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1967-03-28 第55回国会 衆議院 予算委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十二年三月二十八日(火曜日)     午前十時二十一分開議  出席委員    委員長 植木 庚子郎君    理事 赤澤 正道君 理事 小川 半次君    理事 田中 龍夫君 理事 八木 徹雄君    理事 加藤 清二君 理事 中澤 茂一君    理事 小平  忠君 理事 伏木 和雄君       相川 勝六君    愛知 揆一君       有田 喜一君    井出一太郎君       岡本  茂君    仮谷 忠男君       川崎 秀二君    北澤 直吉君       周東 英雄君    鈴木 善幸君       灘尾 弘吉君    野田 卯一君       野原 正勝君    福田  一君       藤波 孝生君    船田  中君       古井 喜實君    保利  茂君       松浦周太郎君    松野 頼三君       猪俣 浩三君    石橋 政嗣君       大原  亨君    角屋堅次郎君       北山 愛郎君    阪上安太郎君       高田 富之君    芳賀  貢君       畑   和君    八木  昇君       山中 吾郎君    曽祢  益君       永末 英一君    沖本 泰幸君       広沢 直樹君    正木 良明君       谷口善太郎君  出席国務大臣         内閣総理大臣  佐藤 榮作君         法 務 大 臣 田中伊三次君         外 務 大 臣 三木 武夫君         大 蔵 大 臣 水田三喜男君         文 部 大 臣 剱木 亨弘君         厚 生 大 臣 坊  秀男君         農 林 大 臣 倉石 忠雄君         通商産業大臣  菅野和太郎君         運 輸 大 臣 大橋 武夫君         郵 政 大 臣 小林 武治君         労 働 大 臣 早川  崇君         建 設 大 臣 西村 英一君         自 治 大 臣 藤枝 泉介君         国 務 大 臣 塚原 俊郎君         国 務 大 臣 二階堂 進君         国 務 大 臣 福永 健司君         国 務 大 臣 増田甲子七君         国 務 大 臣 松平 勇雄君         国 務 大 臣 宮澤 喜一君  出席政府委員         内閣法制局長官 高辻 正巳君         内閣法制次長  吉國 一郎君         公正取引委員会         委員長     北島 武雄君         警察庁警備局長 川島 広守君         防衛庁防衛局長 島田  豊君         防衛庁人事局長 宍戸 基男君         防衛庁装備局長 國井  眞君         経済企画庁総合         計画局長    鹿野 義夫君         科学技術庁研究         調整局長    高橋 正春君         法務省刑事局長 川井 英良君         法務省入国管理         局長      中川  進君         公安調査庁長官 吉河 光貞君         外務政務次官  田中 榮一君         外務省北米局長 東郷 文彦君         外務省経済協力         局長      廣田しげる君         外務省条約局長 藤崎 萬里君         大蔵省主計局長 村上孝太郎君         大蔵省主税局長 塩崎  潤君         文部省初等中等         教育局長    齋藤  正君         文部省大学学術         局長      天城  勲君         文部省社会教育         局長      木田  宏君         文部省体育局長 赤石 清悦君         文部省文化局長 蒲生 芳郎君         文部省管理局長 宮地  茂君         厚生省公衆衛生         局長      中原龍之助君         厚生省環境衛生         局長      舘林 宣夫君         厚生省医務局長 若松 栄一君         厚生省児童家庭         局長      渥美 節夫君         農林大臣官房長 桧垣徳太郎君         農林省農林経済         局長      大和田啓気君         農林省農政局長 森本  修君         農林省農地局長 和田 正明君         農林省畜産局長 岡田 覚夫君         食糧庁長官   大口 駿一君         水産庁長官   久宗  高君         労働省職業安定         局長      有馬 元治君         労働省職業訓練         局長      和田 勝美君         建設省住宅局長 三橋 信一君         自治省行政局長 長野 士郎君         自治省財政局長 細郷 道一君  委員外出席者         専  門  員 大沢  実君     ————————————— 三月二十八日  委員江崎真澄君、山崎巖君、永末英一君、小濱  新次君及び正木良明君辞任につき、その補欠と  して仮谷忠男君、岡本茂君、西村榮一君、広沢  直樹君及び沖本泰幸君が議長の指名で委員に選  任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和四十二年度一般会計予算  昭和四十二年度特別会計予算  昭和四十二年度政府関係機関予算  昭和四十二年度一般会計暫定予算  昭和四十二年度特別会計暫定予算  昭和四十二年度政府関係機関暫定予算      ————◇—————
  2. 植木庚子郎

    植木委員長 これより会議を開きます。
  3. 中澤茂一

    中澤委員 議事進行。今朝は、本会議が二時からあるもので、われわれ社会党も御協力申し上げよう、できるならば、午前詰めて二人の質問者を終わろうというので、実は了承を与えておるのにもかかわらず、担当大臣の、しかも質問相手である担当大臣出席をしないという、こういう事態においては、われわれは審議に御協力はできません。いま少し質問のある担当大臣は時間正確に御出席を願います。
  4. 植木庚子郎

    植木委員長 この際、政府に申し上げます。  開会時間を厳守いたしたいと思いますから、定刻までに必ず出席されるよう御注意申し上げます。  昭和四十二年度一般会計予算昭和四十二年度特別会計予算昭和四十二年度政府関係機関予算並びに昭和四十二年度一般会計暫定予算昭和四十二年度特別会計暫定予算昭和四十二年度政府関係機関暫定予算、右の各案を一括して議題とし、質疑を続行いたします。猪俣浩三君。
  5. 猪俣浩三

    猪俣委員 第三次防衛計画が発表せられまして、驚くべき予算が計上せられておるのでありますが、それに伴いまして、自衛隊のあり方と日本国憲法九条との関係につきまして、はなはだ明瞭を欠いた答弁が繰り返されておるようであります。そこで、私は、第三次防衛計画に関連いたしまして、日本国憲法趣旨を明らかにするべく、主として総理大臣所信をお尋ねしたいと存じます。  日本国憲法第九条は、世界にまれなる戦争放棄、平和をこいねがうところの国民意思表明として、内外ともに高く評価せられておるのでありますが、この日本国憲法第九条に対しまして、佐藤総理はいかなる評価をなされておるのであるか、その点について、まずお伺いしたいと存じます。
  6. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 これは平和主義に徹した規定だ、かように考えております。
  7. 猪俣浩三

    猪俣委員 私も真摯にお尋ねしますから、いわゆる大臣答弁といわれるようなおざなりの答弁をなさらぬように。これはわが国の前途に対して重大な問題なんです。ことに総理大臣として、憲法規定に対してどれだけの評価をしておるかということは、これは重大であります。いまのあなたの答弁を聞いてはなはだ私は不満なんです。  私の質問する要点は、日本国憲法第九条は、世界にまれなるところの平和憲法であると、世界人たちも、日本人たちも、そういうふうに評価しておる。日本国憲法は、平和主義憲法であるということを高くわれわれは誇りとしておるし、また、外国の識者も高く評価しておる。その意味において、外国にないような珍しい平和熱願規定であるかどうかについてのあなたの評価を聞いているのであります。
  8. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私も猪俣君と同じ考え方を持っております。したがって、わが国民、これも理解し、ただいま平和憲法国民の血となり肉となっている、こういうことを申しておりますが、平和に徹している規定だ、かように思っております。
  9. 猪俣浩三

    猪俣委員 そこで、憲法九条が、世界にまれなる平和に徹した条項であるという御認識であるとすると、私はここにお尋ねしなければならぬのは、いままでの政府答弁によれば、自衛権発動としての戦力戦争は認めるが、いわゆる攻撃的、侵略的戦争は認めない、こういう規定であるというふうな解釈に承っておりますが、そのとおりか。
  10. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 そのとおりでございます。詳しいことは法制局長官から説明させても差しつかえございません。
  11. 猪俣浩三

    猪俣委員 私は、法制局長官からの答弁はなるべく差し控えていただきたい。いまここで憲法論争をいわゆる専門的にやろうというのじゃない。総理大臣の心がまえを聞いている。だから、あなたがその所信を述べていただきたい。  いまあなたが申されたように、世界にまれなる条項であるということになる、そうして、しかも自衛権発動としての戦力戦争は是認し、侵略戦争はこれを否定する条項であるとしますと、これは矛盾しておる。なぜならば、自衛権戦争だけを認め、侵略戦争を否認している規定世界にたくさんある。たとえば、西洋においてはフランス、イタリア、東独、西独、いずれも侵略戦争を否定し、自衛戦争を認めるという規定憲法規定になっておる。のみならず、スペインもそうです。また、アジアにおいてはフィリピン、ビルマ、タイ、あるいは南米においてはブラジル、ことにわれわれのすぐ近くの韓国現行憲法も、侵略戦争を明確に否定し、自衛戦争だけを認めているのだ。こういう規定現行憲法としても世界にたくさんある。何も珍しいことじゃない。しかるにかかわらず、日本憲法が実に世界に珍しい憲法であるといって内外に称賛せられておる。あなたもそれを認めておる。しかるに自衛戦争を認めているということになると、矛盾しているのです。世界にたくさんあるのです。また、歴史的に見ましても、これはたくさんある。一九二七年の不戦条約だって、そういう趣旨にできておる。日本もそれに加盟している。そういうことになると、明治憲法すらこれは自衛戦争だけを認めているということになるわけです。  試みに韓国憲法、これを私は読み上げますから、日本国憲法九条とどこが違うか、あなたが指摘していただきたい。これは総理としてのあなたのしろうと解釈でよろしい、しろうとが多いのだから。読み上げますから、これをよく聞いていてください。「大韓民国は、一切の侵略戦争を否認する。国軍国土防衛の神聖な任務遂行のためのみこれを使用する。」こういう規定があるのだ。これは韓国現行憲法だ。一切の侵略戦争を否認している。「国軍国土防衛の神聖な任務遂行のためのみこれを使用する。」これは韓国憲法です。これと日本国憲法、あなたの解釈する憲法とどこが違ってくるのですか。これはほかの、先ほど私が読みましたる各国憲法も、大体こういう規定になっておる。侵略戦争を否定している。国土防衛の神聖な任務だけに使用するというふうにきめているのです。これと日本国憲法とどこが違うことになるか。その違いを明らかにしてください。
  12. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 猪俣教授に私が試験を受けておるようですが、御承知のように、日本の場合、第九条は「国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。」武力の行使は放棄する。かような規定でございます。だから、いわゆる戦争を私どもはもう頭から否定している。これがいわゆる侵略戦争とか自衛戦争だとかいうような名目のものではないこと、これを御承知おき願いたい。
  13. 猪俣浩三

    猪俣委員 あなた、私の質問にまつ正面に答弁していないんだ。大韓民国は、一切の侵略戦争を否認している、国土防衛だけでやっているんだ。あなた方も自衛権発動としての国土防御は認めるが、侵略戦争はやらぬというふうな規定だ、こう言っている。韓国憲法と何にも違ってないじゃないか。また、先ほど言いました各国憲法とあまり違っていない。しかるに、なぜ日本憲法第九条が世界にまれなる規定であるとせられておるかということについて、私は区別はつかない。その韓国は、いまベトナムに数万人の韓国兵を出しているじゃありませんか。これと同じような精神だとするならば、日本自衛隊もまたベトナムにやらぬとも限らぬ。だから、憲法九条の解釈は厳格にしなければならぬ。  そこで、引き続いてお尋ねすることは、しからば、自衛権戦力自衛権に基づく戦争は、これは認めるという自衛権とは何ぞや。自衛権本質は何であるか。それをひとつ説明してください。
  14. 高辻正巳

    高辻政府委員 お答え申し上げます。非常に専門的なことでございますので、まず私から答弁させていただきたいと思います。  ただいまのお尋ねは、自衛権本質は何であるかということでございます。自衛権は、これはわざわざこまかくお話しするのもどうかと思いますが、国家または国民に対する急迫不正の侵害があった、そういう場合に、その国家実力をもってこれを防衛する権利として、御承知のように、国際法国家に認められた権利でございます。日本国憲法がそういう意味自衛権を持っておるということは、砂川判決等で示されたことからも、御存じのとおりであろうと思います。
  15. 猪俣浩三

    猪俣委員 私、さっき断わったんだ、法制局長官答弁は要らぬと。それをのこのこ出て来る。それじゃ、あなたが出て来るならあなたに尋ねます。  国際法上、自衛権なるものは、国内の刑法正当防衛権とほとんど同じ解釈と、全部学者は言っておる。すなわち、急迫不正な侵害に対して、やむことを得ず出でたる反撃行為だ、こういうことになっている。これに対して裁判所は、三つこの正当防衛権限界について判決を出している。どういう判決か。甲の暴力団と乙の暴力団が対峙しておった。甲の暴力団が乙の暴力団なぐり込みをかけて来るということを乙の暴力団が察知して、南の口から入ったらどういう防衛をする、北の口から入ったらどういう防衛をするということで、武器その他を用意して始終団員を訓練しておった。そこへはからずも予定どおり甲暴力団がやって来た。そこで大乱闘になって、相当の死傷者が出た。これは全部検挙された。そうすると、乙の暴力団のほうは、これは正当防衛だ、向こうのほうからなぐり込みをかけて来たからわれわれはそれを防いだんじゃないか、何もわれわれは殺人傷害罪に問われる理由はないんだ、こういう主張をした。裁判所は、それに対してこういう判決をしておる。甲の暴力団侵害を予期して作戦計画を立て、それに対する訓練をやっておるところへなぐり込みをかけて来て乱闘になった。それは急迫とはいえない、やむを得ざる行為とはいえない、逃げればいいじゃないか、あるいはいろいろの手段があったじゃないか。しかるに、逃げもせずして、武器用意し、来たらやっつけてやろうと待ちかまえておったことは、正当防衛にならぬという判決がある。これは三つも出ておる。あなた、これに対してどう思うんだ。
  16. 高辻正巳

    高辻政府委員 お答え申し上げます。  そういうただいまのような議論は、実は憲法九条をめぐる議論として終始反復して出ております。その際も申し上げたことでございますが、政府当局説明でも、自衛権本質というものは、先ほど申し上げたように、また猪俣委員がおっしゃいますように、三つの厳重なる要件があるということも申し上げております。  そこで、この侵害に対する用意ですが、一体どこまで用意といいますか、いまおっしゃるようなことができるのかということは、確かに一つの問題でございます。したがって、いままでも政府当局からしばしば申し上げておりますように、非常に大きな侵害に対して大なる兵力を用意し、いつでも、来たらばこれに対してかまえるという意味戦力というものは、これは持てない。しかし、どこにその限界があるかというのが、また同時に問題になりますが、ただいま申しておりますような、よく世界——現在未開といってもいいような国際社会の現状から見ますと、法律的な意味においてでございますが、そういう場合に、しばしば通常兵器による局地戦というものはよく見られる状況にございまして、そういう状況下における場合に備えるために、一定の実力を備えておくというようなことは、少なくとも自衛力限界を越えるというふうには考えられないだろう。しかし、同時にまた、原爆等による攻撃を予期して、それに備えるための原爆を、こちらがいざとなれば十分な用意ができるようにというふうな用意をしておくこと、そういうことは、憲法上問題があるということはかつても申し上げたと思います。
  17. 猪俣浩三

    猪俣委員 厚爆に対しては原爆用意することならばいかぬというような、そんなとほうもない答弁、そんなことを聞いているんじゃない。とにかく国際公法上の自衛権本質というものは、やはり刑法正当防衛権とほとんど同じ説明公法学者がやっておる。それから見ますると、警察予備隊ができた時分保安隊ができた時分自衛隊ができた時分——われわれが警察予備隊ができたときに、これは憲法違反だという訴訟を起こしているんだ。そのとき、これは戦力じゃないか、軍隊じゃないかという質問をやっても、ここにいらっしゃる大橋という人は、法務総裁時分だが、いや、絶対これは警察だ。しかし、後にこれは必ず——これは軍隊オタマジャクシじゃないか、いや、そんなことは絶対ない、これは絶対カエルのオタマジャクシではないんだ。そういう答弁で貫き通してきたんだ。それが今度は保安隊となり、自衛隊となると、その途中でいろいろこっけいな答弁をやっておる。吉田総理戦力なき軍隊だなんて言っておる。世界のもの笑いになった。それは無理に憲法と合致せしめようとするからだ。それじゃ通らなくなって、今度は、自衛のためなら戦力でも戦争でもできるんだなんというようなことを言い出してきた。ところが、自衛権発動戦争戦力というものはどういうものであるか。そんなものはあなた方が何べん言うたかわからぬ。それは第一次大戦の後に国際連盟ができたときに、攻撃的、侵略的な武器と防御的な武器との定義をしようとして、全世界の知能が集まってずいぶん討議したけれども結論がつかぬで終わった問題なんです。それをあなたが簡単に割り切るなんて、無理だろうよ。そんなことは、あなた、国際連盟でさんざん討議しても結論がつかぬです。その後の経過を見れば、第二次世界大戦において世界じゅうの国が参加しても、どこの国でも私は侵略のためにやったなんて言っている国は一つもないんだ。  そこで聞くんですが、日中戦争、あれは一体侵略戦争であるか、自衛戦争ですか。これは総理大臣に聞くんだ、あなたじゃない。
  18. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 大東亜戦争といいますか、対英、対米の宣戦の詔勅に自衛自存のためということが書いてあります。しかし私は、いま言っている自衛と、憲法第九条のいっている自衛権、これはたいへん限定されておる、かように思っております。したがいまして、過去の戦争がどうあろうと、この新しい憲法下においての考え方とは同一にはできません。したがって、過去が自衛戦争だから、今後もこの種の自衛戦争ができるんだ、かような結論でないことは、これはもう岸総理もさような答弁をいたしております。政府は別に考えが変わってはおりません。
  19. 猪俣浩三

    猪俣委員 あなた方は、自衛戦争であるかどうかというようなことは、国会と政府できめることであるような答弁をなさっているのであるが、非常に危険なことは、時の政府自衛戦争だと言えば自衛戦争になるようなことになる。これは日中戦争におきましても、政府は、相手国不戦条約精神に反する、世界平和を脅威する挑発的行動に出たので、やむなくとられた自衛措置である、こう言っている。太平洋戦争もそうだ。これはどうせ同じ答弁をするから私が言いますが、太平洋戦争のときは政府はどう行ったか。「東亞安定ニ關スル帝國積年努力ハ悉ク水泡ニ歸シ帝國存立亦正ニ危殆ニ瀕セリ事既ニ此ニ至ル帝國ハヤ自存自衞ノ爲蹶然起ツテ一切ノ障礙ヲ破碎スルノ外ナキナリ自存自衛のためなんだ。このままにしておったら滅びてしまう、死ぬか生きるかの場合に立ち至った、こういうんだ。じゃ、あなた方の言う自衛戦争じゃないですか。それとは違うんだ、どこが違うんだ。あなたの説明とどこが違うんだ。ちっとも違わない。これは「東亞安定ニ關スル帝國積年努力ハ悉ク水泡ニ歸シ帝國存立亦正ニ危殆ニ瀕セリ日本存立危殆に瀕したというんだ。「事既ニ此ニ至ル帝國ハヤ自存自衞ノ爲蹶然起ツテ一切ノ障礙ヲ破碎スルノ外ナキナリ」こういうんだ。自存自衛のためなり。それとあなたのいま言う解釈とどこが違うんだ。同じことじゃないですか。いまあなた方戦争を始めたら、こういう声明を出すだろうと思うんだ。どこが違うんだ。
  20. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 猪俣君はその道の大家ですからよくおわかりになっておると思います。わざわざお聞きになるのも、先ほど来申すように、試験を受けているような気がいたします。先ほど法制局長官が申しましたように、急迫不正の侵害、これがまず一つ要件だと思います。そういう場合に、自衛権そのものは否定はなさらないだろう。自分らの力によってそれに対応するという、そういう事態を排除するその自衛権、本来の自衛権利国家にあるということは、これは否定なさらないだろうと思う。さらに、そういうものが無制限にやられるものでないこと、これは憲法のいま規定し、私どもが約束しておるものです。したがいまして、過去の戦争がいろいろ言われておりますけれども、私、いまそれを批評しようとするわけじゃありません。これとは今回の憲法規定は違う。これだけははっきりしているように思います。
  21. 猪俣浩三

    猪俣委員 私どもがこの質問をするゆえんのものは、憲法制定当時におきまする政府答弁が、私は憲法九条のすなおなる解釈だと思うのです。自衛権はあるけれども戦争はしない。そこで、じゃ、どうして守るのだといったら、やはり警察力かあるいは群民蜂起の形で守る、これが自衛権発動だ、こういう答弁になっている。それが、アメリカの国策が変わるとともに政府答弁が変わってきてしまう。もう大東亜戦争日支事変時分と同じような解釈になってしまった。非常に危験だ。あなたは違うとおっしゃるが、何べん違うと言っても、わからない。自衛自存のための戦争だということは、日清戦争でも、日露戦争でも、あるいは日支戦争でも、大東亜戦争でも、みな言っている。ことに近年は「大東亜戦争肯定論」なんという議論一流雑誌に数カ月にわたって連載されておる。そういう時代だ。非常に反動的な時代になってきている。あなた、この「大東亜戦争肯定論」というのをお読みになりましたか。それを聞かせていただきたい。読んだらどういう御感想をお持ちですか。
  22. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 読んでおりません。   〔委員長退席赤澤委員長代理着席
  23. 猪俣浩三

    猪俣委員 それじゃ話にならぬ。こういうものはやはりお読みなさらぬといかぬと思うのだ。あなたは、お読みなさると同感するところが多々あるんじゃないかと思うんだ。  それからなお、あなたがこんな法制局長官のような政府御用法律学者の意見だけでやっていなさると非常に違う。その意味で、私がひとつここに申し上げますが、憲法九条と自衛隊関係といたしまして「法律時報」という、これは相当権威ある雑誌でありますが、ここで日本の有名な公法学者の二百八十六名に対してアンケートをとった。詳しい数字は時間の都合上省きますが、この回答者の八〇%は、現在の自衛隊憲法九条に違反しているという答えなんだ。なおまた、もう一回は、北海道大学の今村、深瀬という教授が、これはいま行なわれております札幌地裁の恵庭事件の裁判官の参考にするためだと断わって、これまた公法学者三百七十三名に対して、自衛隊憲法違反であるかどうか回答を求めた。これまた驚くべき高率でありまして、ほとんど八〇%になんなんとする違憲論が回答されておる。なお興味あることは、昭和三十五年の司法修学生、これは第十二期生ですが、これは国家試験に合格した人がもう二年修御する、大学院みたいなものですが、将来これが判事になり、検事になり、弁護士になっていく大事な中堅的少壮法律家がそろっているところです。これは法制局長官もよく御存じだろうと思う。そしてこの司法修習制度ができましてからの若手の法曹というものは実に優秀です。これはもう驚くべきだ。私も弁護士試験に及第したんだが、私の時分といまの若い弁護士とは全く質が違うくらい優秀です。私は二年の教育の効果は非常にあると思うんだ。大蔵省はこれにけちをつけているようですが、そうじゃない、実に優秀です。十二期生と申しますると三十五年だ。それと、十四期生というのは三十七年、この卒業まぎわに、それぞれ、おまえは裁判官になるか、検事になるか、弁護士になるかという志望を出させた。その志望別に向かって、判事希望の人に対し、検事希望の人に対し、あるいは弁護士希望の人に対して、それぞれ憲法九条と自衛隊の合憲、違憲論をアンケートしたところが、実に驚くべき結果が出ているのであります。時間がありませんから数字を大略いたしますが、昭和三十七年の十四期生のごときは、裁判官になろうとする志願者のうち、百人とすると九十人が、自衛隊憲法違反だという回答をしているんだ。この人たちは裁判官になるんですよ。それから検事になるという人も八八%だ。弁護士になるという者は八七%。私は弁護士になろうとする人の回答はそれほど驚きませんが、将来裁判官になる、もうすでに数カ月で裁判官になる、検事になるという人が、自衛隊は違憲なりという回答をした者がこれだけの率になっている。この司法修習生が、いま在朝在野法曹のほとんど半分を占めているでしょう。日本の将来においては彼らが法蔵界を牛耳ることは明らかであります。これらの人たちが、自衛隊憲法九条違反だという観念を持っているのだ。一体あなたは、これに対してどういう感想がありますか。これでいいのか。あなたのような解釈でいいのかどうか。自民党のような解釈でいいのかどうか。民主国家は法の支配だ。法の支配というのは裁判を重んじ、法曹を重んずるのであります。だから、イギリスでもアメリカでも、法律家というものは実に尊重されておる。日本はあまり尊重されておりませんがね。それは、あれらは非常に徹底した民主国家であるためです。この在朝在野の法曹のほとんど中堅どころがみなこういう考えを持っておる。しかるに政府や自民党は、まるでそれと反対に、憲法違反ではない、戦争はできる。永末君の質問や石橋君の質問を聞いておると、どこまで一体この自衛権は伸びるのかわけがわからぬ。縮めるのではなくて伸びることばかり。これは第四次防衛計画ができたらまた伸びてしまうのだ。おしまいには、自衛権だ、侵略だという区別が何にもないようになる。自衛権のあなた方の理解からいけば、そうなるのが当然だから、私どもはいま質問しておる。こういう若い法曹及び刑法や行政法を専門にしておる公法学者の意見、こういうものに対して、あなたはどういう考えを持っておりますか。
  24. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は、いまの実情をよく知りません。知りませんが、猪俣君の言われるとおり、若い連中がもしこういう考え方を持っておればどうか、こういうお尋ねとして、その実態を知りませんから、お答えをいたしますが、私は、法の解釈というものは、やはり日本では法治国家のもとに一つの権威のある判定の方法がございます。その方法によってきまるのでございまして、ただいまこういう説が、一部で調べると非常にパーセンテージが高い、だからこの説に従え、こういうわけにはいかない。やはり法治国家では、こういう問題をきめるそれぞれの機関がございます。それによって意見をきめるべきだ、かように思います。
  25. 猪俣浩三

    猪俣委員 こんなことをあなたと論争したって時間をとるばかりだ。根本的に立場が違っておる。あなた方は非常に危険な解釈をとっておる。韓国憲法と同じような解釈をとっておる。だから、ベトナムにでも何でも派遣するような議論が出てくるのではないかと思う。  これで打ち切りますが、明日は例の札幌地方裁判所刑事第二部で、いわゆる自衛隊法違反として起訴されました恵庭裁判というものの判決があるのであります。これは自衛隊の通信線を切断したということで、自衛隊法第百二十一条、自衛隊の使用するものを損壊したということで、五年以下、五万円以下の懲役、罰金に処せられる制裁規定がついておる。ところが、裁判所の審理ぶりを見ますと、切断したかどうか、切断するについていかなる事情があったかどうか、そういうことは一切触れないのであります。そうして検事が論告求刑しようとしたら、つまり五年以下の懲役、五万円以下の罰金ですから、何年の懲役、何万円の罰金というふうに求刑するのが普通の論告でありますが、私はかつて経験したことはないが、裁判長は求刑の論告を禁止してしまった。そうして、検事ももっぱら憲法論争をやる、弁護人は全力を尽くして憲法論争をやりました。裁判所は、憲法に対する見解を明らかにするということの裁判長の宣言をやっておる。そうして、何年に処するという求刑を論告することを禁止したということになりますので、しかも切断したかどうかということに対しての事情は一切調べない。そこで、これは憲法の判断を下す判決であることは明らかであるのみならず、自衛隊憲法違反でないとするならば、論告求刑を禁止する必要はないわけです。そこから見まして、九分九厘、自衛隊憲法違反であるという判決が出ることは明らかであります。三権分立の趣旨からいたしましても、一審なりといえどもこういう判決が出た以上は、法の支配の国、裁判を重んずる民主政治の国家においては、裁判所判決に対して相当の敬意を表すべきものだと私は考える。そういう際に第三次防衛計画なんというものを推し進めようとするならば、裁判所判決なんて紙くずみたいになってしまう。こういう裁判所判決、これが行政権に一体どういう影響を及ぼすかということは、法律上非常に議論があります。その議論をあなたに聞こうとしません。これは議論がある。判決の効力は行政権にどれだけ影響を及ぼすか、私も相当研究していますが、そういうことをいまここで論争いたしません。しかし、こういう判決が出たときに、政府としては一体どういうふうに対処せられるか、あなたの所見を承りたい。
  26. 赤澤正道

