府の努力によって腐敗肉の問題を解決するんじゃないかという期待を持っておりました。事業団に納めた豚肉といえども、いずれは国民の食卓にのぼる食肉であります。再びこのような事件が発生したということは、政府に対する食品行政の不信感を一そう深めるものである、まことに私は遺憾である、こう思うのです。政府機関の事業団が今回のような不祥事件を起こしたということは、政府の重大な責任である、そう考えざるを得ません。この問題について、農林大臣からその実態を明らかにしていただきたいと思います。——私は、先ほどから大臣に質問しておるのです。
  86. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 事務的なことですから、政府委員から答弁いたさせます。
  87. 斎藤実

    ○斎藤(実)分科員 事務的なことではありませんよ。これは農林大臣として最も基本的な、国民に大きな影響のある問題ですから、農林大臣にと申し上げておるのです。
  88. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 農林大臣も畜産局長も、政、府としては一体で、ございますから、畜産局長の申しておることを農林大臣は否定することはありませんから、私がこまかいことを知らないことをお尋ねになるから、専門家に答えさせます、そういうことで、ございます。
  89. 斎藤実

    ○斎藤(実)分科員 いまの農林大臣の答弁は一応了承します。先ほどから今後の見通し等について大臣に質問いたしました。こまかいところは畜産局長でもけっこうです。ですから、そういう意味で、先ほどもこまかいことは私は何も言いません。畜産局長から答弁もございましたし、見通しについても私は農林大臣から一言でも伺っておきたかった。そういう意味で私は申し上げたのです。ですから、技術的なことは畜産局長でもけっこうですけれども、のちほど大臣から答弁していただきたい、こういう意味なんです。
  90. 岡田覚夫

    岡田(覚)政府委員 ただいまお話のございました南九州畜産商事でございますが、これは事業団が昨年の八月から十二月まで委託加工を契約をしておったわけでございます。たまたまことしに入りまして、御承知のような血清豚の問題があったわけですが、血清豚の問題でたいへん社会に不安を巻き起こしたことにつきましては、はなはだ恐縮に存じておるわけでございますが、その後、ワクチンメーカー等に対しまして、完全な措置をいたしまして、今後そういうものが市場に出回るということはないことにいたしておるわけでございます。たまたま南九州畜産商事が血清豚の事件に関連をいたしまして、事業団に納入いたしましたものにつきまして、捜査と関連をいたしまして、東京都の衛生局で調査が行なわれたわけでございます。中間的な報告として聞いておりますところでは、二十五箱のうち五箱が鮮度が低下をしておるという程度でございまして、著しく腐敗しておるとか、そういうふうなことではなかったわけでございます。これは、南九州畜産商事という会社が一月になりまして倒産になるというふうな事態が生じたわけでございます。その直前でございまして、加工及び凍結の取り扱いに手抜かりがあったのではなかろうかというふうに考えておるわけでございますが、検査の結果をまちまして、これに対して適正な処置を講じてまいりたいというふうに考えておるわけでございまして、現在、同社が扱いましたもの以外のものにつきましてはそういうふうな問題はないというふうに確信いたしております。
  91. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 畜産局長の答えたとおりであります。
  92. 斎藤実

    ○斎藤(実)分科員 いま局長からのお話がございましたけれども、今度はあらゆる対策を講ずる、万全の策を講ずるというお話もございました。この事件はもう二月以上にもなります。なおもう一点は、答弁の中にありましたように、ほかの業者は絶対心配ないと確信するという答弁がありました。私は、今度の事件を通して考えるには、相当信用度の高い加工業者に対して、おそらく調査もし、また現地調査もし、厳重なる指導監督もされたと思うのです。しかしながら、こういう事件が起きたということは、そこに何らかの問題があるのではないか。私ども考えるには、相当指定基準もきびしいそうですが、この事業団の買い入れた豚肉の中に、もともと加工するときに腐敗肉が入っていたのじゃないか。さらにもう一点は、加工業者が納める場合に急速冷凍をしなくてはならないことになっています。その急速冷凍を怠ったのではないか。この二つより考えられない。この点についてお尋ねいたします。
  93. 岡田覚夫

    岡田(覚)政府委員 その原因につきましては、必ずしも明らかでないわけでございますが、最初から腐敗しておりますと、これは現在明らかになったような鮮度低下とかそういったことでは済まないのではないかというふうに思うわけでございます。  それから、急速冷凍につきましては、冷蔵庫が引き受けます場合に、マイナス二十度——たしかそうだったと記憶しておりますが、マイナス二十度かどうかということを確認をいたしまして、それでそういうふうな形が必ずしもできていないような場合には、冷蔵庫のほうでマイナス二十度に下げまして冷蔵をするというたてまえをとっておるわけでございます。そういうふうな関係から、その原因が必ずしも明らかでございませんので、その辺につきましては十分調査をいたしまして、その原因等につきましても究明をしてみたいというふうに考えております。
  94. 斎藤実

    ○斎藤(実)分科員 私の調査では、事業団が加工業者に対して、加工してすぐに急速冷凍にかけなさい、その場合マイナス三十三度C以下で四十八時間置きなさい、そして中心部がマイナス十度C以下になるように、通達をしている。ところが、私が現地へ行って調べてまいりましたところが、ある業者は一ぺんもやっていない。これは古い業者です。アメリカ軍の豚を納入したときには、米軍の監督が毎日来てうるさくてしようがないからやりました、で、マイナス三十三度ということはやったことない、やっても二十五度だという。それじゃ事業団の監督員が来るのか。たまには来ます、一カ月に一ぺんや二へんぐらい。実際にそれじゃ温度計を当てて検査したかというと、しないという。ここに私は問題があると思う。この事業団の監督員の人数の問題や、あるいは熱意の問題や、いろいろあるだろうと思う。全国に相当な加工工場があると伺っております。大体、聞くところによると、八十ぐらいあるのじゃないか。そうしますと、職員が食肉課で大体十一人くらいだ。これは物理的にもほんとうにりっぱな製品を納めるための監督員として不足じゃないか、不可能じゃないか。この点について、御答弁をお願いします。
  95. 岡田覚夫

    岡田(覚)政府委員 お話しのように、現在事業団で豚肉の買い入れ、保管等の業務を担当している職員は、食肉課長外十名が担当しております。これは現在の仕事の量に比べますと、十分でないというふうに考えております。ただ、この豚の買い入れの問題につきましては、御承知のように、三年ないし四年に一回買い入れが行なわれる。通常、ビッグサイクルというのがございまして、三年あるいは四年というふうなことで、常時買い入れ業務をやるというような状態ではないわけであります。したがいまして、そのために膨大な人員を置いておくということは、これはいろいろ問題もあろうと思います。したがいまして、十人ということでこの業務をやっておるわけであります。昨年の三月から買い入れが始まったわけですけれども、その当時におきましては、かように長く継続するというふうな考え方も必ずしもなかったのであります。ところが、現実問題としましては、  一年も経過したというふうな事態ができておりまして、それで、それに対する対策を次々やってまいったわけであります。その点につきましては、加工業者なり冷蔵業者に対しましては、十分な契約はいたしておりました。民法上の損害賠償を請求するというふうな形の厳重な契約はいたしておるわけでございます。ただ、いま御指摘がありましたように、十名をもちまして随時臨時検査等もいたしております。必ずしも十分でない点はもちろんあろうかと思いますけれども、できるだけのことはやらしておるつもりでございます。
  96. 斎藤実

    ○斎藤(実)分科員 いまあなたは十分なことをしているつもりだというお話がございました。しかし、先ほどの南畜の業者みたいに、豚を仕入れて——これは畜産事業団の買い入れの肉を仕入れて、自分もまた仕入れているわけです。ですから、悪く考えれば、その悪い肉をすりかえてもわからないということになる。そこに監督員が行ってほんとうに監視すれば、これは可能でしょう。普通の加工業者であれば、加工したものを小売り店に持っていく。持っていけばすぐ今度は消費者の手元に入ります。これはすぐわかります。しかし、事業団の場合は半年も一年もわからない。ここに問題がある。あなたのおっしゃる、そういうふうに万全の策を講じてあるとか業者を信用しているとかいうことは、そこが盲点だ、こういうふうに私は判断する。  もう一点は、事業団が加工業者を指定する場合の基準は一体どうなっているのか、これをひとつお尋ねいたします。
  97. 岡田覚夫

    岡田(覚)政府委員 御承知のように、豚を保管する場合は、部分肉にして保管したほうが長期的な保存ができる、こういうたてまえからと、もう一つは、保管する場合に経済的である、こういうふうな観点から、部分肉にするためにカットの処理を委託しておるわけでございます。現在百十五カ所を指定しておりますが、八十八カ所が現実に稼働いたしております。  その委託加工工場をきめます場合には、大体五つの基準に適合するものを当該工場の申請によりまして指定をいたしておるわけでございますが、その五つの要件を申し上げますと、まず第一は、施設が食品衛生法により都道府県知事の定める基準に適合し、原則として食肉製品製造業の営業許可を受けた者の工場であって、衛生管理が完全と認められること、これがまず第一点でございます。第二点としまして、原則として工場内に二十五キログラム入り箱詰め部分肉を二十四時間以内に中心部まで凍結可能な急速凍結施設を有し、その処理能力が一日当たり五トン以上であること、第三点としまして、工場内に豚枝肉の解体のための十坪以上の作業室を有すること、それから第四点としまして、食品衛生法による食品衛生管理者として一定の資格を有する者を二名以上常勤させていること、五といたしまして、工場所有者が資力、信用を有すると認められること、以上の条件に合致したものを指定するということにいたしておるわけでございます。
  98. 斎藤実

    ○斎藤(実)分科員 いま局長は、食品衛生法の許可を受けた者と、こういうふうに答弁がございました。実は局長がおっしゃったようなことが実際行なわれていないという事実を私は指摘したい。これは足立区に東鐘羊毛という会社がございます。これは事業団に委託加工の申請をしたのは昨年の四月八日です。事業団からあなたのところは加工業者に指定すると認可になったのが四月の十一日、そのときから加工を始めているわけです。ところが、昨年の七月十二日に都の保健所に食肉販売業、食品衛生法の許可の申請をしているのです。ということは、もう仕事を始めてから三月たってから申請をしている。七月の十九日に許可がおりている。こういう事実がある。さらにまた、東京の中央区の、名前ははばかりますから申し上げませんが、この会社は昭和四十一年の四月一日に事業団の加工指定を受けて現在仕事をしているわけです。ところが、いまだに食品衛生法の許可を受けていないという事実がある。このことを見ても、いかに事業団が国民の口に入る大事な食肉行政に対して真剣でないか、いいかげんであるか、この問題に対してどう処置されるのか、答弁を承りたいと思います。
  99. 岡田覚夫

    岡田(覚)政府委員 ただいまお話がありました東鐘羊毛の点につきましては、私のほうも承知をいたしております。これは指定をいたしますときに、現地調査をいたしたそうでございますが、そのときに、保健所からいろいろな注意があって、施設を改造したとかというふうな話がございまして、施設としては十分条件に適合した施設になっておるわけであります。したがいまして、食品衛生法の許可があったものというふうな推定をいたしまして、それで指定をいたした。当時現実には加工をやっておったというふうな事実があるわけであります。そういうこととか、あるいはいろいろ保健所のほうから注意をされて施設を改造したとか、そういうことで施設は完備しておる、こういうふうなことを前提にいたしまして指定をしたものというふうに考えておるわけでございますが、確かに正式の許可はおくれて出ております。したがいまして、こういうような点につきましては、確実にその許可があったかどうかということを確認しまして指定をすべきものだというふうに考えております。今後そういうことがないように十分指導をいたしたいと考えております。
  100. 斎藤実

    ○斎藤(実)分科員 現在南畜商事から納めた約八千三百ケースが冷凍工場に入っておるわけです。その中で抽出をしたら、約二割が、二十五ケースのうち五ケースですから、そうしますと、ほかの大部分のケースに対して当然腐敗品が入っておると見なければならぬ。いずれは国民の口に入ってくるものである。着物とか日用品とかいうものであれば、これはかまいませんけれども、われわれ国民の食卓にのぼる肉食です。そういう点から一ケース一ケース調べるべきじゃないか、そして国民の不安を一掃すべきじゃないか、こう考えるのですが、この点について御答弁をお願いします。
  101. 岡田覚夫

    岡田(覚)政府委員 南畜商事の納めました品物は八月から十二月にわたっておりまして、いつどういうふうなものが入ったかということはわかっておるわけであります。したがいまして、それぞれにつきまして調査をいたしまして、それで現在東京都の衛生局のほうで調査が行なわれておるわけであります。その結果を待ちまして、その肉の処理につきましては、国民に不安を与えないように適正な処置をいたしたいというふうに考えております。
  102. 斎藤実

    ○斎藤(実)分科員 私は、農林大臣に私がいまこれから質問する問題に対して答弁を実はお願いしたい。
  103. 亀岡高夫

    ○亀岡主査代理 ですから、その答弁の要求者の名前をはっきり言うてください。
  104. 斎藤実

    ○斎藤(実)分科員 それで、事業団という一つのこういう団体は政府保証の最大の業者である、最高の信用を私に持っておると思うのです。おそらく町の何々商店とかあるいは何々会社というよりは、事業団が責任を持って買い取ったその品物に対しては絶対の信頼をみな持っておると思う。それが今回の事件が起きたということは、何を国民が信用したらいいのか、信用できなくなった、こう言われても私はしかたがないと思う。この問題はなぜ起こったのか。いろいろ先ほどから私も指摘をしましたように、この事業団の職員の物理的な人員の不足だ、あるいは指導監督のいいかげんさだ、こうも言えると思う。ところが、事業団職員と業者の腐れ縁があったのじゃないか、こういうふうに言われても私はしかたがないと思う。ろくに検査もしていない。それで国民に豚肉を供給したことになると私は思うのです。私は、国民に多大な不安を与え、税金をむだづかいしておる今回の道義的、政治的責任を農林大臣から明らかにしていただきたい。このことを最後にお願いして、私は質問を終わります。
  105. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 御承知のように、畜産振興事業団というのは、商売でやっておるのじゃないのであります。つまり価格を安定して養豚をやっている農民たちの生活を安定させるというのが主たる目的でやっておるのでありますから、これが最低価格になってきたときには、やはり買い入れることによって養豚家を保護するというのが最大の目的なんです。したがって、そういうところに加工を依頼された者が持ってくるものに腐敗肉があったということについては、検査については、なるほど私は、いまあなたと畜産局長との間に質疑応答がございまして、監督がうまくいかなかったことについては遺憾千万だと思いますけれども、これはいま申し上げましたように、そのことによって利益をはかるという事業団ではないものですから、商売人が不正なことをいたしたというのとは性格が少し違うと思うのです。したがって、畜産振興事業団をもわれわれは信頼をいたしております。事業団としては、その請負をやって、加工して持ってくるやつを、まさかそういう不正なものを持ってくるとは思わずにやっておったのでありましょう。私どもは、そういうことに対して、国民全般として、日本人として相互信頼があってはじめてスムーズに行なわれる事柄が、そういうことを裏切った行為をするような者が出てきておるということについては、まことに遺憾千万です。これから十分私から命じまして、そういうことについて監督を厳重にいたしますし、また何らかの規制措置をとらなければならないということがわかれば、それもいたして、国民大衆に心配をさせないようにいたしたいと思っております。
  106. 斎藤実

    ○斎藤(実)分科員 了解しました。  以上で私の質問を終わります。
  107. 亀岡高夫

    ○亀岡主査代理 岡田利春君。
  108. 岡田利春

    岡田(利)分科員 十七日の日に日ソ漁業交渉が一応まとまったわけですが、私は、国際漁業の面からいって、これと関連する日米漁業交渉が久しぶりで再開をされて、聞くところによりますと、今月の二十二日ごろまでにこの交渉は一応今回は終了する、こういうぐあいに伝えられておるわけです。したがって、この日米漁業交渉は今回のこの十日間の日程の中で交渉が進められておるわけですが、もう三日後には一応交渉の期限のめどが実は来るわけです。私は、日米漁業交渉の推移というものは、将来の日ソ漁業交渉にも大きな関連と影響を持つもの、かように考えるわけです。そういう立場から、この交渉の経過はいまどういうところまで進展をしておるのか、今回の交渉に臨んでいる日本側の政府の態度はどういう態度をとっておるのか、こういう点について、ひとつ大臣から御答弁願いたいと思います。
  109. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 御承知のように、先般行なわれました日米の話し合いは、当方賛意を表することができませんで、決裂して帰ってまいりました。引き続いて現在御承知のようにやっておるわけでありますが、専管水域十二海里という、さような見解については、われわれのほうは承認をいたしておりません。しかし、アメリカ側は、日本以外の国との間にはそういう同じ思想のもとに妥結をいたしておる向きもあるようでありますので、われわれとの間においての交渉も、アメリカ側としてはいろいろ苦心の存するところだと思います。わが国全体の漁業から見まして、こういうことについてアメリカの提唱しておるところを容認するということは、現在の立場では困難であると思います。そういう立場でいま進めておるわけであります。
  110. 岡田利春

    岡田(利)分科員 この交渉の結果というのは、さらにわが国としては、アメリカ以外の国と専管水域十二海里の問題で交渉を持たなければならなない予定があると思うわけです。このあとに予定される交渉の相手国はどういう予定になっているのか、それだけにいま大臣が答弁されましたこの日米漁業交渉の結果というものが、私は今後の国際交渉に及ぼす影響は非常に重大だと思うわけです。それと私どもの伝え聞くところによれば、アメリカ側の主張は、マグロ、サケ、マスの漁業は専管水域では認めない、またタラバガニは、アラスカ沿岸ではこれを認めない、それと別にアラスカ湾においてはカレイ、メヌケ、タラの底びきを禁止をさせる、こういうかね合いの態度をアメリカ側の態度として示していると伝えられるわけです。そこで、他の国との交渉の関係もございますから、専管水域の問題を重要視するあまり、アラスカ湾の底びき漁業との引きかえが行なわれるのではないか、こういう不安が実は漁民にあるわけです。そういうような点についてはどういう態度なのか、こういう点について、ひとつ見解を承りたいと思います。
  111. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 水産庁長官から申します。
  112. 久宗高

    ○久宗政府委員 最初の御質問の、次に予定されております交渉の指手でございますが、具体的にはニュージーランドから申し出がございます。ニュージーランドにつきましては、昨年度でございましたか、やはり専管水域に関します一連の問題が出まして、その法案の中に既存の漁業を行なっておりますものに対する規定が欠けておりますので、実は交渉ができない立場でございます。わがほうといたしましては、かようなことを了承できませんので、国際的な司法裁判に訴えるところまで実はお話が行ったわけでございます。先般、そういう問題を総括いたしましてやはり具体的なお話し合いをしようではないかという申し出もございまして、私どもといたしましては、そういう申し出がございますので、今回の日米交渉が済み次第、できるだけ早い時期にニュージーランドとの話し合いをしてみたいというふうに考えている次第であります。なお、スペインのほうでも問題が起こっておりますので、こういった問題が引き続いて出てまいると思うわけであります。したがいまして、御指摘のように、かような交渉の関連も、ございますので、今回の日米交渉につきましては、相当な決意で臨まざるを得ないというふうに考えておるわけであります。  なお、御指摘の中身の問題でございますが前二回の交渉をいたしまして、第一回目は昨年末にやったわけでございますが、必ずしも、そういう法律的な立場をたな上げにしてどういう具体的な中身できめたらよろしいかというフォームが実はないわけでございます。さような意味で、私どもの持ち出しましたテキストを基礎にいたしまして、双方の見解を述べ合ったというのが第一回でございます。第二昼は本年に入りましてからやや詰めた議論をいたしたわけであります。即日も申し上げましたように、ちょうどソ連と米国の間で同様な問題の話し合いが済んだ直後でありましたので、時期的にはあまりいい時期ではなかったという感じがいたします。さようなことで若干の時間を置きまして、今回相当詰めた議論をいたしております。私どもの感じといたしましては、アラスカの漁民の方々が主としてソ連の急激な進出を頭に置きまして、相当神経質になっておられるような感じがありまして、今回もオブザーバーとしてついてきておられる。さようなこともございまして、アラスカに関連のある部分が非常に取りきめがしにくい状況で、ございます。しかしながら、私どもといたしましては、先ほど大臣からも申し上げましたように、この問題は、あくまで両者の食い違っております内部的な問題をたな上げにいたしまして、現実的な秩序をつくりたいということ、さらに日米の単なる漁業問題と申しますよりは、世界におきます一つのそのような漁業秩序の維持のモデルという感じも両方で持って御相談をしておりますので、今回はできるだけまとめたいという御希望で向こうは来ているように思います。しかし、交渉の過程ではまだ最終的な妥結に至ってないのが現状であります。
  113. 岡田利春

    岡田(利)分科員 今回の交渉で、一応この交渉に付託されている懸案事項の解決の見通しとめどはありますか。
  114. 久宗高

    ○久宗政府委員 これはアメリカ側の態度いかんにかかると思います。しかし、先方もすでに三回のあれを経ておりますので、何らかの形でまとめたいという気持ちで来ておられることは、はっきり読み取れるわけであります。
  115. 岡田利春

    岡田(利)分科員 きのうも質問があったと思いますけれども、十七日の日に妥結をしました日ソ漁業交渉の中で、結果として、日本側としても最終的にいろいろ内部的には意思統一をした上で、若干の意見の相違もあったようでありますが、その調整が終わって妥結をいたしたわけです。私は、この交渉の結果、これをどう一本政府は評価をしていくか、それと、交渉が終わっての反省点というものが当然あるのではないか、こう思うのですが、この点についての見解を大臣からひとつ承りたいと思います。
  116. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 御承知のように、本年は豊漁年ではございますが、いろいろな事情で十万八千トンで妥結をいたしました。このことにつきまして、それ自体は私ども決して満足いたしておりません。ただ、先方が出しておりました四つの条件、こういうものも本年は撤回をいたしました。私ども考え方といたしましては、ほかの外交関係もございますが、とにかくなるべく長期の契約を結んで、漁民あるいは漁業者の計画的安定性を持った事業を進めさせることがいいだろうと思いまして、当初はそういうことを考えたわけでありますが、そういうことになりますと、やはり究極において漁獲量等においても折り合わない点もあるかと見えましたので、本年は十万八千トンで短期にいたしたわけであります。カニにつきましては、御承知のように比較的長期で、これは業界においても喜んでおるところだと思います。私どもといたしましては、最初相手方が主張いたしておりましたのは、いわば一対一の要望、これはかけ引きもございましょうが、私どもといたしましては、それはとうてい問題にならないということで、まずA、B地区における資源の問題、そういうことで専門家が一カ月余りそれぞれ検討したものを資料に論議いたしたわけでありますが、まあ諸般の事情を勘案いたしまして、本年あの程度で踏み切った、こういうことでありますが、やはり私どもといたしましては、引き続いて技術的な検討をさらに掘り下げてまいりまして、そしてわがほうの主張の合理的裏づけを常時いたしまして、そしてわがほうの漁獲量をできるだけ多く、しかもそれを合理的にいたすように、これから常に努力をしていかなければならないのではないか、このように思っておるわけでございます。
  117. 岡田利春

    岡田(利)分科員 私は、今回のこの交渉の結果をどう評価をするか、またその経過や結果から導き出される反省というものは、今後の日ソ漁業交渉を進める上において非常に重大だと思うわけです。ですから、いま大臣が言われたように、カニは相手の増量を認めて一応四年間で協定をした、あるいは漁期が迫っておるので短期に解決をするということで、一応今回は早期妥結に踏み切ったということは、私は、あまり軽く評価をするということは非常に危険性があると思うわけです。豊漁年に七千トンの減量で妥結せざるを得なかったということは、来年は御存じのように不漁年であるわけです。来年の交渉に大きな暗い影を落とした、私はこう判断せざるを得ません。来年の交渉は今年の推移から想定しますと、ソビエトの態度もさらに依然として今年の態度を打ち出してくるでしょうし、いままでのような交渉の進め方では、結局国内的には減船問題が起きる量で妥結せざるを得ない状態に追い込まれるのではないか、こういうふうに私は非常に懸念を持つわけです。過去十年間の経過にかんがみましても、大体豊漁年では十二万三千五百トン程度の漁獲量になっておりますし、また不漁年の場合でも十二万トン程度に十カ年の平均ではなっているわけです。そうしてこの十カ年の間、ソビエト側の主張をいれて、オホーツク海の全面禁漁を認めて、さらにB海域と称して、日本の北海道から本州にかける沿岸一帯のB区域を規制対象に認めたり、こういう後退に次ぐ後退で、十一回目の交渉が今回いま大臣が言われた結論になったわけです。この辺で率直に日ソ漁業交渉に対して、政府はきびしいいままでの経過にかんがみて、反省をする必要があるのではないか。その反省の中から、今後の交渉に対しては新たな立場に立って臨む、こういう政府の決意、準備、こういうものを私はいまからびしっと定められなければならないのではなかろうか、こう考えざるを得ないわけです。そういう意味で、別に私はここで非難をするというのではなくて、そういうきびしい、率直な反省というものがあってしかるべきだと私は思うのですが、見解はいかがですか。
  118. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 私の立場からあまり突っ込んだことを申すのはあるいは響きが大きいかもしれませんが、私が先ほど常時技術的にも掘り下げて検討を続けなければならないと申し上げました精神は、ただいま岡田さんがお話しになりましたことにやや共通する面があると思います。もし今月一ぱいであれを妥結せずに、決裂したといたしますと、やはり自由出漁の問題も出てまいります。そういう決意を持つべきであるという考えも一部にはあったやに承っておりますけれども、そういうことがはたして現実の状況に照らして可能であろうか、また業界においてはそういうことがはたしてできるかどうかということも考慮に入れなければなりません。それからまた、このあとに残っております民間の協定の問題もございます。いま一般論としては、遺憾ながら相手方は陸地でとっておる。われわれは太平洋でやっている。そして現実に申せば、相手方のかん詰め工場が閉鎖したものがあるとかないとかいろいろな報告もきておりますけれども現実に相手方の漁獲量というものがどれだけあるかという真相を把握するすべは、御承知のようにないわけであります。いわば両国間の条約と申しましても、普通に想定される条約とは、私は性格が非常に違うのじゃないかと思います。いわば片務的条約みたいなものであります。国際場裏における日本の置かれた立場ということを考えてみましたときに、こういう見地から私ども日本人として多くの問題が考えられるわけであります。しかし、一つ漁業のことに限って考えましても、お説のように、私は、これからまた多獲性魚等の問題も来年あたりは問題になってくるやに水産庁のほうからも承っておりますので、きびしい反省を加え、これからどうするかということについて、もちろん政府といたしましてはそれを忘れておるわけではございません。識者並びに各方面の御意向を承って、国として対処しなければならない時期だと思います。
  119. 岡田利春

