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1967-06-13 第55回国会 衆議院 本会議 第25号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十二年六月十三日(火曜日)     —————————————  議事日程 第二十号   昭和四十二年六月十三日    午後二時開議  第一 国際法定計量機関を設立する条約改正   の受諾について承認を求めるの件  第二 千九百二十九年十月十二日にワルソーで   署名された国際航空運送についてのある規則   の統一に関する条約改正する議定書締結   について承認を求めるの件  第三 石炭鉱業再建整備臨時措置法案内閣提   出)     ————————————— ○本日の会議に付した案件  東京地裁決定に対する内閣総理大臣異議申立   てに関する緊急質問猪俣浩三提出)  東京地裁判決に対する内閣総理大臣異議申   立てに関する緊急質問岡沢完治提出)  藤枝自治大臣地方財政法第三十条の二の規定   に基づく地方財政状況報告についての発言   及び質疑  道路交通法の一部を改正する法律案内閣提出)   の趣旨説明及び質疑  日程第一 国際法定計量機関を設立する条約の   改正受諾について承認を求めるの件  日程第二 千九百二十九年十月十二日にワル   ソーで署名された国際航空運送についてのあ   る規則統一に関する条約改正する議定書   の締結について承認を求めるの件  日程第三 石炭鉱業再建整備臨時措置法案(内   閣提出)  中小漁業振興特別措置法案内閣提出)  外国人漁業規制に関する法律案内閣提出)    午後二時六分開議
  2. 石井光次郎

    議長石井光次郎君) これより会議を開きます。      ————◇—————  東京地裁決定に対する内閣総理大臣異議申立てに関する緊急質問猪俣浩三提出)  東京地裁判決に対する内閣総理大臣異議申立てに関する緊急質問岡沢完治提出
  3. 亀岡高夫

    亀岡高夫君 議事日程追加緊急動議提出いたします。  すなわち、この際、猪俣浩三提出東京地裁決定に対する内閣総理大臣異議申立てに関する緊急質問、及び岡沢完治提出東京地裁判決に対する内閣総理大臣異議申立てに関する緊急質問を順次許可されんことを望みます。
  4. 石井光次郎

    議長石井光次郎君) 亀岡高夫君動議に御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 石井光次郎

    議長石井光次郎君) 御異議なしと認めます。よって、日程は追加せられました。  まず、猪俣浩三提出東京地裁決定に対する内閣総理大臣異議申立てに関する緊急質問許可いたします。猪俣浩三君。   〔猪俣浩三登壇
  6. 猪俣浩三

    猪俣浩三君 私は、日本社会党を代表いたしまして、先般行なわれました行政事件訴訟法第二十七条による総理大臣異議申し立てにつき、総理はじめ法務自治大臣質問するものであります。(拍手)  およそ民主国家政治原則は法の支配といわれるものであり、法の支配原則政治の根幹をなしている限り、司法権がきわめて尊重せらるべきは当然であります。政党内閣制をとっている政体においては、立法権行政権とが多数党に握られておるのでありまして、三権分立原則がくずれておるのであります。されば多数党内閣の行き過ぎを抑制する機能が必要であり、司法権をしてこの機能をなさしめ、もって国政の円満な運営をはかる必要があるわけであります。政党内閣の典型的な英国におきまして、裁判官がきわめて尊敬せられ、英国の大法官すなわち最高裁判所長官は、総理大臣よりもその国家における席次は上位であることは皆さんも御承知のことであると思います。(拍手)この裁判官尊重司法権優位の原則を、総理はいかに理解されておるのであるか。もし理解されておるとするならば、行政事件訴訟法第二十七条もその趣旨解釈すべきであるにかかわらず、今回の異議申し立ては、この条文精神に違反して行なわれ、権利乱用の疑いがあるので、これが本質問中心であります。  ただし、こういう抽象的な質問だけだと、抽象的な答弁でお茶を濁されるおそれがあるので、右質問趣旨を明らかにしていただくために、以下、数問に分析して質問したいと存じます。(拍手)  由来わが国には、のらりくらり、要領を得ない答弁をして、責任ある言質を与えないことが名答弁であり、才能がある大臣だというような不都合千万な考え方があるのですが、これこそ責任政治原則を破壊するものであり、大臣の資格のないものであることを御承知願いたい。(拍手)その意味におきまして、何とぞ具体的明確な御答弁をお願いいたします。もし答弁が不明確である場合におきましては、再質問を留保いたします。(拍手)  第一点としては、裁判官に対する総理理解程度についてであります。  本件が係属しました東京地裁民事第二部は、九日は控え廷日で、在宅の日であったにかかわらず、事案の重大かつ緊急性を考え、特に午前九時半登庁して、杉本裁判長中心に、午前十時ごろから審議に入ったのでありますが、午前十時半には都公安委員会に出頭を求めて、十分その意見を徴しているのであります。都公安委員会は、裁判官質問に答えて書面をもって裁判所意見を具申したのであります。この意見により、裁判所は、慎重審議の結果、おそらくは同日午後八時前後には結論に達し、午後九時ごろには決定書都公安委員会に送付せられたはずであります。佐藤総理は、この決定に対して異議申し立てをなされた。そのため裁判官は、十日の午前三時ごろ、夜中だ、杉本裁判長宅集合佐藤総理が眠っている真夜中に、みずから信念をもって下した決定をみずからの手で取り消さねばならぬという、まことに屈辱的な運命になったのであります。この裁判官の無念や察するに余りがあります。一体佐藤総理は、この裁判官の心情に対しいかなる感想をお持ちであるか、承りたいのであります。(拍手)  第二点といたしまして、佐藤総理異議申し立て理由についてでありますが、これも細分して質問いたします。これは印刷物で前もって回してあるから、私はその順序で聞きます。  第二点の一、十日は土曜日に当たり、本会議常任委員会ともなかったのであるが、しかもおそくとも前日九日の午後八時ごろには議事日程決定され、印刷に付されていたはずであるが、総理はそれを認められますか。  二点の二、土曜、月曜は、緊急の事態のない限り通例本会議常任委員会とも開かれないのであるが、その慣例を総理は認められますか。  三、十日は土曜なるがゆえに、各官庁とも午後は、職員は特別の任務の者以外退庁するはずであるが、総理はそれを認められますか。  四、以上の事実の認定の上に立って異議申し立てをしたものであるかどうか。  五、東京地方裁判所決定の出たことを、どこで、いつごろ知られましたか。  六、それについて異議申し立て裁判所にしたのは何時ごろでありましたか。  七、杉本裁判長は、かつては法務省訟務局の参事官であり、本法律案者の一人で、解説書もあり、最も本法に精通せられた人であります。その人が裁判長であるので、これほど公正、正確な判断を下される人はほかにないと私は思われますが、総理の御所見を承りたいのである。(拍手)  八、総理裁判所提出された異議陳述書の内容についてお尋ねいたします。その理由にこういうことを言っておる。「現に五十五回特別国会開会中であって、当然予想せられる衆参両院における本会議委員会その他の審議、折衝、連絡、打ち合わせ等に伴う両院議員登院退院等の往来が確保できない。」と言っておるのだ。これはさきの質問のとおり、全く事実に反することであり、また、さようなことのないことは、当然前もって知っておらなければならぬはずである。現に当日十二時十分の調査によれば、登院者は、衆議院において自民党が九人、社会党が二十一人、民社三人、公明、無所属はゼロであって、参議院でも、自民党が五、社会党が七、民社一、他はゼロである。そのようなことはすでに予想されておらなければならぬはずであるのであります。これが現実だ。しかるに、かような衆参両院常任委員会や本会議が土曜日に開かれるというようなことでもって、それで審議を妨げられるなんていうことでもって、異議申し立ての事由にしておる。これはなぜかというと、国会運営の実情を知らぬ都の公安委員会裁判所に出した意見書をそのまままる写しにして出したのだ。不見識きわまるじゃないか。一国の総理大臣ともあろう者が、そんなでたらめなことをやっていいのであるか、これに対して答弁をしなさい。(拍手)  そうしていま申しましたように、陳述書には、本会議常任委員会が開かれることを前提として、国政審議権の公正な行使が阻害されるおそれがあると断定を下しているのであるが、これが全くでたらめであることはいま申したとおりである。さあ、かようなことを一体理由とされた総理の御意見を承りたい。  さて、なお理由として述べておることは、これも都の公安委員会が出した意見書そのものであるが、一々これを読むといいのですが、時間がありませんから省略しますが、集団示威行進をあたかも暴徒集合団体のように理解せられておる。一瞬にして暴徒と化し、警察力をもってもいかんともなし得ない事態に発展するおそれがある、こう言う。何ていうことなんだ、一体これは。東京護憲連合行進許可申請は千人ぐらいの集団で、国会裏通り行進するだけのことであり、ことに都の公安委員会は、ジグザグ行進はいかぬ、かけ足はいかぬ、あるいはすわり込みはいかぬ、フランスデモはいかぬ、全体を数班にわけて、一班と二班の間の距離はどのくらいにしろ、あらゆる制限をやっておる。それを護憲連合ではのんで、ただこのコースの変更だけについて裁判所に訴えたのであります。  かような場合におきまして、国会裏行進することが、何で一体公共福祉に害があるのだ。何で警察力をもっても押えることのできないような事態が発生するおそれがあるのだ。土曜日の午後三時ごろ通るというその行進は、人数は千人なんだ。実際は二百人ぐらいだったのだ。それで通らなかったのだから。とにかくさような千人で、これだけの規制をされて、そうして国会裏通りを通るときに、日本警察力はこれを押え切れないような無力なものであるかどうか、これをひとつ自治大臣答弁しなさい。  まあとにかく通常神経では考えられないような神経過敏症というか、誇大妄想狂というか、あるいは神経性恐怖症というか、どうも異常だと私は思うのであります。でありまするから、この第二部杉本判決は、この東京都の意見書、すなわち、総理大臣陳述書はあとから出たにしても、ほとんどこの意見書引き写しですから、やはりそれに対する批判になる。この東京地裁第二部の杉本裁判長の班ではこういうことを言っている。「民主政治にとってきわめて重要な集団行動による表現の自由を制限するものであるからその運用にあたっては、いやしくも公安委員会がその権限を濫用し、公共の安寧の保持を口実にして、平穏で秩序ある集団行動まで抑圧することのないよう戒心すべきことはいうまでもない。」こう言っているのだ。これはあたりまえのことなんだ。「しかるに被申立人は」中間省略するが、「本件進路変更条件を付すことなく許可を与えた場合には、国政審議権の公正なる行使が阻害されるおそれがあり、公共福祉に重大な影響をおよぼすおそれがあると主張するが、しかし本件許可申請がなんらの条件も付されることなく許可されたのであればともかく、前示のような諸条件が付され、なかんずく危害防止および秩序維持に関しきびしい条件が付されていること、本件集団示威行進主催団体およびその参加予定者数が前示のとおりであること、前記被申立人変更にかかる当初の進路国会周辺すべての道路ではなく永田町小学校から国会裏側を経て特許庁に至る道路であるにすぎないこと等にかんがみれば、本件集団示威行進が被申立人主張のように国政審議権の公正な行使を阻害する等のものとは断ずることができない。」こう言っているのだ。(拍手)  さて、しかるにかかわらず、これに対して総理大臣異議申し立てられた。これはまあ法律規定があるからしかたがない。ただ、総理大臣はこの法律成立経過をどれだけ研究されたか、以下お尋ねしたいと思います。  行政事件訴訟法第二十七条に対して総理はどういう理解を持っているのだ。どうも東京都公安委員会意見書引き写したものを出すというに至っては、あまり理解なさっていないのではないかと思うが、お尋ねだけしてみる。  総理は、行政事件訴訟法第二十七条について、いかなる方法で条文を見、また聞き、その解釈理解したか。しかして、この二十七条の成立経過につきどんな研究をなさったか。昭和三十七年三月二十二日の衆議院法務委員会における私の質問、同年四月十九日の同委員会における阿部五郎君の質問に対し、当時の法務大臣植木庚子郎君、あるいはまた濱本訟務局長、これらが政府答弁に立って、質問は主としてこの二十七条に集中したのだ。それに対して彼らはどう言ったか。みな口うらを合わしたように、いやこの二十七条は伝家の宝刀でございます。めったに抜かないのでございます。どうしても公共福祉のため真にやむを得ない場合だけに限る、まれな場合を規定したものであります。こう答弁しておる。後に、当時法制審議会本法審議に当たられましたる、ただいま最高裁判所の判事になっておる田中二郎氏と、本件裁判長杉本氏の対話が法律雑誌に載っておりますが、国会においては、論議はこの二十七条に集中していたので、ほかの部分はあまり論議なしに通すことができたと述懐しているのである。このくらいこれは問題だった。本条については、社会党民社党も共産党も、野党全部反対をした。そうして修正案を出したのであるが否決された因縁つき条文であります。一体、慎重の上にも慎重に取り扱わなければならない運命を持っておる条文なんだ。さようなことを総理は御承知あったのかないのか、その認識をお聞きしたい。  さて、三点の二といたしまして、司法権優位、裁判官尊重精神と、ただいま申しました四十回国会法務委員会における野党主張及び政府委員答弁趣旨、これを総合して考察するならば、今回総理大臣異議申し立ては、各大新聞の論説において指摘せられたるとおり、不法に法を歪曲し、職権乱用したおそれが十二分にあるが、これに対し、総理並びに法務大臣はどういうふうにお考えになっておるか、御答弁願いたいのであります。(拍手)  さて、これが職権乱用があったと、かりにいたしますならば、刑法百九十三条の公務員職権濫用罪に該当すると思うのでありますが、法務大臣はどう考えるか。(拍手)  さて、第五点といたしましては、佐藤総理は、今後もなお国会裏行進については、裁判所見解いかんにかかわらず、本件のごとく行政事件訴訟法第二十七条の異議申し立てをする意思であるかないか、それを明らかにしていただきたい。  第六点。法務大臣は、みだりに公安条例違反なりとして起訴せざるよう、慎重に捜査すべきことを全検察官に対して訓令を発する意思があるか、これをお聞きする。  第七点。自治大臣は、全国公安委員会に対し、デモ行進等条件を付するにつき、判例並びに憲法精神に違反しないよう特別の通達を発する真意があるかどうか。  私が、このことを質問するゆえんのものは、国家公務員の中に、内閣総理大臣は、行政長官であるとともに、国家最高機関だなんて言うたやつがいるんだ。新聞にちゃんと出ています。それが国家公務員だ。いわんや、地方自治体の公務員なんというのは、どういうのがいるかわけがわからぬ。憲法など全然おかまいなしの連中が相当いるんじゃないか、そういうのが条例をつくるのだ、そういうのが条件を付して、その条件に違反したら一々引っぱられて起訴される。こんなむざんな話がありますか。いま少しくこれに対しまして、人権を尊重し、憲法表現の自由を尊重するならば、法務大臣自治大臣は、特別の処置をとっていいと思うが、その所見を承りたいと存ずるのであります。  第八点。行政事件訴訟法第二十七条によれば、その第六項において、「異議を述べたときは、次の常会において国会にこれを報告しなければならない。」という規定になっておりますが、この報告をいつなさるのであるか、総理大臣の御意見を承りたい。  以上をもって、私は質問を終わります。(拍手)   〔内閣総理大臣佐藤榮作登壇
  7. 佐藤榮作