    赤澤委員長代理 内閣法制局長官が特に発言を求めておりますので、これを許します。高辻君。
  27. 高辻正巳

    高辻政府委員 先ほど来から、この憲法九条の解釈に関しまして、自衛力といいますか、それは無制限であって、伸びるばかりであって縮まることがないという仰せがございました。また同時に、韓国憲法についての御引用もございました。また同時に、憲法九条に対しては、非常に若い方々に、政府解釈でない解釈をとるべきであるという説が多いように伺っておりますので、大体、政府解釈というものが、何か一見自衛のための名目であれば戦争もかまわないというようなふうにとられているのではないかという懸念がございますし、大事な点でありますので、一言させていただきます。  おっしゃいますように、この自衛権というものは非常に厳格なる限界がある。これは本源として厳格に守らなければならぬ点でございます。したがって、そういう点において必要な限度というものを、政府憲法解釈では非常に憶病なほどやかましく言っておるわけでございます。先ほど韓国憲法で、国軍国土防衛の神聖な任務を遂行するためにのみ使用される、という御引用がございましたが、日本憲法が違いますのは、戦力についてのきわめて神経質な規定があることが一つ違います。それについては、そういう規定があることでございますので、自衛に必要な限度以上にわたって持つことが許されない。韓国憲法では必ずしもそうではないと思います。  もう一つは、そういう自衛権本質からいっても当然でございますが、しばしば国会でも問題になっておりますように、海外派兵というものは、通常の場合、憲法上許されておらないということを申しておりますのも、韓国憲法日本国憲法の非常に大きな相違点でございます。念のためにそれだけ申し上げておきます。
  28. 猪俣浩三

    猪俣委員 私は法制局長官答弁を要求しているのじゃないんだ。私は総理大臣の所見を聞いているのです。法律論争をするつもりはないことは初めから言っているのです。ただ、総理大臣が、この憲法九条をどういうふうに考えていらっしゃるか。というのは、世間では、佐藤さんは非常に反動的な人だという評判がもっぱらなんですよ。岸さんと一緒に、この兄弟はどうも反動的だ。私が見ておりますとそうでもない。答弁なんか非常に親切丁寧にやっておられる。だけれども、ときどききらっと目を光らせるところに、少しあぶないなという感じもする。そこで、あなたの所見を聞いているのですよ。ここで法制局長官、あなた、総理大臣になったような気で答弁するのはちょっと早過ぎるわね。私は、世間に妙な目で見られている佐藤さんから、憲法九条に対する確信のほどを聞きたいと思って質問しているのに、あなたが長々と答弁するものだから、だんだん私の時間が減ってきてしまう。  そこで、きのうの沖繩船舶に対するあなたの答弁——あなたの気持ちはわかりますよ。気持ちはわかりますけれども、いやしくもこの憲法に非常に制約があることをいま法制局長官は強調しておる。そうなりますと、あなたのきのうの、沖繩の船舶が外国から攻撃された場合には、海上自衛隊によって救うようなことを言っておるが、これは海上自衛隊総理大臣として出動を命令するという意味ですか。
  29. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いま昔われますように、私の気持ちはわかると言われる、それなんです。これは憲法上の権利はございませんし、また、沖繩に出かける、そういうような筋のものでないことは、もうお説のとおりであります。
  30. 猪俣浩三

    猪俣委員 そこで、これが問題があるんだ。そのときの総理大臣の気持ちでね、感情でだ、何ら基準がなしにやられちゃたまらぬのだ。みんなそうなんだ。ヒトラーだってそうだし、ムソリーニだってそうなんだ。感情でだ。ことにヒトラーというのは非常に感情の激しい男だ。規定を設けずして、いたずらに憲法解釈を拡大して、憲法九条をほとんど空洞化していますよ。そうして今度は感情でもってやるということになったら、これはたいへんな問題だと思うんだ。感情論で戦争に巻き込むようなことがあったらたいへんだ。それは、あなた総理大臣として——市井の人なら、いや、そういう感情だということも知れますが、陸海空軍の全権を握っていらっしゃるあなたが、実は権利義務じゃなくて感情論でやったんだなんて、これはたいへんな問題だと思うんだ。そうすると、あなた、感情論に走ると何でもやっていいことになりますか。
  31. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 そんなことにはなりません。御安心願います。
  32. 猪俣浩三

    猪俣委員 ところが、それだからぼくは自衛戦争侵略戦争の区別を明らかにしてもらいたいことを質問要綱にも書いてある。あなた方の答弁はよくわからないのだ。わからぬのも無理もないんだ。いま言ったように、国際連盟で区別しようとしたが、とうとうできなかったんだから。そういう区別できない問題を、日本国憲法九条に適用してやろうとするところに無理がある。何といったって無理がある。合理的じゃない。法解釈として合理的じゃないのです。だから、全国の公法学者や若い純心な法曹学徒が、全部政府の見解と違った見解を出している。無理がある。だが、私もこれ以上聞きません。自衛戦争侵略戦争をどこで区別するか。これは一言で言われるなら言ってみてください。どこで区別するんです。これは総理大臣、どこで区別するんです。
  33. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 自衛戦争侵略戦争の区別、これはわが憲法が認めておる自衛権、その自衛権発動なりやいなや、ここにその限度があるわけであります。また、区別があるわけであります。だから、ことばで何と言おうと、わが国憲法が認めておる自衛権の行動なりやいなや、これで区別すべきものでございます。
  34. 猪俣浩三

    猪俣委員 だから、それじゃみんな、日中戦争でも、大東亜戦争でも、みんな自衛権発動だといっておる。そこと何も区別がないじゃありませんか。だから、自衛権ということばを隠れみののように使われるのは、憲法を空洞化する一つの詭弁ですよ。だから自衛権本質というものを私は聞いているのです。これは刑法正当防衛権と同じ意味です。急迫不正の侵害に対しやむことを得ざるに出たる行為でなければならない。ところが、第三次防のようなとほうもない、世界第何番目というような軍備をして、あらゆる作戦計画を立て、アメリカの兵隊とともに練習をやっておって、——そういうことは正当防衛の中、すなわち自衛権の中に入らない。それを皆さんは自衛権自衛権と呼んでいる。そうすると、いままでの過去の日清、日露戦争も、みんなわが国自衛権のための戦争だということを、宣戦の詔勅というものはみんなうたっている。だから、あなたもまた、戦争をやるときは、わが国の自衛のためにやむを得ざるに出たる行為であると、こう言うだろうと思うんだ。それじゃ、あなた全然意味ないじゃないですか。
  35. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私が平和に徹しておるということ、これはもう誤解はないと思います。また、わが国の憲法は、国際紛争解決のために武力は用いない、これはもうはっきりいたしております。したがって、ただいまのような戦争の危険はない。これは御了承いただけると思います。まして、日清、日露の戦いなどを引き合いに出されますが、今度の憲法は、日本の外地へ出かけるというか、本土を離れる、こういうようなことは一切しない、これは約束でありますから、日清、日露の話をここへお出しになることは間違っておる。私は、猪俣さん自身が自衛権を否定なさるならこれはよろしいのです。自衛権をしゃんと認められる。その範囲においていま議論している。その範囲でりっぱに意見は一致するはずなんだ。それを、特にいまのように拡大されて、あるいは日清、日露がどうだとか、大東亜戦争がどうだとか、そこへ無理やり持っていかれようとする、私どもはそこまで考えてはいないのです。今回も、憲法が限定的な自衛権、その行使についても非常に限定していること、これはもう百も承知です。また、それを踏み越えるつもりはございません。
  36. 猪俣浩三

    猪俣委員 これはいま言ったように時間がないから、自衛権本質についてあなたとの論争はやめます。あなたの議論は間違っているんだ。正しいのは、憲法制定当時の吉田総理大臣なり金森国務大臣が答弁したことが正しいのです。憲法九条のすなおなる解釈ですよ。吉田さんは、自衛戦争を否認するとまで言っているじゃないか。自衛戦争という名のもとにいままで戦争をたびたび重ねてきた、こう吉田さんは答弁している。これはあなたの大親分じゃありませんか。それをあなた、子分がだんだんこれを空洞化してしまって、そうして危険な情勢をつくっている。それでは親分に対して申しわけないだろう。この憲法制定当時の精神をいま議論しませんが、もう一ぺん速記録をよく読みなさい。あなた方の解釈は間違っているんだ。それは結局自衛隊を拡張せんとするために憲法解釈をひん曲げて、ほとんど、憲法九条を、あるけれどもなきがごとく空洞化してしまった。ここにぼくは保守党の政権の非常な罪悪があると思う。しかし、これ以上言うたって水かけ論になります。だから私はやめますが、それは非常に間違っておるのです。初心忘るべからずということばがあるが、憲法制定当時の初心を忘れないように、もう一ぺん吉田総理大臣答弁から、金森の答弁からよく読みなさいよ。総理大臣として大事なことですよ、憲法問題は。そんな属僚にまかせずに……。解釈は全く間違っています。間違っていますが、この程度にいたします。  それからいま一つ、第二問は、この自衛隊の膨張、軍需産業資本の発展と好戦的政治勢力の増大についてという題であります。これは実は第二次世界大戦後のアメリカの平和的性格の変貌についてというのですが、これはアメリカのアイゼンハワーが一九六一年一月十七日の夜、大統領をやめるときに、あれはワシントン以来の伝統だそうですが、国民に対して告別の辞という特別放送をやるそうです。ところが彼は、その最後に至って非常に驚くべき発言をしたために全米に非常にショックを与えたという。どういう発言かというと、アメリカの民主主義は新しい巨大な陰険な勢力によって脅威を受けている。それは軍部・産業ブロックとも称すべき脅威であって、何百万という人間と何十億ドルというばく大な金を空費しており、その影響力は全米の都市、州議会、連邦政府の各機関にまで浸透している。こういうことで結んだので、これは非常なショックを与えた。それをきっかけにいたしまして、アメリカの政治評論家のフレッド・クックという人が「戦争国家」という本を書いた。この中には実に驚くべきことが書いてある。たとえば、朝鮮戦争のときには、ゼネラルモーターズの会長であるチャールズ・ウィルソンが国防長官になって朝鮮戦争をやっている。そうすると、二十五万人のアメリカの兵隊が死傷しているのに、ゼネラルモーターズは一兆億円の金もうけをしたというのです。いままた、フォード株式会社の重役マクナマラが国防長官になって、そしてベトナム戦争をやっておる。このフォード自動車株式会社がどのくらいもうけるか、まだ戦争がやまっていないからわからない。こういう産業資本のチャンピオンが国防長官になって、そして軍隊と産業資本が結合して、大統領といえどもこれの命に従わざるを得ないような現状にアメリカは変化してきている。だから第一次大戦以前の自由、民主、平和のアメリカというものは、第二次世界大戦以後は変わってきた。私どもが青少年の時分に教わりました平和、自由、民主というアメリカを想定しておると、いまのアメリカは非常に違ってしまったということを、アメリカ人の有名な評論家があらゆる材料を駆使して書いてある。これははなはだ警戒を要する。  イギリスの政治学者ノエル・ベーカーが「軍備競争」という本を書いている。これはノーベル賞をもらった本だ。この中に、一九五五年まではソ連が戦争国家であったが、それ以後はアメリカが戦争国家になったという結論を下している。これはアメリカの最も友邦であるイギリスの政治学者である。なぜこうなったか。結局軍事予算をたくさんとって、軍需産業家が非常に大きくなってしまって、もう政府といえども押え切れなくなった。私はこれを聞きまして非常に心配なんです。一体、今度は三次防、二兆三千何百億円、たいへんな金であります。そして、そのうちの四〇%、九千四百億円というのは装備費であるとして民間に全部これをやらせる。だから、民間の軍需産業、死の商人どもはもう笑いがとまらぬ状態である。こういうものがだんだん大きくなる。そしてこれが一部の野心家と結びついて、自衛隊、軍需産業、その上に野心のある政治家が乗っかりましたらどういうことになりますか。ヒトラーや東条みたいなのが出てこないとも限らぬ。佐藤さんはそうならぬかもしれませんがね。しかし、はなはだ私は日本の将来——こういうふうに自衛隊をだんだん膨張させていって、そして軍需産業が非常に強大になってくる。そうすると、日本の平和にして民主的なる政治勢力が変貌を遂げて、アメリカみたいになってしまうのじゃなかろうか。アメリカのベトナム戦争はどう考えても狂気のさたです。  そこで、あなたはどういう自信がおありになるか。こういう軍需産業をどんどん育成強化して、今度は国産にするらしい。それと自衛隊の増強、こういう勢力が出てきて、これを政党なりあるいは文官系統がどういうふうにコントロールできるか。あなたはその自信があるかないか。あるとするならば、どういう方法でやっていくか。私はこれは国家の大計として相当考えなければならぬ問題じゃないかと思うのであります。これに対して、あなたの決意のほどを承りたい。
  37. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 猪俣君の御意見で、いろいろ御注意また御忠告をいただいたようでございます。もちろん気をつけてまいりますが、御承知のようにシビルコントロール、ただいまたいへんりっぱにやられております。この上とも一そう注意してまいるつもりであります。
  38. 猪俣浩三

    猪俣委員 いつものあなたの精神論、抽象論でよくわからないが、総理大臣として、将来私は心配があると思うのです。あなたを責めようとして言っているのではない。アメリカはもうこういう姿になっている。それと日本は安全保障条約という軍事同盟を結んでいる。アメリカの独占資本に相当突き上げられている。そして今度は軍需品を国産化する。そうすると、軍需産業が一人歩きし、今度は自衛隊と手を組みますよ。自衛隊と軍需産業に関します黒いうわさがずいぶんあるのですが、今回はそれは省略します。とにかく彼らは利害一致しておりますから、軍隊というものは、戦争をしなければ商売にならない。そこへもってきて、軍需産業は戦争も拡大しなければ商売にならない。アメリカを見てごらんなさい。ベトナム戦争が平和に向かうといううわさが出ると、株がばっと下がる。そうすると、大統領は大いにやるのだと、また声明を出す。そうするとまた上がってくる。資本主義と戦争というものがどんなに密接なる関係があるか明らかなんです。そういう場合におきまして、私は、いま警察予備隊自衛隊になったように、オタマジャクシがとうとうカエルになってしまった。いまのところまだ軍需産業は、それほど政治を支配するだけの権力を握らぬかもしれませんが、これが自衛隊と結託いたしますと、その勢力の上に乗るか、乗らぬかというと打倒される。そういうことになると、今度は政党も、また東条内閣時代の翼賛議会みたいなことにならぬとも限らぬ。そうすると、日本平和憲法なんというものは、非常に有名無実になってしまう。いまそろそろ有名無実になりつつあるのだけれども……。とにかく非常に危険がある。というのは、憲法九条があれだけ明確な規定をしておるにかかわらず、御用学者の言をたてにして、そうして今日のごとく拡張解釈してしもうた。いかに法制局長官なんというものはでたらめに答弁するか。あの佐藤達夫という人が長官の時分自衛隊は公務員だから、公務員の出張として海外に出ることがあり得ると答弁している。これもあなたから聞かなければならぬと思っているのだが、自衛隊国家公務員である、だから国家公務員が海外出張して何が悪いのか、そしてベトナムへ海外出張だ。法制局長官はそういう解釈をとっている。ちゃんと文献に残っている。佐藤達夫氏は雑誌にも書いているのだ。だから、よほど引き締めてからぬと、あなたは悪意はないにしても、そういう取り巻きにだんだんそういうふうに持っていかれる。国家公務員であるから海外出張はあり得るなんという、そういう答弁をする法制局長官を置いて、そうしてその法律解釈で運営せられたらたまったものじゃないですよ。いまその点はあなたはどう考えますか。国家公務員だから海外出張はあり得るなんという説をおとりになるのですかどうですか。
  39. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いろいろ御意見を述べられましたが、ただいま海外派兵をするかどうか、こういうお尋ねであります。海外派兵はしない、これはもうたびたび申し上げておりますから、誤解のないよう願っておきます。
  40. 猪俣浩三

    猪俣委員 そこで私は、時間がくるようでありますから、次に移りたいと思います。  次にお尋ねをするのは、この質問のあれに書いてありますが、佐藤さんにもう一つお尋ねしたいことは、三矢研究事件に関連して、軍隊に対する文民コントロールの確信についてというのです。三矢事件に関連してと申しますのは、例の札幌の恵庭事件裁判に対しまして、例の三矢研究の最高責任者でありまする田中義男統幕会議の事務局長、この人が出て裁判に証言をしておる。それを見ますると、この三矢研究の四というところに、アメリカの軍隊との連合の調整所を設けるということが書いてあるのです。どういう場合に設けるかというと、その場合は、つまり間接侵略にあらざる自発的な暴動が起こった場合においては、アメリカの司令部と日本の統幕議長とが調整所というものを設けて、そうしてそこで防衛の任に当たるという規定があるわけです。そこで裁判におきましても、一体この間接侵略にあらざる暴動というものは実際どういう程度のものを考えているのかということを弁護士が質問をいたしますと、その田中さんは、弁護士が例をあげて、あの三池炭鉱の争議のようなことを言うのか。まああれはそこまでいかぬ。それでは安保条約反対のデモのようなことを言うのかと言ったら、まずあの程度のことになります。こういう答弁をしている。そうすると、安保条約反対の国民運動が盛り上がった際には、この三矢研究の人たちの頭の中には、アメリカ軍と連合してこの暴動を鎮圧するという構想のようでありますが、私は、これがこういうことになってくると、この三矢研究はあなたは最初知らなかったと言う、総理大臣が知らぬ間にこういう計画が立てられて、しかも国民の反対運動、デモ対策としてアメリカ軍と一緒になって鎮圧に当たるような、こういう計画を立てている。これは非常におそるべきことだと私は思うのですが、あなたはこれに対してどういう御感想を持ちますか。   〔「そういうものはない」と呼ぶ者あり〕
  41. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 三矢研究はどうあろうと、ただいま——三矢研究については特別委員会まで設けていろいろ当時調査を続けられました。そうして、ただいまもそういうものはないという不規則発言がございましたが、これは別といたしまして、私は、治安出動といいますか、治安保持のための出動、そういうことはもちろん、私自身、国内の秩序維持また安全確保、その最高責任者でございます。私の考えなしにそういうものが自由かってに行なわれるとは思いません。
  42. 猪俣浩三

    猪俣委員 まあそんなものはないなどと言っていますが、昭和四十年七月七日の公判期日における田中義男の証言にはっきりと出ておるのだ。(「そんなものはないよ」と呼ぶ者あり)ないと言ったって出ているじゃないか。君らのほうでないないと言うなら、ないという証拠を出しなさい。ここにちゃんと出ている。その「基礎研究−4対米関係事項」と題する文書に「第2 情況の近迫に応じとるべき具体的な統幕在日米軍司令部間の連けいのあり方。作戦調整所の開設。(1) 次のような事態が生起した場合、統幕議長と在日米軍司令官間の協議を経て設置さるべきである。イ 日米安保条約第五条の適用に至らない状況ではあるが、次のような事態が発生した場合」日米安保条約の第五条の適用に至らない状況なんですよ。そういう状況だ。だから間接侵略じゃないじゃないか。「状況ではあるが、次のような事態が発生した場合、天災地変」これはわかる。「若しくは外国勢力の関与しない相当大規模な国内擾乱が発生した場合」これが作戦調整所を設ける三矢研究の「基礎研究−4対米関係事項」と称する「第2」に書いてある。この文書を示して質問しているのだ。それに対して田中義男氏は、いま言ったように、安保闘争についてはアメリカの海兵隊、マリーンを出動させるという話があったじゃないかということに対しては、安保闘争については海兵隊云々については是認しませんが、安保闘争のああいうような規模であるということになると、それはいろいろ考えなければなりません、こういうふうに肯定しているのです。これは法廷の速記録なんです。速記録だから、ないなんて、あなたでたらめ言っちゃいけない。
  43. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 先ほどお答えいたしましたように、この最高責任者は私でございます。また、出動さしたら二十日以内に国会の承認を求めなければならない。大体、事前に承認をとっているのが筋だと思います。それぞれの手続がございますから、いま、その三矢研究にこうあるから、かってにやるのだ、これは結論としては間違っていると思います。どうか誤解のないように願っておきます。
  44. 猪俣浩三

    猪俣委員 まあ、勘ぐると、一九七〇年、安保改定時期に相当国民の反対運動が盛んになる、これを予想してこんな三矢研究なんかできたのじゃないかと思うので、あなたにお尋ねしているのですが、そうすると、政府としては、国代のこういう反対運動に対して自衛隊を使うような考え方はあるんですか、ないんですか。
  45. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いまお答えいたしましたが、事前にというような話をしました。これは、事前はないので、出動を命じたら二十日以内に国会の承認をとる、こういうことでございます。  ただいま設例のような事態につきまして、私は、過去におきましても発動さしておりませんが、あの当時の岸内閣の態度は適当であった、かように私考えております。
  46. 猪俣浩三

    猪俣委員 あなたは、出さないという確約をなさったからいいんだが、実は国会の承認と申しましても、いま、現在政党内閣は、それは民主政治の姿としてそうなるのですが、立法権と行政権というものは多数党に握られているのです。また司法権というのも、最高裁判所の長官は内閣総理大臣が任命するのだ。だから多数党政治というものは、よほど多数党が自制いたしませんと、行政、司法、立法、みんな掌握するようなことになるわけだ。それを、ただ国会の承認というようなことは、それはカムフラージュにすぎないので、国会の承認といったって、自民党が多数じゃありませんか。それじゃ国会は承認してしまう。押し切ってしまう。社会党がいないでもなんでも表決してしまう。そうなりましたら、国会の承認なんというのは、結局、多数党の承認ということになってしまう。そういう意味におきまして、よほど多数党が自粛、自戒していただきませんと、政党政治の名においての独裁政治、多数党の独裁政治が行なわれる。これはあなた、立法、行政、ともに多数党が握っている。形の上で立法権だ行政権だといっているけれども、政党政治は両方握っているわけですよ。その意味において、あなたが、そんな安保反対国民運動なんというものには自衛隊を使う意思はないんだということをおっしゃったのでありますが、それまであなたが総理大臣になっていらっしゃるかどうかわかりませんけれども、次の総理大臣になる人にはよくそれを言い伝えてもらいたい。  次に、今度はアメリカの中央諜報機関でありまするところのCIAというものにつきまして、相当これが日本国民の間にも疑惑が出ておりますので、私は、それを明らかにしてもらいたいと思いますが、その順序といたしまして、小型のCIAだといわれております日本の内閣調査室、この内閣調査室の予算、人員、仕事、これをまず明らかにしていただきたいと思います。これはどなたになりますか、官房長官らしいな。
  47. 福永健司

    ○福永国務大臣 内閣調査室の所掌事務は、内閣法及び内閣官房組織令に基づきまして、内閣の重要政策に関する情報の収集及び調査、各行政機関の行なう情報の収集及び調査でありまして、内閣の重要政策にかかるものの連絡調整を行なうことになっております。  この予算につきましては、四十一年度当初予算は六億一千四百七十八万四千円でありましたが、補正後五億九千五百三十五万二千円となり、現在に至っております。  人員につきましては、内閣法に規定されている職員七十一名でありまして、その内訳は、内閣調査官十五人、専門職三十六人、その他一般職員及び技能労務職員が二十人というようになっております。
  48. 猪俣浩三

    猪俣委員 そこで、この内閣調査室にはいろいろな外郭団体があって、その外郭団体に相当補助金が出ておる。そこで、どういうふうな外郭団体があって、その団体に幾ら内閣調査室の予算から補助金を出しているか、その外郭団体の名称、所在地及び外郭団体の責任者及び責任者の前歴、それをひとつ明らかにしていただきたいと思います。
  49. 福永健司

    ○福永国務大臣 内閣調査室の行なう情報調査活動のうち、ただいま外郭団体という名においてお聞きでございますが、委託しておりまする民間の十一の団体につきまして、お尋ねの点を明らかにいたします。  日本放送協会に対しまして七百三十万円の予算で海外放送の聴取、記録の作成を委託しております。会長は前田義徳君であり、その前にNHKの副会長をしておりまして、さらにその前には、報道関係の仕事をいたしておったわけでございます。  次に、内外情勢調査会に対しましては五千二十三万五千円、海外放送の聴取、記録の翻訳、整理及び国際情勢に関する資料の作成並びに有識者の意見調査を委託しております。会長は長谷川才次君でございます。前歴等については、おおむね御承知かと思いますが、報道関係の出身でございます。  次は、共同通信社に対しましては七百二十万円で内外ニュースの速報を委託しており、社長は福島慎太郎氏、元国連大使であります。  次は、ラヂオプレスに対しまして五百四万円で海外ニュースの速報を委託しております。所在地は市ケ谷河田町でございますが、理事長は中田格郎氏、元外務省の嘱託でございます。  次は、共同通信社開発局に対しまして二千八百九十三万七千円で、外国通信の収集、翻訳、整理を委託しております。代表取締役は菊地幸作氏、共同通信社の元九州支社長でございます。  その次に、海外事情調査所に対しましては四千五百二十八万七千円で、海外資料の収集、翻訳、整理及び調査並びに各国事情の基礎資料の作成を委託しております。所長は小林正雄氏、前内閣調査官であります。  次は、世界政経調査会に対しまして一億七千八百九十一万六千円で、世界各国、東南アジア及び中東諸国を除きますが、その政治、経済、社会事情の調査並びにこれに関する資料の作成を委託しており、会長は広岡謙二氏、前に国防会議事務局長などをいたしております。  東南アジア調査会に対しましては三千二百六十一万四千円で、東南アジア及び中東諸国の政治、経済、社会事情等の調査並びにこれに関する資料の作成を委託しております。会長は横山正幸氏、前に外務省の顧問でございます。  次は、国際情勢研究会に対しまして五千三百三十六万八千円で、情勢の分析及び総合判断資料の作成を委託しており、会長は矢部貞治氏、拓大総長でございます。  次に、国民出版協会に対しましては七千八百九十三万三千円で、新聞、出版物、放送等、マスコミにあらわれた論調及び社会風潮の調査研究並びにこれに関する資料の作成を委託しており、会長は横溝光輝氏、元県知事、弁護士等であります。  最後に、民主主義研究会でございますが、この団体には七千六十六万五千円で、民主主義の観点からの政治、経済、社会、文化等に関する理論的、基礎的研究調査及びこれに関する資料の作成を委託しており、会長は浅井清氏、元人事院総裁でございます。  以上が詳細でございます。
  50. 猪俣浩三

    猪俣委員 これはわかりましたが、内閣調査室自身あるいはこれらの外郭団体とアメリカの中央謀報局CIAとは何らかの関係がありますか、ありませんか。
  51. 福永健司

    ○福永国務大臣 内閣調査室は、もとよりいま御指摘のCIA等とは共同で工作する等のことは一切ございません。外郭団体についても言及されましたが、外郭団体のことにつきましては、十分正確には私は承知いたしておりませんけれども、さしてさような連絡はあるものとは考えられません。
  52. 猪俣浩三

    猪俣委員 岸さんが内閣総理大臣時代にアメリカへ渡られまして、アメリカの有名なアレン・ダレスCIAの長官と懇談をして、お互いに情報交換をしてもらいたいという申し込みをしたという新聞記事があるのですが、そうしてみれば、向こうがもちろん応じたでありましょうし、相当の連絡があるとわれわれは思うのですが、実際何の関係もありませんか。
  53. 福永健司

    ○福永国務大臣 私は、共同して工作する等のことは一切ありませんと申し上げました。あとのおことばで、猪俣さんが情報の交換等はどうだと、こういうことでございますが、流動する国際情勢に対処するため情報の交換というような程度のことはこれはあると存じます。これらは、たてまえといたしまして外務省等を通じてと、こういうことになっておりますので、内閣といたしましては、そういう方法においての連絡等はあり得る、こういうことを申し上げたいと存じます。
  54. 猪俣浩三