    岡田(利)分科員 日ソ漁業条約にしろ、日米加漁業条約にしろ、締結された当時日本が置かれていた状態というものは、戦後の非常に混乱した、国力のまだない、そういう不利な情勢の中で締結されたわけですから、私は、そういう意味において、いま大臣が言われたこれからの日ソ漁業交渉に対する態度として、日ソ漁業条約の改定をも含めて根本的に検討し、第十二回交渉に臨む態度というものをきめるべきではないか、こう実は考えるわけです。そういう点、特にいま大臣の述べられた意見を了として、強くひとつ要請をしておきたいと存じます。  なおソ連側は日本の近海に最近は盛んに進出をしてまいりまして、大衆魚であるサンマとかサバとかあるいはまたイカの水揚げも、大体推定するところ三十万トン程度漁獲をしている、こういう状態にあるように聞いているわけです。これがさらに増加する傾向があり、このことは、日本の近海漁民のいろいろな面に非常な不安とかあるいはまた心配をもたらしておるということは間違いのない事実なわけです。そうなってまいりますと、日ソ漁業というのは、サケ、マスに限らず、大衆魚に対しても日本側としてはいまから対策を立て、検討する必要があるのではないか、こう私は考えるのでありますが、これは水産庁長官でけっこうですから、見解を承りたいと思います。
  120. 久宗高

    ○久宗政府委員 御指摘のような問題がございます。ソ連の長期計画におきまして、水産に対する依存が急激にふえまして、特に極東方面でどのぐらいとるかということが非常に大きなウエートを持っているようでございます。ただ、私どものただいま聞いております範囲では、急速に船がふえまして、それに伴う一連の港湾設備でございますとか処理施設が伴わないギャップがございますので、当面はまだあまりはっきりした形で、具体的に日本列島近海におきます多獲性魚に大きく伸びてくるという形ではございませんけれども、おそらくそのトレンドを伸ばしてまいりますと、おっしゃるような問題が必ず起きるというふうに予期しておるわけでございます。ただ、私どもの業界におきましても、あるいは研究の体制にいたしましても、この種の問題につきましては、急激に出てまいりました問題でございまして、必ずしも準備が十分でないように思うわけであります。したがいまして、私どもといたしましては、この際、本格的にこの種の問題につきましての体制を整備いたしまして、処理に当たらなければならぬという考え方を持っておるわけでございます。
  121. 岡田利春

    岡田(利)分科員 サケ、マスの資源の立場からいって、資源論の立場で、交渉ではその点を強く主張して日本側は臨んできたわけですが、御存じのように、オホーツク海の全面禁漁で、日本からもずっと継続的に毎年調査船が出て、漁場調査をしておるわけです。この結果というものは、私ども聞いておりますところによれば、資源の回復は非常に著しいものがある、こういう結果を聞いておるわけです。このことは、私は、前の委員会でも、特に日ソ漁業交渉の議題として強く言うべきではないか、こう主張したことがございますけれども、この点の調査について日本側としては確信があるかどうか、そしてまた、今回の交渉についてこの面をどのような角度から取り上げて折衝したのか、お伺いしたいと思います。
  122. 久宗高

    ○久宗政府委員 毎回この交渉にあたりましては、学者を中心といたしまして、特別の委員会で資源問題を論じて、それを基礎にきめてきたわけでございますが、今回初めて両者の意見がどうしても食い違う、特別委員会としての統一見解に実は達しなかったわけでございます。今日までのところは、ずいぶんもめましたけれども、曲がりなりにも一応の結論が出て、それを素材にいたしまして一応の交渉に入っていったわけでございます。今回は非常に鋭く意見が対立いたしまして、私どもは必ずしも先方の言うような危険な状態であるというふうには考えなかったわけでございますけれども、この点はついに学者の間で意見の一致がないという異常な事態になったわけでございますので、その結果といたしまして、あのような交渉の結果になったわけでございますが、私どもといたしましては、すでにこれは相当年期の入った調査なり資源研究でございますので、ほかの海域、世界中でこの種の問題ほど突っ込んだ検討がされているものはまずないのではないかと思うぐらいのレベルだと思います。ただ、条約がすでに一応の期限が切れまして、今後どうするかといった問題もございましたので、それと関連した問題が出ましたのと、もう一つは、資源を基礎にした御議論のほかに、今回の非常な特色は、いわば結果から見ますと、配分論のような議論が非常に強く出たわけです。つまり、日本側と五分五分にしてくれという意見で、しかもそれは、当初の先方の提案は、日本の沿岸のものも含めて五分五分にしたい、これはまさに資源論から見ても非常におかしな議論でございまして、系統も違いますし、またそういう御議論というものは、やはりむしろ配分論が表に出てまいりまして、条約の趣旨としてもおかしいのではないかということで、私のほうはそれを強く拒否いたしまして、長年資源に基づいた議論をしてきたのでありますから、やはり資源に基づいてきちんとした議論をすべきではないかということで、これは徹底的にけったわけでございます。今後といえども、私どもといたしましては、わがほうの調査には十分な自信がございますので、それを基礎にいたしまして交渉を進めてまいりたいと考えております。
  123. 岡田利春

    岡田(利)分科員 交渉の過程で、B海域の七トン未満の小型鮭鱒についても規制の意見が相手側から出されたように聞いておるわけです。しかし、御存じのように、小型鮭鱒というのは零細漁民であり、小型鮭鱒漁業を通じて魚価の安定という面で、民生安定の面からいっても、非常に私は重要な問題だと思うわけです。今年は一応従来どおり操業されるわけですが、いまの政府として、この小型鮭鱒の扱いについて、特に将来検討を加えなければならぬ、そういう何か特別な問題点はございますか。
  124. 久宗高

    ○久宗政府委員 この段階で特に問題はないと考えております。しかし、御指摘のように、将来資源論からだんだん離れまして——配分論的な要素が非常に強くなってきておりますから、もし数量のきめ方がややそういう問題から離れてくるような傾向があるといたしますと、相当問題があると考えます。そこで、私どもといたしましては、やはり条約の本来の場に返って、今日までの実績につきましても、日本側はあまり減らないで、自分たちだけ減ったということを盛んに申すわけでございますけれども、これは毎回科学者が集まって十分検討した結果毎年の漁獲量がきまっておったので、日本側が恣意的にきめたものではないわけでございますので、やはり資源論の立場をしっかりと維持して処理に当たりたいと考えます。
  125. 岡田利春

    岡田(利)分科員 サケ・マスのはえなわ漁業の問題なんですが、御存じのように、いま北海道を基地にする漁船と、それから本州の漁港を基地にする漁船では、操業開始が三日間のズレがあるわけです。三十八年からだと思いまけれども、それ以降三日間のズレがある。しかし、今日もう当初の状況とも非常に変化もございますし、また、二航海を一応考えて三日間——漁場に出るまでまる一昼夜要する、したがって四日間になるけれども、一日間は、これは最後は切り上げの時期ですから、昨年のように早期に繰り上げて打ち切りをするという事態も出ておりますし、言うなれば、そういう三日間を初めからとりますから、本州の漁船は二日前にすでに操業している。北海道を基地にしているものはその後操業するという結果になるわけです、二往復でありますから。これはもう不合理ではないか。こういう不合理なことは、漁業条約で規制が加えられ、国内でさらに規制を加えているというのは、何らか政治的な問題があるのかどうか。こういうものはもう今年からやめるべきである。こういう見解を持っておるのですが、いかがですか。
  126. 久宗高

    ○久宗政府委員 先生もうよく御存じだと思いますが、この問題につきましては、いろいろな意見があって、いろいろな御相談の結果こういうふうにきまっておるわけでございます。一応の考え方といたしましては、やはり漁場までの距離の差に基づく漁獲の格差の是正という問題あるいは稼働日数の均衡化といったような問題、それからサケ・マス資源の保存を自主的に推進するための漁獲努力の調整といったような観点から、関係者の間で相当時間をかけてお話をしてきまっておるものでございます。さような意味で、そういう経緯もございますので、現状のところでは、私どもこの段階でこれをすぐ変える必要があるとは必ずしも思っておりません。しかしながら、これはやはり関係者の間でお話がついてこういうふうになっておる経緯もございますので、さらに御関係の方の意見を聴取いたしまして、慎重に検討いたしたいと考えておるようなわけでございます。ただ、どうも当初のお話と若干新しい要素があると考えておりますのは、魚をとりに行く段階の問題と、とってまいりましたものの処理の問題とあるようでございます。さような意味で、これを御主張になっている方たちの御意見が多少当初のころと最近では違っているような部面も、ございますので、さような意味でももう少し慎重に検討いたしたいと考えております。
  127. 岡田利春

    岡田(利)分科員 長官は、これは関係者とずいぶん綿密に話し合って了解の上でやった、こう言われますけれども、私は経過をそう理解をしていないわけです。全般的に了解を得てこの規制が加えられたのではなくして、これはある程度の話し合いで、政治判断で強行したものである、こう私は実は理解をいたしているわけです。しかも、日ソ漁業交渉の経過からかんがみましても、できるだけ管理がしやすいような方法を日本側としても講ずる必要がありますし、そういう意味では、やはり基地の制限というものは当然伴ってこなければならない問題です。また、歴史的に見れば、すでにその基地にはその加工工場分があるわけですから、そういう面も無視するわけにはいかないわけです。それはこの規制が行なわれた以降の各漁船の基地の隻数の傾向を見れば大体おわかりだと思うのです。私は、このまま継続をしていくことは、むしろ不合理に不合理を生み出す結果になるのではないだろうか、こう実は心配をいたしているわけです。御存じのように、北海道は花咲が指定解除になり、いま釧路港だけです。百二十九隻程度です。そして、もちろん漁船は本州の漁船でありますけれども、昨年はさらに二ヵ所追加される。もちろん本州の漁船なるがゆえにそういう気持ちはわかりますけれども、しかし、そういう管理の面や十年間の長い経過から考えての加工工場ですね、かん詰め工場もございますし、そういう面から考えてこれは対処しなければならない問題であり、その時期がもうきているのではないか。矛盾はもう小さくなってきているわけですから、そういう意味で、この三日間の問題は、この際勇断をもって解決別すべきだと思うのですが、大臣いかがですか。
  128. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 いまのお話、よくひとつ事情を聞いてみまして、その上で判断をいたしたいと思います。
  129. 岡田利春

    岡田(利)分科員 私はずっと経過の資料を一切持っておりますし、内容については十分熟知しておるつもりです。特にこの点については毎年問題になるわけですし、また今後の鮭鱒漁業に対する新たな方針もきめ、ソビエトとの交渉態度もきめてまいらなければならない重大な時期でございます。これを契機にこの問題をぜひ解決してほしい。いま大臣の言われた検討の結果については、あらためて別な委員会で見解を承りたいと思いますので、特にこの点強く要望をいたしておきます。  次に、先般、大臣は、昨年の五月八日羅臼町の第十一進洋丸の問題に対して、七万何がしの見舞い金を贈られた模様です。私はそう聞いているわけです。その前には、内閣総理大臣から同程度の見舞い金が贈られ、北海道知事からも二万何がしの見舞い金が贈られた。五月ですから、もう来月でまる一周忌、一年たつわけです。この事件は、すでに御存じのように、ソビエトの監視艇と小林広生船長の進洋丸が衝突をして、五名死亡し、六名が行方不明、生存はただの二名、十三名の乗り組み員であったわけです。きょう外務省からもきておると思いますが、見舞い金を大臣が出されたのですね。いまごろになって、一年近くなってから大臣が見舞い金を出されたというのですから、出されたのは、一体どういう理由に基づいて出されたのか。この問題については、当然外交問題でありますから、この一年間どういう折衝をし、その経過は一体どうなのか、お伺いしたいと思います。
  130. 秋保光孝

    ○秋保説明員 御説明いたします。  この事件が起きましてすぐ、去年の五月二十日に中川大使からソ連側に申し入れたことは、新聞紙上その他で御存じのとおりだと思うのでございますが、念を入れる意味で、同じ五月二十一日に北原局長からビノグラードフ大使にも同じような趣旨を申し入れているわけでございます。その後、ソ連側から六月二十四日になりまして返事がまいっております。ただ、事実関係については、非常に食い違った主張をソ連側がしておりますので、これに対して、去年の十二月二十八日に再反駁をして、現在交渉中の案件になっております。まだソ連側からわがほうの再反駁に対する回答はきておりません。
  131. 久宗高

    ○久宗政府委員 この種の問題につきましては、御承知のとおり、三十四年に閣議決定がありまして、その閣議決定に基づきまして今回の金を出したわけでございます。したがいまして、私どもの気持ちといたしましては、これは御承知のとおり賠償請求の権利を留保しているわけでございまして、当然賠償金が入る、その内払いという性質のものでございますので、賠償請求そのものに影響があるというふうな考え方はとっておらないわけでございます。
  132. 岡田利春

    岡田(利)分科員 これはいま外務省から経緯の御報告がありましたように、相手のあることで、さらに反駁をされて向こうの返答を待たれておるわけですが、この種の問題について、いままでのケースは私は知りませんけれども、なかなか時間を要する面もあるわけです。しかし、現実に人間尊重をうたう佐藤内閣のもとで、こういう痛ましい事件があって、そういう面から、内払いというような考え方で見舞い金をそれぞれ出されておると思うのですが、別にこれは交渉に影響するわけではないわけですから、一年経過して、一周忌がまいるわけですから、そういう意味で、遺族のその後の対策について、もう少し具体的に考えられてしかるべきではないか。そこまで考えられるならば、わずか七万何がしでは——いま交通事故であってもこれは国内相場というものがあるわけですから、もう少しやはり一歩進めた対策を私はとるべきだと思うのですが、いかがですか。
  133. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 いま事務当局から申し上げましたような経過のようでございますが、お説のように私も考えますので、なるべく早く事を処理いたしたいと思っております。
  134. 岡田利春

    岡田(利)分科員 長官、サケ・マスのふ化事業は本年から全面的に民間委託になったようですが、この理由はどうなんですか。
  135. 久宗高

    ○久宗政府委員 御承知のように、サケ・マスのふ化事業につきまして、従来は親魚そのものの捕獲事業は一括して北海道知事に委託申し上げまして、さらに北海道庁自体でなされますものと、それから他の市町村並びに漁業協同組合に再委託して行なわれるものと、二つあったわけでございます。しかしながら、やはりサケ・マスの川への遡上が一部地域的に片寄りがございますので、過剰に遡上しました場合とそうでない場合につきまして種卵——種の卵でございますが、これが不足している河川には移植してやらざるを得ないというのが、実務的に必要なのでございます。さような意味でこれをプールして処理をいたします場合に、最もそれを円滑にいたしますためには、いままでのようなやり方では必ずしも十分ではないのじゃないかという考え方で、本年度からそういう形に切りかえたいということで、国といたしましては、直接にモデル的に親魚捕獲事業を行なう場所を五カ所確保いたしまして、あとはむしろ予算なり人員の配置なりの面で、従来の経緯から見まして、それをもう少し弾力的に事業運営ができるような形の民間団体にこれを委託してやるのがいいじゃないかということで、ことしからそういう形に切りかえたいということで考えておるわけでございます。
  136. 亀岡高夫

    ○亀岡主査代理 岡田君、持ち時間が経過しておりますので、結論をお願いします。
  137. 岡田利春

    岡田(利)分科員 二、三問で……。特にサケの場合には長い間の実績もありますし、マスのふ化事業については再三問題になっているのですが、御存じのように、非常にむずかしさはあるわけです。しかし、これはいまのマスの資源論の立場からいっても、将来の資源培養の立場からいっても、日本としてこの点についてはもう少し力を入れるべきじゃないか、非常に微々たるものでございますから。この点について、特別に計画をお持ちになっていますか。
  138. 久宗高

    ○久宗政府委員 今年の計画の中で、マスについて特別な計画は持ってはおりません。しかしながら、御指摘のように、今回でも非常に問題になりましたし、また、特に沿岸といったような問題が出てまいりましたような経緯もございますので、ふ化事業そのものにつきましては、従来若干惰性的な点がなかったともいえないと思いますので、さらにこれを強化するような考え方で考え直してみる必要があるのじゃないかということを実感しております。
  139. 岡田利春

    岡田(利)分科員 いずれにしても、ふ化事業についても、私は、日ソ漁業交渉とは直接関係がないかもしれませんけれども日本側の自主的な立場において、これもまたもう一歩進めて検討する必要があるのではないか。特にえさづけ、放流等についても、大々的にその方向を見詰めてみる必要があるのじゃないか、私はこう思うわけです。そういう点もあわせ含めて検討いただきたいと存じます。  最後に、残念ながら時間がございませんが、最近北洋における海難事故、及び新たにサケ・マス漁船が出漁するわけですが、今年度の対策は一体どういう対策を考えておられるか。それと同時に、民間の海難救助組織というものがあるわけなんですが、この組織について私は再検討したらどうか、再編成をする必要があるのではないか、もう少し機動的なものに再編成をする必要があるのではないか、こう実は考えるわけです。そしてまた、この組織に対する助成といいますか、ある程度政府としてこの組織が活動できるように、また訓練も日ごろ行なうことができるような、そういう措置をぜひ講ずるべきじゃないか、こういう意見を持っておるわけですが、この点、聞くところによれば、予算要求をされた経過もあるようでございますけれども、見解を承りたいと思います。
  140. 猪口猛夫

    ○猪口説明員 御承知のように、また鮭鱒の時期が参りましたのですが、北洋方面におきます海難は、海難総件数の面から見ましても非常に多いわけでございます。ことに、北洋周辺におきます海難の約九〇%は漁船で、ございまして、これに対する海難救助対策並びに海難防止対策というものは、海上保安庁をはじめといたしまして、関係省庁、機関において大きな課題であるわけでございます。  御承知のように、この問題につきましては、海上保安庁といたしましては、所有巡視船の約二割以上になります十八隻、「宗谷」を中心といたしまして巡視船十八隻を配置いたしまして、鮭鱒時期はもちろん、毎年十一月から翌年の三月の間は前進哨戒に当たっております。また、鮭鱒時期は海上人口がにわかにふえまして、医療設備もございませんので、北海道の水産会とも話し合いの上、また水産庁とも協議の上で、前進哨戒する巡視船には医者を乗せておくというような対策を立てておるわけでございます。  なお反面、漁船の乗り組み員に対する海難防止思想の啓蒙に当たりましては、ひんぴんと海難防止講習会を開くなり、また機会があるたびに救命設備の使用方法等についても訓練あるいは講習をやっているわけでございます。しかし、やはり海上保安庁だけでかゆいところまで手が届くほどの設備、施設もございません。民間の組織によらなければなりませんので、御承知のように、現在非常に長い歴史を持っております日本水難救済会の組織が全国に約七百くらいの救難所もありますので、これを大いに活用したいというような気持ちが私たちにはあるわけでございます。  実は御承知のように、マリアナで集団海難が起きました際に、一般船舶が海難船舶の救助に当たる際におきますいろんな救助費用の補償等について、何らか講ずべきではないかというようなことが非常に問題になりました。海上保安庁としても研究いたしまして、海上人命救助基金のようなものを設立するのが好ましいのではないかというようなことから、鋭意研究してまいったのでございますが、まだ実現に及んでおりません。今後とも、そういう民間の救助意欲を促進するためのそのような問題につきまして、鋭意検討してまいりたいと存じておる次第でございます。
  141. 岡田利春

    岡田(利)分科員 長官、サンマの問題ですけれども、御存じのように、エトロフ沖のサンマ漁場は回遊時期が大体七月一ばいくらい。ソビエトはすでに母船式で出漁しているわけですね。しかも三百トン級の船が出ている。ところが、日本の場合には八月解禁ですから、八月に出漁するわけです。ところが、このエトロフ沖の魚田というものは、八月になるともうサンマが散ってしまうわけです。それでずっと南下してくるわけです。この時期にとれば非常に生産量が上がるわけです。また陸上のかん詰め基地からいっても、その時期にサンマが揚がることは非常に好ましいわけです。もちろん、これはサンマ漁業と他の漁業との、一隻の船で時期的に兼ね合いはございますけれども、これももうはっきりしているわけです。水産庁でもソビエトへ行って、これははっきり確認をしておる問題です。ソビエトはどんとサンマをとっていく。日本の場合は散らばってからとる。おそらく一隻あたりについても相当な違いが出るのではないか、こういわれておりますし、事実、専門家もこういうことは確信をもって証明いたしておるわけです。この問題は、やはりいろいろ他の漁業との関係、その船の関係がございますけれども、解決の方向を打ち出すべきではないか。そのことを通じて消費者に安いサンマを供給する。もちろん、漁獲の制限については、これは魚価の問題もございますから、行政指導でできるわけですから、この問題は解決すべきではないか、こう思うのですが、いかがですか。
  142. 久宗高

    ○久宗政府委員 もうよく内容は御存じのようでございますので、説明を省略いたしますが、私どもは、これはたいへんいろんな問題があると考えておりますので、いまちょうど業界と詳しくいろいろお打ち合わせしておるわけでございます。
  143. 亀岡高夫

    ○亀岡主査代理 松浦周太郎君より関連質疑の申し出がありますので、これを許します。松浦周太郎君。
  144. 松浦周太郎

    ○松浦分科員 一問だけお尋ねいたしたいと思うのですが、野党の御質問に関連することについては特に異例に属するかもしれませんが、重要なことでございますから、お許しを得たいと思います。  いまお話のございました日ソ漁業交渉の問題でございますが、この問題に対しまして交渉中に地元からいろいろ陳情がありましたけれども、もう交渉が始まっておる、こういうことを言ってもこれはだめだ。しかし、このことばどうしてもやってもらわなければならぬから、相当予備的に御相談を申し上げて、また外交的にも予備的に御相談すべき問題である。というのは、あまりに真理にさからっているからでございます。それは宗谷半島から根室の先までのオホーツク海全域が一匹もとってはならぬという禁止区域になっているのであります。これが太平洋におけるように四十五度以南ということにでもなるならば、オホーツク海の漁民は恩恵に浴することができます。オホーツク海に至っては、稚内の宗谷半島から根室まで波打ちぎわまで全部が、新聞にあらわれております区域を見れば禁止区域になっているわけなんです。そこで、オホーツク海の漁民というものの生活状態はどうかというと、これはもとは昆布も豊富にあり、あるいは貝柱もあり、あるいはニシンもたくさんとれ、サケ・マスも豊富にとれた。サケ・マスは現在全部禁止されてしまっている。貝柱は全然とれません。ニシンは一匹も接岸したい。しかも、この地方は三カ月間結氷するのです。三カ月間全然出ることができません。全部氷が張りますから……。そういうところに住まっている者が目の前に資源が回遊しているのを見ながらとることができない。反面どうかと申しますと、いまお話にありましたように、サケ・マスのふ化については、どんな小河川でも禁止河川になっておりまして、農民が一匹とってもおまわりさんに引っぱっていかれるというような禁止河川なんです。それを漁業組合が全部ふ化して放流している。自分たちがふ化放流した魚を一匹もとれない。これは外交上、いま倉石大臣の仰せになりましたように、日ソの交渉は、他の外交と違いまして領土問題にあると同じようなことでありますことは十分わかっております。また非常に困難九中に御交渉くださっておることもわかっておりますが、あまりにも真理にさからっているのです。それはやはり私は、太平洋と同じようにオホーツク海も四十五度線をずっと貫けば——太平洋のように広くはありませんが、陸地との間は狭いけれども、せめて流し網なりはえなわなりをやらせて、ふ化放流をしておるだけはとれるのだという観念をいだくことはできますが、現にふ化放流するけれども、一匹もとってはならぬという。これは何といっても外交上の問題とは言いながら、外交の問題について今後挙国外交をおやりになるということでございますから、外務大臣とよく御相談願いまして——小さな問題です。またトン数にしてもそう大きなトン数ではありません。しかし、ここの漁民にとってはたいへんな問題でございます。このオホーツク海の四十二度から三度にしかなっておらぬところ、四十五度までが全然とれませんから、前にサケ・マスがおってもとることができない。それでどうかというと、非常に貧困なんです。北海道の平均の生活状況の統計は、全国の平均で鹿児島その他よりも高くなっておりますが、根釧原野とかオホーツク海をやれば、これは私は日本一低いと思います。そういう生活の中におって、目の前に資源がありながらとることができない。それで魚のふ化放流をやれ、こういうことは真理にさからっている。これは外交の問題で非常に御努力なさっても今日までできなかったことでございますが、今後ひとつ継続的に、予備的に向こうの連中にも見せたりいろいろ御尽力を願って、来年度からは何かこの間の道の開けるように、技術的には水産庁長官のほうで、政治的、外交的には倉石大臣のほうで、ひとつこの点について特に同情のある政治をしていただきたいということを、この住民にかわって申し上げますから、よろしくお願いいたします。
  145. 久宗高

