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1967-07-04 第55回国会 衆議院 本会議 第32号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十二年七月四日(火曜日)     —————————————  議事日程 第二十六号   昭和四十二年七月四日    午後二時開議  第一 日本専売公社法の一部を改正する法律案   (内閣提出)  第二 同一価値労働についての男女労働者に   対する同一報酬に関する条約(第百号)の締   結について承認を求めるの件  第三 関税及び貿易に関する一般協定譲許表   の訂正及び修正に関する千九百六十七年五月   五日の締約国団の第三確認書締結について   承認を求めるの件  第四 航空機工業振興法等の一部を改正する法   律案内閣提出)  第五 土地収用法の一部を改正する法律案(内   閣提出)  第六 土地収用法の一部を改正する法律施行法   案(内閣提出)  第七 公共用飛行場周辺における航空機騒音に   よる障害防止等に関する法律案内閣提   出)     ————————————— ○本日の会議に付した案件  倉石農林大臣農業基本法に基づく昭和四十一   年度年次報告及び昭和四十二年度農業施策に   ついて並びに沿岸漁業等振興法に基づく昭和   四十一年度年次報告及び昭和四十二年度沿岸   漁業等施策についての発言及び質疑  日程第一 日本専売公社法の一部を改正する法   律案内閣提出)  日程第二 同一価値労働についての男女労働   者に対する同一報酬に関する条約(第百号)   の締結について承認を求めるの件  日程第三 関税及び貿易に関する一般協定の譲   許表訂正及び修正に関する千九百六十七年   五月五日の締約国団の第三確認書締結につ   いて承認を求めるの件  日程第四 航空機工業振興法等の一部を改正す   る法律案内閣提出)  日程第五 土地収用法の一部を改正する法律案   (内閣提出)  日程第六 土地収用法の一部を改正する法律施   行法案内閣提出)  日程第七 公共用飛行場周辺における航空機騒   音による障害防止等に関する法律案内閣   提出)    午後二時六分開議
  2. 園田直

    ○副議長園田直君) これより会議を開きます。      ————◇—————  倉石農林大臣農業基本法に基づく昭和四十一年度年次報告及び昭和四十二年度農業施策について並びに沿岸漁業等振興法に基づく昭和四十一年度年次報告及び昭和四十二年度沿岸漁業等施策についての発言
  3. 園田直

    ○副議長園田直君) 農林大臣から、農業基本法に基づく昭和四十一年度年次報告及び昭和四十二年度農業施策について、また、沿岸漁業等振興法に基づく昭和四十一年度年次報告及び昭和四十二年度沿岸漁業等施策について発言を求められております。これを許します。農林大臣倉石忠雄君。   〔国務大臣倉石忠雄登壇
  4. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) 昭和四十一年度農業動向に関する年次報告及び昭和四十二年度において講じようとする農業施策につきまして、その概要を御説明申し上げます。  まず、昭和四十一年度農業動向に関する年次報告について申し上げます。  四十年度から四十一年度にかけてのわが国経済は、三十九年来の不況及びそれからの回復、さらには上昇という変動の過程をたどったのでありますが、このような景気の変動にもかかわらず、新規学卒者中心とする農家労働力流出食糧需要の旺盛な伸びという従来からの傾向には、基本的な変化は見られなかったのであります。  このような状況のもとで、四十年度における農業生産性及び農業従事者生活水準は、前年度に引き続き上昇を見、他産業との格差も引き続きやや縮小を見たのであります。しかしながら、このように格差が縮小した要因としては、不況の進行に伴い他産業における生産活動が低調であったことや、農産物価格が大幅に上昇したこと等の事情があずかっており、特に生活水準上昇は、兼業化進展に伴う農外所得増加に負うところが大きく、基調として格差が本格的に是正される方向にあるとは言いがたいのでありまして、生産性向上がなお強く要請される次第であります。  農業生産は、食糧消費高度化多様化傾向に応じつつ、選択的拡大基調を持続いたしておりますものの、農業労働力の急速な流出兼業化進展、冬作不作付地増加等に伴い、一部に停滞のきざしも見られるのであります。四十一年におきましては気象条件にも恵まれて、米の生産は四年ぶりに増加に転じましたが、農業生産全体としての停滞傾向に基本的な変化を生じたと言い得る状況にはないのでありまして、この結果、内容変化を伴いながら増大する食糧需要農産物生産が必ずしも十分に対応し得ない傾向が見られるのであります。今後、農業生産性の一そうの向上をはかりつつ、需要動向に即応した生産振興をはかることが必要と考えられる次第であります。  次に、農業経営動向について見ますと、農業就業人口は四十年度には前年度より三・五%減少して一千百八万人となり、農家戸数も四十年十二月現在で五百五十八万戸に減少いたしました。このような傾向の中で兼業化はさらに広範化し、農家数全体の七一%に達しております。他方農業に専念し、農業所得だけで勤労者並み生活水準を享受している農家も一部に育ちつつありますが、農地価格高騰等により、経営規模拡大への道は険しく、このような農家がその数を増し、農産物供給に占める割合を高めていくという動きは、現在のところなお微弱であり、構造政策推進の急務であることを痛感する次第であります。  以上のような農業動向にかんがみますとき、食糧の安定的な供給をはかりながら、同時に、その生産を担当する農家が社会的に均衡した生活水準を確保し得るよう、生産政策構造政策価格政策等の諸施策を有機的な関連のもとに総合的に推進することが、これまで以上に強く要請されていると考えられるのであります。  以上が第一部の概要であります。  次に、第二部、農業に関して講じた施策について申し上げます。  昭和四十年度を中心といたしまして政府農業に関して講じた施策を、おおむね農業基本法第二条に掲げる施策項目に従って記述したものであります。  最後に、昭和四十二年度において講じようとする農業施策について申し上げます。  政府は、ただいま御説明いたしました農業動向にかんがみ、農業近代化を一そう促進することが、わが国経済均衡がとれ、安定した発展を達成する上できわめて重要であることにかんがみ、農業基本法の定めるところにより、農業生産性及び農業従事者生活水準向上をはかるため、同法の定める施策を着実に具体化することを基本的態度として農業施策を講ずることといたしております。  このため、四十二年度におきましては、農業生産基盤整備農産物生産対策の拡充、生鮮食料品等価格安定及び流通改善対策の強化、農業構造改善推進農山漁村福祉対策等の充実につとめることといたしております。  以上、昭和四十一年度農業動向に関する年次報告及び昭和四十二年度において講じようとする農業施策について、その概要を御説明申し上げた次第であります。  次に、昭和四十一年度漁業動向に関する年次報告及び昭和四十二年度において沿岸漁業等について講じようとする施策につきまして、その概要を御説明いたします。  まず、昭和四十一年度漁業動向に関する報告書概要について申し上げます。  昭和四十年における漁業生産は、過去二カ年にわたる減少から回復し、六百九十一万トンと、過去の最高を記録いたしました。他方水産物に対する需要は、所得水準上昇とともに増大し、国内生産を上回る傾向にあります。このため、水産物輸入は、高級魚介類魚粉等中心として増加しており、また、水産物消費地価格は、高級生鮮品中心として上昇傾向が見られるのであります。  漁業経営体数就業者数は、昭和四十年には、経営体数二十二万余、就業者数は前年と同水準の六十一万余でありましたが、近年いずれも減少傾向にあります。沿岸漁家経営を見てまいりますと、その所得水準は、ノリの不作もありまして、昭和四十年度にはやや低下いたしましたが、近年の傾向としては上昇を示しております。中小漁業経営におきましては、昭和四十年度には概して収益性の好転した業種が多かったのでありますが、近年、業種間及び階層間における収益性格差が目立ってきております。また、就業者賃金水準はかなり上昇しておりますが、労働条件及び労働環境には、なお一そうの改善の余地があると考えられるのであります。  次に、沿岸漁業等について講じた施策に関する報告書でありますが、これは昭和四十年度を中心といたしまして政府沿岸漁業等について講じた施策を、おおむね沿岸漁業等振興法第三条の項目に従って記述いたしたものであります。  最後に、昭和四十二年度において沿岸漁業等について講じようとする施策概要について申し上げます。  ただいま御説明いたしました漁業動向を考慮しつつ、政府といたしましては水産資源維持増大漁業生産基盤整備を積極的に推進するほか、漁業協同組合の合併の促進漁業災害補償制度改善中小漁業近代化促進等を重点として沿岸漁業及び中小漁業振興をはかるとともに、水産物流通加工合理化沿岸漁業及び中小漁業従事者福祉向上につとめることといたしているのであります。  以上、昭和四十一年度漁業動向に関する年次報告及び昭和四十二年度において沿岸漁業等について講じようとする施策について、その概要を御説明いたした次第であります。(拍手)      ————◇—————  農業基本法に基づく昭和四十一年度年次報告   及び昭和四十二年度農業施策について並び   に沿岸漁業等振興法に基づく昭和四十一年   度年次報告及び昭和四十二年度沿岸漁業等   の施策についての発言に対する質疑
  5. 園田直