    猪俣委員 あなた、さっき何もないと言ったから私は質問したんだ。昭和三十二年の六月に岸さんは渡米しておる。そのときにCIAの最高責任者であるアレン・ダレスと会見して、そして緊密にひとつ連絡してやってくれぬかと提携を話し合った。これは昭和三十二年七月十四日の読売新聞に出ておる。それでお聞きしたのです。情報交換という程度ではCIAと連絡をとっているわけですね。
  55. 福永健司

    ○福永国務大臣 そういう意味においては連絡と申しますか、情報交換ということはあると存じます。ただし、先ほども申し上げましたように、外務省を通じてと、こういうたてまえでございます。
  56. 猪俣浩三

    猪俣委員 それじゃ、外務大臣に聞きますが、CIAと外務省はどんなふうな連絡をやっておるのです。
  57. 三木武夫

    ○三木国務大臣 CIA等との情報の交換は、私の承知しておる限りではないのでございます。連絡は、私に関する限りは、CIA等から情報を受け取るというふうには承知してはいないのでございます。まあ、CIAというのは、こういう点ではないかと思うのですが、CIAの出先機関が日本にあるわけではない、CIAというのはアメリカ政府の情報機関でありますから、そういう点で、CIAがいろんな情報を大使館を通じて流すので、そういうふうな形でわれわれが情報を受けることはあるけれども、CIAが直接外務省に情報交換の連絡があるようには承知してないのでございます。
  58. 猪俣浩三

    猪俣委員 そうすると、官房長官の答弁とちょっと違っているじゃないか。私は、岸さんが総理大臣として渡米したときにアレン・ダレスとよく話し合って、お互いに提携しようじゃないかと申し込んできた、それだから関係があるんじゃないかと言ったら、情報の交換はするが、一切外務省を通じてやっているんだ、あなたは今度、CIAとはやっていないんだ。そうすると、何だかこれは二人の間で違うのですね。
  59. 福永健司

    ○福永国務大臣 先ほど私が明らかにいたしましたように、共同して工作する等のことは一切ございません、情報交換等についてはあり得るかと思いますが、これは外務省を通じてというたてまえでございます、こういうように申しました。そして、実際に外務省がどういう形においてどの程度であるかということは、ただいま外務大臣がお答えを申し上げましたようなことであろうかと思うわけでございまして、私どもがみずからつまびらかにいたしておりませんので、先ほどのようなことばによってお答えを申し上げた次第でございます。別段矛盾はないと存ずる次第でございます。
  60. 猪俣浩三

    猪俣委員 その次、まあ、あとに回すことにいたしまして、公安調査庁の予算、人員、協力者への報酬金の総額、それからついでにCIAとの関係、そういうことを言ってください。
  61. 田中伊三次

    田中国務大臣 公安調査庁の予算の総額は二十八億余りと承知をしております。それで、ただいまお尋ねの調査費はそのうち八億余り。そのうち調査に協力してくれた人々に対する報償費という名目でございますが、これは大体六五%程度、すなわち六億近いものかと存じます。詳細は公安調査庁長官答弁をさせます。
  62. 吉河光貞

    ○吉河政府委員 御指名によりまして御答弁申し上げます。  四十一年度の調査活動費は、総額七億八千万円でございます。四十二年度に至りましては六千二百万円増額になっております。  次に、公安調査庁といたしましてはアメリカの中央情報局とは関係がございません。
  63. 猪俣浩三

    猪俣委員 あなた、そこにいたついでだ。その協力者の中に一体右翼団体と思われるような人物は入っていますか。
  64. 吉河光貞

    ○吉河政府委員 公安調査庁といたしましては、破防法に基づきまして、左翼の団体のみならず、右翼団体についても調査を進めております。この調査につきまして、右翼団体の協力者には調査活動費の配付をいたしておる次第でございます。
  65. 猪俣浩三

    猪俣委員 右翼団体を調査するために右翼の団体にやはり協力費なるものが出ておる、こう承ってよろしいな。
  66. 吉河光貞

    ○吉河政府委員 右翼団体の内外の構成員その他関係者で任意に協力してもらう者には、右翼団体の実態を解明するために調査活動費をその謝礼として交付いたしておる次第でございます。
  67. 赤澤正道

    赤澤委員長代理 長官は席へお帰りください。
  68. 猪俣浩三

    猪俣委員 そうすると、いま右翼団体調査のために費用を出している。それから、しからば左翼団体調査のためにやはり費用が出ていますか。
  69. 田中伊三次

    田中国務大臣 公安調査は公安調査庁の重要な任務でありますから、予算を計上いたしまして国費をもってこれをやっておる。そこで、調査はみずからできることあり、第三者を経なければできないこともございます。そこで、調査に協力を求めたときに、協力してくれて成果のあがったものに対しては、左翼も右翼もこの区別を問わず、協力者に対して適当なる報償金を支払うということとなっております。
  70. 猪俣浩三

    猪俣委員 次に、警察庁、警視庁における情報収集機構及びCIAとの関係について御答弁願います。
  71. 藤枝泉介

    ○藤枝国務大臣 情報収集を専門とする機構はございません。と申しますのは、警察が情報を収集いたしますのは、警察法第二条第一項に掲げられた目的を達成するために、それに必要最小限度の情報を収集いたしますので、情報収集だけを目的とした機構はございません。  それからCIAとは全然関係がございません。
  72. 猪俣浩三

    猪俣委員 そこで第六問に移りますが、公安調査庁でも、警察庁でも、外務省でも、内閣調査室でも、CIAとは何の関係もない、外務省もそう言っている。私は、CIAの実態を知っておってとぼけた答弁をやっているのか、あるいは知らぬのであるか。知らぬとすればはなはだ日本の治安上これはたいへんなことだ、知っておるとすればはなはだごまかしがある、こう思うのですが、アメリカの中央情報局、これはもう世界的に有名だ。これは日本においてどういう活動をしておるかということについて、いまお聞きすると、どこの庁でもあまり関係ないようなことを言っておる。ところが、これは外務大臣にお尋ねしますが、このアメリカの大使館の中に、大使館員なる名前のもとに相当のCIA要員が入っているということを御存じですかどうか。
  73. 三木武夫

    ○三木国務大臣 御承知のように、中央情報局はアメリカの政府機関でありますから、アメリカの政府予算によって広報、宣伝、情報収集、いろいろなことをやっておるわけであります。各国政府においてもそういう活動はやっておるわけであります。したがって、アメリカの大使館は政府機関でありますから、大使館員と連絡は十分あることは当然だと思いますが、御承知のように、アメリカのCIAと名のった機関はございませんし、そういうものが大使館の中にいて、CIAとどういう連絡を持っておるかということは、われわれは承知をいたさないのでございます。
  74. 猪俣浩三

    猪俣委員 はなはだ危険だと思うのだな。  これは一九六六年四月二十五日−二十九日までのニューヨーク・タイムズ、これは相当穏健な、しかもCIAに対しては同情的な新聞だが、CIAの特集号を出しておるのです。その中にこういうことを書いているのだ。「外国駐在のCIA職員はいわゆる穏密部隊のほか、在外公館に公然と席を置き、政治ないし経済担当官をよそおう機関員になっている。この後者の数は約二千二百人もおり、一部の大使館ではCIA職員が七五%に及んでいる」という、こういうふうなニューヨーク・タイムズの発表であります。なお、元インド大使であるヘンリー・テーラー氏が昭和四十一年一月二十一日新聞記者に語った言によれば、「ニューデリーの米大使館で働いている七百人のアメリカ人のうち、国務省関係者はわずか百人しかいなかった。どこの大使館でも、そこの大勢を占めているのは主としてCIAの人間である。CIAは国務省よりはるかに大きく、予算も国務省の二倍以上使っている。」これはインド大使のテーラーさんがこう言っている。そうすると、こういうことに対して一体日本の外務省は何も調査もせず、それから関心もないわけですか。
  75. 三木武夫

    ○三木国務大臣 そういう活動が不法であり、日本の国益に反するようなことがあれば、これはやはり問題にせざるを得ないけれども、そうでない限りは、アメリカの政府機関でありますから、大使館でいろいろ情報活動をしても、各国とも自分の国の宣伝、広報の活動というものはみなやっておるわけでありまして、そのことについて、われわれが特に大使館でだれがCIAでどうだというような調査をする必要は考えておりません。
  76. 猪俣浩三

    猪俣委員 これは驚くべき発言だと思う。いまCIAそのものについては、あなたは政府機関とおっしゃるが、アメリカではしょっちゅう国民あるいは国会においてこれが問題になっておる。というのは、相当危険性のある機関であるからであります。政府機関であって何でもないというようなことを、知っておっしゃるのかどうか。過去においてCIAがいかなることをやってきたか。これは世界的な歴史的事実として存在しておる。東ヨーロッパにおいてハンガリー、ポーランド、中近東においてはイラン、イラク、それからアフリカにおいてはコンゴ、ガーナ、中南米においてはグアテマラ、ブラジル、ことにキューバに対する侵攻——カストロ打倒のキューバ侵攻部隊を派遣することは全部CIAのやったことであるということで、当時大統領になったばかりのケネディを非常に嘆かした。これは失敗したんだ。なお、カンボジアにおいてはシアヌーク殿下を爆死させようとしてやった。しかも、その中に二世の松井という人物がおって、これは鹿地亘を監禁した人物ですが、カンボジア国家から追放せられた。もとヨーロッパのボンにありましたCIAの本拠が、いま東京に移ってきた。そうして中国、ベトナムその他のアジアに対する諜報活動をやっておる。こういうことがたくさん報道せられ、本にもたくさん出ているのです。あなた方は、これはアメリカの政府機関だというようなことで、こういうことに対してさっぱり関心がないようでありますが、一体こういう事実、私がいま言ったような事実は——なお、例の黒い偵察飛行機、U2型事件、これなんかもCIAの偵察機だ。こういうことで、情報収集のみならず、相当破壊活動をやるところの任務を持っているのでありますが、そういうことについて認識があるのかないのか、お聞かせ願いたいんだ。
  77. 三木武夫

    ○三木国務大臣 いろいろ新聞等でCIAが世界的に問題になっておることは、私も承知しておるのでございます。しかし、新聞のいろいろな報道、これが真実を伝えるものかどうかということに対しては、これを私自身が内容について詳細に立証するような材料を持っていないのであります。ただ言えることは、そういうCIAの活動が、日本において不法であり、不当なような活動があった場合においては、われわれはこれは国際の慣例に従って処置をすることは当然でございます。その点に対する関心はあるけれども世界各国でやっておることについていろいろな報道はあるけれども、それを突きとめていくだけの材料をわれわれは持っていないのでございます。
  78. 猪俣浩三

    猪俣委員 一体内閣調査室は、CIAがどういう活動をしておるかというようなことを調査していますか。
  79. 福永健司

    ○福永国務大臣 特別にその点に重点を置いた詳細な調査等はいたしておりません。
  80. 猪俣浩三

    猪俣委員 CIAは相当破壊活動をやっておるということは、私の憶測じゃないのだ。内閣調査室委託編集、内外情勢調査会、これが昭和四十二年三月十三日付の特集号を出しております。その見出しが「破壊活動の問題を直視せよ、CIA補助金活動の意味、こういうて詳細に発表している。知らぬのは官房長官だけで、嘱託しておる内外情勢調査会からはこういうパンフレットが出ているじゃないか。時間がありませんから言いませんが、CIAがどんな破壊活動をしているかということが、ニューヨーク・タイムズあるいはニューズウイークその他の新聞から訳して、これに出ているのです。
  81. 福永健司

    ○福永国務大臣 先ほども申し上げましたように、その点に特別に重点を置いて調査をいたしておるわけではございませんと、かく申し上げた。一般に調査しておるものの中に、そういうものが御指摘のように入っているというようなことは、広範囲にわたって調査をいたしておりますので、あり得ることでございます。
  82. 猪俣浩三

    猪俣委員 そこで、CIAがいかに危険なものであるかは、外務大臣は、ちょうどいまシンガポールのリー・クアンユー首相が東京におるでしょう、これにひとつ聞いてもらいたいのだ。この人は非常に問題を起こした。これは「インドネシアの変貌」というデビッド・コンデという人の書いた単行本に書いてある。一九六五年九月一日、CIAの機関員はシンガポールの国家機密を買うため、わが国——というのはシンガポールだ。シンガポールの政府職員を買収しようとした。CIA機関員が逮捕されたとき、CIAはシンガポール政府そのものを買収しようとしていることがわかった。CIAは、首相である——これはリー首相が言うているのだ。CIAは、首相である私に、一千マラヤドル(約三百万ドル)を提供することになっていたと爆弾発言をした。アメリカの大使はこれを否定したが、リー首相は、米国は愚かにも否定できぬことを否定している。私が公表したCIA事件にはちゃんと証拠がある。米国は取引の相手がゴ・ジン・ジェムや李承晩でないことを知るべきだ。シンガポール政府を売ったり買ったりすることはできぬと反論し、ラスク国務長官が事実を認め、謝罪した文書と録音テープなど、多数の証拠をアメリカ国務省スポークスマンに示した。これでアメリカ国務省はぺちゃんこになっちゃった。こういう事実がある。これはたいへんなことじゃないですか。政府まで買収しようとするのだ。まあ、われわれにもいろいろなうわさが入っていますが、そんなことはここで言いません。これは外務大臣は証拠がないなんと言うが、ちょうどこの人がいま東京へ来ているのだ。聞いてみてください。これは有名な事件だ。知らぬは皆さんだけだ。一体こういうような行動をやるCIA、日本にどういうことをやっているか、私は不安でかなわぬのだ。ことに安保条約を締結し、アメリカからは日本自衛隊の強化をしいられ、アメリカの独占資本がまたどんどん日本に入り込んでくる。こういう状態のもとにおいて、しかもCIAの本部が東京に移っている、こういうことに対して、はなはだ政府はわけのわからぬ答弁をやっている。  そこで総理大臣なり外務大臣に聞きますが、これは向こうは総理大臣だから、こっちも総理大臣がいいんじゃないか。シンガポールのリー・クアンユー首相に聞いてもらえるかどうか。これはたいへんですよ。日本にも、佐藤さんのところへ金を持ってきたらどうするのです。たいへんな問題だから、よく聞いてみてください。こういうことがあったかないか。一国の根幹をゆるがす問題じゃないか。それまでCIAがやるんだ。合法機関だから、不都合なことをすればあれだが、それまではどうにもならぬなんというばかなことを言っていてどうするのですか。リー首相に確かめてください。どうします。
  83. 三木武夫

    ○三木国務大臣 そういうことで特に面会を申し込んで、CIAの調査をするという意思は持っておりません。
  84. 猪俣浩三

    猪俣委員 しかし、こういう生き証人が来ているんだから、お聞きになったほうがいいんじゃないか。何もわからぬ、わからぬと言っておってどうするのですか。自衛隊ばかりつくって、外交的な防衛ということをちっとも考えていない。私は、そんな兵力の防衛よりも、外交的な国防ということが最も大事だと思っているんだ。だから、外務大臣の責任は、ぼくは総理大臣以上だといま思っているんだ。平和外交、それにはCIAというのは、これは実にたいへんな組織だ。それに対しては無防備であって、ただ自衛隊だけ増強していって国を守るなんて、そんなことは非常に考えが薄い。昔の源平時代の思想だ。三木さん、もうちょっとぼくは進歩的な人だと思ったが、どうもやはりだめですね。確かめなさいよ。たまたまちょうど来ているんじゃないですか。ちょうどいい証人が来ているんだ。そうしたら、他山の石として皆さんも大いに考えなければならぬ。このくらいのことをやっているんですよ。CIAというのは。どうですか。
  85. 三木武夫

    ○三木国務大臣 これは日本での不法とか不当な情報活動は、絶対に許すわけにはいかぬのであります。この点に対してはわれわれとしても十分な注意をいたしますけれども、いま猪俣さんの御指摘のような方に会って、私がCIAのシンガポールの活動を調査するという意思は、いろいろおすすめにはあずかりましたけれども、持っておらないことを申し上げます。
  86. 猪俣浩三

    猪俣委員 もう時間がありませんので急ぎます。  アメリカのランバーツという週刊誌が、たいへんなことを暴露いたしました。アメリカのCIAは全米学生同盟その他労働組合、文化団体、みんな金を出しているということが暴露せられまして、いまアメリカでは非常なセンセーションを起こしている。その中にアジア財団なるものが含まれている。このアジア財団なるものは、いまの駐南ベトナム・アメリカ大使やライシャワー大使も、役員の中に入っておる。このアジア財団なるものがアジア全般に向かってCIA活動をやっておる。これはアジア財団そのものが認めています。二月二十二日の毎日新聞を見ると「アジア財団にも黒い資金」、日本は黒い霧といっていますが、向こうは黒い手となっている。手と霧の違いだけれども、向こうではやはり黒い手。それで毎日の三月二十二日をみると、「米CIAの学生団体、労働組合の国際活動その他の対外文化交流団体に対する「黒い資金」提供事件の一環として、二十一日付ワシントンのイブニング・スター紙は、日本はじめアジアの十四カ国に常駐代表を置き、広範囲な文化交流、社会、経済活動で知られるアジア財団(ハーデン・ウィリアムズ会長、本部サンフランシスコ)もCIAのある「御用財団」を通じてCIA資金を受け取っていたと見られていると伝えている。同紙によると、アジア財団はこのCIAとの関係問題について同日、サンフランシスコで緊急執行委員会を開いて態度を協議するといわれる。」こういうことが二十二日に報道され、今度は三月二十二日には「アジア財団は二十一日、同財団がCIAから財政的支援を受けていたことを公表した。同財団は米国と極東方面との関係の強化をはかるため、年間四百万ドル以上の予算を計上する大きな民間財団で、その理事には新任のバンカー駐南ベトナム米大使やライシャワー前駐日大使も顔を並べている。」こういう記事が出ているのであります。時間がないからこまかく聞くことができなくなりましたが、アジア財団なるものは相当の活動をして、日本の劇団にも出ている。  なお、私がここに問題にすることは、日本弁護士連合会、日弁連と称します。これにアジア太平洋の法曹家連盟というようなものができているのでありますが、そこに対して入会をしきりにすすめてきている。まあ、日弁連でも、あるいは入会しようかというようなことで準備をやっておるのですが、ところが、これをだんだん調べますと、このアジア財団からその弁護士連合会の会合に対して三分の二以上の金が出ていることがはっきりし、会費と称するものが三分の一しかない。そこで、やはり弁護士団体にもこういうCIAの息のかかった財団が乗り込んできている、こういうふうに私どもはとっているのでありまして、いま弁護士会ではこれが問題になっている。かような意味におきまして、広範な部分にわたってCIAは手を伸ばしているのであります。  そこで私は、時間がありませんから最後の提案をいたしますが、アメリカでは、いまCIAの行き過ぎに対して非常に問題になりまして、CIAに対する監査委員会、そういうものの設置案がいま与党議員から出ようとしているのであります。なおまた、インドにおきましてもこれが問題になりまして、インドのガンジー内閣のチャダラー外務大臣は、インド国会におきまして、インドにおけるCIAの活動の調査を約束するとともに、ある外国がわれわれの国の政治的な目的に金を送っていることが明らかになった場合には、必ず一つの処置をとると言明しておる。また、フランスのドゴールは、いまCIAの調査に乗り出して、カナダでも学生団体がCIAの資金をもらっていたことが問題になり、ピアソン首相は米国政府に抗議するかどうか検討中と、議会でドゴールが答弁しておる。こういうふうなことで、世界ではみなCIAについていま警戒を始めているわけであります。日本におきましても、きょうあなた方の答弁を聞くというと、まるっきり何もわかっておらぬような答弁でありますが、これじゃ日本の治安は守れない。日本の治安なんて、警察軍隊だけで守れるものじゃない。そこで、CIAについてどの機関もさっぱりわからないんですが、これは何かCIAの活動について調査特別機関でも設ける意思があるかないか、総理大臣にお尋ねします。
  87. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 先ほど来いろいろ外務大臣、内閣官房長官等からCIAについての当方の考え方を詳細に説明いたしました。そこで、ただいま何らかの機関をつくる意思ありやいなや、こういうお尋ねでございます。ただいまのところではございません。
  88. 猪俣浩三

    猪俣委員 私の持ち時間がまいりましたので、まだたくさんお聞きしたいことが残っておるのですが、そこで私は、実は前の質問書には書いていたのですが、今度の質問書に抜けてしまいましたのは、いまアメリカで問題になっておりまするCIAが学生団体、労働団体、文化団体等に多額の金を出していることが暴露せられまして、いまてんやわんやの騒ぎをやっている。そこで大統領は、CIAが学生団体に金を出すことをやめろという処置をとっているのであります。いま向こうの新聞の論調を一々読み上げられませんが、CIAから日本の学生団体、日本の労働組合、日本の文化団体に相当金がきている。ことにある大学、ある個人に相当の金がきている事実があるわけです。私はきょうそれを質問したいと思いましたが、いま都知事選挙の最中でありますので、その質問は取りやめました。しかし、これは政府としては、アメリカ自身がいま学生に対する悪影響がありとして騒ぎ立てている際に、日本の学生がCIAと関係するようなことがあったら、大きな問題だと思うのです。これは内閣調貸室でも、公安調査庁でも、よくお調べいただきたい。私は実はその材料を持っているのです。これはジャパンタイムズにも発表されたことでありますけれども、それをいまここで申しますことはいかがなものであろうかとして私は遠慮しているのですから、私の良心のあるところをお認めいただきたい。しかし、それと皆さんの調査を厳重にしていただくこととは別であります。私はきょうはその人の名前、その大学の名前、これを差し控えることにいたします。  これで私の質問を終わります。(拍手)
  89. 赤澤正道

    赤澤委員長代理 これにて猪俣君の質疑は終了いたしました。  次に山中吾郎君。(「定足数がない」「休憩しろ」と呼び、その他発言する者あり)山中君質疑を始めてください。——山中君。
  90. 山中吾郎

    ○山中(吾)委員 委員長に先にお聞きしておきますが、二時間は……。
  91. 赤澤正道

    赤澤委員長代理 ええ、お約束のとおりどうぞ。
  92. 山中吾郎

    ○山中(吾)委員 そうですか。  私は、日本社会党の文教政策の立場の中から、文教政策の面で佐藤首相を中心に今度の予算関係を御質問いたしたいと思いますので、そのつもりでお聞き願いたいと思います。  まず第一に、総理大臣の施政演説の中で、「民族の生み出す巨大なエネルギーを生かし、先進諸国に比して遜色のない重厚かつ能率的な社会基盤を確立する考えであります。その基礎の上に、民族のすぐれた伝統を継承し、創造力を豊かに開花せしめ、風格ある日本社会を建設いたしたい」と言っておるのでありますが、風格のある社会というビジョンとはどういうことであるか、総理大臣の心境を推測して考えてみましてもなかなかぴったりしたものがない。本会議で、キャッチフレーズとして風格のある社会を強調されたからには、何かの具体的なビジョンをお持ちであるのではないか。それはなぜ私がお聞きいたしますかというと、一国の総理大臣の施設演説でありますので、いろいろの方面に反響を呼んでおります。この四月二日の朝日ジャーナルの巻頭言の中にも、こういうふうにいっております。「始めに言(ことば)があった。言は神と共にあった。言は神であった。しかし佐藤首相お得意のキャッチ・フレーズは、言葉だけが浮いて漂っているような印象を禁じえない。歩行者優先の政治とか社会開発が唱えられた。こんどは風格ある社会である。キャッチ・フレーズは結構だ。国民に政治への鮮明なビジョンを与えることができるからである。だが、思いつきだけではこまる。風格ある社会を日本の英文新聞はいずれもソサイエティ・ウイズ・ア・キャラクターと訳している。ほかに訳しようがなかったのだろう。」こういう書き方をしております。したがいまして、これは外国に対してもソサイエティ・ウイズ・ア・キャラクターという翻訳で、日本総理大臣一つのビジョンを出したと受け取っておるのではないか、また、国民自身も思いつきであるのではないかという受け取り方をしておるようであります。また、その施政演説の直後に、読売新聞にも一つの批判を書いております。「風格のある社会建設に進むべき道の焦点をあわせたが、風格のある社会についてのビジョンにとぼしく、演説ではこのヤマ場ともいうべきくだりで、野党席に一瞬失笑も聞かれたほど。第二次佐藤内閣のスタートにあたり、キャッチ・フレーズを求めたい側近の苦労はわかるとして、佐藤はこれをやるのだという率直な首相のナマの決意が聞きたいところだ。」こういうふうに、新聞自身もそういう受け取り方をしておるとすれば、やはりここでもう少し具体的に総理大臣が思いつきでないということをお示しになるということが非常に肝要であると思うので、お聞きしたいと思うのです。
  93. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私の施政演説、さらにまた本会議における質疑等を通じまして、この風格ある社会、これはいろいろ各方面でそれぞれの立場においてそれぞれの批判が下されておると思います。私は、この風格ある社会を一つ定義づけて、かくかくなさい、かように私申すつもりはございません。山中君も御承知のように、ただいまわが国の経済的発展はすばらしい、もう世界の驚異だといわれておりますし、また、保守党の政治が今後続いてまいりますならば、さらに十年後、二十年後、これはすばらしい世の中になると思います。そのときに、これがいままでいわれておりますような合理主義的な社会であったり、あるいは合目的的な社会であったりしては、どうもその社会が重厚かつ風格のある社会とはなかなかならないと思います。私は、日本の歴史というものは、これはもう輝かしいものを持っておりますし、また、日本民族の持つ素質もこれまたすばらしいのであります。でありますから、これから先の社会、日本国家というものを日本人らしい国家日本人らしい社会につくり上げること、これがいわゆる風格ある社会、私はかように実は考えておるのであります。ただいまいわれておりますように、物心両面、これがそろっておらない、そういうものが調和がとれること、これがおそらく根本をなすだろうと思います。それぞれの立場においてそれぞれの風格ある社会を考える、かように申しましたが、そういう意味でひとつ前進すること、これが私どものビジョンでもある、かように考えております。
  94. 山中吾郎

    ○山中(吾)委員 御説明では国民はなかなかわからないと思うのです。私、総理大臣のああいうことばを使ったことを善意に推測いたしまして、風格ある社会をつくるのには、まず風致豊かな国土と、そこに住む国民は風格のある国民、品格のある国民という二つの要素がないといけないのではないか。そこで、総理大臣のお考えを私のほうから善意に考えまして、よく社会開発ということばを使われておるから、風政豊かなるいわゆる国土を開発するというそのビジョンは、常にいわれておる社会開発ということばの中に通ずるものがあるように思う。単なる経済の繁栄でなくて、国土のすみずみに人知が加えられて、どこへ行っても文化のにおいのする国土にするという、そこに一つの風格のある、ムードのあることはわかる。日本世界の公園にするぐらいのビジョンを一国の総理大臣が出してもいいじゃないか。ところが、どうも遺憾なことには、そこに住む国民に対する、品格のある国民形成についての文教政策、その点については一言もいまだかつてビジョンらしいものは触れていない。まことに私は遺憾なんです。そこからは、総理大臣がせっかく本会議場で言われても、私は風格ある社会は建設できないじゃないかと思う。そこで、そういう風格のある国民を形成するというその一点の中で、私は文教政策を考えながらお聞きしていきたいと思うのであります。  首相のそういう意味においての教育観といいますか、国民形成についての基本的な考え方はお持ちになっておられると思いますので、それを一言にして簡略にお聞きいたしたいと思います。
  95. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 たいへん抽象的なお話をして恐縮です。先ほど申し上げますように、われわれはりっぱな素質を持っておる、また、りっぱな輝やかしい過去もある、歴史もある。こういうところで日本人らしい社会をひとつつくろう。それには、いまおっしゃるように、それぞれの国民個々の者もまた風格がなければならない。それがやはり結集されて初めて国ができ、社会ができるだろう。こういう御意見、私もさように思います。  そこで、一体そういう考え方で進む場合に、教育は一体何を考えているのだ。昔は徳育、知育、体育の三百ということが盛んにいわれておりました。いまでもやはり同じような気持ちのものがあるのではないだろうかと思います。また、最近は、ずいぶん批判を受けましたが、期待される人間像、それぞれのものにやはり批判を投げかけておる。少なくとも、期待される人間像、そういうものをひとつ描いて、そういう方向で進もう、こういうことが努力されておる。これらのことをお考えになると、いまの風格ある人間、風格ある社会をつくろうというその努力それぞれは、それぞれの立場においてそれぞれがいま取り組んでおられる、かように私は思います。いま申し上げますように、期待される人間像、これについていろいろの御批判がございますけれども、ただいま比較的まとまっておるものはいま出されたものだ、かように私は考えております。
  96. 山中吾郎