    ○久宗政府委員 御説明するまでもなく、オホーツクの禁漁のきまりましたいろんな経緯があるわけであります。いずれにいたしましても、とる漁法が違いますので、こちらは沖取りでとる、向こうは陸地でしかとれないということから、前もって沖でとられてしまうという一種の猜疑心がございまして、禁漁区の問題は非常な経緯を経た後きまったわけでございます。したがいまして、私どもといたしましてははなはだ納得できない、いつの日かこれを開放してもらいたいという悲願がございます。現実の問題としては、客観的にはなかなかむずかしいと考えるのでありますが、ただ、御指摘のようなある地域について考えました場合に、そこの方々のお気持ちとしてまことに納得いかぬという気持ちはよくわかりますので、ひとつ御趣旨をよく考えまして事に当たりたいと思っております。
  146. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 御趣旨われわれも悲願とするところでありますので、先ほど岡田さんにお答えいたしましたように、続けて根本的な問題をさらに政府としては検討を続けてまいりたいと思っております。
  147. 亀岡高夫

    ○亀岡主査代理 以上をもちまして午前の質疑は終了いたしました。  午後二時から再開することとし、これにて休憩いたします。    午後一時二分休憩      ————◇—————    午後二時七分開議
  148. 野原正勝

    野原主査 休憩前に引き続き会議を開きます。  昭和四十二年度一般会計予算及び特別会計予算中、農林省所管について質疑を続行いたします。芳賀貢君。
  149. 芳賀貢

    ○芳賀分科員 まず第一に農民年金の問題についてお尋ねしたいと思いますが、その前に申し上げたい点は、昨日同僚の西宮委員が農林年金の問題について質問を行ないまして、その際、農林年金法第六十二条二項の規定——これは昨年の国会審議の場合に農林委員会が修正を行なって六十二条二項を加えたわけです。これは財源調整のために必要のある場合には毎年予算の範囲内においてこれを計上するということになっておるが、昨日の農政局長の答弁によると、この財源調整のための四十二年度確保した四千万円というものは年金の整理資源関係がないと、このように解釈される発言を繰り返して行なっておるわけです。大蔵省の辻主計官もそういうことを言っておるわけです。これは大きな誤りであって、このような答弁がそのまま認められるということになると、これは農林年金の運営上重大なことになるわけです。ですから、もう一度、六十二条二項なるものの趣旨、これはほんとうに整理資源関係があるのだから、この点を明確にひとつ。
  150. 森本修

    ○森本政府委員 私が昨日御答弁を申し上げましたのは、六十二条の財源調整に関する規定は、単に整理資源に対する補助のみを対象とする規定ではございませんで、もちろんそれも解釈としては含みますけれども、その他、将来において給付費用が増高する、そういうようなものに対してもその規定でもって補助することができる、そのほかいろいろなケースがあり得ると思いますが、そういう内容のものと解釈すべきだというふうな六十二条の解釈についてのお答えを申し上げたつもりでございます。
  151. 芳賀貢

    ○芳賀分科員 そうなれば、その財源調整のための必要な費用というものは整理資源を含むということですか。
  152. 森本修

    ○森本政府委員 法文の解釈としてはそういうことになろうかと思います。
  153. 芳賀貢

    ○芳賀分科員 これは後日誤解を生じないようにはっきりしておきたいと思いますが、昨年五月二十六日に農林水産委員会において農林年金法は修正で成立したわけです。その際の修正点は、いま問題にいたしました六十二条の第一項は、これは従来百分の十五を百分の十六に改める改正、これは政府から提案されたわけです。それに加えて、第二項は新しく委員会修正にして、「国は、前項に規定するもののほか、財源調整のため必要があるときは、毎年度予算の範囲内において、これに要する費用の一部を補助することができる。」とし、そしてこれに対して附帯決議を付しておるわけであります。たまたま私がその自民党、社会党、民社党を代表して附帯決議の提案者となりまして、四項目にわたる附帯決議を付したわけでありますが、そのうちの第三項がこの六十二条第二項の関係であります。附帯決議の第三項とまして、「本改正案に対する社会保障制度審議会の答申中「整理資源確保に欠くるところがあるので、他の年金制度との均衡を考慮しつつ、国庫負担の増額を今後ともはかっていく必要がある」旨の趣旨を尊重して措置すること。」、そしてこれに対して若干の説明を加えたわけですが、その点は時間の関係で私のほうから朗読しておきたいと思います。すなわち、「第三は、いわゆる整理資源に対する国庫負担の増額についてであります。ただいま三党共同修正を行なった中で、新たに第六十二条二項を規定したのであります。すなわち、その条文は「国は、前項に規定するもののほか、財源調整のため必要があるときは、毎年度予算の範囲内において、これに要する費用の一部を補助することができる。」としてありますがこの条文の目的は、千分の二十三といわれる整理資源率がそのまま組合員の掛け金負担の重圧となっておる実情にかんがみ、整理資源分に対する国庫負担の道を開いたことであります。なお、本改正案に対する社会保障制度審議会の答申とは、昭和四十一年三月三十一日に坂田農林大臣に対して答申が行なわれたものであり、その答申の明記しておる点は、「厚生年金保険の給付に対する国庫負担率は、昨年の法改正によって百分の十五から二十に引き上げられた。この制度は厚生年金保険制度から分れたものであるし、この点についても考慮を払う必要があるが、給付内容等の点において厚生年金保険とは異なるものがあることを忘れてはならない。それにしても、この組合員の標準給与が極端に低いこと等の理由により、掛け金率が他の組合に比して高いにかかわらず、整理資源確保に欠くるところがあるので、他の年金制度との均衡を考慮しつつ、国庫負担の増額を今後ともはかっていく必要がある。」この二点を援用いたしましても、政府におきましは、今回の政府案修正を機会にいたしまして、昭和四十二年度以降十分なる整理資源の負担に任ずるべきであると思うのであります。」、これが六十二条二項に関する附帯決議並びに趣旨の説明でありまして、附帯決議に対しまして、もちろん時の坂田農林大臣は、「ただいまの御決議を尊重いたしまして、検討の上、善処いたします。」、こういうことに事態は明瞭になっておるわけです。それを、言を左右にして、整理資源というものはそういう趣旨のものではない、特に大蔵省の主計官のごときは、整理資源分に対して国が補助負担を行なうのは間違いであるというような、こういう行き過ぎの答弁さえ行なっておるわけです。  私はここで議論する考えはないわけです。国会法律の修正を行なっておる。したがって、この部分の精神というものは、修正を行なったわれわれのほうが知っているわけですよ。ですから、その精神に基づいて、政府当局においては精神を尊重して善処するということで足りると思うわけです。これは明確になっておる点ですからして、これに異論とかそうでないという点があれば答えてもらいたい。
  154. 森本修

    ○森本政府委員 昨日の私の答弁も、それから、先ほど申し上げました答弁も、六十二条の法文の解釈としては当然財源調整のための補助の中に整理資源に対する補助ということが含まれるということは、るる御説明を申し上げたとおりでありまして、趣旨としては、ただいま読み上げられましたようなことは当然私どもとしてもわかっておるわけであります。ただ、くどいようでありますが、財源調整に対する補助という規定のほうが整理資源に対する補助という表現よりも広い意味補助が行ない得るような解釈がとり得るということを申し上げているわけであります。
  155. 芳賀貢

    ○芳賀分科員 いや、整理資源を含めて広くしてわずかに四千万じゃどうしようもないのですよ。範囲が狭くても、千分の二十三の整理資源分にどれだけ厚みのある、効果のある国の助成措置を行なうかということのほうが問題だと思うのですよ。  それから、年金法の政令、省令の中にも整理資源なるものの法的の表現というものは明確でないのですよ。昨年の法案審議の場合もいろいろ検討した結果、いわゆる政省令にいうところの財源調整なるものは、これは整理資源の表現に通ずるものであるということが明らかになっているわけです。そういうように、万事われわれはあらゆる角度から検討した上で政府案の修正を行なっているわけですからして、この点は実は、四千万円を何に使うかということ、その積算等についてもお尋ねしたいのですが、これは後日に回すことにして、とにかく国会が修正した法律の精神だけは何とあっても行政府において趣旨を尊重して最善を尽くして実行すべきだ。この点はくどいようでありますけれども倉石大臣から明確にしてもらいたい。
  156. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 四十二年度予算に財源調整のためにということで計上いたしてありますが、その趣旨については、いま農政局長が申し上げたとおりであると私も考えております。
  157. 芳賀貢

    ○芳賀分科員 次に、農民年金の問題について農林大臣考えを明らかにしておいてもらいたいと思うのです。  この点につきましては、三月二十五日の予算委員会の総括質問の中で私から佐藤総理に尋ねまして、その結果、現在は農民の年金に対する措置は国民年金の中に包括されておるが、今後の日本の農政の発展、あるいはまたわが国の農地制度を考え、あるいは農業従事者が激減して将来農業が崩壊するようなことを政策的に阻止するためには、この際農民年金というものを新たに創設して、農民諸君の老後の安定をはかり、現在農業に従事しておる農家の皆さんに対して安心して農業に精進してもらいたい、こういう趣旨の答弁があったわけです。  そこで、この総理大臣予算委員会における明らかな考えというものについて、農林省のことしの予算の中には構造改革の推進費という形で、金額は僅少でありますが、二千五百万円計上されておるわけであります。あるいはまた農業白書における四十二年に行なうべき施策の中にもこれはうたわれておるのでありますから、この際、農林省として、農林大臣としての農民年金制度に対する構想の大要を明らかにしておいてもらいたい。
  158. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 農業構造の改善をはかりますためには、土地対策、資本装備の充実方策、それから協業の助長、そういう問題と並びまして、農業経営の担当者にわれわれは着目して、その老後の生活の安定、それから経営の移譲の促進等をはかる必要がある、こういうふうにいま考えておるわけであります。  日本農業の究極の一番大事なことは構造改善を推し進めていかなければならぬわけでありますが、いま申し上げました大事な柱を実行していくのに、その一つのさえといたしまして、私は、農民年金というような制度こそ必要である。そういうことを政府考えまして、そこで、そういうものをまず実行に移しますためには、国民年金の制度もあることでありますし、そこで、予算はいま御指摘のように二千五百万円を農林省としては構造政策の研究の中に入れておりますが、それは、いま申しましたような趣旨で、構造政策を推し進めていく一環として非常に大事な問題である、そういう構想のもとにあすこに入れておるわけであります。  いま私が申し上げましたような趣旨で、大きな柱は二つ。つまり、老後の安定感を与えていくこと、もう一つは経営の移譲をこれによってやりやすくすることを考えていきたい。しかしながら、実現しますためには、御承知のように、外国でも私がいま申しましたような趣旨でいろいろ採用いたしておるところも、ございますので、そういうようなことも勘案をいたしまして、なるべく早く政府方針決定いたしたい、こう思っておるわけであります。
  159. 芳賀貢

    ○芳賀分科員 いずれにしても、現在の国民年金の制度からこれは分離して、いわゆる独立した形の農民年金制度ということでなければ、いま農林大臣の言われたそういう趣旨の実現はできないと思う。その点は間違いないですか。
  160. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 いろいろ世間には論をなす者がございまして、安直に、年金というものは国民年金——いま農民もそれに入っておるわけでありますから、それの上積みで事足れりという意見を申す者もあります。私どもは、しかし、いわゆる農民年金なるものの発想のもとは、それだけではないのでありますから、先ほど申しましたような大事な問題が基礎にあるわけでありますから、農林省的な考え方でひとつこれには真剣に取り組んでまいりたい、こう思っております。
  161. 芳賀貢

    ○芳賀分科員 これは事務当局である農林省において構想を積み上げて農民年金制度の実現をはかるというところまで実は来ていないんです。たまたま一月の総選挙の際に佐藤総理が、これはおそらく選挙目当てだと思いますけれども、とにかく一国の総理が農民の皆さんに対して、今度は農民の恩給制度というものを実行するということを約束したわけですから、それと関連があって二千五百万胃の予算確保したのかどうかはわかりませんが、とにかく国民に対する公約ですから、政府部内においても農林省の構想に対してあるいは厚生省当局の異説を唱える同きもないとは限りませんけれども、この際、今後の日本農業の構造的な躍進をはかる、あるいは国民経済に大きな貢献をして、何ら恵まれることのない農民に対して重厚な社会保障の一環として農民年金制度を確立する、これは農林省としても重大な使命であるし、倉石農林大臣としても、これをあなたの時代に柱を立てたとすれば、これは後世に残る問題だと思うのです。おだてるわけではないですよ。ですから、ぜひいまの答弁が途中で立ち消えにならぬように努力してもらいたいと思います。  くどいようですが、もう一度明確に、これは私に対する答弁というよりも、広く国民あるいは全国の農民の諸君に対して大臣から明確にしてもらいたい。
  162. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 私が就任いたしましたのは昨年の十二月三日だと思いますが、そのときはすでに農林省において昭和四十二年度予算の骨格はでき上がっておりました。しかし、その説明を事務当局から聞いております間に、かなり事務当局においても農民年金の構想があったわけであります。そういうことを私は知りませんで、就任早々の記者会見においても、やりたいことの一つとして、農民年金という制度——これは私は衆議院の社会労働委員会に長く所属いたしておりまして、しかも農村の実情を見ておりまして、前からこういうことは早くやるべきであるという考えを持っておりました。したがって、いまお話しのように、別に佐藤総理が選挙目当てに突然言い出したわけでありませんで、その選挙に入るずっと何ヵ月か前に、農林省においてはこれを予算に計上しておいたわけです。原案にはそうなっておるわけであります。  何はともあれ、いま芳賀さんのおっしゃいましたような御趣旨は、私ども考えておりますことと一致いたしておりますので、これはひとつ先ほど来お話し申し上げましたような形でぜひ実現をいたしたいと思っておりますので、特段の御協力をお願いいたします。
  163. 芳賀貢

    ○芳賀分科員 次にお尋ねしますのは、「昭和四十二年度において講じようとする農業施策」の中に、今年は特に北海道及び特定地域の農業振興なるものが掲げられておるわけであります。農林省としてことさらに北海道の開発あるいは北海道農業の振興発展に触れたということは、はなはだ意を強うするところでありますが、この表現は、「北海道の開発等」として、「北海道の開発については、ひきつづき第二期北海道総合開発計画を強力に推進することとするが、最近における三年続きの冷害にかんがみ、寒冷地農業の確立の方向に沿って、草地開発事業、農地の基幹排水事業等を中心として農業生産基盤の整備をひきつづき積極的に推進する。このほか河川改修に伴なう堤内地のたん水被害を防止するための内水排除事業を大幅に促進するとともに、北海道冷害の恒久対策の一環として、四十一年度に着手した冷害備林造成事業を拡充する。また、北海道寒冷地畑作営農改善資金融通臨時措置法による営農改善資金については、貸付適格の認定申請期限が四十二年度末まで延長されたことにより、農林漁業金融公庫からの融通をひきつづき行なう。さらに北海道および南九州の畑作地域を対象に、これら地域の畑作振興対策の樹立に資するため、四十一年度から二ヵ年計画で実施しているこれら地域の畑作経営の実態をは握するための調査研究をひきつづき行なう。」とあります。この点に対して若干お尋ねしておきたいと思うわけです。  第一点は、今年度農業の長期予報というものはすでに出されておるわけでありますが、この長期予報に対して農林省としてどういうような対応策を講ぜられておりますか。これは北海道を中心とした東北の一部のことを言うわけです。この点をお尋ねしておきます。
  164. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 北海道は昭和三十九年以来三ヵ年にわたる冷害がございまして、私どもは、北海道農民の経営に対する関心ということもさることながら、やはりあれだけの広い地域における農産物の増産をぜひはからなければならぬということで、いまお読みになりました「四十二年度において講じようとする施策」の中に重大な一つの項目として入れておるわけなんです。具体的なことについては政府委員から申し上げます。
  165. 檜垣徳太郎

    ○檜垣政府委員 ただいま大臣から基本的な方針についてお答えをしたわけでございますが、御承知のように、北海道におきましては特殊な気象条件と土壌の条件を持っておるのでございます。そこが災害が発生しやすい要因であるわけでございますが、これらの災害発生要因に対処をいたしまして、かねて防災的な営農あるいはそれらの技術の研究普及をはかってまいったわけでございますが、本年も、従前に引き続きまして、土地条件の整備としての土地改良の実施、畑作改善、酪農の振興等を一そう促進をいたしまして、寒冷地の気象条件に適応した農業経営の確立につとめてまいりたいと思っておるのでございます。
  166. 芳賀貢

    ○芳賀分科員 檜垣さん、最初に、ことしの長期予報はどうなっているか。
  167. 檜垣徳太郎

    ○檜垣政府委員 長期予報は、気象庁のほうから見えておりますので、専門家にひとつ御説明をしてもらうことにいたします。それではそのあとに私の御説明をしたいと思います。
  168. 小田部康

    ○小田部政府委員 お答え申します。  本年の前半季節予報、これは去る三月十日に気象庁といたしまして発表いたしました。これは全国的なものでございますが、「今年の暖候期には昨年に引き続き季節的にもまた地域的にも変動の大きい天候があらわれるでしょう。春(三月ないし五月)はおよそ十日ないし十五日くらいの単位で寒暖が繰り返される見込みですが、低温がやや目立つのは四月でしょう。四月末から五月にかけては温暖な晴天が多い見込みですが、霜害が懸念されます。五月も半ばを過ぎると曇雨天が多くなり、関東以西ではつゆのはしりを思わせる天候となるでしょう。六月に入って梅雨期の前半に当たる中、ころまでは比較的晴天に恵まれる見込みです。しかし、六月も後半になってから後、七月中旬のつゆ明けまでは前線活動が活発で局地的な大雨があるでしょう。つゆ明け以後の盛夏期は本州方面では晴天が続き、一般には雨が少ない見込みですが、台風の影響が考えられますので、雨量の多い地域があるでしょう。なお、北日本では七月から八月にかけて一、二回低温の期間のあることを考慮しておく必要があります。九月はいまのところ残暑の天候が予想されます。台風活動は昨年よりは衰えますが、なお活動期にあり、発生数は三十個ないし三十二個で、本土に接近もしくは上陸して影響を与えるものは四つないし五つある見込みです。」  この全国的な長期予報を受けまして札幌管区気象台が三月十日に発表いたしましたところの北海道地方季節予報、これをちょっと読みますと、「今年の暖候期は天候の変動が大きく春の不順が目立ち、夏にも一、二回低温の時期が予想されます。春は四月を中心とした春先の低温と中部以南の日照不足や多雨が懸念されます。この傾向は五月に入っても残りますが、五月半ば。ころから回復に向かい気温も急にのぼるようになりましょう。六月は大体順調で気温、降水とも平年並みに経過する見込みです。七月から八月にかけては一、二回はっきりした低温期があり、日照不足や多雨が予想されますが、七月下旬ごろからは夏型の天気が目立つ時期もあり変動の大きい夏になりそうです。秋九月は早冷の傾向は少なく気温はほぼ平年並みと思われますが、雨や日照の点で若干不順となることも予想されます。」  以上が三月十日の札幌管区気象台の発表でございます。
  169. 芳賀貢

    ○芳賀分科員 そこで、いま次長から御説明のあったとおりの北海道を中心とした農業の長期予報となるわけですが、これは昭和四十年と四十一年にやや類似しておるということになっておるわけですね。そうなればやはり冷害の危険が多分にあるということになると思いますが、その点はどうなんでしょうか。
  170. 小田部康

    ○小田部政府委員 具体的なことは、長期予報管理官が来ておりますので、長期予報管理官から説明いたします。
  171. 芳賀貢

    ○芳賀分科員 実は、札幌管区気象台、三月十日の発表は持っておりますから、時間の関係で詳しく御説明は承るいとまがないが、総括しては昭和四十一年と四十年の推移に類似しておるということになるわけです。そうすると、過去三ヵ年北海道は冷害を受けておるわけですからね。それに類似しておるということば、似ておるということでしょう。似ておるということは冷害になるおそれがあるということだと思うのですよ。これははっきり言ってもらわぬと、去年は気象庁のほうはたいしたことはないと言ったんですよ。たまたま異常低温は訪れてくるが立ち直りが早いので冷害の心配がないということを繰り返して言うものですから、春以来北海道の農家は気象台の長期予報に安心して、あとで心配がないというんだからだいじょうぶだろうというのでやったところが、甚大な打撃を受けておるわけです。ですから、おそれがあるとすれば、そのための役所ですから、これは明確にしておいてもらいたいと思うのですよ。心配がなければそれにこしたことはないですよ。
  172. 和田英夫

    和田説明員 おことばのとおり、ことしは昨年あるいは一昨年にかなり類似した天候というふうに考えてよろしいと思います。ただ、一昨年のような非常に持続した低温ということはまず考えられない。しかし、この北半球全般の状況から見ますと、少なくとも北海道は楽観を許さないということだけは言えると思います。基本的にむずかしい問題なのです。現在言えるのは大体そこまでなのです。ほんとうに正確なことは、五月の状況を見ませんと、ことしは冷害になるぞということは言えないのです。医者でいうと、ガンみたいなもので、おまえはガンだぞという徴候もないのにガンだということは言えないのと同じだと思うのです。いずれにしましても、状況は昨年・一昨年にほぼ似ているというふうに現在考えております。
  173. 芳賀貢

    ○芳賀分科員 それはどうなんですか。毎年の予算が少ないから適当な観測ができないのか、観測の技術水準が諸外国に比べて非常に低いから予算があっても的確な観測ができないのか、どういうことなんですか。
  174. 和田英夫

    和田説明員 実は、一ヵ月以上の長期予報をやっているのは世界で日本だけなんです。学問的にまだ確立されてないものを、御承知のように農民の要求で昭和十六年から季節予報ということをやっているのです。日本の季節予報というのは、六ヵ月先から始まって、一ヵ月があとからできたものです。そういう事情ですから、われわれは一生懸命勉強しておりますし、世界的に、技術的な水準というのは日本のほうがはるかに進んでおります。現在ソビエトとか英国などでは日本の論文を非常に参考にして夏の予報をやっておりますから、技術的には十分自信を持っておりますけれども、まだ確実な予報というまでは——大体、あした、あさっての予報がなかなかうまくいかないのですから。(笑声)一生懸命努力したいと思っております。
  175. 芳賀貢

    ○芳賀分科員 それでは、こういう長期予報を土台にして、先ほど官房長からも発言がありましたが、ことしも冷害の危険があるわけですから、これに対する対応策ですね。一昨年は、春以来、天明以来の凶作になるということで、四月に農林大臣が冷害対策本部長になって相当強力な対策を進められたわけです。その結果というわけでもないが、観測よりも気象が緩和した関係で冷害の度合いは昨年よりは一昨年のほうが低かったわけです。去年は、農林省は全く無防備でやったものですから、予測できない被害に見舞われたわけで、北海道だけでも水稲の共済金九十億円。これをもってしても、いかに深刻であったかということがわかると思うのです。ですから、わざわざ、四十二年の講ずる施策の中に、三年連続の冷害から脱却させるために強力な施策を進めるということになっておるので、具体的にどうやって去年のような低湿が襲来しても冷害を受けないようにするかということについて、主たる具体策を示してもらいたい。
  176. 檜垣徳太郎

    ○檜垣政府委員 ただいま気象庁のほうから御説明を申し上げましたような長期予報を私どもも受けましたので、本年の春夏作については該当時期における北海道等の気象は変化が非常に激しい気象と予想されるということを前提にいたしまして、先ほど全国の春夏作についての指導の通達を出したのでございますが、特に北海道については、そういう天気予報というものを前提にした耕種の技術についての配慮を十分に行なうようにという指導をいたしたのでございます。  なお、専門的な技術的諸点につきましては、官房技術審議官が参っておりますので、説明をさせたいと思います。
  177. 原政司

    ○原説明員 それでは、私から技術的な点を主体といたしまして御説明を申し上げます。  ただいま気象庁のほうから昨年あるいは一昨年の気候と北海道はかなり類似しておるという見通しがございまして、その御説明の中で、類似はしておりますけれども、いわゆるまずい状態が継続型ではない、持続型ではないという御説明を承ったのでございます。先生御承知のように、冷害誘発要因といたしましては、非常に持続的な気象の悪い状態が参るか、あるいは断続的に参るかということによりまして、その受ける作物の被害状況は非常に変わってまいるわけでございます。私らの感じから申し上げまして、九月はほぼ平年並みといいますか、残暑といいますか、そういうタイプでありますし、七月におもしろくない状態が断続的に来るであろうという御説明と存じますが、七月の状態でございますと、要は、いつどの程度の悪い条件を受けるかということによりまして、非常にそこは状態が変わってまいります。非常に敏感な時期が作物の生育過程にございますので、さような断続型であるということを前提といたしますと、何と申しましても、大事なことは、耐冷性の品種を導入すること、第二番目は、それを一品種に限らないで、できるだけ複数の組み合わせをいたしまして、危険の分散をしてまいる、さような点が私は当面の、きわめて目前の対策といたしましては大事ではなかろうかという判断に立ちまして、先ほど檜垣官房長から御説明申し上げましたように、去る四月の十日に、全軍の春夏作についての注意を申し上げると同時に、北海道につきましては特段に別途加えて注意を喚起いたしたのでございます。御承知のように、北海道庁におかれましても、この三年続きの冷害のあとを受けられまして、すでに昨年来この春夏作については万般の御指導を願っておりますが、さらに、われわれといたしましても、一段と注意を喚起して協力し、また北海道庁と一緒になりまして、遺憾のないように指導をいたしてまいりたい、かように思っております。
  178. 芳賀貢

    ○芳賀分科員 そこで、原さんにお尋ねいたしますが、昨年の秋の委員会においても、今後の冷害恒久対策をどうするかという問題を取り上げまして、その中の一つとして、耐冷品種の開発を行なう、その場合の目標をどこに置くかということを私が技術会議の近藤局長に聞きました際、現在ある北海道の耐冷品種は十五度までの低温には耐え得るわけですね。気象が十五度まで下がった場合もこれは冷害を受けないわけです。ところが、昨年、一昨年も七月の中、下旬、幼穂形成期あるいは減数分裂期にちょうど低温が来るものですから、極端な被害を受けるわけです。ですから、その場合、品種の改良、開発によって、十二度程度の低温が襲来しても対抗できるということになれば、大体北海道の水稲については危険が免れるということになると思うのです。それから、目標は十二度までの低温に耐えられる品種ということに去年明らかにされたわけですから、ことしの四十二年の予算を通じてそういう具体的な研究対策というものをどういうふうにこの中できめたのですか。
  179. 近藤武夫