    ○副議長園田直君) ただいまの発言に対して質疑の通告があります。順次これを許します。實川清之君。   〔實川清之登壇
  6. 實川清之

    實川清之君 私は、日本社会党を代表して、ただいま説明のありました農業動向並びに施策に関し、特に農政に関する基本的な問題について、総理並びに農林大臣に御質問いたします。  農業基本法が制定されてから六年を経過いたしましたが、一体農業基本法成果日本農業に何を寄与いたしたでございましょうか。わが国経済高度成長政策進展に伴いまして農村人口は急激に流出し、専業農家減少兼業農家増大農業就業構造脆弱化農業生産停滞食糧輸入増大等々となってあらわれ、まさに農業危機ともいうべき事態を展開しておるのであります。  元来農基法が企図いたしましたものは、わが国農業をその零細性とおくれた生産方法から解放して農業近代化をはかり、生産性を高め、農業所得向上し、農家と他産業従事者との所得均衡を実現するにあったはずであります。農基法の申し子ともいうべき農業構造改善事業によって、農業基盤たる土地改良事業経営近代化施設導入等事業においては若干の前進のあったことを認むるにやぶさかではありませんが、構造問題の根本たる土地制度そのものには全く触るるところなく、したがって日本農業の宿命的な欠陥ともいうべき零細性の克服には何ら見るべきものがなかったのであります。自立経営農家の育成も単なる口頭禅に終わっております。零細経営の基礎の上に近代的農業のみごとな開花を期待いたしましても、それは元来無意味なことでございます。農基法のうたい文句の一つだった所得格差の解消もついにあだ花となったのであります。  かくて、農業の憲法として救世主のごとく全国の農民から絶大なる期待のもとに発足いたしました農基法について、今日だれ一人口にするものがない現状でございます。農民から全く見捨てられた農基法に対し、総理はいかに評価しておらるるか、あるいはこれを抜本的に手直しする御意思があるかどうか、お伺いいたします。  次に、食糧自給についてお伺いいたします。  農業白書は、「食糧供給国際収支農業者福祉等国民経済的要請から食糧自給率をできる限り維持することが望ましい」と述べております。食糧需要は年々増大しているのに、農業生産停滞し、輸入増加いたしております。したがって、国内食糧自給率昭和三十年八七%、同四十一年八二%であって、これを昭和三十五年価格に換算いたしますと七六%になると農業白書は報告いたしております。  また、最近の新聞報道によりますと、昭和四十一年度の工業原料を除いた農林水産物輸入実績は三十億六千五百万ドルでありまして、これは円換算いたしますと一兆円の大台を突破し、そのうち農産物だけで二十一億八千八百万ドル、輸入総額九十五億ドルのおおむね二三%であり、このことは、単に食糧自給の問題としてだけではなく、国民経済全体の問題としてもきわめて重大だと考えます。思うに、歴代政府農業を軽視し、一貫した政策なく、その日暮らしの農政を続けてきた当然の帰結でありますが、農基法の精神をじゅうりんするものであると申しても過言ではないと思うのであります。(拍手)  現在需給のアンバランスが拡大し、価格上昇する傾向の強い生鮮食料品はもちろん、主食である米を含めて輸入に期待することなく、国内生産を計画的に増強すべきものと考えますが、食糧増産自給に対する政府の御見解をお示しいただきたいのであります。  次に、当面の米価の問題についてお伺いいたします。  生産農民の求める米価は、生産費所得補償方式により算出された米価であり、再生産を保障するとともに、他産業従事者均衡のとれた生活を保障するものであることは、かねて御承知のとおりであります。しかるに、昭和四十二年産米価については昨年の秋以来論議され、財界を筆頭に学者やジャーナリストなど一斉に低米価農民に押しつけるための論陣を展開いたしております。それらの論議は、ややもすれば食糧問題を経済的視点からのみ取り扱わんとし、あるいは物価問題に籍口して米価を抑制せんといたしておるのでございます。特に最近の高物価において、生産性の低い農漁業等の一次産品の寄与率が高いということをもって、あたかも今日の物価高の原因が農漁民にあるかのごときことばすら聞かれるのでありますが、まことに本末を転倒した発言だと考えます。人々は今日日本経済の繁栄を謳歌いたしておりますが、戦中戦後の破局的な食糧危機にあたって、農民自由価格の半値または三分の一の捨て値で強権供出に甘んじてまいったのであります。これが日本経済の破綻を防ぎ、日本再建の大きな礎石となったことを忘れてはならないと思うのでございます。農業農民こそ日本再建の大恩人だと私は信じております。のみならず、今日の物価高歴代自民党政府の大資本、大企業本位経済成長政策の当然の結果であり、農業農民こそはその最大の犠牲者でございます。  いまわれわれが当面している四十二年産米価にいたしましても、米価算定の技術的な論議よりも政治的な発言が特徴的であります。いわく、米価審議会から国会議員を締め出せとか、国際比価が高過ぎるとか、あるいは物価高に拍車をかけるとか、消費者生活を圧迫するとか、あるいはまた食管の赤字がふえるなどなど、まさに百家争鳴、にぎやかな話でございますが、これこそ農業あるいは農民を袋だたきにしている姿ではないかと私は考えます。(拍手)  だが、農業の現実は、激しい人口流出兼業農家増大、出かせぎ日雇いの恒常化、不作付地増大など、すべて割りに合わない農業、食えない農業への抵抗の姿であります。米作地帯農家経営は、いまなお米作収入に依存し、米価成り行きいかんがその生活を左右している事実にかんがみ、生産費所得補償方式を厳守して、正しい米価を算定し、農民が出かせぎに出なくとも安心して農業に専念できるよう、強く政府に要請するものであります。米価に関する農林大臣の所信をお聞かせ願いたいと思います。(拍手)  次に、米価に関連いたしまして、農畜産物流通対策についてお伺いいたします。  農基法選択的拡大ということがいわれ、米麦作を抑制し、青果物畜産増産振興に力を入れておりますが、その結果、今日では園芸、畜産は飛躍的に発展しつつあります。構造改善事業もまたこの方面では一応の成果をあげたものと考えられます。だが問題は、かくして生産された物の処理についてはきわめておざなりのことしかやっていない。農民生産するのは自家消費のためでもなく、いわんや趣味でやっているのでもない。販売し、金にかえて生活をするために農業生産に励んでおるのでございます。自分でつくった物くらいは自分処理をせよとおっしゃるかも存じませんが、実はこの点が政府の手厚い指導と援助が必要な点であります。ところが政府は、この一番肝心なところで手を抜いておる、このように私は考えます。政府のこの手抜きで一番困っているのは生産者であります。同時にまた消費者も困っておるのであります。もうけておるのは中間の商人であります。たとえば牛乳一つをとりましても、農家庭先相場の三倍出さなければ、末端消費者牛乳を飲むことができないわけでございます。青果物、肉類など、いずれも生産者泣かせ、消費者泣かせの流通体系ができ上がっておるのであります。選択的拡大でじゃんじゃん物をつくらせながら、その流通対策については有効な対策を講じようとしないのは、明らかに政府の怠慢であり、農民いじめといわざるを得ません。政府のこの怠慢で、生産者消費者がともに泣き、喜んでいるのは一体だれでしょうか。  主要農畜産物については、現在ある種の支持価格制度がとられております。一般的な形といたしましては、御案内のごとく、上限、下限の安定帯を設け、事業団のごときものをつくって、下がれば買い上げ、上がれば放出して調整するという仕組みであります。利潤追求自由競争をたてまえとする無政府的な生産が行なわれておる現体制のもとでは、全くこのような方式が無力であることは先刻御承知のとおりであります。私から言わしむるならば、こんなざる法農民を欺瞞するためのものだとしか考えられません。  かりにこれらの法律農民保護のために良心的に運用されたといたしましても、その効用には一定の限界があります。農民が求めているのは、再生産を保障する安定した価格であります。価格変動の波のまにまに浮きつ沈みつして、食うや食わずの一生を送ってきたのが農民の実態であります。百姓とゴマはしぼればしぼるほど出る。百姓は生かさず殺さずといわれたのは、封建領主治民策だと聞いておりますけれども、今日の農民経済的地位はどれほど変化があるでありましょうか。もちろん農民生活内容は充実し向上してきたことは否定いたしませんが、その従属的被搾取の経済的地位はいささかも変化いたしておりません。昔は直接権力の強圧によって搾取されましたが、今日は複雑な経済仕組みで、資本主義的機構を通じて搾取されております。したがって、このような構造的な弱さを持つ農業は、国の保護なしには農業農民は立ち行かないと私は考えております。国が主体となって、生産流通消費の流れを規制する以外、農業の安定はあり得ないと考えております。主要農畜産物について、政府はその需要供給についての科学的な調査を行ない、その調査に基づいて緻密な生産計画消費計画を立て、もって生産者にはその再生産を保障する安定した価格を、消費者には安価で豊富な供給を約束するごとき積極的な農政を実行される必要があると考えますが、大臣の御所見をお伺いいたします。(拍手)  次に、政府がその振興に力を入れておる畜産物生産に必要な飼料の問題について、若干お伺いいたします。  畜産物価格はきわめて不安定であり、変転まことにきわまりないものがありますが、これが生産の根源である飼料価格は一貫して上昇傾向をたどっております。長期的、達観的に畜産農家経営を見ますと、原料高製品安という形がはっきり出ておるのでございます。ことばをかえて申しますならば、日本農民が営々として牛や豚、鶏を飼うのはアメリカの飼料資本を太らせる結果に終わっております。自給飼料指導奨励なり、輸入飼料に規制を加えるなり、何らかの有効な手を打って、畜産農民えさ地獄から救い出してやろうとはお考えになりませんか。講じようとする施策というパンフレットを拝見いたしましても、ほんの数行飼料問題に触れただけで、何も書いてございません。書いてあるのは、前々から言い古された、しかも実効のさっぱりあがらないことばかりで、きわめておざなりであって、積極的な熱意が全く受け取れないのはまことに遺憾であります。たとえば食管会計を拡充して、輸入飼料政府が管理し、価格の低下をはかるなど、飼料対策について農林大臣の御所見を伺います。  最後に、農村における生活環境整備についてお伺いいたします。  農村人口が急激に都市に流出して、農業危機が叫ばれております。青壮年男子労働力の不足は別といたしましても、あと取りの問題、嫁の問題など深刻な社会問題となりつつあります。このような現象は、基本的には、農業経済的な条件によるものとは考えますが、その反面、農村生活の文化的立ちおくれもまた大きく作用しておると考えます。政府の講じております施策を見ましても、生活改善指導、住宅、道路交通教育文化、医療、電信電話など手広く着手されておりますことはわかるのでありますが、端的に申し上げまして、やっと手がけただけで、内容的にはほんとうに申しわけ的なきわめて貧弱なものでしかありません。従来、国の農村施策は、農業生産にのみ片寄り、農村生活文化の面については全く放棄されております。予算の大幅な増額はもちろんのこと、まず農林省自体農村生活環境整備のために本腰を入れてやることが肝要だと考えております。農林大臣の御所見をお伺いいたしまして、私の質問を終わりたいと思います。(拍手)   〔内閣総理大臣佐藤榮作登壇
  7. 佐藤榮作