    ○山中(吾)委員 どうも十分理解しがたいのですが、私は、教育があらゆる政策の基本であることを確信しておる人間なので、そういう意味において教育の偉大な力を信じておる人間なのです。正しい教育というものは、産業、経済、人間の推進力になるが、そのかわり、誤った教育は歴史を逆行させる、そういう力を持っておると私は思っております。知育、徳育、体育というような抽象的なことを害われても、一国の総理大臣一つの風格のある社会というビジョンを出した限りにおいては、それに通ずる国民形成にもっと具体的なものを出すべきじゃないか。過去の日本の長所と同時に、この身分社会の中でつくられた国民性の優越感、劣等感の重なっておることとか、その他の具体的な歴史の中に生まれた人間の欠陥を是正するような一つのものを出すべきである。また、現在の世界の進んでおる科学技術に耐え得るような科学的知識、考え方というものを持っていなければ、これも風格のある国民は出ない。しかし、それだけではいけないので、やはり少なくとも総理大臣の言う人間尊重の思想といいますか、思想以前の思想、イデオロギー以前の平和主義たる民主主義の思想形成というふうなものを含んで、もっと具体的に日本の教育の進むべき道を、やはり確信を持ってお示しになるべきであると私は思うのです。知育、徳育、体育という教育学の分類を並べられても、政治家としての総理大臣の具体的な表現にはならないのじゃないか。  なぜ私はそういうことを申しますかというと、列国議会同盟の大会に私もスイスに行ったことがありますが、帰りにインドに参りましたけれども、こじきの子供が、自動車がとまるとその周囲に集まってくる。その付近に肥えた牛が遊んでおる。人間が飢え死にしそうな姿の中でも肥えた牛が遊んでおるというあの現実は何を示しているか。数百年のヨーロッパの植民政策の中で、科学する心を植えつけない、それで五百年前の生産性の低い農法の中で、少し飢饉があると食っていけないようになっている。また一方に、にもかかわらず、人間尊重の思想教育をしないために、人権より牛の権利が尊重されておる。無知と貧乏が重なりあって、あの植民政策の中で、教育を否定した搾取政治の中にインドの現実の姿がある。  そういう意味において、日本の政治の中にも、私は、科学教育とそういう意味の近代思想教育というものを含んだ具体的な教育ビジョンを出し、計画を出すべきである。そういう中にこそ、私は、人間性豊かであり、また科学的な高い水準を持っておる国民の中に、風格のある日本国民、したがって国土も生まれると考えておるのでありまして、これは文部大臣ではないけれども、一国の総理大臣としては、少なくとも、国民形成のもっと具体的なビジョンを持つべきである。何となれば、日本の現在の教育というものは、ある意味において、私はそういう教育についてむしろ反する方向にいっておるのではないか。文部大臣は一年ごとに交代をして、日教組対策は考えるけれども、いまのような意味の民主教育について何らの向こうところを示すという努力をしていない。一年ごとに交代をしておる。そういうことをまことに遺憾と思うので申し上げておるのであります。一たび総理大臣がああいうビジョンを出したのであるから、もう少し具体的に、これがあとに検討を加えてお出しになる意思があるのかどうか、それをお聞きしておきたいと思います。
  97. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 山中君からいろいろ御注意とまた御意見を交えてのお尋ねでございます。私は、基本的なわが国の行き方という、そこまでを披露いたしませんでした。戦後の日本とすれば、これは申し上げるまでもなく、自由を守り、平和に徹する、その国是のもとにおいて、ただいまのようなあらゆる面における知識、学問、これを充実さすこともちろんでありますが、同時に、りっぱな精神を持ちまして、そうして何ものにも屈しない強靱なものが必要だ。  そこで、重厚な社会というもの、それはどういうものを考えるか。私は、最近の近代科学あるいは近代理論というもの、これが軽薄だとは申しません。しかし、先ほど私が申し上げた合理主義に徹するということは必ずしも望ましい形ではない、合目的主義、それでも困るのだ、そこらに私の言わんとするところのものをおくみ取りをいただきたいと思うのです。そこで、物心両面の調和のとれたもの、これが一つ必要だということを申したのであります。具体的にこれを見ますと、なかなかむずかしいことで、私どもは、これはりっぱな社会だ、かように考えておりましても、外国から敬愛されない、あるいは尊敬されないようなことじゃ困るのです。だからやはり外国からも尊敬され、また敬愛されるような社会であり、それが日本人らしい日本人の形成した社会、そこらに特殊な風格のある社会ができるのではないか、かように思います。たいへん簡単に説明いたしますから、なかなかお聞きとりにくいかわかりません。  そこで、なお私が御注意申し上げておくのは、風格ある社会というものはこれこれだという、そういう画一的な注釈を加えるつもりもございません。そこに縛っていくつもりもございません。その点誤解のないように願っておきます。
  98. 山中吾郎

    ○山中(吾)委員 お聞きしておいて次に移りたいと思います。  ただ、文部省が出した期待される人間像という、十八世紀の哲学のカビのはえたような、あんな人間像をお出しになっては困るので、特につけ加えておきたいと思います。  なお、総理大臣が総裁に立候補される直前に、文化省設置の構想をお出しになったと新聞に明らかになっておる。そのお考えはいまでもお変わりございませんか。
  99. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は、わが国に誇るべき文化、また今後さらに高めるべき文化、これのあることをよく承知しております。そういう意味の自由を守り、平和に徹した国柄としては、そういう事柄もやはり風格ある社会をつくる上において望ましい問題であると思っております。御承知のように文化局をつくりました。これはいわゆる文化省というものから比べますと、何だ一局をつくっただけで、そんなものは省じゃないじゃないかという御批判はあろうかと思いますが、文化局をつくり、さらに今後とも必要があればその内容を充実していく、かような考え方でございます。私は、いついつまでにいわゆる文化省をつくるとか、かような約束はいたしませんが、私どもの持つ文化、これをやはり国民の誇りとし、同時にまた、国際的にも世界に誇示する——というのは少しことばが過ぎますが、やはり示すべきものだ、かように思っております。
  100. 山中吾郎

    ○山中(吾)委員 おそらく文部省に文化局を置いたのは、総理大臣の助言があったのではないかと推察はしておった。ところが、それをおつくりになると、いよいよ文化省をつくらなければ、矛盾が次にさらに出てくると思う。文化財保護委員会という行政委員会があって、日本の古典文化を保護する一つの行政庁ができておる。そして芸術振興その他のためには文部省に文化局を置いた。これは二途に行政が出ておるわけだ。しかも、文化財保護委員会は責任者がない。あの委員長は、国会が始まっても、政府委員になって答弁する責任を持っていないのです。事務局長という事務屋が来ておる。文部大臣は別に責任があるわけでもない。そうして独占企業によって、奈良、京都、どこに行っても利潤の追求のために、日本の民族の文化があとからあとへ削られつつある。そういうことを考えて、一方に芸術振興行政、過去の文化保存行政、そういうものと同時に、一方に観光行政が別の省にあって、そして営利と結びついて日本の文化の集中しておる地域には温泉旅館その他が出てくる。したがって、そういう文化行政と観光行政は、一つの責任者が、観光と文化財保護というものを調和して、文化財というものを観光の資源とする立場の中でこれをやっていかなければ、総理大臣の意図する日本の民族の前進もできないじゃないか。風格のある社会というビジョンもお出しになったのですから、現在の文化財保護委員会と文部省の文化局、あるいは厚生省の公園行政あるいは運輸省の観光行政を一つにして、やはり一つの独自の構想を一度発表されたのですから、あとへ引かないで、構想を立てられるのが総理大臣の責任ではないか。これは直ちにという問題ではないと思いますが、少なくとも当面、それならば、現在予算その他は要らないのですから、文化財保護委員会の委員長は国務大臣をもって充てるぐらいの法一部改正でもして、もっと責任を明確にすべきではないか。これは総現大臣が文化省構想を堂々と総裁就任前に発表して、総裁それから総理大臣になられたのですから、責任のある一国総理大臣の言明なので、その方向は明確にお出しになるべきだと思います。
  101. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 文化財保護委員長の問題は、ひとつ政府においても研究しましょう。山中君の御提案、これはしごく私どもも検討すべき問題だ、かように思います。同時にまた、ただいまのお話はたいへん示唆に富んだ幾つもの問題を提供しておられます。いわゆる名勝旧跡等特別地域に対する開発か保存か、これは各方面でいろいろ論議も尽くされております。しかし、私は冒頭に申しましたように、また山中君も御指摘のように、風格ある社会をつくる、こういう意味において、風土、景観あるいは歴史、それぞれのものもやはり尊重していかなければならぬ、かように思っております。  ただ、この際に支化省をつくれという、そこに踏み切れという、ことにまた、その中に観光事業まで含めて云々になりますと、これはまだもっと私ども研究しないと結論は出ないものでございます。先ほど申しましたように、ただいま文化局をつくった、その内容を今後は充実してみる。そうしてさらにそれが発展して文化省というようなものにまで発展するかどうか、またそこへ持っていく、こういうことで検討すべきものだ、かように私は思っております。
  102. 山中吾郎

    ○山中(吾)委員 当面、文化財保護委員会の委員長は、いつもあそこへ七十を越えた文部省の大先輩を、もう隠居仕事に、老後を楽しむために持ってくる。これはもう間違いない。何回もそうしておられる。どこにも、国会へも顔を出したことがない。そこぐらいは修正されることがやはり総理大臣の責任であろうと思うので、いまおことばをお聞きして、期待をしておきたいと思います。  次に、こういうことをしていると具体的な話が出ないので、外務大臣の演説について伺いたいのですが、その中に、「アジアの繁栄の達成は、アジアの一員としてのわが国の最も希求してやまないところである」という一つの明確なアジア的立場を出しておられる。それから「貧困、無知、偏見、疾病、ことごとく平和の敵である」、ここに貧困と無知が平和の敵であるという正しい認識をお出しになっておられる。総理大臣は一方に風格のある社会のビジョンを出しておられる。そういうことを結びつけて、やはり日本の政治家が一たん施政演説で言ったものについては、私は、具体的に何かを示すものがあって、作文で終わってはならないという立場から提案をしたいと思うのであります。  外交がいつもアジアに対する経済的援助を強調されておられるが、もっと文化的な援助という一面を考えるべきではないか。貧困なるがゆえに無知であり、無知なるがゆえに貧困で、貧困と無知は別々でない。もう無知なところは貧困なんです。貧困なところは無知なんです。表裏一体である。そういうことを考えてみましたときに、一方にアジア開発会議がユネスコの関係でときどき会議を開かれておるようでありますが、文部大臣が——中村文部大臣のときでありますけれども、東南アジア開発閣僚会議の席上で、教育的援助について大いに積極的な発言をされております。そのときにタイ国代表のほうから、アジア地域に共同教育機関の設置を提案しておる。それについて検討するというふうな約束をしておるようでありますが、私は、アジアの諸国が、イデオロギーを越えて、一つの共同教育機関の中でいろいろの研さんをするということは非常に望ましいことであると思います。そういう意味において、アジア大学というのですか、アジア国際大学というか、ユネスコ大学というのか、日本が率先してそういうものを建設するくらいの熱意をお示しになることが必要ではないか。経済援助は必ず搾取になる。ああいう地域は輸出するものがあっても輸入するものがない。どこへ行っても、アフリカへ行っても、私は行ったときにも言われた。先輩として日本に敬意を表しておるけれども、輸出ばかりされて、われわれのほうから買ってくれないと言う。しかし買う物がないのです、その地域が発達しない限りは。したがって、私は、教育的援助というものがほんとうの親切な外交であると思うのであります。  そのときに、私は、日本社会党の文教政策の一項の中にも、民族を越えた世界共通語というものをやはり提案をすべきであるという考えを持っておりましたが、幸いに、国際用語であるエスペラント語があるんだから、エスペラント語というものを用いる、もう各民族の区分を越えて、美しい国語をみな持って——同時にアジアはなかなか統一しないが、ユネスコの主張しておるところのエスペラント語をその学校の用語として、それでアジアの各国の青年諸君が研さんをするというふうな、そういう国際大学をつくるような構想があって、初めてあなたの演説というものは具体化するのだ、こういうふうに私は見て取ったわけです。これは突然でありますけれども、こういう演説を通じて、やはり何か政治家として具体的ビジョンを出すとすれば、こういうものでも、やらなければ無責任で、日本の政治家は事務官に原稿を書かして、大臣が演説しているだけだというのが常識になっておるわけでありますから、その常識を打破してもらいたい意味において、一つの提案をしてみたいと思うのですが。この点、外務大臣の御意見をお聞きしておきたいと思います。
  103. 三木武夫

    ○三木国務大臣 山中君の、教育こそが根本であるということは全く私も同感でございます。低開発国が将来発展していくためには、教育の普及というものが基礎になる。日本の国の繁栄もやはり教育が原動力になったことは事実であります。そういう意味において日本も、従来から、経済援助ばかりでなしに、教育の面においてもすでに各地から五百名近くの者を毎年受け入れておるし、日本からも教育の専門家が東南アジアに参っておるわけでございます。  ただ、経済協力が搾取になるという、そういうふうに私は考えないのです。いま農業開発などが盛んに重要な問題として取り上げられておる。このことなどは非常に大事であります。そういう点で経済協力も大事でありますけれども、その基礎になるものがアジアの教育の普及である。こういう点で、いまエスペラント語によるアジア大学をつくったらどうかというお話であります。アジアの総合大学というものは非常に興味のある御提案だと思います。そういう総合大学がアジアにできるということは、アジアの教育の普及にも、あるいは文化の発展にも寄与する、これは一つの御提案である。研究をいたします。   〔赤澤委員長代理退席、委員長着席〕 けれども、エスペラント語というのは、やはりことばというものは相当歴史があり、伝統があり、私も一時エスペラント語のようなものが世界的に普及すれば非常に便利だと思っていろいろと考えた時代もあるのですけれども、なかなかそうはいかない。だからエスペラント語による大学ということはなかなか実際問題として困難がありますけれども、アジアに総合的な大学というものをつくるということを検討したらどうかという点は、十分にこれは検討に値する課題であると私も考えるということをお答えをいたす次第でございます。
  104. 山中吾郎

    ○山中(吾)委員 私がエスペラント話と言ったのは、アジア大学をつくって、いかなる国語で学問するかということになると、日本語というものを使えばこれは日本のエゴイズムになる。世界の歴史を見ますと、一つの強大なる民族というのは必ず自分の母国語というのを他民族に強制するというのが歴史の通則なんです。たとえば、オランダがヨーロッパの植民地政策で一番繁栄したときには、オランダ語というものが南アジアに強制され、日本の江戸時代もオランダ語というものだけが通用した。あるいはナポレオン時代においてはフランス語がある。あるいは現在アメリカが世界に一番強力な姿勢を示しているときは、アメリカ語が世界用語として生きておる。英国が植民地政策をしたゆえに英語が通用しておる。アフリカへ行っても南アジアへ行っても、国民は英語しか知らないというかっこうになってしまった。したがって、ほんとうの意味の平和、総理大臣の平和に徹するという信念が政治的ビジョンに出るならば、エスペラント語はすでに一つの歴史を持ち、世界的に一つの組織を持っているものだから、それを各民族を越えた共通語として使うアジア大学というのを持てば、ほんとうの意味の、民族のことばの壁を越えた、アジアは一つであるという一つのものが生まれてき、日本が、いわゆる昔の専制的な指導者というものを越えたものができるじゃないかと思うので申し上げたわけです。ことにまた、エスペラント語を教育的に見ても、これを先にやれば、英語を最初に習ったのより、さらに英語が上達するという教育的な体験があるのでありますから、外務大臣の演説を聞いたので、それを提案したわけであります。外務大臣のいまのことばも、また将来期待しておきたいと思います。  さらに、経済企画庁長官が、時間で帰られるそうでありますから……。あなたの演説の中に、経済社会開発計画の問題が出されておった。しかし長期経済開発計画には、必ず教育計画が伴わないと、実際に実のある、現実性のあるものにならぬと私は思うのですが、どうもその辺が明確でない。簡単に経済計画と教育計画の関係についてのあなたの所信をお聞きしておきたいと思うのです。
  105. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 私は、教育投資であるとか、あるいは人的資源といったようなものの考え方はできるだけ避けるべきものだ、教育はそれ自身完結したものだというふうに考えるわけでございます。しかし教育がすべてのもののもとであるという意味では、やはり経済発展のもとでもあるわけでございます。  そこで、この長期計画では一章をかなりさきまして、進路指導でありますとか、後期中等教育でありますとか、育英奨学制度でありますとか、かなり詳しく述べております。これはやはり長期の経済社会建設のためには、高い教育が必要であるということの認識に基づいておるわけでございます。山中委員の言われましたように、したがって、そういう長期のプログラムが入り用ではないかという、そういう認識に立って全体が書かれていると思いますが、文部省でも中教審のほかに長期教育のプログラムを研究されるような意図を持っておられるように承知をいたしております。
  106. 山中吾郎

    ○山中(吾)委員 教育投資論に批判があるというのは私も同じ思想であって、人間は手段であってはならない、目的でなければならぬので、投資ということばは避けるべきである。ただし教育は、究極の意味における生産事業であるという意味において、経済発展の推進力であることは明らかなのであります。あなたはいま配慮しておるとおっしゃいましたけれども、五カ年計画を長期開発計画といっておるが、五カ年などで教育ができるはずがない。生まれたときから教育は始まって、一つの生産人として活躍するのにはまず二十年、——二十年計画でなければ教育計画はほんとうは長期に入らない。それはそれとして、少なくとも高等学校あるいは中学時代の十四、五歳から一つの生産人として、新しい科学的技術者として養成されて出ていくのには、十年は考えなければならぬだろう。だから五カ年の長期計画を出されておる思想そのものには、すでに教育計画という観念は非常に薄いのであります。あるいはさっと書いただけだ。書いてあるんだが、五カ年くらいではどうにもならぬ。それで私は申し上げたのです。もしそういう長期計画と名前をお出しになるなら、五年を長期なんて、これは短期じゃないですか。長期計画であって初めてそれが教育計画としての具体的な案が出るのであって、最初の思想については賛成でありますけれども、あとのほうは思いつきでおしゃべりになったんじゃないかと思うので、もしお出しになるときは、長期計画のできる程度の期間を持った計画をお出し願いたい、要望いたしておきます。  次に、教育費の父母負担のことについてお聞きいたしたいと思います。大蔵大臣の施政演説の中にも、父母負担の軽減については力を注いだと、自信のある施政演説が出ておるようであります。一部、教材整備計画その他においてその努力がされておるということは私もわかるのでございますけれども一つ遺憾なことには、昨年から間接的に総理大臣も文部大臣も言っておったが、家計から支出される教育費については税を免ずるという方向の検討がされておったはずである。ところが、教育費は免税にするといういままでの検討というものがどこにもあらわれていない。私学調査会の中間報告の中にもそういう方向の報告があるわけでありますが、これは除かれておるので、私はまことに遺憾である。大蔵大臣にその辺のいきさつとお考えをお聞きしておきたいと思います。
  107. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 臨時私学調査会の中間答申も拝見いたしましたが、この一番最後についておる「修学費の父兄負担の軽減のための措置」というのは、必ずしも、減税措置だけを言っているのじゃないというふうに私どもは思っております。税制でこの教育費控除をする措置をとるということは、いろいろむずかしい問題があろうと思います。たとえば新規の学校卒業者が、就職したらもうすぐに自分で働いて税の負担をしているというときに、一方修学子弟を持っている父兄にのみ恩典を及ぼす制度がいいかどうかといういろんな問題がございますし、また同時に、扶養控除のうちの特定人を特定に優遇するということになりますと、いま扶養控除全体をもう少し引き上げろという一般の要望もある、これらの要望との権衡というような問題がございますので、私は、税でこの教育費の免税をするという方向はやはりむずかしい。結局、父兄負担を軽くするためには、ほかの行政措置によってこの負担の軽減を心がける。たとえば七十何%の学生が私学であるというのでしたら、私学に子弟を通わせるための負担軽減というようなものの措置とか、そういう方向からの父兄負担を考えるのがいいのじゃないかというのが私の考えでございます。
  108. 山中吾郎

    ○山中(吾)委員 それは便宜的なお考えであると思うのです。たとえば、企業の交際費を免税対象にされておられて、飲み食いの、それをなお残しておって、そして生計費を切り詰めて、食費まで切り詰めて子供の教育費を出しておる、それを免税の対象にするのはいかがかと思うというお考えが、私はあまりバランスがとれない、アンバランスであると思うのです。それはたとえば義務教育なら義務教育だけを見ましても、これは文部省の統計ですから間違いないのでありますが、父兄支出の学校教育費——学校教育費ですから小学校、中学校、これは憲法の義務教育無償という精神が透徹した場合にはすべて国が支出をすべきはずのものであるが、いまは不十分であって、父兄に転嫁をされた教育費ということですね。小学校が年間一万三千七十円、中学校が一万六千七百八十八円、全日制高等学校が四万五百四十円、定時制高等学校が二万四千三百四十五円、これは明確に出ておるわけです。これは税の対象から省くことは簡単にできるじゃないですか。しかも、せめて義務教育だけ、小学校、中学校だけにしても、明確に年間三万という数字が出ておる。現在子供がなくても、生まれた子供はいつかは小学生になり、いつかは中学生になり、これを必ず通過するのです。国民からいったら平等になるでしょう。しかも、現在の在学生徒数からいきますと、国民の四人に一人ずつ在学生がおる統計が出ておる。それは大体四人家族一世帯というのが平均でありますから、一世帯に一人は現実におる。そういうことを考えてみますと、交際費を免税対象にしておいて、教育費を税行政のほうから、どうもうまくいかぬといって排除をされる思想がわからない。いかがですか。
  109. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 ですから、税制でこれを考えようとするのでしたら、一般の国民はみんな子弟を持ち、教育費の負担を持っておるのでありますから、所得税の減税、扶養手当の引き上げというような、全般の措置をとることが適切であって、特別に修業子弟を持つ父兄だけに恩典を与える、税でこのことをやろうとすることは、私はなかなかむずかしいのじゃないかという気がいたします。
  110. 山中吾郎

    ○山中(吾)委員 私の言っているのは特別措置法ですよ。だから、特別措置法の対象にすべきだと言っている。一般の税対象であるはずのものを特別に排除するという意味の法律問題ですからね。大蔵大臣の御答弁は、私にはどうもわからない。交際費というものを一体税からはずすなんというばかなことはないじゃないですか。特別措置法じゃないですか。だから、これは公費として負担すべきはずのものの数字をいま言ったのですよ。家庭の中で、子供に家庭教師を持たすとかなんとかいう関係からの家庭教育費というのは別にあるのですよ。小学校は、年間統計を見ると一万三百九十二円、中学は六千八百十円、高等学校は五千四百九円、これが平均です。これは家庭の中での補習、学習塾に行かすものがあるとか、あるいはピアノを習わすとか、こういうものは別でしょう。しかし公費として負担すべきはずのもので、なお父兄に転嫁をしておるものをいま申し上げた。それぐらいはできるのじゃないですか。
  111. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 国立の学校の授業料が非常に安いということで、私どもは私学との均衡から見てこれを若干引き上げようとしたことがございますが、このときに、この授業料を引き上ぐべきじゃないという非常な反対があって、これはいまだに実現をせずにおります。そのときに私どもにはたくさん国民から投書がきまして、自分たちは子弟を、もうすぐに卒業させて就職させて働かせている、にもかかわらず、自分の子弟を官立の学校へ入れて教育できる父兄はむしろしあわせじゃないか、それに対して、なぜ、なおかつ特別の恩恵をしなければならぬか、それが自分たちに感情的にわからないというような、非常に反撃を受けたことが私どもはございましたが、この件もやはり同じようで、父兄の負担を軽くするには別個の方法、行政措置が私はあろうと思います。これを税で特別の恩典を与える、特別措置をするということは、私はやはりそういういろいろな国民感情から見ても必ずしも適切なものじゃないというふうに考えております。
  112. 山中吾郎

    ○山中(吾)委員 私は大学生の学資にはまだ少しも触れていないのです。義務教育のものに触れただけです。いまあなたは、私学関係のことで責められたことを言っておられるが、その御答弁は少しピントがはずれておる。  もう少し角度を変えて申しますと、大蔵省からこの間、所得税の課税最低限の計算の基礎として標準生活費ですか、これをお出しになって、新聞に出ておりますが、一日二百五円という食費を前提として、そうして課税最低限と基準生計費の比較を出しておられる。二十五日の新聞に発表になっております。これを見ますと、たとえば標準世帯である五人、これについては四十二年分課税最低限は年間七十一万一千八百九十九円になる。基準生活費は、食費を一日二百五円と計算をして、大蔵省の発表では六十三万七千七百七十八円になる。したがって課税最低限と基準生計費の差は年間七万四千百二十一円あるので、これだけの余裕がある。したがって、今度政府が七十一万円を課税最低限にしたのは、まだ年間七万四千百二十一円の余裕を残しておるのだから妥当であるという証明をしておるわけです。ところが、大体五人世帯というものは、三人子供だということですね。三人子供がある。まず普通考えて、大学を出て奥さんをもらっていけるのは三十歳。三十歳で結婚をする、三十二歳で長男が生まれ、三十五歳で次男が生まれ、まず三十八歳で長女が生まれ、五十歳になりますと長男はもう大学ですよ。そして次男は高等学校、長女は中学校の一年くらいでしょう。そうして、おそらくこれはサラリーマン生活の基準です。サラリーマンは、大体五十歳になると月給六万五、六千円くらいになるのだと思います。学校を出て二十五年、年間二千円ずつ昇給をしても大体五、六万になる。しかし東京の大学に通わせれば、月二万は要るでしょう。そうして、先ほど言った高等学校と中学校の、公費で負担すべきものを家計で出しておれば、これは年間五万くらいになる。大学に月二万くらいの学資を出しておるといいますと、年間少なくとも二十五、六万は家計から教育に支出をせざるを得ないのである。したがって、エンゲル係数は低下をされて、栄養を下げて、食費を少なくして、そうして学資を出しておる、大体四〇%くらいは。五十歳くらいになって三人子供がある標準世帯においては、教育費のために最も圧迫をされるのが現実のサラリーマンの家庭だと思うのです。したがって、こういう大蔵省の数字を出されていっても、だから受け取る者は本気にしない。婦人団体の会長その他は、それに対して酷評をしておるでしょう。つまり実感を持った者からいえば、こういうことでだますことはできないようになっておる。家計において圧迫をするのは、いつも税金問題がここで論議になりますけれども、一番圧迫するものは私は家庭における教育費だと思う。貯金の目的は何だということをアンケートをとっても、病気という次に教育のためと書いてあるもの、あるいは教育のためというのを第一に書いているのが大部分である。そういうことを考えたときに、現在において一番政治的にあたたかみのある政策をとるならば、企業の交際費を年間六千六百億も免税にするようなことをする政治ならば、教育費を免税対象にして特別措置法の中に入れるというのは、最小限の私は血の通った政治だと思うのです。大蔵大臣のその思想は、特に教育というものを課税対象にすることについては大蔵省の事務官僚のほうから意見があって、それを説明するためにわざわざ理屈をつけてお答えになっているんではないですか、いかがです。
  113. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 そうではございません。私は、個人としてはもともとこういう考えを持っておりました。義務教育費は国の責任である、同時にやはり世の父兄の義務である、したがって、教育費についての父兄負担というものが始終問題になっておりましたが、この父兄負担は絶対にいけないものだ、解消すべきものだという方向で私どもは論議してきました。けれども、考えようによってはそうじゃなくて、むしろ父兄が余力を持って義務教育費の充実に協力することがいいんじゃないか、父兄側がこの負担をするというようなことも、これは悪いことじゃない、もしそういうことが行なわれた場合には、父兄負担は全部税でこれを見て恩典を与えることがいいのじゃないかということを個人的にはいままで考えて、いろいろ研究したことがございます。これはまだ私どもや党のほうでこの問題を真剣にやっておりませんので、これからの検討問題だと思いますが、しかし、さっき申しましたように、もう国民一つの共同の義務ということになりましたら、私は教育の問題だけを特定しないで、政治の施策としては国民全体の減税を強化して、生活余力を与えるという方向へいくのが本筋の施策であるというふうな気がいたします。
  114. 山中吾郎