    内閣総理大臣佐藤榮作君) お答えいたします。  民主主義のもとにおきましては、お説のとおり、法律を守ることが絶対に必要であります。また、三権分立原則、これも守らなければなりません。  ただいま、私のとりました処置は、行政事件訴訟法二十七条、法律に基づいてとった処置でございます。裁判官もまた第二十五条によって処置をいたし、私は二十七条によって処置いたしたのでございます。これは抽象的でございますが、この原則はぜひ守っていただきたい。  そこで、具体的に土曜日ではあまりたいしたことはないじゃないか、委員会も開かれず、本会議もない、また、月曜日もたいしたことはないのだ、そういう際のデモだからこれは問題じゃないじゃないか、こういうお話であります。私も国会に籍を置いて十数年になりますので、土曜日にどういうようなことが行なわれるということはよく知っております。猪俣君また御承知のとおりであります。しかしながら、国会というところは、会議ばかりがいわゆる国会ではございません。もちろん緊急の場合にはどういうことがあるかわかりません。これは猪俣君御自身も、緊急のものが考えられれば別だということを言われております。また、私ども議員国会にはしょっちゅう出入りしておるのであります。それらのことを考えてみますと、国会周辺デモというのは当然私どもが気をつけなければならない問題でございます。(拍手)  次に、私が事態を何時ごろ知ったか、こういうことでありますが、私は大体夜の九時半ごろ静養先でこれを知りました。そうして私は直ちに官房副長官、さらに法務大臣自治大臣等にこれに対する処置を命じたのでございます。おそらく政府といたしましては、同日中に裁判所に対しまして異議申し立てをした、かように私は理解しております。  杉本裁判長が過去においてこの問題にも関係されたという、猪俣君はさすがに弁護士でありますから、よく御存じのようでありますが、私はさような点は知りませんでした。しかし、ただいま申し上げますように、関係大臣並びに法制局長官もこの条文がどういうような審議経過をたどり、また、杉本裁判長がもとどういうような官歴を持っていたか等々はよく承知いたしておるのであります。ただいまも御指摘になりましたように、この二十七条についてはずいぶん反対がございました。反対はございましたが、これはりっぱに成立して今日有効にこの法律があること、これは御承知のとおりであります。ただいまこの法律を無視しようという、そのことこそが実は民主政治のもとにおいては許されないことではないか、私はかように思います。(拍手)  そこで、このデモ行進は、私が申し上げるまでもなく、多数の人が一定の目的を持ちまして一般公衆に対して気勢を示す集団行動でありますから、開会中の国会、そのすぐそばで、その道路でこういうことをやられるということは、当然国会議員その他国会審議に関係する人たちに対しまして気勢が示されるのでありまして、国会審議権の公正な行使に支障を与えることは当然といわなければなりません。(拍手)私は、国会議員の方々はどんなことにも乱されず、その責務を果たされることだと思いますが、しかし、国会周辺に無理やりにデモをしたいという、そういうところにやはり私どもがただいまのような説明をせざるを得ない事情のあることを御了承いただきたいと思います。(拍手)  わずか千名程度デモだ、そんなことは御心配要らない、実際に集まったのは二百名だ、かように言われますが、さようであればあるだけに、これは国会周辺でやられないほうがほんとうに適当であった、かように私は思います。  次に、今日の総理大臣のこの異議申し立てがこれは権利乱用だ、かようには私は絶対に思っておりません。  また、最後にお尋ねがありましたように、次の通常会には、必ず報告をいたします。(拍手)   〔国務大臣田中伊三次君登壇
  8. 田中伊三次

    国務大臣田中伊三次君) 内閣総理大臣異議陳述が、刑法のいわゆる職権濫用罪に該当するのではないかという御質問でありました。  職権濫用罪なるものは、猪俣浩三君御承知のとおり、職権乱用して、人をして義務なきことを行なわしめ、行なうべき権利を妨害するという構成要件が必要でございます。内閣総理大臣は、行政事件訴訟法二十七条に基づいて緊急やむを得ざるものと認めて、本件発動をしたものでありまして、職権のまさに行使というべきであって、これを濫用罪該当と認めることは誤りでございます。(拍手)  それから第二のお尋ねは、今後、全国検察庁は、公安条例違反事件を起訴せざるよう通達を行なう意思ありやとの御質疑でありますが、御承知のとおり、公安条例憲法上有効であるということは、最高裁判所大法廷をはじめ、幾多の高等裁判所においてその有効を認めておるところであります。しかしながら、最近において、所々に、下級裁判所において、これに反するがごとき判決あることは事実でありますが、そのような下級裁判所判決の存在する事実をもって、法の適用を阻止するがごとき通達を行なう意思はございません。(拍手)   〔国務大臣藤枝泉介登壇
  9. 藤枝泉介

    国務大臣藤枝泉介君) 集団示威運動というものは、言論、出版等とは異なりまして、つまり潜在する一種の物理的な力によって支持されていることが特徴でありまして、こうした潜在的な力は、あるいは予定された計画に従い、あるいは突発的に内外からの刺激、扇動等によってきわめて容易に動員される性質であるということは、三十五年の最高裁の判決にも明記しておるところでございまして、猪俣さんは十分御承知のところだと存じます。  次に、公案条例の取り扱いにつきましては、憲法その他によって十分慎重にすべきことは、常々都道府県公安委員会通達をいたし、指示をいたしておるところでございまして、今回特にこの指示をいたす所存はございません。(拍手)     —————————————
  10. 石井光次郎

    議長石井光次郎君) 次に、岡沢完治提出東京地裁判決に対する内閣総理大臣異議申立てに関する緊急質問許可いたします。岡沢完治君。   〔議長退席、副議長着席〕   〔岡沢完治登壇
  11. 岡沢完治

    岡沢完治君 私は、民主社会党を代表いたしまして、総理大臣並びに藤枝国家公安委員長に対しまして、去る九日の東京地裁決定に対する総理大臣異議申し立てについて、先ほどの社会党代表猪俣議員と同じ観点から、重複する点も若干あると思いますけれども、それはそれだけ事態が重大であるというふうに御理解いただきましてお尋ねを進めたいと思います。  先ほど総理は、今回の異議申し立ては、行政事件訴訟法第二十七条に基づいてこれをなしたとおっしゃいました。規定はまさにそのとおりでございますが、この二十七条の解釈を誤っておられるのではないかということを第一に指摘申し上げたいと思います。(拍手)  何となれば、第二十七条の六項には、この異議申し立ては、やむをえない場合でなければ、これをすることができないと明記してあるわけでございますけれども、今回のこの異議申し立て対象になりましたデモ行進につきまして、先ほど猪俣議員も御指摘になりましたが、当日六月の十日は土曜日であり、異議申し立て書に明記されました国政審議が妨害されるという対象審議そのものが、本会議委員会もないということから見ましても、対象の存在しない事案をさして国政の混乱というようなことを異議申し立て理由の第一点にあげておられるわけでございまして、そのことからもナンセンスでございます。(拍手)  また、先ほどの地裁裁判長の御判断にもございましたように、このデモ行進につきましては、その他のきわめて厳密な規制がすでになされておりました。人員は千名以内、そしてまた、その態様につきましては、プラカードの大きさ、あるいはデモの態様の、たとえばフランスデモは禁止する、ジグザグ行進は許さない、あるいはかけ足は許さない等、先ほど猪俣議員の御指摘のとおりでございまして、さらにまた、私は、その対象憲法擁護を主張する都民連合の方々であったということを考えましても、異議申し立て書理由にありますように、これが暴徒化するというような考え方は、むしろ一般の常識に反するものではないかと考えるわけであります。(拍手)  ことに、この第六項の解釈につきましては、立法経過からいたしましても、また、学者の通例の解釈からいたしましても、この「やむをえない」という理由は、一般的、抽象的なやむをえない理由ではいけないのであって、具体的、直接的に公共の秩序を害するおそれがあるというときに限るというきわめて厳格な規制が当然でありまして、この点からいたしましても、今回の総理大臣異議申し立ては、第六項の解釈を明らかに誤った措置ではないか、この点について総理の御見解を賜わりたいと思います。(拍手)  次に、この異議申し立てがなされました以後の藤枝国家公安委員長の御発言等を見ますと、あたかも表現の自由は、他の言論の自由、あるいは思想の自由のごとき基本的人権とはいささか性質を異にするという趣旨の御説明がございます。しかし、この点につきましても、すでに杉本裁判長の御見解にも明らかでございますように、この表現の自由は、他の基本的人権の保障とともに、憲法並びに議会政治の基本的な要素の一つでありまして、私は、これを一般的、抽象的な公共福祉の名において制限をするような考え方は明らかに憲法精神に反すると思うのでございますが、これについての総理並びに国家公安委員長の御見解を表明していただきたい。(拍手)  ことに私は、総理が常に自由を愛し平和に徹するということばを口癖のように申され、所属の御政党が自由民主党でありまして、自由を標榜せられておりますその自由の名が泣くような解釈につきましては、この際自由民主党の与党の諸君にも御反省を求めたいと考えるものであります。(拍手)  ここで私は、異議申し立ての性格について国会の皆さん方とともに考えてみたいと思います。もとより申し上げるまでもなしに、この二十七条の趣旨は、いわゆる三権分立の基本的な憲法の構成に対する異例中の異例の措置であります。それだけに立法経過からいたしましても、いわゆる伝家の宝刀としてこれが行使には慎重の上にも慎重さが要求されるのであります。ところが、この決定のいきさつを見ますと、六月九日の午後九時過ぎに裁判所決定がなされました。それに対し、総理は鎌倉で御静養中であります。法務大臣国家公安委員長、木村官房副長官等と電話連絡で簡単に、三時間足らずのあとにこの決定指示されておる。いわば司法権行政権の交錯、三権分立の基礎をゆるがすような、こういう大決定を簡単な、軽率な御判断のもとにとられた今回の総理の措置につきましては、いささか御反省を求めたいと思うものであります。  なお、新聞等に木村官房副長官が、昨日あたり報ぜられましたところによりますと、今回の措置は、たとえばイギリス、アメリカ、西ドイツ、フランス等では当然に規制されている内容であって、国会裁判所、外国大公使館周辺デモは禁止するのが当然だという趣旨の御発言がございました。しかし、将来の立法論は別といたしまして、現在私たちは、新しい憲法のもとで、生きた日本国の法律のもとで生活をし、それによって行政が行なわれておるわけであります。外国の立法例をあげて、行き過ぎた総理判断を弁護するがごときは、私はナンセンスであろうと考えるのであります。(拍手)  ただし、念のために、この機会に総理大臣に私はお尋ねをいたしたい。将来国会等の周辺におけるデモ規制について、今後立法措置をとる御意思がありやいなや、もしあるとすれば、その具体的な構想をこの機会に明らかにせられたい。  次に、私は、今回のこういう総理大臣決定がなされた背景が那辺にあるかということを考えてみたいと思うのでございますが、時間の関係でただ一点、結局総理の想定の中に、いわゆる権力主義、多数横暴の政治の現状に甘んじた権力主義的な政治姿勢が、その背景にあるのではないかと指摘せざるを得ないのであります。(拍手)ことに私は、政治の基本は、政治家の国民に対する信頼がその基礎であろうと思うのでございますけれども、先ほどの異議申し立て理由にもございましたように、この憲法擁護都民連合の会合をもって、将来これはいつか暴徒と化するというような不信を前提とした異議申し立てがなされておるのであります。国民を信頼しないところにどうして政治が行なわれますか。そういう点、ことに今回のデモの結果を見ますと、二百名足らずの方々が、きわめて整然と許可されましたコースに従いまして、憲法擁護の名にふさわしい姿でデモを終わられた。結果論ではございますけれども、あまりにも政府が杞憂な態度をとり過ぎたというところに、やはり政治姿勢の反省を求めたいと考えるものであります。  最後に、私は、総理がいつもおっしゃいます風格ある政治、風格ある政治とはどんなものであろうか。私は、総理がみずから持てる権力を誇示されまして、総理大臣は何ができるかということをお示しになるのではなしに、国民の期待される最高の姿としての総理、国民に対し、また国家に対し、総理が何をしていただけるか、何をする意思をお持ちかというところを明確に示してもらいたい。憲法擁護を訴える国民に対して、デモ規制するような態度ではなしに、みずから憲法を守る権化の姿を、私は国民が期待しておると信ずるものであります。(拍手)  そういう点から、総理の今回の措置についての御見解をあわせ表明いただきたいとお願いいたしまして、私の質問を終わります。(拍手)   〔内閣総理大臣佐藤榮作登壇
  12. 佐藤榮作