    内閣総理大臣佐藤榮作君) お答えいたします。  御承知のように、農政目標、これは申すまでもなく生産性の高い農業を確立して、そして国内食糧自給度を維持する、同時にまた、農業従事者生活向上をはかる、これが農政に課せられた使命だ、かように私は考えております。  ところで、農業基本法ができまして以来いろいろ各方面において努力されました。その結果、プラスの面もありますが、御指摘になりましたようにマイナスの面もございます。このプラスの面は、私が申し上げるまでもなく、機械化近代化が進んだことであります。人間の労働機械労働にかわった、こういう点は見のがすことはできません。また、専業農家もやはりそれぞれその分野においてでき上がっておりまして、こういうことは望ましいことでありますが、御指摘になりました農村労働力流出であるとか、あるいはまた兼業農家がふえたとか、そういう意味で、農業生産必ずしもわれわれが望むような傾向にはございません。増加さすというような方向ではなくて、低下しておる、こういう点で、私は十分の効果をまだあげていないことをうらんでおる次第でございます。  そこで、農業基本法を根本的に改正するかどうか、こういう具体的なお尋ねでありますが、農業基本法の示している方向は、これは私は正しいと思います。今日必要なのは、農業基本法の定むるところの方向施策を十分拡充整備することだ、かように私は考えておりますので、ただいま農業基本法を改正する考えは持っておりません。  なお、いろいろお話がございまして、ただいまも、自給度を高めること、あるいは米価、あるいは流通機構、あるいは飼料、さらにまた農村生活環境整備しろ、こういうようなお話、これは御意見を交えてのお尋ねでございますが、これらは農林大臣からお聞き取りをいただきます。(拍手)   〔国務大臣倉石忠雄登壇
  8. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) 食糧需要増大に対処いたしまして、食糧自給度をできるだけ高い水準に維持することを目標に、政府は、土地改良長期計画に基づきまして、生産基盤整備の計画的推進その他各種必要な生産対策を強力にいたしておることは御存じのとおりであります。これによりまして、米につきましては、今後必要量を国内生産でまかなうことが可能であると考えております。現在でもすでに九二%程度の自給度は確保いたしておることは御存じのとおりであります。しかし、国民の食生活動向等によりまして、畜産及び酪農事業につきましてはさらに一段の努力を必要とするわけでありますが、乳牛生産対策等を計画的に推進いたしまして、可能な限り生産増大をはかってまいりたいと思っております。その他野菜、果樹等については、もはや大体において充足いたしておることは、實川さん御承知のとおりでありますが、今後ともこういう自給度を高める点においては全力をあげてやってまいるつもりでございます。  四十二年産米のことについてお尋ねがございましたが、御存じのように食糧管理法の規定に基づいて、従来と同様に生産費及び所得補償の考え方によりまして、賃金、物価の動向等を的確に反映して決定する考えでございます。近く米価審議会の諸君をわずらわして、その答申を得て、なるべく早く米価を決定いたしてまいりたいと思っております。  それから、流通機構のことについてお話がございました。まことに大事な話でございまして、政府は、四十二年度予算におきましても、この流通機構整備し、生産消費均衡を維持できるように努力することが私どもの職責であると考えまして、新しい施策を打ち出しておりますことは御承知のとおりでありますが、今後ともこの生鮮食料について国民生活に及ぼす影響を重大視しております政府は、流通機構ということに御指摘のようにさらに格段の力を入れてまいりたいと思っております。  輸入飼料のことについてお話がございました。政府は、現在、飼料需給安定法によりまして、輸入飼料の一部を操作することによりまして、飼料の需給及び価格の安定をはかって、畜産振興に資しておるわけでありますが、この場合の食管会計による払い下げ価格は、原価にはかかわらず、国内飼料の市価その他の経済事情をしんしゃくいたしまして、畜産業の経営を安定せしむることを旨として定めるということになっております。したがって、四十二年度においても、この方向に沿って措置する方針でございますが、日本農政の中で、お話しのように、畜産、酪農についてはえさが非常にネックになっております。私どもは、これの自給度を高めるためにはいろいろな施策をもって、たとえば草地の造成等についても国有林野の活用等、その他草地の造成に全力をあげて、大体政府の予定に近づき得る生産を、飼料においてもまかなってまいるように鋭意努力を進めてまいるつもりでございます。  農政の全般についてお話がございましたが、ただいま総理大臣もお答えいたしましたように、私どもが六年前に農業基本法を制定いたしました当時においては、御同様、この議席をお持ちになる国会議員各位も、今日のように非常に高度の経済成長が行なわれて、そして日本産業構造にでこぼこがくるであろうということは予想しなかった人が多かったと思います。そういうことの結果、私どもとしては、いまの農業基本法の精神というものはどこまでもりっぱなものであると存じますので、こういう経済伸展の変化の中に処しながらも、やや低生産性であるという農業については均衡のとれた経済の発展のできるように努力をいたしてまいりたい。そのために、農業白書でも申し上げておりますような施策を全般的にやってまいるつもりでございます。  農村生活環境についてお話がございました。このことは全く同感でありまして、私ども農林省におきましても、生産対策価格対策整備いたすと同時に、やはり農村のあと継ぎをなさる若者たちの近代的生活環境整備するということが非常に必要であります。四十二年度予算におきましても、後継者育成資金の金額を非常にふやしたばかりでありません。そういうことのほかに、さらに生活環境整備することについても予算的措置をいたしまして、そうして若者たちに農村を守っていただくような施策を講じてまいりたい。その他、道路、住宅等についても同様な方向で努力をいたしてまいりたいと思っております。(拍手)     —————————————
  9. 園田直

    ○副議長園田直君) 神田大作君。   〔神田大作君登壇
  10. 神田大作

    ○神田大作君 私は、民主社会党を代表いたしまして、ただいま報告されました昭和四十一年度農業動向に関する年次報告並びに漁業に対する報告につきまして、質問を行ないます。  まず第一に、政府は、毎年同じように農業危機を白書において指摘しながら、何ら見るべき施策をしておらないというのは、一体真剣にこれら農業問題と取り組む気があるのかどうか疑わざるを得ないのであります。(拍手)  私は、まず第一に、総理大臣農政とどう取り組むつもりであるか、率直な見解を伺っておきます。  第二に、日本食糧自給は年々低下を続けております。三十五年に八七%でありましたところの自給度は、四十年には七六%と急激に下がり、したがって、農畜産物輸入は、いまや八千億円に達しております。その典型的なものとして、麦は国内需要の三分の二である四百三十五万トンとなり、家畜の飼料においては、実にその五六%である八百二十五万トンを外国から輸入しておるのであります。このような膨大な輸入を一方で見ながら、内にあっては貴重な農地が空閑地として放てきされている現状を何と考えておるのであるか。これら裏作を放てきした空閑地はついに二百七十四万ヘクタールに及んだのであります。これらに対して、政府は、農政重視のかけ声だけで、何ら見るべき施策をいたしておりません。これをして農業軽視の農政と批判されても答弁の余地はないと私は存ずるのであります。(拍手)  これらについて抜本的にして思い切った対策を立てざれば、日本農業はついに破滅におちいることは火を見るよりも明らかであります。一体政府は、これらの現実をどう考えておるか、また、日本食糧自給度をどの程度に守るつもりであるか、総理並びに農林大臣お尋ねをいたす次第であります。  第三に、私は畜産振興についてお尋ねいたします。  政府は、農業選択的拡大を唱え、畜産の奨励をいたしてまいったのであります。農民もこれらの勧奨に呼応して、酪農、養豚、養鶏等、あらゆる犠牲に耐えながらその拡大をいたしてまいりました。しかしながら、今日、これらの畜産物価格は低落をいたし、畜産農民は高い外国からの購入飼料によって今日赤字経営を続けております。しかるに、政府は、これらの畜産物並びにその加工品を外国から輸入いたし、国内価格の圧迫をいたしておるのであります。まさに日本畜産農民のための畜産にあらず、アメリカの飼料業者に奉仕する畜産であります。(拍手)  このように赤字経営に苦悩する酪農、養鶏、養豚を行なっている農民に対し、いかなる施策をもってこれを守らんとするのか、農林大臣の見解をただす次第であります。  第四に、私は品種並びに畜種の改良について大臣お尋ねいたします。  乳牛、豚、鶏等の畜種改良は遠く外国に及ばず、これら優秀なる種畜はすべて外国から輸入しております。乳牛においてはアメリカ、デンマーク、豚においては英国並びに北欧諸国、鶏に至ってはアメリカ種にほとんど席巻されて、日本系の鶏はその影をひそめております。畜種、品種等の改善に対し、一体いままで政府は何を研究していたのであるか、理解に苦しむものであります。政府はみずからの責任においてこれらの対策を立てるべきであると思うが、大臣の所信を伺います。  第五に、農産物流通機構改善が叫ばれてから実に久しいのであります。しかるに、今日、魚菜市場をはじめとして末端小売りに至るまで、何ら改善が行なわれておらないのであります。生産から卸、小売りを経て消費者に届くまでにはたくさんのむだと不合理があるために、安い生産物が消費者には高く渡るのであります。この現実を改善する努力をいたしておらないのであるが、これらの市場の施設の拡大近代化についていかに考えておるか、大臣の方針をお尋ね申し上げる次第であります。  第六に、私は今日の問題であるところの米価についてお尋ねいたします。  米は日本農業にとってその中枢をなしていることは言うまでもありません。また、日本食糧自給の第一は米であります。今日、農業者が、これら米価について生産費を補償し、都会の労働者に見合う米価を要求することは当然であります。都会と農村との所得格差をなくすことは、農業基本法において明記されているところであります。この意味において、米価はきわめて重要であります。政府が前向きに農業近代化施策をとらない限り、米価日本食糧自給のかなめとなることは当然であるからして、政府は、この重大な意義を持つ米価について、農民の切なる要望を考えて、すみやかにこれを米価審議会にはかり、これを決定すべきであると考えておるのでありますが、総理大臣並びに農林大臣にこの点をお尋ね申し上げます。(拍手)  次に、漁業白書に関連して質問申し上げます。  白書によると、十年後における水産物需要は年間一千万トンと推計されておりますが、わが国漁業の現状における総生産は年間七百万トン前後に停滞しております。しかも、国際漁場における漁獲の制限はますます強化される方向にあり、加えて、近海漁業は資源の枯渇と他国の漁船が進出することにより、大きな発展は望み得べきところではありません。また、沿岸漁業生産基盤が薄弱であり、総じて需要を満たす生産対策がきわめて不備であります。政府はこの実態の中から、いかにして需要に応ずる生産の増強をはかるのか、長期的な計画について、農林大臣の所信を伺いたいのであります。  第二は、農業従事者に対する施策でありますが、今日漁船労働者の経済生産の実態は、過酷な労働、危険な作業条件の中にあるにもかかわらず、賃金水準は低いのであります。しかるに、白書では、陸上中小企業の従事者三十人程度のものと同一視して報告しているのであるが、これは作業に伴う危険性と、長時間労働という特殊労働条件を無視したものであって、正しい見解とは言えないのであります。したがって、労働条件改善について、一段の施策と努力が要求されている実情であります。よって、政府は、漁業労働近代化に関し、船員法の適用範囲の拡大等、具体的な施策の用意をしていると思いますが、これについて総理大臣並びに農林大臣の明快な御答弁を得たいと存ずる次第であります。  最後に、日本の農漁村はまさに重大なる段階に来ておるのであります。若者は農村にとどまらず、農村の妻も母も農業に希望を失い、農村の嫁飢謹はまさに深刻であります。このような現状を打開し、希望のある新農村を建設するためには、わずかばかりの構造改善施策近代化対策では乗り切れるものではないのであります。農村基盤整備、社会施設の充実、農民年金、農業教育等を含めた画期的な総合施策を強力に実施してこそ、初めて明るく希望の持てる新農村の建設ができると思うのでありますが、このことについて大臣の所信をただし、私の質問を終わります。(拍手)   〔内閣総理大臣佐藤榮作登壇
  11. 佐藤榮作