    ○山中(吾)委員 特別措置法の減税、免税というのは、これは政策減税ですよ。政策ですよ。そういう税法の原則や何かを越えて、政策的に減税するんだ。一体企業の交際費は免税にして、もっと飲み食いに使いなさいという、そういうふうに奨励になるとすればとるべきであるが、大体、子供はせめて高等学校、せめて大学まで出したいという父母の教育に対する熱情というものは、民族の発展のためにこれこそ奨励すべきエネルギーでしょう。むだ使いをしないで、別荘をつくったりあるいはその他の不健全なレクリエーションに金を使うのを節約して、子供の教育のために支出をするというのは、それこそ奨励すべきものじゃないか。そういう奨励すべきものを、いわゆる特別措置法の減税の対象にすべきじゃないのか。しかもそれは時限法、だから大蔵大臣が言ったように、義務教育費無償の原則が完成したときには、そこからはずしたらいいじゃないですか。そのためにやるのが、それこそいわゆる特別措置法の本筋じゃないのですか。だから、何かこだわりになっておるので、検討されたらどうですか。これは一番大きい問題だから、まじめに大蔵大臣も考え直してもらう必要があると思うのです。ここに教育費と家計の実際を東京友の会で調べた家計の一例があります。これを見ますと、月の収入が夫が五万九千四百五十円、奥さんの内職を若干入れて六万一千四百五十円、そのうち、食費が七千五十三円で、全体の家計の一三・九%、教育費が二万九千三百五十五円、生計費の全部の五七・七%である。半分は教育費に使っておる。これはほとんどあらゆる節約をしておると思うのです。これは小学校の先生です。御主人は五十五歳、町の小学校長、千葉県佐原市と書いてある。妻は五十三歳、うちで野菜の自給をしておる。長男は大学の四年生、次女が大学の三年生、三女が大学の二年生、これは寮に入ったり、ずいぶん苦心をしておるのだろうと思うのです。教育家というものは、せめて子供は大学までというのが最低の親の願いなんです。これを見ると、生計費の五七・七%は教育費になってしまっておる。五十五、六歳というときには、一番家計から教育費が支出されるときである。そのときが標準世帯の減税対象になる問題ではないんですか。そういうときに、教育費というものは客観的にとらえられるのですからね、それに減税を考慮されるのは当然じゃないですか。佐藤総理大臣の御意見を聞きたい。
  115. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 先ほどから私も静かに聞いておりましたが、この問題は検討さすことにいたします。
  116. 山中吾郎

    ○山中(吾)委員 総理大臣が、高い政治的感覚で検討すると言われましたので、おそらく日本の五十前後の、中間の給与をもらっておる賃金労働者あるいはサラリーマンは非常に喜んでおるだろうと思います。ぜひ実現をしてもらいたい。失望させないようにしてもらいたい。  次に、父母負担の問題の一つとして僻地教育の補助率の問題ですが、これは大蔵大臣です。どうも補助率、文部省の補助主義というのは画一主義で非常に困る。かつて、昨年、一昨年でしたか、僻地の学校給食においては、岩手の藪川という小学校の悲惨な状況で、佐藤総理大臣が全額負担をする方向で検討すると言明をされて、全額まではいかないが、三分の二以上のいわゆる特別補助の制度が実現をした。まことに実態に即した私は処置だと思う。ところが、その他の建築費補助にしても、あらゆるものが僻地も二分の一である。全国知事会議、市町村長会議その他もう数年にわたって、僻地は三分の二にしてほしいという要望が毎回出ておるのである。これは僻地の学校のあるところは、いわゆる財政的に非常に貧弱な市町村であることはもう明確なんです。そして学校給食において三分の二補助という思想が制度的に実現をした今日においては、その他の教育施設、設備についても三分の二にするという思想は当然あるべきだと思うのだが、今度の予算にはそれが出ていない。これは当然そうすべきだと思うのですが、大蔵大臣、御所見を承りたいと思うのです。
  117. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 僻地の問題につきましては、御承知のように、僻地児童生徒のパン、ミルクの給食費は特殊性によって一〇〇%全額を補助する、それから要保護児童生徒の給食費は二分の一から五分の四までの間でこれを補助するということをやっております。これは金額はわりあいに大きいものでございますが、そのほかのものは、わりあいに金額的に見ても少ない、市町村がこれをあとはまかなえるというふうに私どもは思って、そのほかは全部二分の一の補助率にいたしております。まあ、市町村の財政力にいろいろ違いがございますので、一律にそれをやらなくてもいいのじゃないか。一律にどうしても見てやる必要のあるのは、いま言った給食費を中心にするものじゃないかというので、この補助を厚くして、そのほかは僻地の事情もございますが、いろいろ他の補助事業との関連、均衡というような問題がありまして、私どもはやはりこれは当分二分の一にしておきたいというので、この三分の二の踏み切りは今度はいたしませんでした。
  118. 山中吾郎

    ○山中(吾)委員 農林関係の補助その他を考えると、文教関係の補助は、その額が微々たるものです。実際は、せっかくああいう補助政策ができても、二分の一のために市町村ではそれを恵んで実施をしていないのです。  たとえば教員住宅についても、これは岩手の僻地のある先生の手記ですが、住宅問題でもこういうなまな実感を述べております。これは総理大臣及び大蔵大臣にひとつ聞いておいてもらわなければいかぬ。「当地は標高八百メートルもあり、冬季間の気温は札幌よりも低く、積雪量もかなりあります。ところが、現在の教員住宅の構造は、それらの環境条件を考慮していません。むしろ暖地向けのバラック建築です。一度吹雪にでもなると、どこからともなく吹き込んでくる粉雪が畳の上に真白に積もります。冬中通して天井や壁に氷片がついて、キラキラ光っています。よそに旅行していつも思うことは、どんないなかの巡査駐在所の住宅を見ても、電力会社の工夫さんの散宿所を見ても、あるいは営林署の林道工夫さんの宿舎を見ても、私達の教員住宅よりはずっとりっぱな建物です。ある人が、学校の先生達はみな江戸時代の傘張り浪人の長屋のような住宅に入っていると言いました。何の因果で教員だけがこんな低い住生活に甘んじなければならないのでしょう。それでも、私のように入る住宅にありついた者はいいとして、入りたくても住宅がない者はどうしたらいいのでしょう。昨年春、新しく赴任して来た先生の住宅がなくて困ったとき、その対策に種々頭を悩ました結果、民家に押しかけ下宿をするよりほかに方法がないという結論に達し、ある家に押しかけて行き、床の上に二時間も膝をついて頭を下げた揚句、やっと一部屋を解放してもらったことがありました。」これは補助金が二分の一だからですよ。町村長も、建てたいけれども建てられない。建ててみても一番粗末な建て方をするので 僻地の冬の暖房というものはきかないのです。そこで先生の精神的な一つの不平不満というものが、現実に政治に対しても激しい戦いの姿になっている。こういうことをおやりになることが血の通った政治であろうと思うのであります。これはもう少し実態を知っていただかないと、そういう一般論だけで、その補助金に対して画一主義をいつまでも固持されておられては、私は先生がかわいそうだと思う。  これも岩手の川井村という、普通の中級ぐらいの僻地の中学校の校長さんの手記なんです。校長さんの手記ですが、これも五カ年校長をしておるときに、施設、設備というものはほとんど頭を下げて、PTAの補助金をもらうために五年苦労をしておるような手記である。まず設備の充実については暗幕設備、「映画、幻燈、等による学習は、教室の窓をベニヤ板で遮へいして使用していたが、生徒数が増加してきたので、講堂に暗幕設備が必要になってきた。この問題をPTA役員会に提案することにより、昭和三十七年度PTA会費月額四十円とし、その外に、学区民寄付金三万五千円が見込まれ、五月末、設備が完了した。」こういうふうにして、地財法にどういう規定があろうが、結局PTAから金をとらざるを得ない。  次に校庭拡張。この「中学校の校庭拡張は、多年の懸案であった。結果的に、三校合同運動会がこれを促進したとも考えられる。」校長は合同運動会をやって、そうして父兄をうまく誘導していって「多年の懸案でありましたが、村当局のご努力と、地主」云々と名前が書いてある。「地主のご協力により、いよいよ具体化し、去る七月一日から四日間でブルドーザーによる作業が完了いたしました。PTA運営委員会で協議しましたところ、工事費予算関係もあり、中学校学区全戸一人宛のご奉仕により、これを完成させようということになりましたので、何卒、ご協力の程、お願い申し上げます。」こういう手紙を出して、そして完成したということを言っておる。  これも、今度は労働の奉仕である。校門建設。これは、校門などは文部省の補助対象にはない。ところが僻地の子供には、校門をつくって、そこから入るようにしていなければプライド、誇りを持たない。「校庭拡張、井戸の新設に引続き、校門建設を行った。設計は、私自身が設計し、生徒を指導して行い、荒工事及び仕上げは、専門家に頼んだ。材料の購入なども含むので、これも請負工事のような形となった。工費約四万五千円、極めて立派にでき上ることになりますので、生徒職員一同、よろこんでいます。教育環境が次々に整備され、生徒の幸福をしみじみ思うと共に、教育効果においても、先進地との格差を速かに解消したいと念じています。」校門、校庭はこういうことである。こういうふうな、自転車、バックネット、これは寄付、簡易水道設備も寄付、寄宿舎建築も、これは文部省でちょっぴりお金をもらって建てて、そこに遠距離の子供を収容して、苦労をしたという五カ年の記事を書いている。これは手記ですよ。それでも都市と同じように二分の一補助で通しますか。大蔵大臣、三分の三にしてあげていいじゃないですか。
  119. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 さっき申しましたように、僻地といえども市町村の力に違いがあるから、一律にしなくてもいいんじゃないかと申しました。といいますことは、僻地については特別交付税、普通交付税で、特に手厚くこれは交付税で見るということになっておりますので、大体補助率はその程度でも、実際においてはある程度いいのじゃないかというふうに思っております。
  120. 山中吾郎

    ○山中(吾)委員 二分の一補助でも三分の一でも、あとは交付税というのは理屈なので、そんな交付税はどこかにすっ飛んでしまいますよ。だから、特に学校の設備を充実するという意味において補助で処置をしなければ、実質はPTAの寄付になり、そして先生がPTAのボスに頭が上がらなくなる。そしてあらゆるエネルギー、努力は、子供に対する教育そのものよりも、設備の拡充に力を入れる。一方に佐藤総理大臣の話で、給食は三分の二という、僻地には三分の二を支給すべきであるという思想が出ているじゃないですか。同じですよ。額が多いから少ないからじゃない、三分の二を検討さるべきだと思いますが、総理大臣いかがでございますか。
  121. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いま大蔵大臣が申しておりますように、交付税で見る、さらにまた特別交付税、これを支給を始めたばかりでございます。その結果をひとつしばらく見ていただいて、そうして一体どんな実施状況になるか、これは大蔵省も十分今後のあり方を検討してまいる、こういうことにしたいと思います。いまちょうど制度を始めたばかりのようでございますから、いましばらく御検討願います。
  122. 山中吾郎

    ○山中(吾)委員 文部大臣に質問をすると、時間がどうも困るので、文教委員会でまたなんですが、その辺は文部大臣自身が熱がないとどうにもならないので、ひとつ僻地の実態に即した今後の努力をお願いしておきたいと思います。  同じ文教施設でございますが、これも政治のあり方いかんによってPTAに負担をかける問題です。一般の学校建築に対しては、中学校においては二分の一を補助しておるか、小学校には依然として三分の一補助、差別待遇をしておる。どうも私は理屈がわからない。義務教育費国庫負担法の、大体二分の一という思想は確立しておるのだが、施設について中学が二分の一、小学校は三分の一、これは何か理屈があるのですか、大蔵大臣。
  123. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 私の聞いておるのは、六・三制の完成を急いだために、特にあのとき中学にだけ三分の一ではなくて二分の一の補助をきめたというふうに聞いております。当時六・三制の完成を急ぐために、中学の校舎の建設にだけ補助を高くしたというふうに聞いております。
  124. 剱木亨弘

    ○剱木国務大臣 中学校のほうは御承知のように二分の一でございますが、小学校が三分の一になっておりまして、大部省としましては、やはり二分の一程度にぜひお願いしたいと存じますが、本年は、この超過負担の解消という意味もありまして、単価を増加いたしますのと、特に非常な要望がございまして事業量を相当増加してまいりました。また、構造比率の増加もいたしまして、これに相当の予算を計上いたしまして、この補助率の問題は、今後私どもとしましては努力目標としてまいりたい。本年は三分の一にとどめたわけでございます。
  125. 山中吾郎

    ○山中(吾)委員 文部大臣はずいぶん大蔵大臣に遠慮をされて——二分の一要求されておったんじゃないですか。あと査定をされて、自分から最初から三分の一を要求したような、そんな消極的なことで——これはやはり父母負担の問題ですよ。国民の立場でもう少し信念をお出しになるべきだと思うのです。  大蔵大臣——その前に、佐藤総理大臣にお聞きしたいのですが、衆議院、参議院で附帯決議を何回もしておる事項については、総理大臣はそれを尊重されるのかされないのか。
  126. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 附帯決議はもちろん尊重いたします。これがなかなか実現できないのは、いろいろ国にも事情がございますから、どうか御了承いただきます。
  127. 山中吾郎

    ○山中(吾)委員 義務教育の小学校の三分の一補助を二分の一にするという附帯決議は、これは毎回、これほど附帯決議が重なっておるものはないのです。第二十六回国会における衆議院本会議においても「義務教育が国と地方公共団体との共同責任にかかる重要事項たる点と、地方財政の実情とに鑑み、公立義務教育諸学校の施設、設備についても、政府は、すみやかに、義務教育費国庫負担法の精神に則り、これに必要な経費の二分の一を国が負担するために必要な措置を講ずべきである。」小学校、中学校、同じ義務教育ですから差別する理由はないのです。参議院本会議も同じ。次に、第四十六回国会においても同じ附帯決議、「公立義務教育諸学校の施設の整備に必要な経費は、小学校、中学校の別なく、その二分の一を国が負担するよう関係法を整理し、もって義務教育費国庫負担法の趣旨にそうこと。」さらに第五十一回国会衆議院文教委員会附帯決議、これも同じ文章、参議院文教委員会同じ、毎回ですよ。それを、これだけは弊履のごとく顧みない。しかも、理屈からいえば、小学校、中学校、片方は二分の一、片方は三分の一という理屈はどこにもない。しかも、義務教育費国庫負担法によって二分の一という原則がもう常識化しているんじゃないですか。それをどうして三分の一にいままでして、これだけ毎回附帯決議をつけても、それが一つもあらわれてこない。私はこれぐらいなことは当然やるべきだと思うのですが、まあ佐藤総理大臣は、附帯決議は尊重します、しかし事によっては、——その事による理屈は、これだけは排除できないはずです、どういう常識からいっても。大蔵大臣の御意見をお聞きしておきます。
  128. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 附帯決議は尊重いたします。しかし、本年度の各省の予算要求を見ますと、ことごとくの、いままでの補助についての補助率の引き上げというのが、全省の要求事項となってきております。そこで、結局私どもがぶつかりましたことは、個々に補助率の引き上げというようなことを簡単に全部をやるか、それとも、やはり中央・地方の事務配分、財政配分をどうするかというようなものをもう少し突っ込んで検討しないと、行政全部にわたる補助率というものはなかなか簡単に動わせない。みな権衡問題を持っておりますので、いまおっしゃられる問題は、一番理屈のつく補助率のあれだと私は思うのですが、それに関連してそういう問題がたくさん出ましたので、私どもは、この補助率の引き上げということについては、権衡をとって考えるということと、それから、補助金と交付税とそれから地方固有の税でもってまかなっておる地方財政におけるこの補助金のウエートをどういうふうにするかという、やはり根本問題に本年度は私どもはぶつかっているというようなぐあいで、できるだけ補助金の必要と思われるものはやりましたが、まあこの問題の権衡はもう一期延ばそうという形で、大体においてこれにさわらなかったという事情でございます。
  129. 山中吾郎

    ○山中(吾)委員 もう一期延ばすということは、次はだいじょうぶだということと受け取っておいていいでしょうね。この義務教育費国庫負担法の二分の一という原則は、それはもう法的な一つの義務支出的にお考えになってしかるべきものであり、ほかの補助金と違って、この六・三制の建築については、村長さんが自殺をしたり、これをつくるために一番苦労しておるのは村長さんですよ。ほかの農林関係予算が削られたりどうだで自殺をしたり神経痛になる人は一人もない。まあ大蔵大臣が次ということをおっしゃったので、そういうふうに受け取っておきたい。よろしいですね。いま一度お聞きいたします。これは、ほかのものと違って一番筋の通ったことなんです。いま一度大蔵大臣、明確に……。
  130. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 これは、いま申しましたように、十分検討いたしますということでございます。
  131. 山中吾郎

    ○山中(吾)委員 同じ父母負担の問題で、私学問題に少し触れたいと思うのですが、査定がゼロになったあと、大蔵大臣が努力されたので、中間報告の趣旨に沿って三分の二くらいは予算にあらわれてきたということについては、私も率直に認めたいと思うのですが、現在の私学関係からいいますと焼け石に水というのが実感であろうと思うのであります。私は、この関係については、ものの考え方をお互いに統一する必要がある。現在の日本の私学の位置というものを率直に認めなければならぬのじゃないか。国立、公立の学校と比較して、私学がどういう役割りを果たしておるかということは、まじめに私は政治は考えなければならぬと思うのであります。たとえば、私立学校の在学者の数を見てみますと、幼稚園は全体の幼稚園の児童数に対して七三・五%である。小中学校は、これは義務教育ですから別にして、高等学校も、高等学校でさえ三二・八%が私立学校の在学生である。大学は七〇・五%である。短大に至ると八五・三%が私立の学生である。各種学校は九八・二%である。このことは何を示しているか。国は、大部分は民間の努力にまかして、ほんとうの公教育についてはちょっぴりしかしていないという事実を示している。その民間の教育を含んで日本世界の教育水準を抜きん出るという、外に対しては、世界の教育国というふうなプライドを示しておるのであるけれども、現実は、これを見ますと、私学に対して、いやおうなしに日本の教育における重要な位置というものを私は認めなければならないと思う。こういうことを考えてみたときに、国家予算の中で、教育費というものは、今度の予算においても一四%くらいの位置を占めている。それから、国民総所得に対して日本の教育費は五%をこえて、アメリカその他世界各国国民所得から教育支出の比率を見ると、先進国であることは間違いない。ところが、今度は一人当たりの教育費を見ますと、日本はアメリカの五分の一である。ドイツの三分の一くらい。それはなぜかというと、私立学校にゆだねておるからである。私立学校にゆだねておるものであるから、したがって、一人当たりの教育費が非常に低い。しかし、実際は出しているんですね。そういうことを考えてみますと、国は私学に対してもっと敬意を表して、そうして思い切った措置をとる責任があるのではないか、こう思うのです。この考え方がない限りにおいては、私は、現在の私学は企業化しておるから、それで補助は出さないとか、そういう間違った考えになってくるのではないか。あくまでも父母負担の立場と、その在学生の勉学ができる施設、設備を充実するという立場の中で、この問題を解決すべきであると思うのですが、この点についてはもう少し深刻にお考え願いたい。ことに私立大学の場合については、国民から言えば、国民の税金でまかなっておる国立大学に自分の子供を入れないで、国立大学の三倍の学費の要るところに入学をさしておる父兄からは、二重課税といって訴えておるでしょう。しかも、国立大学の在学生の父兄の家計というものは、戦前と違ってほとんど中産階級である。むしろ家庭教師その他を頼める金持ちの家庭のほうが国立に入っている。貧乏人が私学に入っている。こういう状況を見ると、私は、もう少し真剣に考えるべきであると思う。私学に対しても経常費を真剣に考えて、いろいろのことを検討し、方法を検討して、経常費まで考えるという線までいくのが、日本の私学の位置と父母負担の不公平とを考えれば、検討すべきものであると思うのです。総理大臣のその点についての御見解をお聞きしておきたいと思います。
  132. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 おっしゃるとおり、私は私学はもっと振興さるべきものであると思っております。政府がいままでやっておりますことは、私学の特殊な設備についての補助を出すことと、私学振興会を通じて融資をするということでございますが、この経常費につきましては、昔からいろいろ問題があることは御承知のとおりと思います。国が私学の経常費に対して補助するということをいたしますと、当然何らかの規制を受けるということになろうと思いますが、これが昔から問題でございまして、私学は、国からそういう経常費を援助されない、したがって規制は受けないという立場で、明治以来今日まできたこの風潮がまだ残っておりまして、したがって、国もそう範単に私学に経常費の補助はできないという事情もございます。これをどうするかは、いま文部大臣のところで臨時私立学校振興方策調査会というものができておりまして、ここに私学のそういう問題を含めた今後の振興策について、ことしの六月までに大体答申をもらうという作業が始まっておりますので、私はやはりその答申を待って今後根本的に考えたいと思っております。
  133. 山中吾郎

    ○山中(吾)委員 営利事業にさえ補助政策をとっている政治ですから、教育事業に経常費を補助できないなんという思想は、これもアンバランスだ。英国のように八五%も国が援助をしておる場合にも、いわゆる委員会を設定して、委員会に渡して、プールをして各大学に渡すことによって、援助して支配せずの原則が現実に行なわれているじゃないですか。だから、いまおっしゃったように、補助を出せば支配をせざるを得ないという考え方は、私はそれはあとでつけた理屈だと思う。幾らでも制度的に改革はできる。理想的な私学の財源は、学生の納入金が三分の一、国費の援助が三分の一、寄付その他が三分の一が理想的であるということが常識になっている。そういう中でこういう問題を解決しなければならぬ。いま私は私学経営者の立場を考えているのじゃない。学生のことを考えなければならない。学生は一つの夢を持って大学に入った。入ってみると、教室につくえがない、全部入ったらすわれない。一時間ほど先にいってつくえの取り合いをしているじゃないですか。そして今度は教授の言うことがわからない。教授も月給が安いから欠講ばかりする。何のために大学に来ているんだ。そのうちに、ばからしくなって、学問をする熱情をなくして、マージャンその他をやる者、あるいは政治に対する抵抗を示す、自己疎外、欲求不満がそこにあらわれておるという見方が私は正しいと思うのです。だから、国民の人間を破壊するような現実に来ておると思うのです。大学が多いか少ないかということをまた言う人がありますけれども、大体一つの民族の高等教育を受けて、その素質を引き出すことのできる優秀な者は、同一年齢人口の二五%もあるといわれている。百人のうち二十五人は、日本の大学がまだふえても、日本民族の素質を引き出す、局等教育で引き出すところの素質をもっと引き出せるのです。その点は、六月に答申が出ると思いますけれども、大蔵大臣は少なくともそれを阻止するような思想は撤去せられなければならぬと思うのです。その点はよろしいのですか。
  134. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 私は、国の果たすべき教育責任を私学が負っていることは事実でございますから、私学の振興、私学への補助はできるだけ厚くしたいというほうのことを考えているものでございますが、ただ、御承知のようなことで、私学はいままで政府の規制を受けないという立場でずっときましたために、その内容は実に千差万別で、区々たるものがございますので、これに経常費を補助するといっても、そのしかたがなかなかむずかしいという問題も出てくると思います。問題は、私学が充実した教育の供給ができるようにするために財政の強化をはかってやる。それをはかり得るような措置といいますと、私学にやはり寄付を多く集められるような方策を国が考えるとか、いろいろやる方法はたくさんあると思いますので、これが直接国の経常費の補助という形でやることがいいか悪いか、ここらがこの六月の答申の中にどうあらわれてくるかということを見て、十分検討するつもりでおります。
  135. 山中吾郎

    ○山中(吾)委員 もう少し突っ込んで論議をしたいのですが、時間がないので次に移りたいと思います。  次に、文部大臣にお聞きしますが、簡潔にお答えください。時間を文部大臣につぶされては惜しいので、文教委員会でまたやります。  警備員制度についていま検討されておると思いますが、宿日直にかわる警備員制度の問題なのです。宿日直というものは、なぜ日本にこういう独特の制度ができたかということを調べてみますと、御真影が学校に下付されたあと、御真影を守るために宿日直制度が出てきた。これは記録に出ておるのですね。明治四十二年東京府令第三十一号「御眞影下賜セラレタル小学校ニ於テ宿直ノ件 天皇陛下 皇后陛下ノ御影ヲ下賜セラレタル小学校ニ於テハ其校男教員ヲシテ宿直ヲナサシムヘシ」これは、それまでには宿直なんという制度はなかった。ところが、いま依然としてその習慣が、御真影のなくなったあとですね、宿日直を入れて、そして精神的にどれだけ負担をかけておるか。教材研究その他に没頭させる時間をとってしまっておる。私も昔、宿直をしたことがある。御真影に落書きをしたといって始末書を書かされたことがある。そういうことでエネルギーを浪費さすということをまだ行なっておる。まことに遺憾だ。宿直を廃止したらいい。もう鉄筋コンクリートになっているし、御真影のためにできておるということが明確になっている。これについていろいろのことを書いておりますが、最初の考え方が、少し方向が違うとどこまで間違ってくるか、これを読むとわかるのです。やめますけれども、そういう性格のものですから、率直にもう宿日直なんというものを廃止をされて、警備員制度をとってすぐ実施すべきであると思うのです。簡単にお答えください。
  136. 剱木亨弘

    ○剱木国務大臣 この問題は、衆議院の文教委員会の小委員会で御研究願いまして、その決定に基づきまして、文部省では義務教育における学校の先生の業務の状態を調査いたして、まさにその集計が出かかっております。山中委員の申されますように、歴史的な問題もございますが、そういうものも考慮して、この問題について考えていきたいと考えております。
  137. 山中吾郎

    ○山中(吾)委員 一番消極的な感じがするのですが、文部大臣、時間がないので、速急に実現することを私は信じてほかに移りたいと思います。  六・三制の制度の問題を含んで日本の教育制度のことに移っていきたいと思うのですが、最近の新聞その他を通じますと、教育論議は、六・三制検討とからんできておる。もう制度と結びつかなければ、日本の現在の教育の弊害は除去できないという思想になってきたのだと思うのです。たとえば、元の中村文部大臣は、満五歳から義務教育をやれということを放言をされた。そしてやめられた。その次の有田文部大臣、きょうはいないようですが、六・三制はアメリカから押しつけられたので改正すると、そんなばかなことを言っておられる。あれは真剣に日本の者が検討して、一番民主的なものとして取り入れたのに、こういうことを放言をしておる。そして、一年ごとに文部大臣がかわられて、思いつきだけを言われて、移っておるわけであります。  しかも、別にそういう教育制度に特別の関係のない田中法務大臣も、法科大学を六年制にしてというなにを発表されたですね。あれは何か言われただけで、その後何か責任を持ったやり方をおやりですか。そうじゃないのですか。
  138. 田中伊三次