    内閣総理大臣佐藤榮作君) お答えいたします。  このたび行政事件訴訟法第二十七条の規定で、私が異議申し立てをいたしたのであります。これが何か解釈が間違っていはしないかというお話でございます。私自身は法律家ではございませんが、この法律を十分検討いたしまして、誤ったつもりはございません。  次に、ただいまも言われるように、これは第六項でよほど限定的なものなんだ、その意味において乱用ではないか、こういうお話であります。事の起こりは、公共福祉、それは一体どういうことか。政府におきましては当然公共福祉解釈権を持っておる、このことをひとつ御了承いただきたいと思います。私はこのことが望ましいと、かように考えたのでございます。  また、自由民主党についての御意見がございましたが、これは、私伺っておきます。  その次に、この条文ができるいきさつについて、これは先ほども猪俣君にお答えしたとおりであります。私もその法律のできばえ等について、その審議経過等も十分承知しております。しかし、今日はこの法律が厳然としてあるのでございますから、民主主義のもとにおきましては、法律を守ることは最も大事なことです。(拍手)これを無視するようなことがあってはなりません。  また、……(発言する者多し)ちょっと待ってください。もっと静かに聞いてください。また、今回のこの処置は、夜の九時半から十二時までの間で、その時間が非常に短かった、したがって、これは軽率ではなかったか、こういうお話であります。しかし、行政、立法、司法、三権の区分は明確にするのが、これが民主政治の根本であります。私は、この行政と、いわゆる司法権立法権、これは絶対に混淆、混同するような考えはございません。また、行政権司法権に先立つものだ、かようにも私は考えておりません。ただいまの行政事件訴訟法二十五条と二十七条と、二つが規定してあることをごらんになれば、裁判官のとった処置も非難すべきではないでありましょうが、同時に、二十七条の規定で私が処置をとったことも、これは法律に忠実であるゆえんだ、かように御了承いただきたいと思います。(拍手)  国会周辺デモを今後規制する考えがあるか、こういうお尋ねでありますが、ただいま私どもさような段階になってはおりません。規制するような段階になっておりません。  次に、今回のこの処置の背後についていろいろ想像をめぐらしていらっしゃるようであります。私は別に権力主義者でもございません。忠実なる民主主義者でございます。どうかその点では誤解のないようにお願いしておきます。  また、これが多数横暴だ、かように言われますが、民主政治の当然の帰結として、最後にはやはり国民を代表しておる多数そのものに従わなければ、これを無視するところに問題があるのではないか、私はかように考えます。  次に、風格ある政治ということについていろいろ御意見を聞かしていただき、まことにありがとうございました。参考になったので、ありがたくお礼を申し上げます。しかし、民主主義のもとにおいては、憲法も守らなければなりませんが、あらゆる法を守るという、その心がけでなければならない、この点を特に強く申し上げておきます。(拍手)   〔国務大臣藤枝泉介登壇
  13. 藤枝泉介

    国務大臣藤枝泉介君) 表現の自由は、出版、言論によるものと、それから集団行動によるものと差別するような考え方を私は申し上げたわけではございませんで、先ほど猪俣さんにお答えいたしましたように、集団示威運動というものは多数のエネルギーにささえられているという特徴があるということを申し上げた次第でございます。(拍手)      ————◇—————  藤枝自治大臣地方財政法第三十条の二の規定に基づく地方財政状況報告についての発言副議長(園田直君) 自治大臣から、地方財政法第三十条の二の規定に基づく地方財政状況報告について発言を求められております。これを許します。自治大臣藤枝泉介君。   〔国務大臣藤枝泉介登壇
  14. 藤枝泉介

    国務大臣藤枝泉介君) 地方財政法第三十条の二の規定に基づき、地方財政の状況を御報告申し上げます。  まず、昭和四十年度の地方財政のうち、普通会計の決算について申し上げますと、決算規模は、歳入四兆四千七百八十億円、歳出四兆三千六百五十一億円でありまして、前年度に比べますと、歳入において五千六百七十一億円、一四・五%、歳出において五千四百三十一億円、一四・二%増加しており、歳入歳出ともにその増加率は前年度を下回っております。  収支状況について見ますと、黒字団体は三千百団体で、その黒字額は八百二十億円、赤字団体は三百四十一団体で、その赤字額は三百四十二億円、合計四百七十八億円の黒字でありまして、前年度に比べますと、黒字団体の黒字額が百四十六億円増加し、赤字団体の赤字額が三十億円減少しております。なお、昭和四十年度におきましては、地方税の減収対策として地方債を三百八十五億円追加発行しておりますので、これを考慮した場合の収支では、合計九十三億円の黒字にすぎず、前年度に比べますと、二百九億円黒字額が減少したことになります。  以上のような昭和四十年度の普通会計決算につきまして、その特徴を申し上げますと、  第一に、財政収支は表面上黒字が増加しておりますが、これをささえたおもな原因は、地方税の減収対策としての公共事業関係地方債の大幅な増発や単独事業の抑制などによるものであります。  第二に、財政規模の伸びをささえる財源の中心が、従来の一般財源から国庫支出金及び地方債に移っております。  第三に、建設事業費では、国庫補助事業を優先的に完全消化し、単独事業は伸び悩んでおります。  第四に、人件費は、給与改定等のため、引き続き大きい増加を示しているほか、国民健康保険事業及び地方公営企業に対する繰り出しが引き続き多額であります。  以上の歳入歳出諸要因により、財政構造はさらに弾力性を失っております。  次に、地方公営企業について申し上げますと、前年度に引き続き事業数、規模ともに大幅に増加した反面、経営面においては、赤字がさらに累増しております。  また、国民健康保険事業につきましては、その財政収支はかなり改善されておりますが、大都市、特別区をはじめ多くの団体がなお多額の赤字をかかえ、また、事務費等についても問題が残されております。  次に、昭和四十一年度における地方財政運営状況について申し上げますと、年度当初において地方公共団体も公共事業の早期消化の方針に積極的に協力し、顕著な成果をあげております。その後、年度中途において、災害対策、地方公務員の給与改定等、歳出に新たな増加要因が加わりましたが、地方交付税の増加、地方債のワクの増加等所要の対策を講じましたので、景気も漸次上昇に転じつつあることとも相まって、おおむね順調に推移しております。  以上のように、最近の地方財政におきましては、さしあたっての運営に大きな支障はないものの、内容的には、一般財源の多くが義務的経費に費消され、社会資本の充実、住民福祉の向上を強力に推進するためには、積極的に財源強化の措置が講ぜられない限り、借り入れ金に依存せざるを得ず、財政構造はますます硬直化の傾向を示しております。他方、最近における社会経済の急速な変貌は、地方公共団体に対し、ますます複雑かつ広範にわたる役割りを課しつつあり、これに伴い地方財政需要も急増し、かつ、そのあり方も変容する趨勢にあります。  したがいまして、地方財政に安定性と計画性を持たせると同時に、最近における社会経済情勢の急激な変動に対処して地方財政を真に住民の負託にこたえ得るようにするためには、さらに抜本的に検討すべき問題があると存じます。  反面、地方財政の真の健全化のためには、地方公共団体自身においても、経費の合理化につとめ、その財政運営について、より一そうの効率性を発揮すべきことは申すまでもありません。政府といたしましては、今後とも地方財政の健全化のためあらゆる努力をいたすとともに、各地方団体に対しましても十分指導してまいる所存であります。  以上、地方財政の状況についてその要旨を報告いたした次第であります。(拍手)      ————◇—————  地方財政法第三十条の二の規定に基づく地方財政状況報告についての発言に対する質疑
  15. 園田直