    ○近藤政府委員 四十二年度予算要求の中で、特に耐冷性品種の改良につきまして最も重要なものといたしましては、北海道立用土農業試験場、これは国の育種指定試験地になっておるわけでありますが、そこに耐冷性検定装置としまして、いわゆるグロスキャビネットと申しますか、それを十個備えるということで、合計二千九百五十万円の予算措置を講じておるわけであります。その他、国立の農業試験場にありますところのファイトトロンの運営についても、それに若干の配慮を加えておるわけであります。
  180. 芳賀貢

    ○芳賀分科員 その研究の成果はいつあがるのですか。
  181. 近藤武夫

    ○近藤政府委員 少し育種目標について述べさせていただきますが、障害型冷害に対する抵抗性に関しましては、出穂前の十二日ないし十三日を中心といたしまして、もしも十三度から十四度くらいの過度の低温に七日間くらい遭遇いたしますと、いわゆるタペート肥大というものが出てまいりまして、非常に障害が出てくるということがわかっておるわけでございます。そこで、十三度ないし十四度の低温が七日間くらい続いてもそれに耐えられるようなことを目標にいたしまして、障害型冷害に抵抗性のある品種をつくっていきたいということで努力をいたしております。  それから、もう一つは、遅延型冷害の抵抗性に関しましては、冷害の年になりますとどうしても出穂が遅延いたしますが、そうした遅延ができるだけ少ないものをつくっていこう、それから、出穂後登熟期の期間をできるだけ短くするということを目標にしてやっておるわけでございます。それで、現在までに育成いたしましたシオカリ並びにササオナミというようなものも、これらの条件をかなりのところまでは満たしておると言い得るかと思いますけれども、十分ではございません。そこで、現在国と道の試験研究機関の緊密な連絡のもとに新しい品種の育成に努力しておるわけでございますが、特にいま比較的有望と申しますか、期待を持たれておりますものが北育三十三号、これは道立の北見試験場で育成のものでございますが、それと上川試験場で育成の上育三百十九号、同じく上育三百三十四号というような系統がございまして、まだこれがはっきり品種として奨励する段階にまで至っておりませんけれども、ほぼ最終的な段階に近づいておりますので、おそらく近い将来その結論が出るのではなかろうか。私どもとしてはこれにかなり期待を持っておるわけでございます。それにいたしましても、十三度ないし十四度に幾日間も耐え得るということは、かなりむずかしい条件を満たすことになりますので、基礎的な研究面から、十分こういったいろいろな面の要因を解決していかなければならぬというわけでございますので、先ほど言いました国立の農業試験場にありますファイトトロンによる基礎研究から始まりまして、国立、道立の農業試験場が実際やっておるところの試験研究を強化拡充していく必要があるというふうに考えております。
  182. 芳賀貢

    ○芳賀分科員 あわせて、技術会議の局長からでもいいですが、北海道にある国の試験場が、水稲地帯の適地地図ですね、これは水稲の北限ですから、ここまでは水稲に適せんとか適するとか、そういう農業地図の作成をしたはずです。もちろん、これは国の試験場が出先でやっておるわけだから、あなたのところで関知しないわけがないと思うのです。これをきょうは説明を聞く時間がないですから、資料としてその地図なども出してもらいたい。
  183. 近藤武夫

    ○近藤政府委員 いまおっしゃいました地図につきましては、これは純技術的な観点から幾つかの条件を考えまして、それを満たす三つばかりの条件を考えておるのでございますが、それを全部満たすのは安定地帯である、二つの場合には、やや安定とか、やや不安定とか、どちらでも言い方があると思いますが、そういうような地帯というような式で道立の試験場のほうでいろいろ研究をなさっておられることを聞いている、こういうわけでございます。  なお、これは結論が出ていないので、私どもも若干そういうお話を伺ったという程度でございますので、逐一そういう資料をちょうだいしておりませんので、道のほうと連絡して、向こうからいただければ提出いたしますが、まだ私どもそれを持っておりませんので……。
  184. 芳賀貢

    ○芳賀分科員 これは、今後の北海道の農業を堅実に進める上から、むしろ純技術的な資料がいままで乏しいわけであります。抽象的な政治論に基づく資料でなくて、そういうものをせっかくつくっておるわけですから、そういうものは結論とか完成というものじゃないと思うので、ぜひこれを取り寄せて速急に資料として提出してもらいたいのです。
  185. 近藤武夫

    ○近藤政府委員 北海道のほうからいただければ、まだおそらくそういう結論は出ていないと思いますが、そういう中間的な一つの資料ということでもし道のほうからちょうだいできれば、提出いたします。
  186. 芳賀貢

    ○芳賀分科員 ちょうだいできとかいうものじゃないでしょう。国の試験機関の出先でしょう。その出先のやっているものを、あなたは局長で役人の中で一番えらいんじゃないですか。それがちょうだいできればとか、いただければとか……。技術的に検討の要があるから、それを取り寄せて委員会に資料として出していただきたいと思うのです。
  187. 近藤武夫

    ○近藤政府委員 実は、国立の試験場ではなく、道立の試験場でやっている作業でございます。道立の試験場でやっている作業でございますので、向こうでもまだほんとうに自信が持てるかどうかという問題があるのではないかと思います。まだほんとうに研究の途中だということになりますと、これをしいて出せという権限は私どものほうにはございませんので、先ほどのようなことを申し上げたわけです。
  188. 芳賀貢

    ○芳賀分科員 国の機関じゃないのですね。道立ですか。
  189. 近藤武夫

    ○近藤政府委員 道立でございます。
  190. 芳賀貢

    ○芳賀分科員 じゃ、道立の試験場にあなたのほうから連絡して、国会の委員会が必要と言っているから未熟なものでも——完成なんというものはないと思うのです。完成なんということば、もうここから、この限界から北のほうは水稲栽培はしてはならぬとかなんとか、有権的に栽培を禁止するなら別だけれども、技術者の判断で適地の地図をつくるということは、何もこれは完成というもんじゃないと思うのです。いまそれが完成だと思っても、先ほどあなたの説明のように、先にいった時点で品種の改良がどんどん進めば、その地図の北限においても水稲の栽培が可能であるとか、冷害を受けないということになるでしょう。あくまでもそれは絶対動かしがたいというもんじゃないですよ。そう何もびくびくする必要はないですよ、技術的な資料なんですから。
  191. 近藤武夫

    ○近藤政府委員 できるだけ御希望に沿うようにいたしたいと思います。
  192. 芳賀貢

    ○芳賀分科員 次にお尋ねしたいのは、三年間の冷害によって北海道の農業者が経済的に相当甚大な痛手を受けていることは、大臣も御承知のとおりであります。つまり、それは農家の固定負債という形で現われてきておるわけですが、内容を分析しますと、農家の固定負債を農家自身の経営努力だけで解消するということは不可能な段階に来ておるわけです。これは単に開拓農家とか既存農家の差はないわけです。ですから、この際、北海道農業を安定的に進める一番障害になっておる農家の固定負債の解消あるいは負債整理を国の方針に基づいてどうやるかということについて大臣のお考えを聞かしてもらいたい。
  193. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 北海道の農家負債は年々累増の傾向にございますことは、御指摘のとおりでございます。特に三十九、四十、四十一の三年連続の冷災害がありましてさらに増大をいたして、これが固定化の傾向にあることも事実でございます。これらの負債の実態につきましては目下北海道庁において調査を行なっておりますが、その道庁の調査の結果に基づく道庁の事務的連絡をこちらで受けたばかりでございまして、これに基づきまして私ども農林省もすみやかに道庁の連絡内容につきまして検討を行ないますとともに、道庁とさらに必要な調査検討を行ないまして、北海道の負債の問題について道庁とも協議をしながら検討を進めて処置をいたしたい、こう思っております。
  194. 芳賀貢

    ○芳賀分科員 北海道の農家負債の問題は、昨年の秋の農林委員会等においてもしばしば取り上げた問題です。すみやかに検討するという農林省の態度でしたが、この内容はもう御承知と思うのです。どの程度の固定負債があって、解決方策はどうしたらいいかということも、事務当局では検討済みだと思うわけです。私としては、この際、たとえば農家負債整理法という立法措置を行なって、これによって、一定の固定負債を有してなかなか自力で償還ができないというような農家の固定負債分については、国の無利子に近い低利の長期資金にこれを肩がわりすることによって、安定的な経営を進める中で長期的に債務の償還が可能になるという、そういう誘導政策をとる必要があると思うわけです。従来は、毎年の冷害あるいは全国的には災害が起きたつど、いまの自作農維持資金によって負債整理対策等をやってきたわけですが、これでは抜本的な解決にならぬわけです。したがって、この際一歩前進して、負債整理を目的とした立法措置を行なうことがどうしても必要だと思いますが、この点を大臣から明らかにしてもらいたい。
  195. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 最近事務的連絡を受けまして、したがって、その内容等について私どものほうでもさらに検討し、北海道庁にもさらにわれわれの希望する資料を要求しまして、この検討をすみやかにやりたい、こう思っております。
  196. 芳賀貢

    ○芳賀分科員 この際、北海道開発庁から、これらの問題に関運した方針を示してもらいたい。特に農林省の施策の中にも第二期長期計画に触れておりますし、ことしはちょうど第二期八ヵ年計画の五年目を迎えるわけですね。特に二階堂長官は、北海道に視察に来て、第二期計画については改定の必要があるということを札幌で発言しておるわけです。あるいはまた、従来とってきた経済合理主義に基づく拠点開発方式は改める必要がないということも言っておりますし、また、開発庁としても、水田北限論ですね、冷害が頻発する地域において水田を経営するのは避けたほうがいいとか、あるいは共済金を目当てにして水田の経営をするのは邪道であるとか、そういう発言が随所に行なわれておりまして、北海道の農民には非常な不安を与えておるわけです。あるいはまた、農家の固定負債の整理の問題等についても、これは北海道開発審議会の中においても活発な論議が行なわれたということを承知しておりますので、これら一連の問題について、北海道開発庁としての方針を明らかにしてもらいたい。
  197. 堂垣内尚弘

    ○堂垣内説明員 最初に、うちの長官が北海道で申されたことにつきまして誤解があったようでありますが、閣議決定による二期計画は改定しないということであります。それから、公共的な施設、施策、産業基盤の整備、農業基盤の整備、これらにつきましては、おかげでいろいろ進んでおりますが、一応社会生活基盤の住宅その他が多少でこぼこがございますので、今後弾力的に運営してまいりたい、こういう趣旨で申されたわけでありまして、帰られましてから記者クラブの発表でそれを明らかにしてございます。  それから、寒冷地農業の全般につきましては、農林省とよく連絡をとりまして、私のほうで特に受け持っております農業基盤整備、これらにつきましては、特に寒地農業の確立の線に沿いまして  いま力を入れておるところであります。酪農と水田の問題はいまお触れになりましたが、やはり北海道は大きいので、適地適作ということでまいっ  ております。その内容は、やはり経営規模の拡大とかあるいは農地、草地造成事業、それから耐冷作物、土地生産力の増強。で、私らといたしましては、試験研究機関とよく連絡をとり、また農林省とよく連絡をとりながら、根本的には土地改良をうんと伸ばしていく、こういう線でいっております。災害防除につきましては、内水排除その他につきましても、ことしは特に力を入れております。
  198. 芳賀貢

    ○芳賀分科員 これはあまり羅列的でよくわからぬのです。たとえば、いま大臣にお尋ねいたしました北海道の農家の固定負債の整理というものについて、私どもは、これは立法措置を講ずることによる以外は具体的なきめ手はないという見解に立っておるわけですが、開発庁としてはどういう考えに立っておりますか。
  199. 堂垣内尚弘

    ○堂垣内説明員 先ほど農林大臣及び農林当局から御説明がありましたように、前から要望しておりました資料が、いろいろ現況把握その他で時間がかかりまして、いま出てきましたので、よく関係機関と協力いたしまして、御趣旨に沿うように努力いたしたいと思います。なお、来月早々開発審議会も開催いたしますので、その場合でも審議会でおはかりしたい、こういうふうに思っております。
  200. 芳賀貢

    ○芳賀分科員 北海道の場合には、農林省の地方農政局という出先がないのですよね。どうして北海道にそういう出先がないかというと、北海道開発局というものがあるから。この開発局の次長は農林省の役人が必ずなるということになって、局長は建設省ですね。ですから、内地府県の地区の地方農政局の役割りは、北海道の場合は北海道開発局が担当して行なうということになっておるわけです。ですから、これは開発局自身も、開発庁から見れば純然たる出先機関ではないか。これは事業の調査実施を行なう主体になっておるわけだから、調査はしておらぬなんというばかなことはないと思う。調査も何もしないで、ただ放言だけするというわけにはいかぬと思う。資料が整わなければ、いつまで調査を進める、開発庁として、農家負債整理の問題とか、冷害を受けやすい地域の水田経営、これはとるべきでないというのであれば、どういうふうにこれを——水田経営をやめさして酪農に切りかえるといったって簡単にいかぬと思う。ですから、現地の農業者を惑わすような言辞というものは、これはかりそめにも政治的な発言であっても慎んでもらいたいと思うわけです。ですから、農家負債整理の問題と水田転換の問題は、開発庁としてもそれは知らぬとか関知しないというわけにはいかぬと思うのです。その結論を出していつ方針を明らかにできるか、その点をこの際述べてもらいたい。
  201. 堂垣内尚弘

    ○堂垣内説明員 開発庁として正式に農民を惑わすというような言辞は吐いたことはございません。  それで、営農の問題につきまして、開発庁は開発法に基づきましておのずからやる範囲がきまっておりまして、公共的なものを主としてやっておりまして、非公共的なものは農林省直轄で道と絶えず連絡して把握しまして、農林省にいろいろ要請も申し上げるし、いろいろ連絡するわけでございます。    〔主査退席、亀岡主査代理着席〕  それで、現地の開発局の次長が農林省からいつも出ておりますが、農政局長会議にはいつも出ておりまして、北海道の概況、いろいろな困った点その他につきましては、そのつど農政局長会議で反映させてもらっております。  農家の負担の問題につきましても、私たちとしても重々心配しておるところでございまして、何とか長期・低利でやっていきたい。ただ、すぐ立法化するかどうか、これはなかなかいろんな問題が、ございますので、いろいろ今後さらに相談をいたしまして進めていきたい、こう考えておるわけです。
  202. 芳賀貢

    ○芳賀分科員 立法化問題となるとこれは農林省がやる仕事ですからね。あなたのほうは、するかしないかということより、その必要ありやいなやを早急に判断して、しかるべき表現をしてもらえばいいと思うのです。そういうことは関知しないと言われるが、北海道開発審議会の会長の黒沢酉蔵君が、たとえば北限論を唱え、水稲の酪農転換を始終唱えておることは御承知でしょう。だから、開発審議会の会長さんがそういうことを言っているわけだから、これは関知しないというものじゃないと思うのです。
  203. 堂垣内尚弘

    ○堂垣内説明員 黒沢会長の申されたことにつきましてちょっと申し上げます。黒沢会長も、この線からが北限で、これから先は米をつくっちゃいかぬ、そういうことを申されておるのではなくて、例年冷害を受けるようなことはひとつこれからよく検討すべきではないか、こういうことだろうと思います。  それで、開発庁といたしましても、三年かかりましていま開発庁の経費でことしでき上がりますが、農業の土地利用現況図がことしじゅうにでき上がります。それらをも利用いたしまして、農林当局ともよく相談いたしまして、今後時間をかけながら行政的に指導していくべきもの、こういうふうに思っておりまして、いますぐここはだめだということできめつける、あるいはやめさす、そういう考えは持っておりませんし、黒沢会長もそういうようなことは申されておらないと思うのであります。
  204. 芳賀貢

    ○芳賀分科員 北海道の農業というものが日本の人口、食糧問題に寄与する役割りというものはますます重大になるわけですからね。つまり、北海道は全国で一番離農率が多いのですよ。全国都道府県の中で北海道が一番脱農率が多いわけです。ここ数年間、毎年七千戸ずつ農家が脱農しておるわけです。これはもうたいへんなことになるのですよ。十年間このまま続けば、七千戸減るわけですからね。現在もう二十万戸を割って十九万そこそこですから、このまま放置しておけば十年後には北海道の農家戸数というのは十万そこそこになるので、これは国家としても重大な問題ですよ。それを確固たる政策的な裏づけがなく単に北限論であるとか、そういうことは、これはあなたのせいじゃないが、慎んでもらいたいと思う。何のために北海道開発予算というものがつくられておるかということになるのですよ。まあ余談になるが、黒沢会長の場合は、社会党の田中知事の時代と、それからいまの町村自民党知事の時代に北海道開発予算のふえ方が違うと言うのですよ。毎年国民経済が膨張して国の予算がふえておって、国家の予算の中で北海道開発予算がふえるのはあたりまえなんですね。そういうことを何も言わぬで、ただ数字が以前の田中君の知事の時代よりもいまの町村君の知事の時代のほうがふえたということを宣伝しておるが、この真意は即断しかねるが、こういう点はまあ開発庁の考えではないと思いますが、開発庁として北海道に限定された日本農業部面の担当が、これは適当でないということにもしわれわれが判断した場合には、これは全部農林省でやってもらわなければならぬということにもなると思うのですよ。非常にこれは重大な問題ですから、十分庁をあげて慎重に研究して答えを出してもらいたいと思うのですが、その点はいかがですか。
  205. 堂垣内尚弘

    ○堂垣内説明員 政治的な問題は私ども別に申し上げないでおきますが、戸数の減少はある程度二期計画でも予定しておりました。ただ、先生おっしゃいますように、最近の農林省で出されました農業センサスを見ましても、この五年間、三十五年から四十年にかけましては、北海道だけが特に減少率が高くて三・二%であります。全国が一・三%の減でございまして、現在は、三十五年に約二十四万戸ありましたのが十九万九千戸でございます。この原因といたしましては、開拓農業としての歴史の浅いこと、あるいは自然条件、そういうようないろいろきびしい条件、これらがございますし、また、特徴といたしましては、北海道の場合は専業農家が農家のうちの五〇%を占めておりまして、本州における兼業農家の率と全然違うわけであります。そういうようなことで、私たち、よく離農の要因、こういうようなことを調べまして、適地適作、自立の安定経営のできるような育成農業、生産の拡大、こういうようなことで努力しておるところでございまして、私が考えますのには、いろいろ負債整理その他と並行いたしまして、やはり何といっても農業の施策、基盤整備を強力に推進していく。また、離れる人にとりましては、拠点開発をいまやっておりますが、拠点都市と結びつけた産業の振興、なるべくその付近で働けるような方策、これらもいろいろいまやっているところでございます。
  206. 芳賀貢

    ○芳賀分科員 時間がまいりましたので、あと二点だけでとどめておきますが、その一点は、北海道で生産される生乳の大消費地に対する遠距離輸送の問題であります。  これは、一昨年国会におきまして加工原料乳補給金制度の審議の際、いまの酪農あるいは牛乳の消費の動向から見て、国産牛乳については飲用を重点にするということが、酪農近代化計画の中にも明らかになっておるわけです。ところが、消費地域と生産地域が非常に離れておるという関係、あるいは生産地と消費地が結合しておらぬというような地理的条件もあって、この需給の調整あるいは流通が円滑にいってないことは御承知のとおりであります。国会において審議した際も、国の飲用牛乳中心の施策を進めるということになれば、どうしても、北海道において生産された生乳を消費地へ国の政策の一環として遠距離輸送をする施設、これを速急に整備する必要があるということが論議されまして、補給金法が成立します場合にも附帯決議の中にこれは明確にうたっておるわけです。自来二年たっておるわけですが、この生乳の遠距離輸送に対する政府の準備体制というものはどうなったかという点について、もちろん農林省並びにきょうは国鉄の副総裁も出席してもらっておりますので、両者からこの点について具体的な見解を明らかにしてもらいたい。
  207. 岡田覚夫

    岡田(覚)政府委員 ただいまお話のございました生乳の長距離輸送の問題でございますが、いま飲用牛乳の需給事情からいたしまして、加工原料乳地帯から主要飲用乳の地帯への生乳輸送の必要性は強まってまいっております。今後ともこの傾向は促進すべきものだというふうに考えておるわけです。現段階におきましては、長距離輸送が可能な地域において生産者が行ないます生乳の長距離輸送に対しましては、畜産振興事業団の出資によります生乳輸送リース法人によりまして施設の貸与が行なわれまして、長距離輸送が行なわれておるわけでございますが、北海道につきましては、生乳の内地への長距離輸送につきましては、輸送方法だとか、輸送経費の軽減だとか、品質保全等の問題がございますので、そういう問題には今後十分検討してまいりたいというふうに考えておるわけでございます。
  208. 磯崎叡

    ○磯崎説明員 北海道のなま牛乳の輸送につきまして、いま先生のおっしゃったように、一昨年約三ヵ月にわたって千七百トンほど輸送の試験をいたしました。物理的には途中の腐敗、変質もなく、大体常温、摂氏四度くらいに保ってくれば、濃縮牛乳ならばだいじょうぶ輸送できるという結果が出ました。これは試験いたしましたのは森永と雪印で、ございますけれども、いま畜産局長の言われますとおり、いろいろ流通経費等の関係からいって、その後、せっかく試験輸送をいたしましたけれども、輸送の需要が実はさっぱり出てこない。私のほうといたしましては、その後冷蔵コンテナあるいは冷蔵車、あるいは場合によってはタンクコンテナ——現在植物性の油あるいは潤滑油等を運んでいる小さなタンクのコンテナがございます。そういうものをつくることも、もしそれが冷蔵できれば、そういうものでもいいじゃないかというふうにいろいろ考えておりますが、肝心の荷主さんのほうがあまり積極的ではない。また農林省からも私のほうにあまりそう強い御希望がございませんので、私のほうは、あの当時と比べまして多少輸送力もふえていますし、それから、おかげさまで青函連絡船もごく最近「十和田丸」の改造も済みまして就航いたしました。一日約九百両くらいの輸送力がございますし、ことに、最近北海道は、どっちかと申しますと、下り貨車がわりに強い、上りのほうがむしろ弱いくらいの事情でございますので、牛乳の運賃によりまして私どもは商売させていただきたいことはやまやまでございますが、どうも肝心のほうがあまり積極的でないというふうな事情で、私のほうではいつでも送らしていただけるだけの物理的な輸送力を持っております。
  209. 芳賀貢

    ○芳賀分科員 実は、一昨年の国会の審議の際、国鉄から資料を出していただきまして、その場合、一般冷蔵車使用の指定列車の急行便でトン当り五千円。牛乳ですからキロ当たりにしたほうが乳価との比較でわかりやすいと思いますが、この場合一キロ当たり五円になりますね。北海道の北見の遠軽から東京の秋葉原までの直送便の場合に一キロにして五円。これは一升に換算しますと九円四十銭ということになる。それから、冷凍機つきの冷蔵車の急行便の場合には、少し高くてトン当たり六千五百円、一キロ当たり六円五十銭、一升当たり約十二円ということになっておるわけです。ですから、これをことしの乳価決定の結果に比較すると、不可能ではないと思うのです。東京を中心とした市乳圏の場合は、消費者価格が一合ビンで二円上がったわけですから、一升で二十円。そのうちの一升十二円が生産者乳価の値上げということで、大体、地域によって違うが、奨励金まで入れると、市乳圏は一升百円ということになると思うわけです。ところが、北海道を中心とした一道六県の場合は、先般の保証乳価によって、これは一升当たりにしますと七十五円ということになるわけです。ですから、市乳圏は一升百円、それから北海道並びに加工乳地帯は七十五円ですから、一升について二十五円の格差が今度生じたわけです。そうなると、こういうことはいままでないのですよ。従来用途別に見て、市乳圏と加工乳の地域は大体一升十五円くらいの格差があるのが通例とされておったが、今度は二十五円違うですからね。ますます市乳消費地域においてはなま乳の供給が枯渇をして、それは全く還元牛乳で充当するということになっておるわけです。二年前の国鉄の試算によりましてもこういう輸送コストになっておるわけですからして、現段階は、いま副総裁の言われたような説明によると、これは大量輸送ということになればまだ輸送賃も軽減されると思うわけです。これをただ、お客がないとかどうとか、あるいは農林省が全く無関心でおるということでなくて、これは国民食生活全体の面から見ても、一大供給地から消費地へ向かって政策的にこれを輸送する、——イギリスの場合なんかは、特にミルク専用列車というものを経営してやっておるわけですからして、これは法案審議の場合にも言ったように、指定生産者団体は都道府県単位であるが、その地域内だけのなま乳の取引ということでなくて、全国的な組織を強化することによって、生産地の生産者団体が消費地の生産者団体になま乳の供給を行なう、あるいは全国組織において調整をはかるということは必要だと思うのです。これは北海道開発庁もこの調査研究はやっておるわけですからね。この際農林省が中心になってこの問題の解決に乗り出すべきだと思うわけですが、これは大臣どうですか。国鉄のほうは十分輸送力は確保してあるということを明らかにされておるわけですから、ここではっきりしてもらいましよう。
  210. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 農林省では、先ほど畜産局長がお答え申し上げましたように、必要なことではあります。全般に出回るようにするためには十分検討いたしてみたいと思っておりますが、現在のところはまだ結論を得ておりませんが、調査研究いたします。
  211. 芳賀貢