    田中国務大臣 法務大学のことであろうと思います。法務大学は、私の意見を一口に申しますと、一番大事な裁判官、事件を起訴する検事、これを弁護する弁護士、これを一口に訴訟関係人ということにいたしまして、この訴訟関係人は、右に片寄らず、左に偏せざる中庸のものの考え方を持って、裁判、弁護、検察に当たるべきもの、こういう考え方からいたしますと、高等学校を卒業いたしましたそういう年齢の程度の学年を専門の大学に集めまして、ここで六年制の教育をする。現在でも四年制の法律学教育はやっておるわけでございますが、卒業いたしまして二年の修習をやっておるわけでございます。この修習をあわせて六年間制度の理想の大学をつくりたい、こういう考え方でもって、現段階は構想をまとめる段階で、次官以下の私のほうの省議にかけまして、そして目下構想をまとめておる、各方面の意見を聞いておる最中でございます。決して放言ではございません。
  139. 山中吾郎

    ○山中(吾)委員 権限のない法務大臣が、学校制度についてぽつんと言われたので放言だと申し上げた。幼稚園から小学校、中学校、高等学校、大学まで、有機的な学校制度でして、ぽつんと一つだけ持ってきたところで、これはどうしたって放言になると思うのです。いずれにしても、ずいぶん最近学校制度についていろいろの意見が出ておるようでございますが、この点について、六・三制を検討するということは、総理大臣もどこかで言われておるのですが、文部大臣はその点は間違いないんですか。
  140. 剱木亨弘

    ○剱木国務大臣 六・三制が実施されましてから、まさに二十年になります。その間におきまして、日本の社会、経済状態は相当の変革をいたしております。また、六・三制の問題につきましても、たとえば幼児教育の問題でございますとか、ただいま法務大臣も申されましたある専門教科の学習の人間の問題とか、いろいろ問題がございます。これらの学制を根本的に年限を含めて改革するということは、きわめて重大な問題でございますので、そう一朝一夕に思いつきでやるべき問題ではないと思います。しかし、ただまさに、私どもといたしましては、その研究は開始すべきときがきておると思いまして、文部省におきましても、長期教育問題につきまして研究を開始する意図でございます。ただ、六・三制の現在のままの姿におきましても、内容その他におきましても、相当改善を要する点もございますので、いわゆる根本的な改正と、現学制のもとにおいて内容的にどう改善するか、この二つの問題をあわせて研究したいと思っております。
  141. 山中吾郎

    ○山中(吾)委員 われわれ社会党のほうも、責任をもって六・三制を前向きに、もっと日本の教育水準を高めて、科学的な基礎的知識を持ち、また、豊かな人間性を持つ、そういう人間を目ざしての教育制度を検討し、第一次草案を発表もしておるので、真剣に考えておるわけであります。  そこで、文部大臣にお聞きしておきたいのだが、いろいろの考えが出ると思うのですね。しかし、教育制度は、国家百年の大計であって、一つにきまったからそれをということでは簡単にいかないので、満五歳から教育をしてみる。あるいは、国立教育研究所長の平塚氏が五・四・四制の何か個人的意見を出している。われわれは四・五・五・四制を主張しておるのですが、一体、それについて、現在大学の付属小学校、中学校、高等学校というものは、そういうものを実験さすためにあるのじゃないか。有名校になって大学の準備校になってしまっておるが、私は、そういう問題が出てくれば、国立大学の付属小中学校にそういう実験学校としてそれをやらして、一つの教育効果を見て、一番安定した、日本の風土に合った教育制度を定着せしめるということがなければならぬ。そういうことをして十年後に初めて新しい制度を確信をもってやれるということになると思うのですが、国立大学の付属学校のそういう善用をぜひやらなければならぬ。どうですか、文部大臣。
  142. 剱木亨弘

    ○剱木国務大臣 国立学校の付属学校におきましては、いろいろな面におきまして、教育の内容及び制度につきましても研究陣を利用しなければならぬと思いますが、しかし、現実の問題としまして、他の学校との連絡を無視して、ある特定の制度を実験的に国立大学の付属でやってみるということは不過当なことではないかと思います。
  143. 山中吾郎

    ○山中(吾)委員 国立学校の学芸部、教育大学というものをあなたはおつくりになっておられるのですが、それは、教師というものは、知識と同時に教育実習が医学の臨床のように必要だというので、付属小中学校を置いているのじゃないですか。不適当とは何ですか。時間がないからもういいです。あとで論議をします。不適当ということばならば、私は論議をし続けなければならないので、時間がかかります。そういう生徒の実験、臨床のためにつくったものでしょう。画一的な現在の制度の中で、改正しようとするときに、そういう付属実験学校を利用することが不適当ということばは受け取れない。あとでまた検討したいと思うのです。  それで、まことに遺憾ですが、どうも時間が制限されたので残念ですけれども、次に移りたいと思うのです。  学校制度に関連をして、私は自治大臣と労働大臣にお聞きしたいのですけれども、自治大臣、定年制について、地方公務員法の改正によって、大体五十五歳以上ということを基準としながら、一度法案を出して未了になったのですが、五十五歳を基準とするような定年制をしこうとする法案をお出しに相なる方針をお持ちになるのですか。
  144. 藤枝泉介

    ○藤枝国務大臣 職員の新陳代剛を促進して、公務の能率的な運営をはかるためには、定年制度というものが必要だとは考えております。しかし、それをしくには、やはりその円滑なる運営ができるようなほかのいろいろな前提条件も考えなければならないと思いますので、目下検討いたしておるという段階でございます。
  145. 山中吾郎

    ○山中(吾)委員 定年制について労働大臣からお聞きしたい。
  146. 早川崇

    ○早川国務大臣 私は、民間企業のことを申し述べたいと思いますが、御承知のように中高年化いたしまして、若年労働者が不足してまいっておりますので、五十五歳の定年では不十分だ、さらに延長したらいいだろう、かように考えておりますが、その場合に、ただ年功序列で、生産性と無関係に、年齢がふえていけば給料が上がっていくというのでは、かえって経済全体としてマイナスでございますから、定年延長と並行して職務給、能率給というものがどうあるべきかということを総合的に検討して結論を出したい、かように思っております。
  147. 山中吾郎

    ○山中(吾)委員 民間対象ですが、労働大臣の考え方のほうに私は賛意を表したいと思うのです。自治大臣のお考えは時代に逆行しているのではないか。第一に、すでに日本の高等学校の進学率は七〇%をこえておる。経済企画庁の経済開発計画においては、四十六年には八〇%をこえるといっておる。現実に満十八歳までは教育を受けるということが準義務化をしている。さらに文部省の後期中等教育に関する答申は、将来は高等学校の満十八歳までは義務化を目ざしてという答申をしておる。しからば、大体満十八歳までは国が責任をもって教育をするということを前提として労働政策も考えるべきである。十五、六歳の低賃金の、しかも判断がまだできていない、そして企業から非常にいろいろと非人権的な取り扱いを受ける危険のある者が不足をすれば、むしろ十八歳以上の労働力を考えるべきではないか。そうすると、一方で、労働人口の終着年齢を考えるときに、日本人の平均年齢は、男は七十一歳ですか、女は七十二歳ぐらいまで平均寿命が延びている。そして、栄養その他の関係からして六十歳ぐらいで堂々と働ける。就労年齢というものを十八歳にして、終わる年齢を六十歳にし、国民年金の開始も一致せしめて、もっと各省総合的にものを考えるべきではないか。地方公務員だけ便宜的に、年功序列というものを直す努力をしないで、年功序列を温存するように、五十五歳で首を切るというのは、時代逆行じゃないですか。私は、ここに法務大臣もおられますけれども、学校制度の年齢制度と、民法、刑法の年齢制度、あるいは労働政策における年齢制度を統一的にお考え願いたいと思うのです。大体、民法が満二十歳を成人にしておれば、十九歳ではいわゆる法律行為のない無能力者にしているということである。刑法においても、法務省においては満十八歳まで青少年法で下げると言っておるが、そういう便宜的なものを考える以前に、一体社会制度が、満十九歳以下が未成年で、完全なる責任能力を認めないというならば、私は、国が教育の責任を持つべきである。したがって、剱木文部大臣に申し上げておきたいと思うのですが、六・三制の検討のときに、現実に八〇%まで進学が伸びるということを前提としたときに、十八歳までに国が十分の責任をもって教育をするのだ。出たならば、社会制度も、十九歳以上はいわゆる能力年齢にして、完全なる法律行為を行なうことができる責任能力を持たしていくという制度で一致せしめるべきではないか。また、自治省においても、労働省においても、若年労働人口が減るからどうだ、こうだじゃなくて、十八歳まではむしろ労働基準法を改正をして、就労の禁止の方向で検討すべきである。平均寿命は延びているんじゃないですか。そうして、現在世界各国の方向としては、十七、八歳までは教育をする方向で教育改革が行なわれておる。ところが、日本政府は、自治大臣、労働大臣、文部大臣、法務大臣は、別々に、このいろいろの年齢制度というものを検討されているように思うのです。その点をもっと統一的に検討すべきであって、そのうちで一番遺憾なことは自治大臣の考え方だと思うのです。自治大臣、どうです。
  148. 藤枝泉介

    ○藤枝国務大臣 私は、定年制が必要である、そういう制度が必要であるということを申し上げたのでございまして、それの円滑な運営の前提となるべき諸般の事情を検討いたしておるというのは、給与制度の問題あるいは年齢の問題、そういう諸般の前提となるべきものを検討しながら考えていきたい、そういうふうに申し上げたわけでございます。
  149. 田中伊三次

    田中国務大臣 せっかくの御意見でありますから、一口所見を申し上げておきます。  教育の場における年齢の考え方は、わが国教育基本法の本旨に従って、教育政策的に年齢をいかにすべきかを考えるべきもの、それから、私のほうにおける少年法その他の年齢の取り扱い方は、犯罪の動向、これに対する国民の感情、こういうものを総合いたしまして、刑事政策的見地に立って考えるべきもの。両方同じレベルで並べたらよいではないかということは、机の上ではそういうふうにお考えになることもごもっともでございます。わからぬことはありませんが、そうはいかないのではなかろうかと考えます。
  150. 山中吾郎

    ○山中(吾)委員 田中法務大臣とまた論議を続けなければならなくなったのですが、人間の知能発達その他というものは、大体何歳ぐらいで熟するのだということは、脳医学からいっても、心理学からいっても、定説があるわけだ。それを無視して、政策的に、あるときには十七歳まで青少年を下げるとか二十二歳にするとか、そんなばかなことはないじゃないですか。それから、教育基本法には、何もそういうことは書いていない。憲法二十六条に、すべての国民は、保護する子女に対して普通教育を行なう義務があるとあって、保護する子女といえば、大体社会制度としての成人年齢をさしているとすれば、十九歳までに義務教育を施すのが憲法が指向する一つの理想を立てていると思うのですよ。そういう意味でなくて、少なくとも、国が刑事責任、法律行為能力を考える、十八歳なら十八歳、十九歳でもいいですが、それまでは国が一人前にする教育の責任を持つということが正しいのじゃないですか。その辺を、全然無関係だということで、青少年法その他をお出しになるということについては私は異議があります。しかし、いま論議をしても一致するような時間はないと思いますから、お聞きだけしておきます。  あと五分ですか。どうもいかぬですね、こういう時間の制限は。私に引き延ばす気はないのです。しかし明確にしたいことがたくさんあるので申し上げておるのです。  この六・三制の全体の学校制度の問題について、日本の場合は大学制度が一番問題になっております。これは当然そうなると私は思うのです。戦争前の旧制帝国大学から地方の師範学校まで一諸にして単一の大学制度にした、上と下から抑えつけてサンドイッチのように圧縮したのが戦後の大学制度である。しかも、いけないことには、文部省で六・三制を施行するときに、新制大学に必要なる財政計画を立てて、施設設備、研究設備の充実をはかる計画がなかった。教授、研究者の養成がなかった。したがって、上と下で圧縮した新制大学は下に引きずりおろす作用しか働かないで、二十年たっておると思うのです。したがって、学問不在の大学その他のことがいわれてきておるのであります。六・三制を検討するという場合については、そういう意味において下から上に引き上げるような方向で、幼稚園から大学に至るまで検討すべき課題であろうと私は思います。  ことに大学制度でいま問題になっております大学研究の限界はどこだということが、この間民社党の永末委員からロケット研究の問題に触れておったと思いますが、これについて二階堂科学技術庁長官が、きょうの新聞か、四十二年においては一つにまとめるということを答弁したのが大きく載っておるようであります。この点について、総理大臣は元科学技術庁長官をされておったので、私は心配なので、ひとつ御意見をお聞きしておきたいと思うのですが、日本の大学の場合は、確かに教育と研究というものは兼ねておる。教育だけでは大学といわないで、研究と教育を兼ねたものを大学といっておるのが伝統的なイメージだと私は思うのです。そこで、基礎研究というものは大学の付属研究所において、直接有効性を考える応用研究は科学技術庁という常識があると思います。  そこで、この間のロケット問題が管理能力を中心として出てきたように思いますけれども、だからといって、簡単にそのまま科学技術庁所管に持っていっても、日本の研究が伸びるか伸びないかということは一つの問題があると思う。しかし、一方に、大学の研究にそれを残し、今度の予算において実現してきたところの加速器の研究、数百億の予算をもって行なう研究も東大に入っている。現在の東大の年間の予算は二百数十億である。加速器研究を入れると数百億、五百億以上になるのじゃないか。一つの大学の管理能力をもう越えてしまうという心配があると思うのであります。しかし、大学の研究で日本の研究が発達をしたという歴史があるので、大学から研究を離した場合に、さらに進歩するかどうかという疑問は残っておる。したがって、研究を大学の中で行なうという伝統はやはり残してもいいのではないかと思いますが、東大のように管理能力を越えて規模過大になってはどうにもならない。そこで、東大を大学院大学として独立させて、そうしてそこでビッグサイエンスも含んで独立の東大の大学院大学にして、学部は別の大学で行なうということにして、そうして研究を主として、同時に教授、研究者を養成する、もうそこまでいっておるのじゃないか。それを考えなければ、大学の研究は科学技術庁に渡し、技術庁においてそれが東大で行なったように伸ばせるかどうかという疑問を確認しない限りは、そう簡単にいかない。二階堂科学技術庁長がきょう新聞には簡単に四十三年からは統一すると言われておった。統一のしかたはいわゆる独立の大学院大学にして、そういう大学で伝統的に日本の風土に合うように研究を進めていくか、あるいは大学とも、あるいは科学技術庁も独立した独立研究所というものをつくっていくのか、科学技術庁に持っていくのか、三つあると思うのです。私は独立大学をつくって、そして適正規模というものを持ちながら最高の研究は伝統を持った東大の大学院でやるという行き方が一番伸びるのではないかという見解を持っておる。しかしきょうの毎日新聞では、三段がまえに二階堂長官の見解が出ておったものですから、そう簡単に割り切ってお考えになるということは、科学技術の研究と教育の問題に関連するので、私はあの明確なる問答が政府の方針に確定されるということについては、もう少し留保されるべきものがあるのではないか、こう思うのです。総理大臣はいかがでございましょう。
  151. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いま御指摘になりましたように、研究、これは一口に研究と申しますが、基礎研究だといわれる部門、さらにまた開発研究、利用研究、そういうように分けることができるようです。ところが、実際問題としてはなかなかどこで切ったらそういうようにせつ然とするか、これはたいへんわかりにくい問題であります。しかし、国のいろいろな研究自体を見ますときに、少なくとも学術的研究に主体を置く、それからまた開発研究に主体を置く、こういうことは大まかには言えるだろうと思うのです。しかもこれから先の科学技術の発達というものは、いわゆる総合的に結びついて初めて成果があがるのでありますから、一人や二人の学者でこれはきまるものではございません。そういうことを考えますと、総合的機能を発揮するようにするのにはどうしたらいいか。これはひとり、いま大学院大学の構想を発表されましたが、それだけでも実は片づかないんじゃないかと思います。大学そのものから申しましても、大学院大学というのは一つだけなのか、あるいは旧制の四つだけはそれに右へならいするのか、そしてわれわれと格差をつけるのか、こういうことで大学制度にも簡単にさわれないものがあります。いい手っとり早い話をしますと、原子力研究所というものがありますね。これは原子力が新しい分野だいう、新しいエネルギー開発だ、こういうことであります。そうして基本法までつくって、東海村の原子力研究所を発足しました。おそらく発足したこの原子力研究所は、いわゆる開発研究の部門を担当するものだ、こういうように思われているに違いないと思います。しかし、いま原子力研究所が使われておるもの、これは基礎研究も、同時に開発研究もあわせてやっておられる、こういうことですね。それのまた小さいものが各大学にもある、こういうような状態でございますから、なかなかむずかしいものです。  きょうも私、閣議で発言して、関係各省に要求し、命じたのですが、とにかく限られた能力——学者能力ですね。また限られたメーカー、こういう状態のもとにおいて、ひとつ新しい開発をやろう、こういう場合に相互に助け合うといいますか、協力体制をつくる、そうして総合性を発揮する、こういうことでなければ人工衛星などはそう簡単に上がるものじゃないのだ、そういうことでひとつくふうしようじゃないか、類似のものが、ただ固体燃料ではどこそこだ、液体燃料はどちらのほうでやっている、またその両方でやはりロケットを打っているとか、こういうようなことで、まあ困る。さらに搭載する、あるいはたとえば通信衛星を打ち上げるのだとかあるいは気象観測の用に供するのだとか、こういうようにそれぞれの目的も違っておりますから、そこらで全然別々のものだということで総合性を発揮しないようでは困るから、そこらにもっとくふうしようじゃないか、きょうそういう相談をしたわけです。おそらくこの国会でも済めば、ただいま申し上げるような問題、これは今後いかにしたらいいか、そういうことを真剣に各関係閣僚が取り組む、こういう予定でございます。だから、いま二階堂君の、新聞に出たところで簡単に結論が出ておるわけじゃございません。
  152. 山中吾郎

    ○山中(吾)委員 まことに残念ですが、時間も来たというので締めくくりますが……。
  153. 植木庚子郎

    植木委員長 本会議の都合もございますから……。
  154. 山中吾郎

    ○山中(吾)委員 わかりました。  先ほど公立文教施設の小学校、中学校、同じように二分の一にすべきである、総理大臣はそれに大体了解されたようであるが、大蔵大臣、文部大臣、よろしゅうございますか。よろしいですね。それから教育費減税の問題、よろしいですか。大蔵大臣も検討されますか。
  155. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 検討いたします。
  156. 剱木亨弘

    ○剱木国務大臣 非常に希望を持って検討いたします。
  157. 山中吾郎

    ○山中(吾)委員 時間がまいりましたので終わりますが、私は、教育政策については今後六・三制度と含んで幼稚園から大学に至るまで有機的に検討すべき段階に来ておると思います。世界は教育改革時代で、どこの国でも長期計画を立てて、科学技術に負けないための教育改革が行なわれ、あるいはAAグループにおいては、民族独立のための教育政策優先の政策をとっておるときでありますので、もう少し文教政策については、総理大臣、大蔵大臣、注意を深めていただいて、理解も深めていただいて、推進を願いたいと思うのであります。  以上で質問を終わります。
  158. 植木庚子郎

    植木委員長 これにて山中君の質疑は終了いたしました。  本会議散会後直ちに再開することとし、暫時休憩いたします。    午後二時三十八分休憩      ————◇—————    午後三時四十六分開議
  159. 植木庚子郎

    植木委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  昭和四十二年度総予算並びに昭和四十二年度暫定予算に対する質疑を続行いたします。広沢直樹
  160. 広沢直樹

    広沢(直)委員 私はただいまから総理並びに関係大臣に以下数点にわたりまして質問いたします。  まず第一点は、財政についてでありますが、一昨年、四十年度の財政は、多額の税収不足をもたらしております。この不足財源確保のために赤字公債を発行いたしました。二千五百九十億の歳入補てん債を発行して、ようやく財政のつじつまを合わしているわけであります。さらに四十一年度は、不況克服のために七千三百億の公債を発行して景気刺激をはかり、好景気を迎えたというものの、景気過熱を憂慮するに至っております。三十二年、三十六年の景気過熱時においては、一般会計の中で国債に依存してなかったわけであります。財投においても、公募債の依存度というものは、せいぜいで約二〇%ぐらいでありました。ところが新年度の予算は五兆円以内にとどめた、景気中立予算である、こう言われておりますが、一般会計において前年度七百億を上回っております八千億の公債を組み入れております。また財投計画においても、先ほどの三十二年、三十六年と比べまして、依存度というものは三分の一にも達しているわけであります。いわゆる過去の景気過熱のときよりもはるかに高い状態になっております。もしも財源に景気調整の機能を持たせるものであるならば、当然この国債依存度というものは整理しなければならないわけであります。  そこでお尋ねいたしたいことは、政府の税収の伸び、これは非常に過小に見積もっているのではないか。そこでまず一点総理にお伺いいたすわけでありますが、明年度の自然増収は七千三百五十三億と説明されておるわけでありますけれども、この数字は非常に少な過ぎるように思うのでありますが、どうでありますか。
  161. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 四十二年度の経済成長率を一三・四%と見ますと税収の伸びが三〇・五%ということでございまして、過去昭和三十五年から今日まで二〇%の税収の伸びを見たという年はございません。相当大幅な伸びを見ておりますので、そういう点で、経済成長率をあのとおり見る限りでは、過小の見積もりということ言えないだろうと思います。
  162. 広沢直樹

    広沢(直)委員 税収の実績と経済成長率の数字を使って計算してみますと、私の計算によると、経済成長率は名目で二二%成長して、約八千三百億くらいになるわけであります。一四%になりまと八千八百億くらいに見積もることができるわけであります。そこで、この七千三百五十三億を一千億ないし一千五百億オーバーする結果になるわけでありますが、いま大蔵大臣からお答えいただいたこの七千三百五十三億という税収の伸びは、  これは正しいとお思いになっていらっしゃるか、お答えいただきたいと思います。
  163. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 七千三百億というのですが、この前もお答えしましたように、昨年大幅な減税をやりました。この減税が本年度に響いてきているのが一千億円ございますので、それらを見ますと、実質的には八千億円以上の自然増を見積もったということになりますので、大体妥当な見積もりじゃないかと思います。
  164. 広沢直樹

    広沢(直)委員 まあ歳入見積もりが非常に渋い、こういう点でもう一点申し上げておきたいわけでありますが、国民所得の増加額に対する国税の限界負担率から計算してまいりますと、やはり自然増収の伸びというものは八千四百億ぐらいになるわけであります。決して七千三百五十三億という小さい額にはならないわけでありますが、この問題は議論になりますからこの程度にしておきまして、次にまた質問いたしたいと思うわけであります。  もしもこの税収の伸びがいまの見積もりよりも多くなった場合においては、現在問題になっております国債発行の予定額八千億を減らすという御意向があるかどうか、お伺いいたしたいと思うのです。
  165. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 税収の伸びが多かったときには、これを減税に回すか、経費増に充てるか、公債の発行額を削減するかと、この三つでございますが、やはり公債発行を減らすという運営をしたいと思っております。
  166. 広沢直樹

    広沢(直)委員 それでは、次は減税についてお伺いしたいと思います。  経済の均衡ある発展の成長のためには、国民生活の安定と企業の健全育成が基本であることは当然でありますし、今日景気回復というものの、昨年の中小企業の相次ぐ倒産、また物価上昇による国民生活の苦しみを考えてみますときに、やはり今日の税制においてもこれは十分な配慮を行なっていかなければならない。国民はこういった情勢の中で、特に大幅な減税を強く要望していることは、総理も大蔵大臣も十分御承知のことと存ずるわけであります。特に国民の税負担に対する軽減の強い要望は、やはり現行税制が一つには過重ではないか、もう一つには不公平であるというところに原因があると思われるわけであります。この点について総理並びに大蔵大臣にお考えを伺いたい。
  167. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 減税は、まだまだこれから私どもはしなければならぬと思っております。ただし、経済の動向から見まして、本年度減税を多くして、そうして公債発行額を多くするというような運営をする年ではございませんで、今年度どうしても差し迫ったものは、何といっても所得税の高いことを処置することが必要であると見て、減税を所得税の千億円にほとんど限定した、全体で千五百五十億ぐらいの減税にとどめたということは、やはり今年度の予算のあり方と関係した処置でございます。
  168. 広沢直樹

    広沢(直)委員 私が聞いておるのは、基本的な問題をまずお伺いしておきたい。要するに、現在の税制が特に大衆に対しては過重に考えられておる、あるいはまた企業と所得者と考えましても不公平ではないか、この二点の問題が基本的な一つの現在の税制を改正していかなければならないこういった問題点ではないかと聞いておるのであります。
  169. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 日本の現在の国民の所得水準から見ましたら、いまの国民の税の負担率というものは、やはりまだ私は重いというふうに思っております。
  170. 広沢直樹

    広沢(直)委員 過重であるということはわかったわけでありますが、不公平であるかどうか、この点についてのお答えをいただきたい。
  171. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 過去何年も減税のときには、公平ということを理念としての税制改革をやっておりますので、私は一応いまの税制は、そういう国民各層の不公平という税制にはなっていないだろうと思っております。
  172. 広沢直樹

    広沢(直)委員 現在の所得税が累進的構造のために、税負担は所得の伸びを上回って急速に累増していく傾向にあることは御承知のとおりであろうと思います。国民所得が増大して、一人当たりの国民所得の水準が上昇するにつれて、担税力は増大する理屈になるわけでありますが、しかし現実は一人当たりの国民所得が非常に低い。所得税における納税人口の増加、いまだ相当所得の低い層にまで税金はかかっているわけであります。個人の家計の税負担の軽減は、早急に改善しなければならないし、また負担公平の原則は、これは税の生命であると思うわけでありますが、これも当然近代民主国家をささえるモラル、道義的な面から考えてみましても、一そう公平な税負担の実現に力を入れていかなければならないと思うわけであります。  そこで、先ほど大蔵大臣は確かに現在は過重である、こういうことを認めております。過重であるというのは、これはどういった面から過重であるとお考えになっていらっしゃるか、お伺いしたいわけであります。
  173. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 過重というわけではございませんで、所得水準が高ければ国民の租税負担率というものはやっぱり高くていいというのは、先進国の状態を見てもそうですが、それから比べますと、日本の私どものいまの水準では、まだ少し高いというふうに思うので、それを申したのでございますが、それじゃ日本のいまの実情から見て、それで不当かというと、そうじゃございませんで、公債の発行までやって税を軽くするという措置までとっておる現状でございますから、いまの水準がやむを得ない税の負担率じゃないかというふうに感じますが、外国の例を見ますと、私はまだ負担率が少し重いというふうに感ずるだけでございます。
  174. 広沢直樹

    広沢(直)委員 先日新聞に課税最低限の計算の方法が出ておりました。一日の食費が二百五円である、これは最低限度の基準になっている一つの食費のメニューからはじき出したものだと思うわけでありますが、この基準生計費をどのようにしてはじき出したか、そのことをお伺いいたしたいと思うわけてあります。——大蔵大臣にお願いいたしたいと思うわけであります。というのは、いま言ったこの税金の問題は、相当軽減が叫ばれておりますが、なかなかそれは実践できません。したがって、その税金が非常に暗いということについて、やはりその責任者である大臣が、どういうわけでこういうふうにはじき出されてきているかということをよく認識していただかなければなりません。そういうわけでお答え願いたいと思うわけであります。
  175. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 これは、ことし計算を直したわけではございませんで、昨年の大体の計算に基づいて、物価の値上がりを見てきめた額でございます。
  176. 広沢直樹

    広沢(直)委員 昨年の物価から見てきめたと言われるわけでありますが、間違いありませんか。
  177. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 間違うといけませんから、事務当局に説明させます。
  178. 村上孝太郎

    ○村上(孝)政府委員 ただいまその主管の局長が大蔵委員会に呼ばれておりまして、かわりの財務調査官が参りますから、それまでちょっと詳細をお待ち願いたいのでございます。
  179. 広沢直樹

