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永井勝次郎君 私は、
日本社会党を代表して、
昭和四十二年七月
豪雨の
災害に対する
お尋ねをいたしたいと存じます。
質問に先立ちまして、今回の
災害によって
人命を失い、
財産を流失し、多大の犠牲を受けられた
被災地域の
罹災者の
皆さまに対して、党の名においてつつしんでお悔やみとお
見舞いとを申し上げる次第であります。(
拍手)
災害に対しましては、
現地の人心を安定させる、社会不安を取り除く、緊急の
措置を行なう、こういうような事柄でとりあえずの
処置が例年力を入れて行なわれますけれ
ども、その後において、この
災害を再び起こさないような、恒久的な、抜本的な
対策については、いつの間にか忘れて、これが繰り延べされておるのが実例であります。今回はそのようなことのないように、特に戒心して
努力をいたしていただきたいと思うのであります。
第一に、佐藤総理に
お尋ねをいたします。
今回の
災害の特徴は、
都市災害である、山地が崩壊しておる、
中小河川が大荒れに荒れた、商業
関係の損害、
個人災害が非常に大きい、あるいは公共施設の損害は少ないが、土砂のあと始末であるとか、あるいは崩壊した
宅地のあと始末とか、そうしたものが非常に多いというようなことが特徴的なものと見られております。これらについて、総理はどのように分析し、把握されているか、明確に
お答えをいただきたいと存じます。
第二は、今度の
災害は天災か人災かということであります。
確かに今回の雨は短い時間に局所的に大量の雨がありましたことは事実であります。
原因の何%かは雨によるものであることはいなめないのでありますが、この種の
災害は連年のように繰り返されておるのであります。
神戸の
現地について見ますと、
昭和十三年の
災害における
対策として当時三千万円の
予算で
対策が進められました。六割が完成したところで戦争に逢着して、四割がそのままに残されております。工事完了した六割の地帯は、今回土砂を押え、流木を押え、大きな水はどんどん飲んで、びくともしない状態に完成されておるのであります。今回の
災害は、残された四割の工事未済の部分に集中して起こっておる事実に照らしましても、いかに政治が責任を負わなければならないかということを、明確に実証しておるところであろうと思うのであります。(
拍手)
また、島根の
災害にいたしましても、山梨の
災害にいたしましても、連年われわれに教訓をしておるのであります。経験を与えておるのであります。これが少しも事後の
災害に生かされておらない、このことは強く反省をしなければならないところであろうと思うのであります。
また、
災害の起こりました地帯は花こう岩の地帯であります。第三紀層の地帯であります。これは治山を行ない、治水の工事を進めまして、できるだけ
現地の崩壊を防ぐことが科学的な思考に基づいた常識的な
措置であろうと思うにもかかわりませず、
現地はその逆をやっております。こういうところにどんどん
宅地の造成をやって山をくずしておる。あるいは六甲の奥のほうに広大なゴルフ場を
建設しておる。今回崩壊して十四人が生き埋めとなったのは、こうしたゴルフ場の場所の崩壊によるのであります。
また、大阪の実例を見ましても、ほんらんした
河川の奥の万博の敷地百万坪、それに隣したニュータウンの敷地数百万坪、こういうところが木を切り、いろいろな土地を起こし、自然の
条件が破壊されておるのであります。
河川は、
中小河川といえ
ども自然の中に安定しておるのでありますから、その沿線、奥地の自然の
条件が破壊された場合は、その自然
条件を破壊したに見合う
河川に対する負担の施工をしておくというのが、これが常識であろうと思うのであります。(
拍手)それを放置しておくのでありますから、一たび異常の雨でもまいりましたら、今回のような
災害が繰り返されることはあたりまえのことでありまして、これらに対して、私は、責任を雨に転嫁して政治の責任を回避する、人災であるという反省を怠るということは断じて許せないことと思うのであります。(
拍手)
第三は、
災害対策基本法は、
災害の
予防をする、
災害に対する
対策を確立する、あるいは恒久的な
対策を行なうということで、その責任の所在を明確にすべきことを法定いたしておるのであります。しかし、このことは、単に行政区分の責任の所在を法定したものではなくて、
一般的な政治の責任を明確にすべきことを要求されておると思うのであります。
大雨が降ればすぐ何十人という
人命がそこなわれる、何百億という損害が起こる、大風が吹けばまた同様、このような連年の
