○
川崎(秀)
分科員 関連して。実は
機会があったら田中
法務大臣には友人としても申し上げたいと思って今日までおったわけであります。私は与党議員でありますから、いろいろと追及しようという
気持ちではない。けれども、
法務大臣というものがこういう姿であっていいかということについては多大の疑問を持っているわけです。あなたは非常な
法律の勉強家でもあるし、青年時代から苦学力行の士である、法学博士にもなられておるし、非常に敬意を払う面が多々あります。ただ私は、昨年の十二月の十六、七日であったと思うのですが、いよいよこれは
選挙だなというので、われわれも
選挙に対する準備もしなければならぬし勉強もしなければならぬ。日曜日に
国会へ来て議員会館の部屋へ入ろうとすると、
うしろから円タクが来たわけです。そうしてその円タクの中からあらわれ出たのが田中
法務大臣自身である。幾ら払ったか知らぬけれども、自分のうちから日曜日に円タクの代金を自分で払って、とにかく午後六時以後は公用の車は使わぬということを厳守されておる。あれほど黒い霧、粛党
運動というものが盛んになっておったころですから、その後に
内閣の
法務大臣になられる人はりっぱな人に相違ない。田中さんがなったのを非常に喜んでおった。その一週間ほど前に京都へ行くのに側近も連れずに出かけて、そうして駅弁を買ったというような記事も拝見しておって、今度の
内閣は非常に形を変えて、えりを正す
内閣だなという印象を受けて今日に至った。しかるに、先般来茶会通知の問題、これは私は党内でもっと厳粛に話し合いをしてみなきやならぬ問題だと思っております。と同時に、私はあれが
選挙違反であるとか、あるいは
違反の容疑があるとかいうことはこの席上追及しませんが、あれはこの次の
選挙のときに悪用されるですな。茶会を
中止をしたという通知を何万枚も出したものが何にもならぬということになれば、
選挙の直前において各候補はいろいろなことをやるだろうと思うですな。自分のうちのめいに赤ん坊が生まれたという通知を何十万枚と出す。いろいろな形になってきて、これは驚くべきことが起こるのではないかと私は先を非常に憂えておるわけです。それから、いまの
連呼行為の問題もいろいろ問題点でしょう。しかし、私があなたに
質問したいのは、むしろそういうものを追及するよりも、
法務大臣とはいかなるものであるか。これは私は佐藤総理
大臣に一ぺん進言したいと思うけれども、
法務大臣や自治省の
大臣は
選挙期間中は使っちゃならぬ。政党員よりもはるかに重い使命をあなた方は行政官として持っておる。政党よりもさらに重いものをあなた方は持って監督をしておる、国家の中正なる
選挙取り締まりの機関として非常に重要な役目ではないか。だから、いまの問題でも、自分が
注意したと言われるけれども、それはもう自分がほんとうに悪い行為だと思ったら下車しなければならぬ。いろいろな防御の行為というものはできたはずだと私は思うので、この際あなたに直言をしておきたいけれども
——いいほうの例を言いましょう、悪いことを追及するよりは。私は尾崎行雄先年の崇拝者である。あなたもおそらくそうでしょう。尾崎行雄という人が東京市政をあずかっておる間に一件の汚職もなかった。また彼が司法
大臣をしておるときに、自分の同僚の大浦兼武という内務
大臣に
選挙違反が出た。大
選挙違反。これは、指揮権を発動した者もあるけれども、普通ならかばうのをかばわぬ。
内閣が倒れるよりも道を正しくすることのほうがいいと言って、同僚の大浦兼武議員を司法
大臣が検察庁に起訴せしめることを首相に進言した。それで
内閣は倒れたのです。そういうものが
法務大臣でなければならぬ。至公至平の
立場に立って厳正に国の政治を守っていく、大道を守るというのが
法務大臣でなければならぬと私は思うので、そういう意味で尾崎行雄
先生のつめのあかぐらいはぜひかんでほしいと私は思うのです。そういう意味での、私はあなたの感想を聞きたい。つまり、
法務大臣というものは独行影に恥じず、ひとり行くわが影にも恥じない。わが影どころでない、これはほうぼうに恥じなければならぬ事件が起こってきておる。そういう点で、私は与党の議員としての限界を守りつつあなたに御
忠告を申し上げ、
法務大臣とはいかなるものであるか、あなたの信念を聞いておきます。