    内閣総理大臣佐藤榮作君) お答えいたします。  先ほど實川君にもお答えいたしたのでございますが、農業基本法の定むるところによりまして、その方向政府はいろいろ努力しておる最中でございます。もちろん、まだ十分の効果があがっておりません。これは、この農業をめぐる実情と、それに対する施策、その施策のほうの効果は、しばらく時間をかけないとあがってこないのであります。したがいまして、その結びつきが十分でない、こういううらみはございますが、ただいま基本法で定むる方向、それに施策の充実改善をはかりつつございますから、しばらくその事態の推移を見ていただきたい、かようにお願いをいたします。  また、米価の問題についてお尋ねがございましたが、これは先ほど農林大臣もお答えいたしたのであります。私は、生産費及び所得補償方式、これを基幹にしてのものの考え方でございます。もちろん価格政策を加味してまいりますが、この価格政策にも限度があります。やはりこれは各関係者、生産者消費者も、また一般の方々も、全部が納得のいくような方法で価格が決定されなければならないと思っております。ただいま米価審議会等も発足しておりますので、その諮問の結果は政府の決定に必ず役立つことだ、かように私は確信しております。  また、漁業の問題について、船員労働と漁労者の賃金あるいは労働条件等についてのお尋ねがございました。確かに、御指摘になりますように、この漁業従事者の労働、また、その労働条件並びに賃金、これは一般船員とは、いま区別されております。しかし、船員中央労働委員会におきまして、ただいまこれらの問題と取り組んでおりますから、その検討の結果によりまして、政府対策を立てるつもりでございます。  その他は農林大臣からお聞き取りをいただきます。(拍手)   〔国務大臣倉石忠雄登壇
  12. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) わが国経済の高度成長に伴いまして、近年の農業動向には、きわめて激しいものがございました。農業労働力の急速な減少流出等、それから、そういうことのために兼業農家増加、それからまた、したがって農作業の粗放化、お話のような冬作不作付地増加、こういうようなことがございましたのは、自給率停滞が見られるというものも出てまいりましたことは御承知のとおりであります。  政府は、このような農業動向に十分対応することを旨といたしまして、今後とも農業取り巻く諸情勢の変化に応じまして、先ほど申し上げましたように、農業基本法の定める方向に従いまして、諸般の施策を拡充いたしてまいって、そして自給度を高めてまいることに全力をあげてまいるつもりでございます。  畜産についてお話ございました。實川さんにお答えいたしましたので大体御了承願いたいのでありますが、自給飼料生産を増強するということについては、これは先ほども申し上げましたように、政府は全力をあげてやってまいる決意でございます。  それから、品種改良その他農業技術のこともお話がございました。農林省の試験場におきましては、先ほど御指摘のように、機械化の検討をいたしておるばかりじゃありませんで、品種の改良については、神田さん御存じだと思いますが、世界的にも有名ないろいろな研究が発表されております。したがって、米はもちろんのことでありますが、飼料関係についても、こういう技術を生かしまして、品種の改良に全力をあげてまいりたいと思っております。それから、牛等についても御存じのとおりでございます。  それから、流通機構につきましては、先ほど私が申し上げましたように、農業政策のうちで、この流通機構については、国民全体の経済に非常に大きな関係がございますので、四十二年度予算ももちろんこれに力を入れておりますけれども、将来さらにこういう点については格段の努力を継続してまいるつもりでございます。  漁業お話がございました。漁業も、神田さんも御存じのように、いろいろな種類がございまして、国際的に非常な競争力を持っております。たぶん先ほど御指摘なのは、遠洋でなくて、沿岸のことだと思いますが、沿岸につきましては、ただいま国会に提出をいたして、御審議を願っております中小漁業法律等によりましても、政府考え方は御理解をいただけることだと思います。あのようにして中小の沿岸漁業を助けると同時に、新しい漁港の改修、漁礁の整備等をやりまして、沿岸については特段の努力を続けてまいるつもりでございます。(拍手)     —————————————
  13. 園田直