災害があたりまえのように放置されておることに対しましては、これは法定された内容からいたしましても放置すべきではないと存ずるのであります。この点における佐藤総理の責任の所在に対する明確な御判断を承りたいと存ずるのであります。(
拍手)
次は治山
対策についてであります。
今回の六甲における
災害の
実情を見ましても、治山の
整備されておるところは大きな流木を山元で押える、土砂の流出を山元で押える、こういうことで
災害を最小限に押えておるのでありますが、治山の
関係を見ますと、三十五年から三十九年の五カ年
計画は事業量に対してわずか五八%の達成率であります。四十年から四十四年のただいまの五カ年
計画は、三カ年経過の中で事業量にして四〇%の達成に至っておりません。連年これだけの
災害を受けながら、これに対する抜本的な
対策を講ずると言いながら、事業の
計画量の半分前後より達成していないという、こういうことは政治上の怠慢であるといわれても私は
答弁の辞がなかろうと思うのであります。
また、林地崩壊
防止事業は、これは全国一万八千カ所が
調査されております。これに
所要する
予算が一千億と見込まれております。これに対して、本年度五億の
予算がつけられました。との五億の
予算で計算いたしますと、現在の危険
個所を固定して
考えましても二百年かかる計算になるのであります。問題は、百年単位、一世紀単位で
考えなければならないというような、こういう内容で、どうして現実の
災害に対応することができるか、これを明確にしていただきたい。
さらに、
河川関係で見ますと、四十年度の
予算が二千四百七億、四十一年度が二千七百九十八億、四十二年度が二千六百三十九億となって、かえって
予算額は減ってきておるのであります。そうしてその内容は、事業量は
計画の四〇%に達しておらない。こういう状態では、私は、
災害のときのその場限りの
答弁に終わって、具体的には問題は少しも前進せず、さらに
災害を拡大する方向に推移しておる、こう判断せざるを得ないのであります。この点について
お答えをいただきたいと思うのであります。(
拍手)
次に、先ほど、今回の
災害は
都市災害であると申し上げました。
都市災害であるということは、
都市計画あるいは
都市に対する国の政策がほとんど手を抜いておる、こういう
都市の弱点に
災害が集中して起こってきたのであると私は思うのであります。
中小河川の問題を
中小河川全般の問題として取り上げている限りにおいては、先ほど来申し上げましたように、前進をいたしません。この影響力を
考えて、
中小河川一般から
都市河川としての特定をいたしまして、特にこれらに対する
対策を急速に行なわなければならないのではないかと思うのでありますが、この点に対する決意を伺いたいと思うのであります。
また、今回の
災害の
特色として
個人災害が多いのでありますが、
都市に
災害が発生した場合、
個人災害が多くなることは当然であります。したがって、
都市災害に対する特質と
個人災害に対するこれらの結果と照らし合わせまして、新たな側面から
災害対策を
考えていく、
都市対策を
考えていく、こういうことが必要な段階にきておると思うのでありますが、これに対する御所見を承りたいと思うのであります。
また、財源
措置についてでありますが、先般
予算委員会で、わが党の高田君の
質問に対しまして、総理は、財源は無限でないと申されました。私もそのとおりに
考えております。しかし、現在の
災害対策あるいは
治山治水、こうした
基本的な投資が、これが
日本の負担できる財政の最高限度であるとも
考えておらないのであります。ことに在外資産に対する二千億からの財源の捻出、山一証券に対する
個人営利会社に対する保証の何百億円の問題、これらに照らしましても、現実に何百の
人命がそこなわれる、何百億の
災害が起こるというこの緊急避けられない事態に対しまして、取り組む
政府の
姿勢といたしましては、もっと誠実な、もっと軽重と緩急とを
国民に納得できる立場で
措置されることが必要であろうと存じます。これらに対する総理の所見を伺いたいと存じます。
次は、大蔵
大臣であります。
災害対策については、結局財政の問題、
金融の問題、税金の問題になると思うのであります。これらについては既定の
法律の限界で、あるいはいろいろな従来の慣行という限度において、問題を処理いたしましては、私は緊急の現実の対応にはならぬと思うのであります。その意味において、私は、総理並びに各
大臣に
お尋ねをいたしましたそれらの問題について、最後のさいふのひもをどのように締めるのか、どのようにゆるめるのか、どういう覚悟でこの
災害に取り組むのか、大蔵
大臣の総合的所見を伺いたいと思うのであります。
次は
建設大臣。
宅地造成が今回の