    ○副議長(園田直君) ただいまの発言に対して質疑の通告があります。これを許します。華山親義君。   〔華山親義君登壇
  16. 華山親義

    ○華山親義君 日本社会党を代表し、ただいま報告のありました地方財政の状況に関連して、政府に対し質問をいたします。  まず、総理大臣に対し、  第一点は、現在の地方制度が、昭和二十四、五年のシャウプ勧告に由来するものであることは御承知のとおりであります。この勧告の内容には批判を持つものではありますが、勧告はそれなりに地方自治の本旨をわきまえ、国、府県、市町村の事務の分野を明らかにし、これに必要な財源を配分したものであって、自治精神を堅持しつつ実際を処理した、理論の一貫したものであったのであります。しかるに、今日まで、地方の事務と財源とは、理論を離れて、そのときどきの便宜におちいり、憲法に定むる地方自治の本旨をも没却するまでに至っております。総理はこの指摘に対して、現在、地方制度調査会において地方の事務と財源の再配分を審議中なので、その答申を待って実行したいと、しばしば答弁されておるのでございますが、私にはうつろにしか響きません。かつて池田総理は、行政の合理化について、臨時行政調査会の答申を待ってと繰り返されたのであるが、答申以来すでに三年になんなんとして、ほとんど見るべきものがないからであります。地方制度調査会は——私もその一員でありますが、すでに事務の再配分の審議を終わり、その内容は、詳細、具体的なものでありますし、今後審議される財源の再配分については、大幅な国から地方への移しかえが予想されるのでありまして、これが実行に対する抵抗は、臨時行政調査会答申に対する抵抗の比ではあるまいと思うのであります。  総理は、答申の暁、真に不退転の決意を持って強力に抵抗を排除して、実行に移される決意がおありなのかどうか、伺いたいのであります。  第二点は、今年の報告といままでの報告との違いは、人口過密過疎の問題を投げかけたことであります。人口の著しい流動によって、一方に人口過密地帯を生じ、ここに公害を発生し、住宅難を生み、交通難、交通禍をもたらし、この困難な処理の第一線に立つものは、大都市及びその周辺市町なのであります。一方、人口流出によって人口過疎地帯を生じ、教育その他の公共施設は崩壊に瀕し、これを食いとめようとする貧弱地方団体の苦悩ははかり知れないものがあります。しかも、人口流動の趨勢はいよいよ急激となり、やむところを知りません。過日、経済企画庁は、新産業都市について、この地域の工業生産品の出荷高は予想された実績を示したが、人口増加率は全国の増加率を下回り、人口集中を阻止しようとした目的は果たされなかったと言い、その上に、これら地方の財政は先行投資のために悪化しつつあると報告しているではありませんか。  一方、過疎地帯の典型ともいうべき山村僻地について、これに対する政府の施策は、山村を将来保持するつもりなのか、滅びてもやむを得ないと思われるのか、いずれともつかない実態ではないかとの過日の私の質問に対し、宮澤経済企画庁長官は、率直に申して、御指摘の実情で、これは政治の貧困にもなるのではないかと、正直に自認されたのであります。このままで行くならば、山村地帯の部落は、高度経済成長政策の落とし子としてスラム地帯化することをおそれるものであります。現在これら山村をはじめ、東北地方などの貧弱地帯からは、最も劣悪な条件のもとに、約百万の人々が出かせぎに出ている。この地帯の農村の主婦の半数は農夫症にかかっている。総理はこの実態を御存じなのであろうか、これらをかかえている自治体の苦悩に一片の心をとめていただきたいと思うのであります。  地方公営企業は、住民の要求にこたえて、おのずから後進的地域においては医療機関、都市においては交通機関を中心として発足したのであるが、いまや人口過疎地帯の病院は患者の減少によって維持の困難におちいっております。一面、大都市交通は自動車のとめどもない増加と、限りある道路面積の拡張との間に急激なアンバランスを生じて交通麻痺の状態になり、この間を運行する公営企業の車両の時間走行距離の著しい短縮となり、また地下交通は建設資金の重大な圧迫を受けており、これが今日の交通公営企業悪化の必然的要因であります。  このような過密過疎の進行と実態に処して、政府はただそのときそのときの現象に応じて場当り的措置を講じてきたにすぎません。いかに臨時措置法、緊急措置法、臨時特例法なる名のものが多いかは、これを実証するものであります。  財政報告は、地方財政の長期計画を求めているのであるが、この人口流動の中で、長期に立つ安定した地方財政計画の立つわけがありません。  そこで総理に伺いたいことは、資本主義、自由主義経済のもとでは、人口流動の趨勢はとめがたいことと認めた上に、いまのような場当たり的地方財政対策を続けていくよりしかたがないとお考えになっているのか、それともいまここで資本の流れに変更を加えて、人口の流動を抑制、安定させた上に、地方財政の安定長期計画を求めようとされるのであるか、御所見を伺いたいのであります。  次に、当面の具体策につき大蔵大臣に、  第一点は、毎年国会提出される地方財政計画には、超過負担の項目がありません。しかし、超過負担は間違いなく実在している。この結果、実際にあたっては超過負担は計画の中の一般行政費及び単独事業に食い込んでいくものであり、このことは自治省当局の認めるところであります。この点において、地方財政計画にはうそがひそんでいる、このうそは地方自治をむしばむ悪質なものであります。超過負担は多年にわたるものであり、中央、地方の間の不信をかもす最大のものであります。政府はすみやかに有効具体的な方策をもってその解消に当たるべきであります。しかるに、今日までこの解消の遅々として進まない原因の一つは、予算編成の過程において、自己の仕事の分野を守り、拡大しようとする官僚の本能的意欲がまつわることにあるのであります。すなわち、超過負担は、自己の仕事の拡大とは無縁のものでありますから、関係各省は限られた限度の予算の要求にあたって、また、大蔵省との折衝査定の経過において、超過負担解消のための意欲が二の次になりがちなことは明らかであります。  そこで、私は具体的方策として、予算編成の事前に、このための計画的な特別なワクを設けるか、あるいは大蔵省、自治省を中心として所管各省と協議し、事業の合理的単価を定め、これによって予算の要求並びに査定を進められることを提唱いたすものであります。  地方財政法第十八条は、国の補助金、負担金は、必要でかつ十分な金額を基礎として算定されなければならないと規定している。政府みずからがこれを空文化し、違法をあえてすることは許さるべきではありません。大臣は私の提言をも考慮されて、有効具体的な方策によってこの問題に取り組むお考えがあるかどうかをお伺いいたします。  第二点は、地方自治体の起債は、昭和二十六年までは全額政府資金によったのでありますが、日本財界の復興期にあたって、その後は公募債を交えるようになり、それでも昭和三十年代の初めにおいては、政府資金は八〇%前後を占め、地方債は政府資金による原則に立っていたのであります。しかるに、昭和三十六、七年以降、経済高度成長政策の発展につれて次第に低下し、いまや六〇%に近づきつつあります。政府資金による原則は破れ去ろうといたしておるのであります。政府資金は、郵便貯金、簡保掛け金など大衆庶民の生活の中から生まれる零細資金の集積でありますし、地方行政は、大衆庶民の生活に密着するものであります。したがって、これらの資金を地方行政を通じて庶民の生活のために還元することは理の当然と申さねばなりません。一般地方行政も、公営企業も、目前の利益を追求するものではない。長期にわたる住民の利益のためになされるものであって、これには長期低利の資金が要求されます。大臣は、地方債は政府資金によるものであるとのかつての原則に返る考えはないか、これによって政府資金の割合を増大していくお考えはないかを承りたい。  次に、自治大臣に、  第一点は、ただいま大蔵大臣に要望いたしました超過負担の解消には、自治大臣が最も推進力を持たなければならないのであるが、従来の模様を見ておりますと、この点について、自治省の力はまことに弱過ぎる、たよりにならないことおびただしい。大臣、あなたは、この問題について有効な具体的方策を確立して軌道に乗せただけでも、地方自治省に対する信頼を高め、大臣就任の意義を果たすものであります。予算編成の時期は間近であります。急がなければなりません。大臣のかたい決意のほどを伺いたい。  第二点は、今日地方住民は、生活様式の変化につれて生活環境の整備を求め、交通など社会環境の危険の増大につれて、これから身を守るための整備を求めております。当然な切実な要求であります。しかるに、地方財政はこれを満たす財源を持ちません。しかし、住民の切迫した要求には、財源付与のときまで待つことのできない、きょう、あすの問題があるのであります。ここに住民は、公共団体が借金をしてでも早く実施されることを求めています。  本来、地方自治体の起債は自由なものであり、ただ地方財政法は、当分の間国の許可を要するものといたしておるのでございますが、この当分の間はすでに二十年に及ぶのであります。立法当時、承認許可を要するものとしたのは、当時の原資不足、発足したばかりの地方自治体に対する不信などに基づくものと思われるのでありますが、現在はその様相は異なっております。この辺で住民の切実な要求にこたえるためにも、自治体の自治を回復するためにも、起債自由の原則を弾力的に回復すべき検討の時期がまいったのではないかと思うのでありますが、大臣所見のほどを承りたいと存じます。(拍手)   〔内閣総理大臣佐藤榮作登壇
  17. 佐藤榮作

    内閣総理大臣佐藤榮作君) お答えいたします。  お話にもありましたように、中央、地方行政事務の再配分、同時に、その財源の配分の問題、これは地方制度調査会におきましていろいろ検討しておる最中でございます。お話にもありましたように、第九次並びに第十次答申によりまして、行政事務の配分は一応答申を得ておりますが、財源の裏づけがございませんので、その財源の裏づけを待ってこれを処置するつもりでございます。政府におきましては、もちろん、いつもこの種の調査会の答申は尊重する、このたてまえでございますので、そういう意味で十分調査会の答申は尊重いたしまして、結論をつけるつもりであります。  次に、人口の流動、最近の経済、社会の発展から見まして、これは必然的にそういう状態が起こるのであります。そうして、資本主義経済のもとにおいてはこういう状況は続くだろう、だからどうしようもできないのか、こういうお話でございますが、とにかく、経済、社会の発展上、こういうことが必然的に起こる。政府は、国内の均衡ある発展、これが最も望ましい姿でございますので、過密都市対策並びに過疎対策、それぞれ具体的に実行いたしまして、そうして均衡のある発展を期していくつもりでございます。しかしながら、ある程度実情が地方によって相違いたしますので、財源的措置をいたすにいたしましても、これらの実情を十分勘案して、それに応ずる財源的措置を講じていくということでなければならない、かように思っておりますので、その点で努力しておるような次第でございます。(拍手)   〔国務大臣水田三喜男君登壇
  18. 水田三喜男

    国務大臣(水田三喜男君) お答えいたします。  超過負担の問題でございますが、本年度の予算におきましては、超過負担が最も顕著といわれておる公共、文教施設費、公営住宅建設費、国民健康保険の事務費等において、補助単価の改正をいたしまして、総額二百六十六億円の超過負担の解消をいたしまして、昨年度の施策に合わせて六百億円程度の解消をいたしましたが、御承知のように、この超過負担の問題が出てきます原因は、いわゆる地方における単独事業のつけ増し分との限界がはっきりしないことと、補助金の配分方法に適切を欠く問題があることということでございますので、どうしても補助事業の実態調査をやらないとほんとうの解決案ができません。したがって、関係省におきまして、補助事業の実態調査にちょうどいま着手したばかりでございますが、これができましたら、その結果によって、今後の補助単価の適正化をはかってまいりたいと考えております。  それからもう一つは、政府資金をできるだけ国民生活に密接した方面に運用すべしという御議論でございましたが、国民生活に密接している方面は、ひとり地方公共団体だけではございませんで、鉄道、道路、住宅、生活環境施設等、いわゆる財政投融資計画の対象機関全面にわたっております。そういう問題があると同時に、また逆に、財政投融資計画の原資は、政府資金だけでは足らない。したがって、その不足分を、地方公共団体とかあるいは政府機関それぞれにおいて民間資金を導入しているというのが現状でございます。したがいまして、地方起債におきましても、今後、地方自治原則に従って、地方公共団体が金融機関から起債するというような問題につきましては、できるだけ弾力的に対処するということにいたしますと同時に、政府資金をできるだけ多くこれに充てることには今後十分つとめてまいりたいと考えております。(拍手)   〔国務大臣藤枝泉介登壇
  19. 藤枝泉介

    国務大臣藤枝泉介君) 超過負担につきましては、ただいま大蔵大臣からお答えがございましたが、四十三年度の予算編成を目途といたしまして、計画的な解消につとめたいと存じます。  起債の自由化の問題でございますが、元来、地方自治のたてまえからいたしまして、起債は自由であるべきだという原則は認めるわけでございますが、現在の経済情勢におきましては、国並びに民間の資金需要と地方公共団体の資金需要との調整をはかる必要があることが第一、第二には、自由化された場合に、弱い団体が不利になるのではないかということ、第三には、無計画な起債というものが住民に将来非常な負担をかけるのではないかというようなことがありますので、現在、この段階におきましては、自由化に踏み切ることは非常に困難であると考えております。(拍手
  20. 園田直

    ○副議長(園田直君) これにて質疑は終了いたしました。      ————◇—————  道路交通法の一部を改正する法律案内閣提出)の趣旨説明
  21. 園田直

    ○副議長(園田直君) 内閣提出道路交通法の一部を改正する法律案について、趣旨説明を求めます。国務大臣藤枝泉介君。   〔国務大臣藤枝泉介登壇
  22. 藤枝泉介