    ○副議長園田直君) 兒玉末男君。   〔兒玉末男君登壇
  14. 兒玉末男

    ○兒玉末男君 私は、日本社会党を代表いたしまして、ただいま農林大臣より説明のありました漁業動向に関する年次報告書及び沿岸漁業等について講じようとする施策について、佐藤総理並びに関係大臣に質問を行ないます。  沿岸漁業等振興法に基づくいわゆる漁業白書が国会に報告されるようになってから回を重ねること四回、そのつど日本社会党から質疑を行ない、改善すべきところはそのつど指摘してまいったのでありますが、それにもかかわらず、いまだに改められない点が数多く残っておることはまことに遺憾であります。国会で指摘をされた欠陥を改善すべき努力を欠いた政府も、この際強く反省し、わが国漁業の発展のために積極的に取り組むべきであることを強く主張するものであります。  私は、まず漁業白書の性格について触れてみたいと思います。  漁業白書は、何よりもまず日本漁業の指針となるべき内容と権威を持つべきものでなければなりません。そしてその内容も、政府施策、すなわち、前年度重点施策として掲げた漁業生産基盤整備事業沿岸漁業及び中小漁業近代化事業等々がどう進められ、その効果がどのようにあらわれたか、また、効果がなかったとすれば、どこにその欠陥があったのかというきめこまかい分析が必要であります。その分析の上に、次年度の施策を積み重ねるという姿勢をとってこそ、真の漁業白書といえるものであります。現在出されているような古い統計資料を羅列し、次年度予算の数字説明に終始するがごとき白書は、単に国会に報告する義務を形式的に果たしている事務的所産物にすぎないと申しても過言ではありません。かかる形式的かつ内容に乏しい報告が今後引き続き繰り返され、また、国会で指摘をされた欠陥の改善政府みずからが無視する状態が通例ともなれば、白書に対する関係者の関心は年ごとに薄れていき、法の目的からはるかに逸脱した無用の長物となりかねません。  政府は、次年度から漁業白書に対していま少し真剣に取り組み、わが国漁業振興の指針となるにふさわしい白書とするよう、責任を持って対処さるべきであります。(拍手総理は、漁業白書の今日のあり方をどのように考えておられるのか、そして今後の白書について、これを改善するためいかなる構想をお持ちなのか、お伺いしたいのであります。  わが国漁業は、昭和三十六年までは引き続き世界第一位の生産量を占め、名実ともに水産日本の名を誇ってまいりましたが、三十七年以降はかろうじて二位の座を守って今日に至っております。しかし、近年における中国あるいはソ連の進出状況からして、これらの国にその地位を追い抜かれ、二位の座が入れかわる日も間近いといわれております。  かかる状況を招来しました原因は、政府が水産業に対しまして積極的な施策を講じなかった結果であり、それにも増して重要なことは、日本漁業が、将来に対するビジョンも持ち得ず、きわめて近視眼的な漁業を行なっているということであります。現実に動物性たん白を魚介類に大きく依存する一億の国民を背後に持ちながら、そうして国土の四方を海に囲まれた地理的条件を有しながら、また、かつて水産の国日本という名を永年世界にとどろかした実績を持ちながら、現実には積極的な施策を期待できず、未来像を持ち得ない状況に置かれているのであります。海洋資源の開発に必要な資源量の調査、魚介蝦類の種類別の各種調査、研究、あるいは中、深海魚類の開発調査並びに研究など、幾多の調査、研究の課題があるはずであります。これらの基本的な調査、研究が積極的に行なわれ、その調査、研究結果に対する国の適切な援助措置が講ぜられるならば、日本漁業のビジョンを打ち立てることも可能なはずであります。また白書も、未来像をいかにして築き上げるかについての調査並びに研究の面に全く目を向けていないと思いますが、総理は一体いまの日本漁業の実態をどのように考えておられるのか、将来これをいかなる形で振興、発展させる方針なのか、責任ある御答弁をいただきたいのであります。  次に、日本漁業について具体的な問題でお尋ねをします。  わが国漁業生産は、昭和三十五年から四十年までの五カ年の平均は、年間六百七十万トンであり、その伸びが全く停滞している状況であります。一方、政府は、わが国水産物需要は、五年後の昭和四十六年には約九百万トン、十年後の昭和五十一年には約一千万トンと予測しているのであります。また、年ごとに増大する需要に応じて輸入は毎年増加の一途をたどっており、最近の輸入統計を見ましても、昭和三十五年の五十五億二千三百万円から、昭和四十年には四百六十三億六千六百万円に増大しており、このままで推移するならば、需要供給のアンバランスを輸入によって埋め合わせすることは、長期的に見ると不可能であります。  また、わが国民の動物性たん白質の摂取量は、現在、先進国の二分の一ないし三分の一であり、今後国民所得上昇とともに、水産物が動物性たん白供給源としてますますその需要を増してくることは明らかであります。これらの需要をまかなうに、輸入のみに依存するという消極的な姿勢では、必ず行き詰まりを来たすことを考えるとき、政府が逡巡することなく、即刻積極的な生産体制をつくる必要があることを痛切に感ずるものであります。政府は、需要供給の見通しについても、いま少し大所高所から検討を加え、積極的な対策を直ちに講ずべきでありますが、その方策をお持ちかどうか、お伺いしたいのであります。  さらに、現状打開をはかる前向きの姿勢を持つ意思があるとすれば、沿岸漁業を不振におとしいれている水質汚濁問題にも、当然きびしい態度で対処されるべきであります。水質二法案は実施されたものの、その後も工場排水、都市下水等による水質汚濁はあとを断たず、魚の住めない沿岸海域はますますふえております。その上、海岸埋め立ての進行等も加わって、漁業環境はますます悪化しております。この状態を放置するならば、沿岸漁業が衰微の一途をたどることは火を見るよりも明らかでありますが、これに対してはいかに対処されるつもりなのか。  以上二点について総理並びに農林大臣の御答弁をいただきたいのであります。(拍手)  戦前、日本は公海自由の原則により海外漁場に何ら制約を受けることなく進出することができました。ところが、戦後は状況が著しく変化して、日本漁業をめぐる国際的な規制はとみに強化されてまいっております。中でも世界の国々で漁業専管水域を主張する国は年ごとにふえ、国連加盟九十二カ国のうち実に三十三カ国が十二海里の領海を含めた専管水域を設定し、もしくは設定しようとしております。  一方わが国は、現在にあっては古典的なものとなりかねない領海三海里説をいまなお固執し、漁業専管水域についても国際的趨勢にかんがみ、これに対する合理的な考え方を固めなければならないにもかかわらず、積極的な姿勢をとらず、その設定については関係国との合意に基づくものでなければならないという消極的な立場をとっております。この考え方は今日国際舞台においては少数意見となっており、はなはだしく説得力を欠くものであります。この消極的な政府の態度が、ひいては幅の広い領海並びに専管水域の一方的な設定を相手国にゆだねることになり、わが国の海外漁業が不利益をこうむることになります。この政府の方針でわが国漁業指導する場合、かつての李承晩ラインと同様、一方的に専管水域を設定した相手国に日本漁船が拿捕される危険性が多分にあり、現にインドネシアその他の国で事件が発生しております。  先般、外務事務次官を通じて専管水域十二海里説をとる旨の新聞発表がなされましたが、この際政府は、領海及び専管水域に関する基本的な考え方を明らかにするとともに、わが国漁業者をいかにして保護するかについても、その方途を明らかにしていただきたいのであります。総理大臣は、領海及び専管水域並びに関係漁民の保護についていかなる方策で対処されるつもりなのか、この際明確にお答えをいただきたいのであります。  また、これに関連しまして、この種の拿捕事件は政府指導の誤った結果生ずるものであると考えますが、これについての政府の責任、たとえば李承晩ライン拿捕事件の際の閣議決定に基づく援助措置に類する救済方策を講ずる用意がありやいなや、あわせて明らかにしていただきたいのであります。  次に、近隣国との漁場の競合問題についてお尋ねいたします。  日韓国交正常化に伴い、わが国は韓国漁業育成のため、無償供与による第一年度分として漁船三十四隻、三百六十万ドル、また、民間信用供与によるものの総額九千万ドルのうち、第一年度分一千五百万ドルを決定し、沿岸漁船四十三隻、遠洋漁船三十九隻、計八十二隻の建造が契約済みと報ぜられております。しかも、これらの漁船はカツオ・マグロ漁業あるいは底びき網漁業に従事するものが大部分であります。すでに台湾漁業も大幅に進出をしてきておりますおりに、わが国の援助によって韓国漁業が進出してくれば、日本漁業との競合は必至の情勢であり、関係者一同も非常に憂慮しておるのであります。この漁場競合もまた政府の方針によるものでありますが、政府は、この結果生ずる不利益、悪影響を最小限度に食いとめる責任を持つとともに、こうむった不利益を償う責を負うべきであると思いますが、これに対する対策をいかに講じようとするのか、総理並びに農林大臣に御答弁を求める次第であります。  次に、許可漁業に関する問題点について農林大臣にお伺いいたします。  漁業は公開性、流動性、相互関連性、多岐利用性等数多くの特性を持つ漁場から水産資源を採取するという特異な性格を持っていますので、その操業には何らかの規制が必要であることは理の当然であり、その規制の一つとして漁業許可制度をとっていると思いますが、日本漁業許可制度については、いま一つの任務があわせて課されていると思うのであります。それは日本漁業が跛行的な発達をすることを阻止する、すなわち漁業全般の発達が期せられず、特定のものだけが発展するいびつな形をとることを防止するという大きな目的を持っていることであります。  しかるに、現行の許可制漁業の実態を見ますときに、この目的からはなはだしく逸脱し、ただ単に形式的なワクのみを規制した中で、基盤の異なる漁業者に弱肉強食の自由競争をしいているとしか思えない点があります。このことは、許可制度に触れることなく、現行制度のもとであげた生産の実績のみを重視する考え方がその原因であろうかと思います。たとえば、資本の大小によって許可制漁業の恩恵を受ける格差が大きくつけられていること、トン数補充制を採用しているために、漁船の新改造に許可トン数を売買するというような一種の権利売買が公然と行なわれ、それもトン当たり三十万から四十万の高値を呼んでいることなどから、日本漁業の中にあって、常に重要な役割りを果たしている中小漁業及びその他の漁業として扱われている弱小資本資本漁業は実に大きな痛手を受けているのであります。  これらの実態から考える場合に、制度本来の意義を失ない、むしろ逆に跛行的発展を助けているがごとき現行許可制度は、その運用をすみやかに改善する必要があろうと思いますが、農林大臣の御所見を承りたい。  さらに、許可漁業に関連し、漁業就業者の問題でお伺いします。  沿岸漁業、遠洋漁業のいかんを問わず、漁業就業者は出港時より帰港時まで、その身体を完全に拘束されることは当然でありますが、漁労の必要によっては、早朝、深夜を分かたず過激な労働に従事しなければなりません。その上に、気象条件に大きく影響されることと、この上ない危険作業であることも加わって、漁業後継者が少なくなり、漁業従事者の年齢構成も、高年齢層の比重が高くなってきております。日本漁業がビジョンを持ち得ないこととあわせて、政府指導性の欠除によって、漁業後継者を少なくし、若年労働力の確保を困難にしていると思うのでありますが、これも早急に対策を講ずべきであろうと思います。政府は、漁業後継者育成についての対策を持っておられるのかどうか、また、漁業後継者育成資金等について検討されているかどうか、お伺いいたします。  加えまして、漁業労働者の労働条件等についてお伺いします。  漁業労働者の場合も、同じく時間にとらわれず、必要によって漁労に従事しなければならないという漁業の特性を重視するのあまり、労働基準法並びに船員法に規定されている労働者の保護規定の適用を除外されております。そのために深夜、早朝にわたる長時間労働が継続し、出漁期間中は休日もなく、これらの重労働に比較して、季節労働であるために、年平均にならすと賃金が低い等のことが加わって、漁業労働者を志望する者が年ごとに減少し、現在労働者不足のために出漁できない漁船すらあるといわれており、極端にいえば、労働者を集め得る漁業だけが将来残っていくであろうともいわれている実情であります。  許可条項の一つに、労働法令関係について著しく違反したものは不許可あるいは許可取り消しをするという定めがありますが、労働条件が劣悪なために志望者が激減しているにもかかわらず、不許可または許可取り消しが一件もないということは、まことにふかしぎなことであります。漁業生産を上げるための原動力である漁業労働者を確保するためには、必要な保護規定の適用と適切な賃金体系の確立をはかることが必要でありますが、この際、労働者の保護規定適用除外をある程度形を変えるか、あるいは違反事実のあったものにはきびしい態度で許可取り消しを行なうなど、その措置を講ずべきであると考えます。  以上、許可漁業に関連する問題についてどのように対処される方針なのか、農林大臣及び運輸大臣にお答えを要求する次第であります。  最後に、農林大臣並びに防衛庁長官にお尋ねいたします。  さきにも触れましたように、日本漁業生産と需給の関係は、年々その均衡がくずれ、それを輸入増大によってまかなっておりますが、漁業生産増加させるために最も必要な近海の好漁場が他の目的に使用され、そのために著しい漁業制限を受けているという問題であります。その結果、関係海域で操業していた漁民は、漁場を遠隔の地に求めざるを得なくなり、漁獲量の減少、経費の増大等できわめて大きな痛手を受けております。これらの海域を九州周辺に限って列挙しても、米軍演習場リマ水域、陸海空自衛隊の実弾射撃場、内之浦東大宇宙観測所、また鹿児島県南種子の宇宙開発センター等、その海域は実に一万六千七百平方キロで、東京都全面積の八倍以上に達しており、そのいずれもがカツオ・マグロ漁業の宝庫といわれる水域であります。これらの広大なすぐれた漁場が、何ら制限を受けることなく漁労ができるとするならば、実に大きな漁獲高が約束され、日本漁業振興にも大きな貢献をなし得るはずであります。  もし、これら演習場やロケット基地等の諸施設並びに海域が必要欠くべからざるものであるとするならば、これを漁業並びに船舶の航行に支障を来たさない地域を選定し、設置もしくは制限を行なうべきであります。ただ単に地形上の問題と、周辺住民の意向が政府の方針と比較的簡単に同調をはかれるという安易な分析だけで、魚族の宝庫といわれる海域を指定することは、漁業振興のたてまえからも、漁民の生活権を守る立場からも、絶対に行ってはならないものであります。  政府はこの際、これらの制限水域を全廃し、これらの海域における漁労を全面的に保障する措置をなし、関係漁民の生活の保障と日本水産資源の確保をはかるべきだと考えますが、これについていかなる措置をとられるおつもりか、関係大臣のお答えを求めまして、私の代表質問を終わります。(拍手)   〔内閣総理大臣佐藤榮作登壇
  15. 佐藤榮作