    ○芳賀分科員 大臣、何でも大事なことは調査研究、——調査研究じゃこれは相すまぬと思うのですよ。指摘されない前に、重要事項については十分調査研究、立案して、いや、お尋ねの点は実はこういう体制でやりますくらいのことを、百に一つくらい言ってもらわぬと、百が百全部、ごもっともでございます、調査研究してしかるべく善処しますでは、これはもう張り合いがなくて、質問する気も起きないですよ。これは大事な問題ですからね。ぜひ速急にこれは検討してやってもらいたいと思います。とにかく、経済企画庁を中心に牛乳の消費価格が高い高いと騒いだところで、きめ手にならぬですよ。豊富な優良な乳をどんどん消費地に送る体制が整わなければ問題の解決はできないと思うので、速急にこれは案をつくって、六月一ぱいまで国会はやっておるわけですから、会期中に農林大臣から具体案を示してもらいたいと思いますが、いかがですか。
  212. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 できるだけ早く結論を得たいと思っております。
  213. 芳賀貢

    ○芳賀分科員 最後に、簡単にお尋ねしますが、失業保険の改正の問題。これは、三月二十五日の総括質問の際、農林大臣に、農林水産業関係についてのいま政府考えておる失業保険改正の問題について、これは改悪につながると思うので、一体どういうお考えかということをお尋ねをしたわけですが、いや、まだ労働大臣から何も言ってきておらぬ、たぶん言ってくるはずだと思うので、その時点で十分検討して農林省の見解を明らかにする、こういうたよりのない答弁が三月二十五日に行なわれておる。ところが、昨日すでに中央職安審議会の答申が出まして、これは政府の諮問にこたえた答申であります。特にその中でわれわれとして軽視できない点は、三月に農林省部内の農政局長林野庁長官とそれから水産庁長官の三者連名で失業保険改正に対する意見というものを明らかにしておるわけです。これは最も遺憾でありますが、政府の諮問の内容、答申の内容においては残念ながら農林省の意見、方針というものが尊重されていないように考えられるわけです。たとえば、五人未満の事業所の当然適用の問題についても、農林水産業以外はいままでの任意適用が全部当然適用ということになるわけですが、農林水産業の場合には当然適用を除外されるということになっておるわけです。あるいはまた、農業の季節的な条件、林業の季節的な就労条件から、毎年反復して一定の期間休業をしなければならぬというような特殊事情というものは、政府全体が知っておるわけです。それにもかかわらず、これらの特殊的な第一次産業に対する季節的な労働力の確保、あるいは失業保険の給付というものは、今度の改正の中では全然後退しておるわけですね。これは農林省としてもゆゆしい問題だと思うのです。優秀な労働力はどんどん他産業に吸収されておる。結局は農村においても林業においても労働力が不足して、全くこれは変則的な現象を呈しておるわけですが、これを無視するわけにはいかないわけですから、この点についてはもうすでにおわかりになっておると思うので、農林大臣から、今度の改正点に対する農林省としての、大臣としての考え方を明らかにしてもらいたいと思います。
  214. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 失業保険制度の改正につきましては、お話のように、現在労働省で適用範囲の拡大、短期循環適用者に対する給付の取り扱い等について検討中でございますが、これは、いまお話しのように、農林漁業の経営者及び農林漁業で働く季節労務者、農山漁村からの季節が出かせぎ者等にとって関心の寄せられる問題であります。  このうち、適用範囲の拡大の問題でございますが、今回の改正案では、五人未満の事業所へ当然適用を広げることといたしておりますけれども農林漁業については、現在任意適用とされており、今回の改正案でも従来どおりとされておることはお話しのとおりであります。これについては、当方と労働省ともいろいろ折衝いたしておるわけでありますが、これは、農林漁業における雇用の関係の不明確性というようなことと、それから就業の季節性などによるものであり、私は、失業保険というものの本質から申しまして、こういうことについてけじめをつけるという労働省の考え方というものはよくわかるのでありますが、農林漁業の実態に即応して、加入の促進をはかる必要がありますので、この点についてもさらに折衝をいたしてみたいと思っております。  それから、短期循環受給者に対する給付の取り扱いは、いま林野庁等のお話もございましたが、季節的出かせぎに依存している農村漁家の生活の安定、農林漁業部門の労働力の確保に影響する問題でございますので、失業保険制度の立場とともに、これらの点をも考慮に入れまして慎重な検討を行なう必要があるものと考えております。  そこで、ただいま労働省ですでに方針決定したというふうなお話でございましたが、これは芳賀さんも御承知のように、審議会の答申の中でもまだ全会一致で意見がまとまっておるわけではないのでありまして、また、その答申はわれわれが関与すべき筋合いのものではありませんが、答申を受けて立法に至る段階においては、いま申し上げましたような農林側の趣旨について、できるだけ、政府部内でありますからさらに協議を進めて、われわれの言っておることも理解してもらうようにつとめたいと思っております。
  215. 芳賀貢

    ○芳賀分科員 ただここで明確にしてもらいたいのは、ことしの三月十三日に、先ほど申しました農政局、林野庁、水産庁各長官連名で、失業保険制度の改正に関する意見というものを打ち出しておるわけです。要点を申し上げますと、「貴省においては、今国会への提出を目途として、失業保険制度の改正案について検討中の由であり、この一環として失業保険の当然適用の範囲の拡大、季節的受給者に対する制度の適用等について改正を検討中であると伝えられているが、失業保険の制度および運営のいかんは、今後の農林行政の推進に影響するところが少なくないので、次の諸点を十分ご配慮のうえ善処願いたい。1、失業保険制度が農林漁家世帯員の生活の安定、農林水産業における所要労働力の確保、協業の助長等の見地から重要な意義を持っていること、特定の地域および産業における季節的労働力需給の存在を無視し得ないこと、農林水産業の各業種における雇用の安定、就業構造の近代化がにわかに進みがたいこと等からしても、失業保険の季節的受給者に対する取扱いを変更し、これにより農林漁家世帯員の扱いが従来より不利となるようなおそれのある制度改正が行なわれることは農林漁家世帯員および農林水産業の立場からして極めて重大な問題であること。2、農林水産業は、現在業種として、任意適用とささているが、今回、失業保険制度充実の一環として労働者五人未満事業所の当然適用の措置が予定されていることにかんがみ、農林水産業についても社会保障充実の方向に沿って原則として当然適用とする方向で検討の要があること。」というものであります。これがいまの段階では全然満たされていないのです。この点は、農林大臣の説明もいまありましたが、職安局長からこの際、労働省の立場で、一体何のために日本農林漁業を意図的に圧迫するような制度改正が必要か、必要があっての改正であると思うのですが、それらの点についても明らかにしてもらいたいと思います。農林大臣は、まだこれはそういうことになる心配はないというようなことを言っておりますが、あなたのほうもそう考えておるかどうか。
  216. 有馬元治

    ○有馬政府委員 ただいま農林大臣からお答えがありましたように、今度の失業保険法の改正につきましては、労働省案を職業安定審議会に諮問いたしまして、昨日付で答申を得ております。さらに、総理府の社会保障審議会にも同じ案を目下諮問いたしておりますが、この審議会からも答申が近く出るものと期待しております。私どもは、この両審議会の答申を十分検討した上で、関係各省とも調整を済まして、法案として国会へ提出する、こういうふうな段取りを考えておるわけでございます。ただ、御指摘のような季節労働者に対する問題、これは、われわれのほうの保険の立場から申しますと、千九百万に及ぶ被保険者全体、それから六十万に及ぶ事業所全体の立場から公正な運営をはかっていかなければならぬ、それからまた、保険の原理的な問題が先生も御承知のようにございまして、予定された失業というものに保険を支給するということにそもそも問題があるわけでございます。そうは言っても、日本の実情から言いまして、すでに五十八万にふくれ上がっておりまするいわゆる短期循環的な季節労働者の保険の受給、これをいきなり切り捨てるということは、実際上もできないし、また、実情から言ってもそうすべきではないと思いますので、今度の改正におきましても、これは既得権を擁護する、こういう考え方で労働省案をつくっております。したがって、これから新規に季節労働者として出かせぎに出ていく場合に問題が残るわけでございますが、この点についても、職業安定審議会の答申では、出かせぎ地帯に限って、シーズンオフの時期について、中高年、すなわち三十五歳以上の年齢層については、さらに給付の延長措置を講じて、結局は三年目以降二分の一に切り下げるべきところを切り下げないで済むような、実質的に従前と同じような保険が受けられるような措置を講ずべし、こういうふうな答申が出ておるわけでございます。したがいまして、私どもは、農山村の出かせぎにつらく当たるというつもりは毛頭ございませんで、全国的に見まして短期循環の受給者については、今後三回続けて保険の受給をする場合には、三年目に半分にする、こういうふうな措置考えておるわけでございます。むしろ、都会地のこの種の保険の利用者から見ますと、農山村の出かせぎ者については非常に有利にといいますか、実情を考慮して、私どもとしては労働省案を考えたわけでございますので、決して農山漁村の出かせぎ者につらく当たるという趣旨ではないということを御了解いただきたいと思います。
  217. 芳賀貢

    ○芳賀分科員 いま言われた短期循環の失業現象というのは、第一次産業である農林水産業の特徴点なんですよ。ですから、労働者が意図的にそういう現象をまき起こすのじゃなくて、農林水産業それ自体の特徴として就業の制約というものがそこにあるわけだから、これを十分認識して、やはり失業保険制度というものを活用する必要は当然これはあると思うのですよ。だれでも、通年雇用、完全雇用が望ましいことは、働く者はわかっておるですよ。しかし、一番大宗をなす林野庁においても、まだこの完全雇用というものは国有林労働者の中で全面的に実現されておらない。徐々にそうなるという方向をいまたどっておるわけですから、そういう状態の中で、一方においては農村の基幹的な労働力あるいは若年労働力というのは毎年大量に都市あるいは他産業に流出しておるわけです。結果的に農村には労働力不足現象が起きておるわけだから、どうしても季節的に労働力の供給を仰がなければ、農業の経営維持あるいは林業の経営維持ができないわけです。ですから、たとえば五人未満の事業所についてもいままでは任意適用であったのを、農林水産業以外は全部今度は当然適用にする。なぜ農林水産業だけを当然適用から除外するかということが問題になるわけですね。そういうような差別的な扱いを意図的にやった場合に、結局は、結果としては農村に対する労働力の供給というものがもう断絶されるわけですね。当然そうなるわけですよ。そういうことを見越して今度の改正をするということは、これは農林省の三局長が意見を述べているとおり、もう明らかに予見される重大な制度上の欠陥が来るわけだから、専門の労働省がそういうことを知らないでやるというわけはないですよ。ですから、意図的にそういう制度の改悪を行なって、農林水産業の生産力というものを萎縮させる、これは実に重大な問題ですから、いまの局長の答弁ぐらいではわれわれ絶対に了解することができないわけです。重ねて議論をする意思はないが、これは慎重に反省の必要がある。特に農林大臣においては、この点は責任を持って改悪が行なわれないように努力してもらいたいと思うのですが、いかがでしょうか。
  218. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 目下事務当局同士でいろいろな見地に立って協議をいたしておるところであります。なお善処いたしたいと思います。
  219. 亀岡高夫

    ○亀岡主査代理 金丸徳重君。
  220. 金丸徳重

    金丸(徳)分科員 私は、だいぶ制約された時間でありまするので、問題をきわめてしぼって大臣にお尋ね申し上げます。  ただいまも問題になっておりましたが、農山村におきまする人口減、それからまた、それに伴いまする労働力の減というようなものが、各地に各種の問題を引き起こしておるようであります。特に山村の人口減、山つきの農村、それから山合いの農業地帯、林業地帯などにおける人口の減がここに数年来きわめて顕著に進行しておるのであります。そして、その原因を見てみますると、もちろん環境が悪いとか所得格差がひどくなるということもあるようでありますが、最近の傾向としましては、打ち続く局地激甚災害などのために、出合いあるいは山つきの農村の人々が生業の上に非常な不安を感じて、もうこれ以上はがまんできないというようなことから、若い者が都会にあこがれて出るというばかりでなくて、年とった者までが、先祖代々続いてきたところの農業を捨てるとか、林業を捨てるとか、あるいは大事な田地田畑、りっぱなうちを捨てて出てくるというような傾向があらわれて、そして、その結果としまして、山がまた捨てられるということから、山の荒れる原因となる。原因が結果を生み、結果がまた原因となって、このところ山村地帯の人口減が非常に大きくクローズアップされてきたのではないかというように思うのでありますが、そういうような傾向を受けて、先般山村振興法というようなものもつくって、これに対する対策を講じてまいったのであります。しかし、はたしてこういうものでもってこういう傾向を押しとどめることができるかどうか。すなわち、最近この数年来の全国的な傾向を伺いたいのです。それから、それに対してとった対策の成果、ことにこうしたことに対して今年度予算においてどういう考慮が払われておるか。その考慮に基づいて、今後における見通しというものはどういうことでありましょうか。ざっとでいいから、大臣からひとつ承りたい。
  221. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 山村における一般経済情勢が、最近のような日本経済の跛行的な伸びの結果、だんだんと離村してまいる傾向もありますことは、私どもも全く憂えておるところでございますが、これはやはり、そうかといってそれを放置いたしておくわけにはいきません。そこで、いまお話しのように、山村振興法、そういうものに基づいて指定を受けました山村については、山村振興計画に即して山村の振興に必要な諸事業の総合的かつ円滑な推進をはかることといたしておるわけでありますが、あなたの時間の間でいろいろやりますために、まず最初に予算のことから申し上げたほうがいいと思いますので、事務当局から四十二年度予算について……。
  222. 金丸徳重

    金丸(徳)分科員 ごく概要でよろしゅうございますから、この点にしぼって……。
  223. 森本修

    ○森本政府委員 大臣から概括的なお話がございましたが、四十二年度の山村振興関係予算について概略を申し上げますと、御承知のように、山村振興に対する予算は、単に農林省だけではございませんで、各省総合的な施策をするということで予算措置が行なわれておりますが、特に農林省分について申し上げますと、たとえば農免農道につきましては、指定山村分といたしまして四十二年度四億円、それから農免林道は同じく三億円、それから山村振興の農林漁業特別開発事業というものをやっておりますが、昨年度は七十二地域指定いたしております。その地域について本年度継続してやります。さらに本年度指定分として百町村ということで、合わせまして補助額として七億二千六百万円というふうな予算が計上されております。なお、これは特に指定山村分ということで計上いたしました予算でございますが、そのほか、一般的な土地改良でありますとか、林野関係の事業でありますとか、そういうものも当然山村にいくわけでありますので、一般的な予算の中からも相当山村に回るというふうに御理解をいただきたいと思います。
  224. 金丸徳重

    金丸(徳)分科員 これは去年も、あるいはそれまでではなかったかもしらぬけれども、ある程度予算を盛って仕事をされておった。私がお伺いしたいのは、そういう措置を講じておるのにもかかわらず、人口減、山を捨てるという傾向は押しとめられぬのじゃないか、ことしそれだけの予算を盛り、そのほかに各省でいろいろな仕事をしておられるに違いないのですが、そうした措置を講じたのにもかかわらず、人口減は押しとめられないのじゃないか、そういうことについてどういう考えをお持ちになっておられるか、これが実は私のお伺いしたがった点でございます。
  225. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 私どもは、やはり山村における経済事情が一般の他産業よりもよろしくないということが一番大きな原因ではないかと思っているわけでございます。したがって、いま申し上げましたような振興に関する予算措置はもちろんでありますけれども、さらに、生活環境を変えていくことは大事なことではないかと思っております。したがって、いま、山村振興という予算の中ではございませんが、一般農業についても、御存じのように、後継者育成資金のほかに生活改善に対する援助を与えております。それからまた、先ほどお話のありましたような農民年金のような制度等を併用いたすことによって、やはり先祖代々の土地を守っていけば老後においてはまず安心だという気持ちを持っていただくような方法を講じていく必要があるんではないか、こういうように思っております。それからまた、御承知のように、山村における特産物については、これは農林省といたしましては、山村ばかりではございません、それぞれの主産地の形成に努力をいたしまして、特産物は特段の保護をして、その増強をはかることになっておりますからして、山村においてもそういう適地に適作を見出すことによって経済的な基盤も何とかこわさないように持っていきたい。要するに、山村が荒廃してしまうことはわれわれとしては極力防がなければならぬ、このように考えております。
  226. 金丸徳重

    金丸(徳)分科員 山村が荒廃しないために、何とか所得を確保する方法を適地適作というような方向で考えられる、私はそれは非常に大事なことだと思うのですが、具体的にはどこでどういうふうな研究をなさっておられるのですか。適地適作といっても、各地における条件が違うと思います。傾斜の度合いも違いましょうし、山地の土質も違いましょう。また日照度のぐあいも違う。そういうのに対してきわめてきめのこまかい指導をしてやりませんと、現地ではいたずらに混乱をしてしまって、あれをやってもだめだ、これをやってもだめだ、しかたがないから逃げ出すのだというようなことになる。現にそういう例を私は幾つか見ておるのでありますが、農林省のほうでそういうような研究をされており、それから今後それに大いに力を入れるとするならば、どういう具体的な方針措置をとっておられますか。
  227. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 政府委員から申し上げます。
  228. 森本修

    ○森本政府委員 山村の振興につきまして、特に作物なり、あるいはそれぞれの山村の特徴に応じた振興の方策ということの研究の問題でございますが、昨年度及び本年度予算におきましても、山村振興特別調査対象地域をきめまして、それは昨年度は十五地域、また四十二年度は十五地域ということで、特に山村の特徴的な類型を分けまして、その中でどういう作物を選定すればいいか、あるいはその作物についてどういう経営をやればいいかというふうなことを含めまして、それぞれ調査研究をしておるわけであります。もっとも、この関係は単に農林省のみの問題ではございませんので、予算の計上といたしましては企画庁予算ということでそういう予算がつくられております。また、実際に実施をいたしておる、そういう段階で、ございます。
  229. 金丸徳重

    金丸(徳)分科員 広い角度から各方面の協力の中で推進されるということにつきましては、私もそのほうがいいと思いますが、しかし、問題は、冒頭に私が申し上げましたように、どんどん人口が減っている。減っていることが原因となりまして、山が急にまた荒れ出している。ことに私が心配いたしますのは、山を守る体制というのがだんだん薄らいできまして、ことに、せっかく林野庁で施策を立てられ、あるいは指導なさっても、現地における労力不足からいたして、治山治水計画というのが予定どおり進まぬのではないかという心配を持つのです。したがって、これはよその役所のほうで力を入れる面もあろうかと思うのですが、農林省として、山地保全といいますか、そういう広い高い立場から強力に進めてもらいませんと間に合わないのじゃないかという心配を持つものです。私からあらためて申し上げるまでもないのですけれども、山が荒れだして一番困るのは、山の人は逃げてしまえばいいのですけれども、下流の平地におけるところの都市なりその他の産業なりが非常な被害を受けることになるわけですから、そういう意味におきましても、私は農林省や林野庁の計画の責任の重大さを思わざるを得ないのです。そういうことについて、各省でやるからということでなくて、農林省が山地保全の立場という意味からして相当に強力に進めるべきだと思うのですが、いかがでしょう。
  230. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 私どもも、山地の荒廃ということにつきましは、自分のことを申して申しわけありませんが、私は信州でございますので、選挙区などには半分以上そういう問題が重積いたしております。これは実際離れていく者から実情を調べてみますと、いろいろな理由はありますが、先ほど来ここでお話し合いしているようなのが原因でございます。そこで、やはり私どもといたしましては、山を守ると同時に、山を守るために治山治水のほかに林業、林道の開発をやる、そういうようなことで、先祖からもらっております地域を守りながら所得がふえていくということを考えてやらなければならないと思うのであります。金丸さんさっきちょっとお話のございました山林のことでも、林野庁におきましてもそういうことも考えながら四十二年度予算等に片りんを出しておりますので、林野庁のほうからもちょっと補足して御説明申し上げさせたいと思います。
  231. 若林正武

    ○若林政府委員 山村から人口が減少してまいるということは、先生のお話のとおりでございます。山を守る林業経営をやっていく、これに必要な林業労働力というものは、何とかしてこれを確保してまいりたいというふうな考えの中で、私どもはいろいろな施策をやっておるわけでございます。二、三例をあげて申しますると、林業労働者対策といたしまして、四十二年度予算におきましては、前年度予算の三倍以上の予算を組みまして、林業労働力を確保するためのいろいろな施策をやってまいることにいたしております。さらにまた、林業の後継者の養成の問題でございますが、これにつきましても新しく予算を組みまして、若い優秀な労働力というものを確保してまいるというような施策も考えております。さらにまた、森林組合等で、森林組合の林業経営に必要な林業労働力というものを確保いたしますために、森林組合に労務班というものを設置をさせるように従来から指導してまいっておるのでありますが、現在全国で約四千組くらいの労務班の結成を見ております。現時点におきましては、林業のいろいろな施策というものが何とか計画的にやれるというふうな体制にございますので、私どものいろいろ考えております林業施策の実行につきましては心配がないというふうに私ども確信をいたしておる次第でございます。
  232. 金丸徳重

    金丸(徳)分科員 実は、大臣は長野県でおられる。私は山梨県であります。山ではうんと苦労しておる。ことに私は山が好きなものだから山を歩く。台風のあとなんかは、ことに私は心配になるものですから歩くのですが、そういう立場からしまして、私どもの子供のころ歩いた山と最近における山とが何か非常な——子供のころは楽しんで歩けた山であったように記憶しておりますが、いまはそうではなくて、なるほど砂防ダムができたりいたしておるようですが、さてしかし、ダムのもう一歩上へ進んで行きますと、非常に心配の種がそちこちに見えるのです。その心配な種ばかりではなくて、そうした心配が現実に、かつては三十四年のあの七号台風で大臣の故郷のほうもずいぶんやられた。私のところもたいへんやられた。昨年は二十六号台風であのような全日本を心配さしたような激甚な被害をこうむっておる。それが、山の上のほうに対する施策といいますか、山はだに対する対策がもう少しきめこまかに、あるいは事前に行なわれておったならば、ああいうことにはならなかったのではないか、かりになったとしても、もう少し被害を少なからしめたのではないか、こんな感がいたします。そこで、さらに県当局に、そのほかの地帯においてそういう心配はなかろうかと尋ねてみましたら、たくさんある。これはきっと林野庁のほうへも報告されておると思うのですが、あの狭い私の山梨県だけにおきましても八百何個所かの心配な谷があるんだそうです。特に緊急施行を要するところは二百もしくは三百個所あるということであります。もちろんそれは、ばく大な、何億、何十億の工事費を必要とするところではないと思いますけれども、早目にこれに対して手当てをする必要があろうじゃないか、私はこう考えます。これについては、もちろん中央政府のほうの援助といいますか、指導も必要です。県におきましてもそれに対策を講じなければいかぬ。さてしかし、そういうふうな施策を講じても、はたして労力が現地において得られるだろうか。どんどん年寄りさえも減っていくというようなことであります。で、いまのようなお尋ねをし、これに対する対策を練っていただかなければと思ったのであります。実は私は、いままでのわが国の農業対策というものが、構造改善に見られるところからいたしましても、あるいはまたその前の新農村建設計画、そういうようなものを見ましても、大きな規模のところ、効果の多いところに目をつけられて進められてきたように思う。これはやむを得ないことと思います。そのとおりであろうとも思うのですけれども、そのかわりに、非常にこまかいところが捨ておかれてきた。ことに、山地のほうは、工事の規模からいきましても、また工事の効果からいいましても少ないものですから、自然にそれは取り残されてきた。そういう結果が、山つきの農業あるいは山合いの農業というものが全く張り合いのない、前途の暗いものに置かれておった。適地適作という研究を進められておるそうでありまするけれども、それが現地においてはたしてかゆいところへ手の届くような形で行き渡ったかどうか、私は非常に疑いを持たれるというようなことからして、このような、私どもの子供のころから見れば心配の種をたくさんそちこちに残しておるような状況に立ち至ったのじゃないか、こんなように思うものであります。  そこで、今度は、そういう現象をつかまえて、こまかい、同時にその効果は薄いかもしれぬけれども、将来のことを考えて、山地保全に相当の、いままで捨ておいた分までも大きく力を入れていく必要があろうじゃないか、こう思う。そうして、そのためには、まず第一に、人々にその山にとどまっていてもらわなければなりません。山につき守る人をとどめておいてもらわなければならぬということになるわけです。大臣はさっき所得政策を考えなければいけないと言われた。私もそう思います。所得のないところに人をとどめるわけにいきません。ところが、山合いの農業というものは、あるいは山つきの農業というものは、どう考えても平地の農業と競争して勝てるわけにいかぬと思う。たまたまそこにワサビだとかあるいはシイタケだとかいうかりに若干の適地適作のものを発見し得たとしましても、それはごく部分的なものであって、全体的に言えば、総体的に言えばとうてい競争できないのであります。所得面で競争できないものがそこにとどまるということは無理である。したがって、そうなればどうしても他の所得方法を考えなければ追いつかぬのじゃないかと思うのです。他の所得方法は、いままでは炭焼きだとかまきだとかいうこともあったかもしれませんけれども、それが今日望み少ないということになれば、やはり何か考えていかなければならぬのじゃないか。で、私は思いついたのであります。これも現地を歩いて思いついたのでありますけれども、たとえば、林道を開発してくださる、たいへんありがたいのですけれども、その林道保全の金が十分に行っておらぬ。したがって、もしこれを現地における所得策と結びつけて考えまするならば、せっかくつくった林道を補修するという経費でもたくさんやって、その人たちの仕事を常時つくっておかれるというようなことも一つの策ではないか。もっと言うならば、道だけではない。そのほかに山はだを監視する、山の状況を査察する、山を守るというような仕事を、これは生業としてつくっておかれることが、所得を確保する上において一番手短かであり、言ってみまするならば一石二鳥の方法とも思われるのでありますが、こういうことについて大臣はどんなふうな考えをお持ちになっておられるか。
  233. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 私どもも山を常に見ておりまして、いまのお話のようなことを痛感するわけであります。農道、それから林道等につきましては、これは山の奥に参って森林を伐採するということだけではなくて、利用する者はほかの者も利用するのでありますから、いまのお話のように、ある程度の資金をかけて補修をするということも必ずしも不経済ではないと私は思っております。したがって、山につきましては、いま林野庁長官が申し上げましたように、われわれとしては、日本の林野全体に対する構造政策、構造改善をするつもりでおるわけでありますから、同時にひとつ、そういう調査研究と相まって、ただいまお話しのような件についても、とくとひとつ参考にいたして計画を進めてまいりたいと思っております。
  234. 金丸徳重