    国務大臣藤枝泉介君) 道路交通法の一部を改正する法律案について、その趣旨説明申し上げます。  この法律案は、最近における道路交通の実情にかんがみ、交通事故の防止をはかるため、所要の規定を整備するとともに、大量に発生している自動車等の運転者の道路交通法違反事件を迅速かつ合理的に処理するため、交通反則通告制度を新設すること等をその内容としております。  まず、交通事故の防止をはかるための改正について説明申し上げます。  第一は、横断歩行者の保護の徹底をはかるため、交通整理の行なわれていない横断歩道を通過する車両等の通行方法に関する規制を強化することであります。  第二は、大型自動車による交通事故を防止するため、所要の規定を整備することでありますが、その内容は、運行記録計による記録及び保存について規定すること、積載制限違反の罰則を強化するとともに、安全運転管理者等が積載制限違反の運転を下命し、または容認することを禁止すること、並びに大型自動車免許の資格年齢を二十歳に引き上げる等、大型自動車の運転の資格要件を引き上げることであります。  第三は、運転免許の行政処分の制度の合理化をはかるための改正でありますが、そのおもな内容は、運転免許の効力の仮停止の制度の新設であります。これは、酒酔い運転またはひき逃げの死傷事故、居眠り運転による死亡事故等、一定の悪質、重大な交通事故を起こした者については、警察署長が運転免許の効力を二十日間仮停止することができることとし、都道府県公安委員会がその者の運転免許を取り消し、またはその効力を停止するまでの間における危険を排除しようとするものであります。もとより、この仮停止を受けていた期間は、運転免許の取り消しまたは効力の停止を受けた場合の期間に通算することとしております。このほか、運転免許の行政処分の迅速化をはかるため、都道府県公安委員会の運転免許の効力の停止等に関する事務の委任の規定を設けること等もその内容となっております。  以上のほか、若干の規定の整備を行なっております。  次に、交通反則通告制度の新設のための改正について説明申し上げます。  まず、この制度は、自転車、荷車等を除く車両等の運転者がした違反行為のうち、比較的軽微であって、現認、明白、定型のものを反則行為とし、反則行為をした者に対しては、警視総監または道府県警察本部長が定額の反則金の納付を通告し、その通告を受けた者が反則金を任意に納付したときは、その反則行為について刑事訴追をされず、一定の期間内に反則金の納付がなかったときは、本来の刑事手続が進行するということを骨子とするものでありますが、これによって、大量に発生している自動車等の運転者の道路交通法違反事件について、事案の軽重に応じた合理的な処理方法をとるとともに、その処理の迅速化をはかろうとするものであります。  次に、この制度は、事案の軽重に応じた処理をすることを目的としておりますところから、反則行為をした者であっても、無資格運転者、過去一年以内に運転免許の効力の停止を受けたことがある者等、危険性が高いと考えられる者に対しては、この制度を適用しないこととしております。なお、少年につきましては、この制度を適用しないこととしております。  次に、この制度は、警視総監または道府県警察本部長の通告によって反則金を納付するのがたてまえとなっておりますが、警察官の告知の制度を設け、この告知によって反則金を仮納付することができることとし、国民の利便をはかっております。  次に、反則金の額は、その最高限度額を法律で定め、その限度額の範囲内で反則行為の種別ごとに政令で定額を定めることといたしております。  また、反則金は、国に対して納付することとしておりますが、国は、当分の間、交通安全対策の一環として、反則金収入額に相当する金額を、交通安全対策特別交付金として、都道府県及び市町村に交付することとしております。この交付金は、地方公共団体が単独事業として行なう道路交通安全施設の設置に要する費用に充てさせるため、交通事故の発生件数、人口の集中度等を考慮して政令で定める一定の基準により交付することといたしております。  なお、この交通反則通告制度は、全く新しい制度でありますため、実施のための準備に相当の期間を要すると考えられますので、この制度の実施は、昭和四十三年七月一日からとしております。  以上が道路交通法の一部を改正する法律案趣旨でございます。(拍手)      ————◇—————  道路交通法の一部を改正する法律案内閣提出)の趣旨説明に対する質疑
  23. 園田直

    ○副議長(園田直君) ただいまの趣旨説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。太田一夫君。   〔太田一夫君登壇
  24. 太田一夫

    ○太田一夫君 私は、日本社会党を代表いたしまして、ただいま趣旨説明のありました道路交通法の一部を改正する法律案につきまして、総理大臣以下関係大臣お尋ねをいたしたいと思います。  まず、総理大臣お尋ねをいたします。  道交法は、「道路における危険を防止し、その他交通の安全と円滑を図ること」を目的としまして、昭和三十五年に制定されたものであります。また、道路法は、「道路網の整備を図るため、道路に関して、路線の指定、管理、保全、費用の負担区分に関する事項を定め、もって交通の発達に寄与し、公共福祉を増進すること」を目的といたしまして、昭和二十七年に制定されました。そのほか、踏切道改良促進法が昭和三十六年に、交通安全施設等整備事業に関する緊急措置法が昨年、それぞれ制定されたのであります。しかし、残念ながら、交通事故は、減少を見るどころか、かえって逐年激増の一途をたどっているのであります。  試みに、その数字を調べてみますと、死者は昭和三十九年一万三千三百十八人、昭和四十年には一万二千四百八十四人、昭和四十一年一万三千九百四人と相なっておりますし、負傷者のほうは、昭和三十九年四十万一千人余り、昭和四十年四十二万五千人余り、昭和四十一年には五十一万七千人有余と、おそるべき増加を示しているのであります。  他方、自動車の数は、昭和三十九年に七百十六万七千台余り、昭和四十年八百十二万三千台余り、昭和四十一年には九百四十万台をこえておりまして、毎年百万台をこえる目ざましい躍進を見せておるのであります。そのために、数次にわたる道路整備計画も、ついに、とどまるところなき自動車交通量の増加の前には両手をあげざるを得ないような羽目におちいりつつあります。  自動車と道路とのバランスは大きくくずれてしまいましたが、しかし、このバランスは、交通事故を防ぎ、交通の安全と円滑をはかるためには、何としても回復しなければならないものであります。この際、道路、車両、運転者のすべてにわたって総合的な対策を講ずることこそ、戦後最高といわれる今日の交通事故発生に対処する道でなければならないと思うのであります。  総理は、いままでしばしば、抜本的対策を講ずるとか、安全の確保を期するとか申されているのでありますが、一向に実現されそうにありません。どうしてそれができないのでありますか。交通事故を減らし、それを絶滅する道は何か、総理の御所信を伺いたいと思うのであります。(拍手)  次に、交通関係閣僚協議会と交通対策本部とが今後果たすべき役割りにつきまして、総理並びに総理府総務長官お尋ねいたします。  陸上交通事故防止の最大なる理想の一つは、運輸省、建設省、警察庁、労働省、通産省等、交通に関係大なる行政の総合性の樹立であります。交通行政が権限とかなわ張りとかに災いされてばらばらとなっている弊害はないのでありますか。事故を防止し、交通文化の発展を期するがためには、いままでどこも手をつけることができなかった問題、たとえば都市交通の体系的計画の樹立、道路別自動車交通量の規制、安全運転のための労務行政の強化等、すみやかに実施しなければならないことと考えます。これらについて交通関係閣僚協議会または交通対策本部はいかなる役割りを果たされる所存でありますか、お考えを承りたいのであります。  第三には、今次道交法改正の眼目であります反則金の制度について、藤枝国家公安委員長お尋ねいたします。  すなわち、反則金の法律的性質についてであります。反則金は、行政機関たる警察本部長が反則者に通告して任意に納付させるものでありますから、裁判により科せられる罰金や科料とも、また、納付強制力を伴う過料等の行政上の秩序罰とも異なるものであると考えます。行政機関が反則者にその納付を通知し、一定の期間内に納付すれば、反則事件に対して公訴の提起がなくなるという点で、国税犯則取締法による税務署長から税法違反者に対して納付を通告される金額と類似の性質を有すると思われるが、反則金の法律的性質は何か、これを承りたいのであります。  また、反則金制度は違反処理の合理化にはなるが、交通事故防止、違反抑制の効果は望まれないと思いますが、お考えはいかがでありますか。金さえ払えばよいだろうということで、罰金というきびしさを感じさせない制度が軽微な交通違反者を激増させるというような心配はないか、お伺いをしたいのであります。  第四に、道交法の運用と交通警察官の態度について、国家公安委員長にお尋ねいたします。  道交法は取り締まり法ではなかったはずであります。しかし、従来、ともすれば交通警察官の威圧的、権力的態度が大きな非難を浴びております。国民の信頼を得ることのできる交通警察官たり得ないとするならば、いかなる法律制度をもってするも、交通事故防止、交通安全の目的を達成することはできません。スピード違反のドライバーに対して、その言動が気に食わないといって手錠をかけたり、電柱にくくったりする等の非常識な行動をするような警察官は、例外的にも存在するようでは困るのであります。違反を犯した者の中には、ちょっとした不注意、不用意によるものが多くあるのであります。罰則を振りかざし、権力をかさに着たしゃくし定木的取り締まりが、どれほど国民に嫌悪の感情を植えつけ、反抗心をかり立てているか、はかり知れないものがあります。取り締まり第一主義におちいらず、道交法本来の目的たる交通の安全と円滑をはかることに重点を置いた、大乗的な気持ちによる適切かつ寛容な指導こそ、第一線警察官のとるべき態度だと思いますが、藤枝国家公安委員長のお考えを承りたいのであります。  それから、近来、警察官の綱紀がゆるんでいるのではないかと思われる現象がしばしば各地にあらわれております。つい先日、千葉県で機動隊員が幼稚園の園児をはね、静岡では警察官が酔っぱらい運転をし、帯広ではひき逃げをするというような不祥事件が起きております。昨年警察官が関係した交通事故は約四百件ありまして、特に暴走が目立っておるのであります。警察当局は、交通反則金制度を発足せしめようとするおりから、警察官の教養、訓練、いわゆる素質の向上について特段の留意が必要だと思いますが、これに対していかなる具体策を用意されておるのか、伺いたいのであります。(拍手)  第五に、野放しになっておるといわれる白ナンバーダンプについて、運輸大臣、労働大臣並びに国家公安委員長にお尋ねしたい。  無法者の代名詞になっている暴走ダンプは、いまもなお健在であります。この暴走ダンプの問題は、すでに大きな社会問題となって注目を浴びておりますが、建設会社、建材会社等から使用者、安全運転管理者、運転者のすべてに密接な関係を持っております。  今次法改正に際し、大型車規制を盛り込み、かつ、積載オーバー違反に対し罰則が加重されたことは、理解できることであります。しかしながら、積載オーバーを承知で運転した運転者には懲役刑を適用するが、この違反を命じたり、知っていて知らぬふりをしている安全運転管理者には罰金だけというのは、いささか筋違いではありませんか。片手落ちではありませんか。また、自動車運送事業者の場合は、運行管理者の解任にとどめておるというのは甘きに過ぎます。大型車による死傷事故を分析すると、運転者に過重な仕事をさしているのは管理者であり雇用者である場合が非常に多いのであります。運転者はむしろ被害者であるというケースが少なくありません。積載オーバーを罰するためには、雇用者ないし管理者の責任をこそ、よりきびしく追及するのでなければならないと思いますが、運輸大臣並びに国家公安委員長の御見解を承りたいと思います。  また、ダンプ等大型車の運転者の労務管理の改善について、労働大臣の御所信を伺いたいのであります。  寝るところ、休む場所に事欠き、低賃金とノルマ過重に泣くこれら運転者の立場には、考えなければならない重大問題があまりにも多過ぎるのであります。積極的労働行政の具体的措置が考えられておりますならば、この際お示しをいただきたいのであります。  第六に、建設大臣に、道路と自動車の関係について所信を伺いたい。  六兆六千億の第五次道路整備五カ年計画は、はたして、今日の自動車のはんらん、すなわち、一年に百万台を上回る増加を示す自動車の洪水に対処して、五カ年後においてよく大都市及び主要地方道における交通の安全と円滑が期せられるものでありますか。建設大臣は、五カ年先の日本道路上を走る自動車の数を、何千何百万台ぐらいと計算されているのでありますか、伺いたいのであります。  近代都市の交通安全は、人と車の分離、自動車と鉄道の関係の調整といわれております。いたずらに自動車をしてはんらんするにまかせておくならば、都市は自動車の洪水におぼれ、それを解決しようとすれば道路網の無限大の拡充となり、都市の形態はいたずらに荒漠たるものとなりまして、ついには都市的活動は不可能になってしまいましょう。したがいまして、大都市においては、自動車と道路とが均衡するよう人為的な規制を強化し、交通の安全と円滑化をはかるべきだと思いますが、御意見を承りたいのであります。  次に、市町村における安全対策とその財源の問題につきまして、総理並びに自治大臣にお伺いいたします。  学童、園児の登下校にあたり、その交通指導を無料で奉仕しておる母親は、全国で十八万三千人にも及んでいると聞いております。市町村には、固有の事務として、交通の安全の保持というのがありますが、遺憾ながら、現状では、手をこまねいているといった状態であります。放置されている市町村道、それから裏通り、狭い橋、通学通園路の安全の確保等、市町村のなさねばならぬ仕事は多いのですが、残念ながら、特段の財源措置が講ぜられておりません。国は、府県や市町村が道路の維持改善や交通安全施設等に要する費用に困らぬよう、十分に財源措置を講ずべきであると思いますが、具体策について承りたいのであります。  ただ、ここで申し上げておきたいのは、今次の法改正にあたって制度化された反則金でありますが、国を経由して地方団体に交付されるにあたり、従来制度化されておりました交通安全施設等整備事業に関する緊急措置法、踏切道改良促進法等の予算措置に代置されるようなことのないように、この際方針を明らかにしていただきたいと思うのでございます。交通安全施設の拡充が思うようにいかないために、反則金によって、国のなすべき責任が肩がわりされるような始末にならないよう、この際総理から確固たる御方針を承っておきたいと思います。(拍手)  最後に、交通犠牲者の救済について、運輸大臣並びに総理府総務長官お尋ねいたします。  運輸大臣は、しばしば、自動車事故に関し強制保険の保険金引き上げの意向を表明されておりますが、その引き上げは死亡の場合に限られておるようでありまして、負傷の場合の五十万円限度の引き上げというのは除外されているように伺っております。しかし、近時、交通事故の特徴は、死亡者よりも負傷者のほうが急増しておるのであります。負傷者に対する自賠保険の限度額五十万円は当然引き上げられてしかるべきだと考えられますが、運輸大臣のお考えはいかがでありますか。  また、近来、交通事故は、大都市のみでなく、地方の市町村区域へも急激に広まってきております。一たび交通事故にあったとき、その補償について被害者は困却することが非常に多く、警察官に相談しましても、民事であるからと言って、ものを申してくれません。戸惑う善良な被害者に対して、くろうとの示談屋や事故係等は、強圧的な態度で圧迫を加えてきます。これを救うことは急務でありますが、総理府は、今回交通事故相談所を都道府県に一カ所ずつつくると申されております。しかし、一府県一カ所とはあまりにも少な過ぎるではありませんか。事故相談所を市町村単位にまで設置するという用意はないのか、総理府総務長官にお伺い申し上げます。  以上、お尋ねをいたしまして、時間になりましたので、私の質問を終わります。(拍手)   〔内閣総理大臣佐藤榮作登壇
  25. 佐藤榮作