    内閣総理大臣佐藤榮作君) 兒玉君にお答えいたします。  ただいま農林大臣から報告いたしました漁業白書、この性格並びに取り扱い方について、どうも要領を得ていないというきびしい御批判がございました。私は、児玉君のお説のようなつもりで白書をつくったのでございまして、この上とも努力してまいります。ただ、一つ御了承を得たいと思いますのは、今日、漁業動向そのものは今日の問題でありますが、それに対する施策を立てましても、この施策は一年あるいは二年の後でなければ効果は出てこないのであります。したがいまして、この施策動向との結びつきにおきまして、さらに私どもはくふうしなければならないだろうと思いますけれども、ただいまの統計資料等がどうしてもおくれておりますので、十分でございません。この上とも、御指摘がございましたので、十分御意思に沿うように最善を尽くすつもりでございます。  次に、わが国漁業の実態でございますが、これは私が申し上げるまでもなく、国民経済において重要な役割りを果たしております。また、ただいまもたん白資源の需要はたいへん高まりつつある、こういうことを言われております。確かに需給のバランスはなかなかとりにくい状態であります。ことに供給の担当者である沿岸漁業者、さらに中小企業等はたいへんきびしい環境下において操業いたしておりますし、その企業自体も零細であります。また所得水準もたいへん低い、こういう状態であります。また、沖合いあるいは遠洋漁業、こういうふうなことについて考えてみますると、最近は国際的な規制がだんだん強まっております。そういう意味で、たいへんきびしいもとにおいて漁業を操業しなければならない、こういうマイナスの点があるようでございます。しかし、私どもは漁業従事者の生活向上をはかりつつ、また漁業資源を確保しながらも供給の円滑化を期する、こういう意味であらゆる努力をしておるわけであります。そのおもな方向は、やはり構造改善あるいは近代化、新しい漁場の開発、新漁法の発見あるいは遠海魚族を利用する等々の方法によりまして、需給のバランスをとるようにいたすつもりであります。そういう場合に、御指摘になりましたように、基本的な調査をまず先行させろ、そしてその調査に基づいてそれぞれの具体的対策を立てろとおっしゃること、それはまことにそのとおりだと思います。関係者におきましては、これらの調査を積極的に遂行しておるような状況でありまして、私は、関係者の努力を高く評価すべきではないか、かように思っております。また、生産増強対策については農林大臣から詳しくお話をすると思いますが、それぞれの業態に対応した対策を立ててまいるつもりであります。  いわゆる沿岸漁業については、あるいは沿岸漁場を新しくつくり出すとか、あるいはまた養殖に重点を置くとか、あるいは漁港を整備するとか、あるいはまた遠洋漁業については、先ほど申しましたような新しい技術の導入、新しい漁場の開発等々を行なってまいりたい、かように考えております。問題は、やはり何と申しましても、近代化に積極的に取り組まなければ、産業としての漁業がなかなか成育しないのじゃないか、かように思っておるような次第であります。  次に、水質汚濁についての御意見を述べられました。確かに最近の都市化、工業化等から見まして、水質が汚濁しておる。これこそは沿岸漁業を毒するものでありまして、沿岸漁業振興のためにも、水質汚濁について積極的な対策を立てなければならないと思っております。今日公害基本法が成立いたしますれば、さらにそれらの点で役立つのではないかと思います。また、公共用水域の水質の保全に関する法律、もうすでにできておる法律、この運用等につきましても十分くふういたすべきだ、かように考えております。  次に、外務大臣に対しお尋ねがありました。私、ただいま留守中かわりをつとめておりますので、これについてお答えをいたしますが、いわゆる領海の幅、こういうものはもうわが国が主張しておるような三海里、この三海里は国際法上はっきりした一つの規則であります。したがいまして、ただいま領海の幅をとやかく言うわけにはいきません。しかし、領海は三海里だが、最近各国で採用しておりますのは、漁業水域という特別な水域が考えられないか、こういうことを実は申しておるのであります。この漁業水域では十二海里、こういうことを主張しておる国がだんだんふえてきております。この領海という概念と漁業水域という概念は全然別なものでありまして、これは区別していかなければならないのであります。そうして、この領海以外はいわゆる公海でありますから、公海自由の原則というものが守られておるわけであります。したがいまして、幾ら漁業水域と申しましても、他国を締め出すような専管水域、これを設けるということは国際法上認められておらない。わが国も、もちろんさような状態を承認するものではありません。またもう一つ漁業水域でありましても、すでにその地域で操業した実績があるならば、過去の実績は尊重さるべきでありまして、この実績を無視して専管水域をつくる、こういう場合には、私どもは国際法上のこれに対する抗議が言えるわけであります。  今日、いわゆる専管水域を認める国がだんだんふえております。たとえばヨーロッパの漁業条約、これは十三カ国が加盟しておりますが、これは漁業水域のたてまえで、ただいまその条約を結んで、昨年からこれが発効いたしております。また、最近日韓間で協定を結びました漁業協定、これまた十二海里で実は協定を結んでおります。また、ただいまアメリカと交渉し、ニュージーランドと交渉しておるものも、この漁業水域で話をつけようとしておるのであります。さらに積極的にわが国は、東南アジア諸地域等におきましても、この漁業水域の問題がだんだん表面化する状態でありますので、特殊事情を十分考慮した上で、新しい解決方法をつくるべきではないか、かように実は考えておるのであります。くれぐれも申しますが、この漁業水域は、漁業に関してのみ沿岸国が特別な管轄権を持とうというのであります。そういう方向にただいま進んでおること、これは動向を申し上げておきます。したがいまして、この救済その他につきましても、在来から要求すべきものは要求する、また、わがほうにおいてのこれが救済は、それぞれの社会保障その他ともにらみ合わせて対策をとっておるわけであります。  また、韓国漁業をただいま漁業協定の結果だんだん大きくする、それは日本漁業と競合するではないか。こういうお話がございますが、私は韓国の漁業も育成強化し、わが国漁業とともに共存共栄の立場で繁栄すべきではないか、かように考えておる次第であります。  その他の点は農林大臣からお聞き取りをいただきます。(拍手)   〔国務大臣倉石忠雄登壇
  16. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) 水産物の需給見通しにつきましては、先ほどお話がございました。このような傾向に対処いたしますために、沿岸漁業につきましては、養殖漁業振興等を積極的に推進いたしますとともに、三トンないし五トン層を中心とする中核的漁家の育成につとめてまいりたいと思っております。その他は、ただいま御審議中の中小漁業振興法律によく説明いたしてございまして、あのような方向政府漁業振興をはかってまいりたいと思っております。  それから、水質汚濁の漁業に及ぼすことにつきましては、総理大臣から詳しくお話がありましたから省略をいたします。  それから、韓国の漁業が進出をするということにつきましても、総理からお話がございました。これも省略をいたします。  それから、許可制度の運用についてお話がございました。許可制度はただいま五年に一ぺんの更新時期でございますが、お尋ねのような点は、許可をいたします当事者である私どもの頭には全然ございませんで、きわめて事務的にただいままでの実績を考慮いたして判断をいたしておるわけでございます。  それから漁業後継者の育成につきましては、兒玉さんも先般の委員会でいろいろ御熱心にお話がございまして、私どもも同感でございます。なかなかこれは困難な問題ではありますけれども、農業の後継者育成と同じような考え方に基づいて、同じような方向でぜひ後継者育成につとめていかなければならないと思います。  漁業に従事いたしまする労働者のことについては、農林省に関する限りは、今般の法律案にも説明いたしておりますように、その装備等を改善し、労働条件改善することによって、魅力ある漁業にいたして、労働者に楽しんでやっていただけるように、できるだけ整備をいたしてまいりたいと思っております。  以上、お答えいたします。(拍手)   〔国務大臣大橋武夫君登壇
  17. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 労働時間及び有給休暇等に関する規定など、船員法の一部の規定は、漁船乗り組み員に対しては適用除外となっております。これは漁船における漁労という作業の特殊性からかかる措置がとられておるのでありますが、漁船乗り組み員に必要な保護を徹底するためには、適当な法の規制を拡充する必要があるので、検討してまいりたいと存じます。とりあえずといたしましては、漁船乗り組み員の労働時間について、船員中央労働委員会から、一部の漁船における労働時間規制の基準に関する建議も行なわれておるのでございますので、これを法制化するよう、作業を進めることといたしたい次第でございます。(拍手)   〔国務大臣増田甲子七君登壇
  18. 増田甲子七

    国務大臣(増田甲子七君) いまの水域等は、気象条件、船舶の航路、航空路、基地からの距離等を勘案いたしまして、関係機関等と協議の上設定されたものでございまして、これにかわる適切なる区域を他に求めることは、ただいまのところ困難でございます。  そこで、漁業関係者に対する措置としては、当該区域における漁業制限時間を極力短縮すべく、米軍と折衝してきたところでございまして、演習休止日を日曜日のほかにさらに原則として土曜日も加えるということを交渉してまいりましたが、ようやく米軍との話し合いがまとまりましたので、近く実施する予定でございます。  なおまた、関係漁民を守るため、補償ないし厚生福利施設については、お説のごとくできる限り万全の策を講じたいと存じまして、防衛施設庁等関係部局を督励いたしております。(拍手
  19. 園田直

    ○副議長園田直君) これにて質疑は終了いたしました。      ————◇—————  日程第一 日本専売公社法の一部を改正する   法律案内閣提出
  20. 園田直

    ○副議長園田直君) 日程第一、日本専売公社法の一部を改正する法律案を議題といたします。
  21. 園田直

    ○副議長園田直君) 委員長の報告を求めます。大蔵委員会理事藤井勝志君。     —————————————   〔報告書は本号(二)に掲載〕     —————————————   〔藤井勝志君登壇
  22. 藤井勝志

    ○藤井勝志君 ただいま議題となりました日本専売公社法の一部を改正する法律案につきまして、大蔵委員会における審査の経過並びに結果を御報告申し上げます。  この法律案による改正点の第一は、日本専売公社のたなおろし資産に対する資金手当ての円滑化をはかることであります。すなわち、公社のたなおろし資産は、たばこ事業の業務量の拡大に伴って近年著しく増加いたしておりますが、これに対する資金手当ては、現行法では政府からの借り入れ金に限定されておりますので、これを改めて、政府以外からも借り入れをすることができるようにするとともに、たなおろし資産の増加額を限度として利益金の一部を公社に留保することができるようにいたしております。  第二点は、日本専売公社の監事の権限に関する規定を整備することであります。すなわち、監事が監査の結果、必要があると認めるときは、総裁または大蔵大臣に意見を提出することができるようにするとともに、公社が大蔵大臣提出する決算書類には監事の意見を付さなければならないことといたしております。  この法案は、去る六月三十日、質疑を終了し、直ちに採決いたしましたところ、全会一致をもって原案のとおり可決をいたしました。  以上、御報告申し上げます。(拍手)     —————————————
  23. 園田直