    金丸(徳)分科員 大臣がそういう方向に力を入れてくださるということであれば、私はさらにひとつこれはお願いいたしたいことがあるのですが、いま地方の町村長は財政窮乏に非常に苦しんでいる。財源に苦しんでいる。その苦しんでいる原因はいろいろあろうと思うけれども、平衡交付金の算定基準、ことに基準財政需要の算定の中に、山の状況というものがあまりに重視されておらぬのじゃないかという心配を持つのですが、これは農林省あるいは林野庁のほうではどういうふうにごらんになっておられますか。平衡交付金の算定の場合には、たとえば道の長さであるとか幅であるとか、あるいは学校の数であるとか、あるいは川の状況だとかいうようなものはずいぶん重く見てそろばんをはじいておるようでありますけれども、山全体を見て、そしてこの山は非常に金のかかる山だ、守るのに金がたいへんかかるとか、あるいは荒れたら人がたいへん迷惑するというようなことまで考えが及んでおらぬのじゃないか。したがって、大きな荒れ山をかかえた町村長は、たいへんな道楽むすこをたくさん押し込まれているようなもので、苦労ばかり多くてたまらぬというようなことが現実ではないかというような気がするのであります。こういうことについては、従来といえども農林省としては自治省その他に対して平衡交付金の算定について申し入れをされておると思うのであります。しかし、それがあまりにも足りなかったために、山を持ち、あるいは山つきの農村、山合いの部落などをかかえた町村長は、行政運営上非常に苦労しておると思うのです。したがって、それが台風でも来ると一挙にまた救われるのだというような例も聞かないわけではありませんけれども、台風でも来なければ救われないような状況にしておくというところに問題があろうと思うのでありまして、もし財政的に相当見てやる方法が講ぜられておるならば、山を査察する、山の手当てをするということも、現地の町村長の力をもってしてなし得る、そして現地の労力などを巧みに確保する方法にもなろうじゃないか、こう思うのでありますが、いかがでありますか。
  235. 若林正武

    ○若林政府委員 交付金のお話でございますが、森林につきましては、荒廃地面積、それから要造林地面積等、こういうものを算定の中に入れまして、需要額の増大とかいうことについて努力をいたしておりますし、また今年度もさらにふえております。
  236. 金丸徳重

    金丸(徳)分科員 全体的に山をどの程度に見ておられるのですか。
  237. 若林正武

    ○若林政府委員 従来百七十億でございましたが、これを今年度二百億にいたしております。
  238. 金丸徳重

    金丸(徳)分科員 その額は全国的に山に対する平衡交付金算定の総額ですか。
  239. 若林正武

    ○若林政府委員 そのとおりでございます。
  240. 金丸徳重

    金丸(徳)分科員 それが私は少な過ぎるのじゃないかと思うのですよ。ほとんど山の国日本である。しかも、その山というものは台風などに非常に弱い山であり、林野庁あたりでしきりと苦労なさって指導されておりまするけれども、なお植林などはおくれがちである。言ってみますならば荒れ山なんです。それに対する対策として百七十億という算定総額というものが非常に少ない。私は、もっと五倍も十倍もあってもよろしいのではなかろうか、こう思う。しかも、それが現地にばらまかれることによってそういう山をかかえた町村長の政治行動というものが楽になりはしないか、非常に苦しんでおる原因というものがそこにあるのじゃないか、こう思うものですから、従来どの程度の足取りでもってふえてきたのか、これからどういうふうな要求をなさる御決意であろうか。その点も私は倉石大臣なればこそ実はこの機会にひとつ強く突っ張っておいていただきたいという念願も込めてお尋ねをいたしておる。
  241. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 これは私どもだけで決定のいたしかねることでありますが、ただいまの御質疑を拝聴いたしておりまして、ひとつとくと相談いたしたいと思います。
  242. 金丸徳重

    金丸(徳)分科員 私の与えられた時間はもう来てしまったのでありますが、じゃもう一点だけ、実は私はきょうは山のことばかりをお尋ねをいたしたのでありますが、山を捨てておいたために最近非常な問題を起こしておるという現実を見ておりますだけに、一生懸命の気持ちをもって大臣及び農林全御当局に善処をお願い、要望申し上げておるのであります。ずっと見てみますると、今日までのいろいろの施策が、これはひとり農林ばかりでなく、全体の施策が、都市中心、都市へ都市へという都市対策という面にのみ重点が置かれてきた。これは私は、いまのような経済機構の発展の状況からすれば、これもまたやむを得ないことであったと思うのですが、それだけに、忘れられたる農村、山村、同時に忘れられたる山というものに対して、いまこそおそろしいまでの心配、関心を持って見直してもらわなければならないときだと思うのです。それは昨年の二十六号台風の災害の惨状を見ておる私だけではないと思います。各地に、例の集中豪雨なる名において、局地的ではあるけれども、ものす。こい激甚な災害を受けております。これは、いままでになかったような現象をなぜ来たしたかといいますと、山を捨てておいた、山に力が入らなかった、山の守りが欠けておった、こういうことにある。これは少しことばが強過ぎるかもしれませんけれども、私は、あえて強過ぎるくらいの強さをもってお訴えをいたしたい。非常におくれておる、手当てが足りなかったということになろうではないか。治山治水十カ年計画というようなものがこしらえられたけれども、実際面において、金額というものが少ない、手当ても少ない。そして、それがまた原因となり結果となっていって、今日のような山村における人口減となる。山を守る人なしというような、これから三年、五年たった後においてはそういう心配を持つものであります。そうしますというと、今度は、山のふもとに住む、あるいは扇状地帯に町を構成し、そこで生業を営んでおるという者はとても心配で耐えられぬのではないか、こう思う。そこで私は平衡交付金のことにまで及んだのでありますけれども、あらゆる角度から山に目を向けて、山に対策を集中していってもらわなければならないのではないか。倉石農政の重点はもっとほかにもあろうが、いうならば倉石農政の力点を山に置いていただくわけにはいかないか、かように思うのでありますが、最後に大臣のこれについての、私をして安心せしむるようなお答えをちょうだいできればありがたい。
  243. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 先ほどのお話のように、わが国は山間部で大きな面積を占めておるわけでございます。しかもこの山間から出てまいります国の富というものはかなりなものであるにもかかわらず、ある時期には相当荒廃されてしまっておることは御承知のとおりでございます。いま農林省といたしましては、林野庁が特に力を入れまして、やはり一般として国有林についてはかなりな手当てをいたしておりますけれども、民有林というものは、大きな部分がほとんど伐採後あまり造林も行なわれておらないようなものがたくさんございまして、私どもは、林業もさることながら、山全体として考えましたときに、経済的価値よりも、やはり国全体とし、山の重要性、ことに定期的に参ります台風災害等のあとを見ますというと、御指摘のようなことをつくづく感じるわけであります。農林省は、全体の構造政策を再検討して推し進めると同時に、林野行政についても十分、ただいま私が申し上げましたような角度で再検討をいたして、力を入れてまいるつもりで、いま努力をいたしておる最中でございます。
  244. 亀岡高夫

    ○亀岡主査代理 華山親義君。
  245. 華山親義

    華山分科員 先ほど失業保険のことにつきまして質疑応答がありましたが、その際には第一次産業における失業保険の問題でありましたけれども、現在の出かせぎ者は、第一次産業ばかりでなくて、あるいは最も労働条件の悪い建設業界、その他工場等にも相当の出かせぎ者があるわけでございます。このことにつきまして、このたびの失保の改正について、このような失業保険におけるところのマイナスの部分は、これは農政の推進によって埋められるべきものであって、これを失業保険の分野においてやるべきことではない、こういうふうな論議があるわけでございますし、私もまた、他の常任委員会におきまして、自民党の議員の方がこういうことを非常に強く主張しておられるのを聞きました。そういうふうに農林大臣もお考えになりますかどうか、お伺いいたしたい。
  246. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 私は、国としては失業保険制度の対象範囲というものは厳格に守らるべきが本筋だと思います。いたずらにあらゆるものに失業保険制度というものを均てんさせるということは、諸外国の例を見ましても悪い反面が出てきております。イギリスなどでは、御承知のように、失業保険をもらっている者をアイドル・ボーイといっております。いまでもそういうことばを使っております。しかし、われわれは、失業保険制度というものは、本来は摩擦的失業を救済するというのがあの趣旨のねらいなんでありますから、そういうことを考えた上で、失業保険というものは当初から限界を置いてやるべきであると思っておりますけれども、わが国は、経済事情、いろいろな要素が加わりまして、その適用範囲が逐次拡大されてまいりまして、そういう制度が拡大されて、それの恩典に均てんするようになってまいりますというと、それが一つの日本的社会制度になっておるものでありますから、あながち、本来失業保険というものはこうあるべきであるというような理論だけで通すわけにはまいりませんと思います。そこで、農業ばかりでございませんで、季節的に働く人々について、わが国は失業保険に均てんさせるような制度が採用されておりますものですから、これもすでに比較的長期間行なわれておるわけでありますから、制度をいまもし全然変えるということになるというと、あらゆる面にその影響が出てまいると思うのであります。したがって、現在存在しておる制度そのもののもとにおいて、たとえば出かせぎの人も季節労務者も失業保険の均てんに浴する、それから、その他の農業でない季節的な労務者も失業保険の恩典に浴する、そういうふうな制度になってしまっている以上は、これは乱給は防がなければなりませんけれども、いままでやってまいりました程度の制度というものは、やはり継続していくのが、社会制度全体を安定させる上に必要ではないか、こういうふうに思っています。したがって、いま例に引かれましたように、農業政策あるいは通商産業政策の欠陥を保険におんぶしていく考えはよくないという説があるようでありますけれども、失業保険を悪用するということについては、いかなるやり方でもまずいと思いますが、現実にあります制度として均てんしておる既得権を剥奪するようなことは、一般の社会の秩序を維持してまいるに適当でないではないか、こういうふうに私は思っておるわけであります。
  247. 華山親義

    華山分科員 それで、私が労働省に聞きますというと、現在のこのような状態を是正するためには、通年制に改めるべきである、通年制を推進するということを言っておるわけであります。それから、農林省でお出しになりました「農業の動向に関する年次報告」におきましても、これを通年制に改めていくということが書いてあるわけであります。そうしますというと、通年制に改められた場合、現在百万人になんなんとするところの出かせぎ者が出ておるわけですけれども、そうなった場合には農村には男がいなくなる。農山村には若い人がいなくなってしまう。そういうふうな結果になるのでございますけれども、そういうふうなことを考えていられるのでしょうか。
  248. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 理屈ではありませんが、雇用というものは、私は通年制が普通だと思うのです。ところが、仕事によりまして、たとえば酒屋の杜氏みたいな人は、これはごくある委節だけに限られます。農林関係でも林野庁の従業員などにはそういうふうなものがございます。しかし、これは日本独得のいままでの雇用関係の制度でありまして、それを当事者双方が別にふしぎに思わずにやってまいったのであります。それにまた、その人たちも、通年制の雇用が家庭的にもいいと考える人もあれば、そうでないことを望む人もあります。やはり、ああいう農業関係の雇用については一概には言えないのではないか、こういうふうに見ております。    〔亀岡主査代理退席、主査着席〕
  249. 華山親義

    華山分科員 たいへんあいまいになりますけれども、この白書では通年制を推進するかのごとくに書いてある。通年制ということになりますと、現在とにかく東北の山村とかそういう方面では冬は男がいない。消防もよくできない。そういう実態なんです。それを通年制に直した場合、現在土建業なりそれから工場に行っておるのが全部通年制になった日には、もう農村には男がいなくなるということなんです。そういうふうなことで、安易に通年制、通年制ということを農林省が言われるということは、これは農業あるいは農村の壊滅を意味することだと思うのです。私は、その点につきまして、通年制ということと農業ということについて相当の考えがありませんといけないと思うのです。しかも、現在出かせぎ者によって初めて日本の労働力の不足というものが補われている。そういう実態において、通年制にするというふうなことは、私はうかうかと乗れる議論じゃないと思うのです。御所見があれば承りたいのでございますけれども、一言だけ申し上げておきたい。  それから、もう一つ。とにかく現在失保というものは改正が進行しておるわけです。いろいろな問題がありますけれども、少なくとも現在の改正案では、二年をたちますと失保によって受けたところのものが若い層は半減される。そのことによってマイナスができるわけでございますけれども、そのマイナスというものを農政によっててん補できるお見込みですかどうですか、伺いたい。
  250. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 私はただいま労働大臣でございませんので、どういう趣旨でああいうふうな改正案を考えたかということについて批判をすることは御遠慮いたしたいと思いますが、先ほどちょっと私が申しましたように、失業保険の適用範囲を拡大いたしました結果、私どもが比較的長く労政をやっております時代には、失業保険の保険金というものは逐年増加いたしまして、これをどのように活用するかということに頭を悩ましたものでありますが、現在は、御承知かもしれませんけれども、だんだん窮迫をいたしてまいりました。それは適用範囲を拡大いたしたばかりが原因ではありません。わが国には乱給が非常に多いのであります。私は、国費を非常に浪費している面があるのではないかと心配いたしておるのでありますが、ただいまの失業保険の改正案では五人未満の事業所に適用範囲を拡張する、これは長年の間われわれが五人未満の事業所にも強制適用すべきものであるということを言っておったわけであります。五人未満というのは、経営規模がそれだけ大産業より小さいのでありますから、そこではやはり、労働力を確保する意味においても、それから経営の弱体であるところに従事しておる従業員の身分を安定させる意味においても大切なことでありますから、これを考えることはいいと思うのです。しかし、何らかの方法を講じて失業保険財政の健全性をはかっていくにあらざれば、私はいまのままでは失業保険のファンドというものは崩壊してしまうのではないかと長年の間心配しておった一人であります。そういうようなこともありまして、やはりある面においては、継続的に常に六カ月ずつ切りかえ切りかえで保険金をもらっていられる部面を、節約のできるだけしたいという考えを持つに至ったことも、やはり労働省としてはごもっともな考えであったと思います。しかし、それは保険のファンドの意味から申しておるのでありまして、先ほど私がちょっと申しましたように、制度自体としてすでにその恩典に浴し得る既得権を与えておるものでありますから、これを年齢限をかりに切るにしても剥奪するということについては、おいそれとなかなかどなたも気持ちょく賛意を表することができないのではないか、こういうふうに思っております。ことに、これは先ほどの御質疑にもお答えいたしたのでありますが、農林省といたしましては、特に農業に従事している者の出かせぎ者にも影響がくることでございますので、農政局長に命じまして、労働省側ともそういう点について十分検討して、筋の通るようにやってもらいたい、こういうことを私は申しておるわけでございます。
  251. 華山親義

    華山分科員 私がお聞きしたことに率直にお答えにならないようでございますけれども、とにかく、いまの状態でまいりますと、二年たちますと、農村から出かせぎに来ている連中につきまして、三十五歳以上はどうこうということもありますけれども、マイナスがくるわけです。現実にマイナスがくる。そのマイナスというものを農政の推進によって補てんすることができるかどうかということを伺っているわけなんです。できるならできる、まだそういう考え方を立てたことがないならないと、率直にお答え願いたい。
  252. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 原則論としては、所得を増強するために、あるいは所得の不足分を補うために失業保険に依存するという考え方は、よろしくないと思います。これは農業従事者に限らず、日本人全体がそういう考えを持つべきではないと思うのであります。したがって、三年目には半額になるというこの切られ方というものは、ひとり農業従事者、いわゆる出かせぎの人ばかりではございませんで、すべての産業に従事し、そして失業保険の恩典に浴している者はすべて同じような措置を受けるわけでありますから、そこで、いま華山さんのお話農業従事者の収入の欠如するものを他の面で補うことができるか、こういうお話でございますが、それは個々別々なそれぞれの事情があるでありましょうから何とも言えないことでありますけれども農業面としては、失業保険で部分的に三年目には一部切られるからそれを補うために何か追加的な補助でもとか、そういうことは考えるべきではないと思いますが、所得全体をふやしてまいるということ、それからまた、あとう限り出かせぎのようなことをせずに、裏作も並行してやって、そうして家庭にとどまって農業を営んでいかれるようにしていくのが、私どもの心からのねらいでございまして、したがって、いまその切られる面だけで申しますというと、幾らか減収になるかもしれませんけれども、私は、農業全体としては、もしいま労働省の考えているような方策を進めざるを得ないとすれば、農業政策としては、ほかの面で農業所得をふやすことはいろいろな点で考慮いたしておるわけでありますから、そういう施策を進めてまいりたい、こういうふうに思っております。
  253. 華山親義

    華山分科員 そういうお答えが初めからあれば、こう時間をとらなくたってよかったのですけれども、そういうふうなことで、ほんとうにもしもこういうことになるならば、私は強力にそういう点を推し進めていただきたいと思うのです。何も好んで出かせぎに来ているわけじゃございません。食うに困るから来ている。それですから、農政が確立しているならば、農政がそこまで行き届いておるならば、私はだれも出かせぎなんかに来ないと思う。それですから、もう現実にそういう問題が起きたならば、それを保障する制度を別に設けろとは私は言いかねるかもしれませんけれども、農政面で推し進めて、特に山村地帯、寒冷地帯については農政を推し進めて、そして農業所得なり農外所得というものを増すことを、ひとつほんとうに考えていただきたいと私は思うのでございます。だからといって、私はこの案に賛成する意味じゃございませんから、その点は誤解のないようにしていただきたいと思うのでございますけれども農林省としてはそういう自信があるならばいいでしょうけれども、なければひとつ反対していただきたい。  その次に伺いますけれども、この失業保険の改正によりますというと、一月の労働日数というものを、十一日を十八日に延ばすということになっておる。これが十五日というふうに安定審議会では言っておるようにも新聞に出ていますけれども、この点につきまして、そういたしますと、農村から出かせぎする人は、一週間程度あるいは十日間程度早く出てこなければいけない、あるいはおそく帰らなければいけない。まず、出かけるほうを早くするということにつきましては、これは、もうできた稲作でございますから、みんなで助け合えば処理ができるのかとも思いますけれども、帰る時期が五日か十日なりおくれるということは、これは大問題だ。ちょうど米作地帯から出かせぎ者が多いのでございますけれども、この点は、新潟県や山形県等におきましては苗しろづくりの最盛期なんです。一日も早く国へ帰りたいということでやっているわけなんです。もしもこのままやるのならば、これは実際上におきましては失保がもう受けられないという者が多数出てくるのじゃないか。そうでなければ稲作というものに大きな影響を及ぼすのではないか、こういうふうに私は考えますけれども、事務当局でけっこうでございますが、この点についてお考えになったことがございますか。
  254. 森本修

    ○森本政府委員 労働省が職安審議会のほうに出しました労働省の当初案によりますと、御指摘のように、月間の労働日数について従来よりも引き上げて、失業保険の適用について検討する、そういうふうなことになっておるようであります。ただ、その後職安審議会におきましても、この点について種々議論がございまして、必ずしも当初案どおりいくかどうかはまだ未定のような段階であるというふうに私どもは聞いております。
  255. 華山親義

    華山分科員 聞いておられるのはけっこうですけれども農林省はどういうふうにこの点を考えているか、こういうふうに期間が延びるということが農業に対して影響があるのか、影響があるとすればこういうものはとめさせる考えなのかどうか、そういう点を伺いたい。
  256. 森本修

    ○森本政府委員 ある意味ではこういった改正は失業保険制度の認定上の技術的な部門に属するようにも思うのであります。したがいまして、月間働いたというふうに認定する際に、どの程度の日数を働けば一月の間働いたというふうに認定するかということになるわけでございますので、やや技術的な問題に属するというふうに思います。ただ、御指摘がありましたように、そういうふうな改正がかりに行なわれたといたしますと、実際に出かせぎ者といいますか季節労務者に対してどういう影響を及ぼすかということは、一つは、そういう人々がそういう制度改正に対していかなる対応をするかということにかかってくることだと思います。かりに、御指摘がありましたようなことで、若干季節労働の期間が長くなるというふうなことになりますれば、理論的には、農業生産の、あるいは農作業に対する準備がおくれるといったような影響も考えられないことはないと思います。しかし、その程度いかんということは、いま直ちに私どものほうでも実は断定ができないというふうなことでございます。ただ、一般的に申し上げますれば、そういうふうな関係が出てくるというふうなこともございますし、また、農業の労働力が減少しておるというふうなこともございますので、できるだけ手間の省けるような農作業をやる、いわゆる省力技術の普及でありますとか、あるいは生産の組織化といいますか、共同して苗しろをつくるとか、あるいは共同作業をするとか、そういうふうなことで、いわゆる生産の組織化について指導いたしておりますので、そういう指導がそういった方面についても一つの対応策になるのではないか、そういうふうに思っております。
  257. 華山親義

    華山分科員 おっしゃることは、これは理論的にはそうなんですけれども、実際は理論では割り切れません。ちょうどいまから一週間前程度が苗しろの最盛期なんです。その前に出かせぎ者が失業保険を受け取りたいということのために帰郷できないということになったならば、私は相当の影響があると思うのです。あるいは相当の影響があるからということで国に帰らざるを得ないということであれば、これはもう失業保険は受け取れない、こういう問題を私は生ずると思うのでございます。  それで、実際のことを申しますというと、私の県などはリンゴの産地でございますけれども、果樹の栽培業者は失業保険を受けておりません。ということは、剪定の時期がおくれるからでございます。幾らあなたがそういうふうに言われたって、剪定を共同作業でやれとかなんとかといっても、できるものじゃない。機械で剪定できませんから。それから、苗しろづくりだって、あれだけのこまかな仕事を、とにかく土から何から全部改良してやるというようなことは、機械や共同作業なんかでできるものじゃないのです。手工業なんです。私はその点を心配して、よしあしの問題は別ですけれども、この案が通るならば、失業保険というものについて、実際はいま出てきている人がやむを得ずもらえなくなるか、でなければ、農業に重大な影響があるのではないかということを心配をしておりますので、その点実態についてほんとうに調べていただきたいと思う。  その次に伺いますが、消費者物価の問題でございますけれども政府はよく、物価の上がるのは農業と中小企業が近代化されないからだとか、合理化されないでおくれているために消費物資が上がるのだ、こういうことを口ぐせのように言われるのでございますが、この報告書には書いてたい。どうしてですか。
  258. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 物価の問題はたいへんむずかしい問題だと思いますが、物価につきまして、ここ二、三年来、わが国の消費物価の中で生鮮食料品が上下しているときにやはり大体それと並行したような形で全体の消費物価が動いていることも事実であります。したがって、私は、いわゆる近代化されないのが物価上昇のすべての原因であるとは思いませんけれども農業も中小企業も近代化されてコストが下がってまいるということは、したがって全体の物価にはいい影響を持ってくるんではないか、そういうことは言えると思います。
  259. 華山親義

    華山分科員 私は中小企業のことをそれだから省きますと申し上げた。農業におきまして近代化されても、あるいは合理化されても、それはコストが下がるということには響きません。大体において響かない。生産性の向上ということが近代化であり、合理化の一つの問題でございますけれども、農村の現在のやり方というものは自家労働です。賃金を払っておるんじゃない。近代化されようとどうしようと、自分はひまになるんではあろうけれども、それによって賃金が減るという問題じゃないわけです。したがって、近代化されても、それはひまにはなるかもしれない。しかし、そのひまになったものをよそから金がもらえるから、それじゃ農産物のほうを安くしましょう。そんな簡単にはいかない。私はそこは自家労働のものと賃金を払うものとの間では違うと思うのです。ですから、この勧告の中でも、消費者物価の引き下げについて農業の近代化とかなんとかいうことをうたってない。私はこの勧告のほうが正しいと思うのです。どうですか。事務当局でもいいですが、おっしゃってください。
  260. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 華山さん御存じのように、いま自家労力だけで農業をやっているという農家もございますけれども、だんだんと、たとえばさっきリンゴのお話がございましたが、リンゴでも、少し大きく経営している者は、労力が足りませんから、労働力を雇い入れます。そういう場合に、近代化されておる経営規模の大きいものと小さい畑だけのものとはコストが違っておることは御承知のとおりです。私の選挙区でもあなたのところと同じようにリンゴばかりでございます。ただ、私のほうがうまいというだけです。そこで、たとえばエノキダケという、おたくのほうでもやっていらっしゃるそういうものでも、工場で大きくやっているところと、農家一戸でつくっておるところとは、東京に出すコストがうんと違ってきております。やはり私は、農業も省力をして近代化をしていくことのほうがコストが安くなって、売れ行きがよくなって所得がふえてくるのではないか、こういうふうに考えています。
  261. 華山親義

    華山分科員 議論するのはやめますけれども、そういうふうな農業が全国的に普及してしまって、もう自家労働ということだけでなく他から労働力を得てやるという企業形態が農業に出てきた暁には、これはもう安いほうにものが引っぱられるのですが、いま大臣のおっしゃたような企業が現在の農業というものを支配してないのですね。たとえば鶏卵等については私は考えられますけれども。そういうときに、農業の近代化が進まないからといって、消費物価が下がらないのは農民の責任であるかのごとくに言われるということは、私はどうかと思うのです。  それで私伺うのですけれども、この点で一番やはり問題は、私は流通の問題だと思うのです。生鮮食料品というものは、野菜なんかは不作の場合に八百屋の店頭でうんと上がる。上がった分は一体農民の手に入っておるのかどうか。そうじゃないと私は思うのですけれども、これにつきまして御研究でもなさいましたか。上がった分、あれが全部農家に入っておりますか。
  262. 檜垣徳太郎