    内閣総理大臣佐藤榮作君) ただいま太田君から、死傷者の数をあげられ、同時にまた、自動車の数も年々増加している、一年に百万台以上ふえておる、こういうことから、交通事故防止、絶滅について政府はどういう処置をとるか、こういう私の基本的な態度についてのお尋ねがございました。  私は、政局を担当して以来、まず、人間尊重ということを申しました。この点で、事故を絶滅さすこと、これは人命尊重の最も具体的ないい例でございます。そこで、私がまず展開いたしましたものが、国民総ぐるみ運動でございます。これは、過去三年におきまして、各界、各方面の協力を得るということ、これがまず何よりも大事だ、かように考えまして、呼びかけたのであります。たいへん成績のあがったところもございますが、しかし、何といいましても自動車がふえておる、道路施設がこれに対応していない、まあそういうところから、痛ましい事故がいまなおあとを断たない。しかもその数がふえておる。最近は、死者はやや減少いたしましたが、負傷者の数はまたふえております。そこで、私はこの交通事故絶滅運動について楽観はしておりません。この上ともさらに各界、各方面の協力を得なければならないと思います。  しかし、ただ精神的にさような協力だけを呼びかけただけでも、もちろん不十分でございます。そこで、まず、道路整備、安全施設の整備、これをやらなければなりません。御承知のように、諸君の協力も得まして、道路整備五カ年計画、これは今度は第五次でございます。六兆六千億にのぼる道路計画も、また、安全施設三カ年計画も立てております。そうして、同時に、交通秩序を確立する、また、安全運転を各方面で要望する、さらに、不幸にして事故が起きた場合にはこれの救急措置、これは病院ばかりじゃございません、あとの賠償その他の処置をも含めて被害者救済の処置をとる、これがただいま交通事故に対する私が取り組んでおる姿勢でございます。しかし、これは政府だけの問題ではございませんし、各界、各方面の協力を得なければこのむずかしい問題は解決できない、かように私も思っておりますので、ただいま国会におきましてもこういう意味の御審議をいただいたこの際、大いに政府は総合的に、かつまた、効果的な施策をとりたい、かように考えておる次第であります。  次に、各具体的な問題についてお尋ねがございましたが、私に特に名ざしでお尋ねのありましたものは、いわゆる幼児の通学通園等について、父兄その他が無料で奉仕しておる、こういうことでございます。これは私は、ただいまの各界、各方面の協力を得る、こういう立場に立ちまして事故絶滅を期したい、かように思いますので、必ずしも無報酬ということが大きく出るわけでもないだろう、かように思います。私は、その父兄の方々が自分のところの通学通園等について特別に協力されることは、これは自然の姿だ、かように思っております。しかし、それにいたしましても、市町村が当然なすべき事柄、施設その他については積極的であってほしい、かように思っております。  今回の反則金の問題、この使途もそういう意味で使われるものかと思いますが、しかし、これは政令によってその使途をきめることになっております。ただいま予定しておりますものは、まず歩道橋が設けられるとか、あるいは交通信号機の費用に支出されるとか、こういうようなことが一応予定されておるようであります。しかし、その他の点について、具体的に委員会の場において十分御審議をいただきたい。  その他は各大臣にお願いいたします。(拍手)   〔国務大臣西村英一君登壇
  26. 西村英一

    国務大臣(西村英一君) 今回政府が改定を予定いたしております第五次道路整備五カ年計画でございますが、これは、最近における自動車の激増に対しまして、従来の第四次計画では間に合わないようになりましたので、さらにこれを拡充してそれに対処したいのでございます。この場合に、やはり今後二十年後におけるわが国の社会、経済の水準による交通需要を一応想定いたしまして、それによる道路を考えまして、その一環として今回の新五カ年計画をしようとするものでございます。したがいまして、この五カ年間におきましては、自動車の増加に対しましておおむね対処し得るつもりでございます。  また、自動車の台数は、昭和四十六年度におきまして——いままでの自動車の伸び率は一五・八%、約一六%ぐらいな伸び率を示しておりますが、それに対しまして、この事業費といたしましては、四十一年、四十二年の対比は、おおむね一六%ぐらいになっておるつもりでございます。  第二の問題でございまするが、特に大都市の中の交通でございます。われわれは、大都市の中の交通につきましては、放射線幹線あるいは環状幹線、あるいは高速の自動車道を考えております。したがいまして、それによって都内の交通の調整をいたしてまいりたい。また、都外から入ってくる交通量に対しましては、おおむね環状線で受けとめまして、バイパスをつくり、バイパスによって都内になるべく入れないように、または、都内に入る場合には、最短距離の放射線道路によってこの調節をとっていきたい、かように考えておるものでございます。(拍手)   〔国務大臣藤枝泉介登壇
  27. 藤枝泉介

    国務大臣藤枝泉介君) 反則金は反則者が任意に納付するもので、その金銭的な負担が一種の制裁的効果をあらわす、いわば広い意味での行政上の一種の制裁金と考えていいのではないかと思います。  それから、金さえ払えばといってしばしば反則を犯すようなことはないかということでございますが、御承知のとおり、今回の反則金制度は、非常に軽微な違反に限定をいたしておりまして、しかも、それらの違反のうちでも、過去一年間に免許の効力を停止されたというようなものは対象から除外いたしております。また、反則行為を犯した者でも、免許の効力を停止されるものもあるわけでございまして、さような点からいたしまして、金さえ払えばというような思想はないものと考えるわけでございます。  交通取り締まりにあたりましては、本来、指導を本位とすべきでございまして、もちろん、悪質な違反については厳重な取り締まりをいたしますが、しかし、一方、ちょっとした不注意その他のものにつきましては、親切な指導をしていくという考え方を持っておるわけでございまして、ことに、今回の反則金制度が発足いたしますと、もし警察官の取り締まりの態度いかんによっては、この制度そのものの運命にも関することがございますので、この一年の間にさらに一そうこうした面を徹底してまいりたいと存じております。  警察官の交通違反が幾たびか起こりまして、国をあげて交通事故対策に全力をあげているときに、その指導、取り締まりに当たる警察官が交通違反を起こすというようなことは、まことに申しわけないことでございます。従来も指導、教養には意を用いておったのでございますが、たとえば、運転免許を持っておる全警察官の適性検査をさらにもう一度やる、あるいは過去に重大な事故を起こした者は運転を禁止する、あるいは職場においてお互いに牽制し合うというようなことを徹底いたしまして、絶無を期したいと存じます。  それから、積載違反につきまして、下命、容認をした者の刑罰が軽いではないかということでございますが、現実に積載違反をいたしましたときに、下命をいたした者は、悪質な者につきましては、教唆犯として同一の刑罰が科せられるわけでございまして、たとえば、下命をしたが、運転者は積載違反をしなかったというような場合の下命の場合に、この軽いのほうの罰則が適用されるものと考えます。  市町村の安全対策につきましては、現在の三カ年計画の裏づけとなるものは財政的な措置をいたしましたが、御指摘のような、裏通りまたはその他の危険な場所について、それ以上にやらなければならない財政需要につきましては、今後十分考えてまいりたいと思います。今回市町村道の財源として二十五億を計上いたしたのも、それに使えるものと考えておる次第でございます。(拍手)   〔国務大臣塚原俊郎君登壇
  28. 塚原俊郎

    国務大臣(塚原俊郎君) 交通行政は各省にまたがっておりますので、交通事故を撲滅するために、総合調整の立場から、交通対策本部を設けまして、また一方においては、交通関係閣僚会議を開きまして、この問題に取り組んでおるわけでございます。  その基本姿勢といたしましては、先ほども総理が述べましたけれども、四つの柱を中心といたしております。道路と交通安全施設の整備を第一の柱とし、それから、交通道徳教育の徹底と申しますか、これを第二の柱、そしてまた、交通秩序の確立、つまり取り締まりでありますが、これを第三の柱、世界に比べて日本においては歩行者に非常に犠牲者が多いという立場から、事故にあわれた方のごめんどうを見るということ、これを第四の柱として、これを基本線にして取り組んでおるわけでございます。  今日まで、交通対策本部も、交通関係閣僚会議もきわめて精力的に動いておりますが、当面一番重点として取り組んでおります問題は、ダンプ等大型車に対する対策をどうするかという一つの専門部会を設けてあること、そうしてまた、学童園児をいかにして守るかという一つの専門部会、それから踏切をどう扱うかという、この三つに重点を置いておるわけでございます。きわめて精力的に動きまして、交通戦争といういやなことばを抹殺したい、このように考えておるわけでございます。  なお、お尋ねの、交通事故相談所でありますが、今度御審議を願った予算の中で、全国で五十カ所ほどこれを設けることになるのであります。しかし、府県に一カ所では少ないのではないかという御指摘でありますが、私の考えでは、市町村の末端にまで簡易な窓口というようなものを設けまして、事故にあわれた方々に親身になってお世話を申し上げる機関を充実させなければならないと考えております。また、非常に僻陬の地にありましては、巡回というような措置も講じていきたいと考えております。交通安全協会あるいは弁護士会等民間団体の非常な御協力もいただいておりますし、また、国民総ぐるみ運動ということでこの問題とも取り組んでおりますので、そういう方との連絡を緊密に保ちながら、せっかくつくられまするところの交通事故相談所の妙味を発揮して、そして御不便の方々、お困りの方々にその手を差し伸べていきたい、このように考えております。なお、これをやりまして、もし不十分の点がありましたならば、一カ所で少ないという結果があらわれましたならば、さらにこれは考慮しなければならない問題であろうと思いますが、今日の段階では、いま申し上げましたことから、十分にその対策が講じ得られるものと私は考えております。(拍手)   〔国務大臣早川崇君登壇
  29. 早川崇

    国務大臣(早川崇君) 交通事故防止のために運転者の労務管理の面からメスを入れなければならないということは、御指摘のとおりでございます。現在、ダンプ等トラック運転手の労働条件を調べてみますと、一日十時間以上働いておる労働者が、運転者の二七%、一般産業は八%の実情でございます。また、休日も非常に少ないという実情がわかりました。そこで、労働省といたしましては、本年二月に自動車運転者の労働時間等の改善指導基準というものを設けまして、この基準によりまして九千事業所を労働基準監督署で監督をいたしました。そうすることによりまして運転者の労務管理の面から交通事故を少しでも少なくしようと努力をいたしておる次第でございます。  同時に、民間の有識者から労務改善推進員というのを委嘱いたしまして、民間の有識者の面からも運転者の労務管理、労働条件の向上に協力をしていただく体制をつくって労務面の改善をはかりたいと考えておる次第でございます。(拍手)   〔国務大臣大橋武夫君登壇
  30. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 自家用ダンプカーを規制する問題でございますが、運輸省としては、運行管理者の監督指導に今後一そう力を入れる考えでございますが、特に大型車及びダンプに対する対策としましては、これだけではなく、目下、交通対策本部において関係各省庁参加して検討いたしておる次第でございます。  次に、自動車損害賠償責任保険の保険金額の引き上げにつきましては、死亡及び傷害後の後遺障害についてそれぞれ三百万円に引き上げるということを目標にいたしておりますが、単なる傷害そのものにつきましては、現在でも五十万円の限度額に達するものはきわめてわずかでありますので、目下据え置きの方向でございますが、せっかくの御意見でございますから、なお今後よく調査をいたします。(拍手)     —————————————
  31. 園田直