    広沢(直)委員 いま、その問題について聞いているわけでありまして、当然この委員会に出席しておらなければならないと思うわけであります。したがいまして、すぐにお答えいただきたいと思うわけであります。
  180. 村上孝太郎

    ○村上(孝)政府委員 ただいま大蔵大臣が申されました昨年の一人一日当たりの食料費百八十六円八十七銭に、四十一年度の消費者物価の上昇率一・〇五一をかけまして、さらに四十二年度におきまする経済見通しに計上してあります消費者物価の値上がり率一・〇四五を乗じまして出したものが二百五円二十四銭でございます。
  181. 広沢直樹

    広沢(直)委員 この新聞によりますと、大体生計費には課税をしないということが一つの原則であります。この計算によると、決して生計費にはかかっていない、こういうふうにこの新聞を見た国民は受け取っているわけであります。しかしながら、現実の生活の上から考えていった場合においては、一日食費二百五円で生活ができるか。もちろんこの計算の基礎は、いま、百八十六円八十七銭、すなわち四十一年度の当初の大蔵メニューからはじき出してきたわけじゃないかと思うわけであります。この問題は、まず四十年の大蔵メニューを全部基準にして、四十一年も、そしてまた四十二年の基準もはじき出してきているわけであります。したがいまして、この四十年につくったメニューによりましても、前年度の物価、すなわち国立栄養研究所ではじき出した献立表による前年度の物価を対象とし、献立を対象としてつくられてきているわけでありまして、したがって、これは現実に合わない一つの基準になっているわけであります。したがいまして、この二百五円で、実際のいまいう基準生計費にはかけていない、このようにお考になっていらっしゃるのか、ひとつその点をお伺いしたいと思うわけであります。
  182. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 これはもう御承知のとおり、一番最初、この基準生計費はこの献立からはじいてやったことじゃございませんで、その生計費をそれじゃ説明してみろと言われて、あとからこれをつくったというのが実際のいきさつだと思います。そういう意味におきまして、なかなかこれはむずかしい問題で、そう実際と合うというふうにここで言い切ることも私はできないと思いますが、いきさつはそういういきさつでございますので、これはどうも全部これに基づいて出た科学的な計算だというわけではございません。
  183. 広沢直樹

    広沢(直)委員 しかし、一応これは大蔵省の標準食費の基準としてこの資料を出されているわけでありまして、それに基づいてこの一日食費二百五円というものがはじき出された、このように考えられるわけであります。全然基準がなければ、最低生活費には課税しないのですから、今年度の減税は、課税最低限が約七十四万円までは、給与所得者においても、もちろん所得者全部入るわけでありますが、税がかからない。したがって、この表を見てみますと、それと比べますと、大体七万四千百二十一円の余裕があるんだ、このようにいわれておるわけであります。したがいまして、いまこの基準になっている、いわゆる大蔵メニューというのは単なる作文にすぎない、そういうわけでありますか。
  184. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 単なる作文というわけではございませんが、おのずからこの基準最低限というものはきまっておった。その時点においてこの数字を説明しろと言われて、非常に苦心してつくった数字だと私はそう聞いております。過去のことでございますから、聞いておりますが、しかし、一応そういうものができております以上は、それに基づいてやはり合理的な計算をしなければなりませんので、昨年のこの数字に、いま言いましたような物価の値上がりを考慮した数字に本年度直しているということでございます。
  185. 広沢直樹

    広沢(直)委員 要するに、先ほど申し上げましたとおり、非常に税金が重い、大衆の税金を減税しなければならぬ、こういう声がよく聞かれておるわけでありますし、総理も、現在の課税最低限は当然百万円まで上げなければならない、こういうことも選挙の公約として言っているわけであります。  そこで総理にお伺いいたすわけでありますが、昭和四十五年までこの最低限百万円までに上げられない何か一つの作為があるならば、いま直ちにこれは引き上げることができるのではないか。しかしながら、現実においては四十五年までできない。何が理由でそういったことができないのか、ひとつお答えいただきたいと思うのです。
  186. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 この長期減税計画を立てまして、できるだけ早く百万円までこれを無税にしよう、こういうことでございます。いままで研究されておりますものは、百万円までになるのが五年かかる、こういう計算でございますが、私は、最近の経済情勢等から見まして、五年を待たずしてこれを実施したらどうだ、そういう意味でひとつ努力し、そういう意味の検討をしろ、こういうことを実は命じておるわけであります。この百万円については、野党の皆さん方のほうも、いま直ちに実現しろ、こういう強いご要望でございます。なぜ政府のほうは長期計画、皆さん方のほうは一年でやれ、かように言われるか、その相違でございますが、政府のほうでいろいろ減税計画等から見まして、昨年は非常に大幅な減税をした。ことしもまた相当の減税をしている。やはりしなければならない仕事はうんとある。また、しばしば御指摘になりますように、公債も発行しておる、こういうような状況でございます。歳出の面に非常な仕事を要求されておる、また、歳入も思うようにいかない、そういうところから見まして、いま直ちに百万円というわけにはいかない。ことしはまず十万円、そこで七十三万九千円、こういうような減税措置をとったわけであります。  なお、私の不足分については、大蔵大臣からお聞き取りをいただきたいと思います。
  187. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 いま総理の言われたとおりでございまして、一挙にこれを百万円にしようとすれば、所要財源は大体四千億円から五千億円かかるということがはっきりしておりますので、これはなかなか一挙にはいかない、こういう事情でございます。
  188. 広沢直樹

    広沢(直)委員 大蔵大臣にお伺いいたしますが、大体それじゃ最低基準を百万円までにするということで一応計算はやっているわけでありますか。
  189. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 やっております。昭和四十五年までにはこれを実現したいということでいろいろやっております。
  190. 広沢直樹

    広沢(直)委員 計算をやっているようでありましたならば、具体的にその計算の内容をひとつお教えいただきたいと思うわけであります。
  191. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 大体年々所要財源が千三百億円くらいは必要だろうという計算をしております。
  192. 広沢直樹

    広沢(直)委員 われわれは三党共同で直ちに百万円まで免税点を引き上げなければならない、こういうふうに言っているわけでありますが、いまやろうと思えば直ちにこれはできるのではないか、こういうわけで、こちらのほうで、わが党として考えておりますことを申し上げてみたいと思うわけであります。  まず、四十一年度の課税最低限は六十三万一千六百三十四円でありますが、この限度額を四十二年度に一挙に百万円まで引き上げるとすれば、その額は三十六万八千三百六十六円となるわけであります。政府の四十二年度税制改正によりますれば、課税最低限は七十三万九千余円になるわけでありますが、この限度引き上げに要する財源は約一千億、そこで前に申しました三十六万八千三百六十六円を四十二年度に引き上げるとなりますと、政府案十が七千九百十二円に比べて約三・四一倍ぐらいに当たるわけであります。この倍率を四十二年度の課税限度額引き上げに要する財源約一千億にかけますと、大体三千億を少し出るぐらいになるわけでありますが、こうして計算した額から、政府は四十三年度に限度額を引き上げることを予定といたしまして、この分は差し引くことになりますが、したがって、残りは大体二千三百三十億くらい。そこで百万円の限度額引き上げにあたっては、その実行過程で納税人員の減少等があるので、必要財源はこの計算結果の金額より少なく済むのではないか。おおよその目安として、やはり一割五分ないし二割の限度は少なくなると考えられる。したがって、この分を調整しますと、大体一千八百億から一千九百億で、百万円減税する財源としては足りるのではないか、原資としては当然足りることになるのではないかと思われるわけです。そこで、課税最低限を百万円に引き上げた場合に必要とする一千八百億から一千九百億の財源は、まず租税特別措置の整理合理化と交際費課税を適正に行なうことによって十二分にまかなっていけるのではないか。これを整理統合いたしますと、大体五百三十四億の原資が出てくるわけであります。そうしてまた、交際費課税の適正化を行ないますと、約一千百四十億出てまいります。また、これは率のかけぐあいによって変わってまいりますけれども、大体低い税率でかけると、そういうことに相なってまいります。そういった税制の合理化をはかっていくことによって、当然百万円減税はいま直ちにやろうと思ったらできる。四十五年を目途としてできるだけ早くやるというあいまいなものではなくて、どうしても本年度にできないならば、四十三年か四十四年にはこれを実現することは、やろうと思えば実際にできるのではないかと思われるわけでありますが、その点に関しての大臣のお考えをもう一度お聞かせいただきたいと思います。
  193. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 本年度十万円の引き上げをやるだけでも一千億をこしておることでございますから、一挙にこれをやろうとしましたら、これはさっき申しましたような四千億から五千億円の財源を要するということで、これを年々やっていくということにしましても、これは納税者の数が多くなっていくのですから、そういうものを四年先を見通しますと、最後の年の減税は二千三百億円ぐらいになるのではないかというような計算で、財源としてはとても一千八百億や二千億では、一挙にこれをやるということは不可能であると思います。そのほかの特別の措置というものは、できるだけ政策的な効果をなくしたものは逐次やめていくという、整理する方法を考えるのが当然でございますが、いまやっておる特例措置は、これはみな政策の必要に迫られて次々に実施したものでございまして、ほとんどこれをいますぐになくするというわけにはいかないというものばかりでございますので、この特例の措置によってこの百万円減税を実現しようということは、これはもうはっきり無理でございます。
  194. 広沢直樹

    広沢(直)委員 いま大臣のお考えをお伺いしたわけでありますが、この百万円減税の問題は、あらゆる時点から考えてみましても、当然この時点でやっていくときが来ておるのではないか。一応総理も先ほどお話がありましたけれども、要するにその時点を感じておるがゆえに一日も早くこれを実現したい、こういうふうに考えておるわけだろうと思うわけであります。したがいまして、わが党のいま概略の計算でありますが、もっと正確にやりますと、きちっと出てくるわけであります。また、最初に申し上げました税の公平なる負担をしていかなければならないという見地から考えてみましても、税制の基本の見地に立って考えていくならば、税制調査会からも答申が出ておりますけれども、当然その気になってやっていけばできるのではないかと思うわけであります。どうかこの点に関しては一日も早く、直ちにこれを実行なさるように強く要望いたしまして、次の質問に移りたいと思う次第であります。  次に、物価対策についてでありますけれども、この物価対策にどれだけの手を打っておられるか、実際に見てみましても、その効果があるとは思われないわけであります。また、価物対策の一つの問題として、実際に景気の問題もありますけれども、行政的な手段によって物価を下げられる、そういったものもありますが、現実的にはその問題はいまだに解決していない問題もあるわけでありまして、以下その一つの例をあげながらお伺いしたいと思う次第であります。  これは厚生大臣にお伺いいたします。たとえばいま問題になっております、きょうの新聞には牛乳の一本二円の値上げが出ておりましたが、その牛乳の問題であります。この牛乳を隔日配達にしていくならば、流通コストの引き下げ、または人件費が減る。そのために現行の販売曜日標示を製造曜日標示に改めるよう行政管理庁でもあるいは物懇からも答申も出、あるいは勧告も出ておるわけであります。この点に関してはメーカーにしてもあるいは小売り業者にいたしましても、消費団体も希望しているところでありますが、これが現実には行なわれていない。どこに問題があるかといいますと、厚生省が乳及び乳製品の成分規格等に関する省令を改正しない限りこれはできないわけでありますが、これが改正できない理由をひとつお聞かせいただきたいと思うわけであります。
  195. 坊秀男

    ○坊国務大臣 牛乳についての御質問でございますが、牛乳につきましては、食品衛生法上一応の規格というものをきめてございます。その規格というものは、食品衛生上、人間の健康なり衛生なりに非常に関係がありますから、この牛乳そのものの規格というものは、今日尊重していかなければならない。ただ、その販売をしたりなんかする方式につきましては、毎日の配達ということでなしに、隔日配達をされるというようなことにつきましては別に規制も何もしてございません。だから、そういうことは商売をなさる方がそのほうでやっていただく。日付につきましては、曜日というような日付でもってやっていっておりますが、これは今日検討をしておるような次第でございます。
  196. 広沢直樹

    広沢(直)委員 しかし、いま言った乳及び乳製品の成分規格等に関する省令、こういったものを改正して、製造曜日標示に改めていかなければならない。この省令があるために、やはりこういった問題が差しさわりがあるわけであって、これを改正していくならば、当然いま言ったように、この牛乳の流通改善にもなっていくわけであります。また、滅菌牛乳の製造許可も、流通コストの引き下げ上有効な対策になるわけでありますが、これも厚生省は、衛生上問題ないという厚生省内の試験機関の結論が出ておるわけでありますけれども、だいぶこれは渋っておった、こういうふうにいわれておるわけであります。最近ようやくこれを許可しておるわけでありますけれども、この許可条件がどうなっているか、ひとつお聞かせいただきたい。
  197. 坊秀男

    ○坊国務大臣 許可条件等につきましては、今日専門家の意見等も聴取しまして、これを目下検討中でございます。厚生省といたしましても、そういった面から物価の引き下げ、物価の安定ということにつきましては、鋭意これから検討をいたしまして、でき得るだけのことをやっていこう、かように考えております。
  198. 広沢直樹

    広沢(直)委員 それではもう一つ例をあげてみたいと思うわけでありますが、これは厚生大臣御存じかどうかわかりませんが、栃木県の桐生市では、保健所の保健所長が、すでに許可をとっている肉の移動販売ですね——これは二割方の肉の値下げの効果を出しているわけであります。ところが、既存業者の利益の擁護という立場から、移動販売の車が行ったその停車場所、それを何カ所か調べて、一カ所について千五百円の店舗の認可料を取っているわけであります。そうして何カ所とまったから九万円支払えと言われた。これは千五百円で割ったら出てくるわけでありますが、結局移動販売車というのはそこへとまって売っていく、非常に安い価格でこれが販売できるわけでありまして、消費者には非常に喜ばれておりますが、これに対しては保健所が口を出して、現実にはそれが高い店舗料というのですか、認可料というものを取られているわけであります。こういった例を見ましても、保健所自体がこういった問題に手を入れてやっていくべき問題ではないのじゃないか、これも一つのいま言ったような形において物価の値下げを押えている手段ではないか、こう思われるわけであります。このことに関してのお答えをいただきたいと思います。
  199. 坊秀男

    ○坊国務大臣 食肉販売の移動販売車によって販売をするということは、これは価格を引き下げる上に非常に資するところが多いと思います。さような意味におきまして、厚生省といたしましては、この移動販売車のいろいろな衛生設備等の条件がございますけれども、その条件を緩和をしていこう、こういうふうに考えておりまして、すでに栃木県のその御指摘のケースに際しましては、そういったようなケースもございますので、三月三日付で自動車による食品の移動販売に関する取り扱い要領についてすでにそういう通達をいたしたような次第でございます。
  200. 広沢直樹

    広沢(直)委員 この問題に触れましたからついでにお伺いするわけでありますけれども、要するに、こういうふうに店舗の認可料として車がとまるたびにそういうものは取らないというわけでありますか。改正はした、こういうことはわかりましたですが、その問題について。
  201. 坊秀男

    ○坊国務大臣 おっしゃるとおりの方向に指導いたしております。
  202. 広沢直樹

    広沢(直)委員 いま二つの例をあげたわけでありますけれども、今日の物価問題で非常に苦しんでいる国民の実情を見ていくならば、当然より早くこういった手は打たれていなければならなかったと思うわけであります。こういった点において今後も許認可行政というものによって物価の値下げを行なうことはできる、こういった点については、地方の問題におきましても、多々地方行政面においても出てきておると思われるわけでありまして、この問題に関して鋭意進めていっていただきたい、改善に努力していただきたい、こう思うわけであります。  次に、畜産関係になりますが、まず総理大臣に、これはそしてまた農林大臣にお伺いしたいと思うわけであります。いま世間で非常に大騒ぎになっております、国民を不安におとしいれております食肉不正事件についてお伺いいたすわけであります。事件発生以来早くも一カ月を経過いたしておりますが、いまだにこの問題については不安をぬぐうことができないわけでありまして、それだけではない。牛あるいはヤギ、鶏、こういった問題に拡大されてきておるわけであります。昨日の新聞を読みますと、総理以下みんなで一ぺんこの豚肉というものを食べてみようじゃないか、こういうことで試食することにしたというようなことが出ておりましたのですが、総理みずからがそういったことをやったからといって、国民全体のこの問題に対しての疑いが晴れるということはあり得ないことでありまして、まずこういった国民全体に非常に不安を投げかけた問題、国民の健即を守る上から、これに対する最高責任者としての総理のお考えをお伺いしたい。
  203. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 豚肉をはじめ一部の不正事件、まことに私は残念に思っております。この種の不祥事件が起きたために、国民の各界、各層にわたって食生活に不安を与える、また食肉業者のほうからいえば、自分たちの信用をなくした、こういうことで、たいへんな問題をかもしております。そこで、厚生省あるいは農林省を督励いたしまして、もう心配はないんだということを数次にわたって声明しておりますが、まだまだ国民の一部においては、政府がそう言ったからといっても、まだあぶないんだ、かようなこともあるんではないだろうか。そこでひとつ政府みずから豚を食べてみせる、これも一つの方法じゃないか。私はこれで全部が解消するというわけじゃないんだが、私自身も安心してこのとおり豚のなかなかうまいところも食べているんだ、これを目で見せることも一つの方法じゃないだろうか、こういうことで、ただいまのような問題が起きておるわけであります。ただいまは一切不安はないはずでございます。しかし、これを一掃することはなかなか困難でありますから、政府みずからが、かつて黄変米の事件の際にとりましたようなその先例にならうことも一つの方法だろう、かように申しておるような次第でございます。
  204. 広沢直樹

    広沢(直)委員 こういった問題が突如として起こってきて国民を不安におとしいれていく、これは大いに考えてみなければならない問題でありますが、一体どうしてこういうようなことがあとを断たないのか。また豚コレラの問題が起こってから、やはり鶏あるいは牛、ヤギ、そういった問題にまで次から次へと出てきているわけであります。これは何かこういった面における構造上の問題があるのじゃないかと思われますし、また販売ルート、屠殺場、保健所検査あるいは監視員、こういった点のどこかに不備があるのじゃないか。またプリマハムは畜産振興事業団と関係があるのかどうか、どんな関係なのか、あわせて詳しく説明願いたいと思うわけであります。
  205. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 ただいまのお話の中に少し混雑している点があると思うのです。豚の問題と鶏の問題とは全然違うのであります。鶏のほうについて豚に関すると同じような不正な事件とか、そういうものは起こっておらないのでありまして、問題が起こりましたのは豚のほうであります。  豚につきましては、先日もこの席で詳しく申し上げましたように、大体一年に一千万頭つぶされておるうち、いわゆる病菌豚、つまりワクチン・メーカーから出ました斃獣というのは一万五千頭ですから、そのパーセンテージでいうと〇・一五だ。それからいまお話の中にあとを断たないとおっしゃいましたけれども、いま行なわれているということではなくて、前に行なわれておった悪事が露見して摘発されておるということでございます。  そこで、先般も申し上げましたように、七つあります全国のワクチン・メーカーのうち一つは焼却炉を持っておりますが、あとはありませんので、残りの各工場は全部このワクチン豚を絶対に外へ出してはいけない、緊急に工場内に焼却炉を設けて全部焼却せよと、目下その建設に努力しております。まだ焼却炉の間に合わないところでは、全部工場内に埋却せしめておる。したがって、絶対にこれから出てくる豚については安心である、こういうことを言っているのであります。鶏は、これは全然別な問題でございます。
  206. 広沢直樹

    広沢(直)委員 いまもう一点答弁が抜かったと思うわけであります。プリマハムと畜産振興事業団との関係でありますが、どんな関係なのか、ひとつ説明願いたいと思うわけであります。
  207. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 御承知のように、最下限の価格を維持するために、畜産振興事業団では、ただいまうわさされたような事件がどんどん出てきたものですから、一日四千頭分も買い入れておるような次第でありますが、この畜産振興事業団に買い入れておるものがいろいろなメーカーのほうに引き渡しをされていくことはたくさんございます。ただ、その豚をどこの会社で購入いたしておるかというふうなことについては私はつまびらかにいたしませんので、御必要があれば事務当局からお答えいたします。
  208. 広沢直樹

    広沢(直)委員 じゃ、ひとつ詳しく説明いただきたいと思うわけであります。
  209. 桧垣徳太郎

    ○桧垣政府委員 御説明を申し上げます。農林大臣からお答えしました指定食肉の買い入れ場所が全国で中央卸売り市場十市場、産地の買い入れ場所四十カ所、これを部分肉に加工いたしまして貯蔵いたしますために、加工所七十三カ所を使っております。その中には、プリマハムは御承知のように全国的に加工場を持っておりまして、プリマハムの会社もこの七十三カ所の中に入っておる箇所がございますが、先般問題になりました東京事業所は、指定加工場の中に入っておりません。
  210. 広沢直樹

    広沢(直)委員 では続いてお伺いいたしますが、このプリマハムは、事業団の加工業者であるとすれば、やはり一般の豚と一緒に豚コレラの豚も、毒豚も扱われたことになるし、また同一の貯蔵庫に貯蔵された、こういうことも考えられるわけでありますが、この点は間違いなくまざっておるかどうか、検査をされたかどうか。またどんな検査で食肉事業団に入るか、検査規定を教えていただきたいと思うわけであります。
  211. 桧垣徳太郎

    ○桧垣政府委員 先般来いわゆるワクチン豚の屠体につきまして、その肉が食肉として出回っておるという事実が発見されまして、一方では警察による屠体肉の流通の追及がされておるのでございますが、食肉衛生の観点から——これはむしろ厚生省からお答え願ったほうがよろしいかと思いますが、衛生検査の観点で食肉のサンプルにつきまして検査をいたしておるのでございます。  プリマハムにつきまして、先ほど申し上げましたようなことでございますが、今回問題になりました東京事業所は、畜産振興事業団の指定加工場ではございませんので、無関係でございます。  なお、畜産振興事業団が指定食肉の買い入れをいたしますについては、産地四十カ所については、指定いたしました農業団体からの買い入れという形をとっております。中央卸売り市場につきましては、中央卸売り市場の荷受け会社、つまり卸売り機能を営んでおります認可を受けた業者から畜産振興事業団が買い入れをする。その場合、指定の倉庫へ入れましたものについては、卸売り会社からの通知に基づきまして現地で検証をいたした上で引き取りをするということをいたしております。
  212. 広沢直樹

    広沢(直)委員 この畜産事業団は一切、買い入れから売り渡しまで全部これを特定業者に委託しているわけでありますが、その委託業者についての監督あるいは確認、こういった問題がさっぱり行なわれておらないのじゃないか。冷凍倉庫の倉庫入れの実態にしても、途中輸送の実態、倉庫での検査の実態を知っておられるのか、あるいは事業団は業者の提出する倉荷証券によって金を支払っているだけではないか、こういうふうに、現実の問題はそうなっておるわけでありますが、これは御承知になっていらっしゃるかどうか、お答えいただきたい。
  213. 岡田覚夫

    ○岡田(覚)政府委員 事業団が買い入れをいたしました場合には、数量は報告をとりまして確認をいたしまして、その後も冷蔵の場所につきましては検査をいたしまして、確認をいたしておるわけでございます。
  214. 広沢直樹

    広沢(直)委員 事業団は、現実の問題として調べてみましても、やはり地方においては、その事業団の業者とあるいはまた買い受け人または加工業者、そういった人たちが入っている。ですから、この事業団の目的である生産者の保護あるいは消費物価の安定、こういった働きが現実には阻害されているのではないか、こういったことも考えられるわけであります。そういった点について、やはり事業団は、業者が入っておれば現在そういった問題で、うたい文句はいいけれども、現実の行政のあり方としては、豚を買うときに買いたたいて買う。そうしてそれを加工し、ストックし、そういうような状態であったならば、事業団の趣旨に反していくのじゃないか。現実の状態を掌握されていらっしゃるかどうか。現実にこういった問題で非常な不平が出てきております。こういった問題について、ひとつ機構上のことをお聞かせいただきたいと思うわけであります。
  215. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 畜産振興事業団は、御承知のように畜産を振興するためにございます事業団でありまして、これは先ほどもちょっと申しましたように、豚の価格、豚の生産者を保護するために、最低下限まできたときには、幾らでも賢い上げて価格を保持しようという目的だけのものでありますから、事業団が豚を買い入れるとき買いたたいておるというお話は、どうも私ども理解できないことであります。
  216. 広沢直樹

    広沢(直)委員 やはりそれは事業団そのものが豚を買いに行くというわけではなく、地方地方には事業団の出張機関があるわけでありましょう。そうじゃありませんか。したがって、その出先においてやっていることを、業者が現実にやっていると言っているわけであります。事業団そのものは、いま言ったように倉荷証券によって金を払っているだけだ。だから、実態というものがよくわかっていないんじゃないか。現実に、現在、豚を買う場合においては、その出先機関になっている分が、まあ東京を一つの例にとっても、キロ当たり三百二十円とするならば、三百二十円以下に下がったならば豚を賢い上げる。しかしながら、高いときはそれはいいわけですが、現実には豚を買いに行くときに、それは三百二十円以下にたたいて買って、そうして事業団として冷蔵庫へ入っちゃう、そういう現実が行なわれているわけだ。こういった問題について、現実の問題としてよくひとつ監督し、そういったことがないように改めてもらいたい。  では、次の問題に移りたいと思うわけであります。  次は、やはり農林大臣にお伺いしたいと思うわけでありますが、昭和四十一年度の農家の戸数というのは五百五十八万戸あったわけであります。年間九万一千戸、一・六%の減少となっております。三十五年度よりは四十九万九千戸、六・八%の減少を見ているわけであります。就業人員は一千一百八万人で、前年対比四十万人の減、三十五年度よりは二百三十一万人の減少であり、総人口の一七%に達するのでありまして、製造業、就業人員一千一百七十七万人を下回るという事態に立ち至っておりますし、また専従者も減ってきている。高年齢の割合が増加するという最悪の状態であります。また学校卒業者にいたしましても、農業に従事する者は、そのうちの平均一二・二%、就業状態でかろうじて六万人台を維持したというようなありさまであります。農家人口の他産業への流出は年々増加の一途をたどっておるのでありますが、このままであるならば、当然農業は破壊されていくわけであります。こういった点に関して、農業人口の減少というものは根本的にどこにあるのか、いろいろありましょうけれども、その根本原因がどこにあるのか、まずそれをお答えいただきたいと思うわけであります。
  217. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 政府の出しております経済社会開発計画などにもいろいろ指摘いたしておりますように、第一に、御指摘のように、農家人口はだんだん減ってまいっております。これは御承知のごとく、最近の経済成長の伸びに従って、それに要する労働力の供給源をやはり農村に求めてまいりましたこと、同時にまた、その反面、農業経済はごらんのとおりに、ほかのほうの産業が伸びてまいります割合にしては立ちおくれておりますし、したがって、所得水準も低いわけであります。そういうことで、日本の産業構造全体から見れば、ややバランスを失った状態になっておる農業面をただいま御指摘になったと思いますが、これはやはり御存じのように、日本の産業構造の中で一方が非常に伸びが早かった、これに立ちおくれておるというのが今日の状態だと思います。
  218. 広沢直樹

    広沢(直)委員 まず第一に、農業基本法ができましてから六年になるわけでありますが、農家救済の抜本策、農業構造の改善であることは、これは法の示すとおりであります。しかしながら、その改善事業というものが具体的に進んでいない、計画も片手落ちな状態にありますし、本年度の予算においてやはりこれを根本的に調査して直していかなければならない。農業構造の政策推進調査費二千五百万円が計上されているわけでありますが、これは一体どういう内容のものであるか、お伺いしたいわけであります。
  219. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 先ほど申し上げましたのは概括的なことを申し上げたわけでありますが、ただいま四十二年度予算のことにお触れになりましたが、四十二年度予算の中では、公共事業関係はわりあいに予算が渋かったにもかかわらず、農林省所管の公共関係においては約二〇%増でありまして、政府がいかに農業のおくれを戻し、これに重点を置いておるかということを理解していただけると思います。ただいまの構造政策の調査費の中には、いまもおっしゃいましたように、日本の産業構造をちんばでなく、調和のとれた形に持ってまいるには、われわれは急いで構造政策を推進してまいる必要がある。そういうことの調査費と合わせて、後継者を喜ばせ、そして安心して農業にいそしんでいただくために、農民年金というような制度についてもこの際大いに研究をいたそう、そういうような研究費も含まれておるのがあの調査費であります。
  220. 広沢直樹