    ○檜垣政府委員 生鮮食料品の生産者団体以後の価格形成の模様というのは、品目により、あるいは需給の関係によって非常に違うものですから、一がいに言えないのでございます。一般的に申し上げられますことは、需給関係が非常に逼迫をいたしておるときは生産者価格も上がっております。上がっておりますが、それが消費価格の段階までの間に上がり方が大きいということは明らかであります。また、需給が非常にゆるんでおります場合にはそれが逆であるということが言えると思います。
  263. 華山親義

    華山分科員 仲買いあるいは八百屋さんの段階におきましても、少量のものから自分の生計を維持するための利潤を得なければならない。そうすれば、できるだけ買うから農家の段階においても高くなるかもしれませんが、上がるということは、これは利潤の幅が大きくなるからだと私は思う。そういうふうな現象で、農家の場合は、その逆に、とにかく農家のほうは売らなければいけない。ある程度たくさん買ってくれても、売ろうとしても売れない。しかし、ある程度の利潤があれば、大量であるから、売るほうはある程度の利潤が出るというふうなことから出すのであって、私は、その点に考慮を払って、そうしてできた野菜なり何なり、そういうようなものの供給を円滑化するという点をやりませんと、この問題は解決しないのじゃないか。それは低温冷蔵のこともありましょうし、いろいろなことがあると思いますけれども、その点いかがでございますか。
  264. 檜垣徳太郎

    ○檜垣政府委員 お話のように、価格が非常に不自然な形をとりますのは、過度に需給がアンバランスであるとき、あるいは供給が多過ぎるとき、いずれも価格の形成は非常に不自然になるのでございます。で、ございますので、その観点から見ましても、需要に即応した生産、そういうことを何らかの方法で計画的に進めていくということがきわめて大事であるという点は同感でございます。
  265. 華山親義

    華山分科員 生産の面だけでおやりになるわけですか。
  266. 檜垣徳太郎

    ○檜垣政府委員 私は、供給の根本は生産でございますから、生産についても需要に対応させるようにする必要がある。また、その間の生産と需要との関係においては、需給の調節の機能は流通段階でやることも必要であるというふうに思います。
  267. 華山親義

    華山分科員 キャベツとか大根とか白菜とか、そういうふうな大量のものは生産という問題はありますけれども、一体、毎日毎日台所を非常に脅威しているものは、菜っぱとかそういうものが多いのですけれども、そういうものは長雨になると値段がぐんと上がるわけです。そういう面から言いましても、私は、どうしても保管とか、供給の調節、そういうものがなければいけないと思うのです。私は、その点におきまして、国のほうは一体低温冷蔵とかそういうものについて考えていられるのかどうか非常に疑問だと思うのでございますが、長くなりますから、ひとつ考えていただきたい。  次に伺いますが、私の県の山形県では、現在五十万トンあるいは五十二万トン程度の米ができておりますけれども、ことしになりまして、わずか五ヵ年計画か、五ヵ年を目途でございますか、それによって六十万トンにしようということで、県と農協が中心になって大運動を展開しておる。こういうふうに米を増産することは、これは国の政策で出ているのかどうか。こういうふうなことをやることはけっこうだと思いますけれども、いつかまた、かつて踏んだように、米が余って困るというようなことになりはしないのか。どうなのですか、この点は。何か米の増産というものを奨励していられるのですか。
  268. 森本修

    ○森本政府委員 御案内のように、最近数年間の米の生産の状況は、昭和三十七年をピークにいたしまして、停とんないし減少というふうな状況になっております。ただ、四十一年産は、これまた御案内のように、やや生産量が回復しておるというふうなことでありますが、何分にも、最近の需給状況を見ていきましても、米の生産の確保、また米の生産についてその生産性を上げていくということは、農産物の生産対策としてきわめて重要であるというふうに思うわけであります。また、若干将来のことを展望いたしましても、やはり米の生産の確保は重要であるというふうに存じます。そういうことで、われわれとしても各種の米についての生産対策を講じておる。また、そういう全体的な状況もおわかりになっておられる各県のことでございますから、それぞれの県における米の生産対策についてもかなり最近は力を入れておられるというふうにも見受けられるわけでございます。
  269. 野原正勝

    野原主査 華山君の持ち時間は約八分過ぎておりますので、結論をお急ぎ願いたいと思います。
  270. 華山親義

    華山分科員 米の生産につきまして、昔のことを言うわけじゃありませんけれども、もう米の生産はあまりしなくてもいいのだというふうなことを言った時代があるかと思うと、今度のように米はつくれつくれというふうなことを言う時代がくる。ほんとうに私は何かしらん非常に不安な気がするのですよ。いま山形県知事は、米をつくれつくれということを言っておる。このままでいって、十年後、五年後にはたして米というものがほんとうにあの状態で今後五年間に二割も増して消化されるのか。また再び三十五、六年当時のようにもう要らないのだという時代がくるのじゃないか。確信がおありになるということで、ございますから、私はそういうことでいきたいと思います。  時間がないそうでございますから、なるべく簡単にお伺いいたします。  先ほどもお話がありましたけれども、山村地区からの人口流出は今後いよいよ激しくなるだろうと思います。これに伴って耕地の壊廃が当然あるだろうと私は思う。あるいは、先ほどお話のありましたように、耕作物というものは放棄して山林へ転換するというふうなこともあるかと思いますが、この点の見通しを伺いたい。
  271. 和田正明

    和田(正)政府委員 山村部分についてだけの見通しというのは私持ち合わしておりませんが、最近、御承知のように、工場の敷地でございますとか、あるいは宅地でございますとか、道路敷地でございますとか、そういう形で耕地がつぶれる面積がございます。昨年閣議決定をいたしまして、国会でも御審議をいただきました土地改良長期計画では、昭和四十年度を初年度にいたしまして、昭和四十九年までに、こういうことで田畑を含めまして三十五万ヘクタールほどの面積がつぶれるであろうということをいろいろなデータから推定をいたしまして、それに見合いますものを開拓及び干拓で造成をして、昭和四十九年におきます農地の面積が昭和三十九年の農地の面積と同一であるような方向で土地改良事業を進めたいという考え方で、土地基盤整備の予算等について計上をいたしておるわけでございます。
  272. 華山親義

    華山分科員 山村のことにつきましては関心がおありにならないということでございますけれども、いまどうなっておるか知りませんが、開拓適地というものの条件としましては、傾斜十五度以上は適地ではないというふうに農林省はおとりになった時代がある。そういうふうなことをいまおとりになっておられるかどうか知りませんけれども、そうだと思うのです。そうしますと、傾斜十五度以上の耕地がもしも近代化からおくれるようなことによって放棄されるとしますと、この耕地というものは百万ないし百五十万ヘクタールにもなる。そしてそれが現に壊滅しつつあるというふうな見解を堂々と述べている学者がある。こういうことにつきまして、そんなばかなことはないよと一笑に付せられますか。
  273. 和田正明

    和田(正)政府委員 お話がございましたように、過去におきまして開拓を戦後の緊急開拓で実施をいたしましたときには、物理的な傾斜度十五度ということで考えまして、そういう斜面にいろいろな開拓工事を実施をしてまいったわけでございます。現在その後の技術の進歩その他を考えてみましても、山成りに等高線に沿って開墾をいたします場合に、作物によりましては十五度ないし二十度程度まで開墾ができるかと思いますけれども、それ以上は階段工の実施をいたしませんと不可能でございまして、最近の工事費等から考えてみますと、二十度をこえますと反当八万円余の工事費がかかりますので、特定の場所におきまして果樹等を栽培します場合を除きましては、効率的に考えまして、傾斜の高いところを開墾することは無理ではないかというふうに考えております。
  274. 華山親義

    華山分科員 私は無理かどうかということを聞いているのじゃないのですよ。十五度以上というふうな傾斜地は、あなたの言われるような今後の大規模農業には適さないのであって、これは壊滅すると考えるのかどうかということを聞いているのです。それがわずかなものだったらいいのですよ。百ないし百五十万ヘクタールあるといわれている。そして水田等が多いわけであります。こういうものは壊滅しないというお考えなのかどうかということを伺っているのですが、それはだいじょうぶだとお考えになるか、やはりだんだん減っていくだろうとお考えになりますか。時間がありませんから簡単にお答えを願いたいのです。
  275. 和田正明

    和田(正)政府委員 いま私が申し上げましたのは、現在農地でございませんところを新たに開墾をしていく場合の、反当の工事費等から考えての採算を申し上げたわけでございます。いま先生のお尋ねは、現状において十五度以上の農地はどうするのかというお尋ねだろうと思いますが、現在農地でありますものにつきましては、でき得る限り土地改良事業の対象等に考えて、生産力の増強等によって維持していきたいと考えます。なお、作目によりましては、傾斜が高くてもやれるような、たとえば草地改良のような場合には可能な部分も相当あろうかと思います。
  276. 華山親義

    華山分科員 それじゃ、山村地区その他、とにかく十五度以上もあるようなところでも、今後近代農業が行なわれてずっとそのままにいくだろうという考えでございますね。  それじゃ伺いますけれども、都市近郊における耕地の壊滅はどのようにお考えになりますか。
  277. 和田正明

    和田(正)政府委員 地帯別には、都市近郊は、四十一年度の実績で申し上げますと、田で八千四百ヘクタール、畑で八千五百ヘクタールでございます。先ほど全国的な数字として、今後四十年を初年度として十年間に三十五万ヘクタールほどの農地が壊廃されるであろうという数字推定をしておることを申し上げましたが、それは都市近郊も、また先生のおっしゃるような山村も含むわけでございますが、最近におきます実際の傾向値としての絶対数は、都市近郊が一番多いことは事実でございます。
  278. 華山親義

    華山分科員 私の持っている資料が間違いなければ、都市近郊における農地の壊滅は五万ヘクタールといわれている。それで、将来非常にあぶないと思われるところの山間の傾斜度が十五度もあるようなところが百万、百五十万、そして毎年毎年五万ヘクタールずつでも減っていくということであるならば、先ほどおっしゃった現在の土地改良長期計画というものでは不足なのではないか、私はこういうふうに考えざるを得ないので、再検討をお願いしたいと思うのでございますが、この火山灰地帯とかローム地帯というものは、開墾の土地改良計画にはもう入れていないのでございますか。
  279. 和田正明

    和田(正)政府委員 いまの特殊土壌地帯に対します対策の前にお尋ねがございました壊廃関係は、農地法で農地を転用いたします場合の許可を要するわけで、それの年度別の数字を見ましても、最近、年によって違いますが、一年三万くらい、そのほかに災害によるものとかあるいは農地法上の許可を要しませんものを含めましても、これは年度が違いますが、たとえばことしの八月から来年の八月というふうに押えております統計調査部の資料でも、全国合計で六万ヘクタールくらいでございますので、おっしゃいますように、都市近郊だけで五万というような事実はございません。それらを前提にして、先ほど申し上げましたような三十五万ヘクタールということを考えておるわけでございます。  それから、特殊土壌地帯における土地改良、基盤整備はもう実施をしないのかというお話でございましたが、現在、先ほども申しました土地改良長期計画の中にも、そういう特殊土壌地帯、たとえばシラスでございますとか、火山灰地でございますとか、そういうものも含めた計画として計算をいたしております。
  280. 華山親義

    華山分科員 主査、たいへん長くなりましたけれども、どうも御答弁が長いものですから……。
  281. 野原正勝

    野原主査 この辺で終えてもらいたい。
  282. 華山親義

    華山分科員 私は非常に短くお聞きしているのですけれども……。  それで、開田技術というものが相当進歩しているのだから、私は、もっと開田ということをおやりになったらいいと思うのです。特に関東ロームとか火山灰地帯、東北地方それから関東地方では、いわゆる陸田といいまして、それで政府から補助をもらわないでそこで田をつくっているわけですよ。そういうふうなものが多い。関東ローム一地帯では、埼玉県や栃木県では数千ヘクタールに及んでいるといわれている。仙台の北部におきましては、火山灰地帯で数千ヘクタールの水田を、政府補助をもらわないでやっておるわけです。こういうふうに水田をつくろうという意欲が非常に強いわけです。ところが、政府のほうはいまでも田畑輪換、そういうふうなことで、むしろ農家は困惑を感じている田畑輪換——私が県庁におって仕事をした場合の田畑輪換とか畑地かんがいというのはどういうことだったか。これから米をつくると余るんだぞ、田をつくるのはやめなさい、そんなに田がつくりたいなら田畑輪換でいきなさい、畑地かんがいでいきなさい、こういうことでやったのですよ。しかし、いまでもこの田畑輪換とか畑地かんがいということをやっている。そういうことを推奨している。先ほど聞くと、これからは米をうんとつくってもらわなくちゃいけないんだということだった。そうすると、田畑輪換、畑地かんがいというのは、そんなものはこれからはあまりおっしゃらないわけですね。
  283. 和田正明

    和田(正)政府委員 お尋ねのように、最近開田をしたいという意欲は相当ございます。それに対しましては、私どものほうも、事業計画の中で、国営、団体営、県営でいたしておりますが、田畑輪換と申します場合には、新たに開田する場合、全部をたんぼにして使うのには水が不足するような場合に、やむを得ず田にしたり畑にしたりしながらやっていくというふうに考えております。水量が十分にございますれば、開田計画で処理をいたしておるわけであります。
  284. 華山親義

    華山分科員 終わります。
  285. 野原正勝

  286. 米内山義一郎

    ○米内山分科員 私は、北東北のビートの問題について、大臣及び政府側の見解をただしたいと思います。この問題は、すでに三月三十日の参議院の農林水産委員会で渡辺委員が大臣に質問をし、一応の答弁もあったことですから、それと重複を避けましてお尋ねをしたいと思います。  政府考え方は、この間の参議院の委員会における大臣のお答えでも、ことしぎりの問題、しかもことしぎりの値段については農民に迷惑をかけないけどということなんでありますが、しかし、この問題はその程度で済まされる問題ではないと思います。三月十日の時点では農林省に対してフジ製糖会社が休止したいという申し出がありましたが、四月の十四日になりまして、社長がわざわざ青森まで参りまして、契約の相手方である経済連に契約解除の申し入れをしておるわけであります。そういうふうになってきますと、これは単にことしぎりの問題ではなく、将来に及ぼす問題なのであります。そこで、私は、質問の最初に、国の腹をまずお聞きしたいと思います。せっかく定着しかかった北東北におけるビート栽培事業というものをこれでやめるつもりなのか、それとも何らかのやり方によって生かす道があるとすれば生かす考えもあるのか、この点をひとつお聞きしたいと思うのです。  そこで、お聞きしたいのは、これは四月十八日号のエコノミストでありますが、これに荒勝食糧庁業務第二部長という人なんですが、こういうことを言っておる。「東北の場合、ビート糖生産はムリ。乱暴ないい方をすればかりに五万トンの砂糖をつくって八億円の赤字を出すのとビートを中止することで三億五千万円の損害を出すのではどちらがよいか。また農家にとっても十アールあたり二万円の粗収入を得るより、米でも作った方が、三百キロとして三万円入る勘定になる」。まあこういう記事ですから、これは責任あってないものでしょうが、かりにこれが政府を代表する腹であるとすれば、これは殺すほうなんです。抹殺のほうなんですが、こういう考え方が政府考え方であるか、単なる属僚の食言であるか、失言であるか、この点をまず大臣から明らかにしていただきたい。
  287. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 昭和四十二年のてん菜生産につきましては、いまお話しの、フジ製糖が工場の操業中止を申し出ておる状態でございますが、その申し出の時期が、すでに種をまきます時期にかかっておったものでありますから、生産に着手している耕作者もございましょう。これらの者の不利とならないように配慮する方針でございます。四十三年以後のてん菜生産につきましては、現在のところその振興を中止せざるを得ない見通しが大きいと思います。生産の奨励を中止した場合の分後の同地域における畑作営農につきましては、関係の県当局の意向もしんしゃくいたしまして、総合的に検討を進めてまいることといたしたい、こういうのが政府方針でございます。
  288. 米内山義一郎

    ○米内山分科員 いまの業務第二部長のことについては御答弁がないのですが、これはあとで、もし食糧庁関係の人がいたら、このことについて、真実であるか、これは単なる架空の記事であるかを明らかにしていただきたい。  そこで、そうしますと、問題は、あと会社が休業すればビート栽培はやめるということに通じますか。それとも、フジ製糖のあの工場がやめても栽培を継続して、何らかの方法で北海道の工場へ送るなりしてでも栽培は継続させる、奨励を続けるというお考えなんですか。
  289. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 北東北のような地域につきまして、ああいうてん菜栽培、これがもし計画どおりに進んだといたしまして、それからまた、それを中心にしておる製糖会社がコマーシャルベースでペイするということであるならば、私どもやはり北海道と同じように好ましい姿であると思っております。しかし、現在はあなたがよく御存じのような状態でございますので、先ほど申し上げましたように、本年すでに作付いたしておりますものについては、これは放置しておくわけにはいきませんからして、何らかの救済の方法を関係県と打ち合わしてやらなければなりません。しかし、これをこのまま継続していくということが経済的に可能であるかどうかということも判断をしなければならないと思います。そういう意味で、政府方針は、私が先ほど申し上げましたようにきめたわけであります。
  290. 米内山義一郎

    ○米内山分科員 そうしますと、経済的に可能かどうかということは、会社の企業採算のことを重視するという意味と解しますが、それでいいのか。  そこで、これは非常に重大だから、私、少し長話になるかもしれませんが、このビート指定地域というものは、北東北の中でも農業のおくれている地帯であります。非常に気象条件もよくないし、土壌もやせております。したがって、戦前からの過去の長い間は馬産地でございます。そして畑というのはアワ、ヒエ、大豆というような明治時代そのままの作物がずいぶん長く続いてきておりました。ところが、戦後になりまして、軍馬の需要がなくなって馬がやめになる、かわって酪農が入る、同時にバレイショとか、なたねというものが畑作の主要なものにかわってきておったわけです。ところが、でん粉あるいは油脂原料の自由化が始まりまして、これらのものの収益性が低下してきた。ちょうどその時期に、昭和三十四年でございますか、国が甘味資源の自給力強化総合対策というものを打ち出したわけであります。ちょうど行き詰まった畑作地帯ですから、これによって何とか畑作農業の生きる道を見出そうということで、国の政策に呼応して始まったわけです。そして、試作時代を経まして、昭和三十六年から本格的になったと思いますが、本格的になってからわずか五年しか経過していない。一体、農業の中で、三年や五年で、あるいは五年か十年で、やりつけないものが広い地域のたくさんの農家に定着し得るものがあるでしょうか。三年、五年やって、会社が引き合わなくなったからやめるということならば、もう農林省は要らないようなものです。農業政策なんというものは、単なるリップサービスと申しますか、くちびるだけでやっておるのじゃないですか。これはまさにぺてんであり、うそ、ごまかしだったということだ。  さらに、こういうことを国がうたっておりましょう。甘味資源特別措置法というのが出ました段階におきまして、実にりっぱなことを言っております。これは農林省からの通達なんですが、生産地域の指定、製造事業施設の承認、さらに、国内甘味資源作物の価格支持、国内糖の政府買い入れ、そして目的とするところは農業経営改善と農家所得の安定、さらに、砂糖類の自給度の向上及び甘味資源の国際競争力の強化を目的とすると言っている。まあいまの時代に国際的に砂糖が競争してやるということは、ことばだけではできるはずがないのです。それを、困難な国内で始めるときにはこういううたい文句をしておって、会社が採算が合わなくなったからやめますなんということは、これは農業政策じゃなくて、ぺてんにすぎない。  そうして、なおこういうことも言っている。政府は、国内甘味資源の保護という確たる方針を堅持しつつ、国際糖価の動向その他内外諸情勢を慎重に考慮して昨年八月三十一日粗糖の輸入の自由化を実施したので、これに対処する上からも本法による国内甘味資源の保護育成のための措置は一段とその重要性を高めているということは言うまでもない、こう言っている。通達の中にここまでうたっています。  そうしますと、これは三十八年ですから、わずか三年か何ぼしかたたないうちに、これを忘れたのです。このときとどういうふうに条件が変わり、いま会社がやめたからこの大事業をやめることもやむを得ないという結論が出るのでありましょうか。会社は企業ですから、もうけがあれば手を出すでしょう。ものけがなければ手を引くでしょう。これは明らかに私利私欲に基づいたものなのです。しかし、少なくとも国というものはそれに追随していいものでしょうか。それに追随すれば、結局いままで国民、農民に対してうそ、ぺてんをやったという結果にしかならぬと思うが、この点についての大臣としての責任感についてまずお伺いしたいと思います。
  291. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 政府は、原則として、やはりでき得べくんば甘味資源の自給度を高めたいという考え方であるわけであります。そのためには、北海道のごときああいう地域の畑作としてはビートはきわめてよいものである。したがって、ビートについての奨励をする方針は、いまお読みになったような趣旨で政府は奨励をいたしておる。いま会社のお話がございましたけれども、ああいうような作物というものは加工原料でございますから、それを受けて砂糖を製造するという生産工場と相まって初めて成り立つ業種でありますから、一方においてその工場が採算が合わないということで閉鎖するという限りは、やはりこれを採算を無視して継続することは困難でありましょう。私どもは、したがって、さっき申し上げましたように、ことしフジ製糖が閉鎖を宣言いたしましたときは、農家においては播種時期であり、播種が済んでおるものもあったでありましょうから、これは政府において困らないように県と相談をして何とか処置をいたしましょう、こういうことでございますから、ビートを奨励し、そして砂糖についてなるべく自給度を高めたいという政府考え方は一向変わっておらないわけでございます。ただ、いま三十八年のことをおっしゃいましたが、砂糖が自由化されましたのは大体三十八年の十月ごろでありますか、それからしばらくの間はやはり糖価は非常にいい値段であった。したがって、日本内地にあります砂糖工場でも競って生産設備を拡大いたしたのであります。私は、いま考えてみますのに、世界のマーケットの状況が悪くなってきておるということが日本の糖業を苦しめておるのではなくて、むしろ国内におけるそういう生産過剰、設備過剰こそ糖業をいまのような困難な状態におとしいれておるのであると思うのであります。全体としてあの当時のことを考えてみますと、やはり、当時の政府が砂糖というものを自給するということを考え、同時に北海道のようなああいう寒冷地にはビートは適当なものであるという考え方によってこれを奨励いたしたという方針は、当時としては誤りではなかったのではないか、そのように考えております。
  292. 米内山義一郎

    ○米内山分科員 そういうお話になりますと、これは単にビートだけのものじゃなくて、農業全体にかかわる重大問題だと思うのです。そのときは値段がよくて会社の企業も成り立つ見通しだったから奨励したのは間違いではない、しかしその後国際的に糖価が安くなって企業の採算が合わないからやめるということになりますと、その他の雑穀類にしましても、あるいは遠い将来を見ると米にしましても、いまはよいから、いまの時点では自給度を高めよう、あるいは国際競争力を強めようというようなりっぱなことばを言ったとしても、国際価格が下がれば、そのときになってみなければわからぬ、そのときはやめるよりしかたがないというようなことであれば、一体これで農業政策というものがあると思いますか。特に日本農業というものは体質的に弱いのでございましょう。これを強化して、しかる後なら、この国際競争に対等に立ち向かうとか、自由化の中に自由に泳ぐということは可能なのですが、泳ぐ能力もない農村と農業の実情をこのままにしながら、いまの倉石農林大臣お話のようであるとすれば、国全体の農業の不安というものはますます高まると思うのです。これは砂糖に限らず、他の各種のいわゆる国際的に交流する農作物については、ことごとくそういうお考えですか。たとえば乳製品等にしましても、みんなそういうお考えですか。それによってこれからやるつもりです。
  293. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 あなたも御存じのように、いま貿易の自由化ということは国際的傾向として拒むことのできない情勢であります。しかしながら、私どもは、いまもお話のありましたように、農業というものは比較的そういう国際競争力に立ち向かうのに弱い面を持っているものもございますからして、そういうものは、ただいまジュネーブで行なわれておるガットの会議においても、われわれとしては強硬に主張をして、ある程度のものは守ることに努力をしておる。しかし、国全体の考えからいたしますならば、やはり私どもは貿易の自由化に協力をし、ガットに参加しておるほうが全体としてはプラスであるということで政府方針がきめてあるわけでございますが、その中であるにもかかわらず、農作物に対しては、われわれ全部が全部自由化いたしておるものでないことは御承知のとおりであります。ただ、砂糖はすでに自由化されております。したがって、ビートは別問題といたしましても、ほかのものはもう自由に入ってくるわけでありますからして、国際相場全体の中で私は考えてみたときに、北東北におけるビート工場を含めたてん菜作物については、こういう事態になった以上は、やはりわれわれとしては地元の農家に御迷惑をかけない程度に方向を転換せざるを得ないのではないか、このように踏み切っておるわけであります。
  294. 米内山義一郎

    ○米内山分科員 国全体として利益だということは、農業も含んで利益だということとは別な意味でございましょう。いわゆる工業面では、農業を除くその他では大きい利益を得るのかもしれないが、こういうやり方であったら、打撃を受け、利益どころか損害だけを受けるのは一方的に農業じゃないでしょうか。戦後日本工業を今日までに至らせた最初の生産力を支えたものは日本農業だったはずです。そうして今日のように工業が発展した。今度はこの発展した工業の力をおくれた農業に支援するということは、きわめて合理的で公平な考え方だ。しかも、これは急がなければならぬでしょう。あなた方は貿易自由化をどんどん進めている。そういう観点に立って、農林省としては、国際競争に勝ち得るような、自由化体制に立ってもこごえて死なないような日本農業の体質を高めるために、いま具体的にどういう政策をとっているか、将来においてどういう考え方を持っているかを、ひとつついでだから明らかにしていただきたい。
  295. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 私の申し上げたことを若干ことばが足りなくて誤解があったようであります。私が国全体と申しておるのは、日本全体の経済を申しておるのでありますから、当然農業生産も含めてあるわけであります。さりながら、日本の農作物の中には十文字の風の吹く国際競争にさらしてはいけないものもあるからして、これについては御承知のように特段の措置をし、ガットの会議においても、われわれは、守るべき一線、これ以上は譲歩できないという主張はいまやっているわけでございます。私が国全体の利益であるという考えをガットについても貿易の自由化についても持つというのは日本産業全体を含めての意味でありますから、誤解のないようにお願いをいたします。
  296. 米内山義一郎