    ○副議長(園田直君) 松本忠助君。   〔松本忠助君登壇
  32. 松本忠助

    ○松本忠助君 私は、公明党を代表して、ただいま趣旨説明がございました道路交通法の一部を改正する法律案に対し質疑を行ない、総理並びに関係各大臣の率直明快な答弁を求めるものでございます。  交通事故は、ここ数年増加の一途をたどり、その猛威をふるっております。きょうもまた、一日で千四百人の負傷者と三十八人の死亡者が出て、その家族が事故の知らせを聞いて、動転して病院にかけつけ、また、死者の遺族が、悲しみにのどを詰まらせ、何千組かの賠償交渉が、あるいは示談で、あるいは裁判で行なわれていることでございましょう。そしてあすもあさっても、自動車のある限り、永遠にこの悲劇の幕はおりそうもないのであります。いまこそ交通安全の対策を強化して、とうとい人命を悲惨な交通事故から守らなければなりません。これは全国民の悲願であり、この悲願を成就させることが、われわれ政治家の最大の責務の一つでなければならないのであります。この自覚のもとに、交通安全対策の総合的な実施は緊急、最要の問題でございますが、遺憾ながら政府の施策はあまりにも時代の要請とほど遠いのが実情でございます。  ただいま道交法の改正案を提案されましたが、その内容は、激増する交通違反者の処理に便ならしめようとするのか、交通事故を少なくしようとするのか、はなはだ真意をはかりかねるものがございますので、その内容について順次質問をしたいと思うものであります。  まず第一に、大型車の運転免許の取得基準は二十歳以上、二年の運転経験者と改正されるわけであります。これは最近の大型自動車の重大事故の多発から見ましても当然であると思いますが、さらに取得基準を引き上げる必要があると考えます。この点、どうお考えか。また、普通免許は取得基準を二十歳以上にすべきではないかと思うが、総理並びに国家公安委員長にお伺いいたします。  第二に、今回の法の改正にあたり、積載制限に違反した運転者に対する罰則の強化は、安全運転確保のたてまえからもやむを得ないことと思いますが、運転者はむしろ管理者に命令され、不本意ながら違反せざるを得ないのが実情なのでございます。しかるに、これが取り締まりの対象となった場合は、運転者も管理者も同等の刑罰を受けることは、運転者に過酷であると考えるものであります。したがいまして、管理者としての責任を追及するため、運転者に対する刑罰以上のものを科する考えはないか、国家公安委員長の見解を伺いたいのであります。  さて、次に、このたび新設されます反則金通告制度についてお尋ねいたします。  その第一は、この反則金は罰金にかわる内容を持った制裁であり、行政罰としての過料との中間的性質を持つものとされておるのであります。しかし、刑罰としての罰金、科料に準ずる反則金は、はたして裁判手続によらないで科することができるのか、また、通告の内容に不服があるならば正式裁判を受けることができるということであっても、法の適正手続を要請している憲法第三十一条に違反するのではないか。この点、総理並びに法務大臣の見解を承りたいのでございます。  また第二は、この制度によって被検挙者が裁判を受ける権利を妨げることにならないかということであります。交通違反があったとして、検挙された者がその違反事実の適否に争点があれば、当然裁判を受ける権利があるのでありますが、その手続の繁雑をきらい、また、通告処分に応じて任意に反則金を納めた者は前科とはならないが、違反事実を争いたい者は公訴が提起され、罰金を科せられることによって前科を負い、資格制限を受けるおそれが生じるのでございます。この結果、休職や免許の停止、取り消しなど、前科を負担する可能性が大であり、それは生活にもつながってくるということから、違反の事実に争点があっても、そのほとんどはやむを得ず反則金を納付いたしまして、裁判を受けることを避ける。すなわち、裏返せば、裁判を受ける権利を妨げられることになるのではないか。総理並びに法務大臣国家公安委員長の御見解を賜わりたいのであります。  第三に、従来から交通違反者の罪悪感が非常に低いことが問題になっているのであります。交通違反者が悪いことをしたという罪悪感よりも、運が悪かったという意識のほうがはるかに強いということであります。これらの交通違反者にとって、罰金を支払うことよりも、運転免許の一時停止のほうがよほど苦痛でありますが、このたびの通告制度によって、反則金さえ支払えば前科もつかず、免許の停止もないということになれば、自然と順法精神を麻痺させ、かえってこの新制度が逆効果を生むと考えられますが、この点どのような見解であるか、法務大臣並びに国家公安委員長にお尋ねいたしたいのであります。  なお、ポイントシステムと称せられる持ち点制を設け、交通違反の内容、頻度によって、たび重なれば、運転免許の取り消しや停止処分のできるようにすることが、前段の欠陥を補う一つの方途と考えられますが、総理並びに国家公安委員長に御見解を承りたいのであります。  第四に、またこの反則金通告制度は、比較的軽い違反事故について適用しようとしているのでありますが、このごく軽い違反であった場合、違反者に対し、単に口頭で注意を与えるのにとどまるか、反則金の納付を通告するかは、現場の警察官の判断にまかせられることになるのであります。したがって、警察官に対し新しい権力を与えることになるのであります。当然運営にあたりましては、あくまで公正、慎重を期することに徹しなくてはならないのでありますが、職権乱用が多くなることは避けられないと考えられるのであります。従来からも問題になっているところの警察官の検挙第一主義や、警察官の教養に対する具体的方針等、職権乱用を防ぐ方策について、総理並びに国家公安委員長にお伺いいたしたいのであります。  第五に、反則金の帰属の問題であります。当分の間国に納付されることとし、交通安全対策特別交付金として地方公共団体に交付することとしていますが、一たん国に納付して地方に還元するという繁雑な手続を排し、なぜ地方公共団体に直接帰属させる方法をとらなかったか、また、その交付金の交付基準はどのようにするのか、あわせて大蔵、自治大臣にお伺いをしたいものであります。  さて、交通事故防止の方策は、三E政策、すなわち、交通安全施設、交通安全教育、交通法規の順守の三本の柱が相ともに充実、整備、徹底されなければならないのが定説であります。  従来からの政府の方針を見ますと、取り締まりの強化が先行して、そのほかの交通安全施設の整備充実、交通安全教育の普及徹底が非常におくれているのであります。しかも、自動車の増加は、現在の約一千万台が、十年後にはおそらく三千万台に達するのではないかといわれております。したがって、全国至るところに自動車はあふれ、国民の大部分が自動車を持つか、その運転の経験を持つことになります。  いま政府は、現状打開のために、緊急整備三カ年計画をもって交通安全対策を実施しておりますが、全くこれは一時しのぎにすぎないことは明らかでございます。自動車交通の激化に対処するためには、このような近視眼的な計画ではなく、長期構想に基づく計画の樹立は絶対不可欠のものであると確信するものであります。いまにしてこの計画が樹立され、着々と実施に移されなければ、それこそ交通事故亡国の惨状となるでありましょう。  また、このたびの道交法改正にいたしましても、交通事故絶滅のために取り締まりの強化が不可欠の要件の一つであっても、交通安全施設や道路の根本的な構造改善や整備がなされていかなければ、単に一億総違反者をつくるのみで、交通事故の防止に何ら役立たないでありましょう。  最後に、総理大臣お尋ねいたしたいのであります。  今後の交通激化に伴う交通事故防止のための長期的、抜本的構想、いわゆるビジョンとそのプログラムについて所信を明らかにしていただきたいのであります。また同時に、これら総合的交通安全対策のため、各方面の権威者を集めて、交通専門の科学者の育成をはかる研究センターを設置する考えはないか、以上をお伺いいたしまして、私の質問を終わらせていただきます。(拍手)   〔内閣総理大臣佐藤榮作登壇
  33. 佐藤榮作

    内閣総理大臣佐藤榮作君) お答えいたします。  政府は、事故防止のために最善を尽くす、また、その決意で取り組んでおるわけであります。先ほどもいろいろお尋ねがございまして、社会党の方にもお答えしたとおりでございますから、重複をひとつ避けさしていただきたいと思います。今回の道路交通法改正は疑念があるように言われますけれども、事故防止に役立てるための改正でございます。十分ひとつ御審議をいただきたいと思います。  大型車の運転免許あるいは運転者の年齢等についてどういうようにするがいいか、これらのことは委員会において十分ひとつ御審議をいただきたいと思います。  また、反則金の問題についていろいろお尋ねがございました。これが基本的な点について私お答えいたしますが、反則金は決して憲法違反ではございません。また、この反則金制度、これによりまして法秩序をべっ視する、かようなものではないのでありまして、私は、いつも申し上げますように、民主政治のもとにおきましては、法律を守ることが最も大事でございますから、そういう意味で、関係者もこの法律を守る、こういうことに徹してもらいたいと思います。  次に、先ほどお答えをいたしましたように、この対策といたしましては、総合的、計画的な四つの柱をつくっておりますので、これを十分ひとつ御審議いただきたいと思います。  また、最後にお話がありましたが、事故防止のためのビジョン、これは、私、先ほどもお答えしたように、国民総ぐるみ運動——もちろん安全施設を整備すること、これは大事でございます。けれども国民総ぐるみ運動を展開しない限り、この絶滅はなかなか効果をあげ得ない、かように私は思っております。また、その意味で総合的な対策を立てろ、ことに、研究センターという御提案がございました。私は、確かに、この事故防止研究センター、これは一つの検討すべき御提案だ、かように思っておりますので、十分ひとつ御意見も伺いながら、さらに掘り下げてみたいと思います。(拍手)   〔国務大臣藤枝泉介登壇
  34. 藤枝泉介

    国務大臣藤枝泉介君) 運転免許の年齢制限でございますが、これは現在の産業界、その他の事情からいたしまして、この程度が適当ではないかと存じますが、さらに検討をしてまいりたいと思います。  積載制限の違反についてでございますが、これを命じた者につきましては、教唆犯として運転者と同一の法体系によって処罰されるわけでございますが、おそらく、運転者がいやがるものを命令したというような場合には、実際の科刑においては命令者のほうが重く罰せられるであろうと私は考えます。  それから、前科がつくのがいやなんで、その違反について異議があるが、やむを得ず納めるようなことがないかということでございますが、今回の反則行為は、現認され、明白な、しかも定型的なものでありまして、その上反則金そのものは定額でございますから、争いがあるというのは、違反をしたかしないかということで、そういう問題はほとんど起こらないと考えます。したがいまして、やむを得ず納めるというようなことはあり得ないと存じます。  それから、金さえ払えばということで、反復反則行為を犯すのではないかということでございますが、先ほどもお答えいたしましたように、一年以内に免許の停止を受けた者あるいは事故を起こした者、そういう者にはこの反則金制度は適用しないのでございまして、また、反則行為をやりましても、その中にはまた免許の効力の停止を受ける者もあるわけでございますから、金さえ払えばというような思想は出てこないと考えております。  ポイントシステムについては、四十四年の十月から実施するつもりでございますが、これができますれば、さらにこの交通事故取り締まりの徹底が期せられると考えております。  警察官の教養につきましては、従来とも十分意を用いて、いやしくも乱用にわたらないようにということは、常に指導をいたしておるわけでございますが、この反則金制度の発足を機に、さらに一そう徹底してまいりたいと思います。  反則金を国に帰属することにいたしましたのは、なるほど罰金ではございませんけれども、一種の行政的な制裁金でございますので、一たん国に帰属させ、それを地方に分けるという方法をとったわけでございまして、その配分の方法は交通事故の件数あるいは人口の集中度等、客観的基準によって配分いたしたいと存じます。(拍手)   〔国務大臣田中伊三次君登壇
  35. 田中伊三次