    広沢(直)委員 いまの根本原因については、確かに多少は進んできている。しかし現時点で考えてみた場合においては、やはり農家の所得というものが、あるいは製造業あるいは非農家の所得に比べて非常に低いということが一つの大きな板本原因と考えられるわけであります。したがいまして、それは前から考えては多少前進している、これはあたりまえな話でありまして、当然現時点における農業の構造改善による生活の安定、そういったこと、あるいは生産性の拡大も考えていかなければならない。しかしながら、全体の現在の経済の中から見ていくならば、やはり非常にこれはおくれている。また農業基本法これ自体は自立経営農家というものの確立を考えておるようでありますけれども、現実には零細農家、こういった農家は三ちゃん農業といわれ、あるいは現在一ちゃん農業といわれているところもありますけれども、そのような状態で、だんだん衰微して離農していく人たちができてきている。その離農に対しての抜本的な対策というものがない。いまようやくにして、老齢に対しては年金制度を考えようか、こういうような段階にようやくみこしを上げたといわざるを得ないような状態であります。これもまだまだ構想の固まってないものじゃないかと思うわけでありますが、具体的にこの農民年金を実施していこうという、あるいはこれは離農の面にも関係してくるでありましょうし、あるいは高年齢の問題に対しても関係してくるでありましょうが、具体的な構想というものはどうでありますか。
  221. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 先ほど申し上げましたように、やはり今日の日本の農業生産を拡大し、そして農業従事者の生活を安定し、流通機構を完備してまいりますためには、やはり基本になるのは構造政策だと思うのであります。  そこで、農林省といたしましては、昨年の末から省内に構造政策推進会議というものを設けまして、鋭意総合的な計画を練っておる最中であります。この結論は、やがて農業基本法の差し示す方向のわれわれの見解が出ると思いますが、まずその前に、四十二年度の予算で先ほど申し上げましたように、構造政策を進めてまいりますためには、やはり今日の地価の問題がございます。もう一つは、構造政策を進め、その規模を拡大してまいろうとするときに、やはり障害となる二、三の点がございます。そういうようなことについては政府部内においても鋭意研究をいたしまして、ぜひ規模拡大を基礎にいたしました構造政策を推進してまいると同時に、先ほどお話しのありましたような労働力の流動については、鋭意機械化、その他の力を用いて、省力によって生産をなお維持し、増大していくことについていろいろな施策をやっておるわけであります。  ただいま御指摘のように、やはり農村をになって立つあと継ぎにつきましては、昭和四十二年度予算においても、後継者育成資金については、昨年度の予算の倍額である二十七億という大きなワクをもちまして、後継者育成の資金を拡大いたしたほかに、お話しの農民年金につきましては、先ほど申しました経済社会開発計画の中にもうたっておりますように、土地の移譲をしやすくして、そして構造政策を推進してまいる補助になるようなことも農林省としては考えておるわけであります。  なかなかこういう問題につきましては安直に結論を出すことはむずかしいと思いますので、ただいま政府部内でその実現のために調整しながら研究いたしておる最中であります。
  222. 広沢直樹

    広沢(直)委員 次に、生鮮食品の消費者価格の値上がり、これは台所と直結している問題だけに、国民に与える影響は非常に大きいわけでありますが、物価安定を叫ぶ政府として、大きな問題になっております流通機構の改善に断固取り組んでいかなければならない。そこでこの流通機構の具体的な改善策について、明らかにしていただきたいと思います。
  223. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 御承知のように、農業者の仕事は、生産を一生懸命でやるということの半面に、やはり農業生産をやっておらない国民に対して安定した価格で食糧を供給するという二つの義務があると思います。農林行政というのはその二つが大事だと思いますが、やはり私ども、御指摘のように、流通機構につきましては、ただいま農林省といたしましても、昭和四十二年度予算でも非常に重点を置いていたしましたことですが、たとえばいまのお話の中央卸売り市場を整備する、それからまたそのブランチを各地に設けて流通を円滑ならしめる、それからまた、地方の野菜、果実その他の価格は中央の農林省に全部報告が来ますが、それを今度は新しい施設で地方に全国の価格を戻して、そして安いところから品不足のところに品物を供給するような施設を今度の予算で取りましたことは御承知のとおりであります。ああいうことは、諸外国でも成功いたしておりますように、われわれとしては価格を安定して供給するための流通機構の一助としてはたいへんに効果があがるものではないか、このように考えております。
  224. 広沢直樹

    広沢(直)委員 まず流通機構の問題として第一にあげられますのは、やはり中央卸売り市場の大増設であろうと思われるわけであります。中央卸売市場法によりまして定められた人口十五万以上の設置該当都市というのは八十八都市を数えるわけでありますが、その中で中央卸売り市場を設置しているのはわずかに約三分の一、二十五都市になっているわけであります。食料品の流通と価格安定の上で、やはりこういった問題が大きな一つの壁とも言えるわけでありまして、今日までの政府の中途はんぱな年次計画を根本的に修正していかなければならぬ。全国的に市場配置の構想基準を示して、やはり関係地方公共団体に設置を促していくとともに、こういった問題をすみやかに実現さして、運営を全面公営にすべきである。  また、時代が要求しているのは、全国に適正な人口と距離に見合った市場を行き渡らせることになると思うのでありますが、また、その市場自体の機能、これも適正化していかなければならない。十二分に公営市場としての機能を発揮できるようにしていくことも先決であろうと思われるわけでありますが、大臣のお考えを承りたいと思います。
  225. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 農林省で考えております考え方につきましては、大体ただいまお話しになりましたような流通機構の整備であります。
  226. 広沢直樹

    広沢(直)委員 次に、農政の中で特に補助金の合理化、補助金の問題についてお尋ねいたしたいと思う次第であります。  何と申しましても、農業経営の安定、あるいはまた生活向上のためには、その保護育成というものに対して積極的な処置がとられなければならない。先ほど申し上げましたとおり、他産業に比べて生産性が非常に低いわけで、採算がとりにくいわけでありますが、この経済成長の陰に取り残されたといいいますか、現実には大きな格差を持っております農業に対して、やはり国家的な保護、こういったことを必要とするわけでありますが、その一つの中にやはり補助金の行政があるわけであります。ところが、現実的にはこの補助金行政というものが総花的になっているのではないか、あるいは、零細的になってきているのではないか、こういうことが考えられるわけであります。そこで、総花的、零細化とともに、もう一つ問題になるのは、適正にその補助金の行政が行なわれているかどうか、こういった面も一つの問題になるわけであります。  まず一つの例をあげて申し上げてみたいと思うわけでありますが、この補助金の中に草地改良事業補助金というのが十一億幾らか組まれております。当然これも流通飼料の値上がり等の観点から考えましても大いにこれを推進していかなければならない、これは当然のことであります。しかしながら、ややもすると、従来こういった問題の中で過去からもう二、三の例がありますとおり、補助金は出したけれども、現実の問題としてそれが適正に使われてないんじゃないか、草地改良事業でありますから、牧場をつくっていく、しかしながら、その畜産のほうへ力を入れていかなければならないそういう事業のほうが、現実的にはいろいろな周囲の関係から壁にぶつかっているのではないか、こういった二、三の例もあったわけでありまして、現在も一つ問題になっておるところがあるわけであります。  それを一つ例にあげて申し上げますと、山口県の熊毛郡上関町に草地改良事業補助金が昭和四十年予算から支出されておるわけであります。その上関町町営の預託牧場の問題については、現在その補助金が四十一年に支払われたきり、あとはそのままになっている、何かそこに問題があるんじゃないか。したがいまして、この預託牧場の事業計画、そしてまた現状をひとつ説明願いたいと思う次第であります。
  227. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 補助金につきましては、臨時行政調査会の御意見もありますし、政府全体としては、これの効果が上がるような補助金をやるべきであるということで、農林省といたしましてはその方針を尊重いたしまして、比較的効果が上がりそうもないものはどんどん整理してまいっておるのでありますが、一方において、予算編成に際しまして、地方の国会議員さんたちその他から、補助金についてぜひ、少額ではあるが、これはこれこれの理由で非常に地方農業発展のために必要なものであるという要望をされたようなものについては、これを維持しておるという現状であります。  ただいま御指摘になりました山口県の特定の事項につきましては、事務当局から御報告いたします。
  228. 桧垣徳太郎

    ○桧垣政府委員 お答えをします。山口県の熊毛郡上関町の小規模華地改良の経緯と現状でございますが、この地区は、昭和三十九年度に上関町が山口県を通して小規模の草地改良事業として申請がされ、四十二年度に採択されたものでございます。  まず事業計画につきましては、町有地三十ヘクタールの土地に十八ヘクタールの草地を造成し、町内の農家を対象とします預託育成牧場を建設しようとしたものでございますが、当初の総事業費は八百万九千円という予定でございまして、国庫補助金は三百五十一万八千円を期待をいたしておったのでございます。  次に事業実施の経過を申し上げますと、四十年の六月に事業実施を承認をいたしておるのでございますが、当初は単年度事業として申請があったものでございます。その後同年の十月に町の申請によりまして、四十年度は牧道のみを実施をいたしまして、残りの草地の造成、牧さくの設置は四十一年に実施することにいたしたいというふうに申請が改められたのであります。したがいまして、四十年度には牧道の事業費三百七十五万円に対しまして国庫の補助金百六十九万円、これは四五%の補助率に相なっておりますが、これを交付をいたしました。で、四十一年の三月に県が牧道の竣工検査を行ないました際に、施工地区内に計画書にない施設がございましたので、それについて県側から町にその事情をただしました結果、町の所有にかかるものでない施設が一部ございましたので、今後の事業が計画どおり実施できるかどうか疑義が生じたということで、県としてはそれが明らかになりますまで次の事業をストップする、また計画どおり進まないということであれば補助金につきましては例規に従いまして措置をするということで、町の態度を待っておるというのが現状でございます。
  229. 広沢直樹

    広沢(直)委員 農林大臣、いまお聞きのとおりでありまして、現実に四十年度において行なわれていくこういった草地改良事業の補助金というものが、今日二年を経過してそのまま問題として推進されてないわけであります。したがいまして、これはこういった期間内においてどういった問題が起こっておるのか、なぜこれがいま言ったような種々の問題が起こって推進しない、ただその一言でこの二年間そのままに放置されていいものであろうか、私はそう思うわけであります。したがいまして、ここに問題が起こっているというのはどういう問題でありましょうか。やはりこういった一つのことをきちっとしていくことが——全般にわたります補助金の行政に対してきびしく監督もし、適切にそれが使われていくようになっていかなければならない。特に補助金はひもつき財源でありますので、当然それについては国の責任があるわけであります。ただ出しておけば、あとは切り取りごめんでそれでいいんだ、こういった筋合いのものではない。そういうわけでありますので、いまこういった問題、どういうような問題が起こっているのか。私はなぜこれを言っているのかというと、過去にも二、三そういった例があった、それがこの二年間も工事がストップしてしまっている、こういったことで、予算としてまた出さなければならないはずであります。予算をつけたまま、そのままになっておる。そういった点から、この問題点がどうなっておるのか、あらあら御説明いただきたいと思うのであります。
  230. 桧垣徳太郎

    ○桧垣政府委員 先ほども申し上げましたように、この上関町の小規模草地改良事業につきましては、四十一年三月に牧道の竣工検査をいたしましたときに、町の所有にかからない施設が当該地区内に建設をされておったということでございますので、将来の事業が計画どおり行なわれるかどうかに疑問があったということで、翌年度、四十一年度の事業について助成をしなかった。その後、当初計画どおりやるのであるのかどうか町の態度をただしておるというのがいまの段階でございます。それにつきましては、現在上関町自身も態度を明確にすべく町内の意思をまとめておるというふうに報告を聞いております。
  231. 広沢直樹

    広沢(直)委員 そういった問題の、こちらで初め申請のあったとおりではなかった。しかし、この目的というのは、先ほど説明がありましたとおり、町営の預託牧場であります。町営の預託牧場であれば、当然それをつくって預託していくことになろうと思う。決してそれはおかしい筋合いのものではない。ですから、当然その預託牧場としての目的で補助金の申請がなされているとするならば、どこへ預託していくのかということは、これははっきりしなければならない問題だろう。町が言っているから、どこへしようとそんなことはどうでもよろしいというわけにはいかないと思う。これは草地改良事業の上から考えていきましても、当然これを推進していかなければならない。畜産推進の上におきましても、どこでどういうようにやっていくのか、こういったことは当然のこととして知っていかなければならない問題だと思う。したがいまして、どこがこれを預託されておったのか、お伺いしたいと思うのです。
  232. 桧垣徳太郎

    ○桧垣政府委員 お答えを申し上げます。預託牧場と申しますのは、当該地方公共団体内の農家が持っております家畜を預かって放牧をして、ある期間育成をするという趣旨のものでございまして、牧場の建設自身は、少なくとも補助事業につきましては上関町がみずからその責任主体となってやったことは間違いがないのでございます。
  233. 広沢直樹

    広沢(直)委員 一つの問題点といたしましては、確かに預託というのは預かるところでありますけれども、現在これをつくりかけたといえばそれまでかもしれませんが、現実にはこの二年間においてやはり放牧がなされているわけでありまして、現在は六頭とか八頭とかいっておりますが、非常に牛がおらない。やはりこういった問題のままずうっとこれは尾を引いているわけであります。したがいまして、当然、これはやはり問題になった以上は町で解決してこいというのではなくて、零細かもしれませんが、小規模のこういう草地改良事業として多くの支出金がまとめますと出てくるわけでありまして、これをやはりどこが経営していくようになるのか。聞くところによりますと、町は使用収益権を設定して、ある会社にこれを委託してやる、こういわれておるわけであります。また現在のその牧場地を、町有原野であったものを、やはりそういったある会社に預けている、貸している、そういったようないろいろな事実もあるわけでありますが、やはりそれ自体が問題というよりも、なぜそういった行政が停渋している問題に対して、どういうようになっておるのか、具体的な調査はしたのか。ただ単に町がやってくるまで、いわば鳴くまで待とうホトトギスで、解決してくるまでは、もう二年間たっておりますが、何年もこれをほうっておくつもりなのか、こういった問題に対して、農林大臣、お答えいただきたいと思います。
  234. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 補助金申請の目的に反した用途に使っておるといたしますれば、政府としてはその補助金の返還を命ずるつもりであります。
  235. 広沢直樹

    広沢(直)委員 いまお答えがありましたが、補助金用途の目的に反する使い方をしておったならば返還を求める、当然なことだろうと思う。ですから、私が聞いているのは、二年間もこれが経過をしておるわけでありまして、現実的にこういった問題を残していけば、ほかにもやはり問題が出てくるのではないか、こういったことを考えた上で申し上げているわけでありまして、これが問題であるのかないのか。すでに第一回の牧道ができたときに、四十一年でありますか、これは竣工検査に行っておりますし、できたらまたこれは検査に行かなければならない、当然行かなければならないと思う。したがいまして、これは一体どういつだ形でこれが経営を、この改良事業というものがなされていく形態になっておるのか、これをお聞きしているわけなのです。ただ町が預かっているというだけでは納得しかねる問題であります。町がやっていくのだというだけでは納得しかねる。なぜならば、町自体がそういった問題を引き起こしておる。どういうわけで、どこのほうへ委託して、あるいは経常さしていくのか。だから、こういう目的でやっていくのだから当然補助をいただきたいというなら、それはその上で調べて、筋が通るでありましょう。しかしながら、町営の預託牧場であるとしてやりながら、現実は預託牧場になっていない、そこに問題があって困っている、こういった問題であります。したがいまして、この現実の問題もお知りになっていらっしゃるとは思うのでありますが、それならば、こういった問題は適当なのか適当でないのか、ここでこういった問題を全部一ぺん教えていただいてもけっこうでありますけれども、現在この問題は適当なのか適当でないと判断しておられるのか、この点お伺いしておきたいと思います。または、将来この町営の牧場が町営でなくなって、ほかのどこかある会社のほうなら会社のほうへこれが使われていく、一応は初めは手をつけるけれども、これは別な会社に経営させていく、なぜこういった問題は——聞くところによると、赤字になっていく、したがってこの牧場の経営についてはやはり市町村あるいは農協、そういった団体によってこれがなされていく、こういわれているわけでありますけれども、やはりこれ自体についても経営ができないのじゃないか、それで別の会社にやらそうとしたのではないか、そういったところに一つの問題点があって、これがとまっておるのではないか、これははっきりなさるおつもりでありますかどうですか。
  236. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 ただいまのお話のことにつきましてばかりではありませんで、中国四国農政局におきましては、常にそういう問題について管内のことをよく調べておりますし、いろいろ中央に報告もいたしておりますが、そういう問題につきましては、当初の目的のとおり、しかもわれわれのほうとしては草地造成というのは非常に必要な事業でありますから、なるべくそのほうにうまくやってもらうように考えておったわけでありますが、ただいまいろいろな御指摘のような問題もあるようでありますので、なるべく早く調査をいたしまして、措置をいたしたいと思います。
  237. 広沢直樹

    広沢(直)委員 こういった問題は、いま一つの例にあげたわけでありまして、要するに補助金の行政は、特に農政の上においては、先ほど冒頭に申し上げましたとおり補助が多いわけであります。こういった疑わしい問題あるいはまたせっかくの事業を推進していこうという問題に差しさわっていくような問題が起こってこないように、補助金の適正化、そういったことについては力を入れていっていただきたい、こう思うわけであります。  次に、最後になりますが、公害の問題についてお尋ねしておきたいと思うわけであります。  御承知のように、現在の人口の都市への集中化あるいはまた産業の発達、言うまでもなく都市交通の発達等におきまして、非常に公害の問題が、空気汚染の問題にいたしましても河川汚濁の問題にいたしましても、起こってきているわけでありますが、この問題に対して、ようやく公害基本法というものを制定しようとしておるわけであります。しかしながら、この公害基本法の根本の趣旨というものの、ポイントをどこに置いているのか。まずこの点について、特に総理はこの公害の問題について、人間尊重ということを言っていらっしゃるわけであります。昭和四十一年の末でありますか、そのころに、特に国民生活の安定、健康の上からも、この公害問題に対しましては、国民の福祉に責任を負う、断じて放置はいたしませんというようなお話もしていらっしゃるわけでありますが、このことについて、基本方針について、ひとつお聞かせいただきたいと思うわけであります。
  238. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 公害の問題につきましては、いま結論から先に申し上げますと、公害対策基本法ですか、公害防止基本法ですか、そういうものを国会に提案いたしまして御審議をいただくことになっております。  この公害問題は、私が申し上げるまでもなく、もうすでに始まっておる。大気汚染あるいは河川汚濁、騒音その他、とにかくもう始まっておる。したがいまして、現在すでに始まっている公害、そういうものにはいかに対処するかということも一つございます。しかし、何といっても、これから先公害を発生するような危険な事業に対しましてどういう処置をとるかということ、これがその骨子になるのだと思います。そこで、現在のもの並びに将来のものにつきましての原因発生者の責任、これを明らかにすること、これはもう事業者でございます。しかして、また、同時に、なかなかその事業者自身の責任で片づかないような小さな公害、それがたくさん集まって大きな公害を発生しておる、こういう原因者の責任だけでもいけないものもございますから、そういうものに対しては国あるいはまた地方公共団体、これがどういうように対策を処置するか。国あるいは地方公共団体の責任というものを明確にしたい。事業者はもちろんです。そういう事柄。こういうところから、またさらに、これが法律の中に入りますかどうか、いろいろ研究しておることだと思いますが、土地の利用計画あるいは工場立地等についても、ある程度制限を加えざるを得ないのだろう。これらのことを勘案いたしまして、相当広範になるものでございます。もちろん、これは最終的に人間尊重、そういう立場でやらなければならない問題でございますが、同時に、このきめ方によりましては、産業の発達にも非常な影響のあるものだ、かように私、思いますので、基本法制定につきましては各界各層の衆知を集めて、そしてりっぱな、他の先進国にも負けないようなものをつくりたい、かように思っております。
  239. 広沢直樹

    広沢(直)委員 まずお伺いしたがったことは、要するに公害の問題については、当然国民の生活、健康の保持、そういった問題が出てまいりますし、ある一面においては、また、産業の健全な発展、こういった二面の問題があるわけであります。したがいまして、このポイントをどこに置くか、基本法の精神というもののポイントをどこに置くかということによって、これははっきりしていかなければならないと思うわけです。したがいまして、そのポイントをどこに置いているのか。たとえば、この前の試案として出してきた、厚生省が出しているこの試案要綱の中には、ほとんど人間尊重、国民の生活ということを根本にして、この基本法は目的としてつくられようとしております。次の公害対策推進連絡会議、後にこれは公害会議というのですか、対策会議という名称に変わるのかもわかりませんが、その中によりますと、今度は、「国民の生活を公害から保護するとともに、経済の健全な発展との調和をはかる、」これは確かに文句はそのとおりであります。しかし、このポイントを国民の生活保持の上から、もしも公害が起こってきた場合、やはり協調をとっていかなければならない。会社のためにしかたがない、そういう矛盾が起きないように、どこにポイントを置いて考えていくのかというと、人間尊重なのか産業なのか、そういった基本の問題をお伺いしたいわけであります。
  240. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 人間尊重と産業開発、これらのものが対立するわけのものではございません。私どもの経済活動も政治活動も、すべてが人間尊重、人間を目的にして、その生活の向上、福祉をはかる、これに寄与するように持っていかなければなりません。したがいまして、ただいまのような人間尊重と産業開発、これは対立するような考え方ではございません。
  241. 坊秀男

    ○坊国務大臣 公害基本法につきましては、先ほど来総理からお答え申し上げたとおりでございますが、私からも補足をさせていただきます。  公害基本法のポイントはどこか、こういう御質問でございますが、もともと公害基本法は、公害から国民の健康、生活環境というものを守っていこう、こういう趣旨でございまして、公害基本法の目的とするところは、いずれにいたしましても国民の健康である、こういうことでございますが、国民の健康を守っていくためには、国民の生活環境というものを守っていく、この生活環境というものを守るあり方といたしましては、これは産業を無視していくわけにはいかない、そういったようなあり方として産業との調和をはかっていく、こういうことを考えておるわけでございますが、まだ、関係各部面におきまして公害基本法についていまいろいろの御意見も承り、いろいろな方面とも連絡調整をとっておる過程でございますが、いずれ成案ができましたならば、国会へ提出いたしまして御審議をお願いする、こういうことになっております。
  242. 広沢直樹

    広沢(直)委員 いま答弁を伺っておりますと、簡単に言いますと、要するに、もしも公害の問題が起こってきた場合においては、やはり国民の健康あるいは生活、そういうことをまず第一に基本に置いて考える、こういうことでありますね。  そこでお尋ねしておきたいことは、いままでの現実の問題において、先ほどお答えいただいたとおり、生活とわれわれ国民の活動、また産業の発展というものは決して矛盾するものではない、それはそのとおりです。しかしながら、公害の問題については、やはり工場がどんどんできてくると、現実の問題として、前にもありました四日市病というのでありますか、また足尾銅山、こういった面にもいろいろな問題が出てきております。したがって、産業発展の陰には、いま言ったように、現在の生活を圧迫していくそういった問題が出てくるから、要するにこの公害基本法をつくろうとしているわけであります。ところが、いままでの対策というのは後手後手になってきている。起こってからどうしようかということですが、公害の問題は、とうの昔からわかっている問題であります。したがって、いまこの問題がおくれてきたのはどこかというと、産業発展の陰にこういったものはむしろ目を向けられてきてなかったのではないか。それは各地方、都道府県においても、公害の問題を全然扱わないということはない。あることはあるけれども、現実的にはどこへ訴えていっていいかわからない。泣き寝入りという現状が、いま言った大きな問題でいえば四日市の問題、足尾銅山の問題、そういった問題に出てきているわけであります。したがって、今度問題が起こってくる場合においては、せっかく基本法ができておるならば、そのポイントを、やはり問題が起こってきたときには、あとに規定がいろいろあるわけでありますけれども、責任範囲というものをはっきりしていただいて、まず第一に国民の健康、生活を保持するという意味における基本法の精神であるかどうかということを再度確認しておきたいと思うわけです。総理にお願いいたします。
  243. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 今日までのものにつきましては、いろいろ批判があると思います。経済成長、経済拡大、それに専念した、そういう結果、人間尊重の基本的な考え方がどうもはっきりしなかった、そういうところに欠陥が出てきたと思います。これからは、その目標をはっきりさせまして、そして、ただいま原因発生者、これは事業者です。それがまず第一の責任者であることは当然でありますが、しかし、国や地方公共団体の責任もまたあると、かように考えるから、先ほどのように説明をいたしたわけであります。十分御審議をいただきたいと思います。
  244. 広沢直樹

    広沢(直)委員 これはいまここへ提案されておりますので、あらあら読んで、その本本法の精神というものをはっきりしておかなければならない。そういうわけで、これは後々の具体的な審議になってまいろうと思うわけでありますが、やはり人間尊重をまず第一番に言っておられる総理のこういった問題に対する基本姿勢というものを考えていかなければ、いままでの姿勢というものは、やはり産業保護の陰には過密化の問題も当然出てくる、そういった陰には、やはり泣き寝入りという問題も起こってきているし、問題が起こってからあわてて厚生省はその手を打っていくというような段取りになってきている。やはりこういったものの一元化をはかってやっていかなければならないと思うわけであります。ただ、この条文一つ一つの問題について、こまかくなりますけれども、やはりこういった環境の問題が起こってきた場合には、ことばの文句でありますけれども、その各項に規定されている——読んでみますと、まず政府はいろいろな公害が起こってきた場合には「その他の施策を総合的かつ有効適切に講ずることにより第一項の基準が確保されるよう努めなければならない」、要するに、問題が起こってきた場合は、それをやらないようにつとめなければならないというような趣旨なんです。公害を起こしたほうが悪いのだという一つのはっきりとした罰則の規定といいますか、それがそもそも産業の圧迫になるかといいますと、そうではない。当然そこにやっていく場合は、環境を考えてやっていかなければならない。先ほどお答えがあったとおりでありますが、そういった問題について、もう一ぺん姿勢をお伺いしたわけであります。  もう一つの問題としては、この公害の問題というのは、各省にいろいろまたがって問題がある。経済企画庁関係もありましょうし、また厚生省関係もありましょうし、建設省関係もありましょうし、こういったばらばらの行政であったならば、これは決して推進ができない。やはりこういった問題に対しては一元化をはかっていく、より強力な体制でこれを解決していくところをつくっていかなければならないと思うわけでありますが、そういった考え方についても、いままでのおざなり的なような、ただの会議というのではなくて、それをきちっと処理していくだけの精神に立ってやっていかなければならない。そういう面におきまして、いまお伺いしたとおり、まず第一点は、人間尊重を中心にしてやっていくのだ、そうして、こういった公害問題には今後抜本的に取り組んでいくのだ、こういう一つの姿勢をはっきりしておいていただきたいと思うわけであります。
  245. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 別に答弁を求められなかったようですが、いま広沢君が御指示なさいましたような意見をこれから取り込みまして成案を得るのであります。まだ内閣といたしましても成案を得ておりません。ただ、お手元に差し上げてあるのは要綱の程度ではないかと思います。いずれ成案を得まして、十分御審議をいただきたいと思います。
  246. 広沢直樹

    広沢(直)委員 以上で質問を終わります。
  247. 植木庚子郎

    植木委員長 これにて広沢君の質疑は終了いたしました。  次会は、明二十九日午前十時より閉会することとし、本日は、これにて散会いたします。    午後五時三十七分散会