    ○米内山分科員 そうおっしゃいますが、日本農業の中で国際競争にさらしてならないもの、これは全部じゃなかろうか。国際競争に勝てるというものは、養蚕はどうかしらぬが、大臣に聞きたいが、おもなるものをさして、さらしてもいいものは何々ですか。そうすると、あとはさらされないものになると思うが、さらしていいものというのは、いまあなたがはっきり自信を持って言えるのは何と何ですか。
  297. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 わが国の農産物の中で、数字はもし違えばあとでほかの者から訂正いたしますが、農産物で大体九三%程度のものは自由化されております。非常に大きなものが自由化されておらない。私どもといたしましては、先ほど来申しておりますように、貿易の自由化を行なうことによって、一つの農作物、AならA、ミカンならミカンというものを取り出して、それが競争場裏に立ち向かうときに、はたして競争ができるか、そういう特定のものを考えるといろいろ事情がありますから、そこで、そういう事情については、われわれのほうでは品目別に、これは何%の関税をかける、これは何%かけるということをいまやっておるわけでありますからして、大筋としては、われわれは貿易の自由化というのは国全体の経済にとって不利ではないという判定をいたしておるということを申しておるわけであります。
  298. 米内山義一郎

    ○米内山分科員 何も私の、質問に対しての具体的な答弁がない。これはいつかの機会には聞くことにします。  そこで、国際競争に勝つように農業を保護するということは、単に貿易関係を制限することによる関税とか数量制限だけじゃなくて、国内的に改良の余地があると思う。生産の量と質を高めていけば、かなり競争力がつくと思います。  そこでビートの問題ですが、具体的な問題だからお聞きしますが、一体北東北でビートがだめだという根拠は技術的にどこから出たと思いますか。何かいま断定し得る根拠があると思いますか。特にこれは国の責任なんですが、こう大々的に奨励する前に、国の重大な手落ちがある。この地域は、かつてただの一粒、ただの一株もビートの生産のなかった地帯です。自然にあったものが数量がふえて、北海道送りでは手数と運賃がかかるから工場が誘致されたのじゃない。国の政策に基づいてまず工場をつくって、しかる上にビートの奨励が始まった。しかもやり方がきわめて不徹底です。期待したよりも反収が低いから農家の栽培が伸びないというけれども、もう四年目、五年目になりまして、四トン、五トンという農家がたくさんある。しかも一村の一部落全員が平均で去年五トン半という収量をあげた地域もあります。これは決して花をつくるとか、いいメロンを取るというような複雑な技術じゃないのです。要すれば、基本的なこと、土壌改良です。十分な所要量の炭カルと燐肥を入れる、それだけが第一の問題です。すべての増収はこれが第一のかぎです。あとは若干の違いです。第一、こういうことをやっていない。品種の問題にしても、北海道のあり合わせのもので、これならば東北へ持ってきても病害が少なかろう、ただし含糖率が低いのはやむを得ないというようなことで、既製品を間に合わせに使っておるわけです。したがって、いまは伸びないのも困難するのもあたりまえなんです。やるならば、もっと技術的にも徹底した方法をやればいい。しかも、いまここでやめるわけにいくものじゃないと思う。国だって多額の金を出したでしょう。これに伴って関係県は相当な県費を出しております。しかも、その長い期間、陸稲も奨励せず、ジャガイモのこともやらずに、ほとんどビート一本にしぼってきている。青森県だけでも、このビートのために導入された大型機械というものは百六十セットに及んでいる。砂糖業界が過剰設備で困っているというけれども、農民のこの設備、これは投げるものじゃないかもしれないが、どうしますか。さらに、二十数億という工場をつくっております。この金には国民の税金も入っておるはずです。誘致した地元では、七十町歩という広大な土地を坪百円で提供している。これがものになったら、やがては固定資産税になって返ってくるだろう、あるいは住民の購買力がこの地域の経済を均てんするであろう、こういう期待をかげながら希望を持ち続けてきたのが、今日のあの地域におけるあのビート工場仕事なんです。これがくず金同様になるでしょう。非常に経済力の乏しいところで、いまあの地域では、農業だけでは立ち行かないから、何とかして小さな工場でもというので、古い学校をただみたいに提供して、くつ下工場から電気器具のコイルを巻くというような単純な工場を誘致して、これがこの地域における最大の設備だ。しかも、常時雇用の労働者が二百人、臨時雇用約二百人。いろいろなことを考えると、これは単にビート問題ではなくて、一つの社会問題でもある。しかもこれが、いま大臣がおっしゃった程度の、自由化になってそろばんが合わなくなったからフジ製糖がやめるのだ。やめるのもやむを得ないだろう、したがって栽培をやめるのもやむを得ぬというようなことは理由にならない。見込みはあるのですよ、技術的にもっと進めていくならば。まだまだやれますよ。ビートなんというものは非常にかんがい施設を要するものだが、このビートが成功すれば、それに関連して他の畑作物もよくなることは明らかです。そしてさらに畜産問題と結合させていく以外にあの地域の畑作を振興させる方法はない。ないわけじゃないが、これを生かしながらやっていくのが一番いい方法です。そのためには、もっと技術の水準を高める。そのために、国がこれを奨励するときうたったように、国際競争力に勝てるような段階まで国が援助したらいい。これが当然な義務です。これを忘れたかのごとく手を引くということは無責任です。踏んだりけったりということがありますが、あの地域はこの前農林省にこれ以上ひどい目にあった。これと同等以上の目にあった。日本じゅうどこでも養ったことのないジャージーという牛を入れて、そうして、その時点では、この牛は飼育管理がやさしい、粗食に耐えて脂肪量が多いのだ、したがって乳量が少なくても採算のいい牛だといって大奨励をした。ところが、その後条件が変わったでしょう。バターが自由化してきました。乳業会社が脂肪買いしなくなった。ジャージーの利点というものはなくなる。しかも雑駁な牛までつかませて、いま開拓農家はあのジャージーのために離農する農家もいる。十何万円の借金を返せないで、利子に延滞利子が重なって一頭の牛で四十万円の催促を受けておる。これだって少ない地域ではない。国の奨励するものはことごとく大損害を農民に与えて、またこれに追い打ちをかけるようにビートでやるといったら、農民の気持ちになってごらんなさい。その中間に立っている県知事や市町村長やいろいろな農業関係者のメンツというものはどういたします。あなた方は東京にいるからわからぬだろうが、日常直接農民と触れて、いいものだといって奨励したものがこういう結末になって、しかも農林大臣はそういう答弁であっさりとこれを殺してしまう、生かそうとしないということになったら、これは農業問題であるだけじゃなく、政治不信の問題です。大臣はそこまで考えておられますか。どだい、どんな種目の農業をやったって、あなたもやってみればわかるけれども、五年や七年でものになる農業種目がありますか。たとえばエノキダケをつくろうが何をつくろうが、そんな簡単なものじゃありません。ここで考え直して、技術的にも行政的にもいままでの不足を補えば、運賃の差額を損するなんというそんなけちなことじゃなく、生かす道があるというのに、それを知らぬのですか。知らないというならもっと詳しく教えてあげてもいいですが、専門家がいるでしょう。食糧庁の見解と園芸局の見解と二つ並べて聞いてみたい。どうでしょう、大臣。食糧庁はどういうお考えなんです。園芸局のほうはどうお考えですか。
  299. 八塚陽介

    ○八塚政府委員 ただいま米内山先生がいろいろ御指摘になったわけでございますが、確かに、品種につきましても、従来育成に努力はいたしておりますが、御指摘のように、完全に北東北地域向けというものはまだ完成をいたしておりません。あるいは土壌改良資材等についても、農民の要望があることは事実でございます。ただ、品種につきましてももちろん努力はいたしておりますし、これはもういまさらいろいろ申し上げるまでもなく、国といたしましては実にさまざまな生産奨励の対策を講じてまいっております。資材はとにかくといたしまして、土壌改良の機械等については従来とも補助をいたし、その奨励をはかってまいってきたわけであります。そういうことで、北東北の地域の中では、先ほどもお話がございましたように、相当まとまった、反収の高い、いわゆるビート栽培の定着した地域は確かにあると思います。したがいまして、そういうところを特に指導いたしておる向きにおきましては、かなりな程度にそれに希望を持っておるということも事実だろうと存じます。もしそういうところが相当多ければ、われわれも、少なくとも従来の生産奨励の効果があったということで、非常に喜ばしいと思うのでございますが、ただ、一方、御承知のように、あの地方では相当水田化等も進んでおります。あるいは、水田といわなくても、陸稲等の作付が相当ふえておる。御承知のように、ビートは相当労力を食う作物でございますが、そういう意味では、いまのような農村の労働力事情等からいくとそれの不足を感じ、あるいはその点で問題にしておる地帯もあるわけでございます。そういう意味におきまして、これもいまさら申し上げるまでもないことだと思いますが、作付面積につきましては、やはり三十八年がピークで、残念ながら——まあ残念ながらと申しますか、私ども園芸局の担当者としては残念ながら、やはりその後漸減、最近は激減、まあ激減とまで言ってしまうとあるいはおしかりを受けるかもわかりませんが、減っておる。生産量につきましても、やはり四十年をピークにいたしまして減ってまいっておるわけでございます。先ほど来大臣が再々申し上げましたように、全体として相当程度まとまって工場に売られるということでないと立ち行かない加工原料作物でございますので、その点の見通しがどうか、つまり、地帯的に非常に定着し、反収も上がり、農業経営上りっぱな存在理由を獲得しているところはあるわけでございますが、そういう地帯が広くなって、かつ今後そういう加工原料作物として企業に供給される見込みがあるかどうかということに相なりますと、いまの段階では、ただいま申し上げましたように、作付面積においては減ってきつつあるし、生産量もかなりな程度で減りつつある。そこで、やはりこういう農作物というものの定着はそもそもそう簡単な短い時間で考えるべきではないのではないかということも、私どもやはり農業関係に携わっております以上はその点については身にしみておるわけでございますが、やはり、いまのような面積あるいは収量の減少傾向から考えますと、どうもいわゆる一歩前進二歩後退というふうな、後退し進歩し、後退し進歩しという動きじゃなくて、残念ながらどうも後退する方向へ行っておるのではないか、——全体としてでございます。そういう判断に立たざるを得ないのではないかというのが現在の状態でございます。
  300. 米内山義一郎

    ○米内山分科員 それは、そうはおっしゃるけれども、どんなものだって直線的に上がるものじゃないのです。しかも、初めて手がけたものです。失敗する人もあるだろうし、予想外の成績をあげる人もあるでしょう。そこで、あなた方のものの考え方をぼくは直したいと思うのは、指導したとかなんとか言いますが、あなた方には農民を指導することも大事でしょうが、もっと農民の経験に学ぶ必要がある。現に、あの学問もない、学識も何もない農民が、部落あげて五トン半をあげておるという事実は、決してむずかしいことじゃないのです。こういうことをおろそかにしながら、指導だ計画だということだけで農業を発展させようなんて、もってのほかだと思う。特に大臣は、いままでの御答弁を聞いて、これは農業は全然知らない方だとお見受けしましたが、知らなくてもいいでしょう。とにかく、少なくとも大臣である限りは、農業というものに対する理想だけは持ってもらいたい。  そこで、私は申し上げますが、この意見に賛成か反対か聞きたいんです。一体農業の理想とは何か。きわめて簡単なことじゃないですか。国民にいい食糧を豊富に安く供給することが農業の理想だと思う。任務だと思うのです。これを達成するのは農民の使命だと思うのです。ところが、これはやせこけた日本農民の力ではできない。これをでかすようにするのが政治の責任じゃないでしょうか。ばく然と、安いものだから外国から買えばいいんだというようなことでは、属僚のやることです。日本農民の運命を託するわけにはまいらぬのです。農業の理想というものについての私の見解について御異論がありますか。あったらお聞きしたい。
  301. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 お説のとおりだと思います。
  302. 米内山義一郎

    ○米内山分科員 それじゃ、もう焦点をしぼりますが、そこで、ことしのビートに対する問題ですが、ばく然とことしの生産物に対しては農民に損をかけないという、単なる政治家としてのゼスチュアだかほんとうだかわかりませんが、六万トンとれると私は思っております。これを六戸工場で処理しようとしているのか。北海道へ送るだけの準備調査で、これがもうひっかかってきます。この点についていまはどうお考えになっておりますか。
  303. 大口駿一

    ○大口政府委員 ことし栽培をされるビートの処理につきましては、たびたび大臣から明言をされておりますように、栽培農民に不安を与えないように、不利にならないように処置をするということで、われわれとしては計画を策定すべきものと考えております。ただ、本年の栽培面積が最終的に何ほどに落ちつくか、また、生産量が、ただいま米内山先生が六万トンというふうに仰せられましたが、はたして六万トンになるものやら七万トンになるものやら、あるいは五万トンにとどまるものやら、その数量のフレによってその処理の方法は非常に計算その他から申しましても違ってまいる性格のものでございまするので、現時点におきましては、なるべく早い時期に両県当局を通しまして最終的な生産見込みの正確なる把握につとめる。その把握ができました段階で、最も国民経済的に見ましてもまた農民の側に立ちましても満足のいく結論を出すべきものだと思っておりまするので、現時点で作付面積並びに生産量の正確な見通しがつき得ませんので、いま少し時間的余裕をいただいた上で結論に到達いたしたいと思います。
  304. 米内山義一郎

    ○米内山分科員 ことしの分だけは損をかけないなんというようなことは、まあ農民のために銭さえやったらいいじゃないかということだと思います。しかし、つくったものが粗末になるようなことじゃ問題でしょう。国民経済的に、それから、そのためにむだな税金がかかるようじゃ問題でしょう。仕事というものは、早く、よく、安くやるように考えなければならぬ。いまの時点になっても、しばらく時間をというのは、一体どういうわけですか。フジ製糖の会社では職員にまだ解雇命令は出していませんが、今月中に、配転、希望退職、応じなければ解雇、こういう段階まで迫っております。これは二十六、七日の段階じゃないかと思うんです。それを過ぎて会社が解体してしまってから数万トンのもの一これは、気候が悪くても五万トン、多ければ七万トンとわれわれは考えていますが、あの時期にあの性質のものを青森県の駅なり港から北海道へ送るのですか。砂糖工場というのは海工場じゃないでしょう。北海道の砂糖工場へ送るには、埠頭であろうが駅頭であろうが、そこへおろしてから行く。しかも、北海道の受け入れ会社がかりにあるとすれば、その会社のものと質が違う。含糖量が二%も違う。これをミックスしてやることは、実際問題として不可能に近い。あなた方ここまで考慮した上に何日か時間を貸せというならば、まだがまんもできるが、こういう考慮はありますか。
  305. 大口駿一

    ○大口政府委員 もう少し時間の余裕をと申し上げましたのは、先生は確信を持って天候が悪くても五万トンということを仰せられますが、やはり私どもいろいろな県の事務当局等の意見も聞き、またいろいろな意見を聞きまして、要は非常に正確に数量を把握した上で対策を立てないと取り返しのつかないことになるのではなかろうかと思います。北海道に送りますという方法をとると仮定をいたしました場合に種々起こる技術的な問題等につきましては、ただいま先生の御指摘のような問題が十分に予想されます。また、できるだけ国民経済的に見てむだのないような方法をとるべきだという配慮も、私どもとしては当然しなければなりませんので、ただ金をかけて運べばいいんだというふうに安易に考えておるわけじゃありませんので、非常に判断のむずかしい問題でありますから、要は生産量を正確につかんだ上で、再びあと戻りのできないような判断を下さなければなりませんので、ただむだに時間をかせいでやっておるわけではございませんので、その点は御了解いただきたいと思います。
  306. 米内山義一郎

    ○米内山分科員 正確に数量を把握というと、土の中のビートを掘り起こして頭をとって土を落として目方をかけるのは十二月になります。一体そういう意味ですか。おおよその作付面積とできばえを見た段階で買い付けをする。それでもおそいんです。それから、もう一つは、あと戻りできないような正確な金の見積もりを立てるというけれども、これは多目に見て、かからなかったら残せばいいじゃないですか。あなた方、予算をとって、使わなければ損だというので、あとから出張するからそういうことを言うので、安全なものを多く見積もって、かからなかったらそれだけ国家の得だというふうにやれば、何も心配あるものじゃない。何だかわけがあって、そんな一寸か五分ずつ横へそれたりうしろに戻ったりするような答弁をしておるけれども、全く熱意も誠意もない。まことにこれは遺憾きわまりない。
  307. 大口駿一

    ○大口政府委員 私のことばが若干足りませんでしたので、誤解を生じたことは非常に残念でございますが、もちろん正確な数量というのはとってみて目方をかけなければわからぬというのはお説のとおりでありますが、私が正確なと申しましたのは、いま作付面積すら正確な見通しがついておらないので、せめて作付面積ぐらい正確につかんだ上でというふうに申し上げるべきであったと思います。  それから、再びあと戻りができないようにというふうに申し上げましたのは、予算をよけいとってあとで少なくなったら困るという趣旨のことを申し上げたのではございません。まだ今後の方針の問題でございますから確定的なことは申し上げられませんが、この大根をどういうふうに使うかという方法は、まず北海道に送るか、あるいは現地の工場を使うかということになると思います。その場合に、かりに北海道に送るんだという方針決定したあとで、工場がすでに全部の措置を終わったあとでやはり現地で加工したほうがよかったということになった場合には、もうあと戻りができないということになりますので、あと戻りのできない判断を要するというふうに私は申し上げたつもりでございますので、ことばが足りなかった点はおわびを申し上げます。
  308. 米内山義一郎

    ○米内山分科員 時間がかかりまして、はなはだ恐縮ですが、重要ですからもう少し……。  これは急がなければならないことですが、結論を出すには少し早過ぎるし、農林省としても無責任過ぎると思うのです。ビートを進めるにしてもやめるにしても、もっと現地の事情を知らない限りは、あなた方は国際情勢とか会社の損益からだけものを判断されていますが、数万の農民の生きているこの仕事を、その程度のことで結論を出されるんじゃ、これは迷惑千万です。よって、国としては誠意をもってこの問題を前向きに処理するために、現地を調査して、地元関係者といろいろ意思の交流をするという考えはありませんか。
  309. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 先般青森、岩手、宮城三県の知事がこの問題でおいでになりましたとき、農林省としては農家に迷惑をかけるようなことはしないつもりだ、そこで事情を調査しに役人を派遣しようかと申しましたところが、ちょっと待ってください、いまその時期ではございません、しばらく時期を待っていただいて、関係県のほうからいまごろがちょうどよかろうということを申し出ますから、いま来られても困る。これは言っていいことか悪いことか知りませんが、正直に申しますとそういうことでありますから、事情を率直に申し上げまして、私のほうは、もちろん方針として、農家に迷惑をかけないようにするにはどうしたらいいかということを苦慮しておるわけであります。向こうから連絡がありましたら、もちろん調査をいたしたいと思っております。
  310. 米内山義一郎

    ○米内山分科員 その迷惑をかけない程度の問題ですが、これは渡辺参議院議員に大臣が答えていますから重複を避けますが、価格はこの間告示をされた最低価格に若干の上積み、これは常識です。その他会社がサービス的にやっている農民の実際の実勢価格と申しますか、三十トンとると熱海に招待している、これまでは農民は考えていませんが、少なくともあの還元配給のビートパルプだけは確実にそろばんの中に入っています。ここまでですね。損をかけないようにやろうといっても、これは事実問題なんですから、何もかもおいかぶせて大臣からしぼり取ろうというのじゃないが、この程度までの誠意を示されるお考えですか。
  311. 倉石忠雄

    倉石国務大臣 熱海に招待することの計算まではどうか存じませんが、とにかく、いままでの歴史がありましてビートをつくったわけであります。それについてはよく地元の知事とも相談しまして、実情を調べた上で善処いたしたい、こう思っております。
  312. 米内山義一郎

    ○米内山分科員 これは意見になりますが、ビート問題はビートだけを抜き出して考えるからこういうことになるので、ビートがよくなればその他の作物もよくなり、そしてバレイショもたくさんとれて、そのでん粉で、あの設備で砂糖をつくるということになれば、やがて何年か後には工場も採算ベースに乗るようになると思うのです。もっと総合的にものを考えて、現地調査をしながらあらゆる意見を聞いて結論を出していただきたいと思います。  それから、次に一つありますが、これは先ほど私が申しましたように、農業というのは国民にいい食糧を供給するということなんですが、最近の食物というものは容易ならざるものがある。特に農薬からくる国民保健に対する影響というものは、すでに医学者、衛生学者が心配していろいろな意見を出しております。水銀農薬につきましては、国会の科学特別委員会が意見書を出しまして以来、何とか前向きになっていますが、日本では、わが国の実情としてやむを得ず水銀が優先しなければならないのですが、同時に、塩素剤、さらには燐剤、こういうものもことごとく人体に、いわゆる食べた人のからだに蓄積しているということが言われているのですが、この問題について農林省側から——食品衛生の上からいえば厚生省ですが、何といったって、使わせたり使ったり、農薬を認可したり使い方を指導するのは農林省なんです。何か前向きに研究体制を敷き、そうしてそのために人員なり予算なり機構なりを考えておられるか、その計画、何年計画でどの目標に到達しようと現段階で考えておられるかをお聞きしておきたいと思う。
  313. 野原正勝

    野原主査 ちょっと申し上げますが、持ち時間をだいぶ経過していますから……。
  314. 米内山義一郎

    ○米内山分科員 これ一問で終わります。
  315. 野原正勝

    野原主査 簡単に願います。  簡単に答弁してください。
  316. 森本修

    ○森本政府委員 お尋ねは、農薬の残留問題であろうと思いますが、簡単に申し上げますと、御案内のように、農薬は農林省の登録をして販売をするということになっておるわけです。従来は実は主として農薬につきましては急性毒に関する検査をいたしまして登録をしておったわけですが、御指摘のように、最近残留毒性についてもきわめて国民の保健衛生上から重要な問題であるということになってまいりましたので、今後登録をいたします農薬については、残留毒性についても検査をし、適正なものを登録をしていくというふうな措置をとる方針をとっております。ただ、これは将来登録を申請をする農薬についてでございます。そういった検査体制をとるための所要の器具あるいは人員等についても、四十二年度予算に所要経費を計上して要求をいたしておるわけです。すでに登録をいたしております農薬についても、そのまま放置するわけにはまいらないわけでありますから、一つは厚生省のほうで目下残留許容量というのを御検討になっておられます。そういった許容量が出てまいりますれば、その許容量の範囲内で農薬の散布をしていくというふうな、生産対策といいますか、農薬の処理対策を農林省としても講じていかなければならないということになるわけでございますので、必要な試験研究費を同じく四十二年度予算に所要額を計上いたしまして、そういった許容量に見合うような農薬の散布基準といったようなものをつくるべく検討を開始をしたいというふうに思っておるわけであります。
  317. 野原正勝

    野原主査 簡単に願います。
  318. 米内山義一郎

    ○米内山分科員 では最後にしておきますが、最近の家畜の疫病の問題ですが、多頭化してきましたし、それから、ばい菌豚を売るような不徳義な者も出てきまして、国としては家畜の防疫体制というものを重視しなければならない。その際、現在の家畜衛生の試験場の問題ですが、青森県にも今度ニューカッスル病というのが入りまして、青森県に家畜衛生試験場の東北支場というものがございますが、これに、宮城県にニューカッスル病が出たときに、このばい菌が散らばらないようにビニールの袋に入れて密封して試験場に送ったところが、受け取った試験場では、この設備ではこの袋を開けば近所の鶏に伝染するかもしれないというので、袋を開かずに焼いた。この設備というものは三十数年前にできたそのままですよ。これは国の施設とは考えられない。東京の目の届くところはりっぱになっていますが、ああいう僻遠の地にある国の試験場というものをあまりにも粗末に扱うということは、いまのようにニューカッスル病が出たとき、国の機関は何の役にも立たないという結果を生ずる。このことを一つ申し上げて、何か対策がないかどうかを私はお聞きしたいと思います。
  319. 近藤武夫

    ○近藤政府委員 ニューカッスル病の研究そのものにつきましては、きわめて高度な研究能力を必要といたしますし、それから、この研究が病源ウイルスの伝播の危険性を持っておるということで、隔離施設を設けるということになりますと、非常に多額な施設が必要でございます。それからまた、ニューカッスル病の発生ということは全国的に出ておるわけでございまして、そういう意味で、純粋の研究プロパーの分野につきましては、家畜衛生試験場の本場、支場全体を通じまして、最も研究効率があがるようなしかたでやっていくことが必要である。そういう意味で、家畜衛生試験場の本場に集中するというふうな方針をとっておるわけでございます。ただし、病性鑑定というものにつきましては、本来家畜保健衛生所での業務となっておるわけでございますが、家畜衛生試験場におきましても、家畜保健衛生所の未整備な地域でありますとか、あるいは家畜保健衛生所の能力を越える鑑定につきましては、試験研究業務に負担はありますけれども、積極的に応じておるというのが現状でございます。そういう意味で、病性鑑定につきまして、いまおっしゃいましたようなことで即応できないという点があれば、それについての改善措置を講じていく必要はあろうかと思います。しかしながら、ニューカッスル病そのものの研究、研究そのものという点から申しますと、特に各支場において本場と同時にやっていくという考えは持っていないわけでございます。
  320. 野原正勝

    野原主査 本日はこの程度にとどめ、次会は明二十一日午前十時から開会し、通商産業省所管について質疑を行なうことといたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後六時二十三分散会