災害を大きく誘導いたしておりますことは、現実の
調査で明らかなところと存じます。現在の
規制法が十分でないというなら、
人命に関する問題でもっと規制を
強化する
措置が講ぜらるべきだと思います。アメリカにおきましても川のふちに
住宅をつくっていけないというような
規制法が実行されておるのであります。こういうことを
考えて、私は、
宅地造成に対して一段の前進が必要であると思いますが、いかがでありますか。
さらに、治水五カ年
計画の改定、
都市河川の特定あるいは砂防等局部改良その他の問題が、今回の
災害によって大きく示唆されたと思うのであります。これらに対して、百年単位の
計画ではなく、現実のわれわれの時代に役に立つような
計画を示していただきたいと存じます。
次は農林
大臣。やはり治山事業に対する五カ年
計画の改定、あるいは
宅地造成について十分の効果をあげておらないという現実に照らしまして、ああいう地帯は保安林の網をかけて、もっと
国土保全、水源林涵養、こういった問題を処理する必要があろうと思うのでありますが、いかがでありますか。
さらに、樹園地がどんどん開発されて山にのぼっていっております。こういう
関係を野放しにしないで、テラスをつくる、排水路の工事をする、こういう問題について適切な規制と
措置が必要であろうと思いますが、いかがでありますか。明確にお示しを願いたいと存じます。
次は通産
大臣。今回の
災害の特徴が商店の
災害にある、約五十五億、工業二十五億、これは直接の
災害でありますが、
災害地域における間接
災害を合計いたしますと、相当大きなものになろうと思います。
融資の面あるいは利率の引き下げの問題、据え置き年限、償還年限の問題等、
金融の
措置をいたしますことはもちろん、もっと根本的にこれらの
個人災害、商店
災害等に対する
対策が必要であると思いますが、現実の
災害をどのように把握されて、どのように対処されようとしておるか、明確にしていただきたいと存じます。
次に運輸
大臣。今回の
気象の
観測は、
気象庁の話によりますと、現在の学問、技術、施設では局所の
大雨は
観測ができない、将来もできないであろうという
答弁でありました。できないことはやむを得ないのでありますが、できることをもっと充実してやるべきであります。それには
予報官の増員の問題であるとか、あるいは施設の充実であるとか、当面できることが非常にたくさんあると思います。それにもかかわらず、四十二年度の
気象庁の
予算は、前年十三億でありましたものが本年は十億九千万、かえって減額されております。これはどういう理由によるのか。
また、単に
災害だけではなく、農業の
災害に対する
予防措置といたしましても、北海道等冷害地帯における内陸
気象観測は、もっと充実し拡大していく必要があろうと思います。これに対する所見を伺いたい。
次は厚生
大臣。
災害救助法による
救助費用の単価が非常に低い。現実に合いません。一食百円ということ、あるいは生業資金として一万二千円ということ、あるいは医療として一週間という限定がありますこと等々、これは現実に合うような
措置が必要であろうと思うのでありますが、これに対する所見を伺いたい。
次は文部省。私は国立、公立、私立、これらの学校の
災害の
復旧はもちろんでありますが、銀閣寺その他名勝史跡が今度の
災害で相当に痛めつけられております。このような貴重な文化財に対する保存の問題、管理の問題が十分でないのではないか、こう思うのであります。これらに対する所見を伺いたい。
次は自治
大臣。
災害復旧費の
地方負担分に対する起債額のワクを広げること、それから起債の償還財源として
交付税
交付金の算定上の財源需要としてこれらを認めること、
市町村財政に対する特交の特別
措置、こうした
関係について
お尋ねをいたします。
次は
総務長官。これは今回の
災害によっても明らかでありますように、(
発言する者あり)明らかでありますように、全国に
災害が頻発しております。
災害あるごとに
交通が遮断される、あるいはいろいろな事態が起こっておるのでありますが、
非常災害に対する用意があるのかどうか。
それから、東京都その他にもし大きな
災害があった場合、この過密
都市になっております今日の
状況から見て、非常に重大な事態が想定されるのでありますが、そういうことに対してかねての用意があるのかどうか。東京都に大
災害があったという想定に立って、どのような用意と準備があるかを示していただきたいと存じます。(
発言する者あり)
次は防衛庁、防衛
大臣。今度の
災害においては非常に
現地は感謝されております。しかし、当初は人体を発掘するということに限定されて行動されたようであります。アメリカでは、工兵隊が動員されて……。