○華山親義君
日本社会党を代表し、ただいま
報告のありました
地方財政の状況に関連して、
政府に対し
質問をいたします。
まず、
総理大臣に対し、
第一点は、現在の
地方制度が、
昭和二十四、五年のシャウプ勧告に由来するものであることは御
承知のとおりであります。この勧告の内容には批判を持つものではありますが、勧告はそれなりに
地方自治の本旨をわきまえ、国、府県、市町村の事務の分野を明らかにし、これに必要な財源を配分したものであって、
自治の
精神を堅持しつつ実際を処理した、理論の一貫したものであったのであります。しかるに、今日まで、
地方の事務と財源とは、理論を離れて、そのときどきの便宜におちいり、
憲法に定むる
地方自治の本旨をも没却するまでに至っております。
総理はこの
指摘に対して、現在、
地方制度調査会において
地方の事務と財源の再配分を
審議中なので、その答申を待って実行したいと、しばしば
答弁されておるのでございますが、私にはうつろにしか響きません。かつて池田
総理は、
行政の合理化について、臨時
行政調査会の答申を待ってと繰り返されたのであるが、答申以来すでに三年になんなんとして、ほとんど見るべきものがないからであります。
地方制度調査会は——私もその一員でありますが、すでに事務の再配分の
審議を終わり、その内容は、詳細、具体的なものでありますし、今後
審議される財源の再配分については、大幅な国から
地方への移しかえが予想されるのでありまして、これが実行に対する抵抗は、臨時
行政調査会答申に対する抵抗の比ではあるまいと思うのであります。
総理は、答申の暁、真に不退転の決意を持って強力に抵抗を排除して、実行に移される決意がおありなのかどうか、伺いたいのであります。
第二点は、今年の
報告といままでの
報告との違いは、人口過密過疎の問題を投げかけたことであります。人口の著しい流動によって、一方に人口過密地帯を生じ、ここに公害を発生し、住宅難を生み、交通難、交通禍をもたらし、この困難な処理の第一線に立つものは、大都市及びその
周辺市町なのであります。一方、人口流出によって人口過疎地帯を生じ、教育その他の
公共施設は崩壊に瀕し、これを食いとめようとする貧弱
地方団体の苦悩ははかり知れないものがあります。しかも、人口流動の趨勢はいよいよ急激となり、やむところを知りません。過日、経済企画庁は、新産業都市について、この地域の工業生産品の出荷高は予想された実績を示したが、人口増加率は
全国の増加率を下回り、人口集中を阻止しようとした目的は果たされなかったと言い、その上に、これら
地方の財政は先行投資のために悪化しつつあると
報告しているではありませんか。
一方、過疎地帯の典型ともいうべき山村僻地について、これに対する
政府の施策は、山村を将来保持するつもりなのか、滅びてもやむを得ないと思われるのか、いずれともつかない実態ではないかとの過日の私の
質問に対し、宮澤経済企画庁
長官は、率直に申して、御
指摘の実情で、これは
政治の貧困にもなるのではないかと、正直に自認されたのであります。このままで行くならば、山村地帯の部落は、高度経済成長政策の落とし子としてスラム地帯化することをおそれるものであります。現在これら山村をはじめ、東北
地方などの貧弱地帯からは、最も劣悪な
条件のもとに、約百万の人々が出かせぎに出ている。この地帯の農村の主婦の半数は農夫症にかかっている。
総理はこの実態を御存じなのであろうか、これらをかかえている
自治体の苦悩に一片の心をとめていただきたいと思うのであります。
地方公営企業は、住民の要求にこたえて、おのずから後進的地域においては医療機関、都市においては交通機関を
中心として発足したのであるが、いまや人口過疎地帯の病院は患者の減少によって維持の困難におちいっております。一面、大都市交通は自動車のとめ
どもない増加と、限りある
道路面積の拡張との間に急激なアンバランスを生じて交通麻痺の状態になり、この間を運行する公営企業の車両の時間走行距離の著しい短縮となり、また地下交通は建設資金の重大な圧迫を受けており、これが今日の交通公営企業悪化の必然的要因であります。
このような過密過疎の進行と実態に処して、
政府はただそのときそのときの現象に応じて場当り的措置を講じてきたにすぎません。いかに臨時措置法、緊急措置法、臨時特例法なる名のものが多いかは、これを実証するものであります。
財政
報告は、
地方財政の長期計画を求めているのであるが、この人口流動の中で、長期に立つ安定した
地方財政計画の立つわけがありません。
そこで
総理に伺いたいことは、資本主義、自由主義経済のもとでは、人口流動の趨勢はとめがたいことと認めた上に、いまのような場当たり的
地方財政対策を続けていくよりしかたがないとお考えになっているのか、それともいまここで資本の流れに
変更を加えて、人口の流動を抑制、安定させた上に、