    ○副議長園田直君) 採決いたします。  本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  24. 園田直

    ○副議長園田直君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。      ————◇—————  日程第二 同一価値労働についての男女労働者に対する同一報酬に関する条約(第百号)の締結について承認を求めるの件  日程第三 関税及び貿易に関する一般協定譲許表訂正及び修正に関する千九百六十七年五月五日の締約国団の第三確認書締結について承認を求めるの件
  25. 園田直

    ○副議長園田直君) 日程第二、同一価値労働についての男女労働者に対する同一報酬に関する条約(第百号)の締結について承認を求めるの件、日程第三、関税及び貿易に関する一般協定譲許表訂正及び修正に関する千九百六十七年五月五日の締約国団の第三確認書締結について承認を求めるの件、右両件を一括して議題といたします。     —————————————  同一価値労働についての男女労働者に対する同一報酬に関する条約(第百号)の締結について承認を求めるの件  関税及び貿易に関する一般協定譲許表訂正及び修正に関する千九百六十七年五月五日の締約国団の第三確認書締結について承認を求めるの件   〔本号(二)に掲載〕     —————————————
  26. 園田直

    ○副議長園田直君) 委員長の報告を求めます。外務委員長福田篤泰君。     —————————————   〔報告書は本号(二)に掲載〕     —————————————   〔福田篤泰君登壇
  27. 福田篤泰

    ○福田篤泰君 ただいま議題となりました二案件につきまして、外務委員会における審査の経過並びに結果を御報告申し上げます。  まず、国際労働条約第百号について申し上げます。  一九五一年にジュネーブに招集された国際労働機関の第三十四回総会において、本条約が採択され、一九五三年に発効いたしております。  本条約は、各加盟国が、労働者の単位当たりの報酬を決定するにあたり、同一価値労働については、男女労働者に対し、性別による差別をしないという同一報酬の原則を適用することを促進し、そのために必要なる措置をとらねばならないことを規定しております。  次に、ガットの確認書について申し上げます。  わが国関税定率法の別表は、昨年四月、ブラッセル関税品目分類表に合致した新しい関税率表に全面的に改正されました。これに伴いまして、この改正前に締結したガット文書に収録されておるわが国関税譲許表を新しい品目分類法に基づいたものに訂正することが、関税事務の運用上必要となりましたので、政府は関係各国の了解を求める交渉を進めておりましたが、本年五月五日、この訂正を実施するために必要なるガット上の手続を終了いたしました。  本件確認書は、右の訂正を加えたわが国の新譲許表を収録したものであります。  国際労働条約第百号は六月十日、ガットの確認書は六月二日、それぞれ本委員会に付託されましたので、政府から提案理由の説明を聞き、質疑を行ないましたが、詳細は会議録により御了承を願います。  かくて、六月三十日、質疑を終了し、討論を省略して採決を行ないましたところ、国際労働条約第百号は全会一致をもって、ガットの確認書は多数をもって、それぞれ承認すべきものと議決いたしました。  以上、御報告申し上げます。(拍手)     —————————————
  28. 園田直

    ○副議長園田直君) これより採決に入ります。  まず、日程第二につき採決いたします。  本件は委員長報告のとおり承認するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  29. 園田直

    ○副議長園田直君) 御異議なしと認めます。よって、本件は委員長報告のとおり承認するに決しました。  次に、日程第三につき採決いたします。  本件は委員長報告のとおり承認するに賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  30. 園田直

    ○副議長園田直君) 起立多数。よって、本件は委員長報告のとおり承認するに決しました。      ————◇—————  日程第四 航空機工業振興法等の一部を改正   する法律案内閣提出
  31. 園田直

    ○副議長園田直君) 日程第四、航空機工業振興法等の一部を改正する法律案を議題といたします。     —————————————
  32. 園田直

    ○副議長園田直君) 委員長の報告を求めます。商工委員長島村一郎君。     —————————————   〔報告書は本号(二)に掲載〕     —————————————   〔島村一郎君登壇
  33. 島村一郎

    ○島村一郎君 ただいま議題となりました航空機工業振興法等の一部を改正する法律案につきまして、商工委員会における審査の経過と結果の概要を御報告申し上げます。  現行法は、航空機等の国産化を促進するための措置を講ずることにより航空機工業の振興をはかり、あわせて産業技術の向上及び国際収支改善に寄与することを目的として、昭和三十三年に制定せられたものであります。  この法律に基づいて設立された日本航空機製造株式会社は、昭和四十年から中型輸送機YS11の量産に入り、現在まで三十数機の販売を行なってきております。  本改正案は、航空機販売の国際競争が激化しつつある情勢のもとで、YS11の量産事業に対する助成を一段と強化する必要があるという理由により提案されたものでありまして、  改正の第一は、YS11の設計、試作完了後は、政府日本航空機製造株式会社に対して出資することができない旨の規定を削除し、追加出資ができるようにすること  第二は、政府の出資の限度を四十二億円にすることであります。  本案は、去る四月三日当委員会に付託され、四月二十八日菅野通商産業大臣より提案理由の説明を聴取し、六月十六日から審議に入り、同日参考人から意見を聴取する等、きわめて熱心な審議が行なわれましたが、その詳細は会議録に譲ります。  六月三十日に至り、質疑を終了し、引き続き採決いたしましたところ、本案は全会一致をもって原案のとおり可決すべきものと決した次第であります。  以上、御報告申し上げます。(拍手)     —————————————
  34. 園田直

    ○副議長園田直君) 採決いたします。  本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  35. 園田直

    ○副議長園田直君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。      ————◇—————  日程第五 土地収用法の一部を改正する法律案内閣提出)  日程第六 土地収用法の一部を改正する法律施行法案(内閣提出
  36. 園田直

    ○副議長園田直君) 日程第五、土地収用法の一部を改正する法律案日程第六、土地収用法の一部を改正する法律施行法案、右両案を一括して議題といたします。
  37. 園田直

    ○副議長園田直君) 委員長の報告を求めます。建設委員長森下国雄君。     —————————————   〔報告書は本号(二)に掲載〕     —————————————   〔森下國雄君登壇
  38. 森下國雄

    ○森下國雄君 ただいま議題となりました土地収用法の一部を改正する法律案及び土地収用法の一部を改正する法律施行法案につきまして、建設委員会における審査の経過並びに結果を御報告申し上げます。  土地収用法の一部を改正する法律案は、公共事業の施行に伴う開発利益の帰属の適正化及び土地等の取得の円滑化をはかるため、収用、使用する土地に関する補償額の算定時期を、原則として事業認定の告示のときとするとともに、手続の促進について所要の措置を講ずることを目的といたしましたもので、おもな内容は次のとおりであります。  第一に、補償額は、近傍類地の取引価格等を考慮して算定した事業認定の告示のときにおける相当な価格に、権利取得裁決のときまでの物価の変動に応ずる修正率を乗じた額とするものとしたことであります。  第二に、事業認定の申請及び告示にあたって、起業地の全部または一部について手続保留地を設けることができるものとし、起業者は手続保留地については、当該事業認定の告示後三年以内に収用手続を開始するものとし、補償額は手続開始の告示のときの価格によって算定するものとしたことであります。  第三に、土地所有者等の利益の保護をはかるため、事業認定等の告示があった後、土地所有者等はいっでも起業者に対し、補償金の支払いを請求することができるものとしたことであります。  第四に、収用裁決を権利取得裁決と明け渡し裁決とに分離し、権利取得裁決を原則として先決するものとしたことであります。  第五に、補償金の支払い請求制度を設けたことに伴い、事業認定において起業地を確定することとし、そのため不要となる土地細目の公告の手続は廃止するものとしたことであります。  第六に、事業認定は、認定の告示または収用手続開始の公告後一年以内に裁決申請をしなければ、将来に向かって失効するものとしたことであります。  以上が土地収用法の一部を改正する法律案の目的とおもな内容であります。  土地収用法の一部を改正する法律施行法案は、土地収用法の一部を改正する法律案を施行するために必要な経過措置並びに関係法律の規定を整備したものであります。  両案は、去る五月十日本委員会に付託され、自乗慎重に審議を進めてまいったのでありますが、その詳細につきましては会議録に譲ることといたします。  かくて、六月三十日、両案に対する質疑を終了し、討論の申し出なく、直ちに採決の結果、多数をもって原案のとおり可決すべきものと決した次第であります。  なお、土地収用法の一部を改正する法律案に対しましては、自由民主党、日本社会党、民主社会党、公明党の四党共同提案になる附帯決議を付することに決したのでありますが、これらの内容につきましては会議録で御承知願いたいと存じます。  右、御報告申し上げます。(拍手
  39. 園田直