    国務大臣田中伊三次君) 松本君の御意見は、この反則金制度が裁判を受ける権利を奪うのではないか、したがって、その意味で憲法違反ではないかという御心配でありますが、反則金は、藤枝大臣からすでに御説明の中でも申しましたように、新しい制度である。ことばをかえると、罰金、科料ではない、また、行政罰としての過料でもない、また、似た制度といたしましては、大蔵省所管で行なっております間接国税通告処分というものでもない、全く新しい制度である、こういうことであります。もう一つ、重要な点は、本人の意思に基づかずして適用されない、本人の意思に基づいてのみ適用される制度である、こういうことから、憲法違反なりとの意見は成り立たないものと存じます。(拍手)   〔国務大臣水田三喜男君登壇
  36. 水田三喜男

    国務大臣(水田三喜男君) お答えいたします。  反則金は、単なる納付金ではございませんで、まず反則金の納付通告ということは、犯罪である道交法違反の捜査によって、確定した事実に対して行なわれるというものでございますので、司法権の一作用である犯罪捜査と一体のものであるということ。それから反則金を納めるということは、これも司法権の一作用である公訴権を消滅させるという効果を伴っておるものでございます。ですから反則金の納付通告ということは、公訴権の行使とも一体性を持っている事務ということでございますので、これは明らかに国の事務であり、この所属は国に所属すべきものだというふうに私どもは考えております。したがって性格をはっきりさせるために、直接これを地方団体の収入にすることを避けたという次第でございます。  それから、基準についてのお尋ねがございましたが、いまこの基準の作成の作業中でございまして、人口の集中度、それから事件の発生件数、さらに施設の必要度というもの、これらのものに応じた客観的な、適切な基準をつくりたい。いま作業中でございます。(拍手
  37. 園田直

    ○副議長(園田直君) これにて質疑は終了いたしました。      ————◇—————  日程第一 国際法定計量機関を設立する条約改正受諾について承認を求めるの件  日程第二 千九百二十九年十月十二日にワルソーで署名された国際航空運送についてのある規則統一に関する条約改正する議定書締結について承認を求めるの件
  38. 園田直

    ○副議長(園田直君) 日程第一、国際法定計量機関を設立する条約改正受諾について承認を求めるの件、日程第二、千九百二十九年十月十二日にワルソーで署名された国際航空運送についてのある規則統一に関する条約改正する議定書締結について承認を求めるの件、右両件を一括して議題といたします。
  39. 園田直

    ○副議長(園田直君) 委員長の報告を求めます。外務委員長福田篤泰君。   〔報告書は本号末尾に掲載〕     —————————————   〔福田篤泰君登壇
  40. 福田篤泰

    ○福田篤泰君 ただいま議題となりました二案件につきまして、外務委員会における審査の経過並びに結果を御報告申し上げます。  まず、国際法定計量機関を設立する条約改正案件について申し上げます。  本条約は、計量に関する諸問題、特に計量器類の使用に伴って生ずる技術上、行政上の諸問題を国際間で統一的に解決することを目的とする国際法定計量機関の設立、機構、任務、事業等を定めたものであります。わが国は一九六一年に本条約に加入いたしております。  このたびの改正は、この機関の執行機関である国際法定計量委員会が、国際法定計量会議が選任する国籍の異なる二十人以内の委員で構成することに相なっておりましたのを、すべての加盟国がそれぞれ指名する一人ずつの代表者で構成しようとするものであります。  次に、ワルソー条約改正議定書について申し上げます。  本条約は、国際航空運送における運送人の責任及び運送証券を国際間で統一的に規律することを目的とする条約でありまして、わが国は一九五三年にその当事国と相なっております。  その後、世界における航空運送事業が飛躍的に発達いたしましたために、この条約規定中には、実際の慣行に沿わないものも出てまいりましたので、これを改善するために、一九五五年ヘーグで本議定書が作成されたのでありまして、わが国は一九五六年にこの議定書に署名をいたしております。  本議定書により改正せられましたおもな点は、旅客運送における運送人の責任限度額を邦貨にして約三百万円から倍額の約六百万円に引き上げたこと、並びに航空運送証券に関する規定を整備したこと等でありまして、本議定書はすでに一九六三年に発効いたしております。  わが国といたしましては、最近に至り、わが国の国民所得も増加し、かつ、わが国の国際航空企業も著しく発展いたしましたので、このたび本議定書を批准することにいたした次第であります。  国際法定計量機関を設立する条約改正案件は四月十八日、ワルソー条約改正議定書は五月二十四日、それぞれ外務委員会に付託せられましたので、政府から提案理由説明を聞き、質疑を行ないましたが、詳細は会議録により御了承を願います。  かくて、六月九日、質疑を終了し、討論を省略して採決を行ないましたところ、二案件はいずれも全会一致をもって承認すべきものと議決いたしました。  以上、御報告申し上げます。(拍手)     —————————————
  41. 園田直

    ○副議長(園田直君) 両件を一括して採決いたします。  両件は委員長報告のとおり承認するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  42. 園田直

    ○副議長(園田直君) 御異議なしと認めます。よって、両件は委員長報告のとおり承認するに決しました。      ————◇—————  日程第三 石炭鉱業再建整備臨時措置法案   (内閣提出
  43. 園田直

    ○副議長(園田直君) 日程第三、石炭鉱業再建整備臨時措置法案を議題といたします。
  44. 園田直

    ○副議長(園田直君) 委員長の報告を求めます。石炭対策特別委員長多賀谷真稔君。     —————————————   〔報告書は本号末尾に掲載〕     —————————————   〔多賀谷真稔君登壇
  45. 多賀谷真稔

    ○多賀谷真稔君 ただいま議題となりました石炭鉱業再建整備臨時措置法案について、石炭対策特別委員会における審査の経過並びに結果を御報告申し上げます。  わが国の石炭鉱業は、エネルギー革命の進行に伴う諸情勢の変化により、今日未曾有の危機に直面していることは、皆さん御存じのとおりであります。石炭のわが国産業、経済における重要性は、最近の中東戦争による石油の供給不安一つをとりましても多言を要しないところであります。  すでに石炭鉱業の再建、自立安定については、本院において、過去再三にわたり決議を行ない、また、政府においても、石炭鉱業審議会の審議を求め、その一次、二次の答申に基づき、各般の施策を講じてまいったのであります。しかし、諸情勢の変化はあまりにも急激であり、石炭鉱業の苦況はますます深刻の度を加えている現状であります。  このような重大な局面に対処し、抜本的な対策の必要が叫ばれ、昨年七月、石炭鉱業審議会の答申が提出されたのであります。  本案は、この答申に基づく中核的な施策として、過去数年にわたる急激かつ大規模な閉山合理化過程において発生した過重な負担を軽減するため、財政資金により約一千億円の肩がわり措置を講じ、もって石炭鉱業の経営基盤を改善し、その再建を期そうとするものであります。  本案の内容の骨子は、肩がわり措置の対象となろうとする会社は、再建整備計画を作成し、通商産業大臣の認定を受け、その認定を受けた企業は、金融機関からの借り入れ金のうち一定額につき政府と元利補給契約を結ぶこととしたことであります。その他これに関連して、再建整備会社が利益を計上した場合の納付金、石炭の生産をやめた場合の元利補給契約の解除、金融機関に対する損失補償及び再建整備会社に対する政府の指導監督体制の強化等を定めたものでありまして、本法昭和六十年三月三十一日までの限時法としております。  本案は、去る四月十九日本委員会に付託され、四月二十八日菅野通商産業大臣より提案理由説明を聴取した後、参考人を招致する等、慎重な審議を重ねたのでありますが、おもな質疑は次のとおりであります。  「五千万トン需要は国の政策として不動なものであるか」、「この肩がわり措置は金融機関、大手炭鉱の救済となり、中小炭鉱への恩恵はきわめて僅少ではないか」、「わが国の石炭鉱業の根本的欠陥は鉱区の分散私有化と流通機構の複雑化であるが、その解決のために企業合同、一社化、国有化の必要はないか」、「現在炭鉱労働者はきわめて劣悪な労働条件下にあり、労働力不足による労務倒産のおそれがあるが、その対策いかん等」であります。  六月九日に至り、質疑を終了し、引き続き討論を行ないましたところ、自由民主党、民主社会党及び公明党よりそれぞれ賛成の意見が述べられ、日本社会党より反対意見が述べられました。  かくて、採決の結果、本案は多数をもって原案のとおり可決すべきものと決しました。  以上、御報告申し上げます。(拍手)     —————————————
  46. 園田直

    ○副議長(園田直君) 採決いたします。  本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  47. 園田直

    ○副議長(園田直君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。      ————◇—————  中小漁業振興特別措置法案内閣提出)  外国人漁業規制に関する法律案内閣提出
  48. 亀岡高夫

    亀岡高夫君 議事日程追加緊急動議提出いたします。  すなわち、この際、内閣提出中小漁業振興特別措置法案外国人漁業規制に関する法律案、右両案を一括議題となし、委員長の報告を求め、その審議を進められんことを望みます。
  49. 園田直

    ○副議長(園田直君) 亀岡高夫君動議に御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  50. 園田直

    ○副議長(園田直君) 御異議なしと認めます。よって、日程は追加せられました。  中小漁業振興特別措置法案外国人漁業規制に関する法律案、右両案を一括して議題といたします。
  51. 園田直

    ○副議長(園田直君) 委員長の報告を求めます。農林水産委員長本名武君。     —————————————   〔報告書は本号末尾に掲載〕     —————————————   〔本名武君登壇
  52. 本名武

    ○本名武君 ただいま議題となりました両案につきまして、農林水産委員会における審査の経過及び結果を御報告いたします。  まず、中小漁業振興特別措置法案について申し上げます。  本案は、中小漁業のうち、生産性の向上その他経営の近代化を促進して、その振興をはかることが特に必要であると認められる業種について、中小漁業振興計画を樹立し、その実施の円滑化をはかるため、金融、税制上の優遇措置を講じようとするものであります。  本案は、去る四月四日内閣から提出され、四月十九日提案理由説明を聴取し、五月二十五日以降六日間にわたって慎重審査を行ない、六月七日質疑を終局いたしたのであります。  次いで、六月十三日において、自民、社会、民社及び公明の四党共同により、振興計画を定める場合は、沿岸漁業等振興審議会の意見を聞くものとする旨の修正案提出され、修正案及び修正部分を除く原案についてそれぞれ採決いたしましたところ、いずれも全会一致をもって可決され、よって、本案は修正議決すべきものと決した次第であります。  なお、本案に対しては、指定業種の拡大をはかること等五項目にわたる附帯決議が付されました。  次に、外国人漁業規制に関する法律案について申し上げます。  本案は、外国人がわが国の近海において漁業活動を行なうことが増大し、わが国漁業の秩序維持に支障を来たすおそれが生じてきたため、わが国の領海における外国人漁業を禁止するとともに、外国漁船の寄港は農林大臣許可制とし、また、漁獲物を外国漁船からわが国に陸揚げすること等を禁止しようとするものであります。  本案は、去る四月二十五日内閣から提出され、五月二十三日提案理由説明を聞き、五月二十五日以来中小漁業振興特別措置法案と一括審査を行ない、六月七日質疑を終了し、六月十三日全会一致で可決すべきものと決した次第であります。  以上、御報告申し上げます。(拍手
  53. 園田直

    ○副議長(園田直君) これより採決に入ります。  まず、中小漁業振興特別措置法案につき採決いたします。  本案の委員長の報告は修正であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  54. 園田直

    ○副議長(園田直君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり決しました。  次に、外国人漁業規制に関する法律案につき採決いたします。  本案は委員長報告のとおり決するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  55. 園田直

    ○副議長(園田直君) 御異議なしと認めます。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。      ————◇—————
  56. 園田直

    ○副議長(園田直君) 本日は、これにて散会いたします。    午後四時三十四分散会      ————◇—————  出席国務大臣         内閣総理大臣  佐藤 榮作君         法 務 大 臣 田中伊三次君         外 務 大 臣 三木 武夫君         大 蔵 大 臣 水田三喜男君         農 林 大 臣 倉石 忠雄君         通商産業大臣  菅野和太郎君         運 輸 大 臣 大橋 武夫君         労 働 大 臣 早川  崇君         建 設 大 臣 西村 英一君         自 治 大 臣 藤枝 泉介君         国 務 大 臣 塚原 俊郎君  出席政府委員         内閣法制局長官 高辻 正巳君         内閣法制局第二         局長      真田 秀夫君         警察庁交通局長 鈴木 光一君         警察庁警備局長 川島 広守君         法務省刑事局長 川井英代良君         法務省訟務局長 青木 義人君      ————◇—————