地方財政の安定長期計画を求めようとされるのであるか、御
所見を伺いたいのであります。
次に、当面の具体策につき大蔵
大臣に、
第一点は、毎年
国会に
提出される
地方財政計画には、超過負担の項目がありません。しかし、超過負担は間違いなく実在している。この結果、実際にあたっては超過負担は計画の中の一般
行政費及び単独事業に食い込んでいくものであり、このことは
自治省当局の認めるところであります。この点において、
地方財政計画にはうそがひそんでいる、このうそは
地方自治をむしばむ悪質なものであります。超過負担は多年にわたるものであり、中央、
地方の間の不信をかもす最大のものであります。
政府はすみやかに有効具体的な方策をもってその解消に当たるべきであります。しかるに、今日までこの解消の遅々として進まない原因の一つは、予算編成の過程において、自己の仕事の分野を守り、拡大しようとする官僚の本能的意欲がまつわることにあるのであります。すなわち、超過負担は、自己の仕事の拡大とは無縁のものでありますから、関係各省は限られた限度の予算の要求にあたって、また、大蔵省との折衝査定の
経過において、超過負担解消のための意欲が二の次になりがちなことは明らかであります。
そこで、私は具体的方策として、予算編成の事前に、このための計画的な特別なワクを設けるか、あるいは大蔵省、
自治省を
中心として所管各省と協議し、事業の合理的単価を定め、これによって予算の要求並びに査定を進められることを提唱いたすものであります。
地方財政法第十八条は、国の補助金、負担金は、必要でかつ十分な金額を基礎として算定されなければならないと
規定している。
政府みずからがこれを空文化し、違法をあえてすることは許さるべきではありません。
大臣は私の提言をも考慮されて、有効具体的な方策によってこの問題に取り組むお考えがあるかどうかをお伺いいたします。
第二点は、
地方自治体の起債は、
昭和二十六年までは全額
政府資金によったのでありますが、
日本財界の復興期にあたって、その後は公募債を交えるようになり、それでも
昭和三十年代の初めにおいては、
政府資金は八〇%前後を占め、
地方債は
政府資金による
原則に立っていたのであります。しかるに、
昭和三十六、七年以降、経済高度成長政策の発展につれて次第に低下し、いまや六〇%に近づきつつあります。
政府資金による
原則は破れ去ろうといたしておるのであります。
政府資金は、郵便貯金、簡保掛け金など大衆庶民の生活の中から生まれる零細資金の集積でありますし、
地方行政は、大衆庶民の生活に密着するものであります。したがって、これらの資金を
地方行政を通じて庶民の生活のために還元することは理の当然と申さねばなりません。一般
地方行政も、公営企業も、目前の利益を追求するものではない。長期にわたる住民の利益のためになされるものであって、これには長期低利の資金が要求されます。
大臣は、
地方債は
政府資金によるものであるとのかつての
原則に返る考えはないか、これによって
政府資金の割合を増大していくお考えはないかを承りたい。
次に、
自治大臣に、
第一点は、ただいま大蔵
大臣に要望いたしました超過負担の解消には、
自治大臣が最も推進力を持たなければならないのであるが、従来の模様を見ておりますと、この点について、
自治省の力はまことに弱過ぎる、たよりにならないことおびただしい。
大臣、あなたは、この問題について有効な具体的方策を確立して軌道に乗せただけでも、
地方の
自治省に対する信頼を高め、
大臣就任の意義を果たすものであります。予算編成の時期は間近であります。急がなければなりません。
大臣のかたい決意のほどを伺いたい。
第二点は、今日
地方住民は、生活様式の変化につれて生活環境の整備を求め、交通など社会環境の危険の増大につれて、これから身を守るための整備を求めております。当然な切実な要求であります。しかるに、
地方財政はこれを満たす財源を持ちません。しかし、住民の切迫した要求には、財源付与のときまで待つことのできない、きょう、あすの問題があるのであります。ここに住民は、
公共団体が借金をしてでも早く実施されることを求めています。
本来、
地方自治体の起債は自由なものであり、ただ
地方財政法は、当分の間国の
許可を要するものといたしておるのでございますが、この当分の間はすでに二十年に及ぶのであります。立法当時、
承認許可を要するものとしたのは、当時の原資不足、発足したばかりの
地方自治体に対する不信などに基づくものと思われるのでありますが、現在はその様相は異なっております。この辺で住民の切実な要求にこたえるためにも、
自治体の
自治を回復するためにも、起債自由の
原則を弾力的に回復すべき検討の時期がまいったのではないかと思うのでありますが、
大臣の
所見のほどを承りたいと存じます。(
拍手)
〔
内閣総理大臣佐藤榮作君
登壇〕