    ○副議長園田直君) 両案につき討論の通告があります。これを許します。井上普方君。   〔井上普方君登壇
  40. 井上普方

    ○井上普方君 私は、ただいま提案されました土地収用法の一部を改正する法律案並びに土地収用法の一部を改正する法律施行法案につき、日本社会党を代表して、反対の討論を行なわんとするものであります。(拍手)  まず、政府の土地政策について、根本的反省と再検討を求めるものであります。  今日、地価の値上がりの実態は、昭和三十年を一〇〇といたしますと、四十二年三月には平均八七五の指数を示し、さらに上昇を続けつつあるのであります。このことは消費者物価指数の騰貴と比較いたしましても異常な姿であり、物価上昇の基本的原因を構成しておるものといわなければならないと存ずるのであります。また、この地価の高騰は、庶民のささやかな願いであります住宅建設の夢を奪い去ったばかりでなく、公共投資の効率を著しく低下せしめ、東京都下における建設費のうち七五%以上が土地代であるという現状となり、国、地方自治体の予算を増大させ、国民の大部分は、重い税負担とインフレの二重苦に呻吟する状態に追い込まれたのであります。(拍手)  今日の地価の高騰を招いたおもな原因は、無責任なる高度成長政策の結果、民間資本が設備投資に狂奔した結果であることは、つとに指摘されるところでありますが、四十一年九月末の指数を見ましても、商業地、住宅地に比べ、工業地域の指数が三〇%も高い指数で示されていることで明らかであります。かてて加えて、土地が投機の対象となり、思惑買いや売り惜しみが横行し、土地ブローカーや私鉄資本、不動産会社等が開発利益を独占しつつ買い占めを行ない、地価はさらに高騰を続け、その上政府出先機関のてんでんばらばらなる用地取得が地価の上昇に拍車をかけておるのであります。(拍手)  総理は、施政方針演説の中で土地問題に言及し、土地価格の高騰は、住宅の安定をはじめ国民生活の健全な発展員大きな障害となっているので、土地収用法の改正案を今国会に提出するなど、土地問題と積極的に取り組むことを公約されたのであります。しかるに、今回提案されたものは、ただ単に公共用地取得を簡単、迅速ならしめるため収用法を手直ししたのみにすぎません。土地問題、地価問題解決のためには、ほとんどといってよいほど効力は少ないものであります。これをもって土地問題に積極的に取り組むなどとはおこがましき沙汰と申さなければならないと存ずるのであります。(拍手)  土地は、本来国民全体に与えられた天与の資源であるとの認識の上に立って、政府は、国土全体を合理的、効率的に活用するため、いわば土地基本法、国土開発法のごときものを制定し、国土全体の利用区分、利用計画を立て、これに基づく総合立法を立てて、開発利益を社会に還元させ、土地の有効利用を促進する施策こそ、まず取り組むべきであります。そうすることによって、野放しにされております地価の高騰、用地取得難、土地問題の混乱である土地の思惑買い、売り惜しみ、投機の対象となっていることを規制できるのであります。  安定した公共用地の取得は、大量の住宅用地を国民に提供することが可能になるのであります。このような根本的対策なくして、いたずらに片々たるゴネ得をなくするためと称し、安易に公権力を強化し、私権を圧迫するのは、本末転倒もはなはだしいと申さなければならないと存ずるのであります。(拍手)もちろん、ゴネ得の是正を私は否定するものではありません。しかし、ゴネ得の出現も、政府の土地政策の貧困と地価対策の皆無に根本的原因があり、政府の諸施策が国民に信頼されざるところにその源を発しておるのであります。  次に、今次政府原案は、収用する土地に関する補償額の算定の時期を事業認定の時としております。そうして、この点を最重要改正点といたしておるのであります。西村建設大臣は、土地は特殊な商品であると申されましたが、土地は、その地域一般に通ずる評価額があると同時に、その土地特有の事情、所有者の個人的評価もあり得るのであって、先祖代々受け継がれた土地の上で働き、生活してきた等の歴史的事情もあり、複雑微妙なものであります。したがって、こうした土地を公共用地として収用する際には、特殊事情を十分に参酌し、その生活補償を十分に行ない、生活権確保をできる限り講ずるあたたかい処置の必要であることは申すまでもありません。  補償額算定という重大な課題を事業認定のときと固定しています。しかし、さきに物価安定推進会議は、政府の出先機関の無統制な公共用地の取得が地価の高騰を来たすと、政府に警告していることは御承知のとおりでありますが、その中で、政府はろくな統計資料を持たないと、強く指摘いたしておるのであります。政府は、その基礎資料を十分に整備すべきで、政府みずからが公共用地の取得に対し客観的、公正な施策を確立しないで、認定の時期に補償額を固定することは、一見可能なようで不可能事に近いのでございます。しかも、先刻も申しましたように、公権力を強め、私権を圧迫して収用法の強化をはかり、被収用者に精神的圧迫を加えることは、私の賛成できないところであります。  収用法はいわゆる伝家の宝刀でございます。しかし、佐藤総理のごとき権力主義者の手にこれが渡ると、常に抜き放たれまして、伝家の宝刀は村正の妖刀となり、その被害は弱い被収用者の生活をも断つことになりかねません。まことに憂慮すべき事態であります。(拍手)  補償決定額は、本来被収用者の合意と信頼によって定めらるべきものであります。そのため、諸外国におきましても長期的な土地政策の確立を目ざして補償額がきめられ、たとえば総合的土地計画のもとで地価が安定したイタリアでは、計画時二年前の地価に押えているのであります。イギリスでも開発利益について土地増価税の対象とされているのであります。このように、地価対策が総合的かつ長期的な計画のもとで安定したときに初めて事業認定時の価格が客観性を有してくるのでありまして、わが国の現状のもとでは、いたずらに私権軽視となるのみであって、私の賛成できないところであります。  現在の土地収用委員会は弱体であります。この改正案で、今後収用委員会に持ち込まれる件数の増加が予想されます。現収用委員会は独立した事務局も持たず、第三者機関としての権能を発揮できる状況にありません。本来の機能を発揮できる機関としなければ国民の信頼を失い、公共用地の取得はさらに困難となり、国民の過酷な犠牲の上に行なわれることに相なるのであります。しかも、起業者保護、私権軽視の傾向は、本法施行法の随所に見られるところでありまして、憲法にも抵触しかねないところであり、私の賛成できないところであります。  最後に、日米安保条約に基づく土地収用の特別処置を本施行法に入れていることであります。土地収用法の目的は、国民の私権を尊重しつつ、公共の福祉の増進を同時に実現しようとする憲法の精神にのっとったものでなければなりません。過去激しく争われました軍事基地反対は、日本の平和と安全を守るという公共性を確立しようとするもので、そのために土地は平和的な産業にとって最も有効に活用されなければならないといろ主張に裏づけられておったのであります。(拍手)今回の改正は、土地収用法の一般的な平和利用にもぐり込んで、重要な目的をごまかそうとするものであります。  さらに、軍事基地拡張が、過去最も過酷な権力弾圧によって達成されたことを考えてみますときに、今後の運用はさらに権力強化によって容易に収用されることは必然だと思われるのであります。米軍軍事基地が公共の福祉の増進を来たすものとはまさにナンセンスであり、その周辺は公害を生じ、かつまた一朝有事の際にはまっ先に被害をこうむり、生命の危険にさらされるのであります。憲法の精神、収用法の精神に反するものといわなければならないと存ずるのであります。(拍手)これまでの安保条約に基づく規定を、今回の収用法改正案の施行法に盛り込むことは、法の目的に反し、国民感情の許すところではございません。いわばこれまでの私生子を公に認知しろというようなものであって、断じて容認することができないのであります。(拍手)  以上、政府の基本姿勢に対し強く反省を求むるとともに反対の理由を申し上げまして、討論を終わります。(拍手
  41. 園田直

    ○副議長園田直君) これにて討論は終局いたしました。  両案を一括して採決いたします。  両案の委員長の報告はいずれも可決であります。両案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  42. 園田直

    ○副議長園田直君) 起立多数。よって、両案とも委員長報告のとおり可決いたしました。      ————◇—————  日程第七 公共用飛行場周辺における航空機   騒音による障害防止等に関する法律案   (内閣提出
  43. 園田直

    ○副議長園田直君) 日程第七、公共用飛行場周辺における航空機騒音による障害防止等に関する法律案を議題といたします。
  44. 園田直

    ○副議長園田直君) 委員長の報告を求めます。運輸委員会理事進藤一馬君。     —————————————   〔報告書は本号(二)に掲載〕     —————————————   〔進藤一馬君登壇
  45. 進藤一馬

    ○進藤一馬君 ただいま議題となりました公共用飛行場周辺における航空機騒音による障害防止等に関する法律案について、運輸委員会における審査の経過並びに結果を御報告申し上げます。  最近におけるわが国の航空の発展はまことにめざましく、国際的にも国内的にも、航空機はもはや国民経済の伸展に欠くことのできない存在となるに至りました。特に、航空技術の発達による航空機のジェット化、大型化に伴い、空港周辺における騒音は住民の日常生活への影響が大きな問題となり、政府としては従来から東京、大阪両空港におけるジェット機の深夜の発着の禁止等の行政措置は講じてまいりましたが、さらに、立法措置により関係住民の生活の安定及び福祉向上に寄与するために、航空審議会の答申をも尊重し、航空機騒音障害防止対策を積極的に推進しようとするもので、そのおもな内容を申し述べますと、  まず第一は、運輸大臣は、公共用飛行場周辺における航空機の騒音により生ずる障害を防止または軽減するため、航空機の離着陸の経路、時間、その他の航行の方法を航空交通の安全を阻害しない限度において規制すること。  第二は、運輸大臣の設置する特定飛行場及び新東京国際空港については、その設置者は、学校、病院または学習のための共同利用施設の騒音防止工事に対しては、補助金を交付し、一定区域内における建物等の移転または農業等の事業経営上生じた損失を補償するとともに、土地の買い入れもできることとした。  第三は、航行の方法の指定の規制に違反したときの罰則、損失の補償にあたっての争訟手続等所要の規定を設けたことであります。  本案は、去る五月十九日本委員会に付託され、次いで、五月二十六日政府より提案理由の説明を聴取し、六月二十三日、二十七日、二十八日及び三十日質疑を行ない、その間、産業公害対策特別委員会との連合審査を行なう等、慎重に審議をいたしましたが、その内容会議録によって御承知願います。  かくて、三十日、質疑を終了し、討論を省略して採決の結果、本案は全会一致をもって政府原案のとおり可決すべきものと議決した次第であります。  なお、本案に対し、政府は、特定飛行場周辺の市町村財政等の実情にかんがみ、騒音防止工事の施行により必要となる空気調節装置及び騒音以外の公害に対しても、実態に合致するよう努力すべき旨の附帯決議が付されました。  以上、御報告申し上げます。(拍手)     —————————————
  46. 園田直

    ○副議長園田直君) 採決いたします。  本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  47. 園田直

    ○副議長園田直君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。      ————◇—————
  48. 園田直

    ○副議長園田直君) 本日は、これにて散会いたします。    午後四時十一分散会      ————◇—————  出席国務大臣         内閣総理大臣  佐藤 榮作君         大 蔵 大 臣 水田三喜男君         農 林 大 臣 倉石 忠雄君         通商産業大臣  菅野和太郎君         運 輸 大 臣 大橋 武夫君         建 設 大 臣 西村 英一君         国 務 大 臣 増田甲子七君  出席政府委員         内閣法制局第二         部長      田中 康民君         防衛施設庁長官 小幡 久男君         防衛施設庁施設         部長      鐘江 士郎君         外務政務次官  田中 榮一君      ————◇—————